JP2021008546A - シアノ基含有炭化水素樹脂およびその製造方法 - Google Patents

シアノ基含有炭化水素樹脂およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】極性が高く、低臭気であるシアノ基含有炭化水素樹脂を提供すること。【解決手段】炭素数4〜8の不飽和脂肪族単量体単位および/または炭素数8〜10の芳香族単量体単位を含む炭化水素樹脂を、ヒドロシアノ化してなる、シアノ基含有炭化水素樹脂を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、シアノ基含有炭化水素樹脂およびその製造方法に関する。
炭化水素樹脂は、粘着剤、接着剤、塗料、ポリマー改質剤等に広く利用されている。ところが、一般的な炭化水素樹脂は、臭気を有するものであるため、用途によっては不適当であった。そのため、臭気を改善すべく、種々の試みがなされている。
また、近年、炭化水素樹脂に酸や酸無水物を作用させて得られる変性炭化水素樹脂が、酸や酸無水物に起因する極性により、従来の炭化水素樹脂にはない新規な特性(耐水接着性等)を付与できることから、注目を集めている。
例えば、特許文献1には、ビニル芳香族炭化水素100重量部と、炭素数4〜5の不飽和炭化水素を主成分とする炭化水素分5〜100重量部とを共重合させてなる炭化水素樹脂に、モノオレフィンジカルボン酸およびその無水物から選ばれる少なくとも1種をグラフト共重合させてなる、酸価1〜150(mgKOH/g)、かつ重量平均分子量300〜5000の変性炭化水素樹脂が開示されている。しかしながら、当該変性炭化水素樹脂は、ビニル芳香族炭化水素の共重合量が多いため、残留モノマーに由来する臭気が問題であった。
また、特許文献2には、炭素数5の不飽和脂肪族炭化水素モノマー、イソオレフィンモノマー、及びジカルボン酸又は酸無水物等の反応生成物を含んでなり、かつ所定の酸価及び組成比を有する酸改質炭化水素樹脂が開示されている。しかしながら、当該酸改質炭化水素樹脂の製造方法は、炭化水素樹脂を酸改質するために複数の工程を経る必要があるため、製造が容易ではないという問題があった。さらに、当該酸改質炭化水素樹脂は、高温時の臭気が問題であった。
特開平7−188352号公報 国際公開第2002/004530号
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、極性が高く、低臭気であるシアノ基含有炭化水素樹脂、およびこのようなシアノ基含有炭化水素を容易に製造することができる製造方法を提供することを主目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を行った結果、特定の組成を有する炭化水素樹脂をヒドロシアノ化してなる、シアノ基含有炭化水素樹脂によれば、極性が高く、低臭気であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、炭素数4〜8の不飽和脂肪族単量体単位および/または炭素数8〜10の芳香族単量体単位を含む炭化水素樹脂を、ヒドロシアノ化してなる、シアノ基含有炭化水素樹脂が提供される。
本発明のシアノ基含有炭化水素樹脂は、重量平均分子量が、1,000以上10,000以下であることが好ましい。
本発明のシアノ基含有炭化水素樹脂は、アニリン点が、45℃以上90℃以下であることが好ましい。
本発明のシアノ基含有炭化水素樹脂において、前記炭化水素樹脂が、1,3−ペンタジエン単量体単位20〜70質量%、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィン単量体単位10〜50質量%、炭素数4〜8の非環式モノオレフィン単量体単位5〜40質量%、脂環式ジオレフィン単量体単位0〜1質量%、および芳香族モノオレフィン単量体単位0〜40質量%を含む樹脂であることが好ましい。
また、本発明によれば、炭素数4〜8の不飽和脂肪族単量体および/または炭素数8〜10の芳香族単量体を重合して得られた炭化水素樹脂を、ヒドロシアノ化触媒の存在下に下記一般式(1)で表されるシアノ基含有化合物と接触させることで、ヒドロシアノ化反応させるヒドロシアノ化反応工程を備えるシアノ基含有炭化水素樹脂の製造方法が提供される。
R−C−CN・・・(1)
(上記一般式(1)中、Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香環基、シアノ基、ヒドロキシ基、またはシクロアルキル基を示す。)
本発明のシアノ基含有炭化水素樹脂の製造方法において、前記ヒドロシアノ化反応による、前記シアノ基含有炭化水素樹脂の変性率が、0.1モル%以上100モル%以下であることが好ましい。
本発明のシアノ基含有炭化水素樹脂の製造方法において、前記ヒドロシアノ化反応を、下記一般式(2)で表されるビニル基含有化合物の沸点以上の温度で行うことが好ましい。
R−CH=CH・・・(2)
(上記一般式(2)中、Rは、前記一般式(1)中のRと同じである。)
本発明によれば、極性が高く、低臭気であるシアノ基含有炭化水素樹脂、およびこのようなシアノ基含有炭化水素を容易に製造することができる製造方法を提供することができる。
本発明のシアノ基含有炭化水素樹脂は、炭素数4〜8の不飽和脂肪族単量体単位および/または炭素数8〜10の芳香族単量体単位を含む炭化水素樹脂を、ヒドロシアノ化してなる、シアノ基含有炭化水素樹脂である。
<炭化水素樹脂>
本発明における炭化水素樹脂は、シアノ基含有炭化水素の原料となる樹脂であり、炭素数4〜8の不飽和脂肪族単量体単位および/または炭素数8〜10の芳香族単量体単位を含む炭化水素樹脂である。
(炭素数4〜8の不飽和脂肪族単量体単位)
炭素数4〜8の不飽和脂肪族単量体単位を形成するための、炭素数4〜8の不飽和脂肪族単量体としては、芳香環を含まず、不飽和炭化水素を少なくとも含む、炭素数4〜8のものであればよく、このような単量体としては、例えば、1,3−ペンタジエン、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィン単量体、炭素数4〜8の非環式モノオレフィン単量体、炭素数4〜8の脂環式ジオレフィン単量体等を挙げることができる。
1,3−ペンタジエン単量体単位の炭化水素樹脂中の含有量としては、好ましくは20〜70質量%の範囲内であり、より好ましくは25〜65質量%の範囲内であり、さらに好ましくは30〜60質量%の範囲内であり、特に好ましくは35〜55質量%の範囲内である。炭化水素樹脂中の1,3−ペンタジエン単量体単位量が上述の範囲内であることにより、得られるシアノ基含有炭化水素樹脂の接着力および耐熱劣化性を優れたものとすることができる。なお、1,3−ペンタジエン単量体単位におけるシス/トランス異性体比は任意の比でよく、特に限定されない。
炭素数4〜6の脂環式モノオレフィンは、その分子構造中に、1つのエチレン性不飽和結合と非芳香族性の環構造とを有する炭素数が4〜6の炭化水素化合物である。炭素数4〜6の脂環式モノオレフィンの具体例としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロブテン、メチルシクロペンテンなどを挙げることができる。
炭素数4〜6の脂環式モノオレフィン単量体単位の炭化水素樹脂中の含有量としては、好ましくは10〜50質量%の範囲内であり、より好ましくは15〜50質量%の範囲内であり、さらに好ましくは19〜50質量%の範囲内であり、特に好ましくは23〜40質量%の範囲内である。炭化水素樹脂中の炭素数4〜6の脂環式モノオレフィン単量体単位量が上述の範囲内であることにより、得られるシアノ基含有炭化水素樹脂の接着力および耐熱劣化性を優れたものとすることができる。
なお、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィンとしては、これに該当する各化合物の割合は任意の割合でよく、特に限定されないが、少なくともシクロペンテンが含まれることが好ましく、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィン中にシクロペンテンの占める割合が50質量%以上であることがより好ましい。
炭素数4〜8の非環式モノオレフィンは、その分子構造中にエチレン性不飽和結合1つを有し、環構造を有さない炭素数が4〜8の鎖状炭化水素化合物である。炭素数4〜8の非環式モノオレフィンの具体例としては、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン(2−メチルプロペン)などのブテン類;1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテンなどのペンテン類;1−ヘキセン、2−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテンなどのヘキセン類;1−ヘプテン、2−ヘプテン、2−メチル−1−ヘキセンなどのヘプテン類;1−オクテン、2−オクテン、2−メチル−1−ヘプテン、ジイソブチレン(2,4,4−トリメチル−1−ペンテン、2,4,4−トリメチル−2−ペンテン)などのオクテン類;などを挙げることができる。
炭素数4〜8の非環式モノオレフィン単量体単位の炭化水素樹脂中の含有量としては、好ましくは5〜40質量%の範囲内であり、より好ましくは5〜35質量%の範囲内であり、さらに好ましくは5〜30質量%の範囲内であり、特に好ましくは5〜25質量%の範囲内である。炭化水素樹脂中の炭素数4〜8の非環式モノオレフィン単量体単位量が上述の範囲内であることにより、得られるシアノ基含有炭化水素樹脂の接着力および耐熱劣化性を優れたものとすることができる。
なお、炭素数4〜8の非環式モノオレフィンとしては、これに該当する各化合物(異性体を含む)の割合は任意の割合でよく、特に限定されないが、少なくとも2−メチル−2−ブテン、イソブチレンおよびジイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種が含まれることが好ましく、炭素数4〜8の非環式モノオレフィン中に2−メチル−2−ブテン、イソブチレンおよびジイソブチレンの合計量が占める割合が50質量%以上であることがより好ましい。
炭素数4〜8の脂環式ジオレフィンは、その分子構造中に、2つ以上のエチレン性不飽和結合と非芳香族性の環構造とを有する炭素数が4〜8の炭化水素化合物である。炭素数4〜8の脂環式ジオレフィンの具体例としては、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエンなどを挙げることができる。
炭素数4〜8の脂環式ジオレフィン単量体単位の炭化水素樹脂中の含有量としては、好ましくは0〜1質量%の範囲内であり、より好ましくは0〜0.8質量%の範囲内であり、さらに好ましくは0〜0.6質量%の範囲内であり、特に好ましくは0〜0.4質量%の範囲内である。炭素数4〜8の脂環式ジオレフィン単量体単位量が上述の範囲内であることにより、得られるシアノ基含有炭化水素樹脂の接着力および耐熱劣化性を優れたものとすることができる。
また、本発明で用いる炭化水素樹脂は、炭素数4〜8の不飽和脂肪族単量体単位として、上述した1,3−ペンタジエン由来の単量体単位、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィン単量体単位、炭素数4〜8の非環式モノオレフィン単量体単位、および炭素数4〜8の脂環式ジオレフィン単量体単位以外に、本発明の効果が得られる範囲で、その他の炭素数4〜8の脂肪族単量体単位を含んでいてもよい。
このようなその他の炭素数4〜8の脂肪族単量体単位を形成するために用いられるその他の炭素数4〜8の脂肪族単量体は、前述した炭素数4〜8の不飽和脂肪族単量体以外の化合物であって、1,3−ペンタジエンなどと付加共重合され得る付加重合性を有する、炭素数4〜8の不飽和脂肪族単量体であれば、特に限定されない。上記その他の炭素数4〜8の脂肪族単量体としては、たとえば、1,3−ブタジエン、1,2−ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、1,4−ペンタジエンなどの1,3−ペンタジエン以外の炭素数4〜6の不飽和炭化水素;シクロヘプテンなどの炭素数7〜8の脂環式モノオレフィン;などが挙げられる。
上記その他の炭素数4〜8の脂肪族単量体単位の炭化水素樹脂中の含有量としては、本発明の効果が得られる範囲であればよく、特に限定されないが、好ましくは0〜30質量%であり、より好ましくは0〜25質量%、さらに好ましくは0〜20質量%である。
炭素数4〜8の不飽和脂肪族単量体単位の炭化水素樹脂中の含有量としては、好ましくは50〜99.9質量%であり、より好ましくは55〜95質量%、さらに好ましくは57〜92質量%、特に好ましくは60〜90質量%である。炭素数4〜8の不飽和脂肪族単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、得られるシアノ基含有炭化水素樹脂の接着力および耐熱劣化性を優れたものとすることができる。
(炭素数8〜10の芳香族単量体単位)
炭素数8〜10の芳香族単量体単位を形成するための、炭素数8〜10の芳香族単量体としては、芳香環を有し、不飽和脂肪族単量体と共重合することができる、炭素数8〜10のものであればよく、例えば、炭素数8〜10の芳香族モノオレフィン単量体等を挙げることができる。
炭素数8〜10の芳香族モノオレフィンは、その分子構造中に、1つのエチレン性不飽和結合を有する炭素数8〜10の芳香族化合物である。炭素数8〜10の芳香族モノオレフィンの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、クマロンなどが挙げられる。
炭素数8〜10の芳香族モノオレフィン単量体単位の炭化水素樹脂中の含有量としては、好ましくは0〜40質量%の範囲内であり、より好ましくは0〜38質量%の範囲内であり、さらに好ましくは0〜36質量%の範囲内であり、特に好ましくは0〜34質量%の範囲内である。炭素数8〜10の芳香族モノオレフィン単量体単位量が上述の範囲内であることにより、得られるシアノ基含有炭化水素樹脂の接着力および耐熱劣化性を優れたものとすることができる。
なお、炭素数8〜10の芳香族モノオレフィンとして、これに該当する各化合物(異性体を含む)の割合は任意の割合でよく、特に限定されないが、少なくともスチレンが含まれることが好ましく、炭素数8〜10の芳香族モノオレフィン中にスチレンが占める割合が50質量%以上であることがより好ましい。
また、本発明で用いる炭化水素樹脂は、炭素数8〜10の芳香族単量体単位として、上述した炭素数8〜10の芳香族モノオレフィン単量体単位以外に、本発明の効果が得られる範囲で、その他の炭素数8〜10の芳香族単量体単位を含んでいてもよい。
上記その他の炭素数8〜10の芳香族単量体単位の炭化水素樹脂中の含有量としては、本発明の効果が得られる範囲であればよく、特に限定されないが、好ましくは0〜10質量%であり、より好ましくは0〜5質量%、さらに好ましくは0〜2質量%である。
炭化水素樹脂中における、炭素数8〜10の芳香族単量体単位含有量は、好ましくは0.1〜50質量%であり、より好ましくは5〜45質量%、さらに好ましくは8〜43質量%、特に好ましくは10〜40質量%である。炭素数8〜10の芳香族単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、得られるシアノ基含有炭化水素樹脂の接着力および耐熱劣化性を優れたものとすることができる。
また、炭化水素樹脂は、単量体単位として、上述した炭素数4〜8の不飽和脂肪族単量体単位および炭素数8〜10の芳香族単量体単位以外に、本発明の効果が得られる範囲で、その他の単量体単位を含んでいてもよい。
このようなその他の単量体単位を形成するために用いられる単量体は、前述した単量体以外の化合物であって、付加重合性を有する単量体であれば、特に限定されない。このようなその他の単量体としては、たとえば、炭素数3以下または9以上の非環式モノオレフィン、炭素数9以上の脂環式ジオレフィン、炭素数11以上の芳香族モノオレフィンなどを挙げることができ、具体的には、エチレン、プロピレン、ノネンなどの炭素数3以下または9以上の非環式モノオレフィン;ジシクロペンタジエンなどのシクロペンタジエンの多量体;メチルシクロペンタジエンの多量体;エチルインデン、プロピルインデン、ブチルインデン、t−ブチルインデン、sec−ブチルインデン、n−ペンチルインデン、2−メチル−ブチルインデン、3−メチル−ブチルインデン、n−ヘキシルインデン、2−メチル−ペンチルインデン、3−メチル−ペンチルインデン、4−メチル−ペンチルインデン等の炭素数11以上のインデン化合物;1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、アリルナフタレン、ブテニルナフタレン等のナフタレン化合物;2,7−ジビニルフルオレン、2−ビニルフルオレン、アリルフルオレン、ブテニルフルオレン等のフルオレン化合物;4−ビニルビフェニル、4−ビニル−p−ターフェニル等のビフェニル化合物;9−ビニルアントラセン、2−ビニルアントラセン、9,10−ジビニルアントラセン、アリルアントラセン、ブテニルアントラセン等のアントラセン化合物;9−ビニルフェナントレン、3−ビニルフェナントレン等のフェナントレン化合物;5−ビニルベンゾチオフェン、2−ビニルベンゾチオフェン等のベンゾチオフェン化合物;などが挙げられる。
上記その他の単量体単位の炭化水素樹脂中の含有量としては、本発明の効果が得られる範囲であればよく、特に限定されないが、好ましくは0〜30質量%であり、より好ましくは0〜25質量%であり、さらに好ましくは0〜20質量%である。
特に、炭化水素樹脂としては、1,3−ペンタジエン単量体単位、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィン単量体単位、炭素数4〜8の非環式モノオレフィン単量体単位、脂環式ジオレフィン単量体単位、および芳香族モノオレフィン単量体単位を含むものであることが好ましい。炭化水素樹脂がこのようなものであれば、得られるシアノ基含有炭化水素樹脂の接着力および耐熱劣化性を優れたものとすることができる。なお、このような炭化水素樹脂に含まれる脂環式ジオレフィン単量体単位としては、炭素数4〜8の不飽和脂肪族単量体単位である炭素数4〜8の脂環式ジオレフィン単量体単位であっても、その他の単量体単位である炭素数9以上の脂環式ジオレフィン単量体単位であっても、これらの組み合わせであってもよい。また、芳香族モノオレフィン単量体単位としては、炭素数8〜10の芳香族単量体単位である炭素数8〜10の芳香族モノオレフィン単量体単位であっても、その他の単量体単位である炭素数11以上の芳香族モノオレフィン単量体単位であっても、これらの組み合わせであってもよい。
このとき、炭化水素樹脂中における、それぞれの単量体単位の含有量は、1,3−ペンタジエン単量体単位20〜70質量%、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィン単量体単位10〜50質量%、炭素数4〜8の非環式モノオレフィン単量体単位5〜40質量%、脂環式ジオレフィン単量体単位0〜1質量%、および芳香族モノオレフィン単量体単位0〜40質量%であることが好ましい。炭化水素樹脂がこのようなものであれば、得られるシアノ基含有炭化水素樹脂の接着力および耐熱劣化性を優れたものとすることができる。
(炭化水素樹脂の製造方法)
炭化水素樹脂を製造する方法としては、上記した各単量体単位を構成可能な各単量体を有する重合性成分(単量体混合物A)を、好適には付加重合する限りにおいて、特に限定されない。たとえば、フリーデルクラフツ型のカチオン重合触媒を用いた付加重合によって、炭化水素樹脂を得ることができる。
炭化水素樹脂を製造するために好適に用いられる方法としては、たとえば、次に述べる、ハロゲン化アルミニウム(A)と、3級炭素原子にハロゲン原子が結合したハロゲン化炭化水素(B1)および炭素−炭素不飽和結合に隣接する炭素原子にハロゲン原子が結合したハロゲン化炭化水素(B2)からなる群より選ばれるハロゲン化炭化水素(B)とを組み合わせて、重合触媒とし、炭素数4〜8の不飽和脂肪族単量体および/または炭素数8〜10の芳香族単量体を含む単量体混合物Aを重合する重合工程を有する方法を挙げることができる。
ハロゲン化アルミニウム(A)の具体例としては、塩化アルミニウム(AlCl)、臭化アルミニウム(AlBr)などを挙げることができる。なかでも汎用性などの観点から、塩化アルミニウムが好適に用いられる。
ハロゲン化アルミニウム(A)の使用量は、特に限定されないが、重合性成分(単量体混合物A)100質量部に対し、好ましくは0.05〜10質量部の範囲内、より好ましくは0.1〜5質量部の範囲内である。
また、重合に際しては、ハロゲン化炭化水素(B)を、ハロゲン化アルミニウム(A)と併用することにより、重合触媒の活性が極めて良好なものとなる。
ハロゲン化炭化水素(B)としての、3級炭素原子にハロゲン原子が結合したハロゲン化炭化水素(B1)の具体例としては、t−ブチルクロライド、t−ブチルブロマイド、2−クロロ−2−メチルブタン、トリフェニルメチルクロライドなどを挙げることができる。これらのなかでも、活性と取り扱いやすさとのバランスに優れる点で、t−ブチルクロライドが特に好適に用いられる。
ハロゲン化炭化水素(B)としての、炭素−炭素不飽和結合に隣接する炭素原子にハロゲン原子が結合したハロゲン化炭化水素(B2)における不飽和結合としては、炭素−炭素二重結合および炭素−炭素三重結合が挙げられ、芳香族環などにおける炭素−炭素共役二重結合も含むものである。このような化合物の具体例としては、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、(1−クロロエチル)ベンゼン、アリルクロライド、3−クロロ−1−プロピン、3−クロロ−1−ブテン、3−クロロ−1−ブチン、ケイ皮クロライドなどが挙げられる。これらのなかでも、活性と取り扱いやすさとのバランスに優れる点で、ベンジルクロライドが好適に用いられる。
なお、ハロゲン化炭化水素(B)は、1種類で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ハロゲン化炭化水素(B)の使用量は、ハロゲン化アルミニウム(A)に対するモル比で、好ましくは0.05〜50の範囲内、より好ましくは0.1〜10の範囲内である。
重合反応を行うに当たり、単量体混合物や重合触媒のそれぞれの成分を重合反応器に添加する順序は特に限定されず、任意の順で添加すればよいが、重合反応を良好に制御して、色相に優れ、臭気をより低減したシアノ基含有炭化水素樹脂を得る観点からは、単量体混合物と重合触媒の成分の一部とを重合反応器に添加して、重合反応を開始した後に、重合触媒の残部を重合反応器に添加することが好ましい。
具体的に、1,3−ペンタジエン単量体単位、脂環式モノオレフィン単量体単位、非環式モノオレフィン単量体単位、脂環式ジオレフィン単量体単位、および芳香族モノオレフィン単量体単位を含む炭化水素樹脂の製造に当たっては、まず、ハロゲン化アルミニウム(A)と脂環式モノオレフィンとを予め混合することが好ましい。ハロゲン化アルミニウム(A)と脂環式モノオレフィンとを予め混合する接触処理をすることにより、ゲルの生成を防止でき、色相に優れた炭化水素樹脂を好適に得ることができる。
ハロゲン化アルミニウム(A)と混合する脂環式モノオレフィンの量は、ハロゲン化アルミニウム(A)の量の少なくとも5倍(質量比)とすることが好ましい。脂環式モノオレフィンの量が少なすぎると、ゲル生成防止、および色相改良の効果が小さくなってしまうおそれがある。脂環式モノオレフィンとハロゲン化アルミニウム(A)との質量比は、「脂環式モノオレフィン:ハロゲン化アルミニウム(A)」の質量比で、好ましくは5:1〜120:1、より好ましくは10:1〜100:1、さらに好ましくは15:1〜80:1である。この割合より脂環式モノオレフィンを多く使用すると、触媒活性が低下し、重合が十分に進行しなくなるおそれがある。
ハロゲン化アルミニウム(A)と脂環式モノオレフィンとを予め混合するに際し、これらの投入順序は特に制限されず、脂環式モノオレフィン中にハロゲン化アルミニウム(A)を投入してもよいし、逆に、ハロゲン化アルミニウム(A)中に脂環式モノオレフィンを投入してもよい。混合は通常、発熱をともなうので、適当な希釈剤を用いることもできる。希釈剤としては後述する溶媒を用いることができる。
上記のようにして、ハロゲン化アルミニウム(A)と脂環式モノオレフィンとの混合物Mを調製した後、少なくとも1,3−ペンタジエンおよび非環式モノオレフィンを含む混合物aと、混合物Mとを混合することが好ましい。上記混合物aには脂環式ジオレフィンおよび/または芳香族モノオレフィンが含まれていてもよい。
混合物aの調製方法は特に限定されず、それぞれ純粋な化合物を混合して目的の混合物aを得てもよいし、たとえば、ナフサ分解物の留分などに由来する、目的の単量体を含む混合物を用いて、目的の混合物aを得てもよい。たとえば、混合物aに1,3−ペンタジエンなどを配合するためには、イソプレンおよびシクロペンタジエン(その多量体を含む)を抽出した後のC5留分を好適に用いることができる。
混合物aと混合物Mと共に、ハロゲン化炭化水素(B)をさらに混合することが好ましい。これら3者の投入順序は特に制限されない。
重合反応をより良好に制御する観点からは、重合反応系に溶媒を添加して、重合反応を行うことが好ましい。溶媒の種類は、重合反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、飽和脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素が好適である。溶媒として用いられる飽和脂肪族炭化水素としては、たとえば、n−ペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、3−エチルペンタン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン、2,2,4−トリメチルペンタンなどの炭素数5〜10の鎖状飽和脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどの炭素数5〜10の環状飽和脂肪族炭化水素などが挙げられる。溶媒として用いられる芳香族炭化水素としては、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭素数6〜10の芳香族炭化水素が挙げられる。溶媒は1種を単独で使用してもよいし、2種以上の混合溶媒として用いてもよい。
溶媒の使用量は、特に限定されないが、重合性成分(単量体混合物A)100質量部に対して、10〜1,000質量部の範囲内であることが好ましく、50〜500質量部の範囲内であることがより好ましい。なお、たとえば、C5留分に由来するシクロペンタンとシクロペンテンとの混合物のような、付加重合性成分と非付加重合性成分との混合物を重合反応系に添加して、付加重合性成分は単量体混合物の成分として用い、非付加重合性成分は溶媒として用いるようにすることもできる。
重合反応を行う際の重合温度は、特に限定されないが、−20℃〜100℃の範囲内であることが好ましく、10℃〜80℃の範囲内であることがより好ましい。重合温度が低すぎると重合活性が低下して生産性が劣る可能性があり、重合温度が高すぎると得られる炭化水素樹脂の色相に劣るおそれがある。重合反応を行う際の圧力は、大気圧下でも加圧下でもよい。重合反応時間は、適宜選択できるが、通常10分間〜12時間、好ましくは30分間〜6時間の範囲内で選択される。
重合反応は、所望の重合転化率が得られた時点で、メタノール、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液などの重合停止剤を重合反応系に添加することにより停止することができる。
上記炭化水素樹脂の製造方法においては、上記重合工程を少なくとも備えるものとすればよいが、必要に応じて、その他の工程を備えるものであってもよい。
その他の工程としては、たとえば、重合工程後に、重合工程において重合停止剤を添加して、重合触媒を不活性化した際に生成する、溶媒に不溶な触媒残渣を濾過などにより除去する触媒残渣除去工程や、重合工程による重合反応停止後、未反応の単量体と溶媒とを除去し、さらに水蒸気蒸留などにより低分子量のオリゴマー成分を除去し、冷却することにより、固体状の炭化水素樹脂を得る回収工程などを挙げることができる。
また、その他の工程として、触媒残渣除去工程後、かつ、回収工程前に、溶媒に不溶な触媒残渣を除去した後の触媒残渣除去混合物を吸着剤と接触させて、吸着剤処理混合物を得る接触処理工程を備えていてもよい。接触処理工程を備えていることにより、シアノ基含有炭化水素樹脂臭気の臭気をより低減することができる。
なお、上記その他の工程は、後述するシアノ基含有炭化水素樹脂の製造方法におけるヒドロシアノ化反応工程後に行ってもよい。
また、上記接触処理工程において用いる吸着剤は特に限定されず、化学吸着剤であってもよいし、物理吸着剤であってもよい。
上記化学吸着剤としては、たとえば、塩基性炭酸亜鉛、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛などの亜鉛系吸着剤;酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、リン酸ジルコニウムなどのジルコニウム系吸着剤;二酸化マンガンなどのマンガン系吸着剤;塩化コバルトなどのコバルト系吸着剤;塩化銅、酸化銅などの銅系吸着剤、ポリアミン化合物などのアミン系吸着剤;などが挙げられる。
上記物理吸着剤としては、たとえば、ケイ酸アルミニウムナトリウムなどの含水アルミノケイ酸塩鉱物群で総称されるゼオライト系吸着剤、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、シリカゲル、シリカ・アルミナ、アルミニウムシリケート、活性アルミナ、酸性白土、活性白土、ドーソナイト類化合物、ハイドロタルサイト類化合物などが挙げられる。
吸着剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、2種以上の吸着剤を併用する場合は、2種以上の化学吸着剤を併用してもよいし、2種以上の物理吸着剤を併用してもよいし、1種以上の化学吸着剤と1種以上の物理吸着剤とを併用してもよく、たとえば、物理吸着剤に化学吸着剤を担持させてもよい。特に、低臭気性により優れたシアノ基含有炭化水素樹脂を得る観点からは、これらの吸着剤のなかでも、化学吸着剤を用いることが好ましく、亜鉛系吸着剤を用いることがより好ましく、塩基性炭酸亜鉛を用いることが特に好ましい。
上記接触処理工程において、触媒残渣除去混合物に吸着剤に接触させる方法は、特に限定されない。たとえば、適宜選択される容器に触媒残渣除去混合物と吸着剤とを共存させて、必要に応じて撹拌して、接触させるバッチ処理法や、予め充填塔中に吸着剤を充填しておき、これに触媒残渣除去混合物を流通して接触させる連続処理法などが挙げられる。
触媒残渣除去混合物と吸着剤とをバッチ処理法で接触させる場合における、吸着剤の使用量は、特に限定されないが、触媒残渣除去混合物に含まれる炭化水素樹脂100質量部に対して、通常0.01質量部〜5.0質量部の範囲内であり、好ましくは0.03質量部〜3.0質量部の範囲内であり、より好ましくは0.05質量部〜2.0質量部の範囲内である。
触媒残渣除去混合物と吸着剤とを接触させる際の温度は、特に限定されないが、通常10℃〜70℃の範囲内で選択される。また、処理時間も、特に限定されないが、通常0.1時間〜2時間の範囲内で選択される。
触媒残渣除去混合物と吸着剤とをバッチ処理法で接触させた場合、必要に応じて、ろ過などにより触媒残渣除去混合物から吸着剤を除去することができる。また、吸着剤が残存していても炭化水素樹脂およびシアノ基含有炭化水素樹脂の使用に問題がない場合には、触媒残渣除去混合物から吸着剤を除去せずに次の工程に供してもよい。
<シアノ基含有炭化水素樹脂>
本発明のシアノ基含有炭化水素樹脂は、上述した炭化水素樹脂を、ヒドロシアノ化してなるシアノ基が導入された炭化水素樹脂である。
シアノ基含有炭化水素樹脂は、たとえば、上述した炭化水素樹脂を、ヒドロシアノ化触媒の存在下に下記一般式(1)で表されるシアノ基含有化合物と接触させることで、ヒドロシアノ化反応させるヒドロシアノ化反応工程を備える製造方法により、得ることができる。
R−C−CN・・・(1)
(上記一般式(1)中、Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香環基、シアノ基、ヒドロキシ基、またはシクロアルキル基を示す。)
ヒドロシアノ化反応工程において、ヒドロシアノ化反応は、反応触媒として、ヒドロシアノ化触媒を用い、上述した炭化水素樹脂と、一般式(1)で表されるシアノ基含有化合物とを反応させることにより行われる。このヒドロシアノ化反応により、炭化水素樹脂中のオレフィン性二重結合を選択的にヒドロシアノ化することができ、これにより、炭化水素樹脂に含まれるオレフィン性二重結合の飽和化、および、シアノ基の導入を同時に行うことができる。また、このヒドロシアノ化反応においては、反応の副生成物として、後述する一般式(2)で表されるビニル基含有化合物が生成することとなる。
(シアノ基含有化合物)
ヒドロシアノ化反応工程において用いる、シアノ基含有化合物は、ヒドロシアノ化触媒の存在下、上述した炭化水素樹脂とヒドロシアノ化反応する化合物であればよいが、下記一般式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
R−C−CN・・・(1)
上記一般式(1)中、Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香環基、シアノ基、ヒドロキシ基、またはシクロアルキル基を示す。
置換基を有していてもよいアルキル基を構成するアルキル基としては、直鎖状でも、分岐状でもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。
また、置換基を有していてもよい芳香環基を構成する芳香環基としては、芳香族炭化水素環基、または、芳香族複素環基が挙げられる。
芳香族炭化水素環基としては、例えば、ベンゼン環基、ナフタレン環基、アントラセン環基、フェナントレン環基、ピレン環基、フルオレン環基等が挙げられる。これらの中でも、本発明の効果がより得られやすい点で、ベンゼン環基、ナフタレン環基、アントラセン環基、フルオレン環基が好ましく、ベンゼン環基、ナフタレン環基がより好ましい。
芳香族複素環基としては、例えば、1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン環基、1−ベンゾフラン環基、2−ベンゾフラン環基、アクリジン環基、イソキノリン環基、イミダゾール環基、インドール環基、オキサジアゾール環基、オキサゾール環基、オキサゾロピラジン環基、オキサゾロピリジン環基、オキサゾロピリダジル環基、オキサゾロピリミジン環基、キナゾリン環基、キノキサリン環基、キノリン環基、シンノリン環基、チアジアゾール環基、チアゾール環基、チアゾロピラジン環基、チアゾロピリジン環基、チアゾロピリダジン環基、チアゾロピリミジン環基、チオフェン環基、トリアジン環基、トリアゾール環基、ナフチリジン環基、ピラジン環基、ピラゾール環基、ピラノン環基、ピラン環基、ピリジン環基、ピリダジン環基、ピリミジン環基、ピロール環基、フェナントリジン環基、フタラジン環基、フラン環基、ベンゾ[b]チオフェン環基、ベンゾ[c]チオフェン環基、ベンゾイソオキサゾール環基、ベンゾイソチアゾール環基、ベンゾイミダゾール環基、ベンゾオキサジアゾール環基、ベンゾオキサゾール環基、ベンゾチアジアゾール環基、ベンゾチアゾール環基、ベンゾチオフェン環基、ベンゾトリアジン環基、ベンゾトリアゾール環基、ベンゾピラゾール環基、ベンゾピラノン環基、キサンテン環基等が挙げられる。
これらの中でも、芳香族複素環基としては、フラン環基、ピラン環基、チオフェン環基、オキサゾール環基、オキサジアゾール環基、チアゾール環基、チアジアゾール環基等の単環の芳香族複素環基;および、ベンゾチアゾール環基、ベンゾオキサゾール環基、キノリン環基、1−ベンゾフラン環基、2−ベンゾフラン環基、ベンゾ[b]チオフェン環基、1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン環基、ベンゾ[c]チオフェン環基、チアゾロピリジン環基、チアゾロピラジン環基、ベンゾイソオキサゾール環基、ベンゾオキサジアゾール環基、ベンゾチアジアゾール環基、キサンテン環基等の縮合環の芳香族複素環基;が好ましい。
置換基を有していてもよいアルキル基、または置換基を有していてもよい芳香環基を構成する置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等の少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換された炭素数1〜6のアルキル基;ジメチルアミノ基等の炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20の芳香族炭化水素環基;−OCF;−C(=O)−R;−C(=O)−O−R;−O−C(=O)−R;および−SO;等が挙げられる。ここで、Rは、(i)置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、(ii)置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、(iii)置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、または、(iv)置換基を有していてもよい炭素数5〜12の芳香族炭化水素環基を表す。また、Rは、メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;または、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基等の、炭素数1〜6のアルキル基若しくは炭素数1〜6のアルコキシ基を置換基として有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素環基を表す。
ここで、シアノ基含有炭化水素樹脂を効率的に製造できるという観点から、上記一般式(1)中、Rは、置換基を有さないアルキル基であることが好ましく、置換基を有さない炭素数1〜6のアルキル基であることがより好ましい。
本発明において上記一般式(1)で表されるシアノ基含有化合物としては、具体的には、例えば、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ペンタニトリル、3−フェニルプロピオニトリル、デカンニトリル等のアルキルニトリルが挙げられる。これらの中でも、本発明のシアノ基含有炭化水素樹脂を製造する際に、溶媒への溶解性を高めることができ、これにより、シアノ基含有炭化水素樹脂の生産性を向上させることができるという観点から、上記一般式(1)で表されるシアノ基含有化合物としては、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ペンタニトリルが好ましく、ブチロニトリルがより好ましい。
シアノ基含有化合物の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。また、シアノ基含有化合物として、市販品を用いてもよい。
シアノ基含有化合物の使用量は、炭化水素樹脂100モル%に対して、好ましくは0.001モル%以上10,000モル%以下であり、より好ましくは0.01モル%以上1,000モル%以下であり、さらに好ましくは0.1モル%以上500モル%以下であるシアノ基含有化合物の使用量が上記範囲内であれば、本発明のシアノ基含有炭化水素樹脂の製造方法において、ヒドロシアノ化反応が好適に進行する。
(ヒドロシアノ化触媒)
ヒドロシアノ化反応工程で用いるヒドロシアノ化触媒は、炭化水素樹脂と、シアノ基含有化合物とのヒドロシアノ化反応において、触媒として機能するものであれば限定されない。ヒドロシアノ化触媒としては、例えば、ニッケル錯体と、助触媒と、配位子とを用いることができる。
ニッケル錯体としては、例えば、塩化ニッケル(II)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ニッケル(II)ジクロリド、[1,2−ビス(ジフェニルホスィノ)エタン]ニッケル(II)ジクロリド、トリフルオロメタンスルホン酸ニッケル(II)、ビス(2,4−ペンタンジオナト)ニッケル(II)水和物、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル等が挙げられる。これらの中でも、本発明のシアノ基含有炭化水素樹脂の製造方法において、ヒドロシアノ化反応を好適に行える観点からは、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケルが好ましい。
ニッケル錯体の使用量は、炭化水素樹脂100モル%に対して、好ましくは0.01モル%以上10モル%以下であり、より好ましくは0.05モル%以上5モル%以下である。ニッケル錯体の使用量が上記範囲内であれば、本発明のシアノ基含有炭化水素樹脂の製造方法において、ヒドロシアノ化反応が好適に進行する。
助触媒としては、例えば、トリクロロアルミニウム、トリブロモアルミニウム、ジクロロメチルアルミニウム、ジクロロエチルアルミニウム、ジエチルクロロアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム等のルイス酸が挙げられる。これらの中でも、本発明のシアノ基含有炭化水素樹脂の製造方法において、ヒドロシアノ化触媒の触媒機能が好適に発揮される観点からは、ジメチルクロロアルミニウムが好ましい。
助触媒の使用量は、炭化水素樹脂100モル%に対して、好ましくは0.01モル%以上10モル%以下であり、より好ましくは0.05モル%以上5モル%以下である。助触媒の使用量が上記範囲内であれば、本発明のシアノ基含有炭化水素樹脂の製造方法において、ヒドロシアノ化触媒の触媒機能がより好適に発揮される。
配位子としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリパラフルオロフェニルホスフィン、トリパラトリフルオロメチルフェニルホスフィン、トリパラメトキシフェニルホスフィン、ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテル等が挙げられる。これらの中でも、本発明のシアノ基含有重炭化水素樹脂の製造方法において、ヒドロシアノ化触媒の触媒機能が好適に発揮される観点からは、ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルが好ましい。
配位子の使用量は、炭化水素樹脂100モル%に対して、好ましくは0.01モル%以上10モル%以下であり、より好ましくは0.05モル%以上5モル%以下である。配位子の使用量が上記範囲内であれば、本発明のシアノ基含有炭化水素樹脂の製造方法において、ヒドロシアノ化触媒の触媒機能がより好適に発揮される。
さらに、ヒドロシアノ化反応工程においては、溶媒を任意に用いてもよく、任意に用い得る溶媒としては、特に限定されることなく、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン、シクロトルエン、キシレン等が挙げられる。これらの中でも、本発明のシアノ基含有炭化水素樹脂の製造方法において、シアノ基含有化合物の溶媒への溶解性を向上させることで、シアノ基含有炭化水素樹脂の生産性を高める観点からは、溶媒として、トルエン、キシレン、ベンゼンが好ましく、トルエンがより好ましい。これらは、1種類を単独で含んでいてもよいし、2種類以上を含んでいてもよい。
溶媒の使用量は、炭化水素樹脂100質量部に対して50質量部以上2,000質量部以下であることが好ましい。溶媒の使用量が上記範囲内であれば、炭化水素樹脂がゲル化等の副反応をほとんど起こさないため、シアノ基含有炭化水素樹脂を効率的に製造することができる。
また、ヒドロシアノ化反応工程において、任意に用い得るその他の成分としては、特に限定されることなく、例えば、ヒドロシアノ化触媒以外の他の触媒等が挙げられる。その他の成分は、本発明の効果を損なわない範囲で用いることができる。
本発明におけるヒドロシアノ化反応工程は、これらの成分を用いて、炭化水素樹脂のヒドロシアノ化反応を行う。
本発明において、シアノ基含有化合物として、上記一般式(1)で表されるシアノ基含有化合物を使用した場合における、炭化水素樹脂のヒドロシアノ化反応は、ヒドロシアノ化触媒の存在下で、下記反応式のように進行する。
Figure 2021008546
上記反応式で表されるヒドロシアノ化反応においては、ヒドロシアノ化触媒の作用により、炭化水素樹脂中のオレフィン性二重結合と、一般式(1)で表されるシアノ基含有化合物との間で、オレフィン交換が起こることで、反応が進行する。このとき、オレフィン交換反応の反応副生成物として、下記一般式(2)で表されるビニル基含有化合物も生成される。そして、このオレフィン交換反応は、平衡反応であり、そのため、逆反応も発生することとなるが、下記一般式(2)で表されるビニル基含有化合物を気体状態にて反応系から排出する等の方法により、シアノ基含有炭化水素樹脂の生成を促進させることができ、これにより、本発明のシアノ化炭化水素樹脂の生産性を向上させることができる。
R−CH=CH・・・(2)
上記一般式(2)で表されるビニル基含有化合物は、一般式(1)で表されるシアノ基含有化合物から、シアノ基が脱離した化合物であるため、上記一般式(2)中、Rは、基本的に、用いた一般式(1)中のRと同じ基である。
シアノ基含有炭化水素樹脂の生産性を向上させるという観点から、上記一般式(2)で表されるビニル基含有化合物中のRは、置換基を有さない炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましい。上記一般式(2)で表されるビニル基含有化合物がこのようなRを有するものであれば、上記一般式(2)で表されるビニル基含有化合物の沸点は低いものとなるため、後述のように、ヒドロシアノ化反応の反応温度を、比較的低い温度とした場合でも、気体状態での除去が容易となり、これにより、シアノ基含有炭化水素樹脂の生成を適切に促進させることができる。
ヒドロシアノ化反応における反応温度は、好ましくは20℃以上200℃以下であり、より好ましくは40℃以上150℃以下であり、さらに好ましくは60℃以上120℃以下である。反応温度を上記範囲とすることにより、反応工程における炭化水素樹脂やシアノ基含有化合物の分解およびゲル化を抑制しながら、ヒドロシアノ化反応を適切に進行させることができる。
ヒドロシアノ化反応は、上記した温度範囲にて行えばよいが、ヒドロシアノ化反応をより適切に進行させるという観点より、反応副生成物としての上記一般式(2)で表されるビニル基含有化合物の沸点以上の温度で行うことが好ましい。上述したように、ヒドロシアノ化反応は平衡反応であるため、反応温度を上記一般式(2)で表されるビニル基含有化合物の沸点以上の温度とすることで、上記一般式(2)で表されるビニル基含有化合物が揮発することで、気体状態にて反応系外に排出させることができ、これにより、ヒドロシアノ化反応を進行し易くすることができる。
また、ヒドロシアノ化反応の反応時間は、好ましくは1分以上48時間以下であり、より好ましくは5分以上24時間以下であり、さらに好ましくは10分以上12時間以下である。反応時間が上記下限値以上であれば、反応工程においてヒドロシアノ化反応を十分に行うことができる。一方、反応時間が上記上限値以下であれば、シアノ基含有炭化水素樹脂の製造に要する時間を低減し、プロセス性を高めることができる。
なお、ヒドロシアノ化反応工程は、反応容器を脱圧しながら行うことが好ましい。反応容器を脱圧することで、ヒドロシアノ化反応で反応副生成物として得られる一般式(2)で表されるビニル基含有化合物を反応系外に効率的に排出することができ、シアノ基含有炭化水素樹脂の生産性を向上させることができる。
ヒドロシアノ化反応工程後、得られたシアノ基含有炭化水素を回収するための、回収工程を設けてもよい。シアノ基含有炭化水素の回収方法としては、特に限定されず、例えば、ヒドロシアノ化反応工程の後に得られた反応溶液をメタノール等の貧溶媒中に滴下してシアノ基含有炭化水素を凝固させ、ろ過などの固液分離手段を用いて凝固したシアノ基含有炭化水素を分離することにより、回収する方法などを用いることができる。
このように、本発明のシアノ基含有炭化水素樹脂の製造方法によれば、炭化水素樹脂を、ヒドロシアノ化反応させることにより、極性基としてのシアノ基の導入と、炭化水素樹脂中に含まれる不飽和結合の飽和化を、1工程にて行うことができる。一方で、炭化水素樹脂に酸を反応させて、炭化水素樹脂に極性基を導入する方法も知られているが、このような酸を反応させる方法では、炭化水素樹脂の飽和化は行われないため、炭化水素樹脂を飽和化するためには、別途飽和反応を行う必要がある。これに対し、本発明によれば、極性基としてのシアノ基の導入と飽和化とを1工程で行うことができるため、生産効率の向上を図ることができる。さらに、このようにして得られるシアノ基含有炭化水素樹脂は、極性が高く、変性反応生成物に起因する臭気が抑制されたものである。
上記製造方法により得られるシアノ基含有炭化水素樹脂は、ヒドロシアノ化反応による変性率が、好ましくは20モル%以上であり、より好ましくは50モル%以上である。なお、変性率の上限としては、特に限定されないが、通常は100モル%以下である。変性率が上記範囲内であれば、得られるシアノ基含有炭化水素樹脂の極性を十分に高めることができる。
シアノ基含有炭化水素樹脂の変性率は、炭化水素樹脂およびシアノ基含有炭化水素樹脂の非芳香族性炭素−炭素二重結合(以下、オレフィン性二重結合と称する場合がある。)量の比に基づいて、下記式により算出することができる。
変性率(%)=100−[100×(シアノ基含有炭化水素樹脂のオレフィン性二重結合率/炭化水素樹脂のオレフィン性二重結合率)]
ここで、各樹脂のオレフィン性二重結合含有量は、H−NMRスペクトル測定により測定した、炭素−炭素単結合量およびオレフィン性二重結合量の和と、オレフィン性二重結合との比(オレフィン性二重結合量/炭素−炭素単結合量とオレフィン性二重結合量との和)として求めることができる。なお、H−NMRスペクトル測定は、溶媒に重クロロホルムを用い、NMR測定装置として、たとえば、AVANCE III 500MHz NMR、Bruker社製を用いて行うことができる。
シアノ基含有炭化水素樹脂のアニリン点は、好ましくは0℃以上120℃以下であり、より好ましくは45℃以上90℃以下である。アニリン点が上記範囲内であることにより、シアノ基含有炭化水素樹脂の極性を十分に高いものとすることができる。なお、シアノ基含有炭化水素樹脂のアニリン点は、たとえば、JIS K2256に準拠して測定することができる。
シアノ基含有炭化水素樹脂の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500〜5,000の範囲内であり、より好ましくは550〜4,000の範囲内であり、さらに好ましくは600〜3,000の範囲内である。数平均分子量(Mn)が上述の範囲内であることにより、得られるシアノ基含有炭化水素樹脂の臭気をより低減することができる。
シアノ基含有炭化水素樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000〜10,000の範囲内であり、より好ましくは1,500〜5,000の範囲内であり、さらに好ましくは1,800〜4,700の範囲内であり、特に好ましくは1,800〜4,500の範囲内である。重量平均分子量(Mw)が上述の範囲内であることにより、得られるシアノ基含有炭化水素樹脂の臭気をより低減することができる。
なお、本発明において、シアノ基含有炭化水素樹脂の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、高速液体クロマトグラフィの測定による、ポリスチレン換算の値として求めるものとする。
シアノ基含有炭化水素樹脂の数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)は、好ましくは1.01〜2.50の範囲内であり、より好ましくは1.02〜2.20の範囲内であり、さらに好ましくは1.02〜2.00の範囲内である。上記比が上述の範囲内であることにより、得られるシアノ基含有炭化水素樹脂の臭気をより低減することができる。
シアノ基含有炭化水素樹脂の軟化点は、好ましくは30℃以上であり、より好ましくは50℃〜125℃の範囲内であり、さらに好ましくは60℃〜120℃の範囲内である。上記軟化点が上述の範囲内であることにより、得られるシアノ基含有炭化水素樹脂の臭気をより低減することができる。シアノ基含有炭化水素樹脂の軟化点は、JIS K2531によって規定される環球法により測定することができる。
本発明のシアノ基含有炭化水素樹脂は、高極性であり、低臭気であることから、その特性を活かして、従来の炭化水素樹脂を適用しうる各種の用途に適用することができる。例えば、粘着付与剤、バインダー樹脂、相溶化剤、粘接着剤改質剤、路面区画線表示材料改質剤、道路舗装材料改質剤、ゴム成型物改質剤、インキ改質剤、塗料改質剤、樹脂改質剤などに適用することができる。特に、本発明のシアノ基含有炭化水素樹脂は、極性が高いものであるため、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)などの比較的極性の低い樹脂と混合して用いることができることに加え、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの比較的極性の高い樹脂とも混合して用いることができるため、これら各種樹脂が使用される用途においても、好適に用いることができる。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。なお、各種の物性は以下のように測定した。
<変性率>
反応前の炭化水素樹脂と、反応後のシアノ基含有炭化水素樹脂について、H−NMRスペクトル測定により各々の炭素−炭素単結合、オレフィン性二重結合、および芳香族基の割合を求めた。また、反応前の炭化水素樹脂と、反応後のシアノ基含有炭化水素樹脂について、炭素−炭素単結合およびオレフィン性二重結合の合計量中の、オレフィン性二重結合量の割合を算出し、オレフィン性二重結合率とした。そして、反応前後のオレフィン性二重結合率に基づいて、下記式によって変性率を算出した。
変性率(%)=100−[100×(シアノ基含有炭化水素樹脂のオレフィン性二重結合率/炭化水素樹脂のオレフィン性二重結合率)]
<重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布>
ゲル浸透クロマトグラフィを用いて重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
その際、測定器としてはHLC−8320(東ソー社製)を用い、カラムはTSKgelα−M(東ソー社製)二本を直列に連結して用い、検出器は示差屈折計RI−8320(東ソー社製)を用いた。そして、展開溶媒としてテトラヒドロフランを用いて、重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を標準ポリスチレン換算値として求めた。そして、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
<アニリン点(℃)>
試料である炭化水素樹脂およびシアノ基含有炭化水素樹脂について、JIS K 2256に従い測定した。
<臭気評価試験>
試料である炭化水素樹脂およびシアノ基含有炭化水素樹脂についての官能試験は、公益社団法人におい・かおり環境協会発行の臭気の嗅覚測定法(第5版)における臭気強度表示法に従って行った。具体的には、まず、1粒の大きさを約10mm×5mm×5mmとした炭化水素樹またはシアノ基含有炭化水素樹脂10gを120mLの耐熱性容器に入れて、アルミ箔でフタをした。そして、この炭化水素樹脂またはシアノ基含有炭化水素樹脂の入った耐熱性容器を、オーブンに入れて、温度160℃、30分間の条件で加熱し、加熱後の臭気の確認を行った。臭気の確認は、石油樹脂の臭気に慣れていない(すなわち、普段の生活において、石油樹脂の臭気に触れることのない)4人のパネルにより行った。本試験においては、嗅覚疲労を防ぐため、4人のパネルを2人ずつの2班に分けて、1班ずつ臭気を嗅ぐという方法を採用した。また、臭気を嗅ぐサンプルの順番は、無作為とした。
0:無臭
1:やっと認知できる臭い(検知閾値濃度)
2:何の臭いであるか判る弱い臭い(認知閾値濃度)
3:楽に感知できる臭い
4:強い臭い
5:強烈な臭い
(製造例1)
重合反応器にシクロペンタン34.5部およびシクロペンテン26.2部の混合物を重合反応器に仕込み、60℃に昇温した後、塩化アルミニウム0.7部を添加した(混合物M1)。引き続き、1,3−ペンタジエン43.4部、イソブチレン8.4部、スチレン21.3部、C4−C6不飽和炭化水素0.6部、ジシクロペンタジエン0.1部、およびC4−C6飽和炭化水素8.2部からなる混合物a1と、t−ブチルクロライド0.5部とを、それぞれ、別のラインを通して、60分間に亘り温度(60℃)を維持して、上記混合物M1を含む重合反応器に連続的に添加しながら重合を行った。その後、水酸化ナトリウム水溶液を重合反応器に添加して、重合反応を停止した。なお、重合反応時の重合反応器中の成分の種類および量を表1にまとめて示した。重合停止により生成した沈殿物をろ過により除去し、変性前樹脂および未反応単量体等を含む重合体溶液を得た。
また、重合体溶液の一部を取り出し、これを蒸留釜に仕込み、窒素雰囲気下で加熱し、重合溶媒と未反応単量体とを除去し、炭化水素樹脂(A−1)とした。
(製造例2〜4)
重合反応器に添加する成分の種類および量、ならびに重合温度を表1に示すとおりにそれぞれ変更したこと以外は、製造例1と同様にして、製造例2〜4として、炭化水素樹脂(A−2)〜(A−4)をそれぞれ得た。なお、製造例1に記載のないジイソブチレン、シクロペンタジエン、および無水マレイン酸は、1,3−ペンタジエン等と共に混合し、重合に供した。
(実施例1)
窒素雰囲気下、耐圧性のガラス反応容器に、炭化水素樹脂(A−1)50部と、脱気・脱水したトルエン160部およびブチロニトリル32部とを加えた後、ニッケル錯体として、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケルを炭化水素樹脂(A−1)50部に対して0.2部(0.1モル%)と、助触媒として、ジメチルクロロアルミニウムを炭化水素樹脂(A−1)50部に対して0.6部(0.1モル%)と、配位子として、ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルを炭化水素樹脂(A−1)50部に対して0.4部(0.1モル%)と、をそれぞれ加えた。この混合物を、窒素雰囲気下、90℃で5時間反応させて、シアノ基含有炭化水素樹脂を得た。得られたシアノ基含有炭化水素樹脂について、数平均分子量、重量平均分子量、分子量分布、芳香族の含有割合、オレフィン性二重結合の含有割合、炭素−炭素単結合の含有割合、オレフィン性二重結合率、変性率、アニリン点をそれぞれ測定および算出した。さらに、臭気強度試験(6段階)を行った。結果を表1に示す。
(実施例2〜4)
炭化水素樹脂(A−1)の代わりに、製造例2〜4で得た炭化水素樹脂(A−2)〜(A−4)100部を使用した以外は、実施例1と同様に反応を行い、シアノ基含有炭化水素樹脂をそれぞれ得た。得られた実施例2〜4のシアノ基含有炭化水素樹脂について、実施例1と同様にして、数平均分子量、重量平均分子量、分子量分布、芳香族の含有割合、オレフィン性二重結合の含有割合、炭素−炭素単結合の含有割合、オレフィン性二重結合率、変性率、アニリン点をそれぞれ測定および算出した。さらに、臭気強度試験(6段階)を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
製造例1で得られた炭化水素樹脂(A−1)を溶融状態とし、溶融状態の炭化水素樹脂(A−1)100部に対して、無水マレイン酸3.1部を添加し、230℃で1時間付加反応させた後、酸化防止剤としてペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名「イルガノックス1010」、BASF社製)0.2部を添加し、混合した。その後、反応後の溶融樹脂を取り出し、室温まで放冷することにより、変性炭化水素樹脂(B−1)を得た。得られた変性炭化水素樹脂(B−1)について、実施例1と同様にして、数平均分子量、重量平均分子量、分子量分布、芳香族の含有割合、オレフィン性二重結合の含有割合、炭素−炭素単結合の含有割合、オレフィン性二重結合率、変性率、アニリン点をそれぞれ測定および算出した。さらに、臭気強度試験(6段階)を行った。結果を表1に示す。
Figure 2021008546
表1に示すように、炭素数4〜8の不飽和脂肪族単量体および/または炭素数8〜10の芳香族単量体を重合して得られた炭化水素樹脂を、ヒドロシアノ化触媒の存在下に一般式(1)で表されるシアノ基含有化合物と接触させることで、ヒドロシアノ化反応させるヒドロシアノ化反応工程を備えるシアノ基含有炭化水素樹脂の製造方法は、反応工程が1工程のみであるため、容易にシアノ基含有炭化水素樹脂を生産できるものであった。また、得られるシアノ基含有炭化水素樹脂は、低臭気のものであり、かつ、変性率が高く、ヒドロシアノ化によりアニリン点が効果的に低減されたものであり、かつ、アニリン点自体も比較的低く、極性が効果的に高められたものであった(実施例1〜4)。
一方、一般式(1)で表されるシアノ基含有化合物以外の変性剤を用いて得られた炭化水素樹脂は、アニリン点は比較的低いものの、変性率は低く、臭気の強いものであった(比較例1)。

Claims (7)

  1. 炭素数4〜8の不飽和脂肪族単量体単位および/または炭素数8〜10の芳香族単量体単位を含む炭化水素樹脂を、ヒドロシアノ化してなる、シアノ基含有炭化水素樹脂。
  2. 重量平均分子量が、1,000以上10,000以下である請求項1に記載のシアノ基含有炭化水素樹脂。
  3. アニリン点が、45℃以上90℃以下である請求項1または2に記載のシアノ基含有炭化水素樹脂。
  4. 前記炭化水素樹脂が、
    1,3−ペンタジエン単量体単位20〜70質量%、
    炭素数4〜6の脂環式モノオレフィン単量体単位10〜50質量%、
    炭素数4〜8の非環式モノオレフィン単量体単位5〜40質量%、
    脂環式ジオレフィン単量体単位0〜1質量%、および
    芳香族モノオレフィン単量体単位0〜40質量%を含む樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載のシアノ基含有炭化水素樹脂。
  5. 炭素数4〜8の不飽和脂肪族単量体および/または炭素数8〜10の芳香族単量体を重合して得られた炭化水素樹脂を、ヒドロシアノ化触媒の存在下に下記一般式(1)で表されるシアノ基含有化合物と接触させることで、ヒドロシアノ化反応させるヒドロシアノ化反応工程を備えるシアノ基含有炭化水素樹脂の製造方法。
    R−C−CN・・・(1)
    (上記一般式(1)中、Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香環基、シアノ基、ヒドロキシ基、またはシクロアルキル基を示す。)
  6. 前記ヒドロシアノ化反応による、前記シアノ基含有炭化水素樹脂の変性率が、0.1モル%以上100モル%以下である請求項5に記載のシアノ基含有炭化水素樹脂の製造方法。
  7. 前記ヒドロシアノ化反応を、下記一般式(2)で表されるビニル基含有化合物の沸点以上の温度で行う請求項5または6に記載のシアノ基含有炭化水素樹脂の製造方法。
    R−CH=CH・・・(2)
    (上記一般式(2)中、Rは、前記一般式(1)中のRと同じである。)
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"Catalytic reversible alkene-nitrile interconversion through controllable transfer hydrocyanation", SCIENCE, vol. VOL 351 ISSUE 6275, JPN6023024689, pages 832 - 836, ISSN: 0005091334 *

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