定義
本発明では、以下の用語は以下の意味を有する。
数値の前の用語の「約」は前記数値の値の±10%を意味する。
単独で、または別の置換基の一部として、本明細書で使用される場合、用語の「アルコキシ」は、基−O−アルキルを意味し、アルキルは本明細書で定義される通りである。
単独で、または別の置換基の一部として、本明細書で使用される場合、用語の「アルキル」は、式CnH2n+1のヒドロカルビルラジカルを意味し、nは、1以上の数である。通常、本発明のアルキル基は、1〜8個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子、より好ましくは1〜3個の炭素原子を含む。アルキル基は、直鎖または分岐鎖アルキル基であってよい。好適なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチルおよびオクチルが挙げられる。
単独で、または別の置換基の一部として、本明細書で使用される場合、用語の「アルキルアミノ」は、基−NH−アルキルを意味し、アルキルは本明細書で定義される通りである。
単独で、または別の置換基の一部として、本明細書で使用される場合、用語の「アルキルオキシカルボニル」は、基−C(=O)−O−アルキルを意味し、アルキルは本明細書で定義される通りである。好ましいアルキルオキシカルボニル基は、メチルオキシカルボニルである。
単独で、または別の置換基の一部として、本明細書で使用される場合、用語の「アルキルスルホニル」は、基−SO2−アルキルを意味し、アルキルは本明細書で定義される通りである。
本明細書で使用される場合、用語の「アミノ」は、基−NH2を意味する。
単独で、または別の置換基の一部として、本明細書で使用される場合、用語の「アミノアルキル」は、基−アルキル−NH2を意味し、アルキルは本明細書で定義される通りである。
単独で、または別の置換基の一部として、本明細書で使用される場合、用語の「アミノスルホニル」は、基−SO2−NH2を意味する。
単独で、または別の置換基の一部として、本明細書で使用される場合、用語の「アリール」は、単一環(すなわち、フェニル)または一緒に縮合した複数の芳香環(例えば、ナフチル)を有し、通常、5〜12個の原子、好ましくは6〜10個の原子を含む、多価不飽和芳香族ヒドロカルビル基を意味する。アリールの非限定的例には、フェニル、ナフタレニルが含まれる。
本明細書で使用される場合、用語の「バイオアイソスター」は、ほぼ等しい分子形状および体積、ほぼ同じ電子分布を有し、類似の物理学的性質および類似の生物活性を示す、化合物または基を意味する。
本明細書で使用される場合、用語の「カルボキシ」は、基−COOHを意味する。
単独で、または別の置換基の一部として、本明細書で使用される場合、用語の「カルボキシアルキル」は、基−アルキル−COOHを意味し、アルキルは本明細書で定義される通りである。
用語の「ハロ」または「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードを意味する。
単独で、または別の置換基の一部としての用語の「ハロアルキル」は、1つまたは複数の水素が本明細書で定義されるハロゲンで置換されている、本明細書で定義されるアルキルラジカルを意味する。ハロアルキルの非限定的例には、フルオロメチル、ジフルオロメチルおよびトリフルオロメチルが挙げられる。
単独で、または別の置換基の一部として、本明細書で使用される場合、用語の「ヘテロアリール」は、少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子で置換されている、本明細書で定義されるアリール基を意味する。換言すれば、それは、5〜12個の炭素原子芳香族単一環または一緒に縮合した、通常5〜6個の原子を含む2個の環を含む環系を意味し、その中の1個または複数の炭素原子が酸素、窒素および/または硫黄原子で置換され、窒素および硫黄へテロ原子は任意に酸化されてもよく、窒素へテロ原子は任意に四級化されてもよい。このようなヘテロアリールの非限定的例には、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、フラニルおよびピロリルが挙げられる。
用語の「IC50」または「50%阻害濃度」は、インビトロで50%阻害に必要な阻害剤の濃度を表す。これは、アゴニスト薬物に対する「EC50」または「50%効果濃度」と同等である。「EC50」はまた、50%の最大作用をインビボで得るために必要な血漿中濃度も表す。
単独で、または別の置換基の一部として、本明細書で使用される場合、用語の「ニトロオキシアルキル」は、基−アルキル−ONO2を意味し、アルキルは本明細書で定義される通りである。
表現の「薬学的に許容可能な賦形剤」は、動物、好ましくはヒトに投与した場合に、有害、アレルギー性またはほかの不都合な反応をもたらさない賦形剤を意味する。これは、ありとあらゆる溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌薬および抗真菌薬、等張剤および吸収遅延剤などを含む。ヒトへの投与のために、製剤は、例えばFDAまたはEMAなどの規制当局によって要求される無菌性、発熱性、一般的な安全性および純度基準を満たすものでなければならない。
本明細書で使用される場合、用語の「ROS」は、活性酸素種を意味する。ROSは、化学的に反応性の酸素含有化学種である。例としては、ペルオキシド([O−O]2−およびR−O−O−R、例えば、H2O2)、超酸化物(O2・−)、ヒドロキシルラジカル(・OH)および一重項酸素(1O2)が挙げられるが、これらに限定されない。細胞中では、ROSは、酸素の代謝の副産物として産生されるが、環境ストレスは、「酸化ストレス」と呼ばれる細胞によるROS産生の増大をもたらす場合があり、細胞構造に対する大きな損傷に繋がる。現在までに、いくつかの別々のROS産生部位が特定され、これらの中には、ミトコンドリア(特に、ミトコンドリアの呼吸鎖の部位IQ、IF、IIIQO、SDHおよびmGPDH)、ミクロソーム(例えば、チトクロムP450およびジアミンオキシダーゼ)、ペルオキシソームおよび細胞膜中のいくつかの酵素(例えば、NADPHオキシダーゼおよびリポキシゲナーゼ)がある。ROSが放出および貯蔵される細胞内の部位に応じて、「細胞質ゾルのROS」および「ミトコンドリアのROS」にさらに区別してもよい。例えば、ミトコンドリアの呼吸鎖の複合体I(部位IQおよびIF)およびミトコンドリア複合体IIの部位SDHは、ROSを産生し、ミトコンドリアの内腔に向けてROSを放出するので、これらは「ミトコンドリアのROS」と見なされ、一方、ミトコンドリアの呼吸鎖の複合体III(部位IIIQO)および部位mGPDHは、ROSを産生し、細胞質に向けてROSを放出するので、これらは、「細胞質ゾルのROS」と見なされる。
本発明の化合物の用語の「塩」は、本明細書では、酸付加塩およびその塩基塩を表すために使用される。好適な酸付加塩は、非毒性塩を形成する酸から形成される。非限定的例には、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、シクラミン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、蟻酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2−ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロト酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/二水素リン酸塩、ピログルタミン酸塩、サッカリン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩およびキシノホ酸塩が挙げられる。好適な塩基塩は、非毒性塩を形成する塩基から形成される。非限定的例には、アルミニウム塩、アルギニン塩、ベンザチン塩、カルシウム塩、コリン塩、ジエチルアミン塩、ジオラミン塩、グリシン塩、リシン塩、マグネシウム塩、メグルミン塩、オラミン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、トロメタミン塩、2−(ジエチルアミノ)エタノール塩、エタノールアミン塩、モルホリン塩、4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン塩および亜鉛塩が挙げられる。例えば、ヘミ硫酸塩およびヘミカルシウム塩などの酸および塩基のヘミ塩を形成してもよい。好ましい薬学的に許容可能な塩には、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、重硫酸塩/硫酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、および酢酸塩が挙げられる。
本明細書で使用される場合、用語の「部位IQ」は、NADH:ユビキノン酸化還元酵素(ミトコンドリア複合体Iとしても知られる)のユビキノン結合部位を意味する。部位IQは、ミトコンドリア内腔内に放出されるROSを産生する。
本明細書で使用される場合、用語の「部位IF」は、ミトコンドリア複合体Iのフラビン結合部位を意味する。部位IFは、ミトコンドリア内腔内に放出されるROSを産生する。
本明細書で使用される場合、用語の「部位IIIQO」は、チトクロムbc1複合体(ミトコンドリア複合体IIIとしても知られる)のユビキノン結合部位を意味する。部位IIIQOは、細胞質に向けて放出されるROSを産生する。
本明細書で使用される場合、用語の「部位SDH」は、コハク酸デヒドロゲナーゼ(ミトコンドリア複合体IIとしても知られる)を意味する。部位SDHは、ミトコンドリア内腔内に放出されるROSを産生する。
本明細書で使用される場合、用語の「部位mGPDH」は、グリセロール 3−リン酸デヒドロゲナーゼを意味する。部位mGPDHは、細胞質に向けて放出されるROSを産生する。
本明細書では、用語の「溶媒和物」は、化学量論的または準化学量論的量の1個または複数の薬学的に許容可能な溶媒分子、例えば、エタノールまたは水を含む本発明の化合物を表すために使用される。用語の「水和物」は、前記溶媒が水の場合を意味する。
用語の「対象」はヒトを含む動物を意味する。本発明の意味において、対象は患者、すなわち、治療を受けている人、医学的治療を受けている人、または治療を受けたことがある人、または疾患の発症について監視されている人であってもよい。一実施形態では、対象は雄(男性)である。別の実施形態では、対象は雌(女性)である。
用語の「互変異性体」は、互変異性化と呼ばれる化学反応により相互変換可能な有機化合物を意味する。前記化学反応は、単結合と隣接二重結合の切り替えに付随して起こる水素原子またはプロトンの移動を含む。
表現の「治療的有効量」は、標的に対して有意なマイナスまたは有害な副作用を引き起こすことなく、(1)遊離酸素ラジカルに関連する疾患、障害または状態の発症を遅らせるか予防する、(2)遊離酸素ラジカルに関連する疾患、障害または状態の1つまたは複数の症状の進行、増悪または悪化を減速または停止する、(3)遊離酸素ラジカルに関連する疾患、障害または状態の症状の寛解をもたらす、(4)遊離酸素ラジカルに関連する疾患、障害または状態の重症度または発生率を低下させる、または(5)遊離酸素ラジカルに関連する疾患、障害または状態を治癒させることを目的とした薬剤のレベルまたは量を意味する。予防的または防止的な処置のために、遊離酸素ラジカルに関連する疾患、障害または状態の発症前に治療的有効量を投与してもよい。代わりにまたは追加して、治療処置のために遊離酸素ラジカルに関連する疾患、障害または状態の開始後に治療的有効量を投与してもよい。
「治療すること(treating)」または「治療(treatment)」または「軽減(alleviation)」という用語は、治療処置および予防処置の両方を指し、その目的は、標的とされる病的状態または疾患を予防するか減速させることである。治療を必要とするものとしては、既に疾患に罹患しているものならびに疾患に罹患しやすいものまたは疾患を予防すべきものが挙げられる。対象または哺乳動物は、本発明に係る治療を受けた後に当該対象または哺乳動物が、ROS産生の減少および/または特定の疾患または状態に関連する1つまたは複数の症状のある程度の緩和、罹患率および死亡率の低下ならびに生活の質の問題の改善のうちの1つまたは複数の観察可能および/または測定可能な減少または非存在を示す場合に、疾患または障害または状態に対する「治療が成功」となる。治療の成功および疾患の改善を評価するための上記パラメータは、医師が精通している通常の手順によって容易に測定可能である。
発明の詳細な説明
本発明の目的の1つは、有効量のミトコンドリアの活性酸素種(ROS)産生阻害剤の投与を含む、治療および/または予防を必要とする対象の遊離酸素ラジカル関連疾患の治療および/または予防方法;または遊離酸素ラジカル関連疾患の治療および/または予防のための方法である。
本発明の別の目的は、遊離酸素ラジカル関連疾患の治療および/または予防方法のための、またはその治療および/または予防に使用するための、ミトコンドリアの活性酸素種(ROS)産生阻害剤であり、前記阻害剤が、ミトコンドリアのROS産生を阻害する。
一実施形態では、本発明の阻害剤は生理学的(細胞質ゾルの)ROS産生に影響を与えない。一実施形態では、生理学的(細胞質ゾルの)ROS産生は、本発明の阻害剤の存在下で5%を超えて調節(増減)されない。一実施形態では、生理学的(細胞質ゾルの)ROS産生は、本発明の阻害剤の存在下で、2%、4%、6%、8%、10%、12%、14%、16%、18%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%超えて調節(増減)されない。
本明細書で使用される場合、「影響を与えない」という用語は、ROS産生レベルを決定するための当業者に公知の技術により測定される本発明の阻害剤の効果がないことを意味する。
別の実施形態では、本発明の阻害剤は、細胞質ゾルのROS産生の阻害剤ではない。
一実施形態では、本発明の阻害剤は、IIIQOおよびmGPDHから選択される少なくとも1つの部位で、生理学的(細胞質ゾルの)ROS産生に影響を与えない。
一実施形態では、本発明の阻害剤は、2%、4%、6%、8%、10%、12%、14%、16%、18%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%超えて、IIIQOおよびmGPDHから選択される少なくとも1つの部位からの生理学的(細胞質ゾルの)ROS産生を減少させない。
好ましい実施形態では、本発明の阻害剤は、ミトコンドリアの呼吸鎖の複合体IIIの部位IIIQOからの生理学的(細胞質ゾルの)ROS産生を減少させない。
細胞質ゾルのROS産生は、細胞全体のROS産生と内部ミトコンドリアのROS産生との差によって決定される。あるいは、細胞質ゾルのROS産生は、NAD(P)HオキシダーゼROS産生のインビトロアッセイで決定できる。
別の実施形態では、本発明の阻害剤はROS産生の上流で作用する。
細胞質ゾルのROS産生を検出するための試験は最先端技術であり、当業者に周知である。
このような試験の例には、下記が挙げられるが、これらに限定されない。
(1)細胞全体のROS産生の測定:
5−(および−6)−クロロメチル−2’,7’−ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテート、アセチルエステル(CM−H2DCFDA)および/またはH2DCFDAは、細胞における細胞質ゾルの活性酸素種(ROS)の指示薬である。CM−H2DCFDAは受動的に細胞の中に拡散し、そこではその酢酸基が細胞内エステラーゼによって切断され、そのチオール反応性クロロメチル基が細胞内のグルタチオンおよび他のチオールと反応する。その後の酸化により細胞内部に捕捉された蛍光付加物が生じ、これにより長期の試験を容易にする(Zhang et al.,2008.J.Cardiovasc.Pharmacol.51(5):443−9;Sarvazyan,1996.Am.J.Physiol.271(5 Pt 2):H2079−2085)。
(2)細胞中のミトコンドリアのROS産生の測定:
無傷の細胞中の細胞内ROSを測定してその起源をミトコンドリアであると帰属するのはかなり難しい。近年、ミトコンドリアの機能にとって非常に重要なプロトン駆動力が、親油性トリフェニルホスホニウムカチオンTPP+を「送達」複合体として用いて、様々な化合物を、高度に陰性のミトコンドリアマトリックスに向けるために利用されている。これらのうち、ミトヒドロエチジンまたはミトジヒドロエチジウムとも呼ばれているミトソックスレッド(MitoSOX Red)は一般にミトコンドリアのROSの推定のために使用されている。ミトソックス(MitoSOX)のTPP+部分により、ミトコンドリアマトリックス中でのROS感受性ヒドロエチジンの多様な蓄積が可能となり、スーパーオキシドによるヒドロエチジンの酸化により特異的な蛍光酸化生成物、2−ヒドロキシエチジウムを生じる(Zhao et al.,2005.Proc.Natl.Acad.Sci.USA.102(16):5727−5732;Polster et al.,2014.Methods Enzymol.547:225−250)。
一実施形態では、本発明の阻害剤は、ミトコンドリアの活性酸素種(ROS)産生の選択的阻害剤である。
一実施形態では、本発明の阻害剤は、IQ、IFおよびSDHから選択される少なくとも1つの部位でのミトコンドリアのROS産生の選択的阻害剤である。
一実施形態では、本発明によるミトコンドリアの産生の選択的阻害剤は、2%、4%、6%、8%、10%、12%、14%、16%、18%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%を超えて、IQ、IFおよびSDHから選択される少なくとも1つの部位からのミトコンドリアのROS産生を減少させ、一方で、残りのROS産生部位からのミトコンドリアのROS産生に対し与える影響は、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、18%、16%、14%、12%、10%、8%、6%、4%、2%未満である。
一実施形態では、単一のミトコンドリアのROS産生部位からのミトコンドリアのROS産生の選択的阻害剤である阻害剤は、ROS産生部位IQ、IF、またはSDHの内の1つからのROS産生を18%を超えて減少させるが、残りのROS産生部位からのROS産生に対する影響は10%未満である。
好ましい実施形態では、本発明の阻害剤は、ミトコンドリア呼吸鎖の複合体Iの部位IQおよび/またはIFでのミトコンドリアのROS産生の選択的阻害剤である。
ミトコンドリアの呼吸鎖の複合体Iは、2つの別々の部位:ユビキノン結合部位およびフラビンモノヌクレオチド部位、からROSを産生できる。
複合体Iのユビキノン結合部位(IQ):
IQからのROS産生を特異的に分析するために、呼吸鎖に電子を供給するための基質として5mMのコハク酸を使用し得る。IQ ROS産生は、ミトコンドリアの内膜を横切るプロトン駆動力(PMF)の変化に対して非常に感受性が高い(PMF=ΔΨm+ΔpH)。従って、IQ ROSアッセイでのヒット化合物の選択性を評価する場合に、ΔΨmアッセイの保守的な閾値を利用してもよい。
部位IQからの電子漏出は、強力なPMFの存在下において減少したQプールからCIによるマトリックスNAD+への逆輸送中に十分に明らかにされている。実験的には、IQ ROS産生に有利に働く条件は生理機能からあまりにもかけ離れており、そのため、高いその能力にもかかわらず多くの者がその関連性を軽視している。但し、低濃度のグルタミン酸(CIにより電子を順方向に供給する)およびコハク酸(電子を逆方向に供給する)の両方を供給した場合であっても、呼吸しているミトコンドリアは有意なレベルのロテノン感受性ROS(すなわちIQ ROS)を産生する。さらに、比較分析から、部位IQからの最大のROS産生(但し、部位IFからの産生は異なる)と多様な脊椎動物種全体における最大寿命との反比例関係が示されている(Lambert et al.,2007.Aging Cell.6(5):607−18;Lambert et al.,2010.Aging Cell.9(1):78−91)。従っ て、IQ ROSの選択的調節剤により、正常および病理学的プロセスにおけるミトコンドリアROS産生の推定上の役割を探るための特有の機会が得られる。
複合体Iのフラビン結合部位(IF):
IFからのROS産生を特異的に分析するために、呼吸鎖に電子を与えるための基質溶液は5mMのグルタミン酸、5mMのリンゴ酸および4μMのロテノンを含み得る。部位IFは、ミトコンドリアマトリックス内のNADHプールの減少状態に比例する速度でROSを産生する(Treberg et al.,2011.J.Biol.Chem.286(36):31361−72)。殺虫剤ロテノンによる部位IQの遮断は、フラビンの酸化を防止することによって部位IFからのROS産生を増加させることができる。複合体Iのフラビン結合部位(部位IF)からの最大のROS産生は、部位IQおよびIIIQOと比較して比較的低く、これは、このアッセイにおけるより高いバラツキおよびその後の最初のスクリーニングにおけるヒットコーリングのより高い偽陽性率に繋がり得る。
ロテノンおよび神経毒MPP+による複合体I活性の阻害は、げっ歯類およびヒトの両方におけるパーキンソニズムに関連づけられており、これは複合体IのROS産生の機能障害と神経変性との間の関連を示唆している。従って、複合体IからのROS産生を阻害できる化合物は、療法において有用であり得る。
別の実施形態では、本発明の阻害剤または選択的阻害剤は、ミトコンドリア呼吸鎖の複合体Iの部位IQでのミトコンドリアの活性酸素種(ROS)産生の選択的阻害剤である。
本明細書で使用される場合、用語の「選択的阻害剤」は、複合体Iの部位IQでのROS産生を阻害できる化合物を意味するが、同時に、残りの部位からのROS産生およびミトコンドリアの膜電位(ΔΨm)および酸化的リン酸化に対する影響は最小であり得る。例えば、ロテノンの存在下(すなわち、部位IQにおけるROS産生が阻害される場合)およびアンチマイシンAの存在下(すなわち、ROSが主に複合体IIIによって産生される場合)での単離ミトコンドリアの場合、ROS産生の阻害に対する化合物のIC50は、ロテノンの非存在下よりも約5、6、7、8、9、10、15、20倍高い。
一実施形態では、本明細書で使用される場合、「選択的阻害剤」という用語はまた、本明細書で与えられるいずれか1つの定義と排他的にまたは包括的に、複合体Iの部位IQでのミトコンドリアのROS産生を、約0.1μM〜約20μMの範囲、好ましくは約10μMのIC50で阻害できる化合物を意味する。一実施形態では、本明細書で使用される場合、「選択的阻害剤」という用語はまた、本明細書で与えられるいずれか1つの定義と排他的にまたは包括的に、複合体Iの部位IQでのミトコンドリアのROS産生を、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、15.5、16.0、16.5、17.0、17.5、18.0、18.5、19.0、19.5、20μMのIC50で阻害できる化合物を意味する。別の実施形態では、前記化合物は、NAD(P)HオキシダーゼROS産生のインビトロアッセイにおいて細胞質ゾルのROS産生を大きくは阻害しない。
本明細書で使用される場合、用語の「選択的阻害剤」はまた、本明細書で与えられるいずれか1つの定義と排他的にまたは包括的に、複合体Iの部位IQでのROS産生を阻害できる化合物を意味し、同時に、残りの部位からのROS産生およびミトコンドリアの膜電位(ΔΨm)および酸化的リン酸化に対する影響は最小であり得る。例えば、ロテノンの存在下での(すなわち、部位IQでのROS産生が阻害される場合の)単離したミトコンドリアにおけるROS産生の阻害に対する化合物のIC50は、アンチマイシンAの存在下(すなわち、ロテノンの後で添加され、従って、ROSが主に複合体IIIによって産生される場合)よりも約5、6、7、8、9、10、15、20倍高いまたは大きい。
種々の組織から単離したミトコンドリアにおけるミトコンドリア呼吸鎖の複合体Iの部位IQで産生されるROSを特異的に検出するための試験は当業者に周知である。
エネルギー産生を変えることなく、単離ミトコンドリアの所定の部位におけるROS産生阻害剤を特定するための高スループットアッセイについても説明する。これらのアッセイはROS産生の部位特異的調節物質を特定すると共に、ミトコンドリアの生体エネルギー産生の広範囲作用型抗酸化剤および各種阻害剤などの特異性の低いエフェクターも明らかにする。従って、内部ミトコンドリア膜を横切る正常なエネルギー共役電子およびプロトン流束を変えることなく、電子伝達鎖内の特定の部位における酸素への望ましくない電子漏出(ROS産生)を区別する阻害剤を特定し得る。アッセイは、色素アンプレックス UltraRed(Invitrogen)を用いるミトコンドリアROS産生の標準的な蛍光ベースアッセイおよび電位差測定色素TMRM(Invitrogen)を用いるΔΨmを高スループットマイクロプレートフォーマットに適合させる。新しく単離した骨格筋ミトコンドリアにおける機能的調節のロバスト検出のために5種類のROSおよび1種類のΔΨmアッセイのコアセットが提供される。一般的なアッセイ混合物に添加される基質および阻害剤を変えることにより、5つの主要なROS産生部位(部位IQ、IF、IIIQO、SDHおよびmGPDH)を別々に標的化し得る。ΔΨmを監視するためのカウンタースクリーニングを並行して実行し、正常なミトコンドリアエネルギー産生の一般的な阻害剤または脱共役剤であると思われる化合物を除去してもよい。
別の実施形態では、全てのアッセイに対して阻害剤を2.5μMで、二通りに試験する。エンドポイント蛍光をDMSOに対して正規化し、公知のミトコンドリアの阻害剤対照ウェルを各プレートに含めた。各ROSアッセイにおける陽性ヒット化合物を、好ましくは15%以上、より好ましくは18%以上、さらにより好ましくは20%以上の低減閾値をそのアッセイに適用することにより最初に濾過してもよい。TMRMベースのカウンタースクリーニングにおいてΔΨmを変えた化合物の除去も行いながら、各ROSアッセイをそれ以外に対するカウンタースクリーニングとして用い得る。従って、濾過したヒット化合物をその後に評価して、他のROSアッセイを、例えば、20%または18%または15%を超えて変えるか、ΔΨmを好ましくは10%またはより好ましくは5%またはさらにより好ましくは4%を超えて変えたものを除去してもよい。
別の実施形態では、本発明の阻害剤は直接にはミトコンドリアでの酸化的リン酸化に大きくは影響を与えず、酸化的リン酸化は10、9、8、7、6、5%未満で調節されることが好ましい。
遊離酸素ラジカル関連疾患は、酸化ストレス不均衡およびミトコンドリア機能障害に関連している。特に、ミトコンドリア機能障害に関連する疾患は、ミトコンドリアのROS産生によって誘導される。
遊離酸素ラジカル関連疾患としては、限定されないが、心臓血管疾患、老化疾患、自己免疫疾患、早老症候群、パーキンソン症候群、神経疾患、虚血再灌流障害、感染性疾患、筋肉疾患、肺、腎臓および肝臓の疾患が挙げられる。
遊離酸素ラジカル関連心臓血管疾患としては、限定されないが、高血圧症、心毒性(アントラサイクリンの心毒性、抗癌剤の心毒性、キノロンの心毒性および抗ウイルス薬の心毒性を含む)、原因を問わない心不全、虚血、心筋梗塞、心臓発作、脳卒中、アテローム性動脈硬化症、心細動、高血圧症、血栓症および塞栓症、気管支喘息などのアレルギー/炎症状態、関節リウマチ、炎症性腸疾患、2型糖尿病、糖尿病と難聴(DAD、Ballinger−Wallace症候群としても知られる)、炎症性疾患、リウマチ熱、肺動脈高血圧症、症候性心筋症(バース症候群、コステロ症候群、フリードライヒ失調症、レオパード症候群、ヌーナン症候群、心臓・顔・皮膚症候群、心臓脳筋症およびアルストレーム症候群、など)、自然免疫応答および心肺疾患、例えば、慢性閉塞性肺疾患、肺塞栓症、心膜炎、大動脈縮窄症、ファロー四徴症、大動脈弁狭窄症、僧帽弁狭窄症、大動脈弁逆流症、僧帽弁逆流症、塵肺症、気管支拡張症、心筋症、および/または内皮ニトログリセリン耐性が挙げられる。
遊離酸素ラジカル関連老化疾患としては、限定されないが、加齢黄斑変性症(AMD)、皮膚の老化、皮膚のUV損傷、薄毛(thinning)、たるみ、しわ、年齢によるしみの出現、血管損傷/乾燥部位、脂漏性角化症、日光性角化症、キンドラー症候群、ボーエン病、皮膚癌、関節炎、強直性脊椎炎、炎症性多発性関節症、膝関節炎、流行性多発性関節炎、乾癬性関節炎、白内障、難聴、癌、転移、転移プロセス阻止、肝疾患、移植、腫瘍および抗腫瘍薬または免疫抑制薬および化学物質の毒性、骨粗鬆症、多形皮膚萎縮症、肢端早老症、遺伝性硬化性ポイキロデルマ、先天性角化異常症、色素性乾皮症、ブルーム症候群、ファンコニー貧血、コケイン症候群および公害病が挙げられる。
遊離酸素ラジカル関連自己免疫疾患としては、限定されないが、多発性硬化症、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、1型糖尿病、クローン病、重症筋無力症、グレーヴス病、強皮症、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性肝炎、橋本甲状腺炎、強直性脊椎炎、乾癬が挙げられる。
自己免疫疾患は、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血および自己免疫性血小板減少症などの血液疾患に関連する自己免疫疾患であり得る。
自己免疫疾患はまた、側頭動脈炎、抗リン脂質抗体症候群、ウェゲナー肉芽腫症などの脈管炎およびベーチェット病であり得る。
他の自己免疫疾患としては、多発性筋炎、皮膚筋炎、強直性脊椎炎などの脊椎関節症、抗リン脂質抗体症候群および多発性筋炎が挙げられる。
遊離酸素ラジカル関連早老症候群としては、限定されないが、早老症、ブルーム症候群、コケイン症候群、ド・ブラシー症候群(De Barsy syndrome)、先天性角化異常症、拘束性皮膚障害、ロスムンド・トムソン症候群、硫黄欠乏性毛髪発育異常症、ウェルナー症候群、Wiedemann−Rautenstrauch症候群、および色素性乾皮症が挙げられる。
遊離酸素ラジカル関連パーキンソン症候群としては、限定されないが、パーキンソン病(PD)、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症またはレヴィー小体認知症、毒素誘発性パーキンソニズム、および常染色体性劣性PARK6関連パーキンソニズムまたは常染色体性劣性PINK1関連パーキンソニズムなどのPDの早期発症型バリアントが挙げられる。
遊離酸素ラジカル関連神経疾患としては、限定されないが、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病および老化、ハンチントン病、フリードライヒ運動失調症、ウィルソン病、リー症候群、キーンズ・セイアー症候群、レーベル遺伝性視神経症、認知障害、気分障害、運動障害、遅発性ジスキネジー、脳損傷、アポトーシス、認知症、てんかん、てんかん性認知症、初老期認知症、外傷後認知症、老人性認知症、血管性認知症、HIV−1関連認知症、脳卒中後認知症、統合失調症、ダウン症候群、運動ニューロン疾患、アミロイドーシス、2型糖尿病関連アミロイド、クロイツフェルト・ヤコブ病、壊死性細胞死、ゲルストマン・ストロイスラー症候群、クールー病・動物スクレイピー、長期血液透析関連アミロイド、老人性心臓アミロイドおよび家族性アミロイドポリニューロパチー、脳疾患、内臓神経障害、記憶喪失、アルミニウム中毒、生体細胞中の鉄レベルの減少、哺乳類における遊離遷移金属イオンレベルの減少、体または特定の体区画に毒性量の金属を有する患者、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、視覚性運動盲、アルコール関連認知症、主要な加齢性タウオパチー、健忘失語症、疾病失認、失行症、発語失行、聴覚型言語失認(auditory verbal agnosia)、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、ロゴペニック型進行性失語、神経原線維変化、声失認)、ピック病、主要な進行性失語症、進行性非流暢性失語症、意味性認知症、ステロイド認知症症候群、視空間失認(visuospatial dysgnosia)、アミノグリコシドの耳毒性副作用およびコカイン毒性が挙げられる。
遊離酸素ラジカル関連虚血再灌流障害としては、限定されないが、脳卒中、脳虚血、脳幹脳卒中症候群(brainstem stroke syndrome)、頸動脈内膜剥離、小脳卒中症候群、皮質性色覚異常、脳出血、脳梗塞、脳静脈洞血栓症、実質内出血、頭蓋内出血、ラクナ梗塞、延髄外側症候群、橋脳外側症候群(lateral pontine syndrome)、部分的前方循環梗塞(partial anterior circulation infarct)、後方循環梗塞(posterior circulation infarct)、無症候性脳卒中(silent stroke)、脳卒中の組み合わせ(stroke Association)、脳卒中地帯(stroke belt)、脳卒中回復、一過性脳虚血発作、流域梗塞(Watershed stroke)、ウェーバー症候群、肥満症、移植のための臓器保存、虚血および再灌流障害が挙げられる。
遊離酸素ラジカル関連感染性疾患としては、限定されないが、C型肝炎、敗血症、感染性ミオパチー、敗血症性ショックが挙げられる。
遊離酸素ラジカル関連筋肉疾患としては、限定されないが、ミオパチー、ミトコンドリアのミオパチー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー1型、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー2型、リアノジン受容体1(RYR1)関連ミオパチー、セレンタンパク質1(SEPN1)関連ミオパチー、キーンズ・セイアー症候群、心筋症、運動障害、不活動による筋萎縮、骨格筋火傷およびデュピュイトラン拘縮が挙げられる。
遊離酸素ラジカルに関連する肺、腎臓および肝臓の疾患としては、限定されないが、嚢胞性線維症、喘息、公害病、心肺疾患、肺動脈高血圧症、慢性閉塞性肺疾患、肺塞栓症、塵肺症、気管支拡張症、気管支喘息、人工呼吸器誘発性横隔膜機能不全、肺癌、アルコール性脂肪肝疾患、脂肪肝疾患、糖尿病、生体外腎臓保存、C型肝炎における肝炎、1型糖尿病における腎臓損傷および肝硬変が挙げられる。
一実施形態では、特に本発明において治療されるべき疾患は、加齢黄斑変性症、パーキンソン病、アルツハイマー病、虚血再灌流障害、肺動脈高血圧症、強皮症、アテローム性動脈硬化症、心不全、心筋梗塞、関節炎、肺毒性、心肺疾患、炎症性疾患、癌、転移、心毒性(アントラサイクリンの心毒性、抗癌剤の心毒性、キノロンの心毒性および抗ウイルス薬の心毒性を含む)、原因を問わない心不全、虚血、心臓発作、脳卒中、血栓症/塞栓症、喘息、アレルギー/炎症状態、気管支喘息、関節リウマチ、炎症性腸疾患、ハンチントン病、認知障害、早老症、早老症候群、てんかん性認知症、初老期認知症、外傷後認知症、老人性認知症、血管性認知症、HIV−1関連認知症、脳卒中後認知症、ダウン症候群、運動ニューロン疾患、アミロイドーシス、2型糖尿病関連アミロイド、クロイツフェルト・ヤコブ病、壊死性細胞死、ゲルストマン・ストロイスラー症候群、クールー病・動物スクレイピー、長期血液透析関連アミロイド、老人性心臓アミロイドおよび家族性アミロイドポリニューロパチー、脳疾患、内臓神経障害(neurospanchnic disorder)、記憶喪失、アルミニウム中毒、生体細胞中の鉄レベルの減少、哺乳類における遊離遷移金属イオンレベルの減少、体または特定の体区画に毒性量の金属を有する患者、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、白内障、糖尿病、癌、肝疾患、皮膚の老化、移植、アミノグリコシドの耳毒性副作用、腫瘍および抗腫瘍薬または免疫抑制薬および化学物質の毒性、先天性免疫応答およびフリードライヒ運動失調症である。
一実施形態では、特に本発明において治療されるべき疾患は、心筋梗塞、心毒性(アントラサイクリンの心毒性、抗癌剤の心毒性、キノロンの心毒性および抗ウイルス薬の心毒性、好ましくは、アントラサイクリンの心毒性を含む)、肺動脈高血圧症、心不全、心肺疾患、虚血、心臓発作、脳卒中、血栓症および塞栓症を含む群から選択される遊離酸素ラジカル関連心臓血管疾患である。
一実施形態では、本発明において特に治療されるべき疾患は、老化疾患、AMD、皮膚の老化、心臓血管疾患(例えば、アントラサイクリンの心毒性など)、早老症/早老症候群、パーキンソン病、アルツハイマー病、フリードライヒ運動失調症、虚血再灌流、心肺疾患、喘息、癌、転移および/または公害病である。
一実施形態では、本発明において特に予防および/または治療されるべき疾患は心毒性、好ましくは、アントラサイクリンの心毒性である。アントラサイクリン毒性に関与する機序は、ROS産生および部位特異的DNA損傷に関係する。酸化ストレス誘導は、実際に、アントラサイクリンの心毒性において、DNA損傷、筋節損傷、ミトコンドリア機能障害および生存促進性シグナル伝達の減少を誘導することにより役割を果たし、心筋細胞の死亡と生存の両方を媒介する(Valcovici et al.,2016.Arch.Med.Sci.12(2):428−435)。
一実施形態では、本発明において特に予防および/または治療されるべき疾患は、肺高血圧症である。実際に、肺血管系に対し、ROS生成を促進する薬剤の有害作用が示され、また逆に、肺高血圧症の動物モデルにおいて、抗酸化剤の有益な効果が示されている。このように、ROS産生は、肺血管リモデリング、内皮機能障害、血管収縮反応の変化、細胞外マトリックスの炎症および改変、肺高血圧症病態生理学の全ての重要な特徴に直接的に関連している(Freund−Michel et al.,2013.Ther.Adv.Respir.Dis.7(3):175−200)。
一実施形態では、本発明において特に予防および/または治療されるべき疾患は、虚血性および再潅流傷害である。実際に、ROSの過剰産生は、再潅流傷害の起源における重要な因子である(Granger et al.,2015.Redox Biol.6:524−51)。
一実施形態では、本発明において特に予防および/または治療されるべき疾患は、糖尿病である。実際に、慢性高血糖およびその後の活性酸素種(ROS)の増大は、細胞機能を劣化させ、インスリン抵抗性を高めて、2型糖尿病の増悪に繋がる(Kaneto et al.2010.Mediators Inflamm.,2010:453892)が、しかし、他のタイプの糖尿病、例えば、MODY(若年発症成人型糖尿病)の増悪にも繋がる。
一実施形態では、本発明において特に予防および/または治療されるべき疾患は、パーキンソン病である。実際に、ROSの産生の増大をもたらす、ミトコンドリアの機能障害および酸化的損傷は、パーキンソン病の損傷した脳領域中で見つかることが多い状態である(Munoz et al.,2016.Parkinsons Dis.2016:7049108)。
一実施形態では、本発明において特に予防および/または治療されるべき疾患は、黄斑変性症である。実際に、特に、網膜色素上皮細胞中の、過剰のROS産生および酸化ストレスと一緒になったROSの蓄積は、黄斑変性症の病因として一定の役割を果たす。ROSレベルは、加齢網膜中で増加し、酸化ストレスに繋がり、光受容体、網膜色素上皮細胞、およびアポトーシスプロセスにおける脈絡毛細管の損傷を生ずる(Nita et al.,2016.Oxid.Med.Cell.Longev.2016:3164734)。
一実施形態では、本発明において特に予防および/または治療されるべき疾患は、強皮症である。実際に、重要なROS源であるNADPHオキシダーゼは、強皮症線維芽細胞中で発現上昇し、ROSの大きな蓄積を生じ、次にこれが細胞活性化およびDNA損傷において重要な役割を果たしていることが示された(Spadoni et al.,2015.Arthritis Rheumatol.67(6):1611−22)。
一実施形態では、本発明において特に予防および/または治療されるべき疾患は、転移である。実際には、ROS産生は腫瘍増殖および転移の機序、すなわち腫瘍細胞の遊走、浸潤、コロニー形成能、転移生着に関与しており、自然発生転移は、ROS産生およびTCAサイクル活性異常に関連するミトコンドリア表現型の自然選択、すなわち「転移性ミトコンドリアスイッチ(metastatic mitochondrial switch)」と命名されている機序によって促進される(Porporato et al.,2014.Cell Reports.8(3):754−766)。ROS過剰産生も血管新生を促進し、ROS産生阻害剤は互恵的な抗血管新生剤でもある。
一実施形態では、本発明の阻害剤または選択的阻害剤は、AOXまたはその誘導体である。AOXは、デスメチルアネトールトリチオンであり、5−(4−ヒドロキシフェニル)−3H−1,2−ジチオール−3−チオン:
としても表される。
一実施形態では、AOXの誘導体は、そのバイオアイソスター、好ましくは、そのフェノールバイオアイソスターである。
一実施形態では、フェノールバイオアイソスターは、例えば、次の群、その互変異性体および任意に置換されてもよいその誘導体である。
特定の実施形態では、好ましい本発明のフェノールバイオアイソスターは、以下のもの、その互変異性体および任意に置換されてもよいその誘導体である:
従って、好ましい実施形態では、本発明の阻害剤は、式(I)
の化合物またはその薬学的に許容可能な互変異性体、塩もしくは溶媒和物であり;
式中、XはS、OまたはNHOHであり;好ましくはXはSまたはOであり;より好ましくはXはSであり;
YはCH、CまたはNであり;好ましくはYはCHまたはNであり;より好ましくはYはCHであり;
R
1、R
2、R
4およびR
5は、それぞれ独立に、水素、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、シアノ、ニトロ、カルボキシ、アリール、アルコキシ、ハロアルキル、アルキルアミノ、アミノアルキル、ニトロオキシアルキルまたはカルボキシアルキルであり;
R
3はヒドロキシであり;またはR
3およびR
2は、これらが結合している炭素原子と一緒に、5員ヘテロアリール部分を形成し、−R
3−R
2−は、−A−CR
6=B−または−B=CR
6−A−であり;
AはO、SまたはNR
7であり;R
7は水素、C1−C8アルキルまたはアルキルオキシカルボニルであり;
BはCHまたはNであり;および
R
6は、水素、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、シアノ、ニトロ、カルボキシ、アリール、アルコキシ、ハロアルキル、アルキルアミノ、アミノアルキル、ニトロオキシアルキルまたはカルボキシアルキルである。
好ましい実施形態では、式(I)において:
XはS、OまたはNHOHであり;好ましくはXはSであり;
YはCH、CまたはNであり;好ましくはYはCHであり;
R1、R2、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、シアノ、ニトロ、カルボキシ、アリール、アルコキシ、ハロアルキル、アルキルアミノ、アミノアルキル、ニトロオキシアルキルまたはカルボキシアルキルであり;好ましくはR1、R2、R4およびR5は、水素であり;
R3はヒドロキシであり;またはR3およびR2は、これらが結合している炭素原子と一緒に、5員ヘテロアリール部分を形成し、−R3−R2−は、−A−CR6=B−であり;
AはO、SまたはNR7であり;R7は水素またはC1−C8アルキルであり;
BはCHまたはNであり;および
R6は、水素、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、シアノ、ニトロ、カルボキシ、アリール、アルコキシ、ハロアルキル、アルキルアミノ、アミノアルキル、ニトロオキシアルキルまたはカルボキシアルキルである。
好ましい実施形態では、XはSである。別の好ましい実施形態では、XはOである。好ましい実施形態では、YはCHである。別の好ましい実施形態では、YはNである。
好ましい実施形態では、R3およびR2は、これらが結合している炭素原子と一緒に、5員ヘテロアリール部分を形成し、−R3−R2−は、−A−CR6=B−であり;
AはO、SまたはNR7であり;R7は水素、C1−C8アルキルまたはアルキルオキシカルボニルであり;好ましくはR7は水素またはアルキルオキシカルボニルであり;
BはCHまたはNであり;および
R6は、水素、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、シアノ、ニトロ、カルボキシ、アリール、アルコキシ、ハロアルキル、アルキルアミノ、アミノアルキル、ニトロオキシアルキルまたはカルボキシアルキルであり;好ましくはR6は水素またはヒドロキシルである。
より好ましくは、−R3−R2−は、−O−C(OH)=N−または−N(COOMe)−CH=CH−であり、より好ましくは、−R3−R2−は、−O−C(OH)=N−である。
別の好ましい実施形態では、R3およびR2は、これらが結合している炭素原子と一緒に、5員ヘテロアリール部分を形成し、−R3−R2−は、−B=CR6−A−であり;
AはO、SまたはNR7であり;R7は水素、C1−C8アルキルまたはアルキルオキシカルボニルであり;好ましくはR7は水素またはアルキルオキシカルボニルであり;
BはCHまたはNであり;および
R6は、水素、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、シアノ、ニトロ、カルボキシ、アリール、アルコキシ、ハロアルキル、アルキルアミノ、アミノアルキル、ニトロオキシアルキルまたはカルボキシアルキルであり;好ましくはR6は水素またはヒドロキシルである。
より好ましくは、−R3−R2−は、−N=C(OH)−S−である。
従って、好ましい実施形態では、本発明の阻害剤は、式(I’)
の化合物またはその薬学的に許容可能な互変異性体、塩もしくは溶媒和物であり;
式中、XはS、OまたはNHOHであり;好ましくはXはSまたはOであり;より好ましくはXはSであり;
YはCH、CまたはNであり;好ましくはYはCHまたはNであり;より好ましくはYはCHであり;
R
1、R
4およびR
5は、それぞれ独立に、水素、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、シアノ、ニトロ、カルボキシ、アリール、アルコキシ、ハロアルキル、アルキルアミノ、アミノアルキル、ニトロオキシアルキルまたはカルボキシアルキルであり;
R
2’およびR
3’は、これらが結合している炭素原子と一緒に、5員ヘテロアリール部分を形成し、−R
3’−R
2’−は、−A−CR
6=B−または−B=CR
6−A−であり;
AはO、SまたはNR
7であり;R
7は水素、C1−C8アルキルまたはアルキルオキシカルボニルであり;
BはCHまたはNであり;および
R
6は、水素、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、シアノ、ニトロ、カルボキシ、アリール、アルコキシ、ハロアルキル、アルキルアミノ、アミノアルキル、ニトロオキシアルキルまたはカルボキシアルキルである。
好ましい実施形態では、本発明の阻害剤は、式(II)
の化合物またはその薬学的に許容可能な互変異性体、塩もしくは溶媒和物であり、式中、X、Y、R
1、R
4、R
5、R
6、AおよびBは、式(I)で定義される通りである。
一実施形態では、式(II)において:
XはS、OまたはNHOHであり;好ましくはXはSであり;
YはCH、CまたはNであり;好ましくはYはCHであり;
AはO、SまたはNR7であり;R7は水素またはC1−C8アルキル基であり;
BはCHまたはNであり;
R1、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、シアノ、ニトロ、カルボキシ、アリール、アルコキシ、ハロアルキル、アルキルアミノ、アミノアルキル、ニトロオキシアルキルまたはカルボキシアルキルであり;
R6は、水素、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、シアノ、ニトロ、カルボキシ、アリール、アルコキシ、ハロアルキル、アルキルアミノ、アミノアルキル、ニトロオキシアルキルまたはカルボキシアルキルである。
好ましい実施形態では、式(II)の化合物は、式(IIa)または(IIb)
の化合物またはその薬学的に許容可能な互変異性体、塩もしくは溶媒和物であり、式中X、Y、A、B、R
1、R
4、R
5およびR
6は、上記で定義の通りである。
好ましい実施形態では、本発明の阻害剤は、式(IIa)の化合物である。
好ましい実施形態では、式(IIa)の化合物は、式(IIa−1)または(IIa−2)
の化合物またはその薬学的に許容可能な互変異性体、塩もしくは溶媒和物であり、式中X、A、B、R
1、R
4、R
5およびR
6は、上記で定義の通りである。
好ましい実施形態では、本発明の阻害剤は、式(IIa−1)の化合物である。別の好ましい実施形態では、本発明の阻害剤は、式(IIa−2)の化合物である。
好ましい実施形態では、式(IIa−1)の化合物は、式(IIa−1’)、(IIa−1’’)または(IIa−1’’’)
の化合物またはその薬学的に許容可能な互変異性体、塩もしくは溶媒和物であり、式中A、B、R
1、R
4、R
5およびR
6は、上記で定義の通りである。
好ましい実施形態では、本発明の阻害剤は、式(IIa−1’)または(IIa−1’’)の化合物、より好ましくは式(IIa−1’)の化合物である。
好ましい実施形態では、式(IIa−2)の化合物は、式(IIa−2’)、(IIa−2’’)または(IIa−2’’’)
の化合物またはその薬学的に許容可能な互変異性体、塩もしくは溶媒和物であり、式中A、B、R
1、R
4、R
5およびR
6は、上記で定義の通りである。
好ましい実施形態では、本発明の阻害剤は、式(IIa−2’)または(IIa−2’’)の化合物である。
好ましい実施形態では、式(IIa−1)および(IIa−2)の化合物は、式(IIa−1a)、(IIa−1b)、(IIa−1c)、(IIa−1d)、(IIa−1e)、(IIa−2a)、(IIa−2b)、(IIa−2c)、(IIa−2d)または(IIa−2e)
の化合物またはその薬学的に許容可能な互変異性体、塩もしくは溶媒和物であり、式中X、R
1、R
4、R
5、R
6およびR
7は、上記で定義の通りである。
好ましい実施形態では、本発明の阻害剤は、式(IIa−1a)、(IIa−1b)、(IIa−1e)、(IIa−2a)、(IIa−2b)または(IIa−2e)の化合物、より好ましくは式(IIa−1a)または(IIa−1e)の化合物、より好ましくは式(IIa−1a)の化合物である。
好ましい実施形態では、式(IIb)の化合物は、式(IIb’)、(IIb’’)および(IIb’’’)
の化合物またはその薬学的に許容可能な互変異性体、塩もしくは溶媒和物であり、式中A、B、R
1、R
4、R
5およびR
6は、上記で定義の通りである。
好ましい実施形態では、式(IIb)の化合物は、式(IIb−1)、(IIb−2)、(IIb−3)、(IIb−4)または(IIb−5)
の化合物またはその薬学的に許容可能な互変異性体、塩もしくは溶媒和物であり、式中X、R
1、R
4、R
5、R
6およびR
7は、上記で定義の通りである。
好ましい実施形態では、本発明の阻害剤は、式(III)
の化合物またはその薬学的に許容可能な互変異性体、塩もしくは溶媒和物であり、式中、X、Y、R
1、R
4、R
5、R
6、AおよびBは、式(I)で定義される通りである。
好ましい実施形態では、式(III)の化合物は、式(IIIa)または(IIIb)
の化合物またはその薬学的に許容可能な互変異性体、塩もしくは溶媒和物であり、式中X、Y、A、B、R
1、R
4、R
5およびR
6は、上記で定義の通りである。
好ましい実施形態では、本発明の阻害剤は、式(IIIa)の化合物である。
好ましい実施形態では、式(IIIa)の化合物は、式(IIIa−1)または(IIIa−2)
の化合物またはその薬学的に許容可能な互変異性体、塩もしくは溶媒和物であり、式中X、A、B、R
1、R
4、R
5およびR
6は、上記で定義の通りである。
好ましい実施形態では、本発明の阻害剤は、式(IIIa−1)の化合物である。別の好ましい実施形態では、本発明の阻害剤は、式(IIIa−2)の化合物である。
好ましい実施形態では、式(IIIa−1)の化合物は、式(IIIa−1’)、(IIIa−1’’)または(IIIa−1’’’)
の化合物またはその薬学的に許容可能な互変異性体、塩もしくはは溶媒和物であり、式中A、B、R
1、R
4、R
5およびR
6は、上記で定義の通りである。
好ましい実施形態では、本発明の阻害剤は、式(IIIa−1’)または(IIIa−1’’)の化合物、より好ましくは式(IIIa−1’)の化合物である。
好ましい実施形態では、式(IIIa−2)の化合物は、式(IIIa−2’)、(IIIa−2’’)または(IIIa−2’’’)
の化合物またはその薬学的に許容可能な互変異性体、塩もしくはは溶媒和物であり、式中A、B、R
1、R
4、R
5およびR
6は、上記で定義の通りである。
好ましい実施形態では、本発明の阻害剤は、式(IIIa−2’)または(IIIa−2’’)の化合物である。
好ましい実施形態では、式(IIIa−1)および(IIIa−2)の化合物は、式(IIIa−1a)、(IIIa−1b)、(IIIa−1c)、(IIIa−1d)、(IIIa−1e)、(IIIa−2a)、(IIIa−2b)、(IIIa−2c)、(IIIa−2d)または(IIIa−2e)
の化合物またはその薬学的に許容可能な互変異性体、塩もしくは溶媒和物であり、式中X、R
1、R
4、R
5、R
6およびR
7は、上記で定義の通りである。
好ましい実施形態では、本発明の阻害剤は、式(IIIa−1a)、(IIIa−1b)、(IIIa−1e)、(IIIa−2a)、(IIIa−2b)または(IIIa−2e)の化合物、より好ましくは式(IIIa−1b)の化合物である。
好ましい実施形態では、式(IIIb)の化合物は、式(IIIb’)、(IIIb’’)および(IIIb’’’)
の化合物またはその薬学的に許容可能な互変異性体、塩もしくは溶媒和物であり、式中A、B、R
1、R
4、R
5およびR
6は、上記で定義の通りである。
好ましい実施形態では、式(IIIb)の化合物は、式(IIIb−1)、(IIIb−2)、(IIIb−3)、(IIIb−4)または(IIIb−5)
の化合物またはその薬学的に許容可能な互変異性体、塩もしくは溶媒和物であり、式中X、R
1、R
4、R
5、R
6およびR
7は、上記で定義の通りである。
特定の実施形態では、本発明の阻害剤は、下記から選択される:
5−(4−ヒドロキシフェニル)−3H−1,2−ジチオール−3−チオン(AOX);
5−(4−ヒドロキシフェニル)−3H−1,2−ジチオール−3−オン(Cp1);
5−(4−ヒドロキシフェニル)−3H−1,2−ジチオール−3−オンオキシム(Cp2);
5−(4−ヒドロキシフェニル)−3H−1,2,4−ジチアゾール−3−チオン(Cp3);
4−(4−ヒドロキシフェニル)−3H−1,2−ジチオール−3−チオン(Cp4);
5−(2−ヒドロキシベンゾ[d]オキサゾール−5−イル)−3H−1,2−ジチオール−3−チオン(Cp5);
5−(2−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−6−イル)−3H−1,2−ジチオール−3−チオン(Cp6a);
5−(ベンゾフラン−5−イル)−3H−1,2−ジチオール−3−チオン(Cp8);および
メチル5−(3−チオキソ−3H−1,2−ジチオール−5−イル)−1H−インドール−1−カルボキシレート(Cp9a)。
好ましい実施形態では、本発明の阻害剤は、AOX、Cp1、Cp3、Cp4、Cp5、Cp6aおよびCp9aから選択される。好ましい実施形態では、本発明の阻害剤は、AOX、Cp1、Cp3、Cp5およびCp6aから選択される。好ましい実施形態では、本発明の阻害剤は、AOXである。好ましい実施形態では、本発明の阻害剤は、Cp1である。好ましい実施形態では、本発明の阻害剤は、Cp3である。好ましい実施形態では、本発明の阻害剤は、Cp5である。好ましい実施形態では、本発明の阻害剤は、Cp6aである。
本発明はまた、上記で定義の式(IIa−1)の化合物、より具体的には、式(IIa−1’)、(IIa−1’’)および(IIa−1’’’)
の化合物またはその薬学的に許容可能な互変異性体、塩もしくは溶媒和物の製造方法に関し、式中A、B、R
1、R
4、R
5およびR
6は、上記で定義の通りであり;
前記方法は、
a)硫黄系試薬(好ましくは硫黄系試薬はP
4S
10である)を用いて、シロキサン(好ましくはシロキサンはヘキサメチルジシロキサン(Me
3SiOSiMe
3、HMDOである)の存在下、式(C)
の化合物(式中、A、B、R
1、R
4、R
5およびR
6は、上記で定義の通り)を環化し、
上記で定義の式(IIa−1’)の化合物を得ることを含み、また、必要に応じ、
b1)式(IIa−1’)の化合物を酸化剤(好ましくは、酸化剤は、酢酸水銀Hg(OAc)
2である)と反応させて、上記で定義の式(IIa−1’’)の化合物を得ることができ、または
b2)式(IIa−1’)の化合物を、塩基(好ましくは、塩基は酢酸ナトリウム(AcONa)である)の存在下、ヒドロキシルアミンNH
2OH−HClと反応させて、上記で定義の式(IIa−1’’’)の化合物を得ることができる。
一実施形態では、式(IIa−1)の化合物の製造方法は、中間体(C)を製造する予備ステップを含んでよく、該ステップは、式(A)
(式中、A、B、R
1、R
4、R
5およびR
6は、上記で定義の通り)の酸誘導体を、塩化マグネシウム(MgCl
2)の存在下で、3−メトキシ−3−オキソプロパン酸(B)
、その後ジイミダゾリルケトン、さらにその後、HClと反応させて、式(C)の化合物を得ることを含む。
一実施形態では、式(IIa−1)の化合物の製造方法は、中間体(C)を製造する予備ステップを含んでよく、該ステップは、式(A’)
(式中、A、B、R
1、R
4、R
5およびR
6は、上記で定義の通り)の酸誘導体を、水素化ナトリウムの存在下で、ジメチルカーボネートと反応させて、式(C)の化合物を得ることを含む。
本発明はまた、式(IIa−2)の化合物、より具体的には、式(IIa−2’)および(IIa−2’’’)
(式中A、B、R
1、R
4、R
5およびR
6は、上記で定義の通り)の化合物またはその薬学的に許容可能な互変異性体、塩もしくは溶媒和物の製造方法に関し、
前記方法は、式(E)
(式中、A、B、R
1、R
4、R
5およびR
6は、上記で定義の通り)の化合物を、塩基(好ましくは、塩基は水素化ナトリウム(NaH)である)の存在下で、二硫化炭素(CS
2)を用いて環化し、上記で定義の式(IIa−2’)の化合物を得ることを含み;
および、必要に応じ、式(IIa−2’)の化合物を、塩基(好ましくは、塩基は酢酸ナトリウム(AcONa)である)の存在下、ヒドロキシルアミンNH
2OH−HClと反応させて、上記で定義の式(IIa−2’’’)の化合物を得ることができる。
本発明はまた、式(IIa−2’’)
(式中A、B、R
1、R
4、R
5およびR
6は、上記で定義の通り)の化合物またはその薬学的に許容可能な互変異性体、塩もしくは溶媒和物の製造方法に関し、
前記方法は、式(E)
(式中、A、B、R
1、R
4、R
5およびR
6は、上記で定義の通り)の化合物を、クロロカルボニルスルフェニルクロリドと反応させて、式(IIa−2’’)の化合物を得ることを含む。
一実施形態では、中間体(E)は、アミド誘導体(D)
(式中、A、B、R
1、R
4、R
5およびR
6は、上記で定義の通り)を、ローソン試薬と反応させて、上記で定義の式(E)の化合物を得ることにより、得てもよい。
一実施形態では、アミド中間体(D)は、式(A)
(式中、A、B、R
1、R
4、R
5およびR
6は、上記で定義の通り)の酸誘導体を、塩基(好ましくは、塩基はピリジン(C
5H
5N)である)の存在下で、尿素(CO(NH
2)
2と反応させて、式(D)の化合物を得ることにより、得てもよい。
本発明はまた、式(IIb)の化合物、より具体的には、式(IIb’)、(IIb’’)および(IIb’’’)
(式中A、B、R
1、R
4、R
5およびR
6は、上記で定義の通り)の化合物またはその薬学的に許容可能な互変異性体、塩もしくは溶媒和物の製造方法に関し、
前記方法は、
a)ローソン試薬の存在下、硫黄系試薬(好ましくは硫黄系試薬は八硫黄S
8である)を用いて、式(G)
(式中、A、B、R
1、R
4、R
5およびR
6は、上記で定義の通り)の化合物を環化し、上記で定義の式(IIb’)の化合物を得ることを含み;
および必要に応じて:
b1)式(IIb’)の化合物を酸化剤(好ましくは、酸化剤は、酢酸水銀Hg(OAc)
2である)と反応させて、上記で定義の式(IIb’’)の化合物を得ることができ;または
b2)式(IIb’)の化合物を、塩基(好ましくは、塩基は酢酸ナトリウム(AcONa)である)の存在下、ヒドロキシルアミンNH
2OH−HClと反応させて、上記で定義の式(IIb’’’)の化合物を得ることができる。
一実施形態では、式(IIb)の化合物の製造方法は、中間体(G)を製造する予備ステップを含んでよく、該ステップは、式(F)
(式中、A、B、R
1、R
4、R
5およびR
6は、上記で定義の通り)のエステル誘導体を、塩基(好ましくは、塩基はトリエチルアミン(Et
3N)である)の存在下、ルイス酸(好ましくは、ルイス酸はTiCl
4である)と反応させて、上記で定義の式(G)の化合物を得ることを含む。
本発明はまた、本発明の阻害剤または選択的阻害剤を含むかそれからなるかまたは本質的にそれからなる組成物にも関する。
本発明はまた、本明細書の前に記載されている阻害剤を含むかそれからなるか本質的にそれからなる組成物であって、それを必要としている対象の遊離酸素ラジカル関連疾患を治療するための組成物またはその治療に使用するための組成物に関する。
本発明は、遊離酸素ラジカル関連疾患を治療するための、またはその治療で使用するための、組成物に関し、前記組成物は、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤を含むかそれからなるか本質的にそれからなる。
本発明はまた、本発明の阻害剤または選択的阻害剤を、少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤を組み合わせて、含むかそれからなるかまたは本質的にそれからなる医薬組成物に関する。
本発明はまた、本明細書の前に記載されている阻害剤を、少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤と組み合わせて、含むかそれからなるか本質的にそれからなる医薬組成物であって、それを必要としている対象の遊離酸素ラジカル関連疾患を治療するための、またはその治療に使用するための医薬組成物に関する。
本発明はまた、遊離酸素ラジカル関連疾患を治療するための、またはその治療で使用するための、医薬組成物に関し、前記医薬組成物は、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤および少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤を含むかそれからなるか本質的にそれからなる。
好適な賦形剤としては、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液およびエタノール、グルコース、スクロース、デキストラン、マンノース、マンニトール、ソルビトール、ポリエチレングリコール(PEG)、リン酸塩および酢酸塩の溶液、ゼラチン、コラーゲン、カーボポール(登録商標)、植物油などが挙げられる。また、好適な防腐剤、安定化剤、抗酸化剤、抗菌剤および緩衝剤、例えば、BHA、BHT、クエン酸、アスコルビン酸、テトラサイクリンなどをさらに含んでもよい。
本発明の組成物中に使用し得る薬学的に許容可能な賦形剤の他の例としては、限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒトの血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸塩、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられる。
さらに、いくつかの賦形剤は、界面活性剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)、好適な担体(例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)を含有する例えば溶媒および分散媒、好適なそれらの混合物および例えば落花生油および胡麻油などの植物油など)、等張剤(例えば、糖類または塩化ナトリウムなど)、被覆剤(例えば、レシチンなど)、吸収遅延剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなど)、防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロロブタノール、チメロサールなど)、緩衝液(例えば、ホウ酸、重炭酸ナトリウムおよび重炭酸カリウム、ホウ酸ナトリウムおよびホウ酸カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなど)、等張化剤(例えば、デキストラン40、デキストラン70、デキストロース、グリセリン、塩化カリウム、プロピレングリコール、塩化ナトリウムなど)、抗酸化剤および安定化剤(例えば、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ尿素など)、非イオン性浸潤剤または清澄剤(例えば、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロキサマー282およびチロキサポールなど)、粘度調整剤(例えば、デキストラン40、デキストラン70、ゼラチン、グリセリン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ラノリン、メチルセルロース、ペトロラタム、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースなど)を含んでもよい。
薬学的に許容可能な賦形剤の他の例は、シクロデキストリン(CD)およびその誘導体である。シクロデキストリンは、有効成分の可溶化および/または安定化を改善し得る。好ましくは、シクロデキストリンはベータシクロデキストリンである。ある実施形態では、シクロデキストリンは、SBEシクロデキストリン(SBE:スルホブチルエーテル)およびHPシクロデキストリン(HP:ヒドロキシプロピル)またはこれらの誘導体から選択される。ある実施形態では、シクロデキストリンはSBEシクロデキストリン、好ましくは、SBEベータシクロデキストリンである。ある実施形態では、シクロデキストリンはHPシクロデキストリン、好ましくは、HPベータシクロデキストリンである。
本発明はまた、本発明の阻害剤または選択的阻害剤を含むかそれからなるかまたは本質的にそれからなる薬物に関する。
本発明はまた、本明細書の前に記載されている阻害剤を含むかそれからなるか本質的にそれからなる薬物であって、それを必要としている対象の遊離酸素ラジカル関連疾患を治療するための、またはその治療に使用するための薬物に関する。
本発明はまた、遊離酸素ラジカル関連疾患を治療するための、またはその治療で使用するための薬物に関し、前記薬物は、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤を含むかそれからなるか本質的にそれからなる。
本発明はまた、本発明の阻害剤を含む化粧品組成物に関する。
本発明はまた、本発明の阻害剤を含む機能性化粧品組成物に関する。
本発明の別の目的は、本発明の阻害剤を含むかそれからなるか本質的にそれからなる保全液または保護液である。
一実施形態では、保全液は、臓器、生体組織および/または生細胞の保全のためのものである。一実施形態では、前記臓器としては、限定されないが、心臓、肝臓、腎臓、肺、膵臓、腸、皮膚および角膜が挙げられる。一実施形態では、前記臓器は移植、すなわち、任意の臓器または体組織のそれの元の部位からレシピエント部位への移動のためのものである。特に、同種移植片移植手順では、元の移植片の部位は、ドナー個体中にあり、レシピエント部位は、別のレシピエント個体中である。
一実施形態では、保全液は、0.1μM〜120μMの範囲の濃度の、すなわち、約0.1μM、0.5μM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、10μM、15μM、20μM、30μM、40μM、50μM、75μM、100μMまたは120μMの濃度の本発明の阻害剤を含む。
一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物は、全身投与または局所投与される。
一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物は、経口で、注射によって、局所的に、経鼻で、頬側に、直腸内に、膣内に、気管内に、内視鏡で、経粘膜で、および経皮投与で、投与される。
一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物は、注射、好ましくは全身注射される。全身注射に適した製剤の例としては、限定されないが、液体溶液または懸濁液、注射前に液体に溶解または懸濁するのに適した固体形態が挙げられる。全身注射の例としては、限定されないが、静脈内、皮下、筋肉内、皮内および腹腔内注射ならびに灌流が挙げられる。別の実施形態では、注射の場合、本発明の組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物は無菌である。無菌医薬組成物を得るための方法としては、限定されないが、GMP合成(GMPは「優良医薬品製造基準」を表す)が挙げられる。
別の実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物は経口投与される。経口投与に適した製剤の例としては、限定されないが、固体形態、液体形態およびゲルが挙げられる。経口投与に適した固体形態の例としては、限定されないが、丸薬、錠剤、カプセル、軟ゼラチンカプセル、硬ゼラチンカプセル、カプレット、圧縮錠剤、カシェ剤、ウェーハ、糖衣丸剤、糖衣錠剤、または分散錠/または崩壊錠、粉末、経口投与前の液体中への溶解または懸濁に適した固体形態および発泡錠が挙げられる。経口投与に適した液体形態の例としては、限定されないが、溶液、懸濁液、飲用に適した溶液、エリキシル剤、密閉薬びん、頓服水剤、飲薬、シロップおよび水薬が挙げられる。
別の実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物は局所投与される。局所投与に適した製剤の例としては、限定されないが、スティック、リップスティック、ワックス、クリーム、ローション、軟膏、香膏、ゲル、グロス、日焼け止め製剤、化粧品、マスク、洗い流さない洗浄剤またはクレンザー、脱毛製剤などが挙げられる。
局所投与は、例えば、手、指または多種多様な塗布装置(ロールアップ、ロールオンもしくは他のスティック容器、チューブ容器、綿ボール、化粧用パフ、綿棒、ポンプ、ブラシ、マット、布など)を用いて、局所的効果のために本発明の組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物を目的の部位(一般に、露出された目視で観察可能な表皮の最も外側の層などのその1つまたは複数の露出面または外面)に直接に送達、投与または塗布することを特徴とする。塗布は、例えば、皮膚に塗る、置く、擦り付ける、撫で付ける、注ぐ、延ばす、および/またはマッサージすることによって、あるいはあらゆる他の好都合または好適な方法によって行ってもよい。局所投与は、本組成物の成分の対象の血流内へのあらゆる顕著な吸収を生じさせることなく(全身作用を回避するように)達成することが好ましい。
本発明の組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物を、例えば、防腐剤としての1%または2%(w/w)ベンジルアルコール、乳化蝋、グリセリン、パルミチン酸イソプロピル、乳酸、精製水およびソルビトール溶液と混合して、白色の滑らかで均質かつ不透明なクリームまたはローションを形成することができる。さらに、本組成物はポリエチレングリコール400(PEG400)を含有し得る。それらを例えば、防腐剤としての2%(w/w)ベンジルアルコール、白色ペトロラタム、乳化蝋およびテノックスII(ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、クエン酸、プロピレングリコール)と混合して軟膏を形成することができる。包帯材料の織布パッドまたはロール、例えばガーゼを本組成物の溶液、ローション、クリーム、軟膏に含浸させることができ、あるいは他のそのような形態も局所塗布のために使用することができる。
別の実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物は、組成物を含浸させて不透過性裏地に積層した、樹脂架橋剤を含むアクリル系ポリマー接着剤の1種などの経皮システムを用いて局所塗布することもできる。
一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物は、経皮パッチ、より具体的には徐放経皮パッチとして投与することができる。この経皮パッチは、例えば、接着性マトリックス、ポリマーマトリックス、リザーバーパッチ、マトリックスまたは一体型積層構造などのあらゆる従来の形態を含むことができ、一般に1つまたは複数の裏打ち層、接着剤、浸透促進剤、任意の律速膜および塗布前に接着剤を露出させるために除去される剥離ライナーを含む。ポリマーマトリックスパッチはポリマーマトリックス形成材料も含む。好適な経皮パッチは、例えば、米国特許第5,262,165号、同第5,948,433号、同第6,010,715号および同第6,071,531号にさらに詳細に記載されており、その各開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
経皮投与に適した製剤の例としては、限定されないが、軟膏、ペースト、クリーム、フィルム、香膏、例えば、経皮パッチなどのパッチ、ゲル、リポソーム形態などが挙げられる。
一実施形態では、経皮組成物は、軟膏、ペースト、クリーム、フィルム、香膏、例えば、経皮パッチなどのパッチ、ゲル、リポソーム形態などである。
本発明の一実施形態では、軟膏は油性軟膏、例えば水中油型または油中水型軟膏などの乳化軟膏または水溶性軟膏であり、好ましくは油性軟膏である。
本発明の一実施形態では、油性軟膏は、例えば、植物および動物油、植物および動物脂肪、ワックス、ワセリン(例えば白色ワセリンまたはワセリン油など)、ならびにパラフィン(例えば液体パラフィンまたはパラフィン油など)などの基剤を使用する。
本発明の一実施形態では、経皮組成物は1種または複数の賦形剤をさらに含む。好適な薬学的に許容可能な賦形剤は当業者に周知である。好適な賦形剤の例としては、限定されないが、担体、乳化剤、硬化剤、レオロジー調整剤または増粘剤、界面活性剤、皮膚軟化剤、防腐剤、湿潤剤、緩衝剤、溶媒、保湿剤および安定化剤が挙げられる。
別の実施形態では、特定の投与経路は眼内であってもよい。別の実施形態では、投与経路は、例えば、点眼薬の投与または眼を本発明の阻害剤を含む点眼液に浸す、などの局所眼投与であってもよい。
点眼液は、眼球および/または結膜への投与、結膜嚢への挿入あるいは後眼部内への投与を目的とした無菌の液体、半固体または固体製剤を意味する。本明細書で使用される場合、「後眼部」という用語は、前部硝子体膜およびその後ろの構造体(硝子体液、網膜、脈絡膜、視神経)を含む眼の後部3分の2を意味する。特に、眼科用組成物は、例えば硝子体内注射によって硝子体内に投与してもよい。眼科用組成物の例としては、限定されないが、点眼薬、洗眼液、点眼薬のための粉末および洗眼液のための粉末ならびに結膜嚢または硝子体内に注射される組成物が挙げられる。
担体の例としては、限定されないが、水、緩衝生理食塩水、石油ゼリー(ワセリン、白色軟パラフィンとしても知られている)、ペトロラタム、油(例えば、鉱油、植物油、動物油、パラフィン油、ヒマシ油またはワセリン油など)、有機および無機ワックス(例えば、微結晶性ワックス、パラフィンワックス、蜜蝋およびオゾケライトワックスなど)、天然ポリマー(例えば、キサンタンガム、ゼラチン、セルロース、コラーゲン、澱粉またはアラビアゴムなど)、合成ポリマー、アルコール、ポリオールなどが挙げられる。本発明の一実施形態では、担体は乳化剤、油相成分および水相成分を含むクリーム基剤である。
周知の軟膏またはローション基剤賦形剤の例としては、限定されないが、ワセリン、プラスチベース(商標)(ポリエチレン(平均分子量:約21000Da)および液体パラフィンを用いて調製された基剤)およびESMA−P(商標)(微結晶性ワックスから作製されている)が挙げられる。
乳化剤の例としては、限定されないが、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、カルボキシポリメチレン、ポリカルボフィル、ポリエチレングリコールおよびそれらの誘導体、単独または脂肪アルコール(例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコールおよびセトステアリルアルコールなど)と組み合わせた、例えば、ポリソルベート20またはポリソルベート80などのポリオキシエチレンおよびその誘導体、ならびにソルビタンエステル(例えば、ソルビタン脂肪酸エステルなど)が挙げられる。
油相成分の例としては、限定されないが、ワセリン(例えば、白色ワセリン、黄色ワセリンまたはワセリン油など)、パラフィン(例えば、液体パラフィンまたはパラフィン油など)、ジメチコンおよびそれらの混合物が挙げられる。
水相成分の例としては、限定されないが、水、グリセロールおよびプロピレングリコールが挙げられる。
硬化剤の例としては、限定されないが、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコールおよびセチルアルコールが挙げられる。
レオロジー調整剤または増粘剤の例としては、限定されないが、カルボマー(例えば、カーボポール(登録商標)など)およびポリオキシエチレン獣脂アミン(例えば、エトミーン(登録商標)など)が挙げられる。
界面活性剤の例としては、限定されないが、アニオン性、カチオン性、両性および非イオン性界面活性剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリル硫酸マグネシウム、ワックスまたはそれらの組み合わせなどが挙げられる。
皮膚軟化剤の例としては、限定されないが、白色または黄色ペトロラタム(白色または黄色ワセリン)、液体ペトロラタム(液体ワセリン)、パラフィンまたはアクアフォーが挙げられる。
防腐剤の例としては、限定されないが、例えば、ニパギン(ヒドロキシ安息香酸メチル)、ニパソール(ヒドロキシ安息香酸エステル)、ブチルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベンカリウム、プロピルパラベンナトリウム、パラヒドロキシ安息香酸エステル、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、安息香酸、パラベン、クロロブタノール、フェノール、チメロサール、安息香酸ナトリウムおよびベンジルアルコールなどの抗菌性防腐剤が挙げられる。
湿潤剤の例としては、限定されないが、プロピレングリコールおよびアルギン酸プロピレングリコールが挙げられる。
緩衝剤の例としては、限定されないが、水酸化ナトリウム、クエン酸および水酸化カリウムが挙げられる。
溶媒の例としては、限定されないが、水、イソプロパノール、ベンジルアルコールおよびプロピレングリコールが挙げられる。
保湿剤の例としては、限定されないが、グリセリン、鉱油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油およびワセリン、プロピレングリコール、パラフィン、ワックス(例えば、蜜蝋など)、ポリエチレングリコールまたはそれらの混合物(例えば、マクロゴール(マクロゴールは異なる分子量のポリエチレングリコールからなる混合物である)など)、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、パラヒドロキシ安息香酸エステル(パラベン)、ゲル化炭化水素、クエン酸、スクアレン、ラノリン、グリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、動物および植物脂肪、油、澱粉、トラガント、セルロース誘導体、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、酸化亜鉛およびそれらの混合物が挙げられる。
安定化剤の例としては、限定されないが、炭水化物(例えば、スクロース、ラクトースおよびトレハロースなど)、糖アルコール(例えば、マンニトールおよびソルビトールなど)、アミノ酸(例えば、ヒスチジン、グリシン、フェニルアラニンおよびアルギニンなど)が挙げられる。
本発明の一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物を、薬剤の中枢神経系への送達を容易にする送達システムと共に使用してもよい。例えば、各種血液脳関門(BBB)透過性促進剤を使用して、治療薬に対する血液脳関門の透過性を一時的かつ可逆的に高めてもよい。そのようなBBB透過性促進剤としては、限定されないが、ロイコトリエン、ブラジキニン作動薬、ヒスタミン、タイトジャンクションディスラプター(例えば、ゾヌリン、ゾット)、高浸透圧溶液(例えば、マンニトール)、細胞骨格収縮剤(cytoskeletal contracting agent)、および短鎖アルキルグリセロール(例えば、1−O−ペンチルグリセロール)が挙げられる。経口、舌下、非経口、埋込、経鼻および吸入経路により活性薬剤の中枢神経系への送達を行うことができる。いくつかの実施形態では、本発明の化合物を末梢神経系に対する影響を最小にして中枢神経系に投与し得る。
血液脳関門(BBB)は物理的障壁であり、中枢神経系(CNS)の血管とCNSそれ自体の大部分の領域との間の細胞輸送機序システムである。BBBは血液からの有害である可能性のある化学物質の進入を制限し、かつ必須栄養素の進入を可能にすることによって恒常性を維持する。しかし、BBBは障害の治療または認知、学習および記憶などの正常で、望ましい脳機能を維持または促進するための、薬剤のCNSへの送達に対する手ごわい障壁になり得る。
一実施形態では、本阻害剤、組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物は、徐放形態で投与される。別の実施形態では、本組成物、医薬組成物または薬物は、調節剤の放出を制御する送達システムを含む。
一実施形態では、本発明の阻害剤、組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物は、当業者によって決定され、各対象に個人的に適合させた用量で投与される。
本発明の阻害剤、組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物の総1日使用量は、健全な医学的判断の範囲内で担当医によって決定されることは理解されよう。どの特定の患者のための具体的な治療的有効量も、治療されている疾患および疾患の重症度、用いられる特定の組成物、対象の年齢、体重、総体的な健康、性別および食事、投与時間、投与経路、治療の持続期間、本発明の阻害剤、組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物と組み合わされるか同時に使用される薬物、および医術で周知の同様の因子などを含む種々の要因に依存するであろう。例えば、所望の治療効果を達成するのに必要なレベルよりも低いレベルで治療用化合物の投与を開始して所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることは十分に当業者の範囲内であるが、反対に、負荷用量(より迅速に定常状態血漿中濃度に到達するための方法)で開始し、その後に排出過程の効果を正確に補償するように計算した維持用量を投与することも同様に有用であり得る。
一実施形態では、治療的有効量の本発明の阻害剤、組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物は、少なくとも1日1回、1日2回、少なくとも1日3回投与される。
別の実施形態では、治療的有効量の本発明の阻害剤、組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物は、2日ごとに、3日ごとに、4日ごとに、5日ごとに、6日ごとに投与される。
別の実施形態では、治療的有効量の本発明の阻害剤、組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物は、1週間に2回、毎週、2週間ごとに、1ヶ月に1回投与される。
本発明の一実施形態では、対象に投与される阻害剤、組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物の1日量は、約1μg/日〜約100mg/日、約1μg/日〜約50mg/日、約1μg/日〜約10mg/日、約1μg/日〜約9mg/日、約1μg/日〜約8mg/日、約1μg/日〜約7mg/日、約1μg/日〜約6mg/日、約1μg/日〜約5mg/日、約1μg/日〜約4mg/日、約1μg/日〜約3mg/日、約1μg/日〜約2mg/日、約1μg/日〜約1mg/日、約1μg/日〜約100μg/日の範囲である。
本発明の一実施形態では、対象に投与される阻害剤、組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物の1日量は、約1μg/日〜約10mg/日、約5μg/日〜約10mg/日、約10μg/日〜約7.5mg/日、約10μg/日〜約5mg/日、約10μg/日〜約2.5mg/日、約10μg/日〜約2mg/日、約10μg/日〜約1mg/日、約10μg/日〜約0.75mg/日、約10μg/日〜約0.5mg/日、約10μg/日〜約0.25mg/日の範囲である。
本発明の一実施形態では、対象に投与される阻害剤、組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物の1日量は、約0.1mg/日〜約2000mg/日、約0.1mg/日〜約1500mg/日、約0.1mg/日〜約1000mg/日、約0.1mg/日〜約500mg/日、約0.1mg/日〜約200mg/日、約0.5mg/日〜約2000mg/日、約0.5mg/日〜約1500mg/日、約0.5mg/日〜約1000mg/日、約0.5mg/日〜約500mg/日、約0.5mg/日〜約200mg/日、約1mg/日〜約2000mg/日、約1mg/日〜約1500mg/日、約1mg/日〜約1000mg/日、約1mg/日〜約500mg/日、約1mg/日〜約200mg/日の範囲である。
本発明の一実施形態では、対象に投与される阻害剤、組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物の1日量は、約1μg/日、約2μg/日、約4μg/日、約6μg/日、約8μg/日、約10μg/日、約15μg/日、約20μg/日、約25μg/日、約30μg/日、約35μg/日、約40μg/日、約45μg/日、約50μg/日、約55μg/日、約60μg/日、約65μg/日、約70μg/日、約75μg/日、約80μg/日、約85μg/日、約90μg/日、約95μg/日、約100μg/日、約150μg/日、約200μg/日、約250μg/日、約300μg/日、約350μg/日、約400μg/日、約450μg/日、約500μg/日である。
本発明の一実施形態では、対象に投与される阻害剤、組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物の1日量は、約0.1mg/日、0.2mg/日、0.3mg/日、0.4mg/日、0.5mg/日、0.6mg/日、0.7mg/日、0.8mg/日、0.9mg/日、1mg/日、2mg/日、4mg/日、6mg/日、8mg/日、10mg/日、15mg/日、20mg/日、25mg/日、30mg/日、35mg/日、40mg/日、45mg/日、50mg/日、75mg/日、100mg/日、125mg/日、150mg/日、175mg/日、200mg/日、300mg/日、400mg/日、500mg/日、600mg/日、700mg/日、800mg/日、900mg/日、1000mg/日、1200mg/日、1400mg/日、1600mg/日、1800mg/日、2000mg/日である。
本発明の一実施形態では、対象に投与される阻害剤、組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物の1日量は、約0.1μg/kg/日〜約10mg/kg/日、約0.1μg/kg/日〜約5mg/kg/日、約0.1μg/kg/日〜約1mg/kg/日、約0.1μg/kg/日〜約0.9mg/kg/日、約0.1μg/kg/日〜約0.8mg/kg/日、約0.1μg/kg/日〜約0.7mg/kg/日、約0.1μg/kg/日〜約0.6mg/kg/日、約0.1μg/kg/日〜約0.5mg/kg/日、約0.1μg/kg/日〜約0.4mg/kg/日、約0.1μg/kg/日〜約0.3mg/kg/日、約0.1μg/kg/日〜約0.2mg/kg/日、約0.1μg/kg/日〜約0.1mg/kg/日、約0.1μg/kg/日〜約10μg/kg/日の範囲である。
本発明の一実施形態では、対象に投与される阻害剤、組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物の1日量は、約0.1μg/kg/日〜約1mg/kg/日、約0.5μg/kg/日〜約1mg/kg/日、約1μg/kg/日〜約0.75mg/kg/日、約1μg/kg/日〜約0.5mg/kg/日、約1μg/kg/日〜約0.25mg/kg/日、約1μg/kg/日〜約0.2mg/kg/日、約1μg/kg/日〜約0.1mg/kg/日、約1μg/kg/日〜約0.075mg/kg/日、約1μg/kg/日〜約0.05mg/kg/日、約1μg/kg/日〜約0.025mg/kg/日の範囲である。
本発明の一実施形態では、対象に投与される阻害剤、組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物の1日量は、約0.01mg/kg/日〜約20mg/kg/日、約0.01mg/kg/日〜約15mg/kg/日、約0.01mg/kg/日〜約12mg/kg/日、約0.01mg/kg/日〜約10mg/kg/日、約0.01mg/kg/日〜約9mg/kg/日、約0.01mg/kg/日〜約8mg/kg/日、約0.01mg/kg/日〜約7mg/kg/日、約0.01mg/kg/日〜約6mg/kg/日、約0.01mg/kg/日〜約5mg/kg/日、約0.01mg/kg/日〜約4mg/kg/日、約0.01mg/kg/日〜約3mg/kg/日、約0.01mg/kg/日〜約2mg/kg/日、約0.01mg/kg/日〜約1mg/kg/日の範囲である。
本発明の一実施形態では、対象に投与される阻害剤、組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物の1日量は、約0.1μg/kg/日、約0.2μg/kg/日、約0.4μg/kg/日、約0.6μg/kg/日、約0.8μg/kg/日、約1μg/kg/日、約1.5μg/kg/日、約2.0μg/kg/日、約2.5μg/kg/日、約3.0μg/kg/日、約3.5μg/kg/日、約4.0μg/kg/日、約4.5μg/kg/日、約5.0μg/kg/日、約5.5μg/kg/日、約6.0μg/kg/日、約6.5μg/kg/日、約7.0μg/kg/日、約7.5μg/kg/日、約8.0μg/kg/日、約8.5μg/kg/日、約9.0μg/kg/日、約9.5μg/kg/日、約10.0μg/kg/日、約15.0μg/kg/日、約20.0μg/kg/日、約25.0μg/kg/日、約30.0μg/kg/日、約35.0μg/kg/日、約40.0μg/kg/日、約45.0μg/kg/日、約50.0μg/kg/日である。
本発明の一実施形態では、対象に投与される阻害剤、組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物の1日量は、約0.01mg/kg/日、約0.02mg/kg/日、約0.03mg/kg/日、約0.04mg/kg/日、約0.05mg/kg/日、約0.06mg/kg/日、約0.07mg/kg/日、約0.08mg/kg/日、約0.09mg/kg/日、約0.1mg/kg/日、約0.2mg/kg/日、約0.3mg/kg/日、約0.4mg/kg/日、約0.5mg/kg/日、約0.6mg/kg/日、約0.7mg/kg/日、約0.8mg/kg/日、約0.9mg/kg/日、約1mg/kg/日、約1.5mg/kg/日、約2mg/kg/日、約2.5mg/kg/日、約3mg/kg/日、約3.5mg/kg/日、約4mg/kg/日、約4.5mg/kg/日、約5mg/kg/日、約6mg/kg/日、約7mg/kg/日、約8mg/kg/日、約9mg/kg/日、約10mg/kg/日、約12mg/kg/日、約14mg/kg/日、約16mg/kg/日、約18mg/kg/日、約20mg/kg/日である。
本発明の一実施形態では、本発明の阻害剤、組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物は、約1μg〜約100mg、約1μg〜約50mg、約1μg〜約10mg、約1μg〜約9mg、約1μg〜約8mg、約1μg〜約7mg、約1μg〜約6mg、約1μg〜約5mg、約1μg〜約4mg、約1μg〜約3mg、約1μg〜約2mg、約1μg〜約1mg、約1μg〜約100μgの量で投与される。
本発明の一実施形態では、本発明の阻害剤、組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物は、約1μg〜約10mg、約5μg〜約10mg、約10μg〜約7.5mg、約10μg〜約5mg、約10μg〜約2.5mg、約10μg〜約2mg、約10μg〜約1mg、約10μg〜約0.75mg、約10μg〜約0.5mg、約10μg〜約0.25mgの量で投与される。
別の実施形態では、本発明の阻害剤、組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物は、約0.02mg〜約2000mg、約0.02mg〜約1500mg、約0.02mg〜約1000mg、約0.02mg〜約500mg、約0.02mg〜約200mg、約0.02mg〜約100mg、約0.02mg〜約50mg、約0.02mg〜約25mg、約0.02mg〜約10mg、約0.02mg〜約5mgの量で投与される。
別の実施形態では、本発明の阻害剤、組成物、医薬組成物、薬物、化粧品組成物または機能性化粧品組成物は、約0.02mg、0.04mg、0.06mg、0.08mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mg、1mg、1.5mg、2mg、2.5mg、3mg、3.5mg、4mg、4.5mg、5mg、5.5mg、6mg、6.5mg、7mg、7.5mg、8mg、8.5mg、9mg、9.5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1200mg、1400mg、1600mg、1800mg、2000mgの量で投与される。
一実施形態では、本発明の方法は長期治療のためのものである。別の実施形態では、本発明の方法は急性治療のためのものである。
本発明の一実施形態では、対象は、遊離酸素ラジカル関連疾患であると診断されている。本発明の別の実施形態では、対象は、遊離酸素ラジカル関連疾患を発症するリスクがある。
一実施形態では、前記対象は成人、十代の若者、小児、幼児または新生児である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤を対象に投与することを含む、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することにより、遊離酸素ラジカルの産生を阻害することを必要とする対象において、それを実施する方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤を対象に投与することを含む、細胞質ゾルのROS産生を阻害することなく、遊離酸素ラジカルの産生を阻害することを必要とする対象において、それを実施する方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤の対象への投与を含む、治療および/または予防を必要とする対象の少なくとも1種の遊離酸素ラジカル関連疾患の治療および/または予防方法;またはその治療および/または予防のための方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤の対象への投与を含む、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することにより、治療および/または予防を必要とする対象の少なくとも1種の遊離酸素ラジカル関連疾患の治療および/または予防方法;またはその治療および/または予防のための方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤の対象への投与を含む、細胞質ゾルのROS産生を阻害することなく、治療および/または予防を必要とする対象の少なくとも1種の遊離酸素ラジカル関連疾患の治療および/または予防方法;またはその治療および/または予防のための方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤の対象への投与を含む、治療および/または予防を必要とする対象の遊離酸素ラジカル関連心臓血管疾患の治療および/または予防方法;またはその治療および/または予防のための方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤の対象への投与を含む、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することにより、治療および/または予防を必要とする対象の遊離酸素ラジカル関連心臓血管疾患の治療および/または予防方法;またはその治療および/または予防のための方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤の対象への投与を含む、細胞質ゾルのROS産生を阻害することなく、治療および/または予防を必要とする対象の遊離酸素ラジカル関連心臓血管疾患の治療および/または予防方法;またはその治療および/または予防のための方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤の対象への投与を含む、治療および/または予防を必要とする対象の心筋梗塞の治療および/または予防方法;またはその治療および/または予防のための方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤の対象への投与を含む、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することにより、治療および/または予防を必要とする対象の心筋梗塞の治療および/または予防方法;またはその治療および/または予防のための方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤の対象への投与を含む、細胞質ゾルのROS産生を阻害することなく、治療および/または予防を必要とする対象の心筋梗塞の治療および/または予防方法;またはその治療および/または予防のための方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤の対象への投与を含む、治療および/または予防を必要とする対象の心不全の治療および/または予防方法;またはその治療および/または予防のための方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤の対象への投与を含む、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することにより、治療および/または予防を必要とする対象の心不全の治療および/または予防方法;またはその治療および/または予防のための方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤の対象への投与を含む、細胞質ゾルのROS産生を阻害することなく、治療および/または予防を必要とする対象の心不全の治療および/または予防方法;またはその治療および/または予防のための方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤の対象への投与を含む、治療および/または予防を必要とする対象の心毒性、好ましくはアントラサイクリンの心毒性、抗癌剤の心毒性、キノロンの心毒性および/または抗ウイルス薬の心毒性、より好ましくはアントラサイクリンの心毒性の治療および/または予防方法;またはその治療および/または予防のための方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤の対象への投与を含む、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することにより、治療および/または予防を必要とする対象の心毒性、好ましくはアントラサイクリンの心毒性、抗癌剤の心毒性、キノロンの心毒性および/または抗ウイルス薬の心毒性、より好ましくはアントラサイクリンの心毒性の治療および/または予防方法;またはその治療および/または予防のための方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤の対象への投与を含む、細胞質ゾルのROS産生を阻害することなく、治療および/または予防を必要とする対象の心毒性、好ましくはアントラサイクリンの心毒性、抗癌剤の心毒性、キノロンの心毒性および/または抗ウイルス薬の心毒性、より好ましくはアントラサイクリンの心毒性の治療および/または予防方法;またはその治療および/または予防のための方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤の対象への投与を含む、治療および/または予防を必要とする対象の肺高血圧症の治療および/または予防方法;またはその治療および/または予防のための方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤の対象への投与を含む、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することにより、治療および/または予防を必要とする対象の肺高血圧症の治療および/または予防方法;またはその治療および/または予防のための方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤の対象への投与を含む、細胞質ゾルのROS産生を阻害することなく、治療および/または予防を必要とする対象の肺高血圧症の治療および/または予防方法;またはその治療および/または予防のための方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤の対象への投与を含む、治療および/または予防を必要とする対象の虚血再灌流障害の治療および/または予防方法;またはその治療および/または予防のための方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤の対象への投与を含む、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することにより、治療および/または予防を必要とする対象の虚血再灌流障害の治療および/または予防方法;またはその治療および/または予防のための方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤の対象への投与を含む、細胞質ゾルのROS産生を阻害することなく、治療および/または予防を必要とする対象の虚血再灌流障害の治療および/または予防方法;またはその治療および/または予防のための方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤の対象への投与を含む、治療および/または予防を必要とする対象の老化疾患の治療および/または予防方法;またはその治療および/または予防のための方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤の対象への投与を含む、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することにより、治療および/または予防を必要とする対象の老化疾患の治療および/または予防方法;またはその治療および/または予防のための方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤の対象への投与を含む、細胞質ゾルのROS産生を阻害することなく、治療および/または予防を必要とする対象の老化疾患の治療および/または予防方法;またはその治療および/または予防のための方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤の対象への投与を含む、インスリン分泌を増大させることを必要とする対象において、それを実施する方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤を投与することを含む、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することにより、インスリン分泌を増大させることを必要とする対象において、それを実施する方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤を投与することを含む、細胞質ゾルのROS産生を阻害することなく、インスリン分泌を増大させることを必要とする対象において、それを実施する方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤の対象への投与を含む、ニューロンを保護することを必要とする対象において、それを実施する方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤を投与することを含む、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することにより、ニューロンを保護することを必要とする対象において、それを実施する方法である。
本発明の別の目的は、有効量のミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤を投与することを含む、細胞質ゾルのROS産生を阻害することなく、ニューロンを保護することを必要とする対象において、それを実施する方法である。
本発明の別の目的は、好ましくは移植手順の前に、臓器、生体組織および/または生細胞を保存する方法であって、該方法は、前記臓器、生体組織および/または生細胞を、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤と接触させることを含む。
本発明の別の目的は、好ましくは移植手順の前に、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することにより、臓器、生体組織および/または生細胞を保存する方法であって、該方法は、前記臓器、生体組織および/または生細胞を、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤と接触させることを含む。
本発明の別の目的は、好ましくは移植手順の前に、細胞質ゾルのROS産生を阻害することなく、臓器、生体組織および/または生細胞を保存する方法であって、該方法は、前記臓器、生体組織および/または生細胞を、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤と接触させることを含む。
本発明の別の目的は、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することにより、遊離酸素ラジカルの産生を阻害することを必要とする対象においてそれを実施するための、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、細胞質ゾルのROS産生を阻害することなく、遊離酸素ラジカルの産生を阻害することを必要とする対象においてそれを実施するための、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、少なくとも1種の遊離酸素ラジカル関連疾患の治療および/または予防のための、またはその治療および/または予防に使用するための、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、少なくとも1種の遊離酸素ラジカル関連疾患の治療および/または予防のための、またはその治療および/または予防に使用するための、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、少なくとも1種の遊離酸素ラジカル関連疾患の治療および/または予防のための、またはその治療および/または予防に使用するための、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、少なくとも1種の遊離酸素ラジカル関連心臓血管疾患の治療および/または予防のための、またはその治療および/または予防に使用するための、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、少なくとも1種の遊離酸素ラジカル関連心臓血管疾患の治療および/または予防のための、またはその治療および/または予防に使用するための、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、少なくとも1種の遊離酸素ラジカル関連心臓血管疾患の治療および/または予防のための、またはその治療および/または予防に使用するための、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、心筋梗塞の治療および/または予防のための、またはその治療および/または予防に使用するための、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、心筋梗塞の治療および/または予防のための、またはその治療および/または予防に使用するための、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、心筋梗塞の治療および/または予防のための、またはその治療および/または予防に使用するための、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、心不全の治療および/または予防のための、またはその治療および/または予防に使用するための、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、心不全の治療および/または予防のための、またはその治療および/または予防に使用するための、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、心不全の治療および/または予防のための、またはその治療および/または予防に使用するための、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、心毒性、好ましくはアントラサイクリンの心毒性、抗癌剤の心毒性、キノロンの心毒性および/または抗ウイルス薬の心毒性、より好ましくはアントラサイクリンの心毒性を治療および/または予防するための、または治療および/または予防に使用するための、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、心毒性、好ましくはアントラサイクリンの心毒性、抗癌剤の心毒性、キノロンの心毒性および/または抗ウイルス薬の心毒性、より好ましくはアントラサイクリンの心毒性を治療および/または予防するための、または治療および/または予防に使用するための、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、心毒性、好ましくはアントラサイクリンの心毒性、抗癌剤の心毒性、キノロンの心毒性および/または抗ウイルス薬の心毒性、より好ましくはアントラサイクリンの心毒性を治療および/または予防するための、または治療および/または予防に使用するための、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、肺高血圧症の治療および/または予防のための、またはその治療および/または予防に使用するための、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、肺高血圧症の治療および/または予防のための、またはその治療および/または予防に使用するための、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、肺高血圧症の治療および/または予防のための、またはその治療および/または予防に使用するための、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、虚血再灌流障害の治療および/または予防のための、またはその治療および/または予防に使用するための、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、虚血再灌流障害の治療および/または予防のための、またはその治療および/または予防に使用するための、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、虚血再灌流障害の治療および/または予防のための、またはその治療および/または予防に使用するための、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、老化疾患の治療および/または予防のための、またはその治療および/または予防に使用するための、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、老化疾患の治療および/または予防のための、またはその治療および/または予防に使用するための、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、老化疾患の治療および/または予防のための、またはその治療および/または予防に使用するための、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、インスリン分泌を増大させるための、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、インスリン分泌を増大させるための、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、インスリン分泌を増大させるための、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、ニューロンを保護するための、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、ニューロンを保護するための、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、ニューロンを保護するための、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、好ましくは移植手順の前に、臓器、生体組織および/または生細胞を保存するための、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、好ましくは移植手順の前に、臓器、生体組織および/または生細胞を保存するための、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、好ましくは移植手順の前に、臓器、生体組織および/または生細胞を保存するための、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤である。
本発明の別の目的は、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することにより、遊離酸素ラジカルの産生を阻害することを必要とする対象においてそれを実施するための、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、細胞質ゾルのROS産生を阻害することなく、遊離酸素ラジカルの産生を阻害することを必要とする対象においてそれを実施するための、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、少なくとも1種の遊離酸素ラジカル関連疾患の治療および/または予防のための、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、少なくとも1種の遊離酸素ラジカル関連疾患の治療および/または予防のための、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、少なくとも1種の遊離酸素ラジカル関連疾患の治療および/または予防のための、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、少なくとも1種の遊離酸素ラジカル関連心臓血管疾患の治療および/または予防のための、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、少なくとも1種の遊離酸素ラジカル関連心臓血管疾患の治療および/または予防のための、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、少なくとも1種の遊離酸素ラジカル関連心臓血管疾患の治療および/または予防のための、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、心筋梗塞の治療および/または予防のための、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、心筋梗塞の治療および/または予防のための、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、心筋梗塞の治療および/または予防のための、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、心不全の治療および/または予防のための、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、心不全の治療および/または予防のための、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、心不全の治療および/または予防のための、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、心毒性、好ましくはアントラサイクリンの心毒性、抗癌剤の心毒性、キノロンの心毒性および/または抗ウイルス薬の心毒性、より好ましくはアントラサイクリンの心毒性を治療および/または予防するための、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、心毒性、好ましくはアントラサイクリンの心毒性、抗癌剤の心毒性、キノロンの心毒性および/または抗ウイルス薬の心毒性、より好ましくはアントラサイクリンの心毒性を治療および/または予防するための、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、心毒性、好ましくはアントラサイクリンの心毒性、抗癌剤の心毒性、キノロンの心毒性および/または抗ウイルス薬の心毒性、より好ましくはアントラサイクリンの心毒性を治療および/または予防するための、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、肺高血圧症の治療および/または予防のための、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、肺高血圧症の治療および/または予防のための、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、肺高血圧症の治療および/または予防のための、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、虚血再灌流障害の治療および/または予防のための、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、虚血再灌流障害の治療および/または予防のための、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、虚血再灌流障害の治療および/または予防のための、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、老化疾患の治療および/または予防のための、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、老化疾患の治療および/または予防のための、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、老化疾患の治療および/または予防のための、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、インスリン分泌を増大させるための、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、インスリン分泌を増大させるための、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、インスリン分泌を増大させるための、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、ニューロンを保護するための、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、ニューロンを保護するための、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、ニューロンを保護するための、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、好ましくは移植手順の前に、臓器、生体組織および/または生細胞を保存するための、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、好ましくは移植手順の前に、臓器、生体組織および/または生細胞を保存するための、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、好ましくは移植手順の前に、臓器、生体組織および/または生細胞を保存するための、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することにより、遊離酸素ラジカルの産生を阻害することを必要とする対象においてそれを実施するための薬物の製造における、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、細胞質ゾルのROS産生を阻害することなく、遊離酸素ラジカルの産生を阻害することを必要とする対象においてそれを実施するための薬物の製造における、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、少なくとも1種の遊離酸素ラジカル関連疾患の治療および/または予防のための薬物の製造における、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、少なくとも1種の遊離酸素ラジカル関連疾患の治療および/または予防のための薬物の製造における、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、少なくとも1種の遊離酸素ラジカル関連疾患の治療および/または予防のための薬物の製造における、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、少なくとも1種の遊離酸素ラジカル関連心臓血管疾患の治療および/または予防のための薬物の製造における、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、少なくとも1種の遊離酸素ラジカル関連心臓血管疾患の治療および/または予防のための薬物の製造における、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、少なくとも1種の遊離酸素ラジカル関連心臓血管疾患の治療および/または予防のための薬物の製造における、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、心筋梗塞の治療および/または予防のための薬物の製造における、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、心筋梗塞の治療および/または予防のための薬物の製造における、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、心筋梗塞の治療および/または予防のための薬物の製造における、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、心不全の治療および/または予防のための薬物の製造における、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、心不全の治療および/または予防のための薬物の製造における、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、心不全の治療および/または予防のための薬物の製造における、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、心毒性、好ましくはアントラサイクリンの心毒性、抗癌剤の心毒性、キノロンの心毒性および/または抗ウイルス薬の心毒性、より好ましくはアントラサイクリンの心毒性を治療および/または予防するための薬物の製造における、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、心毒性、好ましくはアントラサイクリンの心毒性、抗癌剤の心毒性、キノロンの心毒性および/または抗ウイルス薬の心毒性、より好ましくはアントラサイクリンの心毒性を治療および/または予防するための薬物の製造における、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、心毒性、好ましくはアントラサイクリンの心毒性、抗癌剤の心毒性、キノロンの心毒性および/または抗ウイルス薬の心毒性、より好ましくはアントラサイクリンの心毒性を治療および/または予防するための薬物の製造における、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、肺高血圧症の治療および/または予防のための薬物の製造における、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、肺高血圧症の治療および/または予防のための薬物の製造における、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、肺高血圧症の治療および/または予防のための薬物の製造における、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、虚血再灌流障害の治療および/または予防のための薬物の製造における、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、虚血再灌流障害の治療および/または予防のための薬物の製造における、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、虚血再灌流障害の治療および/または予防のための薬物の製造における、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、老化疾患の治療および/または予防のための薬物の製造における、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、老化疾患の治療および/または予防のための薬物の製造における、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、老化疾患の治療および/または予防のための薬物の製造における、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、インスリン分泌の増大のための薬物の製造における、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、インスリン分泌を増大させるための薬物の製造における、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、インスリン分泌を増大させるための薬物の製造における、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、ニューロンの保護のための薬物の製造における、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、ニューロンを保護するための薬物の製造における、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、ニューロンを保護するための薬物の製造における、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、好ましくは移植手順の前に、臓器、生体組織および/または生細胞を保存するための薬物の製造における、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、好ましくは移植手順の前に、臓器、生体組織および/または生細胞を保存するための薬物の製造における、複合体Iの部位IQでミトコンドリアに作用することによる、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
本発明の別の目的は、好ましくは移植手順の前に、臓器、生体組織および/または生細胞を保存するための薬物の製造における、細胞質ゾルのROS産生を阻害することのない、ミトコンドリアのROS産生阻害剤または選択的阻害剤の使用である。
以下の実施例により本発明をさらに例示する。
化学的実施例
一般実験手順
試薬および溶媒
全ての合成グレードの試薬および溶媒は、供給されたままで使用した。反応に使用した溶媒は乾燥し、必要に応じ最先端技術により蒸留した。いくつかの溶媒は、乾燥品として市販されており、そのままで使用した。
反応条件
乾燥条件が必要な場合には、ガラス器具をオーブン乾燥し、反応を窒素雰囲気下で実施した。室温(r.t.)は、20〜25℃を意味する。−78℃の反応温度は、固体CO2とアセトンを用いて得た。0℃の反応温度は、氷浴を用い、加熱が必要な場合は、接触温度計を備えた油浴を使用した。
反応は、TLCでモニターした。TLCは、シリカゲルおよび蛍光指示薬を塗布した、Merck,DC Kieselgel 60 F254プレートUV254プレコートアルミニウムシートを用いて実施した。使用した指示薬には、リンモリブデン酸エタノール溶液を含めた。
フラッシュクロマトグラフィー
フラッシュカラムクロマトグラフィーによる粗生成物の精製には、シリカゲルであるMN Kieselgel 60、15〜40ミクロングレード(マッハライ・ナーゲル社製)を用いた。試料をシリカ/溶媒カラムの上端に直接アプライするかドライシリカゲルスラリーとしてアプライした。
自動化フラッシュクロマトグラフィー
Teledyne Isco Combiflash Companion(登録商標)精製システムで、粗製試料を少量の適切な溶媒中に溶解し、RediSep(登録商標)プレパックカラムにアプライした。カラムをTeledyne Isco Combiflash Companion(登録商標)精製システム内に置き、溶媒勾配液プログラムを用いて自動精製を実施した。システムは、化合物がUVにより検出される自動画分収集設備と共に使用したか、または全画分を収集した。
核磁気共鳴分光法(NMR)
NMRは、400MHz(1H)および100MHz(13C)で稼働するBruker UltraShield測定器で記録した。重水素化溶媒からの残留溶媒のシフトを用いて、較正を実施した。CDCl3を溶媒として用いた場合、この溶媒の7.26(1H)および77.16(13C)のシグナルに対し、較正を実施した。分析する試料中に芳香族化合物が存在する場合、CDCl3にMe4Siを加え、0.0(1H)でスペクトルを較正した。D2Oを使った場合、4.79ppm(1H)の水のシグナルを内部標準として選定した。CD3ODの場合には、内部標準として、3.31ppm(1H)および49.0ppm(13C NMR)を選定した。(CD3)2SOの場合には、内部標準として、2.50ppm(1H)および39.5ppm(13C)を選定した。19Fの場合には、CFCl3を外部基準として使用した。化学シフトは100万分の1(ppm)の単位で報告し、結合定数をヘルツ(Hz)で示す。プロトンおよび炭素シグナルの多重度の略語は、次の通りである:s シングレット、d ダブレット、 dd ダブレットのダブレット、dt トリプレットのダブレット、ddt トリプレットのダブレットのダブレット、t トリプレット、tt トリプレットのトリプレット、q クインテット、m マルチプレット。
質量分析(MS)および液体クロマトグラフィー・タンデム型質量分析(LC−MS)
質量分析は次記を備えた、Waters 3100 Mass detector,Waters Alliance 2695で実施した:ESIまたはAPCIによる1pg感度;数秒幅の高速LCピークと完全適合するための、2,000ダルトンまで10,000Da/秒のスキャン速度;ZSpray(商標)源による双直交サンプリングイオン化;支持型可変UV(TUV)、フォトダイオードアレイ(PDA)、および蒸発光散乱(ELS)光学検出器。または、質量分析は、UPLC/MS:Xevo G2 Qtof The Xevo G2 QTof質量分析計に、UPLC(登録商標)/MSEおよびQuanTof技術を付加した装置で実施した。
融点分析
融点をSTUART SMP3測定器で測定した。
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
HPLC−DAD分析を、適切な分析カラム、Empowerソフトウェア、Waters Delta 600 Multisolvent送達システムおよびフォトダイオードアレイ検出器(Waters 2996)および/または屈折計、システム制御装置(Waters 600)を備えたWaters分析HPLCシステムで実施し、また、20μLの試料ループを有するRheodyne injector 7725iを使用した。
中間化合物(C)の合成
基本手順A。磁気攪拌機を備えた100mLの丸底フラスコに、適切な市販のアリールエタノンおよびジメチルカーボネートを加える。水素化ナトリウム(鉱物油中60%)を撹拌しながらゆっくり加えた後、全体を一晩還流する。混合物を水中に注ぎ込み、HCl(2M)で酸性化し、酢酸エチルで抽出する。有機層を水(50mL)および飽和ブライン溶液(50mL)で洗浄する。有機層をNa2SO4上で乾燥させ、減圧下で溶媒を除去する。粗製材料を、適切な溶媒を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、対応するメチル 3−オキソ−3−アリールプロパノエートを得る。
中間体7、11および13を基本アルキル化手順Aを用いて合成した。
中間体7:メチル 5−(3−メトキシ−3−オキソプロパノイル)−1H−インドール−1−カルボキシレート
アリールエタノンとしての6(1.03g、6.47mmol)、ジメチルカーボネート(12mL)および水素化ナトリウム(2.5g、64.7mmol)を用いて、基本アルキル化手順Aにより反応を行った。後処理および精製後、化合物7を得た(m=1.4g、78%)。
1H NMR(400MHz,DMSO−D
6)δ(ppm)8.30(d,J=1.4Hz,1H),7.78(dd,J=8.7,1.7Hz,1H),7.55(d,J=8.7Hz,1H),7.48(d,J=3.1Hz,1H),6.64(dd,J=3.1,0.7Hz,1H),4.23(s,2H),3.84(s,3H),3.66(s,3H).
中間体11:メチル 3−(2−ヒドロキシベンゾ[d]オキサゾール−5−イル)−3−オキソプロパノエート
アリールエタノンとしての10(1.9g、10.7mmol)、ジメチルカーボネート(24mL)および水素化ナトリウム(4.75g、118mmol)を用いて、基本アルキル化手順Aにより反応を行った。後処理および精製後、化合物11を得た(m=580mg、23%)。
1H NMR(400MHz,DMSO−D
6)δ(ppm)11.94(s,2H),7.77(dd,J=8.4,1.8Hz,2H),7.58(d,J=1.7Hz,2H),7.44(d,J=8.4Hz,2H),4.23(s,3H),3.64(s,6H).
中間体13:メチル 3−(ベンゾフラン−5−イル)−3−オキソプロパノエート
アリールエタノンとしての12(1.45g、9.06mmol)、ジメチルカーボネート(25mL)および水素化ナトリウム(2.17g、90.6mmol)を用いて、基本アルキル化手順Aにより反応を行った。後処理および精製後、化合物13を得た(m=1.58g、80%)。
1H−NMR(300MHz,CD
3OD):δ(ppm)8.35(d,J=1.8Hz,1H),7.98−8.01(m,1H),7.89(d,J=2.1Hz,1H),7.61(d,J=8.7Hz,1H),7.00−7.01(m,1H),4.17(s,2H),3.65(s,3H).
中間体9:メチル 3−(2−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−6−イル)−3−オキソプロパノエート
磁気攪拌機を備えた100mLの丸底フラスコに、水素化ナトリウム(鉱物油中60%)(1g、48mmol)、ジメチルカーボネート(4.2mL)およびテトラヒドロフラン(30mL)を加えた。テトラヒドロフラン(30mL)中の市販アリールエタノン8(1.94g、10mmol)を撹拌しながらゆっくり加え、全体を72時間還流した。混合物を水中に溶注ぎ込み、飽和塩化アンモニウム(50mL)で酸性化し、酢酸エチルで抽出した。有機層を水(50mL)で洗浄し、無水Na
2SO
4上で乾燥させた。減圧下で蒸発させた後、粗製材料を酢酸エチル中の結晶化により精製し、対応するメチル 3−オキソ−3−アリールプロパノエート 9を得た(m=1.89g、75%)。
1H NMR(400MHz,DMSO−D
6)δ(ppm)12.33(s,1H),8.24(d,J=1.7Hz,1H),7.89(dd,J=8.4,1.8Hz,1H),7.22(d,J=8.4Hz,1H),4.17(s,2H),3.65(s,3H).
化合物Cp1の合成
ステップ1.Cp1−メトキシ:5−(4−メトキシフェニル)−3H−1,2−ジチオール−3−オン。酢酸水銀(II)(4g、12.5mmol)を、市販のジチオン1(1g、4.16mmol)の、酢酸(v=25mL)およびクロロホルム(v=80mL)の混合物中の溶液に加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌した。全体を濾過し、留去した。得られた固体をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル:アセトン=90:10)に供し、黄色固体として、Cp1−メトキシ(800mg、85%収率)を得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm)7.59(d,J=8.9Hz,2H),6.98(d,J=8.9Hz,2H),6.77(s,1H),3.88(s,3H).
13C NMR(101MHz,CDCl
3)δ(ppm)194.29,170.13,162.52,128.08,125.08,116.30,114.75,55.60.
ステップ2.Cp1:5−(4−ヒドロキシフェニル)−3H−1,2−ジチオール−3−オン。メチルアリールエーテルのCp1−メトキシ(410mg、1.83mmol)およびピリジン塩酸塩(630mg、5.5mmol)の混合物を丸底フラスコに入れ、250Wで5分間のマイクロ波照射を実施した。変換が完了後、反応混合物をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=97:3)に供し、ジチオンCp1(m=70mg、10%収率)を得た。1H NMR(400MHz,アセトン−D6)δ(ppm)9.31(s,1H),7.80−7.66(m,2H),7.05−7.00(m,2H),6.98(s,1H).13C NMR(101MHz,アセトン−D6)δ(ppm)192.95,170.48,161.08,160.96,128.34,123.94,116.25,116.16,115.17.
化合物Cp2の合成
Cp2:5−(4−ヒドロキシフェニル)−3H−1,2−ジチオール−3−オンオキシム。ヒドロキシルアミン塩酸塩(140mg、2mmol)を、市販のジチオン2(224mg、1mmol)および酢酸ナトリウム(165mg、2mmol)のエタノール(v=5mL)中溶液に加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌した後、減圧下で濃縮した。得られた固体をシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン)に供し、赤色固体として、ジチオンCp2(m=51mg、32%)を得た。
1H NMR(400MHz,DMSO−D
6)δ(ppm)11.55(s,1H),10.08(s,1H),7.51(d,J=8.7Hz,2H),7.07(s,1H),6.84(d,J=8.7Hz,2H).
13C NMR(101MHz,DMSO−D
6)δ(ppm)161.99,159.83,153.46,128.36,123.71,116.30,112.77.
化合物Cp3の合成
参考文献:MacDonald & McKinnon,1967.Can.J.Chem.45(11):1225−1229
ステップ1.Cp3−メトキシ:5−(4−メトキシフェニル)−3H−1,2,4−ジチアゾール−3−チオン。二硫化炭素(18mL)中の市販イソチオシアネート3(3g、15.5mmol)および五硫化リン(6g、13.5mmol)を、丸底フラスコに入れ、65Wで15分間のマイクロ波照射に供した。変換の完了後、溶液を濾過し、減圧下で留去した。オイル状の残留物をエタノール(約30mL)で処理し、0℃に冷却した。粗製ジチオンを濾別し、(ジクロロメタン:エタノール=1:1)から再結晶化して黄色固体Cp3−メトキシ(m=220mg、7%収率)を得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm)8.12(d,J=8.9Hz,2H),7.26(s,1H),7.00(d,J=9.0Hz,3H),3.92(s,3H).
13C NMR(101MHz,DMSO−D
6)δ(ppm)185.35,160.71,126.65,119.04,110.23,51.10.
ステップ2.Cp3:5−(4−ヒドロキシフェニル)−3H−1,2,4−ジチアゾール−3−チオン。メチルアリールエーテルのCp3−メトキシ(300mg、1.25mmol)およびジクロロメタン(v=6mL)の混合物を丸底フラスコに入れ、0℃に冷却した。ジクロロメタン中の1Mの三臭化ホウ素(v=6mL、6mmol)をゆっくり加え、全体を一晩撹拌した。変換の完了後、反応混合物を水中に注ぎ込み、懸濁液を得た。固形物を濾別し、水で洗浄した。ジクロロメタン中での沈殿により、所望のフェノールCp3(m=270mg、95%)を得る。1H NMR(400MHz,DMSO−D6)δ(ppm)11.09(s,1H),8.07(d,J=8.8Hz,2H),6.97(d,J=8.8Hz,2H).13C NMR(101MHz,DMSO−D6)δ(ppm)214.93,191.66,165.12,132.15,122.22,117.20.
化合物Cp4の合成
参考文献: Brown et al.,2014.Bioorg Med Chem Lett.24(24):5829−5831
ステップ1.Cp4−メトキシ:4−(4−ヒドロキシフェニル)−3H−1,2−ジチオール−3−チオン。 メチル 2−(4−メトキシフェニル)−3−オキソプロパノエート4(3.79g、19.52mmol)、ローソン試薬(7.89g、19.52mmol)、および硫黄(313mg、9.59mmol)の250mLのトルエン中混合物を、270分間加熱還流した。反応が完了すると、混合物を濾過し、濾液を濃縮した。カラムクロマトグラフィー(石油エーテル:アセトン=10:1)による精製により、赤色固体を得た。得られた固体をエーテルで洗浄し、アセトン中で結晶化し、Cp4−メトキシ(1.56g、33%収率)を得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm)8.37(s,1H),7.50(d,J=8.8Hz,2H),6.97(d,J=8.8Hz,2H),3.84(s,3H).
13C NMR(101MHz,CDCl
3)δ(ppm)214.12,160.10,153.04,149.08,130.28,125.43,113.88,55.35.
ステップ2.Cp4:4−(4−ヒドロキシフェニル)−3H−1,2−ジチオール−3−チオン。メチルアリールエーテルのCp4−メトキシ(171mg、0.71mmol)およびピリジン塩酸塩(264mg、0.86mmol)の混合物を丸底フラスコに入れ、250Wで5分間のマイクロ波照射を実施した。変換が完了後、反応混合物をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=97:3)に供し、ジチオンCp4(m=51mg、32%)を得た。1H NMR(400MHz,アセトン−D6)δ(ppm)8.94(s,1H),8.67(s,1H),7.50(d,J=8.6Hz,1H),6.91(d,J=8.6Hz,1H).
化合物Cp5の合成
基本手順B.五硫化リン(0.7mmol)、硫黄(1mmol)、ヘキサメチルジシロキサン HMDO(3mmol)をキシレン(2.5mL)中、145℃で5分間加熱する。適切な メチル 3−オキソ−3−アリールプロパノエートを少しずつ加え、反応混合物を1時間還流し、反応を終了させる。その後、粗製チオンを濾別し、濾液を濃縮する。カラムクロマトグラフィーによる精製および結晶化により、対応するアリールジチオンを得る。
Cp5:5−(2−ヒドロキシベンゾ[d]オキサゾール−5−イル)−3H−1,2−ジチオール−3−チオン。化合物Cp5の合成は、中間体11(580mg、2.47mmol)、P4S10(658mg、1.53mmol)、硫黄(79mg、2.55mmol)、HMDO(0.76mL、7.65mmol)、およびキシレン(5mL)を用いて、基本加硫手順Bにより実施した。後処理、シリカゲル(THF)上での急速精製およびエタノールとアセトン中での結晶化後、Cp5(m=70mg)を暗赤色固体として得た。1H NMR(400MHz,DMSO−D6)δ(ppm)12.07(s,1H),7.84(s,1H),7.66(dd,J=8.4,2.0Hz,1H),7.59(d,J=1.8Hz,1H),7.45(d,J=8.4Hz,1H).13C NMR(101MHz,DMSO−D6)δ(ppm)215.73,173.92,154.61,146.65,136.06,132.07,127.48,122.31,110.94,108.69.
化合物Cp6aの合成
CP6a:5−(2−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−6−イル)−3H−1,2−ジチオール−3−チオン。中間体9(700mg、2.55mmol)、P
4S
10(680mg、1.53mmol)、硫黄(81.5mg、2.55mmol)、HMDO(1.63mL、7.65mmol)、およびキシレン(6mL)を用いて、基本加硫手順Bにより反応を行った。後処理、シリカゲル(THF)上での急速精製およびC18(アセトニトリル:水勾配液)上での逆相によるさらなる精製後、Cp6a(m=6.7mg)を赤色固体として得た。
1H NMR(400MHz,DMSO−D
6)δ(ppm)8.26(d,J=1.9Hz,1H),7.84(dd,J=8.4,1.9Hz,1H),7.77(s,1H),7.22(d,J=8.4Hz,1H).
13C NMR(101MHz,DMSO−D
6)δ(ppm)173.85,170.59,144.13,140.39,135.24,126.37,125.48,122.20,112.62.
化合物Cp8の合成
Cp8:5−(ベンゾフラン−5−イル)−3H−1,2−ジチオール−3−チオン。中間体12(1.58g、7.25mmol)、P
4S
10(1.93g、4.35mmol)、硫黄(232mg、7.25mmol)、HMDO(0.76mL、21.7mmol)、およびキシレン(15mL)を用いて、基本加硫手順Bにより反応を行った。後処理、シリカゲル(ジクロロメタン)上での急速精製およびエタノールとアセトン中での結晶化後、Cp8(m=890mg)を黄色固体として得た。H NMR(400MHz,DMSO−D
6)δ(ppm)8.26(d,J=1.7Hz,1H),8.14(d,J=2.2Hz,1H),7.86−7.81(m,3H),7.75(d,J=8.7Hz,1H),7.06(dd,J=2.2,0.9Hz,1H).
13C NMR(101MHz,DMSO−D6)δ(ppm)215.64,174.84,156.73,148.51,135.82,128.82,126.87,124.25,121.26,113.04,107.68.
化合物Cp9aの合成
Cp9a:メチル 5−(3−チオキソ−3H−1,2−ジチオール−5−イル)−1H−インドール−1−カルボキシレート。中間体7(700mg、2.55mmol)、P
4S
10(680mg、1.53mmol)、硫黄(81.5mg、2.55mmol)、HMDO(1.63mL、7.65mmol)、およびキシレン(6mL)を用いて、基本加硫手順Bにより反応を行った。後処理、シリカゲル(THF)上での急速精製およびエタノールとアセトン中での結晶化後、我々は、Cp9a(m=55mg)を暗赤色固体として得た。
1H NMR(400MHz,DMSO−D
6)δ(ppm)8.20(d,J=1.6Hz,1H),7.81(s,1H),7.69(dd,J=8.7,1.8Hz,1H),7.59(d,J=8.7Hz,1H),7.49(d,J=3.1Hz,1H),6.59(d,J=3.1Hz,1H),3.84(s,3H).
13C NMR(101MHz,DMSO−D
6)δ(ppm)176.78,138.90,134.27,132.59,128.85,122.84,120.72,111.52,102.57,34.12,33.24,31.09.
生物学的実施例
実施例1:AOLはミトコンドリアの酸化的リン酸化に影響を与えない
材料および方法
動物処置方法および倫理声明
記載されている全ての実験は、国家および欧州研究会議の実験動物の管理と使用に関する指針に準じて行った。P.Diolezは、フランス農林省の動物の健康および保護局(Service Veterinaire de la Sante et de la Protection Animale of the Ministere de l’agriculture et de la Foret,France)による動物実験を行うための有効なライセンス(03/17/1999、ライセンス番号3308010)を有している。
材料
全ての化学薬品は、スクロースおよびNADHオキシダーゼ(Merck(Darmstadt,Germany)から入手)以外は、Sigma Chemical(St.Louis,MO)から購入した試薬グレードとした。トリチオアネトール化合物(AOL、5−(4−メトキシフェニル)−3H−1,2−ジチオール−3−チオンに該当)は民間企業GMPO(Paris,France)から譲り受けた。15mMのストック溶液をDMSO中で調製し、数日間だけ0℃で暗所に保管した。
ミトコンドリアの単離
雄のウィスターラット(250〜325g;Janvier Labs,Le Genest−Saint−Isle,Franceから入手)をスタニングおよび頸椎脱臼によって屠殺し、心臓を迅速に取り出し、100mMのスクロース、180mMのKCl、50mMのTris、5mMのMgCl2、10mMのEDTAおよび0.1%(w/v)の脱脂BSA(pH7.2)を含有する低温の単離培地で洗浄した。
心臓ミトコンドリアの単離を冷室で行った。ホモジナイゼーションの前に心臓(約1.5g)をハサミで細かく刻み、プロテアーゼ(1mLの単離緩衝液当たり2mgの細菌プロテイナーゼXXIV型)を補充した5mLの同じ培地中で撹拌しながら5分間処理した。その組織懸濁液を50mlのガラス製ポッター型ホモジナイザーの中に注ぎ込み、20mLの単離緩衝液で希釈し、次いで電動テフロン乳棒を用いて3分間ホモジナイズした。ホモジネートを篩絹(Sefar Nitex)で濾過してデブリを除去し、8,000gで10分間遠心分離した。得られたペレットを5mLの単離緩衝液で濯ぎ、25mLの同じ緩衝液に再懸濁した後、8分間、低速遠心分離(400g)を行った。得られた上澄みを7,000gで15分間の遠心分離を2回行い、洗浄したミトコンドリアのペレットを得、これを150μLの単離緩衝液に静かに再懸濁した。BSAを標準液として用いて、ブラッドフォード法(Sigma、キット番号B6916)によってタンパク質濃度を測定した。ミトコンドリアを40〜50mg/mLの最終濃度で、5時間未満にわたり氷上で保持した。
ミトコンドリア呼吸
漸増用量(0〜80μMの最終濃度)のAOLの非存在または存在下でインキュベートした心臓ミトコンドリア(0.1mg/mL)の酸素消費率を、高分解能酸素濃度計(Oxygraph−2K、Oroboros Instruments,Austria)を用いて25℃で一定速度で撹拌しながらポーラログラフィーで記録した。呼吸培地は、140mMのスクロース、100mMのKCl、1mMのEGTA、20mMのMgCl2、10mMのKH2PO4、および本質的に脂肪酸を含まない1g/L(w/v)のBSA(pH7.2)で構成された。
ミトコンドリアROS/H2O2産生
心臓ミトコンドリアからのROS/H2O2産生速度を外来性西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP、EC1.11.1.7、Sigma)の存在下で無色の非蛍光指示薬アンプレックスレッドの酸化によって評価した。H2O2をアンプレックスレッドと1:1の化学量論比で反応させて、蛍光化合物レゾルフィン(励起:560nm、発光:585nm)を得る。このレゾルフィンは、一旦形成されると安定である。温度制御および撹拌機能を備えた分光蛍光光度計(SAFAS Xenius,Monaco)を用いて蛍光を連続的に測定した。単離したミトコンドリア(0.1mg/mL)を15μMのアンプレックスレッドおよび10μg/mLのHRPを補充した以前のものと同じ実験用緩衝液中でインキュベートした。グルタミン酸(5mM)/リンゴ酸(2.5mM)をコハク酸(5mM)と共に、それぞれ、複合体Iおよび複合体II基質として使用した。15μMのアトラクチロシドの存在下での非リン酸化条件、すなわちミトコンドリア膜が最大となる状態IV条件下で実験を行った。その後、ロテノン(1.5μM)、アンチマイシンA(2μM)およびミキソチアゾール(0.2μM)を順次添加して電子伝達鎖内の酸化還元中心(図2を参照)、すなわち部位IQ、IF(ロテノンにより阻害)、IIIQi(アンチマイシンAにより阻害)およびIIIQO(ミキソチアゾールにより阻害)を阻害した。最後にアッセイを、AOLを含む全ての関連化合物の存在下で既知の量のH2O2(300nMのステップ)で較正した。アンプレックスレッドアッセイそれ自体およびNAD(P)HオキシダーゼROS/H2O2産生に対するAOLの効果がない対照試験を、心臓ミトコンドリアの非存在下およびNAD(P)Hオキシダーゼ(EC1.6.3.3、5mU/mL、Sigma社)およびNADH(100μM)溶液の存在下で行った。
結果
我々は最初に、AOL化合物がラットの心臓から単離したミトコンドリアに対する酸化的リン酸化に直接には影響を与えないことを確認した(図1)。これを今では古典的であるオキシグラフ法を用いて行った。ミトコンドリアを最初に各種AOL濃度(5〜80μM)でインキュベートし、次いで呼吸基質を添加し(基質状態、黒色の曲線)、その後、ADP濃度を飽和させて最大の酸化的リン酸化率(灰色の曲線)を得、最後にADP/ATPトランスロケーターを阻害し、非リン酸化条件下でミトコンドリアの漏出率を生じさせるアトラクチロシド(ATR)を添加した(図1A)。図1B〜図1Dの他のパネルは異なる呼吸基質の組み合わせ、すなわち複合体Iに電子を与えるグルタミン酸+リンゴ酸、複合体IIに電子を与えるコハク酸(+ロテノン)、および両複合体に電子を与えるグルタミン酸+リンゴ酸+コハク酸で得られた結果を示す。クレブス回路が機能し、かつコハク酸およびNADHの両方が呼吸鎖によって酸化されるインビボ条件に最も酷似しているために、この最後の基質組み合わせを選択した。その結果は、試験した広範囲の濃度についてAOLの存在下において統計学的差異が観察されなかったことを示しており(図1)、これはミトコンドリアの酸化的リン酸化、すなわち呼吸鎖活性およびATP合成の両方ならびにミトコンドリアの内膜完全性(ATR添加後の漏出率)に対するこれらの条件下でのAOLの効果がないことを実証している。この最後の結果は、AOLが酸化的リン酸化収率に影響を与えないことを示している。まとめると、全てのこれらの結果から、ヒトの健康のためのこの薬物の長期間の使用により報告されている、AOLのどのような有害な効果も存在しないことが確認される。
実施例2:AOLはミトコンドリアによるスーパーオキシド/H2O2産生を阻害する
既に述べたように、ミトコンドリアROS産生はミトコンドリアの活性および条件に大きく依存している。我々は数多くの条件下でミトコンドリアによるROS産生に対するAOLの効果を試験したが、明確性のためにAOLの非常に特異的な効果の最も立証的な結果のみを本明細書に示すことを選択した。既に考察したように、呼吸鎖全体に電子を与える基質の組み合わせ(すなわち、グルタミン酸、リンゴ酸およびコハク酸)(図2A)の存在は、代謝が活性である細胞における最も特有のインサイツ条件である。さらに、最大のミトコンドリアROS/H2O2産生はミトコンドリアの高リン酸化条件下では生じないが電子輸送体が大きく減少する条件下、すなわち低リン酸化条件またはリン酸化が存在しない条件下で生じる。これらの条件は、ATRの存在下(ATRによるATP/ADPトランスロケーターの阻害)(図1)で満たされ、我々は飽和ADP条件下でATRを添加することによりROS産生が引き起こされることを完全に確認することができ、これは最大のリン酸化条件下での検出限界であった(結果は示さず)。これらの条件下では、ROSは呼吸鎖の異なる部位において産生される(Orr et al.,2013.Free Radic.Biol.Med.65:1047−1059;Quinlan et al.,2013.Redox Biol.1:304−312)(図2)。主要な産生部位は複合体IおよびIIIに位置しており、ここでは電子の位置エネルギーの大きな変化が生じ(Balaban et al.,2005.Cell.120(4):483−495;Goncalves et al.,2015.J.Biol.Chem.290(1):209−27)、これにより、これらの部位におけるプロトンポンピングも可能になる。
我々は、最大のROS産生条件下で呼吸鎖全体によるROS産生に対するAOLの作用を解明するために、一連の阻害剤滴定を設計した(図2E)。複合体の特異的阻害剤の非存在下ではROS産生は最大となり、これは主に部位IQにおける逆電子伝達により生じる(図2A)。複合体Iの部位IQ(キノン部位)または部位If(フラビン部位)のいずれかにより産生されるROSはミトコンドリア内膜の内側(すなわちマトリックス側)に送達されることに留意することが非常に重要である。ロテノン(IQに特異的に結合する古典的な複合体I阻害剤)の添加後、ROS産生は大きく減少し、部位IIIQOにおいてほぼ全体が生じ、残りの産生は複合体I基質の存在およびロテノンによって阻害されないNADH産生により部位Ifで生じる(図2B)。その後のアンチマイシンA(チトクロームcへの電子伝達阻害剤)の添加により、酸化されたキノンに対する還元されたキノンの比の増加が生じ、これは複合体II活性によってさらに減少し、従って部位IIIQOにおけるROS産生は付随的に増加する(図1C)。最後に、ミキソチアゾール(複合体IIIの部位IIIQOの阻害剤)の添加により複合体IIIのROS産生が消失し、残りの非常に低い産生は複合体Iのフラビン部位によるものとみなすことができるが、我々はこのための既知の阻害剤を有していない(Goncalves et al.,2015.J.Biol.Chem.290(1):209−27)。
図3は、図2に規定されている異なる条件下で測定したROS/H2O2産生に対する漸増濃度のAOL(5〜80μM)の存在の効果を示す。この図に示されている結果から、AOLは阻害剤の非存在下で測定したROS産生に対してのみ約80%の影響を与えるが、他の条件下で測定したROS/H2O2に対するこの範囲のAOL濃度について統計学的差異は観察されなかったことが明らかである。図2から分かるように、この特定の条件(ATRのみが存在)は、我々のアッセイにおいてROSが複合体I(部位IQ)によって産生される唯一の条件である。ロテノンをこのアッセイに添加した場合、ROS/H2O2産生は、どの部位が関与したにせよ、また高濃度の場合であってもAOLに対して感受性がないように思われる。ミトコンドリアROS産生のいくつかの部位に対する効果の明らかな欠如は驚くべきものであるだけでなく、ミトコンドリアに対するAOLの真の作用機序に関する興味深い疑問を呈するものでもある。実際には、これらの結果は過去の論文に記載されて、その治療的使用のための特許の基盤となるAOLの作用モードの基本的な仮説を否定するものである。これらの結果はAOLがラジカル捕捉剤ではないことを実質的に実証しており、もしAOLがラジカル捕捉剤であれば、その作用はROSの由来とは無関係になるであろう。しかし、AOLは明らかに複合体Iの部位IQでのROS産生、さらには、その部位のみでROS産生を大きく減少させることから、我々はAOLがこの部位におけるROSの形成を特異的に阻害するという証拠を有する。
その機序はまだ調査中であるが、AOL化合物が特異的にミトコンドリアの複合体Iを妨害し、他の部位からのスーパーオキシド産生または酸化的リン酸化に対して影響を与えることなく複合体Iのユビキノン結合部位(部位IQ)からのスーパーオキシド産生を選択的に阻害するという証拠が本明細書に示されている。我々の知る限りでは、最近になって文献に記載されたばかりの匹敵する特性を有する唯一の1種の化合物、すなわちN−シクロヘキシル−4−(4−ニトロフェノキシ)ベンゼンスルホンアミドが存在する(Orr et al.,2013.Free Radic.Biol.Med.65:1047−1059)。AOL同様に、この化合物は呼吸鎖の成分としての複合体Iの活性および酸化的リン酸化を変化させない。
実際にアンプレックスレッドを蛍光レゾルフィンに酸化することによりH2O2の出現を測定する、ミトコンドリアによるROS/H2O2の測定のために利用されるペルオキシダーゼ−アンプレックスレッドシステムを用いて、AOLの特異性をさらにインビトロで試験した(図4を参照)。ミトコンドリアの非存在下で、代わりにH2O2産生系を測定システムに追加して、この系に対するAOLの効果を試験することができた。添加されたNAD(P)Hの存在下でH2O2を産生する市販のNAD(P)Hオキシダーゼを用い、アンプレックスレッドのレゾルフィンへの還元を測定することにより、これを行った(図4)。我々は、これらの条件下では蛍光のどのような阻害も観察しなかったが、これはNAD(P)Hオキシダーゼまたはペルオキシダーゼ活性に対するAOLのいかなる効果をも否定するものである(結果は示さず)。これらの結果から、AOLは測定システムを妨害することもH2O2と直接相互作用することもないことが確認される。興味深いことに、これらの結果は、AOLがNADP(H)オキシダーゼによるROS/H2O2産生を阻害せず、また、NADP(H)オキシダーゼが、細胞における(唯一ではないにしても)1つの主要な非ミトコンドリアROS/H2O2産生物質であることも実証している。図4のスキームは、ミトコンドリアによるROS/H2O2産生およびNAD(P)Hオキシダーゼに対するAOLの作用モードに関する異なる情報を要約しており、本明細書に実証されている非常に高い特異性を強調している。これらの結果はラジカル捕捉剤としてのAOLの推定上の効果に関する過去の断定と顕著に対照をなすものである。
ラットの心臓から単離したミトコンドリアについて試験した場合には、AOLはミトコンドリアROS/H2O2産生を有効に減少させる(単離したミトコンドリアにおいては、H2O2はミトコンドリアスーパーオキシドジスムターゼによるROSの還元により産生される)。しかし、本明細書に示されている結果により、AOLが単純な抗酸化剤またはラジカル捕捉剤として機能しないことが明確に実証されている。抗酸化剤は一般的なROS/H2O2捕捉剤であるが、AOLは複合体Iの部位IQによるROSの形成に対して完全な選択性を示し、これはAOLがスーパーオキシドラジカルと単純に相互作用しないが、複合体Iにおけるそれらの形成を特異的に防止することを実証している。従って、その点でAOLは最新クラスの酸化ストレス保護剤のメンバーであるように見え、そのたった1つのメンバーはごく最近になって報告されたばかりである(Orr et al.,2013.Free Radic.Biol.Med.65:1047−1059)。抗酸化剤は一般に電子伝達を直接妨害せず、産生の下流でROSおよび/またはH2O2を捕捉し、従ってROSの効果を完全に抑制することはできない(Orr et al.,2013.Free Radic.Biol.Med.65:1047−1059)が、AOLはROS形成を防止することにより異なって作用し、従って、ミトコンドリアをそれ自体のROSから保護するために、より活性であり得る。
本明細書に示されているデータはさらに踏み込んでAOLがミトコンドリア呼吸鎖の複合体Iの部位IQにおけるROS形成の特異的阻害剤であることを実証している。しかし、さらなる実験はAOLが他のミトコンドリア部位に対して完全に影響を与えないことを 確認することを求められるが、これは上記結論を妨げるものではない。我々は、AOLが細胞質ゾルにおける酸素ラジカル形成に影響を与えることなくミトコンドリアとのみ相互作用することができ、従って細胞内シグナル伝達に影響を与えないといういくつかの証拠も本明細書に示す。
ロテノンまたは神経毒MPP+による複合体I活性の阻害はげっ歯類およびヒトの両方におけるパーキンソニズムに関連づけられおり、これは複合体Iの機能障害、ROS産生および神経変性間の関連性を示唆している(Langston et al.,1983.Science.219(4587):979−980;Betarbet et al.,2000.Nat.Neurosci.3(12):1301−1306)。対照的に、比較分析から、部位IQからの最大のスーパーオキシド/H2O2産生と多様な脊椎動物種全体における最大寿命との反比例関係が分かっている(但し、部位IFについては、この限りではない)(Lambert et al.,2007.Aging Cell.6(5):607−618;Lambert et al.,2010.Aging Cell.9(1):78−91)。従って、部位IQまたは部位IFからのスーパーオキシド/H2O2産生の選択的調節剤により、正常および病理学的プロセスにおけるミトコンドリアROS産生の推定上の役割を探るための特有の機会が得られる(Orr et al.,2013.Free Radic.Biol.Med.65:1047−1059)。議論の余地があるにしても、AOLによって影響を受けない部位IIIQが低酸素状態中に細胞のシグナル伝達において重要な役割を担うといういくつかの推測もある。
結論として、AOL特性は細胞におけるROS/H2O2産生の特異的調節剤の探索における大きなブレークスルーであり得るように見える。これは研究における現在の重要な問題であり、AOLはヒトの使用のために既に認可されているため、新しく発見される分子に対して非常に大きな利点を有している。
−AOLはROS産生の上流で作用するため古典的な抗酸化剤よりも高い保護を保証する;
−AOLはミトコンドリアROS産生に対して特異的に作用する;
−AOLは数多くの疾患、特に心疾患にとって非常に重要なミトコンドリアの保護を保証する;
−AOLは細胞シグナル伝達を妨げない;
−AOLは、主要なミトコンドリア部位で、パーキンソン病および心細動などの重要な疾患に関与し得る複合体Iの部位IQに特異的に作用する。
故に、AOLはミトコンドリア内部でのROS産生を特異的に防止する新しいクラスの「保護剤」の最初のメンバーの代表となり得、従って各種酸化ストレス中にミトコンドリアの保護のために使用し得、従って非常に重要な細胞のROSシグナル伝達に対して非常に少ない副作用で疾患を防止し得る。
実施例3:心臓血管疾患:糖尿病におけるAOLの効果
マウス膵島におけるグルコース刺激性インスリン分泌(GSIS)に対する化合物AOLの効果
この研究の目的は、マウスから単離した膵島におけるグルコース刺激性インスリン分泌(GSIS)を調節する化合物AOLの能力を調査することであった。
材料および方法
実験は欧州連合勧告(2010/63/EU)に厳密に遵守して行い、フランス農業水産省(認可番号3309004)およびボルドー大学の倫理委員会によって認可された。使用する動物の苦痛および数を少なくするために最大の努力を行った。
3種類の独立した実験を行い、各実験のために2匹のマウスを屠殺し、以下にさらに記載する手順に従って膵島を単離した。
コラゲナーゼ消化法を用いて膵島を単離した。手短に説明すると、膵臓を0.33mg/mLのコラゲナーゼ(Sigma−Aldrich)、5.6mMのグルコースおよび1%のウシ血清アルブミン(pH7.35)を含有するハンクス液で膨張させ、取り出して、37℃で6〜9分間維持した。組織の消化および3回の連続洗浄による外分泌物の除去後に、双眼拡大鏡下で膵島を手で回収した。膵島は11mMのグルコース(Invitrogen,CA,USA)を含有し、2mMのグルタミン、200IU/mLのペニシリン、200μg/mLのストレプトマイシン、およびチャコールデキストラン処理した8%のウシ胎仔血清(Invitrogen)を補充したRPMI−1640培地で20〜24時間培養することにより消化から回復させた。
各静的GSIS実験のために、2匹のマウスからの膵島を最初に95%のO
2:5%のCO
2の混合物(pH7.4)で平衡化した3mLのクレブス−重炭酸塩緩衝液(14mMのNaCl、0.45mMのKCl、0.25mMのCaCl
2、0.1mMのMgCl
2、2mMのHEPESおよび3mMのグルコース)中、37℃で2時間インキュベートした。次いで、5種のサイズを一致させた膵島からなる群を、3mMのグルコース(Glc)および11mMのグルコース+ビークル(クレブス−重炭酸塩緩衝液中の0.4%のDMSO)または11mMのグルコース+希釈試験薬物(ビークル中の10μMまたは20μMのAOL)刺激のうちのいずれか1つを含む0.5mLの新しい緩衝液を含む24ウェルプレートウェルに移し、さらに1時間インキュベートした。各実験条件のために6つの異なるウェルを使用した。インキュベーションの終わりに、ウシのアルブミンを1%の最終濃度になるまで各ウェルに添加し、プレートを4℃で15分間放置してインスリン分泌を止めた。次に、培地を回収し、製造業者の説明書に従って、ELISA(Mercodia,Uppsala,Swedenのキット)によるインスリン含有量のその後の測定のために−20℃で貯蔵した。各ウェルにおけるインスリン分泌を1時間のインキュベーションごとに1つの膵島当たりのインスリン(ng)として計算し、次いで11mMのグルコースビークル群中のインスリン分泌(これを100%とみなした)のパーセンテージとして表した。
実験群の説明を表1に示す。
結果
3種類の実験のそれぞれで得られた個々のインスリン分泌値を合わせて平均した。これらを11mMのグルコースビークル群に対して正規化したインスリン分泌の相対的割合として表す(図5)。
合わせたデータ分析からAOLが10μMおよび20μMの両方においてGSISを増加させたことが分かり、これは11mMのグルコースビークル群と比較した場合に同様の効力を示し(一元配置分散分析、ボンフェローニの事後検定)、そのGSIS増加は約65〜75%の範囲であった。統計分析については表2を参照されたい。
結論
この調査は、試験した用量(10μMおよび20μM)のAOLがGSISを増加させ、マウスから単離した膵島におけるインビトロでのインスリン分泌を有意に刺激することを実証している。
従って、これらの調査結果は、AOLが、1型糖尿病、2型糖尿病およびMODY(若年発症成人型糖尿病)などの他のタイプの糖尿病を含む、糖尿病などの、インスリン分泌が不十分な病的状態において特に有用であり得ることを示唆している。
食餌誘発性肥満マウスにおける食餌摂取量、体重およびグルコース代謝に対するAOLによる長期治療の効果
材料および方法
この研究の目的は、高脂肪食(HFD)を与えられた食餌誘発性肥満(DIO)マウスにおいて毎日の腹腔内(ip)投与によって最長5週間にわたって5mg/kgおよび10mg/kgの用量で毎日投与した化合物AOLが食餌摂取量、体重、脂肪症およびグルコース代謝を変化させるか否かを判定することであった。
薬理学的研究を開始する前の12週間にわたり、マウスにHFD(脂肪、主としてラードからカロリーの60%)を自由に摂取させた。動物に腹腔内(ip)投与によってAOLまたはそのビークルを与え、この研究期間にわたってHFDで維持した。食餌摂取量および体重を毎日測定し、最長で連続3週間記録した。
異なる実験群におけるマウスの適切な振り分けのために、薬理学的研究の開始前に、我々は、それらの体組成をEcho MRI 900(EchoMedical Systems,Houston,Texas,USA)を用いてインビボで評価した(Cardinal et al.,2014.Mol.Metab.3(7):705−16;Cardinal et al.,2015.Endocrinology.156(2):411−8も参照)。毎日の食餌摂取量および体重測定値を天秤(モデルTP1502、Denver Instruments)を用いて得た。
30匹の7週齢の雄のC57/Bl6Jマウスが2016年2月25日に実験室に到着し、マウスを実験飼育室に1週間順応させた後、1回目のインビボ体組成分析(Echo MRI 900,EchoMRI Systems)に供した。この1回目のMRI分析後に、動物に12週間の期間にわたって高脂肪食(HFD)を自由に与えた。その後、それらのマウスを2回目のMRI分析に供し、同等の体重および体組成の3つの実験群に振り分けた。
薬理学的治療を開始すると(1日目)、自身のホームケージに収容されている動物の食餌摂取量(FI)および体重(BW)を暗期前に毎日測定した。こぼれた餌を毎日確認した。最初の事前に測定した量からホッパーに残っている餌を差し引いて餌の消費量を計算した。連続3週間にわたってFIおよびBWを測定した。その後に、体組成(脂肪量および除脂肪量の変化)に対する治療の潜在的効果を観察するために動物を3回目のMRI分析に供し、続いて、ブドウ糖負荷試験(GTT)およびインスリン負荷試験(ITT)に供した。屠殺するまで全部で5週間の期間にわたり、マウスにAOLまたはそのビークルの毎日のip投与を行った。
核磁気共鳴画像全身組成分析装置(Echo MRI 900;EchoMedical Systems)を使用して覚醒下マウスの体脂肪および除脂肪量を繰り返し評価した。
GTTおよびITTを定常的に使用してそれぞれグルコース負荷およびインスリン負荷中にグルコース代謝の動的調節を評価した。それらによりグルコース不耐性の存在およびホルモンインスリンの作用に対する起こり得る抵抗性に関する情報が得られる。
動物にGTTのために1.5g/kgのD−グルコース(Sigma−Aldrich)またはITTのために0.5U/kgのインスリン(Humulin,Lilly,France)をip注射した。GTTおよびITTのために動物を一晩絶食させた。これらの試験を翌朝行った。血液試料を尾静脈から異なる時点で(グルコースまたはインスリンのip投与から0、15、30、60、90および120分後に)採取し、グルコーススティック(OneTouch Vita,Lifescan France,Issy les Moulineaux,France)を用いてグルコース濃度を測定した。
屠殺時に血液試料を採取し、グルコーススティックを用いて血糖を迅速に評価し、次いで血液試料を3000rpmで15分間遠心分離した。得られた血漿をその後のインスリン測定のために−80℃で貯蔵し、製造業者の説明書に従ってELISAを実施し(Mercodia,Uppsala,Swedenのキット)、インスリン測定を行った。
インスリン抵抗性の存在に関する情報を与えるHOMA−IR指数を、式[(グルコース(mmol/L)xインスリン(mU/L)]/22.5を用いて計算した。
GraphPad Prismソフトウェア(San Diego,CA,USA)を用いて統計分析を行った。二元配置分散分析の反復測定を行って、食餌摂取量、体重、GTTおよびITTに対する治療因子、時間因子およびそれらの相互作用の効果を分析した。一元配置分散分析を行って、累積食餌摂取量、体組成、GTTおよびITTのAUCならびに屠殺時の循環グルコース、インスリンおよびHOMA−IRに対する治療因子の効果を比較した。分散分析の結果が有意である場合(p<0.05)、チューキー事後検定を行って群間での適切な多重比較が可能となった。データは平均±SEMとして表されている。グラフはGraphPad Prismソフトウェアを用いて作成した。
結果
この治療は、体重またはAOLの1回目の投与前に体重を測定した1日目から計算した体重の変化率(%)に対して有意な効果を有していなかった。
AOLの長期投与は、3週間後に脂肪量を減少させる傾向があった(p=0.13、図6)が除脂肪量に対しては全く効果を有していなかった(図7)。平均±SEM値は図6および図7に示されており、統計分析はそれぞれ表3および表4に示されている。
10mg/kgの用量のAOLはITT中に循環グルコースレベルに対するインスリンの作用を有意に鈍らせ(図8)、これはインスリン抵抗性の存在を示唆している。従って、治療効果はAUCを分析する際にも認められ(AUC veh:12812.50±750.35、AUC(5mg/kgのAOL):15006.56±1139.69、AUC(10mg/kgのAOL):18168.33±1562.90、一元配置分散分析F(2,23)=5.186、p=0.0138)、10mg/kgのAOL群はビークル群よりも有意に高いAUCを有していた(チューキー事後検定、p=0.0107)。平均±SEM値は図8に示されており、統計分析は表5に示されている。
治療の5週間後の屠殺時に2時間絶食させたマウスで血糖値を測定した。
AOLは血糖値を減少させる傾向があり(図9)、統計分析は表6に示されている。
結論
食餌誘発性肥満動物において、AOLの長期毎日投与はDIOマウスの体重および食餌摂取量を減少させる傾向があった(データは示さず)。従って、これは脂肪量および基礎血糖値を減少させる傾向と関連していた。
全体として、これらのデータはAOLが食餌性肥満症モデルにおいていくつかの有益な効果を有し得ることを示唆している。
実施例4:神経疾患:パーキンソン病におけるAOLの効果
この研究では、パーキンソン病の亜慢性1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)マウスモデルにおける黒質(SN)中のチロシンヒドロキシラーゼ(TH)陽性ニューロンの数を数えることにより、AOLの神経保護効果の可能性を評価した。マウスをAOL(5mg/kg、i.p.)またはビークルで連続11日間治療した。MPTP(20mg/kg、i.p.)または生理食塩水を4〜8日目の治療日に投与した。治療薬の最終投与から12日目に全てのマウスを屠殺した。
C57/bl6マウスにおける亜慢性MPTP投与により黒質線条体のドーパミン作動性ニューロンの変性が生じ、これによりSN中のTH陽性ニューロン数の減少(今回は39%の減少)が生じる。
材料および方法
ビークル条件では、供試品を生理食塩水中の0.5%のDMSO/0.95%のTween20に溶解し、AOLを5mg/kgの用量で腹腔内に(i.p.)投与した。投与体積は10mL/kgであった。
体重22〜28gの雄のC57bl/6マウス(Janvier)を12時間の明暗サイクル下で餌および水を自由に与えながら温度制御された部屋に収容した。暫定的に、1群当たりn=10匹の最終数を達成するために、1群当たりn=12匹を使用して実験中に生じ得る減少を考慮した。黒質においてドーパミン作動性ニューロンの神経変性を生じさせるために、マウスをMPTP塩酸塩で処理した(20mg/kgを連続5日間にわたって1日1回のi.p.投与)。
マウスを最後の投与後に頸椎脱臼によって人道的に安楽死させた。
脳の尾側半分(黒質を含む)をパラホルムアルデヒド(0.1Mのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.4中の4%)中に5日間置き、その後、凍結保護のために20%のスクロース(0.1MのPBS中の20%)に移した。その後、その組織を低温イソペンタン(−50℃±2℃)中で凍結させた。
線条体を切開して別々にし、秤量して、ドライアイス(−70℃±10℃)中で別々に急速凍結させた。組織試料をドーパミンおよびその代謝産物の任意のHPLC分析のために−70℃(±10℃)で貯蔵した。この選択肢を採用しない場合、線条体は破壊される。
中脳全体の冠状連続切片を50μmの間隔でクリオスタットを用いて切断した。切片を凍結保護溶液を含むウェルプレートの中に浮動状態で採取し、次いでこれをTH免疫組織化学処理の日まで−20℃で貯蔵した。
TH免疫組織化学を4番目の切片ごとに以下のように行った。組織切片を−20℃の冷凍庫から取り出し、放置して室温に調節し、次いでPBS溶液で洗い流した。内因性ペルオキシダーゼを0.3%のH2O2を含むPBS中で10分間インキュベートすることによって抑制した。その後、切片をPBSで洗浄し、非特異的抗原部位の遮断のために、4%の正常なウマ血清(NHS)および0.3%のTritonX−100含有PBS中で30分間インキュベートした。次いで、切片を1/10,000希釈の抗体希釈物+チロシンヒドロキシラーゼ(TH)のための一次抗体(抗TH親和性単離抗体、Sigma T8700)中、室温で一晩インキュベートした。その後、切片をPBSで完全に洗い流し、ImmPRESS Igペルオキシダーゼポリマー検出試薬(Vector MP7401)中で30分間インキュベートした。この後に、切片をPBSで完全に洗浄した。その後、免疫学的染色を3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)/Tris/H2O2キット(Vector SK4100)で顕色させた。1分後、何回かのPBS洗浄により顕色を停止した。切片をマウントして0.1%クレシルバイオレットで対比染色した。
不偏立体解析を使用してTH免疫陽性(TH+)ニューロンの数を推定した(Mercator,Explora Nova,La Rochelle,France)。異なるTH+ニューロンの群のサイズおよび形状を調べてSNの境界を決定した。体積を式:V=ΣS td(式中、ΣSは表面積の合計であり、tは平均切片厚であり、dは測定する2つの連続する切片間の切片数である)を用いて計算した。4切片ごとに1つを使用して、系統抽出法を用いて光学的解剖器具を配置した。解剖器具(50μmの長さ、40μmの幅)を150μm(x)および120μm(y)だけ互いに離した。式:N=V(SN)(ΣQ−/ΣV(dis))(式中、Nは細胞数の推定値であり、VはSNの体積であり、ΣQ−は解剖器具で数えた細胞数であり、ΣV(dis)は全ての解剖器具の総体積である)を使用してTH+ニューロンの数を推定した。次いで、各群についてニューロンの平均推定数およびSEMを計算した。
全ての統計分析をGraphPad Prismバージョン7を用いて行った。全てのデータは平均±平均値の標準誤差(SEM)として示されている。AOLの効果は一元配置分散分析、次いでダネットの多重比較事後分析を用いて分析した。0.05未満のP値を有意とみなした。
結果
SN中のTH+細胞数に対する治療の有意な効果が認められた(F2,29=10.94、p<0.001、図10)。SN中のTH+細胞数はビークルで処理動物と比較してMPTP処理動物において39%減少した(p<0.001)。AOLの投与後に、SN中のTH+細胞数はビークルと比較してMPTP処理マウスにおいて44%増加した(p<0.01)。
結論
5mg/kgの用量における連続11日間のAOL治療は、SN中のTH+細胞のMPTPに誘発される減少を防止するためにビークルと比較して有意な神経保護効果があり、AOLの投与によりSN中の44%超の細胞生存が得られる。
これらのデータは、AOL治療がMPTP中毒から黒質中のドーパミン作動性ニューロンを保護できることを示唆している。
実施例5:心臓血管疾患:虚血再灌流障害におけるAOLの効果
本研究は、全虚血および再灌流後に生じる損傷からラットの灌流心臓を保護するAOLの能力を評価することを目的とする。
収縮性および組織生存能に対する30分間の全虚血およびその後の120分間の再灌流の結果(図11)を、10μMのAOLで予め治療したか未治療(対照ビークル)の単離ラットの灌流心臓で調べた。
材料および方法
全ての手順は、英国動物(科学的処置)法1986および米国国立衛生研究所によって発行された実験動物の管理と使用に関する指針(NIH刊行物番号85−23、1996年改訂)に準拠した。雄のウィスターラット(250〜300g)を3%イソフルランで麻酔し、ヘパリン処理してペントバルビタール(130mg/kg)の致死的なIP注射によって安楽死させた。心臓(約0.95gの生体重)を迅速に採取して、37℃で95%O2/5%CO2を通気した118mmol/LのNaCl、25mmol/LのNaHCO3、4.8mmol/LのKCl、1.2mmol/LのKH2PO4、1.2mmol/LのMgSO4、11mmol/Lのグルコースおよび1.8mmol/LのCaCl2を含有する氷冷クレブス−ヘンゼライト緩衝液(pH7.4)中に入れた。ランゲンドルフ心臓灌流を行い(Garlid et al.,2006.Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.291(1):H152−60)、左心室に配置し、圧力変換器に接続したバルーンを用いて、心筋仕事量二重積(心拍数x収縮期血圧)(RPP)を連続測定して収縮性を評価した。心臓を一定流量モード(12mL/分)で灌流した。10分間の安定化およびその後のビークル(対照)または10μMのAOL溶液による10分間の治療後に、心臓を37℃の灌流緩衝液に浸漬しながら灌流の流れを30分間停止することで全正常温虚血(global normothermic ischemia)を誘発させた。再灌流期間の終了時に心臓を染色して梗塞サイズを評価するか、液体窒素で冷却したトングを用いて凍結クランプした。後者の場合、心臓を液体窒素下で粉砕してさらなる分析のために−80℃で貯蔵した。
再灌流期間の終了時に、心臓を塩化トリフェニルテトラゾリウム(TTC)で染色した。すなわち、心臓において1%の最終濃度を得るために、心臓を12%(w/v)のTTC溶液を用いて、13mL/分で7分間灌流した。その後、心臓をカニューレから外し、37℃でさらに4分間インキュベートした後、長手方向軸に直角に6枚の切片を切り出した。次いで、これらの切片を4℃の4%(w/v)のホルマリン溶液で一晩処理し、秤量した後、各切片の両側を写真撮影した。各側の壊死およびリスク部分の面積を面積測定(AlphaEase v5.5)により各写真上で決定し、心臓全体を虚血に供したため、梗塞面積は心臓の総断面積のパーセンテージとして表した。
6種類の独立した製剤からのデータは平均±SEMとして表されている。各群の数nは20匹未満であり、当該分布を非正規とみなしたため、ノンパラメトリックマンホイットニー検定(SPSS statistics 17.0)を行って2つの群を比較した。結果はP値が0.05未満であれば統計的に有意であるとみなした。
結果
図11は、虚血後の再灌流の重要な段階中のRPP(本明細書では心収縮性の代わりとみなした)の変化を示す。明らかにAOLは収縮性を改善し、AOLで治療した対照心臓と比較して同一の変化の後で、再灌流の2時間後、対照心臓よりも約3倍高い収縮性の改善を示した。この時点で、組織生存能を評価するために、心臓をTTC染色するように準備した。AOL心臓のより高い収縮活動をTTC染色で確認し、治療した心臓および未治療の心臓の切片の写真(データは示さず)はAOLが心臓組織の重要な保護を誘発したことを明確に示す。この保護をより徹底的に分析し、その結果は図12に示されている。梗塞面積(損傷した組織)は、AOLで治療した、および未治療の心臓の平均値と共に各独立した実験の総表面のパーセンテージとして表されている。結果から、AOLが心臓組織を虚血/再灌流損傷から極めて有意に保護することが明らかである。実際には、約50%の梗塞組織がAOLによる前治療により救済された(図12)。
結論
これらの結果は、エクスビボ(生体器官)条件下では、高確率で複合体IのレベルにおけるミトコンドリアROS産生阻害剤としてのAOLの役割を拡張する。
それらは心臓だけでなく虚血にさらされるあらゆる組織における虚血/再灌流損傷に対する組織保護のためのAOLの治療的利益も証明している。
実施例6:心臓血管疾患:肺高血圧症におけるAOLの効果
本研究は、肺血管系の生理機能におけるミトコンドリアの役割を調査し、肺高血圧症の新しい代替治療を提供することを目的とする。この疾患は、肺血管抵抗の上昇、右心室肥大、右心不全および最終的に死に繋がる肺の動脈圧の上昇および肺動脈(PA)のリモデリングを特徴とする。
肺高血圧症は5つの群に分けることができ、そのうち群1は肺動脈高血圧症に相当する。群3には、肺疾患(慢性閉塞性肺疾患など)および/または肺胞の低酸素血症(alveolar hypoxemia)に起因する肺高血圧症を含む。
AOLの効果に関する問題を扱うために、群3および群1の肺高血圧症をそれぞれ有する、病態生理学的特性を共有する2種類の異なるラットモデル、すなわち低酸素症モデルおよびモノクロタリン誘発モデルを使用した。
材料および方法
雄のウィスターラット(300〜400g)を3つの群に分けて4週間後に使用した。
・第1の群(対照または正常酸素圧ラット−Nラット)を周囲空気室に収容した。
・第2の群(慢性低酸素症ラット−CHラット)を低圧室(50kPa)において慢性低酸素に3週間曝露した。
・第3の群(MCTラット)に60mg/kgの単一用量のモノクロタリンを腹腔内注射した。MCT(Sigma,St Quentin Fallavier,France)を等体積のHCl(1M)およびNaOH(1M)に溶解した。
各群において、何匹かの動物をAOL(Sulfarlem,EG Labo Eurogenerics、餌と混合した粉砕錠剤、自由に摂取)で治療し、何匹かの他の動物は未治療とした。食べた餌の重量を毎日測定して投与したAOL用量を推定した。このようにして、第2および第3の群では、3週間の実験中に10mg/kg/日を投与した。
各条件で、7〜10匹のラットを使用した。全ての動物の世話および実験手順は、欧州実験動物学会連合(FELASA:Federation of European Laboratory Animal Science Association)の勧告に準拠しており、地域倫理委員会(アキテーヌ地域倫理委員会(Comite d’ethique regional d’Aquitaine−参照番号50110016−A)によって認可された。
平均肺動脈圧(mPAP)および右心室肥大の両方を測定して肺高血圧症を評価した。PAPを測定するために、N、CHおよびMCTラットをペントバルビタールナトリウム(Centravet)の腹腔内注射(60mg/kg)により麻酔し、閉胸ラットにおいて、右の頸静脈、次いで右心房および右心室を通して肺動脈の中に挿入し、かつBaxter社製Uniflowゲージ圧力変換器に取り付けられたカテーテルを介してmPAPを測定した。右心室(RV)の、左心室+隔壁(LV+S)に対する重量比(フルトン指数)によって右心室肥大を推定した。
パラフィン包埋した肺の切片からの肺動脈(PA)中膜厚の割合を測定してPAリモデリングを評価した。最初に肺切片を一般的な組織学的手順に従ってヘマトキシリンおよびエオシン(VWR)で染色した。各切片において、異なる断面直径を有する10個の腺房内動脈からなる3群(すなわち、50μm未満、50〜100μmおよび100〜150μmの断面直径)を観察して内側壁厚を評価した。
結果
結果をn回の独立した観察の平均±SEMとして表す。対応のない標本のためのノンパラメトリック検定(マンホイットニー検定)を用いて全てのデータを分析した。図13は肺動脈圧(図13A)および心臓リモデリング(図13B)に対するAOLの効果を示す。nはmPAPおよびフルトン指数測定のためのラット数を示す。GraphPad Prismソフトウェア(v6、GraphPad Software)を用いて全ての棒グラフの作成および統計を行った。P<0.05を有意とみなした。図から分かるように、AOLは対照群(Nラット)に対して有意な効果はなかった。しかし、平均肺動脈圧はAOLで治療したMCTラットにおいて減少し、AOLで治療したCHラットにおいてさらにより有意であった。しかし、AOL治療はフルトン指数に対しては効果がなかった。
図14は肺動脈リモデリングに対するAOLの効果を示す。nは中膜厚%の測定のために分析した血管数を示す。GraphPad Prismソフトウェア(v6、GraphPad Software)を用いて全ての棒グラフの作成および統計を行った。P<0.05を有意とみなした。AOLはCHラットにおいて有意な効果を示し、肺動脈直径は約30%減少した。
結論
10mg/kg/日の経口用量でのAOL治療は、インビボでの肺高血圧症、特に群3の肺高血圧症における予防および/または治療において有意な効果を有する。結果は実際に、臨床的総体症状の有意な改善を示している。
これらのデータは、ミトコンドリアが肺血管系の生理機能において主要な役割を担い、AOLの使用を肺高血圧症の治療まで広げることを示唆している。
実施例7:老化疾患および早老症候群:黄斑変性症におけるAOLの効果
本研究は進行性変性に対して網膜を保護するAOLの能力を評価することを目的とする。
材料および方法
周期的な低強度照明下で飼育したラットを周期的な高強度照明下に1週間移動させ、3つの群(未治療動物、ビークル治療動物およびAOL治療動物)に分けた。治療される動物は、6mg/kg/日の投与量のビークルまたはAOL注射を1日3回、移動した7日間にわたって受けた(照明点灯の30分前、01:00pm、09:00pm)。1週間後に動物を暗所に移動させた(D0)。
対照群(「移動させない群」)は周期的な高強度照明下に移動させなかったが、上記と同じ治療、すなわち7日間に3回のビークルまたはAOL注射を受け、その後に暗所に移動させた(D0)。
暗所への移動の翌日(D1)に1回目の網膜電図検査を行う。その検査では光刺激に応答して、網膜により生成される電気生理学的シグナルを測定する。そのシグナルは通常、2種類の波、すなわちa波およびb波を特徴とする。a波は外側の光受容体層の錐体および杆体に由来する初期の角膜の陰性波を表す。それは外節膜におけるナトリウムイオンチャネルの閉鎖による光受容体の過分極を反映している。b波は内網膜(主にミューラーおよびON型双極細胞)に由来する角膜の陽性波を表す。網膜電図の分析は、光刺激の強度の関数としての振幅および/またはこれらの波の潜時を測定することからなる。所与の光刺激強度でのa波の振幅は光受容体の数に依存し、一方、所与の光刺激強度および所与の光受容体数でのb波の振幅はシグナル伝達効率を示す。
D1の網膜電図検査後に動物を周期的な低強度照明条件下に戻し、D15に2回目の網膜電図検査を行う。
その後、組織学的分析のために動物を屠殺した。網膜の各種層の厚さ、特に外顆粒層(ONL)厚および内顆粒層(INL)厚を測定した(単位:μm、視神経から、視神経乳頭の上極および下極中の0.39mm毎)。
結果
組織学的分析は図15に報告されている。それは、対照群(「移動させない群」)においてAOLでの治療がONL厚に対して効果を有していなかったことを示している(図15A)。これはAOLが網膜の光受容体に対して毒性作用がないことを示唆している。
一方、周期的な高強度照明条件への移動(「移動させた場合」)は未治療の動物においてONLの有意な減少(いくつかの領域では半分に)を誘発する。しかし、AOLはONLを光誘発性損傷に対して保護する傾向がある。組織学的分析は実際にAOLで治療し、さらに周期的な高強度照明に曝露した動物においてONL厚の有意な増加を示した(図15B)。
結論
AOL治療は網膜への光誘発性損傷に対する有意な保護効果を有する。特に網膜の厚さは、未治療の動物と比較した場合に長期の周期的な高強度照明曝露後に保護されていることが分かった。
実施例8:ミトコンドリア機能障害に関連する疾患におけるAOLの効果
本研究は酸化的リン酸化機能障害モデルにおけるインビボでのAOLの効果を試験することを目的とする。
材料および方法
CD1バックグラウンドのミトコンドリアのMn−スーパーオキシドジスムターゼが欠乏しているマウス(SOD2−KO)を使用した。この遺伝子変化は有害な表現型をもたらし、平均8日齢での動物の死亡を引き起こす。ミトコンドリアのスーパーオキシドジスムターゼは、スーパーオキシド(高反応性)を過酸化水素(低反応性)に変換し、次いでミトコンドリア膜を通過してマトリックスおよび細胞質ゾルの抗酸化系により解毒することができるフリーラジカル除去酵素である。この研究の目的は、AOLがIQスーパーオキシド産生に対するその活性によりSOD2−KO表現型を救うことができるか否かを試験することであった。
出生後、動物の子の遺伝子型を特定し(3日齢)、産子数は1ケージ当たり動物の子が6匹まで減少した。次いで、動物を治療した(Kolliphor(登録商標)中のAOL−5mg/kg)か、または治療しなかった(Kolliphor(登録商標)のみ、以下ではKOLと記載されている)。投与量の選択は主に、化合物の溶解限度(Kolliphor(登録商標)中の2.8mM)および動物の子における最大注射可能体積(1グラムの体重当たり6〜7μL)によって決定された。同じ親からの2種類の異なる世代に対して2種類の研究(寿命と心臓におけるコハク酸デヒドロゲナーゼ(SDH)活性および肝臓におけるオイルレッドO染色)を行った。毎日動物の体重を測定して(腹腔内)注射した。
コハク酸デヒドロゲナーゼ活性はミトコンドリアマトリックス中のスーパーオキシドのマーカーである。従って、SOD2の不足は心臓におけるSDH活性の減少に関連している。この実験の目的はAOLがKOマウスにおけるSDH活性を回復することができるか否かを試験することであった。
オイルレッドO染色はSod2−KOの肝臓に蓄積することが分かっている脂質のマーカーである。しかし、スーパーオキシド/過酸化水素産生と肝臓の脂質蓄積との直接的な関連性は確立されていない。この研究の目的は、Sod2−KOマウスにおける肝臓の脂質蓄積を防止するAOLの効力を試験することであった。
結果
寿命
4つの群を以下のように構成した。
1.WT−KOL(n=7)、ビークルのみで治療した野生型マウス群;
2.WT−AOL(n=17)、AOLで治療した野生型マウス群;
3.KO−KOL(n=2)、ビークルのみで治療したSod2−KOマウス群
4.KO−AOL(n=4)、AOLで治療したSod2−KOマウス群
3日齢から死亡するまで動物に1日1回注射した。
図16Aおよび図16Bは体重の変化(A)および初期体重の割合を示す。これらの結果から、体重および体重増加がWTマウスよりもKOマウスで低いことが分かる。しかし、AOLでの治療は8日目〜12日目から分かるようにこの効果を軽減する傾向があり、当該化合物の潜在的な有益な効果を示唆している。
図16Cは、AOLで治療したか否かに関わらずSod2−KOマウスの生存割合を示す。上記結果を考慮して期待されるように、KOマウスにおいてAOL治療によって中間寿命および最大寿命の両方が僅かに向上し、AOLで治療したマウスは未治療のマウスと比較して最長2日間長く生き延び、これはAOLの有益な効果を裏付けている。
心臓におけるSDH活性およびオイルレッドO染色
5つの群を以下のように構成した:
1.WT−注射なし(n=6)、未治療の野生型マウス群;
2.WT−KOL(n=6)、ビークルのみで治療した野生型マウス群;
3.WT−AOL(n=6)、AOLで治療した野生型マウス群;
4.KO−KOL(n=4)、ビークルのみで治療したSod2−KOマウス群;
5.KO−AOL(n=6)、AOLで治療したSod2−KOマウス群。
この研究では、動物を3日目から5日目まで毎日治療した(5mg/kg)。心臓および肝臓を6日目に採取した。
予想どおりに、SDH活性はWT動物と比較してKOにおいて減少する傾向があった(有意でない)。但し、AOLはKOマウスにおいてSDH活性の非常に僅かな増加のみを示したが、SDH活性をWTマウスのレベルまで回復させることはできなかった(図17)。
図18は、脂肪滴の平均サイズ(パネルA)、密度(パネルB)および面積(パネルC)を示す。未治療のKOマウスはWT動物と比較して高脂質含有表現型を示した。しかし、AOLで治療したKOマウスでは未治療の動物と比較して脂肪滴密度は減少した。さらに重要なことには、これらの結果はAOL治療がKOマウスにおける総脂質面積を回復させることができることも示し、これはSod2−KOマウスにおけるインビボでのミトコンドリアのスーパーオキシド産生の狙い通りの抑制に一致していた。
結論
インビボ調査は有望な結果を示している。AOL治療はマウスにおけるSOD2枯渇の効果を完全に打ち消すことはできないが、結果は体重増加の低下の軽減と共に未治療のKO動物と比較して寿命をなお数日引き延ばし得ることを示している。これはAOLの潜在的効果を示唆している。
AOLの生物学的利用能は非常に乏しいことが知られている。従って、より高い用量での治療はこれらの実験におけるAOLの効果の向上に繋がる可能性がある。しかし、構成的KOは、1種のみの真に特異的な治療により救うには、あまりにも有害性の強い表現型が保持されているので、他の薬物との相乗作用を求めることが必要かもしれない。
インビボで、結果から、AOLが脂質含有量を回復させることができ、および/またはSod2−KOマウスの肝臓における脂質蓄積を防止することができることも明らかになった。
実施例9:AOXは、高濃度(20μM超)でミトコンドリアの酸化的リン酸化に影響を及ぼす。
材料および方法
動物処置方法および倫理声明
記載されている全ての実験は、国家および欧州研究会議の実験動物の管理と使用に関する指針に準じて行った。P.Diolezは、フランス農林省の動物の健康および保護局(Service Veterinaire de la Sante et de la Protection Animale of the Ministere de l’agriculture et de la Foret,France)による動物実験を行うための有効なライセンス(03/17/1999、ライセンス番号3308010)を有している。
材料
全ての化学薬品は、スクロースおよびNADHオキシダーゼ(Merck(Darmstadt,Germany)から入手)以外は、Sigma Chemical(St.Louis,MO)から購入した試薬グレードとした。AOLおよびAOXは、OP2(Bordeaux,France)から譲り受けた。15mMのストック溶液をDMSO中で調製し、数日間だけ0℃で暗所に保管した。
心臓ミトコンドリアの単離
雄のウィスターラット(250〜325g;Janvier Labs,Le Genest−Saint−Isle,Franceから入手)をスタニングおよび頸椎脱臼によって屠殺し、心臓を迅速に取り出し、100mMのスクロース、180mMのKCl、50mMのTris、5mMのMgCl2、10mMのEDTAおよび0.1%(w/v)の脱脂BSA(pH7.2)を含有する低温の単離培地で洗浄した。
心臓ミトコンドリアの単離を冷室で行った。ホモジナイゼーションの前に心臓(約1.5g)をハサミで細かく刻み、プロテアーゼ(1mLの単離緩衝液当たり2mgの細菌プロテイナーゼXXIV型)を補充した5mLの同じ培地中で撹拌しながら5分間処理した。その組織懸濁液を50mlのガラス製ポッター型ホモジナイザーの中に注ぎ込み、20mLの単離緩衝液で希釈し、次いで電動テフロン乳棒を用いて3分間ホモジナイズした。ホモジネートを篩絹(Sefar Nitex)で濾過してデブリを除去し、8,000gで10分間遠心分離した。得られたペレットを5mLの単離緩衝液で洗い流し、25mLの同じ緩衝液に再懸濁し、次いで低速遠心分離(400g)に8分間供した。得られた上澄みを7,000gで15分間の遠心分離を2回行い、洗浄したミトコンドリアのペレットを得、これを150μLの単離緩衝液に静かに再懸濁した。BSAを標準液として用いて、ブラッドフォード法(Sigma、キット番号B6916)によってタンパク質濃度を測定した。ミトコンドリアを40〜50mg/mLの最終濃度で、5時間未満にわたり氷上で保持した。
ミトコンドリアの酸素消費およびATP合成
漸増用量(0〜100μMの最終濃度)のAOXの非存在または存在下でインキュベートした心臓ミトコンドリア(0.1mg/mL)の酸素消費率を、高分解能酸素濃度計(Oxygraph−2K、Oroboros Instruments,Austria)を用いて25℃で一定速度で撹拌しながらポーラログラフィーで記録した。呼吸培地は、140mMのスクロース、100mMのKCl、1mMのEGTA、20mMのMgCl2、10mMのKH2PO4、および本質的に脂肪酸を含まない1g/L(w/v)のBSA(pH7.2)で構成された。
ATP合成は、以前に記載(Gouspillou et al.,2014.Aging Cell.13(1):39−48)のように、高感度pH電極(Metrohm)を用いて同じ条件下で測定した。
ミトコンドリアROS/H2O2産生
心臓ミトコンドリアからのROS/H2O2産生速度を外来性西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP、EC1.11.1.7、Sigma)の存在下で無色の非蛍光指示薬アンプレックスレッドの酸化によって評価した。H2O2をアンプレックスレッドと1:1の化学量論比で反応させて、蛍光化合物レゾルフィン(励起:560nm、発光:585nm)を得る。このレゾルフィンは、一旦形成されると安定である。温度制御および撹拌機能を備えた分光蛍光光度計(SAFAS Xenius,Monaco)を用いて蛍光を連続的に測定した。
単離したミトコンドリア(0.1mg/mL)を15μMのアンプレックスレッドおよび10μg/mLのHRPを補充した以前のものと同じ実験用緩衝液中でインキュベートした。グルタミン酸(5mM)/リンゴ酸(2.5mM)をコハク酸(5mM)と共に、それぞれ、複合体Iおよび複合体II基質として使用した。15μMのアトラクチロシドの存在下、非リン酸化条件で実験を行った。その後、ロテノン(1.5μM)、アンチマイシンA(2μM)およびミキソチアゾール(0.2μM)を順次添加して電子伝達鎖内の酸化還元中心(図2を参照)、すなわち部位IQ、IF(ロテノンにより阻害)、IIIQi(アンチマイシンAにより阻害)およびIIIQO(ミキソチアゾールにより阻害)を阻害した。最後にアッセイを、AOXを含む全ての関連化合物の存在下で既知の量のH2O2(300nMのステップ)で較正した。アンプレックスレッドアッセイそれ自体およびNAD(P)HオキシダーゼROS/H2O2産生に対するAOL、AOXおよびオルチプラズの効果がない対照試験を、心臓ミトコンドリアの非存在下およびNAD(P)Hオキシダーゼ(EC1.6.3.3、5mU/mL、Sigma社)およびNADH(100μM)溶液の存在下で行った。
結果
我々は最初に、AOX化合物がラットの心臓から単離したミトコンドリアに対する酸化的リン酸化に直接に影響を与えるかどうかを試験した。これを今では古典的であるオキシグラフ法を用いて行った(図19A)。ミトコンドリアを最初に各種AOX濃度(20〜100μM)でインキュベートし、次いで呼吸基質を添加し(基質状態、黒色の曲線)、その後、ADP濃度を飽和させて最大の酸化的リン酸化率(酸素消費の傾斜、灰色の曲線)を得、最後にADP/ATPトランスロケーターを阻害し、非リン酸化条件下でミトコンドリアの漏出率を生じさせるアトラクチロシド(ATR)を添加した(図19A)。図19Bは、呼吸鎖に電子を供給するために、コハク酸(+ロテノン)を用いて得た結果を示す。この基質は、これが呼吸鎖調節を最も厳密に反映しているので、選択した。この結果は、「基質」状態およびATR状態(内膜プロトン漏出率)下で、AOXは、最大50μMの濃度の増加に続いて、50μMを超える濃度の減少を誘導した。これらのデータは、20μMを超える濃度でのAOXの酸化的リン酸化に対する脱共役および付随する酸化速度の抑制を示唆する。データは、ミトコンドリアの酸化的リン酸化、すなわち呼吸鎖活性およびATP合成の両方ならびにミトコンドリアの内膜完全性(ATR添加後測定される漏出率)に対するこれらの条件下での高濃度のAOX(20μM超)の効果がないことを示している。
図20は、単離ラット心臓ミトコンドリアのリン酸化速度(ATP合成速度)に対するAOXの効果を示す。結果は、20μM未満の濃度は、単離ミトコンドリアによるATP合成を変えないことを確証している。しかし、より高い濃度は、速度を効果的に低下させ、60μMで完全にリン酸化を消滅させる。
実施例10:AOXはミトコンドリアによるスーパーオキシド/H2O2産生を阻害する
既に述べたように、ミトコンドリアROS産生はミトコンドリアの活性および条件に大きく依存している。我々は数多くの条件下でミトコンドリアによるROS産生に対するAOXの効果を試験したが、明確性のためにAOXの非常に特異的な効果の最も立証的な結果のみを本明細書に示すことを選択した。呼吸鎖全体に電子を与える完全な基質の組み合わせ(すなわち、グルタミン酸、リンゴ酸およびコハク酸)(図2A)の存在は、代謝が活性である細胞における最も特有のインサイツ条件である。さらに、最大のミトコンドリアROS/H2O2産生はミトコンドリアの高リン酸化条件下では生じないが電子輸送体が大きく減少する条件下、すなわち低リン酸化条件またはリン酸化が存在しない条件下で生じる。これらの条件は、ATRの存在下で満たされ、我々は飽和ADP条件下でATRを添加することによりROS産生が引き起こされることを完全に確認することができ、これは最大のリン酸化条件下での検出限界であった(結果は示さず)。これらの条件下では、ROSは呼吸鎖の異なる部位において産生される(Orr et al.,2013.Free Radic.Biol.Med.65:1047−1059;Quinlan et al.,2013.Redox Biol.1:304−312)(図2)。
我々は、最大のROS産生条件下で呼吸鎖全体によるROS産生に対するAOXの作用を解明するために、一連の阻害剤滴定を設計した(図2E)。基質の組み合わせの存在下および複合体の特異的阻害剤の非存在下ではROS産生は最大となり、これは主に部位IQにおける逆電子伝達により生じる(図2A)。IQ触媒的部位に特異的に結合する古典的な複合体I阻害剤であるロテノンの添加後、ROS産生は大きく減少し、部位IIIQOにおいてほぼ全てが生じる(図2B)。したがって、ロテノン添加後のROS産生の減少(アンプレックスレッド法で測定、図22)は、複合体IによるROS産生活性を表す。
図21は、これらの条件下で測定したROS/H2O2産生に対する漸増濃度のAOX(2.5〜20μM)の効果を示す。この図に示される結果から、AOXは、AOLで必要な濃度より低い濃度で、複合体IによるROS産生を強く阻害することが明らかに認められる(比較のために、図3参照)。実際に、2.5μMもの低いAOX濃度で、部位IQによるROS産生に対する阻害効果が示され、推定IC50は約9.5μMであった(最小:−72.5272±68.64;最大:554.045±19.73;IC50:9.46768±1.018;ヒル係数:2.61579±0.5706)。
実施例11:AOXはNAD(P)Hオキシダーゼによる非ミトコンドリアスーパーオキシド/H2O2産物を除去しない
実際にアンプレックスレッドを蛍光レゾルフィンに酸化することによりH2O2の出現を測定する、ミトコンドリアによるROS/H2O2の測定のために利用されるペルオキシダーゼ−アンプレックスレッドシステムを用いて、AOXの作用機序をさらにインビトロで試験した(図22)。ミトコンドリアの非存在下で、代わりにH2O2産生系をアッセイに追加して、この非ミトコンドリアスーパーオキシド/H2O2産生に対するAOXの効果を試験することができた。この試験は、添加されたNAD(P)Hの存在下でH2O2を産生する市販のNAD(P)Hオキシダーゼを用い、アンプレックスレッドのレゾルフィンへの還元を測定することにより行った。我々は、AOXの漸増濃度(10〜100μM)の効果を、AOLおよびオルチプラズの効果と比較した(図22A)。示された結果は、AOLおよびAOXの両方は、これらの条件下でROS測定に対する全体的な影響は認められなかったが、オルチプラズは、アッセイにより測定されるROSの量が常に低下した。従って、これらの結果は、オルチプラズは、NaD(P)Hオキシダーゼを阻害するかまたは中等度の(不十分な)ラジカル捕捉剤として作用してスーパーオキシド/H2O2に結合し、ペルオキシダーゼアッセイには利用できないが、どのような環境下でも、非ミトコンドリア(細胞質ゾルを模倣する)スーパーオキシド/H2O2産生を阻害することを示している。これはNAD(P)Hオキシダーゼまたはペルオキシダーゼ活性に対するAOXおよびAOLのどの効果とも相容れないものである。これらの結果から、AOXおよびAOLは測定システムを妨害することもH2O2と直接相互作用することもないことが確認される。興味深いことに、これらの結果は、AOXおよびAOLがNADP(H)オキシダーゼによるROS/H2O2産生を阻害せず、また、NADP(H)オキシダーゼが、細胞における(唯一ではないにしても)1つの主要な非ミトコンドリアROS/H2O2産生物質であることも実証している。図22Bのスキームは、ミトコンドリアによるROS/H2O2産生およびNAD(P)Hオキシダーゼに対するAOXおよびAOLの作用モードに関する種々の情報を要約している。
ラットの心臓から単離したミトコンドリアについて試験した場合には、AOXはミトコンドリアROS/H2O2産生を有効に減少させる(単離したミトコンドリアにおいては、H2O2はミトコンドリアスーパーオキシドジスムターゼによるROSの還元により産生される)。しかし、本明細書に示されている結果により、AOXが抗酸化剤またはラジカル捕捉剤として機能しないことが明確に実証されている。抗酸化剤は一般的なROS/H2O2捕捉剤であるが、AOXは複合体Iの部位IQによるROSの形成に対して選択性を示し、これはAOXがスーパーオキシドラジカルと単純に相互作用しないが、複合体Iにおけるそれらの形成を特異的に防止することを実証している。その点に関して、したがって、AOXは、ROS形成を防止し、そのため、自身のROSからミトコンドリアを保護するのにより活性であることによる、新しい種類の酸化ストレス保護剤のメンバーに見える。我々は、AOXが細胞質ゾルにおける酸素ラジカル形成に影響を与えることなくミトコンドリアとのみ相互作用することができ、従って細胞内シグナル伝達に影響を与えないといういくつかの証拠も本明細書に示す。
ロテノンまたは神経毒MPP+による複合体I活性の阻害はげっ歯類およびヒトの両方におけるパーキンソニズムに関連づけられおり、これは複合体Iの機能障害、ROS産生および神経変性間の関連性を示唆している(Langston et al.,1983.Science.219(4587):979−980;Betarbet et al.,2000.Nat.Neurosci.3(12):1301−1306)。対照的に、比較分析から、部位IQからの最大のスーパーオキシド/H2O2産生と多様な脊椎動物種全体における最大寿命との反比例関係が分かっている(但し、部位IFについては、この限りではない)(Lambert et al.,2007.Aging Cell.6(5):607−618;Lambert AJ et al.,2010.Aging Cell.9(1):78−91)。従って、部位IQまたは部位IFからのスーパーオキシド/H2O2産生の選択的調節剤により、正常および病理学的プロセスにおけるミトコンドリアROS産生の推定上の役割を探るための特有の機会が得られる(Orr et al.,2013.Free Radic.Biol.Med.65:1047−1059)。
これらの結果はAOXがラジカル捕捉剤ではないことを実質的に実証しており、もしAOLがラジカル捕捉剤であれば、ROS測定値に対する効果は、スーパーオキシド/H2O2の起源、ミトコンドリアまたは非ミトコンドリアの起源とは無関係になるはずである。その機序はまだ調査中であるが、AOX化合物が特異的にミトコンドリアの複合体Iを妨害し、複合体Iのユビキノン結合部位(部位IQ)からのスーパーオキシド産生を選択的に阻害するという証拠が本明細書に示されている。
結論として、AOX特性は細胞におけるROS/H2O2産生の特異的ミトコンドリア標的化調節剤の探索における大きなブレークスルーであり得るように見える。AOXはROS産生の上流で作用するため古典的な抗酸化剤よりも高い保護を保証する。
実施例12:AOXはミトコンドリアのROS産生を特異的に阻害するが、細胞質ゾルのROS産生を阻害しない
材料および方法
ヒト非小細胞癌腫細胞株H460およびA549をATCCから入手した。DMEM(GIBCO)、10%FBS(GIBCO)および100ユニットのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシン(GIBCO)からなる増殖培地中で細胞を培養した。37℃、95%湿度、および5%CO2で制御したインキュベーター(モデル3100シリーズ、Forma Scientific,Marietta,OH)中、75cm2 Tフラスコまたは175cm2 Tフラスコ(BD Biosciences)に入れて細胞を維持した。細胞培地を1日おきに新しくした。2〜3日おきに、0.25%トリプシン溶液(Gibco)を用いてH460およびA549培養物をフラスコから剥離させ、継代培養した。継代培養時に、全ての培養物を80〜90%コンフルエンスで維持した。
スルホローダミンB比色分析法により細胞傷害性スクリーニングを実施した。A549およびH460細胞(2x103)を96ウェルプレートに播種し、付着後、5〜500μMのAOLまたはAOX、または対照のジメチルスルホキシド(DMSO)と共に、細胞をインキュベートした。処理の48時間後、スルホローダミンB(SRB)アッセイで、Vichai(Vichai et al.,2006.Nat.Protoc.1(3):1112−6)に従って、細胞傷害性を評価した。
トランスウェル(Corning Inc.,8.0μm細孔径)中で細胞遊走アッセイを実施した。遊走アッセイのために、無血清媒体中の2x104細胞を上室中に加えた。10%FBS含有培地を下室に加えた。16時間後、フィルターを通過して移動した細胞を0.2%クリスタルバイオレットで染色し、ソフトウェアImage Jを用いて計数した。
GraphPad Prism6(GraphPad Software,Inc.)を使って統計分析を行った。結果は、n個の独立した実験に対し、平均値±SEM値で表される。群間の比較は、一元配置分散分析と事後ダネット検定により実施した。適切な場合には、独立スチューデントt−検定またはマン・ホイットニーの検定を用いた。p<0.05の差異を有意と見なした。
結果
培養細胞に対するAOXの細胞傷害性の非存在
AOXの細胞傷害性の試験を、広い範囲の濃度(0〜500μM)の、2種の癌腫細胞株(H460およびA459)に対して実施した。結果を図23に示す。
100μM未満の濃度に対して、明確に有意な毒性は観察されず、また、細胞生存率は、より高い濃度のAOXに対してのみ急速な低下が観察された(図23A)。これらの結果を片対数プロットとしてプロットすることにより(図23B)、我々は、高用量AOX毒性のIC50を134.8±0.3μMとして計算可能であった。これらの結果は、AOXが、たとえ高濃度(100μM)でも、培養細胞に対し有害な影響を示さないことを示している。
癌腫細胞呼吸に対するAOXの効果の非存在
癌腫細胞に対するAOX(0〜40μM)の効果を、古典的なオキシグラフ手法を用いて評価し、姉妹分子であるAOLの効果と比較した。
H460休止細胞の酸素消費を連続的に測定し、漸増濃度のAOLおよびAOX(0〜40μM)を調製物に注入した(図24)。AOXまたはAOLを加えたH460細胞による酸素消費速度の変化がないことが認められ、ミトコンドリア活性および細胞エネルギー代謝の細胞内の乱れが存在しないことを示している。これらの結果は、AOLおよびAOXの細胞機能に対する有害な影響が存在しないことを確証している。
癌腫細胞転移活性に対するAOXの効果
細胞遊走のトランスウェル試験をこのアッセイに利用し、2種の異なる濃度のAOX(5および10μM)の存在下でH460癌腫細胞の移動を測定し、細胞質ゾルのROS産生の陽性対照としての100μMのN−アセチルシステイン(NAC)の効果と比較した(図25)。
図25Aは、種々のアッセイ条件に対する下部コンパートメント中の染色細胞の写真を示す。結果をヒストグラム(図25B)に示し、膜を通過した細胞の数が対照とAOX条件で同等なので、AOXによる転移活性の誘導が存在しないことを示している。対照的に、細胞質ゾルのROSを標的とする典型的な細胞浸透性ラジカル捕捉剤であるNACの存在下では、我々は、転移活性の大きな増加を観察した。
これらの結果は、ミトコンドリアのROS産生の阻害剤としてのAOXの作用は、細胞質ゾルのROS産生と干渉しないことを明確に示している。
結論
単離ミトコンドリアに直接適用する場合、AOXは、おそらく、この分子の、弱酸として作用し、ミトコンドリア膜電位を混乱させるプロトン化能力のために、高濃度(20μM超)でミトコンドリアの機能に対しある程度の有害作用を有する。しかし、我々は、これらの条件は、高濃度であってもミトコンドリアの機能障害を誘発しない無傷の細胞中では達成されないことを観察できるであろう。
これらの結果は、100μMを超える濃度、すなわち、治療処置下の可能な循環濃度を十分超える濃度でも、AOXは培養細胞に対し毒作用を有さないことを示す。これは、これらの条件下で、細胞呼吸およびエネルギー代謝に対するAOXの効果が存在しないことで確証された。
癌腫細胞の転移活性に対するAOXの効果が、この転移活性に対する効果を高めるN−アセチルシステイン(NAC)と対比して、存在しないことにより、ミトコンドリアのROS阻害に対するAOXの特異性および細胞質ゾルのROS産生に対するAOXの効果の存在しないことが確証される。
実施例13:心臓血管疾患:肺高血圧症におけるAOXの効果
本研究は、肺高血圧症の新しい代替治療を提供することを目的とする。この疾患は、肺血管抵抗の上昇、右心室肥大、右心不全および最終的に死に繋がる肺の動脈圧の上昇および肺動脈(PA)のリモデリングを特徴とする。
肺内動脈収縮性に対するAOXとAOLの効果比較
AOXの効果の問題を扱うために、AOLまたはAOXの非存在下および存在下で、セロトニンまたはエンドセリンを用いてアゴニスト誘発収縮時の、肺内動脈に対する等尺性張力測定を実施した。
材料および方法
一次肺内動脈(IPA1)を、外径1.5〜2mmの短い管状セグメントに分割し、等尺性収縮測定に使用した。クレブス溶液(118.4mMのNaCl、4.7mMのKCl、1.2mMのMgSO4、25mMのNaHCO3、1.2mMのKH2PO4、2.5mMのCaCl2および11.1mMのD−グルコース含有、NaOHで調節してpH7.4)を含む、37℃の単離臓器浴システムに動脈輪を取り付け、15%O2/5%CO2で連続的にバブリングした。初期荷重0.8g〜1gを動脈輪に印加した。組織をクレブス溶液中で1時間平衡化させ、15分毎に洗い流した。その後の収縮応答の正規化に使用する基準収縮を得るために、高KCl溶液(80mM)を加えた。
その後、セロトニン(5HT、10−4〜10−8M)またはエンドセリン(ET−1、10−7〜10−10M)に対する累積濃度反応曲線(CCRC)を作成することにより、異なるアゴニストに対する収縮応答を試験した。表示がある場合、AOLまたはAOXは30分間プレインキュベーションし、その後、薬物の存在下でアゴニストに対するCCRCを実施した。クレブス溶液からのNaClに対し等モル量のKClで置換することにより、高カリウム溶液を得た。0.3μMのPhe−誘発予備収縮肺動脈輪上の10μMのカルバミルコリンにより誘発された緩和を試験することにより、各輪に対する内皮機能を試験した。データ取得および分析を容易にするために、トランスデューサ系を用いて、IOXソフトウェア(EMKA Technologies,Paris,France)と接続して、受動的および能動的機械的性質を評価した。
結果
収縮は、セロトニン(5HT)またはエンドセリン(ET−1)の濃度依存性であり、測定された最大収縮は、100μMの5HTおよび0.1μMのET−1であった。
AOLは、最大5x10−5Mのセロトニンで誘発された収縮を緩和できたが、エンドセリン誘発収縮に対しては効果がなかった(図26A)。
10μMのAOX含有浴中でインキュベートした輪に対しても同一パターンの応答が観察された(図26B)。しかし、より高い濃度のAOXの使用により、10−4Mのセロトニンで誘発された収縮が緩和され得る。
結論
これらのデータは、ミトコンドリアが肺血管系の生理機能において主要な役割を果たしていることをさらに確証し、また、肺動脈収縮性を小さくするための、従って、肺高血圧症の予防および/または治療のための、AOLよりも高いAOXの効力を示唆している。
肺動脈平滑筋細胞増殖に対するAOLの効果
材料および方法
肺動脈平滑筋細胞(PASMC)増殖の検出を、DNA合成中の、5−ブロモ−2’−デオキシ−ウリジン(BrdU)取り込みの測定に基づいて、比色分析イムノアッセイキット(Roche Applied Science,Indianapolis,Ind.,USA)を使用することによりアッセイした。
単離PASMCを、10%ウシ胎仔血清(FCS)を補充した培地中、5x103細胞/ウェル/100μLの密度で96ウェル培養プレートに播種した。培養プレートを、空気中5%のCO2下、37℃の加湿インキュベーター中に置いた。48時間後、細胞を、1%インスリン−トランスフェリン−セレンを補充した無血清培地中で48時間の増殖停止に供した。この期間の終わりに、PASMCを下記のいずれかを含む培地中で24時間インキュベートした:
−0.2%のFCS(対照条件);
−0.2%のFCS+10、20、60、または100μMのAOL;
−0.2%のFCS+100μMの5HT(セロトニン);
−0.2%のFCS+100μMの5HT+10、20、60、または100μMのAOL;
−10%のFCS;
−10%のFCS+10、20、60、または100μMのAOL。
各条件を、3回繰り返して試験した。次に、10μLのBrdU(100μM)を培地に加え、細胞をさらに37℃で2時間インキュベートした。その後、比色分析方法を用いて、製造業者の説明書に従ってDNA合成をアッセイした。新しく合成したBrdU DNAを、ELISAリーダー(Spectrostar/nano;BMG Labtech,Champigny−sur−Marne,France)で、490nmの基準波長を用いて380nmの波長で試料の吸光度を測定することにより特定した。
結果
図27に報告したように、AOLは、高濃度のFCS(10%)により、またはより多くの生理的条件、すなわち、0.2%のFCSおよび100μMの5HTの存在下で、誘発された増殖をうまく抑制した。
結論
これらのデータは、AOLが、肺高血圧症の予防および/または治療において、潜在的効果を有することを示唆している。
実施例14:心臓血管疾患:アントラサイクリンの心毒性におけるAOXの効果
本研究は、アントラサイクリンの心毒性モデルにおけるAOXの効果を評価することを目的とする。10週齢のラットにアントラサイクリン由来の抗癌剤をAOXと共に14〜17日間投与して、これを評価した。
材料および方法
この研究を10週齢のスプラーグドーリーラットで実施し、異なる治療薬を腹腔内に14〜17日間投与した後、分析のために心臓を回収した。動物実験における「3R原則」を尊重するために、特に1種のアントラサイクリン分子のみ、すなわちドキソルビシンに対する実験に焦点を当て、AOXの効果を1種類の他の保護分子のみ、すなわちデクスラゾキサンのみと比較することによって試験する群の数を可能な限り制限した。
実験の終了時に、治療したラットの心臓を取り出し、心臓機能をLangendhorfシステムにおいてこれらの心臓の灌流後に徹底的に調べて、ドキソルビシンによって影響を受ける心臓機能およびAOX治療が効率的であるか否かを決定した。
この研究は、それぞれ8匹のラットからなる下記の5つの異なる群を含む:
1.対照群。ラットは5%のDMSO+95%のNaCl(0.9%)からなるビークルのみを17日間にわたって1日2回(朝と晩)の投与を受けた;
2.Doxo群。ラットは3mg/kg(i.p.)の用量のドキソルビシンを3日目から14日間にわたって2日に1回(朝)に投与を受けた。ラットは全ての他の注射ではビークルのみの投与を受けた;
3.Dexra群。ラットを3mg/kg(i.p.)の用量のドキソルビシンと同時に30mg/kg(i.p.)の用量のデクスラゾキサン(基準保護剤)で3日目から14日間にわたって2日に1回治療した(2011年にフランスの地域保険機関「ARS」によって推奨された投与量比に従う)。ラットは全ての他の注射ではビークルのみの投与を受けた;
4.AOX群。ラットをAOXおよびドキソルビシンで治療した:
・4mg/kg(i.p.)のAOX、朝と晩、ドキソルビシンの1回目の注射の72時間前;
・ドキソルビシン注射の日に(Doxo群を基準に):ドキソルビシン注射と共に4mg/kg(i.p.)のAOX、次いで90分後に4mg/kg(i.p.)の用量のAOXの2回目の注射;
・ドキソルビシン注射のない日:4mg/kg(i.p.)のAOX、朝と晩。
5.AOX/Carv/Enal群。ラットを本明細書の上に記載したAOX群からのラットと同様に治療した。AOX注射に、心不全のための古典的な治療薬(1mg/kgの用量のカルベジロール(β遮断薬)および0.5mg/kgの用量のエナラプリル(血管拡張薬))を補充した。
実施例15:自己免疫疾患:強皮症におけるAOXの効果
本研究は強皮症を有する患者からの線維芽細胞に対するAOXの効果を試験することを目的とする。強皮症は、コラーゲン合成の増加、微小血管の損傷、Tリンパ球の活性化および結合組織産生の変化を特徴とする慢性の全身性自己免疫疾患である。
材料および方法
健康なドナーおよび強皮症を有する患者の両方からの線維芽細胞を完全DMEM培地(10%FCS、1%抗生物質)中で、フラスコを用いて培養する。6時間の付着後に、細胞から血清を一晩除去した。
AOXを即時調製する。AOXを秤量し、5mg/mLでDMSOに溶解した。このストック溶液を最終的に10mMおよび5mMになるまでDMSOでさらに希釈した。AOXを40、20および10μMの最終濃度に達するまで完全DMEM培地でさらに希釈した。
培養細胞を40、20および10μMのAOXに接触させた。対照細胞をDMSO(0.2%)およびN−アセチルシステイン(3mM)を補充した完全DMEM培地に接触させた。細胞を正常酸素圧条件(37℃、20%O2)および低酸素条件(37℃、1%O2)で6時間または24時間インキュベートする。
MMP−1、MIPおよびMCP分泌分析のために培養物上澄みを採取し、等分して、投与のために−20℃で貯蔵する。製造業者の説明書に従ってMMP−1をELISA(Abcam)により定量化する。MCP−1およびMIP−1αの濃度をCBA(細胞数測定ビーズアレイ、Biolegend)で定量化する。
MMP1、コラーゲンおよびCCl2の発現の分析のために、細胞をトリプシンで剥がし、PBSで洗浄する。次いで、細胞ペレットを溶解緩衝液に再懸濁し、製造業者の説 明書に従ってRNA抽出を行う(Nucleospin RNA Plus、Macherey Nagel)。1μgのRNAをレトロ転写し(GoScript、Promega)、次いで、BioRad CFX384 PCR装置でのSYBRグリーンqPCR(SYBR qPCR Premix Ex Taq、Takara)の前に10倍に希釈する。MMP−1、Col1A2およびCCl2のためのプライマーを使用して目的の遺伝子を測定し、Ppia、RPLP0およびEEF1A1のためのプライマーを使用してリファレンス遺伝子を測定する。
実施例16:オルチプラズとは逆に、AOXは部位IQでのROS産生を選択的に阻害する
材料および方法
ラットの心臓からミトコンドリアを新しく単離し、ミトコンドリア懸濁液のタンパク質量を測定した後、漸増濃度のAOL、AOXおよびオルチプラズの外部からの添加に応答したH2O2産生を、アンプレックスレッドおよび西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を用いて蛍光定量法により測定した
ミトコンドリアのROS/H2O2産生の2つの主要部位を、コハク酸(呼吸複合体2のエネルギー基質)および呼吸鎖の既知の阻害剤、すなわち、部位IQに対しては10mMのコハク酸単独(陽性対照としてのCCCP)および部位IIIQouterに対しては、10mMコハク酸、4μMロテノンおよび2.5μMアンチマイシンA(陽性対照としてのミキソチアゾール)の組み合わせを用いて個別に標的化した。これらの「反応」溶液を、鎖内の主に単一部位から最大速度のROS/H2O2産生を生成するように設計した(Quinlan et al.,2013.Redox Biol.1:304−12)。
測定では、50μMのアンプレックスレッド試薬および20μg/mlのHRPからなる作業溶液を反応緩衝液に混合して、96ウェルプレート(Greiner 96 F−bottom)の対応する、漸増濃度(0〜80μM)のAOL、AOXまたはオルチプラズ非含有または含有ウェル中に入れた。1ウェル当たり0.125mg/mLの最終濃度までミトコンドリアを加え、アッセイを開始した。1マイクロプレートウェル当たりの適切な全容積は200μLであった。
室温下、プレートを暗所で、20〜25分間インキュベートした。二重軌道振とう(100rpm−3秒)を適用した後、CLARIOstarプレートリーダー(BMG LABTECH GmbH,Germany)でエンドポイント蛍光値を読み取った。実際に、H2O2を、アンプレックスレッドと1:1の化学量論比で反応させて、蛍光化合物レゾルフィンを得て、これを次の光学設定で用いて分析した(励起波長:546−20nm;発光:600−40nm;ゲイン:750)。
また、140mMのスクロース、100mMのKCl、1mMのEGTA、20mMのMgCl2、10mMのKH2PO4、および実質的に脂肪酸不含の1g/L(w/v)のBSA(pH7.2)からなる実験緩衝液中で、0〜5μMの範囲の濃度のH2O2検量線を作成した。
結果
図28は、これらの条件下で測定したROS/H2O2産生に対する漸増濃度のAOL、AOXおよびオルチプラズ(0〜80μM)の効果を示す。
図28Aに示される結果から、AOLおよびAOXは、2.5μMの低い濃度で、複合体IによるROS産生を強く阻害することが明らかに認められる。これに対して、オルチプラズは、同一濃度および80μMまでの濃度で、部位IQでのROS産生に対し、不十分な阻害効果のみを示した。
図28Bは3種の化合物のいずれも、複合体IIIによるROS産生の阻害に対し、効果がないことをさらに示す。
まとめると、これらの結果は、オルチプラズとは逆に、AOLおよびAOXが、ミトコンドリアのROS産生の部位IQ選択的阻害剤であることを明確に示す。
実施例17:AOX類似体はミトコンドリアによるスーパーオキシド/H2O2産生を阻害する
材料および方法
実施例16で上記したのと同じプロトコルを用いて、種々のAOX類似体の外部からの添加に応答したROS/H2O2産生を測定した。すなわち、50μMのアンプレックスレッド試薬および20μg/mLのHRPからなる作業溶液を反応緩衝液に混合して、96ウェルプレート(Greiner 96 F−bottom)の対応する、漸増濃度(1〜25μM)の8種の化合物(Cp1;Cp2;Cp3;Cp4;Cp5;Cp6a;Cp8;Cp9a)非含有または含有ウェル中に入れた。1ウェル当たり0.125mg/mLの最終濃度までミトコンドリアを加え、アッセイを開始した。1マイクロプレートウェル当たりの適切な全容積は200μLであった。
結果
図29Aおよび29Bは、これらの条件下で測定したROS/H2O2産生に対する漸増濃度のAOX類似体(2.5〜25μM)の効果を示す。
これらの図に示される結果から、AOX類似体は、複合体IIIと比較して選択的に、複合体IによるROS産生を阻害することが明らかに認められる。