JP2021000630A - 食用油劣化抑制フィルター、劣化抑制剤組成物、及びそれらの製造方法 - Google Patents

食用油劣化抑制フィルター、劣化抑制剤組成物、及びそれらの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2021000630A
JP2021000630A JP2020107354A JP2020107354A JP2021000630A JP 2021000630 A JP2021000630 A JP 2021000630A JP 2020107354 A JP2020107354 A JP 2020107354A JP 2020107354 A JP2020107354 A JP 2020107354A JP 2021000630 A JP2021000630 A JP 2021000630A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
filter
edible oil
deterioration suppressing
filter medium
pores
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2020107354A
Other languages
English (en)
Inventor
祐也 渡辺
Yuya Watanabe
祐也 渡辺
磯 賢一
Kenichi Iso
賢一 磯
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NSK Ltd
Original Assignee
NSK Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NSK Ltd filed Critical NSK Ltd
Publication of JP2021000630A publication Critical patent/JP2021000630A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Filtration Of Liquid (AREA)
  • Frying-Pans Or Fryers (AREA)

Abstract

【課題】優れた酸化劣化抑制性能を有し、且つ、濾過性が良好で目詰まりが生じにくい食用油劣化抑制フィルターを提供する。【解決手段】食用油劣化抑制フィルター10は、食用油劣化抑制剤及びバインダーを含有する劣化抑制組成物1と、細孔を有する濾材2と、を備える。劣化抑制組成物1は、濾材2の表面及び細孔の内面の少なくとも一方にバインダーにより付着している。濾材2の気孔率は50体積%以上であり、細孔の直径は30μm以上である。【選択図】図1

Description

本発明は、食用油劣化抑制フィルター及びその製造方法に関する。
食用油は種々の食品に使用されているが、天ぷら、フライ等の揚げ物の調理に使用される食用油は、調理に伴う加熱や放置により酸化劣化し、食品の味、臭い、外観を悪化させるため、所定の基準以上に酸化劣化した食用油は廃棄される。地球環境保全の観点から、食用油の酸化劣化を少しでも遅らせて、食用油の廃棄回数を少なくすることが望まれている。また、食用油の廃棄回数を少なくすることにより、揚げ物で使用する揚げ物調理器具(フライヤー)の清掃回数が減り、清掃に使用する水の量を減らせるメリットもある。
例えば特許文献1には、使用済みの酸化劣化した食用油を通過させて食用油の濾過と再生とを行う濾過処理材(フィルター)が開示されている。このフィルターは、濾布又は濾紙製の密閉ケース内に粒状の再生剤が充填されて構成されている。
しかしながら、特許文献1に開示のフィルターは、比較的厚みがあるため、ろ過の際の圧力損失が大きくなりやすく、食用油を循環させるためのポンプが比較的大きいものになるなど、改善の余地があった。
特開2016−52627号公報
本発明は、優れた酸化劣化抑制性能を有し、且つ、濾過性が良好で圧力損失によるエネルギー消費を低減することができる食用油劣化抑制フィルター及び、劣化抑制剤組成物、それらの製造方法を提供することを課題とする。
本発明の一態様に係る食用油劣化抑制フィルターは、食用油劣化抑制剤及びバインダーを含有する劣化抑制組成物と、細孔を有する濾材であって気孔率が50体積%以上であり、細孔の直径が30μm以上であるもの、を備え、劣化抑制剤が濾過対象である食用油が接触する部分である濾材の表面及び細孔の内面の少なくとも一方もしくは両方ににバインダーにより食用油劣化抑制剤が付着していることを要旨とする。
本発明の他の態様に係る食用油劣化抑制フィルターの製造方法は、上記の一態様に係る食用油劣化抑制フィルターを製造する方法であって、濾材の表面及び細孔の内面の少なくとも一方もしくは両方に劣化抑制組成物を滴下法、ロールコーター法、浸漬法、又はスプレー塗工法によって付着させる付着工程を備えることを要旨とする。
また、本発明の他の態様に係る食用油劣化抑制組成物は、劣化抑制剤とバインダーを備えることを要旨とする。
本発明によれば、優れた酸化劣化抑制性能を有し、且つ、濾過性が良好で圧力損失によるエネルギー消費を低減することができる食用油劣化抑制フィルター及び、劣化抑制剤組成物、それらの製造方法を提供することができる。
本発明に係る食用油劣化抑制フィルターの構造の一例を模式的に示した拡大図である。 本発明に係る食用油劣化抑制フィルターを使用して食用油の濾過及び酸化劣化抑制を行う方法を説明する処理装置の概念図である。
本発明の一実施形態について以下に説明する。なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。また、本実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。
まず、本発明に係る食用油劣化抑制フィルターの一例について、図1を参照しながら説明する。図1の食用油劣化抑制フィルター10は、食用油劣化抑制剤とバインダーとを含有する劣化抑制組成物1と、細孔2aを有する濾材2と、を備えている。劣化抑制組成物1は、濾材2の表面及び細孔2aの内面の少なくとも一方にバインダーにより付着している。図1においては、濾材2の表面及び細孔2aの内面に付着した劣化抑制組成物1が模式的に描画されている。
食用油劣化抑制剤は、酸化劣化抑制性能を有しており、食用油と接触することにより食用油の酸化劣化を抑制する。食用油劣化抑制剤の例としては、酒石酸水素カリウム等の酒石酸塩が挙げられる。食用油劣化抑制剤として酒石酸塩を単独で使用することが好ましいが、酒石酸塩と他の物質の混合物を食用油劣化抑制剤として使用することもできる。上記の他の物質は、人体に無害であることが好ましく、例としては酸化カルシウムが挙げられる。
バインダーは、食用油劣化抑制剤を濾材2に付着させるために使用されるものであり、人体に無害であることが好ましい。バインダーの例としては接着剤が挙げられる。接着剤としては、澱粉、セルロース、セラック樹脂(カイガラムシの分泌物を精製して得られる樹脂状物質)等の天然系接着剤や、珪素系接着剤(例えばシリケート)、カルシウム系接着剤(例えばセメント、石膏)等の無機系接着剤や、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等の有機系接着剤が挙げられる。これらの接着剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
濾材2は、複数の細孔2aを有していて食用油が通過可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、多孔質体や、複数の繊維の集合体が挙げられる。多孔質体の例としては、焼結金属、素焼等が挙げられる。また、複数の繊維の集合体の例としては、織布、不織布、フェルト、抄紙、濾紙、網等が挙げられる。
繊維の種類は特に限定されるものではなく、天然繊維、人造繊維、合成樹脂繊維、金属繊維、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。天然繊維の例としては、木材、木綿、羊毛、麻、絹等が挙げられる。人造繊維の例としては、レーヨン等が挙げられる。合成樹脂繊維の例としては、ポリエステル樹脂繊維、ポリオレフィン樹脂繊維(例えばポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維)、ポリアミド樹脂繊維(例えばポリアミド66繊維)、ビニル樹脂繊維、アクリル樹脂繊維、ポリウレタン樹脂繊維等が挙げられる。複数の繊維の集合体は、1種の繊維で形成されていてもよいし、2種以上の繊維で形成されていてもよい。
濾材2の素材として食品用途に使用実績のあるもの(例えば天然繊維)を使用し、食用油劣化抑制剤として食品添加物を使用し、バインダーとして人体に無害なもの(例えば天然系接着剤)を使用すれば、食用油劣化抑制フィルター10を人体に無害で安全なフィルターとすることができる。このような食用油劣化抑制フィルター10は、例えば、揚げ物を揚げるフライヤーに設置して、揚げカス等の不純物の濾過と食用油の酸化劣化の抑制を行うことに好適である。
濾材2を形成する繊維の平均繊維長と平均繊維径は特に限定されるものではないが、濾材2の細孔2a内にも劣化抑制組成物1を付着させるためには、細孔2aの直径が食用油劣化抑制剤の粒径よりも大きい濾材2が好ましい。濾材2の細孔2aの直径が食用油劣化抑制剤の粒径よりも小さいと、濾材2の細孔2aの内面に劣化抑制組成物1が付着しにくい。
複数の繊維の集合体は、複数の繊維が接着剤や熱による接着又は機械的な結合によって接合して3次元的に集合した構造を有しており、内部に空隙を有するポーラス構造(多孔質構造)をなしている。このようなポーラス構造を有する濾材2の気孔率、細孔2aの直径、及び密度は、食用油の通液のしやすさ(目詰まり度)を表す指標となる。なお、細孔2aは、濾材2において食用油が通り抜ける孔となる。また、気孔率は、濾材2における細孔2aによる空隙部分の体積の比率である。さらに、密度は、濾材2の質量を濾材2の体積で除したものである。
濾材2の気孔率は50体積%以上であり、好ましくは68体積%以上であり、より好ましくは80体積%以上である。また、細孔2aの直径は30μm以上であり、好ましくは35μm以上であり、より好ましくは100μm以上である。さらに、濾材2の密度は、0.33g/cm3以下であることが好ましい。気孔率、細孔2aの直径、及び密度が上記の数値範囲内であれば、濾材2に劣化抑制組成物1を付着させても細孔2aが閉塞しにくいので、食用油劣化抑制フィルター10に通す前後における食用油の圧力差(圧力損失)が小さくなる(初期の濾過性が優れる)。そのため、食用油を送液するポンプに負荷がかかりにくい。また、食用油に含まれる揚げカス等の不純物による気孔の閉塞が生じにくいので、食用油劣化抑制フィルター10の早期の目詰まりが生じにくい。さらに、細孔2aの直径が上記の数値範囲内であれば、濾材2の細孔2aの内面に劣化抑制組成物1が付着しやすくなる。
濾材2の厚さは特に限定されるものではないが、1mm以上10mm以下であることが好ましく、1mm以上5mm以下であることがより好ましく、1mm以上4mm以下であることがさらに好ましい。濾材2の厚さが上記の数値範囲内であれば、食用油に含まれる揚げカス等の不純物による気孔の閉塞が生じにくい上、食用油劣化抑制フィルター10に通す前後における食用油の圧力差が小さくなる。
このように、上記の数値範囲内の気孔率、細孔2aの直径、密度、及び厚さを有する濾材2を使用することにより、食用油劣化抑制フィルター10の初期の濾過性の悪化と早期の目詰まりを防ぐことが可能である。なお、気孔率及び細孔2aの直径は、水銀圧入法の原理を利用した水銀ポロシメータを用いて測定することができる。
上記のような食用油劣化抑制フィルター10は、以下のようにして製造することができる。図1を参照しながら説明する。まず、食用油劣化抑制剤とバインダーとを混合して、劣化抑制組成物1を得る(混合工程)。劣化抑制組成物1には、所望により、その他の添加剤を配合してもよい。その他の添加剤としては、例えば、発泡剤、熱安定剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。劣化抑制組成物1に発泡剤を配合すれば、発泡剤の発泡により、濾材2に付着した劣化抑制組成物1を多孔質状に形成することができる。劣化抑制組成物1が多孔質状であると、食用油劣化抑制フィルター10を食用油の濾過に使用した際に、早期に目詰まりが生じることを防止することができる。
また、バインダーが少なくなると、食用油劣化抑制剤が脱落しやすくなり、バインダーが多すぎると、食用油劣化抑制剤と被濾過食用油との接触の機会が少なくなり、酸化劣化防止能力が十分に発揮できない可能性が考えられる。
次に、濾材2に劣化抑制組成物1を滴下法、ロールコーター法、浸漬法、又はスプレー塗工法によって付着させる(付着工程)。いずれの方法においても、劣化抑制組成物を所定の揮発性もしくは蒸発性のある溶媒で所定の濃度に希釈した液状のものを使用することもできる。付着工程により、細孔2aを有する濾材2の被濾過食用油の通過部である表面及び細孔2aの内面の少なくとも一方に劣化抑制組成物1が付着する。滴下法は、液状の劣化抑制組成物1を濾材2に滴下することにより、バインダーにより食用油劣化抑制剤を濾材2に付着させる方法であり、ロールコーター法は、表面に液状の劣化抑制組成物1を備えた回転するロールを用いて、劣化抑制組成物1を濾材2に塗布することにより、バインダーにより食用油劣化抑制剤を濾材2に付着させる方法である。また、浸漬法は、液状の劣化抑制組成物1に濾材2を浸漬した後に液状の劣化抑制組成物1から引き上げることにより、バインダーにより食用油劣化抑制剤を濾材2に付着させる方法であり、スプレー塗工法は、液状の劣化抑制組成物1を濾材2に噴霧することにより、バインダーにより食用油劣化抑制剤を濾材2に付着させる方法である。
滴下法、ロールコーター法、浸漬法、又はスプレー塗工法によって劣化抑制組成物1を濾材2に付着させるので、劣化抑制組成物1の付着箇所や付着量を容易に制御することができる。そのため、優れた酸化劣化抑制性能を有し、且つ、濾過性が良好で目詰まりが生じにくい食用油劣化抑制フィルター10を容易に製造することができる。付着工程を複数回繰り返し行って、濾材2に劣化抑制組成物1の層を複数層積層してもよい。
上記のような優れた性能を有する本実施形態の食用油劣化抑制フィルター10は、食用油の濾過及び酸化劣化抑制を行う処理に使用することができる。以下に、使用済みの食用油の濾過及び酸化劣化抑制を、食用油劣化抑制フィルター10を使用して行う方法を、図2を参照しながら説明する。
揚げ物を揚げるフライヤー等に使用されて酸化劣化した食用油20の濾過及び酸化劣化抑制を行う処理装置は、食用油20が貯留される油槽21と、食用油20が通液される環状の配管22と、食用油20を送液するポンプ24と、食用油20の濾過及び酸化劣化抑制を行う食用油劣化抑制フィルター10(図2には図示せず)が装填されている処理部23と、を備えている。
詳述すると、油槽21とポンプ24と処理部23とが環状の配管22で直列に連結されていて、油槽21内の食用油20がポンプ24によって配管22中を送液され、処理部23において濾過及び酸化劣化の抑制がなされた後に、油槽21に戻されるようになっている。使用済みの食用油20は、揚げカス等の不純物を含有していることに加えて酸化劣化しているが、処理部23内の食用油劣化抑制フィルター10を通ることにより、揚げカス等の不純物が濾過されるとともに、食用油20の酸化劣化が抑制されて酸化速度が遅くなる。
上記のように食用油20を循環させながら処理を行うことにより、調理等に使用された後の食用油20を連続的に処理することができる。また、例えば、揚げ物を揚げるフライヤーの油槽に、ポンプ24と処理部23とが配された配管22を接続すれば、調理に使用している食用油20を調理と並行して処理することができる。
食用油劣化抑制フィルター10の酸化劣化抑制性能が低下した場合又は失われた場合や、濾過性が低下した場合又は目詰まりし通液しなくなった場合は、処理部23内の食用油劣化抑制フィルター10を新品と交換する。食用油劣化抑制フィルター10は、濾過助剤等の粉体が使用されていないため、取り扱いが容易である。
また、食用油劣化抑制フィルター10の前、もしくは後ろ側に更に通常の揚げカス捕集フィルター等を設置することもできる。
ここで、食用油劣化抑制組成物の好ましい形態について述べる。食用油劣化抑制組成物は、付着工程において希釈して使用されることがある。しかしながら、食用油劣化抑制組成物に含まれるバインダーが食用油に溶解してしまうと、バインダーとしての機能が発揮できなくなる。そのため、バインダーとしては、食用油への溶解度が小さいが、付着工程で使用する希釈溶媒には可溶であり、かつ、人体への影響のないものが好ましい。この点を鑑みると、食用油への溶解度がほとんどなく、アルコール系物質には可溶である物質をバインダーとすることが好ましい。具体的には、天然系接着剤ともいえるセラック樹脂をバインダーとし、アルコール系溶媒で希釈することが好ましい。アルコール系溶媒としては、人体への影響も小さく、揮発・蒸発によりほとんど残存することのないエタノール(エチルアルコール)を希釈溶媒とすることが好ましい。
〔実施例〕
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
(比較例1−1)
食品用資材として使用できるセルロース製の濾紙を直径90mmの円形に裁断したものを、比較例1−1のフィルターとした。この濾紙の厚さは1.0mmであり、密度は0.38g/cm3である。また、この濾紙の気孔率及び細孔の直径を水銀ポロシメータで測定したところ、気孔率は67体積%で、細孔の直径は35μmであった。
(比較例1−2)
比較例1−1のフィルター上に、酒石酸水素カリウムと酸化カルシウムを質量比1:1で混合した混合物を散布して、濾紙上に混合物が載置された状態のものを、比較例1−2のフィルターとした。濾紙上に載置されている混合物の量は、120g/m2である。
(比較例2)
セルロース製の濾紙を直径90mmの円形に裁断したものを、比較例2のフィルターとした。この濾紙の厚さは2.8mmであり、密度は0.33g/cm3である。また、この濾紙の気孔率及び細孔の直径を水銀ポロシメータで測定したところ、気孔率は68体積%で、細孔の直径は35μmであった。
(参考例1)
食品用のフィルターとして使用されるポリエチレンテレフタレート製の不織布を直径90mmの円形に裁断したものを、参考例1のフィルターとした。この不織布の厚さは3.8mmであり、密度は0.09g/cm3である。なお、不織布の気孔率及び細孔の直径を水銀ポロシメータで測定したが、水銀ポロシメータの測定上限値以上であったため、数値は不明であった。ただし、水銀ポロシメータによる気孔率の測定上限値は80体積%、細孔の直径の測定上限値は100μmであるので、不織布の気孔率は80体積%以上であり、細孔の直径は100μm以上であると言える。
(実施例1)
セラック樹脂をエタノールに溶解して、濃度7質量%のセラック樹脂溶液を得た。このセラック樹脂溶液に、酒石酸水素カリウムと酸化カルシウムを質量比1:1で混合した混合物を食用油劣化抑制剤として添加し、劣化抑制組成物を調製した。液状の劣化抑制組成物中の食用油劣化抑制剤の含有量は、5質量%である。また、劣化抑制剤とバインダーの比率としては、質量比で1:1.4となる。
参考例1のフィルターを濾材とし、この濾材に上記の液状の劣化抑制組成物を滴下法により塗布した。フィルターに塗布された劣化抑制組成物の量は、約340g/m2である。その後、60℃の温風を用いて劣化抑制組成物を乾燥させることにより、実施例1のフィルターを得た。実施例1のフィルターの厚さは3.8mmであり、密度は0.18g/cm3であった(濾材の密度は0.09g/cm3である)。
(参考例2)
食品用資材として使用できるセルロース製の濾紙を直径90mmの円形に裁断したものを、参考例2のフィルターとした。この濾紙の厚さは1.9mmであり、密度は0.24g/cm3である。また、この濾紙の気孔率及び細孔の直径を水銀ポロシメータで測定したところ、気孔率は79体積%で、細孔の直径は54μmであった。
(実施例2)
セラック樹脂をエタノールに溶解して、濃度1質量%のセラック樹脂溶液を得た。このセラック樹脂溶液に、酒石酸水素カリウムと酸化カルシウムを質量比1:1で混合した混合物を食用油劣化抑制剤として添加し、液状の劣化抑制組成物を調製した。液状の劣化抑制組成物中の食用油劣化抑制剤の含有量は、10質量%である。
参考例2のフィルターを濾材とし、この濾材に上記の液状の劣化抑制組成物を滴下法により塗布した。フィルターに塗布された劣化抑制組成物の量は、約160g/m2である。その後、60℃の温風を用いて劣化抑制組成物を乾燥させることにより、実施例2のフィルターを得た。実施例2のフィルターの厚さは1.9mmであり、密度は0.33g/cm3であった(濾材の密度は0.24g/cm3である)。
(参考例3)
食品用資材として使用できるセルロース製の濾紙を直径90mmの円形に裁断したものを、参考例3のフィルターとした。この濾紙の厚さは1.4mmであり、密度は0.30g/cm3である。また、この濾紙の気孔率及び細孔の直径を水銀ポロシメータで測定したところ、気孔率は74体積%で、細孔の直径は50μmであった。
(参考例4)
食品用資材として使用できるセルロース製の濾紙を直径90mmの円形に裁断したものを、参考例4のフィルターとした。この濾紙の厚さは1.0mmであり、密度は0.31g/cm3である。また、この濾紙の気孔率及び細孔の直径を水銀ポロシメータで測定したところ、気孔率は73体積%で、細孔の直径は36μmであった。
次に、上記の各フィルターの評価試験を行った。評価試験には、図2に示す処理装置と同様の構成を有する濾過装置を用いた。フィルターの濾過性の評価方法について、以下に説明する。フィルターの濾過性については、初期の濾過性と、高温で長時間濾過を行った後の濾過性とを評価した。
まず、フィルターの初期の濾過性の評価方法について説明する。濾過装置の処理部にフィルターを装填するとともに、油槽に8Lの食用油(日清オイリオグループ株式会社製「日清キャノーラ油」)を投入した。100℃に加熱した食用油をポンプで送液して、処理部のフィルターで濾過を行った。このとき、フィルターの上流側及び下流側における食用油の圧力を圧力計で測定するとともに、フィルターの下流側における食用油の流量を流量計で測定した。
そして、食用油の流量を種々変更して、各流量における食用油の圧力を測定し、各流量における食用油の圧力損失(フィルターの上流側と下流側での圧力差)を算出した。次に、流量をX軸、圧力差をY軸とするXY座標に、得られたデータをプロットして、近似直線Y=aX+bを導き出し、その傾きaの大きさによって初期の濾過性を評価した。なお、傾きaが小さいほどフィルターの濾過性が良好であることを意味する。
次に、高温で長時間濾過を行った後のフィルターの濾過性の評価方法について説明する。初期の濾過性の評価方法と同様に、濾過装置の処理部にフィルターを装填するとともに、油槽に8Lの食用油を投入した。180℃に加熱した食用油をポンプで送液して、処理部のフィルターで濾過を行った。この濾過は、食用油を循環させながら96時間行った。そして、96時間濾過後に、フィルターの上流側及び下流側における食用油の圧力を圧力計で測定し、食用油の圧力損失を算出した。この圧力損失の大きさによって96時間濾過後の濾過性を評価した。
結果を表1に示す。なお、初期の濾過性については、比較例1−1の濾過性(傾きa)を1とした場合の相対値で示してある。また、96時間濾過後の濾過性については、比較例1−1の濾過性(圧力損失)を1とした場合の相対値で示してある。
次に、フィルターの酸化劣化抑制性能の評価方法について説明する。96時間濾過後の濾過性の評価方法と同様に96時間濾過を行った後に、食用油をサンプリングし、酸価を測定した。食用油の酸価は、JIS K2501に準拠し、電位差滴定法を用いて測定した。結果を表1に示す。なお、酸化劣化抑制性能は、比較例1−1の酸化劣化抑制性能(酸価)を1とした場合の相対値で示してある。
Figure 2021000630
比較例1−1と比較例1−2との対比から、表1に示すような物性(厚さ、密度、気孔率、及び細孔の直径)を有する濾材においては、酒石酸水素カリウムと酸化カルシウムを混合した混合物を濾材上に散布すると、初期の濾過性が低下することが分かる。また、比較例1−2と参考例1、実施例1との対比から、比較例1−2は、フィルターに目詰まりが生じやすく、96時間濾過後の濾過性が大きく低下することが分かる。
一方、参考例1と実施例1との対比、及び、参考例2と実施例2との対比から、表1に示すような物性(厚さ、密度、気孔率、及び細孔の直径)を有する濾材においては、濾材に劣化抑制組成物を付着させても、初期の濾過性は良好であることが分かる。また、参考例1と実施例1と比較例1−1と比較例1−2との対比から、参考例1と実施例1は、フィルターに目詰まりが生じにくく、96時間濾過後の濾過性が良好であることが分かる。すなわち、比較例1−1よりも初期の濾過性が良好な濾材に劣化抑制組成物を付着させてフィルターを製造すれば、目詰まりが生じにくいフィルターを得ることができる。
次に、参考例1と実施例1、比較例1−1との対比から、濾材に劣化抑制組成物を付着させることにより、酸化劣化抑制性能が優れたフィルターが得られることが分かる。
以上のように、厚さが1mm以上10mm以下、密度が0.33g/cm3以下、気孔率が50体積%以上、且つ、細孔の直径が30μm以上である濾材に劣化抑制組成物を付着させたフィルターは、初期の濾過性及び96時間濾過後の濾過性が良好であり、なおかつ、酸化劣化抑制性能が優れている。実施例によると、3.8mm、1.9mmという、4mm以下の厚さにおいても優れた性能を発揮している。さらに、バインダーとしてセラック樹脂を用いているため、人体に無害なフィルターである。
1 劣化抑制組成物
2 濾材
2a 細孔
10 食用油劣化抑制フィルター
20 食用油
23 処理部

Claims (6)

  1. 食用油劣化抑制剤及びバインダーを含有する劣化抑制組成物と、細孔を有する濾材と、を備え、
    前記劣化抑制組成物が前記濾材の表面及び前記細孔の内面の少なくとも一方に前記バインダーにより付着しており、
    前記濾材の気孔率が50体積%以上であり、前記細孔の直径が30μm以上である食用油劣化抑制フィルター。
  2. 前記食用油劣化抑制剤が酒石酸塩を含むものである請求項1に記載の食用油劣化抑制フィルター。
  3. 前記バインダーがセラック樹脂である請求項1又は請求項2に記載の食用油劣化抑制フィルター。
  4. 前記濾材の厚さが1mm以上10mm以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の食用油劣化抑制フィルター。
  5. 前記濾材の密度が0.33g/cm3以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載の食用油劣化抑制フィルター。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の食用油劣化抑制フィルターを製造する方法であって、
    前記濾材の表面及び前記細孔の内面の少なくとも一方に前記劣化抑制組成物を滴下法、ロールコーター法、浸漬法、又はスプレー塗工法によって付着させる付着工程を備える食用油劣化抑制フィルターの製造方法。
JP2020107354A 2019-06-20 2020-06-22 食用油劣化抑制フィルター、劣化抑制剤組成物、及びそれらの製造方法 Pending JP2021000630A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019114461 2019-06-20
JP2019114461 2019-06-20

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2021000630A true JP2021000630A (ja) 2021-01-07

Family

ID=73993708

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020107354A Pending JP2021000630A (ja) 2019-06-20 2020-06-22 食用油劣化抑制フィルター、劣化抑制剤組成物、及びそれらの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2021000630A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2023008391A1 (ja) 2021-07-26 2023-02-02 日本精工株式会社 食用油劣化抑制フィルタ及びその製造方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2023008391A1 (ja) 2021-07-26 2023-02-02 日本精工株式会社 食用油劣化抑制フィルタ及びその製造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6790095B2 (ja) グラフェン吸着材、その製造方法とその適用、及びタバコフィルターとタバコ
JP2021000630A (ja) 食用油劣化抑制フィルター、劣化抑制剤組成物、及びそれらの製造方法
RU2014105586A (ru) Частица несущего ароматизатор адсорбента, сигаретный фильтр, сигарета с фильтром и способ получения частицы несущего ароматизатор адсорбента
EP0363288A1 (en) Tobacco smoke filters and process for production thereof
TWI243026B (en) Filter section for cigarette and cigarette comprising the same
JP2014100640A (ja) 塗装ミスト処理装置
JP5224873B2 (ja) 除湿用シート状物及び除湿用フィルター材
JP2006082006A (ja) フィルタ素材及びその製造方法
CN103110190A (zh) 丝瓜络纤维卷烟滤嘴及其制备方法
JP7222316B2 (ja) 食用油劣化抑制フィルターの製造方法
JP2022086644A (ja) 食用油劣化抑制フィルター及びその製造方法
CN204335813U (zh) 一种多重过滤香烟滤嘴
JP6946576B2 (ja) めっき液精製用フィルターおよびめっき液精製用吸着剤
JPWO2006117862A1 (ja) 有害物質を除去し得るタバコフィルタ
US10183249B2 (en) Coated, reticulated foam air filter suitable for respiration
JP2022086645A (ja) 食用油劣化抑制フィルターその製造方法
JP6243180B2 (ja) 活性炭成形体及び活性炭成形体の製造方法
CN106215513B (zh) 一种室内空气净化器用绿色复合滤芯材料的制备方法
KR101368462B1 (ko) 수처리용 분리막 및 그의 제조방법
JP3786576B2 (ja) 食用油の再生用フィルター
JP2017006868A (ja) 空気浄化装置
JP2012020229A (ja) 活性炭粒子の製造方法
WO2021052172A1 (zh) 烟用过滤部件
WO2016060124A1 (ja) 脱臭材の製造方法
CN101189989B (zh) 食用油的再生用过滤器

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20230222

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20230222

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20240122

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20240130

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20240319