JP2021008125A - 三次元成形用加飾シート、加飾樹脂成形品及びそれらの製造方法 - Google Patents

三次元成形用加飾シート、加飾樹脂成形品及びそれらの製造方法 Download PDF

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【課題】本発明は、三次元成形性と耐薬品性に優れた三次元成形用加飾シートを提供することを目的とする。【解決手段】本発明は、基材シート(2)と、基材シート(2)上に設けられた表面保護層(3)とを備える三次元成形用加飾シート(1)であって、表面保護層(3)が、標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が100,000以上250,000以下、かつ、ガラス転移温度が95℃以上である熱可塑性樹脂と、(メタ)アクリロイルモルホリンとを含有する電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物で形成されている、前記加飾シート(1)を提供する。【選択図】図1

Description

本発明は、三次元成形用加飾シート、加飾樹脂成形品及びそれらの製造方法に関する。
成形された樹脂の表面に加飾シートを積層することにより加飾を施した加飾樹脂成形品が、車両内装部品等の各種用途で使用されている。このような加飾樹脂成形品の成形方法としては、真空成形型、圧空成形型等により予め三次元(立体)形状に成形(オフライン予備成形)した加飾シートを射出成形型に挿入し、溶融樹脂を型内に射出して、成形された加飾シートと樹脂とを一体化するインサート成形法(例えば、特許文献1参照)、射出成形型内に加飾シートを挿入し、型内で加飾シートを成形(オンライン予備成形)し、溶融樹脂を型内に射出して、成形された加飾シートと樹脂とを一体化する射出成形同時加飾法(例えば、特許文献2及び3参照)等が知られている。
インサート成形法では、加飾シートを真空成形型で予備成形する過程で、加飾シートを型の内周面に沿うように密着させ、真空作用又は圧空作用により加飾シートを延伸する。
また、射出成形同時加飾法では、射出成形型での予備成形の過程における加飾シートの延伸に加え、溶融樹脂を射出する時に加飾シートに圧力又はせん断応力が加えられる。したがって、加飾シートには、三次元成形性(特に、成形伸び性)が求められる。それに加えて、加飾樹脂成形品の表面の耐薬品性を向上させるために、加飾シートには、耐薬品性が求められる。
加飾シートとしては、表面保護層を最外層として有する加飾シートが知られている(例えば、特許文献4〜7参照)。
特許文献4には、標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が100,000以上250,000以下の熱可塑性樹脂と、多官能(メタ)アクリレートモノマーとを含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる表面保護層を有する加飾シートが記載されている。
特許文献5には、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと、単官能(メタ)アクリレートとを含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる表面保護層を有する加飾シートが記載されている。
特許文献6には、ポリオールと、ポリイソシアネートとを含む硬化性樹脂組成物の硬化物からなる表面保護層を有する加飾シートが記載されている。
特許文献7には、ブロックイソシアネートを含む樹脂組成物の硬化物からなる表面保護層を有する加飾シートが記載されている。
特開2004−322501号公報 特公昭50−19132号公報 特公昭61−17255号公報 特開2012−91497号公報 特開2012−218277号公報 特開2012−97248号公報 特開2015−193211号公報
しかしながら、特許文献4に記載の加飾シートの表面保護層は、多官能(メタ)アクリレートモノマーによって形成された三次元架橋を有するため、加飾シートの成形伸び性を低減させる。また、特許文献5に記載の加飾シートの表面保護層は、高分子量及び高ガラス転移温度の熱可塑性樹脂を含有する表面保護層と比較して、耐薬品性が劣る。また、特許文献6及び7に記載の加飾シートの表面保護層は、三次元ウレタン結合を有するため、加飾シートの成形伸び性を低減させる。なお、特許文献6及び7に記載の加飾シートの表面保護層は、2液硬化型の樹脂組成物を使用して形成されるため、Roll To Rollでのシートの連続生産に適していない。
そこで、本発明は、三次元成形性と耐薬品性に優れた加飾シート、該加飾シートを備える加飾樹脂成形品、及び、それらの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、以下の発明を提供する。
[1]基材シートと、前記基材シート上に設けられた表面保護層とを備える三次元成形用加飾シートであって、
前記表面保護層が、標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が100,000以上250,000以下、かつ、ガラス転移温度が95℃以上である熱可塑性樹脂と、(メタ)アクリロイルモルホリンとを含有する電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物で形成されており、
前記電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物が、前記(メタ)アクリロイルモルホリンを構成単位として含む(メタ)アクリル樹脂を含有し、
前記(メタ)アクリロイルモルホリンを構成単位として含む(メタ)アクリル樹脂における前記(メタ)アクリロイルモルホリンの含有量が、前記(メタ)アクリロイルモルホリンを構成単位として含む(メタ)アクリル樹脂全体に対して50質量%以上である、
前記加飾シート。
[2]前記電離放射線硬化性樹脂組成物に含有される前記熱可塑性樹脂と前記(メタ)アクリロイルモルホリンとの質量比が40:60〜90:10である、[1]に記載の加飾シート。
[3]前記熱可塑性樹脂が、(メタ)アクリル酸エステルを構成単位として含む(メタ)アクリル樹脂である、[1]又は[2]に記載の加飾シート。
[4][1]〜[3]のいずれかに記載の加飾シートと、前記加飾シートと一体化した樹脂成形体とを備える、加飾樹脂成形品。
[5][1]〜[3]のいずれかに記載の加飾シートの製造方法であって、
基材シートを準備する工程、
前記基材シート上に、直接又は中間層を介して、標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が100,000以上250,000以下、かつ、ガラス転移温度が95℃以上である熱可塑性樹脂と、(メタ)アクリロイルモルホリンとを含有する電離放射線硬化性樹脂組成物層を形成する工程、及び
前記電離放射線硬化性樹脂組成物層に電離放射線を照射して前記電離放射線硬化性樹脂組成物層を硬化させる工程
を含む、加飾シートの製造方法。
[6]前記電離放射線硬化性樹脂組成物層に含有される前記熱可塑性樹脂と前記(メタ)アクリロイルモルホリンとの質量比が40:60〜90:10である、[5]に記載の加飾シートの製造方法。
[7]前記熱可塑性樹脂が、(メタ)アクリル酸エステルを構成単位として含む(メタ)アクリル樹脂である、[5]又は[6]に記載の加飾シートの製造方法。
[8][4]に記載の加飾樹脂成形品の製造方法であって、
[1]〜[3]のいずれかに記載の加飾シートを加熱して軟化させる工程、
軟化させた前記加飾シートを真空吸引して射出成形型の成形面に沿って密着させることにより予備成形する工程、及び
前記射出成形型を型締めして形成されたキャビティ内に流動状態の樹脂を射出して前記加飾シートの前記基材シート側に前記樹脂を一体化する工程
を含む、加飾樹脂成形品の製造方法。
[9][4]に記載の加飾樹脂成形品の製造方法であって、
[1]〜[3]のいずれかに記載の加飾シートを加熱して軟化させた後、真空成形型により三次元形状に真空成形し、前記加飾シートの成形体を形成する工程、及び
前記成形体を射出成形型に挿入し、前記射出成形型を型締めして形成されたキャビティ内に流動状態の樹脂を射出して前記成形体の前記基材シート側に前記樹脂を一体化する工程
を含む、加飾樹脂成形品の製造方法。
[10][4]に記載の加飾樹脂成形品の製造方法であって、
[1]〜[3]のいずれかに記載の加飾シート及び樹脂成形体が配置された密閉空間であって、前記密閉空間が前記加飾シートを境界として上部空間及び下部空間に仕切られ、前記加飾シートの前記基材シート側が前記下部空間側に位置し、かつ、前記樹脂成形体が前記下部空間内に位置する前記密閉空間を形成する工程、
前記上部空間及び前記下部空間を真空状態とする工程、
前記加飾シートを加熱して軟化させる工程、
前記樹脂成形体を上昇させ、前記加飾シートの前記基材シート側表面に押し当てる工程、及び
前記上部空間を大気圧状態又は加圧状態とし、前記上部空間と前記下部空間との圧力差により前記樹脂成形体と前記加飾シートとを密着させる工程
を含む、加飾樹脂成形品の製造方法。
本発明によれば、三次元成形性と耐薬品性に優れた加飾シート、該加飾シートを備える加飾樹脂成形品、及び、それらの製造方法が提供される。
図1は、本発明の一実施形態に係る三次元成形用加飾シートの構成を模式的に示す断面図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る加飾樹脂成形品の構成を模式的に示す断面図である。
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について説明する。
<三次元成形用加飾シート>
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る三次元成形用加飾シート1は、基材シート2と、基材シート2上に設けられた表面保護層3とを備える。
「三次元成形用」には、加飾シートの三次元成形体(立体的形状を有する成形体)を製造する用途に加えて、加飾シートの二次元成形体(シート形状を有する成形体)を製造する用途も包含される。
<基材シート>
図1に示すように、基材シート2は、第1主面S1と、第1主面S1の反対側に位置する第2主面S2とを有し、第1主面S1上に設けられる層を支持する。
基材シート2としては、真空成形、圧空成形への適性の観点から、通常、熱可塑性樹脂からなる樹脂シートが使用される。樹脂シートは、単層シートであってもよいし、複数層シートであってもよい。樹脂シートが複数層シートである場合、樹脂シートを構成する複数層のシートは、同一の樹脂で構成されていてもよいし、異なる樹脂で構成されていてもよい。樹脂シートを構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
アクリル樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独又は共重合体からなるアクリル樹脂が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
ポリエステル樹脂としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸(酸成分)と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール(アルコール成分)とをエステル結合して得られた共重合体、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、エチレン−テレフタレート−イソフタレート共重合体等が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体等が挙げられる。
基材シート2は、着色剤を含有してもよい。着色剤により、基材シート2を有色透明、有色不透明等に着色することができる。着色剤としては、例えば、カーボンブラック、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の粒子からなる無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の粒子からなる有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。着色剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
基材シート2は、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等の添加剤を含有してもよい。
基材シート2の厚みは、加飾シート1の用途に応じて適宜調整することができるが、通常0.05〜1.0mm程度であり、製造コスト等の観点から、好ましくは0.05〜0.7mm程度である。
基材シート2の第1主面S1及び第2主面S2の一方又は両方には、基材シート2に接して設けられる層又は部材との密着性を向上させるために、酸化法、凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理を施してもよい。酸化法による表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等が挙げられ、凹凸化法による表面処理としては、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材シート2の種類に応じて適宜選択されるが、効果及び操作性等の面から、一般的にはコロナ放電処理法が好ましく使用される。
<表面保護層>
表面保護層3は、加飾シート1に耐薬品性、耐傷性、耐摩耗性等の表面特性を付与し、加飾シート1の表面を保護する。図1に示すように、表面保護層3は、加飾シート1の最も外側に位置する。「耐薬品性」には、耐溶剤性の特性も包含される。
図1に示すように、表面保護層3は、基材シート2上に設けられている。「基材シート2上に設けられている」には、表面保護層3が基材シート2の第1主面S1上に直接設けられる場合に加えて、表面保護層3が基材シート2の第1主面S1上に中間層4を介して設けられる場合も包含される。本実施形態において、表面保護層3は、中間層4を介して基材シート2の第1主面S1上に設けられている。
表面保護層3の厚みは、特に限定されるものではないが、優れた三次元成形性と耐薬品性とを両立する観点から、通常1〜1000μm程度であり、好ましくは1〜50μm、より好ましくは1〜30μmである。
表面保護層3は、標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が100,000以上250,000以下、かつ、ガラス転移温度が95℃以上である熱可塑性樹脂と、(メタ)アクリロイルモルホリンとを含有する電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物で形成されている。
<電離放射線硬化性樹脂組成物>
電離放射線硬化性樹脂組成物は、標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が100,000以上250,000以下、かつ、ガラス転移温度が95℃以上である熱可塑性樹脂と、(メタ)アクリロイルモルホリンとを含有する。ガラス転移温度(Tg)は、例えば、示唆熱量分析器(DSC、株式会社島津製作所製、型番:DSC−60)等を用い、JIS K7121に準拠した測定法で求めることができる。
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性樹脂を含有する組成物である。本実施形態において、電離放射線硬化性樹脂組成物は、少なくとも(メタ)アクリロイルモルホリンを電離放射線硬化性樹脂として含有する。電離放射線硬化性樹脂は、電離放射線の照射により重合反応を生じ、高分子構造に変化することで硬化する樹脂である。電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合又は架橋し得るエネルギー量子を有するものである。電離放射線としては、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が使用されるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も使用することができる。
<(メタ)アクリロイルモルホリン>
(メタ)アクリロイルモルホリンは、単官能(メタ)アクリレートモノマーである。なお、「(メタ)アクリロイルモルホリン」は、アクリロイルモルホリン又はメタクリロイルモルホリンを意味する。単官能とは、分子内にエチレン性不飽和結合((メタ)アクリロイル基)を1個有することをいう。(メタ)アクリロイルモルホリンを含有する電離放射線硬化性樹脂組成物に電離放射線を照射することにより、(メタ)アクリロイルモルホリン同士が重合して、(メタ)アクリロイルモルホリンを構成単位として含む(メタ)アクリル樹脂が形成される。単官能(メタ)アクリレートモノマーである(メタ)アクリロイルモルホリンを使用した場合、多官能(メタ)アクリレートモノマーを使用した場合と比較して、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物中の三次元架橋の形成を抑制することができ、これにより、三次元架橋に起因する加飾シート1の三次元成形性(特に、成形伸び性)の低下を抑制することができる。また、(メタ)アクリロイルモルホリンは、重合してポリマー化すると高いガラス転移温度(145℃)を有するため、優れた三次元成形性に加えて、常温下だけでなく高温下での耐薬品性を表面保護層3に付与することができる。なお、「(メタ)アクリレートモノマー」は、アクリレートモノマー又はメタクリレートモノマーを意味し、「(メタ)アクリロイルモルホリン」は、アクリロイルモルホリン又はメタクリロイルモルホリンを意味する。
電離放射線硬化性樹脂組成物に含有される(メタ)アクリロイルモルホリンの含有量は、電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂全体に対して、好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、さらに一層好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは実質的に100質量%である。
<熱可塑性樹脂>
電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂は、標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が100,000以上250,000以下のものであれば特に限定されるものではなく、公知の熱可塑性樹脂を使用することができる。ここで、熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定された値であり、標準サンプルとしてポリスチレンを使用した条件で測定される値である。
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は100,000以上250,000以下の範囲で適宜調整することができるが、好ましくは100,000以上200,000以下、さらに好ましくは100,000以上170,000以下である。熱可塑性樹脂の重量平均分子量が上記範囲内であると、加飾シート1に優れた三次元成形性及び耐薬品性を付与することができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール(ブチラール樹脂)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン等のアセタール樹脂、エチレン−4フッ化エチレン共重合体等のフッ素樹脂、ポリイミド、ポリ乳酸、ポリビニルアセタール樹脂、液晶性ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上を組み合わせて使用する場合は、これらの熱可塑性樹脂を構成するモノマーの共重合体として使用してもよいし、それぞれの熱可塑性樹脂を混合して使用してもよい。なお、「(メタ)アクリル樹脂」は、アクリル樹脂又はメタクリル樹脂を意味する。
上記の熱可塑性樹脂の中でも、(メタ)アクリル樹脂が好ましく、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルモノマーを構成単位として含む(メタ)アクリル樹脂がさらに好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸エステルモノマーの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルモノマーと他のモノマーとの共重合体が好ましい。なお、「(メタ)アクリル酸エステルモノマー」は、アクリル酸エステルモノマー又はメタクリル酸モノマーを意味する。
(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ノルマルブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸セカンダリーブチル、(メタ)アクリル酸ターシャリーブチル、(メタ)アクリル酸イソボニル、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート等が好ましい例として挙げられ、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸メチルである。2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体としては、例えば、これらの(メタ)アクリル酸エステルモノマーから選ばれる2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの共重合体が挙げられ、それらの共重合体はランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。
(メタ)アクリル酸エステルモノマーと共重合体を形成する他のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、(メタ)アクリル酸、スチレン、(無水)マレイン酸、フマル酸、ジビニルベンゼン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、フッ化ビニル、ビニルアルコール、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ブタジエン、イソプレン、イソブテン、1−ブテン、2−ブテン、N−ビニル−2−ピロリドン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ノルボルネン類等の脂環式オレフィンモノマー、ビニルカプロラクタム、シトラコン酸無水物、N−フェニルマレイミド等のマレイミド類、ビニルエーテル類等が好まし例として挙げられ、さらに好ましくはスチレン及び(無水)マレイン酸である。すなわち、(メタ)アクリル酸エステルとスチレン又は(無水)マレイン酸との二元共重合体、(メタ)アクリル酸エステルとスチレン及び(無水)マレイン酸との三元共重合体が好ましい。(メタ)アクリル酸エステルモノマーと他のモノマーとの共重合体はランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。
電離放射線硬化性樹脂組成物に含有される熱可塑性樹脂は、必要に応じて溶剤に溶解又は分散させて、基材シート2に塗工できる粘度まで希釈してもよい。熱可塑性樹脂の溶解又は分散に使用される溶剤又は分散媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等の無機溶剤等が挙げられる。溶剤又は分散媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのうち、メチルエチルケトンを使用することが好ましい。
電離放射線硬化性樹脂組成物に含有される熱可塑性樹脂が(メタ)アクリル樹脂を含有する場合、(メタ)アクリル樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂全体に対して好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上、さらに一層好ましくは70質量%以上である。
<熱可塑性樹脂と(メタ)アクリロイルモルホリンとの質量比>
電離放射線硬化性樹脂組成物に含有される熱可塑性樹脂と(メタ)アクリロイルモルホリンとの質量比(熱可塑性樹脂の含有量:(メタ)アクリロイルモルホリンの含有量)は、特に限定されるものではないが、好ましくは40:60〜90:10であり、さらに好ましくは50:50〜80:20、さらに一層好ましくは70:30である。電離放射線硬化性樹脂組成物に含有される熱可塑性樹脂の(メタ)アクリロイルモルホリンに対する質量比が上記範囲内であると、加飾シート1に優れた三次元成形性及び耐薬品性を付与することができる。
<その他の樹脂成分>
電離放射線硬化性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、熱可塑性樹脂及び(メタ)アクリロイルモルホリンに加えて、その他の成分を含有することができる。その他の成分としては、例えば、(メタ)アクリロイルモルホリン以外の電離放射線硬化性樹脂が挙げられる。(メタ)アクリロイルモルホリン以外の電離放射線硬化性樹脂としては、電離放射線の照射により架橋可能な重合性不飽和結合、エポキシ基等を分子中に有するモノマー、オリゴマー、プレポリマー等の樹脂の1種以上を使用することができる。電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、シロキサン等のケイ素樹脂、ポリエステル、エポキシ等が挙げられる。これらのうち、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物中の三次元架橋の形成を抑制し、これにより、三次元架橋に起因する加飾シート1の三次元成形性(特に、成形伸び性)の低下を抑制する観点、及び、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度を低下させる観点から、単官能(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のモノマー、オリゴマー、プレポリマー等が挙げられる。単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
単官能(メタ)アクリレートは、モノマー、オリゴマー、プレポリマー等の形態で使用することができるが、三次元成形性向上の観点から、オリゴマーの形態で使用することが好ましい。単官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリブタジエン(メタ)アクリレートオリゴマー、シリコーン(メタ)アクリレートオリゴマー、アミノプラスト(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂組成物には、耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チキソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤等の樹脂組成物に常用される各種添加剤を添加して、表面保護層に各種の機能、例えば、高硬度で耐傷付き性を有するいわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能等を付与することもできる。
電離放射線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、電離放射線硬化性樹脂の硬化反応に関与する成分、例えば、光重合開始剤(増感剤)を含んでもよい。例えば、紫外線の照射により電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させる場合、電離放射線硬化性樹脂組成物は光重合開始剤(増感剤)を含むことが好ましい。なお、電離放射線硬化型樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するので、電子線の照射により電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させる場合、電離放射線硬化性樹脂組成物は光重合開始剤(増感剤)を含まなくてもよい。
電離放射線硬化性樹脂がラジカル重合性不飽和基を有する場合、光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイト、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル−N,N−ジメチルアミノベンゾエート等の少なくとも1種を使用することができる。また、電離放射線硬化性樹脂組成物がカチオン重合性官能基を有する場合、光重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシスルホキソニウムジアリルヨードシル塩等の少なくとも1種を使用することができる。
光重合開始剤の添加量は特に限定されるものではないが、電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して、通常0.1〜10質量部程度である。
<電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物>
電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物は、(メタ)アクリロイルモルホリンを構成単位として含む(メタ)アクリル樹脂を含有する。「(メタ)アクリロイルモルホリンを構成単位として含む(メタ)アクリル樹脂」とは、(メタ)アクリル樹脂を構成するすべて又は一部のモノマーが(メタ)アクリロイルモルホリンであることを意味する。(メタ)アクリロイルモルホリンを構成単位として含む(メタ)アクリル樹脂において、当該(メタ)アクリル樹脂を構成するすべてのモノマーが(メタ)アクリロイルモルホリンであること(すなわち、(メタ)アクリロイルモルホリンの含有割合が100質量%であること)が好ましい。これにより、優れた三次元成形性及び耐薬品性を表面保護層3に付与することができる。
(メタ)アクリロイルモルホリンを構成単位として含む(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリロイルモルホリン同士が重合することにより形成される。(メタ)アクリロイルモルホリンを構成単位として含む(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリロイルモルホリンと1種以上の他の単官能(メタ)アクリレートのモノマー、オリゴマー、プレポリマー等とのランダム重合、ブロック重合等の共重合体であってもよい。
(メタ)アクリロイルモルホリンを構成単位として含む(メタ)アクリル樹脂における(メタ)アクリロイルモルホリンの含有量は、(メタ)アクリロイルモルホリンを構成単位として含む(メタ)アクリル樹脂全体に対して50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは実質的に100質量%である。
<中間層>
図1に示すように、加飾シート1は、基材シート2と表面保護層3との間に、中間層4を備える。但し、中間層4は省略可能である。したがって、本発明には、基材シート2上に表面保護層3が直接設けられている実施形態も包含される。
本実施形態において、中間層4は、基材シート2側から順に、装飾層41及びプライマー層42を有する。但し、中間層4を構成する層の数は特にされるものではなく、1であってもよいし、2以上であってもよい。また、中間層4は、装飾層、プライマー層又はこれらの組み合わせに限定されるものではない。中間層4は、例えば、接着層を有していてもよい。
<装飾層>
装飾層41は、加飾シート1に装飾性を付与する。図1に示すように、装飾層41は、基材シート2の第1主面S1に設けられている。但し、装飾層41は、第2主面S2に設けられていてもよいし、第1主面S1及び第2主面S2の両方に設けられていてもよい。
装飾層41は、基材シート2の第1主面S1及び/又は第2主面S2の全体に形成されていてもよいし、基材シート2の第1主面S1及び/又は第2主面の一部に形成されていてもよい。
装飾層41としては、例えば、着色層、絵柄層、これらの組み合わせ等が挙げられる。
着色層は、加飾シート1に所望の色を付与する。着色層は、例えば、基材シート2の第1主面S1の全体に形成されたベタ層である。着色層は、基材シート2の色の変化及びばらつきが、加飾シート1の絵柄の色に影響を及ぼすことを防止する隠蔽層として機能し得る。ベタ層の形成方法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等のコーティング法が挙げられる。着色層の色は、通常、不透明色であるが、基材シート2等の下地の色又は模様を活かす場合には、透明色であってもよい。また、基材シート2等の下地の色又は模様を活かす場合には、着色層を形成しなくてもよい。
絵柄層は、加飾シート1に所望の模様を付与する層である。絵柄層は、例えば、基材シート2の第1主面S1の一部又は全体あるいは着色層の表面の一部又は全体に形成された印刷層である。絵柄層の形成に使用される印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。絵柄層を構成する模様としては、例えば、年輪断面の春材領域及び秋材領域、導管部等から構成される木目模様、レザー(皮シボ)模様、大理石、花崗岩、砂岩等の石材表面の石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等、また、これらの模様等を複合した寄木、パッチワーク等の模様が挙げられる。これらの模様は、通常の黄色、赤色、青色及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成することができる他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成することができる。
装飾層41の形成に使用されるインキは、例えば、溶剤又は分散媒と、着色剤、バインダー樹脂等の成分との混合物である。インキは、その他の成分として、着色剤、体質顔料、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を含んでもよい。インキは、シートのVOC(揮発性有機化合物)を低減する観点から、水性組成物であってもよい。
インキに含まれる着色剤としては、例えば、カーボンブラック、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。着色剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
インキに含まれるバインダー樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、(メタ)アクリルウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−(メタ)アクリル共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース樹脂(硝化綿)、酢酸セルロース樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
インキに含まれる溶剤又は分散媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等の無機溶剤等が挙げられる。溶剤又は分散媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
装飾層41は、手描き法、墨流し法、写真法、転写法、レーザービーム描画法、電子ビーム描画法等の方法により形成してもよい。また、装飾層41がアルミニウム、クロム、金、銀、銅等の金属層(金属薄膜)である場合、蒸着法、スパッタリング法、エッチング法等の方法により装飾層41を形成することができる。
装飾層41の厚みは、製品特性に応じて適宜調整することができるが、インキ塗工時の厚みは、例えば1〜200μm程度であり、乾燥後の厚みは、例えば0.1〜20μm程度であり、1〜20μm程度のベタ印刷層であることが好ましい。
<プライマー層>
図1に示すように、プライマー層42は、装飾層41と表面保護層3との間に設けられており、これらの層の密着性を向上させる。加飾シート1は、その他の隣り合う2層(例えば、基材シート2と装飾層41)の密着性を向上させるために、その他の隣り合う2層の間にプライマー層を備えていてもよい。
プライマー層は、樹脂により形成することができる。プライマー層42を構成する樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂のうち、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、及び(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂が好ましい。これらの樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、装飾層41と表面保護層3との密着性を向上させる観点から、プライマー層42を構成するプライマー組成物は、架橋剤(硬化剤)を使用して形成することが好ましい。このようなプライマー組成物としては、例えば、ポリオールを主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とする2液硬化型の樹脂が挙げられる。特に、加飾シート1の三次元成形性等の物性を向上させる観点から、(メタ)アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリエステルポリオール等のポリオールと、ヘキサメチレンジイソシアネート及び4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の架橋剤とを適宜組み合わせて使用することが好ましい。これらの中では、(メタ)アクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを組み合わせて使用することがより好ましい。
プライマー層42を構成する(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、及び(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独又は共重合体からなる(メタ)アクリル樹脂が使用される。
プライマー層42を構成するウレタン樹脂としては、例えば、ポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)として使用して重合されたポリウレタンが挙げられる。主剤として使用されるポリオールは、分子中に2個以上の水酸基を有するアルコール(多価アルコール)であり、ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。架橋剤(硬化剤)として使用されるイソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(又は脂環族)イソシアネートが挙げられる。また、ウレタン樹脂とブチラール樹脂とを混合したものでプライマー層を構成することも可能である。
(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル−ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合体樹脂が挙げられる。架橋剤(硬化剤)としては、例えば、上記の各種イソシアネートが挙げられる。(メタ)アクリル−ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合体樹脂は、所望により、(メタ)アクリル/ウレタン比(質量比)を、好ましくは(9/1)〜(1/9)、さらに好ましくは(8/2)〜(2/8)の範囲で調整し、種々の加飾シートに使用することができるので、プライマー組成物に使用される樹脂として特に好ましい。
また、プライマー層42には、必要に応じて、耐候性改善剤、接着性向上剤、レベリング剤、チキソ性付与剤、ブロッキング防止剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤等の各種添加剤を添加してもよい。
<接着層>
加飾シート1は、隣り合う2層(例えば、基材シート1及び装飾層41)の接着性や、加飾シート1と樹脂成形体との密着性を向上させるために、隣り合う2層の間や、加飾シートの第2主面S2に接着層を備えていてもよい。接着層を構成する接着剤は、層や樹脂成形体に応じて適宜選択することができるが、例えば、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂が使用される。熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂等が挙げられ、また、熱硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。接着層は、これら樹脂等からなる接着剤組成物を使用して、塗工法等の公知の層形成法で形成することができる。接着層のその厚みは、通常0.1〜50μm程度であり、十分な接着性が得る観点から、好ましくは1〜30μmの範囲である。
<三次元成形用加飾シートの製造方法>
加飾シート1は、例えば、
基材シート2上に装飾層41を形成する工程、
装飾層41上にプライマー層42を形成する工程、及び
プライマー層42上に表面保護層3を形成する工程
を含む方法により製造することができる。
上記製造方法では、まず、基材シート2の第1主面S1上に装飾層41を形成する。装飾層31の形成前に、基材シート2の第1主面S1に、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の処理を施してもよい。また、装飾層41の形成前に、基材シート2の第1主面S1にプライマー層又は接着層を形成してもよい。
上記製造方法では、次いで、装飾層41上にプライマー層42を形成する。
上記製造方法では、次いで、プライマー層42上に表面保護層3を形成する。表面保護層3は、プライマー層42上に、標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が100,000以上250,000以下、かつ、ガラス転移温度が95℃以上である熱可塑性樹脂と、(メタ)アクリロイルモルホリンとを含有する電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させて形成することができる。電離放射線硬化性樹脂組成物の塗布により形成した未硬化の電離放射線硬化性樹脂組成物層は、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して硬化物とすることにより、表面保護層3となる。電離放射線として電子線を使用する場合、その加速電圧については、使用する樹脂、層の厚み等に応じて適宜調整することができるが、例えば、加速電圧70〜300kV程度で未硬化の電離放射線硬化性樹脂組成物層を硬化させることができる。電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材シート2として電子線により劣化する材料を使用する場合には、電子線の浸透深さと電離放射線硬化性樹脂組成物層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選択することにより、基材シート2への余分な電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材シート2の劣化を最小限にとどめることができる。照射線量は、電離放射線硬化性樹脂の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)であり、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。電子線源としては、例えば、コックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を使用することができる。電離放射線として紫外線を使用する場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては、特に制限はなく、例えば、高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が使用される。
なお、(メタ)アクリロイルモルホリンはポリマー化すると、樹脂組成物を溶解するために一般的に使用される有機溶剤に難溶であるため、(メタ)アクリロイルモルホリンをモノマーとして電離放射線硬化性樹脂組成物に含有させ、プライマー層42上に塗布した後に電離放射線を照射してポリマー化(硬化)させている。また、電離放射線硬化性樹脂組成物に含有される、標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が100,000以上250,000以下、かつ、ガラス転移温度が95℃以上である熱可塑性樹脂は常温で固体であるため、溶剤に溶解、希釈して使用する必要がある。しかしながら、該熱可塑性樹脂は、溶剤への溶解性が低いため、メチルエチルケトン等の溶解力が高い有機溶剤を使用して溶解、希釈する必要がある。一方で、メチルエチルケトン等の有機溶剤のみを使用して溶解、希釈すると、基材シート2の劣化、有機溶剤揮発時の吸湿、得られる加飾シート1への有機溶剤の残留等の製造上の問題がある。(メタ)アクリロイルモルホリンのモノマーは粘度が低いため、このような熱可塑性樹脂と併用することにより、熱可塑性樹脂を希釈する役割を果たす。さらに、単官能(メタ)アクリレートモノマーは、一般的に刺激臭を有し、生物に対して有害であるが、(メタ)アクリロイルモルホリンのモノマーは、他の単官能(メタ)アクリレートモノマーと比較して沸点が高いため蒸発しにくく、また、ほぼ無臭であるため、より安全で無臭の加飾シート1を製造することができる。
<加飾樹脂成形品>
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る加飾樹脂成形品10は、加飾シート1と、加飾シート1と一体化された樹脂成形体5とを備える。図2に示すように、加飾シート1と一体化された樹脂成形体5は、加飾シート1の基材シート2の第2主面S2側に位置する。加飾樹脂成形品10は、加飾シート1を、必要に応じて成形した後、樹脂成形体5と一体化させることにより成形されたものである。
<樹脂成形体>
本発明の加飾樹脂成形品10における樹脂成形体5としては、射出成形時に加飾シート1と一体化することが可能なものであればよい。樹脂成形体5の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
加飾樹脂成形品10は、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材;窓枠、扉枠等の建具;壁、床、天井等の建築物の内装材;テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体;容器等の、様々な用途に使用することができる。
<加飾樹脂成形品の製造方法>
加飾樹脂成形品10は、例えば、加飾シート1を使用して、インサート成形法、射出成形同時加飾法、ブロー成形法、ガスインジェクション成形法等の各種射出成形法により製造することができる。これらの射出成形法の中でも、インサート成形法及び射出成形同時加飾法が好ましい。また、加飾樹脂成形品10は、予め用意された立体的な樹脂成形体5上に、加飾シート1又はその成形体を貼着する、真空圧着法等の加飾方法によっても製造することができる。このような真空圧着法としては、例えば、TOM法(Three dimension Overlay Method)等が挙げられる。
インサート成形法としては、例えば、
加飾シート1を加熱して軟化させた後、真空成形型により三次元形状に真空成形し、必要に応じて真空成形された加飾シート1の余分な部分をトリミングし、加飾シート1の成形体を形成する工程、及び
加飾シート1の成形体を射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めして形成されたキャビティ内に流動状態の樹脂を射出して加飾シート1の成形体の基材シート2側に樹脂を一体化する工程
を含む方法が挙げられる。
インサート成形法の一例では、熱盤により加飾シート1を加熱して軟化させた後、真空成形工程において、軟化させた加飾シート1を真空成形型により予め成形品表面形状に真空成形(オフライン予備成形)し、必要に応じて余分な部分をトリミングし、加飾シート1の成形体を得る。次いで、この成形体を射出成形型(例えば、射出成形金型)に挿入し、射出成形型を型締めし、射出成形型を型締めして形成されたキャビティ内において、流動状態の樹脂を加飾シート1の成形体の基材シート2側に向けて射出し、充填された樹脂を固化させて樹脂成形体5の外表面に加飾シート1を一体化させることにより、加飾樹脂成形品10を製造することができる。
真空成形工程において、加飾シート1を加熱して軟化させる時の加熱温度は、特に限定されず、加飾シート1を構成する樹脂の種類、加飾シート1の厚み等に応じて適宜調整することができるが、例えば120〜200℃程度である。また、一体化工程において、流動状態の樹脂の温度は、特に限定されないが、通常180〜320℃程度とすることができる。
射出成形同時加飾法としては、例えば、
加飾シート1を加熱して軟化させる工程、
軟化させた加飾シート1を真空吸引して射出成形型(例えば、射出成形金型)の成形面に沿って密着させることにより予備成形する工程、及び
射出成形型を型締めして形成されたキャビティ内に流動状態の樹脂を射出して加飾シート1の基材シート側に樹脂を一体化する工程
を含む方法が挙げられる。
射出成形同時加飾法の一例では、加飾シート1を射出成形の吸引孔が設けられた真空成形型との兼用雌型に、加飾シート1の表面保護層3側が雌型側を向くように配置し、熱盤により加飾シート1を基材シート2側から加熱して軟化させ、軟化させた加飾シート1を雌型側から真空吸引して雌型の成形面に沿って密着させることにより予備成形(オンライン予備成形)を行う。次いで、雌型及び雄型を型締めし、雌型と雄型を型締めして形成されたキャビティ内において、流動状態の樹脂を予備成形された加飾シート1の基材シート2側に向けて射出し、充填された樹脂を固化させて樹脂成形体5の外表面に加飾シート1を一体化させることにより、加飾樹脂成形品10を製造することができる。
射出成形同時加飾法の予備成形工程において、加飾シート1の加熱温度は、特に限定されず、加飾シート1を構成する樹脂の種類、加飾シート1の厚み等に応じて適宜調整することができるが、例えば70〜130℃程度である。また、射出成形工程において、流動状態の樹脂の温度は、特に限定されないが、例えば180〜320℃程度とすることができる。
真空圧着法としては、例えば、
加飾シート1及び樹脂成形体5が配置された密閉空間であって、密閉空間が加飾シート1を境界として上部空間及び下部空間に仕切られ、加飾シート1の基材シート2側が下部空間側に位置し、かつ、樹脂成形体5が下部空間内に位置する密閉空間を形成する工程、 上部空間及び下部空間を真空状態とする工程、
加飾シート1を加熱して軟化させる工程、
樹脂成形体5を上昇させ、加飾シート1の基材シート2側表面に押し当てる工程、及び
上部空間を大気圧状態又は加圧状態とし、上部空間と下部空間との圧力差により樹脂成形体5と加飾シート1とを密着させる工程
を含む方法が挙げられる。
真空圧着法では、例えば、上方に開口する空間が形成された下側チャンバーボックスと、下方に開口する空間が形成された上側チャンバーボックスとを備える真空成形機を使用することができる。下側チャンバーボックスは、上側チャンバーボックスの下方に設置されており、上側チャンバーボックスの開口部と下側チャンバーボックスの開口部とは対向している。上側チャンバーボックスの下方への移動及び/又は下側チャンバーボックスの上方への移動により、上側チャンバーボックスの下部と下側チャンバーボックスの上部とが接合されると、上側チャンバーボックス内の空間と下側チャンバーボックス内の空間とにより密閉空間が形成される。密閉空間は、上側チャンバーボックスと下側チャンバーボックスとの間に挿入され、密閉空間内に保持された加飾シート1を境界として上部空間と下部空間とに仕切られる。上側チャンバーボックスの上方への移動及び/又は下側チャンバーボックスの下方への移動により、上側チャンバーボックスの下部と下側チャンバーボックスの上部とが分離されると、密閉空間の密閉状態は解除される。
真空成形機は、下側チャンバーボックスの空間内に設けられた、上下に移動可能な可動テーブルをさらに備える。樹脂成形体5は、この可動テーブルに載置される。
真空成形機は、上側チャンバーボックス内の空間及び下側チャンバーボックス内の空間により形成された密閉空間が加飾シート1を境界として上部空間及び下部空間に仕切られるように、密閉空間内に加飾シート1を保持する保持部と、保持部に保持された加飾シート1を加熱する加熱部と、密閉空間における上部空間及び下部空間の圧力を調整する圧力調整部とをさらに備える。加熱部は、例えば、近赤外線ヒーター、赤外線ヒーター等の熱盤を有する。圧力調整部は、例えば、上部空間を真空状態、大気圧状態又は加圧状態にするために上側チャンバーボックスに接続されたポンプ、下部空間を真空状態にするために下側チャンバーボックスに接続されたポンプ等を有する。
上述した真空成形機を使用した真空圧着法の一例では、まず、可動テーブル上に樹脂成形体5を載置する。次いで、加飾シート1を上側チャンバーボックスと下側チャンバーボックスとの間に挿入し、保持部により保持する。この際、加飾シート1は、加飾シート1の基材シート2側が下部空間側に位置するように保持される。次いで、上側チャンバーボックスの下方への移動及び/又は下側チャンバーボックスの上方への移動により、上側チャンバーボックスの下部と下側チャンバーボックスの上部とを接合し、上側チャンバーボックス内の空間及び下側チャンバーボックス内の空間により密閉空間を形成する。こうして形成された密閉空間は、加飾シート1を境界として上部空間及び下部空間に仕切られている。次いで、圧力調整部により上部空間及び下部空間を真空状態とし、加熱部により加飾シート1を加熱して軟化させる。次いで、可動テーブルを上昇させることにより、可動テーブル上に載置された樹脂成形体5を上昇させ、軟化させた加飾シート1の下方から、樹脂成形体5を加飾シート1の基材シート2側表面に押し当てる。次いで、圧力調整部により上部空間を大気圧状態又は加圧状態とし(すなわち、上部空間の圧力を、真空状態である下部空間よりも高い圧力に調整し)、上部空間と下部空間との圧力差により樹脂成形体5と加飾シート1とを密着させて一体化させることにより加飾樹脂成形品10を形成する。この際、加飾シート1は延伸されながら樹脂成形体5の表面に貼着される。その後、密閉空間の密閉状態を解除して加飾樹脂成形品10を取り出す。取り出された加飾樹脂成形品10のうち余分な部分は、必要に応じて、トリミングしてもよい。
加熱部による加飾シート1の加熱温度は、特に限定されず、加飾シート1を構成する樹脂の種類、加飾シート1の厚み等に応じて適宜調整することができるが、例えば60〜200℃程度である。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の内容に限定して解釈されるものではない。
(1)三次元成形用加飾シートの製造
基材シートとしてABS樹脂フィルム(曲げ弾性率:2000MPa、厚み:400μm)を用いて、該フィルムの表面にアクリル系樹脂組成物を用いてグラビア印刷により装飾層を形成した。次いで、装飾層の表面にアクリルポリオール及びヘキサメチレンジイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネートは、NCO当量がアクリルポリオールのOH当量と同量になるように配合した。)を含む組成物をプライマー層としてグラビアコートにより塗布した。プライマー層の厚みは3μmであった。
次に、プライマー層の表面に、下記表1に示す組成の熱可塑性樹脂と、アクリロイルモルホリン又はペンタエリスリトールトリアクリレートとを含む電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布し、電子線を照射して表面保護層を形成した。
なお、電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂A〜Cは、それぞれ以下に示す樹脂を使用した。
熱可塑性樹脂A:重量平均分子量:12万、ガラス転移温度Tg:105℃、メタクリル酸メチルの単独重合体
熱可塑性樹脂B:重量平均分子量:9万、ガラス転移温度Tg:105℃、メタクリル酸メチルの単独重合体
熱可塑性樹脂C:重量平均分子量:12万、ガラス転移温度Tg:90℃、メタクリル酸メチルとメタクリル酸との共重合体
また、前記電離放射線硬化性樹脂組成物は、電子線照射による硬化後の厚みが10μmとなるように、グラビアコートにより塗布した。また、電離放射線として、加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、前記電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させた。
(2)三次元成形性(成形伸び性)の評価
(1)で製造した加飾シートのそれぞれを、赤外線ヒーターで160℃に加熱し、軟化させ、次いで真空成形用型を使用して真空成形を行い、下記の形状の型A〜Dのそれぞれの内部形状に成形した後、加飾シートを冷却してから離型して、加飾シートの成形体を得た。得られた加飾シートの成形体の外観に基づいて各加飾シートの三次元成形性(成形伸び性)を評価した。
形状A:最大延伸倍率70%の部分を有する型
形状B:最大延伸倍率150%の部分を有する型
形状C:最大延伸倍率200%の部分を有する型
形状D:最大延伸倍率300%の部分を有する型
なお、各型において「最大延伸倍率」とは、延伸前の加飾シートの面積を100%とした場合の面積の増加分の%を表すものである。すなわち、例えば、「最大延伸倍率70%の部分を有する型」を使用して加飾シートを延伸した場合、延伸前の加飾シートの面積を100%とした場合、面積が最大で170%に延伸することを意味する。
三次元成形性(成形伸び性)の評価基準は以下の通りである。
A:表面保護層にクラックや白化は見られず、良好な外観であった。
B:最大延伸部にわずかな白化が見られたが、実用上問題ない外観であった。
C:最大延伸部にクラックや白化がみられ、実用上問題ある外観であった。
D:最大延伸部及び最大延伸部以外の部分にクラックや白化が見られ、実用上問題ある外観であった。
評価結果を下記表1に示す。
(3−1)耐薬品性(耐アルコール性)の評価
実施例及び比較例で得た加飾シートのシート片(50mm×50mm)を準備し、10%エタノール水溶液を浸み込ませたガーゼで各シート片の表面保護層を500gfの加重で100往復ラビングした。ラビング後のシート片の外観に基づいて各加飾シートの耐アルコール性を評価した。
耐アルコール性の評価基準は以下の通りである。
A:表面保護層の状態に変化はなく、良好な外観であった。
B:表面保護層に軽微な白化と艶低下が見られたが、実用上問題ない外観であった。
評価結果を下記表1に示す。
(3−2)耐薬品性(耐日焼け止めクリーム性)の評価
実施例及び比較例で得た加飾シートのシート片(50mm×50mm)を準備し、市販の日焼け止め化粧料(クリーム)0.5gを各シート片の表面保護層に均一に塗布した。日焼け止め化粧料を塗布した各シート片を80℃のオーブン内で1時間放置したのち、中性洗剤で各シート片の表面を洗浄し、日焼け止め化粧料を塗布した部分(試験表面)の外観に基づいて各加飾シートの耐日焼け止めクリーム性を評価した。なお、日焼け止め化粧料は、市販のSPF50のものであり、以下の成分を含む。
1−(4−メトキシフェニル)−3−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3−プロパンジオン 3%
サリチル酸3,3,5−トリメチルシクロヘキシル 10%
サリチル酸2−エチルヘキシル 5%
2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸2−エチルヘキシル 10%
耐日焼け止めクリーム性の評価基準は以下の通りである。
A:試験表面に塗膜の白化や膨潤、艶低下、割れ、剥離等の異常が見られず、外観は良好だった。
B:試験表面の一部に軽微な塗膜の白化が確認されたが、外観は実用上問題なかった。
C:試験表面の一部に軽微な塗膜の白化や膨潤、艶低下が確認されたが、外観は実用上問題なかった。
D:試験表面の全面に塗膜の白化や膨潤、艶低下、割れ、剥離等の異常が確認され、外観が悪く実用上問題があった。
評価結果を下記表1に示す。
Figure 2021008125
表1に示すように、標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が100,000以上250,000以下、かつ、ガラス転移温度が95℃以上である熱可塑性樹脂と、(メタ)アクリロイルモルホリンとを含有する電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物で形成された表面保護層を備えた実施例1〜5の三次元成形用加飾シートは、160℃程度の温度から型に接触する時の温度までの急激な温度低下と急激な延伸速度、高延伸度の条件であってもクラックや割れが発生することなく、三次元成形性が良好であった。さらに、実施例1〜5の三次元成形用加飾シートの表面は優れた耐薬品性を有することが確認された。すなわち、本発明の三次元成形性加飾シートは、優れた三次元成形性と耐薬品性を発揮するものである。
<他の態様>
本発明のさらなる態様によれば、
基材シートと、該基材シート上に設けられた表面保護層とを備える三次元成形用加飾シートであって、
上記表面保護層が、標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が100,000以上250,000以下、かつ、ガラス転移温度が95℃以上である熱可塑性樹脂と、(メタ)アクリロイルモルホリンとを含有する電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物で形成されている上記加飾シートが提供される。
本態様においては、上記電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物が、上記(メタ)アクリロイルモルホリンを構成単位として含む(メタ)アクリル樹脂を含有することが好ましい。
本発明の態様においては、上記電離放射線硬化性樹脂組成物に含有される上記熱可塑性樹脂と上記(メタ)アクリロイルモルホリンとの質量比が40:60〜90:10であることが好ましい。
本態様においては、上記熱可塑性樹脂が、(メタ)アクリル酸エステルを構成単位として含む(メタ)アクリル樹脂であることが好ましい。
また、本発明のさらに別の態様によれば、上記いずれかの加飾シートと、該加飾シートと一体化した樹脂成形体とを備える加飾樹脂成形品も提供される。
また、本発明のさらに別の態様によれば、
上記いずれかの加飾シートの製造方法であって、
基材シートを準備する工程、
上記基材シート上に、直接又は中間層を介して、標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が100,000以上250,000以下、かつ、ガラス転移温度が95℃以上である熱可塑性樹脂と、(メタ)アクリロイルモルホリンとを含有する電離放射線硬化性樹脂組成物層を形成する工程、及び
上記電離放射線硬化性樹脂組成物層に電離放射線を照射して上記電離放射線硬化性樹脂組成物層を硬化させる工程、
を含む加飾シートの製造方法も提供される。
本態様においては、上記電離放射線硬化性樹脂組成物層に含有される上記熱可塑性樹脂と上記(メタ)アクリロイルモルホリンとの質量比が40:60〜90:10であることが好ましい。
本態様においては、上記熱可塑性樹脂が、(メタ)アクリル酸エステルを構成単位として含む(メタ)アクリル樹脂であることが好ましい。
また、本発明のさらに別の態様によれば、
上記加飾樹脂成形品の製造方法であって、
上記いずれかの加飾シートを加熱して軟化させる工程、
軟化させた上記加飾シートを真空吸引して射出成形型の成形面に沿って密着させることにより予備成形する工程、及び
上記射出成形型を型締めして形成されたキャビティ内に流動状態の樹脂を射出して上記加飾シートの上記基材シート側に上記樹脂を一体化する工程
を含む加飾樹脂成形品の製造方法も提供される。
また、本発明のさらに別の態様によれば、
上記加飾樹脂成形品の製造方法であって、
上記いずれかの加飾シートを加熱して軟化させた後、真空成形型により三次元形状に真空成形し、上記加飾シートの成形体を形成する工程、及び
上記成形体を射出成形型に挿入し、上記射出成形型を型締めして形成されたキャビティ内に流動状態の樹脂を射出して上記成形体の上記基材シート側に上記樹脂を一体化する工程
を含む加飾樹脂成形品の製造方法も提供される。
また、本発明のさらに別の態様によれば、
上記加飾樹脂成形品の製造方法であって、
上記いずれかの加飾シート及び樹脂成形体が配置された密閉空間であって、該密閉空間が上記加飾シートを境界として上部空間及び下部空間に仕切られ、上記加飾シートの上記基材シート側が上記下部空間側に位置し、かつ、上記樹脂成形体が上記下部空間内に位置する上記密閉空間を形成する工程、
上記上部空間及び上記下部空間を真空状態とする工程、
上記加飾シートを加熱して軟化させる工程、
上記樹脂成形体を上昇させ、上記加飾シートの上記基材シート側表面に押し当てる工程、及び
上記上部空間を大気圧状態又は加圧状態とし、上記上部空間と上記下部空間との圧力差により上記樹脂成形体と上記加飾シートとを密着させる工程
を含む加飾樹脂成形品の製造方法も提供される。
1:加飾シート
2:基材シート
3:表面保護層
4:中間層
41:装飾層
42:プライマー層
5:樹脂成形体
S1:基材シートの第1主面
S2:基材シートの第2主面

Claims (10)

  1. 基材シートと、前記基材シート上に設けられた表面保護層とを備える三次元成形用加飾シートであって、
    前記表面保護層が、標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が100,000以上250,000以下、かつ、ガラス転移温度が95℃以上である熱可塑性樹脂と、(メタ)アクリロイルモルホリンとを含有する電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物で形成されており、
    前記電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物が、前記(メタ)アクリロイルモルホリンを構成単位として含む(メタ)アクリル樹脂を含有し、
    前記(メタ)アクリロイルモルホリンを構成単位として含む(メタ)アクリル樹脂における前記(メタ)アクリロイルモルホリンの含有量が、前記(メタ)アクリロイルモルホリンを構成単位として含む(メタ)アクリル樹脂全体に対して50質量%以上である、
    前記加飾シート。
  2. 前記電離放射線硬化性樹脂組成物に含有される前記熱可塑性樹脂と前記(メタ)アクリロイルモルホリンとの質量比が40:60〜90:10である、請求項1に記載の加飾シート。
  3. 前記熱可塑性樹脂が、(メタ)アクリル酸エステルを構成単位として含む(メタ)アクリル樹脂である、請求項1又は2に記載の加飾シート。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の加飾シートと、前記加飾シートと一体化した樹脂成形体とを備える、加飾樹脂成形品。
  5. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の加飾シートの製造方法であって、
    基材シートを準備する工程、
    前記基材シート上に、直接又は中間層を介して、標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が100,000以上250,000以下、かつ、ガラス転移温度が95℃以上である熱可塑性樹脂と、(メタ)アクリロイルモルホリンとを含有する電離放射線硬化性樹脂組成物層を形成する工程、及び
    前記電離放射線硬化性樹脂組成物層に電離放射線を照射して前記電離放射線硬化性樹脂組成物層を硬化させる工程
    を含む、加飾シートの製造方法。
  6. 前記電離放射線硬化性樹脂組成物層に含有される前記熱可塑性樹脂と前記(メタ)アクリロイルモルホリンとの質量比が40:60〜90:10である、請求項5に記載の加飾シートの製造方法。
  7. 前記熱可塑性樹脂が、(メタ)アクリル酸エステルを構成単位として含む(メタ)アクリル樹脂である、請求項5又は6に記載の加飾シートの製造方法。
  8. 請求項4に記載の加飾樹脂成形品の製造方法であって、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の加飾シートを加熱して軟化させる工程、
    軟化させた前記加飾シートを真空吸引して射出成形型の成形面に沿って密着させることにより予備成形する工程、及び
    前記射出成形型を型締めして形成されたキャビティ内に流動状態の樹脂を射出して前記加飾シートの前記基材シート側に前記樹脂を一体化する工程
    を含む、加飾樹脂成形品の製造方法。
  9. 請求項4に記載の加飾樹脂成形品の製造方法であって、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の加飾シートを加熱して軟化させた後、真空成形型により三次元形状に真空成形し、前記加飾シートの成形体を形成する工程、及び
    前記成形体を射出成形型に挿入し、前記射出成形型を型締めして形成されたキャビティ内に流動状態の樹脂を射出して前記成形体の前記基材シート側に前記樹脂を一体化する工程
    を含む、加飾樹脂成形品の製造方法。
  10. 請求項4に記載の加飾樹脂成形品の製造方法であって、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の加飾シート及び樹脂成形体が配置された密閉空間であって、前記密閉空間が前記加飾シートを境界として上部空間及び下部空間に仕切られ、前記加飾シートの前記基材シート側が前記下部空間側に位置し、かつ、前記樹脂成形体が前記下部空間内に位置する前記密閉空間を形成する工程、
    前記上部空間及び前記下部空間を真空状態とする工程、
    前記加飾シートを加熱して軟化させる工程、
    前記樹脂成形体を上昇させ、前記加飾シートの前記基材シート側表面に押し当てる工程、及び
    前記上部空間を大気圧状態又は加圧状態とし、前記上部空間と前記下部空間との圧力差により前記樹脂成形体と前記加飾シートとを密着させる工程
    を含む、加飾樹脂成形品の製造方法。
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