JP2021023198A - ヒトβディフェンシン2誘導用味噌 - Google Patents

ヒトβディフェンシン2誘導用味噌 Download PDF

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Abstract

【課題】多麹味噌の保健的機能に関する知見を得て、多麹味噌の新たな用途を提供すること。【解決手段】原材料の大豆と米麹の割合が大豆1質量部に対し米麹2質量部以上であるヒトβディフェンシン2誘導用味噌。発酵・熟成期間が7〜15か月である上記味噌。米麹が、麹菌3号B株を使った米麹である、上記いずれかの味噌。本発明によれば、多麹味噌にヒトβディフェンシン2誘導という新たな用途を提供することができる。このことは、例えば本発明の多麹味噌を摂取することにより、大腸などの消化器官のヒトβディフェンシン2誘導を高め食中毒を予防できる、さらに、誘導されたヒトβディフェンシン2、免疫担当細胞に働きかけて、抗腫瘍効果を奏することができる可能性を示している。【選択図】図1

Description

本発明はヒトβディフェンシン2誘導用味噌及びその製造方法に関する。
秋田県横手地方で以前より生産されている横手味噌は、原材料中の大豆に対する米麹の割合が高い多麹みそで、ほんのりと甘い、味わい深い味噌である。江戸時代には大豆より米が高価であったので、麹の割合が高い横手味噌は贅沢な味噌といわれてきた。
また、近年、味噌が有する保健的機能に注目が集まっており、味噌を継続的に摂取することで、がんの発生が抑えられ、高血圧の改善、糖尿病予防などにも効果があるという報告がなされている。このように味噌一般については、様々な知見が得られつつあるが、横手味噌特有の保健的機能に関する知見は十分ではなかった。
一方、植物、昆虫、両生類などにおいて、生来持っている生体防御機構として生体内の抗菌物質、特に抗菌ペプチドの存在が以前より知られている。これらは、自然免疫と呼ばれ、局所での感染防御を担っていることが解明されている。ヒトにおける抗菌ペプチドは、ディフェンシンと総称されている。ディフェンシンは、細菌、真菌等に対して、抗菌活性を有しており、生体内で種々の生体防御機構に関与していることが分かっている。
皮膚、肺、気管、腎臓、生殖器等の粘膜上皮に発現するディフェンシンとして、βディフェンシンが知られている。現在ヒトβディフェンシンとして6種のもの(ヒトβディフェンシン1、ヒトβディフェンシン2、ヒトβディフェンシン3、ヒトβディフェンシン4、ヒトβディフェンシン5、及びヒトβディフェンシン6)が単離、構造決定されている。特に、ヒトβディフェンシン2については、口腔、肺、気管、眼、鼻、消化器官等の粘膜組織及び皮膚において特に強く発現する、細菌感染や炎症性サイトカイン刺激にて発現誘導される、等の特徴があることが解明されており、肺炎等の気管感染症や炎症と密接な関係があることが示唆されている。
近年、βディフェンシンは、局所の感染防御だけでなく、上皮組織の組織修復や樹状細胞、Tリンパ球、単球等の細胞を遊走させることによる獲得免疫にも関与していることも報告されている。また、腫瘍免疫を誘導して、抗腫瘍効果を発揮することやガン細胞で増殖抑制作用があることも報告されている。
生体内で感染防御を司るヒトβディフェンシンの産生を促進することができれば、直接的な抗菌作用の強化ができるだけでなく、感染部位において免疫担当細胞を動員することで、生体防御機構を一層強化できると考えられる。
今までに、食品とヒトβディフェンシン2の誘導の関係について検討されたことはあるが(特許文献1)、味噌とヒトβディフェンシン2誘導の関係について報告されたことはない。
特開2005−270117号公報
本発明の目的は、多麹味噌の保健的機能に関する知見を得て、多麹味噌の新たな用途を提供することである。
本発明者は、上記目的を達成するために種々検討の結果、驚くべきことに、本発明の多麹味噌が、ヒトの細胞株において、ヒトβディフェンシン2を高誘導することを見出し、本発明に到達した。すなわち本発明は以下の通りである
1.原材料の大豆と米麹の割合が大豆1質量部に対し米麹2質量部以上である味噌、を含むヒトβディフェンシン2誘導用組成物。
2.原材料の大豆と米麹の割合が大豆1質量部に対し米麹2質量部以上である味噌、を含むヒトβディフェンシン2誘導用食品組成物。
3.原材料の大豆と米麹の割合が大豆1質量部に対し米麹2質量部以上であるヒトβディフェンシン2誘導用味噌。
4.原材料の大豆と米麹の割合を、大豆1質量部に対し米麹2質量部以上とし、両者を混合後7〜15か月間室温で発酵・熟成させる、ヒトβディフェンシン2誘導用味噌の製造方法。
5.米麹が、麹菌3号B株(株式会社秋田今野商店 原菌番号:AOK38)を使った米麹である、前記1のヒトβディフェンシン2誘導用組成物、又は前記2のヒトβディフェンシン2誘導用食品組成物、又は前記3のヒトβディフェンシン2誘導用味噌、又は前記4のヒトβディフェンシン2誘導用味噌の製造方法。
本発明によれば、多麹味噌にヒトβディフェンシン2誘導という新たな用途を提供することができる。このことは、例えば本発明の多麹味噌を摂取することにより、大腸などの消化器官のヒトβディフェンシン2誘導を高め食中毒を予防したり、誘導されたヒトβディフェンシン2が、免疫担当細胞に働きかけて抗腫瘍効果を奏する可能性を示している。
本発明の味噌の製造方法の1例を示した。 本発明の味噌のヒトβディフェンシン2(hBD2)誘導活性を示した。 半年熟成味噌のhBD2誘導活性を示した。 1.5年熟成味噌のhBD2誘導活性を示した。 従来使用してきた麹菌を使って製造した味噌のhBD2誘導活性を示した。 半年熟成、大豆:米麹1:1(1倍)と1:2.75(3倍)の味噌のhBD2誘導活性を比較した図を示した。 麹菌3号B株及び米麹自体のhBD2誘導活性を示した。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明で用いる原材料の大豆は、味噌用の大豆に限るものではない。例えば、主に枝豆として食されている大豆品種を用いることもできる。米麹を製造する際の米にも特に制限はない。米麹を製造する際に使用する麹菌は、アスペルギルス・オリゼー、アスペルギウス・ソヤ―のどちらを使用してもよいし、両者を共に用いてもよいが、ヒトβディフェンシン2誘導能をもつ味噌を製造できる麹菌である。株式会社今野商店で販売されている麹菌3号B株(株式会社秋田今野商店 原菌番号:AOK38)はこのような麹菌であり、この麹菌を使用するとより好ましい。ただし、麹菌3号B株、及びこれを用いて製造した米麹のみでは誘導活性が観察されないので、麹菌自体、米麹自体が効いているのではなく、この麹菌で味噌を製造する際の代謝産物が、誘導活性に効いていると思われる。
また、麹菌3号B株には、同様の作用を持った、3号B株の改良株、変異株も含まれる。
さらに、当然ながら、麹菌3号B株で米麹を製造した場合、米麹は、麹菌3号B株を含有することになる。
なお、本発明は、今まで知られていなかったヒトβディフェンシン2を誘導する味噌の発明であり、本発明の味噌は、麹菌3号B株で製造した味噌に限定されるものではない。
みそ製造では、蒸し大豆と米麹を製造後、蒸し大豆、米麹、塩、水を混合するが(以下、「仕込む」ともいう)、蒸す前の大豆と、米麹の割合は、重量比で「大豆:米麹=1:2以上」が好ましく、「大豆:米麹=1:2.5〜3.5」がより好ましい。
仕込み時に、全体に占める蒸し大豆(蒸すことで重量がおよそ倍になっている)の割合は30〜40重量%、米麹の割合は40〜50重量%、食塩の割合は8〜12重量%、水の割合は重量5〜15%が好ましい。
仕込む際、耐塩性乳酸菌や耐塩性酵母を添加し、味噌に酸味や香味をつけてもよい。
本発明の味噌は、ヒトβディフェンシン2誘導用の味噌であるが、これは、味噌がヒト細胞株のmRNAレベルで、ヒトβディフェンシン2を高誘導することである。より詳細には、味噌を溶かした味噌溶液が、コントロールであるPBS(リン酸緩衝生理食塩水)よりも、ヒト大腸がん由来の上皮細胞用の細胞株であるCaco-2細胞mRNAレベルで、ヒトβディフェンシン2を高誘導することである。Caco-2細胞は大腸由来の細胞であり、ヒトの消化管において、本発明の味噌がヒトβディフェンシン2を高誘導し、食中毒予防に効く可能性がある。
もちろん、Caco-2細胞において、ヒトβディフェンシン2の発現を蛋白質レベルで上昇させてもよいし、他のヒト細胞株で、ヒトβディフェンシン2の発現を、mRNAレベル、蛋白質レベルで、上昇させてもよい。さらには実験動物に投与したときにその消化管の細胞などで、ヒトβディフェンシン2の発現を、mRNAレベル、蛋白質レベルで、上昇させてもよい。
一般に味噌は、米味噌、麦味噌、豆味噌に分類されるが、本発明の味噌は、大豆の他に米も原料とする米味噌である。もちろん、米味噌とその他の味噌を混ぜた調合味噌でもよい。
また、味噌には、麹菌などの微生物が生きている生味噌(アルコールを加え微生物の働きを抑えている味噌も含む)と、加熱滅菌して麹菌が死んでいる味噌があるが、どちらでもよい。滅菌した味噌のサンプルを用いて誘導活性を測定しているが活性は検出されるので、生きたままの麹菌やその他の微生物が人体に直接働きかけるというプロバイオティクスの機能性食品というよりは、死菌成分も含めた麹菌の代謝産物の中に、ヒト細胞に対し、ヒトβディフェンシン2を誘導する何らかの成分が含まれているバイオジェニックスの機能性食品ということができる。
なお、この観点からは、例えば、本発明の味噌の成分をサプリメントとして摂取することも考えられる。
さらに、ヒトβディフェンシン2誘導に効く、本発明の味噌の成分は1つとは限らず、2つ以上の成分が相乗効果を発揮している可能性もある。
以下、本発明の味噌の製造方法を説明する。
味噌の製造は常法に従って行う。まず、水を吸わせた精白米を蒸してから、そこに種麹をつけて繁殖させ米麹を製造する。次に、原材料の大豆は丸大豆のまま吸水させたものを蒸す。そして、この米麹、蒸した大豆、食塩、水を混合する。混合後、一定期間置き、発酵・熟成させる。発酵・熟成期間に、大豆のタンパク質はアミノ酸に、脂肪は脂肪酸とアルコールに、米麹のデンプンはブドウ糖へと分解され、味噌の旨味を形作られる。
発酵・熟成は、室温で放置するいわゆる自然発酵が好ましい。発酵・熟成期間は、7〜15か月が好ましく、9〜15か月であればより好ましい。なお、発酵・熟成期間とは、大豆、米麹、塩、水を混合してから、即ち仕込んでから、味噌ができあがるまでの期間をいう。できあがるまでとは、より具体的には、例えば、検査、包装のために、発酵・熟成期間に置かれていた仕込み蔵から出すときのことをいう。なお、生味噌の場合、商品出荷後も多少発酵・熟成は進むがその期間は含めない。秋に仕込んだ味噌は、冬期間の低温のため発酵・熟成期間はやや長めとなり、春に仕込んだ味噌は夏期間の高温のため発酵・熟成が早く進むので、発酵・熟成期間はやや短めとなる。
以下に、本発明を実施例で説明する。
実施例1
[味噌の製造]
以下、サンプルを製造した蔵の一つである蔵4での味噌の製造方法を記載する。なお、他の蔵でもほぼ同様に味噌を製造した。
1.米麹と蒸し大豆の準備
(1)原材料として大豆30 kg、米75 kg、麹菌3号B株(株式会社秋田今野商店 原菌番号:AOK38)を使用した。
(2)米麹の製造
図1の1の流れで米麹を製造した。米を水で浸漬し、蒸かした。蒸かした後、放熱し、種付を行い、しばらく麹室に引き込んで、米麹を製造した。できた米麹は82.5 kgであった。
(3)蒸した大豆の製造
図1の2の流れで蒸し大豆を製造した。大豆30 kgを、16時間以上、水に浸漬した後、圧力釜で蒸し、冷却、潰しを経て、蒸し大豆を製造した。蒸し大豆の重さは、蒸す前に比べおよそ2倍になり、できた蒸し大豆の重さは60 kg弱であった。
2.上で製造した米麹82.5 kg、蒸し大豆60 kg弱(蒸す前の大豆30 kgに相当)、食塩18 kg、水20 Lを混合した(「仕込む」ともいう)。混合後、室温で放置し、一定期間、発酵・熟成させた。
実施例2
[多麹味噌をCaco-2細胞に供したときのヒトβディフェンシン2(以下、hBD2)誘導活性の測定]
1.実験例1 <多麹味噌のhBD2誘導活性の測定>
(1)原料は大豆:米麹=1:2.75、麹菌は、麹菌3号B株、発酵・熟成期間は1年とし、実施例1と同様の方法で多麹味噌を製造しサンプルとした。コントロールとしてPBSを用いた。
(2)hBD2 mRNAの発現強度は、以下の方法で測定した。
RNAの抽出はRNeasy Mini kit (Qiagen社)(I)、cDNAの合成はSuper Script III First-Strand kit (Invitrogen社)で行った(II)。また、cDNA合成後のPCRは各目的遺伝子に対応するプライマー(FASMAC社、配列表は表1)を使用し、増幅はKOD-Multi&Epi(東洋紡社)を使用して行った(III)。
(I)RNAの抽出
イ. 1×PBSに溶かした各サンプルをCaco-2細胞(1.6×106 cell/dishとなるよう前日にセルカウント済)に1 mg/mlずつ添加して37℃で3時間共インキュベートした。サンプル溶液は100℃で5分間滅菌したものを使用した。
ロ.細胞をBuffer RLT Lysis 600 μlで溶解し、続いて21Gシリンジで10回ストロークして細胞を破砕した。
ハ.あらかじめ調製しておいた70%エタノールを600 μl加えて青チップで10回パイペティングし、エタノール沈殿を作った。これをスピンカラムに600 μl取り、10,000 rpmで15秒遠心した。ろ液は除去し、残りの溶液も同じスピンカラムに再度600 μl加え、同様に遠心した。エタノールを加えてからの作業は素早く行った。
ニ.スピンカラムにBuffer RW1を700 μl加えて10,000 rpmで15秒遠心し、ろ液を排除した。
ホ.スピンカラムにBuffer RPEを500 μl加えて10,000 rpmで15秒遠心し、ろ液を除去した。その後、再度Buffer RPEを500 μl加えて10,000 rpmで2分遠心し、ろ液を排除した。
ヘ.新しいふた無しチューブを用意し、カラムをセットして何も加えずに15,000 rpmで1分遠心した。
ト.新しい1.5 mlチューブにカラムをセットし、RNase-free waterを30 μl加えて10,000 rpmで1分遠心した。得られたサンプルは直ちに氷上に保存した。
(II)cDNAの合成
(イ)(I)のRNAの抽出で得られたRNAサンプルの濃度をナノドロップおよびQ5000を用いて測定した。
(ロ)Super Script III First-Strand kitを用いて表2に示すとおりに調製した。
(ハ)調製した溶液を65℃ 5 min、4℃ 1 min、25℃ ∞でインキュベートした。
(ニ)インキュベートしている間に表3のcDNA Synthesis Mixを調製し、氷上に保存しておいた。
(ホ)調製したcDNA Synthesis Mixをインキュベート後のサンプルに加えてパイペティングした。その後、直ちに表4のPCR条件でPCRを行った。
(ヘ)PCR終了後サンプルは氷上に移し、RNase Hを1 μl加えて37℃で20分インキュベートした。
ト.作製したcDNAは−20℃で保存した。
(III)目的遺伝子の増幅
目的遺伝子の増幅にはSuper Script III First-Strand kit (Invitrogen) を用いた。
(イ)目的DNAの増幅ために表5のとおりに調製し、PCRを行った。PCR条件は表6、表7のとおりにした。なお、本実験では内部コントロールとしてβ-actinの遺伝子の増幅も行った。
(ロ)PCR終了後、各4 μlの6×SBを加えパイペティング後、アガロースゲル電気泳動を行った。アガロースゲルは1%の濃度で作製し、0.5 μlのエチジウムブロマイド( EtBr ) で先染めした。サンプルはそれぞれ15 μlずつロードし、100 Vで泳動した。
(IV)解析
電気泳動後のゲルは紫外線を当てて撮影し、得られた画像は画像解析ソフト「ImageJ」を用いて解析した。
(3)結果
多麹味噌を供したときのhBD2 mRNAの発現強度を図2に示した。蔵5、4、3の味噌は、hBD2誘導活性を示した。蔵2と蔵6についても、誘導活性が高い傾向があった。
実施例3
[発酵・熟成期間とhBD2誘導活性の関係についての検討]
hBD2誘導活性に対する発酵・熟成期間の影響を調べるため、発酵・熟成期間半年、1.5年のときの誘導活性について調べた
1.実験例2 <半年発酵・熟成多麹味噌のhBD2誘導活性の測定>
(1)原材料は大豆:米麹=1:2.75、麹菌は3号B株、発酵・熟成期間は半年として、実施例1と同様の方法で製造した多麹味噌をサンプルとした。
(2)hBD2 mRNA発現強度の測定は実験例1(2)と同様に行った。
(3)結果
半年発酵・熟成味噌を供したときのhBD2 mRNAの発現強度を図3に示した。蔵1〜6の味噌のhBD2誘導活性は、蔵3、4、6でやや高い傾向はあるものの、PBSを供したときと比べて高いことは確認できなかった。なお、E12はIL−12誘導乳酸菌サプリメントで、結果と関係ないサンプルである。
2.実験例3 <1.5年発酵・熟成多麹味噌のhBD2発現活性の測定>
(1)原料は大豆:米麹=1:2.75、麹菌は3号B株、発酵・熟成期間は1.5年とし、実施例1と同様の方法で多麹味噌を製造しサンプルとした。なお、2つのサンプルがある蔵は、それぞれ異なる品種の大豆を使用している。
また、参考までに、一般的な味噌として、麹菌3号B株を使用せず、大豆:米麹=1:2未満、発酵・熟成期間不明の市販品の味噌もサンプルとした。
(2)hBD2 mRNA発現強度の測定は実験例1(2)と同様に行った。
(3)結果
1.5年発酵・熟成味噌を供したときのhBD2の発現強度を図4に示した。蔵6の5、蔵2の7、の味噌は、やや弱いhBD2誘導活性を示したが、他の9つのサンプルからは誘導活性は確認できなかった。
また、市販品のサンプルからは、hBD2誘導活性を確認できなかったので、実験例1で本発明の多麹味噌に誘導活性が確認された結果と併せると、本発明の多麹味噌の優位性が示唆された。
3.結果まとめ
蔵によって結果に多少のばらつきがあるものの、発酵・熟成期間1年の味噌はhBD2誘導活性を持つあるいはその傾向がある(実験例1、図2)一方、半年、1.5年の味噌は、一部を除いて、hBD2誘導活性を示さなかった。このことから、発酵・熟成期間は、1年程度であればより好ましいことが示唆された。
比較例4
[麹菌の菌株の種類とhBD2誘導活性の関係についての検討]
比較実験例4
(1)麹菌の菌株の違いの影響を検討するため、麹菌3号B株でなく従来使用されてきた各種麹菌を使って味噌を製造し、サンプルとした。大豆:米麹=1:2.75、麹菌3号B株との違いを見やすいように、発酵・熟成期間1年とし、麹菌以外は、実施例1と同様の方法で多麹味噌を製造した。
(2)hBD2 mRNA発現強度の測定は実験例1(2)と同様に行った。
(3)結果
従来の麹菌を使用して製造した1年発酵・熟成多麹味噌のhBD2誘導活性を、図5に示した。いずれの蔵の1年発酵・熟成多麹味噌も、hBD2誘導活性を示さなかった。麹菌3号B株を使った実験例1(図2)では、いずれの1年発酵・熟成多麹味噌も、hBD2誘導活性を示すか、あるいはその傾向はあったので、麹菌3号B株を使用することが重要であることがわかった。
参考例5
[米麹の割合とhBD2誘導活性の関係についての検討]
参考実験例5
(1)米麹の割合とhBD2誘導活性の関係を調べるため、大豆:米麹=1:1のサンプル(以下、1倍)と1:2.75(以下、3倍)の味噌をサンプルとし、誘導活性を比較した。コントロールとしてPBSを置き、同じ蔵の1倍と3倍サンプルをペアとして、1倍と3倍のhBD2誘導活性を比較した。
麹菌は3号B株、発酵・熟成期間は半年とし、大豆に対する米麹の割合以外は、実験例1(2)と同様に、サンプルを製造した。蔵4、蔵2でそれぞれ2セットのサンプルがあるが(図6)、セットごとに大豆の種類が異っている。
(2)hBD2 mRNA発現強度の測定は実験例1(2)と同様に行った。
(3)結果及び考察
発酵・熟成期間が半年なので、3倍サンプルのhBD2誘導活性がはっきりしないので、あくまで参考にとどまるが、いずれのセットでも、1倍よりも3倍のサンプルが、hBD2誘導活性が大きい傾向があった(図6)。なおマル2のサンプルは結果とは関係ないサンプルである。
比較例6
[麹菌と米麹のhBD2誘導活性の測定]
比較実験例6
(1)麹菌自体、又は米麹自体にhBD2誘導活性があるか確認するために、麹菌又は米麹をサンプルとした。
(2)hBD2 mRNA発現強度の測定は実験例1(2)と同様に行った。
(3)結果
麹菌と米麹を供したときのhBD2誘導活性を図7に示した。いずれもhBD2誘導活性を示さなかったので、麹菌や米麹自体にhBD2誘導活性があるのではなく、これらを使用した味噌にhBD2誘導活性があることがわかった。
本発明のヒトβディフェンシン2誘導用味噌は、多麹味噌の新たな用途を提供するもので、多麹味噌の需要拡大に貢献でき、多麹味噌を製造する食品業界に資するものである。

Claims (5)

  1. 原材料の大豆と米麹の割合が大豆1質量部に対し米麹2質量部以上である味噌、を含むヒトβディフェンシン2誘導用組成物。
  2. 原材料の大豆と米麹の割合が大豆1質量部に対し米麹2質量部以上である味噌、を含むヒトβディフェンシン2誘導用食品組成物。
  3. 原材料の大豆と米麹の割合が大豆1質量部に対し米麹2質量部以上であるヒトβディフェンシン2誘導用味噌。
  4. 原材料の大豆と米麹の割合を、大豆1質量部に対し米麹2質量部以上とし、両者を混合後7〜15か月間室温で発酵・熟成させる、ヒトβディフェンシン2誘導用味噌の製造方法。
  5. 米麹が、麹菌3号B株(株式会社秋田今野商店 原菌番号:AOK38)を使った米麹である、請求項1のヒトβディフェンシン2誘導用組成物、又は請求項2のヒトβディフェンシン2誘導用食品組成物、又は請求項3のヒトβディフェンシン2誘導用味噌、又は請求項4のヒトβディフェンシン2誘導用味噌の製造方法。
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