JP2021011426A - 金属複合酸化物及びその製造方法 - Google Patents

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Takayuki Abe
能之 阿部
佐藤 巌
Iwao Sato
巌 佐藤
島川 祐一
Yuichi Shimakawa
祐一 島川
大介 菅
Daisuke Suga
大介 菅
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Abstract

【課題】Aサイト元素としてストロンチウム(Sr)を含み、Bサイト元素として金属元素(M)を含むペロブスカイト又はペロブスカイト類似の結晶構造を有する金属複合酸化物であっても、微細且つ異相の少ない化合物を得ることができる製造方法を提供すること。【解決手段】Aサイト元素としてストロンチウム(Sr)を含み、Bサイト元素として金属元素(M)を含む、ペロブスカイト又はペロブスカイト類似の結晶構造を有する金属複合酸化物の製造方法であって、以下の工程:前記金属複合酸化物の構成成分及び溶媒を含む原料溶液を調整する工程、前記原料溶液を凍結固化し、得られた固化物が凍結した状態のまま溶媒を昇華及び除去して金属塩混合物とする工程、及び前記金属塩混合物を加熱して金属複合酸化物とする工程、を含む、方法。【選択図】図1

Description

本発明は、金属複合酸化物及びその製造方法に関する。
ペロブスカイト又はペロブスカイト類似の結晶構造を有する酸化物は、その多くが特有の電気的又は磁気特性を有し、電子部品を始めとする様々な用途に用いられている。例えば、ペロブスカイト型酸化物及び/又はペロブスカイト類似のルドルスデン−ポッパー型酸化物構造を有する酸化物に関する技術を開示する文献として、以下のものが挙げられる。
特許文献1(特開2009−263225号公報)には、一般式:(M x1 X2(m+1)(Ti(1−y−z) 3m+1−δの化合物(Mはアルカリ土類金属、Mは希土類金属、Mは所定の遷移金属、Mは所定の遷移金属、希土類金属、卑金属)が開示され、該化合物がペロブスカイトから派生したルドルスデン−ポッパー構造として知られている旨、電気化学デバイスの電極に用いることができる旨が記載されている(特許文献1の請求項3、[0040]及び[0048])。
特許文献2(特開2015−198065号公報)には、ルドルスデン−ポッパー型層状ペロブスカイト酸化物を有する正極と、加湿還元処理がなされたルドルスデン−ポッパー型層状ペロブスカイト酸化物を有する固体電解質と、を備えた金属−空気二次電池が開示され、正極での反応過電圧を顕著に低減できる旨が記載されている(特許文献2の請求項1〜5及び[0012])。
特許文献3(特開2014−047307号公報)には、ルドルスデン−ポッパー型ペロブスカイト構造を有する酸化物結晶に希土類イオンが含有されて成るフォトクロミック材料が開示され、ルドルスデン−ポッパー型ペロブスカイト構造を有する酸化物結晶は、フォトクロミック現象を発現するために適切である旨が記載されている(特許文献3の請求項1〜5及び[0014])。さらに、特許文献4(特開平10−114570号公報)には、セラミックス原料を融液中または溶液中で加熱する、ルドルスデン−ポッパー型層状ペロブスカイト構造を有するセラミックス粒子よりなる形状異方性セラミックス粉末の製造方法が開示されている(特許文献4の請求項2)。
このように、ペロブスカイト又はペロブスカイト類似の結晶構造を有する酸化物は、各種用途に用いられている。このうち、特にストロンチウム(Sr)及び遷移金属(Me)を含む酸化物は、触媒機能を発揮するものが多い。触媒はクリーンエネルギー技術において核となる材料である。そのため、ストロンチウム(Sr)及び遷移金属(Me)を含むペロブスカイト又はペロブスカイト類似の結晶構造を有する酸化物は、燃料電池、金属−空気電池及び水分解などの分野において、酸化還元反応(ORR)や酸素発生反応(OER)に寄与する触媒材料として期待がもたれている。
ところで、触媒は、その表面積が大きいほど活性点が多く、優れた触媒性能を発揮する。したがって、触媒材料は、その比表面積が大きなこと、すなわち微細であることが望ましい。また、優れた触媒性能を発揮させるために、触媒材料はできるだけ異相を含まないことが望ましい。
比表面積の大きな金属酸化物触媒を合成する手法として、錯体重合法が多用されている。錯体重合法では、クエン酸などのオキシカルボン酸を含むグリコール溶液中に金属塩を溶解させて、金属オキシカルボン酸錯体を形成させる。次に溶液を加熱し、脱水エステル反応により高分子ゲルとする。最後に、このゲルを焼成及び熱分解して、粉末材料とする。この手法では、金属イオンの均一性が出発溶液中で達成され、この均一性が高分子ゲルにおいても維持される。そのため、焼成温度(熱分解温度)を低温化でき、微細で均一組成の粉末材料を得ることができるとされている。
このような技術を開示する文献として、例えば、特許文献5(特開2009−214033号公報)が挙げられる。特許文献5には、一般式:ALaTi15で表される層状ペロブスカイト化合物よりなる触媒物質の表面に助触媒が担持されてなる構造を有する光触媒に関して、錯体重合法、すなわち合成すべき層状ペロブスカイト化合物に応じた原料物質と、エタノール等の溶媒を混合した後、加熱反応させ、得られた反応生成物(触媒物質前駆体)を焼成処理することにより、層状ペロブスカイト化合物よりなる触媒物質を得ることができる旨が記載されている(特許文献5の請求項1〜5及び[0025])。
特開2009−263225号公報 特開2015−198065号公報 特開2014−047307号公報 特開平10−114570号公報 特開2009−214033号公報
ストロンチウム(Sr)及び遷移金属(Me)を含むペロブスカイト又はペロブスカイト類似の結晶構造を有する酸化物は触媒材料として期待がもたれている。また、金属酸化物触媒の合成には錯体重合法が多用されている。しかしながら、金属酸化物がストロンチウム(Sr)のようなイオン半径の大きい陽イオンを含む場合、錯体重合法であっても、均一組成の化合物を合成することは困難である。イオン半径の大きい陽イオンが含まれる錯体は、これを長時間安定に維持することが困難であるからである。そのため、溶媒乾燥中に陽イオンが析出し、組成の均一性が損なわれてしまう。
特に、ペロブスカイト類似の結晶構造であるルドルスデン−ポッパー型化合物の合成を目的とする場合、わずかな組成ずれがあっても、結晶対称性や結晶構造の異なる化合物が生成してしまう。そのため、原子レベルで均一な状態を維持したままゲルを熱分解させて、単相のルドルスデン−ポッパー型化合物を合成することは困難である。一方で、組成の均一化を図るため、錯体重合法でゲルを熱分解させて化合物とし、その後、粉砕及び焼成を繰り返すことが考えられる。しかしながら、錯体重合法を用いた場合には、粉砕及び焼成を繰り返しても、微細な単相化合物は得られない。
本発明者らは、Aサイト元素としてストロンチウム(Sr)を含み、Bサイト元素として金属元素(M)を含むペロブスカイト又はペロブスカイト類似の結晶構造を有する金属複合酸化物の合成を鋭意検討し、その結果、金属複合酸化物の構成成分及び溶媒を含む原料溶液を凍結固化して固化物とし、この固化物が凍結した状態のまま溶媒を昇華して金属塩混合物とし、得られた金属塩混合物を加熱することで、微細且つ異相の少ない化合物を合成できるとの知見を得て、本発明を完成させた。
したがって、本発明は、Aサイト元素としてストロンチウム(Sr)を含み、Bサイト元素として金属(M)を含むペロブスカイト又はペロブスカイト類似の結晶構造を有する金属複合酸化物であっても、微細且つ異相の少ない化合物を得ることができる製造方法の提供を課題とする。
本発明は、下記(1)〜(11)の態様を包含する。なお、本明細書において、「〜」なる表現は、その両端の数値を含む、すなわち、「X〜Y」は「X以上Y以下」と同義である。
(1)Aサイト元素としてストロンチウム(Sr)を含み、Bサイト元素として金属元素(M)を含む、ペロブスカイト又はペロブスカイト類似の結晶構造を有する金属複合酸化物の製造方法であって、以下の工程:
前記金属複合酸化物の構成成分及び溶媒を含む原料溶液を調整する工程、
前記原料溶液を凍結固化し、得られた固化物が凍結した状態のまま溶媒を昇華及び除去して金属塩混合物とする工程、及び
前記金属塩混合物を加熱して金属複合酸化物とする工程、
を含む、方法。
(2)前記金属複合酸化物が、一般式:An+13n+1(ただし、0<n≦4)で表されるルドルスデン−ポッパー型化合物である、上記(1)の方法。
(3)前記金属元素(M)が、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、錫(Sn)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)及びマグネシウム(Mg)から成る群から選択される1種以上である、上記(1)又は(2)の方法。
(4)前記金属複合酸化物が、Aサイト元素としてストロンチウム(Sr)及び希土類金属(Re)を含み、Bサイト元素として金属元素(M)を含むルドルスデン−ポッパー型化合物である、上記(1)の方法。
(5)前記金属複合酸化物が、一般式Re2−xSrMO4±δ(ただし、0.5≦x≦1.5、0≦δ≦0.25)で表される組成を有する、上記(4)の方法。
(6)前記希土類金属(Re)が、ランタン(La)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、イットリウム(Y)及びエルビウム(Er)から成る群から選択される1種以上である、上記(4)又は(5)の方法。
(7)前記金属元素(M)が、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、錫(Sn)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、クロム(Cr)及び銅(Cu)から成る群から選択される1種以上である、上記(4)〜(6)のいずれかの方法。
(8)前記金属複合酸化物がBET比表面積0.4m/g以上の粉末である、上記(4)〜(7)のいずれかの方法。
(9)前記原料溶液が、構成成分の硝酸塩、酢酸塩、塩化物及び硫酸塩から成る群から選択される1種以上の水溶液である、上記(1)〜(8)のいずれかの方法。
(10)前記原料溶液が有機物を含まない、上記(1)〜(9)のいずれかの方法。
(11)Aサイト元素としてストロンチウム(Sr)を含み、Bサイト元素として金属元素(M)を含む、ペロブスカイト又はペロブスカイト類似の結晶構造を有する金属複合酸化物であって、
前記金属複合酸化物が、一般式:An+13n+1(ただし、0<n≦4)で表されるルドルスデン−ポッパー型結化合物であり、
前記金属元素(M)が、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、錫(Sn)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)及びマグネシウム(Mg)から成る群から選択される1種以上であり、
前記金属複合酸化物がBET比表面積2.0m/g以上の粉末である、金属複合酸化物。
本発明によれば、Aサイト元素としてストロンチウム(Sr)を含み、Bサイト元素として金属元素(M)を含むペロブスカイト又はペロブスカイト類似の結晶構造を有する金属複合酸化物であっても、微細且つ異相の少ない化合物を得ることができる製造方法が提供される。
実施例サンプルのX線回折パターンを示す。 実施例サンプルのSEM像と組成面分析結果を示す。 実施例サンプルのリニアスイープボルタモグラムを示す。 比較例サンプルのX線回折パターンを示す。 比較例サンプルのSEM像と組成面分析結果を示す。
金属複合酸化物の製造方法
本発明の金属複合酸化物の製造方法では、金属複合酸化物は、Aサイト元素としてストロンチウム(Sr)を含み、Bサイト元素として金属元素(M)を含む。また、この金属複合酸化物は、ペロブスカイト又はペロブスカイト類似の結晶構造を有する。ここで、ペロブスカイト(Perovskite)は、Aサイト元素及びBサイト元素を含み、一般式:ABOで表される結晶構造を有する酸化物である。また、ペロブスカイト類似の結晶構造とは、ダブルペロブスカイト(Double−Perovskite)、ルドルスデン−ポッパー(Ruddlesden−Popper)及び/又はディオン−ジャコブソン(Dion−Jacobson)型の構造を指す。
また、本発明の金属複合酸化物の製造方法は、以下の工程:金属複合酸化物の構成成分及び溶媒を含む原料溶液を調整する工程(原料溶液調整工程)、原料溶液を凍結固化し、得られた固化物が凍結した状態のまま溶媒を昇華及び除去して金属塩混合物とする工程(凍結乾燥工程)、及び金属塩混合物を加熱して金属複合酸化物とする工程(焼成工程)、を含む。以下において、各工程の詳細について説明する。
<原料溶液調整工程>
原料溶液調整工程では、金属複合酸化物の構成成分(Aサイト元素及びBサイト元素)を含む原料溶液を調整する。原料溶液は構成成分の無機酸塩を溶媒に溶解させた溶液である。この点、原料溶液は、固体成分が懸濁したスラリーや懸濁液とは明確に区別される。また、無機酸塩は、硝酸塩、酢酸塩、塩化物及び硫酸塩から成る群から選択される一種以上であるのが好ましい。さらに、溶媒として、融点が0℃前後にあり、蒸気圧の高いものから選択すればよい。このような溶媒として、水、シクロヘキサン、ブタノール等が挙げられる。しかしながら、ハンドリング性が容易である水が好ましい。したがって、原料溶液は、好ましくは、構成成分の硝酸塩、酢酸塩、塩化物及び硫酸塩から成る群から選択される1種以上の水溶液である。このような原料溶液は、公知の手法で調整すればよい。例えば、構成成分の無機酸塩、例えば硝酸塩を水等の溶媒に溶解させて作製してもよい。あるいは、構成成分の金属、酸化物又は水酸化物などを硝酸等の無機酸に溶解して調整してもよい。
原料溶液は有機物を含まないのが好ましい。錯体重合法で化合物を合成する際には、金属塩の水溶液にクエン酸などのオキシカルボン酸を加えてオキシカルボン酸錯体を作製し、加熱乾燥して錯体ゲルとする。また、金属クエン酸錯体の溶液にエチレングリコール等のグリコールを溶解させて、高分子ゲルとする。いずれにしても、錯体重合法では、ゲル中に有機物(高分子)が含まれており、この有機物を熱分解する必要がある。そのため、構成金属中に炭酸塩を形成しやすい金属が含まれていると、熱分解時に、好ましくない炭酸塩が形成されやすい。これに対して、本発明の製造方法では、原料溶液にオキシカルボン酸やグリコール等の有機物に加える必要がない。そのため、炭酸塩は形成されにくく、これを熱分解させるための高温熱処理が不要である。
<凍結乾燥工程>
凍結乾燥工程では、原料溶液を凍結固化し、得られた固化物が凍結した状態のまま溶媒を昇華及び除去して金属塩混合物とする。原料溶液を凍結固化することで、イオン半径の大きいストロンチウム(Sr)が溶解する原料溶液を用いても、全ての金属イオンが、溶液中で金属塩の形で均一状態を維持したまま凍結固化される。そのため、得られた固化物中の金属イオンの分布を、原子レベルで均一にすることが可能となる。
凍結固化は、原料溶液を、その凍結温度にまで冷却することにより行えばよい。冷却温度は、原料溶液の成分組成に応じて決めればよく、一概に限定されるものではない。例えば、原料溶液が水溶液の場合には、原料溶液を−10℃以下の冷媒に接触又は投入すればよい。この際、凍結を急速に行う方が、固化物中の金属イオンの分布がより均一になるため好ましい。したがって、原料溶液を急冷することが好ましい。急冷手法として、例えば、冷媒として−196℃の液体窒素を用い、原料溶液をこの液体窒素中に接触又は投入することが挙げられる。また、原料溶液を微細な液滴にして液体窒素等の冷媒中に噴霧することも有効である。微細な液滴とすることで、原料溶液は瞬時に凍結される。液体窒素は凍結固化後に気化させることで除去できる。
次に、固化物が凍結した状態のまま溶媒を昇華除去して、金属塩混合物を得る。得られる金属塩混合物の形態は、特に限定されるものではないが、例えば粉末である。凍結した固化物では金属イオンが均一分布している。したがって、その状態のまま溶媒を昇華除去することで、溶媒除去後の金属塩混合物においても、金属イオンが均一分布した状態を維持している。これに対して、原料溶液を加熱乾燥して溶媒を蒸発除去すると、金属成分の溶解度の違いなどにより、乾燥物中で金属成分が偏析してしまい、均一な金属塩混合物を得ることができない。
溶媒の昇華は減圧下で行う。雰囲気圧力が小さいほど、昇華速度は大きくなる。雰囲気圧力は、1kPa以下が好ましく、100Pa以下がより好ましく、50Pa以下がさらに好ましい。また、雰囲気温度が高いほど、昇華速度は大きくなる。したがって、固化物が凍結した状態を維持する範囲で、雰囲気温度は高いほど好ましい。しかしながら、固化物が融解してしまうと、溶媒を乾燥する必要が生じ、金属イオンの均一分布が損なわれてしまう。したがって、溶媒を昇華除去する際には、固化物が凍結した状態を維持することが必要である。
<焼成工程>
焼成工程では、金属塩混合物を加熱して化合物とする。加熱により、金属塩の分解が起こるとともに、構成成分間の反応が起こり、化合物が形成される。金属塩混合物はこの中に含まれる金属イオンが均一に分布している。したがって、このような金属塩混合物を用いることで、化合物の合成を低温で行うことが可能となる。その結果、粒成長を抑制でき、微細で異相の少ない化合物を得ることができる。これに対して、原料溶液を加熱乾燥して得られた金属塩混合物では、金属成分が偏析している。そのため、単相の化合物を得るためには合成温度を高温にしなければならず、微細な化合物を得ることができない。
焼成工程での加熱温度は、原料や目的とする化合物の種類に応じて決めればよく、一概に限定されるものではない。しかしながら、加熱温度は、500〜1500℃が好ましく、700〜1300℃がより好ましい。加熱時の雰囲気は、所望の化合物が得られる限り限定されるものではない。しかしながら、酸素雰囲気又は大気雰囲気などの酸素含有雰囲気とするのが好ましい。酸素含有雰囲気で加熱することで、得られる化合物(金属複合酸化物)が過度に還元されることを防ぐことができる。また、焼成工程での加熱は複数回行ってもよい。例えば、金属塩混合物を仮焼成して仮焼成物とし、得られた仮焼成物を本焼成してもよい。この場合、仮焼成物を粉砕し、粉砕した仮焼成物を本焼成してもよい。このように仮焼成と本焼成を行うこと又は粉砕工程を挟むことで、化合物の合成をより一層促進させることができる。
本発明の製造方法によれば、Aサイト元素としてストロンチウム(Sr)を含み、Bサイト元素として金属元素(M)を含むペロブスカイト又はペロブスカイト類似の結晶構造を有する金属複合酸化物であっても、微細且つ異相の少ない化合物を得ることができる。この化合物は触媒を始め種々の用途に適用でき、特に酸素還元触媒及び/又は酸素反応触媒の材料として有用である。
金属複合酸化物
本発明の金属複合酸化物は、Aサイト元素としてストロンチウム(Sr)を含み、Bサイト元素として金属元素(M)を含み、ペロブスカイト又はペロブスカイト類似の結晶構造を有する。ここで、ペロブスカイト(Perovskite)は、Aサイト元素及びBサイト元素を含み、一般式:ABOで表される結晶構造を有する酸化物である。また、ペロブスカイト類似の結晶構造とは、ダブルペロブスカイト(Double−Perovskite)、ルドルスデン−ポッパー(Ruddlesden−Popper)及び/又はディオン−ジャコブソン(Dion−Jacobson)型の構造を指す。ここで、ダブルペロブスカイトは、一般式:ABB’Oで表される結晶構造であり、ルドルスデン−ポッパーは、一般式:An+13n+1で表される結晶構造である。また、ディオン−ジャコブソンは、一般式:A’An−13n+1で表される結晶構造である。これらの結晶構造を有する化合物は、ペロブスカイトと類似の結晶構造を有し、ペロブスカイト化合物と類似の特性を示す。
金属複合酸化物は、好ましくは、一般式:An+13n+1(ただし、0<n≦4)で表されるルドルスデン−ポッパー型結晶構造を有する化合物(ルドルスデン−ポッパー型化合物)である。ルドルスデン−ポッパー型結晶構造は、層状ペロブスカイト型構造の一種であり、[ABO]層と[AO]層が交互に積層した構造を有する。これから分かるように、ルドルスデン−ポッパー型化合物は、その結晶構造がペロブスカイト化合物(ABO)と類似しており、それ故、巨大磁気抵抗、超伝導、強誘電性及び触媒活性といった多様な性質を有している。
なお、上記一般式において、所望の結晶構造が得られる限り、組成の揺らぎは許容される。例えば、ペロブスカイトの一般式ABOにおいて、AとBの比は厳密に「1:1」である必要はなく、ペロブスカイト型結晶構造を示す限り、比のずれは許容される。また、結晶構造中イオンの価数によっては、酸素空孔などの格子欠陥が存在する場合があり、その場合は、一般式における酸素(O)量がずれることもある。
本発明の金属複合酸化物は、ストロンチウム(Sr)及びストロンチウム(Sr)以外の金属元素(M)を構成成分として含む。すなわち、ストロンチウム(Sr)が結晶構造のAサイトを占め、金属元素(M)がBサイトを占める。金属元素(M)は遷移金属(Me)であってもよい。金属元素(M)は、好ましくは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、錫(Sn)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)及びマグネシウム(Mg)から成る群から選択される1種以上である。
ペロブスカイト又はペロブスカイト類似の結晶構造が維持される限り、Aサイトにはストロンチウム(Sr)以外の他の成分(イオン)が含まれていてもよい。例えば、ストロンチウム(Sr)の一部が、2価となるバリウム(Ba)やカルシウム(Ca)などの他のアルカリ土類金属の陽イオンで置換されていてもよい。しかしながら、Aサイトを占めるストロンチウム(Sr)の割合は、50原子%以上が好ましく、75原子%以上がより好ましく、90原子%以上がさらに好ましい。Aサイトがストロンチウム(Sr)のみで占められていてもよい。また、化合物中の酸素イオン(O2−)の一部が、塩素やフッ素等の他の陰イオン(Cl、F等)で置換されていてもよい。
金属複酸化物は、Aサイト元素としてストロンチウム(Sr)及び希土類金属(Re)を含み、Bサイト元素として金属元素(M)を含むルドルスデン−ポッパー型化合物であってもよい。ここで、希土類金属(Re)は、周期表で原子番号57のランタン(La)から原子番号71のルテチウム(Lu)に、原子番号21のスカンジウム(Sc)及び原子番号39のイットリウム(Y)を加えた元素の総称である。このようにストロンチウム(Sr)、希土類金属(Re)及び金属元素(M)を含むルドルスデン−ポッパー型化合物は、触媒機能を始め、様々な機能を発揮する。
この金属複合酸化物は、一般式Re2−xSrMO4±δ(ただし、0.5≦x≦1.5、0≦δ≦0.25)で表される組成を有してもよい。ここで、希土類金属(Re)は、好ましくは、ランタン(La)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、イットリウム(Y)及びエルビウム(Er)から成る群から選択される1種以上である。金属元素(M)は、好ましくは、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、錫(Sn)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、クロム(Cr)及び銅(Cu)から成る群から選択される1種以上である。金属元素(M)は遷移金属(Me)であってもよい。ここで、遷移金属(Me)は、周期表で第3族元素から第11族元素の間に存在する元素の総称である。なお、上記一般式において、所望の結晶構造が得られる限り、組成の揺らぎは許容される。例えば、ストロンチウム及び希土類金属の合計モル量と金属元素のモル量の比(Sr+Re:M)は、厳密に「2:1」である必要はなく、ルドルスデン−ポッパー型結晶構造を示す限り、比のずれは許容される。
金属複合酸化物は、好ましくはBET比表面積が0.4m/g以上の粉末であり、より好ましくはBET比表面積が2.0m/g以上の粉末である。BET比表面積は、その上限が特に限定されるものではない。しかしながら、典型的には10.0m/g以下である。金属複合酸化物を合成した後に、超微粉砕処理を行って、異相を新たに生成させずに比表面積を増大させることも効果的である。超微粉砕処理には、ビーズミル、アトライターなどの湿式媒体撹拌型粉砕機や遊星ミル、ボールミルなどの機械的粉砕が有効であるが、これらに限定されない。また超微粉砕処理により酸化物粒子に応力歪が生じた場合は、粒子間の焼結が起きない程度の温度で熱処理することで応力歪を取り除くことができる。粒子間の焼結が起きない熱処理温度は物質にもよるが、400〜800℃が一般的である。
また、金属複合酸化物は、その異相含有量が、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。異相含有量は0質量%、すなわち単相であってもよい。このように、高比表面積且つ低異相含有量の金属複合酸化物とすることで、触媒性能等の種々の機能を優れたものとすることができる。
金属複合酸化物の一例として、Aサイト元素としてストロンチウム(Sr)を含み、Bサイト元素として金属元素(M)を含む、ペロブスカイト又はペロブスカイト類似の結晶構造を有し、一般式:An+13n+1(ただし、0<n≦4)で表されるルドルスデン−ポッパー型化合物であり、金属元素(M)が、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、錫(Sn)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)及びマグネシウム(Mg)から成る群から選択される1種以上であり、BET比表面積2.0m/g以上の粉末である酸化物が挙げられる。
このように、本発明によれば、Aサイト元素としてストロンチウム(Sr)を含み、Bサイト元素として金属元素(M)を含むペロブスカイト又はペロブスカイト類似の結晶構造を有する化合物(金属複合酸化物)であっても、微細且つ異相の少ない状態で得ることができる。特に本発明は、ルデルスデン−ポッパー型化合物や炭酸塩を形成しやすい金属を含む化合物の合成に有用である。このような化合物は、触媒を始め種々の用途に適用でき、特に酸素還元触媒及び/又は酸素反応触媒の材料として有用である。
これに対して、従来の手法によれば、イオン半径の大きいストロンチウム(Sr)を含ペロブスカイト又はペロブスカイト類似の結晶構造を有する化合物を、微細且つ異相の少ない状態で作製することは困難であった。特に、ルデルスデン−ポッパー型化合物は、その合成の際に結晶対称性や結晶構造の異なる化合物が生成しやすく、それ故、単相の化合物を作製することは困難であった。また、化合物がランタン(La)のような炭酸塩を形成しやすい金属を含む場合、このような化合物を微細且つ異相の少ない状態で作製することは困難であった。これは合成時に炭酸塩が生じてしまい、この炭酸塩を分解させるための高温熱処理が必要であったからである。
本発明を、以下の例によってさらに具体的に説明する。
実施例1
(1)化合物の作製
<原料溶液調整工程>
硝酸ランタン六水和物(La(NO・6HO、純度99.9%、関東化学株式会社)、硝酸ストロンチウム(Sr(NO、純度98.0%、関東化学株式会社)及び硝酸ニッケル六水和物(Ni(NO・6HO、純度98%、関東化学株式会社)を、LaSrNiOの化学量論組成となる割合で調合して、硝酸塩水溶液(0.03M)からなる原料溶液を調整した。なお、LaSrNiOは、一般式:Re2−xSrMO4±δにおいて、希土類金属(Re)がランタン(La)、金属元素(M)がニッケル(Ni)であり、x=1.0、δ=0の場合に相当する。
<凍結乾燥工程>
得られた原料溶液(硝酸塩水溶液)100mlをテフロン(登録商標)製ビーカーに入れた。次に、ビーカーの周囲に液体窒素を配置し、原料溶液を急冷して凍結させた。凍結状態の溶液を20Paまで減圧し、3日間放置して、溶媒(水)を融解させずに乾燥を行った。その結果、均一な乾燥粉からなる金属塩混合物を得た。
<焼成工程>
得られた金属塩混合物(乾燥粉)をアルミナ製坩堝に入れて、大気中700〜1000℃で1時間の仮焼を行って熱分解し、酸化物と炭酸塩の混合粉末を得た。得られた混合粉末(仮焼粉末)をメノウ乳鉢を用いて粉砕し、再びアルミナ製坩堝に入れて、大気中1200℃で8時間の本焼成を行い、生成物(化合物)を得た。この生成物は完全な酸化物からなる粉末であった。
(2)生成物の評価
得られた生成物について、各種特性の評価を以下のとおり行った。
<X線回折>
生成物の結晶相の同定を、粉末X線回折(XRD)法により行った。分析条件は、以下のとおりとした。
‐X線回折装置:X’Pert Pro MRD(スペクトリス株式会社製)
‐線源:CuKα(Kβフィルター:Niフィルム)
‐管電圧:45kV
‐管電流:40mA
‐スキャン速度:5.6°/分
‐スキャン範囲(2θ):20〜60°
<BET比表面積>
生成物のBET比表面積を測定した。測定は次のとおり行った。全自動ガス吸着量測定装置AS1−MP(Quantachrome社製)を用い、クリプトンガスを用いたガス吸着法によるBET法で測定を実施した。試料を100℃で5時間真空脱気を行った後、液体窒素下の温度にて比表面積を測定した。
<組織観察>
生成物に対して、走査型電子顕微鏡(Carl Zeiss社製ULTRA55)による二次電子像(SEM)の観察と、エネルギー分散型X線分析(EDS)装置(BRUCKER社製Quan Tax)による組成(Ni、Sr及びa)面分析とを行い、組織及び組成の均一性を評価した。
<酸化還元活性>
得られた生成物の酸素還元活性の評価を、回転ディスク電極(rotating disk electrode:RDE)を用いた対流ボルタンメトリー法により行った。この際、グラッシーカーボンからなるディスク電極(表面積:0.196cm)を用いた。評価は次のようにして行った。
得られた生成物(粉末)を用いて、以下の手順で触媒インクを調製した。初めにイオン交換水と2−プロパノールを4:1の割合で混合してインクの溶媒とし、この溶媒5mLに対して合成した生成物(粉末)5mgと、10wt%ナフィオン溶液(SIGMA−ALDRICH社製527114)0.16mL及びアセチレンブラック(キャボットコーポレーション製VLCAN XC72)21.3mgを混合した。得られた混合液を、周囲を水で冷却しながらホモジナイザーを用いて30分間超音波分散して触媒インクを作製した。次に、マイクロシリンジを用いて、この触媒インクをグラッシーカーボン電極上に8.3μL滴下し、温風を用いて乾燥させて0.042mg/cmの触媒電極膜を形成した。触媒電極膜を形成した回転ディスク電極をポテンショスタットに取り付け、電極面を下向きにして、アルカリ水溶液を満たした三極セルの水面に接触させた。そして、その状態で、ディスクを回転させながら電気化学反応を測定した。
水中でディスクを回転させると、回転数に応じて電極面に流れる水溶液の量が変化する。一般に、電極反応には、(A)反応物質の電極表面への拡散、(B)電極表面上での電荷移動、(C)生成物の電極表面からの逸散、の3種類の現象が寄与する。しかしながら、対流ボルタンメトリー法では、電解液中で対流速度を変化させた電気化学反応を見ることにより、材料本質に起因する(B)の効果を評価することできる。
測定は、次のようにして行った。酸素を30分間バブリングすることにより得た酸素飽和の1.0M水酸化カリウム水溶液を電解液とし、溶液中に触媒電極を配置した。測定温度は25℃、参照電極は可逆水素電極(reversible hydrogen electrode:RHE)、対極は白金線とした。ポテンショスタット(北斗電工製HZ−5000)を用いて電位の走査速度を5mVs−1とし、1600rpmの回転数で電極を回転させながら、電流値を測定した。
(3)結果
実施例1で得られた生成物(金属複合酸化物)のX線回折パターンを図1に示す。また、図1には、粉末X線回折強度データベース(Powder Diffraction File;PDF)に収録されるLaSrNiO(空間群F4/mmm)、LaSrNiO(空間群I4/mmm)、Sr(OH)・HO、SrCO及びNiOの回折線を併せて示す。
図1に示されるように、X線回折パターンには、空間群I4/mmmのLaSrNiO(PDF#01−089−8315)の回折線のみが観測され、SrCO(PDF#00−005−0418)、Sr(OH)・HO(PDF#01−077−2336)及びNiO(PDF#00−047−1049)の回折線は見られなかった。したがって、実施例1では、空間群I4/mmmのLaSrNiOの単相を合成できることが分かった。また、この生成物は、BET比表面積0.43m/gであり、触媒機能を発揮できる大きな比表面積を有するものであった。
また実施例1で得られた生成物のSEM像、及び組成(Ni、Sr、La)面分析結果を図2に示す。この生成物は、組織が均一であり、かつ組成(Ni、Sr、La)が均一であることが確認された。
実施例1の生成物について、酸素還元活性の評価結果を図3に示す。図3に示されるように、リニアスイープボルタモグラム(linear sweep voltammogram:LSV)が得られた。これより、この生成物が酸素還元活性を示すことが確認された。
比較例1
(1)化合物の作製
<原料溶液調整工程>
クエン酸錯体法でLaSrNiOの合成を試みた。まず、硝酸ランタン六水和物(La(NO・6HO、純度99.9%、関東化学株式会社)、硝酸ストロンチウム(Sr(NO、純度98.0%、関東化学株式会社)及び硝酸ニッケル六水和物(Ni(NO・6HO、純度98%、関東化学株式会社)を、LaSrNiOの化学量論組成となる割合でイオン交換水に溶解して、硝酸塩水溶液(0.02M)からなる原料溶液を調整した。
<ゲル化工程>
得られた原料溶液(硝酸塩水溶液)にクエン酸水溶液(0.02M)を、金属イオンに対してクエン酸が等モルとなる割合で混合して、金属イオンのクエン酸錯体を形成した。次に、得られたクエン酸錯体を80℃に加熱したホットプレート上で加熱して溶媒である水を蒸発除去してゲル状態とした。グリーン色のゲルの中に白色の沈殿物が観察され均一性が損なわれていることがわかった。硝酸ストロンチウムを使用せずに、硝酸ランタン六水和物と硝酸ニッケル六水和物から同様の手順でゲルを作製した場合には、白色沈殿物は形成されずグリーン色の均一な乾燥物が得られた。このことから、比較例1では、ストロンチウム(Sr)イオンがクエン酸錯体を形成せず、ストロンチウム化合物からなる白色沈殿物を形成していることが分かった。
<焼成工程>
得られた不均一なゲルをアルミナ製坩堝に移し、電気炉を用いて、大気中350℃で2時間の仮焼を行って仮焼粉末を得た。仮焼粉末を乳鉢に取り出して粉砕した。粉砕した仮焼粉末を、電気炉を用いて1000℃で1時間の予備焼成を行い、さらに1200℃で8時間の本焼成を行った。得られた生成物(焼成物)は完全な酸化物からなっていた。
(2)生成物の評価
比較例1で得られた生成物について、粉末X線回折(XRD)法による結晶相の同定を、実施例1と同様にして行った。また走査型電子顕微鏡によるSEM像の観察と、EDSによる組成(Ni、Sr、La)面分析とを行った。
(3)結果
比較例1で得られた生成物のX線回折パターンを図4に示す。図4に示されるように、生成物にはSrCO(PDF#00−005−0418)、Sr(OH)・HO (PDF#01−077−2336)、NiO(PDF#00−047−1049)などの副生成物は含まれなかった。しかしながら、対称性の異なる2種類のLaSrNiO(空間群I4/mmm(PDF#01−089−8315)及び空間群F4/mmm(PDF#01−076−9307))が混合した形で合成されていた。
比較例1で得られた生成物のSEM像、及び組成(Ni、Sr、La)面分析結果を図5に示す。この生成物は、粒子の大きさ及び形状が不均一であり、かつ組成(Ni、Sr、La)が不均一であった。
実施例2〜6
(1)化合物の作製
原料溶液調整工程の際、一般式:Re2−xSrMO4±δにおいて、x=1.0とする代わりに、x=0.4(実施例2)、x=0.6(実施例3)、x=0.8(実施例4)、x=1.2(実施例5)又はx=1.4(実施例6)とした以外は、実施例1と同様にして、生成物を作製した。
(2)評価及び結果
実施例2〜6で得られた生成物について、粉末X線回折(XRD)法による結晶相の同定を実施例1と同様にして行った。その結果、単相の化合物が得られることを確認した。また、回転ディスク電極を用いた対流ボルタルメトリー法での酸素還元活性の評価を実施例1と同様にして行ったところ、リニアスイープボルタモグラムを描くことができ、酸素還元活性を示すことが確認された。
実施例7
(1)化合物の作製
原料溶液調整工程の際、硝酸ランタン六水和物の代わりに硝酸イットリウム六水和物(Y(NO・6HO、純度99.99%、関東化学株式会社)を用いて、YSrNiO化合物の合成を試みた以外は、実施例1と同様にして、生成物を作製した。
(2)評価及び結果
実施例7で得られた生成物について、粉末X線回折(XRD)法による結晶相の同定を実施例1と同様にして行った。その結果、単相の化合物が得られることを確認した。また、回転ディスク電極を用いた対流ボルタルメトリー法での酸素還元活性の評価を実施例1と同様にして行ったところ、リニアスイープボルタモグラムを描くことができ、酸素還元活性を示すことが確認された。
実施例8
(1)化合物の作製
原料溶液調整工程の際、硝酸ランタン六水和物の代わりに硝酸ネオジム六水和物(Nd(NO・6HO、純度99.95%、関東化学株式会社)を用いて、NdSrNiO化合物の合成を試みた以外は、実施例1と同様にして、生成物を作製した。
(2)評価及び結果
実施例8で得られた生成物について、粉末X線回折(XRD)法による結晶相の同定を実施例1と同様にして行った。その結果、単相の化合物が得られることを確認した。また、回転ディスク電極を用いた対流ボルタルメトリー法での酸素還元活性の評価を実施例1と同様にして行ったところ、リニアスイープボルタモグラムを描くことができ、酸素還元活性を示すことが確認された。
実施例9
(1)化合物の作製
原料溶液調整工程の際、硝酸ランタン六水和物の代わりに硝酸ガドリニウム六水和物(Gd(NO・6HO、純度99.95%、関東化学株式会社)を用いて、GdSrNiO化合物の合成を試みた以外は、実施例1と同様にして、生成物を作製した。
(2)評価及び結果
実施例9で得られた生成物について、粉末X線回折(XRD)法による結晶相の同定を実施例1と同様にして行った。その結果、単相の化合物が得られることを確認した。また、回転ディスク電極を用いた対流ボルタルメトリー法での酸素還元活性の評価を実施例1と同様にして行ったところ、リニアスイープボルタモグラムを描くことができ、酸素還元活性を示すことが確認された。

Claims (11)

  1. Aサイト元素としてストロンチウム(Sr)を含み、Bサイト元素として金属元素(M)を含む、ペロブスカイト又はペロブスカイト類似の結晶構造を有する金属複合酸化物の製造方法であって、以下の工程:
    前記金属複合酸化物の構成成分及び溶媒を含む原料溶液を調整する工程、
    前記原料溶液を凍結固化し、得られた固化物が凍結した状態のまま溶媒を昇華及び除去して金属塩混合物とする工程、及び
    前記金属塩混合物を加熱して金属複合酸化物とする工程、
    を含む、方法。
  2. 前記金属複合酸化物が、一般式:An+13n+1(ただし、0<n≦4)で表されるルドルスデン−ポッパー型化合物である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記金属元素(M)が、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、錫(Sn)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)及びマグネシウム(Mg)から成る群から選択される1種以上である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記金属複合酸化物が、Aサイト元素としてストロンチウム(Sr)及び希土類金属(Re)を含み、Bサイト元素として金属元素(M)を含むルドルスデン−ポッパー型化合物である、請求項1に記載の方法。
  5. 前記金属複合酸化物が、一般式Re2−xSrMO4±δ(ただし、0.5≦x≦1.5、0≦δ≦0.25)で表される組成を有する、請求項4に記載の方法。
  6. 前記希土類金属(Re)が、ランタン(La)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、イットリウム(Y)及びエルビウム(Er)から成る群から選択される1種以上である、請求項4又は5に記載の方法。
  7. 前記金属元素(M)が、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、錫(Sn)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、クロム(Cr)及び銅(Cu)から成る群から選択される1種以上である、請求項4〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記金属複合酸化物がBET比表面積0.4m/g以上の粉末である、請求項4〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記原料溶液が、構成成分の硝酸塩、酢酸塩、塩化物及び硫酸塩から成る群から選択される1種以上の水溶液である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記原料溶液が有機物を含まない、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. Aサイト元素としてストロンチウム(Sr)を含み、Bサイト元素として金属元素(M)を含む、ペロブスカイト又はペロブスカイト類似の結晶構造を有する金属複合酸化物であって、
    前記金属複合酸化物が、一般式:An+13n+1(ただし、0<n≦4)で表されるルドルスデン−ポッパー型結化合物であり、
    前記金属元素(M)が、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、錫(Sn)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)及びマグネシウム(Mg)から成る群から選択される1種以上であり、
    前記金属複合酸化物がBET比表面積2.0m/g以上の粉末である、金属複合酸化物。
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WO2024090211A1 (ja) * 2022-10-28 2024-05-02 Agc株式会社 黒色粒子

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