好適な実施形態の詳細な説明
さて図面に関して、同じ参照番号は、幾つかの図を通して、同一又は対応する部分を示す。
本発明は、低温硬化コーティング組成物、二重層硬化機構により形成される低温硬化複合コーティング、及び該低温硬化複合コーティングを含む物品に関する。低温硬化コーティング組成物は、80℃から120℃未満の温度で硬化するため、感熱性基材又はプラスチック基材に適している。低温コーティング組成物は、また、20分以内で硬化する。
用語「低温硬化コーティング組成物」及び「低温架橋剤」の意義に関連して、用語「低温」は80℃から120℃未満をいうものと定義する。
用語「低親水性アクリル樹脂」は、酸素及びその他のヘテロ原子を最大30.8質量%含むアクリル樹脂と定義する。
本書で検討するポリマーの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定する。これは、次のように実施する。完全に溶解したポリマー試料の分子を多孔性カラム固定相で分画する。テトラヒドロフラン(THF)中0.1mol/l酢酸溶液を溶離剤として使用する。固定相は、Waters Styragel HR5、HR4、HR3、及びHR2カラムの組合せである。5ミリグラムの試料を1.5mLの溶離剤に加え、0.5μmフィルターでろ過する。ろ過後、100μlのポリマー試料溶液を1.0ml/minの流速でカラムに注入する。溶離剤中に形成するポリマーコイルのサイズに応じて分離される。小さな分子はカラム材料の細孔中に拡散する頻度が高いため、大きな分子よりも遅延する。したがって、大きな分子が小さな分子よりも早く溶出される。ポリマー試料の、分子量分布、平均Mn及びMw、及び多分散度Mw/Mnを、EasyValid検証キットで作成した検量線、Polymer Standards Serviceから入手できる、さまざまな分子量の一連の非分岐ポリスチレン標準を使用する、クロマトグラフィーソフトウェアを用いて計算する。
「二重コーティング」は、基材上で互いに接触している少なくとも2つの連続した層を含む。二重コーティングのこの定義内で、該少なくとも2つの連続した層と基材との間に他の層が存在することができる。また、二重コーティングのこの定義内で、該少なくとも2つの連続した層の上に他の層が存在することができる。
樹脂固形分には、顔料(存在する場合)とバインダー樹脂との両方が含まれ、ASTMテストD2369−04に従って測定する。
ガラス転移温度は、特に明記しない限り、DIN 51005「熱分析(TA)−用語」及びDIN EN ISO 11357−2「熱分析−動的走査熱量測定(DSC)」に従って実験的に決定した。
拡散係数は、種々の触媒について、十分に確立され当業者に既知のモデルであるFick’s(フィック)の拡散モデルを使用して得た。
第1の低温硬化コーティング組成物(ベースコート)
第1の低温硬化コーティング組成物は、少なくとも1種のヒドロキシ官能性樹脂、少なくとも1種の低温架橋剤、及び非極性触媒を含む溶剤型(solvent-borne)又は水性(waterborne)組成物である。第1の低温硬化コーティング組成物のヒドロキシ官能性樹脂は、そこに含有される低温架橋剤と架橋することが可能である。しかし、非極性触媒は、第1の低温硬化コーティング組成物に含有される、ヒドロキシ官能性樹脂と低温架橋剤との間の架橋反応を触媒しない。代わりに、非極性触媒は、第1の低温硬化コーティング組成物に隣接して、好ましくは直接接触して配置される、第2の低温硬化コーティング組成物に含有される、第2のヒドロキシ官能性樹脂及び第2の低温架橋剤を架橋する触媒として機能する。
第1の低温コーティング組成物は、二成分系であって、当該系の第1の成分がヒドロキシ官能性樹脂及び非極性触媒を含み、当該系の第2の成分が第1の低温架橋剤を含む系であってもよい。代替的に、当該系の第1の成分が第1のヒドロキシ官能性樹脂を含み、当該系の第2の成分が第1の低温架橋剤及び非極性触媒を含むものであってもよい。第1の低温コーティング組成物は、第1のヒドロキシ官能性樹脂、第1の低温架橋剤、及び非極性触媒を含む単一成分組成物(すなわち、予混合組成物)であることが好ましい。
第1の層の一成分低温コーティング組成物は、粘度が室温(23℃)で2倍になる時間と定義されるポットライフ(可使時間)が、少なくとも30日、好ましくは少なくとも60日、そして最も好ましくは少なくとも90日である。
第1の層の一成分低温硬化コーティング組成物は、極性酸触媒のような適切な触媒に曝すとき、20分以内に硬化するものである。第1の層の一成分低温硬化コーティング組成物は10分以内に硬化することが好ましい。コーティング組成物の硬化については、一般にゲル分率とも呼ばれるゲル含有量を測定することにより評価する。これは、ヒドロキシ官能性樹脂と低温架橋剤との反応すなわち架橋から生じる硬化の程度を直接示すからである。硬化した第1の層のゲル含有量は、第1の層をTHF下で、室温で24時間保存した後の不溶性画分に相当する。通常、ゲル含有量は、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、さらには99.9%である。
硬化した第1の層の組成物は、50N/mm2を超え、好ましくは90N/mm2を超え、より好ましくは100N/mm2を超え、さらにより好ましくは120N/mm2を超える微小硬さを有する。微小硬さは、DIN EN ISO14577に従い、Fischer社製のFischerscope機器を使用し、最大25.6mNの力で決定する。
第1のヒドロキシ官能性樹脂
第1の低温コーティング組成物中の第1のヒドロキシ官能性樹脂は、第1の低温コーティング組成物に含有される第1の低温架橋剤の官能基と反応するヒドロキシル官能性であって、非極性触媒とは反応しないヒドロキシル官能性を有する、いずれかのポリマーであることができる。好ましくは、第1のヒドロキシ官能性樹脂は非極性触媒とは異なる極性の性質(polar nature)を有し、その結果、第1の層に由来する該触媒が非極性の性質(non-polar nature)を持つことにより、第1の層からの非極性触媒の移動が促進される。また、好ましくは、第1のヒドロキシ官能性樹脂は極性触媒と同様の極性の性質を有し、その結果、第2の層に由来するこの触媒が極性の性質を持つことにより、極性触媒の第1の層中への移動が促進される。
第1の低温硬化コーティング組成物は極性特性(polar character)を全体として有することができる。この極性特性は、第1のヒドロキシ官能性樹脂の極性の性質によってもたらされるとともに、場合によっては、第1の低温硬化コーティング組成物中の、アミノプラスト樹脂低温架橋剤の極性の性質及び/又は溶媒の極性の性質が一緒になってもたらされる。
幾つかの実施形態では、第1の低温硬化コーティング組成物は、溶剤型コーティング組成物、好ましくは極性溶剤型コーティング組成物である。
溶剤型の第1の低温硬化コーティング組成物において、ヒドロキシ官能性樹脂は、ヒドロキシル官能性(functionality)を有するアクリルポリマー及びヒドロキシル官能性を有するポリエステルポリマーからなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。ヒドロキシ官能性樹脂は、ヒドロキシル官能性を有するアクリルポリマーであることが最も好ましい。例示的な市販のヒドロキシ官能性樹脂には、商品名Joncryl(登録商標)で販売されているものが含まれる。
第1の低温硬化コーティング組成物としての溶剤型組成物中のヒドロキシ官能基に加えて、ヒドロキシ官能性樹脂は、第1の低温コーティング組成物に含有される第1の低温架橋剤の官能基と反応性である限り、更なる反応性官能性を含むことができる。特定の実施形態では、ヒドロキシ官能性樹脂は、アミン官能性、カルボン酸官能性、及びエポキシ官能性からなる群から選択される少なくとも1つの更なる官能性を含む。
第1の低温コーティング組成物としての溶剤型組成物中に存在するヒドロキシ官能性樹脂は、一般に、第1の低温架橋剤及び等量のヒドロキシ官能性樹脂のガラス転移温度との組合せで、所望の硬度を有する硬化フィルムの製造をもたらす任意のガラス転移温度を有することができる。好ましくは、ヒドロキシ官能性樹脂は、−20℃〜100℃、より好ましくは0℃〜75℃、最も好ましくは10℃〜50℃のガラス転移温度を有する。
第1の低温コーティング組成物としての溶媒型組成物中に存在するヒドロキシ官能性樹脂は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される数平均分子量(Mn)が500〜30,000、又は600〜20,000、又は750〜10,000であることができる。
第1の低温コーティング組成物としての溶剤型組成物中に存在するヒドロキシ官能性樹脂のヒドロキシル当量は、100〜3,000グラム樹脂/eqヒドロキシル、好ましくは200〜1,500グラム樹脂/eqヒドロキシル、より好ましくは250〜800グラム樹脂/eqヒドロキシル、又はさらには300〜700グラム樹脂/eqヒドロキシルである。
第1の低温コーティング組成物としての溶剤型組成物に存在するヒドロキシ官能性樹脂に関し、適切なヒドロキシ官能性アクリル樹脂及びポリエステル樹脂は、80〜120℃、好ましくは100〜115℃、より好ましくは100〜110℃、さらには100〜105℃の所望の硬化温度における反応性にとって十分なヒドロキシル含量を有する。アクリル樹脂は、15〜565mgKOH/g、好ましくは35〜280mgKOH/g、より好ましくは70〜225mgKOH/gのヒドロキシル価を有することができる。ヒドロキシル価は、200mgKOH/g未満、例えば185mgKOH/g未満、又は175mgKOH/g未満であってもよい。ヒドロキシ官能性アクリル樹脂は、一般に、1分子当たり平均少なくとも2つの活性水素基を有する。
他の実施形態において、第1の低温硬化コーティング組成物は水性組成物であることができ、その組成物には、適切な第1のヒドロキシ官能性樹脂が含有される。例えば、ヒドロキシ官能性ポリエーテル含有ポリウレタンが、水性低温硬化コーティング組成物用の第1のヒドロキシ官能性樹脂として適している。
水性の第1の低温硬化コーティング組成物中のポリエーテル含有ポリウレタンは、反応した形態で:(i)ポリエステルポリオール;(ii)低分子量ジオール及び/又はトリオール;(iii)ポリエーテルジオール;及び(iv)ポリイソシアネートを含み、いずれの遊離イソシアネート基も多官能アルコールと反応する。あるいは、ポリエーテル含有ポリウレタンは、反応した形態で:(i)ポリエステルポリオール;(ii)低分子量ジオール及び/又はトリオール;(iii)ポリイソシアネート;(iv)トリヒドロキシ含有モノマー;及び(v)単官能性ポリエーテルを含み、いずれの遊離イソシアネート基も多官能性アルコールと反応する。イソシアネート基と反応する多官能性アルコールは、エチレングリコール又はトリメチロールプロパンなどのポリオールであっても、又はエタノールアミン若しくはジエタノールアミンなどのアミノアルコールであることができる。なぜなら、アミノアルコールのアミノ基は、存在するイソシアネート基と優先的に反応してポリウレタンにヒドロキシ官能基を付与するからである。
ポリエーテル含有ポリウレタンのポリエステルポリオールは分岐又は非分岐であってもよく、ジカルボン酸、及び少なくとも2つのヒドロキシル部分を有するアルコールの反応から形成される。ポリエステルポリオールのカルボン酸は、一般に、その鎖に18個未満の炭素原子を持っている。ジカルボン酸は、アルキル、アルキレン、アラルキル、アラルキレン、及びアリーレンであってもよい。例示的なアルキルジカルボン酸化合物には、アゼライン酸及びアジピン酸が含まれ、適切な芳香族ジカルボン酸はイソフタル酸である。特定の実施形態では、カルボン酸は、2つより多いカルボキシ基を有してもよく、例えば無水トリメリット酸が挙げられる。
ポリエステルポリオールのアルコールは、分岐鎖ポリウレタンの場合、ジオール、トリオール、又は多価アルコール−官能性化合物(例えば、トリメチロールプロパン)であってもよく、トリオール含有化合物の量及び種類は、分岐効果を増加するように変えることができる。ポリエステルポリオールの製造に通常使用するジオールには、アルキレングリコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、及びネオペンチルグリコール、1,6ヘキサンジオール、及び他のグリコール、例えば、水素化ビスフェノールA、シクロヘキサンジメタノール、カプロラクトンジオール、ヒドロキシアルキル化ビスフェノールなどが含まれる。高官能性アルコールには、例えば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、及びペンタエリスリトール、並びに高分子量ポリオールが含まれる。
ポリエーテル含有ポリウレタンの低分子量ジオール及び/又はトリオールは、200より大きい(例えば、1500〜2000)ヒドロキシル価を有する、いずれかのジ−又はトリ−アルコール含有化合物である。脂肪族ジオール、特に、2〜18個の炭素原子を含有するアルキレンポリオール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなど、及び脂環式ジオール、例えば、1,2シクロヘキサンジオール及びシクロヘキサンジメタノールなどが適切である。特に好ましいジオールは、1,6ヘキサンジオールである。例示的な高官能性アルコールには、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、及びペンタエリスリトールが含まれる。
ポリエーテル含有ポリウレタンのポリイソシアネートは、本質的に、少なくとも2つのイソシアネート基を含有する、いずれかのポリイソシアネートであることができ、ジイソシアネートであることが好ましい。ジイソシアネートは、一般に、p−フェニレンジイソシアネート、ビフェニル4,4’ジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4ビフェニレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6ジイソシアネート、メチレンビス(フェニルイソシアネート)、1,5ナフタレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトエチルフマレート)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及びメチレン−ビス−(4シクロヘキシルイソシアネート)から選択される。また、エチレングリコール、又は1,4−ブチレングリコールなどのジオールのイソシアネート末端付加物も使用することができる。ジイソシアネートが好適であるが、1,2,4−ベンゼントリイソシアネート及びポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの他の多官能性イソシアネートを使用してもよい。
ポリエーテル含有ポリウレタンのトリヒドロキシ含有モノマーには、例えば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、及びペンタエリスリトールなどのポリオール、並びに高分子量ポリオールが含まれる。
ポリエーテル含有ポリウレタンの単官能性ポリエーテルは、通常、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びそれらの混合物の、モノアルコール開始重合反応から形成される。100%エチレンオキシド単位からなるポリエーテル化合物が特に好適である。単官能性ポリエーテルは最終ポリウレタン樹脂の10〜25質量%を構成し、1200〜3000の分子量を有することが好ましい。
ポリエーテル含有ポリウレタンのポリエーテルジオールは、上記の単官能性ポリエーテルを上記のポリイソシアネートと反応させて、ポリエーテルで半キャップされたジイソシアネートを生成し、次に、これを少なくとも1つの活性アミン水素及び少なくとも2つの活性ヒドロキシル基を有する化合物と反応させることにより得ることができる。得られたポリエーテルジオールは、ポリエーテル鎖、尿素部分、ウレタン部分、及び2つの遊離ヒドロキシル基を有する。
一般に、ヒドロキシ官能性樹脂は、第1の低温硬化コーティング組成物中に、該組成物中の樹脂固形分の総質量に基づいて、10〜90質量パーセント、好ましくは35〜65質量パーセント、より好ましくは45〜65質量パーセントの範囲の量で存在する。
第1の低温架橋剤
第1の低温硬化コーティング組成物の低温架橋剤はアミノプラスト樹脂を含み、アミノプラスト樹脂は、第1のヒドロキシ官能性樹脂が触媒されるときにそのヒドロキシル官能基と反応する。アミノプラスト樹脂は、ホルムアルデヒドと、メラミン、尿素、又はベンゾグアナミンなどの、アミノ基又はアミド基を持つ物質との縮合生成物に基づくものである。幾つかの実施形態では、メラミンが好適である。
第1の低温硬化コーティング組成物は、全体的に極性特性を有することができる。この極性特性は、アミノプラスト樹脂低温架橋剤の極性の性質により、また、場合によっては、第1の低温硬化コーティング組成物中の、第1のヒドロキシ官能性樹脂の極性の性質及び/又は溶媒の極性の性質が一緒になって、もたらされる。
アミノプラスト樹脂は、好ましくは、メチロール基又は類似のアルキロール基を含有し、ほとんどの場合、これらのアルキロール基の少なくとも一部が、アルコールとの反応によってエーテル化されている。この目的には、いずれかの一価アルコールを使用することができ、これにはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、並びにベンジルアルコール及び他の芳香族アルコール、シクロヘキサノールなどの環状アルコール、グリコールのモノエーテル、及び、3−クロロプロパノール及びブトキシエタノールなどのハロゲン置換アルコール又は他の置換アルコールが含まれる。好適なアミノプラスト樹脂は、メタノール又はブタノール又はそれらの混合物で部分的にアルキル化されている。
メチロール基(−CH2OH)、一般式−CH2OR1(ここで、R1は1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル鎖、及びそれらの組合せである)のアルコキシメチル基のいずれかを含むメラミンホルムアルデヒド樹脂が好適である。
第1の低温硬化コーティング組成物の架橋剤としては、
下記の構造を有するヘキサメチロールメラミン(HMM):
下記の構造を有するヘキサメトキシメチルメラミン(HMMM):
下記の構造を有するヘキサ(ブトキシメチル)メラミン(HBMM):
、及び
メチロール基、メトキシメチル基、及び/又はブトキシメチル基の組合せで置換された、HMMM及びHBMMメラミンの組合せ:
(式中、各Rは、少なくとも2つのR基が異なるという条件で、H及びC
1〜4アルキル基、好ましくはCH
3及びC
4H
9から独立して選択される)
から選択することが好ましい。
低温架橋剤のメチロール基及びアルコキシメチル基(例えば、HMMMのCH2OCH3エーテル基)は、酸触媒などの適切な触媒、例えば、ブロックされていないスルホン酸によって触媒された場合、ヒドロキシ官能性樹脂のヒドロキシル基と特に反応性である。しかしながら、第1の低温硬化コーティング組成物は、極性酸触媒を含まず、その代わりに、第1の低温硬化コーティング組成物の、ヒドロキシ官能性樹脂のヒドロキシル基と低温架橋剤との間の架橋反応を触媒しない非極性金属触媒などの非極性触媒を含む。
低温架橋剤は、第1の低温硬化コーティング組成物中に、該組成物中の樹脂固形分の総質量に基づいて10〜90質量パーセント、好ましくは15〜65質量パーセント、より好ましくは20〜40質量パーセントの範囲の量で存在する。
非極性触媒
第1の低温硬化コーティング組成物に含まれる非極性触媒は、第2のヒドロキシ官能性樹脂と第2の低温架橋剤との間の架橋反応を触媒するが、第1のヒドロキシ官能性樹脂とアミノプラスト樹脂低温架橋剤との間の架橋反応は触媒しない触媒である。
幾つかの実施形態では、非極性触媒は有機金属化合物である。有機金属化合物は、場合により、少なくとも部分的にハロゲン化されており、場合により、少なくとも部分的にフッ素化されていてもよい。有機金属化合物は、少なくとも1つの非極性部分、より好ましくは2つ以上の非極性部分を含むことが好ましい。少なくとも1つの非極性部分は有機部分であることが好ましい。その有機部分は、少なくとも部分的にハロゲン化されていてもよく、例えば、少なくとも部分的にフッ素化されていてもよい。実施形態によっては、その有機金属化合物はシラン基又はシロキサン基を含むことができる場合がある。
有機金属化合物は、少なくとも部分的にフッ素化されたアルキル基を含む、有機ジルコニウム触媒、有機リチウム触媒、有機スズ触媒又は有機亜鉛触媒であることができる。その有機金属化合物には、2つの完全にフッ素化されたアルキル基を含む、有機スズ触媒又は有機亜鉛触媒が含まれることが有利である。有機金属化合物は、また、トリアルコキシシラン基を含む有機ビスマス触媒でもあることができる。
有機金属化合物は、脂肪族ビスマスカルボン酸塩、例えば、エチルヘキサン酸ビスマス、次サリチル酸ビスマス(実験式C7H5O4Biを有する)、ヘキサン酸ビスマス、エチルヘキサン酸ビスマス又はジメチロール−プロピオネート、シュウ酸ビスマス、アジピン酸ビスマス、乳酸ビスマス、酒石酸ビスマス、サリチル酸ビスマス、グリコール酸ビスマス、コハク酸ビスマス、ギ酸ビスマス、酢酸ビスマス、アクリル酸ビスマス、メタクリル酸ビスマス、プロピオン酸ビスマス、酪酸ビスマス、オクタン酸ビスマス、デカン酸ビスマス、ステアリン酸ビスマス、オレイン酸ビスマス、エイコサン酸ビスマス、安息香酸ビスマス、リンゴ酸ビスマス、マレイン酸ビスマス、フタル酸ビスマス、クエン酸ビスマス、グルコン酸ビスマスなど;アセチルアセトン酸ビスマス;ビス−(トリオルガノスズ)オキシド、例えば、ビス(トリメチルスズ)オキシド、ビス(トリエチルスズ)オキシド、ビス(トリプロピルスズ)オキシド、ビス(トリブチルスズ)オキシド、ビス(トリアミルスズ)オキシド、ビス(トリヘキシルスズ)オキシド、ビス(トリヘプチルスズ)オキシド、ビス(トリオクチルスズ)オキシド、ビス(トリ−2−エチルヘキシルスズ)オキシド、ビス(トリフェリヒルスズ)オキシド、ビス(トリオルガノスズ)スルフィド、(トリオルガノスズ)(ジオルガノスズ)オキシド、スルホキシド、及びスルホン、ビス(トリオルガノスズ)ジカルボキシレート、例えば、ビス(トリブチルスズ)アジペート及びマレエートなど;ビス(トリオルガノスズ)ジメルカプチド、トリオルガノスズ塩、例えば、トリオクチルスズオクタノエート、トリブチルスズホスフェートなど;(トリオルガノスズ)(オルガノスズ)オキシド;トリアルキルアルキルオキシスズオキシド、例えば、トリメチルメトキシスズオキシド、ジブチルスズジアセチルアセトネート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズビス(ペルフルオロペンタノエート)など;トリオクチルスズオキシド、トリブチルスズオキシド、ジアルキルスズ化合物、例えば、ジブチルスズオキシド、ジオクチルスズオキシド、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジマレエート、ジブチルスズジステアレート、ジプロピルスズジオクトエート及びジオクチルスズオキシドなど;モノアルキルスズ化合物、例えば、モノブチルスズトリオクタノエート、モノブチルスズトリアセテート、モノブチルスズトリベンゾエート、モノブチルスズトリオクチレート、モノブチルスズトリラウレート、モノブチルスズトリミリステート、モノメチルスズトリホルメート、モノメチルスズトリアセテート、モノメチルスズトリオクチレート、モノオクチルスズトリアセテート、モノオクチルスズトリオクチレート、モノオクチルスズトリラウレート;モノラウリルスズトリアセテート、モノラウリルスズトリオクチレート、及びモノラウリルスズトリラウレート;オクタノン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、亜鉛タレート、亜鉛ビス(ペルフルオロアルカノエート)、カルボキシレート基中に約8〜14個の炭素を有するカルボン酸亜鉛、酢酸亜鉛;リチウムカルボン酸塩、例えば、酢酸リチウム、2−エチルヘキサン酸リチウム、ナフテン酸リチウム、酪酸リチウム、イソ酪酸リチウム、オクタン酸リチウム、ネオデカン酸リチウム、オレイン酸リチウム、バーサチック酸リチウム(lithium versatate)、リチウムタレート、シュウ酸リチウム、アジピン酸リチウム、ステアリン酸リチウム;水酸化リチウム;ジルコニウムアルコレート、例えば、メタノレート、エタノレート、プロパノレート、イソプロパノレート、ブタノレート、tert−ブタノレート、イソブタノレート、ペンタノレート、ネオペンタノレート、ヘキサノレート及びオクタノレートなど;ジルコニウムカルボン酸塩、例えば、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、ブタン酸塩、イソブタン酸塩、ペンタン酸塩、ヘキサン酸塩、シクロヘキサン酸塩、ヘプタン酸塩、オクタン酸塩、2−エチルヘキサン酸塩、ノナン酸塩、デカン酸塩、ネオデカン酸塩、ウンデカン酸塩、ドデカン酸塩、乳酸塩、オレイン酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩及びフェニル酢酸塩など;1,3−ジケトン酸ジルコニウム、例えば、アセチルアセトネート(2,4−ペンタンジオネート)、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオネート(ジベンゾイルメタネート)、1−フェニル−1,3−ブタンジオネート及び2−アセチルシクロヘキサノエートなど;ジルコニウムオキシネート;ジルコニウム1,3−ケトエステレート、例えば、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、エチル−2−メチルアセトアセテート、エチル−2−エチルアセトアセテート、エチル−2−ヘキシルアセトアセテート、エチル−2−フェニル−アセトアセテート、プロピルアセトアセテート、イソプロピルアセトアセテート、ブチルアセトアセテート、tert−ブチルアセトアセテート、エチル−3−オキソ−バレレート、エチル−3−オキソ−ヘキサノエート、及び2−オキソ−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステレートなど;ジルコニウム1,3−ケトアミデート、例えば、N,N−ジエチル−3−オキソ−ブタンアミデート、N,N−ジブチル−3−オキソ−ブタンアミデート、N,N−ビス−(2−エチルヘキシル)−3−オキソ−ブタンアミデート、N,N−ビス−(2−メトキシエチル)−3−オキソ−ブタンアミデート、N,N−ジブチル−3−オキソ−ヘプタンアミデート、N,N−ビス−(2−メトキシエチル)−3−オキソ−ヘプタンアミデート、N,N−ビス−(2−エチルヘキシル)−2−オキソ−シクロペンタンカルボキシアミデート、N,N−ジブチル−3−オキソ−3−フェニルプロパンアミデート、N,N−ビス−(2−メトキシエチル)−3−オキソ−3−フェニルプロパンアミデートなど;及び前述の金属触媒の組合せから選択される化合物であることができる。
非極性触媒は、ジブチルスズオキシド、ジオクチルスズオキシド、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズビス(ペルフルオロペンタノエート)、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジマレエート、ジブチルスズジステアレート、ジプロピルスズジオクトエート、及びジオクチルスズオキシドから選択されるジアルキルスズ化合物であることが有利である。ジブチルスズジラウレート及びジブチルスズビス(ペルフルオロペンタノエート)が好適である。
第1の低温硬化コーティング組成物に含まれる非極性触媒の量は、コーティング組成物中の樹脂固形分の総質量に基づいて0.01〜10質量パーセント、好ましくは0.05〜7.5質量パーセント、より好ましくは1.0〜5.0質量パーセントである。非極性触媒の一部が以下で説明する第2の低温硬化コーティング組成物に移動するため、第1の低温硬化コーティング組成物中の非極性触媒の最小含有量は、第1の低温硬化コーティング組成物中の樹脂固形分の総質量に基づいて、1.5質量パーセント、2.0質量パーセント、又は2.5質量パーセントであってもよい。
第1の低温硬化コーティング組成物中の組成物固形分の総質量の観点からみると、非極性触媒の量は、また、0.05〜10質量パーセント、好ましくは0.25〜7.5質量パーセント、より好ましくは0.5〜5.0質量パーセントの範囲であることができる。非極性触媒の最小量は、第1の低温硬化コーティング組成物中の樹脂固形分の総質量に基づいて、少なくとも0.75質量パーセント、少なくとも1.0質量パーセント、又は2.0質量パーセントまで増加させて、非極性触媒の、第2の低温硬化コーティング組成物中への十分な移動を確実にすることができる。
顔料及び着色剤
第1の低温硬化コーティング組成物は、少なくとも1種の顔料又は着色剤で着色することができる。適切な顔料又は着色剤の具体例には、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化鉄、二酸化チタン、及び酸化鉛などの金属酸化物;カーボンブラック;雲母ベースの効果顔料を含む雲母;アルミニウムフレーク、青銅フレーク、ニッケルフレーク、スズフレーク、銀フレーク、及び銅フレークなどの金属顔料;銅フタロシアニンブルーのようなフタロシアニン、ペリレンレッド及びマルーン、キナクリドンマゼンタ及びジオキサジンカルバゾールバイオレットなどの有機顔料が含まれる。
顔料及び着色剤は、第1の低温硬化性コーティング組成物中の組成物固形分の総質量に基づいて、最大50質量パーセントまで、最大40質量パーセントまで、又は最大30質量パーセントまでの範囲であってもよく、10質量パーセントと少量でも、5質量パーセントと少量でも、又は1質量パーセントと少量であってもよい。第1の低温硬化コーティング組成物の総質量の観点からみると、顔料又は着色剤の含有量は、5〜90質量パーセント、好ましくは10〜70質量パーセント、より好ましくは15〜50質量パーセントの範囲である。
液体成分
第1の低温硬化コーティング組成物は水成分及び/又は別の適切な溶媒成分を含むことが好ましい。
第1の低温硬化コーティング組成物が有機溶媒を含む場合には、その有機溶媒は極性溶媒であることが好ましい。第1の低温硬化性コーティング組成物は全体的に極性特性を有することができる。この極性特性は、第1の低温硬化コーティング組成物中の水及び/又は適切な溶媒の極性の性質により、場合によっては、第1のヒドロキシ官能性樹脂の極性の性質及び/又はアミノプラスト樹脂低温架橋剤の極性の性質が一緒になって、もたらされる。
第1の低温硬化コーティング組成物は、第1の低温硬化コーティング組成物の総質量に基づいて、20質量パーセント以上、好ましくは25質量パーセント以上、より好ましくは30質量パーセント以上、かつ、80質量パーセント以下、好ましくは75質量パーセント以下、より好ましくは60質量パーセント以下の全固形分を有する。したがって、第1の低温硬化コーティング組成物の水又は溶媒の総(合計)含有量は、第1の低温硬化コーティング組成物の総質量に基づいて、少なくとも20質量パーセント、好ましくは少なくとも25質量パーセント、より好ましくは少なくとも40質量パーセントであって、かつ、80質量パーセント以下、好ましくは75質量パーセント以下、より好ましくは70質量パーセント以下である。
第1の低温硬化コーティング組成物に適した溶媒には、トルエン、キシレン、ナフサ、及び石油蒸留物などの芳香族溶媒;ヘプタン、オクタン、及びヘキサンなどの脂肪族溶媒;酢酸ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸ヘキシル、酢酸ヘプチル、プロピオン酸エチル、イソ酪酸イソブチレン、ジ酢酸エチレングリコール、及び酢酸2−エトキシエチルなどのエステル溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノールなどの低級アルコール;エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテルなどのグリコールエーテル;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、3−メトキシn−ブチルアセテートなどのグリコールエーテルエステル;N−メチルピロリドン(NMP)などのラクタム;及びそれらの混合物が含まれる。特定の実施形態では、溶媒は、クロロブロモメタン、1−ブロモプロパン、C12〜18n−アルカン、t−ブチルアセテート、ペルクロロエチレン、ベンゾトリフルオリド、p−クロロベンゾトリフルオリド、アセトン、1,2−ジクロロ−1,1,2−トリフルオロエタン、ジメトキシメタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロ−4−メトキシ−ブタン、2−(ジフルオロメトキシメチル)−1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン、1−エトキシ−1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン、及び2−(エトキシジフルオロメチル)−1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンなどのVOC(揮発性有機化合物)免除溶媒である。第1の低温硬化コーティング組成物の溶媒としては、ブタノールなどの低級アルコール及び酢酸t−ブチルなどのエステルから選択される少なくとも1つであることが好ましい。実施形態によっては、第1の低温コーティング組成物には水が含まれない場合がある。
他の実施形態では、第1の低温コーティング組成物に水が含まれる。水が含まれる場合には、幾つかの実施形態では追加の溶媒が含まれてもよく、また、他の実施形態では存在しなくてもよい。水及び別の溶媒を含む実施形態では、好ましくは、水混和性有機溶媒を15質量パーセント未満の含有量で有することができる。
第2の低温硬化コーティング組成物(トップコート)
第2の低温硬化コーティング組成物は、第2のヒドロキシ官能性樹脂として少なくとも1種の低親水性アクリル樹脂、第2の低温架橋剤として少なくとも1種のイソシアネート樹脂、少なくとも1種の極性触媒、及び少なくとも1種の有機溶媒を含む溶剤型組成物であることが有利である。第2の低温架橋剤としての少なくとも1種のイソシアネート樹脂は、第1の低温硬化コーティング組成物に含まれる架橋剤とは異なる。
第1の低温コーティング組成物と同様に、第2の低温コーティング組成物は、一成分系又は二成分系の形態であることができる。幾つかの実施形態では、第2の低温のコーティング組成物は、1つの成分が第2のヒドロキシ官能性樹脂を含有し、他の成分が第2の低温架橋剤を含有する二成分組成物である。極性触媒が、第2のヒドロキシ官能性樹脂又は第2の低温架橋剤とともに含まれてもよい。他の実施形態では、第2の低温コーティング組成物は第2のヒドロキシ官能性樹脂、第2の低温架橋剤、及び極性触媒を含有する単一成分組成物である。
特定の実施形態(特に、第2の低温硬化コーティング組成物が一成分コーティング組成物の形態で、架橋剤の遊離NCO基がブロックされている実施形態に必ずしも限定されない)においては、一成分コーティング組成物は、少なくとも30日間、好ましくは少なくとも60日間、最も好ましくは少なくとも90日間のポットライフを有する。
第2の層の第2の低温硬化コーティング組成物は、非極性酸触媒に曝すとき、20分以内に硬化するものである。第2の低温硬化コーティング組成物は10分以内に硬化することが好ましい。硬化した第2の層のゲル含有量は、第2の層をTHF下で、室温で24時間保存した後の不溶性画分に相当する。通常、ゲル含有量は、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、さらには99.9%である。
硬化した第2の層の組成物は、90N/mm2を超え、好ましくは100N/mm2を超え、より好ましくは120N/mm2を超える微小硬さを有する。微小硬さは、DIN EN ISO14577に従い、Fischer社製のFischerscope機器を使用し、最大25.6mNの力で決定する。
第2のヒドロキシ官能性樹脂
第2のヒドロキシ官能性樹脂は、第2の低温コーティング組成物に含有される第2の低温架橋剤の官能基と反応するが、極性触媒とは反応しないヒドロキシル官能性を有する、いずれかのポリマーであることができる。幾つかの実施形態では、第2のヒドロキシ官能性樹脂は、少なくとも低親水性及び/又は非極性アクリル樹脂であることが好ましい。第2のヒドロキシ官能性樹脂が持つ低親水性及び/又は非極性の性質が、幾つかの実施形態では、極性触媒が持つ極性の性質と連動して作用し、その結果、この触媒が極性の性質を持つことにより、当該触媒が第2の層から移動していくことが促進される。さらに、第2のヒドロキシ官能性樹脂が持つ低親水性及び/又は非極性の性質が、幾つかの実施形態では、非極性触媒が持つ非極性の性質と連動して作用し、その結果、この触媒が非極性の性質を持つことにより、当該触媒の第2の層内への移動が促進される。
アクリル樹脂の親水性は、樹脂中の酸素及び他のヘテロ原子の含有量に関連している。そのヘテロ原子は、酸素からなることが好ましいが、窒素又は他のヘテロ原子も含むことができる。低親水性アクリル樹脂のヘテロ原子含有量は、30.8質量%以下、より好ましくは24.6質量%以下、さらに好ましくは21.7質量%以下である。
第2の低温硬化コーティング組成物のヒドロキシ官能性樹脂は、そこに含有される低温架橋剤と架橋することが可能である。しかし、極性触媒は、第2の低温硬化コーティング組成物に含有されるヒドロキシ官能性樹脂と低温架橋剤との間の架橋反応を触媒しない。その代わりに、極性触媒は、第2の低温硬化コーティング組成物に隣接して、好ましくは直接接触して配置される、第1の低温硬化コーティング組成物に含有されるヒドロキシ官能性樹脂と低温架橋剤の架橋を触媒する。
第2の低温硬化コーティング組成物中のヒドロキシ官能性樹脂は、第2の低温硬化コーティング組成物に含有される第2の低温架橋剤の官能基と反応するヒドロキシル官能性(functionality)を有する、いずれかのポリマーであることができる。ヒドロキシ官能性樹脂は、ヒドロキシル官能性を有するアクリルポリマー及びヒドロキシル官能性を有するポリエステルポリマーからなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。ヒドロキシ官能性樹脂は、ヒドロキシル官能性を有するアクリルポリマーであることが最も好ましい。例示的な市販のヒドロキシ官能性樹脂には、商品名JONCRYL(登録商標)で販売されているものが含まれる。ヒドロキシ官能基に加えて、ヒドロキシ官能性樹脂は、第2の低温硬化コーティング組成物に含有される第2の低温架橋剤の官能基と反応性である限り、更なる反応性官能性を含むことができる。
好適な実施形態では、第2のヒドロキシ官能性樹脂は、重合形態で、少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含む。
重合したモノマーは、幾つかの実施形態では、少なくとも1種の非置換アルキル(メタ)アクリレートモノマーを、好ましくは少なくとも25モル%で、かつ、100モル%に達するまでの含有量で含むことができる。当該少なくとも1種の非置換アルキル(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、実施形態によっては、少なくとも30モル%、又は少なくとも35モル%、又は少なくとも40モル%である場合がある。同様に、実施形態によっては、低親水性アクリル樹脂は、少なくとも1種の非置換アルキル(メタ)アクリレートモノマーを99モル%以下、又は95モル%以下、又は90モル%以下の含有量で含むことができる場合がある。アルキル(メタ)アクリレートモノマー中のアルキル基は、好ましくは1〜12個の炭素原子、より好ましくは4個又は5個の炭素原子を有する飽和炭化水素基である。アルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基は、直鎖状又は分岐状であることができる。アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、炭素原子の数が異なり、及び/又は、直鎖状であるか分岐状であるかの違いを持つ種々のアルキル基を有する点で異なるモノマーを含めることができる。
重合モノマーは、幾つかの実施形態では、少なくとも1種のシクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーを、好ましくは最大75モル%の含有量で含むことができる。少なくとも1種のシクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、最大で65モル%又は最大で55モル%とすることができる。実施形態によっては、重合モノマーはシクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含まない場合がある。
重合モノマーは、幾つかの実施形態では、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸モノマーを、好ましくは最大25モル%の含有量で含むことができる。少なくとも1種の(メタ)アクリル酸モノマーの含有量は、最大20モル%又は最大10モル%とすることができる。実施形態によっては、重合モノマーは(メタ)アクリル酸モノマーを含まない場合がある。
重合モノマーは、幾つかの実施形態では、少なくとも1種のヒドロキシ置換アルキル(メタ)アクリレートモノマーを、好ましくは最大25モル%の含有量で含むことができる。少なくとも1種のヒドロキシ置換アルキル(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、最大20モル%又は最大10モル%とすることができる。実施形態によっては、重合モノマーはヒドロキシ置換アルキル(メタ)アクリレートモノマーを含まない場合がある。
これらの含有量パーセントは、低親水性アクリル樹脂中の全モノマーに対して表したものである。
重合モノマーは、少なくとも1種の他の置換アルキル(メタ)アクリレートモノマー(ヒドロキシル基ではない置換基を含む)、及び/又は少なくとも1種の他の種類のモノマーを含むことができる。例えば、重合モノマーは、アミン官能性(functionality)、カルボン酸官能性、及びエポキシ官能性からなる群から選択される少なくとも1つの更なる官能性を有する少なくとも1種のモノマーを含むことができる。実施形態によっては、そのモノマーは、上述の置換又は非置換アルキル(メタ)アクリレートモノマー以外の更なるモノマーを実質的に含まない場合がある。
重合した形態の、さまざまな疎水性又は親水性の性質を有するモノマーの相対量については、(第2の低温硬化コーティング組成物内への及び/又は第2の低温硬化コーティング組成物からの、触媒移動を促進することができる)全体的に低い疎水性及び/又は非極性特性を得る目的で、また、第2のヒドロキシ官能性樹脂及び結果として生じる第2の層の他の特性を調節する目的で、調整することができる。したがって、第2の低温硬化コーティング組成物は非極性特性を全体的に有することができる。この非極性特性は、第2のヒドロキシ官能性樹脂の非極性の性質により、また、場合によっては、第2の低温架橋剤の非極性の性質及び/又は第1の低温硬化コーティング組成物中の有機溶媒の非極性の性質が一緒になって、もたらされる。
第2のヒドロキシ官能性樹脂は、一般に、第2の低温架橋剤と等量のヒドロキシ官能性樹脂のガラス転移温度との組合せで、所望の硬度を有する硬化フィルムの生成をもたらす任意のガラス転移温度を有することができる。ヒドロキシ官能性樹脂は、好ましくは−20℃〜100℃、より好ましくは0℃〜75℃、最も好ましくは10℃〜50℃のガラス転移温度を有する。
第2のヒドロキシ官能性樹脂は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定するとき、500〜30,000、又は600〜20,000、又は750〜10,000の数平均分子量(Mn)を有することができる。
第2のヒドロキシ官能性樹脂のヒドロキシル当量は、100〜3,000グラム樹脂/eqヒドロキシル、好ましくは200〜1,500グラム樹脂/eqヒドロキシル、より好ましくは250〜800グラム樹脂/eqヒドロキシル、又はさらには300〜700グラム樹脂/eqヒドロキシルである。
適切なヒドロキシ官能性アクリル樹脂及びポリエステル樹脂は、80〜120℃未満、好ましくは85〜105℃、より好ましくは90〜100℃の所望の硬化温度での反応性にとって十分なヒドロキシル含量を有する。アクリル樹脂は、15〜565mgKOH/g、好ましくは35〜280mgKOH/g、より好ましくは70〜225mgKOH/gのヒドロキシル価を有することができる。ヒドロキシル価は、200mgKOH/g未満、例えば185mgKOH/g未満、又は175mgKOH/g未満であることができる。ヒドロキシ官能性アクリル樹脂は、一般に、1分子当たり平均少なくとも2つの活性水素基を有する。
ヒドロキシ官能性樹脂は、溶剤型コーティング組成物中に、該組成物中の樹脂固形分の総質量に基づいて、25〜75質量パーセント、好ましくは35〜65質量パーセント、より好ましくは45〜65質量パーセントの範囲の量で存在する。
第2の低温架橋剤
第2の低温硬化コーティング組成物中に存在する第2の低温架橋剤は、ブロックされた又はブロックされていないイソシアネート樹脂を含む。
第2の低温硬化コーティング組成物は全体的に非極性の特性を有することができる。この非極性の特性は、第2の低温架橋剤の非極性の性質によってもたらされ、場合によっては、第2のヒドロキシ官能性樹脂の非極性の性質及び/又は第1の低温硬化コーティング組成物中の有機溶媒の非極性の性質が一緒になってもたらされる。
幾つかの実施形態では、イソシアネート樹脂は、ヒドロキシ官能性樹脂のヒドロキシル基と反応してウレタン結合(−NH−CO−O−)、したがって架橋ウレタンを形成する遊離NCO基を有する。
他の実施形態では、イソシアネート樹脂はブロックされたイソシアネート樹脂であり、この樹脂は、ブロッキング基が、遊離イソシアネート基が残るようにイソシアネート樹脂から離脱(すなわち、ブロックを解除)するとき、ヒドロキシ官能性樹脂のヒドロキシル基と反応する。イソシアネート樹脂の遊離NCO官能基は、ヒドロキシ官能性樹脂のヒドロキシル基と反応して、ウレタン結合(−NH−CO−O−)を形成し、架橋ウレタンを形成する。触媒がない場合には、ブロックされたイソシアネート架橋剤はブロックされたままに止まる。高温のときであってもイソシアネート樹脂のブロックがゆっくりと解除されるだけである。その結果、ブロックされたイソシアネート樹脂は、(たとえあったとしても)、金属触媒の非存在下では、80〜120℃の温度でヒドロキシ官能性樹脂と容易には架橋しない。ブロックされたイソシアネート樹脂は、120℃未満の温度で自己架橋することはない。
ブロックされた又はブロックされていないイソシアネート樹脂を有する実施形態では、イソシアネート樹脂は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定するとき、100〜30,000、150〜20,000、又は200〜10,000、又は250〜5,000の数平均分子量(Mn)を有することができる。イソシアネートは、50〜1000、好ましくは100〜500、より好ましくは150〜250のNCO当量(架橋剤のグラム/NCOの当量)を有することができる。
ブロックされた又はブロックされていないイソシアネート樹脂を有する実施形態では、イソシアネート樹脂は、第2のヒドロキシ官能性樹脂を架橋するのに適した、いずれかの有機イソシアネートであってもよい。炭素原子を3個〜36個、特に8個〜約15個含有するイソシアネートが好ましい。適切なジイソシアネートの具体例としては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、エチルエチレンジイソシアネート、2,3−ジメチルエチレンジイソシアネート、1−メチルトリメチレンジイソシアネート、1,3−シクロペンチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,2−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルイレンジイソシアネート、2,6−トルイレンジイソシアネート、4,4−ジフェニレンジイソシアネート(例:4、4’−メチレンビスジフェニルジイソシアネート)、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,4−ナフチレンジイソシアネート、1−イソシアナトメチル−3−イソシアナト−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート又はIPDI)、1,3−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート又はTMXDI)、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ビス(4−イソシアナトフェニル)メタン、4,4’−ジイソシアナトジフェニルエーテル及び2,3−ビス(8−イソシアナトオクチル)−4−オクチル−5−ヘキシルシクロヘキサンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、ヘキサメチレンジイソシアネート、IPDI、及びTMXDIが好適である。より高いイソシアネート官能性のポリイソシアネートを使用することも可能である。これらの具体例には、トリス(4−イソシアナトフェニル)メタン、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、1,3,5−トリス(6−イソシアナトヘキシルビウレット)、ビス(2,5−ジイソシアナト−4−メチルフェニル)メタン、1,3,5−トリス(6−イソシアナトヘキシル)−1,3,5−トリアジナン(triazinane)−2,4,6−トリオン(すなわち、ヘキサメチレンジイソシアネート環状三量体)、1,3,5−トリス(6−イソシアナトヘキシル)及びジイソシアナトトルエンの二量体及び三量体などの高分子ポリイソシアネートがある。さらに、ポリイソシアネートの混合物を使用することも可能である。また、本発明で架橋剤として使用することが考慮されるイソシアネートは、例えば、ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールを含むポリオールから誘導されるプレポリマーであることができる。
ブロックされたイソシアネート樹脂を有する実施形態では、ブロックされたイソシアネート樹脂は実質的にブロックされており、すなわち、90%を超えるNCO基がブロックされており、好ましくは95%を超える、99%を超える、又は99.5%を超えるNCO基がブロックされていることを意味する。第2の低温架橋剤は、遊離のNCO基を完全に欠くものであることができる。また、幾つかの実施形態では、第2のヒドロキシ官能性樹脂は遊離NCO基を欠くべきであり、特定の実施形態では、第2の層を形成する第2の低温硬化コーティング組成物全体が遊離NCO基を欠くものである。
ブロックされたイソシアネート樹脂を有する実施形態では、ブロッキング剤は個々に又は組み合わせて使用することができる。適切なブロッキング剤には、エーテルアルコール、アルキルアルコール、オキシム、アミン、アミド、ヒドロキシルアミン、又は活性水素を含む化合物が含まれる。
典型的なアルキルアルコールブロッキング剤は、アルキル基に1〜20個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式又は芳香族アルキルモノアルコール、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、2−エチルヘキサノール、3,3,5−トリメチルヘキサン−1−オール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロオクタノール、フェノール、ピリジノール、チオフェノール、クレゾール、フェニルカルビノール、及びメチルフェニルカルビノールである。
典型的なエーテルアルコールブロッキング剤は、1〜10個の炭素原子のアルキル基を有する、エチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、又はジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルである。
典型的なオキシムブロッキング剤は、メチルエチルケトンオキシム、メチルイソプロピルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、メチルイソアミルケトンオキシム、メチルn−アミルケトンオキシム、メチル2−エチルヘキシルケトンオキシム、シクロブタノンオキシム、シクロペンタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、3−ペンタノンオキシム、ジイソプロピルケトンオキシム、ジイソブチルケトンオキシム、ジ−2−エチルヘキシルケトンオキシム、アセトンオキシム、ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、プロピオンアルデヒドオキシム、ブチルアルデヒドオキシム、グリオキサールモノオキシム、ジアセチルモノオキシムである。
典型的なヒドロキシルアミンブロッキング剤はエタノールアミンである。典型的なアミドブロッキング剤は、カプロラクタム、メチルアセトアミド、スクシンイミド、及びアセトアニリドである。アミンブロッキング剤には、ジブチルアミンとジイソプロピルアミンが含まれる。
ブロッキング剤の好適な混合物は、グリセロールと、シクロヘキサノンオキシム、ジイソプロピルケトンオキシム又はジ−2−エチルヘキシルケトンオキシムなどのオキシムとの混合物である。
ブロッキング基が解離する温度が高いほど、低温架橋剤が、80〜120℃未満で非極性触媒の存在下で必要な架橋反応を受ける可能性が低くなる。しかし、十分に安定なブロッキング基が存在しない場合には、第2の低温硬化コーティング組成物のポットライフが減少する可能性がある。そのような場合には、第2の低温硬化コーティング組成物は、二成分系として準備しておくことができる。一成分系の場合、第2の低温の低温架橋剤のブロッキング基は、40℃未満、又は好ましくは45℃未満、又は好ましくは50℃未満、又は幾つかの実施形態では、好ましくは75℃未満の温度で、イソシアネート樹脂からブロック解除しない、すなわち、離脱又は化学的に解離しない。他方、第2の低温硬化コーティング組成物の低温架橋剤のブロッキング基は、通常は、120℃未満、又は好ましくは110℃未満、又は好ましくは100℃未満、又は幾つかの実施形態では、好ましくは80℃未満、又は幾つかの実施形態では、好ましくは70℃未満の温度でブロック解除する。
第2の低温硬化溶剤型コーティング組成物のブロックされた架橋剤の具体例は、式(I)〜(VIII)で表される。
(式中、RはC
1〜20アルキル基を表す)
(式中、R’及びR’’は、シクロヘキサノンオキシムでブロックされたイソシアネート、グリセロールでブロックされたイソシアネート、又はその2種のブロッキング試薬のオリゴマー化された組合せを表す)
式(II)の低温架橋剤は、グリセロール及びシクロヘキサノンオキシムのブロッキング剤と、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート又はTMXDIとしても知られる、1,3−ビス(2−イソシアナトプロパン−2−イル)ベンゼンとの組合せである。
オキシムでブロックされたイソシアネート(追加のブロッキング剤なし)は、結晶性が高く、ケトン、アセテート、及びエステル溶媒などの所望の有機溶媒に対する溶解度が低い場合がある。グリセロールなどの第2のブロッキング剤を含めると、ブロックされたイソシアネートに構造的な不規則性が与えられ、それによって結晶性を低下させ、ケトン、アセテート、及びエステル溶媒に対する溶解度を増加させる。特定の実施形態では、ブロックされた官能性の、モル基準で、25%〜45%がグリセロールなどのブロッキング剤に由来し、55%〜75%がシクロヘキサノンオキシムなどのオキシムブロッキング剤に由来し、好ましくは、30%〜40%がグリセロールに、60%〜70%がオキシムブロッキング剤に由来する。
ブロックされたイソシアネート樹脂のブロッキング基(例えば、シクロヘキサノンオキシム)はヒドロキシ官能性樹脂のヒドロキシル基と反応しないが、ブロッキング基の脱離により形成される遊離イソシアネート基は反応する。遊離イソシアネート基は、ブロックされたイソシアネート樹脂と金属触媒とを高温で組み合わせることにより得られる。遊離イソシアネート基は、形成すると、非極性触媒の存在下でヒドロキシ官能性樹脂のヒドロキシル基と反応して、第2のコーティング組成物を硬化させ、また、ウレタンコーティングをもたらす。しかし、上記のように、第2の低温硬化コーティング組成物は、金属触媒を含まず、代わりに、酸触媒、例えば、ブロックされていない有機スルホン酸などの適切な触媒を含む。非極性触媒は、第1の組成物を第2の組成物と接触させると、第2の低温コーティング組成物中に取り込まれる。
低温架橋剤は、第1の低温硬化コーティング組成物中に、該組成物中の樹脂固形分の総質量に基づいて25〜75質量パーセント、好ましくは35〜65質量パーセント、より好ましくは45〜55質量パーセントの範囲の量で存在する。
極性触媒
第2の低温硬化コーティング組成物に含まれる極性触媒は、酸触媒、好ましくはブロックされていない酸触媒及び/又はカルボン酸触媒又はスルホン酸触媒及び/又はpKaが0.25〜1.0の触媒及び/又は強酸触媒であることができる。好ましくは、ブロックされていない触媒には、有機スルホン酸、特にパラ−トルエンスルホン酸(pTSA)、メタンスルホン酸(MSA)、ドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)、ジノニルナフタレンジスルホン酸(DNNDSA)、ポリエチレングリコールスルホン酸、及びそれらの混合物が含まれる。適切なカルボン酸触媒には、ジメチロールプロピオン酸、トリメチロール酢酸、ジメチル酪酸、ジメチルペンタン酸、酪酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ペラルゴン酸、デカン酸、2−エチルヘキサン酸、及びラウリン酸が含まれる。
極性酸触媒は、低温架橋剤のメチロール基及びアルコキシメチル基(例えば、HMMMのCH2OCH3エーテル基)と、上記で検討した、第1の低温硬化コーティング組成物に含有されるヒドロキシ官能性樹脂のヒドロキシル基との間の反応を触媒する機能を果たす。
第2の低温硬化コーティング組成物に含まれる極性触媒の量は、第2の低温硬化性コーティング組成物中の樹脂固形分の総質量に基づいて、0.1〜10質量パーセント、好ましくは0.25〜7.5質量パーセント、より好ましくは1.0〜5.0質量パーセントである。極性触媒の一部が第1の低温硬化コーティング組成物に移動するので、第2の低温硬化コーティング組成物中の極性触媒の最小含有量は、組成物中の樹脂固形分の総質量に基づいて、1.5質量パーセント、2.0質量パーセント、又は2.5質量パーセントであってもよい。
第2の低温硬化コーティング組成物中の組成物固形分の総質量の観点からみると、極性触媒の量は、また、0.05〜10質量パーセント、好ましくは0.25〜7.5質量パーセント、より好ましくは0.5〜5.0質量パーセントの範囲であることができる。極性触媒の最小量は、組成物中の樹脂固形分の総質量に基づいて、少なくとも0.75質量パーセント、少なくとも1.0質量パーセント、又は2.0質量パーセントまで増加させて、極性触媒の、第1の低温硬化コーティング組成物中への十分な移動を確実にすることができる。
顔料及び着色剤
第2の低温硬化コーティング組成物は、また、少なくとも1種の顔料又は着色剤によって着色することができる。第2の低温硬化コーティング組成物に含有される顔料及び着色剤は、第1の低温硬化コーティング組成物について説明したものと同じである。
顔料及び着色剤は、第2の低温硬化性コーティング組成物中の組成物固形分の総質量に基づいて、最大50質量パーセントまで、最大40質量パーセントまで、又は最大30質量パーセントまでの範囲であることができ、また、10質量パーセントと少量でも、5質量パーセントと少量でも、又は1質量パーセントと少量であることができる。第2の低温硬化コーティング組成物の総質量の観点からみると、顔料又は着色剤の含有量は、5〜90質量パーセント、好ましくは10〜70質量パーセント、より好ましくは15〜50質量パーセントの範囲である。第2の低温硬化コーティングは顔料及び/又は着色剤を含まないことが有利である。
溶媒
第2の低温硬化コーティング組成物中に含まれる溶媒としては、第1の低温硬化コーティング組成物が有機溶媒を含有する実施形態では、第1の低温硬化コーティング組成物に関して上述した溶媒と同じもののいくつかの中から選択することができる。第1及び第2の低温硬化コーティング組成物中の溶媒は同じであっても異なっていてもよい。これらの溶媒は異なり、第1及び第2の低温硬化コーティング組成物は異なる極性の異なる溶媒であることが好ましい。第2の低温硬化性コーティング組成物は非極性特性を全体的に有することができる。この非極性特性は、第1の低温硬化コーティング組成物中の有機溶媒が持つ非極性の性質により、場合により、第2のヒドロキシ官能性樹脂の非極性の性質及び/又は第2の低温架橋剤の非極性の性質が一緒になって付与される。
第2の低温硬化コーティング組成物に適した溶媒には、トルエン、キシレン、ナフサ、及び石油蒸留物などの芳香族溶媒;ヘプタン、オクタン、及びヘキサンなどの脂肪族溶媒;酢酸ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸ヘキシル、酢酸ヘプチル、プロピオン酸エチル、イソ酪酸イソブチレン、ジ酢酸エチレングリコール、及び酢酸2−エトキシエチルなどのエステル溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、及びメチルイソブチルケトンなどのケトン溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノールなどの低級アルコール;エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテルなどのグリコールエーテル;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、3−メトキシn−ブチルアセテートなどのグリコールエーテルエステル;N−メチルピロリドン(NMP)などのラクタム;及びそれらの混合物が含まれる。特定の実施形態では、溶媒は、クロロブロモメタン、1−ブロモプロパン、C12〜18n−アルカン、t−ブチルアセテート、ペルクロロエチレン、ベンゾトリフルオリド、p−クロロベンゾトリフルオリド、アセトン、1,2−ジクロロ−1,1,2−トリフルオロエタン、ジメトキシメタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロ−4−メトキシ−ブタン、2−(ジフルオロメトキシメチル)−1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン、1−エトキシ−1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン、及び2−(エトキシジフルオロメチル)−1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンなどのVOC(揮発性有機化合物)免除溶媒である。第2の低温硬化コーティング組成物の溶媒としては、ブタノールなどの低級アルコール及び酢酸t−ブチルなどのエステルから選択される少なくとも1つであることが好ましい。他の好適な実施形態では、第2の低温コーティング組成物の溶媒としては、メチルイソブチルケトンと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと、酢酸t−ブチルとの混合物、メチルイソブチルケトンとトルエンとの混合物、メチルイソブチルケトンとメタノールとの混合物、メチルイソブチルケトンとヘプタンとの混合物、及びメチルイソブチルケトンとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとの混合物から選択される。最も好適なものは、40〜60質量パーセントのトルエン、15〜35質量パーセントのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及び15〜35質量パーセントのメチルイソブチルケトンを含有する混合物である。第2の低温硬化コーティング組成物には水が含まれないことが有利である。
第2の低温硬化コーティング組成物は、第2の低温硬化コーティング組成物の総質量に基づいて、20質量パーセント以上、好ましくは25質量パーセント以上、より好ましくは30質量パーセント以上、かつ、80質量パーセント以下、好ましくは75質量パーセント以下、より好ましくは60質量パーセント以下の全固形分を有する。第2の組成物の希釈剤又は溶媒の総含量は、組成物の総質量に基づいて、少なくとも5質量パーセント〜最大80質量パーセント、好ましくは少なくとも10質量パーセント〜最大70質量パーセント、より好ましくは少なくとも15質量パーセント〜最大50質量パーセントである。
添加剤
第1及び第2のコーティング組成物の各々はまた、界面活性剤、安定剤、湿潤剤、レオロジー制御剤、分散剤、紫外線(UV)吸収剤, ヒンダードアミン光安定剤、接着促進剤などの他の添加剤を含有することができる。これらの添加剤は、それぞれのコーティング組成物中の樹脂固形分の総質量に基づき、0.1〜5質量パーセント、好ましくは0.5〜4質量パーセント、より好ましくは0.5〜2.5質量パーセントを占めることができる。
堆積と硬化
第1及び第2の低温コーティング組成物を基材に塗布し、低温硬化複合コーティングを形成する。適切な基材には、木材、ガラス繊維、金属、ガラス、布、炭素繊維、及びポリマー基材が含まれる。
コートすることができる適切な金属基材としては、鉄、鋼、及びそれらの合金などの鉄金属、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム及びそれらの合金などの非鉄金属、及びこれらの組合せが挙げられる。有用なポリマー基材としては、熱可塑性ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)コポリマー、EPDMゴム、アクリルポリマー、ビニルポリマー、コポリマー及びそれらの混合物などの熱可塑性材料が挙げられる。熱可塑性ポリオレフィンが好適である。適切な基材には、上記の材料の組合せ、例えば、ポリマー基材材料と、鋼、亜鉛めっき鋼、アルミニウム、又はマグネシウムなどの別の種類の材料との組合せがさらに含まれる。
低温硬化コーティング組成物は、自動車、トラック、及びトラクターなどのモーター車両に見られるポリマー基材をコーティングするために特に有用である。低温硬化コーティング組成物は、また、成形品、玩具、スポーツ用品、並びに電子デバイス及び小型電気器具用のケース類又はカバー類にも塗布することができる。各コンポーネントは任意の形状をとることができるが、車体(フレーム)、ボンネット、ドア、フェンダー、バンパー、及び/又は自動車用のトリムなどの自動車車体コンポーネントの形態であることが好ましい。
低温硬化複合コーティングは、基材に第1及び第2の低温硬化コーティング組成物を連続して塗布することにより形成される。第1の低温硬化コーティング組成物を基材に塗布すると、第1の層が設けられる。第1の層を適用した後、第1の層中の水又は有機溶媒などの溶媒は、加熱又は空気乾燥によって第1の層から部分的又は完全に追い出すことができる。例えば、37〜60℃で1〜10分間、大気フラッシュを続けて、例えば、溶媒の一部を部分的に除去することができる。大気フラッシュにより、十分な溶媒が除去され、その結果、第1の層の固形分が60から95質量パーセント、70から90質量パーセント、又は75から85質量パーセントに上昇する。あるいは、基材上に配置した第1層から溶媒を除去しなくてもよい。第1の層の加熱は、ヒドロキシ官能性樹脂と低温架橋剤との間の時期尚早な架橋、又はこれらの成分の自己架橋が起きないように行う必要がある。架橋すると、触媒の、第1の層に出入りする能力が低下するからである。
部分的に又は完全に乾燥させることができる第1の層を塗布した後、第2の低温硬化コーティング組成物を第1の層に塗布し、第2の層(トップコート)を得る。第2層は第1層の上に直接塗布することが有利である。第1層と第2層が一緒になって、低温硬化複合コーティングを形成する。第2層は有利にはクリアコートである。これに関連して、トップコートは、他の層がトップコート上に含まれてもよいため、最も外側の塗膜であることを必ずしも意味しない。同様に、第1の層は、必ずしも基材と接触する最初の塗膜である必要はなく、第1の層の下で基材上に追加の層、例えば、e−コート又はプライマー層を設けることができる。
最初に堆積した第1の層は、第1のヒドロキシ官能性樹脂、アミノプラスト架橋剤、及び非極性触媒を含み、最初に堆積した第2の層は、第2のヒドロキシ官能性樹脂、イソシアネート架橋剤、及び極性触媒を含む。
第1層を備えた基材上に第2の層を配置し、第2の層と第1の層とが互いに接触するようにした後、第1の層の非極性触媒は部分的に第2の層内に移動し、第2層の極性触媒は部分的に第1の層内に移動する。結果として、低温硬化複合コーティングは、最終的に、基材、最終の第1の層、及び最終の第2の層を含み、ここで最終の第1の層は、第1のヒドロキシ官能性樹脂、アミノプラスト架橋剤、及び非極性触媒及び極性触媒を含み、最終の第2の層は、第2のヒドロキシ官能性樹脂、イソシアネート架橋剤、及び極性触媒及び非極性触媒を含む。
注目すべきは、第1のヒドロキシ官能性樹脂とアミノプラスト架橋剤とは、非極性触媒の存在下では、自己架橋又は互いに架橋することができないが、第2の層から第1の層に移動した極性触媒の存在下では、互いに架橋することができる。同様に、第2のヒドロキシ官能性樹脂とイソシアネート架橋剤とは、極性触媒の存在下では自己架橋又は互いに架橋することができないが、第1の層から第2の層に移動した非極性触媒の存在下では、互いに架橋することができる。したがって、低温硬化複合コーティングを80〜120℃未満、好ましくは90〜115℃、より好ましくは100〜110℃の温度に加熱すると、第1の層と第2の層が同時に硬化し、硬化二重コーティングが得られる。硬化操作では、残っている希釈剤を追い出し、また、第1の層と第2の層のフィルム形成材料を各々架橋させる。
幾つかの実施形態では、第1のヒドロキシ官能性樹脂が、第1の層からの非極性触媒の移動を促進し、及び/又は第1の層への極性触媒の移動を促進する。同様に、幾つかの実施形態では、第2のヒドロキシ官能性樹脂が、第2の層からの極性触媒の移動を促進し、及び/又は第2の層への非極性触媒の移動を促進する。
二重コーティングが硬化しているとき、第1の層は、第2の層から移動してきた極性触媒の少なくとも一部を含有する。硬化後の第1の層中の極性触媒の量は、第2の層の堆積直後の第2の層中の極性触媒の初期量の、好ましくは20質量%より多く、より好ましくは30質量%より多く、より好ましくは40質量%より多く、より好ましくは50質量%より多い。非極性触媒が第1の層から第2の層に移動しても、第1の層は必然的に非ゼロ量(nonzero amount)の非極性触媒を保持するが、その量は第1の層を基材に堆積した時よりも少ない。
非極性触媒及び極性触媒は、それぞれ独立して、得られる硬化した第1の層中に、第1の層中の樹脂固形分の総質量に基づいて、0.01〜10質量パーセント、好ましくは0.05〜7.5質量パーセント、より好ましくは0.25〜7.5質量パーセント、及びさらに好ましくは1.0〜5.0質量パーセントの量で含まれる。
極性触媒は第2の層から第1の層内に移動するため、硬化後の第1の層中の極性触媒の含有量は、非極性触媒の含有量よりも、例えば少なくとも0.25質量パーセント、少なくとも0.5質量パーセント、又は少なくとも1質量パーセント少なくなる場合がある。他の実施形態では、硬化後の第1の層中の極性触媒の含有量は、硬化後の第1の層中の非極性触媒の含有量よりも多い。
同様に、二重コーティングが硬化しているとき、第2の層は、第1の層から移動してきた非極性触媒の少なくとも一部を含有する。硬化後の第2の層中の非極性触媒の量は、第1の層を堆積した直後の第1の層中の非極性触媒の初期量の、好ましくは20質量%より多く、より好ましくは30質量%より多く、より好ましくは40質量%より多く、より好ましくは50質量%より多い。極性触媒が第2の層から第1の層に移動しても、第2の層は必然的に非ゼロ量の極性触媒を保持するが、この量は第2の層を第1の層に直接堆積した時よりも少ない。
また、非極性触媒及び極性触媒は、それぞれ独立して、得られる硬化した第2の層中に、第2の層中の樹脂固形分の総質量に基づいて、0.01〜10質量パーセント、好ましくは0.05〜7.5質量パーセント、より好ましくは1.0〜5.0質量パーセントの量で含まれる。
非極性触媒が第1の層から第2の層に移動するため、硬化後の第2の層中の非極性触媒の含有量は、一般に、極性触媒の含有量よりも、例えば少なくとも0.25質量パーセント、少なくとも0.5質量パーセント、又は少なくとも1質量パーセントだけ少ない場合がある。他の実施形態では、硬化後の第2の層中の非極性触媒の含有量は、硬化後の第2の層中の極性触媒の含有量よりも多い。
第1及び第2の低温硬化コーティング組成物の各々は、5〜90μm、好ましくは7.5〜75μm、より好ましくは10〜50μmの乾燥膜厚を与えるように基材に塗布する。例えば、第1の層の乾燥膜厚は5〜35μm、好ましくは10〜30μm、より好ましくは約20μmであり、第2の層の乾燥膜厚は10〜70μm、好ましくは25〜50μm、より好ましくは約45μmである。
第1の層と第2の層のそれぞれへの触媒の移動は、レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析(LA−ICPMS)深さプロファイリング又はex situ X線光電子分光法(XPS)で補完されたレーザーアブレーションによって決定することができる。第1の層からの非極性触媒は、少なくとも15μm、好ましくは25μm、より好ましくは完全に第2の層を通して移動する。同様に、第2の層からの極性触媒は、少なくとも20μm、好ましくは30μm、より好ましくは完全に第1の層を通して移動する。
別の実施形態では、第1の層はイソシアネート架橋剤を含むことができ、第2の層はアミノプラスト架橋剤を含むことができる。この場合、得られる低温複合コーティングにおいては、第1の層中の極性触媒の含有量は非極性触媒の含有量より少なく、第2の層中の非極性触媒の含有量は極性触媒の含有量より少なくてもよい。
二重コーティングは、第1の低温硬化コーティング組成物、第2の低温硬化コーティング組成物、及び任意に、前記組成物を塗布又は乾燥するのに適した1つ以上の他のコンポーネントを含むキットを用いて堆積することができる。
本発明の特定の実施形態を以下の項目で説明する。
項目1:二重コーティングであって、下記:
基材と;
第1の低温硬化コーティング組成物を含む第1の層であって、該第1の低温硬化コーティング組成物が
第1のヒドロキシ官能性樹脂、
アミノプラスト樹脂低温架橋剤、
少なくとも1種の非極性触媒、及び
溶媒
を含む極性組成物である層と、
第2の低温硬化コーティング組成物を含む第2の層であって、該第2の低温硬化コーティング組成物が
第2のヒドロキシ官能性樹脂、
任意にブロックされたイソシアネート樹脂である第2の低温架橋剤、
少なくとも1種の極性触媒、及び
有機溶媒
を含む非極性組成物である層と
を含み、
該第1の層と該第2の層が互いに直接接触しており、
該少なくとも1種の非極性触媒が、第2のヒドロキシ官能性樹脂と第2の低温架橋剤との間の架橋反応を触媒し、第1のヒドロキシ官能性樹脂とアミノプラスト樹脂低温架橋剤との間の架橋反応を触媒しないものであり、
該少なくとも1種の極性触媒が、第1のヒドロキシ官能性樹脂とアミノプラスト樹脂低温架橋剤との間の架橋反応を触媒し、第2のヒドロキシ官能性樹脂と第2の低温架橋剤との間の架橋反応を触媒しないものである、二重コーティング。
項目2:前記第1及び第2の低温硬化コーティング組成物が100℃の温度で20分以内に硬化するものである、項目1のコーティング。
項目3:前記少なくとも1種の非極性触媒が少なくとも部分的にフッ素化されたアルキル基、シラン基、又はシロキサン基を含む、有機金属触媒又は混合有機金属触媒を含む、項目1のコーティング。
項目4:前記少なくとも1種の極性触媒がC1〜C4アルキル又はポリアルキレングリコールを含む水溶性酸を含む、項目1のコーティング。
項目5:前記少なくとも1種の非極性触媒が少なくとも部分的にフッ素化されたアルキル基を含む、有機ジルコニウム触媒、有機リチウム触媒、有機スズ触媒、又は有機亜鉛触媒である、項目1のコーティング。
項目6:前記少なくとも1種の非極性触媒が2つの完全にフッ素化されたアルキル基を含む、有機スズ触媒又は有機亜鉛触媒である、項目5のコーティング。
項目7:前記少なくとも1種の非極性触媒がジブチルスズビス(ペルフルオロペンタノエート)である、項目6のコーティング。
項目8:前記少なくとも1種の非極性触媒が亜鉛ビス(ペルフルオロアルカノエート)である、項目5のコーティング。
項目9:前記少なくとも1種の非極性触媒がトリアルコキシシラン基を含む有機ビスマス触媒である、項目1のコーティング。
項目10:前記少なくとも1種の極性触媒がスルホン酸である、項目1のコーティング。
項目11:前記少なくとも1種の極性触媒がメタンスルホン酸又はポリエチレングリコールスルホン酸である、項目10のコーティング。
項目12:前記第1のヒドロキシ官能性樹脂が低疎水性アクリル樹脂である、項目1のコーティング。低親水性アクリル
項目13:前記アミノプラスト樹脂がホルムアルデヒドとメラミンとの縮合生成物である、項目1のコーティング。
項目14:前記アミノプラスト樹脂が、メチロール及び/又は式−CH2OR1(式中、R1が1〜6個の炭素原子を有するアルキル鎖である)のアルコキシメチル基を含むメラミンホルムアルデヒド樹脂である、項目1のコーティング。
項目15:前記第1及び第2の層のそれぞれが、少なくとも30日の安定したポットライフを有する、項目1のコーティング。
項目16:前記第2の層が非極性クリアコートであり、前記第1の層が溶媒として水を含む、項目1のコーティング。
項目17:前記第1の低温硬化コーティング組成物が顔料又は着色剤をさらに含む、項目1のコーティング。
項目18:前記基材が、少なくとも1種の熱可塑性材料として、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)コポリマー、EPDMゴム、アクリルポリマー、又はビニルポリマーを含む、項目1のコーティング。
項目19:前記基材が、少なくとも1つの追加の材料として、鋼、亜鉛めっき鋼、アルミニウム、又はマグネシウムをさらに含む、項目18のコーティング。
項目20:前記第1の低温硬化コーティング組成物が、組成物中の樹脂固形分の総質量に基づいて、
35〜65質量パーセントの第1のヒドロキシ官能性樹脂、
15〜65質量パーセントのアミノプラスト樹脂低温架橋剤、及び
0.05〜7.5質量パーセントの少なくとも1種の非極性触媒
を含む、項目1のコーティング。
項目21:前記第2の低温硬化コーティング組成物が、組成物中の樹脂固形分の総質量に基づいて、
35〜65質量パーセントの第2のヒドロキシ官能性樹脂、
35〜65質量パーセントの第2の低温架橋剤、及び
0.25〜7.5質量パーセントの少なくとも1種の極性触媒
を含む、項目1のコーティング。
項目22:80℃から120℃未満の温度でコーティングを硬化させることを含む、項目1のコーティングを硬化させる方法。
項目23:硬化後の第1の層中の少なくとも1種の極性触媒の量が、第2の層を堆積した直後の第2の層中の少なくとも1種の極性触媒の初期量の50質量%より多い、項目22の方法。
項目24:硬化後の第2の層中の少なくとも1種の非極性触媒の量が、第1の層を堆積した直後の第1の層中の少なくとも1種の非極性触媒の初期量の50質量%より多い、項目23の方法。
項目25:項目1の二重コーティングを硬化させることにより基材を被覆する方法であって、
基材上に第1の層を堆積し、
第2の層を第1の層上に直接堆積させ、それにより二重コーティングを得、
80℃から120℃未満の温度で二重コーティングを硬化させ、それにより硬化コーティングを得ることを含む方法。
項目26:硬化後の第1の層中の少なくとも1種の極性触媒の量が、第2の層を堆積した直後の第2の層中の少なくとも1種の極性触媒の初期量の50質量%より多く、
硬化後の第2の層中の少なくとも1種の非極性触媒の量が、第1の層を堆積した直後の第1の層中の少なくとも1種の非極性触媒の初期量の50質量%より多い、項目25の方法。
項目27:項目23の方法により得られた硬化コーティング。
項目28:第1の層が、基材上に第1の層を堆積した時より少ない非ゼロ量の少なくとも1種の非極性触媒を含み、第2の層が、第1の層上に第2の層を直接堆積した時より少ない非ゼロ量の少なくとも1種の極性触媒を含む、項目25の硬化コーティング。
項目29:硬化コーティングであって、
基材と;
基材上に堆積した第1の層であって、硬化した形態の第1のヒドロキシ官能性樹脂及びアミノプラスト樹脂低温架橋剤を含む層と;
第1の層上に直接、かつ、第1の層に接触して堆積した第2の層であって、硬化した形態で、第2のヒドロキシ官能性樹脂、及び任意にブロックされたイソシアネート樹脂である第2の低温架橋剤を含む層と
を含み、
ここで、第1の層は、非ゼロ量の少なくとも1種の非極性触媒をさらに含み、該非極性触媒は、第2のヒドロキシ官能性樹脂と第2の低温架橋剤との間の架橋反応を触媒し、第1のヒドロキシ官能性樹脂とアミノプラスト樹脂低温架橋剤との間の架橋反応を触媒しないものであり、
ここで、第2の層は、非ゼロ量の少なくとも1種の極性触媒をさらに含み、該極性触媒は、第1のヒドロキシ官能性樹脂とアミノプラスト樹脂低温架橋剤との間の架橋反応を触媒し、第2のヒドロキシ官能性樹脂と第2の低温架橋剤との間の架橋反応を触媒しないものである、
硬化したコーティング。
項目30:キットであって、
第1成分として、
第1のヒドロキシ官能性樹脂、
アミノプラスト樹脂低温架橋剤、
少なくとも1種の非極性触媒、及び
溶媒
を含む第1の低温硬化コーティング組成物、
及び
第2の成分として、
第2のヒドロキシ官能性樹脂、
任意にブロックされたイソシアネート樹脂である第2の低温架橋剤、
少なくとも1種の極性触媒、及び
有機溶媒
を含む溶剤型組成物である、第2の低温硬化コーティング組成物
を含み、
該少なくとも1種の非極性触媒が、第2のヒドロキシ官能性樹脂と第2の低温架橋剤との間の架橋反応を触媒し、第1のヒドロキシ官能性樹脂とアミノプラスト樹脂低温架橋剤との間の架橋反応を触媒しないものであり、
該少なくとも1種の極性触媒が、第1のヒドロキシ官能性樹脂とアミノプラスト樹脂低温架橋剤との間の架橋反応を触媒し、第2のヒドロキシ官能性樹脂と第2の低温架橋剤との間の架橋反応を触媒しないものである、キット。
項目31:二重コーティングであって、下記:
基材と;
第1のヒドロキシ官能性樹脂、
アミノプラスト樹脂低温架橋剤、
9.86m2/sより大きい拡散係数を有する少なくとも1種の第1の触媒、及び
溶媒
を含む極性組成物である、第1の低温硬化コーティング組成物を含む第1の層と、
第2のヒドロキシ官能性樹脂、
任意にブロックされたイソシアネート樹脂である第2の低温架橋剤、
少なくとも1種の第2の触媒、及び
有機溶媒
を含む非極性組成物である、第2の低温硬化コーティング組成物を含む第2の層と
を含み、
該第1の層と該第2の層が互いに直接接触しており。
該少なくとも1種の非極性触媒が、第2のヒドロキシ官能性樹脂と第2の低温架橋剤との間の架橋反応を触媒し、第1のヒドロキシ官能性樹脂とアミノプラスト樹脂低温架橋剤との間の架橋反応を触媒しないものであり、
該少なくとも1種の極性触媒が、第1のヒドロキシ官能性樹脂とアミノプラスト樹脂低温架橋剤との間の架橋反応を触媒し、第2のヒドロキシ官能性樹脂と第2の低温架橋剤との間の架橋反応を触媒しないものである、二重コーティング。
項目32:少なくとも1種の第2の触媒が少なくとも12.08m2/sの拡散係数を有する、項目31の二重コーティング。
本発明を以下の実施例でさらに説明するが、これらは単に例示的なものであり、説明した本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1
35.8グラムのアクリル樹脂(固形分22.4グラム)、0.5グラムのポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン溶液(BYK 325)、0.1グラムのポリアクリレート溶液(BYK 390)、63.5グラムの、分岐したブロックされた芳香族イソシアネート、及び0.16グラムのパラ−トルエンスルホン酸溶液(pTSA、固形分0.03グラム)を混合することにより、溶剤型の第2の層を調製した。第2の層の粘度を25℃で100cPに低下させるため、50グラムのナフサを添加した。
25.1グラムのミクロゲル、15.7グラムのヘキサ(メトキシメチル)メラミン(Resimene(登録商標)747、固形分15.6グラム)、0.8グラムのn−メチルピロリドン、1.8グラムのn−ブチルアセテート、5.7グラムのn−ペンチルプロピオネート、0.33グラムのジメチルエタノールアミン、6.8グラムのポリエステル樹脂(Parotal(登録商標)VP926009、BASF Corp.)、24.8グラムのアクリル樹脂(固形分15.6グラム)、0.87グラムの高分子分散剤(Solsperse(登録商標)32600、固形分0.35グラム)、0.05グラムのアクリルポリマー(Lindron(登録商標)22、固形分0.025グラム)、及び3.7グラムのジブチルスズジラウレート(DBTDL、Dura Chemicals, Inc.)又は4.3グラムのジオクチルスズジラウレート(DOTDL、Santa Cruz Biotechnology,Inc.)又は2.1グラムのジブチルスズジアセテート(DBTDA、FASCAT(登録商標)触媒)からなる溶剤型の第1の層を混合した。最終粘度は、25℃で40cP〜60cPであった。
二重コーティングの塗布はアルミニウムパネルに2つの別々の塗布により行い、第1の層を最初に塗布した。第1の層は、周囲条件(約24〜28°C、湿度50〜65%)で塗布後7分間フラッシュした。第2のコートである溶剤型の第2の層を塗布し、周囲条件で10分間フラッシュし、次に電気オーブン(Despatch Industries)に移し、パネルが目標温度110℃に達したら20分間焼き付けを行った。これについては、実験室で作製した熱電対により監視制御した。
第1の層の厚さは15〜20ミクロンで、第2の層の厚さは40〜60ミクロンである。硬さは、押込硬さ試験装置(Tukon(ツーコン) 2100、Instron)を使用して測定した。二重コーティング系の硬さは10〜15ヌープ(knoop)である。メチルエチルケトン(MEK)ワイプを使用して、塗膜の架橋の程度を決定する。丸頭ハンマーの端を寒冷紗で包み、MEKを浸み込ませ、二重コーティング系上で25、50、又は100回ダブル摩擦を行い、その後の塗膜の変化を記録した。DBTDAを使用した場合に最善の硬化反応を示す結果を表1に示す。
硬化した二重コーティング内のpTSAからの硫黄及びDBTDLからのスズの移動を確認及び分析するために、検出方法として質量分析と連動したレーザーアブレーション誘導結合プラズマ(LA−ICPMS)を利用して、当該2種の元素の深さ方向プロファイルを得た。
レーザーアブレーションは、約200μmのアブレーションスポットを持つCEM LSX−213システムを使用して実施した。硬化した二重コーティング全体にわたって十分な測定値を得るのに十分な数の工程を確保するようにレーザーの調整を行った。
上記LA−ICPMSは、Perkin Elmer NexION 300Dを用いて実施した。
図1、図2、及び図3は、118Sn同位体を検出することによるLA−ICPMSから得たスズ移動の結果を示している。硫黄、すなわち32S同位体を検出することはできなかった。また、13C信号をも観測して塗膜構造の一貫性を確認し、27Alを検出して基材にいつ接触したかを特定した。
アブレーション距離が工程当たり2.96μmであることを踏まえると、DBTDLは、第1の層から、第2の層の全距離にわたり、17工程すなわち50.0μmを移動した。また、DOTDLは、第2の層全距離を移動した。このとき、工程当たり2.13μm、23.5工程で、これも50μmである。DBTDAの場合は、第2の層の全長を移動した。このとき、1工程当たり2.1μm、20.4工程で、これは43.0μmの距離になる。
一般に、触媒の各々は、二重コーティングの各層全体にわたって同様の定性的分布を示し、移動が生じたことを示す。
実施例2
各種の触媒についての拡散係数を、フィックの拡散モデルを使用して得た。これらを表2及び表3に示す。
スルホン酸触媒の重量平均分子量及びpKa値をさらに下記の表4に示す。
アクリル樹脂(BASF Corp.)、表面添加剤(BYK Industries)、及び合成された新規ブロック化イソシアネートを混合することにより、溶剤型の第2の層(クリアコート)組成物を調製した。次に、基材に塗布する前に、下記の表5及び6に示すように、触媒を加えた。第2の層からのスルホン酸触媒の移動を試験するために、カンファー−10−スルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ノナフルオロブタン−1−スルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、及びジノニルナフタレンスルホン酸を使用した。第1の層から第2の層への触媒の移動を試験するために、p−トルエンスルホン酸を第2の層の一定の第2の触媒として使用した。
ミクロゲル(BASF Corp.)、低イミノメラミン(INEOS)、レオロジー調整剤(Lindau Chemicals、Inc.)、溶媒、ポリエステル樹脂(BASF Corp.)、及びポリオール官能性アクリル(BASF Corp.)を混合して、溶剤型の第1の層(ベースコート)組成物を調製した。次に、これを基材に塗布する前に、触媒を加えた。第1の層からのスズ含有触媒の移動を試験するために、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジネオデカノエート、ジオクチルスズジラウレート、極性アクリルスズポリマー、ジブチルスズジアセテート、及びジブチルスズジペルフルオロペンタノエートを使用した。第2の層から第1の層への触媒の移動を試験するために、ジブチルスズジアセテートを第1の層に一定の成分として使用した。
Cathoguard 800(BASF Corp.)で電着塗装した4インチ×12インチの鋼製パネル(ACT Test Panels、LLC.)、又はアルミニウムパネル(ACT Test Panels、LLC.)をイソプロパノールワイプ(Contek、LLC)できれいに拭き、塗膜構造体を得るため、層塗布の間に取り除くための2片のテープ(インターテープポリマーグループ)をパネルに準備した。パネル上に、上記溶剤型の第1の層(ベースコート)組成物を二層状に、塗装と塗装の間に30秒置いてスプレーした。ベースコート層全体を周囲条件(約24〜28℃、湿度50〜65%)で7分間フラッシュし、テープの第1の片を取り外し、次に上記の溶剤型の第2の層(クリアコート)組成物を二層状に、塗装と塗装の間に30秒置いて塗布した。次に、テープのもう1片を取り外した。クリアコート層を周囲条件で10分間フラッシュした後、電気オーブン(Despatch Industries)に移し、パネルが110℃の目標温度に達したら20分間焼き付けを行った。温度は熱電対で監視制御した。
各膜厚の測定を、ASTM D1005−95(2013)に従って、Fischer Dualscope FMP20Cマイクロメーターを使用して行った。第1の層(ベースコート)の厚さは10〜20ミクロンであり、第2の層(クリアコート)の厚さは40〜50ミクロンであった。ヌープ硬度は、ASTM D1474/D1474M−13に従って、Wilson Tukon2100を用い25gの圧力を18秒間使用して測定した。硬化した二重コーティング系の硬度は10〜15ヌープであった。メチルエチルケトン(MEK)ワイプを使用して、対照用塗膜と移動実験用塗膜との両方について架橋の程度を決定した。0.85kgの丸頭ハンマーの丸い側を寒冷紗で包み、MEKを浸み込ませ、硬化した二重コーティング系の上に25回、50回、又は100回ダブル摩擦を行い、その後の塗膜変化を記録した。
触媒分布の分析を、レーザーアブレーション、誘導結合プラズマ質量分析(LA−ICPMS)を使用した元素検出によって、Perkin Elmer NexION 300Dを用いて行った。準備した、二重層コーティングを施した金属パネルを試料ホルダーに取り付け、その後、試料ホルダーをキャリアガスAr及びHeでパージした密閉チャンバーに入れた。チャンバー上部の特別な窓に高エネルギーパルスレーザー光を導き通過させ、これによりコーティング材料のスパッタリングを行った。各種のスルホン酸触媒及び有機スズ触媒のプローブとして、スズ元素及び硫黄元素を検出した。レーザーのパラメータは、それぞれ、毎回2ミクロン〜5ミクロンの範囲のスパッタ率を達成することができるように調整した。このように、触媒の分布は、元素カウント対時間又は塗膜の厚さを確認することによって特徴付けを行った。
LA−ICPMSデータをスペクトルで図4〜15に示す。LA−ICPMSデータは、また、表7のデータに示すスルホン酸触媒の移動について数値でも示す(5つのピークの平均)。
上記の教示に照らして、本発明について多数の修正及び変更が可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、本明細書に具体的に記載されている以外の方法で本発明を実施することができることを理解されたい。