JP2021007375A - 組換え微生物を用いるグルタミン酸−5−セミアルデヒドの製造方法 - Google Patents

組換え微生物を用いるグルタミン酸−5−セミアルデヒドの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】安価かつ安定な原料からグルタミン酸−5−セミアルデヒド、ピロリン−5−カルボン酸およびL−ピログルタミン酸の1つ以上を生産する方法を提供すること。【解決手段】ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素をコードする遺伝子およびピロリン−5−カルボン酸還元酵素をコードする遺伝子の発現が抑制されるか、または、これら酵素の活性が抑制されるように改変が行われた、組換え微生物。【選択図】なし

Description

本発明は、産業上有用な化合物を生産するように人為的に遺伝子操作された組換え微生物、および、当該組換え微生物を用いて、グルタミン酸−5−セミアルデヒド、ピロリン−5−カルボン酸およびL−ピログルタミン酸のうちの1つ以上を製造する方法に関する。
グルタミン酸−5−セミアルデヒド(CASNo.2886−91−1)は、例えば、有機合成用原料、ポリアミド原料中間体、ポリウレタン原料中間体、イソシアナート原料中間体、PET原料中間体、溶媒原料中間体として重要な化合物である(特許文献1〜4)。生体内において、グルタミン酸−5−セミアルデヒドは、L−グルタミン酸から出発し、中間代謝産物としてL−グルタミン酸−5−リン酸を経由して生成する(図1参照)。酵素的には、L−オルニチンと2−オキソグルタル酸を基質として、オルニチンアミノトランスフェラーゼ処理により合成される(非特許文献1)。また、グルタミン酸−5−セミアルデヒドを生産する天然の微生物を取得した例が報告されているが、その生合成メカニズムについては明記されていない(特許文献5)。
ピロリン−5−カルボン酸(CASNo.2906−39−0)は、グルタミン酸−5−セミアルデヒドが分子内縮合することによって生成する化合物である。グルタミン酸−5−セミアルデヒドに変換されることによって、グルタミン酸−5−セミアルデヒドについて挙げた前記目的に使用されるとともに、本化合物そのものも、除草剤原料、医薬中間体原料として有用な化合物である(特許文献6、非特許文献2)。生体内においては、グルタミン酸−5−セミアルデヒドの自発的環化によって生じ、必須アミノ酸であるプロリンへと酵素的に還元される。有機合成においては、例えば、(S)−5−Hydroxy−2−aminovaleric Acidを酸性条件下、酸化クロム(IV)存在下で80℃に加熱することにより合成されるが、酸化クロム(IV)は化審法において第一種指定化学物に指定されており、その使用は厳しく制限を受ける(非特許文献3)。前記した2つの化合物は、産業的に重要な化合物でありながら、有用な製造方法は未だ確立されていない。
L−ピログルタミン酸(CASNo.98−79−3)は、L−グルタミン酸が分子内縮合することによって生成する化合物である。L−ピログルタミン酸は、生体への無害性から、保湿を目的とした皮膚外用医薬品、化粧品の保湿剤として実用化されている(特許文献7〜9)。L−ピログルタミン酸は、有機合成においては、L−グルタミン酸を酸性条件下で175℃に加熱脱水することにより行われる。しかしながら、この製造法は加熱温度が175℃と非常に高温高圧であり、かつ、酸性条件下で行われるため、望ましくない(非特許文献4)。L−ピログルタミン酸のそのほかの合成法として、L−グルタミン酸から酵素的に生産する手法が報告されている(特許文献10)。
特許第1210190号公報 特表2015−519083号公報 特許第5773990号公報 特許第5912529号公報 特開昭53−136586号公報 特許第4418540号公報 特公平3−29764号公報 特許第4522580号公報 特開昭61−60620号公報 特許第2698056号公報
Stranska et. Al. Biochemical characterization of pea ornithine−δ−aminotransferase: Substrate specificity and inhibition by di− and polyamines, Biochimie, Horand, Elsevier Masson SAS, 2010, 92, 940−948. Hamed et.al. Stereoselective preparation of lipidated carboxymethylproline/pipecolic acid derivatives via coupling of engineered crotonases with an alkylmalonyl−CoA synthetase, Organic & Biomolecular Chemistry,UK, The Royal Society of Chemistry, 21 December 2013, 11, 47, 8191−8196 Luesch et.al. Biosynthesis of 4−Methylproline in Cyanobacteria: Cloning ofnosE and nosF Genes and Biochemical Characterization of the Encoded Dehydrogenase and Reductase Activities, Journal of Organic Chemistry, USA, American Chemical Society, 2003, 68, 83−91 Beecham et. Al. L−Pyrrolidonecarboxylic Acid. Journal of the American Chemical Society, ACS Publication, September 1954, 76, 18, 4613−4614.
本発明の課題は、安価かつ安定な原料である糖から、遺伝的に操作された微生物を使用し、グルタミン酸−5−セミアルデヒド、ピロリン−5−カルボン酸およびL−ピログルタミン酸のうちの1つ以上を生産する方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、微生物がもつL−プロリン生合成経路に関連する遺伝子を操作することによって、糖からグルタミン酸−5−セミアルデヒド、ピロリン−5−カルボン酸およびL−ピログルタミン酸のうちの1つ以上を生産することのできる組換え微生物が得られることを見出した。
すなわち本発明は以下を提供する:
[1]ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素をコードする遺伝子およびピロリン−5−カルボン酸還元酵素をコードする遺伝子の発現が抑制されるか、または、これら酵素の活性が抑制されるように改変が行われた、組換え微生物;
[2]グルタミン酸−5−リン酸合成酵素の活性が増強されるように更に改変が行われた、[1]に記載の組換え微生物;
[3]前記改変により、グルタミン酸−5−リン酸合成酵素のフィードバック阻害が解除される、[2]に記載の組換え微生物;
[4]前記ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素をコードする遺伝子が、
・配列番号27に示される塩基配列からなるDNA、
・配列番号27に示される塩基配列に相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA、
・配列番号27に示される塩基配列と85%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつ、ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA、
・配列番号27に示される塩基配列によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列に対して1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAであって、ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA、または
・配列番号27に示される塩基配列の縮重異性体からなるDNA
であり、
および/または、
前記ピロリン−5−カルボン酸還元酵素をコードする遺伝子が、
・配列番号28に示される塩基配列からなるDNA、
・配列番号28に示される塩基配列に相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ピロリン−5−カルボン酸還元酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA
・配列番号28に示される塩基配列と85%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつ、ピロリン−5−カルボン酸還元酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA、
・配列番号28に示される塩基配列によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列に対して1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAであって、ピロリン−5−カルボン酸還元酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA、または
・配列番号28に示される塩基配列の縮重異性体からなるDNA
である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の組換え微生物;
[5]前記ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素がEC 1.2.1.88で表わされる酵素から選択され、および/または
前記ピロリン−5−カルボン酸還元酵素がEC 1.5.1.2で表わされる酵素から選択される、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の組換え組成物。
[6]前記ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素が、配列番号23に示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素活性を有するタンパク質であり、
および/または、
前記ピロリン−5−カルボン酸還元酵素が、配列番号24に示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、ピロリン−5−カルボン酸還元酵素活性を有するタンパク質である、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の組換え微生物;
[7]前記微生物が、エシェリヒア属である、[1]〜[6]のいずれか1項に記載の組換え微生物;
[8]前記微生物が、エシェリヒア コリである、[1]〜[7]のいずれか1項に記載の組換え微生物;
[9]前記グルタミン酸−5−リン酸合成酵素が、
・配列番号29に示される塩基配列と85%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつ、グルタミン酸−5−リン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA、または、
・配列番号29に示される塩基配列によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列に対して1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAであって、グルタミン酸−5−リン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA
によりコードされる、[2]〜[8]のいずれか1項に記載の組換え微生物;
[10]配列番号25に示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、グルタミン酸−5−リン酸合成酵素活性を有するタンパク質を生産する、[2]〜[9]のいずれか1項に記載の組換え微生物;
[11]配列番号25に示されるアミノ酸配列に対し、
107番目のアスパラギン酸残基のアスパラギン残基への置換、
117番目のアラニン残基のバリン残基への置換、および
143番目のグルタミン酸残基のリジン残基への置換
を含むアミノ酸配列に対して80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、グルタミン酸−5−リン酸合成酵素活性を有するタンパク質を生産する、[2]〜[10]のいずれか1項に記載の組換え組成物;
[12]配列番号25に示されるアミノ酸配列に対し、
107番目のアスパラギン酸残基のアスパラギン残基への置換、
117番目のアラニン残基のバリン残基への置換、および
143番目のグルタミン酸残基のリジン残基への置換
からなる群から選択される1以上の変異を有し、かつ、グルタミン酸−5−リン酸合成酵素活性を有するタンパク質を生産する、[2]〜[11]のいずれか1項に記載の組換え組成物;
[13]前記グルタミン酸−5−リン酸合成酵素をコードする遺伝子が、グルタミン酸−5−セミアルデヒド還元酵素をコードする遺伝子とのオペロンとして含まれる、[2]〜[12]のいずれか1項に記載の組換え組成物;
[14][1]〜[13]のいずれか1項に記載の組換え微生物を培養することを含む、グルタミン酸−5−セミアルデヒドの製造方法;
[15][1]〜[13]のいずれか1項に記載の組換え微生物を培養することを含む、ピロリン−5−カルボン酸の製造方法;
[16][1]〜[13]のいずれか1項に記載の組換え微生物を培養することを含む、L−ピログルタミン酸の製造方法。
本発明により、安価かつ安定な原料である糖から、グルタミン酸−5−セミアルデヒド、ピロリン−5−カルボン酸およびL−ピログルタミン酸のうちの1つ以上を生産することができる。
微生物細胞内でのプロリン生合成経路を示す。 大腸菌W3110株由来のPutA酵素のアミノ酸配列(1〜760残基)を示す。 大腸菌W3110株由来のPutA酵素のアミノ酸配列(761〜1320残基)を示す。 大腸菌W3110株由来のProC酵素のアミノ酸配列を示す。 大腸菌W3110株由来のProB酵素のアミノ酸配列を示す。 大腸菌W3110株由来のProA酵素のアミノ酸配列を示す。 実施例3−1における培養上清のLCMS分析TICチャートを示す。 実施例3−2における培養上清のLCMS分析TICチャートを示す。
以下、本発明を実施するための形態について具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明にかかる組換え微生物は、ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素をコードする遺伝子およびピロリン−5−カルボン酸還元酵素をコードする遺伝子の発現が抑制されるか、あるいは、これら酵素の活性が抑制されるように改変が行われたものである。すなわち、本発明の組換え微生物は、宿主微生物に対して、ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素をコードする遺伝子およびピロリン−5−カルボン酸還元酵素をコードする遺伝子の発現が抑制されるか、あるいは、これら酵素の活性が抑制されるように改変を行ったものである。ここで、改変には、塩基の置換、欠失、挿入および/または付加が含まれる。
<1>ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素
「ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素」には、当該酵素のアミノ酸配列において、1つまたは複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質であって、当該酵素と機能的に同等なタンパク質も含まれる。ここで「機能的に同等なタンパク質」とは、その酵素またはタンパク質の活性と同様の活性を備えたタンパク質である。例えば、「機能的に同等なタンパク質」には、その酵素のアミノ酸配列と80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%以上の配列同一性を有するタンパク質を含む。具体的に、「ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素」は、下記で特定する配列番号に示されるアミノ酸配列と80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素活性を有するタンパク質を包含する。本発明の好ましい一態様において、ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素は、EC 1.2.1.88で表される酵素から選択される。
「ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素をコードする遺伝子」は、
・下記で特定する配列番号に示される塩基配列からなるDNA、
・下記で特定する配列番号に示される塩基配列に相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA、
・下記で特定する配列番号に示される塩基配列と85%、90%、95%、97%、98%または99%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつ、ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA、
・下記で特定する配列番号に示される塩基配列によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列に対して1つまたは複数個(例えば1〜10個、好ましくは1〜7個、さらに好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1個もしくは2個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAであって、ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA、および
・下記で特定する配列番号に示される塩基配列の縮重異性体からなるDNA
を包含する。
本発明に関し、「ストリンジェントな条件」とは、例えば、通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である「1xSSC、0.1%SDS、60℃」程度の条件であり、より厳しい条件としては「0.1xSSC、0.1%SDS、60℃」程度の条件であり、さらに厳しい条件としては「0.1xSSC、0.1%SDS、68℃」程度の条件である。
<2>ピロリン−5−カルボン酸還元酵素
「ピロリン−5−カルボン酸還元酵素」には、当該酵素のアミノ酸配列において、1つまたは複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質であって、当該酵素と機能的に同等なタンパク質も含まれる。ここで「機能的に同等なタンパク質」については、「ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素」について説明したのと同様である。具体的に、「ピロリン−5−カルボン酸還元酵素」は、下記で特定する配列番号に示されるアミノ酸配列と80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、ピロリン−5−カルボン酸還元酵素活性を有するタンパク質を包含する。本発明の好ましい一態様において、ピロリン−5−カルボン酸還元酵素は、EC 1.5.1.2で表される酵素から選択される。
「ピロリン−5−カルボン酸還元酵素をコードする遺伝子」は、
・下記で特定する配列番号に示される塩基配列からなるDNA、
・下記で特定する配列番号に示される塩基配列に相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ピロリン−5−カルボン酸還元酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA
・下記で特定する配列番号に示される塩基配列と85%、90%、95%、97%、98%または99%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつ、ピロリン−5−カルボン酸還元酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA、
・下記で特定する配列番号に示される塩基配列によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列に対して1つまたは複数個(例えば1〜10個、好ましくは1〜7個、さらに好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1個もしくは2個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAであって、ピロリン−5−カルボン酸還元酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA、および
・下記で特定する配列番号に示される塩基配列の縮重異性体からなるDNA
を包含する。
本発明で使用され得る宿主微生物は、図1に示すL−プロリン生合成経路を持つ微生物であれば、本質的にどのような宿主でも利用可能である。そのような微生物として、例えば、エシェリヒア、シュードモナス、バチルス、コリネバクテリウム、ブレビバクテリウム、ミクロコッカス、フラボバクテリウム、エルビニア、ビブリオ、ロドトルラ、サッカロマイセス、カンジダ属等の細菌が挙げられる。その中でも好ましくはエシェリヒア属が挙げられ、さらに好ましくはエシェリヒア コリ W3110株が挙げられる。
本発明において、酵素に関して、「活性の抑制」とは、「機能の抑制」、「機能の低下」および「活性の低下」と同義であり、互換可能に使用される。「酵素の活性の抑制」とは、細菌あたりの活性が、非改変株の活性よりも低くなっていることを意味する。例えば、細菌あたりのタンパク質分子の数が低下している場合、又は、タンパク質当たりの比活性が低下している場合、等が挙げられる。
酵素の活性が抑制された微生物の取得方法としては、紫外線照射や変異原性化学物質で処理することにより、ゲノムDNAにランダムな変異を誘導し、目的変異を生じた株をスクリーニングする方法がある。他には、遺伝子配列があらかじめわかっている場合、相同組み換えやゲノム編集等の技術を用いて、細菌染色体の遺伝子を一部または全部を除去することによっても達成できる。または、目的遺伝子の発現に関与するプロモーター配列をより発現効率が低いものに変更してもよい。いずれにしても、その方法は例示したものに限定されない。
以下、図面を参照して、本発明についてさらに詳述する。
ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素(例えば、EC 1.2.1.88で表される)は、図1に示すように、プロリンを酸化しピロリン−5−カルボン酸を生成する反応と、ピロリン−5−カルボン酸への水分子付加により自発的に生成するグルタミン酸セミアルデヒドのアルデヒド基を、NADを補酵素として酸化する反応を触媒し、グルタミン酸を生成する。ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素のアミノ酸配列および当該酵素をコードする遺伝子の塩基配列に関する情報は、当該分野で既知のデータベースから取得することができる。代表的な遺伝子としては、大腸菌(エシェリヒア コリ)のputAが挙げられる。大腸菌PutA酵素のアミノ酸配列を図2および3に示す(配列番号23)。また、大腸菌putAの塩基配列情報は、例えばGenBankからも利用可能であり、一例として、Gene ID: 945600(配列番号27)が挙げられる。
ピロリン−5−カルボン酸還元酵素(例えば、EC 1.5.1.2で表される)は、図1に示すように、ピロリン−5−カルボン酸を還元しプロリンを生成する反応を触媒する。ピロリン−5−カルボン酸還元酵素のアミノ酸配列および当該酵素をコードする遺伝子の塩基配列に関する情報は、当該分野で既知のデータベースから取得することができる。遺伝子配列として代表的なものは、大腸菌(エシェリヒア コリ)のproCが挙げられる。大腸菌ProC酵素のアミノ酸配列を図4に示す(配列番号24)。また、大腸菌proCの塩基配列情報は、例えばGenBankからも利用可能であり、一例として、Gene ID: 945034(配列番号28)が挙げられる。
上記2つの酵素をコードする遺伝子の発現が抑制されるか、または、これら酵素の活性が抑制されるように改変が行わることによって、プロリン生合成経路における、ピロリン−5−カルボン酸のプロリンやL−グルタミン酸への変換を抑制し、本発明の目的化合物の収率を向上させることができる。
本発明の好ましい態様では、前述の遺伝子の発現抑制または酵素活性の抑制に加え、宿主微生物においてグルタミン酸−5−セミアルデヒド生合成を促進するために、グルタミン酸−5−リン酸合成酵素の活性が増強されるように改変が行われている。当該酵素の活性の増強は、例えば、宿主微生物が元来持っているグルタミン酸−5−リン酸合成酵素をコードする遺伝子に加えて更にグルタミン酸−5−リン酸合成酵素をコードする遺伝子を導入することにより、または、宿主微生物が元来持っているグルタミン酸−5−リン酸合成酵素遺伝子に変異を導入することによって行われる。宿主微生物が元来持っているグルタミン酸−5−リン酸合成酵素をコードする遺伝子に加えて更にグルタミン酸−5−リン酸合成酵素をコードする遺伝子を導入する場合、変異を導入したグルタミン酸−5−リン酸合成酵素をコードする遺伝子(以下、「グルタミン酸−5−リン酸合成酵素変異遺伝子」とも称する。)を、宿主微生物に導入する。グルタミン酸−5−リン酸合成酵素変異遺伝子の宿主微生物への導入においては、当該酵素単独として導入してもよく、以下で説明するグルタミン酸−5−セミアルデヒド還元酵素(例えば、EC 1.2.1.41として表される)をコードする遺伝子とのオペロンとして導入してもよい。
グルタミン酸−5−リン酸合成酵素は、グルタミン酸の5位カルボン酸をリン酸化し、グルタミン酸−5−リン酸を生成する反応を触媒する。ここで、「グルタミン酸−5−リン酸合成酵素」には、当該酵素のアミノ酸配列において、1つまたは複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質であって、当該酵素と機能的に同等なタンパク質も含まれる。「機能的に同等なタンパク質」については、「ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素」および「ピロリン−5−カルボン酸還元酵素」について説明したのと同様である。具体的に、「グルタミン酸−5−リン酸合成酵素」は、下記で特定する配列番号に示されるアミノ酸配列と80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、グルタミン酸−5−リン酸合成酵素活性を有するタンパク質を包含する。本発明の好ましい一態様において、グルタミン酸−5−リン酸合成酵素は、EC 2.7.2.11で表される酵素から選択される。
「グルタミン酸−5−リン酸合成酵素をコードする遺伝子」は、
・下記で特定する配列番号に示される塩基配列からなるDNA、
・下記で特定する配列番号に示される塩基配列に相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、グルタミン酸−5−リン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA
・下記で特定する配列番号に示される塩基配列と85%、90%、95%、97%、98%または99%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつ、グルタミン酸−5−リン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA、
・下記で特定する配列番号に示される塩基配列によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列に対して1つまたは複数個(例えば1〜10個、好ましくは1〜7個、さらに好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1個もしくは2個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAであって、グルタミン酸−5−リン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA、および
・下記で特定する配列番号に示される塩基配列の縮重異性体からなるDNA
を包含する。
代表的な遺伝子としては、大腸菌(エシェリヒア コリ)のproBが挙げられる。大腸菌ProB酵素のアミノ酸配列を図5に示す(配列番号25)。また、大腸菌proBの塩基配列情報は、例えばGenBankからも利用可能であり、一例として、Gene ID: 946425(配列番号29)が挙げられる。
グルタミン酸−5−セミアルデヒド還元酵素(例えば、EC 1.2.1.41で表される)は、L−グルタミン酸−5−リン酸の5位カルボキシル基に修飾されたリン酸を外しながらアルデヒド基を生成する反応を触媒する。「グルタミン酸−5−セミアルデヒド還元酵素」には、当該酵素のアミノ酸配列において、1つまたは複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質であって、当該酵素と機能的に同等なタンパク質も含まれる。具体的に、「グルタミン酸−5−セミアルデヒド還元酵素」は、下記で特定する配列番号に示されるアミノ酸配列と80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、グルタミン酸−5−セミアルデヒド還元酵素活性を有するタンパク質を包含する。また、「グルタミン酸−5−セミアルデヒド還元酵素をコードする遺伝子」は、
・下記で特定する配列番号に示される塩基配列からなるDNA、
・下記で特定する配列番号に示される塩基配列に相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、グルタミン酸−5−リン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA
・下記で特定する配列番号に示される塩基配列と85%、90%、95%、97%、98%または99%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつ、グルタミン酸−5−セミアルデヒド還元酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA、
・下記で特定する配列番号に示される塩基配列によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列に対して1つまたは複数個(例えば1〜10個、好ましくは1〜7個、さらに好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1個もしくは2個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAであって、グルタミン酸−5−セミアルデヒド還元酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA、および
・下記で特定する配列番号に示される塩基配列の縮重異性体からなるDNA
を包含する。代表的な遺伝子としては、大腸菌(エシェリヒア コリ)のproAが挙げられる。大腸菌ProA酵素のアミノ酸配列を図6に示す(配列番号26)。また、大腸菌proAの塩基配列情報は、例えばGenBankからも利用可能であり、一例として、Gene ID: 946680(配列番号30)が挙げられる。
野生型のグルタミン酸−5−リン酸合成酵素は、L−プロリンによってフィードバック阻害されることが一般的に認知されている。したがって、フィードバック阻害が解除される変異を有するものが好ましい。遺伝子組換操作により、フィードバック阻害が解除された変異型グルタミン酸−5−リン酸合成酵素を高発現させた微生物の例が報告されている(特許第4637183号、Jiang et. al., Nature COMMUNICATIONS,SPRINGER NATURE,2017、 Dandekar et. al., JOURNAL OF BACTERIOLOGY, American society for microbiology, 1988, 170, 12, 5943−5945.)。
以下、エシェリヒア コリW3110由来のproBをグルタミン酸−5−リン酸合成酵素の例として説明するが、本発明に用いる遺伝子はこれに限定されるものではない。L−プロリンによるフィードバック阻害を受けない変異型のProBとしては、そのアミノ酸配列において107番目のアスパラギン酸残基がアスパラギン残基に置換されたもの、117番目のアラニン残基がバリン残基に置換されたもの、143番目のグルタミン酸残基がリジン残基に置換されたものが挙げられる。ただし、置換に用いるアミノ酸の種類はこれらに限定されない。また、変異点は1つであってもよいし、複数の組み合わせであってもよい。L−プロリンによるフィードバック阻害を受けない変異型のグルタミン酸−5−リン酸合成酵素には、上記アミノ酸置換を有するアミノ酸配列と80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、グルタミン酸−5−リン酸合成酵素活性を有するタンパク質が含まれる。
本発明において、上記のグルタミン酸−5−リン酸合成酵素変異遺伝子が「発現カセット」として宿主微生物細胞内に導入されることで、より安定的で高レベルの酵素活性を得ることができる。本明細書において、「発現カセット」とは、発現対象の核酸または発現対象の遺伝子に機能的に結合された転写および翻訳をレギュレートする核酸配列を含むヌクレオチドを意味する。典型的に、本発明の発現カセットは、コード配列から5’上流にプロモーター配列、3’下流にターミネーター配列、場合により更なる通常の調節エレメントを機能的に結合された状態で含み、そのような場合に、発現対象の核酸または発現対象の遺伝子が宿主微生物に導入される。
上記のプロモーターは、大腸菌ではlac系、trp系、tacまたはtrc系、λファージの主要オペレーター及びプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、解糖系酵素(例えば、3−ホスホグリセレートキナーゼ、グリセルアルデヒド‐3‐リン酸脱水素酵素)、グルタミン酸デカルボキシラーゼA、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼに対するプロモーター等が利用可能である。ターミネーターとしては、rrnBT1T2ターミネーター、lacターミネーターなどが利用可能である。プロモーターおよびターミネーター配列のほかに、他の調節エレメントの例として挙げられ得るのは、選択マーカー、増幅シグナル、複製起点などである。好適な調節配列については、例えば、”Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185”、Academic Press (1990)に記載されている。
上記で説明した発現カセットは、例えば、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、ISエレメント、ファスミド、コスミド、または線状もしくは環状のDNA等から成るベクターに組み入れて、宿主微生物中に挿入される。本発明ではプラスミドおよびファージが好ましい。これらのベクターは、宿主微生物中で自律複製されるものでもよいし、また染色体に挿入され複製されてもよい。好適なプラスミドは、例えば、大腸菌ではpLG338、pACYC184、pBR322、pUC18、pUC19、pHSG298、pHSG398、pKC30、pRep4、pHS1、pKK223−3、pDHE19.2、pHS2、pPLc236、pMBL24、pLG200、pUR290、pIN−III113−B1、λgt11またはpBdCIなどが挙げられる。これらの他にも使用可能なプラスミド等は、”Cloning Vectors”、Elsevier、1985に記載されている。ベクターへの発現カセットの導入は、PCRによる断片増幅、適当な制限酵素による切り出し、クローニング、及び種々のライゲーションを含む慣用の方法によって可能である。
上記のようにして本発明の発現カセットを有するベクターが構築された後、当該ベクターを宿主微生物に導入する際に適用できる手法として、例えば、共沈、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、レトロウイルストランスフェクションなどの慣用のクローニング法およびトランスフェクション法が使用される。それらの例は、「分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」、F. Ausubelら、Publ.Wiley Interscience、New York、1997、またはSambrookら、「分子クローニング:実験室マニュアル」、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989に記載されている。
本発明の別の実施形態は、先述の組換え微生物を用いて、グルタミン酸−5−セミアルデヒド、ピロリン−5−カルボン酸およびL−ピログルタミン酸のうちの1つ以上を製造する方法に関する。例えば、一態様において、先述の組換え微生物を培養することにより、グルタミン酸−5−セミアルデヒド、ピロリン−5−カルボン酸およびL−ピログルタミン酸が製造される。別の態様では、先述の組換え微生物を培養することにより、グルタミン酸−5−セミアルデヒドおよびピロリン−5−カルボン酸が製造される。さらに別の態様では、先述の組換え微生物を培養することにより、L−ピログルタミン酸が製造される。
本発明にかかる組換え微生物のための好適な培地組成、培養条件、培養時間は、当業者により適宜選択できる。
培地は、1つ以上の炭素源、窒素源、無機塩、ビタミン、及び場合により微量元素ないしビタミン等の微量成分を含む天然、半合成、合成培地であってよい。使用する培地は、培養すべき形質転換体の栄養要求を適切に満たさなければならない。
炭素源としては、D−グルコース、スクロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、オリゴ糖、多糖、でんぷん、セルロース、米ぬか、廃糖密、油脂(例えば大豆油、ヒマワリ油、ピーナッツ油、ヤシ油など)、脂肪酸(例えばパルミチン酸、リノール酸、リノレン酸など)、アルコール(例えばグリセロール、エタノールなど)有機酸(例えば酢酸、乳酸、コハク酸など)が挙げられる。更にD−グルコースを含有するバイオマスであり得る。好適なバイオマスとしては、トウモロコシ分解液やセルロース分解液を例示できる。これらの炭素源は、個別にあるいは混合物として使用することが出来る。炭素源としては、特に、グルコースが好ましい。
窒素源としては、含窒素有機化合物(例えば、ペプトン、酵母抽出物、肉抽出物、麦芽抽出物、コーンスティープリカー、大豆粉および尿素など)、または無機化合物(例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウムなど)が挙げられる。これらの窒素源は、個別にあるいは混合物として使用することが出来る。
また、培地は、形質転換体が有用な付加的形質を発現する場合、例えば抗生物質への耐性マーカーを有する場合、対応する抗生物質を含んでいてよい。それにより、発酵中の雑菌による汚染リスクが低減される。抗生物質としては、アンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、エリスロマイシン、ストレプトマイシン、スペクチノマイシンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
上記、セルロースや多糖類などの炭素源を宿主微生物が資化できない場合は、当該宿主微生物に外来遺伝子を導入するなどの公知の遺伝子工学的手法を施すことで、これら炭素源を使用したグルタミン酸−5−セミアルデヒドおよびプロリン−5−カルボン酸、およびL−ピログルタミン酸生産に適応させることができる。外来遺伝子としては、例えば、セルラーゼ遺伝子やアミラーゼ遺伝子などを挙げることができる。
培養は、バッチ式であっても連続式であってもよい。また、いずれの場合にも、培養の適切な時点で追加の前記炭素源等を補給する形式であってもよい。更に、培養は、好適な温度、酸素濃度、pH等を維持しながら継続されるべきである。一般的な微生物宿主細胞に由来する形質転換体の好適な培養温度は、通常15℃〜45℃、好ましくは25℃〜37℃の範囲である。宿主微生物が好気性の場合、発酵中の適切な酸素濃度を確保するために振盪(フラスコ培養等)、攪拌/通気(ジャー・ファーメンター培養等)を行う必要がある。それらの培養条件は、当業者にとって容易に設定可能である。
以上の説明を与えられた当業者は、本発明を十分に実施できる。以下、更なる説明の目的として実施例を与え、従って、本発明は当該実施例に限定されるものではない。なお、本明細書において特に断りのない限りヌクレオチド配列は5’から3’方向に向けて記載される。
本実施例に示す全てのPCRは、PrimeSTAR Max DNA Polymerase(タカラバイオ)を用いて実施した。大腸菌の形質転換は、塩化カルシウム法(羊土社 遺伝子工学実験ノート 上 田村隆明著、参照)を用いた。
プラスミドの構築においては、LB培地を用い、必要な抗生物質を添加して使用した。各実施例で使用したプライマー配列を表1に示す。
Figure 2021007375
各実施例で用いた培地の組成は以下のとおりである。
(LB培地)
20g/L LB培地、レノックス(ディフコ社製)。
[120℃、20分間蒸気滅菌を行った。必要に応じて、終濃度100mg/L アンピシリン、もしくは終濃度50mg/L カナマイシン硫酸塩、もしくは終濃度30mg/mL クロラムフェニコール、1.5% Bacto agar(ディフコ社製)を加えた。
(M9培地)
6g/L KHPO、12g/L
NaHPO、1g/L
NaCl、2g/L
NHCl、
2mM MgSO・7HO、
0.2mM CaCl
Glucose 20g/L、
1mL trace metal solution(500mg/L FeSO・7HO、400mg/L ZnSO・7HO、20mg/L MnCl・7H2O、50mg/L CoCl・6HO、10mg/L NiCl・6HO、15mg/L HBO、250mg/L EDTA)、
100mg/L チアミン、
1g/L Yeast Extract
[必要に応じて、終濃度100mg/L アンピシリン、もしくは終濃度50mg/L カナマイシン硫酸塩、もしくは30mg/mLクロラムフェニコール、終濃度250mg/mLのL−アラビノースも加えた。KHPO、NaHPO、NaCl、NHClは混合して120℃、20分間蒸気滅菌を行った。trace metal solution、Yeast Extractは個別に120℃、20分間蒸気滅菌を行ってから混合した。MgSO、CaCl、Glucose、チアミンは個別にフィルター滅菌を行ってから混合した。]
[実施例1]プラスミドの構築
(1−1)構成発現型プラスミドの構築
大腸菌にもちいる遺伝子構成発現用ベクターは次のように作製した。プラスミドpNFP−A51(FERM P−22182として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許生物寄託センター(住所:千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 122号室)に2011年10月25日付けで寄託した。国際寄託番号:FERM BP−11515)のマルチクローニングサイトに、ターミネーター配列及びプロモーター配列を挿入し、pSK000を構築した。プロモーター配列(配列番号21)およびターミネーター配列(配列番号22)を表2に示す。
Figure 2021007375
大腸菌株W3110(NBRC12713)をLB培地中(2ml)で37℃にて振盪培養した。培養終了後、培養液から菌体を回収し、Nucleo Spin Tissueを使用してゲノムDNAを抽出した。抽出したゲノムDNAを鋳型に、グルタミン酸−5−リン合成酵素遺伝子、および、グルタミン酸−5−リン酸合成酵素遺伝子/グルタミン酸−5−セミアルデヒド還元酵素遺伝子オペロンをPCR増幅した。proB遺伝子増幅に、表1に示す配列番号1、2記載のプライマーセットを使用した。proB/proAオペロン遺伝子配列増幅に、表1に示す配列番号1、3記載のプライマーセットを使用した。proB遺伝子増幅の反応条件は98℃(10sec),55℃(5sec),72℃(10sec),30cycleとした。proB/proAオペロン遺伝子増幅の反応条件は98℃(10sec),55℃(5sec),72℃(15sec),30cycleとした。得られたproBコード領域およびproB/proAオペロンコード領域は、Mighty Cloning Reagent Set(Takara社製)にてリン酸化し、pSK000プラスミドのプロモーター下流にライゲーションして、大腸菌JM109株に形質転換した。出現コロニーからプラスミドを抽出し、それぞれpSK001およびpSK004とした。
グルタミン酸−5−リン合成酵素遺伝子配列への変異導入は、インバースPCR法を用いて行った。まず、107番目のアスパラギン酸残基のアスパラギン残基への置換、117番目のアラニン残基のバリン残基への置換を目的とした変異導入を行った。すなわち、pSK001プラスミドまたはpSK004プラスミドを鋳型として、表1に示す配列番号4,5記載のプライマーセットにてインバースPCRを行った。proB遺伝子増幅の反応条件は98℃(10sec),55℃(5sec),72℃(10sec),30cycleとした。proB/proAオペロン遺伝子増幅の反応条件は98℃(10sec),55℃(5sec),72℃(15sec),30cycleとした。得られたPCR断片をMighty Cloning Reagent Set(Takara社製)にてリン酸化し、セルフライゲーションして、大腸菌JM109株に形質転換した。出現コロニーからプラスミドを抽出し、それぞれpSK002およびpSK005とした。以降、上記のような2変異を導入したproB遺伝子をproB2mと表記する。
pSK005プラスミドを鋳型として、143番目のグルタミン酸残基のリジン残基への置換を行う変異導入を実施した。まず、表1に示す配列番号6,7記載のプライマーセットにてインバースPCRした。反応条件は、98℃(10sec),55℃(5sec),72℃(15sec),30cycleとした。得られたPCR断片をMighty Cloning Reagent Set(Takara社製)にてリン酸化し、セルフライゲーションして、大腸菌JM109株に形質転換した。出現コロニーからプラスミドを抽出しpSK006とした。以降、上記のような3変異を導入したproB遺伝子をproB3mと表記する。
(1−2)誘導発現型プラスミドの構築
ProB3m誘導発現型プラスミドの構築のため、pSK006プラスミドを鋳型とし、表1に示す配列番号1、3記載のプライマーセットによりPCR増幅した。反応条件は98℃(10sec),55℃(5sec),72℃(15sec),30cycleとした。プラスミドpBAD33(国立遺伝学研究所、NBRP E. Coli strainより分譲)を鋳型とし、表1に示す配列番号8,9記載のプライマーセットによりPCRした。反応条件は98℃(10sec),55℃(5sec),72℃(30sec),30cycleとした。上記2つの断片をライゲーションし、大腸菌JM109株に形質転換した。出現コロニーからプラスミドを抽出し、pSK007とした。挿入方向の確認は、表1に示す配列番号3、10記載のプライマーセットを用いたコロニーPCRにより行った。
(1−3)ゲノム遺伝子組換え用プラスミドの構築
大腸菌株W3110のゲノムDNA(前述)を鋳型として、proCを含む遺伝子配列を、表1に示す配列番号11,12記載のプライマーセットにてPCR増幅した。同様に、putAを含む遺伝子配列を、配列番号13,14記載のプライマーセットにてPCR増幅した。proC遺伝子増幅の反応条件は、98℃(10sec),55℃(5sec),72℃(10sec),30cycle、putA遺伝子増幅の反応条件は、98℃(10sec),55℃(5sec),72℃(20sec),30cycleとした。得られたPCR断片2種をそれぞれMighty Cloning Reagent Set(Takara社製)にてリン酸化し、pHAK1プラスミド(NITE P−02919として、独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター 特許微生物寄託センター(NPMD)(住所:千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 122号室)に2019年3月18日付けで寄託した。)のマルチクローニングサイトにライゲーションした。pHAK1プラスミドで形質転換した大腸菌の培養は、特記のない限り、30℃で行った。ライゲーション産物を大腸菌JM109株に形質転換し、出現コロニーからプラスミドを抽出した。proC遺伝子を含むプラスミドをpSK008、putA遺伝子を含むものをpSK009とした。
pSK008およびpSK009プラスミドを鋳型として、遺伝子配列の一部を欠損させるためのインバースPCRを実施した。pSK008には、表1の配列番号15,16記載のプライマーセットを、pSK009には、表1の配列番号17,18記載のプライマーセットをそれぞれ用いた。反応条件は、98℃(10sec),55℃(5sec),72℃(40sec),30cycleとした。得られたPCR断片をMighty Cloning Reagent Set(Takara社製)にてリン酸化し、セルフライゲーションして、大腸菌JM109株に形質転換した。出現コロニーからプラスミドを抽出し、proCの部分断片を含むプラスミドをpSK010、putAの部分断片を含むプラスミドをpSK011とした。
ゲノム中に挿入するためのProBm2発現カセットは、次のように取得した。すなわち、pSK002を鋳型として、表1の配列番号19、20記載のプライマーセットを用いてPCR増幅した。得られたPCR断片をMighty Cloning Reagent Set(Takara社製)にてリン酸化した。セルフライゲーションせずに脱リン酸化したpSK008もしくはpSK009 DNA断片に、上記のProBm2発現カセットをライゲーションした。ライゲーション産物を大腸菌JM109株に形質転換し、出現コロニーからプラスミドを抽出した。プラスミド配列を解析し、proC断片中にProBm2発現カセットを挟んだプラスミドをpSK012、putA断片中にProBm2発現カセットを挟んだプラスミドをpSK013とした。ここでは、ProBm2発現カセットが差し込まれる先の遺伝子配列は、一部削除されるような設計となっている。
[実施例2]ゲノム遺伝子組み換え株の構築
遺伝子活性抑制を目的として、ゲノム遺伝子組み換え用プラスミドpSK010、pSK011、pSK012、pSK013を用いて、大腸菌のゲノム遺伝子のputAおよびproCの一部を欠損させる遺伝子組み換えを実施した。また、前記2遺伝子配列のどちらかに、ProBm2発現カセットの挿入を行う操作を実施した。
(2−1)一遺伝子破壊株の作成
pSK010またはpSK011を大腸菌AKC−016株(FERM P−22104として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(住所:千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 122号室)に2011年4月20日付で寄託した。国際寄託番号:FERM BP−11512)に形質転換し、カナマイシンを含む平板培地にて30℃培養しコロニーを取得した。得られたコロニーを液体培地に稙菌し、30℃にて3h培養した。この培養液を、カナマイシンを含む平板培地に塗布して44℃培養し、複数のコロニーを取得した。得られたコロニーを液体培地に稙菌し、30℃にて3h培養した。この培養液を、スクロース10%を含む平板培地に塗布して30℃培養し、複数のコロニーを取得した。pSK010プラスミドを形質転換して最終的に得られた株のゲノムproC配列を解析し、目的の遺伝子破壊が起こった株としてAKSK01を得た。pSK011プラスミドを形質転換して最終的に得られた株のゲノムputA配列を解析し、目的の遺伝子破壊が起こった株としてAKSK02株を得た。
(2−2)二遺伝子破壊株の作製
二遺伝子破壊株の作製のため、pSK010プラスミドでAKSK02株を形質転換し、カナマイシンを含む平板培地にて30℃培養しコロニーを取得した。得られたコロニーを液体培地に稙菌し、30℃にて3h培養した。この培養液を、カナマイシンを含む平板培地に塗布して44℃培養し、複数のコロニーを取得した。得られたコロニーを液体培地に稙菌し、30℃にて3h培養した。この培養液を、スクロース10%を含む平板培地に塗布して30℃培養し、複数のコロニーを取得した。得られたコロニーのproCputA配列を解析し、双方に目的の遺伝子破壊が起こっているものをAKSK03株とした。
(2−3)ProBm2発現カセットのゲノム挿入株の作製
二遺伝子を破壊しかつProBm2発現カセットを挿入した大腸菌株の作製のため、pSK012プラスミドでAKSK02株を形質転換し、pSK013プラスミドでAKSK01株を形質転換して、それぞれカナマイシンを含む平板培地にて30℃培養しコロニーを取得した。得られたコロニーを液体培地に稙菌し、30℃にて3h培養した。この培養液を、カナマイシンを含む平板培地に塗布して44℃培養し、複数のコロニーを取得した。得られたコロニーを液体培地に稙菌し、30℃にて3h培養した。この培養液を、スクロース10%を含む平板培地に塗布して30℃培養し、複数のコロニーを取得した。pSK012で形質転換して得られたコロニーのうち、ゲノムproCを解析して目的の遺伝子挿入が起こった株をAKSK04株とした。pSK013で形質転換して得られたコロニーのうち、ゲノムputA遺伝子配列を解析し、目的の遺伝子挿入が起こった株をAKSK05株とした。なお、AKSK04株は、proC配列中にproBm2発現カセットが挿入されており、AKSK05株は、putA配列中にproBm2発現カセットが挿入されている。proBm2発現カセットが差し込まれる先の遺伝子配列は、一部削除されるような設計としているため、AKSK04株ではputA遺伝子に加えてproC遺伝子にも破壊が起こっており、AKSK05株ではproC遺伝子に加えてputA遺伝子にも破壊が起こっている。
[実施例3]作製株の培養と解析
(実施例3−1)
AKSK03株またはAKC−016株をpSK004プラスミドで形質転換した(これをそれぞれAKSK06株、AKSK07株とする)。比較対象として、形質転換されていないAKC−016株およびAKSK03株も準備し、LB平板培地で37℃一晩培養した。得られたコロニーを2mLのLB培地に稙菌し、37℃で一晩振とう培養した。この培養液を、15mL丸底チューブに入れたM9培地 5mLに50uL稙菌した。濁度(OD600)を経時観察し、0.4を超えた時点でL−アラビノースを添加して、さらに20時間37℃で振とう培養した。回収した培養液を遠心分離することで得られる上清を、1%ギ酸で4倍希釈した。この希釈液をクロマトディスク(島津ディーエルシー社製)でMF濾過し、LCMSによる分析を行った。分析条件を表3に示す。
Figure 2021007375
培養上清のトータルイオンクロマトグラフィーチャートを図7に示す。AKC−016株、AKSK07株、AKSK03株の培養サンプルにおいては、グルタミン酸セミアルデヒド(図中、「GSA」)もしくはプロリン−5−カルボン酸(図中、「P5C」)を示すピークは検出できなかった。これに対して、AKSK06株の培養サンプルにおいては、グルタミン酸セミアルデヒド(GSA)とプロリン−5−カルボン酸(P5C)を示すピークが検出された。
培養上清中に排出されていたグルタミン酸セミアルデヒドおよびプロリン−5−カルボン酸の濃度を、文献(Ruiter et. al., Plant Physiol.,American Society of Plant Biologists, 1983, 73, 525−528.)記載の方法に従って定量した。o−アミノベンズアルデヒドとの反応物の吸光係数は、ε=2,300 M−1cm−1として計算した。結果を表4に示す。
Figure 2021007375
(実施例3−2)
AKSK04株、AKSK05株を、2mLのLB培地に稙菌し、37℃で一晩振とう培養した。この培養液を、15mL丸底チューブに入れたM9培地 5mLに50uL稙菌し、22時間37℃で振とう培養した。AKC−016株をコントロールとして同様の条件で培養した。回収した培養液を遠心分離することで得られる上清を、1%ギ酸で4倍希釈した。この希釈液をクロマトディスク(島津ジーエルシー社製)でMF濾過し、LCMSによる分析を行った。
AKC−016株、AKSK04株、AKSK05株培養上清のトータルイオンクロマトグラフィーチャートを図8に示す。AKSK04、AKSK05のチャートにおいて、L−ピログルタミン酸のピークを検出した。AKSK04株においては、さらにグルタミン酸セミアルデヒドおよびピロリン−5−カルボン酸のピークが検出された。
培養上清中に排出されていたグルタミン酸セミアルデヒドおよびプロリン−5−カルボン酸の濃度を定量した。結果を表5に示す。
Figure 2021007375
本発明は、グルタミン酸−5−セミアルデヒドおよびピロリン−5−カルボン酸および/またはL−ピログルタミン酸の工業的発酵生産に利用できる。

Claims (16)

  1. ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素をコードする遺伝子およびピロリン−5−カルボン酸還元酵素をコードする遺伝子の発現が抑制されるか、または、これら酵素の活性が抑制されるように改変が行われた、組換え微生物。
  2. グルタミン酸−5−リン酸合成酵素の活性が増強されるように更に改変が行われた、請求項1に記載の組換え微生物。
  3. 前記改変により、グルタミン酸−5−リン酸合成酵素のフィードバック阻害が解除される、請求項2に記載の組換え微生物。
  4. 前記ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素をコードする遺伝子が、
    ・配列番号27に示される塩基配列からなるDNA、
    ・配列番号27に示される塩基配列に相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA、
    ・配列番号27に示される塩基配列と85%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつ、ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA、
    ・配列番号27に示される塩基配列によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列に対して1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAであって、ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA、または
    ・配列番号27に示される塩基配列の縮重異性体からなるDNA
    であり、
    および/または、
    前記ピロリン−5−カルボン酸還元酵素をコードする遺伝子が、
    ・配列番号28に示される塩基配列からなるDNA、
    ・配列番号28に示される塩基配列に相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ピロリン−5−カルボン酸還元酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA
    ・配列番号28に示される塩基配列と85%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつ、ピロリン−5−カルボン酸還元酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA、
    ・配列番号28に示される塩基配列によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列に対して1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAであって、ピロリン−5−カルボン酸還元酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA、または
    ・配列番号28に示される塩基配列の縮重異性体からなるDNA
    である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組換え微生物。
  5. 前記ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素がEC 1.2.1.88で表わされる酵素から選択され、および/または
    前記ピロリン−5−カルボン酸還元酵素がEC 1.5.1.2で表わされる酵素から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組換え組成物。
  6. 前記ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素が、配列番号23に示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、ピロリン−5−カルボン酸脱水素酵素活性を有するタンパク質であり、
    および/または、
    前記ピロリン−5−カルボン酸還元酵素が、配列番号24に示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、ピロリン−5−カルボン酸還元酵素活性を有するタンパク質である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組換え微生物。
  7. 前記微生物が、エシェリヒア属である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組換え微生物。
  8. 前記微生物が、エシェリヒア コリである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組換え微生物。
  9. 前記グルタミン酸−5−リン酸合成酵素が、
    ・配列番号29に示される塩基配列と85%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつ、グルタミン酸−5−リン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA、または、
    ・配列番号29に示される塩基配列によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列に対して1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAであって、グルタミン酸−5−リン酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA
    によりコードされる、請求項2〜8のいずれか1項に記載の組換え微生物。
  10. 配列番号25に示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、グルタミン酸−5−リン酸合成酵素活性を有するタンパク質を生産する、請求項2〜9のいずれか1項に記載の組換え微生物。
  11. 配列番号25に示されるアミノ酸配列に対し、
    107番目のアスパラギン酸残基のアスパラギン残基への置換、
    117番目のアラニン残基のバリン残基への置換、および
    143番目のグルタミン酸残基のリジン残基への置換
    を含むアミノ酸配列に対して80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、グルタミン酸−5−リン酸合成酵素活性を有するタンパク質を生産する、請求項2〜10のいずれか1項に記載の組換え組成物。
  12. 配列番号25に示されるアミノ酸配列に対し、
    107番目のアスパラギン酸残基のアスパラギン残基への置換、
    117番目のアラニン残基のバリン残基への置換、および
    143番目のグルタミン酸残基のリジン残基への置換
    からなる群から選択される1以上の変異を有し、かつ、グルタミン酸−5−リン酸合成酵素活性を有するタンパク質を生産する、請求項2〜11のいずれか1項に記載の組換え組成物。
  13. 前記グルタミン酸−5−リン酸合成酵素をコードする遺伝子が、グルタミン酸−5−セミアルデヒド還元酵素をコードする遺伝子とのオペロンとして含まれる、請求項2〜12のいずれか1項に記載の組換え組成物。
  14. 請求項1〜13のいずれか1項に記載の組換え微生物を培養することを含む、グルタミン酸−5−セミアルデヒドの製造方法。
  15. 請求項1〜13のいずれか1項に記載の組換え微生物を培養することを含む、ピロリン−5−カルボン酸の製造方法。
  16. 請求項1〜13のいずれか1項に記載の組換え微生物を培養することを含む、L−ピログルタミン酸の製造方法。
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