JP2021014554A - 塗料組成物、硬化塗膜、及び塗装物品 - Google Patents

塗料組成物、硬化塗膜、及び塗装物品 Download PDF

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佳生 金川
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Abstract

【課題】本発明の目的は、帯電防止性及び光沢性の両方に優れた塗膜が得られる塗料組成物を提供することにある。【解決手段】(A1)(メタ)アクリル系樹脂及び(A2)導電性カーボンブラックを含む主剤組成物と、(B)イソシアネート化合物を含む硬化剤組成物とを含む塗料組成物であって、前記(A1)成分の水酸基価及びアミン価が所定範囲内であり、前記(A2)成分のジブチルフタレート吸収量が所定範囲内であり、前記(A2)成分の含有量が、所定範囲内である塗料組成物は、帯電防止性及び光沢性の両方に優れた硬化塗膜を形成することができる。【選択図】なし

Description

本発明は、塗料組成物、硬化塗膜、及び塗装物品に関する。より具体的には、本発明は、帯電防止性能及び光沢性に優れた硬化塗膜が得られる塗料組成物、それによって得られる硬化塗膜、及びその硬化塗膜を有する塗装物品に関する。
産業界で多岐にわたり使用されているプラスチックは、絶縁抵抗性が高く、静電気を帯び易い。静電気の発生は、埃や微粉末の付着による汚染、電子製品の動作不良・破損等のトラブルを招来する。このため、静電気による帯電を抑制することを目的として、物品の表面を被覆するための帯電防止塗料が様々に開発されている。
一般的に、帯電防止塗料は、樹脂組成物に導電性成分が配合されている。例えば、特許文献1には、自己修復性を有するウレタン樹脂と、前記ウレタン樹脂に対して体積比率で5体積%以上25体積%以下(8質量%以上20質量%以下)の導電性粉体とを含有する表面保護膜が記載されており、具体的には、水酸基価が50mgKOH/g以上400mgKOH/g以下のヒドロキシル基含有アクリル樹脂が用いられることが記載されている。特許文献2には、酸価が10mgKOH/g未満の水酸基含有樹脂、当該水酸基含有樹脂に対して25〜500質量部の導電性付与剤、及び所定比率のシランカップリング剤を含有する塗料組成物が記載されており、具体的には、水酸基含有樹脂として、水酸基価が30〜300mgKOH/gの水酸基含有アクリル樹脂が用いられることが記載されている。
特開2013−216854号公報 国際公開第2015/178352号
特許文献1及び2の塗料組成物によれば帯電防止性は得られるものの、導電性成分(導電性付与剤)の配合量が大量であるため、塗膜表面の光沢性が得られず、意匠性に欠ける。一般的に、空隙率が高いカーボンブラックは、少量の配合量で、通常のカーボンブラックよりも導電性が高いということが知られている。本発明者らは、空隙率の高いカーボンブラックが少量の配合量で通常量のカーボンブラックと同等の導電性を発揮することに鑑みて、塗膜表面の優れた光沢性を得るために、塗料組成物に、空隙率の高いカーボンブラックを少量配合した。ところが、今度は、塗膜の優れた光沢性と引き換えに、帯電防止性が得られないという課題に直面した。つまり、これまでの塗料組成物においては、塗膜の帯電防止性と光沢性とが両立しないという課題があることが判明した。
そこで本発明は、帯電防止性及び光沢性の両方に優れた硬化塗膜が得られる塗料組成物を提供することを目的とする。
特許文献1及び2の塗料組成物によって塗膜の帯電防止性が得られても塗膜表面の光沢性が得られない。そのメカニズムに関しては、導電性成分が大量であるために、当該塗料組成物中で分散不良となり、硬化時におけるカーボンブラックの二次凝集体すなわち「アグロメレートの形成」が容易となる。そして、カーボンブラックがアグロメレートの形成することよって塗膜の帯電防止性が良好となる。しかし、一方で、硬化塗膜内で導電性成分が凝集することで塗膜表面の光沢性が得られなくなると考えられる。これに基づくと、少量の空隙率の高いカーボンブラックを含む塗料組成物によって塗膜表面の光沢性が得られても塗膜の帯電防止性を効果的に発揮できない原因に関しては、当該カーボンブラックが少量であるために、当該塗料組成物中で分散状態が良好で、硬化塗膜内での凝集が抑制され、これによって硬化塗膜表面の光沢性が得られる。しかし、一方で、硬化時におけるアグロメレートの形成が不良となり帯電防止性が効果的に得られなくなると考えられる。つまり、本発明者は、塗膜の帯電防止性と光沢性とが両立しない課題が、塗膜の帯電防止性向上に必要なカーボンブラックの「アグロメレート形成」と塗膜表面の光沢性向上に必要な塗料組成物中の「カーボンブラックの分散」とが本質的にトレードオフの関係となっていることにある、と考えた。
そこで、本発明者は、鋭意検討の結果、塗料組成物に配合する(メタ)アクリル系樹脂について、アミノ基の量(アミン価)と、水酸基の量(水酸基価)とを、それぞれ所定の範囲に設定することで、空隙率の高いカーボンブラックの配合量が少量であっても、優れた帯電防止性が得られることを見出した。つまり、塗料組成物において、(メタ)アクリル系樹脂のアミン価及び水酸基価を所定範囲とし、且つ、ジブチルフタレート吸収量が所定範囲の空隙率が高いカーボンブラックを特定の少量配合することで、帯電防止性及び光沢性の両方に優れた塗膜が得られることを見出した。本発明は、この知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A1)(メタ)アクリル系樹脂及び(A2)導電性カーボンブラックを含み、(A3)ポリオールを含んでよい主剤組成物と、(B)イソシアネート化合物を含む硬化剤組成物とを含む塗料組成物であって、
前記(A1)成分及び前記(A3)成分を総合した水酸基価が25〜200mgKOH/g、前記(A1)成分のアミン価が10〜130mgKOH/gであり、
前記(A2)成分のジブチルフタレート吸収量が250〜600ml/100gであり、
前記(A2)成分の含有量が、前記塗料組成物中の、塗膜形成成分の総量100質量%当たり0.7〜7質量%である、塗料組成物。
項2. 前記(A1)成分の含有量が、塗膜形成成分の総量100質量%当たり20質量%以上である、項1に記載の塗料組成物。
項3. 前記(A1)成分が、ポリラクトン、ポリラクタム、ポリカーボネート、ポリエステル及びポリエーテルからなる群より選択される構造を含む、項1又は2に記載の塗料組成物。
項4. 前記(A1)成分及び前記(A3)成分の水酸基の総数に対する(B)成分のイソシアネート基の数の当量比が、0.5〜1.5である、項1〜3のいずれかに記載の塗料組成物。
項5. 前記主剤組成物が、前記(A1)成分、前記(A2)成分、及び前記(A3)成分を含む、項1〜4のいずれかに記載の塗料組成物。
項6. 前記(A2)成分の平均一次粒径が25〜100nmである、項1〜5のいずれかに記載の塗料組成物。
項7. 一液型である、項1〜6のいずれかに記載の塗料組成物。
項8. 二液型である、項1〜6のいずれかに記載の塗料組成物。
項9. 前記(A2)成分の前記主剤組成物中での平均分散粒径が、250〜650nmである、項8に記載の塗料組成物。
項10. 項1〜9のいずれかに記載の塗料組成物の硬化塗膜。
項11. 項10に記載の硬化塗膜を表面に有する塗装物品。
本発明の塗料組成物によれば、帯電防止性及び光沢性の両方に優れた硬化塗膜を形成することができ、物品の表面に塗装することで、帯電防止性による機能と光沢性による意匠性との両方を得ることができる。この本発明の効果が得られるメカニズムは、所定範囲に設定されたアミン価に基づく所定量のアミノ基が、塗料組成物における「カーボンブラックの分散状態」に寄与するとともに、所定範囲に設定された水酸基価に基づく所定量の水酸基が、硬化時におけるカーボンブラックの「アグロメレートの形成」に寄与することによるものと考えられる。
硬化塗膜の帯電防止性と光沢性とを両立させる本発明の効果が得られるメカニズムを模式的に示す。
1.塗料組成物
本発明の塗料組成物は、(A1)(メタ)アクリル系樹脂(以下において、「(A1)成分」とも記載する。)及び(A2)導電性カーボンブラック(以下において、「(A2)成分」とも記載する。)を含み、更に(A3)ポリオール(以下において、「(A3)成分」とも記載する。)を含むことができる主剤組成物と、(B)イソシアネート化合物(以下において、「(B)成分」とも記載する。)を含む硬化剤組成物とを含み、前記(A1)成分の水酸基価及びアミン価が所定範囲内であり、前記(A2)成分のジブチルフタレート吸収量が所定範囲内であり、前記(A2)成分の含有量が、所定範囲内であることを特徴とする。
また、以下において、(A1)成分、(A3)成分及び(B)成分、並びに必要に応じて配合される「他の塗膜形成成分」を「塗膜形成成分」とも記載する。また、「塗膜形成成分の総量」とは、塗膜形成成分である「(A1)成分」及び「(B)成分」と、必要に応じて配合される塗膜形成成分である「(A3)成分」と、必要に応じて配合される「他の塗膜形成成分」と、の配合量の総量を指す。以下、本発明の塗料組成物について詳述する。以下の説明においては、まず、塗料組成物に含まれる各成分(塗膜形成成分、(A2)成分、及び他の成分)について説明し、引き続いて、主剤組成物及び硬化剤組成物それぞれについて説明する。
なお、本明細書において、「〜」で示される数値範囲は、その両端の値を含む。例えば、10〜70質量部との表記は、10質量部以上70質量部以下であることを意味する。
1−1.塗膜形成成分
本発明の塗料組成物は、塗膜形成成分として、(A1)成分としての(メタ)アクリル系樹脂及び(B)成分としてのイソシアネート化合物と;場合により(A3)成分としてのポリオールと;並びに場合により他の塗膜形成成分とを含む。
1−1−1.(A1)(メタ)アクリル系樹脂
(A1)成分である(メタ)アクリル系樹脂は、主剤組成物中に配合することができる塗膜形成成分である。「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」を意味する。また、(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリロイル基含有モノマー(具体的には(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステル)に由来する構造単位を含む高分子を意味する。(A1)成分は、(メタ)アクリロイル基含有モノマー以外のモノマーに由来する構造単位を一部に含んでいてもよい。(メタ)アクリロイル基含有モノマー以外のモノマーとしては、具体的にはエチレン性不飽和モノマーであり、より具体的には、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系モノマー、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸モノマー等が挙げられる。但し、(メタ)アクリル構造に由来する効果を十分に得る観点では、好ましくは、(A1)成分の全構造単位の50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、一層好ましくは99質量%以上)が、(メタ)アクリロイル基含有モノマーに由来する構造単位で占められる。
(A1)成分である(メタ)アクリロイル基含有モノマーは、下記式(1)で表される構造のモノマーである。
式(1)において、Rは水素原子又はメチル基を表し、R'は水酸基又はアミノ基を有していてもよい一価の有機基又は水素原子を表す。
本発明における(A1)成分としての(メタ)アクリル系樹脂は、所定範囲の水酸基価及びアミン価を有することを必須とするため、(A1)成分を構成する(メタ)アクリロイル基含有モノマーに由来する構造単位は、少なくとも、上記R'が水酸基を有する有機基である(メタ)アクリロイル基含有モノマー(以下において、「水酸基を含有する(メタ)アクリロイル基含有モノマー」とも記載する。)に由来する構造単位と、上記R'がアミノ基を有する一価の有機基である(メタ)アクリロイル基含有モノマー(以下において、「アミノ基を含有する(メタ)アクリロイル基含有モノマー」とも記載する。)に由来する構造単位と、を含む。
従って、(A1)成分は、少なくとも、(a11)水酸基を含有する(メタ)アクリロイル基含有モノマー(以下において、「(a11)成分」とも記載する。)及び(a12)アミノ基を含有する(メタ)アクリロイル基含有モノマーを含むモノマー(以下において、「(a12)成分」とも記載する。)の共重合体である。(A1)成分の好ましい例としては、(a11)成分、(a12)成分、並びに、(メタ)アクリル酸(以下において、「(a13)成分」とも記載する。)及び/又は(a14)(メタ)アクリル酸エステル(以下において、「(a14)成分」とも記載する。)の共重合体が挙げられ、より好ましくは、(a11)成分、(a12)成分、(a13)成分、及び(a14)成分の共重合体が挙げられる。
(a11)水酸基を含有する(メタ)アクリロイル基含有モノマー
(a11)成分である水酸基を含有する(メタ)アクリロイル基含有モノマーは、式(1)におけるRが水素原子又はメチル基であり、R'が水酸基を有する一価の有機基であるモノマーである。(a11)成分が有する水酸基は、(B)成分であるイソシアネート化合物と反応することでウレタン結合を形成し、これによって、硬化塗膜の基本物性(例えば、耐溶剤性、耐薬品性や耐摩耗性、塗膜の機械的特性等)を向上させる。更に、(a11)成分が有する水酸基は、(B)成分であるイソシアネート化合物と反応することで、(A2)成分である導電性カーボンブラックを樹脂と乖離し易くして不安定な分散状態をもたらし、これによって、(A2)成分のアグロメレート構造の形成を容易にして帯電防止性を向上させる。
(A1)成分100質量部当たりの(a11)成分の使用量としては、本発明の効果をより一層好ましく得る観点から、例えば10〜70質量部、好ましくは20〜60質量部、より好ましくは30〜50質量部、更に好ましくは35〜40質量部が挙げられる。
(a11)成分としては、以下に述べる(a11H)非柔軟成分(以下において、「(a11H)成分とも記載する。」)である成分、及び(a11S)柔軟成分(以下において、「(a11S)成分とも記載する。」)が挙げられる。これらの(a11)成分は、1種を単独で用いてもよいし、両者を組み合わせて用いてもよい。本発明においては、帯電防止性をより一層向上させる観点から、(a11)成分に(a11S)成分を配合することが好ましい。
(a11H)非柔軟成分
水酸基を含有する(メタ)アクリロイル基含有モノマーのうちの、(a11H)成分である非柔軟成分では、上記式(1)におけるR'としては、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数5〜20のヒドロキシシクロアルキル基、炭素数6〜14のヒドロキシアリール基、炭素数7〜20のヒドロキシアラルキル基が挙げられる。
炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基としては、好ましくは、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、及びヒドロキシブチル基等が挙げられ、より好ましくは、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシ−n−プロピル基、及び4−ヒドロキシ−n−ブチル基等のヒドロキシ鎖状アルキル基が挙げられ、更に好ましくは、2−ヒドロキシエチル基が挙げられる。炭素数5〜20のヒドロキシシクロアルキル基としては、好ましくは、2−ヒドロキシシクロヘキシル基、3−ヒドロキシシクロヘキシル基、及び4−ヒドロキシシクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数6〜18のヒドロキシアリール基としては、好ましくは、2−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2,3−ジヒドロキシフェニル基、2,4−ジヒドロキシフェニル基、2,5−ジヒドロキシフェニル基、2,6−ジヒドロキシフェニル基、3,4−ジヒドロキシフェニル基、及び3,5−ジヒドロキシフェニル基等が挙げられる。炭素数7〜24のヒドロキシアラルキル基としては、好ましくは、2−ヒドロキシフェニルメチル基、3−ヒドロキシフェニルメチル基、4−ヒドロキシフェニルメチル基、及び、炭素数6〜14のアリール基が上記の炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基で置換された基(ヒドロキシメチルフェニル基、ヒドロキシエチルフェニル基等)等が挙げられる。
(A1)成分の合成において、これらの(a11H)成分を1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの(a11H)成分の中でも、本発明の効果をより一層好ましく得る観点から、好ましくは、上記式(1)におけるR'が炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、より好ましくはヒドロキシ鎖状アルキル基、更に好ましくは2−ヒドロキシエチル基である(メタ)アクリロイル基含有モノマーが挙げられる。
(A1)成分が(a11H)成分由来の構造単位を含む場合、(A1)成分100質量部当たりの(a11H)成分の使用量としては、本発明の効果をより一層好ましく得る観点から、例えば6〜50質量部、好ましくは7〜40質量部、より好ましくは8〜30質量部、更に好ましくは8〜20質量部、一層好ましくは8〜10質量部が挙げられる。
(a11S)柔軟成分
水酸基を含有する(メタ)アクリロイル基含有モノマーのうちの、(a11S)成分である柔軟成分では、上記式(1)におけるR'は、ポリラクトン、ポリラクタム、ポリカーボネート、ポリエステル及びポリエーテルからなる群より選択される構造(以下において、「柔軟構造」とも記載する。)を含む水酸基含有基である。(つまり、(a11S)成分由来の構造単位を含む場合の(A1)成分は、ポリラクトン、ポリラクタム、ポリカーボネート、ポリエステル及びポリエーテルからなる群より選択される構造(柔軟構造)を含む。)上記の柔軟構造は、適度に柔軟で弾力性を有しているため、(A1)成分が(a11S)成分由来の構造単位を含むことは、硬化塗膜に柔軟性及び弾力性を付与することができ、耐摩耗性を向上できる点で好ましい。更に、(A1)成分が(a11S)成分由来の構造単位を含むことは、硬化塗膜における帯電防止性をより一層向上させることができる点でも好ましい。本発明の塗料組成物においては、(A3)成分を含む場合も硬化塗膜における帯電防止性をより一層向上させることができるが、その効果は、(A1)成分が(a11S)成分由来の構造単位を含む場合の方が優れている。従って、本発明の塗料組成物においては、少なくとも、(A1)成分が(a11S)成分由来の構造単位を含むことがより一層好ましい。
本発明においては、(a11S)成分由来の構造単位を含む場合の(A1)成分には、ポリラクトン、ポリラクタム、ポリカーボネート、ポリエステル及びポリエーテルのうちの1種を含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
ポリラクトンの構造としては下記式(2)で表される構造が挙げられ、ポリラクタムの構造としては下記式(3)で表される構造が挙げられ、ポリカーボネートの構造としては下記式(4)で表される構造が挙げられ、ポリエステルの構造としては下記式(5)で表される構造が挙げられ、ポリエーテルの構造としては下記式(6)で表される構造が挙げられる。
式(2)〜式(5)において、X1は及びX2は、同一又は異なっていてよい直鎖又は分岐アルキレン基、好ましくは直鎖アルキレン基であり、その炭素数は、好ましくは3〜7、より好ましくは4〜6で、更に好ましくは5である。また、nは1以上の整数であり、好ましくは1〜10、より好ましくは2〜8、更に好ましくは2〜5である。
式(6)において、X3及びX4は、同一又は異なっていてよい直鎖又は分岐アルキレン基(好ましくは直鎖アルキレン基)であり、その炭素数は、好ましくは2〜7、より好ましくは2〜5、更に好ましくは2〜4、特に好ましくは2である。また、lとmとの和は、好ましくは1〜20、より好ましくは2〜10、更に好ましくは2〜8、一層好ましくは2〜5である。
式(2)〜式(6)に示す構造のうち、式(2)に示すポリラクトン、式(4)に示すポリカーボネート、及び式(6)に示すポリエーテル(より好ましくは、式(2)に示すポリラクトン及び式(6)に示すポリエーテル)は、当該構造が末端水酸基を構成でき、本発明の効果をより一層好ましく得る点で好ましい。これらの場合、式(1)におけるR’は、下記式(2a)、式(4a)、及び(6a)に示される、末端水酸基を含有するポリラクトン、ポリカーボネート、及びポリエーテルでそれぞれ構成される。
式(2a)において、X1は、式(2)で述べた通りである。また、X5は、直鎖又は分岐アルキレン基(好ましくは直鎖アルキレン基)であり、その炭素数は、好ましくは2〜7、より好ましくは2〜5、更に好ましくは2〜4、特に好ましくは2である。更に、nは、式(2)で述べた通りである。式(4a)において、X1は、式(4)で述べた通りである。また、X6は、直鎖又は分岐アルキレン基(好ましくは直鎖アルキレン基)であり、その炭素数は、好ましくは2〜7、より好ましくは2〜5、更に好ましくは2〜4である。更に、nは、式(4)で述べた通りである。式(6a)において、X3及びnは、式(6)で述べた通りである。
式(2a)に示す柔軟構造及び水酸基を含有する(メタ)アクリロイル基含有モノマーの市販品としては、例えば、株式会社ダイセル製のプラクセルFシリーズ(ポリカプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート)等、好ましくは、プラクセルFA−2D(ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート;カプロラクトン2モル付加物)、プラクセルFA−5(ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート;カプロラクトン5モル付加物)等が挙げられる。式(4a)に示す柔軟構造及び水酸基を含有する(メタ)アクリロイル基含有モノマーの市販品としては、例えば、(メタ)アクリル酸(3−ヒドロキシ−2,2-ジメチル−プロポキシカルボニルオキシ)−アルキルエステルとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルエステルとの混合物の市販品として、株式会社ダイセル製のHEMAC1等が挙げられる。式(6a)に示す柔軟構造及び水酸基を含有する(メタ)アクリロイル基含有モノマーの市販品としては、例えば、日油株式会社製の、ブレンマーPE−90、200、350、350G、1000、500、800(ポリエチレングリコールモノメタクリレート)、ブレンマー50E−300(ポリエチレングリコール-プロピレングリコール-モノメタクリレート)、ブレンマー55PET−800(ポリエチレングリコール-テトラメチレングリコール-モノメタクリレート)、ブレンマー10PPB−500B(プロピレングリコール-ポリブチレングリコール-モノメタクリレート)、ブレンマーAE−90U、200、400(ポリエチレングリコールモノアクリレート)、ブレンマーAP400、550、800(ポリプロピレングリコールモノアクリレート)等が挙げられる。
(A1)成分の合成において、これらの(a11S)成分を1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A1)成分が(a11S)成分由来の構造単位を含む場合、(A1)成分100質量部当たりの(a11S)成分の使用量としては、本発明の効果をより一層好ましく得る観点から、例えば5〜50質量部、好ましくは10〜40質量部、より好ましくは20〜30質量部、更に好ましくは25〜30質量部が挙げられる。
(A1)成分が(a11H)成分由来の構造単位及び(a11S)成分由来の構造単位を含む場合、(A1)成分を得るために使用される(a11S)成分の比率は、本発明の効果をより一層好ましく得る観点から、(a11H)成分1質量部に対して、例えば0.5〜5質量部、好ましくは0.7〜4.8質量部、より好ましくは1.5〜4.5質量部、更に好ましくは2〜4.2質量部、一層好ましくは2.5〜4質量部、特に好ましくは3〜3.5質量部が挙げられる。
(a12)アミノ基を含有する(メタ)アクリロイル基含有モノマー
(a12)成分であるアミノ基を含有する(メタ)アクリロイル基含有モノマーは、一般式(1)におけるRが水素原子又はメチル基であり、R'がアミノ基を有する一価の有機基であるモノマーである。(a12)成分が有するアミノ基は、塗料組成物中における(A2)成分の分散性を向上させ、硬化時における(A2)成分の過度な凝集を抑制することで、硬化塗膜表面の光沢性を向上させる。
アミノ基を含有する(メタ)アクリロイル基含有モノマーとしては、(モノ−C1〜4アルキル)アミノC2〜6アルキル(メタ)アクリレート、及び(ジ−C1〜4アルキル)アミノC2〜6アルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。(モノ−C1〜4アルキル)アミノC2〜6アルキル(メタ)アクリレートとしては、アミノエチル、アミノプロピル、メチルアミノエチル、エチルアミノエチル、ブチルアミノエチル、メチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。(ジ−C1〜4アルキル)アミノC2〜6アルキル(メタ)アクリレートとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(a12)成分の市販品としては、共栄社化学株式会社製の、ライトエステルDM(N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ライトエステルDE(N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート)等が挙げられる。
(A1)成分の合成において、これらの(a12)成分を1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの(a12)成分の中でも、本発明の効果をより一層好ましく得る観点から、好ましくは(ジ−C1〜4アルキル)アミノC2〜6アルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、より好ましくはジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
(A1)成分100質量部当たりの(a12)成分の使用量としては、本発明の効果をより一層好ましく得る観点から、例えば5〜30質量部、好ましくは10〜25質量部、より好ましくは15〜23質量部が挙げられる。
(a13)(メタ)アクリル酸
(a13)である(メタ)アクリル酸は、式(1)におけるRが水素原子又はメチル基であり、R'が水素であるモノマーである。
(A1)成分の合成において、(a13)成分を1種単独で用いてもよいし、アクリル酸及びメタクリル酸を組み合わせて用いてもよい。
これらの(a13)成分の中でも、本発明の効果をより一層好ましく得る観点から、好ましくは、メタクリル酸が挙げられる。
(A1)成分が(a13)成分由来の構造単位を含む場合、(A1)成分100質量部当たりの(a13)成分の使用量としては、本発明の効果をより一層好ましく得る観点から、例えば0.1〜10質量部、好ましくは0.3〜5質量部、より好ましくは0.5〜2質量部、更に好ましくは0.7〜1.5質量部が挙げられる。
(a14)(メタ)アクリル酸エステル
(a14)成分である(メタ)アクリル酸エステルは、式(1)におけるRが水素原子又はメチル基であり、R'が一価の有機基であるモノマーである。一価の有機基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられる。
炭素数1〜6のアルキル基としては、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等が挙げられ、より好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、及びn−ブチル基等の鎖状アルキル基が挙げられ、炭素数5〜20のシクロアルキル基としては、好ましくは、シクロヘキシル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数6〜18のアリール基としては、好ましくはフェニル基等が挙げられる。炭素数7〜24のアラルキル基としては、好ましくはフェニルメチル基、フェニルエチル基、炭素数6〜14のアリール基が上記の炭素数1〜6のアルキル基で置換された基(メチルフェニル基、エチルフェニル基等)等が挙げられる。
(A1)成分の合成において、これらの(a14)成分を1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの(a14)成分の中でも、本発明の効果をより一層好ましく得る観点から、好ましくは、上記式(1)におけるR'が炭素数1〜6のアルキル基、より好ましくは鎖状アルキル基、更に好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基である(メタ)アクリロイル基含有モノマーが挙げられる。
(A1)成分が(a14)成分由来の構造単位を含む場合、(A1)成分100質量部当たりの(a14)成分の使用量としては、本発明の効果をより一層好ましく得る観点から、例えば10〜65質量部、好ましくは15〜60質量部、より好ましくは20〜55質量部、更に好ましくは30〜50質量部、一層好ましくは40〜45質量部が挙げられる。
(A1)成分の合成
(A1)成分の合成については、上記の(a11)成分及び(a12)成分、並びに必要に応じ(a13)成分及び/又は(a14)成分を用いて公知の重合方法を用いて行うことができる。また、(A1)成分が、ポリラクトン、ポリラクタム、ポリカーボネート、ポリエステル及びポリエーテルからなる群より選択される柔軟構造を含む場合において、柔軟構造を含む(A1)成分の合成方法としては、(a11S)成分をモノマー成分の1つとして用いて重合することで、柔軟構造が導入された(A1)成分を合成する方法;及び、(a11S)成分をモノマー成分に用いずにアクリル樹脂を一旦合成した後、当該合成したアクリル樹脂に対して上記柔軟構造を有する化合物で変性することで、柔軟構造が導入された(A1)成分を得る方法等が挙げられる。
重合方法としては、通常、ラジカル重合が挙げられる。また、重合方式としては、溶液重合、懸濁重合、及び乳化重合等の公知の重合方式のいずれであってもよい。これらの重合方式の中でも、重合の精密な制御等の観点から、溶液重合を用いることが好ましい。
ラジカル重合の重合開始剤としては、公知のものを用いることができる。例えば2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(ACHN)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート(MAIB)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)(ACVA)、1,1'−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチルアミド)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、2,2'−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2'−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等のアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクタノエート、ジイソブチルパーオキサイド、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシピバレート、デカノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、およびt−ブチルパーオキシベンゾエート等の過酸化物系開始剤、過酸化水素と鉄(II)塩、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウム等の、酸化剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤等が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの重合開始剤の中でも、好ましくはアゾ系開始剤が挙げられ、より好ましくは1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(ACHN)が挙げられる。
重合開始剤の使用量としては、特に限定されないが、例えば、重合するモノマーの総量100質量部当たり、0.001〜10質量部、好ましくは0.01〜8質量部、より好ましくは0.1〜6質量部、更に好ましくは1〜4質量部が挙げられる。
また、重合反応に際しては、適宜、公知の連鎖移動剤、重合禁止剤、分子量調整剤などを用いてもよい。さらに、重合反応は、1段階で行ってもよいし、2段階以上で行ってもよい。重合反応の温度は特に限定されないが、例えば50℃〜200℃、好ましくは80℃〜150℃、より好ましくは100〜130℃が挙げられる。
(A1)成分の数平均分子量(Mn)としては、塗膜の物品表面への密着性を良好とする観点から、例えば1000以上、好ましくは2000以上、より好ましくは2500以上が挙げられ、塗膜中の気泡発生を抑制し良好な塗膜を得る観点から、例えば7000以下、好ましくは6000以下、より好ましくは5000以下が挙げられる。また、(A1)成分の重量平均分子量(Mw)としては、塗膜の物品表面への密着性を良好とする観点から、例えば5000以上、好ましくは7000以上、より好ましくは10000以上が挙げられ、塗膜中の気泡発生を抑制し良好な塗膜を得る観点から、例えば50000以下、好ましくは40000以下、より好ましくは30000以下、更に好ましくは20000以下が挙げられる。(A1)成分の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、重合反応時間、反応温度、重合開始剤の使用量などの条件により調節することができる。なお、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレン換算で測定される値である。
(A1)成分の多分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)としては、良好な塗膜を形成する観点から、例えば1以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上が挙げられ、塗布作業性の観点から、例えば7以下、好ましくは5以下、より好ましくは4.5以下が挙げられる。
1−1−2.(A3)ポリオール(塗膜形成成分)
(A3)成分であるポリオールは、場合により主剤組成物中に配合することができる塗膜形成成分である。(A3)成分は、(B)成分と反応することで硬化塗膜を形成する。ポリオールは、その化学構造が適度に柔軟で弾力性を有しているため、本発明の塗料組成物が(A3)成分を更に含むことは、硬化塗膜に柔軟性及び弾力性を付与することができ、耐摩耗性を向上できる点で好ましい。(A1)成分が(a11S)成分由来の構造単位を含む場合も硬化塗膜の耐摩耗性を向上できるが、(A3)成分を含む場合の方が、耐摩耗性をより一層効率的に向上させることができる。また、本発明の塗料組成物が(A3)成分を更に含むことは、硬化塗膜の耐酸性を向上できる場合もある。更に、本発明の塗料組成物が(A3)成分を更に含むことは、硬化塗膜における帯電防止性をより一層向上させることができる点でも好ましい。
ポリオールは、1分子中にヒドロキシ基を2以上有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、ヒドロキシ基を、好ましくは2〜6個、より好ましくは2〜4個含む化合物が挙げられる。
本発明における(A3)成分として用いられるポリオールの好ましい例としては、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールが挙げられる。これらの化学構造は、より適度に柔軟でより好ましい弾力性を有しているため、硬化塗膜により適度な柔軟性及びより好ましい弾力性を付与することができる点で好ましい。(A3)成分としては、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールの中から1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリラクトンポリオールは、一分子中に、ラクトンの開環構造および2以上のヒドロキシ基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、以下の式(7a)〜式(7c)のいずれかに示されるポリオールが挙げられる。
式(7a)において、R1は、2価の有機基を表す。2価の有機基としては、−CH2−、−C24−等の直鎖アルキレン基、−CH2−C(CH32−CH2−等の分岐アルキレン基、−C24−O−C24−等のエーテル含有基、等が挙げられる。また、Xは、それぞれ同じ又は異なっていてよい直鎖又は分岐のアルキレン基、好ましくは直鎖アルキレン基を表す。当該アルキレン基の炭素数は、好ましくは3〜7、より好ましくは4〜6、更に好ましくは5である。更に、m及びnは、それぞれ、1以上の整数、好ましくは2〜20の整数を表し、mとnとの和が好ましくは4〜35である。
式(7b)において、R2は、3価の有機基を表す。3価の有機基としては、直鎖又は分岐アルカンから水素原子を3つ取り除いた構造等が挙げられる。また、Xは、それぞれ同じ又は異なっていてよい直鎖又は分岐のアルキレン基、好ましくは直鎖アルキレン基を表す。当該アルキレン基の炭素数は、好ましくは3〜7、より好ましくは4〜6、更に好ましくは5である。更に、l、m及びnは、それぞれ、1以上の整数、好ましくは2〜20の整数を表し、l、m及びnの和が好ましくは3〜40である。
式(7c)において、R3は、4価の有機基を表す。4価の有機基としては、直鎖又は分岐アルカンから水素原子を4つ取り除いた構造等が挙げられる。また、Xは、それぞれ同じ又は異なっていてよい直鎖又は分岐のアルキレン基、好ましくは直鎖アルキレン基である。当該アルキレン基の炭素数は、好ましくは3〜7、より好ましくは4〜6、更に好ましくは5である。更に、k、l、m及びnは、それぞれ、1以上の整数、好ましくは2〜20の整数を表し、k、l、m及びnの和が好ましくは4〜50である。
これらのポリラクトンポリオールは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
式(7a)〜(7c)に示すポリラクトンポリオールの市販品としては、例えば、株式会社ダイセル製の、プラクセル200シリーズ(ポリカプロラクトンジオール)、プラクセル300シリーズ(ポリカプロラクトントリオール)、プラクセル400シリーズ(ポリカプロラクトンテトラオール)等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールは、一分子中に、−O−(C=O)−O−で表されるカーボネート基と2以上(好ましくは2)のヒドロキシ基とを有する化合物であれば、特に限定されない。ポリカーボネートポリオールは、1種以上のポリオール原料(多価アルコール)と、炭酸エステルやホスゲン(好ましくは炭酸エステル)とを反応させることにより得ることができる。ポリオール原料としては、脂肪族ポリオール、脂環族ポリオール、芳香族ポリオール等が挙げられ、好ましくは脂肪族ポリオールが挙げられ、より好ましくは、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール等の、炭素数2〜10の直鎖又は分岐ジオールが挙げられる。炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の脂肪族炭酸エステル、ジフェニルカーボネート等の芳香族炭酸エステル、エチレンカーボネート等の環状炭酸エステルが挙げられ、好ましくは脂肪族炭酸エステルが挙げられ、より好ましくはジメチルカーボネートが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールの市販品としては、旭化成株式会社製のデュラノールシリーズ(ポリカーボネートジオール)、クラレ株式会社製のクラレポリオールCシリーズ(3−メチル−1,5−ペンタンジオール及び1、6−ヘキサンジオールをポリオール原料とするポリカーボネート)等が挙げられる。
ポリエステルポリオールは、一分子中に、エステル基(−COO−又は−OCO−)と2以上(好ましくは2)のヒドロキシ基とを有する化合物であれば特に限定されない。ポリエステルポリオールは、1種以上のポリオール原料(多価アルコール)と、ポリカルボン酸又はそのエステル、無水物、ハライド等のエステル形成性化合物との反応により得ることができる。ポリオール原としては、上記のポリカーボネートポリオールの原料と同様のポリオール原料が挙げられる。ポリカルボン酸又はそのエステル、無水物、ハライド等のエステル形成性化合物としては、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、トリカルボン酸等の多価カルボン酸、これら多価カルボン酸の酸無水物、ハライド、低級エステル化合物等が挙げられ、より好ましくは、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソルタル酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
これらのポリエステルポリオールは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリエステルポリオールの市販品としては、クラレ株式会社製のクラレポリオールPシリーズ(3−メチル−1,5−ペンタンジオールと、アジピン酸、テレフタル酸、イソルタル酸及びセバシン酸からなる群より選択される1種以上のジカルボン酸を原料とするポリエステルポリオール)、クラレポリオールFシリーズ(3−メチル−1,5−ペンタンジオール及び1,9−ノナンジオールとアジピン酸とを原料とする3官能ポリエステルポリオール)等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールは、一分子中に、エーテル結合(−O−)と2以上(好ましくは2)のヒドロキシ基とを有する化合物であれば特に限定されない。例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシド単位とプロピレンオキシド単位とを有するランダム共重合体又はブロック共重合体、エチレンオキシド単位とブチレンオキシド単位とを有するランダム共重合体又はブロック共重合体等が挙げられる。
本発明における(A3)成分として用いられるポリオールの別の例としては、アミノ基を有さず水酸基を有するアクリル樹脂も挙げられる。このようなアクリル樹脂としては、上記の(a11)成分を用いて重合されたアクリル樹脂が挙げられる。
ポリオールの数平均分子量としては、上述の(A3)成分の水酸基価に基づいて適宜設定することができる。具体的には、ポリオールの数平均分子量としては、好ましくは50〜3000、より好ましくは65〜1500、更に好ましくは80〜1000、一層好ましくは90〜550、より一層好ましくは100〜530が挙げられる。適度な分子量とすることで、塗膜に柔軟性及び弾力性と溶剤耐性等の耐久性とを備えることが容易となる。なお、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレン換算で測定される値である。
1−1−3.(B)イソシアネート化合物
(B)成分であるイソシアネート化合物は、硬化剤組成物に配合することができる塗膜形成成分である。(B)成分は、塗料組成物の主剤組成物における(A1)成分の水酸基、又は(A1)成分及び(A3)成分両方の水酸基と反応することでウレタン結合を形成し塗膜を硬化させる。
イソシアネート化合物は、1分子中に1又は2以上のイソシアネート基(脱離性基で保護されたイソシアネート基を含む。以下において同様。)を含有する化合物である。(B)成分としては、1分子中に1個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物(単官能イソシアネート化合物)及び1分子中に2以上のイソシアネート基有するイソシアネート化合物(多官能イソシアネート化合物)から1種を単独で用いてもよいし、これらを組み合わせて用いてもよい。
単官能イソシアネート化合物としては、メチルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート及びオクチルイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;シクロヘキシルイソシアネート及び4−メチルシクロヘキシルイソシアネート等の環状脂肪族イソシアネート;フェニルイソシアネート、ベンジルイシアネート及びナフチルイソシアネート等の芳香族イソシアネート等が挙げられる。これらの単官能イソシアネート化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多官能イソシアネート化合物としては、イソシアネート基が1分子当たり好ましくは2〜6個、より好ましくは1分子あたり2〜4個である化合物が挙げられる。より具体的には、多官能イソシアネート化合物としては、リジンイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びトリメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−(又は2,6)−ジイソシアネート、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)及び1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の環状脂肪族ジイソシアネート;リジントリイソシアネート等の3官能以上のイソシアネートが挙げられる。これらの多官能イソシアネート化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)成分は、上記のイソシアネート化合物の多量体(ポリイソシアネート)であることがより好ましい。ポリイソシアネートとしては、イソシアヌレート変性体[例えば、IPDI(イソホロンジイソシアネート)イソシアヌレート、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)イソシアヌレート等];アダクト変性体[例えば、TDI(トリレンジイソシアネート)のトリメチロールプロパン付加物、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)のトリメチロールプロパン付加物、キシリレンジイソシアネート(XDI)のトリメチロールプロパン付加物等、IPDI(イソホロンジイソシアネート)のトリメチロールプロパン付加物等];ビウレット変性体[例えば、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)ビウレット等]等が挙げられる。これらのポリイソシアネートは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のポリイソシアネート化合物の市販品としては、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートとして、旭化成ケミカルズ株式会社製のデュラネートTPA−100,同TKA−100、バイエル社製のデスモデュールN3300、BASF社製のバソナートHI−100、日本ポリウレタン工業株式会社製のコロネートHX等が挙げられ、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレートとして、Degussa社製のVestagon T1890、バイエル社製のデスモデュールZ4470等が挙げられ;ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクトとして、旭化成ケミカルズ株式会社製のデュラネートP301−75E等が挙げられ、イソホロンジイソシアネートのアダクトとして、三井化学株式会社製のタケネートD140N等が挙げられ;ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとして、旭化成ケミカルズ株式会社製のデュラネート24A−100,同22A−75PX、バイエル社製のデスモデュールN−75,同N3200、BASF社製のバソナートHB−100、ローディア社製のトロネートHDB等が挙げられる。
これらのイソシアネート化合物の中でも、硬化塗膜の耐酸性をより好ましく得る観点から、好ましくはイソシアヌレート変性体が挙げられ、硬化塗膜の耐酸性及び耐摩耗性をよりバランス良く得る観点から、アダクト変性体及びビウレット変性体が挙げられる。
(B)成分は、ブロックイソシアネートであってもよい。特に、本発明の塗料組成物が1液型である場合、保存性(経時安定性)の観点から(B)成分としてブロックイソシアネートを含むことが好ましい。
ブロックイソシアネートは、上記のイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部又は全部が脱離基により保護された化合物である。脱離基(保護基)を構成するためのブロック剤としては、公知のブロック剤が挙げられ、例えば、フェノール系、アルコール系、活性メチレン系、メルカプタン系、酸アミド系、ラクタム系、酸イミド系、イミダゾール系、尿素系、オキシム系、アミン系化合物等が挙げられる。より具体的には、ブロック剤としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール等のフェノール系化合物;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール等のアルコール系化合物;マロン酸ジメチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系化合物;ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等のメルカプタン系化合物;アセトアニリド、酢酸アミド等の酸アミド系化合物;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム等のラクタム系化合物;コハク酸イミド、マレイン酸イミド等の酸イミド系化合物;アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム等のオキシム系化合物;ジフェニルアニリン、アニリン、エチレンイミン等のアミン系化合物が挙げられる。
イソシアネートインデックス
本発明の塗料組成物において、(A1)成分及(A3)成分の水酸基の総数に対する(B)成分のイソシアネート基(ブロックイソシアネート基を含む)の数の当量比(以下において、「イソシアネートインデックス」とも記載する。)としては、例えば0.5〜1.5が挙げられる。イソシアネートインデックスが上記範囲の下限値以上であることは、塗膜の耐酸性を向上させる点で好ましく、上記範囲の上限値以下であることは、塗膜の耐摩耗性を向上させる点で好ましい。塗膜の耐酸性及び耐摩耗性のバランスをより向上させる観点から、イソシアネートインデックスとしては、好ましくは0.7〜1.3、より好ましくは0.8〜1.2、更に好ましくは0.9〜1.1、特に好ましくは0.95〜10.5が挙げられる。
1−1−4.他の塗膜形成成分
本発明の塗料組成物は、硬化塗膜の樹脂を構成する成分であれば、上記成分以外の他の塗膜形成成分を必要に応じて更に含むことができる。他の塗膜形成成分は、主剤組成物中に含むことができる。他の塗膜形成成分としては、活性エネルギー線硬化樹脂、光開始剤等が挙げられる。
1−2.(A2)導電性カーボンブラック
(A2)成分である導電性カーボンブラックは、硬化塗膜において静電気による帯電を抑制する目的で本発明の塗料組成物に配合される。(A2)成分は、主剤組成物に配合することができる。導電性カーボンブラックとしては、所定範囲のジブチルフタレート吸収量(以下において、「DBP吸収量」とも記載する。)を有する導電性カーボンブラックであれば特に限定されない。なお、本発明においては、(A2)成分にカーボンナノチューブは含まない。
1−2−1.ジブチルフタレート吸収量
(A2)成分のDBP吸収量は、250〜600ml/100gである。DBP吸収量とは、カーボンブラックの粒子表面の空隙にジブチルフタレートを吸収する能力を評価する指標であり、JIS K6217−4:2008(ゴム用カーボンブラック−基本特性−第4部:オイル吸着量の求め方(圧縮材料を含む))に準拠して測定される値である。粒子同士のつながり、すなわちストラクチャーが発達したカーボンブラックでは、一次粒子が融着してできるネック部や粒子同士が凝集して形成される空隙が多くなるためDBP吸収量が多くなる。
DBP吸収量が250〜600ml/100gの範囲を下回ると、ストラクチャーが十分に発達していないために導電パスが効果的に形成されず、本発明における(A2)成分が少量だと塗膜の帯電防止性を得ることができない。DBP吸収量が上記範囲を上回ると、塗料組成物中で塊状の凝集が生成し、分散が不良になるため、塗膜の光沢性を得ることができない。本発明の効果をより一層良好に得る観点から、(A2)成分のDBP吸収量としては、好ましくは260〜500ml/100g、より好ましくは270〜400ml/100g、更に好ましくは280〜350ml/100gが挙げられる。
(A2)成分としては、1種を単独で用いてもよいし、DBP吸収量の異なる2種以上を組み合わせて用いてもよい。
1−2−2.(A2)の製造方法
(A2)成分の製造方法は、上記DBP吸収量のものを得られる限り特に限定されず、例えば、ファーネス法、アセチレン法、ガス化法等の公知の方法が挙げられる。DBP吸収量は、反応炉の形状や炉内温度分布などの制御によって調整できる。例えば、原料ガスの供給量が多くなると、原料ガスの分解による発熱量が多くなるため、反応炉内が高温となる。これにより生成されるカーボンブラックの一次粒子同士が反応炉内で衝突する頻度が高くなるため、ストラクチャーが発達し、DBP吸収量が高くなる。
1−2−3.具体例
(A2)成分としては、市販の導電性カーボンブラックを用いることもでき、例えば、#3600B(三菱ケミカル株式会社製、DBP吸収量290ml/100g)、#3950B(三菱ケミカル株式会社製、DBP吸収量310ml/100g)、BlackPearls 2000(キャボット社製、DBP吸収量330ml/100g)、ケッチェンブラック EC(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、DBP吸収量360ml/100g)、ケッチェンブラック EC−DJ600(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、DBP吸収量495ml/100g)、ライオナイト EC200L(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、DBP吸収量300ml/100g)等が挙げられ、好ましくはケッチェンブラック EC、ケッチェンブラック EC−DJ600、ライトナイト EC200Lが挙げられ、より好ましくはライトナイト EC200Lが挙げられる。
1−3.その他の成分
本発明の塗料組成物は、上記成分以外にも、必要に応じて他の成分を更に含むことができる。他の成分としては、添加剤及び溶剤等が挙げられる。
1−3−1.添加剤
添加剤としては、表面調整剤、レベリング剤、分散剤、塗面調製剤、界面活性剤、光安定剤、酸化防止剤、増粘剤、揺変剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、顔料、光輝剤等が挙げられる。
本発明の塗料組成物は、(A2)成分の分散性に優れているため、分散剤を配合しなくても(A2)成分を良好に分散して硬化塗膜表面の優れた光沢性を得ることができるが、分散剤を更に配合することによって、より一層優れた(A2)成分の分散状態を得て、より一層優れた硬化塗膜表面の光沢性を得ることができる。本発明の塗料組成物が二液型である場合、(A2)成分は、主剤組成物に配合することができる。
また、本発明の塗料組成物において顔料を配合する場合、塗膜に意匠性を付与することができる点で好ましい。顔料は、主剤組成物に配合することができる。顔料としては、白色顔料、黒色以外の有色顔料、及び黒色顔料等が挙げられるが、好ましくは黒色顔料が挙げられ、より好ましくは(A2)成分以外のカーボンブラックが挙げられる。これによって、塗膜の黒をより濃く(黒味をより高く)し、優れた意匠性を付与することができる。
黒色顔料としての(A2)成分以外のカーボンブラックとしては、ジブチルフタレート吸収量が250ml/100g未満のカーボンブラックであればよく、好ましくは200ml/100g以下、より好ましくは150ml/100g以下、更に好ましくは100ml/100g以下のカーボンブラックが挙げられる。黒色顔料としての(A2)成分以外のカーボンブラックのジブチルフタレート吸収量の下限値としては特に限定されないが、例えば50ml/100g以上が挙げられる。黒色顔料としての(A2)成分以外のカーボンブラックの具体例としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。これらのカーボンブラックは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
黒色顔料としての(A2)成分以外のカーボンブラックとの平均一次粒径としては、例えば3〜60nm、好ましくは5〜50nmが挙げられる。
黒色顔料としての(A2)成分以外のカーボンブラックの市販品としては、Bilra Carbon社製の、ラーベン(Raven)7000、ラーベン5750、ラーベン5250、ラーベン5000、ラーベン5000ウルトラ(ULTRA)II、ラーベン3500、ラーベン2500ウルトラ、ラーベン2000、ラーベン1500、ラーベン1255、ラーベン1250、ラーベン1200、ラーベン1190ウルトラII、ラーベン1170、ラーベン1080ウルトラ、ラーベン1060ウルトラ、ラーベン790ウルトラ、ラーベン780ウルトラ、ラーベン760ウルトラ;キャボット社製の、リーガル(Regal)400R、リーガル330R、リーガル660R、モーグル(Mogul)L、モナーク(Monarch)700、モナーク(Monarch)800、モナーク880、モナーク900、モナーク1000、モナーク1100、モナーク1300、モナーク1400;デグッサ社製の、カラーブラックFW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラック18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス(Printex)35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4;三菱ケミカル株式会社製の、No.25、No.33、No.40、No.45、No.45L、No.47、No.52、No.900、No.960、No.2300、No.2650、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100等が挙げられる。
黒色顔料としての(A2)成分以外のカーボンブラックの含有量としては特に限定されないが、(A2)成分1質量部当たり、例えば0.5〜2.5質量部、好ましくは1〜2質量部、より好ましくは1.2〜1.7質量部が挙げられる。また、(A1)成分100質量部当たり、0.5〜5質量部、好ましくは1〜4.5質量部、より好ましくは2〜4質量部が挙げられる。
また、黒色顔料としての(A2)成分以外のカーボンブラックと、(A2)成分との総量としては、塗膜形成成分の総量100質量%当たり1〜12質量%、好ましくは1.2〜7.5質量%、より好ましくは1.4〜4.5質量%が挙げられる。
1−3−2.溶剤
本発明の塗料組成物は、上記の各成分が溶剤に溶解または分散している。溶剤としては、好ましくは有機溶剤であり、実質的に水を含まない。実質的に水を含まないとは、塗料組成物中の水の含有量が好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、最も好ましくは0質量%である。
有機溶剤の例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブチルアルコールなどの第一級アルコール、2−ブタノール等の第二級アルコール、t−ブチルアルコール、等の第三級アルコール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。本発明の塗料組成物が二液型である場合において、有機溶剤が主剤組成物に含まれる場合、当該有機溶剤としては、好ましくは、三級アルコール、ケトン系溶剤及びエステル系溶剤が挙げられ、より好ましくはケトン系溶剤、更に好ましくはメチルイソブチルケトンが挙げられる。また、本発明の塗料組成物が二液型である場合において、有機溶剤が硬化剤組成物に含まれる場合、当該有機溶剤としては、三級アルコール、ケトン系溶剤及びエステル系溶剤が挙げられ、より好ましくはエステル系溶剤、更に好ましくは酢酸ブチルが挙げられる。
本発明の塗料組成物における溶剤の含有量としては、塗料組成物中の固形分(溶剤以外の不揮発成分)の濃度が例えば10〜70質量%となる量とすることができる。本発明の塗料組成物が一液型である場合、塗料組成物中の固形分の濃度が好ましくは30〜60質量%、より好ましくは30〜50質量%、更に好ましくは30〜40質量%となる量とすることができる。また、本発明の塗料組成物が二液型である場合、主剤組成物中の溶剤の含有量としては、主剤組成物中の固形分の濃度が、好ましくは40〜60質量%、より好ましくは45〜55質量%となる量とすることができる。本発明の塗料組成物が二液型である場合、硬化剤組成物中の溶剤の含有量としては、硬化剤組成物中の固形分の濃度が、好ましくは10〜60質量%、より好ましくは20〜58質量%、更に好ましくは30〜56質量%、一層好ましくは40〜54質量%、より一層好ましくは45〜53質量%が挙げられる。
1−4.主剤組成物
本発明の塗料組成物における主剤組成物は、(A1)成分である(メタ)アクリル系樹脂と、所定の且つ所定量の(A2)成分である導電性カーボンブラックとを含む。本発明の塗料組成物における主剤組成物は、更に、(A3)成分であるポリオールを含むことができる。主剤組成物は、(A1)成分及び(A3)成分を総合した水酸基価、及び(A1)成分のアミン価が所定の範囲内で設計されている。
1−4−1.水酸基価
主剤組成物において、(A1)成分及び(A3)成分を総合した水酸基価は25〜200mgKOH/gである。当該水酸基価が上記範囲を下回ると、硬化時に(A2)成分が効果的にアグロメレート構造を形成できなくなり、塗膜の帯電防止性が得られなくなる。また、当該水酸基価が上記範囲を上回ると、(A1)成分や(A3)成分と(B)成分との相溶性が悪くなり、塗膜外観が悪くなる。さらに、(A1)成分の水酸基価が上記範囲を上回ると、硬化時に(A2)成分を過度に締め出すための(A2)成分の配向が不良となる上に、(A2)成分が少量であるために塗膜の帯電防止性が得られなくなり、また、塗膜の光沢性も得られなくなる。
なお、本明細書において「水酸基価」とは、JIS K 0070「化学製品の酸価,けん化価,エステル価,よう素価,水酸基価及び不けん化物の試験方法」の、「7.1 中和滴定法」に規定された方法に準じて求められる値である。なお、水酸基価の算出に際しては、酸価の値も必要であるが、酸価の値についても、同JIS規格の「3.1 中和滴定法」に規定された方法に準じて求められる。
1−4−1−1.(A1)成分の水酸基価
(A1)成分の水酸基価は(a11)成分に由来している。本発明の塗料組成物が(A3)成分を含まない場合、(A1)成分の水酸基価は25〜200mgKOH/gである。(A1)成分の水酸基価が上記範囲を下回ると、硬化時に(A2)成分が効果的にアグロメレート構造を形成できなくなり、塗膜の帯電防止性が得られなくなる。(A1)成分の水酸基価が上記範囲を上回ると、(A1)成分と(B)成分との相溶性が悪くなり、塗膜外観が悪くなる。さらに、(A1)成分の水酸基価が上記範囲を上回ると、硬化時に(A2)成分を過度に締め出すため(A2)成分の配向が不良となる上に、(A2)成分が少量であるために塗膜の帯電防止性が得られなくなり、また、塗膜の光沢性も得られなくなる。
塗膜の帯電防止性及び光沢性等の塗膜外観、又は更に耐摩耗性をより好ましく得る観点から、本発明の塗料組成物が(A3)成分を含まない場合の(A1)成分の水酸基価は、好ましくは45〜190mgKOH/g、より好ましくは50〜185mgKOH/g、更に好ましくは50〜150mgKOH/g、一層好ましくは60〜100mgKOH/g、より一層好ましくは70〜90mgKOH/g、特に好ましくは75〜85mgKOH/gである。
また、本発明の塗料組成物が更に(A3)成分を含む場合は、(A3)成分の水酸基も加味して総合した(つまり、(A1)成分と(A3)成分との均一な混合物の)水酸基価が上記の25〜200mgKOH/gとなるように、(A1)成分の水酸基価が設定される。当該場合の(A1)成分の水酸基価は、塗膜の帯電防止性及び光沢性等の塗膜外観、又は更に耐摩耗性をより好ましく得る観点から、例えば25〜110mgKOH/g、好ましくは45〜105mgKOH/g、より好ましくは50〜100mgKOH/g、更に好ましくは60〜95mgKOH/g、一層好ましくは70〜90mgKOH/g、特に好ましくは75〜85mgKOH/gである。
1−4−1−2.(A3)成分の水酸基価
(A3)成分の水酸基価は、(A1)成分の水酸基を加味して総合した(つまり、(A1)成分と(A3)成分との均一な混合物の)水酸基価が25〜200mgKOH/gとなるように設定される。(A3)成分の水酸基価としては、塗膜の帯電防止性及び光沢性等の塗膜外観、又は更に耐摩耗性をより好ましく得る観点から、好ましくは50〜300、より好ましくは100〜300、更に好ましくは200〜300、一層好ましくは210〜285が挙げられる。
1−4−2.アミン価
主剤組成物において、(A1)成分のアミン価が10〜130mgKOH/gである。(A1)成分のアミン価は(a12)成分に由来しており、本発明の効果を得るため10〜130mgKOH/gである。(A1)成分のアミン価が上記範囲を下回ると、塗料組成物中で(A2)成分の分散が不良となるため、仮に塗膜形成したとしても、(A2)成分が少量であるためアグロメレート構造形成による塗膜の帯電防止性が得られなくなったり、塗膜表面の光沢性が得られなくなったりする。(A1)成分のアミン価が上記範囲を上回ると、(A2)成分の分散が過度となり、硬化時に(A2)成分が効果的にアグロメレート構造を形成できなくなり、塗膜の帯電防止性が得られなくなる。
塗膜の帯電防止性及び光沢性をより好ましく得る観点から、(A1)成分のアミン価は、好ましくは15〜110mgKOH/g、より好ましくは30〜100mgKOH/g、更に好ましくは45〜90mgKOH/g、60〜80mgKOH/g、一層好ましくは65〜75mgKOH/gである。
なお、本明細書において「アミン価」とは、JIS K 7237「エポキシ樹脂のアミン系硬化剤の全アミン価試験方法:電位差滴定法」に規定された方法に準じて求められるものである。
1−4−3.所定範囲内に設定された水酸基価及びアミン価による効果
本発明においては、主剤組成物が水酸基価及びアミン価をそれぞれ所定範囲内とすることよって、硬化塗膜の帯電防止性と光沢性とを両立させる本発明の効果を得ることができる。本発明の効果が得られるメカニズムを図1に模式的に示す。図1(i)は、(A1)成分、(A2)成分及び(B)成分を含む塗料組成物を示しており、(A1)成分が有する所定量のアミノ基は、塗料組成物中の(A2)成分の分散状態を良好にする。一方、図1(ii)は、図1(i)の塗料組成物の硬化塗膜を示している。(A1)成分が有する所定量の中の水酸基は、硬化時つまり(A1)成分が有する水酸基と(B)成分のイソシアネート基とが反応して樹脂として凝集する時に、(A2)成分を樹脂から分離させて配向するように絶妙に締め出すことで、少量の(A2)でもアグロメレートの形成を容易にする。このように、(A1)成分の所定量のアミノ基(所定のアミン価)が塗料組成物における(A2)分散状態を良好にし、(A1)成分の所定量の水酸基(所定の水酸基価)が硬化時における(A2)成分のアグロメレートの形成を容易にすることで、硬化塗膜表面の光沢性が良好に得られるとともに、少量の(A2)成分でも優れた帯電防止性が得られる。
なお、塗料組成物が更に(A3)成分を含む場合は、(A1)成分が有する水酸基と(A3)成分が有する水酸基との両方を総合した所定の量の水酸基(水酸基価)が、硬化時つまり(A1)成分及び(A3)成分が有する水酸基と(B)成分のイソシアネート基とが反応して樹脂として凝集する時に、(A2)成分を樹脂から分離させて配向するように絶妙に締め出すことで、少量の(A2)でもアグロメレートの形成を容易にする。このように、(A1)成分の水酸基及び(A3)成分の水酸基を総合した所定量の水酸基(所定の水酸基価)が硬化時における(A2)成分のアグロメレートの形成を容易にすることで、硬化塗膜表面の光沢性が良好に得られるとともに、少量の(A2)でも優れた帯電防止性が得られる。
1−4−4.(A1)成分の含有量
本発明の塗料組成物における(A1)成分の含有量としては、塗膜形成成分の総量100質量%当たり、例えば20質量%以上が挙げられる。これによって、(A1)成分に含まれる水酸基及びアミノ基が塗膜形成成分中である程度の割合を占めることが出来るため、(A1)成分において所定範囲内に設定された水酸基価及びアミン価による本発明の効果をより一層効率的に得ることができる。本発明の効果をより一層好ましく得る観点から、(A1)成分の好ましい含有量としては、塗膜形成成分の総量100質量%当たり、25〜90質量%、好ましくは26〜80質量%、27〜70質量%、28〜60質量%、29〜50質量%、又は、30〜40質量%が挙げられる。
1−4−5.(A3)成分の含有量
本発明の塗料組成物が(A3)成分を含む場合の(A3)成分の含有量としては、(A1)成分100質量部当たり、例えば10〜200質量部が挙げられる。塗膜の帯電防止性、光沢性等の塗膜外観、及び/又は耐摩耗性をより一層好ましく得る観点から、(A3)成分の好ましい含有量としては、(A1)成分100質量部当たり、30〜180質量部、好ましくは50〜150質量部、より好ましくは70〜120質量部、更に好ましくは90〜110質量部が挙げられる。
また、本発明の塗料組成物における塗膜形成成分の総量100質量%当たりの(A3)成分の含有量としては、10〜50質量%、好ましくは20〜40質量%、より好ましくは30〜35質量%が挙げられる。
1−4−6.(A2)成分の含有量
本発明の塗料組成物における(A2)成分の含有量は、塗膜形成成分の総量100質%部当たり0.7〜7質量%である。(A2)成分の含有量が上記範囲を下回ると、塗膜において帯電防止性を得ることができず、上記範囲を上回ると、塗膜において光沢性を得ることができない。本発明の効果をより一層好ましく得る観点から、(A2)成分の含有量は、好ましくは0.8〜6質量%、より好ましくは1〜5質量%、更に好ましくは2〜3.5質量%、一層好ましくは2.2〜3質量%が挙げられる。
1−4−7.(A2)成分の平均一次粒径
(A2)成分の平均一次粒径としては特に限定されないが、本発明の効果をより一層好ましく得る観点から、好ましくは25〜100nm、より好ましくは28〜80nm、更に好ましくは30〜60nm、一層好ましくは30〜40nm、特に好ましくは32〜38nmが挙げられる。
なお、平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察により特定することができ、具体的には、ランダムに選んだ50個の粒子の表面を走査型電子顕微鏡で観察し、各粒子の最大径を導電性カーボンの粒径とする。なお、導電性カーボンは、複数の粒子の一部が密着し境界が分かりにくい部分がある。この場合、粒子に相当する部分を特定し、これを近似的に粒子とみなして最大径を測定する。そして、50個の導電性カーボンの粒径の平均値を平均粒径として導出する。なお、粒子の最大径は、画像解析ソフトを用いて自動的に求めてもよいし、得られたSEM画像から手動で測定して求めてもよい。得られたSEMの画像から最大径を測定する場合、SEM画像における導電性カーボンの外周上の任意の2点を結ぶ直線を引き、その直線の長さが最大となる箇所を特定し、当該箇所の直線の長さを粒子の最大径とする。
1−4−8.(A2)成分の平均分散粒径
本発明の塗料組成物が二液型である場合における主剤組成物中での(A2)成分の平均分散粒径としては特に限定されないが、本発明の効果をより一層好ましく得る観点から、好ましくは250〜650nmが挙げられる。(A2)成分の平均分散粒径が上記範囲の下限値以上であることは(A2)成分の分散状態をより一層良好とし、塗膜の光沢性をより一層良好に得る点で好ましく、上記範囲の上限値以下であることは、(A2)成分の分散が過度となることを抑制することで硬化時に(A2)成分がより一層効果的にアグロメレート構造を形成しやすくし、これによって塗膜の帯電防止性をより一層良好に得る点で好ましい。
これらの効果を更に好ましく得る観点から、主剤組成物中での(A2)成分の平均分散粒径としては、より好ましくは300〜630nm、更に好ましくは350〜580nm、一層好ましくは380〜520nm、特に好ましくは380〜450nmが挙げられる。
なお、平均分散粒径は、動的光散乱法によって測定を行い、キュムラント法解析から算出される平均値をいう。具体的には、主剤組成物を溶剤で固形分濃度0.1質量%に希釈(分散)したて得た測定試料を、25℃の条件でマルバーン社製Zetasizer Nano ZS」等を用いて測定を行い、得られたデータをキュムラント解析法(ISO13321)にて解析することで得られるZ平均径を、平均分散粒径として得ることができる。
1−5.硬化剤組成物
本発明の塗料組成物における硬化剤組成物は、(B)イソシアネート化合物を含む。(B)成分の含有量としては、好ましくは上記のイソシアネートインデックスを満たすように設定され、(A1)成分及び(A3)成分の総量100質量部に対して、例えば10〜70質量部、好ましくは30〜65質量部、より好ましくは40〜60質量部、更に好ましくは50〜55質量部が挙げられる。
1−6.塗料組成物の形態
本発明の塗料組成物の形態の例として、一液型が挙げられる。すなわち、本発明の塗料組成物は、溶剤以外の全成分が溶剤に実質的に均一に混合(溶解又は分散)された状態であってよい。特に、(B)成分がブロックイソシアネートである場合には、本発明の塗料組成物は一液型であることが好ましい。
本発明の塗料組成物の形態の別の例として、二液型が挙げられる。二液型は、塗料組成物の保存性を高めることができる点で好ましい。例えば、二液型である場合の本発明の塗料組成物は、主剤組成物と、硬化剤組成物とが、物理的に分離され、具体的には、それぞれ別々の容器で保存されている。この二液型の塗料組成物は、使用(塗工)直前に主剤組成物と硬化剤組成物とを混合する。特に、(B)成分がブロックイソシアネートではなくイソシアネート基が−NCOの形で存在している場合には、塗料組成物は二液型であることが好ましい。
1−7.塗料組成物の用途
本発明の塗料組成物は、硬化塗膜表面の帯電防止性に優れているため、帯電防止硬化物を与える帯電防止用の硬化性組成物として有用である。更に、本発明の塗料組成物は、硬化塗膜表面の光沢性にも優れているため、物品のトップコート用塗料組成物としても有用である。
2.硬化塗膜
本発明の硬化塗膜は、上述の塗料組成物の塗膜の硬化物である。上述の塗料組成物は帯電防止硬化物を与える帯電防止用の塗料組成物として有用であるため、硬化塗膜は帯電防止用膜として有用である。更に、上述の塗料組成物は光沢性に優れた硬化物を与えるトップコート用塗料組成物としても有用であるため、硬化塗膜は物品の最表層を構成するトップコート膜としても有用である。
本発明の硬化塗膜の表面抵抗値は、ASTM−D257に準拠して測定される表面抵抗値として、例えば1×105〜1×1010Ω/□、好ましくは1×105〜5×109Ω/□、より好ましくは1×105〜5×108Ω/□、更に好ましくは1×105〜5×107Ω/□、一層好ましくは1×105〜5×106Ω/□が挙げられる。
また、本発明の硬化塗膜の光沢は、60°光沢値として、70以上、好ましくは75以上、より好ましくは80以上、更に好ましくは85以上、一層好ましくは90以上が挙げられる。
更に、(A2)成分以外のカーボンブラックを顔料として含む場合の本発明の塗料組成物から得られる硬化塗膜の意匠性としては、色相に影響を受けない黒色度(MY値)が、例えば250以上、好ましくは300以上である。MY値が250以上である場合、深い黒色を呈するため優れた意匠性が得られる。特にMY値が300以上である場合、漆黒と呼ばれる非常に深い黒色を呈するため、より一層優れた意匠性が得られる。なお、MY値の上限としては特に限定されないが、例えば500以下、400以下、又は350以下である。
本発明の硬化塗膜は、例えば後述の物品の表面に直接または中間層を介して上述の本発明の塗料組成物の塗膜を形成し、塗膜を乾燥させた後硬化することによって得ることができる。塗膜の形成方法としては特に限定されず、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等の塗布方法;エアスプレー、エアレススプレー等のスプレーコーティング等の噴霧方法;及びディップ等の浸漬方法等が挙げられる。
本発明の塗料組成物は、塗膜を単純に硬化するだけで(A2)成分がアグロメレート構造を効果的に形成することができ、(A2)が少量であるにも関わらず表面抵抗が顕著に低減された硬化塗膜が得られる。このため、本発明の硬化塗膜は、ただ一層の塗膜の硬化物であってよい。
硬化方法としては、加熱が用いることができる。本発明の塗料組成物に更に他の塗膜形成成分として活性エネルギー線硬化樹脂を含む場合は、可視光、紫外線、熱線、電子線などの活性エネルギー線の照射が適宜併用される。加熱温度としては、本発明の塗料組成物を構成する成分の種類及び塗布対象の物品の耐熱性等を考慮して適宜決定することができ、例えば30〜180℃、好ましくは40〜150℃、より好ましくは50〜130℃、更に好ましくは60〜120℃が挙げられる。
本発明の硬化塗膜の厚みは特に限定されず、硬化塗膜の用途に応じて適宜厚みを決定することができる。硬化塗膜の厚みの具体例としては、例えば10〜200μm、好ましくは15〜150μm、より好ましくは20〜100μm、更に好ましくは20〜50μmが挙げられる。
3.塗装物品
本発明の塗装物品は、物品の表面に上記の本発明の硬化塗膜を有する。硬化塗膜表面の帯電防止性及び光沢性が優れているため、硬化塗膜が塗装物品のトップコート膜を形成していること、つまり、塗装物品の最表面が上記の本発明の硬化塗膜によって構成されることが好ましい。
塗装対象となる物品としては、表面の帯電防止性及び/又は光沢性が求められるものであれば特に限定されないが、例えば、以下のような物品が挙げられる。
・携帯電話、スマートフォン、パソコン、パソコン周辺機器(キーボード、プリンタ、外付けディスク等)、腕時計、オーディオ機器、各種OA機器等の電気・電子機器。
・冷蔵庫、掃除機、電子レンジ等の家電製品。
・階段、床、机、椅子、タンス、その他の家具等の木工製品。
・自動車やオートバイ等の車両またはその部品:より具体的には、車両のボディ、内装品(メーターパネル、ダッシュボード、ハンドル等)、バンパー、スポイラー、ドアノブ、ヘッドライト、テールライト、アルミホイール、オートバイのガソリンタンク等。
本発明の塗装物品は、物品の表面に上記の本発明の硬化塗膜を設けることによって製造する。例えば、本発明の塗装物品は、物品の表面に上記の本発明の塗料組成物の塗膜を形成し、硬化することによって得ることができる。なお、物品の表面に塗料組成物の塗膜を形成する前に、物品に、表面脱脂又は表面処理等を施しておいてもよい。さらに、物品表面と硬化塗膜との密着性向上等のために下塗り等を行ってもよい。
また、本発明の塗装物品は、樹脂フィルム上に本発明の硬化塗膜を形成し、形成された硬化塗膜を、当該フィルムごと物品に貼りつけるなどして得てもよい。
以下に実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下においては、表1〜表5に示す樹脂組成物及びその硬化塗膜を調製した。表1〜表5に示す各成分の詳細を以下に示す。
(A1)(メタ)アクリル樹脂の原料
・(a11H)HEMA:メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル
・(a11s)FA−2D:プラクセルFA−2D、株式会社ダイセル製、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(カプロラクトン2モル付加物)、分子量344、水酸基価163mgKOH/g
・(a11S)FA−5:プラクセルFA5:株式会社ダイセル製、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(カプロラクトン5モル付加物)、分子量689、水酸基価74〜84mgKOH/g
・(a11S)PE200:ブレンマーPE200、日油株式会社製、ポリエチレングリコール−モノメタクリレート(エチレングリコール4.5モル付加物)、分子量284
・(a12)DM:ライトエステルDM、共栄社化学株式会社製、ジメチルアミノエチルメタクリレート
・(a13)MAA:メタクリル酸
・(a14)MMA:メタクリル酸メチル
・(a14)BMA:メタクリル酸−n−ブチル
導電性カーボンブラック(CB)
・(A2)ライオナイトEC200L:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、DBP吸収量300ml/100g、平均一次粒径35nm
・アセチレンブラック:デンカブラックHS−100、デンカ株式会社製、DBP吸収量140ml/100g、平均一次粒径48nm
・#3050B:三菱ケミカル社製、カーボンブラック、DBP吸収量180ml/100g、平均一次粒径40nm
・#2650:三菱ケミカル社製、カーボンブラック、DBP吸収量73mL/100g、平均一次粒径13nm
・ラーベン5000:ラーベン5000ウルトラII、Bilra Carbon社製、カーボンブラック、DBP吸収量95mL/100g、平均一次粒径8nm
(A3)ポリオール
・プラクセル410D:株式会社ダイセル製、ポリラクトンテトラオール(数平均分子量1000)、水酸基価224mgKOH/g
・プラクセル205:株式会社ダイセル製、ポリラクトンジオール(数平均分子量530)、水酸基価212mgKOH/g
・デュラノール5650E:旭化成株式会社製、ポリカーボネートジオール(数平均分子量500)、水酸基価225mgKOH/g
・PEG−400:三洋化成工業株式会社製、ポリエチレングリコール(数平均分子量400)、水酸基価281mgKOH/g
・クラレポリオールP−510:株式会社クラレ製、ポリエステルジオール(数平均分子量500)、水酸基価224mgKOH/g
(B)イソシアネート化合物
・デュラネートTKA−100:旭化成株式会製、HDIイソシアヌレート変性体(固形分100%、NCO含有量21.7%)
・デュラネート24A−100:旭化成株式会社製、HDIビウレット変性体(固形分100%、NCO含有量23.5%)
・デュラネートP301−75E:旭化成株式会社製、HDIアダクト変性体(固形分70%、NCO含有量12.5%(但し、当該NCO含有量は、非固形分も含むデュラネートP301−75E全体における量である。))
また、用いた導電性カーボンの特性は、以下のようにして測定した。
<導電性カーボンの吸収量の測定>
導電性カーボンの吸収量は、JIS K6217−4:2008(ゴム用カーボンブラック−基本特性−第4部:オイル吸着量の求め方(圧縮材料を含む))に規定された方法によって測定されるDBP吸収量により測定した。測定方法としては、例えば、以下の方法を挙げることができる。まず、吸収量測定装置(商品名:S410C、株式会社あさひ総研製)を用いて、カーボンブラック20gを計量したうえで、装置の混合室に投入する。混合室では、カーボンブラックをモータ駆動で回転翼により125回転/分で混合し、一定の滴下速度でDBPを滴下し、カーボンブラックに吸収させて、その時のトルクを測定できる。その際に測定されるトルクは経時的に上昇するが、やがてカーボンブラックがDBPを吸収できなくなると、カーボンブラックの周りがDBPで覆われ、トルクが急激に下がる。最大トルクの70%時点を終点と判断し、その時のDBPの滴下量から、カーボンブラックに対するDBP吸収量(ml/100g)が算出される。
<導電性カーボンの平均一次粒径>
導電性カーボンの平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察により特定した。具体的には、ランダムに選んだ50個の粒子の表面を走査型電子顕微鏡で観察し、各粒子の最大径を導電性カーボンの粒子径とした。なお、導電性カーボンは、複数の粒子の一部が密着し境界が分かりにくい部分がある。この場合、粒子に相当する部分を特定し、これを近似的に粒子とみなして粒子径(最大径)を測定した。そして、50個の導電性カーボンの粒子径の平均値を平均粒子径として得た。なお、粒子の最大径は、得られたSEM画像から最大径を測定して求めた。この場合、SEM画像における導電性カーボンの外周上の任意の2点を結ぶ直線を引き、その直線の長さが最大となる箇所を特定し、当該箇所の直線の長さを測定し、これを粒子の最大径として得た。
(1)(メタ)アクリル樹脂((A1)成分)の合成(合成例1〜12)
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器及び滴下装置を備えた4つ口フラスコを準備した。このフラスコに、メチルイソブチルケトン100質量部を仕込み、115℃まで撹拌しながら加温した。次いで、表1〜表5に示す比率の(a11)成分、(a12)成分、(a13)成分及び(a14)成分と、重合開始剤として1,1−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル(和光純薬工業株式会社製V−40)3質量部とを均一に混ぜた混合液を、滴下ロートより2時間かけて上記フラスコに連続滴下した。
滴下終了後、さらに115℃で4時間撹拌し、残留するモノマーを反応させた。その後、加熱を止めて室温まで冷却し、(A1)成分である(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂組成物(固形分比率50質量%)を得た。
得られた(メタ)アクリル樹脂((A1)成分)について、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下の装置及び条件にて測定し、算出した。
・使用機器:HLC8220GPC(株式会社東ソー製)
・使用カラム:TSKgel SuperHZM−M、TSKgel GMHXL−H、TSKgel G2500HXL、TSKgel G5000HXL(株式会社東ソー製)
・カラム温度:40℃
・標準物質:TSKgel 標準ポリスチレンA1000、A2500、A5000、F1、F2、F4、F10(株式会社東ソー製)
・検出器:RI(示差屈折)検出器
・溶離液:テトラヒドロフラン
・流速:1ml/min
(2)アミン価及び水酸基価の測定
(2−1)アミン価の測定
得られた(メタ)アクリル樹脂((A1)成分)のアミン価を、JIS K 7237「エポキシ樹脂のアミン系硬化剤の全アミン価試験方法:電位差滴定法」に規定された方法に準じて求めた。得られたアミン価の測定値は、固形分に対するアミノ基の比率である。測定結果を表1〜表5に示す。
(2−2)水酸基価の測定
得られた(メタ)アクリル樹脂((A1)成分)と(A3)成分とを総合した水酸基価として、(A3)成分を用いない場合は(A1)成分自体の水酸基価、又は、(A3)成分を用いる場合は表1〜表5に示す比率での(A1)成分及び(A3)成分の均一混合物の水酸基価を、JIS K 0070「化学製品の酸価,けん化価,エステル価,よう素価,水酸基価及び不けん化物の試験方法」の、「7.1 中和滴定法」に規定された方法に準じて求めた。なお、水酸基価の算出に際しては、酸価の値も必要であるが、酸価の値についても、同JIS規格の「3.1 中和滴定法」に規定された方法に準じて求めた。得られた水酸基価の測定値は、固形分に対する水酸基の比率である。測定結果を表1〜表5に示す。
(3)塗料組成物の調製(実施例1〜25、比較例1〜10)
(3−1)主剤組成物の調製
合成例1〜12のアクリル樹脂組成物200質量部((A1)成分は100質量部)、それぞれと、表1〜表5に示す割合の(A2)成分とを混合した。得られた混合液を、スチールビーズとともにポリエチレン製容器に封入し、ペイントシェーカー(浅田鉄工株式会社製)を用いて2時間分散し、主剤組成物を得た。さらに、実施例14〜19においては、(A2)成分を分散した後に表1〜表5に示す割合の(A3)成分を混合し、主剤組成物を得た。なお、主剤組成物の調製においては分散剤を用いなかった。
(3−2)導電性カーボンの平均分散粒径の測定
得られた主剤組成物をメチルイソブチルケトン(MIBK)で固形分濃度0.1質量%となるように希釈(分散)したサンプルを、25℃で動的光散乱測定することで、導電性カーボンの分散粒径を求めた。装置としてはマルバーン社製の装置「Zetasizer Nano ZS」を用い、得られた光強度分布からキュムラント解析(ISO13321)を行い、Z−Averageの値を平均分散粒径として得た。
(3−3)硬化剤組成物の調製
表1〜表5に示す比率の(B)成分のイソシアネート化合物を、固形分比率が50質量%となるように酢酸ブチルに加え、撹拌し、硬化剤組成物を得た。
(3−4)主剤組成物と硬化剤組成物との混合
得られた主剤組成物及び硬化剤組成物(二液型塗料組成物)を混合し、固形分比率35質量%となるように酢酸ブチルを添加し塗料組成物を調製した。
(4)硬化塗膜の作成
上記で調製された塗料組成物を、厚さ1mm、辺の長さ100mm×100mmの正方形状のアクリルニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂製の試験板の表面に、スプレー塗装機を用いて塗装した。得られた塗膜を、80℃で1時間硬化させ、その後室温にて1時間静置した。これによって、25μm厚の硬化塗膜を表面に有する試験板1を得た。このようにして得られた試験板1を使い、以下の(5−1)〜(5−3)及び(5−5)の評価を行った。
上記で調製された塗料組成物を、厚さ100μm、辺の長さ100mm×100mmの正方形状の易接着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡株式会社製コスモシャインA4300)の表面に、スプレー塗装機で塗装した。得られた塗膜を、80℃で1時間硬化させ、その後室温にて1時間静置した。これによって、25μm厚の硬化塗膜を表面に有する試験板2を得た。このようにして得られた試験板2を使い、以下の(5−4)の評価を行った。
(5)硬化塗膜の評価
(5−1)表面抵抗値(帯電防止性)
硬化塗膜を設けた試験板1を、抵抗測定器(KEITHLEY社製エレクトロメータ6517及び低効率チェンバMODL8009)を用い、23℃、50%RHの条件下で、ASTM−D257に準拠した表面抵抗値の測定に供した。表面抵抗値が低いほど、帯電防止性能が良好であることを示す。表面抵抗値が1×1010以下であれば、帯電防止性能実用上問題のないレベルである。測定結果を表1〜表5に示す。
(5−2)光沢性
硬化塗膜を設けた試験板1を、60°光沢を、BYK−Gardner GmbH社製の光沢計micro−TRI−grossを用い、入反射角を60゜に設定することで、60°光沢値の測定に供した。光沢値が高いほど、光沢性が高く、塗膜外観が良好であることを示す。光沢値が70以上であれば、実用上問題ないレベルである。測定結果を表1〜表5に示す。
(5−3)耐酸性
硬化塗膜を設けた試験板1を0.1N塩酸中に25℃で24時間浸漬し、JIS K5600−6−1「塗膜の化学的性質―耐液体性(一般的方法)」に準拠した方法により、浸漬後の塗膜の状態を観察し、以下の基準に基づいて耐酸性の評価を行った。評価が3以上であれば実用上問題のないレベルである。評価結果を表1〜表5に示す。
5: 塗膜フクレが全く生じていない。
4: 試験塗膜に対する塗膜フクレの部分の面積が、1%未満と判断される。
3: 試験塗膜に対する塗膜フクレの部分の面積が、1%以上3%未満と判断される。
2: 試験塗膜に対する塗膜フクレの部分の面積が、3%以上7%未満と判断される。
1: 試験塗膜に対する塗膜フクレの部分の面積が、7%以上と判断される。
(5−4)耐摩耗性(テーバー耐摩耗)
硬化塗膜を設けた試験板2を、JIS K5600−5−8「耐摩耗性(研摩紙法)」に準じた方法により、テーバー式摩耗試験機No.812(コーティングテスター社)を用い、耐摩耗性の評価に供した。摩耗輪CS10にて1kg荷重で100回転後の傷付性を上記光沢計にて測定し、以下の基準に基づいて評価した。評価結果を表1〜表5に示す。
5: 光沢値80〜100
4: 光沢値60〜80
3: 光沢値40〜60
2: 光沢値10〜40
1: 光沢値10以下
(5−5)黒色度
硬化塗膜の黒味について、Spectro 2(BYK社製)を用い、色相に影響を受けない黒色度であるMY値を測定することで評価した。MY値が250以上である場合、深い黒色であることを示し、MY値が300以上である場合、漆黒と呼ばれるより一層深い黒色であることを示す。測定結果を表5に示す。
表1〜表5から明らかな通り、(A1)成分のアミン価が10〜130mgKOH/gであり、(A1)成分及び(A3)成分を総合した水酸基価が25〜200mgKOH/gであり、(A2)成分のジブチルフタレート吸収量が250〜600ml/100gであり、(A2)成分の含有量が、塗膜形成成分の総量100質量%当たり0.7〜7質量%である塗料組成物(実施例1〜25)では、硬化塗膜の表面抵抗値が1×1010Ω/□以下であり効果的に帯電防止性が得られるとともに、硬化塗膜の60°光沢値が70以上であり優れた光沢性が得られていた。
一方、実施例1、2、3と比較例1、2との対比から明らかな通り、(A1)成分のアミン価が10〜130mgKOH/gを下回る塗料組成物(比較例1)ではカーボンブラックの分散が不良となり評価ができなかった。当該アミン価が10〜130mgKOH/gを上回る塗料組成物(比較例2)ではカーボンブラックが過度に分散され、硬化塗膜の帯電防止性が得られなかった。実施例1、4、5と比較例3、4との対比から明らかな通り、(A1)成分及び(A3)成分を総合した水酸基価が25〜200mgKOH/gを下回る塗料組成物(比較例3)では、カーボンブラックがアグロメレートを形成せず硬化塗膜の帯電防止性が得られず、当該水酸基価が25〜200mgKOH/gを上回る塗料組成物(比較例4)では主剤組成物と硬化剤組成物の相溶性が悪く硬化塗膜の帯電防止性及び光沢性のいずれも得られなかった。
また、実施例1と比較例5及び6、若しくは、実施例9と比較例9及び10との対比から明らかな通り、(A2)成分のジブチルフタレート吸収量が250〜600ml/100gを逸脱する塗料組成物(比較例5及び6若しくは比較例9及び10)では硬化塗膜の帯電防止性が得られなかった。
更に、実施例1、6〜11と比較例7、8との対比から明らかな通り、(A2)成分の含有量が塗膜形成成分の総量100質量%当たり0.7〜7質量%を下回る塗料組成物(比較例7)では硬化塗膜の帯電防止性が得られず、(A2)成分の含有量が塗膜形成成分の総量100質量%当たり0.7〜7質量%を上回る塗料組成物(比較例8)では硬化塗膜の光沢性が得られなかった。
実施例1〜25の塗料組成物の中でも、実施例1と実施例8、12、13との対比から明らかな通り、柔軟構造を含む(a11S)をモノマーに用いて合成した(A1)成分を含む樹脂組成物(実施例8、12、13)では、より一層表面抵抗値が低減され、より一層優れた帯電防止性が得られ、また、より一層優れた耐摩耗性も得られた。実施例1と実施例14との対比から明らかなとおり、柔軟構造を含む(A3)成分を含む樹脂組成物(実施例14)でも、より一層表面抵抗値が低減され、より一層優れた帯電防止性が得られたが、その程度としては、実施例8、12、13と実施例14との対比から明らかなとおり、柔軟構造を含む(a11S)をモノマーに用いて合成した(A1)成分を含む樹脂組成物(実施例8、12、13)の方が優れていた。また、柔軟構造を含む(a11S)をモノマーに用いて合成した(A1)成分と柔軟構造を含む(A3)成分とが組み合わされることで(実施例15〜19)、更に一層表面抵抗値が低減され、更に一層優れた帯電防止性が得られた。一方、実施例1と実施例14との対比から明らかなとおり、柔軟構造を含む(A3)成分を含む樹脂組成物(実施例14)では、より一層優れた耐酸性及び耐摩耗性が得られ、実施例8、12、13と実施例14との対比から明らかなとおり、耐酸性及び耐摩耗性のいずれも柔軟構造を含む(A3)成分を含む樹脂組成物(実施例14)の方がより一層優れていた。特に耐摩耗性については、柔軟構造を含む(a11S)をモノマーに用いて合成した(A1)成分と柔軟構造を含む(A3)成分とが組み合わされても(実施例15〜19)、そのより一層優れた特性が維持されていた。
また、実施例8、20、21と実施例22、23との対比から明らかな通り、イソシアネートインデックスが1を超えており、イソシアネートインデックスが比較的大きい塗料組成物(実施例23)では、より一層優れた耐酸性が得られ、イソシアネートインデックスが1を下回っており、イソシアネートインデックスが比較的小さい塗料組成物(実施例22)では、より一層優れた耐摩耗性が得られ、イソシアネートインデックスが1である塗料組成物(実施例8、20、21)のうち、特に、(B)成分としてビウレット変性体又はアダクト変性体を用いた塗料組成物(実施例20、21)では、耐酸性と耐摩耗性とのバランスにより一層優れていた。
更に、実施例1〜25の塗料組成物の中でも、実施例7と実施例24、25との対比から明らかな通り、黒色顔料を更に含む塗料組成物(実施例24、25)では、更に黒色が深くなり、より一層優れた意匠性が得られた。特に実施例25の塗料組成物では、漆黒に達し、更に一層優れた意匠性が得られた。

Claims (11)

  1. (A1)(メタ)アクリル系樹脂及び(A2)導電性カーボンブラックを含み、(A3)ポリオールを含んでよい主剤組成物と、(B)イソシアネート化合物を含む硬化剤組成物とを含む塗料組成物であって、
    前記(A1)成分及び前記(A3)成分を総合した水酸基価が25〜200mgKOH/g、前記(A1)成分のアミン価が10〜130mgKOH/gであり、
    前記(A2)成分のジブチルフタレート吸収量が250〜600ml/100gであり、
    前記(A2)成分の含有量が、前記塗料組成物中の、塗膜形成成分の総量100質量%当たり0.7〜7質量%である、塗料組成物。
  2. 前記(A1)成分の含有量が、塗膜形成成分の総量100質量%当たり20質量%以上である、請求項1に記載の塗料組成物。
  3. 前記(A1)成分が、ポリラクトン、ポリラクタム、ポリカーボネート、ポリエステル及びポリエーテルからなる群より選択される構造を含む、請求項1又は2に記載の塗料組成物。
  4. 前記(A1)成分及び前記(A3)成分の水酸基の総数に対する(B)成分のイソシアネート基の数の当量比が、0.5〜1.5である、請求項1〜3のいずれかに記載の塗料組成物。
  5. 前記主剤組成物が、前記(A1)成分、前記(A2)成分、及び前記(A3)成分を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の塗料組成物。
  6. 前記(A2)成分の平均一次粒径が25〜100nmである、請求項1〜5のいずれかに記載の塗料組成物。
  7. 一液型である、請求項1〜6のいずれかに記載の塗料組成物。
  8. 二液型である、請求項1〜6のいずれかに記載の塗料組成物。
  9. 前記(A2)成分の前記主剤組成物中での平均分散粒径が、250〜650nmである、請求項8に記載の塗料組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の塗料組成物の硬化塗膜。
  11. 請求項10に記載の硬化塗膜を表面に有する塗装物品。
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