JP2021015862A - 熱電材料、その製造方法、および、熱電発電素子 - Google Patents

熱電材料、その製造方法、および、熱電発電素子 Download PDF

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孝雄 森
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Abstract

【課題】 375K以下の低温において熱電特性に優れた熱電材料、その製造方法およびその熱電発電素子を提供すること。【解決手段】 本発明の熱電材料は、ビスマス(Bi)−アンチモン(Sb)−テルル(Te)からなるBiSbTe系粒子と、BiSbTe系粒子に固着したアンチモン(Sb)の酸化物粒子とを含有し、Sbの酸化物粒子は、BiSbTe系粒子に対して0.5wt%以上10wt%以下の範囲で含有される。本発明の熱電材料は、BiSbTe系粒子と、Sbの酸化物粒子とを混合することと、混合物を焼結することとを包含する。【選択図】 図2

Description

本発明は、熱電材料、その製造方法、および、熱電発電素子に関し、詳細には、ビスマス(Bi)とアンチモン(Sb)とテルル(Te)を含有するBiSbTe系の熱電材料を含有する熱電材料、その製造方法、および、熱電発電素子に関する。
世界の中で特に省エネルギーが進んだ我が国においてでも、廃熱回収においては、一次供給エネルギーの約3/4が熱エネルギーとして廃棄されているのが現状である。そのような状況の下、熱電発電素子は、熱エネルギーを回収して電気エネルギーに直接変換できる固体素子として注目されている。
熱電発電素子は、電気エネルギーへの直接変換素子であるため、可動部分がないことによるメンテナンスの容易さ、スケーラビリティ等のメリットがある。このため、熱電半導体について、盛んな材料研究が行われている。
熱電変換材料を母相とし、これにナノ粒子を分散させたコンポジット熱電材料が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1によれば、母相として(Bi,Sb)Te系の母相組成に種々の金属酸化物の粒子を分散させたコンポジット熱電変換が例示されており、熱伝導率が低く、性能指数が向上することを開示する。
別の熱電変換材料として、BiTeSb熱電変換材料マトリクス中にフォノン散乱粒子としてSbナノ粒子が分散したナノコンポジット熱電変換材料が開示される(例えば、特許文献2を参照)。
特許文献1、特許文献2でも、種々の材料の組み合わせが開示されるが、室温近傍において長期間にわたって安定して無次元性能指数ZTが1を超えるとはいえず、高い無次元性能指数ZTが得られる熱電材料が開発されることが期待される。
特開2010−114419号公報 特開2015−18954号公報
以上から、本発明の課題は、375K以下の低温において熱電特性に優れた熱電材料、その製造方法およびその熱電発電素子を提供することである。
本発明による熱電材料は、ビスマス(Bi)とアンチモン(Sb)とテルル(Te)とを含有するBiSbTe系粒子と、前記BiSbTe系粒子に固着したアンチモン(Sb)の酸化物粒子とを含有し、前記Sbの酸化物粒子は、前記BiSbTe系粒子に対して0.5wt%以上10wt%以下の範囲で含有され、これにより上記課題を達成する。
前記Sbの酸化物粒子は、前記BiSbTe系粒子に対して1wt%以上7wt%以下の範囲で含有されてもよい。
前記Sbの酸化物粒子は、前記BiSbTe系粒子に対して2wt%以上6wt%以下の範囲で含有されてもよい。
前記Sbの酸化物粒子は、前記BiSbTe系粒子に対して4wt%以上6wt%以下の範囲で含有されてもよい。
前記熱電材料は、前記BiSbTe系粒子および前記Sbの酸化物粒子からなる粉末、それを含有する膜、または、それを含有する焼結体のいずれかの形態であってもよい。
前記BiSbTe系粒子は、500nm以上200μm以下の範囲の粒径を有し、前記Sbの酸化物粒子は、1nm以上200nm以下の範囲の粒径を有してもよい。
前記BiSbTe系粒子は、500nm以上10μm以下の範囲の粒径を有し、前記Sbの酸化物粒子は、10nm以上100nm以下の範囲の粒径を有してもよい。
p型であってもよい。
前記BiSbTe系粒子は、菱面体晶系に属し、空間群R−3mの対称性を有してもよい。
前記BiSbTe系粒子は、BiSb2−xTe3+y(xは、0.45≦x≦0.55を、yは、−0.1≦y≦0.1を満たす)で表されてもよい。
前記Sbの酸化物粒子は、斜方晶系に属し、空間群Pccnの対称性を有してもよい。
前記Sbの酸化物粒子は、三酸化アンチモンであってもよい。
本発明による上述の熱電材料を製造する方法は、ビスマス(Bi)とアンチモン(Sb)とテルル(Te)とを含有するBiSbTe系粒子と、アンチモン(Sb)の酸化物粒子とを混合することであって、前記Sbの酸化物粒子は、前記BiSbTe系粒子に対して0.5wt%以上10wt%以下の範囲で混合される、ことと、前記混合するステップで得られた混合物を焼結することとを包含し、それにより上記課題を解決する。
前記焼結することは、放電プラズマ焼結によって行ってもよい。
前記放電プラズマ焼結は、658K以上913K以下の温度範囲で、20MPa以上60MPa以下の圧力下で、1分以上10分以下の時間、行われてもよい。
前記焼結することで得られた焼結体を粉砕することをさらに包含してもよい。
前記粉砕することで得られた粉末と有機材料とを混合することをさらに包含してもよい。
前記有機材料は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、ポリ[2,5−ビス(3−テトラデシルチオフェン−2−イル)チエノ[3,−b]チオフェン](PBTTT)、ポリアニリン(PANI)、テトラチアフルバレン(TTF)、および、ベンゾジフランジオンパラフェニレンビニリデン(BDPPV)からなる群から少なくとも1種選択されてもよい。
前記焼結することで得られた焼結体をターゲットとして用い、物理的気相成長法を行うことをさらに包含してもよい。
本発明による少なくともp型熱電材料を備えた熱電発電素子は、前記p型熱電材料が上記の熱電材料であり、これにより上記課題を解決する。
前記p型熱電材料と交互に直列に接続されるn型熱電材料を備えてもよい。
本発明の熱電材料は、ビスマス(Bi)とアンチモン(Sb)とテルル(Te)を含有するBiSbTe系粒子と、BiSbTe系粒子に固着したアンチモン(Sb)の酸化物粒子とを含有する。Sbの酸化物粒子がBiSbTe系粒子に固着することにより、BiSbTe系粒子とSb酸化物粒子との界面におけるバンド構造により、BiSbTe系粒子からSb酸化物粒子へはエネルギーの高いホールのみしか行かないフィルタリング効果が生じる。さらに、Sbの酸化物粒子は、BiSbTe系粒子に対して0.5wt%以上10wt%以下の範囲で含有されることにより、このフィルタリング効果が高くなり、特に375K以下の低温において高い熱電性能が得られる。このような熱電材料は、熱電発電素子に有利である。
本発明の熱電材料の製造方法は、ビスマス(Bi)とアンチモン(Sb)とテルル(Te)とを含有するBiSbTe系粒子と、アンチモン(Sb)の酸化物粒子とを混合することを包含し、ここで、Sbの酸化物粒子は、BiSbTe系粒子に対して0.5wt%以上10wt%以下の範囲で混合される。これにより、上述の熱電材料が得られるため、汎用性に優れる。
本発明の熱電材料のバンド構造を示す図 本発明の熱電材料を製造する工程を示すフローチャート 本発明の熱電材料を用いた熱電発電素子を示す模式図 原料BSTのX線回折パターンを示す図 混合した原料粉末(例5)のSEM像およびEDSパターンを示す図 例5の焼結体のXRDパターンを示す図 例5の焼結体のXRDパターンの一部を拡大して示す図 例5の焼結体のラインスキャン分析の結果を示す図 例1の焼結体のTEM像を示す図 例1、例2、例4および例5の焼結体のSEM像を示す図 例5の焼結体の暗視野STEM像およびEDSラインスキャン分析の結果を示す図 例1〜例5の焼結体のゼーベック係数の温度依存性を示す図 例1〜例5の焼結体の電気伝導度の温度依存性を示す図 例1〜例5の焼結体のパワーファクタの温度依存性を示す図 例1〜例5の焼結体の合計熱伝導率の温度依存性を示す図 例1〜例5の焼結体のローレンツ数の温度依存性を示す図 例1〜例5の焼結体の熱伝導率の電荷キャリア成分の温度依存性を示す図 例1〜例5の焼結体の熱伝導率の格子定数成分の温度依存性を示す図 例1〜例5の焼結体の無次元性能指数の温度依存性を示す図 例4の焼結体の無次元性能指数の経時変化を示す図
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
(実施の形態1)
実施の形態1では、本発明の熱電材料およびその製造方法について説明する。
図1は、本発明の熱電材料のバンド構造を示す図である。
本発明の熱電材料は、ビスマス(Bi)とアンチモン(Sb)とテルル(Te)とを含有するBiSbTe系粒子と、それに固着したアンチモン(Sb)の酸化物粒子(Sb酸化物粒子)とを含有する。ここで、BiSbTe系粒子は、BiTeとSbTeとの固溶体であり、それ自身が熱電半導体である。このため、本発明の熱電材料は、p型の熱電性能を有する。
特に、本願発明者らは、BiSbTe系粒子にSb酸化物粒子が固着することにより、これらの界面において、図1に示すように、BiSbTe系粒子からSb酸化物粒子へは、エネルギーの低いホール(図1においてLow Eと示す)はフィルタされ、エネルギーの高いホール(図1においてHigh Eと示す)しか行くことができない(フィルタリング効果)ことを見出した。このような界面が形成されることにより、キャリアの輸送特性が影響を受け、375K以下の低温において熱電性能を向上させる。
なお、本願明細書において「BiSbTe系粒子にSb酸化物粒子が固着している」とは、走査型電子顕微鏡による試料作製のために試料(焼結体)を力学的に破断した場合も、Sb酸化物粒子の固着位置が変わらないことをいい、BiSbTe系粒子を母相として、これにSb酸化物粒子が分散したものとは異なる。
さらに、本発明の熱電材料において、Sbの酸化物粒子は、BiSbTe系粒子に対して0.5wt%以上10wt%以下の範囲で含有されている。この含有量において、上述のフィルタリング効果が高く、本発明の熱電材料は、高い熱電性能を発揮し、375K以下の低温において熱電発電素子に有利である。
BiSbTe系粒子は、さらに好ましくは、菱面体晶系に属し、空間群R−3m(ここで「−」は、3のオーバーラインを表す)に属する。これにより、BiSbTe系粒子は、BiTeとSbTeとの固溶体となり、熱電半導体となるため、本発明の熱電材料全体で熱電性能を発揮する。
BiSbTe系粒子は、なお好ましくは、詳細には、空間群の国際表記R−3m(International Tables for Crystallographyの166番)の対称性を持ち、格子定数a、bおよびcが、
a=0.433±0.05nm、
b=0.433±0.05nm、および
c=3.028±0.2nm
を満たすものが安定である。この範囲を外れると、結晶が不安定となり得る。
BiSbTe系粒子は、さらに好ましくは、一般式BiSb2−xTe3+y(xは0.45≦x≦0.55を、yは−0.1≦y≦0.1を満たす)で表される。これにより、BiSbTe系粒子は、BiTeとSbTeとの固溶体となり、熱電半導体となるため、本発明の熱電材料全体で熱電性能を発揮する。
Sb酸化物粒子は、一般式Sbで表される、斜方晶系の三酸化アンチモンであるが、結晶構造に影響のない範囲で酸素欠損および酸素過剰のものも含む。より好ましくは、Sb酸化物粒子は、空間群の国際表記Pccn(International Tables for Crystallographyの56番)の対称性を持つ。
本発明の熱電材料において、Sbの酸化物粒子は、好ましくは、BiSbTe系粒子に対して1wt%以上7wt%以下の範囲で含有されている。この含有量において、上述のフィルタリング効果がさらに高く、本発明の熱電材料は、375K以下の低温において高い熱電性能を発揮し得る。なお好ましくは、Sbの酸化物粒子は、BiSbTe系粒子に対して2wt%以上6wt%以下の範囲で含有されている。この含有量において、上述のフィルタリング効果がなおさらに高く、本発明の熱電材料は、375K以下の低温において高い熱電性能を発揮し得る。なお好ましくは、Sbの酸化物粒子は、BiSbTe系粒子に対して4wt%以上6wt%以下の範囲で含有されている。この含有量において、上述のフィルタリング効果がなおさらに高く、本発明の熱電材料は、375K以下の低温において高い熱電性能を発揮し得る。
本発明の熱電材料は、好ましくは、BiSbTe系粒子およびそれに固着したSbの酸化物粒子からなる粉末、それを含有する膜、または、それを含有する焼結体のいずれかの形態である。これにより、BiSbTe系粒子およびそれに固着したSbの酸化物粒子によるフィルタリング効果が生じ、375K以下の低温において高い熱電性能を発揮し得る。
なお、本発明の熱電材料が、BiSbTe系粒子およびそれに固着したSbの酸化物粒子からなる粉末を含有する膜である場合、粉末と有機材料と混合し、膜状に加工したものである。この場合、有機材料には、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、ポリ[2,5−ビス(3−テトラデシルチオフェン−2−イル)チエノ[3,−b]チオフェン](PBTTT)、ポリアニリン(PANI)、テトラチアフルバレン(TTF)、および、ベンゾジフランジオンパラフェニレンビニリデン(BDPPV)からなる群から少なくとも1種選択される有機材料を用いることができる。これらの有機材料であれば、フレキシブルな膜状の熱電材料を提供できる。
この場合、膜を形成可能であれば、粉末の含有量は特に制限はないが、好ましくは、粉末は、有機材料に対して4wt%以上80wt%以下、好ましくは、4wt%以上50wt%以下、なお好ましくは、4wt%以上10wt%以下、なおさらに好ましくは、4wt%以上7wt%以下の範囲で含有される。これにより、フレキシビリティを有し、熱電性能を有する膜となり得る。
本発明の熱電材料において、好ましくは、BiSbTe系粒子は、500nm以上200μm以下の範囲の粒径を有し、Sb酸化物粒子は、1nm以上200nm以下の範囲の粒径を有する。BiSbTe系粒子とSb酸化物粒子とが、上述の粒径を有することにより、界面におけるフィルタリング効果が高まる。さらに好ましくは、BiSbTe系粒子は、500nm以上10μm以下の範囲の粒径を有し、Sb酸化物粒子は、1nm以上100nm以下の範囲の粒径を有する。BiSbTe系粒子とSb酸化物粒子とが、上述の粒径を有することにより、界面におけるフィルタリング効果がさらに高まる。なおさらに好ましくは、BiSbTe系粒子は、3μm以上6μm以下の範囲の粒径を有し、Sb酸化物粒子は、50nm以上70nm以下の範囲の粒径を有する。
熱電材料が粉末または粉末を含有する膜である場合には、上述のBiSbTe系粒子の粒径は、粉末の体積基準のメディアン径(d50)であり、マイクロトラックやレーザ散乱法によって測定できる。熱電材料が焼結体である場合には、上述のBiSbTe系粒子の粒径は、走査型電子顕微鏡などの電子顕微鏡による観察写真から、Average Grain Intercept(AGI)法を用いて算出した平均粒径である。本願明細書では、電子顕微鏡の観察像に長さLの線を3本ひき、それぞれの線上にあるBiSbTe系粒子の粒界の切片の数Nを算出し、LをNで除した値の平均値を平均粒径とした。なお、Sb酸化物粒子は、ナノメートルオーダの粒径を有し、焼成時に粒成長等は実質生じないため、後述する製造工程において採用した原料のSb酸化物粒子の大きさである。
次に、このような本発明の熱電材料の例示的な製造方法を説明する。
図2は、本発明の熱電材料を製造する工程を示すフローチャートである。
ステップS210:ビスマス(Bi)とアンチモン(Sb)とテルル(Te)とを含有するBiSbTe系粒子と、アンチモン(Sb)の酸化物粒子とを混合する。ここで、Sbの酸化物粒子(Sb酸化物粒子)は、BiSbTe系粒子に対して0.5wt%以上10wt%以下の範囲で混合される。BiSbTe系粒子およびSb酸化物粒子は上述した通りであるため省略する。
BiSbTe系粒子の粒径は、500nm以上200μm以下の範囲の粒径を有し、Sb酸化物粒子は、1nm以上200nm以下の範囲の粒径を有するものを採用するとよい。BiSbTe系粒子とSb酸化物粒子とが、上述の粒径を有することにより、界面におけるフィルタリング効果の高い熱電材料が得られる。
さらに好ましくは、BiSbTe系粒子は、500nm以上10μm以下の範囲の粒径を有し、Sb酸化物粒子は、1nm以上100nm以下の範囲の粒径を有するものを採用するとよい。BiSbTe系粒子とSb酸化物粒子とが、上述の粒径を有することにより、界面におけるフィルタリング効果のさらに高い熱電材料が得られる。BiSbTe系粒子の粒成長を考慮すれば、なおさらに好ましくは、BiSbTe系粒子は、500nm以上3μm以下の範囲の粒径を有し、Sb酸化物粒子は、50nm以上70nm以下の範囲の粒径を有する。
BiSbTe系粒子は、例えば、粉末冶金、高温溶融など標準的な冶金技術によって製造され、上述の粒径を有するよう、ボールミルなどのメカニカルミリングによる粉砕を行ってもよい。
Sb酸化物粒子は、好ましくは、BiSbTe系粒子に対して1wt%以上7wt%以下の範囲で、なお好ましくは、BiSbTe系粒子に対して2wt%以上6wt%以下の範囲で、なおさらに好ましくは、BiSbTe系粒子に対して4wt%以上6wt%以下の範囲で含有されている。この含有量において、上述のフィルタリング効果がなおさらに高く、高い熱電性能を発揮する熱電材料が得られ得る。
ステップS220:ステップS210で得られた混合物を焼結する。これにより上述の焼結体である本発明の熱電材料が得られる。
焼結は、放電プラズマ焼結(SPS)、ホットプレス焼結(HP)、熱間等方加圧焼結(HIP)、冷間等方圧加圧焼結(CIP)、パルツ通電焼結等の任意の方法によって行われてよいが、好ましくは、放電プラズマ焼結(SPS)によって行われる。これにより、焼結助剤を用いることなく、短時間で粒成長を抑制した焼結体が得られる。
SPSは、好ましくは、658K以上913K以下の温度範囲で、20MPa以上60MPa以下の圧力下で、1分以上10分以下の時間、行われる。この条件であれば、上述の焼結体である本発明の熱電材料が歩留まりよく得られる。
さらに、ステップS220に続いて、得られた焼結体を粉砕してもよい。これにより、粉末である本発明の熱電材料が得られる。焼結体においてBiSbTe系粒子にSb酸化物粒子が固着しているので、メカニカルミリングによる粉砕を行っても、Sb酸化物粒子の固着は維持される。
このようにして得られた粉末である本発明の熱電材料を、有機材料と混合すれば、フレキシブルな熱電材料を提供できる。この場合、有機材料には、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、ポリ[2,5−ビス(3−テトラデシルチオフェン−2−イル)チエノ[3,−b]チオフェン](PBTTT)、ポリアニリン(PANI)、テトラチアフルバレン(TTF)、および、ベンゾジフランジオンパラフェニレンビニリデン(BDPPV)からなる群から選択される有機材料を用いることができる。これらの有機材料であれば、本発明の熱電材料の熱電性能を損なうことはない。
あるいは、ステップS220で得られた焼結体をターゲットに用い、物理的気相成長法を行ってもよい。これにより、本発明の熱電材料からなる薄膜を提供できる。
ここで、特許文献1、2における熱電材料と本発明の熱電材料との差異について述べておく。特許文献1、2のいずれにおいても、母相(例えば、BiSbTe)となり得る塩と酸化物(例えば、Sb)となり得る塩とを水熱合成によって複合体としたのち、必要に応じて、焼結し、熱電材料を得ている。一方、本発明の熱電材料は、BiSbTe系粒子とSbの酸化物粒子とを直接混合し、焼結することによって得られる。このようなプロセスの違いが、上述したBiSbTe系粒子とSbの酸化物粒子とが固着し、界面にフィルタリング効果を生じるバンド構造を形成した熱電材料となり、上述の優れた熱電性能を発揮できるといえる。
(実施の形態2)
実施の形態2では、実施の形態1で説明した本発明の熱電材料を用いた熱電発電素子について説明する。
図3は、本発明の熱電材料を用いた熱電発電素子を示す模式図である。
本発明による熱電発電素子300は、少なくともp型熱電材料320を備え、p型熱電材料320は、実施の形態1で説明した本発明の熱電材料を含有する。
本発明による発電熱電素子300は、一対のn型熱電材料310およびp型熱電材料320、ならびに、これらのそれぞれの端部に電極330、340を含む。電極330、340により、n型熱電材料310およびp型熱電材料320は、電気的に直列に接続される。
ここで、n型熱電材料310は、特に制限はないが、375K以下の温度において熱電性能の高い(例えば、ZTが0.4以上0.9以下)ものがよい。例示的には、n型熱電材料310は、BiTeSe系、MgSbBi系、MgSnGe系等が挙げられる。これらの熱電材料は、周知であるため、当業者であれば、適宜採用できる。
一方、p型熱電材料320は、実施の形態1で説明した本発明の熱電材料である。本発明の熱電材料は、とりわけ375K以下の低温において優れた熱電特性を発揮するため、廃熱回収に有利である。
電極330、340は、通常の電極材料であり得るが、例示的には、Al、Ni、Cu等である。
図3では、低温となる側の電極340に半田等によってn型熱電材料310からなるチップが接合され、n型熱電材料310のチップの反対側の端部と、高温となる側の電極330とが半田等によって接合されている様子が示される。同様に、高温側となる側の電極330に半田等によってp型熱電材料320からなるチップが接合され、p型熱電材料320のチップの反対側の端部と、低温となる側の電極340とが半田等によって接合されている様子が示される。
電極330が高温、電極340が、電極330に比べて低温となるような環境に、本発明の熱電発電素子300を設置して、端部の電極を電気回路等に接続すると、ゼーベック効果によって電圧が発生し、図3の矢印で示すように、電極340、n型熱電材料310、電極330、p型熱電材料320の順で電流が流れる。詳細には、n型熱電材料310内の電子が、高温側の電極330から熱エネルギーを得て、低温側の電極340へ移動し、そこで熱エネルギーを放出し、それに対して、p型熱電材料320の正孔が高温側の電極330から熱エネルギーを得て、低温側の電極340へ移動して、そこで熱エネルギーを放出するという原理によって電流が流れる。
本発明では、p型熱電材料320として実施の形態1で説明した本発明の熱電材料を用いるので、室温〜375Kの比較的低温域において発電量の大きな発電熱電素子300を実現できる。また、熱電材料として、本発明の熱電材料がBiSbTe系粒子およびそれに固着したSbの酸化物粒子からなる粉末を含有する膜、あるいは、本発明の熱電材料が上記粉末からなる焼結体をターゲットして得た薄膜を用いた場合には、IoT電源としてフレキシブル熱電発電モジュールを提供できる。
図3では、π型の熱電発電素子を用いて説明したが、本発明の熱電材料は、U字型熱電発電素子(図示せず)に用いてもよい。この場合も同様に、本発明の熱電材料からなるn型熱電材料およびp型熱電材料が、交互に電気的に直列に接続されて構成される。
図3では、n型熱電材料310を用いて説明してきたが、n型熱電材料310に代えて、金属材料やp型熱電材料を用いてもよい。例えば、n型熱電材料310に代えて金属材料を用いる場合、金属材料は電極330、340と同様の材料であってよい。n型熱電材料310に代えてp型熱電材料を用いる場合、p型熱電材料は、p型熱電材料310である発明の熱電材料のゼーベック係数と異なるゼーベック係数を有する材料を採用できる。好ましくは、p型熱電材料は、本発明の熱電材料のゼーベック係数よりも小さいゼーベック係数を有する。このような構成であっても、上述のように熱エネルギーを電気に効率的に変えることができる。
次に具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
[原料BSTの合成]
原料に用いるBiSbTe系粒子を合成した。Bi粉末(シグマアルドリッチ製、−100メッシュ、純度≧99.99%)と、Sb粉末(シグマアルドリッチ製、−100メッシュ、純度99.5%)と、Te粉末(シグマアルドリッチ製、−200メッシュ、純度≧99.8%)とを用い、Bi0.5Sb1.5Teで表されるBiSbTe系粒子(原料BSTと称する)を合成した。
Bi粉末、Sb粉末およびTe粉末を上述の組成式を満たすように秤量し、混合し、真空石英管に配置し、密封した。電気炉で970Kに加熱し、混合物を溶融させ、室温まで48時間かけて冷却した。冷却後、生成物を取り出し、4時間メカニカルミリング後4時間ボールミルを行い、生成物を粉砕、分散させた。得られた粉末(原料BST)は、数nm〜数μmの大きさを有した。得られた生成物を、Cu Kα線を用いた粉末X線回折(Rigaku、Ultima III)により同定した。結果を図4に示す。
図4は、原料BSTのX線回折パターンを示す図である。
図4によれば、原料BSTのX線回折パターンのすべてのピークは、菱面体晶系に属し、空間群R−3mの対称性を有する、Bi−Sb−Te相(COD#1530822、PDF#721836、JCPDS#49−1713)に指数付けされた。また、ピークから算出した格子定数a〜cは、上述の範囲を満たすことを確認した。
[熱電材料:例1〜例5]
原料BST(粒径:0.5μm以上10μm以下)と、Sb粉末(シグマアルドリッチ製、粒径≒62nm、純度>99.9%)とを、表1に示すように、原料BSTに対してSb粉末がそれぞれ0wt%、1wt%、2wt%、4wt%および6wt%となるように秤量し、混合した。原料BSTとSb粉末(添加量:6wt%)とを混合した原料粉末について、エネルギー分散型X線分光(EDS)を備えた走査型電子顕微鏡(SEM、株式会社日立ハイテクノロジーズ、SU8200)によってSEM観察し、EDSパターンを測定した結果を図5に示す。
混合した原料粉末を放電プラズマ焼結装置(SPS SYNTEX Inc.,SPS−1080)を用いて焼結した。詳細には、表1に示すように、放電プラズマ焼結装置のチャンバ内をアルゴン雰囲気にし、各原料粉末を黒鉛型(φ=10mm)に約1g装入し、46MPa一軸圧力下にて808Kで5分間、焼結した。
得られた焼結体の観察を行い、結晶構造解析等を行った。粉末X線回折、EDSラインスキャンおよびSEM観察を行った。得られた焼結体の構造解析および組成分式を、EDSおよび走査透過電子顕微鏡(STEM)検出器を備えた高分解能電界放出形透過電子顕微鏡(日本電子株式会社、JEM−2100F)を用いて行った。以上の結果を図5〜図11に示す。
次に、得られた焼結体の熱電特性を測定した。焼結体をまず円盤状にカットし、これを測定用の試料(10mmφ×2mm)とした。熱拡散係数(D)をレーザフラッシュサーマルアナライザ(ULVAC、TC−7000)を用いて測定した。熱容量(Cp)を、示差走査熱量計(Netzsch、STA−449)を用いて測定した。合計熱伝導率(Ktot)を一般式Ktot=DρCpを用いて算出した。ここで、ρは、焼結体の密度であり、質量/体積比から算出した。熱伝導率の電荷キャリア成分をWiedemann−Franz則(K=σLT)を用いて算出した。式中のローレンツ数(L)は、Fermi積分関数を用いて温度の関数として算出した。得られた電荷キャリア成分を合計熱伝導率から減算し、熱伝導率の格子成分(Klat)を求めた。
電気伝導度およびゼーベック係数は、円盤状試料を7mm×2mm×2mmの棒状にカッティングして、標準四探針を備えた市販の熱伝導測定装置(ULVAC Shinku−Riko、ZEM−2)を用いて、ヘリウム雰囲気中で測定された。ACトランスポートオプションを搭載した物理特性測定装置(PPMS、日本カンタム・デザイン株式会社)を用い、磁場を−5Tから+5Tに掃引させて、ホール効果測定を行った。以上結果を図12〜図20に示す。
以上の結果をまとめて説明する。
図5は、混合した原料粉末(例5)のSEM像およびEDSパターンを示す図である。
図5のSEM像(上段)によれば、原料BST粉末が0.4μm以上2μm以下の粒径を有しており、Sb粉末が10nm以上100nm以下の粒径を有しており、よく混合されていた。また、図5のEDSパターン(下段)によれば、Bi、Sb、TeおよびO(酸素)のピークが確認された。その他にAl(アルミニウム)、C(炭素)、Be(ベリリウム)のピークも見られたが、これらはSEMの試料ホルダおよび基板によるものであった。
図6は、例5の焼結体のXRDパターンを示す図である。
図7は、例5の焼結体のXRDパターンの一部を拡大して示す図である。
図6には、例5の焼結体のXRDパターンとともに原料BSTのXRDパターンも併せて示す。図6および図7によれば、例5の焼結体のXRDパターンは、原料BSTの(105)ピークのショルダにわずかながらSb相を示すピークが見られた。詳細に検討した結果、斜方晶系の空間群Pccnに属するSb相の(121)のピークであることが分かった。その他に、不純物を示すピークは見られなかった。
図8は、例5の焼結体のラインスキャン分析の結果を示す図である。
ラインスキャンは、図8中のSEM像(例5の焼結体を拡大して示す図)中に示される線に沿って行われた。図8によれば、ナノメートルオーダの粒子とと主相との間の界面にて酸素(O)およびアンチモン(Sb)の含有量が増大し、テルル(Te)およびビスマス(Bi)の含有量は逆に減少することが分かった。
図9は、例1の焼結体のTEM像を示す図である。
図9(a)は、例1の焼結体のTEM像を示し、図9(b)は、図9(a)の丸で示す領域を拡大して示す。さらに、図9(c)は、図9(b)に対応する電子回折パターンである。図9(b)によれば、BiおよびSb/Teの原子配列が確認され、図9(c)によれば、高い結晶性を有することが分かった。
また、図9(b)の原子配列は、図9(d)に示すBSTの原子構造モデルに良好に一致しており、Te−Bi−Te−Bi−Teからなる5層が、隣接するTe原子間のファンデルワールス結合により互いに重なり合った構造をしている。これは、例1の焼結体は、菱面体晶系に属し、空間群R−3mの対称性を有し、かつ、BiSb2−xTe3+y(xは、0.45≦x≦0.55を、yは、−0.1≦y≦0.1を満たす)で表される、BiSbTe系粒子からなることを示す。なお、図示しないが、例2〜例5の焼結体も同様の原子配列を示した。
これらから、例2〜例5の焼結体は、BiSbTe系粒子とSb粒子とを含有しており、Sb粒子は、SPS焼結によっても、原料BSTと反応することなく、化学的に安定であることが分かった。したがって、Sb粒子は、添加しただけ存在しており、仕込み組成が生成物の組成に一致することが確認された。
図10は、例1、例2、例4および例5の焼結体のSEM像を示す図である。
図10のSEM像は、例1、例2、例4および例5の焼結体の破断面であり、図10(e)および(f)は、それぞれ、図10(b)および(d)を拡大して示す。図10(b)〜10(d)によれば、焼結体中にマイクロメートルオーダの粒子と、ナノメートルオーダの粒子とが存在することが分かる。さらに、Sbの添加量が増大するにしたがいZenerピニング効果によりBiSbTe系粒子の粒成長が抑制される傾向を示した。また、AGI法により、焼結体中のBiSbTe系粒子の粒径を測定し、重さおよび体積から密度を算出した。結果を表2にまとめる。
表2によれば、例2〜例5の焼結体において、BiSbTe系粒子は、500nm以上10μm以下の範囲の粒径を有し、Sb粒子は、10nm以上100nm以下の範囲の粒径を有することが分かった。また、SEM観察のために、焼結体を破断しても、Sb粒子がばらばらになることはなく、Sb粒子は、BiSbTe系粒子に固着していることを確認した。なお、例5の焼結体では、BiSbTe系粒子の粒径が増大したが、これは、粒子の凝集が生じたためと考えられる。粒子の様態とともに後述する熱電性能も考慮すれば、Sb粒子の含有量の上限は6wt%とすることが好ましいことが示唆される。
図11は、例5の焼結体の暗視野STEM像およびEDSラインスキャン分析の結果を示す図である。
図11の暗視野STEM像(上段)によれば、例5の焼結体には、黒く示される小さな領域が点在しており、ナノメートルサイズの粒子を示した。黒く示される領域のEDSラインスキャン分析の結果(下段)によれば、領域はSbとOとからなりSb粒子であることが確認された。
以上より、例2〜例5の焼結体は、BiSbTe系粒子と、それに固着したSb粒子とを含有し、Sb粒子は、BiSbTe系粒子に対して0.5wt%以上10wt%以下の範囲で含有されることが確認された。
図12は、例1〜例5の焼結体のゼーベック係数の温度依存性を示す図である。
図12によれば、いずれも、全測定範囲に対してゼーベック係数は正の値を示し、例1〜例5の焼結体において、主要なキャリアはホールであり、p型半導体であることが確認された。図12によれば、Sb粒子の添加によって、ゼーベック係数が増大し、本発明の焼結体は、熱電材料として機能することが示された。また、Sb粒子の添加量が多いほど、ゼーベック係数が大きくなることが分かった。さらに、Sb粒子を添加していない例1の焼結体のゼーベック係数は、325Kを最大とし、その後減少したが、Sb粒子を添加した例2〜例5の焼結体のゼーベック係数は、325K〜425Kの間で高い値を維持する傾向を示した。このことから、本発明の焼結体は、Sb粒子の添加によって広い温度範囲において安定した高い熱電特性を有する熱電材料であることを示唆する。
ボルツマン輸送理論およびシングルパラボリックバンド(SPB)モデルを用いて、ゼーベック係数(S(η))および電荷キャリア濃度(p)を次式で表すことができる。
ここで、ηは低減したフェルミレベル、kはボルツマン定数、qは素電荷、rは散乱パラメータ、mは状態密度の有効質量、Tは絶対温度、hは低減したプランク定数である。また、式(2)のpは、p=1/(qR)(Rはホール係数)であらわされる。電荷キャリアが音響フォノンによって散乱されると、式(1)におけるr=−1/2と仮定できる。
例1の焼結体である純粋なBiSbTeを室温における参照試料とすると、状態密度の有効質量mは1.25m(mは電子の質量である)となり、例2〜例5の焼結体において一定であると仮定する。ここで、式(2)における電荷キャリア濃度(p)を代入し、室温においてr=−1/2と仮定し、すべての焼結体ついてF(1/2)(η)を算出した。式(3)を用いて、ηを計算し、式(1)に代入し、ゼーベック係数を算出した。結果を表3に示す。
表3によれば、例1の焼結体のゼーベック係数の測定値は、計算値に良好に一致したが、例2〜例5の焼結体のそれは、計算値に比べて小さいことが分かった。このことから、本発明の熱電材料におけるSb粒子の添加による熱電特性の向上は、焼結体中のキャリア濃度の変化に加えて、図1を参照して説明したエネルギーのフィルタリング効果によるものといえる。
図13は、例1〜例5の焼結体の電気伝導度の温度依存性を示す図である。
図13によれば、いずれも、温度の上昇とともに電気伝導度は減少した。図13内に拡大して示すように、Sb粒子の添加量が多いほど、電気伝導度は小さいことが分かった。例えば、室温(300K)における例6の焼結体の電気伝導度は、例1の焼結体のそれの10.1%小さく、475Kになるとさらにその差は大きく(18.5%)なった。
p型半導体の電気伝導度σは、キャリア濃度および移動度に依存し、σ=μpeで表される(μはキャリア濃度、pは移動度、eはキャリアの電荷量)。Sb粒子を添加すると、キャリア濃度は減少するが、キャリア移動度はゆっくりと増大する。その結果、BiSbTe系粒子とSb粒子との間のバンド構造のミスマッチによりキャリア濃度が低減するため、電気伝導度が低減する。
図14は、例1〜例5の焼結体のパワーファクタの温度依存性を示す図である。
図12および図13で得られたゼーベック係数Sおよび電気伝導率σからパワーファクタ(F=σS)を算出した。図14によれば、いずれも、温度の上昇とともにパワーファクタは減少した。詳細には、Sb粒子を1wt%より多く添加した例3〜例5の焼結体のパワーファクタは、Sb粒子が添加されていない例1の焼結体のそれよりも増大した。Sb粒子を1wt%添加した例2の焼結体のパワーファクタは、例1の焼結体のそれと、350K以下ではあまり変わらないが、350Kより高い高温側で増大した。
図15は、例1〜例5の焼結体の合計熱伝導率の温度依存性を示す図である。
図15によれば、いずれも、温度の上昇とともに合計熱伝導率は減少し、その後、増大する傾向を示した。Sb粒子の添加量が多いほど、合計熱伝導率は測定した全温度範囲において小さくなることが分かった。次に、合計熱伝導率を電荷キャリア成分(K)と格子定数成分(Klat)とにわけ、詳細な検討を行った。
図16は、例1〜例5の焼結体のローレンツ数の温度依存性を示す図である。
図17は、例1〜例5の焼結体の熱伝導率の電荷キャリア成分の温度依存性を示す図である。
図18は、例1〜例5の焼結体の熱伝導率の格子定数成分の温度依存性を示す図である。
図16は、上述したFermi積分関数を用いて算出された。図16によれば、いずれも、温度の上昇とともに、ローレンツ数は減少し、その後増大する傾向を示した。Sb粒子の添加量が多いほど、ローレンツ数は測定した全温度範囲において小さくなることが分かった。
図17によれば、いずれも、温度の上昇とともに、電荷キャリア成分が減少した。また、電荷キャリア成分は、Sb粒子の添加に伴い、顕著に低減した。これは、BiSbTe系粒子とSb粒子との間に新たに生成した界面によって生じるキャリア散乱やホールフィルタリングによるものと考えられる。
一方、図18によれば、格子定数成分は、図17とは異なり、温度の上昇とともに増大した。詳細には、低温側(≦375K)では、Sb粒子の添加によって格子定数成分が増大するが、高温側(>375K)では、Sb粒子の添加によって格子定数成分の増大が抑制され、純粋なBiSbTeの格子定数成分が大きくなる傾向を示した。
Sb粒子の粒径は、ナノメートルオーダであるため、電子はフォノンよりもより強く散乱される。そのため、本発明の熱電材料の合計熱伝導率の低減には、電荷キャリア成分の低減が大きく寄与していることが分かった。したがって、本発明の熱電材料は、電気伝導度が低下し、低い熱伝導率を有しつつも、375K以下の温度範囲において高い熱電性能を有する特異な材料といえる。
図19は、例1〜例5の焼結体の無次元性能指数の温度依存性を示す図である。
図19によれば、全体的に、Sb粒子の添加によって、無次元性能指数(ZT)は、大きくなる傾向を示した。特に、Sb粒子が2wt%以上添加されると、375K以下の低温におけるZT値は、最大で1.5に達することが分かった。このことから、本発明の熱電材料において、Sb粒子が、BiSbTe系粒子に対して2wt%以上6wt%以下の範囲で含有されることが好ましいことが分かった。
以上の結果を表4にまとめる。
本発明の熱電材料は、375K以下の低温領域において、高いゼーベック係数および高いZT値を有する。
図20は、例4の焼結体の無次元性能指数の経時変化を示す図である。
例4の焼結体を293K〜298Kの温度範囲で相対湿度50%〜60%の雰囲気下で24か月維持し、6ヶ月、12ヶ月および24か月経過時の焼結体のZT値の温度依存性を測定した。図20によれば、経時変化とともに若干のZT値の低下がみられるものの、ZT値は大きく変化しないことが分かった。325Kおよび350KにおけるZT値の変化を調べた。結果を表5に示す。
表5によれば、375K以下の低温において、ZT値の減少率はわずか7%未満であり、本発明の熱電材料は、環境に対する安定性が高く、長期間にわたって高い熱電性能を有することが分かった。
本発明の熱電材料は、375K以下の低温において、高いパワーファクタを達成できるので、各種電気機器に用いられる発電装置に利用される。特に、薄膜化を行えば、IoT電源としてフレキシブル熱電発電素子を提供できる。
300 発電熱電素子
310 n型熱電材料
320 p型熱電材料
330、340 電極

Claims (21)

  1. ビスマス(Bi)とアンチモン(Sb)とテルル(Te)とを含有するBiSbTe系粒子と、
    前記BiSbTe系粒子に固着したアンチモン(Sb)の酸化物粒子と
    を含有し、
    前記Sbの酸化物粒子は、前記BiSbTe系粒子に対して0.5wt%以上10wt%以下の範囲で含有される、熱電材料。
  2. 前記Sbの酸化物粒子は、前記BiSbTe系粒子に対して1wt%以上7wt%以下の範囲で含有される、請求項1に記載の熱電材料。
  3. 前記Sbの酸化物粒子は、前記BiSbTe系粒子に対して2wt%以上6wt%以下の範囲で含有される、請求項2に記載の熱電材料。
  4. 前記Sbの酸化物粒子は、前記BiSbTe系粒子に対して4wt%以上6wt%以下の範囲で含有される、請求項3に記載の熱電材料。
  5. 前記熱電材料は、前記BiSbTe系粒子および前記Sbの酸化物粒子からなる粉末、それを含有する膜、または、それを含有する焼結体のいずれかの形態である、請求項1〜4のいずれかに記載の熱電材料。
  6. 前記BiSbTe系粒子は、500nm以上200μm以下の範囲の粒径を有し、
    前記Sbの酸化物粒子は、1nm以上200nm以下の範囲の粒径を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の熱電材料。
  7. 前記BiSbTe系粒子は、500nm以上10μm以下の範囲の粒径を有し、
    前記Sbの酸化物粒子は、10nm以上100nm以下の範囲の粒径を有する、請求項6に記載の熱電材料。
  8. p型である、請求項1〜7のいずれかに記載の熱電材料。
  9. 前記BiSbTe系粒子は、菱面体晶系に属し、空間群R−3mの対称性を有する、請求項1〜8のいずれかに記載の熱電材料。
  10. 前記BiSbTe系粒子は、BiSb2−xTe3+y(xは、0.45≦x≦0.55を、yは、−0.1≦y≦0.1を満たす)で表される、請求項1〜9のいずれかに記載の熱電材料。
  11. 前記Sbの酸化物粒子は、斜方晶系に属し、空間群Pccnの対称性を有する、請求項1〜10のいずれかに記載の熱電材料。
  12. 前記Sbの酸化物粒子は、三酸化アンチモンである、請求項11に記載の熱電材料。
  13. 少なくとも請求項1に記載の熱電材料を製造する方法であって、
    ビスマス(Bi)とアンチモン(Sb)とテルル(Te)とを含有するBiSbTe系粒子と、アンチモン(Sb)の酸化物粒子とを混合することであって、前記Sbの酸化物粒子は、前記BiSbTe系粒子に対して0.5wt%以上10wt%以下の範囲で混合される、ことと、
    前記混合するステップで得られた混合物を焼結することと
    を包含する、方法。
  14. 前記焼結することは、放電プラズマ焼結によって行う、請求項13に記載の方法。
  15. 前記放電プラズマ焼結は、658K以上913K以下の温度範囲で、20MPa以上60MPa以下の圧力下で、1分以上10分以下の時間、行われる、請求項14に記載の方法。
  16. 前記焼結することで得られた焼結体を粉砕することをさらに包含する、請求項13〜15のいずれかに記載の方法。
  17. 前記粉砕することで得られた粉末と有機材料とを混合することをさらに包含する、請求項16に記載の方法。
  18. 前記有機材料は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、ポリ[2,5−ビス(3−テトラデシルチオフェン−2−イル)チエノ[3,−b]チオフェン](PBTTT)、ポリアニリン(PANI)、テトラチアフルバレン(TTF)、および、ベンゾジフランジオンパラフェニレンビニリデン(BDPPV)からなる群から少なくとも1種選択される、請求項17に記載の方法。
  19. 前記焼結することで得られた焼結体をターゲットとして用い、物理的気相成長法を行うことをさらに包含する、請求項13〜15のいずれかに記載の方法。
  20. 少なくともp型熱電材料を備えた熱電発電素子であって、
    前記p型熱電材料は、請求項1〜12のいずれかに記載の熱電材料である、熱電発電素子。
  21. 前記p型熱電材料と交互に直列に接続されるn型熱電材料を備える、請求項20に記載の熱電発電素子。
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