JP2021018956A - 透明導電体及び有機デバイス - Google Patents

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喜彦 田邊
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千恵子 山田
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菜摘 香西
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Abstract

【課題】高い仕事関数と優れた導電性を有しつつ、エッチングによる加工精度に優れる透明導電体を提供すること。【解決手段】透明基材11と、第1の金属酸化物層12と、銀合金を含む金属層18と、第2の金属酸化物層14と、をこの順で備え、第2の金属酸化物層14がITOで構成されており、第2の金属酸化物層14の表面14aのX線回折で検出される2θ=40°のピーク強度Isに対する、ITOの(222)面のピーク強度I1の比が40以上である透明導電体10を提供する。【選択図】図1

Description

本開示は、透明導電体及び有機デバイスに関する。
透明性と導電性を兼ね備える透明導電体は、種々の用途に用いられている。近年、有機ELディスプレイ、有機EL照明、及び有機薄膜太陽電池等の有機デバイスが実用化されつつある。有機ELディスプレイ及び有機EL照明は、例えば、ガラス等の透明基板上に、透明電極層(陽極)、有機層、反射電極層(陰極)が積層されて構成される。透明電極層と反射電極層の間に電圧を印加することで電極間に電流が流れ、有機層が発光する。有機層で生じた光は、電極を透過して外部に取り出される。このため、電極のうち少なくとも一方には透明電極が用いられている。
特許文献1では、ガラス等の透明基体の上に、銀合金の金属薄膜層を一対の透明屈折率薄膜層で挟んで構成される積層構造を設けることが開示されている。透明屈折率薄膜層に用いられる材料として、ITO等が挙げられている。
特許文献2では、有機電界発光素子の陽極は、効率良く正孔を注入するために仕事関数が大きいものが用いられること、及び、ITOのような仕事関数が大きい透明電極材料層を設けることで電荷注入効率が高められることが開示されている。
特開2002−15623号公報 特開2006−324016号公報
透明導電体は、通常、エッチングによって回路が形成される。ここで、電極材料としてITO(酸化インジウムスズ)を用いる場合、その結晶構造によってエッチング速度が変化する。ITOの結晶性を低くするとエッチングし易くなるものの、エッチングの速度が速くなると、特に微細な電極を形成する場合に、加工精度を確保することが難しくなることが懸念される。このため、高い仕事関数と優れた導電性を有しながら、加工の制御性にも優れるような透明導電体は、種々の用途において有用であると考えられる。
そこで、本開示は、一つの側面において、高い仕事関数と優れた導電性を有しつつ、エッチングによる加工精度に優れる透明導電体を提供する。本開示は、別の側面において、そのような透明導電体を用いて形成される有機デバイスを提供することを目的とする。
本開示の一側面に係る透明導電体は、透明基材と、第1の金属酸化物層と、銀合金を含む金属層と、第2の金属酸化物層と、をこの順で備え、第2の金属酸化物層がITOで構成されており、第2の金属酸化物層の表面のX線回折で検出される2θ=40°のピーク強度Iに対する、ITOの(222)面のピーク強度Iの比が40以上である。
上記透明導電体の第2の金属酸化物層を構成するITOは、X線回折測定において、2θ=40°付近に回折ピークを有しない。このため、X線回折で検出される2θ=40°のピーク強度Iに対する比を求めることで、ITOの各結晶面のピーク強度を規格化することができる。
上記透明導電体の第2の金属酸化物層は、ピーク強度Iに対するピーク強度Iの比を40以上とすることによって、仕事関数とITOの結晶性と導電性を高くすることができる。高い結晶性を有するITOで構成される第2の金属酸化物層を備えることから、第2の金属酸化物層のエッチングに所要する時間を長くすることができる。すなわち、エッチングの時間を確保できることから、エッチング量を精密に制御することが可能となる。したがって、上記透明導電体は、高い仕事関数と優れた導電性を有するとともに、エッチングによる加工精度に優れる。
上記ピーク強度Iは、上記X線回折で検出されるITOの(400)面のピーク強度Iよりも大きくてもよい。このような透明導電体は、一層高い結晶性を有する第2の金属酸化物層を備える。したがって、エッチングによる加工精度に一層優れる。
上記第2の金属酸化物層の体積抵抗率は32Ω・cm以下であってよい。これによって、透明導電体の導電性を一層向上することができる。
第2の金属酸化物層の表面における仕事関数は5.0eV以上であってよい。これによって、第2の金属酸化物層の表面上に有機層を設けて有機デバイスを作製した場合に、有機層への正孔の注入又は有機層からの正孔の受け入れを十分円滑に行うことができる。このため有機デバイスの性能を向上することができる。
第2の金属酸化物層を構成するITOの(222)面のピークから求められるITOの結晶子のサイズは15nm以上であってよい。これによって、エッチングによる加工精度を一層高くすることができる。
本開示の一側面に係る有機デバイスは、上述のいずれかの透明導電体を備える。上述の透明導電体は、高い仕事関数を有しつつ、エッチングによる回路形成を高い精度で行うことができる。したがって、信頼性が高く且つ高効率である有機デバイスを提供することができる。
本開示によれば、高い仕事関数と優れた導電性を有しつつ、エッチングによる加工精度に優れる透明導電体を提供することができる。また、そのような透明導電体を用いて形成される有機デバイスを提供することができる。
図1は、透明導電体の一実施形態を模式的に示す断面図である。 図2は、透明導電体の別の実施形態を模式的に示す断面図である。 図3は、透明導電体のさらに別の実施形態を模式的に示す断面図である。 図4は、有機デバイスの一実施形態を模式的に示す図である。 図5は、実施例5、比較例1、及び比較例3のX線回折測定の結果を示すチャートである。 図6は、仕事関数と、ピーク強度Iに対するピーク強度Iの比(I/I)との関係を示すグラフである。 図7は、実施例1、参考例1、及び参考例2のX線回折測定の結果を示すチャートである。
本開示の一実施形態を、図面を参照しながら以下に詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一構造又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、各層の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
図1は、透明導電体の一実施形態を示す模式断面図である。透明導電体10は、透明基材11と、第1の金属酸化物層12と、金属層18と、第2の金属酸化物層14と、がこの順に配置された積層構造を有する。
本開示における「透明」とは、可視光が透過することを意味しており、光をある程度散乱してもよい。光の散乱度合いについては、透明導電体10の用途によって要求されるレベルが異なる。一般に半透明といわれるような光の散乱があるものも、本明細書における「透明」の概念に含まれる。光の散乱度合いは小さい方が好ましく、透明性は高い方が好ましい。透明導電体10全体の全光線透過率は、例えば60%以上であり、好ましくは65%以上であり、より好ましくは70%以上である。この全光線透過率は、積分球を用いて求められる、拡散透過光を含む透過率であり、市販のヘイズメーターを用いて測定される。
透明基材11は、特に限定されず、可撓性を有する透明樹脂基材であってもよい。透明樹脂基材は、例えば有機樹脂フィルムは有機樹脂シートであってもよい。透明基材11としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム、ノルボルネンフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、ポリイミド、並びにトリアセチルセルロースフィルム等が挙げられる。これらのうち、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルムが好ましい。
透明基材11の厚みは、透明導電体10の屈曲性を一層高くする観点から、例えば200μm以下である。透明基材の屈折率は、光学特性に優れる透明導電体10とする観点から、例えば1.50〜1.70である。なお、本開示における屈折率は、λ=633nm、温度20℃の条件下で測定される値である。透明基材11は、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、及びオゾン処理からなる群より選ばれる少なくとも一つの表面処理が施されたものであってもよい。
透明基材11が透明樹脂基材であることによって、透明導電体10を柔軟性に優れたものとすることができる。これによって、透明導電体10を、フレキシブルな有機デバイス用の透明導電体として好適に用いることできる。
第1の金属酸化物層12は、金属酸化物を含む透明の層である。第1の金属酸化物層12は、金属層18を保護する機能を有する。第1の金属酸化物層12は、ITO(酸化インジウムスズ)とは異なる金属酸化物で構成されてよい。
透明性と耐食性を一層高い水準で両立する観点から、第1の金属酸化物層12は、酸化亜鉛、酸化インジウム及び酸化チタンの3成分を主成分として含有していてもよく、3成分と不可避的不純物から構成されていてもよい。
第1の金属酸化物層12に含まれる酸化亜鉛は例えばZnOであり、酸化インジウムは例えばInである。酸化チタンは例えばTiOである。上記各金属酸化物における金属原子と酸素原子の比は、化学量論比からずれていてもよい。また、酸化数が異なる別の酸化物を含んでいてもよい。第1の金属酸化物層12は、酸化スズを含んでいてもよいが、金属層18に含まれる銀合金の腐食を低減する観点から、酸化スズ(SnO)の含有量は少ない方が好ましく、酸化スズを含有しないことがより好ましい。第1の金属酸化物層12における3成分の合計の含有量は、それぞれ、ZnO、In及びTiOに換算して、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。
第1の金属酸化物層12の厚みは、透明性を一層向上する観点から、例えば60nm以下である。一方、耐食性を一層向上するとともに生産性向上の観点から、上記厚さは、例えば5nm以上である。
第1の金属酸化物層12は、酸化亜鉛、酸化インジウム及び酸化チタンを、それぞれZnO、In及びTiOに換算したときに、ZnO、In及びTiOの合計に対するZnOの含有量は、20〜85mol%であることが好ましく、30〜80mol%であることがより好ましい。同様に換算したときに、ZnO、In及びTiOの合計に対するInの含有量は、透明性向上の観点、並びに高い導電性及び高い耐食性を両立する観点から、10〜35mol%であることが好ましく、10〜25mol%であることがより好ましい。
同様に換算したときに、ZnO、In及びTiOの合計に対するTiOの含有量は、高い透明性と優れた耐食性を両立する観点から、5〜15mol%であることが好ましく、7〜13mol%であることがより好ましい。
第1の金属酸化物層12は、導電性が低くてもよく、絶縁体であってもよい。この場合、透明導電体10の導電性は、金属層18及び第2の金属酸化物層14によって担われてもよい。第1の金属酸化物層12は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、又はCVD法などの真空成膜法によって作製することができる。これらのうち、成膜室を小型化できる点、及び成膜速度が速い点で、スパッタリング法が好ましい。スパッタリング法としては、DCマグネトロンスパッタリングが挙げられる。ターゲットとしては、金属ターゲット又は金属酸化物ターゲットを用いることができる。第1の金属酸化物層12は、酸性エッチング液に溶解しない層であってもよい。
金属層18は、主成分として銀合金を含むことが好ましい。金属層18は、酸性エッチング液に溶解する層であってもよい。これによって、容易にパターニングすることができる。金属層18が高い透明性と導電性を有することによって、透明導電体10の可視光透過率を十分高くしつつ表面抵抗を十分に低くすることができる。銀合金の構成元素としては、Agと、Pd、Cu、Nd、In、Sn、及びSbから選ばれる少なくとも1種と、が挙げられる。銀合金の例としては、Ag−Pd、Ag−Cu、Ag−Pd−Cu、Ag−Nd−Cu、Ag−In−Sn、及びAg−Sn−Sbが挙げられる。銀合金は、Agを主成分として含有し、副成分として上述の各金属を含むものが好ましい。金属層18は、金属のみからなる層であってもよい。
銀合金におけるAg以外の金属の含有量は、耐食性と透明性を一層向上させる観点から、例えば0.5〜5質量%である。銀合金はAg以外の金属としてPdを含有することが好ましい。これによって、高温高湿環境下における耐食性を一層向上することができる。
金属層18の厚さは、例えば5〜25nmであってもよい。金属層18の厚さが小さくなり過ぎると、金属層18の連続性が損なわれて透明導電体10の表面抵抗値が高くなる傾向にある。一方、金属層18の厚さが大きくなりすぎると、十分に優れた透明性が損なわれる傾向にある。
金属層18は、透明導電体10の導電性及び表面抵抗を調整する機能を有している。金属層18は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、又はCVD法などの真空成膜法によって作製することができる。これらのうち、成膜室を小型化できる点、及び成膜速度が速い点で、スパッタリング法が好ましい。スパッタリング法としては、DCマグネトロンスパッタリングが挙げられる。ターゲットとしては、金属ターゲットを用いることができる。
第2の金属酸化物層14は、ITOで構成される透明の層である。第2の金属酸化物層14は、例えば、有機デバイスの有機層に隣接して配置されたときに、正孔の移動を円滑にする機能を有する。
ITOは、インジウムとスズの酸化物である。当該酸化物は、構成元素としてIn、Sn及びO(酸素)を有する複合酸化物である。第2の金属酸化物層14は、ITO以外の成分として、不可避的な不純物を含んでいてもよい。このような場合も、ITOで構成される第2の金属酸化物層14に含まれる。
第2の金属酸化物層14の金属層18側とは反対側の表面14aの仕事関数は、好ましくは5.0eV以上であり、より好ましくは5.1eV以上である。このような高い仕事関数を有する第2の金属酸化物層14の表面14a上に有機層を設けて有機デバイスを作製した場合に、有機層への正孔の注入又は有機層からの正孔の受け入れを十分円滑に行うことができる。このため有機デバイスの性能を向上することができる。第2の金属酸化物層14の表面14aの仕事関数は、市販の測定装置を用いて測定することができる。
第2の金属酸化物層14の表面14aの仕事関数は、表面14a近傍における組成に依存する傾向にある。例えば、ITOにおける酸素原子の割合を変えることによって調整することができる。具体的には、ITOの焼結体からなるターゲットを用いたDCマグネトロンスパッタリングによって第2の金属酸化物層14を形成する場合、スパッタリング時の不活性ガスに対する酸素ガスの割合を変えることで第2の金属酸化物層14を構成するITOの結晶性を制御することができる。
第2の金属酸化物層14を構成するITOは高い結晶性を有することが好ましい。高い結晶性を有することによって、エッチングの時間を確保することができる。これによって、エッチング量を高い制度で制御することが可能となり、エッチングによる加工精度を高くすることができる。高い結晶性を有するITOは、スパッタリング時の不活性ガスに対する酸素ガスの割合を調節するとともに、例えば、DCマグネトロンスパッタリング時のHOの分圧を低く維持することによって形成することができる。HOの分圧は、例えば、0.05Pa以下であってもよいし、0.01Pa以下であってもよい。なお、このときの全圧は、例えば0.1〜1.0Paであってよい。
第2の金属酸化物層14を構成するITOの結晶性は、X線回折測定によって確認することができる。CuKα線を用い、第2の金属酸化物層14の表面14aのX線回折測定を行うことによって、ITOをアモルファス、結晶、又はこれらの中間である微結晶に分類することができる。ITOが結晶又は微結晶である場合、通常、2θ=30°付近にITOの(222)面に由来する回折ピークが検出され、2θ=35°付近にITOの(400)面に由来する回折ピークが検出される。また、2θ=50°付近に(440)面に由来する回折ピークが検出される。
本開示では、ITOの(222)面に由来する回折ピークの高さをピーク強度I、2θ=35°付近に検出されるITOの(400)面に由来する回折ピークの高さをピーク強度I、及び2θ=50°付近に検出される(440)面に由来する回折ピークの高さをピーク強度Iとする。そして、ピーク強度Iが500以上である場合、ITOは「結晶」に分類される。検出された回折ピークのピーク強度Iが500未満である場合、ITOは「微結晶」に分類される。ピークが全く検出されない場合、ITOは「アモルファス」に分類される。なお、ピーク強度は、実施例に記載のX線回折装置で測定した場合の強度である。
第2の金属酸化物層を構成するITOの結晶子のサイズは、好ましくは15nm以上であり、より好ましくは16nm以上である。ITOの結晶子のサイズが大きい場合、エッチングの加工精度を一層高くすることができる。本開示におけるITOの結晶子の大きさは、X線回折測定で検出される(222)面のピークの半値幅から求められる値である。
透明導電体10における第2の金属酸化物層14の上記比(I/I)は、40以上である。ここで、ピーク強度Iは、2θ=40°の回折ピークの高さである。ITOは40°付近にピークを有しないことから、ピーク強度Iに対するピーク強度Iの比(I/I)を求めることによって、ITOの(222)面に由来する回折ピークの強度を規格化することができる。この比(I/I)を大きくすることによって、ITOの結晶性を高くしつつ、表面14aの仕事関数を高くすることができる。表面14aの仕事関数は、例えば、5.0ev以上であってよく、5.1eV以上であってよく、5.2eV以上であってもよい。
第2の金属酸化物層14は、上記比(I/I)が40以上であることから、導電性にも優れる。第2の金属酸化物層14の体積抵抗率は、例えば、32Ω・cm以下であってよく、1Ω・cm以下であってよい。高い結晶性と高い仕事関数と優れた導電性の全てを一層高水準とする観点から、上記比(I/I)は、45以上であってもよいし、50以上であってもよい。本開示における体積抵抗率は、4端子法によって測定されるITO単層の表面抵抗値にITO層の厚みを乗じて算出される。
高い仕事関数と優れた導電性とを高水準で両立できる第2の金属酸化物層14を備える透明導電体10は、種々の用途に好適に用いることができる。例えば、有機EL素子に用いた場合、有機EL素子の発光効率を向上することができる。また例えば、有機薄膜太陽電池に用いた場合、有機薄膜太陽電池の発電効率を向上することができる。
上述のX線回折測定において、2θ=35°付近に検出されるITOの(400)面に由来する回折ピークの高さをピーク強度I、2θ=50°付近に検出されるITOの(440)面に由来する回折ピークの高さをピーク強度Iとしたとき、I>Iであることが好ましい。これによって、ITOの結晶性が高くなり、エッチングによる加工精度を一層高くすることができる。
第2の金属酸化物層14の厚みは、表面14aにおける仕事関数を安定的に大きくする観点から、好ましくは2nm以上であり、より好ましくは5nm以上であり、さらに好ましくは10nm以上である。一方、第2の金属酸化物層14の厚みは、透明導電体10の透明性と屈曲性を十分に高くする観点から、例えば100nm以下である。
透明導電体10を構成する各層の厚みは、以下の手順で測定することができる。集束イオンビーム装置(FIB,Focused Ion Beam)によって透明導電体10を切断して断面を得る。透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて当該断面を観察し、各層の厚みを測定する。測定は、任意に選択された10箇所以上の位置で測定を行い、その平均値を求めることが好ましい。断面を得る方法として、集束イオンビーム装置以外の装置としてミクロトームを用いてもよい。厚みを測定する方法としては、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてもよい。また蛍光X線装置を用いても膜厚を測定することが可能である。
透明導電体10の厚みは、210μm以下であってもよく、200μm以下であってもよい。このような厚みであれば、例えば、透明性と屈曲性の要求レベルを十分に満足することができる。
第1の金属酸化物層12と第2の金属酸化物層14は、厚み、構造及び組成の点で同じであってもよいし、厚み、構造及び組成の少なくとも一つの点において互いに異なっていてもよい。第1の金属酸化物層12の組成と第2の金属酸化物層14の組成とを異なれば、一つの工程で、第2の金属酸化物層14及び金属層18のみを酸性のエッチング液を用いてエッチングにより除去し、第1の金属酸化物層12を残存させることができる。
上述の構成を備える透明導電体10は、アルカリ耐性にも優れている。したがって、パターニングを効率よく行うことができる。第1の金属酸化物層12、金属層18、及び第2の金属酸化物層14は透明電極20を構成する。透明電極20を備える透明導電体10は、有機ELディスプレイ、有機EL照明、有機薄膜太陽電池等の有機デバイス用として好適に用いることができる。
図2は、透明導電体の別の実施形態を示す模式断面図である。透明導電体10Aは、フィルム状の透明基材11、第1の金属酸化物層12、金属層18、及び第2の金属酸化物層14をこの順に有する第1積層部21と、透明基材11及び第1の金属酸化物層12をこの順に有する第2積層部22とを備える。第1積層部21と第2積層部22は、これらの積層方向(図2の上下方向)とは垂直方向(図2の左右方向)に隣接して設けられている。第1積層部21と第2積層部22は、上記垂直方向に沿って、交互に並ぶように設けられていてもよい。
第1積層部21は、例えばパターニングプロセスによって形成される導電部分である。第2積層部22は、例えばパターニングプロセスによって形成される、導電体を有しない絶縁部分となる。透明導電体10Aは、図1の透明導電体10のパターニングを行うことによって製造することができる。この製造方法の一例を以下に説明する。
図1の透明導電体10の第2の金属酸化物層14の表面14aにフォトレジストを塗布して加熱しレジスト膜を形成する。所定のパターンを有するフォトマスクを介して紫外線をレジスト膜に照射して一部を感光する。その後、現像液を用いて感光した部分を溶解して除去し、第2の金属酸化物層14の表面14aの一部を露出させる(ポジ型)。
酸性エッチング液を用いて第2の金属酸化物層14の当該一部とその下側にある金属層18を溶解して除去する。このときの溶解時間を確保することによって、パターニング(加工)の精度を十分に高くすることができる。また、第1の金属酸化物層12を酸性エッチング液に溶解しない組成にすれば、金属層18の下側にある第1の金属酸化物層12を残存させることができる。
第2の金属酸化物層14及び金属層18を溶解して第2積層部22を形成した後、レジスト膜を除去する。このようにして、透明導電体10Aを得ることができる。なお、上述の手順ではポジ型のフォトレジストを用いたときの例を説明したが、これに限定されず、ネガ型のフォトレジストを用いてもよい。
透明導電体10Aの製造方法、つまり、透明導電体10のパターニングの方法は、上述のフォトレジストを用いた方法に限定されず、例えば印刷法であってもよい。印刷法の場合、図1の透明導電体10の第2の金属酸化物層14の表面14aの一部に、インクジェット印刷、スクリーン印刷、又はグラビア印刷等の方法によって、パターン形状に応じてインクを印刷する。印刷後、酸性エッチング液を用いてインクが印刷されていない部分のエッチングを行う。これによって、第2の金属酸化物層14及び金属層18を溶解して第2積層部22を形成する。その後、インクを除去することによって透明導電体10Aを得ることができる。
図3は、透明導電体のさらに別の実施形態を示す模式断面図である。透明導電体10Bは、透明基材11と、第1の金属酸化物層12と、金属層18、第3の金属酸化物層16と、第2の金属酸化物層14とがこの順に配置された積層構造を有する。すなわち、金属層18と第2の金属酸化物層14の間に第3の金属酸化物層16を備える点で、図1の透明導電体10と異なっている。第3の金属酸化物層16以外の構成は、透明導電体10と同様である。
第1の金属酸化物層12、金属層18、第3の金属酸化物層16及び第2の金属酸化物層14は透明電極25を構成する。例えば、透明電極25をアノードとして有機デバイスの有機層に隣接して配置したときに、第3の金属酸化物層16は、透明電極25における金属層18の腐食抑制機能を有する。
第3の金属酸化物層16は、ITOとは異なる組成を有する金属酸化物層である。例えば、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ及び酸化チタンの4成分を主成分として含有していてもよく、当該4成分と不可避的不純物から構成されていてもよい。この4成分を含む第3の金属酸化物層16は、十分に高い導電性と透明性を兼ね備える。酸化亜鉛は例えばZnOであり、酸化インジウムは例えばInである。酸化チタンは例えばTiOであり、酸化スズは、例えばSnOである。上記各金属酸化物における金属原子と酸素原子の比は、化学量論比からずれていてもよい。
第3の金属酸化物層16において、上記4成分の合計に対する酸化亜鉛の含有量は、高い透明性を維持しつつ導電性を十分に高くする観点から、例えば20mol%以上である。第3の金属酸化物層16において、上記4成分の合計に対する酸化亜鉛の含有量は、高温高湿度の環境下における保存安定性を十分に高くする観点から、例えば68mol%以下である。
第3の金属酸化物層16において、上記4成分の合計に対する酸化インジウムの含有量は、表面抵抗を十分に低くしつつ透過率を適切な範囲とする観点から、例えば35mol%以下である。第3の金属酸化物層16において、上記4成分の合計に対する酸化インジウムの含有量は、高温高湿度の環境下における保存安定性を十分に高くする観点から、例えば15mol%以上である。
第3の金属酸化物層16において、上記4成分の合計に対する酸化チタンの含有量は、可視光の透過率を確保する観点から、例えば20mol%以下である。第3の金属酸化物層16において、上記4成分の合計に対する酸化チタンの含有量は、アルカリ耐性を十分に高くする観点から、例えば5mol%以上である。
第3の金属酸化物層16において、上記4成分の合計に対する酸化スズの含有量は、高い透明性を確保する観点から、例えば40mol%以下である。第3の金属酸化物層16において、上記4成分の合計に対する酸化スズの含有量は、高温高湿度の環境下における保存安定性を十分に高くする観点から、例えば5mol%以上である。なお、上記4成分のそれぞれの含有量は、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン及び酸化スズを、それぞれ、ZnO、In、TiO及びSnOに換算して求められる値である。
第3の金属酸化物層16は、第1の金属酸化物層12とは異なる組成を有していてよい。これによって、エッチングによって図2のようなパターンを形成する場合に、第3の金属酸化物層16も、第2の金属酸化物層14及び金属層18とともに酸性エッチング液によって除去することができる。この場合、導電部分となる第1積層部は、透明基材11、第1の金属酸化物層12、金属層18、第3の金属酸化物層16、及び第2の金属酸化物層14で構成される。絶縁部分となる第2積層部は、透明基材11、及び第1の金属酸化物層12で構成される。
第3の金属酸化物層16の厚みは透明性と屈曲性を十分に高く維持しつつ、その機能を十分に発揮させる観点から、2〜200nmであってよいし、5〜100nmであってもよい。
図1の透明導電体10、図2の透明導電体10A及び図3の透明導電体10Bは、各層の間に任意の層を備えていてもよい。例えば、透明基材11と第1の金属酸化物層12の間にハードコート層を備えていてもよいし、金属層18と第1の金属酸化物層12の間に耐エッチング層を備えていてもよい。透明基材11と透明電極20,25との間に、水蒸気バリア層を備えてもよい。ハードコート層は、透明基材11を挟むように対をなして設けられてもよい。透明基材11と第1の金属酸化物層12との間に、第1の金属酸化物層12とは異なる組成を有する別の金属酸化物層、又は金属窒化物層を設けてもよい。
透明導電体10,10A,10Bは、高い仕事関数と導電性を有しつつ、エッチングによる加工精度に優れることから、有機ELディスプレイ、有機EL照明、及び有機薄膜太陽電池等の有機デバイスの電極として好適に用いられる。この場合、第1の金属酸化物層12、金属層18、及び第2の金属酸化物層14が透明電極20として機能する。或いは、第1の金属酸化物層12、金属層18、第3の金属酸化物層16及び第2の金属酸化物層14が透明電極25として機能する。透明電極20,25はアノードであってもよいし、カソードであってもよい。
図4は、有機デバイスの一実施形態を模式的に示す図である。有機デバイス100は、例えば有機EL照明であり、透明基材11、透明電極(アノード)20、正孔輸送層30、発光層40、電子輸送層50及び金属電極(カソード)60をこの順に有する積層体を備える。有機デバイス100における透明基材11及び透明電極20として、透明導電体10を用いることができる。
透明導電体10は、透明電極20の第2の金属酸化物層14の表面(図1の表面14a)が正孔輸送層30と接するように設けられる。アノードとして機能する透明電極20とカソードとして機能する金属電極60には電源80が接続されている。電源80による電界の印加によって、透明電極20から正孔輸送層30に正孔(ホール)が注入されるとともに、金属電極60から電子輸送層50に電子が注入される。
正孔輸送層30に注入された正孔と電子輸送層50に注入された電子は発光層40において再結合する。この再結合によって、発光層40中の有機化合物が発光する。この発光によって生じた光は、正孔輸送層30、透明電極20及び透明基材11を通過して、有機デバイス100の側面20aから放射される。
有機デバイス100は、透明基材11及び透明電極20として透明導電体10を用いている。したがって、透明電極20から正孔輸送層30に効率よく正孔を注入することができる。このため、有機デバイス100の発光効率を高くすることができる。透明電極20に含まれる第2の金属酸化物層14の仕事関数が十分に大きいことから、有機デバイス100の発光効率を十分に高くすることができる。
正孔輸送層30、発光層40、電子輸送層50及び金属電極(カソード)60は、通常の材料を用いて形成することができる。例えば、正孔輸送層30の材料としては、芳香族アミン化合物が挙げられる。発光層40としては、ホスト材料とドーパント材料を組み合わせた2成分系のものが挙げられる。ホスト材料としては、1,10−フェナントロリン誘導体、有機金属錯体化合物、ナフタレン、アントラセン、ナフタセン、ペリレン、ベンゾフルオランテン、ナフトフルオランテン等の芳香族炭化水素化合物及びそれらの誘導体、並びにスチリルアミン及びテトラアリールジアミン誘導体等が挙げられる。ドーパント材料としては、ベンゾジフルオランテン誘導体及びクマリン誘導体等が挙げられる。
電子輸送層50としては、トリニトロフルオレノン、オキサジアゾール又はトリアゾール構造を有する化合物等の有機材料を用いて形成されていてもよいし、リチウム等のアルカリ金属、フッ化リチウム、又は酸化リチウム等の無機材料を用いて形成されていてもよい。金属電極60としては、アルミニウム等の金属材料、有機金属錯体又は金属化合物で構成されたものを用いることができる。各層は、真空蒸着法、イオン化蒸着法、及び塗布法等の通常の方法によって形成することができる。
以上、幾つかの実施形態を説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、図4の有機デバイスは、透明導電体10の代わりに透明導電体10A又は透明導電体10Bを有していてもよい。また、有機デバイスは図4に示すような有機EL照明に限定されず、有機ELディスプレイ又は有機薄膜太陽電池等であってもよい。
以下に実施例及び比較例を挙げて本開示をさらに具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
[透明導電体の作製]
(実施例1)
図1に示すような積層構造を有する透明導電体を作製した。透明導電体は、透明基材、第1の金属酸化物層、金属層、及び第2の金属酸化物層が、この順で積層された積層構造を有していた。この透明導電体を以下の要領で作製した。
市販のポリエチレンナフタレートフィルム(厚さ:100μm)を準備した。このPENフィルムを透明基材として用いた。DCマグネトロンスパッタリングによって、透明基材の上に、第1の金属酸化物層、金属層、及び第2の金属酸化物層を順次形成した。
酸化亜鉛、酸化インジウム、及び酸化チタンの3成分で構成されるターゲットを用いて、アルゴンガスと酸素ガスの混合ガス雰囲気の減圧下(0.5Pa)、DCマグネトロンスパッタリングによって、透明基材上に第1の金属酸化物層(厚さ:40nm)を形成した。第1の金属酸化物層において、酸化亜鉛、酸化インジウム、及び酸化チタンを、それぞれ、ZnO、In、及びTiOに換算したときに、上記3成分の合計に対し、ZnOの含有量は74mol%、Inの含有量は15mol%、及びTiOの含有量は11mol%であった。
Ag、Pd及びCuの銀合金で構成されるターゲットを用いて、アルゴンガス雰囲気の減圧下(0.5Pa)、DCマグネトロンスパッタリングによって、第1の金属酸化物層の上に金属層(厚さ:10nm)を形成した。金属層を構成する銀合金の各金属の質量比率は、Ag:Pd:Cu=99.0:0.7:0.3であった。
ITOで構成されるターゲットをDCマグネトロンスパッタリング装置のチャンバー内にセットし、ターボポンプを用いてチャンバー内の排気を十分に行った。その後、チャンバー内へのアルゴンガスと酸素ガスの混合ガスの流通を開始した。チャンバー内の圧力を0.5Paとし、HO分圧を0.01Pa以下に維持しながら、DCマグネトロンスパッタリングを行った。これによって、金属層の上にITOで構成される第2の金属酸化物層(厚さ:60nm)を形成した。DCマグネトロンスパッタリングの際のアルゴンガスに対する酸素ガスの流量比率は4.3体積%であった。なお、この流量比率は、標準状態(25℃、1bar)における比率であり、以下の実施例、比較例及び参考例においても同様である。このようにして、図1に示すような積層構造を有する透明導電体を作製した。
(実施例2)
第2の金属酸化物層をDCマグネトロンスパッタリングで形成する際のアルゴンガスに対する酸素ガスの流量比率を6.5体積%にしたこと以外は、実施例1と同じ条件で透明導電体を作製した。
(実施例3)
第2の金属酸化物層をDCマグネトロンスパッタリングで形成する際のアルゴンガスに対する酸素ガスの流量比率を8.7体積%にしたこと以外は、実施例1と同じ条件で透明導電体を作製した。
(実施例4)
第2の金属酸化物層をDCマグネトロンスパッタリングで形成する際のアルゴンガスに対する酸素ガスの流量比率を10.9体積%にしたこと以外は、実施例1と同じ条件で透明導電体を作製した。
(実施例5)
第2の金属酸化物層をDCマグネトロンスパッタリングで形成する際のアルゴンガスに対する酸素ガスの流量比率を2.2体積%にしたこと以外は、実施例1と同じ条件で透明導電体を作製した。
(比較例1)
第2の金属酸化物層をDCマグネトロンスパッタリングで形成する際のアルゴンガスに対する酸素ガスの流量比率を、13体積%にしたこと以外は実施例1と同じ条件で透明導電体を作製した。
(比較例2)
第2の金属酸化物層をDCマグネトロンスパッタリングで形成する際のアルゴンガスに対する酸素ガスの流量比率を1.1体積%にしたこと以外は、実施例1と同じ条件で透明導電体を作製した。
(比較例3)
第2の金属酸化物層をDCマグネトロンスパッタリングで形成する際、酸素ガスを混合せず、アルゴンガスのみを用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で透明導電体を作製した。
(比較例4)
第2の金属酸化物層をDCマグネトロンスパッタリングで形成する際、チャンバー内の排気の時間を実施例1よりも短くしてスパッタリングの際のHO分圧を高くしたこと以外は、実施例1と同じ条件で透明導電体を作製した。つまり、スパッタリングの際のチャンバー内の圧力は実施例1と同じ0.5Paとしたが、HO分圧は0.1Paを超えていた。
[透明導電体の評価]
<仕事関数の測定>
作製した透明導電体の第2の金属酸化物層の表面における仕事関数を、光電子分光装置(理研計器株式会社製、商品名:FAC−1)を用いて測定した。測定結果を表1の「仕事関数」の欄に示す。
<X線回折の測定>
第2の金属酸化物層の表面のX線回折測定を行った。測定には、マルバーン・パナリティカル製のX線回折装置(装置名:EMPYREAN、CuKα線)を用いた。測定した回折角(2θ)の範囲は、20〜65°とした。2θ=30°付近に検出されるITOの(222)面に由来する回折ピークの高さを、ピーク強度Iとした。また、2θ=35°付近に検出されるITOの(400)面に由来する回折ピークの高さをピーク強度Iとした。また、2θ=50°付近に検出されるITOの(440)面に由来する回折ピークの高さをピーク強度Iとした。また、2θ=40°の回折ピークの高さを、基準のピーク強度Iとした。これらの結果を表1に示す。
表1には、ピーク強度Iに対するピーク強度Iの比(I/I)を示した。また、ピーク強度Iが500以上であるものを「結晶」、回折ピークは存在するもののピーク強度Iが500未満のものを「微結晶」、ピークが全く検出されないものを「アモルファス」と分類した。これらの結果を表1の「結晶性」の欄に示す。また、「結晶」に分類されたものについて、ITOの結晶子のサイズを算出した。この結果も、表1における「結晶性」の欄の下段に示す(単位はnm)。ITOの結晶子のサイズは、ITOの(222)面に由来する回折ピークの半値幅から以下の計算式によって求めた。式中、Kはシェラー定数、λはX線波長、βは半値幅、θはブラック角である。ここで、K=0.9とした。
結晶子のサイズ(nm)=Kλ/βcosθ
<エッチングの制御性の評価>
各実施例及び各比較例の透明導電体を塩鉄系エッチング液に浸漬させ、第2の金属酸化物層が完全に溶解する時間を測定した。この時間が10秒間以上の場合を「A」、5秒間から10秒間の場合を「B」、5秒間未満の場合を「C」と判定とした。評価結果を表1に示す。結晶性が低い場合、溶解に要する時間が短くなり、エッチング量を精密に制御することが難しくなる。
<体積抵抗率の評価>
各実施例及び各比較例において透明導電体の第2の金属酸化物層を作製したときと同じ方法で、市販のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:125μm)の表面上にITOで構成される金属酸化物層を形成した。このようにして得られた金属酸化物層の体積抵抗率を、4端子抵抗率計(商品名:ロレスタGP、三菱化学株式会社製)を用いて表面抵抗値を測定した。この表面抵抗値とITO層の厚みから体積抵抗率を算出した。結果を表1の「体積抵抗率」の欄に示す。
Figure 2021018956
図5は、実施例5、比較例1、及び比較例3のX線回折測定の結果を示すチャートである。各チャートを見やすくするため、実施例5、比較例1、及び比較例3の各チャートは上下方向にずらして示している。実施例5では、ITOの(222)面及び(440)面のピーク強度I及びIが、比較例1,3よりも大きくなっていることが確認された。一方、比較例3は、ピーク強度Iが相対的に小さかった。表1に示すとおり、比較例3,4のピーク強度Iは500未満であり、ITOが微結晶であることが確認された。ITOが微結晶である場合、エッチングの制御性の評価はCであった。
表1に示すとおり、各実施例の透明導電体における第2の金属酸化物層は、ピーク強度の比(I/I)が大きく、且つ、ITOの結晶性が高いことが確認された。このようなITOは、アルゴンガスに対する酸素ガスの流量比率を所定の範囲にしつつ、スパッタリングの際の雰囲気におけるHO分圧を低く維持することによって得られることが確認された。一方、アルゴンガスに対する酸素ガスの流量比率が低すぎる場合(比較例2,3)、又はスパッタリングの際の雰囲気におけるHO分圧が高い場合(比較例4)には、ITOの結晶性が低下することが確認された。アルゴンガスに対する酸素ガスの流量比率が高すぎる場合(比較例1)には、ピーク強度の比(I/I)が小さくなり、体積抵抗率が上昇することが確認された。
図6は、ピーク強度Iに対するピーク強度Iの比(I/I)を縦軸に、仕事関数を横軸にとったときの両者の関係を示すグラフである。図6には、HO分圧が0.01Pa以下の条件で形成された第2の金属酸化物層を有する実施例1〜5及び比較例1〜3のデータをプロットした。図6及び表1の結果から、上記比(I/I)を40以上にすれば、仕事関数が5eV以上であり、結晶性及び導電性に優れるITOで構成される第2の金属酸化物層を備える透明導電体にできることが確認された。
(参考例1)
実施例1において透明導電体の第2の金属酸化物層を作製したときと同様の方法で、市販のPENフィルム(厚さ:100μm)の表面上にITOで構成される金属酸化物層を形成した。ただし、DCマグネトロンスパッタリングで金属酸化物層を形成する際のアルゴンガスに対する酸素ガスの流量比率は、0.7体積%とした。実施例1と同様にして、金属酸化物層の評価を行った。結果は表2に示すとおりであった。
(参考例2)
参考例1の金属酸化物層を150℃、60分間、大気下でアニールした。実施例1と同様にして、アニール後の金属酸化物層の評価を行った。結果は表2に示すとおりであった。
Figure 2021018956
図7は、参考例1,2の金属酸化物層のX線回折測定の結果を示すチャートである。比較のため、実施例1のX線回折測定の結果も合わせて示している。各チャートを見やすくするため、参考れ例1,2、及び実施例1の各チャートは上下方向にずらして示している。表2及び図7に示すとおり、参考例1のITOは回折ピークが検出されずアモルファスであることが確認された。一方、参考例2は、アニールによって結晶化しているものの、ピーク強度Iに対するピーク強度Iの比(I/I)が40未満であり、仕事関数を高くすることができなかった。すなわち、単にITOを結晶化させても仕事関数は大きくできないことが確認された。
本開示によれば、高い仕事関数と優れた導電性を有しつつ、エッチングによる回路形成を高い精度で行うことが可能な透明導電体を提供することができる。また、そのような透明導電体を用いて形成される有機デバイスを提供することができる。
10,10A,10B…透明導電体、11…透明基材、12…第1の金属酸化物層、14…第2の金属酸化物層、14a…表面、18…金属層、20,25…透明電極、21…第1積層部、22…第2積層部、30…正孔輸送層、40…発光層、50…電子輸送層、60…金属電極、80…電源、100…有機デバイス。

Claims (6)

  1. 透明基材と、第1の金属酸化物層と、銀合金を含む金属層と、第2の金属酸化物層と、をこの順で備え、
    前記第2の金属酸化物層がITOで構成されており、
    前記第2の金属酸化物層の表面のX線回折で検出される2θ=40°のピーク強度Iに対する、ITOの(222)面のピーク強度Iの比が40以上である、透明導電体。
  2. 前記ピーク強度Iが、前記X線回折で検出されるITOの(400)面のピーク強度Iよりも大きい、請求項1に記載の透明導電体。
  3. 前記第2の金属酸化物層の体積抵抗率が32Ω・cm以下である、請求項1又は2に記載の透明導電体。
  4. 前記第2の金属酸化物層の表面における仕事関数が5.0eV以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の透明導電体。
  5. 前記第2の金属酸化物層を構成するITOの(222)面のピークから求められる結晶子のサイズが15nm以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の透明導電体。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の透明導電体を備える有機デバイス。
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