JP2021004401A - 電気防食構造体及び電気防食方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】隙間を設けて設置された複数の構造物における該隙間の近傍の電気防食に有用で、長期にわたって安定した防食効果が得られる、電気防食構造体及び電気防食方法を提供すること。【解決手段】電気防食構造体1Aは、内部に金属材61が埋設されたコンクリート構造物51を含む、複数の構造物51,51が隙間60を設けて対向配置されている場合に、該隙間60に配置され、該金属材61の電気防食に使用される。電気防食構造体1Aは、金属材61と電気的に接続される電極層2と、保水層3とを有し、且つ隙間60の隙間方向60Xの長さの変化に応じて該隙間方向60Xに伸縮する伸縮性を有する。【選択図】図3

Description

本発明は、コンクリート構造物の内部に埋設された鉄筋等の金属材の電気防食技術に関し、詳細には、コンクリート構造物における突き合わせ部相互の遊間などの狭隘部の電気防食に有用な電気防食技術に関する。
橋梁や高架道路などの道路基盤に、外気温の変化や車両等の通行による振動等に起因して、膨張や収縮が生じる場合がある。そのため、道路基盤の突き合わせ部相互間、例えば、コンクリート橋梁における橋桁と橋桁との間、あるいは橋桁と橋台との間には、道路基盤がその延長方向へ伸長するのを許容するための隙間、いわゆる遊間が設けられており、道路基盤の膨張・伸縮に対応して遊間が伸縮するようになされている。また、この道路基盤の遊間の上部には、該遊間を跨ぐように伸縮装置が設けられる場合があり、これにより、道路基盤における車両等の走行面の連続性が維持されている。
伸縮装置は常時外部に晒されているため経年劣化する。伸縮装置の劣化によりその防水性が低下すると、雨水等が道路基盤の遊間に流入しやすくなるため、道路基盤の突き合わせ部の湿潤状態が助長される。また、道路基盤の遊間には土砂やゴミなどが堆積しやすく、そのような堆積物は湿気を保持しやすいため、このような堆積物によっても道路基盤の突き合わせ部の湿潤状態が助長される。このような様々な要因により道路基盤の突き合わせ部の湿潤状態が長くなると、該突き合わせ部の内部に埋設されている鉄筋等の鋼材が腐食するとともに、鋼材の腐食に伴う体積膨張によって、該突き合わせ部におけるかぶり部分のコンクリートが劣化するという問題がある。
このような、コンクリート構造物中の鋼材の腐食やそれに伴うコンクリートの劣化を防止する方法として、電気防食方法が知られている。電気防食方法は、典型的には、コンクリート構造物の外部に陽極を設置するとともに、該陽極と該コンクリート構造物中の鋼材とを電気的に接続し、該鋼材に対して電流(防食電流)を継続的に流す方法であり、流電陽極方式と外部電源方式とがある。流電陽極方式は、コンクリート構造物中の鋼材に対して電気化学的に卑な電位を有する金属を、流電陽極としてコンクリート構造物の表面などに設置し、該流電陽極と該鋼材との間の電位差を利用して両者の間に電池を構成し、該鋼材に直流電流を供給する方式である。流電陽極は、鋼材の犠牲となって腐食することから犠牲陽極とも呼ばれる。外部電源方式は、コンクリート構造物の表面などに電気防食用電極を設置し、コンクリート構造物中の鋼材を陰極として、直流電源装置を用いて該電気防食用電極から該陰極に直流電流を供給することにより、該陰極の電位を卑方向に変化させて該鋼材(陰極)を防食する方式である。
特許文献1には、流電陽極方式を利用した鋼構造物の電気防食方法として、鋼構造物の表面に、水を吸収させた膨潤ゴムからなる保水材を介して鋼よりも腐食電位が卑な犠牲陽極材を設置するとともに、該保水材の上面に水を溜める貯水部を形成し、該犠牲陽極材と該鋼構造物とを導通可能に接続する方法が記載されている。特許文献1に記載の電気防食方法によれば、長期的な防食が可能であるとされている。
ところで、コンクリート橋梁の如き道路基盤の遊間には、非常に狭く、電気防食を施すのに十分な作業空間が存在しないものがある。そのような狭隘な遊間に適用可能な電気防食技術に関し、特許文献2には、遊間近傍の橋桁端部の電気防食方法として、橋桁端部の劣化したコンクリートを、その内部に埋設されている鋼材が露出するまではつり取る工程と、そのはつり取った橋桁の端面と対向する位置に、陽極部材が取り付けられた目地材を配置するとともに、該鋼材と該陽極部材との間に直流電圧を印加するための導電線を配置する工程と、該橋桁の端面と該目地材との間にモルタル又はコンクリートを充填する工程とを有する方法が記載されている。特許文献3には、対向配置された複数のコンクリート構造物どうしの間の狭隘部に施される電気防食方法として、該狭隘部の近傍の劣化したコンクリートを除去した後、陽極体が嵌め込まれた嵌込部材を配置し、更に、該陽極体と該コンクリート構造物との間の空間に充填材を充填して硬化させる方法が記載されている。
特許文献2及び3に記載の電気防食方法は何れも、コンクリート構造物のコンクリートを削除し、必要な電気防食のための処置を施した後に、その削除部分を充填材で修復する工程を有するため、作業が煩雑で施工性に問題がある。また例えば、橋梁や桟橋等に使用されている既設のプレストレストコンクリート桁(PC桁)は、その端部にプレストレス構造を維持させるためのPC鋼材端部定着体が埋設され、PC桁を構成するコンクリートには該PC緊張材端部定着体を介して強大な応力が伝達されているところ、このようなデリケートな性状のPC桁の端部を電気防食のために損傷させることは、PC桁の耐荷性等の諸性能に悪影響を及ぼすおそれがあり、できれば避けたいものである。このようなPC桁に特有の問題に鑑み、特許文献4には、PC桁の端部を損傷させずにこれに電気防食を施す方法が記載されている。特許文献4に記載の電気防食方法は、並列に配置された複数のPC桁と、隣り合う該PC桁どうしの間に配置されたコンクリート製の横桁とを一体に備えた構造物において、該横桁に、該PC桁の長手方向中央部側から端部側に向かって延びる電極挿入孔を形成し、該電極挿入孔内に電気防食用陽極を挿入して埋設し、該陽極と該PC桁内の鋼材との間に直流電圧を印加させる方法である。
特開2016−94633号公報 特開2013−87291号公報 特開2014−5513号公報 特開2009−179876号公報
本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る電気防食技術を提供することであり、詳細には、隙間を設けて設置された複数の構造物における該隙間の近傍の電気防食に有用で、長期にわたって安定した防食効果が得られる、電気防食構造体及び電気防食方法を提供することである。
本発明は、内部に金属材が埋設されたコンクリート構造物を含む、複数の構造物が隙間を設けて対向配置されている場合に、該隙間に配置され、該金属材の電気防食に使用される電気防食構造体であって、前記金属材と電気的に接続される電極層と、保水層とを有し、且つ前記隙間の隙間方向の長さの変化に応じて該隙間方向に伸縮する伸縮性を有する、電気防食構造体である。
また本発明は、内部に金属材が埋設されたコンクリート構造物を含む、隙間を設けて対向配置された複数の構造物において、該隙間の近傍の該金属材の電気防食を行う電気防食方法であって、前記金属材を露出させるためのコンクリートの削除を行わずに、前記隙間に、前記の本発明の電気防食構造体を配置する工程を有する、電気防食方法である。
本発明によれば、隙間を設けて設置された複数の構造物における該隙間の近傍の電気防食に有用で、長期にわたって安定した防食効果が得られる、電気防食構造体及び電気防食方法が提供される。また、本発明の電気防食方法は、コンクリート構造物中の金属材を露出させるためのコンクリートの削除を行わないため、作業性に優れるとともに、コンクリートの損傷を最小限に抑えることができ、PC桁のようなデリケートな性状の構造物の電気防食に有用である。
図1は、本発明が適用可能なコンクリート構造物の具体例としてのコンクリート橋梁を示す図であり、図1(a)は、該コンクリート橋梁の模式的な側面図、図1(b)は、図1(a)のI−I線での模式的な横断面図(該コンクリート橋梁の長手方向と直交する方向に沿う断面図)である。 図2は、図1に示すコンクリート橋梁における、対向配置された複数の橋桁どうしの隙間(遊間)及びその近傍を一部破断して模式的に示す縦断面図(該コンクリート橋梁の長手方向に沿う断面図)である。 図3は、本発明の電気防食構造体の一実施形態の模式的な断面図(図2相当図)である。 図4は、本発明の電気防食構造体の他の実施形態の模式的な断面図(図2相当図)である。 図5は、本発明の電気防食構造体の更に他の実施形態の模式的な断面図(図2相当図)である。 図6は、本発明の電気防食構造体の更に他の実施形態の模式的な断面図(図2相当図)である。
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照して説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。図面は基本的に模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合がある。
図1及び図2には、本発明が適用可能なコンクリート構造物の具体例としてのコンクリート橋梁の一実施形態である既設の橋梁50が示されている。橋梁50は、図1(a)に示すように、直列に配置された複数の橋桁51と、該複数の橋桁51を下方から支持する橋脚52及び橋台53とを備える。橋台53は、橋梁50の長手方向Xの両端部に一対配置され、その一対の橋台53,53の間に、複数の橋脚52が長手方向Xに間欠配置されている。橋梁50の長手方向Xは、橋梁50を走行する車輌等の走行方向に一致する。複数の橋桁51は、それぞれ、一方向に長い形状を有し、その長手方向を橋梁50の長手方向Xに一致させて、複数の橋脚52どうしの間、又は橋脚52と橋台53との間に跨らせて架設され、支承54によって橋脚52又は橋台53の上に支持されている。
複数の橋桁51は、それぞれ図1(b)に示すように、長手方向Xに直交する幅方向Yに間欠配置された複数(図示の形態では4つ)の主桁55と、幅方向Yに隣り合う主桁55どうしの間に介在配置された横桁56とを含んで構成され、これらの主桁55と横桁56とは一体とされている。複数の主桁55は、それぞれ、プレストレストコンクリートからなるPC桁であり、図示の形態では、幅方向Yに沿う断面が略T字状をなしている。幅方向Yに隣り合う主桁55それぞれの上床版部55aどうしの間にはコンクリート57が現場打設されており、これにより、上床版部55aとコンクリート57とを含むコンクリート床版が長手方向Xに連続的に延在している。また、この連続するコンクリート床板の上面には舗装58が施されている。
図示の形態では、複数の橋桁51は、それぞれ単純支持されており、各橋桁51は、その長手方向Xの一端部の長手方向X(橋桁51の軸線方向)の移動が阻害され、他端部の同方向の移動は許容されている。したがって、1つの橋脚52に支持された2つの橋桁51,51それぞれの長手方向Xの端部のうち、一方は固定され、他方は長手方向Xに移動可能になされている。そして、図1(a)に示すように、橋脚52の上方では、対向配置された複数(2つ)の橋桁51の長手方向Xの端部どうしの間に隙間(遊間)60が設けられ、また、橋台53の上方では、該橋台53の上部と橋桁51の長手方向Xの一端部との間に隙間(遊間)60が設けられている。なお、1つの橋脚52に支持された2つの橋桁51,51それぞれの長手方向Xの端部の双方は、長手方向Xに移動可能になされていてもよく、固定されていてもよい。後者の場合であっても、回転方向の変位を許容するように、複数の橋桁51は隙間60を設けて対向配置される。
図2に示すように、橋脚52上に位置する隙間60の上方には、該隙間60を長手方向Xに跨ぐように伸縮装置59が設けられている。図示していないが、橋台53上に位置する隙間60の上方にも同様に伸縮装置59が設けられている。伸縮装置59は、舗装58とともに、連続した路面を形成している。
橋桁51を構成する主桁55及び/又は横桁56の内部には金属材61が埋設されており、橋桁51は、内部に金属材61が埋設されたコンクリート構造物である。金属材61は、コンクリートの補強のためにコンクリート中に芯として埋設される金属製の棒状物であり、典型的には鉄筋である。前述したように、橋桁51における隙間60の近傍、すなわち橋桁51の長手方向Xの端部は、湿潤状態が長くなりやすいため、埋設されている金属材61が腐食しやすく、金属材61を覆うコンクリートが劣化しやすいという問題がある。
図3には、本発明の電気防食構造体の一実施形態である電気防食構造体1Aが示されている。電気防食構造体1Aは、図2に示すように、内部に金属材61が埋設されたコンクリート構造物である橋桁51を含む、複数の構造物が隙間(遊間)60を設けて対向配置されている場合に、該隙間60に配置され、該金属材61の電気防食に使用されるものであり、前記問題を解決し得るものである。なお、前記の「複数の構造物」、すなわち対向配置された複数(2つ)の構造物は、図示の橋梁50では、長手方向Xに隣り合う複数(2つ)の橋桁51の組み合わせ、及び、橋桁51と橋台53との組み合わせが該当する。本発明の電気防食構造体が適用される、「対向配置された2つの構造物」は、それらのうちの少なくとも一方の構造物が、内部に金属材が埋設されたコンクリート構造物であればよく、他方の構造物の構成は特に限定されず、コンクリート構造物でなくてもよく、内部に金属材が埋設されていなくてもよい。
電気防食構造体1Aは、図3に示すように、電極層2と保水層3とを有する。電極層2は、導線4を介して防食対象の金属材61と電気的に接続されている。
電極層2は、電気防食における電極(流電陽極方式では犠牲陽極、外部電源方式では電極(外部電源用電極))として機能するもので、金属材料を主体とする層であり、典型的には、所定の形状に成形された金属からなる。電極層2を構成する金属の形状は特に制限されず、例えば板状、棒状、球状などであり得るが、典型的には板状である。電極層2の厚みは、特に制限されないが、好ましくは0.5〜100mm、より好ましくは1〜20mmである。
図3に示す形態では、電極層2は、防食対象の金属材61に対して電気化学的序列が卑となる金属材料を含有し、流電陽極方式により腐食する犠牲陽極として機能する。金属材61が鉄筋の如き鉄製の場合、犠牲陽極として機能する電極層2が含有する金属材料(犠牲陽極作用を有する金属材料)としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム又はそれらの合金が挙げられる。
保水層3は、本技術分野においてバックフィルなどとも呼ばれるもので、電極層2の接地抵抗の低下や電気化学的特性の向上等を目的として配置される。保水層3は、典型的には、電解質を含む電解液と、該電解液を保持する液保持材とを含んで構成される。液保持材に保持された電解液が電極層2と接していることで、電極層2に腐食を起こさせるとともに、電極層2の表面に不動態皮膜が生成される不都合が抑制され、結果として、金属材61の電気防食が安定的になされるようになる。保水層3における電解液の単位体積当たりの保持量は、好ましくは0.5〜5g/cm、より好ましくは1〜3g/cmである。
保水層3に含有される電解質としては、本技術分野においてバックフィルの電解質として使用可能なものを特に制限無く用いることができ、例えば、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化リチウム等の潮解性塩;塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸ナトリウム、酢酸マグネシウム、水酸化ナトリウム等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。保水層3に含有される電解液は、典型的には、溶媒として水を含有する。電解液の電解質濃度は、該電解液の全質量に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。電解液の電解質濃度の上限については、該電解液の飽和濃度以下であることが好ましい。
保水層3に含有される液保持材としては、電解液を保持し得るものであればよく、本技術分野においてバックフィルの電解液の液保持材として使用可能なものを特に制限無く用いることができ、例えば、セメント、ベントナイト等の硬化性素材(電気防食構造体の配置時は流動性を有するが、経時的にその流動性が失われ、電気防食構造体の配置後は硬化した状態となる素材);吸水性樹脂等の吸水膨張性素材(水分を吸収して膨張する素材);吸水シートが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記吸水シートは、典型的には、吸水性繊維を主体とする繊維集合体からなり、該繊維集合体の形態としては、例えば、不織布、紙、あるいはこれらの2種以上を積層してなる複合シートが挙げられる。前記吸水性繊維としては、天然セルロース系繊維、あるいは天然セルロース系繊維にエステル化やエーテル化等の処理を施して得られたセルロース誘導体が好ましく、より具体的には例えば、綿、麻、レーヨン、ポリノジック、リヨセル、キュプラ、パルプ等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。前記吸水シートとしては市販品を用いることもでき、例えば、パルプを主体とする吸水シートとして、王子キノクロス株式会社製の商品名「ハトシートXCA」、株式会社セリア発売の「セルロース水切りマット」を例示できる。
図3に示す形態では、電気防食構造体1Aは、電極層2及び保水層3を含む複数の層(図示の形態では両層2,3のみ)が隙間方向60Xに積層された構造を有している。すなわち、電気防食構造体1Aを構成する複数の層それぞれの厚み方向は、隙間方向60Xに一致している。より具体的には、電気防食構造体1Aは、隙間60を画成する相対向する一対の橋桁51,51それぞれの長手方向Xの端面51aどうしの間に配され、一方の端面51aから他方の端面51aにわたって連続している。電気防食構造体1Aを構成する複数の層の平面視(厚み方向と直交する方向から見た場合)における形状及び寸法は互いに同じである。
隙間方向60Xは、隙間60を挟んで対向配置された複数の構造物(図示の形態では2つの橋桁51,51)のそれぞれの軸線方向(橋桁51の端面51aに直交する方向)に一致し、図3に示す形態では、橋梁50(橋桁51)の長手方向Xにも一致する。外気温の変化や車両等の通行による振動等に起因してコンクリート構造物である橋桁51が膨張ないし収縮すると、それに伴って隙間60が隙間方向60Xに伸長ないし収縮する。
また、図3に示す形態では、保水層3が電気防食構造体1Aの隙間方向60Xの両端に位置し、その隙間方向60Xの両端の保水層3,3の間に電極層2が位置しており、電気防食構造体1Aは、隙間方向60Xに3つの層が積層された積層構造を有している。保水層3は、隙間60を画成する橋桁51の長手方向Xの端面51aに固着している。橋桁51はコンクリート構造物であり、その端面51aはコンクリートで形成されている。電気防食構造体1Aは、橋桁51の端面51a(隙間60を画成する構造物の表面)の一部又は全部と接触し、典型的には、端面51aの全面積の20〜30%以上と接触し、また、端面51aの全面積の80〜100%以下と接触する。
電気防食構造体1Aは、隙間60の隙間方向60Xの長さの変化に応じて隙間方向60Xに伸縮する伸縮性(以下、「隙間方向伸縮性)ともいう。)を有する点で特徴付けられる。隙間60に配置された電気防食構造体1Aが隙間方向伸縮性を有することにより、隙間60を画成する橋桁51に埋設されている金属材61の腐食やそれに伴うコンクリートの劣化が効果的に防止される。図3に示す形態では、電気防食構造体1Aを構成する複数の層のうち、隙間方向伸縮性を有しているのは保水層3であり、電極層2は隙間方向伸縮性を有していない。
電気防食構造体1Aの前記特徴について更に説明すると、電気防食構造体1Aが長期にわたって安定した防食性能を発揮するためには、隙間60を画成する橋桁51の端面51aに、電極層2が保水層3を介して密着した状態が維持されることが好ましいところ、前述したように、隙間60の隙間方向60Xの長さは外的要因等により変化するため、電気防食構造体1Aの配置当初は前記の好ましい密着状態となっていても、その後の隙間60の伸縮によってその密着状態が失われることが懸念される。これに対し、電気防食構造体1Aは隙間方向伸縮性を有していることにより、隙間60が隙間方向60Xに伸縮してもその伸縮に追従することが可能であるため、常時、隙間60の隙間方向60Xの全長にわたって連続し、電気防食構造体1Aの隙間方向60Xの両端(保水層3)が橋桁51の端面51aに密着し得る。したがって、電気防食構造体1Aによれば、隙間60の近傍の金属材61の腐食やその周辺のコンクリートの劣化が長期にわたって安定的に防止される。
本発明の電気防食構造体は、隙間方向伸縮性を本来的に有していてもよく、潜在的に有していてもよい。隙間方向伸縮性を本来的に有する電気防食構造体は、その配置当初から隙間方向伸縮性を発現し得る。一方、隙間方向伸縮性を潜在的に有する電気防食構造体は、その配置当初は隙間方向伸縮性を発現しないか、又は発現しても伸縮性に乏しく実質的に発現しないと言えるレベルであるが、その後に所定の条件が満たされると、隙間方向伸縮性を発現し得る。この「所定の条件」の一例として、電気防食構造体による水分吸収が挙げられる。すなわち、本発明の電気防食構造体には、水分を吸収することで隙間方向伸縮性を発現し得るものが包含される。
図3に示す形態では、保水層3が吸水膨張性を有している。吸水膨張性を有する保水層3は、水分を吸収することにより膨張し、隙間方向60Xに弾力性を有するようになるので、該保水層3を有する電気防食構造体1Aは隙間方向伸縮性を有するものとなる。すなわち、保水層3が吸水膨張性を有する電気防食構造体1Aは、前述の「水分を吸収することで隙間方向伸縮性を発現し得る電気防食構造体」の一種であり、隙間方向伸縮性を潜在的に有する。保水層3が吸収する水分としては、例えば、隙間60に本来的に存在するものや湿気の他、後述する固着時等に保持させる電解液、水道水、隙間60の上方の伸縮装置59から隙間60に流入してくる雨水等が挙げられる。
保水層3が吸水膨張性を有しているか否かは、保水層3の吸水前の寸法と吸水後の寸法との差分ないし比率によって評価することができる。具体的には例えば、保水層3の吸水前の厚みと吸水後の厚みとの比率(保水層3の吸水後の厚み/保水層3の吸水前の厚み)が1.1以上である場合には、当該保水層3は吸水膨張性を有していると言える。ここでいう「保水層3の厚み」とは、保水層3の隙間方向60Xに沿う長さである。また、ここでいう「吸水後」とは、保水層3がその限界まで吸水した状態を意味する。
吸水膨張性を有する保水層3の一例として、吸水性樹脂が配合されたウレタン系樹脂(以下、「吸水膨張性ウレタン樹脂」ともいう。)を含有するものが挙げられる。
吸水膨張性ウレタン樹脂に含有される吸水性樹脂としては、例えば、アクリル酸系樹脂、イソブチレン・マレイン酸系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。吸水性樹脂としては市販品を用いることもでき、例えば、アクリル酸系樹脂として、日本触媒株式会社製の商品名「アクアリック CS−6S」、住友精化株式会社製の商品名「アクアキープ」を例示できる。
吸水膨張性ウレタン樹脂に含有される吸水性樹脂としては、下記の方法により測定した膨張率が、10〜40倍の範囲内であるものが好ましく、20〜30倍の範囲内であるものがより好ましい。
〔膨張率の測定方法〕
濃度3.5質量%の食塩水に試料(吸水性樹脂)を2時間浸漬する。このとき、試料の全体が食塩水に浸かるようにする。2時間浸漬後の試料の重量を測定し、その測定値W1と、予め測定した食塩水への浸漬前の試料の重量の測定値W0とを用い、次式により、試料の膨張率を算出する。 膨張率(%)=(W1/W0)×100
吸水膨張性ウレタン樹脂に含有されるウレタン樹脂としては、ペースト状ウレタン系樹脂の硬化物が好ましい。すなわち、吸水膨張性ウレタン樹脂は、ペースト状ウレタン系樹脂に吸水性樹脂を配合したものを硬化させたものが好ましい。このように、吸水膨張性ウレタン樹脂の原料としてペースト状ウレタン系樹脂を用いることのメリットとして、吸水性樹脂の配合が容易になる点が挙げられる。
ペースト状ウレタン系樹脂としては、例えば、一液湿気硬化型水膨張性ウレタン系樹脂、二液硬化型ウレタン系樹脂を用いることができ、特に前者が好ましい。一液湿気硬化型水膨張性ウレタン系樹脂としては、例えば、ポリイソシアネートとポリエーテルポリオールとを反応させたイソシアネート基含有プレポリマーを主成分とするポリウレタンシーラントを用いることができる。また、一液湿気硬化型水膨張性ウレタン系樹脂の商品名としては、シーアイ化成株式会社の「アクアガード」や「リークマスター」などがある。
吸水膨張性ウレタン樹脂における吸水性樹脂の含有量は、該吸水膨張性ウレタン樹脂の全質量に対して、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%である。
吸水膨張性ウレタン樹脂におけるウレタン系樹脂の含有量は、該吸水膨張性ウレタン樹脂の全質量に対して、好ましくは60〜95質量%、より好ましくは70〜90質量%である。
保水層3における吸水膨張性ウレタン樹脂の含有量は、該保水層3の全質量に対して、好ましくは10〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%である。前述したように、保水層3は典型的には、電解液及びこれを保持する液保持材を含有するところ、吸水膨張性ウレタン樹脂は該液保持材として機能し得る。吸水膨張性ウレタン樹脂を含有する保水層3は、更に少なくとも電解液(電解質)を含有する。吸水膨張性ウレタン樹脂を含有する保水層3における電解液の単位体積当たりの保持量は、前述した範囲で設定することができる。
吸水膨張性ウレタン樹脂は、所定量のペースト状ウレタン系樹脂に所定量の吸水性樹脂を加えて混合し、その混合物を硬化させることによって作製することができる。そして、こうして作製した吸水膨張性ウレタン樹脂に電解液を保持させることによって、吸水膨張性を有する保水層3が得られる。吸水膨張性ウレタン樹脂に電解液を保持させる方法は特に限定されず、例えば、吸水膨張性ウレタン樹脂に電解液を塗布又は噴霧する方法、電解液に吸水膨張性ウレタン樹脂を浸漬する方法が挙げられる。
吸水膨張性ウレタン樹脂を含有する保水層3(吸水膨張性を有する保水層3)の吸水前の厚みは、好ましくは5〜100mm、より好ましくは10〜50mmである。
吸水膨張性ウレタン樹脂を含有する保水層3(吸水膨張性を有する保水層3)の吸水前の坪量は、好ましくは0.1〜2.0g/m、より好ましくは0.5〜1.5g/mである。
図4〜図6には、本発明の電気防食構造体の他の実施形態が示されている。後述する実施形態については、前述した電気防食構造体1Aと異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、電気防食構造体1Aについての説明が適宜適用される。
図4に示す電気防食構造体1Bは、電極層2及び保水層3に加えて更に、隙間方向60Xの両端の保水層3,3の間に、保水層3を隙間方向60Xの外方(すなわち隙間60を画成する橋桁51の端面51a側)へ付勢する付勢手段5を有している。電極層2は、付勢手段5と隙間方向60Xの両端の保水層3,3それぞれとの間に位置し、導線4を介して防食対象の金属材61と電気的に接続されている。電気防食構造体1Bは、隙間方向60Xに5つの層が積層された積層構造を有している。付勢手段5は、典型的には弾性伸縮性を有しており、伸長させることができ且つ張力を解放したときに収縮する。
電気防食構造体1Bは付勢手段5を有するため、これを有しない電気防食構造体1Aに比べて、隙間60の伸縮に対する追従性に優れている。したがって、電気防食構造体1Bによれば、隙間60の隙間方向60Xの長さが比較的長い場合でも、具体的には例えば、隙間60の隙間方向60Xの長さが0.5mを超えるような場合でも、隙間60の伸縮に追従することができ、隙間60を画成する橋桁51の端面51aに電極層2が保水層3を介して密着した状態が常時維持されるため、隙間60の近傍の金属材61の腐食やその周辺のコンクリートの劣化が長期にわたって安定的に防止される。
電極層2と吸水膨張性を有する保水層3とからなる電気防食構造体1Aは、隙間60の隙間方向60Xの長さが好ましくは1〜20cm、より好ましくは5〜15cmである場合に特に有効である。
電気防食構造体1Bは、隙間60の隙間方向60Xの長さが好ましくは5〜100cm、より好ましくは10〜50cmである場合に特に有効である。
付勢手段5としては、例えば、吸水性樹脂、吸水性樹脂が配合された樹脂組成物等の吸水膨張性素材;ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、メラミンフォーム、ポリイミド発泡体等の弾性発泡体;スプリング、板ばね、ゴム製部材等の弾性部材、ジャッキが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。前記「吸水性樹脂が配合された樹脂組成物」(吸水膨張性素材)としては、保水層3に使用可能な前記「吸水膨張性ウレタン樹脂」を用いることもできる。なお、電気防食構造体1Bにおいては、保水層3及び付勢手段5の双方が吸水膨張性ウレタン樹脂を含有する場合があり得るが、その場合、典型的には、保水層3は更に電解質(電解液)を含有するのに対し、付勢手段5は電解質(電解液)を含有しない点で相違する。
吸水膨張性素材を含む付勢手段5は、典型的には、吸水膨張性素材を含む層からなる。弾性発泡体を含む付勢手段5は、典型的には、弾性発泡体を含む層からなる。弾性部材を含む付勢手段5は、典型的には、複数の弾性部材を含み、且つ各弾性部材はその伸縮方向を隙間方向60Xに一致させて、付勢方向と直交する方向(具体的には幅方向Y、又は隙間60を画成する橋桁51の端面51aの面方向)に間欠配置されている。ジャッキを含む付勢手段5は、典型的には、複数のジャッキを含み、且つ各ジャッキはその伸縮方向を隙間方向60Xに一致させて、付勢方向と直交する方向に間欠配置されている。ジャッキとしては、隙間60に配置可能であることを前提として、公知のものを特に制限無く用いることができる。
電気防食構造体1A,1Bは、図3及び図4に示す如き流電陽極方式の電気防食のみならず、外部電源方式の電気防食にも適用できる。図5は、電気防食構造体1Aの外部電源方式の電気防食への適用例、図6は、電気防食構造体1Bの外部電源方式の電気防食への適用例を示す。外部電源方式の電気防食においては、図5及び図6に示すように、防食対象のコンクリート構造物である橋桁51の外部に直流電源装置6が配置され、且つ直流電源装置6のプラス極と電極層2とが導線4を介して電気的に接続されるとともに、直流電源装置6のマイナス極と橋桁51内の金属材61とが導線4を介して電気的に接続されており、これにより、電極層2から金属材61に防食電流を供給し得る電気回路が形成されている。斯かる電気回路において、直流電源装置6により電極層2と金属材61との間に直流電圧を印加することで、金属材61の電気防食が行われる。
電気防食構造体1A,1Bを外部電源方式の電気防食に適用する場合の電極層2としては、前述した流電陽極方式の電気防食で使用可能なもの(金属材61が鉄製の場合に犠牲陽極として機能し得る金属材料を含有するもの)の他に、外部電源方式の電気防食に通常用いられる不溶性電極を用いることができる。後者の外部電源方式により不溶性電極として機能し得る電極としては、例えば、表面が白金族金属の酸化物で被覆されたチタン製基材;表面がニッケルで被覆された炭素繊維が挙げられる。その他に、高珪素鋳鉄、磁性酸化鉄、鉛合金が挙げられる。前者のチタン製基材に関し、白金族金属の酸化物としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウムからなる群から選択される1種以上の酸化物が挙げられる。
本発明には、図3及び図4に示すように、隙間60を設けて対向配置された複数のコンクリート構造物(前記実施形態では対向配置された一対の橋桁51,51)の該隙間60に配置され、少なくとも電極層2及び保水層3を有する電気防食構造体を有し、該電極層2と該コンクリート構造物(橋桁51)中の金属材61とが電気的に接続され、該電極層2から該保水層3を介して該金属材61に防食電流が流れるようになされている、コンクリート構造物の電気防食構造(流電陽極方式の電気防食構造)が包含される。
また本発明には、図5及び図6に示すように、隙間60を設けて対向配置された複数のコンクリート構造物(前記実施形態では対向配置された一対の橋桁51,51)の該隙間60に配置され、少なくとも電極層2及び保水層3を有する電気防食構造体と、直流電源装置6とを有し、該電極層2と該コンクリート構造物(橋桁51)中の金属材61と該直流電源装置6とが電気的に接続され、該電極層2から該保水層3を介して該金属材61に防食電流が流れるようになされている、コンクリート構造物の電気防食構造(外部電源方式の電気防食構造)が包含される。
次に、本発明の電気防食方法について説明する。本発明の電気防食方法は、前述した本発明の電気防食構造体を用いるものであり、図1及び図2に示すように、内部に金属材61が埋設されたコンクリート構造物を含む、隙間60を設けて対向配置された複数の構造物(図示の形態では橋桁51)において、該隙間60の近傍の該金属材61の電気防食を行うものである。
本発明の電気防食方法は、金属材61を露出させるためのコンクリートの削除を行わずに、隙間60に、前述した電気防食構造体1A,1Bに代表される本発明の電気防食構造体を配置する工程を有する点で特徴付けられる。前記の「金属材61を露出させるためのコンクリートの削除」は、具体的には例えば、隙間60を画成するコンクリート(図示の形態では橋桁51の端面51aを形成するコンクリート)を、金属材61の端部の全体が露出する程度にはつり取ることを意味し、金属材61に導線4を接続するためのコンクリートの削除(導線4が挿入される孔の穿設)は含まない。斯かる特徴を有する本発明の電気防食方法は、実質的にコンクリートの削除を必要とせず、したがってコンクリートが削除された部分の修復作業も実質的に不要であるため、作業性に優れるとともに、コンクリートの損傷を最小限に抑えることができ、PC桁のようなデリケートな性状の構造物に対しても電気防食を効果的に行うことができる。
隙間60に電気防食構造体1Aを配置する工程では、図3又は図5を参照して、典型的には、まず、隙間60を画成する一対の橋桁51,51それぞれの端面51aに対し、端面51a形成するコンクリートを実質的に削除することなく、保水層3を固着させ、次に、両端面51a,51aに固着させた両保水層3,3間に電極層2を配置し、しかる後、電極層2と橋桁51中の金属材61とを導線4で接続する。なお、金属材61に導線4を接続するためには、金属材61を被覆するコンクリートの一部を削除する必要があるが、斯かるコンクリートの削除は、金属材61の露出を目的としたものと比べて極めて限定的なものであり、コンクリート構造物の強度特性などに深刻な影響を及ぼし得るものではない。
保水層3の端面51aへの固着方法は、保水層3の構成等によって適宜選択し得る。例えば、保水層3の液保持材が、常温常圧で流動性を有する塗料となり得るものである場合、具体的には例えば、該液保持材が前述した硬化性素材又は吸水膨張性素材(吸水膨張性ウレタン樹脂)を含む場合は、該塗料を端面51aに塗布又は噴霧した後、硬化させ、その塗料の硬化物に電解液を保持させる方法により、保水層3(該塗料の硬化物に電解液を保持させたもの)を端面51aに固着させることができる。また、保水層3の液保持材が前述した吸水シートの如きシート状物の場合は、該シート状物を接着剤等の接着手段を介して端面51aに固着させた後、該シート状物に電解液を保持させる方法により、保水層3(該シート状物に電解液を保持させたもの)を端面51aに固着させることができる。後者の方法の変形例として、シート状物に予め電解液を保持させた後、該シート状物すなわち保水層3を端面51aに固着させてもよい。前述した何れの方法であっても、コンクリート表面である端面51aに固着させる塗料ないしシート状物(保水層3の中間体)は、端面51aに微小な凹凸があってもその凹凸に追従して密着し得るものであるため、保水層3を端面51aに密着させることができる。保水層3を端面51aに密着させることは、電気防食構造体1Aの防食性能を十分に発揮させる上で重要である。
隙間60に電気防食構造体1Bを配置する工程は、前述した電気防食構造体1Aの配置工程に準じて実施することができる。すなわち、図4又は図6を参照して、まず、隙間60を画成する一対の橋桁51,51それぞれの端面51aに保水層3を固着させ、次に、両端面51a,51aに固着させた両保水層3,3それぞれに電極層2を固着させ、次に、両電極層2,2間に付勢手段5を配置し、しかる後、電極層2と橋桁51中の金属材61とを導線4で接続する。あるいは、このように電極層2及び付勢手段5を順次配置する代わりに、電極層2と付勢手段5とを予め一体化させてき、その一体化物を、両端面51a,51aに固着させた両保水層3,3間に配置してもよい。
流電陽極方式の電気防食方法の場合(図3及び図4参照)は、以上の工程で電気防食構造体1A,1Bの配置は完了する。外部電源方式の電気防食方法の場合(図5及び図6参照)は、更に、直流電源装置6を設置してこれを含む前述した電気回路を形成する工程が必要である。
本発明は、内部に金属材が埋設されたコンクリート構造物を含む、隙間を設けて対向配置された複数の構造物に対して適用することができ、該構造物は、図示の如きPC桁のみならず、例えば、コンクリート部材や鋼部材の目地部等にも適用できる。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されず、また、一の実施形態が具備する構成は、他の実施形態が具備し得る。
前記実施形態では、電気防食構造体を構成する複数の層(電極層2、保水層3、付勢手段5)が隙間方向に積層されていたが、隙間方向伸縮性を有することを前提として、隙間方向と直交する方向に積層されていてもよい。ただし、電気防食構造体を構成する複数の層どうしは通常、伸縮特性が互いに同じではない(電極層2は通常は非伸縮性)ため、これら複数の層を隙間方向と直交する方向に積層すると、その積層構造からなる電気防食構造体の隙間方向伸縮性にばらつきが生じ、隙間の伸縮に対する追従性が低下する可能性がある。この点を考慮すると、前記実施形態のように、電気防食構造体を構成する複数の層は隙間方向に積層されることが好ましい。
1A,1B 電気防食構造体
2 電極層
3 保水層
4 導線
5 付勢手段
6 直流電源装置
50 コンクリート橋梁
51 橋桁(コンクリート構造物)
52 橋脚
53 橋台
54 支承
55 主桁
56 横桁
57 コンクリート
58 舗装
59 伸縮装置
60 隙間(遊間)
61 金属材

Claims (10)

  1. 内部に金属材が埋設されたコンクリート構造物を含む、複数の構造物が隙間を設けて対向配置されている場合に、該隙間に配置され、該金属材の電気防食に使用される電気防食構造体であって、
    前記金属材と電気的に接続される電極層と、保水層とを有し、且つ前記隙間の隙間方向の長さの変化に応じて該隙間方向に伸縮する伸縮性を有する、電気防食構造体。
  2. 前記電極層及び前記保水層を含む複数の層が前記隙間方向に積層された構造を有する、請求項1に記載の電気防食構造体。
  3. 前記保水層が前記電気防食構造体の前記隙間方向の両端に位置し、その隙間方向両端の保水層の間に前記電極層が位置している、請求項2に記載の電気防食構造体。
  4. 前記隙間方向両端の保水層の間に、該保水層を前記隙間方向外方へ付勢する付勢手段を有し、該付勢手段と該隙間方向両端の保水層それぞれとの間に前記電極層が位置している、請求項3に記載の電気防食構造体。
  5. 前記付勢手段が、吸水膨張性素材、弾性発泡体、弾性部材及びジャッキからなる群から選択される1種以上を含む、請求項4に記載の電気防食構造体。
  6. 前記保水層が吸水膨張性を有する、請求項1〜5の何れか1項に記載の電気防食構造体。
  7. 前記保水層が、吸水性樹脂が配合されたウレタン系樹脂を含有する、請求項6に記載の電気防食構造体。
  8. 前記電極層が、前記金属材に対して電気化学的序列が卑となる金属材料を含有し、流電陽極方式により腐食する犠牲陽極として機能する、請求項1〜7の何れか1項に記載の電気防食構造体。
  9. 前記電極層が、高珪素鋳鉄、磁性酸化鉄、鉛合金、表面が白金族金属の酸化物で被覆されたチタン製基材、又は表面がニッケルで被覆された炭素繊維を含有し、外部電源方式により不溶性電極として機能する、請求項1〜7の何れか1項に記載の電気防食構造体。
  10. 内部に金属材が埋設されたコンクリート構造物を含む、隙間を設けて対向配置された複数の構造物において、該隙間の近傍の該金属材の電気防食を行う電気防食方法であって、
    前記金属材を露出させるためのコンクリートの削除を行わずに、前記隙間に、請求項1〜9の何れか1項に記載の電気防食構造体を配置する工程を有する、電気防食方法。
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