JP2020509141A - フッ素化熱可塑性エラストマー - Google Patents

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Abstract

本発明は、均一に分散された微球粒の形態下において、ECTFE様可塑ゴム弾性ブロックを含むフッ素化熱可塑性エラストマーの密封性能に実質的に寄与する、低い結晶性及び固体状態でのアセンブリによって特徴付けられるECTFE様可塑性ブロックを含む新規のフッ素化熱可塑性エラストマーに関する。【選択図】なし

Description

関連出願の参照
本出願は、2017年3月8日出願の欧州特許出願公開第17159768.5号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
フッ素化熱可塑性エラストマー、即ちゴムの性質と熱可塑性挙動とを組み合わせた材料は、当技術分野において提供されており、ゴム状弾性を有する少なくとも1つの「ソフト」セグメントと、熱可塑性を有する少なくとも1つの「ハード」セグメントとからなるブロックコポリマーであることが知られている。
弾性ブロック構成成分は、ゴムに関係する性質を担う一方、熱可塑性セグメントは、結晶性球粒を作製することによって一種の可逆的架橋をもたらし、ブロックコポリマー鎖間での相互接続を作製することが一般に理解されている。
結果的に、これらのフッ素化熱可塑性エラストマーは、更なる硬化を必要とせず、顕著な性能をもたらすことが可能であり、これは、スクラップ及びロスの再加工を含む加工の観点から著しく有利である。
本分野において、米国特許第5605971号明細書(AUSIMONT SPA)(1997年2月25日公開)、米国特許第5612419号明細書(AUSIMONT SPA)(1997年3月18日公開)、米国特許第6207758号明細書(AUSIMONT SPA)(2001年3月27日公開)は、可塑性セグメント及び弾性セグメントを含むフッ素化熱可塑性エラストマーを開示しているものの、弾性セグメントは、例えば、フッ化ビニリデン(VDF)繰り返し単位を含むセグメント及び/又はテトラフルオロエチレン(TFE)繰り返し単位を含むセグメントを含む異なる種類のものであり得る一方、可塑性セグメントは、他の単位と組み合わせて、同様にTFE単位を含むセグメント、VDF単位を含むセグメント、エチレン、プロピレン又はイソブチレン単位を含むセグメントなどの異なる種類であり得る。特に、これらの文献において、可塑性種のセグメントは、特に、任意選択的に第3のコモノマーC〜C(ペル)フルオロオレフィン又はPAVEを0.1〜10%の量で含有する、TFE又はCTFE(40〜60%)のエチレン、プロピレン又はイソブチレン(40〜60%)とのコポリマーであり得るが、それにもかかわらず、これらの実施形態は、特定の性質を有する材料の実際の実施例に関連してより具体的に記載されていない。
ここで、ECTFEのブロックの存在は、対応するフッ素化熱可塑性エラストマーに対し、顕著に増加した不透性、増加した耐溶媒性及び耐化学性などを含む、ECTFEで既知の有利な特徴を付与するための有利な手段であるように思われ得る。
これらに関して、通常、低温で溶媒アシスト重合により作製されるエチレン(E)−クロロトリフルオロエチレン(CTFE)コポリマーは、その重合鎖がE及びCTFE単位の標的化した厳密な代替配列に関する場合、非常に結晶性の構造を付与することが知られており、最大で統計上50/50モル/モルのECTFEに対応する融点をもたらす。
しかし、フッ素化熱可塑性エラストマーで大型球粒を形成する非常に結晶性の構造の存在は、これらの構造がむしろエラストマー鎖の全体的な物理的架橋密度を低下させ、特に高温での密封性に悪影響を与えると考えられるため、極めて不利であると考えられる。
したがって、改善された化学性及びバリア性と組み合わせて、改善された密封性、特に最高で70℃の温度において改善されたC−Set値を付与することが可能なフッ素化熱可塑性エラストマーについて、当技術分野において依然として欠点が存在する。
驚くべきことに、本出願人は、以下で詳述する特定のフッ素化熱可塑性エラストマーが、上述した課題となる必要条件を処理し且つそれに対処するようなものであることを発見した。乳化重合法に依拠して、本出願人は、均一に分散された微球粒の形態下において、特に高温での密封性能の改善に実質的に寄与する、低い結晶性及び固体状態でのアセンブリによって特徴付けられる「ECTFE」様可塑性ブロックを含む特定のフッ素化熱可塑性エラストマーをもたらすことができた。
したがって、本発明は、フッ素化熱可塑性エラストマー[ポリマー(F−TPE)]であって、
− 繰り返し単位の配列からなる少なくとも1つの弾性ブロック(A)であって、前記配列は、少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含み、前記ブロック(A)は、ASTM D3418に従って測定されて25℃未満のガラス転移温度を有する、少なくとも1つの弾性ブロック(A)と、
− 繰り返し単位の配列からなる少なくとも1つの熱可塑性ブロック(B)であって、前記配列は、エチレンに由来する繰り返し単位と、クロロトリフルオロエチレンに由来する繰り返し単位とを含む、熱可塑性ブロック(B)と
を含み、前記ポリマー(F−TPE)は、少なくとも180℃の融点(T)及び以下の不等式:
1.5J/g≦ΔHXX≦F(B)・35J/g
に関する結晶化熱(ΔHXX)を有し、T及びΔHXXは、ASTM D3418に従って測定され、上述の不等式において、F(B)は、重量比Wt(B)/[Wt(A)+Wt(B)]である一方、Wt(A)は、ブロック(A)の重量であり、及びWt(B)は、ブロック(B)の重量である、フッ素化熱可塑性エラストマー[ポリマー(F−TPE)]に関する。
フッ素化熱可塑性エラストマー[ポリマー(F−TPE)]
本発明の目的に関して、用語「弾性の」は、本明細書において、「ブロック(A)」と組み合わせて使用される場合、単独で取り出した際に実質的に非晶質であり、即ちASTM D3418に従って測定されて2.0J/g未満、好ましくは1.5J/g未満、より好ましくは1.0J/g未満の結晶化熱を有するポリマー鎖セグメントを意味することを意図する。
本発明の目的に関して、用語「熱可塑性」は、本明細書において、「ブロック(B)」と組み合わせて使用される場合、単独で取り出した際に半結晶性であり、ASTM D3418に従って測定されて10.0J/gを超える関連結晶化熱を有する、検出可能な融点を有するポリマー鎖セグメントを意味することを意図する。
本発明の組成物(C)のフッ素化熱可塑性エラストマーは、有利には、ブロックコポリマーであり、前記ブロックコポリマーは、典型的には、少なくとも1つのブロック(B)と交互に変えられた少なくとも1つのブロック(A)を含む構造を有し、即ち、前記フッ素化熱可塑性エラストマーは、典型的には、(B)−(A)−(B)の種類の1つ以上の繰り返し単位を含み、好ましくはそれらからなる。一般に、ポリマー(F−TPE)は、(B)−(A)−(B)の種類の、即ち両方の末端においてサイドブロック(B)に接続された2つの末端を有する中央ブロック(A)を含む構造を有する。
ブロック(A)は、多くの場合、代替的にソフトブロック(A)と呼ばれ、ブロック(B)は、多くの場合、代替的にハードブロック(B)と呼ばれる。
用語「フッ素化モノマー」は、本明細書において、少なくとも1つのフッ素原子を含むエチレン系不飽和モノマーを意味することを意図する。
フッ素化モノマーは、1つ以上の他のハロゲン原子(Cl、Br、I)を更に含み得、且つ有利には、
(a)テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ペルフルオロイソブチレンなどのC〜Cペルフルオロオレフィン;
(b)フッ化ビニリデン(VDF)、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン(TrFE)、ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)、式CH=CH−Rf1(式中、Rf1は、C〜Cペルフルオロアルキル基である)のペルフルオロアルキルエチレンなどの水素含有C〜Cフルオロオレフィン;
(c)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)などのC〜Cクロロ及び/又は臭素含有フルオロオレフィン;
(d)式CF=CFORfa(式中、Rfaは、CF、C又はCなどのC〜Cフルオロアルキル基である)のフルオロアルキルビニルエーテル;
(e)特に式CF=CFOCFORfb(ここで、Rfbは、−CFCF、−CFCF−O−CF及び−CFなどのC〜Cフルオロ(オキシ)アルキル基である)のフルオロメトキシアルキルビニルエーテルを含む、式CF=CFOX0a(式中、X0aは、1つ又は2つ以上のエーテル性酸素原子を含むC〜C12フルオロアルキル基である)のフルオロオキシアルキルビニルエーテル;
(f)式:
Figure 2020509141
(式中、Rf3、Rf4、Rf5及びRf6のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、独立して、フッ素原子、−CF、−C、−C、−OCF又は−OCFCFOCFなどの、任意選択的に1つ以上の酸素原子を含むC〜Cペルフルオロ(オキシ)アルキル基である)
の(ペル)フルオロジオキソール
からなる群から選択される。
ブロック(A)は、少なくとも1つの水素化モノマーに由来する繰り返し単位を更に含み得、用語「水素化モノマー」とは、少なくとも1つの水素原子を含み、フッ素原子を含まないエチレン系不飽和モノマーを意味することを意図する。上で詳述した水素化モノマーとしては、特にエチレン、プロピレン、(メタ)アクリルモノマー、スチレンモノマーが挙げられる。
ポリマー(F−TPE)は、典型的には、
− 少なくとも1つの弾性ブロック(A)であって、
(1)繰り返し単位の配列からなるフッ化ビニリデン(VDF)系弾性ブロック(AVDF)であって、前記配列は、VDFに由来する繰り返し単位と、VDFと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位とを含み、前記VDFと異なるフッ素化モノマーは、典型的には、
(a)テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)などのC〜Cペルフルオロオレフィン;
(b)フッ化ビニル、トリフルオロエチレン(TrFE)、ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)、式CH=CH−Rf1(式中、Rf1は、C〜Cペルフルオロアルキル基である)のペルフルオロアルキルエチレンなどの、VDFと異なる水素含有C〜Cフルオロオレフィン;
(c)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)などのC〜Cクロロ及び/又は臭素含有フルオロオレフィン;
(d)式CF=CFORf1(式中、Rf1は、CF(PMVE)、C又はCなどのC〜Cペルフルオロアルキル基である)のペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE);
(e)特に式CF=CFOCFORf2(式中、Rf2は、−CFCF、−CFCF−O−CF及び−CFなどのC〜Cペルフルオロ(オキシ)アルキル基である)のペルフルオロメトキシアルキルビニルエーテルを含む、式CF=CFOX(式中、Xは、1つ又は2つ以上のエーテル性酸素原子を含むC〜C12ペルフルオロオキシアルキル基である)のペルフルオロオキシアルキルビニルエーテル;
Figure 2020509141
(式中、Rf3、Rf4、Rf5及びRf6のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、独立して、フッ素原子、−CF、−C、−C、−OCF又は−OCFCFOCFなどの、任意選択的に1つ以上の酸素原子を含むC〜Cペルフルオロ(オキシ)アルキル基である)
からなる群から選択される、フッ化ビニリデン(VDF)系弾性ブロック(AVDF)と、
(2)繰り返し単位の配列からなるテトラフルオロエチレン(TFE)系弾性ブロック(ATFE)であって、前記配列は、TFEに由来する繰り返し単位と、TFEと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位とを含み、前記フッ素化モノマーは、典型的には、上記のクラス(b)、(c)、(d)、(e)のものからなる群から選択される、テトラフルオロエチレン(TFE)系弾性ブロック(ATFE)と
からなる群から選択される少なくとも1つの弾性ブロック(A)と、
− 少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位の配列からなる少なくとも1つの熱可塑性ブロック(B)と
を含み、好ましくはそれらからなる。
ブロック(AVDF)及び(ATFE)のいずれも、エチレン、プロピレン又はイソブチレンなどのC〜C非フッ素化オレフィンからなる群から選択され得る、少なくとも1つの水素化モノマーに由来する繰り返し単位を更に含み得る。
弾性ブロック(A)がブロック(AVDF)である場合、上で詳述したとおり、前記ブロック(AVDF)は、典型的には、ブロック(AVDF)の配列の繰り返し単位の総モルに対して、
− 45モル%〜90モル%の、フッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位、
− 5モル%〜50モル%の、VDFと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位、及び
− 任意選択的に、最大で30モル%の、少なくとも1つの水素化モノマーに由来する繰り返し単位
を含む、好ましくはそれらからなる繰り返し単位の配列からなる。
弾性ブロック(A)は、式:
=CR−T−CR=R
(式中、R、R、R、R、R及びRは、互いに等しいか又は異なり、H、F、Cl、C〜Cアルキル基及びC〜C(ペル)フルオロアルキル基からなる群から選択され、及びTは、任意選択的に、好ましくは少なくとも部分的にフッ素化された1つ又は2つ以上のエーテル性酸素原子又は(ペル)フルオロポリオキシアルキレン基を含む直鎖又は分岐鎖C〜C18アルキレン又はシクロアルキレン基である)
の少なくとも1つのビス−オレフィン[ビス−オレフィン(OS)]に由来する繰り返し単位を更に含み得る。
ビス−オレフィン(OF)は、好ましくは、式(OF−1)、(OF−2)及び(OF−3):
Figure 2020509141
(式中、jは、2〜10、好ましくは4〜8に含まれる整数であり、及びR1、R2、R3及びR4は、互いに等しいか又は異なり、H、F、C〜Cアルキル基及びC〜C(ペル)フルオロアルキル基からなる群から選択される);
Figure 2020509141
(式中、Aのそれぞれは、互いに且つそれぞれの出現において等しいか又は異なり、H、F及びClからなる群から独立して選択され、Bのそれぞれは、互いに且つそれぞれの出現において等しいか又は異なり、H、F、Cl及びORからなる群から独立して選択され、ここで、Rは、部分的に、実質的に又は完全にフッ素化又は塩素化され得る分岐鎖又は直鎖アルキル基であり、Eは、エーテル結合と共に挿入され得る、任意選択的にフッ素化された、2〜10個の炭素原子を有する二価の基であり、好ましくは、Eは、−(CF基であり、ここで、mは、3〜5に含まれる整数であり、好ましい(OF−2)の種類のビス−オレフィンは、FC=CF−O−(CF−O−CF=CFである);
Figure 2020509141
(式中、E、A及びBは、上記と同じ意味を有し、R5、R6及びR7は、互いに等しいか又は異なり、H、F、C〜Cアルキル基及びC〜C(ペル)フルオロアルキル基からなる群から選択される)
からなる群から選択される。
ブロック(A)が、少なくとも1種のビス−オレフィン(OF)に由来する繰り返し単位を更に含む繰り返し単位配列からなる場合、前記配列は、典型的には、ブロック(A)の繰り返し単位の総モルを基準にして0.01モル%〜1.0モル%、好ましくは0.03モル%〜0.5モル%、より好ましくは0.05モル%〜0.2モル%に含まれる量において、前記少なくとも1種のビス−オレフィン(OF)に由来する繰り返し単位を含む。
ポリマー(F−TPE)のブロック(A)中のビス−オレフィンに由来する繰り返し単位の量を示すため、以下において本明細書で用いられる場合の表現「少量」とは、他のモノマー、即ちTFE及びTFE以外のペルフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位により、典型的な熱安定性及び耐化学性といった性能に著しく影響を及ぼさないために、前記繰り返し単位の量よりも一桁少ない(例えば、少なくとも50分の1である)量を意味することを目的とする。
ポリマー(F−TPE)の弾性ブロック(A)が、少なくとも1つのビス−オレフィン(OF)に由来する繰り返し単位を更に含む場合、前記ブロック(A)は、典型的には、前記弾性ブロック(A)を構成する繰り返し単位の総モルを基準にして0.01モル%〜1.0モル%、好ましくは0.03モル%〜0.5モル%、より好ましくは0.05モル%〜0.2モル%に含まれる量において、少なくとも1つのビス−オレフィン(OF)に由来する繰り返し単位を更に含む。
前述のとおり、ポリマー(F−TPE)のブロック(B)は、繰り返し単位の配列からなり、前記配列は、エチレンに由来する繰り返し単位と、クロロトリフルオロエチレンに由来する繰り返し単位とを含む。
前記ブロック(B)の繰り返し単位の配列は、一般に、
(j)40〜60モル%の、エチレン(E)に由来する繰り返し単位;
(jj)60〜40モル%の、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)に由来する繰り返し単位;及び
(jjj)0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%、より好ましくは0〜2.5モル%の、E及びCTFEと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマー及び/又は水素化モノマーに由来する繰り返し単位
から本質的になり、モル%は、ブロック(B)の繰り返し単位のモル全体を参照する。
前記表現「フッ素化モノマー」及び「水素化モノマー」は、ブロック(A)に関連して上で詳述した意味を有し、少なくとも1つのフッ素原子を含むエチレン系不飽和モノマー又はフッ素原子を含まないエチレン系不飽和モノマーを称することをそれぞれ意味する。
コモノマー(jjj)は、
1)一般式:CH=CH−CO−O−R(式中、Rは、任意選択的に1つ以上のヘテロ原子を含有するC〜C20炭化水素基である)を有するアクリルモノマー;
2)一般式:CH=CH−O−R(式中、Rは、任意選択的に1つ以上のヘテロ原子を含有するC〜C20炭化水素基である)を有するビニルエーテルモノマー;
3)一般式:CH=CH−O−CO−R(式中、Rは、任意選択的に1つ以上のヘテロ原子を含有するC〜C20炭化水素基である)を有するカルボン酸のビニルエステル;
4)一般式CH=CH−(CH−COOH(式中、nは、0であるか又は1〜10の整数である)を有する不飽和カルボン酸
からなる群から選択される水素化モノマーであり得る。
コモノマー(jjj)は、フッ素化モノマーであり得る。このような場合、コモノマー(jjj)は、ブロック(A)に関連して上述したフッ素化モノマーのいずれかであり得、より具体的には、式CF=CFORfc(式中、Rfcは、C〜Cフルオロ又はペルフルオロアルキル、例えばCF、C、Cである)を満たす(ペル)フルオロアルキルビニルエーテルであり得る。
本発明のポリマー(F−TPE)において、特に良好な結果を与えることが発見されているブロック(B)は、
(j)45〜55モル%のエチレン(E);
(jj)55〜45モル%のクロロトリフルオロエチレン(CTFE)、及び任意選択的に、
(jjj)0〜2.5モル%の、式CF=CFORfc(式中、Rfcは、C〜Cフルオロ又はペルフルオロアルキル、例えばCF、C、Cである)を満たす少なくとも1つの(ペル)フルオロアルキルビニルエーテル
に由来する繰り返し単位の配列からなるものであり、モル%は、ブロック(B)の繰り返し単位のモル全体を参照する。
上述したものと異なる繰り返し単位をもたらす末端鎖、欠陥又は微量のモノマー不純物(1モル%未満)は、依然としてポリマー(F−TPE)の性質に影響を与えることなく好ましいブロック(B)に含まれ得る。
述べたように、ポリマー(F−TPE)は、少なくとも180℃、好ましくは少なくとも200℃、より好ましくは少なくとも220℃の融点(T)を有し、Tは、ASTM D3418に従って測定される。更に、ポリマー(F−TPE)は、最大で242℃、好ましくは最大で240℃、より好ましくは最大で235℃、更により好ましくは最大で230℃の融点(T)を有することが好ましい。
更に、本発明のポリマー(F−TPE)は、以下の不等式:
1.5J/g≦ΔHXX≦F(B)・35J/g
に関する、好ましくは以下の不等式:
2.0J/g≦ΔHXX≦F(B)・30J/g
に関する結晶化熱(ΔHXX)を有し、ΔHXXは、ASTM D3418に従って測定され、上述の不等式において、F(B)は、重量比Wt(B)/[Wt(A)+Wt(B)]である一方、Wt(A)は、ブロック(A)の重量であり、及びWt(B)は、ブロック(B)の重量である。
この理論に拘束されるものではないが、本出願人は、ECTFE種の材料に特有の高い融解温度は、高温で機械的性質及び密封性の維持をもたらすのに決定的である一方、乳化重合により顕著に達成可能である、小球粒に代表的な比較的小さい結晶性により、微結晶性ドメインの作製、弾性マトリックス内への十分な分散、及びしたがって物理架橋の最大化、及びしたがって密封性の最大化を確実にもたらすと考える。
フッ素化熱可塑性エラストマー中におけるブロック(A)及びブロック(B)間の重量比は、典型的には、95:5〜10:90に含まれ、即ち、F(B)値は、0.05〜0.90の範囲である。
特定の好ましい実施形態に従うと、ポリマー(F−TPE)は、多量のブロック(A)を含む。これらの実施形態に従うと、本発明の方法で使用されるポリマー(F−TPE)は、ブロック(A)及びブロック(B)が、95:5〜65:35、好ましくは90:10〜70:30の重量比によって特徴付けられ、即ち、F(B)値は、0.05〜0.35、好ましくは0.10〜0.30の範囲である。
本発明の方法で使用されるポリマー(F−TPE)は、以下の連続的な工程:
(a)少なくとも1つのフッ素化モノマー及び場合により少なくとも1つのビス−オレフィン(OF)を水性媒体中でラジカル反応開始剤及びヨウ素化連鎖移動剤の存在下において乳化重合し、それにより、水性媒体中に分散された1つ以上のヨウ素化末端基を含有する少なくとも1つのブロック(A)からなるプレポリマーを提供する工程と、
(b)エチレン(E)及びクロロトリフルオロエチレン(CTFE)並びに任意選択的にE及びCTFEと異なる1つ又は2つ以上のフッ素化モノマー及び/又は水素化モノマーを、ラジカル反応開始剤の存在下及び工程(a)から得られた前記水性媒体に分散されたプレポリマーの存在下において乳化重合し、それにより、ブロック(A)の前記ヨウ素化末端基の反応を通して、前記プレポリマーにグラフトされた少なくとも1つのブロック(B)を提供する工程と
を含む製造工程によって製造することができる。
ラジカル開始剤は、典型的には、
− 無機過酸化物、例えば任意選択的に鉄、銅若しくは銀塩又は他の容易に酸化可能な金属と組み合わせたアルカリ金属又はアンモニウム過硫酸塩、過リン酸塩、過ホウ酸塩又は過炭酸塩など、
− 有機過酸化物、例えばジスクシニルペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド及びジ−tert−ブチルペルオキシドなど、並びに
− アゾ化合物(例えば、米国特許第2515628号明細書(E.I.DU PONT DE NEMOURS AND CO.)(1950年7月18日)及び米国特許第2520338号明細書(E.I.DU PONT DE NEMOURS AND CO.)(1950年8月29日)を参照されたい)
からなる群から選択される。
有機又は無機レドックス系、例えば過硫酸アンモニウム/亜硫酸ナトリウム、過酸化水素/アミノイミノメタンスルフィン酸を使用することも可能である。
上で詳述した製造方法の工程(a)及び/又は(b)において、典型的には、式R(式中、Rは、C〜C16、好ましくはC〜C(ペル)フルオロアルキル又は(ペル)フルオロクロロアルキル基であり、及びnは、1又は2である)の1つ以上のヨウ素化連鎖移動剤を反応媒体に添加する。米国特許第5173533号明細書(AUSIMONT SPA)(1992年12月22日)に特に記載されているように、連鎖移動剤としてアルカリ又はアルカリ土類金属ヨウ化物を使用することも可能である。添加される連鎖移動剤の量は、得られることが意図される分子量及び連鎖移動剤自体の有効性に応じて確立される。
上で詳述した製造方法の工程(a)及び(b)のいずれにおいても、1つ以上の界面活性剤、好ましくは式:
−X
(式中、Rは、C〜C16(ペル)フルオロアルキル又は(ペル)フルオロポリオキシアルキル基であり、Xは、−COO又はSO であり、及びMは、H、NH 及びアルカリ金属イオンからなる群から選択される)
のフッ素化界面活性剤が使用され得る。
最も一般的に使用されている界面活性剤の中でも、1つ以上のカルボキシル基で終結された(ペル)フルオロポリオキシアルキレンを挙げることができる。
製造プロセスにおいて、工程(a)が終了される場合、反応は、一般に、例えば冷却することによって中止され、残留モノマーは、例えば、撹拌下でエマルションを加熱することによって除去される。次に、第2の重合工程(b)は、有利には、エチレン/クロロトリフルオロエチレン含有モノマー混合物を供給し、新鮮なラジカル反応開始剤を添加することで実施される。必要に応じて、ポリマー(F−TPE)の製造方法の工程(b)下において、1種以上の更なる連鎖移動剤が添加され得、これは、上で定義されたとおりの同じヨウ素化連鎖移動剤又はフルオロポリマーの製造での使用のための当技術分野で公知の連鎖移動剤、例えば3〜10個の炭素原子を有するケトン、エステル又は脂肪族アルコール、例えばアセトン、酢酸エチル、マロン酸ジエチル、ジエチルエーテル及びイソプロピルアルコール;炭化水素、例えばメタン、エタン及びブタン;水素原子を任意選択的に有するクロロ(フルオロ)炭素、例えばクロロホルム及びトリクロロフルオロメタン;アルキル基が1〜5個の炭素原子を有するビス(アルキル)カーボネート、例えばビス(エチル)カーボネート及びビス(イソブチル)カーボネートなどから選択され得る。工程(b)が完了するとき、従来の方法に従い、例えば電解質を添加することによる凝固又は冷却により、ポリマー(F−TPE)を一般にエマルションから単離する。
重合温度及び圧力は、使用されるモノマーの種類に依存して及び他の反応条件に基づいて広い範囲内で変動し得る。ポリマー(F−TPE)の製造プロセスの工程(a)及び/又は工程(b)は、典型的には、−20℃〜150℃の温度及び/又は典型的には10MPa以下の圧力下で実施される。
本発明のポリマー(F−TPE)は、使用分野に応じて必要により様々な添加剤、アジュバント及び改質剤と化合することができる。
そのため、更に別の本発明の目的は、有利には、補強剤、顔料、加工助剤、可塑剤、安定剤(熱安定剤、UV安定剤を含む)、酸スカベンジャー、金型剥離剤及び硬化系からなる群から選択される少なくとも1つの追加の構成成分との組み合わせにおいて本発明のポリマー(F−TPE)を含む組成物(C)である。
硬化系を使用することは、必須でないものの、特定の実施形態に従うと、得られた硬化部分の性能を更に改善するように、ポリマー(F−TPE)の架橋促進を可能にする作用物質を含めることが適切であり得る。このような場合、弾性ブロック(A)又は熱可塑性ブロック(B)の架橋を促進するのに好適であることが発見されている一般的な硬化系を添加し得る。
ポリマー(F−TPE)又はそれを含む組成物(C)を通常の熱可塑性技術により加工して成形物品を得ることができる。
そのため、本発明の更なる目的は、成形物品を製造する方法であって、上で詳述したポリマー(F−TPE)又は組成物(C)を成形して前記成形物品を提供することを含む方法である。
成型に使用する技術は、特に限定されない。溶融/軟化形態のポリマー(F−TPE)又は組成物(C)を成形することを含む標準的な技術を有利に適用することができ、特に圧縮成型、押し出し成型、射出成型、トランスファー成形などが挙げられる。
それにもかかわらず、一般に、特に前記成形物品が複雑な設計を有する場合、射出成型技術が最も多機能的であり、幅広く使用されていると理解される。
本技術によると、ラム又はスクリュー型プランジャーを使用して、その溶融状態のポリマー(F−TPE)又は組成物(C)の一部を金型キャビティ中に押し込み、それは、金型の輪郭に対して確認した形状に固化する。次に、金型が開き、好適な手段(例えば、一連のピン、スリーブ、ストリッパーなど)が物品を離型するために前進される。次に、金型が閉じ、このプロセスが繰り返される。
本発明の別の実施形態において、成形物品を製造する方法は、標準的な成形部分をマシニングして、前記標準的な成形部分と異なる寸法及び形状を有する目標の成形物品を得る工程を含む。前記標準的な成形部分の非限定例としては、特にプレート、ロッド、スラブなどが挙げられる。前記標準的な成形部分は、特にポリマー(F−TPE)又は組成物(C)の押出成型又は射出成型を含む任意の加工技術により得ることができる。
ポリマー(F−TPE)又は組成物(C)から作製した成形物品は、特にシーリング材料として有用であり得る。
シーリング材料として有用な本発明の成形物品の非限定例としては、特にOリング又は角リング、パッキン、ガスケット、半導体関連分野(例えば、半導体製造装置、液晶パネル製造装置、プラズマパネル製造装置、プラズマアドレス液晶パネル、電解放出表示パネル及び太陽電池基板)における隔壁及び他のシーリング材料があり、これらは、CVD装置、ドライエッチング装置、ウェットエッチング装置、酸化及び拡散装置、スパッタリング装置、アッシング装置、清掃装置、イオン打ち込み装置及び排気装置で使用することができる。具体的には、これらは、ゲートバルブ用Oリング及びシーリング材料として、石英窓用Oリング及び他のシーリング材料として、チャンバ用Oリング及び他のシーリング材料として、ゲート用Oリング及び他のシーリング材料として、ベルジャー用Oリング及び他のシーリング材料として、連結具用Oリング及び他のシーリング材料として、ポンプ用Oリング、隔壁及び他のシーリング材料として、半導体のガス制御装置用Oリング及び他のシーリング材料として、且つレジスト現像溶液及びリリース溶液用Oリング及び他のシーリング材料として使用することができる。
自動車分野では、本発明の成形物品は、ガスケット、シャフトシール、バルブステムシール、ピストンリング、クランク軸シール、カム軸シール、オイルシール並びにエンジン及びその周辺装置のための様々なシーリング材料並びに駆動装置のための様々なシーリング材料として使用することができる。燃料システム及びその周辺装置で使用されるシーリング材料の例としては、Oリング又は角リング、パッキン及び隔壁がある。具体的には、これらは、エンジンヘッドガスケット、金属ガスケット、油受けガスケット、クランク軸シール、カム軸シール、バルブステムシール、マニホールドパッキン、酸素センサ用シール、インジェクタOリング、インジェクタパッキン、燃料ポンプOリング、隔壁、クランク軸シール、ギアボックスシール、動力ピストンパッキン、シリンダーライナーシール、バルブステムシール、オートマチックトランスミッションギアのフロントポンプシール、リアアクセルピニオンシール、自在継ぎ受けガスケット、スピードメーターピニオンシール、フロントブレーキピストンカップ、トルクトランスミッションのOリング、オイルシール、排気ガス再循環燃焼装置のシール、ベアリングシール及び気化器センサの隔壁として使用することができる。
航空分野では、本発明の成形物品は、隔壁、Oリング又は角リング、バルブ、パッキン及び様々なシーリング材料であり得、これらは、燃料システムで使用することができる。具体的には、航空分野では、ジェットエンジンのバルブステムシール、ガスケット、Oリング、回転軸シール、水力装置及び防火壁シール用ガスケットが存在し、船舶分野では、スクリューのプロペラシャフト船尾シール、ディーゼルエンジンの吸排気用バルブステムシール、バタフライバルブシール及びバタフライバルブ軸シールが存在する。
化学処理分野では、本発明の成形物品は、バルブ、パッキンの隔壁、Oリング又は角リング及び様々なシーリング材料であり得、これらは、薬剤、農薬、コーティング剤及び樹脂などの化学物質を調製するためのプロセスにおいて使用することができる。具体的には、化学物質用ポンプ、流量計及び配管のシール、熱交換器用シール、硫酸製造装置のガラス冷却器用パッキン、農薬スプリンクラー及び移送ポンプのシール、ガス配管のシール、めっき溶液用シール、高温乾燥機用パッキン、製紙用ベルトロールのシール、燃料電池のシール、ダクトの継ぎ目シール、ガスクロマトグラフィー、pH計管の継ぎ目用パッキン、分析器並びに物理装置及び化学装置のシール、隔壁、バルブ部品などに使用することができる。
写真分野の現像機、印刷分野の印刷機及びコーティング分野のコーティング施設では、本発明の成形物品は、シール及び乾燥コピー機のバルブ部品として使用することができる。
食品加工装置の分野では、本発明の成形物品は、バルブ、パッキン、隔壁、Oリング又は角リング及び食品加工プロセスで使用可能な様々なシーリング材料であり得る。具体的には、本発明の成形物品は、プレート型熱交換器のシール及び自動販売機の電磁弁シールとして使用することができる。
核電力プラント用装置の分野では、本発明の成形物品は、パッキン、Oリング、隔壁、バルブ及び様々なシーリング材料であり得る。
汎用産業装置の分野では、本発明の成形物品は、パッキン、Oリング、隔壁、バルブ及び様々なシーリング材料であり得る。より具体的には、本発明の成形物品は、水力及び潤滑機のシール、ベアリングシール、乾燥クリーナーの窓及び他のシール、六フッ化ウラン濃縮器のシール、サイクロトロンのシール(真空)バルブ、自動梱包機のシール並びに空気中の二酸化硫黄及び塩素ガスを分析するためのポンプの隔壁(汚染防止装置)に使用することができる。
電気デバイスを使用する分野では、本発明の成形物品は、例えば、高速列車のための絶縁オイルキャップ及び液体シール変圧器での通気シールとして使用することができる。
燃料電池領域では、本発明の成形物品は、電極とセパレータとの間のシーリング材料、水素、酸素及び生成した水配管用シール並びに燃料電池の電極とその周辺パイプとの間で使用されるパッキンとして使用することができる。
電子部品の分野では、本発明の成形物品は、熱放出材料、電磁波遮蔽材料及びコンピュータのハードディスクドライブ用ガスケットとして使用することができる。
また、本発明の成形物品は、特に磁気レコーダー(ハードディスクドライブ)用ガスケットなど、クリーン施設用シーリング材料並びに半導体製造装置及びウエハ用デバイスストレージのシールリング材料として好適に使用することができる。
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
本発明は、ここで、以下の実施例を参照してより詳細に説明されるが、その目的は、例示的なものにすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1:構造ECTFE−P(VDF−HFP)−ECTFEを有するブロックコポリマー
工程1:460rpmで稼働する機械的撹拌器を備えた22リットルの反応容器に13.5Lの脱塩水並びに54mLのマイクロエマルション(12.0mLの、式CFClO(CF−CF(CF)O)(CFO)CFCOOH(式中、n/m=10であり、600の平均分子量を有する]の、酸性末端基を有するペルフルオロポリオキシアルキレン、7.5mLの、30%v/v NHOH水溶液、27.0mLの脱塩水及び7.5mLの、式CFO(CFCF(CF)O)(CFO)CF(式中、n/m=20であり、450の平均分子量を有する)のGALDEN(登録商標)D02ペルフルオロポリエーテルを混合することにより事前に入手)を導入した。反応器を加熱し、80℃の設定点温度に維持し、フッ化ビニリデン(VDF)(78.5モル%)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)(21.5モル%)との混合物を次に添加して25barの最終圧力に達した。次いで、連鎖移動剤として20gの1,4−ジヨードペルフルオロブタン(C)を導入し、開始剤として3.0gの過硫酸アンモニウム(APS)を導入した。フッ化ビニリデン(VDF)(78.5モル%)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)(21.5モル%)のガス状混合物を合計4800gまで連続供給することにより、25barの設定点で圧力を維持した。4800gのモノマー混合物を反応器に供給した時点で反応器を室温まで冷却することにより反応を停止した。反応温度を一定に保ちながら残留圧力を下げた後、反応器を冷却し、通気してラテックスを回収した。そのようにして得られた水性ラテックスは、27重量%の固形分を有していた。
工程2:
バッフル及び600rpmで稼動する機械的撹拌器を装着した18リットルのエナメル質反応器に、工程1で得た8kgの水性ラテックス、2Lの脱塩水及び1kgのクロロトリフルオロエチレンを導入した。次いで、温度を75℃にし、エチレンを供給して、21絶対barの圧力まで上げ、反応開始剤として2.5gの過硫酸アンモニウム(APS)を導入した。合計110gまでエチレンを連続供給することにより、21barの設定点で圧力を維持した。次いで、反応器を冷却し、通気してラテックスを回収した。ラテックスを硫酸ナトリウムで処理して凝固させ、形成した固体凝固物を水相から分離し、脱塩水で洗浄して、対流式オーブン内で60℃において16時間乾燥させた。そのように得られたポリマーの特徴付けデータを表1にまとめている。
比較実施例2:構造PVDF−P(VDF−HFP)−PVDF(P(VDF−HFP)VDF:78.5モル%、HFP:21.5モル%)を有するブロックコポリマー
72rpmで稼働する機械的攪拌器を備えた7.5リットルの反応容器に4.5Lの脱塩水並びに22mLのマイクロエマルション(4.8mLの、式CFClO(CF−CF(CF)O)(CFO)CFCOOH(式中、n/m=10であり、600の平均分子量を有する)の、酸性末端基を有するペルフルオロポリオキシアルキレン、3.1mLの、30%v/v NHOH水溶液、11.0mLの脱塩水及び3.0mLの、式CFO(CFCF(CF)O)(CFO)CF(式中、n/m=20であり、450の平均分子量を有する)のGALDEN(登録商標)D02ペルフルオロポリエーテルを混合することにより事前に入手)を導入した。反応器を加熱し、85℃の設定点温度に維持し、フッ化ビニリデン(VDF)(78.5モル%)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)(21.5モル%)との混合物を次に添加して20barの最終圧力に達した。次に、連鎖移動剤として8gの1,4−ジヨードパーフルオロブタン(C)を導入し、開始剤として1.25gの過硫酸アンモニウム(APS)を導入した。圧力を、フッ化ビニリデン(VDF)(78.5モル%)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)(21.5モル%)とのガス状混合物の合計2000gまでの連続供給によって20barの設定点に維持した。更に、転化率の5%増加毎に、20回の同等部分で供給される0.86gのCH=CH−(CF−CH=CHを導入した。2000gのモノマー混合物を反応器に供給した時点で反応器を室温まで冷却することにより反応を停止した。次に、残留圧力を放出し、反応容器を通気してから温度を再び80℃にした。次に、VDFをオートクレーブに供給して、圧力を20barにし、反応開始剤として0.14gの過硫酸アンモニウム(APS)を導入した。合計500gまでVDFを連続供給することにより、20barの設定点で圧力を維持した。次いで、反応器を冷却し、通気してラテックスを回収した。ラテックスを硫酸アルミニウムで処理して凝固させ、形成した凝固物を水相から分離し、脱塩水で洗浄して、対流式オーブン内で90℃において16時間乾燥させた。そのように得られたポリマーの特徴付けデータを表1にまとめている。
Figure 2020509141
上に含まれるΔHXX及びF(B)のデータから明らかなように、実施例1のポリマーは、不等式1.5J/g≦ΔHXX≦F(B)・35J/g、より具体的には1.5J/g≦5.9≦7J/gを満たすようなものである。前記ポリマーは、実質的に同一のハード/ソフト構成成分のバランスを有するフッ素化熱可塑性エラストマーと比較した場合、大きく改善された密封性を有し、ハードセグメントがPVDF型ブロックであり、より高温に維持した場合に得られたものよりも大幅に低いC−set値を有する。これは、特定の微結晶性挙動のため、乳化重合により得られたECTFE型熱可塑性ブロックの独特の微細構造が改善された自己強化能力をもたらしながら、依然としてゴム状弾性を最大化するという驚くべき発見によるものである。

Claims (15)

  1. フッ素化熱可塑性エラストマー[ポリマー(F−TPE)]であって、
    − 繰り返し単位の配列からなる少なくとも1つの弾性ブロック(A)であって、前記配列は、少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含み、前記ブロック(A)は、ASTM D3418に従って測定されて25℃未満のガラス転移温度を有する、少なくとも1つの弾性ブロック(A)と、
    − 繰り返し単位の配列からなる少なくとも1つの熱可塑性ブロック(B)であって、前記配列は、エチレンに由来する繰り返し単位と、クロロトリフルオロエチレンに由来する繰り返し単位とを含む、少なくとも1つの熱可塑性ブロック(B)と
    を含み、少なくとも180℃の融点(T)及び以下の不等式:
    1.5J/g≦ΔHXX≦F(B)・35J/g
    に関する結晶化熱(ΔHXX)を有し、T及びΔHXXは、ASTM D3418に従って測定され、上述の不等式において、F(B)は、重量比Wt(B)/[Wt(A)+Wt(B)]である一方、W(A)は、ブロック(A)の重量であり、及びWt(B)は、ブロック(B)の重量である、フッ素化熱可塑性エラストマー[ポリマー(F−TPE)]。
  2. ブロックコポリマーであり、前記ブロックコポリマーは、(B)−(A)−(B)の種類の少なくとも1つのブロック(B)に代替された少なくとも1つのブロック(A)を含む、即ち両方の末端においてサイドブロック(B)に接続された2つの末端を有する中央ブロック(A)を含む構造を有する、請求項1に記載のフッ素化熱可塑性エラストマー。
  3. 請求項1に記載のフッ素化モノマーは、
    (a)テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ペルフルオロイソブチレンなどのC〜Cペルフルオロオレフィン;
    (b)フッ化ビニリデン(VDF)、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン(TrFE)、ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)、式CH=CH−Rf1(式中、Rf1は、C〜Cペルフルオロアルキル基である)のペルフルオロアルキルエチレンなどの水素含有C〜Cフルオロオレフィン;
    (c)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)などのC〜Cクロロ及び/又は臭素含有フルオロオレフィン;
    (d)式CF=CFORfa(式中、Rfaは、CF、C又はCなどのC〜Cフルオロアルキル基である)のフルオロアルキルビニルエーテル;
    (e)特に式CF=CFOCFORfb(ここで、Rfbは、−CFCF、−CFCF−O−CF及び−CFなどのC〜Cフルオロ(オキシ)アルキル基である)のフルオロメトキシアルキルビニルエーテルを含む、式CF=CFOX0a(式中、X0aは、1つ又は2つ以上のエーテル性酸素原子を含むC〜C12フルオロアルキル基である)のフルオロオキシアルキルビニルエーテル;及び
    (f)式:
    Figure 2020509141
    (式中、Rf3、Rf4、Rf5及びRf6のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、独立して、フッ素原子、−CF、−C、−C、−OCF又は−OCFCFOCFなどの、任意選択的に1つ以上の酸素原子を含むC〜Cペルフルオロ(オキシ)アルキル基である)
    の(ペル)フルオロジオキソール
    からなる群から選択される、請求項1又は2に記載のフッ素化熱可塑性エラストマー。
  4. − 少なくとも1つの弾性ブロック(A)であって、
    (1)繰り返し単位の配列からなるフッ化ビニリデン(VDF)系弾性ブロック(AVDF)であって、前記配列は、VDFに由来する繰り返し単位と、VDFと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含み、前記VDFと異なるフッ素化モノマーは、典型的には、
    (a)テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)などのC〜Cペルフルオロオレフィン;
    (b)フッ化ビニル、トリフルオロエチレン(TrFE)、ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)、式CH=CH−Rf1(式中、Rf1は、C〜Cペルフルオロアルキル基である)のペルフルオロアルキルエチレンなどの、VDFと異なる水素含有C〜Cフルオロオレフィン;
    (c)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)などのC〜Cクロロ及び/又は臭素含有フルオロオレフィン;
    (d)式CF=CFORf1(式中、Rf1は、CF(PMVE)、C又はCなどのC〜Cペルフルオロアルキル基である)のペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE);
    (e)特に式CF=CFOCFORf2(式中、Rf2は、−CFCF、−CFCF−O−CF及び−CFなどのC〜Cペルフルオロ(オキシ)アルキル基である)のペルフルオロメトキシアルキルビニルエーテルを含む、式CF=CFOX(式中、Xは、1つ又は2つ以上のエーテル性酸素原子を含むC〜C12ペルフルオロオキシアルキル基である)のペルフルオロオキシアルキルビニルエーテル;及び
    (f)式:
    Figure 2020509141
    (式中、Rf3、Rf4、Rf5及びRf6のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、独立して、フッ素原子、−CF、−C、−C、−OCF又は−OCFCFOCFなどの、任意選択的に1つ以上の酸素原子を含むC〜Cペルフルオロ(オキシ)アルキル基である)
    の(ペル)フルオロジオキソール
    からなる群から選択される、フッ化ビニリデン(VDF)系弾性ブロック(AVDF)と、
    (2)繰り返し単位の配列からなるテトラフルオロエチレン(TFE)系弾性ブロック(ATFE)であって、前記配列は、TFEに由来する繰り返し単位と、TFEと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位とを含み、前記フッ素化モノマーは、典型的には、上記のクラス(b)、(c)、(d)、(e)のものからなる群から選択される、テトラフルオロエチレン(TFE)系弾性ブロック(ATFE)と
    からなる群から選択される少なくとも1つの弾性ブロック(A)と、
    − 少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位の配列からなる少なくとも1つの熱可塑性ブロック(B)と
    を含む、好ましくはそれらからなる、請求項1又は2に記載のフッ素化熱可塑性エラストマー。
  5. 前記弾性ブロック(A)は、式:
    =CR−T−CR=R
    (式中、R、R、R、R、R及びRは、互いに等しいか又は異なり、H、F、Cl、C〜Cアルキル基及びC〜C(ペル)フルオロアルキル基からなる群から選択され、及びTは、任意選択的に、好ましくは少なくとも部分的にフッ素化された1つ若しくは2つ以上のエーテル性酸素原子又は(ペル)フルオロポリオキシアルキレン基を含む直鎖又は分岐鎖C〜C18アルキレン又はシクロアルキレン基である)
    の少なくとも1つのビス−オレフィン[ビス−オレフィン(OF)]に由来する繰り返し単位を更に含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のフッ素化熱可塑性エラストマー。
  6. ブロック(B)は、繰り返し単位の配列からなり、前記ブロック(B)の繰り返し単位の配列は、
    (j)40〜60モル%の、エチレン(E)に由来する繰り返し単位;
    (jj)60〜40モル%の、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)に由来する繰り返し単位:及び
    (jjj)0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%、より好ましくは0〜2.5モル%の、E及びCTFEと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマー及び/又は水素化モノマーに由来する繰り返し単位
    から本質的になり、前記モル%は、ブロック(B)の繰り返し単位のモル全体を参照する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のフッ素化熱可塑性エラストマー。
  7. ブロック(B)は、
    (j)45〜55モル%のエチレン(E);
    (jj)55〜45モル%のクロロトリフルオロエチレン(CTFE)、及び任意選択的に、
    (jjj)0〜2.5モル%の、式CF=CFORfc(式中、Rfcは、C〜Cフルオロ又はペルフルオロアルキル、例えばCF、C、Cである)を満たす少なくとも1つの(ペル)フルオロアルキルビニルエーテル
    に由来する繰り返し単位の配列からなるものからなる群から選択され、前記モル%は、ブロック(B)の繰り返し単位のモル全体を参照する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のフッ素化熱可塑性エラストマー。
  8. 以下の不等式:
    1.5J/g≦ΔHXX≦F(B)・35J/g
    に関する、好ましくは以下の不等式:
    2.0J/g≦ΔHXX≦F(B)・30J/g
    に関する結晶化熱(ΔHXX)を有し、ΔHXXは、ASTM D3418に従って測定され、上述の不等式において、F(B)は、重量比Wt(B)/[Wt(A)+Wt(B)]である一方、W(A)は、ブロック(A)の重量であり、及びWt(B)は、ブロック(B)の重量である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のフッ素化熱可塑性エラストマー。
  9. 前記フッ素化熱可塑性エラストマー中におけるブロック(A)及びブロック(B)間の重量比は、典型的には、95:5〜10:90に含まれ、即ち、F(B)値は、0.05〜0.90の範囲である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のフッ素化熱可塑性エラストマー。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載のフッ素化熱可塑性エラストマーを製造する方法であって、以下の連続的な工程:
    (a)少なくとも1つのフッ素化モノマー及び場合により少なくとも1つのビス−オレフィン(OF)を水性媒体中でラジカル反応開始剤及びヨウ素化連鎖移動剤の存在下において乳化重合し、それにより、水性媒体中に分散された1つ以上のヨウ素化末端基を含有する少なくとも1つのブロック(A)からなるプレポリマーを提供する工程と、
    (b)エチレン(E)及びクロロトリフルオロエチレン(CTFE)並びに任意選択的にE及びCTFEと異なる1つ又は2つ以上のフッ素化モノマー及び/又は水素化モノマーを、ラジカル反応開始剤の存在下及び工程(a)から得られた前記水性媒体に分散された前記プレポリマーの存在下において乳化重合し、それにより、前記ブロック(A)の前記ヨウ素化末端基の反応を通して、前記プレポリマーにグラフトされた少なくとも1つのブロック(B)を提供する工程と
    を含む方法。
  11. 有利には、補強剤、顔料、加工助剤、可塑剤、安定剤(熱安定剤、UV安定剤を含む)、酸スカベンジャー、金型離型剤及び硬化系からなる群から選択される少なくとも1つの追加の構成成分との組み合わせにおいて、請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリマー(F−TPE)を含む組成物(C)。
  12. 成形物品を製造する方法であって、請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリマー(F−TPE)又は請求項11に記載の組成物(C)を成型して、前記成形物品を得ることを含む方法。
  13. 成型は、圧縮成型、押し出し成型、射出成型、トランスファー成形の少なくとも1つによって達成される、請求項12に記載の方法。
  14. 標準的な成形部分をマシニングして、前記標準的な成形部分と異なる寸法及び形状を有する前記目標の成形物品を得る工程を含む、請求項12に記載の方法。
  15. 請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリマー(F−TPE)又は請求項11に記載の組成物(C)から作製された成形物品。
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