JP6694992B1 - 塗膜の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】様々な被塗物に対しても、塗膜を形成でき、更に、例えば、平滑面における光沢を抑制できる塗膜を形成できる塗膜の製造方法の提供。【解決手段】塗料組成物を被塗物に塗装する塗装工程、及び塗料組成物の塗装面に水を噴霧する、少なくとも1つの水噴霧工程を含み、塗料組成物を塗装した直後の時間をt0とし、塗装後の塗料組成物から形成された塗膜が、JIS K 5600−1−1の規定に基づく硬化乾燥状態に至るまで要した時間をtHとし、水噴霧工程のうち最初の水噴霧工程における、第n回目の水噴霧の開始時間をtWn(ただし、nは1以上の整数である)とした場合、時間t0、tH及びtWnが、t0<tWn<tH(式1)の関係を有し、並びに塗料組成物は、無溶媒主剤組成物と、無溶媒硬化剤組成物とを含む、塗膜の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、塗膜の製造方法に関する。
道路面の塗装、コンクリート面等を塗装する塗料組成物として、特開2004−251108号公報(特許文献1)に記載の舗装面用遮熱塗料が挙げられる。特許文献1には、太陽光の可視領域で吸収を示し赤外領域で反射を示す顔料と、溶剤可溶アクリル系樹脂、アクリル系エマルション樹脂、ウレア樹脂、エポキシ系樹脂、溶剤可溶ふっ素系樹脂、ふっ素系エマルション樹脂のいずれか1つ又は2つ以上から選択するビヒクルと、必要に応じて白色顔料とを含有する遮熱塗料を塗布したことを特徴とする道路等の舗装体が開示されている。
また、アスファルト面、コンクリート面、モルタル面等の床面に形成された塗膜について、照明等による眩しさを低減する試みがなされている。特開2008−127474号公報(特許文献2)には、塗りむら、厚さむらが目立たないエンボス調凹凸を形成するために、セルロース粉を含む無溶剤塗床組成物が開示されている。更に、特開2008−150514号公報(特許文献3)には、低光沢な塗床を提供するために、酸化カルシウム粉を含む無溶剤ウレタン塗床組成物が開示されている。
国際公開第03/046286号パンフレット(特許文献4)には、舗装体の表層部に中空微細粒子及び/又は可視波長域で吸収を示し赤外 線波長域では反射を示す顔料を存在させてなることを特徴とする太陽熱遮断性舗装体が開示されている。特許文献4において、舗装体表面に塗布して固体表層部を形成しうるバインダーとして、常温硬化型のラジカル架橋型樹脂組成物が開示されている(特許文献4の請求項参照)。
特開2004−251108号公報 特開2008−127474号公報 特開2008−150514号公報 国際公開第03/046286号パンフレット
ところで、路面(アスファルト)、コンクリート面及びモルタル面等の被塗物は、用途に応じて種々の表面凹凸を有し得る。例えば、開粒アスファルト等は表面凹凸が大きく、密粒度アスファルト等は平滑の高い表面を有する。また、補修等がなされた舗装等は、これら種々の表面形態を有するアスファルト面が混在する場合がある。同様のことが、コンクリート面等の床面、路面にも当てはまり得る。
しかし、例えば、密粒度アスファルト等の平滑性の高い表面を有する路面に対して、一般的な路面用の塗料組成物を塗装すると、得られる塗膜の光沢が高くなり得る。塗膜の光沢が高くなると、自動車の運転者が、路面からの反射光を眩しく感じ、路面標示等の視認性が低下してしまい、安全性の観点から望ましくない。
したがって、様々な被塗物に対しても、塗膜を形成でき、更に、例えば、平滑面における光沢を抑制できる塗膜を形成できる組成物が必要である。
一方、特許文献1に記載の発明に係る遮熱塗料のうち、例えば、ウレア塗料は、自動車の運転者が、路面からの反射光を眩しく感じ、路面標示等の視認性が低下するおそれがある。
特許文献2及び3は、いずれも、屋内で用いる塗床材組成物であり、屋外での使用には、十分な耐久性及び強度を示さない可能性がある。更に、屋内用途の塗床材組成物では、太陽光等の強い光が照射されることも少なく、僅かな艶消し効果が得られるにすぎず、例えば、太陽光等による強い反射を、十分に抑制できないおそれがある。
更に、特許文献4は、バインダーとして、常温硬化型のラジカル架橋型樹脂組成物を含むため、揮発性成分が含まれ、臭気を生じたりする問題がある。
本発明は上記問題を解決することを課題とし、より詳細には、本発明は、様々な被塗物に対しても、塗膜を形成でき、更に、例えば、平滑面における光沢を抑制できる塗膜を形成できる、塗膜の製造方法を提供する。
その上、本発明は、太陽光、照明等の光源を問わず、光沢を低減できる塗膜の製造方法を提供し、加えて、塗装から塗膜の完成に至るまで、溶剤による臭気を削減できる塗膜の製造方法を提供する。更に、例えば、車両の通行等による劣化及び摩耗に強い塗膜を形成でき、耐用年数の長い塗膜を形成できる、塗膜の製造方法を提供する。
上記課題を解決するため、本開示は下記態様を提供する。
[1]塗料組成物を被塗物に塗装する塗装工程、及び
前記塗料組成物の塗装面に水を噴霧する、少なくとも1つの水噴霧工程を含み、
前記塗料組成物を塗装した直後の時間をtとし、
前記塗装後の塗料組成物から形成された塗膜が、JIS K 5600−1−1の規定に基づく硬化乾燥状態に至るまで要した時間をtとし、
前記水噴霧工程のうち最初の水噴霧工程における、第n回目の水噴霧の開始時間をtWn(ただし、nは1以上の整数である)とした場合、
前記時間t0、及びtWnが、
<tWn<t (式1)
の関係を有し、並びに
前記塗料組成物は、無溶媒主剤組成物と、無溶媒硬化剤組成物とを含む、
塗膜の製造方法。
[2]一実施態様において、本開示の塗膜の製造方法は、前記塗装後の塗料組成物から形成された塗膜が、JIS K 5600−1−1の規定に基づく指触乾燥状態に至るまで要した時間をtとし、
前記塗装後の塗料組成物から形成された塗膜が、JIS K 5600−1−1の規定に基づく半硬化乾燥状態に至るまで要した時間をtとした場合、
前記t、t、t及びtは、前記塗装後の塗料組成物から形成された塗膜が、JIS K 5600−1−1の規定に基づく指触乾燥状態に至るまで要した時間をtとし、
前記塗装後の塗料組成物から形成された塗膜が、JIS K 5600−1−1の規定に基づく半硬化乾燥状態に至るまで要した時間をtとした場合、
前記t、t、t及びtは、
<t≦t<tの関係を有し、更に、
前記水噴霧工程のうち最初の水噴霧工程における、第1回目の前記水噴霧工程の開始時間tW1が、以下の(式2)、(式3)、(式4)及び(式5)からなる群から選択される少なくとも1つの条件を満たす、
≦tw1<t (式2)
≦tw1<t (式3)
≦tw1≦t (式4)
1/2×t≦tw1≦t (式5)
[3]一実施態様において、水噴霧工程は、水蒸気及び水のミストからなる群から選択される少なくとも1種を含む、噴霧用の前記水を、前記塗料組成物の塗装面に噴霧することを含み、並びに
水蒸気及び水のミストからなる群から選択される少なくとも1種を含む、噴霧用の前記水を、塗装面に対して、5g/m以上、500g/m以下の量で噴霧することを含む。
[4]一実施態様において、ミストは、0.01μm以上、150μm以下の平均粒子径を有する。
[5]一実施態様において、スチーム洗浄機、スプレーノズルを有する噴霧器、ミスト噴霧装置及び超音波噴霧器からなる群から選択される少なくとも1つの方法により行われる。
[6]一実施態様において、無溶媒主剤組成物は、塗膜形成樹脂を含み、
塗膜形成樹脂は、ポリオール及び多官能アミンから選択される少なくとも1種を含み、 前記無溶媒硬化剤組成物は、脂肪族多官能イソシアネート化合物及び芳香族多官能イソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
[7]一実施態様において、無溶媒硬化剤組成物に含まれるNCO基の当量と、無溶媒主剤組成物に含まれるOH基の当量及びNH基の当量の合計との比
[NCO/(OH+NH)]は、0.5以上2.0以下である。
[8]一実施態様において、塗料組成物は、路面標示用塗料組成物及び/又は路面遮熱用塗料組成物である。
[9]一実施態様において、塗装工程は、スプレー塗装、スリットコーター塗装及び流し塗りからなる群から選択される少なくとも1つの方法により行われる。
本開示の塗膜の製造方法であれば、形成された塗膜は、光沢を低減できる。更に、本開示の塗膜の製造方法は、溶剤による臭気を大きく低減できる。その上、様々な表面形態の被塗物に対しても、塗膜を形成でき、耐摩耗性に優れ、耐用年数の長い塗膜を形成できる。
図1は、一実施態様に係る塗膜表面を示す顕微鏡観察写真である 図2は、比較例に係る塗膜表面を示す顕微鏡観察写真である
本開示に至った経緯を説明する。例えば、路面の塗装、コンクリートの補修等、主に無機材料を被塗物とする塗料分野において、揮発性溶媒を低減することを目的として、無溶媒タイプの塗料組成物が使用されている。無溶媒タイプの塗料組成物は、溶媒の揮散の抑制が要求される用途において使用され、エポキシ系塗料、ウレタン系塗料、ウレア系塗料等が公知である。
しかし、公知の無溶媒タイプの塗料組成物を塗装して形成された塗膜は高い光沢値を有する傾向がある。特に、近年では、平滑度の高い路面も増加傾向にあり、平滑度の高い道路(路面)にこれらの塗料組成物が塗装された場合、太陽光(例えば、西日)等の強い反射により、車両の運転手が眩しさを感じる問題がある。例えば、塗膜の光沢が高くなると、自動車の運転者が、路面からの反射光を眩しく感じ、路面標示等の視認性が低下してしまい、安全性の観点から望ましくない。
更に、依然として、無溶媒タイプの塗料組成物の光沢を低減させること(艶消しされた塗膜を形成させること)は、困難であった。
また、路面の滑り止めの目的で散布しているセラミック骨材等の影響により、路面表面に凹凸が生じることがある。これにより、道路における塗膜形成面の光沢値が低下することもある。しかし、骨材の散布時に、骨材が飛散することが多く、また、路面の滑り止めを目的として骨材を散布するため、骨材の分布ムラが発生しやすい。更に、骨材が多くなると、塗膜物性が低下するおそれがある。
その上、例えば、道路面の塗装において、塗装時における塗料組成物の粘度が高くなることがあり、塗装作業性が低下したり、路面に対して要求される性能を満たす塗膜が形成されないおそれがある。
そこで、本発明者等は、無溶媒タイプの塗料組成物を用いても、形成される塗膜の光沢を低減でき、太陽光等の反射による塗膜の眩しさを低減又は抑制できる塗膜の製造方法を鋭意検討した。その結果、本発明者等は、
塗料組成物を被塗物に塗装する塗装工程、及び
前記塗料組成物の塗装面に水を噴霧する、少なくとも1つの水噴霧工程を含み、
前記塗料組成物を塗装した直後の時間をtとし、
前記塗装後の塗料組成物から形成された塗膜が、JIS K 5600−1−1の規定に基づく硬化乾燥状態に至るまで要した時間をtとし、
前記水噴霧工程のうち最初の水噴霧工程における、第n回目の水噴霧の開始時間をtWn(ただし、nは1以上の整数である)とした場合、
前記時間t0、及びtWnが、
<tWn<t (式1)
の関係を有し、並びに
前記塗料組成物は、無溶媒主剤組成物と、無溶媒硬化剤組成物とを含む、
塗膜の製造方法である、本発明を完成させた。
本開示に係る塗膜の製造方法であれば、塗料組成物を被塗物に塗装後、塗膜が完全に硬化する前に、塗膜表面に水を噴霧することにより、塗膜の光沢を低減(調整)できる。特定の理論に限定して解釈すべきではないが、本開示に係る特定の条件下で、特定の塗料組成物の塗装面に水を噴霧することで、微細な凹凸が形成され、艶消し効果が発現するものと推測される。
また、本開示の塗膜形成方法であれば、塗料組成物は、無溶媒主剤組成物と、無溶媒硬化剤組成物とを含むので、溶剤等の揮発、乾燥工程を行うことなく、水を噴霧できる。
このように、塗膜の光沢を調整でき、光沢ムラの少ない塗膜を形成できるため、路面、路面標識等の識別性を向上できる。
また、上述した種々の効果に加え、塗料組成物は、無溶媒主剤組成物と、無溶媒硬化剤組成物とを含むので、揮発性成分が含まれることで生じ得る臭気を抑制できる。
更に、塗料組成物は無溶媒であるため、硬化時の膜厚減少が無いか、ほとんど生じない。このため、耐摩耗性に優れ、耐用年数の長い塗膜を形成できる。ここで、本開示の塗膜の製造方法であれば、硬化時の膜厚減少が無いか、ほとんど生じない、無溶媒主剤組成物と無溶媒硬化剤組成物とを含む塗料組成物であるにもかかわらず、強度等の塗膜物性を損なうことなく、その上、光沢を低減(調整)できる。
加えて、本開示に係る塗膜の製造方法であれば、塗膜の表面のみに水を接触させているため、塗膜の内部において、二酸化炭素等に起因する気泡であって、塗膜の諸物性に悪影響を及ぼし得る気泡が発生することを抑制できる。このため、屋外での使用に十分耐え得る塗膜を形成できる。
一実施態様において、本開示の塗膜の製造方法は、路面舗装におけるヒートアイランド現象を防止できる遮熱性を備える、遮熱性塗膜の形成も可能である。本開示の塗膜の製造方法であれば、上記効果に加え、遮熱性を備えながらも、粘度の増加を抑制した塗膜形成が可能であるため、種々の被塗物に対して塗膜を形成でき、更に光沢を低減できる。
以下、本開示に係る塗膜の製造方法について説明する。
(塗装工程)
本開示は、無溶媒主剤組成物と無溶媒硬化剤組成物とを含む塗料組成物を、被塗物に塗装する塗装工程を含む。塗装は、スプレー塗装、スタティック方式を用いる塗装方法、衝突混合方式を用いる塗装方法、スリットコーター塗装及び流し塗りからなる群から選択される少なくとも1つの方法により行うことができる。
一態様において、塗装工程は、スプレー塗装、スリットコーター塗装及び流し塗りからなる群から選択される少なくとも1つの方法により行われる。
一態様において、本開示の塗装工程は、無溶媒主剤組成物及び無溶媒硬化剤組成物の2液の成分を衝突混合させて噴霧する、2液衝突混合スプレー塗装を含み得る。
2液衝突混合スプレー塗装は、高圧2液衝突混合型吹付装置を使用することが好ましい。更に、塗装直前に無溶媒主剤組成物及び無溶媒硬化剤組成物とを混合し、スリットコーター等の塗装機を用いて塗装することもできる。また、無溶媒主剤組成物及び無溶媒硬化剤組成物の2液をエアレスで連続的に押し出す方法、スタティックミキサーで混合し、連続的にスプレーする方法等も使用できる。
例えば、乾燥及び硬化後の膜厚が50μm以上2,000μm以下となるよう、塗料組成物の塗装量を適宜調整できる。
塗料組成物の加熱及び/又は硬化工程は、例えば、常温(外気温)で行ってよい。また、外気温、被塗物温度等の条件に応じて、赤外線ヒーター、バーナー等を用いて強制的に硬化させてもよい。
例えば、本開示の塗装工程において、被塗物を10℃以上60℃以下に加熱又は保温しながら塗料組成物を塗装してもよく、塗装直後の塗料組成物を、10℃以上60℃以下に加熱又は保温してもよい。このような温度範囲に設定することで、本開示に係る塗装工程よりも後に行われる水噴霧工程を施すことで、形成された塗膜は、光沢を低減又は抑制できる(調整できる)。その上、様々な表面形態の被塗物に対しても、塗膜を形成でき、耐摩耗性に優れ、耐用年数の長い塗膜を形成できる。
また、従来の塗膜の製造方法と比べて、塗膜形成時間の更なる短縮が可能である。
(水噴霧工程)
本開示の塗膜の製造方法は、更に、本開示に係る塗料組成物の塗装面に水を噴霧する、少なくとも1つの水噴霧工程を含み、
塗料組成物を塗装した直後の時間をtとし、
塗装後の塗料組成物から形成された塗膜が、JIS K 5600−1−1の規定に基づく硬化乾燥状態に至るまで要した時間をtとし、
水噴霧工程のうち最初の水噴霧工程における、第n回目の水噴霧の開始時間をtWn(ただし、nは1以上の整数である)とした場合、
時間t0、及びtWnが、
<tWn<t (式1)
の関係を有する。
本開示の塗膜の製造方法は、上記水噴霧工程を含むことで、形成された塗膜は、塗膜の光沢を低減(調整)でき、艶消し効果を得ることができる。このため、作業者、運転者に対する視認性が向上し、安全性の向上が予測される。また、近年検討されている自動運転等に対しても、路面情報を有効に提供できる可能性があると推測される。
更に、本開示の条件を満たす必要はあるが、水噴霧工程は、任意の範囲で塗膜の光沢を低減(調整)でき、例えば、均一な艶消し塗膜を形成できる。更に、セラミック骨材等を用いなくても、塗膜の光沢を低減できるので、特に、被塗物が比較的平滑な場合において、骨材の飛散による塗膜外観不良を抑制できる。その上、光沢ムラ等の塗膜外観の悪化、及び塗膜物性の悪化を抑制できる。
一実施態様において、本開示の塗膜の製造方法は、塗料組成物が、指触乾燥状態から硬化乾燥状態に至るまでの期間、半硬化乾燥状態から硬化乾燥状態に至るまでの期間、指触乾燥状態、半硬化乾燥状態、及び指触乾燥前状態から半硬化乾燥状態に至るまでの期間のいずれかの期間において、本開示に係る条件で水を噴霧することにより、塗膜の物性を大きく損なうことなく、光沢を低減又は大きく低減させた塗膜を形成できる。
別の実施態様において、本開示の塗膜の製造方法は、塗料組成物が、指触乾燥状態である期間内に水噴霧工程を行い、例えば、指触乾燥状態である期間内に、塗膜形成工程の全工程において最初の水噴霧工程を行うことができる。
また、指触乾燥前状態から半硬化乾燥状態に至るまでの期間、例えば、指触乾燥前状態である期間内に、塗膜形成工程の全工程において最初の水噴霧工程を行うことができる。ただし、指触乾燥前状態に最初の水噴霧工程を行う場合、塗料組成物を塗装した直後の時間tの経過後に、最初の水噴霧工程を行う。
このような水噴霧工程を経ることで、塗膜の物性を更に良好に保持でき、その上、より効果的に光沢を低減又は大きく低減させた塗膜を形成でき、塗膜の硬化時間を短縮することにも寄与できる。
ここで、本開示において、「乾燥状態」は、JIS K 5600−1−1の定義に基づき、「塗料が塗り付けられた後、粘着性を失い、塗膜が形成された」状態に相当する。
また、本開示において、塗料組成物は、無溶媒主剤組成物と、無溶媒硬化剤組成物とを含む。塗膜の形成における、これら無溶媒主剤組成物と無溶媒硬化剤組成物について、用語「乾燥」は、溶剤を揮発させる意義で使用されるものではない。
このように、本開示に係る特定の条件下で塗料組成物の塗装面に水を噴霧する水噴霧工程を、本開示の塗膜の製造方法が含むことにより、無溶媒型の塗料組成物を用いながらも、塗膜表面に微細な表面凹凸を形成でき、艶消し効果を有する塗膜を形成できる。
また、本開示の範囲を逸脱しない範囲で、水噴霧工程の各種条件を設定することができ、塗膜の光沢を調整できる。例えば、被塗物の種類、表面状態に応じて塗膜の光沢を調整できるので、要求される道路、道路標識等の識別性を向上することができる。
更に、無溶媒型の塗料組成物を用いるので、水噴霧工程後の塗膜又は未硬化の塗膜は、硬化時の膜厚減少が無いか、ほとんど生じない。このため、耐摩耗性等の塗膜物性に優れ、耐用年数の長い塗膜を形成できる。
また、本開示においては、無溶媒型の塗料組成物であるので、例えば、トルエン等の有機溶剤を含む塗料組成物を用いて塗膜を形成する場合と異なり、有機溶剤を揮発させる工程を必要としない。更に、有機溶剤による臭気の低減が可能であり、及び、有機溶剤を用いることにより生じ得る火災を防ぐことができる。
ここで、トルエン等の有機溶剤を含む塗料組成物を用いて、本開示に係る水噴霧工程を行うと、例えば、塗膜は、路面等で使用できる十分な強度を有さないおそれがある。特定の理論に限定して解釈すべきではないが、例えば、溶剤が残った塗料組成物の塗装面に対し、本開示に係る水噴霧工程を行うと、ブラッシング現象(瞬間的に塗料組成物の成分、特に溶剤が分離する現象)を生じ、不均一な厚さを有する層が形成され得る。このため、路面等で使用できる十分な強度を、塗膜が有さないおそれがある。また、溶剤を含む塗料組成物を用いて、本開示に係る水噴霧工程を行うと、樹脂の吸水等による表面樹脂組成の変化及び硬化反応速度に差等が生じ、路面等での使用に要求される塗膜物性を満たさないおそれがある。また、溶剤を含む塗料組成物を用いて、本開示に係る水噴霧工程を行うと、溶剤の揮発を十分に行う必要があり、溶剤の揮発が不十分であると塗膜表面にフクレが生じ得る。
これに対して、本開示の塗膜の製造方法であれば、このような問題を解決できるか、又は問題を大きく低減できる。
例えば、本開示の塗膜の製造方法は、本開示に係る特定の水噴霧工程を含むことにより、塗膜の内部において、二酸化炭素等に起因する気泡であって、塗膜の諸物性に悪影響を及ぼし得る気泡が発生することを抑制又は低減できる。
更に、本開示においては、マット材(例えば、骨材)を用いなくても、塗膜の光沢を低減でき、例えば、多量のマット材を用いなくても塗膜の光沢を低減でき、塗膜強度等の物性が低下することも抑制できる。
本開示においては、塗膜形成工程における種々の期間において、特定の関係を有する。
まず、本開示において、塗料組成物を塗装した直後の時間をtとする。
また、塗装後の塗料組成物から形成された塗膜が、JIS K 5600−1−1の規定に基づく硬化乾燥状態に至るまで要した時間をtとする。
ここで、JIS K 5600−1−1の規定に基づく硬化乾燥状態とは、
「塗面の中央を、親指又は人差指で強く押さえ、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面の中央を指先で急速に繰り返しこすって、塗面にすり跡が付かない状態」を意味する。
更に、本開示の塗膜の製造方法は、少なくとも1つの水噴霧工程を含み、塗膜の製造方法に含まれる水噴霧工程のうち、最初の水噴霧工程における、第n回目の水噴霧の開始時間をtWn(ただし、nは1以上の整数である)とする。
このような時間t0、及びtWnが、
<tWn<t (式1)
で示される関係を有する。
本開示において、時間t0、及びtWnが、(式1)の関係を満たすことにより、塗膜の光沢を調整することができる。特定の理論に限定して解釈すべきではないが、本開示に係る特定の条件下で塗料組成物の塗装面に水を噴霧することで、硬化後の塗膜表面に微細な凹凸が形成され、艶消し効果が発現するものと推測される。
ところで、本開示においては、t<tWnの関係が成立する。すなわち、本開示においては、塗料組成物の塗装前及び塗装中において、水噴霧工程を行ったとしても、塗膜強度等の塗膜物性と、艶消し効果とをバランスよく有することができないおそれがある。このような現象は、通常の塗膜硬化環境(塗料組成物の塗装段階)における水分量と比べ、塗料組成物に存在する水分量が過剰となり、塗膜の硬化が不十分になるためと考えられる。
例えば、塗料組成物に含まれる無溶媒硬化剤組成物が、脂肪族多官能イソシアネート化合物及び芳香族多官能イソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む態様において、塗料組成物の塗装段階で過剰量の水分が存在することにより、塗膜の硬化が不十分となるおそれがある。
一実施態様において、最初の水噴霧工程における水噴霧工程の第n回目の水噴霧で示されるnは、1以上3以下であり、例えば、nは1以上2以下であり、nは1であってもよい。
例えば、nが1である場合、塗膜の製造方法の、最初の水噴霧工程における水噴霧工程に含まれる、第1回目の水噴霧の開始時間はtW1で示され、nが2である場合、最初の水噴霧工程における第2回目の水噴霧の開始時間はtW2で示される。
また、時間t、tW1、tW2及びtは、
<tW1<tW2<t
の関係を有することができる。nが3の場合も同様に規定できる。
水噴霧工程において、複数回の水噴霧を行うことで、塗料組成物の硬化状態、気温、湿度の等の塗膜形成条件に応じて、水噴霧の条件を調整でき、光沢の調整をより細かく行うことができる。
本開示の塗膜の製造方法は、水を噴霧する水噴霧工程を少なくとも1つ含む。例えば、2つ以上の水噴霧工程を含む場合、最初の水噴霧工程と、2回目の水噴霧工程の条件を、本開示の範囲を逸脱しない範囲で適宜選択できる。
一実施態様において、本開示の塗膜の製造方法は、塗料組成物が、指触乾燥状態に最初の水噴霧工程を含み、次いで、半硬化乾燥状態において2回目の水噴霧工程を含んでよい。
更に、この態様において、最初の水噴霧工程では、1回以上n回以下の水噴霧を行うことができ、例えば、2回目の水噴霧工程も1回以上n回以下の水噴霧を行うことができる。
別の態様において、最初の水噴霧工程と、2回目以降の水噴霧工程とを同一条件で行ってもよく、異なる条件で行ってもよい。例えば、水噴霧の回数、温度等を適宜選択できる。
一実施態様において、塗装後の塗料組成物から形成された塗膜が、JIS K 5600−1−1の規定に基づく指触乾燥状態に至るまで要した時間をtとし、
塗装後の塗料組成物から形成された塗膜が、JIS K 5600−1−1の規定に基づく半硬化乾燥状態に至るまで要した時間をtとした場合、
、t、t及びtは、
<t≦t<tの関係を有し、更に、
前記水噴霧工程のうち最初の水噴霧工程における、第1回目の前記水噴霧工程の開始時間tW1が、以下の(式2)、(式3)、(式4)及び(式5)からなる群から選択される少なくとも1つの条件を満たす
≦tw1<t (式2)
≦tw1<t (式3)
≦tw1≦t (式4)
1/2×t≦tw1≦t (式5)
このような関係を有することにより、本開示に係る塗膜の製造方法は、塗料組成物を被塗物に塗装後、塗膜が完全に硬化する前に、塗膜表面に水を噴霧することにより、塗膜の光沢をより効率よく調整できる。更に、優れた耐摩耗性及び耐用年数の長い塗膜を形成できる。また、塗膜物性に悪影響を及ぼし得る発泡を生じることなく、あるいは大きく低減でき、塗膜強度等のより優れた塗膜を形成できる。
特定の理論に限定して解釈すべきではないが、本開示の製造方法によると、例えば、塗膜表面に、光沢を低減(調整)できる程度の微細な表面凹凸を形成でき、その一方で、塗膜物性を損なうことがない。このように、光沢の低減を行いつつ、優れた塗膜物性を有する塗膜を形成できる。また、一実施態様において、塗料組成物に含まれる無溶媒硬化剤組成物が、脂肪族多官能イソシアネート化合物を含む場合、水とNCO基の反応を抑制できるので発泡を抑制できる。更に、良好な乾燥性を維持できる。
一実施態様において、本開示の製造方法は、水噴霧工程のうち最初の水噴霧工程における、第1回目の前記水噴霧工程の開始時間tW1は、以下の関係を有する。
<tw1≦t (式6)
このような関係を有することにより、形成された塗膜は、塗膜の光沢を低減(調整)でき、艶消し効果を得ることができる。更に、本開示の条件を満たす必要はあるが、水噴霧工程は、任意の範囲で塗膜の光沢を低減(調整)でき、例えば、均一な艶消し塗膜を形成できる。更に、セラミック骨材等を用いなくても、塗膜の光沢を低減できるので、特に、被塗物が比較的平滑な場合において、骨材の飛散による塗膜外観不良を抑制できる。その上、光沢ムラ等の塗膜外観の悪化及び塗膜物性の悪化を抑制できる。
例えば、(式6)の態様は、上記(式4)及び(式5)で示される態様を含む。
別の実施態様において、塗装後の塗料組成物から形成された塗膜が、JIS K 5600−1−1の規定に基づく指触乾燥状態に至るまで要した時間をtとし、
塗装後の塗料組成物から形成された塗膜が、JIS K 5600−1−1の規定に基づく半硬化乾燥状態に至るまで要した時間をtとした場合、
、t及びtは、
<t≦tの関係を有し、更に、
水噴霧工程のうち最初の水噴霧工程における、第1回目の前記水噴霧工程の開始時間tW1が、以下の(式4)、(式5)及び(式6)からなる群から選択される少なくとも1つの条件を満たす、
≦tw1≦t (式4)
1/2×t≦tw1≦t (式5)
<tw1≦t (式6)
このような関係を有することにより、本開示に係る塗膜の製造方法は、塗料組成物を被塗物に塗装後、塗膜が完全に硬化する前に、塗膜表面に水を噴霧することにより、塗膜の光沢を更に効率よく調整できる。例えば、(式4)、(式5)及び(式6)からなる群から選択される少なくとも1つの条件を満たすことにより、塗膜の光沢を、効率よく所望の範囲に調整(低減)できる。
その上、優れた耐摩耗性及び耐用年数の長い塗膜を形成できる。また、塗膜物性に悪影響を及ぼし得る発泡を生じることなく、あるいは大きく低減でき、塗膜強度等のより優れた塗膜を形成できる。
特定の理論に限定して解釈すべきではないが、本開示の製造方法によると、例えば、塗膜表面に、光沢を低減(調整)できる程度の微細な表面凹凸を形成でき、その一方で、塗膜物性を損なうことがない。このように、光沢の低減を行いつつ、優れた塗膜物性を有する塗膜を形成できる。また、一実施態様において、塗料組成物に含まれる無溶媒硬化剤組成物が、脂肪族多官能イソシアネート化合物を含む場合、水とNCO基の反応を抑制できるので発泡を抑制できる。更に、良好な乾燥性を維持できる。
ところで、本開示においては、本開示に係る特定の条件を満たす限り、様々な条件で、水噴霧工程のうち最初の水噴霧工程における、第1回目の前記水噴霧工程の開始時間tW1を設定できる。
例えば、(式2)〜(式6)からなる群から選択される態様において、(式4)、(式5)及び(式6)のうちの1つを選択して、第1回目の前記水噴霧を行うことにより、塗膜の光沢を、効率よく所望の範囲に調整(低減)できる傾向がある。
また、(式4)、(式5)及び(式6)からなる群のうち、1つ条件を選択する態様において、(式4)>(式5)>(式6)の順で第1回目の前記水噴霧を選択することにより、塗膜の光沢を、効率よく所望の範囲に調整(低減)できる傾向がある。
本開示において、JIS K 5600−1−1の規定に基づく指触乾燥状態は、「塗面の中央に指先で軽く触れて,指先が汚れない状態」を意味する。
本開示において、JIS K 5600−1−1の規定に基づく半硬化乾燥状態は「塗面の中央を指先で静かに軽くこすって塗面にすり跡が付かない状態」を意味する。
また、上記時間tとtは、塗料組成物の乾燥条件によっては、ほとんど差が生じない場合も考えられる。この場合、t=tの関係が生じ得る。
上記(式2)〜(式6)について、各条件を説明する。
まず、指触乾燥状態に至るまでに要した時間tから半硬化乾燥状態となる前の時間tまでの塗料組成物の状態を、「指触乾燥状態」とも示すことができる。また、半硬化乾燥状態に至るまでに要した時間tから硬化乾燥状態となる前時間をtまでの時間を、「半硬化乾燥状態」と示すことができる。
≦tw1<t で示される(式2)は、塗料組成物の塗装後、第1回目の水噴霧を、塗料組成物が指触乾燥状態に至るまでに要した時間の経過後から、硬化乾燥前の間で行われることを意味する。例えば、第1回目の水噴霧は、塗料組成物が指触乾燥状態に至り次第、行うことができ、指触乾燥状態、半硬化乾燥状態のいずれで行ってもよい。
このような関係を有することにより、本開示に係る塗膜の製造方法は、塗膜の光沢をより効率よく調整できる。また、塗膜物性に悪影響を及ぼす大きさ及び数の発泡を生じることなく、あるいは大きく低減でき、塗膜強度等のより優れた塗膜を形成できる。
≦tw1<t で示される(式3)は、塗料組成物の塗装後、第1回目の水噴霧を、塗料組成物が半硬化乾燥状態に至るまでに要した時間から、硬化乾燥前の間で行われることを意味する。例えば、第1回目の水噴霧は、塗料組成物が半硬化乾燥状態に至り次第、行うことができ、半硬化乾燥状態で水噴霧を行える。
このような関係を有することにより、本開示に係る塗膜の製造方法は、塗膜の光沢をより効率よく調整できる。また、塗膜物性に悪影響を及ぼす大きさ及び数の発泡を生じることなく、あるいは大きく低減でき、塗膜強度等のより優れた塗膜を形成できる。
≦tw1≦t で示される(式4)は、塗料組成物の塗装後、第1回目の水噴霧を、塗料組成物が指触乾燥状態に至るまでに要した時間の経過後から、塗料組成物が半硬化乾燥状態に至るまでに要した時間までの間で行われることを意味する。例えば、第1回目の水噴霧は、塗料組成物が指触乾燥状態から半硬化乾燥状態に至るまでの間で行うことができる。
例えば、塗料組成物の水噴霧を、指触乾燥状態直後に行ってもよく、塗料組成物の水噴霧を、半硬化乾燥状態直後に行ってもよい。
例えば、最初の水噴霧を、塗料組成物が指触乾燥状態〜半硬化乾燥状態の範囲内で行うことができ、別の実施態様において、最初の水噴霧を、塗料組成物の塗装後、指触乾燥状態の状態で行うことができる。このような状態で水噴霧を行うことにより、塗膜の光沢をより効率よく調整できる。また、塗膜物性に悪影響を及ぼす大きさ及び数の発泡を生じることなく、あるいは大きく低減でき、塗膜強度等のより優れた塗膜を形成できる。
1/2×t≦tw1≦t で示される(式5)は、塗料組成物の塗装後、第1回目の水噴霧を、塗料組成物を塗装した直後の時間tの経過後であり、塗料組成物が指触乾燥前の状態であって、上記所定の関係を有する期間から、半硬化乾燥状態に至るまでに要した時間までの間で行われることを意味する。
例えば、最初の水噴霧を、塗料組成物が指触乾燥前の状態から、半硬化乾燥状態に至るまでの範囲内で行うことにより、塗膜の光沢を効率よく低減(調整)できる。また、塗膜物性に悪影響を及ぼす大きさ及び数の発泡を生じることなく、あるいは大きく低減でき、塗膜強度等のより優れた塗膜を形成できる。
<tw1≦tで示される(式6)は、第1回目の水噴霧を、塗料組成物を塗装した直後の時間をtの経過後、塗料組成物が半硬化乾燥状態に至るまでに要した時間までの間で行われることを意味する。例えば、第1回目の水噴霧は、塗料組成物が指触乾燥状態から半硬化乾燥状態に至るまでの間で行うことができる。
また、例えば、塗料組成物の水噴霧を、指触乾燥状態直後に行ってもよい。
一実施態様において、最初の水噴霧工程において、水噴霧を複数回行う場合、例えば2回水噴霧を行う場合
≦tw1<tW2<t の関係 (式2の変形例)、
≦tw1<tW2<t の関係 (式3の変形例)、
≦tw1<tW2≦t の関係 (式4の変形例)及び
1/2×t≦tw1<tW2≦t (式5の変形例)
からなる群から選択される1つの条件を満たし得る。
一実施態様において、最初の水噴霧工程において、水噴霧を複数回行う場合、例えば2回水噴霧を行う場合
<tw1<tW2≦t の関係 (式6の変形例)、
からなる群から選択される1つの条件を満たし得る。
一実施態様において、例えば、第1回目の水噴霧を、塗料組成物が指触乾燥状態である期間に行い、第2回目の水噴霧を塗膜が半硬化乾燥状態である期間に行ってよい。また、例えば、第1回目の水噴霧を、塗料組成物が指触乾燥状態に至った直後に行い、第2回目の水噴霧を塗膜が半硬化乾燥状態に至った直後に行ってよい。
一実施態様において、t≦tw1≦(t+t)/2の関係、すなわち、指触乾燥状態から半硬化状態の中間地点以前の段階で、水噴霧を行うことができる。これにより、塗膜の光沢をより効率よく調整できる。更に、優れた耐摩耗性及び耐用年数の長い塗膜を形成できる。また、塗膜物性に悪影響を及ぼし得る発泡を生じることなく、あるいは大きく低減でき、塗膜強度等のより優れた塗膜を形成できる。
別の態様において、t≦tw1≦(t+t)/3の関係で、水噴霧を行うことができる。
すなわち、指触乾燥状態から半硬化状態の期間において、指触乾燥状態に至った直後であるほど、塗膜の光沢をより効率よく調整できる。
更に優れた耐摩耗性及び耐用年数の長い塗膜を形成できる。また、塗膜物性に悪影響を及ぼし得る発泡を生じることなく、あるいは大きく低減でき、塗膜強度等のより優れた塗膜を形成できる。
水噴霧の条件は、本開示の範囲を逸脱しない範囲で適宜設定できる。例えば、外気温、湿度の限定等はなく、噴霧量も特に限定されない。
一実施態様において、水噴霧工程は、水微粒子を塗料組成物の塗装面に噴霧することを含む。
一実施態様において、水噴霧工程は、水蒸気及び水のミストからなる群から選択される少なくとも1種を含む、噴霧用の水を、塗料組成物の塗装面に噴霧することを含む。
これにより、上記効果に加えて、塗膜の内部における、二酸化炭素等に起因する気泡であって、塗膜の諸物性に悪影響を及ぼし得る気泡が発生することを、より効果的に抑制できる。このため、屋外での使用に十分耐え得る塗膜を良好に形成できる。
更に、水蒸気及び水のミストからなる群から選択される少なくとも1種を含む、噴霧用の水を用いることで、硬化前の塗料組成物に含まれる樹脂成分に対する悪影響、例えば、分子量低下等を抑制でき、目的に応じて要求される塗膜物性を得ることができる。
本明細書において、水蒸気の噴霧は、例えば、80℃以上の温度で行われる。
一実施態様において、水噴霧工程は、水蒸気を含む、噴霧用の水を、塗料組成物の塗装面に噴霧することを含む。水蒸気を含む、噴霧用の水を噴霧することにより、より効果的に光沢値を低減できる。
一実施態様において、水噴霧工程は、塗料組成物の塗装面に、水蒸気を噴霧することを含む。これにより、塗料組成物の塗装面に熱を加えることができ、塗膜の硬化を促進できる。
水噴霧工程において、水蒸気及び水のミストからなる群から選択される少なくとも1種を含む、噴霧用の前記水を、塗料組成物の塗装面に噴霧することにより、塗膜の光沢を、目的に応じた所望の範囲に調整できる。例えば、50μm以上200μm以下の範囲内に塗膜の凹凸を形成でき、別の実施態様では80μm以上150μm以下の範囲内に塗膜の凹凸を形成できる。
また、本開示の塗膜の製造方法であれば、塗料組成物は、無溶媒主剤組成物と、無溶媒硬化剤組成物とを含むので、溶剤等の揮発、乾燥工程を行うことなく、水蒸気及び水のミストからなる群から選択される少なくとも1種を含む、噴霧用の水を噴霧できる。このため、塗膜の形成時間を、従来の塗膜形成工程と比べ、大きく低減でき得る。
このように、塗膜の光沢を調整できるため、路面、路面標識等の識別性を向上できる。
また、上述した種々の効果に加え、塗料組成物は、無溶媒主剤組成物と、無溶媒硬化剤組成物とを含み、その上、水噴霧工程において、水蒸気及び水のミストを噴霧するので、揮発性成分を用いることなく、塗膜の光沢を、目的に応じた所望の範囲に調整できる。
本開示において、例えば、水蒸気及び水のミストからなる群から選択される少なくとも1種を含む、噴霧用の水は、アルコール等の水以外の成分(液体)を含んでもよい。
ここで、本開示において、水噴霧工程において噴霧される噴霧用の水は、主成分として水を含む。
一実施態様において、塗膜形成工程等で用い得る水を再利用してもよく、例えば、装置の洗浄等に用いた水から固形分等を取り除く等、適宜処理して使用でき、環境への負荷も低減できる。
一実施態様において、水噴霧工程で用いられる水微粒子は、0.01μm以上の平均粒子径を有しており、例えば、塗膜を形成する条件に応じて、1.0mm程度の平均粒子径を有してもよい。例えば、本開示の条件を満たす限り、霧雨(例えば、水の粒子径約0.5mm以下)の環境下に塗料組成物の塗装面を晒すことで、本開示に係る水噴霧工程を行うことも理論上は可能である。
一実施態様において、水噴霧工程で用いられる水微粒子は、150μm超1.0mm以下、例えば、150μm超0.5mm以下の平均粒子径を有してもよい。
本明細書において、水微粒子の平均粒子径は、体積平均粒子径を意味し、水微粒子の体積基準の粒度分布において、小粒子径側からある粒子径までの間で積算した粒子の合計体積を、粒子全体の体積に対する百分率で表したときに、その値が50%になるときの粒子径の値(D50)を意味する。水微粒子の平均粒子径の測定は、レーザー回析法により測定でき、例えば、スプレーテック(Malvern Panalytical社製)等を用いることができる。
一実施態様において、水のミストは、250μm以下の平均粒子径を有し、200μm未満であってよく、例えば、150μm以下の平均粒子径を有し、120μm以下の平均粒子径であってよく、例えば、110μm以下である。別の実施態様において、水のミストは、100μm以下の平均粒子径を有し、70μm以下の平均粒子径を有してよく、例えば、50μm以下の平均粒子径を有する。
一実施態様において、水のミストは、0.01μm以上の平均粒子径を有し、0.1μm以上の平均粒子径を有してよく、例えば、3μm以上の平均粒子径を有し、4μm以上の平均粒子径を有してよい。別の実施態様において、水のミストは、5μm以上の平均粒子径を有し、例えば、10μm以上の平均粒子径を有する。本開示において、水のミストの平均粒子径は、上記数値範囲を適宜組み合わせてもよい。また、水のミスト平均粒子径は、レーザー回析法により測定でき、例えば、スプレーテック(Malvern Panalytical社製)等を用いることができる。
一実施態様において、水蒸気及び水のミストからなる群から選択される少なくとも1種を含む、噴霧用の水を、前記塗装面に対して、5g/m以上500g/mの量で噴霧することを含み、例えば、50g/m以上500g/mであり、90g/m以上500g/mであってもよい。また、水蒸気及び水のミストからなる群から選択される少なくとも1種を含む、噴霧用の水を、前記塗装面に対して、500g/m以下で噴霧でき、例えば、300g/m以下で噴霧してもよい。
このような量で、水蒸気及び水のミストからなる群から選択される少なくとも1種を含む、噴霧用の水を、前記塗装面に対して噴霧することにより、塗膜の光沢を良好に調整することができる。更に、耐摩耗性に優れ、耐用年数の長い塗膜を形成できる。また、塗膜表面が水膜を形成することを抑制でき、良好な艶消し効果を得ることができる。
水噴霧の方法は、本開示の範囲を逸脱しない範囲で選択できる。例えば、外気温は0℃以上40℃以下の範囲で行え、湿度は0%以上70%以下の範囲で行える。
また、水蒸気及び水のミストからなる群から選択される少なくとも1種を含む、噴霧用の水を噴霧する装置等は、公知のものを使用できる。
例えば、水蒸気及び水のミストの吐出量(流量)、吐出圧(霧化圧)は限定されない。
また、水噴霧に用いる装置について、ノズル・ヘッド形状及び口径等は特に限定されない。
一実施態様において、水噴霧条件は、吐出量0.02L/min以上20L/min以下であり、吐出圧0.2MPa以上20MPa以下であり、ガン距離10mm以上1m以下である。なお、これら数値範囲内で、任意の値を適宜組み合わせることができる。
一実施態様において、上記水噴霧条件に係る吐出量及び吐出圧等の条件は、水の噴霧量が5g/m以上500g/mとなるように、適宜設定できる。
噴射時間、レシプロ回数、パターン、移動時間等も、本開示により得られる効果を損なわない範囲で適宜設定できる。水噴霧装置としては、スチーム洗浄機、スプレーノズルを有する噴霧器、ミスト噴霧器、超音波噴霧器等が挙げられる。
例えば、スプレーノズルを有する噴霧器として、エアスプレーガン、農薬散布用噴霧器等を用いてもよい。
本開示に係る塗料組成物は、無溶媒主剤組成物と、無溶媒硬化剤組成物とを含む。例えば、塗料組成物は、イソシアネート基を有する無溶媒硬化剤組成物を含む。このような無溶媒硬化剤組成物を含むことで、より効果的に塗膜の艶消し効果を得ることができる。
無溶媒主剤組成物
無溶媒主剤組成物は、塗膜形成樹脂を含み、更に、顔料及び有機金属触媒からなる群から選択される少なくとも1種を含み得る。
本開示の塗料組成物は、無溶媒主剤組成物を含むので、主剤組成物に揮発性成分が含まれない。故に、臭気を生じることがなく、環境に対する負荷も低減できる。更に、本開示に係る組成物は、水系溶媒、有機溶剤等の溶剤を含む塗料組成物よりも優れた耐候性を有し、更に、強靱性を有する塗膜を形成できるので、路面標示用の塗料組成物にも適する。
塗膜形成樹脂
本開示において、塗膜形成樹脂は、特に限定されない。例えば、塗膜形成樹脂は、エポキシ系塗料組成物、ウレタン系塗料組成物、ウレア系塗料組成物からなる群から選択される少なくとも1種を含んでよい。
一実施態様において、本開示に係る塗膜形成樹脂は、ヒドロキシル基を2個以上有するポリオール、多官能アミン及び芳香族多官能アミンより選択される少なくとも一種を含んでよい。
ある態様において、塗膜形成樹脂は、ヒドロキシル基を2個以上有するポリオール及び芳香族ジアミンからなる群より選択される少なくとも一種を含む。このような塗膜形成樹脂を持ちることで、本開示に記載の効果をより良好に奏することができる。例えば、揮発性成分による臭気を抑制でき、乾燥性、耐候性が充分な塗膜を形成でき、屋外で使用される塗膜として、充分な性質を得ることができる。更に、塗膜表面において、二酸化炭素が発生し発泡を生じるという問題を抑制できる。
ヒドロキシル基を2個以上有するポリオール
ポリオールは特に限定されない。得られる塗料組成物の粘度を無溶媒型としての使用が容易となるように、例えば、数平均分子量は、50以上3,000以下であり、ある態様では、50以上1,000以下であり、例えば500以上1,000以下である。なお、本明細書中において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算した値である。
例えば、ポリオールの水酸基価は50mgKOH/g以上2,000mgKOH/g以下である。水酸基価がこのような範囲内であることにより、充分な強度の塗膜を得ることができる。さらに、柔軟性も有する塗膜を形成できる。
ある態様においては、ポリオールの水酸基価は、50mgKOH/g以上1,500mgKOH/g以下であり、例えば、50mgKOH/g以上500mgKOH/g以下、ある態様において、50mgKOH/g以上350mgKOH/g以下である。
本明細書において、水酸基価は、固形分水酸基価を表し、JIS K 0070の規定に準拠して測定できる。
ポリオールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール及び、ひまし油系ポリオールからなる群から選択される少なくとも1種を含み得る。
また、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール等を例示できる。例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール、ポリオクタメチレンエーテルグリコール等のポリアルキレングリコール、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリ−3−メチルペンチルアジペート、ポリエチレン/ブチレンアジペート、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペート等のポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリ−3−メチルバレロラクトンジオール等のポリラクトンジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等のポリカーボネートジオール、ひまし油系ポリオール、これらの変性物及びこれらの混合物等を挙げることができる。
ある態様において、ポリオールは、ひまし油系ポリオールである。本開示に係る無溶媒主剤組成物は、ひまし油系ポリオールを含むことにより、比較的低粘度の塗料組成物を得ることができる。ひまし油系ポリオールは、特に限定されず、ひまし油及びその誘導体、例えば、ひまし油脂肪酸のジグリセライド、モノグリセライド及びこれらの混合物等を挙げることができる。ひまし油系のポリオールを用いることで、低粘度の無溶媒主剤組成物と無溶媒硬化剤組成物との混合を行え、これらを充分に混合できる。
ある態様において、ポリオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタングリコール、ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、
ポリエチレングリコール、テトラメチレンエーテルグリコール、ヘキサメチレンエーテルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、イノシトール、マンニトール、グルコース、フルクトース等の多価アルコールであってもよい。
ある態様において、アクリルポリオールは、ラジカル重合性の不飽和単量体組成物の重合によって得られる。上記ラジカル重合性の不飽和単量体としては、上記水酸基価を得るために必要な水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体及びその他の単量体を混合したものを使用することができる。上記水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体としては特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等が挙げられ、これらは単独で使用してもよく、併用してもよい。その他のラジカル重合性単量体としては特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n、i及びt−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n、i及びt−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステル類を挙げることができる。
アクリルポリオールは、無溶媒又は適当な有機溶剤の存在下において重合反応を行い、溶媒を除去することによって、アクリルポリオールとすることができる。
例えば、重合開始剤には、ラジカル重合開始剤として当該技術分野において既知の開始剤を使用できる。例えば、重合開始剤は、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシド及びクメンハイドロパーオキシド等の有機過酸化物、アゾビスシアノ吉草酸及びアゾイソブチロニトリル等の有機アゾ化合物等が挙げられる。
重合は、80〜140℃の温度で1〜8時間、当業者に周知の操作で行い得る。例えば、加熱した有機溶剤中に、ラジカル重合性単量体及び重合開始剤を滴下することにより重合を行える。重合に用いる有機溶剤は、特に限定されないが、沸点が60〜250℃程度のものが好ましい。好適に用いうる有機溶剤には、酢酸ブチル、キシレン、トルエン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、メチルエーテルアセテートのような非水溶性有機溶剤;及びテトラヒドロフラン、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、2−ブタノール、t−ブチルアルコール、ジオキサン、メチルエチルケトン、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、2−メトキシプロパノール、2−ブトキシプロパノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ブチルジグリコール、N−メチルピロリドン、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートのような水溶性有機溶剤が挙げられる。
多官能アミン
多官能アミンは、一分子中に2個以上のアミノ基を有するアミンであり、特に限定されない。一実施態様において、多官能アミンは、芳香族多官能アミンである。
芳香族多官能アミンは、一分子中に2個以上のアミノ基を有する芳香族アミンであり、特に限定されない。
ある態様において、芳香族環の水素原子を、2個以上のアミノ基で置換した芳香族化合物である。例えば、ジアミノトルエン(フェニレンジアミンともいう)、トリアミノベンゼンが挙げられる。芳香族多官能アミンは、芳香族環に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基からなる群から選択される少なくとも1つのアルキル基を有してもよい。
ある態様において、芳香族多官能アミンとして、ジエチルジアミノトルエン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジクロロジフェニルメタン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、3,4−ジアミノトルエン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン(両者は、ジエチルトルエンジアミン又はDETDAと称される)、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチルフェニルメタン(MEDDM)、1,3,5−トリエチル−2,6−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5,3’,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミン、3,5−ジメチルチオ−2,6−トルエンジアミン等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ある態様において、芳香族多官能アミンは、ジエチルジアミノトルエン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジクロロジフェニルメタン及びこれらの混合物である。
ある態様において、芳香族多官能アミンとして、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ある態様において、芳香族多官能アミンは、ジアミノジフェニルメタン系の芳香族多官能アミン、フェニレンジアミン系の芳香族多官能アミン、ビスアミノフェニルフルオレン系の芳香族多官能アミン、ジアミノジフェニルエーテル系の芳香族多官能アミン(例えば、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル)、ジアミノナフタレン系の芳香族多官能アミン、ジアミノベンゾフェノン系の芳香族多官能アミン等である。
芳香族多官能アミンにおいて、例えば、アミン価は100mgKOH/g以上1,200mgKOH/g以下であり、200mgKOH/g以上800mgKOH/g以下であってもよい。
アミン価がこのような範囲内であることにより、所望される短時間硬化を可能にし、かつ、強靭な塗膜を形成できる。さらに、塗料組成物、例えば、路面標示用塗料組成物及び路面遮熱用塗料組成物のポットライフを所望の範囲に調整できるので、塗料組成物の作業性に優れる。なお、本明細書中において、アミン価は、固形分アミン価を表し、JIS K 7237の規定に準拠して測定することができる。
無溶媒主剤組成物に含まれる塗膜形成樹脂は、ポリオール及び芳香族多官能アミン及のうち、1種又は2種以上の化合物を組み合わせたものである。なかでも、ポリオールを選択できる。
例えば、市販されている芳香族多官能アミンとして、ジアミノジフェニルメタン系(イハラキュアミンMT、キュアハード−MED、いずれもクミアイ化学社製)、フェニレンジアミン系(エタキュア100、アルベマーレ社製)、ビスアミノフェニルフルオレン系(BAFL、JFEケミカル社製)、ジアミノジフェニルエーテル系(4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、JFEケミカル社製)、ジアミノナフタレン系の芳香族多官能アミン、ジアミノベンゾフェノン系の芳香族多官能アミン等が挙げられる。
本開示の塗料組成物において、無溶媒主剤組成物と、後述する無溶媒硬化剤組成物とは、無溶媒硬化剤組成物に含まれるNCO基の当量と、無溶媒主剤組成物に含まれるOH基の当量及びNH基の当量の合計との比[NCO/(OH+NH)]は、0.5以上2.0以下であり、例えば、0.7以上1.7以下、ある態様においては、0.8以上1.6以下である。また、[NCO/(OH+NH)]は0.8以上1.55以下であってもよい。
[NCO/(OH+NH)]の関係が上記範囲内であることにより、塗膜の硬化を充分に行え、より強靱な塗膜を得ることができ、塗膜は、優れた耐摩耗性及び耐久性を備えることができる。
顔料
本開示の塗料組成物は、顔料を含んでよく、一実施形態において、無溶媒主剤組成物は、顔料を含んでよい。ある態様において、顔料は、炭酸塩、酸化チタン、酸化亜鉛、沈降性硫酸バリウム、タルク、シリカ、カオリン、ベントナイト、スメクタイト、ガラスフレーク(シリカフィラー)、酸化鉄、針状酸化チタン、キノフタロン、アンスラキノン、ベンズイミダゾロン、バナジン酸ビスマス、イソインドリン系顔料、イソインドリンノン系顔料、カーボンブラック、ジオキサジン系顔料、インダンスレン系顔料、銅フタロシアニン、塩素化銅フタロシアニン、臭素化銅フタロシアニン、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、アゾ系顔料、複合酸化物系顔料、キナクリドン系顔料、アニリン系顔料から選択される少なくとも1種を含んでもよい。
一実施態様において、本開示に係る顔料は、炭酸塩、酸化チタン、酸化亜鉛、沈降性硫酸バリウム、タルク、シリカ、カオリンからなる群から選択される少なくとも1種を含む。また、貝殻胡粉、卵殻カルシウム、中空粒子等であってもよい。例えば、炭酸塩、酸化チタン及びタルクからなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよく、複数種の炭酸塩を含んでもよい。
このような顔料を含むことにより、本開示の塗料組成物から形成される塗膜は、白色を呈することができる。例えば、ある態様において、路面標示用塗料組成物は、白色系の塗膜、例えば、白線等の塗膜形成に使用できる。
遮熱顔料
一実施態様において、塗料組成物は、遮熱顔料を含んでもよい。用いられる遮熱顔料としては特に限定されず、例えば、下記の遮熱顔料等を挙げることができる。
本開示において、遮熱顔料とは、近赤外波長域(波長:780nm〜2,500nm)の光を吸収しない、又は近赤外波長域(波長:780nm〜2,500nm)の光の吸収率が小さい顔料を指す。
白色遮熱顔料としては、酸化チタンである、タイペークCR−97(石原産業社製)等を挙げることができる。
赤色遮熱顔料としては、Fastogen Super Magenta RH(DIC社製)、Fastogen Super Red 7100Y(DIC社製)、ルビクロンレッド400RG(東ソー社製)、パシフィックレッド2020(BASF社製)等を挙げることができる。また、これらの赤色系原色顔料を2種以上組み合わせて使用してもよい。
青色遮熱顔料としては、ダイピロキサイドブルー#9453(大日精化工業社製)、Fastogen Blue 5485K(DIC社製)、Fastogen Blue RSKE(DIC社製)、シアニンブルー5240KB(大日精化工業社製)、リオノールブルーSPG−8(トーヨーカラー社製)等を挙げることができる。これらの青色系原色顔料を2種以上組み合わせて使用してもよい。
黄色遮熱顔料としては、Symuler Fast Yellow 4192(DIC社製)、シコパールイエロー L−1110(BASF社製)、イルガカラーイエロー2GLMA(BASF社製)等を挙げることができる。これらの黄色系原色顔料を2種以上組み合わせて使用してもよい。
黒色遮熱顔料としては、例えば、アゾメチアゾ系顔料、ペリレン系顔料、アニリン系顔料、複合酸化物焼成顔料を挙げることができる。これらの黒色系原色顔料を2種以上組み合わせて使用してもよい。
また、ここに記載した原色顔料は一例であり、本開示において開示されている「顔料」を、選択して用いてもよい。例えば、本開示においては、上記顔料として記載した各種成分について、遮熱顔料としての機能を有する場合がある。
塗料組成物は、必要に応じて、微粒子状の充填剤、添加剤等を含んでいてもよい。微粒子状の充填剤としては特に限定されず、例えば、SiO、ZrO、3Al・2SiO、ケイ酸ジルコニア、セラミックビーズ等からなる微粒子、繊維状又は粒状の微細ガラス、ガラスビーズ等を挙げることができる。微粒子状とは、粒子状、球状、中空球状の何れでもよい。
ある態様において、顔料の分散粒子の平均粒子径(D50)は、0.2μm以上50μm以下であり、ある態様においては、3μm以上35μm以下である。
例えば、顔料の分散粒子の平均粒子径(D50)は、0.2μm以上50μm以下であり、ある態様においては、3μm以上35μm以下である。顔料の分散粒子の平均粒子径は(D50)は、例えば、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラックMT3300EX II、マイクロトラック・ベル社製)等の粒度測定装置を用いて測定することができる。
本開示の塗料組成物は、遮熱顔料を含むことにより、遮熱機能を有することができる。遮熱機能を有する本開示に係る塗料組成物は、ヒートアイランド現象への対策等に有効であり、JIS K 5675において規定される屋根用高日射反射率塗料に分類されるような高い反射率を持つ塗料組成物である。
さらに、着色を目的としない体質顔料を添加してもよい。これらの顔料を塗料組成物に添加することによって、JIS K 5602に規定される日射反射率を高くすることができるため、塗膜に遮熱機能を与えることができる。
本開示に係る塗料組成物における遮熱機能の有無は、JIS K 5675に従い、本開示の無塗料組成物から得られる塗膜の「日射反射率」及び「明度」を算出した後に判定できる。
日射反射率とは、規定の波長域において求めた分光反射率から算出され、塗膜表面に入射する日射に対する塗膜からの反射光束の比率を指す。日射反射率は、JIS K 5602に従い、近赤外波長域(波長:780nm〜2,500nm)及び全波長域(波長:300nm〜2,500nm)において求められる。
明度は、JIS K 5600−4−4の3.2及びJIS K 5600−4−5に従って算出される。
算出された明度(L)が40.0<L<80.0である場合は、近赤外波長域の日射反射率(ρIR)の値が、当該明度の値以上である塗膜が、遮熱性を有する塗膜であると判定される。また、塗膜の明度(L)が40.0以下である場合には、近赤外波長域の日射反射率(ρIR)が40.0%以上である塗膜が、遮熱性を有する塗膜であると判定される。
有機金属触媒
本開示の塗料組成物は、有機金属触媒を含んでよく、一実施形態において、無溶媒主剤組成物は、有機金属触媒を含んでよい。有機金属触媒は、本開示に係る無溶媒主剤組成物の硬化に寄与し得るものであれば、限定されない。例えば、公知のものが使用できる。ある態様において、有機金属触媒は、スズ、鉛、ビスマス、亜鉛、チタン等のエステル化合物を用いることができる。具体的には、例えば、ジブチルスズジラウレート、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)、オクチル酸鉛、ビスマスオクトエート等を挙げることができる。有機金属触媒として、スズエステル及び/又はビスマスエステルが好ましい。
有機金属触媒として、スズエステル、例えばジブチルスズジラウレート等を使用する場合、無溶媒主剤組成物の全量に対して0.01〜2質量%の割合で含むことができ、例えば、0.05質量部以上1.0質量部以下の量で含んでよい。このような添加量であることにより、塗料組成物の反応性を所望の範囲内に調節できる。例えば、無溶媒硬化剤組成物が、硬化剤としては比較的反応性が低くても、塗料組成物の反応性を高めることができる。また、水との反応性を抑制でき、塗料組成物の発泡を抑制できる。更に、塗料組成物の作業性を良好にできる。
脱水剤
本開示の塗料組成物は、有機金属触媒を含んでよく、一実施形態において、無溶媒主剤組成物は、有機金属触媒を含んでよい。脱水剤を含むことにより、塗装面に付着している水分と、後述の無溶媒硬化剤組成物、例えば、脂肪族多官能イソシアネートとの反応による二酸化炭素の発生を更に抑制でき、塗膜上に凹凸、多孔が発生することを、更に抑制できる。脱水剤は、特に限定されず、公知のものを挙げることができる。例えば、合成ゼオライトのモレキュラーシーブ、硫酸カルシウム、酸化カルシウム等を挙げることができる。脱水剤の量は、塗料組成物の固形分100質量部に対して、例えば、0.3質量部以上5質量部以下である。このような範囲内であることにより、塗料組成物に含まれ得る水分を充分に脱水でき、塗料組成物の発泡を抑制できる。
一方、ある態様においては、脱水剤を含まなくてもよい。路面に水分が付着していない、又は、無溶媒主剤組成物の反応に悪影響が出ない程度の水分量であれば、脱水剤を含まなくてもよい。脱水剤を含まない態様であれば、製造工程を短縮することができ、その上、優れた耐摩耗性を有することができる。
無溶媒硬化剤組成物
本開示の塗料組成物は、無溶媒硬化剤組成物を含む。無溶媒硬化剤組成物は、脂肪族多官能イソシアネート化合物及び芳香族多官能イソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
脂肪族多官能イソシアネート化合物は、特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。また、これらの変性体であってもよい。
芳香族多官能イソシアネート化合物は、特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。また、これらの変性体であってもよい。
ある態様において、無溶媒硬化剤組成物は、脂肪族多官能イソシアネートを含む。脂肪族多官能イソシアネートは、耐候劣化による変色を抑制できる。例えば、脂肪族多官能イソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート又はその変性体である。
上記脂肪族多官能イソシアネート及び芳香族多官能イソシアネートは、これらのビュレット体、イソシアヌレート体、アルファネート体又は、アダクト体であってよい。また、無溶媒硬化剤組成物は、脂肪族多官能イソシアネート化合物を単独でも含んでもよく、2種以上を混合して含んでもよい。
本開示の塗料組成物において、無溶媒硬化剤組成物の量は、無溶媒硬化剤組成物に含まれるNCO基の当量と、無溶媒主剤組成物に含まれるOH基の当量及びNH基の当量の合計との比が所定の範囲内、すなわち、上述した、[NCO/(OH+NH)]=0.5以上2.0以下となるよう、適宜調整できる。
添加剤
本開示の塗料組成物は、上記成分以外に、骨材(砂等)、シリカ、反射材、アルミナ等の艶消し剤、表面調整剤、粘性調整剤、防腐剤、防かび剤、消泡剤、分散剤、光安定剤、紫外線吸収剤、ワックス、脱水剤、レベリング剤及び酸化防止剤等、塗料組成物に配合される添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、無溶媒主剤組成物及び無溶媒硬化剤組成物の少なくとも一方に含み得る。また、本開示の効果を損なわない範囲で、これらの量を適宜調整できる。
本開示の塗料組成物は、ある態様において、路面標示用塗料組成物及び路面遮熱用塗料組成物から選択される塗料組成物である。また、ある態様において、本開示の塗料組成物は、白色の路面標示用塗料組成物及び/又は路面遮熱用塗料組成物であり、例えば、路面における白線等に使用できる。
塗料組成物の調製方法
本開示に係る塗料組成物を調製する方法は、特に限定されず、上記無溶媒主剤組成物及び無溶媒硬化剤組成物等を混合及び撹拌し、所望により、含まれる添加剤等を分散させる方法を例示できる。撹拌方法は、特に限定されず、ディスパー等を使用できる。また、分散方法は、特に限定されず、ロールミル、ペイントシェーカー、ポットミル、ディスパー、サンドグラインドミル等の一般に顔料分散に使用されている機器を使用できる。
被塗物
本開示に係る塗料組成物は、道路面等の舗装体の表面に塗装できる。上記舗装体は、特に限定されず、例えば、アスファルト舗装、コンクリート舗装等を挙げることができる。さらに、開粒アスファルトと、密粒度アスファルト等を組み合わせる態様のように、様々な状態(表面状態)の被塗物を使用できる。
以下の実施例により本開示を更に具体的に説明するが、本開示はこれらに限定されない。実施例中「部」及び「%」は、ことわりのない限り質量基準による。
(無溶媒主剤組成物)
無溶媒主剤組成物に含まれる組成は、以下のとおりである。
[塗膜形成樹脂]:
・ポリオール1:URIC−H368(伊藤製油社製、ヒマシ油系ポリオール;固形分水酸基価:195mgKOH/g、数平均分子量:約700)
・ポリオール2:サンニックスGP−400(三洋化成工業社製、ポリエーテルポリオール;固形分水酸基価:400mgKOH/g)
・多官能アミン1:エタキュア100(アルベマーレ社製、DETDA;固形分アミン価:629mgKOH/g)
その他:
・有機金属触媒:TVSチンロウ(日東化成社製、ジブチルスズラウレート(DBTL))
・脱水剤:ゼオラムA4(東ソー社製、ゼオライト)
・顔料:
・顔料1:タイペークCR−97(石原産業社製、酸化チタン)
・顔料2:クロモファインA−1103(大日精化工業社製、アゾメチアゾ系顔料)
<アクリル樹脂1の調製>
撹拌機、温度調整器、冷却管、窒素導入管及び滴下ロートを備えた反応容器に、トルエン35質量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら110℃まで昇温し保った。これに、アクリル酸0.49質量部、メタクリル酸メチル33質量部、アクリル酸ブチル35.44質量部及びスチレン29.07質量部からなるモノマー溶液と、トルエン15質量部と開始剤であるアゾビスイソブチルニトリル2質量部からなる開始剤溶液を、別々の滴下ロートを通じて同時に3時間で等速滴下した。滴下終了後、さらに3時間撹拌を継続した。その後、80℃まで冷却し、酢酸エチル50質量部を加え、1時間攪拌保ち、アクリル樹脂(A1−1)(固形分水酸基価:0mgKOH/g、数平均分子量:15,000、固形分濃度:50質量%)を得た。
上記組成を含む無溶媒主剤組成物を、表1に示す量(質量部)で配合し、ディスパーを用いて混合して、無溶媒主剤組成物を調製した。
(無溶媒硬化剤組成物)
無溶媒硬化剤組成物に含まれる組成は、以下のとおりである。
無溶媒硬化剤:
・イソシアネート化合物1:コロネートHXLV(東ソー社製、脂肪族イソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、NCO含有量:23.2質量%)
・イソシアネート化合物2:ミリオネートMR−200(東ソー社製、芳香族イソシアネート化合物;ポリメリックMDI、NCO含有量:31質量%)
(実施例1)
(塗料組成物の塗装及び塗膜形成)
表1Aに示す条件で、無溶媒主剤組成物及び無溶媒硬化剤組成物を、無溶媒主剤組成物に含まれるOH基の当量及びNH基の当量の合計と、無溶媒硬化剤組成物に含まれるNCO基の当量との比[NCO/(OH+NH)]が1.0になるように使用した。得られた無溶媒主剤及び無溶媒硬化剤を塗装直前に混合した後、30milドクターブレードを使用して、硬化後の膜厚が200μmとなるよう、被塗物(SPCC鋼板)に塗装し、試験板を得た。
実施例1に関する各種配合、及び以下に記載の評価等について、詳細を表1Aに示す。
ここで、実施例及び比較例において、塗料組成物を塗装した直後の時間をtとし、
塗装後の塗料組成物から形成された塗膜が、JIS K 5600−1−1の規定に基づく指触乾燥状態に至るまで要した時間をtとし、
塗装後の塗料組成物から形成された塗膜が、JIS K 5600−1−1の規定に基づく半硬化乾燥状態に至るまで要した時間をtとし、
塗料組成物を塗装後の塗料組成物から形成された塗膜が、JIS K 5600−1−1の規定に基づく硬化乾燥状態に至るまで要した時間をtとし、
塗膜形成における全工程を通して、第1回目の水噴霧工程の開始時間をtW1とする。
また、時間t、t、t及びtは、
<t≦t<tの関係を有するものとする。
上述のようにして得られた試験板を25℃(外気温)にて養生後、t、tw1、及びtが表1Aに記載の関係となる条件で、スチームクリーナー(SC2、ケルヒャー社製)を用いスチームを吹き付けた。噴霧量は163g/mとし、塗膜とスチーム吐出部との距離(噴霧距離)を100mmとし、スチームの平均粒子径は10μmであった。その後、70分後に塗膜はtに到達した。
ここで、表中に記載のt等の時間は平均値である。
なお、スチームの平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(スプレーテック、Malvern Panalytical社製)を用いて測定した。具体的には、レーザーから300mm離れた場所にスチーム吐出部の先端を設置し、レーザーに対して垂直かつ噴霧液滴群の中心をレーザーが貫通するようにスチームを噴霧し、30秒間噴霧を継続して測定を行った。
また、噴霧量は、スチームクリーナーの水噴霧前後の質量差より算出した。
(塗膜の状態観察)
試験板を25℃にて1日養生し、得られた塗膜の外観を目視で観察した。評価基準は以下の通りである。
○:塗膜に異常が認められない。
×:塗膜に数mm以上の大きさの水滴跡が形成され、正常な連続塗膜が形成されない。
また、得られた塗膜の表面の85度及び60度の光沢値を、光沢計(マイクロ−トリ−グロス、BYK Gardner社製)を用いて測定した。
実施例1における塗料組成物の配合、各種物性、水噴霧工程(第1回目)の条件及び光沢値等に関する結果を、表1Aに示す。
また、60°光沢評価において、測定結果は以下のように分類できる。「◎」が最も光沢を低下(調整)できたことを意味する。
◎:光沢値が30以下
〇:光沢値が30超50以下
△:光沢値が50超70以下
△−:光沢値が70超85以下
×:光沢値が85超
ここで、評価「◎」の下限は、特に限定されない。例えば、評価「◎」は、60度光沢値の値が、1.0以上30以下である。
また、本実施例等においては、「60°光沢評価」について説明したが、同様の傾向が「85°光沢評価」にも当てはまる傾向がある。
(引張試験)
得られた無溶媒主剤及び無溶媒硬化剤を塗装直前に混合した後、30milドクターブレードを使用して、硬化後の膜厚が200μmとなるよう、被塗物(ポリプロピレン板)に塗装し、水噴霧を行った。その後、23℃、72時間の条件で塗料組成物を硬化させた。得られた塗膜の中心部からスケールにて10mm×70mmの塗膜を3個切り出した。切り出したフリーフィルムを引張圧縮試験機(ストログラフVG5−E、東洋精機製作所社製;引張速度:50mm/min、温度:23℃)を用いて引張試験を行い、塗膜の引張強度及び伸び率を算出した。
(塗膜表面観察)
実施例1で得られた塗膜の表面を、デジタルマイクロスコープ(VHX−6000、キーエンス社製)を使用して塗膜表面を観察した。結果を図1に示す。
(実施例2〜実施例37)
表1A〜表1Eに示す条件で塗膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして塗膜形成及び各種評価を行った。ミストの噴霧は、エアスプレーガンW−61(アネスト岩田社製;ノズル口径:1.0mm、吐出:全閉から0.5回転開き、エア圧:2.0MPa、噴霧距離:100mm)を用いて行った。
ここで、実施例40については、水の噴霧を2回行った。ミストの噴霧は、エアスプレーガンW−61(アネスト岩田社製;ノズル口径:1.0mm、吐出:全閉から0.5回転開き、エア圧:2.0MPa、噴霧距離:100mm)を用いて行った。
1回目及び2回目共に同一の条件で噴霧した。
(比較例1〜比較例4)
表2A及び表2Bに示す条件で塗膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして塗膜形成及び各種評価を行った。
表2Aにおける、比較例1及び2は、本開示に係る水噴霧工程を経ることなく、塗膜を形成した。
比較例3は、水の噴霧の代わりに、イソプロピルアルコール(IPA、濃度99.9%)を用いた。
比較例4は、上記手順により得られたアクリル樹脂1を用いて調製した1液型の溶剤系塗料を用いたこと以外は、実施と同様の条件で塗膜を形成し、評価を行った。
Figure 0006694992
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実施例1によると、本開示の塗膜製造方法により製造された塗膜は、塗膜の状態が良好であり、光沢を十分に低減できた。更に、塗膜としての視認性も十分備えていた。
例えば、図1に示すように、塗膜表面には光沢を低減(調整)できる程度の微細な表面凹凸を形成でき、その一方で、塗膜強度にも優れ、塗膜物性を損なうことがなかった。
例えば、実施例5と、比較例2における引張り強度試験からも明らかなように、本開示の塗膜の形成方法により得られた塗膜であれば、高い引張り強度を有する塗膜であり、その上、光沢の低減可能な(調整可能な)塗膜を形成できる。
更に、上記実施例によると、例えば、本開示に係る、
≦tw1≦t (式4) 及び
1/2×t≦tw1≦t (式5)
からなる少なくとも1つの関係を有することで、より効果的に、塗膜の光沢を低減(調整)でき、その上、優れた塗膜物性、例えば、高い塗膜強度、伸び率を有することができる。
このように、他の実施例からも明らかなように、本発明の塗膜の製造方法によると、形成された塗膜は、光沢を低減(調整)できる。更に、本開示の塗膜の製造方法は、溶剤による臭気を大きく低減できる。その上、様々な表面形態の被塗物に対しても、塗膜を形成でき、耐摩耗性に優れ、耐用年数の長い塗膜を形成できる。
一方、比較例1〜2はいずれも、本開示に係る水噴霧工程を行っていないため、塗膜の光沢値が高く、例えば、路面に塗装した場合、車両の運転者は、塗膜が光を乱反射することにより、眩しく感じる等の問題を生じ得る。
また、水の噴霧の代わりに、イソプロピルアルコール(IPA)を用いた場合(比較例3)、塗膜の光沢を低減(調整)することができなかった。
更に、塗料組成物を1液型の溶剤系塗料を用いた場合(比較例4)も、塗膜の光沢を低減することができなかった。
また、塗料組成物の塗装中に、水を噴霧すると、塗膜に数mm以上の大きさの水滴跡が形成され、正常な連続塗膜が形成されなかった。
本開示の塗膜の製造方法であれば、様々な被塗物に対しても、塗膜を形成でき、更に、例えば、平滑面における光沢を抑制できる塗膜を形成できる。その上、本開示は、光沢を低減できる塗膜の製造方法を提供し、加えて、塗装から塗膜の完成に至るまで、溶剤による臭気を低減できる。

Claims (8)

  1. 塗料組成物を被塗物に塗装する塗装工程、及び
    前記塗料組成物の塗装面に水を噴霧する、少なくとも1つの水噴霧工程を含み、
    前記塗料組成物を塗装した直後の時間をtとし、
    前記塗装後の塗料組成物から形成された塗膜が、JIS K 5600−1−1の規定に基づく硬化乾燥状態に至るまで要した時間をtとし、
    前記水噴霧工程のうち最初の水噴霧工程における、第n回目の水噴霧の開始時間をtWn(ただし、nは1以上の整数である)とした場合、
    前記時間t0、及びtWnが、
    <tWn<t (式1)
    の関係を有し、
    前記塗装後の塗料組成物から形成された塗膜が、JIS K 5600−1−1の規定に基づく指触乾燥状態に至るまで要した時間をt とし、
    前記塗装後の塗料組成物から形成された塗膜が、JIS K 5600−1−1の規定に基づく半硬化乾燥状態に至るまで要した時間をt とした場合、
    前記t 、t 、t 及びt は、
    <t <t <t の関係を有し、更に、
    前記水噴霧工程のうち最初の水噴霧工程における、第1回目の前記水噴霧工程の開始時間t W1 が、以下の(式2)、(式3)、(式4)及び(式5)からなる群から選択される少なくとも1つの条件を満たし、
    ≦t w1 <t (式2)
    ≦t w1 <t (式3)
    ≦t w1 <t (式4)
    1/2×t ≦t w1 <t (式5)
    並びに、
    前記塗料組成物は、無溶媒主剤組成物と、無溶媒硬化剤組成物とを含む、
    塗膜の製造方法。
  2. 前記水噴霧工程は、水蒸気及び水のミストからなる群から選択される少なくとも1種を含む、噴霧用の前記水を、前記塗料組成物の塗装面に噴霧することを含み、並びに
    前記水蒸気及び水のミストからなる群から選択される少なくとも1種を含む、噴霧用の前記水を、前記塗装面に対して、5g/m以上、500g/m以下の量で噴霧することを含む、請求項に記載の塗膜の製造方法。
  3. 前記ミストは、0.01μm以上150μm以下の平均粒子径を有する、請求項に記載の塗膜の製造方法。
  4. 前記水噴霧工程は、スチーム洗浄機、スプレーノズルを有する噴霧器、ミスト噴霧装置及び超音波噴霧器からなる群から選択される少なくとも1つの方法により行われる、請求項1からのいずれか1項に記載の塗膜の製造方法。
  5. 前記無溶媒主剤組成物は、塗膜形成樹脂を含み、
    前記塗膜形成樹脂は、ポリオール及び多官能アミンから選択される少なくとも1種を含み、前記無溶媒硬化剤組成物は、脂肪族多官能イソシアネート化合物及び芳香族多官能イソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、
    請求項1からのいずれか1項に記載の塗膜の製造方法。
  6. 前記無溶媒硬化剤組成物に含まれるNCO基の当量と、無溶媒主剤組成物に含まれるOH基の当量及びNH基の当量の合計との比[NCO/(OH+NH)]は、0.5以上2.0以下である、請求項1からのいずれか1項に記載の塗膜の製造方法。
  7. 前記塗料組成物は、路面標示用塗料組成物及び/又は路面遮熱用塗料組成物である、請求項1からのいずれか1項に記載の塗膜の製造方法。
  8. 前記塗装工程は、スプレー塗装、スリットコーター塗装及び流し塗りからなる群から選択される少なくとも1つの方法により行われる、請求項1からのいずれか1項に記載の塗膜の製造方法。
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