以下、図面を参照して一実施形態について説明する。なお、図面の説明においては、同一の要素同士、或いは、相当する要素同士には、互いに同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
[溶接装置]
図1〜図2を参照しながら溶接装置1の構成について説明する。図1に示される溶接装置1が適用される溶接対象物(例えば2つの柱部品3)の外形状は、例えば角形状である。溶接対象物は、4つの側面部Ws(第1平面部、第2平面部)と4つの隅角部Wc(交差部)とを含む。4つの側面部Wsのそれぞれは平坦に形成されており、4つの側面部Wsのうち隣り合う2つの側面部Ws同士は、隅角部Wcにおいて互いに交差(直交)している。溶接装置1は、建物の施工現場において、例えば上記溶接対象物としての柱部品3同士の溶接を行うための現場溶接装置である。
柱部品3は例えば角形の鋼管であり、複数の柱部品3が鉛直方向に重ねられ互いに溶接されることで角形の鋼管柱が構築される。溶接される柱部品3同士は、水平な端部同士を全周に亘って近接させ対向させるように配置される。この端部同士が対向する箇所が、溶接装置1により溶接される被溶接部Wであり、被溶接部Wの開先は柱部品3の全周に亘って(すなわち、すべての側面部Wsに亘って)水平面内に延在している。以下では、互いに溶接される柱部品3のうち下に位置するものを柱部品3A、上に位置するものを柱部品3Bとする。
柱部品3A,3Bには、被溶接部Wの開先を跨ぐようにそれぞれエレクション(第1エレクション、第2エレクション)が設けられている。エレクションは、被溶接部Wの近傍において、各柱部品3A,3Bの各側面の中央部に溶接されたエレクションピース5と、建て方治具7とを有する。柱部品3Aに設けられたエレクションピース5と、柱部品3Bに設けられたエレクションピース5とが鉛直方向に並び、建て方治具7によって互いに接続されている。このようなエレクションによって柱部品3Aと柱部品3Bとが仮接続されている。
溶接装置1は、2台の同型のロボット9と、ロボット9を柱部品3の周囲で移動させるためのレール11と、ロボット9の動作及び移動を制御する制御部13と、を備えている。
ロボット9は多関節ロボットであり、例えば汎用の6軸の垂直多関節ロボットである。2台のロボット9を互いに区別する場合には、それぞれ「ロボット9A」、「ロボット9B」と呼ぶ。ロボット9Aは、被溶接部Wの開先形状(例えば、開先の断面形状)をセンシングするための開先センサ15(例えば、レーザーセンサ)をエンドエフェクタとして備えている。ロボット9Aは、制御部13の制御下で動作し、開先センサ15を被溶接部Wに沿って移動させ開先形状(例えば、開先の3次元座標データ)を取得する。取得された開先形状は、制御部13で一時的に記憶される。ロボット9Bは、被溶接部Wを溶接するための溶接ツール17(例えば、アーク溶接用の溶接トーチ)をエンドエフェクタとして備えている。ロボット9B(溶接ロボット)は、制御部13の制御下で動作し、溶接ツール17を被溶接部Wに沿って移動させ被溶接部Wを溶接する。
レール11は、被溶接部Wよりもやや低い位置で柱部品3の周囲を取り囲むように円環状に延びており、柱部品3Aの外周面に固定され支持されている。レール11は、平面視で柱部品3の材軸を中心とする円環をなしている。レール11には、当該レール11上をスライド可能でそれぞれ別々に走行可能な2つのキャリッジ19が設置されている。各ロボット9は、それぞれキャリッジ19に取付けられることで、レール11に沿って柱部品3の周囲を別々に走行可能である。
キャリッジ19の取付座面21は鉛直面に対して傾斜している。また、取付座面21は、キャリッジ19のスライド方向に対して平行である。この取付座面21に取付けられたロボット9の第1軸23(旋回軸)は、取付座面21に直交し、鉛直方向及び水平面の両方に対して傾斜している。すなわち第1軸23は鉛直軸でもなく水平軸でもない。この構成によれば、水平に延びる被溶接部Wに沿って移動する開先センサ15や溶接ツール17の移動範囲を、ロボット9の可動域の中で好適な可動範囲に合せることが容易になる。すなわち、例えばロボット9がアームの可動限界の付近で動作するといった状態を回避し易くなる。
更に溶接装置1は、レール11を搭載した状態で例えば水平な床面上を走行移動可能な台車27を備えている。台車27により、2台のロボット9A,9Bが設置された状態のレール11が、水平に搬送されて柱部品3の周囲に設置される。また、台車27とレール11とは切離しが可能であり、ロボット9Aによるセンシングやロボット9Bによる溶接が実行されるときには、レール11は、台車27から絶縁されて柱部品3Aに固定される。これにより、ロボット9Aのセンシング精度やロボット9Bの溶接精度に対して床面の振動が及ぼす影響を低減することができる。
[現場溶接方法]
溶接装置1を用いた被溶接部Wの溶接方法は、次に説明するセンシング工程と溶接工程とを備えている。
(センシング工程)
制御部13は、ロボット9Aをレール11上の適切な位置に移動させる。そして制御部13は、ロボット9Aを動作させ、開先センサ15を溶接区間の被溶接部Wに沿って移動させて、開先形状を取得する。制御部13は、上記のように取得された開先形状を一時的に記憶する。なお、このセンシング工程は、キャリッジ19がレール11上で停止し、ロボット9Aの位置がレール11上で停止した状態で実行されることが好ましい。これにより、キャリッジ19の動作精度がセンシング精度に及ぼす影響を低減することができる。
(溶接工程)
続いて、制御部13は、ロボット9Bをレール11上の適切な位置に移動させる。そして制御部13は、ロボット9Bを動作させ、溶接ツール17を上記溶接区間の被溶接部Wに沿って移動させて、被溶接部Wを溶接する。このとき、制御部13は、センシング工程で取得され記憶された開先形状に基づいて、開先形状に適した溶接を実行する。例えば、制御部13は、記憶された開先形状に基づいて、被溶接部Wの断面内における溶接ツール17の移動軌跡、溶接ツール17の移動速度、溶接ツール17の姿勢等を所定のアルゴリズムで計画し、この計画に従って溶接ツール17を移動させる。なお、この溶接工程は、キャリッジ19がレール11上で停止し、ロボット9Bの位置がレール11上で停止した状態で実行されることが好ましい。これにより、キャリッジ19の動作精度が溶接精度に及ぼす影響を低減することができる。
上記の溶接方法は、被溶接部Wのうち、1つのエレクションの建て方治具7に覆われた位置から隣接するエレクションの建て方治具7に覆われた位置までを対象の溶接区間とする。本実施形態では、被溶接部Wのうちの4分の1の開先に1つの溶接区間が設定されている。そして、この溶接方法が溶接区間ごとに繰り返されて被溶接部Wの開先の全周分の溶接が完了する。1つの溶接区間のセンシング工程と、他の溶接区間の溶接工程と、が並行して実行されてもよい。
またここでは、ロボット9Bとして垂直多関節ロボットが採用されるので、ロボット9Bは、溶接ツール17を複雑に動作させることが可能であり、建て方治具7と被溶接部Wとの隙間に溶接ツール17の先端を挿入することができる。従って、この溶接装置1によれば、建て方治具7の内側部分の溶接も建て方治具7が存在する状態で行われ、被溶接部Wの全周分の溶接が完了した後に建て方治具7及びエレクションピース5を除去するといった運用が可能である。
[制御部]
続いて、制御部13と、制御部13が溶接区間の溶接作業で実行する制御について更に詳細に説明する。
(制御部の構成)
図3は、制御部の機能的な構成を示すブロック図である。図4は、制御部の処理内容を説明するための図である。図3に示されるように、制御部13は、機能的な構成(以下、「機能モジュール」という。)として、記憶部31と、センシング制御部32と、エリア割付部33と、パス割付部34と、動作パターン設定部35と、速度パターン設定部36と、溶接制御部37と、を有する。これらの機能モジュールは、制御部13の機能を便宜上複数のモジュールに区切ったものに過ぎず、制御部13を構成するハードウェアがこのようなモジュールに分かれていることを必ずしも意味するものではない。各機能モジュールは、プログラムの実行により実現されるものであってもよく、専用の電気回路(例えば論理回路)、又は、これを集積した集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)により実現されるものであってもよい。
センシング制御部32は、ロボット9Aを制御する。具体的には、センシング制御部32は、ロボット9Aを移動させる処理と、ロボット9Aを動作させる処理と、開先センサ15によってセンシングする処理とを実行する。ロボット9Aを移動させる処理において、センシング制御部32は、レール11上における隅角部Wcに対向する位置までロボット9Aを移動させる。ロボット9Aを動作させる処理において、センシング制御部32は、複数のセンシング位置のいずれかに開先センサ15を配置するようにロボット9Aを動作させる。複数のセンシング位置は、初期センシング位置とエリア割付部33によって設定された複数の開先センシング位置とを含む。初期センシング位置は、例えば隅角部Wcに対向する位置である。
センシングする処理において、センシング制御部32は、柱部品3A,3Bのうち対象の溶接区間の全域を含む部分の形状(例えば、溶接区間の周辺環境の3次元座標データ)を取得することと、複数の開先形状を取得することとを含む。例えばセンシング制御部32は、開先形状として、開先の延在方向に交差(直交)する開先断面の深さ及び高さと、当該開先断面の溶接区間における相対位置とを対応付けたデータ(開先データ;例えば、開先断面の3次元座標データ)を取得する(データ取得処理)。
図4(a)は、溶接区間の平面図である。図4(a)に示されるように、センシング制御部32は、柱部品3A,3Bのうち対象の溶接区間の全域を含む部分の形状に基づいて隅角部Wcを原点Oに設定するとともに、原点Oから一方の側面部Wsに沿って水平に延びるX軸、及び原点Oから他方の側面部Wsに沿って水平に延びるY軸、原点Oから上方に沿って延びるZ軸によって規定される直交座標系Sを設定し、当該直交座標系Sに基づいて各開先形状を取得してもよい。センシング制御部32は、取得した各形状を記憶部31に保存する。
エリア割付部33は、対象の溶接区間にゾーンZ1(第1ゾーン)〜ゾーンZm(第mゾーン)(但し、mは2以上の自然数)を割り付ける処理と、当該溶接区間にブロックB1(第1ブロック)〜ブロックBn(第nブロック)(但し、nは2以上の自然数)を割り付ける処理と、を実行する。本実施形態においては、mは5であり、nは7である。ただし、m及びnはこれに限定されず、適宜変更してよい。
エリア割付部33は、柱部品3A,3Bのうち対象の溶接区間の全域を含む部分の形状に基づいて、柱部品3A,3Bにおける部位の種類に応じたゾーンZ1〜Z5を当該溶接区間に割り付ける。本実施形態において、ゾーンZ1は、溶接区間の上流側の端部にエレクションが設けられた部位に割り当てられる。ゾーンZ1の上流側の端部は、建て方治具7で覆われている。ゾーンZ2は、平坦な部位であって、隅角部Wcに対して溶接区間の上流側に位置する部位に割り当てられる。ゾーンZ3は、隅角部Wcを含む部位に割り当てられる。ゾーンZ4は、平坦な部位であって、隅角部Wcに対して溶接区間の下流側に位置する部位に割り当てられる。ゾーンZ5は、溶接区間の下流側の端部にエレクションが設けられた部位に割り当てられる。ゾーンZ5の下流側の端部は、建て方治具7で覆われている。エリア割付部33は、設定した各ゾーンの割り付け(以下、「ゾーン割」という。)を記憶部31に保存する。
また、エリア割付部33は、被溶接部Wの開先の延在方向に沿って順に並ぶブロックB1〜B7を当該溶接区間に割り付ける。本実施形態において、ブロックB1は、ゾーンZ1が割り当てられた区間に割り当てられる。ブロックB2,B3は、ゾーンZ2が割り当てられた区間にこの順で割り当てられる。ブロックB4は、ゾーンZ3が割り当てられた区間に割り当てられる。ブロックB5,B6は、ゾーンZ5が割り当てられた区間にこの順で割り当てられる。ブロックB7は、ゾーンZ5が割り当てられた区間に割り当てられる。エリア割付部33は、ブロックB1〜Bnを割り付ける処理において設定した各ブロックの割り付け(以下、「ブロック割」という。)を記憶部31に保存する。
また、エリア割付部33は、ブロックBi(第iブロック)(但し、iは1〜n−1の任意の自然数)とブロックBi+1(第i+1ブロック)との境界をセンシング対象の開先断面として設定する。本実施形態では、エリア割付部33は、ブロック同士の境界のすべてをセンシング対象の開先断面として設定し、各開先断面に対向する位置を開先センシング位置として設定する。ここでは、ゾーン同士の境界は、ブロック同士の境界に一致している。ただし、ゾーン同士の境界は、ブロック同士の境界に一致していなくてもよい。ブロックB1〜Bnは、ゾーン同士の境界を跨ぐように割り当てられたブロックを含んでいてもよい。例えば、ブロック同士の境界の間隔が一定となるようにブロックB1〜Bnが割り付けられていてもよい。エリア割付部33は、設定した各センシング位置をセンシング制御部32に送信する。
パス割付部34は、溶接区間を溶接する際の複数の溶接パスをブロックBk(第kブロック)(但し、kは1〜nの自然数)に対して割り付ける。本実施形態において、パス割付部34は、ブロックB1〜B7に対して同数の溶接パスをそれぞれ割り付ける。対象の溶接区間は、その全域に亘って共通の溶接パス数で溶接される。なお、「溶接パス」とは、開先の延在方向に沿って行う1回の溶接操作(設計上の区画)をいう。溶接パスは、開先の延在方向に沿って延在する。1つの溶接パスによって1つの溶接ビードが形成され、パス割付部34が設定した複数の溶接パスによって複数の溶接ビードが形成されることにより、被溶接部Wが溶接される。
図4(b)は、開先断面図の一例(図4(a)のIVB−IVB線に沿った開先断面図)を示す図である。パス割付部34は、ブロックB1〜B7のそれぞれの複数の開先断面に対し、溶接パスの延在方向に交差(直交)する各パス断面Pを割り付ける。複数のパス断面Pの割り付け(以下、「パス割」という。)が行われる対象の複数の開先断面は、ブロックB1〜B7のそれぞれの始端の開先断面及び終端の開先断面を含む。ブロックB1〜B6の終端の開先断面、及びブロックB2〜B7の始端の開先断面は、エリア割付部33が設定したセンシング対象の開先断面(すなわち、ブロック同士の各境界)である。パス割付部34は、対象の開先断面の開先データを記憶部31から取得する。ブロックB1の始端の開先断面及びブロックB7の終端の開先断面の各開先データとしては、近傍の開先断面の開先データを用いて設定された開先データが代用されてもよい。
パス割付部34は、記憶部31に保存された開先データに基づいて、各開先断面に対して割り付ける複数のパス断面Pを設定する処理を実行する(第3設定処理)。複数のパス断面Pを設定する処理は、パス断面Pの層数(開先の深さ方向の積層数)を算出する第1処理と、パス断面Pの段数(開先の高さ方向の積層数)を算出する第2処理と、第1処理の算出結果及び第2処理の算出結果を満たすように、開先断面に対して複数のパス断面を割り付ける第3処理と、を含む。
第1処理において、パス断面Pの層数は、各層の厚み(例えば、各層の下端部の厚みD1)が所定範囲内(例えば、9mm未満)となるように、開先断面の深さ(例えば、各層の下端部の深さD2)に応じて算出される。厚みD1の範囲は、例えば4.5mm以上9mm未満に設定されてもよい。パス断面Pの段数は、層ごとに算出される。第2処理において、パス断面Pの各層(図4(b)の例では、開先の奥から2層目)の段数は、各段の幅(例えば各段の最深部の上下方向の幅D3)が所定範囲内(例えば、9mm未満)となるように、開先断面の各層の高さ(例えば各層の最深部の高さD4)に応じて算出される。幅D3の範囲は、例えば4.5mm以上9mm未満に設定されてもよい。第3処理において、算出された層数及び段数によって開先断面を分割(例えば均等割)してパス割を行う。パス割付部34は、分割によって得られた各分割点を、溶接ツール17の狙い位置Kに設定してもよい。また、パス割付部34は、溶接ツール17からの溶加材(例えば、溶接用ワイヤ)の突き出し長さ(例えば5mm)だけ狙い位置Kよりも奥の位置を、補正狙い位置として更に設定してもよい。
パス割付部34は、各開先断面に対して設定した複数のパス割及び複数の狙い位置Kを記憶部31に保存する。パス割付部34は、すべての開先断面のパス断面P数(ここでは、層数及び各層の段数)が共通していない場合には、すべての開先断面のパス断面P数が共通するように調整する調整処理を実行してもよい。パス割付部34は、パス断面P数が最も多い開先断面に合わせて、すべての開先断面のパス断面P数を共通させてもよいし、パス断面P数が最も少ない開先断面に合わせて、すべての開先断面のパス断面P数を共通させてもよい。また、パス割付部34は、調整処理においてパス断面P数を変更すべき開先断面に対して、パス割を再設定する再設定処理を行ってもよい。
動作パターン設定部35は、ゾーンZj(第jゾーン)(但し、jは1〜mの自然数)の柱部品3A,3Bにおける部位の種類に関する情報を取得する処理(種類取得処理)を、それぞれj=1〜m(本実施形態では、j=1〜5)について実行する。具体的には、動作パターン設定部35は、対象の溶接区間のゾーン割と、柱部品3A,3BにおけるゾーンZ1〜Z5が割り当てられた部位の種類とを記憶部31からそれぞれ取得する。
本実施形態において、ゾーンZ1は、柱部品3A,3Bのうち溶接区間の上流側の端部にエレクションが設けられた部位に割り当てられている。ゾーンZ2は、柱部品3A,3Bのうち平坦な部位であって、隅角部Wcに対して溶接区間の上流側に位置する部位に割り当てられている。ゾーンZ3は、柱部品3A,3Bのうち隅角部Wcを含む部位に割り当てられている。ゾーンZ4は、柱部品3A,3Bのうち平坦な部位であって、隅角部Wcに対して溶接区間の下流側に位置する部位に割り当てられている。ゾーンZ5は、柱部品3A,3Bのうち溶接区間の下流側の端部にエレクションが設けられた部位に割り当てられている。
また、動作パターン設定部35は、ゾーンZjの柱部品3A,3Bにおける部位の種類に応じて、ゾーンZjを溶接する際の溶接ツール17の向きを調節する第j動作パターンを設定する処理(第2設定処理)を、それぞれj=1〜m(本実施形態では、j=1〜5)について実行する。例えば、動作パターン設定部35は、ゾーンZ1〜Z5を溶接する際の溶接ツール17の先端の向きの動かし方のパターンをそれぞれ設定する。各動作パターンは、予め設定された複数の動作パターンから選択されてもよい。
図5(a)は、動作パターンを説明するための概略平面図であり、図5(b)は、図5(a)の一部を拡大して示す図である。本実施形態において、ゾーンZ1を溶接する際には、上方から見て、溶接ツール17の先端の向きが、開先の延在方向に沿うように後方に傾斜した向きから開先の延在方向に直交する向きに徐々に変化するように、第1動作パターンが設定されてもよい。ゾーンZ2を溶接する際には、上方から見て、溶接ツール17の先端が開先の延在方向に直交する向きで維持されるように、第2動作パターンが設定されてもよい。
ゾーンZ3は、上述したように、隅角部Wcを含む部位に割り当てられている。図5(b)に示されるように、ゾーンZ3において、被溶接部Wは、延在部W1,W2と角部W3とを含む。延在部W1(第1延在部)は、角部W3から第1方向(図4(a)に示すX軸方向)に沿って延在する部分である。延在部W2(第2延在部)は、角部W3から第2方向(図4(a)に示すY軸方向)に沿って延在する部分である。以下では、角部W3は、特に、被溶接部Wのうち延在部W1の延在方向と延在部W2の延在方向とが為す角を二等分する直線Lcに沿う部分をいう。
ゾーンZ3を溶接する際には、被溶接部Wの延在方向(すなわち、開先の延在方向)に沿って、延在部W1、角部W3、及び延在部W2の順に溶接ツール17を移動させつつ、第1状態、第2状態及び第3状態との間で溶接ツール17の向きを順に変化させるように、第3動作パターンが設定されてもよい。
第1状態は、図5(b)に二点鎖線T1で示されるように、溶接ツール17の先端が延在部W1の延在方向に交差する向きである。第1状態において、溶接ツール17の姿勢は、延在部W1を溶接するのに適した状態となっている。上方から見て、第1状態の溶接ツール17の先端は、延在部W1の開先の延在方向に直交する向きに維持されている。
第2状態は、図5(b)に実線T2で示されるように、溶接ツール17の先端が角部W3の開先に正対する向きである。第2状態において、溶接ツール17の姿勢は、直線Lcに溶接ツール17の先端が沿う状態となっている。上方から見て、第2状態の溶接ツール17の先端は、第1状態から45°傾斜した向き(第3状態から45°傾斜した向き)に維持されている。
第3状態は、図5(b)に二点鎖線T3で示されるように、溶接ツール17の先端が延在部W2の延在方向に交差する向きである。第3状態において、溶接ツール17の姿勢は、延在部W2を溶接するのに適した状態となっている。上方から見て、第3状態の溶接ツール17の先端は、延在部W2の開先の延在方向に直交する向きに対して前方に僅かに傾斜する向きで維持されている。
第3動作パターンにおいては、延在部W1に沿って移動する溶接ツール17が角部W3と距離L1(第1距離)だけ離れた位置から角部W3に到達するまでの間に、溶接ツール17の向きが第1状態から第2状態に徐々に変更される。距離L1は、例えば5mm程度である。また、溶接ツール17の向きが第1状態から第2状態に変更された後、所定時間(例えば0.3秒)だけ溶接ツール17の移動が停止される。そして、所定時間経過後、延在部W2に沿って移動する溶接ツール17が角部W3から角部W3と距離L2(第2距離)だけ離れた位置まで遠ざかる間に、溶接ツール17の向きが第2状態から第3状態に徐々に変更される。距離L2は、例えば10mm程度である。
なお、ゾーンZ3のうち角部W3と距離L1だけ離れた位置よりも上流側では、溶接ツール17の姿勢は第1状態で固定されている。また、ゾーンZ3のうち、角部W3と距離L2だけ離れた位置よりも下流側では、溶接ツール17の姿勢は第3状態で固定されている。
更に、第3動作パターンは、後退パターン(停止処理)及び前進パターン(前進処理)を含んでいてもよい。後退パターンは、延在部W1に沿って移動する溶接ツール17が角部W3と距離L3(第3距離)だけ離れた位置から角部W3に到達するまでの間に、被溶接部Wの開先から遠ざかる向きに溶接ツール17を後退させるように設定されている。距離L3は、例えば距離L1と同じである。ただし、距離L3は、距離L1と異なっていてもよい。前進パターンは、延在部W2に沿って移動する溶接ツール17が角部W3から角部W3と距離L4(第4距離)だけ離れた位置まで遠ざかる間に、後退パターンにおいて後退した分だけ溶接ツール17を前進させるように設定されている。距離L4は、例えば距離L2と同じである。ただし、距離L4は、距離L2と異なっていてもよい。後退パターンにおいて、溶接ツール17が被溶接部Wの開先から遠ざかる距離L5は、例えば3mm程度である。
ゾーンZ4を溶接する際には、上方から見て、溶接ツール17の先端が、開先の延在方向に直交する向きに対して前方に僅かに傾斜する向きで維持されるように、第4動作パターンが設定されてもよい。あるいは、上方から見て、溶接ツール17の先端が開先の延在方向に直交する向きで維持されるように、第4動作パターンが設定されてもよい。ゾーンZ5を溶接する際には、上方から見て、溶接ツール17の先端の向きが、ゾーンZ4で設定された向きから開先の延在方向に沿うように前方に傾斜した向きに徐々に変化するように、第5動作パターンが設定されてもよい。
また、動作パターン設定部35は、第1回目の溶接パス(図4(b)のパス断面P1の溶接操作)においては、ゾーンZ1〜Z5の少なくとも一部をウィービング溶接する(すなわち、溶接ツール17を上下に揺動させる)ように、各動作パターンを設定してもよい。また、動作パターン設定部35は、上方の溶接パス(図4(b)の各パス断面PUの溶接操作)においては、ゾーンZ1〜Z5の少なくとも一部において、溶接ツール17が斜め上方を向くように、各動作パターンを設定してもよい。
速度パターン設定部36は、ブロックBk(第kブロック)(但し、kは1〜nの自然数)を溶接する際の溶接パスの延在方向に交差するパス断面Pの面積に関する情報を記憶部31から取得する処理(面積取得処理)を、それぞれk=1〜n(本実施形態では、k=1〜7)について実行する。例えば、速度パターン設定部36は、対象の溶接区間のブロック割と、各ブロック同士の境界の各開先断面のパス割とを記憶部31からそれぞれ取得する。速度パターン設定部36は、ブロックB1の始端の開先断面のパス割及びブロックB7の終端の開先断面のパス割を併せて取得してもよい。
また、速度パターン設定部36は、ブロックBkを溶接する際の溶接ツール17の移動速度のパターンである第k速度パターンを設定する処理(第1設定処理)を、それぞれk=1〜n(本実施形態では、k=1〜7)について実行する。具体的に、速度パターン設定部36は、ブロックB1〜B7を溶接する際にロボット9Bの溶接ツール17を移動させる速度の調整の仕方のパターンである第1速度パターン〜第7速度パターンをそれぞれ設定する。速度パターン設定部36は、溶接パスごとに第1速度パターン〜第7速度パターンをそれぞれ設定してもよいし、すべての溶接パスで共通の第1速度パターン〜第7速度パターンをそれぞれ設定してもよい。
速度パターン設定部36は、ブロックBkにおける溶接ツール17の移動速度の平均値と、ブロックBkにおけるパス断面Pの面積の平均値とが負の相関関係を有するように、第1速度パターン〜第7速度パターンを設定する。例えば、第1速度パターン〜第7速度パターンは、ブロックB1〜B7のすべての間で、溶接ツール17の移動速度の平均値とパス断面Pの面積の平均値との積が一定となるように設定される。なお、本実施形態において、速度パターン設定部36は、ブロックB1〜B7のすべてにおいて、各ブロックの境界のパス断面Pの面積に応じて、第1速度パターン〜第7速度パターンをそれぞれ設定する。
一例として、パス割付部34が設定したブロックB1,B2の境界のパス断面Pの面積(以下、「第1面積」という。)が、ブロックB2,B3の境界のパス断面Pの面積(以下、「第2面積」という。)よりも大きく、ブロックB3,B4の境界のパス断面Pの面積(以下、「第3面積」という。)よりも小さい場合について説明する。このとき、ブロックB2におけるパス断面Pの面積の平均値(ここでは、第1面積と第2面積との平均値)は、ブロックB3におけるパス断面Pの面積の平均値(ここでは、第2面積と第3面積との平均値)よりも小さい。したがって、速度パターン設定部36は、ブロックB2における溶接ツール17の移動速度の平均値が、ブロックB3における溶接ツール17の移動速度の平均値よりも大きくなるように、第2速度パターン(ブロックB2を溶接する際の溶接ツール17の移動速度のパターン)及び第3速度パターン(ブロックB2を溶接する際の溶接ツール17の移動速度のパターン)をそれぞれ設定する。
速度パターン設定部36は、第2速度パターンとして、第1面積の溶接に適した速度と、第2面積の溶接に適した速度との平均値である一定速度を設定してもよい。あるいは、速度パターン設定部36は、第2速度パターンとして、第1面積の溶接に適した速度から第2面積の溶接に適した速度に徐々に変化するように(ここでは大きくなるように)設定してもよい。このとき、第2速度パターンは、連続的に変化するように設定されてもよいし、段階的に変化するように設定されてもよい。第1,第3〜第7速度パターンも同様に設定されてよい。
速度パターン設定部36は、各速度パターンを設定する際に用いるパス断面Pの面積の溶接に適した速度を、溶加材の供給速度(単位時間当たりの溶加材の供給量)を当該面積で除して求めてもよい。あるいは、速度パターン設定部36は、対象の面積の溶接に適した速度を、溶加材の供給速度を当該面積で除した値に対して補正値を乗じて求めてもよい。補正値としては、例えば溶接時のスパッタによる影響を考慮した補正値、溶加材の単位重量の差に応じた補正値等が挙げられる。溶接時のスパッタによる影響を考慮した補正値は、例えば0.95程度である。補正値は、事前に実験によって定められてもよい。
溶接制御部37は、ロボット9Bを制御する。具体的には、溶接制御部37は、ロボット9Bを移動させる処理と、ロボット9Bを動作させる処理と、溶接ツール17による溶接状態を調節する処理とを実行する。ロボット9Bを移動させる処理において、溶接制御部37は、レール11上における隅角部Wcに対向する位置までロボット9Bを移動させる。ロボット9Bを動作させる処理において、溶接制御部37は、動作パターン設定部35が設定した第j動作パターンに従って溶接ツール17の向きを調節しながら第jゾーンの溶接を行い、速度パターン設定部36が設定した第k速度パターンに従って溶接ツール17が移動しながら第kブロックの溶接を行うように、ロボット9Bを制御する処理(ロボット制御処理)を、それぞれk=1〜n,j=1〜mについて実行する。
また、溶接状態を調節する処理において、溶接制御部37は、溶接パスごとの溶接電流値や溶加材の供給速度等を調節する。溶接制御部37は、各パス断面Pの位置(例えば、開先の奥から何層目であるか)と溶接条件(例えば、溶接電流値及び溶加材の供給速度)とが予め対応付けられたテーブルを参照して溶接状態を調節してもよい。
また、溶接状態を調節する処理として、溶接制御部37は、ゾーンZ3においては、溶接ツール17が延在部W1、角部W3、及び延在部W2の順に移動する間、溶接ツール17に連続的にアーク放電を発生させるようにロボット9Bを制御してもよい。本実施形態において、溶接制御部37は、ブロックB1〜B7(ゾーンZ1〜Z3)に亘って溶接ツール17が移動する間、溶接ツール17に連続的にアーク放電を発生させるようにロボット9Bを制御する。
制御部13のハードウェアは、例えば一つ又は複数の制御用のコンピュータにより構成される。本実施形態では、溶接装置1は、一つのコントローラ100を備えている。制御部13が複数のコンピュータで構成されている場合には、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのコンピュータによって実現されていてもよいし、2つ以上のコンピュータの組み合わせによって実現されていてもよい。
(現場溶接処理)
次に、制御部13による現場溶接処理の概要について説明する。図6は、現場溶接処理の手順を示すフローチャートである。図6に示されるように、制御部13は、まず、ステップS01を実行する。ステップS01では、センシング制御部32が、センシングを行うようにロボット9Aを制御する。具体的に、センシング制御部32は、ロボット9Aを移動させる処理と、ロボット9Aを動作させる処理と、開先センサ15によってセンシングする処理とを実行する。
センシング制御部32は、まず、レール11上における隅角部Wcに対向する位置までロボット9Aを移動させる。次に、図7(a)に示されるように、センシング制御部32は、初期センシング位置に開先センサ15を配置するようにロボット9Aを動作させる。その状態で、センシング制御部32は、開先センサ15によってセンシングするようにロボット9Aを制御して、柱部品3A,3Bのうち対象の溶接区間の全域を含む部分の形状を取得する。
次に、制御部13は、ステップS02を実行する。ステップS02では、エリア割付部33が、ステップS01におけるセンシング結果に基づいて、対象の溶接区間にゾーンZ1〜Z5を割り付ける処理と、当該溶接区間にブロックB1〜B7を割り付ける処理と、を実行する(図4(a)参照)。また、エリア割付部33は、ブロック同士の境界のすべてをセンシング対象の開先断面として設定し、各開先断面に対向する位置を開先センシング位置として設定する。
次に、制御部13は、ステップS03を実行する。ステップS03では、センシング制御部32が、ロボット9Aを動作させる処理と、開先センサ15によってセンシングする処理とを実行する。図7(b)に示されるように、センシング制御部32は、エリア割付部33によって設定された開先センシング位置に開先センサ15を配置するようにロボット9Aを動作させる。その状態で、センシング制御部32は、開先センサ15によってセンシングするようにロボット9Aを制御して、開先データを取得する。センシング制御部32は、この処理をエリア割付部33によって設定されたすべての開先センシング位置において実行し、センシング対象の開先断面として設定されたすべての開先データを取得する。
次に、制御部13は、ステップS04,S05を順に実行する。ステップS04においては、パス割付部34が、溶接区間を溶接する際の複数の溶接パスをブロックB1〜B7に対してそれぞれ割り付ける。ステップS05では、制御部13が、溶接区間の溶接を行うようにロボット9Bを制御する。具体的に、制御部13は、動作パターン設定部35がゾーンZ1〜Z5を溶接する際の溶接ツール17の先端の向きの動かし方のパターンをそれぞれ設定する処理と、速度パターン設定部36がブロックB1〜B7を溶接する際にロボット9Bの溶接ツール17を移動させる速度の調整の仕方のパターンをそれぞれ設定する処理と、溶接制御部37が、対象の溶接区間を溶接するようにロボット9Bを制御する処理と、をそれぞれ実行する。ステップS04,S05の具体的な処理内容については、以下で詳細に説明する。
(パス割付処理)
ステップS04の具体的な処理内容の一例について説明する。図8は、バス割付処理の手順を示すフローチャートである。図9は、バス割付処理を説明するための開先の断面図である。図8に示されるように、制御部13は、まず、ステップS41を実行する。ステップS41では、パス割付部34が、記憶部31から各開先データを取得し、パス割が設定されていない開先断面を、今回パス割を行う開先断面として特定する。パス割付部34は、溶接区間の上流の開先断面から下流の開先断面に向けて順にパス割を行ってもよいし、特殊な開先断面(例えば、面積が最大である開先断面又は面積が最小である開先断面等)に対するパス割を先に行ってもよい。
次に、制御部13は、ステップS42を実行する。ステップS42では、パス割付部34が、特定した開先断面に対してパス断面Pの層数を算出する第1処理を実行する。図9(a)に示されるように、パス割付部34は、各層の厚みD1が所定範囲内となるように、開先断面の深さD2に応じてパス断面Pの層数を算出する。
次に、制御部13は、ステップS43を実行する。ステップS43では、パス割付部34が、特定した開先断面に対してパス断面Pの段数を算出する第2処理を実行する。図9(b)に示されるように、パス割付部34は、パス断面Pの段数を層ごとに算出する。パス割付部34は、各段の幅D3が所定範囲内となるように、開先断面の各層の高さD4に応じてパス断面Pの各層(図9(b)の例では、開先の奥から2層目)の段数を算出する。
次に、制御部13は、ステップS44を実行する。ステップS44では、パス割付部34が、第1処理の算出結果及び第2処理の算出結果を満たすように、特定した開先断面に対して複数のパス断面を割り付ける第3処理を実行する。パス割付部34は、算出された層数及び各段数によって開先断面を分割(例えば均等割)してパス割を行う(図4(b)参照)。また、パス割付部34は、分割によって得られた各分割点を、溶接ツール17の狙い位置Kに設定してもよい。パス割付部34は、設定したパス割及び各狙い位置Kを記憶部31に保存する。
次に、制御部13は、ステップS45を実行する。ステップS45では、パス割付部34が、パス割を行う対象のすべての開先断面に対するパス割を設定したか否かを確認する。本実施形態では、ブロックB1〜B7のそれぞれの始端の開先断面及び終端の各開先断面がパス割を行う対象である。パス割を行う対象のすべての開先断面のうちパス割を設定していない開先断面がある場合、制御部13は、処理をステップS41に戻す。以後、制御部13は、パス割を行う対象のすべての開先断面に対するパス割を設定するまで、ステップS41〜44を繰り返し実行する。
パス割を行う対象のすべての開先断面に対するパス割を設定した後、制御部13は、ステップS46を実行する。ステップS46では、パス割付部34が、パス割を行ったすべての開先断面の溶接パス数(すなわち、パス断面P数)が共通しているか否かを確認する。例えば、パス割付部34は、対象のすべての開先断面のパス断面Pの層数が共通しているか否か、及び、対象のすべての開先断面のパス断面Pの各層の段数が共通しているか否かを確認する。
ステップS46において、パス割を行ったすべての開先断面の溶接パス数が共通していないと判断した場合、制御部13は、ステップS47を実行する。ステップS47では、パス割付部34が、パス割を行ったすべての開先断面の溶接パス数が共通するように各パス割を調整する。
本実施形態では、すべての開先断面のパス断面Pの層数が共通するとともにすべての開先断面のパス断面Pの各層の段数が共通するように各パス割りが調整される。例えば、パス割付部34は、パス断面Pの層数が最も多い開先断面に合わせて、当該開先断面のパス断面Pの層数によってすべての開先断面のパス断面Pの層数を共通させる。あるいは、パス割付部34は、パス断面Pの層数が最も少ない開先断面に合わせて、当該開先断面のパス断面Pの層数によってすべての開先断面のパス断面Pの層数を共通させる。パス断面Pの各層の段数についても同様に、段数が最も多い開先断面(又は段数が最も少ない開先断面)に合わせて、すべての開先断面に対して層ごとに段数を共通させる。
パス割付部34は、上記の調整によってパス断面P数を変更すべき開先断面に対して、パス割及び各狙い位置Kを再設定する。例えば、パス割付部34は、共通のパス断面P数の層数及び各段数によって開先断面を分割(例えば均等割)してパス割を行う。パス割付部34は、記憶部31のパス割及び各狙い位置Kを更新する。
以上により、制御部13は、パス割付処理用の制御を完了する。なお、ステップS46において、パス割を行ったすべての開先断面の溶接パス数が共通していると判断した場合、制御部13は、ステップS46を省略してパス割付処理用の制御を完了する。
(ロボット溶接処理)
続いて、上記ステップS05の具体的な処理内容について説明する。図10は、ロボット溶接処理の手順を示すフローチャートである。なお、図10では、1回の溶接パスによるロボット溶接処理の手順を示している。1回の溶接パスは、ステップS06でパス割を行ったすべての開先断面の同じ位置のパス断面P(ここでは、同じ層の同じ段のパス断面P)を通過して、対象の溶接区間の全域に亘って延在する。本実施形態において、すべての溶接パス(パス断面P数分の溶接パス)によるロボット溶接処理は、レール11上における隅角部Wcに対向する位置にロボット9Bが停止した状態で実行される。
図10に示されるように、制御部13は、まず、ステップS51を実行する。ステップS51では、動作パターン設定部35及び速度パターン設定部36が、対象のエリア(ここでは、ゾーンZjのブロックBk)を確認する。具体的に、動作パターン設定部35は、対象の溶接区間のゾーン割及びブロック割に基づき、対象のエリアのゾーンZjがゾーンZ1〜Z5のうちのいずれであるかを確認する。また、速度パターン設定部36は、対象のエリアのブロックBkがブロックB1〜B7のうちのいずれであるかを確認する。
次に、制御部13は、ステップS52を実行する。ステップS52では、動作パターン設定部35が、柱部品3A,3BにおけるゾーンZjが割り当てられた部位の種類を記憶部31から取得する。柱部品3A,3BにおけるゾーンZjが割り当てられた部位の種類は、溶接区間の上流側の端部にエレクションが設けられた部位(j=1の場合)と、平坦な部位であって、隅角部Wcに対して溶接区間の上流側に位置する部位(j=2の場合)と、隅角部Wcを含む部位(j=3の場合)と、平坦な部位であって、隅角部Wcに対して溶接区間の下流側に位置する部位(j=4の場合)と、溶接区間の下流側の端部にエレクションが設けられた部位(j=5の場合)とを含む(図4(a)参照)。
次に、制御部13は、ステップS53を実行する。ステップS53では、動作パターン設定部35が、ゾーンZjの柱部品3A,3Bにおける部位の種類に応じて、ゾーンZjを溶接する際の溶接ツール17の向きを調節する第j動作パターンを設定する。動作パターン設定部35は、第1動作パターン〜第5動作パターンのいずれかを設定する。第1動作パターンでは、上方から見た溶接ツール17の先端の向きは、開先の延在方向に沿うように後方に傾斜した向きから開先の延在方向に直交する向きに徐々に変化する(図5(a)参照)。第2動作パターンでは、溶接ツール17の先端は、上方から見て、開先の延在方向に直交する向きで維持される。
第3動作パターンでは、図5(b)に示されるように、溶接ツール17の向きは、溶接ツール17が延在部W1、角部W3、及び延在部W2の順に移動する間に第1状態(図5(b)に二点鎖線T1で示される状態)、第2状態(図5(b)に実線T2で示される状態)及び第3状態(図5(b)に二点鎖線T3で示される状態)との間で徐々に変化する。具体的には、延在部W1に沿って移動する溶接ツール17が角部W3と距離L1だけ離れた位置から角部W3に到達するまでの間に、溶接ツール17の向きが第1状態から第2状態に徐々に変化する。また、溶接ツール17の向きが第1状態から第2状態に変更した後、その状態で、所定時間だけ溶接ツール17の移動が停止する。そして、所定時間経過後、延在部W2に沿って移動する溶接ツール17が角部W3から角部W3と距離L2だけ離れた位置まで遠ざかる間に、溶接ツール17の向きが第2状態から第3状態に徐々に変化する。
更に、第3動作パターンでは、延在部W1に沿って移動する溶接ツール17が角部W3と距離L3だけ離れた位置から角部W3に到達するまでの間に、被溶接部Wの開先から遠ざかる向きに溶接ツール17を後退させる。また、延在部W2に沿って移動する溶接ツール17が角部W3から角部W3と距離L4だけ離れた位置まで遠ざかる間に、後退パターンにおいて後退した分だけ溶接ツール17を前進させる。
第4動作パターンでは、溶接ツール17の先端は、上方から見て、開先の延在方向に直交する向きに対して前方に僅かに傾斜する向きで維持される(図5(a)参照)。あるいは、溶接ツール17の先端は、上方から見て、開先の延在方向に直交する向きで維持される。第5動作パターンでは、上方から見た溶接ツール17の先端の向きは、ゾーンZ4で設定された向きから開先の延在方向に沿うように前方に傾斜した向きに徐々に変化する(図5(a)参照)。
次に、制御部13は、ステップS54を実行する。ステップS54では、速度パターン設定部36が、ブロックBkのパス断面Pの面積に関する情報を記憶部31から取得する。速度パターン設定部36は、少なくともブロックBkの始端及び終端の各開先断面のパス断面Pの面積を取得する。速度パターン設定部36は、ブロックBkの始端及び終端の各開先断面のパス割をそれぞれ取得してもよい。あるいは、速度パターン設定部36は、各ブロック同士の境界の各開先断面のパス割と、ブロックB1の始端の開先断面のパス割と、ブロックB7の終端の開先断面のパス割とを同時に取得してもよい。
次に、制御部13は、ステップS55を実行する。ステップS55では、速度パターン設定部36が、ブロックBkを溶接する際の溶接ツール17の移動速度のパターンである第k速度パターンを設定する。速度パターン設定部36は、ブロックBkにおける溶接ツール17の移動速度の平均値と、ブロックBkにおけるパス断面Pの面積の平均値とが負の相関関係を有するように、第k速度パターンを設定する。第k速度パターンとして、ブロックBkの始端のパス断面Pの面積の溶接に適した速度と、ブロックBkの終端のパス断面Pの面積の溶接に適した速度との平均値である一定速度が設定されてもよい。あるいは、第k速度パターンとして、ブロックBkの始端のパス断面Pの面積の溶接に適した速度からブロックBkの終端のパス断面Pの面積の溶接に適した速度に徐々に変化することが設定されてもよい。
次に、制御部13は、ステップS56を実行する。ステップS56では、動作パターン設定部35及び速度パターン設定部36が、対象の溶接区間内のすべてのエリア(ここでは、ゾーンZ1〜Z5、ブロックB1〜B7)に対する各設定が完了したか否かを確認する。換言すると、動作パターン設定部35が第j動作パターンの設定をj=1〜5について実行し、速度パターン設定部36が第k速度パターンの設定をk=1〜7について実行したか否かを確認する。
設定が完了していないエリアがある場合(ここでは、速度パターン設定部36がk=1〜7の少なくとも1つについて第k速度パターンの設定を実行していないと判断した場合)、制御部13は、処理をステップS51に戻す。以後、制御部13は、対象の溶接区間内のすべてのエリアに対する各設定が完了するまで、ステップS51〜S55を繰り返し実行する。すなわち、動作パターン設定部35は、第j動作パターンの設定をj=1〜5について実行し、速度パターン設定部36は、第k速度パターンの設定をk=1〜7について実行する。
対象の溶接区間内のすべてのエリアに対する各設定が完了した後、制御部13は、ステップS57を実行する。ステップS57では、溶接制御部37が、対象の溶接区間を溶接するようにロボット9Bを制御する。具体的に、溶接制御部37は、ロボット9Bを動作させる処理と、溶接ツール17による溶接状態を調節する処理とを実行する。ロボット9Bを動作させる処理において、溶接制御部37は、動作パターン設定部35が設定した第j動作パターンに従って溶接ツール17の向きを調節しながら速度パターン設定部36が設定した第k速度パターンに従って溶接ツール17が移動するように、ロボット9Bを制御する処理を、それぞれk=1〜7,j=1〜5について実行する。また、溶接状態を調節する処理において、溶接制御部37は、溶接電流値や溶加材の供給速度等を調節する。また、溶接制御部37は、ブロックB1〜B7(ゾーンZ1〜Z3)に亘って溶接ツール17が移動する間、溶接ツール17に連続的にアーク放電を発生させるようにロボット9Bを制御する。
以上により、制御部13は、1回の溶接パスによるロボット溶接処理用の制御を完了する。対象の溶接区間の溶接は、パス断面P数分の回数の上記ロボット溶接処理用の制御が繰り返されることによって完了する。制御部13は、すべての溶接パスが完了するまで、以上のロボット溶接処理用の制御を繰り返し実行する。すべての溶接パスの完了により、対象の溶接区間(被溶接部Wのうちの4分の1の開先に設定された区間)の溶接が完了する。制御部13は、この現場溶接処理を溶接区間ごとに繰り返し、被溶接部Wの開先の全周分の溶接を完了する。
なお、制御部13は、上記ステップS52,S53,S54のそれぞれにおいて、k=1〜7,j=1〜5のすべてについて処理を実行した後に次のステップを実行するように構成されていてもよい。この場合、制御部13は、ステップS51,S56を省略してステップS57を実行する。
また、制御部13は、被溶接部Wのうち、対象の溶接区間に隣接する溶接区間の溶接の進捗に応じて、対象の溶接区間の始端(ここでは、ゾーンZ1の始端)及び終端(ここでは、ゾーンZ5の終端)において、溶接ビードの盛り方を、カスケード状(階段状)とするか、逆カスケード状(上下反転させた階段状)とするかを判断し、当該判断結果に基づいて、各溶接パスの始点及び終点を調節する処理を更に実行してもよい。
以上説明した溶接装置1の作用効果について説明する。本実施形態に係る溶接装置1においては、ロボット9Bを制御する制御部13が、溶接パスのパス断面Pの面積に関する情報を取得する面積取得処理と、ブロックBkを溶接する際の溶接ツール17の移動速度のパターンである第k速度パターンを設定する第1設定処理と、第k速度パターンに従って溶接ツール17が移動しながらブロックBkの溶接を行うように、ロボット9Bを制御するロボット制御処理と、をそれぞれk=1〜7について実行する。
ここで、第1速度パターン〜第7速度パターンは、ブロックBkにおける溶接ツール17の移動速度の平均値と、ブロックBkにおけるパス断面Pの面積の平均値とが負の相関関係を有するようにそれぞれ設定される。これにより、ブロックB1〜B7に亘って形成される溶接ビードが、各ブロック間のパス断面Pの面積の大小に応じた太さとなるように、ロボット9Bの溶接ツール17の移動速度が調整される。そのため、1回の溶接パスにおいて他の溶接条件を調整することなく(例えば、溶加材の供給速度等が一定である場合でも)溶接ビードの太さが調整される。したがって、柱部品3A,3Bの被溶接部Wの開先の形状が場所ごとに一定でない場合であっても(すなわち、溶接区間にテーパーギャップが存在する場合であっても)、溶接ビードの不足箇所や過剰箇所等が生じるおそれが低減される。以上により、現場溶接の自動化の際の溶接の品質の低下を抑制可能となる。
ところで、例えば、溶接区間にテーパーギャップが存在する場合、太さが一定の溶接ビードしか形成できないと、テーパーギャップに応じて溶接区間の途中で溶接パス数を増減させることがある。溶接パス数を増減させる際には、溶接ツール17のアーク放電を中断させるので、溶接の品質の低下につながるおそれがある。これに対し、溶接装置1によれば、各ブロック間のパス断面Pの面積の大小に応じた太さの溶接ビードが形成されるので、溶接区間にテーパーギャップが存在する場合であっても、溶接区間の全域に亘って共通の溶接パス数で溶接することが可能となる。そして、溶接装置1において制御部13は、ブロックB1〜B7に対して同数の溶接パスをそれぞれ割り付けるので、溶接ツール17のアーク放電の中断に起因する溶接の品質の低下を抑制可能となる。
また、溶接装置1において、溶接区間は、柱部品3A,3Bにおける開先が形成された部位の種類が互いに異なるゾーンZ1〜ゾーンZ5を含む。制御部13は、ゾーンZjの部位の種類に関する情報を取得する種類取得処理と、ゾーンZjを溶接する際の溶接ツールの向きを調節する第j動作パターンを設定する第2設定処理と、をそれぞれj=1〜5について実行する。制御部13は、ロボット制御処理では、第j動作パターンに従って溶接ツール17の向きを調節しながらゾーンZjの溶接を行うように、ロボット9Bを制御する。これにより、溶接区間に、柱部品3A,3Bにおける開先が形成された部位の種類が互いに異なる部分が存在している場合であっても、現場溶接の自動化が可能となる。
溶接装置1において、柱部品3A,3Bは、互いに交差する2つの側面部Wsと、2つの側面部Wsの間の隅角部Wcと、を含む。開先は、一の側面部Wsから当該一の側面部Wsとは別の側面部Wsに亘って延在し、2つの側面部Wsには、開先を跨ぐようにエレクション(エレクションピース5及び建て方治具7)がそれぞれ設けられている。開先には、1つのエレクションに覆われた位置から隣接するエレクションに覆われた位置までが溶接区間として設定されている。換言すると、本実施形態における溶接区間は、隅角部Wcやエレクションに覆われた位置を含む。このように、溶接装置1によれば、隅角部Wcやエレクションに覆われた位置等が混在している溶接区間を含むあらゆる溶接区間を自動化によって現場溶接することができる。
また、溶接装置1は、開先の延在方向(ブロックB1〜B7の並ぶ方向)に交差する開先断面の位置、当該開先断面の深さ、及び当該開先断面の高さを含む開先データを取得する開先センサ15を更に備える。制御部13は、開先センサ15によって、各ブロック同士の境界の開先断面の開先データを取得するデータ取得処理と、開先データに基づいて、開先断面に対して割り付ける複数のパス断面Pを設定する第3設定処理と、を更に実行する。第3設定処理は、パス断面Pの各層の厚みD1が所定範囲内となるように、開先断面の深さD2に応じてパス断面Pの層数を算出する第1処理と、パス断面Pの各段の幅D3が所定範囲内となるように、開先断面の各層の高さD4に応じてパス断面Pの各層の段数を算出する第2処理と、第1処理の算出結果及び第2処理の算出結果を満たすように、開先断面に対して複数のパス断面Pを割り付ける第3処理と、を含む。第3処理では、開先断面が第1処理の算出結果で深さ方向に分割されるとともに当該開先断面の各層が第2処理の算出結果で高さ方向に分割され、得られた各分割点が溶接ツール17の狙い位置Kに設定される。
上記の構成により、開先断面に対する複数のパス断面Pの割り付けを自動化によって行うことができるとともに、パス断面Pの割り付けを活用して溶接ツール17の狙い位置Kを設定することが可能となる。溶接が行われる際には、作業のし易さの観点から、複数のパス断面Pに対し、最も深い層から順に溶接するとともに各層において下段から上段に順に溶接する場合がある。このような場合、上記の狙い位置Kによれば、溶接ビードが形成されていない位置のうち最も奥に向けて溶加材が供給されるので、溶接ビード同士の間に隙間が形成されにくい。したがって、現場溶接の自動化の際の溶接の品質の低下をより一層抑制できる。
また、本実施形態に係る溶接装置1においては、ロボット9Bを制御する制御部13が、被溶接部Wの延在方向に沿って溶接ツール17を移動させるようにロボット9Bを制御する処理と、溶接ツール17が移動する間、溶接ツール17に連続的にアーク放電を発生させるようにロボット9Bを制御する処理と、溶接ツール17の向きを変更させるようにロボット9Bを制御する処理と、を実行する。また、溶接ツール17の向きは、延在部W1に沿って移動する溶接ツール17が角部W3と距離L1だけ離れた位置から角部W3に到達するまでの間に徐々に変更されるとともに、延在部W2に沿って移動する溶接ツール17が角部W3から角部W3と距離L2だけ離れた位置まで遠ざかる間に徐々に変更される。このため、溶接ツール17を移動させながら溶接ツール17の姿勢がゆっくり変換されるので、角部W3に溶着金属が過剰に付着することが抑制される。これにより、溶着金属の垂れ等が抑制され、溶接ビードの形状が滑らかになる。したがって、角部W3における溶接の品質の低下を抑制することができる。
ところで、角部W3における開先断面は、その他の開先断面よりも大きい。本実施形態において、角部W3の開先断面の大きさは、延在部W1,W2の開先断面の大きさの約1.4倍である。そのため、角部W3において溶接を中断せずに溶接ツール17の姿勢を変換させると、角部W3において溶接ビードの量が不足(いわゆる角落ち)しやすい。
溶接装置1において、溶接ツール17を移動させる処理は、延在部W1に沿って移動する溶接ツール17が角部W3と距離L3だけ離れた位置から角部W3に到達するまでの間に、被溶接部Wの開先から遠ざかる向きに溶接ツール17を後退させる後退処理と、延在部W2に沿って移動する溶接ツール17が角部W3から角部W3と距離L4だけ離れた位置まで遠ざかる間に、後退処理において後退した分だけ溶接ツール17を前進させる前進処理と、を含んでいる。これにより、溶接ツール17の先端が角部W3に正対する際の溶接ツール17の位置が被溶接部Wの開先から離間するので、角部W3において突出した形状の溶接ビードが形成されやすくなる。したがって、溶接ビードの角落ちを抑制することができる。
また、溶接装置1において、制御部13は、溶接ツール17の向きを第1状態から第2状態に変更した後、所定時間だけ溶接ツール17の移動を停止させるようにロボット9Bを制御する処理を更に実行し、所定時間だけ移動が停止された後、溶接ツール17の向きが第2状態から第3状態に変更される。これにより、溶接ツール17の移動の一時的な停止によって角部W3に十分な量の溶接金属が確保される。したがって、溶接ビードの角落ちを抑制することができる。
以上の実施形態は、本発明に係る現場溶接装置の一実施形態について説明したものである。本発明に係る現場溶接装置は、上述した溶接装置1を任意に変更したものとすることができる。
例えば、上記の実施形態ではロボット9Aとロボット9Bとが同型であるが、ロボット9Aとロボット9Bとは互いに異なる型のものであってもよい。また、溶接装置1がロボット9を2台備えることは必須ではなく、ロボット9は1台のみであってもよい。この場合、1台のロボット9のエンドエフェクタが選択的に交換可能であればよい。そして、センシング工程ではロボット9に開先センサ15を取付けてセンシング用ロボットとして機能させ、溶接工程ではロボット9に溶接ツール17を取付けて溶接用ロボットとして機能させるようにしてもよい。或いは、1台のロボット9のアーム先端に開先センサ15と溶接ツール17とが両方とも取付けられてもよい。この場合、ロボット9は、センシング工程では開先センサ15を使用するセンシング用ロボットとして機能し、溶接工程では溶接ツール17を使用する溶接用ロボットとして機能してもよい。
また、上記の実施形態で説明したゾーン割、ブロック割、及びパス割の決め方は一例であって、適宜変更してよい。例えば、上記実施形態では、対象の開先断面内の全領域に対して一連のパス割を行ったが、対象の開先断面内の複数の領域ごとにパス割を行ってもよい。例えば、対象の開先断面内の奥側の領域と手前側の領域とに対してそれぞれパス割を行ってもよい。このとき、奥側の領域の最外層が垂直に延びるように各層を設定してもよい。これにより、手前側の領域を溶接するための溶接ツール17の動作を簡易にすることができる。
また、制御部13は、パス割付処理において、すべての開先断面で共通させるパス断面P数を設定した後に、当該パス断面P数によって各開先断面にパス割を行ってもよい。制御部13は、特殊な開先断面(例えば、面積が最大である開先断面又は面積が最小である開先断面等)に対するパス割を先に行い、当該開先断面に設定したパス断面P数をすべての開先断面で共通させるパス断面P数に設定し、当該パス断面P数によって他の開先断面に対するパス割を行ってもよい。このとき、パス割付部34は、共通のパス断面P数の層数及び各段数によって開先断面を分割(例えば均等割)してパス割を行ってもよい。
また、上記の実施形態で説明した溶接区間は一例であって、適宜変更してよい。例えば、上記実施形態では、溶接区間は隅角部Wcを含んでいたが、隅角部Wcを含まない直線状の溶接区間であってもよい。例えば、柱部品3A,3B等の溶接対象物において、一の側面部Wsのうち互いに異なる位置のそれぞれに、開先を跨ぐように2つのエレクション(エレクションピース5及び建て方治具7)が設けられていてもよい。この場合、当該開先には、当該2つのエレクションのうち一方のエレクションに覆われた位置から他方のエレクションに覆われた位置までが溶接区間として設定されてもよい。このような溶接区間が設定される例としては、溶接対象物としての柱部品3A,3Bが、大断面の柱を構成する場合等が挙げられる。
また、例えば上記のように隅角部Wcを含まない直線状の溶接区間の溶接を行う場合、制御部13は、ロボット9Bを移動させる処理において、側面部Wsに対向する位置(例えば、2つのエレクション間の中心に対向する位置)までロボット9Bを移動させてもよい。制御部13は、この位置にロボット9Bを停止させた状態で、溶接区間の溶接を行うようにロボット9Bを制御してもよい。同様に、制御部13は、ロボット9Aを移動させる処理において、側面部Wsに対向する位置(例えば、2つのエレクション間の中心に対向する位置)までロボット9Aを移動させ、この位置にロボット9Aを停止させた状態で、溶接区間の開先のセンシングを行うようにロボット9Aを制御してもよい。