本発明は、作業地を走行するために設定された案内走行経路を探索する技術及び、この技術を採用した作業車に関する。
GPS装置により計測される位置情報に基づいて、ティーチング経路生成手段により生成されたティーチング経路に対して平行な目標経路を生成し、該目標経路上を自律的に走行する田植機が、特許文献1から知られている。この田植機では、オペレータにより自動旋回操作具が操作されることにより、次の目標経路へ向けて自動的に旋回し、かつ、旋回動作の終了後に引き続き、次の目標経路上を自律的に走行する。
GPSユニットにより計測される位置情報に基づいて生成されたティーチング経路に対して平行な目標経路が生成され、次の目標経路へ向けて自動的に旋回し、かつ、次の目標経路上を自律的に走行するように構成された田植機が特許文献2から知られている。
特開2016−021890号公報
特開2008−131880号公報
上述したように、設定された案内走行経路に沿って走行を行う、従来の作業車では、走行案内となっていた走行経路から次の走行経路に移行する旋回走行時や、ぬかるみ面や凹凸面での走行時に、一時的に車体の位置や向きが走行経路から逸脱し、走行経路を見失うことがある。探索すべき走行経路が複数設定されていると、その内から新たに走行目標とすべき走行経路を探索する場合、走行目標とすべき走行経路ではなく、それに隣接する走行経路やその他の探索領域内にある走行経路を見つけ出してしまう可能性がある。そのような間違った走行経路に向かうことを指示する操舵情報が報知されたり、間違った走行経路に向かって自動操舵されたりすると、意図しない走行結果をもたらす。
このような実情に鑑み、走行目標とすべき走行経路を高い信頼性で探索する技術が要望されている。
本発明による、作業車の走行目標となる案内走行経路を見つけ出す経路探索プログラムは、前記作業車における所定基準点である自車基準点の進行方向に広がる扇形領域を探索領域として設定する探索領域設定機能と、複数の前記走行経路を格納する走行経路格納部から読み出された複数の走行経路候補のうち、取得した自車位置に基づき、前記探索領域内において最も自車基準点に近いと判定された走行経路候補を前記作業車の走行目標となる案内走行経路として選択する案内経路選択機能とをコンピュータに実現させるように構成されている。
この構成によれば、作業車が作業地を走行するために設定されている複数の走行経路が走行経路格納部から読み出され、走行経路候補としてメモリ等に展開され、設定されている探索領域内において、これらの走行経路候補の中で、作業車の進行方向前方で、作業車の自車基準点(一般には測位データから算出される)にもっとも近い走行経路候補が案内走行経路として選択される。作業車の進行方向の前方に広がる扇形領域において、作業車の自車基準点に最も近い走行経路候補が走行すべき走行経路である確率が高い。したがって、走行経路候補が複数存在しても、上述の方法によって簡単かつ迅速に走行すべき案内走行経路を選択することが可能となる。なお、自車基準点の進行方向に広がる扇形領域の具体的な例としては、自車基準点を中心として、中心角180°(進行方向を中心線として+90°と−90°)以下、好ましくは中心角45°から90°の扇形領域であるが、任意に設定できるような構成が好適である。
上述した経路探索プログラムを作業車に構築するためには、経路探索プログラムをシステム化して作業車の制御系に組み込むと好都合である。そのような経路探索システムを搭載した作業車も本発明に含まれ、上述した経路探索プログラムと同じ作用効果を得ることができる。
さらに、本発明による、作業車の走行目標となる案内走行経路を見つけ出す経路探索プログラムは、前記作業車における所定基準点である自車基準点の周辺領域を探索領域として設定する探索領域設定機能と、複数の前記走行経路を格納する走行経路格納部から読み出された複数の走行経路候補及び測位モジュールからの測位データに基づいて算出された前記作業車の自車位置及び前記探索領域との間の位置関係を算出する位置関係算出機能と、前記走行経路候補から、前記位置関係に基づいて、前記作業車の走行目標となる案内走行経路を選択する案内経路選択機能とをコンピュータに実現させるように構成されている。
この構成によれば、作業車が作業地を走行するために設定されている複数の走行経路が走行経路格納部から読み出され、メモリ等に展開され、これらの走行経路と作業車の自車位置と、前記探索領域と、前記走行経路候補との間の位置関係が算出され、この位置関係に基づいて、現時点でより走行目標に適した走行経路が案内走行経路として選択される。作業車の実際の走行目標となる案内走行経路が、複数の走行経路候補から選択されるので、作業車の位置ずれ等によって本来走行すべきでない走行経路(走行経路候補の1つ)に接近したとしても、各走行経路候補と自車位置と探索領域との間の位置関係に基づいて評価されるので、本来走行すべき走行経路が案内走行経路として選択される可能性が高くなる利点がある。
作業車は前進しながら作業を行うのが一般的であるので、作業車の進行方向に沿って位置する走行経路が案内走行経路(現時点で案内されるべき走行経路)として適切である。しかしながら、作業車は、90°ターンや180ターンなどを繰り返すため、あるいは障害物の回避のためなどで、走行経路に対する作業車の進行方向の角度は、実質的には0°(走行経路と進行方向とが平行関係)を中心としてプラスマイナス90°の範囲の角度をとる可能性がある。このことから、探索領域は自車の進行方向の前面、つまり前方領域をカバーするのがよいが、進行方向の中心からの角度が左右方向にずれていくほど、案内走行経路が存在する可能性が低くなる。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記探索領域は、前記自車基準点を中心点して自車の進行方向に広がる扇形となっている。ここでも同様に、自車基準点の進行方向に広がる扇形領域の具体的な例としては、自車基準点を中心として、中心角180°以下、好ましくは中心角45°から90°の扇形領域であるが、任意に設定できるような構成が好適である。このような形状の探索領域を採用することで、案内走行経路の選択処理が効果的にかつ高速に行われる。
走行経路候補と、自車位置と、探索領域との間での算出される位置関係には種々のものがあるが、案内走行経路を正確に選択するためには、より効果的な位置関係を採用することが重要である。作業車の中心が走行経路上に位置するように走行することが目標であるとすれば、自車基準点(例えば自車中心点や自車前端中心点など)と走行経路候補との間の位置関係は、特に重要となる。また、作業車が走行経路から離脱した状況では、自車基準点の周辺領域である探索領域と走行経路候補との間の位置関係も重要となる。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記位置関係算出機能には、前記位置関係として、前記自車基準点と前記走行経路候補との間の前記位置関係及び前記探索領域と前記走行経路候補との間の前記位置関係を算出する機能が含まれている。
作業地における走行経路は、両側に端点をもつ線分であるが、作業車が走行経路から離脱した状況を考慮するならば、場合によって、走行経路は端点によって制限されない線と定義することも必要である。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記走行経路は、実際の走行経路として機能する実走行経路部分と、前記実走行経路部分の延長線である経路延長部分とからなるように定義され、前記位置関係算出機能には、前記自車基準点と、前記実走行経路部分または前記経路延長部分との間の最短位置の座標値を算出する機能と、前記最短位置が前記探索領域に存在するかどうかを判定する機能とが含まれている。これにより、作業車が事実上の走行経路である実走行経路部分から外れていても、適切に案内走行経路を選択することが可能となる。
より具体的には、前記最短位置が前記実走行経路部分上に位置することを示す位置関係が算出された走行経路候補が存在した場合には、当該走行経路候補を案内走行経路として選択することが好適である。これにより、作業車が正しく案内走行経路上を走行している場合には、即座に案内走行経路の選択処理を終了することでき、処理効率が向上する。
また、前記最短位置が前記経路延長部分上に位置するとともに、当該最短位置が前記探索領域内に入っていることを示す位置関係が算出された走行経路候補が存在した場合には、当該走行経路候補を案内走行経路として選択することが好適である。作業車が案内走行経路の実走行経路部分から離脱していても、その状態で走行することによって、作業車は実走行経路部分に到達するので、この時点で、当該走行経路候補を案内走行経路として選択することは効率的である。
上述した経路探索プログラムを作業車に構築するためには、経路探索プログラムをシステム化して作業車の制御系に組み込むと好都合である。そのような経路探索システムも本発明に含まれる。本発明による、作業車の走行目標となる案内走行経路を見つけ出す経路探索システムは、作業車における所定基準点である自車基準点の周辺領域を探索領域として設定する探索領域設定部と、複数の前記走行経路を格納する走行経路格納部から読み出された複数の走行経路候補及び測位モジュールからの測位データに基づいて算出された前記作業車の自車位置及び前記探索領域の間の位置関係を算出する位置関係算出部と、前記走行経路候補から、前記位置関係に基づいて、前記案内走行経路を選択する案内経路選択部と、前記案内走行経路と前記自車位置との偏差を算出する偏差算出部とを備えている。このような経路探索システムも、上述した経路探索プログラムと同じ作用効果を得ることができ、また上述した種々の好適な実施形態を取り入れることも可能である。
さらに、この経路探索プログラムまたは経路探索システムを組み込んだ作業車も本発明に含まれる。そのような本発明による作業車は、複数の走行経路を格納する走行経路格納部と、測位モジュールからの測位データに基づいて自車位置を算出する自車位置算出部と、自車基準点の周辺領域を探索領域として設定する探索領域設定部と、前記走行経路格納部から読み出された複数の走行経路候補及び前記自車位置及び前記探索領域との間の位置関係を算出する位置関係算出部と、前記走行経路候補から、前記位置関係に基づいて、自車を案内する案内走行経路を選択する案内経路選択部と、前記案内走行経路と前記自車位置との偏差を算出する偏差算出部とを備えている。このような作業車も、上述した経路探索プログラムと同じ作用効果を得ることができ、また上述した種々の好適な実施形態を取り入れることも可能である。
さらに、作業地を走行する作業車は、手動操舵または自動操舵により案内走行経路に沿って走行することができる。自動操舵を行う作業車では、前記偏差に基づいて、前記自車が前記案内走行経路に沿って走行するように自動操舵する自動走行制御部が備えられる。また、手動操舵を行う作業車では、前記偏差に基づいて、前記自車が前記案内走行経路に沿って走行するための操舵案内情報を報知する報知部が備えられている。
作業車の周辺に設定された探索領域と作業地に設定された走行経路とを説明する説明図である。
走行経路候補群と自車位置と探索領域との間の位置関係に基づいて案内走行経路を選択する制御ルールを説明する説明図である。
作業車の具体的な実施形態の1つである耕耘装置付きトラクタの側面図である。
トラクタの制御系を示す機能ブロック図である。
経路探索ルーチンの1つを示すフローチャート図である。
走行経路候補群と自車位置と探索領域との間の位置関係を説明する模式図である。
走行経路候補群と自車位置と探索領域との間の位置関係を説明する模式図である。
走行経路候補群と自車位置と探索領域との間の位置関係を説明する模式図である。
まず、本発明の具体的な実施形態を説明する前に、本発明で用いられている用語の定義と経路探索の原理を、図1と図2を用いて説明する。図1には、車体1と、車体1に装備された作業装置30とからなる作業車と、この作業車が走行する作業地が模式的に示されている。作業地に設定された、作業車の走行目標となる案内走行経路LNは、ここでは、互いに平行に延びている直線状の走行経路群として示されており、各走行経路LNは式で表される。走行経路LNは、実際の走行経路として機能する実走行経路部分Laと、実走行経路部分Laの延長線である経路延長部分Lbとからなり、実走行経路部分Laは両端の端点EPによって規定されている。また、走行経路群を構成する各走行経路LNは、厳密な意味での直線でなくともよく、曲線でもよい。その際、曲線は、曲線式で表されるような曲線でもよいし、折れ曲がりながらつながっている直線片の集合体でもよい。各走行経路LNは、平行な配置に限定されるわけではなく、非平行な配置、例えば他の走行経路LNと直交する走行経路LNが混在してもよい。さらに、作業車の走行には、作業を伴いながら走行する実作業走行と、方向転回などの作業を伴わずに走行する非作業走行とが含まれているが、この明細書においては、作業車の走行という用語には、実作業走行と非作業走行とのいずれかあるいは両方の意味が含まれている。
ここでは、作業車における所定基準点としての自車基準点CPは、車体1のほぼ中央の位置に設定されているが、作業装置30の対地作業位置など種々の位置に設定可能である。自車基準点CPからの径方向の距離は探索距離Rと称される。つまり、自車基準点CPを中心とする半径:Rの円SCの内側が探索距離R以内を満たす領域となる。さらに、図1の例では、自車基準点CPの周辺領域を探索領域SAとして、自車基準点CPを中心として自車の進行方向に広がる中心角が約45°の扇形状の領域(扇形領域)が探索領域SAとして設定されている。この扇形の半径は、探索距離Rと一致しており、その辺には符号Seが付与されている。扇形の中心角:θは180°まで広げてもよい。探索領域SAの形状は任意であるが、演算上、できるだけ簡単な形状が好ましい。GPSやGNNSなどの衛星測位モジュール(測位モジュールの一例)からの測位データに基づいて算出される自車位置と自車基準点CPとの位置が異なっていても簡単な演算で補正することができるので、実質的には同一位置であると見なすことができる。説明を簡単にするため、以下の説明では、自車位置と自車基準点CPは同一であるとする。したがって、自車基準点CPは、以下単に自車位置とも略称される。自車基準点CP(自車位置)から走行経路LNへの垂線は自車基準点CPと走行経路LNとの最短距離MDを規定するので、この垂線と走行経路LNの交点を示す座標位置は最短位置MPと定義される。
作業地に設定されている走行経路群、演算上はメモリに展開されている直線群が、本経路探索プログラムによって取り扱われる複数の走行経路候補となる。自車基準点CPと探索領域SAとの間の位置関係が算出され、算出された位置関係に基づいて、複数の走行経路候補から作業車の走行目標となる案内走行経路が選択される。
図2には、3本の走行経路LNからなる走行経路候補とこの走行経路候補に対して種々の位置(姿勢)にある作業車とが、示されている。作業車には、黒丸で示された自車基準点CPと扇形の探索領域SAが付記されている。各走行経路LNは紙面上から下に互いに平行に直線状に延びており、実走行経路部分Laと下側の経路延長部分Lbとで示されている。案内走行経路として採用された走行経路LNは太い線で示されている。
本発明の基本的な経路探索の1つでは、探索領域SA内において最も自車位置(自車基準点)CPに近い走行経路候補を作業車の走行目標となる案内走行経路として選択する。図2においても、探索領域SA内において、実質的に、自車基準点CPから最も近くに位置する走行経路LNが、案内走行経路として採用されている。
図2には、本発明の基本的な経路探索の他の1つとして用いられる、走行経路候補と作業車の自車基準点CPと探索領域SAとの間の位置関係に基づいて3つの走行経路候補から案内走行経路を選択するためのルールの例、つまり例(a)から例(f)が示されている
例(a)
作業車の進行方向は走行経路LNの延び方向と一致している。探索領域SAは真ん中の走行経路候補の実走行経路部分Laを捉えている。自車基準点CPは、真ん中の走行経路候補の経路延長部分Lb上にある。このまま進行すれば、作業車は実走行経路部分Laに達するので、真ん中の走行経路候補が案内走行経路として選択される。
例(b)
作業車の進行方向は走行経路LNの延び方向に対してわずかに傾斜している。探索領域SAは真ん中の走行経路候補の実走行経路部分Laと右側の走行経路候補の実走行経路部分Laを捉えている。自車基準点CPは、真ん中の走行経路候補の経路延長部分Lb上にある。真ん中の走行経路候補に沿ってわずかに操舵しながら進行すれば、作業車は実走行経路部分Laに達するので、真ん中の走行経路候補が案内走行経路として選択される。
例(c)
作業車の進行方向は走行経路LNの延び方向と一致しているが、作業車は真ん中の走行経路候補と右側の走行経路候補との間に位置している。探索領域SAは真ん中の走行経路候補の実走行経路部分Laと右側の走行経路候補の実走行経路部分Laを捉えている。いずれの走行経路候補においても、最短位置MPは実走行経路部分La上となる。最短距離MDは真ん中の走行経路候補との間の方が短いので、真ん中の走行経路候補が案内走行経路として選択される。
例(d)
作業車の進行方向は走行経路LNの延び方向に対して大きく傾斜している。探索領域SAは真ん中の走行経路候補の実走行経路部分Laと右側の走行経路候補の経路延長部分Lbを捉えている。いずれの走行経路候補においても、最短位置MPは経路延長部分Lb上となる。最短距離MDは真ん中の走行経路候補との間の方が短い。探索領域SAと走行経路候補との交点は、真ん中の走行経路候補ではその実走行経路部分Laに位置し、右側の走行経路候補ではその経路延長部分Lbに位置する。ここでは、真ん中の走行経路候補が案内走行経路として選択される。
例(e)
作業車の進行方向は走行経路LNの延び方向に対して大きく傾斜している。探索領域SAは右側の走行経路候補の実走行経路部分Laを捉えている。いずれの走行経路候補においても、最短位置MPは実走行経路部分Laとなる。最短距離MDは真ん中の走行経路候補との間の方が短い。作業車の自車基準点CPは、真ん中の走行経路候補を通り抜けている。探索領域SAと右側の走行経路候補との交点は、その実走行経路部分Laに位置する。ここでは、右側の走行経路候補が案内走行経路として選択される。
例(f)
作業車の進行方向は走行経路LNの延び方向に対して大きく傾斜している。探索領域SAは左側の走行経路候補の実走行経路部分Laと真ん中の走行経路候補の実走行経路部分Laとを捉えている。いずれの走行経路候補においても、最短位置MPは実走行経路部分Laとなる。最短距離MDは左側の走行経路候補との間の方が短い。探索領域SAと左側の走行経路候補との交点及び探索領域SAと真ん中の走行経路候補との交点は、それぞれの実走行経路部分Laに位置する。ここでは、左側の走行経路候補が案内走行経路として選択される。
上述したようなルールを組み合わせて、走行経路候補と作業車の自車基準点CPと探索領域SAとの間の位置関係に基づいて複数の走行経路候補から案内走行経路を選択する選択アルゴリズムが、作業車の種類や作業地の種類などに応じて構築することができる。
案内走行経路が選択されると、案内走行経路と自車位置との間の偏差が算出され、この偏差を縮小するように操舵することで、予定通りの走行が実現する。作業車の操舵は、手動でもよいし、自動でもよい。手動の場合には、算出された偏差が視覚または音声を通じて運転者に報知されるので、その報知を参考にして運転者は操舵を行う。
次に、本発明の作業車の具体的な実施形態の1つを説明する。この実施形態では、作業車は、図3に示されているように、畦によって境界づけられた圃場(作業地)に対して走行作業を行う作業装置30を装備可能なトラクタである。このトラクタは、前輪11と後輪12とによって支持された車体1の中央部に操縦部20が設けられている。車体1の後部には油圧式の昇降機構31を介してロータリ耕耘装置である作業装置30が装備されている。前輪11は操向輪として機能し、その操舵角を変更することでトラクタの走行方向が変更される。前輪11の操舵角は操舵機構13の動作によって変更される。操舵機構13には自動操舵のための操舵モータ14が含まれている。手動走行の際には、前輪11の操舵は操縦部20に配置されているステアリングホイール22の操作によって可能である。トラクタのキャビン21には、GNSSモジュールとして構成されている衛星測位モジュール80が設けられている。衛星測位モジュール80の構成要素として、GPS信号やGNSS信号を受信するための衛星用アンテナがキャビン21の天井領域に取り付けられている。なお、衛星測位モジュール80には、衛星航法を補完するために、ジャイロ加速度センサや磁気方位センサを組み込んだ慣性航法モジュールを含めることができる。もちろん、慣性航法モジュールは、衛星測位モジュール80とは別の場所に設けてもよい。
図4には、このトラクタに構築されている制御系が示されている。この制御系は、図1と図2とを用いて説明された、本発明による線路探索技術を実現するように構成されている。この制御系の中核要素である制御ユニット5には、入出力インタフェースとして機能する、出力処理部7、入力処理部8、通信処理部70が備えられている。出力処理部7は、車両走行機器群71、作業装置機器群72、報知デバイス73などと接続している。車両走行機器群71には、操舵モータ14をはじめ、図示されていないが変速機構やエンジンユニットなど車両走行のために制御される機器が含まれている。作業装置機器群72には、作業装置30の駆動機構や、作業装置30を昇降させる昇降機構31などが含まれている。通信処理部70は、制御ユニット5で処理されたデータを遠隔地の管理センタKSに構築された管理コンピュータ100に送信するとともに、管理コンピュータ100から種々のデータを受信する機能を有する。報知デバイス73には、ディスプレイやランプやスピーカが含まれている。特に、ディスプレイには、制御ユニット5で生成された各走行経路が表示される。ランプやスピーカは、走行注意事項や自動操舵走行での目標走行経路からの外れ度合など、運転者に報知したい種々の情報を運転者や操作者に報知するために用いられる。報知デバイス73と出力処理部7との間の信号伝送は、有線または無線で行われる。
入力処理部8は、衛星測位モジュール80、走行系検出センサ群81、作業系検出センサ群82、自動/手動切替操作具83などと接続している。走行系検出センサ群81には、エンジン回転数や変速状態などの走行状態を検出するセンサが含まれている。作業系検出センサ群82には、作業装置30の位置や傾きを検出するセンサ、作業負荷などを検出するセンサなどが含まれている。自動/手動切替操作具83は、自動操舵で走行する自動走行モードと手動操舵で走行する手動操舵モードとのいずれかを選択するスイッチである。例えば、自動操舵モードでの走行を中断し、自動/手動切替操作具83を操作することで、手動操舵での走行に切り替えることも可能であり、また、手動操舵での走行を中断し、自動/手動切替操作具83を操作することで、自動操舵での走行に切り替えることも可能である。
制御ユニット5には、図1と図2とを用いて説明された、作業車の走行目標となる案内走行経路を見つけ出す経路探索を実行する走行経路探索モジュール60が構築されている。そのほかに、制御ユニット5には、走行制御部50、作業制御部53、自車位置算出部54、偏差算出部55、経路生成部56、走行経路格納部57、報知部58が備えられている。
車両走行機器群71を制御する走行制御部50は、このトラクタが自動走行(自動操舵)と手動走行(手動操舵)の両方で走行可能に構成されているため、手動走行制御部51と自動走行制御部52とが含まれている。手動走行制御部51は、運転者による操作に基づいて車両走行機器群71を制御する。自動走行制御部52は、車体1が走行経路探索モジュール60によって選択された案内走行経路に沿うように、自動操舵指令を生成し、出力処理部7を介して操舵モータ14に出力する。作業制御部53は、作業装置30の動きを制御するために、作業装置機器群72に制御信号を与える。
自車位置算出部54は、衛星測位モジュール80から送られてくる測位データに基づいて、自車位置を算出する。偏差算出部55は、走行経路探索モジュール60によって選択された案内走行経路と自車位置との間の偏差(座標位置ずれ及び方向ずれを含む)を算出し、自動走行制御部52に与える。自動走行制御部52はこの偏差が小さくなるような自動操舵指令を生成し、出力処理部7を介して操舵モータ14を制御する。
経路生成部56は、走行経路探索モジュール60で走行経路候補として取り扱われる走行経路を規定する経路データを生成する。この経路データの生成は、作業地情報に含まれている作業地地図データから得られる外形データに基づいて生成される。あるいは、運転者や管理者の入力操作を通じて、経路データを生成することも可能である。作業地情報は、遠隔地の管理センタKSに設置されている管理コンピュータ100の作業地情報格納部101から抽出され、制御ユニット5にダウンロード可能である。また、経路データそれ自体を作業地情報に含ませて、管理コンピュータ100で管理することも可能である。つまり、図4では、経路生成部56が制御ユニット5に構築されているが、経路生成部56を管理コンピュータ100内に構築し、管理コンピュータ100で生成された経路データが制御ユニット5に通信処理部70を介してダウンロードされる構成も可能である。さらには、図4には図示されていないが、このトラクタの走行を監視している監視者等が携帯しているタブレットコンピュータなどの通信端末に経路生成部56を構築し、通信端末で生成された経路データが制御ユニット5に通信処理部70を介してダウンロードされる構成も可能である。いずれにしても、制御ユニット5で取得された経路データである走行経路は、走行経路格納部57に格納される。さらに、指定された圃場での走行作業を記述した作業計画書も管理コンピュータ100の作業計画管理部102から制御ユニット5にダウンロードしてもよい。作業車は、作業前に、作業計画書に基づく作業が可能なように調整される。
報知部58は、ディスプレイやスピーカなどの報知デバイス73を通じて運転者や監視者に必要な情報を報知するための報知信号(表示データや音声データ)を生成する。この実施形態では、報知部58は、走行経路格納部57に格納されている作業経路や偏差算出部55によって算出された偏差をグラフィカルにディスプレイに表示す表示データを生成する表示データ生成機能を有している。
走行経路探索モジュール60は、実質的にコンピュータプログラムによって構築されており、図1と図2で説明された制御を実行することが可能である。このため、走行経路探索モジュール60には、探索領域設定部61、位置関係算出部62、案内経路選択部63が含まれている。探索領域設定部61は、図1で示された探索領域SAの形状、探索領域SAの車体1に対する位置を設定する。この実施形態では、探索領域SAは扇形であるので、扇形の中心角θ、扇形の辺の長さSeが設定される。また、この扇形の中心点は自車基準点CPとされ、自車位置として取り扱われる。なお、扇形の辺の長さSeと探索距離Rは同一である。位置関係算出部62は、走行経路格納部57から読み出された複数の走行経路候補と自車位置算出部54で得られた自車位置との間の位置関係を算出する。案内経路選択部63は、位置関係算出部62で算出された位置関係に基づいて、走行経路候補から、自車を案内する案内走行経路を選択して、偏差算出部55に与える。
案内経路選択部63は、図2を用いて説明された、例(a)から例(f)などの制御ルールを組み合わせて実行することができる。このような制御ルールを組み合わせて、案内経路選択部63によって実行される経路探索ルーチンの1つを、図5に示されたフローチャートを用いて説明する。
なお、フローチャートの理解を助けるため、自車位置と探索領域SAと走行経路との位置関係が図6から図8に模式的に例示されている。この位置関係は、案内経路を選択する際の選択条件として用いられる。図6において、自車基準点(自車位置)CPは、走行経路LN上に位置している。さらに、図6の(a)では、自車基準点CPは実走行経路部分La上に位置しており、図6の(b)と(c)では、経路延長部分Lb上に位置しており、図6の(b)では、端点EPは探索領域SA内であり、図6の(c)では、端点EPは探索領域SA外である。図7において、自車基準点(自車位置)CPは、走行経路LNから外れて位置しており、最短距離MDと最短位置MPが示されている。さらに、図7の(a)では、最短位置MPに対応する端点EPが探索領域SA内に位置し、図7の(b)では、端点EPが探索距離Rの外側に位置している、図7の(c)では、自車基準点CPと端点EPを結ぶ直線と車体1の進行方向との角度:αが所定角度の90°を超えている。図8において、探索領域SAの辺Seと走行経路との交点IP(図8では星印で示されている)が示されており、図8の(a)では、交点IPは実走行経路部分La上に位置しており、図8の(b)では、交点IPは経路延長部分Lb上に位置している。
経路探索ルーチンが呼び出されると、走行経路格納部57から走行経路データが走行経路候補群として読み出される(#10)。次いで、自車位置算出部54で算出された自車位置を取得する(#11)。走行経路格納部57から走行経路候補として複数の走行経路を抽出して読み出す(#12)。なお、走行経路候補として、作業地全体または部分領域に展開される走行経路を全て読み出してもよい。この場合、この処理ステップは初期処理として取り扱われる。あるいは、走行経路に、未作業/既作業の属性値や進行方向の属性値を付与しておき、選択対象とはならない走行経路は抽出しないように構成してもよい。
次に、自車位置を通る各走行経路候補への垂線を求め、最短位置MP(座標値)と最短距離MDとが求められ(#13)、最短距離MDが短い順に、以降の位置関係算出処理のための対象走行経路候補(以下単に対象経路と略称する)として指定される(#14)。経路選択の第1段階として、自車位置(自車基準点CP)が対象経路上に位置しているかどうか判定される(#15)。もちろん、この判定条件には所定の誤差範囲は含まれており、厳密に自車位置が対象経路上に位置していなくてもよい。その際、自車位置が対象経路の実走行経路部分La上に位置しているだけでなく、経路延長部分Lbに位置していても、この判定条件を満たしているとみなし(#15Yes分岐)、この対象経路は案内走行経路として選択される(#51)。選択された案内走行経路と自車位置との偏差として、位置ずれ(最短距離MDと同じ)及び方向ずれが偏差算出部55で算出され(#52)、走行制御部50における走行制御に用いられる(#53)。新たな自車位置での経路探索のため、ステップ#11に戻る。
ステップ#15で、自車位置(自車基準点CP)が対象経路上に位置しない場合(#15No分岐)、次に、対象経路の実走行経路部分の端点EPが探索距離Rの円領域に入っているかどうかの探索領域判定を受ける(#20)。この探索領域判定が不成立ならば(#20No分岐)、全走行経路候補の探索が済んだかどうか判定され(#40)、未処理の対象経路が残っている限りは(#40No分岐)、次の対象経路に対する選択処理のため#14に戻り、未処理の対象経路が残っていなければ(#40Yes分岐)、新たな自車位置での経路探索のため、ステップ#11に戻る。逆に、探索領域判定が成立するなら(#20Yes分岐)、次の角度判定を受ける(#21)。この角度判定では、端点EPと自車位置とを結ぶ直線と車体1の進行方向との間の角度が所定の範囲に入っているかどうか、あるいは端点EPが探索領域SAにはいっているかどうかが判定される。
この角度判定が不成立ならば、(#21No分岐)、未処理の対象経路が残っている限りは(#40No分岐)、次の対象経路に対する選択処理のため#14に戻り、未処理の対象経路が残っていなければ(#40Yes分岐)、新たな自車位置での経路探索のため、ステップ#11に戻る。角度判定が成立ならば(#21Yes分岐)、さらに探索領域SAの辺Seと対象経路との交点を算出し(#30)、当該交点が対象経路の実走行経路部分に位置するかどうかを判定する交点判定を受ける(#31)。この交点判定が不成立ならば(#31No分岐)、未処理の対象経路が残っている限りは(#40No分岐)、次の対象経路に対する選択処理のため#14に戻り、未処理の対象経路が残っていなければ(#40Yes分岐)、新たな自車位置での経路探索のため、ステップ#11に戻る。交点判定が成立ならば(#31Yes分岐)、この対象経路は案内走行経路として選択される(#51)。選択された案内走行経路と自車位置との偏差として、位置ずれ(最短距離MDと同じ)及び方向ずれが偏差算出部55で算出され(#52)、走行制御部50における走行制御に用いられる(#53)。新たな自車位置での経路探索のため、ステップ#11に戻る。
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、自車位置(自車基準点CP)と探索領域SAと走行経路候補(走行経路LN)との間の位置関係に基づいて、案内走行経路が選択されていたが、最も簡単な実施形態では、自車位置(自車基準点)にもっとも近い走行経路候補を案内走行経路として選択される。
(2)上述した実施形態では、走行経路LNは、直線として示されていたが、曲線であってもよい。
(3)上述した実施形態では、扇形状の探索領域SAの中心角は、ほぼ45°として示されていたが、中心角は、好ましくは180°以下で任意に設定できるようにしてもよい。なお、中心角0°の探索領域SAは、実際的には、直線として取り扱われる。また、探索領域SAの中心点は、車体1の幅方向で中央で、かつ車体進行方向で前側が好ましいが、作業車の仕様等に応じて任意に設定可能である。
(4)上述した実施形態では、作業車として、ロータリ耕耘機を作業装置30として装備したトラクタを、作業車として取り上げたが、そのようなトラクタ以外にも、例えば、田植機、コンバインなどの農作業車も、実施形態として採用することができる。
(5)図4で示された機能ブロック図における各機能部は、主に説明目的で区分けされている。実際には、各機能部は他の機能部と統合または複数の機能部に分けることができる。また、遠隔地の管理センタKSに設置される管理コンピュータ100に代えて、運転者や監視者が携帯する通信端末(携帯電話やタブレットコンピュータなど)を利用してもよいし、図4で示された機能部の1つ以上をそのような通信端末に構築してもよい。もちろん、この圃場走行経路生成システムの全ての機能部を作業車に構築してもよい。
本発明は、作業地を走行するために設定された案内走行経路を探索するコンピュータプログラムやコンピュータシステム及び、このような経路探索技術を採用する作業車に適用可能である。走行経路に沿った走行は、手動走行であってもよいし、自動走行であってもよい。
1 :車体
5 :制御ユニット
22 :ステアリングホイール
30 :作業装置
50 :走行制御部
51 :手動走行制御部
52 :自動走行制御部
54 :自車位置算出部
55 :偏差算出部
57 :走行経路格納部
58 :報知部
60 :走行経路探索モジュール
61 :探索領域設定部
62 :位置関係算出部
63 :案内経路選択部
80 :衛星測位モジュール
CP :自車基準点
EP :端点
LN :走行経路
La :実走行経路部分
Lb :経路延長部分
本発明は、作業地を走行するために設定された案内走行経路を探索する技術及び、この技術を採用した作業車に関する。
GPS装置により計測される位置情報に基づいて、ティーチング経路生成手段により生成されたティーチング経路に対して平行な目標経路を生成し、該目標経路上を自律的に走行する田植機が、特許文献1から知られている。この田植機では、オペレータにより自動旋回操作具が操作されることにより、次の目標経路へ向けて自動的に旋回し、かつ、旋回動作の終了後に引き続き、次の目標経路上を自律的に走行する。
GPSユニットにより計測される位置情報に基づいて生成されたティーチング経路に対して平行な目標経路が生成され、次の目標経路へ向けて自動的に旋回し、かつ、次の目標経路上を自律的に走行するように構成された田植機が特許文献2から知られている。
特開2016−021890号公報
特開2008−131880号公報
上述したように、設定された案内走行経路に沿って走行を行う、従来の作業車では、走行案内となっていた走行経路から次の走行経路に移行する旋回走行時や、ぬかるみ面や凹凸面での走行時に、一時的に車体の位置や向きが走行経路から逸脱し、走行経路を見失うことがある。探索すべき走行経路が複数設定されていると、その内から新たに走行目標とすべき走行経路を探索する場合、走行目標とすべき走行経路ではなく、それに隣接する走行経路やその他の探索領域内にある走行経路を見つけ出してしまう可能性がある。そのような間違った走行経路に向かうことを指示する操舵情報が報知されたり、間違った走行経路に向かって自動操舵されたりすると、意図しない走行結果をもたらす。
このような実情に鑑み、走行目標とすべき走行経路を高い信頼性で探索する技術が要望されている。
本発明による、作業車の走行目標となる案内走行経路を見つけ出す経路探索プログラムは、前記作業車における所定基準点である自車基準点の進行方向に広がる扇形領域を探索領域として設定する探索領域設定機能と、複数の走行経路を格納する走行経路格納部から読み出された作業地における複数の走行経路候補のうち、取得した自車位置に基づき、前記探索領域内において最も自車基準点に近いと判定された前記走行経路候補を前記作業車の走行目標となる案内走行経路として選択する案内経路選択機能と、をコンピュータに実現させ、前記案内経路選択機能において、前記探索領域が複数の前記走行経路候補を捉えている場合、前記探索領域に捉えられている複数の前記走行経路候補のうち、最も自車基準点に近いと判定された前記走行経路候補が、前記案内走行経路として選択されるように構成されている。
この構成によれば、作業車が作業地を走行するために設定されている複数の走行経路が走行経路格納部から読み出され、走行経路候補としてメモリ等に展開され、設定されている探索領域内において、これらの走行経路候補の中で、作業車の進行方向前方で、作業車の自車基準点(一般には測位データから算出される)にもっとも近い走行経路候補が案内走行経路として選択される。作業車の進行方向の前方に広がる扇形領域において、作業車の自車基準点に最も近い走行経路候補が走行すべき走行経路である確率が高い。したがって、走行経路候補が複数存在しても、上述の方法によって簡単かつ迅速に走行すべき案内走行経路を選択することが可能となる。なお、自車基準点の進行方向に広がる扇形領域の具体的な例としては、自車基準点を中心として、中心角180°(進行方向を中心線として+90°と−90°)以下、好ましくは中心角45°から90°の扇形領域であるが、任意に設定できるような構成が好適である。
さらに、本発明において、前記複数の走行経路候補は、作業地において互いに略平行に延びるものであると好適である。
さらに、本発明において、各前記走行経路に、作業済みであるか否かを示す属性が付与されており、前記走行経路格納部に格納された複数の前記走行経路から前記属性に基づいて抽出された複数の前記走行経路が、複数の前記走行経路候補として前記走行経路格納部から読み出されると好適である。
上述した経路探索プログラムを作業車に構築するためには、経路探索プログラムをシステム化して作業車の制御系に組み込むと好都合である。そのような経路探索システムを搭載した作業車も本発明に含まれ、上述した経路探索プログラムと同じ作用効果を得ることができる。
作業車の周辺に設定された探索領域と作業地に設定された走行経路とを説明する説明図である。
走行経路候補群と自車位置と探索領域との間の位置関係に基づいて案内走行経路を選択する制御ルールを説明する説明図である。
作業車の具体的な実施形態の1つである耕耘装置付きトラクタの側面図である。
トラクタの制御系を示す機能ブロック図である。
経路探索ルーチンの1つを示すフローチャート図である。
走行経路候補群と自車位置と探索領域との間の位置関係を説明する模式図である。
走行経路候補群と自車位置と探索領域との間の位置関係を説明する模式図である。
走行経路候補群と自車位置と探索領域との間の位置関係を説明する模式図である。
まず、本発明の具体的な実施形態を説明する前に、本発明で用いられている用語の定義と経路探索の原理を、図1と図2を用いて説明する。図1には、車体1と、車体1に装備された作業装置30とからなる作業車と、この作業車が走行する作業地が模式的に示されている。作業地に設定された、作業車の走行目標となる案内走行経路LNは、ここでは、互いに平行に延びている直線状の走行経路群として示されており、各走行経路LNは式で表される。走行経路LNは、実際の走行経路として機能する実走行経路部分Laと、実走行経路部分Laの延長線である経路延長部分Lbとからなり、実走行経路部分Laは両端の端点EPによって規定されている。また、走行経路群を構成する各走行経路LNは、厳密な意味での直線でなくともよく、曲線でもよい。その際、曲線は、曲線式で表されるような曲線でもよいし、折れ曲がりながらつながっている直線片の集合体でもよい。各走行経路LNは、平行な配置に限定されるわけではなく、非平行な配置、例えば他の走行経路LNと直交する走行経路LNが混在してもよい。さらに、作業車の走行には、作業を伴いながら走行する実作業走行と、方向転回などの作業を伴わずに走行する非作業走行とが含まれているが、この明細書においては、作業車の走行という用語には、実作業走行と非作業走行とのいずれかあるいは両方の意味が含まれている。
ここでは、作業車における所定基準点としての自車基準点CPは、車体1のほぼ中央の位置に設定されているが、作業装置30の対地作業位置など種々の位置に設定可能である。自車基準点CPからの径方向の距離は探索距離Rと称される。つまり、自車基準点CPを中心とする半径:Rの円SCの内側が探索距離R以内を満たす領域となる。さらに、図1の例では、自車基準点CPの周辺領域を探索領域SAとして、自車基準点CPを中心として自車の進行方向に広がる中心角が約45°の扇形状の領域(扇形領域)が探索領域SAとして設定されている。この扇形の半径は、探索距離Rと一致しており、その辺には符号Seが付与されている。扇形の中心角:θは180°まで広げてもよい。探索領域SAの形状は任意であるが、演算上、できるだけ簡単な形状が好ましい。GPSやGNNSなどの衛星測位モジュール(測位モジュールの一例)からの測位データに基づいて算出される自車位置と自車基準点CPとの位置が異なっていても簡単な演算で補正することができるので、実質的には同一位置であると見なすことができる。説明を簡単にするため、以下の説明では、自車位置と自車基準点CPは同一であるとする。したがって、自車基準点CPは、以下単に自車位置とも略称される。自車基準点CP(自車位置)から走行経路LNへの垂線は自車基準点CPと走行経路LNとの最短距離MDを規定するので、この垂線と走行経路LNの交点を示す座標位置は最短位置MPと定義される。
作業地に設定されている走行経路群、演算上はメモリに展開されている直線群が、本経路探索プログラムによって取り扱われる複数の走行経路候補となる。自車基準点CPと探索領域SAとの間の位置関係が算出され、算出された位置関係に基づいて、複数の走行経路候補から作業車の走行目標となる案内走行経路が選択される。
図2には、3本の走行経路LNからなる走行経路候補とこの走行経路候補に対して種々の位置(姿勢)にある作業車とが、示されている。作業車には、黒丸で示された自車基準点CPと扇形の探索領域SAが付記されている。各走行経路LNは紙面上から下に互いに平行に直線状に延びており、実走行経路部分Laと下側の経路延長部分Lbとで示されている。案内走行経路として採用された走行経路LNは太い線で示されている。
本発明の基本的な経路探索の1つでは、探索領域SA内において最も自車位置(自車基準点)CPに近い走行経路候補を作業車の走行目標となる案内走行経路として選択する。図2においても、探索領域SA内において、実質的に、自車基準点CPから最も近くに位置する走行経路LNが、案内走行経路として採用されている。
図2には、本発明の基本的な経路探索の他の1つとして用いられる、走行経路候補と作業車の自車基準点CPと探索領域SAとの間の位置関係に基づいて3つの走行経路候補から案内走行経路を選択するためのルールの例、つまり例(a)から例(f)が示されている
例(a)
作業車の進行方向は走行経路LNの延び方向と一致している。探索領域SAは真ん中の走行経路候補の実走行経路部分Laを捉えている。自車基準点CPは、真ん中の走行経路候補の経路延長部分Lb上にある。このまま進行すれば、作業車は実走行経路部分Laに達するので、真ん中の走行経路候補が案内走行経路として選択される。
例(b)
作業車の進行方向は走行経路LNの延び方向に対してわずかに傾斜している。探索領域SAは真ん中の走行経路候補の実走行経路部分Laと右側の走行経路候補の実走行経路部分Laを捉えている。自車基準点CPは、真ん中の走行経路候補の経路延長部分Lb上にある。真ん中の走行経路候補に沿ってわずかに操舵しながら進行すれば、作業車は実走行経路部分Laに達するので、真ん中の走行経路候補が案内走行経路として選択される。
例(c)
作業車の進行方向は走行経路LNの延び方向と一致しているが、作業車は真ん中の走行経路候補と右側の走行経路候補との間に位置している。探索領域SAは真ん中の走行経路候補の実走行経路部分Laと右側の走行経路候補の実走行経路部分Laを捉えている。いずれの走行経路候補においても、最短位置MPは実走行経路部分La上となる。最短距離MDは真ん中の走行経路候補との間の方が短いので、真ん中の走行経路候補が案内走行経路として選択される。
例(d)
作業車の進行方向は走行経路LNの延び方向に対して大きく傾斜している。探索領域SAは真ん中の走行経路候補の実走行経路部分Laと右側の走行経路候補の経路延長部分Lbを捉えている。いずれの走行経路候補においても、最短位置MPは経路延長部分Lb上となる。最短距離MDは真ん中の走行経路候補との間の方が短い。探索領域SAと走行経路候補との交点は、真ん中の走行経路候補ではその実走行経路部分Laに位置し、右側の走行経路候補ではその経路延長部分Lbに位置する。ここでは、真ん中の走行経路候補が案内走行経路として選択される。
例(e)
作業車の進行方向は走行経路LNの延び方向に対して大きく傾斜している。探索領域SAは右側の走行経路候補の実走行経路部分Laを捉えている。いずれの走行経路候補においても、最短位置MPは実走行経路部分Laとなる。最短距離MDは真ん中の走行経路候補との間の方が短い。作業車の自車基準点CPは、真ん中の走行経路候補を通り抜けている。探索領域SAと右側の走行経路候補との交点は、その実走行経路部分Laに位置する。ここでは、右側の走行経路候補が案内走行経路として選択される。
例(f)
作業車の進行方向は走行経路LNの延び方向に対して大きく傾斜している。探索領域SAは左側の走行経路候補の実走行経路部分Laと真ん中の走行経路候補の実走行経路部分Laとを捉えている。いずれの走行経路候補においても、最短位置MPは実走行経路部分Laとなる。最短距離MDは左側の走行経路候補との間の方が短い。探索領域SAと左側の走行経路候補との交点及び探索領域SAと真ん中の走行経路候補との交点は、それぞれの実走行経路部分Laに位置する。ここでは、左側の走行経路候補が案内走行経路として選択される。
上述したようなルールを組み合わせて、走行経路候補と作業車の自車基準点CPと探索領域SAとの間の位置関係に基づいて複数の走行経路候補から案内走行経路を選択する選択アルゴリズムが、作業車の種類や作業地の種類などに応じて構築することができる。
案内走行経路が選択されると、案内走行経路と自車位置との間の偏差が算出され、この偏差を縮小するように操舵することで、予定通りの走行が実現する。作業車の操舵は、手動でもよいし、自動でもよい。手動の場合には、算出された偏差が視覚または音声を通じて運転者に報知されるので、その報知を参考にして運転者は操舵を行う。
次に、本発明の作業車の具体的な実施形態の1つを説明する。この実施形態では、作業車は、図3に示されているように、畦によって境界づけられた圃場(作業地)に対して走行作業を行う作業装置30を装備可能なトラクタである。このトラクタは、前輪11と後輪12とによって支持された車体1の中央部に操縦部20が設けられている。車体1の後部には油圧式の昇降機構31を介してロータリ耕耘装置である作業装置30が装備されている。前輪11は操向輪として機能し、その操舵角を変更することでトラクタの走行方向が変更される。前輪11の操舵角は操舵機構13の動作によって変更される。操舵機構13には自動操舵のための操舵モータ14が含まれている。手動走行の際には、前輪11の操舵は操縦部20に配置されているステアリングホイール22の操作によって可能である。トラクタのキャビン21には、GNSSモジュールとして構成されている衛星測位モジュール80が設けられている。衛星測位モジュール80の構成要素として、GPS信号やGNSS信号を受信するための衛星用アンテナがキャビン21の天井領域に取り付けられている。なお、衛星測位モジュール80には、衛星航法を補完するために、ジャイロ加速度センサや磁気方位センサを組み込んだ慣性航法モジュールを含めることができる。もちろん、慣性航法モジュールは、衛星測位モジュール80とは別の場所に設けてもよい。
図4には、このトラクタに構築されている制御系が示されている。この制御系は、図1と図2とを用いて説明された、本発明による線路探索技術を実現するように構成されている。この制御系の中核要素である制御ユニット5には、入出力インタフェースとして機能する、出力処理部7、入力処理部8、通信処理部70が備えられている。出力処理部7は、車両走行機器群71、作業装置機器群72、報知デバイス73などと接続している。車両走行機器群71には、操舵モータ14をはじめ、図示されていないが変速機構やエンジンユニットなど車両走行のために制御される機器が含まれている。作業装置機器群72には、作業装置30の駆動機構や、作業装置30を昇降させる昇降機構31などが含まれている。通信処理部70は、制御ユニット5で処理されたデータを遠隔地の管理センタKSに構築された管理コンピュータ100に送信するとともに、管理コンピュータ100から種々のデータを受信する機能を有する。報知デバイス73には、ディスプレイやランプやスピーカが含まれている。特に、ディスプレイには、制御ユニット5で生成された各走行経路が表示される。ランプやスピーカは、走行注意事項や自動操舵走行での目標走行経路からの外れ度合など、運転者に報知したい種々の情報を運転者や操作者に報知するために用いられる。報知デバイス73と出力処理部7との間の信号伝送は、有線または無線で行われる。
入力処理部8は、衛星測位モジュール80、走行系検出センサ群81、作業系検出センサ群82、自動/手動切替操作具83などと接続している。走行系検出センサ群81には、エンジン回転数や変速状態などの走行状態を検出するセンサが含まれている。作業系検出センサ群82には、作業装置30の位置や傾きを検出するセンサ、作業負荷などを検出するセンサなどが含まれている。自動/手動切替操作具83は、自動操舵で走行する自動走行モードと手動操舵で走行する手動操舵モードとのいずれかを選択するスイッチである。例えば、自動操舵モードでの走行を中断し、自動/手動切替操作具83を操作することで、手動操舵での走行に切り替えることも可能であり、また、手動操舵での走行を中断し、自動/手動切替操作具83を操作することで、自動操舵での走行に切り替えることも可能である。
制御ユニット5には、図1と図2とを用いて説明された、作業車の走行目標となる案内走行経路を見つけ出す経路探索を実行する走行経路探索モジュール60が構築されている。そのほかに、制御ユニット5には、走行制御部50、作業制御部53、自車位置算出部54、偏差算出部55、経路生成部56、走行経路格納部57、報知部58が備えられている。
車両走行機器群71を制御する走行制御部50は、このトラクタが自動走行(自動操舵)と手動走行(手動操舵)の両方で走行可能に構成されているため、手動走行制御部51と自動走行制御部52とが含まれている。手動走行制御部51は、運転者による操作に基づいて車両走行機器群71を制御する。自動走行制御部52は、車体1が走行経路探索モジュール60によって選択された案内走行経路に沿うように、自動操舵指令を生成し、出力処理部7を介して操舵モータ14に出力する。作業制御部53は、作業装置30の動きを制御するために、作業装置機器群72に制御信号を与える。
自車位置算出部54は、衛星測位モジュール80から送られてくる測位データに基づいて、自車位置を算出する。偏差算出部55は、走行経路探索モジュール60によって選択された案内走行経路と自車位置との間の偏差(座標位置ずれ及び方向ずれを含む)を算出し、自動走行制御部52に与える。自動走行制御部52はこの偏差が小さくなるような自動操舵指令を生成し、出力処理部7を介して操舵モータ14を制御する。
経路生成部56は、走行経路探索モジュール60で走行経路候補として取り扱われる走行経路を規定する経路データを生成する。この経路データの生成は、作業地情報に含まれている作業地地図データから得られる外形データに基づいて生成される。あるいは、運転者や管理者の入力操作を通じて、経路データを生成することも可能である。作業地情報は、遠隔地の管理センタKSに設置されている管理コンピュータ100の作業地情報格納部101から抽出され、制御ユニット5にダウンロード可能である。また、経路データそれ自体を作業地情報に含ませて、管理コンピュータ100で管理することも可能である。つまり、図4では、経路生成部56が制御ユニット5に構築されているが、経路生成部56を管理コンピュータ100内に構築し、管理コンピュータ100で生成された経路データが制御ユニット5に通信処理部70を介してダウンロードされる構成も可能である。さらには、図4には図示されていないが、このトラクタの走行を監視している監視者等が携帯しているタブレットコンピュータなどの通信端末に経路生成部56を構築し、通信端末で生成された経路データが制御ユニット5に通信処理部70を介してダウンロードされる構成も可能である。いずれにしても、制御ユニット5で取得された経路データである走行経路は、走行経路格納部57に格納される。さらに、指定された圃場での走行作業を記述した作業計画書も管理コンピュータ100の作業計画管理部102から制御ユニット5にダウンロードしてもよい。作業車は、作業前に、作業計画書に基づく作業が可能なように調整される。
報知部58は、ディスプレイやスピーカなどの報知デバイス73を通じて運転者や監視者に必要な情報を報知するための報知信号(表示データや音声データ)を生成する。この実施形態では、報知部58は、走行経路格納部57に格納されている作業経路や偏差算出部55によって算出された偏差をグラフィカルにディスプレイに表示す表示データを生成する表示データ生成機能を有している。
走行経路探索モジュール60は、実質的にコンピュータプログラムによって構築されており、図1と図2で説明された制御を実行することが可能である。このため、走行経路探索モジュール60には、探索領域設定部61、位置関係算出部62、案内経路選択部63が含まれている。探索領域設定部61は、図1で示された探索領域SAの形状、探索領域SAの車体1に対する位置を設定する。この実施形態では、探索領域SAは扇形であるので、扇形の中心角θ、扇形の辺の長さSeが設定される。また、この扇形の中心点は自車基準点CPとされ、自車位置として取り扱われる。なお、扇形の辺の長さSeと探索距離Rは同一である。位置関係算出部62は、走行経路格納部57から読み出された複数の走行経路候補と自車位置算出部54で得られた自車位置との間の位置関係を算出する。案内経路選択部63は、位置関係算出部62で算出された位置関係に基づいて、走行経路候補から、自車を案内する案内走行経路を選択して、偏差算出部55に与える。
案内経路選択部63は、図2を用いて説明された、例(a)から例(f)などの制御ルールを組み合わせて実行することができる。このような制御ルールを組み合わせて、案内経路選択部63によって実行される経路探索ルーチンの1つを、図5に示されたフローチャートを用いて説明する。
なお、フローチャートの理解を助けるため、自車位置と探索領域SAと走行経路との位置関係が図6から図8に模式的に例示されている。この位置関係は、案内経路を選択する際の選択条件として用いられる。図6において、自車基準点(自車位置)CPは、走行経路LN上に位置している。さらに、図6の(a)では、自車基準点CPは実走行経路部分La上に位置しており、図6の(b)と(c)では、経路延長部分Lb上に位置しており、図6の(b)では、端点EPは探索領域SA内であり、図6の(c)では、端点EPは探索領域SA外である。図7において、自車基準点(自車位置)CPは、走行経路LNから外れて位置しており、最短距離MDと最短位置MPが示されている。さらに、図7の(a)では、最短位置MPに対応する端点EPが探索領域SA内に位置し、図7の(b)では、端点EPが探索距離Rの外側に位置している、図7の(c)では、自車基準点CPと端点EPを結ぶ直線と車体1の進行方向との角度:αが所定角度の90°を超えている。図8において、探索領域SAの辺Seと走行経路との交点IP(図8では星印で示されている)が示されており、図8の(a)では、交点IPは実走行経路部分La上に位置しており、図8の(b)では、交点IPは経路延長部分Lb上に位置している。
経路探索ルーチンが呼び出されると、走行経路格納部57から走行経路データが走行経路候補群として読み出される(#10)。次いで、自車位置算出部54で算出された自車位置を取得する(#11)。走行経路格納部57から走行経路候補として複数の走行経路を抽出して読み出す(#12)。なお、走行経路候補として、作業地全体または部分領域に展開される走行経路を全て読み出してもよい。この場合、この処理ステップは初期処理として取り扱われる。あるいは、走行経路に、未作業/既作業の属性値や進行方向の属性値を付与しておき、選択対象とはならない走行経路は抽出しないように構成してもよい。
次に、自車位置を通る各走行経路候補への垂線を求め、最短位置MP(座標値)と最短距離MDとが求められ(#13)、最短距離MDが短い順に、以降の位置関係算出処理のための対象走行経路候補(以下単に対象経路と略称する)として指定される(#14)。経路選択の第1段階として、自車位置(自車基準点CP)が対象経路上に位置しているかどうか判定される(#15)。もちろん、この判定条件には所定の誤差範囲は含まれており、厳密に自車位置が対象経路上に位置していなくてもよい。その際、自車位置が対象経路の実走行経路部分La上に位置しているだけでなく、経路延長部分Lbに位置していても、この判定条件を満たしているとみなし(#15Yes分岐)、この対象経路は案内走行経路として選択される(#51)。選択された案内走行経路と自車位置との偏差として、位置ずれ(最短距離MDと同じ)及び方向ずれが偏差算出部55で算出され(#52)、走行制御部50における走行制御に用いられる(#53)。新たな自車位置での経路探索のため、ステップ#11に戻る。
ステップ#15で、自車位置(自車基準点CP)が対象経路上に位置しない場合(#15No分岐)、次に、対象経路の実走行経路部分の端点EPが探索距離Rの円領域に入っているかどうかの探索領域判定を受ける(#20)。この探索領域判定が不成立ならば(#20No分岐)、全走行経路候補の探索が済んだかどうか判定され(#40)、未処理の対象経路が残っている限りは(#40No分岐)、次の対象経路に対する選択処理のため#14に戻り、未処理の対象経路が残っていなければ(#40Yes分岐)、新たな自車位置での経路探索のため、ステップ#11に戻る。逆に、探索領域判定が成立するなら(#20Yes分岐)、次の角度判定を受ける(#21)。この角度判定では、端点EPと自車位置とを結ぶ直線と車体1の進行方向との間の角度が所定の範囲に入っているかどうか、あるいは端点EPが探索領域SAにはいっているかどうかが判定される。
この角度判定が不成立ならば、(#21No分岐)、未処理の対象経路が残っている限りは(#40No分岐)、次の対象経路に対する選択処理のため#14に戻り、未処理の対象経路が残っていなければ(#40Yes分岐)、新たな自車位置での経路探索のため、ステップ#11に戻る。角度判定が成立ならば(#21Yes分岐)、さらに探索領域SAの辺Seと対象経路との交点を算出し(#30)、当該交点が対象経路の実走行経路部分に位置するかどうかを判定する交点判定を受ける(#31)。この交点判定が不成立ならば(#31No分岐)、未処理の対象経路が残っている限りは(#40No分岐)、次の対象経路に対する選択処理のため#14に戻り、未処理の対象経路が残っていなければ(#40Yes分岐)、新たな自車位置での経路探索のため、ステップ#11に戻る。交点判定が成立ならば(#31Yes分岐)、この対象経路は案内走行経路として選択される(#51)。選択された案内走行経路と自車位置との偏差として、位置ずれ(最短距離MDと同じ)及び方向ずれが偏差算出部55で算出され(#52)、走行制御部50における走行制御に用いられる(#53)。新たな自車位置での経路探索のため、ステップ#11に戻る。
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、自車位置(自車基準点CP)と探索領域SAと走行経路候補(走行経路LN)との間の位置関係に基づいて、案内走行経路が選択されていたが、最も簡単な実施形態では、自車位置(自車基準点)にもっとも近い走行経路候補を案内走行経路として選択される。
(2)上述した実施形態では、走行経路LNは、直線として示されていたが、曲線であってもよい。
(3)上述した実施形態では、扇形状の探索領域SAの中心角は、ほぼ45°として示されていたが、中心角は、好ましくは180°以下で任意に設定できるようにしてもよい。なお、中心角0°の探索領域SAは、実際的には、直線として取り扱われる。また、探索領域SAの中心点は、車体1の幅方向で中央で、かつ車体進行方向で前側が好ましいが、作業車の仕様等に応じて任意に設定可能である。
(4)上述した実施形態では、作業車として、ロータリ耕耘機を作業装置30として装備したトラクタを、作業車として取り上げたが、そのようなトラクタ以外にも、例えば、田植機、コンバインなどの農作業車も、実施形態として採用することができる。
(5)図4で示された機能ブロック図における各機能部は、主に説明目的で区分けされている。実際には、各機能部は他の機能部と統合または複数の機能部に分けることができる。また、遠隔地の管理センタKSに設置される管理コンピュータ100に代えて、運転者や監視者が携帯する通信端末(携帯電話やタブレットコンピュータなど)を利用してもよいし、図4で示された機能部の1つ以上をそのような通信端末に構築してもよい。もちろん、この圃場走行経路生成システムの全ての機能部を作業車に構築してもよい。
本発明は、作業地を走行するために設定された案内走行経路を探索するコンピュータプログラムやコンピュータシステム及び、このような経路探索技術を採用する作業車に適用可能である。走行経路に沿った走行は、手動走行であってもよいし、自動走行であってもよい。
1 :車体
5 :制御ユニット
22 :ステアリングホイール
30 :作業装置
50 :走行制御部
51 :手動走行制御部
52 :自動走行制御部
54 :自車位置算出部
55 :偏差算出部
57 :走行経路格納部
58 :報知部
60 :走行経路探索モジュール
61 :探索領域設定部
62 :位置関係算出部
63 :案内経路選択部
80 :衛星測位モジュール
CP :自車基準点
EP :端点
LN :走行経路
La :実走行経路部分
Lb :経路延長部分