本明細書に引用される全ての参考文献、刊行物、および特許は、それらが完全に記載されているかのように、参照によりその全体を組み込まれる。特段に定義のない限り、本明細書に使用される技術用語および科学用語は、この発明の属する分野の当業者が通例理解するものと同じ意味を有する。Hornyakら、Introduction to Nanoscience and Nanotechnology、CRCPress(2008);Singletonら、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology、第3版、J.Wiley&Sons(ニューヨーク、ニューヨーク州、2001);March, Advanced Organic Chemistry Reactions,Mechanisms and Structure、第7版、J.Wiley&Sons(ニューヨーク、ニューヨーク州、2013);ならびにSambrookおよびRussel、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第4版、Cold Spring Harbor Laboratory Press(Cold Spring Harbor、ニューヨーク州、2012)は、本願に使用される用語の多くに対する一般的なガイドを当業者に提供する。当業者は、本発明の実践に使用することのできる、本明細書に記載されるものと同様または等価の多くの方法および材料を認識することになろう。実に、本発明は、記載される方法および材料に全く限定されない。
本明細書に使用される際に,用語「対象」は、哺乳動物、魚類、鳥類、爬虫類、または両生類などの脊椎動物とすることができる。そのため、本開示の対象は、ヒト、ヒトでない霊長類、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、モルモット、または齧歯類とすることができる。用語は、具体的な年齢または性別を意味しない。そのため、成人および新生児の対象、ならびに胎児は、男女に関わらず、カバーされることが意図される。一態様では、対象は哺乳動物である。
本明細書に使用される際に、用語「患者」とは、疾患または障害に罹っている対象を指す。用語「患者」は、ヒトおよび獣医学の対象を含む。開示される方法の態様によっては、対象は、血液障害および関連の疾患について治療の必要があるものと診断されており、そのようなものとしては、以下に限定されないが、出血障害、例えば血友病A(第VIII因子欠乏症)、血友病B(第IX因子欠乏症)、フォン・ヴィルブランド疾患、および因子I、II、V、VII、X、XI、XII、およびXIIIなどを含めた稀少因子欠乏症が挙げられる。
本明細書に使用される際に、用語「FVIII:C」は、血漿のFVIIIの凝血活性を想定する。実施形態によっては、用語FVIII:Cは、血漿中のFVIIIaの濃度を指すことがある。実施形態によっては、用語FVIII:Cは、FVIIIの凝血原機能を指すことがある。この開示を通して記載されるように、以前は未知であったFVIII活性化経路が開示されており、そこでは、FVIIIプロ補因子は、FIIaフィードバック活性化とは独立して、FVIIIa活性補因子に変換される。実施形態によっては、FVIII:Cは、この開示の実施例、アッセイ、方法、およびキットに記載されるように測定されてもよい。この開示の実施形態によっては、血友病患者は、血漿のFVIIIの凝血活性(FVIII:C)に基づいて、3つのカテゴリーに分類されている。すなわち、FVIII:Cレベルが1IU/dL未満であれば重度;FVIII:Cレベルが1IU/dLと5IU/dLとの間であれば中等度;およびFVIII:Cレベルが5IU/dL超であれば軽度である。
本明細書に使用される際に、本明細書に互換的に使用される用語「第IIa因子」、「FIIa」および「生成トロンビン」(TG)とは、フィブリノーゲンをフィブリンに変換することによって血液の凝固を引き起こす、血漿中の酵素を指す。TGとは、本明細書に開示されるアッセイの結果として生成されるトロンビンの量をも指すことがある。
本明細書に開示されるように、本発明者らは、対象での血液凝固を査定するために使用されることがある、様々なアッセイおよび方法を開発している。本発明者らは、新しい凝固開始経路を開示しており、その経路では、TF−FVIIa−新生FXa複合体が、トロンビンフィードバックとは別にFVIIIを直接的に活性化する。TFによる内在性経路の直接的な活性化は、トロンビン増幅を標的とした抗凝血療法下で、止血を保持することがある。
一実施形態では、本明細書に開示されるのは、血液試料中の生成トロンビン(TG)を測定するための高感度で迅速なアッセイであり、このアッセイは、血液試料を組織因子(TF)、FIXa、およびCaCl2と共に5分間までインキュベーションすること;ならびにH−D−シクロヘキシル−アラニル−アラニル−アルギニル−アミドメチルクマリン(AMC)および/またはブチルオキシカルボニル−バリル−プロリニル−アルギニル−AMC(V−P−R−AMC)を使用することによって、血液試料中のTGを測定することを含む。一実施形態では、本アッセイは、EDTAの添加によってステップ(a)での反応を終了させることをさらに含む。一実施形態では、血液試料に添加されるTFの量は、1pMと1fMとの間である。一実施形態では、血液試料に添加されるFIXaの量は、1uMと1pMとの間である。一実施形態では、血液試料に添加されるCaCl2の量は、1mMと999mMとの間である。一実施形態では、血液試料は、重度の血友病患者由来である。一実施形態では、TFは、組換え組織因子(rTF)である。一実施形態では、本アッセイは、高感度であり、約5pMのTGの検出限界を有する。一実施形態では、本アッセイは、患者における大出血および血栓形成のリスクを予測する。一実施形態では、本アッセイは、10分以内に完了させることができる。一実施形態では、本アッセイは、前記血液試料中のFVIIIのレベルを決定することをさらに含む。一実施形態では、本アッセイは、機能性が向上しおよび/または安定性が増加したFVIIIバリアントを特定するのに有用である。一実施形態では、本アッセイは、新規の止血剤をスクリーニングするのに有用である。
一実施形態では、本明細書に開示されるのは、対象における出血リスクを決定するためのアッセイであり、このアッセイは、対象から血液試料を取得すること;組織因子(TF)および/または第IXa因子(FIXa)を、血液試料に添加すること;血液試料中の第VIII凝固因子(FVIII:C)の量を決定すること;ならびに(a)試料中のFVIII:Cの量が>5IU/dLであれば対象での軽度の出血リスクを、および(b)試料中のFVIII:Cの量が1〜5IU/dLであれば対象での中等度の出血リスクを、および(c)対象中のFVIII:Cの量が<1IU/dLであれば対象での重度の出血リスクを、決定することを含む。一実施形態では、本アッセイは、中等度の出血リスクを重度と区別するための高感度の能力がある。一実施形態では、血液試料に添加されるTFの量は、1fMから1pMである。一実施形態では、血液試料に添加されるFIXaの量は、1pMから1nMである。一実施形態では、本アッセイは、遊離のFXaの生成が減少した際に、モノクローナル抗体12C7を使用することによって、FVIIIの活性化を測定することをさらに含む。一実施形態では、本アッセイは、FVIIのT99Y変異体を試料に添加すること、および遊離のFXaの生成が減少した際に、FVIIIの活性化を測定することをさらに含む。別の実施形態では、本アッセイは、FVIIのE154A変異体を試料に添加すること、および遊離のFXaの生成が減少した際に、FVIIIの活性化を測定することをさらに含む。一実施形態では、本アッセイは、補因子FVIIIとFVの活性化を区別することを可能にする。一実施形態では、FVIII:Cの量の検出限界は0.1IU/dL以下である。一実施形態では、TFおよびFIXaは、個々の血液試料に同時に添加される。一実施形態では、TFは再脂質化された形態である。一実施形態では、対象は、重度の血友病Aであることを以前に診断されている。一実施形態では、対象は、後天性のFVIII欠乏症であることを以前に診断されている。一実施形態では、本アッセイは、出血の表現型の特徴を正確に明らかにすることをさらに含む。一実施形態では、血液凝固レベルを査定することは、重度の血友病A患者の治療レジメン全体の一部分である。一実施形態では、血液凝固レベルを査定することは、FVIII製品を用いた置き換え療法全体の一部分である。一実施形態では、本アッセイは、現在利用可能な方法よりも少なくとも10倍の感度を用いて、重度の血友病患者におけるFVIII:Cのレベルを決定する。一実施形態では、本アッセイは、FVIII濃縮物を用いた治療のモニタリングのために、および濃縮物の効力の査定のために有用である。一実施形態では、本アッセイは、機能性が向上しおよび/または安定性が増加したFVIIIバリアントを特定することをさらに含む。一実施形態では、本アッセイは、血友病A治療のための効能および安全性が向上した新規の止血剤をスクリーニングすることをさらに含む。一実施形態では、本アッセイは、個々の患者について抗血栓療法の安全性および効能をモニタリングするための新しい方法およびキットを設計するのに有用である。一実施形態では、本アッセイは、治療効能が向上した新しい抗血栓剤を特定し特徴を明らかにするのに有用である。一実施形態では、本アッセイは、止血への影響が減少した新しい抗血栓剤を特定し特徴を明らかにするのに有用である。一実施形態では、本アッセイは、自然発生や外傷後の頭蓋内大出血などの、命に関わる出血合併症を低減する。一実施形態では、本アッセイは、効能および安全性が向上した新規の止血剤を特定するのに有用である。一実施形態では、対象は、先天性または後天性のFVIIIおよびFIXの欠乏症を有する。
一実施形態では、本明細書に開示されるアッセイは、遊離のFXaによるFVIIIaの活性化またはトロンビン−フィードバックループとは別個のものとして、活性のFVIIIa補因子の生成に対する天然のTF−FVIIa−FXatの相対的寄与を測定する。一実施形態では、アッセイは、FVIIIを活性化するがFVを活性化せず、初発のトロンビン生成を必要とすることなくそのようにする。一実施形態では、遊離のFXaは、FVをFVaに活性化する。それゆえ、本明細書に記載されるアッセイのフォーマットは、遊離のFXaによるFVIIIaの活性化またはトロンビン−フィードバックループとは別個のものとして、活性の補因子FVIIIaの生成に対する天然のTF−FVIIa−FXaの相対的寄与を、血漿または血液試料中で測定することができる。
「天然の」TF−FVIIa−FXaとは、本明細書に使用される際には、初発のTF−FVIIa−FX複合体(FXが不活性である)から、TF−FVIIa−FXa(TFに会合しているFVIIaがFXをFXa活性プロテアーゼに変換している)への変換が起こっているが、FXaがTF−FVIIaに会合したままであることを指す。これまで認識されていなかったこの複合体のユニークな特性とは、生理的ならびに薬理的なFXa阻害剤による阻害を逃れるとともに、選択的にFVIIIをFVIIIaに活性化する能力である。一実施形態では、この知見の重要性とは、遊離のFXa−すなわち、TF−FVIIaによって活性化されているが、複合体から放出されているFX−がまた、FVIIIに加えて、FVをFVaに活性化することである。FVaは、プロトロンビンをトロンビンに効率良く変換するのに不可欠なプロトロンビナーゼ複合体(FVa−FXa複合体)の必須の補因子であり、凝固系の最終的な活性プロテアーゼ産物である。トロンビンは、フィブリノーゲンを凝固させ、血小板を活性化させ、この両方が正常な止血に不可欠であるが、病理学的な血栓症の原因でもある。正常な状態では、特異的な生理的阻害剤による制御によって、止血をサポートするために正しい場所で正しい時間に充分なトロンビンが産生されるようにするバランスが確保される。トロンビン生成が制御されなければ、病理的な状態では血管内血栓症が引き起こされてゆく。そのため、FVIIIを活性化するがFVを活性化せず、かつ初発のトロンビン生成を必要とすることなくそのようにするという反応の発見、この反応の発生に感受性を持つ方法の記載は、本開示の1つの重要な態様であり、なぜなら、それは、トロンビン生成を鈍らせて血栓症を治癒または防止しなければならない抗凝血剤を使用する状況で、止血の保持を説明し正確に測定することのできる、経路の定量的な査定を可能にするためである。同時にFVaを産生することなくFVIIIをFVIIIaに活性化することは、血栓症とは反対に止血の方へと凝固応答を偏らせることができる機構である。この経路の相対的な機能を定量的に査定することは、非処理個体または異なる種類の抗凝血剤を受けている患者で出血のリスクvs血栓症のリスクを確かめる際に重要である。
一実施形態では、本明細書に開示されるのは、血液凝固を決定するのに有用なキットであり、このキットは、組織因子(TF)、第IXa因子(FIXa)、凝血原(PL)、および/もしくは第IIa因子(FIIa)、またはその医薬的な等価体、誘導体、類似体、および/または塩を含む組成物を含む。一実施形態では、本キットは、H−D−シクロヘキシル−アラニル−アラニル−アルギニル−アミドメチルクマリン(AMC)および/またはブチルオキシカルボニル−バリル−プロリニル−アルギニル−AMC(V−P−R−AMC)を含む組成物をさらに含む。一実施形態では、本キットは、FVIII:C活性のレベルを決定するための装置をさらに含む。一実施形態では、本キットは、TGの量を決定するための装置をさらに含む。一実施形態では、TFおよび/またはFIXaの組成物が、ピコモルおよび/またはナノモルの投薬量である。一実施形態では、本キットは、血友病患者の個別化診断に有用である。一実施形態では、本キットは、先天性のおよび後天性のFVIII:C欠損症の患者における出血リスクを予測するのに有用である。一実施形態では、本キットは、抗血栓レジメンのモニタリングおよび評価に有用である。一実施形態では、本キットは、薬剤の治療または薬剤の組合せに基づく診断、モニタリング、および/または評価をさらに含む。
一実施形態では、本明細書に開示されるのは、患者における疾患を診断、モニタリング、または予知する方法であり、この方法は、患者から血漿試料を取得すること;血液試料を組織因子(TF)、FIXa、および/またはCaCl2と共にインキュベーションすること;試料をアッセイして、FVIII:Cおよび/または生成トロンビン(TG)のレベルを決定すること;ならびに試料中のFVIII:Cの量に基づき、疾患を診断、モニタリング、または予知することを含む。一実施形態では、疾患は出血障害である。一実施形態では、疾患は、血栓障害である。一実施形態では、疾患は止血障害である。一実施形態では、検出されたFVIII:C量のレベルが5IU/dL超である場合に、患者は軽度の出血リスクを有する。一実施形態では、検出されたFVIII:C量のレベルが1〜5IU/dLの間にある場合に、患者は中等度の出血リスクを有する。一実施形態では、検出されたFVIII:C量のレベルが1〜0.1IU/dLの間にある場合に、前記患者は重度の出血リスクを有する。一実施形態では、TFおよび/またはFIXaは、ピコモル量またはナノモル量で前記患者の血液試料に投与される。一実施形態では、本方法は、適切な抗血栓症治療を投与することによる追加の治療をさらに含む。一実施形態では、本方法は、血栓症の治療のための薬剤の組合せを投与することをさらに含む。一実施形態では、本方法は、機構論的な見地で異なる標的選択的な抗凝血剤を用いた個別化治療を達成するのに有用である。一実施形態では、患者は、抗凝血剤を用いた治療を受けている。一実施形態では、抗凝血剤は、経口の抗凝血剤である。一実施形態では、アッセイは、重度の血友病A患者における低レベルのFVIII:Cを検出することができる。一実施形態では、アッセイは、後天性のFVIII欠乏症の個体における低レベルのFVIII:Cを検出することができる。一実施形態では、感度の増加したFVIII活性アッセイによって、出血の表現型の特徴をさらに正確に明らかにすることが可能になる。一実施形態では、感度の増加したFVIII活性アッセイによって、重度の血友病A患者における出血リスクの予測が可能になる。一実施形態では、アッセイは、新たに特定された凝固経路における機能が増大しおよび/または安定性が増加した抗血友病FVIIIのバリアントを特定する助けとなり、それゆえ、抗血友病FVIII機能を欠損している患者の補充療法が改善される。
一実施形態では、本明細書に開示されるのは、新しい抗血栓性のまたは止血促進性の薬剤候補をスクリーニングおよび/または評価する方法であって、この方法は、患者の血漿試料を提供すること;TF、FIXa、および/またはCaCl2を含む組成物を血液試料に添加すること、ならびに試料をアッセイしてFVIII:Cレベルもしくは生成トロンビン(TG)レベルを決定すること;ならびにFVIII:Cレベルまたは生成トロンビン(TG)レベルに基づいて、新しい抗血栓性のまたは止血促進性の薬剤候補をスクリーニングおよび/または評価することを含む。一実施形態では、TFおよびFIXaは、ピコモル量またはナノモル量で前記血液試料に添加される。一実施形態では、新しい抗血栓剤または止血促進剤を評価することは、新しい抗血栓剤または止血促進剤のために設計またはスクリーニングすることを含む。一実施形態では、抗血栓剤または止血促進剤は、治療効能が向上している。一実施形態では、抗血栓剤または止血促進剤は、安全性プロファイルが向上している。一実施形態では、新しい抗血栓薬剤候補を評価することは、TF開始性の凝固の状況では、凝固補因子の機能的な保存または分解に特異的におよび定量的に焦点を置き、血栓促進性経路と止血促進性経路とを区別することを含む。一実施形態では、抗血栓剤または止血促進剤は、出血合併症に関する抗血栓効果と安全性プロファイルとの最良のプロファイルに基づいて評価される。
一実施形態では、本明細書に開示されるのは、抗凝血剤の治療効能を査定する方法であり、この方法は、血液試料を提供すること;コラーゲンで被覆されているかまたはrTFで固相化されている表面上に、前記血液試料を灌流すること;前記コラーゲンで被覆されているかまたはrTFで固相化されている表面上で、血小板の凝集およびフィブリンの沈着を測定すること;ならびに血小板凝集体および/または沈着フィブリンの体積に基づき、抗凝血剤の治療効能を査定することを含む。一実施形態では、抗凝血剤は、FXaを標的とする凝血剤である。一実施形態では、抗凝血剤は、ヘパリン(抗トロンビン補因子)、ワルファリン(ビタミンKアンタゴニスト)、ダビガトラン(直接的なトロンビン阻害剤)、リバーロキサバン、および/またはアピキサバン(2種の直接的なFXa阻害剤)である。一実施形態では、凝血剤は、血漿中のFXIレベルとそれゆえに活性を低下させるアプタマーなどの、標的凝血剤である。一実施形態では、灌流は、壁せん断速度300s−1で5分間である。
安全で有効な抗血栓療法は、病理学的な血栓症に寄与するが止血に及ぼす影響が小さい機構の理解を必要とする。本明細書に記載されるように、および本明細書に開示される様々な実施形態に従って、本発明者らは、外因性組織因子(TF)凝固開始複合体が、トロンビンフィードバックループとは独立して止血性の内在性凝固経路を惹起する抗血友病補因子であるFVIIIを、選択的に活性化できることを見出した。比較的軽度の血栓形成性の傷の付いたマウスモデルでは、TF依存的なFVIIIの活性化によって、接触相による生成FIXaを通じた血栓形成の閾値が定められる。In vitroでは、安定的にTF−FVIIaと会合しているFXaは、FVIIIを活性化するが、FVを活性化しない。さらに、TF−FVIIaの新生FXa産物は、TF経路阻害剤(TFPI)によるKunitz型阻害の緩やかなカイネティクスを一過的に逃れ、FVよりもFVIIIを優先的に活性化することができる。それゆえ、TFは、トロンビンによる補因子の活性化とは独立して、FIXa依存的なトロンビン生成を相乗的にプライミングする。したがって、直接的なTF依存的トロンビン生成を欠損するが新生FXaによるFVIIIa生成を保持するFVIIa変異体は、内在性経路による凝固をサポートすることができる。ex vivoの血流中では、遊離FXa生成不全ではあるがbothFVIIIとFIXの両方を活性化するTF−FVIIa変異体複合体は、効率の良いFVIII依存的な血栓形成をサポートする。そのため、以前に認識されていなかった、FVIIIa−FIXa内在性テナーゼ複合体を直接的に産生するTF開始性経路は、トロンビン依存的なフィードバックループによるさらに進んだ凝固増幅によって血栓症のリスクが増大する前に、止血促進性となる可能性がある。
一実施形態では、本開示は、血友病の対象における血液凝固を査定する方法を提供し、この方法は、組織因子(TF)および/または第IXa因子(FIXa)を含む有効な投薬量の組成物を、個体から得られた血液試料に添加すること;および試料をアッセイして、凝固因子VIII(FVIII:C)のレベルを決定することを含む。本方法は、中等度の出血リスクを、約1〜0.1IU/dLのFVIII:Cレベルの結果として生じる重度と区別することが可能であり、それは、FVIII:Cが<1IU/dLである際に重度の出血リスクが生じ、FVIII:Cが1〜5IU/dLである際に中等度の出血リスクが生じ、FVIII:Cが>5IU/dLである際に軽度の出血リスクが生じることによる。一実施形態では、本方法は、中等度の出血リスクを、1〜0.1IU/dL範囲のFVIII:Cレベルの結果として生じる重度と区別することが可能である。実施形態によっては、TFおよびFIXaは、患者の血液試料に同時に添加される。実施形態によっては、TFは、再脂質化された形態である。実施形態によっては、TFおよびFIXaは、患者の血漿(PRPまたはPPP)中に添加される。実施形態によっては、TFおよびFIXaは、ピコモル量またはナノモル量で添加される。一実施形態では、本方法は、重度の血友病A患者に使用される。実施形態によっては、本方法は、後天性のFVIII欠乏症の患者に使用される。実施形態によっては、本方法は、出血の表現型の特徴をさらに正確に明らかにすることができる。実施形態によっては、本方法は、重度の血友病A患者における出血リスクを予測するのに有用である。一実施形態では、本方法は、FVIII産物を用いて補充療法を改善する。実施形態によっては、本方法は、少なくとも10倍超の感度で、重度の血友病患者におけるFVIII:Cのレベルを決定する。実施形態によっては、本方法は、FVIII濃縮物を用いた治療のモニタリングのために、および濃縮物の効力の査定のために有用である。実施形態によっては、本方法は、機能性が向上しおよび/または安定性が増加したFVIIIバリアントを特定することをさらに含む。実施形態によっては、本方法は、血友病Aまたは他の出血障害の治療のための効能および安全性が向上した新規の止血剤をスクリーニングすることをさらに含む。実施形態によっては、本方法は、個々の患者について抗血栓療法の安全性および効能をモニタリングするための新しい方法およびキットを設計するのに有用である。実施形態によっては、本方法は、治療効能が向上した新しい抗血栓剤を特定し特徴を明らかにするのに有用である。実施形態によっては、本方法は、止血への影響が減少した新しい抗血栓剤を特定し特徴を明らかにするのに有用である。実施形態によっては、本方法は、自然発生や外傷後の頭蓋内大出血などの、命に関わる出血合併症を低減する。実施形態によっては、本方法は、効能および安全性が向上した新規の止血剤を特定するのに有用である。これらの実施形態のいくつかでは、患者は、先天性または後天性のFVIIIおよびFIXの欠乏症である(血友病)。
様々な実施形態では、本明細書に開示されるのは、対象での血液 凝固を査定する方法であり、この方法は、対象から適した血液試料を取得すること;個々の試料に所定の濃度の組織因子(TF)および/または第IXa因子(FIXa)を添加すること;および試料をアッセイして、凝固因子VIII(FVIII:C)のレベル決定することを含み、ここでは、FVIII:Cが>5IU/dLである際に軽度の出血リスクが生じ;FVIII:Cが1〜5IU/dLである際に中等度の出血リスクが生じ;FVIII:Cが<1IU/dLである際に重度の出血リスクが生じる。そのため、このアッセイは、中等度の出血リスクを、約1〜0.1IU/dLのFVIII:Cレベルの結果として生じる重度と区別することが可能である。これらの実施形態のいくつかでは、モノクローナル抗体12C7および任意のT99Y変異の等価体を使用することによって、遊離のFXaの生成が減少した際にFVIIIの活性化を測定することが可能になる。実施形態によっては、本方法によって、補因子FVIIIとFVの活性化を区別することを可能にする。実施形態によっては、モノクローナル抗体12C7を使用することによって、遊離のFXaの生成が減少した際にFVIIIの活性化を測定することが可能になる。実施形態によっては、FVIIのT99Y変異体またはその任意の等価体を使用することによって、遊離のFXaの生成が減少した際にFVIIIの活性化を測定することが可能になる。実施形態によっては、FVIIのT99Y変異体またはその任意の等価体を使用して、モノクローナル抗体12C7を用いるアッセイフォーマットと同様のFXIループを査定する。
さらに本明細書に開示されるのは、血液FVIIのTFへの結合で競り勝つためのアッセイであり、このアッセイは、(a.)個体から血液試料を取得すること;(b)凝固因子VIIaの変異体を高濃度で添加すること;および(c)血液FVIIのTFへの結合で競り勝つことを含む。実施形態によっては、凝固因子VIIaの変異体は、E154Aまたは実質的に同様の機能を果たす同様の変異体である。
さらに本明細書に開示されるのは、新しい止血性の薬剤候補を評価するための方法であり、この方法は、(a)TF開始性反応においてモノクローナル抗体12C7を存在させてTGを開始させること;(b)12C7の存在下ではTGが無効であることを決定すること;(c)止血性の薬剤候補を添加すること;および(d)12C7の存在によるTF開始性反応において無効なTGを補完する場合に、止血性の薬剤候補が有効であるものと評価することを含む。
さらに本明細書に開示されるように、本発明者らは、血液凝固の査定に使用される可能性がある様々なデバイスおよび装置を開発している。例えば、一実施形態では、本開示は、血液凝固を査定するためのデバイスを提供し、このデバイスは、1種または複数種のFVIII:Cレベルを試料から測定するのに適応された装置を含む。別の実施形態では、TFおよびFIXは、ピコモル量またはナノモル量で投与されてもよい。実施形態によっては、デバイスは、血友病患者の個別化診断に有用である。実施形態によっては、デバイスは、先天性および後天性のFVIII:C欠損症の患者における出血リスクを予測するのに有用である。
別の実施形態では、本開示は、TFおよび/もしくはFIXaまたはその医薬的な等価体、誘導体、類似体、および/または塩と、医薬的に許容可能な担体とを含む、ある量の組成物を含む医薬組成物を提供する。本明細書に開示される医薬組成物はまた、医薬的に許容可能な賦形剤を含むことがある。「医薬的に許容可能な賦形剤」とは、概ね安全で毒性がなく望ましい医薬組成物を調製する際に有用な賦形剤を意味し、ヒトの医薬用途のみでなく獣医学的用途にも許容され得る賦形剤を含む。そのような賦形剤は、固体、液体、準固体、またはエアロゾル組成物の場合はガス性であってもよい。
様々な実施形態では、本開示による医薬組成物は、任意の投与経路を介したデリバリのために製剤化されることがある。「投与経路」とは、当技術分野に公知の任意の投与経路を指すことがあり、そのようなものとしては、以下に限定されないが、エアロゾル、鼻、経口、経粘膜、経皮、または非経口が挙げられる。「非経口」とは、一般に注射に関連する投与経路を指し、そのようなものとしては、眼窩内、輸注、動脈内、嚢内、心臓内、皮内、筋肉内、腹腔内、肺内、脊髄内、胸骨内、くも膜下腔内、子宮内、静脈内、くも膜下、嚢下、皮下、経粘膜、または経気管が挙げられる。非経口経路を介して、組成物は、輸注用もしくは注射用に溶液もしくは懸濁液の形態で、または凍結乾燥粉末とされることがある。
本開示による医薬組成物は、任意の医薬的に許容可能な担体も含有することができる。本明細書に使用される際の「医薬的に許容可能な担体」とは、医薬的に許容可能な材料、組成物、または媒体を指し、この媒体は、ある組織、器官、または身体の一部から別の組織、器官、または身体の一部への目的の化合物の運搬または輸送に関与する。例えば、担体は、液体または固体フィラー、希釈剤、賦形剤、溶媒、、もしくは被包化材、またはそれらの組合せとしてもよい。担体の各構成成分は、製剤の他の成分と必ず適合するという点で「医薬的に許容可能」でなければならない。それは、接触することがある任意の組織または器官との接触での使用に適していなければならず、このことは、毒性、刺激、アレルギー応答、免疫原性、または治療上のメリットよりも過度に重さのある任意の他の合併症のリスクを持ち込んではならないことを意味する。
本開示による医薬組成物はまた、経口投与のために、被包化、錠剤化、またはエマルジョンもしくはシロップに調製することができる。医薬的に許容可能な固体または液体担体は、組成物を増強または安定化するか、または組成物の調製を容易にするために添加されることがある。液体担体としては、シロップ、ピーナッツ油、オリーブ油、グリセリン、生理食塩水、アルコール、および水が挙げられる。固体担体としては、デンプン、ラクトース、硫酸カルシウム二水和物、白土、ステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸、タルク、ペクチン、アラビアゴム、寒天、またはゼラチンが挙げられる。担体としてはまた、モノステアリン酸グリセリルやジステアリン酸グリセリルなどの持続性放出材が単独で、またはろうとともに挙げられることがある。
医薬調製物は、薬学の従来の手法に従って作製され、そのような手法としては、錠剤形態では摩砕、混合、顆粒化、および必要に応じて圧縮;または硬ゼラチンカプセル形態では摩砕、混合、および充填が挙げられる。液体担体が使用される際には、調製物は、シロップ、エリキシル、エマルジョン、または水性もしくは非水性の懸濁液の形態となる。そのような液体製剤は、直接的に経口で投与されるか、または軟ゼラチンカプセル内に充填されることがある。
本開示による医薬組成物は、治療有効量でデリバリされてもよい。的確な治療有効量は、所与の対象における治療の効能という観点から、最も有効な結果を生じることになる組成物の量である。この量は、種々の因子に応じて変わるものとなり、そのようなものとしては、以下に限定されないが、治療化合物の特徴(活性、薬物動態、薬力学、および生物学的利用能)、対象の生理的な状態(年齢、性別、疾患のタイプおよびステージ、全身的な身体状態、所与の投薬量に対する応答性、および薬物治療のタイプが挙げられる)、製剤中の医薬的に許容可能な1つまたは複数の担体の性質、および投与経路が挙げられる。臨床的または薬理的な技術分野の当業者は、定型的な実験作業を通じて、例としては、化合物の投与に対する対象の応答をモニタリングして投薬量を相応に調整することによって、治療有効量を決定することが可能となる。補足的な指針については、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Gennaro編、第21版、Williams&Wilkins、ペンシルベニア州、米国)(2005)を参照されたい。
有効な組成物の典型的な投薬量は、製造業者の推奨する範囲内とすることができ、その範囲とは、公知の治療化合物が使用され、また、動物モデルでのin vitroの1種または複数種の応答により当業者に標示されるようなものである。そのような投薬量について、典型的には、意義ある生物学活性を失うことなく、濃度または量を約1桁までは低減することができる。そのため、実際の投薬量は、医師の判断、患者の状態、および治療方法の有効性に応じたものとなり、治療方法の有効性は、例えば、以前に記載されているような、関連の初代培養細胞もしくは組織培養された組織試料、例えば生検された悪性腫瘍などのin vitroでの応答性、または適切な動物モデルに観察される応答に基づく。
様々な実施形態で、また、本明細書に開示されるのは、患者で抗血栓療法をモニタリングするための診断方法であり、この方法は、(a)所定量のTFおよびFIXaを個々の患者の血液試料に添加すること;(b)患者血液試料中のFVIII:Cレベルを決定すること;および(c)FVIII:Cレベルに基づき、患者で抗血栓療法をモニタリングすることを含む。実施形態によっては、TFおよびFIXaが、患者血液試料にピコモル量またはナノモル量で添加される。実施形態によっては、本方法は、血栓症の治療のために薬剤を投与することをさらに含む。実施形態によっては、本方法は、血栓症の治療のために薬剤の組合せを投与することをさらに含む。実施形態によっては、本方法は、機構論的な見地で異なる標的選択的な抗凝血剤を用いた個別化治療を達成するのに有用である。
様々な実施形態で、本明細書に開示されるのは、患者における出血合併症を引き起こすリスクを査定するための診断方法であり、この方法は、(a)所定量のTFおよびFIXaを個々の患者の血液試料に添加すること;(b)患者のFVIII:Cレベルを決定すること;および(c)FVIII:Cレベルに基づき、患者における出血合併症を引き起こすリスクを査定することを含む。これらの実施形態のいくつかでは、TFおよびFIXaが、患者血液試料にピコモル量またはナノモル量で添加される。
様々な実施形態で、本明細書に開示されるのは、新しい抗血栓性のまたは止血促進性の薬剤候補を評価する方法であり、この方法は、(a)それを必要とする患者の個々の血液試料に、所定量のTFおよびFIXaを添加すること;(b)患者のFVIII:Cレベルを決定すること;および(c)FVIII:Cレベルに基づき、新しい抗血栓性または止血促進性の薬剤候補を評価することを含む。これらの実施形態のいくつかでは、TFおよびFIXaが、患者血液試料にピコモル量またはナノモル量で添加される。実施形態によっては、新しい抗血栓性のまたは止血促進性の薬剤を評価することは、新しい抗血栓性のまたは止血促進性の薬剤について設計またはスクリーニングすることを含む。実施形態によっては、抗血栓性のまたは止血促進性の薬剤は、治療効能が向上している。実施形態によっては、抗血栓性のまたは止血促進性の薬剤は、安全性プロファイルが向上している。実施形態によっては、新しい抗血栓性の薬剤候補の特異的かつ定量的な評価は、TF開始性凝固のコンテクストでは、凝固補因子の機能的な保持または分解に焦点が置かれ、これによって、血栓促進性経路と止血促進性経路とが区別される。実施形態によっては、抗血栓性のまたは止血促進性の薬剤は、抗血栓効果についての最も良いプロファイルvs出血合併症に関する安全性プロファイルに基づき評価される。
様々な実施形態で、本明細書に開示されるのは、患者における血栓性または止血性のリスクを決定するためのアッセイであり、このアッセイは、(a)所定量のTFおよびFIXaを個々の患者の血液試料に添加すること;(b)患者血液試料中のFVIII:Cレベルを測定すること;および(c)FVIII:Cレベルに基づき、患者における血栓性または止血性のリスクを決定することを含む。実施形態によっては、TFおよびFIXaが、患者血液試料にピコモル量またはナノモル量で添加される。実施形態によっては、患者は、抗凝血薬剤を用いた治療を受けている。実施形態によっては、抗凝血剤は、経口の抗凝血剤である。実施形態によっては、本アッセイは、重度の血友病A患者で、低レベルのFVIII:Cを検出することができる。実施形態によっては、本アッセイは、後天性のFVIII欠乏症の個体で、低レベルのFVIII:Cを検出することができる。実施形態によっては、感度の増加したFVIII活性アッセイによって、出血の表現型の特徴をさらに正確に明らかにすることが可能になる。実施形態によっては、感度の増加したFVIII活性アッセイによって、重度の血友病A患者における出血リスクの予測が可能になる。実施形態によっては、本アッセイは、新たに特定された凝固経路における機能が増大しおよび/または安定性が増加した抗血友病FVIIIのバリアントを特定する助けとなり、それゆえ、抗血友病FVIII機能を欠損している患者の補充療法が改善される。
様々な実施形態で、本明細書に開示されるのは、新規の凝固経路であり、そこでは、TF−FVIIaによって形成される新生FXaが、トロンビンフィードバック反応とは独立して、FVIIIを直接的に活性化する。様々な実施形態で、本明細書に開示されるのは、(a)組織因子(TF)および(b)第IXa因子(FIXa)を含む組成物であり、そこでは、組成物は、個体の血漿中に投与された際に、トロンビン生成を惹起することが可能である。この組成物の実施形態によっては、個体とは血友病患者である。
様々な実施形態で、また、本明細書に記載されるのは、血栓症および止血に広範な意義を持つ、in vivoでの血栓形成の開始内にある経路である。実施形態によっては、この新規の機構は、抗血栓療法のモニタリングおよび治療効能の向上した新しい止血剤の設計のための、より良好な診断アプローチを可能にする。実施形態によっては、本明細書に開示されるのは、血栓症において凝固プロ補因子FVおよびFVIIIの活性化に繋がるde novo生成された因子Xaをもたらすような、組織因子(TF)凝固開始複合体の新規の機能である。実施形態によっては、止血に必要とされるプロテアーゼ補因子FVIIIaの生成は、好ましい安全性プロファイルを有した臨床で使用される抗凝血剤の存在下で保持される。一実施形態では、新規のアッセイが、この経路での機能性が向上し補充療法のための有用性を有した抗血友病FVIIIおよびFVのバリアントを特定するために開示される。別の実施形態では、本明細書に開示されるのは、安全性プロファイルへの有益な効能を有した抗血栓性の薬剤を評価するための、新規のアッセイである。さらに他の実施形態では、本明細書に開示されるのは、TF開始性凝固のコンテクストでの凝固補因子の機能的な保持または分解に基づき抗血栓療法をモニタリングするための、新規のアッセイである。実施形態によっては、本明細書に開示される新規の薬剤の探索アプローチおよび診断の原理は、抗血栓療法下のおよび/または止血療法を必要とする大規模な患者集団に適用可能である。
様々な実施形態では、 〆 新規の 機構 in 〆 凝固 process as 本明細書に開示される provides a hitherto unknown 方法 to identify and measure differentially 〆 機能 of 血栓促進性の and 止血促進性の 凝固経路s and, consequently, 〆 distinct effects of 阻害剤s. 実施形態によっては、 本開示 presents 新しい 診断の 方法s for モニタリング 抗血栓 療法 in individual 患者s, providing 定量的な パラメーターs that distinctly define 〆 レベル of 抗血栓 effect and 〆 リスク of causing 出血合併症s. 実施形態によっては、 this 新規の 機構 may guide 〆 process of 設計すること および/または スクリーニングすること for 新しい 抗血栓 or 止血促進剤s with 向上され 治療効能 and 安全性 プロファイル.
様々な実施形態で、本明細書に開示されるのは、新しい経口の抗凝血剤を用いて治療される患者について、血栓と出血とのリスクの定義を個別化する新規の凝固アッセイである。実施形態によっては、本明細書に開示されるアッセイは、より良好な抗血栓効果のための、または出血合併症の可能性を低減するための、投薬量の調整を必要とする状況を客観的に特定する。実施形態によっては、本開示は、充分な止血機能を保持するとともに血栓症を阻害および治療するための新しい薬理的なアプローチの特定および試験に適切な、新しい展望を提供する。
様々な実施形態では、本明細書に記載されるのは、血栓症および止血のための広範な意義を持つin vivoでの血栓形成の開始における経路である。様々な実施形態で、本開示は、外因性凝固開始複合体の新規の機能を描き出しており、すなわち、トロンビンフィードバックループとは独立した抗血友病補因子FVIIIの選択的なフィードフォワード活性化を示している(図1)。
一実施形態では、本明細書に開示されるのは、接触相(CP)開始性またはFXIa開始性の凝血原プロテアーゼの生成を可能にする鍵となるFVIII凝固補因子を、TF経路開始複合体が直接的に活性化することである。実施形態によっては、外因性経路の開始を介したプロテアーゼ生成が生理的に制限されている際に、TFPIによる補因子FVIII活性化の阻害が不十分であることによって、内在性経路を通じたトロンビン産生の継続が可能になる。実施形態によっては、TFPIと同様に、FXa指向性の抗凝血薬剤であるリバーロキサバンは、TF媒介性のトロンビン生成を低減するとともに、FVIIIの活性化を保持する。一実施形態では、生理的なTFPIの制御を選択的に回避することによって、内在性経路依存的なトロンビン生成のレスキューが可能になり、この回避は、リバーロキサバン治療患者で致命的な出血合併症が低減されることを説明する。実施形態によっては、この代替的な凝固機構は、血栓症における新規のTFとCP(内在性経路)との相乗効果を定義し、改善された抗血栓剤および止血剤の開発に広範な意味を有する。
様々な実施形態で、ここに開示されるのは、TF−FVIIa複合体により生成される新生FXaが、トロンビンフィードバックループとは独立して直接的に、内在性経路補因子であるFVIIIを活性化することを示す、実験、方法、および結果である。トロンビン生成に繋がるこの代替的な機構は、生理的なTF経路阻害剤(TFPI)の制御だけでなく直接的なFXa薬理的な阻害剤をも逃れる。その結果、これらの抗凝血薬剤は、ビタミンKアンタゴニストとは異なり、外因性TF経路の血栓形成促進機能が制限されている際に、抗血友病FVIIIa−FIXa複合体を通じたフィブリン形成を保持する。Fxaによる阻害に対する抵抗性は、どのように、この新規の凝固における連係が、脆弱な部位で、治療濃度のFXa指向性の抗凝血剤の存在下であっても、凝塊の形成を促進し出血を防止するのかを説明する。本開示は、止血への負の結果を制限するとともに抗血栓効能を増強するための、ならびに抗凝血療法中の出血リスクの個別化評価を行うための、新しい展望を提供する。
本開示はまた、TFおよびFIXaを含むキットに向けられている。例えば、本明細書に開示される様々な実施形態では、本開示は、個体でFVIII:C活性を決定するためのキットを提供し、このキットは、TFおよびFIXaを含み、ここでは、治療有効量のTFおよびFIXaは、個体の血漿中に投与されて、FVIII:C活性を1〜0.1IU/dLの範囲で決定することがある。これらの実施形態のいくつかでは、TFおよびFIXaは、個体の血漿中にピコモル量またはナノモル量で投与される。実施形態によっては、本キットは、血友病患者の個別化診断に有用である。実施形態によっては、本キットは、先天性のおよび後天性のFVIII:C欠損症の患者における出血リスクを予測するのに有用である。実施形態によっては、本キットは、抗血栓レジメンのモニタリングおよび評価に有用である。実施形態によっては、診断、モニタリング、または評価は、新しい薬剤または薬剤の組合せに基づく。
様々な実施形態では、本キットは、血友病および抗血栓症について治療するか、診断するか、または新しい薬剤をスクリーニングする、本発明の方法を実践するのに有用である。本キットは、本発明の組成物のうち少なくとも1つを含む材料または構成成分の組合せである。それゆえ、実施形態によっては、本キットは、上に記載されるように、TFおよびFIXaを含む組成物を含有する。
発明のキットに構成される構成成分の正確な性質は、その意図される目的に依存する。例えば、いくつかの実施形態は、血友病患者の個別化診断および治療の目的のために構成される。一実施形態では、本キットは、具体的には、哺乳動物対象を治療するために構成される。別の実施形態では、本キットは、具体的にはヒト対象を治療する目的で構成される。さらに別の実施形態では、本キットは、以下に限定されないが、家畜動物、飼育動物や、実験動物などの対象を治療する獣医学の適用のために構成される。
使用のための指示書が、キットに含まれていることがある。「使用のための指示書」とは、典型的には、血友病患者を診断または治療するなどの所望のアウトカムをもたらすためのキットの構成成分を使用する際に採用される手法を記載する、明確な表現を含む。任意選択で、本キットはまた、他の有用な構成成分、例えば、希釈剤、緩衝剤、医薬的に許容可能な担体、シリンジ、カテーテル、アプリケーター、ツールをピペッティングまたは測定すること、材料を当てること、または当業者が容易に認識することになるような他の有用な道具を含有する。
キットに組み合わされた材料または構成成分は、実務者に提供されて、それらの操作性および有用性を保持する簡便かつ適した方法で保存することができる。例えば、構成成分は、溶解形態、脱水形態、または凍結乾燥形態とすることができる。そして、それらは、室温で、冷蔵温度で、または凍結温度で提供することができる。構成成分は、典型的には、適したパッケージング材(複数可)に含有させることができる。本明細書に採用されるように、節「パッケージング材」とは、発明の組成物などのキットの内容物を格納するのに使用される、1種または複数種の物理的構造を指す。パッケージング材は、好ましくは混入物のない滅菌済みの環境を与えるように、周知の方法によって構築される。キットで使用されるパッケージング材は、医療分野で慣習的に利用されるものである。本明細書に使用される際に、用語「パッケージ」とは、個々のキットの構成成分を支持することが可能なガラス、プラスチック、紙、ホイルなどの適した固体マトリックスまたは材料を指す。そのため、例えば、パッケージは、TFとFIXaと止血性経路の活性化に影響を与えるモノクローナル抗体または変異体タンパク質とを含有する、適した量の本発明の組成物を含有するために使用されるガラスバイアルとすることができる。パッケージング材は、一般に、キットおよび/またはその構成成分の内容物および/または目的を標示する外装ラベルを有する。
ポリペプチドまたは他のバイオマーカーの存在または不在を検出するための、当技術分野で利用可能な様々な手法があり、そのようなものとしては、タンパク質マイクロアッセイが挙げられる。例えば、この目的のために利用できるいくつかの検出のパラダイムとしては、光学的な方法、電気化学的な方法(ボルタンメトリーおよび電流滴定法)、原子間力顕微鏡法、および無線周波数法、例えば、多極共鳴分光法が挙げられる。共焦点と非共焦点の両方の顕微鏡法に加えて、光学的な方法の例証は、蛍光、発光、化学発光、吸光度、反射率、透過率、および複屈折または屈折率の検出(例えば、表面プラズモン共鳴、偏光解析、共振ミラー法、格子カプラー導波管法、または干渉分光法)である。
同様に、バイオマーカーを単離および/または分画するために採用される、任意の数の手法がある。例えば、バイオマーカーは、抗体、アプタマー、またはバイオマーカーおよびその修飾形態を認識する抗体など、生体分子特異的な捕捉試薬を用いて捕捉されてもよい。また、この方法の結果、タンパク質相互作用物質を捕捉することができ、これらの相互作用物質は、タンパク質に結合されるかまたはその他抗体により認識され、それら自体でバイオマーカーとなることができる。生体分子特異的な捕捉試薬はまた、固相に結合されることがある。次いで、捕捉されたタンパク質は、SELDI質量分析によって、または捕捉試薬からタンパク質を溶出して古典的なMALDIによりまたはSELDIにより溶出タンパク質を検出することによって、検出することができる。SELDIの一例は、「アフィニティ捕捉質量分析」または「表面増強アフィニティ捕捉」または「SEAC」とよばれ、プローブを使用することを含み、このプローブは、材料と分析物との間の非共有結合アフィニティ相互作用(吸着)を通じて分析物を捕捉する材料をプローブ表面に有する。質量分析計のいくつかの例は、飛行時間型、磁場セクター型、四重極フィルター型、イオントラップ型、イオンサイクロトロン共鳴型、静電場セクター型の解析装置およびこれらのハイブリッドである。
あるいは、例えば、ポリペプチドなどのバイオマーカーの存在は、古典的なイムノアッセイ手法を用いておそらくは検出した。イムノアッセイは、分析物を捕捉するための抗体などの生体分子特異的な捕捉試薬を必要とする。本アッセイはまた、タンパク質と修飾形態のタンパク質とを特異的に区別するために設計されることがあるが、その区別を、サンドイッチアッセイを採用することによって行うことができ、そのアッセイでは、ある抗体が2種以上の形態を補足し、第2の別個に標識された抗体が特異的に結合して、様々な形態の別個の検出を可能にする。抗体は、生体分子を用いて、免疫された動物によって生産することができる。古典的なイムノアッセイはまた、ELISAまたは蛍光ベースイムノアッセイを含めたサンドイッチイムノアッセイ、ならびに他の酵素イムノアッセイを含む。
検出前に、バイオマーカーはまた、溶液中の、または検出に干渉することのある血液の他の構成成分から、それらを単離するために分画されることがある。分画としては、クロマトグラフィー、アフィニティ精製、1Dおよび2Dマッピング、および当業者に公知の精製のための他の手順などの手法を用いた、他の血液構成成分からの血小板の単離、血小板構成成分の細胞内分画、および/または血小板中に見られる他の生体分子からの所望のバイオマーカーの分画が挙げられる。一実施形態では、試料は、バイオチップを用いて分析される。バイオチップは、一般に固体基質を含み、概ね平面の表面を有し、その表面に補足試薬(吸着試薬またはアフィニティ試薬ともよばれる)を付加させる。しばしば、バイオチップの表面は、複数のアドレス指定可能な場所を含み、それらの場所ではそれぞれ、補足試薬がそこに結合されている。
本明細書の様々な実施形態に従って、FVIIの配列の一例が、配列番号1に図説されている。本明細書の様々な実施形態に従って、FVIIの様々な変異体の例が、参照によりここに組み込まれる以下の文献:Larsenら(Journal of Biological Chemistry、2010年);およびPikeら(Proc.Natl.Acad.Sci.、8月、1999年);およびShobeら(Biochemistry、1999年)に説明されている。
当業者に容易に理解されるように、本明細書の様々な実施形態はまた、様々な疾患および状態と併せて使用されてもよく、その開示は、決して血液療法または血液合併症の分野にのみに限定されない。本明細書に開示される様々な実施形態は、本明細書に記載される凝固経路に関連する他の疾患の治療、診断、または予知に、単独でまたは組合せで使用されてもよい。例えば、一実施形態では、本明細書の開示は、腫瘍、がん、および他の関連の状態の評価、予知、診断、または治療のために使用されてもよい。
同様に、本明細書に記載される様々な方法およびデバイスもまた、追加の装置と併せて使用されることがある。一実施形態では、本開示は、1種または複数種のマイクロ流体デバイスと併せて、血液合併症および/または凝固査定する方法を提供する。
本開示の実施形態は、以下の実施例にさらに記載される。実施例は、説明的なものに過ぎず、形はどうあれ特許請求の範囲にあるような本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1
TF凝固経路およびCP凝固経路の両方が、FeCl 3 誘導性の血栓症に寄与する
従来の凝固カスケードの観点では、図1に説明されるように、外因性TF経路が、フィードバック反応を促進する限定量のトロンビンを生成し、その反応では、可溶性の血漿プロ補因子であるFVIIIおよびFVが、FXIと併せて活性化される。活性化されたFXI(FXIa)は、次々にFIXをFIXaに切断するが、このFIXaはまた、TF−FVIIaによっても生成できる。FIXaは、次いで、内在性のテナーゼ複合体(FVIIIa−FIXa)およびプロトロンビナーゼ複合体(FVa−FXa)を通じて、凝血原プロテアーゼの産生を増幅する。このパラダイムは、なぜFXIIではなくFVIIaが、FVIII欠乏症におけるTFPI制御の除去のように、止血促進性であるのかを説明する。しかし、この現行のパラダイムでは、なぜポリアニオン依存的なFXIIa媒介性のFXI活性化が、TF開始性の実験的な動脈血栓症に必須であるのかを説明することができない。
様々な実施形態で、本開示はこの課題に対処する。一実施形態では、本明細書の開示は、様々な実験および結果を通じて、TF凝固経路とCP凝固経路の両方が、マウス頸動脈におけるFeCl3誘導性の血栓症に寄与することを確定し、それは、TF依存的な凝固を80%阻害するモノクローナル抗体(MoAb)およびFXIIによるFXIの活性化を遮断するMoAbが、全て個別に血管の閉塞を阻害したことを示すことによる。別の実施形態では、同様の効果が、閾値下の濃度の2つの抗体を組み合わせることによって得られ、このことは、このモデルで、内在性と外因性の両方の経路が、血栓形成促進性のレベルの凝固プロテアーゼを生成することに一致する。いくつかの実験、すなわち正常血小板を補充してカルシウム再加されたヒトFIX欠損血漿を用いたex vivo実験では、再脂質化された組換えTF(rTF)は、個別の不活性な濃度で、FIXaによるトロンビン生成を相乗的に増強した。一実施形態では、この知見は、観察されたTF経路とCP経路との協働機能が、FIXを活性化する直接的または間接的なフィードフォワードループの結果ではなかったことを実証する。さらに、正常な血小板に富む血漿(PRP)では、rTFと共に添加されたFXIIaまたはFXIaは、FIXaと同じ効果を有し、このことは、CPの活性化が、FIXa生成の上流経路であることを実証する。いくつかの実施形態で、TFおよびCPの経路の相乗作用は、FVIIとFVIIIの両方を含み、血漿中に存在する低濃度のTFPIは、rTFのみによるトロンビン生成の抑制に関与した。
実施例2
精製構成成分を含む反応における凝固プロテアーゼの生成
いくつかの実施形態で、精製され構成成分を含む反応における凝固プロテアーゼの生成を決定した。一実施形態では、血漿における結果と一致して、rTFは、最小限のFXaおよびトロンビン(FIIa)しか生じなかったが、FIXaとの組合せでは、各プロテアーゼの相加的な量よりも多く産生した。いくつかの実施形態で、FVIIIおよびFVの活性化は、トロンビン活性のバーストを続行させ、思いがけないことに、FIXaのみよりもrTFの存在の方がはるかに効率が良かった。様々な実施形態では、これらの結果は、外因性凝固開始複合体が、重要なトロンビン生成の前に、血漿由来の凝固補因子の直接的なアクティベーターとしての役割を果たす可能性があることを示唆する。この概念に一致して、潜在的な痕跡量のトロンビンの混入を阻害するためにレピルジンを添加した単純化したプロトロンビン不含の系において、FVIIaおよびFXの存在下、rTFは、用量依存的な補因子の活性化を引き起こした。いくつかの実施形態で、FVIIIは、4倍モル過剰のFVであっても優先的に活性化された。いくつかの実施形態で、トロンビン阻害剤のダンシルアルギニン−N−(3−エチル−l,5−ペンタンジイル)アミド(DAPA)の存在下でのプロトロンビンの活性化をモニタリングしたところ、この新規の経路は、補因子を変換するトロンビンフィードバック反応による寄与がなくても、触媒性プロトロンビナーゼ複合体のアセンブリを導くことが示された。
いくつかの実施形態では、TF−FVIIaのみでは、FVIIIaおよびFVaよりも小さな不活性の補因子断片が生じたが、FXの添加によって、適切にプロセッシングされた補因子が産生し、このことは、TF開始性の凝固の間にFXaが生成された際に、切断の活性化が優先的に起こったことを標示する。マダニ抗凝血ペプチド(TAP)を用いたFXaの阻害によって、反応は分解断片を生成する方に逆戻りした。いくつかの実施形態で、FVIIa活性部位を遮断することによってFXの活性化を防止するTFPI様阻害剤である線虫抗凝血タンパク質(NAP)c2は、これらの断片を生成しなかった。いくつかの実施形態で、NAPc2は、FXaの触媒部位に影響を及ぼさない。そのため、いくつかの実施形態で、不活性のSer195Ala変異型FVIIa(iFVIIa)およびFXaの存在下、NAPc2安定性のTF複合体では、FXaのみが活性プロテアーゼである。一実施形態では、TF−iFVIIa−FXa−NAPc2複合体は安定であったが、このことは、それがプロトロンビナーゼ活性を失ったという事実に示される通りである。一実施形態では、この複合体は、FVではないもののFVIIIを活性化することができた。様々な実施形態で、これらの知見は、補因子の活性化が、TF開始性の凝固の間の早期のイベントであり、TF−FVIIa−FXa複合体内に依然としてアセンブルされているde novo生成されたFXaによって媒介されるという、新規の概念を確立する。
実施例3
TF経路開始複合体によるFVIIIaの生成
いくつかの実施形態で、TF経路開始複合体によるFVIIIa生成は、ここに開示される代替の凝固のパラダイムにおいて鍵となるステップである。いくつかの実施形態で、この概念は、TFおよびFXIIaによって同時に開始される反応で検証された。予め活性化されたFVIIIaは、FXIIaまたはFXIaによる凝固の開始後、rTF−FVIIaがFXa生成に及ぼす影響をバイパスしたが、プロ補因子FVIIIはバイパスしないことが見出された。さらに、閾値下の濃度の抗TF MoAbおよび抗FXI MoAbの同時投与によってFeCl3誘導性の大腿静脈血栓症を防止されたマウスモデルにおいて、FVIIIa−しかしFVIIIではなく−の輸注によって、フィブリンに富む血栓による閉塞が復活する。いくつかの実施形態で、FVIIIaは、より高く完全に阻害性の抗FXI MoAbの用量の持つ抗血栓効果を逆進させることができなかったが、このことは、FVIIIaが、本明細書に開示されるCP依存的な相乗的な凝固経路でのみ作用したことを確定するものである。いくつかの実施形態で、これらの知見は、FVIIIaが、動的なin vivo環境では、TFPI媒介性のフィードバック阻害によって生理的に調節されたTF依存的な外因性凝固経路によって、活性化されるという結論を支持する。
実施例4
負のTFPI調節の結果
様々な実施形態で、負のTFPI調節の結果を詳細に解明するために、本発明者らは、FXIIaを遮断するトウモロコシトリプシン阻害剤(CTI)が、TFPIの添加がない限り、TF開始性のトロンビン生成に影響を及ぼさなかったことを示した。いくつかの実施形態で、このことは、TFPIが、使用された静置血漿アッセイ系にそれ自体で最小限の影響を及ぼした濃度であった場合でさえ、起こった。いくつかの実施形態では、どのようにFXIIaがTF開始性のトロンビン生成における役割を獲得するのかを説明するために実施された実験において、TFPIが、外因性経路開始複合体によるFV活性化を部分的に、および非常に高い濃度で、阻害したに過ぎないことが見出された。いくつかの実施形態で、FVIIIの活性化の阻害は、FVIIIa活性の測定によって確定されたように最小限であった。いくつかの実施形態で、詳細な経時変化分析によって、TFPIが、最初は補因子の活性化を弱めるものの、FXaへの曝露によって引き起こされる時間依存的な分解を防止し、それゆえに機能的な補因子の半減期を本質的に延長させることが明らかになった。
一実施形態では、プロトロンビン不含の反応中、固定濃度のrTF−FVIIaで40nM TFPIによって引き起こされたFXa活性の時間依存的な減少が、FIXaの添加によって防止されたことで、活性FVIIIaの生成が確認された。符合する結果は、高い初発のFXa濃度が活性の持続に必要であったことを除けば、8倍低いTF濃度で、FXa生成が対応して低減したことに得られた。別の実施形態では、トロンビン阻害剤DAPAの存在下でのプロトロンビン(FII)の切断において、TFPIの存在下で生成されたFVaが、活性のプロトロンビナーゼ複合体中にアセンブリされることが実証された。そのため、いくつかの実施形態では、TFPI制御下でのTF開始性の凝固は、フィードバック反応による補因子の活性化を必要とすることなく、トロンビン生成への直接路を確立し、内在性テナーゼ複合体中のCP由来FIXaに依存したトロンビン産生の増幅を支援する。したがって、いくつかの実施形態では、rTF開始性のFXaおよびトロンビンの生成のTFPIによる阻害は、FIXaの存在下で著しく減少した。
本明細書に開示される様々な実施形態で、TF−FVIIa−FXaによる活性化のための好適な補因子基質とは、FVIIIであり、このFVIIIは、抗血友病因子として、止血において鍵となる役割を果たす。いくつかの実施形態で、永続的なFVIIIの活性化は、リバーロキサバンで報告されている出血合併症の発生率がワルファリン治療患者に比べてさらに低いことを説明する一助となることが確定された。一実施形態では、臨床的意義のある濃度では、リバーロキサバンは、TF−FVIIa−FXa三成分複合体によるFVa生成を遮断し、一方で、TF−FVIIaによる不活性断片への切断を可能にした。別の実施形態では、リバーロキサバンは、FVIIIの活性化に最小限に影響を及ぼした。完全な抗凝血投薬量でのピーク血漿濃度である500nMリバーロキサバンであっても、外因性凝固がTFPI制御によって有効にオフにされた際に、FVIIIa生成は持続し、機能的に意味のあるトロンビン濃度のFIXa依存的な産生をサポートした。それゆえ、一実施形態では、リバーロキサバンを用いて選択的にFXaを標的とすることは、外因性凝固開始複合体の新生の産物による動態学的に好都合なFVIII活性化を可能にする、本来的に備わった安全性機構を有する。結果として、いくつかの実施形態では、内在性経路抗血友病因子に選択的に依存し、止血に有用となる可能性がある、限定的なトロンビン生成が起こる。様々な実施形態では、本明細書に開示される概念は、改善された止血剤および標的化された抗血栓剤を開発するための、ならびにそれらの特性を評価するための、新しい展望を提供する。
実施例5
凝固と宿主防御機構との間の補完的な相互作用
様々な実施形態で、外因性凝固開始複合体中の新生のFXa産物は、内在性経路依存的なトロンビン生成を可能にする血漿補因子であるFVIIIの、TFPI回避アクティベーターであることが特定された。いくつかの実施形態で、本開示は、血管閉塞の進展におけるFXIIとTFとの同時発生的な役割を説明し、止血および血栓症でどのように凝固開始が異なることがあるのかについて理解するための糸口を提供する。この点について、いくつかの実施形態では、TFPIは、主にトロンビン生成を制御し、血管の開通性を維持するように設計されたマスタースイッチとして作用する。いくつかの実施形態で、一次止血では、傷害部位で血液を豊富なTFに曝露することによって、TFPIの阻害を直接的に乗り越えることができ、主に外因性経路を通じて初発の凝固プロテアーゼの生成および補因子の増幅が可能になる。他の実施形態では、外因性FXa産生に対するTFPIによる封鎖を乗り越えることは、血管内血栓症では難しいことがあり、具体的には、血小板に富む発達中の血栓によって豊富なTFPIが放出される動脈では難しい。いくつかの実施形態で、TFは、CP開始性のトロンビン生成を継続するための内在性凝固経路をプライミングする補因子を直接的に活性化することによって、予期しない選択的な役割を果たす。同じ機構は、病理的な状態で作動することがあり、それは、CP経路を惹起する二次的な危険信号が、活性化された血小板、白血球、微生物病原体、または損傷細胞のいずれから放出されるかに関わらず、TFの誘導を伴う際に起こる。一実施形態では、アテローム血栓症は、そのような状態の具体的な例であることがあり、それはなぜなら、動脈内の閉塞が、多くの場合、TFに曝露されている脆いアテローム硬化性のプラークの上に炎症または感染が重なり合うことによって沈殿形成するためである。そのため、様々な実施形態で、ここに報告される知見は、血栓症およびその治療への凝固の寄与についてのみならず、凝固と宿主防御機構との間の補完的な相互作用を理解することについても、広い意義を有する。
実施例6
止血性および血栓性の凝塊形成は、区別的に調節される。
従来の観点(図1)では、凝固は、血漿中のプロ補因子であるFVIIIおよびFVのフィードバック活性化に依存し、このフィードバック活性化は、FXaによって最初に産生される限定量のトロンビン(FIIa)によって起こり、そのFXaは、負のTFPI制御の下、TF−FVIIa複合体によって活性化されるFXから順次生じる。TF−FVIIaまたはFXIaによって生成されるFIXaは、次いで、さらに多くのFXaおよびトロンビンをそれぞれ産生する内在性のテナーゼ複合体(FVIIIa−FIXa)およびプロトロンビナーゼ(FVa−FXa)複合体を連続的にアセンブリすることを通じて、凝固を増幅することができる。トロンビン産生の増幅は、止血に不可欠であり、この止血は、外因性経路のFVIIaを必要とするが、接触相のFXIIaを必要としない。したがって、TFPIチェックポイント制御を取り除くことによって、血友病マウスでは、止血が向上する。しかし、ある種の実験的な血栓症モデルは、接触相のFXIIaによるFXIaの活性化に依存し、このことは、止血性および血栓性の凝塊の形成が、区別的に調節されることを示唆する。一実施形態で、本発明者らは、止血性および血栓性の凝塊の形成におけるこれらの違いを特定した。
一実施形態では、血栓症を引き起こすのに必要なレベルで凝固プロテアーゼが生成される際に、内在性経路および外因性経路が、協働する。このことを確立するため、マウス頸動脈モデルを使用したところ、そこでは、TFに対するモノクローナル抗体(MoAb)は、FXIIaによる活性化を遮断する抗FXI MoAbと同様に、7%FeCl3・6H2Oによって誘導された付傷の後の安定な血管閉塞の頻度を有意に減少させた。重要なことに、さらに重度の8%FeCl3・6H2Oによる付傷の後では、2つの抗体は、もはや使用された濃度では個々で有効ではなかったが、組み合わせると血管閉塞を著しく阻害した。このことは、血栓症を引き起こすのに必要なレベルで凝固プロテアーゼが生成される際に、内在性経路および外因性経路が協働することを実証する。また、高濃度の抗FXI MoAbも閉塞を阻害し、このことは、この実験的モデルでの血栓症に不可欠であるものとして接触経路を結び付ける遺伝子的なエビデンスと一致する。
一実施形態で、正常血小板を補充された血漿(再構成されPRP)中のトロンビン生成を測定することによって、凝固経路の協働をin vitroで調べた。接触経路プロテアーゼ(FXIIa、FXIa、またはFIXa)をTFと共に添加することによって、プロテアーゼまたはTFが個別に添加された際よりも多くのトロンビンが産生した。しかし、人工的な接触経路の活性化を阻害するために、正常血漿がFXIIa指向性のトウモロコシトリプシン阻害剤(CTI)を含有していた際には、低濃度のTFのみでは、トロンビンは本質的には産生されなかった。むしろ、TFは、FVIIaおよびFVIIIの両方を必要とする様式では、FIXaによるトロンビン産生を相乗的に増大させた。直接的または間接的なループによる追加的なFIXの活性化にTFが寄与したことを除けば、同じ相乗効果が、FIX欠損血漿に起こり、このことは、生理的な血漿凝固阻害物質の存在下でのFIXa依存的なトロンビン生成のための実現化ステップとして、FVIIIa補因子の生成を標示する。
実施例7
再脂質化された組換えTF(rTF)が限定的なリン脂質表面を提供した、精製FVIII、FX、FV、およびプロトロンビンを用いて再構成された反応において、TF経路は、機能的なFVIIIaを提供する
一実施形態では、再脂質化されたTFが限定的なリン脂質表面を提供した、精製FVIII、FX、FV、およびプロトロンビンを用いて再構成された反応において、TF経路は、機能的なFVIIIaを提供することがある。FIXaのみの添加によって、低レベルのFVIIIおよびFXの活性化が誘導され、それらは、トロンビン阻害剤であるダンシルアルギニンN−(3−エチル−1,5−ペンタンジイル)アミド(DAPA)によって無効化された。このことは、この系で産生されたトロンビンによる公知のFVIIIのフィードバック活性化に一致する。FVIIaのみでは、FIXaのみよりも有意に多くのFXaおよびFVIIIaを産生した。FIXaをFVIIaと共に添加することによって、FVIIIaの形成ははっきりとは変化しなかったが、FXaの量は、FVIIaおよびFIXaにより個々に得られたものの和を上回って増加した。これらの結果は、相乗効果が、外因性経路で生成されたFVIIIaから起こり、次いで、FIXaと複合体を形成して、プロテアーゼの形成をさらに亢進することを実証する。重要なことに、完全反応混合物中でプロトロンビンおよびFVIIIの活性化が不在であっても、用量依存的な様式でTFによってサポートされる補因子の活性化は、DAPAによって低減したが消失はしなかった。しかし、相乗的なFXa産生は、トロンビン阻害剤の存在下では、または反応中の野生型プロトロンビンが触媒的に不活性のS195Aプロトロンビン変異体に置き換えられた際には、変化しなかった。そのため、限定的な開始リン脂質表面では、TF−FVIIa複合体による直接的なFVIII活性化は、トロンビンによるフィードバック補因子の活性化がない場合でさえ、FIXa−FVIIIa内在性テナーゼ複合体の産出型アセンブリを可能にするのに充分である(図1)。
いくつかの実施形態では、血漿中に存在しかつ活性化血小板によって放出されるTFPIαは、TF依存的なプロテアーゼの生成およびプロトロンビナーゼの生理的な調節因子である。したがって、抗TFPI IgGをカルシウム再加されたクエン酸添加PRPに添加することにより、低いTF濃度によってのみ誘導されるトロンビンの生成が亢進したが、TFと共に添加されたFIXaへの応答は、TFPIの封鎖により最小限の影響を受けた。このように、新たに描き出されたFVIIIa生成の経路は、TFPIの制御下にはない。期待されるように、再構成系でTF−FVIIaによって産生されるFXaは、TFPIのみで>50%低減し、TFPIとプロテインS(PS)補因子とを合わせることによって>75%低減した。これに対し、反応中の機能的なFVIIIaを反映する、TF−FVIIa(FVIIIa−FIXaによるFXa)から生じた量を超えるFIXa依存的なFXaの生成は、PSを含有する反応に単独でおよび部分的にのみ添加されたTFPIによる影響を受けなかった。プロテアーゼ生成の低減に一致して、TFPI、TFPI/PS、および五糖を伴う生理的な阻害物質アンチトロンビンは、FVIIIaの形成を有意に低減した。しかし、これらのFXa阻害剤は、DAPAによるトロンビン封鎖がある際には、TF−FVIIaによるFVIIIaの生成を防止せず、このことは、新規の外因性凝固と内在性凝固との間のトロンビン非依存的な機能的な連係が、内在性の生理的な阻害物質による制御を逃れることができることを実証する。
いくつかの実施形態で、追加の実験では、FVIIIaの他に、TF経路が、トロンビンフィードバック活性化の不在下で、プロトロンビナーゼ活性を有するFVaを生成し、TFPIによる制御を免れることができることが示され、このことは、FVの活性化にFXaを結び付ける薬理学的なエビデンスに一致する。そのため、TF経路は、既に想定された補因子活性化のトロンビンフィードバックループの不在下で、フィブリン形成を開始することができる。部分的に活性のFVaが、血管傷害部位で、刺激された血小板によって放出されることから、トロンビン非依存的なFVIIIaの形成は、本明細書に開示される新規の凝固の連係のとなるin vivo機能である可能性がある。この概念は、カルシウム再加されたPRPベースのトロンビン生成アッセイにおいて最初に検証され、このアッセイは、FXIIaを遮断するために、CTIの存在下、TFおよびFIXaを添加することによって開始された。いくつかの実施形態で、機能を遮断する抗TF抗体は、遅延時間を有意に延長し、産生されるトロンビンの量を低減したが、この効果は、FVIIIaを添加することによって用量依存的に逆転した。
実施例8:
塩化鉄により誘導された傷害の後のマウス大腿静脈におけるフィブリン沈着を評価するIn−vivo実験
いくつかの実施形態で、in−vivo実験を実施して、FeCl3・6H2Oにより誘導された傷害の後のマウス大腿静脈におけるフィブリン沈着を評価した。頸動脈に見られるように、個別では無効な用量の抗TFおよび抗FXIのMoAbを同時投与することによって、血管の安定な閉塞が防止され、傷の範囲におけるフィブリン沈着が著しく低減した(図7C、D)。一実施形態では、FVIIIaを輸注することによってこの阻害効果は逆転するが、FVIIIでは逆転せず、このことは、FVIIIの活性化が、この血栓症のモデルにける律速段階であることを実証する。しかし、FVIIIaは、完全阻害の用量の抗FXI MoAbの存在下で、ここに開示される内在性経路とのTF依存的な連係以外の寄与を除いて、血管の閉塞を復活させることができた(図7D)。そのため、FVIIIを、in vivoで、生理的なTFPI制御の下、TF依存的な外因性凝固経路によって活性化することができる。
一実施形態では、これらの結果は、TFPIによる阻害を逃れるTF媒介性のFVIIIの活性化が、外因性TF−FVIIa複合体とアセンブリされたままの産物FXaの機能であったことを説明した。このことは、FXの活性化を防止するFVIIa活性部位を遮断するTFPI様阻害剤である線虫抗凝血タンパク質(NAP)c2の特性を活用することによって決定した。NAPc2がFXa触媒部位に影響を及ぼさないことから、NAPc2により安定化されたFXaとTFと触媒的に不活性のSer195Ala FVIIa(iFVIIa)変異体との複合体が形成された。この複合体では、FXaは、唯一の活性プロテアーゼであった。注目すべきことに、この複合体中のFXaはFVIIIaを生成したが、同濃度の遊離のFXaは生成しなかった(図4A)。NAPc2のTFPI様複合体の形成と同様に、TFPIは、安定化された複合体によるFVIIIの活性化を阻害しなかったが、五糖を伴う複合体中のアンチトロンビン(図4A)または他のFXa阻害剤は、FVIIIaの形成を減少し、このことは、FVIIIaがFXaによって生成されることをさらに確定している。これらの知見は、補因子の活性化が、TF−FVIIa−FXa複合体内にアセンブリされたままである可能性があるde novo生成FXaによって媒介される、TF開始性の凝固中における早期のイベントであるという、新規の概念をサポートする。
一実施形態では、新生産物FXaは、FXaの異なる2種の薬理的な小分子阻害剤リバーロキサバンおよびアピキサバンによる阻害を逃れる。このことは、FXaが生理的なTFPIチェックポイントを逃れるのと同様である。止血を保持するFVIIIの永続的な活性化は、なぜFXa阻害剤の抗血栓効能が、比較的低リスクの出血合併症に関連するのかに対する理由である可能性がある。リバーロキサバンおよびアピキサバンは、精製FXaのアミド分解活性およびプロトロンビナーゼ活性の遮断において互角の効力を有し、後者については約2倍のIC50がある。治療濃度では、リバーロキサバンおよびアピキサバンは、TFリン脂質表面の遊離のFXaによる、または安定化されたTF/iFVIIa/FXa/NAPc2複合体による、FVIIIの活性化を約90%阻害した。これに対して、IC50は、TF−FVIIaによりde novo生成されたFXaによってFVIIIが活性化された場合よりも、少なくとも1桁高かった。新生FXaによるFVIIIa生成の阻害の効率の悪さは、供試されたリバーロキサバンおよびアピキサバンの各濃度で、TFPI阻害的な制御の下、FIXaの存在下で、TF−FVIIaによるFVIII依存的なトロンビン産生の維持に反映された。
実施例9
生理的な妥当性
一実施形態では、生理的な妥当性を評価するために、接触相のFXIIaを遮断するようにCTIを含有するカルシウム再加PRPにおける、TF誘導性のトロンビン生成。リバーロキサバンおよびアピキサバンは、トロンビン産生を用量応答において約3倍の差で阻害した。重要なことに、これらのFXa阻害剤の存在下での残りのトロンビン生成は、機能を遮断する抗FVIII抗体に対する著しい感受性を有した。これに対して、薬理的なFXaアンタゴニストの不在または存在下でのトロンビン生成は、FXIaまたは他のFXIa効果を通じて作動するトロンビンフィードバックループを妨げる抗FXI抗体による影響を受けなかった。これらの結果は、全ての生理的な血液凝固阻害剤の存在下では、TF開始性のトロンビン生成の測定可能な構成成分は、FVIIIaに依存し、臨床用途において、少なくとも部分的には、直接的なFXa阻害剤を逃れることを確定される。抗体によるTFPIの封鎖によって、PRP中でトロンビン生成に及ぼされる抗凝血効果に必要とされるリバーロキサバンおよびアピキサバン濃度が増加した。しかし、TFPIが機能的であるか否かに関わらず、FVIII依存的なトロンビン生成の増幅は、臨床的意義のある阻害濃度の2種の薬剤で保持された。そのため、TFPI制御が低減した場合でさえ、血栓形成性の環境で起こるように、新生産物FXaによる動態学的に好都合なFVIII活性化が、内在性凝固経路とのこの連係を通じて止血に寄与することがある。
実施例10
新規の診断のアプローチ
一実施形態では、新しい診断のアプローチを用いてこの概念を具体化するために、本発明者らは、コラーゲンまたはTFで被覆された表面に沈着している血小板凝集体およびフィブリンの体積を測定した。上記表面は、被覆後に、正常な対照由来の、およびリバーロキサバンまたはワルファリンにより治療された患者由来の、カルシウム再加されたクエン酸添加血液を灌流したものであった。後者は、国際標準比(INR)試験によって、定期的にモニタリングした。前者は、治療ガイドラインに従う検査モニタリングを受けなかった。低いTF濃度で被覆された表面では、機能を遮断する抗FVIII MoAbは、正常な血液中のフィブリン沈着を低減したが、抗TFPI IgGの添加によって、フィブリンと血小板の両方の沈着へのこの阻害効果は軽減された。被覆溶液中のTFの増加によって、正常な血液中のFVIII依存性およびTFPIの制御は消失し、このことは、この状態が、血栓形成表面がTFPIチェックポイント制御を逃れることを模倣していたことを実証する。これに対して、コラーゲンの飽和した被覆による表面では、FVIIIの阻害は、−固相化コラーゲンが強力な血小板作動剤であることから−血小板の凝集に影響を及ぼさなかったが、フィブリン体積の大幅な低下を引き起こし、それは抗TFPI IgGの存在下で変化しなかった。
一実施形態ではこのアプローチを使用して、対照および患者の血液中における血栓形成を測定してもよい。上記血液は、TFPI制御とは独立した外因性凝固経路によってトロンビン生成が駆動される高密度のTF表面の上を、および内在性経路によって凝固が駆動される高密度のコラーゲン表面の上を、灌流される。フィブリン沈着は、ワルファリン治療患者由来の血液中、両方の表面で有意に低減した。しかし、リバーロキサバン治療患者は、フィブリン沈着が、TF表面でのワルファリン治療患者と同様に低かったが、コラーゲン上の非処理対照に比べて有意に減少しなかった。そのため、両治療は、外因性TF経路によって直接的に駆動される血栓形成を阻害するのに有効である。これに対し、ビタミンK依存的プロテアーゼ全てに影響を及ぼす代わりにFXaを標的とする薬剤は、抗凝血療法を受けている患者において出血に不可欠な部位で止血をサポートすることがあるFVIII依存的なフィブリン形成を、選択的に保持する。
一実施形態では、本明細書に開示される実験結果は、新規の凝固連係(図1)をさらに説明し、そこでは、外因性TF−FVIIa凝固開始複合体を通じて産生された新生FXaが、補因子、具体的には抗血友病FVIIIのフィードフォワード活性化をもたらす。最初に生成されるトロンビンに依存する古典的なフィードバック機構とは対照的に、新生FXaによるFVIIIの活性化は、TFPIチェックポイントを逃れ、FXaを標的とする抗凝血剤の存在下で保持される。いくつかの実施形態で、このFVIII活性化の機構、具体的にはTF開始性の凝固経路内に組み込まれているものは、TF−FVIIaによるFIXaプロテアーゼ生成と協調する様式で作動することがあり、このTF−FVIIaはまた、生理的な抗凝血物質による阻害性の制御を逃れる。いくつかの実施形態で、外因性凝固経路と内在性凝固経路との間の新規の連係はまた、血栓症の動物モデルにおいて、従来は合理的な説明が不充分であったものの実験的には明らかであった、接触相FXIIのTF依存的なフィブリン形成に及ぼす寄与をも説明する。いくつかの実施形態で、これらの結果は、どのように、古くからある経口の抗凝血剤とは全く対照的に、FXaを特異的に標的とすることが、抗血友病内在性経路を通じた残りのトロンビンおよびフィブリンの生成を保持することができるのかについて、予期しない説明を提供する。このように、ここに覆いを外された概念は、新しい経口の抗凝血剤を用いて治療される患者について、血栓および出血のリスクの定義を個別化する助けとなるだけでなく、充分な止血機能を保持するとともに血栓症を阻害するための洗練されたアプローチに導く助けとなる。
実施例11
FVIII依存的なトロンビンおよびフィブリンの形成を保持するFXa阻害剤
一実施形態では、本発明者らは、FXa阻害剤がFVIII依存的なトロンビンおよびフィブリンの形成保持することを見出している。一実施形態では、本発明者らは、どのようにFXa選択的な抗凝血剤であるリバーロキサバン、およびビタミンKアンタゴニストであるワルファリンが血栓形成に影響を与えるかについて、固相化された再脂質化組換えTF(rTF)の上に灌流された治療患者由来の血液中の血小板凝集体を用いて、フィブリン形成を測定することによって比較した。沈着フィブリンの体積は、抗凝血薬剤を受けている患者では非処理対照よりも著しく小さかったが、表面のrTF濃度が増加すると、リバーロキサバン治療患者ではワルファリン治療患者よりも有意に大きかった(図2A)。リバーロキサバンを、薬剤摂取の2時間後の治療患者で測定された平均血漿濃度でin vitroで正常な血液に添加し、それによって、フィブリンの体積が部分的に低減したが、それ自体で中程度の阻害を生じる抗FVIIIモノクローナル抗体(MoAb)の存在下ではほぼ完全に低減した(図2B)。先行研究では、トロンビン生成(TG)アッセイにおいて、プロテアーゼ特異的な抗凝血剤により限定的な阻害が観察されたが、一方、これらのデータでは、FXaを選択的に標的とすることによって、血液中、凝固阻害剤の制御の下で、内在性凝固経路を通じたTF開始性のトロンビン生成が明瞭に保持されることが示された。上記実験には内皮細胞がなかったことから、この結果はまた。リバーロキサバンが、血液と血管壁とを含む相互作用とは独立して止血を保持したことを標示した。
これらの知見を確定するために、接触相FXIIaによるFXIの活性化を遮断するように、止血に役割を持たないトウモロコシトリプシン阻害剤(CTI)を含有する血小板に富む血漿(PRP)中で、TGを測定した。使用された濃度では、CTIは、報告されているFXIIaの下流の凝固プロテアーゼへの効果を持たなかった。別個の2つのFXaアンタゴニストであるリバーロキサバンおよびアピキサバンは、TF誘導性のTGを阻害し、阻害剤の存在下では、残りのTGは、追加のFVIII活性の封鎖によって大きく減少した(図3A)。さらに、低いrTF濃度によって惹起されたごく僅かなTG応答は、特異的抗体によるTFPIの遮断の後に、実質的に増加し、このことは、閾値濃度のTFによるTGが、血漿および/または血小板のTFPIによって調節されたことを示す(図3B)。低いTFは、測定可能な早期のTG誘導できなかったものの、TFPIの阻害がない場合であっても(図3B)、およびFIX欠損PRP中でも(図3C)、観察された効果が追加のFIXaを生成するTF依存的なループによって引き起こされたことを除いて、FIXaの効果を増強した。
一実施形態では、不連続TGアッセイにて感度の高いトロンビン基質を用いて、FVIIa野生型(WT)―しかし活性部位変異体FVIIa S195A(iFVIIa)ではなく―を伴うTFが、正常血小板で再構成されたFVII欠損血漿中で、初発のトロンビン生成が5分間で<10pMであった場合でさえ、FIXa誘導性のTGを増幅したことが見出された(図3D)。別の実施形態では、iFVIIaとともに添加されFIXaが、同様の低レベルのトロンビンを産生したが、活性のFVIIaで見られたようなTGのバーストはなかった。一実施形態では、TF−FVIIaは、PRP中のTFPI制御があるにも関わらず、トロンビンとは独立したFIXaによるTGを増強する。TFPI阻害性複合体TF−FVIIa−FXaの認識されていない活性−おそらくはrTF製剤の配合に起因する−によるTGへのいかなる影響も除外するために、不活性のFVIIa S195A、FXa、およびTFPIにより予め形成された、機能的に阻害されたTF複合体を供試した。FXaは、この複合体中で効率良く阻害され、複合体は、FVII欠損血漿中でTGの誘導またはFIXa依存的なTGの増幅をできなかった(図3E、左)。これに対して、TFPIが線虫抗凝血タンパク質(NAP)c2によって置き換えられた同様の複合体は、やはりそれ自体ではTGを誘導できなかったが、PRP中でTGを惹起するのに使用されたものと同様のTF濃度で添加された際に、FIXa誘導性のTGを著しく増強した(図3E、右)。TFPIとは異なり、NAPc2は、FXaの触媒機能に影響を及ぼすことなく、TF−FVIIaをFXa依存的な様式で阻害することから、これらのデータは、新生FXaが、TF−FVIIaと会合したままである一方で、生理的な血漿凝固因子および阻害剤の存在下では主要なFVIIIアクティベーターであることを説明する。
実施例12
新生FXaを含むTF−FVIIaによるトロンビン非依存的なFVIII活性化
いくつかの実施形態で、本開示は、新生FXaを伴うTF−FVIIaによるトロンビン非依存的なFVIII活性化に関する。様々な実施形態で、精製構成成分と主要なリン脂質表面としてrTFとを用いた、FVIIIの活性化を試験した。一実施形態では、NAPc2により安定化された、唯一の活性プロテアーゼとしてのFXaとともに予め形成されたTF−FVIIaS195A複合体は、FVIIIを効率良く活性化した(図4A)。このTFPI様複合体は、TFPIによって阻害されなかったが、この複合体中のFXaは、FVIIIの活性化を防止する五糖補因子(ペンタ)を伴うアンチトロンビン(AT)などの他の巨大分子阻害剤が依然としてアクセス可能であった(図4A)。精製された補因子(FVおよびFVIII)およびプロテアーゼ酵素原(FX、プロトロンビン)を含有する再構成された凝固反応では、FIXaによる凝固開始によって、限定的なFXa産生が生じ、そのFXa産生は、トロンビン−フィードバックによるFVIIIの活性化に一致して、ダンシルアルギニンN−(3−エチル−1,5−ペンタンジイル)アミド(DAPA)によって、または不活性の変異体S195Aが正常なプロトロンビンと置き換えられた場合に、阻害された(図4B)。いくつかの実施形態で、活性のトロンビンがないことは、TF−FVIIaによるFXa生成に影響を及ぼさなかった(図4B)。いくつかの実施形態で、TF−FVIIaとFIXaとの組合せは、個別の反応の和よりも多くのFXaを生じ、追加のFXa産生は、トロンビン封鎖によって影響されなかった(図4B)。一実施形態では、このことは、新生FXaを伴うTF−FVIIaが、新たに生成されたFVIIIaを伴うFIXaの活性複合体による追加のFXa産生をプライミングすることができることを説明した。血漿中TGアッセイでの結果に一致して、TF開始複合体によるトロンビン非依存的なFVIII活性の生成は、VWFの存在によって影響されなかった(図4C)。
TFを含有する同じリン脂質表面を用いて、本発明者らは、200pMの予め活性化されたFXaまたは20pM FVIIa/50nM FXのどちらかが促進するTF−FVIIaによるde novoのFXa生成によって起こる、FVIIIの活性化を比較した(図4D)。阻害剤の添加がない場合、新生のまたは予め活性化されたFXaによるFVIIIの活性化は、代替の酵素原基質であるFIXと補因子であるFVの不在下(上のパネル)でも存在下(下のパネル)でも互角であった。しかし、予め活性化されたものでは、ATおよび五糖補因子を反応に添加することによって、新生FXaよりも非常に大きな用量依存的なFVIIIa生成の阻害が引き起こされた(図4D、E)。このように、TF−FVIIaとともに複合体中に予め形成されたFXaはATによる阻害を受けやすく(図4A)、de novo生成されたFXaは、この阻害性のチェックポイントを逃れ、このことは、FVIIIの活性化が、TF開始性凝固の迅速かつ好適な即時反応であることに一致する。
実施例13
TFによる内在性経路の活性化は、流れの下でのTGおよびフィブリン形成に充分である。
いくつかの実施形態で、TFによる内在性経路の活性化は、流れの下でのTGおよびフィブリンの形成に充分である。一実施形態では、2種のFVIIa変異体が特定され―T99YおよびE154A―これらは、FXの切断のための触媒活性を保持していたが、基質のターンオ−バー速度が著しく低減していた。FVIIa WTとは異なり、この2種の変異体は、リン脂質不含のアッセイにおいて初発のバースト後(図5A)、またはリン脂質で再構成されたTF中で(図5B)、FXa生成を持続できなかった。FXa生成が著しく減少したとはいえ、変異体および野生型のTF−FVIIa複合体は、反応ではFXの存在を必要とするFVIIIの活性化を、互角にサポートした(図5C)。一実施形態では、血小板からの放出に起因して血漿中に様々な濃度で存在する可能性のあるTFPIαは、前掲の生理的な濃度の10nMで添加された場合であっても、FVIIa WTまたは変異体によるFVIIIの活性化をはっきりとは阻害しなかった(図5D)。FVIIIとは際だって対照的に、FXの存在下、TFを伴う複合体中のFVIIa変異体は、FVを活性化できなかった。そして、FVIIa WTを伴うFVaの生成は、TFPIαによって遮断された(図5D)。このように、一実施形態では、TFPIは、FVの活性化を調節した。追加の対照実験では、エビデンスが提供されなかった。TFPIα補因子であるプロテインSは、新生FXaを伴うTF−FVIIaによるFVIII活性化に及ぼされるTFPIによる阻害を亢進した。
いくつかの実施形態で、FXa生成不全性の両方のFVIIa変異体は、添加されたFIXaによるFVIIIa依存的なFXa産生をサポートした(図5E)。しかし、酵素原FIXが代わりに添加された際には、FVIIaエキソサイト変異体のE154Aのみが、機能的なFVIIIa−FIXa内在性テナーゼ複合体の形成を完全にサポートしたが、FIX活性化能を欠損したT99Yは、そのようにサポートしなかった(図5E)。したがって、FIXaを生成する既知の能力に加えて、TF開始複合体は、TFPIαによる阻害性の制御の前に内在性経路の凝固を可能にする抗血友病FVIII補因子を、直接的に活性化する。
いくつかの実施形態で、特定されたFVIIa変異体を用いて、本発明者らは、血漿阻害剤および血小板の存在下でのこの結論の妥当性を検証した。野生型および変異体のFVIIa E154Aが、洗浄済みの正常血小板を補充されたFVII欠損血漿に添加され、それによって、互角のレベルのトロンビンが産生された一方で、FVIIa T99Yは、効率が低かった(図5F、左)。FVIIIa生成を阻害することによって、2種の変異体によるTGが本質的に遮断されたのに対し、WT FVIIaは、残りのTGを産生し(図5F、中央)、このことは、FXaおよびそれによるトロンビン生成を直接的に惹起する際に、FVIIa変異体で選択的に欠陥があったことに一致する。いくつかの実施形態で、FXIa活性の遮断によって、WTに比べて中程度の影響がFVIIa E154AによるTGに生じたのに対し、FVIIa T99YによるTGは著しく低減した(図5F、右).この結果は、FVIIIおよびFIXの両方の活性化が、TF開始性の内在性凝固に不可欠であることを実証する。 限定的な直接のFXa生成をもたらす変異体FVIIa E154Aが、TFによる内在性経路の開始をサポートする際にFVIIa WTと互角であったことは、トロンビンフィードバックが、TF惹起性の凝固の間のFVIIIの活性化に限定的な役割を有することをさらに説明する。
一実施形態では、ex vivoの血流実験で、遊離のFXaのターンオ−バーが低減したFVIIa変異体の血栓形成活性を試験した。壁せん断速度が300s−1の際にフィブリンの沈着がFVIIIaに依存するように表面TF濃度を限定することによって、E154A変異を持つFVIIaは、FVII欠損血液中に再構成された際に、WT FVIIaと同様に軽度な血栓形成の減少をサポートしたが、T99Yはサポートしないことが見出された(図6A)。同じ濃度の触媒的に不活性のFVIIa S195Aではなく、FVIIa T99Yを含有する血液に20pM FIXaを添加することによって、FVIII依存的なフィブリン形成が、FVIIa E154Aで見られるものと互角のレベルに復活した(図6B)。このことにより、新生FXaを伴うTF−FVIIa複合体が、内在性テナーゼ活性とTFの低い環境での止血に有益となる能力とを有するFVIIIaを、直接的に生成したことが確定された。
いくつかの実施形態で、本明細書に記載される新規の経路を、マウスモデルで評価した。一実施形態では、マウスのTF−FVIIaは、機能的なFVIIIaの生成をin vitroでサポートした。一実施形態では、マウスマクロファージ由来の凝血原マイクロパーティクルを生成した。次いで、この天然のTFの供給源を、精製構成成分を含む反応中で、FVIII活性化について分析した。種に適合しているFVIIaの存在下、ノックインヒトTFまたは内在性マウスTFのどちらかをマイクロパーティクルに組み込むことによって、リン脂質により再構成された組換えTFで見られるように、FIXa依存的なFXa生成が刺激された(図6C)。このように、新生FXaを伴うTF−FVIIaによってサポートされる直接的なFVIII活性化経路は、生物学的に関連のあるTFの供給源を用いて起こり、マウスに保存されている。
実施例14
TFはin vivoでFVIIIの活性化に寄与する
本開示のいくつかの実施形態で、TFは、in vivoでFVIII活性化に寄与する。次に、TF機能が、塩化鉄により誘導された血栓症のモデルにおいて、in vivoで、FVIII活性の生成に寄与するか否かを評価した。血栓症に接触相およびTF凝固経路の両方が関与することに一致して、TF機能(21E10など)またはFXIIaによるFXIの活性化(抗FXI 14E11など)を遮断するMoAbを独立して投与することによって、7%(0.26M)FeCl3・6H2Oに起因する付傷後のマウス頸動脈の閉塞が、有意に低減した(図7A)。同じ濃度のMoAbは、さらに重度の8%(0.3M)塩化鉄による付傷の後、個別には無効であったが、組み合わせると顕著に抗血栓性があり、このことは、in vivoでの外因性と内在性の凝固の収束を説明する。さらに高濃度の抗FXI MoAbのみもまた、動脈の閉塞を防止し、このことは、このモデルでは、FXIIa−FXIaによるFIXの活性化が必須の役割を果たすことに一致する。in vitroでは、PRP中でTFとFIXaとの組合せによって開始される相乗的なTGに対する、抗TF MoAbによる阻害は、FVIIIaを添加することによって逆転されたが、FVIIIでは逆転されず(図7B)、このことは、血漿中でのFVIII活性化においてTFが支配的な役割を持つことを確定する。同様に、FVIIIaは、塩化鉄により誘導された大腿静脈の閉塞に対する、閾値下の用量の抗TF MoAbおよび抗FXI MoAbの組合せによる阻害を逆転したが、FVIIIは逆転しなかった。しかし、FVIIIaは、FXIIa/FXIa媒介性のFIXa生成に対する抗TF(図7C、D)不在下での完全用量の抗FXI MoAbによる阻害には影響を及ぼさなかった。もっともその場合、TF−FVIIaまたは代替経路が、血栓症を惹起するために外因的に供給されるFVIIIaを利用するのに充分な量で、FIXaを生成することができたことを除く。FVIIIaがTFによる封鎖を選択的に逆転するという知見は、in vivoでは、FVIIIの活性化を促進することが、TF−FVIIa外因性凝固経路の鍵となる役割であることを説明する。
実施例15
TFによる内在性経路の開始は、薬理的なFXaの封鎖を逃れる。
本明細書に開示されるいくつかの実施形態で、TFによる内在性経路の開始は、薬理的なFXaの封鎖を逃れる。一実施形態で、本発明者らは、臨床用途のFXa阻害剤(リバーロキサバンやアピキサバンなど)が、TF凝固開始複合体によるFVIIIの活性化を保持するか否かを評価した。両方の阻害剤が、FXaのアミド分解活性およびプロトロンビナーゼ活性を互角に遮断した(図8A、B)。両方とも、治療濃度、すなわち50〜450nMの間では、遊離であるかまたはNAPc2により安定化されたTFFVIIa S195A(iFVIIa)を伴う複合体中にあるかのどちらかの予め活性化されたFXaによるFVIIIの活性化を、約90%阻害したが、TFFVIIaにより生成された新生FXaによるFVIII活性化を、ごく僅かに低減したに過ぎなかった(図8C)。後者は特異的な効果であったが、それはなぜなら、リバーロキサバンが、TF非依存的なラッセルマムシ毒(RVV)FXアクティベーターを用いて等しいレベルにde novo生成されたFXaによるFVIIIの活性化を、阻害したためである(図8D)。さらに、治療用量のリバーロキサバンとアピキサバンの両方が、FVIIIを含まずFIXaを含有する反応中で、TFのみによって開始されたTGを阻害したが、FVIIIが添加されると、有意に多くのTGが保持された(図8E)。小分子阻害剤と巨大分子阻害剤の両方がTF開始複合体によるFVIIIa生成を遮断する能力を持たないということは、抗血友病補因子FVIIIが新生FXの好適な基質であるということを確定する。特定されたFVIIa変異体を用いた追加の試験では、リバーロキサバン存在下でのTGが、FVIIa E154Aを用いた場合にはWTに比べて僅かに遅れるに過ぎないことが見出され(図8F)、このことは、治療濃度のFXa阻害剤の存在下での内在性経路の活性化が、FIXaを生成可能な変異体によって保持されることを実証する。これに対して、FIX活性化欠損型のFVIIa T99Yを用いた場合にE154AおよびWTに比べてTGが有意に減少することは、FXaを標的とする抗凝血剤が、FXIa依存的なFIXa生成に繋がるトロンビンフィードバックループを阻害することができたことを標示する。
様々な実施形態で、本発明者らは、TF媒介性の内在性経路の活性化に干渉するための抗FVIIa MoAbのパネルをスクリーニングした。いくつかの実施形態で、MoAb 3G12などの阻害性抗体は、TF開始複合体によるFVIIIの活性化を防止した。他の実施形態では、巨大分子基質結合エキソサイトの近くの画定されたエピトープに反応することが公知であるMoAb 12C7は、この反応では阻害性を示さなかった(図9A)。この抗体は、FVIIa WTによって媒介されるFXaのターンオ−バーを制限し、TF経路により生成されたFVIIIaの存在下では、FXa生成の増幅にFIXaを必要とした(図9B)。阻害性の抗FVIIa MoAb 3G12とは異なり、MoAb 12C7は、正常なPRP中でTGを保持した。しかし、MoAb 12C7存在下でのFVIII依存的なTGは、抗FXI抗体による阻害を大きく受けやすくなっていた(図9C)。これらの結果は、MoAb 12C7が、FVIIa T99Yの特性を模倣してTF−FVIIaによるFIXa生成を阻害することを説明する。さらに、低いリバーロキサバン濃度では、MoAb 12C7の存在下でさらに顕著なTGの阻害が生じ(図9D)、このことは、FXaを標的とする抗凝血剤が、トロンビン−FXIフィードバックループを阻害するとともに、TF開始複合体による直接的なFVIIIおよびFIXの活性化を選択的に保持することを確定する。
実施例16
凝固経路
様々な実施形態で、本開示は、外因性凝固開始複合体の新規の機能を描き出し、言い換えれば、トロンビンフィードバックループとは独立した、選択的な抗血友病補因子FVIIのフィードフォワード活性化を提供する(図1)。この新生FXaの特異的な反応は、生理的な凝固阻害剤であるTFPIαおよびATによる制御、ならびにFXaを標的とする薬理的な抗凝血剤による制御を逃れる。いくつかの実施形態で、抗血友病プロテアーゼFIXを活性化するTF−FVIIaの能力と併せて、直接的なFVIIIa生成は、TF開始性の凝固の中に完全に組み込まれたFVIIIa−FIXaの内在性テナーゼ活性への経路を構成する。
いくつかの実施形態で、FVIIa変異体と線虫NAPc2タンパク質により安定化された複合体とを用いて実験的に明らかにされたように、TF−FVIIa−FXa複合体は、内在性テナーゼに用いられるFVIIIa補因子を選択的に生成するが、遊離FXaを阻害的な制御に曝露するTF−FVIIaからドッキング解除されたFXaを必要とするプロトロンビナーゼに用いられるFVa補因子を生成しない。したがって、新たに特定されたTF−FVIIa−FXaの機能は、血栓形成促進性のFVaを増加することなく、活性かつ止血促進性の抗血友病補因子の蓄積を可能にする。一実施形態では、これは、なぜ、互角の抗血栓効力を有しFXaおよびトロンビンを標的とする阻害剤が、ビタミンKアンタゴニストよりも小さな影響を止血に与えるのか説明することができる。上記でビタミンKアンタゴニストとは、FIXaの利用可能性を低減して、その結果、止血性のフィブリン生成に繋がるTF経路により駆動される内在性テナーゼの直接的な活性化を減じるものである。一実施形態では、そのような機構は、FXIの活性とは独立しており、それゆえ、最近検証されたFXIを標的とする抗血栓ストラテジーの状況でも、止血を保持する可能性がある。
いくつかの実施形態で、補因子の選択性は、TF−FVIIaとの複合体であるかまたはそこから放出されているFXaの有する、別個の機能的な特性を説明する。凝固補因子−酵素複合体は、典型的には、迅速なトロンビン生成のための効率の良い基質ターンオ−バーの方にギアを入れられるが、TF開始複合体は、進化を通じて、その安定性に有利となるような機構を保持しているようである。FXは、酵素原から酵素への基質の転移による影響を最小限に受ける延伸した境界面を通じて、TF−FVIIaと相互作用する。この境界面では、様々な種を通じて保存されているFVIIaの残基E154が、プロテアーゼの活性部位にドッキングしている基質に立体配座の変化を伝え、このプロテアーゼは、次の産物の放出を調節することがある。この立体配座のスイッチの排除は、TF−FVIIaによる巨大分子基質の活性化と産物のターンオ−バーとを分離するには充分である。そのため、変異体FVIIaのE154Aによって、流れの下の血小板に富む血漿および全血中における、TF−FVIIaに会合している新生FXaによる直接的なFVIII活性化の機能、ならびに内在性凝固を活性化するこの新規の経路のもたらすトロンビン生成および血栓形成への寄与を認識することが可能となった。
いくつかの実施形態では、TF凝固開始複合体の安定性は、凝固の活性化と先天免疫とを連係するというTF−FVIIa−FXaの持つ重要なシグナル伝達の役割を保持することの、進化上の利点を表す可能性がある。効率良くFVIIIを活性化することに一致して、FVIIa T99Yは、TF−FVIIa−FXaによるプロテアーゼ活性化受容体(PAR)2の活性化を媒介する際に、完全に機能性である。さらに、FVIIIa生成に見られるように、TFPIαによる機能阻害に対する抵抗性もまた、内皮細胞中でTFFVIIa−FXaによって誘導されるPARシグナル伝達の重要な特長である。このシグナル伝達複合体は、マウスおよびヒトでは、FXa結合パートナーである内皮プロテインC受容体(EPCR)の動員によって、さらに安定化される。樹状細胞は、TF−FVIIa−FXa−EPCR複合体に対し先天免疫シグナル伝達の重要な役割を有し、その際、それは、TIRドメイン含有アダプター誘導インターフェロン−β/TIRドメイン含有アダプター分子1(TRIF/TICAM−1)を含む応答のtoll様受容体4による誘導に不可欠である。いくつかの実施形態で、代替的なEPCRリガンドである活性化プロテインCによるこの経路の負の制御は、FVおよびプロテインSの持つ古典的な抗凝血補因子機能を利用する。このように、これらのおよび他の従来になかった凝固系の機能は、多様な役割を免疫、止血、傷害修復に同時に提供する、同じ機構論の特長を利用する可能性がある。
標的選択的な経口の抗凝血剤は、ビタミンKアンタゴニストに必要とされるように、周到な治療モニタリングを行うことなく安全であるのに対し、ここに開示される新しい概念および診断のアプローチは、これらの薬剤を用いて治療される患者について血栓および出血のリスクの定義を個別に設定することになる。本開示は、止血をサポートするかまたは血栓症に寄与する際のTFの別個の役割を定義するための、生化学的なベースを提供する。実際に、生理的な阻害物質から保護されている内在性経路の直接的なフィードフォワード活性化を通じて、TFは、止血のためのFXaおよびトロンビンの生成を持続することができる一方で、FXaおよびFVaのプロトロンビナーゼ補因子の直接的な過剰生成に起因する血栓症のリスクを制限する、TFPIによる制御を受けやすい。血栓形成促進性の凝固経路vs止血に有利なFVIII活性化を標的とする際のFXa経口抗凝血剤の選択性は、ここに記載される試薬に基づく新しい診断検査によって評価することができる。一実施形態では、このことは、最近開発されたおよび将来の新しい抗凝血剤が止血および血栓症におけるTFの二重の役割に及ぼす効果を、選択的に査定することに繋がることがある。いくつかの実施形態で、ここに提示された凝固に関する新規の概念は、新しい止血剤の開発および評価のための潜在的な意義を有する可能性があり、このような止血剤は、血管性の基礎疾患を有する患者において、有害な血栓性の合併症を回避するとともに、重度の出血合併症からの保護を同時にもたらすことが可能である。
実施例17
材料
対照のマウスおよびウサギのIgG、キナクリン−HCl(メパクリン)、およびアピラーゼは、Sigma−Aldrich(セントルイス、ミズーリ州)から得た。ヒトプロトロンビン(FII)、トロンビン(FIIa)、FV、FVa、FIX、FIXa、FX、FXa、アンチトロンビン(AT)、トウモロコシトリプシン阻害剤(CTI)、ダンシルアルギニンN−(3−エチル−1,5−ペンタンジイル)アミド(DAPA)、ラッセルマムシ毒FXアクティベーター、および抗ヒトFVモノクローナル抗体(MoAb)AHV−5146(FVのA1−A2ドメインの残基306〜506に結合)は、Haematologic Technologies(エセックス・ジャンクション、バーモント州)から得た。リバーロキサバンおよびアピキサバンは、Santa Cruz Biotechnology(サンタクルーズ、カリフォルニア州)から得た。ウシ血清アルブミン(BSA)は、Calbiochem(サンディエゴ、カリフォルニア州)から;再脂質化されたヒト組換え組織因子(rTF;デイドイノビン)は、Siemens Healthcare Diagnostics(ディアフィールド、イリノイ州)から得た。製造業者が今ではイノビンのタンパク質およびリン脂質(PL)濃度を提供していないため、FXa生成アッセイを用いて、全ての使用バッチを既知のTF濃度(13.9nM)のロット(#53691)に対して較正した。アッセイは、用量応答曲線を得るための様々なrTF濃度、100pM FVIIa、135nM FX、2.5mM CaCl2を含有し、37℃で60秒インキュベーションした。凝血原のPL濃度は、反応中のプロトロンビナーゼ活性によって決定し、その反応は、rTF、12.5pM FXa、10nM FVa、1μM プロトロンビン、2.5mM CaCl2を含み、37℃で60秒インキュベーションされた。80%ホスファチジルコリン(PC)および20%ホスファチジルセリン(PS)mol/molからなるPLベシクル(Avanti Polar Lipids、アラバスター、アラバマ州)−0.15M NaCl、10mM4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−エタンスルホン酸(HEPES)、pH7.4中で超音波処理された−を用いた較正により、参照rTF溶液は101.4μM PLを含有していた。ヒトプロテインS(PS)は、Enzyme Research Laboratories(サウスベンド、インディアナ州)から;ヘパリンのAT結合性五糖(フォンダパリヌクス塩;アリクストラ)は、Glaxo−SmithKline S.p.A.(ヴェローナ、イタリア)から;ヒツジ抗ヒトプロトロンビン抗体は、Affinity Biologicals(アンカスター、オンタリオ州)から;線虫抗凝血プロテインC2(NAPc2)は、Corvas International(サンディエゴ、カリフォルニア州)から得た。阻害性の抗ヒトFVIII MoAbは、ESH−8および8D4−それぞれSekisui Diagnostics(スタンフォード、コネチカット州)およびマーク・ジャックマン(Marc Jacquemin)博士(ルーヴェン、ベルギー)から得た−ならびに既に記載されているC5(56)である。FVIIIは、Bayer Healthcare(バークレー、カリフォルニア州)から寄贈された。組換えTFPI、ヒトFVIIa、不活性FVIIa S195A(キモトリプシンナンバリング;iFVIIa)、変異体FVIIa T99YおよびFVIIa E154A、可溶性TF細胞外ドメイン(sTF1−218)、および不活性のプロトロンビンS195Aは、当技術分野に公知の通りに生産し、特性解析を行った。FVIIIaは、19nMトロンビンおよび5mM CaCl2の共存下で190nM FVIIIを37℃で30秒間インキュベーションした後、36nMレピルジン(組換え[Leu1−Thr2]−63−ジスルホヒルジン;レフルダン、BayerCorp、ピッツバーグ、ペンシルベニア州)でインキュベーションしてトロンビン活性を中和することによって調製した。
実施例18
血液灌流実験
0.2mg/mLポリ−L−リジンを用いて37℃で6時間処理したガラスカバースリップを、rTFを用いて37℃で18〜20時間、または2.5mg/mL酸不溶性I型コラーゲンを用いて22〜25℃で2時間、被覆した。次いで、それらをpH7.4緩衝生理食塩水でリンスし、125μm高のシリコンガスケットの付いた矩形のフローチャンバーに取り付け、共焦点顕微鏡の解析用ステージ上に配置した。試験用の静脈血は、正常ボランティアにはプラスチックシリンジを、または患者および対照にはバキュテナーチューブ(Becton Dickinson、ブッチナスコ、ミラノ)を用いて、終濃度10.9mMのクエン酸三ナトリウム中に採集した。CaCl2を添加して1.29mM Ca2+を得た後に、シリンジポンプ(Harvard Apparatus、ホリストン、マサチューセッツ州)を用いて初発の壁せん断速度300s−1を生じる流速で灌流を維持した。患者−凝固亢進性である可能性あり−および関連の対照の血液中、レピルジン(50nM)も添加して、試験前に生成された可能性があるトロンビンを中和した。予備実験では、この量のレピルジンは、フローチャンバー中で、沈着フィブリンの体積に限定的な効果を及ぼした。WTおよび変異体のFVIIaを用いた実験については、50μg/mL CTIおよび10U/mL(ADPase活性)アピラーゼを含有するO型のクエン酸添加血液由来の細胞を、1500gで7分間の遠心分離ステップの連続により、洗浄して血漿不含とした。血漿は、1回目の後、5U/mLアピラーゼを含む等体積のカルシウム不含のタイロード緩衝液、pH6.5に置換し;次いで、1.25U/mLアピラーゼを含む緩衝液に置換し;最後に、ヒトFVII欠損血漿(George KingBio−Medical、オーバーランドパーク、カンザス州)に本来の血液の体積になるまで置換した。再構成された血液または天然の血液中の細胞の計数の結果は、90%以内であった。実験は、ミラノ(イタリア)では、Leica TCS SP5顕微鏡およびHCX PL APO 63×/1.40NA油浸対物レンズ(Leica Microsystems GmbH、ヴェッツラー、ドイツ)を用いて;ラホヤ(カリフォルニア州)では、Zeiss Axiovert 135M/LSM 410およびPlan−Apochromat 40×/1.40NA油浸対物レンズ(Carl Zeiss AG、オーバーコッヘン、ドイツ)を用いて、実施された。
表面上に接着または凝集している血小板は、キナクリン−HCl(メパクリン;10μg/mL;Sigma−Aldrich)を血液に添加することによって可視化した。沈着フィブリンは、マウスのB鎖に特異的なAlexa Fluor 546標識(Invitrogen)マウスモノクローナルIgG(50μg/mL)およびヒトフィブリン(HB−8545;ATCC)を用いて可視化した。シリンジポンプ(Harvard Apparatus Inc.)を用いて、初発の(流路が妨げられていない状態で)壁せん断速度300s−1を生じる流速で、血液を37℃で3〜5分間灌流した。これに続いて、フィブリン定量を容易に行うために緩衝液(DMEM)を2分間流した。定量は、Zeiss Axiovert 135M/LSM 410顕微鏡(Carl Zeiss)およびPlan−Apochromat×63/1.40NA油浸対物レンズを用いた、共焦点z切片化解析によって行った。画像解析は、NIH画像J64を用いて実施した。沈着フィブリンの体積は、フローチャンバー内の4つのプリセットされた位置で採集した共焦点切片から測定した。沈着した血小板およびフィブリンの総体積は、区画当たりのそれぞれの面積範囲にz間隔(2μm)を乗じた和から算出した。ヒト対象を含む全ての試験は、研究施設で認可されたプロトコールに従って実施した。
実施例19
ヒトの天然のまたは再構成されたPRP中のTGの分析
PRPまたは再構成されたPRP中のTGは、当業者に公知の通りに評価した。天然のPRPは、終濃度12.9mM クエン酸三ナトリウム中に採集した血液から、25℃、250gで10分間遠心分離することによって調製した。PRPを1,500gで10分間遠心分離することによって得た相同なPPPを用いて希釈することによって、血小板数を180×103/μLに調整した。FXIIaによる阻害により査定して較正された効力を基準に、30〜50μg/mLでCTIを添加した。再構成されたPRPを、洗浄済みの血小板を用いて調製した。この血小板は、正常なPRPから、1/5体積の酸性クエン酸デキストロース(71mMクエン酸、85mMクエン酸三ナトリウム、および111mMデキストロース、pH4.5)および5U/mlアピラーゼを添加し;続いて25℃、1,500gで10分間遠心分離することによって調製された。血小板ペレットを、FVII(George King Bio−Medical)またはFIX(Haematologic Technologies)を欠失したPPP中に再懸濁して、最終血小板数180・103/μLを得た。PRPを、96穴マイクロタイタープレート中で様々な濃度のrTFおよび/または20pM FIXaと混合した。360μMの発光発生基7−アミド−4−メチルクマリン(Gly−Gly−Arg−AMC;Bachem Americas、トーランス、カリフォルニア州)にカップリングされたトロンビン基質ベンジルオキシカルボニル−グリシル−グリシル−L−アルギニンを含む、18mM CaCl2を添加することによって、この反応を開始した。蛍光を、分光蛍光光度計にて、37℃で40分間まで継続的に測定した(355/460nm励起/放出)。時間の関数としての蛍光強度の増加率(dF/dt)を、Turbo Delphi2006(Borland Software Corporation、オースティン、テキサス州)を用いて算出し、較正曲線を用いてトロンビン当量濃度(nM)に変換した。試料の内在性トロンビン生成能(ETP)、すなわち総生成トロンビン活性を、TG曲線下の面積から決定した。指定の場合には、TGは、不連続2段階アッセイを用いて、検出限界5pMで測定した。このために、400pM WT FVIIaまたはiFVIIaの存在下、20pM FIXaの不在または存在下で、30μg/mL CTIを含んで再構成されたFVII欠損PRP中、0.15pM rTFおよび18mM CaCl2によって、TGを誘導した。37℃で11分間までのインキュベーション後、20mM EDTAを添加することによって反応を終了し、高感度のトロンビン基質H−D−CHA−Ala−Arg−AMC・2AcOH(PefafluorTH,Pentapharm,バーゼル、スイス)を50μM濃度で用いて、生成トロンビンを測定した。他の実験では、TFiFVIIa−FXa−TFPIまたはTF−iFVIIa−FXa−NAPc2によって、TGを誘導した。これらの安定な複合体を、2.5mM CaCl2の存在下、5nM Fxa、10nM TF、10nM iFVIIa、および40nM TFPIまたはNAPc2を、37℃で2分間インキュベーションすることによって予め形成した。複合体をFVII欠損PRP中に添加した後、37℃で8分間インキュベーションした。
実施例20
ウェスタンブロット(WB)によるFVIIIおよびFVの活性化の分析
凝固反応の産物を、還元ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって分離したが、抗FVIIa MoAbの存在下でのFVIIIの活性化の分析のみ、非還元条件下で実施した。ポリフッ化ビニルピロリドン膜に転写した後、FVIIIの活性化についてはビオチン化があるかまたはないMoAb C5(0.5μg/mL)を用いて;FVについてはMoAb AHV−5146(1μg/mL)を用いて、ブロットをプロービングした。FVIIIaおよびFVaの定量的な赤外線検出を、IRDye 800CWコンジュゲート抗マウスIgGまたはストレプトアビジンを用いて得た後、Odyssey赤外線撮像装置(Li−COR、リンカーン、ネブラスカ州)を用いて解析した。既知のFVIIIaおよびFVaの量を用いた較正によって、濃度を算出した。
実施例21
精製構成成分を用いた反応中の凝固の活性化
合成の反応混合物は、0.1%BSAを含む50mM Tris緩衝生理食塩水、pH7.4中、0.7nM FVIII、3nM FV、135nM FX、1μMプロトロンビンから構成された。凝固阻害剤であるTFPI、PS、AT/五糖、NAPc2、および直接的なFXa阻害剤(リバーロキサバンやアピキサバンなど)を、標示された濃度で添加した。トロンビン効果を防止するための反応を、200nMレピルジンまたは4μM DAPAの存在下で実施した。0.6から400pMのrTF、200から500pMのFVIIaまたは/および10nM FIXaを添加することによって反応を開始し、続いて2.5mM CaCl2を添加し、標示された時間の間、37℃でインキュベーションした。次いで、10mM EDTAを添加して、反応をクエンチした。FXa、FIIa、およびトロンビンの生成を、発色基質S−2765(180μM;N−α−ベンジルオキシカルボニル−D−アルギニル−L−グリシル−L−アルギニン−p−ニトロアニリン;DiaPharma、ウェストチェスター、オハイオ州)および発光発生基質Z−Gly−Gly−Arg−AMC(360μM)それぞれに対するアミド分解活性を測定することによって評価した。
0.2μg/mL DS、100nM HMWK、30nM FXI、50μM ZnCl2、90nM FIX、135nM FX、700pM FVIIIまたはFVIIIa、18nM VWF、20μM PL、および2.5mMCaCl2を含む反応中に、0.6pM TF/200pM FVIIaの不在または存在下でFXIIa(500pM)を添加することによって、接触相のFXaの生成を試験した。DAPAならびにFVIIIおよびFVの活性化の存在下でのFIIaの生成を、下記に記載されるようなウェスタンブロッティング(WB)により決定した。NAPc2(5または40nM)をiFVIIa(100または200pM)、FXa(100または200pM)およびrTF(50または400pM)と混合することによって、外因性経路活性化複合体(TF−FVIIa−FXa)を安定化した。FXaのプロトロンビナーゼ活性は、10nM FVa、1μM FII、および2.5mM CaCl2を含有する、標示されたインキュベーション時間の37℃の反応中で測定した。リバーロキサバンおよびアピキサバンの抗FXa活性を、アミド分解活性またはプロトロンビナーゼ活性の阻害として測定した。FXaのアミド分解活性の阻害を測定するために、1nM FXaを様々な阻害剤濃度と発色基質S−2765(360μM)と混合し;405nmでの(OD)を、マイクロプレートリーダー中37℃で10分間まで継続的に測定した。FXaのアミド分解活性を、GraphPad Prism(GraphPad Software、ラホヤ、カリフォルニア州)を用いて算出したOD/分曲線の傾きから決定した。FXaのプロトロンビナーゼ活性の阻害を測定するために、50pM FXaを、50pM rTF、3nM FVa、および1μM FIIとともに37℃でインキュベーションした。4分後、10mM EDTAを用いて反応をクエンチし、発光発生基質Z−GGR−AMCを用いて生成FIIaを決定した。両阻害剤について半分の最大阻害性を示す濃度(IC50)を、GraphPad Prismを用いて決定した。
トロンビン活性を遮断するために、4μM DAPの存在下で、または不活性のS195AをWTプロトロンビンと置き換えて、反応を実施した。いくつかの実験では、プロトロンビンを反応から省略し、200nMレピルジンを添加して、混入した可能性のあるトロンビンを不活性化した。de novo生成されたFXaによるFVIIIの活性化にリバーロキサバンおよびアピキサバンが及ぼす影響も検討し、この検討は、50pM rTFをリン脂質表面として含有するがFVIIaを含まず10nM TFPIを含む反応に、ラッセルマムシ毒FXアクティベーター(13.5pM)を添加した後、FVIIIaのWBを行うことによった。唯一の活性プロテアーゼとしてFXaを含む安定な複合体は、50pM rTF、100pM FVIIa−S195A(iFVIIa)、100pM FXaおよび5nM NAPc2を用い、37℃で120秒間インキュベーションして調製した。この複合体によるFVIIIの活性化は、FVIII、FV、およびレピルジンを120秒インキュベーションした反応中で検討した。
リン脂質を含まず10nM FVIIa、2μM sTF1−218、および1μM FXを含む反応中、FXa生成をモニタリングすることによって、TF−FVIIaによる基質のターンオ−バーを評価した。リバーロキサバンまたはアピキサバンによるFXaアミド分解活性の阻害を、1nM FXaを様々な阻害剤濃度と発色基質S−2765(360μM)と混合することによって測定した。すなわち、405nmでのODを、マイクロプレートリーダー.中、37℃で10分間まで継続的に測定した。FXaのアミド分解活性を、GraphPadPrism(GraphPad Software、ラホヤ、カリフォルニア州)を用いて算出された時間の関数としてのOD変化の傾きから決定した。プロトロンビナーゼ活性の阻害は、リン脂質表面として50pM rTFと、3nM FVaおよび1μMプロトロンビンとともに50pMFXaを37℃でインキュベーションし;240秒後、10Mm EDTAを用いて反応をクエンチし、発光発生基質Z−GGR−AMC(360μM)を用いて生成トロンビンを定量することによって、測定した。GraphPad Prismを用いて対応の阻害性の用量応答曲線をフィッティングさせることによって、各基質について、半分の最大阻害性を示す濃度(IC50)を決定した。
実施例22
マウスにおける塩化鉄により誘導された血栓症
全ての動物の処置は、実験動物の管理と使用に関する指針(Guide for Care and Use of Laboratory Animals)を満たし、スクリプス研究所のIACUCによって承認された。1滴の0.8μLの7%(0.26M)または8%(0.30M)のFeCl3・6H2Oを頸動脈に3分間;または0.4μLの4%(0.15M)液滴を大腿静脈に1分間用いた後に、リンスすることによって、血管の傷害をC57BL/6Jマウスに誘導した。
頸動脈血栓症は、2つのパラメーターによって記載される。それらはすなわち、1)動脈中の血流が0.1mL/分以下に低下する時間として定義される、最初の閉塞までの時間;および2)傷害後30分間に動脈を通って流れる総血液体積(1秒毎にサンプリングされた血流の体積測定から積分される)と対応の非傷害の動脈の体積(傷害前に1分間にわたって測定された流量から算出される)との間の比として定義される、流動指数(FI)であり;それゆえ、FI=1は、流量に変化がないことを標示する。静脈血栓症は、傷害された血管中、リアルタイムに、落射蛍光ビデオ顕微鏡ベースの血小板凝集体およびフィブリンの形成の評価によって査定された。カルセインレッド−オレンジを用いて標識した洗浄済みの血小板(2×106/g体重)を、マウス頸静脈に注射した後、血管の傷を構築した。フルオレセインイソチオシアネート標識抗フィブリン抗体(0.8μg/g体重)を標識化血小板懸濁液とともに注射することによって、フィブリンを可視化した。Image Jソフトウェアを使用して、蛍光性の血小板凝集体およびフィブリンについて選択画像上の画素密度を統合して測定することによって、血栓のサイズを定量的に査定した。
TFまたはFXIに対する抗体を、カテーテル挿管された頸静脈内に、標示された量のボーラス注射によって投与した。FVIIIおよびFVIIIaを、ボーラス注射(1.4pmoles)によって投与した後、0.47pmoles/分の速度の継続的な輸注を15分間維持した。傷害の開始後の最初の閉塞までの時間とは、非傷害の動脈で最初に測定された値の10%未満にまで血流が減少するのに必要な時間である。流動指数とは、傷害後に動脈を通って流れる総血液体積(mL/分で測定された流量および30分間毎秒サンプリングされた流量の積分)と、非傷害の動脈における流量の期待値(傷害前の1分間に測定される流量に30を乗じて算出される)との比である。
実施例23
統計解析
統計解析には、GraphPad Prism(GraphPad Software,Inc、ラホヤ、カリフォルニア州)およびXLSTAT(Addinsoft、パリ、フランス)を使用した。等分散性は、ルビーンの中央値およびバートレット検定を用いて評価した。群間の多重比較には、一元ANOVAを使用し、等分散性に必要な場合はy=log10yデータを転換した後にそれを行い、続いて、テューキー検定もしくはダネット検定を行うか;またはクラスカル−ウォリス・ノンパラメトリック検定に続いてダン検定を行った。いくつかの実施形態で、この開示に示されるデータは、標示された数の実験値の標準誤差(SEM)を伴う平均値である。
実施例24
ヒト血小板に富む血漿(PRP)または再構成されたPRPにおけるトロンビン生成
PRPは、クエン酸三ナトリウム中(終濃度0.0129M)に採集した血液から、25℃、250gで10分間遠心分離することによって調製した。PRPを1,500gで追加的に10分間遠心分離することによって得た相同な血小板に乏しい血漿(PPP)を用いて希釈することによって、血小板数をμL当たり180・103に調整した。標示されている場合には、FXIIaによる阻害により測定して較正された効力を基準に、30から50μg/mLでCTIを添加した。FVII、FVIII(どちらもGeorge King Bio−Medical、オーバーランドパーク、カンザス州から入手)かまたはFIX(Haematologic Technologies)を欠いたPPP(CTIを含むかまたは含まない)中に、洗浄済みの正常血小板を添加することによって、再構成されたPRPを調製した。PRP中のTFIIa生成は、Hemker et al.に記載されているように測定した。53μLのPRPを、96穴マイクロタイタープレート中、標示された終濃度を達成するようにrTFおよび/または内在性凝固経路プロテアーゼ−FXIIa、FXIa、またはFIXa−のうち1つを含有する15μLの溶液と混合した。抗体または阻害剤も、この時点で、各特定の場合について標示された濃度で添加した。15と20μLの間の100mM CaCl2および2mM発光発生基質ベンジルオキシカルボニル−グリシル−グリシル−L−アルギニン−7−アミド−4−メチルクマリン(Gly−Gly−Arg−AMC;Bachem Americas、トーランス、カリフォルニア州)を添加することによって、反応を開始した。阻害性の抗TFPIポリクローナル抗体または対照のウサギIgG(20μg/mL)の存在下、リン脂質ベシクル(5μM)を添加したPPP中での、FIIa生成も検討した。反応中に発達した相対蛍光強度を、分光蛍光光度計にて、37℃で40分間まで継続的に測定した(励起355nmおよび放出460nm)。時間の関数としての蛍光強度速度の増加(dF/dt)を、プログラムTurbo Delphi2006(Borland Software Corporation、オースティン、テキサス州)を用いて算出し、較正曲線を用いてトロンビン当量濃度(nM)に変換した。FIIa生成は、遅延時間(3nM トロンビンが形成されるまでの時間)および内在性トロンビン生成能(ETP;トロンビン生成経時曲線下の面積から決定した総生成トロンビン活性)を決定することによって表現した。
実施例25
FII、FVIII、およびFVの活性化のウェスタンブロッティング分析
ウェスタンブロッティング(WB)分析用の試料は、まず、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)および512nM 2−メルカプトエタノールの存在下、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)に供した。ポリフッ化ビニルピロリドン膜に転写した後、抗ヒトFIIヒツジポリクローナル抗体(0.5μg/mL)、抗FVIIIMoAb C5(0.5μg/mL)、または抗FV MoAb AHV−5146(2μg/mL)を用いて、タンパク質のバンドを露出させた。FIIの活性化断片を、ビオチン化抗ヒツジIgG(Thermo Fisher Scientific、ロックフォード、イリノイ州)および西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)−ストレプトアビジンコンジュゲート(Life Technologies、グランドアイランド、ニューヨーク州)を用いた化学発光によって検出した。FVIIIaおよびFVaの定量的な赤外線(IR)検出には、IRDye 800CWコンジュゲート抗マウスIgG(Li−COR、リンカーン、ネブラスカ州)を使用した後、Odyssey赤外線撮像装置(Li−COR)を用いて解析した。既知のFVIIIaおよびFVaの量を用いた得た較正曲線によって、値を導き出した。
実施例26
FXaのユニークな機能
いくつかの実施形態で、本明細書に示される開示は、補因子VIIIの活性化をサポートする際のTF−FVIIa由来のFXaのユニークな機能を実証する、2つの重要なエビデンスの筋道を提供する。いくつかの実施形態で、エビデンスの第1の筋道では、TF−FVIIaは、生理的なTFPI抗凝血剤またはリバーロキサバンなどの薬理的な直接的FXa阻害剤の有意な影響を受けることなく、FVIIIaを順次生成するFXaを生成することができる。しかし、哺乳動物のADAM様重鎖および2つのレクチン様軽鎖を有するヘテロ三量体のメタロプロテイナーゼであるラッセルマムシ毒FXアクティベーター(RVV−X)は、FXaを生成できない。いくつかの実施形態では、TFPIおよびリバーロキサバンが組合せで存在する際であっても−後者は450nMの高さの濃度である−、FVIIaによるTF媒介性凝固が開始された際には実質的なFVIIIa生成があるが、開始物質がRVV−Xである際には実質的な阻害があった。いくつかの実施形態で、生成トロンビンによってFVIIIの活性化に及ぼされるいかなるフィードバックも排除するために、全ての反応は、強力なトロンビン阻害剤であるレピルジンを含有していた。いくつかの実施形態で、これらの知見によって、既知のFXa自体による直接的なFVIIIの活性化とは別個に、外因性凝固開始複合体(TF−FVIIa)に会合している新生FXaによるFVIII活性化機能を特定することの、さらに実験的なサポートが提供された。
いくつかの実施形態で、この概念は、FVIIa中の単一の点変異が、WT種に比べて外因性TF−FVIIaテナーゼ複合体による直接的なFXa生成を消失させるとともに、新生FXaおよびそれゆえの内在性テナーゼ活性によるTF−FVIIa依存的なFVIIIの活性化を保持することができるという、第2のエビデンスの筋道によって強化される。
いくつかの実施形態で、本明細書に示される開示は、FVIIIa生成に繋がる会合しているTF−FVIIa複合体によって誘導される、新生FXaの新たに特定された機能について、構造的および生化学的な基礎を確立する。いくつかの実施形態で、この新しい機能は、プロトロンビナーゼ複合体内に組み込まれてゆくFXaを生成する、一般に認識される外因性テナーゼ活性とは別個である。この機能は、止血に不可欠な抗血友病FVIIIに厳密に依存する内在性テナーゼ活性を作動させることから、初めてここにその機構論の詳細にて定義されるTF開始性の止血ループを構成する。
実施例27
定量的な測定
いくつかの実施形態で、この開示は、ベースライン条件下または抗凝血および/もしくは抗血栓治療の間に、個々の血液試料中の血栓形成促進能および止血効率を別個に定量的に測定することを可能にする。いくつかの実施形態で、本明細書に開示されるのは、血栓症を誘導するリスクを減少した治療用途のための、新しい止血促進性の分子を特定するための方法である(すなわち、内在性テナーゼを通じてTF開始性の止血ループのサポートを保持するが直接的なFXa生成を減少した改変型FVIIa分子)。
止血は、大出血を阻止することおよび自然発生の出血を防止することが不可欠であることが、通例知られている。血液凝固は、止血を持続する際に中心的な役割を果たす。血液凝固では、因子(F)VIIIは、内在性凝固プロテアーゼであるFIXaに不可欠な補因子として機能する。その活性形態(FVIIIa)に活性化されると、FVIIIaはFIXaに結合し、FVIIIa−FIXa複合体は、FXa生成を促進することによって、トロンビン(FIIa)生成を増幅する。最終的に、生成されたFIIaは、フィブリノーゲンを安定なフィブリン凝塊に変換し、止血に繋げる。この概念の裏付けとして、FVIIIの先天性の欠損症(血友病A)は、重度の、時には命に関わる、出血のエピソードに関連する。血友病患者は、血漿中のFVIII凝血活性(FVIII:C)に基づき3つのカテゴリー:重度(<1IU/dL FVIII:C)、中等度(1−5IU/dL)、および軽度(>5IU/dL)に分類されている。FVIII:Cは、現在では、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)などの凝固ベースのアッセイによって決定される。従来の凝固アッセイは、患者の大まかな分類には有用であるが、そのように分類される重度の症例間では、臨床的な表現型の大幅な不均一性がある。これは、現行の凝固ベースFVIIIアッセイの低感度が、約1〜0.1IU/dLのFVIII:Cレベルに起因する重度の出血リスクから中等度を区別するには不充分であるためである。
実施例28
新規のアッセイ
いくつかの実施形態で、高感度を有し、患者で中等度と重度との出血リスクの間を区別することが可能な新規のアッセイが、本明細書に開示されている。いくつかの実施形態で、本明細書に記載されるアッセイによって、さらに詳細な患者の分類、出血リスクの正確な予測、およびFVIIIの予防的または治療的な輸注との連関が可能になる。いくつかの実施形態で、開示されるアッセイの感度は、現在利用可能な方法の10倍までの大きさである。他の実施形態では、開示されるアッセイの感度は、現在利用可能な方法の10倍を超える大きさである。
本明細書に開示される新規のFVIII活性化機構に基づき、新しいアッセイが記載される。このアッセイのいくつかの実施形態で、極端に低い濃度(例えば、ピコモル濃度)の再脂質化TFおよびFIXa(ピコモル濃度またはナノモル濃度)を組み合わせて患者血漿中に添加することによって、TGが惹起される。いくつかの実施形態で、TFまたはFIXaの個別の添加では、それぞれTF経路阻害剤(TFPI)による制御および緩やかな反応があるために、血友病A患者の血漿中には有意なFIIaが生成しない。他の実施形態では、2種の凝固開始物質を個々に不活性な濃度で組み合わせて添加することによって、TGが相乗的に増幅された(図10)。いくつかの実施形態で、血漿中の相乗効果の機構の関する生化学的な研究では、TFがFVIIaおよびFXと複合体を形成し、その複合体では、後者はFXaに活性化され、FXaは、TF−FVIIaに結合されたままTFPI阻害から保護されるとともに(それゆえに遊離FXaに比べて異なる機構を用いて)FVIIIをFVIIIaに活性化し、FVIIIaは順次にFIXaに結合してFXa生成およびTGを増幅する。いくつかの実施形態で、本明細書に開示される新規のTG方法によって、血漿中の非常に低いFVIIIレベルの検出が可能になり、それは、FVIIIによりスパイクされた血友病A患者血漿のアッセイにより検出限界0.07IU/dL FVIII:Cに示される通りである(図10Bおよび図10C)。このように、一実施形態では、本明細書に開示される方法は、TF駆動性のFVIIIの活性化と、FVIIIa−FIXa複合体によって誘導されるTGとを、特異的に決定する。
いくつかの実施形態で、本明細書に提供されるのは、重度の血友病A患者および後天性のFVIII欠乏症の個体で低レベルのFVIII:Cを決定するための感度の高い方法である。いくつかの実施形態で、本明細書に提供されるのは、重度の血友病A患者でさらに正確な出血の表現型の特徴付けと出血リスクの予測を可能にして、それによってFVIII産物を用いた補充療法を改善する、新規のアッセイである。
いくつかの実施形態で、本明細書に開示される新規のアッセイは、FVIII濃縮物を用いた治療のモニタリングおよび濃縮物の効力の査定に有用である。他の実施形態では、本アッセイは、機能性が向上しおよび/もしくは安定性が増加したFVIIIバリアント特定するために、ならびに/または血友病A治療のための効能および安全性が向上した新規の止血剤をスクリーニングするために、利用される。
実施例29
因子FVIIaの変異体
いくつかの実施形態で、補因子VIIIの活性化に関する新規の機構をサポートするさらに別のエビデンスが、2種のFVIIa変異体T99YおよびE154Aの特徴を明らかにすることによって得られた。どちらもFXを切断するための触媒活性を保持するが、野生型(WT)のFVIIaに比べて基質のターンオ−バー速度が顕著に遅く、そのため、最初のバースト後にFXa生成を持続することができない。いくつかの実施形態で、FXa生成が顕著に減少していたにも関わらず、変異体および野生型のTF−FVIIa複合体は、互角にFXa依存的なFVIIIの活性化をサポートした。いくつかの実施形態で、同じ条件下で、2種の変異体は、WT FVIIaとは異なり、FVIIIに高度に相同なFVプロトロンビナーゼプロ補因子を活性化することができなかった。いくつかの実施形態で、直接的なFXa生成を大きく損なっているにも関わらず、FVIIa変異体はどちらも、添加されたFIXaの存在下で、WTと同等に効率良くFVIIIa依存的なFXa産生をサポートした。いくつかの実施形態で、これらの結果は、FXa生成をTF−FVIIa外因性テナーゼ複合体によって直接的に遮断できることを示す。いくつかの実施形態で、これは、新生のTF−FVIIa−FXaが止血促進性の抗血友病FVIIIa−FIXa内在性テナーゼ複合体を活性化する本明細書に開示の経路に干渉することなく、血栓促進性のトロンビンを生成する。
いくつかの実施形態で、本明細書に開示されるのは、TF−FVIIa複合体内の新生FXaに関する、新規のFVIIIaの生じる機能についての生化学的な基礎であり、この基礎は、プロトロンビナーゼ複合体中に組み込まれるように外因性テナーゼから放出される遊離のFXaのものとは別個のものである。いくつかの実施形態で、止血に不可欠な抗血友病FVIIIに厳密に依存する内在性テナーゼ活性を作動させるこの新規の機能は、初めてここにその機構論の詳細にて定義されるTF開始性の止血ループを構成する。
いくつかの実施形態で、2種のFVIIa変異体の間の違いが、TF−FVIIa複合体の公知の機能であるFIXをFIXaに変換する能力にある。いくつかの実施形態で、T99YおよびE154のFVIIaは、新生FXa産物によるFVIIIの活性化をサポートする互角の能力を有する。そのため、両変異体ならびにWTのFVIIaは、添加されたFIXaによるFVIIIa依存的なFXa産生をサポートした。いくつかの実施形態で、酵素原であるFIXが代わりに添加された際に、FVIIaエキソサイト変異体であるE154Aのみが、FXa生成に繋がる機能的なFVIIIa−FIXa内在性テナーゼ複合体の形成をサポートしたが、T99Yはサポートしなかった。
いくつかの実施形態で、2種のFVIIa変異体を使用して、生理的な凝固阻害剤を含む血小板に富む血漿(PRP)の状況下で、トロンビン生成について、TF−FVIIaによるFIXのFIXaへの変換の重要性を評価した。そのため、洗浄済みの正常な血小板を補充したFVII欠損血漿にFVIIaを添加することによって、WTまたはE154AのFVIIaが、互角のレベルのトロンビンを産生するが、T99Y FVIIaは、それより効率が低いことが見出された(図5F)。いくつかの実施形態で、FVIIIa生成を阻害することによって、2種の変異体によるTGが遮断されたのに対し、WT FVIIaは残りのTGを産生した(図5)。このことは、FXaとそれゆえの直接的なトロンビン生成とを惹起する際の、FVIIa変異体の選択的な欠陥に一致する。いくつかの実施形態で、FXIa活性を遮断することによって、WTに比べてFVIIa E154AによるTGに中程度の効果が及ぼされるのに対し、FVIIa T99YによるTGは顕著に低減される(図5)。いくつかの実施形態で、これらの結果は、FVIIIとFIXの両方の活性化が、TF開始性の内在性の凝固に不可欠であることを実証する。いくつかの実施形態で、直接的なFXa生成が制限された変異体FVIIaE154Aが、TFによる内在性経路の開始をサポートする際にFVIIa WTと互角であるということは、トロンビンフィードバックがTF惹起性の凝固の間のFVIIIの活性化において限定的な役割を有するという概念を補強するものである。
一実施形態では、変異体E154Aは、FIXa生成に対するTF−FVIIaまたはFXIa−トロンビンフィードバックループの相対的寄与を測定することを可能にする。ここでFIXaは、補因子としてFVIIIaと組み合わさって内在性テナーゼ複合体を形成するプロテアーゼであり、この複合体は、FXをFXaに活性化して、TF−FVIIaによる直接的なFXa生成の生理的な阻害剤であるTFPIの制御を逃れる。また、これは、止血促進反応vs.血栓促進反応の区別に適切である。一実施形態では、本明細書に開示されるアッセイは、新生のTF−FVIIa−FXaを通じたFVIIIa生成に起因する止血促進機構の保持を定量的に査定することができる。
一実施形態では、FVIIaの変異体E154Aを、プロトロンビナーゼのアセンブリのための生成FXaを放出できないことによって引き起こされるFXa生成の直接的な経路を研究する際に使用した。驚くべきことに、そうであるにも関わらず、E154A変異体は、複合体TF−FVIIa154A−FXa中の新生FXaによるFVIIIa生成をサポートすることができた。FVIIaの他の変異体の形態は、同様の効果を持つ可能性があることが想定される。このアッセイのフォーマットには、FVIIa Y76F変異体と同様の効果を生じる抗FVIIaモノクローナル抗体12C7の特性を含めることができた。後者は、プロトロンビナーゼ活性を最小限サポートする点で、新生FXaによる止血促進性のFVIIIの活性化の機構を保持するFVIIa E154Aと類似するが、さらに、FVIIaがFIXをFIXaに活性化する能力を失う原因となる。このことにより、血栓形成促進性となる可能性のあるトロンビン−FXIループによってサポートされるFIXa生成の経路を、FVIIIの活性化を伴うTF−FVIIa−FXa複合体中に組み込まれるTF−FVIIaによってサポートされるものと区別することが可能になる。それゆえ、12C7のような抗体の使用に基づくアッセイは、保護されるべきものである。
実施例30
抗FVIIaモノクローナル抗体のスクリーニング
いくつかの実施形態で、抗FVIIaモノクローナル抗体(MoAb)のパネルを、TF媒介性の内在性経路の活性化への干渉についてスクリーニングした。これによって、異なる抗凝血剤で治療された異なる個体および患者で、止血促進性凝固経路および血栓促進性凝固経路の特徴を明らかにするために、新規の凝固経路を適用することが可能になった。MoAb 3G12に例示される殆どの阻害性抗体が、TF開始複合体によるFVIIIの活性化を防止したのに対し、巨大分子基質結合エキソサイトの近くの画定されたエピトープに反応することが知られるMoAb 12C7は、この反応に阻害効果を及ぼさなかった(図9)。いくつかの実施形態で、抗体は、FVIIa WTによって媒介される直接的なFXaのターンオ−バーを制限した(図9)。いくつかの実施形態で、それによって、TF経路により生成されたFVIIIaを通じたFXa生成の増幅が可能になったが、これはFIXaの場合にのみ示され、酵素原FIXでは示されなかった(図9B)。いくつかの実施形態で、この知見は、MoAb 12C7が、TF−FVIIaによるFIXからFIXaへの変換を阻害することを実証する。いくつかの実施形態で、このことにより、血液中のFIXa生成に繋がる可能性がある異なる経路を機能的に切り分けるためのツールが提供され、止血または血栓症についてそれらの機能的な意義を試験することが可能になる。実際に、様々な実施形態では、阻害性の抗FVIIa MoAb 3G12とは異なり、MoAb 12C7は、正常なPRP.中でTGを保持した。他の実施形態では、MoAb 12C7の存在下でのFVIII依存的なTGは、抗FXI抗体による阻害を大きく受けやすくなっていった(図9C)。いくつかの実施形態で、MoAb 12C7は、変異体FVIIa T99Yの特性を模倣する。さらに、低いリバーロキサバン濃度によって、MoAb 12C7の存在下でさらに顕著なトロンビン生成(TG)の阻害が引き起こされ(図9D)、このことは、FXaを標的とする抗凝血剤が、トロンビン−FXIフィードバックループを阻害するのに対し、TF開始複合体による直接的なFVIIIおよびFIXの活性化を選択的に保持することを確定する。.
実施例31
アッセイまたは試験
いくつかの実施形態で、新たに特定されたTF依存的なFVIII活性化経路は、FVIIIa−FIXa複合体を介した初発のトロンビン生成(TG)で鍵となる役割を有し、このTGは、止血に不可欠な二次的なTGのバーストに繋がる。いくつかの実施形態で、極端に低い濃度(例えば0.15pM)の再脂質化TFおよびFIXa(例えば200pM)を組み合わせて患者血漿中に添加することによってTGを惹起する試験を実施した。TFまたはFIXaを個別に添加することでは、それぞれTF経路阻害剤(TFPI)による制御および緩やかな反応に起因して、血友病A患者の血漿中に有意なFIIaを生成しない。これに対して、2種の凝固開始物質を個々に不活性な濃度で組み合わせて添加することによって、TGが相乗的に増幅された(図10)。いくつかの実施形態で、本明細書に開示される新規の方法によって、血漿中の非常に低いFVIII濃度の検出が可能になる。重要なことに、この新しいアッセイによって検出された機構は、公知の遊離のFXaによるFVIIIの活性化の機構とは異なる。いくつかの実施形態で、FVIIIによりスパイクされた血友病A患者の血漿中の測定によって示されるように、新しいアッセイの検出限界は、0.07IU/dL FVIII:Cである。そのため、一実施形態では、本発明の方法は、TF駆動性のFVIIIの活性化と、FVIIIa−FIXa複合体により誘導されたTGとを、特異的に決定する。
いくつかの実施形態で、本開示は、新しい経口の抗凝血剤を用いて治療される患者について血栓および出血のリスクの定義を個別に設定する助けとすることができる、新たに設計された凝固アッセイの基盤である。例えば、一実施形態では、本明細書に開示される方法は、より良好な抗血栓効果のための、または出血合併症の可能性を低減するための、投薬量の調整に必要な状況を客観的に特定することができる。いくつかの実施形態で、本開示は、充分な止血機能を保持するとともに血栓症の防止または治療のために新しい薬理的なアプローチを特定および試験するのに適切な、新しい展望を提供する。
いくつかの実施形態で、本開示によって、TF開始性の凝固の状況で凝固補因子の機能的な保持または分解に特異的かつ定量的に焦点を置いた新しい抗血栓薬剤候補の評価が可能になり、それにより血栓促進性経路と止血促進性経路とが区別される。いくつかの実施形態で、このことによって、抗血栓効果について最も良好なプロファイルvs出血合併症に関する安全性プロファイルを有する薬剤候補の区分が改善される。いくつかの実施形態では、同じメリットによって、新しい薬剤または薬剤の組合せに基づく抗血栓レジメンのモニタリングおよび評価が、すなわち機構論的な見地で異なる標的選択的な抗凝血剤を用いた最良の個別化治療を達成する鍵となる課題が、改善される。止血に関しては、本明細書に開示される新規のアッセイは、重度の血友病A患者および後天性のFVIII欠乏症の個体で、低レベルのFVIII:Cを検出する。いくつかの実施形態で、感度の増加したFVIII活性アッセイによって、出血の表現型の特徴をさらに正確に明らかにすること、および重度の血友病A患者で出血リスクを予測することが可能になり、それゆえ、FVIII産物を用いた補充療法が改善される。いくつかの実施形態で、そのようなアッセイはまた、抗血友病FVIIIのバリアントを特定する助けとなり、このバリアントは、新たに特定された凝固経路における機能が増大しおよび/または安定性が増加して、それゆえに抗血友病FVIII機能を欠損している患者での補充療法を改善する。
実施例32
全般
組織傷害への応答における血液凝固は、止血および先天性免疫のための鍵であるが、重篤な疾患に繋がる血管の血栓症の一因となる可能性がある。現在広まっている凝固スキームでは(図1、左)、組織因子(TF)と活性因子(F)VIIaとの外因性経路開始複合体が、タンパク質分解反応のカスケードを促進してFXaを産生し、FXaは、FVaとともにプロトロンビナーゼ複合体中に組み合わさって、プロトロンビンをトロンビンに変換する。最初に生成されたトロンビンは、凝固を増幅するフィードバック反応においてFVIII補因子およびFV補因子を活性化する。重要なトロンビン産生の前にどのように活性の補因子が生成され得るのかは、依然として不可解な問題であり、今のところFXaが、該当する凝固開始のFVアクティベーターであるものとみなされている。この開示では、直接的なFVIIIの活性化を通じた凝固開始へのFXaおよび/またはTF−FVIIaの寄与を示す。
外因性の凝固の開始は、TF経路阻害剤(TFPI)によって制御され、このTFPIは、FVIIaおよびFXaをTFとの4つ組の複合体内で不活性化することによって血栓症を減じる。さらに、正電荷を持つTFPIαのカルボキシル末端領域は、活性のプロトロンビナーゼのFXaの形成に干渉する部分的にプロセッシングされたFV中の、特異的な酸性配列に相互作用する。直接的なトロンビン生成を低減するこれらの機構は、生理的な血漿阻害剤の存在下、動態学的に好都合な反応で、内在性経路のFIXを活性化するTF−FVIIaによって相殺される。あるいは、FIXaは、血管の炎症をも促進するトロンビンフィードバックループ中で活性化されたFXIaによって、または接触相のFXIIaによって生成される。マウスモデルでは、FXIIaは、実験的な血栓症でのトロンビン生成の増幅に寄与するが、ヒトデータに一致して、止血には役割を持たない。
現在広く知られている凝固のパラダイムは、TF依存的な開始とプロトロンビナーゼの生成との両方を厳密に制御するTFPIの幅広い機能を擁しており、最初に生じたトロンビンがどのようにして接触経路またはTF−FVIIa自体により生じるFIXaのためのFVIIIa補因子の起源となり得るのかを、容易に説明することができない。そのため、本発明者らは、外因性凝固開始複合体の新規の機能を本明細書に開示しており、その機能により、TF−FVIIaに会合している新生FXaは、TFPIによる阻害剤性の制御に抵抗性のあるFVIIIを直接的に活性化する。そのような機構は、止血におけるTFの機能に妥当であることがあり、生理的および病理学的な血栓形成の際の凝固反応の別個の役割を解釈するための新しい展望を提供する。
実施例33
方法
材料 マウスおよびウサギのIgG、キナクリン−HCl、およびアピラーゼは、Sigma−Aldrich(セントルイス、ミズーリ州)から得た。ヒトプロトロンビン(FII)、トロンビン(FIIa)、FV、FVa、FIX、FIXa、FX、FXa、CTI、ダンシルアルギニンN−(3−エチル−1,5−ペンタンジイル)アミド(DAPA)、および抗ヒトFV MoAb AHV−5146(A1−A2ドメインの残基306〜506に結合)は、Haematologic Technologies(エセックス・ジャンクション、バーモント州)から得た。ウシ血清アルブミンは、Calbiochem(サンディエゴ、カリフォルニア州)から;rTF(デイドイノビン)は、Siemens Healthcare Diadnostics(ディアフィールド、イリノイ州)から;ヒトプロテインSは、Enzyme Research Laboratories(サウスベンド、インディアナ州)から;線虫抗凝血タンパク質(NAP)c2およびマダニ抗凝血ペプチド(TAP)は、Corvas International(サンディエゴ、カリフォルニア州)から得た。使用した抗ヒトFVIII MoAbsのうち、ESH−8は、Sekisui Diagnostics(スタンフォード、コネチカット州)から;8D4は、agiftofマーク・ジャックマン博士(ルーヴェン、ベルギー)から;A1ドメインに対し指向性のあるC5は、実験室で調製した。FVIIIは、Bayer Healthcare(バークレー、カリフォルニア州)から寄贈された。組換えTFPI;可溶性TF(残基1〜218);ヒトFVIIaのWTおよび変異体S195A(キモトリプシンナンバリング;iFVIIa)、T99Y、およびE154A;およびプロトロンビンS195Aは、記載されるように生産し、特性解析を行った。ヒルゲン、MoAbである抗マウスTF 21E10、抗ヒトFVIIa 12C7、抗マウスFXI 14E11および抗ヒトFXI O1A6は、以前に特性解析を行った。阻害性の抗TFPIポリクローナル抗体、抗ヒトFVIIa 3G12、および抗ヒトTF 5G9 MoAbは、本発明者らが作製した。
血液灌流実験 TFで被覆されたガラスカバースリップを、壁せん断速度300s−1で静脈血により灌流した。Zeiss Axiovert 135M/LSM410およびPlan−Apochromat 40×/1.40NA油浸対物レンズ(Carl Zeiss AG、オーバーコッヘン、ドイツ)を用いて、メパクリンおよび特異的抗体でそれぞれ染色した血小板/白血球およびフィブリンを可視化した。体積を算出するための画像解析を、本明細書に記載されるように実施した。
ヒト未処理または再構成された血小板に富む血漿(PRP)でのTG分析 PRPまたは再構成されたPRP中のTGを、本明細書に記載されるように評価した。PRP中の血小板を、相同な血小板欠乏血漿(PPP)を用いて180・103/μLに調整し、CTIを30〜50μg/mLで添加した。再構成されたPRPは、洗浄済み血小板を180・103/μlでPPP中に再懸濁して調製した。トロンビン生成(TG)は、360μM蛍光発生性の7−アミド−4−メチルクマリンにカップリングされたベンジルオキシカルボニル−グリシル−グリシル−L−アルギニンcoupledto(Gly−Gly−Arg−AMC;Bachem Americas、トーランス、カリフォルニア州)をトロンビン基質として含有するマイクロタイタープレートウェル中に、規定濃度のrTFおよび/またはFIXaを18mM CaCl2とともに添加することによって開始した。Turbo Delphi2006(Borland Software Corporation、オースティン、テキサス州)を用いて、時間の関数として蛍光強度増加の速度(355/460nmの励起/放出で測定)(dF/dt)を算出し、較正曲線を用いて、トロンビン−等価物濃度(nM)に変換した。検出限界5pMの不連続2段階アッセイを用いて、TGも測定した。このアッセイでは、37℃で11分間までインキュベーションされた反応を、20mMEDTAを用いて終了させ、感受性トロンビン基質H−D−CHA−Ala−Arg−AMC・2AcOH(Pefafluor TH,Pentapharm、バーゼル、スイス)を50μMで用いて生成トロンビンを測定した。
イムノブロッティングによるFVIIIおよびFVの活性化の分析 凝固産物を、還元条件下、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって分離したが、抗FVIIa MoAbを含有する反応のみ、FVIII A1ドメインに匹敵する分子量を持つIgG軽鎖由来の混同の影響を回避するために非還元下で処理した。ポリフッ化ビニルピロリドン膜に転写したタンパク質を、抗FVIII MoAbs C5(0.5μg/mL)または抗FV AHV−5146(1μg/mL)を用いてプロービングした。既知のFVIIIaおよびFVaの量を用いて較正したOdyssey赤外線撮像装置(Li−COR,リンカーン、ネブラスカ州)を用いた赤外線検出によって、FVIIIaおよびFVaを定量した。
精製構成成分を含む反応中での凝固の活性化 0.1%ウシ血清アルブミンを含む50mM Tris−緩衝生理食塩水、pH7.4の反応は、4μM DAPAの不在/存在下、0.7nM FVIII、3nM FV、135nM FX、および1μMプロトロンビンを含んでいた。TFPIおよび他の阻害剤を標示の通りに添加した。反応を、FVIIa(200もしくは500pM)および/またはFIXa(2もしくは10nM)を含むrTF(50または400pM)に2.5mM CaCl2を添加して開始し、37℃で標示された時間の間インキュベーションした。10mM EDTAで反応をクエンチした後、S−2765(180μM)を用いて生成FXaを測定した。FVIIIa凝血原活性をFIXa依存的なFXa生成として測定した。すなわち、新生のTF−FVIIa−FXa複合体によって生じたFVIIIa凝血原活性は、FVIIaおよびFIXaにより個々に開始された反応中で生産されたFXaの量を、FVIIa/FIXaを組み合わせて開始された反応中のものから差し引くことによって算出した。標示されている場合には、200nMレピルジンを使用して、混入した可能性のあるトロンビンを不活性化した。
マウスにおける塩化鉄により誘導された血栓症 動物の処置は、実験動物の管理と使用に関する指針(Guide for Care and Use of Laboratory Animals)を満たし、TSRI動物管理使用委員会によって承認された。1滴の0.8μLの7%(0.26M)または8%(0.30M)のFeCl3・6H2Oを頸動脈に3分間;または0.4μLの4%(0.15M)液滴を大腿静脈に1分間用いた後に、リンスすることによって、血管の傷害をC57BL/6Jマウスに誘導した。抗体を、カテーテル挿管された頸静脈内に、ボーラス注射によって投与した。FVIIIおよびFVIIIaを、ボーラス注射(1.4pmoles)によって投与した後、0.47pmoles/分の速度の継続的な輸注を15分間維持した。傷害の開始後の最初の閉塞までの時間および流動指数を、当技術分野に記載されるように定量した。
試験の承認 ヒト対象を含む試験は、任命された治験審査委員会によって承認された。ヒトボランティアから試験に参加するためのインフォームドコンセントを得た後に、血液を採集し、確立された手順に従って実験を実施した。
統計 群の分散は、ルビーンの中央値およびバートレット検定を用いて評価し;差は、一元ANOVA検定またはクラスカル−ウォリス検定の後に、多重比較のためにテューキー検定およびダン検定をそれぞれ用いて評価した。データは、等分散性を得る必要があった場合には、y=log10yとして変換した。使用したソフトウェアパッケージは、GraphPad Prismバージョン7(GraphPad Software、ラホヤ、カリフォルニア州)およびXLSTAT(Addinsoft、パリ、フランス)である。
実施例34
結果
TF経路はin vivoでFVIIIを活性化する。 以前に示されているように、接触相のFXIIおよびTFは、塩化鉄により誘導された頸動脈閉塞モデルで、実験的な血栓症に寄与するが、どのようにしてこれが起こるのかは依然として不明である。本発明者らは、TF機能かまたはFXIIaによるFXIの活性化を遮断するモノクローナル抗体(MoAb)が独立して、7%(0.26M)FeCl3に起因する血管壁の付傷後の閉塞を低減することを見出した(図11A)。8%(0.3M)FeCl3による付傷の後では、同じMoAb濃度は効果がなかったが、さらに高い用量の抗FXI MoAb−抗TFのそれではなく−は、やはり血栓症を防止した(図11A)。このように、さらに重度の付傷の後であっても、血栓形成は、FXIIa−FXIaによるFIXaの生成を必要とした。注目すべきことに、後者の条件下では、個々では抗血栓活性を持たない低用量の抗TFおよび抗FXI MoAbを組み合わせることによって、動脈の閉塞が有意に低減し(図11A)、このことは、血栓形成のこの内在性凝固依存的なモデルにおけるTF経路への役割を確定する。このように、TFは、内在性テナーゼプロテアーゼであるFIXaに不可欠な補因子であるFVIIIの活性化に寄与する可能性がある。大腿静脈に可視化されたように、FVIIIa−しかしFVIIIではなく−は、FeCl3誘導性のフィブリン沈着に対する低用量の抗TF/抗FXI MoAbの組合せによる阻害を防止したが、高用量の抗FXIのみによる阻害を防止しなかった(図11B、図11C)。これらの結果は、TF−FVIIaまたは代替経路により生成されたFIXaが、外因的に供給されたFVIIIaを使用して血栓症を惹起したことを除外するものであり、このことは、TF−FVIIaがin vivoでFVIIIの活性化に寄与するという概念を支持する。
この概念を支持する実験的なエビデンスを得るために、血小板に富む血漿(PRP)中のトロンビン生成(TG)を測定した。TFPIを遮断する阻害性ポリクローナル抗体と、FXIIaによるFXIの活性化を防止するトウモロコシトリプシン阻害剤(CTI)とを含有する反応中、本発明者らは、互角のTGを産生するFIXaまたは組換え再脂質化TF(rTF)の濃度範囲を定めた(図11D、左)。同じ濃度で、しかしTFPIによる封鎖の不在下では(図11D、右)、rTFは、殆どトロンビンを生産せず反応が遅かったが、FIXaの同時添加ではTGを増強した。このFIXa惹起性のTGの増幅は、FVIIIを<10%血漿濃度で必要としたが、FIXを必要とせず(図11E)、このことは、追加のTF依存的なFIXa生成を除外する。Since FVIII欠損患者で重度の自然発生の出血を防止するのに充分であることが知られているFVIII濃度によって、相乗的なTG増幅をサポートすることができ、このアッセイの条件は、PRP中の止血能を査定するために適切であるように思われる。
TF−FVIIa−FXa複合体は、FVIIIを活性化する。 TF誘導性の内在性凝固のプライミングの機構を、感度の高い2段階TGアッセイを用いて研究した。正常な血小板を用いて再構成されたFVII欠損血漿では、野生型(WT)FVIIaの存在下の0.15pM rTFは、トロンビンを殆ど生産せず(11分で<20pM)、活性部位変異体FVIIa S195A(iFVIIa)またはFIXaのみによって生成されたものと同様であった(図12A)。しかし、rTFおよびFVIIaWT−しかし不活性のFVIIa S195Aではなく−は、FIXaとの組合せで、TGを5〜11分で約5〜20倍に増幅した(図12A)。そのため、このアッセイでTF−FVIIaおよびFIXaにより別々に生産されたトロンビンの付加的な量は、2種の組合せにより産生された量よちもはるかに少なく、このことは、トロンビン生成の上流に、TF開始性凝固と内在性凝固とを連係する相乗的な相互作用があることを実証する。
トロンビンとは別に、FIXa依存的な凝固に必要なFVIIIaを産生できた反応を特定するために、本発明者らは、TF−FVIIaおよびFXaを潜在的なFVIIIアクティベーターであるものと考えた。まず、全ての反応物が生理的に妥当な濃度であった際に、FXを含まないTF−FVIIa−またはFVIIaを含まないTF−FX−は、FVIIIa活性を生じないかまたは最小限生じるが、FXを含むTF−FVIIa−FXaを生成する−は、実質的な量のFVIIIaを生産することを決定した(図12B)。TF−FVIIaと会合しているFXaとは対照的に、TF−FVIIaから放出された後のFXaの機能を区別するために、本発明者らは、線虫抗凝血タンパク質(NAP)c2を含む安定なTF−FVIIa−FXa複合体を形成した。形成された複合体中では、FVIIaの触媒活性は、S195A活性部位変異(iFVIIa)によって除外されたが、一方で、FXaは、NAPc2複合体に捕捉された際に触媒機能を保持することが知られている。この複合体は、再構成されたFVII欠損PRP中ではTGを誘導できないが、FIXa誘導性のTGを顕著に増強し(図12C)、このことは、TF−FVIIaと会合しているFXaがFVIIIを活性化することができることを示唆している。FXaを阻害するTFPIを用いて形成された同様の複合体は、不活性であったに過ぎず、PRP中でFIXa依存的なTGをサポートしなかった(図12C)。驚くべきことに、NAPc2により安定化された予め形成された複合体TF−iFVIIa−FXaは、精製FVIIIを活性化することができたが、相同な補因子FVを活性化できなかった(図12D)。TAPを用いた特異的な阻害は、安定化されたTF−iFVIIa−FXa複合体中のFXaが、FVIIIを活性化すること(図12D)を確定し、このことは、TF−FVIIaと会合したままの新生FXaが、同じ機能を発揮できること(図12E)を暗示している。
次に、本発明者らは、プロトロンビナーゼ複合体を形成することによって凝固を惹起する遊離のFXaが、プロトロンビナーゼ補因子であるFVaを生成する際のその機能と類似して、生理的な状況でFVIIIアクティベーターとしての役割を果たすことができたのか否かを検討した。上記の実験で使用された同じ凝血原膜上では、FVaの濃度を増加させてゆくと、低濃度のFXaによるプロトロンビンの変換を顕著に刺激した(図12F)。これに対して、同じFXa濃度によるFVIIIa活性の生成(図12G)またはFVIIIのタンパク質分解性切断(図12H)は、同じ濃度範囲でFVaを添加することによって次第に阻害され、このことは、FVaに結合しているFXaが、FVIIIを効率良く活性化することができないことを標示する。このように、TF−FVIIaと会合している新生FXaは、FVIIIを優先的に活性化して、内在性凝固経路を惹起する。それに続いて起こるTF−FVIIaからFVaを含むプロトロンビナーゼ複合体内へのFXaの移送は、直接的なTF−誘導性の凝固への遷移を指し示す。
TF−FVIIa−FXa複合体は、トロンビンとは独立してFVIIIを活性化する。 FVIIIaを生成する際の新生のTF−FVIIa−FXa複合体およびトロンビンの相対的な役割を査定するために、精製FX、プロトロンビン、FVIII、およびFVと混合した、rTFを帯びたリン脂質ベシクル上における、プロ補因子の活性化を研究した。FVIIaの添加後のFVIIIの活性化は、DAPAを用いてトロンビンを遮断することによって、または正常なプロトロンビンを不活性のS195A変異体に置き換えることによって、部分的に阻害されたが、両方の条件下で、約15%のFVIIIaが依然として検出可能であった(図13A)。重要なことに、トロンビンは、溶液相での効率の良いFVIII切断から予想されたように、さらに多くのFVIIIaを生成できたにも関わらず、活性トロンビンの不在下でTF開始性の反応により活性化されたVIIIの量は、膜にアセンブリされたFVIIIa−FIXa内在性テナーゼ複合体の全機能に用いられるのに充分であった(図13B)。内在性凝固阻害剤を含有するPRPでの結果に一致して(図11Dを参照)、TF−FVIIaによる直接的なFXa生成を顕著に抑制するTFPIは、TF開始性の反応において機能的なFVIIIa−FIXa複合体の形成に限定的な効果を及ぼした(図13C)。後者はまた、補因子プロテインSと併せたTFPIαによる阻害に抵抗性を有した−プロテインSのみによる部分的な阻害は、限られた凝血原表面に対する競合に起因する可能性がある。PRP中、新生FXaによるトロンビン非依存的なFVIIIの活性化が観察されたことに一致して、TF−FVIIa−XによるFVIIIの活性化は、FVIIIに結合するフォン・ヴィルブランド因子(VWF)による影響を受けなかった。
rTFが、生理的な血漿の環境中で、トロンビンフィードバック反応とは独立してFVIIIの活性化をサポートできることを直接的に実証するために、本発明者らは、ヒルゲン(63−O−スルホ−Tyr−ヒルジンを使用して、補因子の活性化に必要なトロンビンエキソサイトIを遮断した。ヒルゲンは、トロンビンによるFVIIIの活性化を用量依存的に阻害したが、TF−FVIIa−FIXaによって生成されたFXaを阻害しなかった。CTIと、FXIaによるFIXa生成の増加を通じたフィードバックTG増幅を遮断するための抗FXI MoAbとを含むPRP中では、2μMヒルゲンは、FIXa依存的なTGを遮断し(図13D)、このことは、この反応が、トロンビンフィードバックによるFVIIIの活性化を必要としたことを実証する。これに対して、同じヒルゲン濃度では、rTFと組み合わせたFIXaによるTGを阻害できず、FIXaおよびrTFを別々に添加した際にTGを検出できなかった場合でさえも阻害できなかった(図13E)。このように、TF経路は、トロンビンフィードバックループが阻害されると、血漿中のFVIIIinを活性化する。注目すべきことに、WTまたはヒトのTFのノックインマクロファージから生成されたマウスのマイクロベシクルを用いた実験によって、トロンビン非依存的なFVIIIa生成が、ヒトまたはマウスのTF−FVIIaを用いて天然の凝血原表面にも起こったことが示された。
新生のTF−FVIIa−FXa複合体による内在性凝固経路の活性化は、直接的な外因性経路の機能とは独立してトロンビン生成に寄与する。 どのようにしてTF−FVIIaによるFXa生成が、直接的な外因性経路のTGとは対照的に、内在性経路の活性化に別個に寄与するのかを、さらに明らかにするために、2種のFVIIa変異体を試験した−T99YおよびE154A。これらの変異体は、FX切断活性を保持するが、FXa放出が不全であるために非常に僅かな基質ターンオ−バーを呈示する。リン脂質不含のアッセイで、またはリン脂質が再構成されたTFを用いると、FVIIa変異体は、最初のバーストを生じたが、FVIIaWTとは対照的に、FXa生成を持続することができなかった(図14A)。注目すべきことに、両方の変異体を含むTF複合体は、FXa依存的なFVIIIの活性化をサポートすることにおいてFVIIa WTと互角であり、重要なことに、TFPIαは、上記の生理的な濃度(10nM)では、このFVIIIa生成の経路にはっきりとした影響を与えなかった(図14B)。FVIIIとは大きく対照的に、FVIIa変異体は、FVの活性化を誘導できず、TFPIαは、FVIIaWTにより誘導されたFVa生成を阻害した(図14C)。
FXaターンオ−バー不全のどちらのFVIIa変異体も、FIXaが利用可能である際には、機能的なFVIIIa−FIXa内在性テナーゼ複合体の形成をサポートしたが、FVIIaエキソサイト変異体であるE154Aのみが、酵素原FIXが代わりに存在した際に、FVIIIa−IXa活性を生じた(図14D)。このことは、FVIIa T99YがFVIIa E154Aとは異なり、FIXを活性化する能力を持たないことによって説明される。このように、FIXaを生成する能力を補完することから、TF−FVIIaの新生FXa産物による抗血友病FVIII補因子の直接的な活性化は、TFPIαによる阻害性制御に先立ち、内在性経路の凝固を可能にする。
これらの結論を、追加のTFPIαの潜在的な供給源として正常な血小板を用いて再構成されたFVII欠損血漿中−内在性凝固阻害物質を含有する−で、さらに試験した。これらの条件下、FVIIa WTは、抗FVIII中和MoAbの存在下でTGを誘導したが、E154A変異体またはT99Y変異体は誘導せず(図14E)、このことは、変異体が、血漿環境中でトロンビンを直接的に生成できなかったことを確定する。FVIIIの阻害がない場合、FVIIa E154Aは、WTに比べてほんの僅かに遅れてTGを誘導したのに対し、FVIIa T99Yは、明らかに効率が低下した。FXIaの阻害によって、FVIIa T99YによるTGがさらに低減したが、FVIIa WTまたはE154Aには中程度に影響を及ぼしたに過ぎなかった(図14F)。これらのデータは、後者のFIXaならびにFVIIIaの生成に一致する。
トロンビン非依存的なFVIII活性化がこれらの反応で起こったことを直接的に証明するために、本発明者らは、まず、トロンビンエキソサイト遮断剤であるヒルゲンが、FVII欠損血漿中でFIXa誘導性のTGを消失させることを立証した(図14G)。同じヒルゲン濃度の存在下、変異体FVIIa E154AによるTGは、全体的にFVIII依存的であったが、FVIIa WTではそのような依存性はなく、それに対し、FVIIIの阻害がない場合、FVIIa WTおよびE154Aによって誘導されたTGは同様の規模であったが、後者によるTGは明らかに遅延した(図14H)。この遅延は、変異体FVIIaによる直接的なFXa生成の不全が、初発のプロトロンビナーゼアセンブリに用いられるFVa補因子の生成を低減できたことに起因した可能性がある。実際に、FVaの添加によって、FVIIa E154AによるFVIIIa依存的なTGでは、この遅延は正常化された(図14I)。したがって、FVaを正常なPRPに添加することによって、TF開始性のTGが加速されたが、TFPI機能の遮断を超えるものではなかった。これらのデータは、FVの活性化に寄与するFXa生成に対するTFPIによる制御によって、プロトロンビナーゼ活性が調節されることを標示し;TF開始性の凝固の間のFVIIIの活性化によって、トロンビンフィードバック反応と独立して、FVIIIa−FIXa内在性テナーゼ活性が生じ、TFPIによる制御を逃れるという概念を補強する。
本発明者らは、次いで、原理証明の阻害剤を特定するために、FVIIaに対するMoAbのライブラリーをスクリーニングした。このような阻害剤によって、FVIIa変異体T99Yを用いて見られた機能的な特性のシフト−FVIIIの活性化の喪失ではなく、効率的なFXaおよびFIXa生成の喪失−をまとめることができた。完全な阻害性MoAbである3G12とは対照的に、抗体12C7は、FVIIIの活性化に効果を及ぼさなかった(図15A)。さらに、それは、FIXaが存在した際に、内在性テナーゼ活性の生成に有意な効果を及ぼさなかったが、FIXが代わりに供給された際には、顕著に阻害した(図15B)。MoAb 12C7は、PRP中でTGを減弱させるが、FVIIa T99Yを用いて見られたように、TGをFXIa依存的なものとした(図15C)。このように、変異体FVIIa分子および阻害性抗体を用いた結果により、一致して、TF−FVIIa複合体が、別個の反応で内在性凝固経路および外因性凝固経路を開始できることが示された。
TFによる内在性経路の活性化は、血流中のフィブリン形成に繋がる。 ex vivoでの血流中、直接的な初発のトロンビン生成が制限された際に、TF−FVIIaが血栓形成を開始できるか否かを評価するために、壁せん断速度of300s−1でのFVIII依存的なフィブリン形成に充分な低さの濃度で、TFを表面に固相化した。WT FVIIaを用いて確立されたこれらの条件下で、不活性のFVIIa S195Aよりも多くの血小板の接着を支持したにも関わらず、FVIIa T99Yは、血栓形成活性を減じていた(図16A、図16B)。FVIIa T99Yを含有する血液に10pM FIXaを添加することによって、FVIII依存的なフィブリン形成が復活したが、不活性のFVIIa S195Aを含有する血液では復活しなかった(図16A、図16B)。これに対して、直接的なTGにおいてT99Yのように欠陥のある変異体FVIIaE154A(図14Eを参照)は、FIXa不在下で再構成されたFVII欠損血液に添加された際に、FVIIa WTと同様にFVIIIa依存的な血栓形成をサポートした(図16A、図16C)。このことによって、フィードバックループを活性化する直接的なTF依存的なトロンビン生成が限定された低いTF環境で、止血を亢進する可能性を有した内在性テナーゼ複合体中で機能するFVIIIaを、TF−FVIIaの新生FXa産物が直接的に生成することができることが確定された。
実施例35
考察
ここに提示される知見は、外因性TF−FVIIa複合体の新規の機能を描き出すものであり、言い換えれば、トロンビンフィードバックループとは独立した、FVIII抗血友病補因子の選択的なフィードフォワード活性化を示すものである(図1B)。この新生FXaの特異的な反応は、PRP中の生理的な凝固阻害物質または精製系中のTFPIαによる制御を逃れる。これまで認識されていたTF−FVIIaのFIXa抗血友病プロテアーゼ生成能と併せて、直接的なFVIIIの活性化は、TF/FVIIa開始性凝固の中に完全に組み込まれかつ共通の凝固経路の古典的な直接的な活性化に先立つ、FVIIIa−FIXa内在性テナーゼ活性への経路を完成するものである。
新生のTF−FVIIa−FXaは、内在性テナーゼの形成を容易にするFVIIIaを生成するが、プロトロンビナーゼ活性のためのFVaをもたらさない。後者の生成は、TF−FVIIaからドッキング解除されたFXaを必要とし、それゆえ遊離のFXaは阻害性の制御に曝露される。したがって、新たに特定されたTF−FVIIa−FXaの機能は、血栓形成促進性のFVaを増加させることなく、活性の止血促進性の抗血友病FVIIIa補因子の蓄積を可能にする。このことは、互角の抗血栓効力を有し、ビタミンKアンタゴニストよりも少ない影響を止血に及ぼす標的化FXa抗凝血剤にとって適切であることがある。注目すべきことに、そのような機構は、トロンビンフィードバック反応およびFXI活性とは独立しており、それゆえトロンビン阻害剤または最近妥当性が確認されたFXIを標的としたストラテジーを用いた治療の間、止血をサポートすることがある。
補因子の活性化の選択性は、TF−FVIIaとの複合体であるかまたはTF−FVIIaから放出されるFXaの別個の機能的な特性を標示する。凝固補因子−酵素複合体は、典型的には、迅速なトロンビン生成のための効率の良い基質ターンオ−バーの方にギアを入れられるのに対し、TF開始複合体は、進化を通じて、その安定性に有利となるような機構を保持しているようである。FXは、酵素原から酵素への転移による影響を最小限に受ける延伸した境界面を通じて、TF−FVIIaと相互作用する。この境界面では、様々な種を通じて保存されているFVIIaの残基E154が、基質により占有されているプロテアーゼの活性部位から立体配座の変化を伝え、それによって次の産物の放出を調節することがある。この立体配座のスイッチの排除は、TF−FVIIaによる巨大分子基質の活性化と産物FXaのターンオ−バーとを分離するには充分である。そのため、変異体FVIIaのE154Aは、流れの下の血小板に富む血漿および全血中における、TF−FVIIaに会合している新生FXaによる直接的なFVIIIの活性化、ならびにこの新規の経路のもたらすトロンビン生成および血栓形成への寄与に関し、情報を提供する助けとなった。
TF凝固開始複合体の安定性は、凝固の活性化と先天免疫とを連係するというTF−FVIIa−FXaの持つ重要なシグナル伝達の役割を保持することの、進化上の利点を表す可能性がある。効率良くFVIIIを活性化することに一致して、FVIIa T99Yは、TF−FVIIa−FXaによるプロテアーゼ活性化受容体(PAR)2の活性化を媒介する際に、完全に機能性である。さらに、FVIIIa生成に見られるように、TFPIαによる機能阻害に対する抵抗性もまた、内皮細胞中でTF−FVIIa−FXaによって誘導されるPARシグナル伝達の重要な特長である。このシグナル伝達複合体は、マウスおよびヒトでは、FXa結合パートナーである内皮プロテインC受容体(EPCR)の動員によって、さらに安定化される。TF−FVIIa−FXa−EPCR複合体について鍵となる先天免疫のシグナル伝達の役割が、最近、樹状細胞で明らかになり、樹状細胞では、toll様受容体4によるインターフェロン調節遺伝子の誘導に不可欠である。代替的なEPCRリガンドである活性化プロテインCによるこの経路の負の制御は、FVおよびプロテインSの持つ古典的な抗凝血補因子機能を利用する。このように、これらのおよび他の従来になかった凝固系の機能は、多様な役割を免疫、止血、傷害修復に同時に提供する、同じ機構論の特長を利用する可能性がある。
本明細書の開示は、止血をサポートするかまたは血栓症に寄与する際のTFの別個の役割を定義するための、生化学的なベースを提供する。直接的に血栓形成を惹起する際のTFの部分的な機能を定義するか、または止血に適合する内在性経路の活性化をもたらすための、FVIIaの変異体または記載される抗体試薬の適用を想定することができる。突き詰めれば、このことは、最近のおよび将来の新しい抗凝血剤が止血および血栓症におけるTFの二重の役割に及ぼす効果を、選択的に査定する可能性に繋がるはずである。ここに提示された凝固に関する新規の概念はまた、止血剤の開発および評価のための潜在的な意義を有する可能性があり、このような止血剤は、血管性の基礎疾患を有する患者において、有害な血栓性の合併症を回避するとともに、重度の出血合併症からの保護を同時にもたらすことが可能である。
実施例36
凝固活性
材料 様々なrTF濃度、100pM FVIIa、および135nM FXを含むFXa生成アッセイを用いて、イノビンrTF(Siemens Healthcare Diagnostics)を、参照ロット(#53691;13.9nM rTF)に対し較正した。参照ロットは、80%ホスファチジルコリン(PC)/20%ホスファチジルセリン(PS)mol/molリン脂質ベシクル(Avanti Polar Lipids、アラバスター、アラバマ州)を用いて較正されたプロトロンビナーゼ活性により測定された101.4μM凝血原リン脂質を含み、10mM 4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−エタンスルホン酸(HEPES)、0.15M NaCl、pH7.4中で超音波処理された。トロンビン生成性のFVIIIaは、190nM FVIII、19nM FIIa、および5mM CaCl2中、37℃で30秒間インキュベーションした後、トロンビンを中和するために36nMレピルジン(組換え[Leu1−Thr2]−63−ジスルホヒルジン;レフルダン,Bayer Corp、ピッツバーグ、ペンシルベニア州)を加えて調製した。正常なPPPは、地元にて、10.9mMクエン酸三ナトリウムを含有する静脈血を25℃、1,500gで10分間遠心分離することによって調製した。FVII、FVIII、またはFIXの重度の先天性欠乏症(<1%)の患者由来のPPPは、GeorgeKing Bio−Medical(オーバーランドパーク、カンザス州)から;正常な血漿の免疫親和性枯渇によって調製されたFIX欠損PPPは、Haematologic Technologiesから得た。
血液灌流実験 0.2mg/mLポリ−L−リジンを用いて37℃で6時間処理したガラスカバースリップを、rTFを用いて37℃で18〜20時間被覆し、緩衝生理食塩水でリンスし、125μm高のシリコンガスケットの付いた矩形のフローチャンバーに取り付けた。共焦点顕微鏡の解析用ステージ上に配置した。プラスチックシリンジを用いて、静脈血を終濃度10.9mMのクエン酸三ナトリウム中に採集した。CaCl2を添加して1.29mM Ca2+を得た後に、シリンジポンプ(Harvard Apparatus、ホリストン、マサチューセッツ州)を用いて初発の壁せん断速度300s−1で灌流を維持した。WTおよび変異体のFVIIaを用いた実験については、50μg/mL CTIおよびアピラーゼ(10U/mL ADPase活性)を補充した0型のクエン酸添加血液中の細胞を、1500gで7分間の遠心分離のサイクルの連続により、洗浄して血漿不含とした。1回目のサイクルで、血漿は、5U/mLアピラーゼを含有する等体積のカルシウム不含のタイロード緩衝液、pH6.5に置換し;次いで、緩衝液および1.25U/mlアピラーゼに置換し;最後に、ヒトFVII欠損血漿に本来の血液の体積になるまで置換した。再構成された血液または天然の血液中の血球容量および血小板の計数は、±10%以内であった。血小板/白血球は、灌流前に、キナクリン−HCl(メパクリン;Sigma)を濃度10μg/mLで添加し、室温で15分間インキュベーションすることによって可視化した。フィブリンは、Alexa Fluor 546(Invitrogen)で標識したマウスモノクローナルIgG(HB−8545;American Type Culture Collection、マナサス、バージニア州)を50μg/mL濃度で血液中に使用した際の結合を可視化した。上記抗体は、ヒト/マウスフィブリンβと相互作用するが、フィブリノーゲンBβ鎖には作用しない。
ヒトの天然のまたは再構成されたPRPのTG分析 PRPは、終濃度12.9mM クエン酸三ナトリウムとなるように採集した血液から、25℃、250gで10分間遠心分離して調製した。1,500gで10分間遠心分離したPRPから得た相同なPPPを用いて希釈することによって、血小板数を180・103/μLに調整した。再構成されたPRPを、洗浄済みの血小板を用いて調製した。この血小板は、1/5体積の酸性クエン酸デキストロース(71mMクエン酸、85mMクエン酸三ナトリウム、および111mMデキストロース、pH4.5)および5U/mlアピラーゼと混合した正常なPRPから調製した。1,500gで10分間遠心分離した後、血小板ペレットを、正常であるかまたは特定の凝固因子を欠失しているかのどちらかでありかつ予め30〜50μg/mL CTIを添加されたPPPに再懸濁し、最終的な血小板数を180・103/μLとした。トロンビンによる基質Gly−Gly−Arg−AMCの切断によって生じる、反応中の蛍光強度を、分光蛍光光度計にて37℃で40分までの間、継続的に測定した。トロンビンのバーストの傾き(nM/分)は、トロンビン濃度のピーク高を、誘導から発生までの時間マイナス遅延時間、すなわち誘導から3nM生成トロンビンとなるまでの時間として定義されるもので割ることによって算出した。内在性トロンビン生成能(ETP、すなわち総生成トロンビン活性)は、TG曲線下の面積から決定した。不連続2段階TGアッセイは、0.15pM rTFおよび18mM CaCl2を、30μg/mL CTIおよび400pM WT FVIIaまたはiFVIIaを含みかつ20pM FIXa不在/存在のFVII欠損PRP中に添加することによって開始した。他の実験では、TGを、TF−iFVIIa−FXa−TFPIまたはTF−iFVIIa−FXa−NAPc2によって誘導した。5nM FXa、10nM TF、10nM iFVIIa、および40nM TFPIまたはNAPc2を、2.5mM CaCl2の存在下、37℃で120秒間インキュベーションすることによって、安定な複合体を予め形成した。複合体を、FVII欠損PRP中に添加した後、37℃で8分間インキュベーションした。
精製構成成分を含む反応中での凝固活性化 TF−FVIIaを含む安定なFXa複合体によるFVIIIの活性化は、TFPIα,の存在または不在下、FVIII、FV、およびレピルジンを含有し、37℃での30〜120秒間のインキュベーションを伴う反応中にて試験した。唯一の活性プロテアーゼとしてFXaを含む安定な複合体は、1)200pM FXa、400pM rTF、500pM iFVIIa、40nM NAPc2、および2.5mM CaCl2;2)100pM FXa、50pM rTF、100pM iFVIIa、5nM NAPc2、および2.5mM CaCl2を含む反応中で、37℃で120秒間インキュベーションして調製した。添加されたFVaが遊離のFXaによるFVIIIaの生成に及ぼす効果は、10pM FXaを含む反応中で、50pM rTFおよび基質とともに37℃で180秒間インキュベーションして試験した。ヒルゲンがFIIaによるFVIIIaの生成に及ぼす阻害効果は、0.5nM FIIaを含む反応中で、50pM rTFおよびFVIIIとともに37℃で180秒間インキュベーションして試験した。
TF−FVIIaによる基質のターンオ−バーは、リン脂質を含まず、10nM FVIIa、1μM FX、および2μM 可溶性rTF1−218を含有する反応における、FXaの生成から評価した。FVaは、プロトロンビン活性化アッセイにて力価測定し、このアッセイでは、10pM FXaを1μM プロトロンビン、50pM rTF、および700pM FVIIIとともに180秒間インキュベーションした。
TF−FVIIaによるFIXの活性化は、150nM FIXを50pM rTF、200pM FVIIa、および2.5mM CaCl2とともに含有する反応にて、37℃で30分間インキュベーションして試験した。.10mM EDTAを用いて反応を終了させた後、エチレングリコール(37%、体積/体積)の存在下、発色基質CH3SO2−(D)−CHG−Gly−Arg−パラ−ニトロアニリド・AcOH(Pefachrome FIXa、Pentapharm、バーゼル、スイス;1mM)を用いてアミド分解活性を動態学的に測定することによって、FIXa活性を決定した。FIXaの較正曲線は、既知濃度のFIXaを用いて作製した。
FVIIIaの凝固活性の測定 FVIIIaが生成した反応物のアリコートを、FVIII欠損血漿(George King Bio−Medical)中に添加し、次いで、10nM FIXa、20μM PL および8mM CaCl2と混合した。FVIIIaの凝固活性は、トロンビンにより活性化された既知濃度のFVIIIaを用いて作製した較正曲線を使用して定量した。
マウスにおける塩化鉄により誘導された血栓症 傷害後の最初の閉塞までの時間とは、非傷害の動脈で測定された値の<10%にまで血流が減少するのに必要な時間である。流動指数とは、30分内に傷害のある動脈を通って流れる血液体積(mL/分で測定された流量および毎秒サンプリングされた流量の積分)と、非傷害の動脈における流量の期待値(傷害前の1分間に測定される流量に30を乗じて算出される)との比である。
実施例37
高感度かつ迅速なトロンビン生成アッセイ
本明細書に開示されるのは、抗血友病内在性経路によって血漿中に生産される初発の少量のトロンビンを選択的に決定するための、高感度かつ迅速なトロンビン 生成 アッセイの組成物および方法であり、これらによって、先天性および後天性の 出血 障害および血栓性の 合併症をさらに正確に査定することが可能になる。
血液凝固酵素であるトロンビン(FIIa)は、安定なフィブリン凝塊を形成することにより、大出血の防止および自然発生の出血の停止(すなわち「止血」)を担うが、その一方で、FIIaの過剰形成は、心臓発作および脳卒中を含めた致死性の血管の疾患「血栓症」を引き起こすことがある。現在広まっているFIIa生成(TG)のスキームでは、組織因子(TF)と活性の因子(F)VIIaとの外因性経路複合体が、タンパク質分解反応のカスケードを開始し、このカスケードは、活性の補因子FVaとともにプロトロンビナーゼ複合体を形成する第1相で、FXaを産生し、初発の少量のFIIaを生成する。初発で生産されたFIIaは、プロトロンビナーゼ複合体の活性を増強することによってFIIa生成(TG)を増幅し、第2相の生成FIIaのバーストに導く。本発明者らは、初発のFIIaがプロトロンビナーゼ複合体の活性を増強することに資する分子機構が、以下の通りであることを発見している。すなわち、1)初発のFIIaが、プロトロンビナーゼ活性に不可欠な活性のリン脂質表面を提供する、血小板の活性化を惹起する;2)FIIaが、FVをFVaへと直接的に活性化することによって、プロトロンビナーゼ複合体の形成を増加させる;3)FIIaが、内在性のFVIIIa−FIXa経路の活性化によって、FXaの生成を促進する、である。FIIaは、必須の補因子であるFVIIIを、プロテアーゼFIXaのための活性のFVIIIaへと、直接的に活性化する。さらに、FIIaは、FIXをFIXaへと間接的に活性化するが、この活性化は、酵素原FXIの酵素FXIaへの活性化によって媒介され、FXIaは、次いで、FIXをFIXaへと活性化する。最後に、大量の生成FIIaは、フィブリノーゲンを、止血および血栓症に不可欠なフィブリンに変換する。このように、最初に生成されるFIIaは、血液凝固の程度の決定要因として機能し、このことは、初発のTGを決定することによって、出血障害および血栓性の合併症をさらに正確に査定するための診断のアプローチがもたらされることを示唆する。
本願で開示されるTF依存的なFVIII活性化経路は、FVIIIのフィードバック活性化の前にFVIII活性化機構がTF−FVIIa−FXa開始複合体中の新生FXaによって媒介されるものであり、血漿中の初発のTGにおいて鍵となる役割を持つ。新規の機構論の概念に基づき、本発明者らは、血漿中のFVIIIa依存的な初発のTGを決定するための新規の組成物および方法を開示している。本アッセイでは、極端に低い濃度(例えば150fM)の再脂質化組換えTF(rTF)およびFIXa(例えば200pM)を組み合わせて添加することによって、TGを開始し、その後、FIIa基質を37℃で40分間用いて、生成FIIaを継続的にモニタリングする(いわゆる「連続TGアッセイ」)。この連続TGアッセイでは、FVIIIaは、TF−FVIIa−FXa開始複合体によって生産され、生成されたFVIIIaは、FIXaにより生成されるFXaを増加させることによって、TGを促進する。そのため、このTGアッセイは、先天性の/後天性のFVIIIa−欠損症の血友病A患者および抗血栓療法で治療されている対象における、機能的なFVIIIaのレベルと出血のエピソードとの関係を定義するための、有用なアプローチを提供する。
さらに、本発明者らは、TGの量の迅速な決定を可能にする別のアッセイを開示している。一実施形態では、この新しいアッセイは、患者でのTGを決定するための標準化および自動化された方法を提供することがある。本発明者らは、抗血友病内在性経路によって生産される初発の少量のFIIaを選択的に決定するための、迅速かつ高感度なTGアッセイの新規の構成成分および方法を開示している。この新規のアッセイによって、先天性および後天性の出血障害さらに正確な自動化された査定が可能になる。本アッセイは、従来の凝固アッセイを置き換える、臨床診断用の臨床検査として利用される可能性がある。
高感度のTGアッセイ方法を確立するために、本発明者らは、動態学的パラメーターを決定することにより、高い親和性とターンオ−バー速度とを持つFIIa基質のスクリーニングを作出し、次いで、既知濃度のFIIaキャリブレーターを用いて、較正曲線を作製した。研究にて、我々は、2種の発光発生基質H−D−シクロヘキシル−アラニル−アラニル−アルギニル−アミドメチルクマリン(AMC)(Pefafluor TH)およびブチルオキシカルボニル−バリル−プロリニル−アルギニル−AMC(V−P−R−AMC)が、検出限界約5pMの極めて低濃度のFIIa活性の定量に適していることを見出した(図17)。初発のTGは、高感度の基質を使用した「不連続2段階アッセイ」を用いて測定した。簡単に述べれば、rTFとFIXaとを組み合わせて18mM CaCl2とともに血漿中に添加することによって、TGを開始した後、37℃で5分までの間インキュベーションした。インキュベーション後、20mM EDTAを用いて反応を終了させ、高感度のFIIa基質Pefafluor THまたはV−P−R−AMCを用いて生成FIIaを測定した。アッセイでは、150fM rTFおよび200pM FIXaを組み合わせて添加することによって、健康なドナーから調製された正常な血小板を欠乏した血漿(PPP)中で、FIIaが時間依存的に生産された(図18A)。rTF(9.4〜600fM)およびFIXa(6.3〜400pM)を用いた力価測定実験では、初発のTGに2種の開始物質の用量依存性が示された(図18B、図18C)。さらに別の実験では、80%ホスファチジルコリン/20%ホスファチジルセリン(mol/mol)からなるリン脂質(PL)ベシクル(0.08〜20μM)の添加によって、PPP中の初発のTGが劇的に増強されることが標示された(図18D)。さらに本アッセイ方法の妥当性を確認するために、手動のアッセイプロトコールを用いてアッセイ内および−アッセイ間の変動係数(CV)を決定することによって、本TGアッセイ方法の再現性を検討した。アッセイ内とアッセイ間のどちらのCV値も、<15%と算出され(図19)、このことは、これが、信頼性の高いTGアッセイ方法であることを標示する。
正常なPPP中に添加された抗FVIII阻害性のモノクローナル抗体(MoAb)が、PLとともに150fM rTF/200pM FIXaによって誘導された初発のTGに及ぼす効果を試験することによって、FVIIIa依存的なTGを立証した(図20)。初発のTGを、血友病A患者から調製されたFVIII欠損PPP中で検討した。TF/FIXaおよびPLを添加することによって誘導された正常なPPP中の初発のTGに比べて、はるかに少ないTGが、抗FVIII阻害剤抗体(96、133、および176ベセスダ単位/mL)の不在および存在下の患者由来のPPP中に観察された(図21A)。1ベセスダ単位は、正常な血漿中で1単位のFVIII活性の50%を中和する阻害剤の量として定義される。さらに重要なことに、阻害剤を含まないFVIII欠損PPPに血漿由来のFVIII(0.1〜1.6IU/dL)を補充した際には、初発のTGは、用量依存的な様式で増強された(図5B)。結果は、初発のTGの不連続2段階アッセイが、FVIIIa依存的なTGが特異的に決定すること、およびそれが、血漿中のFVIIIa活性の検出では、以前に開示されている連続TGアッセイと同様の感度を有することを、明確に標示している(図5B)。このように、このアッセイを使用して、重度の血友病A患者でさらに正確にかつ迅速に出血リスクを予測することができ、それによってFVIII産物を用いた補充療法が改善される。.
ビタミンKアンタゴニストであるクマジン(ワルファリン)は、血栓性の疾患を防止するために広く使用されている。クマジン治療は、命に関わる重篤な大出血を引き起こすことがあることから、患者は、通常、国際標準比(INR)試験によってモニタリングされる。INR値は、rTFを用いた従来の凝固アッセイ(いわゆるプロトロンビン時間アッセイ)によって決定される。INR値が初発のFVIIIa依存的なTGと相関するか否かを明らかにするために、クマジン治療患者由来の各種INR値を用い、rTFおよびFIXaを添加することによって、PPP中の初発のTGを試験した。初発のFVIIIa依存的なTGは、それぞれ1.5および2.9のINRを有する患者血漿では、正常な血漿の約15%および約5%に低減したが、尤も、それよりはるかに高いINR値を有する血漿ではTGは完全に消失した(図22)。これに対して、血漿中にFIXaを含まず1.2pM rTFのみを添加することによって決定されたFVIIIa非依存的なTGは、さらに低いINRでさえ消失した。それらの結果は、直接的なTF経路によるFVIIIa非依存的なTGとは対照的に、抗血友病内在性経路によるFVIIIa依存的なTGが、クマジン治療患者中で持続されることがあり、それによりおそらくは止血に寄与することを示唆している。このように、ここに発明された本アッセイ方法は、患者における出血リスクの個別化予測の助けとなることがある。また、FVIIIa非依存的なTGと依存的なTGのアッセイの組合せは、薬剤の投薬量のさらに洗練された決定を可能にすることがあり、FVIIIa非依存的なTGを決定することにより血栓症を阻害するための、一方で、FVIIIa依存的なTGを決定することにより充分な止血性の機能を保持するための、薬剤の投薬量とする。要約すると、この開示は、血漿および血液中にFVIIIa−FIXa複合体を介して特異的に抗血友病内在性経路によって生産された初発の少量のFIIaを決定するための高感度のアッセイの診断検査キットおよび方法を提供する。本キットは、rTF、FIXaや、PLなどの凝固因子および高感度のFIIa基質から構成される。本新規のアッセイは、出血の表現型の特徴をさらに正確に明らかにすること、および先天性および後天性の血友病A患者および抗血栓治療下の個体における出血リスクを予測することを、可能にするものと思われる。
プロトロンビン時間(PT)や活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)などの従来の凝固アッセイは、自動化された臨床検査として広く使用されているが、それらは、凝固反応の些少な変化の特徴を明らかにする際に、ならびに患者での大出血および血栓形成のリスク予測する際に、感度が非常に低いという決定的なデメリットを有する。一方、元々はHemkerの研究室により開発された連続FIIa生成(TG)試験は、そのような患者で、過剰凝固状態および出血性素因の診断の助けとするには充分な感度がある。しかし、凝固アッセイとは異なり、このアッセイは、自動化に馴染みかつ充分に標準化されているという点で強力なメリットはなく、それはなぜなら、このアッセイ方法が、非常に時間のかかるものであり(例えば40〜60分)、アッセイ内およびアッセイ間に高い変動性を有するためである。このアッセイはまた、親和性が低いために大量のFIIa基質を必要とし、それゆえに診断キットの生産のコストがより大きく、販売製品の値段がより高いものとなる。そのため、臨床的な意思決定への連続TGアッセイの適用は、上記の課題により依然として阻まれている。
本明細書に開示される新規の「不連続2段階TGアッセイ方法」は、この課題を克服し、抗血友病内在性経路により生産された初発の少量のFIIaを選択的に決定することによって、出欠に関連する凝固因子の変化および反応の検証に際し高感度を持つ迅速(10分以内)かつ簡便なTGアッセイを提供する。例として、本明細書に開示されるアッセイおよび方法は、重度の血友病A患者におけるFVIIIのレベルを決定するために使用することができ(図21Bを参照)、FVIII濃縮物を用いた治療をモニタリングするために、および濃縮物の効力を査定するために、有用となることがある。本アッセイはまた、機能性が向上しおよび/または安定性が増加したFVIIIバリアントを特定するために、ならびに血友病A治療のための効能および安全性が向上した新規の止血剤をスクリーニングするために、利用することができる。さらに、本明細書に開示される不連続TGアッセイは、患者でより高い初発のTGを検出することによって、血栓性の障害を正確に予測することを可能にする。総合すると、本発明のTGアッセイは、従来の凝固アッセイを置き換えることが可能な臨床診断の臨床検査として利用されるべきである。
ここに開示されるアッセイは、血漿中のTF開始複合体により駆動されるFVIII活性化経路の発見に基づき、この経路は、止血に不可欠な凝固反応の開始および第1相で、FIIa生成の増幅をサポートする。そのため、古典的なおよび従来のFVIII活性アッセイとは対照的に、本願のアッセイは、生理的なFVIII活性化の過程のこれまで認識されていなかった経路を査定することに関する追加の利点を有する。それゆえにこの高感度の方法は、FVIIIの活性化を阻害または促進する因子および基質を特定するために、および重度の血友病A患者をさらに正確に分類するために、有用であることがあり、FVIII活性と出血エピソードの頻度および重症度とのさらに直接的な相関を確立し、出血リスクのさらに正確な予測に導く。
臨床スクリーニング検査は、自動化および標準化された方法を必要とする。以前の連続TGアッセイとは対照的に、本明細書に開示される新規のTGアッセイは、生成FIIaをある特定の時点(例えば3分)で測定することによって、充分に自動化されさらに容易に標準化されたものとすることができ、患者での過小または過剰凝固状態の迅速かつ単純な臨床検査を提供する。さらに、それは、はるかに少ないコストの診断キットを提供することができ、なぜなら本キットが非常に少量の構成成分rTF、FIXa、PL、および高感度のFIIa基質を含むためである。このことは、本キットが商業化に大きなメリットを有することを標示する。
本発明者らの目標は、従来の凝固アッセイを置き換える新規の臨床検査を確立することであった。この目標のために、彼らは、補填的な方法のいくらかの改変を伴う新規のTGアッセイ方法を開発してきた。ここでの方法およびアッセイのFVIII活性の診断用臨床検査への適用は、感度、特異性、および再現性を分析により決定することによって、および重度のFVIII欠乏症の患者由来のFVIIIスパイクされた血漿を用いて回収試験を実施することによって、妥当性を確認されている。クマジン−血漿を用いたさらに別の研究もまた、本アッセイが、患者についての血栓および出血のリスクの個別化予測に非常に有用である場合があることを支持する。アッセイ妥当性確認研究の結果に基づき、本発明者らは、試作品キットが凝固因子であるrTFとFIXaとPL、および高感度のFIIa基質からなるものと決定している。
一実施形態では、本発明者らは、rTF、FIXa、PL、およびFIIa基質を含む凍結乾燥の試作品の診断キットを開示し、次いで、国際医療施設との共同研究で得られた臨床血漿試料を使用することによって、新規のアッセイの妥当性を確認している。これらの研究の目標は、新規のアッセイが、さらに詳細な血友病患者の分類と、抗血栓治療下の患者についての血栓および出血のリスクの予測とを可能にすることを証明することになろう。別の実施形態では、本明細書に開示されるアッセイおよびキットをさらに開発して、自動のデバイスおよび試薬キットを作り出す。
実施例38
新規の凝固機構は、出血/血栓症リスクの個別化評価および抗血栓療法をサポートする。
安全で有効な抗血栓療法は、血栓症を妨げるとともに正常な止血を最小限に減じることを目標とする機構をより良く理解することが必要である。本開示は、生理的な因子(F)Xa阻害物質に抵抗性がある外因性組織因子(TF)凝固開始複合体のこれまで認識されていなかった機能を示す。内在性TF経路阻害剤(TFPI)は、プロトロンビナーゼ補因子FVの活性化と直接的なTF誘導性の血栓形成とを制御するが;TF−FVIIaに会合している新生FXaによる抗血友病補因子FVIIIの選択的な活性化を制御しない。TF経路による内在性FVIIIa−FIXa複合体の直接的な活性化は、内在性阻害剤による制御だけではなく、治療用量のFXa指向性の経口抗凝血剤による制御をも逃れる。これらのFXa阻害剤は、TFによる直接的な凝固活性化を制限するにも関わらず、TF開始複合体によるフィードフォワードのFVIIIおよびFIXの活性化を保持し、それゆえ、抗血栓治療中の止血にさらに小さく干渉する。これらの知見は、広く処方されている特異的なFXaおよびトロンビン(FIIa)の阻害剤であるビタミンKアンタゴニストに関連する、個々の出血リスクvs抗血栓効能を予測するための新規のアッセイフォーマットの使用、ならびに現在開発中のFXIを標的とするストラテジーを支持するものである。
現在公知の凝固のパラダイム(図1A)は、共通の凝固経路の鍵となるプロテアーゼであるFXaおよびトロンビンを標的とする薬剤が、複数の凝固因子に影響を及ぼすビタミンKアンタゴニスト(VKA)に匹敵する抗血栓効能のために用量投与した際に、重度の出血および頭蓋内出血のリスクを低減するという、充分に文書で立証された観察を容易に説明することができない。この結論に対する報告された例外、例えば胃腸内出血などは、全身的な止血の阻害というよりも、活性の経口薬剤の器官特異的な濃度が治療的な血漿中レベルを超えたことの結果である可能性がある。外因性TF−FVIIa複合体の新規の機能はここに開示されており、言い換えれば、トロンビンフィードバックループとは独立した、FVIII抗血友病補因子の選択的なフィードフォワード活性化が示されている。この新生FXaの特異的な反応は、TFPIαを含めた生理的な凝固阻害物質による制御を逃れる。これまで認識されていたTF−FVIIaのFIXa抗血友病プロテアーゼ生成能と併せて、直接的なFVIIIの活性化は、TF/FVIIa開始性凝固の中に完全に組み込まれかつ共通の凝固経路の古典的な直接的な活性化に先立つ、FVIIIa−FIXa内在性テナーゼ活性への経路を完成するものである(図1B)。
一実施形態では、本発明者らは、限られた濃度の再脂質化された組換え組織因子(rTF)を用いて被覆された表面の上を流れる血液中で凝固が開始された際に、内在性テナーゼプロテアーゼであるFIXaの活性化が別個の個体のパターンを辿ることを示している。さらに、TF−FVIIaを含む複合体中の新生FXaによるFVIIIの活性化は、内在性FXa阻害物質と同じ量の薬理的な阻害物質に抵抗性を有し、このことは、標的選択的な抗凝血療法の間に止血が保持されることを説明することができる。とはいえ、予期しないことに、別個の凝固経路がトロンビン生成に及ぼす寄与を選択的に評価する条件下で試験した際に、FXaおよびトロンビンを標的とする経口の抗凝血剤の効果は、個体間で多様である。このことは、各種凝固開始経路および増殖経路の相対的な機能を評価するためにフォーマット化された検査アッセイに基づいて、出血および血栓のリスクを査定するための新しい展望をもたらす。重要なことに、この新しいアッセイフォーマットは、現在考えられていることとは対照的に、標的化された経口の抗凝血剤が、全ての個体において一定の投薬量では同等に有効ではない場合があることを明らかにする。
本発明者らは、FIXからFIXaへの活性化の際にFXIaおよびTF−FVIIaを生成するトロンビンフィードバックループの相対的な役割を比較するための、カルシウム再加されたクエン酸添加全血を用いた流れベースのアッセイを本明細書に開示している。この帰結のために、FVIIIaおよびFIXaの活性に依存した凝固の活性化およびフィブリンの沈着をサポートすることが以前に示されている限定濃度のrTFで被覆された表面の上に、10人の正常な個体から得た血液を灌流した(図16を参照)。そこでは、灌流中の壁せん断速度を300s−1で維持した。対照として、トロンビン生成とは独立して血小板の接着および凝集をサポートする線維コラーゲンI型の表面に、同じ血液試料を灌流した。トロンビンフィードバックループによるFXIaかまたはTF−FVIIaをそれぞれ通じたFIXa生成を選択的に阻害するための特異的なモノクローナル抗体(MoAb)を用いて、FXIaおよびTFの活性を遮断した。予想通り、コラーゲン表面で、血小板凝集体の体積は、凝固経路を阻害することによる影響を受けなかったのに対して、フィブリンの沈着は、抗FXIa MoAbによって顕著に減少し、抗TF MoAbによって本質的に影響を受けなかった(図23A〜B)。これらの結果は、コラーゲン表面での凝固の活性化が、FXIIa依存的な接触経路を通じたFXIa生成によって開始されるという見解に一致する。
rTF表面では、驚くべきことに、得られた結果は、2つの別個のパターンの凝固開始を描き出した。供試された10人の正常な個体のうち6人では、フィブリン形成が、FXIa活性の阻害に対する感受性を持たなかったが(図23A)、残りの4人では、抗FXIa MoAbが、TF開始性の凝固およびフィブリン形成が有意に低減した(図23B)。全ての試料で、抗TF MoAbは、フィブリン沈着を本質的に消失させ(図23A〜B)、このことは、選ばれた実験条件下でのトロンビン生成に必要なFVIIIaの活性化においてTF−FVIIa−新生FXaの持つ、最近実証された鍵となる役割に一致する。フィブリンの体積とは異なり、FXIa活性を阻害することによって、TF表面で血小板凝集体の体積が有意に減少した試料はなく、その一方で、それは、TF活性の遮断によって様々に減少したが、FXIa活性がトロンビン生成およびフィブリン形成に寄与していた上記の4試料でのみ大幅に減少した(図23A〜B)。
FVIIIa依存的な凝固が、FIXaの利用可能性によって制限されることから、これらの知見は、約60%の正常な個体で、トロンビンフィードバックによるFXIの活性化が、FVIIIa−FIXa複合体の形成のためのFIXaをTF−FVIIaから得る内在性テナーゼ依存的な凝固にとっては制限とはならないことを標示する。約40%の正常な個体では、その代わりに、FXIaによるFIXa生成がフィブリン形成に必要であり、それゆえ、TF−FVIIaによるFIXa生成は、正常な凝固に寄与することができない。外因性経路により生産されるFIXaと、Xを活性化する内在性Xase複合体内で機能するためのその能力は、血管の損傷に続く凝血原応答の開始相と持続相の両方に必要なXaの生産に重要な役割を果たすことがあることが、早期に示唆されていた。現時点で、本発明者らは、新たに開発された凝固アッセイフォーマットを流れの下で用いることで、FIXa生成に導く機構が、標的特異的な抗凝血薬剤の効果に関して潜在的な意義を有する可能性がある個々の変量であることを見出している。最も明らかな例は、FXIの血漿中濃度を減少させる新しいカテゴリーの化合物であり、これらの化合物は、FXIa−トロンビンフィードバックループ由来のFIXaが凝固の増幅の鍵であるという現在広まっている仮説の上で開発されている。このデータは、それらの効果が、TF−FVIIaから生じるFIXaの影響が限定的であることを示すおそらくは60%もの患者では、様々に変動するはずであることを示唆している。
FXaを標的とする抗凝血剤であるリバーロキサバンおよびアピキサバンの効能を、異なる治療下の個体で評価した。リバーロキサバンおよびアピキサバンは、FXaプロトロンビナーゼ活性をそれぞれIC500.43±0.06および1.08±0.11nMで互角に阻害する(図24A)。治療濃度の50〜450nMでは、予め活性化されたFXaを含有する精製構成成分を含む反応中で、両方ともFVIIIa生成を約90%阻害した。ここでは、FXaは、遊離であるか、またはTFと活性部位の変異したFVIIa(iFVIIa)とを含み線虫抗凝血タンパク質(NAP)c2により安定化された複合体であるかのどちらかであった。これに対し、最初にFXを含有していた反応では、新生のTF−FVIIa−FXaによるFVIIIa生成は、僅かに影響を受けたに過ぎなかった(図24B)。2種のFXa阻害剤に対する抵抗性は、TF−FVIIaにより新たに生成されたFXaの特異的な特性であったが、それはなぜなら、ラッセルマムシ毒(RVV)FXアクティベーターによりin situで生産された等濃度のFXaによるFVIIIの活性化を、リバーロキサバンが阻害したためである(図24C)。観察された阻害の喪失が、FXaと相互作用する阻害剤についての酵素原からプロテアーゼへの立体配座の遷移における動態学的なデメリットを反映するか否かを評価するために、本発明者らは、活性のプロテアーゼの立体配座を採る能力を制限する、V17M置換を持つFXaを試験した。TF−iFVIIa−NAPc2との安定な複合体では、FXaV17Mは、FXa WTよりも効率は劣るものの、FVIIIaを生成することができた。しかし、この活性は、5nMまでのリバーロキサバンには感受性がなかったのに対し、1nMでは、FXa WTによるFVIII活性化がほぼ完全に阻害された(図24D〜E)。このように、酵素原からプロテアーゼへの遷移の動力学は、新生TF−FVIIa−FXaの機能への直接的FXa阻害剤の干渉の制限に寄与する。
この結果は、FXa−選択的なリバーロキサバンおよびVKAワルファリン−後者はFXaおよびFIIaに加えてFVIIaおよびFIXaの機能に影響を及ぼす−の抗血栓効果が、治療患者の個々での基盤に応じて変わる可能性があったことを示唆した。この仮説を試験するために、本発明者らは、2種の抗凝血薬剤を受けていた患者由来の血液の流れに曝露された固相化rTF上への、血小板の凝集およびフィブリンの沈着を、非処理対照と比べて測定した(図25)。アッセイ条件は、図2に示されたような実験に使用された通りであったが、凝固の開始が、非処理対照由来の血液中のFVIIIa活性によってもはや完全には制限されないものとなるように、表面のTF濃度を増加させた。表面の被覆に用いるTFのモル濃度は、TF−FVIIaによる直接的なFXa生成として測定した個々のrTFロットの持つ異なる特異的な凝血原活性を考慮して調整した。2つの異なるTF濃度を試験すると、itwasfoundthat,低い方のTFでは、沈着フィブリンの体積は、ワルファリンまたはリバーロキサバンのどちらかを用いて治療された患者で、対照よりも顕著に小さかったが、高い方のTFでは、それはリバーロキサバン治療患者で、ワルファリンよりも有意に大きかったことが見出された(図25A)。さらに、高い方のTF表面では、治療患者血漿中で測定されたピーク濃度範囲でリバーロキサバンを正常な血液に添加することによって、フィブリンの体積が部分的に低減したが、それ自体で中程度の阻害を生じる抗FVIII MoAbの存在下では、ほぼ完全に低減した(図25B−C)。これらの知見は、ピーク濃度であっても、選択的なFXa標的化阻害剤は、生理的な阻害物質による制御下の血流中で内在性凝固を直接的に可能にする新たに明らかになったTF開始性経路を、別個に保持することができることを実証する。
これらの研究は、ワルファリン、リバーロキサバン、または直接的なトロンビン阻害剤であるダビガトランを用いて治療されていたさらに大きな患者のコホートから得られた血液中の血小板の凝集およびフィブリンの沈着を測定することによって、拡大された。全ての抗凝血レジメンが長期間であり、患者は、現在承認されているプロトコールに従って投薬を受けていた。ワルファリン治療患者は、定期的に、INR凝固指標を測定することによってモニタリングされた。リバーロキサバンまたはダビガトランを用いて治療されていた患者は、凝固の変化を測定されることなく、現行の処方通りに固定用量の薬剤を受けた。全ての試験は、治験審査委員会によって認可および監督され、ヒト対象での実験行為に関する標準プロトコールに従って実施された。同じ実験的なアプローチを、図2に示されるような試験に使用し、線維コラーゲン1型または異なるrTF濃度を用いて被覆した表面の上に、カルシウム再加されたクエン酸添加全血を、壁せん断速度300s−1で5分間灌流した。コラーゲン表面上で、対照の非処理試料中または3種の抗凝血レジメンのいずれかを用いて治療された患者由来の試料中に形成された血小板凝集体の平均体積は、有意な差はなかったが、尤も、何人かの患者では、特にトロンビン阻害剤であるダビガトランを用いて治療された患者では、対象群で測定された最低値を下回っていた(図26)。この結果は、トロンビンが、血小板の活性化および凝集を補強することができるものの、血小板は、コラーゲンに接着し、トロンビンの生成とそれによる刺激とは独立して活性化されて凝集体を形成するという見解に一致する。これに対し、沈着フィブリンの体積は、ワルファリンおよびダビガトランを受けていた患者では顕著に低減した−トロンビン生成の低減とトロンビン活性の阻害とをそれぞれ標示する−が、リバーロキサバンを受けていた患者では低減しなかった。実際に、後者では、沈着フィブリンの平均体積は、正常とは有意な差はなく、ワルファリン群およびダビガトラン群よりも有意に大きかった(図26)。
rTF表面では、興味深いことに結果は異なっていた。2通りの被覆濃度(20および40pM)を、図25に示される実験にあるように試験し、図26に示されるコラーゲンに関する実験にあるように、血小板凝集体および沈着フィブリンの体積を測定した。どちらのrTF表面でも、血小板凝集体の体積は、リバーロキサバンを受けていた患者では対照とは有意な差はなく;ワルファリンを受けていた患者では、代わりに、両方のrTF表面で有意に低減しており、ダビガトランを受けていた患者では、低い方のrTF濃度を用いた表面でのみ有意に低減していた(図27A)。これらの結果は、固相化TF上の血小板の接着および凝集が、TF誘導性の凝固の結果として生成されるトロンビンによりもたらされる活性化を必要とするという概念に一致する。この結果はまた、血小板凝集体の体積が、生成トロンビンおよびトロンビン活性のレベルの結果であって、それは、ワルファリンおよびダビガトランを受けていた患者では、使用された投薬量でリバーロキサバンよりも低いことを示す。フィブリンに関しては、全ての抗凝血治療患者は、低い方のrTF密度の表面に血液を灌流した際に、薬剤および使用された投薬量に関わらず、非処理対照に比べて顕著にかつ有意に沈着を低減した(図27B)。しかし、表面TFが高い方の濃度であった際には、ワルファリンおよびダビガトランを受けていた患者由来の血液のみが、依然として顕著に低減されたフィブリン形成を示したのに対し、多くのリバーロキサバン治療の試料は、正常範囲のフィブリン形成を示した(図27B)。後者の結果は、FXa阻害剤であるリバーロキサバンが、新生のTF−FVIIa−FXaによるFVIIIの活性化を遮断せず、TF経路の生理的な阻害物質をもバイパスするFVIIIa−FIXa内在性テナーゼ複合体の機能を保持することに一致する。
上に記載される様々な方法および手法は、本発明を実施するための複数の手段を提供する。もちろん、必ずしも全ての記載される目的または利点が、本明細書に記載される具体的な実施形態に従って達成されるわけではないことが理解されよう。それゆえ、例えば、本明細書に教示または示唆されることがあるような他の目的または利点を必ずしも達成することなく、本明細書に教示されるような1つの利点または利点のグループを達成または最適化する方式で、本方法を実施することができることを、当業者は認識することになる。種々の 有利なおよび不利な代替物が、本明細書に言及される。1つの、別の、またはいくつかの有利な 特長を具体的に含む好適な実施形態があれば、1つの、別の、またはいくつかの有利な 特長を具体的に除外するものもあり、さらに1つの、別の、またはいくつかの有利な 特長を含むことによって当面の不利な 特長を具体的に軽減するものもあることを理解されたい。
さらに、当業者は、異なる実施形態から様々な特長の適用性を認識することになろう。同様に、上記に議論された様々な要素、特長、およびステップ、ならびにそのような要素、特長、またはステップのそれぞれについての他の公知の等価物を、この技術分野の当業者は混合および適合して、本明細書に記載される原理に従う方法を実施することができる。様々な要素、特長、およびステップのうち、多様な実施形態に具体的に含まれることになるものもあれば、具体的に除外されるものもある。
本発明が、ある特定の実施形態および実施例のコンテクストで開示されているとはいえ、本発明の実施形態は、具体的に開示される実施形態を越えて、他の代替の実施形態および/または使用およびそれらの改変および等価物に延びることを、当業者は理解されよう。
数多くの変形および代替の要素が、本発明の実施形態に開示されている。さらに別の変形および代替の要素が、当業者に明らかになろう。これらの変形の中には、限定なく、本発明の組成物、ならびにそれを用いて診断、予知、または治療されることがある疾患および他の臨床的状態について、構成要素のモジュールの選択がある。本発明の様々な実施形態は、これらの変形または要素のいずれも具体的に含むか除外することができる。
いくつかの実施形態では、本発明の特定の実施形態を記載および特許請求するために使用される、成分の量、濃度などの特性、反応条件を表す数字は、場合によっては用語「約」によって修飾されるものと理解されよう。したがって、いくつかの実施形態では、書面記載および添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメーターは、特定の実施形態によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。いくつかの実施形態では、数値パラメーターは、報告された有効数字の数と、通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。本発明のいくつかの実施形態の広い範囲を示す数値範囲およびパラメーターが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に示された数値は、実施可能な限り正確に報告される。本発明のいくつかの実施形態で提示される数値は、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を含むことがある。
いくつかの実施形態では、本発明の特定の実施形態を説明する文脈で使用される用語「a」、「an」および「the」および同様の言及は(特に以下の特許請求の範囲のある特定の文脈において)、単数形と複数形の両方をカバーするものと解釈することができる。本明細書での値の範囲の記述は、その範囲内にある別々の値のそれぞれに個々に言及する簡略な方法として役立つことを意図されているに過ぎない。本明細書に特段に標示のない限り、それぞれの個々の値は、本明細書中に個別に記述されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書中で特段に標示のない限り、または文脈により特段に明確に矛盾のない限り、任意の適した順序で実施することができる。本明細書のある特定の実施形態に関して提供される任意のおよび全ての例、または例示的な語(例えば、「など」)の使用は、本発明をより良く明示することを意図されているに過ぎず、特許請求の範囲に記載されている以外の本発明の範囲に限定を置くものではない。本明細書中のいかなる語も、本発明の実践に不可欠な任意の特許請求の範囲に記載されていない要素を示すものと解釈されるべきではない。
本明細書に開示される本発明の代替の要素または実施形態のグループ分けは、限定であるものと解釈されるべきではない。各グループのメンバーは、個別に、または本明細書に見出されるグループまたは他の要素の他のメンバーとの任意の組み合わせで、参照するおよび特許請求の範囲に記載することができる。利便性および/または特許性の理由から、1つまたは複数のグループのメンバーをグループに含めるか、またはグループから削除することができる。いかなるそのような包含または欠失が起こる際にも、本明細書は、そのグループを改変として含み、それゆえ添付の特許請求の範囲で使用される全てのMarkushグループの書面記載を満たすものとみなされる。
本発明を実施するための本発明者らの知る最良の形態を含めて、この発明の好適な実施形態が本明細書に記載されている。これらの好適な実施形態の変形は、前述の記載を読んだ際に当業者に明らかとなるろう。当業者は、そのような変形を適切に採用することができ、本発明は、本明細書に具体的に記載される以外に実践できるものと想定される。したがって、この発明の多くの実施形態は、適用法によって許容されるように、ここに添付されている特許請求の範囲に記載された主題のすべての改変および等価物を含む。さらに、本明細書中に特段に指示のない限り、または文脈によって特段に明確に否定されない限り、その全ての可能な変形のうちの上記の要素の任意の組合せは、本発明に包含される。
さらに、この明細書を通して、特許および印刷刊行物に数多くの参照がなされている。上に引用した参考文献および印刷刊行物のそれぞれは、参照によりその全体が個々に本明細書に組み込まれる。
最後に、本明細書に開示される本発明の実施形態は、本発明の原理を説明するものであることを理解されたい。採用できる他の改変もまた本発明の範囲内とすることができる。ゆえに、限定ではなく例として、本発明の代替の構成を、本明細書の教示に従って利用することができる。したがって、本発明の実施形態は、図示および記載されるまさにそのようなものに限定されない。