JP2021007285A - 超電導回転電機 - Google Patents
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Abstract
【課題】 軸受或いは回転シール部材の凍結を防止することができるように構成された超電導回転電機を提供すること。【解決手段】 超電導モータ1のステータ3及びロータ4の少なくとも一方は、液体窒素から受ける冷熱により超電導状態にされる超電導材料により構成される。また、超電導モータ1のモータケース2内に低温容器6を囲むように真空断熱空間である密閉空間S1が形成される。そして、密閉空間S1内にて回転軸5の外周回りに回転軸5を加熱することができるように構成された加熱コイル91が配設される。【選択図】 図2
Description
本発明は、超電導材料が用いられた超電導回転電機に関する。
ロータ及びステータの少なくとも一方に超電導材料が使用される超電導回転電機としての超電導モータは、作動時の電気抵抗が非常に小さいので、大きなトルクを発生することができるという利点を有する。しかしながらその反面、作動中に超電導材料を超電導状態に維持するために超電導材料を超電導遷移温度以下の温度に冷却させるための冷却手段が必要である。
冷却手段により超電導材料のみが冷却されるのが好ましいが、実際には、ロータに接続された回転軸を介して、回転軸の軸受や、回転軸を回転シールするための回転シール部材(例えば磁性流体シール)も冷却される。軸受及び回転シール部材が過剰に冷却された場合、これらが劣化することによって耐久性が低下する。
特許文献1は、回転軸の軸受が超電導回転電機の大気側に近い位置に設けられているように構成された超電導回転電機を開示する。このように超電導回転電機を構成することにより、軸受が回転軸を介して冷却手段から受ける冷熱の伝達量が低減される。よって、軸受が過剰冷却されることによる耐久性の低下が抑制される。
(発明が解決しようとする課題)
特許文献1に記載の超電導回転電機によれば、作動中における軸受の過剰冷却は抑制されるものの、作動停止中には、回転軸を経由して冷熱が軸受及び回転シール部材に伝達される。このため軸受や回転シール部材が凍結し、それにより超電導回転電機が凍結してしまう虞があるので、何等かの対策が必要となる。
特許文献1に記載の超電導回転電機によれば、作動中における軸受の過剰冷却は抑制されるものの、作動停止中には、回転軸を経由して冷熱が軸受及び回転シール部材に伝達される。このため軸受や回転シール部材が凍結し、それにより超電導回転電機が凍結してしまう虞があるので、何等かの対策が必要となる。
そこで、本発明は、軸受或いは回転シール部材の凍結を防止することができるように構成された超電導回転電機を提供することを、目的とする。
(課題を解決するための手段)
本発明は、内部空間を有するとともに軸孔(211)が形成されたケース(2)と、ケースの内部に固定配置したステータ(3)と、ケースの内部にてステータに対して回転可能に設けられたロータ(4)と、ロータと一体的に同軸回転するようにロータに接続されるとともに少なくとも一方端がケースに形成された軸孔から突出した回転軸(5)と、ケースの内部に設けられ、ステータ及びロータを収容するとともに冷熱媒体が充填される低温容器(6)と、軸孔の内周面に取付けられ、回転軸を回転可能に支持する軸受(71)と、回転軸の軸方向に沿って軸受に隣接するように軸孔と回転軸との間に取付けられ、回転軸が回転しているときに回転軸と軸孔との隙間をシールすることができるように構成された回転シール部材(8)と、を備え、ステータ及びロータの少なくとも一方が、冷熱媒体から受ける冷熱により超電導状態にされる超電導材料により構成される部分を有し、ケース内に低温容器を囲むように真空断熱空間(S1)が形成されてなる超電導回転電機(1)であって、真空断熱空間内にて回転軸の外周回りに配設され、回転軸を加熱することができるように構成された加熱部材(91,92)を備える、超電導回転電機を提供する。
本発明は、内部空間を有するとともに軸孔(211)が形成されたケース(2)と、ケースの内部に固定配置したステータ(3)と、ケースの内部にてステータに対して回転可能に設けられたロータ(4)と、ロータと一体的に同軸回転するようにロータに接続されるとともに少なくとも一方端がケースに形成された軸孔から突出した回転軸(5)と、ケースの内部に設けられ、ステータ及びロータを収容するとともに冷熱媒体が充填される低温容器(6)と、軸孔の内周面に取付けられ、回転軸を回転可能に支持する軸受(71)と、回転軸の軸方向に沿って軸受に隣接するように軸孔と回転軸との間に取付けられ、回転軸が回転しているときに回転軸と軸孔との隙間をシールすることができるように構成された回転シール部材(8)と、を備え、ステータ及びロータの少なくとも一方が、冷熱媒体から受ける冷熱により超電導状態にされる超電導材料により構成される部分を有し、ケース内に低温容器を囲むように真空断熱空間(S1)が形成されてなる超電導回転電機(1)であって、真空断熱空間内にて回転軸の外周回りに配設され、回転軸を加熱することができるように構成された加熱部材(91,92)を備える、超電導回転電機を提供する。
本発明によれば、超電導回転電機のケース内に形成される真空断熱空間内に加熱部材が回転軸を覆うように回転軸の外周回りに設けられており、この加熱部材によって回転軸を加熱することができる。こうした加熱部材による回転軸の加熱によって、冷熱媒体から回転軸を介して軸受及び回転シール部材に伝達される冷熱量が低減され、それにより、回転軸から伝達される冷熱により軸受及び回転シール部材が過剰冷却することが抑止される。その結果、超電導回転電機の作動停止中における軸受及び回転シール部材の過剰冷却による凍結が効果的に防止される。
この場合、加熱部材は、真空断熱空間内にて回転軸の外周回りに巻回され、交流電流が流れることにより回転軸を誘導加熱することができるように構成される加熱コイル(91)とすることができる。これによれば、誘導加熱によって回転軸自体を発熱させることにより、効率的に、回転軸を加熱することができる。
また、本発明に係る超電導回転電機は、真空断熱空間内にて加熱部材の外周回りに配設される断熱材(10)を備えていてもよい。これによれば、断熱材によって加熱部材の外方への熱の流出が抑制される。よって、加熱部材の内側に位置する回転軸を効率的に加熱することができる。
また、低温容器は、ステータ及びロータを覆うように円筒状に形成され、軸方向が回転軸の軸方向に平行であるように配設された胴部(61)と、胴部の一方端から径内方に延設した蓋部(62)と、蓋部の内方端から回転軸の軸方向に沿って軸孔に向かって延設されるとともに先端が軸孔の内周面に接続され、回転軸の外周面との間に微小の隙間を形成するように回転軸の外周面に対面配置したシール筒部(64)と、を有するように構成されていてもよい。この場合、シール筒部の外周側に真空断熱空間が形成され、加熱部材がシール筒部の外周回りに配設されているとよい。これによれば、シール筒部の外周回りに加熱部材を配設することにより、加熱部材を回転軸に近づけることができる。よって、効率的に、回転軸を加熱することができる。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る超電導回転電機である超電導モータ1を、回転軸心を含む平面で切断した部分断面概略図である。この超電導モータ1は誘導モータである。図1に示すように、超電導モータ1は、モータケース2(ケース)と、ステータ3と、ロータ4と、回転軸5と、低温容器6と、第一軸受71(軸受)と、第二軸受72と、磁性流体シール8(回転シール部材)と、加熱コイル91(加熱部材)と、を備える。
以下、本発明の第一実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る超電導回転電機である超電導モータ1を、回転軸心を含む平面で切断した部分断面概略図である。この超電導モータ1は誘導モータである。図1に示すように、超電導モータ1は、モータケース2(ケース)と、ステータ3と、ロータ4と、回転軸5と、低温容器6と、第一軸受71(軸受)と、第二軸受72と、磁性流体シール8(回転シール部材)と、加熱コイル91(加熱部材)と、を備える。
モータケース2は、超電導モータ1の筐体を構成し、内部空間を有する。モータケース2は、図1からわかるように、互いに対向配置した第一端面板21及び第二端面板22と、円筒状の側周部23とを有する。第一端面板21及び第二端面板22の外周形状は共に円形である。そして、第一端面板21の外周部分と円筒状の側周部23の一方の端部、及び、第二端面板22の外周部分と側周部23の他方の端部が、それぞれ締結部材により締結されることにより、内部空間を有するモータケース2が構成される。モータケース2は、金属、FRP(繊維強化樹脂)又はセラミックスにより形成することができる。
また、モータケース2の第一端面板21の中心部分に第一軸孔211が形成され、モータケース2の第二端面板22の中心部分に第二軸孔221が形成される。第一軸孔211の内周面に第一軸受71が取り付けられ、第二軸孔221の内周面に第二軸受72が取り付けられる。また、モータケース2の側周部23に、挿入孔231が形成される。図1からわかるように、挿入孔231から液体窒素タンクTの供給口T1がモータケース2内に挿入される。
ステータ3は、モータケース2の内部に固定配置される。ステータ3は、ステータコア31とコイル32とを含んで構成される。ステータコア31は、中心軸を通る貫通孔が軸方向に沿って形成された中空円柱形状に形成され、その中心軸線がモータケース2に設けられている第一軸孔211の中心と第二軸孔221の中心とを結ぶ直線と一致するように、モータケース2内に配設される。また、ステータコア31には、周知のように複数のティース及びスロットが形成されており、このスロットにコイル32が配設される。コイル32は、スロットに配設された状態でティースに巻回される。
ステータコア31は、本実施形態では、電磁鋼板により形成される。また、コイル32は、銅線或いは超電導線により形成される。図1には、銅線により形成されるコイル32が示される。
ステータコア31に形成された貫通孔内にロータ4が配設される。従って、ロータ4はステータコア31の内周側に配設される。ロータ4は、ロータコア41及びかご型ロータ42を備える。ロータコア41は中心軸を通るシャフト挿通孔が軸方向に沿って貫通形成された中空円柱状に形成され、シャフト挿通孔の中心軸線がステータコア31の中心軸線と同軸になるように、ステータコア31の内周側に配置される。また、ロータコア41は、その外周壁とステータコア31の内周壁との間に微小な隙間が形成されるように、ステータコア31に対して配設される。
かご型ロータ42は、リング状に形成されて互いに対向して配置された一対のエンドリングと、複数のロータバーとを有する。複数のロータバーのそれぞれは、一対のエンドリング間にエンドリングの周方向に沿って配置しており、一方の端部が一方のエンドリングに接続され他方の端部が他方のエンドリングに接続される。また、ロータコア41には、シャフト挿通孔の回りに周方向に沿って複数の貫通孔が軸方向に沿って形成されており、複数のロータバーはこの貫通孔内に挿通された状態で、その両端にて一対のエンドリングに接続される。本実施形態では、ロータコア41が電磁鋼板により形成され、かご型ロータ42を構成する一対のエンドリング及び複数のロータバーが超電導材料により形成される。一対のエンドリング及び複数のロータバーに用いられる超電導材料として、本実施形態では、窒素の沸点(−196℃)程度に冷却されたときに超電導状態となるもの、すなわち液体窒素に浸漬された状態で超電導状態となるものが選択される。このような超電導材料として、RE−Ba−Cu−O(REはYを含む希土類元素)系超電導材料が例示できる。
中空円柱状のロータコア41の内周面の一部には、径内方に突出した嵌合部43が軸方向に沿って延設される。この嵌合部43に嵌合するように、回転軸5がロータコア41に固定される。従って、回転軸5の回りにロータ4が配設され、ロータ4の回りにステータ3が配設されることになる。回転軸5は、図1に示すように、嵌合部43に嵌合するキー溝が形成された固定軸部51と、固定軸部51からモータケース2の第一軸孔211に向かって図1の左方に延設するとともに第一軸受71に支持される第一軸部52と、第一軸部52からモータケース2の外部に突出する先端軸部53と、固定軸部51からモータケース2の第二軸孔221に向かって図1の右方に延設するとともに第二軸受72に支持される第二軸部54とを有し、これらの軸部が直線状に連なるように構成される。また、軽量化のために、回転軸5の内部が部分的に中空にされる。本実施形態では、回転軸5がステンレスにより形成される。
第一軸受71と第二軸受72は、共に、インナーレース、アウターレース、球状の転動体、及び動作部分に塗りつけられたグリース等を備えて構成されており、これらの軸受は同軸的に配設される。そして、第一軸受71のインナーレースの内周面に回転軸5の第一軸部52の外周が固定され、第二軸受72のインナーレースの内周面に回転軸5の第二軸部54の外周が固定される。このようにして、回転軸5が、モータケース2に取り付けられている第一軸受71及び第二軸受72に回転可能に支持される。この回転軸5が回転すると、回転軸5に固定されたロータ4が、ステータ3に対して回転する。つまり、ロータ4は、モータケース2の内部にてステータ3に対して回転可能に設けられる。また、回転軸5は、ロータ4と一体的に同軸回転するようにロータ4に接続されるとともに一方端(先端軸部53)がモータケース2に形成された第一軸孔211から突出するように、構成される。
また、図1に示すように、モータケース2の第二端面板22に形成された第二軸孔221の外部開口は、封止板24により外部から気密的に塞がれる。
図2は、図1のA部の詳細を示す断面概略図である。図1及び図2に示すように、モータケース2の第一端面板21に取付ブラケット25が固定されている。この取付ブラケット25は、第一軸孔211に取り付けられた第一軸受71の左方に隣接するように、第一軸孔211の内周側に配設される。取付ブラケット25には貫通孔251が形成されており、この貫通孔251が第一軸孔211と同軸になるように、取付ブラケット25が第一端面板21に固定される。そして、回転軸5の第一軸部52は、第一端面板21の第一軸孔211及び取付ブラケット25の貫通孔251を挿通する。このため取付ブラケット25は、第一軸孔211の内周側であって回転軸5の外周側に配置することになる。つまり、取付ブラケット25は、第一軸孔211と回転軸5との間に配設される。
取付ブラケット25に形成された貫通孔251の内周壁に、回転シール部材としての磁性流体シール8が保持される。磁性流体シール8は、回転軸5の軸方向に沿って第一軸受71に隣接するように、取り付けられる。この例では、磁性流体シール8は、第一軸受71の左側に、すなわち回転軸5の先端軸部53に近い側にて第一軸受71に隣接配設する。この磁性流体シール8は、回転軸5の第一軸部52の外周回りにリング状に配設される。ここで、取付ブラケット25は第一軸孔211と回転軸5との間に配設されるから、この取付ブラケット25に保持されている磁性流体シール8も、第一軸孔211と回転軸5との間に取り付けられることになる。
また、図2に良く示すように、磁性流体シール8と回転軸5との間に、磁性体である鉄製のリング部材55が配設される。リング部材55は、回転軸5の外周に固設されていて、リング部材55の内周と回転軸5の外周との間の隙間は完全に封止される。
磁性流体シール8は、永久磁石と磁性流体とを含んで構成される。永久磁石とリング部材55との間に形成される磁路に沿って磁性流体が配列することにより、回転軸5と第一軸孔211との間の隙間が磁性流体シール8によりシールされる。また、磁性流体シール8は、回転軸5が回転しているときにも、回転軸5と第一軸孔211との隙間をシールすることができる。すなわち磁性流体シール8は回転シール部材として機能する。
図1に示すように、ステータ3及びロータ4は、モータケース2内に設けられる低温容器6内に収容される。低温容器6は、例えばモータケース2の内部に設けられた樹脂製のブラケット等を介して、図1に示す位置に固定配置される。また、このようにして固定配置されている低温容器6の内壁にステータ3が押し当てられて締結ボルト等によって低温容器6にステータ3が固定されることにより、ステータ3が図1に示す位置に固定配置される。低温容器6は、例えばステンレスにより形成される。
低温容器6は、胴部61と、蓋部62と、底部63と、第一シール筒部64と、第二シール筒部65とを有する。胴部61は、ステータ3の外周を覆うように円筒状に形成される。この胴部61は、その軸方向が回転軸5の軸方向に平行であるように、モータケース2内に配設される。このとき胴部61の一方端である左端面がモータケース2の第一端面板21に近い側に位置し、胴部61の他方端である右端面がモータケース2の第二端面板22に近い側に位置する。
低温容器6の蓋部62は、胴部61の左端縁(一方端)に接続されるとともにその左端縁から径内方に延設する。このため蓋部62はモータケース2の第一端面板21と所定距離だけ離間して対面して配置する。また、低温容器6の底部63は、胴部61の右端縁に接続されるとともに径内方に延設する。このため底部63はモータケース2の第二端面板22と所定距離だけ離間して対面して配置する。
低温容器6の胴部61には、モータケース2の側周部23に形成されている挿入孔231に対面する位置に、取付孔611が形成されている。この取付孔611には、挿入孔231からモータケース2内に挿入された液体窒素タンクTの供給口T1が気密的に固定される。従って、液体窒素タンクT内の液体窒素は、低温容器6の内部空間に充填されることになる。
図1からわかるように低温容器6の胴部61の軸方向長さは、モータケース2内のロータコア41に固定された回転軸5の固定軸部51の軸方向長さよりも長い。そして、胴部61の左端縁に接続された蓋部62は、胴部61の左端縁から径内方に延びたリング状の部分と、リング状の部分の内周端から回転軸5の固定軸部51に向かうようにテーパ状に形成された部分とを有する。同様に、胴部61の右端縁に接続された底部63は、胴部61の右端縁から径内方に延びたリング状の部分と、リング状の部分の内周端から回転軸5の固定軸部51に向かうようにテーパ状に形成された部分とを有する。このように低温容器6の蓋部62及び底部63を径内方に向かうほど互いに近づくようなテーパ状に形成することにより、低温容器6内に充填された液体窒素が回転軸5の固定軸部51及びその近辺のみに接触することになる。このため、回転軸5のうち固定軸部51から離れた部分に冷熱が伝達することを抑制できる。
また、図1及び図2に示すように、低温容器6の蓋部62の内方端に、第一シール筒部64が接続される。第一シール筒部64は、蓋部62の内方端から回転軸5の第一軸部52の外周回りに沿って、第一軸孔211に向かって延設するように円筒状に形成される。また、図1に示すように、低温容器6の底部63の内方端に、第二シール筒部65が接続される。第二シール筒部65は、底部63の内方端から回転軸5の第二軸部54の外周回りに沿って、第二軸孔221に向かって延設するように円筒状に形成される。第一シール筒部64と回転軸5の第一軸部52の外周面との間には微小な隙間が形成され、第二シール筒部65と回転軸5の第二軸部54の外周面との間には微小な隙間が形成される。
また、第一シール筒部64の先端には、径外方に延設した第一円環部64aが形成され、第二シール筒部65の先端には、径外方に延設した第二円環部65aが形成される。第一円環部64aの外周面は、モータケース2の第一端面板21に形成されている第一軸孔211の内周面のうち第一軸受71が取り付けられている部分よりも回転軸5の固定軸部51寄りの部分に気密的に連結される。第二円環部65aの外周面は、モータケース2の第二端面板22に形成されている第二軸孔221の内周面のうち第二軸受72が取り付けられている部分よりも回転軸5の固定軸部51寄りの部分に気密的に連結される。
上記のようにして低温容器6とモータケース2が気密的に連結されることにより、モータケース2と低温容器6との間に密閉空間S1が形成される。そして、密閉空間S1の内側に、低温容器6により囲まれた低温空間S2が配置する。つまり、密閉空間S1は、低温容器6を囲むようにモータケース2内に形成される。また、密閉空間S1は、モータケース2の側周部23に形成された挿入孔231を経由して真空ポンプPに気密的に接続される。従って、真空ポンプPが作動することによって、上記の密閉空間S1が真空或いは真空に近い状態にされる。このため、密閉空間S1が真空断熱空間として機能して、密閉空間S1(真空断熱空間)に囲まれた低温容器6内の低温空間S2が真空断熱される。この真空断熱空間(密閉空間S1)は、図1からわかるように、第一シール筒部64の外周側及び第二シール筒部65の外周側に形成される。
図2に良く示すように、密閉空間S1内にて、第一シール筒部64の外周回りに、加熱部材としての加熱コイル91が配設される。この加熱コイル91は、密閉空間S1(真空断熱空間)内にて、回転軸5の第一軸部52の外周回りを巻回するように、第一シール筒部64の外周回りに配設される。加熱コイル91は、第一シール筒部64の外周回りのうち、第一軸受71及び磁性流体シール8に近い側に配設されているとよい。また、加熱コイル91は、電線を通じて交流電源Vに電気的に接続される。この交流電源Vが作動することにより、加熱コイル91に交流電流が流れる。
上記構成の超電導モータ1を使用する際には、低温容器6内の低温空間S2内に、液体窒素タンクTから冷熱媒体としての液体窒素が充填される。これにより、低温空間S2に収容されているステータ3及びロータ4のうち超電導材料により形成されている部分(すなわちかご型ロータ42)は、液体窒素に浸されて液体窒素から受ける冷熱によって超電導遷移温度以下に冷却される。このためかご型ロータ42を構成する一対のエンドリング及び複数のロータバーが超電導状態にされる。その後、ステータ3のコイル32に電流を流して回転磁界を生成する。この回転磁界によってロータ4に誘導電流が誘起され、さらに誘導電流により生じる電磁力によって、ロータ4及び回転軸5が回転磁界と同じ方向に回転する。ロータ4及び回転軸5の回転中、ロータ4のかご型ロータ42を構成する一対のエンドリング及び複数のロータバーに誘導電流が流れるが、これらは超電導材料により形成されており、さらにこれらは超電導状態にされている。従って、エンドリング及びロータバーの電気抵抗は非常に小さい。そのため大きな電磁力を発生させることができ、その結果、モータトルクを増大させることができる。
また、上記したように、低温容器6の第一シール筒部64と回転軸5の第一軸部52の外周面との間に微小隙間が形成され、低温容器6の第二シール筒部65と回転軸5の第二軸部54の外周面との間に微小隙間が形成されている。低温容器6内の液体窒素はこれらの微小隙間内にも進入し、微小隙間内にて気化される。第一シール筒部64と第一軸部52の外周面との間の微小隙間は第一軸孔211と回転軸5との隙間に通じているが、この隙間は、磁性流体シール8によって、回転軸5の回転中でも回転停止中でもシールされている。つまり、上記の微小隙間は磁性流体シール8によってシールされている。よって、磁性流体シール8によって、低温空間S2内の冷熱媒体(窒素)が第一軸孔211を経由して外部に放出されることが防止される。また、第二シール筒部65と第二軸部54の外周面との間の微小隙間は第二軸孔221に通じているが、第二軸孔221の開口は封止板24によってシールされている。つまり、上記の微小隙間は封止板24によってシールされている。よって、封止板24によって、低温空間S2内の冷熱媒体(窒素)が第二軸孔221を経由して外部に放出されることが防止される。
また、この超電導モータ1によれば、第一軸受71、第二軸受72、及び磁性流体シール8が、真空断熱空間である密閉空間S1よりも外側(大気側)に配設されている。このため、これらの部材と低温空間S2との間に真空断熱層が介在する。よって、超電導モータ1の作動中に、これらの部材の過剰冷却が抑制され、これらの部材が過剰冷却されることに起因する耐久性の低下を抑制することができる。
しかしながら、超電導モータ1の作動停止中は、低温空間S2内の冷熱媒体(液体窒素)に接触している回転軸5が冷熱媒体から冷熱を受け、この冷熱が回転軸5に接触している第一軸受71、第二軸受72、及び磁性流体シール8に伝達されて、これらが冷やされる。これらのうち、第二軸受72は、回転軸5の端部(第二軸部54の先端部)付近に設けられており、回転軸5の端部から冷熱が放出されるために、さほど過剰冷却されない。一方、第一軸受71及び磁性流体シール8は回転軸5の端部(先端軸部53の先端部)から離れた位置に取り付けられているので、回転軸5からの受ける冷熱が放出されにくい。よって、斯かる冷熱により第一軸受71及び磁性流体シール8が過剰冷却される。第一軸受71が過剰冷却された場合、第一軸受71に含まれるグリース等が凍結する虞がある。また、磁性流体シール8が過剰冷却された場合、磁性流体シール8に含まれる磁性流体が凍結する虞がある。
この点に関し、本実施形態によれば、第一シール筒部64の外周回りに加熱コイル91が配設されている。従って、超電導モータ1の作動停止中に第一軸受71及び磁性流体シール8の温度を監視しておき、これらが凍結する程度にまで温度低下したときに交流電源Vを作動させて、加熱コイル91に交流を印加する。これにより、加熱コイル91に交流電流が流れる。加熱コイル91に交流電流が流れると、加熱コイル91に囲まれている回転軸5の表面に渦電流が発生し、渦電流のジュール熱により回転軸5が加熱される。つまり、回転軸5が誘導加熱される。こうして回転軸5が誘導加熱されて発熱するために、冷熱媒体から回転軸5を介して第一軸受71及び磁性流体シール8に伝達される冷熱量が低減され、それにより、回転軸5から伝達される冷熱により第一軸受71及び磁性流体シール8が過剰冷却することが抑止される。その結果、超電導モータ1の作動停止中における第一軸受71及び磁性流体シール8の過剰冷却による凍結が効果的に防止される。
このように、本実施形態によれば、超電導モータ1のモータケース2内に形成される真空断熱空間(密閉空間S1)内に加熱コイル91が回転軸5を覆うように回転軸5の外周回りに設けられている。この加熱コイル91によって回転軸5を加熱することにより、上記したように第一軸受71及び磁性流体シール8の過剰冷却による凍結が効果的に防止される。
また、加熱コイル91によって回転軸5を誘導加熱することにより、回転軸5自体を発熱させることができる。このため、効率的に、回転軸5を加熱することができる。
また、低温容器6は、第一シール筒部64を有する。この第一シール筒部64は、胴部61の一方端から径内方に延設した蓋部62の内方端から回転軸5の軸方向に沿って第一軸孔211に向かって延設されるとともに先端部分(第一円環部64a)が第一軸孔211の内周面に接続されており、回転軸5の第一軸部52の外周面との間に微小の隙間を形成するように回転軸5の外周面に対面配置している。そして、第一シール筒部64の外周側に真空断熱空間(密閉空間S1)が形成され、加熱コイル91は真空断熱空間内にて第一シール筒部64の外周回りに配設されている。第一シール筒部64は、真空断熱空間(密閉空間S1)のうち最も回転軸5に近い位置に設けられているので、第一シール筒部64の外周回りに加熱コイル91を配設することにより、加熱コイル91を回転軸5に近づけることができる。よって、効率的に、回転軸5を加熱することができる。
(第二実施形態)
図3は、第二実施形態に係る超電導モータ1の要部断面概略図である。図3は、第一実施形態にて説明した図2に相当する図である。図3に示すように、この例においては、第一軸受71と磁性流体シール8の位置が、第一実施形態における両者の位置と入れ替わっている。すなわち、磁性流体シール8の外方(図3の左方)に第一軸受71が配設されている。また、第一シール筒部64の先端に設けられた第一円環部64aの内周側に、磁性流体シール8が配設され、この磁性流体シール8の内周側に、回転軸5の第一軸部52の外周に固着されたリング部材55が配置している。このように第一円環部64aの内周側に磁性流体シール8が配設されるため、第一実施形態にて磁性流体シール8を保持している取付ブラケット25は、本実施形態では省略される。また、加熱コイル91は、第一実施形態と同様に、回転軸5の第一軸部52を巻回するように、密閉空間S1(真空断熱空間)内にて第一シール筒部64の外周回りに配設される。
図3は、第二実施形態に係る超電導モータ1の要部断面概略図である。図3は、第一実施形態にて説明した図2に相当する図である。図3に示すように、この例においては、第一軸受71と磁性流体シール8の位置が、第一実施形態における両者の位置と入れ替わっている。すなわち、磁性流体シール8の外方(図3の左方)に第一軸受71が配設されている。また、第一シール筒部64の先端に設けられた第一円環部64aの内周側に、磁性流体シール8が配設され、この磁性流体シール8の内周側に、回転軸5の第一軸部52の外周に固着されたリング部材55が配置している。このように第一円環部64aの内周側に磁性流体シール8が配設されるため、第一実施形態にて磁性流体シール8を保持している取付ブラケット25は、本実施形態では省略される。また、加熱コイル91は、第一実施形態と同様に、回転軸5の第一軸部52を巻回するように、密閉空間S1(真空断熱空間)内にて第一シール筒部64の外周回りに配設される。
本実施形態においても、超電導モータ1の作動停止中に加熱コイル91を作動して回転軸5を誘導加熱することにより、第一軸受71及び磁性流体シール8の過剰冷却による凍結を防止することができる。
(第三実施形態)
図4は、第三実施形態に係る要部断面概略図である。図4は、第一実施形態にて説明した図2に相当する図である。図4に示すように、この例においては、第一実施形態にて示した加熱コイル91に代えて、シート状のヒータ92が用いられる。ヒータ92は、第一実施形態における加熱コイル91と同様に、回転軸5の第一軸部52を巻回するように、密閉空間S1(真空断熱空間)内にて第一シール筒部64の外周回りに配設される。この場合、第一実施形態のように誘導加熱により回転軸5が直接発熱しないものの、シート状のヒータ92自身が発熱し、その熱が第一シール筒部64に伝えられて第一シール筒部64が加熱され、さらに第一シール筒部64から回転軸5に伝熱されることにより回転軸5が加熱される。このようにして回転軸5が加熱される結果、第一軸受け71及び磁性流体シール8に伝達される冷熱量が低減されて、これらの凍結が防止される。また、第一シール筒部64からも第一軸受71及び磁性流体シール8に熱を伝えることができるので、これらの凍結がより一層防止される。
図4は、第三実施形態に係る要部断面概略図である。図4は、第一実施形態にて説明した図2に相当する図である。図4に示すように、この例においては、第一実施形態にて示した加熱コイル91に代えて、シート状のヒータ92が用いられる。ヒータ92は、第一実施形態における加熱コイル91と同様に、回転軸5の第一軸部52を巻回するように、密閉空間S1(真空断熱空間)内にて第一シール筒部64の外周回りに配設される。この場合、第一実施形態のように誘導加熱により回転軸5が直接発熱しないものの、シート状のヒータ92自身が発熱し、その熱が第一シール筒部64に伝えられて第一シール筒部64が加熱され、さらに第一シール筒部64から回転軸5に伝熱されることにより回転軸5が加熱される。このようにして回転軸5が加熱される結果、第一軸受け71及び磁性流体シール8に伝達される冷熱量が低減されて、これらの凍結が防止される。また、第一シール筒部64からも第一軸受71及び磁性流体シール8に熱を伝えることができるので、これらの凍結がより一層防止される。
また、この例では、真空断熱空間(密閉空間S1)内にて、シート状のヒータ92の外周回りに、断熱材10が配設されている。断熱材10として、例えば、シリコンスポンジや、ガラスクロスを例示できる。この断熱材10の存在により、ヒータ92の外周側への熱の流出が防止され、効率的にヒータ92の熱を、ヒータ92の内周側に位置する第一シール筒部64及び回転軸5に伝達することができる。このため、効率的に第一シール筒部及び回転軸5を加熱することができる。
以上、本発明の様々な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるべきではない。例えば、上記実施形態では、回転軸5の一方端側(先端軸部53)がモータケース2から突出するように構成された超電導モータ1について説明したが、回転軸の両端側がモータケースから突出するように構成された超電導モータにも、本発明を適用することができる。この場合、回転軸の両端側にそれぞれ磁性流体シールを取り付けるとともに、第一シール筒部64の外周回り及び第二シール筒部65の外周回りにそれぞれ加熱部材を設け、これらの加熱部材によって回転軸を加熱することにより、回転軸の両端側に取り付けられた磁性流体シール、第一軸受71、及び第二軸受72の凍結を防止することができる。
また、上記実施形態では、ロータ4の構成部材の一部を超電導材料で構成した超電導モータについて示したが、例えばステータの構成部材の一部(例えばコイル)を超電導材料で構成した超電導モータにも、本発明を適用することができるし、ロータ及びステータの双方に超電導材料を使用した超電導モータにも本発明を適用することができる。さらに、上記実施形態では、回転シール部材として磁性流体シールを用いた超電導モータを示したが、それ以外の回転シール部材を用いた超電導モータにも本発明を適用することができる。また、モータ以外の超電導回転電機、例えば発電機にも、本発明を適用することができる。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。
1…超電導モータ(超電導回転電機)、2…モータケース(ケース)、21…第一端面板、211…第一軸孔(軸孔)、22…第二端面板、221…第二軸孔、3…ステータ、31…ステータコア、32…コイル、4…ロータ、41…ロータコア、42…かご型ロータ、5…回転軸、51…固定軸部、52…第一軸部、53…先端軸部、54…第二軸部、55…リング部材、6…低温容器、61…胴部、62…蓋部、63…底部、64…第一シール筒部(シール筒部)、65…第二シール筒部、71…第一軸受(軸受)、72…第二軸受、8…磁性流体シール(回転シール部材)、91…加熱コイル(加熱部材)、92…ヒータ(加熱部材)、10…断熱材、S1…密閉空間(真空断熱空間)、S2…低温空間
Claims (4)
- 内部空間を有するとともに軸孔が形成されたケースと、
前記ケースの内部に固定配置したステータと、
前記ケースの内部にて前記ステータに対して回転可能に設けられたロータと、
前記ロータと一体的に同軸回転するように前記ロータに接続されるとともに少なくとも一方端が前記ケースに形成された前記軸孔から突出した回転軸と、
前記ケースの内部に設けられ、前記ステータ及び前記ロータを収容するとともに冷熱媒体が充填される低温容器と、
前記軸孔の内周面に取付けられ、前記回転軸を回転可能に支持する軸受と、
前記回転軸の軸方向に沿って前記軸受に隣接するように前記軸孔と前記回転軸との間に取付けられ、前記回転軸が回転しているときに前記回転軸と前記軸孔との隙間をシールすることができるように構成された回転シール部材と、
を備え、
前記ステータ及び前記ロータの少なくとも一方が、前記冷熱媒体から受ける冷熱により超電導状態にされる超電導材料により構成される部分を有し、
前記ケース内に前記低温容器を囲むように真空断熱空間が形成されてなる超電導回転電機であって、
前記真空断熱空間内にて前記回転軸の外周回りに配設され、前記回転軸を加熱することができるように構成された加熱部材を備える、超電導回転電機。 - 請求項1に記載の超電導回転電機において、
前記加熱部材は、前記真空断熱空間内にて前記回転軸の外周回りに巻回され、交流電流が流れることにより前記回転軸を誘導加熱することができるように構成される加熱コイルである、超電導回転電機。 - 請求項1又は2に記載の超電導回転電機において、
前記真空断熱空間内にて前記加熱部材の外周回りに配設される断熱材を備える、超電導回転電機。 - 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超電導回転電機において、
前記低温容器は、
前記ステータ及び前記ロータを覆うように円筒状に形成され、軸方向が前記回転軸の軸方向に平行であるように配設された胴部と、
前記胴部の一方端から径内方に延設した蓋部と、
前記蓋部の内方端から前記回転軸の軸方向に沿って前記軸孔に向かって延設されるとともに先端が前記軸孔の内周面に接続され、前記回転軸の外周面との間に微小の隙間を形成するように前記回転軸の外周面に対面配置したシール筒部と、を有し、
前記シール筒部の外周側に前記真空断熱空間が形成され、
前記加熱部材が前記シール筒部の外周回りに配設されている、超電導回転電機。
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- 2019-06-28 JP JP2019121126A patent/JP2021007285A/ja active Pending
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