JP2021016832A - 脱水素化触媒 - Google Patents

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Abstract

【課題】常圧から160MPaに至る高圧条件下でも安定して、ギ酸等の水素貯蔵剤から水素と二酸化炭素に変換しうる脱水素化触媒を提供し、かつ、ギ酸等の水素貯蔵剤の脱水素化によって水素と二酸化炭素を安定して得る方法を提供する。【解決手段】2,2′−ビピリジン配位子のパラ位(4,4′位)上に、あるいは1,10−フェナントロリン配位子の4,7′位上に、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジン基等のアミノ基を有するイリジウム錯体を有効成分として含む脱水素化触媒を用いることにより、100℃でも分解せず安定した脱水素反応が行え、更に約160MPaの高圧条件でも安定して脱水素反応を行うことが可能になる。【選択図】なし

Description

本発明は、脱水素化触媒に関し、特に、常圧から160MPaに至る高圧条件下でも安定して、ギ酸等の水素貯蔵剤から水素と二酸化炭素に変換する脱水素化反応を行うことができる触媒に関するものである。
近年のエネルギー事情において、次世代燃料として水素が着目され、日本では水素社会の実現に向けて種々の取り組みがなされている(非特許文献1)。日本政府は2020年までに4万台の水素燃料電池車の普及を目指しているが普及は遅れている。その主な要因は燃料電池車の値段と、水素ステーションの設置と燃料電池車に70MPaの高圧水素を供給するコストとされている。現在の日本国内の燃料電池車用の水素ステーションでは、水素を液化して、あるいは水素ボンベに充填させて運んだ後、圧縮機で一旦20MPa程度まで昇圧させて蓄圧してから、必要な時に再度圧縮機で82MPaに昇圧させて、燃料電池車に供給する(特許文献1)。この高圧水素の供給にかかるコストの内、圧縮にかかるコストが大きく関わっている。即ち機械式コンプレッサーを用いて多段回で水素の圧縮を行う手法(特許文献2〜9)や、冷却して液化した水素を機械式ポンプで昇圧させる方法(特許文献10)が用いられているが、コンプレッサーの設備費やコンプレッサーを稼働するための電気代がかさむことが、燃料電池車への水素供給コストを上げる要因となっている。
近年、機械式コンプレッサー用いることなく、高圧水素を得る手法として物理吸着を利用した水素吸蔵合金による高圧水素発生法などが報告されている(特許文献11〜13)。ただし作動圧が数MPaであることが多く、水素ステーションで必要な水素圧力82MPaを得るには、310℃までの昇温と240℃の昇温の2段階の圧縮操作を経る必要があり、熱の出し入れを頻繁に行う必要から実用的な手法であるとは言い難い(非特許文献3)。
一方、イリジウム触媒(特許文献14〜20)を用いて、ギ酸等の水素貯蔵剤から脱水素化によって水素と二酸化炭素を得る方法が最近特に報告されるようになった。更に近年、特許文献20では、得られる水素と二酸化炭素が5MPa以上の高圧ガスであることを見いだし、圧縮機を用いずとも水素と二酸化炭素が1:1(それぞれ50%ずつ含む)のガスを最大126MPaの圧力で得ることを報告している。
しかし、この技術における水素の分圧は126MPaの半分の63MPaであり、本来必要な82MPaの高圧水素を取り出すには、更に圧縮をしなくてはならない。理由は、触媒の耐久性が低いことにあり、特に高圧の水素と二酸化炭素雰囲気下では触媒の活性が著しく劣化するため、水素70MPa+二酸化炭素70MPa=合計140MPa以上の高圧ガスを得ることが出来ないという課題があった。
更に、この技術では、触媒の耐久性が低いことからその寿命も短いため、実際に高圧水素を供給するシステムで使用する場合、触媒の入れ替えが頻繁になり、コスト高に繋がるという課題もあった。
特許4932525号 特許4611924号 特許5839545号 特許5355639号 特許6114676号 特許6279340号 特許6289963号 特許6364296号 特許4279546号 特許5707043号 特開昭59−47196号公報 特開2003−342004号公報 特開2019−19884号公報 特許5812290号 特許5896539号 特許6071079号 特許6090957号 国際公開第2015/1053317号 特開2018−126737号公報 特許6502091号
水素・燃料電池戦略協議会 水素・燃料電池戦略ロードマップ、平成31年3月21日 富岡秀徳 水素エネルギーシステム, Vol.37, No.1 (2012) 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 平成27年度成果報告書新エネルギーベンチャー技術革新事業 新エネルギーベンチャー技術革新事業(燃料電池・蓄電池)「再生可能エネルギーを用いた省エネルギー型水素昇圧システムの開発」2017年11月14日公開
前述のとおり、イリジウム触媒を用いたギ酸の脱水素化によって常圧から高圧に至る水素と二酸化炭素を得る方法は知られている。しかし、水素と二酸化炭素の雰囲気下でも安定した触媒、そして安定に稼働できる触媒が存在しないため、発生技術はあるものの、安定した運転を行うためには触媒の寿命、即ち耐久性という新たな問題を抱えていた。
特に、イリジウム触媒は、ギ酸の脱水素化が進むに従って溶液中のギ酸濃度が変化し、更には酸性度(pH)も変化する。これに耐えうる触媒の開発も一部進んでいるが、構造が複雑になり触媒自体のコストが上昇することによって、更に水素供給コストの上昇に繋がる課題がある。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、常圧から160MPaに至る高圧条件下でも安定して、ギ酸等の水素貯蔵剤から水素と二酸化炭素に変換しうる脱水素化触媒を提供し、かつ、ギ酸等の水素貯蔵剤の脱水素化によって常圧から160MPaに至る水素と二酸化炭素を安定して得る方法を提供することを目的とするものである。
これまでのイリジウム錯体を触媒とした脱水素反応から、必要な時に必要な水素ガスを得る反応において触媒の活性にのみ注目が行き、その性能向上に向けた技術を中心に開発が進んできた。しかし、触媒の耐久性または寿命に着目した技術開発は報告されていなかった。
そこで、イリジウム触媒の分解挙動の解明を行ったところ、ビピリジン配位子又はフェナントロリン配位子が大きく影響することが判明した。即ち、ビピリジン配位子又はフェナントロリン配位子からイリジウムへの電子供与性にビピリジン配位子上又はフェナントロリン配位子上の置換基が関わっており、これによってイリジウム錯体触媒の活性が変化すると同時に耐久性にも大きく関わることを見出した。
すなわち、各種置換基を有するビピリジン配位子又はフェナントロリン配位子を合成し、イリジウム触媒の耐久性を調べたところ、2,2′−ビピリジン配位子のパラ位(4,4′位)上に、あるいは1,10−フェナントロリン配位子の4,7′位上に、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジン基等のアミノ基を有する配位子を用いたイリジウム錯体が、100℃でも分解せず安定した脱水素反応を行えること、更にこれら配位子を用いたイリジウム錯体が、約160MPaの高圧条件でも安定して脱水素反応を可能にすることが判明し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、これらの知見に基づいて完成させるに至ったものであり、以下のとおりである。
[1]下記の式(1)、式(2)、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)又は式(8)で表されるイリジウム錯体、その異性体、またはそれらの塩 を有効成分として含む脱水素化触媒。
(式(1)、式(2)、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)又は式(8)において、m及びnは、それぞれ独立して正の整数又は0であり、Zは、HO、塩素(Cl)、臭素(Br)のいずれかの分子又はイオンであり、Cは、水酸化物イオン(OH)、硫酸イオン(SO )、塩素イオン(Cl)、臭素イオン(Br)、硝酸イオン(NO )のいずれかのイオンである。)
[2]水素貯蔵剤から、[1]に記載の触媒を用いた脱水素反応により、全圧が0.1MPa以上200MPa以下の水素と二酸化炭素とを含むガスを生成させることを特徴とする水素ガス製造方法。
[3]前記水素貯蔵剤が、ギ酸または/およびギ酸塩、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキサール、グリオキサール酸から選ばれる1種類または2種類以上であることを特徴とする[1]および[2]に記載の水素ガス製造方法。
[3]前記脱水素化触媒として、前記の式(1)、式(2)、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)又は式(8)におけるイリジウムがルテニウムである錯体を用いることを特徴とする[1]から[3]のいずれかに記載の水素ガス製造方法。
本発明によれば、熱および圧力に対して高い耐久性を有する脱水素化触媒を提供できる。また、本発明のイリジウム錯体触媒を用いることにより、高温下あるいは高圧下でも脱水素反応によって安定的に水素ガスの発生を行うことができる。
実施例に用いた、ギ酸の脱水素化反応の反応システムを示す概要図 触媒A(□)、触媒B(●)及び触媒C(▲)を用いた際の、反応時の初期速度を示す図 触媒Bを用いた脱水素化反応における、ガス発速度、及び触媒回転数(TON)を示す図 触媒A(□)及び触媒B(〇及●)を用いた際の、初期速度のpH依存性を示す図 触媒B(○)及び触媒E(×)を用いた際の、ガスの発生圧力を示す図
以下、本発明について詳細に説明する。
(脱水素化反応)
本発明における脱水素化反応では、水素貯蔵剤、例えば、ギ酸または/およびギ酸塩から、
HCOOH → H + CO
に示されるように、水素と二酸化炭素が発生する。
この際、ギ酸の脱カルボニル化反応により、一酸化炭素と水が副生する可能性があるが、本発明で使用する触媒は、高選択・高効率でギ酸の脱水素化反応が進行し、一酸化炭素が極力含まない水素ガスおよび二酸化炭素ガスを製造することができる。
(水素貯蔵剤)
本発明において、製造する高圧の水素ガスを得るための水素貯蔵剤は、高圧の水素を含むガスを発生させられれば特に限定されないが、好適には、ギ酸または/ およびギ酸塩である。また、水素貯蔵剤としてギ酸、ギ酸塩以外にも、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、およびホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキサール、グリオキサール酸などを用いることができる。
これらの水素貯蔵剤は、1種類または2種類以上の混合物として使用できるし、また、溶媒を含む溶液または分散剤を含む分散液としても使用することができる。その際の溶媒や分散媒は固体でも液体でも良い。水素貯蔵剤としてギ酸または/ およびギ酸塩を用いる場合、水、アルコール、炭化水素等から選ばれる少なくとも1 種類以上の溶媒または分散媒を用いることができ、好適には水、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、メタノール、エタノール、プロパノール、ペンタノール等を用いることができるが、より好適には、超臨界二酸化炭素への溶解度が低い水、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、更に好適には水を用いることができる。なお、アルコール類は、溶媒または分散媒としても用いられるが、同時に水素貯蔵剤として用いることも可能である。
(水素貯蔵剤を含む原料例)
また、炭化水素の改質や石炭乾留、石炭ガス化等で得られる処理物や、草木系のバイオマスの分解で得られた溶液を含む処理物や、糞尿等の処理から得られる処理物、さらには廃プラスチックスなどの分解処理で得られる処理物は、いずれもギ酸または/ およびギ酸塩を含んでいるので、本発明において水素貯蔵剤を含む原料(溶液や分散液など)として用いることができる。特にバイオマスとしては、セルロース、ヘミセルロース由来のグルコース、フルクトース等の糖類を分解することでギ酸が得られるため、これらを含む処理物は将来水素をエネルギーとして使用する際に、水素貯蔵剤を含む有用な原料として使用できる。
(脱水素化触媒)
本発明の脱水素化触媒は、下記の式(1)、式(2)、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)または式(8)で示される、イリジウム錯体、その異性体、またはそれらの塩 を有効成分として含む。
(Zの説明)
Zは、HO、塩素(Cl)、臭素(Br)のいずれかの分子又はイオンであり、特に、合成のしやすさでは、Zは塩素イオンが好ましく、一方で、反応開始時に水中に簡便に溶解させるために、Zは水分子が好ましい。また、一旦水に溶解すれば下記に示されるようにZは限定されない。
式(1)〜式(8)において、Zで示される配位子の種類により、置換や脱離等が比較的容易になる場合がある。一例として、前記配位子Zは、塩素などのハロゲンイオンであっても、酸性の水溶液中では水分子(HO)となり、アルカリ性の水溶液中ではOHとなる。また、水素ガスまたはギ酸分子存在下では、容易にヒドリド(水素、H)となる。アルコール溶媒中ではアルコキシドイオン(RO、Rはアルキル基またはアリール基)となり、また、光や熱により脱離する場合があり得る。ただし、この記述は、可能な機構の例示に過ぎず、本発明を限定するものではない。
(n、mの説明)
式(1)〜式(8)において、m及びnは、それぞれ独立して、正の整数又は0である。
(Cの説明)
式(1)〜式(8)において、Cは水酸化物イオン(OH)、硫酸イオン(SO 2−)、塩素イオン(Cl)、臭素イオン(Br)、硝酸イオン(NO )のいずれかのイオンである。
本発明の触媒は、ギ酸等の水素貯蔵剤の脱水素化反応、即ち常圧から高圧に至るまでの水素および二酸化炭素の製造方法に用いる触媒である。該触媒の有効成分は、前記の式(1)〜式(8)で表されるイリジウム錯体、その互変異性体、立体異性体、およびそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つ以上の化合物からなる。例えば、該有効成分の1つまたは2つ以上の複数種の化合物を本発明の触媒としてそのまま用いても良いし、これらの異性体の混合物を用いてもよい。また、他の成分を適宜(好ましくは、80wt%未満)添加して用いても良い。
(触媒の製造方法)
触媒の合成方法は目的の構造の触媒が得られれば特に限定されないが、合成方法が既知であり、市販されている下記の式(9)で示されるイリジウム錯体と、下記の式(10)又は式(10)で示される配位子とを、不活性雰囲気下、水中で反応させた後、適当な媒体で再結晶をすることによって高純度の触媒を簡単に得ることができる。
式(10)及び式(11)におけるRは、水素(H)、メチル基、又はエチル基であるか、あるいはピペリジン環又はピロリジン環を形成している。
式(10)又は式(11)で示される配位子は、いずれの合成法を用いても得られるが、例えば、式(10)の場合を例に示すと、式(12)に示すように、4,4‘−ジクロロ−2,2’−ビピリジンや、式(13)に示すように4,4‘−ジクロロ−2,2−ビピリジン−N,N’−オキサイドに各種アミンを反応させて、目的の配位子を得ることができる。ここで、Rは、水素(H)、メチル基、エチル基であるか、あるいはピペリジン環又はピロリジン環を形成している。
(触媒の様態)
本発明の触媒は反応溶液に均一に溶解していることが好ましいが、ギ酸あるいは溶媒と何ら反応しない他の物質と混合、あるいは物理的に吸着、あるいは化学的に結合させてもよい。ギ酸あるいは溶媒と何ら反応しない物質であれば、特に限定されないが、一種類のみ用いても二種類以上併用してもよい。前記物質として、例えば、ガラス等を含むシリカ、シリカゲル、アルミナ、ゼオライト、チタニア、メソポーラスシリカ、グラフェン、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、活性炭またはポリマー等が挙げられる。ただし、この記述は、可能な物質の例示に過ぎず、本発明を限定するものではない。
(触媒濃度)
本発明の触媒の濃度は特に上限及び下限はなく、反応速度、反応液への錯体触媒の溶解性及び経済性などに応じて適宜選択することができるが、適切な触媒濃度は1×10−9Mから2Mで、より好ましくは1×10−7Mから1×10−1Mの濃度で行うことができる。
(反応時間)
本発明における反応時間は、各物質や濃度によって反応速度が異なるため、目的に応じて適宜調整することができるが、反応は触媒を添加するか、あるいは触媒にギ酸を添加すると、1分以内でガス発生が開始されることから、1秒以上48時間以内で反応時間調整することで目的のガスを得ることができるが、好適には1秒以上36時間以内、更に好適には1秒以上24時間以内、最も好適には10秒以上24時間以内で目的とする化合物を得ることができる。
(反応方法)
本発明の脱水素化は、バッチ式でもフロー式でもどちらの方法でも行うことができる。
(反応媒体)
本発明の触媒を用いた脱水素化反応における媒体は、非圧縮性の流体あるいは無くとも良く、その形態は特に限定されないが、液体であれば例えば水やアルコールや炭化水素などの有機溶媒を用いることができ、その種類は一種類のみ用いても二種類以上併用しても良いが、本発明で用いるギ酸あるいは脱水素化の原料と脱水素化反応で用いる錯体触媒が溶解すれば、その種類は特に限定されず、発生するガスの媒体への溶解度が小さければ小さいほど好ましいが、発生ガスが超臨界流体になった場合、各種有機物は超臨界流体に溶解しやすくなる傾向があるため、水に可溶な場合は、水を用いることが簡便で好ましい。また媒体の一つとして必要に応じてトリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、ヒスチジン、ホスファゼンおよびその誘導体なども用いることもできる。前記反応媒体としては特に限定されないが、錯体触媒の溶解度等の観点から高極性溶媒が好ましく、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール等の第1級アルコール、イソプロピルアルコール、s−ブチルアルコール等の第2級アルコール、t−ブチルアルコール等の第3級アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチルエーテル等のエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド、酢酸エチル等のエステル等が挙げられる。さらに、原料のギ酸は、例えば、溶液、塩等の形態であっても良い。好ましくは水を好適に用いることで安全に温和な条件で反応を行うことができる。
(反応温度)
本発明の触媒は耐熱性を有するため、他のイリジウム錯体触媒と比べてより高温で脱水素化を行うことができ、その温度範囲は特に限定されないが、特に媒体が水である場合、10℃(室温)以上100℃以下の範囲のいずれの温度で好適に反応を行うことができる。
(反応圧力)
本発明の触媒は耐圧性を有するため、他のイリジウム触媒と比べてより高圧の水素や二酸化炭素の存在下で脱水素化を行うことができ、その圧力範囲は特に限定されないが、0.1MPa以上250MPa以下の範囲のいずれの圧力で好適に反応を行うことができるが、好適には0.1MPa以上200MPa以下、更に好適には0.1MPa以上164MPa以下の範囲で反応を行うことができる。
(反応容器:耐圧)
本発明の触媒で脱水素化を行うときの反応容器は、発生するガス圧あるいは必要とされるガス圧に応じて適宜選択することができるが、ギ酸から得られる圧力は理論上225MPaまでであるため、安全係数を1.50とした場合、0.1MPa以上337.5MPa以下の範囲で使用できる反応容器であれば特に限定されないが、0.1Mpa以上200MPa以下の範囲で使用できる耐圧容器であれば好適に使用できるが、水素燃料電池自動車等への利用を想定する場合、必要とする水素圧力が82MPaで有ることから164MPa(82MPaの水素と二酸化炭素)以下の範囲で使用できる耐圧容器であれば好適に使用できる。
(反応容器:材質)
本発明のギ酸の脱水素化に用いられる反応容器の材質は、必要とされる圧力に耐えられれば特に限定されず、1MPa以上10MPa以下の比較的中圧の領域では、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラスなどケイ酸塩を主成分とするガラス、セリア、チタニア、アルミナ、ジルコニア等のセラミックス、サファイア、石英や、PEEK、PTFE、ポリイミド、PBIの樹脂や、SUS316、SUS304、SUS430等のオーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、インコネル4,4′4,4’−ジエチルアミノ625、インコネル601、ハステロイC276、ハステロイC22などのニッケル系合金やチタンやアルミニウムや黄銅や鉄やタングステンなどを用いることが出来、更に10MPa以上の圧力条件下で反応を行う場合は、安全製や流通量や価格等から好適には金属製で、より好適にはSUS316、SUS304、SUS430等のオーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、インコネル625、インコネル601、ハステロイC276、ハステロイC22などのニッケル系合金やチタンやアルミニウムや黄銅や鉄やタングステンなどを用いることができる。また、高濃度のギ酸を用いる場合は、耐酸性を考慮して前述の材料と樹脂やガラスやセラミックスなどとの複合材料も用いることができる。
(原料濃度)
本発明の触媒を用いた脱水素反応において、水素貯蔵剤としてギ酸あるいはギ酸塩を用いる場合、その初期濃度は、特に上限及び下限はなく本発明を限定するものではないが、100%のギ酸(27モル/リットル)を用いた場合は反応が進まないため、若干の水を加えることで好適に脱水素化を行うことができる。そのため、用いるギ酸あるいはギ酸塩の初期濃度は、好ましくは0.01モル/リットル以上26モル/リットル以下で、さらに好ましくは0.01モル/リットル以上20モル/リットル以下である。ギ酸を使用する際に、反応溶液に、有機アミン、任意の無機塩を混合させることも可能であり、その量はギ酸に対して0.001モル等量以上10モル等量以下、より好ましくは0.01モル等量以上5モル等量以下、更に好ましくは0.1モル等量以上2モル等量以下であることが好ましい。また、本発明における脱水素化は、条件によってほぼ100%進行するため、反応後の最終的なギ酸の濃度は特に限定されず、0モル/リットル以上26モル/リットル未満の範囲で調整することができる。
(酸性度pH)
本発明の触媒を用いた脱水素化反応に使用する溶液のpHは特に限定されないが、pH=0〜10のいずれの範囲で実施することが好ましく、更に好ましくは0.5〜7の範囲で用いることが好ましい。また最も好ましくは、pH調整する必要のないギ酸水溶液を用いることが望ましい。最適な条件で脱水素を行うために、溶液に酸あるいは塩基を加えて、このpHの範囲外でもギ酸の脱水素化を行うこともできる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例では、水素貯蔵剤としてギ酸を用いた。各実施例で使用したイリジウム錯体触媒を以下に示す。
(実施例1:触媒合成(その1))
本実施例では、触媒の合成法について記す。代表的な例として上記Bの場合の合成法を示す。
前記の式(9)で示すイリジウム錯体(103mg,220mmol)と、前記の式(10)(R=メチル)で示す4,4′−ジエチルアミノ−2,2′−ビピリジン(53mg,220mmol)を水(10mL)に入れて、アルゴン雰囲気下、室温で一晩撹拌した。反応後、生成物を濾過して減圧下で乾燥させた。その後、メタノールに溶解させた後、ジエチルエーテルを加えて晶析を行った。得られた黄色い結晶を濾過してから室温、減圧下で乾燥させた。結晶は、70mg(収率50%)得られた。得られた結晶は、H−NMR、13C−NMR、マススペクトル、元素分析から、目的の化合物Bであることを確認した。
(実施例1:触媒合成(その2))
実施例1その1と同様に、前記の式(9)で示すイリジウム錯体(102mg)と、下記の式(14)(前記の式(10)中、NR=ピペリジン)で示す4,4′−ビスピペリジン−2,2′−ビピリジン(64mg)を水(10mL)に加え、アルゴン雰囲気下、室温で一晩撹拌させた。反応後、生成物を濾過して減圧下で乾燥させた。その後、ジクロロメタンに要介護、ジエチルエーテルで晶析を行った。得られた黄色い結晶を濾過してから室温、減圧下で乾燥させた。結晶は、104mg得られた。得られた結晶は、H−NMR、13C−NMR、マススペクトル、元素分析から、目的の化合物Dであることを確認した。
更に、同じように、4,4′−ジエチルアミノ−2,2’−ピピリジン、4,4′−ジアミノ−2,2′−ビピリジンを用いて上記B、上記Cの触媒を合成した。
(実施例2:配位子合成(その1))
本実施例では、触媒合成に用いる配位子の合成方法を示す。代表的な例として触媒Dに用いる配位子である4,4′−ジピペリジン−2,2′−ビピリジンの例を示す。
下記の式(15)に示す4,4′−ジクロロ−2,2′−ビピリジン−N,N′−オキサイド(513mg)にピぺリジン(40mL)を加えアルゴン雰囲気下で130℃に加熱した。4時間後溶液の色が赤く変化したところで加熱を止め、減圧下で乾燥させた。得られた反応物をクロロホルムに溶かして、0℃に冷やした後に、酸塩化リン(5mL)を滴下した。滴下終了後、100℃に加熱して反応を完結させた。反応溶液が室温まで下がったら得られた溶液に飽和食塩水を加えてから、室温で1時間ほど撹拌した。有機層のみを取り出し、硫酸マグネシウムで乾燥後、濾過して濾液の溶媒を減圧下で除いた。得られた固形物はメタノールとジエチルエーテルで再結晶を行い、目的の化合物(上記の式(10)において、NR=ピペリジン)を272mgで得た。得られた生成物は、H−NMR、13C−NMR、マススペクトル、元素分析から、触媒Dに用いる配位子の構造であることを確認した。
(実施例2:配位子合成(その2)
実施例2その1と同様にして、上記の式(15)で示す4,4′−ジクロロ−2,2′−ビピリジン−N,N′−オキサイド(482mg)にジエチルアミン(40mL)を加えアルゴン雰囲気下で60℃に加熱した。10時間後溶液の色が赤く変化したところで加熱を止め、減圧下で乾燥させた。得られた反応物をクロロホルムに溶かして、0℃に冷やした後に、酸塩化リン(5mL)を滴下した。滴下終了後、100℃に加熱して反応を完結させた。反応溶液が室温まで下がったら得られた溶液に飽和食塩水を加えてから、室温で1時間ほど撹拌した。有機層のみを取り出し、硫酸マグネシウムで乾燥後、濾過して濾液の溶媒を減圧下で除いた。得られた固形物はメタノールとジエチルエーテルで再結晶を行い、目的の化合物(上記の式(10)において、R=エチル)を390mg(0.121mmol, 収率61%)で得た。得られた生成物は、H−NMR、13C−NMR、マススペクトル、元素分析から、触媒Cに用いる配位子の構造であることを確認した。
更に同様にしてジメチルアミン、アンモニア水を用いて同様に合成し、触媒Bに用いる配位子と触媒Aに用いる配位子を合成した。
(実施例2:配位子合成(その3)
実施例2その1と同様にして、下記の式(16)で示す4,7′−ジクロロ−1,10−フェナントロリン−N,N′−オキサイド(498mg,1.96mmol)にジエチルアミン(40mL)を加えアルゴン雰囲気下で60℃に加熱した。10時間後溶液の色が赤く変化したところで加熱を止め、減圧下で乾燥させた。得られた反応物をクロロホルムに溶かして、0℃に冷やした後に、酸塩化リン(5mL)を滴下した。滴下終了後、100℃に加熱して反応を完結させた。反応溶液が室温まで下がったら得られた溶液に飽和食塩水を加えてから、室温で1時間ほど撹拌した。有機層のみを取り出し、硫酸マグネシウムで乾燥後、濾過して濾液の溶媒を減圧下で除いた。得られた固形物はメタノールとジエチルエーテルで再結晶を行い、目的の化合物(化10、R=エチル)を205mg(0.62mmol,収率32%)で得た。得られた生成物は、H−NMR、13C−NMR、マススペクトル、元素分析から、触媒Gに用いる配位子の構造であることを確認した。
更に同様にしてジメチルアミン、アンモニア水を用いて同様に合成し、触媒Fに用いる配位子と触媒Eに用いる配位子を合成した。
(実施例3:ギ酸濃度(その1))
本実施例では、図1に示した反応システムを用いてギ酸の発生速度に対するギ酸濃度依存性を調べた。
反応容器(50mLのスレンレス製耐圧容器)に、ギ酸溶液を30mL入れ、触媒A(アミノ基)、触媒B(ジメチルアミノ基)、触媒C(ジエチルアミノ基)で示したイリジウム錯体を溶解させ、水媒体の温調ジャケットを通して反応溶液の温度を60℃に維持し、反応圧力は常圧(0.1MPa)で行った。そのとき、ギ酸の濃度を0.01moL/L〜16moL/L範囲で適宜調整し、(A:□)、(B:●)、(C:▲)の触媒を0.02moL/Lの濃度に調整して反応を行った。反応時の初期速度を図2に示した。
結果、各触媒はギ酸濃度が2.5mol/Lの時に初期速度が最大となることが分かり、また何れのギ酸の濃度においても脱水素化が進むことが確認された。そして、Aのアミノ基を有する場合に比べて、Bのジメチルアミノ基、Cのジエチルアミノ基を有する触媒の方がガス発生の初速度が大きいことが分かった。
(実施例3:ギ酸濃度(その2))
実施例3その1と同様の条件で、Bのジメチルアミノ基を有するイリジウム触媒を用い、20モル/リットルの濃度のギ酸を用いて脱水素化を行った。その結果を図3に示した。
20mol/Lの高濃度のギ酸を用いた場合、脱水素化によるガス発生は殆ど進まなかったが、20時間後に水で13mol/Lに希釈したところ脱水素化によるガス発生の発生が確認された。耐久性を表す触媒回転数(TON)は、90万回に達しているが、触媒の劣化によるガス発生速度の低下は見られなかった。
(実施例4:pH依存性の試験)
500mLのパイレックス(登録商標)製ガラス容器に、0.1Mまたは3Mのギ酸水溶液を100mL入れ、AまたはBのイリジウム錯体(2.1mg、0.03mM)を溶解させて、反応溶液の温度を60℃に維持しながらマグネチックスターラーで攪拌させた。発生するガスは、ガス流量計で量と発生速度を測定し、さらに得られたガスはガスクロマトグラフィーでその成分を分析した。酸性度は、水酸化ナトリウムと硫酸を使用して調整した。その結果を図4に示す。□はA、○および●はBを用いた時の初速度の値をグラフに示した。
0.1Mのギ酸を用いた場合、AとBの各酸性度に対する初期速度は、pH=1〜5の全ての領域においてBの方が速いことが分かった。更に3Mのギ酸水溶液を用いた場合(●)、ギ酸濃度が濃いにも関わらず0.1Mのギ酸水溶液を用いた場合(○)に比べて初期速度が大幅に速くなることが判明し、最も速くなる酸性度は0.1Mの場合に比べて大きく異なることなく若干酸性側にあることだけであることが分かった。
その結果、ギ酸が0.1MのpH=3の時に、初速度が最も大きくなることが分かり、更にAのアミノ基を有する触媒より、Bのジメチルアミノ基を有する触媒の方が、初速度が速いことが分かった。また、得られた成分に一酸化炭素は含まれておらず、二酸化炭素と水素がそれぞれ50%ずつであった。これより、ジメチルアミノ基がアミノ基より速いガス発生速度が得られることが分かった。
(実施例5:高圧ガス発生)
10mLのステンレス製耐圧容器に、21Mのギ酸水溶液を9mL入れ、EとBのイリジウム錯体(2.1mg、2mM)を溶解させて、反応溶液の温度を80℃に維持した。発生するガスは、圧力計で発生圧力を測定した。その結果を図5に示す。○はBのイリジウム錯体の場合、×はEのイリジウム錯体の場合の圧力を示す。
その結果、触媒Eは、圧力が上がる速度が時間と同時に減少していき、最終的には126MPaで止まった。一方、触媒Bは、圧力の上がる速度は変化せず、157MPaまで上昇した。
(実施例6:常圧での試験)
50mLのスレンレス製耐圧容器に、1Mないしは3Mのギ酸溶液を30mL入れ、表1に記載のイリジウム錯体(番号1〜10)を溶解させ、水媒体の温調ジャケットを通して反応溶液の温度を60℃ないしは80℃に維持した。反応圧力は全て常圧(0.1MPa)で行った。その結果を表1に示した。
その結果、触媒A〜触媒Dのアミノ基を有する触媒は、何れも、水酸基を有する触媒I(番号1)、触媒J(番号6)と比べて、初期触媒回転速度が速いことが分かる。その中でも、特にジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジン基を有する触媒B(番号3)、触媒C(番号4)、触媒D(番号5)の初期触媒回転速度が高いことが分かる。また、置換基はパラ位に置換基を有する触媒が高く、オルト位にアミノ基が置換した触媒K(番号7)は著しく低いことが分かる。
(実施例7:高圧条件での試験)
表2に記載のイリジウム錯体(番号1〜5)を用い、実施例5と同様の条件で、反応圧力を40MPaとして反応を行った。結果を、表2に示した。
その結果、何れの触媒を用いても、アミノ基を有する触媒A(番号1)と比べて、初期触媒回転速度が速いことが分かる。また、従来技術でもっとも高性能だったピリジルイミダゾールを置換基に持つ触媒L(番号5)と比べても初期触媒回転速度が高いことがわかり、高圧下における触媒活性がいずれの触媒と比べて高いことがわかる。更に、反応が終了した段階で、ギ酸の残渣濃度は、ピロリジンを置換基に持つ触媒D(番号4)が最も低くギ酸をほぼ完全に分解し、水素に変換することができることがわかる。なお、これまで最も性能の良かった触媒H(番号5)は、ギ酸の変換率が低い。
(実施例8:耐久性の試験)
表3に記載のイリジウム錯体(番号1〜7)を用い、実施例5と同様の条件で、常圧(0.1MPa)と高圧(20MPa)の条件で反応を行った。ギ酸の濃度は5Mにして、反応が進み消費された分のギ酸を連続してポンプで充填しながら濃度を一定に保った。結果を表3に示した。一酸化炭素はガスクロマトグラフィーで調べ、研究限界値は6ppmである。触媒回転数は、初期ガス発生速度に対して、80%に減少した時の触媒回転数をTON80と表記した。この値が大きければ大きいほど、触媒の耐久性があることを示している。
その結果、触媒A(番号1)のTON80は、66500と、従来の触媒L(番号7)と比較して耐久性が高いことが分かるが、置換基にピロリジンを有する触媒D(番号2)を用いたところ、TON80が402000回と大幅に向上していることが判明した。これから、環状アルキルアミンを置換基に持つことで活性が向上することと同時に、耐久性が大幅に向上することが分かった。また、高圧下でも、置換基にアミノ基を有する触媒A(番号3)と比較して、置換基にジメチルアミノ基を有する触媒B(番号4)、置換基にジエチルアミノ基を有する触媒C(番号5)、及び置換基にピロリジンを有する触媒D(番号6)の耐久性が高いことが分かった。更に、燃料電池車などに供給する際に電極を劣化させる一酸化炭素の発生は一切認められなかった。
その結果、何れの触媒を用いても、アミノ基を有する触媒A(番号1)と比べて、初期触媒回転速度が速いことが分かる。また、従来技術でもっとも高性能だったピリジルイミダゾールを置換基に持つ触媒L(番号5)と比べても初期触媒回転速度が高いことがわかり、高圧下における触媒活性がいずれの触媒と比べて高いことがわかる。更に、反応が終了した段階で、ギ酸の残渣濃度は、ピロリジンを置換基に持つ触媒D(番号4)が最も低くギ酸をほぼ完全に分解し、水素に変換することができることがわかる。なお、これまで最も性能の良かった触媒(番号5)は、ギ酸の変換率が低い。

Claims (4)

  1. 下記の式(1)、式(2)、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)または式(8)で表されるイリジウム錯体、その異性体、またはそれらの塩を有効成分として含む脱水素化触媒。
    (式(1)、式(2)、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)または式(8)において、mおよびnは性の整数および0で、Zは、HO、塩素(Cl)、臭素(Br)のいずれかの分子またはイオンであり、Cは水酸化物イオン(OH)、硫酸イオン(SO42−)、塩素イオン(Cl)、臭素イオン(Br)、硝酸イオン(NO )のいずれかのイオンである。)
  2. 請求項1に記載の脱水素化触媒を用い、水素貯蔵剤からの脱水素反応により、全圧が0.1MPa以上200MPa以下の水素と二酸化炭素とを含むガスを生成させることを特徴とする水素ガス製造方法。
  3. 前記水素貯蔵剤が、ギ酸または/およびギ酸塩、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキサール、グリオキサール酸から選ばれる1種類または2種類以上であることを特徴とする請求項2に記載の水素ガス製造方法。
  4. 前記脱水素化触媒として、前記の式(1)、式(2)、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)又は式(8)におけるイリジウムがルテニウムである錯体を用いることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の水素ガス製造方法
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