JP2020511403A - 改良されたアスタセンの調製方法 - Google Patents

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Abstract

本発明には、環外二重結合がE配置又はE−及び/もしくはZ−配置のいずれかを有する式1のアスタセンを製造する方法であって、それぞれ(S)−又は(R)−立体配座を有する不斉中心3及び3’を有する一般式2のアスタキサンチンであって、前記アスタキサンチン2の環外二重結合がE−又はE−及び/もしくはZ配置のいずれかを有するアスタキサンチンを、少なくとも一種の第三級アルコラートの存在下で酸化する方法が記載されている。【選択図】なし

Description

本発明は、アスタセンを得るための簡単な方法に関する。本発明のさらなる実施形態は、エナンチオマー的に純粋なアスタキサンチン又は高いエナンチオマー過剰率を有するアスタキサンチンを得るための方法を開発するものである。本発明のさらに別の実施形態は、エナンチオマー的に純粋なアスタキサンチン又は高いエナンチオマー過剰率を示すアスタキサンチンを含む調製物を含む。
1938年に、アスタセンはアスタキサンチンの酸化アーティファクト(oxidative artefact)であり、該アスタキサンチンは酸素を補充したアルカリ環境中でアスタセンに変換させることができると仮定されていた。これは、1モルのアスタキサンチンあたり2モルの酸素が消費されて過酸化水素及びおそらくはアスタセンが生じたことから推定された(R.Kuhn,N.A.Soerensen,Chem.Ber.1938 71,1879−1888,p.1880,段落1参照)。しかしながら、仮にそうであったとしても、酸素の消費はアスタセン形成の間接的な指標に過ぎない。例え(明らかではないが)アスタセンが本当に生じるとしても、Kuhnらが記載した前記反応は、少なくとも8時間を要する。さらに、過酸化水素の形成も起こるが、これは、4個の環式二重結合及び9個の環外二重結合を示す成分であるアスタセンの安定性に確実に影響を与える。
2006年3月16日に出願されたCN1817858Aにおいて、アスタキサンチンから出発する2ステップの反応にてアスタセンが合成されている。実際には、アスタキサンチンをアルコール中に懸濁し、アルカリ性物質と接触させている。前記アルカリ性物質は、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムからなる群から選択され、ナトリウムメトキシド及び水酸化カリウムが好ましい。反応は、酸素雰囲気下、30〜80℃の温度で、攪拌しながら行われる。1時間当たり0.6〜18Lの酸素が必要とされる。反応時間は、実施例によれば7〜28時間の範囲内である。反応終了時には固体粗生成物が得られるが、これは、実際はいずれもイオン化した形態の未反応のアスタキサンチンとアスタセンの混合物である。前記粗固体をジクロロメタンと接触させ、濾過する。未反応のアスタキサンチンは濾液に残るが、イオン化したアスタセンは溶解しない。第二のステップにおいて、前記イオン化したアスタセンを水に溶解し、アルカリ性反応溶液を得、これを酸を用いてpH4〜6に中和する。この中和ステップにより、イオン化した形態のアスタセンが中和されたアスタセンに変換される。
この従来技術の反応にはいくつかの欠点がある。反応は酸素下で行わなければならない。つまり、酸素雰囲気中で加熱された有機溶媒を用いて、ひいては爆発性混合物を用いて行われる。このような爆発性混合物はオートクレーブのような耐圧手段中でしか安全に扱うことができず、工業規模では反応が非常に高額になる。加えて、少なくとも7時間の反応時間は極めて長い。別の欠点は、冗長な固体粗生成物の処理である。さらに、出発物質に対する収率はあまり高くなく、約38〜約68wt%の範囲内である。
そこで、本発明の目的は、従来技術の欠点を解消すること、及びアスタキサンチンからアスタセンを製造するための、簡単で且つ多量の副生成物を生成しない、改良された安全な方法を開発することである。とりわけ、過酸化生成物及び多くの反応ステップは、排除するか又は少なくとも減らすべきである。この方法は、高速で、費用効果が高く、省エネルギーであるべきである。爆発を避けるための高価な保護手段は排除すべきである。この方法は高い、ほぼ完全な転化(率)と、純粋な反応生成物であるアスタセンの高い収率をもたらすべきである。最終生成物中に多量の金属イオンがあることは避けるべきである。同時に、中間体又は粗生成物の煩雑な処理又は処置は排除すべきである。さらに、この方法は工業規模で実現される必要がある。
本発明のさらなる目的は、エナンチオマー的に純粋なアスタキサンチン又はエナンチオマー的に高度に富化されたアスタキサンチンをラセミアスタキサンチン混合物から製造するための、安価で、短時間で、簡単な方法を提供することにある。前記方法は同様に、多量の副生成物を生成すべきではない。多くの反応ステップは排除するか又は少なくとも減らすべきである。この方法は、高速で、費用効果が高く、省エネルギーであるべきである。この方法は高い転化率と、純粋な又はエナンチオマー的に高度に富化されたアスタキサンチンの高い収率をもたらすべきである。最終生成物中に多量の金属イオンがあることは避けるべきである。同時に、中間体又は粗生成物の煩雑な処理又は処置を排除すべきである。同様に、本発明の方法に係るこの実施形態は、工業規模で行われる必要がある。
本発明のさらに別の目的は、エナンチオマー的に純粋なアスタキサンチン、又はエナンチオマー的に純粋なアスタキサンチンが高度に富化されたアスタキサンチンを含む非治療用調製物を提供することである。エナンチオマー的に純粋なアスタキサンチン、又はエナンチオマー的に純粋なアスタキサンチンが高度に富化されたアスタキサンチンを含む医薬又は医療用途のための調製物を製造することもまた、さらなる目的である。
環外二重結合がE配置又はE−及び/もしくはZ−配置のいずれかを有する式1のアスタセンを製造する方法であって、
Figure 2020511403
それぞれ(S)−又は(R)−立体配座を有する不斉中心3及び3’を有する一般式2のアスタキサンチン
Figure 2020511403
であって、前記アスタキサンチン2の環外二重結合がE−又はE−及び/もしくはZ配置のいずれかを有するアスタキサンチンを、少なくとも一種の第三級アルコラートの存在下で酸化する方法により、先に設定した要件が満たされる。
この特徴は、以下の実施例で示されるように、今まで知られていない高収率且つ高純度の式1のアスタセンをもたらす。酸素雰囲気下での作業及びそれにより必要な爆発保護手段はもはや必要ない。反応時間は約2時間であり、極めて高速であるが、それにも関わらず反応は従来技術よりも非常に優れた転化率及び収率を示す。相当な量の未反応の一般式2のアスタキサンチンは残留しない。前記量は従来技術の主な欠点であり、本反応についても反応時間が短いため同様に予想されていた。入念な濾過ステップは従来技術のように必須ではなく、多量の副生成物、とりわけ過酸化生成物は見られない。
特許請求の範囲に記載の方法によりアスタキサンチンからアスタセンを高収率で得ることが可能なことは驚くべきことである。なぜなら、アスタキサンチンをオッペナウアー酸化の条件にさらしてもアスタセンは生じなかったためである。使用したオッペナウアー触媒はAl(OR)(Rはフェニルである)であった。
第三級アルコラートは、第三級アルコールが金属又は金属化合物に接触して、それにより金属イオンを対イオンとして有する脱プロトン化第三級アルコール又はアルコールアニオンを形成することから得ることができる任意の化合物であると理解される。この方法は一般的に、水素又はハロゲン化水素を遊離させる。本開示による「第三級」という語は、3個のアルキル基で囲まれた中心炭素を有する任意の成分を意味し、ここで「アルキル」は炭素及び水素原子からなる任意の成分を意味する。
この開示における収率及び転化率又は有効性(potency)は、出発物質であるアスタキサンチンに対する重量パーセントで与えられる。これは妥当であると思われる。なぜならアスタキサンチンは分子量が596.841g/molであり、アスタセンは分子量が592.81であり、つまり、モル量に基づくパーセント収率は、重量に基づくパーセント収率と比べると小数点第二位で異なるだけであるためである。小数点より前の値のみを考慮して従来技術と比較するため、この違いは無視することができる。
「モル当量」という語は、使用するアスタキサンチン2のモル量に対する、使用する表示された化合物のモル倍量を意味する。
本発明の開示における「金属塩」は、金属カチオンとアニオンの集合体により形をなすことができる任意の塩であると理解される。しかしながら、アルカリ及びアルカリ土類金属のヒドロキシル化合物は、この「金属塩」という語から明確に除外される。同様に、アルカリ及びアルカリ土類金属のアルコラート、つまり、アルカリ又はアルカリ土類金属を対イオンとして有する脱プロトン化アルコールは、「金属塩」という語の一部ではない。
この開示の目的のための「遷移金属塩」は「金属塩」と同じ意味を有するが、しかし、周期表の第3〜12族に属する金属のみを含む。
「遷移金属の塩」という語は、ハロゲン化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、トシラートイオン、1〜6個の炭素原子を有するカルボン酸イオンを意味するC1−C6カルボン酸イオン、1〜4個の炭素原子を有するスルホン酸イオンであるC1−C4スルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンからなる群から選択される少なくとも一種のアニオンを含む、「遷移金属塩」のサブグループである。
「遷移金属の二価の塩」は、酸化状態(酸化数)IIの遷移金属の塩である。
「遷移金属の三価の塩」は、酸化状態IIIの遷移金属の塩である。
「遷移金属の酸化物」は、遷移金属の酸化物のみを含む遷移金属塩の別のサブグループである。
本開示中の「エナンチオマー過剰率」又は「ee」という語は、化合物のパーセントエナンチオマー過剰率と理解される。(+)及び(−)エナンチオマーの混合物について、各エナンチオマーの量をモル分率又は重量分率F(+)及びF(−)(ただしF(+)+F(−)=1)として与えると、エナンチオマー過剰率は|F(+)−F(−)|と定義され、本開示で使用されるエナンチオマー過剰率に対応するパーセントエナンチオマー過剰率は100×((|F(+)−F(−)|)/(F(+)+F(−)))と定義される。エナンチオマー過剰率は、例えば「ee94%」のように%で表される。さらなる詳細については、IUPAC,Compendium of Chemical Terminology,2nd ed.(the“Gold Book”)(1997)を参照されたい。オンライン修正版:(1996)“Enantiomer excess”。
この本文中で理解される「ジアステレオマー過剰率」又は「de」という語は、化合物のパーセントジアステレオマー過剰率を意味する。ジアステレオマー1とジアステレオマー2の混合物について、各ジアステレオマーの量をモル分率又は重量分率D(1)及びD(2)(ただしD(1)+D(2)=1)として与えると、ジアステレオマー過剰率は|D(1)−D(2)|と定義され、本開示で使用されるジアステレオマー過剰率に対応するパーセントジアステレオマー過剰率は100×((|D(1)−D(2)|)/(D(1)+D(2)))と定義される。ジアステレオマー過剰率は、例えば「de92%」のように%で表される。さらなる詳細については、IUPAC,Compendium of Chemical Terminology,2nd ed.(the“Gold Book”) (1997)を参照されたい。ライン修正版:(1996)“Diastereomer excess”。
「式3又は式5のアスタキサンチンが高度に富化されたアスタキサンチン」は、少なくとも95wt%の式3の化合物及び多くとも5wt%の式5の化合物を含むアスタキサンチンサンプル、又は少なくとも95wt%の式5の化合物及び多くとも5wt%の式3の化合物を含むアスタキサンチンサンプルを意味する。
この開示において用いられる「エナンチオ選択的移動水素化」は、気体H以外のソースから分子への水素のエナンチオ選択的付加であると理解される。
本明細書において開示される「後処理を行うことなく」は、先に行った処理又は反応ステップの反応物又は溶媒の1つを全く除去することなく、さらなる処理又は反応ステップを行うことを意味する。反応物又は溶媒の一部の量のみを除去することは、「後処理を行うことなく」の語に該当するとはみなされない。
「ワンポット」は、実行する化学反応又は実行する一連の化学反応を一つの同じ容器内で行い、化学反応又は一連の化学反応の最終生成物のみを前記容器からそのまま又は例えばさらなる精製のために取り出すことを表すものである。
本発明のさらに発展した実施形態は、環外二重結合がE配置又はE−及び/もしくはZ−配置のいずれかを有する式1のアスタセンを製造する方法であって、
Figure 2020511403
それぞれ(S)−又は(R)−立体配座を有する不斉中心3及び3’を有する一般式2のアスタキサンチン
Figure 2020511403
であって、前記アスタキサンチン2の環外二重結合がE−又はE−及び/もしくはZ配置のいずれかを有するアスタキサンチンを、少なくとも一種の第三級アルコラートの存在下で酸化し、前記アスタキサンチン2を複数回分に分けて(in multiple portions)反応手段に加える、方法を含む。
複数回分とは、3〜20回分、好ましくは4〜15回分、非常に好ましくは6〜10回分を意味する。
この方法により、非常に高度に濃縮された反応混合物が処理されることになり、つまり、時間当たりより多くの一般式2のアスタキサンチンを式1のアスタセンに変換することができる。
本実施形態の他に、又は本実施形態に加えて、本発明の方法は、バッチ式で、セミバッチ式(1種のみ又はいくつかの選択された試薬を反応混合物に加えることを意味する)で、又は反応器カスケード中もしくは管型反応装置中で連続的に行うのに適している。
本発明の方法のさらなる重要な特徴は、使用する少なくとも一種の第三級アルコラートの量である。実施例から得られるように、使用するアスタキサンチン2の量に対して、使用する第三級アルコラートの総量が2〜25モル当量、好ましくは3〜20モル当量、最も好ましくは4〜20モル当量の範囲内の場合に、高いアスタセン1の収率が得られる。本発明の方法のいくつかの実施形態について、使用するアスタキサンチン2の量に対して第三級アルコラートの総量が15〜25モル当量、好ましくは18〜20モル当量で、最も高いアスタセン1の収率が得られることが示された。これらの実施形態は、特に、「ワンポット」反応では行われないようなものを含む。
したがって、環外二重結合がE配置又はE−及び/もしくはZ−配置のいずれかを有する式1のアスタセンを製造する本発明の方法の別の実施形態は、
Figure 2020511403
それぞれ(S)−又は(R)−立体配座を有する不斉中心3及び3’を有する一般式2のアスタキサンチン
Figure 2020511403
であって、前記アスタキサンチン2の環外二重結合がE−又はE−及び/もしくはZ配置のいずれかを有するアスタキサンチンを、
少なくとも一種の第三級アルコラートの存在下で酸化し、使用するアスタキサンチン2の量に対して、使用する全ての第三級アルコラートの量が2〜25モル当量、好ましくは3〜20モル当量、最も好ましくは4〜20モル当量の範囲内であることを開示している。
実験により、第三級アルコラートのカチオンが反応時間及び収率の両方に影響することが示された。「K」及び「Na」がその他のカチオンと比べてより良好な候補であることがわかった。よって、本発明は、さらなる実施形態において、少なくとも一種の第三級アルコラートが、K、Naからなる群から選択される少なくとも一種の対イオンを有し、好ましくはKである対イオンを有することを規定している。
使用する攪拌機の種類も本発明の方法の収率に影響を及ぼすことが確定された。ディスクスターラーと比較して、実験室規模のインペラ(impeller)を用いることで、より高い収率が実現された。よって、本発明はまた、環外二重結合がE配置又はE−及び/もしくはZ−配置のいずれかを有する式1のアスタセンを製造する方法であって、
Figure 2020511403
それぞれ(S)−又は(R)−立体配座を有する不斉中心3及び3’を有する一般式2のアスタキサンチン
Figure 2020511403
であって、前記アスタキサンチン2の環外二重結合がE−又はE−及び/もしくはZ配置のいずれかを有するアスタキサンチンを、
少なくとも一種の第三級アルコラートの存在下で酸化し、前記酸化をインペラを混合手段として用いて行う方法を開示する実施形態の保護も要する。
本発明の省溶媒の実施形態は、環外二重結合がE配置又はE−及び/もしくはZ−配置のいずれかを有する式1のアスタセンを製造する方法であって、
Figure 2020511403
それぞれ(S)−又は(R)−立体配座を有する不斉中心3及び3’を有する一般式2のアスタキサンチン
Figure 2020511403
であって、前記アスタキサンチン2の環外二重結合がE−又はE−及び/もしくはZ配置のいずれかを有するアスタキサンチンを、
少なくとも一種の第三級アルコラートの存在下で酸化し、前記少なくとも一種の第三級アルコラートがプロセス溶媒(process solvent)である方法である。
しかしながら、少量の第三級アルコラートを用いる場合、本発明の方法は溶媒中で行われる。このような、環外二重結合がE配置又はE−及び/もしくはZ−配置のいずれかを有する式1のアスタセンを製造する方法は、
Figure 2020511403
それぞれ(S)−又は(R)−立体配座を有する不斉中心3及び3’を有する一般式2のアスタキサンチン
Figure 2020511403
であって、前記アスタキサンチン2の環外二重結合がE−又はE−及び/もしくはZ配置のいずれかを有するアスタキサンチンを、
−塩素化C6−C8−アロマート(aromates)、C4−C8−エーテル、C1−C6−アルコール、ハロゲン化C1−C4−炭化水素、C2−C4−ニトリル、C2−C7−エステルを含む群、好ましくはこれらからなる群から選択される溶媒又は溶媒混合物中で、且つ
−少なくとも一種の第三級アルコラートの存在下で、
酸化することを記載している。
塩素化C6−C8−アロマートは、以下の化合物、すなわち、クロロベンゼン、2−クロロトルエン及びその異性体、クロロキシレン及びその異性体の少なくとも一種を含むことが理解される。非常に好ましいC6−C8−アロマートはクロロベンゼンである。
C4−C8エーテルの群は、以下の化合物、すなわち、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、2−メチル−テトラヒドロフラン、メチル−tert.−ブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジシクロペンチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルの少なくとも一種を含む。ジ−n−ブチルエーテルが非常に好ましい。
C1−C6アルコールの群は、以下のアルコール、すなわち、メタノール、エタノール、2−メトキシエタノール、エチレングリコール、n−プロパノール、イソプロパノール、2−メトキシ−1−プロパノール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、n−ブタノール、sec.−ブタノール、イソブタノール、tert.−ブタノール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−2,3−ブタンジオール、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ジエチレングリコール、n−ペンタノール、2−ペンタノール、イソペンチルアルコール、イソアミルアルコール又は3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、ネオペンチルアルコール、tert.−ペンチルアルコール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオールシクロペンタノール、シクロヘキサノール、n−ヘキサノール、1.3−ジメチルブタノール又はアミルメチルアルコール、ジアセトンアルコール、メチル2−エチル−2−イソブチルカルビノール、tert.−ヘキシルアルコール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、ピナコール又は2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、グリセリン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパンの少なくとも一種からなる。これらのアルコールのうち、t−ブタノールが非常に好ましい。なぜなら、以下の実施例からわかるように、その他の溶媒と比べてよい収率をもたらすためである。
ハロゲン化C1−C4炭化水素は、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、1,1,2,2−テトラクロロエタンを含むことを意図している。これらのうち、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロメタン及び1,1,2,2−テトラクロロエタンが非常に好ましい。
C2−C4−ニトリルは、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリルからなる化合物の群を含む。好ましい候補はアセトニトリルである。
2〜7個の炭素原子を有するエステル(C2−C7−エステル)も同様に溶媒として働き、メチルホルマート、エチルホルマート、n−プロピルホルマート、イソ−プロピルホルマート、n−ブチルホルマート、メチルアセタート、エチルアセタート、n−プロピルアセタート、イソ−プロピルアセタート、n−ブチルアセタート、メチルプロピオナート、エチルプロピオナート、n−プロピルプロピオナート、イソ−プロピルプロピオナート、n−ブチルプロピオナートを含む群、好ましくはこれらからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含む。好ましい候補は、エチルアセタートである。
これらの溶媒のうち、t−ブタノールが、本発明の方法の化合物を溶解するための最も好適な能力を示した。
第三級アルコラートは本発明の方法に必須のものである。なぜなら、例えばナトリウムメタノラート及びナトリウムエタノラートのような第二級又は第一級アルコラートは、高い収率及び短縮した反応時間をもたらすことができなかったためである。上記で定義した第三級アルコラートのうち、C4−C6アルコラートの種類のものがコストの理由から非常に好ましい。第三級C4−C6アルコラートは、4〜6個の炭素原子を含む。第三級C4−C6アルコラートは、tert.−ブタノラート、2−メチルブタン−2−オラート、1,1−ジメチルプロパン−1−オラート、1,1−ジメチルブタン−1−オラートを含む群、好ましくはこれらからなる群から選択される。
この観察結果を考慮すると、本発明の別の実施形態は、環外二重結合がE配置又はE−及び/もしくはZ−配置のいずれかを有する式1のアスタセンを製造する方法であって、
Figure 2020511403
それぞれ(S)−又は(R)−立体配座を有する不斉中心3及び3’を有する一般式2のアスタキサンチン
Figure 2020511403
であって、前記アスタキサンチン2の環外二重結合がE−又はE−及び/もしくはZ配置のいずれかを有するアスタキサンチンを、
少なくとも一種の第三級C4−C6−アルコラートの存在下で酸化し、使用するアスタキサンチン2の量に対して、使用する全ての第三級アルコラートの量が2〜25モル当量、好ましくは3〜20モル当量、最も好ましくは4〜20モル当量の範囲内である、方法を開示している。
実施例から、一般式2のアスタキサンチンを少なくとも一種の金属塩の存在下で酸化すると、アスタセン1の収率及びアスタキサンチン2の転化率が増加することが観察される。金属塩は、上記で定義した塩である。
このことは、金属塩が、遷移金属の塩からなる群から及び/又は遷移金属の酸化物からなる群から、好ましくは遷移金属の二価及び/又は三価の塩から、より好ましくはMn、Co、Fe、Cu、Ruからなる群から選択される遷移金属の二価及び/又は三価の塩から、非常に好ましくはMn(II)、Co(II)、Fe(II)、Cu(II)及びRu(III)からなる群から選択される遷移金属の二価及び/又は三価の塩から選択される遷移金属塩である場合に、特に当てはまる。
遷移金属塩は、Cu、Co、Ru、Mn、Cr、Ti、V、Fe、Ni、Pd、Pt、Ag、Zr、Mo、Rh、W、Re、Os、Ir、Au及びHgからなる金属の群から選択される少なくとも一種の塩であると理解される。Mn、Co、Fe、Cu、Ruからなる金属の群から選択される少なくとも一種の遷移金属塩を用いて、短い反応時間の間にアスタセン1の良好な収率及びアスタキサンチン2の高い転化率が得られることが示された。
好ましい遷移金属の塩は、上記で定義したようにハロゲン化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、トシラートイオン、C1−C6カルボン酸イオン、C1−C4スルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンからなる群から選択される少なくとも一種のアニオンを含み、好ましくは少なくとも一種のアニオンのみを含み、カチオンとしてCu、Co、Ru、Mn、Cr、Ti、V、Fe、Ni、Pd、Pt、Ag、Zr、Mo、Rh、W、Re、Os、Ir、Au及びHgからなる群から選択される少なくとも一種の金属を有する塩である。より好ましくは、前記遷移金属の塩は、上記で定義したようにハロゲン化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、トシラートイオン、C1−C6カルボン酸イオン、C1−C4スルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンからなる群から選択される少なくとも一種のアニオンを含み、好ましくは少なくとも一種のアニオンのみを含み、カチオンとしてMn、Co、Fe、Cu、Ruからなる金属の群から選択される少なくとも一種の金属を有する塩である。非常に好ましくは、前記遷移金属の塩は、上記で定義したようにハロゲン化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、トシラートイオン、C1−C6カルボン酸イオン、C1−C4スルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンからなる群から選択される少なくとも一種のアニオンを含み、好ましくは少なくとも一種のアニオンのみを含み、カチオンとしてMn(II)、Co(II)、Fe(II)、Cu(II)、Ru(III)からなる金属の群から選択される少なくとも一種の金属を有する塩である。
より好ましい遷移金属の塩は、遷移金属の二価又は三価の塩、特に、前段落において開示した遷移金属二価又は三価の塩である。
遷移金属の酸化物は、MnO、Co、FeO、Fe、CuO、CuO、Ru、MnO、Fe、Ruを含む群、好ましくはこれらからなる群から選択される少なくとも一種の化合物である
その他のアニオンのうち、実験から、ハロゲン化物イオン、C1−C6−カルボン酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、C1−C4−スルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トシラートイオンからなる群から選択される少なくとも一種のアニオンを含み、好ましくは少なくとも一種のアニオンのみを含むこのような金属塩が、反応混合物に非常に適合することが示された。
一般式2のアスタキサンチンのアスタセン1への転化に影響を及ぼすには少量の金属塩しか必要ないことが観察された。このことは有利である。なぜなら、生成物であるアスタセン1は、なるべく少量の金属イオンを含有することが求められ、さもなければその後のステップで苦労して除去しなければならないためである。
したがって、環外二重結合がE配置又はE−及び/もしくはZ−配置のいずれかを有する式1のアスタセンを製造する方法であって、
Figure 2020511403
それぞれ(S)−又は(R)−立体配座を有する不斉中心3及び3’を有する一般式2のアスタキサンチン
Figure 2020511403
であって、前記アスタキサンチン2の環外二重結合がE−又はE−及び/もしくはZ配置のいずれかを有するアスタキサンチンを、
少なくとも一種の第三級アルコラート及び少なくとも一種の金属塩の存在下で酸化し、使用する一般式2のアスタキサンチンの量に対して、使用する金属塩の量が合計して0〜4mol%、好ましくは0.05〜2mol%、最も好ましくは0.1〜1mol%の範囲内である、方法についても保護が求められる。
先の実施形態において使用する金属塩は、好ましくは、遷移金属の塩からなる群から及び/又は遷移金属の酸化物からなる群から、より好ましくは遷移金属の二価及び/又は三価の塩から、さらに好ましくはMn、Co、Fe、Cu、Ruからなる群から選択される遷移金属の二価及び/又は三価の塩から、非常に好ましくはMn(II)、Co(II)、Fe(II)、Cu(II)及びRu(III)からなる群から選択される遷移金属の二価及び/又は三価の塩から選択される遷移金属塩である。
本発明の方法のさらに発展した実施形態において、窒素化合物が重要であることがわかった。なぜなら、窒素化合物が、使用する第三級アルコラートのカチオンと錯体を形成するためである。したがって、一般式2のアスタキサンチンを少なくとも一種の窒素化合物の存在下で酸化することについても保護が求められ、前記少なくとも一種の窒素化合物は、第三級アミン、ピリジン、ジアミン及びジピリジンを含む群、好ましくはこれらからなる群から選択され、このうち、N,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)が非常に好ましい。これは、第三級アルコラートアニオンをより一層非遮蔽にする、N,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)のカチオンキレートのような特性が存在することに起因するものであり得る。
使用するアスタキサンチンよりもずっと少ないモル量で窒素化合物を使用しても十分であることが分かった。よって、本発明のさらに詳細な実施形態は、環外二重結合がE配置又はE−及び/もしくはZ−配置のいずれかを有する式1のアスタセンを製造する方法であって、
Figure 2020511403
それぞれ(S)−又は(R)−立体配座を有する不斉中心3及び3’を有する一般式2のアスタキサンチン
Figure 2020511403
であって、前記アスタキサンチン2の環外二重結合がE−又はE−及び/もしくはZ配置のいずれかを有するアスタキサンチンを、
少なくとも一種の第三級アルコラート及び少なくとも一種の窒素化合物の存在下で酸化し、
前記少なくとも一種の窒素化合物が、第三級アミン、ピリジン、ジアミン及びジピリジンを含む群、好ましくはこれらからなる群から選択され、使用するアスタキサンチン2の0〜0.1モル当量、好ましくは0〜0.06モル当量、最も好ましくは0〜0.02モル当量の範囲内の量で使用される、方法を含む。
窒素化合物は、短い反応時間の後の反応収率に有利な効果を有することが分かった。しかしながら、使用する第三級アルコラートの量が低減されていれば、窒素化合物を排除することもできる。この結果を保護するために、本発明のさらなる実施形態は、環外二重結合がE配置又はE−及び/もしくはZ−配置のいずれかを有する式1のアスタセンを製造する方法であって、
Figure 2020511403
それぞれ(S)−又は(R)−立体配座を有する不斉中心3及び3’を有する一般式2のアスタキサンチン
Figure 2020511403
であって、前記アスタキサンチン2の環外二重結合がE−又はE−及び/もしくはZ配置のいずれかを有するアスタキサンチンを、
少なくとも一種の第三級アルコラートの存在下で酸化し、使用する全ての第三級アルコラートの量が、使用するアスタキサンチン2の量に対して2〜10モル当量、好ましくは3〜8モル当量、最も好ましくは4〜6モル当量の範囲内の量である、方法を開示している。
従来技術のアスタセンを形成するためのアスタキサンチンの酸化は、上述のように、7〜28時間かかり、したがって非常に時間がかかる。この新規に開発された方法は、より短い時間でより高い収率をもたらす。したがって、本発明のさらなる実施形態は、式1のアスタセンを製造する方法であって、一般式2のアスタキサンチンを少なくとも一種の第三級アルコラートの存在下で、0.25〜6時間、好ましくは0.5〜5時間、より好ましくは1〜4時間、最も好ましくは2〜3時間の範囲内の時間酸化する方法である。前記実施形態は、費用効果が高く、時間当たりにより多くのアスタセン1をもたらす。
従来技術における反応温度は、55〜80℃の範囲内である。一例だけ30℃で働くことができるが、しかしながら、25時間の長い反応時間という犠牲を払っている。以下の実施例からわかるように、新規に開発された方法は適度な温度で行われ、したがって従来技術よりも有利である。このことは、環外二重結合がE配置又はE−及び/もしくはZ−配置のいずれかを有する式1のアスタセンを製造する方法であって、
Figure 2020511403
それぞれ(S)−又は(R)−立体配座を有する不斉中心3及び3’を有する一般式2のアスタキサンチン
Figure 2020511403
であって、前記アスタキサンチン2の環外二重結合がE−又はE−及び/もしくはZ配置のいずれかを有するアスタキサンチンを、
少なくとも一種の第三級アルコラートの存在下で、0〜40℃、好ましくは21〜40℃の範囲内の温度で酸化する方法を開示している、本発明のさらなる実施形態により反映されている。
従来技術に対する利点は、環外二重結合がE配置又はE−及び/もしくはZ−配置のいずれかを有する式1のアスタセンを製造する本発明の方法であって、
Figure 2020511403
それぞれ(S)−又は(R)−立体配座を有する不斉中心3及び3’を有する一般式2のアスタキサンチン
Figure 2020511403
であって、前記アスタキサンチン2の環外二重結合がE−又はE−及び/もしくはZ配置のいずれかを有するアスタキサンチンを、
少なくとも一種の第三級アルコラートの存在下で、0〜40℃、好ましくは21〜40℃の範囲内の温度で、0.25〜6時間、好ましくは0.5〜5時間、より好ましくは1〜4時間、最も好ましくは2〜3時間の範囲内の時間、酸化する、本発明の方法の実施形態において、より一層明らかである。
アスタキサンチンをアスタセンに転化するための既知の反応は、上述したように、酸素雰囲気を必要とするという大きな欠点がある。本発明の方法は、一般式2のアスタキサンチンを、不活性ガス雰囲気中、又は空気と不活性ガスの混合物雰囲気中、又は空気雰囲気中で酸化することにより、この欠点を防いでおり、前記各雰囲気は0〜50vol%、好ましくは5〜30vol%、より好ましくは6〜20vol%、最も好ましくは7〜15vol%の酸素を含む。この特徴により、本発明の方法は、爆発保護手段を排除することができるため、特に大規模の場合に非常に安価である。
本開示内の「不活性ガス」という語は、窒素、アルゴン、二酸化炭素からなる群から選択される少なくとも一種の気体であることが意図されている。
必要とされる各雰囲気の気体又は複数の気体は、別個に又は混合物として反応容器に補充される。気体は反応混合物に導入されるか、又は反応混合物を通過する。このために、ガススターラー(gassing stirrer)又は反応混合ポンプ及び反応混合ノズルのような、化学反応のためのガス処理手段が用いられる。
本発明の方法は、低圧、周囲気圧又は加圧下で行うのに適しており、周囲気圧から10bar(1000kPa)以下の範囲内の圧力が非常に好ましい。
本発明の方法は、以下の実施形態で考慮すべき延長がある。それは、一般式2の種々のアスタキサンチン異性体の混合物から、エナンチオマー的に純粋な式3もしくは式5のアスタキサンチン、又は式3もしくは式5のアスタキサンチンが高度に富化されたアスタキサンチンを調製する方法であって、a)好ましくは上記の実施形態の少なくとも一つに従って、一般式2のアスタキサンチンを溶媒中又は溶媒混合物中で少なくとも一種の第三級アルコラートの存在下で酸化して、式1のアスタセンを形成し、b)式1のアスタセンをエナンチオ選択的移動水素化により還元して式3の3S,3’S−アスタキサンチン
Figure 2020511403
又は式5の3R,3’R−アスタキサンチン
Figure 2020511403
を形成し、式3の3S,3’S−アスタキサンチン又は式5の3R,3’R−アスタキサンチンの環外二重結合が、E−又はE−及び/もしくはZ配置のいずれかを有する、方法である。
この方法は、式2のラセミアスタキサンチンを式3の3S,3’S−アスタキサンチン又は式5の3R,3’R−アスタキサンチンに変換する今まで知られていない短時間且つ単純なルートをもたらす。全反応シーケンスは8〜25時間を必要とし、これは極めて高速である。この方法は、一般式2のアスタキサンチンに対して60〜70%の範囲内の全収率をもたらす。ステップa)及びb)が連続して並んでいること(straight alignment)により、この方法は、以下の実施例からわかるように、安価で省エネルギーあり、必要とされるアスタキサンチンエナンチオマー3又は5の高い収率をもたらす。化合物3又は化合物5のエナンチオマー過剰率は100%であり、ジアステレオマー過剰率は93%である。つまり、それぞれの他方の光学活性対掌体3又は5の形成がほぼ完全に抑制される。
上記の本発明の方法の延長の相当な平易さ(smoothness)は言うまでもないが、さらなる実施形態においてプロセスステップa)において得られた式1のアスタセンを、後処理を行うことなく、エナンチオ選択的移動水素化により還元して、式3の3S,3’S−アスタキサンチン又は式5の3R,3’R−アスタキサンチンを形成することは、より一層驚くべきことである。
プロセスステップa)から、第三級アルコラート及び対応するアルコラート対イオンが(そしていくつかの実施形態については金属塩又は遷移金属塩も)、ステップb)のエナンチオ選択的移動水素化の間、依然として反応混合物中に残っていることを念頭に置く必要がある。これらの反応物がステップb)のエナンチオ選択的移動水素化の反応物を妨げないことは相当な驚きである。なぜなら、ステップa)は酸化反応であり、ステップb)は選択的還元反応であるためである。例えば、当業者であれば、プロセスステップa)の第三級ブタノラート又はTMEDA又はMn(II)アセタート(以下の実施例参照)が存在することが、プロセスステップb)の結果及びそこで用いられる化合物に影響を与えることを予期するであろうが、しかし、影響は見られない。
ステップa)及びステップb)をその間に「後処理を行うことなく」行うことができることにより、精製ステップ及び形成される副生成物の量が低減されるため、この方法は極めて高速かつ安価になる。中間体又は粗生成物の煩雑な処理又は処置が排除される。
拡張された実施形態における、ラセミアスタキサンチンをエナンチオマー的に純粋な式3もしくは式5のアスタキサンチンに、又は式3もしくは式5のアスタキサンチンが高度に富化されたアスタキサンチンに転化する方法は、エナンチオ選択的移動水素化をギ酸と遷移金属触媒の組み合わせにより行うことを定め、前記遷移金属触媒は、好ましくはHN−CHPh−CHPh−OH、HN−CHMe−CHPh−OH、MeHN−CHMe−CHPh−OH、TsNH−CHPh−CHPh−NH、(1S,2S)−N−p−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、(1R,2R)−N−p−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、N−[(1S,2S)−1,2−ジフェニル−2−(2−(4−メチルベンジルオキシ)エチルアミノ)−エチル]−4−メチルベンゼンスルホンアミド又はN−[(1R,2R)−1,2−ジフェニル−2−(2−(4−メチルベンジルオキシ)エチルアミノ)−エチル]−4−メチルベンゼンスルホンアミドである、少なくとも一種の光学活性アミンと;少なくとも一種の光学活性アミノ酸とからなる群から選択される少なくとも一種の配位子を含み、非常に好ましい実施形態においては、少なくとも一種の配位子は、HN−CHPh−CHPh−OH、HN−CHMe−CHPh−OH、MeHN−CHMe−CHPh−OH、TsNH−CHPh−CHPh−NH、(1S,2S)−N−p−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、(1R,2R)−N−p−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、N−[(1S,2S)−1,2−ジフェニル−2−(2−(4−メチルベンジルオキシ)エチルアミノ)−エチル]−4−メチルベンゼンスルホンアミド、N−[(1R,2R)−1,2−ジフェニル−2−(2−(4−メチルベンジルオキシエチルアミノ)−エチル]−4−メチルベンゼンスルホンアミドからなる群から選択される。
移動水素化は、ギ酸を還元手段として用いる場合に、必要とされる化合物3又は5の特に高い収率をもたらすことが示された。ギ酸の代わりに又はギ酸とともに、その他の還元剤(例えば第二級アルコール)をエナンチオ選択的移動水素化のための還元手段として用いることもできるが、しかしながら、収率及び/又は転化率がより低くなる。
その他の還元手段は、イソプロパノール、2−ブタノール、シクロヘキサノールからなる群から選択される。
つまり、本発明の別の実施形態は、一般式2のアスタキサンチンと呼ばれる種々のアスタキサンチン異性体の混合物から、エナンチオマー的に純粋な式3もしくは式5のアスタキサンチン、又は式3もしくは式5のアスタキサンチンが高度に富化されたアスタキサンチンを調製する方法であって、a)好ましくは上記の実施形態の少なくとも一つに従って、一般式2のアスタキサンチンを溶媒中又は溶媒混合物中で少なくとも一種の第三級アルコラートの存在下で酸化して、式1のアスタセンを形成し、b)式1のアスタセンをエナンチオ選択的移動水素化により還元して式3の3S,3’S−アスタキサンチン
Figure 2020511403
又は式5の3R,3’R−アスタキサンチン
Figure 2020511403
を形成し、式3の3S,3’S−アスタキサンチン又は式5の3R,3’R−アスタキサンチンの環外二重結合が、E−又はE−及び/もしくはZ配置のいずれかを有し、エナンチオ選択的移動水素化が、ギ酸、イソプロパノール、2−ブタノール、シクロヘキサノールからなる群から選択される少なくとも一種の化合物と遷移金属触媒の組み合わせを用いて行われ、前記遷移金属触媒が、好ましくはHN−CHPh−CHPh−OH、HN−CHMe−CHPh−OH、MeHN−CHMe−CHPh−OH、TsNH−CHPh−CHPh−NH、(1S,2S)−N−p−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、(1R,2R)−N−p−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、N−[(1S,2S)−1,2−ジフェニル−2−(2−(4−メチルベンジルオキシ)エチルアミノ)−エチル]−4−メチルベンゼンスルホンアミド又はN−[(1R,2R)−1,2−ジフェニル−2−(2−(4−メチルベンジルオキシ)エチルアミノ)−エチル]−4−メチルベンゼンスルホンアミドである、少なくとも一種の光学活性アミンと;少なくとも一種の光学活性アミノ酸とからなる群から選択される少なくとも一種の配位子を含む、方法を開示しており、非常に好ましい実施形態において、少なくとも一種の配位子は、HN−CHPh−CHPh−OH、HN−CHMe−CHPh−OH、MeHN−CHMe−CHPh−OH、TsNH−CHPh−CHPh−NH、(1S,2S)−N−p−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、(1R,2R)−N−p−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、N−[(1S,2S)−1,2−ジフェニル−2−(2−(4−メチルベンジルオキシ)エチルアミノ)−エチル]−4−メチルベンゼンスルホンアミド、N−[(1R,2R)−1,2−ジフェニル−2−(2−(4−メチルベンジルオキシ)エチルアミノ)−エチル]−4−メチルベンゼンスルホンアミドからなる群から選択される。
エナンチオ選択的移動水素化についてのより多くの詳細は、WO2016/023732A1から得ることができ、その内容は参照により本開示に完全に組み入れられる。
上記の還元手段と遷移金属触媒の組み合わせにより、アスタセンのような複雑なシクロヘキサジエノロンを3位において選択的に還元することができることは、驚くべきことである。
一般式2の種々のアスタキサンチン異性体の混合物を式3の3S,3’S−アスタキサンチンに、又は式5の3R,3’R−アスタキサンチンに転化する本発明の方法の延長は、ステップa)において使用した溶媒又は溶媒混合物をステップb)の前に部分的に又は完全に交換する場合に、さらに一層改善することができる。
このことは、ステップa)を行い、使用した溶媒を部分的に又は完全に交換し、その後にのみステップb)を行うことが、(部分的な)溶媒交換を行わない方法と比べて、収率の点でより有効であることを意味する。この方法により、ステップb)の反応混合物がより容易に式3の3S,3’S−アスタキサンチン又は式5の3R,3’R−アスタキサンチンに変換される。さらに、これらの化合物は、ステップa)の溶媒又は溶媒混合物中でこれらの化合物を得る/保持する場合と比べて、非常に容易に結晶化する。
延長された本発明の方法のさらに一層発展した実施形態は、一般式2の種々のアスタキサンチン異性体の混合物から、エナンチオマー的に純粋な式3もしくは式5のアスタキサンチン、又は式3もしくは式5のアスタキサンチンが高度に富化されたアスタキサンチンを調製する方法であって、a)一般式2のアスタキサンチンを溶媒中又は溶媒混合物中で少なくとも一種の第三級アルコラートの存在下で酸化して、式1のアスタセンを形成し、b)式1のアスタセンをエナンチオ選択的移動水素化により還元して式3の3S,3’S−アスタキサンチン
Figure 2020511403
又は式5の3R,3’R−アスタキサンチン
Figure 2020511403
を形成し、式3の3S,3’S−アスタキサンチン又は式5の3R,3’R−アスタキサンチンの環外二重結合が、E−又はE−及び/もしくはZ配置のいずれかを有し、ステップb)を不活性ガス中で行う、方法を開示している。
つまり、ステップa)の最後にフラスコ、容器又は反応器に窒素又はアルゴンをフラッシュし(flush)、反応混合物を不活性ガス中に維持し、ステップb)を不活性ガス中で行う。
このさらなる本発明の方法は、還元手段及び/もしくは遷移金属触媒、並びに/もしくは前記遷移金属触媒の少なくとも一種の配位子を酸化することができる又は少なくとも変化させることができる微量の酸素又は酸素成分が存在することによる、ステップb)の減速を防止する。
延長された本発明の方法のさらに別の実施形態は、プロセスステップb)の後、プロセスステップc)において、60〜120℃、好ましくは80〜110℃、非常に好ましい実施形態においては90〜106℃の温度までの加熱を行うことを規定する。
本実施形態は、式3の3S,3’S−アスタキサンチン又は式5の3R,3’R−アスタキサンチンの形態を非常に均一にするため、重要であるとされる。特に、本実施形態は、式3又は式5の化合物に、均一にオールトランス(all−trans)又はオールE(all−E)配置をとらせる。
式3の3S,3’S−アスタキサンチン又は式5の3R,3’R−アスタキサンチンである化合物は、多くの用途のために非常に純粋であることが求められる。とりわけ、これらの化合物を食品サプリメント又は医薬において用いるためには、残留試薬及びとりわけ微量金属をできるだけ排除しなければならない。
これは、一般式2の種々のアスタキサンチン異性体の混合物から、エナンチオマー的に純粋な式3もしくは式5のアスタキサンチン、又は式3もしくは式5のアスタキサンチンが高度に富化されたアスタキサンチンを調製するための、さらに別の延長した方法であって、a)一般式2のアスタキサンチンを溶媒中又は溶媒混合物中で少なくとも一種の第三級アルコラートの存在下で酸化して、式1のアスタセンを形成し、b)式1のアスタセンをエナンチオ選択的移動水素化により還元して式3の3S,3’S−アスタキサンチン
Figure 2020511403
又は式5の3R,3’R−アスタキサンチン
Figure 2020511403
を形成し、式3の3S,3’S−アスタキサンチン又は式5の3R,3’R−アスタキサンチンの環外二重結合が、E−又はE−及び/もしくはZ配置のいずれかを有し、プロセスステップb)の後、プロセスステップc)において、60〜120℃、好ましくは80〜110℃、非常に好ましい実施形態においては90〜106℃の温度までの加熱を行い、プロセスステップc)における前記加熱を、メタノール中で、及び/又はプロセスステップc)の反応混合物に繰り返しシリカを加えることにより、行う方法により達成される。
本開示中のシリカは、任意の種類の二酸化ケイ素(例えば、粒状、ガラス質、多孔質の形態)を意味すると理解される。
メタノール中の処理及び/又はプロセスステップc)の反応混合物への繰り返しのシリカ添加により、微量の試薬及びとりわけ微量金属が相当な程度まで除去されることがわかった。例えば、ステップc)においてメタノールを用いて処理した場合、式3の3S,3’S−アスタキサンチン又は式5の3R,3’R−アスタキサンチン中75ppmの金属しか見られなかった。シリカを用いた場合、105ppmの金属が見られた。強酸性樹脂Amberlyst(登録商標)15を用いた処理又はアンモニア水を用いた抽出により、幾分より良くない結果が得られた。前記処理を行わなかった場合、式3の3S,3’S−アスタキサンチン又は式5の3R,3’R−アスタキサンチンにおいて、微量金属の量は920ppmであった。
上記のように、式3の3S,3’S−アスタキサンチン又は式5の3R,3’R−アスタキサンチンを一般式2の種々のアスタキサンチン異性体の混合物から製造する方法は、安価で簡単であることが必要である。この必要性は、プロセスステップa)及びb)、好ましくはプロセスステップa)、b)及びc)が「ワンポット」で行われる、延長した本発明の方法のさらなる実施形態によりサポートされる。
そうすることにより、容器(vessel)、フラスコ、容器(receptacle)等の数が減るだけでなく、反応時間が相当に高速になり同時に消費エネルギーが減少する。同様に、中間体又は粗生成物の煩雑な処理又は処置が排除される。
これらの利点は、以下の延長された実施形態であって、一般式2のアスタキサンチンと称される種々のアスタキサンチン異性体の混合物から、エナンチオマー的に純粋な式3もしくは式5のアスタキサンチン、又は式3もしくは式5のアスタキサンチンが高度に富化されたアスタキサンチンを調製する方法であって、
a)一般式2のアスタキサンチンを溶媒中又は溶媒混合物中で少なくとも一種の第三級アルコラートの存在下で酸化して式1のアスタセンを形成し、使用する全ての第三級アルコラートの量が、使用するアスタキサンチン2の量に対して2〜20モル当量、好ましくは2〜10モル当量、さらにより好ましくは3〜8モル当量、最も好ましくは4〜6モル当量の範囲内の量であり、
b)式1のアスタセンをエナンチオ選択的移動水素化により還元して式3の3S,3’S−アスタキサンチン
Figure 2020511403
又は式5の3R,3’R−アスタキサンチン
Figure 2020511403
を形成し、式3の3S,3’S−アスタキサンチン又は式5の3R,3’R−アスタキサンチンの環外二重結合が、E−又はE−及び/もしくはZ配置のいずれかを有し、
プロセスステップa)及びb)、好ましくはプロセスステップa)、b)及びc)を「ワンポット」で行う方法を開示している実施形態についてもさらに一層当てはまる。
本発明の実験を「ワンポット」プロトコルを用いて行ったとき、依然として式3又は式3のアスタキサンチンの高い収率を、好ましくは高い反応速度で得るためには、使用する全ての第三級アルコラートの量が上述したようなものであるべきであることが認められた。
本発明のさらなる実施形態は、全てが本発明の方法により得られた、エナンチオマー的に純粋な式3もしくは式5のアスタキサンチン、又は式3もしくは式5のアスタキサンチンが高度に富化されたアスタキサンチンを含む非治療用調製物である。エナンチオマー的に純粋な又は高度に富化された式3もしくは式5のアスタキサンチンを含有する典型的な非治療用調製物は、14mgの式3の3S,3’S−アスタキサンチン、16mgのビタミンC、カプセルフィラーとして微結晶セルロース、及びカプセルシェルとしてヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。
本発明のさらに別の実施形態は、全てが本発明の方法により得られた、エナンチオマー的に純粋な式3もしくは式5のアスタキサンチン、又は式3もしくは式5のアスタキサンチンが高度に富化されたアスタキサンチンを含む、医薬又は医療用途のための調製物である。典型的な医薬又は医療用途のための調製物は、6mgのエナンチオマー的に純粋な又は高度に富化された式3又は式5のアスタキサンチン、15IUのビタミンE、全ての脂肪酸の重量を100%として75wt%のオレイン酸、20%のリノール酸、5wt%のパルミチン酸を含み、全ての脂肪酸の重量は医薬又は医療用途の調製物の60〜80wt%を構成する。前記調製物は、ゼラチン、グリセロール及び水を含む標準的なジェルキャップ(gel cap)をさらに含み、前記ジェルキャップは上記化合物のための容器である。
ここで、以下の例により本発明をさらに説明するが、しかしながら、以下の例は決して本発明の思想を減じるものではなく、説明目的のものに過ぎない。
有効性(potency)[%]、及び[%]単位の収率を以下のようにして測定した。得られたそれぞれの生成物のサンプルをアセトニトリル/クロロホルムの溶媒混合物に溶解し、Agilent Series 1100 HPLCに取り付けたAgilentのZorbax Extend C18カラムに注入した。溶媒Aとしての水及び溶媒Bとしてのアセトニトリル/2−プロパノール(1:1)を含む溶媒系を用いて溶離を行った。得られたそれぞれの化合物の重量パーセントを、重量パーセント=(ピーク面積×100×レスポンスファクター)/サンプルの初期重量という等式(レスポンスファクターは、サンプルの初期重量/ピーク面積として定義される)に従って測定した。100a%という値は、100%の面積すなわち100a%をなす一個のピークの出現を意味する。
エナンチオマー過剰率及びジアステレオマー過剰率を、分析するサンプルを含有するジクロロメタン、n−へプタン、エタノールの溶媒混合物を補充した2xChirex(R)−PGLYカラムで測定した。
実施例1〜6:
142.5g(1.92mol)のtert.−ブタノール、28.2g(251.3mmol、20モル当量)のカリウム−tert.−ブタノラート、29.21g(0.25mmol、0.02モル当量)のN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン、及び下記表1に示す金属塩を40℃で1000mlの三ツ口フラスコ中に入れた。フラスコの上部空間を窒素(45.3L/h)及び空気(22.8L/h)で同時にパージした。1時間の期間の間、7.5g(12.57mmol)の一般式2のアスタキサンチン(異性体比R,R:R,S:S,S=1:2:1)を、7回分に分けて、十分に撹拌しながら(500r.p.m.)均等に加えた。フラスコを常にパージしながら、撹拌をさらに1時間継続した。その後、反応混合物に350mlのジクロロメタン及び18.9gの酢酸を補充する。次いで、前記混合物を100mlの水で洗浄し、126gの飽和重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、再度100mlの水で洗浄する。有機相を減圧下で除去し、残りをさらに精製することなく分析する。
Figure 2020511403
実施例7〜9:(ガス注入様式、温度及び溶媒の影響)
これらの実施例は、実施例5について先に記載したように行った。ただし、2−メチル−ブタン−2−オール中で行った。温度及びガス注入の様式を変えた。
Figure 2020511403
2−メチル−ブタン−2−オールと比べて、t−ブタノールは収率及び化合物の溶解度に関して優れていることが観察される。2−メチル−ブタン−2−オールでは、温度が低いほど収率向上効果を有することが示された。
実施例10〜11(ガスの量及び組成の変化、使用するカリウム−tert.−ブタノラートの量及び反応時間の変化)
実施例10〜11を実施例9のように0℃で行った。ただし、カリウム−tert.−ブタノラートを10モル当量のみとし、空気雰囲気中で様々な反応時間で行った。
Figure 2020511403
空気雰囲気中での生成物の形成には、より長い時間が必要であり、反応時間に伴って副生成物及び過酸化生成物の量が増加することが理解される。
実施例12(TMEDA及びカリウム−tert.−ブタノラートの量の変化)
実施例12を実施例1のように行った。ただし、TMEDA及び/又はカリウム−tert.−ブタノラートの量を変えた。
Figure 2020511403
量を減らしたカリウム−tert.−ブタノラートを用いた場合、窒素化合物TMEDAを省略しても、短い反応時間で依然として十分なアスタセン1の収率が得られる。
実施例13
1490g(20.1mmol)のtert.−ブタノール、75.2g(0.67mol、4モル当量)のカリウム−t−ブタノラート及び0.289g(0.0017mol、0.01モル当量)のマンガン−(II)−アセタートを、40℃で2Lのミニプラント反応器(miniplant−reactor)中に入れ、前記反応器を窒素及び7vol%の酸素部分からなるガス流れでパージした。10回分に分けたアスタキサンチン(合計100g、0.1675mol、異性体比R,R:R,S:S,S=1:2:1)を145分の期間にわたって反応器に等しく計量添加した。混合物をさらに30分間反応させた後、902gの溶媒を留去し、その後401gのジクロロメタン、77.1gのギ酸、さらなる267gのジクロロメタン、144.1gのトリエチルアミン、さらなる802gのジクロロメタン及び1.066g(0.00168mol)のクロロ{[(1S,2S)−(+)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエチル]((4−トルエンスルホニル)アミド)(p−シメン)}ルテニウム(II)を加え、22.5時間40℃で攪拌した。0.52g(0.00335mol)の2−メルカプトニコチン酸を加えた後、1.606gの溶媒を30〜45℃で500〜650mbar(50〜65kPa)の減圧下で留去し、500mlの水を加え、再度510.6gの溶媒を40〜53℃で150〜180mbar(15〜18kPa)の減圧中で留去する。残りを1.737gのジクロロメタンで希釈し、相を分離し、334gのジクロロメタンを用いて水相を抽出し、合わせた有機相を300gの水及び47gのメタノールからなる混合物で2回抽出し、その後1.358gの溶媒を周囲気圧中で蒸発させた。次いで、混合物に920gのメタノールを補充し、周囲気圧下での留去を混合物の沸点が65℃になるまで継続した。こうして得られた残りを4時間106℃で固有の圧力(inherent pressure)で加熱し、0℃に冷却した。こうして得られたサスペンションを濾過し、濾過ケークを99.4gのメタノールで2回洗浄し、その後真空キャビネット乾燥機中で温度20℃、30mbar(3kPa)の減圧中で乾燥した。68.88gの(S,S)−アスタキサンチン(一般式2のアスタキサンチンに対して収率69%)が得られた(HPLC:100a%、エナンチオマー過剰率ee100%、ジアステレオマー過剰率de93%)。
本発明は、環外二重結合がE配置又はE−及び/もしくはZ−配置のいずれかを有する式1のアスタセンを製造する方法であって、一般式2の不斉中心3及び3’を有するアスタキサンチンであって、前記不斉中心がそれぞれ(S)−又は(R)−立体配座を有し、前記アスタキサンチン2の環外二重結合がE−又はE−及び/もしくはZ配置のいずれかを有するアスタキサンチンを、少なくとも一種の第三級アルコラートの存在下で酸化する方法を記載していることが理解される。

Claims (16)

  1. 環外二重結合がE配置又はE−及び/もしくはZ−配置のいずれかを有する式(1)のアスタセンを製造する方法であって、
    Figure 2020511403
    それぞれ(S)−又は(R)−立体配座を有する不斉中心3及び3’を有する一般式(2)のアスタキサンチン
    Figure 2020511403
    であって、前記アスタキサンチン(2)の環外二重結合がE−又はE−及び/もしくはZ配置のいずれかを有するアスタキサンチンを、
    少なくとも一種の第三級アルコラートの存在下で酸化する、方法。
  2. 前記少なくとも一種の第三級アルコラートが第三級C4−C6アルコラートである、請求項1に記載の方法。
  3. 一般式(2)のアスタキサンチンを少なくとも一種の金属塩の存在下で酸化する、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記金属塩が、遷移金属の塩からなる群から及び/又は遷移金属の酸化物からなる群から、好ましくは遷移金属の二価及び/又は三価の塩からなる群から、さらに好ましくはMn、Co、Fe、Cu、Ruからなる群から選択される遷移金属の二価及び/又は三価の塩からなる群から、非常に好ましくはMn(II)、Co(II)、Fe(II)、Cu(II)及びRu(III)からなる群から選択される遷移金属の二価及び/又は三価の塩からなる群から選択される遷移金属塩である、請求項3に記載の方法。
  5. 前記金属塩が、少なくとも一種のアニオンを、好ましくは少なくとも一種のアニオンのみを含み、前記少なくとも一種のアニオンが、ハロゲン化物イオン、C1−C6−カルボン酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、C1−C4−スルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トシラートイオンからなる群から選択される、請求項3又は4に記載の方法。
  6. 前記一般式(2)のアスタキサンチンを少なくとも一種の窒素化合物の存在下で酸化し、前記少なくとも一種の窒素化合物が、第三級アミン、ピリジン、ジアミン及びジピリジンを含む群、好ましくは第三級アミン、ピリジン、ジアミン及びジピリジンからなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記一般式(2)のアスタキサンチンを、0.25〜6時間、好ましくは0.5〜5時間、より好ましくは1〜4時間、最も好ましくは2〜3時間の範囲内の時間で酸化する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記一般式(2)のアスタキサンチンを、不活性ガス雰囲気中又は空気と不活性ガスの混合物雰囲気中又は空気雰囲気中で、好ましくは不活性ガス雰囲気中又は空気と不活性ガスの混合物雰囲気中で酸化し、前記各雰囲気が、0〜50vol%、好ましくは5〜30vol%、より好ましくは6〜20vol%、最も好ましくは7〜15vol%の酸素を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 一般式(2)のアスタキサンチンと称される種々のアスタキサンチン異性体の混合物から、エナンチオマー的に純粋な式(3)もしくは式(5)のアスタキサンチン、又は式(3)もしくは式(5)のアスタキサンチンが高度に富化されたアスタキサンチンを調製する方法であって、
    a)請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法により、一般式(2)のアスタキサンチンを溶媒中又は溶媒混合物中で少なくとも一種の第三級アルコラートの存在下で酸化して、式(1)のアスタセンを形成し、
    b)式(1)のアスタセンをエナンチオ選択的移動水素化により還元して式(3)の3S,3’S−アスタキサンチン
    Figure 2020511403
    又は式(5)の3R,3’R−アスタキサンチン
    Figure 2020511403
    を形成し、
    式(3)の3S,3’S−アスタキサンチン又は式(5)の3R,3’R−アスタキサンチンの環外二重結合が、E−又はE−及び/もしくはZ配置のいずれかを有する、方法。
  10. プロセスステップa)で得られた式(1)のアスタセンを、後処理を行うことなく、エナンチオ選択的移動水素化により還元して式(3)の3S,3’S−アスタキサンチン又は式(5)の3R,3’R−アスタキサンチンを形成する、請求項9に記載の方法。
  11. 前記エナンチオ選択的移動水素化をギ酸と遷移金属触媒の組み合わせを用いて行い、前記遷移金属触媒が少なくとも一種の配位子を有し、前記少なくとも一種の配位子が、
    −少なくとも一種の光学活性アミンであって、好ましくはHN−CHPh−CHPh−OH、HN−CHMe−CHPh−OH、MeHN−CHMe−CHPh−OH、TsNH−CHPh−CHPh−NH、(1S,2S)−N−p−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、(1R,2R)−N−p−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、N−[(1S,2S)−1,2−ジフェニル−2−(2−(4−メチルベンジルオキシ)エチルアミノ)−エチル]−4−メチルベンゼンスルホンアミド又はN−[(1R,2R)−1,2−ジフェニル−2−(2−(4−メチルベンジルオキシ)エチルアミノ)−エチル]−4−メチルベンゼンスルホンアミドである、少なくとも一種の光学活性アミンと;
    −少なくとも一種の光学活性アミノ酸と
    からなる群から選択され、
    非常に好ましい実施形態において、前記少なくとも一種の配位子が、
    −HN−CHPh−CHPh−OH、HN−CHMe−CHPh−OH、MeHN−CHMe−CHPh−OH、TsNH−CHPh−CHPh−NH、(1S,2S)−N−p−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、(1R,2R)−N−p−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、N−[(1S,2S)−1,2−ジフェニル−2−(2−(4−メチルベンジルオキシ)エチルアミノ)−エチル]−4−メチルベンゼンスルホンアミド、N−[(1R,2R)−1,2−ジフェニル−2−(2−(4−メチルベンジルオキシ)エチルアミノ)−エチル]−4−メチルベンゼンスルホンアミド
    からなる群から選択される、請求項9又は10に記載の方法。
  12. プロセスステップa)において用いた溶媒又は溶媒混合物を、プロセスステップb)の前に部分的に又は完全に交換する、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. プロセスステップb)の後、プロセスステップc)において、60〜120℃、好ましくは80〜110℃、非常に好ましい実施形態においては90〜106℃の温度までの加熱を行う、請求項9〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. プロセスステップa)及びb)、好ましくはプロセスステップa)、b)及びc)を、ワンポットで行う、請求項9〜13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 全てが請求項9〜14のいずれか一項に記載の方法により得られた、エナンチオマー的に純粋な式(3)もしくは式(5)のアスタキサンチン、又は式(3)もしくは式(5)のアスタキサンチンが高度に富化されたアスタキサンチンを含む非治療用調製物。
  16. 全てが請求項9〜14のいずれか一項に記載の方法により得られた、エナンチオマー的に純粋な式(3)もしくは式(5)のアスタキサンチン、又は式(3)もしくは式(5)のアスタキサンチンが高度に富化されたアスタキサンチンを含む医薬又は医療用途のための調製物。
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