本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、トランス−1,2−ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、トリフルオロエチレン(HFO-1123)及びジフルオロメタン(HFC-32又はR32)を含む混合冷媒が、上記特性を有することを見出した。
本開示は、かかる知見に基づきさらに研究を重ねた結果完成されたものである。本開示は、以下の実施形態を含む。
<用語の定義>
本明細書において用語「冷媒」には、ISO817(国際標準化機構)で定められた、冷媒の種類を表すRで始まる冷媒番号(ASHRAE番号)が付された化合物が少なくとも含まれ、さらに冷媒番号が未だ付されていないとしても、それらと同等の冷媒としての特性を有するものが含まれる。冷媒は、化合物の構造の面で、「フルオロカーボン系化合物」と「非フルオロカーボン系化合物」とに大別される。「フルオロカーボン系化合物」には、クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)及びハイドロフルオロカーボン(HFC)が含まれる。「非フルオロカーボン系化合物」としては、プロパン(R290)、プロピレン(R1270)、ブタン(R600)、イソブタン(R600a)、二酸化炭素(R744)及びアンモニア(R717)等が挙げられる。
本明細書において、用語「冷媒を含む組成物」には、(1)冷媒そのもの(冷媒の混合物を含む)と、(2)その他の成分をさらに含み、少なくとも冷凍機油と混合することにより冷凍機用作動流体を得るために用いることのできる組成物と、(3)冷凍機油を含有する冷凍機用作動流体とが少なくとも含まれる。本明細書においては、これら三態様のうち、(2)の組成物のことを、冷媒そのもの(冷媒の混合物を含む)と区別して「冷媒組成物」と表記する。また、(3)の冷凍機用作動流体のことを「冷媒組成物」と区別して「冷凍機油含有作動流体」と表記する。
本明細書において、用語「代替」は、第一の冷媒を第二の冷媒で「代替」するという文脈で用いられる場合、第一の類型として、第一の冷媒を使用して運転するために設計された機器において、必要に応じてわずかな部品(冷凍機油、ガスケット、パッキン、膨張弁、ドライヤその他の部品のうち少なくとも一種)の変更及び機器調整のみを経るだけで、第二の冷媒を使用して、最適条件下で運転することができることを意味する。すなわち、この類型は、同一の機器を、冷媒を「代替」して運転することを指す。この類型の「代替」の態様としては、第二の冷媒への置き換えの際に必要とされる変更乃至調整の度合いが小さい順に、「ドロップイン(drop in)代替」、「ニアリー・ドロップイン(nealy drop in)代替」及び「レトロフィット(retrofit)」があり得る。
第二の類型として、第二の冷媒を用いて運転するために設計された機器を、第一の冷媒の既存用途と同一の用途のために、第二の冷媒を搭載して用いることも、用語「代替」に含まれる。この類型は、同一の用途を、冷媒を「代替」して提供することを指す。
本明細書において用語「冷凍機(refrigerator)」とは、物あるいは空間の熱を奪い去ることにより、周囲の外気よりも低い温度にし、かつこの低温を維持する装置全般のことをいう。言い換えれば、冷凍機は温度の低い方から高い方へ熱を移動させるために、外部からエネルギーを得て仕事を行いエネルギー変換する変換装置のことをいう。
本明細書において冷媒が「WCF微燃」であるとは、米国ANSI/ASHRAE34-2013規格に従い最も燃えやすい組成(Worst case of formulation for flammability; WCF)が、燃焼速度が10cm/s以下であることを意味する。また、本明細書において冷媒が「ASHRAE微燃」であるとは、WCFの燃焼速度が10cm/s以下で、かつ、WCFを用いてANSI/ASHRAE34-2013に基づいた貯蔵、輸送、使用時の漏洩試験を行うことで特定される最も燃えやすい分画組成(Worst case of fractionation for flammability; WCFF)が、燃焼速度が10cm/s以下であり、米国ANSI/ASHRAE34-2013規格の燃焼性区分が「2Lクラス」と判断されることを意味する。
1.冷媒
1.1 冷媒成分
本開示の冷媒は、トランス−1,2−ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、トリフルオロエチレン(HFO-1123)及びジフルオロメタン(R32)を含み、
前記冷媒において、HFO-1132(E)、HFO-1123及びR32の、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、HFO-1123及びR32の総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が、
点E(36.3, 28.1, 35.6)
点K(30.3, 21.7, 48.0)
点L(26.7, 14.1, 59.2)
点B’(0.0, 49.8, 59.2)
点I(0.0, 56.0, 44.0)
点H(10.0, 47.0, 43.0)
点G(20.3, 38.7, 41.0)及び
点F(29.6, 32.5, 37.9)
の8点をそれぞれ結ぶ直線EK、KL、LB’、B’I、IH、HG、GF及びFEで囲まれる図形の範囲内又は前記直線EK、KL、LB’、IH、HG、GF及びFE上にある(ただし、点B’及びIを除く)ことが好ましい。このとき、本開示の冷媒は、R410Aを基準とするCOP比が97%以上となり、GWPが400以下であり、かつWCF微燃性を示す。
本開示の冷媒において、HFO-1132(E)、HFO-1123及びR32の、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、HFO-1123及びR32の総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が、
点F(29.6, 32.5, 37.9)
点N(28.7, 23.3, 48.0)
点O(25.5, 15.3, 59.2)
点B’(0.0, 49.8, 59.2)
点I(0.0, 56.0, 44.0)
点H(10.0, 47.0, 43.0)及び
点G(20.3, 38.7, 41.0)
の7点をそれぞれ結ぶ直線FN、NO、OB’、B’I、IH、HG及びGFで囲まれる図形の範囲内又は前記直線FN、NO、OB’、IH、HG及びGF上にある(ただし、点B’及びIを除く)ことが好ましい。このとき、本開示の冷媒は、R410Aを基準とするCOP比が97%以上となり、GWPが400以下であり、かつASHRAE微燃性を示す。
本開示の冷媒において、HFO-1132(E)、HFO-1123及びR32の、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、HFO-1123及びR32の総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が、
点E(36.3, 28.1, 35.6)
点K(30.3, 21.7, 48.0)
点B(0.0, 52.0, 48.0)
点I(0.0, 56.0, 44.0)
点H(10.0, 47.0, 43.0)
点G(20.3, 38.7, 41.0)及び
点F(29.6, 32.5, 37.9)
の7点をそれぞれ結ぶ直線EK、KB、BI、IH、HG、GF及びFEで囲まれる図形の範囲内又は前記直線EK、KB、IH、HG、GF及びFE上にある(ただし、点B及びIを除く)ことが好ましい。このとき、本開示の冷媒は、R410Aを基準とするCOP比が97%以上となり、GWPが325以下であり、かつWCF微燃性を示す。
本開示の冷媒において、HFO-1132(E)、HFO-1123及びR32の、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、HFO-1123及びR32の総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が、
点F(29.6, 32.5, 37.9)
点N(28.7, 23.3, 48.0)
点B(0.0, 52.0, 48.0)
点I(0.0, 56.0, 44.0)
点H(10.0, 47.0, 43.0)
点G(20.3, 38.7, 41.0)及び
点F(29.6, 32.5, 37.9)
の7点をそれぞれ結ぶ直線FN、NB、BI、IH、HG、GF及びFEで囲まれる図形の範囲内又は前記直線FN、NB、IH、HG、GF及びFE上にある(ただし、点B及びIを除く)ことが好ましい。このとき、本開示の冷媒は、R410Aを基準とするCOP比が97%以上となり、GWPが325以下であり、かつASHRAE微燃性を示す。
本開示の冷媒は、上記の全ての態様において、R32を冷媒全体に対して、0質量%より多く含んでいてもよく、0.5質量%以上含んでいてもよく、1質量%以上含んでいてもよく、3質量%以上含んでいてもよく、10質量%以上含んでいてもよく、又は15質量%以上含んでいてもよい。
本開示の冷媒は、上記の特性や効果を損なわない範囲内で、HFO-1132(E)、HFO-1123及びR32に加えて、さらに他の追加的な冷媒を含有していてもよい。この点で、本開示の冷媒が、HFO-1132(E)、HFO-1123及びR32の合計を、冷媒全体に対して99.5質量%以上含むことが好ましく、99.75質量%以上含むことがより好ましく、99.9質量%以上含むことがさらに好ましい。
追加的な冷媒としては、特に限定されず、幅広く選択できる。混合冷媒は、追加的な冷媒として、一種を単独で含んでいてもよいし、二種以上を含んでいてもよい。
1.2 用途
本開示の冷媒は、冷凍機における作動流体として好ましく使用することができる。
本開示の組成物は、R410Aの代替冷媒としての使用に適している。
2. 冷媒組成物
本開示の冷媒組成物は、本開示の冷媒を少なくとも含み、本開示の冷媒と同じ用途のために使用することができる。また、本開示の冷媒組成物は、さらに少なくとも冷凍機油と混合することにより冷凍機用作動流体を得るために用いることができる。
本開示の冷媒組成物は、本開示の冷媒に加え、さらに少なくとも一種のその他の成分を含有する。本開示の冷媒組成物は、必要に応じて、以下のその他の成分のうち少なくとも一種を含有していてもよい。上述の通り、本開示の冷媒組成物を、冷凍機における作動流体として使用するに際しては、通常、少なくとも冷凍機油と混合して用いられる。したがって、本開示の冷媒組成物は、好ましくは冷凍機油を実質的に含まない。具体的には、本開示の冷媒組成物は、冷媒組成物全体に対する冷凍機油の含有量が好ましくは0〜1質量%であり、より好ましくは0〜0.1質量%である。
2.1 水
本開示の冷媒組成物は微量の水を含んでもよい。冷媒組成物における含水割合は、冷媒全体に対して、0.1質量%以下とすることが好ましい。冷媒組成物が微量の水分を含むことにより、冷媒中に含まれ得る不飽和のフルオロカーボン系化合物の分子内二重結合が安定化され、また、不飽和のフルオロカーボン系化合物の酸化も起こりにくくなるため、冷媒組成物の安定性が向上する。
2.2 トレーサー
トレーサーは、本開示の冷媒組成物が希釈、汚染、その他何らかの変更があった場合、その変更を追跡できるように検出可能な濃度で本開示の冷媒組成物に添加される。
本開示の冷媒組成物は、トレーサーとして、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
トレーサーとしては、特に限定されず、一般に用いられるトレーサーの中から適宜選択することができる。
トレーサーとしては、例えば、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、フルオロカーボン、重水素化炭化水素、重水素化ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、フルオロエーテル、臭素化化合物、ヨウ素化化合物、アルコール、アルデヒド、ケトン、亜酸化窒素(N2O)等が挙げられる。トレーサーとしては、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、フルオロカーボン及びフルオロエーテルが特に好ましい。
上記トレーサーとしては、以下の化合物が好ましい。
FC-14(テトラフルオロメタン、CF4)
HCC-40(クロロメタン、CH3Cl)
HFC-23(トリフルオロメタン、CHF3)
HFC-41(フルオロメタン、CH3Cl)
HFC-125(ペンタフルオロエタン、CF3CHF2)
HFC-134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン、CF3CH2F)
HFC-134(1,1,2,2−テトラフルオロエタン、CHF2CHF2)
HFC-143a(1,1,1−トリフルオロエタン、CF3CH3)
HFC-143(1,1,2−トリフルオロエタン、CHF2CH2F)
HFC-152a(1,1−ジフルオロエタン、CHF2CH3)
HFC-152(1,2−ジフルオロエタン、CH2FCH2F)
HFC-161(フルオロエタン、CH3CH2F)
HFC-245fa(1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、CF3CH2CHF2)HFC-236fa(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、CF3CH2CF3)HFC-236ea(1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン、CF3CHFCHF2)HFC-227ea(1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン、CF3CHFCF3)HCFC-22(クロロジフルオロメタン、CHClF2)HCFC-31(クロロフルオロメタン、CH2ClF)
CFC-1113(クロロトリフルオロエチレン、CF2=CClF)
HFE-125(トリフルオロメチル−ジフルオロメチルエーテル、CF3OCHF2)HFE-134a(トリフルオロメチル−フルオロメチルエーテル、CF3OCH2F)HFE-143a(トリフルオロメチル−メチルエーテル、CF3OCH3)
HFE-227ea(トリフルオロメチル−テトラフルオロエチルエーテル、CF3OCHFCF3)HFE-236fa(トリフルオロメチル−トリフルオロエチルエーテル、CF3OCH2CF3) 本開示の冷媒組成物は、トレーサーを合計で、冷媒組成物全体に対して、約10重量百万分率(ppm)〜約1000ppm含んでいてもよい。本開示の冷媒組成物は、トレーサーを合計で、冷媒組成物全体に対して、好ましくは約30ppm〜約500ppm、より好ましくは約50ppm〜約300ppm含んでいてもよい。
2.3 紫外線蛍光染料
本開示の冷媒組成物は、紫外線蛍光染料として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
紫外線蛍光染料としては、特に限定されず、一般に用いられる紫外線蛍光染料の中から適宜選択することができる。
紫外線蛍光染料としては、例えば、ナフタルイミド、クマリン、アントラセン、フェナントレン、キサンテン、チオキサンテン、ナフトキサンテン及びフルオレセイン、並びにこれらの誘導体が挙げられる。紫外線蛍光染料としては、ナフタルイミド及びクマリンのいずれか又は両方が特に好ましい。
2.4 安定剤
本開示の冷媒組成物は、安定剤として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
安定剤としては、特に限定されず、一般に用いられる安定剤の中から適宜選択することができる。
安定剤としては、例えば、ニトロ化合物、エーテル類及びアミン類等が挙げられる。
ニトロ化合物としては、例えば、ニトロメタン及びニトロエタン等の脂肪族ニトロ化合物、並びにニトロベンゼン及びニトロスチレン等の芳香族ニトロ化合物等が挙げられる。
エーテル類としては、例えば、1,4-ジオキサン等が挙げられる。
アミン類としては、例えば、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルアミン、ジフェニルアミン等が挙げられる。
その他にも、ブチルヒドロキシキシレン、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
安定剤の含有割合は、特に限定されず、冷媒全体に対して、通常、0.01〜5質量%とすることが好ましく、0.05〜2質量%とすることがより好ましい。
2.5 重合禁止剤
本開示の冷媒組成物は、重合禁止剤として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
重合禁止剤としては、特に限定されず、一般に用いられる重合禁止剤の中から適宜選択することができる。
重合禁止剤としては、例えば、4-メトキシ-1-ナフトール、ヒドロキノン、ヒドロキノンメチルエーテル、ジメチル-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
重合禁止剤の含有割合は、特に限定されず、冷媒全体に対して、通常、0.01〜5質量%とすることが好ましく、0.05〜2質量%とすることがより好ましい。
3. 冷凍機油含有作動流体
本開示の冷凍機油含有作動流体は、本開示の冷媒又は冷媒組成物と、冷凍機油とを少なくとも含み、冷凍機における作動流体として用いられる。具体的には、本開示の冷凍機油含有作動流体は、冷凍機の圧縮機において使用される冷凍機油と、冷媒又は冷媒組成物とが互いに混じり合うことにより得られる。冷凍機油含有作動流体には冷凍機油は一般に10〜50質量%含まれる。
3.1 冷凍機油
本開示の冷凍機油含有作動流体は、冷凍機油として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
冷凍機油としては、特に限定されず、一般に用いられる冷凍機油の中から適宜選択することができる。その際には、必要に応じて、前記混合物との相溶性(miscibility)及び前記混合物の安定性等を向上する作用等の点でより優れている冷凍機油を適宜選択することができる。
冷凍機油の基油としては、例えば、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリオールエステル(POE)及びポリビニルエーテル(PVE)からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
冷凍機油は、基油に加えて、さらに添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、酸化防止剤、極圧剤、酸捕捉剤、酸素捕捉剤、銅不活性化剤、防錆剤、油性剤及び消泡剤からなる群より選択される少なくとも一種であってもよい。
冷凍機油として、40℃における動粘度が5〜400 cStであるものが、潤滑の点で好ましい。
本開示の冷凍機油含有作動流体は、必要に応じて、さらに少なくとも一種の添加剤を含んでもよい。添加剤としては例えば以下の相溶化剤等が挙げられる。
3.2 相溶化剤
本開示の冷凍機油含有作動流体は、相溶化剤として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
相溶化剤としては、特に限定されず、一般に用いられる相溶化剤の中から適宜選択することができる。
相溶化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン、エステル、ラクトン、アリールエーテル、フルオロエーテルおよび1,1,1-トリフルオロアルカン等が挙げられる。相溶化剤としては、ポリオキシアルキレングリコールエーテルが特に好ましい。
4.冷凍機の運転方法
本開示の冷凍機の運転方法は、本開示の冷媒を用いて冷凍機を運転する方法である。
具体的には、本開示の冷凍機の運転方法は、本開示の冷媒を冷凍機において循環させる工程を含む。
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
5.冷凍サイクル装置
以下において、本開示の冷媒を総称して「冷媒A」と表記することがある。
(1)第1グループ
GWPが十分に小さい冷媒を用いて冷凍サイクルを行う場合に、冷凍サイクル装置内における潤滑性を良好とすることについては、これまで検討されていない。
本開示の内容は、上述した点に鑑みたものであり、GWPが十分に小さい冷媒を用いて冷凍サイクルを行う場合において、冷凍サイクル装置内の潤滑性を良好にすることが可能な冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
第1グループの第1観点に係る冷凍サイクル装置は、本開示の冷媒組成物と、冷凍機油と、を含む冷凍機用作動流体を含む。
この冷凍サイクル装置は、GWPが十分に小さい冷媒と、冷凍機油と、を含んでいるため、上記冷媒組成物を用いて冷凍サイクルを行う場合の冷凍サイクル装置内の潤滑性を良好にすることが可能である。また、この冷凍サイクルでは、R410Aと同等の冷凍能力[Refrigeration Capacity(Cooling Capacity又はCapacityと表記されることもある)]及び成績係数[Coefficient of Performance(COP)]を有する、という性能を兼ね備える冷媒を用いた場合の冷凍サイクル装置内の潤滑性を良好にすることも可能である。
第1グループの第2観点に係る冷凍サイクル装置は、第1観点の冷凍サイクル装置であって、冷凍機油の40℃における動粘度が、1mm2/s以上750mm2/s以下である。
第1グループの第3観点に係る冷凍サイクル装置は、第1グループの第1観点又は第2観点の冷凍サイクル装置であって、冷凍機油の100℃における動粘度が、1mm2/s以上100mm2/s以下である。
第1グループの第4観点に係る冷凍サイクル装置は、第1グループの第1観点から第3観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、冷凍機油の25℃における体積抵抗率が、1.0×1012Ω・cm以上である。
第1グループの第5観点に係る冷凍サイクル装置は、第1グループの第1観点から第4観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、冷凍機油の酸価が、0.1mgKOH/g以下である。
第1グループの第6観点に係る冷凍サイクル装置は、第1グループの第1観点から第5観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、冷凍機油の灰分は、100ppm以下である。
第1グループの第7観点に係る冷凍サイクル装置は、第1グループの第1観点から第6観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、冷凍機油のアニリン点は、−100℃以上0℃以下である。
第1グループの第8観点に係る冷凍サイクル装置は、第1グループの第1観点から第7観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、冷媒回路を備えている。冷媒回路は、圧縮機と凝縮器と減圧部と蒸発器が冷媒配管で接続されて構成されている。冷媒回路は、内部を冷凍機用作動流体が循環する。
第1グループの第9観点に係る冷凍サイクル装置は、第1グループの第1観点から第8観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、冷凍機用作動流体中における冷凍機油の配合割合は、5質量%以上60質量%以下である。
第1グループの第10観点に係る冷凍サイクル装置は、第1グループの第1観点から第9観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、冷凍機油は、酸捕捉剤、極圧剤、酸化防止剤、消泡剤、油性剤、金属不活性化剤、摩耗防止剤および相溶化剤から選ばれる少なくとも1種類の添加剤を含んでいる。添加剤を含む冷凍機油の質量に対する添加剤の割合が5質量%以下である。
(2)第2グループ
GWPが十分に小さい冷媒を用いて冷凍サイクルを行う場合に、冷凍サイクル装置内における潤滑性を良好とすることについては、これまで検討されていない。
本開示の内容は、上述した点に鑑みたものであり、GWPが十分に小さい冷媒を用いて冷凍サイクルを行う場合の潤滑性を良好にすることが可能な冷媒用または冷媒組成物用の冷凍機油、冷凍機油の使用方法、および、冷凍機油としての使用を提供することを目的とする。
第2グループの第1観点に係る冷媒組成物用の冷凍機油は、本開示の冷媒組成物用の冷凍機油である。
第2グループの第2観点に係る冷媒組成物用の冷凍機油は、第2グループの第1観点の冷媒組成物用の冷凍機油であって、冷凍機油の40℃における動粘度が、1mm2/s以上750mm2/s以下である。
第2グループの第3観点に係る冷媒組成物用の冷凍機油は、第2グループの第1観点または第2観点の冷媒組成物用の冷凍機油であって、冷凍機油の100℃における動粘度が、1mm2/s以上100mm2/s以下である。
第2グループの第4観点に係る冷媒組成物用の冷凍機油は、第2グループの第1観点から第3観点のいずれかの冷媒組成物用の冷凍機油であって、冷凍機油の25℃における体積抵抗率が、1.0×1012Ω・cm以上である。
第2グループの第5観点に係る冷媒組成物用の冷凍機油は、第2グループの第1観点から第4観点のいずれかの冷媒組成物用の冷凍機油であって、冷凍機油の酸価が、0.1mgKOH/g以下である。
第2グループの第6観点に係る冷媒組成物用の冷凍機油は、第2グループの第1観点から第5観点のいずれかの冷媒組成物用の冷凍機油であって、冷凍機油の灰分は、100ppm以下である。
第2グループの第7観点に係る冷媒組成物用の冷凍機油は、第2グループの第1観点から第6観点のいずれかの冷媒組成物用の冷凍機油であって、冷凍機油のアニリン点は、−100℃以上0℃以下である。
第2グループの第8観点に係る冷凍機油の使用方法は、本開示の冷媒組成物と共に用いる冷凍機油の使用方法であって、冷媒には、冷媒Aが含まれる。
この冷凍機油の使用方法によれば、GWPが十分に小さい冷媒または該本開示の冷媒組成物を用いて冷凍サイクルを行う場合の潤滑性を良好にすることが可能である。
第2グループの第9観点に係る冷凍機油の使用方法は、第2グループの第8観点の冷凍機油の使用方法であって、冷凍機油の40℃における動粘度が、1mm2/s以上750mm2/s以下である。
第2グループの第10観点に係る冷凍機油の使用方法は、第2グループの第8観点または第9観点の冷凍機油の使用方法であって、冷凍機油の100℃における動粘度が、1mm2/s以上100mm2/s以下である。
第2グループの第11観点に係る冷凍機油の使用方法は、第2グループの第8観点から第10観点のいずれかの冷凍機油の使用方法であって、冷凍機油の25℃における体積抵抗率が、1.0×1012Ω・cm以上である。
第2グループの第12観点に係る冷凍機油の使用方法は、第2グループの第8観点から第11観点のいずれかの冷凍機油の使用方法であって、冷凍機油の酸価が、0.1mgKOH/g以下である。
第2グループの第13観点に係る冷凍機油の使用方法は、第2グループの第8観点から第12観点のいずれかの冷凍機油の使用方法であって、冷凍機油の灰分は、100ppm以下である。
第2グループの第14観点に係る冷凍機油の使用方法は、第2グループの第8観点から第13観点のいずれかの冷凍機油の使用方法であって、冷凍機油のアニリン点は、−100℃以上0℃以下である。
第2グループの第15観点に係る冷凍機油としての使用は、本開示の冷媒組成物と共に用いられる冷凍機油としての使用、冷媒には、後述の(26)に示す冷媒のいずれかが含まれる。
この冷凍機油としての使用によれば、GWPが十分に小さい冷媒または該本開示の冷媒組成物を用いて冷凍サイクルを行う場合の潤滑性を良好にすることが可能である。
第2グループの第16観点に係る冷凍機油としての使用は、第2グループの第15観点の冷凍機油としての使用であって、冷凍機油の40℃における動粘度が、1mm2/s以上750mm2/s以下である。
第2グループの第17観点に係る冷凍機油としての使用は、第2グループの第15観点または第16観点の冷凍機油としての使用であって、冷凍機油の100℃における動粘度が、1mm2/s以上100mm2/s以下である。
第2グループの第18観点に係る冷凍機油としての使用は、第2グループの第15観点から第17観点のいずれかの冷凍機油としての使用であって、冷凍機油の25℃における体積抵抗率が、1.0×1012Ω・cm以上である。
第2グループの第19観点に係る冷凍機油としての使用は、第2グループの第15観点から第18観点のいずれかの冷凍機油としての使用であって、冷凍機油の酸価が、0.1mgKOH/g以下である。
第2グループの第20観点に係る冷凍機油としての使用は、第2グループの第15観点から第19観点のいずれかの冷凍機油としての使用であって、冷凍機油の灰分は、100ppm以下である。
第2グループの第21観点に係る冷凍機油としての使用は、第2グループの第15観点から第20観点のいずれかの冷凍機油としての使用であって、冷凍機油のアニリン点は、−100℃以上0℃以下である。
(3)第3グループ
GWPが小さい冷媒を用いることができる具体的な冷媒回路については、これまで、なんら検討されていない。
第3グループの第1観点に係る冷凍サイクル装置は、冷媒回路と本開示の冷媒組成物を備えている。冷媒回路は、圧縮機と凝縮器と減圧部と蒸発器とを有している。冷媒組成物は、冷媒回路に封入されている。
この冷凍サイクル装置は、圧縮機と凝縮器と減圧部と蒸発器とを有する冷媒回路において、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いた冷凍サイクルを行うことができるため、GWPの小さい冷媒を用いて冷凍サイクルを行うことが可能になっている。
第3グループの第2観点に係る冷凍サイクル装置は、第3グループの第1観点の冷凍サイクル装置であって、冷媒回路は、低圧レシーバをさらに有している。低圧レシーバは、蒸発器から圧縮機の吸入側に向かう冷媒流路の途中に設けられている。
この冷凍サイクル装置は、冷媒回路における余剰冷媒を低圧レシーバに溜めながら冷凍サイクルを行うことが可能になる。
第3グループの第3観点に係る冷凍サイクル装置は、第3グループの第1観点または第2観点の冷凍サイクル装置であって、冷媒回路は、高圧レシーバをさらに有している。高圧レシーバは、凝縮器から蒸発器に向かう冷媒流路の途中に設けられている。
この冷凍サイクル装置では、冷媒回路における余剰冷媒を高圧レシーバに溜めながら冷凍サイクルを行うことが可能になる。
第3グループの第4観点に係る冷凍サイクル装置は、第3グループの第1観点から第3観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、冷媒回路は、第1減圧部と第2減圧部と中間圧レシーバとさらに有している。第1減圧部と第2減圧部と中間圧レシーバは、いずれも、凝縮器から蒸発器に向かう冷媒流路の途中に設けられている。中間圧レシーバは、凝縮器から蒸発器に向かう冷媒流路における第1減圧部と第2減圧部との間に設けられている。
この冷凍サイクル装置では、冷媒回路における余剰冷媒を中間圧レシーバに溜めながら冷凍サイクルを行うことが可能になる。
第3グループの第5観点に係る冷凍サイクル装置は、第3グループの第1観点から第4観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、制御部をさらに備えている。冷媒回路は、第1減圧部と第2減圧部とをさらに有している。第1減圧部と第2減圧部は、凝縮器から蒸発器に向かう冷媒流路の途中に設けられている。制御部は、第1減圧部を通過する冷媒の減圧程度と第2減圧部を通過する冷媒の減圧程度との両方を調節する。
この冷凍サイクル装置では、凝縮器から蒸発器に向かう冷媒流路の途中に設けられた第1減圧部と第2減圧部の各減圧程度を制御することにより、凝縮器から蒸発器に向かう冷媒流路の途中における第1減圧部と第2減圧部との間に位置する冷媒の密度を低下させることが可能になる。これにより、冷媒回路に封入された冷媒を、凝縮器および/または蒸発器に多く存在させやすくなり、能力を向上させることが可能になる。
第3グループの第6観点に係る冷凍サイクル装置は、第3グループの第1観点から第5観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、冷媒回路は、冷媒熱交換部をさらに有している。冷媒熱交換部は、凝縮器から蒸発器に向かう冷媒と、蒸発器から圧縮機に向かう冷媒と、の間で熱交換を行わせる。
この冷凍サイクル装置では、冷媒熱交換部において、蒸発器から圧縮機に向かう冷媒が凝縮器から蒸発器に向かう冷媒によって加熱される。このため、圧縮機における液圧縮を抑制することが可能になる。
(4)第4グループ
GWPが小さい冷媒には、可燃性を有する冷媒がある。このため、仮に、可燃性を有する冷媒が漏洩した場合においても、電装品の周辺に漏洩した冷媒が到達しにくい配置構造を採用することが好ましい。
本開示の内容は、上述した点に鑑みたものであり、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒であって、可燃性を有する冷媒を用いる場合であっても電装品ユニットに冷媒が到達しにくい熱交換ユニットを提供することを目的とする。
第4グループの第1観点に係る熱交換ユニットは、冷凍サイクル装置の一部分を構成している、熱交換ユニットであり、筐体と、熱交換器と、配管接続部と、電装品ユニットを備えている。熱交換ユニットは、利用側ユニットと熱源側ユニットのいずれかである。利用側ユニットと熱源側ユニットとは、連絡配管を介して互いに接続されている。熱交換器は、筐体内に設けられており、内部に冷媒Aが流れる。配管接続部は、連絡配管と接続される。電装品ユニットは、筐体内に設けられている。冷媒Aは、可燃性冷媒である。熱交換ユニットの設置状態では、電装品ユニットの下端は、配管接続部よりも高い位置に配置されている。
ここで、可燃性冷媒とは、米国ANSI/ASHRAE34-2013規格の燃焼性区分が「2Lクラス」以上の可燃性を有する冷媒を意味する。
なお、配管接続部は、特に限定されないが、熱交換器から伸び出す冷媒配管に対して直接的にまたは他の要素を介して間接的に接続されているものであってよい。
なお、電装品ユニットの形態としては、特に限定されず、複数の電気部品が収容された電気品箱であってもよいし、複数の電気部品が設けられた基板であってもよい。
この熱交換ユニットは、設置状態において、電装品ユニットの下端が、配管接続部よりも高い位置に配置されている。このため、仮に、配管接続部から、1,2−ジフルオロエチレンを含む可燃性冷媒が漏洩することがあったとしても、1,2−ジフルオロエチレンは空気よりも重いため、電装品ユニットに到達しにくい。
(5)第5グループ
GWPが十分に小さい冷媒として、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いる場合において、冷凍サイクルの運転効率を向上させることについては、これまでなんら検討されていない。
本開示の内容は、上述した点に鑑みたものであり、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いる場合において、運転効率を向上させることが可能な冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
第5グループの第1観点に係る冷凍サイクル装置は、圧縮機と、凝縮器と、減圧部と、蒸発器と、インジェクション流路と、を備えている。圧縮機は、吸入流路から低圧の冷媒Aを吸入し、冷媒Aの圧縮を行って高圧の冷媒Aを吐出する。凝縮器は、圧縮機から吐出された高圧の冷媒Aを凝縮させる。減圧部は、凝縮器を出た高圧の冷媒Aを減圧させる。蒸発器は、減圧部で減圧され冷媒Aを蒸発させる。インジェクション流路は、中間インジェクション流路と吸入インジェクション流路との少なくともいずれかである。中間インジェクション流路は、凝縮器から蒸発器に向かって流れる冷媒Aの一部を、圧縮機の中間圧の冷媒Aに合流させる。吸入インジェクション流路は、凝縮器から蒸発器に向かって流れる冷媒Aの一部を、圧縮機に吸入される低圧の冷媒Aに合流させる。
この冷凍サイクル装置では、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いることでGWPを十分に小さく抑えつつ、インジェクション流路を用いることで冷凍サイクルの運転効率を向上させることが可能である。
第5グループの第2観点に係る冷凍サイクル装置は、第5グループの第1観点の冷凍サイクル装置であって、分岐流路と、開度調整弁と、インジェクション熱交換器と、をさらに備えている。分岐流路は、凝縮器と蒸発器とを結ぶメイン冷媒流路から分岐している。開度調整弁は、分岐流路に設けられている。インジェクション熱交換器は、メイン冷媒流路を流れる冷媒と、分岐流路の開度調整弁の下流を流れる冷媒とを熱交換させる。インジェクション用熱交換器を出て分岐流路を流れる冷媒が、インジェクション流路に流れる。
この冷凍サイクル装置では、冷凍サイクルの運転効率をより向上させることが可能である。
第5グループの第3観点に係る冷凍サイクル装置は、第5グループの第1観点または第2観点の冷凍サイクル装置であって、凝縮器と蒸発器とを結ぶメイン冷媒流路に設けられた冷媒貯留タンクをさらに備えている。冷媒貯留タンクの内部に溜まる冷媒のガス成分が、インジェクション流路を流れる。
この冷凍サイクル装置では、冷媒貯留タンクにおいて余剰冷媒を蓄えさせつつ、冷凍サイクルの効率を向上させることが可能になる。
第5グループの第4観点に係る冷凍サイクル装置は、第5グループの第1観点から第3観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、圧縮機は、固定スクロールと、旋回スクロールと、を有している。固定スクロールは、鏡板と鏡板から渦巻き状に立ち上がったラップを有している。旋回スクロールは、固定スクロールと噛み合うことで圧縮室を形成する。インジェクション流路を流れる冷媒は、圧縮室に合流する。
この冷凍サイクル装置では、スクロール圧縮機を用いつつ、冷凍サイクルの運転効率を向上させることが可能になる。
(6)第6グループ
GWPが十分に小さい冷媒として、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いる場合において、冷凍サイクル装置やその構成機器としていかなる耐圧強度のものを用いるかは、これまでなんら検討されていない。
例えば、従来より多用されているR410AやR32等の冷媒が用いられた冷凍サイクル装置について、既設連絡配管を流用しつつ、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒に更新する場合には、冷凍サイクル装置を構成する機器が既設連絡配管の耐圧圧力を超えるような運転を行ってしまうと、既設連絡配管に損傷が生じるおそれもある。
本開示の内容は、上述した点に鑑みたものであり、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いる場合において、連絡配管の損傷を抑制させることが可能な熱源ユニットおよび冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
第6グループの第1観点に係る熱源ユニットは、圧縮機と熱源側熱交換器を備えている。熱源ユニットは、利用ユニットと連絡配管を介して接続されることで冷凍サイクル装置を構成する。利用ユニット、利用側熱交換器を有する。熱源ユニットでは、冷媒Aが使用されている。熱源ユニットの設計圧力は、連絡配管の設計圧力の1.5倍よりも低い。
なお、「設計圧力」とは、ゲージ圧力を意味する(以下、同じ)。
この熱源ユニットは、設計圧力が連絡配管の設計圧力の1.5倍よりも低いことから、連絡配管の耐圧圧力よりも低い状態で運転されるため、連絡配管に接続されて用いられた場合であっても、連絡配管の損傷を抑制させることが可能である。
第6グループの第2観点に係る冷凍サイクル装置は、利用ユニットと、連絡配管と、第1観点の熱源ユニットと、を備えている。冷凍サイクル装置は、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が使用される。熱源ユニットの設計圧力は、冷媒R22または冷媒R407Cが使用されていた際の冷凍サイクル装置での設計圧力と同等である。
ここでいう「同等」は、冷媒R22または冷媒R407Cが使用されていた際の冷凍サイクル装置での設計圧力に対して±10%の範囲内であることが好ましい。
この冷凍サイクル装置では、冷媒R22または冷媒R407Cが使用されていた冷凍サイクル装置について、連絡配管を流用しつつ、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が使用される冷凍サイクル装置に更新する場合であっても、熱源ユニットの設計圧力として更新前のものと同等または同じものを用いることにより、連絡配管の損傷を抑制させることが可能である。
第6グループの第3観点に係る冷凍サイクル装置は、第6グループの第2観点の冷凍サイクル装置であって、熱源ユニットの設計圧力は、3.0MPa以上3.7MPa以下である。
第6グループの第4観点に係る冷凍サイクル装置は、利用ユニットと、連絡配管と、第1観点の熱源ユニットと、を備えている。冷凍サイクル装置は、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が使用される。熱源ユニットの設計圧力は、冷媒R410Aまたは冷媒R32が使用されていた際の冷凍サイクル装置での設計圧力と同等である。
ここでいう「同等」は、冷媒R410Aまたは冷媒R32が使用されていた際の冷凍サイクル装置での設計圧力に対して±10%の範囲内であることが好ましい。
この冷凍サイクル装置では、冷媒R410Aまたは冷媒R32が使用されていた冷凍サイクル装置について、連絡配管を流用しつつ、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が使用される冷凍サイクル装置に更新する場合であっても、熱源ユニットの設計圧力として更新前のものと同等または同じものを用いることにより、連絡配管の損傷を抑制させることが可能である。
第6グループの第5観点に係る冷凍サイクル装置は、第6グループの第4観点の冷凍サイクル装置であって、熱源ユニットの設計圧力は、4.0MPa以上4.8MPa以下である。
第6グループの第6観点に係る冷凍サイクル装置は、熱源ユニットと、利用ユニットと、連絡配管と、を備えている。熱源ユニットは、圧縮機および熱源側熱交換器を有している。利用ユニットは、利用側熱交換器を有している。連絡配管は、熱源ユニットと利用ユニットを接続する。冷凍サイクル装置では、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が使用される。熱源ユニットの設計圧力は、冷媒R22または冷媒R407Cが使用されていた際の冷凍サイクル装置での設計圧力と同等である。
ここでいう「同等」は、冷媒R22または冷媒R407Cが使用されていた際の冷凍サイクル装置での設計圧力に対して±10%の範囲内であることが好ましい。
この冷凍サイクル装置では、冷媒R22または冷媒R407Cが使用されていた冷凍サイクル装置について、連絡配管を流用しつつ、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が使用される冷凍サイクル装置に更新する場合であっても、熱源ユニットの設計圧力として更新前のものと同等または同じものを用いることにより、連絡配管の損傷を抑制させることが可能である。
第6グループの第7観点に係る冷凍サイクル装置は、第6グループの第6観点の冷凍サイクル装置であって、熱源ユニットの設計圧力は、3.0MPa以上3.7MPa以下である。
第6グループの第8観点に係る冷凍サイクル装置は、熱源ユニットと、利用ユニットと、連絡配管と、を備えている。熱源ユニットとは、圧縮機および熱源側熱交換器を有している。利用ユニットは、利用側熱交換器を有している。連絡配管は、熱源ユニットと利用ユニットを接続する。冷凍サイクル装置では、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が使用される。熱源ユニットの設計圧力は、冷媒R410Aまたは冷媒R32が使用されていた際の冷凍サイクル装置での設計圧力と同等である。
ここでいう「同等」は、冷媒R410Aまたは冷媒R32が使用されていた際の冷凍サイクル装置での設計圧力に対して±10%の範囲内であることが好ましい。
この冷凍サイクル装置では、冷媒R410Aまたは冷媒R32が使用されていた冷凍サイクル装置について、連絡配管を流用しつつ、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が使用される冷凍サイクル装置に更新する場合であっても、熱源ユニットの設計圧力として更新前のものと同等または同じものを用いることにより、連絡配管の損傷を抑制させることが可能である。
第6グループの第9観点に係る冷凍サイクル装置は、第6グループの第8観点の冷凍サイクル装置であって、熱源ユニットの設計圧力は、4.0MPa以上4.8MPa以下である。
第6グループの第10観点に係る熱源ユニットは、圧縮機と熱源側熱交換器と制御装置とを備えている。熱源ユニットは、利用ユニットと連絡配管を介して接続されることで冷凍サイクル装置を構成する。利用ユニットは、利用側熱交換器を有する。熱源ユニットでは、冷媒として、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が使用される。制御装置は、冷媒の制御圧力の上限値が、連絡配管の設計圧力の1.5倍よりも低く設定または設定可能に構成されている。
この熱源ユニットは、制御装置による冷媒の制御圧力の上限値が、連絡配管の設計圧力の1.5倍よりも低くなるように、設定または設定可能に構成されている。このため、連絡配管に接続されて用いられた場合であっても、連絡配管の耐圧圧力よりも低い状態での運転制御が確保されるため、連絡配管の損傷を抑制させることが可能である。
第6グループの第11観点に係る冷凍サイクル装置は、利用ユニットと、連絡配管と、第6グループの第10観点の熱源ユニットと、を備えている。冷凍サイクル装置では、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が使用される。制御装置は、冷媒の制御圧力の上限値が、冷媒R22または冷媒R407Cが使用されていた際の冷凍サイクル装置での制御圧力の上限値と同等に設定または設定可能に構成されている。
ここでいう「同等」は、冷媒R22または冷媒R407Cが使用されていた際の冷凍サイクル装置での制御圧力の上限値に対して±10%の範囲内であることが好ましい。
この冷凍サイクル装置では、冷媒R22または冷媒R407Cが使用されていた冷凍サイクル装置について、連絡配管を流用しつつ、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が使用される冷凍サイクル装置に更新する場合であっても、熱源ユニットの制御装置による冷媒の制御圧力の上限値が、冷媒R22または冷媒R407Cが使用されていた際の冷凍サイクル装置の熱源ユニットの制御圧力の上限値と同等または同じになるように、設定または設定可能に構成されているため、連絡配管の損傷を抑制させることが可能である。
第6グループの第12観点に係る冷凍サイクル装置は、第6グループの第11観点の冷凍サイクル装置であって、制御圧力の上限値は、3.0MPa以上3.7MPa以下に設定されている。
第6グループの第13観点に係る冷凍サイクル装置は、利用ユニットと、連絡配管と、第10観点の熱源ユニットと、を備えている。冷凍サイクル装置では、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が使用される。制御装置は、冷媒の制御圧力の上限値が、冷媒R410Aまたは冷媒R32が使用されていた際の冷凍サイクル装置での制御圧力の上限値と同等に設定または設定可能に構成されている。
ここでいう「同等」は、冷媒R410Aまたは冷媒R32が使用されていた際の冷凍サイクル装置での制御圧力の上限値に対して±10%の範囲内であることが好ましい。
この冷凍サイクル装置では、冷媒R410Aまたは冷媒R32が使用されていた冷凍サイクル装置について、連絡配管を流用しつつ、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が使用される冷凍サイクル装置に更新する場合であっても、熱源ユニットの制御装置による冷媒の制御圧力の上限値が、冷媒R410Aまたは冷媒R32が使用されていた際の冷凍サイクル装置の熱源ユニットの制御圧力の上限値と同等または同じになるように、設定または設定可能に構成されているため、連絡配管の損傷を抑制させることが可能である。
第6グループの第14観点に係る冷凍サイクル装置は、第6グループの第13観点の冷凍サイクル装置であって、制御圧力の上限値は、4.0MPa以上4.8MPa以下に設定されている。
第6グループの第15観点に係る冷凍サイクル装置は、熱源ユニットと、利用ユニットと、連絡配管と、制御装置と、を備えている。熱源ユニットは、圧縮機および熱源側熱交換器を有している。利用ユニットは、利用側熱交換器を有している。連絡配管は、熱源ユニットと利用ユニットを接続する。冷凍サイクル装置では、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が使用される。制御装置は、冷媒の制御圧力の上限値が、冷媒R22または冷媒R407Cが使用されていた際の冷凍サイクル装置での制御圧力の上限値と同等に設定または設定可能に構成されている。
ここでいう「同等」は、冷媒R22または冷媒R407Cが使用されていた際の冷凍サイクル装置での制御圧力の上限値に対して±10%の範囲内であることが好ましい。
この冷凍サイクル装置では、冷媒R22または冷媒R407Cが使用されていた冷凍サイクル装置について、連絡配管を流用しつつ、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が使用される冷凍サイクル装置に更新する場合であっても、熱源ユニットの制御装置による冷媒の制御圧力の上限値が、冷媒R22または冷媒R407Cが使用されていた際の冷凍サイクル装置の熱源ユニットの制御圧力の上限値と同等または同じになるように、設定または設定可能に構成されているため、連絡配管の損傷を抑制させることが可能である。
第6グループの第16観点に係る冷凍サイクル装置は、第6グループの第15観点の冷凍サイクル装置であって、制御圧力の上限値は、3.0MPa以上3.7MPa以下に設定されている。
第6グループの第17観点に係る冷凍サイクル装置は、熱源ユニットと、利用ユニットと、連絡配管と、制御装置と、を備えている。熱源ユニットは、圧縮機および熱源側熱交換器を有している。利用ユニットは、利用側熱交換器を有している。連絡配管は、熱源ユニットと利用ユニットを接続する。冷凍サイクル装置は、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が使用される。制御装置は、冷媒の制御圧力の上限値が、冷媒R410Aまたは冷媒R32が使用されていた際の冷凍サイクル装置での制御圧力の上限値と同等に設定または設定可能に構成されている。
ここでいう「同等」は、冷媒R410Aまたは冷媒R32が使用されていた際の冷凍サイクル装置での制御圧力の上限値に対して±10%の範囲内であることが好ましい。
この冷凍サイクル装置では、冷媒R410Aまたは冷媒R32が使用されていた冷凍サイクル装置について、連絡配管を流用しつつ、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が使用される冷凍サイクル装置に更新する場合であっても、熱源ユニットの制御装置による冷媒の制御圧力の上限値が、冷媒R410Aまたは冷媒R32が使用されていた際の冷凍サイクル装置の熱源ユニットの制御圧力の上限値と同等または同じになるように、設定または設定可能に構成されているため、連絡配管の損傷を抑制させることが可能である。
第6グループの第18観点に係る冷凍サイクル装置は、第6グループの第17観点の冷凍サイクル装置であって、制御圧力の上限値は、4.0MPa以上4.8MPa以下に設定されている。
(7)第7グループ
GWPが小さい冷媒には、可燃性を有する冷媒がある。そして、空調ユニットにおいては、種々の目的により消費電力の高い電熱装置を用いる場合がある。このように、消費電力の高い電熱装置が用いられた空調ユニットにおいて、仮に、可燃性を有する冷媒の漏洩が生じることがあっても、電熱装置における発火が抑制されることが望まれる。
本開示の内容は、上述した点に鑑みたものであり、GWPが小さい冷媒を用いつつ、冷媒漏洩時においても電熱装置での発火を抑制させることが可能な空調ユニットを提供することを目的とする。
第7グループの第1観点に係る空調ユニットは、筐体と、機器と、電熱装置と、を備えている。機器は、筐体の内部に設けられている。電熱装置は、筐体の内部に設けられている。機器は、冷媒Aを圧縮する圧縮機、および/または、外気と冷媒Aとを熱交換させる熱交換器である。電熱装置の消費電力は、300W以下である。
なお、空調ユニットとしては、特に限定されず、例えば、室外ユニット等の熱源ユニットと室内ユニット等の利用ユニットとが冷媒連絡配管を介して接続される空気調和装置等の冷凍サイクル装置における、熱源ユニットであってもよいし、利用ユニットであってもよい。なお、熱源ユニットとしては、熱交換器のみを有しており、圧縮機が別ユニットに設けられているものであってもよい。
この空調ユニットは、筐体内において、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を圧縮する圧縮機、および/または、外気と1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒とを熱交換させる熱交換器が、電熱装置と共に収容されているが、電熱装置の消費電力は300W以下のものである。したがって、仮に上記冷媒が漏洩することがあっても、電熱装置において発火することが抑制される。
第7グループの第2観点に係る空調ユニットは、第7グループの第1観点の空調ユニットであって、筐体は、設置状態における側面に、熱交換器を通過した空気を吹き出すための吹出口が形成されている。電熱装置の消費電力は75W以上である。
この空調ユニットは、電熱装置の消費電力が75W以上であるため、電熱装置の機能を発揮させやすい。
第7グループの第3観点に係る空調ユニットは、第7グループの第2観点の空調ユニットであって、熱交換器を通過する空気流れを形成させるファンを1つ有している。電熱装置の消費電力は75W以上100W以下である。
なお、ファンが1つだけ設けられている空調ユニットが有する熱交換器の内容積(内部に充填可能な流体の体積)としては、0.4L以上3.5L未満であることが好ましい。なかでも、空調ユニットが用いられる冷媒回路において冷媒容器(低圧レシーバや高圧レシーバ等であり、圧縮機に付属のアキュムレータを除く)が設けられていないものについては、0.4L以上2.5L以下であることが好ましく、冷媒回路において冷媒容器が設けられているもの(好ましくは室内ユニット等の利用ユニットが1台であるもの)については、1.4L以上3.5L未満であることが好ましい。
この空調ユニットは、ファンが1つしか設けられていない程度の能力のものであるため、電熱装置の消費電力が100W以下のものであっても、電熱装置の機能は十分に発揮される。
第7グループの第4観点に係る空調ユニットは、第7グループの第2観点の空調ユニットであって、熱交換器を通過する空気流れを形成させるファンを2つ有している。電熱装置の消費電力は100W以上である。
なお、ファンが2つ設けられている空調ユニットが有する熱交換器の内容積(内部に充填可能な流体の体積)としては、3.5L以上7.0L以下であることが好ましい。なかでも、空調ユニットが用いられる冷媒回路において膨張弁を有さない室内ユニット等の利用ユニットが1台または複数台設けられているものについては、3.5L以上5.0L未満であることが好ましく、冷媒回路において膨張弁を有する室内ユニット等の利用ユニットが複数台設けられているものについては、5.0L以上7.0L以下であることが好ましい。
この空調ユニットは、ファンが2つ設けられているものであるため、空調ユニットの能力は大きいものとなり、電熱装置としても大きな能力が求められる傾向にあるが、ここでは、電熱装置の消費電力が100W以上のものが用いられるため、電熱装置の機能を、空調ユニットの能力に見合う分だけ十分に発揮させることが可能になる。
第7グループの第5観点に係る空調ユニットは、第7グループの第1観点の空調ユニットであって、筐体は、熱交換器を通過した空気を上方に向けて吹き出すための吹出口を有している。電熱装置の消費電力は200W以上である。
なお、熱交換器を通過した空気が上方に向けて吹き出す空調ユニットが有する熱交換器の内容積(内部に充填可能な流体の体積)としては、5.5L以上38L以下であることが好ましい。このように熱交換器の内容積が5.5L以上38L以下のものは、冷媒回路において膨張弁を有する室内ユニット等の利用ユニットが複数台設けられているものにおいて採用されることが好ましい。
この空調ユニットは、熱交換器を通過した空気が上方に向けて送られるものであるため、空調ユニットの能力は大きいものとなり、電熱装置としても大きな能力が求められる傾向にあるが、ここでは、電熱装置の消費電力が200W以上のものが用いられるため、電熱装置の機能を、空調ユニットの能力に見合う分だけ十分に発揮させることが可能になる。
第7グループの第6観点に係る空調ユニットは、第7グループの第1観点から第5観点のいずれかの空調ユニットであって、電熱装置は、ドレンパンヒータ、クランクケースヒータ、冷媒ヒータの少なくともいずれかである。
この空調ユニットは、ドレンパンヒータが設けられている場合にはドレンパンが設けられている空調ユニットにおいてドレンパン上における結露水の凍結を抑制させることが可能になり、クランクケースヒータが設けられている場合には圧縮機が設けられている空調ユニットにおいて圧縮機の起動時における冷凍機油の泡の発生(オイルフォーミング)を抑制させることが可能になり、冷媒ヒータが設けられている場合には冷媒回路における冷媒を加熱することが可能となる。
(8)第8グループ
地球温暖化防止を考えた場合の指数として、LCCP(Life Cycle Climate Performance:製品寿命気候負荷)という指数がある。このLCCPは、地球温暖化防止を考えた場合の指数であり、TEWI(Total Equivalent Warning Impact:総等価温暖化影響)に、使用温室効果ガス製造時のエネルギ消費(間接影響)と外気への漏洩(直接影響)を追加した数値であって、単位はkg-CO2である。すなわち、TEWIは、所要の数式によりそれぞれ算出される直接影響と間接影響とを加算して得られる。このLCCPは下記の関係式により算出される。
LCCP=GWPRM×W+GWP×W×(1−R)+N×Q×A
ここで、GWPRM:冷媒製造に関わる温暖化効果、W:冷媒充填量、R:機器廃棄時の冷媒回収量、N:機器使用期間(年)、Q:CO2排出原単位、A:年間消費電力量である。
冷凍サイクル装置のLCCPは、冷媒回路における充填量が少な過ぎると、冷媒不足に起因するサイクル効率の悪化によりLCCPが大きくなり、さらに、冷媒回路における充填量が多過ぎるとGWPの影響が高くなり、LCCPが大きくなる。また、従来多用されているR32よりもGWPの低い冷媒は、熱搬送能力が低い傾向にあり、サイクル効率が悪化することによりLCCPが大きくなる傾向にある。
本開示の内容は、上述した点に鑑みたものであり、GWPが十分に小さい冷媒を用いて熱サイクルを行う場合において、LCCPを低く抑えることが可能な冷凍サイクル装置および冷凍サイクル装置における冷媒封入量の決定方法を提供することを目的とする。
第8グループの第1観点に係る冷凍サイクル装置は、熱源ユニットと、利用ユニットと、冷媒配管と、を備えている。熱源ユニットは、圧縮機および熱源側熱交換器を有している。利用ユニットは、利用側熱交換器を有している。冷媒配管は、熱源ユニットと利用ユニットとを接続する。圧縮機と熱源側熱交換器と利用側熱交換器が接続されて構成される冷媒回路には、冷媒Aが封入されている。冷媒回路における冷媒の封入量は、冷凍サイクル装置の冷凍能力1kW当り160g以上560g以下の条件を満たしている。
なお、冷凍サイクル装置の冷凍能力とは、定格冷凍能力を意味する。
この冷凍サイクル装置は、冷媒回路において、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が、冷凍能力1kW当り160g以上560g以下封中されているため、GWPが十分に小さい冷媒を用いて熱サイクルを行う場合において、LCCPを低く抑えることが可能となっている。
なお、上記熱源側熱交換器の内容積(内部に充填可能な流体の体積)としては、冷媒回路において冷媒容器(低圧レシーバや高圧レシーバ等であり、圧縮機に付属のアキュムレータを除く)が設けられていないものについては、0.4L以上2.5L以下であることが好ましく、冷媒回路において冷媒容器が設けられているものについては、1.4L以上5.0L未満であることが好ましい。
また、ファンが1つだけ設けられている熱源ユニットが有する熱源側熱交換器の内容積(内部に充填可能な流体の体積)としては、設置状態における側面に熱源側熱交換器を通過した空気を吹き出すための吹出口が形成されている筐体を熱源ユニットが有している場合(熱源ユニットがトランク型等の場合)については、0.4L以上3.5L未満であることが好ましく、ファンが2つ設けられている熱源ユニットが有する熱源側熱交換器の内容積(内部に充填可能な流体の体積)としては、設置状態における側面に熱源側熱交換器を通過した空気を吹き出すための吹出口が形成されている筐体を熱源ユニットが有している場合(熱源ユニットがトランク型等の場合)については、3.5L以上5.0L未満であることが好ましい。
第8グループの第2観点に係る冷凍サイクル装置は、熱源ユニットと、第1利用ユニットと、第2利用ユニットと、冷媒配管と、を備えている。熱源ユニットは、圧縮機および熱源側熱交換器を有している。第1利用ユニットは、第1利用側熱交換器を有している。第2利用ユニットは、第2利用側熱交換器を有している。冷媒配管は、熱源ユニットと第1利用ユニットと第2利用ユニットとを接続している。圧縮機および熱源側熱交換器に第1利用側熱交換器と第2利用側熱交換器とが並列に接続されて構成される冷媒回路には、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が封入されている。冷媒回路における冷媒の冷凍能力1kW当りの封入量は、190g以上1660g以下の条件を満たしている。
この冷凍サイクル装置は、互いに並列に接続された利用側熱交換器を複数有する冷媒回路において、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が、冷凍能力1kW当り190g以上1660g以下封中されているため、GWPが十分に小さい冷媒を用いて熱サイクルを行う場合において、LCCPを低く抑えることが可能となっている。
なお、上記熱源側熱交換器の内容積(内部に充填可能な流体の体積)としては、第1利用ユニットが第1利用側熱交換器の液側において膨張弁を有しておらず、第2利用ユニットも第2利用側熱交換器の液側において膨張弁を有していないものについては、1.4L以上5.0L未満であることが好ましく、第1利用ユニットが第1利用側熱交換器の液側において膨張弁を有し、第2利用ユニットも第2利用側熱交換器の液側において膨張弁を有しているものについては、5.0L以上38L以下であることが好ましい。
また、ファンが1つだけ設けられている熱源ユニットが有する熱源側熱交換器の内容積(内部に充填可能な流体の体積)としては、設置状態における側面に熱源側熱交換器を通過した空気を吹き出すための吹出口が形成されている筐体を熱源ユニットが有している場合(熱源ユニットがトランク型等の場合)については、0.4L以上3.5L未満であることが好ましく、ファンが2つ設けられている熱源ユニットが有する熱源側熱交換器の内容積(内部に充填可能な流体の体積)としては、設置状態における側面に熱源側熱交換器を通過した空気を吹き出すための吹出口が形成されている筐体を熱源ユニットが有している場合(熱源ユニットがトランク型等の場合)については、3.5L以上7.0L以下であることが好ましく、熱源側熱交換器を通過した空気が上方に向けて吹き出す熱源ユニットが有する熱源側熱交換器の内容積(内部に充填可能な流体の体積)としては、5.5L以上38L以下であることが好ましい。
(9)第9グループ
従来のR410AやR32が用いられている冷凍サイクル装置としては、熱源側熱交換器を有する熱源ユニットと利用側熱交換器を有する利用ユニットを接続する液側冷媒連絡配管やガス側冷媒連絡配管の管外径が具体的に検討され、提案されている。
ところが、GWPが十分に小さい冷媒として少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いた冷凍サイクル装置については、液側冷媒連絡配管やガス側冷媒連絡配管の管外径は、なんら検討されておらず、提案もなされていない。
本開示の内容は、上述した点に鑑みたものであり、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いる場合において、能力の低下を小さく抑えることが可能な冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
第9グループの第1観点に係る冷凍サイクル装置は、圧縮機、熱源側熱交換器、減圧部、液側冷媒連絡配管、利用側熱交換器、ガス側冷媒連絡配管が接続された冷媒回路を有する。冷凍サイクル装置は、冷媒Aが使用されている。液側冷媒連絡配管の管外径と、ガス側冷媒連絡配管の管外径は、D0/8インチ(ここで、「D0−1/8インチ」は冷媒R32が使用される場合の冷媒連絡配管の管外径である)であり、且つ、液側冷媒連絡配管では、前記D0の範囲は「2≦D0≦4」であり、ガス側冷媒連絡配管では、前記D0の範囲は「3≦D0≦8」である。
なお、減圧部は、特に限定されず、膨張弁であってもよいし、キャピラリーチューブであってもよい。なお、液側冷媒連絡配管では、D0の範囲は「2≦D0≦3」であり、ガス側冷媒連絡配管では、D0の範囲は「4≦D0≦7」であることがより好ましい。
この冷凍サイクル装置は、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いることでGWPを十分に小さく抑えつつ、能力の低下を小さく抑えることが可能である。
なお、第9グループの第1観点に係る冷凍サイクル装置は、冷媒Aと冷媒R32との物性の違いを踏まえて、以下の冷凍サイクル装置としてもよい。
第9グループの第1観点に係る冷凍サイクル装置において、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が6.3kW以上10.0kW以下であり、且つ、液側冷媒連絡配管の管外径はD0/8インチ(ここで、「D0−1/8インチ」は冷媒R32が使用される場合の液側冷媒連絡配管の管外径である)であり、且つ、液側冷媒連絡配管はD0が3であってもよい。
第9グループの第1観点に係る冷凍サイクル装置において、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が4.0kW以下であり、且つ、ガス側冷媒連絡配管の管外径はD0/8インチ(ここで、「D0−1/8インチ」は冷媒R32が使用される場合のガス側冷媒連絡配管の管外径である)であり、且つ、ガス側冷媒連絡配管はD0が4であってもよい。
第9グループの第1観点に係る冷凍サイクル装置において、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が6.3kW以上10.0kW以下であり、且つ、ガス側冷媒連絡配管の管外径はD0/8インチ(ここで、「D0−1/8インチ」は冷媒R32が使用される場合のガス側冷媒連絡配管の管外径である)であり、且つ、ガス側冷媒連絡配管はD0が5であってもよい。
第9グループの第1観点に係る冷凍サイクル装置において、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が15.0kW以上19.0kW以下であり、且つ、ガス側冷媒連絡配管の管外径はD0/8インチ(ここで、「D0−1/8インチ」は冷媒R32が使用される場合のガス側冷媒連絡配管の管外径である)であり、且つ、ガス側冷媒連絡配管はD0が6であってもよい。
第9グループの第1観点に係る冷凍サイクル装置において、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が25.0kW以上であり、且つ、ガス側冷媒連絡配管の管外径はD0/8インチ(ここで、「D0−1/8インチ」は冷媒R32が使用される場合のガス側冷媒連絡配管の管外径である)であり、且つ、ガス側冷媒連絡配管はD0が7であってもよい。
第9グループの第2観点に係る冷凍サイクル装置は、第9グループの第1観点の冷凍サイクル装置であって、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が5.6kWより大きく11.2kW未満であり、且つ、液側冷媒連絡配管はD0が3(即ち配管径が3/8インチ)である。なお、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が6.3kW以上10.0kW以下であり、且つ、液側冷媒連絡配管はD0が3(即ち配管径が3/8インチ)であることが好ましい。
第9グループの第3観点に係る冷凍サイクル装置は、第9グループの第1観点の冷凍サイクル装置であって、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が22.4kWより大きく且つガス側冷媒連絡配管はD0が7(即ち配管径が7/8インチ)であるか、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が14.0kWより大きく22.4kW未満であり且つガス側冷媒連絡配管はD0が6(即ち配管径が6/8インチ)であるか、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が5.6kWより大きく11.2kW未満であり且つガス側冷媒連絡配管はD0が5(即ち配管径が5/8インチ)であるか、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が4.5kW未満であり且つガス側冷媒連絡配管はD0が4(即ち配管径が1/2インチ)であるか、のいずれかである。なお、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が25.0kW以上であり、且つ、ガス側冷媒連絡配管はD0が7(即ち配管径が7/8インチ)であるか、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が15.0kW以上19.0kW未満であり、且つ、ガス側冷媒連絡配管はD0が6(即ち配管径が6/8インチ)であるか、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が6.3kW以上10.0kW未満であり、且つ、ガス側冷媒連絡配管はD0が5(即ち配管径が5/8インチ)であるか、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が4.0kW未満であり、且つ、ガス側冷媒連絡配管はD0が4(即ち配管径が1/2インチ)であるか、のいずれかであることが好ましい。
第9グループの第4観点に係る冷凍サイクル装置は、圧縮機、熱源側熱交換器、減圧部、液側冷媒連絡配管、利用側熱交換器、ガス側冷媒連絡配管が接続された冷媒回路を有している。サイクル装置は、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が使用されている。液側冷媒連絡配管の管外径と、ガス側冷媒連絡配管の管外径は、D0/8インチであり、且つ、液側冷媒連絡配管では、D0の範囲は「2≦D0≦4」であり、ガス側冷媒連絡配管では、D0の範囲は「3≦D0≦8」である。液側冷媒連絡配管の管外径は、冷媒R410Aが使用される場合の液側冷媒連絡配管の管外径と同じであり、ガス側冷媒連絡配管の管外径は、冷媒R410Aが使用される場合のガス側冷媒連絡配管の管外径と同じである。
なお、減圧部は、特に限定されず、膨張弁であってもよいし、キャピラリーチューブであってもよい。なお、液側冷媒連絡配管では、D0の範囲は「2≦D0≦3」であり、ガス側冷媒連絡配管では、D0の範囲は「4≦D0≦7」であることがより好ましい。
この冷凍サイクル装置は、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いることでGWPを十分に小さく抑えつつ、能力の低下を小さく抑えることが可能である。
第9グループの第5観点に係る冷凍サイクル装置は、第9グループの第4観点の冷凍サイクル装置であって、液側冷媒連絡配管では、D0が2(即ち配管径が1/4インチ)である。
第9グループの第6観点に係る冷凍サイクル装置は、第9グループの第4観点の冷凍サイクル装置であって、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が6.3kW以上であり、且つ、液側冷媒連絡配管はD0が3(即ち配管径が3/8インチ)であるか、または、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が6.3kW未満であり、且つ、液側冷媒連絡配管はD0が2(即ち配管径が1/4インチ)である。
第9グループの第7観点に係る冷凍サイクル装置は、第9グループの第4観点の冷凍サイクル装置であって、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が6.0kW以上であり、且つ、ガス側冷媒連絡配管はD0が4(即ち配管径が1/2インチ)であるか、または、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が6.0kW未満であり、且つ、ガス側冷媒連絡配管はD0が3(即ち配管径が3/8インチ)である。
第9グループの第8観点に係る冷凍サイクル装置は、第9グループの第4観点の冷凍サイクル装置であって、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が25.0kW以上であり、且つ、ガス側冷媒連絡配管はD0が7(即ち配管径が7/8インチ)であるか、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が15.0kW以上25.0kW未満であり、且つ、ガス側冷媒連絡配管はD0が6(即ち配管径が6/8インチ)であるか、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が6.3kW以上15.0kW未満であり、且つ、ガス側冷媒連絡配管はD0が5(即ち配管径が5/8インチ)であるか、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が6.3kW未満であり、且つ、ガス側冷媒連絡配管はD0が4(即ち配管径が1/2インチ)であるか、のいずれかである。
第9グループの第9観点に係る冷凍サイクル装置は、圧縮機、熱源側熱交換器、減圧部、液側冷媒連絡配管、利用側熱交換器、ガス側冷媒連絡配管が接続された冷媒回路を有している。冷凍サイクル装置は、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が使用されている。液側冷媒連絡配管の管外径と、ガス側冷媒連絡配管の管外径は、D0/8インチであり、且つ、液側冷媒連絡配管では、D0の範囲は「2≦D0≦4」であり、ガス側冷媒連絡配管では、D0の範囲は「3≦D0≦8」である。
なお、減圧部は、特に限定されず、膨張弁であってもよいし、キャピラリーチューブであってもよい。なお、液側冷媒連絡配管では、D0の範囲は「2≦D0≦3」であり、ガス側冷媒連絡配管では、D0の範囲は「4≦D0≦7」であることがより好ましい。
この冷凍サイクル装置は、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いることでGWPを十分に小さく抑えつつ、能力の低下を小さく抑えることが可能である。
第9グループの第10観点に係る冷凍サイクル装置は、第9グループの第9観点の冷凍サイクル装置であって、液側冷媒連絡配管では、D0が2(即ち配管径が1/4インチ)である。
第9グループの第11観点に係る冷凍サイクル装置は、第9グループの第9観点の冷凍サイクル装置であって、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が7.5kW以上であり、且つ、液側冷媒連絡配管はD0が2.5(即ち配管径が5/16インチ)であるか、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が2.6kW以上7.5kW未満であり、且つ、液側冷媒連絡配管はD0が2(即ち配管径が1/4インチ)であるか、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が2.6kW未満であり、且つ、液側冷媒連絡配管はD0が1.5(即ち配管径が3/16インチ)であるか、のいずれかである。
第9グループの第12観点に係る冷凍サイクル装置は、第9グループの第9観点の冷凍サイクル装置であって、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が6.3kW以上であり、且つ、液側冷媒連絡配管はD0が3(即ち配管径が3/8インチ)であるか、または、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が6.3kW未満であり、且つ、液側冷媒連絡配管はD0が2(即ち配管径が1/4インチ)である。
第9グループの第13観点に係る冷凍サイクル装置は、第9グループの第9観点の冷凍サイクル装置であって、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が12.5kW以上であり、且つ、液側冷媒連絡配管はD0が3(即ち配管径が3/8インチ)であるか、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が6.3kW以上12.5kW未満であり、且つ、液側冷媒連絡配管はD0が2.5(即ち配管径が5/16インチ)であるか、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が6.3kW未満であり、且つ、液側冷媒連絡配管はD0が2(即ち配管径が1/4インチ)であるか、のいずれかである。
第9グループの第14観点に係る冷凍サイクル装置は、第9グループの第9観点の冷凍サイクル装置であって、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が6.0kW以上であり、且つ、ガス側冷媒連絡配管はD0が4(即ち配管径が1/2インチ)であるか、または、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が6.0kW未満であり、且つ、ガス側冷媒連絡配管はD0が3(即ち配管径が3/8インチ)である。
第9グループの第15観点に係る冷凍サイクル装置は、第9グループの第9観点の冷凍サイクル装置であって、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が6.0kW以上であり、且つ、ガス側冷媒連絡配管はD0が4(即ち配管径が1/2インチ)であるか、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が3.2kW以上6.0kW未満であり、且つ、ガス側冷媒連絡配管はD0が3(即ち配管径が3/8インチ)であるか、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が3.2kW未満であり、且つ、ガス側冷媒連絡配管はD0が2.5(即ち配管径が5/16インチ)であるか、のいずれかである。
第9グループの第16観点に係る冷凍サイクル装置は、第9グループの第9観点の冷凍サイクル装置であって、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が25.0kW以上であり、且つ、ガス側冷媒連絡配管はD0が7(即ち配管径が7/8インチ)であるか、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が15.0kW以上25.0kW未満であり、且つ、ガス側冷媒連絡配管はD0が6(即ち配管径が6/8インチ)であるか、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が6.3kW以上15.0kW未満であり、且つ、ガス側冷媒連絡配管はD0が5(即ち配管径が5/8インチ)であるか、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が6.3kW未満であり、且つ、ガス側冷媒連絡配管はD0が4(即ち配管径が1/2インチ)であるか、のいずれかである。
(10)第10グループ
近年、環境保護の観点から、空調機に使用される冷媒として、地球温暖化係数(GWP)の低い冷媒(以後、低GWP冷媒とよぶ)が検討されている。低GWP冷媒としては、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒が有力である。
しかしながら、上記冷媒を使用した空調機の高効率化という側面から考察した先行技術が少ない。空調機に、上記冷媒を適用しようとした場合に、如何にして圧縮機の高効率化を達成するか、が課題として存在する。
第10グループの第1観点に係る圧縮機は、圧縮部と、モータとを備えている。圧縮部は、冷媒Aを圧縮する。モータは、永久磁石を含む回転子を有し、圧縮部を駆動する。
圧縮機は、モータが永久磁石を含む回転子を有するので、モータの回転数を変更することができる容量可変型圧縮機に適している。この場合、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒を用いた空調機において、空調負荷に応じてモータ回転数を変更することができるので、圧縮機の高効率化が可能である。
第10グループの第2観点に係る圧縮機は、第10グループの第1観点の圧縮機であって、回転子が埋込磁石型回転子である。埋込磁石型回転子は、永久磁石が回転子内に埋め込まれている。
第10グループの第3観点に係る圧縮機は、第10グループの第1観点又は第2観点の圧縮機であって、回転子が複数の電磁鋼板を板厚方向に積層して形成されている。電磁鋼板の厚みは、0.05mm以上0.5mm以下である。
一般に、板厚を薄くするほど渦電流損を低減できるが、0.05mm未満は電磁鋼板の加工が困難であり、板厚0.5mmを超えると鋼板表面からの浸珪処理、およびSi分布適正化のための拡散処理に時間がかかることに鑑みれば、板厚は0.05〜0.5mmが望ましい。
第10グループの第4観点に係る圧縮機は、第10グループの第1観点又は第2観点の圧縮機であって、回転子が複数の板状のアモルファス金属を板厚方向に積層して形成されている。
この圧縮機では、鉄損が少なく効率の高いモータが実現されるので、圧縮機の高効率化が可能である。
第10グループの第5観点に係る圧縮機は、第10グループの第1観点又は第2観点の圧縮機であって、回転子が5質量%以上のシリコンを含有する複数の電磁鋼板を板厚方向に積層して形成されている。
この圧縮機では、適量のシリコンを含有させてヒステリシスを低減させた電磁鋼板により、鉄損が少なく効率の高いモータが実現されるので、圧縮機の高効率化が可能である。
第10グループの第6観点に係る圧縮機は、第10グループの第1観点から第5観点のいずれか1つの圧縮機であって、永久磁石が、Nd−Fe−B系磁石である。
この圧縮機では、磁気エネルギー積を大きくすることができるモータが実現されるので、圧縮機の高効率化が可能である。
第10グループの第7観点に係る圧縮機は、第10グループの第1観点から第6観点のいずれか1つの圧縮機であって、永久磁石が重希土類を粒界拡散して形成される。
この圧縮機では、永久磁石の減磁耐力が向上し、少量の重希土類で永久磁石の保持力を高めることができるので、圧縮機の高効率化が可能である。
第10グループの第8観点に係る圧縮機は、第10グループの第6観点の圧縮機であって、永久磁石が1質量%以下のディスプロシウムを含有している。
この圧縮機では、永久磁石の保持力が向上するので、圧縮機の高効率化が可能である。
第10グループの第9観点の圧縮機は、第10グループの第1観点から第8観点のいずれか1つの圧縮機であって、永久磁石の平均結晶粒径が10μm以下である。
この圧縮機では、永久磁石の減磁耐力が上がるので、圧縮機の高効率化が可能である。
第10グループの第10観点に係る圧縮機は、第10グループの第1観点又は第2観点の圧縮機であって、永久磁石が平板状であり、複数の永久磁石がV字型を成すように回転子に埋め込まれている。V字型の谷間に位置する部分の保持力は他の部分よりも{1/(4π)}×103[A/m]以上高く設定されている。
この圧縮機では、永久磁石の減磁が抑制されるので、圧縮機の高効率化が可能である。
第10グループの第11観点に係る圧縮機は、第10グループの第1観点又は第2観点の圧縮機であって、回転子が、引張り強さが400MPa以上の複数の高張力電磁鋼板を板厚方向に積層して形成されている。
この圧縮機では、高速回転時の回転子の耐久性が向上するので、圧縮機の高効率化が可能である。
第10グループの第12観点に係る圧縮機は、第10グループの第11観点の圧縮機であって、永久磁石が所定厚みを有する平板を成している。回転子は、収容孔と、非磁性空間と、ブリッジとを有している。収容孔は、複数の永久磁石が埋め込まれる。非磁性空間は、収容孔に収容された永久磁石それぞれの端部から回転子の表面近傍まで延びている。ブリッジは、非磁性空間の外側に位置して磁極どうしを連結する。ブリッジの厚みは、3mm以上である。
この圧縮機では、高速回転時の耐久性が向上するので、圧縮機の高効率化が可能である。
第10グループの第13観点に係る圧縮機は、第10グループの第1観点の圧縮機であって、回転子が、表面磁石型回転子である。表面磁石型回転子は、永久磁石が回転子の表面に張り付けられている。
第10グループの第14観点に係る冷凍サイクル装置は、第10グループの第1観点から第13観点のいずれか1つの圧縮機を備えた冷凍サイクル装置である。
(11)第11グループ
国際公開第2015/141678号においては、R410Aに代替可能な低GWP混合冷媒が種々提案されている。
また、冷媒としてR32を用いた冷凍サイクル装置としては、例えば、特開2002−54888号公報に記載のように、冷媒としてR32を用いた場合においてエネルギ効率を高めるため、熱交換器が有する伝熱管の配管径を7mm以上10mm以下とすることが提案されている。
ところが、GWPが十分に小さい冷媒として、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いる場合において、圧力損失を低減させつつ、保有される冷媒量を少なく抑えることが可能な熱交換器の伝熱管の配管径については、これまでなんら検討されていない。
本開示の内容は、上述した点に鑑みたものであり、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いる場合において、圧力損失を低減させつつ、保有される冷媒量を少なく抑えることが可能な冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
第11グループの第1観点に係る冷凍サイクル装置は、冷媒回路と、冷媒Aと、を備えている。冷媒回路は、圧縮機と熱源側熱交換器と減圧部と利用側熱交換器とを有している。冷媒Aは、冷媒回路に封入されている。熱源側熱交換器は、配管径が6.35mm以上10.0mm未満である伝熱管を有している。
なお、減圧部は、特に限定されず、膨張弁であってもよいし、キャピラリーチューブであってもよい。
この冷凍サイクル装置は、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いることでGWPを十分に小さく抑え、圧力損失を低減させつつ、保有される冷媒量を少なく抑えることが可能である。
第11グループの第2観点に係る冷凍サイクル装置は、第11グループの第1観点の冷凍サイクル装置であって、熱源側熱交換器は、配管径が6.35mmと7.0mmと8.0mmと9.5mmのいずれかである伝熱管を有している。
第11グループの第3観点に係る冷凍サイクル装置は、第11グループの第1観点または第2観点の冷凍サイクル装置であって、熱源側熱交換器は、配管径が7.0mm以上である伝熱管を有している。
第11グループの第4観点に係る冷凍サイクル装置は、冷媒回路と、冷媒と、を備えている。冷媒回路は、圧縮機と熱源側熱交換器と減圧部と利用側熱交換器とを有している。冷媒は、冷媒回路に封入されており、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含んでいる。利用側熱交換器は、配管径が4.0mm以上10.0mm未満である伝熱管を有している。
この冷凍サイクル装置は、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いることでGWPを十分に小さく抑え、圧力損失を低減させつつ、保有される冷媒量を少なく抑えることが可能である。
第11グループの第5観点に係る冷凍サイクル装置は、第11グループの第4観点の冷凍サイクル装置であって、利用側熱交換器は、配管径が8.0mm以下である伝熱管を有している。
第11グループの第6観点に係る冷凍サイクル装置は、第11グループの第4観点または第5観点の冷凍サイクル装置であって、利用側熱交換器は、配管径が4.0mmと5.0mmと6.35mmと7.0mmと8.0mmのいずれかである伝熱管を有している。
(12)第12グループ
近年、環境保護の観点から、空調機に使用される冷媒として、地球温暖化係数(GWP)の低い冷媒(以後、低GWP冷媒とよぶ)が検討されている。低GWP冷媒としては、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒が有力である。
しかしながら、上記冷媒を使用した空調機の高効率化という側面から考察した先行技術が少ない。空調機に、上記冷媒を適用しようとした場合に、如何にして圧縮機の高出力化を達成するか、が課題として存在する。
第12グループの第1観点に係る圧縮機は、冷媒Aを圧縮する圧縮部と、圧縮部を駆動する誘導モータとを備えている。
上記のように、冷媒Aを圧縮する圧縮機において、誘導モータを採用することによって、比較的低コストで高出力化が可能となる。
第12グループの第2観点に係る圧縮機は、第12グループの第1観点の圧縮機であって、誘導モータの回転子が、棒状の導電体であって環状に配置される複数の導体棒と、複数の導体棒を軸方向の端部で短洛する端絡環とを有している。少なくとも導体棒が、アルミニウムよりも電気抵抗が低い金属で形成されている。
この圧縮機では、誘導モータの導体棒を流れる電流による発熱が抑制されるので、高出力化が可能となる。
第12グループの第3観点に係る圧縮機は、第12グループの第1観点の圧縮機であって、誘導モータの回転子が放熱構造を有している。
この圧縮機では、誘導モータの回転子の温度上昇が抑制されるので、高出力化が可能となる。
第12グループの第4観点に係る圧縮機は、第12グループの第3観点の圧縮機であって、誘導モータの回転子が、棒状の導電体であって環状に配置される複数の導体棒と、複数の導体棒を軸方向の端部で短洛する端絡環とを有している。放熱構造は、端絡環に形成されている。
この圧縮機では、放熱構造自体が回転するので、放熱性が向上する上に、回転により強制対流が起こり、周辺の温度上昇が抑制されるので、高出力化が可能となる。
第12グループの第5観点に係る圧縮機は、第12グループの第3観点又は第4観点の圧縮機であって、放熱構造がヒートシンクである。
この圧縮機では、ヒートシンクは誘導モータの端絡環を成形する際に一体成形することができ、比較的低コストで高出力化が可能となる。
第12グループの第6観点に係る圧縮機は、第12グループの第1観点の圧縮機であって、誘導モータの固定子を冷媒によって冷却する冷却構造をさらに備えている。
この圧縮機では、誘導モータが冷却されるので、高出力化が可能となる。
第12グループの第7観点に係る圧縮機は、第12グループの第6観点の圧縮機であって、冷却構造が、圧縮機が接続される冷媒回路を流れる冷媒の冷熱によって固定子を冷却する。
第12グループの第8観点に係る冷凍サイクル装置は、第12グループの第1観点から第7観点のいずれか1つの圧縮機を備えた冷凍サイクル装置である。
(13)第13グループ
近年、環境保護の観点から、空調機に使用される冷媒として、地球温暖化係数(GWP)の低い冷媒(以後、低GWP冷媒とよぶ)が検討されている。低GWP冷媒としては、1,2−ジフルオロエチレンを含む沸混合冷媒が有力である。
しかしながら、上記冷媒を使用した空調機の高効率化という側面から考察した先行技術が少ない。例えば、空調機に、上記冷媒を適用しようとした場合に、如何にして高効率化を達成するか、が課題として存在する。
第13グループの第1観点に係る空調機は、冷媒Aを圧縮する圧縮機と、電力変換装置とを備えている。電力変換装置は、圧縮機を駆動するモータと、交流電源とモータとの間に接続され、スイッチング素子を有し、モータの出力が目標値になるようにスイッチング素子を制御する。
少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒を用いた空調機において、空調負荷に応じて圧縮機のモータ回転数を変更することができるので、高い通年エネルギー消費効率[Annual Performance Factor (APF)]を実現することができる。
第13グループの第2観点に係る空調機は、第13グループの第1観点の空調機であって、電力変換装置が、整流回路と、コンデンサとを含んでいる。整流回路は、交流電源の交流電圧を整流する。コンデンサは、整流回路の出力側に並列に接続され、電力変換装置のスイッチングによって生じる電圧変動を平滑する。
この空調機では、整流回路の出力側に電解コンデンサを要しないので、回路の大型化、高コスト化が抑制される。
第13グループの第3観点に係る空調機は、第13グループの第1観点又は第2観点の空調機であって、交流電源が単相電源である。
第13グループの第4観点に係る空調機は、第13グループの第1観点又は第2観点の空調機であって、交流電源が三相電源である。
第13グループの第5観点に係る空調機は、第13グループの第1観点の空調機であって、電力変換装置が、コンバータとインバータとを含むインダイレクトマトリックスコンバータである。コンバータは、交流電源の交流電圧を直流電圧に変換する。インバータは、直流電圧を交流電圧に変換してモータに供給する。
この空調機は、高効率な上に、整流回路の出力側に電解コンデンサを要しないので回路の大型化、高コスト化が抑制される。
第13グループの第6観点に係る空調機は、第13グループの第1観点の空調機であって、電力変換装置が、交流電源の交流電圧を所定周波数の交流電圧に直接変換してモータに供給する、マトリックスコンバータである。
この空調機は、高効率な上に、整流回路の出力側に電解コンデンサを要しないので回路の大型化、高コスト化が抑制される。
第13グループの第7観点に係る空調機は、第13グループの第1観点の空調機であって、圧縮機が、スクロール圧縮機、ロータリー圧縮機、ターボ圧縮機、およびスクリュー圧縮機のいずれかである。
第13グループの第8観点に係る空調機は、第13グループの第1観点から第7観点のいずれかの空調機であって、モータが、永久磁石を含む回転子を有する永久磁石同期モータである。
(14)第14グループ
近年、環境保護の観点から、空調機に使用される冷媒として、地球温暖化係数(GWP)の低い冷媒(以後、低GWP冷媒とよぶ)が検討されている。低GWP冷媒としては、1,2−ジフルオロエチレンを含む沸混合冷媒が有力である。
しかしながら、上記冷媒を使用した空調機の高効率化という側面から考察した先行技術が少ない。例えば、空調機に、上記冷媒を適用しようとした場合に、如何にして高効率化を達成するか、が課題として存在する。
第14グループの第1観点に係る空調機は、冷媒Aを圧縮する圧縮機と、圧縮機を駆動するモータと、交流電源からモータへと周波数変換をさせずに電力を供給させる接続部とを備えている。
少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒を使用した空調機において、交流電源とモータとの間に電力変換装置を介在させずに圧縮機を駆動することができるので、比較的安価な構成で、環境保護に配慮した空調機を提供することができる。
第14グループの第2観点に係る空調機は、第14グループの第1観点の空調機であって、接続部が、モータの少なくとも2つの端子間に交流電源の交流電圧を直接印加する。
第14グループの第3観点に係る空調機は、第14グループの第1観点又は第2観点の空調機であって、交流電源が単相電源である。
第14グループの第4観点に係る空調機は、第14グループの第1観点から第3観点のいずれかの空調機であって、モータの一端子に起動回路が直列に接続されている。
第14グループの第5観点に係る空調機は、第14グループの第4観点の空調機であって、起動回路が、正特性サーミスタと運転コンデンサとを並列に接続した回路である。
少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒を使用した空調機において、圧縮機の起動後、正特性サーミスタは自己発熱して抵抗値が増大し、実質的に運転コンデンサによる運転回路へ切り替わるので、圧縮機は適時に定格トルクを出力し得る状態になる。
第14グループの第6観点に係る空調機は、第14グループの第1観点又は第2観点の空調機であって、交流電源が三相電源である。
この空調機では、起動回路を要しないので、比較的安価である。
第14グループの第7観点の空調機は、第14グループの第1観点から第6観点のいずれかの空調機であって、モータが誘導モータである
この空調機では、モータが比較的低コストで高出力が可能であるので、空調機の高効率化が可能である。
(15)第15グループ
従来から、ボイラーや電気ヒータによって温水を生成する温水製造装置が普及している。また、熱源としてヒートポンプユニットを採用する温水製造装置も存在している。
ヒートポンプユニットを採用する従来の温水製造装置は、ヒートポンプユニットにおいて冷媒として二酸化炭素を用いることが多い。しかし、従来の温水製造装置よりも効率良く温水を製造したいという要望がある。
第15グループの第1観点に係る温水製造装置は、冷媒Aを用いる。この温水製造装置は、圧縮機と、熱源側の第1熱交換器と、膨張機構と、利用側の第2熱交換器とを備える。第2熱交換器は、その内部を流れる混合冷媒と、第1の水との間で熱交換をさせて、第1の水を加熱する。
この温水製造装置では、従来よく使われている二酸化炭素ではなく、冷媒として、上記の混合冷媒を用いている。これにより、効率の良い温水の製造が可能になる。
第15グループの第2観点に係る温水製造装置は、第15グループの第1観点の温水製造装置であって、タンクと、循環流路とをさらに備える。循環流路は、タンクと第2熱交換器との間で、第1の水を循環させる。
第15グループの第3観点に係る温水製造装置は、第15グループの第1観点の温水製造装置であって、第1循環流路と、第2循環流路と、第3熱交換器と、タンクと、をさらに備える。第1循環流路は、第2熱交換器によって加熱された第1の水を、循環させる。第2循環流路は、第1循環流路とは別の循環流路である。第3熱交換器は、第1循環流路を流れる第1の水と、第2循環流路を流れる第2の水との間で熱交換をさせて、第2循環流路を流れる第2の水を加熱する。タンクは、第3熱交換器によって加熱された第2の水を貯める。
第15グループの第4観点に係る温水製造装置は、第15グループの第1観点の温水製造装置であって、第1循環流路と、タンクと、をさらに備える。第1循環流路は、第2熱交換器によって加熱された第1の水を循環させる。第1循環流路の一部は、タンクの中に配置されており、第1循環流路を流れる第1の水と、タンクの中の第2の水との間で熱交換をさせることによって、タンクの中の第2の水を加熱する。
第15グループの第5観点に係る温水製造装置は、第15グループの第1観点の温水製造装置であって、タンクと、第1循環流路と、第3熱交換器と、第2循環流路と、第3流路と、をさらに備える。第1循環流路は、第2熱交換器とタンクとの間で、第1の水を循環させる。第2循環流路は、第3熱交換器とタンクとの間で、第1の水を循環させる。第3流路は、第1循環流路および第2循環流路とは別の流路である。第3熱交換器は、タンクから流れてくる第1の水と第3流路を流れる第3の水との間で熱交換をさせることによって、第3流路を流れる第3の水を加熱する。
第15グループの第6観点に係る温水製造装置は、第15グループの第1観点の温水製造装置であって、タンクと、第1循環流路と、第2流路と、をさらに備える。第1循環流路は、タンクと第2熱交換器との間で、第1の水を循環させる。第2流路は、第1循環流路とは別の流路である。第2流路の一部は、タンクの中に配置され、タンクの中の第1の水と、第2流路を流れる第2の水との間で熱交換をさせることによって、第2流路を流れる第2の水を加熱する。
第15グループの第7観点に係る温水製造装置は、第15グループの第1観点の温水製造装置であって、第1の水を貯めるタンクと、第2の水が流れる流路と、をさらに備える。流路の一部は、タンクの中に配置される。第2熱交換器は、タンクの中において、タンクに貯められている第1の水を加熱する。タンクに貯められている第1の水は、流路を流れる第2の水を加熱する。
第15グループの第8観点に係る温水製造装置は、第15グループの第1観点の温水製造装置であって、タンクと、給水源からタンクへと第1の水を流す流路と、をさらに備える。第2熱交換器は、流路を流れる第1の水を加熱する。
第15グループの第9観点に係る温水製造装置は、第15グループの第1観点から第8観点のいずれかの温水製造装置であって、利用側の第4熱交換器と、第4循環流路と、をさらに備える。第4熱交換器は、第2熱交換器とは別の熱交換器である。第4循環流路には、冷房または暖房用の第4の水が流れる。第4熱交換器は、その内部を流れる混合冷媒と、第4循環流路を流れる第4の水との間で熱交換をさせることによって、第4の水を冷却または加熱する。
(16)第16グループ
従来から、例えば、特開平11−256358号公報に記載されているように、熱交換器を備える冷凍サイクル装置がある。この冷凍サイクル装置の熱交換器のように、伝熱管に銅パイプが用いられているものがある。 しかし、伝熱管に銅パイプが用いられている熱交換器は、高価である。
このように、熱交換器を備える冷凍サイクル装置には、材料費を削減するという課題がある。
第16グループの第1観点に係る冷凍サイクル装置は、可燃性の冷媒Aと、冷媒を蒸発させる蒸発器と、冷媒を凝縮させる凝縮器と、を備え、蒸発器と凝縮器のうちの少なくとも一方が、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の複数のフィン及び、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の複数の伝熱管を有し、伝熱管の内部を流れる冷媒とフィンに沿って流れる流体に熱交換させる熱交換器であり、冷媒が、蒸発器と凝縮器とを循環して冷凍サイクルを繰り返すように構成されている。
この冷凍サイクル装置では、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の複数のフィン及び、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の複数の伝熱管を有していることから、例えば伝熱管に銅パイプを使う場合に比べて、熱交換器の材料費を削減することができる。
第16グループの第2観点に係る冷凍サイクル装置は、第16グループの第1観点の冷凍サイクル装置であって、複数のフィンの各々が、複数の穴を有し、複数の伝熱管が、複数のフィンの複数の穴を貫通し、複数の伝熱管の外周が、複数の穴の内周に密着している。
第16グループの第3観点に係る冷凍サイクル装置は、第16グループの第1観点の冷凍サイクル装置であって、複数の伝熱管が、複数の扁平管であり、互いに隣り合う扁平管の平面部が、互いに向かい合うように配置されている。
第16グループの第4観点に係る冷凍サイクル装置は、第16グループの第3観点の冷凍サイクル装置であって、複数のフィンの各々が、波形に折り曲げられて互いに隣り合う扁平管の平面部の間に配置され、平面部に熱を伝えられるように接続されている。
第16グループの第5観点に係る冷凍サイクル装置は、第16グループの第3観点の冷凍サイクル装置であって、複数のフィンの各々が、複数の切り欠きを有し、複数の扁平管が、複数のフィンの複数の切り欠きに差し込まれて複数のフィンに熱を伝えらるように接続されている。
(17)第17グループ
従来から、1台で室内の複数の部屋の空気を調整する空気調和装置として、マルチ型の空気調和装置が知られている。
マルチ型の空気調和装置は、異なる部屋に配置されている第1室内機と第2室内機とを備えている。このような空気調和装置では、第1室内機と第2室内機に冷媒を循環させるため、空気調和装置に充填される冷媒量が多くなる。
室内の複数の部屋の空気を調整する空気調和装置には、空気調和装置に充填される冷媒量を削減するという課題がある。
第17グループの第1観点に係る空気調和装置は、圧縮機と、第1空気を熱交換する利用側熱交換器と、第2空気を熱交換する熱源側熱交換器と、冷媒Aとを含み、前記圧縮機と前記利用側熱交換器と前記熱源側熱交換器とを循環して冷凍サイクルを繰り返す冷媒と、前記第1空気を室内の複数の部屋に供給する第1ダクトと、前記第1ダクトに接続され且つ前記利用側熱交換器を収納している利用側空間を有し、前記利用側熱交換器で前記冷媒と熱交換された後の前記第1空気を前記第1ダクトに送出するように構成されているケーシングと、を備える。
この空気調和装置では、複数の室内機を複数の部屋に配置する空気調和装置に比べて室内側熱交換器が少なくなるので、空気調和装置に充填される冷媒量を削減することができる。
第17グループの第2観点に係る空気調和装置は、第17グループの第1観点の空気調和装置であって、前記第1空気を前記室内から取り入れる第2ダクトと、前記ケーシングを有し、前記ケーシングを前記第2ダクトに接続し、前記室内から取り入れた前記第1空気を前記利用側熱交換器に導くように構成されている利用側ユニットと、前記熱源側熱交換器を収納し、前記利用側ユニットとは別体の熱源側ユニットとを備える、ものである。
この空気調和装置では、利用側ユニットと熱源側ユニットが別体であることから、空気調和装置の設置が容易になる。
第17グループの第3観点に係る空気調和装置は、第17グループの第1観点の空気調和装置であって、前記第1空気を室外から取り入れる第3ダクトと、前記ケーシングを有し、前記ケーシングを前記第3ダクトに接続し、前記室外から取り入れた前記第1空気を前記利用側熱交換器に導くように構成されている利用側ユニットと、前記熱源側熱交換器を収納し、前記利用側ユニットとは別体の熱源側ユニットとを備える、ものである。
この空気調和装置では、利用側ユニットと熱源側ユニットが別体であることから、空気調和装置の設置が容易になる。
第17グループの第4観点に係る空気調和装置は、第17グループの第1観点の空気調和装置であって、ケーシングに接続され、前記室内から取り入れた前記第1空気を前記利用側空間に供給する第2ダクトを備え、前記ケーシングが、室外から取り入れた前記第2空気が通過する熱源側空間と前記利用側空間と仕切って前記熱源側空間と前記利用側空間の空気の流通を遮断する仕切板を有し、前記熱源側熱交換器が、前記熱源側空間に配置されている、ものである。
この空気調和装置では、1つのケーシングの中に利用側熱交換器と熱源側熱交換器が同じケーシングの中に仕切板で仕切られた利用側空間と熱源側空間に収納されていることから、限られたスペースを使って空気調和装置を設置し易くなる。
(18)第18グループ
非共沸混合冷媒を用いた冷凍サイクルにおいて、熱源側熱交換器において一定の圧力で冷媒を蒸発させると、熱交換の能力が十分に発揮されない。
第18グループの第1観点に係る冷凍サイクルは、可燃性冷媒である冷媒Aを用いた冷凍サイクルであって、圧縮機と、熱源側熱交換器と、膨張機構と、利用側熱交換器と、減圧機構とを備えている。減圧機構は、蒸発器として機能している熱源側熱交換器を流れる混合冷媒を、熱源側熱交換器の入口と出口との間において減圧する。
ここでは、熱源側熱交換器において冷媒が蒸発するときに、減圧機構が途中で冷媒の圧力を低下させる。これにより、一定の圧力で冷媒を蒸発させる場合に生じる熱源側熱交換器の入口、出口での蒸発温度の差を、小さくすることができる。その結果、熱交換の能力を確保することができ、冷凍サイクルの性能が向上する。
第18グループの第2観点に係る冷凍サイクルは、第18グループの第1観点に係る冷凍サイクルであって、減圧機構は、熱源側熱交換器を流れる混合冷媒を、混合冷媒の温度勾配に応じて減圧する。
第18グループの第3観点に係る冷凍サイクルは、第18グループの第1観点又は第2観点に係る冷凍サイクルであって、熱源側熱交換器は、第1熱交換部と、第2熱交換部と、を有している。減圧機構は、第1熱交換部と第2熱交換部との間に配置されている。
第18グループの第4観点に係る冷凍サイクルは、第18グループの第1観点から第4観点のいずれかの冷凍サイクルであって、利用側熱交換器は、利用ユニットの中に配置されている。利用側熱交換器は、利用ユニットの前面側に位置する第3熱交換部と、利用ユニットの後面側に位置する第4熱交換部と、を有している。第3熱交換部の上部の近傍には、第4熱交換部の上部が位置している。第3熱交換部は、その上部から、利用ユニットの前面側に向かって斜め下方に延びている。第4熱交換部は、その上部から、利用ユニットの後面側に向かって斜め下方に延びている。第3熱交換部の冷媒流路の容積は、第4熱交換部の冷媒流路の容積よりも大きい。
ここでは、利用ユニットの前面側に位置する第3熱交換部のほうが、第4熱交換部よりも、冷媒流路の容積が大きい。これにより、熱交換部を通過する空気の速度が速い傾向にある利用ユニットの前面側において、冷媒流路の容積が大きい第3熱交換部が、混合冷媒と空気との間で多くの熱交換を行うようになる。
(19)第19グループ
空気調和機の制御回路は、発熱するインバータ回路などを有する。このため、特開昭62−69066号公報に示すように、制御回路を冷却することが行われている。 空気調和機の冷媒として、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒が用いられることがある。1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒は、R32冷媒よりも効率が悪い。このため、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒を用いた空気調和機においては、圧縮機の消費電力が増加し、インバータ回路などの制御回路の発熱量が増える。したがって、制御回路を冷却する必要がある。
第19グループの第1観点に係る空気調和機は、プリント基板と、冷媒ジャケットを備える。プリント基板には、パワー素子が取り付けられる。冷媒ジャケットには、パワー素子が熱的に接続される。冷媒ジャケットには、冷媒が流通する。冷媒ジャケットを流通する冷媒によってパワー素子が冷却される。冷媒は、冷媒Aである。
第19グループの第2観点に係る空気調和機は、第19グループの第1観点の空気調和機であって、冷凍サイクルを行う冷媒回路、をさらに備える。冷媒ジャケットを流通する冷媒は、冷媒回路を循環する。
第19グループの第3観点に係る空気調和機は、第19グループの第1観点の空気調和機であって、冷凍サイクルを行う冷媒回路、をさらに備える。冷媒ジャケットは、冷媒を封入するパイプを有する。パイプは、冷媒回路と冷媒を授受しない。
(20)第20グループ
近年の環境保護への意識の高まりを受け、低い地球温暖化係数(GWP)を有する冷媒を使用した空気調和機が必要となる。その際に、空気調和機が、快適性を維持したまま除湿運転を実行可能であることが望ましい。
第20グループの第1観点に係る空気調和機は、圧縮機、室外熱交換器、減圧器、第1室内熱交換器、除湿用減圧装置、および第2室内熱交換器が環状に接続された冷媒回路、を備える。空気調和機は、減圧器を開状態にして除湿用減圧装置により除湿運転を行う。空気調和機では、冷媒Aが使用される。
第20グループの第2観点に係る空気調和機は、第20グループの第1観点の空気調和機であって、除湿用減圧装置が、第1室内熱交換器と第2室内熱交換器との間に配置される。
第20グループの第3観点に係る空気調和機は、第20グループの第1観点又は第2観点の空気調和機であって、除湿用減圧装置が、電磁弁である。
第20グループの第4観点に係る空気調和機は、第20グループの第1観点又は第2観点の空気調和機であって、除湿用減圧装置が、膨張弁である。
(21)第21グループ
従来から除湿機能を備える空気調和機は、種々開発されている。例えば、室内側熱交換器を2つの熱交換器に分割し、これら2つの熱交換器を直列に接続している空気調和機が存在する。室内側熱交換器である2つの熱交換器は、除湿時に、一方で冷媒が凝縮され、他方で冷媒が蒸発される。
しかしながら、このような空気調和機では、室内側熱交換器と室内側熱交換器の冷媒の流れを制御する機構が複雑になる。
このような除湿機能を有する空気調和機には、冷媒回路の構成を簡略化するという課題がある。
第21グループの第1観点に係る空気調和機は、冷媒Aと、冷媒を圧縮する圧縮機と、冷媒を蒸発域で蒸発させる第1熱交換器と、冷媒を減圧する減圧部と、冷媒を凝縮させる第2熱交換器とを有する冷媒回路と、を備え、第1熱交換器の全体を蒸発域とする第1熱交換器で熱交換された空気を室内に吹き出す第1運転と、第1熱交換器の一部分のみを蒸発域とする第1熱交換器で熱交換された空気を室内に吹き出す第2運転とを切り換えられるように構成されている。
この空気調和機は、冷媒を蒸発域で蒸発させて除湿することができ且つ簡略化された冷媒回路を有する。
第21グループの第2観点に係る空気調和機は、第21グループの第1観点の空気調和機であって、第1熱交換器が、補助熱交換器であり、補助熱交換器の風下に主熱交換器を備え、補助熱交換器の全体を蒸発域として補助熱交換器と主熱交換器で熱交換された空気を室内に吹き出す第1運転と、第1熱交換器の一部分のみを蒸発域として補助熱交換器と主熱交換器で熱交換された空気を室内に吹き出す第2運転とを切り換えられるように構成されている、ものである。
この空気調和機は、冷房運転において、除湿運転のためのCOPの悪化を抑制することができる。
第21グループの第3観点に係る空気調和機は、第21グループの第1観点または第2観点の空気調和機であって、室内を除湿するための除湿運転モードにおいて、負荷に応じ、第1運転から第2運転に切り替わるように構成されている、ものである。
この空気調和機は、除湿運転モードを選択して運転が開始されるときに負荷が大きい場合、第1運転でも第1熱交換器の温度が低いため、十分な除湿が可能であるので、第1運転を開始することで、効率良く、除湿と冷房を同時に行うことが可能である。そして、室内の温度が低下して、負荷が小さくなってくると、第1運転では、蒸発温度が高くなって除湿できなくなるため、その時点で第2運転に切り換える。これにより、除湿運転のためのCOP悪化の影響を抑えることができる。
第21グループの第4観点に係る空気調和機は、第21グループの第3観点の空気調和機であって、負荷を、設定温度と、第1熱交換器が熱交換する室内の空気の温度との差に基づいて検知する、ものである。
第21グループの第5観点に係る空気調和機は、第21グループの第3観点または第4観点の空気調和機であって、負荷を、圧縮機の周波数に基づいて検知する、ものである。
第21グループの第6観点に係る空気調和機は、第21グループの第1観点から第5観点のいずれかの空気調和機であって、室内を除湿するための除湿運転モードにおいて、第1熱交換器における冷媒の蒸発温度が所定温度よりも低い場合には、第1運転から第2運転には切り替えずに第1運転を行うように構成されている、ものである。
この空気調和機は、負荷が所定値以下まで小さくなったときに、蒸発温度が所定値より低いので、第1運転から第2運転に切り換えなくても除湿できる。
第21グループの第7観点に係る空気調和機は、第21グループの第1観点から第6観点のいずれかの空気調和機であって、第2運転では、第1熱交換器の一部分以外の部分が、冷媒が蒸発温度以上になっている過熱域である、ものである。
(22)第22グループ
低地球温暖化係数の冷媒を用いて高効率な運転を実現する冷媒回路の構成については、これまで十分に提案されていない。
第22グループの第1観点に係る冷凍サイクル装置は、圧縮機と、熱源側熱交換器と、膨張機構と、利用側熱交換器と、を含む冷媒回路を備える。冷媒回路には、冷媒Aが封入される。少なくとも所定の運転時に、熱源側熱交換器及び利用側熱交換器の少なくとも一方における、冷媒の流れと冷媒と熱交換する熱媒体の流れとが対向流である。
第22グループの第1観点の冷凍サイクル装置では、1,2−ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))を含む低地球温暖化係数の冷媒を用いて、熱交換器を有効に利用した高効率な運転が実現される。
第22グループの第2観点に係る冷凍サイクル装置は、第22グループの第1観点の冷凍サイクル装置であって、熱源側熱交換器を蒸発器として用いる冷凍サイクル装置の運転時に、熱源側熱交換器における、冷媒の流れと、冷媒と熱交換する熱媒体の流れとが対向流である。
第22グループの第3観点に係る冷凍サイクル装置は、第22グループの第1観点又は第2観点の冷凍サイクル装置であって、熱源側熱交換器を凝縮器として用いる冷凍サイクル装置の運転時に、熱源側熱交換器における、冷媒の流れと、冷媒と熱交換する熱媒体の流れとが対向流である。
ここでは、温度グライドの影響で凝縮器の出口側で冷媒と熱媒体との温度差が取りにくくなる冷媒が用いられる場合であっても、凝縮器の入口から出口まで温度差が比較的確保されやすく、高効率な冷凍サイクル装置の運転を実現できる。
第22グループの第4観点に係る冷凍サイクル装置は、第22グループの第1観点から第3観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、利用側熱交換器を蒸発器として用いる冷凍サイクル装置の運転時に、利用側熱交換器における、冷媒の流れと、冷媒と熱交換する熱媒体の流れとが対向流である。
第22グループの第5観点に係る冷凍サイクル装置は、第22グループの第1観点から第4観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、利用側熱交換器を凝縮器として用いる冷凍サイクル装置の運転時に、利用側熱交換器における、冷媒の流れと、冷媒と熱交換する熱媒体の流れとが対向流である。
第22グループの第6観点に係る冷凍サイクル装置は、第22グループの第1観点から第5観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、熱媒体は空気である。
第22グループの第7観点に係る冷凍サイクル装置は、第22グループの第1観点から第5観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、熱媒体は液体である。
(23)第23グループ
GWPが十分に小さい冷媒として少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いた冷凍サイクル装置において、圧力損失を抑制するために液側冷媒連絡配管やガス側冷媒連絡配管の管外径が大きくなり、それがコスト増大を招来する虞がある。
本開示の内容は、上述した点に鑑みたものであり、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いる場合において、コストの増大を抑制した冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
第23グループの第1観点に係る冷凍サイクル装置は、圧縮機、熱源側熱交換器、減圧部、液側冷媒連絡配管、利用側熱交換器、ガス側冷媒連絡配管が接続された冷媒回路を有する冷凍サイクル装置であって、冷媒Aが使用されており、液側冷媒連絡配管およびガス側冷媒連絡配管が、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である。
この冷凍サイクル装置では、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を使用するに当たり、圧力損失抑制のために液側冷媒連絡配管およびガス側冷媒連絡配管の径を大きくする場合でも、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の管を使用することによって、コストの増大を抑制することできる。
第23グループの第2観点に係る冷凍サイクル装置は、第23グループの第1観点の冷凍サイクル装置であって、液側冷媒連絡配管の肉厚が、前記冷凍サイクル装置と同じ定格冷凍能力の冷凍サイクル装置に使用される銅または銅合金製の液側冷媒連絡配管の肉厚以上である。また、ガス側冷媒連絡配管の肉厚は、前記冷凍サイクル装置と同じ定格冷凍能力の冷凍サイクル装置に使用される銅または銅合金製のガス側冷媒連絡配管の肉厚以上である。
第23グループの第3観点に係る冷凍サイクル装置は、第23グループの第1観点の冷凍サイクル装置であって、液側冷媒連絡配管の外径は、前記冷凍サイクル装置と同じ定格冷凍能力の冷凍サイクル装置に使用される銅または銅合金製の液側冷媒連絡配管の外径以上である。また、ガス側冷媒連絡配管の外径は、前記冷凍サイクル装置と同じ定格冷凍能力の冷凍サイクル装置に使用される銅または銅合金製のガス側冷媒連絡配管の外径以上である。
第23グループの第4観点に係る冷凍サイクル装置は、第23グループの第3観点の冷凍サイクル装置であって、液側冷媒連絡配管の外径は、前記冷凍サイクル装置と同じ定格冷凍能力の冷凍サイクル装置に使用される銅または銅合金製の液側冷媒連絡配管の外径と同じである。
第23グループの第5観点に係る冷凍サイクル装置は、第23グループの第3観点の冷凍サイクル装置であって、液側冷媒連絡配管の外径の範囲が6.4mm〜12.7mmである。また、ガス側冷媒連絡配管の外径の範囲が12.7mm〜25.4mmである。
第23グループの第6観点に係る冷凍採掘装置は、第23グループの第5観点に係る冷凍サイクル装置であって、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が8.5kW以上10.0kW以下であり、且つ、前記ガス側冷媒連絡配管の外径が19.1mmである。
第23グループの第7観点に係る冷凍サイクル装置は、第23グループの第5観点の冷凍サイクル装置であって、冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が25.0kW以上28kW以下であり、且つ、前記ガス側冷媒連絡配管の外径が25.4mmである。
第23グループの第8観点に係る冷凍サイクル装置は、第23グループの第1観点の冷凍サイクル装置であって、
冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が25.0kW以上であり、且つ、前記ガス側冷媒連絡配管の外径が25.4mm、或いは、
冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が19.0kW以上25.0kW未満であり、且つ、前記ガス側冷媒連絡配管の外径が22.2mm、或いは、
冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が8.5kW以上19.0kW以下であり、且つ、ガス側冷媒連絡配管の外径が19.1mmであり、或いは、
冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が5.0kW以上8.5kW未満であり、且つ、前記ガス側冷媒連絡配管の外径が15.9mm、或いは、
冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が5.0kW未満であり、且つ、ガス側冷媒連絡配管の外径が12.7mm、
のいずれかである。
第23グループの第9観点に係る冷凍サイクル装置は、第23グループの第1観点の冷凍サイクル装置であって、
冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が19.0kW以上であり、且つ、前記液側冷媒連絡配管の外径が12.7mm、或いは、
冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が5.0kW以上19.0kW未満であり、且つ、液側冷媒連絡配管の外径が9.5mm、或いは、
冷凍サイクル装置の定格冷凍能力が5.0kW未満であり、且つ、液側冷媒連絡配管の外径が6.4mm、
のいずれかである。
第23グループの第10観点に係る冷凍サイクル装置は、第23グループの第1観点から第9観点のいずれか1つの冷凍サイクル装置であって、液側冷媒連絡配管およびガス側冷媒連絡配管に使用される材料が、日本工業規格「JIS H 4080」で定められるA3003TD、A3003TDS−O、A3005TDS−O及びA6063TDS−T84のいずれかである。
(24)第24グループ
低地球温暖化係数の冷媒を用いた冷凍サイクルにおいて、電力負荷の平準化をいかに実現するかについてはこれまで十分に提案されていない。
第24グループの第1観点にかかる蓄熱装置は、蓄熱槽と、蓄熱用熱交換器と、を備える。蓄熱槽には、蓄熱媒体が貯留されている。蓄熱用熱交換器は、蓄熱槽の蓄熱媒体に浸漬される。蓄熱用熱交換器は、冷媒供給装置に接続される。蓄熱用熱交換器は、冷媒供給装置から供給される冷媒Aにより蓄熱媒体を冷却する。
第24グループの第1観点の蓄熱装置では、冷媒供給装置から供給される1,2−ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))を含む低地球温暖化係数の冷媒を用いて蓄熱媒体を冷却して蓄熱槽に冷熱を貯留し、もって電力負荷の平準化に寄与することができる。
(25)第25グループ
従来の冷凍装置として、例えば、高温側(一次側)の冷凍サイクルと低温側(二次側)の冷凍サイクルとを備えた装置が存在する。例えば、高温側の冷凍サイクルの冷媒としてHFC冷媒(R410A、R32など)、HFO冷媒などを使用し、低温側の冷凍サイクルの冷媒として二酸化炭素冷媒を使用する二元冷凍装置が存在する。 二元冷凍装置などの2つのサイクルを組み合わせた冷凍装置において、さらなる効率のよい運転が求められている。
第25グループの第1観点に係る冷凍装置は、第1サイクルと、第2サイクルとを備える。第1サイクルは、第1圧縮機、第1放熱器、第1膨張機構および第1吸熱器が接続されている。第1サイクルでは、第1冷媒が循環する。第2サイクルは、第2放熱器および第2吸熱器が接続されている。第2サイクルでは、第2冷媒が循環する。第1吸熱器と第2放熱器とは、熱交換器である。この熱交換器は、第1吸熱器を流れる第1冷媒と、第2放熱器を流れる第2冷媒との間で、熱交換をさせる。第1冷媒および第2冷媒の少なくとも一方は、冷媒Aである。
ここでは、上記の混合冷媒を採用することによって、熱交換器における熱交換の効率を向上させることが可能になる。
第25グループの第2観点に係る冷凍装置は、第1サイクルと、第2サイクルとを備える。第1サイクルは、第1圧縮機、第1放熱器、第1膨張機構および第1吸熱器が接続されている。第1サイクルでは、第1冷媒が循環する。第2サイクルは、第2放熱器および第2吸熱器が接続されている。第2サイクルでは、第2冷媒が循環する。第1放熱器と第2吸熱器とは、熱交換器である。この熱交換器は、第1放熱器を流れる第1冷媒と、第2吸熱器を流れる第2冷媒との間で、熱交換をさせる。第1冷媒および第2冷媒の少なくとも一方は、冷媒Aである。
ここでは、上記の混合冷媒を採用することによって、熱交換器における熱交換の効率を向上させることが可能になる。
第25グループの第3観点に係る冷凍装置は、第25グループの第1観点に係る冷凍装置であって、第2サイクルは、さらに第2圧縮機および第2膨張機構が接続されたサイクルである。第1サイクルの第1放熱器を流れる第1冷媒は、外気に対して熱を放出する。第1冷媒は、上記の混合冷媒である。第2冷媒は、二酸化炭素である。
第25グループの第4観点に係る冷凍装置は、第25グループの第1観点に係る冷凍装置であって、第2サイクルは、さらに第2圧縮機および第2膨張機構が接続されたサイクルである。第1サイクルの第1放熱器を流れる第1冷媒は、外気に対して熱を放出する。第1冷媒は、上記の混合冷媒である。第2冷媒は、上記の混合冷媒である。
第25グループの第5観点に係る冷凍装置は、第25グループの第1観点に係る冷凍装置であって、第2サイクルは、さらに第2圧縮機および第2膨張機構が接続されたサイクルである。第1サイクルの第1放熱器を流れる第1冷媒は、外気に対して熱を放出する。第1冷媒は、R32である。第2冷媒は、上記の混合冷媒である。
第25グループの第6観点に係る冷凍装置は、第25グループの第1観点に係る冷凍装置であって、第1サイクルの第1放熱器を流れる第1冷媒は、外気に対して熱を放出する。第1冷媒は、上記の混合冷媒である。第2冷媒は、液媒体である。
第25グループの第7観点に係る冷凍装置は、第25グループの第2観点に係る冷凍装置であって、第2サイクルは、さらに第2圧縮機および第2膨張機構が接続されたサイクルである。第1サイクルの第1吸熱器を流れる第1冷媒は、外気から熱を奪う。第1冷媒は、上記の混合冷媒である。第2冷媒は、混合冷媒よりも所定温度における飽和圧力が低い冷媒である。
(26)上記の冷媒を用いる各グループの技術の特徴
GWPが十分に小さい上記のいずれかの冷媒を用いる第1グループの技術によれば、冷凍サイクル装置内の潤滑性を良好にすることが可能である。
GWPが十分に小さい上記のいずれかの冷媒を用いる第2グループの技術によれば、冷凍サイクルを行う場合の潤滑性を良好にすることが可能である。
GWPが十分に小さい上記のいずれかの冷媒を用いる第3グループの技術によれば、冷凍サイクルを行うことが可能である。
GWPが十分に小さい上記のいずれかの冷媒を用いる第4グループの技術によれば、冷媒漏洩時においても電装品ユニットに到達させにくくすることが可能である。
GWPが十分に小さい上記のいずれかの冷媒を用いる第5グループの技術によれば、冷凍サイクルの運転効率を向上させることが可能になる。
GWPが十分に小さい上記のいずれかの冷媒を用いる第6グループの技術によれば、連絡配管の損傷を抑制させることが可能である。
GWPが十分に小さい上記のいずれかの冷媒を用いる第7グループの技術によれば、仮に当該冷媒の漏洩が生じたとしても電熱装置における発火を抑制できる。
GWPが十分に小さい上記のいずれかの冷媒を用いる第8グループの技術によれば、冷凍サイクルを行うことが可能である。
GWPが十分に小さい上記のいずれかの冷媒を用いる第9グループの技術によれば、能力の低下を小さく抑えることが可能である。
GWPが十分に小さい上記のいずれかの冷媒を用いる第10グループの技術によれば、空調負荷に応じて圧縮機のモータ回転数を変更することができるので、圧縮機の高効率化が可能である。
GWPが十分に小さい上記のいずれかの冷媒を用いる第11グループの技術によれば、エネルギー効率を良好にすることが可能である。
GWPが十分に小さい上記のいずれかの冷媒を用いる第12グループの技術によれば、圧縮機のモータとして誘導モータを採用することによって、比較的低コストで高出力化が可能となる。
GWPが十分に小さい上記のいずれかの冷媒を用いる第13グループの技術によれば、空調負荷に応じて、当該冷媒を圧縮する圧縮機のモータ回転数を変更することができるので、高い通年エネルギー消費効率[Annual Performance Factor (APF)]を実現することができる。
GWPが十分に小さい上記のいずれかの冷媒を用いる第14グループの技術によれば、環境保護に配慮した空調機を提供することができる。
GWPが十分に小さい上記のいずれかの冷媒を用いる第15グループの技術によれば、効率的に温水を製造することが可能である。
GWPが十分に小さい上記のいずれかの冷媒を用いる第16グループの技術によれば、熱交換器の材料費を削減することが可能である。
GWPが十分に小さい上記のいずれかの冷媒を用いる第17グループの技術によれば、空気調和装置に充填される冷媒量を削減することが可能になる。
GWPが十分に小さい上記のいずれかの冷媒を用いる第18グループの技術によれば、熱源側熱交換器の熱交換の能力を向上させることが可能である。
GWPが十分に小さい上記のいずれかの冷媒を用いる第19グループの技術によれば、制御回路を冷却することが可能である。
GWPが十分に小さい上記のいずれかの冷媒を用いる第20グループの技術によれば、再熱除湿運転を適正に行うことが可能である。
GWPが十分に小さい上記のいずれかの冷媒を用いる第21グループの技術によれば、冷媒を蒸発域で蒸発させて除湿することが可能であり、且つ、冷媒回路の構成を簡略化することが可能である。
GWPが十分に小さい上記のいずれかの冷媒を用いる第22グループの技術によれば、高効率な運転を実現することが可能である。
GWPが十分に小さい上記のいずれかの冷媒を用いる第23グループの技術によれば、圧力損失抑制のために液側冷媒連絡配管およびガス側冷媒連絡配管の径を大きくする場合でも、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の管を使用することによって、コストの増大を抑制することできる。
GWPが十分に小さい上記のいずれかの冷媒を用いる第24グループの技術によれば、蓄熱槽に冷熱を貯留することが可能である。
GWPが十分に小さい上記のいずれかの冷媒を用いる第25グループの技術によれば、熱交換の効率を向上させることが可能である。
(2)冷凍機油
第2グループの技術としての冷凍機油は、冷媒組成物と共存させて冷凍サイクルを行わせることで、冷凍サイクル装置内の潤滑性を高めることが可能であり、効率的なサイクル性能を発揮させることも可能となる。
冷凍機油として、例えば、含酸素系合成油(エステル系冷凍機油、エーテル系冷凍機油等)、炭化水素系冷凍機油等が挙げられる。なかでも、冷媒または冷媒組成物との相溶性の観点から、エステル系冷凍機油、エーテル系冷凍機油が好ましい。冷凍機油としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
冷凍機油は、潤滑性や圧縮機の密閉性の低下を抑制させること、低温条件下で冷媒に対して相溶性が十分に確保されること、圧縮機の潤滑不良を抑制させること、蒸発器における熱交換効率を良好にすること、の少なくともいずれかの観点から、40℃における動粘度が1mm2/s以上750mm2/s以下であることが好ましく、1mm2/s以上400mm2/s以下であることがより好ましい。なお、冷凍機油の100℃における動粘度としては、例えば、1mm2/s以上100mm2/s以下であってよく、1mm2/s以上50mm2/s以下であることがより好ましい。
冷凍機油は、アニリン点が、−100℃以上0℃以下であることが好ましい。ここで、「アニリン点」は、例えば、炭化水素系溶剤等の溶解性を示す数値であり、試料(ここでは冷凍機油)を等容積のアニリンと混合して冷やしたときに、互いに溶解し合えなくなって濁りがみえ始めたときの温度を表すものである(JIS K 2256で規定)。なお、これらの値は、冷媒が溶解しない状態の冷凍機油自体の値である。このようなアニリン点の冷凍機油を用いることで、例えば、樹脂製機能部品を構成する各軸受および電動機の絶縁材料が冷凍機油と接する位置で用いられている場合においても、これらの樹脂製機能部品に対する冷凍機油の適合性を向上させることができる。具体的には、アニリン点が低すぎると、冷凍機油が軸受や絶縁材料に浸透し易くなり、軸受等が膨潤し易くなる。一方、アニリン点が高すぎると、冷凍機油が軸受や絶縁材料に浸透し難くなり、軸受等が収縮し易くなる。そこで、アニリン点が上述した所定の範囲(−100℃以上0℃以下)である冷凍機油を用いることで、軸受や絶縁材料の膨潤/収縮変形を防止することができる。ここで、各軸受が膨潤変形してしまうと、摺動部での隙間(ギャップ)を所望とする長さに維持することができない。その結果、摺動抵抗の増大を招く虞がある。各軸受が収縮変形してしまうと、軸受の硬度が高くなり圧縮機の振動によって軸受が破損する虞がある。つまり、各軸受が収縮変形すると、摺動部の剛性の低下を招く虞がある。また、電動機の絶縁材料(絶縁被服材料や絶縁フィルム等)が膨潤変形してしまうと、その絶縁材料の絶縁性が低下してしまう。絶縁材料が収縮変形してしまうと、上述した軸受の場合と同様に絶縁材料が破損する虞があり、この場合もまた絶縁性が低下してしまう。これに対して、上記のようにアニリン点が所定の範囲内である冷凍機油を用いることで、軸受や絶縁材料の膨潤/収縮変形を抑制できるため、このような不具合を回避することができる。
冷凍機油は、冷媒組成物と混合して冷凍機用作動流体として使用される。冷凍機用作動流体全量に対する冷凍機油の配合割合は、5質量%以上60質量%以下であることが好ましく、10質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
(2−1)含酸素系合成油
含酸素系合成油であるエステル系冷凍機油やエーテル系冷凍機油は、主として、炭素原子と酸素原子を有して構成されている。エステル系冷凍機油やエーテル系冷凍機油においては、この炭素原子と酸素原子の比率(炭素/酸素モル比)が小さすぎると吸湿性が高くなり、当該比率が大きすぎると冷媒との相溶性が低下してしまうことから、当該比率はモル比で2以上7.5以下であることが好ましい。
(2−1−1)エステル系冷凍機油
エステル系冷凍機油としては、化学的安定性の観点から、二塩基酸と1価アルコールとの二塩基酸エステル油、ポリオールと脂肪酸とのポリオールエステル油、またはポリオールと多価塩基酸と1価アルコール(又は脂肪酸)とのコンプレックスエステル油、ポリオール炭酸エステル油等が基油成分として挙げられる。
(二塩基酸エステル油)
二塩基酸エステル油としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の二塩基酸、特に、炭素数5〜10の二塩基酸(グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等)と、直鎖または分枝アルキル基を有する炭素数1〜15の一価アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール等)とのエステルが好ましい。この二塩基酸エステル油としては、具体的には、グルタル酸ジトリデシル、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジトリデシル、セバシン酸ジ(3−エチルヘキシル)等が挙げられる。
(ポリオールエステル油)
ポリオールエステル油とは、多価アルコールと脂肪酸(カルボン酸)とから合成されるエステルであり、炭素/酸素モル比が2以上7.5以下、好ましくは3.2以上5.8以下のものである。
ポリオールエステル油を構成する多価アルコールとしては、ジオール(エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール等)、水酸基を3〜20個有するポリオール(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜3量体)、1,3,5−ペンタントリオール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトールなどの多価アルコール、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、シュクロース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレンジトースなどの糖類、ならびにこれらの部分エーテル化物等)が挙げられ、エステルを構成する多価アルコールとしては、上記の1種でもよく、2種以上が含まれていてもよい。
ポリオールエステルを構成する脂肪酸としては、特に炭素数は制限されないが、通常炭素数1〜24のものが用いられる。直鎖の脂肪酸、分岐を有する脂肪酸が好ましい。直鎖の脂肪酸としては、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられ、カルボキシル基に結合する炭化水素基は、全て飽和炭化水素であってもよく、不飽和炭化水素を有していてもよい。さらに、分岐を有する脂肪酸としては、2−メチルプロパン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、2,2−ジメチルプロパン酸、2−メチルペンタン酸、3−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2,2−ジメチルブタン酸、2,3−ジメチルブタン酸、3,3−ジメチルブタン酸、2−メチルヘキサン酸、3−メチルヘキサン酸、4−メチルヘキサン酸、5−メチルヘキサン酸、2,2−ジメチルペンタン酸、2,3−ジメチルペンタン酸、2,4−ジメチルペンタン酸、3,3−ジメチルペンタン酸、3,4−ジメチルペンタン酸、4,4−ジメチルペンタン酸、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、2,2,3−トリメチルブタン酸、2,3,3−トリメチルブタン酸、2−エチル−2−メチルブタン酸、2−エチル−3−メチルブタン酸、2−メチルヘプタン酸、3−メチルヘプタン酸、4−メチルヘプタン酸、5−メチルヘプタン酸、6−メチルヘプタン酸、2−エチルヘキサン酸、3−エチルヘキサン酸、4−エチルヘキサン酸、2,2−ジメチルヘキサン酸、2,3−ジメチルヘキサン酸、2,4−ジメチルヘキサン酸、2,5−ジメチルヘキサン酸、3,3−ジメチルヘキサン酸、3,4−ジメチルヘキサン酸、3,5−ジメチルヘキサン酸、4,4−ジメチルヘキサン酸、4,5−ジメチルヘキサン酸、5,5−ジメチルヘキサン酸、2−プロピルペンタン酸、2−メチルオクタン酸、3−メチルオクタン酸、4−メチルオクタン酸、5−メチルオクタン酸、6−メチルオクタン酸、7−メチルオクタン酸、2,2−ジメチルヘプタン酸、2,3−ジメチルヘプタン酸、2,4−ジメチルヘプタン酸、2,5−ジメチルヘプタン酸、2,6−ジメチルヘプタン酸、3,3−ジメチルヘプタン酸、3,4−ジメチルヘプタン酸、3,5−ジメチルヘプタン酸、3,6−ジメチルヘプタン酸、4,4−ジメチルヘプタン酸、4,5−ジメチルヘプタン酸、4,6−ジメチルヘプタン酸、5,5−ジメチルヘプタン酸、5,6−ジメチルヘプタン酸、6,6−ジメチルヘプタン酸、2−メチル−2−エチルヘキサン酸、2−メチル−3−エチルヘキサン酸、2−メチル−4−エチルヘキサン酸、3−メチル−2−エチルヘキサン酸、3−メチル−3−エチルヘキサン酸、3−メチル−4−エチルヘキサン酸、4−メチル−2−エチルヘキサン酸、4−メチル−3−エチルヘキサン酸、4−メチル−4−エチルヘキサン酸、5−メチル−2−エチルヘキサン酸、5−メチル−3−エチルヘキサン酸、5−メチル−4−エチルヘキサン酸、2−エチルヘプタン酸、3−メチルオクタン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、2−エチル−2,3,3−トリメチル酪酸、2,2,4,4−テトラメチルペンタン酸、2,2,3,3−テトラメチルペンタン酸、2,2,3,4−テトラメチルペンタン酸、2,2−ジイソプロピルプロパン酸などが挙げられる。脂肪酸は、これらの中から選ばれる1種または2種以上の脂肪酸とのエステルであってもよい。
エステルを構成する多価アルコールは1種類でもよく、2種以上の混合物でもよい。また、エステルを構成する脂肪酸は、単一成分でもよく、2種以上の脂肪酸とのエステルでもよい。脂肪酸は、各々1種類でもよく、2種類以上の混合物でもよい。また、ポリオールエステル油は、遊離の水酸基を有していてもよい。
具体的なポリオールエステル油としては、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)などのヒンダードアルコールのエステルがより好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタンおよびペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)のエステルがさらにより好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)等と炭素数2〜20の脂肪酸とのエステルが好ましい。
このような多価アルコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸において、脂肪酸は直鎖アルキル基をもつ脂肪酸のみでもよいし、分岐構造をもつ脂肪酸から選ばれてもよい。また、直鎖と分岐脂肪酸の混合エステルでもよい。さらに、エステルを構成する脂肪酸は、上記脂肪酸から選ばれる2種類以上が用いられていてもよい。
具体的な例として、直鎖と分岐脂肪酸の混合エステルの場合には、直鎖を有する炭素数4〜6の脂肪酸と分岐を有する炭素数7〜9の脂肪酸のモル比は、15:85〜90:10であり、好ましくは15:85〜85:15であり、より好ましくは20:80〜80:20であり、さらに好ましくは25:75〜75:25であり、最も好ましくは30:70〜70:30である。また、多価アルコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の全量に占める直鎖を有する炭素数4〜6の脂肪酸および分岐を有する炭素数7〜9の脂肪酸の合計の割合は20モル%以上であることが好ましい。脂肪酸組成に関しては、冷媒との十分な相溶性、および冷凍機油として必要な粘度とを両立させるものであることが好ましい。なお、ここでいう脂肪酸の割合とは、冷凍機油に含まれる多価アルコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸全量を基準とした値である。
なかでも、このような冷凍機油としては、脂肪酸における炭素数4〜6の脂肪酸と炭素数7〜9の分岐脂肪酸のモル比が15:85〜90:10であり、炭素数4〜6の脂肪酸は2−メチルプロパン酸を含有し、上記エステルを構成する脂肪酸の全量に占める炭素数4〜6の脂肪酸および炭素数7〜9の分岐脂肪酸の合計の割合が20モル%以上であるエステル(以下、「多価アルコール脂肪酸エステル(A)」という。)を含有したものが好ましい。
多価アルコール脂肪酸エステル(A)には、多価アルコールの全ての水酸基がエステル化された完全エステル、多価アルコールの水酸基の一部がエステル化せずに残っている部分エステル、ならびに完全エステルと部分エステルとの混合物が包含されるが、多価アルコール脂肪酸エステル(A)の水酸基価は、好ましくは10mgKOH/g以下、さらには5mgKOH/g以下、最も好ましくは3mgKOH/g以下である。
多価アルコール脂肪酸エステル(A)を構成する脂肪酸において、炭素数4〜6の脂肪酸と分岐を有する炭素数7〜9の脂肪酸のモル比は、15:85〜90:10であり、好ましくは15:85〜85:15であり、より好ましくは20:80〜80:20であり、さらに好ましくは25:75〜75:25であり、最も好ましくは30:70〜70:30である。また、多価アルコール脂肪酸エステル(A)を構成する脂肪酸の全量に占める炭素数4〜6の脂肪酸および分岐を有する炭素数7〜9の脂肪酸の合計の割合は20モル%以上である。脂肪酸組成に関する上記の条件を満たさない場合には、冷媒組成物にジフルオロメタンが含まれている場合において、当該ジフルオロメタンとの十分な相溶性、および冷凍機油として必要な粘度とが高水準で両立されにくくなる。なお、脂肪酸の割合とは、冷凍機油に含有される多価アルコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸全量を基準とした値である。
上記炭素数4〜6の脂肪酸としては、具体的には例えば、ブタン酸、2−メチルプロパン酸、ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、2,2−ジメチルプロパン酸、2−メチルペンタン酸、3−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2,2−ジメチルブタン酸、2,3−ジメチルブタン酸、3,3−ジメチルブタン酸、ヘキサン酸などが挙げられる。これらの中でも、2−メチルプロパン酸のように、アルキル骨格に分岐を有するものが好ましい。
上記分岐を有する炭素数7〜9の脂肪酸としては、具体的には例えば、2−メチルヘキサン酸、3−メチルヘキサン酸、4−メチルヘキサン酸、5−メチルヘキサン酸、2,2−ジメチルペンタン酸、2,3−ジメチルペンタン酸、2,4−ジメチルペンタン酸、3,3−ジメチルペンタン酸、3,4−ジメチルペンタン酸、4,4−ジメチルペンタン酸、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、1,1,2−トリメチルブタン酸、1,2,2−トリメチルブタン酸、1−エチル−1メチルブタン酸、1−エチル−2−メチルブタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、3−エチルヘキサン酸、3,5−ジメチルヘキサン酸、2,4−ジメチルヘキサン酸、3,4−ジメチルヘキサン酸、4,5−ジメチルヘキサン酸、2,2−ジメチルヘキサン酸、2−メチルヘプタン酸、3−メチルヘプタン酸、4−メチルヘプタン酸、5−メチルヘプタン酸、6−メチルヘプタン酸、2−プロピルペンタン酸、ノナン酸、2,2−ジメチルヘプタン酸、2−メチルオクタン酸、2−エチルヘプタン酸、3−メチルオクタン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、2−エチル−2,3,3−トリメチル酪酸、2,2,4,4−テトラメチルペンタン酸、2,2,3,3−テトラメチルペンタン酸、2,2,3,4−テトラメチルペンタン酸、2,2−ジイソプロピルプロパン酸などが挙げられる。
多価アルコール脂肪酸エステル(A)は、炭素数4〜6の脂肪酸と分岐を有する炭素数7〜9の脂肪酸のモル比が15:85〜90:10であり、かつ、炭素数4〜6の脂肪酸が2−メチルプロパン酸を含有する限りにおいて、炭素数4〜6の脂肪酸および分岐を有する炭素数7〜9の脂肪酸以外の脂肪酸を構成酸成分として含有してもよい。
上記炭素数4〜6の脂肪酸および分岐を有する炭素数7〜9の脂肪酸以外の脂肪酸としては、具体的には、酢酸、プロピオン酸等の炭素数2〜3の脂肪酸;ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸等の炭素数7〜9の直鎖脂肪酸;デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、オレイン酸等の炭素数10〜20の脂肪酸等が挙げられる。
上記炭素数4〜6の脂肪酸および分岐を有する炭素数7〜9の脂肪酸と、これらの脂肪酸以外の脂肪酸とを組み合わせて用いる場合、多価アルコール脂肪酸エステル(A)を構成する脂肪酸の全量に占める炭素数4〜6の脂肪酸および炭素数7〜9の分岐脂肪酸の合計の割合が20モル%以上とすることが好ましく、25モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることがさらにより好ましい。この割合が20モル%以上であることにより、冷媒組成物においてジフルオロメタンが含まれている場合における当該ジフルオロメタンとの相溶性が十分となる。
多価アルコール脂肪酸エステル(A)の中でも、酸構成成分が2−メチルプロパン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸のみからなるものが、必要粘度の確保と、冷媒組成物においてジフルオロメタンが含まれている場合における当該ジフルオロメタンとの相溶性との両立の面で特に好ましい。
上記多価アルコール脂肪酸エステルは、分子構造の異なるエステルの2種以上の混合物であってもよく、かかる場合には個々の分子が必ずしも上記の条件を満たしている必要はなく、冷凍機油中に含まれるペンタエリスリトール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸全体として上記条件を満たしていればよい。
上記した通り、多価アルコール脂肪酸エステル(A)は、エステルを構成する酸成分として炭素数4〜6の脂肪酸及び分岐を有する炭素数7〜9の脂肪酸を必須とし、必要に応じてその他の脂肪酸を構成成分として含むものである。すなわち、多価アルコール脂肪酸エステル(A)は、2種のみの脂肪酸を酸構成成分としているものであっても、3種以上の構造の異なる脂肪酸を酸構成成分としているものであってもよいが、当該多価アルコール脂肪酸エステルは、酸構成成分として、カルボニル炭素と隣接する炭素原子(α位炭素原子)が四級炭素でない脂肪酸のみを含有することが好ましい。多価アルコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸中に、α位炭素原子が四級炭素である脂肪酸が含まれる場合には、冷媒組成物にジフルオロメタンを含んでいる場合における当該ジフルオロメタン存在下での潤滑性が不十分となる傾向にある。
また、本実施形態にかかるポリオールエステルを構成する多価アルコールとしては、水酸基を2〜6個有する多価アルコールが好ましく用いられる。
2価アルコール(ジオール)としては、具体的には例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオールなどが挙げられる。また、3価以上のアルコールとしては、具体的には例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜3量体)、1,3,5−ペンタントリオール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトールなどの多価アルコール、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオースなどの糖類、ならびにこれらの部分エーテル化物などが挙げられる。これらの中でも、より加水分解安定性に優れることから、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)などのヒンダードアルコールのエステルがより好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタンおよびペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)のエステルがさらにより好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)がさらに好ましく、冷媒との相溶性および加水分解安定性に特に優れることから、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)またはペンタエリスリトールとジ−(ペンタエリスリトール)との混合エステルが最も好ましい。
上記多価アルコール脂肪酸エステル(A)を構成する酸構成成分の好ましい例としては、以下のものを挙げることができる。
(i)ブタン酸、2−メチルプロパン酸、ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、2,2−ジメチルプロパン酸、2−メチルペンタン酸、3−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2,2−ジメチルブタン酸、2,3−ジメチルブタン酸、3,3−ジメチルブタン酸およびヘキサン酸から選ばれる1〜13種と、2−メチルヘキサン酸、3−メチルヘキサン酸、4−メチルヘキサン酸、5−メチルヘキサン酸、2,2−ジメチルペンタン酸、2,3−ジメチルペンタン酸、2,4−ジメチルペンタン酸、3,3−ジメチルペンタン酸、3,4−ジメチルペンタン酸、4,4−ジメチルペンタン酸、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸および2−エチル−3−メチルブタン酸から選ばれる1〜13種との組合せ;
(ii)ブタン酸、2−メチルプロパン酸、ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、2,2−ジメチルプロパン酸、2−メチルペンタン酸、3−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2,2−ジメチルブタン酸、2,3−ジメチルブタン酸、3,3−ジメチルブタン酸およびヘキサン酸から選ばれる1〜13種と、2−メチルヘプタン酸、3−メチルヘプタン酸、4−メチルヘプタン酸、5−メチルヘプタン酸、6−メチルヘプタン酸、2,2−ジメチルヘキサン酸、3,3−ジメチルヘキサン酸、4,4−ジメチルヘキサン酸、5,5−ジメチルヘキサン酸、2,3−ジメチルヘキサン酸、2,4−ジメチルヘキサン酸、2,5−ジメチルヘキサン酸、3,4−ジメチルヘキサン酸、3,5−ジメチルヘキサン酸、4,5−ジメチルヘキサン酸、2,2,3−トリメチルペンタン酸、2,3,3−トリメチルペンタン酸、2,4,4−トリメチルペンタン酸、3,4,4−トリメチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、3−エチルヘキサン酸、2−プロピルペンタン酸、2−メチル−2−エチルペンタン酸、2−メチル−3−エチルペンタン酸および3−メチル−3−エチルペンタン酸から選ばれる1〜25種との組合せ;
(iii)ブタン酸、2−メチルプロパン酸、ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、2,2−ジメチルプロパン酸、2−メチルペンタン酸、3−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2,2−ジメチルブタン酸、2,3−ジメチルブタン酸、3,3−ジメチルブタン酸およびヘキサン酸から選ばれる1〜13種と、2−メチルオクタン酸、3−メチルオクタン酸、4−メチルオクタン酸、5−メチルオクタン酸、6−メチルオクタン酸、7−メチルオクタン酸、8−メチルオクタン酸、2,2−ジメチルヘプタン酸、3,3−ジメチルヘプタン酸、4,4−ジメチルヘプタン酸、5,5−ジメチルヘプタン酸、6,6−ジメチルヘプタン酸、2,3−ジメチルヘプタン酸、2,4−ジメチルヘプタン酸、2,5−ジメチルヘプタン酸、2,6−ジメチルヘプタン酸、3,4−ジメチルヘプタン酸、3,5−ジメチルヘプタン酸、3,6−ジメチルヘプタン酸、4,5−ジメチルヘプタン酸、4,6−ジメチルヘプタン酸、2−エチルヘプタン酸、3−エチルヘプタン酸、4−エチルヘプタン酸、5−エチルヘプタン酸、2−プロピルヘキサン酸、3−プロピルヘキサン酸、2−ブチルペンタン酸、2,2,3−トリメチルヘキサン酸、2,2,3−トリメチルヘキサン酸、2,2,4−トリメチルヘキサン酸、2,2,5−トリメチルヘキサン酸、2,3,4−トリメチルヘキサン酸、2,3,5−トリメチルヘキサン酸、3,3,4−トリメチルヘキサン酸、3,3,5−トリメチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、4,4,5−トリメチルヘキサン酸、4,5,5−トリメチルヘキサン酸、2,2,3,3−テトラメチルペンタン酸、2,2,3,4−テトラメチルペンタン酸、2,2,4,4−テトラメチルペンタン酸、2,3,4,4−テトラメチルペンタン酸、3,3,4,4−テトラメチルペンタン酸、2,2−ジエチルペンタン酸、2,3−ジエチルペンタン酸、3,3−ジエチルペンタン酸、2−エチル−2,3,3−トリメチル酪酸、3−エチル−2,2,3−トリメチル酪酸および2,2−ジイソプロピルプロピオン酸から選ばれる1〜50種との組合せ。
上記多価アルコール脂肪酸エステルを構成する酸構成成分のさらに好ましい例としては、以下のものを挙げることができる。
(i)2−メチルプロパン酸と、2−メチルヘキサン酸、3−メチルヘキサン酸、4−メチルヘキサン酸、5−メチルヘキサン酸、2,2−ジメチルペンタン酸、2,3−ジメチルペンタン酸、2,4−ジメチルペンタン酸、3,3−ジメチルペンタン酸、3,4−ジメチルペンタン酸、4,4−ジメチルペンタン酸、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸および2−エチル−3−メチルブタン酸から選ばれる1〜13種との組合せ;(ii)2−メチルプロパン酸と、2−メチルヘプタン酸、3−メチルヘプタン酸、4−メチルヘプタン酸、5−メチルヘプタン酸、6−メチルヘプタン酸、2,2−ジメチルヘキサン酸、3,3−ジメチルヘキサン酸、4,4−ジメチルヘキサン酸、5,5−ジメチルヘキサン酸、2,3−ジメチルヘキサン酸、2,4−ジメチルヘキサン酸、2,5−ジメチルヘキサン酸、3,4−ジメチルヘキサン酸、3,5−ジメチルヘキサン酸、4,5−ジメチルヘキサン酸、2,2,3−トリメチルペンタン酸、2,3,3−トリメチルペンタン酸、2,4,4−トリメチルペンタン酸、3,4,4−トリメチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、3−エチルヘキサン酸、2−プロピルペンタン酸、2−メチル−2−エチルペンタン酸、2−メチル−3−エチルペンタン酸および3−メチル−3−エチルペンタン酸から選ばれる1〜25種との組合せ;
(iii)2−メチルプロパン酸と、2−メチルオクタン酸、3−メチルオクタン酸、4−メチルオクタン酸、5−メチルオクタン酸、6−メチルオクタン酸、7−メチルオクタン酸、8−メチルオクタン酸、2,2−ジメチルヘプタン酸、3,3−ジメチルヘプタン酸、4,4−ジメチルヘプタン酸、5,5−ジメチルヘプタン酸、6,6−ジメチルヘプタン酸、2,3−ジメチルヘプタン酸、2,4−ジメチルヘプタン酸、2,5−ジメチルヘプタン酸、2,6−ジメチルヘプタン酸、3,4−ジメチルヘプタン酸、3,5−ジメチルヘプタン酸、3,6−ジメチルヘプタン酸、4,5−ジメチルヘプタン酸、4,6−ジメチルヘプタン酸、2−エチルヘプタン酸、3−エチルヘプタン酸、4−エチルヘプタン酸、5−エチルヘプタン酸、2−プロピルヘキサン酸、3−プロピルヘキサン酸、2−ブチルペンタン酸、2,2,3−トリメチルヘキサン酸、2,2,3−トリメチルヘキサン酸、2,2,4−トリメチルヘキサン酸、2,2,5−トリメチルヘキサン酸、2,3,4−トリメチルヘキサン酸、2,3,5−トリメチルヘキサン酸、3,3,4−トリメチルヘキサン酸、3,3,5−トリメチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、4,4,5−トリメチルヘキサン酸、4,5,5−トリメチルヘキサン酸、2,2,3,3−テトラメチルペンタン酸、2,2,3,4−テトラメチルペンタン酸、2,2,4,4−テトラメチルペンタン酸、2,3,4,4−テトラメチルペンタン酸、3,3,4,4−テトラメチルペンタン酸、2,2−ジエチルペンタン酸、2,3−ジエチルペンタン酸、3,3−ジエチルペンタン酸、2−エチル−2,3,3−トリメチル酪酸、3−エチル−2,2,3−トリメチル酪酸および2,2−ジイソプロピルプロピオン酸から選ばれる1〜50種との組合せ。
上記多価アルコール脂肪酸エステル(A)の含有量は、冷凍機油全量基準で50質量%以上であり、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上である。本実施形態に係る冷凍機油は、後述するように多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外の潤滑油基油や添加剤を含有してもよいが、多価アルコール脂肪酸エステル(A)が50質量%未満であると、必要粘度と相溶性とを高水準で両立することができなくなる。
本実施形態に係る冷凍機油において、多価アルコール脂肪酸エステル(A)は主として基油として用いられる。本実施形態に係る冷凍機油の基油としては、多価アルコール脂肪酸エステル(A)のみを単独で(すなわち多価アルコール脂肪酸エステル(A)の含有量が100質量%)用いてもよいが、これに加えて、その優れた性能を損なわない程度に、多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外の基油をさらに含有してもよい。多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外の基油としては、鉱油、オレフィン重合体、アルキルジフェニルアルカン、アルキルナフタレン、アルキルベンゼン等の炭化水素系油;多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外のポリオールエステル、コンプレックスエステル、脂環式ジカルボン酸エステル等のエステル、ポリグリコール、ポリビニルエーテル、ケトン、ポリフェニルエーテル、シリコーン、ポリシロキサン、パーフルオロエーテル等の酸素を含有する合成油(以下、場合により「他の含酸素合成油」という)などが挙げられる。
酸素を含有する合成油としては、上記の中でも、多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外のエステル、ポリグリコール、ポリビニルエーテルが好ましく、特に好ましいのは、多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外のポリオールエステルである。多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外のポリオールエステルとしては、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールと脂肪酸とのエステルが挙げられ、特に好ましいものは、ネオペンチルグリコールと脂肪酸とのエステル、ペンタエリスリトールと脂肪酸とのエステル及びジペンタエリスリトールと脂肪酸とのエステルである。
ネオペンチルグリコールエステルとしては、ネオペンチルグリコールと炭素数5〜9の脂肪酸とのエステルであることが好ましい。このようなネオペンチルグリコールエステルとしては、具体的には例えば、ネオペンチルグリコールジ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ネオペンチルグリコールジ2−エチルヘキサノエート、ネオペンチルグリコールジ2−メチルヘキサノエート、ネオペンチルグリコールジ2−エチルペンタノエート、ネオペンチルグリコールと2−メチルヘキサン酸・2−エチルペンタン酸のエステル、ネオペンチルグリコールと3−メチルヘキサン酸・5−メチルヘキサン酸のエステル、ネオペンチルグリコールと2−メチルヘキサン酸・2−エチルヘキサン酸のエステル、ネオペンチルグリコールと3,5−ジメチルヘキサン酸・4,5−ジメチルヘキサン酸・3,4−ジメチルヘキサン酸のエステル、ネオペンチルグリコールジペンタノエート、ネオペンチルグリコールジ2−エチルブタノエート、ネオペンチルグリコールジ2−メチルペンタノエート、ネオペンチルグリコールジ2−メチルブタノエート、ネオペンチルグリコールジ3−メチルブタノエート等が挙げられる。
ペンタエリスリトールエステルとしては、ペンタエリスリトールと炭素数5〜9の脂肪酸とのエステルが好ましい。このようなペンタエリスリトールエステルとしては、具体的には、ペンタエリスリトールと、ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸および2−エチルヘキサン酸から選ばれる1種以上の脂肪酸とのエステルが挙げられる。
ジペンタエリスリトールエステルとしては、ジペンタエリスリトールと炭素数5〜9の脂肪酸のエステルが好ましい。このようなジペンタエリスリトールエステルとしては、具体的には、ジペンタエリスリトールと、ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸および2−エチルヘキサン酸から選ばれる1種以上の脂肪酸とのエステルが挙げられる。
本実施形態に係る冷凍機油が多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外の含酸素合成油を含有する場合、多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外の含酸素合成油の含有量は、本実施形態に係る冷凍機油の優れた潤滑性と相溶性とを損なわない限りにおいて特に制限はないが、多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外のポリオールエステルを配合する場合、冷凍機油全量基準で、50質量%未満であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましく、35質量%以下であることがさらにより好ましく、30質量%以下であることが一層好ましく、25質量%以下であることが最も好ましく;ポリオールエステル以外の含酸素合成油を配合する場合、冷凍機油全量基準で50質量%未満であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。ペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外のポリオールエステルや他の含酸素合成油の配合量が多すぎると、上記効果が十分には得られない。
なお、多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外のポリオールエステルは、多価アルコールの水酸基の一部がエステル化されずに水酸基のまま残っている部分エステルであっても良く、全ての水酸基がエステル化された完全エステルであっても良く、また部分エステルと完全エステルの混合物であっても良いが、水酸基価が、10mgKOH/g以下であることが好ましく、5mgKOH/g以下であることがより好ましく、3mgKOH/g以下であることが最も好ましい。
本実施形態に係る冷凍機および冷凍機用作動流体が多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外のポリオールエステルを含有する場合、該ポリオールエステルとして、単一の構造のポリオールエステルの1種からなるものを含有してもよく、また、構造の異なる2種以上のポリオールエステルの混合物を含有してもよい。
また、多価アルコール脂肪酸エステル(A)以外のポリオールエステルは、1種の脂肪酸と1種の多価アルコールとのエステル、2種以上の脂肪酸と1種の多価アルコールとのエステル、1種の脂肪酸と2種以上の多価アルコールとのエステル、2種以上の脂肪酸と2種以上の多価アルコールとのエステルのいずれであってもよい。
本実施形態に係る冷凍機油は、多価アルコール脂肪酸エステル(A)のみからなるものであってもよく、また、多価アルコール脂肪酸エステル(A)とその他の基油とからなるものであってもよいが、後述する各種添加剤をさらに含有してもよい。また、本実施形態に係る冷凍機用作動流体においても、各種添加剤をさらに含有してもよい。なお、以下の説明において、添加剤の含有量については、冷凍機油全量を基準として示すが、冷凍機用作動流体におけるこれらの成分の含有量は、冷凍機油全量を基準とした場合に後述する好ましい範囲内となるように選定することが望ましい。
本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体の耐摩耗性、耐荷重性をさらに改良するために、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、チオリン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステルおよび亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のリン化合物を配合することができる。これらのリン化合物は、リン酸または亜リン酸とアルカノール、ポリエーテル型アルコールとのエステルあるいはその誘導体である。
具体的には例えば、リン酸エステルとしては、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェートなどが挙げられる。
酸性リン酸エステルとしては、モノブチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシッドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノヘキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェートなどが挙げられる。
チオリン酸エステルとしては、トリブチルホスフォロチオネート、トリペンチルホスフォロチオネート、トリヘキシルホスフォロチオネート、トリヘプチルホスフォロチオネート、トリオクチルホスフォロチオネート、トリノニルホスフォロチオネート、トリデシルホスフォロチオネート、トリウンデシルホスフォロチオネート、トリドデシルホスフォロチオネート、トリトリデシルホスフォロチオネート、トリテトラデシルホスフォロチオネート、トリペンタデシルホスフォロチオネート、トリヘキサデシルホスフォロチオネート、トリヘプタデシルホスフォロチオネート、トリオクタデシルホスフォロチオネート、トリオレイルホスフォロチオネート、トリフェニルホスフォロチオネート、トリクレジルホスフォロチオネート、トリキシレニルホスフォロチオネート、クレジルジフェニルホスフォロチオネート、キシレニルジフェニルホスフォロチオネートなどが挙げられる。
酸性リン酸エステルのアミン塩としては、酸性リン酸エステルと、炭素数1〜24、好ましくは5〜18の1〜3級の直鎖または分岐アルキル基のアミンとのアミン塩が挙げられる。
酸性リン酸エステルのアミン塩を構成するアミンとしては、直鎖または分岐のメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、テトラコシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミン、ジトリデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジペンタデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジヘプタデシルアミン、ジオクタデシルアミン、ジオレイルアミン、ジテトラコシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリウンデシルアミン、トリドデシルアミン、トリトリデシルアミン、トリテトラデシルアミン、トリペンタデシルアミン、トリヘキサデシルアミン、トリヘプタデシルアミン、トリオクタデシルアミン、トリオレイルアミン、トリテトラコシルアミンなどのアミンとの塩が挙げられる。アミンは単独の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であっても良い。
塩素化リン酸エステルとしては、トリス・ジクロロプロピルホスフェート、トリス・クロロエチルホスフェート、トリス・クロロフェニルホスフェート、ポリオキシアルキレン・ビス[ジ(クロロアルキル)]ホスフェートなどが挙げられる。亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイトなどが挙げられる。また、これらの混合物も使用できる。
本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体が上記リン化合物を含有する場合、リン化合物の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準(基油と全配合添加剤の合計量基準)で、0.01〜5.0質量%であることが好ましく、0.02〜3.0質量%であることがより好ましい。なお、上記リン化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体は、その熱・化学的安定性をさらに改良するために、テルペン化合物を添加することができる。本開示でいう「テルペン化合物」とは、イソプレンの重合した化合物およびこれらの誘導体を意味し、イソプレンの2〜8量体が好ましく用いられる。テルペン化合物としては、具体的には、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール(ゲラニアールを含む)、シトロネロール、メントール、リモネン、テルピネロール、カルボン、ヨノン、ツヨン、樟脳(カンファー)、ボルネオールなどのモノテルペン、ファルネセン、ファルネソール、ネロリドール、幼若ホルモン、フムレン、カリオフイレン、エレメン、カジノール、カジネン、ツチンなどのセスキテルペン、ゲラニルゲラニオール、フィトール、アビエチン酸、ピマラジェン、ダフネトキシン、タキソール、ピマール酸などのジテルペン、ゲラニルファルネセンなどのセスタテルペン、スクアレン、リモニン、カメリアゲニン、ホパン、ラノステロールなどのトリテルペン、カロテノイドなどのテトラテルペンなどが挙げられる。
これらのテルペン化合物の中でも、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペンが好ましく、セスキテルペンがより好ましく、αファルネセン(3,7,11−トリメチルドデカ−1,3,6,10−テトラエン)および/またはβファルネセン(7,11−ジメチル−3−メチリデンドデカ−1,6,10−トリエン)が特に好ましい。本開示において、テルペン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態に係る冷凍機油におけるテルペン化合物の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準で、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%、さらに好ましくは0.05〜3質量%である。テルペン化合物の含有量が0.001質量%未満であると熱・化学的安定性の向上効果が不十分となる傾向にあり、また、10質量%を超えると潤滑性が不十分となる傾向にある。また、本実施形態に係る冷凍機用作動流体におけるテルペン化合物の含有量については、冷凍機油全量を基準とした場合に上記の好ましい範囲内となるように選定することが望ましい。
また、本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体は、その熱・化学的安定性をさらに改良するために、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、アリルオキシラン化合物、アルキルオキシラン化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステルおよびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物を含有することができる。
フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエーテルまたはアルキルフェニルグリシジルエーテルが例示できる。ここでいうアルキルフェニルグリシジルエーテルとは、炭素数1〜13のアルキル基を1〜3個有するものが挙げられ、中でも炭素数4〜10のアルキル基を1個有するもの、例えばn−ブチルフェニルグリシジルエーテル、i−ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ペンチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキシルフェニルグリシジルエーテル、ヘプチルフェニルグリシジルエーテル、オクチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、デシルフェニルグリシジルエーテルなどが好ましいものとして例示できる。
アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルなどが例示できる。
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエステル、アルキルグリシジルエステル、アルケニルグリシジルエステルなどが挙げられ、好ましいものとしては、グリシジル−2,2−ジメチルオクタノエート、グリシジルベンゾエート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが例示できる。
アリルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2−エポキシスチレン、アルキル−1,2−エポキシスチレンなどが例示できる。
アルキルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシトリデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシペンタデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシヘプタデカン、1,1,2−エポキシオクタデカン、2−エポキシノナデカン、1,2−エポキシイコサンなどが例示できる。
脂環式エポキシ化合物としては、具体的には、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロペンタン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ−2,3−エポキシノルボルナン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)−スピロ(1,3−ジオキサン−5,3’−[7]オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、4−(1’−メチルエポキシエチル)−1,2−エポキシ−2−メチルシクロヘキサン、4−エポキシエチル−1,2−エポキシシクロヘキサンなどが例示できる。
エポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、具体的には、エポキシ化された炭素数12〜20の脂肪酸と炭素数1〜8のアルコールまたはフェノール、アルキルフェノールとのエステルなどが例示できる。特にエポキシステアリン酸のブチル、ヘキシル、ベンジル、シクロヘキシル、メトキシエチル、オクチル、フェニルおよびブチルフェニルエステルが好ましく用いられる。
エポキシ化植物油としては、具体的には、大豆油、アマニ油、綿実油等の植物油のエポキシ化合物などが例示できる。
これらのエポキシ化合物の中でも好ましいものは、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、および脂環式エポキシ化合物である。
本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体が上記エポキシ化合物を含有する場合、エポキシ化合物の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準で、0.01〜5.0質量%であることが好ましく、0.1〜3.0質量%であることがより好ましい。なお、上記エポキシ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、多価アルコール脂肪酸エステル(A)を含む冷凍機油の40℃における動粘度は、好ましくは20〜80mm2/s、より好ましくは25〜75mm2/s、最も好ましくは30〜70mm2/sとすることができる。また、100℃における動粘度は好ましくは2〜20mm2/s、より好ましくは3〜10mm2/sとすることができる。動粘度が前記下限値以上の場合には冷凍機油として必要な粘度を確保しやすく、他方、前記上限値以下の場合には冷媒組成物としてジフルオロメタンが含まれている場合の当該ジフルオロメタンとの相溶性を十分にすることができる。
また、多価アルコール脂肪酸エステル(A)を含む冷凍機油の体積抵抗率は特に限定されないが、好ましくは1.0×1012Ω・cm以上、より好ましくは1.0×1013Ω・cm以上、最も好ましくは1.0×1014Ω・cm以上とすることができる。特に、密閉型の冷凍機用に用いる場合には高い電気絶縁性が必要となる傾向にある。なお、体積抵抗率とは、JISC 2101「電気絶縁油試験方法」に準拠して測定した25℃での値を意味する。
また、多価アルコール脂肪酸エステル(A)を含む冷凍機油の水分含有量は特に限定されないが、冷凍機油全量基準で好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下とすることができる。特に密閉型の冷凍機用に用いる場合には、冷凍機油の熱・化学的安定性や電気絶縁性への影響の観点から、水分含有量が少ないことが求められる。
また、多価アルコール脂肪酸エステル(A)を含む冷凍機油の酸価は特に限定されないが、冷凍機または配管に用いられている金属への腐食を防止するため、好ましくは0.1mgKOH/g以下、より好ましくは0.05mgKOH/g以下とすることができる。なお、本開示において、酸価とは、JISK 2501「石油製品および潤滑油一中和価試験方法」に準拠して測定した酸価を意味する。
また、多価アルコール脂肪酸エステル(A)を含む冷凍機油の灰分は特に限定されないが、冷凍機油の熱・化学的安定性を高めスラッジ等の発生を抑制するため、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下とすることができる。なお、灰分とは、JISK 2272「原油および石油製品の灰分並びに硫酸灰分試験方法」に準拠して測定した灰分の値を意味する。
(コンプレックスエステル油)
コンプレックスエステル油とは、脂肪酸および二塩基酸と、一価アルコールおよびポリオールとのエステルである。脂肪酸、二塩基酸、一価アルコール、ポリオールとしては、上述と同様のものを用いることができる。
脂肪酸としては、上記ポリオールエステルの脂肪酸で示したものが挙げられる。
二塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。
ポリオールとしては、上記ポリオールエステルの多価アルコールとして示したものが挙げられる。コンプレックスエステルは、これらの脂肪酸、二塩基酸、ポリオールのエステルであり、各々単一成分でもよいし、複数成分からなるエステルでもよい。
(ポリオール炭酸エステル油)
ポリオール炭酸エステル油とは、炭酸とポリオールとのエステルである。
ポリオールとしては、上述と同様のジオールやポリオールが挙げられる。
また、ポリオール炭酸エステル油としては、環状アルキレンカーボネートの開環重合体であってもよい。
(2−1−2)エーテル系冷凍機油
エーテル系冷凍機油としては、ポリビニルエーテル油、ポリオキシアルキレン油等が挙げられる。
(ポリビニルエーテル油)
ポリビニルエーテル油としては、ビニルエーテルモノマーの重合体、ビニルエーテルモノマーとオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとの共重合体、オレフィン性二重結合とポリオキシアルキレン鎖を有するモノマーとビニルエーテルモノマーとの共重合体等が挙げられる。
ポリビニルエーテル油の炭素/酸素モル比は、2以上7.5以下であることが好ましく、2.5以上5.8以下であることがより好ましい。炭素/酸素モル比が当該範囲より低いと吸湿性が高くなり、当該範囲より高いと相溶性が低下する。また、ポリビニルエーテルの重量平均分子量は、好ましくは200以上3000以下、より好ましくは500以上1500以下である。
ポリビニルエーテル油は、流動点が−30℃以下であることが好ましい。ポリビニルエーテル油は、20℃における表面張力が0.02N/m以上0.04N/m以下であることが好ましい。ポリビニルエーテル油は、15℃における密度が0.8g/cm3以上1.8g/cm3以下であることが好ましい。ポリビニルエーテル油は、温度30℃、相対湿度90%における飽和水分量が2000ppm以上であることが好ましい。
冷凍機油においては、ポリビニルエーテルが主成分として含まれていてもよい。冷媒にHFO−1234yfが含まれている場合には、冷凍機油の主成分であるポリビニルエーテルが、当該HFO−1234yfに対して相溶性を有しており、冷凍機油の40℃における動粘度が400mm2/s以下であると、HFO−1234yfが、冷凍機油にある程度溶解する。また、冷凍機油の流動点が−30℃以下である場合には、冷媒回路において冷媒組成物や冷凍機油が低温となる部位においても冷凍機油の流動性を確保しやすい。また、冷凍機油の20℃における表面張力が0.04N/m以下である場合には、圧縮機から吐出された冷凍機油が冷媒組成物によって押し流されにくくなるような大きな油滴になりにくい。このため、圧縮機から吐出された冷凍機油は、HFO−1234yfに溶解してHFO−1234yfと共に圧縮機に戻されやすい。
また、冷凍機油の40℃における動粘度が30mm2/s以上である場合には、動粘度が低すぎて油膜強度が不十分になることが抑制され、潤滑性能を確保しやすい。また、冷凍機油の20℃における表面張力が0.02N/m以上である場合には、圧縮機内のガス冷媒中で小さな油滴になりにくく、圧縮機から多量に冷凍機油が吐出されることを抑制できる。このため、圧縮機における冷凍機油の貯留量を充分に確保しやすい。
また、冷凍機油の飽和水分量が、温度30℃/相対湿度90%において2000ppm以上である場合には、冷凍機油の吸湿性を比較的高いものとすることができる。これにより、冷媒にHFO−1234yfが含まれている場合には、HFO−1234yf中の水分を冷凍機油によって有る程度捕捉することが可能となる。HFO−1234yfは、含有される水分の影響により、変質/劣化し易い分子構造を有する。よって、冷凍機油による吸湿効果により、このような劣化を抑制することができる。
さらに、冷媒回路を流れる冷媒と接触可能となるシール部や摺動部に所定の樹脂製機能部品が配置されている場合であって、当該樹脂製機能部品が、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイド、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、クロロブレンゴム、シリコンゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、ヒドリンゴムのいずれかで構成されている場合には、冷凍機油のアニリン点は、当該樹脂製機能部品との適合性を考慮して、その数値範囲を設定することが好ましい。このようにアニリン点を設定することで、例えば樹脂製機能部品を構成する軸受と冷凍機油との適合性が向上する。具体的に、アニリン点が小さ過ぎると、冷凍機油が軸受等に浸透し易くなり、軸受等が膨潤し易くなる。一方、アニリン点が大き過ぎると、冷凍機油が軸受等と浸透し難くなり、軸受等が収縮し易くなる。そこで、冷凍機油のアニリン点を所定の数値範囲とすることで、軸受等の膨潤/収縮変形を防止できる。ここで、例えば各軸受等が膨潤/縮小変形してしまうと、摺動部での隙間(ギャップ)を所望とする長さに維持することができない。その結果、摺動抵抗の増大や摺動部の剛性の低下を招くおそれがある。しかしながら、上記のように冷凍機油のアニリン点を所定の数値範囲とすることで、軸受等の膨潤/縮小変形が抑制されるので、このような不具合を回避できる。
ビニルエーテルモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。オレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとしては、エチレン、プロピレン、各種ブテン、各種ペンテン、各種ヘキセン、各種ヘプテン、各種オクテン、ジイソブチレン、トリイソブチレン、スチレン、α−メチルスチレン、各種アルキル置換スチレン等が挙げられる。オレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリビニルエーテル共重合体は、ブロックまたはランダム共重合体のいずれであってもよい。ポリビニルエーテル油は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
好ましく用いられるポリビニルエーテル油は、下記一般式(1)で表される構造単位を有する。
(式中、R1、R2およびR3は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を示し、R4は炭素数1〜10の2価の炭化水素基または炭素数2〜20の2価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、R5は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mは上記ポリビニルエーテルについてのmの平均値が0〜10となるような数を示し、R1〜R5は構造単位ごとに同一であっても異なっていてもよく、一の構造単位においてmが2以上である場合には、複数のR4Oは同一でも異なっていてもよい。)
上記一般式(1)におけるR1、R2およびR3は、少なくとも1つが水素原子、特には全てが水素原子であることが好ましい。一般式(1)におけるmは0以上10以下、特には0以上5以下が、さらには0であることが好ましい。一般式(1)におけるR5は炭素数1〜20の炭化水素基を示すが、この炭化水素基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基のアリール基、ベンジル基、各種フェニルエチル基、各種メチルベンジル基のアリールアルキル基を示す。なお、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、アリール基、アリールアルキル基の中でも、アルキル基、特には炭素数1以上5以下のアルキル基が好ましい。なお、上記ポリビニルエーテル油としては、R5の炭素数が1又は2のアルキル基であるポリビニルエーテル油:R5の炭素数が3又は4のアルキル基であるポリビニルエーテル油の比率が、40%:60%〜100%:0%で含まれていることが好ましい。
本実施形態におけるポリビニルエーテル油は、一般式(1)で表される構造単位が同一である単独重合体であっても、2種以上の構造単位で構成される共重合体であってもよい。共重合体はブロック共重合体またはランダム共重合体のいずれであってもよい。
本実施形態に係るポリビニルエーテル油は、上記一般式(1)で表される構造単位のみで構成されるものであってもよいが、下記一般式(2)で表される構造単位をさらに含む共重合体であってもよい。この場合、共重合体はブロック共重合体またはランダム共重合体のいずれであってもよい。
(式中、R6〜R9は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)
ビニルエーテル系モノマーとしては、下記一般式(3)の化合物が挙げられる。
(式中、R1、R2、R3、R4、R5およびmは、それぞれ一般式(1)中のR1、R2、R3、R4、R5およびmと同一の定義内容を示す。)
上記ポリビニルエーテル系化合物に対応する各種のものがあるが、例えば、ビニルメチルエーテル;ビニルエチルエーテル;ビニル−n−プロピルエーテル;ビニル−イソプロピルエーテル;ビニル−n−ブチルエーテル;ビニル−イソブチルエーテル;ビニル−sec−ブチルエーテル;ビニル−tert−ブチルエーテル;ビニル−n−ペンチルエーテル;ビニル−n−ヘキシルエーテル;ビニル−2−メトキシエチルエーテル;ビニル−2−エトキシエチルエーテル;ビニル−2−メトキシ−1−メチルエチルエーテル;ビニル−2−メトキシ−プロピルエーテル;ビニル−3,6−ジオキサヘプチルエーテル;ビニル−3,6,9−トリオキサデシルエーテル;ビニル−1,4−ジメチル−3,6−ジオキサヘプチルエーテル;ビニル−1,4,7−トリメチル−3,6,9−トリオキサデシルエーテル;ビニル−2,6−ジオキサ−4−ヘプチルエーテル;ビニル−2,6,9−トリオキサ−4−デシルエーテル;1−メトキシプロペン;1−エトキシプロペン;1−n−プロポキシプロペン;1−イソプロポキシプロペン;1−n−ブトキシプロペン;1−イソブトキシプロペン;1−sec−ブトキシプロペン;1−tert−ブトキシプロペン;2−メトキシプロペン;2−エトキシプロペン;2−n−プロポキシプロペン;2−イソプロポキシプロペン;2−n−ブトキシプロペン;2−イソブトキシプロペン;2−sec−ブトキシプロペン;2−tert−ブトキシプロペン;1−メトキシ−1−ブテン;1−エトキシ−1−ブテン;1−n−プロポキシ−1−ブテン;1−イソプロポキシ−1−ブテン;1−n−ブトキシ−1−ブテン;1−イソブトキシ−1−ブテン;1−sec−ブトキシ−1−ブテン;1−tert−ブトキシ−1−ブテン;2−メトキシ−1−ブテン;2−エトキシ−1−ブテン;2−n−プロポキシ−1−ブテン;2−イソプロポキシ−1−ブテン;2−n−ブトキシ−1−ブテン;2−イソブトキシ−1−ブテン;2−sec−ブトキシ−1−ブテン;2−tert−ブトキシ−1−ブテン;2−メトキシ−2−ブテン;2−エトキシ−2−ブテン;2−n−プロポキシ−2−ブテン;2−イソプロポキシ−2−ブテン;2−n−ブトキシ−2−ブテン;2−イソブトキシ−2−ブテン;2−sec−ブトキシ−2−ブテン;2−tert−ブトキシ−2−ブテン等が挙げられる。これらのビニルエーテル系モノマーは公知の方法により製造することができる。
上記一般式(1)で表される構成単位を有するポリビニルエーテル系化合物は、その末端を本開示例に示す方法及び公知の方法により、所望の構造に変換することができる。変換する基としては、飽和の炭化水素,エーテル、アルコール、ケトン、アミド、ニトリルなどを挙げることができる。
ポリビニルエーテル系化合物としては、次の末端構造を有するものが好ましい。
(式中、R11、R21およびR31は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を示し、R41は炭素数1〜10の二価の炭化水素基または炭素数2〜20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、R51は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mはポリビニルエーテルについてのmの平均値が0〜10となるような数を示し、mが2以上の場合には、複数のR41Oは同一でも異なっていてもよい。)
(式中、R61、R71、R81およびR91は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)
(式中、R12、R22およびR32は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を示し、R42は炭素数1〜10の二価の炭化水素基または炭素数2〜20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、R52は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mはポリビニルエーテルについてのmの平均値が0〜10となるような数を示し、mが2以上の場合には、複数のR42Oは同一でも異なっていてもよい。)
(式中、R62、R72、R82およびR92は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)
(式中、R13、R23およびR33は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を示す。)
本実施形態におけるポリビニルエーテル油は、上記したモノマーをラジカル重合、カチオン重合、放射線重合などによって製造することができる。重合反応終了後、必要に応じて通常の分離・精製方法を施すことにより、目的とする一般式(1)で表される構造単位を有するポリビニルエーテル系化合物が得られる。
(ポリオキシアルキレン油)
ポリオキシアルキレン油としては、炭素数2〜4のアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド等)を、水や水酸基含有化合物を開始剤として重合させる方法等により得られたポリオキシアルキレン化合物が挙げられる。また、ポリオキシアルキレン化合物の水酸基をエーテル化またはエステル化したものであってもよい。ポリオキシアルキレン油中のオキシアルキレン単位は、1分子中において同一であってもよく、2種以上のオキシアルキレン単位が含まれていてもよい。1分子中に少なくともオキシプロピレン単位が含まれることが好ましい。
具体的なポリオキシアルキレン油としては、例えば次の一般式(9)
R101−[(OR102)k−OR103]l …(9)
(式中、R101は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアシル基又は結合部2〜6個を有する炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、R102は炭素数2〜4のアルキレン基、R103は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数2〜10のアシル基、lは1〜6の整数、kはk×lの平均値が6〜80となる数を示す。)で表される化合物が挙げられる。
上記一般式(9)において、R101、R103におけるアルキル基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。このアルキル基の炭素数が10を超えると冷媒との相溶性が低下し、相分離を生じる場合がある。好ましいアルキル基の炭素数は1〜6である。
また、R101、R103における該アシル基のアルキル基部分は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。該アシル基のアルキル基部分の具体例としては、上記アルキル基の具体例として挙げた炭素数1〜9の種々の基を同様に挙げることができる。該アシル基の炭素数が10を超えると冷媒との相溶性が低下し、相分離を生じる場合がある。好ましいアシル基の炭素数は2〜6である。
R101及びR103が、いずれもアルキル基又はアシル基である場合には、R101とR103は同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
さらにlが2以上の場合には、1分子中の複数のR103は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
R101が結合部位2〜6個を有する炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基である場合、この脂肪族炭化水素基は鎖状のものであってもよいし、環状のものであってもよい。結合部位2個を有する脂肪族炭化水素基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基などが挙げられる。また、結合部位3〜6個を有する脂肪族炭化水素基としては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール;1,2,3−トリヒドロキシシクロヘキサン;1,3,5−トリヒドロキシシクロヘキサンなどの多価アルコールから水酸基を除いた残基を挙げることができる。
この脂肪族炭化水素基の炭素数が10を超えると冷媒との相溶性が低下し、相分離が生じる場合がある。好ましい炭素数は2〜6である。
上記一般式(9)中のR102は炭素数2〜4のアルキレン基であり、繰り返し単位のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。1分子中のオキシアルキレン基は同一であってもよいし、2種以上のオキシアルキレン基が含まれていてもよいが、1分子中に少なくともオキシプロピレン単位を含むものが好ましく、特にオキシアルキレン単位中に50モル%以上のオキシプロピレン単位を含むものが好適である。
上記一般式(9)中のlは1〜6の整数で、R101の結合部位の数に応じて定めることができる。例えばR101がアルキル基やアシル基の場合、lは1であり、R101が結合部位2,3,4,5及び6個を有する脂肪族炭化水素基である場合、lはそれぞれ2,3,4,5及び6となる。lは1または2であることが好ましい。また、kはk×lの平均値が6〜80となる数であることが好ましい。
ポリオキシアルキレン油の構造は、下記一般式(10)で表されるポリオキシプロピレンジオールジメチルエーテル、並びに下記一般式(11)で表されるポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)ジオールジメチルエーテルが経済性および前述の効果の点で好適であり、また、下記一般式(12)で表されるポリオキシプロピレンジオールモノブチルエーテル、さらには下記一般式(13)で表されるポリオキシプロピレンジオールモノメチルエーテル、下記一般式(14)で表されるポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)ジオールモノメチルエーテル、下記一般式(15)で表されるポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)ジオールモノブチルエーテル、下記一般式(16)で表されるポリオキシプロピレンジオールジアセテートが、経済性等の点で好適である。
CH3O−(C3H6O)h−CH3 …(10)
(式中、hは6〜80の数を表す。)
CH3O−(C2H4O)i−(C3H6O)j−CH3 …(11)
(式中、iおよびjはそれぞれ1以上であり且つiとjとの合計が6〜80となる数を表す。)
C4H9O−(C3H6O)h−H …(12)
(式中、hは6〜80の数を示す。)
CH3O−(C3H6O)h−H …(13)
(式中、hは6〜80の数を表す。)
CH3O−(C2H4O)i−(C3H6O)j−H …(14)
(式中、iおよびjはそれぞれ1以上であり且つiとjとの合計が6〜80となる数を表す。)
C4H9O−(C2H4O)i−(C3H6O)j−H …(15)
(式中、iおよびjはそれぞれ1以上であり且つiとjとの合計が6〜80となる数を表す。)
CH3COO−(C3H6O)h−COCH3 …(16)
(式中、hは6〜80の数を表す。)
このポリオキシアルキレン油は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(2−2)炭化水素系冷凍機油
炭化水素系冷凍機油としては、例えば、アルキルベンゼンを用いることができる。
アルキルベンゼンとしては、フッ化水素などの触媒を用いてプロピレンの重合物とベンゼンを原料として合成される分岐アルキルベンゼン、また同触媒を用いてノルマルパラフィンとベンゼンを原料として合成される直鎖アルキルベンゼンが使用できる。アルキル基の炭素数は、潤滑油基油として好適な粘度とする観点から、好ましくは1〜30、より好ましくは4〜20である。また、アルキルベンゼン1分子が有するアルキル基の数は、アルキル基の炭素数によるが粘度を設定範囲内とするために、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3である。
なお、炭化水素系冷凍機油は、冷凍サイクル系内を、冷媒と共に循環することが好ましい。冷凍機油は冷媒と溶解することが最も好ましい形態だが、冷凍サイクル系内を冷媒と共に循環できる冷凍機油であれば、例えば、溶解性が低い冷凍機油(例えば、特許第2803451号公報に記載されている冷凍機油)であっても用いることができる。冷凍機油が冷凍サイクル系内を循環するためには、冷凍機油の動粘度が小さいことが求められる。炭化水素系冷凍機油の動粘度としては、40℃において1mm2/s以上50mm2/s以下であることが好ましく、1mm2/s以上25mm2/s以下であることがより好ましい。
これらの冷凍機油は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
冷凍機用作動流体における、炭化水素系冷凍機油の含有量は、例えば、冷媒組成物100質量部に対して、10質量部以上100質量部以下であってよく、20質量部以上50質量部以下であることがより好ましい。
(2−3)添加剤
冷凍機油には、1種または2種以上の添加剤が含まれていてもよい。
添加剤としては、酸捕捉剤、極圧剤、酸化防止剤、消泡剤、油性剤、銅不活性化剤等の金属不活化剤、、摩耗防止剤、および、相溶化剤等が挙げられる。
酸捕捉剤には、フェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキレングリコールグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキシド、α−オレフィンオキシド、エポキシ化大豆油などのエポキシ化合物、カルボジイミド等を用いることができる。なお、これらのうち、相溶性の観点から、フェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキレングリコールグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキシド、α−オレフィンオキシドが好ましい。アルキルグリシジルエーテルのアルキル基、及びアルキレングリコールグリシジルエーテルのアルキレン基は、分岐を有していてもよい。これらの炭素数は、3以上30以下であればよく、4以上24以下であればより好ましく、6以上16以下であればさらに好ましい。また、α−オレフィンオキシドは、全炭素数が4以上50以下であればよく、4以上24以下であればより好ましく、6以上16以下であればさらに好ましい。酸捕捉剤は、1種だけを用いてもよく、複数種類を併用することも可能である。
極圧剤には、例えば、リン酸エステル類を含むものを用いることができる。
リン酸エステル類としては、リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性リン酸エステル、及び酸性亜リン酸エステル等を用いることができ、リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性リン酸エステル、及び酸性亜リン酸エステルのアミン塩を含むものを用いることもできる。
リン酸エステルには、トリアリールホスフェート、トリアルキルホスフェート、トリアルキルアリールホスフェート、トリアリールアルキルホスフェート、トリアルケニルホスフェート等がある。さらに、リン酸エステルを具体的に列挙すると、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ベンジルジフェニルホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、エチルジブチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、エチルフェニルジフェニルホスフェート、ジエチルフェニルフェニルホスフェート、プロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリエチルフェニルホスフェート、トリプロピルフェニルホスフェート、ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ジブチルフェニルフェニルホスフェート、トリブチルフェニルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリデシルホスフェート、トリラウリルホスフェート、トリミリスチルホスフェート、トリパルミチルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリオレイルホスフェート等がある。
また、亜リン酸エステルの具体的としては、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリオレイルホスファイト等がある。
また、酸性リン酸エステルの具体的としては、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、トリデシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、イソステアリルアシッドホスフェート等がある。
また、酸性亜リン酸エステルの具体的としては、ジブチルハイドロゲンホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドゲンホスファイト、ジステアリルハイドロゲンホスファイト、ジフェニルハイドロゲンホスファイト等がある。以上のリン酸エステル類の中で、オレイルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェートが好適である。
また、リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性リン酸エステル又は酸性亜リン酸エステルのアミン塩に用いられるアミンのうちモノ置換アミンの具体例としては、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ベンジルアミン等がある。また、ジ置換アミンの具体例としては、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジラウリルアミン、ジステアリルアミン、ジオレイルアミン、ジベンジルアミン、ステアリル・モノエタノールアミン、デシル・モノエタノールアミン、ヘキシル・モノプロパノールアミン、ベンジル・モノエタノールアミン、フェニル・モノエタノールアミン、トリル・モノプロパノール等がある。また、トリ置換アミンの具体例としては、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリラウリルアミン、トリステアリルアミン、トリオレイルアミン、トリベンジルアミン、ジオレイル・モノエタノールアミン、ジラウリル・モノプロパノールアミン、ジオクチル・モノエタノールアミン、ジヘキシル・モノプロパノールアミン、ジブチル・モノプロパノールアミン、オレイル・ジエタノールアミン、ステアリル・ジプロパノールアミン、ラウリル・ジエタノールアミン、オクチル・ジプロパノールアミン、ブチル・ジエタノールアミン、ベンジル・ジエタノールアミン、フェニル・ジエタノールアミン、トリル・ジプロパノールアミン、キシリル・ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン等がある。
また、上記以外の極圧剤としては、例えば、モノスルフィド類、ポリスルフィド類、スルホキシド類、スルホン類、チオスルフィネート類、硫化油脂、チオカーボネート類、チオフェン類、チアゾール類、メタンスルホン酸エステル類等の有機硫黄化合物系の極圧剤、チオリン酸トリエステル類等のチオリン酸エステル系の極圧剤、高級脂肪酸、ヒドロキシアリール脂肪酸類、多価アルコールエステル類、アクリル酸エステル類等のエステル系の極圧剤、塩素化パラフィン等の塩素化炭化水素類、塩素化カルボン酸誘導体等の有機塩素系の極圧剤、フッ素化脂肪族カルボン酸類、フッ素化エチレン樹脂、フッ素化アルキルポリシロキサン類、フッ素化黒鉛等の有機フッ素化系の極圧剤、高級アルコール等のアルコール系の極圧剤、ナフテン酸塩類(ナフテン酸鉛等)、脂肪酸塩類(脂肪酸鉛等)、チオリン酸塩類(ジアルキルジチオリン酸亜鉛等)、チオカルバミン酸塩類、有機モリブデン化合物、有機スズ化合物、有機ゲルマニウム化合物、ホウ酸エステル等の金属化合物系の極圧剤が挙げられる。
酸化防止剤には、例えば、フェノール系の酸化防止剤やアミン系の酸化防止剤を用いることができる。フェノール系の酸化防止剤には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(DBPC)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ビスフェノールA等がある。また、アミン系の酸化防止剤には、N,N’−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、N.N’−ジ−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジ(2−ナフチル)−p−フェニレンジアミン等がある。なお、酸化防止剤には、酸素を捕捉する酸素捕捉剤も用いることができる。
消泡剤としては、例えば、ケイ素化合物を用いることができる。
油性剤としては、例えば、高級アルコール類、脂肪酸等を用いることができる。
銅不活性化剤等の金属不活化剤としては、ベンゾトリアゾールやその誘導体等を用いることができる。
摩耗防止剤としては、ジチオリン酸亜鉛等を用いることができる。
相溶化剤としては、特に限定されず、一般に用いられる相溶化剤の中から適宜選択することができ、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。相溶化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン、エステル、ラクトン、アリールエーテル、フルオロエーテルおよび1,1,1-トリフルオロアルカン等が挙げられる。相溶化剤としては、ポリオキシアルキレングリコールエーテルが特に好ましい。
なお、冷凍機油には、必要に応じて、耐荷重添加剤、塩素捕捉剤、清浄分散剤、粘度指数向上剤、耐熱性向上剤、安定剤、腐食防止剤、耐熱性向上剤、流動点降下剤、および、防錆剤等を添加することも可能である。
上記各添加剤の配合量は、冷凍機油に含まれる割合が0.01質量%以上5質量%以下であってよく、0.05質量%以上3質量%以下であることが好ましい。なお、冷媒組成物と冷凍機油とを合わせた冷凍機用作動流体中の添加剤の配合割合が、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
なお、冷凍機油は、塩素濃度が50ppm以下となっていることが好ましく、硫黄濃度が50ppm以下となっていることが好ましい。
(3)第3グループの技術の実施形態
第1グループの技術および第3グループの技術としての冷凍サイクル装置は、空気調和装置である。
(3−1)第1実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図3A、概略制御ブロック構成図である図3Bを参照しつつ、第1実施形態に係る冷凍サイクル装置としての空気調和装置1について説明する。
空気調和装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うことで、対象空間の空気を調和させる装置である。
空気調和装置1は、主として、室外ユニット20と、室内ユニット30と、室外ユニット20と室内ユニット30を接続する液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5と、入力装置および出力装置としての図示しないリモコンと、空気調和装置1の動作を制御するコントローラ7と、を有している。
空気調和装置1では、冷媒回路10内に封入された冷媒が、圧縮され、冷却又は凝縮され、減圧され、加熱又は蒸発された後に、再び圧縮される、という冷凍サイクルが行われる。本実施形態では、冷媒回路10には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が充填されている。当該冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。また、冷媒回路10には、当該混合冷媒と共に、冷凍機油が充填されている。
(3−1−1)室外ユニット20
室外ユニット20は、液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5を介して室内ユニット30と接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。室外ユニット20は、主として、圧縮機21と、四路切換弁22と、室外熱交換器23と、室外膨張弁24と、室外ファン25と、液側閉鎖弁29と、ガス側閉鎖弁28と、を有している。
圧縮機21は、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒を高圧になるまで圧縮する機器である。ここでは、圧縮機21として、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素(図示省略)が圧縮機モータによって回転駆動される密閉式構造の圧縮機が使用されている。圧縮機モータは、容量を変化させるためのものであり、インバータにより運転周波数の制御が可能である。なお、圧縮機21には、吸入側において、図示しない付属アキュムレータが設けられている(なお、当該付属アキュムレータの内容積は、後述する低圧レシーバ、中間圧レシーバ、高圧レシーバのそれぞれより小さく、好ましくは半分以下である)。
四路切換弁22は、接続状態を切り換えることで、圧縮機21の吐出側と室外熱交換器23とを接続しつつ圧縮機21の吸入側とガス側閉鎖弁28とを接続する冷房運転接続状態と、圧縮機21の吐出側とガス側閉鎖弁28とを接続しつつ圧縮機21の吸入側と室外熱交換器23とを接続する暖房運転接続状態と、を切り換えることができる。
室外熱交換器23は、冷房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の凝縮器として機能し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能する熱交換器である。
室外ファン25は、室外ユニット20内に室外の空気を吸入して、室外熱交換器23において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための空気流れを生じさせる。室外ファン25は、室外ファンモータによって回転駆動される。
室外膨張弁24は、室外熱交換器23の液側端部と液側閉鎖弁29との間に設けられている。室外膨張弁24は、キャピラリーチューブ又は感温筒と共に用いられる機械式膨張弁であってもよいが、制御により弁開度を調節可能な電動膨張弁であることが好ましい。
液側閉鎖弁29は、室外ユニット20における液側冷媒連絡配管6との接続部分に配置された手動弁である。
ガス側閉鎖弁28は、室外ユニット20におけるとガス側冷媒連絡配管5との接続部分に配置された手動弁である。
室外ユニット20は、室外ユニット20を構成する各部の動作を制御する室外ユニット制御部27を有している。室外ユニット制御部27は、CPUやメモリ等を含むマイクロコンピュータを有している。室外ユニット制御部27は、各室内ユニット30の室内ユニット制御部34と通信線を介して接続されており、制御信号等の送受信を行う。
室外ユニット20には、吐出圧力センサ61、吐出温度センサ62、吸入圧力センサ63、吸入温度センサ64、室外熱交温度センサ65、外気温度センサ66等が設けられている。これらの各センサは、室外ユニット制御部27と電気的に接続されており、室外ユニット制御部27に対して検出信号を送信する。吐出圧力センサ61は、圧縮機21の吐出側と四路切換弁22の接続ポートの1つとを接続する吐出配管を流れる冷媒の圧力を検出する。吐出温度センサ62は、吐出配管を流れる冷媒の温度を検出する。吸入圧力センサ63は、圧縮機21の吸入側と四路切換弁22の接続ポートの1つとを接続する吸入配管を流れる冷媒の圧力を検出する。吸入温度センサ64は、吸入配管を流れる冷媒の温度を検出する。室外熱交温度センサ65は、室外熱交換器23のうち四路切換弁22が接続されている側とは反対側である液側の出口を流れる冷媒の温度を検出する。外気温度センサ66は、室外熱交換器23を通過する前の屋外の空気温度を検出する。
(3−1−2)室内ユニット30
室内ユニット30は、対象空間である室内の壁面や天井等に設置されている。室内ユニット30は、液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5を介して室外ユニット20と接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。
室内ユニット30は、室内熱交換器31と、室内ファン32と、を有している。
室内熱交換器31は、液側が、液側冷媒連絡配管6と接続され、ガス側端が、ガス側冷媒連絡配管5とを接続されている。室内熱交換器31は、冷房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の凝縮器として機能する熱交換器である。
室内ファン32は、室内ユニット30内に室内の空気を吸入して、室内熱交換器31において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための空気流れを生じさせる。室内ファン32は、室内ファンモータによって回転駆動される。
また、室内ユニット30は、室内ユニット30を構成する各部の動作を制御する室内ユニット制御部34を有している。室内ユニット制御部34は、CPUやメモリ等を含むマイクロコンピュータを有している。室内ユニット制御部34は、室外ユニット制御部27と通信線を介して接続されており、制御信号等の送受信を行う。
室内ユニット30には、室内液側熱交温度センサ71、室内空気温度センサ72等が設けられている。これらの各センサは、室内ユニット制御部34と電気的に接続されており、室内ユニット制御部34に対して検出信号を送信する。室内液側熱交温度センサ71は、室内熱交換器31のうち四路切換弁22が接続されている側とは反対側である液側の出口を流れる冷媒の温度を検出する。室内空気温度センサ72は、室内熱交換器31を通過する前の室内の空気温度を検出する。
(3−1−3)コントローラ7の詳細
空気調和装置1では、室外ユニット制御部27と室内ユニット制御部34が通信線を介して接続されることで、空気調和装置1の動作を制御するコントローラ7が構成されている。
コントローラ7は、主として、CPU(中央演算処理装置)と、ROMやRAM等のメモリを有している。なお、コントローラ7による各種処理や制御は、室外ユニット制御部27および/又は室内ユニット制御部34に含まれる各部が一体的に機能することによって実現されている。
(3−1−4)運転モード
以下、運転モードについて説明する。
運転モードとしては、冷房運転モードと暖房運転モードとが設けられている。
コントローラ7は、リモコン等から受け付けた指示に基づいて、冷房運転モードか暖房運転モードかを判断し、実行する。
(3−1−4−1)冷房運転モード
空気調和装置1では、冷房運転モードでは、四路切換弁22の接続状態を圧縮機21の吐出側と室外熱交換器23とを接続しつつ圧縮機21の吸入側とガス側閉鎖弁28とを接続する冷房運転接続状態とし、冷媒回路10に充填されている冷媒を、主として、圧縮機21、室外熱交換器23、室外膨張弁24、室内熱交換器31の順に循環させる。
より具体的には、冷房運転モードが開始されると、冷媒回路10内において、冷媒が圧縮機21に吸入されて圧縮された後に吐出される。
圧縮機21では、室内ユニット30で要求される冷却負荷に応じた容量制御が行われる。当該容量制御は、特に限定されず、例えば、空気調和装置1が室内の空気温度が設定温度を満たすように制御される場合には、吐出温度(吐出温度センサ62の検出温度)が、設定温度と室内温度(室内空気温度センサ72の検出温度)との差分に応じた値となるように、圧縮機21の運転周波数を制御する。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22を経て、室外熱交換器23のガス側端に流入する。
室外熱交換器23のガス側端に流入したガス冷媒は、室外熱交換器23において、室外ファン25によって供給される室外側空気と熱交換を行って凝縮し、液冷媒となって室外熱交換器23の液側端から流出する。
室外熱交換器23の液側端から流出した冷媒は、室外膨張弁24を通過する際に減圧される。なお、室外膨張弁24は、例えば、圧縮機21に吸入される冷媒の過熱度が所定の過熱度目標値となるように制御される。ここで、圧縮機21の吸入冷媒の過熱度は、例えば、吸入圧力(吸入圧力センサ63の検出圧力)に相当する飽和温度を、吸入温度(吸入温度センサ62の検出温度)から差し引くことにより求めることができる。なお、室外膨張弁24の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
室外膨張弁24で減圧された冷媒は、液側閉鎖弁29および液側冷媒連絡配管6を経て、室内ユニット30に流入する。
室内ユニット30に流入した冷媒は、室内熱交換器31に流入し、室内熱交換器31において、室内ファン32によって供給される室内空気と熱交換を行って蒸発し、ガス冷媒となって室内熱交換器31のガス側端から流出する。室内熱交換器31のガス側端から流出したガス冷媒は、ガス側冷媒連絡配管5に流れていく。
ガス側冷媒連絡配管5を流れた冷媒は、ガス側閉鎖弁28、四路切換弁22を経て、再び、圧縮機21に吸入される。
(3−1−4−2)暖房運転モード
空気調和装置1では、暖房運転モードでは、四路切換弁22の接続状態を圧縮機21の吐出側とガス側閉鎖弁28とを接続しつつ圧縮機21の吸入側と室外熱交換器23とを接続する暖房運転接続状態とし、冷媒回路10に充填されている冷媒を、主として、圧縮機21、室内熱交換器31、室外膨張弁24、室外熱交換器23の順に循環させる。
より具体的には、暖房運転モードが開始されると、冷媒回路10内において、冷媒が圧縮機21に吸入されて圧縮された後に吐出される。
圧縮機21では、室内ユニット30で要求される暖房負荷に応じた容量制御が行われる。当該容量制御は、特に限定されず、例えば、空気調和装置1が室内の空気温度が設定温度を満たすように制御される場合には、吐出温度(吐出温度センサ62の検出温度)が、設定温度と室内温度(室内空気温度センサ72の検出温度)との差分に応じた値となるように、圧縮機21の運転周波数を制御する。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22およびガス側冷媒連絡配管5を流れた後、室内ユニット30に流入する。
室内ユニット30に流入した冷媒は、室内熱交換器31のガス側端に流入し、室内熱交換器31において、室内ファン32によって供給される室内空気と熱交換を行って凝縮し、気液二相状態の冷媒または液冷媒となって室内熱交換器31の液側端から流出する。室内熱交換器31の液側端から流出した冷媒は、液側冷媒連絡配管6に流れていく。
液側冷媒連絡配管6を流れた冷媒は、室外ユニット20に流入し、液側閉鎖弁29を通過し、室外膨張弁24において冷凍サイクルにおける低圧になるまで減圧される。なお、室外膨張弁24は、例えば、圧縮機21に吸入される冷媒の過熱度が所定の過熱度目標値となるように制御される。なお、室外膨張弁24の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
室外膨張弁24で減圧された冷媒は、室外熱交換器23の液側端に流入する。
室外熱交換器23の液側端から流入した冷媒は、室外熱交換器23において、室外ファン25によって供給される室外空気と熱交換を行って蒸発し、ガス冷媒となって室外熱交換器23のガス側端から流出する。
室外熱交換器23のガス側端から流出した冷媒は、四路切換弁22を経て、再び、圧縮機21に吸入される。
(3−1−5)第1実施形態の特徴
空気調和装置1では、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いた冷凍サイクルを行うことができるため、GWPの小さい冷媒を用いて冷凍サイクルを行うことが可能になっている。
(3−2)第2実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図3C、概略制御ブロック構成図である図3Dを参照しつつ、第2実施形態に係る冷凍サイクル装置としての空気調和装置1aについて説明する。なお、以下では、第1実施形態の空気調和装置1との違いを主に説明する。
(3−2−1)空気調和装置1aの概略構成
空気調和装置1aは、上記第1実施形態の空気調和装置1とは、室外ユニット20が低圧レシーバ41を備えている点で異なっている。
低圧レシーバ41は、圧縮機21の吸入側と四路切換弁22の接続ポートの1つとの間に設けられており、冷媒回路10における余剰冷媒を液冷媒として貯留することが可能な冷媒容器である。なお、本実施形態では、吸入圧力センサ63及び吸入温度センサ64は、低圧レシーバ41と圧縮機21の吸入側との間を流れる冷媒を対象として検出するように設けられている。また、圧縮機21には、図示しない付属のアキュムレータが設けられており、低圧レシーバ41は、当該付属のアキュムレータの下流側に接続されている。
(3−2−2)冷房運転モード
空気調和装置1aでは、冷房運転モードでは、圧縮機21は、例えば、冷媒回路10における冷媒の蒸発温度が、設定温度と室内温度(室内空気温度センサ72の検出温度)との差分に応じて定まる目標蒸発温度になるように、運転周波数が容量制御される。なお、蒸発温度は、特に限定されないが、例えば、吸入圧力センサ63の検出圧力に相当する冷媒の飽和温度として把握してもよい。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22、室外熱交換器23、室外膨張弁24の順に流れる。
ここで、室外膨張弁24は、例えば、室外熱交換器23の液側出口を流れる冷媒の過冷却度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。なお、室外熱交換器23の液側出口を流れる冷媒の過冷却度は、特に限定されないが、例えば、室外熱交温度センサ65の検出温度から、冷媒回路10の高圧(吐出圧力センサ61の検出圧力)に相当する冷媒の飽和温度を差し引くことにより求めることができる。なお、室外膨張弁24の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
室外膨張弁24で減圧された冷媒は、液側閉鎖弁29、液側冷媒連絡配管6を介して室内ユニット30に流入し、室内熱交換器31において蒸発し、ガス側冷媒連絡配管5に流れていく。ガス側冷媒連絡配管5を流れた冷媒は、ガス側閉鎖弁28、四路切換弁22、低圧レシーバ41を経て、再び、圧縮機21に吸入される。なお、低圧レシーバ41では、室内熱交換器31において蒸発しきれなかった液冷媒が余剰冷媒として貯留される。
(3−2−3)暖房運転モード
空気調和装置1aでは、暖房運転モードでは、圧縮機21は、例えば、冷媒回路10における冷媒の凝縮温度が、設定温度と室内温度(室内空気温度センサ72の検出温度)との差分に応じて定まる目標凝縮温度になるように、運転周波数が容量制御される。なお、凝縮温度は、特に限定されないが、例えば、吐出圧力センサ61の検出圧力に相当する冷媒の飽和温度として把握してもよい。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22、ガス側冷媒連絡配管5を流れた後、室内ユニット30の室内熱交換器31のガス側端に流入し、室内熱交換器31において凝縮する。室内熱交換器31の液側端から流出した冷媒は、液側冷媒連絡配管6を経て、室外ユニット20に流入し、液側閉鎖弁29を通過して、室外膨張弁24において冷凍サイクルにおける低圧になるまで減圧される。なお、室外膨張弁24は、例えば、室内熱交換器31の液側出口を流れる冷媒の過冷却度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。なお、室内熱交換器31の液側出口を流れる冷媒の過冷却度は、特に限定されないが、例えば、室内液側熱交温度センサ71の検出温度から、冷媒回路10の高圧(吐出圧力センサ61の検出圧力)に相当する冷媒の飽和温度を差し引くことにより求めることができる。なお、室外膨張弁24の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
室外膨張弁24で減圧された冷媒は、室外熱交換器23において蒸発し、四路切換弁22、低圧レシーバ41を経て、再び、圧縮機21に吸入される。なお、低圧レシーバ41では、室外熱交換器23において蒸発しきれなかった液冷媒が余剰冷媒として貯留される。
(3−2−4)第2実施形態の特徴
空気調和装置1aでは、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いた冷凍サイクルを行うことができるため、GWPの小さい冷媒を用いて冷凍サイクルを行うことが可能になっている。
また、空気調和装置1aでは、低圧レシーバ41を設けることにより、圧縮機21に吸入される冷媒の過熱度が所定値以上となることが確保される制御(室外膨張弁24の制御)を行わなくても、液圧縮が生じることを抑制させることが可能になっている。このため、室外膨張弁24の制御としては、凝縮器として機能させる場合の室外熱交換器23(凝縮器として機能させる場合の室内熱交換器31も同様)について、出口を流れる冷媒の過冷却度を十分に確保するように制御させることが可能になっている。
(3−3)第3実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図3E、概略制御ブロック構成図である図3Fを参照しつつ、第3実施形態に係る冷凍サイクル装置としての空気調和装置1bについて説明する。なお、以下では、第2実施形態の空気調和装置1aとの違いを主に説明する。
(3−3−1)空気調和装置1bの概略構成
空気調和装置1bは、上記第2実施形態の空気調和装置1aとは、複数の室内ユニットが並列に設けられている点、および、各室内ユニットにおいて室内熱交換器の液冷媒側に室内膨張弁が設けられている点で異なっている。
空気調和装置1bは、互いに並列に接続された第1室内ユニット30と第2室内ユニット35とを有している。第1室内ユニット30は、上記実施形態と同様に、第1室内熱交換器31、第1室内ファン32を有しており、第1室内熱交換器31の液冷媒側において第1室内膨張弁33が設けられている。第1室内膨張弁33は、弁開度を調節可能な電動膨張弁であることが好ましい。第1室内ユニット30には、上記実施形態と同様に、第1室内ユニット制御部34と、第1室内ユニット制御部34に対して電気的に接続された第1室内液側熱交温度センサ71、第1室内空気温度センサ72が設けられており、さらに、第1室内ガス側熱交温度センサ73等が設けられている。第1室内液側熱交温度センサ71は、第1室内熱交換器31の液冷媒側の出口を流れる冷媒の温度を検出する。第1室内ガス側熱交温度センサ73は、第1室内熱交換器31のガス冷媒側の出口を流れる冷媒の温度を検出する。第2室内ユニット35は、第1室内ユニット30と同様に、第2室内熱交換器36、第2室内ファン37を有しており、第2室内熱交換器36の液冷媒側において第2室内膨張弁38が設けられている。第2室内膨張弁38は、弁開度を調節可能な電動膨張弁であることが好ましい。第2室内ユニット35には、第1室内ユニット30と同様に、第2室内ユニット制御部39と、第2室内ユニット制御部39に対して電気的に接続された第2室内液側熱交温度センサ75、第2室内空気温度センサ76、および、第2室内ガス側熱交温度センサ77が設けられている。
また、空気調和装置1bは、上記第2実施形態の空気調和装置1aとは、室外ユニットにおいて、室外膨張弁24が設けられていない点、および、バイパス膨張弁49を有するバイパス配管40が設けられている点で異なっている。
バイパス配管40は、室外熱交換器23の液冷媒側の出口から液側閉鎖弁29まで延びる冷媒配管と、四路切換弁22の接続ポートの1つから低圧レシーバ41まで延びる冷媒配管と、を接続する冷媒配管である。バイパス膨張弁49は、弁開度を調節可能な電動膨張弁であることが好ましい。なお、バイパス配管40には、開度調節可能な電動膨張弁が設けられたものに限られず、例えば、キャピラリーチューブと開閉可能な電磁弁を有したものであってもよい。
(3−3−2)冷房運転モード
空気調和装置1bでは、冷房運転モードでは、圧縮機21は、例えば、冷媒回路10における冷媒の蒸発温度が目標蒸発温度になるように、運転周波数が容量制御される。ここで、目標蒸発温度は、各室内ユニット30、35において設定温度と室内温度との差分が最も大きいもの(負荷が最も大きな室内ユニット)に応じて定めることが好ましい。なお、蒸発温度は、特に限定されないが、例えば、吸入圧力センサ63の検出圧力に相当する冷媒の飽和温度として把握することができる。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22を介して、室外熱交換器23において凝縮する。室外熱交換器23を流れた冷媒は、液側閉鎖弁29、液側冷媒連絡配管6を介して、第1室内ユニット30および第2室内ユニット35に送られる。
ここで、第1室内ユニット30では、第1室内膨張弁33は、例えば、第1室内熱交換器31のガス側出口を流れる冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。なお、第1室内熱交換器31のガス側出口を流れる冷媒の過熱度は、特に限定されないが、例えば、第1室内ガス側熱交温度センサ73の検出温度から、冷媒回路10の低圧(吸入圧力センサ63の検出圧力)に相当する冷媒の飽和温度を差し引くことにより求めることができる。また、第2室内ユニット35の第2室内膨張弁38も、第1室内膨張弁33と同様に、例えば、第2室内熱交換器36のガス側出口を流れる冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。なお、第2室内熱交換器36のガス側出口を流れる冷媒の過熱度についても、特に限定されないが、例えば、第2室内ガス側熱交温度センサ77の検出温度から、冷媒回路10の低圧(吸入圧力センサ63の検出圧力)に相当する冷媒の飽和温度を差し引くことにより求めることができる。また、第1室内膨張弁33と第2室内膨張弁38は、いずれも、吸入温度センサ64の検出温度から吸入圧力センサ63の検出圧力に相当する冷媒の飽和温度を差し引くことで得られる冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御されてもよい。さらに、第1室内膨張弁33および第2室内膨張弁38の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
第1室内膨張弁33で減圧された冷媒は第1室内熱交換器31において蒸発し、第2室内膨張弁38で減圧された冷媒は第2室内熱交換器36において蒸発し、合流した後、ガス側冷媒連絡配管5に流れていく。ガス側冷媒連絡配管5を流れた冷媒は、ガス側閉鎖弁28、四路切換弁22、低圧レシーバ41を経て、再び、圧縮機21に吸入される。なお、低圧レシーバ41では、第1室内熱交換器31および第2室内熱交換器において蒸発しきれなかった液冷媒が余剰冷媒として貯留される。なお、バイパス配管40のバイパス膨張弁49は、凝縮器として機能する室外熱交換器23の内部の冷媒量が過剰であることに関する所定条件を満たした場合に開けられるまたは弁開度が上げられる制御が行われる。バイパス膨張弁49の開度制御としては、特に限定されないが、例えば、凝縮圧力(例えば、吐出圧力センサ61の検出圧力)が所定値以上である場合に、開けるまたは開度が上げられる制御であってもよいし、通過流量を増大させるように所定の時間間隔で開状態と閉状態とを切り換える制御であってもよい。
(3−3−3)暖房運転モード
空気調和装置1bでは、暖房運転モードでは、圧縮機21は、例えば、冷媒回路10における冷媒の凝縮温度が、目標凝縮温度になるように、運転周波数が容量制御される。ここで、目標凝縮温度は、各室内ユニット30、35において設定温度と室内温度との差分が最も大きいもの(負荷が最も大きな室内ユニット)に応じて定めることが好ましい。なお、凝縮温度は、特に限定されないが、例えば、吐出圧力センサ61の検出圧力に相当する冷媒の飽和温度として把握してもよい。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22、ガス側冷媒連絡配管5を流れた後、一部の冷媒が、第1室内ユニット30の第1室内熱交換器31のガス側端に流入し、第1室内熱交換器31において凝縮し、他の一部の冷媒が、第2室内ユニット35の第2室内熱交換器36のガス側端に流入し、第2室内熱交換器36において凝縮する。
なお、第1室内ユニット30の第1室内膨張弁33は、第1室内熱交換器31の液側を流れる冷媒の過冷却度が所定の目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。第2室内ユニット35の第2室内膨張弁38についても同様に、第2室内熱交換器36の液側を流れる冷媒の過冷却度が所定の目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。なお、第1室内熱交換器31の液側を流れる冷媒の過冷却度は、第1室内液側熱交温度センサ71の検出温度から、冷媒回路10における高圧(吐出圧力センサ61の検出圧力)に相当する冷媒の飽和温度を差し引くことで求めることができる。また、第2室内熱交換器36の液側を流れる冷媒の過冷却度についても同様に、第2室内液側熱交温度センサ75の検出温度から、冷媒回路10における高圧(吐出圧力センサ61の検出圧力)に相当する冷媒の飽和温度を差し引くことで求めることができる。
第1室内膨張弁33で減圧された冷媒および第2室内膨張弁38で減圧された冷媒は、合流し、液側冷媒連絡配管6、液側閉鎖弁29を通過した後、室外熱交換器23において蒸発し、四路切換弁22、低圧レシーバ41を経て、再び、圧縮機21に吸入される。なお、低圧レシーバ41では、室外熱交換器23において蒸発しきれなかった液冷媒が余剰冷媒として貯留される。なお、暖房運転時には、特に限定されないが、バイパス配管40のバイパス膨張弁49は、例えば、全閉状態に維持されていてもよい。
(3−3−4)第3実施形態の特徴
空気調和装置1bでは、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いた冷凍サイクルを行うことができるため、GWPの小さい冷媒を用いて冷凍サイクルを行うことが可能になっている。
また、空気調和装置1bでは、低圧レシーバ41を設けることにより、圧縮機21における液圧縮を抑制することができている。また、冷房運転時には、第1室内膨張弁33、第2室内膨張弁38を過熱度制御することで、暖房運転時には、第1室内膨張弁33、第2室内膨張弁38を過冷却度制御することで、第1室内熱交換器31、第2室内熱交換器36における能力を十分に発揮させやすい。
(3−4)第4実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図3G、概略制御ブロック構成図である図3Hを参照しつつ、第4実施形態に係る冷凍サイクル装置としての空気調和装置1cについて説明する。なお、以下では、第2実施形態の空気調和装置1aとの違いを主に説明する。
(3−4−1)空気調和装置1cの概略構成
空気調和装置1cは、上記第2実施形態の空気調和装置1aとは、室外ユニット20が低圧レシーバ41を備えていない点、高圧レシーバ42を備えている点、室外ブリッジ回路26を備えている点で異なっている。
また、室内ユニット30は、室内熱交換器31の液側を流れる冷媒温度を検出する室内液側熱交温度センサ71と、室内の空気温度を検出する室内空気温度センサ72と、室内熱交換器31のガス側を流れる冷媒温度を検出する室内ガス側熱交温度センサ73と、を有している。
室外ブリッジ回路26は、室外熱交換器23の液側と液側閉鎖弁29との間に設けられており、4つの接続箇所および各接続箇所の間に設けられた逆止弁を有している。室外ブリッジ回路26が有する4つの接続箇所のうち、室外熱交換器23の液側に接続される箇所と液側閉鎖弁29に接続される箇所以外の2箇所からは、それぞれ高圧レシーバ42まで延びた冷媒配管が接続されている。また、これらの冷媒配管のうち、高圧レシーバ42の内部空間のうちのガス領域から延びだしている冷媒配管には、途中に室外膨張弁24が設けられている。
(3−4−2)冷房運転モード
空気調和装置1cでは、冷房運転モードでは、圧縮機21は、例えば、冷媒回路10における冷媒の蒸発温度が、設定温度と室内温度(室内空気温度センサ72の検出温度)との差分に応じて定まる目標蒸発温度になるように、運転周波数が容量制御される。なお、蒸発温度は、特に限定されないが、例えば、室内液側熱交温度センサ71の検出温度として把握してもよいし、吸入圧力センサ63の検出圧力に相当する冷媒の飽和温度として把握してもよい。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22を介して、室外熱交換器23において凝縮する。室外熱交換器23を流れた冷媒は、室外ブリッジ回路26の一部を介して、高圧レシーバ42に流入する。なお、高圧レシーバ42では、冷媒回路10における余剰冷媒が液冷媒として貯留される。高圧レシーバ42のガス領域から流出したガス冷媒は、室外膨張弁24において減圧される。
ここで、室外膨張弁24は、例えば、室内熱交換器31のガス側出口を流れる冷媒の過熱度または圧縮機21の吸入側を流れる冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。なお、室内熱交換器31のガス側出口を流れる冷媒の過熱度は、特に限定されないが、例えば、室内ガス側熱交温度センサ73の検出温度から、冷媒回路10の低圧(吸入圧力センサ63の検出圧力)に相当する冷媒の飽和温度を差し引くことにより求めてもよい。また、圧縮機21の吸入側を流れる冷媒の過熱度は、吸入温度センサ64の検出温度から、吸入圧力センサ63の検出圧力に相当する冷媒の飽和温度を差し引くことにより求めてもよい。なお、室外膨張弁24の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
室外膨張弁24で減圧された冷媒は、室外ブリッジ回路26の他の一部を流れ、液側閉鎖弁29、液側冷媒連絡配管6を介して室内ユニット30に流入し、室内熱交換器31において蒸発する。室内熱交換器31を流れた冷媒は、ガス側冷媒連絡配管5、ガス側閉鎖弁28、四路切換弁22を経て、再び、圧縮機21に吸入される。
(3−4−3)暖房運転モード
空気調和装置1cでは、暖房運転モードでは、圧縮機21は、例えば、冷媒回路10における冷媒の凝縮温度が、設定温度と室内温度(室内空気温度センサ72の検出温度)との差分に応じて定まる目標凝縮温度になるように、運転周波数が容量制御される。なお、凝縮温度は、特に限定されないが、例えば、吐出圧力センサ61の検出圧力に相当する冷媒の飽和温度として把握してもよい。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22、ガス側冷媒連絡配管5を流れた後、室内ユニット30の室内熱交換器31のガス側端に流入し、室内熱交換器31において凝縮する。室内熱交換器31の液側端から流出した冷媒は、液側冷媒連絡配管6を経て、室外ユニット20に流入し、液側閉鎖弁29を通過して、室外ブリッジ回路26の一部を流れ、高圧レシーバ42に流入する。なお、高圧レシーバ42では、冷媒回路10における余剰冷媒が液冷媒として貯留される。高圧レシーバ42のガス領域から流出したガス冷媒は、室外膨張弁24において冷凍サイクルにおける低圧になるまで減圧される。
なお、室外膨張弁24は、例えば、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。なお、圧縮機21の吸入側を流れる冷媒の過熱度は、特に限定されないが、例えば、吸入温度センサ64の検出温度から、吸入圧力センサ63の検出圧力に相当する冷媒の飽和温度を差し引いて求めることができる。なお、室外膨張弁24の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
室外膨張弁24で減圧された冷媒は、室外ブリッジ回路26の他の一部を流れ、室外熱交換器23において蒸発し、四路切換弁22を経て、再び、圧縮機21に吸入される。
(3−4−4)第4実施形態の特徴
空気調和装置1cでは、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いた冷凍サイクルを行うことができるため、GWPの小さい冷媒を用いて冷凍サイクルを行うことが可能になっている。
また、空気調和装置1cでは、高圧レシーバ42を設けることにより、冷媒回路10における余剰冷媒を貯留することが可能になる。
(3−5)第5実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図3I、概略制御ブロック構成図である図3Jを参照しつつ、第5実施形態に係る冷凍サイクル装置としての空気調和装置1dについて説明する。なお、以下では、第4実施形態の空気調和装置1cとの違いを主に説明する。
(3−5−1)空気調和装置1dの概略構成
空気調和装置1dは、上記第4実施形態の空気調和装置1cとは、複数の室内ユニットが並列に設けられている点、および、各室内ユニットにおいて室内熱交換器の液冷媒側に室内膨張弁が設けられている点で異なっている。
空気調和装置1dは、互いに並列に接続された第1室内ユニット30と第2室内ユニット35とを有している。第1室内ユニット30は、上記実施形態と同様に、第1室内熱交換器31、第1室内ファン32を有しており、第1室内熱交換器31の液冷媒側において第1室内膨張弁33が設けられている。第1室内膨張弁33は、弁開度を調節可能な電動膨張弁であることが好ましい。第1室内ユニット30には、上記実施形態と同様に、第1室内ユニット制御部34と、第1室内ユニット制御部34に対して電気的に接続された第1室内液側熱交温度センサ71、第1室内空気温度センサ72、第1室内ガス側熱交温度センサ73等が設けられている。第1室内液側熱交温度センサ71は、第1室内熱交換器31の液冷媒側の出口を流れる冷媒の温度を検出する。第1室内ガス側熱交温度センサ73は、第1室内熱交換器31のガス冷媒側の出口を流れる冷媒の温度を検出する。第2室内ユニット35は、第1室内ユニット30と同様に、第2室内熱交換器36、第2室内ファン37を有しており、第2室内熱交換器36の液冷媒側において第2室内膨張弁38が設けられている。第2室内膨張弁38は、弁開度を調節可能な電動膨張弁であることが好ましい。第2室内ユニット35には、第1室内ユニット30と同様に、第2室内ユニット制御部39と、第2室内ユニット制御部39に対して電気的に接続された第2室内液側熱交温度センサ75、第2室内空気温度センサ76、第2室内ガス側熱交温度センサ77が設けられている。
(3−5−2)冷房運転モード
空気調和装置1cでは、冷房運転モードでは、圧縮機21は、例えば、冷媒回路10における冷媒の蒸発温度が目標蒸発温度になるように、運転周波数が容量制御される。ここで、目標蒸発温度は、各室内ユニット30、35において設定温度と室内温度との差分が最も大きいもの(負荷が最も大きな室内ユニット)に応じて定めることが好ましい。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22を介して、室外熱交換器23において凝縮する。室外熱交換器23を流れた冷媒は、室外ブリッジ回路26の一部を介して、高圧レシーバ42に流入する。なお、高圧レシーバ42では、冷媒回路10における余剰冷媒が液冷媒として貯留される。高圧レシーバ42のガス領域から流出したガス冷媒は、室外膨張弁24において減圧される。ここで、冷房運転時は、室外膨張弁24は、例えば、弁開度が全開状態となるように制御される。
室外膨張弁24を通過した冷媒は、室外ブリッジ回路26の他の一部を流れ、液側閉鎖弁29、液側冷媒連絡配管6を介して第1室内ユニット30および第2室内ユニット35に流入する。
第1室内ユニット30に流入した冷媒は、第1室内膨張弁33において減圧される。第1室内膨張弁33は、第1室内熱交換器31のガス側出口を流れる冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。なお、第1室内熱交換器31のガス側出口を流れる冷媒の過熱度は、特に限定されないが、例えば、第1室内ガス側熱交温度センサ73の検出温度から、冷媒回路10の低圧(吸入圧力センサ63の検出圧力)に相当する冷媒の飽和温度を差し引くことにより求めてもよい。同様に、第2室内ユニット35に流入した冷媒は、第2室内膨張弁38において減圧される。第2室内膨張弁38は、第2室内熱交換器36のガス側出口を流れる冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。なお、第2室内熱交換器36のガス側出口を流れる冷媒の過熱度は、特に限定されないが、例えば、第2室内ガス側熱交温度センサ77の検出温度から、冷媒回路10の低圧(吸入圧力センサ63の検出圧力)に相当する冷媒の飽和温度を差し引くことにより求めてもよい。また、第1室内膨張弁33と第2室内膨張弁38は、いずれも、吸入温度センサ64の検出温度から吸入圧力センサ63の検出圧力に相当する冷媒の飽和温度を差し引くことで得られる冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御されてもよい。さらに、第1室内膨張弁33および第2室内膨張弁38の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
第1室内熱交換器31において蒸発した冷媒と、第2室内熱交換器36において蒸発した冷媒とは、合流した後、ガス側冷媒連絡配管5、ガス側閉鎖弁28、四路切換弁22を経て、再び、圧縮機21に吸入される。
(3−5−3)暖房運転モード
空気調和装置1cでは、暖房運転モードでは、圧縮機21は、例えば、冷媒回路10における冷媒の凝縮温度が、目標凝縮温度になるように、運転周波数が容量制御される。ここで、目標凝縮温度は、各室内ユニット30、35において設定温度と室内温度との差分が最も大きいもの(負荷が最も大きな室内ユニット)に応じて定めることが好ましい。なお、凝縮温度は、特に限定されないが、例えば、吐出圧力センサ61の検出圧力に相当する冷媒の飽和温度として把握してもよい。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22、ガス側冷媒連絡配管5を流れた後、第1室内ユニット30および第2室内ユニット35にそれぞれ流入する。
第1室内ユニット30の第1室内熱交換器31に流入したガス冷媒は、第1室内熱交換器31において凝縮する。第1室内熱交換器31を流れた冷媒は、第1室内膨張弁33において減圧される。第1室内膨張弁33は、第1室内熱交換器31の液側出口を流れる冷媒の過冷却度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。第1室内熱交換器31の液側出口を流れる冷媒の過冷却度は、例えば、第1室内液側熱交温度センサ71の検出温度から、吐出圧力センサ61の検出圧力に相当する冷媒の飽和温度を差し引くことで求めることができる。
第2室内ユニット35の第2室内熱交換器36に流入したガス冷媒は、同様に、第2室内熱交換器36において凝縮する。第2室内熱交換器36を流れた冷媒は、第2室内膨張弁38において減圧される。第2室内膨張弁38は、第2室内熱交換器36の液側出口を流れる冷媒の過冷却度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。第2室内熱交換器36の液側出口を流れる冷媒の過冷却度は、例えば、第2室内液側熱交温度センサ75の検出温度から、吐出圧力センサ61の検出圧力に相当する冷媒の飽和温度を差し引くことで求めることができる。
第1室内熱交換器31の液側端から流出した冷媒および第2室内熱交換器36の液側端から流出した冷媒は、合流した後、液側冷媒連絡配管6を経て、室外ユニット20に流入する。
室外ユニット20に流入した冷媒は、液側閉鎖弁29を通過して、室外ブリッジ回路26の一部を流れ、高圧レシーバ42に流入する。なお、高圧レシーバ42では、冷媒回路10における余剰冷媒が液冷媒として貯留される。高圧レシーバ42のガス領域から流出したガス冷媒は、室外膨張弁24において冷凍サイクルにおける低圧になるまで減圧される。すなわち、暖房運転時は、高圧レシーバ42は、擬似的な中間圧冷媒が貯留されることとなる。
なお、室外膨張弁24は、例えば、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。なお、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度は、特に限定されないが、例えば、吸入温度センサ64の検出温度から、吸入圧力センサ63の検出圧力に相当する冷媒の飽和温度を差し引いて求めることができる。なお、室外膨張弁24の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
室外膨張弁24で減圧された冷媒は、室外ブリッジ回路26の他の一部を流れ、室外熱交換器23において蒸発し、四路切換弁22を経て、再び、圧縮機21に吸入される。
(3−5−4)第5実施形態の特徴
空気調和装置1dでは、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いた冷凍サイクルを行うことができるため、GWPの小さい冷媒を用いて冷凍サイクルを行うことが可能になっている。
また、空気調和装置1dでは、高圧レシーバ42を設けることにより、冷媒回路10における余剰冷媒を貯留することが可能になる。
なお、暖房運転時において、室外膨張弁24の弁開度が過熱度制御されることにより圧縮機21の信頼性が確保されるため、第1室内膨張弁33および第2室内膨張弁38については、第1室内熱交換器31および第2室内熱交換器36における能力を十分に発揮させるように、過冷却度制御を行うことが可能となっている。
(3−6)第6実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図3K、概略制御ブロック構成図である図3Lを参照しつつ、第6実施形態に係る冷凍サイクル装置としての空気調和装置1eについて説明する。なお、以下では、第2実施形態の空気調和装置1aとの違いを主に説明する。
(3−6−1)空気調和装置1eの概略構成
空気調和装置1eは、上記第2実施形態の空気調和装置1aとは、室外ユニット20が低圧レシーバ41を有していない点、中間圧レシーバ43を有している点、室外膨張弁24を有していない点、第1室外膨張弁44および第2室外膨張弁45を有している点で異なっている。
中間圧レシーバ43は、冷媒回路10における室外熱交換器23の液側から液側閉鎖弁29までの間に設けられており、冷媒回路10における余剰冷媒を液冷媒として貯留することが可能な冷媒容器である。
第1室外膨張弁44は、室外熱交換器23の液側から中間圧レシーバ43まで延びる冷媒配管の途中に設けられている。第2室外膨張弁45は、中間圧レシーバ43から液側閉鎖弁29まで延びる冷媒配管の途中に設けられている。第1室外膨張弁44および第2室外膨張弁45は、いずれも、弁開度を調節可能な電動膨張弁であることが好ましい。
(3−6−2)冷房運転モード
空気調和装置1eでは、冷房運転モードでは、圧縮機21は、例えば、冷媒回路10における冷媒の蒸発温度が、設定温度と室内温度(室内空気温度センサ72の検出温度)との差分に応じて定まる目標蒸発温度になるように、運転周波数が容量制御される。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22を通過した後、室外熱交換器23において凝縮する。室外熱交換器23を流れた冷媒は、第1室外膨張弁44において、冷凍サイクルにおける中間圧力まで減圧される。
ここで、第1室外膨張弁44は、例えば、室外熱交換器23の液側出口を流れる冷媒の過冷却度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。
第1室外膨張弁44において減圧された冷媒は、中間圧レシーバ43に流入する。中間圧レシーバ43では、冷媒回路10における余剰冷媒が液冷媒として貯留される。中間圧レシーバ43を通過した冷媒は、第2室外膨張弁45において、冷凍サイクルの低圧まで減圧される。
ここで、第2室外膨張弁45は、例えば、室内熱交換器31のガス側を流れる冷媒の過熱度または圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。なお、第2室外膨張弁45の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
第2室外膨張弁45において冷凍サイクルの低圧まで減圧された冷媒は、液側閉鎖弁29、液側冷媒連絡配管6を介して室内ユニット30に流入し、室内熱交換器31において蒸発する。室内熱交換器31を流れた冷媒は、ガス側冷媒連絡配管5を流れた後、ガス側閉鎖弁28、四路切換弁22を経て、再び、圧縮機21に吸入される。
(3−6−3)暖房運転モード
空気調和装置1eでは、暖房運転モードでは、圧縮機21は、例えば、冷媒回路10における冷媒の凝縮温度が、設定温度と室内温度(室内空気温度センサ72の検出温度)との差分に応じて定まる目標凝縮温度になるように、運転周波数が容量制御される。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22、ガス側冷媒連絡配管5を流れた後、室内ユニット30の室内熱交換器31のガス側端に流入し、室内熱交換器31において凝縮する。室内熱交換器31の液側端から流出した冷媒は、液側冷媒連絡配管6を経て、室外ユニット20に流入し、液側閉鎖弁29を通過して、第2室外膨張弁45において冷凍サイクルにおける中間圧になるまで減圧される。
ここで、第2室外膨張弁45は、例えば、室内熱交換器31の液側出口を流れる冷媒の過冷却度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。
第2室外膨張弁45において減圧された冷媒は、中間圧レシーバ43に流入する。中間圧レシーバ43では、冷媒回路10における余剰冷媒が液冷媒として貯留される。中間圧レシーバ43を通過した冷媒は、第1室外膨張弁44において、冷凍サイクルの低圧まで減圧される。
ここで、第1室外膨張弁44は、例えば、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。なお、第1室外膨張弁44の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
第1室外膨張弁44で減圧された冷媒は、室外熱交換器23において蒸発し、四路切換弁22を経て、再び、圧縮機21に吸入される。
(3−6−4)第6実施形態の特徴
空気調和装置1eでは、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いた冷凍サイクルを行うことができるため、GWPの小さい冷媒を用いて冷凍サイクルを行うことが可能になっている。
また、空気調和装置1eでは、中間圧レシーバ43を設けることにより、冷媒回路10における余剰冷媒を貯留させることが可能になっている。また、冷房運転時においては、第1室外膨張弁44を過冷却度制御させることにより、室外熱交換器23の能力を十分に発揮させやすく、暖房運転時においては、第2室外膨張弁45を過冷却度制御させることにより、室内熱交換器31の能力を十分に発揮させやすくすることが可能になっている。
(3−7)第7実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図3M、概略制御ブロック構成図である図3Nを参照しつつ、第7実施形態に係る冷凍サイクル装置としての空気調和装置1fについて説明する。なお、以下では、第6実施形態の空気調和装置1eとの違いを主に説明する。
(3−7−1)空気調和装置1fの概略構成
空気調和装置1fは、上記第6実施形態の空気調和装置1eとは、室外ユニット20が互いに並列に配置された第1室外熱交換器23aおよび第2室外熱交換器23bを有している点、第1室外熱交換器23aの液冷媒側に第1分岐室外膨張弁24aを有し、第2室外熱交換器23bの液冷媒側に第2分岐室外膨張弁24bを有している点で異なっている。なお、第1分岐室外膨張弁24aおよび第2分岐室外膨張弁24bは、弁開度を調節可能な電動膨張弁であることが好ましい。
また、空気調和装置1fは、上記第6実施形態の空気調和装置1eとは、複数の室内ユニットが並列に設けられている点、および、各室内ユニットにおいて室内熱交換器の液冷媒側に室内膨張弁が設けられている点で異なっている。
空気調和装置1fは、互いに並列に接続された第1室内ユニット30と第2室内ユニット35とを有している。第1室内ユニット30は、上記実施形態と同様に、第1室内熱交換器31、第1室内ファン32を有しており、第1室内熱交換器31の液冷媒側において第1室内膨張弁33が設けられている。第1室内膨張弁33は、弁開度を調節可能な電動膨張弁であることが好ましい。第1室内ユニット30には、上記実施形態と同様に、第1室内ユニット制御部34と、第1室内ユニット制御部34に対して電気的に接続された第1室内液側熱交温度センサ71、第1室内空気温度センサ72、第1室内ガス側熱交温度センサ73等が設けられている。第1室内液側熱交温度センサ71は、第1室内熱交換器31の液冷媒側の出口を流れる冷媒の温度を検出する。第1室内ガス側熱交温度センサ73は、第1室内熱交換器31のガス冷媒側の出口を流れる冷媒の温度を検出する。第2室内ユニット35は、第1室内ユニット30と同様に、第2室内熱交換器36、第2室内ファン37を有しており、第2室内熱交換器36の液冷媒側において第2室内膨張弁38が設けられている。第2室内膨張弁38は、弁開度を調節可能な電動膨張弁であることが好ましい。第2室内ユニット35には、第1室内ユニット30と同様に、第2室内ユニット制御部39と、第2室内ユニット制御部39に対して電気的に接続された第2室内液側熱交温度センサ75、第2室内空気温度センサ76、第2室内ガス側熱交温度センサ77が設けられている。
(3−7−2)冷房運転モード
空気調和装置1fでは、冷房運転モードでは、圧縮機21は、例えば、冷媒回路10における冷媒の蒸発温度が目標蒸発温度になるように、運転周波数が容量制御される。ここで、目標蒸発温度は、各室内ユニット30、35において設定温度と室内温度との差分が最も大きいもの(負荷が最も大きな室内ユニット)に応じて定めることが好ましい。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22を通過した後、第1室外熱交換器23aと第2室外熱交換器23bとに分岐して流れ、第1室外熱交換器23aと第2室外熱交換器23bのそれぞれにおいて凝縮する。第1室外熱交換器23aを流れた冷媒は、第1分岐室外膨張弁24aにおいて、冷凍サイクルにおける中間圧力まで減圧される。また、第2室外熱交換器23bを流れた冷媒は、第2分岐室外膨張弁24bにおいて、冷凍サイクルにおける中間圧力まで減圧される。
ここで、第1分岐室外膨張弁24aおよび第2分岐室外膨張弁24bは、例えば、いずれも全開状態となるように制御してもよい。
また、第1室外熱交換器23aと第2室外熱交換器23bとにおいて、構造上または冷媒配管の接続上、冷媒の流れやすさにおいて違いが生じている場合には、第1室外熱交換器23aの液側出口を流れる冷媒の過冷却度が共通目標値になる等の所定条件を満たすように第1分岐室外膨張弁24aの弁開度を制御し、第2室外熱交換器23bの液側出口を流れる冷媒の過冷却度が同じ共通目標値になる等の所定条件を満たすように第2分岐室外膨張弁24bの弁開度を制御してもよい。この制御により、第1室外熱交換器23aと第2室外熱交換器23bとの間の冷媒の偏流を小さく抑えることが可能になる。
第1分岐室外膨張弁24aを通過した冷媒および第2分岐室外膨張弁24bを通過した冷媒は、合流した後に、中間圧レシーバ43に流入する。中間圧レシーバ43では、冷媒回路10における余剰冷媒が液冷媒として貯留される。中間圧レシーバ43を通過した冷媒は、液側閉鎖弁29、液側冷媒連絡配管6を流れて、第1室内ユニット31および第2室内ユニット35にそれぞれ流入する。
第1室内ユニット31に流入した冷媒は、第1室内膨張弁33において、冷凍サイクルの低圧まで減圧される。また、第2室内ユニット35に流入した冷媒は、第2室内膨張弁38において、冷凍サイクルの低圧まで減圧される。
ここで、第1室内膨張弁33は、例えば、第1室内熱交換器31のガス側を流れる冷媒の過熱度または圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。また、第2室内膨張弁38も、同様に、例えば、第2室内熱交換器36のガス側を流れる冷媒の過熱度または圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。なお、第1室内膨張弁33および第2室内膨張弁38の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
第1室内膨張弁33において減圧された冷媒は、第1室内熱交換器31において蒸発し、第2室内膨張弁38において減圧された冷媒は、第2室内熱交換器36において蒸発し、合流した後、ガス側冷媒連絡配管5、ガス側閉鎖弁28、四路切換弁22を経て、再び、圧縮機21に吸入される。
(3−7−3)暖房運転モード
空気調和装置1fでは、暖房運転モードでは、圧縮機21は、例えば、冷媒回路10における冷媒の凝縮温度が、目標凝縮温度になるように、運転周波数が容量制御される。ここで、目標凝縮温度は、各室内ユニット30、35において設定温度と室内温度との差分が最も大きいもの(負荷が最も大きな室内ユニット)に応じて定めることが好ましい。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22、ガス側冷媒連絡配管5を流れた後、第1室内ユニット30と第2室内ユニット35にそれぞれ流入する。
第1室内ユニット30に流入した冷媒は、第1室内熱交換器31において凝縮し、第2室内ユニット35に流入した冷媒は、第2室内熱交換器36において凝縮する。
第1室内熱交換器31の液側端から流出した冷媒は、第1室内膨張弁33において、冷凍サイクルの中間圧となるまで減圧される。第2室内熱交換器36の液側端から流出した冷媒も、同様に、第2室内膨張弁38において、冷凍サイクルの中間圧となるまで減圧される。
ここで、第1室内膨張弁33は、例えば、第1室内熱交換器31の液側出口を流れる冷媒の過冷却度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。また、第2室内膨張弁38についても同様に、例えば、第2室内熱交換器36の液側出口を流れる冷媒の過冷却度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。
第1室内膨張弁33を通過した冷媒と第2室内膨張弁38を通過した冷媒は、合流した後、液側冷媒連絡配管6を経て、室外ユニット20に流入する。
室外ユニット20に流入した冷媒は、液側閉鎖弁29を通過して、中間圧レシーバ43に送られる。中間圧レシーバ43では、冷媒回路10における余剰冷媒が液冷媒として貯留される。中間圧レシーバ43を通過した冷媒は、第1分岐室外膨張弁24aと第2分岐室外膨張弁24bとに分離して流れる。
第1分岐室外膨張弁24aは、通過する冷媒を、冷凍サイクルの低圧となるまで減圧する。第2分岐室外膨張弁24bも同様に、通過する冷媒を、冷凍サイクルの低圧となるまで減圧する。
ここで、第1分岐室外膨張弁24aおよび第2分岐室外膨張弁24bは、例えば、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。なお、第1分岐室外膨張弁24aおよび第2分岐室外膨張弁24bの弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
第1分岐室外膨張弁24aで減圧された冷媒は、第1室外熱交換器23aにおいて蒸発し、第2分岐室外膨張弁24bで減圧された冷媒は、第2室外熱交換器23bにおいて蒸発し、合流した後、四路切換弁22を経て、再び、圧縮機21に吸入される。
(3−7−4)第7実施形態の特徴
空気調和装置1fでは、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いた冷凍サイクルを行うことができるため、GWPの小さい冷媒を用いて冷凍サイクルを行うことが可能になっている。
また、空気調和装置1fでは、中間圧レシーバ43を設けることにより、冷媒回路10における余剰冷媒を貯留させることが可能になっている。また、暖房運転時においては、第1室内膨張弁33と第2室内膨張弁38を過冷却度制御させることにより、室内熱交換器31の能力を十分に発揮させやすくすることが可能になっている。
(3−8)第8実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図3O、概略制御ブロック構成図である図3Pを参照しつつ、第8実施形態に係る冷凍サイクル装置としての空気調和装置1gについて説明する。なお、以下では、第3実施形態の空気調和装置1bとの違いを主に説明する。
(3−8−1)空気調和装置1gの概略構成
空気調和装置1gは、上記第3実施形態の空気調和装置1bとは、バイパス膨張弁49を有するバイパス配管40が設けられていない点、過冷却熱交換器47が設けられている点、過冷却配管46が設けられている点、第1室外膨張弁44および第2室外膨張弁45が設けられている点、過冷却温度センサ67が設けられている点において異なっている。
第1室外膨張弁44は、冷媒回路10における室外熱交換器23の液側出口から液側閉鎖弁29までの間に設けられている。第2室外膨張弁45は、冷媒回路10における第1室外膨張弁44から液側閉鎖弁29までの間に設けられている。第1室外膨張弁44と第2室外膨張弁45とは、いずれも、弁開度を調節可能な電動膨張弁であることが好ましい。
過冷却配管46は、冷媒回路10において、第1室外膨張弁44から第2室外膨張弁45までの間の分岐部分から分岐しており、四路切換弁22の接続ポートの1つから低圧レシーバ41に至るまでの間の合流箇所に合流するように設けられている。過冷却配管46には、過冷却膨張弁48が設けられている。過冷却膨張弁48は、弁開度を調節可能な電動膨張弁であることが好ましい。
過冷却熱交換器47は、冷媒回路10において第1室外膨張弁44から第2室外膨張弁45までの間の部分を流れる冷媒と、過冷却配管46において過冷却膨張弁48の合流箇所側を流れる冷媒と、の間で熱交換を行わせる熱交換器である。本実施形態では、過冷却熱交換器47は、第1室外膨張弁44から第2室外膨張弁45までの間の部分であって、過冷却配管46の分岐部分よりも第2室外膨張弁45側に設けられている。
過冷却温度センサ67は、冷媒回路10において第1室外膨張弁44から第2室外膨張弁45までの間の部分のうち、過冷却熱交換器47よりも第2室外膨張弁45側を流れる冷媒の温度を検出する温度センサである。
(3−8−2)冷房運転モード
空気調和装置1gでは、冷房運転モードでは、圧縮機21は、例えば、冷媒回路10における冷媒の蒸発温度が目標蒸発温度になるように、運転周波数が容量制御される。ここで、目標蒸発温度は、各室内ユニット30、35において設定温度と室内温度との差分が最も大きいもの(負荷が最も大きな室内ユニット)に応じて定めることが好ましい。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22を介して、室外熱交換器23において凝縮する。室外熱交換器23を流れた冷媒は、第1室外膨張弁44を通過する。なお、この場合には、第1室外膨張弁44は、全開状態となるように制御されている。
第1室外膨張弁44を通過した冷媒は、一部が第2室外膨張弁45側に向けて流れ、他の一部が、過冷却配管46に分岐して流れる。過冷却配管46に分岐して流れた冷媒は、過冷却膨張弁48において減圧される。過冷却熱交換器47では、第1室外膨張弁44から第2室外膨張弁45側に向けて流れる冷媒と、過冷却膨張弁48において減圧された過冷却配管46を流れる冷媒と、が熱交換される。過冷却配管46を流れる冷媒は、過冷却熱交換器47での熱交換を終えた後、四路切換弁22の接続ポートの1つから低圧レシーバ41に至るまでの間の合流箇所に合流するように流れる。第1室外膨張弁44から第2室外膨張弁45側に向けて流れる冷媒は、過冷却熱交換器47での熱交換を終えた後、第2室外膨張弁45において減圧される。
以上において、第2室外膨張弁45は、室外熱交換器23の液側出口を流れる冷媒の過冷却度が目標値になる等の所定条件を満たすように制御される。
また、過冷却膨張弁48の弁開度は、冷媒回路10のうち、第2室外膨張弁45から液側冷媒連絡配管6を介して第1室内膨張弁33および第2室内膨張弁38に至るまでの部分の全てが液状態の冷媒で満たされることがないように、少なくとも第1室内膨張弁33および第2室内膨張弁38に到達する冷媒が気液二相状態となるように制御される。例えば、過冷却膨張弁48の弁開度は、第1室外膨張弁44から第2室外膨張弁45側に向けて流れる冷媒であって過冷却熱交換器47を通過した冷媒の比エンタルピーが、モリエル線図において冷凍サイクルの低圧と飽和液腺とが交わる箇所の比エンタルピーよりも大きくなるように制御されることが好ましい。ここで、コントローラ7は、冷媒に対応するモリエル線図のデータを予め保持しておき、上記過冷却熱交換器47を通過した冷媒の比エンタルピーを、吐出圧力センサ61の検出圧力、過冷却温度センサ67の検出温度と、当該冷媒に対応するモリエル線図のデータと、を用いて過冷却膨張弁48の弁開度を制御してもよい。なお、過冷却膨張弁48の弁開度は、第1室外膨張弁44から第2室外膨張弁45側に向けて流れる冷媒であって過冷却熱交換器47を通過した冷媒の温度(過冷却温度センサ67の検出温度)が、目標値になる等の所定条件を満たすように制御されることがより好ましい。
第2室外膨張弁45において減圧された冷媒は、液側閉鎖弁29、液側冷媒連絡配管6を介して、第1室内ユニット30および第2室内ユニット35に送られる。
ここで、第1室内ユニット30では、第1室内膨張弁33は、例えば、第1室内熱交換器31のガス側出口を流れる冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。また、第2室内ユニット35の第2室内膨張弁38も、第1室内膨張弁33と同様に、例えば、第2室内熱交換器36のガス側出口を流れる冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。また、第1室内膨張弁33と第2室内膨張弁38は、いずれも、吸入温度センサ64の検出温度から吸入圧力センサ63の検出圧力に相当する冷媒の飽和温度を差し引くことで得られる冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御されてもよい。さらに、第1室内膨張弁33および第2室内膨張弁38の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
第1室内膨張弁33で減圧された冷媒は第1室内熱交換器31において蒸発し、第2室内膨張弁38で減圧された冷媒は第2室内熱交換器36において蒸発し、合流した後、ガス側冷媒連絡配管5に流れていく。ガス側冷媒連絡配管5を流れた冷媒は、ガス側閉鎖弁28、四路切換弁22を経て、過冷却配管46を流れた冷媒と合流する。合流した冷媒は、低圧レシーバ41を経て、再び、圧縮機21に吸入される。なお、低圧レシーバ41では、第1室内熱交換器31、第2室内熱交換器、過冷却熱交換器47において蒸発しきれなかった液冷媒が余剰冷媒として貯留される。
(3−8−3)暖房運転モード
空気調和装置1gでは、暖房運転モードでは、圧縮機21は、例えば、冷媒回路10における冷媒の凝縮温度が、目標凝縮温度になるように、運転周波数が容量制御される。ここで、目標凝縮温度は、各室内ユニット30、35において設定温度と室内温度との差分が最も大きいもの(負荷が最も大きな室内ユニット)に応じて定めることが好ましい。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22、ガス側冷媒連絡配管5を流れた後、一部の冷媒が、第1室内ユニット30の第1室内熱交換器31のガス側端に流入し、第1室内熱交換器31において凝縮し、他の一部の冷媒が、第2室内ユニット35の第2室内熱交換器36のガス側端に流入し、第2室内熱交換器36において凝縮する。
なお、第1室内ユニット30の第1室内膨張弁33は、第1室内熱交換器31の液側を流れる冷媒の過冷却度が所定の目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。第2室内ユニット35の第2室内膨張弁38についても同様に、第2室内熱交換器36の液側を流れる冷媒の過冷却度が所定の目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。
第1室内膨張弁33で減圧された冷媒および第2室内膨張弁38で減圧された冷媒は、合流し、液側冷媒連絡配管6を流れて、室外ユニット20に流入する。
室外ユニット20の液側閉鎖弁29を通過した冷媒は、全開状態に制御された第2室外膨張弁45を通過し、過冷却熱交換器47において、過冷却配管46を流れる冷媒と熱交換する。第2室外膨張弁45を通過して過冷却熱交換器47を通過した冷媒は、一部が過冷却配管46に分岐され、他の一部が第1室外膨張弁44に送られる。過冷却配管46に分岐して流れた冷媒は、過冷却膨張弁48において減圧された後、四路切換弁22の接続ポートの1つと低圧レシーバ41との間の合流箇所において、各室内ユニット30、35から流れてきた冷媒と合流する。また、過冷却熱交換器47から第1室外膨張弁44に向けて流れてきた冷媒は、第1室外膨張弁44において減圧され、室外熱交換器23に流入する。
ここで、第1室外膨張弁44は、例えば、圧縮機21の吸入側を流れる冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。なお、第1室外膨張弁44の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
また、過冷却膨張弁48は、圧縮機21の吸入側を流れる冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。なお、過冷却膨張弁48の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。また、暖房運転時においては、過冷却配管46に冷媒が流れないように、過冷却膨張弁48を全閉状態に制御してもよい。
第1室外膨張弁44で減圧された冷媒は、室外熱交換器23において蒸発し、四路切換弁22を経て、過冷却配管46を流れた冷媒と合流する。合流した冷媒は、低圧レシーバ41を経て、再び、圧縮機21に吸入される。なお、低圧レシーバ41では、室外熱交換器23、過冷却熱交換器47において蒸発しきれなかった液冷媒が余剰冷媒として貯留される。
(3−8−4)第8実施形態の特徴
空気調和装置1gでは、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いた冷凍サイクルを行うことができるため、GWPの小さい冷媒を用いて冷凍サイクルを行うことが可能になっている。
また、空気調和装置1gでは、低圧レシーバ41を設けることにより、圧縮機21における液圧縮を抑制することができている。また、冷房運転時には、第1室内膨張弁33、第2室内膨張弁38を過熱度制御することで、暖房運転時には、第1室内膨張弁33、第2室内膨張弁38を過冷却度制御することで、第1室内熱交換器31、第2室内熱交換器36における能力を十分に発揮させやすい。
さらに、空気調和装置1gでは、冷房運転時において、第2室外膨張弁45を通過して、液側冷媒連絡配管6を経て、第1室内膨張弁33、第2室内膨張弁38に至るまでの配管内部の空間を、液状態で満たすのではなく、少なくとも一部において気液二相状態の冷媒が存在するように制御されている。このため、第2室外膨張弁45から第1室内膨張弁33および第2室内膨張弁38に至るまでの配管内部の空間が全て液冷媒で満たされている場合と比べて、当該箇所の冷媒密度を低下させることができる。このため、冷媒回路10に封入されている冷媒の量を少なく抑えて、冷凍サイクルを行うことが可能になっている。したがって、仮に、冷媒回路10から冷媒が漏洩することがあったとしても、漏洩冷媒量を少なく抑えることが可能になっている。
(3−9)第9実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図3Q、概略制御ブロック構成図である図3Rを参照しつつ、第9実施形態に係る冷凍サイクル装置としての空気調和装置1hについて説明する。なお、以下では、第6実施形態の空気調和装置1eとの違いを主に説明する。
(3−9−1)空気調和装置1hの概略構成
空気調和装置1hは、上記第6実施形態の空気調和装置1eとは、吸入冷媒加熱部50を有している点で異なっている。
吸入冷媒加熱部50は、四路切換弁22の接続ポートの1つから圧縮機21の吸入側に向けて延びる冷媒配管の一部が中間圧レシーバ43内に位置する部分により構成されている。この吸入冷媒加熱部50では、四路切換弁22の接続ポートの1つから圧縮機21の吸入側に向けて延びる冷媒配管を流れる冷媒と、中間圧レシーバ43内に存在している冷媒とは、冷媒同士は混ざり合うことなく、互いに熱交換を行う。
(3−9−2)冷房運転モード
空気調和装置1hでは、冷房運転モードでは、圧縮機21は、例えば、冷媒回路10における冷媒の蒸発温度が、設定温度と室内温度(室内空気温度センサ72の検出温度)との差分に応じて定まる目標蒸発温度になるように、運転周波数が容量制御される。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22を通過した後、室外熱交換器23において凝縮する。室外熱交換器23を流れた冷媒は、第1室外膨張弁44において、冷凍サイクルにおける中間圧力まで減圧される。
ここで、第1室外膨張弁44は、例えば、室外熱交換器23の液側出口を流れる冷媒の過冷却度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。
第1室外膨張弁44において減圧された冷媒は、中間圧レシーバ43に流入する。中間圧レシーバ43では、冷媒回路10における余剰冷媒が液冷媒として貯留される。ここで、中間圧レシーバ43に流入した冷媒は、吸入冷媒加熱部50における圧縮機21の吸入側を流れる冷媒との熱交換により、冷却される。中間圧レシーバ43内の吸入冷媒加熱部50において冷却された冷媒は、第2室外膨張弁45において、冷凍サイクルの低圧まで減圧される。
ここで、第2室外膨張弁45は、例えば、室内熱交換器31のガス側を流れる冷媒の過熱度または圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。なお、第2室外膨張弁45の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
第2室外膨張弁45において冷凍サイクルの低圧まで減圧された冷媒は、液側閉鎖弁29、液側冷媒連絡配管6を介して室内ユニット30に流入し、室内熱交換器31において蒸発する。室内熱交換器31を流れた冷媒は、ガス側冷媒連絡配管5を流れた後、ガス側閉鎖弁28、四路切換弁22を経て、中間圧レシーバ43の内部を通過する冷媒配管内を流れる。中間圧レシーバ43の内部を通過する冷媒配管内を流れる冷媒は、中間圧レシーバ43内の吸入冷媒加熱部50において中間圧レシーバ43に貯留されている冷媒と熱交換を行うことで加熱され、再び、圧縮機21に吸入される。
(3−9−3)暖房運転モード
空気調和装置1hでは、暖房運転モードでは、圧縮機21は、例えば、冷媒回路10における冷媒の凝縮温度が、設定温度と室内温度(室内空気温度センサ72の検出温度)との差分に応じて定まる目標凝縮温度になるように、運転周波数が容量制御される。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22、ガス側冷媒連絡配管5を流れた後、室内ユニット30の室内熱交換器31のガス側端に流入し、室内熱交換器31において凝縮する。室内熱交換器31の液側端から流出した冷媒は、液側冷媒連絡配管6を経て、室外ユニット20に流入し、液側閉鎖弁29を通過して、第2室外膨張弁45において冷凍サイクルにおける中間圧になるまで減圧される。
ここで、第2室外膨張弁45は、例えば、室内熱交換器31の液側出口を流れる冷媒の過冷却度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。
第2室外膨張弁45において減圧された冷媒は、中間圧レシーバ43に流入する。中間圧レシーバ43では、冷媒回路10における余剰冷媒が液冷媒として貯留される。ここで、中間圧レシーバ43に流入した冷媒は、吸入冷媒加熱部50における圧縮機21の吸入側を流れる冷媒との熱交換により、冷却される。中間圧レシーバ43内の吸入冷媒加熱部50において冷却された冷媒は、第1室外膨張弁44において、冷凍サイクルの低圧まで減圧される。
ここで、第1室外膨張弁44は、例えば、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。なお、第1室外膨張弁44の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
第1室外膨張弁44で減圧された冷媒は、室外熱交換器23において蒸発し、四路切換弁22を経て、中間圧レシーバ43の内部を通過する冷媒配管内を流れる。中間圧レシーバ43の内部を通過する冷媒配管内を流れる冷媒は、中間圧レシーバ43内の吸入冷媒加熱部50において中間圧レシーバ43に貯留されている冷媒と熱交換を行うことで加熱され、再び、圧縮機21に吸入される。
(3−9−4)第9実施形態の特徴
空気調和装置1hでは、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いた冷凍サイクルを行うことができるため、GWPの小さい冷媒を用いて冷凍サイクルを行うことが可能になっている。
また、空気調和装置1hでは、中間圧レシーバ43を設けることにより、冷媒回路10における余剰冷媒を貯留させることが可能になっている。また、冷房運転時においては、第1室外膨張弁44を過冷却度制御させることにより、室外熱交換器23の能力を十分に発揮させやすく、暖房運転時においては、第2室外膨張弁45を過冷却度制御させることにより、室内熱交換器31の能力を十分に発揮させやすくすることが可能になっている。
さらに、吸入冷媒加熱部50が設けられていることで、圧縮機21に吸入される冷媒が加熱され、圧縮機21における液圧縮が抑制されるため、冷房運転において冷媒の蒸発器として機能する室内熱交換器31の出口を流れる冷媒の過熱度が小さい値となるように制御させることが可能になる。また、暖房運転においても同様に、冷媒の蒸発器として機能する室外熱交換器23の出口を流れる冷媒の過熱度が小さい値となるように制御させることが可能になる。これにより、冷房運転と暖房運転のいずれにおいても、冷媒として非共沸混合冷媒が用いられることで蒸発器内において温度グライドが生じる場合であっても、蒸発器として機能させる熱交換器において十分に能力を発揮させることができる。
(3−10)第10実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図3S、概略制御ブロック構成図である図3Tを参照しつつ、第10実施形態に係る冷凍サイクル装置としての空気調和装置1iについて説明する。なお、以下では、第9実施形態の空気調和装置1hとの違いを主に説明する。
(3−10−1)空気調和装置1iの概略構成
空気調和装置1iは、上記第9実施形態の空気調和装置1hとは、第1室外膨張弁44と第2室外膨張弁45が設けられておらず、室外膨張弁24が設けられている点、複数の室内ユニット(第1室内ユニット30と第2室内ユニット35)が並列に設けられている点、および、各室内ユニットにおいて室内熱交換器の液冷媒側に室内膨張弁が設けられている点で異なっている。
室外膨張弁24は、室外熱交換器23の液側の出口から中間圧レシーバ43に至るまで延びている冷媒配管の途中に設けられている。室外膨張弁24は、弁開度を調節可能な電動膨張弁であることが好ましい。
第1室内ユニット30は、上記実施形態と同様に、第1室内熱交換器31、第1室内ファン32を有しており、第1室内熱交換器31の液冷媒側において第1室内膨張弁33が設けられている。第1室内膨張弁33は、弁開度を調節可能な電動膨張弁であることが好ましい。第1室内ユニット30には、上記実施形態と同様に、第1室内ユニット制御部34と、第1室内ユニット制御部34に対して電気的に接続された第1室内液側熱交温度センサ71、第1室内空気温度センサ72、第1室内ガス側熱交温度センサ73等が設けられている。第2室内ユニット35は、第1室内ユニット30と同様に、第2室内熱交換器36、第2室内ファン37を有しており、第2室内熱交換器36の液冷媒側において第2室内膨張弁38が設けられている。第2室内膨張弁38は、弁開度を調節可能な電動膨張弁であることが好ましい。第2室内ユニット35には、第1室内ユニット30と同様に、第2室内ユニット制御部39と、第2室内ユニット制御部39に対して電気的に接続された第2室内液側熱交温度センサ75、第2室内空気温度センサ76、第2室内ガス側熱交温度センサ77が設けられている。
(3−10−2)冷房運転モード
空気調和装置1iでは、冷房運転モードでは、圧縮機21は、例えば、冷媒回路10における冷媒の蒸発温度が目標蒸発温度になるように、運転周波数が容量制御される。ここで、目標蒸発温度は、各室内ユニット30、35において設定温度と室内温度との差分が最も大きいもの(負荷が最も大きな室内ユニット)に応じて定めることが好ましい。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22を通過した後、室外熱交換器23において凝縮する。室外熱交換器23を流れた冷媒は、全開状態に制御された室外膨張弁24を通過する。
室外膨張弁24を通過した冷媒は、中間圧レシーバ43に流入する。中間圧レシーバ43では、冷媒回路10における余剰冷媒が液冷媒として貯留される。ここで、中間圧レシーバ43に流入した冷媒は、吸入冷媒加熱部50における圧縮機21の吸入側を流れる冷媒との熱交換により、冷却される。中間圧レシーバ43内の吸入冷媒加熱部50において冷却された冷媒は、液側閉鎖弁29、液側冷媒連絡配管6を介して、第1室内ユニット30および第2室内ユニット35にそれぞれ流入する。
第1室内ユニット31に流入した冷媒は、第1室内膨張弁33において、冷凍サイクルの低圧まで減圧される。また、第2室内ユニット35に流入した冷媒は、第2室内膨張弁38において、冷凍サイクルの低圧まで減圧される。
ここで、第1室内膨張弁33は、例えば、第1室内熱交換器31のガス側を流れる冷媒の過熱度または圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。また、第2室内膨張弁38も、同様に、例えば、第2室内熱交換器36のガス側を流れる冷媒の過熱度または圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。
第1室内膨張弁33において減圧された冷媒は、第1室内熱交換器31において蒸発し、第2室内膨張弁38において減圧された冷媒は、第2室内熱交換器36において蒸発し、合流した後、ガス側冷媒連絡配管5を流れ、ガス側閉鎖弁28、四路切換弁22を経て、中間圧レシーバ43の内部を通過する冷媒配管内を流れる。中間圧レシーバ43の内部を通過する冷媒配管内を流れる冷媒は、中間圧レシーバ43内の吸入冷媒加熱部50において中間圧レシーバ43に貯留されている冷媒と熱交換を行うことで加熱され、再び、圧縮機21に吸入される。
(3−10−3)暖房運転モード
空気調和装置1iでは、暖房運転モードでは、圧縮機21は、例えば、冷媒回路10における冷媒の凝縮温度が、目標凝縮温度になるように、運転周波数が容量制御される。ここで、目標凝縮温度は、各室内ユニット30、35において設定温度と室内温度との差分が最も大きいもの(負荷が最も大きな室内ユニット)に応じて定めることが好ましい。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22、ガス側冷媒連絡配管5を流れた後、第1室内ユニット30と第2室内ユニット35にそれぞれ流入する。
第1室内ユニット30に流入した冷媒は、第1室内熱交換器31において凝縮し、第2室内ユニット35に流入した冷媒は、第2室内熱交換器36において凝縮する。
第1室内熱交換器31の液側端から流出した冷媒は、第1室内膨張弁33において、冷凍サイクルの中間圧となるまで減圧される。第2室内熱交換器36の液側端から流出した冷媒も、同様に、第2室内膨張弁38において、冷凍サイクルの中間圧となるまで減圧される。
ここで、第1室内膨張弁33は、例えば、第1室内熱交換器31の液側出口を流れる冷媒の過冷却度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。また、第2室内膨張弁38についても同様に、例えば、第2室内熱交換器36の液側出口を流れる冷媒の過冷却度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。
第1室内膨張弁33を通過した冷媒と第2室内膨張弁38を通過した冷媒は、合流した後、液側冷媒連絡配管6を経て、室外ユニット20に流入する。
室外ユニット20に流入した冷媒は、液側閉鎖弁29を通過して、中間圧レシーバ43に流入する。中間圧レシーバ43では、冷媒回路10における余剰冷媒が液冷媒として貯留される。ここで、中間圧レシーバ43に流入した冷媒は、吸入冷媒加熱部50における圧縮機21の吸入側を流れる冷媒との熱交換により、冷却される。中間圧レシーバ43内の吸入冷媒加熱部50において冷却された冷媒は、室外膨張弁24において、冷凍サイクルの低圧まで減圧される。
ここで、室外膨張弁24は、例えば、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。なお、室外膨張弁24の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
室外膨張弁24で減圧された冷媒は、室外熱交換器23において蒸発し、四路切換弁22を経て、中間圧レシーバ43の内部を通過する冷媒配管内を流れる。中間圧レシーバ43の内部を通過する冷媒配管内を流れる冷媒は、中間圧レシーバ43内の吸入冷媒加熱部50において中間圧レシーバ43に貯留されている冷媒と熱交換を行うことで加熱され、再び、圧縮機21に吸入される。
(3−10−4)第10実施形態の特徴
空気調和装置1iでは、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いた冷凍サイクルを行うことができるため、GWPの小さい冷媒を用いて冷凍サイクルを行うことが可能になっている。
また、空気調和装置1iでは、中間圧レシーバ43を設けることにより、冷媒回路10における余剰冷媒を貯留させることが可能になっている。また、暖房運転時においては、第2室外膨張弁45を過冷却度制御させることにより、室内熱交換器31の能力を十分に発揮させやすくすることが可能になっている。
さらに、吸入冷媒加熱部50が設けられていることで、圧縮機21に吸入される冷媒が加熱され、圧縮機21における液圧縮が抑制されるため、冷房運転において冷媒の蒸発器として機能する室内熱交換器31の出口を流れる冷媒の過熱度が小さい値となるように制御させることが可能になる。また、暖房運転においても同様に、冷媒の蒸発器として機能する室外熱交換器23の出口を流れる冷媒の過熱度が小さい値となるように制御させることが可能になる。これにより、冷房運転と暖房運転のいずれにおいても、冷媒として非共沸混合冷媒が用いられることで蒸発器内において温度グライドが生じる場合であっても、蒸発器として機能させる熱交換器において十分に能力を発揮させることができる。
(3−11)第11実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図3U、概略制御ブロック構成図である図3Vを参照しつつ、第11実施形態に係る冷凍サイクル装置としての空気調和装置1jについて説明する。なお、以下では、第9実施形態の空気調和装置1hとの違いを主に説明する。
(3−11−1)空気調和装置1jの概略構成
空気調和装置1jは、上記第9実施形態の空気調和装置1hとは、吸入冷媒加熱部50が設けられておらず、内部熱交換器51が設けられている点で異なっている。
内部熱交換器51は、第1室外膨張弁44と第2室外膨張弁45との間を流れる冷媒と、四路切換弁22の接続ポートの1つから圧縮機21の吸入側に向けて延びる冷媒配管を流れる冷媒と、の間で熱交換を行わせる熱交換器である。
(3−11−2)冷房運転モード
空気調和装置1jでは、冷房運転モードでは、圧縮機21は、例えば、冷媒回路10における冷媒の蒸発温度が、設定温度と室内温度(室内空気温度センサ72の検出温度)との差分に応じて定まる目標蒸発温度になるように、運転周波数が容量制御される。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22を通過した後、室外熱交換器23において凝縮する。室外熱交換器23を流れた冷媒は、全開状態に制御された第1室外膨張弁44を通過する。第1室外膨張弁44を通過した冷媒は、内部熱交換器51において冷却され、第2室外膨張弁45において冷凍サイクルの低圧まで減圧される。
ここで、第2室外膨張弁45は、例えば、室内熱交換器31のガス側を流れる冷媒の過熱度または圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。なお、第2室外膨張弁45の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
第2室外膨張弁45において冷凍サイクルの低圧まで減圧された冷媒は、液側閉鎖弁29、液側冷媒連絡配管6を介して室内ユニット30に流入し、室内熱交換器31において蒸発する。室内熱交換器31を流れた冷媒は、ガス側冷媒連絡配管5を流れた後、ガス側閉鎖弁28、四路切換弁22を経て、内部熱交換器51において加熱され、再び、圧縮機21に吸入される。
(3−11−3)暖房運転モード
空気調和装置1jでは、暖房運転モードでは、圧縮機21は、例えば、冷媒回路10における冷媒の凝縮温度が、設定温度と室内温度(室内空気温度センサ72の検出温度)との差分に応じて定まる目標凝縮温度になるように、運転周波数が容量制御される。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22、ガス側冷媒連絡配管5を流れた後、室内ユニット30の室内熱交換器31のガス側端に流入し、室内熱交換器31において凝縮する。室内熱交換器31の液側端から流出した冷媒は、液側冷媒連絡配管6を経て、室外ユニット20に流入し、液側閉鎖弁29を通過して、全開状態に制御された第2室外膨張弁45を通過する。第2室外膨張弁45を通過した冷媒は、内部熱交換器51において冷却され、第1室外膨張弁44において冷凍サイクルにおける中間圧になるまで減圧される。
ここで、第1室外膨張弁44は、例えば、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。なお、第1室外膨張弁44の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
第1室外膨張弁44で減圧された冷媒は、室外熱交換器23において蒸発し、四路切換弁22を経て、内部熱交換器51において加熱され、再び、圧縮機21に吸入される。
(3−11−4)第11実施形態の特徴
空気調和装置1jでは、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いた冷凍サイクルを行うことができるため、GWPの小さい冷媒を用いて冷凍サイクルを行うことが可能になっている。
また、空気調和装置1jでは、内部熱交換器51が設けられていることで、圧縮機21に吸入される冷媒が加熱され、圧縮機21における液圧縮が抑制されるため、冷房運転において冷媒の蒸発器として機能する室内熱交換器31の出口を流れる冷媒の過熱度が小さい値となるように制御させることが可能になる。また、暖房運転においても同様に、冷媒の蒸発器として機能する室外熱交換器23の出口を流れる冷媒の過熱度が小さい値となるように制御させることが可能になる。これにより、冷房運転と暖房運転のいずれにおいても、冷媒として非共沸混合冷媒が用いられることで蒸発器内において温度グライドが生じる場合であっても、蒸発器として機能させる熱交換器において十分に能力を発揮させることができる。
(3−12)第12実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図3W、概略制御ブロック構成図である図3Xを参照しつつ、第12実施形態に係る冷凍サイクル装置としての空気調和装置1kについて説明する。なお、以下では、第10実施形態の空気調和装置1jとの違いを主に説明する。
(3−12−1)空気調和装置1kの概略構成
空気調和装置1kは、上記第10実施形態の空気調和装置1jとは、第1室外膨張弁44と第2室外膨張弁45が設けられておらず、室外膨張弁24が設けられている点、複数の室内ユニット(第1室内ユニット30と第2室内ユニット35)が並列に設けられている点、および、各室内ユニットにおいて室内熱交換器の液冷媒側に室内膨張弁が設けられている点で異なっている。
室外膨張弁24は、内部熱交換器51から液側閉鎖弁29まで延びる冷媒配管の途中に設けられている。室外膨張弁24は、弁開度を調節可能な電動膨張弁であることが好ましい。
第1室内ユニット30は、上記実施形態と同様に、第1室内熱交換器31、第1室内ファン32を有しており、第1室内熱交換器31の液冷媒側において第1室内膨張弁33が設けられている。第1室内膨張弁33は、弁開度を調節可能な電動膨張弁であることが好ましい。第1室内ユニット30には、上記実施形態と同様に、第1室内ユニット制御部34と、第1室内ユニット制御部34に対して電気的に接続された第1室内液側熱交温度センサ71、第1室内空気温度センサ72、第1室内ガス側熱交温度センサ73等が設けられている。第2室内ユニット35は、第1室内ユニット30と同様に、第2室内熱交換器36、第2室内ファン37を有しており、第2室内熱交換器36の液冷媒側において第2室内膨張弁38が設けられている。第2室内膨張弁38は、弁開度を調節可能な電動膨張弁であることが好ましい。第2室内ユニット35には、第1室内ユニット30と同様に、第2室内ユニット制御部39と、第2室内ユニット制御部39に対して電気的に接続された第2室内液側熱交温度センサ75、第2室内空気温度センサ76、第2室内ガス側熱交温度センサ77が設けられている。
(3−12−2)冷房運転モード
空気調和装置1kでは、冷房運転モードでは、圧縮機21は、例えば、冷媒回路10における冷媒の蒸発温度が目標蒸発温度になるように、運転周波数が容量制御される。ここで、目標蒸発温度は、各室内ユニット30、35において設定温度と室内温度との差分が最も大きいもの(負荷が最も大きな室内ユニット)に応じて定めることが好ましい。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22を通過した後、室外熱交換器23において凝縮する。室外熱交換器23を流れた冷媒は、内部熱交換器51において冷却され、全開状態に制御された室外膨張弁24を通過し、液側閉鎖弁29、液側閉鎖弁29、液側冷媒連絡配管6を介して第1室内ユニット30および第2室内ユニット35にそれぞれ流入する。
第1室内ユニット31に流入した冷媒は、第1室内膨張弁33において、冷凍サイクルの低圧まで減圧される。また、第2室内ユニット35に流入した冷媒は、第2室内膨張弁38において、冷凍サイクルの低圧まで減圧される。
ここで、第1室内膨張弁33は、例えば、第1室内熱交換器31のガス側を流れる冷媒の過熱度または圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。また、第2室内膨張弁38も、同様に、例えば、第2室内熱交換器36のガス側を流れる冷媒の過熱度または圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。
第1室内膨張弁33において減圧された冷媒は、第1室内熱交換器31において蒸発し、第2室内膨張弁38において減圧された冷媒は、第2室内熱交換器36において蒸発し、合流した後、ガス側冷媒連絡配管5を流れ、ガス側閉鎖弁28、四路切換弁22を経て、内部熱交換器51において加熱され、再び、圧縮機21に吸入される。
(3−12−3)暖房運転モード
空気調和装置1kでは、暖房運転モードでは、圧縮機21は、例えば、冷媒回路10における冷媒の凝縮温度が、目標凝縮温度になるように、運転周波数が容量制御される。ここで、目標凝縮温度は、各室内ユニット30、35において設定温度と室内温度との差分が最も大きいもの(負荷が最も大きな室内ユニット)に応じて定めることが好ましい。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22、ガス側冷媒連絡配管5を流れた後、第1室内ユニット30と第2室内ユニット35にそれぞれ流入する。
第1室内ユニット30に流入した冷媒は、第1室内熱交換器31において凝縮し、第2室内ユニット35に流入した冷媒は、第2室内熱交換器36において凝縮する。
第1室内熱交換器31の液側端から流出した冷媒は、第1室内膨張弁33において、冷凍サイクルの中間圧となるまで減圧される。第2室内熱交換器36の液側端から流出した冷媒も、同様に、第2室内膨張弁38において、冷凍サイクルの中間圧となるまで減圧される。
ここで、第1室内膨張弁33は、例えば、第1室内熱交換器31の液側出口を流れる冷媒の過冷却度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。また、第2室内膨張弁38についても同様に、例えば、第2室内熱交換器36の液側出口を流れる冷媒の過冷却度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。
第1室内膨張弁33を通過した冷媒と第2室内膨張弁38を通過した冷媒は、合流した後、液側冷媒連絡配管6を経て、室外ユニット20に流入する。
室外ユニット20に流入した冷媒は、液側閉鎖弁29を通過して、室外膨張弁24において、冷凍サイクルの低圧まで減圧される。
ここで、室外膨張弁24は、例えば、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。なお、室外膨張弁24の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
室外膨張弁24で減圧された冷媒は、室外熱交換器23において蒸発し、四路切換弁22を経て、内部熱交換器51において加熱され、再び、圧縮機21に吸入される。
(3−12−4)第12実施形態の特徴
空気調和装置1kでは、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いた冷凍サイクルを行うことができるため、GWPの小さい冷媒を用いて冷凍サイクルを行うことが可能になっている。
また、空気調和装置1kでは、暖房運転時においては、第1室内膨張弁33、第2室内膨張弁38を過冷却度制御させることにより、第1室内熱交換器31および第2室内熱交換器36の能力を十分に発揮させやすくすることが可能になっている。
さらに、空気調和装置1kには、内部熱交換器51が設けられていることで、圧縮機21に吸入される冷媒が加熱され、圧縮機21における液圧縮が抑制されるため、冷房運転において冷媒の蒸発器として機能する第1室内熱交換器31や第2室内熱交換器36の出口を流れる冷媒の過熱度が小さい値となるように制御させることが可能になる。また、暖房運転においても同様に、冷媒の蒸発器として機能する室外熱交換器23の出口を流れる冷媒の過熱度が小さい値となるように制御させることが可能になる。これにより、冷房運転と暖房運転のいずれにおいても、冷媒として非共沸混合冷媒が用いられることで蒸発器内において温度グライドが生じる場合であっても、蒸発器として機能させる熱交換器において十分に能力を発揮させることができる。
(4)第4グループの技術の実施形態
(4−1)第1実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図4A、概略制御ブロック構成図である図4Bを参照しつつ、第1実施形態に係る熱交換ユニットとしての室内ユニットおよび熱交換ユニットとしての室外ユニットとを備えた冷凍サイクル装置である空気調和装置1について説明する。
空気調和装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うことで、対象空間の空気を調和させる装置である。
空気調和装置1は、主として、室外ユニット20と、室内ユニット30と、室外ユニット20と室内ユニット30を接続する液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5と、入力装置および出力装置としての図示しないリモコンと、空気調和装置1の動作を制御するコントローラ7と、を有している。
空気調和装置1では、冷媒回路10内に封入された冷媒が、圧縮され、冷却又は凝縮され、減圧され、加熱又は蒸発された後に、再び圧縮される、という冷凍サイクルが行われる。本実施形態では、冷媒回路10には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が充填されている。当該冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。また、冷媒回路10には、当該冷媒と共に、冷凍機油が充填されている。
(4−1−1)室外ユニット20
室外ユニット20は、図4Cに示すように、外観が略直方体箱状の室外筐体50により構成されている。この室外ユニット20は、図4Dに示すように、仕切板50aによって内部空間が左右に分割されることで、送風機室および機械室が形成されている。
この室外ユニット20は、液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5を介して室内ユニット30と接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。室外ユニット20は、主として、圧縮機21と、四路切換弁22と、室外熱交換器23と、室外膨張弁24と、室外ファン25と、液側閉鎖弁29と、ガス側閉鎖弁28と、室外筐体50と、室外電装品ユニット8と、を有している。
圧縮機21は、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒を高圧になるまで圧縮する機器である。ここでは、圧縮機21として、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素(図示省略)が圧縮機モータによって回転駆動される密閉式構造の圧縮機が使用されている。圧縮機モータは、容量を変化させるためのものであり、インバータにより運転周波数の制御が可能である。なお、圧縮機21には、吸入側において、図示しない付属アキュムレータが設けられている。
四路切換弁22は、接続状態を切り換えることで、圧縮機21の吐出側と室外熱交換器23とを接続しつつ圧縮機21の吸入側とガス側閉鎖弁28とを接続する冷房運転接続状態と、圧縮機21の吐出側とガス側閉鎖弁28とを接続しつつ圧縮機21の吸入側と室外熱交換器23とを接続する暖房運転接続状態と、を切り換えることができる。
室外熱交換器23は、冷房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の凝縮器として機能し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能する熱交換器である。室外熱交換器23は、板厚方向に重ねて配置された複数の伝熱フィン23aと、複数の伝熱フィン23aに貫通固定された複数の伝熱管23bと、を有するクロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器である。
室外ファン25は、室外ユニット20内に室外の空気を吸入して、室外熱交換器23において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための空気流れを生じさせる。室外ファン25は、室外ファンモータによって回転駆動される。なお、本実施形態において、室外ファン25は、1つだけ設けられている。
室外膨張弁24は、弁開度を制御可能であり、室外熱交換器23の液側端部と液側閉鎖弁29との間に設けられている。
液側閉鎖弁29は、液側冷媒連絡配管6に対して室外ユニット20が接続される部分に配置された手動弁であり、液側冷媒連絡配管6とはフレア接続される。液側閉鎖弁29と室外熱交換器23の液側出口とは、室外液側冷媒配管29aによって接続されている。室外膨張弁24は、当該室外液側冷媒配管29aの途中に設けられている。
ガス側閉鎖弁28は、ガス側冷媒連絡配管5に対して室外ユニット20が接続される部分に配置された手動弁であり、ガス側冷媒連絡配管5とはフレア接続される。ガス側閉鎖弁28と四路切換弁22の接続ポートの1つとは、室外ガス側冷媒配管28aによって接続されている。
室外筐体50は、図4Cに示すように、吹出口52が設けられた箱状体であり、内部に上記室外ユニット20の構成要素を収容した室外筐体50を有している。室外筐体50は、略直方体形状であり、背面側および一側面側(図4C中の左側)から屋外の空気を取り込むことが可能であり、室外熱交換器23を通過した空気を前面51に形成された吹出口52を介して前側に吹き出すことが可能である。室外筐体50の下端部分は底板53によって覆われている。底板53の上には、図4Dに示すように、背面側および一側面側に沿うように室外熱交換器23が立設されている。この底板53の上面は、ドレンパンとして機能することができる。
室外電装品ユニット8は、室外ユニット20を構成する各部の動作を制御する室外ユニット制御部27を備えている。室外電装品ユニット8は、室外ユニット20の室外筐体50の内部のうち仕切板50aで区切られた機械室側の空間における圧縮機21の上方に配置されており、仕切板50aに対して固定されている。室外電装品ユニット8の下端部分は、液側閉鎖弁29およびガス側閉鎖弁28よりも鉛直方向上方に配置されている。室外電装品ユニット8は、液側閉鎖弁29およびガス側閉鎖弁28よりもさらに10cm以上上方に離れて配置されていることが好ましい。室外電装品ユニット8が備える室外ユニット制御部27は、CPUやメモリ等を含むマイクロコンピュータを有している。室外ユニット制御部27は、各室内ユニット30の室内ユニット制御部34と通信線を介して接続されており、制御信号等の送受信を行う。また、室外ユニット制御部27は、図示しない各種センサと電気的に接続されており、各センサからの信号を受信する。
(4−1−2)室内ユニット30
室内ユニット30は、対象空間である室内の壁面等に設置されている。室内ユニット30は、液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5を介して室外ユニット20と接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。
室内ユニット30は、室内熱交換器31と、室内ファン32と、室内液側接続部11と、室内ガス側接続部13と、室内筐体54と、室内電装品ユニット9等を有している。
室内熱交換器31は、液側が、液側冷媒連絡配管6と接続され、ガス側端が、ガス側冷媒連絡配管5とを接続されている。室内熱交換器31は、冷房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の凝縮器として機能する熱交換器である。室内熱交換器31は、板厚方向に重ねて配置された複数の伝熱フィン31aと、複数の伝熱フィン31aに貫通固定された複数の伝熱管31bと、を有している。
室内液側接続部11は、室内熱交換器31の液側から延びる室内液側冷媒配管12の端部に設けられており、液側冷媒連絡配管6に対してフレア接続される接続部分である。
室内ガス側接続部13は、室内熱交換器31のガス側から延びる室内ガス側冷媒配管14の端部に設けられており、ガス側冷媒連絡配管5に対してフレア接続される接続部分である。
室内ファン32は、室内ユニット30の室内筐体54内に室内の空気を吸入して、室内熱交換器31において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための空気流れを生じさせる。室内ファン32は、図示しない室内ファンモータによって回転駆動される。
室内筐体54は、図4E、図4F、図4Gに示すように、室内熱交換器31、室内ファン32、室内ユニット制御部34を内部に収容する略直方体形状の筐体である。室内筐体54は、室内筐体54の上端部を構成する天面55、室内筐体54の前部を構成する前面パネル56、室内筐体54の底部を構成する底面57、吹出口58a、ルーバ58、左右の側面59、および室内の壁面と対向する背面等を有している。天面55には、上下方向に開口した複数の天面吸込口55aが設けられている。前面パネル56は、天面55の前側端部近傍から下方に広がるパネルである。前面パネル56は、上方部分において左右に細長い開口からなる前面吸込口56aが設けられている。室内の空気は、これらの天面吸込口55aおよび前面吸込口56aを介して室内筐体54内の室内熱交換器31および室内ファン32が収納されている空間からなる通風路に取り込まれる。底面57は、室内熱交換器31や室内ファン32の下方において略水平に広がっている。吹出口58aは、前面パネル56の下方であって底面57の前側である、室内筐体54の前側下方において、前側下方に向けて開口している。右側の側面59の背面側の下方には、側方に向いた開口が設けられており、当該開口付近には、室内液側接続部11および室内ガス側接続部13が位置している。
室内電装品ユニット9は、室内ユニット30を構成する各部の動作を制御する室内ユニット制御部34を備えている。室内電装品ユニット9は、室内ユニット30の室内筐体54の内部のうち室内熱交換器31よりも右側の側端部近傍の上方に位置するように固定されている。室内電装品ユニット9の下端部分は、室内液側接続部11および室内ガス側接続部13よりも鉛直方向上方に配置されている。室内電装品ユニット9は、室内液側接続部11および室内ガス側接続部13よりもさらに10cm以上上方に離れて配置されていることが好ましい。室内電装品ユニット9が備える室内ユニット制御部34は、CPUやメモリ等を含むマイクロコンピュータを有している。室内ユニット制御部34は、室外ユニット制御部27と通信線を介して接続されており、制御信号等の送受信を行う。また、室内ユニット制御部34は、室内ユニット30内に設けられている図示しない各種センサと電気的に接続されており、各センサからの信号を受信する。
(4−1−3)コントローラ7の詳細
空気調和装置1では、室外ユニット制御部27と室内ユニット制御部34が通信線を介して接続されることで、空気調和装置1の動作を制御するコントローラ7が構成されている。
コントローラ7は、主として、CPU(中央演算処理装置)と、ROMやRAM等のメモリを有している。なお、コントローラ7による各種処理や制御は、室外ユニット制御部27および/又は室内ユニット制御部34に含まれる各部が一体的に機能することによって実現されている。
(4−1−4)運転モード
以下、運転モードについて説明する。
運転モードとしては、冷房運転モードと暖房運転モードとが設けられている。
コントローラ7は、リモコン等から受け付けた指示に基づいて、冷房運転モードか暖房運転モードかを判断し、実行する。
(4−1−4−1)冷房運転モード
空気調和装置1では、冷房運転モードでは、四路切換弁22の接続状態を圧縮機21の吐出側と室外熱交換器23とを接続しつつ圧縮機21の吸入側とガス側閉鎖弁28とを接続する冷房運転接続状態とし、冷媒回路10に充填されている冷媒を、主として、圧縮機21、室外熱交換器23、室外膨張弁24、室内熱交換器31の順に循環させる。
より具体的には、冷房運転モードが開始されると、冷媒回路10内において、冷媒が圧縮機21に吸入されて圧縮された後に吐出される。
圧縮機21では、室内ユニット30で要求される冷却負荷に応じた容量制御が行われる。圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22を経て、室外熱交換器23のガス側端に流入する。
室外熱交換器23のガス側端に流入したガス冷媒は、室外熱交換器23において、室外ファン25によって供給される室外側空気と熱交換を行って凝縮し、液冷媒となって室外熱交換器23の液側端から流出する。
室外熱交換器23の液側端から流出した冷媒は、室外膨張弁24を通過する際に減圧される。なお、室外膨張弁24は、室外熱交換器23の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。
室外膨張弁24で減圧された冷媒は、液側閉鎖弁29および液側冷媒連絡配管6を経て、室内ユニット30に流入する。
室内ユニット30に流入した冷媒は、室内熱交換器31に流入し、室内熱交換器31において、室内ファン32によって供給される室内空気と熱交換を行って蒸発し、ガス冷媒となって室内熱交換器31のガス側端から流出する。室内熱交換器31のガス側端から流出したガス冷媒は、ガス側冷媒連絡配管5に流れていく。
ガス側冷媒連絡配管5を流れた冷媒は、ガス側閉鎖弁28、四路切換弁22を経て、再び、圧縮機21に吸入される。
(4−1−4−2)暖房運転モード
空気調和装置1では、暖房運転モードでは、四路切換弁22の接続状態を圧縮機21の吐出側とガス側閉鎖弁28とを接続しつつ圧縮機21の吸入側と室外熱交換器23とを接続する暖房運転接続状態とし、冷媒回路10に充填されている冷媒を、主として、圧縮機21、室内熱交換器31、室外膨張弁24、室外熱交換器23の順に循環させる。
より具体的には、暖房運転モードが開始されると、冷媒回路10内において、冷媒が圧縮機21に吸入されて圧縮された後に吐出される。
圧縮機21では、室内ユニット30で要求される暖房負荷に応じた容量制御が行われる。圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22およびガス側冷媒連絡配管5を流れた後、室内ユニット30に流入する。
室内ユニット30に流入した冷媒は、室内熱交換器31のガス側端に流入し、室内熱交換器31において、室内ファン32によって供給される室内空気と熱交換を行って凝縮し、気液二相状態の冷媒または液冷媒となって室内熱交換器31の液側端から流出する。室内熱交換器31の液側端から流出した冷媒は、液側冷媒連絡配管6に流れていく。
液側冷媒連絡配管6を流れた冷媒は、液側閉鎖弁29、室外膨張弁24において冷凍サイクルにおける低圧になるまで減圧される。なお、室外膨張弁24は、室内熱交換器31の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。室外膨張弁24で減圧された冷媒は、室外熱交換器23の液側端に流入する。
室外熱交換器23の液側端から流入した冷媒は、室外熱交換器23において、室外ファン25によって供給される室外空気と熱交換を行って蒸発し、ガス冷媒となって室外熱交換器23のガス側端から流出する。
室外熱交換器23のガス側端から流出した冷媒は、四路切換弁22を経て、再び、圧縮機21に吸入される。
(4−1−5)第1実施形態の特徴
上述の空気調和装置1では、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が用いられているため、GWPを十分に小さく抑えることが可能になっている。
ここで、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒は可燃性冷媒であるが、本実施形態の室外ユニット20が備える室外電装品ユニット8は、室外ユニット20を液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5に接続するための液側閉鎖弁29およびガス側閉鎖弁28よりも上方に配置されている。このため、液側閉鎖弁29およびガス側閉鎖弁28の接続箇所から可燃性冷媒が漏洩することがあっても、室外電装品ユニット8に到達させにくく、室外ユニット20の安全性を高めることができている。
また、本実施形態の室内ユニット30が備える室内電装品ユニット9は、室内ユニット30を液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5に接続するための室内液側接続部11および室内ガス側接続部13よりも上方に配置されている。このため、室内液側接続部11および室内ガス側接続部13の接続箇所から可燃性冷媒が漏洩することがあっても、漏洩冷媒が室内電装品ユニット9に到達しにくく、室内ユニット30の安全性を高めることができている。
(4−1−6)第1実施形態の変形例A
上記第1実施形態では、室内ユニットが1つだけ設けられている空気調和装置を例に挙げて説明したが、空気調和装置としては、互いに並列に接続された複数の室内ユニットが設けられていてもよい。
(4−1−7)第1実施形態の変形例B
上記第1実施形態の室内ユニット30としては、対象空間である室内の壁面等に設置されて用いられるタイプの室内ユニットを例に挙げて説明した。
しかし、室内ユニットとしては、壁面に設置されるタイプに限られず、例えば、図4H、図4I、図4Jに示すように、空調対象空間である室内の床に置いて用いられる床置きタイプの室内ユニット30aであってもよい。
室内ユニット30aは、主に、室内筐体110と、室内熱交換器31と、室内ファン32と、室内電装品ユニット9と、室内液側接続部11と、室内ガス側接続部13と、を備えている。室内熱交換器31と室内ファン32は、室内筐体110内に収納されている。室内熱交換器31は、室内筐体110内部の上方の空間に配置されており、室内ファン32は、室内筐体110内部の下方の空間に配置されている。
室内筐体110は、正面パネル111と右側面パネル112と左側面パネル113と天面パネル114と底面パネル115と背面パネル116とによって囲まれた直方体形状を有している。正面パネル111には、正面パネル111に向かって右側の上方に右側吹出口117aが形成され、向かって左側の上方に左側吹出口117bが形成され、下方の左右方向中央部に下側吹出口117cが形成されている。右側吹出口117aには、室内ユニット30aの停止時に右側吹出口117aを覆って室内筐体110の一部となり、室内ユニット30aの運転時に右側吹出口117aから吹出される気流(二点鎖線参照)の左右方向の風向を調節するための垂直フラップ151aが設けられている。同様に、左側吹出口117bには、室内ユニット30aの停止時に左側吹出口117bを覆って室内筐体110の一部となり、室内ユニット30aの運転時に左側吹出口117bから吹出される気流の左右方向の風向を調節するための垂直フラップ151bが設けられている。
室内筐体110の右側面パネル112には、下方の前方よりに右側吸込口118aが形成されている。また、室内筐体110の左側面パネル113には、下方の前方よりに左側吸込口118bが形成されている。
室内ファン32は、例えば多数の羽根が配置されており、回転軸が前後方向に延びたシロッコファンである。室内ファン32は、仕切板119で仕切られている内部空間S1に配置されている。内部空間S1の前方には、仕切板119と正面パネル111との間に内部空間S2が形成されている。また、内部空間S1,S2の上方には、室内熱交換器31を境に内部空間S3が形成されている。
室内熱交換器31は、室内ファン32の上方における内部空間S1と内部空間S3の境界部分に配置されている。室内熱交換器31は、上端部に近いほど背面パネル116に近くなるように傾斜した姿勢で配置されている。室内熱交換器31の下端は、ドレンパン141によって支持されている。このドレンパン141は、仕切板119の上に設けられている。これら仕切板119とドレンパン141が内部空間S2と内部空間S3の境界になる。つまり、内部空間S1は、右側面パネル112と左側面パネル113と底面パネル115と背面パネル116と仕切板119とドレンパン141と室内熱交換器31とで囲まれている。また、内部空間S2は、正面パネル111と右側面パネル112と左側面パネル113と底面パネル115と仕切板119とドレンパン141とで囲まれている。また、内部空間S3は、右側面パネル112と左側面パネル113と天面パネル114と室内熱交換器31とドレンパン141と仕切板119とで囲まれている。
室内液側接続部11は、室内熱交換器31の液側から延びる室内液側冷媒配管12の端部に設けられており、液側冷媒連絡配管6に対してフレア接続される接続部分である。室内液側接続部11は、室内ファン32の上端と同様の高さ位置に設けられている。
室内ガス側接続部13は、室内熱交換器31のガス側から延びる室内ガス側冷媒配管14の端部に設けられており、ガス側冷媒連絡配管5に対してフレア接続される接続部分である。室内ガス側接続部13は、室内ファン32の上端と同様の高さ位置に設けられている。
室内電装品ユニット9は、室内筐体110の内部のうち、室内熱交換器31の下方で室内ファン32よりも上方であって、仕切板119の前方に配置されており、仕切板119に対して固定されている。室内電装品ユニット9の下端部分は、室内液側接続部11および室内ガス側接続部13よりも鉛直方向上方に配置されている。
内部空間S2には、正面パネル111に沿うようにして上下に延びたダクト120が設けられている。ダクト120の上部は、上下方向において右側吹出口117aと左側吹出口117bとの間にまで延びている。また、ダクト120の下端は、下側吹出口117cの上部にまで達している。
垂直フラップ151aは、右側吹出口117aに設けられ、垂直フラップ151bは、左側吹出口117bに設けられている。垂直フラップ151a、151bは、正面パネル111に対する角度を変更することによって、吹出される調和空気を案内する角度を調節する。
右側吹出口117aおよび左側吹出口117bには、多数の水平フラップ153がそれぞれ設けられている。水平フラップ153は、回転軸を中心に回転することで、吹き出し空気の方向を変更することができる。
以上の室内電装品ユニット9についても、室内液側接続部11および室内ガス側接続部13の接続箇所から可燃性冷媒が漏洩することがあっても、漏洩冷媒が室内電装品ユニット9に到達しにくく、室内ユニット30aの安全性を高めることができている。
(4−2)第2実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図4K、概略制御ブロック構成図である図4Lを参照しつつ、第2実施形態に係る熱交換ユニットとしての室内ユニットおよび熱交換ユニットとしての室外ユニットとを備えた冷凍サイクル装置である空気調和装置1aについて説明する。
以下、主として、第2実施形態の空気調和装置1aについて、第1実施形態の空気調和装置1と異なる箇所を中心に説明する。
空気調和装置1aにおいても、冷媒回路10には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒として、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかが充填されている。また、冷媒回路10には、当該冷媒と共に、冷凍機油が充填されている。
(4−2−1)室外ユニット20a
第2実施形態の空気調和装置1aの室外ユニット20aでは、室外ファン25として、第1室外ファン25aと第2室外ファン25bとが設けられている。空気調和装置1aの室外ユニット20aの室外熱交換器23は、第1室外ファン25aおよび第2室外ファン25bから受ける空気流れに対応するように、広い熱交換面積が確保されている。
空気調和装置1aの室外ユニット20aでは、上記第1実施形態における室外ユニット20の室外膨張弁24の代わりに、室外熱交換器23の液側から液側閉鎖弁29までの間において、第1室外膨張弁44、中間圧レシーバ41、第2室外膨張弁45が順次設けられている。第1室外膨張弁44および第2室外膨張弁45は、弁開度を制御可能である。中間圧レシーバ41は、第1室外膨張弁44側から延びる配管の端部と、第2室外膨張弁45側から延びる配管の端部と、の両方が内部空間に位置しており、冷媒を溜めることができる容器である。
第2実施形態の室外ユニット20aは、図4Mに示すように、略直方体箱状の室外筐体60の内部空間が鉛直に延びる仕切板66によって左右に分割されることで送風機室および機械室が形成された構造(いわゆる、トランク型構造)を有している。
室外筐体60内の送風機室には、室外熱交換器23、室外ファン25(第1室外ファン25aと第2室外ファン25b)等が配置され、室外筐体60内の機械室には、圧縮機21、四路切換弁22、第1室外膨張弁44、第2室外膨張弁45、中間圧レシーバ41、ガス側閉鎖弁28、液側閉鎖弁29、室外ユニット制御部27を備えた室外電装品ユニット8等が配置されている。
室外筐体60は、主として、底板63、天板64、左前板61、左側板(図示せず)、右前板(図示せず)、右側板65、仕切板66等を有している。底板63は、室外筐体60の底面部分を構成している。天板64は、室外ユニット20aの天面部分を構成している。左前板61は、主に、室外筐体60の左前面部分を構成しており、前後方向に開口しており上下に並んでいる第1吹出口62aおよび第2吹出口62bが形成されている。第1吹出口62aには、主として、第1室外ファン25aによって室外筐体60の背面側および左側面側から内部に吸い込まれた空気であって、室外熱交換器23の上方部分を通過した空気が通過する。第2吹出口62bには、主として、第2室外ファン25bによって室外筐体60の背面側および左側面側から内部に吸い込まれた空気であって、室外熱交換器23の下方部分を通過した空気が通過する。第1吹出口62aおよび第2吹出口62bには、それぞれ、ファングリルが設けられている。左側板は、主に、室外筐体60の左側面部分を構成しており、室外筐体60内に吸入される空気の吸入口としても機能できるようになっている。右前板は、主に、室外筐体60の右前面部分及び右側面の前側部分を構成している。右側板65は、主に、室外筐体60の右側面の後側部分および背面の右側部分を構成している。仕切板66は、底板63上に配置される鉛直に延びる板状部材であり、室外筐体60の内部空間を送風機室と機械室とに分割している。
室外熱交換器23は、板厚方向に重ねて配置された複数の伝熱フィンと、複数の伝熱フィンに貫通固定された複数の伝熱管と、を有するクロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器である。この室外熱交換器23は、送風機室内において、室外筐体60の左側面及び背面に沿うようにして、平面視L字形状となるように配置されている。
圧縮機21は、室外筐体60の機械室内において、底板63上に載置され、ボルトで固定されている。
ガス側閉鎖弁28および液側閉鎖弁29は、室外筐体60の機械室内において、圧縮機21の上端近傍の高さ位置であって、右前方の角部近傍に配置されている。
室外電装品ユニット8は、室外筐体60の機械室内において、圧縮機21よりも上方の空間に配置されている。室外電装品ユニット8の下端部は、ガス側閉鎖弁28および液側閉鎖弁29のいずれよりも上方に配置されている。
以上の空気調和装置1aでは、冷房運転モードでは、第1室外膨張弁44は、例えば、室外熱交換器23の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。また、冷房運転モードでは、第2室外膨張弁45は、例えば、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。
また、暖房運転モードでは、第2室外膨張弁45は、例えば、室内熱交換器31の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。また、暖房運転モードでは、第1室外膨張弁44は、例えば、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。
(4−2−2)室内ユニット30
第2実施形態の室内ユニット30は、第1実施形態で説明した室内ユニット30と同様であるので、説明を省略する。
(4−2−3)第2実施形態の特徴
以上の第2実施形態に係る空気調和装置1aにおいても、第1実施形態に係る空気調和装置1と同様に、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が用いられているため、GWPを十分に小さく抑えることが可能になっている。
ここで、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒は可燃性冷媒であるが、本実施形態の室外ユニット20aが備える室外電装品ユニット8は、室外ユニット20aを液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5に接続するための液側閉鎖弁29およびガス側閉鎖弁28よりも上方に配置されている。このため、液側閉鎖弁29およびガス側閉鎖弁28の接続箇所から可燃性冷媒が漏洩することがあっても、室外電装品ユニット8に到達させにくく、室外ユニット20aの安全性を高めることができている。
(4−2−4)第2実施形態の変形例A
上記第2実施形態では、室内ユニットが1つだけ設けられている空気調和装置を例に挙げて説明したが、空気調和装置としては、互いに並列に接続された複数の室内ユニットが設けられていてもよい。
(4−3)第3実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図4N、概略制御ブロック構成図である図4Oを参照しつつ、第3実施形態に係る熱交換ユニットとしての室内ユニットおよび熱交換ユニットとしての室外ユニットとを備えた冷凍サイクル装置である空気調和装置1bについて説明する。
以下、主として、第3実施形態の空気調和装置1bについて、第1実施形態の空気調和装置1と異なる箇所を中心に説明する。
空気調和装置1bにおいても、冷媒回路10には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒として、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかが充填されている。また、冷媒回路10には、当該冷媒と共に、冷凍機油が充填されている。
(4−3−1)室外ユニット20b
第3実施形態に係る空気調和装置1bの室外ユニット20bでは、上記第1実施形態における室外ユニット20が備える要素に加えて、低圧レシーバ26、過冷却熱交換器47および過冷却回路46が設けられている。
低圧レシーバ26は、四路切換弁22の接続ポートの1つから圧縮機21の吸入側に至るまでの間に設けられ、冷媒を溜めることができる容器である。なお、本実施形態においては、圧縮機21が有する付属のアキュムレータとは別に設けられている。
過冷却熱交換器47は、室外膨張弁24と液側閉鎖弁29との間に設けられている。
過冷却回路46は、室外膨張弁24と過冷却熱交換器47との間の主回路から分岐し、四路切換弁22の接続ポートの1つから低圧レシーバ26に至るまでの途中の部分に合流するように延びた回路である。過冷却回路46の途中には、通過する冷媒を減圧させる過冷却膨張弁48が設けられている。過冷却回路46を流れる冷媒であって、過冷却膨張弁48で減圧された冷媒は、過冷却熱交換器47において、主回路側を流れる冷媒との間で熱交換を行う。これにより、主回路側を流れる冷媒はさらに冷却され、過冷却回路46を流れる冷媒は蒸発する。
第3実施形態に係る空気調和装置1bの室外ユニット20bの詳細構造について、図4Pの外観斜視図、図4Qの分解斜視図、図4Rの平面視概略配置構成図、図4Sの正面視概略配置構成図を参照しつつ、以下に説明する。
空気調和装置1bの室外ユニット20bは、下方から室外筐体80内に空気を取り込んで上方から室外筐体80外に空気を吹き出す上吹き型構造と呼ばれるものである。
室外筐体80は、主として、左右方向に延びる一対の据付脚82上に架け渡される底板83と、底板83の角部から鉛直方向に延びる支柱84と、前面パネル81と、ファンモジュール85と、を有している。底板83は、室外筐体80の底面を形成しており、左側の第1底板83aと右側の第2底板83bとに分かれている。前面パネル81は、ファンモジュール85の下方において、前面側の支柱84間に架け渡されており、室外筐体80の前面を構成している。室外筐体80内のうち、ファンモジュール85の下方であって底板83上方の空間には、圧縮機21、室外熱交換器23、低圧レシーバ26、四路切換弁22、室外膨張弁24、過冷却熱交換器47、過冷却膨張弁48、過冷却回路46、ガス側閉鎖弁28、液側閉鎖弁29、室外ユニット制御部27を備えた室外電装品ユニット8等が配置されている。室外熱交換器23は、室外筐体80のファンモジュール85の下方の部分のうち、背面および左右両側面に面する平面視略U字形状であり、室外筐体80の背面および左右両側面を実質的に形成している。この室外熱交換器23は、底板83の左側縁部、後側縁部、右側縁部の上に沿うように配置されている。第3実施形態の室外熱交換器23は、板厚方向に重ねて配置された複数の伝熱フィン23aと、複数の伝熱フィン23aに貫通固定された複数の伝熱管23bと、を有するクロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器である。
ファンモジュール85は、室外熱交換器23の上側に設けられており、室外ファン25と、図示しないベルマウス等を有している。室外ファン25は、回転軸が鉛直方向になる姿勢で配置されている。
ガス側閉鎖弁28および液側閉鎖弁29は、室外筐体80の内部であって、ファンモジュール85の下方の空間のうち、圧縮機21の上端近傍の高さ位置であって、左前方近傍に配置されている。なお、本実施形態のガス側閉鎖弁28は、ガス側冷媒連絡配管5に対してロウ付け接続される。本実施形態の液側閉鎖弁29は、液側冷媒連絡配管6に対してロウ付け接続される。
室外電装品ユニット8は、室外筐体80の内部であって、ファンモジュール85の下方の空間のうち、圧縮機21よりも上方であって前側に配置されており、前面パネル81の右側部分に対して固定されている。室外電装品ユニット8の下端部は、ガス側閉鎖弁28および液側閉鎖弁29のいずれよりも上方に配置されている。
以上の構造により、室外ファン25が形成させる空気流れは、室外熱交換器23の周囲から室外熱交換器23を通過して室外筐体80内部に流入し、室外筐体80の上端面において上下方向に貫通するように設けられた吹出口86を介して、上方に吹き出される。
(4−3−2)第1室内ユニット30および第2室内ユニット35
また、第3実施形態に係る空気調和装置1bでは、上記第1実施形態における室内ユニット30の代わりに、互いに並列に設けられた第1室内ユニット30および第2室内ユニット35を有している。
第1室内ユニット30は、上記第1実施形態における室内ユニット30と同様に、第1室内熱交換器31と、第1室内ファン32と、第1室内液側接続部11と、第1室内ガス側接続部13と、第1室内ユニット制御部34を備えた第1室内電装品ユニットが設けられており、さらに、第1室内膨張弁33が設けられている。第1室内液側接続部11は、第1室内熱交換器31の液側と液側冷媒連絡配管6とを接続するように延びた第1室内液側冷媒配管12の端部に設けられている。第1室内ガス側接続部13は、第1室内熱交換器31のガス側とガス側冷媒連絡配管5とを接続するように延びた第1室内ガス側冷媒配管14の端部に設けられている。第1室内膨張弁33は、第1室内液側冷媒配管12の途中に設けられており、弁開度が制御可能である。ここでも、第1実施形態と同様に、第1室内電装品ユニットは、第1室内液側接続部11および第1室内ガス側接続部13よりも上方に配置されている。
第2室内ユニット35は、第1室内ユニット30と同様であり、第2室内熱交換器36と第2室内ファン37と、第2室内液側接続部15と、第2室内ガス側接続部17と、第2室内ユニット制御部39を備えた第2室内電装品ユニットが設けられており、さらに、第2室内膨張弁38が設けられている。第2室内液側接続部15は、第2室内熱交換器36の液側と液側冷媒連絡配管6とを接続するように延びた第2室内液側冷媒配管16の端部に設けられている。第2室内ガス側接続部17は、第2室内熱交換器36のガス側とガス側冷媒連絡配管5とを接続するように延びた第2室内ガス側冷媒配管18の端部に設けられている。第2室内膨張弁38は、第2室内液側冷媒配管16の途中に設けられており、弁開度が制御可能である。ここでも、第2室内電装品ユニットは、第2室内液側接続部15および第2室内ガス側接続部17よりも上方に配置されている。
なお、第3実施形態のコントローラ7は、室外ユニット制御部27と、第1室内ユニット制御部34と、第2室内ユニット制御部39と、が互いに通信可能に接続されて構成されている。
以上の空気調和装置1bでは、冷房運転モードでは、室外膨張弁24は、室外熱交換器23の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。また、冷房運転モードでは、過冷却膨張弁48は、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。なお、冷房運転モードでは、第1室内膨張弁33および第2室内膨張弁38は、全開状態に制御される。
また、暖房運転モードでは、第1室内膨張弁33は、第1室内熱交換器31の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。第2室内膨張弁38も同様に、第2室内熱交換器36の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。また、暖房運転モードでは、室外膨張弁45は、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。なお、暖房運転モードでは、過冷却膨張弁48は、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。
(4−3−3)第3実施形態の特徴
以上の第3実施形態に係る空気調和装置1bにおいても、第1実施形態に係る空気調和装置1と同様に、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が用いられているため、GWPを十分に小さく抑えることが可能になっている。
ここで、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒は可燃性冷媒であるが、本実施形態の室外ユニット20bが備える室外電装品ユニット8は、室外ユニット20bを液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5に接続するための液側閉鎖弁29およびガス側閉鎖弁28よりも上方に配置されている。このため、液側閉鎖弁29およびガス側閉鎖弁28の接続箇所から可燃性冷媒が漏洩することがあっても、室外電装品ユニット8に到達させにくく、室外ユニット20bの安全性を高めることができている。
また、本実施形態の第1室内ユニット30が備える第1室内電装品ユニットについても、第1室内液側接続部11および第1室内ガス側接続部13よりも上方に配置されている。このため、第1室内液側接続部11および第1室内ガス側接続部13の接続箇所から可燃性冷媒が漏洩することがあっても、漏洩冷媒が第1室内電装品ユニットに到達しにくく、第1室内ユニット30の安全性を高めることができている。同様に、第2室内ユニット35が備える第2室内電装品ユニットについても、第2室内液側接続部15および第2室内ガス側接続部17よりも上方に配置されている。このため、第2室内液側接続部15および第2室内ガス側接続部17の接続箇所から可燃性冷媒が漏洩することがあっても、漏洩冷媒が第2室内電装品ユニットに到達しにくく、第2室内ユニット35の安全性を高めることができている。
(4−4)第4実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図4T、概略制御ブロック構成図である図4Uを参照しつつ、第4実施形態に係る熱交換ユニットとしての冷温水供給ユニットおよび熱交換ユニットとしての室外ユニットとを備えた冷凍サイクル装置である冷温水供給装置1cについて説明する。
以下、主として、第4実施形態の冷温水供給装置1cについて、第1実施形態の空気調和装置1と異なる箇所を中心に説明する。
冷温水供給装置1cは、冷水または温水を得て、室内の床に設置されている床冷暖房パネル251、252、253に対して供給することで、室内の床を冷却もしくは暖めるための装置である。
冷温水供給装置1cにおいても、冷媒回路10には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒として、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかが充填されている。また、冷媒回路10には、当該冷媒と共に、冷凍機油が充填されている。
(4−4−1)室外ユニット20
冷温水供給装置1cの室外ユニット20は、第1実施形態において説明した室外ユニット20と同様であるため、説明を省略する。
(4−4−2)冷温水供給ユニット30b
冷温水供給ユニット30bは、対象空間である室内の床面を冷却または暖めるために用いられるものであり、液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5を介して室外ユニット20と接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。
冷温水供給ユニット30bは、水熱交換器231と、ポンプ232と、タンク233、室内液側接続部11と、室内ガス側接続部13と、戻りヘッダ236と、行きヘッダ235と、室内筐体237と、冷温水電装品ユニット9a等を有している。
水熱交換器231は、内部を流れる冷媒と、水回路210を流れる水との間で熱交換を行わせる。水熱交換器231は、液冷媒側が、室内液側冷媒配管12および室内液側接続部11を介して液側冷媒連絡配管6とフレア接続され、ガス冷媒側が、室内ガス側冷媒配管14および室内ガス側接続部13を介してガス側冷媒連絡配管5とフレア接続されている。水熱交換器231は、冷房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能し、水回路210を流れる水を冷却し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の凝縮器として機能して、水回路210を流れる水を加熱する。
ポンプ232は、水回路210内の水を、戻りヘッダ236、水熱交換器231の水流路、タンク233、行きヘッダ235、床冷暖房パネル251、252、253に循環させるための水流れを生じさせる。ポンプ232は、図示しないモータによって回転駆動される。
タンク233は、水熱交換器231において温度調節された冷水または温水が蓄えられる。
行きヘッダ235は、ポンプ232から送られてきた冷温水を、複数の床冷暖房パネル251、252、253が有する水循環パイプ251a、252a、253aのそれぞれに分岐して流す。行きヘッダ235は、水循環パイプ251a、252a、253aの端部のそれぞれと接続される複数の行き接続部235aを有している。
戻りヘッダ236は、複数の床冷暖房パネル251、252、253が有する水循環パイプ251a、252a、253aのそれぞれを流れた水を合流させ、再び、水熱交換器231に供給する。戻りヘッダ236は、水循環パイプ251a、252a、253aの他端のそれぞれと接続される複数の戻り接続部236aを有している。
冷温水電装品ユニット9aは、冷温水供給ユニット30bを構成する各部の動作を制御する冷温水供給ユニット制御部234を備えている。冷温水供給ユニット制御部234は、具体的には、複数の床冷暖房パネル251、252、253における温度調節負荷に応じてポンプの流量制御を行う。
室内筐体237は、図4Vに示すように、内部に、水熱交換器231や冷温水電装品ユニット9a等を収容した箱状体である。具体的には、室内筐体237の内部のうち、上方の空間に冷温水電装品ユニット9aが配置されている。室内筐体237の下方には、行きヘッダ235が有する複数の行き接続部235aと、戻りヘッダ236が有する複数の戻り接続部236aが位置している。さらに、室内筐体237の下方からは、室内液側冷媒配管12および室内ガス側冷媒配管14が延びだしており、室内液側冷媒配管12の下端には室内液側接続部11が位置し、室内ガス側冷媒配管14の下端には室内ガス側接続部13が位置している。
(4−4−3)第4実施形態の特徴
上述の冷温水供給装置1cでは、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が用いられているため、GWPを十分に小さく抑えることが可能になっている。
ここで、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒は可燃性冷媒であるが、本実施形態の冷温水供給ユニット30bが備える冷温水電装品ユニット9aは、冷温水供給ユニット30bを液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5に接続するための室内液側接続部11および室内ガス側接続部13よりも上方に配置されている。このため、室内液側接続部11および室内ガス側接続部13の接続箇所から可燃性冷媒が漏洩することがあっても、漏洩冷媒が冷温水電装品ユニット9aに到達しにくく、冷温水供給ユニット30bの安全性を高めることができている。
(4−4−4)第4実施形態の変形例A
上記第4実施形態では、水熱交換器231において冷媒との熱交換で得られた冷温水を床冷暖房パネル251、252、253に供給することで、室内の床を冷却もしくは暖める冷温水供給装置1cを例に挙げて説明した。
これに対して、図4W、図4Xに示すように、貯湯ユニット30cと室外ユニット20が液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5を介して接続されて構成される貯湯装置1dにおいて、水熱交換器231を用いて温水を供給するようにしてもよい。
具体的には、貯湯ユニット30cの貯湯筐体327には、水熱交換器331と、ポンプ332と、貯湯タンク333と、混合弁338と、水入口336と、水出口335と、貯湯電装品ユニット9b等が収容されている。なお、室外ユニット20は、第4実施形態等と同様である。
水熱交換器331は、上記第4実施形態の水熱交換器231と同様に、室外ユニット20と液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5を循環する冷媒と、貯湯ユニット30c内に収容されている水回路310を循環する水と、の間で熱交換を行わせる。
水回路310は、タンク333、タンク333の下端から水熱交換器331の水流路の入口まで延びておりポンプ332が設けられた水往き管と、水熱交換器331の水流路の出口とタンク333の上端とを接続する水戻り管と、を有しおり、内部を水が循環している。
貯湯タンク333には、下端から、水入口336介して水入口管を流れた市水が供給される。貯湯タンク333の上端からは、水熱交換器331で得られて蓄えられているお湯が、水出口管を流れて水出口335に向けて送られる。水入口管と水出口管とはバイパス管によって接続されており、水出口管とバイパス管の連結箇所には混合弁338が設けられており、市水とお湯の混合が可能となっている。
水熱交換器331の液冷媒側の室内液側冷媒配管12の先端に設けられている室内液側接続部11は、貯湯筐体327の下方に位置している。水熱交換器331のガス冷媒側の室内ガス側冷媒配管14の先端に設けられている室内ガス側接続部13も、貯湯筐体327の下方に位置している。
貯湯ユニット30cには、ポンプ332の駆動制御を行う貯湯ユニット制御部334を備えた貯湯電装品ユニット9bが設けられている。貯湯電装品ユニット9bは、貯湯筐体327の内部の上方の空間に設置されており、室内ガス側接続部13および室内液側接続部11よりも上方に位置している。
以上の貯湯ユニット30cにおいても、貯湯電装品ユニット9bは室内ガス側接続部13および室内液側接続部11よりも上方に配置されているため、室内ガス側接続部13や室内液側接続部11から冷媒が漏洩することがあっても、貯湯電装品ユニット9bに到達しにくく、貯湯ユニット30cの安全性を高めることができている。
(5)第5グループの技術の実施形態
(5−1)第1実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図5A、概略制御ブロック構成図である図5Bを参照しつつ、第1実施形態に係る冷凍サイクル装置としての空気調和装置1について説明する。
空気調和装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うことで、対象空間の空気を調和させる装置である。
空気調和装置1は、主として、室外ユニット20と、第1室内ユニット30と、第2室内ユニット35と、室外ユニット20に対して第1室内ユニット30および第2室内ユニット35を並列に接続する液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5と、入力装置および出力装置としての図示しないリモコンと、空気調和装置1の動作を制御するコントローラ7と、を有している。
空気調和装置1では、冷媒回路10内に封入された冷媒が、圧縮され、冷却又は凝縮され、減圧され、加熱又は蒸発された後に、再び圧縮される、という冷凍サイクルが行われる。本実施形態では、冷媒回路10には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が充填されている。当該冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。また、冷媒回路10には、当該混合冷媒と共に、冷凍機油が充填されている。
(5−1−1)室外ユニット20
室外ユニット20は、液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5を介して室内ユニット30と接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。室外ユニット20は、主として、圧縮機21と、四路切換弁22と、室外熱交換器23と、過冷却熱交換器47と、吸入インジェクション配管40と、過冷却膨張弁48と、室外膨張弁24と、室外ファン25と、低圧レシーバ41と、液側閉鎖弁29と、ガス側閉鎖弁28と、を有している。
圧縮機21は、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒を高圧になるまで圧縮する機器である。ここでは、圧縮機21として、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素(図示省略)が圧縮機モータによって回転駆動される密閉式構造の圧縮機が使用されている。圧縮機モータは、容量を変化させるためのものであり、インバータにより運転周波数の制御が可能である。なお、圧縮機21には、吸入側において、図示しない付属アキュムレータが設けられている(なお、当該付属アキュムレータの内容積は、低圧レシーバ、中間圧レシーバ、高圧レシーバのような冷媒容器より小さく、好ましくは半分以下である)。
四路切換弁22は、接続状態を切り換えることで、圧縮機21の吐出側と室外熱交換器23とを接続しつつ圧縮機21の吸入側とガス側閉鎖弁28とを接続する冷房運転接続状態と、圧縮機21の吐出側とガス側閉鎖弁28とを接続しつつ圧縮機21の吸入側と室外熱交換器23とを接続する暖房運転接続状態と、を切り換えることができる。
室外熱交換器23は、冷房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の凝縮器として機能し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能する熱交換器である。
室外膨張弁24は、冷媒回路10における室外熱交換器23の液側出口から液側閉鎖弁29までの間に設けられている。室外膨張弁24は、弁開度を調節可能な電動膨張弁である。
吸入インジェクション配管40は、冷媒回路10の主回路のうち室外膨張弁24から液側閉鎖弁29までの間の分岐部分から分岐しており、四路切換弁22の接続ポートの1つから低圧レシーバ41に至るまでの間の合流箇所に合流するように設けられている。吸入インジェクション配管40には、過冷却膨張弁48が設けられている。過冷却膨張弁48は、弁開度を調節可能な電動膨張弁である。
過冷却熱交換器47は、冷媒回路10において室外膨張弁24から液側閉鎖弁29までの間の部分を流れる冷媒と、吸入インジェクション配管40において過冷却膨張弁48の合流箇所側を流れる冷媒と、の間で熱交換を行わせる熱交換器である。本実施形態では、過冷却熱交換器47は、室外膨張弁24から液側閉鎖弁29までの間の部分であって、吸入インジェクション配管40の分岐部分よりも液側閉鎖弁29側に設けられている。
室外ファン25は、室外ユニット20内に室外の空気を吸入して、室外熱交換器23において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための空気流れを生じさせる。室外ファン25は、室外ファンモータによって回転駆動される。
低圧レシーバ41は、圧縮機21の吸入側と四路切換弁22の接続ポートの1つとの間に設けられており、冷媒回路10における余剰冷媒を液冷媒として貯留することが可能な冷媒容器である。また、圧縮機21には、図示しない付属のアキュムレータが設けられており、低圧レシーバ41は、当該付属のアキュムレータの下流側に接続されている。
液側閉鎖弁29は、室外ユニット20における液側冷媒連絡配管6との接続部分に配置された手動弁である。
ガス側閉鎖弁28は、室外ユニット20におけるとガス側冷媒連絡配管5との接続部分に配置された手動弁である。
室外ユニット20は、室外ユニット20を構成する各部の動作を制御する室外ユニット制御部27を有している。室外ユニット制御部27は、CPUやメモリ等を含むマイクロコンピュータを有している。室外ユニット制御部27は、各室内ユニット30の室内ユニット制御部34と通信線を介して接続されており、制御信号等の送受信を行う。
室外ユニット20には、吐出圧力センサ61、吐出温度センサ62、吸入圧力センサ63、吸入温度センサ64、室外熱交温度センサ65、外気温度センサ66、過冷却温度センサ67等が設けられている。これらの各センサは、室外ユニット制御部27と電気的に接続されており、室外ユニット制御部27に対して検出信号を送信する。吐出圧力センサ61は、圧縮機21の吐出側と四路切換弁22の接続ポートの1つとを接続する吐出配管を流れる冷媒の圧力を検出する。吐出温度センサ62は、吐出配管を流れる冷媒の温度を検出する。吸入圧力センサ63は、圧縮機21の吸入側と低圧レシーバ41とを接続する吸入配管を流れる冷媒の圧力を検出する。吸入温度センサ64は、吸入配管を流れる冷媒の温度を検出する。室外熱交温度センサ65は、室外熱交換器23のうち四路切換弁22が接続されている側とは反対側である液側の出口を流れる冷媒の温度を検出する。外気温度センサ66は、室外熱交換器23を通過する前の屋外の空気温度を検出する。過冷却温度センサ67は、冷媒回路10の主回路において過冷却熱交換器47と第2室外膨張弁45との間を流れる冷媒の温度を検出する。
(5−1−2)第1室内ユニット30および第2室内ユニット35
第1室内ユニット30および第2室内ユニット35は、いずれも、同一または異なる対象空間である室内の壁面や天井等に設置されている。第1室内ユニット30および第2室内ユニット35は、液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5を介して室外ユニット20と接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。
第1室内ユニット30は、第1室内熱交換器31と、第1室内膨張弁33と、第1室内ファン32と、を有している。
第1室内熱交換器31は、液側が、液側冷媒連絡配管6と接続され、ガス側端が、ガス側冷媒連絡配管5とを接続されている。第1室内熱交換器31は、冷房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の凝縮器として機能する熱交換器である。
第1室内膨張弁33は、第1室内熱交換器31の液冷媒側の冷媒配管に設けられた弁開度を調節可能な電動膨張弁である。
第1室内ファン32は、第1室内ユニット30内に室内の空気を吸入して、第1室内熱交換器31において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための空気流れを生じさせる。第1室内ファン32は、室内ファンモータによって回転駆動される。
また、第1室内ユニット30は、第1室内ユニット30を構成する各部の動作を制御する第1室内ユニット制御部34を有している。第1室内ユニット制御部34は、CPUやメモリ等を含むマイクロコンピュータを有している。第1室内ユニット制御部34は、第2室内ユニット制御部39および室外ユニット制御部27と通信線を介して接続されており、制御信号等の送受信を行う。
第1室内ユニット30には、第1室内液側熱交温度センサ71、第1室内空気温度センサ72、第1室内ガス側熱交温度センサ73等が設けられている。これらの各センサは、第1室内ユニット制御部34と電気的に接続されており、第1室内ユニット制御部34に対して検出信号を送信する。第1室内液側熱交温度センサ71は、第1室内熱交換器31の液冷媒側の出口を流れる冷媒の温度を検出する。第1室内空気温度センサ72は、第1室内熱交換器31を通過する前の室内の空気温度を検出する。第1室内ガス側熱交温度センサ73は、第1室内熱交換器31のガス冷媒側の出口を流れる冷媒の温度を検出する。
第2室内ユニット35は、第2室内熱交換器36と、第2室内膨張弁38と、第2室内ファン37と、を有している。
第2室内熱交換器36は、液側が、液側冷媒連絡配管6と接続され、ガス側端が、ガス側冷媒連絡配管5とを接続されている。第2室内熱交換器36は、冷房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の凝縮器として機能する熱交換器である。
第2室内膨張弁38は、第2室内熱交換器36の液冷媒側の冷媒配管に設けられた弁開度を調節可能な電動膨張弁である。
第2室内ファン37は、第2室内ユニット35内に室内の空気を吸入して、第2室内熱交換器36において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための空気流れを生じさせる。第2室内ファン37は、室内ファンモータによって回転駆動される。
また、第2室内ユニット35は、第2室内ユニット35を構成する各部の動作を制御する第2室内ユニット制御部39を有している。第2室内ユニット制御部39は、CPUやメモリ等を含むマイクロコンピュータを有している。第2室内ユニット制御部39、第1室内ユニット制御部34および室外ユニット制御部27と通信線を介して接続されており、制御信号等の送受信を行う。
第2室内ユニット35には、第2室内液側熱交温度センサ75、第2室内空気温度センサ76、第2室内ガス側熱交温度センサ77等が設けられている。これらの各センサは、第2室内ユニット制御部39と電気的に接続されており、第2室内ユニット制御部39に対して検出信号を送信する。第2室内液側熱交温度センサ75は、第2室内熱交換器36の液冷媒側の出口を流れる冷媒の温度を検出する。第2室内空気温度センサ76は、第2室内熱交換器36を通過する前の室内の空気温度を検出する。第2室内ガス側熱交温度センサ77は、第2室内熱交換器36のガス冷媒側の出口を流れる冷媒の温度を検出する。
(5−1−3)コントローラ7の詳細
空気調和装置1では、室外ユニット制御部27と第1室内ユニット制御部34と第2室内ユニット制御部39とが通信線を介して接続されることで、空気調和装置1の動作を制御するコントローラ7が構成されている。
コントローラ7は、主として、CPU(中央演算処理装置)と、ROMやRAM等のメモリを有している。なお、コントローラ7による各種処理や制御は、室外ユニット制御部27および/又は第1室内ユニット制御部34および/又は第2室内ユニット制御部39に含まれる各部が一体的に機能することによって実現されている。
(5−1−4)運転モード
以下、運転モードについて説明する。
運転モードとしては、冷房運転モードと暖房運転モードとが設けられている。
コントローラ7は、リモコン等から受け付けた指示に基づいて、冷房運転モードか暖房運転モードかを判断し、実行する。
(5−1−4−1)冷房運転モード
空気調和装置1では、冷房運転モードでは、圧縮機21は、例えば、冷媒回路10における冷媒の蒸発温度が目標蒸発温度になるように、運転周波数が容量制御される。ここで、目標蒸発温度は、各室内ユニット30、35において設定温度と室内温度との差分が最も大きいもの(負荷が最も大きな室内ユニット)に応じて定めることが好ましい。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22を介して、室外熱交換器23において凝縮する。室外熱交換器23を流れた冷媒は、室外膨張弁24を通過する。なお、この場合には、室外膨張弁24は、全開状態となるように制御されている。
室外膨張弁24を通過した冷媒は、一部が液側閉鎖弁29側に向けて流れ、他の一部が、吸入インジェクション配管40に分岐して流れる。吸入インジェクション配管40に分岐して流れた冷媒は、過冷却膨張弁48において減圧される。過冷却熱交換器47では、室外膨張弁24から液側閉鎖弁29側に向けて流れる冷媒と、過冷却膨張弁48において減圧された吸入インジェクション配管40を流れる冷媒と、が熱交換される。吸入インジェクション配管40を流れる冷媒は、過冷却熱交換器47での熱交換を終えた後、四路切換弁22の接続ポートの1つから低圧レシーバ41に至るまでの間の合流箇所に合流するように流れる。また、過冷却膨張弁48の弁開度は、冷媒回路10のうち過冷却熱交換器47を通過した後の冷媒の過冷却度が所定の目標値になる等の所定条件を満たすように制御される。
室外膨張弁24から液側閉鎖弁29側に向けて流れる冷媒は、過冷却熱交換器47での熱交換を終えた後、液側閉鎖弁29を介して、液側冷媒連絡配管6を流れ、第1室内ユニット30および第2室内ユニット35に送られる。
ここで、第1室内ユニット30では、第1室内膨張弁33は、例えば、第1室内熱交換器31のガス側出口を流れる冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。また、第2室内ユニット35の第2室内膨張弁38も、第1室内膨張弁33と同様に、例えば、第2室内熱交換器36のガス側出口を流れる冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。また、第1室内膨張弁33と第2室内膨張弁38は、いずれも、吸入温度センサ64の検出温度から吸入圧力センサ63の検出圧力に相当する冷媒の飽和温度を差し引くことで得られる冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御されてもよい。さらに、第1室内膨張弁33および第2室内膨張弁38の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
第1室内膨張弁33で減圧された冷媒は第1室内熱交換器31において蒸発し、第2室内膨張弁38で減圧された冷媒は第2室内熱交換器36において蒸発し、合流した後、ガス側冷媒連絡配管5に流れていく。ガス側冷媒連絡配管5を流れた冷媒は、ガス側閉鎖弁28、四路切換弁22を経て、吸入インジェクション配管40を流れた冷媒と合流する。合流した冷媒は、低圧レシーバ41を経て、再び、圧縮機21に吸入される。なお、低圧レシーバ41では、第1室内熱交換器31、第2室内熱交換器36、過冷却熱交換器47において蒸発しきれなかった液冷媒が余剰冷媒として貯留される。
(5−1−4−2)暖房運転モード
空気調和装置1では、暖房運転モードでは、圧縮機21は、例えば、冷媒回路10における冷媒の凝縮温度が、目標凝縮温度になるように、運転周波数が容量制御される。ここで、目標凝縮温度は、各室内ユニット30、35において設定温度と室内温度との差分が最も大きいもの(負荷が最も大きな室内ユニット)に応じて定めることが好ましい。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22、ガス側冷媒連絡配管5を流れた後、一部の冷媒が、第1室内ユニット30の第1室内熱交換器31のガス側端に流入し、第1室内熱交換器31において凝縮し、他の一部の冷媒が、第2室内ユニット35の第2室内熱交換器36のガス側端に流入し、第2室内熱交換器36において凝縮する。
なお、第1室内ユニット30の第1室内膨張弁33は、第1室内熱交換器31の液側を流れる冷媒の過冷却度が所定の目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。第2室内ユニット35の第2室内膨張弁38についても同様に、第2室内熱交換器36の液側を流れる冷媒の過冷却度が所定の目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。
第1室内膨張弁33で減圧された冷媒および第2室内膨張弁38で減圧された冷媒は、合流し、液側冷媒連絡配管6を流れて、室外ユニット20に流入する。
室外ユニット20の液側閉鎖弁29を通過した冷媒は、過冷却熱交換器47を流れた後、室外膨張弁24において減圧される。ここで、室外膨張弁24は、例えば、圧縮機21の吸入側を流れる冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。なお、室外膨張弁24の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
なお、暖房運転モードでは、吸入インジェクション配管40に設けられた過冷却膨張弁48は全閉状態に制御されるため、吸入インジェクション配管40には冷媒は流れず、過冷却熱交換器47における熱交換も行われない。
室外膨張弁24で減圧された冷媒は、室外熱交換器23において蒸発し、四路切換弁22および低圧レシーバ41を経て、再び、圧縮機21に吸入される。なお、低圧レシーバ41では、室外熱交換器23において蒸発しきれなかった液冷媒が余剰冷媒として貯留される。
(5−1−5)第1実施形態の特徴
上述の空気調和装置1では、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が用いられているため、GWPを十分に小さく抑えることが可能になっている。
また、空気調和装置1では、吸入インジェクション配管40によって、圧縮機21に吸入される冷媒の温度を低下させることが可能となるため、冷凍サイクルにおける運転効率を向上させることが可能になる。
(5−1−6)第1実施形態の変形例A
上記第1実施形態では、複数の室内ユニットが並列に接続された空気調和装置を例に挙げて説明したが、空気調和装置としては、1つの室内ユニットが直列に接続されたものであってもよい。
(5−1−7)第1実施形態の変形例B
上記第1実施形態では、冷媒を過冷却熱交換器47に流した後に圧縮機21の吸入側に送る吸入インジェクション配管40を備えた空気調和装置1を例に挙げて説明した。
これに対して、空気調和装置としては、例えば、図5Cに示すように、冷媒をエコノマイザ熱交換器47aに流した後に圧縮機21aの中間圧の領域に送るエコノマイザインジェクション配管40aを備えた空気調和装置1aであってもよい。
エコノマイザインジェクション配管40aは、冷媒回路10の主回路のうち室外膨張弁24から液側閉鎖弁29との間の部分から分岐し、圧縮機21aの中間圧の領域にまで延びた配管である。エコノマイザインジェクション配管40aの途中には、弁開度を制御可能なエコノマイザ膨張弁48aが設けられている。
エコノマイザ熱交換器47aは、冷媒回路10の主回路から分岐してエコノマイザインジェクション配管40aを流れる冷媒であって、エコノマイザ膨張弁48aにおいて減圧された後の冷媒と、冷媒回路10の主回路において室外膨張弁24から液側閉鎖弁29までの間を流れる冷媒との間で熱交換を行わせる熱交換器である。
圧縮機21aは、特に限定されないが、例えば、図5Dに示すような、スクロール圧縮機を用いることができる。
この圧縮機21aは、ケーシング80と、固定スクロール82を含むスクロール圧縮機構81と、駆動モータ91と、クランクシャフト94と、下部軸受98と、を備えている。
ケーシング80は、上下が開口した略円筒状の円筒部材80aと、円筒部材80aの上端および下端にそれぞれ設けられた上蓋80bおよび下蓋80cとを有する。円筒部材80aと、上蓋80bおよび下蓋80cとは、気密を保つように溶接により固定される。ケーシング80には、スクロール圧縮機構81、駆動モータ91、クランクシャフト94、および下部軸受98を含む圧縮機21aの構成機器が収容される。また、ケーシング80の下部には油溜まり空間Soが形成される。油溜まり空間Soには、スクロール圧縮機構81等を潤滑するための冷凍機油Oが溜められる。ケーシング80の上部には、冷媒回路10の冷凍サイクルにおける低圧ガス冷媒を吸入し、スクロール圧縮機構81にガス冷媒を供給する吸入管19が、上蓋80bを貫通して設けられる。吸入管19の下端は、スクロール圧縮機構81の固定スクロール82に接続される。吸入管19は、後述するスクロール圧縮機構81の圧縮室Scと連通する。ケーシング80の円筒部材80aの中間部には、ケーシング80外に吐出される冷媒が通過する吐出管18が設けられる。吐出管18は、ケーシング80の内部の吐出管18の端部が、スクロール圧縮機構81のハウジング88の下方に形成された高圧空間Shに突き出すように配置される。吐出管18には、スクロール圧縮機構81による圧縮後の、冷凍サイクルにおける高圧冷媒が流れる。ケーシング80の上蓋80bの側面には、インジェクション接続口が設けられており、このインジェクション接続口において、エコノマイザインジェクション配管40aが接続される。
スクロール圧縮機構81は、主に、ハウジング88と、ハウジング88の上方に配置される固定スクロール82と、固定スクロール82と組み合わされて圧縮室Scを形成する可動スクロール84と、を有する。
固定スクロール82は、平板状の固定側鏡板82aと、固定側鏡板82aの前面から突出する渦巻状の固定側ラップ82bと、固定側ラップ82bを囲む外縁部82cとを有する。固定側鏡板82aの中央部には、スクロール圧縮機構81の圧縮室Scに連通する非円形形状の吐出口82dが、固定側鏡板82aを厚さ方向に貫通して形成される。圧縮室Scで圧縮された冷媒は、吐出口82dから吐出され、固定スクロール82およびハウジング88に形成された図示しない冷媒通路を通過して、高圧空間Shへ流入する。また、固定側鏡板82aには、固定側鏡板82aの側面において開口し、圧縮室Scに連通する供給通路82eが形成される。この供給通路82eにより、エコノマイザインジェクション配管40aを流れた中間圧冷媒が圧縮室Scに供給される。供給通路82eは、固定側鏡板82aの側面の開口から固定側鏡板82aの中央側に向けて水平方向に延びる水平通路部82fを有する。また、供給通路82eは、水平通路部82fの、固定側鏡板82aの中央側の部分(水平通路部82fの、固定側鏡板82aの中央側の端部近傍)から圧縮室Scに向かって延び、圧縮室Scと直接連通するインジェクションポート82gを有する。インジェクションポート82gは、円形の孔である。
可動スクロール84は、平板状の可動側鏡板84aと、可動側鏡板84aの前面から突出する渦巻状の可動側ラップ84bと、可動側鏡板84aの背面から突出する、円筒状に形成されたボス部84cとを有する。固定スクロール82の固定側ラップ82bと、可動スクロール84の可動側ラップ84bとは、固定側鏡板82aの下面と可動側鏡板84aの上面とが対向する状態で組み合わされる。隣接する固定側ラップ82bと可動側ラップ84bとの間には、圧縮室Scが形成される。可動スクロール84が後述するように固定スクロール82に対して公転することで、圧縮室Scの体積が周期的に変化し、スクロール圧縮機構81において、冷媒の吸入、圧縮、吐出が行われる。ボス部84cは、上端の塞がれた円筒状部分である。ボス部84cの中空部に、後述するクランクシャフト94の偏心部95が挿入されることで、可動スクロール84とクランクシャフト94とが連結される。ボス部84cは、可動スクロール84とハウジング88との間に形成される偏心部空間89に配置される。偏心部空間89は、後述するクランクシャフト94の給油経路97等を介して高圧空間Shと連通しており、偏心部空間89には高い圧力が作用する。この圧力により、偏心部空間89内の可動側鏡板84aの下面は、固定スクロール82に向かって上方に押される。この力により、可動スクロール84は、固定スクロール82に密着する。可動スクロール84は、「オルダムリング空間Sr」に配置されたオルダムリングを介してハウジング88に支持される。オルダムリングは、可動スクロール84の自転を防止し、公転させる部材である。オルダムリングを用いることで、クランクシャフト94が回転すると、ボス部84cにおいてクランクシャフト94と連結された可動スクロール84が、固定スクロール82に対して自転することなく公転し、圧縮室Sc内の冷媒が圧縮される。
ハウジング88は、円筒部材80aに圧入され、その外周面において周方向の全体に亘って円筒部材80aに固定されている。また、ハウジング88と固定スクロール82とは、ハウジング88の上端面が、固定スクロール82の外縁部82cの下面と密着するように、図示しないボルト等により固定されている。ハウジング88には、上面中央部に凹むように配置される凹部88aと、凹部88aの下方に配置される軸受部88bとが形成される。凹部88aは、可動スクロール84のボス部84cが配置される偏心部空間89の側面を囲む。軸受部88bには、クランクシャフト94の主軸96を軸支する軸受90が配置される。軸受90は、軸受90に挿入された主軸96を回転自在に支持する。また、ハウジング88には、オルダムリングが配置されるオルダムリング空間Srが形成される。
駆動モータ91は、円筒部材80aの内壁面に固定された環状のステータ92と、ステータ92の内側に、僅かな隙間(エアギャップ通路)を空けて回転自在に収容されたロータ93とを有する。ロータ93は、円筒部材80aの軸心に沿って上下方向に延びるように配置されたクランクシャフト94を介して可動スクロール84と連結される。ロータ93が回転することで、可動スクロール84は、固定スクロール82に対して公転する。
クランクシャフト94は、駆動モータ91の駆動力を可動スクロール84に伝達する。クランクシャフト94は、円筒部材80aの軸心に沿って上下方向に延びるように配置され、駆動モータ91のロータ93と、スクロール圧縮機構81の可動スクロール84とを連結する。クランクシャフト94は、円筒部材80aの軸心と中心軸が一致する主軸96と、円筒部材80aの軸心に対して偏心した偏心部95とを有する。偏心部95は、前述のように可動スクロール84のボス部84cに挿入される。主軸96は、ハウジング88の軸受部88bの軸受90、および、後述する下部軸受98により、回転自在に支持される。主軸96は、軸受部88bと下部軸受98との間で、駆動モータ91のロータ93に連結される。クランクシャフト94の内部には、スクロール圧縮機構81等に冷凍機油Oを供給するための給油経路97が形成される。主軸96の下端は、ケーシング80の下部に形成された油溜まり空間So内に位置し、油溜まり空間Soの冷凍機油Oは、給油経路97を通じてスクロール圧縮機構81等に供給される。
下部軸受98は、駆動モータ91の下方に配置される。下部軸受98は、円筒部材80aに固定される。下部軸受98は、クランクシャフト94の下端側の軸受を構成し、クランクシャフト94の主軸96を回転自在に支持する。
次に、圧縮機21aの動作について説明する。
駆動モータ91が起動すると、ロータ93がステータ92に対して回転し、ロータ93と固定されたクランクシャフト94が回転する。クランクシャフト94が回転すると、クランクシャフト94に連結された可動スクロール84が固定スクロール82に対して公転する。そして、冷凍サイクルにおける低圧のガス冷媒が、吸入管19を通って、圧縮室Scの周縁側から、圧縮室Scに吸引される。可動スクロール84が公転するのに従い、吸入管19と圧縮室Scとは連通しなくなる。そして、圧縮室Scの容積が減少するのに伴って、圧縮室Scの圧力が上昇し始める。
圧縮途中の圧縮室Scには、エコノマイザインジェクション配管40aを流れた中間圧冷媒が、水平通路部82fおよびインジェクションポート82gを介して、圧縮室Scに供給される。
圧縮室Scは、冷媒の圧縮が進むにつれ、インジェクションポート82gと連通しなくなる。圧縮室Sc内の冷媒は、圧縮室Scの容積が減少するのに伴って圧縮され、最終的に高圧のガス冷媒となる。高圧のガス冷媒は、固定側鏡板82aの中心付近に位置する吐出口82dから吐出される。その後、高圧のガス冷媒は、固定スクロール82およびハウジング88に形成された図示しない冷媒通路を通過して、高圧空間Shへ流入する。高圧空間Shに流入した、スクロール圧縮機構81による圧縮後の、冷凍サイクルにおける高圧のガス冷媒は、吐出管18から吐出される。
この空気調和装置1aでは、エコノマイザインジェクション配管40aを流れた冷媒が圧縮機21aの中間圧の領域に合流することで、圧縮機21aの中間圧の冷媒の温度を低下させることが可能となるため、冷凍サイクルにおける運転効率を向上させることが可能になる。
(5−1−8)第1実施形態の変形例C
上記第1実施形態の変形例Bでは、圧縮機としてスクロール圧縮機を例に挙げて説明した。
これに対して、第1実施形態において用いられる圧縮機としては、後述の第2実施形態において記載のロータリー圧縮機である圧縮機21bであってもよい。
(5−2)第2実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図5E、概略制御ブロック構成図である図5Fを参照しつつ、第2実施形態に係る冷凍サイクル装置としての空気調和装置1bについて説明する。
以下、主として、第2実施形態の空気調和装置1bについて、第1実施形態の空気調和装置1と異なる箇所を中心に説明する。
空気調和装置1bにおいても、冷媒回路10には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒として、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかが充填されている。また、冷媒回路10には、当該冷媒と共に、冷凍機油が充填されている。
(5−2−1)室外ユニット20
第2実施形態の空気調和装置1bの室外ユニット20では、上記第1実施形態における室外ユニット20の圧縮機21、低圧レシーバ41、吸入インジェクション配管40、過冷却膨張弁48、過冷却熱交換器47、過冷却温度センサ67は設けられておらず、代わりに、圧縮機21b、高圧レシーバ42、中間インジェクション配管46、中間インジェクション膨張弁49が設けられている。
高圧レシーバ42は、冷媒回路10の主流路において室外膨張弁24と液側閉鎖弁29との間に設けられている。高圧レシーバ42は、室外膨張弁24側から延びる配管の端部と、液側閉鎖弁29側から延びる配管の端部と、の両方が内部空間に位置しており、冷媒を溜めることができる容器である。
中間インジェクション配管46は、高圧レシーバ42の内部空間のうちガス領域から延びだしており、圧縮機21bの中間圧の領域に接続されている配管である。中間インジェクション膨張弁49は、中間インジェクション配管46の途中に設けられており、弁開度を制御可能である。
(5−2−2)室内ユニット30
第2実施形態の第1室内ユニット30および第2室内ユニット35は、第1実施形態のものと同様であるため、説明を省略する。
(5−2−3)冷房運転モードおよび暖房運転モード
以上の空気調和装置1bでは、冷房運転モードでは、室外膨張弁24は、例えば、室外熱交換器23の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。また、中間インジェクション膨張弁49は、高圧レシーバ42から流れてきた冷媒を、圧縮機21bにおける中間圧力まで減じるように制御される。
また、暖房運転モードでは、室外膨張弁24は、例えば、圧縮機21bが吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。また、中間インジェクション膨張弁49は、高圧レシーバ42から流れてきた冷媒を、圧縮機21bにおける中間圧力まで減じるように制御される。
(5−2−4)圧縮機21b
圧縮機21bは、図5Gに示すように、1シリンダ型のロータリー圧縮機であって、ケーシング111と、ケーシング111内に配置される駆動機構120および圧縮機構130とを備えた、ロータリー圧縮機である。この圧縮機21bは、ケーシング111内において、圧縮機構130が、駆動機構120の下側に配置される。
(5−2−4−1)駆動機構
駆動機構120は、ケーシング111の内部空間の上部に収容されており、圧縮機構130を駆動する。駆動機構120は、駆動源となるモータ121と、モータ121に取り付けられる駆動軸であるクランクシャフト122とを有する。
モータ121は、クランクシャフト122を回転駆動させるためのモータであり、主として、ロータ123と、ステータ124とを有している。ロータ123は、その内部空間にクランクシャフト122が挿嵌されており、クランクシャフト122と共に回転する。ロータ123は、積層された電磁鋼板と、ロータ本体に埋設された磁石とから成る。ステータ124は、ロータ123の径方向外側に所定の空間を介して配置される。ステータ124は、積層された電磁鋼板と、ステータ本体に巻かれたコイルとから成る。モータ121は、コイルに電流を流すことによってステータ124に発生する電磁力により、ロータ123をクランクシャフト122と共に回転させる。
クランクシャフト122は、ロータ123に挿嵌され、回転軸を中心に回転する。また、クランクシャフト122の偏芯部であるクランクピン122aは、図5Hに示すように、圧縮機構130のピストン131のローラ180(後述)に挿通しており、ロータ123からの回転力を伝達可能な状態でローラ180に嵌っている。クランクシャフト122は、ロータ123の回転に従って回転し、クランクピン122aを偏芯回転させ、圧縮機構130のピストン131のローラ180を公転させる。すなわち、クランクシャフト122は、モータ121の駆動力を圧縮機構130に伝達する機能を有している。
(5−2−4−2)圧縮機構
圧縮機構130は、ケーシング111内の下部側に収容されている。圧縮機構130は、吸入管196を介して吸入した冷媒を圧縮する。圧縮機構130は、ロータリー型の圧縮機構であり、主として、フロントヘッド140と、シリンダ150と、ピストン131と、リアヘッド160とから成る。また、圧縮機構130の圧縮室S1で圧縮された冷媒は、フロントヘッド140に形成されているフロントヘッド吐出孔141aから、フロントヘッド140およびマフラー170に囲われたマフラー空間S2を経て、モータ121が配置され吐出管125の下端が位置する空間へ吐出される。
(5−2−4−2−1)シリンダ
シリンダ150は、金属製の鋳造部材である。シリンダ150は、円筒状の中央部150aと、中央部150aから付属のアキュムレータ195側に延びる第1外延部150bと、中央部150aから第1外延部150bとは反対側に延びる第2外延部150cとを有している。第1外延部150bには、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒を吸入する吸入孔151が形成されている。中央部150aの内周面150a1の内側の円柱状空間は、吸入孔151から吸入される冷媒が流入するシリンダ室152となる。吸入孔151は、シリンダ室152から第1外延部150bの外周面に向かって延び、第1外延部150bの外周面において開口している。この吸入孔151には、アキュムレータ195から延びる吸入管196の先端部が挿入される。また、シリンダ室152内には、シリンダ室152内に流入した冷媒を圧縮するためのピストン131等が収容される。
シリンダ150の円筒状の中央部150aにより形成されるシリンダ室152は、その下端である第1端が開口しており、また、その上端である第2端も開口している。中央部150aの下端である第1端は、後述するリアヘッド160により塞がれる。また、中央部150aの上端である第2端は、後述するフロントヘッド140により塞がれる。
また、シリンダ150には、後述するブッシュ135およびブレード190が配置されるブレード揺動空間153が形成されている。ブレード揺動空間153は、中央部150aと第1外延部150bとにまたがって形成されており、ブッシュ135を介してピストン131のブレード190がシリンダ150に揺動可能に支持される。ブレード揺動空間153は、平面的には、吸入孔151の近傍を、シリンダ室152から外周側に向かって延びるように形成されている。
(5−2−4−2−2)フロントヘッド
フロントヘッド140は、図5Gに示すように、シリンダ150の上端である第2端の開口を閉塞するフロントヘッド円板部141と、フロントヘッド円板部141の中央のフロントヘッド開口の周縁から上方向に延びるフロントヘッドボス部142とを有する。フロントヘッドボス部142は、円筒状であり、クランクシャフト122の軸受として機能する。
フロントヘッド円板部141には、図5Hに示す平面位置に、フロントヘッド吐出孔141aが形成されている。フロントヘッド吐出孔141aからは、シリンダ150のシリンダ室152において容積が変化する圧縮室S1で圧縮された冷媒が、断続的に吐出される。フロントヘッド円板部141には、フロントヘッド吐出孔141aの出口を開閉する吐出弁が設けられている。この吐出弁は、圧縮室S1の圧力がマフラー空間S2の圧力よりも高くなったときに圧力差によって開き、フロントヘッド吐出孔141aからマフラー空間S2へと冷媒を吐出させる。
(5−2−4−2−3)マフラー
マフラー170は、図5Gに示すように、フロントヘッド140のフロントヘッド円板部141の周縁部の上面に取り付けられている。マフラー170は、フロントヘッド円板部141の上面およびフロントヘッドボス部142の外周面と共にマフラー空間S2を形成して、冷媒の吐出に伴う騒音の低減を図っている。マフラー空間S2と圧縮室S1とは、上述のように、吐出弁が開いているときにはフロントヘッド吐出孔141aを介して連通する。
また、マフラー170には、フロントヘッドボス部142を貫通させる中央マフラー開口と、マフラー空間S2から上方のモータ121の収容空間へと冷媒を流すマフラー吐出孔とが形成されている。
なお、マフラー空間S2、モータ121の収容空間、吐出管125が位置するモータ121の上方の空間、圧縮機構130の下方に潤滑油が溜まっている空間などは、全てつながっており、圧力が等しい高圧空間を形成している。
(5−2−4−2−4)リアヘッド
リアヘッド160は、シリンダ150の下端である第1端の開口を閉塞するリアヘッド円板部161と、リアヘッド円板部161の中央開口の周縁部から下方に延びる軸受としてのリアヘッドボス部162とを有する。フロントヘッド円板部141、リアヘッド円板部161、およびシリンダ150の中央部150aは、図5Hに示すように、シリンダ室152を形成する。フロントヘッドボス部142およびリアヘッドボス部162は、円筒形状のボス部であり、クランクシャフト122を軸支する。
リアヘッド円板部161には、供給流路161aが形成されている。供給流路161aは、ケーシング111に開けられたインジェクション用の穴(図示せず)とつながっており、中間インジェクション配管46と結ばれる。供給流路161aは、ケーシング111のインジェクション用の穴からクランクシャフト122の回転軸CAに向かって水平に延び、途中で上に向いて折れ曲がり、リアヘッド円板部161の上面に開口している。この供給流路161aの出口開口161a1は、図5Hにおいて二点鎖線で示す平面位置に開口している。すなわち、供給流路161aの出口開口161a1は、シリンダ150の中央部150aの内周面150a1の内側のシリンダ室152に開口している。この供給流路161aは、圧縮機21bの外部から導入される中間圧の冷媒を、ピストン131のローラ180の公転角度が一定範囲にあるときに、シリンダ室152において容積変化する圧縮室S1に流す役割を果たす。したがって、ピストン131のローラ180の公転角度が上述の一定範囲以外の所定範囲にあるときには、ローラ180の下端面の一部によって塞がれる。
(5−2−4−2−5)ピストン
ピストン131は、シリンダ室152に配置され、クランクシャフト122の偏芯部であるクランクピン122aに装着されている。ピストン131は、ローラ180とブレード190とが一体化された部材である。ピストン131のブレード190は、シリンダ150に形成されているブレード揺動空間153に配置され、上述のように、ブッシュ135を介してシリンダ150に揺動可能に支持される。また、ブレード190は、ブッシュ135と摺動可能になっており、運転中には、揺動するとともに、クランクシャフト122から離れたりクランクシャフト122に近づいたりする動きを繰り返す。
ローラ180は、ローラ下端面である第1端面181aが形成されている第1端部181と、ローラ上端面である第2端面182aが形成されている第2端部182と、それら第1端部181と第2端部182との間に位置する中央部183とから構成されている。中央部183は、図5Iに示すように、内径D2、外径D1である円筒形状の部分である。第1端部181は、内径D3、外径D1である円筒形状の第1本体部181bと、その第1本体部181bから内側に突出する第1突出部181cとから構成される。第1本体部181bの外径D1は、中央部183の外径D1と同じ寸法である。また、第1本体部181bの内径D3は、中央部183の内径D2よりも大きい。第2端部182は、内径D3、外径D1である円筒形状の第2本体部182bと、その第2本体部182bから内側に突出する第2突出部182cとから構成される。第2本体部182bの外径D1は、第1本体部181bの外径D1と同様に、中央部183の外径D1と同じ寸法である。また、第2本体部182bの内径D3は、第1本体部181bの内径D3と同じ寸法であり、中央部183の内径D2よりも大きい。第1突出部181cの内面181c1および第2突出部182cの内面182c1は、クランクシャフト122の回転軸方向視において、中央部183の内周面183a1とほぼ重なる。詳細には、第1突出部181cの内面181c1および第2突出部182cの内面182c1は、平面視において、中央部183の内周面183a1よりも少しだけ外側に位置している。このように、第1突出部181cおよび第2突出部182cを除くと、第1本体部181bおよび第2本体部182bの内径D3が中央部183の内径D2よりも大きくなっているため、第1端部181と中央部183との境界の高さ位置には第1段差面183a2が形成され、第2端部182と中央部183との境界の高さ位置には第2段差面183a3が形成される(図5I参照)。
ローラ180の第1端部181の環状の第1端面181aは、リアヘッド円板部161の上面と接しており、リアヘッド円板部161の上面と摺動する。ローラ180の第1端面181aは、径方向の幅が部分的に大きくなっている第1幅広面181a1を含んでいる。第1端部181の第1突出部181c、および、その外方に位置する第1端部181の第1本体部181bの一部が、第1幅広面181a1を形成している(図5I参照)。
ローラ180の第2端部182の環状の第2端面182aは、フロントヘッド円板部141の下面と接しており、フロントヘッド円板部141の下面と摺動する。ローラ180の第2端面182aは、径方向の幅が部分的に大きくなっている第2幅広面182a1を含んでいる。第2幅広面182a1は、クランクシャフト122の回転軸方向視において、第1幅広面181a1と同じ位置にある。第2端部182の第2突出部182c、および、その外方に位置する第2端部182の第2本体部182bの一部が、第2幅広面182a1を形成している。
ピストン131のローラ180およびブレード190は、図5Hに示すように、シリンダ室152を仕切る形で、ピストン131の公転によって容積が変化する圧縮室S1を形成している。圧縮室S1は、シリンダ150の中央部150aの内周面150a1、リアヘッド円板部161の上面、フロントヘッド円板部141の下面およびピストン131によって囲まれる空間である。ピストン131の公転にしたがって圧縮室S1の容積が変化し、吸入孔151から吸い込まれた低圧の冷媒が圧縮され高圧の冷媒となり、フロントヘッド吐出孔141aからマフラー空間S2へと吐出される。
(5−2−4−3)動作
以上の圧縮機121bでは、クランクピン122aの偏芯回転によって公転する圧縮機構130のピストン131の動きによって、圧縮室S1の容積が変化する。具体的には、まず、ピストン131が公転していく間に、吸入孔151から低圧の冷媒が圧縮室S1に吸入される。吸入孔151に面した圧縮室S1は、冷媒を吸入しているときには、その容積が段々と大きくなる。さらにピストン131が公転すると、圧縮室S1と吸入孔151との連通状態が解消され、圧縮室S1での冷媒圧縮が始まる。その後、供給流路161aの出口開口161a1から圧縮室S1に中間圧の冷媒がインジェクションされた後、フロントヘッド吐出孔141aと連通状態となる圧縮室S1は、その容積がかなり小さくなり、冷媒の圧力も高くなってくる。その際には、ピストン131のローラ180の第1端面181aの第1幅広面181a1が、リアヘッド円板部161の供給流路161aの出口開口161a1を塞いでおり、中間圧の冷媒の圧縮室S1へのインジェクションは為されない状態となる。その後、ピストン131がさらに公転することで、高圧となった冷媒が、フロントヘッド吐出孔141aから吐出弁を押し開いて、マフラー空間S2へと吐出される。マフラー空間S2に導入された冷媒は、マフラー170のマフラー吐出孔からマフラー空間S2の上方の空間へ排出される。マフラー空間S2の外部へ排出された冷媒は、モータ121のロータ123とステータ124との間の空間を通過して、モータ121を冷却した後に、吐出管125から吐出される。
(5−2−5)第2実施形態の特徴
以上の第2実施形態に係る空気調和装置1bにおいても、第1実施形態に係る空気調和装置1と同様に、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が用いられているため、GWPを十分に小さく抑えることが可能になっている。
また、空気調和装置1bでは、中間インジェクション配管46を流れた冷媒が圧縮機21bの中間圧の領域に合流することで、圧縮機21bの中間圧の冷媒の温度を低下させることが可能となるため、冷凍サイクルにおける運転効率を向上させることが可能になる。
(5−2−6)第2実施形態の変形例A
上記第2実施形態では、複数の室内ユニットが並列に接続された空気調和装置を例に挙げて説明したが、空気調和装置としては、1つの室内ユニットが直列に接続されたものであってもよい。
(5−2−7)第2実施形態の変形例B
上記第2実施形態では、圧縮機21bとしてロータリ圧縮機を例に挙げて説明した。
これに対して、第2実施形態において用いられる圧縮機としては、上記の第1実施形態の変形例Bにおいて記載のスクロール圧縮機である圧縮機21aであってもよい。
(5−2−8)第2実施形態の変形例C
上記第2実施形態では、高圧レシーバ42内のガス冷媒を中間インジェクション配管46によって、圧縮機21bの中間圧の領域に合流させる場合を例に挙げて説明した。
これに対して、第2実施形態における高圧レシーバ42内のガス冷媒は、圧縮機の中間圧の領域ではなく、吸入側に合流させるようにしてもよい。この場合には、圧縮機に吸入される冷媒の温度を低下させることで、冷凍サイクルにおける運転効率を向上させることが可能になる。
(6)第6グループの技術の実施形態
(6−1)第1実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図6A、概略制御ブロック構成図である図6Bを参照しつつ、第1実施形態に係る熱源ユニットとしての室外ユニット20を備えた冷凍サイクル装置としての空気調和装置1について説明する。
空気調和装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うことで、対象空間の空気を調和させる装置である。
空気調和装置1は、主として、室外ユニット20と、室内ユニット30と、室外ユニット20と室内ユニット30を接続する液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5と、入力装置および出力装置としての図示しないリモコンと、空気調和装置1の動作を制御するコントローラ7と、を有している。液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5の設計圧力は、例えば、4.5MPa(3/8インチのもの)以上5.0MPa(4/8インチのもの)以下とすることができる。
空気調和装置1では、冷媒回路10内に封入された冷媒が、圧縮され、冷却又は凝縮され、減圧され、加熱又は蒸発された後に、再び圧縮される、という冷凍サイクルが行われる。本実施形態では、冷媒回路10には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が充填されている。当該冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。また、冷媒回路10には、当該冷媒と共に、冷凍機油が充填されている。
(6−1−1)室外ユニット20
室外ユニット20は、外観が略直方体箱状であり、内部が仕切板等によって分割されることで、送風機室および機械室が形成された構造(いわゆる、トランク型構造)を有している。
この室外ユニット20は、液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5を介して室内ユニット30と接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。室外ユニット20は、主として、圧縮機21と、四路切換弁22と、室外熱交換器23と、室外膨張弁24と、室外ファン25と、液側閉鎖弁29と、ガス側閉鎖弁28と、を有している。
室外ユニット20は、設計圧力(ゲージ圧力)が、液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の設計圧力の1.5倍(液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の耐圧圧力)よりも低いものである。このような室外ユニット20の設計圧力は、例えば、4.0MPa以上4.5MPa以下とすることができる。
圧縮機21は、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒を高圧になるまで圧縮する機器である。ここでは、圧縮機21として、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素(図示省略)が圧縮機モータによって回転駆動される密閉式構造の圧縮機が使用されている。圧縮機モータは、容量を変化させるためのものであり、インバータにより運転周波数の制御が可能である。なお、圧縮機21には、吸入側において、図示しない付属アキュムレータが設けられている。なお、本実施形態の室外ユニット20は、当該付属アキュムレータより大きな冷媒容器(圧縮機21の吸入側に配置される低圧レシーバや室外熱交換器23の液側に配置される高圧レシーバ等)を有していない。
四路切換弁22は、接続状態を切り換えることで、圧縮機21の吐出側と室外熱交換器23とを接続しつつ圧縮機21の吸入側とガス側閉鎖弁28とを接続する冷房運転接続状態と、圧縮機21の吐出側とガス側閉鎖弁28とを接続しつつ圧縮機21の吸入側と室外熱交換器23とを接続する暖房運転接続状態と、を切り換えることができる。
室外熱交換器23は、冷房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の凝縮器として機能し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能する熱交換器である。室外熱交換器23は、複数の伝熱フィンと、これに貫通固定された複数の伝熱管とを有している。
室外ファン25は、室外ユニット20内に室外の空気を吸入して、室外熱交換器23において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための空気流れを生じさせる。室外ファン25は、室外ファンモータによって回転駆動される。なお、本実施形態において、室外ファン25は、1つだけ設けられている。
室外膨張弁24は、弁開度を制御可能であり、室外熱交換器23の液側端部と液側閉鎖弁29との間に設けられている。
液側閉鎖弁29は、室外ユニット20における液側冷媒連絡配管6との接続部分に配置された手動弁である。
ガス側閉鎖弁28は、室外ユニット20におけるとガス側冷媒連絡配管5との接続部分に配置された手動弁である。
室外ユニット20は、室外ユニット20を構成する各部の動作を制御する室外ユニット制御部27を有している。室外ユニット制御部27は、CPUやメモリ等を含むマイクロコンピュータを有している。室外ユニット制御部27は、各室内ユニット30の室内ユニット制御部34と通信線を介して接続されており、制御信号等の送受信を行う。また、室外ユニット制御部27は、図示しない各種センサと電気的に接続されており、各センサからの信号を受信する。
この室外ユニット制御部27(およびこれを含むコントローラ7)は、冷媒の制御圧力(ゲージ圧力)の上限値が、液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の設計圧力の1.5倍(液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の耐圧圧力)よりも低くなるように設定されている。
(6−1−2)室内ユニット30
室内ユニット30は、対象空間である室内の壁面等に設置されている。室内ユニット30は、液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5を介して室外ユニット20と接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。なお、室内ユニット30の設計圧力は、室外ユニット20と同様に、例えば、4.0MPa以上4.5MPa以下とすることができる。
室内ユニット30は、室内熱交換器31と、室内ファン32等を有している。
室内熱交換器31は、液側が、液側冷媒連絡配管6と接続され、ガス側端が、ガス側冷媒連絡配管5とを接続されている。室内熱交換器31は、冷房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の凝縮器として機能する熱交換器である。室内熱交換器31は、複数の伝熱フィンと、これに貫通固定された複数の伝熱管と、を有している。
室内ファン32は、室内ユニット30内に室内の空気を吸入して、室内熱交換器31において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための空気流れを生じさせる。室内ファン32は、図示しない室内ファンモータによって回転駆動される。
また、室内ユニット30は、室内ユニット30を構成する各部の動作を制御する室内ユニット制御部34を有している。室内ユニット制御部34は、CPUやメモリ等を含むマイクロコンピュータを有している。室内ユニット制御部34は、室外ユニット制御部27と通信線を介して接続されており、制御信号等の送受信を行う。
室内ユニット制御部34は、室内ユニット30内に設けられている図示しない各種センサと電気的に接続されており、各センサからの信号を受信する。
(6−1−3)コントローラ7の詳細
空気調和装置1では、室外ユニット制御部27と室内ユニット制御部34が通信線を介して接続されることで、空気調和装置1の動作を制御するコントローラ7が構成されている。
コントローラ7は、主として、CPU(中央演算処理装置)と、ROMやRAM等のメモリを有している。なお、コントローラ7による各種処理や制御は、室外ユニット制御部27および/又は室内ユニット制御部34に含まれる各部が一体的に機能することによって実現されている。
(6−1−4)運転モード
以下、運転モードについて説明する。
運転モードとしては、冷房運転モードと暖房運転モードとが設けられている。
コントローラ7は、リモコン等から受け付けた指示に基づいて、冷房運転モードか暖房運転モードかを判断し、実行する。
(6−1−4−1)冷房運転モード
空気調和装置1では、冷房運転モードでは、四路切換弁22の接続状態を圧縮機21の吐出側と室外熱交換器23とを接続しつつ圧縮機21の吸入側とガス側閉鎖弁28とを接続する冷房運転接続状態とし、冷媒回路10に充填されている冷媒を、主として、圧縮機21、室外熱交換器23、室外膨張弁24、室内熱交換器31の順に循環させる。
より具体的には、冷房運転モードが開始されると、冷媒回路10内において、冷媒が圧縮機21に吸入されて圧縮された後に吐出される。
圧縮機21では、室内ユニット30で要求される冷却負荷に応じた容量制御が行われる。圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22を経て、室外熱交換器23のガス側端に流入する。
室外熱交換器23のガス側端に流入したガス冷媒は、室外熱交換器23において、室外ファン25によって供給される室外側空気と熱交換を行って凝縮し、液冷媒となって室外熱交換器23の液側端から流出する。
室外熱交換器23の液側端から流出した冷媒は、室外膨張弁24を通過する際に減圧される。なお、室外膨張弁24は、室外熱交換器23の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。
室外膨張弁24で減圧された冷媒は、液側閉鎖弁29および液側冷媒連絡配管6を経て、室内ユニット30に流入する。
室内ユニット30に流入した冷媒は、室内熱交換器31に流入し、室内熱交換器31において、室内ファン32によって供給される室内空気と熱交換を行って蒸発し、ガス冷媒となって室内熱交換器31のガス側端から流出する。室内熱交換器31のガス側端から流出したガス冷媒は、ガス側冷媒連絡配管5に流れていく。
ガス側冷媒連絡配管5を流れた冷媒は、ガス側閉鎖弁28、四路切換弁22を経て、再び、圧縮機21に吸入される。
(6−1−4−2)暖房運転モード
空気調和装置1では、暖房運転モードでは、四路切換弁22の接続状態を圧縮機21の吐出側とガス側閉鎖弁28とを接続しつつ圧縮機21の吸入側と室外熱交換器23とを接続する暖房運転接続状態とし、冷媒回路10に充填されている冷媒を、主として、圧縮機21、室内熱交換器31、室外膨張弁24、室外熱交換器23の順に循環させる。
より具体的には、暖房運転モードが開始されると、冷媒回路10内において、冷媒が圧縮機21に吸入されて圧縮された後に吐出される。
圧縮機21では、室内ユニット30で要求される暖房負荷に応じた容量制御が行われる。ここで、例えば、冷媒回路10における圧力の最大値が、ガス側冷媒連絡配管5の設計圧力の1.5倍よりも低くなるように、圧縮機21の駆動周波数と室外ファン25の風量の少なくともいずれかが制御される。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22およびガス側冷媒連絡配管5を流れた後、室内ユニット30に流入する。
室内ユニット30に流入した冷媒は、室内熱交換器31のガス側端に流入し、室内熱交換器31において、室内ファン32によって供給される室内空気と熱交換を行って凝縮し、気液二相状態の冷媒または液冷媒となって室内熱交換器31の液側端から流出する。室内熱交換器31の液側端から流出した冷媒は、液側冷媒連絡配管6に流れていく。
液側冷媒連絡配管6を流れた冷媒は、液側閉鎖弁29、室外膨張弁24において冷凍サイクルにおける低圧になるまで減圧される。なお、室外膨張弁24は、室内熱交換器31の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。室外膨張弁24で減圧された冷媒は、室外熱交換器23の液側端に流入する。
室外熱交換器23の液側端から流入した冷媒は、室外熱交換器23において、室外ファン25によって供給される室外空気と熱交換を行って蒸発し、ガス冷媒となって室外熱交換器23のガス側端から流出する。
室外熱交換器23のガス側端から流出した冷媒は、四路切換弁22を経て、再び、圧縮機21に吸入される。
(6−1−5)第1実施形態の特徴
上述の空気調和装置1では、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が用いられているため、GWPを十分に小さく抑えることが可能になっている。
また、空気調和装置1では、室外ユニット20の設計圧力が液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の設計圧力の1.5倍よりも低いものが用いられている。また、空気調和装置1の室外ユニット20が有する室外ユニット制御部27は、冷媒の制御圧力の上限値が、液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の設計圧力の1.5倍よりも低くなるように、設定されている。このため、特定の冷媒Aを用いた場合であっても、液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の損傷を抑制させることが可能になっている。
(6−1−6)第1実施形態の変形例A
上記第1実施形態では、室内ユニットが1つだけ設けられている空気調和装置を例に挙げて説明したが、空気調和装置としては、互いに並列に接続された複数の室内ユニット(室内膨張弁を有さないもの)が設けられていてもよい。
(6−1−7)第1実施形態の変形例B
上記第1実施形態では、室外ユニット20の設計圧力が液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の設計圧力の1.5倍よりも低く、且つ、室外ユニット20の室外ユニット制御部27について冷媒の制御圧力の上限値が液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の設計圧力の1.5倍よりも低くなるように設定されている場合を例に挙げて説明した。
これに対して、例えば、設計圧力が液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の設計圧力の1.5倍以上の室外ユニット20であっても、冷媒の制御圧力の上限値として複数種類の中から選択可能に構成されており、液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の設計圧力の1.5倍よりも低くなるように設定可能な室外ユニット制御部27を有する室外ユニット20であれば、上記実施形態の空気調和装置1において用いることができる。
(6−2)第2実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図6C、概略制御ブロック構成図である図6Dを参照しつつ、第2実施形態に係る熱源ユニットとしての室外ユニット20を備えた冷凍サイクル装置としての空気調和装置1aについて説明する。
以下、主として、第2実施形態の空気調和装置1aについて、第1実施形態の空気調和装置1と異なる箇所を中心に説明する。
空気調和装置1aにおいても、冷媒回路10には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒として、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒であり、冷媒Aのいずれかが充填されている。また、冷媒回路10には、当該冷媒と共に、冷凍機油が充填されている。
(6−2−1)室外ユニット20
第2実施形態の空気調和装置1aの室外ユニット20では、室外ファン25として、第1室外ファン25aと第2室外ファン25bとが設けられている。空気調和装置1aの室外ユニット20の室外熱交換器23は、第1室外ファン25aおよび第2室外ファン25bから受ける空気流れに対応するように、広い熱交換面積が確保されている。なお、室外ユニット20は、上記第1実施形態と同様に、設計圧力(ゲージ圧力)が、液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の設計圧力の1.5倍(液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の耐圧圧力)よりも低い。このような室外ユニット20の設計圧力は、例えば、4.0MPa以上4.5MPa以下とすることができる。
空気調和装置1aの室外ユニット20では、上記第1実施形態における室外ユニット20の室外膨張弁24の代わりに、室外熱交換器23の液側から液側閉鎖弁29までの間において、第1室外膨張弁44、中間圧レシーバ41、第2室外膨張弁45が順次設けられている。第1室外膨張弁44および第2室外膨張弁45は、弁開度を制御可能である。中間圧レシーバ41は、第1室外膨張弁44側から延びる配管の端部と、第2室外膨張弁45側から延びる配管の端部と、の両方が内部空間に位置しており、冷媒を溜めることができる容器である。なお、中間圧レシーバ41の内容積は、圧縮機21に付属した付属アキュムレータの内容積より大きく、2倍以上であることが好ましい。
第2実施形態の室外ユニット20は、略直方体箱状であり、鉛直に延びる仕切板等によって分割されることで送風機室および機械室が形成された構造(いわゆる、トランク型構造)を有している。
室外熱交換器23は、例えば、複数の伝熱フィンと、これに貫通固定された複数の伝熱管とを有している。この室外熱交換器23は、平面視L字形状となるように配置されている。
なお、第2実施形態の室外ユニット20についても、室外ユニット制御部27(およびこれを含むコントローラ7)は、冷媒の制御圧力(ゲージ圧力)の上限値が、液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の設計圧力の1.5倍(液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の耐圧圧力)よりも低くなるように設定されている。
以上の空気調和装置1aでは、冷房運転モードでは、第1室外膨張弁44は、例えば、室外熱交換器23の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。また、冷房運転モードでは、第2室外膨張弁45は、例えば、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。
また、暖房運転モードでは、第2室外膨張弁45は、例えば、室内熱交換器31の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。また、暖房運転モードでは、第1室外膨張弁44は、例えば、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。なお、暖房運転モードでは、例えば、冷媒回路10における圧力の最大値が、ガス側冷媒連絡配管5の設計圧力の1.5倍よりも低くなるように、圧縮機21の駆動周波数と室外ファン25の風量の少なくともいずれかが制御される。
(6−2−2)室内ユニット30
第2実施形態の室内ユニット30は、対象空間である室内の上方空間に吊り下げられることで設置されるか、天井面に対して設置されるか、壁面に対して設置されて用いられる。室内ユニット30は、液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5を介して室外ユニット20と接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。なお、室内ユニット30の設計圧力は、室外ユニット20と同様に、例えば、4.0MPa以上4.5MPa以下とすることができる。
室内ユニット30は、室内熱交換器31と、室内ファン32等を有している。
第2実施形態の室内熱交換器31は、複数の伝熱フィンと、これに貫通固定された複数の伝熱管と、を有している。
(6−2−3)第2実施形態の特徴
以上の第2実施形態に係る空気調和装置1aにおいても、第1実施形態に係る空気調和装置1と同様に、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が用いられているため、GWPを十分に小さく抑えることが可能になっている。
また、空気調和装置1aでは、室外ユニット20の設計圧力が液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の設計圧力の1.5倍よりも低いものが用いられている。また、空気調和装置1aの室外ユニット20が有する室外ユニット制御部27は、冷媒の制御圧力の上限値が、液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の設計圧力の1.5倍よりも低くなるように、設定されている。このため、特定の冷媒Aを用いた場合であっても、液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の損傷を抑制させることが可能になっている。
(6−2−4)第2実施形態の変形例A
上記第2実施形態では、室内ユニットが1つだけ設けられている空気調和装置を例に挙げて説明したが、空気調和装置としては、互いに並列に接続された複数の室内ユニット(室内膨張弁を有さないもの)が設けられていてもよい。
(6−2−5)第2実施形態の変形例B
上記第2実施形態では、室外ユニット20の設計圧力が液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の設計圧力の1.5倍よりも低く、且つ、室外ユニット20の室外ユニット制御部27について冷媒の制御圧力の上限値が液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の設計圧力の1.5倍よりも低くなるように設定されている場合を例に挙げて説明した。
これに対して、例えば、設計圧力が液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の設計圧力の1.5倍以上の室外ユニット20であっても、冷媒の制御圧力の上限値として複数種類の中から選択可能に構成されており、液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の設計圧力の1.5倍よりも低くなるように設定可能な室外ユニット制御部27を有する室外ユニット20であれば、上記実施形態の空気調和装置1aにおいて用いることができる。
(6−3)第3実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図6E、概略制御ブロック構成図である図6Fを参照しつつ、第3実施形態に係る熱源ユニットとしての室外ユニット20を備えた冷凍サイクル装置としての空気調和装置1bについて説明する。
以下、主として、第3実施形態の空気調和装置1bについて、第1実施形態の空気調和装置1と異なる箇所を中心に説明する。
空気調和装置1bにおいても、冷媒回路10には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒として、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒であり、冷媒Aのいずれかが充填されている。また、冷媒回路10には、当該冷媒と共に、冷凍機油が充填されている。
(6−3−1)室外ユニット20
第3実施形態に係る空気調和装置1bの室外ユニット20では、上記第1実施形態における室外ユニット20において、低圧レシーバ26、過冷却熱交換器47および過冷却回路46が設けられている。なお、室外ユニット20は、上記第1実施形態と同様に、設計圧力(ゲージ圧力)が、液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の設計圧力の1.5倍(液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の耐圧圧力)よりも低く、複数の室内ユニット30、35を有する本実施形態の空気調和装置1bにおいては後述する分岐管5a、5b、6a、6bの設計圧力よりも低いことが好ましい。このような室外ユニット20の設計圧力は、例えば、4.0MPa以上4.5MPa以下とすることができる。
低圧レシーバ26は、四路切換弁22の接続ポートの1つから圧縮機21の吸入側に至るまでの間に設けられ、冷媒を溜めることができる容器である。なお、本実施形態においては、圧縮機21が有する付属のアキュムレータとは別に設けられている。なお、低圧レシーバ26の内容積は、圧縮機21に付属した付属アキュムレータの内容積より大きく、2倍以上であることが好ましい。
過冷却熱交換器47は、室外膨張弁24と液側閉鎖弁29との間に設けられている。
過冷却回路46は、室外膨張弁24と過冷却熱交換器47との間の主回路から分岐し、四路切換弁22の接続ポートの1つから低圧レシーバ26に至るまでの途中の部分に合流するように延びた回路である。過冷却回路46の途中には、通過する冷媒を減圧させる過冷却膨張弁48が設けられている。過冷却回路46を流れる冷媒であって、過冷却膨張弁48で減圧された冷媒は、過冷却熱交換器47において、主回路側を流れる冷媒との間で熱交換を行う。これにより、主回路側を流れる冷媒はさらに冷却され、過冷却回路46を流れる冷媒は蒸発する。
第3実施形態に係る空気調和装置1bの室外ユニット20は、例えば、下方から内部に空気を取り込んで上方から外部に空気を吹き出す上吹き型構造と呼ばれるものであってよい。
なお、第3実施形態の室外ユニット20についても、室外ユニット制御部27(およびこれを含むコントローラ7)は、冷媒の制御圧力(ゲージ圧力)の上限値が、液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の設計圧力の1.5倍(液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の耐圧圧力)よりも低くなるように設定されており、複数の室内ユニット30、35を有する本実施形態の空気調和装置1bにおいては後述する分岐管5a、5b、6a、6bの設計圧力よりも低くなるように設定されていることが好ましい。
(6−3−2)第1室内ユニット30および第2室内ユニット35
また、第3実施形態に係る空気調和装置1bでは、上記第1実施形態における室内ユニット30の代わりに、互いに並列に設けられた第1室内ユニット30および第2室内ユニット35を有している。なお、第1室内ユニット30および第2室内ユニット35の各設計圧力は、室外ユニット20と同様に、例えば、4.0MPa以上4.5MPa以下とすることができる。
第1室内ユニット30は、上記第1実施形態における室内ユニット30と同様に第1室内熱交換器31と第1室内ファン32と第1室内ユニット制御部34が設けられており、さらに、第1室内熱交換器31の液側において第1室内膨張弁33が設けられている。第1室内膨張弁33は、弁開度が制御可能である。第1室内ユニット30は、液側が、液側冷媒連絡配管6の室内ユニット側端部から分岐して延びた第1液側分岐管6aと接続され、ガス側が、ガス側冷媒連絡配管5の室内ユニット側端部から分岐して延びた第1ガス側分岐管5aと接続されている。
第2室内ユニット35は、第1室内ユニット30と同様であり、第2室内熱交換器36と第2室内ファン37と、第2室内ユニット制御部39と、第2室内熱交換器36の液側に設けられた第2室内膨張弁38と、を有している。第2室内膨張弁38は、弁開度が制御可能である。第2室内ユニット35は、液側が、液側冷媒連絡配管6の室内ユニット側端部から分岐して延びた第2液側分岐管6bと接続され、ガス側が、ガス側冷媒連絡配管5の室内ユニット側端部から分岐して延びた第2ガス側分岐管5bと接続されている。
上記第1液側分岐管6aと第2液側分岐管6bと第1ガス側分岐管5aと第2ガス側分岐管5bの各設計圧力は、例えば、4.5MPaとすることができる。
なお、第3実施形態に係る空気調和装置1bの第1室内ユニット30および第2室内ユニット35の具体的な構造は、上記第1室内膨張弁33や第2室内膨張弁38を除き、第2実施形態の室内ユニット30と同様の構成である。
なお、第3実施形態のコントローラ7は、室外ユニット制御部27と、第1室内ユニット制御部34と、第2室内ユニット制御部39と、が互いに通信可能に接続されて構成されている。
以上の空気調和装置1bでは、冷房運転モードでは、室外膨張弁24は、室外熱交換器23の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。また、冷房運転モードでは、過冷却膨張弁48は、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。なお、冷房運転モードでは、第1室内膨張弁33および第2室内膨張弁38は、全開状態に制御される。
また、暖房運転モードでは、第1室内膨張弁33は、第1室内熱交換器31の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。第2室内膨張弁38も同様に、第2室内熱交換器36の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。また、暖房運転モードでは、室外膨張弁45は、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。なお、暖房運転モードでは、過冷却膨張弁48は、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。なお、暖房運転モードでは、例えば、冷媒回路10における圧力の最大値が、ガス側冷媒連絡配管5の設計圧力の1.5倍よりも低くなるように、圧縮機21の駆動周波数と室外ファン25の風量の少なくともいずれかが制御される。なお、冷媒回路10における圧力の最大値が、第1ガス側分岐管5aと第2ガス側分岐管5bの設計圧力よりも低くなるように、圧縮機21の駆動周波数と室外ファン25の風量の少なくともいずれかが制御されることが好ましい。
(6−3−3)第3実施形態の特徴
以上の第3実施形態に係る空気調和装置1bにおいても、第1実施形態に係る空気調和装置1と同様に、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が用いられているため、GWPを十分に小さく抑えることが可能になっている。
また、空気調和装置1bでは、室外ユニット20の設計圧力が液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の設計圧力の1.5倍よりも低いものが用いられている。また、空気調和装置1bの室外ユニット20が有する室外ユニット制御部27は、冷媒の制御圧力の上限値が、液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の設計圧力の1.5倍よりも低くなるように、設定されている。このため、特定の冷媒Aを用いた場合であっても、液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の損傷を抑制させることが可能になっている。
(6−3−4)第3実施形態の変形例A
上記第3実施形態では、室外ユニット20の設計圧力が液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の設計圧力の1.5倍よりも低く、且つ、室外ユニット20の室外ユニット制御部27について冷媒の制御圧力の上限値が液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の設計圧力の1.5倍よりも低くなるように設定されている場合を例に挙げて説明した。
これに対して、例えば、設計圧力が液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の設計圧力の1.5倍以上の室外ユニット20であっても、冷媒の制御圧力の上限値として複数種類の中から選択可能に構成されており、液側冷媒連絡配管6とガス側冷媒連絡配管5の設計圧力の1.5倍よりも低くなるように設定可能な室外ユニット制御部27を有する室外ユニット20であれば、上記実施形態の空気調和装置1bにおいて用いることができる。
(6−4)第4実施形態
上記第1〜第3実施形態およびその各変形例においては、冷媒Aのいずれかが用いられている新設された室外ユニット20や空気調和装置1、1a、1bを例に挙げて説明した。
これに対して、第4実施形態に係る空気調和装置は、以下に述べるように、別冷媒が用いられていた空気調和装置について、液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5を再利用しつつ、用いる冷媒を冷媒Aのいずれかに変えることで更新された空気調和装置である。
(6−4−1)R22から更新された空気調和装置
上記第1〜第3実施形態およびその各変形例における空気調和装置1、1a、1bは、R22が用いられていたものであり、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒Aのいずれかが用いられるように更新された空気調和装置1、1a、1bであってもよい。
ここで、冷媒R22(冷媒Aのいずれかの冷媒よりも設計圧力の低い冷媒である)が用いられていた空気調和装置での液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5の設計圧力は、配管の外径と肉厚、さらに配管の材料である銅管の材質により決められている。このような液側冷媒連絡配管6やガス側冷媒連絡配管5に一般的に使用される銅管のうち、設計圧力が最も低い配管の外径、肉厚、材質の組み合わせは、一般冷媒配管用銅管(JIS B 8607)から、φ19.05、肉厚1.0mm、O材の場合であり、設計圧力は3.72MPa(ゲージ圧力)である。
このため、冷媒Aのいずれかの冷媒を使用するように更新された空気調和装置1、1a、1bの室外ユニット20では、冷媒の制御圧力の上限値が3.7MPa(ゲージ圧力)以下になるように、室外熱交換器23の伝熱面積や室外熱交換器23における風量(室外ファン25により送風される空気量)を設定する。または、冷媒Aのいずれかの冷媒を使用するように更新された空気調和装置1、1a、1bの室外ユニット20が有する室外ユニット制御部27において、冷媒の制御圧力の上限値が3.7MPa(ゲージ圧力)以下になるように設定する。これにより、室外ユニット制御部27では、圧縮機21の運転周波数を制御することによる冷媒循環量の調整、および、室外熱交換器23における室外ファン25の風量の調整を行うことになる。
以上により、冷媒R22を使用していた空気調和装置(旧機)で使用されていた液側冷媒連絡配管6やガス側冷媒連絡配管5を、冷媒Aのいずれかの冷媒を使用して更新された空気調和装置(新機)1、1a、1bの導入時に再利用することが可能となり、その場合における液側冷媒連絡配管6やガス側冷媒連絡配管5の損傷を抑制することが可能になる。
この場合、冷媒Aのいずれかに更新された空気調和装置1、1a、1bの室外ユニット20の設計圧力は、R22が使用されていた際の空気調和装置における室外ユニットの設計圧力と同等であり、具体的には、3.0MPa以上3.7MPa以下であることが好ましい。また、R22が用いられていた際の空気調和装置が有する室外ユニットおよび室内ユニットについては、再利用してもよいし、新たなものを用いてもよい。
室外ユニット20について新たなものを用いる場合には、その設計圧力または冷媒の制御圧力の上限値が、R22が用いられていた際の空気調和装置が有していた室外ユニットの設計圧力または冷媒の制御圧力の上限値と同等のものを用いる。例えば、R22が用いられていた際の空気調和装置が有していた室外ユニットの設計圧力や冷媒の制御圧力の上限値が3.0MPaである場合には、新たな室外ユニット20としては、設計圧力が3.0MPaと同等のものであるか、または、設計圧力がより大きなもの(設計圧力が4.0MPa以上4.5MPa以下のものであって、冷媒Aのいずれかについて用いられる液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5に接続して用いることができるもの)であっても冷媒の制御圧力の上限値については3.0MPaと同等に設定されたものであることが好ましい。
なお、第3実施形態等に示すように複数の室内ユニット30、35が、第1液側分岐管6a、第2液側分岐管6b、第1ガス側分岐管5a、第2ガス側分岐管5b等の分岐管を介して接続されている空気調和装置については、冷媒としてR22を用いた場合のこれらの分岐管の設計圧力は3.4MPaとされており、上記3.7MPaよりもさらに低いものが用いられている。このため、複数の室内ユニット30、35を有しており、用いられる冷媒がR22から冷媒Aのいずれかの冷媒に更新された空気調和装置1、1a、1bについては、上記各分岐管を流れる冷媒の圧力が3.4MPaを超えることが無いように、室外ユニット20の設計圧力が3.4MPa以下のものを用いるか、または、室外ユニット20が有する室外ユニット制御部27による冷媒の制御圧力の上限値が3.4MPa以下となるように設定することが好ましい。
(6−4−2)R407Cから更新された空気調和装置
上記第1〜第3実施形態およびその各変形例における空気調和装置1、1a、1bは、冷媒R407Cが用いられていたものであり、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒Aのいずれかが用いられるように更新された空気調和装置1、1a、1bであってもよい。
ここで、冷媒R407C(冷媒Aのいずれかの冷媒よりも設計圧力の低い冷媒である)が用いられていた空気調和装置での液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5の設計圧力は、上記R22が用いられていた場合と同様に、液側冷媒連絡配管6やガス側冷媒連絡配管5について設計圧力が最も低い配管の設計圧力は3.72MPa(ゲージ圧力)である。
このため、冷媒Aのいずれかの冷媒を使用するように更新された空気調和装置1、1a、1bの室外ユニット20では、上記R22からの更新の場合と同様に、冷媒の制御圧力の上限値が3.7MPa(ゲージ圧力)以下になるように、室外熱交換器23の伝熱面積や室外熱交換器23における風量(室外ファン25により送風される空気量)を設定する。または、冷媒Aのいずれかの冷媒を使用するように更新された空気調和装置1、1a、1bの室外ユニット20が有する室外ユニット制御部27において、冷媒の制御圧力の上限値が3.7MPa(ゲージ圧力)以下になるように設定する。これにより、室外ユニット制御部27では、圧縮機21の運転周波数を制御することによる冷媒循環量の調整、および、室外熱交換器23における室外ファン25の風量の調整を行うことになる。
以上により、冷媒R407Cを使用していた空気調和装置(旧機)で使用されていた液側冷媒連絡配管6やガス側冷媒連絡配管5を、冷媒Aのいずれかの冷媒を使用して更新された空気調和装置(新機)1、1a、1bの導入時に再利用することが可能となり、その場合における液側冷媒連絡配管6やガス側冷媒連絡配管5の損傷を抑制することが可能になる。
この場合、冷媒Aのいずれかに更新された空気調和装置1、1a、1bの室外ユニット20の設計圧力は、R407Cが使用されていた際の空気調和装置における室外ユニットの設計圧力と同等であり、具体的には、3.0MPa以上3.7MPa以下であることが好ましい。また、R407Cが用いられていた際の空気調和装置が有する室外ユニットおよび室内ユニットについては、再利用してもよいし、新たなものを用いてもよい。
室外ユニット20について新たなものを用いる場合には、その設計圧力または冷媒の制御圧力の上限値が、R407Cが用いられていた際の空気調和装置が有していた室外ユニットの設計圧力または冷媒の制御圧力の上限値と同等のものを用いる。例えば、R407Cが用いられていた際の空気調和装置が有していた室外ユニットの設計圧力や冷媒の制御圧力の上限値が3.0MPaである場合には、新たな室外ユニット20としては、設計圧力が3.0MPaと同等のものであるか、または、設計圧力がより大きなもの(設計圧力が4.0MPa以上4.5MPa以下のものであって、冷媒Aのいずれかについて用いられる液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5に接続して用いることができるもの)であっても冷媒の制御圧力の上限値については3.0MPaと同等に設定されたものであることが好ましい。
なお、第3実施形態等に示すように複数の室内ユニット30、35が、第1液側分岐管6a、第2液側分岐管6b、第1ガス側分岐管5a、第2ガス側分岐管5b等の分岐管を介して接続されている空気調和装置については、冷媒としてR407Cを用いた場合のこれらの分岐管の設計圧力はR22と同様に3.4MPaとされており、上記3.7MPaよりもさらに低いものが用いられている。このため、複数の室内ユニット30、35を有しており、用いられる冷媒がR407Cから冷媒Aのいずれかの冷媒に更新された空気調和装置1、1a、1bについては、上記各分岐管を流れる冷媒の圧力が3.4MPaを超えることが無いように、室外ユニット20の設計圧力が3.4MPa以下のものを用いるか、または、室外ユニット20が有する室外ユニット制御部27による冷媒の制御圧力の上限値が3.4MPa以下となるように設定することが好ましい。
(6−4−3)R410Aから更新された空気調和装置
上記第1〜第3実施形態およびその各変形例における空気調和装置1、1a、1bは、冷媒R410Aが用いられていたものであり、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒Aのいずれかが用いられるように更新された空気調和装置1、1a、1bであってもよい。
ここで、冷媒R410A(冷媒Aのいずれかの冷媒と概ね同等の設計圧力の冷媒である)が用いられていた空気調和装置での液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5の設計圧力は、外径が3/8インチの配管については4.3MPa(ゲージ圧力)、外径が1/2インチの配管については4.8MPa(ゲージ圧力)とされている。
このため、冷媒Aのいずれかの冷媒を使用するように更新された空気調和装置1、1a、1bの室外ユニット20では、冷媒の制御圧力の上限値が、外径が3/8インチの連絡配管が用いられている場合については4.3MPa以下となるように、また、外径が1/2インチの連絡配管が用いられている場合については4.8MPa以下となるように、室外熱交換器23の伝熱面積や室外熱交換器23における風量(室外ファン25により送風される空気量)を設定する。または、冷媒Aのいずれかの冷媒を使用するように更新された空気調和装置1、1a、1bの室外ユニット20が有する室外ユニット制御部27において、冷媒の制御圧力の上限値が、外径が3/8インチの連絡配管が用いられている場合については4.3MPa以下となるように、また、外径が1/2インチの連絡配管が用いられている場合については4.8MPa以下となるように設定する。これにより、室外ユニット制御部27では、圧縮機21の運転周波数を制御することによる冷媒循環量の調整、および、室外熱交換器23における室外ファン25の風量の調整を行うことになる。
以上により、冷媒R410Aを使用していた空気調和装置(旧機)で使用されていた液側冷媒連絡配管6やガス側冷媒連絡配管5を、冷媒Aのいずれかの冷媒を使用して更新された空気調和装置(新機)1、1a、1bの導入時に再利用することが可能となり、その場合における液側冷媒連絡配管6やガス側冷媒連絡配管5の損傷を抑制することが可能になる。
この場合、冷媒Aのいずれかに更新された空気調和装置1、1a、1bの室外ユニット20の設計圧力は、R410Aが使用されていた際の空気調和装置における室外ユニットの設計圧力と同等であり、具体的には、4.0MPa以上4.8MPa以下であることが好ましい。また、R410Aが用いられていた際の空気調和装置が有する室外ユニットおよび室内ユニットについては、再利用してもよいし、新たなものを用いてもよい。
室外ユニット20について新たなものを用いる場合には、その設計圧力または冷媒の制御圧力の上限値が、R410Aが用いられていた際の空気調和装置が有していた室外ユニットの設計圧力または冷媒の制御圧力の上限値と同等のものを用いる。例えば、R410Aが用いられていた際の空気調和装置が有していた室外ユニットの設計圧力や冷媒の制御圧力の上限値が4.2MPaである場合には、新たな室外ユニット20としては、設計圧力が4.2MPaと同等のものであるか、または、設計圧力がより大きなもの(設計圧力が4.2MPaより大きく4.5MPa以下のものであって、冷媒Aのいずれかについて用いられる液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5に接続して用いることができるもの)であっても冷媒の制御圧力の上限値については4.2MPaと同等に設定されたものであることが好ましい。
なお、第3実施形態等に示すように複数の室内ユニット30、35が、第1液側分岐管6a、第2液側分岐管6b、第1ガス側分岐管5a、第2ガス側分岐管5b等の分岐管を介して接続されている空気調和装置については、冷媒としてR410Aを用いた場合のこれらの分岐管の設計圧力は4.2MPaとされており、上記4.8MPaよりもさらに低いものが用いられている。このため、複数の室内ユニット30、35を有しており、用いられる冷媒がR410Aから冷媒Aのいずれかの冷媒に更新された空気調和装置1、1a、1bについては、上記各分岐管を流れる冷媒の圧力が4.2MPaを超えることが無いように、室外ユニット20の設計圧力が4.2MPa以下のものを用いるか、または、室外ユニット20が有する室外ユニット制御部27による冷媒の制御圧力の上限値が4.2MPa以下となるように設定することが好ましい。
(6−4−4)R32から更新された空気調和装置
上記第1〜第3実施形態およびその各変形例における空気調和装置1、1a、1bは、冷媒R32が用いられていたものであり、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒Aのいずれかが用いられるように更新された空気調和装置1、1a、1bであってもよい。
ここで、冷媒R32(上述の冷媒Aのいずれかの冷媒と概ね同等の設計圧力の冷媒である)が用いられていた空気調和装置での液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5の設計圧力は、外径が3/8インチの配管については4.3MPa(ゲージ圧力)、外径が1/2インチの配管については4.8MPa(ゲージ圧力)とされている。
このため、冷媒Aのいずれかの冷媒を使用するように更新された空気調和装置1、1a、1bの室外ユニット20では、冷媒の制御圧力の上限値が、外径が3/8インチの連絡配管が用いられている場合については4.3MPa以下となるように、また、外径が1/2インチの連絡配管が用いられている場合については4.8MPa以下となるように、室外熱交換器23の伝熱面積や室外熱交換器23における風量(室外ファン25により送風される空気量)を設定する。または、冷媒Aのいずれかの冷媒を使用するように更新された空気調和装置1、1a、1bの室外ユニット20が有する室外ユニット制御部27において、冷媒の制御圧力の上限値が、外径が3/8インチの連絡配管が用いられている場合については4.3MPa以下となるように、また、外径が1/2インチの連絡配管が用いられている場合については4.8MPa以下となるように設定する。これにより、室外ユニット制御部27では、圧縮機21の運転周波数を制御することによる冷媒循環量の調整、および、室外熱交換器23における室外ファン25の風量の調整を行うことになる。
以上により、冷媒R32を使用していた空気調和装置(旧機)で使用されていた液側冷媒連絡配管6やガス側冷媒連絡配管5を、冷媒Aのいずれかの冷媒を使用して更新された空気調和装置(新機)1、1a、1bの導入時に再利用することが可能となり、その場合における液側冷媒連絡配管6やガス側冷媒連絡配管5の損傷を抑制することが可能になる。
この場合、冷媒Aのいずれかに更新された空気調和装置1、1a、1bの室外ユニット20の設計圧力は、R32が使用されていた際の空気調和装置における室外ユニットの設計圧力と同等であり、具体的には、4.0MPa以上4.8MPa以下であることが好ましい。また、R32が用いられていた際の空気調和装置が有する室外ユニットおよび室内ユニットについては、再利用してもよいし、新たなものを用いてもよい。
室外ユニット20について新たなものを用いる場合には、その設計圧力または冷媒の制御圧力の上限値が、R32が用いられていた際の空気調和装置が有していた室外ユニットの設計圧力または冷媒の制御圧力の上限値と同等のものを用いる。例えば、R32が用いられていた際の空気調和装置が有していた室外ユニットの設計圧力や冷媒の制御圧力の上限値が4.2MPaである場合には、新たな室外ユニット20としては、設計圧力が4.2MPaと同等のものであるか、または、設計圧力がより大きなもの(設計圧力が4.2MPaより大きく4.5MPa以下のものであって、冷媒Aのいずれかについて用いられる液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5に接続して用いることができるもの)であっても冷媒の制御圧力の上限値については4.2MPaと同等に設定されたものであることが好ましい。
なお、第3実施形態等に示すように複数の室内ユニット30、35が、第1液側分岐管6a、第2液側分岐管6b、第1ガス側分岐管5a、第2ガス側分岐管5b等の分岐管を介して接続されている空気調和装置については、冷媒としてR32を用いた場合のこれらの分岐管の設計圧力は4.2MPaとされており、上記4.8MPaよりもさらに低いものが用いられている。このため、複数の室内ユニット30、35を有しており、用いられる冷媒がR32から冷媒Aのいずれかの冷媒に更新された空気調和装置1、1a、1bについては、上記各分岐管を流れる冷媒の圧力が4.2MPaを超えることが無いように、室外ユニット20の設計圧力が4.2MPa以下のものを用いるか、または、室外ユニット20が有する室外ユニット制御部27による冷媒の制御圧力の上限値が4.2MPa以下となるように設定することが好ましい。
(7)第7グループの技術の実施形態
(7−1)第1実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図7A、概略制御ブロック構成図である図7Bを参照しつつ、第1実施形態に係る冷凍サイクル装置としての空気調和装置1について説明する。
空気調和装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うことで、対象空間の空気を調和させる装置である。
空気調和装置1は、主として、室外ユニット20と、室内ユニット30と、室外ユニット20と室内ユニット30を接続する液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5と、入力装置および出力装置としての図示しないリモコンと、空気調和装置1の動作を制御するコントローラ7と、を有している。
空気調和装置1では、冷媒回路10内に封入された冷媒が、圧縮され、冷却又は凝縮され、減圧され、加熱又は蒸発された後に、再び圧縮される、という冷凍サイクルが行われる。本実施形態では、冷媒回路10には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が充填されている。当該冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。また、冷媒回路10には、当該冷媒と共に、冷凍機油が充填されている。なお、室内ユニット30が1台だけ設けられている空気調和装置1の定格冷房能力としては、特に限定されず、例えば、2.0kW以上17.0kW以下とすることができ、なかでも、冷媒容器が設けられていない規模の本実施形態の空気調和装置1では、2.0kW以上6.0kW以下とすることが好ましい。
(7−1−1)室外ユニット20
室外ユニット20は、略直方体箱状の筐体50の内部空間が鉛直に延びる図示しない仕切板によって左右に分割されることで送風機室および機械室が形成された構造(いわゆる、トランク型構造)を有するものである。
この室外ユニット20は、液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5を介して室内ユニット30と接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。室外ユニット20は、主として、圧縮機21と、四路切換弁22と、室外熱交換器23と、室外膨張弁24と、室外ファン25と、液側閉鎖弁29と、ガス側閉鎖弁28と、を有している。
圧縮機21は、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒を高圧になるまで圧縮する機器である。ここでは、圧縮機21として、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素(図示省略)が圧縮機モータによって回転駆動される密閉式構造の圧縮機が使用されている。圧縮機モータは、容量を変化させるためのものであり、インバータにより運転周波数の制御が可能である。なお、圧縮機21には、吸入側において、図示しない付属アキュムレータが設けられている。
四路切換弁22は、接続状態を切り換えることで、圧縮機21の吐出側と室外熱交換器23とを接続しつつ圧縮機21の吸入側とガス側閉鎖弁28とを接続する冷房運転接続状態と、圧縮機21の吐出側とガス側閉鎖弁28とを接続しつつ圧縮機21の吸入側と室外熱交換器23とを接続する暖房運転接続状態と、を切り換えることができる。
室外熱交換器23は、冷房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の凝縮器として機能し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能する熱交換器である。なお、冷媒回路10において冷媒容器(低圧レシーバや高圧レシーバ等であり、圧縮機に付属のアキュムレータを除く)が設けられていない本実施形態においては、室外熱交換器23の内容積(内部に充填可能な流体の体積)は、0.4L以上2.5L以下であることが好ましい。
室外ファン25は、室外ユニット20内に室外の空気を吸入して、室外熱交換器23において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための空気流れを生じさせる。室外ファン25は、室外ファンモータによって回転駆動される。なお、本実施形態において、室外ファン25は、1つだけ設けられている。
室外膨張弁24は、弁開度を制御可能であり、室外熱交換器23の液側端部と液側閉鎖弁29との間に設けられている。
液側閉鎖弁29は、室外ユニット20における液側冷媒連絡配管6との接続部分に配置された手動弁である。
ガス側閉鎖弁28は、室外ユニット20におけるとガス側冷媒連絡配管5との接続部分に配置された手動弁である。
室外ユニット20は、室外ユニット20を構成する各部の動作を制御する室外ユニット制御部27を有している。室外ユニット制御部27は、CPUやメモリ等を含むマイクロコンピュータを有している。室外ユニット制御部27は、各室内ユニット30の室内ユニット制御部34と通信線を介して接続されており、制御信号等の送受信を行う。また、室外ユニット制御部27は、図示しない各種センサと電気的に接続されており、各センサからの信号を受信する。
室外ユニット20は、図7Cに示すように、吹出口52が設けられた筐体50を有している。筐体50は、略直方体形状であり、背面側および一側面側(図7C中の左側)から屋外の空気を取り込むことが可能であり、室外熱交換器23を通過した空気を前面51に形成された吹出口52を介して前側に吹き出すことが可能である。筐体50の下端部分は底板53によって覆われている。底板53の上には、図7Dに示すように、背面側および一側面側に沿うように室外熱交換器23が立設されている。この底板53の上面は、ドレンパンとして機能することができる。また、底板53の上表面を沿うように、電熱線で構成されたシーズヒータであるドレンパンヒータ54が設けられている。ドレンパンヒータ54は、底板53の上であって、室外熱交換器23の鉛直下方を通過する部分と、室外熱交換器23よりも前面側を通過する部分とを有している。ドレンパンヒータ54は、電源供給部を兼ねた室外ユニット制御部27と接続されており、電力の供給を受けている。ドレンパンヒータ54は、定格消費電力が300W以下のものであり、本実施形態においては、75W以上100W以下であることが好ましい。
(7−1−2)室内ユニット30
室内ユニット30は、対象空間である室内の壁面や天井等に設置されている。室内ユニット30は、液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5を介して室外ユニット20と接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。
室内ユニット30は、室内熱交換器31と、室内ファン32と、を有している。
室内熱交換器31は、液側が、液側冷媒連絡配管6と接続され、ガス側端が、ガス側冷媒連絡配管5とを接続されている。室内熱交換器31は、冷房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の凝縮器として機能する熱交換器である。
室内ファン32は、室内ユニット30内に室内の空気を吸入して、室内熱交換器31において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための空気流れを生じさせる。室内ファン32は、室内ファンモータによって回転駆動される。
また、室内ユニット30は、室内ユニット30を構成する各部の動作を制御する室内ユニット制御部34を有している。室内ユニット制御部34は、CPUやメモリ等を含むマイクロコンピュータを有している。室内ユニット制御部34は、室外ユニット制御部27と通信線を介して接続されており、制御信号等の送受信を行う。
室内ユニット制御部34は、室内ユニット30内に設けられている図示しない各種センサと電気的に接続されており、各センサからの信号を受信する。
(7−1−3)コントローラ7の詳細
空気調和装置1では、室外ユニット制御部27と室内ユニット制御部34が通信線を介して接続されることで、空気調和装置1の動作を制御するコントローラ7が構成されている。
コントローラ7は、主として、CPU(中央演算処理装置)と、ROMやRAM等のメモリを有している。なお、コントローラ7による各種処理や制御は、室外ユニット制御部27および/又は室内ユニット制御部34に含まれる各部が一体的に機能することによって実現されている。
(7−1−4)運転モード
以下、運転モードについて説明する。
運転モードとしては、冷房運転モードと暖房運転モードとが設けられている。
コントローラ7は、リモコン等から受け付けた指示に基づいて、冷房運転モードか暖房運転モードかを判断し、実行する。
(7−1−4−1)冷房運転モード
空気調和装置1では、冷房運転モードでは、四路切換弁22の接続状態を圧縮機21の吐出側と室外熱交換器23とを接続しつつ圧縮機21の吸入側とガス側閉鎖弁28とを接続する冷房運転接続状態とし、冷媒回路10に充填されている冷媒を、主として、圧縮機21、室外熱交換器23、室外膨張弁24、室内熱交換器31の順に循環させる。
より具体的には、冷房運転モードが開始されると、冷媒回路10内において、冷媒が圧縮機21に吸入されて圧縮された後に吐出される。
圧縮機21では、室内ユニット30で要求される冷却負荷に応じた容量制御が行われる。当該容量制御としては、特に限定されず、例えば、吸入圧力の目標値が室内ユニット30で要求される冷却負荷に応じて設定され、吸入圧力が目標値になるように圧縮機21の運転周波数が制御されるものであってもよい。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22を経て、室外熱交換器23のガス側端に流入する。
室外熱交換器23のガス側端に流入したガス冷媒は、室外熱交換器23において、室外ファン25によって供給される室外側空気と熱交換を行って凝縮し、液冷媒となって室外熱交換器23の液側端から流出する。
室外熱交換器23の液側端から流出した冷媒は、室外膨張弁24を通過する際に減圧される。なお、室外膨張弁24は、室外熱交換器23の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。なお、室外膨張弁24の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
室外膨張弁24で減圧された冷媒は、液側閉鎖弁29および液側冷媒連絡配管6を経て、室内ユニット30に流入する。
室内ユニット30に流入した冷媒は、室内熱交換器31に流入し、室内熱交換器31において、室内ファン32によって供給される室内空気と熱交換を行って蒸発し、ガス冷媒となって室内熱交換器31のガス側端から流出する。室内熱交換器31のガス側端から流出したガス冷媒は、ガス側冷媒連絡配管5に流れていく。
ガス側冷媒連絡配管5を流れた冷媒は、ガス側閉鎖弁28、四路切換弁22を経て、再び、圧縮機21に吸入される。
(7−1−4−2)暖房運転モード
空気調和装置1では、暖房運転モードでは、四路切換弁22の接続状態を圧縮機21の吐出側とガス側閉鎖弁28とを接続しつつ圧縮機21の吸入側と室外熱交換器23とを接続する暖房運転接続状態とし、冷媒回路10に充填されている冷媒を、主として、圧縮機21、室内熱交換器31、室外膨張弁24、室外熱交換器23の順に循環させる。
より具体的には、暖房運転モードが開始されると、冷媒回路10内において、冷媒が圧縮機21に吸入されて圧縮された後に吐出される。
圧縮機21では、室内ユニット30で要求される暖房負荷に応じた容量制御が行われる。当該容量制御としては、特に限定されず、例えば、吐出圧力の目標値が室内ユニット30で要求される暖房負荷に応じて設定され、吐出圧力が目標値になるように圧縮機21の運転周波数が制御される。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22およびガス側冷媒連絡配管5を流れた後、室内ユニット30に流入する。
室内ユニット30に流入した冷媒は、室内熱交換器31のガス側端に流入し、室内熱交換器31において、室内ファン32によって供給される室内空気と熱交換を行って凝縮し、気液二相状態の冷媒または液冷媒となって室内熱交換器31の液側端から流出する。室内熱交換器31の液側端から流出した冷媒は、液側冷媒連絡配管6に流れていく。
液側冷媒連絡配管6を流れた冷媒は、液側閉鎖弁29、室外膨張弁24において冷凍サイクルにおける低圧になるまで減圧される。なお、室外膨張弁24は、室内熱交換器31の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。なお、室外膨張弁24の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
室外膨張弁24で減圧された冷媒は、室外熱交換器23の液側端に流入する。
室外熱交換器23の液側端から流入した冷媒は、室外熱交換器23において、室外ファン25によって供給される室外空気と熱交換を行って蒸発し、ガス冷媒となって室外熱交換器23のガス側端から流出する。
室外熱交換器23のガス側端から流出した冷媒は、四路切換弁22を経て、再び、圧縮機21に吸入される。
(7−1−4−3)デフロスト運転モード
デフロスト運転モードは、上記暖房運転モードにおいて、室外気温が所定温度以下に低下した状態での運転が所定時間以上続いている等の所定デフロスト条件を満たした場合に行われる運転であり、四路切換弁22の接続状態を冷房運転モードの時と同様に切り換えつつ、室内ファン32の運転を停止させる点以外は冷房運転モードと同様の冷凍サイクルを行う。これにより、室外熱交換器23に付着していた霜を部分的に融解させて、筐体50の底板53上に落とすことができる。なお、この際に、ドレンパンヒータ54に通電させる制御が行われることで、底板53が暖められるため、底板53上に落下した霜を融解させ、液体状にして排水を促すことが可能になる。
(7−1−5)第1実施形態の特徴
上述の空気調和装置1では、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が用いられているため、GWPを十分に小さく抑えることが可能になっている。
また、空気調和装置1が有する室外ユニット20では、筐体50の底板53上にドレンパンヒータ54が設けられているため、底板53上に霜が堆積する場合であっても、当該霜を融解させて、排水性を向上させることができている。
また、定格消費電力が75W以上のドレンパンヒータ54を用いることで、室外ファン25が1つしか設けられていない程度の能力の室外ユニット20では、当該能力に見合う分だけ、ドレンパンヒータ54の機能を十分に発揮させることが可能となる。
しかも、ドレンパンヒータ54の定格消費電力が100W以下のものを用いることで、室外ユニット20において仮に1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が漏洩することがあったとしても、ドレンパンヒータ54が発火源となることを抑制させることができている。
(7−1−6)第1実施形態の変形例A
上記第1実施形態では、圧縮機21の吸入側には圧縮機21に付属されたアキュムレータ以外の冷媒容器が設けられていない空気調和装置を例に挙げて説明したが、空気調和装置としては、冷媒回路において冷媒容器(低圧レシーバや高圧レシーバ等であり、圧縮機に付属のアキュムレータを除く)が設けられていてもよい。
この場合には、室外熱交換器23の内容積(内部に充填可能な流体の体積)としては、1.4L以上3.5L未満であることが好ましい。
(7−1−7)第1実施形態の変形例B
上記第1実施形態では、室内ユニットが1つだけ設けられている空気調和装置を例に挙げて説明したが、空気調和装置としては、互いに並列に接続された複数の室内ユニット(室内膨張弁を有さないもの)が設けられていてもよい。
この場合には、室外熱交換器23の内容積(内部に充填可能な流体の体積)としては、0.4L以上3.5L未満であることが好ましい。
(7−2)第2実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図7C、概略制御ブロック構成図である図7Dを参照しつつ、第2実施形態に係る冷凍サイクル装置としての空気調和装置1aについて説明する。
以下、主として、第2実施形態の空気調和装置1aについて、第1実施形態の空気調和装置1と異なる箇所を中心に説明する。
空気調和装置1aにおいても、冷媒回路10には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒として、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかが充填されている。また、冷媒回路10には、当該冷媒と共に、冷凍機油が充填されている。なお、室内ユニット30が1台だけ設けられている空気調和装置1aの定格冷房能力としては、特に限定されず、例えば、2.0kW以上17.0kW以下とすることができ、後述するように冷媒容器である中間圧レシーバ41が設けられている本実施形態の空気調和装置1aでは、10.0kW以上17.0kW以下とすることが好ましい。
空気調和装置1aの室外ユニット20では、室外ファン25として、第1室外ファン25aと第2室外ファン25bとが設けられている。空気調和装置1aの室外ユニット20の室外熱交換器23は、第1室外ファン25aおよび第2室外ファン25bから受ける空気流れに対応するように、広い熱交換面積が確保されている。なお、空気調和装置1aの室外ユニット20が有する室外熱交換器23の内容積(内部に充填可能な流体の体積)が、3.5L以上7.0L以下であることが好ましく、室内膨張弁が設けられていない室内ユニット30を有する本実施形態の空気調和装置1aにおいては、室外熱交換器23の内容積が、3.5L以上5.0L未満であることがより好ましい。
空気調和装置1aの室外ユニット20では、上記第1実施形態における室外ユニット20の室外膨張弁24の代わりに、室外熱交換器23の液側から液側閉鎖弁29までの間において、第1室外膨張弁44、中間圧レシーバ41、第2室外膨張弁45が順次設けられている。
第1室外膨張弁44および第2室外膨張弁45は、弁開度を制御可能である。
中間圧レシーバ41は、第1室外膨張弁44側から延びる配管の端部と、第2室外膨張弁45側から延びる配管の端部と、の両方が内部空間に位置しており、冷媒を溜めることができる容器である。
空気調和装置1aの室外ユニット20では、圧縮機21に対して、クランクケースヒータ67が設けられている。クランクケースヒータ67は、圧縮機21内の下方において冷凍機油が溜まる油溜り部に取り付けられている電気ヒータである。圧縮機21が長時間停止していた場合においても、圧縮機21の起動前にクランクケースヒータ67に通電して油溜り部を加熱することにより、油溜り部に貯留されている冷凍機油に溶け込んでいる冷媒を蒸発させて低減し、圧縮機21の起動時における冷凍機油の泡の発生を抑制することが可能になっている。クランクケースヒータ67は、定格消費電力が300W以下のものであり、100W以上であることが好ましい。
第2実施形態の室外ユニット20は、図7Gに示すように、略直方体箱状の筐体60の内部空間が鉛直に延びる仕切板66によって左右に分割されることで送風機室および機械室が形成された構造(いわゆる、トランク型構造)を有している。
筐体60内の送風機室には、室外熱交換器23、室外ファン25(第1室外ファン25aと第2室外ファン25b)等が配置され、筐体60内の機械室には、圧縮機21、四路切換弁22、第1室外膨張弁44、第2室外膨張弁45、中間圧レシーバ41、ガス側閉鎖弁28、液側閉鎖弁29、室外ユニット制御部27を構成する電装品ユニット27a等が配置されている。
筐体60は、主として、底板63、天板64、左前板61、左側板(図示せず)、右前板(図示せず)、右側板65、仕切板66等を有している。底板63は、筐体60の底面部分を構成している。天板64は、室外ユニット20の天面部分を構成している。左前板61は、主に、筐体60の左前面部分を構成しており、前後方向に開口しており上下に並んでいる第1吹出口62aおよび第2吹出口62bが形成されている。第1吹出口62aには、主として、第1室外ファン25aによって筐体60の背面側および左側面側から内部に吸い込まれた空気であって、室外熱交換器23の上方部分を通過した空気が通過する。第2吹出口62bには、主として、第2室外ファン25bによって筐体60の背面側および左側面側から内部に吸い込まれた空気であって、室外熱交換器23の下方部分を通過した空気が通過する。第1吹出口62aおよび第2吹出口62bには、それぞれ、ファングリルが設けられている。左側板は、主に、筐体60の左側面部分を構成しており、筐体60内に吸入される空気の吸入口としても機能できるようになっている。右前板は、主に、筐体60の右前面部分及び右側面の前側部分を構成している。右側板65は、主に、筐体60の右側面の後側部分および背面の右側部分を構成している。仕切板66は、底板63上に配置される鉛直に延びる板状部材であり、筐体60の内部空間を送風機室と機械室とに分割している。
室外熱交換器23は、例えば、伝熱管と多数のフィンとにより構成されたクロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器によって構成されており、送風機室内において、筐体60の左側面及び背面に沿った平面視L字形状となるように配置されている。
圧縮機21は、筐体60の機械室内において、底板63上に載置され、ボルトで固定されている。
ガス側閉鎖弁28および液側閉鎖弁29は、筐体60の機械室内において、圧縮機21の上端近傍の高さ位置であって、右前方の角部近傍に配置されている。
電装品ユニット27aは、筐体60の機械室内において、ガス側閉鎖弁28および液側閉鎖弁29のいずれよりも上方の空間に配置されている。
以上の空気調和装置1aでは、冷房運転モードでは、第1室外膨張弁44は、室外熱交換器23の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。また、冷房運転モードでは、第2室外膨張弁45は、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。なお、冷房運転モードでは、第2室外膨張弁45は、圧縮機21が吐出する冷媒の温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21が吐出する冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
また、暖房運転モードでは、第2室外膨張弁45は、室内熱交換器31の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。また、暖房運転モードでは、第1室外膨張弁44は、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。なお、暖房運転モードでは、第1室外膨張弁44は、圧縮機21が吐出する冷媒の温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21が吐出する冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。ここで、空気調和装置1aの暖房運転モードでは、圧縮機21を起動させようとする際に、圧縮機21の駆動停止状態が所定時間以上となっている等の所定条件を満たしているか否か判断し、所定条件を満たしている場合には、圧縮機21を起動させる前に、クランクケースヒータ67に所定時間または油溜め部の温度が所定温度に達するまで通電する処理が行われる。
以上の第2実施形態に係る空気調和装置1aにおいても、第1実施形態に係る空気調和装置1と同様に、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が用いられているため、GWPを十分に小さく抑えることが可能になっている。
また、空気調和装置1aが有する室外ユニット20では、クランクケースヒータ67が設けられているため、圧縮機21の起動時のオイルフォーミングを抑制させることができている。
また、定格消費電力が100W以上のクランクケースヒータ67を用いることで、室外ファン25が2つ(第1室外ファン25aと第2室外ファン25b)設けられている程度の能力の室外ユニット20においても、当該能力に見合う分だけ、クランクケースヒータ67の機能を十分に発揮させることが可能となる。
しかも、クランクケースヒータ67の定格消費電力が300W以下のものを用いることで、室外ユニット20において仮に1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が漏洩することがあったとしても、クランクケースヒータ67が発火源となることを抑制させることができている。
(7−2−1)第2実施形態の変形例A
上記第2実施形態では、室内ユニットが1つだけ設けられている空気調和装置を例に挙げて説明したが、空気調和装置としては、互いに並列に接続された複数の室内ユニット(室内膨張弁を有さないもの)が設けられていてもよい。
この場合には、室外熱交換器23の内容積(内部に充填可能な流体の体積)としては、3.5L以上5.0L未満であることが好ましい。
(7−2−2)第2実施形態の変形例B
上記第2実施形態では、室内膨張弁を有しない室内ユニットが1つだけ設けられている空気調和装置を例に挙げて説明したが、空気調和装置としては、互いに並列に接続された複数の室内ユニット(室内膨張弁を有するもの)が設けられていてもよい。
この場合には、室外熱交換器23の内容積(内部に充填可能な流体の体積)としては、5.0L以上7.0L以下であることが好ましい。
(7−3)第3実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図7E、概略制御ブロック構成図である図7Fを参照しつつ、第3実施形態に係る冷凍サイクル装置としての空気調和装置1bについて説明する。
以下、主として、第3実施形態の空気調和装置1bについて、第1実施形態の空気調和装置1と異なる箇所を中心に説明する。
空気調和装置1bにおいても、冷媒回路10には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒として、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、上述した冷媒Aのいずれかが充填されている。また、冷媒回路10には、当該冷媒と共に、冷凍機油が充填されている。なお、室内ユニット30が複数台設けられている空気調和装置1bの定格冷房能力としては、特に限定されず、例えば、18.0kW以上160.0kW以下とすることができる。
第3実施形態に係る空気調和装置1bの室外ユニット20では、上記第1実施形態における室外ユニット20において、低圧レシーバ26、IHヒータ81、過冷却熱交換器47および過冷却回路46が設けられている。
低圧レシーバ26は、四路切換弁22の接続ポートの1つから圧縮機21の吸入側に至るまでの間に設けられ、冷媒を溜めることができる容器である。なお、本実施形態においては、圧縮機21が有する付属のアキュムレータとは別に設けられている。
IHヒータ81は、冷媒配管内を流れる冷媒を加熱することが可能な電熱装置である。この電熱装置としては、特に限定されないが、バーナー等の火を用いた方式よりも、電気的な方式である電磁誘導加熱方式によって冷媒を加熱するものであることが好ましい。電磁誘導加熱方式によれば、例えば、磁性体材料を含む素材を冷媒と直接的または間接的に接触する箇所に設け、磁性体材料を含む素材の周囲に電磁誘導コイルを巻いた状態とし、この電磁誘導コイルに電流を流して磁束を生じさせることで磁性体材料を含む素材を発熱させ、冷媒を加熱することが可能である。
過冷却熱交換器47は、室外膨張弁24と液側閉鎖弁29との間に設けられている。
過冷却回路46は、室外膨張弁24と過冷却熱交換器47との間の主回路から分岐し、四路切換弁22の接続ポートの1つから低圧レシーバ26に至るまでの途中の部分に合流するように延びた回路である。過冷却回路46の途中には、通過する冷媒を減圧させる過冷却膨張弁48が設けられている。過冷却回路46を流れる冷媒であって、過冷却膨張弁48で減圧された冷媒は、過冷却熱交換器47において、主回路側を流れる冷媒との間で熱交換を行う。これにより、主回路側を流れる冷媒はさらに冷却され、過冷却回路46を流れる冷媒は蒸発する。
第3実施形態に係る空気調和装置1bの室外ユニット20の詳細構造について、図7Jの外観斜視図、図7Kの分解斜視図を参照しつつ、以下に説明する。
空気調和装置1bの室外ユニット20は、下方から筐体70内に空気を取り込んで上方から筐体70外に空気を吹き出す上吹き型構造と呼ばれるものである。
筐体70は、主として、左右方向に延びる一対の据付脚72上に架け渡される底板73と、底板73の角部から鉛直方向に延びる支柱74と、前面パネル71と、ファンモジュール75と、を有している。底板73は、筐体70の底面を形成しており、左側の第1底板73aと右側の第2底板73bとに分かれている。前面パネル71は、ファンモジュール75の下方において、前面側の支柱74間に架け渡されており、筐体70の前面を構成している。筐体70内のうち、ファンモジュール75の下方であって底板73上方の空間には、圧縮機21、室外熱交換器23、低圧レシーバ26、四路切換弁22、IHヒータ81、室外膨張弁24、過冷却熱交換器47、過冷却膨張弁48、過冷却回路46、ガス側閉鎖弁28、液側閉鎖弁29、室外ユニット制御部27を構成する電装品ユニット27b等が配置されている。室外熱交換器23は、筐体70のファンモジュール75の下方の部分のうち、背面および左右両側面に面する平面視略U字形状であり、筐体70の背面および左右両側面を実質的に形成している。この室外熱交換器23は、底板73の左側縁部、後側縁部、右側縁部の上に沿うように配置されている。電装品ユニット27bは、前面パネル71のうちの右側部分に対して、背面側から固定されるようにして設けられている。
ファンモジュール75は、室外熱交換器23の上側に設けられており、室外ファン25と、図示しないベルマウス等を有している。室外ファン25は、回転軸が鉛直方向になる姿勢で配置されている。
以上の構造により、室外ファン25が形成させる空気流れは、室外熱交換器23の周囲から室外熱交換器23を通過して筐体70内部に流入し、筐体70の上端面において上下方向に貫通するように設けられた吹出口76を介して、上方に吹き出される。
以下、IHヒータ81の詳細構造について、図7Lの外観斜視図、図7Mの断面図を参照しつつ、以下に説明する。
IHヒータ81は、配管部87、固定部材82、筒状部材83、フェライトケース84、フェライト部材85、コイル86等を備えている。配管部87は、金属で構成されており、両端が冷媒回路10を構成する冷媒配管に溶接等により連結固定されている。特に限定されないが、配管部87は、内側部分が銅合金で構成され、外側部分が鉄で構成されていてもよい。冷媒回路10においてIHヒータ81によって冷媒を加熱する箇所は、特に限定されないが、本実施形態では、四路切換弁22の接続ポートの1つから低圧レシーバ26に至るまでの箇所を加熱することができるように設けられている。筒状部材83は、内側に配管部87が位置しており、外周面に対してコイル86が巻き付けられている樹脂製の部材である。コイル86の両端は図示しない電力供給部と接続されており、室外ユニット制御部27によって出力制御される。コイル86が巻き付けられている筒状部材83は、配管部87の一端および他端に設けられる樹脂製の固定部材82を介して配管部87に固定されている。これにより、配管部87は、筒状部材83に巻き付けられたコイル86の内側に位置することとなる。また、筒状部材83の外側には配管部87の長手方向に沿うように延びた複数の樹脂製のフェライトケース84が取り付けられている。各フェライトケース84には、配管部87の長手方向に沿った方向で並んだ複数のフェライト部材85が収容されている。なお、複数のフェライト部材85のうち、配管部87の長手方向の両端部に配置されているものは、配管部87側に近づくように設けられている。
以上の構成において、IHヒータ81のコイル86に高周波電流が供給されると、コイル86の周辺に磁束を生じさせることができる。そして、この磁束が配管部87を貫通することで、配管部87において渦電流が誘導され、配管部87自身の電気抵抗により発熱する。これにより、配管部87の内部を通過する冷媒を加熱することが可能になっている。なお、コイル86の外側に生じた磁束は、主として、フェライト部材85を通過させることが可能になっている(点線の矢印参照)。
以上のIHヒータ81は、定格消費電力が300W以下のものであり、200W以上であることが好ましい。
また、第3実施形態に係る空気調和装置1bでは、上記第1実施形態における室内ユニット30の代わりに、互いに並列に設けられた第1室内ユニット30および第2室内ユニット35を有している。
第1室内ユニット30は、上記第1実施形態における室内ユニット30と同様に第1室内熱交換器31と第1室内ファン32と第1室内ユニット制御部34が設けられており、さらに、第1室内熱交換器31の液側において第1室内膨張弁33が設けられている。第1室内膨張弁33は、弁開度が制御可能である。
第2室内ユニット35は、第1室内ユニット30と同様であり、第2室内熱交換器36と第2室内ファン37と、第2室内ユニット制御部39と、第2室内熱交換器36の液側に設けられた第2室内膨張弁38と、を有している。第2室内膨張弁38は、弁開度が制御可能である。
このように、室内膨張弁が設けられた室内ユニットを複数有しており上吹き型の室外ユニットを有している第3実施形態に係る空気調和装置1bでは、室外ユニット20が有する室外熱交換器23の内容積(内部に充填可能な流体の体積)が、5.5L以上38L以下であることが好ましい。
なお、第3実施形態のコントローラ7は、室外ユニット制御部27と、第1室内ユニット制御部34と、第2室内ユニット制御部39と、が互いに通信可能に接続されて構成されている。
以上の空気調和装置1bでは、冷房運転モードでは、室外膨張弁24は、室外熱交換器23の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。また、冷房運転モードでは、過冷却膨張弁48は、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。なお、冷房運転モードでは、第1室内膨張弁33および第2室内膨張弁38は、全開状態に制御される。
また、暖房運転モードでは、第1室内膨張弁33は、第1室内熱交換器31の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。第2室内膨張弁38も同様に、第2室内熱交換器36の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。また、暖房運転モードでは、室外膨張弁45は、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。なお、暖房運転モードでは、過冷却膨張弁48は、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。
以上の第3実施形態の空気調和装置1bにおいても、第1実施形態に係る空気調和装置1と同様に、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が用いられているため、GWPを十分に小さく抑えることが可能になっている。
また、空気調和装置1bが有する室外ユニット20では、IHヒータ81が設けられているため、冷媒回路10におけるIHヒータ81が設けられている箇所を流れる冷媒を加熱することができる。なお、圧縮機21の吸入側を流れる冷媒を加熱することにより、圧縮機21に吸入される冷媒をより確実にガス状態とすることが可能となり、圧縮機21における液圧縮を抑制させることが可能になっている。
また、定格消費電力が200W以上のIHヒータ81を用いることで、上吹き型のようにある程度の能力のある室外ユニット20においても、当該能力に見合う分だけ、IHヒータ81の機能を十分に発揮させることが可能となる。
しかも、IHヒータ81の定格消費電力が300W以下のものを用いることで、室外ユニット20において仮に1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が漏洩することがあったとしても、IHヒータ81が発火源となることを抑制させることができている。
(7−4)第4実施形態
上記第1実施形態から第3実施形態および各変形例を適宜組み合わせて空気調和装置や室外ユニットを構成してもよい。例えば、第2実施形態の室外ユニットがドレンパンヒータおよびIHヒータをさらに備えていてもよい。この場合には、各電熱装置の定格消費電力が所定の値を超えなければよいが、各電熱装置の定格消費電力の合計が300W以下となるように構成されていてもよい。
(8)第8グループの技術の実施形態
(8−1)第1実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図8A、概略制御ブロック構成図である図8Bを参照しつつ、第1実施形態に係る冷凍サイクル装置としての空気調和装置1について説明する。
空気調和装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うことで、対象空間の空気を調和させる装置である。
空気調和装置1は、主として、室外ユニット20と、室内ユニット30と、室外ユニット20と室内ユニット30を接続する液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5と、入力装置および出力装置としての図示しないリモコンと、空気調和装置1の動作を制御するコントローラ7と、を有している。
空気調和装置1では、冷媒回路10内に封入された冷媒が、圧縮され、冷却又は凝縮され、減圧され、加熱又は蒸発された後に、再び圧縮される、という冷凍サイクルが行われる。本実施形態では、冷媒回路10には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が充填されている。当該冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。なお、室内ユニット30が1台だけ設けられている空気調和装置1の定格冷房能力としては、例えば、2.0kW以上17.0kW以下とすることができ、なかでも、冷媒容器である低圧レシーバ26が設けられた本実施形態では、4.0kW以上17.0kW以下とすることが好ましい。
(8−1−1)室外ユニット20
室外ユニット20は、液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5を介して室内ユニット30と接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。室外ユニット20は、主として、圧縮機21と、四路切換弁22と、室外熱交換器23と、室外膨張弁24と、室外ファン25と、低圧レシーバ26と、液側閉鎖弁29と、ガス側閉鎖弁28と、を有している。
圧縮機21は、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒を高圧になるまで圧縮する機器である。ここでは、圧縮機21として、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素(図示省略)が圧縮機モータによって回転駆動される密閉式構造の圧縮機が使用されている。圧縮機モータは、容量を変化させるためのものであり、インバータにより運転周波数の制御が可能である。なお、圧縮機21には、吸入側において、図示しない付属アキュムレータが設けられている。
四路切換弁22は、接続状態を切り換えることで、圧縮機21の吐出側と室外熱交換器23とを接続しつつ圧縮機21の吸入側とガス側閉鎖弁28とを接続する冷房運転接続状態と、圧縮機21の吐出側とガス側閉鎖弁28とを接続しつつ圧縮機21の吸入側と室外熱交換器23とを接続する暖房運転接続状態と、を切り換えることができる。
室外熱交換器23は、冷房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の凝縮器として機能し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能する熱交換器である。なお、室外熱交換器23の内容積(内部に充填可能な流体の体積)としては、本実施形態のように、冷媒回路10において冷媒容器(低圧レシーバや高圧レシーバ等であり、圧縮機に付属のアキュムレータを除く)が設けられているものについては、1.4L以上5.0L未満であることが好ましい。また、本実施形態のように、室外ファン25が1つだけ設けられているトランク型の室外ユニット20が有する室外熱交換器23の内容積(内部に充填可能な流体の体積)としては、0.4L以上3.5L未満であることが好ましい。
室外ファン25は、室外ユニット20内に室外の空気を吸入して、室外熱交換器23において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための空気流れを生じさせる。室外ファン25は、室外ファンモータによって回転駆動される。
室外膨張弁24は、弁開度を制御可能であり、室外熱交換器23の液側端部と液側閉鎖弁29との間に設けられている。
低圧レシーバ26は、四路切換弁22の接続ポートの1つから圧縮機21の吸入側に至るまでの間に設けられ、冷媒を溜めることができる容器である。
液側閉鎖弁29は、室外ユニット20における液側冷媒連絡配管6との接続部分に配置された手動弁である。
ガス側閉鎖弁28は、室外ユニット20におけるとガス側冷媒連絡配管5との接続部分に配置された手動弁である。
室外ユニット20は、室外ユニット20を構成する各部の動作を制御する室外ユニット制御部27を有している。室外ユニット制御部27は、CPUやメモリ等を含むマイクロコンピュータを有している。室外ユニット制御部27は、各室内ユニット30の室内ユニット制御部34と通信線を介して接続されており、制御信号等の送受信を行う。また、室外ユニット制御部27は、図示しない各種センサと電気的に接続されており、各センサからの信号を受信する。
(8−1−2)室内ユニット30
室内ユニット30は、対象空間である室内の壁面や天井等に設置されている。室内ユニット30は、液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5を介して室外ユニット20と接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。
室内ユニット30は、室内熱交換器31と、室内ファン32と、を有している。
室内熱交換器31は、液側が、液側冷媒連絡配管6と接続され、ガス側端が、ガス側冷媒連絡配管5とを接続されている。室内熱交換器31は、冷房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の凝縮器として機能する熱交換器である。
室内ファン32は、室内ユニット30内に室内の空気を吸入して、室内熱交換器31において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための空気流れを生じさせる。室内ファン32は、室内ファンモータによって回転駆動される。
また、室内ユニット30は、室内ユニット30を構成する各部の動作を制御する室内ユニット制御部34を有している。室内ユニット制御部34は、CPUやメモリ等を含むマイクロコンピュータを有している。室内ユニット制御部34は、室外ユニット制御部27と通信線を介して接続されており、制御信号等の送受信を行う。
室内ユニット制御部34は、室内ユニット30内に設けられている図示しない各種センサと電気的に接続されており、各センサからの信号を受信する。
(8−1−3)コントローラ7の詳細
空気調和装置1では、室外ユニット制御部27と室内ユニット制御部34が通信線を介して接続されることで、空気調和装置1の動作を制御するコントローラ7が構成されている。
コントローラ7は、主として、CPU(中央演算処理装置)と、ROMやRAM等のメモリを有している。なお、コントローラ7による各種処理や制御は、室外ユニット制御部27および/又は室内ユニット制御部34に含まれる各部が一体的に機能することによって実現されている。
(8−1−4)運転モード
以下、運転モードについて説明する。
運転モードとしては、冷房運転モードと暖房運転モードとが設けられている。
コントローラ7は、リモコン等から受け付けた指示に基づいて、冷房運転モードか暖房運転モードかを判断し、実行する。
(8−1−4−1)冷房運転モード
空気調和装置1では、冷房運転モードでは、四路切換弁22の接続状態を圧縮機21の吐出側と室外熱交換器23とを接続しつつ圧縮機21の吸入側とガス側閉鎖弁28とを接続する冷房運転接続状態とし、冷媒回路10に充填されている冷媒を、主として、圧縮機21、室外熱交換器23、室外膨張弁24、室内熱交換器31の順に循環させる。
より具体的には、冷房運転モードが開始されると、冷媒回路10内において、冷媒が圧縮機21に吸入されて圧縮された後に吐出される。
圧縮機21では、室内ユニット30で要求される冷却負荷に応じた容量制御が行われる。当該容量制御としては、特に限定されず、例えば、吸入圧力の目標値が室内ユニット30で要求される冷却負荷に応じて設定され、吸入圧力が目標値になるように圧縮機21の運転周波数が制御されるものであってもよい。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22を経て、室外熱交換器23のガス側端に流入する。
室外熱交換器23のガス側端に流入したガス冷媒は、室外熱交換器23において、室外ファン25によって供給される室外側空気と熱交換を行って凝縮し、液冷媒となって室外熱交換器23の液側端から流出する。
室外熱交換器23の液側端から流出した冷媒は、室外膨張弁24を通過する際に減圧される。なお、室外膨張弁24は、室外熱交換器23の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。なお、室外膨張弁24の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
室外膨張弁24で減圧された冷媒は、液側閉鎖弁29および液側冷媒連絡配管6を経て、室内ユニット30に流入する。
室内ユニット30に流入した冷媒は、室内熱交換器31に流入し、室内熱交換器31において、室内ファン32によって供給される室内空気と熱交換を行って蒸発し、ガス冷媒となって室内熱交換器31のガス側端から流出する。室内熱交換器31のガス側端から流出したガス冷媒は、ガス側冷媒連絡配管5に流れていく。
ガス側冷媒連絡配管5を流れた冷媒は、ガス側閉鎖弁28、四路切換弁22を経て、再び、圧縮機21に吸入される。
(8−1−4−2)暖房運転モード
空気調和装置1では、暖房運転モードでは、四路切換弁22の接続状態を圧縮機21の吐出側とガス側閉鎖弁28とを接続しつつ圧縮機21の吸入側と室外熱交換器23とを接続する暖房運転接続状態とし、冷媒回路10に充填されている冷媒を、主として、圧縮機21、室内熱交換器31、室外膨張弁24、室外熱交換器23の順に循環させる。
より具体的には、暖房運転モードが開始されると、冷媒回路10内において、冷媒が圧縮機21に吸入されて圧縮された後に吐出される。
圧縮機21では、室内ユニット30で要求される暖房負荷に応じた容量制御が行われる。当該容量制御としては、特に限定されず、例えば、吐出圧力の目標値が室内ユニット30で要求される暖房負荷に応じて設定され、吐出圧力が目標値になるように圧縮機21の運転周波数が制御される。
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22およびガス側冷媒連絡配管5を流れた後、室内ユニット30に流入する。
室内ユニット30に流入した冷媒は、室内熱交換器31のガス側端に流入し、室内熱交換器31において、室内ファン32によって供給される室内空気と熱交換を行って凝縮し、気液二相状態の冷媒または液冷媒となって室内熱交換器31の液側端から流出する。室内熱交換器31の液側端から流出した冷媒は、液側冷媒連絡配管6に流れていく。
液側冷媒連絡配管6を流れた冷媒は、液側閉鎖弁29、室外膨張弁24において冷凍サイクルにおける低圧になるまで減圧される。なお、室外膨張弁24は、室内熱交換器31の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。なお、室外膨張弁24の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
室外膨張弁24で減圧された冷媒は、室外熱交換器23の液側端に流入する。
室外熱交換器23の液側端から流入した冷媒は、室外熱交換器23において、室外ファン25によって供給される室外空気と熱交換を行って蒸発し、ガス冷媒となって室外熱交換器23のガス側端から流出する。
室外熱交換器23のガス側端から流出した冷媒は、四路切換弁22を経て、再び、圧縮機21に吸入される。
(8−1−5)冷媒封入量
以上の室内ユニット30が1台だけ設けられている空気調和装置1では、冷凍能力1kW当りの封入量が160g以上560g以下となるように、冷媒が冷媒回路10に充填されており、なかでも、冷媒容器としての低圧レシーバ26が設けられている空気調和装置1では、冷凍能力1kW当りの封入量が260g以上560g以下となるように、冷媒が冷媒回路10に充填されている。
(8−1−6)第1実施形態の特徴
例えば、従来多用されているR32冷媒を用いた冷凍サイクル装置では、R32の充填量が少な過ぎると、冷媒不足に起因するサイクル効率の悪化によりLCCPが大きくなり、R32の充填量が多過ぎるとGWPの影響が高くなり、LCCPが大きくなる傾向にある。
これに対して、本実施形態の室内ユニット30が1台だけ設けられている空気調和装置1では、冷媒として1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒Aのいずれかの冷媒が用いられており、しかもその冷媒封入量を、冷凍能力1kW当りの封入量が160g以上560g以下(特に、低圧レシーバ26が設けられていることから260g以上560g以下)となるようにしている。
これにより、R32よりもGWPが十分に小さい冷媒を用いつつ、冷凍能力1kW当りの封入量を560gまでに抑えることで、LCCPを低く抑えることが可能になっている。また、R32よりも熱搬送能力が低い冷媒であっても冷凍能力1kW当りの封入量を160g以上(特に、低圧レシーバ26が設けられていることから260g以上)とすることで冷媒不足によるサイクル効率の低下を抑制してLCCPの上昇を抑えることが可能になっている。以上より、GWPが十分に小さい冷媒を用いて熱サイクルを行う場合において、LCCPを低く抑えることが可能になっている。
(8−1−7)第1実施形態の変形例A
上記第1実施形態では、圧縮機21の吸入側に低圧レシーバが設けられている空気調和装置を例に挙げて説明したが、空気調和装置としては、冷媒回路において冷媒容器(低圧レシーバや高圧レシーバ等であり、圧縮機に付属のアキュムレータを除く)が設けられていないものであってもよい。
この場合には、冷凍能力1kW当りの冷媒封入量が160g以上400g以下となるように、冷媒が冷媒回路10に充填される。そして、この場合には、室外熱交換器23の内容積(内部に充填可能な流体の体積)としては、0.4L以上2.5L以下であることが好ましい。
(8−1−8)第1実施形態の変形例B
上記第1実施形態では、室内ユニットが1つだけ設けられている空気調和装置を例に挙げて説明したが、空気調和装置としては、互いに並列に接続された複数の室内ユニット(室内膨張弁を有さないもの)が設けられていてもよい。
この場合には、冷凍能力1kW当りの冷媒封入量が260g以上560g以下となるように、冷媒が冷媒回路10に充填される。そして、この場合には、室外熱交換器23の内容積(内部に充填可能な流体の体積)としては、1.4L以上5.0L未満であることが好ましい。
(8−1−9)第1実施形態の変形例C
上記第1実施形態では、室外ファン25が1つだけ設けられているトランク型の室外ユニット20を有する空気調和装置を例に挙げて説明したが、空気調和装置としては、室外ファン25が2つ設けられているトランク型の室外ユニット20を有するものであってもよい。
この場合には、冷凍能力1kW当りの冷媒封入量が350g以上540g以下となるように、冷媒が冷媒回路10に充填される。そして、この場合には、室外熱交換器23の内容積(内部に充填可能な流体の体積)としては、3.5L以上7.0L以下であることが好ましい。
(8−2)第2実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図8C、概略制御ブロック構成図である図8Dを参照しつつ、第2実施形態に係る冷凍サイクル装置としての空気調和装置1aについて説明する。
以下、主として、第2実施形態の空気調和装置1aについて、第1実施形態の空気調和装置1と異なる箇所を中心に説明する。
空気調和装置1aにおいても、冷媒回路10には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒として、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒であって、冷媒Aのいずれかが充填されている。
空気調和装置1aの室外ユニット20では、上記第1実施形態における室外ユニット20の室外膨張弁24の代わりに、室外熱交換器23の液側から液側閉鎖弁29までの間において、第1室外膨張弁44、中間圧レシーバ41、第2室外膨張弁45が順次設けられている。また、上記第1実施形態における室外ユニット20の低圧レシーバ26は、第2実施形態の室外ユニット20には設けられていない。
第1室外膨張弁44および第2室外膨張弁45は、弁開度を制御可能である。
中間圧レシーバ41は、第1室外膨張弁44側から延びる配管の端部と、第2室外膨張弁45側から延びる配管の端部と、の両方が内部空間に位置しており、冷媒を溜めることができる容器である。
なお、第2実施形態に係る空気調和装置1aでは、冷媒回路10において冷媒容器である中間圧レシーバ41が設けられていることから、室外ユニット20が有する室外熱交換器23の内容積(内部に充填可能な流体の体積)が、1.4L以上5.0L未満であることが好ましい。また、本実施形態のように、室外ファン25が1つだけ設けられているトランク型の室外ユニット20が有する室外熱交換器23の内容積(内部に充填可能な流体の体積)としては、0.4L以上3.5L未満であることが好ましい。
以上の空気調和装置1aでは、冷房運転モードでは、第1室外膨張弁44は、室外熱交換器23の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。また、冷房運転モードでは、第2室外膨張弁45は、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。なお、冷房運転モードでは、第2室外膨張弁45は、圧縮機21が吐出する冷媒の温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21が吐出する冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
また、暖房運転モードでは、第2室外膨張弁45は、室内熱交換器31の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。また、暖房運転モードでは、第1室外膨張弁44は、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。なお、暖房運転モードでは、第1室外膨張弁44は、圧縮機21が吐出する冷媒の温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機21が吐出する冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
以上の室内ユニット30が1台だけ設けられている空気調和装置1aでは、冷凍能力1kW当りの封入量が160g以上560g以下となるように、冷媒が冷媒回路10に充填されており、なかでも、冷媒容器としての中間圧レシーバ41が設けられている空気調和装置1では、冷凍能力1kW当りの封入量が260g以上560g以下となるように、冷媒が冷媒回路10に充填されている。
なお、室内ユニット30が1台だけ設けられている空気調和装置1の定格冷房能力としては、例えば、2.2kW以上16.0kW以下とすることができ、4.0kW以上16.0kW以下とすることが好ましい。
以上の第2実施形態に係る空気調和装置1aにおいても、第1実施形態に係る空気調和装置1と同様に、GWPが十分に小さい冷媒を用いて熱サイクルを行う場合において、LCCPを低く抑えることが可能になっている。
(8−2−1)第2実施形態の変形例A
上記第2実施形態では、室内ユニットが1つだけ設けられている空気調和装置を例に挙げて説明したが、空気調和装置としては、互いに並列に接続された複数の室内ユニット(室内膨張弁を有さないもの)が設けられていてもよい。
この場合には、冷凍能力1kW当りの冷媒封入量が260g以上560g以下となるように、冷媒が冷媒回路10に充填される。そして、この場合には、室外熱交換器23の内容積(内部に充填可能な流体の体積)としては、1.4L以上5.0L未満であることが好ましい。
(8−2−2)第2実施形態の変形例B
上記第2実施形態では、室外ファン25が1つだけ設けられているトランク型の室外ユニット20を有する空気調和装置を例に挙げて説明したが、空気調和装置としては、室外ファン25が2つ設けられたトランク型の室外ユニット20を有するものであってもよい。
この場合には、冷凍能力1kW当りの冷媒封入量が350g以上540g以下となるように、冷媒が冷媒回路10に充填される。そして、この場合には、室外熱交換器23の内容積(内部に充填可能な流体の体積)としては、3.5L以上7.0L以下であることが好ましい。
(8−3)第3実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図8E、概略制御ブロック構成図である図8Fを参照しつつ、第3実施形態に係る冷凍サイクル装置としての空気調和装置1bについて説明する。
以下、主として、第3実施形態の空気調和装置1bについて、第1実施形態の空気調和装置1と異なる箇所を中心に説明する。
空気調和装置1bにおいても、冷媒回路10には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒として、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒であって、冷媒Aのいずれかが充填されている。
第3実施形態に係る空気調和装置1bの室外ユニット20では、上記第1実施形態における室外ユニット20において、過冷却熱交換器47および過冷却回路46が設けられている。
過冷却熱交換器47は、室外膨張弁24と液側閉鎖弁29との間に設けられている。
過冷却回路46は、室外膨張弁24と過冷却熱交換器47との間の主回路から分岐し、四路切換弁22の接続ポートの1つから低圧レシーバ26に至るまでの途中の部分に合流するように延びた回路である。過冷却回路46の途中には、通過する冷媒を減圧させる過冷却膨張弁48が設けられている。過冷却回路46を流れる冷媒であって、過冷却膨張弁48で減圧された冷媒は、過冷却熱交換器47において、主回路側を流れる冷媒との間で熱交換を行う。これにより、主回路側を流れる冷媒はさらに冷却され、過冷却回路46を流れる冷媒は蒸発する。
なお、室内膨張弁が設けられた室内ユニットを複数有している第3実施形態に係る空気調和装置1bでは、室外ユニット20が有する室外熱交換器23の内容積(内部に充填可能な流体の体積)が、5.0L以上38L以下であることが好ましい。なかでも、室外熱交換器23を通過した空気の吹出口が側方を向いている室外ユニット20において、室外ファン25が2つ設けられているものである場合には、室外熱交換器23の内容積(内部に充填可能な流体の体積)は、7.0L以下であることが好ましく、室外熱交換器23を通過した空気が上方に向けて吹き出す室外ユニット20である場合には、室外熱交換器23の内容積は、5.5L以上であることが好ましい。
また、第3実施形態に係る空気調和装置1bでは、上記第1実施形態における室内ユニット30の代わりに、互いに並列に設けられた第1室内ユニット30および第2室内ユニット35を有している。
第1室内ユニット30は、上記第1実施形態における室内ユニット30と同様に第1室内熱交換器31と第1室内ファン32と第1室内ユニット制御部34が設けられており、さらに、第1室内熱交換器31の液側において第1室内膨張弁33が設けられている。第1室内膨張弁33は、弁開度が制御可能である。
第2室内ユニット35は、第1室内ユニット30と同様であり、第2室内熱交換器36と第2室内ファン37と、第2室内ユニット制御部39と、第2室内熱交換器36の液側に設けられた第2室内膨張弁38と、を有している。第2室内膨張弁38は、弁開度が制御可能である。
なお、第3実施形態のコントローラ7は、室外ユニット制御部27と、第1室内ユニット制御部34と、第2室内ユニット制御部39と、が互いに通信可能に接続されて構成されている。
冷房運転モードでは、室外膨張弁24は、室外熱交換器23の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。また、冷房運転モードでは、過冷却膨張弁48は、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。なお、冷房運転モードでは、第1室内膨張弁33および第2室内膨張弁38は、全開状態に制御される。
暖房運転モードでは、第1室内膨張弁33は、第1室内熱交換器31の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。第2室内膨張弁38も同様に、第2室内熱交換器36の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。また、暖房運転モードでは、室外膨張弁45は、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。なお、暖房運転モードでは、過冷却膨張弁48は、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。
以上の室内ユニット30、35が複数台設けられている空気調和装置1bでは、冷凍能力1kW当りの封入量が190g以上1660g以下となるように、冷媒が冷媒回路10に充填されている。
なお、室内ユニット30が複数台設けられている空気調和装置1bの定格冷房能力としては、例えば、4.0kW以上150.0kW以下とすることができ、14.0kW以上150.0kW以下とすることが好ましく、なかでも、室外ユニット20が上吹き型のものである場合には22.4kW以上150.0kW以下とすることが好ましい。
以上の第3実施形態の室内ユニットが複数台設けられている空気調和装置1bでは、冷媒として1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒であって、冷媒Aのいずれかが用いられており、しかもその冷媒封入量を、冷凍能力1kW当りの封入量が190g以上1660g以下となるようにしている。
これにより、室内ユニットが複数台設けられている空気調和装置1bにおいても、R32よりもGWPが十分に小さい冷媒を用いつつ、冷凍能力1kW当りの封入量を1660gまでに抑えることで、LCCPを低く抑えることが可能になっている。また、室内ユニットが複数台設けられている空気調和装置1bにおいても、R32よりも熱搬送能力が低い冷媒であっても冷凍能力1kW当りの封入量を190g以上とすることで冷媒不足によるサイクル効率の低下を抑制してLCCPの上昇を抑えることが可能になっている。以上より、室内ユニットが複数台設けられている空気調和装置1bにおいても、GWPが十分に小さい冷媒を用いて熱サイクルを行う場合において、LCCPを低く抑えることが可能になっている。
(8−4)第4実施形態
冷凍サイクル装置の冷媒回路に1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒であって冷媒Aのいずれかを封入する場合の封入冷媒量について、第1実施形態の空気調和装置1や第2実施形態の空気調和装置1aのように室内ユニット30が1台だけ設けられている冷凍サイクル装置については、冷凍能力1kW当りの封入量が160g以上560g以下となるようにしつつ、第3実施形態の空気調和装置1bのように室内ユニット30が複数台設けられている冷凍サイクル装置については、冷凍能力1kW当りの封入量が190g以上1660g以下となるようにする。
これにより、冷凍サイクル装置の種類に応じて、GWPとLCCPを低く抑えることが可能になる。
(9)第9グループの技術の実施形態
(9−1)第1実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図9A、概略制御ブロック構成図である図9Bを参照しつつ、第1実施形態に係る冷凍サイクル装置としての空気調和装置1について説明する。
空気調和装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うことで、対象空間の空気を調和させる装置である。
空気調和装置1は、主として、室外ユニット20と、室内ユニット30と、室外ユニット20と室内ユニット30を接続する液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5と、入力装置および出力装置としての図示しないリモコンと、空気調和装置1の動作を制御するコントローラ7と、を有している。
空気調和装置1では、冷媒回路10内に封入された冷媒が、圧縮され、冷却又は凝縮され、減圧され、加熱又は蒸発された後に、再び圧縮される、という冷凍サイクルが行われる。本実施形態では、冷媒回路10には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が充填されている。当該冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。また、冷媒回路10には、当該冷媒と共に、冷凍機油が充填されている。
(9−1−1)室外ユニット20
室外ユニット20は、外観が略直方体箱状であり、内部が仕切板等によって分割されることで、送風機室および機械室が形成された構造(いわゆる、トランク型構造)を有している。
この室外ユニット20は、液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5を介して室内ユニット30と接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。室外ユニット20は、主として、圧縮機21と、四路切換弁22と、室外熱交換器23と、室外膨張弁24と、室外ファン25と、液側閉鎖弁29と、ガス側閉鎖弁28と、を有している。
圧縮機21は、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒を高圧になるまで圧縮する機器である。ここでは、圧縮機21として、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素(図示省略)が圧縮機モータによって回転駆動される密閉式構造の圧縮機が使用されている。圧縮機モータは、容量を変化させるためのものであり、インバータにより運転周波数の制御が可能である。なお、圧縮機21には、吸入側において、図示しない付属アキュムレータが設けられている。なお、本実施形態の室外ユニット20は、当該付属アキュムレータより大きな冷媒容器(圧縮機21の吸入側に配置される低圧レシーバや室外熱交換器23の液側に配置される高圧レシーバ等)を有していない。
四路切換弁22は、接続状態を切り換えることで、圧縮機21の吐出側と室外熱交換器23とを接続しつつ圧縮機21の吸入側とガス側閉鎖弁28とを接続する冷房運転接続状態と、圧縮機21の吐出側とガス側閉鎖弁28とを接続しつつ圧縮機21の吸入側と室外熱交換器23とを接続する暖房運転接続状態と、を切り換えることができる。
室外熱交換器23は、冷房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の凝縮器として機能し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能する熱交換器である。室外熱交換器23は、複数の伝熱フィンと、これに貫通固定された複数の伝熱管とを有している。
室外ファン25は、室外ユニット20内に室外の空気を吸入して、室外熱交換器23において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための空気流れを生じさせる。室外ファン25は、室外ファンモータによって回転駆動される。なお、本実施形態において、室外ファン25は、1つだけ設けられている。
室外膨張弁24は、弁開度を制御可能であり、室外熱交換器23の液側端部と液側閉鎖弁29との間に設けられている。
液側閉鎖弁29は、室外ユニット20における液側冷媒連絡配管6との接続部分に配置された手動弁である。
ガス側閉鎖弁28は、室外ユニット20におけるとガス側冷媒連絡配管5との接続部分に配置された手動弁である。
室外ユニット20は、室外ユニット20を構成する各部の動作を制御する室外ユニット制御部27を有している。室外ユニット制御部27は、CPUやメモリ等を含むマイクロコンピュータを有している。室外ユニット制御部27は、各室内ユニット30の室内ユニット制御部34と通信線を介して接続されており、制御信号等の送受信を行う。また、室外ユニット制御部27は、図示しない各種センサと電気的に接続されており、各センサからの信号を受信する。
(9−1−2)室内ユニット30
室内ユニット30は、対象空間である室内の壁面等に設置されている。室内ユニット30は、液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5を介して室外ユニット20と接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。
室内ユニット30は、室内熱交換器31と、室内ファン32等を有している。
室内熱交換器31は、液側が、液側冷媒連絡配管6と接続され、ガス側端が、ガス側冷媒連絡配管5とを接続されている。室内熱交換器31は、冷房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の凝縮器として機能する熱交換器である。室内熱交換器31は、複数の伝熱フィンと、これに貫通固定された複数の伝熱管と、を有している。
室内ファン32は、室内ユニット30内に室内の空気を吸入して、室内熱交換器31において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための空気流れを生じさせる。室内ファン32は、図示しない室内ファンモータによって回転駆動される。
また、室内ユニット30は、室内ユニット30を構成する各部の動作を制御する室内ユニット制御部34を有している。室内ユニット制御部34は、CPUやメモリ等を含むマイクロコンピュータを有している。室内ユニット制御部34は、室外ユニット制御部27と通信線を介して接続されており、制御信号等の送受信を行う。
室内ユニット制御部34は、室内ユニット30内に設けられている図示しない各種センサと電気的に接続されており、各センサからの信号を受信する。
(9−1−3)コントローラ7の詳細
空気調和装置1では、室外ユニット制御部27と室内ユニット制御部34が通信線を介して接続されることで、空気調和装置1の動作を制御するコントローラ7が構成されている。
コントローラ7は、主として、CPU(中央演算処理装置)と、ROMやRAM等のメモリを有している。なお、コントローラ7による各種処理や制御は、室外ユニット制御部27および/又は室内ユニット制御部34に含まれる各部が一体的に機能することによって実現されている。
(9−1−4)運転モード
以下、運転モードについて説明する。
運転モードとしては、冷房運転モードと暖房運転モードとが設けられている。
コントローラ7は、リモコン等から受け付けた指示に基づいて、冷房運転モードか暖房運転モードかを判断し、実行する。
(9−1−4−1)冷房運転モード
空気調和装置1では、冷房運転モードでは、四路切換弁22の接続状態を圧縮機21の吐出側と室外熱交換器23とを接続しつつ圧縮機21の吸入側とガス側閉鎖弁28とを接続する冷房運転接続状態とし、冷媒回路10に充填されている冷媒を、主として、圧縮機21、室外熱交換器23、室外膨張弁24、室内熱交換器31の順に循環させる。
より具体的には、冷房運転モードが開始されると、冷媒回路10内において、冷媒が圧縮機21に吸入されて圧縮された後に吐出される。
圧縮機21では、室内ユニット30で要求される冷却負荷に応じた容量制御が行われる。圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22を経て、室外熱交換器23のガス側端に流入する。
室外熱交換器23のガス側端に流入したガス冷媒は、室外熱交換器23において、室外ファン25によって供給される室外側空気と熱交換を行って凝縮し、液冷媒となって室外熱交換器23の液側端から流出する。
室外熱交換器23の液側端から流出した冷媒は、室外膨張弁24を通過する際に減圧される。なお、室外膨張弁24は、室外熱交換器23の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。
室外膨張弁24で減圧された冷媒は、液側閉鎖弁29および液側冷媒連絡配管6を経て、室内ユニット30に流入する。
室内ユニット30に流入した冷媒は、室内熱交換器31に流入し、室内熱交換器31において、室内ファン32によって供給される室内空気と熱交換を行って蒸発し、ガス冷媒となって室内熱交換器31のガス側端から流出する。室内熱交換器31のガス側端から流出したガス冷媒は、ガス側冷媒連絡配管5に流れていく。
ガス側冷媒連絡配管5を流れた冷媒は、ガス側閉鎖弁28、四路切換弁22を経て、再び、圧縮機21に吸入される。
(9−1−4−2)暖房運転モード
空気調和装置1では、暖房運転モードでは、四路切換弁22の接続状態を圧縮機21の吐出側とガス側閉鎖弁28とを接続しつつ圧縮機21の吸入側と室外熱交換器23とを接続する暖房運転接続状態とし、冷媒回路10に充填されている冷媒を、主として、圧縮機21、室内熱交換器31、室外膨張弁24、室外熱交換器23の順に循環させる。
より具体的には、暖房運転モードが開始されると、冷媒回路10内において、冷媒が圧縮機21に吸入されて圧縮された後に吐出される。
圧縮機21では、室内ユニット30で要求される暖房負荷に応じた容量制御が行われる。圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22およびガス側冷媒連絡配管5を流れた後、室内ユニット30に流入する。
室内ユニット30に流入した冷媒は、室内熱交換器31のガス側端に流入し、室内熱交換器31において、室内ファン32によって供給される室内空気と熱交換を行って凝縮し、気液二相状態の冷媒または液冷媒となって室内熱交換器31の液側端から流出する。室内熱交換器31の液側端から流出した冷媒は、液側冷媒連絡配管6に流れていく。
液側冷媒連絡配管6を流れた冷媒は、液側閉鎖弁29、室外膨張弁24において冷凍サイクルにおける低圧になるまで減圧される。なお、室外膨張弁24は、室内熱交換器31の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。室外膨張弁24で減圧された冷媒は、室外熱交換器23の液側端に流入する。
室外熱交換器23の液側端から流入した冷媒は、室外熱交換器23において、室外ファン25によって供給される室外空気と熱交換を行って蒸発し、ガス冷媒となって室外熱交換器23のガス側端から流出する。
室外熱交換器23のガス側端から流出した冷媒は、四路切換弁22を経て、再び、圧縮機21に吸入される。
(9−1−5)液側冷媒連絡配管6
第1実施形態の冷媒Aが用いられる空気調和装置1の液側冷媒連絡配管6は、管外径をD0/8インチとして表した場合に、D0の範囲は「2≦D0≦4」であり、冷媒R410Aが使用される場合の液側冷媒連絡配管の管外径と同じである。冷媒Aの圧力損失等の物性は冷媒R410Aと近似していることから、この液側冷媒連絡配管6の管外径は、冷媒R410Aが使用される場合の液側冷媒連絡配管の管外径と同じ管外径とすることで、能力の低下を抑制することができる。
なかでも、第1実施形態の液側冷媒連絡配管6は、D0が2(即ち配管径が1/4インチ)であることが好ましい。
特に、本実施形態の液側冷媒連絡配管6は、空気調和装置1の定格冷凍能力が7.5kW以上である場合にはD0が2.5(即ち配管径が5/16インチ)であることがより好ましく、空気調和装置1の定格冷凍能力が2.6kW以上7.5kW未満である場合にはD0が2(即ち配管径が1/4インチ)であることがより好ましく、空気調和装置1の定格冷凍能力が2.6kW未満である場合にはD0が1.5(即ち配管径が3/16インチ)であるかことがより好ましい。
(9−1−6)ガス側冷媒連絡配管5
第1実施形態の冷媒Aが用いられる空気調和装置1のガス側冷媒連絡配管5は、管外径をD0/8インチとして表した場合に、D0の範囲は「3≦D0≦8」であり、冷媒R410Aが使用される場合のガス側冷媒連絡配管の管外径と同じである。冷媒Aの圧力損失等の物性は冷媒R410Aと近似していることから、このガス側冷媒連絡配管5の管外径は、冷媒R410Aが使用される場合のガス側冷媒連絡配管の管外径と同じ管外径とすることで、能力の低下を抑制することができる。
なかでも、第1実施形態のガス側冷媒連絡配管5は、空気調和装置1の定格冷凍能力が6.0kW以上である場合にはD0が4(即ち配管径が1/2インチ)であることが好ましく、空気調和装置1の定格冷凍能力が6.0kW未満である場合にはD0が3(即ち配管径が3/8インチ)であることが好ましい。
特に、第1実施形態のガス側冷媒連絡配管5は、空気調和装置1の定格冷凍能力が6.0kW以上である場合にはD0が4(即ち配管径が1/2インチ)であることがより好ましく、空気調和装置1の定格冷凍能力が3.2kW以上6.0kW未満である場合にはD0が3(即ち配管径が3/8インチ)であることがより好ましく、空気調和装置1の定格冷凍能力が3.2kW未満である場合にはD0が2.5(即ち配管径が5/16インチ)であることがより好ましい。
(9−1−7)第1実施形態の特徴
上述の空気調和装置1では、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が用いられているため、GWPを十分に小さく抑えることが可能になっている。
また、空気調和装置1では、液側冷媒連絡配管6の管外径とガス側冷媒連絡配管5の管外径を所定の範囲とすることにより、特定の冷媒Aを用いた場合であっても、能力の低下を小さく抑えることが可能になっている。
(9−1−8)冷媒と冷媒連絡配管の管外径の関係
第1実施形態の空気調和装置1において、冷媒Aではなく、冷媒R410AとR32が用いられるとした場合には、一般的に、定格冷房能力の範囲に応じて、以下の表1、表2に示すような管外径(インチ)の液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5が用いられている。
これに対して、第1実施形態の空気調和装置1においては、1,2−ジフルオロエチレンを含んでいる冷媒Aを用いた場合については、定格冷房能力の範囲に応じて、以下の表1または表2に示すような管外径(インチ)の液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5を用いることにより、1,2−ジフルオロエチレンを含んでいる冷媒Aを用いた場合の能力の低下を小さく抑えることが可能となる。
ここで、第1実施形態の空気調和装置1において、冷媒R410A、R32、上記1,2−ジフルオロエチレンを含んでいる本開示の冷媒Aをそれぞれ用い、表2に記載の管外径を有する液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5を用いた場合について、図9Cに液側冷媒連絡配管6の暖房運転時の圧力損失を示し、図9Dにガス側冷媒連絡配管5の冷房運転時の圧力損失を示す。なお、圧力損失の算出は、凝縮温度と蒸発温度と凝縮器出口の冷媒の過冷却度と蒸発器出口の冷媒の過熱度との各制御目標値を共通化させて、馬力に応じた定格能力で運転させた場合に必要となる冷媒循環量に基づいて、冷媒連絡配管において生じる冷媒の圧力損失として算出した。また、馬力の単位はHPである。
この図9C、図9Dから分かるように、1,2−ジフルオロエチレンを含んでいる本開示の冷媒Aは、冷媒R410Aと圧力損失の挙動を近似させることができており、空気調和装置1において冷媒Aを用いた場合の能力の低下を小さく抑えることができていることが分かる。この点は、1,2−ジフルオロエチレンを含んでいる点で共通する本開示の冷媒Aの全てについて共通である。
(9−1−9)第1実施形態の変形例A
上記第1実施形態では、室内ユニットが1つだけ設けられている空気調和装置を例に挙げて説明したが、空気調和装置としては、互いに並列に接続された複数の室内ユニット(室内膨張弁を有さないもの)が設けられていてもよい。
(9−2)第2実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図9E、概略制御ブロック構成図である図9Fを参照しつつ、第2実施形態に係る冷凍サイクル装置としての空気調和装置1aについて説明する。
以下、主として、第2実施形態の空気調和装置1aについて、第1実施形態の空気調和装置1と異なる箇所を中心に説明する。
空気調和装置1aにおいても、冷媒回路10には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒として、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかが充填されている。また、冷媒回路10には、当該冷媒と共に、冷凍機油が充填されている。
(9−2−1)室外ユニット20
第2実施形態の空気調和装置1aの室外ユニット20では、室外ファン25として、第1室外ファン25aと第2室外ファン25bとが設けられている。空気調和装置1aの室外ユニット20の室外熱交換器23は、第1室外ファン25aおよび第2室外ファン25bから受ける空気流れに対応するように、広い熱交換面積が確保されている。
空気調和装置1aの室外ユニット20では、上記第1実施形態における室外ユニット20の室外膨張弁24の代わりに、室外熱交換器23の液側から液側閉鎖弁29までの間において、第1室外膨張弁44、中間圧レシーバ41、第2室外膨張弁45が順次設けられている。第1室外膨張弁44および第2室外膨張弁45は、弁開度を制御可能である。中間圧レシーバ41は、第1室外膨張弁44側から延びる配管の端部と、第2室外膨張弁45側から延びる配管の端部と、の両方が内部空間に位置しており、冷媒を溜めることができる容器である。なお、中間圧レシーバ41の内容積は、圧縮機21に付属した付属アキュムレータの内容積より大きく、2倍以上であることが好ましい。
第2実施形態の室外ユニット20は、略直方体箱状であり、鉛直に延びる仕切板等によって分割されることで送風機室および機械室が形成された構造(いわゆる、トランク型構造)を有している。
室外熱交換器23は、例えば、複数の伝熱フィンと、これに貫通固定された複数の伝熱管とを有している。この室外熱交換器23は、平面視L字形状となるように配置されている。
以上の空気調和装置1aでは、冷房運転モードでは、第1室外膨張弁44は、例えば、室外熱交換器23の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。また、冷房運転モードでは、第2室外膨張弁45は、例えば、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。
また、暖房運転モードでは、第2室外膨張弁45は、例えば、室内熱交換器31の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。また、暖房運転モードでは、第1室外膨張弁44は、例えば、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。
(9−2−2)室内ユニット30
第2実施形態の室内ユニット30は、対象空間である室内の上方空間に吊り下げられることで設置されるか、天井面に対して設置されるか、壁面に対して設置されて用いられる。室内ユニット30は、液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5を介して室外ユニット20と接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。
室内ユニット30は、室内熱交換器31と、室内ファン32等を有している。
第2実施形態の室内熱交換器31は、複数の伝熱フィンと、これに貫通固定された複数の伝熱管と、を有している。
(9−2−3)液側冷媒連絡配管6
第2実施形態の冷媒Aが用いられる空気調和装置1aの液側冷媒連絡配管6は、管外径をD0/8インチとして表した場合に、R410AやR32を用いた場合の管外径との関係とは無関係に、D0の範囲を「2≦D0≦4」とすることができる。
また、第2実施形態の冷媒Aが用いられる空気調和装置1aの液側冷媒連絡配管6は、管外径をD0/8インチ(ここで、「D0−1/8インチ」は冷媒R32が使用される場合の液側冷媒連絡配管の管外径である)として表した場合に、D0の範囲は「2≦D0≦4」である。冷媒Aは冷媒R32よりも圧力損失が生じやすいものの、第2実施形態の空気調和装置1aの液側冷媒連絡配管6の管外径は、冷媒R32が使用される場合の管外径以上の大きさであるため、能力の低下を抑制することができる。なかでも、空気調和装置1aの液側冷媒連絡配管6は、管外径をD0/8インチ(ここで、「D0−1/8インチ」は冷媒R32が使用される場合の液側冷媒連絡配管の管外径である)として表した場合に、空気調和装置1aの定格冷凍能力が5.6kWより大きく11.2kW未満である場合にD0が3(即ち配管径が3/8インチ)であることが好ましく、空気調和装置1aの定格冷凍能力が6.3kW以上10.0kW以下である場合にD0が3(即ち配管径が3/8インチ)であることがより好ましい。
また、第2実施形態の冷媒Aが用いられる空気調和装置1aの液側冷媒連絡配管6は、管外径をD0/8インチとして表した場合に、D0の範囲は「2≦D0≦4」であり、冷媒R410Aが使用される場合の液側冷媒連絡配管の管外径と同じである。冷媒Aの圧力損失等の物性は冷媒R410Aと近似していることから、この液側冷媒連絡配管6の管外径は、冷媒R410Aが使用される場合の液側冷媒連絡配管の管外径と同じ管外径とすることで、能力の低下を抑制することができる。
なかでも、第2実施形態の冷媒Aが用いられる空気調和装置1aの液側冷媒連絡配管6は、管外径をD0/8インチとして表した場合において、空気調和装置1aの定格冷凍能力が6.3kW以上である場合にD0が3(即ち配管径が3/8インチ)であることが好ましく、空気調和装置1aの定格冷凍能力が6.3kW未満である場合にD0が2(即ち配管径が1/4インチ)であることが好ましく、いずれも冷媒R410Aが使用される場合の液側冷媒連絡配管の管外径と同じであることがより好ましい。
特に、第2実施形態の冷媒Aが用いられる空気調和装置1aの液側冷媒連絡配管6は、管外径をD0/8インチとして表した場合において、空気調和装置1aの定格冷凍能力が12.5kW以上である場合にD0が3(即ち配管径が3/8インチ)であることが好ましく、空気調和装置1aの定格冷凍能力が6.3kW以上12.5kW未満である場合にD0が2.5(即ち配管径が5/16インチ)であることが好ましく、空気調和装置1aの定格冷凍能力が6.3kW未満である場合にD0が2(即ち配管径が1/4インチ)であることが好ましい。
(9−2−4)ガス側冷媒連絡配管5
第2実施形態の冷媒Aが用いられる空気調和装置1aのガス側冷媒連絡配管5は、管外径をD0/8インチとして表した場合に、R410AやR32を用いた場合の管外径との関係とは無関係に、D0の範囲を「3≦D0≦8」とすることができる。
また、第2実施形態の冷媒Aが用いられる空気調和装置1aのガス側冷媒連絡配管5は、管外径をD0/8インチ(ここで、「D0−1/8インチ」は冷媒R32が使用される場合のガス側冷媒連絡配管の管外径である)として表した場合に、D0の範囲は「3≦D0≦8」である。冷媒Aは冷媒R32よりも圧力損失が生じやすいものの、第2実施形態の空気調和装置1aのガス側冷媒連絡配管5の管外径は、冷媒R32が使用される場合の管外径以上の大きさであるため、能力の低下を抑制することができる。なかでも、空気調和装置1aのガス側冷媒連絡配管5は、管外径をD0/8インチ(ここで、「D0−1/8インチ」は冷媒R32が使用される場合のガス側冷媒連絡配管の管外径である)として表した場合に、空気調和装置1aの定格冷凍能力が22.4kWより大きい場合にD0が7(即ち配管径が7/8インチ)であることが好ましく、空気調和装置1aの定格冷凍能力が14.0kWより大きく22.4kW未満である場合にD0が6(即ち配管径が6/8インチ)であることが好ましく、空気調和装置1aの定格冷凍能力が5.6kWより大きく11.2kW未満である場合にD0が5(即ち配管径が5/8インチ)であることが好ましく、空気調和装置1aの定格冷凍能力が4.5kW未満である場合にD0が4(即ち配管径が1/2インチ)であることが好ましい。この場合において、空気調和装置1aの定格冷凍能力が25.0kW以上である場合にD0が7(即ち配管径が7/8インチ)であることがより好ましく、空気調和装置1aの定格冷凍能力が15.0kW以上19.0kW未満である場合にD0が6(即ち配管径が6/8インチ)であることがより好ましく、空気調和装置1aの定格冷凍能力が6.3kW以上10.0kW未満である場合にD0が5(即ち配管径が5/8インチ)であることがより好ましく、空気調和装置1aの定格冷凍能力が4.0kW未満である場合にD0が4(即ち配管径が1/2インチ)であることがより好ましい。
また、第2実施形態の冷媒Aが用いられる空気調和装置1aのガス側冷媒連絡配管5は、管外径をD0/8インチとして表した場合に、D0の範囲は「3≦D0≦8」であり、冷媒R410Aが使用される場合のガス側冷媒連絡配管の管外径と同じである。冷媒Aの圧力損失等の物性は冷媒R410Aと近似していることから、このガス側冷媒連絡配管5の管外径は、冷媒R410Aが使用される場合のガス側冷媒連絡配管の管外径と同じ管外径とすることで、能力の低下を抑制することができる。
なかでも、第2実施形態の冷媒Aが用いられる空気調和装置1aのガス側冷媒連絡配管5は、管外径をD0/8インチとして表した場合において、空気調和装置1aの定格冷凍能力が25.0kW以上である場合にD0が7(即ち配管径が7/8インチ)であることが好ましく、空気調和装置1aの定格冷凍能力が15.0kW以上25.0kW未満である場合にD0が6(即ち配管径が6/8インチ)であることが好ましく、空気調和装置1aの定格冷凍能力が6.3kW以上15.0kW未満である場合にD0が5(即ち配管径が5/8インチ)であることが好ましく、空気調和装置1aの定格冷凍能力が6.3kW未満である場合にD0が4(即ち配管径が1/2インチ)であることが好ましく、いずれも冷媒R410Aが使用される場合のガス側冷媒連絡配管の管外径と同じであることがより好ましい。
(9−2−5)第2実施形態の特徴
以上の第2実施形態に係る空気調和装置1aにおいても、第1実施形態に係る空気調和装置1と同様に、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が用いられているため、GWPを十分に小さく抑えることが可能になっている。
また、空気調和装置1aでは、液側冷媒連絡配管6の管外径とガス側冷媒連絡配管5の管外径を所定の範囲とすることにより、特定の冷媒Aを用いた場合であっても、能力の低下を小さく抑えることが可能になっている。
(9−2−6)冷媒と冷媒連絡配管の管外径の関係
第2実施形態の空気調和装置1aにおいて、冷媒Aではなく、冷媒R410AとR32が用いられるとした場合には、一般的に、定格冷房能力の範囲に応じて、以下の表3、表4に示すような管外径(インチ)の液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5が用いられている。
これに対して、第2実施形態の空気調和装置1aにおいては、1,2−ジフルオロエチレンを含んでいる本開示の冷媒Aを用いた場合については、定格冷房能力の範囲に応じて、以下の表3または表4に示すような管外径(インチ)の液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5を用いることにより、1,2−ジフルオロエチレンを含んでいる本開示の冷媒Aを用いた場合の能力の低下を小さく抑えることが可能となる。
ここで、第2実施形態の空気調和装置1aにおいて、冷媒R410A、R32、上記1,2−ジフルオロエチレンを含んでいる本開示の冷媒Aをそれぞれ用い、表4に記載の管外径を有する液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5を用いた場合について、図9Gに液側冷媒連絡配管6の暖房運転時の圧力損失を示し、図9Hにガス側冷媒連絡配管5の冷房運転時の圧力損失を示す。なお、圧力損失の算出は、凝縮温度と蒸発温度と凝縮器出口の冷媒の過冷却度と蒸発器出口の冷媒の過熱度との各制御目標値を共通化させて、馬力に応じた定格能力で運転させた場合に必要となる冷媒循環量に基づいて、冷媒連絡配管において生じる冷媒の圧力損失として算出した。また、馬力の単位はHPである。
この図9G、図9Hから分かるように、1,2−ジフルオロエチレンを含んでいる本開示の冷媒Aは、冷媒R410Aと圧力損失の挙動を近似させることができており、空気調和装置1aにおいて冷媒Aを用いた場合の能力の低下を小さく抑えることができていることが分かる。この点は、1,2−ジフルオロエチレンを含んでいる点で共通する冷媒Aの全てについて共通である。
(9−2−7)第2実施形態の変形例A
上記第2実施形態では、室内ユニットが1つだけ設けられている空気調和装置を例に挙げて説明したが、空気調和装置としては、互いに並列に接続された複数の室内ユニット(室内膨張弁を有さないもの)が設けられていてもよい。
(9−3)第3実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図9I、概略制御ブロック構成図である図9Jを参照しつつ、第3実施形態に係る冷凍サイクル装置としての空気調和装置1bについて説明する。
以下、主として、第3実施形態の空気調和装置1bについて、第1実施形態の空気調和装置1と異なる箇所を中心に説明する。
空気調和装置1bにおいても、冷媒回路10には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒として、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかが充填されている。また、冷媒回路10には、当該冷媒と共に、冷凍機油が充填されている。
(9−3−1)室外ユニット20
第3実施形態に係る空気調和装置1bの室外ユニット20では、上記第1実施形態における室外ユニット20において、低圧レシーバ26、過冷却熱交換器47および過冷却回路46が設けられている。
低圧レシーバ26は、四路切換弁22の接続ポートの1つから圧縮機21の吸入側に至るまでの間に設けられ、冷媒を溜めることができる容器である。なお、本実施形態においては、圧縮機21が有する付属のアキュムレータとは別に設けられている。なお、低圧レシーバ26の内容積は、圧縮機21に付属した付属アキュムレータの内容積より大きく、2倍以上であることが好ましい。
過冷却熱交換器47は、室外膨張弁24と液側閉鎖弁29との間に設けられている。
過冷却回路46は、室外膨張弁24と過冷却熱交換器47との間の主回路から分岐し、四路切換弁22の接続ポートの1つから低圧レシーバ26に至るまでの途中の部分に合流するように延びた回路である。過冷却回路46の途中には、通過する冷媒を減圧させる過冷却膨張弁48が設けられている。過冷却回路46を流れる冷媒であって、過冷却膨張弁48で減圧された冷媒は、過冷却熱交換器47において、主回路側を流れる冷媒との間で熱交換を行う。これにより、主回路側を流れる冷媒はさらに冷却され、過冷却回路46を流れる冷媒は蒸発する。
第3実施形態に係る空気調和装置1bの室外ユニット20は、例えば、下方から内部に空気を取り込んで上方から外部に空気を吹き出す上吹き型構造と呼ばれるものであってよい。
(9−3−2)第1室内ユニット30および第2室内ユニット35
また、第3実施形態に係る空気調和装置1bでは、上記第1実施形態における室内ユニット30の代わりに、互いに並列に設けられた第1室内ユニット30および第2室内ユニット35を有している。
第1室内ユニット30は、上記第1実施形態における室内ユニット30と同様に第1室内熱交換器31と第1室内ファン32と第1室内ユニット制御部34が設けられており、さらに、第1室内熱交換器31の液側において第1室内膨張弁33が設けられている。第1室内膨張弁33は、弁開度が制御可能である。
第2室内ユニット35は、第1室内ユニット30と同様であり、第2室内熱交換器36と第2室内ファン37と、第2室内ユニット制御部39と、第2室内熱交換器36の液側に設けられた第2室内膨張弁38と、を有している。第2室内膨張弁38は、弁開度が制御可能である。
なお、第3実施形態に係る空気調和装置1bの第1室内ユニット30および第2室内ユニット35の具体的な構造は、上記第1室内膨張弁33や第2室内膨張弁38を除き、第2実施形態の室内ユニット30と同様の構成である。
なお、第3実施形態のコントローラ7は、室外ユニット制御部27と、第1室内ユニット制御部34と、第2室内ユニット制御部39と、が互いに通信可能に接続されて構成されている。
以上の空気調和装置1bでは、冷房運転モードでは、室外膨張弁24は、室外熱交換器23の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。また、冷房運転モードでは、過冷却膨張弁48は、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。なお、冷房運転モードでは、第1室内膨張弁33および第2室内膨張弁38は、全開状態に制御される。
また、暖房運転モードでは、第1室内膨張弁33は、第1室内熱交換器31の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。第2室内膨張弁38も同様に、第2室内熱交換器36の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。また、暖房運転モードでは、室外膨張弁45は、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。なお、暖房運転モードでは、過冷却膨張弁48は、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。
(9−3−3)液側冷媒連絡配管6
第3実施形態の冷媒Aが用いられる空気調和装置1bの液側冷媒連絡配管6は、管外径をD0/8インチとして表した場合に、R410AやR32を用いた場合の管外径との関係とは無関係に、D0の範囲を「2≦D0≦4」とすることができる。
また、第3実施形態の冷媒Aが用いられる空気調和装置1bの液側冷媒連絡配管6は、管外径をD0/8インチ(ここで、「D0−1/8インチ」は冷媒R32が使用される場合の液側冷媒連絡配管の管外径である)として表した場合に、D0の範囲は「2≦D0≦4」である。冷媒Aは冷媒R32よりも圧力損失が生じやすいものの、第3実施形態の空気調和装置1bの液側冷媒連絡配管6の管外径は、冷媒R32が使用される場合の管外径以上の大きさであるため、能力の低下を抑制することができる。なかでも、空気調和装置1bの液側冷媒連絡配管6は、管外径をD0/8インチ(ここで、「D0−1/8インチ」は冷媒R32が使用される場合の液側冷媒連絡配管の管外径である)として表した場合に、空気調和装置1bの定格冷凍能力が5.6kWより大きく11.2kW未満である場合にD0が3(即ち配管径が3/8インチ)であることが好ましく、空気調和装置1bの定格冷凍能力が6.3kW以上10.0kW以下である場合にD0が3(即ち配管径が3/8インチ)であることがより好ましい。
また、第3実施形態の冷媒Aが用いられる空気調和装置1bの液側冷媒連絡配管6は、管外径をD0/8インチとして表した場合に、D0の範囲は「2≦D0≦4」であり、冷媒R410Aが使用される場合の液側冷媒連絡配管の管外径と同じである。冷媒Aの圧力損失等の物性は冷媒R410Aと近似していることから、この液側冷媒連絡配管6の管外径は、冷媒R410Aが使用される場合の液側冷媒連絡配管の管外径と同じ管外径とすることで、能力の低下を抑制することができる。
なかでも、第3実施形態の冷媒Aが用いられる空気調和装置1bの液側冷媒連絡配管6は、管外径をD0/8インチとして表した場合において、空気調和装置1bの定格冷凍能力が6.3kW以上である場合にD0が3(即ち配管径が3/8インチ)であることが好ましく、空気調和装置1bの定格冷凍能力が6.3kW未満である場合にD0が2(即ち配管径が1/4インチ)であることが好ましく、いずれも冷媒R410Aが使用される場合の液側冷媒連絡配管の管外径と同じであることがより好ましい。
特に、第3実施形態の冷媒Aが用いられる空気調和装置1bの液側冷媒連絡配管6は、管外径をD0/8インチとして表した場合において、空気調和装置1bの定格冷凍能力が12.5kW以上である場合にD0が3(即ち配管径が3/8インチ)であることが好ましく、空気調和装置1bの定格冷凍能力が6.3kW以上12.5kW未満である場合にD0が2.5(即ち配管径が5/16インチ)であることが好ましく、空気調和装置1bの定格冷凍能力が6.3kW未満である場合にD0が2(即ち配管径が1/4インチ)であることが好ましい。
(9−3−4)ガス側冷媒連絡配管5
第3実施形態の冷媒Aが用いられる空気調和装置1bのガス側冷媒連絡配管5は、管外径をD0/8インチとして表した場合に、R410AやR32を用いた場合の管外径との関係とは無関係に、D0の範囲を「3≦D0≦8」とすることができる。
また、第3実施形態の冷媒Aが用いられる空気調和装置1bのガス側冷媒連絡配管5は、管外径をD0/8インチ(ここで、「D0−1/8インチ」は冷媒R32が使用される場合のガス側冷媒連絡配管の管外径である)として表した場合に、D0の範囲は「3≦D0≦8」である。冷媒Aは冷媒R32よりも圧力損失が生じやすいものの、第3実施形態の空気調和装置1bのガス側冷媒連絡配管5の管外径は、冷媒R32が使用される場合の管外径以上の大きさであるため、能力の低下を抑制することができる。なかでも、空気調和装置1aのガス側冷媒連絡配管5は、管外径をD0/8インチ(ここで、「D0−1/8インチ」は冷媒R32が使用される場合のガス側冷媒連絡配管の管外径である)として表した場合に、空気調和装置1aの定格冷凍能力が22.4kWより大きい場合にD0が7(即ち配管径が7/8インチ)であることが好ましく、空気調和装置1aの定格冷凍能力が14.0kWより大きく22.4kW未満である場合にD0が6(即ち配管径が6/8インチ)であることが好ましく、空気調和装置1aの定格冷凍能力が5.6kWより大きく11.2kW未満である場合にD0が5(即ち配管径が5/8インチ)であることが好ましく、空気調和装置1aの定格冷凍能力が4.5kW未満である場合にD0が4(即ち配管径が1/2インチ)であることが好ましい。この場合において、空気調和装置1aの定格冷凍能力が25.0kW以上である場合にD0が7(即ち配管径が7/8インチ)であることがより好ましく、空気調和装置1aの定格冷凍能力が15.0kW以上19.0kW未満である場合にD0が6(即ち配管径が6/8インチ)であることがより好ましく、空気調和装置1aの定格冷凍能力が6.3kW以上10.0kW未満である場合にD0が5(即ち配管径が5/8インチ)であることがより好ましく、空気調和装置1aの定格冷凍能力が4.0kW未満である場合にD0が4(即ち配管径が1/2インチ)であることがより好ましい。
また、第3実施形態の冷媒Aが用いられる空気調和装置1bのガス側冷媒連絡配管5は、管外径をD0/8インチとして表した場合に、D0の範囲は「3≦D0≦8」であり、冷媒R410Aが使用される場合のガス側冷媒連絡配管の管外径と同じである。冷媒Aの圧力損失等の物性は冷媒R410Aと近似していることから、このガス側冷媒連絡配管5の管外径は、冷媒R410Aが使用される場合のガス側冷媒連絡配管の管外径と同じ管外径とすることで、能力の低下を抑制することができる。
なかでも、第3実施形態の冷媒Aが用いられる空気調和装置1bのガス側冷媒連絡配管5は、管外径をD0/8インチとして表した場合において、空気調和装置1bの定格冷凍能力が25.0kW以上である場合にD0が7(即ち配管径が7/8インチ)であることが好ましく、空気調和装置1bの定格冷凍能力が15.0kW以上25.0kW未満である場合にD0が6(即ち配管径が6/8インチ)であることが好ましく、空気調和装置1bの定格冷凍能力が6.3kW以上15.0kW未満である場合にD0が5(即ち配管径が5/8インチ)であることが好ましく、空気調和装置1bの定格冷凍能力が6.3kW未満である場合にD0が4(即ち配管径が1/2インチ)であることが好ましく、いずれも冷媒R410Aが使用される場合のガス側冷媒連絡配管の管外径と同じであることがより好ましい。
(9−3−5)第3実施形態の特徴
以上の第3実施形態に係る空気調和装置1bにおいても、第1実施形態に係る空気調和装置1と同様に、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が用いられているため、GWPを十分に小さく抑えることが可能になっている。
また、空気調和装置1bでは、液側冷媒連絡配管6の管外径とガス側冷媒連絡配管5の管外径を所定の範囲とすることにより、特定の冷媒Aを用いた場合であっても、能力の低下を小さく抑えることが可能になっている。
(9−3−6)冷媒と冷媒連絡配管の管外径の関係
第3実施形態の空気調和装置1bにおいて、冷媒Aではなく、冷媒R410AとR32が用いられるとした場合には、一般的に、定格冷房能力の範囲に応じて、以下の表5、表6に示すような管外径(インチ)の液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5が用いられている。
これに対して、第3実施形態の空気調和装置1bにおいては、1,2−ジフルオロエチレンを含んでいる冷媒Aを用いた場合については、定格冷房能力の範囲に応じて、以下の表5または表6に示すような管外径(インチ)の液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5を用いることにより、1,2−ジフルオロエチレンを含んでいる冷媒Aを用いた場合の能力の低下を小さく抑えることが可能となる。
ここで、第3実施形態の空気調和装置1bにおいて、冷媒R410A、R32、上記1,2−ジフルオロエチレンを含んでいる本開示の冷媒Aをそれぞれ用い、表6に記載の管外径を有する液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5を用いた場合について、図9Kに液側冷媒連絡配管6の暖房運転時の圧力損失を示し、図9Lにガス側冷媒連絡配管5の冷房運転時の圧力損失を示す。なお、圧力損失の算出は、凝縮温度と蒸発温度と凝縮器出口の冷媒の過冷却度と蒸発器出口の冷媒の過熱度との各制御目標値を共通化させて、馬力に応じた定格能力で運転させた場合に必要となる冷媒循環量に基づいて、冷媒連絡配管において生じる冷媒の圧力損失として算出した。また、馬力の単位はHPである。
この図9K、図9Lから分かるように、1,2−ジフルオロエチレンを含んでいる冷媒Aは、冷媒R410Aと圧力損失の挙動を近似させることができており、空気調和装置1bにおいて冷媒Aを用いた場合の能力の低下を小さく抑えることができていることが分かる。この点は、1,2−ジフルオロエチレンを含んでいる点で共通する冷媒Aの全てについて共通である。
(9−4)その他
上記第1実施形態から第3実施形態および各変形例を適宜組み合わせて空気調和装置や室外ユニットを構成してもよい。
(10)第10グループの技術の実施形態
(10−1)空調機1の構成
図10Aは、一実施形態に係る圧縮機100が利用される空調機1の冷媒回路図である。空調機1は、圧縮機100を備えた冷凍サイクル装置である。圧縮機100が採用される空調機1として、「冷房運転専用の空調機」、「暖房運転専用の空調機」、及び「四路切換弁を用いて冷房運転および暖房運転のいずれかに切り換え可能な空調機」などが挙げられる。ここでは、「四路切換弁を用いて冷房運転および暖房運転のいずれかに切り換え可能な空調機」を用いて説明する。
図10Aにおいて、空調機1は、室内ユニット2及び室外ユニット3を備え、室内ユニット2と室外ユニット3とは、液冷媒連絡配管4及びガス冷媒連絡配管5によって接続されている。図10Aに示すように、空調機1は、室内ユニット2と室外ユニット3とを各々1つ有するペア式である。但し、これに限定されるものではなく、空調機1は、室内ユニット2を複数の有するマルチ式であってもよい。
空調機1では、アキュムレータ15、圧縮機100、四方切換弁16、室外熱交換器17、膨張弁18、室内熱交換器13等の機器が配管により接続されることで、冷媒回路11が構成されている。
本実施形態では、冷媒回路11には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が充填されている。当該冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。また、冷媒回路11には、当該混合冷媒と共に、冷凍機油が充填されている。
(10−1−1)室内ユニット2
室内ユニット2に搭載される室内熱交換器13は、伝熱管と多数の伝熱フィンとにより構成されたクロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器である。室内熱交換器13は、液側が液冷媒連絡配管4に接続され、ガス側がガス冷媒連絡配管5に接続され、冷房運転時は冷媒の蒸発器として機能する。
(10−1−2)室外ユニット3
室外ユニット3は、アキュムレータ15、圧縮機100、室外熱交換器17、及び膨張弁18を搭載している。
(10−1−2−1)室外熱交換器17
室外熱交換器17は、伝熱管と多数の伝熱フィンとにより構成されたクロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器である。室外熱交換器17は、その一方が圧縮機100から吐出された冷媒が流れる吐出管24側に接続され、他方が液冷媒連絡配管4側に接続されている。室外熱交換器17は、圧縮機100から吐出管24を介して供給されるガス冷媒の凝縮器として機能する。
(10−1−2−2)膨張弁18
膨張弁18は、室外熱交換器17と液冷媒連絡配管4とを接続する配管に設けられている。膨張弁18は、配管を流れる冷媒の圧力や流量の調節を行うための開度調整可能な電動弁である。
(10−1−2−3)アキュムレータ15
アキュムレータ15は、ガス冷媒連絡配管5と圧縮機100の吸入管23とを接続する配管に設けられている。アキュムレータ15は、圧縮機100に液冷媒が供給されることを防止するため、室内熱交換器13からガス冷媒連絡配管5を経て吸入管23に向かう冷媒を、気相と液相とに分離する。圧縮機100には、アキュムレータ15の上部空間に集まる気相の冷媒が供給される。
(10−1−2−4)圧縮機100
図10Bは、一実施形態に係る圧縮機100の縦断面図である。図10Bにおいて、圧縮機100は、スクロール圧縮機である。圧縮機100は、吸入管23を介して吸入した冷媒を、圧縮室Scで圧縮し、圧縮後の冷媒を吐出管24から吐出する。なお、圧縮機100については、「(10−2)圧縮機100の構成」の節で詳細を説明する。
(10−1−2−5)四方切換弁16
四方切換弁16は、第1から第4までのポートを有している。四方切換弁16では、第1ポートが圧縮機100の吐出側に接続され、第2ポートが圧縮機100の吸入側に接続され、第3ポートが室外熱交換器17のガス側端部に接続され、第4ポートがガス側閉鎖弁Vgに接続されている。
四方切換弁16は、第1状態(図1の実線で示す状態)と第2状態(図1の破線で示す状態)とに切り換わる。第1状態の四方切換弁16では、第1ポートと第3ポートが連通し且つ第2ポートと第4ポートが連通する。第2状態の四方切換弁16では、第1ポートと第4ポートが連通し且つ第2ポートと第3ポートが連通する。
(10−2)圧縮機100の構成
図10Bに示すように、圧縮機100は、ケーシング20と、固定スクロール30を含む圧縮機構60と、モータ70と、クランクシャフト80と、下部軸受90とを備えている。
以下、構成部材の位置関係等を説明するため、「上」、「下」等の表現を用いる場合があるが、ここでは図10Bの矢印Uの方向を上、矢印Uと逆方向を下と呼ぶ。また、「垂直」、「水平」、「縦」、「横」等の表現を用いる場合があるが、上下方向を垂直方向かつ縦方向とする。
(10−2−1)ケーシング20
圧縮機100は、縦長円筒状のケーシング20を有する。ケーシング20は、上下が開口した略円筒状の円筒部材21と、円筒部材21の上端および下端にそれぞれ設けられた上蓋22aおよび下蓋22bとを有する。円筒部材21と、上蓋22aおよび下蓋22bとは、気密を保つように溶接により固定されている。
ケーシング20には、圧縮機構60、モータ70、クランクシャフト80、および下部軸受90を含む圧縮機100の構成機器が収容される。また、ケーシング20の下部には油溜まり空間Soが形成される。油溜まり空間Soには、圧縮機構60等を潤滑するための冷凍機油Oが溜められる。なお、冷凍機油Oは、「(1−4−1)冷凍機油」の節で説明した冷凍機油を言う。
ケーシング20の上部には、ガス冷媒を吸入し、圧縮機構60にガス冷媒を供給する吸入管23が、上蓋22aを貫通して設けられる。吸入管23の下端は、圧縮機構60の固定スクロール30に接続される。吸入管23は、圧縮機構60の圧縮室Scと連通する。吸入管23には、圧縮機100による圧縮前の、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒が流れる。
ケーシング20の円筒部材21の中間部には、ケーシング20外に吐出される冷媒が通過する吐出管24が設けられる。より具体的には、吐出管24は、ケーシング20の内部の吐出管24の端部が、圧縮機構60のハウジング61の下方に形成された高圧空間S1に突き出すように配置される。吐出管24には、圧縮機構60による圧縮後の、冷凍サイクルにおける高圧の冷媒が流れる。
(10−2−2)圧縮機構60
圧縮機構60は、図10Bに示されるように、主に、ハウジング61と、ハウジング61の上方に配置される固定スクロール30と、固定スクロール30と組み合わされて圧縮室Scを形成する可動スクロール40と、を有する。
(10−2−2−1)固定スクロール30
図10Bに示すように、固定スクロール30は、平板状の固定側鏡板32と、固定側鏡板32の前面(図10Bにおける下面)から突出する渦巻状の固定側ラップ33と、固定側ラップ33を囲む外縁部34とを有する。
固定側鏡板32の中央部には、圧縮機構60の圧縮室Scに連通する非円形形状の吐出口32aが、固定側鏡板32を厚さ方向に貫通して形成される。圧縮室Scで圧縮された冷媒は、吐出口32aから吐出され、固定スクロール30およびハウジング61に形成された図示しない冷媒通路を通過して、高圧空間S1へ流入する。
(10−2−2−2)可動スクロール40
可動スクロール40は、図10Bに示すように、平板状の可動側鏡板41と、可動側鏡板41の前面(図10Bにおける上面)から突出する渦巻状の可動側ラップ42と、可動側鏡板41の背面(図10Bにおける下面)から突出する、円筒状に形成されたボス部43とを有する。
固定スクロール30の固定側ラップ33と、可動スクロール40の可動側ラップ42とは、固定側鏡板32の下面と可動側鏡板41の上面とが対向する状態で組み合わされる。隣接する固定側ラップ33と可動側ラップ42との間には、圧縮室Scが形成される。可動スクロール40が後述するように固定スクロール30に対して公転することで、圧縮室Scの体積が周期的に変化し、圧縮機構60において、冷媒の吸入、圧縮、吐出が行われる。
ボス部43は、上端の塞がれた円筒状部分である。ボス部43の中空部に、クランクシャフト80の偏心部81が挿入されることで、可動スクロール40とクランクシャフト80とは連結されている。ボス部43は、可動スクロール40とハウジング61との間に形成される偏心部空間62に配置される。偏心部空間62は、クランクシャフト80の給油経路83等を介して高圧空間S1と連通しており、偏心部空間62には高い圧力が作用する。この圧力により、偏心部空間62内の可動側鏡板41の下面は、固定スクロール30に向かって上方に押される。この力により、可動スクロール40は、固定スクロール30に密着する。
可動スクロール40は、図示しないオルダム継手を介してハウジング61に支持される。オルダム継手は、可動スクロール40の自転を防止し、公転させる部材である。オルダム継手を用いることで、クランクシャフト80が回転すると、ボス部43においてクランクシャフト80と連結された可動スクロール40が、固定スクロール30に対して自転することなく公転し、圧縮室Sc内の冷媒が圧縮される。
(10−2−2−3)ハウジング61
ハウジング61は、円筒部材21に圧入され、その外周面において周方向の全体に亘って円筒部材21と固定されている。また、ハウジング61と固定スクロール30とは、ハウジング61の上端面が、固定スクロール30の外縁部34の下面と密着するように、図示しないボルト等により固定されている。
ハウジング61には、上面中央部に凹むように配置される凹部61aと、凹部61aの下方に配置される軸受部61bとが形成される。
凹部61aは、可動スクロール40のボス部43が配置される偏心部空間62の側面を囲む。
軸受部61bには、クランクシャフト80の主軸82を軸支する軸受63が配置される。軸受63は、軸受63に挿入された主軸82を回転自在に支持する。
(10−2−3)モータ70
モータ70は、円筒部材21の内壁面に固定された環状の固定子72と、固定子72の内側に、僅かな隙間(エアギャップ)を空けて回転自在に収容された回転子71とを有する。
回転子71は、円筒部材21の軸心に沿って上下方向に延びるように配置されたクランクシャフト80を介して可動スクロール40と連結される。回転子71が回転することで、可動スクロール40は、固定スクロール30に対して公転する。
なお、モータ70の詳細については、「(10−4)モータ70の構成」の節で説明する。
(10−2−4)クランクシャフト80
クランクシャフト80は、モータ70の駆動力を可動スクロール40に伝達する。クランクシャフト80は、円筒部材21の軸心に沿って上下方向に延びるように配置され、モータ70の回転子71と、圧縮機構60の可動スクロール40とを連結する。
クランクシャフト80は、円筒部材21の軸心と中心軸が一致する主軸82と、円筒部材21の軸心に対して偏心した偏心部81とを有する。偏心部81は、可動スクロール40のボス部43に挿入される。
主軸82は、ハウジング61の軸受部61bの軸受63、及び下部軸受90により、回転自在に支持される。主軸82は、軸受部61bと下部軸受90との間で、モータ70の回転子71と連結される。
クランクシャフト80の内部には、圧縮機構60等に冷凍機油Oを供給するための給油経路83が形成されている。主軸82の下端は、ケーシング20の下部に形成された油溜まり空間So内に位置し、油溜まり空間Soの冷凍機油Oは、給油経路83を通じて圧縮機構60等に供給される。
(10−2−5)下部軸受90
下部軸受90は、モータ70の下方に配置される。下部軸受90は、円筒部材21と固定されている。下部軸受90は、クランクシャフト80の下端側の軸受を構成し、クランクシャフト80の主軸82を回転自在に支持する。
(10−3)圧縮機100の動作
圧縮機100の動作について説明する。モータ70が起動すると、回転子71が固定子72に対して回転し、回転子71と固定されたクランクシャフト80が回転する。クランクシャフト80が回転すると、クランクシャフト80と連結された可動スクロール40が固定スクロール30に対して公転する。そして、冷凍サイクルにおける低圧のガス冷媒が、吸入管23を通って、圧縮室Scの周縁側から、圧縮室Scに吸引される。可動スクロール40が公転するのに従い、吸入管23と圧縮室Scとは連通しなくなり、圧縮室Scの容積が減少するのに伴って、圧縮室Scの圧力が上昇し始める。
圧縮室Sc内の冷媒は、圧縮室Scの容積が減少するのに伴って圧縮され、最終的に高圧のガス冷媒となる。高圧のガス冷媒は、固定側鏡板32の中心付近に位置する吐出口32aから吐出される。その後、高圧のガス冷媒は、固定スクロール30およびハウジング61に形成された図示しない冷媒通路を通過して、高圧空間S1へ流入する。高圧空間S1に流入した、圧縮機構60による圧縮後の、冷凍サイクルにおける高圧のガス冷媒は、吐出管24から吐出される。
(10−4)モータ70の構成
図10Cは、回転軸に垂直な平面で切断されたモータ70の断面図である。また、図10Dは、回転軸に垂直な平面で切断された回転子71の断面図である。さらに、図10Eは、回転子71の斜視図である。
なお、図10C〜図10Eでは、回転子71に連結されて外部へと回転力を伝達するためのシャフトについては図示を省略している。図10C〜図10Eにおいて、モータ70は、永久磁石同期モータである。モータ70は、回転子71と固定子72とを有している。
(10−4−1)固定子72
固定子72は、胴部725と複数の歯部726とを備えている。胴部725は、回転子71の外周径よりも大きな内周径を有する略筒状に形成されている。胴部725は、歯部726と一体に、厚さ0.05mm以上0.5mm以下の薄い電磁鋼板を所定の形状に加工して、所定の枚数を積層することによって形成される。
複数の歯部726は、胴部725の内周部にその周方向に沿って略均等間隔に位置する態様で突出している。各歯部726は、胴部725の内周部から回転軸を中心とする円の径方向に沿って中心に向かって延び、回転子71と所定の隙間を空けて対向している。
各歯部726は、外周側で胴部725を介して磁気的に連結されている。各歯部726には、巻線としてコイル727が巻かれている(図10Cでは一つのみ図示)。コイル727には、回転子71を回転させる回転磁界を発生させるための3相交流が流される。コイル727の巻線方式は特に限定されず、複数の歯部726に対して集中巻された形態であっても、分布巻された形態であってもよい。
これらの回転子71及び固定子72は、ケーシング20に組込まれて回転電機として使用される。
(10−4−2)回転子71
回転子71は、外観形状が略円柱状に形成され、その中心軸に沿ってクランクシャフト80の主軸82が連結固定されている。回転子71は、回転子コア710と複数の永久磁石712とを有している。回転子71は、永久磁石712が回転子コア710内に埋め込まれている、埋込磁石型回転子である。
(10−4−2−1)回転子コア710
回転子コア710は、磁性材料により略円筒状に形成されている。厚さ0.05mm以上0.5mm以下の薄い電磁鋼板711を所定の形状に加工して、所定の枚数を積層することによって形成される。電磁鋼板としては、高速回転時の回転子の耐久性を向上させるため、引張り強さが400MPa以上の複数の高張力電磁鋼板が望ましい。
回転子コア710の中心軸に沿ってクランクシャフト80の主軸82(図10B参照)を固定するための軸挿入孔719が形成されている。また、回転子コア710には、回転軸周りの周方向に沿って複数の磁石収容孔713が形成されている。
(10−4−2−1−1)磁石収容孔713
磁石収容孔713は、回転軸を中心とする円の径方向に対して略直交する方向に扁平な直方体形状の空間である。磁石収容孔713は永久磁石712を埋設可能な形状であれば、貫通していても、底を有していてもよい。
また、図10Dに示すように、各磁石収容孔713は、隣り合う任意の2つの磁石収容孔713が略V字型を成すように設けられている。
(10−4−2−1−2)非磁性空間714
また、非磁性空間714は、磁石収容孔713の端部から屈曲して回転子コア710の外周側に向けて延びている。非磁性空間714は、減磁界が発生したときに、当該減磁界による磁束が永久磁石712を避けて非磁性空間714を通り易くする役割を有しており、非磁性空間714によっても減磁防止が図られる。
(10−4−2−1−3)ブリッジ715
ブリッジ715は、非磁性空間714の半径方向外側に位置して磁極どうしを連結している。ブリッジ715の厚みは、高速回転時の耐久性を向上させるために、3mm以上に設定されている。
なお、図10C〜図10Eに示す回転子71は、一例であって、これに限定されるものではない。
図10Fは、回転軸に垂直な平面で切断された他の回転子71の断面図である。図10Dの回転子との相違点は、図10Dでは隣り合う任意の2つの磁石収容孔が略V字型を成すように設けられているが、図10Fでは隣り合う2つ一組の磁石収容孔713がV字型を成すように設けられている点である。
そのために、図10Fの回転子71では、回転子コア710に、図10Dに示す磁石収容孔よりも幅の狭い8つの磁石収容孔713が設けられ、隣り合う2つ一組の磁石収容孔713がV字型を成しており、合計4つのV字が形成されている。また、一組の磁石収容孔713が成すV字型の谷側は2つの非磁性空間が繋がることによって1つのV字型の非磁性空間714を形成している。
外側の非磁性空間714は、磁石収容孔713の谷側とは反対側の端部に形成され、回転子コア710の外周側に向けて延びている。
また、磁石収容孔713の横幅は、図10Dに示す磁石収容孔に比べて小さく設定されているので、それに伴って、永久磁石712の横幅も、図10Dに示す永久磁石に比べて小さく成形されている。
図10Fに示す、永久磁石712、磁石収容孔713、非磁性空間714、およびブリッジ715の働きは、図10Dに示すそれらと同じである。
(10−4−2−2)永久磁石712
永久磁石712は、Nd−Fe−B(ネオジウム・鉄・ボロン)を主成分とするネオジウム希土類磁石である。Nd−Fe−B系磁石の保磁力は、温度の影響を受けて劣化するので、圧縮機にNd−Fe−B系磁石を用いたモータを使用する場合、圧縮機内の高温雰囲気(100℃以上)により保磁力は低下する。
それゆえ、永久磁石712は、重希土類(例えばディスプロシウム)を粒界拡散して形成されることが望ましい。重希土類を粒界拡散する粒界拡散法では、所定の組成物を焼結して焼結物を形成し、その焼結物に重希土類加工物を塗布した後に、焼結温度よりも低い温度で熱処理を行なって、永久磁石712を製造している。
粒界拡散法によれば、重希土類の添加量を低減して保磁力を高めることができる。本実施形態の永久磁石712は、1質量%以下のディスプロシウムを含有することによって、保持力を向上させている。
また、本実施形態では、永久磁石712の減磁耐力を向上させるため、永久磁石712の平均結晶粒径を10μm以下としており、5μm以下が望ましい。
永久磁石712は、2つの主面を有する厚みが均一な四角形の板状に成形されている。各磁石収容孔713に1つの永久磁石712が埋設されている。図10Dおよび図10Fに示すように、各磁石収容孔713に埋設された永久磁石712のうち、隣り合う任意の2つの永久磁石712が略V字型を成す。
永久磁石712の外向面は、回転子コア710に対して磁極を生じさせる磁極面であり、永久磁石712の内向面は、それとは反対の反磁極面である。また、永久磁石712を、固定子72に対して磁極を生じさせる部分として考えると、永久磁石712の周方向両端部が磁極端であり、周方向中央部が磁極中心である。
上記のような永久磁石712の姿勢において、永久磁石712の両端部が磁極の端部付近であって、エアギャップに近い部分を「近接部分716」という。近接部分716は、V字型の谷間に位置する部分である。また、永久磁石712のうち中間部が近接部分716よりも磁極中心部に近く、エアギャップから遠い部分を「遠方部分717」という。
各歯部726にコイル727を巻回した集中巻タイプのモータ70にあっては、コイル727による磁束は、最短で隣設する歯部726に流れる。従って、回転子コア710の表面付近にある永久磁石712の近接部分716に減磁界がより強く作用する。それゆえ、本実施形態では、近接部分716(V字型の谷間に位置する部分)の保持力が他の部分よりも{1/(4π)}×103[A/m]以上高く設定されており、これによって、減磁を抑制している。
このため、集中巻タイプのモータ70に本形態を適用すると減磁抑制効果が大きい。
永久磁石712の厚み寸法と、永久磁石712の厚み方向における磁石収容孔713の寸法とは実質的に同じに形成され、永久磁石712の両主面は磁石収容孔713の内面に実質的に接している。結果として、永久磁石712と回転子コア710との間で磁気抵抗を小さくすることができる。
なお、「永久磁石712の両主面が磁石収容孔713の内面に実質的に接している場合」とは、「永久磁石712を磁石収容孔713に挿入する際に必要となる程度の微小な隙間が永久磁石712と磁石収容孔713との間に生じている場合」をも含む。
(10−5)特徴
(10−5−1)
圧縮機100は、モータ70が永久磁石712を含む回転子71を有するので、モータの回転数を変更することができる容量可変型圧縮機に適している。この場合、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒を用いた空調機1において、空調負荷に応じてモータ回転数を変更することができるので、圧縮機100の高効率化が可能である。
(10−5−2)
回転子71が埋込磁石型回転子である。埋込磁石型回転子は、永久磁石712が回転子71内に埋め込まれている。
(10−5−3)
回転子71が複数の電磁鋼板711を板厚方向に積層して形成されている。電磁鋼板711の厚みは、0.05mm以上0.5mm以下である。
一般に、板厚を薄くするほど渦電流損を低減できるが、0.05mm未満は電磁鋼板の加工が困難であり、板厚0.5mmを超えると鋼板表面からの浸珪処理、およびSi分布適正化のための拡散処理に時間がかかることに鑑みれば、板厚は0.05〜0.5mmが望ましい。
(10−5−4)
永久磁石712は、Nd−Fe−B系磁石である。その結果、磁気エネルギー積を大きくすることができるモータ70が実現し、圧縮機100の高効率化が可能となる。
(10−5−5)
永久磁石712は、重希土類を粒界拡散して形成されている。その結果、永久磁石712の減磁耐力が向上し、少量の重希土類で永久磁石の保持力を高めることができ、圧縮機100の高効率化が可能となる。
(10−5−6)
永久磁石712は、1質量%以下のディスプロシウムを含有している。その結果、永久磁石712の保持力が向上するので、圧縮機100の高効率化が可能となる。
(10−5−7)
永久磁石712は、平均結晶粒径が10μm以下である。その結果、永久磁石712の減磁耐力が上がり、圧縮機100の高効率化が可能となる。
(10−5−8)
永久磁石712が平板状であり、複数の永久磁石712がV字型を成すように回転子71に埋め込まれている。V字型の谷間に位置する部分の保持力は他の部分よりも{1/(4π)}×103[A/m]以上高く設定されている。その結果、永久磁石712の減磁が抑制され、圧縮機100の高効率化が可能となる。
(10−5−9)
回転子71が、引張り強さが400MPa以上の複数の高張力電磁鋼板を板厚方向に積層して形成されている。その結果、高速回転時の回転子71の耐久性が向上するので、圧縮機100の高効率化が可能となる。
(10−5−10)
回転子71のブリッジ715の厚みは、3mm以上である。その結果、高速回転時の回転子の耐久性が向上するので、圧縮機の高効率化が可能となる。
(10−6)変形例
(10−6−1)
回転子71が複数の板状のアモルファス金属を板厚方向に積層して形成されてもよい。この場合、鉄損が少なく効率の高いモータが実現されるので、圧縮機の高効率化が可能となる。
(10−6−2)
回転子71が、5質量%以上のシリコンを含有する複数の電磁鋼板を板厚方向に積層して形成されてもよい。この場合、適量のシリコンを含有させてヒステリシスを低減させた電磁鋼板により、鉄損が少なく効率の高いモータが実現されるので、圧縮機の高効率化が可能となる。
(10−6−3)
上記実施形態では、回転子71が埋込磁石型回転子として説明してきたが、これに限定されるものではない。例えば、永久磁石が回転子の表面に張り付けられている、表面磁石型回転子であってもよい。
(10−7)第2実施形態に係る圧縮機300の構成
第1実施形態では、圧縮機100としてスクロール圧縮機を説明したが、圧縮機はスクロール圧縮機に限定されるものではない。
図10Gは、本開示の第2実施形態に係る圧縮機300の縦断面図である。図10Gにおいて、圧縮機300はロータリ圧縮機である。圧縮機300は、冷媒Aのいずれかの冷媒が循環する冷媒回路の一部を構成する。圧縮機300は、冷媒を圧縮して、高圧のガス冷媒を排出する。図中の矢印は、冷媒の流れを表している。
(10−7−1)ケーシング220
圧縮機300は、縦長円筒状のケーシング220を有する。ケーシング220は、上下が開口した略円筒状の円筒部材221と、円筒部材221の上端および下端にそれぞれ設けられた上蓋222aおよび下蓋222bとを有する。円筒部材221と、上蓋22aおよび下蓋22bとは、気密を保つように溶接により固定されている。
ケーシング220には、圧縮機構260、モータ270、クランクシャフト280、上部軸受263および下部軸受290を含む圧縮機300の構成機器が収容される。また、ケーシング220の下部には油溜まり空間Soが形成される。
ケーシング220の下部には、ガス冷媒を吸入し、圧縮機構260にガス冷媒を供給する吸入管223が、円筒部材221の下部を貫通して設けられる。吸入管223の一端は、圧縮機構260のシリンダ230に接続される。吸入管223は、圧縮機構260の圧縮室Scと連通する。吸入管223には、圧縮機300による圧縮前の、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒が流れる。
ケーシング220の上蓋222aには、ケーシング220外に吐出される冷媒が通過する吐出管224が設けられる。より具体的には、ケーシング220の内部の吐出管224の端部が、モータ270の上方に形成された高圧空間S1に配置される。吐出管224には、圧縮機構260による圧縮後の、冷凍サイクルにおける高圧の冷媒が流れる。
(10−7−2)モータ270
モータ270は、固定子272および回転子271を有している。モータ270は、ロータリ圧縮機である圧縮機300に使用されているという以外は、基本的に第1実施形態のモータ70と同等であり、第1実施形態のモータ70と同等の性能、作用・効果を発揮する。したがって、ここでは、モータ270の説明を省略する。
(10−7−3)クランクシャフト280、上部軸受263、下部軸受290
クランクシャフト280は、回転子271に固定されている。さらに、クランクシャフト280は、上部軸受263および下部軸受290によって、回転軸心Rsを中心として回転できるように支持されている。クランクシャフト280は偏心部241を有している。
(10−7−4)圧縮機構260
圧縮機構260は、単一のシリンダ230と、当該シリンダ230の中に設置された単一のピストン242を有している。シリンダ230は、所定の容積を有し、ケーシング220に固定されている。
ピストン242は、クランクシャフト280の偏心部241に設置されている。シリンダ230およびピストン242は、圧縮室Scを規定する。回転子271の回転は、偏心部241を介して、ピストン242を公転させる。この公転に伴って、圧縮室Scの容積が変動することにより、気体冷媒が圧縮される。
ここで、「シリンダ容積」とは、いわゆる理論容積を意味し、すなわち、ピストン242が1回転する間に吸入管223からシリンダ230へ吸入される気体冷媒の体積に相当する。
(10−7−5)油溜まり空間So
ケーシング220の下部には、油溜まり空間Soが設けられている。油溜まり空間Soには、圧縮機構260を潤滑するための冷凍機油Oが溜められる。なお、冷凍機油Oは、「(1−4−1)冷凍機油」の節で説明した冷凍機油を言う。
(10−8)圧縮機300の動作
圧縮機300の動作について説明する。モータ270が起動すると、回転子271が固定子272に対して回転し、回転子271と固定されたクランクシャフト280が回転する。クランクシャフト280が回転すると、クランクシャフト280と連結されたピストン242がシリンダ230に対して公転する。そして、冷凍サイクルにおける低圧のガス冷媒が、吸入管223を通って圧縮室Scに吸引される。ピストン242が公転するのに従い、吸入管223と圧縮室Scとは連通しなくなり、圧縮室Scの容積が減少するのに伴って、圧縮室Scの圧力が上昇し始める。
圧縮室Sc内の冷媒は、圧縮室Scの容積が減少するのに伴って圧縮され、最終的に高圧のガス冷媒となる。高圧のガス冷媒は、吐出口232aから吐出される。その後、高圧のガス冷媒は、固定子272と回転子271との間のギャップおよびその他の箇所を通過して、ケーシング220の上方に設置された吐出管224から排出される。
(10−9)第2実施形態の特徴
(10−9−1)
圧縮機300は、第1実施形態のモータ70と同等のモータ270を採用しているので、モータの回転数を変更することができる容量可変型圧縮機に適している。この場合、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒を用いた空調機1において、空調負荷に応じてモータ回転数を変更することができるので、圧縮機300の高効率化が可能である。
(10−9−2)
圧縮機300は、第1実施形態のモータ70と同等のモータ270を採用しているので、第1実施形態の「(10−5)特徴」の「(10−5−2)〜(10−5−10)の特徴」を有している。
(10−9−3)
空調機1の圧縮機として、にロータリ圧縮機である圧縮機300を使用する場合は、スクロール圧縮機を使用する場合に比べて冷媒充填量を少なくすることができるので、可燃性冷媒を使用する空調機に適している。
(10−10)第2実施形態の変形例
圧縮機300は、第1実施形態のモータ70と同等のモータ270を採用しているので、第1実施形態の「(10−6)変形例」に記載の全てに変形例の適用が可能である。
(10−11)他の実施形態
圧縮機の形態としては、モータ70と同等のモータを使用する限り、スクリュー圧縮機、或いは、ターボ圧縮機でもよい。
(11)第11グループの技術の実施形態
(11−1)第1実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図11A、概略制御ブロック構成図である図11Bを参照しつつ、第1実施形態に係る冷凍サイクル装置としての空気調和装置1について説明する。
空気調和装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うことで、対象空間の空気を調和させる装置である。
空気調和装置1は、主として、室外ユニット20と、室内ユニット30と、室外ユニット20と室内ユニット30を接続する液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5と、入力装置および出力装置としての図示しないリモコンと、空気調和装置1の動作を制御するコントローラ7と、を有している。
空気調和装置1では、冷媒回路10内に封入された冷媒が、圧縮され、冷却又は凝縮され、減圧され、加熱又は蒸発された後に、再び圧縮される、という冷凍サイクルが行われる。本実施形態では、冷媒回路10には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が充填されている。当該冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。また、冷媒回路10には、当該冷媒と共に、冷凍機油が充填されている。
(11−1−1)室外ユニット20
室外ユニット20は、図11Cに示すように、外観が略直方体箱状の室外筐体50により構成されている。この室外ユニット20は、図11Dに示すように、仕切板50aによって内部空間が左右に分割されることで、送風機室および機械室が形成されている。
この室外ユニット20は、液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5を介して室内ユニット30と接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。室外ユニット20は、主として、圧縮機21と、四路切換弁22と、室外熱交換器23と、室外膨張弁24と、室外ファン25と、液側閉鎖弁29と、ガス側閉鎖弁28と、を有している。
圧縮機21は、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒を高圧になるまで圧縮する機器である。ここでは、圧縮機21として、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素(図示省略)が圧縮機モータによって回転駆動される密閉式構造の圧縮機が使用されている。圧縮機モータは、容量を変化させるためのものであり、インバータにより運転周波数の制御が可能である。なお、圧縮機21には、吸入側において、図示しない付属アキュムレータが設けられている。
四路切換弁22は、接続状態を切り換えることで、圧縮機21の吐出側と室外熱交換器23とを接続しつつ圧縮機21の吸入側とガス側閉鎖弁28とを接続する冷房運転接続状態と、圧縮機21の吐出側とガス側閉鎖弁28とを接続しつつ圧縮機21の吸入側と室外熱交換器23とを接続する暖房運転接続状態と、を切り換えることができる。
室外熱交換器23は、冷房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の凝縮器として機能し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能する熱交換器である。室外熱交換器23は、板厚方向に重ねて配置された複数の伝熱フィン23aと、複数の伝熱フィン23aに貫通固定された複数の伝熱管23bと、を有するクロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器である。本実施形態の室外熱交換器23では、特に限定されないが、冷媒が2以上10以下に分岐して流れるように複数の冷媒流路を有していてもよい。本実施形態の室外熱交換器23の複数の伝熱管23bは、湾曲された部分以外は円筒形状の配管であり、外径が6.35mm、7.0mm、8.0mm、および、9.5mmからなる群より選択される1種類で構成されている。なお、外径が6.35mmの伝熱管23bは、肉厚が0.25mm以上0.28mm以下であり、0.266mmであることが好ましい。外径が7.0mmの伝熱管23bは、肉厚が0.26mm以上0.29mm以下であり、0.273mmであることが好ましい。外径が8.0mmの伝熱管23bは、肉厚が0.28mm以上0.31mm以下であり、0.295mmであることが好ましい。外径が9.5mmの伝熱管23bは、肉厚が0.32mm以上0.36mm以下であり、0.340mmであることが好ましい。
室外ファン25は、室外ユニット20内に室外の空気を吸入して、室外熱交換器23において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための空気流れを生じさせる。室外ファン25は、室外ファンモータによって回転駆動される。なお、本実施形態において、室外ファン25は、1つだけ設けられている。
室外膨張弁24は、弁開度を制御可能であり、室外熱交換器23の液側端部と液側閉鎖弁29との間に設けられている。
液側閉鎖弁29は、室外ユニット20における液側冷媒連絡配管6との接続部分に配置された手動弁である。
ガス側閉鎖弁28は、室外ユニット20におけるとガス側冷媒連絡配管5との接続部分に配置された手動弁である。
室外ユニット20は、室外ユニット20を構成する各部の動作を制御する室外ユニット制御部27を有している。室外ユニット制御部27は、CPUやメモリ等を含むマイクロコンピュータを有している。室外ユニット制御部27は、各室内ユニット30の室内ユニット制御部34と通信線を介して接続されており、制御信号等の送受信を行う。また、室外ユニット制御部27は、図示しない各種センサと電気的に接続されており、各センサからの信号を受信する。
室外ユニット20は、図11Cに示すように、吹出口52が設けられた室外筐体50を有している。室外筐体50は、略直方体形状であり、背面側および一側面側(図11C中の左側)から屋外の空気を取り込むことが可能であり、室外熱交換器23を通過した空気を前面51に形成された吹出口52を介して前側に吹き出すことが可能である。室外筐体50の下端部分は底板53によって覆われている。底板53の上には、図11Dに示すように、背面側および一側面側に沿うように室外熱交換器23が立設されている。この底板53の上面は、ドレンパンとして機能することができる。
(11−1−2)室内ユニット30
室内ユニット30は、対象空間である室内の壁面等に設置されている。室内ユニット30は、液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5を介して室外ユニット20と接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。
室内ユニット30は、室内熱交換器31と、室内ファン32と、室内筐体54等を有している。
室内熱交換器31は、液側が、液側冷媒連絡配管6と接続され、ガス側端が、ガス側冷媒連絡配管5とを接続されている。室内熱交換器31は、冷房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の凝縮器として機能する熱交換器である。室内熱交換器31は、板厚方向に重ねて配置された複数の伝熱フィン31aと、複数の伝熱フィン31aに貫通固定された複数の伝熱管31bと、を有している。本実施形態の室内熱交換器31の複数の伝熱管31bは、円筒形状であり、外径が4.0mm、5.0mm、6.35mm、7.0mm、および、8.0mmからなる群より選択される1種類で構成されている。なお、外径が4.0mmの伝熱管31bは、肉厚が0.24mm以上0.26mm以下であり、0.251mmであることが好ましい。外径が5.0mmの伝熱管31bは、肉厚が0.22mm以上0.25mm以下であり、0.239mmであることが好ましい。外径が6.35mmの伝熱管31bは、肉厚が0.25mm以上0.28mm以下であり、0.266mmであることが好ましい。外径が7.0mmの伝熱管31bは、肉厚が0.26mm以上0.29mm以下であり、0.273mmであることが好ましい。外径が8.0mmの伝熱管31bは、肉厚が0.28mm以上0.31mm以下であり、0.295mmであることが好ましい。
室内ファン32は、室内ユニット30の室内筐体54内に室内の空気を吸入して、室内熱交換器31において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための空気流れを生じさせる。室内ファン32は、図示しない室内ファンモータによって回転駆動される。
室内筐体54は、図11E、図11Fに示すように、室内熱交換器31、室内ファン32、室内ユニット制御部34を内部に収容する略直方体形状の筐体である。室内筐体54は、室内筐体54の上端部を構成する天面55、室内筐体54の前部を構成する前面パネル56、室内筐体54の底部を構成する底面57、吹出口58a、ルーバ58、室内の壁面と対向する背面59、図示しない左右の側面等を有している。天面55には、上下方向に開口した複数の天面吸込口55aが設けられている。前面パネル56は、天面55の前側端部近傍から下方に広がるパネルである。前面パネル56は、上方部分において左右に細長い開口からなる前面吸込口56aが設けられている。室内の空気は、これらの天面吸込口55aおよび前面吸込口56aを介して室内筐体54内の室内熱交換器31および室内ファン32が収納されている空間からなる通風路に取り込まれる。底面57は、室内熱交換器31や室内ファン32の下方において略水平に広がっている。吹出口58aは、前面パネル56の下方であって底面57の前側である、室内筐体54の前側下方において、前側下方に向けて開口している。
また、室内ユニット30は、室内ユニット30を構成する各部の動作を制御する室内ユニット制御部34を有している。室内ユニット制御部34は、CPUやメモリ等を含むマイクロコンピュータを有している。室内ユニット制御部34は、室外ユニット制御部27と通信線を介して接続されており、制御信号等の送受信を行う。
室内ユニット制御部34は、室内ユニット30内に設けられている図示しない各種センサと電気的に接続されており、各センサからの信号を受信する。
(11−1−3)コントローラ7の詳細
空気調和装置1では、室外ユニット制御部27と室内ユニット制御部34が通信線を介して接続されることで、空気調和装置1の動作を制御するコントローラ7が構成されている。
コントローラ7は、主として、CPU(中央演算処理装置)と、ROMやRAM等のメモリを有している。なお、コントローラ7による各種処理や制御は、室外ユニット制御部27および/又は室内ユニット制御部34に含まれる各部が一体的に機能することによって実現されている。
(11−1−4)運転モード
以下、運転モードについて説明する。
運転モードとしては、冷房運転モードと暖房運転モードとが設けられている。
コントローラ7は、リモコン等から受け付けた指示に基づいて、冷房運転モードか暖房運転モードかを判断し、実行する。
(11−1−4−1)冷房運転モード
空気調和装置1では、冷房運転モードでは、四路切換弁22の接続状態を圧縮機21の吐出側と室外熱交換器23とを接続しつつ圧縮機21の吸入側とガス側閉鎖弁28とを接続する冷房運転接続状態とし、冷媒回路10に充填されている冷媒を、主として、圧縮機21、室外熱交換器23、室外膨張弁24、室内熱交換器31の順に循環させる。
より具体的には、冷房運転モードが開始されると、冷媒回路10内において、冷媒が圧縮機21に吸入されて圧縮された後に吐出される。
圧縮機21では、室内ユニット30で要求される冷却負荷に応じた容量制御が行われる。圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22を経て、室外熱交換器23のガス側端に流入する。
室外熱交換器23のガス側端に流入したガス冷媒は、室外熱交換器23において、室外ファン25によって供給される室外側空気と熱交換を行って凝縮し、液冷媒となって室外熱交換器23の液側端から流出する。
室外熱交換器23の液側端から流出した冷媒は、室外膨張弁24を通過する際に減圧される。なお、室外膨張弁24は、室外熱交換器23の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。
室外膨張弁24で減圧された冷媒は、液側閉鎖弁29および液側冷媒連絡配管6を経て、室内ユニット30に流入する。
室内ユニット30に流入した冷媒は、室内熱交換器31に流入し、室内熱交換器31において、室内ファン32によって供給される室内空気と熱交換を行って蒸発し、ガス冷媒となって室内熱交換器31のガス側端から流出する。室内熱交換器31のガス側端から流出したガス冷媒は、ガス側冷媒連絡配管5に流れていく。
ガス側冷媒連絡配管5を流れた冷媒は、ガス側閉鎖弁28、四路切換弁22を経て、再び、圧縮機21に吸入される。
(11−1−4−2)暖房運転モード
空気調和装置1では、暖房運転モードでは、四路切換弁22の接続状態を圧縮機21の吐出側とガス側閉鎖弁28とを接続しつつ圧縮機21の吸入側と室外熱交換器23とを接続する暖房運転接続状態とし、冷媒回路10に充填されている冷媒を、主として、圧縮機21、室内熱交換器31、室外膨張弁24、室外熱交換器23の順に循環させる。
より具体的には、暖房運転モードが開始されると、冷媒回路10内において、冷媒が圧縮機21に吸入されて圧縮された後に吐出される。
圧縮機21では、室内ユニット30で要求される暖房負荷に応じた容量制御が行われる。圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22およびガス側冷媒連絡配管5を流れた後、室内ユニット30に流入する。
室内ユニット30に流入した冷媒は、室内熱交換器31のガス側端に流入し、室内熱交換器31において、室内ファン32によって供給される室内空気と熱交換を行って凝縮し、気液二相状態の冷媒または液冷媒となって室内熱交換器31の液側端から流出する。室内熱交換器31の液側端から流出した冷媒は、液側冷媒連絡配管6に流れていく。
液側冷媒連絡配管6を流れた冷媒は、液側閉鎖弁29、室外膨張弁24において冷凍サイクルにおける低圧になるまで減圧される。なお、室外膨張弁24は、室内熱交換器31の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。室外膨張弁24で減圧された冷媒は、室外熱交換器23の液側端に流入する。
室外熱交換器23の液側端から流入した冷媒は、室外熱交換器23において、室外ファン25によって供給される室外空気と熱交換を行って蒸発し、ガス冷媒となって室外熱交換器23のガス側端から流出する。
室外熱交換器23のガス側端から流出した冷媒は、四路切換弁22を経て、再び、圧縮機21に吸入される。
(11−1−5)第1実施形態の特徴
上述の空気調和装置1では、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が用いられているため、GWPを十分に小さく抑えることが可能になっている。
また、空気調和装置1が有する室外ユニット20の室外熱交換器23では、配管径が6.35mm以上の伝熱管23bが用いられている。このため、R32よりも圧力損失が生じやすい上記冷媒を用いた場合であっても、伝熱管23bを通過する際の圧力損失を低減させることができる。そして、室外熱交換器23を流れる冷媒の温度の変化(温度グライド)が生じる場合であっても、その程度を小さく抑えることが可能になる。さらに、室外熱交換器23では、配管径が10.0mm未満の伝熱管23bが用いられている。このため、室外熱交換器23において保持される冷媒量を少なく抑えることが可能になっている。
また、空気調和装置1が有する室内ユニット30の室内熱交換器31では、配管径が4.0mm以上の伝熱管31bが用いられている。このため、R32よりも圧力損失が生じやすい上記冷媒を用いた場合であっても、伝熱管31bを通過する際の圧力損失を低減させることができる。このため、R32よりも圧力損失が生じやすい上記冷媒を用いた場合であっても、伝熱管31bを通過する際の圧力損失を低減させることができる。そして、室内熱交換器31を流れる冷媒の温度の変化(温度グライド)が生じる場合であっても、その程度を小さく抑えることが可能になる。さらに、室内熱交換器31においても、配管径が10.0mm未満の伝熱管31bが用いられている。このため、室内熱交換器31において保持される冷媒量を少なく抑えることが可能になっている。
(11−1−6)第1実施形態の変形例A
上記第1実施形態では、室内ユニットが1つだけ設けられている空気調和装置を例に挙げて説明したが、空気調和装置としては、互いに並列に接続された複数の室内ユニット(室内膨張弁を有さないもの)が設けられていてもよい。
(11−2)第2実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図11G、概略制御ブロック構成図である図11Hを参照しつつ、第2実施形態に係る冷凍サイクル装置としての空気調和装置1aについて説明する。
以下、主として、第2実施形態の空気調和装置1aについて、第1実施形態の空気調和装置1と異なる箇所を中心に説明する。
空気調和装置1aにおいても、冷媒回路10には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒として、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかが充填されている。また、冷媒回路10には、当該冷媒と共に、冷凍機油が充填されている。
(11−2−1)室外ユニット20
第2実施形態の空気調和装置1aの室外ユニット20では、室外ファン25として、第1室外ファン25aと第2室外ファン25bとが設けられている。空気調和装置1aの室外ユニット20の室外熱交換器23は、第1室外ファン25aおよび第2室外ファン25bから受ける空気流れに対応するように、広い熱交換面積が確保されている。
空気調和装置1aの室外ユニット20では、上記第1実施形態における室外ユニット20の室外膨張弁24の代わりに、室外熱交換器23の液側から液側閉鎖弁29までの間において、第1室外膨張弁44、中間圧レシーバ41、第2室外膨張弁45が順次設けられている。第1室外膨張弁44および第2室外膨張弁45は、弁開度を制御可能である。中間圧レシーバ41は、第1室外膨張弁44側から延びる配管の端部と、第2室外膨張弁45側から延びる配管の端部と、の両方が内部空間に位置しており、冷媒を溜めることができる容器である。
第2実施形態の室外ユニット20は、図11Iに示すように、略直方体箱状の筐体60の内部空間が鉛直に延びる仕切板66によって左右に分割されることで送風機室および機械室が形成された構造(いわゆる、トランク型構造)を有している。
筐体60内の送風機室には、室外熱交換器23、室外ファン25(第1室外ファン25aと第2室外ファン25b)等が配置され、筐体60内の機械室には、圧縮機21、四路切換弁22、第1室外膨張弁44、第2室外膨張弁45、中間圧レシーバ41、ガス側閉鎖弁28、液側閉鎖弁29、室外ユニット制御部27を構成する電装品ユニット27a等が配置されている。
筐体60は、主として、底板63、天板64、左前板61、左側板(図示せず)、右前板(図示せず)、右側板65、仕切板66等を有している。底板63は、筐体60の底面部分を構成している。天板64は、室外ユニット20の天面部分を構成している。左前板61は、主に、筐体60の左前面部分を構成しており、前後方向に開口しており上下に並んでいる第1吹出口62aおよび第2吹出口62bが形成されている。第1吹出口62aには、主として、第1室外ファン25aによって筐体60の背面側および左側面側から内部に吸い込まれた空気であって、室外熱交換器23の上方部分を通過した空気が通過する。第2吹出口62bには、主として、第2室外ファン25bによって筐体60の背面側および左側面側から内部に吸い込まれた空気であって、室外熱交換器23の下方部分を通過した空気が通過する。第1吹出口62aおよび第2吹出口62bには、それぞれ、ファングリルが設けられている。左側板は、主に、筐体60の左側面部分を構成しており、筐体60内に吸入される空気の吸入口としても機能できるようになっている。右前板は、主に、筐体60の右前面部分及び右側面の前側部分を構成している。右側板65は、主に、筐体60の右側面の後側部分および背面の右側部分を構成している。仕切板66は、底板63上に配置される鉛直に延びる板状部材であり、筐体60の内部空間を送風機室と機械室とに分割している。
室外熱交換器23は、例えば、図11Jに示すように、板厚方向に重ねて配置された複数の伝熱フィン23aと、複数の伝熱フィン23aに貫通固定された複数の伝熱管23bと、を有するクロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器である。この室外熱交換器23は、送風機室内において、筐体60の左側面及び背面に沿うようにして、平面視L字形状となるように配置されている。本実施形態の室外熱交換器23では、特に限定されないが、冷媒が10以上20以下に分岐して流れるように複数の冷媒流路を有していてもよい。本実施形態の室外熱交換器23の複数の伝熱管23bは、湾曲された部分以外は円筒形状の配管であり、外径が6.35mm、7.0mm、8.0mm、および、9.5mmからなる群より選択される1種類で構成されている。なお、伝熱管23bの外径と肉厚との関係は、上記第1実施形態と同様である。
圧縮機21は、筐体60の機械室内において、底板63上に載置され、ボルトで固定されている。
ガス側閉鎖弁28および液側閉鎖弁29は、筐体60の機械室内において、圧縮機21の上端近傍の高さ位置であって、右前方の角部近傍に配置されている。
電装品ユニット27aは、筐体60の機械室内において、ガス側閉鎖弁28および液側閉鎖弁29のいずれよりも上方の空間に配置されている。
以上の空気調和装置1aでは、冷房運転モードでは、第1室外膨張弁44は、例えば、室外熱交換器23の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。また、冷房運転モードでは、第2室外膨張弁45は、例えば、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。
また、暖房運転モードでは、第2室外膨張弁45は、例えば、室内熱交換器31の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。また、暖房運転モードでは、第1室外膨張弁44は、例えば、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。
(11−2−2)室内ユニット30
第2実施形態の室内ユニット30は、対象空間である室内の上方空間に吊り下げられることで設置されるか、天井面に対して設置される。室内ユニット30は、液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5を介して室外ユニット20と接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。
室内ユニット30は、室内熱交換器31と、室内ファン32と、室内筐体70等を有している。
室内筐体70は、図11K、図11Lに示すように、筐体本体71と、化粧パネル72と、を有している。筐体本体71は、下方が開口しており、内部に室内熱交換器31、室内ファン32等を収容する。化粧パネル72は、筐体本体71の下面を覆っており、吸込口72a、複数のフラップ72b、複数の吹出口72c等を有している。吸込口72aから吸い込まれた室内空気は、フィルタ73を通過した後、ベルマウス74によって室内ファン32の吸い込み側に案内される。室内ファン32から送り出された空気は、ドレンパン75の上に配置された室内熱交換器31を通過して、ドレンパン75の周囲に設けられた流路を通過した後、吹出口72cから室内に吹き出される。
第2実施形態の室内熱交換器31は、平面視において、室内ファン32を周囲から囲んだ略四角形状となるように設けられている。この室内熱交換器31は、板厚方向に重ねて配置された複数の伝熱フィン31aと、複数の伝熱フィン31aに貫通固定された複数の伝熱管31bと、を有している。なお、第2実施形態の室内熱交換器31の複数の伝熱管31bは、円筒形状であり、外径が4.0mm、5.0mm、6.35mm、7.0mm、8.0mm、および、9.5mmからなる群より選択される1種類で構成されている。なお、外径が9.5mmの伝熱管31bは、肉厚が0.32mm以上0.36mm以下であり、0.340mmであることが好ましい。なお、他の伝熱管31bについての外径と肉厚との関係は、上記第1実施形態と同様である。
(11−2−3)第2実施形態の特徴
以上の第2実施形態に係る空気調和装置1aにおいても、第1実施形態に係る空気調和装置1と同様に、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が用いられているため、GWPを十分に小さく抑えることが可能になっている。
また、空気調和装置1aが有する室外ユニット20の室外熱交換器23においても、R32よりも圧力損失が生じやすい上記冷媒について伝熱管23bを通過する際の圧力損失を低減させることができ、室外熱交換器23を流れる冷媒の温度の変化(温度グライド)が生じる場合であっても、その程度を小さく抑えることが可能になっている。さらに、室外熱交換器23において保持される冷媒量を少なく抑えることが可能になっている。
また、空気調和装置1aが有する室内ユニット30の室内熱交換器31においても、R32よりも圧力損失が生じやすい上記冷媒を用いた場合であっても、R32よりも圧力損失が生じやすい上記冷媒について伝熱管31bを通過する際の圧力損失を低減させることができ、室内熱交換器31を流れる冷媒の温度の変化(温度グライド)が生じる場合であっても、その程度を小さく抑えることが可能になっている。さらに、室内熱交換器31において保持される冷媒量を少なく抑えることが可能になっている。
(11−2−4)第2実施形態の変形例A
上記第2実施形態では、室内ユニットが1つだけ設けられている空気調和装置を例に挙げて説明したが、空気調和装置としては、互いに並列に接続された複数の室内ユニット(室内膨張弁を有さないもの)が設けられていてもよい。
(11−3)第3実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図11M、概略制御ブロック構成図である図11Nを参照しつつ、第3実施形態に係る冷凍サイクル装置としての空気調和装置1bについて説明する。
以下、主として、第3実施形態の空気調和装置1bについて、第1実施形態の空気調和装置1と異なる箇所を中心に説明する。
空気調和装置1bにおいても、冷媒回路10には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒として、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかが充填されている。また、冷媒回路10には、当該冷媒と共に、冷凍機油が充填されている。
(11−3−1)室外ユニット20
第3実施形態に係る空気調和装置1bの室外ユニット20では、上記第1実施形態における室外ユニット20において、低圧レシーバ26、過冷却熱交換器47および過冷却回路46が設けられている。
低圧レシーバ26は、四路切換弁22の接続ポートの1つから圧縮機21の吸入側に至るまでの間に設けられ、冷媒を溜めることができる容器である。なお、本実施形態においては、圧縮機21が有する付属のアキュムレータとは別に設けられている。
過冷却熱交換器47は、室外膨張弁24と液側閉鎖弁29との間に設けられている。
過冷却回路46は、室外膨張弁24と過冷却熱交換器47との間の主回路から分岐し、四路切換弁22の接続ポートの1つから低圧レシーバ26に至るまでの途中の部分に合流するように延びた回路である。過冷却回路46の途中には、通過する冷媒を減圧させる過冷却膨張弁48が設けられている。過冷却回路46を流れる冷媒であって、過冷却膨張弁48で減圧された冷媒は、過冷却熱交換器47において、主回路側を流れる冷媒との間で熱交換を行う。これにより、主回路側を流れる冷媒はさらに冷却され、過冷却回路46を流れる冷媒は蒸発する。
第3実施形態に係る空気調和装置1bの室外ユニット20の詳細構造について、図11Oの外観斜視図、図11Pの分解斜視図を参照しつつ、以下に説明する。
空気調和装置1bの室外ユニット20は、下方から室外筐体80内に空気を取り込んで上方から室外筐体80外に空気を吹き出す上吹き型構造と呼ばれるものである。
室外筐体80は、主として、左右方向に延びる一対の据付脚82上に架け渡される底板83と、底板83の角部から鉛直方向に延びる支柱84と、前面パネル81と、ファンモジュール85と、を有している。底板83は、室外筐体80の底面を形成しており、左側の第1底板83aと右側の第2底板83bとに分かれている。前面パネル81は、ファンモジュール85の下方において、前面側の支柱84間に架け渡されており、室外筐体80の前面を構成している。室外筐体80内のうち、ファンモジュール85の下方であって底板83上方の空間には、圧縮機21、室外熱交換器23、低圧レシーバ26、四路切換弁22、室外膨張弁24、過冷却熱交換器47、過冷却膨張弁48、過冷却回路46、ガス側閉鎖弁28、液側閉鎖弁29、室外ユニット制御部27等が配置されている。室外熱交換器23は、室外筐体80のファンモジュール85の下方の部分のうち、背面および左右両側面に面する平面視略U字形状であり、室外筐体80の背面および左右両側面を実質的に形成している。この室外熱交換器23は、底板83の左側縁部、後側縁部、右側縁部の上に沿うように配置されている。第3実施形態の室外熱交換器23は、板厚方向に重ねて配置された複数の伝熱フィン23aと、複数の伝熱フィン23aに貫通固定された複数の伝熱管23bと、を有するクロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器である。本実施形態の室外熱交換器23では、特に限定されないが、冷媒が20以上40以下に分岐して流れるように複数の冷媒流路を有していてもよい。第3実施形態の室外熱交換器23の複数の伝熱管23bは、湾曲された部分以外は円筒形状の配管であり、外径が7.0mm、8.0mm、および、9.5mmからなる群より選択される1種類で構成されている。なお、伝熱管23bの外径と肉厚との関係は、上記第1実施形態と同様である。
ファンモジュール85は、室外熱交換器23の上側に設けられており、室外ファン25と、図示しないベルマウス等を有している。室外ファン25は、回転軸が鉛直方向になる姿勢で配置されている。
以上の構造により、室外ファン25が形成させる空気流れは、室外熱交換器23の周囲から室外熱交換器23を通過して室外筐体80内部に流入し、室外筐体80の上端面において上下方向に貫通するように設けられた吹出口86を介して、上方に吹き出される。
(11−3−2)第1室内ユニット30および第2室内ユニット35
また、第3実施形態に係る空気調和装置1bでは、上記第1実施形態における室内ユニット30の代わりに、互いに並列に設けられた第1室内ユニット30および第2室内ユニット35を有している。
第1室内ユニット30は、上記第1実施形態における室内ユニット30と同様に第1室内熱交換器31と第1室内ファン32と第1室内ユニット制御部34が設けられており、さらに、第1室内熱交換器31の液側において第1室内膨張弁33が設けられている。第1室内膨張弁33は、弁開度が制御可能である。
第2室内ユニット35は、第1室内ユニット30と同様であり、第2室内熱交換器36と第2室内ファン37と、第2室内ユニット制御部39と、第2室内熱交換器36の液側に設けられた第2室内膨張弁38と、を有している。第2室内膨張弁38は、弁開度が制御可能である。
なお、第3実施形態に係る空気調和装置1bの第1室内ユニット30および第2室内ユニット35の具体的な構造は、上記第1室内膨張弁33や第2室内膨張弁38を除き、第2実施形態の室内ユニット30と同様の構成である。なお、第1室内熱交換器31および第2室内熱交換器36は、いずれも、円筒形状である複数の伝熱管を有しており、伝熱管の外径が4.0mm、5.0mm、6.35mm、7.0mm、8.0mm、および、9.5mmからなる群より選択される1種類で構成されている。なお、伝熱管23bの外径と肉厚との関係は、上記第2実施形態と同様である。
なお、第3実施形態のコントローラ7は、室外ユニット制御部27と、第1室内ユニット制御部34と、第2室内ユニット制御部39と、が互いに通信可能に接続されて構成されている。
以上の空気調和装置1bでは、冷房運転モードでは、室外膨張弁24は、室外熱交換器23の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。また、冷房運転モードでは、過冷却膨張弁48は、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。なお、冷房運転モードでは、第1室内膨張弁33および第2室内膨張弁38は、全開状態に制御される。
また、暖房運転モードでは、第1室内膨張弁33は、第1室内熱交換器31の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。第2室内膨張弁38も同様に、第2室内熱交換器36の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。また、暖房運転モードでは、室外膨張弁45は、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。なお、暖房運転モードでは、過冷却膨張弁48は、圧縮機21が吸入する冷媒の過熱度が所定の条件を満たすように制御される。
(11−3−3)第3実施形態の特徴
以上の第3実施形態に係る空気調和装置1bにおいても、第1実施形態に係る空気調和装置1と同様に、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が用いられているため、GWPを十分に小さく抑えることが可能になっている。
また、空気調和装置1bが有する室外ユニット20の室外熱交換器23においても、R32よりも圧力損失が生じやすい上記冷媒について伝熱管23bを通過する際の圧力損失を低減させることができ、室外熱交換器23を流れる冷媒の温度の変化(温度グライド)が生じる場合であっても、その程度を小さく抑えることが可能になっている。さらに、室外熱交換器23において保持される冷媒量を少なく抑えることが可能になっている。
また、空気調和装置1bが有する室内ユニット30の室内熱交換器31においても、R32よりも圧力損失が生じやすい上記冷媒を用いた場合であっても、R32よりも圧力損失が生じやすい上記冷媒について伝熱管31bを通過する際の圧力損失を低減させることができ、室内熱交換器31を流れる冷媒の温度の変化(温度グライド)が生じる場合であっても、その程度を小さく抑えることが可能になっている。さらに、室内熱交換器31において保持される冷媒量を少なく抑えることが可能になっている。
(11−4)その他
上記第1実施形態から第3実施形態および各変形例を適宜組み合わせて空気調和装置や室外ユニットを構成してもよい。
(12)第12グループの技術の実施形態
(12−1)空調機1の構成
図12Aは、一実施形態に係る圧縮機100が利用される空調機1の冷媒回路図である。空調機1は、圧縮機100を備えた冷凍サイクル装置である。圧縮機100が採用される空調機1として、「冷房運転専用の空調機」、「暖房運転専用の空調機」、及び「四路切換弁を用いて冷房運転および暖房運転のいずれかに切り換え可能な空調機」などが挙げられる。ここでは、「四路切換弁を用いて冷房運転および暖房運転のいずれかに切り換え可能な空調機」を用いて説明する。
図12Aにおいて、空調機1は、室内ユニット2及び室外ユニット3を備え、室内ユニット2と室外ユニット3とは、液冷媒連絡配管4及びガス冷媒連絡配管5によって接続されている。図12Aに示すように、空調機1は、室内ユニット2と室外ユニット3とを各々1つ有するペア式である。但し、これに限定されるものではなく、空調機1は、室内ユニット2を複数の有するマルチ式であってもよい。
空調機1では、アキュムレータ15、圧縮機100、四方切換弁16、室外熱交換器17、膨張弁18、室内熱交換器13等の機器が配管により接続されることで、冷媒回路11が構成されている。
本実施形態では、冷媒回路11には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が充填されている。当該冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。また、冷媒回路11には、当該混合冷媒と共に、冷凍機油が充填されている。
(12−1−1)室内ユニット2
室内ユニット2に搭載される室内熱交換器13は、伝熱管と多数の伝熱フィンとにより構成されたクロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器である。室内熱交換器13は、液側が液冷媒連絡配管4に接続され、ガス側がガス冷媒連絡配管5に接続され、冷房運転時は冷媒の蒸発器として機能する。
(12−1−2)室外ユニット3
室外ユニット3は、アキュムレータ15、圧縮機100、室外熱交換器17、及び膨張弁18を搭載している。
(12−1−2−1)室外熱交換器17
室外熱交換器17は、伝熱管と多数の伝熱フィンとにより構成されたクロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器である。室外熱交換器17は、その一方が圧縮機100から吐出された冷媒が流れる吐出管24側に接続され、他方が液冷媒連絡配管4側に接続されている。室外熱交換器17は、圧縮機100から吐出管24を介して供給されるガス冷媒の凝縮器として機能する。
(12−1−2−2)膨張弁18
膨張弁18は、室外熱交換器17と液冷媒連絡配管4とを接続する配管に設けられている。膨張弁18は、配管を流れる冷媒の圧力や流量の調節を行うための開度調整可能な電動弁である。
(12−1−2−3)アキュムレータ15
アキュムレータ15は、ガス冷媒連絡配管5と圧縮機100の吸入管23とを接続する配管に設けられている。アキュムレータ15は、圧縮機100に液冷媒が供給されることを防止するため、室内熱交換器13からガス冷媒連絡配管5を経て吸入管23に向かう冷媒を、気相と液相とに分離する。圧縮機100には、アキュムレータ15の上部空間に集まる気相の冷媒が供給される。
(12−1−2−4)圧縮機100
図12Bは、一実施形態に係る圧縮機100の縦断面図である。図12Bにおいて、圧縮機100は、スクロール圧縮機である。圧縮機100は、吸入管23を介して吸入した冷媒を、圧縮室Scで圧縮し、圧縮後の冷媒を吐出管24から吐出する。なお、圧縮機100については、「(12−2)圧縮機100の構成」の節で詳細を説明する。
(12−1−2−5)四方切換弁16
四方切換弁16は、第1から第4までのポートを有している。四方切換弁16では、第1ポートが圧縮機100の吐出側に接続され、第2ポートが圧縮機100の吸入側に接続され、第3ポートが室外熱交換器17のガス側端部に接続され、第4ポートがガス側閉鎖弁Vgに接続されている。
四方切換弁16は、第1状態(図12Aの実線で示す状態)と第2状態(図12Aの破線で示す状態)とに切り換わる。第1状態の四方切換弁16では、第1ポートと第3ポートが連通し且つ第2ポートと第4ポートが連通する。第2状態の四方切換弁16では、第1ポートと第4ポートが連通し且つ第2ポートと第3ポートが連通する。
(12−2)圧縮機100の構成
圧縮機100は、蒸発器や、凝縮器、膨張機構などと共に冷媒回路を構成し、その冷媒回路中のガス冷媒を圧縮する役割を担うものである。図12Bに示されるように、圧縮機100は、主に、縦長円筒状の密閉ドーム型のケーシング20、モータ70、圧縮機構60、オルダムリング39、下部軸受90、吸入管23、および吐出管24から構成されている。
(12−2−1)ケーシング20
ケーシング20は、略円筒状の円筒部材21と、円筒部材21の上端部に気密状に溶接される椀状の上蓋22aと、円筒部材21の下端部に気密状に溶接される椀状の下蓋22bとを有している。
ケーシング20には、主に、ガス冷媒を圧縮する圧縮機構60と、圧縮機構60の下方に配置されるモータ70とが収容されている。圧縮機構60とモータ70とは、ケーシング20内を上下方向に延びるように配置されるクランクシャフト80によって連結されている。圧縮機構60とモータ70との間には、間隙空間68が生じる。
また、ケーシング20の下部には油溜まり空間Soが形成される。油溜まり空間Soには、圧縮機構60等を潤滑するための冷凍機油Oが溜められる。なお、冷凍機油Oは、「(1−4−1)冷凍機油」の節で説明した冷凍機油を言う。
クランクシャフト80の内部には、圧縮機構60等に冷凍機油Oを供給するための給油経路83が形成されている。クランクシャフト80の主軸82の下端は、ケーシング20の下部に形成された油溜まり空間So内に位置し、油溜まり空間Soの冷凍機油Oは、給油経路83を通じて圧縮機構60等に供給される。
(12−2−2)モータ70
モータ70は、誘導モータであって、主に、ケーシング20の内壁面に固定された環状の固定子72と、固定子72の内側に僅かな隙間(エアギャップ)をもって回転自在に収容された回転子71とから構成されている。
モータ70は、固定子72の上側に形成されているコイル727のコイルエンドの上端がハウジング61の軸受部61bの下端とほぼ同じ高さ位置になるように配置されている。
固定子72には、歯部に銅線が巻回されており、上方および下方にコイル727のコイルエンドが形成されている。
回転子71は、上下方向に延びるように円筒部材21の軸心に配置されたクランクシャフト80を介して圧縮機構60の可動スクロール40に駆動連結されている。また、連絡通路46の出口49を流出した冷媒をモータ冷却通路55に案内する案内板58が、間隙空間68に配設されている。
固定子72は、いわゆる分布巻固定子であり、鉄心である胴部725と、胴部725に巻き掛けられたコイル727とを有している。また、胴部725の上部および下部には、胴部725の外周面よりも内側へ凹むコイル727のくびれ部分であるくびれ部727aが形成されている。
なお、モータ70の詳細については、「(12−4)モータ70の構成」の節で説明する。
(12−2−3)圧縮機構60
圧縮機構60は、図12Bに示されるように、主に、ハウジング61と、ハウジング61の上方に密着して配置される固定スクロール30と、固定スクロール30に噛合する可動スクロール40とから構成されている。
(12−2−3−1)固定スクロール30
固定スクロール30は、図12Bに示されるように、主に、鏡板34と、鏡板34の下面に形成された渦巻き状(インボリュート状)のラップ33とから構成されている。
鏡板34には、圧縮室Scに連通する吐出穴341と、吐出穴341に連通する拡大凹部342とが形成されている。吐出穴341は、鏡板34の中央部分において上下方向に延びるように形成されている。
拡大凹部342は、鏡板34の上面に水平方向に広がる凹部により構成されている。そして、固定スクロール30の上面には、この拡大凹部342を塞ぐように蓋体344がボルト344aにより締結固定されている。そして、拡大凹部342に蓋体344が覆い被せられることにより圧縮機構60の運転音を消音させる膨張室からなるマフラー空間345が形成されている。
(12−2−3−2)可動スクロール40
可動スクロール40は、図12Bに示されるように、主に、鏡板41と、鏡板41の上面に形成された渦巻き状(インボリュート状)のラップ42と、鏡板41の下面に形成されたボス部43とから構成されている。
可動スクロール40は、アウタードライブの可動スクロールである。すなわち、可動スクロール40は、クランクシャフト80の外側に嵌合するボス部43を有している。
可動スクロール40は、鏡板41に形成された溝部にオルダムリング39が嵌め込まれることによりハウジング61に支持される。また、ボス部43にはクランクシャフト80の上端が嵌入される。可動スクロール40は、このように圧縮機構60に組み込まれることによってクランクシャフト80の回転により自転することなくハウジング61内を公転する。そして、可動スクロール40のラップ42は固定スクロール30のラップ33に噛合させられており、両ラップ33,42の接触部の間には圧縮室Scが形成されている。圧縮室Scでは、可動スクロール40の公転に伴い、両ラップ33,42間の容積が中心に向かって収縮する。これにより、ガス冷媒を圧縮することが可能である。
(12−2−3−3)ハウジング61
ハウジング61は、その外周面において周方向の全体に亘って円筒部材21に圧入固定されている。つまり、円筒部材21とハウジング61とは全周に亘って気密状に密着されている。このため、ケーシング20の内部は、ハウジング61下方の高圧空間とハウジング61上方の低圧空間とに区画されていることになる。また、このハウジング61には、上面中央に凹設されたハウジング凹部61aと、下面中央から下方に延設された軸受部61bとが形成されている。軸受部61bには、上下方向に貫通する軸受孔63が形成されており、クランクシャフト80が軸受孔63を介して回転自在に嵌入されている。
(12−2−4)オルダムリング39
オルダムリング39は、可動スクロール40の自転運動を防止するための部材であって、ハウジング61に形成されるオルダム溝(図示せず)に嵌め込まれている。なお、このオルダム溝は、長円形状の溝であって、ハウジング61において互いに対向する位置に配設されている。
(12−2−5)下部軸受90
下部軸受90は、モータ70の下方の下部空間に配設されている。この下部軸受90は、円筒部材21に固定されるとともにクランクシャフト80の下端側軸受を構成し、クランクシャフト80を支持している。
(12−2−6)吸入管23
吸入管23は、冷媒回路の冷媒を圧縮機構60に導くためのものであって、ケーシング20の上蓋22aに気密状に嵌入されている。吸入管23は、低圧空間Slを上下方向に貫通すると共に、内端部が固定スクロール30に嵌入されている。
(12−2−7)吐出管24
吐出管24は、ケーシング20内の冷媒をケーシング20外に吐出させるためのものであって、ケーシング20の円筒部材21に気密状に嵌入されている。そして、この吐出管24は、上下方向に延びる円筒形状に形成されハウジング61の下端部に固定される内端部36を有している。なお、吐出管24の内端開口、即ち流入口は、下方に向かって開口されている。
(12−3)圧縮機100の動作
モータ70が駆動されると、クランクシャフト80が回転し、可動スクロール40が自転することなく公転運転を行う。すると、低圧のガス冷媒が、吸入管23を通って圧縮室Scの周縁側から圧縮室Scに吸引され、圧縮室Scの容積変化に伴って圧縮され、高圧のガス冷媒となる。
高圧のガス冷媒は、圧縮室Scの中央部から吐出穴341を通ってマフラー空間345へ吐出され、その後、連絡通路46、スクロール側通路47、ハウジング側通路48、出口49を通って間隙空間68へ流出し、案内板58と円筒部材21の内面との間を下側に向かって流れる。
ガス冷媒は、案内板58と円筒部材21の内面との間を下側に向かって流れる際に、一部が分流して案内板58とモータ70との間を円周方向に流れる。なお、このとき、ガス冷媒に混入している潤滑油が分離される。
一方、分流したガス冷媒の他部は、モータ冷却通路55を下側に向かって流れ、モータ下部空間にまで流れた後、反転して固定子72と回転子71との間のエアギャップ通路、または連絡通路46に対向する側(図12Bにおける左側)のモータ冷却通路55を上方に向かって流れる。
その後、案内板58を通過したガス冷媒と、エアギャップ又はモータ冷却通路55を流れてきたガス冷媒とは、間隙空間68で合流して吐出管24の内端部36から吐出管24に流入し、ケーシング20外に吐出される。
そして、ケーシング20外に吐出されたガス冷媒は、冷媒回路を循環した後、再度吸入管23を通って圧縮機構60に吸入されて圧縮される。
(12−4)モータ70の構成
図12Cは、回転軸に垂直な平面で切断されたモータ70の断面図である。また、図12Dは、回転軸に垂直な平面で切断された回転子71の断面図である。さらに、図12Eは、回転子71の斜視図である。
なお、図12C〜図12Eでは、回転子71に連結されて外部へと回転力を伝達するためのシャフトについては図示を省略している。図12C〜図12Eにおいて、モータ70は、誘導モータである。モータ70は、回転子71と固定子72とを有している。
(12−4−1)固定子72
固定子72は、胴部725と複数の歯部726とを備えている。胴部725は、回転子71の外周径よりも大きな内周径を有する略筒状に形成されている。胴部725は、厚さ0.05mm以上0.5mm以下の薄い電磁鋼板を所定の形状に加工して、所定の枚数を積層することによって形成される。
複数の歯部726は、胴部725の内周部にその周方向に沿って略均等間隔に位置する態様で突出している。各歯部726は、胴部725の内周部から回転軸を中心とする円の径方向に沿って中心に向かって延び、回転子71と所定の隙間を空けて対向している。
各歯部726は、外周側で胴部725を介して磁気的に連結されている。各歯部726には、巻線としてコイル727が巻かれている(図12Cでは一つのみ図示)。コイル727には、回転子71を回転させる回転磁界を発生させるための3相交流が流される。コイル727の巻線方式は特に限定されず、複数の歯部726に対して集中巻された形態であっても、分布巻された形態であってもよい。
これらの回転子71及び固定子72は、ケーシング20に組込まれて回転電機として使用される。
(12−4−2)回転子71
回転子71は、かご型回転子である。回転子71は、略円柱状の外観形状に形成され、その中心軸に沿ってクランクシャフト80の主軸82が連結固定される。回転子71は、回転子コア710と、複数の導体棒716と、端絡環717とを有している。
(12−4−2−1)回転子コア710
回転子コア710は、磁性材料により略円筒状に形成されている。厚さ0.05mm以上0.5mm以下の薄い電磁鋼板を所定の形状に加工して、図12Eに示すように、所定の枚数を積層することによって形成される。
電磁鋼板としては、高速回転時の回転子の耐久性を向上させるため、引張り強さが400MPa以上の複数の高張力電磁鋼板が望ましい。図12Dに示すように、回転子コア710は、複数の導体棒形成孔718と、軸挿入孔719とを有している。
1枚の電磁鋼板711には、中央に[軸挿入孔719と同じ平面形状の孔]が設けられ、さらに[導体棒形成孔718と同じ平面形状の孔]が所定の間隔をあけて設けられている。[導体棒形成孔718と同じ平面形状の孔]が所定角度ずれた状態で電磁鋼板711が積層されることによって、導体棒形成孔718と、軸挿入孔719が形成される。導体棒形成孔718は、回転子コア710内に導体棒716を成形するための孔である。なお、図12Eには、一部の導体棒716および導体棒形成孔718のみを記載している。
軸挿入孔719は、回転子コア710の中心軸に沿ってクランクシャフト80の主軸82(図12B参照)を固定するための孔である。
(12−4−2−2)導体棒716と端絡環717
導体棒形成孔718に充填される導体棒716と、回転子コア710を両端から挟む端絡環717とは、一体に成形される。例えば、導体としてアルミニウム又はアルミニウム合金を採用する場合、回転子コア710がアルミダイカスト金型にセットされた後、溶融したアルミニウム又はアルミニウム合金が型内に圧入されることによって、一体的に成形される。
これによって、環状に配置される複数の導体棒716と、複数の導体棒716を軸方向の端部で短洛する端絡環717とを有する、かご型の回転子71が実現される。
(12−5)特徴
圧縮機100は、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒を圧縮する圧縮機であって、誘導モータ70を採用することによって、比較的低コストで高出力化が可能となる。
(12−6)変形例
(12−6−1)第1変形例
上記実施形態では、導体棒716と端絡環717とがアルミニウム又はアルミニウム合金で一体に成形される態様で説明したが、これに限定されるものではない。
例えば、導体棒716と端絡環717とがアルミニウムよりも電気抵抗が低い金属で成形されてもよい。具体的には、導体棒716と端絡環717とが銅又は銅合金で成形されてもよい。
第1変形例によれば、誘導モータ70の導体棒716を流れる電流による発熱が抑制されるので、圧縮機100の高出力化が可能となる。
なお、銅および銅合金の場合、導体棒716及び端絡環717をダイカスト方式で成形することはできないので、導体棒716及び端絡環717はロウ付けによって溶接される。
もちろん、導体棒716及び端絡環717それぞれを異種金属としてもよく、例えば、導体棒716が銅又は銅合金で成形され、端絡環717がアルミニウム又はアルミニウム合金で成形されてもよい。
(12−6−2)第2変形例
図12Fは、第2変形例に係る圧縮機100の誘導モータ70に使用される回転子71の斜視図である。図12Fにおいて、回転子71は、放熱構造としてのヒートシンク717aを有している。
ヒートシンク717aは、端絡環717の端面から回転子71の中心軸方向に突出し、且つ、回転子71の半径方向に沿って延びる放熱フィン717afを有している。本変形例では、6つの放熱717afが、中心軸周りに中心角60°間隔で配置されている。
圧縮機100では、回転子71の回転によってヒートシンク717aが回転するので、放熱フィン717afの放熱性が向上する上に、回転により強制対流が起こり、周辺の温度上昇が抑制されるので、圧縮機100の高出力化が可能となる。
また、ヒートシンク717aは端絡環717に形成されており、ヒートシンク717aは端絡環717を成形する際に端絡環717と一体的に成形することができるので、製造コストの増加を抑制することができる。
(12−6−3)第3変形例
図12Gは、第3変形例に係る圧縮機100が利用される空調機1の冷媒回路図である。図12Gにおいて、図12Aとの違いは、冷媒回路11が分岐回路110を含む冷却構造を有している点であり、それ以外は、図12Aと同じ構成である。
分岐回路110には、冷媒回路11から分岐された冷媒が流れる。分岐回路110は、冷媒回路11の室外熱交換器17と膨張弁18との間から、膨張弁18と室内熱交換器13との間まで、の部分に並列に設けられている。分岐回路110には、第2膨張弁112、冷却部111および第3膨張弁113が接続されている。
冷却部111は圧縮機100のケーシング20の外周面に伝熱板を介して装着され、その装着位置は誘導モータ70の固定子72の側方に対応している。冷却部111は、冷媒回路11を流れる冷媒の冷熱を用いて固定子72を間接的に冷却するものである。具体的には、サーペンタイン状に曲げられた状態で前記伝熱板に嵌め込まれた管の一端に第2膨張弁112、他端に第3膨張弁113が接続されている。
冷房運転時には、冷媒回路11を流れる冷媒の一部が、室外熱交換器17と膨張弁18との間から分岐回路110に分岐され、開度調節された第2膨張弁112、冷却部111および開度全開の第3膨張弁113の順に流れて、膨張弁18と室内熱交換器13との間に合流する。第2膨張弁112の開度は、第2膨張弁112で減圧された冷媒が冷却部111で吸熱して蒸発することができるように調節される。
また、暖房運転時には、冷媒回路11を流れる冷媒の一部が、室内熱交換器13と膨張弁18との間から分岐回路110に分岐され、開度調節された第3膨張弁113、冷却部111および開度全開の第2膨張弁112の順に流れて、膨張弁18と室外熱交換器17との間に合流する。第3膨張弁113の開度は、第3膨張弁113で減圧された冷媒が冷却部111で吸熱して蒸発することができるように調節される。
上記の冷却構造によって、冷媒回路11を流れる冷媒の冷熱によって固定子72を冷却することができるので、圧縮機の高出力化が可能となる。
(12−7)第2実施形態に係る圧縮機300の構成
第1実施形態では、圧縮機100としてスクロール圧縮機を説明したが、圧縮機はスクロール圧縮機に限定されるものではない。
図12Hは、本開示の第2実施形態に係る圧縮機300の縦断面図である。図12Hにおいて、圧縮機300はロータリ圧縮機である。圧縮機300は、冷媒Aのいずれかの冷媒が循環する冷媒回路の一部を構成する。圧縮機300は、冷媒を圧縮して、高圧のガス冷媒を排出する。図中の矢印は、冷媒の流れを表している。
(12−7−1)ケーシング220
圧縮機300は、縦長円筒状のケーシング220を有する。ケーシング220は、上下が開口した略円筒状の円筒部材221と、円筒部材221の上端および下端にそれぞれ設けられた上蓋222aおよび下蓋222bとを有する。円筒部材221と、上蓋22aおよび下蓋22bとは、気密を保つように溶接により固定されている。
ケーシング220には、圧縮機構260、モータ270、クランクシャフト280、上部軸受263および下部軸受290を含む圧縮機300の構成機器が収容される。また、ケーシング220の下部には油溜まり空間Soが形成される。
ケーシング220の下部には、ガス冷媒を吸入し、圧縮機構260にガス冷媒を供給する吸入管223が、円筒部材221の下部を貫通して設けられる。吸入管223の一端は、圧縮機構260のシリンダ230に接続される。吸入管223は、圧縮機構260の圧縮室Scと連通する。吸入管223には、圧縮機300による圧縮前の、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒が流れる。
ケーシング220の上蓋222aには、ケーシング220外に吐出される冷媒が通過する吐出管224が設けられる。より具体的には、ケーシング220の内部の吐出管224の端部が、モータ270の上方に形成された高圧空間S1に配置される。吐出管224には、圧縮機構260による圧縮後の、冷凍サイクルにおける高圧の冷媒が流れる。
(12−7−2)モータ270
モータ270は、固定子272および回転子271を有している。モータ270は、ロータリ圧縮機である圧縮機300に使用されているという以外は、基本的に第1実施形態のモータ70と同等であり、第1実施形態のモータ70と同等の性能、作用・効果を発揮する。したがって、ここでは、モータ270の説明を省略する。
(12−7−3)クランクシャフト280、上部軸受263、下部軸受290
クランクシャフト280は、回転子271に固定されている。さらに、クランクシャフト280は、上部軸受263および下部軸受290によって、回転軸心Rsを中心として回転できるように支持されている。クランクシャフト280は偏心部241を有している。
(12−7−4)圧縮機構260
圧縮機構260は、単一のシリンダ230と、当該シリンダ230の中に設置された単一のピストン242を有している。シリンダ230は、所定の容積を有し、ケーシング220に固定されている。
ピストン242は、クランクシャフト280の偏心部241に設置されている。シリンダ230およびピストン242は、圧縮室Scを規定する。回転子271の回転は、偏心部241を介して、ピストン242を公転させる。この公転に伴って、圧縮室Scの容積が変動することにより、気体冷媒が圧縮される。
ここで、「シリンダ容積」とは、いわゆる理論容積を意味し、すなわち、ピストン242が1回転する間に吸入管223からシリンダ230へ吸入される気体冷媒の体積に相当する。
(12−7−5)油溜まり空間So
ケーシング220の下部には、油溜まり空間Soが設けられている。油溜まり空間Soには、圧縮機構260を潤滑するための冷凍機油Oが溜められる。なお、冷凍機油Oは、「(1−4−1)冷凍機油」の節で説明した冷凍機油を言う。
(12−8)圧縮機300の動作
圧縮機300の動作について説明する。モータ270が起動すると、回転子271が固定子272に対して回転し、回転子271と固定されたクランクシャフト280が回転する。クランクシャフト280が回転すると、クランクシャフト280と連結されたピストン242がシリンダ230に対して公転する。そして、冷凍サイクルにおける低圧のガス冷媒が、吸入管223を通って圧縮室Scに吸引される。ピストン242が公転するのに従い、吸入管223と圧縮室Scとは連通しなくなり、圧縮室Scの容積が減少するのに伴って、圧縮室Scの圧力が上昇し始める。
圧縮室Sc内の冷媒は、圧縮室Scの容積が減少するのに伴って圧縮され、最終的に高圧のガス冷媒となる。高圧のガス冷媒は、吐出口232aから吐出される。その後、高圧のガス冷媒は、固定子272と回転子271との間のギャップおよびその他の箇所を通過して、ケーシング220の上方に設置された吐出管224から排出される。
(12−9)第2実施形態の特徴
(12−9−1)
圧縮機300は、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒を圧縮する圧縮機であって、モータ270に誘導モータを採用することによって、比較的低コストで高出力化が可能となる。
(12−9−2)
空調機1の圧縮機として、ロータリ圧縮機である圧縮機300を使用する場合は、スクロール圧縮機を使用する場合に比べて冷媒充填量を少なくすることができるので、可燃性冷媒を使用する空調機に適している。
(12−10)第2実施形態の変形例
圧縮機300は、第1実施形態のモータ70と同等のモータ270を採用しているので、第1実施形態の「(12−6)変形例」に記載の全てに変形例の適用が可能である。
(12−11)他の実施形態
圧縮機の形態としては、モータ70と同等のモータを使用する限り、スクリュー圧縮機、或いは、ターボ圧縮機でもよい。
(13)第13グループの技術の実施形態
(13−1)第1実施形態
図13Aは、本開示の第1実施形態に係る空調機1の構成図である。図13Aにおいて、空調機1は、利用ユニット2と熱源ユニット3とによって構成されている。
(13−1−1)空調機1の構成
空調機1は、圧縮機100、四路切換弁16,熱源側熱交換器17、減圧機構としての膨張弁18、及び利用側熱交換器13が、冷媒配管によって環状に接続された冷媒回路11を有している。
本実施形態では、冷媒回路11には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が充填されている。当該冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。また、冷媒回路11には、当該混合冷媒と共に、冷凍機油が充填されている。
(13−1−1−1)利用ユニット2
冷媒回路11のうち、利用側熱交換器13は利用ユニット2に属している。また、利用ユニット2には、利用側ファン14が搭載されている。利用側ファン14は、利用側熱交換器13への空気の流れを生成する。
利用ユニット2側には、利用側通信器35、及び利用側マイクロコンピュータ41が搭載されている。利用側通信器35は利用側マイクロコンピュータ41に接続されている。
利用側通信器35は、利用ユニット2が熱源ユニット3と通信を行う際に使用される。利用側マイクロコンピュータ41は、空調機1が運転していない待機中も、制御用電圧の供給を受けているので、利用側マイクロコンピュータ41は常に起動している。
(13−1−1−2)熱源ユニット3
冷媒回路11のうちの圧縮機100、四路切換弁16,熱源側熱交換器17、及び膨張弁18は熱源ユニット3に属している。また、熱源ユニット3には、熱源側ファン19が搭載されている。熱源側ファン19は、熱源側熱交換器17への空気の流れを生成する。
また、熱源ユニット3側には、電力変換装置30、熱源側通信器36、及び熱源側マイクロコンピュータ42が搭載されている。電力変換装置30、および熱源側通信器36はともに熱源側マイクロコンピュータ42に接続されている。
電力変換装置30は、圧縮機100のモータ70を駆動するための回路である。熱源側通信器36は、熱源ユニット3が利用ユニット2と通信を行う際に使用される。熱源側マイクロコンピュータ42は電力変換装置30を介して圧縮機100のモータ70を制御し、さらに熱源ユニット3の他の機器(例えば、熱源側ファン19)の制御も行う。
図13Bは、電力変換装置30の回路ブロック図である。図13Bにおいて、圧縮機100のモータ70は、3相のブラシレスDCモータであって、固定子72と、回転子71とを備えている。固定子72は、スター結線されたU相、V相及びW相の各相巻線Lu,Lv,Lwを含む。各相巻線Lu,Lv,Lwの一方端は、それぞれインバータ25から延びるU相、V相及びW相の各配線の各相巻線端子TU,TV,TWに接続されている。各相巻線Lu,Lv,Lwの他方端は、互いに端子TNとして接続されている。これら各相巻線Lu,Lv,Lwは、回転子71が回転することによりその回転速度と回転子71の位置に応じた誘起電圧を発生させる。
回転子71は、N極及びS極からなる複数極の永久磁石を含み、固定子72に対し回転軸を中心として回転する。
(13−1−2)電力変換装置30の構成
電力変換装置30は、図13Aに示すように、熱源ユニット3側に搭載されている。電力変換装置30は、図13Bに示すように、電源回路20、インバータ25と、ゲート駆動回路26と、熱源側マイクロコンピュータ42とで構成されている。電源回路20は、整流回路21と、コンデンサ22とで構成されている。
(13−1−2−1)整流回路21
整流回路21は、4つのダイオードD1a,D1b,D2a,D2bによってブリッジ状に構成されている。具体的には、ダイオードD1aとD1b、D2aとD2bは、それぞれ互いに直列に接続されている。ダイオードD1a,D2aの各カソード端子は、共にコンデンサ22のプラス側端子に接続されており、整流回路21の正側出力端子として機能する。ダイオードD1b,D2bの各アノード端子は、共にコンデンサ22のマイナス側端子に接続されており、整流回路21の負側出力端子として機能する。
ダイオードD1a及びダイオードD1bの接続点は、交流電源90の一方の極に接続されている。ダイオードD2a及びダイオードD2bの接続点は、交流電源90の他方の極に接続されている。整流回路21は、交流電源90から出力される交流電圧を整流して直流電圧を生成し、これをコンデンサ22へ供給する。
(13−1−2−2)コンデンサ22
コンデンサ22は、一端が整流回路21の正側出力端子に接続され、他端が整流回路21の負側出力端子に接続されている。コンデンサ22は、整流回路21によって整流された電圧を平滑する程の大きな静電容量を有しない、小容量のコンデンサである。以下、説明の便宜上、コンデンサ22の端子間電圧をDCバス電圧Vdcという。
DCバス電圧Vdcは、コンデンサ22の出力側に接続されるインバータ25へ印加される。言い換えると、整流回路21及びコンデンサ22は、インバータ25に対する電源回路20を構成している。
そして、コンデンサ22は、インバータ25のスイッチングによって生じる電圧変動を平滑する。なお、本実施形態においては、コンデンサ22としてフィルムコンデンサが採用される。
(13−1−2−3)電圧検出器23
電圧検出器23は、コンデンサ22の出力側に接続されており、コンデンサ22の両端電圧、即ちDCバス電圧Vdcの値を検出するためのものである。電圧検出器23は、例えば、互いに直列に接続された2つの抵抗がコンデンサ22に並列接続され、DCバス電圧Vdcが分圧されるように構成される。それら2つの抵抗同士の接続点の電圧値は、熱源側マイクロコンピュータ42に入力される。
(13−1−2−4)電流検出器24
電流検出器24は、コンデンサ22及びインバータ25の間であって、かつコンデンサ22の負側出力端子側に接続されている。電流検出器24は、モータ70の起動後、モータ70に流れるモータ電流を三相分の電流の合計値として検出する。
電流検出器24は、例えば、シャント抵抗及び該抵抗の両端の電圧を増幅させるオペアンプを用いた増幅回路で構成されてもよい。電流検出器24によって検出されたモータ電流は、熱源側マイクロコンピュータ42に入力される。
(13−1−2−5)インバータ25
インバータ25は、モータ70のU相、V相及びW相の各相巻線Lu,Lv,Lwそれぞれに対応する3つの上下アームが互いに並列に、且つコンデンサ22の出力側に接続されている。
図13Bにおいて、インバータ25は、複数のIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ、以下、単にトランジスタという)Q3a,Q3b,Q4a,Q4b,Q5a,Q5b及び複数の還流用のダイオードD3a,D3b,D4a,D4b,D5a,D5bを含む。
トランジスタQ3aとQ3b、Q4aとQ4b、Q5aとQ5bは、それぞれ互いに直列に接続されることによって各上下アームを構成しており、それによって形成された接続点NU,NV,NWそれぞれから対応する相の各相巻線Lu,Lv,Lwに向かって出力線が延びている。
各ダイオードD3a〜D5bは、各トランジスタQ3a〜Q5bに、トランジスタのコレクタ端子とダイオードのカソード端子が、また、トランジスタのエミッタ端子とダイオードのアノード端子が接続されるよう、並列接続されている。このそれぞれ並列接続されたトランジスタとダイオードにより、スイッチング素子が構成される。
インバータ25は、コンデンサ22からのDCバス電圧Vdcが印加され、かつゲート駆動回路26により指示されたタイミングで各トランジスタQ3a〜Q5bがオン及びオフを行うことによって、モータ70を駆動する駆動電圧SU,SV,SWを生成する。この駆動電圧SU,SV,SWは、各トランジスタQ3aとQ3b、Q4aとQ4b、Q5aとQ5bの各接続点NU,NV,NWからモータ70の各相巻線Lu,Lv,Lwに出力される。
(13−1−2−6)ゲート駆動回路26
ゲート駆動回路26は、熱源側マイクロコンピュータ42からの指令電圧に基づき、インバータ25の各トランジスタQ3a〜Q5bのオン及びオフの状態を変化させる。具体的には、ゲート駆動回路26は、熱源側マイクロコンピュータ42によって決定されたデューティを有するパルス状の駆動電圧SU,SV,SWがインバータ25からモータ70に出力されるように、各トランジスタQ3a〜Q5bのゲートに印加するゲート制御電圧Gu,Gx,Gv,Gy,Gw,Gzを生成する。生成されたゲート制御電圧Gu,Gx,Gv,Gy,Gw,Gzは、それぞれのトランジスタQ3a〜Q5bのゲート端子に印加される。
(13−1−2−8)熱源側マイクロコンピュータ42
熱源側マイクロコンピュータ42は、電圧検出器23、電流検出器24、及びゲート駆動回路26と接続されている。本実施形態では、熱源側マイクロコンピュータ42は、モータ70をロータ位置センサレス方式にて駆動させている。なお、ロータ位置センサレス方式に限定されるものではないので、センサ方式で行なってもよい。
ロータ位置センサレス方式とは、モータ70の特性を示す各種パラメータ、モータ70起動後の電圧検出器23の検出結果、電流検出器24の検出結果、及びモータ70の制御に関する所定の数式モデル等を用いて、ロータ位置及び回転数の推定、回転数に対するPI制御、モータ電流に対するPI制御等を行い駆動する方式である。モータ70の特性を示す各種パラメータとしては、使用されるモータ70の巻線抵抗、インダクタンス成分、誘起電圧、極数などが挙げられる。なお、ロータ位置センサレス制御については多くの特許文献が存在するので、詳細はそれらを参照されたい(例えば、特開2013−17289号公報)。
(13−1−3)第1実施形態の特徴
(13−1−3−1)
少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒を用いた空調機1において、必要に応じ、電力変換装置30を介してモータ70の回転数を変更することができる。言い換えると、空調負荷に応じて圧縮機100のモータ回転数を変更することができるので、高い通年エネルギー消費効率[Annual Performance Factor (APF)]を実現することができる。
(13−1−3−2)
また、整流回路21の出力側に電解コンデンサを要しないので、回路の大型化、高コスト化が抑制される。
(13−1−4)第1実施形態の変形例
図13Cは、第1実施形態の変形例における電力変換装置130の回路ブロック図である。図13Cにおいて、本変形例と上記第1実施形態との相違点は、単相交流電源90に替えて三相交流電源190に対応することができるように、単相用の整流回路21に替えて三相用の整流回路121を採用している点である。
整流回路121は、6つのダイオードD0a,D0b,D1a,D1b,D2a,D2bによってブリッジ状に構成されている。具体的には、ダイオードD0aとD0b、ダイオードD1aとD1b、D2aとD2bは、それぞれ互いに直列に接続されている。
ダイオードD0a,D1a,D2aの各カソード端子は、共にコンデンサ22のプラス側端子に接続されており、整流回路121の正側出力端子として機能する。ダイオードD0b,D1b,D2bの各アノード端子は、共にコンデンサ22のマイナス側端子に接続されており、整流回路121の負側出力端子として機能する。
ダイオードD0a及びダイオードD0bの接続点は、交流電源190のR相の出力側に接続されている。ダイオードD1a及びダイオードD1bの接続点は、交流電源190のS相の出力側に接続されている。ダイオードD2a及びダイオードD2bの接続点は、交流電源190のT相の出力側に接続されている。整流回路121は、交流電源190から出力される交流電圧を整流して直流電圧を生成し、これをコンデンサ22へ供給する。
なお、他の構成については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
(13−1−5)第1実施形態の変形例の特徴
(13−1−5−1)
少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒を用いた空調機1において、必要に応じ、電力変換装置130を介してモータ70の回転数を変更することができる。言い換えると、空調負荷に応じて圧縮機100のモータ回転数を変更することができるので、高い通年エネルギー消費効率[Annual Performance Factor (APF)]を実現することができる。
(13−1−5−2)
また、整流回路121の出力側に電解コンデンサを要しないので、回路の大型化、高コスト化が抑制される。
(13−2)第2実施形態
図13Dは、本開示の第2実施形態に係る空調機に搭載される電力変換装置30Bの回路ブロック図である。
(13−2−1)電力変換装置30Bの構成
図13Dにおいて、電力変換装置30Bは、インダイレクトマトリックスコンバータである。図13Bの第1実施形態の電力変換装置30との相違点は、整流回路21に替えてコンバータ27を採用し、ゲート駆動回路28と、リアクタ33を新たに追加している点であり、これら以外は、第1実施形態と同様である。
ここでは、コンバータ27、ゲート駆動回路28と、リアクタ33について説明し、他の構成については記載を省略する。
(13−2−1−1)コンバータ27
図13Dにおいて、コンバータ27は、複数のIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ、以下、単にトランジスタという)Q1a,Q1b,Q2a,Q2b及び複数のダイオードD1a,D1b,D2a,D2bを含んでいる。
トランジスタQ1aとQ1bは互いに直列に接続されることによって上下アームを構成しており、それによって形成された接続点は交流電源90の一方の極に接続されている。トランジスタQ2aとQ2bは互いに直列に接続されることによって上下アームを構成しており、それによって形成された接続点は交流電源90の他方の極に接続されている。
各ダイオードD1a〜D2bは、各トランジスタQ1a〜Q2bに、トランジスタのコレクタ端子とダイオードのカソード端子が、また、トランジスタのエミッタ端子とダイオードのアノード端子が接続されるよう、並列接続されている。このそれぞれ並列接続されたトランジスタとダイオードにより、スイッチング素子が構成される。
コンバータ27は、ゲート駆動回路28により指示されたタイミングで各トランジスタQ1a〜Q2bがオン及びオフを行う。
(13−2−1−2)ゲート駆動回路28
ゲート駆動回路28は、熱源側マイクロコンピュータ42からの指令電圧に基づき、コンバータ27の各トランジスタQ1a〜Q2bのオン及びオフの状態を変化させる。具体的には、ゲート駆動回路28は、交流電源90から熱源側に流れる電流を所定の値に制御するよう熱源側マイクロコンピュータ42によって決定されたデューティを有するパルス状のゲート制御電圧Pq,Pr,Ps,Ptを生成する。生成されたゲート制御電圧Pq,Pr,Ps,Ptは、それぞれのトランジスタQ1a〜Q2bのゲート端子に印加される。
(13−2−1−3)リアクタ33
リアクタ33は、交流電源90とコンバータ27との間に交流電源90と直列に接続されている。具体的には、その一端が交流電源90の1つの極に接続され、他端がコンバータ27の1つの入力端に接続されている。
(13−2−2)動作
熱源側マイクロコンピュータ42は、コンバータ27の上下アームのトランジスタQ1a,Q1bまたはトランジスタQ2a,Q2bをオン・オフすることで、所定時間だけ短絡・開放させ、例えば電流を略正弦波状に制御することによって、電源入力力率の改善や高調波成分の抑制を行う。
また、熱源側マイクロコンピュータ42は、インバータ25を制御するゲート制御電圧のデューティ比に基づいて短絡期間を制御するような、コンバータとインバータの協調制御を行う。
(13−2−3)第2実施形態の特徴
空調機1は、高効率な上に、コンバータ27の出力側に電解コンデンサを要しないので回路の大型化、高コスト化が抑制される。
(13−2−4)第2実施形態の変形例における電力変換装置130Bの構成
図13Eは、第2実施形態の変形例における電力変換装置130Bの回路ブロック図である。図13Eにおいて、本変形例と上記第2実施形態との相違点は、単相交流電源90に替えて三相交流電源190に対応することができるように、単相用のコンバータ27に替えて三相用のコンバータ127を採用している点である。また、単相用のコンバータ27から三相用のコンバータ127への変更に伴い、ゲート駆動回路28に替えてゲート駆動回路128を採用している点である。さらに、各相の出力側とコンバータ127との間にリアクタ33が接続されている。なお、リアクタ33の入力側端子間にコンデンサを接続しているが、外すことも可能である。
(13−2−4−1)コンバータ127
コンバータ127は、複数のIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ、以下、単にトランジスタという)Q0a,Q0b,Q1a,Q1b,Q2a,Q2b及び複数のダイオードD0a,D0b,D1a,D1b,D2a,D2bを含んでいる。
トランジスタQ0aとQ0bは互いに直列に接続されることによって上下アームを構成しており、それによって形成された接続点は交流電源190のR相の出力側に接続されている。トランジスタQ1aとQ1bは互いに直列に接続されることによって上下アームを構成しており、それによって形成された接続点は交流電源190のS相の出力側に接続されている。トランジスタQ2aとQ2bは互いに直列に接続されることによって上下アームを構成しており、それによって形成された接続点は交流電源190のT相の出力側に接続されている。
各ダイオードD0a〜D2bは、各トランジスタQ0a〜Q2bに、トランジスタのコレクタ端子とダイオードのカソード端子が、また、トランジスタのエミッタ端子とダイオードのアノード端子が接続されるよう、並列接続されている。このそれぞれ並列接続されたトランジスタとダイオードにより、スイッチング素子が構成される。
コンバータ127は、ゲート駆動回路128により指示されたタイミングで各トランジスタQ1a〜Q2bがオン及びオフを行う。
(13−2−4−2)ゲート駆動回路128
ゲート駆動回路128は、熱源側マイクロコンピュータ42からの指令電圧に基づき、コンバータ127の各トランジスタQ0a〜Q2bのオン及びオフの状態を変化させる。具体的には、ゲート駆動回路128は、交流電源190から熱源側に流れる電流を所定の値に制御するよう熱源側マイクロコンピュータ42によって決定されたデューティを有するパルス状のゲート制御電圧Po,Pp,Pq,Pr,Ps,Ptを生成する。生成されたゲート制御電圧Po,Pp,Pq,Pr,Ps,Ptは、それぞれのトランジスタQ0a〜Q2bのゲート端子に印加される。
(13−2−5)第2実施形態の変形例の特徴
空調機1は、高効率な上に、コンバータ127の出力側に電解コンデンサを要しないので回路の大型化、高コスト化が抑制される。
(13−3)第3実施形態
図13Fは、本開示の第3実施形態に係る空調機に搭載される電力変換装置30Cの回路ブロック図である。
(13−3−1)第3実施形態における電力変換装置30Cの構成
図13Fにおいて、電力変換装置30Cは、マトリックスコンバータ29である。
(13−3−1−1)マトリックスコンバータ29の構成
マトリックスコンバータ29は、交流電源90からの入力の一端には双方向スイッチS1a,S2a,S3aを接続し、他方の一端には双方向スイッチS1b,S2b,S3bを接続することによって構成されている。
直列に接続された双方向スイッチS1aと双方向スイッチS1bの中間端には、モータ70の3相巻線のうちのU相巻線Luの一端が接続されている。また、直列に接続された双方向スイッチS2aと双方向スイッチS2bの中間端には、モータ70の3相巻線のうちのV相巻線Lvの一端が接続されている。また、直列に接続された双方向スイッチS3aと双方向スイッチS3bの中間端には、モータ70の3相巻線のうちのW相巻線Lwの一端が接続されている。
交流電源90から入力された交流電力は、双方向スイッチS1a〜S3bでスイッチングされることにより、所定の周波数の交流に変換され、モータ70を駆動することができる。
(13−3−1−2)双方向スイッチの構成
図13Gは、双方向スイッチを概念的に示す回路図である。図13Gにおいて、トランジスタQ61,Q62と、ダイオードD61,D62と、端子Ta,Tbを有している。トランジスタQ61,Q62は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)である。
トランジスタQ61は、エミッタEが端子Taに接続され、コレクタCがダイオードD61を介して端子Tbに接続されている。このコレクタCには、ダイオードD61のカソードが接続される。
トランジスタQ62は、エミッタEが端子Tbに接続され、コレクタCがダイオードD62を介して端子Taに接続されている。このコレクタCには、ダイオードD62のカソードが接続される。端子Taは入力側に接続され、端子Tbは出力側に接続される。
トランジスタQ61をオンに、トランジスタQ62をオフにすることによって、端子Tbから端子TaへとダイオードD61およびトランジスタQ61をこの順に介して電流を流すことができる。このとき、端子Taから端子Tbへの電流の流れ(逆流)は、ダイオードD61によって阻止される。
他方、トランジスタQ61をオフに、トランジスタQ62をオンにすることで、端子Taから端子TbへとダイオードD62およびトランジスタQ62をこの順に介して電流を流すことができる。このとき、端子Tbから端子Taへの電流の流れ(逆流)は、ダイオードD62によって阻止される。
(13−3−2)動作
図13Hは、マトリックスコンバータ29の電流方向の一例を示した回路図である。交流電源90からマトリックスコンバータ29を通じ、モータ70へと流れる電流の経路の一例を示している。交流電源90の一つの極から双方向スイッチS1aを通して、モータ70の3相巻線の一つであるU相巻線LuからW相巻線Lwを経て、双方向スイッチS3bを通り、交流電源90の他の極へと電流は流れる。これによって、モータ70へ電力が供給されモータ70が駆動される。
図13Iは、マトリックスコンバータ29の別の電流方向の一例を示した回路図である。図13Iにおいて、交流電源90の一つの極から双方向スイッチS3aを通して、モータ70の3相巻線の一つであるW相巻線LwからU相巻線Luを経て、双方向スイッチS1bを通り、交流電源90の他の極へと電流は流れる。これによって、モータ70へ電力が供給されモータ70が駆動される。
(13−3−3)第3実施形態の特徴
空調機1は、高効率な上に、マトリックスコンバータ29の出力側に電解コンデンサを要しないので回路の大型化、高コスト化が抑制される。
(13−3−4)第3実施形態の変形例における電力変換装置130Cの構成
図13Jは、第3実施形態の変形例における電力変換装置130Cの回路ブロック図である。図13Jにおいて、本変形例と上記第3実施形態との相違点は、単相交流電源90に替えて三相交流電源190に対応することができるように、単相用のマトリックスコンバータ29に替えて三相用のマトリックスコンバータ129を採用している点である。
(13−3−4−1)マトリックスコンバータ129の構成
また、単相用のマトリックスコンバータ29から三相用のマトリックスコンバータ129への変更に伴い、ゲート駆動回路31に替えてゲート駆動回路131を採用している点も相違点である。さらに、各相の出力側とマトリックスコンバータ129との間にリアクタL1,L2,L3が接続されている。
双方向スイッチS1a〜S3cで変換して得られた所定の3相交流電圧は、各相巻線端子TU,TV,TWを介して、モータ70に供給される。各リアクタL1,L2,L3は、各入力端子に接続されている。各コンデンサC1,C2,C3は、それぞれの一端が互いに接続され、それぞれの他端が出力端子に接続されている。
電力変換装置130Cでは、リアクタL1,L2,L3を、マトリックスコンバータ129を介して短絡させることによって、3相交流電源190から供給されるエネルギーをリアクタL1,L2,L3に蓄積することができ、コンデンサC1,C2,C3の両端電圧を昇圧することができる。よって、電圧利用率を1以上にすることができる。
このとき、マトリックスコンバータ129の入力端子には電圧型の3相交流電圧Vr,Vs,Vtが入力され、出力端子からは電流型の3相交流電圧Vu,Vv,Vwが出力される。
また、コンデンサC1,C2,C3それぞれが、リアクタL1,L2,L3とでLCフィルタを構成するので、出力端子に出力される電圧に含まれる高周波成分を低減することができ、モータ70に生じるトルクの脈動成分や、騒音を低減することができる。
さらに、整流回路とインバータとを用いたAC−AC変換回路に比べ、スイッチング素子数は少なくて良く、電力変換装置130Cで生じる損失が低減できる。
(13−3−4−2)クランプ回路133の構成
また、電力変換装置30では、入力端子と出力端子との間にクランプ回路133が接続されているので、双方向スイッチS1a〜S3bのスイッチングによってマトリックスコンバータ129の入力端子と出力端子との間に生じるサージ電圧を、クランプ回路133内のコンデンサ(図13I参照)で吸収することができる。
図13Kは、クランプ回路133の回路図である。図13Iにおいて、クランプ回路133は、ダイオードD31a〜D36bと、コンデンサC21と、端子135〜140とを有する。
端子135には、ダイオードD31aのアノードと、ダイオードD31bのカソードが接続されている。端子136には、ダイオードD32aのアノードと、ダイオードD32bのカソードが接続されている。端子137には、ダイオードD33aのアノードと、ダイオードD33bのカソードが接続されている。
各ダイオードD31a,D32a,D33aのカソードは、コンデンサC37の一端に接続され、各ダイオードD31b,D32b,D33bのアノードは、コンデンサC37の他端に接続されている。
端子138には、ダイオードD34aのアノードと、ダイオードD34bのカソードが接続されている。端子139には、ダイオードD35aのアノードと、ダイオードD35bのカソードが接続されている。端子140には、ダイオードD36aのアノードと、ダイオードD36bのカソードが接続されている。
各ダイオードD34a,D35a,D36aのカソードは、コンデンサC37の一端に接続され、各ダイオードD34b,D35b,D36bのアノードは、コンデンサC37の他端に接続されている。
各端子135,136,137はマトリックスコンバータ129の入力側に接続され、端子138,139,140はマトリックスコンバータ129の出力側に接続される。クランプ回路133によって、入力端子と出力端子との間にクランプ回路133が接続されているので、双方向スイッチS1a〜S3bのスイッチングによってマトリックスコンバータ129の入力端子と出力端子との間に生じるサージ電圧をクランプ回路133内のコンデンサC37で吸収することができる。
上記の通り、電力変換装置130Cは電源電圧よりも大きい電圧をモータ70に供給することができるので、電力変換装置130Cおよびモータ70に流れる電流が小さくても、所定のモータ出力を得ることができ、換言すれば、電流が小さくて良いので、電力変換装置130Cおよびモータ70で生じる損失を低減できる。
(13−3−5)第3実施形態の変形例の特徴
空調機1は、高効率な上に、マトリックスコンバータ129の出力側に電解コンデンサを要しないので回路の大型化、高コスト化が抑制される。
(13−4)その他
(13−4−1)
空調機1の圧縮機100は、スクロール圧縮機、ロータリー圧縮機、ターボ圧縮機、およびスクリュー圧縮機のいずれかが採用される。
(13−4−2)
圧縮機100のモータ70は、永久磁石を含む回転子71を有する永久磁石同期モータである。
(14)第14グループの技術の実施形態
(14−1)
図14Aは、本開示の一実施形態に係る空調機1の構成図である。図14Aにおいて、空調機1は、利用ユニット2と熱源ユニット3とによって構成されている。
(14−1−1)空調機1の構成
空調機1は、圧縮機100、四路切換弁16,熱源側熱交換器17、減圧機構としての膨張弁18、及び利用側熱交換器13が、冷媒配管によって環状に接続された冷媒回路11を有している。
本実施形態では、冷媒回路11には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が充填されている。当該冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。また、冷媒回路11には、当該混合冷媒と共に、冷凍機油が充填されている。
(14−1−1−1)利用ユニット2
冷媒回路11のうち、利用側熱交換器13は利用ユニット2に属している。また、利用ユニット2には、利用側ファン14が搭載されている。利用側ファン14は、利用側熱交換器13への空気の流れを生成する。
利用ユニット2側には、利用側通信器35、及び利用側マイクロコンピュータ41が搭載されている。利用側通信器35は利用側マイクロコンピュータ41に接続されている。
利用側通信器35は、利用ユニット2が熱源ユニット3と通信を行う際に使用される。利用側マイクロコンピュータ41は、空調機1が運転していない待機中も、制御用電圧の供給を受けているので、利用側マイクロコンピュータ41は常に起動している。
(14−1−1−2)熱源ユニット3
冷媒回路11のうちの圧縮機100、四路切換弁16,熱源側熱交換器17、及び膨張弁18は熱源ユニット3に属している。また、熱源ユニット3には、熱源側ファン19が搭載されている。熱源側ファン19は、熱源側熱交換器17への空気の流れを生成する。
また、熱源ユニット3側には、接続部30、熱源側通信器36、及び熱源側マイクロコンピュータ42が搭載されている。接続部30および熱源側通信器36はともに熱源側マイクロコンピュータ42に接続されている。
(14−1−2)接続部30の構成
図14Bは、圧縮機100のモータ70の運転回路図である。図14Bにおいて、接続部30は、交流電源90から圧縮機100のモータ70へと周波数変換をさせずに電力を供給させる回路である。
モータ70は、誘導モータであって、かご型の回転子71と、主巻線727および補助巻線728を有する固定子72とを含んでいる。かご型の回転子71は、固定子72で発生する回転磁界に追従して回転する。
圧縮機100は、M端子、S端子およびC端子を有している。M端子とC端子との間は、主巻線727によって繋がっている。S端子とM端子との間は、補助巻線728とによって繋がっている。
交流電源90と圧縮機100とは、圧縮機100に交流電圧を供給する電源ライン901,902とによって繋がっている。電源ライン901は、サーモスタット26を介してC端子に接続されている。
サーモスタット26は、空調機1が据え付けられている室内の温度を検出し、室温が設定温度範囲内のときは接点を開放し、室温が設定温度範囲外のときに接点を閉じる。
電源ライン902は、途中、第1分岐ライン902Aと第2分岐ライン902Bとに分かれており、第1分岐ライン902AはM端子に接続され、第2分岐ライン902Bは起動回路20を介してS端子に接続されている。
起動回路20は、正特性サーミスタ21と、運転コンデンサ22とを並列に接続した回路である。
本実施形態では、電源ライン901に接続されているサーモスタット26、および電源ライン902に接続されている起動回路20を接続部30とよぶ。
(14−1−3)動作
上記のように構成された圧縮機100の運転回路において、交流電源90が投入されると、補助巻線728に正特性サーミスタ21を通じて電流が流れ、モータ70が起動する。
モータ70の起動後、正特性サーミスタ21は自身を流れる電流によって自己発熱し、抵抗値が増大する。その結果、正特性サーミスタ21に替わって運転コンデンサ22と補助巻線728とが接続された状態となり、安定動作に移行する。
(14−1−4)特徴
(14−1−4−1)
少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒を使用した空調機1において、交流電源90とモータ70との間に電力変換装置を介在させずに圧縮機100を駆動することができるので、比較的安価な構成で、環境保護に配慮した空調機1を提供することができる。
(14−1−4−2)
少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒を使用した空調機1において、正特性サーミスタ21と運転コンデンサ22との並列回路である起動回路20を補助巻線728に接続したことによって、圧縮機100のモータ70の起動トルクを大きくとることができる。
圧縮機100の起動後は、正特性サーミスタ21は自己発熱して抵抗値が増大し、実質的に運転コンデンサ22と補助巻線728とが接続された状態へ切り替わり、一定の回転数(電源周波数)で運転されるので、圧縮機100は定格トルクを出力し得る状態となる。上記の通り、空調機1では、運転コンデンサ22への接続切替が適時に実施されるので、圧縮機100の高効率化が可能となる。
(14−1−4−3)
モータ70が誘導モータであり、比較的低コストで高出力が可能であるので、空調機1の高効率化が可能である。
(14−1−5)変形例
図14Cは、変形例に係る空調機1における圧縮機200のモータ170の運転回路図である。図14Cにおいて、モータ170は、三相誘導モータであって、接続部130を介して三相交流電源190に接続されている。
接続部130は、接点130u、130vおよび130wを有するリレーである。接点130uは、三相交流電源190のR端子とモータ170のU相巻線Luとの間の電源ライン903を開閉する。接点130vは、三相交流電源190のS端子とモータ170のV相巻線Lvとの間の電源ライン904を開閉する。接点130wは、三相交流電源190のT端子とモータ170のW相巻線Lwとの間の電源ライン905を開閉する。
そして、三相交流電源190のR端子、S端子およびT端子から、対応するモータ170のU相巻線Lu、V相巻線LvおよびW相巻線Lwに交流電圧が供給される。モータ170のV相巻線Lvに供給される交流電圧は、U相巻線Luに供給される交流電圧に対して位相が120°ずれている。また、モータ170の、W相巻線Lwに供給される交流電圧は、V相巻線Lvに供給される交流電圧に対して位相が120°ずれている。
したがって、モータ170に三相交流電源190から交流電圧が供給されるだけで、固定子172に回転磁界が発生し、回転子171がその回転磁界に追従して回転する。その結果、圧縮機200は一定の回転数(電源周波数)で運転される。よって、モータ170の運転回路には、上記実施形態のような起動回路20は必要なく、接続部130のリレー回路だけでよい。
(14−1−5)変形例の特徴
(14−1−5−1)
少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒を使用した空調機1において、三相交流電源190とモータ170との間に電力変換装置を介在させずに圧縮機200を駆動することができるので、比較的安価な構成で、環境保護に配慮した空調機1を提供することができる。
(14−1−5−2)
モータ170が誘導モータであり、比較的低コストで高出力が可能であるので、空調機1の高効率化が可能である。
(15)第15グループの技術の実施形態
(15−1)第1実施形態
第1実施形態に係る温水製造装置である給湯システム1は、図15A〜図15Cに示すように、ヒートポンプ2、貯湯ユニット3、これらの管理や制御を行うコントローラ50、ユーザーへの情報表示やユーザーの操作受付を担うリモコン90、などを備えている。
(15−1−1)ヒートポンプ
ヒートポンプ2は、水を加熱するための熱源装置として機能するユニットであり、冷媒が循環する冷媒回路20、送風ファン24F、各種センサ、などを備えている。本実施形態では、冷媒回路20には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が充填されている。当該冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。
冷媒回路20は、圧縮機21、利用側の水熱交換器22、電動膨張弁23、熱源側の空気熱交換器24、冷媒配管25、などから構成されている。
圧縮機21は、インバータ式の出力可変の電動圧縮機である。
水熱交換器22は、冷媒の熱を利用する利用側の熱交換器として機能し、冷媒管22rと、水管32wとを有している。水熱交換器22は、ヒートポンプ2の圧縮機21によって吐出された後に冷媒管22rを流れる高温高圧のガス冷媒と、後述する貯湯ユニット3から流れてきて水管32wを流れる循環水との間で、熱交換を行わせる。この水熱交換器22における熱交換によって、冷媒管22rを通過する冷媒が冷却されると同時に、水管32wを通過する水が加熱され、湯(高温の水=温水)が生成される。
電動膨張弁23は、圧縮機21を出て、水との熱交換で冷却された低温高圧の冷媒を膨張させる。
空気熱交換器24は、外気から熱を奪う熱源側の熱交換器として機能し、電動膨張弁23で膨張した低温低圧の二相状態の冷媒と、外気との間で、熱交換を行わせる。外気から吸熱した冷媒は、蒸発して低圧のガス冷媒となって圧縮機21に吸入される。
冷媒配管25は、圧縮機21の吐出口、水熱交換器22内の冷媒管22r、電動膨張弁23、空気熱交換器24、圧縮機21の吸入口、の順に各機器を接続している。
各種センサとしては、例えば、冷媒に関する温度や圧力を検知するセンサが設けられる。図15Bには、これらのセンサのうち、熱交換器入口水温センサ31Tと、熱交換器出口水温センサ32Tとを示している。熱交換器入口水温センサ31Tは、水熱交換器22に入る前の水の温度を検出する。すなわち、熱交換器入口水温センサ31Tは、水熱交換器22を通過する前の水の温度を検出する。熱交換器出口水温センサ32Tは、水熱交換器22を通過した後の水の温度を検出する。
(15−1−2)貯湯ユニット
貯湯ユニット3は、市水(水道水)などの外部から供給される水を、ヒートポンプ2に送って加熱させ、ヒートポンプ2から戻ってきた水(湯)を蓄えるユニットである。また、貯湯ユニット3は、ユーザーが設定する温度の湯が供給されるように、燃焼加熱装置4や混合弁77によって温度調整された湯を給湯部82に送る機能を持つ。
貯湯ユニット3は、取水部81、給湯部82、貯湯タンク35、循環水配管30、取水給湯配管70、燃焼加熱装置4、などを備えている。
(15−1−2−1)取水部および給湯部
取水部81は、接続口を有し、市水(水道水)の供給管89aが接続される。
給湯部82は、接続口を有し、設置対象の建物内の蛇口99などから延びる給水・給湯用の建物内配管99aが接続される。
(15−1−2−2)貯湯タンク
貯湯タンク35は、ヒートポンプ2によって加熱された水(湯)を、ユーザーが蛇口99を回して利用する前から予め蓄えておくタンクである。貯湯タンク35は、水が常に満たされている。そして、貯湯タンク35には、所定温度以上、ここでは70℃以上の高温の水(以下、高温水という。)の量をコントローラ50に把握させるための、タンク温度分布検知センサが設けられている。タンク温度分布検知センサは、貯湯タンク35の下部から上部に向かって、順に、第1センサT1、第2センサT2、第3センサT3、第4センサT4、第5センサT5、第6センサT6の6つにより構成される。コントローラ50は、これらのタンク温度分布検知センサT1〜T6が検知する貯湯タンク35内の各高さ位置での水温およびリモコン90による設定に基づき、ヒートポンプ2を駆動させて沸き上げ運転を行う。沸き上げ運転とは、貯湯タンク35の中の水の温度が目的の温度に到達するまで水の熱量を上げていく運転である。沸き上げ運転における目的の温度、すなわち、貯湯タンク35の中の水の目標貯湯温度は、例えば予め給湯システム1の製造工場において設定されている。本実施形態では、目標貯湯温度は75℃である。
なお、第6センサT6の温度検出値が70℃を下回っていれば、残湯量は0、第6センサT6の温度検出値が70℃以上であれば、残湯量は1である。さらに、第5センサT5の温度検出値も70℃以上であれば、残湯量は2である。同様に、残湯量は3,4,5,6まで存在し、第1センサT1の温度検出値も70℃以上であれば、残湯量は最大の6である。
(15−1−2−3)循環水配管
循環水配管30は、貯湯タンク35の中の水にヒートポンプ2で得られる熱を伝えるための回路であり、往き管31、水熱交換器22内の水管32w、戻り管33、および、循環用ポンプ34を有している。往き管31は、貯湯タンク35の下端近傍と水熱交換器22内の水管32wの上流側端部とを接続している。戻り管33は、水熱交換器22内の水管32wの下流側端部と貯湯タンク35の上端近傍とを接続している。循環用ポンプ34は、往き管31の途中に設けられている。循環用ポンプ34は、出力を調整することができる電動ポンプであり、貯湯タンク35と水熱交換器22との間で水を循環させる役割を果たす。具体的には、循環水配管30では、循環用ポンプ34がコントローラ50からの指令を受けて駆動することにより、貯湯タンク35内の水のうち下部に存在している温度の低い水が、往き管31に流出し、水熱交換器22内の水管32wを通過することで温度上昇し、戻り管33を介して貯湯タンク35の上端近傍に戻ってくる。これにより、貯湯タンク35内の高温水とそれより温度が低い水との境界が上から下に向けて移動していくことになり、貯湯タンク35内の高温水の量が増えていく。
(15−1−2−4)取水給湯配管および燃焼加熱装置
取水給湯配管70は、外部の市水等から水の供給を受けつつ、貯湯タンク35に蓄えられている高温水を利用するための回路であって、取水管71、給湯管73、バイパス管74、および、混合弁77を有している。
取水管71は、外部の市水等から水の供給を受けて、貯湯タンク35の下端近傍に常温の水を供給する。この取水管71には、市水によって供給される水の温度を検知するための取水温度センサ71Tが設けられている。
給湯管73は、貯湯タンク35に蓄えられている水のうち、上端近傍に存在している温度の高い水を、給湯部82から、ユーザーの利用箇所、例えば建物内の蛇口99から延びる建物内配管99aに導く。
燃焼加熱装置4は、給湯管73の途中に配備されている。燃焼加熱装置4は、貯湯タンク35と混合弁77との間に配置されており、燃料ガスを燃焼させる燃焼バーナー41を備えている。燃焼バーナー41は、その加熱能力が調整できるガスバーナーであり、コントローラ50の指令に応じて加熱量を調整しながら給湯管73を流れる水を加熱する。
また、給湯管73の燃焼加熱装置4と混合弁77との間には、通過する水の温度を検知するための混合前湯温センサ4Tが設けられている。
バイパス管74は、取水管71を流れている常温の水と、給湯管73を流れてくる水(湯)と、を混合させるための配管である。バイパス管74は、取水管71から給湯管73まで延びており、混合弁77によって給湯管73に接続されている。
混合弁77は、コントローラ50からの指令を受け、給湯管73を流れてくる高い温度の水(湯)と、バイパス管74を流れてくる常温の水との混合比率を調節するための調整弁である。
(15−1−3)コントローラおよびリモコン
コントローラ50は、貯湯ユニット3の内部に設置されており、圧縮機21、電動膨張弁23、送風ファン24F、混合弁77、燃焼バーナー41、循環用ポンプ34などのアクチュエータと接続され、これらのアクチュエータに動作指示を送る。また、コントローラ50は、熱交換器入口水温センサ31T、熱交換器出口水温センサ32T、タンク温度分布検知センサT1〜T6、取水温度センサ71T、混合前湯温センサ4T、などのセンサ類と接続されており、これらのセンサ類から検知結果を取得する。さらに、コントローラ50には、ユーザーの設定入力を受け付けたりユーザーへの情報提供を行ったりするためのリモコン90が接続されている。
リモコン90には、図15Cに示すように、必要な湯(水)の温度を設定するための湯温設定部91や、設定湯温や残湯量などを表示する表示部92などが設けられている。
(15−1−4)給湯システムの特徴
本実施形態に係る給湯システム1では、冷媒Aのいずれかを用いて、水熱交換器22によって水を加熱しているため、効率が高い。供給される水が硬水である場合、スケールが生じるというデメリットがあるが、供給される水が軟水である場合には、本実施形態に係る給湯システム1を採用するメリットが特に大きい。
(15−1−5)第1実施形態の第1の変形例
第1実施形態の給湯システム1に代えて、図15Dに示す給湯システム1aを採用すれば、スケールの発生のデメリットを抑制することができる。図15Dの給湯システム1aでは、ヒートポンプ2aが、第1実施形態のヒートポンプ2が保有しないサブの循環水配管60を備えている。サブの循環水配管60には、サブの循環用ポンプ64が設けられている。サブの循環水配管60の中の水は、水熱交換器22において冷媒から熱を奪い、サブの水熱交換器62においてメインの循環水配管30を流れる水に放熱する。メインの水熱交換器22は、冷媒と水との間で熱交換をさせる熱交換器であるが、サブの水熱交換器62は、水と水との間で熱交換をさせる熱交換器である。
図15Dに示す給湯システム1aでは、ヒートポンプ2aの圧縮機21から吐出された高温のガス冷媒によって、サブの環水配管60を流れる水がサブの水熱交換器62において加熱され、その加熱された水によって、メインの循環水配管30を流れる水がサブの水熱交換器62において加熱される。サブの循環水配管60によって構成される水の流路は閉ループであり、ここでは殆どスケールは発生しない。
(15−1−6)第1実施形態の第2の変形例
第1実施形態の給湯システム1に代えて、図15Eに示す給湯システム1bを採用すれば、スケールの発生のデメリットを抑制することができる。図15Eの給湯システム1bでは、貯湯ユニット3bが、第1実施形態の貯湯ユニット3が保有しない熱交換部38を備えている。熱交換部38は、循環水配管30bの一部であって、貯湯タンク35の内部に配置される。第1実施形態の給湯システム1では、貯湯タンク35の下部から水を循環水配管30に流出させ、加熱後の水を貯湯タンク35の上端近傍に戻しているが、図15Eに示す給湯システム1bでは、閉ループを構成する循環水配管30bを流れる加熱水によって、貯湯タンク35の中の水の沸き上げが行われる。貯湯タンク35の中の水は、熱交換部38を流れる温水から熱を奪って温度が上がっていく。
図15Eに示す給湯システム1bでは、循環水配管30bによって構成される水の流路は閉ループであり、ここでは殆どスケールは発生しない。
また、図15Eに示す給湯システム1bのヒートポンプ2bには、利用側の熱交換器として機能する水熱交換器22に加えて、同じく利用側の水熱交換器22aを備える。水熱交換器22aは、水熱交換器22の冷媒流れの上流側に配置され、水循環流路190を流れる水を加熱する。水循環流路190は、床暖房を行うために床の下に配置された熱交換器192と、ヒートポンプ2bの水熱交換器22aとを結ぶ、閉じたループ流路である。水循環流路190には、ポンプ194が設けられている。水熱交換器22aにおいて圧縮機21から吐出された高温の混合冷媒から熱を奪って加熱された水は、ポンプ194の駆動によって床の下の熱交換器192に送られる。熱交換器192において放熱し、床暖房を行った水は、水循環流路190を通って再び水熱交換器22aに流入する。
ここでは、ヒートポンプ2bが、貯湯タンク35の中の水を加熱して給湯に役立つとともに、床暖房の熱源としての役割も果たす。
(15−2)第2実施形態
(15−2−1)温水循環暖房システムの主要構成
第2実施形態に係る温水製造装置である温水循環暖房システムの構成を、図15F〜図15Hに示す。温水循環暖房システムは、建物において温水を循環させて暖房を行うとともに給湯機能を持つシステムであって、温水を溜めるタンク240と、居室内ラジエータ261a,262aと、トイレ内放熱器269b,269c,269eと、屋内暖房用循環ポンプ251と、温水を加熱するための蒸気圧縮式のヒートポンプ210と、温水加熱用循環ポンプ225と、給湯用熱交換器241aと、加熱水散布装置275と、コントロールユニット220とを備えている。
居室内ラジエータ261a,262aは、建物の居室261,262に配置され、温水の持つ熱を居室261,262の室内空気に放熱させる。
トイレ内放熱器269b,269c,269eは、建物のトイレ269に配置され、温水の持つ熱をトイレ269内で放熱させる。
屋内暖房用循環ポンプ251は、タンク240から居室内ラジエータ261a,262aおよびトイレ内放熱器269b,269c,269eへと温水を流し、居室内ラジエータ261a,262aおよびトイレ内放熱器269b,269c,269eで放熱を行った温水を再びタンク240へと戻す。タンク240を出た温水は、居室内ラジエータ261a,262aを流れた後、トイレ内放熱器269b,269c,269eを流れて、タンク240へと戻る。
ヒートポンプ210は、圧縮機211、放熱器212、膨張弁213および蒸発器214を有する冷媒回路を備え、蒸発器214により外気から熱を奪い、放熱器212から放出する熱によってタンク240から流れてくる温水を加熱する。本実施形態では、冷媒回路には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が充填されている。当該冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。
温水加熱用循環ポンプ225は、タンク240からヒートポンプ210の放熱器212へと温水を流し、ヒートポンプ210の放熱器212から再びタンク240へと温水を戻す。
給湯用熱交換器241aは、タンク240内に配置され、給水源から取り入れた水とタンク240内の温水との間で熱交換をさせ、水を加熱して建物の給湯配管272に供給する。給湯用熱交換器241aで加熱され給湯配管272に供給される水を、以下、加熱水と称する。なお、給水源から取り入れられ給湯配管272に供給される水と、タンク240内の温水とは、互いに混ざり合うことはない。図15Fの符号241は、給水源から給湯配管272に至る水の流路である。
加熱水散布装置275は、給湯用熱交換器241aから給湯配管272に供給される加熱水を、ヒートポンプ210の蒸発器214の外表面に散布する装置である。
なお、タンク240に溜められ、屋内暖房用循環ポンプ251や温水加熱用循環ポンプ225により閉じたループを循環する温水は、ここでは普通の水を用いているが、液体であればよく、必ずしも水(H2O)でなくてもよい。屋内暖房用循環ポンプ251や温水加熱用循環ポンプ225の動力を低減でき、循環ルートとなる配管252,231などのサイズを水(H2O)よりも小さくすることができる液体があれば、その液体を用いることが望ましい。
(15−2−2)温水循環暖房システムの概略動作
温水循環暖房システムでは、温水加熱用循環ポンプ225の作動によりタンク240からヒートポンプ210の放熱器212に流れてくる温水を、ヒートポンプ210の作動により放熱器212から放出される熱を使って加熱する。これにより、ヒートポンプ210からタンク240へは、高温の温水が戻される。一方、タンク240内の温水は、屋内暖房用循環ポンプ251の作動により、居室261,262にある居室内ラジエータ261a,262aやトイレ269にあるトイレ内放熱器269b,269c,269eに送られる。温水の熱は、居室261,262の室内空気やトイレ内放熱器269b,269c,269eの周囲に移動し、居室261,262が暖房され、トイレ269においてもトイレタンク269a内の洗浄水や便座269dなどが暖められる。そして、約10℃〜20℃に温度が下がった温水が、再びタンク240に戻されてくる。この温度が下がった温水は、ヒートポンプ210の作動によって再び高温にされる。
このように、ここでは、配管231で接続されるタンク240とヒートポンプ210とを循環する第1のループと、配管252で接続されるタンク240と居室内ラジエータ261a,262aやトイレ内放熱器269b,269c,269eとを循環する第2のループとが形成されており、それぞれのループを温水が循環する。これにより、ヒートポンプ210の作動によって屋外から集めた熱や圧縮機211の作動により生じた熱が、タンク240に溜められた温水を介して、最終的には居室261,262の室内空気やトイレ269の各部に移動することになる。
また、タンク240内には給湯用熱交換器241aが配備されており、給水源から取り入れられた水が、給湯用熱交換器241aを通るときにタンク240内の温水から熱を奪って加熱水となり、建物の給湯配管272に流れていく。この給湯配管272に流れた加熱水は、シャワー273や浴槽274などで使用されることになる。さらに、給湯配管272に流れた加熱水の一部は、加熱水散布装置275により、ヒートポンプ210の蒸発器214の外表面に散布される。この散布は、ヒートポンプ210の蒸発器214に霜がつく所定条件のときに、定期的に行われる。
(15−2−3)コントロールユニット220の詳細構成
総合コントローラ229は、図15Fおよび図15Iに示すように、ヒートポンプ210に付随する機器およびタンク240に付随する機器を、外部から入力される信号に基づいて制御する。総合コントローラ229は、三方弁221,222や温水加熱用循環ポンプ225とともにケーシングの中に収められ、1つのコントロールユニット220を形成している(図15F参照)。
三方弁221,222は、タンク240の高さ方向のどの部分から温水を引き出して居室内ラジエータ261a,262aなどへ送り出すかや、トイレ内放熱器269b,269c,269eから戻ってくる低温の温水をタンク240の高さ方向のどの部分へ戻すかを調整するために設けられている。これらの三方弁221,222は、総合コントローラ229からの指示によって作動する。
総合コントローラ229は、三方弁221,222のほか、ブースターヒータ242、ヒートポンプ制御ユニット219、屋内暖房用循環ポンプ251、温水加熱用循環ポンプ225、温水流量調整弁253〜255、デフロスト用バルブ277、などを制御する。また、総合コントローラ229は、暖房温水往き温度センサ252a、暖房温水戻り温度センサ252b、タンク240の温度センサ240a〜240e、給水配管温度センサ271a、給湯配管温度センサ272aなどから計測結果の信号を受けるとともに、居室261,262などに配備されたリモコン/サーモスタット291から室内温度や室内設定温度の情報などを受ける。
(15−2−4)温水循環暖房システムの特徴
第2実施形態に係る温水循環暖房システムでは、冷媒Aのいずれかを用いて、ヒートポンプ210の放熱器212によって水を加熱しているため、効率が高い。また、ヒートポンプ210の放熱器212によって加熱される水は、タンク240に溜められ、屋内暖房用循環ポンプ251や温水加熱用循環ポンプ225により閉じたループを循環する。言い換えると、ヒートポンプ210の放熱器212によって加熱される水は、給水源から取り入れられ給湯配管272に供給される水と混ざり合うことはない。このため、ヒートポンプ210の放熱器212による水の加熱によって過度のスケールが発生することがない。
(15−2−5)第2実施形態の第1の変形例
第2実施形態の温水循環暖房システムでは、タンク240内に配置された給湯用熱交換器241aによって給水源から取り入れた水を加熱して給湯用の加熱水を作っているが、図15Jに示すように、水熱交換器112によって加熱水を作ってもよい。図15Jに示す温水循環暖房システムでは、第3のループを構成する水循環流路110およびポンプ115を設けて、タンク240の上部から温水を取り出し、水熱交換器112を通した後に、放熱した温水がタンク240の下部に戻るようにしている。水熱交換器112では、タンク240から流れてくる温水の放熱によって、給水源から取り入れた水が加熱され、給湯用の加熱水となって給湯配管272に流れていく。図15Jの符号118は、給水源から給湯配管272に至る水の流路である。
(15−2−6)第2実施形態の第2の変形例
第2実施形態の温水循環暖房システムでは、温水加熱用循環ポンプ225によって、タンク240の下部からヒートポンプ210の放熱器212へと温水を流し、ヒートポンプ210の放熱器212から再びタンク240の上部へと温水を戻しているが、図15Kに示すように、放熱器212を無くし、圧縮機211から吐出された高温高圧の混合冷媒をタンク240の中まで導く冷媒循環流路217を設け、タンク240の中に配置した熱交換器216によってタンク240内の水を加熱する構成を採ってもよい。図15Kに示す温水循環暖房システムでは、タンク240内の熱交換器216が、給湯用熱交換器241aの近傍に配置される。冷媒循環流路217を流れてきた高温の混合冷媒は、熱交換器216においてタンク240内の水に放熱し、凝縮して低温高圧の液相の冷媒となり、ヒートポンプ210のユニットへと戻る。ヒートポンプ210のユニットに戻った液冷媒は、膨張弁213で減圧されて蒸発器214に流入し、外気から熱を奪って蒸発する。その後、混合冷媒は、再び圧縮機211において圧縮され、高温高圧となる。熱交換器216によって加熱されたタンク240内の水は、熱交換器216に隣接する給湯用熱交換器241aを流れる水を加熱する。また、熱交換器216から輻射によっても、冷媒の熱が給湯用熱交換器241aへと伝えられる。給水源から取り入れられ給湯用熱交換器241aを流れる水は、タンク240内の水を介して熱交換器216から熱を奪って、また輻射によって熱交換器216から熱を奪って、加熱水となる。
図15Kに示す温水循環暖房システムでは、タンク240内の水と、給水源から給湯配管272に至る水(流路241を流れる水)とが分けられており、混合冷媒の凝縮器として機能するタンク240内の熱交換器216による水の急激な加熱があったとしても、スケールの発生量が少なくなる。
(15−3)第3実施形態
図15Lは、第3実施形態に係る温水製造装置である給湯システム310の概略構成図である。給湯システム310は、ホテル、病院およびスポーツ施設等の大型施設で利用される給湯設備である。図15Lに示されるように、給湯システム310は、主として、受水槽320と、熱源ユニット330と、貯湯タンク340と、湯利用部350と、制御部360と、給水ライン312と、出湯ライン314と、湯循環路316とを備える。給水ライン312は、受水槽320と熱源ユニット330とを接続する管である。出湯ライン314は、熱源ユニット330と貯湯タンク340とを接続する管である。湯循環路316は、貯湯タンク340と湯利用部350とを接続する管である。図15Lにおいて、給水ライン312、出湯ライン314および湯循環路316に沿った矢印は、水または湯の流れる方向を表す。次に、受水槽320、熱源ユニット330、貯湯タンク340、湯利用部350および制御部360について、それぞれ説明する。
(15−3−1)受水槽
受水槽320は、給湯システム310によって使用される水を貯留するための槽である。受水槽320は、上水道等に接続される。受水槽320は、給水ライン312を介して、熱源ユニット330に水を供給する。受水槽320の給水圧力は、40kPa〜500kPaである。
(15−3−2)熱源ユニット
熱源ユニット330は、屋外に設置される。熱源ユニット330は、受水槽320から給水ライン312を介して水の供給を受ける。熱源ユニット330は、給水ライン312から取り入れた水を加熱する。熱源ユニット330は、加熱された水である湯を、出湯ライン314を介して貯湯タンク340に送る。
図15Mは、熱源ユニット330の概略構成図である。図15Nは、給湯システム310のブロック図である。図15Mおよび図15Nに示されるように、熱源ユニット330は、主として、水流路331と、給水ポンプ332と、第2熱交換器333と、冷媒循環流路334と、圧縮機335と、膨張弁336と、第1熱交換器337と、出湯温度センサ338とを有している。水流路331は、給水ポンプ332および第2熱交換器333に接続されている。冷媒循環流路334は、圧縮機335、膨張弁336および第1熱交換器337に接続されている。図15Mにおいて、水流路331および冷媒循環流路334に沿った矢印は、水または冷媒の流れる方向を表す。次に、熱源ユニット330の各構成要素について説明する。
(15−3−2−1)水流路
水流路331は、給水ライン312から取り入れた水が流れる管である。水流路331は、第1水配管331aと、第2水配管331bと、第3水配管331cとから構成される。第1水配管331aは、給水ライン312に接続され、かつ、給水ポンプ332の吸入口に接続される。第2水配管331bは、給水ポンプ332の吐出口に接続され、かつ、第2熱交換器333の水管333aに接続される。第3水配管331cは、第2熱交換器333の水管333aに接続され、かつ、出湯ライン314に接続される。第3水配管331cは、出湯ライン314との接続部の近傍において、第3水配管331cを流れる水の温度を測定するための出湯温度センサ338が取り付けられている。
(15−3−2−2)給湯ポンプ
給水ポンプ332は、容量可変のポンプであり、水流路331を流れる水の量を調節することができる。水流路331を流れる水は、給水ライン312から供給され、給水ポンプ332および第2熱交換器333を通過して、出湯ライン314に供給される。
(15−3−2−3)第2熱交換器
第2熱交換器333は、水流路331を流れる水が通過する水管333aと、冷媒循環流路334を流れる冷媒が通過する冷媒管333bとを有する。第2熱交換器333は、例えば、水管333aの外周に冷媒管333bが螺旋状に巻きつけられ、かつ、水管333aの内部に溝が形成されている構成を有するトルネード式の熱交換器である。第2熱交換器333では、水管333aを流れる低温の水と、冷媒管333bを流れる高温高圧の冷媒との間で熱交換が行われる。第2熱交換器333の水管333aを流れる低温の水は、第2熱交換器333の冷媒管333bを流れる高温の冷媒と熱交換が行われて加熱される。これにより、給水ライン312から供給された水は、第2熱交換器333で加熱されて、湯として出湯ライン314に供給される。
(15−3−2−4)冷媒循環流路
冷媒循環流路334は、第2熱交換器333において水と熱交換される冷媒が循環する管である。本実施形態では、冷媒循環流路334には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が充填されている。当該冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。
図15Mに示されるように、冷媒循環流路334は、圧縮機335の吐出口と第2熱交換器333の冷媒管333bとを連結し、第2熱交換器333の冷媒管333bと膨張弁336とを連結し、膨張弁336と第1熱交換器337とを連結し、第1熱交換器337と圧縮機335の吸入口とを連結する。第2熱交換器333は、冷凍サイクルにおける凝縮器としての機能を有する。第1熱交換器337は、冷凍サイクルにおける蒸発器としての機能を有する。
(15−3−2−5)圧縮機
圧縮機335は、容量可変のインバータ圧縮機である。圧縮機335は、冷媒循環流路334を流れる低圧のガス冷媒を吸入して圧縮する。圧縮機335において圧縮された高温高圧のガス冷媒は、圧縮機335から吐出されて、第2熱交換器333の冷媒管333bに送られる。第2熱交換器333では、第2熱交換器333の冷媒管333bを流れる高温高圧のガス冷媒は、第2熱交換器333の水管333aを流れる低温の水と熱交換する。これにより、第2熱交換器333において、高温高圧のガス冷媒は、凝縮して高圧の液冷媒となる。
(15−3−2−6)膨張弁
膨張弁336は、冷媒循環流路334を流れる冷媒の圧力および流量を調節するための電動弁である。第2熱交換器333の冷媒管333bで熱交換された高圧の液冷媒は、膨張弁336を通過することで減圧され、低圧の気液二相状態の冷媒となる。
(15−3−2−7)第1熱交換器
第1熱交換器337は、例えば、プレートフィンコイル熱交換器である。第1熱交換器337の近傍には、ファン337aが設置されている。ファン337aは、第1熱交換器337に対して外気を送風して、第1熱交換器337において冷媒と熱交換された外気を排出する。第1熱交換器337では、膨張弁336で減圧された低圧の気液二相状態の冷媒が、ファン337aによって供給される外気との熱交換により蒸発して、低圧のガス冷媒となる。第1熱交換器337を通過した低圧のガス冷媒は、圧縮機335に送られる。
(15−3−2−8)出湯温度センサ
出湯温度センサ338は、水流路331の第3水配管331cと出湯ライン314との接続部の近傍において、第3水配管331cに取り付けられる温度センサである。出湯温度センサ338は、第2熱交換器333において加熱され、第3水配管331cを流れる水の温度を測定する。すなわち、出湯温度センサ338は、熱源ユニット330によって供給される湯の温度を測定する。
(15−3−3)貯湯タンク
貯湯タンク340は、熱源ユニット330から出湯ライン314を介して供給される湯を貯めるための開放型の貯湯タンクである。貯湯タンク340は、例えば、ステンレス製のタンク、および、FRP製のタンクである。貯湯タンク340に貯められた湯は、湯循環路316を介して湯利用部350に供給される。湯循環路316は、図15Lに示されるように、第1湯配管316aと、第2湯配管316bとから構成される。貯湯タンク340は、内部に貯められた湯を第1湯配管316aに供給し、第1湯配管316aを介して湯利用部350に湯を送る。湯利用部350で利用されなかった湯は、第2湯配管316bを介して貯湯タンク340に戻される。すなわち、貯湯タンク340に貯められた湯の一部は、第1湯配管316aおよび第2湯配管316bを流れて、貯湯タンク340に再び戻される。
なお、図15Lに示されるように、第1湯配管316aには、給湯ポンプ351が取り付けられている。給湯ポンプ351は、貯湯タンク340に貯められた湯を湯利用部350に送るための加圧ポンプである。給湯ポンプ351は、容量可変であり、湯利用部350に送られる湯の量を調節することができる。
図15Nに示されるように、貯湯タンク340は、主として、保温ヒータ341と、水圧センサ342と、フロートスイッチ343と、貯湯温度センサ344とを有している。次に、貯湯タンク340の各構成要素について説明する。
(15−3−3−1)保温ヒータ
保温ヒータ341は、貯湯タンク340に貯められている湯の温度を、湯利用部350において湯として利用可能な温度以上に維持するために、貯湯タンク340の内部に取り付けられるヒータである。貯湯タンク340は、保温ヒータ341を用いて、内部に貯められた湯の保温運転を行う。
(15−3−3−2)水圧センサ
水圧センサ342は、貯湯タンク340に貯められている湯の残量を測定するためのセンサである。水圧センサ342は、貯湯タンク340内部の下部に取り付けられ、貯湯タンク340内部の湯による水圧を検出することで、貯湯タンク340に貯められている湯の残量および水位を算出する。水圧センサ342は、例えば、貯湯タンク340に貯められている湯の残量が、予め設定されている目標残湯量未満であるか否かを検出することができる。
(15−3−3−3)フロートスイッチ
フロートスイッチ343は、貯湯タンク340に貯められている湯の水位に応じて上下するフロートを用いて、貯湯タンク340に貯められている湯の残量を補助的に検出する。
(15−3−3−4)貯湯温度センサ
貯湯温度センサ344は、湯循環路316の第1湯配管316aと、貯湯タンク340との接続部の近傍において、貯湯タンク340の内部に設置されている温度センサである。貯湯温度センサ344は、貯湯タンク340に貯められている湯の温度を測定する。
(15−3−4)湯利用部
湯利用部350は、台所、シャワーおよびプール等、貯湯タンク340に貯められている湯が利用される場所である。貯湯タンク340に貯められている湯は、給湯ポンプ351によって、湯循環路316の第1湯配管316aを介して、湯利用部350に供給される。湯利用部350では、第1湯配管316aを介して供給された湯の全てが利用されるとは限らない。湯利用部350で利用されなかった湯は、湯循環路316の第2湯配管316bを介して、貯湯タンク340に戻される。
(15−3−5)制御部
制御部360は、図15Nに示されるように、給湯システム310の構成要素に接続されている。具体的には、制御部360は、給水ポンプ332、圧縮機335、膨張弁336、ファン337a、出湯温度センサ338、保温ヒータ341、水圧センサ342、フロートスイッチ343、貯湯温度センサ344および給湯ポンプ351に接続されている。制御部360は、例えば、熱源ユニット330内部の電装品ユニット(図示せず)に設置されている。
制御部360は、給湯システム310の構成要素を制御するためのコンピュータである。例えば、制御部360は、給水ポンプ332の回転数、圧縮機335の運転周波数、膨張弁336の開度、ファン337aの回転数、保温ヒータ341の消費電力および給湯ポンプ351の回転数を制御し、出湯温度センサ338、水圧センサ342、フロートスイッチ343および貯湯温度センサ344の測定値を取得する。
また、図15Nに示されるように、制御部360は、さらに、リモコン370と接続されている。リモコン370は、給湯システム310を制御するための機器である。
(15−3−6)給湯システムの特徴
第3実施形態に係る給湯システムでは、冷媒Aのいずれかを用いて、熱源ユニット330の第2熱交換器333によって水を加熱しているため、効率が高い。
(16)第16グループの技術の実施形態
(16−1)第1実施形態
第1実施形態では、冷凍サイクル装置の一例である空気調和装置10について説明する。冷凍サイクル装置とは、冷凍サイクルで運転される全ての装置をいい、空気調和機、除湿機、ヒートポンプ式の給湯装置、冷蔵庫、冷凍用の冷凍装置、製造プロセス用冷却装置などを包含する。
この空気調和装置10は、室外機(図示省略)と室内機(図示省略)とを備えたセパレートタイプの空気調和装置であり、冷房運転と暖房運転を切り換え可能に構成されている。
この空気調和装置10は、図16Aに示すように、蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷媒回路20を備えている。冷媒回路20は、室外機に搭載された室外回路20aと、室内機に搭載された室内回路20bとを備えている。室外回路20aには、圧縮機21と室外熱交換器23と室外膨張弁24と四方弁22とブリッジ回路31と気液分離器25とが接続されている。室外熱交換器23は熱源側熱交換器を構成している。一方、室内回路20bには、室内熱交換器27と室内膨張弁26とが接続されている。室内熱交換器27は利用側熱交換器を構成している。圧縮機21の吐出管45は、四方弁22の第1ポートP1に接続されている。圧縮機21の吸入管46は、四方弁22の第2ポートP2に接続されている。
気液分離器25には、流入管36と流出管37とインジェクション管38とが接続されている。流入管36は、気液分離器25の内部空間の上部に開口している。流出管37は、気液分離器25の内部空間の下部に開口している。インジェクション管38は、気液分離器25の内部空間の上部に開口している。気液分離器25では、流入管36から流入した冷媒が飽和液と飽和ガスとに分離され、飽和液が流出管37から流出し、飽和ガスがインジェクション管38から流出する。流入管36及び流出管37は、ブリッジ回路31にそれぞれ接続されている。インジェクション管38は、圧縮機21の中間接続管47に接続されている。
一方、インジェクション管38から流出した飽和ガス状態の冷媒は、中間ポートを通じて圧縮機構32の中間圧の圧縮室に注入される。本実施形態では、流入管36と流出管37とインジェクション管38と気液分離器25とが、冷却動作中に室外熱交換器23から流出して冷凍サイクルの中間圧に減圧された冷媒のうち、飽和液状態の冷媒を室内熱交換器27へ供給して、飽和ガス状態の冷媒を圧縮機21へ供給するためのインジェクション回路15を構成する。
ブリッジ回路31は、第1逆止弁CV1、第2逆止弁CV2、第3逆止弁CV3及び第4逆止弁CV4をブリッジ状に接続した回路である。ブリッジ回路31では、第1逆止弁CV1の流入側及び第2逆止弁CV2の流入側に位置する接続端が、流出管37に接続されている。第2逆止弁CV2の流出側及び第3逆止弁CV3の流入側に位置する接続端が、室内熱交換器27に接続されている。この接続端と室内熱交換器27とを繋ぐ冷媒配管には、開度可変の室内膨張弁26が設けられている。第3逆止弁CV3の流出側及び第4逆止弁CV4の流出側に位置する接続端が、流入管36に接続されている。第1逆止弁CV1の流出側及び第4逆止弁CV4の流入側に位置する接続端が、室外熱交換器23に接続されている。
冷房運転では、四方弁22が、第1ポートP1と第3ポートP3が互いに連通して第2ポートP2と第4ポートP4が互いに連通する状態(図16Aに実線で示す状態)に設定される。そして、この状態で圧縮機21の運転が行われると、冷媒回路20では室外熱交換器23が凝縮器として動作して室内熱交換器27が蒸発器として動作する冷却動作が行われる。
暖房運転では、四方弁22が第1ポートP1と第4ポートP4が互いに連通して第2ポートP2と第3ポートP3が互いに連通する状態(図16Aに破線で示す状態)に設定される。そして、この状態で圧縮機21の運転が行われると、冷媒回路20では室外熱交換器23が蒸発器として動作して室内熱交換器27が凝縮器として動作する加熱動作が行われる。
室外熱交換器23は、冷媒の流路となるマイクロチャネル13が形成されたマイクロチャネル熱交換器(マイクロ熱交換器とも言う。)により構成されている。マイクロチャネル13とは、微細加工技術などを使って加工した微細な流路(流路面積が極めて小さい流路)である。一般に、表面張力の影響が現れる数ミリ径以下の流路のマイクロチャネル13を有する熱交換器が、マイクロチャネル熱交換器と呼ばれる。
具体的に、室外熱交換器23は、図16Bに示すように、複数の扁平管16と、一対のヘッダ17,18とを備えている。一対のヘッダ17,18は、筒状の密閉容器により構成されている。各扁平管16には、図16Cに示すように、複数のマイクロチャネル13が形成されている。複数のマイクロチャネル13は、扁平管16の幅方向に所定のピッチで形成されている。各扁平管16は、マイクロチャネル13の一端が一方のヘッダ17内に開口し、マイクロチャネル13の他端が他方のヘッダ18内に開口するように、一対のヘッダ17,18に固定されている。また、扁平管16の間には、波状の金属板19が設けられている。
室外熱交換器23の近傍には、室外ファン28が設けられている。室外熱交換器23では、室外ファン28により供給された室外空気が、扁平管16と金属板19により形成される隙間を流れる。室外空気は、扁平管16の幅方向に流れる。
室外熱交換器23では、一方のヘッダ17が四方弁22の第3ポートP3に接続され、他方のヘッダ18がブリッジ回路31に接続されている。室外熱交換器23では、一方のヘッダ17,18に流入した冷媒が複数のマイクロチャネル13に分配され、各マイクロチャネル13を通過した冷媒が他方のヘッダ17,18で合流する。各マイクロチャネル13は、冷媒が流れる冷媒流路となる。室外熱交換器23では、各マイクロチャネル13を流れる冷媒が室外空気と熱交換を行う。
室内熱交換器27は、マイクロチャネル熱交換器により構成されている。室内熱交換器27は室外熱交換器23と同じ構造であるため、室内熱交換器27の構造の説明は省略する。室内熱交換器27の近傍には、室内ファン29が設けられている。室内熱交換器27では、各マイクロチャネル13を流れる冷媒が、室内ファン29により供給された室内空気と熱交換を行う。室内熱交換器27では、一方のヘッダ17が四方弁22の第4ポートP4に接続され、他方のヘッダ18がブリッジ回路31に接続されている。
本実施形態では、室外熱交換器23及び室内熱交換器27が、マイクロチャネル熱交換器により構成されている。マイクロチャネル熱交換器内の容積は、同等の性能の他の構造型式の熱交換器(例えば、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器)に比べて小さくなる。このため、他の構造型式の熱交換器を使用した冷凍サイクル装置に比べて、冷媒回路20内の総容積を小さくすることが可能である。
耐圧性、耐腐食性を鑑みて「0.9mm≦扁平管厚み(図16Cに示されている扁平管16の縦高さh16)≦4.0mm」、熱交換能力を鑑みて「8.0mm≦扁平管厚み(図16Cに示されている扁平管16の横幅W16)≦25.0mm」、とすることが好ましい。
本実施形態では、冷媒回路20には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が充填されている。当該冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。
(16−2)第2実施形態
図16Dに示されているように、 室外熱交換器125は、熱交換部195とヘッダ集合管191,192とを有する。熱交換部195は、複数の扁平多孔管193および複数の差込フィン194を有する。扁平多孔管193は、扁平管の一例である。室外熱交換器125は、冷凍サイクル装置の冷媒回路に含まれる。冷凍サイクル装置の冷媒回路は、圧縮機と、蒸発器と、凝縮器と、膨張弁とを備える。暖房運転では、冷凍サイクル装置の冷媒回路において、室外熱交換器125が蒸発器として機能する。冷房運転では、冷凍サイクル装置の冷媒回路において、室外熱交換器125が凝縮器として機能する。
図16Eは、扁平多孔管193および差込フィン194を鉛直方向に切断したときの熱交換部195の部分拡大図である。扁平多孔管193は伝熱管として機能し、差込フィン194と室外空気との間で移動する熱を、内部を流れる冷媒に伝達する。
扁平多孔管193は、伝熱面となる側面部と、冷媒が流れる複数の内部流路193aとを有している。扁平多孔管193は、隣り合う扁平多孔管193と側面部を上下に対向させた状態で、間隔をあけて複数段配列される。差込フィン194は、図16Eに示す形状の複数のフィンであり、扁平多孔管193に接続している。両ヘッダ集合管191,192の間に配列された複数段の扁平多孔管193に対して差込フィン194を差し込めるように、差込フィン194には、水平に細長く延びる複数の切り欠き194aが形成されている。これらの差込フィン194の切り欠き194aの形状は、図16Eに示すように、扁平多孔管193の断面の外形にほぼ一致している。
ここでは、差込フィン194の連通部分194bが風下に配置される場合について説明した。ここで連通部分194bは、差込フィン194の中で、切り欠き194aがなく、直線的に繋がっている部分である。しかし、室外熱交換器125において、差込フィン194の連通部分194bが風上に配置されてもよい。連通部分194bが風上に配置されている場合には、差込フィン194で先に除湿された後に、扁平多孔管193に風が当たる。
ここでは、室外熱交換器125に、図16Dに示されている熱交換器を用いる場合について説明したが、図16Dに示されている熱交換器を室内熱交換器に用いてもよい。差込フィンが室内熱交換器に用いられる場合において、差込フィンの連通部分を風下に配置することができる。このように、室内熱交換器において、差込フィンの連通部分が風下に配置されている場合には、水飛びを防止することができる。
耐圧性、耐腐食性を鑑みて「0.9mm≦扁平管厚み(図16Eに示されている扁平多孔管193の縦高さh193)≦4.0mm」、熱交換能力を鑑みて「8.0mm≦扁平管厚み(図16Eに示されている扁平多孔管193の横幅W193)≦25.0mm」、とすることが好ましい。
本実施形態では、室外熱交換器125を含む冷媒回路には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が充填されている。当該冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。
(16−3)第3実施形態
図16Iに示されている複数の平行に配置されたプレートフィン211の貫通穴211aに内面溝付管201を挿入する。次に、この拡管用工具(図示せず)を内面溝付管201内に圧入する。これによって、内面溝付管201が拡管して、内面溝付管201とプレートフィン211との間のクリアランスがなくなり、内面溝付管201とプレートフィン211との密着性が高まる。次に、拡管用工具を内面溝付管201から取り出す。これによって、内面溝付管201とプレートフィン211とが隙間なく接合した熱交換器が製造される。
内面溝付管201は、空気調和機および冷凍空調機器などの冷凍サイクル装置のプレートフィンチューブ型熱交換器に使用される。プレートフィンチューブ型熱交換器は、冷凍サイクル装置の冷媒回路に含まれる。冷凍サイクル装置の冷媒回路は、圧縮機と、蒸発器と、凝縮器と、膨張弁とを備える。暖房運転では、冷凍サイクル装置の冷媒回路において、プレートフィンチューブ型熱交換器が蒸発器として機能する。冷房運転では、冷凍サイクル装置の冷媒回路において、プレートフィンチューブ型熱交換器が凝縮器として機能する。
内面溝付管201は、管の管外径D201は、4mm以上10mm以下のものが使用される。また、内面溝付管201の素管の材質としては、アルミニウムまたはアルミニウム合金が使用される。なお、内面溝付管201の内面溝形状の形成方法は、転造加工法、圧延法などがあるが、特に限定されるものではない。
そして、内面溝付管201は、図16F、図16G及び図16Hに示すように、その内面に管軸方向に傾斜する方向に形成された多数の溝202と、この溝202間に形成された管内ひれ203とを有する構成を備え、溝202の溝数は30以上100以下、溝202と管軸とがなす溝リード角θ201は10度以上50度以下、内面溝付管201の管軸直交断面(I−I線で切断)における内面溝付管201の底肉厚T201は0.2mm以上1.0mm以下、前記管内ひれのひれ高さh201は0.1mm以上であって底肉厚T201の1.2倍以下、ひれ山頂角δ201は5度以上45度以下、ひれ根元半径r201はひれ高さh201の20%以上50%以下である。
次に、内面溝付管201の前記内面溝形状における数値限定について説明する。
(16−3−1)溝数:30以上100以下
溝数は、後記する内面溝形状の各諸元と組み合わせて、伝熱性能および単重等を考慮して、適宜決定されるものであるが、30以上100以下が好ましい。溝数が30未満であると溝成形性が悪くなりやすく、また、溝数が100を超えると溝付工具(溝付プラグ)の欠損が生じやすい。いずれも、内面溝付管201の量産性が低下しやすくなる。
さらに、内面溝付管201を冷凍サイクル装置の冷媒回路に含まれる室外熱交換器及び室内熱交換器に用いる場合、室外熱交換器の内面溝付管201の溝数>室内熱交換器の内面溝付管201の溝数、とすることが好ましい。そうすることで、内面溝付管201の管内圧力損失を低減させかつ伝熱性能を向上させることができる。
(16−3−2)溝リード角θ201:10度以上50度以下
溝リード角θ201は、10度以上50度以下が好ましい。溝リード角θ201が10度未満であると、内面溝付管201(熱交換器)の伝熱性能が低下しやすい。また、溝リード角θ201が50度を超えると、内面溝付管201の量産性の確保および拡管による管内ひれ203の変形を抑制しにくくなる。
さらに、内面溝付管201を冷凍サイクル装置の冷媒回路に含まれる室外熱交換器及び室内熱交換器に用いる場合、室外熱交換器の内面溝付管201の溝リード角<室内熱交換器の内面溝付管201の溝数、とすることが好ましい。そうすることで、内面溝付管201の管内圧力損失を低減させかつ伝熱性能を向上させることができる。
(16−3−3)底肉厚T201:0.2mm以上1.0mm以下
底肉厚T201は0.2mm以上1.0mm以下が好ましい。底肉厚T201が前記範囲外であると、内面溝付管201の製造がしにくくなる。また、底肉厚T201が0.2mm未満であると、内面溝付管201の強度が低下しやすく、耐圧力強度の保持が困難になりやすい。
(16−3−4)ひれ高さh201:0.1mm以上(底肉厚T201×1.2)mm以下
ひれ高さh201は、0.1mm以上(底肉厚T201×1.2)mm以下が好ましい。ひれ高さh201が0.1mm未満であると、内面溝付管201(熱交換器)の伝熱性能が低下しやすい。また、ひれ高さh201が(底肉厚T201×1.2)mmを超えると、内面溝付管201の量産性の確保および拡管による管内ひれ203の極度の変形を抑制しにくくなる。
さらに、内面溝付管201を冷凍サイクル装置の冷媒回路に含まれる室外熱交換器及び室内熱交換器に用いる場合、室外熱交換器の内面溝付管201のひれ高さh201>室内熱交換器の内面溝付管201のひれ高さh201、とすることが好ましい。そうすることで、内面溝付管201の管内圧力損失を低減させかつ、室外熱交換器の伝熱性能をより向上させることができる。
(16−3−5)山頂角δ201:5度以上45度以下
山頂角δ201は、5度以上45度以下が好ましい。山頂角δ201が5度未満であると、内面溝付管201の量産性の確保および拡管による管内ひれ203の変形を抑制しにくくなる。また、山頂角δ201が45度を超えると、内面溝付管201(熱交換器)の伝熱性能の維持および内面溝付管201の単重が過大となりやすい。
(16−3−6)ひれ根元半径r201:ひれ高さh201の20%以上50%以下 ひれ根元半径r201は、ひれ高さh201の20%以上50%以下が好ましい。ひれ根元半径r201がひれ高さh201の20%未満であると、拡管によるひれ傾きが過大となりやすく、かつ、量産性が低下しやすい。また、ひれ根元半径r201がひれ高さh201の50%を超えると、冷媒気液界面の有効伝熱面積が減少しやすく、内面溝付管201(熱交換器)の伝熱性能が低下しやすい。
本実施形態では、内面溝付管201が使用されるプレートフィンチューブ型熱交換器を含む冷媒回路には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が充填されている。当該冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。
(16−4)特徴
第1実施形態の冷凍サイクル装置である空気調和装置10、第2実施形態の冷凍サイクル装置及び第3実施形態の冷凍サイクル装置は、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む可燃性の冷媒と、冷媒を蒸発させる蒸発器と、冷媒を凝縮させる凝縮器とを備えている。これら冷凍サイクル装置では、冷媒が蒸発器と凝縮器とを循環して冷凍サイクルを繰り返すように、これら冷凍サイクル装置は構成されている。
第1実施形態では、室外熱交換器23が、蒸発器と凝縮器のうちの一方であり、室内熱交換器27が、蒸発器と凝縮器のうちの他方であって、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の複数のフィンである金属板19及び、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の複数の伝熱管である扁平管16を有している。室外熱交換器23と室内熱交換器27は、扁平管16の内部を流れる冷媒と金属板19に沿って流れる流体である空気に熱交換させる熱交換器である。扁平管16は、図16Cに示されている平面部16aを有している。室外熱交換器23及び室内熱交換器27では、互いに隣り合う扁平管16の平面部16aが、互いに向かい合うように配置されている。複数の金属板19の各々が、波形に折り曲げられて、互いに隣り合う扁平管16の平面部16aの間に配置されている。各金属板19は、平面部16aに熱を伝えられるように、平面部16aに接続されている。
第2実施形態では、室外熱交換器125が、蒸発器と凝縮器のうちの一方であって、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の複数の差込フィン194及び、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の複数の伝熱管である扁平多孔管193を有している。室外熱交換器125は、扁平多孔管193の内部を流れる冷媒と差込フィン194に沿って流れる流体である空気に熱交換させる熱交換器である。扁平多孔管193は、図16Eに示されている平面部193bを有している。室外熱交換器125では、互いに隣り合う扁平多孔管193の平面部193bが、互いに向かい合うように配置されている。複数の差込フィン194の各々が、複数の切り欠き194aを有している。複数の扁平多孔管193が、複数の差込フィン194の複数の切り欠き194aに差し込まれて複数の差込フィン194に熱を伝えらるように接続されている。
第3実施形態では、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の複数のプレートフィン211及び、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の複数の伝熱管である内面溝付管201を有している熱交換器が、蒸発器と凝縮器のうちの一方になる。この熱交換器は、内面溝付管201の内部を流れる冷媒とプレートフィン211に沿って流れる流体である空気に熱交換させる熱交換器である。複数のプレートフィン211の各々が、複数の貫通穴211aを有している。熱交換器において、複数の内面溝付管201が、複数のプレートフィン211の複数の貫通穴211aを貫通している。これら複数の内面溝付管201の外周が、複数の貫通穴211aの内周に密着している。
上記の冷凍サイクル装置は、熱交換器に、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の複数のフィンである金属板19、差込フィン194またはプレートフィン211、及び、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の複数の伝熱管である扁平管16、扁平多孔管193または内面溝付管201を有している。冷凍サイクル装置がこのような構成を有していることから、例えば伝熱管に銅パイプを使う場合に比べて、熱交換器の材料費を削減することができる。
(17)第17グループの技術の実施形態
(17−1)第1実施形態
図17Aは、第1実施形態に係る空気調和装置1の配置を示す模式図である。図17Bは、空気調和装置1の概略構成図である。図17A及び図17Bにおいて、空気調和装置1は、住宅やビルの空調に使用される装置である。
ここでは、空気調和装置1は、2階建て構造の住宅100に設置されている。住宅100には、1階に部屋101、102が設けられ、2階に部屋103、104が設けられている。また、住宅100には、地下室105が設けられている。
空気調和装置1は、いわゆるダクト式の空調システムである。空気調和装置1は、利用側ユニットである室内機2と、熱源側ユニットである室外機3と、冷媒連絡管306、307と、室内機2で空調された空気を部屋101〜104に送る第1ダクト209とを有している。第1ダクト209は、部屋101〜104に分岐されて、各部屋101〜104の通風口101a〜104aに接続されている。なお、説明の便宜上、室内機2と、室外機3と、冷媒連絡管306、307とを一体として、空調機器80という。利用側ユニットである室内機2と熱源側ユニットである室外機3とは、互いに別体である。
図17Bにおいて、室内機2、室外機3、及び冷媒連絡管306、307は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルによって室内の暖房を行うヒートポンプ部360を構成している。また、室内機2の一部であるガスファーネスユニット205は、ヒートポンプ部360とは別の熱源(ここでは、ガス燃焼による熱)によって室内の暖房を行う別熱源部270を構成している。
このように、室内機2は、ヒートポンプ部360を構成するもの以外に、別熱源部270を構成するガスファーネスユニット205を有している。また、室内機2は、ケーシング230内に部屋101〜104内の空気を取り込んで、ヒートポンプ部360や別熱源部270(ガスファーネスユニット205)で空調された空気を部屋101〜104内に供給するための室内ファン240も有している。また、室内機2には、ケーシング230の空気出口231における空気の温度である吹出空気温度Trdを検出する吹出空気温度センサ233と、ケーシング230の空気入口232における空気の温度である室内温度Trを検出する室内温度センサ234とが設けられている。尚、室内温度センサ234は、室内機2ではなく、部屋101〜104内に設けられていてもよい。ケーシング230の空気入口232には、第2ダクト210が接続されている。利用側ユニットである室内機2は、ケーシング230及びそれらの中に収納されている機器を有している。室内機2は、室内から取り入れた第1空気である室内空気F1を、利用側熱交換器である室内熱交換器242に導くように構成されている。
(17−1−1)ヒートポンプ部360
空調機器80のヒートポンプ部360では、冷媒回路320は、室内機2と、室外機3とが冷媒連絡管306、307を介して接続されることによって構成されている。冷媒連絡管306、307は、空調機器80を設置する際に、現地にて施工される冷媒管である。
室内機2は、住宅100の地下室105に設置されている。なお、室内機2の設置場所は地下室105に限定されるものではなく、他の屋内に配置されてもよい。室内機2は、冷凍サイクルにおける冷媒の放熱によって空気を加熱する冷媒放熱器としての室内熱交換器242と、室内膨張弁241とを有している。
室内膨張弁241は、冷房運転時、冷媒回路320を循環する冷媒を減圧して室内熱交換器242に流す。ここで、室内膨張弁241は、室内熱交換器242の液側に接続された電動膨張弁である。
室内熱交換器242は、ケーシング230に形成された空気入口232から空気出口231までの通風路内の最も風下側に配置されている。
室外機3は、住宅100の屋外に設置されている。室外機3は、圧縮機321と、室外熱交換器323と、室外膨張弁324と、四方弁328とを有している。圧縮機321は、ケーシング内に図示しない圧縮要素及び圧縮要素を回転駆動する圧縮機モータ322が収容された密閉型圧縮機である。
圧縮機モータ322は、図示しないインバータ装置を介して電力が供給されるようになっており、インバータ装置の周波数(すなわち、回転数)を変化させることによって、運転容量を可変することが可能になっている。
室外熱交換器323は、室外空気によって冷凍サイクルにおける冷媒を蒸発させる冷媒蒸発器として機能する熱交換器である。室外熱交換器323の近傍には、室外熱交換器323に室外空気を送るための室外ファン325が設けられている。室外ファン325は、室外ファンモータ326によって回転駆動されるようになっている。
室外膨張弁324は、暖房運転時、冷媒回路320を循環する冷媒を減圧して室外熱交換器323に流す。ここで、室外膨張弁324は、室外熱交換器323の液側に接続された電動膨張弁である。また、室外機3には、室外機3が配置される住宅100の屋外の室外空気の温度、すなわち、外気温度Taを検出する室外温度センサ327が設けられている。
本実施形態では、冷媒回路320には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が充填されている。当該冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。
四方弁328は、冷媒の流れの方向を切り換える弁である。冷房運転時、四方弁328は圧縮機321の吐出側と室外熱交換器323のガス側とを接続するとともに圧縮機321の吸入側とガス冷媒連絡管307とを接続する(冷房運転状態:図17Bの四方弁328の実線を参照)。その結果、室外熱交換器323は冷媒の凝縮器として、室内熱交換器242は冷媒の蒸発器として機能する。
暖房運転時、四方弁328は、圧縮機321の吐出側とガス冷媒連絡管307とを接続するとともに圧縮機321の吸入側と室外熱交換器323のガス側とを接続する(暖房運転状態:図17Bの四方弁328の破線を参照)。その結果、室内熱交換器242は冷媒の凝縮器として、室外熱交換器323は冷媒の蒸発器として機能する。
(17−1−2)空気調和装置1の重要な構成の概要
ヒートポンプ暖房運転が行われているとき、空気調和装置1では、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒が、圧縮機321と利用側熱交換器である室内熱交換器242と熱源側熱交換器である室外熱交換器323とを循環して冷凍サイクルを繰り返す。室内熱交換器242が、第1空気である室内空気F1と冷媒とに熱交換させる。室内空気F1が、室内ファン240によって室内熱交換器242に供給される。室内熱交換器242において加熱された室内空気F3(第1空気)は、第1ダクト209を通じて室内機2から各部屋101〜104に送られて、暖房が行われる。室外熱交換器323が、第2空気である室外空気と冷媒に熱交換させる。ケーシング230は、第1ダクト209に接続され且つ室内熱交換器242を収納している利用側空間SP2を有し、室内熱交換器242で冷媒と熱交換された後の室内空気F3を第1ダクト209に送出するように構成されている。
別熱源暖房運転が行われているとき、ファーネス熱交換器255に送られた高温の燃焼ガスは、ファーネス熱交換器255において、室内ファン240によって供給される室内空気F1と熱交換を行って冷却され、低温の燃焼ガスとなる。この低温の燃焼ガスは、排気管257を経由してガスファーネスユニット205から排出される。一方、ファーネス熱交換器255において加熱された室内空気F2は、第1ダクト209を通じて室内機2から各部屋101〜104に送られて、暖房が行われる。
(17−1−3)別熱源部270
別熱源部270は、空調機器80の室内機2の一部であるガスファーネスユニット205によって構成されている。
ガスファーネスユニット205は、住宅100の地下室105に設置されたケーシング230内に設けられている。ガスファーネスユニット205は、ガス燃焼式暖房装置であり、燃料ガス弁251と、ファーネスファン252と、燃焼部254と、ファーネス熱交換器255と、給気管256と、排気管257とを有している。
燃料ガス弁251は、開閉制御が可能な電磁弁等からなり、ケーシング230外から燃焼部254まで延びる燃料ガス供給管258に設けられている。燃料ガスとしては、天然ガスや石油ガス等が使用される。
ファーネスファン252は、給気管256を通じて燃焼部254に空気を取り込んで、その後、ファーネス熱交換器255に空気を送り、排気管257から排出するという空気の流れを生成するファンである。ファーネスファン252は、ファーネスファンモータ253によって回転駆動されるようになっている。
燃焼部254は、ガスバーナ等(図示せず)によって燃料ガスと空気との混合ガスを燃焼させて高温の燃焼ガスを得る機器である。
ファーネス熱交換器255は、燃焼部254で得られた燃焼ガスの放熱によって空気を加熱する熱交換器であり、ヒートポンプ部360とは別の熱源(ここでは、ガス燃焼による熱)の放熱によって空気を加熱する別熱源放熱器として機能するものである。
ファーネス熱交換器255は、ケーシング230に形成された空気入口232から空気出口231までの通風路内において、冷媒放熱器としての室内熱交換器242よりも風上側に配置されている。
(17−1−4)室内ファン240
室内ファン240は、ヒートポンプ部360を構成する冷媒放熱器としての室内熱交換器242や別熱源部270を構成する別熱源放熱器としてのファーネス熱交換器255によって加熱される空気を部屋101〜104内に供給するための送風機である。
室内ファン240は、ケーシング230に形成された空気入口232から空気出口231までの通風路内において、室内熱交換器242及びファーネス熱交換器255の両方よりも風上側に配置されている。室内ファン240は、羽根243と、羽根243を回転駆動するファンモータ244とを有している。
(17−1−5)コントローラ30
室内機2は、室内機2の各部の動作を制御する室内側制御基板21を搭載している。室外機3は、室外機3の各部の動作を制御する室外側制御基板31を搭載している。そして、室内側制御基板21及び室外側制御基板31はマイコン等を有しており、サーモスタット40との間で制御信号等のやりとりを行う。また、室内側制御基板21と室外側制御基板31との間では制御信号のやりとりは行わない。室内側制御基板21及び室外側制御基板31を含めた制御装置をコントローラ30という。
(17−1−6)コントローラ30の詳細構造
図17Cは、第1実施形態に係る空気調和装置1におけるコントローラ30及びサーモスタット40の電気的接続状態を示すブロック図である。サーモスタット40は、室内機2と同じように屋内空間に取り付けられる。なお、サーモスタット40および室内機2それぞれが取り付けられる場所は、屋内空間の異なる場所でもよい。また、サーモスタット40は、室内機2及び室外機3それぞれの制御系と通信線で繋がっている。
トランス20は、商用電源90の電圧を使用可能な低電圧へ変圧後、電源ライン81,82を介して室内機2、室外機3及びサーモスタット40それぞれに供給する。
(17−2)第2実施形態
(17−2−1)全体構成
第2実施形態に係る空気調和装置701は、図17Dに示されているように、建物800の屋根801の上、すなわち屋上に設置される。空気調和装置701は、建物800の内部である屋内の空気調和を行なう機器である。建物800は、複数の部屋810を有している。建物800の部屋810が、空気調和装置701にとっての空調対象空間になる。図17Dには、空気調和装置701が、1つの第1ダクト721及び1つの第2ダクト722を備えている例が示されている。しかし、空気調和装置701は、これら第1ダクト721及び第2ダクト722を、それぞれ複数備えるように構成することもできる。なお、図17Dに示されている第1ダクト721は、途中で枝分かれしている。第1ダクト721は、サプライエアのために設けられており、第2ダクト722は、リターンエアのために設けられている。第1ダクト721で室内の複数の部屋810に供給されるサプライエアが第1空気である。第2ダクト722で室内から取り入れられるリターンエアも第1空気である。図17Dにおいて、第1ダクト721、第2ダクト722の中の矢印Ar1,Ar2は、第1ダクト721、第2ダクト722の中の空気が流れている方向を示している。空気調和装置701から部屋810には第1ダクト721を通って空気が送られ、空調対象空間の空気である部屋810の屋内空気が第2ダクト722を通って空気調和装置701に送られる。第1ダクト721と部屋810との境界には、複数の吹出口723が設けられている。第1ダクト721で供給されるサプライエアは、吹出口723から部屋810に吹出される。また、第2ダクト722と部屋810の境界には、少なくとも一つの吸込口724が設けられている。吸込口724から吸い込まれた屋内空気は、第2ダクト722によって空気調和装置701に戻されるリターンエアとなる。
(17−2−2)空気調和装置701の外観
図17Eには、空気調和装置701を斜め上方から見た空気調和装置701の外観が示され、図17Fには、空気調和装置701を斜め下方から見た空気調和装置701の外観が示されている。以下においては、便宜的に、図に矢印で示されている上下前後左右の方向を用いて説明する。空気調和装置701は、直方体を基礎とする形状を有するケーシング730を備えている。このケーシング730が、上面730a、正面730b、右側面730c、左側面730d、背面730e及び底面730fを覆う金属板を含んでいる。ケーシング730は、上面730aに第3開口733を有している。この第3開口733が熱源側空間SP1(図17G参照)に連通している。第3開口733を通して熱源側空間SP1の空気をケーシング730の外に吹出させる熱源側ファン747が、第3開口733に取り付けられている。熱源側ファン747には、例えばプロペラファンが用いられる。また、ケーシング730が、正面730b、左側面730d及び背面730eにスリット734を有している。これらスリット734も、熱源側空間SP1に連通している。熱源側ファン747によって熱源側空間SP1からケーシング730の外側に向って空気が吹出されると、熱源側空間SP1が大気圧に対して負圧になるので、スリット734を通してケーシング730の外部から熱源側空間SP1に屋外空気が吸い込まれる。なお、第3開口733及びスリット734は、利用側空間SP2(図17G参照)には連通していない。従って、通常の状態では、第1ダクト721、第2ダクト722以外に、利用側空間SP2からケーシング730の外部に連通する箇所はない。
ケーシング730の底面730fには、第1開口731及び第2開口732を有する底板735が取り付けられている。サプライエアのための第1開口731には、図17Jに示されているように、第1ダクト721が接続されている。また、リターンエアのための第2開口732には、図17Jに示されているように、第2ダクト722が接続されている。空調対象空間である部屋810から第2ダクト722を通ってケーシング730の利用側空間SP2に帰ってきた空気は、利用側空間SP2から第1ダクト721を通って部屋810へ送られる。第1開口731及び第2開口732の周囲には、底板735の強度を補強するために、高さ3cm未満のリブ731a,732aが形成されている(図17H参照)。リブ731a,732aは、第1開口731及び第2開口732を例えばプレス成形によって底板735に形成するときに、底板735の材料である金属板をプレス成形によって立てて底板735と一体に形成される。
(17−2−3)空気調和装置701の内部構成
(17−2−3−1)ケーシング730の中の熱源側空間SP1と利用側空間SP2 図17Gには、ケーシング730の正面730bを覆っていた金属板及び左側面730dを覆っていた金属板が取り外された状態が示されている。図17Hには、ケーシング730の右側面730cを覆っていた金属板及び背面730eを覆っていた一部の金属板が取り外された状態が示されている。図17Hにおいて、背面730eを覆っていた金属板のうちの取り外された金属板は、利用側空間SP2を覆っていた金属板である。従って、図17Hに示されている、背面730eを覆っている金属板は、熱源側空間SP1のみを覆っている。そして、図17Iには、ケーシング730の右側面730cを覆っていた金属板、左側面730dを覆っていた金属板、背面730eを覆っていた金属板及び上面730aの一部を覆っていた金属板が取り外され且つ熱源側熱交換器743及び熱源側ファン747が取り外された状態が示されている。
熱源側空間SP1と利用側空間SP2が、仕切板739によって仕切られている。熱源側空間SP1に屋外空気が流れ、利用側空間SP2に屋内空気が流れるが、仕切板739は、熱源側空間SP1と利用側空間SP2を仕切ることによって、熱源側空間SP1と利用側空間SP2の間の空気の流通を遮断する。従って、通常の状態では、ケーシング730の中で屋内空気と屋外空気が混ざることはなく、空気調和装置701を介して屋外と屋内が連通されることはない。
(17−2−3−2)熱源側空間SP1の中の構成
熱源側空間SP1には、熱源側ファン747以外にも、圧縮機741、四方弁742、熱源側熱交換器743及びアキュムレータ746が収納されている。熱源側熱交換器743は、冷媒が中を流れる複数の伝熱管(図示せず)と、互いの隙間を空気が流れる複数の伝熱フィン(図示せず)とを含んでいる。複数の伝熱管が上下方向(以下、行方向ともいう)に並んでいて、各伝熱管が上下方向と実質的に直交する方向(実質的に水平方向)に延びている。また、複数の伝熱管は、ケーシング730に近い側から順に複数列設けられている。熱源側熱交換器743の端部では、ある列から他の列に及び/またはある行から他の行に冷媒の流れが折り返されるように、例えばU字状に曲げられ或いはU字管で伝熱管同士が接続されている。上下方向に長く延びた複数の伝熱フィンは、互いに所定の間隔を保って、伝熱管の延びる方向に沿って並べられている。各伝熱フィンを複数の伝熱管が貫通するように、複数の伝熱フィンと複数の伝熱管とが組み合わされている。そして、複数の伝熱フィンも複数列に配置されている。
熱源側熱交換器743が、上面視において、C字型の形状を有しており、ケーシング730の正面730bと左側面730dと背面730eに対向するように配置されている。熱源側熱交換器743が囲っていない部分は、仕切板739に対向する部分である。そして、C字型形状の2つの端にあたる側端部が仕切板739の近傍に配置され、熱源側熱交換器743の2つの側端部と仕切板739の間が、空気の通過を遮る金属板(図示せず)によって塞がれている。また、熱源側熱交換器743は、実質的に、ケーシング730の底面730fから上面730aに達する高さを持つ。このような構成によって、スリット734から入って、熱源側熱交換器743を通過して第3開口733から出る空気の流路が形成される。スリット734を通って熱源側空間SP1に吸い込まれた屋外空気が、熱源側熱交換器743を通過するときに、熱源側熱交換器743の中を流れる冷媒と熱交換する。熱源側熱交換器743で熱交換をした後の空気は、熱源側ファン747によって、第3開口733からケーシング730の外に排気される。
(17−2−3−3)利用側空間SP2の中の構成
利用側空間SP2には、膨張弁744、利用側熱交換器745及び利用側ファン748が配置されている。利用側ファン748には、例えば遠心ファンが用いられる。遠心ファンとしては、例えばシロッコファンがある。なお、膨張弁744は、熱源側空間SP1に配置されてもよい。図17Hに示されているように、利用側ファン748は、支持台751によって、第1開口731の上方に配置されている。利用側ファン748の吹出口748bは、図17Nに示されているように、上面視において、第1開口731とは重ならない位置に配置されている。支持台751とケーシング730によって利用側ファン748の吹出口748bと第1開口731以外の部分が囲まれているので、利用側ファン748の吹出口748bから吹出される空気は、実質的に全て第1開口731から第1ダクト721を通して屋内に供給される。
利用側熱交換器745は、冷媒が中を流れる複数の伝熱管745a(図17M参照)と、互いの隙間を空気が流れる複数の伝熱フィン(図示せず)とを含んでいる。複数の伝熱管745aが上下方向(行方向)に並んでいて、各伝熱管745aが上下方向と実質的に直交する方向(第2実施形態では、左右方向)に延びている。ここでは、冷媒が、複数の伝熱管745aの中を左右方向に流れる。また、複数の伝熱管745aは、前後方向に複数列設けられている。利用側熱交換器745の端部では、ある列から他の列に及び/またはある行から他の行に冷媒の流れが折り返されるように、例えばU字状に曲げられ或いはU字管で伝熱管745a同士が接続されている。上下方向に長く延びた複数の伝熱フィンは、互いに所定の間隔を保って、伝熱管745aの延びる方向に沿って並べられている。そして、各伝熱フィンを複数の伝熱管745aが貫通するように、複数の伝熱フィンと複数の伝熱管745aとが組み合わされている。例えば、利用側熱交換器745を構成する伝熱管745aに銅管を使用し、伝熱フィンに、アルミニウムを使用することができる。
利用側熱交換器745は、前後に短く、上下左右に長い形状を有する。ドレンパン752は、左右に長く延びる直方体の上面を取り除いたような形状を持っている。ドレンパン752は、上面視において、利用側熱交換器745の前後の長さよりも長い前後方向の寸法を持つ。利用側熱交換器745は、このようなドレンパン752の中に嵌め込まれている。そして、このドレンパン752が、利用側熱交換器745で発生して下方に向って滴り落ちる結露水を受け止める。ドレンパン752は、ケーシング730の右側面730cから仕切板739まで延びている。ドレンパン752の排水口752aがケーシング730の右側面730cを貫通しており、ドレンパン752で受けた結露水は、排水口752aを通ってケーシング730の外に排水される。
また、利用側熱交換器745は、ケーシング730の右側面730cの近傍から仕切板739の近傍まで延びている。ケーシング730の右側面730cと利用側熱交換器745の右側部745cの間及び、仕切板739と利用側熱交換器745の左側部745dの間が金属板で塞がれている。ドレンパン752は、底板735から上方に離れて底板735を基準に高さh1の位置に支持枠736によって支持されている。利用側熱交換器745の支持は、利用側熱交換器745の上下左右の周囲に合わせた棒状の枠部材を含み、ケーシング730及び仕切板739に直接または間接的に固定されている補助枠753によって補助されている。利用側熱交換器745とケーシング730の上面730aの間は、利用側熱交換器745自身または補助枠753によって塞がれている。また、利用側熱交換器745と底板735との間の開口部は、支持台751とドレンパン752によって塞がれている。
このように、利用側熱交換器745によって、利用側空間SP2が、利用側熱交換器745よりも上流側の空間と、利用側熱交換器745よりも下流側の空間に分割されている。そして、利用側熱交換器745の上流側から下流側に流れる空気は、全て、利用側熱交換器745を通過する。利用側ファン748は、利用側熱交換器745の下流側の空間に配置されており、利用側熱交換器745を通過する気流を発生させる。既に説明した支持台751は、利用側熱交換器745の下流側の空間をさらに、利用側ファン748の吸入側の空間と吹出側の空間に分けている。
(17−2−3−4)冷媒回路
図17Kには、空気調和装置701の中に構成されている冷媒回路711が示されている。冷媒回路711は、利用側熱交換器745と熱源側熱交換器743とを含んでいる。この冷媒回路711において、利用側熱交換器745と熱源側熱交換器743の間を冷媒が循環する。この冷媒回路711では、冷房運転または暖房運転において蒸気圧縮式の冷凍サイクルが実施されているときに、利用側熱交換器745と熱源側熱交換器743で熱交換が行なわれる。図17Kにおいて、矢印Ar3は、利用側熱交換器745の下流側の気流であって利用側ファン748から吹出されるサプライエアを示しており、矢印Ar4は、利用側熱交換器745の上流側の気流であるリターンエアを示している。また、矢印Ar5は、熱源側熱交換器743の下流側の気流であって熱源側ファン747によって第3開口733から吹出される気流を示しており、矢印Ar6は、熱源側熱交換器743の上流側の気流であって熱源側ファン747によってスリット734から吸い込まれる気流を示している。
冷媒回路711は、圧縮機741と四方弁742と熱源側熱交換器743と膨張弁744と利用側熱交換器745とアキュムレータ746とを含んでいる。四方弁742は、冷房運転時には実線で示された接続状態に切り換わり、暖房運転時には破線で示された接続状態に切り換わる。
冷房運転時には、圧縮機741で圧縮されたガス冷媒が、四方弁742を通って熱源側熱交換器743に送られる。この冷媒は、熱源側熱交換器743で屋外空気に放熱し、冷媒配管712を通って膨張弁744に送られる。膨張弁744では、冷媒が膨張して減圧され、冷媒配管712を通って利用側熱交換器745に送られる。膨張弁744から送られてきた低温低圧の冷媒は、利用側熱交換器745で熱交換を行って屋内空気から熱を奪う。利用側熱交換器745で熱を奪われて冷えた空気が、第1ダクト721を通って部屋810に供給される。利用側熱交換器745で熱交換を終えたガス冷媒または気液二相の冷媒は、冷媒配管713、四方弁742及びアキュムレータ746を通って圧縮機741に吸入される。
暖房運転時には、圧縮機741で圧縮されたガス冷媒が、四方弁742、冷媒配管713を通って利用側熱交換器745に送られる。この冷媒は、利用側熱交換器745で屋内空気と熱交換を行って屋内空気に熱を与える。利用側熱交換器745で熱を与えられて暖められた空気が、第1ダクト721を通って部屋810に供給される。利用側熱交換器745で熱交換を行った冷媒は、冷媒配管712を通って膨張弁744に送られる。膨張弁744で膨張して減圧された低温低圧の冷媒は、冷媒配管712を通って熱源側熱交換器743に送られ、熱源側熱交換器743で熱交換を行って屋外空気から熱を得る。熱源側熱交換器743で熱交換を終えたガス冷媒または気液二相の冷媒は、四方弁742及びアキュムレータ746を通って圧縮機741に吸入される。
(17−2−3−5)制御系統
図17Lには、空気調和装置701を制御するメインコントローラ760とそのメインコントローラ760によって制御される主な機器などが示されている。メインコントローラ760は、圧縮機741、四方弁742、熱源側ファン747及び利用側ファン748を制御する。メインコントローラ760は、リモートコントローラ762と通信できるように構成されている。ユーザは、部屋810の室内温度の設定値などをリモートコントローラ762からメインコントローラ760に送信することができる。
空気調和装置701の制御のために、冷媒回路711の各部の冷媒温度を測定するための複数の温度センサ及び/または各部の圧力を測定する圧力センサ並びに各所の空気温度を測定するための温度センサが設けられている。
メインコントローラ760は、少なくとも、圧縮機741のオン・オフの制御、熱源側ファン747のオン・オフの制御、利用側ファン748のオン・オフの制御を行う。なお、圧縮機741、熱源側ファン747及び利用側ファン748のいずれかまたは全てが回転数を変更できるタイプのモータを有している場合には、圧縮機741、熱源側ファン747及び利用側ファン748のうちの回転数可変のモータの回転数を、メインコントローラ760が制御できるように構成してもよい。その場合、メインコントローラ760は、圧縮機741のモータの回転数の変更することによって、冷媒回路711を流れる冷媒の循環量を変更できる。熱源側ファン747のモータの回転数を変更することにより、メインコントローラ760は、熱源側熱交換器743の伝熱フィン間を流れる屋外空気の流量を変更できる。また、利用側ファン748のモータの回転数を変更することにより、メインコントローラ760は、利用側熱交換器745の伝熱フィン間を流れる屋内空気の流量を変更できる。
メインコントローラ760には、冷媒漏洩センサ761が接続されている。冷媒漏洩センサ761は、空気中に漏れ出した冷媒ガスが検知下限濃度以上になったときに、冷媒ガスの漏洩の検知を示す信号をメインコントローラ760に送信する。
メインコントローラ760は、例えばコンピュータにより実現されるものである。メインコントローラ760を構成するコンピュータは、制御演算装置と記憶装置とを備える。制御演算装置には、CPU又はGPUといったプロセッサを使用できる。制御演算装置は、記憶装置に記憶されているプログラムを読み出し、このプログラムに従って所定の画像処理や演算処理を行う。さらに、制御演算装置は、プログラムに従って、演算結果を記憶装置に書き込んだり、記憶装置に記憶されている情報を読み出したりすることができる。しかし、メインコントローラ760は、CPUとメモリを用いて行うのと同様の制御を行うことができる集積回路(IC)を用いて構成されてもよい。ここでいうICには、LSI(large-scale integrated circuit)、ASIC(application-specific integrated circuit)、ゲートアレイ、FPGA(field programmable gate array)等が含まれる。
本実施形態では、冷媒回路711には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が充填されている。当該冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。
(17−3)第3実施形態
図17Oには、第3実施形態に係る空気調和装置601の構成が示されている。この空気調和装置601は室内の換気と調湿とを行うように構成されたものである。空気調和装置601のケーシング621の中の中央部には、顕熱交換器622が設けられている。顕熱交換器622とは、流通空気間で湿分の交換は行わず、顕熱の熱交換だけを行う機能を有するものである。
空気調和装置601は、圧縮機633と、熱源側熱交換器である室外熱交換器634と、利用側熱交換器である給気熱交換器625と、供給空気SAを室内の複数の部屋に供給する給気ダクト651と、室内空気RAを室内から取り入れる還気ダクト652と、室外空気OAを室外から取り込む吸込ダクト653と、ケーシング621とを備えている。給気熱交換器625で冷媒と熱交換される前の第1空気が室外空気OAであり、給気熱交換器625で冷媒と熱交換された後の第1空気が供給空気SAである。室外熱交換器634が熱交換する室外空気が第2空気である。第2空気である室外空気と第1空気である室外空気OAは、互いに異なるものである。
少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒は、圧縮機633と給気熱交換器625と室外熱交換器634とを循環して冷凍サイクルを繰り返す。さらに詳細には、冷媒は、圧縮機633で圧縮され、室外熱交換器634で凝縮され、キャピラリチューブ636で減圧され、給気熱交換器625で蒸発される。キャピラリチューブ636に代えて、膨張弁を用いることもできる。
ケーシング621の中の給気通路641と外気通路643とを含む空間は、給気ダクト651に接続され且つ給気熱交換器625を収納している利用側空間である。ケーシング621は、給気熱交換器625で冷媒と熱交換された後の供給空気SA(第1空気)を給気ダクト651に送出することができるように構成されている。給気ダクト651が第1ダクトであり、吸込ダクト653が第3ダクトである。
ここで見方を変えると、空気調和装置601が利用側ユニット602と熱源側ユニット603で構成されているとみなすことができる。利用側ユニット602と熱源側ユニット603は、互いに別体のユニットである。利用側ユニット602は、ケーシング621と、顕熱交換器622と、給気熱交換器625と、排気ファン627と、給気ファン628と、加湿器629とを有している。熱源側ユニット603は、圧縮機633と、室外熱交換器634と、キャピラリチューブ636とを備えている。利用側ユニット602は、ケーシング621を第3ダクトである吸込ダクト653に接続し、室外から取り入れた第1空気である室外空気OAを利用側熱交換器である給気熱交換器625に導くように構成されている。
この顕熱交換器622よりも室内側に給気通路641と吸込通路644とが形成されている。顕熱交換器622よりも室外側に排気通路642と外気通路643とが形成されている。給気通路641に給気ファン628と加湿器629とが設けられている。排気通路642に排気ファン627が設けられている。外気通路643には、給気熱交換器625が設けられている。この給気熱交換器625は、熱源側ユニット603に接続されている。熱源側ユニット603には、上記給気熱交換器625とともに冷媒回路610を構成する圧縮機633、室外熱交換器634及びキャピラリチューブ636が設けられている。圧縮機633、室外熱交換器634及びキャピラリチューブ636が冷媒配管645で接続されている。室外熱交換器634には室外ファン(図示せず)が並設されている。空気調和装置601では、排気ファン627を駆動することにより室内空気RAが吸込通路644に吸い込まれ、給気ファン628を駆動することにより室外空気OAが外気通路643に吸い込まれる。このとき外気通路643に吸い込まれた室外空気OAは蒸発器として機能する上記給気熱交換器625で冷却除湿され、顕熱交換器622に至る。この顕熱交換器622において、吸込通路644に吸い込まれた上記室内空気RAと顕熱の交換を行う。この顕熱交換によって、上記室外空気OAは除湿されたまま温度だけが室内空気RAと略等しくなり、供給空気SAとして室内へ供給される。一方、顕熱交換器622で冷却された室内空気RAは、排気EAとして室外へ排出される。
第3実施形態の空気調和装置601は、室外空気OAを給気熱交換器625で冷却する。給気熱交換器625で冷却された空気が顕熱交換器622に至る。空気調和装置601は、給気熱交換器625で冷却された空気と室内空気RAに、顕熱交換器622で顕熱交換を行わせる。空気調和装置601は、室内空気RAと顕熱交換を行った空気を、その後、供給空気SAとして室内へ供給する。
しかし、室外空気を導入する構成は、この構成に限らない。例えば、空気調和装置は、先に、室外空気OAと室内空気RAに、顕熱交換器で顕熱交換を行わせる。その後、空気調和装置は、室内空気RAと顕熱交換を行った空気を、利用側熱交換器で冷却する。空気調和装置は、利用側熱交換器で冷却された空気を、供給空気SAとして室内へ供給する。
空気調和装置は、室外空気の温度が低い季節に対応できるように、室外空気OAを加熱して室内に供給するように構成されてもよい。このような空気調和装置は、例えば、室外空気OAと室内空気RAに、顕熱交換器で顕熱交換を行わせる。空気調和装置は、その後、室内空気RAと顕熱交換を行った空気を、利用側熱交換器で加熱する。空気調和装置は、利用側熱交換器で加熱した空気を、供給空気SAとして室内へ供給する。
上述の空気調和装置は、上述のような構成を備えることで、先に顕熱交換器で温度を調節された室外空気OAを、後から利用側熱交換器で冷却あるいは加熱することができるので、冷凍サイクルの効率を上げることができる。
本実施形態では、冷媒回路610には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が充填されている。当該冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。
(17−4)特徴
上述の第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態の空気調和装置(1,601,701)は、圧縮機(321,633,741)と、室内熱交換器242、給気熱交換器625または利用側熱交換器745と、室外熱交換器323,634または熱源側熱交換器743と、冷媒Aのいずれかと、第1ダクト209,721または給気ダクト651と、ケーシング230,621,730とを備えている。
室内熱交換器242、給気熱交換器625または利用側熱交換器745は、第1空気を熱交換する利用側熱交換器である。室外熱交換器323,634または熱源側熱交換器743は、第2空気を熱交換する熱源側熱交換器である。第1ダクト209,721または給気ダクト651は、第1空気を室内の複数の部屋101〜104,810に供給する第1ダクトである。冷媒Aは、少なくとも1,2−ジフルオロエチレンを含み、圧縮機と利用側熱交換器と熱源側熱交換器とを循環して冷凍サイクルを繰り返す。ケーシング230,621,730は、第1ダクト209,721または給気ダクト651に接続され且つ室内熱交換器242、給気熱交換器625または利用側熱交換器745を収納している利用側空間SP2を有し、室内熱交換器242、給気熱交換器625または利用側熱交換器745で冷媒と熱交換された後の第1空気を第1ダクト209,721または給気ダクト651に送出するように構成されている。
このように構成された空気調和装置1,601,701は、第1空気を第1ダクト209,721または給気ダクト651で複数の部屋に熱交換後の第1空気を供給することから、冷媒回路320,711,610の構成が簡素化されるので、空気調和装置1,601,701に充填される冷媒量を削減することが可能になる。
(18)第18グループの技術の実施形態
(18−1)第1実施形態
図18Aに示す冷凍サイクルは、非共沸の混合冷媒を用いた蒸気圧縮式の冷凍サイクルである。図18Aにおいて、1は圧縮機、2は利用側熱交換器、3は熱源側熱交換器、4は膨張機構として作用する第1キャピラリーチューブである。これらの機器は、四路切換弁5を介して、可逆サイクルを構成するように接続されている。6は、アキュムレータである。
本実施形態では、冷凍サイクルには、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が充填されている。当該冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。
この冷凍サイクルにおいて、熱源側熱交換器3は、第1熱交換部31と第2熱交換部32とに分かれている。これらの第1、第2熱交換部31,32は、減圧機構としての第2キャピラリーチューブ7を介して、直列に接続されている。暖房運転時には、混合冷媒の蒸発圧力を、熱源側熱交換器3を流れている間に第2キャピラリーチューブ7が低下させる。8は、冷房運転時に、混合冷媒が第2キャピラリーチューブ7をバイパスするように設けられた逆止弁である。
圧縮機1、熱源側熱交換器3、第1キャピラリーチューブ4、四路切換弁5、アキュムレータ6、第2キャピラリーチューブ7は、室外にある熱源ユニット50の中に配置されている。利用側熱交換器2は、室内にある利用ユニット60に配置されている。
利用ユニット60は、図18Bに示すように、その後面が室内の側壁WLに固定される。利用側熱交換器2には、利用ユニット60の前面側(図18Bの左側)および上面側から室内の空気が流れ込む。利用側熱交換器2は、利用ユニット60の前面側に位置する第3熱交換部21と、利用ユニット60の後面側に位置する第4熱交換部22と、を有している。第3熱交換部21の上部の近傍に、第4熱交換部22の上部が位置している。第3熱交換部21は、その上部から、利用ユニット60の前面側に向かって斜め下方に延びている。第4熱交換部22は、その上部から、利用ユニット60の後面側に向かって斜め下方に延びている。第3熱交換部21の冷媒流路の容積は、第4熱交換部22の冷媒流路の容積よりも大きい。第3熱交換部21を通過する空気の風速は速く、第4熱交換部22を通過する空気の風速は遅いが、それに合わせた冷媒流路の容積になるように第3熱交換部21および第4熱交換部が設計されている。これにより、利用側熱交換器2の熱交換の効率も高くなっている。
次に、各キャピラリーチューブ4,7による各減圧量の設定について、図18Cのモリエル線図を基に説明する。
図18Cにおいて、T1は、フロスト限界温度(例えば−3℃)、T2は、暖房運転時における標準外気温度(例えば7℃)を示す等温線である。
第1熱交換部31の入口側にある第1キャピラリーチューブ4の減圧量は、暖房運転時、第1熱交換部31の人口での冷媒の蒸発温度がフロスト限界温度T1より僅かに高い温度T3となる圧力P1、になるように設定する。
第1,第2熱交換部31,32の間に配置される第2キャピラリーチューブ7の減圧量は、混合冷媒の温度勾配に対応させて決定する。具体的には、第2熱交換部32の入口での蒸発温度がフロスト限界温度T1以上の温度T5で、かつ、第2熱交換部32の出口での蒸発温度が標準外気温度T2を下回る温度T6となる圧力P2、まで減圧するように設定する。
次に、冷凍サイクルの作用を説明する。
暖房運転では、四路切換弁(5)を図18Aの実線で示す状態に切り換えて、暖房サイクルを形成する。そして、圧縮機1を駆動させると、混合冷媒は、圧縮機1、利用側熱交換器2、第1キャピラリーチューブ4、熱源側熱交換器3、アキュムレータ6の順で循環する。この循環による混合冷媒の状態変化を、図18Cのモリエル線図を使って説明する。
混合冷媒は、圧縮機1から圧力P0の高温高圧のガスとして吐出される(図18Cの点C1)。その後、利用側熱交換器2で、同一圧力で凝縮して、冷媒は液の状態になる(C2)。次に、第1キャピラリーチューブ4で膨張(減圧)され、冷媒は、圧力P1の状態となって熱源側熱交換器3の第1熱交換部31に流入する(C3)。
第1熱交換部31に流入した冷媒は、第1熱交換部31の入口付近でフロスト限界温度T1より高い温度T3で蒸発を開始し、この蒸発に伴い、第1熱交換部31の出口付近では蒸発温度がT4(但し、T2以下)まで上昇する(C4)。この第1熱交換部31から流出した混合冷媒は、第2キャピラリーチューブ7で再び減圧され、圧力P2となる。これに伴い、第2熱交換部32の入口での蒸発温度は、第1熱交換部31の出口における蒸発温度より低く、且つ、フロスト限界温度T1より高い温度T5まで低下する(C5)。
第2熱交換部32での蒸発に伴い、冷媒の蒸発温度は上昇し、第2熱交換部32の出口付近において、冷媒は、標準外気温度T2より低い温度T6のガス冷媒となる。その後、冷媒は、圧縮機1に戻り、再び圧縮される。
このように、熱源側熱交換器3の第1熱交換部31と第2熱交換部32との間に、減圧機構としての第2キャピラリーチューブ7を設けているため、熱源側熱交換器3の入口と出口との蒸発温度の差が小さくなる。言い換えると、この冷凍サイクルでは、熱源側熱交換器3における蒸発温度の上昇幅が小さくなる。これにより、蒸発温度を好適な蒸発温度域内で推移させることでき、熱源側熱交換器3でのフロスト(霜付き)を回避しながら、しかも外気温と蒸発温度との差も確保することで出来ている。これらの効果によって、この冷凍サイクルでは、熱源側熱交換器3の熱交換の効率が向上している。
また、この冷凍サイクルでは、蒸発温度の温度勾配が大きい混合冷媒を使用しても、熱源側熱交換器3の能力低下が抑制される。
なお、四路切換弁5を破線で示す状態に切り換えると、冷房運転を行うことができるが、これは従来と同様なので説明を省略する。
(18−2)第2実施形態
図18Dに示す冷凍サイクルは、上記の第1実施形態の冷凍サイクルと同様に、非共沸点冷媒を使ったヒートポンプ式の冷凍装置である。第1実施形態との相違点は、負荷に応じて、混合冷媒の組成を変えて能力を増減させられるようにしている点である。具体的には、膨張機構として作用する第3,第4キャピラリーチューブ41、42の間に、気液分離器9を設けている。吸入ガス管10には、冷媒貯留用の容器11を設けている。容器11の一端は、第1開閉弁12を介して、気液分離器9のガス域に接続されている。容器11の他端は、第2開閉弁13を介して、吸入ガス管10に接続されている。
第2開閉弁13を閉状態にし、かつ、第1開閉弁12を開状態にすることにより、容器11に気液分離器9から低沸点冷媒の割合が多い混合冷媒を流入させて、凝縮貯留させることができる。これにより、循環する混合冷媒における高沸点冷媒の組成比が大きくなって、能力を低下させることが可能である。
また、第2開閉弁13を開状態にし、かつ、第1開閉弁12を閉状態にすると、再び混合冷媒の組成比が元に戻り、能力がアップする。
その他の構成は、第1実施形態と同様であるから、図18Dに第1実施形態の構成と同一符号を付して説明を省略する。
なお、上記各実施形態においては、暖房運転における蒸発圧力を2ステップとしたが、熱源側熱交換器3を3個以上に分割し、これら分割した各熱交換部の間それぞれに減圧機構を設け、3ステップ以上に蒸発圧力を変化させてもよい。
また、上記各実施形態においては、減圧機構としてキャピラリーチューブ7を設けたが、熱源側熱交換器3の伝熱管の内径を適当な減圧勾配が得られるように選定することによって、減圧機構を構成してもよい。
また、減圧機構の減圧量は、必ずしも暖房運転時における熱源側熱交換器3の入口での蒸発温度がフロスト限界温度以上となるようにしなくともよい。
(19)第19グループの技術の実施形態
(19−1)第1実施形態
本実施形態では、冷媒回路10には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が充填されている。当該冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。
図19Aは、本開示の第1実施形態に係る空気調和機1における冷媒回路10の配管系統図である。この空気調和機1は、冷房運転と暖房運転とが可能なヒートポンプ式の空気調和機である。図19Aに示すように、空気調和機1は、室外に設置される室外機100と、室内に設置される室内機200とを備えている。室外機100と室内機200とは、第1の接続配管11及び第2の接続配管12を介して互いに接続され、冷媒が循環して蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う冷媒回路10を構成している。
〈室内機〉
室内機200には、冷媒を室外空気と熱交換させるための室内熱交換器210が設けられている。この室内熱交換器210には、例えばクロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器などを採用できる。また、室内熱交換器210の近傍には、室内ファン211が設置されている。
〈室外機〉
室外機100には、圧縮機13、油分離器14、室外熱交換器15、室外ファン16、膨張弁17、アキュムレータ18、四方切換弁19、冷媒ジャケット20、及び電気回路30が設けられ、ケース(後述する室外機ケーシング70)に収められている。
圧縮機13は、冷媒を吸入ポートから吸入して圧縮し、圧縮した冷媒を吐出ポートから吐出する。この圧縮機13には、例えばスクロール圧縮機などの種々の圧縮機を採用できる。
油分離器14は、圧縮機13から吐出された潤滑油が混じった冷媒を、冷媒と潤滑油とに分離して、冷媒は四方切換弁19に送り、潤滑油は圧縮機13に戻すようになっている。
室外熱交換器15は、冷媒を室外空気と熱交換させるための空気熱交換器であり、例えばクロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器などである。室外熱交換器15の近傍には、室外熱交換器15へ室外空気を送風する室外ファン16が設置されている。
膨張弁17は、室外熱交換器15と室内熱交換器210に接続され、流入した冷媒を膨張させて、所定の圧力まで減圧させてから流出させる。膨張弁17は、例えば、開度可変の電子膨張弁で構成できる。
アキュムレータ18は、流入する冷媒を気液分離し、分離したガス冷媒を圧縮機13に送る。
四方切換弁19には、第1から第4の4つのポートが設けられる。四方切換弁19は、第1ポートと第3ポートが連通すると同時に第2ポートと第4ポートが連通する第1状態(図19Aに実線で示す状態)と、第1ポートと第4ポートが連通すると同時に第2ポートと第3ポートが連通する第2状態(図19Aに破線で示す状態)とに切り換え可能である。この室外機100では、第1ポートは油分離器14を介して圧縮機13の吐出ポートに、第2ポートはアキュムレータ18を介して圧縮機13の吸入ポートにそれぞれ接続されている。また、第3ポートは室外熱交換器15及び膨張弁17を介して第2の接続配管12に、第4ポートは第1の接続配管11にそれぞれ接続されている。そして、室外機100において冷房運転が行われる場合には第1状態に切り替えられ、暖房運転が行われる場合には第2状態に切り替えられる。
冷媒ジャケット20は、例えば、アルミニウムなどの金属を扁平な直方体状に形成したものであり、室外熱交換器15と膨張弁17とを接続する冷媒配管21の一部を覆って、冷媒配管21と熱的に接続されている。詳しくは、この冷媒ジャケット20には、図19Bに示すように冷媒配管21を嵌めこむ2つの貫通孔が設けられ、冷媒配管21は、一方の貫通孔を通り抜けた後にU字状に折り返して、もう一方の貫通孔を通り抜けている。つまり、冷媒ジャケット20の内部には、冷凍サイクルに使用する冷媒が流通している。
電気回路30は、圧縮機13の電動機の回転数などの制御を行う。この電気回路30は、プリント基板31上に形成され、プリント基板31はスイッチボックス40内にスペーサ32によって固定されている。このプリント基板31上には、図19Bに示すように、パワー素子33などが配置されている。このパワー素子33は、例えば圧縮機13の電動機に電力を供給するインバータ回路のスイッチング素子であり、圧縮機13の運転時には発熱し、パワー素子33を冷却しておかないと、パワー素子33が動作可能な温度(例えば90℃)を超える可能性がある。そのため、空気調和機1では、冷媒ジャケット20を流通する冷媒によってパワー素子33を冷却するようになっている。
具体的には、空気調和機1では、図19Bに示すように、冷媒ジャケット20をスイッチボックス40に固定してスイッチボックス40内のパワー素子33を冷却する。より詳しくは、スイッチボックス40は、一つの面が開口した扁平な箱状に形成され、開口部が対向した面には貫通孔40aが設けられ、板状に形成された伝熱板50が貫通孔40aを覆うように取り付けネジ51によって固定されている。伝熱板50は、アルミニウムなどの比較的熱抵抗が小さい材料で構成される。
この伝熱板50に対しては、スイッチボックス40の外側からは冷媒ジャケット20が取り付けネジ51で固定され、スイッチボックス40の内側からはパワー素子33が取り付けネジ51で固定されている。この構造では、パワー素子33の熱は、伝熱板50を介して冷媒ジャケット20に伝導し、冷媒ジャケット20を流通する冷媒に放熱することになる。
詳しくは、冷媒ジャケット20では、冷房運転時には室外熱交換器15で凝縮してパワー素子33の温度よりも低温の冷媒が流れ、暖房運転時には、室内熱交換器210で凝縮してパワー素子33の温度よりも低温の冷媒が流れる。そのため、電気回路30のパワー素子33で生じた熱は、伝熱板50を介して冷媒ジャケット20に伝熱し、冷媒ジャケット20において冷媒配管21内の冷媒に放熱する。これにより、パワー素子33は、動作可能な温度に維持されることになる。
図19Cは、室外機100の横断面形状を模式的に示した図であり、圧縮機13等の主要部品の配置を示している。図19Cに示すように、室外機ケーシング70は仕切り板60によって2つに仕切られている。一方の区画(熱交換室)には、断面形状がL字型に形成された室外熱交換器15が、室外機ケーシング70の側面及び背面に面して配置され、この室外熱交換器15の近傍には、室外ファン16が設置されている。また、もう一方の区画(機械室)には冷媒ジャケット20、圧縮機13、スイッチボックス40等が配置されている。詳しくは、この室外機ケーシング70は、正面側の面に、機械室に貫通するサービス用開口部71が設けられ、スイッチボックス40は、伝熱板50の側が、サービス用開口部71からみて手前側に向いている。また、冷媒ジャケット20は、サービス用開口部71から見て伝熱板50よりも手前側(すなわちパワー素子33よりも手前側)に配置されている。
−スイッチボックス40の室外機ケーシング70内への組み付け−
本実施形態では、プリント基板31と伝熱板50とは予めスイッチボックス40に取り付けておく。具体的には、まず伝熱板50をスイッチボックス40に対して取り付けネジ51で固定し、その状態で、プリント基板31をスイッチボックス40の中に入れて、スペーサ32を介してスイッチボックス40に固定するとともに、パワー素子33を伝熱板50に対して取り付けネジ51で固定して熱的に接続する。このようにして組み立てたスイッチボックス40は、空気調和機1の製造時や、修理等でプリント基板31を再度組み付ける際などに、サービス用開口部71から室外機ケーシング70内に入れる。
図19Dは、室外機100の正面図である。この例では、室外機ケーシング70は、冷媒ジャケット20の上方に、スイッチボックス40を通過させることができる空間が設けられ、サービス用開口部71はこの空間に対しても開口している。そして、このサービス用開口部71からスイッチボックス40を室外機ケーシング70内に組み込む。この場合、スイッチボックス40は、冷媒ジャケット20の上方を乗り越えさせて、冷媒ジャケット20よりも奥側に入れる。この際、スイッチボックス40は伝熱板50側を手前側(すなわち冷媒ジャケット20に対向する側)にしておく。そして、この状態で、冷媒ジャケット20と伝熱板50とを取り付けネジ51によって固定する。
このとき、冷媒ジャケット20と伝熱板50との間に隙間があると、冷媒ジャケット20とパワー素子33との間で適切に熱交換が行われず、所望の冷却効果を得られないことになる。本実施形態では、冷媒ジャケット20は、サービス用開口部71から見てパワー素子33よりも手前側に配置されているので、冷媒ジャケット20と伝熱板50とを取り付けネジ51によって固定する際に、両者の接続状態を視認することができる。したがって、本実施形態によれば、製造時や修理時などに、冷媒ジャケット20とパワー素子33とを適切に接続して所望の冷却効果を得ることが可能になる。
(19−2)第2実施形態
本実施形態でも、冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。
図19Eは、本開示の第2実施形態に係る空気調和機1の室外機100の内部構成を示す。本実施形態の室外機100は、冷媒ジャケット20が、放熱板50に取り付けられたヒートパイプ20Aによって構成されている点において、第1実施形態と異なる。ヒートパイプ20Aは、冷媒が封入されているパイプである。ヒートパイプ20Aは、冷凍サイクルを行う冷媒回路とは連通していないので、冷媒を冷媒回路と授受しない。
第2実施形態に係る室外機100は、ケーシング70と、ケーシング70に設けられた仕切り板60を有する。仕切り板60は、ケーシング70の内部空間を、熱交換室81、機械室82、制御機器室83に仕切る。機械室82には、圧縮機13、アキュムレータ18、吸込配管91、連結配管92が設けられている。圧縮機13、アキュムレータ18、吸込配管91、連結配管92は、冷凍サイクルを行う冷媒回路に属する。吸込配管91は、低圧ガス状態の冷媒をアキュムレータ18へ導入する。連結配管92は、圧縮機13の吸込口とアキュムレータ18を連絡する。制御機器室83には、パワー素子33、放熱板50、冷媒ジャケット20、が設けられる。パワー素子33は、第1実施形態と同様に、冷媒ジャケット20に熱的に接続している。
冷媒ジャケット20、即ちヒートパイプ20Aは、左端垂直部X、傾斜部Y、右端垂直部Zを有する。左端垂直部Xは放熱板50と接触するように構成されている。右端垂直部Zには、吸込配管91が弾性体93を介して接触するように配置されている。弾性体93は、熱伝導率が比較的大きなものであり、例えばシリコンゴムである。
パワー素子33が発する熱は、左端垂直部Xにおいてヒートパイプ20Aに伝達される。この熱によって、左端垂直部Xの内部の冷媒が蒸発する。蒸発によって生じたガス冷媒は、傾斜部Yを上昇して右端垂直部Zへ到達する。ガス冷媒は、右端垂直部Zにおいて吸込配管91へ熱を放出する。これにより、ガス冷媒は凝縮して液冷媒に変化する。液冷媒は、傾斜部Yを下降して左端垂直部Xへ到達する。このように、ヒートパイプ20Aを用いた廉価な構成により、パワー素子33は冷却される。
(20)第20グループの技術の実施形態
(20−1)実施形態
以下、本開示の一実施形態に係る空気調和機について説明する。本実施形態では、空気調和機10の冷媒回路には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が充填されている。当該冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。
<空気調和機10の全体構成>
図20Aに示すように、本実施形態の空気調和機10は、圧縮機1、四路弁2、室外熱交換器3、減圧器の一例としての膨張弁4、第1室内熱交換器5、除湿用電磁弁6および第2室内熱交換器7が環状に接続された冷媒回路を備えている。また、空気調和機10は、室外熱交換器3の近傍に配置された室外ファン8と、第1室内熱交換器5及び第2室内熱交換器7の近傍に配置された室内ファン9を備えている。除湿用電磁弁6は、第1室内熱交換器5と第2室内熱交換器7との間に配置される。
空気調和機10において、冷房運転時は、除湿用電磁弁6を開いた状態で四路弁2が実線の位置に切り換えられ、圧縮機1から吐出された冷媒は、室外熱交換器3、膨張弁4、第1室内熱交換器5、除湿用電磁弁6、第2室内熱交換器7を介して圧縮機1の吸込側に戻る。この冷媒回路において、凝縮器として働く室外熱交換器3で放熱し、蒸発器として働く第1室内熱交換器5及び第2室内熱交換器7で室内空気を冷却して冷房を行う。一方、暖房運転時は、除湿用電磁弁6を開いた状態で四路弁2が点線の位置に切り換えられ、冷房運転時とは逆の冷凍サイクルで暖房を行う。
そして、再熱除湿運転では、膨張弁4を開くと共に除湿用電磁弁6を閉じて絞り状態にし、さらに四路弁2が実線の位置に切り換えられ、圧縮機1から吐出された冷媒は、室外熱交換器3、膨張弁4、第1室内熱交換器5、除湿用電磁弁6、第2室内熱交換器7を介して圧縮機1の吸込側に戻る。この冷媒回路において、室外熱交換器3と第1室内熱交換器5が凝縮器として働く一方、第2室内熱交換器7が蒸発器として働く。したがって、第1室内熱交換器5で室内空気を温めつつ第2室内熱交換器7で除湿と冷却が行われて、室内温度を下げずに除湿を行う。したがって、再熱除湿運転では快適性が維持される。
図20Bは、除湿用電磁弁6が開状態である場合であって、図20Cは、除湿用電磁弁6が絞り状態(閉状態)である場合である。除湿用電磁弁6は、図20B及び図20Cに示すように、弁本体20と、開閉機構30とを備えている。弁本体20は、弁室19とその弁室19内の下部に形成された弁座12とを有する円筒部11と、弁座12のテーパ面12aに対向するテーパ面13bを有する弁体13と、円筒部11の上部に内嵌され、弁体13の軸部13aを軸方向に案内するガイド部14とを有している。円筒部11には、入口側通路31が接続された入口11aと、出口側通路32が接続された出口11bを設けている。
また、開閉機構30は、弁体13の軸部13aの外側に配置されたコイルバネ15と、弁体13の軸部13aの端に固定された円筒形状のプランジャ16と、プランジャ16内に配置された電磁ガイド17と、プランジャ16と電磁ガイド17の外側に配置された電磁コイル18とを有している。コイルバネ15は、プランジャ16を電磁ガイド17側に付勢している。
そして、弁座12のテーパ面12aには、図20Dに示すように、複数の溝(ブリード溝)21が設けられている。したがって、図20Cのように、除湿用電磁弁6が絞り状態(閉状態)である場合に、弁体13のテーパ面13bと弁座12のテーパ面12aとの間には、弁座12のテーパ面12aにある複数の溝21によって、小さい隙間の冷媒絞り流路が構成される。
上記のように構成された除湿用電磁弁6において、電磁コイル18に通電されると、電磁ガイド17とプランジャ16との間に電磁力が発生して、コイルバネ15の付勢力に反してプランジャ16が下方に移動して、弁体13のテーパ面13bが弁座12のテーパ面12aに当接する。したがって、弁体13のテーパ面13bと弁座12のテーパ面12aとの間が閉鎖されるが、弁座12のテーパ面12aにある複数の溝21によって小さい隙間の冷媒絞り流路が構成される。よって、除湿用電磁弁6が、絞り状態(閉状態)となって、入口側通路31が接続された入口11aと出口側通路32が接続された出口11bとが、弁座12の複数の溝21によって連通する。
また、電磁コイル18への通電が停止されると、電磁ガイド17とプランジャ16との間の電磁力がなくなるので、コイルバネ15の付勢力によってプランジャ16が上方に移動して、弁体13のテーパ面13bが弁座12のテーパ面12aから離れる。したがって、除湿用電磁弁6が、開状態となって、入口側通路31が接続された入口11aと出口側通路32が接続された出口11bとが連通する。
以上に説明した実施形態において、空気調和機10は、開閉の切り換えが可能な除湿用電磁弁6を備えている。これに代えて、空気調和機10は、開度の調節が可能な除湿用膨張弁を備えていてもよい。
(21)第21グループの技術の実施形態
(21−1)空気調和機の全体構成
図21Aに示すように、本実施形態の空気調和機1は、室内に設置される室内機2と、室外に設置される室外機3とを備えている。そして、空気調和機1は、圧縮機10と、四方弁11、室外熱交換器12と、膨張弁13と、室内熱交換器14とを接続した冷媒回路50を備えている。冷媒回路50において、圧縮機10の吐出口に四方弁11を介して室外熱交換器12が接続され、その室外熱交換器12に膨張弁13が接続される。そして、膨張弁13に室内熱交換器14の一端が接続され、その室内熱交換器14の他端に四方弁11を介して圧縮機10の吸込口が接続される。室内熱交換器14は、補助熱交換器20と、主熱交換器21とを有している。
冷媒回路50には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が充填されている。当該冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。
空気調和機1は、冷房運転モード、所定の除湿運転モードおよび暖房運転モードにおける運転が可能であって、リモートコントローラ41によって、いずれかの運転モードを選択して運転開始操作を行ったり、運転切換操作や運転停止操作を行うことができる。また、リモートコントローラ41では、室内温度の設定温度を設定したり、室内ファンの回転数を変化させることによって室内機2の風量を変更できる。
冷房運転モードおよび所定の除湿運転モードでは、図示実線矢印で示すように、圧縮機10から吐出された冷媒が四方弁11から室外熱交換器12、膨張弁13、補助熱交換器20、主熱交換器21へと順に流れ、主熱交換器21を経た冷媒が四方弁11を通って圧縮機10に戻る冷房サイクルまたは除湿サイクルが形成される。すなわち、室外熱交換器12が凝縮器、室内熱交換器14(補助熱交換器20および主熱交換器21)が蒸発器として機能する。
一方、暖房運転モードでは、四方弁11が切換わることにより、図示破線矢印で示すように、圧縮機10から吐出される冷媒が四方弁11から主熱交換器21、補助熱交換器20、膨張弁13、室外熱交換器12へと順に流れ、室外熱交換器12を経た冷媒が四方弁11を通って圧縮機10に戻る暖房サイクルが形成される。すなわち、室内熱交換器14(補助熱交換器20および主熱交換器21)が凝縮器、室外熱交換器12が蒸発器として機能する。
図21Bに示されている室内機2は、上面に室内空気の吸込口2aを有し、前面下部に空調用空気の吹出口2bとを有している。室内機2内には、吸込口2aから吹出口2bに向かって空気流路が形成され、この空気流路には、室内熱交換器14と、横流型の室内ファン16が配置される。したがって、室内ファン16が回転すると、室内空気が吸込口2aから室内機2内に吸込まれる。室内機2の前側において、吸込口2aからの吸込み空気は、補助熱交換器20と主熱交換器21を通って室内ファン16側に流れる。一方、室内機2の背面側において、吸込口2aからの吸込み空気は、主熱交換器21を通って室内ファン16側に流れる。
室内熱交換器14は、上述したように、補助熱交換器20の下流側に配置された主熱交換器21を有している。主熱交換器21は、室内機2の前面側に配置された前面熱交換器21aと、室内機2の背面側に配置された背面熱交換器21bとを有しており、この熱交換器21a、21bが、室内ファン16を囲むように逆V字状に配置される。そして、補助熱交換器20が前面熱交換器21aの前方に配置される。補助熱交換器20および主熱交換器21(前面熱交換器21a、背面熱交換器21b)は、それぞれ、熱交換パイプおよび多数枚のフィンを備えている。
冷房運転モードおよび所定の除湿運転モードでは、図21Cに示すように、補助熱交換器20の下方の端部近くに配置された液入口17aから液冷媒が供給され、その供給された液冷媒は、補助熱交換器20の上端に近付くように流れる。そして、補助熱交換器20の上端近くに配置された出口17bから流れ出て分岐部18aに流れる。分岐部18aにおいて分岐された冷媒が、それぞれ、主熱交換器21の3つの入口17cから、前面熱交換器21aの下方部分と上方部分と背面熱交換器21bに供給され、その後、出口17dから流れ出て合流部18bで合流する。また、暖房運転モードでは、冷媒が上記と反対方向に流れる。
そして、空気調和機1では、所定の除湿運転モードでの運転が行われているとき、補助熱交換器20の液入口17aから供給された液冷媒は、補助熱交換器20の途中で全て蒸発する。したがって、補助熱交換器20の液入口17a近くの一部の範囲だけが、液冷媒が蒸発する蒸発域61である。よって、所定の除湿運転モードで運転されているとき、室内熱交換器14において、補助熱交換器20の上流側の一部だけが蒸発域61であって、補助熱交換器20の蒸発域61の下流側の範囲と主熱交換器21とは、いずれも過熱域62である。
そして、補助熱交換器20の上端近くの過熱域62を流れた冷媒が、補助熱交換器20の下方部分の風下側に配置された前面熱交換器21aの下方部分を流れる。したがって、吸込口2aからの吸込空気において、補助熱交換器20の蒸発域61で冷却された空気は、前面熱交換器21aで加熱された後で、吹出口2bから吹き出される。一方、吸込口2aからの吸込空気において、補助熱交換器20の過熱域62と前面熱交換器21aを流れた空気と、背面熱交換器21bを流れた空気とは、室内温度と略同一の温度で、吹出口2bから吹き出される。
空気調和機1では、図21Aに示すように、室外機3に、冷媒回路50において膨張弁13の下流側において蒸発温度を検知する蒸発温度センサ30が取り付けられる。そして、室内機2に、室内温度(室内機2の吸込口2aからの吸込空気の温度)を検知する室内温度センサ31と、補助熱交換器20において液冷媒の蒸発が終了したことを検知する室内熱交温度センサ32が取付けられる。
室内熱交温度センサ32は、図21Cに示すように、補助熱交換器20の上端近くの風下側に配置される。そして、補助熱交換器20の上端近くの過熱域62では、吸込口2aからの吸込空気がほとんど冷却されない。したがって、室内熱交温度センサ32で検知される温度が、室内温度センサ31で検知される室内温度と略同一である場合には、補助熱交換器20の途中で蒸発が終了して、補助熱交換器20の上端近くの範囲が過熱域62であることを検知できる。また、室内熱交温度センサ32は、室内熱交換器14の中間部の伝熱管に配置される。したがって、室内熱交換器14の中間部近くにおいて、冷暖房運転での凝縮温度または蒸発温度を検知できる。
図21Dに示すように、空気調和機1の制御部40には、圧縮機10と、四方弁11、膨張弁13と、室内ファン16を駆動するモータ16aと、蒸発温度センサ30と、室内温度センサ31と、室内熱交温度センサ32とが接続される。したがって、制御部40は、リモートコントローラ41からの指令(運転開始操作や室内温度の設定温度等)や、蒸発温度センサ30で検知される蒸発温度、室内温度センサ31で検知される室内温度(吸込空気の温度)、室内熱交温度センサ32で検知される熱交中間温度に基づいて空気調和機1の運転を制御する。
そして、空気調和機1では、所定の除湿運転モードにおいて、補助熱交換器20が、液冷媒が蒸発する蒸発域61と蒸発域61の下流側の過熱域62を有するが、この蒸発域61の範囲が、負荷に応じて変化するように、圧縮機10及び膨張弁13が制御される。ここで、負荷に応じて変化するとは、蒸発域61に供給される熱量に応じて変化することであって、熱量は例えば室内温度(吸込空気の温度)と室内風量によって決まる。また、負荷は、必要除湿能力(必要冷房能力)に対応しており、例えば室内温度と設定温度との差に基づいて検知できる。
圧縮機10は、室内温度と設定温度との差に基づいて制御される。室内温度と設定温度との差が大きい場合に負荷が大きいことから圧縮機10の周波数が増加され、室内温度と設定温度との差が小さい場合に負荷が小さいことから、圧縮機10の周波数が減少するように制御される。
膨張弁13は、蒸発温度センサ30で検知される蒸発温度に基づいて制御される。上述したように、圧縮機10の周波数が制御された状態において、蒸発温度が目標蒸発温度(12℃)近くの所定範囲(10℃−14℃)内の温度になるように、膨張弁13が制御される。この蒸発温度の所定範囲は、圧縮機10の周波数によらず一定に制御されるのが好ましい。ただし、周波数によって、わずかに変化するようにしても実質的に一定であれば問題ない。
このように、制御部40は、所定の除湿運転モードにおいて、負荷に応じて圧縮機10及び膨張弁13を制御することによって、補助熱交換器20の蒸発域61の範囲を変化させる。制御部40は、補助熱交換器20の蒸発域61の範囲を変化させて、蒸発温度が所定範囲内の温度になるように制御することができる。
空気調和機1では、補助熱交換器20及び前面熱交換器21aが、12段の伝熱管をそれぞれ有している。そして、所定の除湿運転モードにおいて補助熱交換器20の蒸発域61となる段数が、前面熱交換器21aの段数の半分以上である場合、補助熱交換器の蒸発域61の範囲を十分に広くできるので負荷の変動に十分に対応できる。特に負荷が大きい場合に効果がある。
図21Eは、膨張弁13において開度を変化したときの流量変化を示している。膨張弁13は、入力される駆動パルスの数に応じて開度が連続的に変化する。そして、開度が減少するにつれて、膨張弁13を流れる冷媒の流量が減少する。膨張弁13では、開度t0のときに全閉状態であって、開度t0からt1の間では、開度が増加するにつれて流量が第1の傾きにしたがって増加し、開度t1からt2の間では、開度が増加するにつれて流量が第2の傾きにしたがって増加する。ここで、第1の傾きは、第2の傾きより大きい。
補助熱交換器20の蒸発域61の範囲が変化するように行われる制御について、一例を説明する。例えば、所定の除湿運転モードにおいて、補助熱交換器20の蒸発域61の範囲が所定面積であるときに負荷が大きくなった場合、圧縮機10の周波数が増加されると共に、膨張弁13の開度が大きく変更される。したがって、補助熱交換器20の蒸発域61の範囲が所定面積より大きくなって、室内機2に吸い込まれた風量が一定であっても、実際に蒸発域61を通過する風量が増加する。
一方、所定の除湿運転モードにおいて、補助熱交換器20の蒸発域61の範囲が所定面積であるときに負荷が小さくなった場合、圧縮機10の周波数が減少されると共に、膨張弁13の開度が小さく変更される。したがって、補助熱交換器20の蒸発域61の範囲が所定面積より小さくなって、室内機2に吸い込まれた風量が一定であっても、実際に蒸発域61を通過する風量が減少する。
空気調和機1のリモートコントローラ41において、除湿運転モードを選択して運転が開始される操作(除湿運転モードの開始操作)が行われた場合の動作を説明する。空気調和機1では、除湿運転モードの開始操作が行われたときに負荷が大きい場合は、補助熱交換器20の一部分のみを蒸発域61とする第2運転を開始しないで、第1運転を開始した後で、負荷の減少に応じて第2運転に切り換わる。ここで、第1運転は、補助熱交換器20の全体を蒸発域61として、室内熱交換器14で熱交換された空気を室内に吹き出す運転である。
そして、空気調和機1では、負荷が、室内温度と設定温度との差に対応して変化する圧縮機の周波数に基づいて検知される。したがって、空気調和機1では、圧縮機10の周波数が所定周波数より小さい場合に、負荷が小さく、第1運転では蒸発温度が高くなって除湿できない状態であることを検知する。また、空気調和機1では、蒸発温度(蒸発温度センサ30で検知される蒸発温度または室内熱交温度センサ32で検知される熱交中間温度)を検知して、その蒸発温度が所定温度より低い場合、第1運転でも十分な除湿ができることから、第2運転に切り換わらない。したがって、空気調和機1では、圧縮機周波数が所定周波数より小さく、蒸発温度が所定温度より高い場合に、第2運転が開始される。
図21Fに示されているように、まず、リモートコントローラ41において除湿運転モードの開始操作が行われると(ステップS1)、圧縮機周波数が所定周波数より小さく、蒸発温度が所定温度より高いか否かを判断する(ステップS2)。所定周波数は、除湿運転モードにおける上限周波数である。所定温度とは、第1運転における除湿限界温度である。そして、圧縮機周波数が所定周波数以上、または、蒸発温度が所定温度以下と判断した場合には(ステップS2:NO)、第1運転を開始する(ステップS3)。その後、ステップS2の判断が繰り返される。一方、ステップS2において、圧縮機周波数が所定周波数より小さく、蒸発温度が所定温度より高いと判断した場合には(ステップS2:YES)、第2運転を開始する(ステップS4)。
なお、冷房運転モードでは、例えば、第1運転が行われ、室内熱交換器14の全体が蒸発器として機能するように、空気調和機1が制御部40により制御される。
(21−2)本実施形態の空気調和機1の特徴
(21−2−1)
本実施形態の空気調和機1では、除湿運転モードにおいて、補助熱交換器20が冷媒を蒸発域61で蒸発させる第1熱交換器となり、室外熱交換器12が冷媒を凝縮させる第2熱交換器となる。空気調和機1では、膨張弁13が、冷媒を減圧する減圧部である。この空気調和機1は、第1熱交換器である室内熱交換器14の蒸発域61で冷媒を蒸発させて除湿することができ且つ簡略化された冷媒回路50を有している。
本実施形態の空気調和機1では、除湿運転モードの開始操作が行われたときに負荷が大きい場合、第1運転でも熱交換器の温度が低いため、十分な除湿が可能であるので、第1運転を開始することで、効率良く、除湿と冷房を同時に行うことが可能である。そして、室内の温度が低下して、負荷が小さくなってくると、第1運転では、蒸発温度が高くなって除湿できなくなるため、その時点で第2運転に切り換える。これにより、除湿のためのCOP悪化の影響を最小限とすることが可能となる。
また、本実施形態の空気調和機1では、除湿運転モードの開始操作によって第1運転を開始した後において、蒸発温度が所定温度より低い場合は第2運転に切り換わらない。この場合、蒸発温度が所定値より低いので、第1運転から第2運転に切り換えなくても除湿できる。
(21−2−2)
さらに詳細に見ると、空気調和機1では、補助熱交換器20を第1熱交換器とみなすことができる。このように見る場合には、第1熱交換器である補助熱交換器20の風下に配置されている主熱交換器21を、空気調和機1が備えている。除湿運転モードの開始操作によって第1運転が行われる場合、補助熱交換器20の全体が蒸発域として機能する。補助熱交換器20の全体が蒸発域として機能する場合、主熱交換器21の全体を蒸発域として機能させる制御ができるように、制御部40が構成されてもよい。補助熱交換器20の全体が蒸発域として機能する場合、主熱交換器21の一部を蒸発域として機能させる制御ができるように、制御部40が構成されてもよい。補助熱交換器20の全体が蒸発域として機能する場合、主熱交換器21の全体を過熱域として機能させる制御ができるように、制御部40が構成されてもよい。また、制御部40は、これらの構成のうちの一つあるいは複数を組み合わせて構成されてもよい。そのために、室内熱交温度センサが適宜追加されてもよい。
(21−3)変形例
(21−3−1)変形例A
上述の実施形態において、補助熱交換器20が、前面熱交換器21aに設けられて、背面熱交換器21bに設けられない場合について説明した。しかし、補助熱交換器20は、背面熱交換器21bの最風上側に設けられてもよい。
(21−3−2)変形例B
上述の実施形態において、補助熱交換器と主熱交換器とが一体に構成されてもよい。したがって、この場合、室内熱交換器が一体に構成され、室内熱交換器の最風上側に、補助熱交換器に対応した部分が設けられ、その風下側に、主熱交換器に対応した部分が設けられる。
この場合には、第1運転が、室内熱交換器の最風上側の補助熱交換器に相当する部分の全体を蒸発域とする運転になり、第2運転が、内熱交換器の最風上側の補助熱交換器に相当する部分の全体を蒸発域とする運転になる。
(21−3−3)変形例C
また、上述の実施形態では、冷房運転モード、所定の除湿運転モードおよび暖房運転モードでの運転を行う空気調和機について説明したが、所定の除湿運転モードの他の方法で除湿運転を行う除湿運転モードでの運転を行う空気調和機であってもよい。
(21−3−4)変形例D
上述の実施形態は、室内熱交換器14を第1熱交換器とみなし、除湿運転モードでは、第1熱交換器の一部を蒸発域として用いて、冷房運転モードでは、第1熱交換器の全体を蒸発域として用いていると見ることもできる。
(22)第22グループの技術の実施形態
(22−1)冷凍サイクル装置
次に、本開示の実施形態に係る冷凍サイクル装置について、図面を参照しながら説明する。
本開示の下記実施形態の冷凍サイクル装置は、少なくとも所定の運転時に、熱源側及び利用側の熱交換器の少なくとも一方において、冷媒の流れと、冷媒と熱交換する熱媒体の流れと、が対向流となるという特徴を有する。以下では、説明の簡略化のため、このような特徴を有する冷凍サイクル装置を、対向流型の熱交換器を有する冷凍サイクル装置と呼ぶ場合がある。なお、ここで対向流とは、熱交換器における冷媒の流れ方向が、外部熱媒体(冷媒回路の外部を流れる熱媒体)の流れ方向に対して逆方向であることを意味する。言い換えれば、対向流とは、熱交換器において、冷媒が、外部熱媒体の流れる方向の下流側から上流側へ向けて流れることを意味する。なお、以下の説明では、熱交換器における冷媒の流れ方向が外部熱媒体の流れ方向に対して順方向である場合、言い換えれば熱交換器において冷媒が外部熱媒体の流れる方向の上流側から下流側へ向けて流れる場合には、冷媒の流れは並行流であると呼ぶ。
対向流型の熱交換器について具体例を挙げて説明する。
外部熱媒体が液体(例えば水)の場合には、熱交換器を、図22A(a)に示すような二重管式熱交換器とし、例えば、二重管の内管P1内に外部熱媒体を一方側から他方側(図示では上側から下側)に流し、外管P2内に冷媒を他方側から一方側(図示では下側から上側)に流すことで、冷媒の流れと外部熱媒体の流れとを対向流とすることができる。また、熱交換器を、図22A(b)に示すような円筒管P3の外周面に螺旋管P4が巻き付けられた構成の熱交換器とし、円筒管P3内に例えば外部熱媒体を一方側から他方側(図示では上側から下側)に流し、螺旋管P4内に冷媒を他方側から一方側(図示では下側から上側)に流すことで、冷媒の流れと外部熱媒体の流れとを対向流とすることができる。さらに、図示は省略するが、プレート式熱交換器等の他の公知の熱交換器において、冷媒の流れる方向を外部熱媒体の流れる方向に対して逆方向として対向流を実現してもよい。
外部熱媒体が空気の場合には、熱交換器を、例えば図22Bに示すようなフィンチューブ式熱交換器とすることができる。フィンチューブ式熱交換器は、例えば図22Bのように、所定間隔を置いて並設される複数のフィンFと、平面視で蛇行したU字状の伝熱管P5とを有する。フィンチューブ式熱交換器では、伝熱管P5が有する複数列(図22Bでは2列)の互いに平行な直線部が、複数のフィンFを貫通するようにして設けられる。各伝熱管P5の両端のうち、一方は冷媒の流入口となり、他方は冷媒の流出口となる。冷媒を、図中の矢印Xに示すように、空気の流通方向Yの下流側から上流側に向けて流すことで、熱交換器における冷媒の流れと外部熱媒体の流れとを対向流とすることができる。
なお、本開示に係る冷凍サイクル装置の冷媒回路に封入される冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかが用いることができる。冷媒Aでは、蒸発、凝縮の間に熱媒体の温度が上昇又は下降する。
このように蒸発、凝縮時に温度変化(温度グライド)を伴う冷凍サイクルをローレンツサイクルという。ローレンツサイクルでは熱交換を行う熱交換器として機能する蒸発器及び凝縮器のそれぞれが対向流型であることで蒸発中と凝縮中の冷媒の温度差が減少するが、冷媒と外部熱媒体との間で有効に熱を伝えるのに十分な大きさの温度差は維持され、効率良く熱交換をすることが可能となる。また、対向流型の熱交換器を有する冷凍サイクル装置の他の利点は圧力差も最小限になるということである。このように対向流型の熱交換器を有する冷凍サイクル装置では、従来システムに比べエネルギー効率や能力の改善をもたらすことができる。
(22−1−1)第1実施形態
図22Cは、一実施例に係る冷凍サイクル装置10の概略構成図である。
なお、ここでは、後述する冷凍サイクル装置10の利用側熱交換器15において、冷媒と外部熱媒体としての空気とが熱交換する場合を例に説明するが、利用側熱交換器15は外部熱媒体としての液体(例えば水)と熱交換するものであってもよい。また、ここでは、後述する冷凍サイクル装置10の熱源側熱交換器13において、冷媒と外部熱媒体としての液体とが熱交換する場合を例に説明するが、利用側熱交換器15は外部熱媒体としての空気と熱交換するものであってもよい。言い換えれば、熱源側熱交換器13及び利用側熱交換器15で冷媒と熱交換する外部熱媒体の組合せは、(液体,空気)、(空気,液体)、(液体,液体)、(空気、空気)のいずれであってもよい。他の実施形態においても同様である。
ここでは、冷凍サイクル装置10は、空気調和装置である。ただし、冷凍サイクル装置10は、空気調和装置に限定されるものではなく、例えば、冷蔵庫、冷凍庫、冷水機、製氷機、冷蔵ショーケース、冷凍ショーケース、冷凍冷蔵ユニット、冷凍冷蔵倉庫等に用いられる冷凍機、チラー(チリングユニット)、ターボ冷凍機、スクリュー冷凍機等であってもよい。
また、ここでは、冷凍サイクル装置10において、熱源側熱交換器13が冷媒の凝縮器として用いられ、利用側熱交換器15が冷媒の蒸発器として用いられ、利用側熱交換器15において外部熱媒体(本実施形態では空気)が冷却されるが、これに限定されるものではない。冷凍サイクル装置10において、熱源側熱交換器13が冷媒の蒸発器として用いられ、利用側熱交換器15が冷媒の凝縮器として用いられ、利用側熱交換器15において外部熱媒体(本実施形態では空気)が加熱されてもよい。ただし、この場合、冷媒の流れ方向は図22Cとは逆になる。この場合には、熱交換器13,15を流れる外部熱媒体の方向も図22Cとは逆方向とすることで対向流が実現される。なお、熱源側熱交換器13を冷媒の蒸発器として用い、利用側熱交換器15を冷媒の凝縮器として用いる場合、用途を限定するものではないが、冷凍サイクル装置10は、空気調和装置(暖房装置)の他、給湯装置や床暖房装置等であってもよい。
冷凍サイクル装置10は、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒が封入され、冷媒が循環する冷媒回路11を有する。なお、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒には、冷媒Aのいずれかが用いることができる。
冷媒回路11は、主として、圧縮機12と、熱源側熱交換器13と、膨張機構14と、利用側熱交換器15とを有しており、これらの機器12〜15等が順次接続されることによって構成されている。冷媒回路11では、図22Cの実線の矢印の方向に冷媒が循環する。
圧縮機12は、低圧のガス冷媒を圧縮して、冷凍サイクルにおける高温高圧のガス冷媒を吐出する機器である。圧縮機12から吐出された高圧のガス冷媒は、熱源側熱交換器13に供給される。
熱源側熱交換器13は、圧縮機12において圧縮された高温高圧のガス冷媒を凝縮させる凝縮器として機能する。熱源側熱交換器13は、例えば機械室等に配置される。本実施形態では、熱源側熱交換器13には、外部熱媒体として液体(ここでは冷却水)が供給される。熱源側熱交換器13は、限定するものではないが、例えば二重管式熱交換器である。熱源側熱交換器13において、冷媒と外部熱媒体とが熱交換することで、高温高圧のガス冷媒は凝縮して高圧の液冷媒となる。熱源側熱交換器13を通過した高圧の液冷媒は、膨張機構14へと送られる。
膨張機構14は、熱源側熱交換器13において放熱した高圧の液冷媒を冷凍サイクルにおける低圧になるまで減圧するための機器である。膨張機構14としては、例えば電子膨張弁が用いられる。
ただし、膨張機構14として、図22Dに示すように、感温式膨張弁が用いられてもよい。膨張機構14として感温式膨張弁を用いる場合、感温式膨張弁は、膨張弁と直結された感温筒によって利用側熱交換器15通過後の冷媒温度を検出し、検出された冷媒温度に基づいて膨張弁の開度を制御する。これにより、例えば利用側ユニット内に利用側熱交換器15、膨張弁、感温筒が設けられた場合に、利用側ユニット内のみで膨張弁の制御が完結する。その結果、熱源側熱交換器13が設けられる熱源側ユニットと利用側ユニットとの間で、膨張弁の制御に関する通信が不要となり、低コスト及び省工事を達成できる。なお、膨張機構14に感温式膨張弁を用いる場合には、膨張機構14の熱源側熱交換器13側に電磁弁17が配置されることが好ましい。
また、膨張機構14は、キャピラリーチューブであってもよい(図示省略)。
膨張機構14を通過した低圧の液冷媒又は気液二相冷媒は、利用側熱交換器15に供給される。
利用側熱交換器15は、低圧の液冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する。利用側熱交換器15は、空調対象空間に配置される。本実施形態では、利用側熱交換器15には、ファン16により外部熱媒体としての空気が供給される。利用側熱交換器15は、限定するものではないが、例えばフィンチューブ式熱交換器である。利用側熱交換器15において、冷媒と空気とが熱交換することで、低圧の液冷媒は蒸発して低圧のガス冷媒となり、一方で外部熱媒体しての空気は冷却される。利用側熱交換器13を通過した低圧のガス冷媒は、圧縮機12に供給され、再び冷媒回路11を循環する。
以上の冷凍サイクル装置10では、運転時に、熱源側熱交換器13及び利用側熱交換器15の両方の熱交換器が対向流型の熱交換器となっている。
<冷凍サイクル装置の特徴>
冷凍サイクル装置10は、圧縮機12と、熱源側熱交換器13と、膨張機構14と、利用側熱交換器15と、を含む冷媒回路11を備える。冷媒回路11には、少なくとも1,2−ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))を含む冷媒が封入される。少なくとも所定の運転時に、熱源側熱交換器13及び利用側熱交換器15の少なくとも一方における、冷媒の流れと冷媒と熱交換する熱媒体の流れとが対向流である。
本冷凍サイクル装置では、1,2−ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))を含む低地球温暖化係数の冷媒を用いて、熱交換器13,15を有効に利用した高効率な運転が実現される。
なお、熱交換器13,15が冷媒の凝縮器として機能している場合には、通過する冷媒の温度は入口側よりも出口側の方が低くなる傾向にある。しかし、凝縮器として機能する際の熱交換器13,15を対向流型に構成する場合には、熱交換器13,15の冷媒の入口側と出口側のいずれにおいても、空気と冷媒の温度差を十分に確保しやすい。
また、熱交換器13,15が冷媒の蒸発器として機能している場合には、通過する冷媒の温度は入口側よりも出口側の方が高くなる傾向にある。しかし、蒸発器として機能する際の熱交換器13,15を対向流型に構成する場合には、熱交換器13,15の冷媒の入口側と出口側のいずれにおいても、空気と冷媒の温度差を十分に確保しやすい。
<変形例>
冷凍サイクル装置10は、図22Eに示すように、冷媒回路11は、膨張機構14及び利用側熱交換器15を複数(図示例では2つ)並列に有するものであってもよい。また、図示は省略するが、冷媒回路11は、並列に配置された熱源側熱交換器13を複数有してもよいし、圧縮機12を複数有するものであってもよい。
また、冷凍サイクル装置10では、図22Fに示すように、冷媒回路11が流路切換機構18を更に有していてもよい。流路切換機構18は、圧縮機12から吐出されるガス冷媒が流れる先を、熱源側熱交換器13及び利用側熱交換器15のいずれか一方に切り換える機構である。流路切換機構18は、例えば四路切換弁であるが、これに限定されるものではなく、複数の弁により流路切換機構が実現されてもよい。流路切換機構18を用いることで、熱源側熱交換器13を凝縮器として機能させかつ利用側熱交換器15を蒸発器として機能させる冷房運転と、熱源側熱交換器13を蒸発器として機能させかつ利用側熱交換器15を凝縮器として機能させる暖房運転とを切り換えることができる。
なお、図22Fに示した例では、冷房運転時に、凝縮器として機能する熱源側熱交換器13及び蒸発器として機能する利用側熱交換器15が、共に対向流型の熱交換器になる(冷媒流れを示す実線矢印参照)。一方で、暖房運転時には、蒸発器として機能する熱源側熱交換器13及び凝縮器として機能する利用側熱交換器15が、共に並行流型(冷媒の流れ方向が外部熱媒体の流れ方向に対して順方向)の熱交換器になる(冷媒流れを示す破線矢印参照)。
ただし、これに限定されるものではなく、冷房運転時に、凝縮器として機能する熱源側熱交換器13が並行流型の熱交換器になり、暖房運転時に、蒸発器として機能する熱源側熱交換器13が対向流型の熱交換器になるように、熱源側熱交換器13を流れる外部熱媒体の流れ方向が設計されてもよい。また、冷房運転時に、蒸発器として機能する利用側熱交換器15が並行流型の熱交換器になり、暖房運転時に、凝縮器として機能する利用側熱交換器15が対向流型の熱交換器になるように、利用側熱交換器15を流れる外部熱媒体の流れ方向が設計されてもよい。
なお、好ましくは、熱交換器13,15が凝縮器として機能する際の冷媒の流れ方向が、外部熱媒体の流れ方向に対して逆方向となるように外部熱媒体の流れ方向が設計される。言い換えれば、好ましくは、熱交換器13,15が凝縮器として機能する際には、その熱交換器13,15は対向流型の熱交換器となることが好ましい。
(22−1−2)第2実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図22G、概略制御ブロック構成図である図22Hを参照しつつ、第2実施形態に係る冷凍サイクル装置としての空気調和装置100について説明する。
空気調和装置100は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うことで、対象空間の空気を調和させる装置である。
空気調和装置100は、主として、熱源側ユニット120と、利用側ユニット130と、熱源側ユニット120と利用側ユニット130を接続する液側冷媒連絡配管106およびガス側冷媒連絡配管105と、入力装置および出力装置としての図示しないリモコンと、空気調和装置100の動作を制御するコントローラ107と、を有している。
冷媒回路110には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が封入されている。空気調和装置100では、冷媒回路110内に封入された冷媒が、圧縮され、冷却又は凝縮され、減圧され、加熱又は蒸発された後に、再び圧縮される、という冷凍サイクルが行われる。当該冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。また、冷媒回路110には、当該混合冷媒と共に、冷凍機油が充填されている。
(22−1−2−1)熱源側ユニット
熱源側ユニット120は、液側冷媒連絡配管106およびガス側冷媒連絡配管105を介して利用側ユニット130と接続されており、冷媒回路110の一部を構成している。熱源側ユニット120は、主として、圧縮機121と、流路切換機構122と、熱源側熱交換器123と、熱源側膨張機構124と、低圧レシーバ141と、熱源側ファン125と、液側閉鎖弁129と、ガス側閉鎖弁128と、熱源側ブリッジ回路153と、を有している。
圧縮機121は、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒を高圧になるまで圧縮する機器である。ここでは、圧縮機121として、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素(図示省略)が圧縮機モータによって回転駆動される密閉式構造の圧縮機が使用されている。圧縮機モータは、容量を変化させるためのものであり、インバータにより運転周波数の制御が可能である。なお、圧縮機121には、吸入側において、図示しない付属アキュムレータが設けられている。
流路切換機構122は、例えば四路切換弁である。流路切換機構122は、接続状態を切り換えることで、圧縮機121の吐出側と熱源側熱交換器123とを接続しつつ圧縮機121の吸入側とガス側閉鎖弁128とを接続する冷房運転接続状態と、圧縮機121の吐出側とガス側閉鎖弁128とを接続しつつ圧縮機121の吸入側と熱源側熱交換器123とを接続する暖房運転接続状態と、を切り換えることができる。
熱源側熱交換器123は、冷房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の凝縮器として機能し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能する熱交換器である。
熱源側ファン125は、熱源側ユニット120内に熱源となる空気を吸入して、熱源側熱交換器123において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための空気流れを生じさせる。熱源側ファン125は、室外ファンモータによって回転駆動される。
熱源側膨張機構124は、熱源側熱交換器123の液側端部と液側閉鎖弁129との間に設けられている。熱源側膨張機構124は、キャピラリーチューブ又は感温筒と共に用いられる機械式膨張弁であってもよいが、制御により弁開度を調節可能な電動膨張弁であることが好ましい。
低圧レシーバ141は、圧縮機121の吸入側と流路切換機構122の接続ポートの1つとの間に設けられており、冷媒回路110における余剰冷媒を液冷媒として貯留することが可能な冷媒容器である。また、圧縮機121には、図示しない付属のアキュムレータが設けられており、低圧レシーバ141は、当該付属のアキュムレータの上流側に接続されている。
液側閉鎖弁129は、熱源側ユニット120における液側冷媒連絡配管106との接続部分に配置された手動弁である。
ガス側閉鎖弁128は、熱源側ユニット120におけるガス側冷媒連絡配管105との接続部分に配置された手動弁である。
熱源側ブリッジ回路153は、4つの接続箇所および各接続箇所の間に設けられた逆止弁を有している。熱源側ブリッジ回路153の4つの接続箇所には、熱源側熱交換器123の流入側から延びた冷媒配管と、熱源側熱交換器123の流出側から延びた冷媒配管と、液側閉鎖弁129から延びた冷媒配管と、流路切換機構122の接続ポートの1つから延びた冷媒配管と、がそれぞれ接続されている。各逆止弁は、それぞれ、流路切換機構122の接続ポートの1つから熱源側熱交換器123の流出側に向かう冷媒流れを遮断し、液側閉鎖弁129から熱源側熱交換器123の流出側に向かう冷媒流れを遮断し、熱源側熱交換器123の流入側から流路切換機構122の接続ポートの1つに向かう冷媒流れを遮断し、熱源側熱交換器123の流入側から液側閉鎖弁129に向かう冷媒流れを遮断する。なお、液側閉鎖弁129から熱源側ブリッジ回路153の接続箇所の1つまで延びている冷媒配管の途中には、熱源側膨張機構124が設けられている。
なお、図22Gでは、熱源側ファン125によって形成される空気流れを点線の矢印で示している。ここで、熱源側ブリッジ回路153を有する熱源側ユニット120の熱源側熱交換器123では、冷媒の蒸発器として機能する場合と冷媒の凝縮器として機能する場合とのいずれの場合においても、熱源側熱交換器123において冷媒が流入する箇所(空気流れの下流側)が同じであり、熱源側熱交換器123から冷媒が流出する箇所(空気流れの上流側)が同じであり、熱源側熱交換器123内において冷媒が流れる向きが同じになるように構成されている。これにより、熱源側熱交換器123内を流れる冷媒の流れ方向は、冷媒の蒸発器として機能する場合と冷媒の凝縮器として機能する場合とのいずれの場合においても、熱源側ファン125が形成させる空気流れの方向とは反対方向(常時対向流)となるように構成されている。
熱源側ユニット120は、熱源側ユニット120を構成する各部の動作を制御する熱源側ユニット制御部127を有している。熱源側ユニット制御部127は、CPUやメモリ等を含むマイクロコンピュータを有している。熱源側ユニット制御部127は、各利用側ユニット130の利用側ユニット制御部134と通信線を介して接続されており、制御信号等の送受信を行う。
熱源側ユニット120には、吐出圧力センサ161、吐出温度センサ162、吸入圧力センサ163、吸入温度センサ164、熱源側熱交温度センサ165、熱源空気温度センサ166等が設けられている。これらの各センサは、熱源側ユニット制御部127と電気的に接続されており、熱源側ユニット制御部127に対して検出信号を送信する。吐出圧力センサ161は、圧縮機121の吐出側と流路切換機構122の接続ポートの1つとを接続する吐出配管を流れる冷媒の圧力を検出する。吐出温度センサ162は、吐出配管を流れる冷媒の温度を検出する。吸入圧力センサ163は、低圧レシーバ141と圧縮機121の吸入側とを接続する吸入配管を流れる冷媒の圧力を検出する。吸入温度センサ164は、吸入配管を流れる冷媒の温度を検出する。熱源側熱交温度センサ165は、熱源側熱交換器123のうち流路切換機構122が接続されている側とは反対側である液側の出口を流れる冷媒の温度を検出する。熱源空気温度センサ166は、熱源側熱交換器123を通過する前の熱源空気の空気温度を検出する。
(22−1−2−2)利用側ユニット
利用側ユニット130は、空調対象空間の壁面や天井等に設置されている。利用側ユニット130は、液側冷媒連絡配管106およびガス側冷媒連絡配管105を介して熱源側ユニット120と接続されており、冷媒回路110の一部を構成している。
利用側ユニット130は、利用側熱交換器131と、利用側ファン132と、利用側ブリッジ回路154を有している。
利用側熱交換器131は、液側が、液側冷媒連絡配管106と接続され、ガス側端が、ガス側冷媒連絡配管105と接続されている。利用側熱交換器131は、冷房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の凝縮器として機能する熱交換器である。
利用側ファン132は、利用側ユニット130内に室内の空気を吸入して、利用側熱交換器131において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための空気流れを生じさせる。利用側ファン132は、室内ファンモータによって回転駆動される。
利用側ブリッジ回路154は、4つの接続箇所および各接続箇所の間に設けられた逆止弁を有している。利用側ブリッジ回路154の4つの接続箇所には、利用側熱交換器131の流入側から延びた冷媒配管と、利用側熱交換器131の流出側から延びた冷媒配管と、液側冷媒連絡配管106の利用側ユニット130側端部に接続された冷媒配管と、ガス側冷媒連絡配管105の利用側ユニット130側端部に接続された冷媒配管と、がそれぞれ接続されている。各逆止弁は、それぞれ、利用側熱交換器131の流入側から液側冷媒連絡配管106に向かう冷媒流れを遮断し、利用側熱交換器131の流入側からガス側冷媒連絡配管105に向かう冷媒流れを遮断し、液側冷媒連絡配管106から利用側熱交換器131の流出側に向かう冷媒流れを遮断し、ガス側冷媒連絡配管105から利用側熱交換器131の流出側に向かう冷媒流れを遮断する。
なお、図22Gでは、利用側ファン132によって形成される空気流れを点線の矢印で示している。ここで、利用側ブリッジ回路154を有する利用側ユニット130の利用側熱交換器131では、冷媒の蒸発器として機能する場合と冷媒の凝縮器として機能する場合とのいずれの場合においても、利用側熱交換器131において冷媒が流入する箇所(空気流れの下流側)が同じであり、利用側熱交換器131から冷媒が流出する箇所(空気流れの上流側)が同じであり、利用側熱交換器131内において冷媒が流れる向きが同じになるように構成されている。これにより、利用側熱交換器131内を流れる冷媒の流れ方向は、冷媒の蒸発器として機能する場合と冷媒の凝縮器として機能する場合とのいずれの場合においても、利用側ファン132が形成させる空気流れの方向とは反対方向(常時対向流)となるように構成されている。
また、利用側ユニット130は、利用側ユニット130を構成する各部の動作を制御する利用側ユニット制御部134を有している。利用側ユニット制御部134は、CPUやメモリ等を含むマイクロコンピュータを有している。利用側ユニット制御部134は、熱源側ユニット制御部127と通信線を介して接続されており、制御信号等の送受信を行う。
利用側ユニット130には、対象空間空気温度センサ172、流入側熱交温度センサ181、流出側熱交温度センサ183等が設けられている。これらの各センサは、利用側ユニット制御部134と電気的に接続されており、利用側ユニット制御部134に対して検出信号を送信する。対象空間空気温度センサ172は、利用側熱交換器131を通過する前の空調対象空間の空気温度を検出する。流入側熱交温度センサ181は、利用側熱交換器131に流入する前の冷媒の温度を検出する。流出側熱交温度センサ183は、利用側熱交換器131から流出する冷媒の温度を検出する。
(22−1−2−3)コントローラの詳細
空気調和装置100では、熱源側ユニット制御部127と利用側ユニット制御部134が通信線を介して接続されることで、空気調和装置100の動作を制御するコントローラ107が構成されている。
コントローラ107は、主として、CPU(中央演算処理装置)と、ROMやRAM等のメモリを有している。なお、コントローラ107による各種処理や制御は、熱源側ユニット制御部127および/又は利用側ユニット制御部134に含まれる各部が一体的に機能することによって実現されている。
(22−1−2−4)運転モード
以下、運転モードについて説明する。
運転モードとしては、冷房運転モードと暖房運転モードとが設けられている。
コントローラ107は、リモコン等から受け付けた指示に基づいて、冷房運転モードか暖房運転モードかを判断し、実行する。
(A)冷房運転モード
空気調和装置100では、冷房運転モードでは、流路切換機構122の接続状態を圧縮機121の吐出側と熱源側熱交換器123とを接続しつつ圧縮機121の吸入側とガス側閉鎖弁128とを接続する冷房運転接続状態とし、冷媒回路110に充填されている冷媒を、主として、圧縮機121、熱源側熱交換器123、熱源側膨張機構124、利用側熱交換器131の順に循環させる。
具体的には、圧縮機121は、例えば、冷媒回路110における冷媒の蒸発温度が、設定温度と室内温度(対象空間空気温度センサ172の検出温度)との差分に応じて定まる目標蒸発温度になるように、運転周波数が容量制御される。
圧縮機121から吐出されたガス冷媒は、流路切換機構122を通過した後、熱源側熱交換器123において凝縮する。なお、熱源側熱交換器123においては、熱源側ファン125によって形成される空気流れ方向とは反対方向に冷媒が流れる。言い換えれば、熱源側熱交換器123を凝縮器として用いる空気調和装置100の運転時に、熱源側熱交換器123における、冷媒の流れと、冷媒と熱交換する熱媒体の流れとは対向流になる。熱源側熱交換器123を流れた冷媒は、熱源側ブリッジ回路153の一部を通過して、熱源側膨張機構124において冷凍サイクルの低圧まで減圧される。
ここで、熱源側膨張機構124は、例えば、利用側熱交換器131のガス側を流れる冷媒の過熱度または圧縮機121が吸入する冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。ここで、利用側熱交換器131のガス側を流れる冷媒の過熱度は、例えば、流出側熱交温度センサ183の検出温度から、吸入圧力センサ163の検出温度に相当する冷媒の飽和温度を差し引くことにより求めてもよい。なお、熱源側膨張機構124の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機121から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機121から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
熱源側膨張機構124において冷凍サイクルの低圧まで減圧された冷媒は、液側閉鎖弁129、液側冷媒連絡配管106を介して利用側ユニット130に流入し、利用側熱交換器131において蒸発する。なお、利用側熱交換器131においては、利用側ファン132によって形成される空気流れ方向とは反対方向に冷媒が流れる。言い換えれば、利用側熱交換器131を蒸発器として用いる空気調和装置100の運転時に、利用側熱交換器131における、冷媒の流れと、冷媒と熱交換する熱媒体の流れとは対向流になる。利用側熱交換器131を流れた冷媒は、ガス側冷媒連絡配管105を流れた後、ガス側閉鎖弁128、流路切換機構122、低圧レシーバ141を経て、再び、圧縮機121に吸入される。なお、低圧レシーバ141では、利用側熱交換器131において蒸発しきれなかった液冷媒が余剰冷媒として貯留される。
(B)暖房運転モード
空気調和装置100では、暖房運転モードでは、流路切換機構122の接続状態を圧縮機121の吐出側とガス側閉鎖弁128とを接続しつつ圧縮機121の吸入側と熱源側熱交換器123とを接続する暖房運転接続状態とし、冷媒回路110に充填されている冷媒を、主として、圧縮機121、利用側熱交換器131、熱源側膨張機構124、熱源側熱交換器123の順に循環させる。
より具体的には、暖房運転モードでは、圧縮機121は、例えば、冷媒回路110における冷媒の凝縮温度が、設定温度と室内温度(対象空間空気温度センサ172の検出温度)との差分に応じて定まる目標凝縮温度になるように、運転周波数が容量制御される。
圧縮機121から吐出されたガス冷媒は、流路切換機構122、ガス側冷媒連絡配管105を流れた後、利用側ユニット130の利用側熱交換器131のガス側端に流入し、利用側熱交換器131において凝縮する。なお、利用側熱交換器131においては、利用側ファン132によって形成される空気流れ方向とは反対方向に冷媒が流れる。言い換えれば、利用側熱交換器131を凝縮器として用いる空気調和装置100の運転時に、利用側熱交換器131における、冷媒の流れと、冷媒と熱交換する熱媒体の流れとは対向流になる。利用側熱交換器131の液側端から流出した冷媒は、液側冷媒連絡配管106を経て、熱源側ユニット120に流入し、液側閉鎖弁129を通過して、熱源側膨張機構124において、冷凍サイクルの低圧まで減圧される。
ここで、熱源側膨張機構124は、例えば、圧縮機121が吸入する冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。なお、熱源側膨張機構124の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機121から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機121から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
熱源側膨張機構124で減圧された冷媒は、熱源側熱交換器123において蒸発する。なお、熱源側熱交換器123においては、熱源側ファン125によって形成される空気流れ方向とは反対方向に冷媒が流れる。言い換えれば、熱源側熱交換器123を蒸発器として用いる空気調和装置100の運転時に、熱源側熱交換器123における、冷媒の流れと、冷媒と熱交換する熱媒体の流れとは対向流になる。熱源側熱交換器123において蒸発した冷媒は、流路切換機構122、低圧レシーバ141を経て、再び、圧縮機121に吸入される。なお、低圧レシーバ141では、熱源側熱交換器123において蒸発しきれなかった液冷媒が余剰冷媒として貯留される。
(22−1−2−5)空気調和装置100の特徴
空気調和装置100では、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いた冷凍サイクルを行うことができるため、GWPの小さい冷媒を用いて冷凍サイクルを行うことが可能になっている。
また、空気調和装置100では、低圧レシーバ141を設けることにより、圧縮機121に吸入される冷媒の過熱度が所定値以上となることが確保される制御(熱源側膨張機構124の制御)を行わなくても、液圧縮が生じることを抑制させることが可能になっている。このため、熱源側膨張機構124の制御としては、凝縮器として機能させる場合の熱源側熱交換器123(凝縮器として機能させる場合の利用側熱交換器131も同様)について、出口を流れる冷媒の過冷却度を十分に確保するように制御させることが可能になっている。
また、熱源側熱交換器123においては、冷房運転時と暖房運転時のいずれにおいても、熱源側ファン125によって形成される空気流れ方向とは反対方向に冷媒が流れている(対向流になっている)。このため、熱源側熱交換器123が冷媒の蒸発器として機能している場合には、通過する冷媒の温度は入口側よりも出口側の方が高くなる傾向にあるが、その場合であっても、熱源側ファン125によって形成される空気流れが反対方向であるため、熱源側熱交換器123の冷媒の入口側と出口側のいずれにおいても、空気と冷媒の温度差を十分に確保しやすい。また、熱源側熱交換器123が冷媒の凝縮器として機能している場合には、通過する冷媒の温度は入口側よりも出口側の方が低くなる傾向にあるが、その場合であっても、熱源側ファン125によって形成される空気流れが反対方向であるため、熱源側熱交換器123の冷媒の入口側と出口側のいずれにおいても、空気と冷媒の温度差を十分に確保しやすい。
さらに、利用側熱交換器131においては、冷房運転時と暖房運転時のいずれにおいても、利用側ファン132によって形成される空気流れ方向とは反対方向に冷媒が流れている(対向流となっている)。このため、利用側熱交換器131が冷媒の蒸発器として機能している場合には、通過する冷媒の温度は入口側よりも出口側の方が高くなる傾向にあるが、その場合であっても、利用側ファン132によって形成される空気流れが反対方向であるため、利用側熱交換器131の冷媒の入口側と出口側のいずれにおいても、空気と冷媒の温度差を十分に確保しやすい。また、利用側熱交換器131が冷媒の凝縮器として機能している場合には、通過する冷媒の温度は入口側よりも出口側の方が低くなる傾向にあるが、その場合であっても、利用側ファン132によって形成される空気流れが反対方向であるため、利用側熱交換器131の冷媒の入口側と出口側のいずれにおいても、空気と冷媒の温度差を十分に確保しやすい。
これにより、冷媒として非共沸混合冷媒が用いられることで蒸発器内および凝縮器内において温度グライドが生じる場合であっても、冷房運転と暖房運転のいずれにおいても、蒸発器として機能させる熱交換器および凝縮器として機能させる熱交換器のいずれにおいても十分に能力を発揮させることができる。
(22−1−3)第3実施形態
以下、冷媒回路の概略構成図である図22I、概略制御ブロック構成図である図22Jを参照しつつ、第3実施形態に係る冷凍サイクル装置としての空気調和装置100aについて説明する。なお、第2実施形態の空気調和装置100と第3実施形態の空気調和装置100aには共通点も多いので、以下では、第1実施形態の空気調和装置100との違いを主に説明する。
(22−1−3−1)空気調和装置の構成
空気調和装置100aは、上記第2実施形態の空気調和装置100とは、熱源側ユニット120においてバイパス膨張弁149を有するバイパス配管140が設けられている点、複数の室内ユニット(第1利用側ユニット130と第2利用側ユニット135)が並列に設けられている点、および、各室内ユニットにおいて室内熱交換器の液冷媒側に室内膨張弁が設けられている点、で主に異なっている。なお、以下の空気調和装置100aの説明において、空気調和装置100と同じ又は同様の構成については、同じ参照符号を付して説明する。
熱源側ユニット120が有するバイパス配管140は、冷媒回路110のうち熱源側膨張機構124と液側閉鎖弁129の間の部分と、流路切換機構122の接続ポートの1つから低圧レシーバ141まで延びる冷媒配管と、を接続する冷媒配管である。バイパス膨張弁149は、特に限定されないが、弁開度を調節可能な電動膨張弁であることが好ましい。
第1利用側ユニット130は、上記実施形態と同様に、第1利用側熱交換器131、第1利用側ファン132、及び第1利用側ブリッジ回路154を有する他、第1利用側膨張機構133を有している。第1利用側ブリッジ回路154は、4つの接続箇所および各接続箇所の間に設けられた逆止弁を有している。第1利用側ブリッジ回路154の4つの接続箇所には、第1利用側熱交換器131の液側から延びた冷媒配管と、第1利用側熱交換器131のガス側から延びた冷媒配管と、液側冷媒連絡配管106から第1利用側ユニット130に向けて分岐した冷媒配管と、ガス側冷媒連絡配管105から第1利用側ユニット130に向けて分岐した冷媒配管と、がそれぞれ接続されている。
なお、図22Iでは、第1利用側ファン132によって形成される空気流れを点線の矢印で示している。ここで、第1利用側ブリッジ回路154を有する第1利用側ユニット130の第1利用側熱交換器131では、冷媒の蒸発器として機能する場合と冷媒の凝縮器として機能する場合とのいずれの場合においても、第1利用側熱交換器131において冷媒が流入する箇所(空気流れの下流側)が同じであり、第1利用側熱交換器131から冷媒が流出する箇所(空気流れの上流側)が同じであり、第1利用側熱交換器131内において冷媒が流れる向きが同じになるように構成されている。これにより、第1利用側熱交換器131内を流れる冷媒の流れ方向は、冷媒の蒸発器として機能する場合と冷媒の凝縮器として機能する場合とのいずれの場合においても、第1利用側ファン132が形成する空気流れの方向とは反対方向(常時対向流)となるように構成されている。また、第1利用側膨張機構133は、液側冷媒連絡配管106から第1利用側ユニット130に向けて分岐した冷媒配管の途中(第1利用側ブリッジ回路154の液冷媒側)に設けられている。第1利用側膨張機構133は、弁開度を調節可能な電動膨張弁であることが好ましい。第1利用側ユニット130には、上記実施形態と同様に、第1利用側ユニット制御部134と、第1利用側ユニット制御部134に対して電気的に接続された第1流入側熱交温度センサ181、第1対象空間空気温度センサ172、第1流出側熱交温度センサ183等が設けられている。
第2利用側ユニット135は、第1利用側ユニット130と同様に、第2利用側熱交換器136、第2利用側ファン137、第2利用側膨張機構138、及び第2利用側ブリッジ回路155を有している。第2利用側ブリッジ回路155は、4つの接続箇所および各接続箇所の間に設けられた逆止弁を有している。第2利用側ブリッジ回路155の4つの接続箇所には、第2利用側熱交換器136の液側から延びた冷媒配管と、第2利用側熱交換器136のガス側から延びた冷媒配管と、液側冷媒連絡配管106から第2利用側ユニット135に向けて分岐した冷媒配管と、ガス側冷媒連絡配管105から第2利用側ユニット135に向けて分岐した冷媒配管と、がそれぞれ接続されている。なお、図22Iでは、第2利用側ファン137によって形成される空気流れを点線の矢印で示している。ここで、第2利用側ブリッジ回路155を有する第2利用側ユニット135の第2利用側熱交換器136では、冷媒の蒸発器として機能する場合と冷媒の凝縮器として機能する場合とのいずれの場合においても、第2利用側熱交換器136において冷媒が流入する箇所(空気流れの下流側)が同じであり、第2利用側熱交換器136から冷媒が流出する箇所(空気流れの上流側)が同じであり、第2利用側熱交換器136内において冷媒が流れる向きが同じになるように構成されている。これにより、第2利用側熱交換器136内を流れる冷媒の流れ方向は、冷媒の蒸発器として機能する場合と冷媒の凝縮器として機能する場合とのいずれの場合においても、第2利用側ファン137が形成する空気流れの方向とは反対方向(常時対向流)となるように構成されている。また、第2利用側膨張機構138は、液側冷媒連絡配管106から第2利用側ユニット135に向けて分岐した冷媒配管の途中(第2利用側ブリッジ回路155の液冷媒側)に設けられている。第2利用側膨張機構138は、弁開度を調節可能な電動膨張弁であることが好ましい。第2利用側ユニット135には、第1利用側ユニット130と同様に、第2利用側ユニット制御部139と、第2利用側ユニット制御部139に対して電気的に接続された第2流入側熱交温度センサ185、第2対象空間空気温度センサ176、第2流出側熱交温度センサ187が設けられている。
(22−1−3−2)運転モード
(A)冷房運転モード
空気調和装置100aでは、冷房運転モードでは、圧縮機121は、例えば、冷媒回路110における冷媒の蒸発温度が目標蒸発温度になるように、運転周波数が容量制御される。ここで、目標蒸発温度は、各利用側ユニット130、135において設定温度と利用側温度との差分が最も大きいもの(負荷が最も大きな利用側ユニット)に応じて定めることが好ましい。
圧縮機121から吐出されたガス冷媒は、流路切換機構122を通過した後、熱源側熱交換器123において凝縮する。なお、熱源側熱交換器123においては、熱源側ファン125によって形成される空気流れ方向とは反対方向に冷媒が流れる。言い換えれば、熱源側熱交換器123を凝縮器として用いる空気調和装置100aの運転時に、熱源側熱交換器123における、冷媒の流れと、冷媒と熱交換する熱媒体の流れとは対向流になる。熱源側熱交換器123を流れた冷媒は、熱源側ブリッジ回路153の一部を通過した後、全開状態に制御されている熱源側膨張機構124を通過し、液側閉鎖弁129、液側冷媒連絡配管106を介して第1利用側ユニット130および第2利用側ユニット135にそれぞれ流入する。
なお、バイパス配管140のバイパス膨張弁149は、余剰冷媒の発生状況に応じて弁開度が制御される。具体的には、バイパス膨張弁149は、例えば、吐出圧力センサ161により検知される高圧圧力および/または熱源側熱交換器123の液側を流れる冷媒の過冷却度に基づいて制御される。これにより、上述の熱源側膨張機構124を通過した冷媒の一部である余剰冷媒は、バイパス配管140を介して低圧レシーバ141に送られる。
第1利用側ユニット130に流入した冷媒は、第1利用側膨張機構133において、冷凍サイクルの低圧まで減圧される。また、第2利用側ユニット135に流入した冷媒は、第2利用側膨張機構138において、冷凍サイクルの低圧まで減圧される。
ここで、第1利用側膨張機構133は、例えば、第1利用側熱交換器131のガス側を流れる冷媒の過熱度または圧縮機121が吸入する冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。ここで、第1利用側熱交換器131のガス側を流れる冷媒の過熱度は、例えば、第1流出側熱交温度センサ183の検出温度から、吸入圧力センサ163の検出温度に相当する冷媒の飽和温度を差し引くことにより求めてもよい。また、第2利用側膨張機構138も、同様に、例えば、第2利用側熱交換器136のガス側を流れる冷媒の過熱度または圧縮機121が吸入する冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。ここで、第2利用側熱交換器136のガス側を流れる冷媒の過熱度は、例えば、第2流出側熱交温度センサ187の検出温度から、吸入圧力センサ163の検出温度に相当する冷媒の飽和温度を差し引くことにより求めてもよい。
第1利用側膨張機構133において減圧された冷媒は、第1利用側ブリッジ回路154の一部を通過して、第1利用側熱交換器131に流入し、第1利用側熱交換器131において蒸発する。なお、第1利用側熱交換器131においては、第1利用側ファン132によって形成される空気流れ方向とは反対方向に冷媒が流れる。言い換えれば、第1利用側熱交換器131を蒸発器として用いる空気調和装置100aの運転時に、第1利用側熱交換器131における、冷媒の流れと、冷媒と熱交換する熱媒体の流れとは対向流になる。第1利用側熱交換器131を通過した冷媒は、第1利用側ブリッジ回路154の一部を通過して、第1利用側ユニット130の外部に流出する。
同様に、第2利用側膨張機構138において減圧された冷媒は、第2利用側ブリッジ回路155の一部を通過して、第2利用側熱交換器136に流入し、第2利用側熱交換器136において蒸発する。なお、第2利用側熱交換器136においては、第2利用側ファン137によって形成される空気流れ方向とは反対方向に冷媒が流れる。言い換えれば、第2利用側熱交換器136を蒸発器として用いる空気調和装置100aの運転時に、第2利用側熱交換器136における、冷媒の流れと、冷媒と熱交換する熱媒体の流れとは対向流になる。第2利用側熱交換器136を通過した冷媒は、第2利用側ブリッジ回路155の一部を通過して、第2利用側ユニット135の外部に流出する。第1利用側ユニット130および第2利用側ユニット135から流出した冷媒は、合流した後、ガス側冷媒連絡配管105を流れ、ガス側閉鎖弁128、流路切換機構122、低圧レシーバ141を経て、再び、圧縮機121に吸入される。なお、低圧レシーバ141では、第1利用側熱交換器131および第2利用側熱交換器136において蒸発しきれなかった液冷媒が余剰冷媒として貯留される。
(B)暖房運転モード
空気調和装置100aでは、暖房運転モードでは、圧縮機121は、例えば、冷媒回路110における冷媒の凝縮温度が、目標凝縮温度になるように、運転周波数が容量制御される。ここで、目標凝縮温度は、各利用側ユニット130、135において設定温度と利用側温度との差分が最も大きいもの(負荷が最も大きな利用側ユニット)に応じて定めることが好ましい。
圧縮機121から吐出されたガス冷媒は、流路切換機構122、ガス側冷媒連絡配管105を流れた後、第1利用側ユニット130と第2利用側ユニット135にそれぞれ流入する。
第1利用側ユニット130に流入した冷媒は、第1利用側ブリッジ回路154の一部を通過した後、第1利用側熱交換器131において凝縮する。なお、第1利用側熱交換器131においては、第1利用側ファン132によって形成される空気流れ方向とは反対方向に冷媒が流れる。言い換えれば、第1利用側熱交換器131を凝縮器として用いる空気調和装置100aの運転時に、第1利用側熱交換器131における、冷媒の流れと、冷媒と熱交換する熱媒体の流れとは対向流になる。第2利用側ユニット135に流入した冷媒は、第2利用側ブリッジ回路155の一部を通過した後、第2利用側熱交換器136において凝縮する。なお、第2利用側熱交換器136においては、第2利用側ファン137によって形成される空気流れ方向とは反対方向に冷媒が流れる。言い換えれば、第2利用側熱交換器136を凝縮器として用いる空気調和装置100aの運転時に、第2利用側熱交換器136における、冷媒の流れと、冷媒と熱交換する熱媒体の流れとは対向流になる。
第1利用側熱交換器131の液側端から流出した冷媒は、第1利用側ブリッジ回路154の一部を通過した後、第1利用側膨張機構133において、冷凍サイクルの中間圧となるまで減圧される。第2利用側熱交換器136の液側端から流出した冷媒も、同様に、第2利用側ブリッジ回路155の一部を通過した後、第2利用側膨張機構138において、冷凍サイクルの中間圧となるまで減圧される。
ここで、第1利用側膨張機構133は、例えば、第1利用側熱交換器131の液側出口を流れる冷媒の過冷却度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。ここで、第1利用側熱交換器131の液側出口を流れる冷媒の過冷却度は、例えば、第1流出側熱交温度センサ183の検出温度から、吐出圧力センサ161の検出温度に相当する冷媒の飽和温度を差し引くことにより求めてもよい。また、第2利用側膨張機構138についても同様に、例えば、第2利用側熱交換器136の液側出口を流れる冷媒の過冷却度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。ここで、第2利用側熱交換器136の液側出口を流れる冷媒の過冷却度は、例えば、第2流出側熱交温度センサ187の検出温度から、吐出圧力センサ161の検出温度に相当する冷媒の飽和温度を差し引くことにより求めてもよい。
第1利用側膨張機構133を通過した冷媒は、第1利用側ブリッジ回路154の一部を通過して、第1利用側ユニット130の外部に流出する。同様に、第2利用側膨張機構138を通過した冷媒は、第2利用側ブリッジ回路155の一部を通過して、第2利用側ユニット135の外部に流出する。第1利用側ユニット130および第2利用側ユニット135から流出した冷媒は、合流した後、液側冷媒連絡配管106を経て、熱源側ユニット120に流入する。
熱源側ユニット120に流入した冷媒は、液側閉鎖弁129を通過して、熱源側膨張機構124において、冷凍サイクルの低圧まで減圧される。
なお、バイパス配管140のバイパス膨張弁149は、冷房運転時と同様に余剰冷媒の発生状況に応じて弁開度を制御してもよいし、全閉状態に制御してもよい。
ここで、熱源側膨張機構124は、例えば、圧縮機121が吸入する冷媒の過熱度が目標値になる等の所定条件を満たすように、弁開度が制御される。なお、熱源側膨張機構124の弁開度制御の手法は、特に限定されず、例えば、圧縮機121から吐出される冷媒の吐出温度が所定温度となるように制御されてもよいし、圧縮機121から吐出される冷媒の過熱度が所定条件を満たすように制御されてもよい。
熱源側膨張機構124で減圧された冷媒は、熱源側熱交換器123において蒸発する。なお、熱源側熱交換器123においては、熱源側ファン125によって形成される空気流れ方向とは反対方向に冷媒が流れる。言い換えれば、熱源側熱交換器123を蒸発器として用いる空気調和装置100aの運転時に、熱源側熱交換器123における、冷媒の流れと、冷媒と熱交換する熱媒体の流れとは対向流になる。熱源側熱交換器123を通過した冷媒は、流路切換機構122、低圧レシーバ141を経て、再び、圧縮機121に吸入される。なお、低圧レシーバ141では、熱源側熱交換器123において蒸発しきれなかった液冷媒が余剰冷媒として貯留される。
(22−1−3−3)空気調和装置100aの特徴
空気調和装置100aでは、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を用いた冷凍サイクルを行うことができるため、GWPの小さい冷媒を用いて冷凍サイクルを行うことが可能になっている。
また、空気調和装置100aでは、低圧レシーバ141を設けることにより、圧縮機121に吸入される冷媒の過熱度が所定値以上となることが確保される制御(熱源側膨張機構124の制御)を行わなくても、液圧縮が生じることを抑制させることが可能になっている。また、暖房運転時においては、第1利用側膨張機構133、第2利用側膨張機構138を過冷却度制御させることにより、第1利用側熱交換器131および第2利用側熱交換器136の能力を十分に発揮させやすくすることが可能になっている。
また、熱源側熱交換器123においては、冷房運転時と暖房運転時のいずれにおいても、熱源側ファン125によって形成される空気流れ方向とは反対方向に冷媒が流れている(対向流になっている)。さらに、冷房運転時と暖房運転時のいずれにおいても、第1利用側熱交換器131においては、第1利用側ファン132によって形成される空気流れ方向とは反対方向に冷媒が流れている(対向流になっている)。同様に、冷房運転時と暖房運転時のいずれにおいても、第2利用側熱交換器136においては、第2利用側ファン137によって形成される空気流れ方向とは反対方向に冷媒が流れている(対向流になっている)。
これにより、冷媒として非共沸混合冷媒が用いられることで蒸発器内および凝縮器内において温度グライドが生じる場合であっても、冷房運転と暖房運転のいずれにおいても、蒸発器として機能させる熱交換器および凝縮器として機能させる熱交換器のいずれにおいても十分に能力を発揮させることができる。
(23)第23グループの技術の実施形態
(23−1)
図23Aは、本開示の一実施形態に係る冷媒回路10の概略構成図である。また、図23Bは、本開示の一実施形態に係る冷凍サイクル装置の概略制御ブロック構成図である。以下、図23Aおよび図23Bを参照しつつ、本実施形態に係る冷凍サイクル装置としての空気調和装置1について説明する。
空気調和装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うことで、対象空間の空気を調和させる装置である。
空気調和装置1は、主として、室外ユニット20と、室内ユニット30と、室外ユニット20と室内ユニット30を接続する液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5と、入力装置および出力装置としての図示しないリモコンと、空気調和装置1の動作を制御するコントローラ7と、を有している。
空気調和装置1では、冷媒回路10内に封入された冷媒が、圧縮され、凝縮し、減圧され、蒸発した後に、再び圧縮される、という冷凍サイクルが行われる。本実施形態では、冷媒回路10には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が充填されている。当該冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。また、冷媒回路10には、当該冷媒と共に、冷凍機油が充填されている。
(23−1−1)室外ユニット20
室外ユニット20は、外観が略直方体箱状であり、内部が仕切板等によって分割されることで、送風機室および機械室が形成された構造(いわゆる、トランク型構造)を有している。
この室外ユニット20は、液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5を介して室内ユニット30と接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。室外ユニット20は、主として、圧縮機21と、四路切換弁22と、室外熱交換器23と、室外膨張弁24と、室外ファン25と、液側閉鎖弁29と、ガス側閉鎖弁28と、を有している。
圧縮機21は、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒を高圧になるまで圧縮する機器である。ここでは、圧縮機21として、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素(図示省略)が圧縮機モータによって回転駆動される密閉式構造の圧縮機が使用されている。
圧縮機モータは、容量を変化させるためのものであり、インバータにより運転周波数の制御が可能である。なお、圧縮機21には、吸入側において、図示しない付属アキュムレータが設けられている。なお、本実施形態の室外ユニット20は、当該付属アキュムレータより大きな冷媒容器(圧縮機21の吸入側に配置される低圧レシーバや室外熱交換器23の液側に配置される高圧レシーバ等)を有していない。
四路切換弁22は、接続状態を切り換えることで、圧縮機21の吐出側と室外熱交換器23とを接続しつつ圧縮機21の吸入側とガス側閉鎖弁28とを接続する冷房運転接続状態と、圧縮機21の吐出側とガス側閉鎖弁28とを接続しつつ圧縮機21の吸入側と室外熱交換器23とを接続する暖房運転接続状態と、を切り換えることができる。
室外熱交換器23は、冷房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の凝縮器として機能し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能する熱交換器である。室外熱交換器23は、複数の伝熱フィンと、これに貫通固定された複数の伝熱管とを有している。
室外ファン25は、室外ユニット20内に室外の空気を吸入して、室外熱交換器23において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための空気流れを生じさせる。室外ファン25は、室外ファンモータによって回転駆動される。なお、本実施形態において、室外ファン25は、1つだけ設けられている。
室外膨張弁24は、弁開度を制御可能であり、室外熱交換器23の液側端部と液側閉鎖弁29との間に設けられている。
液側閉鎖弁29は、室外ユニット20における液側冷媒連絡配管6との接続部分に配置された手動弁である。
ガス側閉鎖弁28は、室外ユニット20におけるとガス側冷媒連絡配管5との接続部分に配置された手動弁である。
室外ユニット20は、室外ユニット20を構成する各部の動作を制御する室外ユニット制御部27を有している。室外ユニット制御部27は、CPUやメモリ等を含むマイクロコンピュータを有している。室外ユニット制御部27は、各室内ユニット30の室内ユニット制御部34と通信線を介して接続されており、制御信号等の送受信を行う。また、室外ユニット制御部27は、図示しない各種センサと電気的に接続されており、各センサからの信号を受信する。
(23−1−2)室内ユニット30
室内ユニット30は、対象空間である室内の壁面等に設置されている。室内ユニット30は、液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管5を介して室外ユニット20と接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。
室内ユニット30は、室内熱交換器31と、室内ファン32等を有している。
室内熱交換器31は、液側が、液側冷媒連絡配管6と接続され、ガス側端が、ガス側冷媒連絡配管5とを接続されている。室内熱交換器31は、冷房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の凝縮器として機能する熱交換器である。室内熱交換器31は、複数の伝熱フィンと、これに貫通固定された複数の伝熱管と、を有している。
室内ファン32は、室内ユニット30内に室内の空気を吸入して、室内熱交換器31において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための空気流れを生じさせる。室内ファン32は、図示しない室内ファンモータによって回転駆動される。
また、室内ユニット30は、室内ユニット30を構成する各部の動作を制御する室内ユニット制御部34を有している。室内ユニット制御部34は、CPUやメモリ等を含むマイクロコンピュータを有している。室内ユニット制御部34は、室外ユニット制御部27と通信線を介して接続されており、制御信号等の送受信を行う。
室内ユニット制御部34は、室内ユニット30内に設けられている図示しない各種センサと電気的に接続されており、各センサからの信号を受信する。
(23−1−3)コントローラ7の詳細
空気調和装置1では、室外ユニット制御部27と室内ユニット制御部34が通信線を介して接続されることで、空気調和装置1の動作を制御するコントローラ7が構成されている。
コントローラ7は、主として、CPU(中央演算処理装置)と、ROMやRAM等のメモリを有している。なお、コントローラ7による各種処理や制御は、室外ユニット制御部27および/又は室内ユニット制御部34に含まれる各部が一体的に機能することによって実現されている。
(23−1−4)運転モード
運転モードとしては、冷房運転モードと暖房運転モードとが設定されている。コントローラ7は、リモコン等から受け付けた指示に基づいて、冷房運転モードか暖房運転モードかを判断し、実行する。
(23−1−4−1)冷房運転モード
空気調和装置1では、冷房運転モードでは、四路切換弁22の接続状態を圧縮機21の吐出側と室外熱交換器23とを接続しつつ圧縮機21の吸入側とガス側閉鎖弁28とを接続する冷房運転接続状態とし、冷媒回路10に充填されている冷媒を、主として、圧縮機21、室外熱交換器23、室外膨張弁24、室内熱交換器31の順に循環させる。
より具体的には、冷房運転モードが開始されると、冷媒回路10内において、冷媒が圧縮機21に吸入されて圧縮された後に吐出される。
圧縮機21では、室内ユニット30で要求される冷却負荷に応じた容量制御が行われる。圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22を経て、室外熱交換器23のガス側端に流入する。
室外熱交換器23のガス側端に流入したガス冷媒は、室外熱交換器23において、室外ファン25によって供給される室外側空気と熱交換を行って凝縮し、液冷媒となって室外熱交換器23の液側端から流出する。
室外熱交換器23の液側端から流出した冷媒は、室外膨張弁24を通過する際に減圧される。なお、室外膨張弁24は、室外熱交換器23の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。
室外膨張弁24で減圧された冷媒は、液側閉鎖弁29および液側冷媒連絡配管6を経て、室内ユニット30に流入する。
室内ユニット30に流入した冷媒は、室内熱交換器31に流入し、室内熱交換器31において、室内ファン32によって供給される室内空気と熱交換を行って蒸発し、ガス冷媒となって室内熱交換器31のガス側端から流出する。室内熱交換器31のガス側端から流出したガス冷媒は、ガス側冷媒連絡配管5に流れていく。
ガス側冷媒連絡配管5を流れた冷媒は、ガス側閉鎖弁28、四路切換弁22を経て、再び、圧縮機21に吸入される。
(23−1−4−2)暖房運転モード
空気調和装置1では、暖房運転モードでは、四路切換弁22の接続状態を圧縮機21の吐出側とガス側閉鎖弁28とを接続しつつ圧縮機21の吸入側と室外熱交換器23とを接続する暖房運転接続状態とし、冷媒回路10に充填されている冷媒を、主として、圧縮機21、室内熱交換器31、室外膨張弁24、室外熱交換器23の順に循環させる。
より具体的には、暖房運転モードが開始されると、冷媒回路10内において、冷媒が圧縮機21に吸入されて圧縮された後に吐出される。
圧縮機21では、室内ユニット30で要求される暖房負荷に応じた容量制御が行われる。圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、四路切換弁22およびガス側冷媒連絡配管5を流れた後、室内ユニット30に流入する。
室内ユニット30に流入した冷媒は、室内熱交換器31のガス側端に流入し、室内熱交換器31において、室内ファン32によって供給される室内空気と熱交換を行って凝縮し、気液二相状態の冷媒または液冷媒となって室内熱交換器31の液側端から流出する。室内熱交換器31の液側端から流出した冷媒は、液側冷媒連絡配管6に流れていく。
液側冷媒連絡配管6を流れた冷媒は、液側閉鎖弁29、室外膨張弁24において冷凍サイクルにおける低圧になるまで減圧される。なお、室外膨張弁24は、室内熱交換器31の液側出口を通過する冷媒の過冷却度が所定条件を満たすように制御される。室外膨張弁24で減圧された冷媒は、室外熱交換器23の液側端に流入する。
室外熱交換器23の液側端から流入した冷媒は、室外熱交換器23において、室外ファン25によって供給される室外空気と熱交換を行って蒸発し、ガス冷媒となって室外熱交換器23のガス側端から流出する。
室外熱交換器23のガス側端から流出した冷媒は、四路切換弁22を経て、再び、圧縮機21に吸入される。
(23−1−5)冷媒と冷媒連絡配管の管外径の関係
銅管に関しては、使用冷媒が冷媒Aの場合、空気調和装置1の特定の定格冷凍能力において、使用冷媒がR32の場合よりも管外径が大きいガス側冷媒連絡配管5、および使用冷媒がR32の場合よりも管外径が大きい液側冷媒連絡配管6を使用する必要があることが、出願人の研究によって確認されている。
かかる場合コスト増となるので、出願人は、銅管よりも低コストであるアルミ管の採用が可能であるか否か、検討を行った。その結果を、以下に説明する。
(23−1−6)管材料と冷媒連絡配管の管外径の関係
図23Cは、冷媒Aが用いられる空気調和装置のガス側冷媒連絡配管5および液側冷媒連絡配管6に採用される銅管の管外径と、銅管に替えてアルミニウム又はアルミニウム合金製の管(以下、アルミ管という。)を採用した場合のガス側冷媒連絡配管5および液側冷媒連絡配管6の管外径と、を定格冷凍能力毎に表示した対比表である。
(23−1−6−1)ガス側冷媒連絡配管5の管外径比較
ここでは、管材料(銅管、アルミ管)別にガス側冷媒連絡配管5の管外径の比較を定格冷凍能力毎に行う。
(23−1−6−1−1)銅管の場合
図23Cにおいて、使用冷媒が冷媒Aである場合、空気調和装置1の定格冷凍能力が5.0kW未満である場合には管外径が12.7mmの銅管が使用され、空気調和装置1の定格冷凍能力が5.0kW以上10.0kW未満である場合には管外径が15.9mmの銅管が使用され、空気調和装置1の定格冷凍能力が10.0kW以上19.0kW未満である場合には管外径が19.1mmの銅管が使用され、空気調和装置1の定格冷凍能力が19.0kW以上28kW以下である場合には管外径が22.2mmの銅管が使用される。
(23−1−6−1−2)アルミ管の場合
図23Cにおいて、使用冷媒が冷媒Aである場合、空気調和装置1の定格冷凍能力が5.0kW未満である場合には管外径が12.7mmのアルミ管が使用され、空気調和装置1の定格冷凍能力が5.0kW以上8.5kW未満である場合には管外径が15.9mmのアルミ管が使用され、空気調和装置1の定格冷凍能力が8.5kW以上19.0kW未満である場合には管外径が19.1mmのアルミ管が使用され、空気調和装置1の定格冷凍能力が19.0kW以上25kW未満である場合には管外径が22.2mmのアルミ管が使用され、空気調和装置1の定格冷凍能力が25kW以上28kW以下である場合には管外径が25.4mmのアルミ管が使用される。
なお、空気調和装置1の定格冷凍能力が28kWを超える場合でも、管外径が25.4mmのアルミ管が使用される。
(23−1−6−1−3)対比結果
図23Cに示す通り、アルミ管の場合、空気調和装置1の定格冷凍能力が9.0kW、及び28kWのとき、銅管の場合よりも管外径が大きいアルミ管のガス側冷媒連絡配管5を使用する必要がある。
空気調和装置1の定格冷凍能力が9.0kW、及び28kWのときの、圧力損失を銅管と同レベルにするために、耐圧を維持したまま内径を拡大した結果、管外径が拡大している。
但し、アルミ管の素材費が銅管の素材費よりも低いので管外径が拡大してもコスト増にはならない。したがって、銅管に替えてアルミ管を使用することによって、たとえ管外径の拡大が伴っても低コスト化を図ることができる。
(23−1−6−2)液側冷媒連絡配管6の管外径比較
ここでは、管材料(銅管、アルミ管)別に液側冷媒連絡配管6の管外径の比較を冷房定格冷凍能力毎に行う。
(23−1−6−2−1)銅管の場合
図23Cにおいて、使用冷媒が冷媒Aである場合、空気調和装置1の定格冷凍能力が5.0kW未満である場合には管外径が6.4mmの銅管が使用され、空気調和装置1の定格冷凍能力が5.0kW以上19.0kW未満である場合には管外径が9.5mmの銅管が使用され、空気調和装置1の定格冷凍能力が19.0kW以上28kW以下である場合には管外径が12.7mmの銅管が使用される。
(23−1−6−2−2)アルミ管の場合
図23Cにおいて、使用冷媒が冷媒Aである場合、空気調和装置1の定格冷凍能力が5.0kW未満である場合には管外径が6.4mmのアルミ管が使用され、空気調和装置1の定格冷凍能力が5.0kW以上19.0kW未満である場合には管外径が9.5mmのアルミ管が使用され、空気調和装置1の定格冷凍能力が19.0kW以上28kW以下である場合には管外径が12.7mmのアルミ管が使用される。
なお、空気調和装置1の定格冷凍能力が28kWを超える場合でも、管外径が12.7mmのアルミ管が使用される。
(23−1−6−2−3)対比結果
図23Cに示す通り、使用冷媒が冷媒Aの場合、銅管と管外径が同じアルミ管の液側冷媒連絡配管6を使用することができる。アルミ管の素材費が銅管の素材費よりも低いので銅管に替えてアルミ管を使用することによって低コスト化を図ることができる。
(23−1−7)管の肉厚と内径
ここでは、上記「(23−1−6−1−3)対比結果」および「(23−1−6−2−3)対比結果」をアルミ管の肉厚と内径とから考察する。
ガス側冷媒連絡配管5および液側冷媒連絡配管6の内径は、定格冷凍能力毎に冷媒の最大循環量における圧力損失を考慮して設計されている。
また、ガス側冷媒連絡配管5および液側冷媒連絡配管6の肉厚は、定格冷凍能力毎に設計耐圧を満足するように設計されている。
図23Dは、銅管およびアルミ管の肉厚を「管の呼称」別に表示した対比表である。以下、「管の呼称」ごとに対比結果を説明する。
(管の称呼:「φ6.4」、「φ9.5」および「φ12.7」)
図23Dにおいて、管の称呼「φ6.4」および「φ9.5」では、銅管およびアルミ管ともに内径が等しく、肉厚も0.8mmで同じである。このように内径が比較的小さい範囲では、元々肉厚0.8mmによって得られる強度に余裕があるため、銅管に替えてアルミ管を使用しても肉厚を大きくする必要がない。
また、称呼「φ12.7」の管では、内周面の全面に設計圧力が作用したとき、アルミ管の場合、銅管と同じ肉厚の0.8mmでは強度不足であるので、1.0mmまで増加させる必要がある。それゆえ、内径が銅管の11.10mmよりも0.4mm小さい10.70mmとなる。但し、内径が0.4mm小さくなっても、圧力損失への影響は少ない。
したがって、ガス冷媒に比べて比体積が小さい液冷媒が流れる液側冷媒連絡配管6については、定格冷凍能力2.2kW〜28kWの範囲で、銅管に替えてアルミ管を使用しても、銅管と同じ外径のアルミ管を使用することができる。それゆえ、「(23−1−6−2−3)対比結果」が得られる。
(管の称呼:「φ15.9」、「φ19.1」、「φ22.2」および「φ25.4」)
図23Dにおいて、管の称呼「φ15.9」、「φ19.1」、「φ22.2」および「φ25.4」では、銅管の場合、肉厚は1mmである。これに対し、アルミ管の肉厚は1.3mm、1.5mm、1.7mm、2.0mmと増加している。これは、内径の拡大にともなって内周面の面積が拡大し、内周面の全面に設計圧力が作用したとき、銅管と同じ肉厚の1.0mmでは強度不足となるので、肉厚を増加して設計圧力に耐えうる強度を確保している。
ガス側冷媒連絡配管5については、図23Cに示すように、定格冷凍能力2.2kW〜4.5kWの範囲で銅管、アルミ管ともに称呼「φ12.7」の管を使用してもよい。この場合、図23Dに示すように、アルミ管の内径は銅管の内径よりも0.4mm小さくなっているが、冷媒の最大循環量を考慮しても圧力損失への影響は少ない。言い換えると、銅管側に圧力損失に対する余裕がある。
同様に、図23Cに示すように、定格冷凍能力5.6kW〜8.0kWの範囲で銅管、アルミ管ともに称呼「φ15.9」の管を使用している。この場合、図23Dに示すように、アルミ管の内径は銅管の内径よりも0.6mm小さくなっているが、冷媒の最大循環量を考慮しても圧力損失への影響は少ない。言い換えると、銅管側に圧力損失に対する余裕がある。
一方、図23Cに示すように、定格冷凍能力9.0kWでは、銅管は称呼「φ15.9」の管を使用しているのに対し、アルミ管は称呼「φ19.1」の管を使用する必要がある。言い換えると、定格冷凍能力9.0kWにおける冷媒の最大循環量のとき、称呼「φ15.9」の銅管よりも圧力損失が小さい称呼「φ19.1」のアルミ管を使用することよって圧力損失を抑制している。
図23Cに示すように、定格冷凍能力11.2kW〜16kWの範囲で銅管、アルミ管ともに称呼「φ19.1」の管を使用してもよい。この場合、図23Dに示すように、アルミ管の内径は銅管の内径よりも1.0mm小さくなっているが、冷媒の最大循環量を考慮しても圧力損失への影響は少ない。言い換えると、銅管側に圧力損失に対する余裕がある。
同様に、図23Cに示すように、定格冷凍能力22.4kWの範囲で銅管、アルミ管ともに称呼「φ22.2」の管を使用している。この場合、図23Dに示すように、アルミ管の内径は銅管の内径よりも1.4mm小さくなっているが、冷媒の最大循環量を考慮しても圧力損失への影響は少ない。言い換えると、銅管側に圧力損失に対する余裕がある。
一方、図23Cに示すように、定格冷凍能力28kWでは、銅管は称呼「φ22.2」の管を使用しているのに対し、アルミ管は称呼「φ25.4」の管を使用する必要がある。言い換えると、定格冷凍能力28kWにおける冷媒の最大循環量のとき、称呼「φ22.2」の銅管よりも圧力損失が小さい称呼「φ25.4」のアルミ管を使用することによって圧力損失を抑制している。
したがって、ガス側冷媒連絡配管5については、定格冷凍能力9kWおよび28kWにおいては、銅管に替えてアルミ管を使用する場合、管外径を大きくする必要があり、その結果が、「(23−1−6−2−3)対比結果」である。
(23−1−8)特徴
空気調和装置1では、1,2−ジフルオロエチレンを含む冷媒を使用するに当たり、圧力損失抑制のために液側冷媒連絡配管およびガス側冷媒連絡配管の径を大きくする場合でも、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の管を使用することによって、能力の低下を小さく抑え、コストの増大を抑制することできる。
なお、実施形態では、空気調和装置1において冷媒Aを用いた場合を前提に説明しているが、1,2−ジフルオロエチレンを含んでいる点で共通する冷媒Aの全てについて共通である。
(23−1−9)変形例
上記実施形態では、室内ユニットが1つだけ設けられている空気調和装置を例に挙げて説明したが、空気調和装置としては、互いに並列に接続された複数の室内ユニット(室内膨張弁を有さないもの)が設けられていてもよい。
(24)第24グループの技術の実施形態
(24−1)第1実施形態
次に、本開示の一実施例に係る蓄熱装置を有する空気調和装置の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図24Aは、本開示の一実施例に係る蓄熱装置20を有する、第1実施形態の空気調和装置100の全体構成を示す。符号2は、圧縮機を示す。符号3は、圧縮機2からの吐出ガスを凝縮する熱源側熱交換器の一例としての室外熱交換器を示す。符号4は、室外熱交換器3で凝縮された冷媒を減圧する第1膨張機構の一例としての第1電子膨張弁を示す。符号5は、冷媒を蒸発させるための負荷側熱交換器の一例としての室内熱交換器を示す。上記各機器2〜5は、冷媒配管6によって冷媒が流通可能に順次接続される。機器2〜5が冷媒配管6によって接続されることで、室内熱交換器5で室内空気との熱交換により得た熱を、室外熱交換器3で外気に放出するヒートポンプ機能を有する主冷媒回路1が構成されている。主冷媒回路1には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が充填されている。当該冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。
主冷媒回路1には、付属機器として、室外熱交換器3の下流側に冷媒を一時貯留するためのレシーバ7が、圧縮機2の上流側に圧縮機2への吸入ガス中の液冷媒を分離するためのアキュームレータ8が、それぞれ設けられている。また、第1電子膨張弁4の上流側およびアキュームレータ8の上流側には、サーミスタThl,Th2がそれぞれ配置されている。サーミスタThl,Th2は、各冷媒配管6内の冷媒の温度を検出する。アキュームレータ8の上流側には圧力センサPsが配設される。圧力センサPsは、圧縮機2の上流側(吸入側)の冷媒配管6内の冷媒の圧力を検出する。空気調和装置100では、検出された冷媒温度および冷媒圧力に基づき、膨張弁の開度が制御されたり、インバータ制御により圧縮機2の容量が制御されたりする。
この空気調和装置100は、蓄熱装置20を有している。蓄熱装置20は、蓄熱槽9と、蓄熱用熱交換器10と、を備える。蓄熱槽9は、蓄熱可能な蓄熱媒体としての水Wを貯留する。蓄熱用熱交換器10は、蓄熱槽9の内部に配設されている。蓄熱用熱交換器10は、少なくともその一部が蓄熱槽9の蓄熱媒体としての水Wに浸漬される。蓄熱用熱交換器10には、冷媒供給装置の一例としての主冷媒回路1から、少なくとも1,2−ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))を含む冷媒が供給される。蓄熱用熱交換器10では、冷媒と水Wとの間で熱交換が行われる。蓄熱用熱交換器10は、冷媒により水Wを冷却する。蓄熱用熱交換器10は、複数の冷却管10aを有する。この冷却管10aは、主冷媒回路1に分岐接続され、蓄熱用熱交換器10の一端はレシーバ7の下流側に連結される室外側連結端10bに、他端は第1電子膨張弁4の上流側に連結される室内側連結端10cになる。室外側連結端10bは、主冷媒回路1において、室内側連結端10cよりも室外熱交換器3に近い位置に配設されている。主冷媒回路1の蓄熱用熱交換器10の両連結端10b,10c間の冷媒配管6には、蓄熱運転時に冷媒の減圧を行う第2電子膨張弁12が設けられている。言い換えれば、蓄熱用熱交換器10の冷却管10aは、第2電子膨張弁12と並列に配管されている。
本開示では、蓄熱用熱交換器10の冷却管10aは、以下の配設構造を有する。
冷却管10aは、蓄熱槽9内に、鉛直方向に蛇行するように配置されている。具体的には、蓄熱用熱交換器10の冷却管10aは、図24Bに示すように、上下方向の端部であるU字部分10dに近接した直線部分10eが、鉛直方向に配置されている。蓄熱用熱交換器10の冷却管10aは、蓄熱槽9内に立設されている支持基台9aによって支持されている。冷却管10aは、蓄熱槽9内の水Wに浸漬される。
また、蓄熱用熱交換器10の室外側連結端10b付近と、圧縮機2の上流側との間は、短絡管13により連結されている。
また、本空気調和装置100には、運転状態に応じて回路接続を切換えるための回路切換手段15が設けられている。回路切換手段15は、第1開閉弁11、第2開閉弁14および開閉制御手段16を含む。第1開閉弁11は、蓄熱用熱交換器10における室外側連結端10bと短絡管13の接続位置との間に設けられている。第2開閉弁14は、短絡管13に設けられている。開閉制御手段16は、空気調和装置100の運転状態および各サーミスタThl,Th2や圧力センサPsからの検出信号に応じて、弁の制御を行う。開閉制御手段16は、蓄熱運転時には、第1開閉弁11を閉状態に、第2開閉弁14を開状態にすると共に、第1電子膨張弁4を全閉状態にし、第2電子膨張弁12の開度をサーミスタThlと圧力センサPsとの検出信号に基づいて制御する。一方、開閉制御手段16は、蓄熱回収冷房運転時には、第1開閉弁11を開状態、第2開閉弁14を閉状態とすると共に、第1電子膨張弁4および第2電子膨張弁12の開度をサーミスタTh2、圧力センサPsの検出信号に基づいて制御する。
次に、上記の如く構成された回路の各運転状態について説明する。
蓄熱回収を伴わない通常冷房運転時には、第1開閉弁11および第2開閉弁14は閉状態とされ、第2電子膨張弁12は全開状態とされる。この状態において、圧縮機2で圧縮された冷媒は、室外熱交換器3で凝縮された後、第1電子膨張弁4で減圧されて、室内熱交換器5に供給される。そして、冷媒は、室内熱交換器5内で蒸発することによって周囲の熱を奪い、冷房に寄与した後、再び圧縮機2側に流通して循環する。
蓄熱運転時には、回路切換手段15の開閉制御手段16は、第1開閉弁11を閉状態に、第2開閉弁14を開状態にすると共に、第1電子膨張弁4を全閉状態とする。また、開閉制御手段16は、第2電子膨張弁12の開度をサーミスタThlと圧力センサPsとの検出信号に基づいて適宜制御する。このように弁が制御される結果、図24Aの矢印に示すように、圧縮機2が吐出し、室外熱交換器3を通過した冷媒は、第2電子膨張弁12によって減圧され、室内側連結端10cから冷却管10a内に供給される。冷却管10a内に供給された冷媒は、蓄熱槽9内の水Wとの間で熱交換を行って冷却管10a内で蒸発し、冷却管10aの表面には氷Iが生成、付着し冷熱が蓄えられる。
蓄熱運転後に蓄熱回収冷房運転を行う際には、開閉制御手段16は、第1開閉弁11を開状態に、第2開閉弁14を閉状態にすると共に、第1電子膨張弁4の開度をサーミスタTh2、圧力センサPsの検出信号に基づいて制御する。また、開閉制御手段16は、図24Cの矢印に示すように、圧縮機2が吐出し、室外熱交換器3を通過して流れる冷媒のうち、主冷媒回路1を流れる流通量を第2電子膨張弁12によって制御することで、室外側連結端10bから冷却管10aへ供給される冷媒の流量を制御する。冷却管10aに供給された冷媒は、蓄熱槽9内に貯留されている氷Iと熱交換して冷却され、室内側連結端10cを介して第1電子膨張弁4へと導かれ、第1電子膨張弁4の開度が制御されて減圧される。第1電子膨張弁4で減圧された冷媒は、室内熱交換器5へと導かれ、室内熱交換器5内で蒸発することで室内の冷房に寄与する。
冷却管10aが鉛直方向に配置されているため、このような蓄熱回収冷房運転では、図24D(a)に示されているように冷却管10aに付着している氷Iは、図24D(b)に示すように冷却管10aと同心円上で均一に融解されることになる。そして、所定量融解した氷Iは、冷却管10aに沿って蓄熱槽9の上方に浮上するため、冷却管10aには浮力が作用しにくく、冷却管10aの変形などが防止される。また、浮上した氷Iは、比較的高温の水Wに晒されるために融解が促進され、古い水Wが常に一箇所に残留することもなく、氷Iの異常成長が防止されている氷充填率の高い製氷設定量でも従来に比べ局所的なブロッキングは起り難く、該ブロッキングによる冷却管10aや蓄熱槽9の破損が抑制される。さらには、再製氷時においては、図24D(c)の如く冷熱回収運転時に融解された部分が再び氷化することになり、その再現性にも優れている。
なお、上述の例では、蓄熱槽9に貯留される蓄熱媒体として水Wを単独で用いたが、その他、エチレングリコール等を混入したブライン水溶液を採用してもよい。また、蓄熱用熱交換器10の配設位置として、図24E(a)に示すように、冷却管10aの上端固定部分を水面の上方に突出させたり、図24E(b)のように冷却管10aの下端のU字部分10dを蓄熱槽9の下方外側に突出させたりすると、氷Iの融解時に氷Iの浮上を妨げる要因が除去されることになり、容易に氷Iの浮上動作が得られる。
(24−2)第2実施形態
次に、本開示の一実施例に係る蓄熱装置を有する空気調和装置の第2実施形態について、図面を参照しながら説明する。
第2実施形態は、蓄熱槽9からの冷熱取出しのための手段が第1実施形態と異なっている。ここでは、その相違点について主に説明する。
図24Fに示すように、第2実施形態における空気調和装置100の主冷媒回路1は、第1実施形態で説明したものと略同様である。ただし、第2実施形態では、蓄熱装置20の蓄熱用熱交換器10は、一端が第2電子膨張弁12を介して室外熱交換器3の下流側に、他端が圧縮機2の上流側(吸入側)に接続されている。さらに、第2実施形態では、蓄熱装置20の蓄熱槽9内に、冷熱取出し用熱交換器17の熱交換部17aが収納されている。この冷熱取出し用熱交換器17は、主冷媒回路1の、第1電子膨張弁4より上流側に接続されている。
第2実施形態における空気調和装置100の動作について説明する。
蓄熱運転時には、開閉制御手段16は、第1開閉弁11および第2開閉弁14を閉状態にし、第1電子膨張弁4を全閉状態にする。また、開閉制御手段16は、第2電子膨張弁12の開度を制御する。その結果、図24Fの矢印に示すように冷媒が流れ、蓄熱用熱交換器10の冷却管1aの表面に氷Iが生成、付着する。
蓄熱運転後に蓄熱回収冷房運転を行う際には、開閉制御手段16は、第1開閉弁11の開度を調節し、第2開閉弁14を開状態とすると共に、第1電子膨張弁4の開度を制御し、第2電子膨張弁12は全閉状態とする。このように弁の制御が行われことで、図24Gの矢印に示すような冷媒の流れにより、冷熱取出し用熱交換器17から冷熱が取り出されて主冷媒回路1内に供給され、冷熱は冷房運転に寄与する。
この蓄熱回収冷房運転時には、図24Hに示すように蓄熱槽9の上方から下方に向かって循環流が生じる。冷却管10aでは、この循環流に沿って氷Iが上下方向に生成されているので、全ての氷Iの表面に均一に水Wが対流することになり、その融解量も均一になるので、局部的に残氷しブロッキング現象が生じる可能性を低減できる。また、製氷量が多く、図24I(a)に示すように各氷Iが融合した状態になっても、各氷Iの間にある水Wが対流可能であるために、この融合を解消するように融解され(図24I(b)参照)、従来のものに比べ水Wの対流する面積が増え、融解効率が向上されている。
なお、上述した実施形態では蓄熱用熱交換器として直膨熱交換器を用いたが、ブライン等の2次冷媒を用いて製氷を行う装置においても適用できる。また、第2実施形態では、冷熱取出し用の熱交換器に2次冷媒を流して冷熱を取出すもの、或いは、蓄熱槽内の水を該蓄熱槽外の冷熱取出し用の熱交換器、ファインコイルユニット等に循環させて冷熱を取出すようにした装置への適用も可能である。
(24−3)本開示の蓄熱装置および空気調和装置の特徴
(24−3−1)
上記実施形態の蓄熱装置20は、蓄熱槽9と、蓄熱用熱交換器10と、を備える。蓄熱槽9には、蓄熱媒体の一例としての水Wが貯留されている。蓄熱用熱交換器10は、蓄熱槽9の水Wに浸漬される。蓄熱用熱交換器10は、冷媒供給装置の一例としての主冷媒回路1に接続される。蓄熱用熱交換器10は、主冷媒回路1から供給される少なくとも1,2−ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))を含む冷媒により水Wを冷却する。ここでの冷媒として、冷媒Aのいずれかを用いることができる。
ここでは、主冷媒回路1から供給される1,2−ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))を含む低地球温暖化係数の冷媒を用いて水Wを冷却して蓄熱槽9に冷熱を貯留し、もって電力負荷の平準化に寄与することができる。
(24−3−2)
上記実施形態の蓄熱装置20では、蓄熱用熱交換器10には冷媒が通る冷却通路が形成され、該冷却通路が蓄熱槽9内で鉛直方向に蛇行するように形成されて構成されている。
(24−3−3)
上記実施形態の蓄熱装置20では、蓄熱用熱交換器10は冷却通路を形成する複数本の冷却管10aを備え、冷却管10aは蓄熱槽9の水平断面視において冷却管10a断面が各々縦横方向に直線上に位置するように配置されて構成されている。
(24−3−4)
第1実施形態の空気調和装置100では、圧縮機2、熱源側熱交換器の一例としての室外熱交換器3、冷媒を減圧する第1減圧機構の一例としての第1電子膨張弁4、および負荷側熱交換器の一例としての室内熱交換器5が冷媒配管6で接続されて主冷媒回路1が構成される。空気調和装置100は、蓄熱可能な蓄熱媒体としての水Wを備えた蓄熱装置20が配設されてなる蓄熱式空気調和装置である。空気調和装置100には、蓄熱運転時に冷媒を減圧する第2減圧機構の一例としての第2電子膨張弁12が冷媒配管6に介設される。蓄熱装置20は、蓄熱槽9内に水Wが貯留されると共に、水Wに浸漬されて蓄熱用熱交換器10が収納されて構成される。蓄熱用熱交換器10は、第2電子膨張弁12と並列に主冷媒回路1に接続される。蓄熱用熱交換器10は、冷媒が通る冷却管10aを備え、冷却管10aが蓄熱槽9内で鉛直方向に蛇行するように形成されている。蓄熱用熱交換器10の第1熱交換器側端部の一例としての室外側連結端10bには短絡管13の一端が接続され、短絡管13の他端は圧縮機2の上流側の冷媒配管6に接続されている。蓄熱運転時には、第2電子膨張弁12を介して、第2熱交換器側端部の一例としての室内側連結端10cから蓄熱用熱交換器10に冷媒を流して蓄熱槽9内の水Wを冷却させ、その後、短絡管13を介して圧縮機2の上流側へと流す。空気調和装置100には、蓄熱回収冷房運転時に、室外熱交換器3から室外側連結端10bを介して蓄熱用熱交換器10に冷媒を流して冷媒を冷却した後、冷媒を室内熱交換器5へと供給するように回路接続を切換える回路切換手段15が設けられている。
(24−3−5)
第2実施形態の空気調和装置100では、蓄熱装置20は、蓄熱槽9と、蓄熱槽9内に水Wに浸漬されるように収容される蓄熱用熱交換器10および冷熱取出し用熱交換器17を含む。蓄熱用熱交換器10は、一端が第2電子膨張弁12を介して室外熱交換器3の下流側に、他端が圧縮機2の上流側に接続されると共に、冷媒が通る冷却管10aを備える。冷却管10aは、蓄熱槽9内で鉛直方向に蛇行するように形成されている。冷熱取出し用熱交換器17は、冷媒配管6の第1電子膨張弁4の上流側に接続されている。蓄熱運転時には、第2電子膨張弁12を介して蓄熱用熱交換器10に冷媒を流して蓄熱槽9内の水Wを冷却した後、圧縮機2の上流側に流す。空気調和装置100には、蓄熱回収冷房運転時に、室外熱交換器3から冷熱取出し用熱交換器17に冷媒を流して冷媒を冷却した後、冷媒を室内熱交換器5に供給するように回路接続を切換える回路切換手段15が設けられている。
(24−3−6)
本開示に係る蓄熱装置20は、以下に述べるような効果を有する。
蓄熱用熱交換器10を鉛直方向に配置したことにより、蓄熱回収冷房運転時には付着された氷が略均一に滞留するために、その融解が均一になり、再製氷時に局部的に氷が成長することがなく、氷のブロッキングが抑制されて、蓄熱効率が向上されるばかりでなく、蓄熱用熱交換器10や蓄熱槽9の変形、破損が防止される。
また、冷却管10aが蓄熱槽9の水平断面視において冷却管10a断面が各々縦横方向に直線上に位置されていることで、氷同志が融合してもその間に氷化していない部分があるために、その部分に蓄熱媒体が対流することで融解が促進され、融解効率の向上が図れる。
また、所定量融解された氷は冷却管10aに沿って浮上し、蓄熱槽9の上層部で融解されることになるために、氷の内部に古い水が残留することがなく、局部的なブロッキングの防止が図れる。
(25)第25グループの技術の実施形態
(25−1)第1実施形態
図面を参照しながら、第1実施形態に係る冷凍装置である熱負荷処理システム100について説明する。なお、以下の実施形態は、具体例であって、技術的範囲を限定するものではなく、要旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。また、以下の説明では、「上」、「下」、「左」、「右」、「前(正面)」、「後(背面)」等の方向を示す表現を用いる場合がある。特に断りのない場合、これらの方向は、図中に矢印で示した方向を示している。なお、これらの方向に関する表現は、あくまでも実施形態の理解を容易にするために用いるものであり、本開示に係る思想を特に限定するものではない。
(25−1−1)全体構成
図25Aは、熱負荷処理システム100の概略構成図である。熱負荷処理システム100は、設置環境において熱負荷を処理するためのシステムである。本実施形態において、熱負荷処理システム100は、対象空間の空気調和を行う空調システムである。
熱負荷処理システム100は、主として、複数(ここでは4台)の熱源側ユニット10と、熱交換器ユニット30と、複数(ここでは4台)の利用側ユニット60と、複数(ここでは4本)の液側連絡管LPと、複数(ここでは4本)のガス側連絡管GPと、第1熱媒体連絡管H1および第2熱媒体連絡管H2と、冷媒漏洩センサ70と、熱負荷処理システム100の動作を制御するコントローラ80と、を有している。
熱負荷処理システム100では、熱源側ユニット10および熱交換器ユニット30が液側連絡管LPおよびガス側連絡管GPで接続されることで冷媒が循環する冷媒回路RCが構成されている。熱負荷処理システム100では、複数の熱源側ユニット10が並列に配置されていることに関連して、複数(ここでは4つ)の冷媒回路RCが構成されている。換言すると、熱負荷処理システム100では、複数の熱源側ユニット10および熱交換器ユニット30によって複数の冷媒回路RCが構成されている。熱負荷処理システム100は、各冷媒回路RCにおいて蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。
本実施形態では、冷媒回路RCに封入される冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。
熱負荷処理システム100では、熱交換器ユニット30および利用側ユニット60が第1熱媒体連絡管H1および第2熱媒体連絡管H2で接続されることで、熱媒体が循環する熱媒体回路HCが構成されている。換言すると、熱負荷処理システム100では、熱交換器ユニット30および利用側ユニット60によって熱媒体回路HCが構成されている。熱媒体回路HCにおいては、熱交換器ユニット30のポンプ36が駆動することによって熱媒体が循環する。
本実施形態では、熱媒体回路HCに封入される熱媒体は、例えば、水やブラインなどの液媒体である。ブラインは、例えば、塩化ナトリウム水溶液、塩化カルシウム水溶液、エチレングリコール水溶液や、プロピレングリコール水溶液等を含む。なお、液媒体の種類はここに例示したものに限定されるものではなく、適宜選択されればよい。特に本実施形態では、熱媒体としてブラインが使用されるものとする。
(25−1−2)詳細構成
(25−1−2−1)熱源側ユニット
本実施形態では、熱負荷処理システム100は、4台の熱源側ユニット10を有する(図25A参照)。そして、熱交換器ユニット30は、4台の熱源側ユニット10において冷却/加熱された冷媒で、液媒体を冷却/加熱する。ただし、熱源側ユニット10の台数は例示であって、その台数は4台に限定されるものではない。熱源側ユニット10は、1〜3台であってもよいし、5台以上であってもよい。なお、図25Aでは、4台の熱源側ユニット10のうち1台についてのみ内部構成を描画し、他の3台の内部構成の描画は省略している。描画を省略した熱源側ユニット10についても、以下で説明する熱源側ユニット10と同様の構成を有する。
熱源側ユニット10は、空気を熱源として、冷媒を冷却又は加熱するユニットである。各熱源側ユニット10は、液側連絡管LPおよびガス側連絡管GPを介して熱交換器ユニット30に個別に接続されている。換言すると、各熱源側ユニット10は、熱交換器ユニット30と共に、個別に冷媒回路RCを構成する。すなわち、熱負荷処理システム100では、複数(ここでは4台)の熱源側ユニット10と、熱交換器ユニット30と、が個別に接続されることで、複数(ここでは4つ)の冷媒回路RCが構成されている。なお、各冷媒回路RCは、分離しており連通していない。
熱源側ユニット10は、設置場所を限定されるものではないが、例えば屋上や建物の周辺のスペース等に設置される。熱源側ユニット10は、液側連絡管LP、ガス側連絡管GPを介して熱交換器ユニット30と接続されており、冷媒回路RCの一部を構成している。
熱源側ユニット10は、冷媒回路RCを構成する機器として、主として、複数の冷媒配管(第1配管P1−第11配管P11)と、圧縮機11と、アキュームレータ12と、四路切換弁13と、熱源側熱交換器14と、過冷却器15と、熱源側第1制御弁16と、熱源側第2制御弁17と、液側閉鎖弁18と、ガス側閉鎖弁19と、を有している。
第1配管P1は、ガス側閉鎖弁19と、四路切換弁13の第1ポートと、を接続する。第2配管P2は、アキュームレータ12の入口ポートと、四路切換弁13の第2ポートと、を接続する。第3配管P3は、アキュームレータ12の出口ポートと、圧縮機11の吸入ポートと、を接続する。第4配管P4は、圧縮機11の吐出ポートと、四路切換弁13の第3ポートと、を接続する。第5配管P5は、四路切換弁13の第4ポートと、熱源側熱交換器14のガス側出入口と、を接続する。第6配管P6は、熱源側熱交換器14の液側出入口と、熱源側第1制御弁16の一端と、を接続する。第7配管P7は、熱源側第1制御弁16の他端と、過冷却器15のメイン流路151の一端と、を接続する。第8配管P8は、過冷却器15のメイン流路151の他端と、液側閉鎖弁18の一端と、を接続する。
第9配管P9は、第6配管P6の両端間の部分と、熱源側第2制御弁17の一端と、を接続する。第10配管P10は、熱源側第2制御弁17の他端と、過冷却器15のサブ流路152の一端と、を接続する。第11配管P11は、過冷却器15のサブ流路152の他端と、圧縮機11のインジェクションポートと、を接続する。
なお、これらの冷媒配管(P1―P11)は、実際には、単一の配管で構成されてもよいし、継手等を介して複数の配管が接続されることで構成されてもよい。
圧縮機11は、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒を高圧になるまで圧縮する機器である。本実施形態では、圧縮機11は、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素が圧縮機モータ(図示省略)によって回転駆動される密閉式構造を有している。圧縮機モータは、インバータにより運転周波数の制御が可能である。すなわち、圧縮機11は、容量制御可能に構成されている。但し、圧縮機11は、容量が一定の圧縮機であってもよい。
アキュームレータ12は、圧縮機11に液冷媒が過度に吸入されることを抑制するための容器である。アキュームレータ12は、冷媒回路RCに充填されている冷媒量に応じて所定の容積を有している。
四路切換弁13は、冷媒回路RCにおける冷媒の流れを切り換えるための流路切換機構である。四路切換弁13は、正サイクル状態と逆サイクル状態とを切り換えられる。四路切換弁13は、正サイクル状態となると、第1ポート(第1配管P1)と第2ポート(第2配管P2)とを連通させるとともに第3ポート(第4配管P4)と第4ポート(第5配管P5)とを連通させる(図25Aの四路切換弁13の実線を参照)。四路切換弁13は、逆サイクル状態となると、第1ポート(第1配管P1)と第3ポート(第4配管P4)とを連通させるとともに第2ポート(第2配管P2)と第4ポート(第5配管P5)とを連通させる(図25Aの四路切換弁13の破線を参照)。
熱源側熱交換器14は、冷媒の凝縮器(又は放熱器)又は蒸発器として機能する熱交換器である。熱源側熱交換器14は、正サイクル運転(四路切換弁13が正サイクル状態にある運転)時には、冷媒の凝縮器として機能する。また、熱源側熱交換器14は、逆サイクル運転(四路切換弁13が逆サイクル状態にある運転)時には、冷媒の蒸発器として機能する。熱源側熱交換器14は、複数の伝熱管と、伝熱フィンと、を含む(図示省略)。熱源側熱交換器14は、伝熱管内の冷媒と、伝熱管又は伝熱フィンの周囲を通過する空気(後述の熱源側空気流)と、の間で熱交換が行われるように構成されている。
過冷却器15は、流入する冷媒を過冷却状態の液冷媒とする熱交換器である。過冷却器15は、例えば二重管熱交換器であり、過冷却器15にはメイン流路151とサブ流路152とが構成されている。過冷却器15は、メイン流路151およびサブ流路152を流れる冷媒が熱交換を行うように構成されている。
熱源側第1制御弁16は、開度制御が可能な電子膨張弁であり、開度に応じて流入する冷媒を減圧する又は流量調節する。熱源側第1制御弁16は、開状態と閉状態とを切換可能である。熱源側第1制御弁16は、熱源側熱交換器14と過冷却器15(メイン流路151)との間に配置されている。
熱源側第2制御弁17は、開度制御が可能な電子膨張弁であり、開度に応じて流入する冷媒を減圧する又は流量調節する。熱源側第2制御弁17は、開状態と閉状態とを切換可能である。熱源側第2制御弁17は、熱源側熱交換器14と過冷却器15(サブ流路152)との間に配置されている。
液側閉鎖弁18は、第8配管P8と液側連絡管LPとの接続部分に配置された手動弁である。液側閉鎖弁18は、一端が第8配管P8に接続され他端が液側連絡管LPに接続されている。
ガス側閉鎖弁19は、第1配管P1とガス側連絡管GPとの接続部分に配置された手動弁である。ガス側閉鎖弁19は、一端が第1配管P1に接続され他端がガス側連絡管GPに接続されている。
また、熱源側ユニット10は、熱源側熱交換器14を通過する熱源側空気流を生成する熱源側ファン20を有している。熱源側ファン20は、熱源側熱交換器14を流れる冷媒の冷却源又は加熱源としての熱源側空気流を熱源側熱交換器14に供給する送風機である。熱源側ファン20は、駆動源である熱源側ファンモータ(図示省略)を含み、状況に応じて発停および回転数を適宜制御される。
また、熱源側ユニット10には、冷媒回路RC内の冷媒の状態(主に圧力又は温度)を検出するための複数の熱源側センサS1(図25C参照)が配置されている。熱源側センサS1は、圧力センサや、サーミスタ又は熱電対等の温度センサである。熱源側センサS1には、例えば、圧縮機11の吸入側(第3配管P3)における冷媒の温度(吸入温度)を検出する第1温度センサ21、又は圧縮機11の吐出側(第4配管P4)における冷媒の温度(吐出温度)を検出する第2温度センサ22が含まれている。また、熱源側センサS1には、例えば、熱源側熱交換器14の液側(第6配管P6)の冷媒の温度を検出する第3温度センサ23、第8配管P8における冷媒の温度を検出する第4温度センサ24、又は第11配管P11における冷媒の温度を検出する第5温度センサ25が含まれている。また、熱源側センサS1には、例えば、圧縮機11の吸入側(第2配管P2)における冷媒の圧力(吸入圧力)を検出する第1圧力センサ27、圧縮機11の吐出側(第4配管P4)における冷媒の圧力(吐出圧力)を検出する第2圧力センサ28が含まれている。
また、熱源側ユニット10は、熱源側ユニット10に含まれる各機器の動作・状態を制御する熱源側ユニット制御部29を有している。熱源側ユニット制御部29は、その機能を実行するために、各種電気回路や、マイクロプロセッサやマイクロプロセッサが実行するプログラムが記憶されたメモリチップを有するマイクロコンピュータ等を有している。熱源側ユニット制御部29は、熱源側ユニット10に含まれる各機器(11、13、16、17、20等)や熱源側センサS1と電気的に接続されており、互いに信号の入出力を行う。また、熱源側ユニット制御部29は、熱交換器ユニット30の熱交換器ユニット制御部49(後述)等と通信線を介して電気的に接続されており、互いに制御信号の送受信を行う。
(25−1−2−2)熱交換器ユニット
熱交換器ユニット30は、熱媒体と冷媒とを熱交換させることで、熱媒体の冷却および加熱の少なくとも一方を行う機器である。本実施形態では、熱交換器ユニット30は、熱媒体と冷媒とを熱交換させることで、熱媒体の冷却および加熱を行う。熱交換器ユニット30で液冷媒により冷却又は加熱された熱媒体は、利用側ユニット60へと送られる。
熱交換器ユニット30は、利用側ユニット60へと送られる熱媒体と冷媒とを熱交換させることで、熱媒体の冷却又は加熱を行うユニットである。熱交換器ユニット30は、設置場所を限定されるものではないが、例えば設備機器室等の室内に設置される。熱交換器ユニット30は、各冷媒回路RCを構成する機器として、熱源側ユニット10の数(冷媒回路RCの数)と同数(ここでは4つ)の、複数の冷媒配管(冷媒配管Pa、Pb、Pc、Pd)、膨張弁31、および開閉弁32を有している。また、熱交換器ユニット30は、各冷媒回路RCおよび熱媒体回路HCを構成する機器として、熱交換器33を有している。
冷媒配管Paは、液側連絡管LPと、膨張弁31の一端と、を接続する。冷媒配管Pbは、膨張弁31の他端と、熱交換器33の一の液側冷媒出入口と、を接続する。冷媒配管Pcは、熱交換器33の一のガス側冷媒出入口と、開閉弁32の一端と、を接続する。冷媒配管Pdは、開閉弁32の他端と、ガス側連絡管GPと、を接続する。なお、これらの冷媒配管(Pa―Pd)は、実際には、単一の配管で構成されてもよいし、継手等を介して複数の配管が接続されることで構成されてもよい。
膨張弁31は、開度制御が可能な電子膨張弁であり、開度に応じて流入する冷媒を減圧する又は流量調節する。膨張弁31は、開状態と閉状態とを切換可能である。膨張弁31は、熱交換器33と液側連絡管LPとの間に配置されている。
開閉弁32は、開状態と閉状態とを切換可能な制御弁である。開閉弁32は、閉状態時に冷媒を遮断する。開閉弁32は、熱交換器33とガス側連絡管GPとの間に配置されている。
熱交換器33には、冷媒回路RCを流れる冷媒の流路(冷媒流路RP)が複数形成されている。熱交換器33において、各冷媒流路RPは、他の冷媒流路RPと連通していない。これに関連して、熱交換器33においては、冷媒流路RPの液側出入口およびガス側出入口が、それぞれ冷媒流路RPの数と同数(ここでは4つ)形成されている。また、熱交換器33には、熱媒体回路HCを流れる熱媒体の流路(熱媒体流路HP)が形成されている。
より具体的に、熱交換器33は、第1熱交換器34および第2熱交換器35を含んでいる。第1熱交換器34および第2熱交換器35は、別体として構成されている。第1熱交換器34および第2熱交換器35においては、分離した2つの冷媒流路RPがそれぞれ形成されている。第1熱交換器34および第2熱交換器35では、各冷媒流路RPの一端が、対応する冷媒回路RCの冷媒配管Pbに接続されており、各冷媒流路RPの他端が対応する冷媒回路RCの冷媒配管Pcに接続されている。第1熱交換器34では、熱媒体流路HPの一端が後述の熱媒体配管Hbに接続されており、熱媒体流路HPの他端が後述の熱媒体配管Hcに接続されている。第2熱交換器35では、熱媒体流路HPの一端が後述のHcに接続されており、熱媒体流路HPの他端が後述の熱媒体配管Hdに接続されている。第1熱交換器34および第2熱交換器35の熱媒体流路HPは、熱媒体回路HCにおいて直列に並んでいる。第1熱交換器34および第2熱交換器35は、各冷媒流路RP(冷媒回路RC)を流れる冷媒と、熱媒体流路HP(熱媒体回路HC)を流れる熱媒体と、で熱交換が行われるように構成されている。
また、熱交換器ユニット30は、熱媒体回路HCを構成する機器として、複数の熱媒体配管(熱媒体配管Ha、Hb、Hc、Hd)、およびポンプ36をさらに有している。
熱媒体配管Haは、一端が第1熱媒体連絡管H1に接続され、他端がポンプ36の吸入側ポートに接続されている。熱媒体配管Hbは、一端がポンプ36の吐出側ポートに接続され、他端が第1熱交換器34の熱媒体流路HPの一端に接続されている。熱媒体配管Hcは、一端が第1熱交換器34の熱媒体流路HPの他端に接続され、他端が第2熱交換器35の熱媒体流路HPの一端に接続されている。熱媒体配管Hdは、一端が第2熱交換器35の熱媒体流路HPの他端に接続され、他端が第2熱媒体連絡管H2に接続されている。なお、これらの熱媒体配管(Ha―Hd)は、実際には、単一の配管で構成されてもよいし、継手等を介して複数の配管が接続されることで構成されてもよい。
ポンプ36は、熱媒体回路HCに配置されている。ポンプ36は、運転中、熱媒体を吸引して吐出する。ポンプ36は、駆動源であるモータを含み、モータをインバータ制御されることで回転数を調整される。すなわち、ポンプ36は、吐出流量可変である。なお、熱交換器ユニット30は、熱媒体回路HCにおいて直列又は並列に接続された複数台のポンプ36を有してもよい。また、ポンプ36は、定量ポンプであってもよい。
また、熱交換器ユニット30には、冷媒回路RC内の冷媒の状態(主に圧力又は温度)を検出するための複数の熱交換器ユニットセンサS2(図25C参照)が配置されている。熱交換器ユニットセンサS2は、圧力センサや、サーミスタ又は熱電対等の温度センサである。熱交換器ユニットセンサS2には、例えば、熱交換器33(冷媒流路RP)の液側(冷媒配管Pb)における冷媒の温度を検出する第6温度センサ41、および熱交換器33(冷媒流路RP)のガス側(冷媒配管Pc)における冷媒の温度を検出する第7温度センサ42が含まれている。また、熱交換器ユニットセンサS2には、例えば、熱交換器33(冷媒流路RP)の液側(冷媒配管Pb)における冷媒の圧力を検出する第3圧力センサ43、および熱交換器33(冷媒流路RP)のガス側(冷媒配管Pc)における冷媒の圧力を検出する第4圧力センサ44が含まれている。
また、熱交換器ユニット30には、熱交換器ユニット30(冷媒回路RC)において冷媒漏洩が生じた場合に、漏洩冷媒を熱交換器ユニット30から排出させるための排気ファンユニットを有している。排気ファンユニットは、排気ファン46を含む。排気ファン46は、駆動源(例えばファンモータ等)に連動して駆動する。排気ファン46は、駆動すると、熱交換器ユニット30内から外部へ流出する第1空気流AF1を生成する。排気ファン46の種別は、特に限定されないが、例えばシロッコファンやプロペラファンである。
また、熱交換器ユニット30には、冷却ファン48を有している。冷却ファン48は、駆動源(例えばファンモータ等)に連動して駆動する。冷却ファン48は、駆動すると、熱交換器ユニット30内に配置される電気部品(発熱部品)を冷却するための第2空気流AF2を生成する。冷却ファン48は、第2空気流AF2が発熱部品の周囲を通過して熱交換を行った後に熱交換器ユニット30内から外部へ流出するように、配置される。冷却ファン48の種別は、特に限定されないが、例えばシロッコファンやプロペラファンである。
また、熱交換器ユニット30は、熱交換器ユニット30に含まれる各機器の動作・状態を制御する熱交換器ユニット制御部49を有している。熱交換器ユニット制御部49は、その機能を実行するために、マイクロプロセッサおよびマイクロプロセッサが実行するプログラムが記憶されたメモリチップを有するマイクロコンピュータや、各種電気部品等を有している。熱交換器ユニット制御部49は、熱交換器ユニット30に含まれる各機器や熱交換器ユニットセンサS2と電気的に接続されており、互いに信号の入出力を行う。また、熱交換器ユニット制御部49は、熱源側ユニット制御部29、利用側ユニット60内に配置される制御部(図示省略)、又はリモコン(図示省略)等と、通信線を介して電気的に接続されており、互いに制御信号の送受信を行う。熱交換器ユニット制御部49に含まれる電気部品は、冷却ファン48によって生成される第2空気流AF2によって冷却される。
(25−1−2−3)利用側ユニット
利用側ユニット60は、熱交換器ユニット30で冷却/加熱された熱媒体を、利用する設備である。各利用側ユニット60は、第1熱媒体連絡管H1や第2熱媒体連絡管H2等を介して、熱交換器ユニット30と接続されている。利用側ユニット60は、熱交換器ユニット30とともに熱媒体回路HCを構成する。
本実施形態において、利用側ユニット60は、熱交換器ユニット30で冷却/加熱された熱媒体と空気とを熱交換させて空調を行う、エアハンドリングユニットやファンコイルユニットである。
図25Aでは、利用側ユニット60を1つだけ図示している。ただし、熱負荷処理システム100には複数の利用側ユニットが含まれ、熱交換器ユニット30で冷却/加熱された熱媒体は、分岐して複数の利用側ユニットへと送られてもよい。また、熱負荷処理システム100に複数の利用側ユニットが含まれる場合、複数の利用側ユニットの種類は全て同一であってもよいし、複数の利用側ユニットには複数の種類の設備が含まれてもよい。
(25−1−2−4)液側連絡管、ガス側連絡管
各液側連絡管LPおよび各ガス側連絡管GPは、熱交換器ユニット30と、対応する熱源側ユニット10と、を接続して冷媒の流路を構成する。液側連絡管LPおよびガス側連絡管GPは、設置現場において施工される。なお、液側連絡管LP又はガス側連絡管GPは、実際には、単一の配管で構成されてもよいし、継手等を介して複数の配管が接続されることで構成されてもよい。
(25−1−2−5)第1熱媒体連絡管、第2熱媒体連絡管
第1熱媒体連絡管H1および第2熱媒体連絡管H2は、熱交換器ユニット30と、対応する利用側ユニット60と、の間を接続して熱媒体の流路を構成する。第1熱媒体連絡管H1および第2熱媒体連絡管H2は、設置現場において施工される。なお、第1熱媒体連絡管H1又は第2熱媒体連絡管H2は、実際には、単一の配管で構成されてもよいし、継手等を介して複数の配管が接続されることで構成されてもよい。
(25−1−2−6)冷媒漏洩センサ
冷媒漏洩センサ70は、熱交換器ユニット30が配置される空間(ここでは後述の設備機器室R)における冷媒漏洩を検知するためのセンサである。より具体的には、冷媒漏洩センサ70は、熱交換器ユニット30における漏洩冷媒を検出する。本実施形態では、冷媒漏洩センサ70は、冷媒回路RCに封入されている冷媒の種別に応じて公知の汎用品が用いられている。冷媒漏洩センサ70は、熱交換器ユニット30が配置される空間に配置されている。本実施形態においては、冷媒漏洩センサ70は、熱交換器ユニット30内に配置されている。
冷媒漏洩センサ70は、継続的又は間欠的にコントローラ80に対して、検出値に応じた電気信号(冷媒漏洩センサ検出信号)を出力している。より詳細には、冷媒漏洩センサ70から出力される冷媒漏洩センサ検出信号は、冷媒漏洩センサ70によって検出される冷媒の濃度に応じて電圧が変化する。換言すると、冷媒漏洩センサ検出信号は、冷媒回路RCにおける冷媒漏洩の有無に加えて、冷媒漏洩センサ70が設置される空間における漏洩冷媒の濃度(より詳細には冷媒漏洩センサ70が検出した冷媒の濃度)を特定可能な態様でコントローラ80へ出力される。
(25−1−2−7)コントローラ
図25Cに示すコントローラ80は、各機器の状態を制御することで熱負荷処理システム100の動作を制御するコンピュータである。本実施形態において、コントローラ80は、熱源側ユニット制御部29、熱交換器ユニット制御部49、およびこれらに接続される機器(例えば利用側ユニット内に配置される制御部やリモコン)が通信線を介して接続されることで構成されている。すなわち、本実施形態において、コントローラ80は、熱源側ユニット制御部29、熱交換器ユニット制御部49、およびこれらに接続される機器が協働することで実現される。
(25−1−3)熱負荷処理システムの設置態様
図25Bは、熱負荷処理システム100の設置態様を示した模式図である。熱負荷処理システム100は、設置場所を特に限定されるものではないが、例えばビルや、商業施設又は工場等に設置される。本実施形態において、熱負荷処理システム100は、図25Bに示すような態様で建物B1に設置されている。建物B1は、複数のフロアを有する。なお、建物B1の階数や部屋数等は、適宜変更が可能である。
建物B1には、設備機器室Rが設けられている。設備機器室Rは、配電盤や発電機等の電気設備、又はボイラー等の冷熱機器等が配置される空間である。設備機器室Rは、人が出入りし滞在可能な空間である。例えば、設備機器室Rは、地下室等の人が歩行可能な空間である。本実施形態において、設備機器室Rは、建物B1の最下のフロアに位置している。また、建物B1には、人が活動を行う居住空間SPが設けられている。建物B1には、複数の居住空間SPが設けられている。本実施形態において、居住空間SPは、設備機器室Rが設けられるフロアの上階に位置している。
図25Bでは、熱源側ユニット10は、建物B1の屋上に設置されている。また、熱交換器ユニット30は、設備機器室Rに設置されている。これに関連して、液側連絡管LPおよびガス側連絡管GPが、屋上と設備機器室Rとの間で鉛直方向に沿って延びている。
また、図25Bでは、各利用側ユニット60は、対応する居住空間SPにおいて配置されている。これに関連して、第1熱媒体連絡管H1および第2熱媒体連絡管H2が、居住空間SPと設備機器室Rとの間で鉛直方向に沿って延びている。
建物B1においては、設備機器室Rの換気(強制換気又は自然換気)を行う換気装置200が設けられている。各換気装置200は、設備機器室Rに設置されている。具体的に、設備機器室Rにおいては、換気装置200として換気ファン210が設置されている。換気ファン210は、複数の換気ダクトDに接続されている。換気ファン210は、駆動すると、設備機器室R内の空気(内気RA)を排気EAとして外部空間に排出し、外部空間の空気(外気OA)を給気SAとして設備機器室Rに供給することで、設備機器室Rの換気を行う。すなわち、換気ファン210は、設備機器室Rにおいて換気を行う「換気装置」に相当する。換気ファン210の動作(発停又は回転数等)は、コントローラ80によって制御可能である。換気ファン210の制御については、換気ファン210に間欠運転を行わせる間欠運転モードと、連続運転を行わせる連続運転モードと、が適宜切り換えられる。
また、設備機器室Rにおいては、換気装置200として開閉機構220が設置されている。開閉機構220は、設備機器室Rと他の空間(例えば外部空間等)とを連通させる開状態と、遮断する閉状態と、を切換可能な機構である。すなわち、開閉機構220は、設備機器室Rと他の空間とを連通する開口を開閉する。開閉機構220は、例えば開閉制御可能なドア、ハッチ、窓又はシャッタ等である。開閉機構220は、アダプタ80b(図25C参照)を介して、コントローラ80に電気的に接続されている。換気ファン210の状態(開状態又は閉状態)は、コントローラ80によって制御される。
(25−1−4)特徴
本実施形態に係る熱負荷処理システム100では、第1のサイクルである冷媒回路RCに封入する冷媒として、冷媒Aのいずれかの混合冷媒を採用しており、熱交換器ユニット30での熱交換の効率を向上させることができている。
(25−2)第2実施形態
図25Dに、本実施形態に係る冷凍装置である二元冷凍装置500の冷媒回路図を示す。二元冷凍装置500は、高温側の高元冷凍サイクルである第1サイクル510と、低温側の低元冷凍サイクルである第2サイクル520とを備えている。第1サイクル510と第2サイクル520は、カスケードコンデンサ531により熱的に接続されている。第1サイクル510および第2サイクル520を構成する各要素は、後述する室外ユニット501若しくは冷却ユニット502に収納されている。
第2サイクル520に封入される冷媒には、冷媒漏れを考慮し、地球温暖化に対する影響が小さい二酸化炭素、すなわちCO2を用いている。第1サイクル510に封入される冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、上述した冷媒Aのいずれかを用いることができる。以下、第2サイクル520に封入される低温側の冷媒を第2冷媒といい、第1サイクル510に封入される高温側の冷媒を第1冷媒という。
第1サイクル510は、第1冷媒が循環する冷凍サイクルである。第1サイクル510において、第1圧縮機511と、第1凝縮器512と、第1膨張弁513と、第1蒸発器514とが順次、冷媒配管で接続され、冷媒回路が構成されている。本明細書では、第1サイクル510の冷媒回路を、第1冷媒回路という。
第2サイクル520は、第2冷媒が循環する冷凍サイクルである。第2サイクル520において、第2圧縮機521と、第2上流側凝縮器522と、第2下流側凝縮器523と、受液器525と、第2下流側膨張弁526と、第2蒸発器527とが順次、冷媒配管で接続され、冷媒回路が構成されている。また、第2サイクル520は、第2下流側凝縮器523と受液器525との間に設けられた第2上流側膨張弁524を有している。本明細書では、第2サイクル520の冷媒回路を、第2冷媒回路という。
二元冷凍装置500は、上述のカスケードコンデンサ531を備えている。カスケードコンデンサ531において、第1蒸発器514を通過する冷媒と第2下流側凝縮器523を通過する冷媒との間で熱交換が可能なように、第1蒸発器514と第2下流側凝縮器523とが結合されて構成されている。すなわち、カスケードコンデンサ531は、冷媒間熱交換器である。カスケードコンデンサ531を設けることにより、第2冷媒回路と第1冷媒回路とは多段構成となっている。
第1圧縮機511は、第1冷媒回路を流れる第1冷媒を吸入し、吸入した第1冷媒を圧縮して高温高圧のガス冷媒にして吐出する。本実施形態において、第1圧縮機511は、インバータ回路により回転数を制御し、冷媒の吐出量を調整できるタイプの圧縮機である。
第1凝縮器512は、例えば、空気、ブライン等と第1冷媒回路を流れる冷媒との間で熱交換を行い、冷媒を凝縮液化させるものである。本実施形態において、第1凝縮器512は、外気と冷媒との熱交換を行うものである。二元冷凍装置500は、第1凝縮器ファン512aを有している。第1凝縮器ファン512aにより、第1凝縮器512に外気が送風され、第1凝縮器512における熱交換が促される。第1凝縮器ファン512aは風量を調整できる。
第1膨張弁513は、第1冷媒回路を流れる第1冷媒を減圧して膨張させるものであり、例えば、電子式膨張弁である。
第1蒸発器514は、熱交換により、第1冷媒回路を流れる冷媒を蒸発させガス化するものである。本実施形態では、第1蒸発器514は、例えば、カスケードコンデンサ531において第1冷媒回路を流れる冷媒が通過する伝熱管等により構成される。そして、カスケードコンデンサ531において、第1蒸発器514を流れる第1冷媒と第2冷媒回路を流れる第2冷媒との間で熱交換が行われる。
第2圧縮機521は、第2冷媒回路を流れる第2冷媒を吸入し、吸入した第2冷媒を圧縮して高温高圧のガス冷媒にして吐出する。本実施形態において、第2圧縮機521は、例えば、インバータ回路により回転数を制御し、冷媒の吐出量を調整できるタイプの圧縮機である。
第2上流側凝縮器522は、例えば、空気、ブライン等と第1冷媒回路を流れる冷媒との間で熱交換を行い、冷媒を凝縮液化させるものである。本実施形態において、第2上流側凝縮器522は、外気と冷媒との熱交換を行うものである。二元冷凍装置500は、第2凝縮器ファン522aを有している。第2凝縮器ファン522aにより、第2上流側凝縮器522に外気が送風され、第2上流側凝縮器522における熱交換が促される。第2凝縮器ファン522aは、風量を調整できるタイプのファンである。
第2下流側凝縮器523は、第2上流側凝縮器522で凝縮され液化された冷媒を、さらに過冷却冷媒にするものである。本実施形態では、第2下流側凝縮器523は、カスケードコンデンサ531において第2冷媒回路を流れる第2冷媒が通過する伝熱管により構成される。そして、カスケードコンデンサ531において、第2下流側凝縮器523を流れる第2冷媒と第1冷媒回路を流れる第1冷媒との間で熱交換が行われる。
第2上流側膨張弁524は、第2冷媒回路を流れる第2冷媒を減圧して膨張させるものであり、ここでは電子式膨張弁である。
受液器525は、第2下流側凝縮器523および第2上流側膨張弁524の下流側に設けられている。受液器525は、冷媒を一時的に貯留するものである。
第2下流側膨張弁526は、第2冷媒回路を流れる第2冷媒を減圧して膨張させるものであり、電子式膨張弁である。
第2蒸発器527は、熱交換により、第1冷媒回路を流れる第1冷媒を蒸発させガス化するものである。第2蒸発器527における冷媒との熱交換により、冷却対象は、直接又は間接に冷却されることになる。
上述した二元冷凍装置500の各構成要素は、室外ユニット501又は冷却ユニット502に収納されている。冷却ユニット502は、例えば、冷蔵冷凍ショーケース若しくはユニットクーラーとして使用される。本実施形態において、第1圧縮機511、第1凝縮器512、第1膨張弁513、第1蒸発器514、第2圧縮機521、第2上流側凝縮器522、第2下流側凝縮器523、第2上流側膨張弁524、受液器525、過冷却冷媒配管528、蒸気冷媒配管529、毛細管528a、および逆止弁529aは、室外ユニット501に収納されている。また、第2下流側膨張弁526および第2蒸発器527は、冷却ユニット502に収納されている。そして、室外ユニット501と冷却ユニット502は、2つの配管、すなわち液配管551およびガス配管552で接続されている。
以上のような構成の二元冷凍装置500において、冷却対象である空気を冷却する通常の冷却運転における各構成機器の動作等を、各冷媒回路を循環する冷媒の流れに基づいて説明する。
まず、図25Dを参照しながら、第1サイクル510の動作について説明する。第1圧縮機511は、第1冷媒を吸入し、圧縮して高温高圧のガス冷媒の状態にして吐出する。吐出された第1冷媒は、第1凝縮器512へ流入する。第1凝縮器512は、第1凝縮器ファン512aから供給される外気とガス冷媒である第1冷媒との間で熱交換を行い、第1冷媒を凝縮し液化する。凝縮液化された第1冷媒は、第1膨張弁513を通過する。第1膨張弁513は凝縮液化した第1冷媒を減圧する。減圧された第1冷媒は、カスケードコンデンサ531の第1蒸発器514に流入する。第1蒸発器514は、第2下流側凝縮器523を通過する第2冷媒との熱交換により、第1冷媒を蒸発、ガス化する。蒸発、ガス化された第1冷媒は、第1圧縮機511に吸入される。
次に、図25Dを参照しながら、第2サイクル520の動作について説明する。第2圧縮機521は、第2冷媒を吸入し、圧縮して高温高圧のガス冷媒の状態にして吐出する。吐出された第2冷媒は、第2上流側凝縮器522へ流入する。第2上流側凝縮器522は、第2凝縮器ファン522aから供給される外気と第2冷媒との間で熱交換を行い、第2冷媒を凝縮し、カスケードコンデンサ531の第2下流側凝縮器523に流入する。第2下流側凝縮器523は、第1蒸発器514を通過する第1冷媒との熱交換により、さらに第1冷媒を過冷却液化する。過冷却液化された第2冷媒は、第2上流側膨張弁524を通過する。第2上流側膨張弁524は、過冷却液化された第2冷媒を減圧し、中間圧の冷媒にする。中間圧まで減圧された第2冷媒は、受液器525を通り、第2下流側膨張弁526を通過し、減圧されて低圧の冷媒となる。低圧まで減圧された第2冷媒は、第2蒸発器527に流入する。第2蒸発器527は、第2蒸発器ファン527aを用いて冷凍倉庫の庫内空気と第2冷媒とを熱交換させ、第2冷媒を蒸発ガス化する。蒸発ガス化した第2冷媒は、第2圧縮機521に吸入される。
本実施形態に係る二元冷凍装置500では、第1サイクル510に封入する第1冷媒として冷媒Aのいずれかの混合冷媒を採用しており、カスケードコンデンサ531での熱交換の効率を向上させることができている。また、第1冷媒として冷媒Aのいずれかの混合冷媒を採用することで、R32を使う場合に較べてGWP(地球温暖化係数)を下げることも可能になる。
(25−2−1)第2実施形態の第1の変形例
上記の実施形態では、第1サイクル510に封入する第1冷媒として冷媒Aのいずれかの混合冷媒を採用し、第2サイクル520に封入する第2冷媒として二酸化炭素を採用しているが、第1冷媒も第2冷媒も、共に冷媒Aのいずれかの混合冷媒を採用してもよい。ここでは、第1サイクル510および第2サイクル520がカスケードコンデンサ531を介して組み合わされ二元冷凍装置500を構成しており、一元の装置に較べて冷却ユニット502側を通るサイクル(第2サイクル520)の冷媒充填量が少なくなる。このため、冷却ユニット502側の冷媒漏洩に備えた安全対策のコストを低減することが可能になる。
(25−2−2)第2実施形態の第2の変形例
上記の実施形態では、第1サイクル510に封入する第1冷媒として冷媒Aのいずれかの混合冷媒を採用し、第2サイクル520に封入する第2冷媒として二酸化炭素を採用しているが、第1冷媒としてR32を採用し、第2冷媒として冷媒Aのいずれかの混合冷媒を採用してもよい。ここでは、二酸化炭素(CO2)に較べて耐圧の設計値が低い傾向にある混合冷媒を用いることで、第2サイクル520を構成する配管や部品の耐圧レベルを下げることが可能になる。
(25−3)第3実施形態
(25−3−1)全体構成
図25Eに、第3実施形態に係る冷凍装置である空調給湯システム600を示す。図25Eは、空調給湯システム600の回路構成図である。空調給湯システム600は、空調装置610と給湯装置620とを備える。給湯装置620には、給湯用温水回路640が接続されている。
(25−3−2)詳細構成
(25−3−2−1)空調装置
空調装置610は、圧縮機611と室外熱交換器612と膨張弁613と室内熱交換器614とが接続された空調用冷媒回路615を備えている。具体的には、圧縮機611の吐出側に、四路切換弁616の第1ポートP1が接続されている。四路切換弁616の第2ポートP2に、室外熱交換器612のガス側端部が接続されている。室外熱交換器612の液側端部は、膨張弁613を介して、室内熱交換器614の液側端部に接続されている。室内熱交換器614のガス側端部は、四路切換弁616の第3ポートP3に接続されている。そして、四路切換弁616の第4ポートP4が、圧縮機611の吸入側に接続されている。
四路切換弁616は、第1ポートP1と第2ポートP2が連通し、第3ポートP3と第4ポートP4が連通する第1の連通状態(図の破線の状態)と、第1ポートP1と第3ポートP3が連通し、第2ポートP2と第4ポートP4が連通する第2の連通状態(図の実線の状態)とに切り換わる。四路切換弁616を切り換えることにより、冷媒の循環方向を逆転させることができる。
第3実施形態では、空調用冷媒回路615には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が充填されている。当該冷媒は、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒であり、冷媒Aのいずれかを用いることができる。
(25−3−2−2)給湯装置
給湯装置620は、給湯用冷媒回路625を有する。給湯用冷媒回路625では、圧縮機621と、第1熱交換器622と、膨張弁623と、第2熱交換器624とが、順に接続されている。給湯用冷媒回路625には、冷媒として、二酸化炭素冷媒が充填されている。給湯装置620は、給湯用冷媒回路625を構成している各機器を一つのケーシング内に収めたもので、一つの給湯ユニットを構成している。
第1熱交換器622は、吸熱部622aと放熱部622bとが一体的に構成された水/冷媒熱交換器である。第1熱交換器622は、放熱部622bが給湯用冷媒回路625に接続されるともに、吸熱部622aが、水から温水を生成する給湯用温水回路640に接続されている。第1熱交換器622では、給湯用温水回路640の水と給湯用冷媒回路625の二酸化炭素冷媒とが熱交換を行うことにより、給湯用温水回路640において水から温水が生成される。
給湯用温水回路640は、循環ポンプ641と、第1熱交換器622の吸熱部622aと、貯湯タンク642と、が接続された回路である。給湯用温水回路640では、第1熱交換器622で二酸化炭素冷媒により加熱された温水が、貯湯タンク642に蓄えられるように、水/温水が循環する。給湯用温水回路640には、貯湯タンク642における給排水を行うため、貯湯タンク642への給水管643と、貯湯タンク642からの出湯管644と、が接続される。
第2熱交換器624は、吸熱部624aと放熱部624bとが一体的に構成されたカスケード熱交換器であり、吸熱部624aが給湯用冷媒回路625に、放熱部624bが空調用冷媒回路615に接続されている。このように第2熱交換器624をカスケード熱交換器としたことで、空調用冷媒回路615が二元ヒートポンプサイクルの低段(低温)側の動作を行い、給湯用冷媒回路625が高段(高温)側の動作を行う。
第2熱交換器624は、二元ヒートポンプサイクルの低段側である空調用冷媒回路615の室内熱交換器614に、並列に接続されている。三方切換弁650の切り換えによって、空調用冷媒回路615の冷媒が第2熱交換器624に流れる状態と、冷媒が室内熱交換器614に流れる状態とが切り換わる。言い換えると、二元ヒートポンプサイクルの低段側である空調用冷媒回路615では、室外熱交換器612と室内熱交換器614との間で冷媒が循環する第1動作と、室外熱交換器612と第2熱交換器624との間で冷媒が循環する第2動作とを切り換えることができる。
(25−3−3)空調給湯システムの運転動作
次に、空調給湯システム600の運転動作について説明する。
まず、第1動作である空調運転は、冷房運転と暖房運転とを切り換えて行うことができる。冷房運転時は、四路切換弁616が破線側の第1連通状態にセットされ、三方切換弁650が破線側の第1連通状態にセットされる。この状態において、圧縮機611から吐出された冷媒は、四路切換弁616を通って室外熱交換器612へ流入し、室外熱交換器612で外気に放熱して凝縮する。冷媒は、膨張弁613において膨張した後、室内熱交換器614で室内空気から吸熱して蒸発し、室内空気を冷却する。その後、冷媒は四路切換弁616を通り、圧縮機611に吸入される。冷媒が以上のように循環して圧縮行程、凝縮行程、膨張行程、蒸発行程を繰り返すことにより、室内が冷房される。
また、暖房運転時は、四路切換弁616が実線側の第2連通状態にセットされ、三方切換弁650が破線側の第1連通状態にセットされる。この状態において、圧縮機611から吐出された冷媒は、四路切換弁616および三方切換弁650を通って室内熱交換器614へ流入し、室内熱交換器614で室内空気に放熱して凝縮し、室内空気を加熱する。この冷媒は、膨張弁613において膨張した後、室外熱交換器612で外気から吸熱して蒸発する。その後、冷媒は、四路切換弁616を通り、圧縮機611に吸入される。冷媒が以上のように循環することにより、室内が暖房される。
一方、第2動作である貯湯運転は、空調が不要となる深夜の時間帯に行われる。このとき、空調用冷媒回路615において、四路切換弁616は、暖房運転時と同様に実線側の第2連通状態にセットされ、三方切換弁650は、空調運転時とは逆に実線側の第2連通状態にセットされる。また、このときは、給湯用冷媒回路625の圧縮機621と給湯用温水回路640の循環ポンプ641の運転も行われる。
この状態において、空調用冷媒回路615では、圧縮機611から吐出された冷媒が、四路切換弁616および三方切換弁650を通って第2熱交換器624の放熱部624bへ流入する。放熱部624bでは、空調用冷媒回路615を流れる冷媒が、給湯用冷媒回路625の二酸化炭素冷媒に放熱して凝縮し、二酸化炭素冷媒を加熱する。空調用冷媒回路615の冷媒は、その後、膨張弁613において膨張し、室外熱交換器612で蒸発した後、四路切換弁616を通って圧縮機611に吸入される。空調用冷媒回路615の冷媒は、以上のように循環し、圧縮行程、凝縮行程、膨張行程、蒸発行程を繰り返す。
給湯用冷媒回路625では、二酸化炭素冷媒が、圧縮機621における圧縮行程、第1熱交換器622の放熱部622bにおける放熱行程、膨張弁623における膨張行程、そして第2熱交換器624の吸熱部624aにおける吸熱行程を順に行う。第2熱交換器624では、二酸化炭素冷媒が空調用冷媒回路615を流れる冷媒から吸熱し、第1熱交換器622においては、二酸化炭素冷媒が温熱を給湯用温水回路640の水に与える作用を行う。
給湯用温水回路640では、循環ポンプ641により貯湯タンク642の水が第1熱交換器622の吸熱部622aに供給され、加熱される(温水が生成される)。加熱によって生成された温水は、貯湯タンク642に戻り、所定の蓄熱温度になるまで給湯用温水回路640内で温水の循環が継続される。以上の貯湯運転は、上述したように深夜の時間帯に行われる。一方、貯湯タンク642から出湯する給湯運転は、昼間や夜間の時間帯に行われる。給湯運転時、給湯用冷媒回路625は停止しており、空調用冷媒回路615においては室内熱交換器614を用いて冷房運転あるいは暖房運転を行うことができる。
(25−3−4)空調給湯システムの特徴
第3実施形態に係る空調給湯システム600では、二酸化炭素を冷媒とする給湯用冷媒回路625における熱源側の第2熱交換器624をカスケード熱交換器にしたユニット型の給湯装置620を用いている。また、第2熱交換器624を低段側冷媒回路である空調用冷媒回路615に接続して、二元のヒートポンプサイクル動作を行う構成にしている。空調用冷媒回路615では、冷媒Aのいずれかの、1,2−ジフルオロエチレンを含む混合冷媒を用いている。このため、第2熱交換器624での熱交換の効率を向上させることができている。
(25−3−5)第3実施形態の変形例
上記の実施形態では、第1のサイクルである空調用冷媒回路615に封入する第1冷媒として冷媒Aのいずれかの混合冷媒を採用し、第2のサイクルである給湯用冷媒回路625に封入する第2冷媒として二酸化炭素を採用しているが、給湯用冷媒回路625に封入する第2冷媒として、第1冷媒よりも所定温度における飽和圧力が低い冷媒を採用することが好ましい。例えば、R134aを給湯用冷媒回路625に封入ことは、好ましい。
以上、各グループの技術に関する各実施形態を説明したが、請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
以下に、実施例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本開示は、これらの実施例に限定されるものではない。
HFO-1132(E)、HFO-1123及びR32を、これらの総和を基準として、表7にそれぞれ示した質量%で混合した混合冷媒を調製した。
各混合物の組成をWCFとし、ASHRAE34-2013規格に従って装置(Equipment)、貯蔵(Storage)、輸送(Shipping)、漏洩(Leak)及び再充填(Recharge)の条件でNational Institute of Science and Technology (NIST) Standard Reference Data Base Refleak Version 4.0により漏洩シミュレーションを行い、最も燃えやすい分画(fraction)をWCFFとした。
これらの各混合冷媒について、ANSI/ASHRAE34-2013規格に従い燃焼速度を測定した。WCF組成、及びWCFF組成の燃焼速度が10 cm/s以下となるものはASHRAEの燃焼性分類で「2Lクラス(微燃性)」に相当する。
なお、燃焼速度試験は図1に示す装置を用いて、以下の通り行った。まず、使用した混合冷媒は99.5%またはそれ以上の純度とし、真空ゲージ上に空気の痕跡が見られなくなるまで凍結、ポンピング及び解凍のサイクルを繰り返すことにより脱気した。閉鎖法により燃焼速度を測定した。初期温度は周囲温度とした。点火は、試料セルの中心で電極間に電気的スパークを生じさせることにより行った。放電の持続時間は1.0〜9.9msとし、点火エネルギーは典型的には約0.1〜1.0Jであった。シュリーレン写真を使って炎の広がりを視覚化した。光を通す2つのアクリル窓を備えた円筒形容器(内径:155mm、長さ:198mm)を試料セルとして用い、光源としてはキセノンランプを用いた。火炎の伝播状態をコーリメトリーレンズを用いたシュリーレンシステム及び高速デジタルビデオカメラ(フレーム速度600fps)で撮影し、ビデオデータとしてPCに記録保存する。そのビデオ映像より火炎伝播速度Sb(cm/sec)を測定する。燃焼速度(Su)は、単位面積の火炎面が単位時間に消費する未燃ガスの体積で表され以下の式より算出した。
Su=Sb*ρu/ρb
ρu;断熱火炎温度(未燃)
ρb;断熱火炎温度(既燃)
ρuは測定温度、ρbは燃焼ガスの燃焼、定圧比熱から算出
結果を表7に示す。
また、R410A(R32=50%/R125=50%)の混合物を含有する組成物のGWPは、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)第4次報告書の値に基づいて評価した。HFO-1132(E)のGWPは記載がないが、HFO-1132a(GWP=1以下)、HFO-1123(GWP=0.3,特許文献1に記載)から、そのGWPを1と想定した。R410A及びHFO-1132(E)とHFO-1123との混合物を含有する組成物の冷凍能力は、National Institute of Science and Technology(NIST) Reference Fluid Thermodynamic and Transport Properties Database(Refprop 9.0)を使い、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。
これらの各混合冷媒について、R410を基準とするCOP比及び冷凍能力[Refrigeration Capacity(Cooling Capacity又はCapacityと表記されることもある)]比をそれぞれ求めた。計算条件は以下の通りとした。
蒸発温度:5℃
凝縮温度:45℃
過熱度:5K
過冷却度;5K
圧縮機効率 70%
これらの値を、各混合冷媒についてのGWPと合わせて表8に示す。
これらの結果から、HFO-1132(E)、HFO-1123及びR32の混合冷媒において、HFO-1132(E)、HFO-1123及びR32の、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、HFO-1123及びR32の総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が、
点E(36.3, 28.1, 35.6)
点K(30.3, 21.7, 48.0)
点L(26.7, 14.1, 59.2)
点B’(0.0, 49.8, 59.2)
点I(0.0, 56.0, 44.0)
点H(10.0, 47.0, 43.0)
点G(20.3, 38.7, 41.0)及び
点F(29.6, 32.5, 37.9)
の8点をそれぞれ結ぶ直線EK、KL、LB’、B’I、IH、HG、GF及びFEで囲まれる図形の範囲内又は前記直線EK、KL、LB’、IH、HG、GF及びFE上にある(ただし、点B’及びIを除く)とき、本開示の冷媒は、R410Aを基準とするCOP比が97%以上となり、GWPが400以下であり、かつWCF微燃性を示すことが判る。
本開示の冷媒において、HFO-1132(E)、HFO-1123及びR32の、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、HFO-1123及びR32の総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が、
点F(29.6, 32.5, 37.9)
点N(28.7, 23.3, 48.0)
点O(25.5, 15.3, 59.2)
点B’(0.0, 49.8, 59.2)
点I(0.0, 56.0, 44.0)
点H(10.0, 47.0, 43.0)及び
点G(20.3, 38.7, 41.0)
の7点をそれぞれ結ぶ直線FN、NO、OB’、B’I、IH、HG及びGFで囲まれる図形の範囲内又は前記直線FN、NO、OB’、IH、HG及びGF上にある(ただし、点B’及びIを除く)とき、本開示の冷媒は、R410Aを基準とするCOP比が97%以上となり、GWPが400以下であり、かつASHRAE微燃性を示すことが判る。
本開示の冷媒において、HFO-1132(E)、HFO-1123及びR32の、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、HFO-1123及びR32の総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が、
点E(36.3, 28.1, 35.6)
点K(30.3, 21.7, 48.0)
点B(0.0, 52.0, 48.0)
点I(0.0, 56.0, 44.0)
点H(10.0, 47.0, 43.0)
点G(20.3, 38.7, 41.0)及び
点F(29.6, 32.5, 37.9)
の7点をそれぞれ結ぶ直線EK、KB、BI、IH、HG、GF及びFEで囲まれる図形の範囲内又は前記直線EK、KB、IH、HG、GF及びFE上にある(ただし、点B及びIを除く)とき、本開示の冷媒は、R410Aを基準とするCOP比が97%以上となり、GWPが325以下であり、かつWCF微燃性を示すことが判る。
本開示の冷媒において、HFO-1132(E)、HFO-1123及びR32の、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、HFO-1123及びR32の総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が、
点F(29.6, 32.5, 37.9)
点N(28.7, 23.3, 48.0)
点B(0.0, 52.0, 48.0)
点I(0.0, 56.0, 44.0)
点H(10.0, 47.0, 43.0)
点G(20.3, 38.7, 41.0)及び
点F(29.6, 32.5, 37.9)
の7点をそれぞれ結ぶ直線FN、NB、BI、IH、HG、GF及びFEで囲まれる図形の範囲内又は前記直線FN、NB、IH、HG、GF及びFE上にある(ただし、点B及びIを除く)とき、本開示の冷媒は、R410Aを基準とするCOP比が97%以上となり、GWPが325以下であり、かつASHRAE微燃性を示すことが判る。