JP2020509367A - Idaのための前駆体イオン選択における付加物およびその他の悪化因子の物理的単離 - Google Patents

Idaのための前駆体イオン選択における付加物およびその他の悪化因子の物理的単離 Download PDF

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Abstract

システムが、イオン源デバイスから生じる前駆体イオンを識別するために開示される。質量フィルタは、前駆体イオン質量範囲を横断して一連の重複前駆体イオン質量選択窓を使用することによって、イオンビームをフィルタ処理する。質量分析器は、一連のうちの各前駆体イオン質量選択窓の前駆体イオンを分析し、前駆体イオン質量範囲のための複数の前駆体イオンスペクトルを生成する。前駆体イオンは、スペクトルから選択される。選択された前駆体イオンの強度は、スペクトルから読み出され、選択された前駆体イオンの強度が前駆体イオン質量選択窓の場所に伴って変動する様子を説明する、トレースが生成される。選択された前駆体イオンは、トレースが選択された前駆体イオンのm/z値に関して非ゼロ強度を含む場合に、イオン源デバイスから生じる前駆体イオンとして識別される。

Description

(関連出願の相互参照)
本願は、2017年2月22日に出願された米国仮特許出願第62/462,066号の利益を主張するものであり、その内容は、全体が参照により本明細書中に援用される。
本明細書の教示は、質量分析計を制御して、前駆体イオンの断片または付加物を除外する前駆体イオン調査走査を実施することに関する。より具体的には、本明細書の教示は、質量分析計を制御して、前駆体イオンの断片または付加物を除外する走査型逐次窓前駆体イオン選択および質量分析を実施するためのシステムおよび方法に関する。本明細書のシステムおよび方法は、図1のコンピュータシステム等のプロセッサ、コントローラ、またはコンピュータシステムと併せて実施されることができる。
(調査走査汚染物質)
下記に説明される情報依存性分析(IDA)における前駆体イオンの単離は、一連の発見的性質に基づく。前駆体イオンの単離は、本質的に、最も強力な前駆体イオンが最初に断片化されることを可能にする、強度ランク付けリスト上で起こる。しかしながら、同一種の多価形態が無視される、多価種の場合を除いて、それらの選択に先立って前駆体イオンの起源の知識がない。
飛行時間質量分析(TOF−MS)調査走査等の前駆体イオン調査走査はまた、前駆体イオンの断片(破片)または付加物(追加)のいずれかであるイオンも含むことが公知である。これらの断片または付加物イオンは、質量分析/質量分析(MS/MS)断片化のために選択されることによって、質量分析識別実験を混乱させ得る。断片イオン、付加物イオン、または他のイオン形態の性質は、サンプル関連であり得るが、それらが質量分析(MS)イオン経路内でも作成されるという証拠が増加している。
前駆体イオン調査走査において前駆体イオンの断片または付加物を識別することは、着目化合物の検出における雑音のレベルを増加させる。本増加した雑音は、調査走査範囲内に入る、これらの断片および付加物イオンの同時断片化によって引き起こされる。断片および付加物イオンの本同時断片化は、本質的に、実施され得る「実際」の化合物の識別の数の減少を引き起こす、同一の前駆体イオンの再断片化である。
(タンデム質量分析背景)
走査型逐次窓取得(SWATH)は、タンデム質量分析方法である。一般に、タンデム質量分析またはMS/MSは、化合物を分析するための周知の技法である。タンデム質量分析は、サンプルからの1つ以上の化合物のイオン化、1つ以上の化合物の1つ以上の前駆体イオンの選択、断片または生成イオンへの1つ以上の前駆体イオンの断片化、および生成イオンの質量分析を伴う。
タンデム質量分析は、定質的および定量的情報の両方を提供することができる。生成イオンスペクトルは、着目分子を識別するために使用されることができる。1つ以上の生成イオンの強度は、サンプル中に存在する化合物の量を定量化するために使用されることができる。
多数の異なるタイプの実験方法またはワークフローが、タンデム質量分析計を使用して実施されることができる。これらのワークフローの3つの広いカテゴリは、標的化取得、情報依存性取得(IDA)またはデータ依存性取得(DDA)、およびデータ非依存性取得(DIA)である。
標的化取得方法では、生成イオンへの前駆体イオンの1つ以上の遷移が、着目化合物に関して事前定義される。サンプルがタンデム質量分析計の中に導入されるにつれて、1つ以上の遷移が、複数の時間周期またはサイクルのうちの各時間周期またはサイクル中に調査される。言い換えると、質量分析計は、各遷移の前駆体イオンを選択および断片化し、遷移の生成イオンに関して標的化質量分析を実施する。その結果、強度(生成イオン強度)が、遷移毎に生成される。標的化取得方法は、限定ではないが、多重反応監視(MRM)および選択反応監視(SRM)を含む。
IDA方法では、ユーザは、サンプルがタンデム質量分析計の中に導入されている間に、生成イオンの非標的化質量分析を実施するための基準を規定することができる。例えば、IDA方法では、前駆体イオンまたは質量分析(MS)調査走査が、前駆体イオンピークリストを生成するように実施される。ユーザは、ピークリスト上の前駆体イオンのサブセットに関してピークリストをフィルタ処理するための基準を選択することができる。MS/MSは、次いで、前駆体イオンのサブセットの各前駆体イオンに実施される。生成イオンスペクトルが、前駆体イオン毎に生成される。MS/MSは、サンプルがタンデム質量分析計の中に導入されるにつれて、前駆体イオンのサブセットの前駆体イオンに繰り返し実施される。
しかしながら、プロテオミクスおよび多くの他のサンプルタイプでは、化合物の複雑性およびダイナミックレンジは、非常に大きい。これは、従来的な標的化およびIDA方法に課題を提起し、広範囲の被分析物の識別および定量化の両方を行うために、サンプルを深く調査するように超高速MS/MS取得に要求する。
その結果、タンデム質量分析の第3の広いカテゴリである、DIA方法が、開発された。これらのDIA方法は、複雑なサンプルからのデータ収集の再現性および包括性を増加させるために使用されてきた。DIA方法はまた、非特異的断片化方法と呼ばれることもできる。従来的なDIA方法では、タンデム質量分析計の作用は、以前の前駆体または生成イオン走査において取得されるデータに基づいて、MS/MS走査の間で変動されない。代わりに、前駆体イオン質量範囲が、選択される。前駆体イオン質量選択窓が、次いで、前駆体イオン質量範囲を横断して段階化される。前駆体イオン質量選択窓内の全ての前駆体イオンが、断片化され、前駆体イオン質量選択窓内の全ての前駆体イオンの全ての生成イオンが、質量分析される。
質量範囲を走査するために使用される前駆体イオン質量選択窓は、窓内の複数の前駆体の可能性が小さいように、非常に狭くあり得る。本タイプのDIA方法は、例えば、MS/MSALLと呼ばれる。MS/MSALL方法では、約1amuの前駆体イオン質量選択窓が、質量範囲全体を横断して走査または段階化される。生成イオンスペクトルが、1amu前駆体質量窓毎に生成される。質量範囲全体を1回分析または走査するために要する時間は、1つの走査サイクルと称される。しかしながら、各サイクル中に広い前駆体イオン質量範囲を横断して狭い前駆体イオン質量選択窓を走査することは、いくつかの器具および実験にとって実用的ではない。
その結果、より大きい前駆体イオン質量選択窓またはより大きい幅を伴う選択窓が、前駆体質量範囲全体を横断して段階化される。本タイプのDIA方法は、例えば、SWATH取得と呼ばれる。SWATH取得では、各サイクル内で前駆体質量範囲を横断して段階化される前駆体イオン質量選択窓は、5〜25amuまたはさらに大きい幅を有してもよい。MS/MSALL方法のように、各前駆体イオン質量選択窓内の全ての前駆体イオンが、断片化され、各質量選択窓内の全ての前駆体イオンの全ての生成イオンが、質量分析される。しかしながら、より広い前駆体イオン質量選択窓が使用されるため、サイクル時間は、MS/MSALL方法のサイクル時間と比較して有意に短縮され得る。または、液体クロマトグラフィ(LC)に関して、累積時間は、増加され得る。概して、LCに関して、サイクル時間は、LCピークによって定義される。十分な点(サイクル時間の関数としての強度)が、その形状を決定するためにLCピークを横断して得られなければならない。サイクル時間がLCによって定義されるとき、サイクル内で実施され得る実験または質量分析走査の数は、各実験または走査がイオン観察を累積し得る長さを定義する。その結果、より広い前駆体イオン質量選択窓を使用することは、累積時間を増加させ得る。
米国特許第8,809,770号は、SWATH取得が着目化合物の前駆体イオンについての定量的および定性的情報を提供するために使用され得る方法を説明する。特に、前駆体イオン質量選択窓を断片化することから見出される生成イオンが、着目化合物の既知の生成イオンのデータベースと比較される。加えて、前駆体イオン質量選択窓を断片化することから見出される生成イオンのイオントレースまたは抽出イオンクロマトグラム(XIC)が、定量的および定性的情報を提供するように分析される。
しかしながら、例えば、SWATH取得を使用して分析されるサンプル中の着目化合物を識別することは、困難であり得る。これは、各生成イオンを生成する前駆体イオンを決定することに役立つための前駆体イオン質量選択窓を提供された前駆体イオン情報がないか、または提供される前駆体イオン情報が低い感度を有する質量分析(MS)観察に由来するかのいずれかであるため、困難であり得る。加えて、前駆体イオン質量選択窓を提供された具体的前駆体イオン情報が殆どまたは全くないため、生成イオンが、前駆体イオン質量選択窓内の複数の前駆体イオンとコンボリューションされるか、またはそこからの寄与を含むかどうかを決定することも困難である。
(走査型SWATH背景)
その結果、走査型SWATHと呼ばれる、SWATH取得において前駆体イオン質量選択窓を走査する方法が、開発された。本質的に、走査型SWATHでは、前駆体イオン質量選択窓が、連続窓が大きい重複面積および小さい非重複面積を有するように、質量範囲を横断して走査される。本走査は、結果として生じる生成イオンを、走査された前駆体イオン質量選択窓の関数にする。本付加的情報は、ひいては、各生成イオンに関わる1つ以上の前駆体イオンを識別するために使用されることができる。
走査型SWATHは、国際公開第WO2013/171459A2号(以降では「第‘459号出願」)に説明されている。第‘459号出願では、前駆体イオン質量選択窓または25Daの前駆体イオン質量選択窓が、前駆体イオン質量選択窓の範囲が時間に伴って変化するように、時間に伴って走査される。生成イオンが検出されるタイミングは、次いで、それらの前駆体イオンが透過された前駆体イオン質量選択窓のタイミングに相関する。
相関は、最初に、四重極質量フィルタによって透過される前駆体イオンm/z値の関数として検出される各生成イオンの質量対電荷比(m/z)をプロットすることによって、行われる。前駆体イオン質量選択窓が経時的に走査されるため、四重極質量フィルタによって透過される前駆体イオンm/z値はまた、時間であると考えられることもできる。特定の生成イオンが検出される開始および終了時間は、その前駆体が四重極から透過される開始および終了時間に相関する。その結果、生成イオン信号の開始および終了時間は、それらの対応する前駆体イオンの開始および終了時間を決定するために使用される。
走査型SWATHはまた、国際公開第WO2015/056066A1号(以降では「第‘066号出願」)にも説明されている。第‘066号出願は、重複する長方形の前駆体イオン質量選択窓の連続群からの生成イオンスペクトルを組み合わせることによって、それらに対応する前駆体イオンへの生成イオンの相関の正確度を改良する。連続群からの生成イオンスペクトルは、生成イオンスペクトル内の生成イオンの強度を連続的に総計することによって組み合わせられる。本総計は、前駆体質量に伴って一定ではない形状を有し得る関数を生成する。形状は、前駆体質量の関数として生成イオン強度を表す。前駆体イオンは、生成イオンに関して計算される関数から識別される。
走査型SWATHデータの中の生成イオンに対応する1つ以上の前駆体イオンを識別するためのシステムおよび方法はさらに、米国仮特許出願第62/366,526号(以降では「第‘526号出願」)に説明される。走査型SWATHが、実施され、前駆体イオン質量範囲を横断して一連の重複窓を生成する。各重複窓が、断片化および質量分析され、質量範囲のための複数の生成イオンスペクトルを生成する。生成イオンが、スペクトルから選択される。選択された生成イオンの強度が、質量範囲を横断して少なくとも1つの走査に関して読み出され、強度対前駆体イオンm/zのトレースを生成する。1つ以上の前駆体イオンが選択された生成イオンに関するトレースに対応する方法を説明する、行列乗算方程式が、作成される。行列乗算方程式は、数値的方法を使用して、選択された生成イオンに対応する1つ以上の前駆体イオンに関して解かれる。
上記で説明されるように、逐次窓取得(SWATH)は、隣接または重複前駆体イオン質量選択窓の複数回の前駆体イオン走査を使用して、ある時間間隔内で質量範囲が走査されることを可能にする、タンデム質量分析技法である。質量フィルタは、断片化のために各前駆体質量窓を選別する。次いで、高分解能の質量分析器が、各前駆体質量窓の断片化から生成される生成イオンを検出するために使用される。SWATHは、前駆体イオン走査の感度が、従来の特異性損失を伴わずに、増加されることを可能にする。
しかしながら、残念ながら、SWATH法における逐次前駆体質量窓の使用を通して得られる増加した感度は、コストを伴わないわけではない。これらの前駆体質量窓はそれぞれ、多くの他の前駆体イオンを含有し得、これは、生成イオンのセットに関して正しい前駆体イオンの識別を困惑させる。本質的に、任意の所与の生成イオンに対する正確な前駆体イオンは、前駆体質量窓にのみ局在化され得る。
図2は、典型的にはSWATH取得で使用される、単一の前駆体イオン質量選択窓の例示的プロット200である。前駆体イオン質量選択窓210は、M〜Mであるm/z値を伴う前駆体イオンを透過させ、設定された質量または中心質量215を有し、鋭い垂直縁220および230を有する。SWATH前駆体イオン質量選択窓幅は、M−Mである。前駆体イオン質量選択窓210が前駆体イオンを透過させる速度は、前駆体m/zに対して一定である。当業者は、用語「m/z」および「質量」が同義的に使用され得ることを理解し得ることに留意されたい。質量は、m/z値を電荷で乗算することによって、m/z値から容易に得られる。
図3は、生成イオンが従来のSWATHにおいて前駆体イオンに相関する方法を示す、例示的な一連のプロット300である。プロット310は、100 m/z〜300 m/zの前駆体イオン質量範囲を示す。本前駆体イオン質量範囲が、前駆体イオン走査を使用して、質量フィルタ処理および分析されるとき、プロット310に示される前駆体イオン質量スペクトルが、見出される。前駆体イオン質量スペクトルは、例えば、前駆体イオンピーク311、312、313、および314を含む。
従来のSWATH取得では、図2の前駆体イオン質量選択窓210のような一連の前駆体イオン質量選択窓が、前駆体イオン質量範囲を横断して選択される。例えば、それぞれ幅20 m/zの10個の前駆体イオン質量選択窓が、図3のプロット310に示される100 m/z〜300 m/zの前駆体イオン質量範囲のために選択されることができる。プロット320は、100 m/z〜300 m/zの前駆体イオン質量範囲に関して、10個の前駆体イオン質量選択窓のうちの3つ、すなわち、321、322、および323を示す。プロット320の前駆体イオン質量選択窓が重複しないことに留意されたい。他の従来のSWATH走査では、前駆体イオン質量選択窓は、重複することができる。
従来のSWATH走査毎に、前駆体イオン質量選択窓は、逐次的に断片化および質量分析される。その結果、走査毎に、生成イオンスペクトルが、前駆体イオン質量選択窓毎に生成される。プロット331は、プロット320の前駆体イオン質量選択窓321に関して生成される生成イオンスペクトルである。プロット332は、プロット320の前駆体イオン質量選択窓322に関して生成される生成イオンスペクトルである。そして、プロット333は、プロット320の前駆体イオン質量選択窓323に関して生成される生成イオンスペクトルである。
従来のSWATHの生成イオンは、各生成イオンの前駆体イオン質量選択窓を特定し、前駆体イオン走査から得られる前駆体イオンスペクトルから前駆体イオン質量選択窓の前駆体イオンを決定することによって、前駆体イオンに相関する。例えば、プロット331の生成イオン341、342、および343は、プロット320の前駆体イオン質量選択窓321を断片化することによって生成される。前駆体イオン質量範囲内のその場所および前駆体イオン走査からの結果に基づいて、前駆体イオン質量選択窓321は、プロット310の前駆体イオン311を含むことが把握される。前駆体イオン311がプロット320の前駆体イオン質量選択窓321内の唯一の前駆体イオンであるため、プロット331の生成イオン341、342、および343は、プロット310の前駆体イオン311に相関する。
同様に、プロット333の生成イオン361は、プロット320の前駆体イオン質量選択窓323を断片化することによって生成される。前駆体イオン質量範囲内のその場所および前駆体イオン走査からの結果に基づいて、前駆体イオン質量選択窓323は、プロット310の前駆体イオン314を含むことが把握される。前駆体イオン314がプロット320の前駆体イオン質量選択窓323内の唯一の前駆体イオンであるため、生成イオン361は、プロット310の前駆体イオン314に相関する。
しかしながら、相関は、前駆体イオン質量選択窓が、1つを上回る前駆体イオンを含み、これらの前駆体イオンが、同一または類似生成イオンを生成し得るときに、より困難になる。言い換えると、妨害前駆体イオンが同一の前駆体イオン質量選択窓内で発生するとき、付加的情報を伴わずに共通生成イオンを妨害前駆体イオンに相関させることは可能ではない。
例えば、プロット332の生成イオン351および352は、プロット320の前駆体イオン質量選択窓322を断片化することによって生成される。前駆体イオン質量範囲内のその場所および前駆体イオン走査からの結果に基づいて、前駆体イオン質量選択窓322は、プロット310の前駆体イオン312および313を含むことが把握される。その結果、プロット332の生成イオン351および352は、プロット310の前駆体イオン312または313に由来し得る。さらに、前駆体イオン312および313は両方とも、生成イオン351のm/zまたはその近傍において生成イオンを生成することが把握され得る。言い換えると、両方の前駆体イオンが、生成イオンピーク351への寄与を提供し得る。その結果、前駆体イオンまたは前駆体イオンからの具体的寄与への生成イオンの相関は、より困難にされる。
従来のSWATH取得では、LCピーク等のクロマトグラフのピークもまた、相関を改良するために使用されることができる。言い換えると、着目化合物は、経時的に分離され、SWATH取得は、複数の異なる溶出または滞留時間において実施される。生成および前駆体イオンクロマトグラフのピークの滞留時間および/または形状が、次いで、相関を向上させるように比較される。しかしながら、残念ながら、前駆体イオン走査の感度が低いため、前駆体イオンのクロマトグラフのピークは、コンボリューションされ、相関をさらに混乱させ得る。
種々の実施形態では、走査型SWATHは、クロマトグラフのピークによって提供されるものに類似するが、向上した感度を伴って、付加的情報を提供する。走査型SWATHでは、重複前駆体イオン質量選択窓が、前駆体および生成イオンを相関させるために使用される。例えば、図2の前駆体イオン質量選択窓210等の単一の前駆体イオン質量選択窓が、連続前駆体イオン質量選択窓の間に大きな重複が存在するように、前駆体質量範囲を横断して小さい段階で偏移される。前駆体イオン質量選択窓の間の重複の量が増加されると、生成イオンを前駆体イオンに相関させることの正確度も増加される。
本質的に、重複前駆体イオン質量選択窓によってフィルタ処理される前駆体イオンから生成される生成イオンの強度が、前駆体質量範囲を横断して移動する前駆体イオン質量選択窓の関数としてプロットされるとき、各生成イオンは、その前駆体イオンが透過された同一の前駆体質量範囲に関して強度を有する。言い換えると、前駆体質量に対して一定の速度で前駆体イオンを透過させる長方形の前駆体イオン質量選択窓(図2の前駆体イオン質量選択窓210等)に関して、縁(図2の縁220および230等)は、前駆体イオン質量選択が前駆体質量範囲を横断して段階化されると、前駆体イオン質量選択および生成イオン強度の両方の一意の境界を画定する。
図4は、重複前駆体イオン質量選択窓を生成するために、前駆体イオン質量範囲を横断して偏移または走査される、前駆体イオン質量選択窓410の例示的プロット400である。前駆体イオン質量選択窓410は、例えば、前縁430がm/z値420を伴う前駆体イオンに到達するときに、m/z値420を伴う前駆体イオンを透過させ始める。前駆体イオン質量選択窓410がm/z範囲を横断して偏移されると、m/z値420を伴う前駆体イオンは、後縁440がm/z値420に到達するまで透過される。
重複窓によって生成される生成イオンスペクトルからの生成イオンの強度が、例えば、前縁430のm/z値の関数としてプロットされるとき、m/z値420を伴う前駆体イオンによって生成される任意の生成イオンは、前縁430のm/z値420〜m/z値450の強度を有するであろう。当業者は、重複窓によって生成される生成イオンの強度が、限定ではないが、後縁440、設定された質量、重心、または前縁430を含む、前駆体イオン質量選択窓410の任意のパラメータに基づいて、前駆体イオンm/z値の関数としてプロットされ得ることを理解することができる。
図5は、生成イオンが走査型SWATHにおいて前駆体イオンに相関する方法を示す、例示的な一連のプロット500である。プロット510は、図3のプロット310と同一である。図5のプロット510は、100 m/z〜300 m/zの前駆体イオン質量範囲を示す。本前駆体イオン質量範囲が前駆体イオン走査を使用して質量フィルタ処理および分析されるとき、プロット510に示される前駆体イオン質量スペクトルが、見出される。前駆体イオン質量スペクトルは、例えば、前駆体イオンピーク311、312、313、および314を含む。
しかしながら、走査型SWATHでは、質量範囲を横断して非重複前駆体イオン質量選択窓を選択し、次いで、断片化および質量分析するのではなく、前駆体イオン質量選択窓が、各走査型SWATH走査において窓の間に大きな重複を伴って前駆体イオン質量範囲を横断して迅速に移動または走査される。例えば、走査1中に、プロット520の前駆体イオン質量選択窓521は、100 m/z〜120 m/zに延在する。走査1中の前駆体イオン質量選択窓521の断片化および結果として生じる断片の質量分析は、プロット531の生成イオンを生成する。プロット531の生成イオン541、542、および543は、前駆体イオン311がプロット520の前駆体イオン質量選択窓521内の唯一の前駆体であるため、プロット510の前駆体イオン311に相関することが把握される。プロット531は、図3のプロット331と同一の生成イオンを含むことに留意されたい。
走査2に関して、前駆体イオン質量選択窓521は、プロット530に示されるように、1 m/z偏移される。プロット530の前駆体イオン質量選択窓521は、もはやプロット510の前駆体イオン311を含まなくなる。しかしながら、プロット530の前駆体イオン質量選択窓521は、ここで、プロット510の前駆体イオン312を含む。走査2中の前駆体イオン質量選択窓521の断片化および結果として生じる断片の質量分析は、プロット532の生成イオンを生成する。プロット532の生成イオン551は、前駆体イオン312がプロット530の前駆体イオン質量選択窓521内の唯一の前駆体であるため、プロット510の前駆体イオン312に相関することが把握される。プロット532の生成イオン551は、図3のプロット332の生成イオン351と同一のm/z値を有するが、異なる強度を有することに留意されたい。図5のプロット532から、ここで、プロット510の前駆体イオン312に由来する、図3のプロット332の351の部分が把握される。
走査3に関して、前駆体イオン質量選択窓521は、プロット540に示されるように、さらに1 m/z偏移される。プロット540の前駆体イオン質量選択窓521は、ここで、プロット510の前駆体イオン312および313を含む。走査3中の前駆体イオン質量選択窓521の断片化および結果として生じる断片の質量分析は、プロット533の生成イオンを生成する。プロット540の前駆体イオン質量選択窓521がプロット510の前駆体イオン312および313を含むため、プロット533の生成イオン551および552は、いずれか一方または両方の前駆体イオンに由来し得る。
プロット533は、図3のプロット332と同一の生成イオンを含むことに留意されたい。しかしながら、走査型SWATHからの付加的情報に起因して、相関が、ここで、可能である。上記のように、図5のプロット532から、ここで、プロット510の前駆体イオン312に由来する、図3のプロット332の351の部分が把握される。言い換えると、前駆体イオン質量選択窓521の前縁が、プロット510の前駆体イオン312に到達し、前駆体イオン質量選択窓521の後縁が、もはやプロット510の前駆体イオン312を含まなくなるとき、プロット510の前駆体イオン312の寄与が把握される。
加えて、図5のプロット532および533を比較することは、プロット510の前駆体イオン313の寄与を決定する。いったん前駆体イオン質量選択窓521の前縁がプロット510の前駆体イオン313に到達すると、プロット533の生成イオン552が出現し、生成イオン551の強度が増加することに留意されたい。したがって、生成イオン552は、プロット510の前駆体イオン313に相関し、生成イオン551の付加的強度もまた、プロット510の前駆体イオン313に相関する。
図6は、走査型SWATH取得において重複前駆体イオン質量選択窓によってフィルタ処理される前駆体イオンから生成される生成イオンが、前駆体質量範囲を横断して移動する前駆体イオン質量選択窓の関数としてプロットされ得る方法を示す、略図600である。プロット610は、m/z630において前駆体イオン620があることを示す。前駆体イオン質量選択窓641は、m/z631〜m/z633の前駆体イオン質量範囲を横断して段階化され、重複する長方形の前駆体イオン質量選択窓640をもたらす。前駆体イオン質量選択窓640のうちの各窓が、断片化される。結果として生じる生成イオンが、次いで、質量分析され、前駆体イオン質量選択窓640のうちの窓毎に生成イオン質量スペクトル(図示せず)を生成する。
図6は、m/z631〜m/z633の前駆体イオン質量範囲を横断して前駆体イオン質量選択窓641の1つだけの走査を示す。しかしながら、前駆体イオン質量選択窓641は、例えば、複数回、m/z631〜m/z633の前駆体イオン質量範囲を横断して走査されることができる。
生成イオンが、生成される生成イオンスペクトルのうちの1つから選択される。例えば、ある閾値を上回る質量ピークを有する生成イオンが、選択される。
生成イオンの強度は、次いで、前駆体イオン質量選択窓640のうちの前駆体イオン質量選択窓毎に生成される各生成イオンスペクトルから生成イオンの強度を得ることによって、前駆体イオン質量選択窓641の位置の関数として計算される。前駆体イオン質量選択窓の位置の関数として計算される、選択された生成イオンの強度は、例えば、四重極イオントレース(QIT)と呼ばれることができる。
生成イオンに関して計算される例示的QIT660が、プロット650に示される。QIT660は、前駆体イオン質量選択窓640のうちの前駆体イオン質量選択窓毎に生成される各生成イオンスペクトルから得られる、選択された生成イオンの強度を示す。強度は、前駆体イオン質量選択窓640の前縁の関数としてプロットされる。しかしながら、上記で説明されるように、これらの強度は、限定ではないが、後縁、設定された質量、前縁、または走査時間を含む、前駆体イオン質量選択窓640の任意のパラメータの関数としてプロットされることができる。
プロット650のQIT660は、走査型前駆体イオン質量選択窓641の前縁がm/z630に到達するときに、選択された生成イオンの強度が非ゼロになることを示す。これはまた、走査型前駆体イオン質量選択窓の前縁がm/z632を通過するときに、生成イオンの強度がゼロに戻ることも示す。言い換えると、QIT660は、走査型前駆体イオン質量選択窓641の場所に対応する、鋭い前縁および後縁を有する。
図6は、QIT660の前縁および後縁が、選択された生成イオンの対応する前駆体イオンを決定するために使用され得ることを示す。本質的に、QIT660の前縁および後縁は、選択された生成イオンの前駆体イオンが、これらの縁の間の前駆体イオン質量選択窓内になければならないことを意味する。前駆体イオン質量選択窓640のうちの前駆体イオン質量選択窓645は、これらの窓内に前縁を有する。プロット610は、前駆体イオン620が前駆体イオン質量選択窓645内にあり得る唯一の前駆体イオンであることを示す。したがって、QIT660を伴う選択された生成イオンは、前駆体イオン620に対応する。
QITの前縁および後縁の分析は、第‘459号出願に説明された。残念ながら、本タイプの分析に関する2つの問題がある。第1に、第‘066号出願が説明するように、殆どの質量フィルタは、明確に画定された縁を伴う前駆体イオン質量選択窓を生成することができない。その結果、計算されたQITは、同様に、明確に画定された縁を有する可能性が低い。第2に、生成イオンは、類似質量を有する、2つ以上の異なる前駆体イオンの結果であり得る。言い換えると、生成イオン強度は、2つ以上の妨害前駆体イオンから生成されるコンボリューション強度であり得る。
図7は、実際の走査型SWATH実験からのデータを使用して、2つの妨害前駆体イオンから生成される選択された生成イオンに関して計算される、例示的四重極イオントレース(QIT)のプロット700である。図6のプロット650とのプロット700の比較は、実際のQITが明確に画定された縁を有していないことを示す。比較はまた、2つの妨害前駆体イオンによって引き起こされる複数のレベルの強度が、対応する前駆体イオンの決定をさらに複雑にすることも示す。その結果、単純な縁検出以外の方法が、生成イオンQITから対応する前駆体イオンを正確に決定するために必要とされる。
第‘526号出願では、対応する前駆体イオンは、連立一次方程式を使用して、生成イオンQITから決定される。例えば、質量範囲を横断した前駆体イオン質量選択窓の各段階は、一次方程式によって表される。各一次方程式の未知の変数は、前駆体イオン質量範囲を横断した前駆体イオンm/z値の強度である。各一次方程式の係数は、前駆体イオン質量選択窓の位置を特定する。各方程式の結果は、質量範囲を横断した前駆体イオン質量選択窓のその特定の段階におけるQITの値である。生成イオンQITの対応する前駆体イオンは、前駆体イオン質量範囲を横断した前駆体イオン強度値(未知の変数)に関して連立一次方程式を解くことによって見出される。
種々の実施形態では、生成イオンQITの対応する前駆体イオンを決定するために使用される連立一次方程式は、行列乗算方程式として表される。例えば、n×m行列は、長さmの列行列で乗算され、長さnの列行列を生成する。n×m行列は、質量フィルタを表す。行nは、前駆体イオン質量範囲を横断した前駆体イオン質量選択窓の場所である。列mは、前駆体イオン質量範囲を横断した前駆体イオンm/z値である。n×m行列の要素は、その場所および前駆体イオンm/z値における前駆体イオン質量選択窓による透過(1)または非透過(0)を表す。要素は、取得から把握される。これは、質量フィルタが前駆体イオン質量範囲を横断して前駆体イオン質量選択窓を走査する方法である。
長さmの列行列の行mは、n×m行列の列に対応し、前駆体イオン質量範囲を横断した前駆体イオンm/z値である。長さmの列行列の要素は、前駆体イオンm/z値における前駆体イオンの強度である。これらの要素は、未知である。
長さnの列行列の行nは、n×m行列の行に対応し、前駆体イオン質量範囲を横断した前駆体イオン質量選択窓の場所である。長さnの列行列の要素は、特定の取得に関して計算されるQITから把握される、前駆体イオン質量範囲を横断した前駆体イオン質量選択窓の場所における生成イオンの強度である。
図8は、対応する前駆体イオンが行列乗算方程式によって表される連立一次方程式を使用して生成イオンQITから決定される方法の簡略化された実施例を示す、略図800である。プロット810は、前駆体イオン質量選択窓841が1のm/z〜5のm/zの前駆体イオン質量範囲を横断して走査される方法を示す。前駆体イオン821および822は、未知である。
生成イオンが、1のm/z〜5のm/zの前駆体イオン質量範囲を横断して前駆体イオン質量選択窓841を走査し、各窓を断片化し、窓毎に生成される生成イオンを質量分析することから生成される、生成イオンスペクトルから選択される。プロット850のQIT860は、選択された生成イオンに関して計算されるQITである。上記で説明されるように、選択された生成イオンの実際のQITは、QIT860の鋭い縁を有しないであろう。実際、選択された生成イオンの実際のQITは、さらに図5のQIT510のように見えるであろう。しかしながら、QIT860は、実施例を単純化するように鋭い縁を伴って描かれる。
QIT860に対応する前駆体イオンを決定するために、連立一次方程式が計算される。この系は、行列乗算方程式870の形態で表される。方程式870では、9×5質量フィルタ行列871が、長さ5の前駆体イオン列行列872で乗算され、長さ9のQIT列行列873を生成する。質量フィルタ行列871の要素は、前駆体イオン質量範囲を横断した走査中の前駆体イオン質量選択窓841の移動から把握される。QIT列行列873もまた、把握される。これは、生成される生成イオンスペクトルから計算される。前駆体イオン列行列872は、未知である。
種々の実施形態では、数値的方法が、前駆体イオン列行列872に関して解くように行列乗算方程式870に適用される。前駆体イオン列行列872の解は、QIT860に関して対応する前駆体イオンを決定する。例えば、前駆体イオン列行列872の解は、QIT860を伴う選択された生成イオンが、2 m/zにおいて強度2を伴う前駆体イオンおよび3 m/zにおいて強度1を伴う前駆体イオンから生成されたことを示す。これらの前駆体イオンは、それぞれ、プロット810に示されるイオン821および822である。
種々の実施形態では、行列乗算方程式870に適用される数値的方法は、非負最小二乗(NNLS)である。
図9は、対応する前駆体イオンが生成イオンQITから決定される方法の実験的実施例を示す、例示的行列乗算方程式900である。行列乗算方程式900は、四重極1(Q1)質量フィルタ行列971、前駆体イオン列行列972、およびQIT列行列973を含む。Q1質量フィルタ行列971は、取得から把握され、Q1質量フィルタ走査が動作する方法を説明する。Q1質量フィルタ行列971は、走査型SWATHTMの摺動前駆体イオン質量選択窓に対応する、対角線980に沿った非ゼロ値を含むことに留意されたい。
QIT列行列973は、Q1または前駆体イオン質量またはm/zの関数として、選択された生成イオンの把握または観察された生成イオン強度を含む。QIT列行列973は、実際の計算されたQIT990によって図9に表される。
前駆体イオン列行列972は、未知である。行列乗算方程式900は、前駆体イオン列行列972に関して解かれる。前駆体イオン列行列972は、QIT列行列973が計算される、生成イオンに対応する前駆体イオンの強度を含む。前駆体イオン列行列972は、前駆体イオン列行列972から生成され得る前駆体イオンスペクトルによって図9に表される。行列乗算方程式900が解かれるとき、前駆体イオン921および922は、QIT990に対応することが見出される。行列乗算方程式900は、NNLS数値的方法を使用して解かれる。
米国特許第8,809,770号明細書 国際公開第WO2013/171459A2号 国際公開第WO2015/056066A1号
システム、方法、およびコンピュータプログラム製品が、走査型逐次窓前駆体イオン選択および質量分析調査走査を使用して、イオン源デバイスから生じる前駆体イオンを識別するために開示される。3つの全ての実施形態は、以下のステップを含む。
イオン源デバイスは、サンプルまたはサンプルからの着目化合物をイオン化し、イオンビームに変換する。質量フィルタは、イオン源デバイスからイオンビームを受け取る。
プロセッサは、重複段階において着目前駆体イオン質量範囲を横断して前駆体イオン質量選択窓を走査することによって、イオンビームをフィルタ処理するように質量フィルタに命令する。前駆体イオン質量選択窓の本走査は、一連の重複前駆体イオン質量選択窓を生成する。プロセッサはまた、一連の重複前駆体イオン質量選択窓のうちの各前駆体イオン質量選択窓から質量分析器に前駆体イオンを透過させるように質量フィルタに命令する。
プロセッサは、一連の重複前駆体イオン質量選択窓のうちの各前駆体イオン質量選択窓の前駆体イオンを分析するように質量分析器に命令する。前駆体イオンスペクトルが、重複前駆体イオン質量選択窓毎に生成され、複数の前駆体イオンスペクトルが、前駆体イオン質量範囲のために生成される。
プロセッサは、質量分析器1030から複数の前駆体イオンスペクトルを受信し、以下のステップを実施する。(A)複数の前駆体イオンスペクトルから、事前決定された閾値を上回る強度を有する前駆体イオンを選択する。(B)選択された前駆体イオンに関して、前駆体イオン質量範囲を横断して前駆体イオン質量選択窓の少なくとも1つの走査に関して複数の前駆体イオンスペクトルから選択された前駆体イオンの強度を読み出す。さらに、選択された前駆体イオンの強度が、前駆体イオン質量選択窓が前駆体イオン質量範囲を横断して走査されるにつれて、前駆体イオン質量選択窓の前駆体イオン質量対電荷比(m/z)として表される前駆体イオン質量選択窓の場所に伴って変動する様子を説明する、トレースを生成する。(C)トレースが選択された前駆体イオンのm/z値に関して非ゼロ強度を含む場合に、イオン源デバイスから生じる前駆体イオンとして選択された前駆体イオンを識別する。
本出願人の教示のこれらおよび他の特徴は、本明細書に記載される。
当業者は、後述の図面が、例証目的にすぎないことを理解するであろう。図面は、本教示の範囲をいかようにも制限することを意図するものではない。
図1は、本教示の実施形態が実装され得るコンピュータシステムを図示するブロック図である。
図2は、典型的にはSWATH取得で使用される、単一の前駆体イオン質量選択窓の例示的プロットである。
図3は、生成イオンが従来のSWATHにおいて前駆体イオンに相関する方法を示す、例示的な一連のプロット3である。
図4は、重複前駆体イオン質量選択窓を生成するために、前駆体イオン質量範囲を横断して偏移または走査される、前駆体イオン質量選択窓の例示的プロットである。
図5は、生成イオンが走査型SWATHにおいて前駆体イオンに相関する方法を示す、例示的な一連のプロットである。
図6は、走査型SWATH取得において重複前駆体イオン質量選択窓によってフィルタ処理される前駆体イオンから生成される生成イオンが、前駆体質量範囲を横断して移動する前駆体イオン質量選択窓の関数としてプロットされ得る方法を示す、略図である。
図7は、実際の走査型SWATH実験からのデータを使用して、2つの妨害前駆体イオンから生成される選択された生成イオンに関して計算される、例示的四重極イオントレース(QIT)のプロットである。
図8は、対応する前駆体イオンが行列乗算方程式によって表される連立一次方程式を使用して生成イオンQITから決定される方法の簡略化された実施例を示す、略図である。
図9は、対応する前駆体イオンが生成イオンQITから決定される方法の実験的実施例を示す、例示的行列乗算方程式である。
図10は、種々の実施形態による、質量分析システムを示す概略図である。
図11は、種々の実施形態による、質量フィルタと図10の質量分析器との間のイオン経路の拡大図である。
図12は、種々の実施形態による、断片イオンおよび付加物がIDA実験を混乱させ得る方法を示す、従来の前駆体イオン調査走査から生成される例示的前駆体イオンスペクトルである。
図13は、種々の実施形態による、図10の質量フィルタが、重複段階において着目前駆体イオン質量範囲を横断して着目前駆体イオン質量範囲よりも小さい幅を伴う前駆体イオン質量選択窓を走査する方法を示す、略図である。
図14は、種々の実施形態による、図10の質量分析器が重複前駆体イオン質量選択窓毎に前駆体イオンスペクトルを生成する方法を示す、略図である。
図15は、種々の実施形態による、前駆体イオンがイオン源デバイスから生じる前駆体イオンとして識別される方法を示す、略図である。
図16は、種々の実施形態による、前駆体イオンがイオン源デバイスから生じないイオンとして識別される方法を示す、略図である。
図17は、種々の実施形態による、走査型逐次窓前駆体イオン選択および質量分析調査走査を使用して、イオン源デバイスから生じる前駆体イオンを識別するための方法を示す、フローチャートである。
図18は、種々の実施形態による、走査型逐次窓前駆体イオン選択および質量分析調査走査を使用して、イオン源デバイスから生じる前駆体イオンを識別するための方法を実施する、1つ以上の明確に異なるソフトウェアモジュールを含むシステムの概略図である。
本教示の1つ以上の実施形態が詳細に説明される前に、当業者は、本教示が、その用途において、以下の詳細な説明に記載される、または図面に図示される、構造、構成要素の配列、およびステップの配列の詳細に限定されないことを理解するであろう。また、本明細書で使用される表現および専門用語は、説明の目的のためであって、限定的と見なされるべきではないことを理解されたい。
(コンピュータ実装システム)
図1は、本教示の実施形態が実装され得る、コンピュータシステム100を図示するブロック図である。コンピュータシステム100は、情報を通信するためのバス102または他の通信機構と、情報を処理するためにバス102と結合されたプロセッサ104とを含む。コンピュータシステム100は、プロセッサ104によって実行される命令を記憶するために、バス102に結合されるランダムアクセスメモリ(RAM)または他の動的記憶デバイスであり得るメモリ106も含む。メモリ106は、プロセッサ104によって実行される命令の実行の間、一時的変数または他の中間情報を記憶するためにも使用され得る。コンピュータシステム100は、プロセッサ104のための静的情報および命令を記憶するために、バス102に結合された読取専用メモリ(ROM)108または他の静的記憶デバイスをさらに含む。磁気ディスクまたは光ディスク等の記憶デバイス110は、情報および命令を記憶するために提供され、バス102に結合される。
コンピュータシステム100は、情報をコンピュータユーザに表示するために、バス102を介して、ブラウン管(CRT)または液晶ディスプレイ(LCD)等のディスプレイ112に結合され得る。英数字および他のキーを含む入力デバイス114は、情報およびコマンド選別をプロセッサ104に通信するために、バス102に結合される。別のタイプのユーザ入力デバイスは、方向情報およびコマンド選別をプロセッサ104に通信し、ディスプレイ112上のカーソル移動を制御するためのマウス、トラックボール、またはカーソル方向キー等のカーソル制御116である。本入力デバイスは、典型的には、デバイスが平面において位置を指定することを可能にする2つの軸、すなわち、第1の軸(すなわち、x)および第2の軸(すなわち、y)において、2自由度を有する。
コンピュータシステム100は、本教示を実施することができる。本教示のある実装によると、結果は、メモリ106内に含有される1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスをプロセッサ104が実行することに応答して、コンピュータシステム100によって提供される。そのような命令は、記憶デバイス110等の別のコンピュータ可読媒体から、メモリ106内に読み込まれ得る。メモリ106内に含有される命令のシーケンスの実行は、プロセッサ104に、本明細書に説明されるプロセスを実施させる。代替として、有線回路が、本教示を実装するためのソフトウェア命令の代わりに、またはそれと組み合わせて、使用され得る。したがって、本教示の実装は、ハードウェア回路およびソフトウェアの任意の具体的組み合わせに限定されない。
本明細書で使用されるような用語「コンピュータ可読媒体」は、実行のために命令をプロセッサ104に提供する際に関与する任意の媒体を指す。そのような媒体は、限定されないが、不揮発性媒体、揮発性媒体、および前駆体イオン質量選択媒体を含む、多くの形態をとり得る。不揮発性媒体は、例えば、記憶デバイス110等の光学または磁気ディスクを含む。揮発性媒体は、メモリ106等の動的メモリを含む。前駆体イオン質量選択媒体は、バス102を備える配線を含む、同軸ケーブル、銅線、および光ファイバを含む。
コンピュータ可読媒体の一般的形態は、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、または任意の他の磁気媒体、CD−ROM、デジタルビデオディスク(DVD)、ブルーレイディスク、任意の他の光学媒体、サムドライブ、メモリカード、RAM、PROM、およびEPROM、フラッシュ−EPROM、任意の他のメモリチップまたはカートリッジ、またはコンピュータが読み取ることができる任意の他の有形媒体を含む。
コンピュータ可読媒体の種々の形態は、実行のために、1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスをプロセッサ104に搬送することに関わり得る。例えば、命令は、最初は、遠隔コンピュータの磁気ディスク上で搬送され得る。遠隔コンピュータは、命令をその動的メモリ内にロードし、モデムを使用して、電話回線を介して、命令を送信することができる。コンピュータシステム100にローカルのモデムは、データを電話回線上で受信し、赤外線送信機を使用して、データを赤外線信号に変換することができる。バス102に結合された赤外線検出器は、赤外線信号で搬送されるデータを受信し、データをバス102上に設置することができる。バス102は、データをメモリ106に搬送し、そこから、プロセッサ104は、命令を読み出し、実行する。メモリ106によって受信された命令は、随意に、プロセッサ104による実行の前後のいずれかにおいて、記憶デバイス110上に記憶され得る。
種々の実施形態によると、方法を実施するためにプロセッサによって実行されるように構成される命令は、コンピュータ可読媒体上に記憶される。コンピュータ可読媒体は、デジタル情報を記憶するデバイスであることができる。例えば、コンピュータ可読媒体は、ソフトウェアを記憶するために、当技術分野において公知のように、コンパクトディスク読取専用メモリ(CD−ROM)を含む。コンピュータ可読媒体は、実行されるように構成される命令を実行するために好適なプロセッサによってアクセスされる。
本教示の種々の実装の以下の説明は、例証および説明の目的のために提示されている。これは、包括的でもなく、本教示を開示されたままの形態に限定するものでもない。修正および変形例が、上記の教示に照らして可能である、または本教示の実践から取得され得る。加えて、説明される実装は、ソフトウェアを含むが、本教示は、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせとして、またはハードウェア単独において、実装され得る。本教示は、オブジェクト指向および非オブジェクト指向の両方のプログラミングシステムによって実装され得る。
(走査型逐次窓前駆体イオン選択および質量分析)
上記で説明されるように、前駆体イオン調査走査が、例えば、断片化される前駆体イオンを決定するために、情報依存性分析(IDA)で使用される。それらの選択に先立って、前駆体イオンの起源の知識はない。残念ながら、前駆体イオン調査走査は、イオン源から生じた前駆体イオンに加えて、汚染物質を含み得る。これらの汚染物質は、質量分析計内のある形態の意図しない自発的断片化によって生成される、前駆体イオンの断片または生成イオンを含み得る。これらの汚染物質はまた、前駆体イオンが質量分析計内から予期しない付加的分子材料を取り上げるときに生成される付加物も含み得る。
図10は、種々の実施形態による、質量分析システム1000を示す概略図である。システム1000は、イオン源デバイス1010と、質量フィルタ1021と、断片化デバイス1022と、質量分析器1030と、プロセッサ1040とを含む。システム1000はさらに、随意に、サンプル導入デバイス1050と、イオン集束デバイス1020とを含む。当業者は、四重極ベースのシステムイオン集束デバイス1020、質量フィルタ1021、および断片化デバイス1022が、それぞれ、Q、Q、およびQと称され得ることを理解するであろう。
理想的には、前駆体イオン調査走査では、イオン源デバイス1010によって生成される前駆体イオンは、イオン集束デバイス1020によって集束され、質量フィルタ1021によって選択またはフィルタ処理され、断片化デバイス1022による断片化を伴わずに質量フィルタ1021から質量分析器1030に輸送され、質量分析器1030によって質量分析される。しかしながら、上記で説明されるように、前駆体イオンは、質量フィルタ1021と質量分析器1030との間のイオン経路に沿ったいずれかの場所で付加的分子材料を断片化する、または取り上げることができる。
図11は、種々の実施形態による、図10の質量フィルタと質量分析器との間のイオン経路の拡大図1100である。本図は、生成および付加物イオンがイオン経路に沿って非意図的に生成され得る方法を示す。これは、質量フィルタ1021と断片化デバイス1022との間で生成イオン1111および1112に非意図的に断片化する前駆体イオン1110を示す。これはまた、付加的分子材料1121を非意図的に取得し、断片化デバイス1022と質量分析器1030との間で付加物イオン1122になる、前駆体イオン1120も示す。
前駆体イオン調査走査は、多くの場合、低エネルギー走査と称される。これは、断片化デバイス1022が、それを通して選択された前駆体イオンを移動させるために十分な衝突エネルギー(CE)であるが、選択された前駆体イオンの意図的断片化を引き起こすために十分ではないCEを与えられることを意味する。選択された前駆体イオンは、断片化デバイス1022を通して移動されるため、質量分析器1030に送信されることができる。質量分析器1030は、選択された前駆体イオンのm/z質量対電荷比(m/z)を測定し、前駆体イオンスペクトルを生成する。断片化デバイス1022のCEが意図的に低く設定されても、前駆体イオンは、依然として、非意図的に断片化し得る。
図12は、種々の実施形態による、断片イオンおよび付加物がIDA実験を混乱させ得る方法を示す、従来の前駆体イオン調査走査から生成される例示的前駆体イオンスペクトル1200である。前駆体イオンスペクトル1200は、0 m/z〜M m/zの前駆体イオン質量範囲を質量フィルタ処理することによって生成される。当業者は、質量フィルタ処理することがまた、例えば、走査、選択、または単離とも呼ばれ得ることを理解する。
言い換えると、質量分析計は、イオンビームから0 m/z〜M m/zの前駆体イオンを選択する。前駆体イオンは、例えば、四重極を使用して、選択される。0 m/z〜M m/zの前駆体イオン質量範囲の選択は、1つのステップ、時間周期、またはサイクルで実施される。1つのステップ、時間周期、またはサイクルにおける本選択はまた、1つの前駆体イオン質量選択窓1201とも称され得る。
前駆体イオンスペクトル1200は、イオン源から生じた実際の前駆体イオン1210、1220、および1230を含む。しかしながら、前駆体イオンスペクトル1200はまた、汚染物質イオン1221、1222、および1223も含む。イオン1221および1222は、前駆体イオン1220の生成イオンである。生成イオン1221および1222は、前駆体イオン1220が、自発的に断片化される、または例えば、ある意図しない衝突に起因して断片化されるときに、イオン経路に沿ったある場所で非意図的に生成される。イオン1223は、前駆体イオン1220の付加物である。付加物イオン1223は、前駆体イオン1220と、前駆体イオン1220が選択され、質量分析器まで移動されたときにイオン経路に沿ったある場所で非意図的に得られた、ある付加的分子材料とを含む。
IDA実験では、0 m/z〜M m/zの前駆体イオン質量範囲内の前駆体イオンについての予備知識がない。その結果、イオン1221、1222、および1223は、イオン源デバイスによって生成される前駆体イオンではないことが把握されない。その結果として、イオン1221、1222、および1223は、断片化され得、それらの結果として生じる生成イオンスペクトルは、サンプルの分析で使用され、潜在的に、サンプルの結果に悪影響を及ぼし得る。
イオン1221、1222、および1223等の汚染物質イオンの機械的フィルタリングは、現在、完全走査IDAデータを分析するための従来の方法では可能ではない。従来の質量分析計は、その質量またはm/zが器具設定の間である、全てのイオンの透過を可能にし、イオンの検出が、行われる。したがって、従来の前駆体イオン調査走査は、実際の前駆体イオンの複雑な混合物だけではなく、透過されている不安定な前駆体イオンの生成イオンの存在とコンボリューションされる。
種々の実施形態では、汚染物質イオンを除去するために、広帯域質量フィルタが、質量分析計を通したイオンの具体的範囲を可能にするように使用される。広帯域質量フィルタは、例えば、Q1四重極を使用して適用される。広帯域フィルタは、全前駆体イオン質量範囲を横断して傾斜しており、透過された前駆体イオンは、質量分析される。
前駆体イオンデータの総計は、従来の前駆体イオン調査走査と同等である複合走査を生成する。しかしながら、データは、走査型四重極の場所に関して質量範囲内のみで総計される。本範囲内ではない前駆体イオンは、範囲内の前駆体イオンからの生成イオンであると仮定される。
言い換えると、種々の実施形態は、イオン源によって実際に生成される前駆体イオンを決定するために、走査型逐次窓前駆体イオン選択および質量分析を実施することを含む。本走査型逐次窓前駆体イオン選択および質量分析は、上記に説明される走査型SWATHに類似する。しかしながら、質量分析計を制御する本方法は、走査された逐次前駆体イオン質量選択窓が断片化されないという点で、走査型SWATHと異なる。代わりに、各前駆体イオン質量選択窓内のイオンは、単純に質量分析される。
種々の実施形態では、検出システムに透過されているイオンのフィルタリングに起因して、いかなるイオン集束も伴わずに質量分析計器具を動作させることが可能である。例えば、四重極ベースの質量分析計では、四重極Qが、イオンを集束させるために使用され、四重極Qが、イオンを質量フィルタ処理するために使用され、四重極Qが、イオンを断片化するために使用される。したがって、イオンのフィルタリングに起因して、Qにおいていかなるイオン制御も伴わずに質量分析計を動作させることが可能である。これは、イオン源からの前駆体イオンの全てが質量分析計に可視であることを可能にするという二次効果を有し、質量分析計の検出限界(LOD)を増加させ得る。
種々の実施形態では、CE値を走査型前駆体イオン調査走査に適用することも可能である。この場合、前駆体イオンは、具体的誘導CEパターンを得る。そのような場合に、前駆体イオンの生成イオンが、意図的に生成される。本疑似前駆体イオンは、2つのタイプの分析を可能にすることができる。(x)だけ前駆体イオン範囲よりも低くなるように前駆体イオン走査からのイオン検出範囲を設定することによって、中立損失ベースの走査が、作成されることができる。本走査は、前駆体および生成イオンおよび後続の生成イオンスペクトルのデコンボリューションに伴う標準中立損失の完全な特異性を有していないが、前駆体イオンは、中立損失成分の具体的断片化パターンとして決定されることもできる。親単離窓よりも質量が大きい質量をとることによって、多価種の識別は、単純化されることができる。
(イオン源デバイスから生じる前駆体イオンを識別するためのシステム)
図10に戻ると、図10はまた、種々の実施形態による、イオン源デバイスから生じる前駆体イオンを識別するためのシステム1000も示す。図10のシステム1000は、イオン源デバイス1010と、質量フィルタ1021と、断片化デバイス1022と、質量分析器1030と、プロセッサ1040とを含む。システム1000はまた、例えば、Q四重極であり得る、集束デバイス1020を含むこともできる。
種々の実施形態では、システム1000はさらに、サンプル導入デバイス1050を含むことができる。サンプル導入デバイス1050は、例えば、経時的に、サンプルからの1つ以上の着目化合物をイオン源デバイス1010に導入する。サンプル導入デバイス1050は、限定ではないが、注入、液体クロマトグラフィ、ガスクロマトグラフィ、キャピラリ電気泳動、またはイオン移動度を含む、技法を実施することができる。
システム1000では、質量フィルタ1021および断片化デバイス1022は、3つの四重極の異なる段階として示され、質量分析器1030は、飛行時間(TOF)デバイスとして示される。当業者は、これらの段階のうちのいずれかが、限定ではないが、イオントラップ、オービトラップ、イオン移動度デバイス、またはフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FT−ICR)デバイスを含む、他のタイプの質量分析デバイスを含み得ることを理解することができる。
イオン源デバイス1010は、サンプル導入デバイス1050によって提供されるサンプルまたはサンプルからの着目化合物をイオンビームに変換する。イオン源デバイス1010は、限定ではないが、マトリクス支援レーザ脱離/イオン化(MALDI)またはエレクトロスプレーイオン化(ESI)を含む、イオン化技法を実施することができる。
質量フィルタ1021は、イオン源デバイス1010からイオンビームを受け取る。プロセッサ1040は、重複段階において着目前駆体イオン質量範囲を横断して着目前駆体イオン質量範囲よりも小さい幅を伴う前駆体イオン質量選択窓を走査することによって、イオンビームをフィルタ処理するように質量フィルタ1021に命令する。前駆体イオン質量選択窓の本走査は、前駆体イオン質量範囲を横断して一連の重複前駆体イオン質量選択窓を生成する。プロセッサ1040はまた、一連の重複前駆体イオン質量選択窓のうちの各前駆体イオン質量選択窓から質量分析器1030に前駆体イオンを透過させるように質量フィルタ1021に命令する。
プロセッサ1040は、例えば、隣接する重複前駆体イオン質量選択窓の間の重複の面積が、隣接する重複前駆体イオン質量選択窓の間の非重複の面積を上回るように、着目前駆体イオン質量範囲を横断して前駆体イオン質量選択窓を走査するように質量フィルタ1021に命令する。理想的には、非重複の面積は、単一の前駆体イオンを分解するために十分小さい。
図13は、種々の実施形態による、図10の質量フィルタ1021が、重複段階において着目前駆体イオン質量範囲を横断して着目前駆体イオン質量範囲よりも小さい幅を伴う前駆体イオン質量選択窓を走査する方法を示す、略図1300である。着目質量範囲Mは、図12に示される同一の着目質量範囲である。例えば、前駆体イオン質量選択窓1331は、重複段階において着目前駆体イオン質量範囲Mを横断して走査される。前駆体イオン質量選択窓1331の本走査は、前駆体イオン質量範囲を横断して一連の重複前駆体イオン質量選択窓1360を生成する。
図10に戻ると、プロセッサ1040は、限定ではないが、コンピュータ、マイクロプロセッサ、図1のコンピュータシステム、またはタンデム質量分析計から制御信号およびデータを送受信し、データを処理することが可能な任意のデバイスであることができる。プロセッサ1040は、イオン源デバイス1010、質量フィルタ1021、断片化デバイス1022、および質量分析器1030と通信する。
質量分析器1030は、質量フィルタ1021によって選択される一連の重複前駆体イオン質量選択窓のうちの各前駆体イオン質量選択窓から前駆体イオンを受け取る。プロセッサ1040は、一連の重複前駆体イオン質量選択窓のうちの各前駆体イオン質量選択窓の前駆体イオンを分析するように質量分析器1030に命令する。前駆体イオンスペクトルが、重複前駆体イオン質量選択窓毎に生成され、複数の前駆体イオンスペクトルが、前駆体イオン質量範囲のために生成される。
図14は、種々の実施形態による、図10の質量分析器1030が重複前駆体イオン質量選択窓毎に前駆体イオンスペクトルを生成する方法を示す、略図1400である。着目質量範囲Mは、再度、図12に示される同一の着目質量範囲である。例えば、質量分析器1030が前駆体イオン質量選択窓1331の第1の段階を分析するとき、これは、前駆体イオンスペクトル1401を生成する。一連の重複前駆体イオン質量選択窓1360のうちの各前駆体イオン質量選択窓の前駆体イオンは、質量分析される。これは、複数の前駆体イオンスペクトル1460を生成する。
前駆体イオンスペクトル1404は、前駆体イオン質量選択窓1331のこの第4の段階の幅がイオン1221および1222を含むと考えられても、前駆体イオン1210のみを含むことに留意されたい。しかしながら、イオン1221および1222は、前駆体イオン1220の生成イオンであることを想起されたい。前駆体イオン質量選択窓1331の第4の段階が前駆体イオン1220を含まないため、これは、前駆体イオン1220の生成イオン1221および1222を含むことができない。言い換えると、前駆体イオン質量選択窓1331の走査は、まだ前駆体イオン1220に到達していない。
同様に、前駆体イオンスペクトル1436は、前駆体イオン質量選択窓1331の第36の段階の幅がイオン1223を含むと考えられても、前駆体イオン1230のみを含む。しかしながら、イオン1223は、前駆体イオン1220の付加物イオンであることを想起されたい。前駆体イオン質量選択窓1331の第36の段階が前駆体イオン1220を含まないため、これは、前駆体イオン1220の付加物イオン1223を含むことができない。言い換えると、前駆体イオン質量選択窓1331の走査は、前駆体イオン1220を通過しており、もはや選択されていない。
図10に戻ると、プロセッサ1040は、質量分析器1030から複数の前駆体イオンスペクトルを受信し、以下のステップを実施する。(A)プロセッサ1040は、複数の前駆体イオンスペクトルから、事前決定された閾値を上回る強度を有する前駆体イオンを選択する。(B)選択された前駆体イオンに関して、プロセッサ1040は、前駆体イオン質量範囲を横断して前駆体イオン質量選択窓の少なくとも1つの走査に関して複数の前駆体イオンスペクトルから選択された前駆体イオンの強度を読み出す。さらに、プロセッサ1040は、選択された前駆体イオンの強度が、前駆体イオン質量選択窓が前駆体イオン質量範囲を横断して走査されるにつれて、前駆体イオン質量選択窓の前駆体イオンm/zとして表される前駆体イオン質量選択窓の場所に伴って変動する様子を説明する、トレースを生成する。(C)プロセッサ1040は、トレースが選択された前駆体イオンのm/z値に関して非ゼロ強度を含む場合に、イオン源デバイスから生じる前駆体イオンとして選択された前駆体イオンを識別する。
図15は、種々の実施形態による、前駆体イオンがイオン源デバイスから生じる前駆体イオンとして識別される方法を示す、略図1500である。ステップ(A)では、前駆体イオン1220は、200 m/z〜360 m/zの前駆体イオン質量範囲を横断して一連の重複前駆体イオン質量選択窓1360に関して生成される複数の前駆体イオンスペクトルのうちの前駆体イオンスペクトル1516から選択される。前駆体イオン1220は、事前決定された閾値を上回る。
一連の重複前駆体イオン質量選択窓1360は、5 m/z段階で160 m/z質量範囲を横断して前駆体イオン質量選択窓1331を走査することによって生成される。前駆体イオン質量選択窓1331の幅は、例えば、20 m/zである。160 m/z前駆体イオン質量範囲を横断した前駆体イオン質量選択窓1331の場所は、前駆体イオン質量選択窓1331の中心の観点から表される。種々の実施形態では、前駆体イオン質量選択窓1331の場所は、限定ではないが、その開始、その中心、およびその終了を含む、前駆体イオン質量選択1331の任意の部分の観点から表されることができる。
ステップ(B)では、選択された前駆体イオン1220に関して、選択された前駆体イオン1220の強度は、160 m/z前駆体イオン質量範囲を横断して前駆体イオン質量選択窓の少なくとも1つの走査に関して複数の前駆体イオンスペクトルから読み出される。重複前駆体イオン質量選択窓1560のみが選択された前駆体イオン1220を単離するであろうため、これらの前駆体イオン質量選択窓からの前駆体イオンスペクトルのみが、選択された前駆体イオン1220に関して非ゼロ強度を有するであろう。例えば、前駆体イオンスペクトル1516では、選択された前駆体イオン1220は、非ゼロ強度I1を有するであろう。前駆体イオンスペクトル1516は、前駆体イオン質量選択窓1331の第16の段階によって生成される。重複前駆体イオン質量選択窓1560のうちの他の窓によって生成される前駆体イオンスペクトルは、前駆体イオンスペクトル1516と本質的に同一であろう。前駆体イオンスペクトル1516はまた、前駆体イオン1220の生成イオン1221および1222と、前駆体イオン1220の付加物イオン1223とを含むことに留意されたい。
選択された前駆体イオン1220の強度が、前駆体イオン質量選択窓が前駆体イオン質量範囲を横断して走査されるにつれて、前駆体イオン質量選択窓1331の前駆体イオンm/zとして表される前駆体イオン質量選択窓1331の場所に伴って変動する様子を説明する、トレースが、次いで、生成される。上記で説明されるように、前駆体イオン質量選択窓1331の中心が、その場所を規定するために使用される。プロット1570は、選択された前駆体イオン1220に関するトレースの一部を示す。これは、非ゼロ強度を伴うトレースの唯一の部分である。トレースは、前駆体イオン質量選択窓1331の中心が260 m/z〜300 m/zであるときに非ゼロ強度を有することに留意されたい。
ステップ(C)では、選択された前駆体イオン1220は、トレースが選択された前駆体イオンのm/z値に関して非ゼロ強度を含む場合に、イオン源デバイスから生じる前駆体イオンとして識別される。プロット1570は、選択された前駆体イオン1220に関するトレースが260 m/z〜300 m/zの非ゼロ強度値を含むことを示す。選択された前駆体イオン1220は、280のm/z値を有する。選択された前駆体イオン1220に関するトレースが、選択された前駆体1220のm/z値に関して非ゼロ強度を含むため、選択された前駆体イオン1220は、イオン源デバイスから生じる前駆体イオンとして識別される。
図16は、種々の実施形態による、前駆体イオンがイオン源デバイスから生じないイオンとして識別される方法を示す、略図1600である。ステップ(A)では、前駆体イオン1223は、200 m/z〜360 m/zの前駆体イオン質量範囲を横断して一連の重複前駆体イオン質量選択窓1360に関して生成される複数の前駆体イオンスペクトルのうちの前駆体イオンスペクトル1516から選択される。前駆体イオン1223は、事前決定された閾値を上回る。前駆体イオン1223は、前駆体イオン1220の付加物イオンであることを想起されたい。
ステップ(B)では、選択された前駆体イオン1223に関して、選択された前駆体イオン1223の強度は、160 m/z前駆体イオン質量範囲を横断して前駆体イオン質量選択窓の少なくとも1つの走査に関して複数の前駆体イオンスペクトルから読み出される。重複前駆体イオン質量選択窓1560のみが選択された前駆体イオン1223を単離するであろうため、これらの前駆体イオン質量選択窓からの前駆体イオンスペクトルのみが、選択された前駆体イオン1223に関して非ゼロ強度を有するであろう。重複前駆体イオン質量選択窓1560のみが、前駆体イオン1223が前駆体イオン1220の付加物であるため、選択された前駆体イオン1223を単離し、重複前駆体イオン質量選択窓1560のみが、前駆体イオン1220を単離するであろう。
例えば、前駆体イオンスペクトル1516では、選択された前駆体イオン1223は、非ゼロ強度I2を有する。前駆体イオンスペクトル1516は、前駆体イオン質量選択窓1331の第16の段階によって生成される。重複前駆体イオン質量選択窓1860のうちの他の窓によって生成される前駆体イオンスペクトルは、前駆体イオンスペクトル1516と本質的に同一であろう。前駆体イオンスペクトル1516はまた、前駆体イオン1220と、前駆体イオン1220の生成イオン1221および1222とを含むことに留意されたい。
選択された前駆体イオン1223の強度が、前駆体イオン質量選択窓が前駆体イオン質量範囲を横断して走査されるにつれて、前駆体イオン質量選択窓の前駆体イオンm/zとして表される前駆体イオン質量選択窓の場所に伴って変動する様子を説明する、トレースが、次いで、生成される。プロット1670は、選択された前駆体イオン1223に関するトレースの一部を示す。これは、非ゼロ強度を伴うトレースの唯一の部分である。
ステップ(C)では、選択された前駆体イオン1223は、トレースが選択された前駆体イオンのm/z値に関して非ゼロ強度を含む場合に、イオン源デバイスから生じる前駆体イオンとして識別される。プロット1670は、選択された前駆体イオン1223に関するトレースが260 m/z〜300 m/zの非ゼロ強度値を含むことを示す。選択された前駆体イオン1223は、345のm/z値を有する。選択された前駆体イオン1223に関するトレースが、選択された前駆体1223のm/z値に関して非ゼロ強度を有していないため、選択された前駆体イオン1223は、イオン源デバイスから生じる前駆体イオンとして識別されない。言い換えると、選択された前駆体イオン1223は、除外される。
したがって、図10に戻ると、プロセッサ1040はまた、選択された前駆体イオンのm/z値がトレースのm/z範囲内ではない場合に、選択された前駆体イオンをイオン源から生じない前駆体イオンとして識別することもできる。言い換えると、プロセッサ1040は、選択された前駆体イオンのm/z値がトレースのm/z範囲内ではない場合に、選択された前駆体イオンを除外することができる。
種々の実施形態では、プロセッサ1040は、複数の前駆体イオンスペクトルから全ての前駆体イオンをフィルタ処理するために、事前決定された閾値を上回る強度を有する、複数の前駆体イオンスペクトルからの前駆体イオン毎にステップ(A)−(C)を繰り返す。言い換えると、プロセッサ1040は、全ての前駆体イオンをフィルタ処理するために、残りの前駆体イオンに関してステップ(A)−(C)を繰り返す。
種々の実施形態では、断片化デバイス1022は、質量フィルタ1021と質量分析器1030との間のイオン経路に沿って位置する。断片化デバイス1022は、例えば、衝突セルであり得る。プロセッサ1040は、一連の重複前駆体イオン質量選択窓のうちの各前駆体イオン質量選択窓からの前駆体イオンを質量フィルタ1021から質量分析器1030まで輸送するために十分高いCEを印加するように断片化デバイス1022に命令する。
種々の実施形態では、プロセッサ1040は、IDA実験の調査走査として上記に説明されるステップを実施し、イオン源デバイス1010から生じることが見出される前駆体イオンから断片化する前駆体イオンのリストを決定する。IDA実験の一部として、プロセッサ1040はさらに、前駆体イオンのリストのうちの各前駆体イオンを選択するように質量フィルタ1021に命令し、前駆体イオンのリスト上の各前駆体イオンを断片化するように断片化デバイス1022に命令し、前駆体イオンのリスト上の各前駆体イオンの生成イオンを分析するように質量分析器1030に命令することができる。
種々の実施形態では、プロセッサ1040は、前駆体イオンの生成イオンおよび付加物が、走査される際に前駆体イオン質量選択窓の外側にあるように十分に小さいように、着目前駆体イオン質量範囲を横断して走査される前駆体イオン質量選択窓の幅を選択するように質量フィルタ1021に命令する。加えて、プロセッサ1040は、IDA実験のために要求される制限時間内に着目質量範囲を横断して走査されるために十分に大きいように、前駆体イオン質量選択窓の幅を選択するように質量フィルタ1021に命令する。
(イオン源デバイスから生じる前駆体イオンを識別するための方法)
図17は、種々の実施形態による、走査型逐次窓前駆体イオン選択および質量分析調査走査を使用して、イオン源デバイスから生じる前駆体イオンを識別するための方法を示す、フローチャート1700である。
方法1700のステップ1710では、質量フィルタが、イオン源デバイスから受け取られるイオンビームをフィルタ処理するように命令される。これは、重複段階において着目前駆体イオン質量範囲を横断して着目前駆体イオン質量範囲よりも小さい幅を伴う前駆体イオン質量選択窓を走査することによって、イオンビームをフィルタ処理するように命令される。これは、前駆体イオン質量範囲を横断して一連の重複前駆体イオン質量選択窓を生成する。質量フィルタはまた、一連の重複前駆体イオン質量選択窓のうちの各前駆体イオン質量選択窓から質量分析器に前駆体イオンを透過させるようにも命令される。イオン源デバイスは、サンプルをイオン化し、イオンビームに変換する。
ステップ1720では、質量分析器が、一連の重複前駆体イオン質量選択窓のうちの各前駆体イオン質量選択窓の前駆体イオンを分析するように命令される。これは、重複前駆体イオン質量選択窓毎の前駆体イオンスペクトルおよび前駆体イオン質量範囲のための複数の前駆体イオンスペクトルを生成する。
ステップ1730では、複数の前駆体イオンスペクトルが、質量分析器から受信される。
ステップ1740では、事前決定された閾値を上回る強度を有する前駆体イオンが、複数の前駆体イオンスペクトルから選択される。
ステップ1750では、選択された前駆体イオンに関して、選択された前駆体イオンの強度が、前駆体イオン質量範囲を横断して前駆体イオン質量選択窓の少なくとも1つの走査に関して複数の前駆体イオンスペクトルから読み出される。加えて、選択された前駆体イオンの強度が、前駆体イオン質量選択窓が前駆体イオン質量範囲を横断して走査されるにつれて、前駆体イオン質量選択窓の前駆体イオンm/zとして表される前駆体イオン質量選択窓の場所に伴って変動する様子を説明する、トレースが、生成される。
ステップ1760では、選択された前駆体イオンが、トレースが選択された前駆体イオンのm/z値に関して非ゼロ強度を含む場合に、イオン源デバイスから生じる前駆体イオンとして識別される。
(イオン源デバイスから生じる前駆体イオンを識別するためのコンピュータプログラム製品)
種々の実施形態では、コンピュータプログラム製品は、そのコンテンツが、走査型逐次窓前駆体イオン選択および質量分析調査走査を使用して、イオン源デバイスから生じる前駆体イオンを識別するための方法を実施するように、プロセッサ上で実行される命令を伴うプログラムを含む、非一過性の有形コンピュータ可読記憶媒体を含む。本方法は、1つ以上の明確に異なるソフトウェアモジュールを含むシステムによって実施される。
図18は、種々の実施形態による、走査型逐次窓前駆体イオン選択および質量分析調査走査を使用して、イオン源デバイスから生じる前駆体イオンを識別するための方法を実施する、1つ以上の明確に異なるソフトウェアモジュールを含むシステム1800の概略図である。システム1800は、測定モジュール1810と、フィルタリングモジュール1820とを含む。
測定モジュール1810は、重複段階において着目前駆体イオン質量範囲を横断して着目前駆体イオン質量範囲よりも小さい幅を伴う前駆体イオン質量選択窓を走査することによって、イオン源デバイスから受け取られるイオンビームをフィルタ処理するように質量フィルタに命令する。これは、前駆体イオン質量範囲を横断して一連の重複前駆体イオン質量選択窓を生成する。加えて、測定モジュール1810は、一連の重複前駆体イオン質量選択窓のうちの各前駆体イオン質量選択窓から質量分析器に前駆体イオンを透過させるように質量フィルタに命令する。イオン源デバイスは、サンプルをイオン化し、イオンビームに変換する。
測定モジュール1810は、一連の重複前駆体イオン質量選択窓のうちの各前駆体イオン質量選択窓の前駆体イオンを分析するように質量分析器に命令する。これは、重複前駆体イオン質量選択窓毎の前駆体イオンスペクトルおよび前駆体イオン質量範囲のための複数の前駆体イオンスペクトルを生成する。
フィルタリングモジュール1820は、質量分析器から複数の前駆体イオンスペクトルを受信する。フィルタリングモジュール1820は、複数の前駆体イオンスペクトルから、事前決定された閾値を上回る強度を有する前駆体イオンを選択する。選択された前駆体イオンに関して、フィルタリングモジュール1820は、前駆体イオン質量範囲を横断して前駆体イオン質量選択窓の少なくとも1つの走査に関して複数の前駆体イオンスペクトルから選択された前駆体イオンの強度を読み出す。フィルタリングモジュール1820は、次いで、選択された前駆体イオンの強度が、前駆体イオン質量選択窓が前駆体イオン質量範囲を横断して走査されるにつれて、前駆体イオン質量選択窓の前駆体イオンm/zとして表される前駆体イオン質量選択窓の場所に伴って変動する様子を説明する、トレースを生成する。最後に、フィルタリングモジュール1820は、トレースが選択された前駆体イオンのm/z値に関して非ゼロ強度を含む場合に、イオン源デバイスから生じる前駆体イオンとして選択された前駆体イオンを識別する。
本教示は、種々の実施形態と併せて説明されるが、本教示がそのような実施形態に限定されることは意図されない。対照的に、本教示は、当業者によって理解されるであろうように、種々の代替案、修正、および均等物を包含する。
さらに、種々の実施形態の説明において、本明細書は、ステップの特定のシーケンスとして、方法および/またはプロセスを提示し得る。しかしながら、方法またはプロセスが本明細書に記載されるステップの特定の順序に依拠しない限りにおいて、方法またはプロセスは、説明されるステップの特定のシーケンスに限定されるべきではない。当業者が理解するであろうように、ステップの他のシーケンスも可能であり得る。したがって、本明細書に記載されるステップの特定の順序は、請求項に関する限定として解釈されるべきではない。加えて、方法および/またはプロセスを対象とする請求項は、それらのステップの実施を書かれた順序に制限されるべきではなく、当業者は、シーケンスが、変動され得、依然として、種々の実施形態の精神および範囲内に留まることを容易に理解することができる。

Claims (15)

  1. 走査型逐次窓前駆体イオン選択および質量分析調査走査を使用して、イオン源デバイスから生じる前駆体イオンを識別するためのシステムであって、
    サンプルをイオン化し、イオンビームに変換するイオン源デバイスと、
    前記イオンビームを受け取る質量フィルタと、
    質量分析器と、
    前記質量フィルタおよび前記質量分析器と通信するプロセッサであって、前記プロセッサは、
    (a)重複段階において着目前駆体イオン質量範囲を横断して着目前駆体イオン質量範囲よりも小さい幅を伴う前駆体イオン質量選択窓を走査することによって、前記イオンビームをフィルタ処理するように前記質量フィルタに命令し、前記前駆体イオン質量範囲を横断して一連の重複前駆体イオン質量選択窓を生成し、前記一連の重複前駆体イオン質量選択窓のうちの各前駆体イオン質量選択窓から前記質量分析器に前駆体イオンを透過させるように前記質量フィルタに命令することと、
    (b)前記一連の重複前駆体イオン質量選択窓のうちの各前駆体イオン質量選択窓の前駆体イオンを分析するように前記質量分析器に命令し、重複前駆体イオン質量選択窓毎の前駆体イオンスペクトルおよび前記前駆体イオン質量範囲のための複数の前駆体イオンスペクトルを生成することと、
    (c)前記質量分析器から前記複数の前駆体イオンスペクトルを受信することと、
    (d)前記複数の前駆体イオンスペクトルから、事前決定された閾値を上回る強度を有する前駆体イオンを選択することと、
    (e)前記選択された前駆体イオンに関して、前記前駆体イオン質量範囲を横断して前記前駆体イオン質量選択窓の少なくとも1つの走査に関して前記複数の前駆体イオンスペクトルから前記選択された前駆体イオンの強度を読み出し、前記選択された前駆体イオンの強度が、前記前駆体イオン質量選択窓が前記前駆体イオン質量範囲を横断して走査されるにつれて、前記前駆体イオン質量選択窓の前駆体イオン質量対電荷比(m/z)として表される前記前駆体イオン質量選択窓の場所に伴って変動する様子を説明する、トレースを生成することと、
    (f)前記トレースが前記選択された前駆体イオンのm/z値に関して非ゼロ強度を含む場合に、前記イオン源デバイスから生じる前駆体イオンとして前記選択された前駆体イオンを識別することと
    を行う、プロセッサと
    を備える、システム。
  2. 前記プロセッサは、前記選択された前駆体イオンのm/z値が前記トレースのm/z範囲内ではない場合に、イオン源から生じない前駆体イオンとして前記選択された前駆体イオンを識別する、請求項1に記載のシステム。
  3. 前記プロセッサは、前記複数の前駆体イオンスペクトルから全ての前駆体イオンをフィルタ処理するために、前記事前決定された閾値を上回る強度を有する前記複数の前駆体イオンスペクトルからの前駆体イオン毎にステップ(d)−(f)を繰り返す、請求項1に記載のシステム。
  4. 前記質量フィルタと前記質量分析器との間のイオン経路に沿って位置する断片化デバイスをさらに備え、前記プロセッサは、前記一連の重複前駆体イオン質量選択窓のうちの各前駆体イオン質量選択窓からの前駆体イオンを前記質量フィルタから前記質量分析器まで輸送するために十分高いが、前記輸送された前駆体イオンを断片化するために十分低い、衝突エネルギー(CE)を印加するように衝突セルに命令する、請求項3に記載のシステム。
  5. 前記プロセッサは、情報依存性取得(IDA)実験の調査走査としてステップ(a)−(f)を実施し、前記イオン源デバイスから生じることが見出される前記前駆体イオンから断片化する前駆体イオンのリストを決定する、請求項4に記載のシステム。
  6. 前記プロセッサはさらに、前記IDA実験の一部として、前記前駆体イオンのリストのうちの各前駆体イオンを選択するように前記質量フィルタに命令し、前記前駆体イオンのリストのうちの各前駆体イオンを断片化するように前記断片化デバイスに命令し、前記前駆体イオンのリストのうちの各前駆体イオンの生成イオンを分析するように前記質量分析器に命令する、請求項5に記載のシステム。
  7. 前記プロセッサは、隣接する重複前駆体イオン質量選択窓の間の重複の面積が、隣接する重複前駆体イオン質量選択窓の間の非重複の面積を上回るように、着目前駆体イオン質量範囲を横断して前記前駆体イオン質量選択窓を走査するように前記質量フィルタに命令する、請求項1に記載のシステム。
  8. 前記プロセッサは、前記前駆体イオンの生成イオンおよび付加物が、走査される際に前記前駆体イオン質量選択窓の外側にあるように十分に小さく、かつ前記IDA実験のために要求される制限時間内に前記着目質量範囲を横断して走査されるために十分に大きいように、前記着目前駆体イオン質量範囲を横断して走査される前記前駆体イオン質量選択窓の幅を選択するように前記質量フィルタに命令する、請求項5に記載のシステム。
  9. 走査型逐次窓前駆体イオン選択および質量分析調査走査を使用して、イオン源デバイスから生じる前駆体イオンを識別するための方法であって、
    (a)プロセッサを使用して、重複段階において着目前駆体イオン質量範囲を横断して着目前駆体イオン質量範囲よりも小さい幅を伴う前駆体イオン質量選択窓を走査することによって、イオン源デバイスから受け取られるイオンビームをフィルタ処理するように質量フィルタに命令し、前記前駆体イオン質量範囲を横断して一連の重複前駆体イオン質量選択窓を生成し、前記一連の重複前駆体イオン質量選択窓のうちの各前駆体イオン質量選択窓から質量分析器に前駆体イオンを透過させるように前記質量フィルタに命令するステップであって、前記イオン源デバイスは、サンプルをイオン化し、前記イオンビームに変換する、ステップと、
    (b)前記プロセッサを使用して、前記一連の重複前駆体イオン質量選択窓のうちの各前駆体イオン質量選択窓の前駆体イオンを分析するように前記質量分析器に命令し、重複前駆体イオン質量選択窓毎の前駆体イオンスペクトルおよび前記前駆体イオン質量範囲のための複数の前駆体イオンスペクトルを生成するステップと、
    (c)前記プロセッサを使用して、前記質量分析器から前記複数の前駆体イオンスペクトルを受信するステップと、
    (d)前記プロセッサを使用して、前記複数の前駆体イオンスペクトルから、事前決定された閾値を上回る強度を有する前駆体イオンを選択するステップと、
    (e)前記選択された前駆体イオンに関して、前記プロセッサを使用して、前記前駆体イオン質量範囲を横断して前記前駆体イオン質量選択窓の少なくとも1つの走査に関して前記複数の前駆体イオンスペクトルから前記選択された前駆体イオンの強度を読み出し、前記選択された前駆体イオンの強度が、前記前駆体イオン質量選択窓が前記前駆体イオン質量範囲を横断して走査されるにつれて、前記前駆体イオン質量選択窓の前駆体イオン質量対電荷比(m/z)として表される前記前駆体イオン質量選択窓の場所に伴って変動する様子を説明する、トレースを生成するステップと、
    (f)前記プロセッサを使用して、前記トレースが前記選択された前駆体イオンのm/z値に関して非ゼロ強度を含む場合に、前記イオン源デバイスから生じる前駆体イオンとして前記選択された前駆体イオンを識別するステップと
    を含む、方法。
  10. 前記プロセッサを使用して、前記選択された前駆体イオンのm/z値が前記トレースのm/z範囲内ではない場合に、イオン源から生じない前駆体イオンとして前記選択された前駆体イオンを識別するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
  11. 前記プロセッサを使用して、前記複数の前駆体イオンスペクトルから全ての前駆体イオンをフィルタ処理するために、前記事前決定された閾値を上回る強度を有する前記複数の前駆体イオンスペクトルからの前駆体イオン毎にステップ(d)−(f)を繰り返すステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
  12. 前記プロセッサを使用して、前記一連の重複前駆体イオン質量選択窓のうちの各前駆体イオン質量選択窓からの前駆体イオンを前記質量フィルタから前記質量分析器まで輸送するために十分高いが、前記輸送された前駆体イオンを断片化するために十分低い、衝突エネルギー(CE)を印加するように、前記質量フィルタと前記質量分析器との間のイオン経路に沿って位置する断片化デバイスに命令するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
  13. 前記プロセッサを使用して、情報依存性取得(IDA)実験の調査走査としてステップ(a)−(f)を実施し、前記イオン源デバイスから生じることが見出される前記前駆体イオンから断片化する前駆体イオンのリストを決定するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
  14. 前記プロセッサを使用して、前記前駆体イオンのリストのうちの各前駆体イオンを選択するように前記質量フィルタに命令し、前記前駆体イオンのリストのうちの各前駆体イオンを断片化するように前記断片化デバイスに命令し、前記IDA実験の一部として、前記前駆体イオンのリストのうちの各前駆体イオンの生成イオンを分析するように前記質量分析器に命令するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
  15. 非一過性の有形コンピュータ可読記憶媒体を備える、コンピュータプログラム製品であって、そのコンテンツは、走査型逐次窓前駆体イオン選択および質量分析調査走査を使用して、イオン源デバイスから生じる前駆体イオンを識別するための方法を実施するように、プロセッサ上で実行される命令を伴うプログラムを含み、
    システムを提供するステップであって、前記システムは、1つ以上の明確に異なるソフトウェアモジュールを備え、前記明確に異なるソフトウェアモジュールは、測定モジュールと、フィルタリングモジュールとを備える、ステップと、
    前記測定モジュールを使用して、重複段階において着目前駆体イオン質量範囲を横断して着目前駆体イオン質量範囲よりも小さい幅を伴う前駆体イオン質量選択窓を走査することによって、イオン源デバイスから受け取られるイオンビームをフィルタ処理するように質量フィルタに命令し、前記前駆体イオン質量範囲を横断して一連の重複前駆体イオン質量選択窓を生成し、前記一連の重複前駆体イオン質量選択窓のうちの各前駆体イオン質量選択窓から質量分析器に前駆体イオンを透過させるように前記質量フィルタに命令するステップであって、前記イオン源デバイスは、サンプルをイオン化し、前記イオンビームに変換する、ステップと、
    前記測定モジュールを使用して、前記一連の重複前駆体イオン質量選択窓のうちの各前駆体イオン質量選択窓の前駆体イオンを分析するように前記質量分析器に命令し、重複前駆体イオン質量選択窓毎の前駆体イオンスペクトルおよび前記前駆体イオン質量範囲のための複数の前駆体イオンスペクトルを生成するステップと、
    前記フィルタリングモジュールを使用して、前記質量分析器から前記複数の前駆体イオンスペクトルを受信するステップと、
    前記フィルタリングモジュールを使用して、前記複数の前駆体イオンスペクトルから、事前決定された閾値を上回る強度を有する前駆体イオンを選択するステップと、
    前記選択された前駆体イオンに関して、前記フィルタリングモジュールを使用して、前記前駆体イオン質量範囲を横断して前記前駆体イオン質量選択窓の少なくとも1つの走査に関して前記複数の前駆体イオンスペクトルから前記選択された前駆体イオンの強度を読み出し、前記選択された前駆体イオンの強度が、前記前駆体イオン質量選択窓が前記前駆体イオン質量範囲を横断して走査されるにつれて、前記前駆体イオン質量選択窓の前駆体イオン質量対電荷比(m/z)として表される前記前駆体イオン質量選択窓の場所に伴って変動する様子を説明する、トレースを生成するステップと、
    前記フィルタリングモジュールを使用して、前記トレースが前記選択された前駆体イオンのm/z値に関して非ゼロ強度を含む場合に、前記イオン源デバイスから生じる前駆体イオンとして前記選択された前駆体イオンを識別するステップと
    を含む、コンピュータプログラム製品。
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