図1A〜1Cは、NSG−(Kb Db)null(IAnull)およびNSG−B2Mnull(IA IE)nullマウスにおけるMHCクラスIおよびクラスII発現の代表的なフローサイトメトリーを示す。NSG、NSG−(Kb Db)null(IAnull)、およびNSG−B2Mnull(IA IE)nullノックアウトマウスからの脾臓を、酵素および機械的消化によって解離した。
図1Aは、単球由来樹状細胞が生存細胞において、CD11b+、Ly6Gdim、CD11c+、およびLy6C−として同定されたことを示すグラフである。
図1Bは、各株から回収した単球由来樹状細胞の、マウスH2KdおよびH2Kbの発現に関する評価の結果を示すグラフである。代表的な染色を、全ての株に関して示す(N=2)。
図1Cは、各株から回収した単球由来樹状細胞の、マウスH2 IAg7およびH2 IAbの発現に関する評価の結果を示すグラフである。代表的な染色を全ての株に関して示す(N=2)。
図2は、NSG−(Kb Db)null(IAnull)およびNSG−B2Mnull(IA IE)nullマウスの血清中のヒトIgGの半減期を示すグラフである。マウスに、ヒトIgG 200μgをIV注射して、示した時点で採血して血清を回収した。血清を循環中のヒトIgGのELISA分析のために使用した。注射の2分後の1回目の採血は、100%血清IgGであると考えられた。各点は、月齢2〜3ヶ月の雄性マウス5匹のIgGの平均値±標準誤差を表す。
図3Aおよび3Bは、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)の注射後のマウスMHCクラスIおよびIIの両方の発現を欠如するNSGマウスの生存を示す。レシピエントマウスに、PBMC 10×106個を静脈内注射(IV)し、マウスを全身健康状態および生存に関してモニターした。
図3Aは、NSG、NSG−(IAnull)、NSG−(Kb Db)null、およびNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスをPBMCのレシピエントとして使用した場合の%生存を示すグラフである。データは、3回の独立した実験を表す。ログランク統計値を使用して、群の間の生存分布を検定した。
図3Bは、NSG、NSG−(IA IE)null、NSG−B2Mnull、およびNSG−B2Mnull(IA IE)nullマウスをPBMCのレシピエントとして使用した場合の%生存を示すグラフである。データは、3回の独立した実験を表す。ログランク統計値を使用して、群の間の生存分布を検定した。
図4A〜4Dは、PBMCの注射後のマウスMHCクラスIおよびIIの両方の発現を欠如するNSGマウスにおけるヒトCD45+細胞キメリズムレベルを示す。レシピエントマウスに、PBMC 10×106個をIV注射し、末梢血(図4Aおよび図4C)および脾臓(図4Bおよび図4D)におけるヒトCD45+細胞の割合を決定することによって、マウスをヒト細胞キメリズムのレベルに関してモニターした。
図4Aは、PBMCを10週間にわたって注射したNSG、NSG−(IAnull)、NSG−(Kb Db)null、およびNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスの血液においてモニターしたヒト細胞キメリズムレベルを示すグラフである。データは3回の独立した実験を表す。二元配置ANOVAを使用して、各時点での群の間の有意差を決定した。6週目;NSGとNSG−(Kb Db)nullとの比較に関してp<0.01、およびNSGとNSG−(Kb Db)null(IAnull)との比較に関してp<0.001;NSG−(IAnull)とNSG−(Kb Db)nullとの比較に関してp<0.01、およびNSG−(IAnull)とNSG−(Kb Db)null(IAnull)との比較に関してp<0.001。
図4Bは、PBMCを注射した後安楽死させたNSG、NSG−(IAnul l)、NSG−(Kb Db)null、およびNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスの脾臓においてモニターしたヒト細胞キメリズムレベルを示すグラフである。一元配置ANOVAを使用して、群の間の有意差を決定した。*はp<0.05を表し、**はp<0.01を表す。
図4Cは、PBMCを10週間にわたって注射したNSG、NSG−(IA IE)null、NSG−B2Mnull、およびNSG−B2Mnull(IA IE)nullマウスの血液においてモニターしたヒト細胞キメリズムレベルを示すグラフである。データは3回の独立した実験を表す。二元配置ANOVAを使用して、各時点での群の間の有意差を決定した。4週目;NSGとNSG−B2Mnull(IA IE)nullとの比較に関してp<0.01、NSG−(IA IE)nullとNSG−B2Mnull(IA IE)nullとの比較に関してp<0.01、およびNSG−B2MnullとNSG−B2Mnull(IA IE)nullとの比較に関してp<0.05。6週目;NSGとNSG−B2Mnull(IA IE)nullとの比較に関してp<0.05、NSG−(IA IE)nullとNSG−B2Mnullとの比較に関してp<0.05、NSG−(IA IE)nullとNSG−B2Mnull(IA IE)nullとの比較に関してp<0.01。8週目;NSGとNSG−B2Mnullとの比較に関してp<0.001、NSGとNSG−B2Mnull(IA IE)nullとの比較に関してp<0.01、NSG−(IA IE)nullとNSG−B2Mnullとの比較に関してp<0.001、NSG−(IA IE)nullとNSG−B2Mnull(IA IE)nullとの比較に関してp<0.01。10週目;NSGとNSG−B2Mnullとの比較に関してp<0.01、NSGとNSG−B2Mnull(IA IE)nullとの比較に関してp<0.01、およびNSG−(IA IE)nullとNSG−B2Mnullとの比較に関してp<0.01、NSG−(IA IE)nullとNSG−B2Mnull(IA IE)nullとの比較に関してp<0.01。
図4Dは、PBMCを注射した後安楽死させたNSG、NSG−(IA IE)null、NSG−B2Mnull、およびNSG−B2Mnull(IA IE)nullマウスの脾臓においてモニターしたヒト細胞キメリズムレベルを示すグラフである。一元配置ANOVAを使用して、群の間の有意差を決定した。**はp<0.01を表す。
図5A〜5Dは、PBMCの注射後のマウスMHCクラスIおよびIIの両方の発現を欠如するNSGマウスにおけるヒトT細胞およびB細胞の生着を示す。レシピエントマウスに、PBMC 10×106個をIV注射し、マウスを、末梢血中のヒトCD3+ T細胞(図5Aおよび図5C)およびCD20+ B細胞(図5Bおよび図5D)のレベルに関してモニターした。
図5Aは、NSG(N=7)、NSG−(IAnull)(N=5)、NSG−(Kb Db)null(N=7)、およびNSG−(Kb Db)null(IAnull)(N=8)マウスをPBMCのレシピエントとして使用した場合のヒトCD3+細胞(CD45の%)を示すグラフである。データは3回の独立した実験を表す。二元配置ANOVAを使用して、各時点での群の間の有意差を決定した。*はp<0.05を表す。
図5Bは、NSG(N=7)、NSG−(IAnull)(N=5)、NSG−(Kb Db)null(N=7)、およびNSG−(Kb Db)null(IAnull)(N=8)マウスをPBMCのレシピエントとして使用した場合のヒトCD20+細胞(CD45の%)を示すグラフである。データは3回の独立した実験を表す。二元配置ANOVAを使用して、各時点での群の間の有意差を決定した。*はp<0.05を表す。
図5Cは、NSG(N=6)、NSG−(IA IE)null(N=6)、NSG−B2Mnull(N=5)、およびNSG−B2Mnull(IA IE)null(N=7)マウスをPBMCのレシピエントとして使用した場合の、ヒトCD3+細胞(CD45の%)を示すグラフである。データは3回の独立した実験を表す。二元配置ANOVAを使用して、各時点での群の間の有意差を決定した。*はp<0.05を表す。
図5Dは、NSG(N=6)、NSG−(IA IE)null(N=6)、NSG−B2Mnull(N=5)、およびNSG−B2Mnull(IA IE)null(N=7)マウスをPBMCのレシピエントとして使用した場合の、ヒトCD20+細胞(CD45の%)を示すグラフである。データは3回の独立した実験を表す。二元配置ANOVAを使用して、各時点での群の間の有意差を決定した。*はp<0.05を表す。
図6A〜6Hは、PBMCを注射したNSG、NSG−(IAnull)、NSG−(Kb Db)null、およびNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスにおいて生着したヒトT細胞の表現型分析を示す。レシピエントマウスにPBMC 10×106個をIV注射し、注射の4週間後、マウスを、末梢血中のヒトCD3+/CD4+およびCD3/CD8+ T細胞のレベル(図6Aおよび図6D)ならびにT細胞表現型(図6B、図6Cおよび図6E〜図6H)に関してモニターした。データは2回の独立した実験を表す。一元配置ANOVAを使用して群の間の有意差を決定した。*はp<0.05を表し、**はp<0.01を表し、***はp<0.005を表し、および****はp<0.001を表す。
図6Aは、フローサイトメトリーによって決定し、CD4のCD8 T細胞に対する比として示したCD4およびCD8 T細胞のレベルを示すグラフである。
図6Bは、フローサイトメトリーによって決定した、PBMCを注射したNSG、NSG−(IAnull)、NSG−(Kb Db)null、およびNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスのCD4 T細胞によるPD−1発現を示すグラフである。
図6Cは、フローサイトメトリーによって決定した、PBMCを注射したNSG、NSG−(IAnull)、NSG−(Kb Db)null、およびNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスのCD8 T細胞によるPD−1発現を示すグラフである。
図6D〜6Fは、代表的なCD4、CD8、およびPD1染色を示すグラフである。
図6D〜6Fは、代表的なCD4、CD8、およびPD1染色を示すグラフである。
図6D〜6Fは、代表的なCD4、CD8、およびPD1染色を示すグラフである。
図6Gおよび6Hは、フローサイトメトリーによってCD45RAおよびCCR7の発現に関して評価したCD4およびCD8 T細胞をそれぞれ示すグラフである。T細胞サブセットのパーセンテージを、ナイーブと標識されるCD45RA+/CCR7+細胞、セントラルメモリーと標識されるCD45RA−/CCR7+細胞、エフェクター/エフェクターメモリーと標識されるCD45RA−/CCR7−細胞、およびTEMRAと標識されるCD45RA+/CCR7−細胞で示す。
図6Gおよび6Hは、フローサイトメトリーによってCD45RAおよびCCR7の発現に関して評価したCD4およびCD8 T細胞をそれぞれ示すグラフである。T細胞サブセットのパーセンテージを、ナイーブと標識されるCD45RA+/CCR7+細胞、セントラルメモリーと標識されるCD45RA−/CCR7+細胞、エフェクター/エフェクターメモリーと標識されるCD45RA−/CCR7−細胞、およびTEMRAと標識されるCD45RA+/CCR7−細胞で示す。
図7A〜7Hは、PBMCを注射したNSG、NSG−(IA IE)nul l、NSG−B2Mnull、およびNSG−B2Mnull(IA IE)nullマウスにおいて生着したヒトT細胞の表現型分析を示す。レシピエントマウスにPBMC 10×106個をIV注射し、注射の4週間後にマウスを、末梢血中のヒトCD3+/CD4+およびCD3/CD8+ T細胞のレベル(図7Aおよび図7D)ならびにT細胞表現型(図7B、図7Cおよび図7E〜図7H)に関してモニターした。データは2回の独立した実験を表す。一元配置ANOVAを使用して群の間の有意差を決定した。*はp<0.05を表し、**はp<0.01を表し、***はp<0.005を表し、および****はp<0.001を表す。
図7Aは、フローサイトメトリーによって決定し、CD4のCD8 T細胞に対する比として示すCD4およびCD8 T細胞のレベルを示すグラフである。
図7Bは、フローサイトメトリーによって決定した、PBMCを注射したNSG、NSG−(IA IE)null、NSG−B2Mnull、およびNSG−B2Mnull(IA IE)nullマウスのCD4細胞によるPD−1発現を示すグラフである。
図7Cは、フローサイトメトリーによって決定した、PBMCを注射したNSG、NSG−(IA IE)null、NSG−B2Mnull、およびNSG−B2Mnull(IA IE)nullマウスのCD8細胞によるPD−1発現を示すグラフである。
図7D〜7Fは、代表的なCD4、CD8、およびPD1染色を示すグラフである。
図7D〜7Fは、代表的なCD4、CD8、およびPD1染色を示すグラフである。
図7D〜7Fは、代表的なCD4、CD8、およびPD1染色を示すグラフである。
図7Gおよび7Hは、フローサイトメトリーによってCD45RAおよびCCR7の発現に関して評価したCD4およびCD8 T細胞をそれぞれ示すグラフである。T細胞サブセットのパーセンテージを、ナイーブと標識されるCD45RA+/CCR7+細胞、セントラルメモリーと標識されるCD45RA−/CCR7+細胞、エフェクター/エフェクターメモリーと標識されるCD45RA−/CCR7−細胞、およびTEMRAと標識されるCD45RA+/CCR7−細胞で示す。
図7Gおよび7Hは、フローサイトメトリーによってCD45RAおよびCCR7の発現に関して評価したCD4およびCD8 T細胞をそれぞれ示すグラフである。T細胞サブセットのパーセンテージを、ナイーブと標識されるCD45RA+/CCR7+細胞、セントラルメモリーと標識されるCD45RA−/CCR7+細胞、エフェクター/エフェクターメモリーと標識されるCD45RA−/CCR7−細胞、およびTEMRAと標識されるCD45RA+/CCR7−細胞で示す。
図8A〜8Fは、PBMCを生着させたNSG−RIP−DTR(Kb Db)null(IAnull)マウスにおけるヒト島同種異系移植片の拒絶を示す。データは2回の独立した実験を表す。t−検定を使用して、群の間の有意差を決定した。*はp<0.05を表し、**はp<0.01を表し、***はp<0.005を表す。
図8Aは、PBMC注射の6日前にジフテリア毒素(DT)40ngでNSG−RIP−DTR(Kb Db)null(IAnull)マウスを処置した後に、ヒト島(4000 IEQ)を脾臓内注射によって植え込んだ結果を示すグラフである。0日目に、1つの群のマウスにヒトPBMC 50×106個をIP注射し、1つの群を無処置とした。血糖値をモニターし、2回連続した試験血糖値が300mg/dlを超えるマウスは、糖尿病であると考えられた。
図8Bは、6週間にわたって末梢血における、および7週目での脾臓におけるCD45+細胞の割合を決定することによって、ヒト細胞キメリズムのレベルに関してマウスをモニターした結果を示すグラフである。
図8Cおよび8Dはそれぞれ、末梢血および脾臓におけるCD3+/CD4+およびCD3+/CD8+ T細胞のレベルを示すグラフである。
図8Cおよび8Dはそれぞれ、末梢血および脾臓におけるCD3+/CD4+およびCD3+/CD8+ T細胞のレベルを示すグラフである。
図8Eは、6週目でELISAによって決定した血漿中の循環中のヒトCペプチドのレベルを示すグラフである。
図8Fは、ELISAによって7週目に決定した島生着マウスの脾臓の総インスリン含有量を示すグラフである。
図9A〜9Hは、PBMCを生着させたNSGマウスおよびNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスにおけるヒトIL2の発現により、ヒトCD4+ Tregの生存が増強されることを示す。レシピエントNSGおよびNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスに、AAV−IL2粒子2.5×1011個をIP注射したか、またはPBSを注射した。2週間後、マウスにPBMC 1×106個を腹腔内(IP)注射した。
図9A〜9Cは、フローサイトメトリーによって決定した、ヒトCD45+細胞(図9A)、CD3+ T細胞(図9B)、およびCD4+/CD25+/CD127−/FOXP3+ Treg(図9C)のレベルを示すグラフである。二元配置ANOVAを使用して、群の間の有意差を決定した。***はp<0.005を表し、および****はp<0.001を表す。
図9Dは、示した群のCD25、CD127、およびFOXP3に関するCD4+ T細胞の代表的な染色を示す。
図9Eは、レシピエントマウスの%生存をモニターしたことを示すグラフであり、示した群の間の生存分布を、ログランク統計値を使用して検定した。
図9Fは、フローサイトメトリーによって決定し、CD4のCD8 T細胞に対する比として示したCD4およびCD8 T細胞のレベルを示すグラフである。黒三角は、NSGマウスを表し、白三角はAAV−IL2を注射したNSGマウスを表し、黒丸はNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスを表し、および白丸は、AAV−IL2を注射したNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスを表す。
図9Gは、フローサイトメトリーによるCD45RAおよびCCR7の発現に関するCD8 T細胞の評価の結果を示すグラフである。T細胞サブセットのパーセンテージを、ナイーブと標識されるCD45RA+/CCR7+細胞、セントラルメモリーと標識されるCD45RA−/CCR7+細胞、エフェクター/エフェクターメモリーと標識されるCD45RA−/CCR7−細胞、およびTEMRAと標識されるCD45RA+/CCR7−細胞で示す。黒三角は、NSGマウスを表し、白三角はAAV−IL2を注射したNSGマウスを表し、黒丸はNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスを表し、および白丸は、AAV−IL2を注射したNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスを表す。
図9Hは、フローサイトメトリーによって決定したCD8 T細胞によるグランザイムB発現を示すグラフであり、代表的な染色を示す。t検定を使用してAAV−IL2で処置したマウスと対照との間の有意差を決定した。***はp<0.005を表し、****はp<0.001を表す。データは、3回の独立した実験を表す。
図10Aは、PBMCとヒト患者由来腫瘍細胞とを同時注射したNSGマウスの群、およびPBMCとヒト患者由来腫瘍細胞とを同時注射したNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスの群のパーセント生存を示すグラフである。
図10Bは、1)ヒト患者由来腫瘍細胞を注射したNSGマウス;2)PBMCとヒト患者由来腫瘍細胞とを同時注射したNSGマウス;PBMCを注射したNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウス;およびPBMCとヒト患者由来腫瘍細胞とを同時注射したNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスにおける腫瘍成長を示すグラフである。
本明細書において使用する科学技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有すると意図される。そのような用語は、J. SambrookおよびD.W. Russell、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press; 第3版、2001年;F.M. Ausubel編、Short Protocols in Molecular Biology、Current Protocols; 第5版、2002年;B. Albertsら、Molecular Biology of the Cell、第4版、Garland、2002年;D.L. NelsonおよびM.M. Cox,Lehninger Principles of Biochemistry、第4版、W.H. Freeman & Company、2004年;A. Nagy、M. Gertsenstein、K. Vintersten、R. Behringer、Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press; 2002年12月15日、ISBN−10:0879695919;Kursad Turksen(編)、Embryonic stem cells: methods and protocols in Methods Mol Biol、2002年;185巻、Humana Press; Current Protocols in Stem Cell Biology、ISBN:9780470151808;Chu, E.およびDevita, V.T.編、Physicians’ Cancer Chemotherapy Drug Manual、Jones & Bartlett Publishers、2005年;J.M. Kirkwoodら編、Current Cancer Therapeutics、第4版、Current Medicine Group、2001年;Remington: The Science and Practice of Pharmacy、Lippincott Williams & Wilkins、第21版、2005年;L.V. Allen, Jr.ら、Ansel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第8版、Philadelphia、PA:Lippincott、Williams & Wilkins、2004年;ならびにL. Bruntonら、Goodman & Gilman’ s The Pharmacological Basis of Therapeutics、McGraw−Hill Professional、第12版、2011年を含む様々な標準的な参考文献の文脈において例証として見出され、定義および使用される。
単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、制限的であると意図されず、明白にそれ以外であることを述べている、または文脈がそれ以外であることを示している場合を除き、複数形を含む。
本明細書において一般的に使用される用語「機能的な」は、対応する天然のタンパク質、複合体、細胞、または他の物質の生物機能を保持しているタンパク質、複合体、細胞、または他の物質を指す。
これに対し、本明細書において一般的に使用される用語「非機能的な」は、対応する天然のタンパク質、複合体、細胞、または他の物質の生物機能を保持していないタンパク質、複合体、細胞、または他の物質を指す。
MHCクラスIおよびMHCクラスIIが欠損している遺伝子改変免疫不全マウスが、本発明によって提供される。
態様によれば、MHC Iがマウスに存在しないかまたは非機能的であるように、機能的なMHC Iαタンパク質の発現を低減もしくは排除する、および/または機能的なβ2−ミクログロブリンの発現を低減もしくは排除するために有効な少なくとも1つの変異をそのゲノムに含み、ならびにMHC IIがマウスに存在しないかまたは非機能的であるように、機能的なMHC IIαタンパク質の発現および/または機能的なMHC IIβタンパク質の発現を低減または排除するために有効な少なくとも1つの変異をそのゲノムに含む、遺伝子改変免疫不全マウスが提供される。
態様によれば、遺伝子改変免疫不全マウスは遺伝子改変NSGマウスである。本発明の態様によるNSG MHC I/IIノックアウトマウスは、GVHDの非存在下でのヒト免疫の研究および抗体に基づく治療の評価を含む様々な応用において有用である。
MHC I
用語「MHC I」および「MHCクラスI」は、互換的に使用され、MHC Iαタンパク質およびβ2−ミクログロブリンタンパク質によって形成される複合体を指す。
MHC Iαタンパク質は、細胞外ドメイン(これは3つのサブドメイン:α1、α2、およびα3を有する)、膜貫通ドメイン、および細胞質テールを含む。α1およびα2サブドメインは、ペプチド結合溝を形成するが、α3サブドメインは、β2−ミクログロブリンと相互作用する。用語「H2−K」、「H2−D」、および「H2−L」は、マウスMHC Iαタンパク質のサブクラスを指し、その全てがマウス第17染色体においてコードされる。
β2−ミクログロブリンは、MHC Iαタンパク質のα3サブドメインと非共有結合により会合する。マウスβ2−ミクログロブリンをコードする遺伝子は、第2染色体(Chr2:122147686−122153083bp、+鎖、GRCm38)においてコードされる。
MHC II
用語「MHC II」および「MHCクラスII」は、互換的に使用され、2つの非共有結合によって会合したタンパク質:MHC IIαタンパク質およびMHC IIβタンパク質によって形成される複合体を指す。用語「H−2A」および「H−2E」(それぞれ、しばしばI−AおよびI−Eと略す)は、MHC IIのサブクラスを指す。MHC IIαタンパク質およびMHC IIβタンパク質は、細胞膜に及び、各々は細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞質ドメインを含有する。MHC IIαタンパク質の細胞外部分は、MHC IIα1およびMHC IIα2ドメインを含み、MHC IIβタンパク質の細胞外部分は、MHC IIβ1およびMHC IIβ2ドメインを含む。
本明細書において、機能的なMHC Iαタンパク質、機能的なβ2−ミクログロブリンタンパク質、機能的なMHC IIαタンパク質、機能的なMHC IIβタンパク質、機能的なMHC Iまたは機能的なMHC IIに関連して使用される用語「機能的な」は、対応する天然のMHC Iαタンパク質、β2−ミクログロブリンタンパク質、MHC IIαタンパク質、MHC IIβタンパク質、MHC IまたはMHC IIの生物機能を保持している、MHC Iαタンパク質、β2−ミクログロブリンタンパク質、MHC IIαタンパク質、MHC IIβタンパク質、MHC IまたはMHC IIを指す。
これに対し、本明細書において、非機能的なMHC Iαタンパク質、β2−ミクログロブリンタンパク質、MHC IIαタンパク質、MHC IIβタンパク質、MHC IまたはMHC IIに関連して使用される用語「非機能的な」は、対応する天然のMHC Iαタンパク質、β2−ミクログロブリンタンパク質、MHC IIαタンパク質、MHC IIβタンパク質、MHC IまたはMHC IIの生物機能を保持していない、MHCタンパク質、またはMHC複合体を指す。
本明細書において使用される用語「天然の」は、未変異タンパク質または核酸を指す。
本明細書において使用される用語「遺伝子改変された」は、マウスが機能的なMHC Iおよび機能的なMHC IIを欠如するように、機能的なMHC Iαタンパク質および機能的なβ2−ミクログロブリンのうちの少なくとも1つ;ならびに機能的なMHC IIαタンパク質および機能的なMHC IIβタンパク質のうちの少なくとも1つの発現を破壊する、マウスにおけるゲノムDNAの改変を指す。
用語「発現」は、対応するmRNAを産生する核酸配列の転写および/または対応するタンパク質を産生するmRNAの翻訳を指す。
本明細書において使用される用語「標的遺伝子」は、マウスMHC Iα遺伝子、マウスβ2−ミクログロブリン遺伝子、マウスMHC IIα遺伝子、またはマウスMHC IIβ遺伝子を定義する核酸配列を指す。
多様な方法のいずれかを使用して、マウスが機能的なMHC Iおよび機能的なMHC IIを欠如するように、そのゲノムが機能的なMHC Iαタンパク質および機能的なβ2−ミクログロブリンのうちの少なくとも1つ;ならびに機能的なMHC IIαタンパク質および機能的なMHC IIβタンパク質のうちの少なくとも1つの発現を破壊する遺伝子改変を含む、遺伝子改変免疫不全マウスを産生することができる。
遺伝子改変は、化学的変異誘発、放射線照射、相同組換え、およびアンチセンスRNAのトランスジェニック発現などの、しかしこれらに限定されない遺伝子工学の標準的な方法を使用して産生される。そのような技術は、当技術分野で周知であり、前核マイクロインジェクションおよび胚性幹細胞の形質転換をさらに含むがこれらに限定されない。そのゲノムが使用することができる遺伝子変異を含む遺伝子改変動物を生成するための方法には、J. P. SundbergおよびT. Ichiki編、Genetically Engineered Mice Handbook、CRC Press: 2006年;M. H. HofkerおよびJ. van Deursen編、Transgenic Mouse Methods and Protocols、Humana Press、2002年;A. L. Joyner、Gene Targeting: A Practical Approach、Oxford University Press、2000年;Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press; 2002年12月15日、ISBN−10:0879695919;Kursad Turksen(編)、Embryonic stem cells: methods and protocols in Methods Mol Biol. 2002年;185巻、Humana Press; Current Protocols in Stem Cell Biology、ISBN:978047015180;Meyerら、PNAS USA、107巻(34号)、15022〜15026頁に記載される方法が挙げられるがこれらに限定されない。
好ましい態様によれば、機能的な内因性のMHC IおよびMHC IIの欠如に加えて、非内因性のMHC IもMHC IIも、本発明の遺伝子改変免疫不全マウスにおいて発現されない。特に、好ましい実施形態によれば、本発明の遺伝子改変免疫不全マウスには、ヒトリンパ球適合性遺伝子は存在しないか、または発現されない。
本明細書において、遺伝子およびそれらがコードするタンパク質に関連して使用する場合の「内因性」は、その天然遺伝子座でマウスのゲノムに存在する遺伝子を指す。
相同性に基づく組換え遺伝子改変戦略を使用して、内因性のタンパク質(単数または複数)、例えばMHC Iαタンパク質およびβ2−ミクログロブリンのうちの少なくとも1つ;ならびにMHC IIαタンパク質およびMHC IIβタンパク質のうちの少なくとも1つをコードする遺伝子の「ノックアウト」または他の変異によって、免疫不全マウスを遺伝子改変することができる。
相同性に基づく組換え遺伝子改変戦略には、ホーミングエンドヌクレアーゼ、インテグラーゼ、メガヌクレアーゼ、トランスポゾンを使用するアプローチ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクター(TAL)、Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)−Casを使用するヌクレアーゼ媒介プロセス、またはショウジョウバエ組換え関連タンパク質(DRAP)アプローチなどの遺伝子編集アプローチが挙げられる。例えば、Cerbiniら、PLoS One. 2015年;10巻(1号):e0116032頁;Shenら、PLoS ONE 8巻(10号):e77696頁;およびWangら、Protein & Cell、2016年2月、7巻、2号、152〜156頁を参照されたい。
ゲノム編集は、例えば、本明細書に記載される、ならびにJ. P. SundbergおよびT. Ichiki編、Genetically Engineered Mice Handbook、CRC Press; 2006年;M. H. HofkerおよびJ. van Deursen編、Transgenic Mouse Methods and Protocols、Humana Press、2002年;A. L. Joyner、Gene Targeting: A Practical Approach、Oxford University Press、2000年;Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press; 2002年12月15日、ISBN−10:0879695919;Kursad Turksen(編)、Embryonic stem cells: methods and protocols in Methods Mol. Biol. 2002年;185巻、Humana Press; Current Protocols in Stem Cell Biology、ISBN:978047015180;Meyerら、PNAS USA、2010年、107巻(34号)、15022〜15026頁;ならびにDoudna, J.ら(編)CRISPR−Cas: A Laboratory Manual、2016年、CSHPに詳述されている方法によって実施される。いくつかのゲノム編集技術の簡単な説明を本明細書に記載する。
ヌクレアーゼによる遺伝子改変技術
ヌクレアーゼによる遺伝子編集技術などの、しかしこれらに限定されない遺伝子改変方法、例えばホーミングエンドヌクレアーゼ、インテグラーゼ、メガヌクレアーゼ、トランスポゾンを使用する方法、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクター(TAL)、Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)−Cas、またはショウジョウバエ組換え関連タンパク質(DRAP)を使用するヌクレアーゼ媒介プロセスを使用して、所望のDNA配列をゲノムの既定の標的部位に導入することができる。簡単に説明すると、使用することができる遺伝子改変方法は、標的化されたTALEN、ZFN、CRISPR、またはDRAPをコードするRNA分子、および少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを、ES細胞、iPS細胞、体細胞、受精卵母細胞、または胚に導入するステップ、次いで、所望の遺伝子改変を有するES細胞、iPS細胞、体細胞、受精卵母細胞、または胚を選択するステップを含む。
例えば、所望の核酸配列を、CRISPR方法論、TAL(転写活性化因子様エフェクター)方法論、ジンクフィンガー媒介ゲノム編集、またはDRAPなどの、しかしこれらに限定されないヌクレアーゼ技術によって、マウスのゲノムの既定の標的部位に導入し、本発明の実施形態により提供される遺伝子改変マウスを産生することができる。
本明細書において、ヌクレアーゼによる遺伝子編集技術の文脈で使用される用語「標的部位」および「標的配列」は、編集される染色体配列の部分を定義し、および結合に関する十分な条件が存在することを条件として、それに対してヌクレアーゼが認識および結合するように操作される核酸配列を指す。
CRISPR−Casシステム
CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)は、シークエンシングした細菌のおよそ40%およびシークエンシングした古細菌の90%のゲノムに見出される複数の短鎖直列反復配列を含有する座であり、外来DNAエレメントに対する抵抗性を付与する、Horvath、2010年、Science、327巻:167〜170頁;Barrangouら、2007年、Science、315巻:1709〜1712頁;およびMakarovaら、2011年、Nature Reviews Microbiology. 9巻:467〜477頁を参照されたい。
CRISPR反復配列のサイズは、24〜48塩基対の範囲である。それらは通常、何らかの2個1組の対称性を示し、ヘアピンなどの二次構造の形成を暗示しているが、真の回文構造ではない。CRISPR反復配列は、類似の長さのスペーサーによって隔てられている。
CRISPR関連(cas)遺伝子はしばしば、CRISPR反復配列−スペーサーアレイに関連している。40を超える異なるCasタンパク質ファミリーが記載されている(Haftら、2005年、PLoS Comput Biol. 1巻(6号):e60頁)。cas遺伝子と反復配列構造の特定の組合せを使用して、8個のCRISPRサブタイプが定義されており、その一部は、反復配列に関連する不可解なタンパク質(RAMP)をコードする追加の遺伝子モジュールに関連している。
異なる生物において多様なCRISPRシステムが存在し、その最も単純なものの1つは、Streptococcus pyogenes由来のII型CRISPRシステムであり、Cas9タンパク質をコードする単一の遺伝子および2つのRNA、すなわち成熟CRISPR RNA(crRNA)および部分的に相補的なトランス作用RNA(tracrRNA)のみが、外来DNAのRNA誘導サイレンシングにとって必要かつ十分である(Gasiunasら、2012年、PNAS 109巻:E2579〜E2586頁;Jinekら、2012年、Science、337巻:816〜821頁)。crRNAの成熟は、tracrRNAおよびRNアーゼIIIを必要とする(Deltchevaら、2011年、Nature、471巻:602〜607頁)。しかし、tracrRNA−crRNA複合体を模倣する設計されたヘアピンを含有する操作された低分子ガイドRNA(sgRNA)を使用することによって、この必要条件は不要となり得る(Jinekら、2012年、Science 337巻:816〜821頁)。sgRNAと標的DNAとの間の塩基対形成は、Cas9のエンドヌクレアーゼ活性により、二本鎖切断(DSB)を引き起こす。結合特異性は、sgRNA−DNA塩基対形成およびDNA相補的領域に近接する短鎖DNAモチーフ(プロトスペーサー隣接モチーフ[PAM]配列:NGG)の両方によって決定される(MarraffiniおよびSontheimer、2010年、Nature Reviews Genetics、11巻:181〜190頁)。例えば、CRISPRシステムは、2つの分子、すなわちCas9タンパク質およびsgRNA、の最少の組を必要とし、したがって宿主非依存的な遺伝子標的化プラットフォームとして使用することができる。Cas9/CRISPRは、標的化挿入などの部位選択的RNA誘導性ゲノム編集のために利用することができる、例えばCarroll、2012年、Molecular Therapy、20巻:1658〜1660頁;Changら、2013年、Cell Research、23巻:465〜472頁;Choら、2013年、Nature Biotechnol、31巻:230〜232頁;Congら、2013年、Science、339巻:819〜823頁;Hwangら、2013年、Nature Biotechnol、31巻:227〜229頁;Jiangら、2013年、Nature Biotechnol、31巻:233〜239頁;Maliら、2013年、Science、339巻:823〜826頁;Qiら、2013年、Cell、152巻:1173〜1183頁;Shenら、2013年、Cell Research、23巻:720〜723頁;およびWangら、2013年、Cell、153巻:910〜918頁)を参照されたい。特に、Wangら、2013年、Cell、153巻:910〜918頁は、オリゴヌクレオチドと組み合わせてCRISPR/Cas9システムを使用する標的化挿入を記載している。
本発明の態様による遺伝子改変免疫不全マウスの生成は、適切な核酸、例えばCRISPRにおける使用のための、cas9をコードする発現構築物、および標的化される遺伝子に対して特異的なガイドRNAをコードする発現構築物の、着床前胚または幹細胞、例えば胚性幹(ES)細胞、または人工多能性幹(iPS)細胞への注入またはトランスフェクションを含み得る。必要に応じて、cas9およびガイドRNAは、単一の発現構築物においてコードされている。
TAL(転写活性化因子様)エフェクター
転写活性化因子様(TAL)エフェクターまたはTALE(転写活性化因子様エフェクター)は、植物病原性細菌属であるXanthomonasに由来し、これらのタンパク質は、植物の転写活性化因子を模倣し、植物転写物を操作する。Kayら、2007年、Science、318巻:648〜651頁を参照されたい。
TALエフェクターは、縦列反復配列の集中ドメインを含有し、各反復配列は、およそ34アミノ酸を含有し、これはこれらのタンパク質のDNA結合特異性にとって重要である。加えて、それらは、核局在化配列および酸性転写活性化ドメインを含有し、論評に関しては、Schornackら、2006年、J. Plant Physiol.、163巻(3号):256〜272頁;ScholzeおよびBoch、2011年、Curr Opin Microbiol、14巻:47〜53頁を参照されたい。
TALエフェクターの特異性は、縦列反復配列に見出される配列に依存する。反復された配列はおよそ102bpを含み、反復配列は典型的に、互いに91〜100%相同である(Bonasら、1989年、Mol Gen Genet、218巻:127〜136頁)。反復配列の多型は、通常12および13位に位置し、12および13位での超可変二残基の同一性と、TAL−エフェクターの標的配列における連続ヌクレオチドの同一性との間に一対一の対応が存在するように思われる。MoscouおよびBogdanove、2009年、Science、326巻:1501頁;ならびにBochら、2009年、Science、326巻:1509〜1512頁を参照されたい。2つの超可変残基は、反復可変二残基(RVD)として公知であり、それによって1つのRVDが、DNA配列の1つのヌクレオチドを認識し、各TAL−エフェクターのDNA結合ドメインは、高い精度で確実に大きい認識部位(15〜30ヌクレオチド)を標的化することができる。実験によって、これらのTAL−エフェクターのDNA認識のためのコードは、12および13位でのHD配列によって、シトシン(C)に対する結合が起こり、NGがTに結合し、NIがA、C、G、またはTに結合し、NNがAまたはGに結合し、およびIGがTに結合するように決定されている。これらのDNA結合反復配列は、新しい組合せおよび数の反復配列と共にタンパク質にアセンブルされ、新しい配列と相互作用して、植物細胞におけるレポーター遺伝子の発現を活性化することができる人工転写因子を作製する(Bochら、2009年、Science、326巻:1509〜1512頁)。これらのDNA結合ドメインは、全ての細胞タイプにおける標的化ゲノム編集または標的化遺伝子調節の分野において一般的応用を有することが示されており、Gajら、Trends in Biotechnol、2013年、31巻(7号):397〜405頁を参照されたい。その上、操作されたTALエフェクターは、天然のXanthomonas TAL効果または哺乳動物におけるタンパク質では本来見出されない、ヌクレアーゼなどの外因性の機能的なタンパク質エフェクタードメインと会合して機能することが示されている。TALヌクレアーゼ(TALNまたはTALEN)は、TALを、N末端またはC末端でヌクレアーゼ、例えばFokIヌクレアーゼドメインと組み合わせることによって構築することができる。Kimら、1996年、PNAS、93巻:1156〜1160頁;Christianら、2010年、Genetics、186巻:757〜761頁;Liら、2011年、Nucleic Acids Res、39巻:6315〜6325頁;およびMillerら、2011年、Nat Biotechnol、29巻:143〜148頁。TALENがNHEJにより欠失を引き起こす機能性は、ラット、マウス、ゼブラフィッシュ、アフリカツメガエル、メダカ、ラット、およびヒト細胞において示されている。Ansaiら、2013年、Genetics、193巻:739〜749頁;Carlsonら、2012年、PNAS、109巻:17382〜17387頁;Hockemeyerら、2011年、Nature Biotechnol.、29巻:731〜734頁;Leiら、2012年、PNAS、109巻:17484〜17489頁;Mooreら、2012年、PLoS ONE、7巻:e37877頁;Stroudら、2013年、J. Biol. Chem.、288巻:1685〜1690頁;Sungら、2013年、Nature Biotechnol、31巻:23〜24頁;Wefersら、2013年、PNAS、110巻:3782〜3787頁。
TALENに関しては、それを作製する方法は、米国特許第8,420,782号;第8,450,471号;第8,450,107号;第8,440,432号;第8,440,431号、ならびに米国特許出願公開第US20130137161号および第US20130137174号にさらに記載されている。
他の有用なエンドヌクレアーゼには、例えばHhaI、HindIII、NotI、BbvCI、EcoRI、Bg/I、およびAlwIが挙げられ得る。いくつかのエンドヌクレアーゼ(例えば、FokI)が二量体としてのみ機能するという事実を利用して、TALエフェクターの標的特異性を増強することができる。例えば、一部の例では、各FokI単量体を、異なるDNA標的配列を認識するTALエフェクター配列に融合することができ、2つの認識部位が非常に近位にある場合に限って、不活性な単量体が一体となって機能的な酵素を創出する。ヌクレアーゼを活性化するためにDNA結合が必要であることによって、高度に部位特異的な制限酵素を創出することができる。
一部の実施形態では、TALENは、核局在化シグナルまたは配列(NLS)をさらに含み得る。NLSは、TALENヌクレアーゼタンパク質の核への標的化を促進して、染色体の標的配列に二本鎖切断を導入するアミノ酸配列である。
核局在化シグナルは、当技術分野で公知であり、例えば、Makkerhら、1996年、Curr Biol. 6巻:1025〜1027頁を参照されたい。NLSは、SV40ラージT抗原からの配列、Kalderon、1984年、Cell、39巻:499〜509頁;Dingwallら、1988年、J Cell Biol.、107巻、841〜9頁に詳細に記載されているヌクレオプラスミンからのNLSを含む。さらなる例は、McLaneおよびCorbett、2009年、IUBMB Life、61巻、697〜70頁;Dopieら、2012年、PNAS、109巻、E544〜E552頁に記載されている。
切断ドメインは、任意のエンドヌクレアーゼまたはエクソヌクレアーゼから得られ得る。切断ドメインが誘導され得るエンドヌクレアーゼの非制限的な例には、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼが挙げられるがこれらに限定されない。例えば、2002〜2003年のカタログ、New England Biolabs、Beverly、Mass.;およびBelfortら、(1997年)Nucleic Acids Res.、25巻:3379〜3388頁を参照されたい。DNAを切断する追加の酵素、例えばSIヌクレアーゼ;リョクトウヌクレアーゼ;膵DNアーゼI;ミクロコッカルヌクレアーゼ;酵母HOエンドヌクレアーゼが公知である。同様にLinnら(編)Nucleases、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1993年を参照されたい。これらの酵素またはその機能的断片の1つまたは複数を切断ドメインの起源として使用してもよい。
ジンクフィンガー媒介ゲノム編集
遺伝子編集のための、例えば相同性に基づく修復プロセスを介しての標的化挿入のためのジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)の使用は十分に確立されている。例えば、Carberyら、2010年、Genetics、186巻:451〜459頁;Cuiら、2011年、Nature Biotechnol.、29巻:64〜68頁;Hauschildら、2011年、PNAS、108巻:12013〜12017頁;Orlandoら、2010年、Nucleic Acids Res.、38巻:e152〜e152頁;およびPorteus & Carroll、2005年、Nature Biotechnology、23巻:967〜973頁を参照されたい。
ZFN媒介プロセスの構成要素は、DNA結合ドメインおよび切断ドメインを有するジンクフィンガーヌクレアーゼを含む。そのような構成要素は、例えば、Beerliら、(2002年)、Nature Biotechnol.、20巻:135〜141頁;Paboら、(2001年)、Ann. Rev. Biochem.、70巻:313〜340頁;Isalanら、(2001年)、Nature Biotechnol.、19巻:656〜660頁;Segalら、(2001年)、Curr Opin. Biotechnol.、12巻:632〜637頁;ならびにChooら、(2000年)、Curr Opin. Struct. Biol.、10巻:411〜416頁;ならびに米国特許第6,453,242号および第6,534,261号に記載されている。標的配列に対してジンクフィンガー結合ドメインを設計および選択する方法は、当技術分野で公知であり、例えば、Seraら、Biochemistry、2002年、41巻、7074〜7081頁;米国特許第6,607,882号;第6,534,261号および第6,453,242号を参照されたい。
一部の実施形態では、ジンクフィンガーヌクレアーゼは、核局在化シグナルまたは配列(NLS)をさらに含み得る。NLSは、ジンクフィンガーヌクレアーゼタンパク質の核への標的化を促進して、染色体の標的配列で二本鎖切断を導入するアミノ酸配列である。核局在化シグナルは当技術分野で公知である。例えば、Makkerhら、(1996年)Current Biology、6巻:1025〜1027頁および本明細書に記載の他の文献を参照されたい。
切断ドメインは、任意のエンドヌクレアーゼまたはエクソヌクレアーゼから得られ得る。切断ドメインが誘導され得るエンドヌクレアーゼの非制限的な例には、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼが挙げられるがこれらに限定されない。例えば、2002〜2003年のカタログ、New England Biolabs、Beverly、Mass.;およびBelfortら、(1997年)Nucleic Acids Res. 25巻:3379〜3388頁を参照されたい。DNAを切断する追加の酵素が公知である(例えば、SIヌクレアーゼ;リョクトウヌクレアーゼ;膵DNアーゼI;ミクロコッカルヌクレアーゼ;酵母HOエンドヌクレアーゼ)。同様にLinnら(編)Nucleases、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1993年を参照されたい。これらの酵素(またはその機能的断片)の1つまたは複数を切断ドメインの起源として使用してもよい。切断ドメインはまた、切断活性のために二量体化を必要とする上記の酵素またはその一部から誘導され得る。
各ヌクレアーゼは、活性な酵素二量体の単量体を含むことから、切断のためには2つのジンクフィンガーヌクレアーゼが必要であり得る。あるいは、単一のジンクフィンガーヌクレアーゼが、両方の単量体を含み、活性な酵素二量体を創出してもよい。制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は、多くの種に存在し、DNA(認識部位で)に配列特異的に結合することができ、結合部位またはその近傍でDNAを切断する。ある特定の制限酵素(例えば、IIS型)は、認識部位から離れた部位でDNAを切断し、分離可能な結合および切断ドメインを有する。例えば、IIS型酵素FokIは、一方の鎖のその認識部位から9ヌクレオチド、および他方の鎖のその認識部位から13ヌクレオチドでDNAの二本鎖切断を触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号;第5,436,150号、および第5,487,994号;ならびにLiら、(1992年)、PNAS、89巻:4275〜4279頁;Liら、(1993年)、PNAS、90巻:2764〜2768頁;Kimら、(1994年)、PNAS、91巻:883〜887頁;Kimら、(1994年)、J. Biol. Chem.、269巻:31、978〜31、982頁を参照されたい。このように、ジンクフィンガーヌクレアーゼは、少なくとも1つのIIS型制限酵素からの切断ドメイン、および操作されていてもされていなくてもよい1つまたは複数のジンクフィンガー結合ドメインを含み得る。例示的なIIS型制限酵素は、例えば、その開示の全体が参照により本明細書に組み込まれている、国際公開第WO07/014275号に記載されている。追加の制限酵素もまた、分離可能な結合および切断ドメインを含有し、これらもまた、本開示によって企図される。例えば、Robertsら、(2003年)Nucleic Acids Res. 31巻:418〜420頁を参照されたい。その切断ドメインが結合ドメインから分離可能である例示的なIIS型制限酵素は、FokIである。この特定の酵素は二量体として活性である(Bitinaiteら、1998年、PNAS 95巻:10、570〜10、575頁)。したがって、本開示の目的に関して、ジンクフィンガーヌクレアーゼに使用されるFokI酵素の一部は、切断単量体であると考えられる。このように、FokI切断ドメインを使用する標的化二本鎖切断に関して、各々がFokI切断単量体を含む2つのジンクフィンガーヌクレアーゼを使用して、活性な酵素二量体を再構成してもよい。あるいは、ジンクフィンガー結合ドメインおよび2つのFokI切断単量体を含有する単一のポリペプチド分子も同様に使用してもよい。ある特定の実施形態では、切断ドメインは、例えば、その各々の全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第20050064474号、第20060188987号、および第20080131962号に記載されているように、ホモ二量体化を最小限にするかまたは防止する1つまたは複数の操作された切断単量体を含み得る。非制限的な例として、FokIの446、447、479、483、484、486、487、490、491、496、498、499、500、531、534、537および538位でのアミノ酸残基は全て、FokI切断ハーフドメインの二量体化に影響を及ぼすための標的である。絶対ヘテロ二量体を形成する例示的な操作されたFokIの切断単量体は、FokIのアミノ酸残基490および538位で変異を含む第1の切断単量体と、アミノ酸残基486および499位で変異を含む第2の切断単量体の組を含む。このように、一実施形態では、アミノ酸490位での変異はGlu(E)をLys(K)に交換し;アミノ酸残基538での変異はIle(I)をLys(K)に交換し;アミノ酸残基486での変異はGln(Q)をGlu(E)に変換し;および499位での変異はIle(I)をLys(K)に交換する。具体的には、操作された切断単量体は、1つの切断単量体において490位をEからKに、および538位をIからKに変異させて、「E490K:I538K」と呼ばれる操作された切断単量体を産生することによって、ならびに別の切断単量体において486位をQからEに、および499位をIからLに変異させて、「Q486E:I499L」と呼ばれる操作された切断単量体を産生することによって調製され得る。上記の操作された切断単量体は、異常な切断が最小限にするかまたは取り除かれている絶対ヘテロ二量体変異体である。操作された切断単量体は、適した方法を使用して、例えば米国特許出願公開第20050064474号に記載される野生型切断単量体(FokI)の部位特異的変異誘発によって調製され得る。
上記のジンクフィンガーヌクレアーゼは、標的化組み込み部位で二本鎖切断を導入するように操作され得る。二本鎖切断は、標的化組み込み部位であってもよく、または組み込み部位から最大1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、もしくは1000ヌクレオチド離れてもよい。一部の実施形態では、二本鎖切断は、組み込み部位から最大1、2、3、4、5、10、15、または20ヌクレオチド離れてもよい。他の実施形態では、二本鎖切断は、組み込み部位から最大10、15、20、25、30、35、40、45、または50ヌクレオチド離れてもよい。さらに他の実施形態では、二本鎖切断は組み込み部位から最大50、100、または1000ヌクレオチド離れてもよい。
DRAP技術は、米国特許第6,534,643号;第6,858,716号、および第6,830,910号、ならびにWattら、2006年に記載されている。
遺伝子改変によってマウスがMHC IおよびMHC IIの欠損となる、そのゲノムが遺伝子改変を含む遺伝子改変免疫不全マウスの生成は、遺伝子標的化ベクターの着床前胚または幹細胞、例えば胚性幹(ES)細胞、もしくは人工多能性幹(iPS)細胞への導入によって達成することができる。
用語「遺伝子標的化ベクター」は、標的化遺伝子への挿入または標的化遺伝子の置き換えなどによる、特定の染色体座を組換えおよび変異させるために有効な二本鎖組換えDNA分子を指す。
標的化遺伝子破壊、例えば変異に関して、遺伝子標的化ベクターは、組換えDNA技術を使用して作製され、幹細胞の内因性の標的遺伝子と相同である5’および3’配列を含む。遺伝子標的化ベクターは、必要に応じておよび好ましくはネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、ヒグロマイシン、またはピューロマイシンなどの選択可能マーカーをさらに含む。当業者は、遺伝子標的化ベクターに含める配列を選択し、これらを単なるルーチンの実験によって使用することができる。遺伝子標的化ベクターは、周知の方法論を使用して組換えまたは合成によって生成することができる。
遺伝子標的化ベクターの着床前胚へのDNA注入の方法に関して、遺伝子標的化ベクターを線形にした後、非ヒト着床前胚に注入する。好ましくは、遺伝子標的化ベクターは、受精卵母細胞に注入される。受精卵母細胞は、交尾後(0.5dpc)の過排卵雌性動物から収集し、発現構築物を注入する。注入した卵母細胞を一晩培養するか、または交尾後0.5日の偽妊娠雌性動物の卵管に直接移入する。過排卵、卵母細胞の採取、遺伝子標的化ベクターの注入、および胚移入のための方法は当技術分野で公知であり、Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press;2002年12月15日、ISBN−10:0879695919に記載されている。子孫を、標的遺伝子破壊、例えば変異の存在に関して、DNA分析、例えばPCR、サザンブロットまたはシークエンシングによって試験することができる。破壊された、例えば変異した標的遺伝子を有するマウスを、ELISAもしくはウェスタンブロット分析を使用することなどによって標的タンパク質の発現、および/またはRT−PCRなどによってmRNA発現に関して試験することができる。
あるいは、遺伝子標的化ベクターを、周知の方法、例えば電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、およびリポフェクションを使用して幹細胞(ES細胞またはiPS細胞)にトランスフェクトしてもよい。
マウスES細胞を、特定の系統に関して最適化した培地中で成長させる。典型的には、ES培地は、15%ウシ胎児血清(FBS)、または合成もしくは半合成の均等物、2mMグルタミン、1mMピルビン酸Na、0.1mM非必須アミノ酸、50U/mlペニシリンおよびストレプトマイシン、0.1mM 2−メルカプトエタノール、ならびに1000U/ml LIF(これに加えて、一部の細胞系統では、化学的分化阻害剤)を、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中に含有する。詳細な説明は、当技術分野で公知である(Tremmlら、2008年、Current Protocols in Stem Cell Biology、第1章:第1C.4項。ES細胞分化の阻害剤の論評に関しては、Buehr, M.ら、(2003年)、Genesis of embryonic stem cells. Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences、358巻、1397〜1402頁を参照されたい。
細胞を、標的遺伝子破壊、例えば変異に関して、DNA分析、例えばPCR、サザンブロットまたはシークエンシングによってスクリーニングする。標的遺伝子を破壊する正しい相同組換え事象を有する細胞を、ELISAもしくはウェスタンブロット分析を使用することなどによって標的タンパク質の発現、および/またはRT−PCRなどによってmRNA発現に関して試験することができる。所望の場合、Creリコンビナーゼで幹細胞を処置することによって選択可能マーカーを除去することができる。Creリコンビナーゼ処置後、細胞を、標的タンパク質をコードする核酸の存在に関して分析する。
標的遺伝子を破壊する正しいゲノム事象を有する選択された幹細胞を、着床前胚に注入することができる。マイクロインジェクションに関して、ESまたはiPS細胞を、トリプシンおよびEDTAの混合物を使用して単細胞にした後、ES培地に再懸濁させる。単細胞の群を、マイクロマニピュレーターを備えた倒立顕微鏡を使用して、微細に引き伸ばされたガラス針(内径20〜25マイクロメートル)を使用して選択し、胚の透明帯を通して胚盤胞腔(卵割腔)の中に導入する。胚盤胞注入の代替として、幹細胞を初期胚(例えば、2細胞、4細胞、8細胞、前桑実胚、または桑実胚)に注入することができる。レーザーまたは圧電パルスの助けを借りて穴を開けた透明帯に注入を行ってもよい。胚盤胞または8細胞期胚あたりおよそ9〜10個の選択した幹細胞(ESまたはiPS細胞)、4細胞期胚あたり6〜9個の幹細胞、および2細胞期胚あたり約6個の幹細胞を注入する。幹細胞の導入後、胚を、5%CO2、5%O2の窒素下、37℃で数時間回復させるか、または一晩培養した後、偽妊娠レシピエント雌性動物に移入する。幹細胞注入のさらなる代替では、幹細胞を、桑実胚期の胚と共に凝集させることができる。これらの方法は全て十分に確立されており、幹細胞キメラを産生するために使用することができる。より詳細な説明に関しては、Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manual、第3版(A. Nagy、M. Gertsenstein、K. Vintersten、R. Behringer、Cold Spring Harbor Laboratory Press; 2002年12月15日、ISBN−10:0879695919、Nagyら、1990年、Development 110巻、815〜821頁;US7576259:Method for making genetic modifications、US7659442、US7,294,754、Krausら、2010年、Genesis、48巻、394〜399頁)を参照されたい。
偽妊娠胚レシピエントは、当技術分野で公知の方法を使用して調製する。簡単に説明すると、6〜8週齢の間の受精可能な雌性マウスを精管除去または不妊雄性動物と交尾させ、外科的に導入された胚の維持を助けるホルモン状態を誘導する。交尾後(dpc)2.5日目、胚盤胞を含有する幹細胞最大15個を、子宮−卵管接合部に非常に近い子宮角に導入する。初期胚および桑実胚では、そのような胚を、in vitroで胚盤胞へと培養するか、または胚期に応じて0.5dpcもしくは1.5dpcの偽妊娠雌性動物の卵管に植え込む。植え込んだ胚からのキメラの仔は、植え込み時の胚年齢に応じて移入後16〜20日目に産まれる。キメラの雄性動物を育種のために選択する。子孫を、ES細胞ゲノムの伝播に関して、被毛の色、およびPCR、サザンブロット、またはシークエンシングなどの核酸分析によって分析することができる。さらに、標的遺伝子の発現を、標的mRNA発現、またはタンパク質発現に関して、例えばタンパク質分析、例えばイムノアッセイもしくは機能的アッセイなどによって分析して、標的遺伝子破壊を確認することができる。標的遺伝子破壊、例えば変異を有する子孫を相互交配して、標的遺伝子破壊に関してホモ接合である非ヒト動物を創出する。トランスジェニックマウスを、免疫不全マウスと交配して、標的遺伝子破壊を有するコンジェニック免疫不全株を創出する。
マウスが標的遺伝子を発現する能力を欠如するように標的遺伝子が破壊されているか否かを決定するために遺伝子改変マウスを評価する方法は周知であり、核酸アッセイ、分光分析アッセイ、イムノアッセイ、および機能的アッセイなどの標準的な技術を含む。
1つまたは複数の標準を使用して、試料中の標的タンパク質の定量的決定を可能にすることができる。
標的遺伝子の破壊が推定される動物における機能的な標的タンパク質の評価のためのアッセイを実施することができる。標的遺伝子の破壊が推定される動物における標的タンパク質の機能の評価のためのアッセイを本明細書に記載する。
必要に応じて、本発明の態様による遺伝子改変免疫不全マウスを、選択的育種によって産生する。第1の所望の遺伝子型を有するマウスの第1の親株を、第2の所望の遺伝子型を有するマウスの第2の親株と交配させて、第1および第2の所望の遺伝子型を有する遺伝子改変マウスである子孫を産生してもよい。例えば、MHC Iの発現が存在しないかまたは低減されるように、免疫不全である第1のマウスを、MHC I遺伝子破壊を有する第2のマウスと交配させて、免疫不全であり、かつMHC Iの発現が存在しないかまたは低減されるようにMHC I遺伝子破壊を有する子孫を産生してもよい。さらなる例では、NSGマウスを、標的遺伝子の発現が存在しないかまたは低減されるように、標的遺伝子破壊を有するマウスと交配させて、免疫不全であり、かつ標的タンパク質の発現が存在しないかまたは低減されるように標的遺伝子破壊を有する子孫を産生してもよい。
本発明の態様は、細胞の実質的に全てに標的遺伝子破壊を含む遺伝子改変免疫不全マウス、ならびに一部の、しかし全てではない細胞に標的遺伝子破壊を含む遺伝子改変マウスを提供する。
免疫不全
用語「免疫不全の非ヒト動物」は、機能的な免疫細胞、例えばT細胞およびB細胞の欠如;DNA修復の欠陥;リンパ球上の抗原特異的受容体をコードする遺伝子再構成の欠陥;ならびにIgM、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3およびIgAなどの免疫機能分子の欠如のうちの1つまたは複数によって特徴付けられる非ヒト動物を指す。
本発明の態様によれば、そのゲノムが遺伝子改変を含み、遺伝子改変によって、非ヒト動物のMHC IおよびMHC II活性が欠損する、本発明の態様により提供される遺伝子改変免疫不全非ヒト動物は、マウスである。本明細書における説明は、遺伝子改変免疫不全非ヒト動物がマウスである本発明の態様を主に指すが、遺伝子改変免疫不全非ヒト動物はまた、ラット、アレチネズミ、モルモット、ハムスター、ウサギ、ブタ、ヒツジ、または非ヒト霊長類などの哺乳動物であり得る。
用語「免疫不全マウス」は、機能的な免疫細胞、例えばT細胞およびB細胞の欠如;DNA修復の欠陥;リンパ球上の抗原特異的受容体をコードする遺伝子再構成の欠陥;ならびにIgM、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3およびIgAなどの免疫機能分子の欠如のうちの1つまたは複数によって特徴付けられるマウスを指す。免疫不全マウスは、Rag1およびRag2(Oettinger, M.Aら、Science、248巻:1517〜1523頁、1990年;およびSchatz, D. G.ら、Cell、59巻:1035〜1048頁、1989年)などの免疫機能に関係する遺伝子の1つまたは複数の欠損によって特徴付けることができる。免疫不全マウスは、マウスにおいて異常な免疫機能をもたらすこれらまたは他の欠陥のいずれかを有し得る。
特に有用な免疫不全マウス株は、NOD.Cg−Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJであり、一般的にNOD scidガンマ(NSG)マウスと呼ばれ、Shultz LDら、2005年、J. Immunol、174巻:6477〜89頁に詳細に記載されている。NSGは、The Jackson Laboratoryで開発されたマウス亜株を表す。他の類似のマウス亜株を使用してNSGを作製してもよく、それらも本発明に包含されると意図される。他の有用な免疫不全マウス株には、一般的にNRGマウスと呼ばれるNOD.Cg−Rag1tm1Mom Il2rgtm1Wjl/SzJ、Shultz LDら、2008年、Clin Exp Immunol、154巻(2号):270〜84頁を参照されたい;および一般的にNOGマウスと呼ばれ、例えば、Ito, M.ら、Blood、100巻、3175〜3182頁(2002年)に詳細に記載されているNOD.Cg−Prkdcscid Il2rgtm1Sug/JicTacまたはNOD/Shi−scid−IL2rγnullが挙げられる。
用語「重症複合免疫不全(SCID)」は、T細胞の非存在およびB細胞機能の欠如によって特徴付けられる状態を指す。
SCIDの一般的な形態には、IL2RG遺伝子のガンマ鎖遺伝子変異およびリンパ球表現型T(−)B(+)NK(−)によって特徴付けられるX連鎖SCID;ならびにJak3遺伝子変異およびリンパ球表現型T(−)B(+)NK(−)、ADA遺伝子変異およびリンパ球表現型T(−)B(−)NK(−)、IL−7Rアルファ鎖変異およびリンパ球表現型T(−)B(+)NK(+)、CD3デルタまたはイプシロン変異およびリンパ球表現型T(−)B(+)NK(+)、RAG1/RAG2変異およびリンパ球表現型T(−)B(−)NK(+)、Artemis遺伝子変異およびリンパ球表現型T(−)B(−)NK(+)、CD45遺伝子変異およびリンパ球表現型T(−)B(+)NK(+)によって特徴付けられる常染色体劣性SCIDが挙げられる。
さらなる態様では、遺伝子改変免疫不全マウスは、欠陥のある内因性のDNA依存的プロテインキナーゼ触媒、サブユニットをマウスに発現させる、DNA依存的プロテインキナーゼ、触媒サブユニット(Prkdc)をコードする、その内因性の遺伝子に欠陥を、および/もしくは内因性DNA依存的プロテインキナーゼ、触媒サブユニットの低減された量を有するか、またはマウスは、内因性のDNA依存的プロテインキナーゼ、触媒サブユニットを全く発現しなくてもよい。免疫不全マウスは、必要に応じて、機能的な内因性のPrkdc遺伝子を欠如するように、Prkdcヌルであり得る。)
本発明の態様による遺伝子改変マウスは、一般的にscid変異と呼ばれる重症複合免疫不全変異(Prkdcscid)を有する。scid変異は周知であり、Bosmaら、Immunogenetics、29巻:54〜56頁、1989年に記載されるようにマウス第16染色体に位置する。scid変異に関してホモ接合であるマウスは、機能的なT細胞およびB細胞の非存在、リンパ球減少症、低グロブリン血症、および正常な造血微小環境によって特徴付けられる。scid変異は、例えば、周知の方法、例えばPCRまたはフローサイトメトリーを使用するscid変異のマーカーの検出によって検出することができる。
本発明の態様による遺伝子改変マウスは、IL2受容体ガンマ鎖欠損を有する。用語「IL2受容体ガンマ鎖欠損」は、IL2受容体ガンマ鎖の減少を指す。IL2受容体ガンマ鎖の減少は、遺伝子欠失または変異が原因であり得る。IL2受容体ガンマ鎖の減少は、例えば周知の方法を使用する、IL2受容体ガンマ鎖遺伝子の欠失もしくは変異の検出および/またはIL2受容体ガンマ鎖発現の減少の検出によって検出することができる。
本発明の態様によれば、ゲノムが遺伝子改変を含む遺伝子改変免疫不全NSGマウスであって、遺伝子改変免疫不全NSGマウスが機能的なMHC Iを欠如し、かつ機能的なMHC IIを欠如するように、遺伝子改変によって、免疫不全マウスがMHC IおよびMHC II欠損となる、遺伝子改変免疫不全NSGマウスを提供する。
本発明の態様によれば、ゲノムが遺伝子改変を含む遺伝子改変免疫不全NRGマウスであって、遺伝子改変免疫不全NRGマウスが機能的なMHC Iを欠如し、かつ機能的なMHC IIを欠如するように、遺伝子改変によって、免疫不全マウスがMHC IおよびMHC II欠損となる、遺伝子改変免疫不全NRGマウスを提供する。
本発明の態様によれば、ゲノムが遺伝子改変を含む遺伝子改変免疫不全NOGマウスであって、遺伝子改変免疫不全NOGマウスが機能的なMHC Iを欠如し、かつ機能的なMHC IIを欠如するように、遺伝子改変によって、免疫不全マウスがMHC IおよびMHC II欠損となるが、但し免疫不全マウスは、β2m(MHC Iの構成要素)ノックアウトおよびIAβ(MHC IIの軽鎖)ノックアウトによって特徴付けられるNOD/Shi−scid−IL2rγnullマウスではない、遺伝子改変免疫不全NOGマウスを提供する。
NSG−(Kb Db)null(IAnull)マウス
本発明の態様によれば、MHCクラスIおよびMHCクラスIIが欠損している遺伝子改変免疫不全マウスは、機能的なMHC Iを欠如し、かつ機能的なMHC IIを欠如するNOD.Cg−Prkdcscid H2−K1tm1Bpe H2−Ab1em1Mvw H2−D1tm1Bpe Il2rgtm1Wjl/SzJ(NSG−(Kb Db)null(IAnull)と略す)マウスである。NSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスは、H2−KおよびH2−D MHC Iαタンパク質サブクラスのホモ接合ヌル変異((Kb Db)nullと略す)により機能的なMHC Iを欠如する。NSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスは、MHC IIのH−2Aサブクラスのホモ接合ヌル変異(IAnullと略す)により機能的なMHC IIを欠如する。
NSG−(Kb Db)null(IAnull)およびNSG−B2Mnull(IA IE)nullマウスはいずれも、機能的なMHC IおよびMHC IIを欠如するが、意外にもNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスにおけるヒトIgGクリアランスは、NSG−B2Mnull(IA IE)nullマウスのクリアランスとは大幅に異なる。NSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスは、遅いヒトIgGクリアランスパターン(NSGマウスにおいて観察されるパターンと類似の;NSGマウスは、機能的なMHC IおよびMHC IIを有することに注意されたい)を示すが、NSG−B2Mnull(IA IE)nullマウスは、急速なIgGクリアランスを示し(図2を参照されたい)、これにより、このマウスモデルは、抗体試験における使用に適さなくなる。本発明のNSG−(Kb Db)null(IAnull))マウスは、ヒトIgGの投与後2日間で、投与されたヒトIgGの60%以下、例えば70%、80%、または90%以下のクリアランスによって特徴付けられる。NSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスでは、投与の約2週間後に、約90%のヒトIgGが除去された。マウスに投与されたヒトIgGに関連して使用される用語「クリアランス」は、マウスからの機能的なヒトIgGの除去のプロセスを指す。
NSG−B2Mnull(IA IE)nullマウス
本発明の態様によれば、機能的なMHC Iが欠如し、かつ機能的なMHC IIが欠如している、MHCクラスIおよびMHCクラスIIが欠損している遺伝子改変免疫不全マウスは、NOD.Cg−Prkdcscid H2−K1tm1Bpe H2−Ab1em1Mvw H2−D1tm1Bpe Il2rgtm1Wjl Tg(Ins2−HBEGF)6832Ugfm/Sz(NSG−B2Mnull(IA IE)nullと略す)マウスである。NSG−B2Mnull(IA IE)nullマウスは、β2ミクログロブリンのホモ接合ヌル変異(B2Mnullと略す)により機能的なMHC Iを欠如している。NSG−B2Mnull(IA IE)nullマウスは、MHC IIのH−2AおよびH−2Eサブクラスのホモ接合ヌル変異((IA IE)nullと略す)により機能的なMHC IIを欠如している。
NSG−B2Mnull(IA IEnull)マウスにおいてヒトIgGの急速なクリアランスが観察された。NSG−B2Mnull(IA IEnull)マウスでは、約2日後に約90%のヒトIgGが除去された、図2を参照されたい。
NSG−RIP−DTR(Kb Db)null(IAnull)マウス
本発明の態様によれば、機能的なMHC Iが欠如し、かつ機能的なMHC IIが欠如している、MHCクラスIおよびMHCクラスIIが欠損している遺伝子改変免疫不全マウスは、NOD.Cg−Prkdcscid H2−K1tm1Bpe H2−Ab1em1Mvw H2−D1tm1Bpe Il2rgtm1Wjl Tg(Ins2−HBEGF)6832Ugfm/Szトランスジェニックマウスであり、NSG−RIP−DTR(Kb Db)null(IAnull)と略され、これはNSGバックグラウンドに対して、ラットインスリンプロモーターの制御下でジフテリア毒素受容体を発現する。ラットインスリンプロモーターの制御下でのジフテリア毒素受容体を発現するマウスへのジフテリア毒素(DT)の注射は、マウス膵ベータ細胞死および高血糖症をもたらす。NSG−RIP−DTR(Kb Db)null(IAnull)株は、マウス膵ベータ細胞の完全かつ特異的な除去を可能にし、それによってストレプトゾトシンなどの糖尿病誘発薬の広い毒性効果を回避する。
同種異系および/または異種細胞を含むマウスモデル
本発明の態様による遺伝子改変免疫不全マウスは、同種異系および/または異種の細胞または組織をさらに含む。マウスは機能的なMHC Iおよび機能的なMHC IIを欠如することから、移植片対宿主病(GVHD)の低減または非存在により、同種異系および/または異種の細胞または組織が投与されている本発明の遺伝子改変免疫不全マウスの生存の増加が観察される。例えば機能的なMHC Iおよび機能的なMHC IIを欠如する遺伝子改変免疫不全マウスは、遺伝子改変免疫不全マウスに同種異系および/または異種の細胞または組織の投与後、機能的なMHC Iおよび機能的なMHC IIを欠如していない同じタイプの免疫不全マウスよりも長く生存する。
機能的なMHC Iおよび機能的なMHC IIを欠如する遺伝子改変免疫不全マウスに投与された同種異系および/または異種の細胞または組織は、起源またはタイプに関して限定されない。機能的なMHC Iおよび機能的なMHC IIを欠如する遺伝子改変免疫不全マウスへの同種異系および/または異種の細胞または組織の投与は、投与される同種異系および/または異種の細胞または組織のタイプに応じて、様々な使用のためのマウスモデルを提供する。投与される異種細胞または組織には、ヒト膵細胞;ヒト膵島;ヒト膵ベータ細胞;幹細胞、例えば、しかしこれに限定されないヒトCD34+細胞;ヒト患者由来初代ヒト腫瘍細胞;ヒト腫瘍細胞系統細胞;ヒト肝細胞;ヒト造血細胞;分化したヒト血液細胞、例えば白血球、赤血球、リンパ球、単球、好中球、好酸球、好塩基球、血小板、NK細胞、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)の単離されたまたは混合集団、および細胞または組織の2つまたはそれより多くのタイプの組合せが挙げられるがこれらに限定されない。
投与される同種異系および/または異種の細胞または組織には、非ヒト膵細胞;非ヒト膵島;非ヒト膵ベータ細胞;幹細胞、例えば、しかしこれに限定されない非ヒトCD34+細胞;非ヒト初代腫瘍細胞;非ヒト腫瘍細胞系統細胞;非ヒト肝細胞;非ヒト造血細胞;分化した非ヒト血液細胞、例えば白血球、赤血球、リンパ球、単球、好中球、好酸球、好塩基球、血小板、NK細胞、および非ヒト末梢血単核細胞の単離されたまたは混合集団、ならびに細胞または組織の2つまたはそれより多くのタイプの組合せが挙げられるがこれらに限定されない。
必要に応じて、機能的なMHC Iおよび機能的なMHC IIを欠如する遺伝子改変免疫不全マウスに投与される同種異系および/または異種の細胞または組織は、遺伝子改変されている。
本発明の特定の態様によれば、ヒトT細胞は、機能的なMHC Iおよび機能的なMHC IIを欠如する免疫不全遺伝子改変マウスに投与される。ヒトT細胞は、単離されたヒトT細胞集団として、マウスにおいてヒトT細胞へと分化するヒト幹細胞もしくはヒト前駆細胞の集団として、またはヒトT細胞がサブセットである混合細胞集団として投与することができる。
本発明の特定の態様によれば、ヒト腫瘍細胞は、機能的なMHC Iおよび機能的なMHC IIを欠如する免疫不全遺伝子改変マウスに投与される。ヒト腫瘍細胞は、ヒト患者由来初代ヒト腫瘍細胞もしくはヒト腫瘍細胞系統細胞などの、しかしこれらに限定されない単離されたヒト腫瘍細胞集団として、またはヒト腫瘍細胞がサブセットである混合細胞集団として投与することができる。
本発明の特定の態様によれば、ヒト腫瘍細胞は、機能的なMHC Iおよび機能的なMHC IIを欠如する免疫不全遺伝子改変マウスに投与される。ヒト腫瘍細胞は、ヒト患者由来初代ヒト腫瘍細胞もしくはヒト腫瘍細胞系統細胞などの、しかしこれらに限定されない単離されたヒト腫瘍細胞集団として、またはヒト腫瘍細胞がサブセットである混合細胞集団として投与することができる。
同種異系および/または異種の細胞または組織は、静脈内、または腹腔内投与などの、しかしこれらに限定されない様々な経路を介して本発明の遺伝子改変免疫不全マウスに投与することができる。
同種異系および/または異種の細胞または組織は、遺伝子改変免疫不全マウスに1回または複数回投与することができる。同種異系および/または異種の細胞または組織が投与されている、本発明の機能的なMHC Iおよび機能的なMHC IIを欠如している遺伝子改変免疫不全マウスの生存の増加は、移植片対宿主病(GVHD)の低減または非存在による。
本発明の態様によれば、分化した同種異系および/または異種の細胞または組織は、免疫不全遺伝子改変マウスにおいて生着し、マウスにおける幹細胞の分化によって分化した細胞または組織を産生する1つまたは複数のタイプの幹細胞を投与することによって、機能的なMHC Iおよび機能的なMHC IIを欠如する免疫不全遺伝子改変マウスに導入される。
投与される同種異系および/または異種細胞の数は、制限されるとは考えられていない。このため、投与される同種異系および/または異種細胞の数は一般的に、1×103〜1×108(1,000〜100,000,000)個の範囲であるが、これより多いまたは少ない数を使用することができる。
このように、本発明の態様による方法は、約1×103(1000)〜約1×108(100,000,000)、約1×104(10,000)〜約1×108(100,000,000)、約1×104(10,000)〜約1×107(10,000,000)、約1×105(100,000)〜約1×107(10,000,000)、約1×103(1,000)〜約1×104(10,000)、約5×103(5,000)〜約5×104(50,000)、約1×104(10,000)〜約1×105(100,000)、約5×104(50,000)〜約5×105(500,000)、約1×106(1,000,000)〜約1×108(100,000,000)、約5×106(5,000,000)〜約1×108(100,000,000)、約1×107(10,000,000)〜約1×108(100,000,000)、約2×104(20,000)〜約5×105(500,000)、または約5×104(50,000)〜約2×105(200,000)個の同種異系および/または異種細胞を、免疫不全遺伝子改変マウスに投与するステップを含み得る。方法は、少なくとも約1×102(100)、約2×102(200)、約3×102(300)、約4×102(400)、約5×102(500)、約6×102(600)、約7×102(700)、約8×102(800)、約9×102(900)、約1×103(1000)、約2×103(2000)、約3×103(3000)、約4×103(4000)、約5×103(5000)、約6×103(6000)、約7×103(7000)、約8×103(8000)、約9×103(9000)、約1×104(10,000)、約2×104(20,000)、約3×104(30,000)、約4×104(40,000)、約5×104(50,000)、約6×104(60,000)、約7×104(70,000)、約8×104(80,000)、約9×104(90,000)、約1×105(100,000)、約2×105(200,000)、約3×105(300,000)、約4×105(400,000)、約5×105(500,000)、約6×105(600,000)、約7×105(700,000)、約8×105(800,000)、約9×105(900,000)、約1×106(1,000,000)、約2×106(2,000,000)、約3×106(3,000,000)、約4×106(4,000,000)、約5×106(5,000,000)、約6×106(6,000,000)、約7×106(7,000,000)、約8×106(8,000,000)、約9×106(9,000,000)、約1×107(10,000,000)、約2×107(20,000,000)、約3×107(30,000,000)、約4×107(40,000,000)、約5×107(50,000,000)、約6×107(60,000,000)、約7×107(70,000,000)、約8×107(80,000,000)、約9×107(90,000,000)、または約1×108(100,000,000)個の同種異系および/または異種細胞を、免疫不全遺伝子改変マウスに投与するステップを含み得る。当業者は、単なるルーチンの実験を使用して、特定のマウスに投与すべき同種異系および/または異種細胞の数を決定することができるであろう。
同種異系および/または異種細胞をマウスに投与するステップは、同種異系および/または異種細胞を含む組成物をマウスに投与するステップを含み得る。組成物は、例えば、水、等張性調節剤(例えば、塩化ナトリウムなどの塩)、pH緩衝剤(例えば、クエン酸)、および/または糖(例えば、グルコース)をさらに含み得る。
遺伝子改変免疫不全動物における同種異系および/または異種造血幹細胞の生着は、本発明の遺伝子改変免疫不全マウスにおける分化した同種異系および/または異種細胞、例えば造血細胞の存在によって特徴付けられる。同種異系および/または異種細胞の生着は、細胞の投与後の1つまたは複数の時点での、同種異系および/または異種が投与される動物における細胞のフローサイトメトリーによる分析などの、しかしこれらに限定されない様々な方法のいずれかによって評価することができる。
腫瘍異種移植片
本発明の様々な態様は、異種腫瘍細胞を、本発明の遺伝子改変免疫不全マウスに投与することに関する。
本発明の遺伝子改変免疫不全マウスに投与される異種腫瘍細胞は、腫瘍細胞系統の細胞および初代腫瘍細胞を含むがこれらに限定されない様々な腫瘍細胞のいずれかであり得る。異種腫瘍細胞は、様々な生物のいずれか、好ましくはヒト、非ヒト霊長類、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ヤギ、ブタ、およびヒツジを含む哺乳動物に由来してもよい。
本発明の具体的な態様によれば、異種腫瘍細胞は、ヒト腫瘍細胞である。本発明の具体的な態様によれば、ヒト腫瘍細胞は、血液試料、組織試料、またはヒト腫瘍の生検から得た試料などの、しかしこれらに限定されないヒトから得た試料中に存在する。
ヒトから得た腫瘍細胞は、本発明の遺伝子改変免疫不全マウスに直接投与することができ、または遺伝子改変免疫不全マウスに投与する前にin vitroで培養してもよい。
本明細書に使用される用語「腫瘍」は、前新生物過増殖、上皮内がん、新生物、転移、ならびに固形および非固形腫瘍を含むがこれらに限定されない、無調節な成長によって特徴付けられる細胞を指す。腫瘍の例は、がんによって引き起こされる腫瘍であり、リンパ腫、白血病、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺癌、肺扁平上皮癌、腹膜がん、副腎がん、肛門がん、胆管がん、膀胱がん、脳がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、中枢神経系または末梢神経系のがん、子宮頸がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、食道がん、胆嚢がん、消化管がん、膠芽腫、頭頸部がん、腎臓がん、肝臓がん、鼻咽頭がん、鼻腔がん、中咽頭がん、口腔がん、骨肉腫、卵巣がん、膵臓がん、副甲状腺がん、下垂体がん、前立腺がん、網膜芽腫、肉腫、唾液腺がん、皮膚がん、小腸がん、胃がん、精巣がん、胸腺がん、甲状腺がん、子宮がん、膣がん、および外陰がんが挙げられるがこれらに限定されない。
腫瘍細胞を遺伝子改変免疫不全マウスに投与することは、当技術分野で認識されるように適している任意の方法であり得る。例えば、投与は、注射または植え込み、例えば皮下および/または腹腔内植え込みなどによって、臓器、体腔、または血管に細胞を投与することを含み得る。腫瘍細胞は、腫瘍瘤、腫瘍細胞塊として、または解離した細胞として投与され得る。
腫瘍細胞は、皮下注射、腹腔内注射、または尾静脈への注射などによる、しかしこれらに限定されない様々な経路によって投与することができる。
異種腫瘍細胞の生着は、腫瘍形成の兆候に関してマウスの肉眼での検分などの、しかしこれらに限定されない様々な方法のいずれかによって評価することができる。
生きているマウスにおける測定、生きているマウスから切除した腫瘍の測定、またはin situでのもしくは死亡したマウスから切除した腫瘍の測定を含むがこれらに限定されない様々な方法のいずれかを使用して、異種腫瘍の成長を測定することができる。測定は、キャリパーなどの測定機器、超音波検査法、コンピューター断層撮影法、陽電子放出断層撮影法、蛍光イメージング、生物発光イメージング、核磁気共鳴画像法などの1つまたは複数の撮像技術を使用する測定、およびこれらまたは他の腫瘍測定法の任意の2つまたはそれより多くの組合せを使用して得ることができる。特に非固形腫瘍の場合、異種腫瘍細胞を有するマウスから得た試料中の腫瘍細胞の数を使用して、腫瘍の成長を測定することができる。例えば、血液試料中の非固形腫瘍の数を評価して、マウスにおける非固形腫瘍の成長の測定を得ることができる。
投与される腫瘍細胞の数は制限されるとは考えられていない。単一の腫瘍細胞を、本明細書に記載の遺伝子改変免疫不全動物において検出可能な腫瘍に増大させることができる。投与される腫瘍細胞の数は一般的に、腫瘍細胞103(1,000)〜1×108(100,000,000)個の範囲であるが、これより多いまたは少ない数を投与することができる。
このように、本発明の態様による方法は、約1×102(100)〜約1×108(100,000,000)、約1×103(1,000)〜約1×105(100,000)、約1×104(10,000)〜約1×106(1,000,000)、約1×105(100,000)〜約1×107(10,000,000)、約1×103(1000)〜約1×104(10,000)、約5×103(5,000)〜約5×104(50,000)、約1×104(10,000)〜約1×105(100,000)、約5×104(50,000)〜約5×105(500,000)、約1×105(100,000)〜約1×106(1,000,000)、約5×105(500,000)〜約5×106(5,000,000)、約1×106(1,000,000)〜約1×107(10,000,000)、約2×104(20,000)〜約5×105(500,000)、または約5×104(50,000)〜約2×105(200,000)個の異種腫瘍細胞、例えばヒト腫瘍細胞を遺伝子改変免疫不全マウスに投与するステップを含み得る。方法は、少なくとも約1×102(100)、約2×102(200)、約3×102(300)、約4×102(400)、約5×102(500)、約6×102(600)、約7×102(700)、約8×102(800)、約9×102(900)、約1×103(1,000)、約2×103(2,000)、約3×103(3,000)、約4×103(4000)、約5×103(5,000)、約6×103(6,000)、約7×103(7,000)、約8×103(8,000)、約9×103(9,000)、約1×104(10,000)、約2×104(20,000)、約3×104(30,000)、約4×104(40,000)、約5×104(50,000)、約6×104(60,000)、約7×104(70,000)、約8×104(80,000)、約9×104(90,000)、約1×105(100,000)、約2×105(200,000)、約3×105(300,000)、約4×105(400,000)、約5×105(500,000)、約6×105(600,000)、約7×105(700,000)、約8×105(800,000)、約9×105(900,000)、約1×106(1,000,000)、約2×106(2,000,000)、約3×106(3,000,000)、約4×106(4,000,000)、約5×106(5,000,000)、約6×106(6,000,000)、約7×106(7,000,000)、約8×106(8,000,000)、約9×106(9,000,000)、または約1×107(10,000,000)個の異種腫瘍細胞、例えばヒト腫瘍細胞を、免疫不全QUADマウスに投与するステップを含み得る。方法は、約1×102(100)、約2×102(200)、約3×102(300)、約4×102(400)、約5×102(500)、約6×102(600)、約7×102(700)、約8×102(800)、約9×102(900)、約1×103(1,000)、約2×103(2,000)、約3×103(3,000)、約4×103(4,000)、約5×103(5,000)、約6×103(6,000)、約7×103(7,000)、約8×103(8,000)、約9×103(9,000)、約1×104(10,000)、約2×104(20,000)、約3×104(30,000)、約4×104(40,000)、約5×104(50,000)、約6×104(60,000)、約7×104(70,000)、約8×104(80,000)、約9×104(90,000)、約1×105(100,000)、約2×105(200,000)、約3×105(300,000)、約4×105(400,000)、約5×105(500,000)、約6×105(600,000)、約7×105(700,000)、約8×105(800,000)、約9×105(900,000)、約1×106(1,000,000)、約2×106(2,000,000)、約3×106(3,000,000)、約4×106(4,000,000)、約5×106(5,000,000)、約6×106(6,000,000)、約7×106(7,000,000)、約8×106(8,000,000)、約9×106(9,000,000)、約1×107(10,000,000)、または約1×108(100,000,000)個の異種腫瘍細胞、例えばヒト腫瘍細胞を遺伝子改変免疫不全マウスに投与するステップを含み得る。当業者は、単なるルーチンの実験を使用して、特定のマウスに投与すべき異種腫瘍細胞の数を決定することができるであろう。
本発明の態様によれば、異種腫瘍細胞および異種白血球は、遺伝子改変免疫不全マウスに投与される。異種腫瘍細胞および異種白血球は、同時にまたは異なる時間に投与することができる。
本発明の態様によれば、腫瘍細胞は、投与される白血球と同じ種に由来する。態様によれば、本発明の遺伝子改変免疫不全マウスに投与される腫瘍細胞および白血球の両方は、ヒト細胞である。
本発明の態様によれば、異種腫瘍細胞および異種T細胞は、遺伝子改変免疫不全マウスに投与される。異種腫瘍細胞および異種T細胞は、同時にまたは異なる時間に投与することができる。
本発明の態様によれば、腫瘍細胞は、投与されるT細胞と同じ種に由来する。態様によれば、本発明の遺伝子改変免疫不全マウスに投与される腫瘍細胞およびT細胞の両方は、ヒト細胞である。
本発明の態様によれば、異種腫瘍細胞および異種PBMCは、遺伝子改変免疫不全マウスに投与される。異種腫瘍細胞および異種PBMCは、同時にまたは異なる時間に投与することができる。
本発明の態様によれば、腫瘍細胞は、投与されるPBMCと同じ種に由来する。態様によれば、本発明の遺伝子改変免疫不全マウスに投与される腫瘍細胞およびPBMCの両方は、ヒト細胞である。
条件付け
本発明の態様による免疫不全遺伝子改変マウスにおける異種細胞の生着は、異種細胞の投与前に、例えばレシピエント動物への高周波電磁放射線の亜致死量照射、またはガンマ線照射、またはブスルファンもしくはナイトロジェンマスタードなどの放射線模倣薬での処置による、免疫不全遺伝子改変マウスの「条件付け」を含む。条件付けは、造血細胞などの宿主免疫細胞の数を低減させ、白血球、T細胞、PBMC、もしくは他の細胞などの、しかしこれらに限定されない異種免疫細胞の生着のための適切な微小環境要因を創出する、および/または異種免疫細胞の生着のための微小環境ニッチェを創出すると考えられている。条件付けのための標準的な方法は、本明細書、およびJ. Hayakawaら、2009年、Stem Cells、27巻(1号):175〜182頁に記載されるように当技術分野で公知である。
本発明の態様によれば、白血球、T細胞、PBMC、または他の細胞などの、しかしこれらに限定されない異種免疫細胞の投与前に免疫不全遺伝子改変マウスを「条件付け」することなく、白血球、T細胞、PBMC、または他の細胞などの、しかしこれらに限定されない異種免疫細胞を、免疫不全遺伝子改変マウスに投与するステップを含む方法が提供される。本発明の態様によれば、異種免疫細胞の投与前に、免疫不全遺伝子改変マウスを放射線または放射線模倣薬によって「条件付け」することなく、白血球、T細胞、PBMC、または他の細胞などの、しかしこれらに限定されない異種免疫細胞を、免疫不全遺伝子改変マウスに投与するステップを含む方法が提供される。
アッセイ
本発明の態様によれば、推定の治療剤の効果をアッセイする方法であって、同種異系および/または異種の細胞または組織を含む遺伝子改変免疫不全マウスに、推定の治療剤のある量を投与するステップ、および推定の治療剤の効果を測定するステップを含む、方法が提供される。
本発明の方法において使用される推定の治療剤は、例示的には、合成もしくは天然に存在する化合物、または合成もしくは天然に存在する化合物の組合せ、小有機もしくは無機分子、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、オリゴ糖、脂質、またはこれらのいずれかの組合せを含む任意の化学実体であり得る。
アッセイにとって適した標準は、当技術分野で周知であり、使用される標準は、任意の適切な標準であり得る。
アッセイ結果を、様々な方法のいずれかによる統計分析を使用して分析することができ、例には、パラメトリックまたはノンパラメトリック検定、分散分析、共分散分析、多変量分析のロジスティック回帰、フィッシャーの正確確率検定、カイ二乗検定、スチューデントt検定、マン−ホイットニー検定、ウィルコクソンの符号付き順位検定、マクネマー検定、フリードマン検定、およびページのL傾向検定が挙げられる。これらおよび他の統計検定は、当技術分野で周知であり、Hicks, CM、Research Methods for Clinical Therapists: Applied Project Design and Analysis、Churchill Livingstone(出版社); 第5版、2009年;およびFreund, RJら、Statistical Methods、Academic Press; 第3版、2010年に詳述されている。
本発明の態様により提供される方法および遺伝子改変免疫不全マウスは、ヒトがんに対する物質のin vivo試験などの様々な有用性を有する。
本発明の態様による試験物質の抗腫瘍活性を同定するための方法は、遺伝子改変免疫不全マウスを用意するステップ;遺伝子改変免疫不全マウスにおいて固形または非固形腫瘍を形成する異種腫瘍細胞を遺伝子改変免疫不全マウスに投与するステップ;試験物質を遺伝子改変免疫不全マウスに投与するステップ;試験物質に対する異種腫瘍および/または腫瘍細胞の応答をアッセイするステップであって、腫瘍および/または腫瘍細胞に対する試験物質の阻害効果により、試験物質が抗腫瘍活性を有すると同定される、ステップを含む。
本発明の態様による試験物質の抗腫瘍活性を同定するための方法は、生着した異種PMBCを有する遺伝子改変免疫不全マウスを用意するステップ;遺伝子改変免疫不全マウスにおいて固形または非固形腫瘍を形成する異種腫瘍細胞を遺伝子改変免疫不全マウスに投与するステップ;試験物質を遺伝子改変免疫不全マウスに投与するステップ;試験物質に対する異種腫瘍および/または腫瘍細胞の応答をアッセイするステップであって、腫瘍および/または腫瘍細胞に対する試験物質の阻害効果により、試験物質が抗腫瘍活性を有すると同定される、ステップを含む。
本発明の態様による試験物質の抗腫瘍活性を同定するための方法は、生着したヒトPBMCを有する遺伝子改変免疫不全マウスを用意するステップ;遺伝子改変免疫不全マウスにおいて固形または非固形腫瘍を形成するヒト腫瘍細胞を遺伝子改変免疫不全マウスに投与するステップ;試験物質を遺伝子改変免疫不全マウスに投与するステップ;試験物質に対するヒト腫瘍および/または腫瘍細胞の応答をアッセイするステップであって、腫瘍および/または腫瘍細胞に対する試験物質の阻害効果により、試験物質が抗腫瘍活性を有すると同定される、ステップを含む。
本発明の態様による試験物質の抗腫瘍活性を同定するためのアッセイに使用される遺伝子改変免疫不全マウスは、NSG−(Kb Db)null(IAnull)マウス;またはNSG−B2Mnull(IA IEnull))マウスである。
本明細書に使用される用語「阻害効果」は、試験物質が、腫瘍の成長、腫瘍細胞の代謝、および腫瘍細胞の分裂のうちの1つまたは複数を阻害する効果を指す。
試験物質に対する異種腫瘍および/または腫瘍細胞の応答をアッセイするステップは、標準に対する応答を比較して、本発明の方法の態様による異種腫瘍細胞に対する試験物質の効果を決定するステップであって、異種腫瘍細胞に対する試験物質の阻害効果により、試験物質が抗腫瘍組成物として同定される、ステップを含む。標準は当技術分野で周知であり、使用される標準は任意の適切な標準であり得る。一例では、標準は、抗腫瘍効果を有することが公知の化合物である。さらなる例では、比較可能な異種腫瘍の無処置は、試験物質の効果を比較するための処置なしで、腫瘍成長の基礎レベル指標を提供する。標準は、個々の比較可能なマウスにおいて、または比較可能なマウスの集団において予め決定され、呼び出しおよびアッセイ結果との比較のために印刷物または電子媒体に保存されている予想される腫瘍成長の基準レベルであり得る。
アッセイ結果を、様々な方法のいずれかによる統計分析を使用して分析して、試験物質が腫瘍に対して阻害効果を有するか否かを決定することができ、方法の例には、パラメトリックまたはノンパラメトリック検定、分散分析、共分散分析、多変量分析のロジスティック回帰、フィッシャーの正確確率検定、カイ二乗検定、スチューデントt検定、マン−ホイットニー検定、ウィルコクソンの符号付き順位検定、マクネマー検定、フリードマン検定、およびページのL傾向検定が挙げられる。これらおよび他の統計検定は、当技術分野で周知であり、Hicks, CM、Research Methods for Clinical Therapists: Applied Project Design and Analysis、Churchill Livingstone(出版社); 第5版、2009年;およびFreund, RJら、Statistical Methods、Academic Press; 第3版、2010年に詳述されている。
本発明の方法において使用される試験物質は、例示的には、合成もしくは天然に存在する化合物、または合成もしくは天然に存在する化合物の組合せ、小有機もしくは無機分子、抗体(マウス、キメラ、またはヒト化)、抗体断片(Fab、F(ab)’2)、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、オリゴ糖、脂質、またはこれらのいずれかの組合せを含む任意の化学実体であり得る。
本発明の態様によれば、試験物質は、免疫療法剤、例えば抗体(マウス、キメラ、またはヒト化)、抗体断片(Fab、F(ab)’2)、またはこれらのいずれかの組合せ、あるいは非免疫療法剤、例えば合成もしくは天然に存在する化合物、合成もしくは天然に存在する化合物の組合せ、小有機もしくは無機分子、抗体でも抗原結合性断片でもないタンパク質もしくはペプチド、核酸、炭水化物、オリゴ糖、脂質、またはこれらのいずれかの組合せである。
本発明の態様によれば、試験物質は抗がん剤である。本発明の態様によれば、抗がん剤は、抗がん免疫療法剤、例えば抗がん抗体またはその抗原結合性断片である。本発明の態様によれば、抗がん剤は、非免疫療法剤、例えば合成もしくは天然に存在する化合物、合成もしくは天然に存在する化合物の組合せ、小有機もしくは無機分子、抗体でも抗原結合性断片でもないタンパク質もしくはペプチド、核酸、炭水化物、オリゴ糖、脂質、またはこれらのいずれかの組合せである。
抗がん剤は、例えばBruntonら(編)、Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、第12版、Macmillan Publishing Co.、2011年に記載されている。
抗がん剤の例には、アシビシン、アクラルビシン、アコダゾール、アクロニン、アドゼレシン、アルデスロイキン、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アンボマイシン、アメタントロン、アミフォスチン、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アントラマイシン、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、アスペルリン、アザシチジン、アゼテパ、アゾトマイシン、バチマスタット、ベンゾデパ、ビカルタミド、ビサントレン、ジメシル酸ビスナフィド、ビゼレシン、ブレオマイシン、ブレキナル、ブロピリミン、ブスルファン、カクチノマイシン、カルステロン、カペシタビン、カラセミド、カルベチメル、カルボプラチン、カルムスチン、カルビシン、カルゼレシン、セデフィンゴール、セレコキシブ、クロラムブシル、シロレマイシン、シスプラチン、クラドリビン、コビメチニブ、メシル酸クリスナトール、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デシタビン、デキソルマプラチン、デザグアニン、メシル酸デザグアニン、ジアジコン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドロロキシフェン、ドロモスタノロン、デュアゾマイシン、エダトレキセート、エフロルニチン、エルサミトルシン、エンロプラチン、エンプロメート、エピプロピジン、エピルビシン、エルブロゾール、エソルビシン、エストラムスチン、エタニダゾール、エトポシド、エトプリン、ファドロゾール、ファザラビン、フェンレチニド、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルロシタビン、ホスキドン、ホストリエシン、フルベストラント、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イフォスファミド、イルモフォシン、インターロイキンII(IL−2、組換えインターロイキンIIまたはrIL2を含む)、インターフェロンアルファ−2a、インターフェロンアルファ−2b、インターフェロンアルファ−n1、インターフェロンアルファ−n3、インターフェロンベータ−Ia、インターフェロンガンマ−Ib、イプロプラチン、イリノテカン、ランレオチド、レトロゾール、リュープロリド、リアロゾール、ロメトレキソール、ロムスチン、ロソキサントロン、マソプロコール、メイタンシン、塩酸メクロレタミン、メゲストロール、酢酸メレンゲストロール、メルファラン、メノガリル、メルカプトプリン、メトトレキセート、メトプリン、メツレデパ、ミチンドミド、ミトカルシン、ミトクロミン、ミトギリン、ミトマルシン、マイトマイシン、ミトスペル、ミトタン、ミトキサントロン、ミコフェノール酸、ネララビン、ノコダゾール、ノガラマイシン、オルムナプラチン、オキシスラン、パクリタキセル、ペグアスパルガーゼ、ペリオマイシン、ペンタムスチン、ペプロマイシン、ペルホスファミド、ピポブロマン、ピポスルファン、塩酸ピロキサントロン、プリカマイシン、プロメスタン、ポルフィマー、ポルフィロマイシン、プレドニムスチン、プロカルバジン、ピューロマイシン、ピラゾフリン、リボプリン、ログレチミド、サフィンゴール、セムスチン、シムトラゼン、スパルホセート、スパルソマイシン、スピロゲルマニウム、スピロムスチン、スピロプラチン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、スロフェヌール、タリソマイシン、タモキシフェン、テコガラン、テガフール、テロキサントロン、テモポルフィン、テニポシド、テロキシロン、テストラクトン、チアミプリン、チオグアニン、チオテパ、チアゾフリン、チラパザミン、トポテカン、トレミフェン、トレストロン、トリシリビン、トリメトレキセート、トリプトレリン、ツブロゾール、ウラシルマスタード、ウレデパ、バプレオチド、ベムラフェニブ、ベルテポルフィン、ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、ビネピジン、ビングリシネート、ビンロイロシン、ビノレルビン、ビンロシジン、ビンゾリジン、ボロゾール、ゼニプラチン、ジノスタチン、ゾレドロネート、ゾルビシンなどが例証として挙げられる。
本発明の態様によれば、抗がん剤は、抗がん抗体とも呼ばれる抗がん免疫療法剤である。使用される抗がん免疫療法剤は、少なくとも1つのタイプの腫瘍、特にヒト腫瘍を阻害するために有効な任意の抗体、または抗体の有効部分であり得る。抗がん免疫療法剤には、3F8、8H9、アバゴボマブ、アビツズマブ、アダリムマブ、アデカツムマブ、アデュカヌマブ、アフツズマブ、アラシズマブペゴル、アレムツズマブ、アマツキシマブ、アナツモマブマフェナトクス、アネツマブラブタンシン、アポリズマブ、アルシツモマブ、アスクリンバクマブ、アテゾリズマブ、バビツキシマブ、ベリムマブ、ベバシズマブ、ビバツズマブメルタンシン、ブレンツキシマブベドチン、ブロンチクツズマブ、カンツズマブメルタンシン、カンツズマブラブタンシン、カプロマブペンデチド、カツマクソマブ、セツキシマブ、シタツズマブボガトクス、シクスツムマブ、クリバツズマブテトラキセタン、コルツキシマブラブタンシン、コナツムマブ、ダセツズマブ、ダロツズマブ、デムシズマブ、デニンツズマブマホドチン、デパツキシズマブマホドチン、デュルバルマブ、デュシギツマブ、エドレコロマブ、エロツズマブ、エマクツズマブ、エミベツズマブ、エノブリツズマブ、エンホルツマブベドチン、エナバツズマブ、エプラツズマブ、エルツマクソマブ、エタラシズマブ、ファルレツズマブ、フィクラツズマブ、フィジツムマブ、フランボツマブ、フツキシマブ、ガリキシマブ、ガニツマブ、ゲムツズマブ、ギレンツキシマブ、グレムバツムマブベドチン、イブリツモマブチウキセタン、イゴボマブ、imab362、イマルマブ、イムガツズマブ、インダツキシマブラブタンシン、インデュサツマブベドチン、イネビリズマブ、イノツズマブオゾガマイシン、インテツムマブ、イピリムマブ、イラツムマブ、イサツキシマブ、ラベツズマブ、レクサツムマブ、リファスツズマブベドチン、リンツズマブ、リリルマブ、ロルボツズマブメルタンシン、ルカツムマブ、ルミリキシマブ、ルムレツズマブ、マパツムマブ、マルゲツキシマブ、マツズマブ、ミラツズマブ、ミルベツキシマブソラブタンシン、ミツモマブ、モガムリズマブ、モキセツモマブパスドトクス、ナコロマブタフェナトクス、ナプツモマブエスタフェナトクス、ナルナツマブ、ネシツムマブ、ネスバクマブ、ニモツズマブ、ニボルマブ、オカラツズマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オナルツズマブ、オンツキシズマブ、オレゴボマブ、オポルツズマブモナトクス、オトレルツズマブ、パニツムマブ、パンコマブ、パルサツズマブ、パトリツマブ、ペンブロリズマブ、ペムツモマブ、ペルツズマブ、ピジリズマブ、ピナツズマブベドチン、ポラツズマブベドチン、プリツムマブ、ラコツモマブ、ラドレツマブ、ラムシルマブ、リロツムマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ、サシツズマブゴビテカン、サマリズマブ、セリバンツマブ、シブロツズマブ、シルツキシマブ、ソフィツズマブベドチン、タカツズマブテトラキセタン、タレクスツマブ、テナツモマブ、テプロツムマブ、テツロマブ、チガツズマブ、トシツモマブ、トベツマブ、トラスツズマブ、トレメリムマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ウブリツキシマブ、ウトミルマブ、バンドルツズマブベドチン、バンチクツマブ、バヌシズマブ、バルリルマブ、ベセンクマブ、ボロシキシマブ、ボルセツズマブマホドチン、ボツムマブ、ザルツムマブ、ザツキシマブなどが挙げられるがこれらに限定されない。
本発明の態様によれば、試験物質は、1)細胞表面タンパク質、例えば分化抗原群(CD)細胞表面分子;2)細胞内タンパク質、例えばキナーゼ;および3)細胞外タンパク質、例えば放出された細胞表面受容体または細胞表面受容体の可溶性リガンドのうちの1つまたは複数を特異的に結合する物質である。
本発明の態様によれば、試験物質は、白血球(例えば、リンパ球または骨髄系列の白血球)によって発現されるタンパク質を特異的に結合する物質である。さらなる選択肢では、試験物質は、白血球のリガンドを特異的に結合する物質である。なおさらなる選択肢では、試験物質は、がん細胞によって発現される分子を特異的に結合する物質である。
本発明の態様によれば、試験物質は、PD−1、PD−L1、またはCTLA−4を特異的に結合することができる。本発明の態様によれば、試験物質は、PD−1阻害剤、PD−L1阻害剤、またはCTLA−4阻害剤などの免疫チェックポイント阻害剤であり得る。本発明の態様によれば、免疫チェックポイント阻害剤は、PD−1、PD−L1、またはCTLA−4に特異的に結合する抗体であり、それぞれPD−1阻害剤、PD−L1阻害剤、またはCTLA−4阻害剤である。本発明の態様によれば、試験物質は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、および前述のいずれか1つの抗原結合性断片から選択される免疫チェックポイント阻害剤である。
試験物質は、経口、直腸、口腔内、鼻、筋肉内、膣、眼、耳、皮下、経皮、腫瘍内、静脈内、および腹腔内などの、しかしこれらに限定されない任意の適した投与経路によって投与することができる。
本発明の組成物および方法の実施形態を、以下の実施例に例証する。これらの実施例は、説明目的のために提供され、本発明の組成物および方法の範囲に対する制限とみなされない。
実施例
マウス
これらの研究に使用したマウスは全て、Jackson Laboratoryでの育種コロニーにおいて育成した。NOD.Cg−Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ(NOD−scid IL2rγnull、NSG)マウスは、以前にShultz LDら、2005年、J Immunol、174巻:6477〜6489頁に記載されている。
NSGマウスは、兄妹交配を通して維持した。NOD.Cg−Prkdcscid H2−K1tm1Bpe H2−Ab1em1Mvw H2−D1tm1Bpe Il2rgtm1Wjl/SzJ(NSG−(Kb Db)null(IAnull)と略す)マウスは、TALENを使用して開発した。H2−Ab1遺伝子のエクソン2を、NOD.Cg−Prkdcscid H2−K1tm1Bpe H2−D1tm1Bpe Il2rgtm1Wjl/SzJ(NSG−(Kb Db)nullと略す、Covassin Lら、2013年、Clin Exp Immunol、174巻:372〜388頁を参照されたい)胚において標的化した。ヌルIAbアレル(H2−Ab1em1Mvw)を有する子孫をPCRによって同定し、ヌルIAbアレルをホモ接合性に固定した。NSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスを、ホモ接合性の兄妹交配を通して維持する。
NOD.Cg−B2mtm1Unc Prkdcscid H2dlAb1−Ea Il2rgtm1Wjl/SzJ(NSG−B2Mnull(IA IE)nullと略す)を、NOD.Cg−B2mtm1Unc Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ(NSG−B2Mnullと略す)マウス(King MAら、2009年、Clin Exp Immunol、157巻:104〜118頁を参照されたい)とNOD.Cg−PrkdcscidH2dlAb1−Ea1Il2rgtm1Wjl/SzJ(Madsen Lら、1999年、Proc Natl Acad Sci U S A、96巻:10338〜10343頁を参照されたい)との相互交配およびF1後代との相互交配の後に、B2mtm1UncおよびH2dlAb1−Eaアレルに関して二重ホモ接合であるNSGマウスを選択することによって作製した。NSG−B2Mnull(IA IEnull)マウスを、兄妹交配を通して維持した。
NSG−RIP−DTR(Kb Db)null(IAnull)株と略されるNOD.Cg−Prkdcscid H2−K1tm1Bpe H2−Ab1em1Mvw H2−D1tm1Bpe Il2rgtm1Wjl Tg(Ins2−HBEGF)6832Ugfm/Szトランスジーンを創出するために、RIP−DTRトランスジーンと略されるTg(Ins2−HBEGF)6832Ugfmを、NSG株(Dai C.ら、2016年、J Clin Invest、126巻:1857〜1870頁;およびYang Cら、2015年、Diabetes Metab Syndr Obes、8巻:387〜398頁)と戻し交配した後、NSG−DTR株をNSG−(Kb Db)null(IAnull)株と交配させてNSG−RIP−DTR(Kb Db)null(IAnull)株を創出した。これらのマウスを、破壊されたアレルに関しておよびトランスジーンに関してホモ接合性のマウスの兄妹交配によって維持する。
全ての動物を、Jackson Laboratoryの特定病原体無菌施設においてマイクロアイソレーターケージに収容し、オートクレーブ処理した飼料を与え、オートクレーブ処理した酸性水で維持したか、またはUniversity of Massachusetts Medical Schoolにおいて、オートクレーブ処理した酸性水とスルファメトキサゾール−トリメトプリム処理水(Goldline Laboratories、Ft.Lauderdale、FL)を週毎に交互に与えた。
抗体およびフローサイトメトリー
NSG MHCノックアウトマウスにおけるマウス細胞の表現型を、Shultz LDら、2005年、J Immunol、174巻:6477〜6489頁に詳細に記載されているように決定した。抗マウスモノクローナル抗体(mAb)は、4色のフローサイトメトリー分析に適応するように、FITC、PE、APC、またはPerCPコンジュゲートとして購入した。免疫コンピテントNOD/ShiLtJ(NOD)およびC57BL/6(B6)マウスを各実験に使用し、正確なMHC染色を確実にした。B6マウスを、129胚性幹細胞において作製される古典的にノックアウトされたEa遺伝子に隣接する連鎖MHC II遺伝子領域のキャリーオーバーを制御するために含め、これを、NSGと戻し交配させてNSG−B2Mnull(IA IEnull)マウスを作製した。脾臓を、氷上、血清を含まないDMEM中の200U/mlコラゲナーゼD 1mL中で小片に刻んだ。さらに2mlのコラゲナーゼD溶液を添加して、脾臓をボルテックスした。それらを37℃の水浴中で、時折ボルテックスおよび混合しながら30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、Geys RBC溶解緩衝液に懸濁させ、混合し、氷上で1分間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液で洗浄し、4℃で30分間染色し、FACS緩衝液で2回洗浄し、FACS緩衝液250μlに懸濁させ、ヨウ化プロピジウムで染色し、次いで100,000事象を、BD Biosciences LSR IIフローサイトメーターにおいて分析した。使用した抗マウス抗体は、抗H2Kb(クローンAF6−885)、H2Kd(SF1−1.1)、CD11b(M1/70)、CD11c(N418)、I−Ab,d IEk,d(M5/114)、Ly6G(1A8)、Ly6c(HK1.4)、およびI−Ag7(10−2.16)であった。
ヒト免疫細胞集団を、以下のヒト抗原;eBioscience、BD Bioscience(San Jose、CA)、またはBioLegend(San Diego、CA)から購入した、CD45(クローンHI30)、CD3(クローンUCHT1)、CD4(クローンRPA−T4)、CD8(クローンRPA−T8)、CD20(クローン2H7) CD45RA(クローンHI100)、CCR7(クローンG043H7)、PD1(クローンEH12.2H7)、およびグランザイムB(クローンGB11)に対して特異的なmAbを使用してPBMC生着マウスにおいてモニターした。マウス細胞を、マウスCD45(クローン30−F11、BD Biosciences)に対して特異的なmAbで染色することによって同定し、分析から除外した。
脾臓の単細胞懸濁液を、生着マウスから調製し、全血をヘパリン中に収集した。細胞1×106個の単細胞懸濁液または全血100μlを、FACS緩衝液(2%ウシ胎児血清(FBS)および0.02%アジ化ナトリウムを補充したPBS)で洗浄し、次いで、ラット抗マウスFcR11b mAb(クローン2.4G2、BD Biosciences)と共にプレインキュベートして、マウスFc受容体への結合を遮断した。次いで、特異的mAbを試料に添加し、4℃で30分間インキュベートした。染色した試料を洗浄し、細胞懸濁液の場合には2%パラホルムアルデヒドで固定したか、または全血の場合にはBD FACS溶解溶液で処置した。少なくとも50,000事象を、LSRIIまたは FACSCalibur機器(BD Biosciences)において獲得した。ヒト細胞表現型決定に関して、マウスCD45(クローン30−F11、BD Biosciences)に対して特異的なmAbで染色することによって、マウス細胞を同定し、分析から除外した。データ分析は、FlowJo(Tree Star,Inc.、Ashland、OR)ソフトウェアによって実施した。
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)の収集
ヒトPBMCを健康なボランティアから得た。PBMCをヘパリン中で収集し、Ficoll−hypaque密度遠心分離によって精製し、示した細胞用量でのマウスへの注射のためにRPMI中に懸濁させた。一部の実験では、フェレ−シスleukopakを、University of Massachusetts Medical Centerの血液バンクから匿名の廃棄単位として得た。
GVHDプロトコール
マウスに、様々な用量のPBMCを腹腔内注射した。マウスの体重を週に2〜3回測定し、体重減少(>20%)、前屈みの姿勢、毛の逆立ち、運動性の低減、および頻呼吸を含むGVHD様の症状の出現を使用して、安楽死の時期を決定し、生存期間として示す。
ヒト島移植
調査用のヒト島を、Prodo Laboratories,Inc.(Irvine、CA)から得た。ヒトIEQ(4000)を、NSG−RIP−DTR(Kb Db)null(IAnull)マウスの脾臓に移植した。NSG−RIP−DTR(Kb Db)null(IAnull)マウスを、島移植の2〜4日前にジフテリア毒素40ngで処置した。高血糖症(>400mg/dl)を、Accu−Chek Active血糖値測定器(Hoffmann−La Roche、Basel、Switzerland)を使用して確認した。次いで、血糖値を、移植後週に2回の間隔で決定して、島移植片の機能をモニターした。血漿中のCペプチドレベルを、ヒトCペプチドに対して特異的なELISAキット(Alpco、Salem、NH)を使用して検出した。移植した脾臓内の総インスリン含有量は、以前に記載されているように(Harlan DMら、1995年、Diabetes、44巻:816〜823頁)、ヒトインスリンに対して特異的なELISAキット(Alpco、Salem、NH)を使用して決定した。
dsAAVベクター
dsAAVベクターは、以前に記載されているように(He Yら、2013年、Hum. Gene Ther.、24巻:545〜553頁)、操作し、パッケージングした。
簡単に説明すると、ヒトIL2またはEGFPをコードする完全長のcDNAを、マウスプレプロインスリンIIプロモーター(mIP)を含有するdsAAVプラスミドにサブクローニングした(McCarty DMら、2001年、Gene Ther、8巻:1248〜1254頁)。dsAAVベクターのパッケージングは、以前に記載されているように(Grieger JCら、2006年、Nat Protoc、1巻:1412〜1428頁;およびJohnson MCら、2013年、Diabetes、62巻:3775〜3784頁)実行したか、またはUniversity of Massachusetts Medical School Horae Gene Therapy Center(Worcester、MA)のViral Vector Coreによって産生した。レシピエントマウスに、精製AAV8−huIL2(AAV−IL2)の粒子2.5×1011個をIP注射した。
統計分析
個々のペアワイズ群化を比較するために、ボンフェローニの事後検定を行う一元配置ANOVAまたは二元配置ANOVA、およびダンの事後検定を行うクラスカル−ウォリス検定を、それぞれ、パラメトリックおよびノンパラメトリックデータに関して使用した。有意差は、p値<0.05であると仮定した。統計分析はGraphPad Prismソフトウェア(バージョン4.0c、GraphPad、San Diego、CA)を使用して実施した。
結果
NSGおよびNSG MHCクラスI/IIダブルノックアウトマウスの2つの株の表現型特徴付け
MHCクラスIおよびクラスIIが二重に欠損している2つのNSGマウス株、NSG−(Kb Db)null(IAnull)およびNSG−B2Mnull(IA IE)nullノックアウト株を創出した。両方の株におけるMHCクラスIおよびクラスIIの非存在を、フローサイトメトリーによって確認した(図1)。容易に検出可能なレベルのマウス MHC IIを発現する免疫細胞が存在しないため、脾臓を酵素により解離し、ゲーティングして、樹状細胞集団を分析した。図1Aは、ダブレットおよび死細胞を除外するゲーティング戦略を示し、単球由来樹状細胞(CD11b+Ly6cdim CD11c+)に対するゲーティングに進むす。NSGマウスは、MHCクラスIに関してH2Kd陽性、H2Kb陰性(図1B)、およびMHCクラスIIに関してI−Ag7陽性、I−Ab陰性(図1C)の予想される染色パターンを示す。NSG−(Kb Db)null(IAnull)およびNSG−B2Mnull(IA IEnull)ノックアウトマウスはいずれも、NODおよびC57BL/6マウスによって通常発現されるMHCクラスIおよびII分子を欠如する。
循環中でのIgGの半減期の延長に関与する受容体であるマウスFcRnの適切な発現に対するB2Mの必要により、両方のマウス血統におけるヒトIgGのクリアランスを比較した。マウスに、ヒトIgG 200μgをIV注射し、循環中のヒトIgGのELISA分析のために一定間隔で採血した。注射の2分後の1回目の採血は、100%血清IgGであると考えられた。NSG−B2Mnull(IA IEnull)マウスにおいてヒトIgGの急速なクリアランスが観察されたが、NSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスにおけるIgGクリアランスは、NSGマウスにおいて観察されたクリアランスと類似であった(図2)。
PBMC生着NSG、ならびにNSG−MHCクラスIノックアウト、NSG−MHCクラスIIノックアウト、およびNSG−MHC I/IIノックアウトマウスの生存
NSG−(Kb Db)null(IAnull):マウスMHCクラスIおよびIIの非存在が、NSG MHC I/IIノックアウトマウスにおけるヒトPBMC生着後の異種GVHDの発生および動態を変化させるか否かを決定するために、MHCクラスI、MHCクラスIIを欠損するNSG株、または2つのNSGダブルノックアウト株に、PBMC 10×106個を生着させ、その生存を、NSGマウスの生存と比較した。以前に報告されたように、NSGおよびNSG−(IAnull)は、NSGマウスにおいて観察される生存と類似の、比較的短い類似の生存を示した。これに対し、予想されるように、NSG−(Kb Db)nullマウスは、NSGマウスと比較して生存期間の延長を有した。しかし、MHCクラスIおよびクラスIIの両方をNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスにおいてノックアウトした場合、生存は100日を超え、これらのMHC I/IIノックアウトマウス15匹中13匹は、GVHDの症状なしで、観察期間(125日間)終了時でなおも生きていた(図3A)。
NSG−B2Mnull(IA IEnull):類似の長期の生存結果が、PBMC生着NSG−B2Mnull(IA IEnull)マウスにおいて観察された。このMHC I/IIノックアウト株では、NSG−(Kb Db)null株ではなく、NSG−B2Mnull株を対照として使用した。この場合もNSGおよびNSG−(IAnull)ノックアウトマウスは、比較的短い生存を有した。NSG−B2Mnullマウスの生存は、大幅に増加した。NSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスにおいて観察されたように、NSG−B2Mnull(IA IEnull)株では長期間の生存が達成され、18匹中15匹は、GVHDの症状なしで、実験(125日間)終了時で生存していた(図3B)。
PBMC生着NSG、ならびにNSG−MHCクラスIノックアウト、NSG−MHCクラスIIノックアウト、およびNSG−MHC I/IIノックアウトマウスにおけるヒト細胞キメリズム
PBMC生着NSG MHC I/IIノックアウトマウスの長期間の生存は、ヒト細胞生着の欠如またはMHCクラスIおよびIIの非存在によるGVHDの欠如のいずれかの結果であり得る。これらの2つの可能性を識別するために、PBMC 10×106個を、両方のNSG MHC I/IIノックアウト株にIP注射し、経時的な循環中のCD45+細胞レベルを、NSG、NSG−クラスIノックアウトおよびMHCクラスIIノックアウトマウスのレベルと比較した。
NSG−(Kb Db)null(IAnull)マウス:ヒトCD45細胞生着は、NSGマウスおよびNSG−(IAnull)マウスにおいて急速に増加した(図4A)。循環中のヒトCD45+細胞の経時的なパーセンテージは、NSGおよびNSG−(IAnull)マウスと比較してNSG−(Kb Db)nullおよびNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスでは低かった。脾臓では、NSG−(IAnull)およびNSG−(Kb Db)nullマウスにおけるヒトCD45+細胞のパーセンテージは、NSGマウスで観察されたパーセンテージと同等であったが、NSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスの脾臓におけるヒトCD45+細胞のパーセンテージは、大幅に減少した(図4B)。
NSG−B2Mnull(IA IE)nullマウス:NSG−B2Mnull株を、NSG MHCクラスIノックアウト(KO)対照として使用した。NSG、NSG−(IAnull)マウス、NSG−(Kb Db)null、およびNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスにおいて観察されたように、循環中のヒトCD45+細胞のパーセンテージは、NSGおよびNSG−(IAnull)マウスでは、NSG−B2MnullおよびNSG−B2Mnull(IA IEnull)マウスにおいて観察されたパーセンテージと比較して高かった(図4C)。NSG−B2Mnull(IA IEnull)マウスの脾臓におけるヒトCD45+細胞のパーセンテージは、他の3つの株よりも大幅に低かった(図4D)。
PBMC生着NSG、NSG−MHCクラスIノックアウト、NSG−MHCクラスIIノックアウト、およびNSG−MHC I/IIノックアウトマウスにおけるヒトT細胞およびB細胞の生着
NSG−(Kb Db)null(IAnull):循環中のヒトCD45+細胞は、NSG、NSG−(IAnull)、およびNSG−(Kb Db)nullマウスでは主にCD3+ T細胞であった(図5A)。同様に、NSG−(Kb Db)null(IAnull)におけるCD45+細胞の大部分もまたCD3+ T細胞であった。NSGおよびNSG−(IAnull)マウスでは、生着後2週間で容易に検出可能な数のCD20+ B細胞が存在したが、これらは生着後4週目までに本質的に検出不能であった(図5B)。
NSG−B2Mnull(IA IE)null:NSG−B2Mnullマウスを、比較のためのMHCクラスIノックアウト対照として使用した。NSG、NSG−(IAnull)、およびNSG−B2MnullマウスにおけるPBMC生着は、NSG−B2Mnull(IA IE)nullマウスにおいて観察されたように、主にCD3+ T細胞からなった(図5C)。ヒトCD20+ B細胞は、第1の実験では、NSGおよびNSG−IAnullマウスにおいて2週目に容易に明白であったが、それらは調べた4つ全ての株では極めて低いレベルで存在し(図5D)、このことは、PBMC生着NSGマウスにおいて、時に本発明者らが観察したようにドナー多様性を反映している可能性がある。
PBMCを注射したNSG、NSG−(IAnull)、NSG−(Kb Db)null、およびNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスにおいて生着したヒトT細胞の表現型分析
PBMC生着後4週目でのNSGマウスにおけるCD4:CD8比は、およそ4:1であった(図6A)。これに対し、NSG−(IAnull)マウスでは生着したCD4+ T細胞は非常に少なかったが、NSG−(Kb Db)nullマウスでは高レベルのCD4+ T細胞が生着し、そのためそれぞれ、非常に低いおよび高いCD4:CD8比をもたらした。NSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスにおけるCD3+ T細胞のCD4:CD8比は、NSGマウスにおいて観察された比と類似であり(図6A)、ヒトT細胞サブセットもMHCクラスIおよびクラスIIの両方を欠如するマウスにおける生着のために選択的利点を有しないことを示唆した。4つ全ての株におけるCD4+およびCD8+ T細胞の大部分は、活性化マーカーであるPD−1を発現した(図6B、図6C)。CD4+およびCD8+CD3+ T細胞(図6D)ならびにCD4+およびCD8+細胞のPD−1染色(図6E、図6F)の代表的なヒストグラムを示す。CD4+およびCD8+ T細胞の活性化状態を決定するために、各サブセットを、CD45RAおよびCCR7に関して染色した。CD45RA+CCR7+細胞は、ナイーブT細胞と標識し、CD45RA−CCR7+細胞は、セントラルメモリーT細胞と標識し、CD45RA−CCR7−細胞は、Tエフェクター/エフェクターメモリーT細胞と標識し、およびCD45RA+CCR7−細胞は、エフェクターメモリーRA(TEMRA)T細胞と標識する。両方のCD4+(図6G)およびCD8+ T細胞集団(図6H)において、PBMC注射後4週目に血液中非常に少数のナイーブT細胞が観察された。少数のセントラルメモリーCD4+およびCD8+ T細胞が検出されたが、TEMRA CD4+またはCD8+ T細胞はほとんど存在しなかった。CD4+およびCD8+ T細胞の大部分は、エフェクター/メモリーCD45RA−CCR7−T細胞であった(図6G、図6H)。
PBMCを注射したNSG、NSG−(IA IE)null、NSG−B2Mnull、NSG−B2Mnull(IA IE)null、およびNSG−B2Mnull(IA IE)nullマウスに生着しているヒトT細胞の表現型分析
NSGマウスにおけるCD4:CD8 T細胞比は、この場合もおよそ4:1であった(図7A)。MHCクラスII(IA IE)nullおよびクラスI KO B2Mnullマウスは同様に、NSG−(IAnull)およびNSG−(Kb Db)nullマウスにおいて観察されたように、それぞれ低いおよび高いCD4:CD8 T細胞比を有した(図6A)。NSG−B2Mnull(IA IE)nullマウス(図7A)は、NSGにおいておよびNSG−B2Mnull(IA IE)nullマウスにおいて観察された約3:1の、3:1のCD4:CD8比を示した(図6A)。MHC KOマウスの4つ全ての株におけるCD4(図7B)およびCD8(図7C)細胞の大部分は、活性化マーカーPD−1を発現した。CD4およびCD8染色(図7D)ならびに抗PD−1によるCD4(図7E)およびCD8(図7F)染色の代表的なヒストグラムを示す。4つ全ての株では、CD4(図7G)またはCD8(図7H)ナイーブ、またはTEMRA細胞はほとんど観察されなかったが、いくつかのセントラルメモリー細胞は存在した。T細胞の大部分は、CD45−CCR7+エフェクター/エフェクターメモリーサブセットにおいてであった(図7G、図7H)。
NSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスに生着したヒトT細胞は機能的である
ヒト同種異系島を生着させたNSGマウスへのヒトPBMCの注射により、島同種異系移植片の拒絶が起こる。NSG MHC I/IIノックアウトマウスに生着したヒト免疫細胞が機能的であるか否かを決定するために、ラットインスリンプロモーターの制御下でジフテリア毒素受容体を発現する新たなマウス株、NSG−RIP−DTR(Kb Db)null(IAnull)を創出した。ジフテリア毒素(DT)の、ラットインスリンプロモーターの制御下でジフテリア毒素受容体を発現する雄性マウスへの注射により、マウスベータ細胞死、および高血糖症が起こる。NSG−RIP−DTR(Kb Db)null(IAnull)株は、マウス膵ベータ細胞の完全かつ特異的な除去を可能にし、ストレプトゾトシンなどの糖尿病誘発薬の広い毒性効果を回避する。図8Aに示すように、NSG−RIP−DTR(Kb Db)null(IAnull)マウスへのDTの注射は、糖尿病の急速な発症をもたらした。NSG−RIP−DTR(Kb Db)null(IAnull)株を使用して、ヒトPBMCが高血糖性のNSG MHC I/IIノックアウトマウスにおいて島同種異系移植片を拒絶する能力を試験した。
ヒトIEQ 4000個の脾臓内移植は、マウスにおいて1〜2日以内に正常血糖を回復させた。次いで、これらのマウスを2群に分けた。1つの島移植群に同種異系PBMC 50×106個をIP注射し、他の群にPBMCを与えずに、同種異系免疫系の非存在下でのヒト島の機能を確認した。ヒト島のみを受けた対照マウスは実験期間を通して正常血糖のままであった(N=3)。これに対し、同種異系ヒトPBMCを受けたマウス4匹中3匹は、3〜4週間後に高血糖症へと逆戻りした(図8A)。
PBMC注射島移植マウスにおけるヒトCD45+細胞の生着レベルは、血液中で経時的により高いパーセンテージに向かう傾向があり、PBMC注射の7週間後に分析すると、脾臓において最大約70%のヒトCD45+細胞が存在した。NSG−RIP−DTR(Kb Db)null(IAnull)株におけるこのヒトCD45+細胞生着レベルは、PBMC生着NSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスで観察されたレベルよりも高かったが(図4B)、NSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスでは、細胞10×106個を注射したのと比較して、NSG−RIP−DTR(Kb Db)null(IAnull)マウスでは、5倍多くの数のヒトPBMC(50×106個)を注射した。血液中のCD4+ T細胞のパーセンテージが低下したのに対し、CD8+ T細胞のパーセンテージが劇的に増加したことから、血液中のCD4:CD8細胞比は、実験期間の間に劇的に変化した(図8C)。実験の終了時、脾臓におけるCD4:CD8 T細胞比もまた、CD8 T細胞の劇的な増加を示した(図8D)。6週目での血液中のヒトCペプチドレベルは、ヒトPBMCを受けた島生着マウス4匹中3匹で減少し、高血糖症へと逆戻りしなかったマウス1匹は、同種異系PBMCを移植しなかった島レシピエントにおいて観察されたレベルと類似のCペプチドレベルを有した(図8E)。しかし、同種異系PBMCを与えたマウス4匹全てにおいて、島移植片において観察されたヒトインスリンの量は、ヒトPBMCを与えられなかった島移植レシピエントと比較して大幅に低かった(図8F)。
このように、NSG−RIP−DTR(Kb Db)null(IAnull)マウスに生着したヒトPBMCは、高血糖症のNSG−RIP−DTR(Kb Db)null(IAnull)マウスに容易に生着した。ヒト島同種異系移植片は、高血糖症への逆戻りによって証明されたように拒絶され、これは組織学的に確認された。このことはまた、循環中のCペプチドの低減および移植片に残っているインスリンの絶対量の減少によっても確認された。島移植マウスは、血液および脾臓の両方においてCD8 T細胞の割合を増加させた。このことは、島同種異系移植片の存在が、細胞傷害性CD8 T細胞集団を優先的に刺激し、増大させたことを示唆している。これらのデータは、ヒトPBMC機能を、GVHD応答が進行の非存在下でNSG MHC I/IIノックアウトマウスにおいて評価することができることを考証している。
PBMCを移植したNSGおよびNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスにおけるAAV−IL2での処置による生着ヒトT細胞の調節
臨床へと進んでいる薬物の多くは、免疫調節剤であり、臨床試験に入っているこれらのうちの1つは、組換えIL2の投与である。高用量IL2は、がん治療のために使用されているが、低用量IL2は自己免疫疾患を処置するために使用されている。
NSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスに生着したヒトT細胞が機能的である(図8A)が、急性のGVHDを媒介しない(図3)ことが示されたことから、次に、ヒト組換えIL2の投与がT細胞集団を調節することができるか否かを決定した。AAV8−ヒトIL2発現ベクターの注射によるヒトIL2の投与により、ヒト胎児肝臓および胸腺の生着によってヒト化したNSGマウス、すなわちBLTモデルにおいてヒトTregの割合が増加した。AAV−huIL2の注射によって、PBMC 10×106個を2週間生着させたNSGおよびNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスの血液中のヒトCD45+細胞の一過性の増大が起こった(図9A)。AAV−IL2は、CD3+であるヒトCD45+細胞の割合を8週間の実験にわたって変化させなかった(図9B)。しかし、PBMCの注射後、NSGマウスでは2、4、および6週目に、ならびにNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスでは2および4週目に、制御性T(Treg)表現型(CD4+CD25+CD127−FOXP3+)を発現するCD4+細胞の割合の大幅な増加があった(図9C)。CD25およびCD127に対する抗体によるCD4+ T細胞の代表的な染色を上の列に示し、AAVIL2を投与したまたは投与していないNSGおよびNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスにおける推定のCD4+CD25+CD127−T細胞におけるFOXP3の発現を下の列に示す(図9D)。Treg細胞の相対的パーセンテージは、両方の株において、PBMC生着後、2週目から8週目まで着実に減少し、8週目ではCD4+ T細胞の正常レベルであった。NSGおよびNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスに与えたAAV−IL2ベクターを使用すると、IL2レベルは、2週目(219±48および262±40pg/ml)からそれぞれ4週目(159±59および214±62pg/ml)まで、それぞれ6週目(110±53および130±72pg/ml;NSGでは2、4、および6週目でN=8、ならびにNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスでは2週目でN=5、および4および6週目でN=4)まで毎週減少した。循環中のIL2のこの減少は、本実験におけるTregの喪失と相関する。
しかし、AAV−IL2の投与はまた、NSGマウスおよびAAV−IL2で処置したNSGマウスにおいて観察された生存より、NSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスの生存を短縮させた(図9E)。AAV−IL2の注射はまた、AAV−IL2を注射していないマウスと比較して、NSGおよびNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスの両方においてCD4:CD8比を主にCD8 T細胞の比へと変化させた(図9F)。CD4+ T細胞集団におけるCD4およびCD8ナイーブ、セントラルメモリー、エフェクター/エフェクターメモリーおよびTEMRAサブセットの割合は、AAV−IL2処置ありまたはなしのNSGおよびNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスの血液中で差はなかった。CD8 T細胞集団におけるT細胞サブセットの割合の唯一の差は、エフェクター/エフェクターメモリーT細胞サブセットであり、これはAAV−IL2で処置したマウスにおいて増加した(図9G)。AAV−IL2処置NSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスにおけるCD8+エフェクター/エフェクターメモリーT細胞の増加と相関して、グランザイムBを発現するCD8 T細胞のパーセンテージが増加した(図9H)。
PBMCおよびヒト患者由来腫瘍細胞の同時投与
NSGおよびNSG−Kb Db)null(IAnull)マウスに、PDX結腸腫瘍(2mm3)と共にSQを植え込み、10日後に、非適合ドナーからのPBMC 20×106個をIP注射した。マウスを生存に関しておよび腫瘍成長に関してモニターした。
図10Aは、PBMCとヒト患者由来腫瘍細胞とを同時注射したNSGマウスの群、およびPBMCとヒト患者由来腫瘍細胞とを同時注射したNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスの群のパーセント生存を示すグラフである。
図10Bは、1)ヒト患者由来腫瘍細胞を注射したNSGマウス;2)PBMCとヒト患者由来腫瘍細胞とを同時注射したNSGマウス;PBMCを注射したNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウス;およびPBMCとヒト患者由来腫瘍細胞とを同時注射したNSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスにおける腫瘍成長を示すグラフである。このように、NSG−(Kb Db)null(IAnull)マウスは、PDX腫瘍およびPBMCの同時生着を支持する。
2つの異なるNSG MHCクラスI/IIノックアウトマウスモデル、NSG−(Kb Db)null(IAnull)株およびNSG−B2Mnull(IA IEnull)株を使用して、これらの実施例は、ヒトPBMCが生着したが、実験期間の終了まで、一部の例ではPBMC生着後125日間にわたって、マウスが急性GVHD様疾患を発症しなかったことを示す。これらの生着したヒトT細胞は、ヒト島同種異系移植片の拒絶能により示されるように機能的であった。その上、ヒトT細胞は、ヒトT細胞の増大につながるAAVベクターを使用して組換えヒトIL2を提供することによって証明されるように、in vivoで調節することができた。NSG−(Kb Db)null(IAnull)株では、ヒトIgGクリアランスはNSGマウスにおいて観察されたクリアランスと同等であったが、NSG−B2Mnull(IA IEnull)株におけるIgGクリアランスは極めて急速であった。
本明細書において言及したいかなる特許または刊行物も、あたかも各個々の刊行物が具体的および個々に参照により組み込まれていると示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれている。
本明細書に記載の組成物および方法は、現在好ましい実施形態を表しており、例示的であり、本発明の範囲に対する制限として意図されない。それらに対する変更および他の使用は、当業者に想起されるであろう。そのような変更および他の使用は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。