JP2021022851A - ヘッドアップディスプレイ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ユーザが視認する虚像の垂直視差を低減する。【解決手段】ヘッドアップディスプレイ装置10は、第1照明光を変調して左目用表示光を生成し、第2照明光を変調して右目用表示光を生成する表示部14と、アイボックス76に位置するユーザ70の両目を撮像するカメラ17と、カメラ17の撮像画像に基づいてユーザ70の両目の高さ方向の位置の差を検出する両目位置検出部と、両目位置検出部により検出されるユーザ70の両目の高さ方向の位置の差に応じて、表示内容の位置が相対的に上下方向にずれるように補正された左目用画像および右目用画像を生成する画像処理部と、第1照明光の生成時に表示部に左目用画像を表示させ、第2照明光の生成時に表示部に右目用画像を表示させる表示制御部と、を備える。【選択図】図1
Description
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置に関する。
近年、車両用表示装置としてヘッドアップディスプレイ装置が用いられることがある。ヘッドアップディスプレイ装置は、画像表示光を車両のウインドシールドなどに投射し、画像表示光に基づく虚像を車外の風景に重畳して表示する。左目用と右目用の画像表示光を別々に生成することで立体像を提示する装置も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
虚像を視認するユーザが首を傾げることで左目と右目の高さ位置に差が生じると、左目で視認される左目用虚像と右目で視認される右目用虚像のそれぞれが提示される高さ位置がずれて垂直視差が発生しうる。ユーザが視認する虚像の垂直視差が大きすぎると、左右の目のそれぞれで視認される虚像を同一像として認識することが困難となり、視覚疲労を生じさせるおそれがある。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、ユーザが視認する虚像の垂直視差を低減する技術を提供することを目的とする。
本発明のある態様のヘッドアップディスプレイ装置は、ウインドシールドにて反射してアイボックスの左側領域に向かう第1投射軸に沿って第1照明光を投射し、ウインドシールドにて反射してアイボックスの右側領域に向かう第2投射軸に沿って第2照明光を投射する照明部と、第1投射軸と第2投射軸の交点に配置され、第1照明光を変調して左目用表示光を生成し、第2照明光を変調して右目用表示光を生成する表示部と、アイボックスに位置するユーザの両目を撮像するカメラと、カメラの撮像画像に基づいてユーザの両目の高さ方向の位置の差を検出する両目位置検出部と、両目位置検出部により検出されるユーザの両目の高さ方向の位置の差に応じて、表示部に表示される左目用画像および右目用画像のそれぞれの表示内容の位置が相対的に上下方向にずれるように補正された左目用画像および右目用画像を生成する画像処理部と、第1照明光と第2照明光が時分割で生成されるように照明部の動作を制御する照明制御部と、第1照明光の生成時に表示部に左目用画像を表示させ、第2照明光の生成時に表示部に右目用画像を表示させる表示制御部と、を備える。
なお、以上の構成要素の任意の組合せや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
本発明によれば、ユーザが視認する虚像の垂直視差を低減できる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。かかる実施の形態に示す具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
図1は、実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置10の構成を模式的に示す図である。本実施の形態では、移動体の一例である車両60のダッシュボード内にヘッドアップディスプレイ装置10が設置される。ヘッドアップディスプレイ装置10は、虚像提示板であるウインドシールド62に表示光52を投射し、車両60の進行方向(図1の右方向)の前方に虚像50を提示する。運転者などのユーザ70は、ウインドシールド62を介して現実の風景に重畳される虚像50を視認できる。そのため、ユーザ70は、車両の走行中に視線をほとんど動かすことなく虚像50に示される情報を得ることができる。図1において、車両60の進行方向(前後方向)をz方向、車両60の天地方向(上下方向)をy方向、車両60の左右方向をx方向としている。
図2は、ユーザ70が視認する虚像50を模式的に示す図である。虚像50は、例えば、ユーザ70の前方の2m〜5m程度の距離の位置に提示される。虚像50の表示サイズに対応する画角(FOV;Field Of View)は、例えば、左右方向(水平方向)が約5度であり、上下方向(垂直方向)が約2度である。
図1に戻り、ヘッドアップディスプレイ装置10は、照明部12と、表示部14と、投射鏡16と、カメラと、制御装置18とを備える。ヘッドアップディスプレイ装置10は、外部装置64と接続されている。
照明部12は、表示部14を照明するための照明光を生成する。照明部12は、LED(Light Emitting Diode)などの光源と、光源から出射される光の強度分布や角度分布を調整して照明光を生成するための光学素子とを有する。照明部12は、表示光52を生成するための可視照明光と、カメラ17の撮像対象となるユーザ70を照明するための赤外照明光とを生成するよう構成される。
表示部14は、照明光を変調して表示光を生成する。表示部14は、液晶パネルなどの表示素子を含む。表示部14は、制御装置18から送信される画像信号に基づいて、画像信号に対応する表示内容の表示光52を生成する。
投射鏡16は、表示部14が生成する表示光52を反射してウインドシールド62に向けて投射する。投射鏡16は、ウインドシールド62にて反射される表示光52がユーザ70の目72が位置するアイボックス76に向かうように表示光52を投射する。これにより、ユーザ70は、表示光52に基づく虚像50を視認できる。投射鏡16は、表示光52に基づく画像を拡大してユーザ70に提示するために凹面鏡として構成される。投射鏡16の反射面は、例えば、非球面などの自由曲面で構成される。
カメラ17は、表示光52の投射軸54とは異なる撮像軸56でユーザ70の顔面を撮像するように配置される。カメラ17の撮像軸56を投射軸54からずらすことにより、ユーザ70が眼鏡やサングラスを使用する場合であっても、眼鏡やサングラスのレンズ74の奥にある目72を好適に撮像できる。ユーザ70には投射軸54に沿って赤外照明光が投射されるため、照明光の一部はレンズ74の表面で鏡面反射される。レンズ74は、ユーザ70の視線方向78に向けられているため、レンズ74の表面で鏡面反射される照明光は、おおむね投射軸54に沿って反射される。その結果、投射軸54に沿ってユーザ70を撮像しようとすると、レンズ74で鏡面反射される赤外光の強度が大きいためにレンズ74の奥に位置するユーザ70の目72を適切に撮像できなくなってしまう。本実施の形態では、カメラ17の撮像軸56を投射軸54からずらすことで、レンズ74により鏡面反射される赤外光がカメラ17に向かわないようにすることができ、レンズ74の奥のユーザ70の目72を適切に撮像できる。
図示する例において、カメラ17は、ウインドシールド62の下端62a付近に設けられており、例えば、車両60のダッシュボード上に設けられる。カメラ17は、上下方向(高さ方向)を基準として、ユーザ70の顔面を前方斜め下方向から撮像する位置に配置されており、ウインドシールド62からアイボックス76までの範囲の投射軸54よりもカメラ17の撮像軸56が下方に位置するように配置されている。水平面に対する撮像軸56の角度は、水平面に対する投射軸54の角度よりも大きく、例えば10度〜20度程度に設定される。ユーザ70の顔面を下から撮像することで、眼鏡やサングラス等の影響を受けず、さらに顔の特徴が適切に検出できるため、画像認識技術を用いてユーザ70の目72の位置を検出しようとする場合に検出しやすい撮像画像を得ることができる。
カメラ17は、撮像軸56がウインドシールド62と投射鏡16の間に位置するように配置されている。また、カメラ17は、ユーザ70からできるだけ離れた位置に配置され、投射鏡16からウインドシールド62に向かう範囲の投射軸54よりもユーザ70から離れた位置に配置される。カメラ17は、例えば、投射鏡16とウインドシールド62の間に配置され、投射鏡16からウインドシールド62に向かう範囲の投射軸54がカメラ17の画角に含まれるように配置される。カメラ17からユーザ70までの距離を大きくとることで、カメラ17の画角内にユーザ70の顔面全体が収まりやすくできる。
カメラ17には、照明部12にて生成される赤外照明光の波長を選択的に透過させる赤外光フィルタが設けられる。カメラ17に設けられる赤外光フィルタの透過波長は、例えば850nm付近または波長940nm付近であるがこれに限られない。カメラ17は、赤外光のみを検出するよう構成されてもよいし、可視光と赤外光の双方を検出するよう構成されてもよい。カメラ17が可視光画像と赤外光画像の双方を撮像可能となるよう構成する場合、例えばカメラ17の隣接する四画素のそれぞれに赤色フィルタ、緑色フィルタ、青色フィルタおよび赤外光フィルタが設けられてもよい。
制御装置18は、ヘッドアップディスプレイ装置10の動作全般を制御する。制御装置18は、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現され、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現され、制御装置18により提供される各種機能は、ハードウェアおよびソフトウェアの連携によって実現されうる。
制御装置18は、表示用画像を生成し、表示用画像に対応する虚像50が提示されるように照明部12および表示部14の動作を制御する。制御装置18は、外部装置64と接続されており、例えば、外部装置64からの情報に基づいて表示用画像を生成する。制御装置18は、ユーザ70の顔面に向けて赤外光の照明光が投射されるように照明部12および表示部14の動作を制御する。制御装置18は、カメラ17が撮像する画像を取得し、取得した画像を解析することでユーザ70の状態をモニタリングしてもよい。
外部装置64は、虚像50として表示される表示用画像の元データを生成する装置である。外部装置64は、例えば、車両60の電子制御ユニット(ECU;Electronic Control Unit)や、ナビゲーション装置、携帯電話やスマートフォン、タブレットといったモバイル装置などである。外部装置64は、虚像50の表示に必要な画像データ、画像データの内容や種別を示す情報、車両60の速度や現在位置といった車両60に関する情報を制御装置18に送信する。
図3(a)、(b)は、表示光52L,52Rの光路を模式的に示す図である。図3(a)、(b)では、車両60の上側から見たヘッドアップディスプレイ装置10の構成を示しており、分かりやすさのために照明部12とウインドシールド62を省略している。図3(a)、(b)のそれぞれに示される表示光52L,52Rは、表示部14を出射し、投射鏡16およびウインドシールド62(不図示)にて反射された後、アイボックス76に向かう。
アイボックス76は、ヘッドアップディスプレイ装置10により提示される虚像50が視認可能となる範囲である。アイボックス76は、ユーザ70の左目72Lおよび右目72Rを包含するように左右方向(x方向)に長く設定される。アイボックス76の左右方向の長さは、例えばユーザ70の両目72L,72Rの瞳孔間隔の2倍程度に設定される。両目72L,72Rの瞳孔間隔は個人差があるが、一般的には60mm〜70mm程度である。アイボックス76の左右方向の長さは、例えば120mm〜130mm程度に設定される。図3(a)、(b)に示される通常の使用態様であれば、アイボックス76の右側領域76Rにユーザ70の右目72Rが位置し、アイボックス76の左側領域76Lにユーザの左目72Lが位置する。投射軸54は、表示部14の中心14Cから出射してアイボックス76の中心76Cに向かう光軸として定義される。投射鏡16は、投射軸54に対して左右方向(x方向)に対称な形状となるよう構成されている。
図3(a)は、アイボックス76の左側領域76Lに向かう左目用表示光52Lを模式的に示している。左目用表示光52Lは、矢印Lで示されるように、投射軸54に対して斜めに出射される表示光であり、表示部14の中心14Cから左寄りに第1投射軸54Lに沿って出射される。そのため、左目用表示光52Lは、投射鏡16の中心16Cから左方向にずれた位置16Lまたはその近傍にて反射される。左目用表示光52Lは、ユーザ70の左目72Lに入射することで、左目用表示光52Lに基づく左目用虚像50Lがユーザ70に視認される。
図3(b)は、アイボックス76の右側領域76Rに向かう右目用表示光52Rを模式的に示している。右目用表示光52Rは、矢印Rで示されるように、投射軸54に対して斜めに出射される表示光であり、表示部14の中心14Cから右寄りに第2投射軸54Rに沿って出射される。そのため、右目用表示光52Rは、投射鏡16の中心16Cから右方向にずれた位置16Rまたはその近傍にて反射される。右目用表示光52Rは、ユーザ70の右目72Rに入射することで、右目用表示光52Rに基づく右目用虚像50Rがユーザ70に視認される。
つづいて、ユーザの両目の高さ位置が異なる場合にユーザが知覚する垂直視差について説明する。図4(a),(b)は、両目72L,72Rの高さ位置を模式的に示す図である。図4(a)は、ユーザ70の左目72Lと右目72Rの高さ位置が同じ場合を示す。図4(b)は、ユーザ70の左目72Lと右目72Rの高さ位置が異なる場合を示し、右目72Rが左目72LよりもΔh1だけ高い位置にある場合を示している。ユーザ70の左目72Lと右目72Rの高さ位置の差Δh1は、例えばユーザ70が頭部を傾げることで発生する。ユーザ70の左目72Lと右目72Rの高さ位置の差Δh1は、ユーザ70の左目72Lと右目72Rの瞳孔間隔wと、ユーザの左目72Lと右目72Rを結んだ直線と水平線のなす角度Δθとを用いて、Δh1=w・sin(Δθ)と記述することができる。ユーザ70の左目72Lと右目72Rの瞳孔間隔wは個人差があるが、一般的に60mm〜70mm程度である。
図5は、両目72L,72Rの高さ位置の差Δh1に起因する虚像50L,50Rの垂直視差を模式的に示す図である。図5は、ユーザ70の両目72L,72Rの位置が図4(b)の状態となる場合を示し、右目72Rが左目72LよりもΔh1だけ高い位置にある場合を示している。ユーザ70の左目72Lは、左目用表示光52Lに基づく左目用虚像50Lを視認し、ユーザ70の右目72Rは、右目用表示光52Rに基づく右目用虚像50Rを視認する。このとき、左目用虚像50Lおよび右目用虚像50Rのそれぞれが提示される高さ位置は必ずしも一致せず、高さ位置の差Δh2が生じうる。具体的には、右目用虚像50Rが左目用虚像50LよりもΔh2だけ高い位置に提示される。このとき、ユーザ70は、左目72Lと右目72Rのそれぞれで視認する虚像50L,50Rの高さ位置の差Δh2を垂直視差(角度差)Δφとして知覚する。垂直視差Δφは、ユーザ70から虚像50L,50Rまでの距離Dを用いて、Δφ=Δh2/Dと記述できる。垂直視差Δφの大きさは、ヘッドアップディスプレイ装置10の光学系の設計が定まれば、両目72L,72Rの高さ位置の差Δh1から求めることができる。例えば、両目72L,72Rの高さ位置の差Δh1が大きくなるほど、垂直視差Δφも大きくなる傾向にある。
図6(a)〜(c)は、比較例において表示部14に表示される表示用画像140と、表示用画像140に基づいて提示される虚像150L,150R,150とを模式的に示す図である。図6(a)は、表示部14に表示される表示用画像140の一例を示し、図2に示す虚像50を提示するための表示用画像140を示す。図6(b)は、図6(a)の表示用画像140を表示部14に表示させたときに提示される左目用虚像150Lおよび右目用虚像150Rを示す。図6(c)は、両目で見たときの虚像150を示す。
図6(b)に示されるように、左目用虚像150Lおよび右目用虚像150Rのそれぞれが提示される高さ位置は一致しておらず、高さ位置の差Δh2が生じている。図示する例では、右目用虚像150Rが左目用虚像150LよりもΔh2だけ高い位置に提示される。図6(c)は、ユーザ70が両目72L,72Rで視認する虚像150を模式的に示し、図6(b)に示す左目用虚像150Lと右目用虚像150Rとを重畳させたものである。図示されるように、左目用虚像150Lと右目用虚像150Rでは、左右で虚像が提示される高さ方向の位置が異なるため、両者を融像して同一視することが困難である。このような左目用虚像150Lと右目用虚像150Rを無理して同一視しようとすると、視覚疲労や目眩が生じるおそれがあり好ましくない。
本発明者の知見によれば、ユーザが知覚する虚像50L,50Rの垂直視差Δφが大きすぎると、ユーザがめまいを感じるおそれがあることが分かっている。本発明者の知見によれば、ユーザが許容しうる垂直視差Δφの上限値の一例は、1×10−3[rad](つまり、1mrad)である。垂直視差Δφが1mradとなる場合の両目72L,72Rの高さ位置の差Δh1は、ヘッドアップディスプレイ装置10の光学系の設計にもよるが、2mm〜5mm程度である。これを両目72L,72Rの角度Δθに換算すると、2度〜5度程度となる。したがって、ユーザ70が2度〜5度程度というわずかな角度で首を傾げたとしても、許容できない垂直視差Δφが発生しうることとなる。
そこで、本実施の形態では、表示部14に表示させる表示用画像として、左目用画像と右目用画像を別々に用意し、左目用画像および右目用画像のそれぞれの表示内容の位置が相対的に上下方向にずれるように補正処理を施すようにする。具体的には、ユーザ70の両目72L,72Rの高さ位置の差Δh1に起因する垂直視差Δφが低減または相殺されるように、左目用画像および右目用画像のそれぞれの表示内容の位置を上下方向に意図的にずらすようにする。
図7(a)〜(c)は、本実施の形態において表示部14に表示される画像40L,40Rと、画像40L,40Rに基づいて提示される虚像50L,50R,50とを模式的に示す図である。図7(a)は、表示部14に表示させる左目用画像40Lおよび右目用画像40Rを模式的に示す。図示されるように、左目用画像40Lおよび右目用画像40Rは、表示内容が同一であるものの、表示内容の位置が相対的に上下方向にずれるように補正されている。図示される例では、左目用画像40Lに含まれる表示内容の画像内での位置は、右目用画像40Rに含まれる表示内容の画像内での位置よりもΔh3だけ上方にずれている。
図7(b)は、表示部14に左目用画像40Lを表示させたときに左目用表示光52Lに提示される左目用虚像50Lと、表示部14に右目用画像40Rを表示させたときに右目用表示光52Rにより提示される右目用虚像50Rとを模式的に示す。図7(b)においても、垂直視差Δφに起因して、左目用虚像50Lおよび右目用虚像50Rのそれぞれが提示される高さ位置は一致せず、高さ位置の差Δh2が生じている。しかしながら、左目用画像40Lと右目用画像40Rの表示内容の位置を相対的に上下方向にずらしているため、左目用虚像50Lおよび右目用虚像50Rのそれぞれにより提示される表示内容の高さ位置は一致している。
図7(c)は、ユーザ70が両目72L,72Rで視認する虚像50を模式的に示し、図7(b)に示す左目用虚像50Lと右目用虚像50Rとを重畳させたものである。図示されるように、左目用虚像50Lおよび右目用虚像50Rのそれぞれにより提示される表示内容の高さ位置が揃っているため、両者を融像して同一視することが容易となる。本実施の形態では、このような虚像50を提示することで、視覚疲労や目眩の発生を防止し、虚像50の視認性を向上させることができる。
つづいて、図7(c)に示されるような虚像50を提示するための照明部12および表示部14の光学系の構成について説明する。通常、左目用と右目用で異なる画像を表示させる場合、左目用表示部と右目用表示部を別に用意する必要があるが、表示部を複数設けることはコストの増加につながる。本実施の形態では、一つの表示部14において左目用画像40Lと右目用画像40Rを時分割で交互に表示し、左目用表示光52Lと右目用表示光52Rが時分割で交互に生成されるようにする。また、表示部14に対し、左目用表示光52Lを生成するための第1照明光と、右目用表示光52Rを生成するための第2照明光とが時分割で交互に照射されるようにする。これにより、アイボックス76の左側領域76Lに向けて左目用表示光52Lが投射され、アイボックス76の右側領域76Rに向けて右目用表示光52Rが投射されるようにする。本実施の形態では、さらに赤外照明光を時分割で投射するように照明部12および表示部14が構成される。
図8〜図10は、実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置10の構成を詳細に示す図である。図8は、図3(a)の構成に対応し、表示部14に左目用画像40Lを表示して左目用表示光52Lを生成する動作状態を示している。図9は、図3(b)の構成に対応し、表示部14に右目用画像40Rを表示して右目用表示光52Rを生成する動作状態を示している。図10は、赤外照明光53を生成する動作状態を示している。
照明部12は、光源20と、コリメータ23と、フライアイレンズ24と、コンデンサ30と、フィールドレンズ32とを含む。表示部14は、光拡散板34と、表示素子36とを含む。照明部12および表示部14を構成する各光学要素と、投射鏡16とは、投射軸54上に配置されている。図面において、投射軸54の方向をz方向とし、z方向と直交する二方向をx方向およびy方向としている。x方向は、表示部14に表示される画像の左右方向により定義され、y方向は表示部14に表示される画像の上下方向により定義される。なお、投射軸54、第1投射軸54Lおよび第2投射軸54Rは、同一平面内に位置する。
光源20は、第1可視光源21a、第2可視光源21b、第1赤外光源22aおよび第2赤外光源22bを含む。各光源21a,21b,22a,22bは、LEDなどの半導体発光素子で構成される。第1可視光源21aおよび第1赤外光源22aは、投射軸54の右側に配置されており、フライアイレンズ24の第1領域24aに向けて光を出射するよう配置される。第2可視光源20bは、投射軸54の左側に配置されており、フライアイレンズ24の第2領域24bに向けて光を出射するよう配置される。
第1可視光源21aおよび第2可視光源21bは、表示光52L,52Rを生成するための白色光を出力する。第1赤外光源22aおよび第2赤外光源22bは、赤外照明光を生成するための赤外光を出力する。第1赤外光源22aおよび第2赤外光源22bの発光波長は、例えば850nmまたは940nmであるがこれに限られるものではない。なお、940nm付近の波長は、太陽光のスペクトルにおいて他の波長に比べて強度が低いことが知られている。そのため、940nm付近の波長を照明光としてユーザ70に投射してカメラ17にて撮像することで、太陽光の影響が少ない環境下でユーザ70を撮像できる。
コリメータ23は、光源20の出力光を平行化し、投射軸54に沿った平行光束を生成する。コリメータ23は、第1反射面23aおよび第2反射面23bを含む。第1反射面23aおよび第2反射面23bは、放物面や楕円面により構成される。第1可視光源21aおよび第1赤外光源22aは、第1反射面23aの焦点位置に配置され、第2可視光源21bおよび第2赤外光源22bは、第2反射面23bの焦点位置に配置される。第1反射面23aは、第1可視光源21aおよび第1赤外光源22aから出射される光を平行化してフライアイレンズ24の第1領域24aに入射させる。第2反射面23bは、第2可視光源21bおよび第2赤外光源22bから出射される光を平行化してフライアイレンズ24の第2領域24bに入射させる。コリメータ23は、ミラーではなくレンズで構成されてもよく、例えば内部全反射を利用するTIR(Total Internal Reflection)レンズであってもよい。
フライアイレンズ24は、光源20の出射光を複数の照明光束に分割する。フライアイレンズ24は、第1レンズ面25と、第2レンズ面26とを有し、第1レンズ面25および第2レンズ面26のそれぞれに複数のレンズ要素がx方向およびy方向にアレイ状に配列されている。フライアイレンズ24を構成する各レンズ要素は矩形状であり、矩形状の表示部14と相似形となるよう構成される。例えば、表示部14の縦横のアスペクト比が1対2であれば、フライアイレンズ24を構成する各レンズ要素の縦横のアスペクト比も1対2である。
第1レンズ面25の各レンズ要素は、第1レンズ面25に入射する平行光束を集光させる。第1レンズ面25の各レンズ要素の焦点は、第2レンズ面26の対応するレンズ要素に位置している。つまり、第1レンズ面25と第2レンズ面26のz方向の間隔は、第1レンズ面25の各レンズ要素の焦点距離に相当する。その結果、第1レンズ面25に入射する平行光束は、第2レンズ面26の各レンズ要素に集光する。第2レンズ面26の各レンズ要素は、仮想的な点光源とみなすことができ、第2レンズ面26の各レンズ要素から分割された照明光束が出射される。
図11(a)〜(c)は、光源20およびコリメータ23の構成と、フライアイレンズ24の構成とを模式的に示す正面図である。図11(a)は、フライアイレンズ24から見た光源20およびコリメータ23を示す。第1可視光源21aおよび第1赤外光源22は、投射軸54の右側に配置され、互いに左右方向に隣接して配置されている。第2可視光源21bおよび第2赤外光源22bは、投射軸54の左側に配置され、互いに左右方向に隣接して配置されている。なお、第1可視光源21aおよび第1赤外光源22は、上下方向に隣接して配置されてもよい。同様に、第2可視光源21bおよび第2赤外光源22bは、上下方向に隣接して配置されてもよい。第1反射面23aおよび第2反射面23bは、二つの放物面または楕円面を左右方向にずらして接続したような形状を有する。第1反射面23aと第2反射面23bの接続部、つまり、第1可視光源21aと第2可視光源21bの間(または、第1赤外光源22aと第2赤外光源22bの間)には反射面は設けられていない。
図11(b)は、第1レンズ面25から見たフライアイレンズ24を示す。図11(b)は、図11(a)とは左右方向が逆になっている。図示されるように、第1レンズ面25には複数のレンズ要素25a,25bがx方向およびy方向に配列されている。フライアイレンズ24の第1領域24aには複数の第1レンズ要素25aが設けられ、フライアイレンズ24の第2領域24bには複数の第2レンズ要素25bが設けられる。フライアイレンズ24は、左右対称形状であり、第1レンズ要素25aおよび第2レンズ要素25bは互いに同じ形状ないし光学特性を有する。
図11(c)は、第2レンズ面26から見たフライアイレンズ24を示す。図11(c)は、図11(b)とは左右方向が逆になっている。第2レンズ面26は、第1レンズ面25と同様に構成されており、第2レンズ面26に複数のレンズ要素26a,26bがx方向およびy方向に配列されている。フライアイレンズ24の第1領域24aには複数の第3レンズ要素26aが設けられ、フライアイレンズ24の第2領域24bには複数の第4レンズ要素26bが設けられる。第3レンズ要素26aおよび第4レンズ要素26bは互いに同じ形状ないし光学特性を有する。
第2レンズ面26からは複数の照明光束が出射される。具体的には、第2レンズ面26の第1領域24aから複数の第1照明光束が出射され、各第3レンズ要素26aが一つの第1照明光束を出射する。同様に、第2レンズ面26の第2領域24bから複数の第2照明光束が出射され、各第4レンズ要素26bが一つの第2照明光束を出射する。
光源20の動作状態として、第1可視光源21aのみを点灯させる第1状態と、第2可視光源21bのみを点灯させる第2状態と、第1赤外光源22aおよび第2赤外光源22bのみを点灯させる第3状態とがある。図8に示される第1状態では、フライアイレンズ24の第1領域24aから複数の第1可視照明光束が出射される。図9に示される第2状態では、フライアイレンズ24の第2領域24bから複数の第2可視照明光束が出射される。図10に示される第3状態では、フライアイレンズ24の第1領域24aおよび第2領域24bから複数の赤外照明光束が出射される。
コンデンサ30は、フライアイレンズ24から出射される複数の照明光束を重畳して照明光を生成する。コンデンサ30は、フライアイレンズ24の各レンズ要素から出射される照明光束が表示部14の表示領域全体に照明されるようにする。したがって、フライアイレンズ24から出射される複数の照明光束は、表示部14の表示領域において互いに重なり合う。図示する例において、コンデンサ30は、凸レンズで構成される。コンデンサ30は、凹面鏡で構成されてもよい。
コンデンサ30は、複数の第1可視照明光束を重畳させることで第1照明光51aを生成し、表示部14が第1照明光51aで照明されるようにする。第1照明光51aは、図8に示されるように、投射軸54の右側から第1投射軸54Lに沿って表示部14に入射する。コンデンサ30は、複数の第2可視照明光束を重畳させることで第2照明光51bを生成する。第2照明光51bは、図9に示されるように、投射軸54の左側から第2投射軸54Rに沿って表示部14に入射する。コンデンサ30は、複数の赤外照明光束を重畳させることで第3照明光51cを生成する。第3照明光51cは、図10に示されるように、投射軸54の右側および左側の双方から表示部14に入射する。
フィールドレンズ32は、コンデンサ30の後段に設けられ、第1照明光51a、第2照明光51bおよび第3照明光51cの配光を調整する。フィールドレンズ32は、例えば、投射鏡16の反射面が存在する範囲と、投射鏡16に表示光52L,52Rが入射する範囲とが対応するように第1照明光51aおよび第2照明光51bの配光を調整する。
光拡散板34は、表示素子36の光入射側に設けられ、表示素子36に入射する第1照明光51a、第2照明光51bおよび第3照明光51cを拡散させるよう構成される。光拡散板34は、例えば、マイクロビーズフィルムといった透過型スクリーンで構成される。光拡散板34は、表示素子36のバックライトのように機能し、表示素子36が自発光型の表示器のように見えるように機能する。
表示素子36は、液晶パネルなどの透過型表示素子であり、表示領域の各画素に入射する照明光を変調することで、表示領域に表示される画像の表示内容に対応した表示光52を生成する。表示素子36は、DMD(Digital Mirror Device)であってもよいし、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)などの反射型表示素子であってもよい。表示素子36は、第1投射軸54Lと第2投射軸54Rの交点に配置され、第1照明光51aと第2照明光51bの双方を変調できるように配置される。
表示素子36は、左目用表示光52Lを生成するための左目用画像40Lと、右目用表示光52Rを生成するための右目用画像40Rと、赤外照明光53を生成するための照明用画像38とを表示する。照明用画像38は、ユーザ70を一様な輝度で照明するための画像であり、全ての画素の輝度値が同じ(例えば最大値)となる画像である。したがって、照明用画像38には、虚像50として提示すべき内容が含まれない。一方、左目用画像40Lおよび右目用画像40Rには、虚像50として提示すべき内容が含まれる。
図8に示されるように、表示素子36は、第1照明光51aを変調して左目用表示光52Lを生成する。第1照明光51aは、投射軸54の右側から表示部14に向けて入射するため、第1照明光51aに基づいて生成される左目用表示光52Lは、矢印Lで示されるように、表示部14から左寄りの方向に出射される。表示部14の中心14Cから出射する左目用表示光52Lは、投射鏡16の中心16Cから左側にずれた位置16Lにて反射され、アイボックス76の左側領域76Lに向かう。
図9に示されるように、表示素子36は、第2照明光51bを変調して右目用表示光52Rを生成する。第2照明光51bは、投射軸54の左側から表示部14に向けて入射するため、第2照明光51bに基づいて生成される右目用表示光52Rは、矢印Rで示されるように、表示部14から右寄りの方向に出射される。表示部14の中心14Cから出射する右目用表示光52Rは、投射鏡16の中心16Cから右側にずれた位置16Rにて反射され、アイボックス76の右側領域76Rに向かう。
図10に示されるように、表示素子36は、第3照明光51cを透過させて赤外照明光53を生成する。第3照明光51cは、投射軸54の右側および左側の双方から表示部14に向けて入射するため、表示部14から出射される赤外照明光53は、投射鏡16の全体において反射され、アイボックス76の全体に向かう。赤外照明光53は、第1投射軸54Lおよび第2投射軸54Rのそれぞれに沿って投射され、アイボックス76の左側領域76Lおよび右側領域76Rの双方に向かう。
制御装置18は、両目位置検出部42と、画像処理部44と、光源制御部46と、表示制御部48とを含む。
両目位置検出部42は、カメラ17の撮像画像に基づいてユーザ70の両目72L,72Rの高さ方向の位置を検出する。両目位置検出部42は、ユーザ70の左目72Lと右目72Rのいずれが上側にあるかを検出する。両目位置検出部42は、ユーザ70の両目72L,72Rを結ぶ直線と基準となる水平線とのなす角度Δθを検出し、角度Δθに基づいて両目72L,72Rの高さ方向の位置の差Δh1を検出する。両目位置検出部42は、角度Δθを用いずに、カメラ17の撮像画像に基づいて両目72L,72Rの高さ方向の位置の差Δh1を直接的に算出してもよい。
画像処理部44は、表示部14に表示させる画像を生成する。画像処理部44は、両目位置検出部42の検出結果に基づいて、表示用画像に補正処理を施して左目用画像40Lおよび右目用画像40Rを生成する。画像処理部44は、両目位置検出部42により検出される両目72L,72Rの高さ方向の位置の差Δh1に起因した垂直視差Δφが低減または相殺されるように、左目用画像および右目用画像のそれぞれの表示内容の位置が相対的に上下方向にずれるように補正処理を施す。
画像処理部44は、左目72Lよりも右目72Rが上側に位置する場合、左目用画像40Lよりも右目用画像40Rの表示内容の位置が下側にずれるように表示用画像に補正処理を施す。一方、画像処理部44は、左目72Lよりも右目72Rが画像内で下側に位置する場合、左目用画像40Lよりも右目用画像40Rの表示内容の位置が画像内で上側にずれるように表示用画像に補正処理を施す。画像処理部44は、両目72L,72Rの高さ方向の位置が同じであれば、左目用画像40Lおよび右目用画像40Rの表示内容の位置が画像内で同じとなるように表示用画像を生成する。
画像処理部44は、左目用画像40Lおよび右目用画像40Rの双方に補正処理を施してもよいし、左目用画像40Lおよび右目用画像40Rの一方のみに補正処理を施してもよい。例えば、左目72Lが下側、右目72Rが上側に位置する場合、左目用画像40Lの表示内容を上側にずらすとともに、右目用画像40Rの表示内容を下側にずらすことにより、左目用画像40Lおよび右目用画像40Rの双方に補正処理を施してもよい。その他、左目用画像40Lの表示内容のみを上側にずらす一方で、右目用画像40Rの表示内容は上下方向にずらさないようにしてもよい。逆に、左目用画像40Lの表示内容は上下方向にずらさないようにし、右目用画像40Rの表示内容のみを下側にずらすようにしてもよい。
なお、画像処理部44により施される補正処理の補正量(上下方向のシフト量)Δh3は、ヘッドアップディスプレイ装置10の光学系の設計に応じてあらかじめ設定される。画像処理部44は、例えば、両目72L,72Rの高さ方向の位置の差Δh1と、補正処理の補正量Δh3とを対応付ける数式またはテーブル情報を保持し、これらを参照して両目位置検出部42による検出結果Δh1から補正量Δh3を決定する。
光源制御部46は、光源20の動作を制御する。光源制御部46は、第1可視光源21aのみを点灯させる第1状態と、第2可視光源21bのみを点灯させる第2状態と、第1赤外光源22aおよび第2赤外光源22bのみを点灯させる第3状態とを切り替える。光源制御部46は、第1状態と第2状態を交互に切り替えるとともに、第1状態と第2状態の間に第3状態が挿入されるようにする。光源制御部46は、光源20の動作状態の切り替えを人間の目が知覚できない程度の速さで切り替える。各動作状態の切り替え速度は、例えば1秒間に120回以上(120Hz以上)である。
表示制御部48は、表示部14の動作を制御する。表示制御部48は、表示素子36を駆動するための画像信号を生成し、表示素子36に左目用画像40L、右目用画像40Rおよび照明用画像38が切替表示されるようにする。表示制御部48は、光源20の動作と同期して表示素子36に表示させる画像を切り替えさせる。表示制御部48は、第1状態において第1照明光51aが生成されるときに表示素子36に左目用画像40Lを表示させる。表示制御部48は、第2状態において第2照明光51bが生成されるときに表示素子36に右目用画像40Rを表示させる。表示制御部48は、第3状態において赤外照明光53が生成されるときに表示素子36に照明用画像38を表示させる。
図12は、光源20および表示素子36の動作を模式的に示す図である。第1期間T1は、左目用表示光52Lを生成する第1状態であり、第1可視光源21aがオンとなり、第2可視光源21b、第1赤外光源22aおよび第2赤外光源22bはオフとなり、表示素子36に左目用画像40Lが表示される。第2期間T2は、右目用表示光52Rを生成する第2状態であり、第2可視光源21bがオンとなり、第1可視光源21a、第1赤外光源22aおよび第2赤外光源22bはオフとなり、表示素子36に右目用画像40Rが表示される。第3期間T3は、赤外照明光53を生成する第3状態であり、第1赤外光源22aおよび第2赤外光源22bがオンとなり、第1可視光源21aおよび第2可視光源21bがオフとなり、照明用画像38が表示される。第3期間T3は、第1期間T1と第2期間T2の間に挿入される。その結果、第1期間T1、第3期間T3、第2期間T2、第3期間T3の順に動作状態が切り替えられ、これら四つの期間を含む基準期間T0が繰り返される。基準期間T0の繰り返し周期は、例えば1秒間に30回以上(30Hz以上)である。
本実施の形態によれば、ユーザ70の両目72L,72Rの高さ方向の位置の差Δh1をカメラ17を用いて検出し、右目用画像40Rと左目用画像40Lの表示内容の上下方向の位置を補正することで、ユーザ70が視認する垂直視差Δφを低減できる。これにより、ユーザ70が首を傾げながら虚像50を視認する場合であっても、左目用虚像50Lおよび右目用虚像50Rが見える高さ位置の差を小さくすることができ、左目用虚像50Lと右目用虚像50Rの融像を容易にできる。これにより、両眼視で視認される虚像50の視認性を向上させることができ、視覚疲労や目眩の発生を好適に防止できる。
本実施の形態によれば、ユーザ70を照明するための赤外照明光53は、表示光52を生成するための光学系と兼用されているため、ユーザ70が虚像50を視認できるように光学系が調整されれば、ユーザ70の顔面に確実に赤外照明光53を投射できる。また、表示光52を生成するための光学系を用いて赤外照明光53が生成されるため、均一な照度分布の赤外照明光53をユーザ70の顔面に投射することができ、ユーザ70の顔面をより適切に撮像できる。
本実施の形態によれば、第3期間T3においてユーザ70に視認されない赤外照明光53が生成されるため、第3期間T3に黒画像が挿入されているかのように虚像50の動画像を提示できる。その結果、表示素子36の応答特性に起因して隣接フレーム間で表示用画像を瞬時に切り替えできないことで動画像がぼやけて見えてしまう「動画ぼけ」を抑制することができ、視認性の優れた虚像50を提示できる。
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、各表示例に示す構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。
上述の実施の形態では、ヘッドアップディスプレイ装置10がカメラ17を備える構成を示した。別の実施の形態では、ヘッドアップディスプレイ装置10がカメラ17を備えなくてもよく、ユーザ70の顔面を撮像可能な任意のカメラが撮像する画像を用いて、ユーザ70の両目72L,72Rの位置が検出されてもよい。ヘッドアップディスプレイ装置10は、ユーザ70を照明するための赤外照明光53を生成しないように構成されてもよく、第1赤外光源22aおよび第2赤外光源22bを備えなくてもよい。この場合、ヘッドアップディスプレイ装置10とは別の赤外照明光源により、ユーザ70が照明されてもよい。例えば、ヘッドアップディスプレイ装置10とは別体のドライバモニタ装置が赤外カメラおよび赤外照明装置を備えてもよく、ドライバモニタ装置が撮像するユーザ70の画像をヘッドアップディスプレイ装置10が取得してもよい。
10…ヘッドアップディスプレイ装置、12…照明部、14…表示部、16…投射鏡、17…カメラ、40L…左目用画像、40R…右目用画像、42…両目位置検出部、44…画像処理部、48…表示制御部、51a…第1照明光、51b…第2照明光、52…表示光、52L…左目用表示光、52R…右目用表示光、53…赤外照明光、54…投射軸、54L…第1投射軸、54R…第2投射軸、56…撮像軸、62…ウインドシールド、70…ユーザ、72…目、72L…左目、72R…右目、76…アイボックス、76L…左側領域、76R…右側領域。
Claims (5)
- ウインドシールドにて反射してアイボックスの左側領域に向かう第1投射軸に沿って第1照明光を投射し、前記ウインドシールドにて反射して前記アイボックスの右側領域に向かう第2投射軸に沿って第2照明光を投射する照明部と、
前記第1投射軸と前記第2投射軸の交点に配置され、前記第1照明光を変調して左目用表示光を生成し、前記第2照明光を変調して右目用表示光を生成する表示部と、
前記アイボックスに位置するユーザの両目を撮像するカメラと、
前記カメラの撮像画像に基づいて前記ユーザの両目の高さ方向の位置の差を検出する両目位置検出部と、
前記両目位置検出部により検出される前記ユーザの両目の前記高さ方向の位置の差に応じて、前記表示部に表示される左目用画像および右目用画像のそれぞれの表示内容の位置が相対的に上下方向にずれるように補正された前記左目用画像および前記右目用画像を生成する画像処理部と、
前記第1照明光と前記第2照明光が時分割で生成されるように前記照明部の動作を制御する照明制御部と、
前記第1照明光の生成時に前記表示部に前記左目用画像を表示させ、前記第2照明光の生成時に前記表示部に前記右目用画像を表示させる表示制御部と、を備えることを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。 - 前記照明部は、前記ウインドシールドにて反射して前記アイボックスに向かう投射軸に沿って赤外照明光をさらに投射し、
前記照明制御部は、前記第1照明光、前記第2照明光および前記赤外照明光が時分割で生成されるように前記照明部の動作を制御し、
前記カメラは、前記赤外照明光が投射される前記ユーザの両目を赤外光で撮像することを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。 - 前記カメラは、前記ウインドシールドから前記アイボックスまでの範囲における前記投射軸からずれた撮像軸で前記ユーザの両目を撮像するよう配置されることを特徴とする請求項1または2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
- 前記カメラは、前記高さ方向を基準として、前記ウインドシールドから前記アイボックスまでの範囲における前記投射軸よりも下方に前記撮像軸が位置するように配置されることを特徴とする請求項3に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
- 前記表示部から出射される前記左目用表示光および前記右目用表示光を前記ウインドシールドに向けて反射させる投射鏡をさらに備え、
前記カメラは、前記撮像軸が前記投射鏡と前記ウインドシールドの間に位置するように配置されることを特徴とする請求項3または4に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
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