JP2021004456A - カッタビットおよびトンネル掘削機 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、本出願人は、特許文献1に示すように、複数のチップが積層された状態で刃先部に埋め込まれたカッタビットを開示している。積層されたチップ同士は、ろう付けされている。このカッタビットによれば、表面側のチップおよび母材(シャンク)が磨耗すると、新たなチップが露出するため、長期間にわたって切削能力が維持される。
礫層等を掘進する際にカッタビットに礫が衝突すると、衝撃によりチップに亀裂が生じる場合がある。このとき、チップ同士がろう材により固定されていると、チップ同士が一体化されるために亀裂が層間にまたがって進行する場合(積層された複数のチップが礫の衝突や圧壊時の圧力により同時に破損すること)があった。複数のチップにまたがって亀裂が生じていると、表面側のチップが脱落してしても、新たなチップが亀裂を有しているために所望の切削能力が確保できないおそれがある。
かかるカッタビットによれば、チップ同士の間に緩衝材が介設されているため、表層側のチップに礫等が接触した際の衝撃を緩衝材が吸収することで、裏層側のチップに作用する衝撃が低減される。その結果、層間にまたがって亀裂が生じることを抑制できる。そのため、カッタビットによる切削能力の長寿命化を図ることができる。
前記母材に先端側に開口する凹部を形成する場合には、複数の前記チップのうちの前記母材の前面側に配設されたチップは、前記母材の先端部において前面および背面が露出している上段刃部と、前記凹部に埋め込まれた下段刃部とを有したものにすることができる。このとき、前記上段刃部は、前面側の露出面が背面側の露出面よりも大きくするとよく、前記下段刃部は、前記凹部内において前面、後面および底面を固定するとよい。
かかるカッタビットによれば、刃材が母材に埋め込まれているため、固定面(ろう付け面)が多くなり、刃材が脱落し難くなる。そのため、カッタビットの長寿命化を図ることができる。また、上段刃部の前面側の露出面が大きいため、母材の摩耗を最小限に抑えることができ、ひいては、早期に刃材が脱落することを防止できる。
刃材3は、一次チップ5および二次チップ6と、一次チップ5と二次チップ6との間に配設された緩衝材7とがろう付けされてなる。すなわち、刃材3は、カッタビット1の前面側から順に一次チップ5、ろう材4の層、緩衝材7、ろう材4の層および二次チップ6を積層して形成したものである。
母材2には、図2に示すように、その先端側に開口する凹部21が形成されている。本明細書において、母材2の先端とは、母材2の前面22と背面23との角部をいう。凹部21は、母材2の先端に形成された欠損部分である。本実施形態の凹部21の底部には、階段状の段差が形成されている。刃材3(一次チップ5および二次チップ6)は、母材2に直接固定(ろう付け)される。
母材2の後面24は、カッタビット1の進行方向後側の面であり、底面25は、図示せぬカッタヘッドに当接する面である。本実施形態の母材2の後面24と底面25は、直角に交わっている。なお、後面24および底面25の必ずしも直角である必要はない。
底面25には、段差が形成されていて、カッタヘッドに係止可能である。なお、底面25の段差は必要に応じて形成すればよい。また、母材2の形状は限定されない。
上段刃部51の前面51aは、母材2の前面22と面一になるように形成されている。すなわち、上段刃部51の前面51aは、母材2の前面22の欠損部分に配置されている。上段刃部51の背面51bは、母材2の背面23と面一になるように形成されている。すなわち、上段刃部51の背面51bは、母材2の背面23の欠損部分の一部に配置されている。上段刃部51の底面51cの一部は、母材2にろう付けされていて、当該底面51cの他の部分には下段刃部52が一体に形成されている。
下段刃部52の前面52a、後面52dおよび底面52cは、凹部21内において母材2または二次チップ6にろう付け固定されている。下段刃部52の前面52aおよび底面52cは、凹部21の内面に直接固定されていて、下段刃部52の後面52dは二次チップ6に固定されている。
まず、図3(a)に示す一般的な貼り付けタイプのカッタビット10に対して、図3(b)に示すように、刃材50の背面後端(点A)を中心として、刃材50を回転させる。このときの回転角度θ2は、例えば、カッタビット1の先端の角度θ1の1/2とする。なお、回転角度θ2の大きさは限定されるものではない。
次に、図3(c)に示すように、回転させた刃材50の前面と底面との角(点B)からカッタビット1の底面と平行な線(水平線)を延ばし前面との交点(点C)を設定する。点Cを上段刃部51の前面の端点とし、点Cから刃材50の前面に垂線をおろし、この垂線を上段刃部51の底面とすることで、一次チップ5の形状を決定する。
二次チップ6の底面6cおよび後面6dは、母材2の凹部21の内面に直接固定されている。また、二次チップ6の前面6aは、一次チップ5の後面51d、52dに緩衝材7を介して固定されているとともに、母材2の凹部21の内面に固定されている。
また、刃材3が母材2に埋め込まれているため、固定面(ろう付け面)が多く、刃材3が脱落し難い。一次チップ5を凹部21に根入れすることで、従来の貼り付けタイプのカッタビット(図3(a)参照)に比べて、ろう付け面積を大きくできる。そのため、カッタビット1の長寿命化を図ることができる。また、上段刃部51の前面側の露出面が大きいため、母材2の摩耗を最小限に抑えることができ、ひいては、早期に刃材3が脱落することを防止することができる。また、一次チップ5は、凹部21内において、三面でろう付けされているため、抜け出し難い。そのため、一次チップ5が衝撃などにより脱落することが防止され、カッタビット1の限界摩耗量が伸び、ひいては、カッタビット1の長寿命化が可能となる。
一次チップ5の背面には、二次チップ6が積層されているため、一次チップ5が摩耗等によって脱落しても、二次チップ6が現れる。したがって、カッタビット1を交換せずとも連続して切削することができる。
凹部21には、段差が形成されているため、二次チップ6についても凹部21内において三面でろう付けすることができる。そのため、二次チップ6が早期に脱落(抜け出す)することが防止されている。
各実験において使用する超硬チップには、シールドマシン用ビットの超硬チップとして、耐摩耗性・耐衝撃性に優れた、WC粒度が粗粒のものを使用するものとし、JIS規格における使用分類E3およびE5のものを採用した。本実験では、E3およびE5に相当する超硬チップとして、サンアロイ工業株式会社製のRV46およびRV56を使用した。表1に超硬チップの仕様を示す。
また、母材に使用する一般構造用圧延鋼材として、表2に示すように、SS400を使用した。
ろう付けせん断試験は、1000kN万能試験機を使用して、図4および図5に示すように、板状の母材102の表面に超硬チップ103をろう付けした試験体101を試験機(治具100)に固定して、変位−荷重関係、最大荷重および最終破壊状態の確認を行った。母材102は、高さ100mm、幅50mm、厚さ20mmで、超硬チップ103は、高さ30mm、幅50mm、厚さ15mmのものを使用した。超硬チップ103は、母材102の上端から10mmの位置にろう付けした。ろう付けに使用するろう材104は銀ろうとした。また、試験体101には、表3に示すように、超硬チップ103と母材102との間に、緩衝材を有していないもの(ケース1)と、厚さ0.1mm、0.3mm、0.5mm、1.0mm、2.0mm緩衝材を介設するもの(ケース2〜6)とを使用した。試験では、図5(a)および(b)に示すように、超硬チップ103を試験機の治具105の上端に載置させた状態で、母材102のみを治具105により挟み、母材102の上端から荷重を作用させて、最大荷重を測定した。各ケースに対して5回試験を行い、超硬チップ103を直接母材102にろう付けしたケース1と、超硬チップ103と母材102との間に緩衝材を介設したケース2〜6とを対比した。
試験結果を表4に示す。
表4に示すように、平均値で比較すると、ケース2〜6は、緩衝材を介設することで、ケース1の最大荷重257.8kNに比べて最大荷重が低下する結果となった。一方、ケース1では、最小値166.4kN、最大値336.3kNと標準偏差にバラつきがあった。これに対し、ケース4では、平均値が186.9kNとなり、ケース1の72%程度であったものの標準偏差は6.1で、バラつきが少なかった。なお、ケース2〜6における最小値は、ケース3の145.9kN、最大値はケース2の273,9kNであった。
受圧面積A=50mm×10mm=500mm2 ・・・式1
地盤の一軸圧縮強度σ=145×103/500=290N/mm2 ・・・式2
次に、各ケースの荷重と変位の関係について検証を行った。図7に、ケース毎の荷重と変位の関係を示す。図7に示すように、ケース1〜3では、荷重の最大値に差はあるものの、変位量−荷重の関係(勾配)は200kN/1mm程度であった。一方、ケース4〜6における変位量−荷重の関係は、175kN/1mm程度であった。この結果から、緩衝材の厚みが増すと、変形しやすい傾向であることが分かった。
また、ケース4,5,6では、塑性域の始まりがそれぞれ175、122、96kN付近であった。一方、ケース1〜3では、勾配が同等で、塑性変形域はほとんど生じていない結果となった。また、ケース2(緩衝材厚0.1mm)の破壊形態はケース1(緩衝材なし)と同等であった。
ケース4,5(緩衝材厚0.5mm、1.0mm)は、他のケースよりも勾配が緩やかになっている。ケース4,5は、変形しやすい傾向であり、塑性変形域も顕著にあらわれていることが確認できた。この結果から、緩衝材の板厚が増すと、塑性変形を始める荷重が低下し、緩衝材の塑性変形後、終局荷重に至ると考えられる。また、試験後の破壊状況を確認すると、脆性的な破壊にはならず、ろう層部の一部が破壊した結果となっているため、緩衝材を含むろう層部の特性が表れていると考えられる。したがって、緩衝材として0.5mm以上のものを使用するのが望ましいことが確認できた。
三点曲げ試験では、オートグラフを使用して、図8に示すように、支間距離60mmで下側から支持された試験体300の中央に上から荷重を加えた場合の最大荷重および最終破壊状況の確認を行った。試験体300には、図9(a)および(b)に示すように、長さ80mm、高さ6mm、幅8mmの超硬材を使用した場合と、図9(c)および(d)に示すように、2枚の長さ80mm、高さ3mm、幅8mmの超硬材301をろう付けしたものを使用した。このとき、超硬材301として、E3を使用した場合、E5を使用した場合、E3とE5を組み合わせて使用した場合とについて、それぞれ試験を行った。また、2枚の超硬材301をろう付けしたケースでは、緩衝材がないものと、緩衝材を介設したものについてもそれぞれ実験を行った。ろう付けのろう材302には、銀ろうを使用した。表5に試験体の構成(緩衝材の有無、緩衝材厚さ等)を示す。試験は、各ケースに対して5回ずつ行った。
また、ケース1−1〜1−4では、最終破壊状態が二分割に折損したのに対し、ケース1−5および1−6では、下側の超硬材に発生したクラックが緩衝材を貫通することがなく、二分割されることはなかった。これにより、引張側の超硬材に発生したクラックを緩衝材により止めるという観点から、0.5mmを超える厚さ、好ましくは1.0mm程度以上の厚さの緩衝材を介設するのが望ましい。
また、ケース2−1〜2−4では、最終破壊状態が二分割に折損したのに対し、ケース2−5および2−6では、下側の超硬材に発生したクラックが緩衝材を貫通することがなく、二分割されることはなかった。これにより、引張側の超硬材に発生したクラックを緩衝材により止めるという観点から、0.5mmを超える厚さ、好ましくは1.0mm程度以上の厚さの緩衝材を介設するのが望ましい。
なお、緩衝材なしのケース3−2では、最終破壊状態が二分割に折損し、緩衝材の板厚が0.5mmのケース3−4でもほとんどの試験体の最終破壊状態が二分割に折損した。一方、緩衝材の板厚が1.0mmのケース3−5では、試験体が二分割されることを防止できた。これにより、引張側の超硬材に発生したクラックを緩衝材により止めるという観点から、0.5mmを超える厚さ、好ましくは1.0mm程度以上の厚さの緩衝材を介設するのが望ましい。
緩衝材なしのケース4−2および緩衝材の板厚が0.5mmの4−4では、最終破壊状態が二分割に折損した。一方、緩衝材の板厚が1.0mmのケース4−5では、ほとんどの試験体が二分割されることを防止できた。これにより、引張側の超硬材に発生したクラックを緩衝材により止めるという観点から、0.5mmを超える厚さ、好ましくは1.0mm程度以上の厚さの緩衝材を介設するのが望ましい。
載荷試験は、1000kN万能試験機を使用した。載荷方法は、図10に示すように、半径50mmの載荷治具400をカッタビット401(一次チップ411)の中心に終局状態まで載荷することにより行った(図10参照)。
載荷試験に使用したカッタビット401の形状を図11(a)および(b)に示す。カッタビット401は、一次チップ411と二次チップ412が積層された状態で、母材420にろう付けされている。また、一次チップ411と二次チップ412は、ろう付けされている。本実験は、表10に示すように、一次チップ411と二次チップ412との間に緩衝材を介設しないケース1〜4と、緩衝材を介設したケース5〜8について実施した。ケース1では、一次チップ411としてE5,二次チップ412としてE3を使用し、ケース2では一次チップ411と二次チップ412の両方にE5を使用した。また、ケース3は、一次チップ411と二次チップ412の両方にE3を使用し、ケース4では一次チップ411としてE3,二次チップ412としてE5を使用した。ケース5は、E3からなる一次チップ411と二次チップ412との間に厚さ0.5mmの緩衝材を介設した。ケース6では、E3からなる一次チップ411と二次チップ412との間に厚さ1.0mmの緩衝材を介設した。ケース7は、一次チップ411をE3,二次チップ412をE5とし、緩衝材の厚さを1.0mmとした。さらに、ケース8では、E3からなる一次チップ411と二次チップ412との間に厚さ2.0mmの緩衝材を介設した。
表12に示すように、初期破損荷重は、いずれも50kN程度であり、最大荷重はいずれも145kN程度であった。したがって、二次チップ412の材種の違いによる影響はほとんど現れなかった。
上記の結果を踏まえ、超硬チップ同士の間に介設する緩衝材の厚さは、0.5mm〜2.0mmの範囲内が望ましいが、0.8mm〜1.5mmの範囲内がより望ましく、さらに1.0mm程度にするのがより望ましい。
刃材3を構成するチップ(一次チップ5および二次チップ6)の積層数は限定されるものではなく、地山状況や掘削延長等に応じて増加させてもよい。刃材3を構成するチップの積層数が3層以上である場合でも、チップ同士は、緩衝材7を介してろう付けする。
一次チップ5および二次チップ6を構成する材料は、限定されるものではなく、予想される地質等に応じて適宜決定すればよい。また、一次チップ5および二次チップ6には、異なる材質のカッタチップを使用してもよいし、同じ材質のカッタチップを使用してもよい。
また、一次チップ5の形状は段差を有した形状(上段刃部51および下段刃部52を有するもの)に限定されるものではなく、例えば、板状であってもよい。
2 母材
21 凹部
22 前面
23 背面
24 後面
25 底面
3 刃材
4 ろう材
5 一次チップ(チップ)
51 上段刃部
62 下段刃部
6 二次チップ(チップ)
7 緩衝材
Claims (5)
- 母材と前記母材にろう付けされた刃材とを備えるカッタビットであって、
前記刃材は、複数のチップと、前記チップ同士の間に配設された緩衝材と、がろう付けされてなり、
前記緩衝材は、ろう材よりも融点が高く、かつ、前記チップよりも硬度が小さい材料からなることを特徴とする、カッタビット。 - 前記ろう材は、銀ろうであり、
前記緩衝材は、銅板であることを特徴とする、請求項1に記載のカッタビット。 - 前記緩衝材の厚さが0.5〜2.0mmの範囲内であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のカッタビット。
- 前記母材には、その先端側に開口する凹部が形成されており、
複数の前記チップのうちの前記母材の前面側に配設されたチップは、前記母材の先端部において前面および背面が露出している上段刃部と、前記凹部に埋め込まれた下段刃部とを有し、
前記上段刃部は、前面側の露出面が背面側の露出面よりも大きく、
前記下段刃部は、前記凹部内において前面、後面および底面が固定されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のカッタビット。 - 地山の切削を行うカッタヘッドと、
前記カッタヘッドの後方に配設された本体部と、を備えるトンネル掘削機であって、
前記カッタヘッドには、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の複数のカッタビットが固定されていることを特徴とする、トンネル掘削機。
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