JP6364604B1 - 塗料組成物、塗膜、塗膜を備えた物品 - Google Patents
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Abstract
Description
艶消し剤を含む塗料組成物を利用して形成した塗膜を表面に備えた物品は、意匠性が高いことから、近年、消費者に好まれている。よって、艶消し剤を含む塗料組成物は、盛んに検討されるようになってきている。
例えば、特許文献1には、アクリル樹脂で被覆されたシリカ粒子の分散体(シリカ粒子の平均一次粒子径は1.0〜50μm)および架橋剤を含む、艶消し塗料組成物が開示されている。
また、特許文献2には、特定のイソシアネート系化合物と、特定のポリカーボネートジオールとを特定の割合で含み、かつ、平均粒子径が0.1〜20μmの艶消し剤を含む塗料用硬化剤組成物が開示されている。
しかし、本発明者の知見によると、これまでに知られている、艶消し剤等の粒子を含む塗料組成物は、実用上、必ずしも性能が十分ではなかった。
「粒子と、塗膜形成成分とを含有する塗料組成物であって、
前記粒子が、平均粒子径が1〜20μmの第1粒子を含み、
当該塗膜形成成分により厚さ60μmの硬化膜を作成したとき、
(i)当該硬化膜のガラス転移温度が30℃以上であり、かつ、
(ii)当該硬化膜に対し、温度25℃、相対湿度50%の下、下記条件でスクラッチ試験を行ったとき、当該スクラッチ試験直後の傷の長さL1が7.0mm以上であり、当該スクラッチ試験24時間後に残る傷の長さL2が4.0mm以下であり、
前記塗膜形成成分が、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル系樹脂と、ポリカプロラクトンポリオールおよびポリカーボネートポリオールからなる群より選択される少なくともいずれかのポリオールと、イソシアネート化合物とを含む、
塗料組成物。
<条件>
・スクラッチ距離:10mm
・スクラッチ荷重:0〜0.49N
・荷重レート:0.049N/sec
・スクラッチ速度:1mm/sec
・圧子:先端径15μmのダイヤモンド圧子」
本明細書において、数値範囲を説明する際の「a〜b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において、「(メタ)アクリル」との表記は、アクリルおよびメタクリルの両方を包含する概念を意味する。
本実施形態の塗料組成物は、
粒子と、塗膜形成成分とを含有する塗料組成物であって、
粒子が、平均粒子径が1〜20μmの第1粒子を含み、
塗膜形成成分により厚さ60μmの硬化膜を作成したとき、
(i)硬化膜のガラス転移温度が30℃以上であり、かつ、
(ii)硬化膜に対し、温度25℃、相対湿度50%の下、下記条件でスクラッチ試験を行ったとき、スクラッチ試験直後の傷の長さL1が7.0mm以上であり、スクラッチ試験24時間後に残る傷の長さL2が4.0mm以下である。
<条件>
・スクラッチ距離:10mm
・スクラッチ荷重:0〜0.49N(0〜50gf)
・荷重レート:0.049N/sec
・スクラッチ速度:1mm/sec
・圧子:先端径15μmのダイヤモンド圧子
また、塗膜形成成分は、塗料組成物をろ過して粒子を除くことで得てもよい。
そして、この知見に基づき、塗膜形成成分により厚さ60μmの硬化膜を作成したときの硬化膜のガラス転移温度が30℃以上で、L1が7.0mm以上であり、かつ、L2が4.0mm以下であるように制御された塗料組成物を設計し、新たな発明を成した。
硬化膜のガラス転移温度が低い場合は、硬化膜中の樹脂が、熱運動(ブラウン運動)しやすい。そのため、樹脂間に「すき間」が生じやすくなり、そのすき間にガソリンがしみ込んで、硬化膜がガソリンに侵されるものと考えられる。
一方、硬化膜のガラス転移温度が適度に高いと、硬化膜中の樹脂の熱運動が適度に抑制されて、樹脂間に「すき間」ができづらくなる。よって、ガソリンがしみ込みにくくなる。結果、硬化膜のガソリン耐性が向上すると考えられる。
すなわち、本実施形態の塗料組成物を用いて形成した塗膜は、外力に対して変形して外力を吸収するため、塗膜表面から粒子が脱落しづらい。よって、粒子の脱落による外観変化(艶上がり等)を抑えることができる。
また、塗膜が単に柔軟なだけの場合、粒子が塗膜内部に押し込まれたまま戻らず、粒子の脱落が抑えられたとしても外観に影響を及ぼす可能性がある。しかし、本実施形態の塗料組成物を用いて形成した塗膜は、外力を吸収して変形後、その変形が、一定時間経過後に「復元する」性質を有する。このような性質(復元性)により、粒子が塗膜内部に押し込まれたままとはならない。このことによっても、外観の変化を小さくすることができる。
本実施形態では、塗膜形成成分を用いて形成した硬化膜のガラス転移温度が30℃以上であり、30〜80℃であることが好ましく、35〜70℃であることがより好ましく、46〜65℃であることが特に好ましい。このような数値範囲とすることで、ガソリン耐性を一層高めることができ、本実施形態の塗料を車両に適用するにあたり特に望ましい。
なお、硬化膜のガラス転移温度の測定は、動的粘弾性測定により行うことができる。
本実施形態において、L1は、好ましくは7.0〜10mm、より好ましくは7.5〜9.5mmである。また、L2は、好ましくは0〜4.0mm、より好ましくは0〜3.8mm、さらに好ましくは0〜3.5mmである。
L3やL4が特定の数値範囲であることにより、より一層、外観変化が起こりにくくなることが期待できる。また、万一、外力に対する塗膜の復元が不十分な場合であっても、加熱により塗膜が十分に復元し、艶上がり等の外観変化が「修復」されることが期待される。
より具体的には、試験片(硬化膜)を1mm/secの一定速度で一方向に10mm動かす間に、先端径15μmのダイヤモンド圧子を、荷重0から0.049N/secの一定レートで0.49Nまで増加させながら試験片(硬化膜)に接触させるものである。
このような試験は、後述の実施例に記載の装置など、市販の装置を用いて行うことができる。
本実施形態では、塗膜形成成分を用いて形成した硬化膜の架橋点間分子量(g/mol)が、300〜700であることが好ましく、400〜700であることがより好ましい。この範囲とすることで、より柔軟で、外力に起因する外観変化が小さい塗膜を得られることが期待できる。
Mc=293d/{log(Eh’/3)−7.0}
本実施形態の塗料組成物は、平均粒子径が1〜20μmの第1粒子を含む。
この第1粒子は、特に限定されず、各種有機粒子、無機粒子、金属粒子等であってよい。また、第1粒子は、各種処理剤による表面処理、被覆処理、分散剤による分散処理等がされていてもよいし、これらの処理がされていなくてもよい。
第1粒子は、1種のみを用いてもよいし、複数種を併用してもよい。複数種の併用には、異なる素材のもの同士を併用するだけでなく、同じ素材であって平均粒子径が異なるものを併用する場合も含まれる。
第2粒子子の平均粒子径は、好ましくは0.01〜0.9μmであり、より好ましくは0.1〜0.9μmである。
本実施形態の塗料組成物は、2種以上の第2粒子を含んでいてもよい。
なお、塗料組成物中が、第1粒子と第2粒子の両方を含む場合、粒子の全量に対する第1粒子の割合は、25〜99質量%であることが好ましく、30〜98質量%であることが好ましい。この割合とすることで、第1粒子の効果(艶消し)を十分得ることができると考えられる。
本実施形態の塗料組成物は、樹脂を含むことが好ましい。なお、樹脂は、前述の「塗膜形成成分」に包含される。
樹脂は、塗膜の形成、塗膜の密着性向上等のために用いられる。樹脂は特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂などを挙げることができる。
また、樹脂がコポリマーである場合、その態様は、ランダム、ブロック、グラフト等のいずれであってもよい。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸エステルのモノマーに由来する構造単位を含む樹脂(高分子)を意味する。すなわち、(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル系ではないモノマーに由来する構造単位を一部含んでいてもよい。ただし、(メタ)アクリル構造に由来する効果を十二分に得る観点では、(メタ)アクリル樹脂は、好ましくは、全構造単位の50質量%以上(より好ましくは、全構造単位の80質量%以上)が、(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸エステルのモノマーに由来する構造単位である。
他のエチレン性不飽和モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系モノマー、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸モノマーなどが挙げられる。
なお、これらの部分構造は、樹脂の側鎖に存在してもよいし、樹脂の主鎖に存在してもよいし、その両方であってもよい。樹脂が(メタ)アクリル樹脂である場合には、これらの部分構造は、樹脂の側鎖に存在することが好ましい。
Xは、直鎖または分岐のアルキレン基である。このアルキレン基の炭素数は、好ましくは3〜7、より好ましくは4〜6である。
X’は、直鎖または分岐のアルキレン基である。このアルキレン基の炭素数は、好ましくは3〜7、より好ましくは4〜6である。
nは、1以上の整数である。好ましくは1〜10、より好ましくは2〜8である。
この数値範囲とすることで、後述のイソシアネート化合物と樹脂とが適度に反応し、架橋構造が適切に制御される。そのため、塗膜の柔軟性・弾力性を維持しつつ塗膜のガラス転移温度を高くすることができる。よって、塗膜に外力が加わった場合の外観変化の抑制と、ガソリン耐性とのより高度な両立が図れると考えられる。
なお、水酸基価とは、試料1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数のことである。
(メタ)アクリル樹脂の構成単位となる(メタ)アクリル系モノマーとしては、一般式CH2=CR−COO−R’で表されるものが好ましい。ここで、Rは水素原子またはメチル基、R’は水素原子または一価の有機基である。R’の一価の有機基としては、好ましくはアルキル基、単環または多環のシクロアルキル基、アリール基、またはアラルキル基であり、これら基はさらに置換基を有していてもよい。
この具体例としては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、特に、R’が炭素数1〜3のアルキル基であるもの(メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等)は、塗膜の適度な柔軟性に寄与すると考えられる。よって、外力に起因する塗膜の外観変化の低減と、ガソリン耐性との高度な両立の観点から望ましい。
この具体例としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
樹脂が、このモノマーに由来する構造単位を含む場合、その含有量は、樹脂の全構造単位に対して、好ましくは1〜25質量%、より好ましくは3〜20質量%、さらに好ましくは3〜17質量%である。
この具体例としては、株式会社ダイセルの商品名「プラクセルF」シリーズや、エチレンオキシド付加モル数3〜20のメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、等が挙げられる。
具体的には、R’が含むポリカプロラクトン等の柔軟な化学骨格が塗膜の柔軟性・弾力性の向上に寄与する一方、(メタ)アクリルの主鎖骨格により塗膜のガラス転移温度が小さくなりすぎることがない。これらが相まって、柔軟性・弾力性がありつつも、ガラス転移温度がある程度高い樹脂が得られる。結果として、塗膜に外力が加わった場合の外観変化の抑制と、ガソリン耐性とのより高度な両立が図れると考えられる。
このモノマーに由来する構造単位の含有量を適切に調整することで、粒子に起因する外観変化が抑えられる効果と、ガソリン耐性とを一層高度に両立させることが可能になると考えられる。
この具体例としては、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
樹脂が、このモノマーに由来する構造単位を含む場合、その含有量は、樹脂の全構造単位に対して、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%である。
重合開始剤の配合量は、特に限定されないが、重合するモノマーの混合液全体を100質量部とした場合に、0.001〜10質量部とすることが好ましい。
この下限値以上とすることで、塗膜の基板への密着性を良好にできる。また、この上限値以下とすることで、塗膜中に気泡が発生することなどが抑制され、良好な塗膜が得られる。
(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、重合反応時間、反応温度、重合開始剤の使用量などの条件により調節することができる。
なお、数平均分子量Mnおよび重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレン換算で測定することができる。
なお、樹脂がコポリマーである場合、そのガラス転移温度は、種々の方法で求めることが可能であるが、例えば以下のフォックス(Fox)の式に基づいて求めることができる。
1/Tg=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+(W3/Tg3)+・・・+(Wn/Tgn)
〔式中、Tgは、樹脂のガラス転移温度(K)、W1、W2、W3・・・Wnは、それぞれのモノマーの質量分率、Tg1、Tg2、Tg3・・・Tgnは、それぞれ各モノマーの質量分率に対応するモノマーからなる単独重合体のガラス転移温度(K)を示す。〕
本実施形態の塗料組成物は、ポリオール、すなわち、1分子中にヒドロキシ基を2以上有する化合物を含むことが好ましい。ポリオールは、後述のイソシアネート化合物と反応することができる。そして、塗膜を硬化させることができる。なお、ポリオールは、上述の「塗膜形成成分」に包含されるものである。
ポリオールが1分子中に有するヒドロキシ基の個数は、通常2以上、好ましくは2〜6、より好ましくは2〜4である。
Rは、2価の有機基を表す。2価の有機基としては、例えば、−CH2−や−C2H4−などの直鎖アルキレン基、−CH2−C(CH3)2−CH2−などの分岐アルキレン基、−C2H4−O−C2H4−などのエーテル含有基、などが挙げられる。
Xは、それぞれ独立に、直鎖または分岐のアルキレン基である。このアルキレン基の炭素数は、好ましくは3〜7、より好ましくは4〜6である。
mおよびnは、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。mおよびnは、それぞれ、2〜20の整数であることが好ましい。また、mとnの和が4〜35であることが好ましい。
Rは、3価の有機基を表す。3価の有機基としては、例えば、直鎖または分岐アルカンから水素原子を3つ取り除いた構造などが挙げられる。
Xは、それぞれ独立に、直鎖または分岐のアルキレン基である。このアルキレン基の炭素数は、好ましくは3〜7、より好ましくは4〜6である。
l、mおよびnは、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。l、mおよびnは、それぞれ、2〜20の整数であることが好ましい。また、l、mおよびnの和が3〜40であることが好ましい。
Rは、4価の有機基を表す。4価の有機基としては、例えば、直鎖または分岐アルカンから水素原子を4つ取り除いた構造などが挙げられる。
Xは、それぞれ独立に、直鎖または分岐のアルキレン基である。このアルキレン基の炭素数は、好ましくは3〜7、より好ましくは4〜6である。
k、l、mおよびnは、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。k、l、mおよびnは、それぞれ、2〜20の整数であることが好ましい。また、k、l、mおよびnの和が4〜50であることが好ましい。
ポリカーボネートポリオールは、1種以上のポリオール原料(多価アルコール)と、炭酸エステルやホスゲンとを反応させることにより得ることができる。
ポリオール原料としては、特に制限されないが、例えば、脂肪族ポリオール、脂環構造を有するポリオール、芳香族ポリオール等が挙げられる。本実施形態においては、塗膜の柔軟性の観点から、脂環構脂を有しない脂肪族ポリオールが好ましい。
炭酸エステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の脂肪族炭酸エステル、ジフェニルカーボネート等の芳香族炭酸エステル、エチレンカーボネート等の環状炭酸エステルが挙げられる。中でも、入手や製造のしやすさから、脂肪族炭酸エステルが好ましく、ジメチルカーボネートが特に好ましい。
ポリカーボネートポリオールの市販品としては、例えば、旭化成株式会社製のデュラノール(商品名)シリーズ等が利用可能である。
ポリエステルポリオールは、1種以上のポリオール原料(多価アルコール)と、ポリカルボン酸又はそのエステル、無水物、ハライド等のエステル形成性化合物との反応により得ることができる。
ポリオール原料は特に制限されず、上記のポリカーボネートポリオールの原料と同様のポリオール原料を挙げることができる。
ポリカルボン酸又はそのエステル、無水物、ハライド等のエステル形成性化合物についても特に制限されず、脂肪族ジカルボン酸化合物、芳香族ジカルボン酸化合物、脂環式ジカルボン酸化合物、トリカルボン酸化合物等の多価カルボン酸、これらのポリカルボン酸の酸無水物、ハライド、低級エステル化合物等を挙げることができる。
具体的な化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシド、エチレンオキシドとブチレンオキシドとのランダム共重合体やブロック共重合体等が挙げられる。
ポリオールの水酸基価は、好ましくは50〜300mgKOH/g、より好ましくは100〜250mgKOH/gである。適度な水酸基の量とすることで、下記のイソシアネート化合物との反応による架橋構造が制御され、塗膜の柔軟性・弾力性等を一層高めることが期待できる。
本実施形態の塗料組成物は、イソシアネート化合物を含むことが好ましい。
イソシアネート化合物は、塗料組成物が前述の樹脂を含み、その樹脂がヒドロキシ基を含む場合にはその樹脂のヒドロキシ基と反応することができる。また、塗料組成物が前述のポリオールを含む場合には、ポリオールのヒドロキシ基と反応することができる。
イソシアネート化合物は、上述の「塗膜形成成分」に包含されるものである。
本実施形態の塗料組成物は、必要に応じて、他の成分を更に含んでもよい。例えば、紫外線硬化樹脂、光開始剤、硬化促進剤(硬化触媒等)、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤などを含んでもよい。なお、これらは、前述の「塗膜形成成分」に包含される。
本実施形態の塗料組成物は、典型的には、各成分を溶剤に溶解または分散させた状態で用いる。
溶剤は、一態様として有機溶剤である。有機溶剤の例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。
本実施形態の塗料組成物は、各成分の量比を適切に調整することで、塗膜の柔軟性・弾力性を一層向上させ、外観変化の抑制や、外力による変形の回復の効果を一層得ることが期待できる。
特に本実施形態においては、組成物中のヒドロキシ基の量と、イソシアネート基の量比を適切に調整することが、最終的に得られる塗膜の物性(柔軟性、弾力性)をより良化させるために重要である。
具体的には、樹脂およびポリオールが有するヒドロキシ基に対する、イソシアネート化合物が含有するイソシアネート基(ブロックイソシアネート基を含む)のモル量(すなわち、当量比)は、好ましくは0.5〜1.5、より好ましくは0.7〜1.3、さらに好ましくは0.8〜1.2である。
本実施形態の塗料組成物は、1液系、すなわち、溶剤以外の全成分が、溶剤に実質的に均一に混合(溶解または分散)された状態であってよい。
イソシアネート化合物がブロックイソシアネートである場合には、1液系が好ましい。
例えば、本実施形態の塗料組成物は、(1)樹脂および/またはポリオールを含み、イソシアネート化合物を含まないA液と、(2)イソシアネート化合物を含み、樹脂およびポリオールを含まないB液とから構成され、A液とB液は別々の容器で保存され、使用(塗工)直前にA液とB液を混合する形態であってもよい。この場合、粒子は、A液に含まれていても、B液に含まれていても、あるいはその他の容器で準備されていてもよい。
特に、イソシアネート化合物が、ブロックイソシアネートではない場合(すなわち、系中でイソシアネート基が−NCOの形で存在している場合)には、塗料組成物は2液系であることが望ましい。
本実施形態の塗膜は、典型的には、上記の各成分を溶媒に溶解または分散させた塗料組成物(2液系の場合は、2液を混合したもの)を、対象物(被塗物)の一部または全部に塗工することで得ることができる。
塗工方法は特に限定されず、例えばエアレススプレー法、エアスプレー法、静電塗装法、ロールコーター法、フローコーター法、スピンコート法、浸漬法などが挙げられる。
塗工後、20〜160℃で10〜120分間、好ましくは60〜120℃で20〜90分間硬化し、そして常温で放冷することで、最終的な塗膜を得ることができる。なお、硬化の温度や時間は、対象物(被塗物)の耐熱性などを踏まえて適宜調整してよい。
・携帯電話、スマートフォン、パソコン、パソコン周辺機器(キーボード、プリンタ、外付けディスク等)、腕時計、オーディオ機器、各種OA機器等の電気・電子機器。
・冷蔵庫、掃除機、電子レンジ等の家電製品。
・階段、床、机、椅子、タンス、その他の家具等の木工製品。
・自動車やオートバイ等の車両またはその部品:より具体的には、車両のボディ、内装品(メーターパネル、ダッシュボード、ハンドル等)、バンパー、スポイラー、ドアノブ、ヘッドライト、テールライト、アルミホイール、オートバイのガソリンタンク等。
なお、対象物(被塗物)には、塗工前に、脱脂や表面処理等を施してもよい。さらに、密着性向上等のために下塗り等を行ってもよい。
さらに、本実施形態においては、合成樹脂製のフィルムに塗膜を形成後、適当な転写プロセスにより、フィルム状に形成された塗膜を物品に転写後、フィルムを剥がして、塗膜を有する物品を得てもよい。
後述の実施例に記載の測定方法を参照されたい。
本発明の参考形態を以下に付記する。
1.
粒子と、塗膜形成成分とを含有する塗料組成物であって、
前記粒子が、平均粒子径が1〜20μmの第1粒子を含み、
当該塗膜形成成分により厚さ60μmの硬化膜を作成したとき、
(i)当該硬化膜のガラス転移温度が30℃以上であり、かつ、
(ii)当該硬化膜に対し、温度25℃、相対湿度50%の下、下記条件でスクラッチ試験を行ったとき、当該スクラッチ試験直後の傷の長さL1が7.0mm以上であり、当該スクラッチ試験24時間後に残る傷の長さL2が4.0mm以下である
塗料組成物。
<条件>
・スクラッチ距離:10mm
・スクラッチ荷重:0〜0.49N
・荷重レート:0.049N/sec
・スクラッチ速度:1mm/sec
・圧子:先端径15μmのダイヤモンド圧子
2.
1.に記載の塗料組成物であって、
前記塗膜形成成分が、樹脂を含む塗料組成物。
3.
2.に記載の塗料組成物であって、
前記樹脂が、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクタム、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリエーテルからなる群より選択される少なくともいずれかの部分構造を有する樹脂を含む塗料組成物。
4.
2.または3.に記載の塗料組成物であって、
前記樹脂が、(メタ)アクリル系樹脂を含む塗料組成物。
5.
1.〜4.のいずれか1つに記載の塗料組成物であって、
前記塗膜形成成分が、ポリオールと、イソシアネート化合物とを含む塗料組成物。
6.
5.に記載の塗料組成物であって、
前記ポリオールが、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールからなる群より選択される少なくともいずれかのポリオールを含む塗料組成物。
7.
1.〜6.のいずれか1つに記載の塗料組成物であって、
前記塗料組成物を硬化させて得られる、厚さ50μmの塗膜の60度鏡面光沢度が、70以下である塗料組成物。
8.
1.〜7.のいずれか1つに記載の塗料組成物により形成された塗膜。
9.
8.の塗膜を備えた物品。
10.
8.の塗膜を備えた車両。
撹拌基、温度計、コンデンサーおよび窒素ガス同入管を備えた500ml形のフラスコにメチルイソブチルケトン100質量部を仕込み、110℃まで昇温した。
これとは別に、メチルメタクリレート(MMA)49質量部、n−ブチルメタクリレート(BMA)30質量部、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(株式会社ダイセル製 プラクセルFA2D)5質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)15質量部、メタクリル酸(MAA)1質量部、および、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(和光純薬工業株式会社製、V−40)3質量部を混合した。この混合モノマーを2時間かけて、上記の500ml形のフラスコに滴下し、5時間反応させた。加熱を止めて室温まで冷却し、(メタ)アクリル系の樹脂(A−1)を含む樹脂溶液(固形分比率:約50質量%)を得た。
後掲の表1、表2および表3に記載の配合比(数値は、質量部である)に従ってモノマーを準備し、合成例1と同様の方法で、(メタ)アクリル系の樹脂(A−2)〜(A−13)を含む樹脂組成物(固形分比率:約50質量%)を得た。各樹脂のガラス転移温度(計算値)、水酸基価、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および多分散度(Mw/Mn)は、各表に示すとおりであった。
プラクセルFA2D:株式会社ダイセル製、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(カプロラクトン2モル付加物、分子量344、水酸基価163mgKOH/g)
プラクセルFA5:株式会社ダイセル製、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(カプロラクトン5モル付加物、分子量689、水酸基価74〜84mgKOH/g)
プラクセルFM2:株式会社ダイセル製、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルメタクリレート(カプロラクトン2モル付加物、分子量358、水酸基価150〜160mgKOH/g)
JIS K 0070「化学製品の酸価,けん化価,エステル価,よう素価,水酸基価及び不けん化物の試験方法」の、「7.1 中和滴定法」に規定された方法に準じて測定および算出した。
なお、水酸基価の算出に際しては、酸価の値も必要である。酸価の値についても、同JIS規格の「3.1 中和滴定法」に規定された方法に準じて測定および算出した。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定、算出した。用いた装置、条件等は以下の通りである。
使用機器:HLC8220GPC(株式会社東ソー製)
使用カラム:TSKgel SuperHZM−M、TSKgel GMHXL−H、TSKgel G2500HXL、TSKgel G5000HXL(株式会社東ソー製)
カラム温度:40℃
標準物質:TSKgel 標準ポリスチレンA1000、A2500、A5000、F1、F2、F4、F10(株式会社東ソー製)
検出器:RI(示差屈折)検出器
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1ml/min
上記で得た樹脂、および、表1、表2および表3に示すその他の材料(ポリオール、イソシアネート化合物、粒子)を、各表に示す量(単位:質量部)で混合した。そして、酢酸ブチルで固形分濃度を調整し、固形分30質量%の塗料組成物を調製した。
なお、各表において、樹脂の量は、樹脂溶液(固形分比率:約50質量%)としての量ではなく、樹脂溶液中に含まれる樹脂(固形分)の量を表す。
また、各表において、「樹脂とポリオールの水酸基価」とあるのは、樹脂とポリオールを、各実施例で示された量で均一に混合したときの混合物の水酸基価の測定値のことである。
ポリカプロラクトンテトラオール:株式会社ダイセル製、プラクセル410D(分子量1000、水酸基価216〜232mgKOH/g)
ポリカプロラクトントリオール:株式会社ダイセル製、プラクセル308(分子量850、水酸基価190〜200mgKOH/g)
ポリカプロラクトンジオール:株式会社ダイセル製、プラクセル208(分子量830、水酸基価130〜140mgKOH/g)
カーボネートジオール:旭化成株式会社製、デュラノールT5650J(分子量800、水酸基価130〜150mgKOH/g)
TPA−100:旭化成株式会社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートタイプ(イソシアネート基含有率23質量%、固形分100質量%)
サイロホービック100:富士シリシア化学株式会社製のシリカビーズ、平均粒子径:2.7μm
サイロホービック200:富士シリシア化学株式会社製のシリカビーズ、平均粒子径:4μm
サイリシア450:富士シリシア化学株式会社製のシリカビーズ、平均粒子径:8μm
アートパールC−800:根上工業株式会社製の架橋ウレタンビーズ、平均粒子径:6μm
カーボンブラック:コロンビアカーボン社製、品番:RAVEN 5000 ULTRA II、平均粒子径:0.25μm
酸化チタン:石原産業株式会社製、品番:CR−95、平均粒子径:0.25μm
粒子を含まない以外は、各実施例、比較例または参考例と同様の組成物を調製した。これら組成物を、それぞれ、厚さ100μmの易接着ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製、コスモシャインA4300)にスプレー塗装し、80℃、60分の条件で硬化させ、その後室温で放冷した。これにより、塗膜形成成分による硬化膜(膜厚60μm、粒子を含まない)を得た。
25℃、相対湿度50%の雰囲気下、株式会社井本製作所製の連続荷重引掻き試験機(型番:900A)の試料台に、上記で得た膜厚60μmの硬化膜(粒子を含まない)を置いた。そして、以下の条件で塗面を引っ掻いてスクラッチ試験を行った。この試験直後の傷の長さL1(mm)、および、スクラッチ試験を行った硬化膜を、25℃、相対湿度50%の雰囲気下に24時間静置した後に残る傷の長さL2(mm)を測定した。また、スクラッチ試験後、25℃、相対湿度50%の雰囲気下に24時間置いた試験板を、60℃、相対湿度50%の雰囲気下に10分間置いたときの傷の長さL3と、スクラッチ試験後、25℃、相対湿度50%の雰囲気下に24時間置いた試験板を、80℃、相対湿度50%の雰囲気下に10分間置いたときの傷の長さL4も測定した。
(条件)
・スクラッチ距離:10mm
・スクラッチ荷重:0〜0.49N(0〜50gf)
・荷重レート:0.049N/sec
・スクラッチ速度:1mm/sec
・圧子:先端径15μmのダイヤモンド圧子
上記で得た膜厚60μmの硬化膜(粒子を含まない)に対して、以下条件で動的粘弾性測定を行った。
装置:動的粘弾性測定装置 RSA3(TA Instruments社製)
測定モード:非共振強制振動法
昇温速度:5.0℃/min
測定間隔:12/min
周波数:1.0Hz
温度範囲:−50〜180℃
この測定におけるtanδのピークトップの温度を、硬化膜のガラス転移温度とした。また、前述のニールセン式に基づき架橋点間分子量Mc(g/mol)を求めた。
各実施例、比較例および参考例の塗料組成物を、厚さ1.0mm、辺の長さ100mm×100mmの正方形状の黒色ABS樹脂板(エンジニアリングテストサービス社製)にエアスプレーで塗装し、80℃で60分硬化させ、常温(25℃)にて24時間静置し、塗膜の厚さが50μmの試験板を得た。このようにして得られた試験板を使い、各種物性試験を行った。
得られた試験板の60°光沢を、BYK−Gardner GmbH社製の光沢計「マイクロ−グロス」で測定した。この光沢値が低いほど、つや消し効果が高いことを示す。
消しゴム試験機(ソニー株式会社製)を用い、試験板上に、ジーンズ生地を荷重1000gで30回/分、ストローク20mmにて往復させた。耐摩耗試験後の試験板の60°光沢(60°グロス)を、上記<初期光沢>と同様の方法で測定した。そして、艶上がり率(%)を下記の式を用いて算出した。この艶上がり率(%)が低いほど、外力による外観の影響が少ない(艶上がりのしにくい)塗料組成物であることを示す。
艶上がり率(%)={(試験後60°光沢−初期60°光沢)/初期60°光沢}×100
JIS D 0202の耐ガソリン試験に準じて評価を行った。
試験板を、市販のガソリンに、液面下120mmで5時間浸漬した。その後、1時間、大気中に放置し、試験板の塗膜の状態を下記の基準で目視評価した。評価数値が大きいほど耐ガソリン性が良好である。
4:異常なし
3:僅かに膨れ、しわ発生
2:膨れ、しわ発生
1:剥がれ、割れ発生
また、L1が7.0mm未満であるか、またはL2が4.0mm超である例では、大きく艶上がりしてしまう結果となった(比較例4〜7)。
Claims (6)
- 粒子と、塗膜形成成分とを含有する塗料組成物であって、
前記粒子が、平均粒子径が1〜20μmの第1粒子を含み、
当該塗膜形成成分により厚さ60μmの硬化膜を作成したとき、
(i)当該硬化膜のガラス転移温度が30℃以上であり、かつ、
(ii)当該硬化膜に対し、温度25℃、相対湿度50%の下、下記条件でスクラッチ試験を行ったとき、当該スクラッチ試験直後の傷の長さL1が7.0mm以上であり、当該スクラッチ試験24時間後に残る傷の長さL2が4.0mm以下であり、
前記塗膜形成成分が、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル系樹脂と、ポリカプロラクトンポリオールおよびポリカーボネートポリオールからなる群より選択される少なくともいずれかのポリオールと、イソシアネート化合物とを含む、
塗料組成物。
<条件>
・スクラッチ距離:10mm
・スクラッチ荷重:0〜0.49N
・荷重レート:0.049N/sec
・スクラッチ速度:1mm/sec
・圧子:先端径15μmのダイヤモンド圧子 - 請求項1に記載の塗料組成物であって、
前記(メタ)アクリル系樹脂が、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクタム、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリエーテルからなる群より選択される少なくともいずれかの部分構造を有する樹脂を含む塗料組成物。 - 請求項1または2に記載の塗料組成物であって、
前記塗料組成物を硬化させて得られる、厚さ50μmの塗膜の60度鏡面光沢度が、70以下である塗料組成物。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗料組成物により形成された塗膜。
- 請求項4の塗膜を備えた物品。
- 請求項4の塗膜を備えた車両。
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