JP2020087340A - 自動走行作業車のための制御装置 - Google Patents

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【課題】目標走行経路から外れた自動走行作業車を元に戻すための改善された制御装置を提供する。【解決手段】目標走行経路に沿って自動走行する作業車のための制御装置は、作業車の自車位置を算出する自車位置算出部40と、所定時間後の目標走行経路における推定目標点を算出する目標点推定部57と、推定目標点と自車位置との間の偏差を解消する補正方位を演算する補正方位演算ユニット9Aと、補正方位を入力パラメータとして、偏差が縮小されるように作業車を制御するための制御量を出力する制御演算ユニット9Bとを備える。【選択図】図6

Description

本発明は、目標走行経路に沿って自動走行する作業車のための制御装置に関する。
特許文献1には、予め設定された目標走行経路に沿って自動走行する農業用作業車が開示されている。この農業用作業車では、GPSを用いて算出された自車位置が目標走行経路上に設定された目標点に向かうように操向機構が制御される。その際、車体前側部分から目標点までの距離は、車体前側部分から目標走行経路に下ろした垂線の長さ(横偏差)が大きいほど小さくなるように設定される。
特許文献2には、目標走行経路に対する横偏差及び目標走行経路に対する方位偏差から目標操舵値を演算し、この目標操舵値に基づいて操舵駆動信号が出力される作業車が開示されている。具体的には、第1操舵値と第2操舵値とから目標操舵値が演算される。第1操舵値は、横偏差に基づいて演算される。第2操舵値は、方位偏差に基づいて導出された演算値を、さらに重み係数によって調整して得られる値に基づいて演算される。この重み係数は、横偏差が大きいほどその値が小さくなる係数である。
特開2002−182741号公報 特開2016−155491号公報
特許文献1による作業車では、車体が目標走行経路から横方向に大きく外れている場合には、大きな操舵角で位置ずれが解消され、車体が目標走行経路から横方向に小さく外れている場合には、小さな操舵角で位置ずれが解消される。大きな操舵角を用いることで、位置ずれは迅速に解消されるが、作業地を走行装置(車輪やクローラ)によって荒らしてしまうという問題が生じる。特に、作業地が圃場などの場合、この問題は深刻である。
特許文献2による作業車では、横偏差が大きい場合には、方位偏差をある程度無視して、横偏差の解消に重きをおいた目標操舵値が出力される。このため、この作業車でも横偏差が大きい場合には、大きな操舵角が用いられることになり、作業地を走行装置(車輪やクローラ)によって荒らしてしまうという、特許文献1による作業車と同様な問題が生じる。
上記実情から、目標走行経路から外れた自動走行作業車を元に戻すための改善された制御装置が要望されている。
上記課題を解決するため、目標走行経路に沿って自動走行する作業車のための制御装置は、前記作業車の自車位置を算出する自車位置算出部と、所定時間後の前記目標走行経路における推定目標点を算出する目標点推定部と、前記推定目標点と前記自車位置との間の偏差を解消する補正方位を演算する補正方位演算ユニットと、前記補正方位を入力パラメータとして、前記偏差が縮小されるように前記作業車の走行方向を変更するための制御量を出力する制御演算ユニットとを備える。
この構成では、作業車を目標走行経路に沿って走行させる制御を行う際に、まずは、所定時間後に目標走行経路上の制御目標点となると推定される推定目標点が算出され、その推定目標点と自車位置との間の偏差が縮小される制御量が演算され、出力される。出力された制御量によって、車輪やクローラなどの操向機器が駆動される。作業車を目標走行経路に沿って走行させる制御を行う際には、所定時間後の目標走行経路上での作業車の位置、つまり現状の自車位置より進行方向に離れた目標走行経路上の位置、が推定目標点となる。このため、当該所定時間が長くなるほど、推定目標点に対する車体方位(車体前後方向の向き)のずれは小さくなり、操向機器を駆動する制御量は小さくなる。この所定時間を、この制御装置を搭載する作業車に応じて適切に設定することにより、作業車に適した操舵制御が実現する。
本発明の制御における、適切な所定時間は、作業車の種類によって異なり、さらに、作業地における作業車走行面の状態、作業車の走行状態など種々の条件によって異なる可能性がある。このような作業車の種類、作業状態、圃場状態などを、ここでは作業車の状態と総称するとすれば、前記所定時間は、前記作業車の状態によって変更されることが好ましい。もちろん、作業車に対して運転者が設定した操作機器の状態に基づいて自動的に前記所定時間が設定されてもよい。
自車が目標走行経路上の推定目標点に向かうように走行方向が調節されると、作業車の目標走行経路からの位置ずれは縮小される。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記推定目標点と前記自車位置とを通る直線と前記目標走行経路とがなす角度を推定方位偏差として算出する推定方位偏差算出部が備えられ、前記補正方位演算ユニットは、前記推定方位偏差を入力パラメータとして第1補正方位を出力する第1制御器を備え、前記第1補正方位に基づいて前記補正方位が演算される。前記補正方位演算ユニットは、前記推定目標点と前記自車位置とを通る直線と前記目標走行経路とがなす推定方位偏差を入力パラメータとして第1補正方位を出力する第1制御器を備え、前記第1補正方位に基づいて前記補正方位が演算される。
推定方位偏差が大きいほど車体の走行方向を変更するための制御量も大きくなる。したがって、この制御をスムーズに行うために、前記第1制御器は比例制御器で構成されることが好ましい。
推定方位偏差だけを入力パラメータとして車体の走行方向を変更するための補正方位を演算するよりは、目標走行経路の左右方向での車体と目標走行経路との距離(横偏差と称する)も入力パラメータとして車体の走行方向を変更するための補正方位を演算する方が、目標走行経路から外れた車体を適切に戻すことができる。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記目標走行経路の経路方位に直交する方向での前記自車位置から前記目標走行経路までの距離を横偏差として算出する横偏差算出部が備えられ、前記補正方位演算ユニットは、前記横偏差を入力パラメータとして第2補正方位を出力する第2制御器を備え、前記第1補正方位と前記第2補正方位とに基づいて、前記補正方位が演算される。
横偏差に基づく車体の走行方向を変更するための補正方位を求める際に、単純な比例演算を用いると、横偏差が大きい場合、演算結果としての補正方位が大きくなり過ぎることがある。この問題を避けるため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記第2制御器は積分制御器で構成されることが好ましい。
車体の走行方向を変更する場合、その車体の挙動は、車速によって異なる。高い車速での走行方向の大きな変更は避ける必要がある。このため、車速が大きいほど、推定目標点が、車体から遠ざかることが好ましい。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記作業車の車速を算出する車速算出部が備えられ、前記目標点推定部は、前記自車位置から前記目標走行経路への射影点を出発点として、前記目標走行経路を前記車速で前記所定時間移動した点の位置を前記推定目標点とする。これにより、車速が高いほど、推定目標点は車体から走行方向に離れることになる。上記射影点という語句は、厳密には、ある点から目標走行経路に垂線を下ろしたときの垂線と直線との交点であるが、ここでは、ある点から目標走行経路に対して垂線を下すのではなく、目標走行経路に対して垂直ではなくてやや傾きをもって下した線と目標走行経路との交点も射影点に含めるものとする。
車体の走行方向を変更する場合、その時の車体の向きである車体方位も考慮すれば、目標走行経路から外れた車体は、より適切に目標走行経路に戻ることができる。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、車体の向きを示す車体方位を算出する車体方位算出部が備えられ、前記制御演算ユニットは、さらに前記車体方位を入力パラメータとして用いる。
これまでの本発明の説明では、推定目標点は、所定時間後の作業車の位置を考慮して、算出されている。車速に所定時間をかけることで、所定時間での作業車の移動距離は得られる。コンバインや田植機などの圃場を走行する作業車では、作業時の車速はそれほど大きくないので、おおよその車速が前もって決められていれば、所定時間で作業車が移動する距離も前もって算出できる。つまり、目標点推定部は、前もって設定されている所定距離を出発点に加算するだけで推定目標点を算出することも可能である。このことを利用した、本発明による、目標走行経路に沿って自動走行する作業車のための制御装置は、前記作業車の自車位置を算出する自車位置算出部と、前記自車位置から前記目標走行経路への射影点から前記目標走行経路上で前記作業車の走行方向側に所定距離離れた位置を推定目標点として算出する目標点推定部と、前記推定目標点と前記自車位置との間の偏差を解消する補正方位を演算する補正方位演算ユニットと、前記補正方位を入力パラメータとして、前記偏差が縮小されるように前記作業車を制御するための制御量を出力する制御演算ユニットとを備える。この構成の制御装置も、実質的に上述した作用効果と同じ作用効果を得ることができる。
圃場作業車の一例としての普通型のコンバインの側面図である。 コンバインの周囲刈り走行を示す説明図である。 Uターンでつながれた往復走行を繰り返すUターン走行パターンを示す説明図である。 アルファターン走行を用いた渦巻き走行のための走行パターンを示す説明図である。 コンバインの制御系の構成を示す機能ブロック図である。 補正方位演算ユニットと制御演算ユニットとの構成と、補正方位演算ユニットに入力されるデータとを説明する機能ブロック図である。 補正方位演算ユニットにおける偏差の解消原理を模式的に示す説明図である。 操舵入力と操舵出力の関係を示すグラフである。 操舵制御特性を改善するために改良された操舵入力と操舵出力の関係を示すグラフである
次に、本発明による制御装置を搭載した自動走行可能な作業車の一例として、普通型のコンバインが取り上げられ、説明される。なお、本明細書では、特に断りがない限り、「前」(図1に示す矢印Fの方向)は車体前後方向(走行方向)に関して前方を意味し、「後」(図1に示す矢印Bの方向)は車体前後方向(走行方向)に関して後方を意味する。また、左右方向または横方向は、車体前後方向に直交する車体横断方向(車体幅方向)を意味する。「上」(図1に示す矢印Uの方向)及び「下」(図1に示す矢印Dの方向)は、車体10の鉛直方向(垂直方向)での位置関係であり、地上高さにおける関係を示す。
図1に示すように、このコンバインは、車体10、クローラ式の走行装置11、運転部12、脱穀装置13、収穫物タンクとしての穀粒タンク14、収穫部15、搬送装置16、穀粒排出装置18、自車位置検出ユニット80を備えている。
走行装置11は、車体10の下部に備えられている。コンバインは、走行装置11によって自走可能に構成されている。運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14は、走行装置11の上方に備えられている。運転部12には、コンバインを運転する運転者及びコンバインの作業を監視する監視者が搭乗可能である。なお、監視者は、コンバインの機外からコンバインの作業を監視してもよい。
穀粒排出装置18は、穀粒タンク14の後下部に連結されている。また、自車位置検出ユニット80は、運転部12の上方面に取り付けられている。
収穫部15は、コンバインにおける前部に備えられている。そして、搬送装置16は、収穫部15の後方に設けられている。コンバインは、収穫部15によって圃場の穀物を収穫しながら走行装置11によって走行する作業走行が可能である。
収穫部15で刈り取られた刈取穀稈は、搬送装置16によって脱穀装置13へ搬送される。脱穀装置13において、刈取穀稈は脱穀処理される。脱穀処理により得られた穀粒は、穀粒タンク14に貯留される。穀粒タンク14に貯留された穀粒は、必要に応じて(満杯など)、穀粒排出装置18によって機外に排出される。
また、運転部12には、汎用端末4が配置されている。本実施形態において、汎用端末4は、運転部12に固定されている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、汎用端末4は、運転部12に対して着脱可能に構成されていても良いし、汎用端末4は、コンバインの機外に持ち出し可能であってもよい。
図2に示すように、このコンバインは、圃場において設定された走行経路に沿って自動走行する。これには、自車位置の情報が必要である。自車位置検出ユニット80には、衛星測位モジュール81と慣性計測モジュール82とが含まれている。衛星測位モジュール81は、人工衛星GSから送信される位置情報であるGNSS(global navigation satellite system)信号(GPS信号を含む)を受信して、自車位置を算出するための測位データを出力する。慣性計測モジュール82は、ジャイロ加速度センサ及び磁気方位センサを組み込んでおり、瞬時の走行方向を示す信号を出力する。慣性計測モジュール82は、衛星測位モジュール81による自車位置算出を補完するために用いられる。慣性計測モジュール82は、衛星測位モジュール81とは別の場所に配置されてもよい。
このコンバインによって圃場での収穫作業を行う場合の手順は、以下に説明する。まず、運転者兼監視者は、コンバインを操作し、図2に示すように、圃場内の外周部分において、圃場の境界線に沿って周囲刈り走行しながら収穫を行う。周囲刈り走行により刈取り収穫作業が終えた領域は、外周領域SAとして設定される。そして、外周領域SAの内側に残された内部領域は未作業領域CAであり、今後の作業対象領域として設定される。この実施形態では、未作業領域CAが四角形となるように、周囲刈り走行が行われる。もちろん、三角形や五角形の未作業領域CAが採用されてもよい。
外周領域SAは、作業対象領域である未作業領域CAにおいて収穫走行を行うときに、コンバインが方向転換するためのスペースとして利用される。また、外周領域SAは、収穫走行を一旦終えて、穀粒の排出場所へ移動する際や、燃料の補給場所へ移動する際等の移動用のスペースとしても利用される。このため、外周領域SAの幅をある程度広く確保するために、自動または手動によって、2〜3周の周囲刈り走行が行われる。
なお、図2に示す運搬車CVは、コンバインが穀粒排出装置18から排出した穀粒を収集し、乾燥施設等へ運搬する。穀粒排出の際、コンバインは、外周領域SAを通って運搬車CVの近傍へ移動した後、穀粒排出装置18によって穀粒を運搬車CVへ排出し、外周領域SAを通って作業を中断した位置である作業開始点に戻る。
未作業領域CAの形状を示す未作業マップデータが、既作業領域である外周領域SAの内周形状に基づいて作成される。この未作業マップデータに基づいて、未作業領域CAを自動運転で作業するために、線状(直線又は湾曲線または屈曲線)の経路が作業用走行経路として未作業領域CAに設定され、1つの作業用走行経路から次の作業用走行経路に移行するための旋回走行経路が外周領域SAに設定される。未作業マップデータは、未作業領域CAに対する作業の進行に伴って更新される。
未作業領域CAを作業走行(収穫走行)する際に用いられる走行パターンとして、図3に示す往復走行パターンと、図4に示す渦巻き走行パターンとがある。往復走行パターンでコンバインが走行する経路は、未作業領域CAの外形を示す多角形の一辺に平行な作業用走行経路とUターン旋回経路とを含む。渦巻き走行パターンでコンバインが走行する経路は、未作業領域CAの外形を示す多角形の一辺に平行な作業用走行経路とアルファターン経路とを含む。アルファターン経路は、直進経路と後進旋回経路と前進旋回経路とからなり、周方向で隣り合う作業用走行経路をつなぐ旋回経路である。
図5に、コンバインの制御系が示されている。この制御系は、1つ以上のECUと呼ばれる電子制御ユニットからなる制御装置5、及びこの制御装置5との間で車載LANなどの配線網を通じて信号通信(データ通信)を行う各種入出力機器から構成されている。
制御装置5は、この制御系の中核要素であり、複数のECUの集合体として示されている。自車位置検出ユニット80からの信号は、車載LANを通じて制御装置5に入力される。
制御装置5は、入出力インタフェースとして、報知部501と入力処理部502と出力処理部503とを備えている。
報知部501は、制御装置5の各機能部からの指令等に基づいて報知データを生成し、報知デバイス62に与える。報知デバイス62は、運転者等に作業走行状態や種々の警告を報知するためのデバイスであり、ブザー、ランプ、スピーカ、ディスプレイなどである。
入力処理部502には、走行状態センサ群63、作業状態センサ群64、人為操作具65、などが接続されている。作業状態センサ群64には、穀粒タンク14内の穀粒貯留量を検出するセンサが含まれている。人為操作具65は、運転者によって手動操作され、その操作信号が制御装置5に入力されるレバー、スイッチ、ボタンなどの総称である。
出力処理部503は、機器ドライバ73を介して種々の動作機器70と接続している。動作機器70として、走行関係の機器である走行機器群71と作業関係の機器である作業機器群72とがある。走行機器群71には、車体10を操舵する操舵機器が含まれている。この操舵機器は、この実施形態のようにクローラ式の走行装置11が採用されている場合には、左右のクローラの速度を変更する機器である。操舵輪方式の走行装置11が採用されている場合には、操舵機器は、操舵輪の操舵角を変更する機器である。
制御装置5には、自車位置算出部40、車体方位算出部41、車速算出部42、走行制御部51、作業制御部52、走行モード管理部53、作業領域決定部54、走行経路算出部55、横偏差算出部56、目標点推定部57、補正方位演算ユニット9A、制御演算ユニット9Bが備えられている。
自車位置算出部40は、自車位置検出ユニット80から逐次送られてくる測位データに基づいて、自車位置を地図座標(または圃場座標)の形式で算出する。その際、自車位置として、車体10の基準点となる特定箇所(例えば車体中心や収穫部15の端部など)の位置を設定することができる。
車体方位算出部41は、自車位置算出部40によって経時的算出された複数の自車位置から車体10の向きを示す車体方位を算出する。なお、車体方位は、慣性計測モジュール82からの出力データに含まれている方位データに基づいて車体方位を算出することも可能である。車速算出部42は、車速センサまたはトランスミッションの変速状態から車速を算出する。
作業領域決定部54は、自車位置算出部40によって算出された自車位置を経時的にプロットすることで走行軌跡データを算出する走行軌跡算出機能、走行軌跡データから作業対象領域となる未作業領域CAの形状を示す未作業マップデータを作成する未作業領域決定機能を有する。
走行経路算出部55は、登録されている経路算出アルゴリズムによって、未作業領域CAを網羅する自動走行のための目標走行経路となる走行経路(作業用走行経路、Uターン走行経路、アルファターン経路など)を算出する。
走行制御部51は、エンジン制御機能や走行装置制御機能(車体10の操舵制御や車速制御を含む)などを有し、走行機器群71に走行制御信号を与える。作業制御部52は、収穫作業装置(収穫部15、脱穀装置13、搬送装置16、穀粒排出装置18など)の動きを制御するために、作業機器群72に作業制御信号を与える。
走行制御部51には、手動走行制御部511と自動走行制御部512と目標走行経路設定部513とが含まれている。自動走行モードが設定されると自動走行となり、手動走行モードが設定されると手動走行となる。このような走行モードの切り替えは、走行モード管理部53によって管理される。目標走行経路設定部513は、自動走行モードが設定された場合に、走行経路算出部55によって算出された作業用走行経路と旋回走行経路とを用いて、目標走行経路を設定する。
横偏差算出部56は、目標走行経路設定部513によって設定された目標走行経路の経路方位(経路の延び方向)に直交する方向での自車位置から目標走行経路までの距離を横偏差として算出する。
手動走行モードが選択されている場合、運転者による操作に基づいて、手動走行制御部511が、機器ドライバ73を介して制御信号を対応する走行機器群71に与えることで、手動走行が実現する。
自動走行モードが設定されている場合、自動走行制御部512が、機器ドライバ73を介して自動操舵及び停止を含む車速変更の制御信号を対応する走行機器群71に与えることで、自動走行が実現する。自動走行制御部512は、以下に説明するように、制御演算ユニット9Bから出力される制御量に基づいて、自動操舵のための制御信号を出力する。
次に、図6と図7とを用いて、補正方位演算ユニット9A及び制御演算ユニット9Bにおける演算時のデータの流れを説明する。なお、図7に示されている符号は次のように定義されている。RPは、車体10の基準点(車体中心や作業装置中心など)を示しており、自車位置算出部40からの自車位置に基づいて算出される。TLは、目標走行経路設定部513によって設定された、自動走行のための目標走行経路である。RLは、車体10の基準点:RPを通って、目標走行経路:TLに平行な仮想線である。DLは、車体10の前後方向の向きである車体方位を示す車体方位線である。図7では、車体方位線:DLは、仮想線:RLから傾斜しており、その傾斜角度はγで示されている。コンバインの車体10は、目標走行経路:TLに対して紙面右側に離れており、車体10の車体方位線:DLは、車体走行方向に進むほど目標走行経路:TLから離れる向きとなっている。dは、横偏差算出部56によって算出される車体10の横偏差である。VPは、目標点推定部57によって算出される推定目標点である。APは補助点であり、自車位置における車体10の基準点:RPから目標走行経路:TLへの射影点である。AL1は第1補助線であり、この第1補助線は、推定目標点:VPと車体10の基準点:RPとを通る直線である。AL2は第2補助線であり、後述する第2補正方位対応する補正角(αで示されている)だけ、第1補助線:AL1に対して角度をもって基準点:RPから径方向に延びた直線である。
目標点推定部57は、現時点から車体10が走行した後の位置(未来自車位置)に対応する、目標走行経路:TL上の位置である推定目標点:VPを算出する。この推定目標点:VPの算出は、例えば、次の方法で算出できる。
(1)補助点:APを出発点として、目標走行経路:TLを所定時間だけ移動した後の位置を推定目標点:VPとする。その際の移動速度を現時点の車速とする場合は、車速算出部42によって算出された車速が用いられる。所定時間は、予め設定されていてもよいし、収穫物の状態や圃場状態によって自動的にあるいは人為的(運転者や管理者)に選択されてもよい。コンバインの場合、所定時間は、0.5秒から5秒ぐらいが好ましい。
(2)補助点:APを出発点として、目標走行経路:TL上で所定距離だけ離れた位置を推定目標点:VPとする。当該所定距離は、予め設定されていてもよいし、収穫物の状態や圃場状態によって自動的にあるいは人為的(運転者や管理者)に選択されてもよい。コンバインの場合、所定距離は、1mから数mぐらいが好ましい。
補正方位演算ユニット9Aは、推定目標点:VPと自車位置との間の偏差を解消する補正方位を演算する。この補正方位は、車体10が目標走行経路:TLに乗るための目標となる操舵方位(操舵制御における操舵量)である。この実施形態では、図6に示すように、補正方位演算ユニット9Aは、補正方位を演算するために、推定方位偏差算出部90と、第1制御器91と、第2制御器92と、演算器93とを備えている。
推定方位偏差算出部90は、第1補助線:AL1と仮想線:RLとがなす角度(図7ではβで示されている)を推定方位偏差として算出する。第1制御器91は、推定方位偏差を入力パラメータとして、車体10の仮の操舵目標となるべき第1補正方位を出力する。第1補正方位は、推定方位偏差を解消するために演算された、操舵制御における操舵方位である。推定方位偏差は、車体10が推定目標点:VPに向かうための角度:βに対応しているので、第1制御器91からの出力は、入力である推定方位偏差に比例することが好ましい。このことから、この実施形態では、第1制御器91は比例制御器として構成されている。
第2制御器92は、横偏差:dを入力パラメータとして第2補正方位を出力する。第2制御器92は、横偏差:dに基づく補正角度(図7ではαで示されている)を演算しており、この第2補正方位は、この補正角度:αに対応する、操舵制御における操舵方位である。第2制御器92は、横偏差:dを縮小するように車体10の向きを変更するための操舵方位を算出するものであり、この実施形態では、積分制御器として構成されている。もちろん、第2制御器92は、比例制御器として構成されてもよい。
演算器93は、第1補正方位と第2補正方位との加算演算を行い、演算結果として補正方位を出力する。この加算演算は、図7を参照して角度で表現すれば、α+βに対応する。この補正方位が、補正方位演算ユニット9Aの出力値であり、制御演算ユニット9Bに与えられる。演算器93における加算演算として、単純加算以外に重み演算などが用いられてもよい。また、第2制御器92が省略されてもよい。その場合には、演算器93は不要となる。
制御演算ユニット9Bは、車体10が、目標走行経路:TLに沿って走行するための制御量を出力するために、演算器95と操舵制御器96とを備えている。操舵制御器96は、PI制御器またはP制御器として構成されている。この実施形態では、制御演算ユニット9Bは、入力パラメータとして、補正方位演算ユニット9Aからの補正方位だけでなく、車体方位算出部41で算出された現時点の車体方位も用いる。この現時点の車体方位は、仮想線:RLと車体方位線:DLとのなす角度(図7ではγで示されている)に相当する。演算器95は、補正方位と車体方位との加算演算を行う。この加算演算は、図7を参照して角度で表現すれば、θ(=α+β+γ)に対応する。演算器95の演算出力は、操舵制御器96の制御目標値として操舵制御器96に与える。さらに、操舵制御器96からの出力値は、操舵のための制御量として、自動走行制御部512に与えられる。
次に、自動走行制御部512で行われる、制御演算ユニット9Bから与えられた制御量を入力制御量として力制御量を導出する演算を図8と図9とを用いて説明する。
自動走行制御部512は、制御演算ユニット9Bから与えられた制御量(操舵入力と称する)を、16ビット化して、操舵出力として出力している。一般には、図8に示すグラフのように、操舵入力は、各ビットに均等に割り当てられて、操舵出力を導出する。このような演算を改善して、ゼロに近い小さな入力制御量に対して精密な操舵が実現するために、ビット拡張機能が導入された演算が、図9に示されている。ここでは、操舵入力の最小領域に対応する、1ビットは、さらに4分割される。これにより、ゼロに近い小さな制御量が制御演算ユニット9Bから入力されても、それに見合った小さな制御出力が導出される。その結果、微細な制御信号を出力することができ、精密な操舵が実現する。
〔別実施の形態〕
(1)図7を用いて説明した実施形態では、推定目標点:VPを推定するために用いられる補助点(出発点):APは、車体10の基準点:RPから目標走行経路:TLに下ろした垂線と目標走行経路:TLとの交点(射影点)であった。これに代えて、基準点:RPから目標走行経路:TLに対して90°に所定角をプラスマイナスした角度で下した線と目標走行経路:TLとの交点(射影点)を補助点:APとしてもよい。その際、当該所定角は0より大きく数十度までの角度であり、固定値でもよいし、車速や圃場状態によって手動または自動で変更されてもよい。さらに、車体方位線:DLと目標走行経路:TLとの交点が補助点:APより車体10の進行方向下流側に位置する場合には、車体方位線:DLと目標走行経路:TLとの交点を補助点:APとしてもよい。
(2)上述した実施形態では、実質的な収穫作業は、コンバインの直線状の走行経路に沿った走行によって行われている。この直線状の走行経路は、1本の直線に限定されない。折れ曲がった経路でもよいし、大きな曲率半径で湾曲した経路でもよいし、蛇行形状の経路でもよい。
(3)上述した実施形態では、未作業領域CAの形状は四角形であったが、これが三角形や五角形などの他の多角形であってもよい。
(4)図5及び図6で示された制御装置5の機能ブロック群は、わかりやすい説明を目的としており、各機能ブロックは、さらに分割されたり、統合されたり、省略されたりしてもよい、また、その機能ブロックの全てまたは一部は、汎用端末4に構築してもよい。
なお、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
本発明による制御装置は、普通型のコンバインだけでなく、自脱型のコンバインにも利用可能であり、田植機やトラクタなどの圃場作業車、さらには、芝刈機やフロントローダなどの作業車にも適用できる。
5 :制御装置
9A :補正方位演算ユニット
9B :制御演算ユニット
10 :車体
11 :走行装置
40 :自車位置算出部
41 :車体方位算出部
42 :車速算出部
51 :走行制御部
511 :手動走行制御部
512 :自動走行制御部
513 :目標走行経路設定部
56 :横偏差算出部
57 :目標点推定部
65 :人為操作具
80 :自車位置検出ユニット
81 :衛星測位モジュール
82 :慣性計測モジュール
90 :推定方位偏差算出部
91 :第1制御器
92 :第2制御器
93 :演算器
95 :演算器
96 :操舵制御器

Claims (9)

  1. 目標走行経路に沿って自動走行する作業車のための制御装置であって、
    前記作業車の自車位置を算出する自車位置算出部と、
    所定時間後の前記目標走行経路における推定目標点を算出する目標点推定部と、
    前記推定目標点と前記自車位置との間の偏差を解消する補正方位を演算する補正方位演算ユニットと、
    前記補正方位を入力パラメータとして、前記偏差が縮小されるように前記作業車を制御するための制御量を出力する制御演算ユニットと、
    を備えた制御装置。
  2. 前記推定目標点と前記自車位置とを通る直線と前記目標走行経路とがなす角度を推定方位偏差として算出する推定方位偏差算出部が備えられ、
    前記補正方位演算ユニットは、前記推定方位偏差を入力パラメータとして第1補正方位を出力する第1制御器を備え、前記第1補正方位に基づいて前記補正方位が演算される請求項1に記載の制御装置。
  3. 前記第1制御器は比例制御器である請求項2に記載の制御装置。
  4. 前記目標走行経路の経路方位に直交する方向での前記自車位置から前記目標走行経路までの距離を横偏差として算出する横偏差算出部が備えられ、
    前記補正方位演算ユニットは、前記横偏差を入力パラメータとして第2補正方位を出力する第2制御器を備え、前記第1補正方位と前記第2補正方位とに基づいて、前記補正方位が演算される請求項2または3に記載の制御装置。
  5. 前記第2制御器は積分制御器である請求項4に記載の制御装置。
  6. 前記作業車の車速を算出する車速算出部が備えられ、
    前記目標点推定部は、前記自車位置から前記目標走行経路への射影点を出発点として、前記目標走行経路を前記車速で前記所定時間移動した点の位置を前記推定目標点とする請求項1から5のいずれか一項に記載の制御装置。
  7. 車体の向きを示す車体方位を算出する車体方位算出部が備えられ、
    前記制御演算ユニットは、さらに前記車体方位を入力パラメータとして用いる請求項1から6のいずれか一項に記載の制御装置。
  8. 前記所定時間は、前記作業車の状態によって変更される請求項1から7のいずれか一項に記載の制御装置。
  9. 目標走行経路に沿って自動走行する作業車のための制御装置であって、
    前記作業車の自車位置を算出する自車位置算出部と、
    前記自車位置から前記目標走行経路への射影点から前記目標走行経路上で前記作業車の走行方向側に所定距離離れた位置を推定目標点として算出する目標点推定部と、
    前記推定目標点と前記自車位置との間の偏差を解消する補正方位を演算する補正方位演算ユニットと、
    前記補正方位を入力パラメータとして、前記偏差が縮小されるように前記作業車を制御するための制御量を出力する制御演算ユニットと、
    を備えた制御装置。
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