JP2020529465A - キナーゼ阻害剤として有用な置換ピラゾロピリミジン - Google Patents

キナーゼ阻害剤として有用な置換ピラゾロピリミジン Download PDF

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Abstract

本開示は、式(I)の新規のピラゾロピリミジン、その誘導体、薬学的に許容される塩、溶媒和物及び水和物に関する。本開示の化合物及び組成物は、プロテインキナーゼ阻害活性を有するとともに、プロテインキナーゼによって媒介される疾患及び病状の治療に有用であることが望まれる。【選択図】なし

Description

(関連出願の相互参照)
本願は2017年8月11日に出願された米国特許仮出願番号第62/605、390の利益を主張するものであり、その全ての内容は援用により本明細書に組み込まれる。
(技術分野)
本開示は、キナーゼ阻害剤(kinase inhibitor)に関する。本開示は、さらに、キナーゼ阻害剤を含む薬物組成物、並びに癌のような疾患の治療におけるキナーゼ阻害剤及びキナーゼ阻害剤を含む薬物組成物の使用に関する。
プロテインキナーゼは標的タンパク質基質のリン酸化(phosphorylation)を触媒する酵素大規模ファミリーである。リン酸化は、通常、リン酸基をATPからタンパク質基質に移行させる反応である。一般的には、リン酸基をタンパク質基質に結合させる箇所には、例えば、チロシン残基、セリン残基、又はトレオニン残基が含まれる。プロテインキナーゼファミリー中のキナーゼの例には、限定ではないが、Abl1(v−Abl Abelsonマウス白血病ウイルス癌遺伝子相同体1)、Akt、Alk、Bcr−Abl1、Blk、Brk、Btk、c−Kit、c−Met、c−Src、c−Fms、CDK1−10、b−Raf、c−Raf1、CSF1R、CSK、EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4、Erk、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FGFR5、Flt−1、Fps、Frk、Jak、KDR、MEK、PDGFR、PIK、PKC、PYK2、Ros、Tie、Tie2、及びZap70が含まれる。プロテインキナーゼは、多数の細胞プロセスで活性があるため、重要な治療標的となっている。
神経芽細胞腫(非特許文献1)、卵巣癌(非特許文献2)、前立腺癌(非特許文献3)、膵臓癌(非特許文献4)、大細胞神経内分泌腫瘍(非特許文献5)及び大腸癌(非特許文献6)に関する検討からわかるように、Trkの過剰発現、活性化増幅及び/又は突然変異と数種類の癌との相関は、効果的なTrk阻害剤の治療意義が疼痛治療を大幅に上回る可能性があるという推論をサポートする。さらに、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4及び米国特許出願第61/650,019号明細書を参照する。
国際公開第07013673号 国際公開第07025540号 国際公開第08052734号 国際公開第20121158413号
Brodeur,G.M.,Nat.Rev.Cancer 2003,3,203−216 Kruettgenら,Brain Pathology 2006,16:304−310 Dionneら,Clin.Cancer Res.1998,4(8):1887−1898 Dangら,J.Gastroenterol.Hepatol.2006,21(5):850−858 Marchettiら,Human Mutation 2008,29(5),609−616 Bardelli,A.,Science 2003,300,949
本開示の一態様において、式Iの化合物:
又は式Iの化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物、前駆薬、立体異性体、互変異性体又は代謝物を提供する。
(式中、Arは置換されるC〜C12アリール又は置換されるC〜C12ヘテロアリールであり、但し、Arが置換されるC〜C12ヘテロアリールである場合、Arは以下の残基であり、
ただし、Yは結合又はCR2324であり、
31は、独立して、水素、C〜Cアルキル及び重水素から選ばれる1つ又は複数の基であり、
32はC〜Cアルキル、CO(C〜Cアルキル)又は水素であり、
23とR24中のそれぞれは、独立して、水素、重水素又はC〜Cアルキル基である。)
本開示の別の態様において、式IIの化合物:
又は式IIの化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物、前駆薬、立体異性体、互変異性体又は代謝物を提供する。
(式中、Arは置換されるC〜C12アリール又は置換されるC〜C12ヘテロアリールであり、但し、Arが置換されるC〜C12ヘテロアリールである場合、Arは以下の残基であり、
ただし、Yは結合又はCR2324であり、
31は、独立して、水素、C〜Cアルキル及び重水素から選ばれる1つ又は複数の基であり、
32はC〜Cアルキル、CO(C〜Cアルキル)又は水素であり、
23とR24中のそれぞれは、独立して、水素、重水素又はC〜Cアルキル基である。)
本開示の別の態様において、本開示の化合物及び薬学的に許容される担体を含む薬物組成物を提供する。
本開示のまた別の態様において、必要な患者に上記薬物組成物を投与するステップを含む、患者の過剰増殖性障害を治療又は予防する方法を提供する。
本開示の別の態様において、本開示の化合物の薬物としての使用を提供する。
本開示のまた別の態様において、各種の癌を治療又は予防するための本開示の化合物の薬物としての使用を提供する。
本開示の更に別の態様において、キナーゼシグナル伝達を調節する方法における本開示の化合物の使用を提供する。
本開示の別の態様において、過剰増殖性障害を治療又は予防する方法における、1つ又は複数の抗癌剤と組み合わせる本開示の化合物の使用を提供する。
本開示の一態様において、式Iの化合物:
又は式Iの化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物、前駆薬、立体異性体、互変異性体又は代謝物を提供する。
(式中、Arは置換されるC〜C12アリール又は置換されるC〜C12ヘテロアリールであり、但し、Arが置換されるC〜C12ヘテロアリールである場合、Arは以下の残基であり、
ただし、Yは結合又はCR2324であり、
31は、独立して、水素、C〜Cアルキル及び重水素から選ばれる1つ又は複数の基であり、
32はC〜Cアルキル、CO(C〜Cアルキル)又は水素であり、
23とR24中のそれぞれは、独立して、水素、重水素又はC〜Cアルキル基である。)
本開示の幾つかの実施形態では、式IIの化合物:
又は式IIの化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物、前駆薬、立体異性体、互変異性体又は代謝物を提供する。
(式中、Arは置換されるC〜C12アリール又は置換されるC〜C12ヘテロアリールであり、但し、Arが置換されるC〜C12ヘテロアリールである場合、Arは以下の残基であり、
ただし、Yは結合又はCR2324であり、
31は、独立して、水素、C〜Cアルキル及び重水素から選ばれる1つまたは又は複数の基であり、
32はC〜Cアルキル、CO(C〜Cアルキル)又は水素であり、
23とR24中のそれぞれは、独立して、水素、重水素又はC〜Cアルキル基である。)
本開示の幾つかの実施形態では、式Iによる化合物:
又は式Iの化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物、前駆薬、立体異性体、互変異性体又は代謝物を提供する。
(式中、Arは、であり、
ただし、R、R、R、R及びR中の少なくとも1つは水素ではなく、R、R、R、R及びRは、独立して、水素、ハロゲン化物、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cシクロアルキル、C〜C12アリール、3〜12員ヘテロ脂環式、5〜12員ヘテロアリール、NO、-NR、-CR(CROR、CN、-C(O)R、-O(CO)R、-OCR(CRNR、-OCR(CROR、-NRC(O)R、-(CRC(O)OR、-(CRC(O)NR、-CR(CRNR、-NR(CO)-NR、-NRS(O)、-S(O)又は-S(O)NRであり、ただし、R、R、R、R及びR中の隣接するフェニル基の原子における2つの基が、それらが結合している隣接する原子と一緒に結合して一緒に結合して、C〜C12アリール、5〜12員ヘテロアリール、C〜C12シクロアルキル又は3〜12員ヘテロ脂環式基を形成することができ、なかでも、それぞれのアリール、ヘテロ脂環式基及びヘテロアリールは無置換であり、又は、独立して、1つ又は複数の重水素又はC〜Cアルキルに置換され、但し、3〜12員ヘテロ脂環式基のヘテロ原子はフェニルと連結せず、
それぞれのR、R、R及びRは、独立して、水素、C〜Cアルキル、C〜C12アリール、5〜12員ヘテロアリール、C〜C12シクロアルキル又は3〜12員ヘテロ脂環式基であり、又は同じ窒素に結合しているR、R、R及びR中の何れか2つが、それらが結合している窒素と一緒に結合して、N、O及びSから選ばれる1〜3個の別のヘテロ原子を任意に含有できる3〜12員ヘテロ脂環式基又は5〜12員ヘテロアリールを形成することができ、又は同じ炭素に結合しているR、R、R及びR中の何れか2つが、それらが結合している炭素と一緒に結合して、C〜C12アリール、5〜12員ヘテロアリール、C〜C12シクロアルキル、又は3〜12員ヘテロ脂環式基を形成することができ、
各nは、独立して、0、1、2、3又は4であり、
各pは、独立して、1又は2であり、ならびに、
各tは、独立して、0、1又は2である。)
本開示の幾つかの実施形態では、式IIの化合物:
又は式IIの化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物、前駆薬、立体異性体、互変異性体又は代謝物を提供する。
(式中、Arは置換されるフェニル、即ち、以下の残基であり、
ただし、R、R、R、R及びR中の少なくとも1つは水素ではなく、R、R、R、R及びRは、独立して、水素、ハロゲン化物、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cシクロアルキル、C〜C12アリール、3〜12員ヘテロ脂環式、5〜12員ヘテロアリール、NO、-NR、-CR(CROR、CN、-C(O)R、-O(CO)R、-OCR(CRNR、-OCR(CROR、-NRC(O)R、-(CRC(O)OR、-(CRC(O)NR、-CR(CRNR、-NR(CO)-NR、-NRS(O)、-S(O)又は-S(O)NRであり、ただし、R、R、R、R及びR中の隣接するフェニル基の原子における2つの基が、それらが結合している隣接する原子と一緒に結合して一緒に結合して、C〜C12アリール、5〜12員ヘテロアリール、C〜C12シクロアルキル又は3〜12員ヘテロ脂環式基を形成することができ、なかでも、それぞれのアリール、ヘテロ脂環式基及びヘテロアリールは無置換であり、又は、独立して、1つ又は複数の重水素又はC〜Cアルキルに置換され、但し、3〜12員ヘテロ脂環式基のヘテロ原子はフェニルと連結せず、
それぞれのR、R、R及びRは、独立して、水素、C〜Cアルキル、C〜C12アリール、5〜12員ヘテロアリール、C〜C12シクロアルキル又は3〜12員ヘテロ脂環式基であり、又は同じ窒素に結合しているR、R、R及びR中の何れか2つが、それらが結合している窒素と一緒に結合して、N、O及びSから選ばれる1〜3個の別のヘテロ原子を任意に含有できる3〜12員ヘテロ脂環式基又は5〜12員ヘテロアリールを形成することができ、又は同じ炭素に結合しているR、R、R及びR中の何れか2つが、それらが結合している炭素と一緒に結合して、C〜C12アリール、5〜12員ヘテロアリール、C〜C12シクロアルキル、又は3〜12員ヘテロ脂環式基を形成することができ、
各nは、独立して、0、1、2、3又は4であり、
各pは、独立して、1又は2であり、ならびに、
各tは、独立して、0、1又は2である。)
本開示の幾つかの実施形態では、式I又は式IIの化合物を提供する。
(式中、Arは置換されるフェニル、即ち、以下の残基であり、
ただし、R、R、R、R及びR中の少なくとも1つは水素ではなく、R、R、R、R及びRは、独立して、水素、ハロゲン化物、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cシクロアルキル、C〜C12アリール、3〜12員ヘテロ脂環式、5〜12員ヘテロアリール、NO、-NR、-CR(CROR、CN、-C(O)R、-O(CO)R、-OCR(CRNR、-OCR(CROR、-NRC(O)R、-(CRC(O)OR、-(CRC(O)NR、-CR(CRNR、-NR(CO)-NR、-NRS(O)、-S(O)又は-S(O)NRであり、ただし、R、R、R、R及びR中の隣接するフェニル基の原子における2つの基が、それらが結合している隣接する原子と一緒に結合して、C〜C12アリール、5〜12員ヘテロアリール、C〜C12シクロアルキル又は3〜12員ヘテロ脂環式基を形成することができ、なかでも、それぞれのアリール、ヘテロ脂環式基及びヘテロアリールは無置換であり、又は、独立して、1つ又は複数の重水素又はC〜Cアルキルに置換される。)
本開示の幾つかの実施形態では、Arは以下の残基である、式Iの化合物を提供する。
(式中、Yは結合又はCR2324であり、
、R、R及びRは、独立して、水素、ハロゲン化物、CF、C〜Cアルキル、NO、C〜Cアルコキシ、又はアルコキシ−4−アミノであり、
21は、独立して、水素、C〜Cアルキル及び重水素から選ばれる1つ又は複数の基であり、
22はC〜Cアルキル、CO(C〜Cアルキル)又は水素であり、
23とR24中のそれぞれは、独立して、水素、重水素又はC〜Cアルキル基である。)
本開示の幾つかの実施形態では、Arは以下の残基である、式IIの化合物を提供する。
(式中、Yは結合又はCR2324であり、
、R、R及びRは、独立して、水素、ハロゲン化物、CF、C〜Cアルキル、NO、C〜Cアルコキシ、又はアルコキシ−4−アミノであり、
21は、独立して、水素、C〜Cアルキル及び重水素から選ばれる1つ又は複数の基であり、
22はC〜Cアルキル、CO(C〜Cアルキル)又は水素であり、
23とR24中のそれぞれは、独立して、水素、重水素又はC〜Cアルキル基である。)
本開示の幾つかの実施形態では、Arは以下の残基である、式Iの化合物を提供する。
(式中、Yは結合又はCR2324であり、
31は、独立して、水素、C〜Cアルキル及び重水素から選ばれる1つ又は複数の基であり、
32はC〜Cアルキル、CO(C〜Cアルキル)又は水素であり、
23とR24中のそれぞれは、独立して、水素、重水素又はC〜Cアルキル基である。)
本開示の幾つかの実施形態では、Arは以下の残基である、式Iの化合物を提供する。
(式中、Yは結合又はCR2324であり、
31は、独立して、水素、C〜Cアルキル及び重水素から選ばれる1つ又は複数の基であり、
32はC〜Cアルキル、CO(C〜Cアルキル)又は水素であり、
23とR24中のそれぞれは、独立して、水素、重水素又はC〜Cアルキル基である。)
本開示の幾つかの実施形態では、以下から選ばれる化合物を提供する。
本開示の幾つかの実施形態では、本開示の化合物及び薬学的に許容される担体を含む薬物組成物を提供する。
本開示の幾つかの実施形態では、必要な患者に上記薬物組成物を投与するステップを含む、患者の過剰増殖性障害を治療又は予防する方法を提供する。
本開示の幾つかの実施形態では、本開示の化合物の薬物としての使用を提供する。
本開示の幾つかの実施形態では、過剰増殖性障害を治療又は予防するための本開示の化合物の薬物としての使用を提供する。
本開示の幾つかの実施形態では、各種の癌を治療又は予防するための本開示の化合物の薬物としての使用を提供する。
本開示の幾つかの実施形態では、キナーゼシグナル伝達を調節する方法における本開示の化合物の使用を提供する。
本開示の幾つかの実施形態では、過剰増殖性障害を治療又は予防する方法における、1つ又は複数の抗癌剤と組み合わせる本開示の化合物を含む薬物組成物の使用を提供する。
幾つかの実施形態では、無制限に以下から選ばれる化合物:
及び/又は薬学的に許容される塩、溶媒和物、前駆薬、立体異性体又はその代謝物を提供する。
幾つかの実施形態では、無制限に以下から選ばれる化合物:
及び/又は薬学的に許容される塩、溶媒和物、前駆薬又はその代謝物を提供する。
他の実施形態では、本開示の化合物は薬学的に許容される塩の形である。幾つかの実施形態では、本開示の化合物は溶媒和物の形である。他の実施形態では、本開示の化合物は代謝物の形である。他の実施形態では、本開示の化合物は前駆薬の形である。幾つかの実施形態では、本開示の化合物はエナンチオマーである。他の実施形態では、本開示の化合物はジアステレオマーである。別の実施形態では、本開示の化合物中の重水素濃縮度は少なくとも約1%である。
幾つかの実施形態では、本開示の化合物及び薬学的に許容される担体を含む薬物組成物を提供する。幾つかの実施形態では、前記組成物がプロテインキナーゼにより調節される疾患の治療に用いられる。幾つかの実施形態では、前記組成物が過剰増殖性障害及び/又は血管新生疾患の予防又は治療に用いられる。幾つかの実施形態では、薬物組成物は、抗腫瘍剤、免疫阻害剤、免疫刺激剤又はその組み合わせをさらに含む。他の実施形態では、薬物組成物は経口投与、非経口投与又は静脈内投与に適する。
幾つかの実施形態では、本開示は、哺乳動物被検体に本明細書に記載の本発明に係る化合物の何れかを治療上有効量で投与することを含む方法であって、キナーゼシグナル伝達を調節するための方法を提供する。
他の実施形態では、本明細書は、哺乳動物被検体に本明細書に記載の本発明に係る化合物の何れかを治療上有効量で投与することを含む方法であって、トロポミオシン関連キナーゼによって媒介される疾患を治療又は予防するための方法を提供する。
他の実施形態では、本明細書は、必要な哺乳動物被検体に本明細書に記載の本発明に係る化合物の何れかを治療上有効量で投与することを含む方法であって、腫瘍形成(neoplasia)の治療に用いられる方法を提供する。幾つかの実施形態では、腫瘍形成は皮膚癌、白血病、大腸癌、腎細胞癌、消化管間質腫瘍、固形腫瘍、骨髄腫、乳癌、膵臓癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫、肝細胞癌、甲状腺癌、膀胱癌、大腸癌及び前立腺癌から選ばれるものである。幾つかの実施形態では、前記方法は、1つ又は複数の抗癌剤を投与することをさらに含む。幾つかの実施形態では、神経芽細胞腫、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、大細胞神経内分泌腫瘍及び結腸直腸癌の治療に用いられる方法であって、必要な哺乳動物被検体に式I又は式IIの化合物又は式I又は式IIの化合物を含む薬物組成物を治療上有効量で投与する方法を提供する。
他の実施形態では、Trk阻害剤を提供する。本明細書に用いられるように、用語Trkは通常、トロポミオシン受容体キナーゼ又はチロシン受容体キナーゼである。Trk受容体ファミリーは癌遺伝子trkで命名される。最初に大腸癌に発現されたTrkは甲状腺乳頭癌において活性化されることが多い。癌遺伝子trkは第1番染色体における突然変異により生成されるものであることが報告されている。通常のTrk受容体にトロポミオシンに関するアミノ酸又はDNA配列が含まれていない。3つの最も一般的なタイプのTrk受容体は、TrkA、TrkB及びTrkCである。TrkA、TrkB及びTrkC中のそれぞれは、あるタイプのニューロトロフィンに対して異なる結合親和力を有することができる。Trk受容体は哺乳動物神経システムにおけるシナプス強度及び可塑性を調整するチロシンキナーゼファミリーである。これらの異なるタイプの受容体が誘発したシグナル伝達差異は様々の生物学的反応を生じることができる。Trk受容体のニューロトロフィンリガンドは処理されたリガンドであってもよく、処理されたリガンドが未成熟な形で合成された後、プロテアーゼ切断により転化される。未熟なニューロトロフィンは1種の通常のp75NTR受容体のみに対して特異性を有することができる。しかし、プロテアーゼ切断は、それと対応するTrk受容体に対してより高い親和力を有するニューロトロフィンを生じることができる。これらの処理されたニューロトロフィンは相変わらずp75NTRに結合するが、低い親和力で結合する。
他の実施形態では、哺乳動物被検体に本明細書に記載の本発明に係る化合物の何れかを治療上有効量で投与することを含む方法であって、過剰増殖及び/又は血管新生を治療又は予防するための方法を提供する。
他の実施形態では、式I又はIIの化合物の薬物組成物を用いて、癌を含む哺乳動物における過剰増殖性障害を治療するための方法を提供する。用語「過剰増殖性障害」及び/又は「癌」とは、例えば乳癌、呼吸器腫瘍、脳癌、生殖器癌、消化管癌、泌尿器癌、眼癌、肝癌、皮膚癌、頭頸部癌、甲状腺癌、副甲状腺癌及びその遠隔転移のような固形腫瘍だけでなく、リンパ腫、肉腫及び白血病も含まれる。
以下の定義は、本明細書に記載の開示内容の理解を支援する。
用語「アルキル」は、炭素−炭素単結合のみを含み、置換されていなくともよく、又は任意に1つ又は複数の官能基で置換されていてもよい、直鎖、分岐、環式の炭化水素基を含むことが意図される。アルキルの好ましい鎖長は1〜6個の炭素原子である。C〜Cアルキルは、Cアルキル、Cアルキル、Cアルキル、Cアルキル、Cアルキル、及びCアルキルを含むことが意図される。アルキルは、置換されていてもよく又は置換されていなくともよい。例示的な置換アルキルには、これらに限定されないが、重水素、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式基、ヒドロキシ、アルコキシ、アリーアルオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバモイル、N−カルバモイル、O−チオカルバモイル、N−チオカルバモイル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシル、O−カルボキシル、ニトロ、シリル、アミノ及び−NRが含まれる。なかでも、RとRが独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、カルボニル、アセチル、スルホニル、トリフルオロメタンスルホニル及び組み合わせられる5員又は6員ヘテロ脂環式基環から選ばれる。例示的な置換アルキルは、CD、CDCD、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、アミノメチル、アミノエチル、ヒドロキシメチル、メトキシメチル、2−フルオロエチル及び2−メトキシエチル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
用語「アルコキシ」は−O−(アルキル)及び−O−(無置換シクロアルキル)基である。C〜Cアルコキシは、C〜Cアルキルを含むことが意図される。C〜Cアルキルは以上のように定義される。代表的な例は、OCD、OCDCD、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、シクロイソプロポキシ、シクロブトキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
「ハロゲン」又は「ハロゲン化物」はフッ素、塩素、臭素及びヨウ素である。「ハロゲン基」はフッ素化、塩素化、臭素化及びヨウ素化であり、好ましくはフッ素又は塩素である。
「アリール」は完全な共役π電子システムを有する6〜12個の炭素原子の全炭素単環基又は縮合環多環基である。アリールの例はフェニル、ナフチル及びアントラセン基に制限されない。アリールは置換もしくは無置換であってもよい。例示的な置換基は、ハロゲン、トリハロメチル、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリーアルオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ニトロ、カルボニル、チオカルボニル、C−カルボキシル、O−カルボキシル、O−カルバモイル、N−カルバモイル、O−チオカルバモイル、N−チオカルバモイル、C−アミド、N−アミド、スルフィニル、スルホニル、アミノ、及び以上のようなR及びRを有する−NRを含むが、アリールは、N、O及びSから選ばれる1つ、2つ、3つ又は4つのヘテロ原子を含み、残りの環原子はCであり、かつ完全な共役π電子システムをさらに有する、5〜12個の環原子の単環又は縮合環基であってもよい。無置換のヘテロアリールの例は、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン、プリン、テトラゾール、トリアジン及びカルバゾールに制限されない。ヘテロアリールは置換もしくは無置換であってもよい。例示的な置換基は、アルキル、シクロアルキル、ハロゲン、トリハロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリーアルオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ニトロ、カルボニル、チオカルボニル、スルファニルアミド、C−カルボキシル、O−カルボキシル、スルフィニル、スルホニル、O−カルバモイル、N−カルバモイル、O−チオカルバモイル、N−チオカルバモイル、C−アミド、N−アミド、アミノ、及び以上のように定義されるR及びRを有する−NRを含む。
本開示は、本開示の同位元素標識の化合物をさらに含む。なかでも、1つ又は複数の原子は、同じ原子番号を有するが、原子質量又は質量数が自然界に通常発現される原子質量又は質量数と異なる原子で置換される。本開示の化合物に含まれる同位体に適用する例は、水素の同位体、例えば重水素及び炭素(例えば13C)を含む。重い同位体、例えば重水素で置換する場合、大きな代謝安定性のため一定の治療優位性を有する。例えば、体内半減期延長又は用量低減が要求されるので、場合によって好ましいものである可能性がある。
重水素(D又はH)は水素の非放射性の安定する同位体であり、重水素の天然存在比が0.015%である。化合物の重水素レベルが0.015%よりも大きい天然存在比レベルまで濃縮される場合、前記化合物が非天然のものと考えるべきである。本開示の化合物において、特定の位置が重水素と指定される場合、重水素の存在量が実質的に重水素の0.015%の天然存在比よりも大きい。前記化合物において、重水素と指定されるそれぞれの原子に、重水素と指定される位置が通常少なくとも3000の最小同位体濃縮係数を有する。本開示の化合物の安定同位体置換の程度に比べ、天然存在比の安定する水素は濃度が小さく、かつ重要でない。
本開示の化合物に関して使用される場合、用語「薬学的に許容される」は、被験体に投与するのに安全な化合物の形態を指す。例えば、米国食品医薬品局(FDA)等の所管当局又は規制当局により、経口摂取又は任意の他の投与経路による哺乳動物使用が承認されている、本開示の化合物の遊離塩基、塩形態、溶媒和物、水和物、前駆薬又は誘導体の形態は、薬学的に許容される。
語句「有効量」は、代替療法に典型的に伴う有害副作用を回避しつつ、各薬剤単独での治療よりも、障害重症度及び発生頻度が改善するという目標を達成することになる各薬剤の量を定量化することが意図される。1つの実施形態では、有効量は、単一の剤形又は複数の剤形で投与される。
本開示の出発物質は、公知であるか、又は市販されているか、又は当技術分野で公知の方法で若しくはその類似方法で合成することができる。多数の出発物質は、公知のプロセスにより調製することができ、特に、実施例に記載のプロセスを使用して調製することができる。出発物質を合成する際、ある場合、官能基は、必要に応じて好適な保護基で保護される。保護基、それらの導入、及び除去は、以下に説明される。
所望の手順により式I又は式IIの化合物を合成する場合、幾つかの実施形態でのステップは、本明細書に記載の手順化合物を含む調製に好適な順序で、又は本明細書に記載のステップの代替的順序で実施される。1つの実施形態では、必要に応じて、その前又はその後に追加の保護/脱保護ステップがある。幾つかの実施形態では、中間体は、単離されるか又はそのままで使用され、精製されるか又は精製されない。本明細書に記載の阻害化合物の合成に有用な合成化学変換及び保護基方法論は、当技術分野で公知であり、例えば以下に説明される方法:R.Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers(1989);T.W.Greene及びP.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,第3版,John Wiley and Sons(1999);L.Fieser及びM.Fieser,Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1994);A.Katritzky及びA.Pozharski,Handbook of Heterocyclic Chemistry,第2版(2001);M.Bodanszky,A.Bodanszky,The Practice of Peptide Synthesis,Springer−Verlag,Berlin Heidelberg(1984);J.Seyden−Penne,Reductions by the Alumino− and Borohydrides in Organic Synthesis,第2版,Wiley−VCH,(1997);及びL.Paquette編集,Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1995)に記載のものが含まれる。
幾つかの実施形態では、本開示の化合物も、複数の互変異性型で表される。本開示は、本明細書に記載の化合物の互変異性型の全てを明確に含む。
1つの実施形態では、上記化合物は、cis−又はtrans−又はE−又はZ−二重結合異性体で存在する。そのような化合物の前記異性体の形は全て明確に本開示に含まれる。
指示
本開示は、これに制限されないが、トロポミオシン関連のキナーゼを含む1つ又は複数のシグナル伝達ルートを調節することができる化合物を提供する。
用語「調節する」とは、前記化合物が存在しない時のその通常な活性と比較して、前記経路(又はその成分)の機能的な活性が変更されたことを意味する。この効果は、増加、アゴナイズ、増大、増強、促進、刺激、低下、阻止、阻害、低減、縮小、アンタゴナイズ等を含む、調節のあらゆる品質又は程度を含む。
本開示の化合物は、これらに限定されないが、以下のものを含む下記プロセスの1つ又は複数を調節することができる:例えば、細胞成長(例えば、分化、細胞生存、及び/又は増殖を含む)、腫瘍細胞成長(例えば、分化、細胞生存、及び/又は増殖を含む)、腫瘍退縮、血管内皮細胞成長(例えば、分化、細胞生存、及び/又は増殖を含む)、血管新生(血管増殖)、リンパ脈管新生(リンパ管増殖)、及び/又は血球新生(例えば、T細胞及びB細胞発生、樹状細胞発生等)。
任意の理論又は作用機序により拘束されることは望まないが、本開示の化合物は、キナーゼ活性を調節する能力を有することが見出された。しかしながら、本開示の方法は、いかなる特定の機序又は化合物が治療効果を達成する様式にも限定されない。語句「キナーゼ活性」とは、アデノシン三リン酸(ATP)からのガンマ−リン酸基を、タンパク質基質のアミノ酸残基(例えば、セリン、トレオニン、又はチロシン)に移転させる触媒活性を意味する。化合物は、キナーゼ活性を調節することができる。例えば、キナーゼのATP結合ポケットをATPと直接的に競合することにより、その活性に影響を及ぼす酵素構造の立体構造変化をもたらすことにより(例えば、生物学的に活性な三次元構造を破壊することにより)、不活性立体構造のキナーゼに結合して固定すること等により、キナーゼ活性を調節することができる。
製剤及び使用方法
本開示の化合物及び/又は組成物で癌を治療するための投与される化合物の量及び投与計画は、被験体の年齢、体重、性別、及び医学的状態、疾患のタイプ、その疾患の重症度、投与の径路及び頻度、並びに使用される具体的化合物を含む、様々な要因に依存する。従って、投与計画は、幅広く変動する場合があるが、標準的方法を使用して日常的に決定することができる。以下の1日用量が適切である可能性があり、本明細書で開示された使用方法全てに有用なはずである:約0.01〜500mg/kg、有利であるのは約0.01〜約50mg/kg、より有利であるのは約0.01〜約30mg/kg、更により有利であるのは約0.1〜約10mg/kg。1日用量は、1日当たり1〜4回量で投与してもよい。
記載されている方法では、本開示の化合物を単独で投与することが可能な場合があるが、投与される化合物は、通常、医薬組成物における活性成分として存在する。従って、本開示の別の実施形態では、本開示の化合物と、本明細書に記載されているような希釈剤、賦形剤、アジュバント等を含む薬学的に許容される担体(本明細書では「担体」物質と総称される)及び必要に応じて他の活性成分との組み合わせを含む医薬組成物が提供される。本開示の医薬組成物は、有効量の本開示の化合物又は有効用量の本開示の化合物を含んでいてもよい。本開示の化合物の有効用量は、化合物の有効量未満の量、化合物の有効量と同量、又は化合物の有効量を超える量を含み、例えば、錠剤及びカプセル等の、2単位又はそれ以上の用量が、有効量の化合物を投与するのに必要である医薬組成物、又はその代わりに粉末、液体等の、有効量の化合物が組成物の一部を投与することにより投与される複数用量医薬組成物である。
投与経路
好適な投与経路には、これらに限定されないが、経口投与、静脈内投与、直腸内投与、エアゾル投与、非経口投与、点眼投与、肺内投与、径粘膜投与、経皮投与、膣内投与、経耳投与、経鼻投与、及び局所投与が含まれる。加えて、例示に過ぎないが、非経口送達には、筋肉内注射、皮下注射、静脈内注射、髄内注射、並びに髄腔内注射、直接心室内注射、腹腔内注射、リンパ管内注射、及び鼻腔内注射が含まれる。
本開示の化合物は、経口投与してもよい。経口投与は、えん下を含み、したがって化合物は胃腸管に進入してもよく、又は化合物が口から直接的に血流に進入することによる頬側投与若しくは舌下投与を使用してもよい。経口投与に好適な製剤には、錠剤等の固形製剤、微粒子、液体、又は粉末を含有するカプセル剤、トローチ剤(液体充填剤を含む)、咀嚼剤、多粒子及びナノ粒子、ゲル剤、固溶剤、リポソーム、薄膜(粘膜付着剤を含む)、オブル(ovule)、スプレー剤、及び液剤が含まれる。
また、本開示の化合物は、例えばLiangとChenがExpert Opinion in Therapeutic Patents,11(6),981−986(2001)に記載のもの等の迅速溶解剤形、迅速崩壊剤形で使用してもよく、その開示全体は、援用により本明細書に組み込まれる。
非経口投与用の製剤は、即時放出及び/又は放出調節するように製剤化してもよい。放出調節製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出、プログラム放出が含まれる。したがって、本開示の化合物は、活性化合物の放出調節を提供する埋込み徐放性製剤としての固形、半固形、又はチキソトローフ液体として製剤化してもよい。そのような製剤の例には、薬物コーティングステント及びPGLAミクロスフェアが含まれる。
組み合わせ
本開示の化合物は、唯一の活性医薬品として投薬又は投与することができるが、1つ又は複数の本開示の化合物と組み合わせて又は他の薬剤と共に使用することもできる。
1つの実施形態では、アジュバントを投与することで本明細書に記載の化合物中の1つの治療効果を強化する(即ち、アジュバントそのものは僅かな治療効果を有することができるが、他の治療剤と組み合わせて、患者への全体治療効果を強める)。または、幾つかの実施形態では、本明細書に記載の化合物中の1つと治療効果も有する別の治療剤(前記治療剤は、治療プロトコールも含む)とを同時に投与することで、患者が経験した効果が向上した。
1つの特定の実施形態では、式I又は式IIの化合物が第2種の治療剤と同時投与される。式I又は式IIの化合物と第2種の治療剤は、治療されている疾患、疾患又は病状の異なる面を調節し、何れか1つの治療剤を単独投与することに比べより大きな全体効果を提供する。
いかなる場合でも、治療される疾患、疾患又は病状の如何に関わらず、患者が経験した全体効果は、簡単に2つの治療剤を累算してもよく、又は患者が相乗効果を経験してもよい。
幾つかの実施形態では、本明細書に開示される化合物が1つ又は複数の別の薬剤、例えば治療上効果を持つ別の薬物、アジュバント等と組み合わせて投与される場合、治療上効果を持つ異なる用量の本明細書に開示される化合物は、薬物組成物の調製に用いられ、及び/又は治療プロトコールに用いられる。治療プロトコールを組み合わせる薬物及び他の薬剤の治療上効果を持つ用量は、上記した活性物そのものに関して説明されるようなそれらの方法によって確定され得る。なお、本明細書に記載の予防/治療方法は、メトロノミック投与、即ち、より頻繁で、より低い用量を提供して毒性及び副作用を最小化することを含む。幾つかの実施形態では、併用療法プロトコールは、本明細書に記載の第2種の薬剤で治療する前に、治療する間に、又は治療した後で、式I又は式IIの化合物を投与し始め、第2種の薬剤で治療する間における任意の時間、又は第2種の薬剤で治療した後まで続けることを含む。併用療法プロトコールは、治療期間と同時に、又は異なる時間に、及び/又は減少又は増加される間隔で式I又は式IIの化合物と、組み合わせて用いられる第2種の薬剤とを投与する治療をさらに含む。併用療法は、それぞれの時間に開始及び停止して患者の臨床管理に協力する定期治療をさらに含む。
なお、複数の要素に応じて、治療、予防又は改善して病状の軽減を求める用量スキームを変更することができる。これらの要素は、被検体がかかる疾患、疾患又は病状、並びに被検体の年齢、体重、性別、食事及び医学的状態を含む。このため、ある場合、実際に用いられる用量スキームが変わるものであり、幾つかの実施形態で、本明細書に記載の用量スキームとは異なる。
本明細書に記載の併用療法に関して、同時投与される化合物の用量は、用いられる共薬の種類、用いられる特定の薬物、治療される疾患又は病状等に応じて変わる。別の実施形態では、1つ又は複数の他の治療剤と同時投与される場合、本明細書において提供される化合物と1つ又は複数の他の治療剤とが同時投与又は順次投与される。
併用療法において、複数の治療剤(前記複数の治療剤中の1つは本明細書に記載の化合物中の1つである)は任意の順番で投与され、又はさらに同時投与される。同時投与される場合、例示にすぎないが、単一の形、統一の形、又は複数の形(例えば、単一の錠剤、又は分けられる2種の錠剤として)で複数の治療剤が提供される。1つの実施形態では、治療剤中の1種が複数用量で与えられ、別の実施形態では、2種(又は存在する場合、それ以上の種類)の治療剤が複数用量で与えられる。同時投与ではない幾つかの実施形態では、複数用量間の時間間隔が0週間〜4週間に変化する。また、組み合わせ方法、組成物及び製剤では、2種類の薬剤のみを使用することに限られない。さらに複数の治療組み合わせを使用することも想定される。
式I又は式IIの化合物及び式I又は式IIの化合物を含む併用療法は、疾患又は病状が発生する前に、発生する間に、又は発生した後で、並びに化合物を含む組成物を投与する時に異なる。このため、1つの実施形態では、本明細書に記載の化合物が予防剤として用いられ、病状又は疾患へ進展する傾向のある被検体に連続して投与されて、疾患又は病状の発生を防止する。別の実施形態では、症状発作期間に、又はその後、化合物及び組成物をできるだけ早く被検体に投与する。具体的な実施形態では、本明細書に説明される化合物が検出された、又は疾患又は病状の発作が疑われた後、実施可能な時点、かつ疾患の治療に必要な時間の長さの内に、できるだけ早く投与される。幾つかの実施形態では、治療に必要な長さは変わり、それぞれの被検体の具体的な要求に適合するように治療の長さを調節する。例えば、特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物又は前記化合物を含む製剤を少なくとも2週間、約1か月間〜約5年間投与する。
具体的には、幾つかの実施形態では、本開示の化合物の投与と、当業者が知られた癌を予防又は治療する他の療法とが組み合わせられる。
化合物の合成
式I又は式IIの化合物は以下のスキームにおいて当業者に説明するプロセスに応じて合成されるものである。特に断りのない限り、置換基は上記の式I又は式IIのように定義されるものである。以下に記載の合成方法は、例示に過ぎず、本開示の化合物は、当業者から理解される代替経路により合成することもできる。
スキーム1で本開示中の式IIの化合物の合成を説明した。化合物1とArCOCl又はArCOOHのアシル化反応は式II又は式Iの化合物を提供した(スキーム1)。
具体的な実施例
これらの詳細な記述は説明のためのものに過ぎず、特許請求の範囲を制限する意図がない。
プロトン核磁気(NMR)スペクトル
特に断りのない限り、H NMRスペクトルは全て、VarianシリーズMercury300、400MHz機器又はBrukerシリーズ400MHz機器で実施した。このように特徴づけられる場合、観察されたプロトンは全て、表示されている適切な溶媒におけるテトラメチルシラン(TMS)又は他の内部標準値からのダウンフィールド百万分率(ppm)として報告されている。
略号
DCMはジクロロメタンである。
RTは室温である。
EAは酢酸エチルである。
DIPEAはN,N−ジイソプロピルエチルアミンである。
TLCは薄層クロマトグラフィーである。
HATUは1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジニウム3−オキサイドヘキサフルオロホスファート又はヘキサフルオロホスファートアザベンゾトリアゾールテトラメチルウラニウムである。
合成例:
実施例1:(R)−5−(2−(2,5−ジフルオロフェニル)ピロリジン−1−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−アミンの合成
ステップ1:(R)−5−(2−(2,5−ジフルオロフェニル)ピロリジン−1−イル)−3−ニトロピラゾロ[1,5−a]ピリミジンの合成
機械撹拌器が取り付けられた丸底フラスコに(R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)ピロリジン(R)−2−ヒドロキシコハク酸エステル(17.6g、5.5mmol、1.1eq)、5−クロロ−3−ニトロピラゾロ[1,5−a]ピリミジン(10.0g、5.0mmol、1.0eq)及びエタノールを入れた。溶解後、室温下で反応混合物にDIPEA(22.7g、17.6mmol、3.5eq)を加えた。反応物を室温下で3時間撹拌した。ろ過し、エタノール(30ml×2)でケーキを洗浄した。40℃で乾燥し、生成物(11.3g)を得た。
ステップ2:(R)−5−(2−(2,5−ジフルオロフェニル)ピロリジン−1−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−アミンの合成
機械撹拌器が取り付けられた丸底フラスコに(R)−5−(2−(2,5−ジフルオロフェニル)ピロリジン−1−イル)−3−ニトロピラゾロ[1,5−a]ピリミジン(50.0g、145mmol、1.0eq)を入れた後、メタノール/DCM(625ml/625ml)を加えた。溶解後、反応混合物にZn(94.2g、1.45mol、10.0eq)を加えた。反応温度を25℃〜30℃まで調整した。当該温度で、反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液(657ml)を滴下し、3時間撹拌した。TLCを介して反応を監視した。
その後、反応混合物をケイ藻土ろ過装置でろ過した。DCM(200ml×2)でフィルタベッドを洗浄し、分離し、DCM(250ml×2)で水相を抽出した。分離し有機層と合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。真空下で蒸発させ、フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、生成物(51g)を得た。
実施例2:(R)−N−(5−(2−(2,5−ジフルオロフェニル)ピロリジン−1−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−イル)−4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)ベンズアミドの合成
水と(R)−5−(2−(2,5−ジフルオロフェニル)ピロリジン−1−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−アミン(46.4g、147.2mmol、1.0eq)を混合した。混合物の温度を0℃〜5℃まで調整した。当該温度範囲で、混合物に4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)ベンゾイルクロライド二塩酸塩(95.9g、294.4mmol、2.0eq)5部を添加し、10分間ごとに混合物に1部を加えた。
反応完了後、反応混合物に活性炭(5.0g)を添加し、反応混合物を15分間撹拌した。その後、反応混合物をケイ藻土ろ過装置でろ過した。水(100ml×2)でフィルタベッドを洗浄した。
EA(200ml×2)でろ液を抽出した後、DCM/EA(v/v=3:7、200ml×3)で抽出し、最後にろ液を再びEA(200ml)で抽出した。水相を50℃〜55℃に加熱した後、NaOH水溶液(20%)で反応溶液のpHを9〜10まで調整した。EA(250ml)で抽出し、いくつかの沈殿物を形成し、沈殿物をろ過分離した。EA(200ml×2)で水相を抽出した。有機層を合わせた。
有機層に活性炭(5.0g)を加えた後、反応混合物を50℃〜55℃に加熱し30分間撹拌した。その後、反応混合物をケイ藻土ろ過装置でろ過した。EA(100ml×3)でフィルタベッドを洗浄し、無水硫酸ナトリウムでろ液を乾燥した。真空下で40℃で蒸発させ、黄色い固体として生成物(71.3g)を得た。
HNMR(CDCl):2.08(s,3H),2.32(d,J=10.0,6H),2.48−2.51(m,8H),3.59(s,2H),4.12(s,1H),6.01(brs,1H),6.78(s,1H),6.91−6.93(m,1H),7.01−7.04(m,1H),7.47(d,J=8.4,2H),7.88(d,J=6.8,2H),8.16(d,J=7.2,2H),8.64(s,1H).MS m/z 532[M+1]。
実施例3:(R)−N−(5−(2−(2,5−ジフルオロフェニル)ピロリジン−1−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−イル)−2−メトキシ−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)ベンズアミドの合成
ステップ1:2−メトキシ−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)安息香酸メチルの合成
100mlの三ツ口丸底フラスコに4−フルオロ−2−メトキシ安息香酸メチル(1.84g、10.0mmol、1.0eq)と1−メチルピペラジン(2.0g、20.0mmol、2.0eq)の混合物を加えた。反応物を80℃に加熱し40時間撹拌した。その後、水(20ml)を反応溶液に入れて、酢酸エチル(20ml×3)で混合物を抽出し、有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。真空下で45℃で蒸発させ、黄色いオイルを得た。黄色いオイルをDCM(30ml)で溶解させ、反応溶液にHClのイソプロピルアルコール溶液(30%、4ml)を添加し、いくつかの固体が出た。ろ過により固体を採取し、DCM(10ml×2)で採取された固体を洗浄し、粗生成物1.32gを得た。
ステップ2:2−メトキシ−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)安息香酸の合成
100mlの三ツ口丸底フラスコに2−メトキシ−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)安息香酸メチル(200mg、0.66mmol、1.0eq)とMeOH(5.0ml)を加えた。撹拌し反応溶液にNaOH水溶液(4mol/L、5.0ml)を加えた。反応溶液を60℃で3時間加熱した。TLCを介して反応を監視した。真空下で45℃でメタノールを除去し、HCl水溶液(4mol/L)で残りの混合物のpHを6まで調整した後、n−BuOH(10ml×3)で抽出した。有機層を採取し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。真空下で蒸発させ、生成物(60mg)を得た。
ステップ3:(R)−N−(5−(2−(2,5−ジフルオロフェニル)ピロリジン−1−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−イル)−2−メトキシ−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)ベンズアミドの合成
2−メトキシ−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)安息香酸(50.0mg、0.17mmol、1.0eq)、(R)−5−(2−(2,5−ジフルオロフェニル)ピロリジン−1−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−アミン(55.0mg、0.17mmol、1.0eq)及びHATU(79.2g、0.21mmol、1.2eq)の混合物をDCM(5ml)に溶解させた。反応混合物にDIPEA(45.2mg、0.35mmol、2.0eq)を加えた。反応混合物を室温で3時間撹拌した。反応混合物に水(20ml)を添加し、DCM(10ml×3)で抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。真空下で蒸発させ、粗生成物を得、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより前記粗生成物を精製し、黄色い固体として生成物(20mg)を得た。
HNMR(CDCl):2.11−2.12(m,4H),2.40(s,3H),2.48(s,1H),2.62(t,J=5.2,J=5.2,4H),3.39(t,J=4.8,J=5.2,4H),3.80(s,1H),4.02(s,3H),4.01(s,1H),6.0(brs,1H),6.45(s,1H),6.65(dd,J=2.0、J=8.8,1H)、6.75−6.79(m,1H),6.93−6.95(m,1H),7.04−7.06(m,1H),8.20(d,J=8.8,2H),8.76(s,1H),8.89(brs,1H).MS m/z 548[M+1]。
実施例4:(R)−N−(5−(2−(2,5−ジフルオロフェニル)ピロリジン−1−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−イル)−4−(エチルスルホニルアミノ)ベンズアミドの合成
ステップ1:4−(エチルスルホニルアミノ)安息香酸メチルの合成
4−アミノ安息香酸メチル(2.0g、13.2mmol、1.0eq)をDCM(15ml)に溶解させ、撹拌し反応混合物にピリジン(2.1g、26.4mmol、2.0eq)を加えた。氷浴で反応混合物を0℃〜5℃まで冷却した。その後反応混合物にエタンスルホニルクロリド(2.0eq、15.8mmol、1.2eq)を滴下し、10℃を超えないように反応温度を保持した。反応物を室温に加熱し3時間保持した。反応混合物を水に入れて、いくつかの固体が出た。ろ過により固体を採取し、水(20ml×2)で採取された固体を洗浄し、濡れた生成物(4.6g)を得た。
ステップ2:4−(エチルスルホニルアミノ)安息香酸の合成
100mlの三ツ口丸底フラスコに4−(エチルスルホニルアミノ)安息香酸メチル(2.3g、ウェット)とMeOH(15ml)を加えた。氷浴の場合、反応混合物を撹拌した。0℃〜5℃で反応混合物にNaOH水溶液(15ml)を滴下した。その後、反応物を室温に昇温させ6時間保持した。真空下で45℃でメタノールを除去し、HCl(濃)で残りの混合物を処理し、そのpHを2まで調整した。いくつかの固体が得られた。ろ過により固体を採取し、水で採取された固体を洗浄し、濡れた生成物(1.3g)を得、前記生成物を室温で一晩保持した。
ステップ3:(R)−N−(5−(2−(2,5−ジフルオロフェニル)ピロリジン−1−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−イル)−4−(エチルスルホニルアミノ)ベンズアミドの合成
4−(エチルスルホニルアミノ)安息香酸(144.5mg、0.63mmol、1.0eq)、(R)−5−(2−(2,5−ジフルオロフェニル)ピロリジン−1−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−アミン(200mg、0.63mmol、1.0eq)及びHATU(287.3mg、0.76mmol、1.2eq)の混合物をDCM(10ml)に溶解させ、反応混合物にDIPEA(162.5mg、1.26mmol、2.0eq)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物に水(15ml)を加えた。有機層を分離させ、DCM(10ml)で含水層を抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。真空下で蒸発させシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、黄色い固体として生成物(240.9mg)を得た。LC−MS(M+1=527.2)。
HNMR(CDCl):1.41(t,J=7.2,3H),2.02−2.12(m,5H),2.51−2.52(m,1H),3.22(q,J=7.6、J=7.2,2H),3.951(s,1H),6.0(brs,1H),6.79(s,1H),6.91(s,1H),7.03(s,1H),7.33−7.36(d,J=8.4,2H),7.70(s,1H),7.88−7.90(d,J=7.2,2H),8.21(s,2H),8.61(s,1H).MS m/z 527[M+1]。
バイオアッセイ:
キナーゼアッセイ:
キナーゼ標識T7ファージ株を、BL21株由来の大腸菌宿主で調製した。大腸菌を対数増殖期まで増殖させ、T7ファージに感染させ、溶解するまで32℃で振とうし、インキュベートした。溶解産物を遠心分離及びろ過して細胞残屑を除去した。残りのキナーゼは、HEK−293細胞で産生した後、qPCR検出のためにDNAで標識した。ストレプトアビジンコーティング磁気ビーズを、ビオチン化低分子リガンドにより30分間室温で処理して、キナーゼアッセイ用の親和性樹脂を生成した。未結合リガンドを除去し、非特異的結合を低減させるために、リガンド付ビーズを、過剰量のビオチンでブロッキングし、ブロッキングバッファー(SeaBlock(Pierce)、1%BSA、0.05%Tween20、1mM DTT)で洗浄した。キナーゼ、リガンド付親和性ビーズ、及び試験化合物を1×結合バッファー(20%SeaBlock、0.17×PBS、0.05%Tween20、6mM DTT)に混合することにより、結合反応を構築した。反応は全て、ポリスチレン製96ウェルプレートでの最終容積0.135ml中で実施した。アッセイプレートを、室温で1時間振とうさせてインキュベートし、親和性ビーズを洗浄バッファー(1×PBS、0.05%Tween20)で洗浄した。その後、ビーズを、溶出バッファー(1×PBS、0.05%Tween20、0.5μM非ビオチン化親和性リガンド)に再懸濁し、30分間室温で振とうさせてインキュベートした。溶出液中のキナーゼ濃度を、qPCRで測定した。
他のアッセイ:
化合物1〜4のアッセイ
化合物1(LOXO−101)は
である。
化合物2は
である。
化合物3は
である。
化合物4は
である。
(a)キナーゼ活性を阻害する試験化合物の能力を決定するインビトロアッセイ
I.キナーゼをテストするための1倍のキナーゼベースバッファー及びストップバッファーの調製
1)1倍のキナーゼベースバッファー(TRK−Aに用いられる)
50mM HEPES、pH7.5
0.0015%Brij−35
2)ストップバッファー
100mM HEPES、pH7.5
0.015%Brij−35
0.2%コーティング剤#3
50mM EDTA
II.化合物を有するソースプレートの製造
1)100%DMSOで化合物を反応物の最終濃度の50倍まで希釈した。この化合物希釈液100μlを96ウェルプレート中の1つのウェルに移した。例えば、所望の最高阻害剤濃度が10μMである場合、このステップで化合物DMSO溶液500μMを調製した。
2)100%DMSOでステップ1)で得られた化合物希釈液を3×シリーズ希釈して、化合物の9種以上の希釈液を提供した。
3)化合物コントロールがなく、及び酵素コントロールがない場合、同じ96ウェルプレートに、2つの空のウェルに100%DMSO 100μlを加えた。プレートをソースプレートとしてマーキングした。
4)中間プレートの製造
ソースプレートから化合物10μlを中間プレートとしての新しい96ウェルプレートに移した。
中間プレートの各ウェルに1倍のキナーゼベースバッファー90μlを加えた。
揺動テーブルで化合物を中間プレートに10分間混合した。
5)アッセイプレートの製造
96ウェル中間プレートから各ウェルの5μlを2倍分で384ウェルプレートに移した。例えば、96ウェルプレートのA1を384ウェルプレートのA1及びA2に移した。96ウェルプレートのA2を384ウェルプレートのA3及びA4に移した。以下同様。
III.キナーゼ反応
1)2.5倍の酵素溶液の調製
キナーゼを1倍のキナーゼベースバッファーに添加した。
2)2.5倍のペプチド溶液の調製
FAMとマーキングされたペプチド及びATPを1倍のキナーゼベースバッファーに添加した。
3)2.5倍の酵素溶液のアッセイプレートへの移動
アッセイプレートには、100%DMSOに含まれる化合物5μlが収容されている。
384ウェルアッセイプレートの各ウェルに10μlの2.5倍の酵素溶液を加えた。
室温で10分間インキュベートした。
4)2.5倍のペプチド溶液のアッセイプレートへの移動
384ウェルアッセイプレートの各ウェルに2.5倍のペプチド溶液10μlを加えた。
5)キナーゼ反応と停止
28℃で所定の時間インキュベートした。
ストップバッファー25μlを添加して反応を止めた。
IV.キャリパー表示値
キャリパーにおけるデータを取った。
V.カーブフィッティング
Caliperプログラムを介してデータをコピーし変換した。
変換値を阻害値に変換する。
阻害%=(最大値−変換値)/(最大値−最小値)*100
「最大値」はDMSOコントロールを、「最小値」は酵素活性無しコントロールを表す。
データをXlfitにフィッティングしIC50値を得た。
用いられる式は、
Y=ボトム+(トップ−ボトム)/(1+10^((LogIC50−X)*Hill傾き)である。
以下の表Aには、本開示の代表的な化合物と、ROS1及びTRK−Aアッセイにおけるその活性が列挙されており、ROS1及びTRK−Aアッセイの両者は何れも上述の一般的に説明されたキナーゼアッセイである。
[表A]
(b)TEL−NTRK1−BaF3細胞に対して代表的な数の化合物を測定した。
I.化合物プレートの製造
測定する化合物を100%DMSOに溶解させて4mMの母液を調製し、それを3×シリーズ希釈して、濃度が10mM、3.333mM、1.111mM、0.370mM、0.123mM、0.041mM、0.014mMである溶液を調製し、これらの溶液が全て0.5mLの無菌のeppendorf(Corning,NY,USA)に蓄積される。同時に、コントロールとしてブランクを調製し、ブランクに化合物溶液と同じ体積であるDMSOのみを含む。化合物プレートにおける9つのサンプルを真空下で−20℃で保存した。
II.細胞培養条件
解凍後、TEL−NTRK1−BaF3細胞株をRPMI 1640(Corning,NY,USA)+10%ウシ胎児血清(Gibco/Invitrogen、米国)に2世代培養した。今後の使用のために保存した。
III.測定及びデータ解析
対数期にある細胞(2,000〜2,500cells/ウェル)を得、それを不透明な白い細胞培養プレート(Corning,NY,USA3570)のウェルに接種した。各ウェル中の細胞を含む懸濁液の体積は100μLであった。化合物プレートからの化合物を0.1μL/ウェルで細胞培養プレートに添加して、10μM、3.3μM、1.1μM、0.37μM、0.12μM、0.04μM及び0.014μMの最終化合物濃度とした。37℃及び5%COインキュベータで72時間インキュベートした。各ウェルにCellTiter−GloRLuminescent Cell Viability Assay10μLを添加し、10分間待ってから、Evision Plateリーダーで読み取った。
以下の表Bには、本開示の代表的な化合物及びTEL−NTRK1−BaF3細胞アッセイにおけるその活性が列挙されている。
[表B]
(c)代表的な数の化合物の溶解度測定
溶解度測定プロセスは以下のことを含むことができる。
リファレンス標準溶液の調製:100mLメスフラスコに、それぞれ、2mgずつのテスト化合物を加えた。化合物をアセトニトリルで100mLまで希釈した。
サンプル溶液の調製:2mL eppendorfパイプ(EP)に、それぞれ、テスト化合物2mgを加えた後、pH4.0の緩衝溶液(20mM)1mLを加えた。溶液を2分間振とうした後、25℃で30分間放置した。30分間放置した後、EPのボトムに沈殿物が形成された。溶液を0.2μmのメンブランフィルタでろ過した後、水で50倍希釈した。
標準溶液及びサンプル溶液を同じ体積のShim−Pack CLC−ODS C18カラム(150mm×6.0mm、5um)におけるHPLCに注入した。移動相はアセトニトリルと、2%トリクロロメタン-20mM KHPOバッファー(pH=7.0)からなり、流速は1mL/分間(40:60)であった。検出波長は264nmであった。計算:サンプルの溶解度=標準溶液の濃度×サンプル面積×50/標準溶液の面積。
以下の表Cには、選ばれる化合物の溶解度データが列挙されている。
[表C]
(d)代表的な数の化合物の薬物動態学研究
PK(薬物動態学)測定に用いられる代表的なスキームは下記の通りである。化合物を同じ動物に静脈注射(IV)又は経口投与した。各化合物の用量は、それぞれ、静脈注射2mg/kg(体積は5ml/kg)と経口投与5mg/kg(体積は10ml/kg)であった。静脈注射の処方は10%Solutol HS 15+0.4mg/mLの90%リン酸塩緩衝食塩水であった。経口製剤は100%(0.5%MC水溶液に含まれる0.5%トゥイーン80)の0.5mg/mL懸濁液を用いた。
サンプル採取:静脈注射ルートについて、0.083、0.25、0.5、1、2、4、8及び24時間の時点で血漿サンプルを採取した。経口ルートについて、0.25、0.5、1、2、4、8及び24時間の時点で血漿サンプルを採取した。
解析:LC−MS/MSによりPKパラメータ:t1/2、tmax、Cmax、Vss及びAUC等を計算した。
以下の表Dには、選ばれる化合物及びそのバイオアベイラビリティが列挙されている。
[表D]
ラットにおいて、化合物1又はLOXO−101は33%の経口バイオアベイラビリティを表している。驚いたことに、化合物3は大幅に改善されたバイオアベイラビリティ(F=56%)を有する。
化合物1(LOXO−101)は低い脳浸透率を有する。これに対して、化合物2と化合物3の両者の脳血漿割合は全て高い(それぞれ、0.96と5.47である)ことから、化合物2と化合物3は血液脳関門を透過することができることが判明した。
(e)毒性研究
1か月間にわたる例示的な毒性研究において、30mg/kg及び100mg/kgの用量でラットに代表的ないくつかの化合物(化合物1(LOXO−101)と化合物3を含む)をテストした。当該実験の条件で、化合物投与期間終了及び回復期間終了時に、30mg/kg及び100mg/kgの用量でLOXO−101を投与した群中の幾つかの動物の血液における#LYMPH及び/又は%LYMPHが僅かに低減し、かつ血液における#NEUT及び/又は%NEUTが僅かに向上した。対応する動物骨髄は、骨髄系細胞−赤血球系細胞比率が増加すること、又は骨髄系細胞−赤血球系細胞比率が増加する傾向を示した。これに対して、30mg/kg又は100mg/kgの用量で化合物3を投与する治療群又は賦形剤コントロール群に同様の変化が観察されなかった。
(付記)
(付記1)
式Iによる化合物:
又は式Iによる化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物、前駆薬、立体異性体、互変異性体又は代謝物。
(式中、Arは置換されるC〜C12アリール又は置換されるC〜C12ヘテロアリールであり、但し、Arが置換されるC〜C12ヘテロアリールである場合、Arは以下の残基であり、
ただし、Yは結合又はCR2324であり、
31は、独立して、水素、C〜Cアルキル及び重水素から選ばれる1つ又は複数の基であり、
32はC〜Cアルキル、CO(C〜Cアルキル)又は水素であり、
23とR24中のそれぞれは、独立して、水素、重水素又はC〜Cアルキル基である。)
(付記2)
前記化合物は式IIによる化合物:
又は式IIによる化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物、前駆薬、立体異性体、互変異性体又は代謝物である、付記1に記載の化合物。
(付記3)
Arは置換されるフェニル、即ち、以下の残基である、付記1又は2に記載の化合物。
(ただし、R、R、R、R及びR中の少なくとも1つは水素ではなく、R、R、R、R及びRは、独立して、水素、ハロゲン化物、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cシクロアルキル、C〜C12アリール、3〜12員ヘテロ脂環式、5〜12員ヘテロアリール、NO、-NR、-CR(CROR、CN、-C(O)R、-O(CO)R、-OCR(CRNR、-OCR(CROR、-NRC(O)R、-(CRC(O)OR、-(CRC(O)NR、-CR(CRNR、-NR(CO)-NR、-NRS(O)、-S(O)又は-S(O)NRであり、ただし、R、R、R、R及びR中の隣接するフェニル基の原子における2つの基が、それらが結合している隣接する原子と一緒に結合して、C〜C12アリール、5〜12員ヘテロアリール、C〜C12シクロアルキル又は3〜12員ヘテロ脂環式基を形成することができ、なかでも、それぞれのアリール、ヘテロ脂環式基及びヘテロアリールは無置換であり、又は、独立して、1つ又は複数の重水素又はC〜Cアルキルに置換され、但し、3〜12員ヘテロ脂環式基のヘテロ原子はフェニルと連結せず、
それぞれのR、R、R及びRは、独立して、水素、C〜Cアルキル、C〜C12アリール、5〜12員ヘテロアリール、C〜C12シクロアルキル又は3〜12員ヘテロ脂環式基であり、又は同じ窒素に結合しているR、R、R及びR中の何れか2つが、それらが結合している窒素と一緒に結合して、N、O及びSから選ばれる1〜3個の別のヘテロ原子を任意に含有できる3〜12員ヘテロ脂環式基又は5〜12員ヘテロアリールを形成することができ、又は同じ炭素に結合しているR、R、R及びR中の何れか2つが、それらが結合している炭素と一緒に結合して、C〜C12アリール、5〜12員ヘテロアリール、C〜C12シクロアルキル、又は3〜12員ヘテロ脂環式基を形成することができ、
各nは、独立して、0、1、2、3又は4であり、
各pは、独立して、1又は2であり、ならびに、
各tは、独立して、0、1又は2である。)
(付記4)
Arは以下の残基である、付記3に記載の化合物。
(式中、Yは結合又はCR2324であり、
、R、R及びRは、独立して、水素、ハロゲン化物、CF、C〜Cアルキル、NO、C〜Cアルコキシ、又はアルコキシ−4−アミノであり、
21は、独立して、水素、C〜Cアルキル及び重水素から選ばれる1つ又は複数の基であり、
22はC〜Cアルキル、CO(C〜Cアルキル)又は水素であり、ならびに、
23とR24中のそれぞれは、独立して、水素、重水素又はC〜Cアルキル基である。)
(付記5)
Arは以下の残基である、付記1又は2に記載の化合物。
(式中、Yは結合又はCR2324であり、
31は、独立して、水素、C〜Cアルキル及び重水素から選ばれる1つ又は複数の基であり、
32はC〜Cアルキル、CO(C〜Cアルキル)又は水素であり、
23とR24中のそれぞれは、独立して、水素、重水素又はC〜Cアルキル基である。)
(付記6)
以下のものから選ばれる、付記1に記載の化合物。
(付記7)
以下のものから選ばれる、付記2に記載の化合物。
(付記8)
付記1〜7の何れか1つに記載の化合物及び薬学的に許容される担体を含む、薬物組成物。
(付記9)
必要な患者に付記8に記載の薬物組成物を投与するステップを含む、患者の過剰増殖性障害を治療又は予防する方法。
(付記10)
付記1〜7の何れか1つに記載の化合物の薬物としての使用。
(付記11)
過剰増殖性障害を治療又は予防するための、付記1〜7の何れか1つに記載の化合物の薬物としての使用。
(付記12)
各種の癌を治療又は予防するための、付記1〜7の何れか1つに記載の化合物の薬物としての使用。
(付記13)
キナーゼシグナル伝達を調節する方法における付記1〜7の何れか1つに記載の化合物の使用。
(付記14)
1つ又は複数の抗癌剤と組み合わせて、過剰増殖性障害を治療又は予防する方法に用いるための、付記1〜7の何れか1つに記載の化合物を含む薬物組成物。

Claims (14)

  1. 式Iによる化合物:
    又は式Iによる化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物、前駆薬、立体異性体、互変異性体又は代謝物。
    (式中、Arは置換されるC〜C12アリール又は置換されるC〜C12ヘテロアリールであり、但し、Arが置換されるC〜C12ヘテロアリールである場合、Arは以下の残基であり、
    ただし、Yは結合又はCR2324であり、
    31は、独立して、水素、C〜Cアルキル及び重水素から選ばれる1つ又は複数の基であり、
    32はC〜Cアルキル、CO(C〜Cアルキル)又は水素であり、
    23とR24中のそれぞれは、独立して、水素、重水素又はC〜Cアルキル基である。)
  2. 前記化合物は式IIによる化合物:
    又は式IIによる化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物、前駆薬、立体異性体、互変異性体又は代謝物である、請求項1に記載の化合物。
  3. Arは置換されるフェニル、即ち、以下の残基である、請求項1又は2に記載の化合物。
    (ただし、R、R、R、R及びR中の少なくとも1つは水素ではなく、R、R、R、R及びRは、独立して、水素、ハロゲン化物、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cシクロアルキル、C〜C12アリール、3〜12員ヘテロ脂環式、5〜12員ヘテロアリール、NO、-NR、-CR(CROR、CN、-C(O)R、-O(CO)R、-OCR(CRNR、-OCR(CROR、-NRC(O)R、-(CRC(O)OR、-(CRC(O)NR、-CR(CRNR、-NR(CO)-NR、-NRS(O)、-S(O)又は-S(O)NRであり、ただし、R、R、R、R及びR中の隣接するフェニル基の原子における2つの基が、それらが結合している隣接する原子と一緒に結合して、C〜C12アリール、5〜12員ヘテロアリール、C〜C12シクロアルキル又は3〜12員ヘテロ脂環式基を形成することができ、なかでも、それぞれのアリール、ヘテロ脂環式基及びヘテロアリールは無置換であり、又は、独立して、1つ又は複数の重水素又はC〜Cアルキルに置換され、但し、3〜12員ヘテロ脂環式基のヘテロ原子はフェニルと連結せず、
    それぞれのR、R、R及びRは、独立して、水素、C〜Cアルキル、C〜C12アリール、5〜12員ヘテロアリール、C〜C12シクロアルキル又は3〜12員ヘテロ脂環式基であり、又は同じ窒素に結合しているR、R、R及びR中の何れか2つが、それらが結合している窒素と一緒に結合して、N、O及びSから選ばれる1〜3個の別のヘテロ原子を任意に含有できる3〜12員ヘテロ脂環式基又は5〜12員ヘテロアリールを形成することができ、又は同じ炭素に結合しているR、R、R及びR中の何れか2つが、それらが結合している炭素と一緒に結合して、C〜C12アリール、5〜12員ヘテロアリール、C〜C12シクロアルキル、又は3〜12員ヘテロ脂環式基を形成することができ、
    各nは、独立して、0、1、2、3又は4であり、
    各pは、独立して、1又は2であり、ならびに、
    各tは、独立して、0、1又は2である。)
  4. Arは以下の残基である、請求項3に記載の化合物。
    (式中、Yは結合又はCR2324であり、
    、R、R及びRは、独立して、水素、ハロゲン化物、CF、C〜Cアルキル、NO、C〜Cアルコキシ、又はアルコキシ−4−アミノであり、
    21は、独立して、水素、C〜Cアルキル及び重水素から選ばれる1つ又は複数の基であり、
    22はC〜Cアルキル、CO(C〜Cアルキル)又は水素であり、ならびに、
    23とR24中のそれぞれは、独立して、水素、重水素又はC〜Cアルキル基である。)
  5. Arは以下の残基である、請求項1又は2に記載の化合物。
    (式中、Yは結合又はCR2324であり、
    31は、独立して、水素、C〜Cアルキル及び重水素から選ばれる1つ又は複数の基であり、
    32はC〜Cアルキル、CO(C〜Cアルキル)又は水素であり、
    23とR24中のそれぞれは、独立して、水素、重水素又はC〜Cアルキル基である。)
  6. 以下のものから選ばれる、請求項1に記載の化合物。
  7. 以下のものから選ばれる、請求項2に記載の化合物。
  8. 請求項1〜7の何れか1項に記載の化合物及び薬学的に許容される担体を含む、薬物組成物。
  9. 必要な患者に請求項8に記載の薬物組成物を投与するステップを含む、患者の過剰増殖性障害を治療又は予防する方法。
  10. 請求項1〜7の何れか1項に記載の化合物の薬物としての使用。
  11. 過剰増殖性障害を治療又は予防するための、請求項1〜7の何れか1項に記載の化合物の薬物としての使用。
  12. 各種の癌を治療又は予防するための、請求項1〜7の何れか1項に記載の化合物の薬物としての使用。
  13. キナーゼシグナル伝達を調節する方法における請求項1〜7の何れか1項に記載の化合物の使用。
  14. 1つ又は複数の抗癌剤と組み合わせて、過剰増殖性障害を治療又は予防する方法に用いるための、請求項1〜7の何れか1項に記載の化合物を含む薬物組成物。
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