原油は、燃料及び石油化学原料として使用される世界の主要な炭化水素源である。同時に、石油及び石油系製品は、今日の大気汚染及び水質汚染の主な発生源でもある。石油及び石油系製品によって引き起こされる汚染をめぐる懸念の高まりに対処するために、多くの国々が、石油製品、特に石油精製操作及び燃料中の特定の汚染物質の許容濃度、例えばガソリン燃料中の許容される硫黄及び窒素含有量に厳しい規制を実施してきた。天然石油又は原油の正確な組成は著しく異なるが、すべての原油は多少の測定可能な量の硫黄化合物を含有し、大半の原油は多少の測定可能な量の窒素化合物も含有する。さらに、原油は酸素も含有し得るが、大半の原油の酸素含有量は低い。一般に、原油中の硫黄濃度は約5重量パーセント(重量%)未満であり、大半の原油は約0.5〜約1.5重量%の範囲の硫黄濃度を有する。大半の原油の窒素濃度は通常、0.2重量%未満であるが、1.6重量%もの高さとなり得る。米国では、自動車用ガソリン燃料の最大総硫黄含有量が10重量百万分率(ppmw)未満の硫黄となるように規制されている。
原油は製油所で精製され、輸送用燃料や石油化学原料が生産される。通例、輸送用燃料は、特定の最終用途の仕様を満足するために、原油からの蒸留留分を処理及び配合することによって製造される。現在一般に入手可能な原油の大半は、高濃度の硫黄を有するため、蒸留留分は通例、各種性能仕様、環境基準又はその両方を満足する生成物を得るために脱硫を必要とする。
原油及び得られた精製燃料中に存在する硫黄含有有機化合物は、環境汚染の主な原因となり得る。硫黄化合物は通例、燃焼工程中に硫黄酸化物に変換され、硫黄酸化物は次に硫黄オキソ酸を生成し、微粒子排出物の一因となり得る。
微粒子排出物を低減するための1つの方法としては、各種の含酸素燃料配合化合物、メタノール及びジメチルエーテルなどの、炭素間化学結合をほとんど若しくは全く含有しない化合物、又はその両方を添加することが挙げられる。しかし、これらの化合物の大半は、それらが高い蒸気圧を有し得るという欠点、ディーゼル燃料にほぼ不溶性であるという欠点、若しくはそのセタン価によって示されるように、劣悪な着火性を有するという欠点、又はそれらの組合せの欠点を有する。
硫黄及び芳香族化合物の含有量を低減するために化学的水素化処理又は水素添加によって処理されたディーゼル燃料は、燃料の潤滑性が低下することがあり、このことは次いで、燃料ポンプ、インジェクタ及び高圧下で燃料と接触する他の可動部品を過度に摩耗させるおそれがある。
例えば、中間留出物(即ち、約180〜370℃の範囲で名目上沸騰する蒸留留分)は、燃料として使用することができるか、又は圧縮着火内燃機関(即ちディーゼルエンジン)に使用する燃料の配合成分として使用することができる。中間蒸留留分は通例、約1〜3重量%の硫黄を含む。中間蒸留留分中の許容硫黄濃度は、欧州と米国で1993年以来、3000ppmwレベルから5〜50ppmwレベルに引き下げられた。
硫黄及び窒素化合物の除去に現在使用されている従来技術は、通例、炭化水素から除去される硫黄含有化合物及び窒素含有化合物の後続の回収及び/又は処分をなお必要としている。超低硫黄含有量燃料に対する次第に厳しくなる規制を遵守するために、製油者は、製油所ゲートでの硫黄レベルがさらに低い燃料を製造する必要があるため、混合後に厳しい規格を満足することができる。
製油所輸送用燃料の配合向けの石油蒸留物から硫黄の大部分を除去するために、低圧の従来の水素化脱硫(HDS)工程を使用することができる。しかし、これらのユニットは、多環芳香族硫黄化合物のように硫黄原子が立体障害されている場合、温和な条件(即ち、最大約30バールの圧力)での化合物からの硫黄除去には効率的でない。このことは、硫黄ヘテロ原子が2個のアルキル基(例えば4,6−ジメチルジベンゾチオフェン)によって障害されている場合に特に当てはまる。除去が困難であるため、障害されたジベンゾチオフェンは、50ppmw〜100ppmwなどの低硫黄レベルで占めている。これらの難脱硫性硫黄化合物から硫黄を除去するためには、厳しい運転条件(例えば、高い水素分圧、高温又は高い触媒体積)を利用する必要がある。水素分圧を上昇させることは、再循環ガス純度を上昇させることによってのみ達成可能であるか、又は新しい基本ユニットを設計する必要があり、これは非常に費用のかかる選択肢となり得る。厳しい運転条件の使用によって、通例、収率の低下、触媒のライフサイクルの低下及び生成物の品質劣化(例えば色)が引き起こされるため、通例、回避されることが求められている。
しかし、石油アップグレードの従来の方法は、各種の制限及び不利益という欠点がある。例えば水素化方法は、通例、所望のアップグレード及び変換を達成するために、外部源からの大量の水素ガスの供給を必要とする。これらの方法はまた、重質原料の水素化処理又は過酷な条件下での水素化処理の場合と通例同様に、触媒の早期又は急速な失活という欠点があり、したがって触媒の再生又は新たな触媒の添加が必要となり、このことは次いで処理ユニットのダウンタイムにつながるおそれがある。熱的方法は、副生成物としての大量のコークスを生成するという欠点、及び硫黄や窒素などの不純物を除去する能力が限られているという欠点を有することが多い。さらに、熱的方法は、過酷な条件(例えば、高温及び高圧)に好適な特殊装置を必要とし、著しいエネルギーの入力を必要とし、それによって複雑さ及び費用が増大する。
したがって、炭化水素原料からの硫黄及び窒素の除去によってなどの、炭化水素原料の脱硫方法を提供する必要性が存在し、この方法は、硫黄含有化合物及び窒素含有化合物の回収及び/若しくは処分又はその両方のための手段も提供することができる、低い過酷度条件を使用する、炭化水素原料の脱硫及び脱窒素のためのステップも含む。
実施形態は、存在する硫黄及び窒素の大部分を除去し、次にこれらの化合物を関連する工程で利用する、炭化水素原料のアップグレードのための方法及び装置を提供する。
少なくとも一実施形態により、炭化水素原料をアップグレードする方法であって、炭化水素原料を酸化反応装置に供給するステップであって、炭化水素原料が硫黄含有化合物を含むステップ、並びに炭化水素原料中に存在する硫黄化合物を選択的に酸化して、炭化水素及び酸化された硫黄含有化合物を含む炭化水素流を生成するのに十分な条件下で、酸化反応装置内にて触媒の存在下で炭化水素原料を酸化剤と接触させるステップを含む方法が提供される。この方法は、炭化水素流を抽出容器に供給し、炭化水素流を極性溶媒で抽出することによって、炭化水素流を抽出された炭化水素流及び混合流に分離することをさらに含み、混合流は極性溶媒及び酸化された硫黄含有化合物を含み、抽出された炭化水素流は炭化水素原料よりも低濃度の硫黄含有化合物を有する。さらに、該方法は、蒸留塔を使用して、混合流を第1の回収された極性溶媒流と第1の残留物流に分離すること、第1の残留物流をコーカーに供給して揮発性成分流を生成すること、及び揮発性成分流の少なくとも一部を酸化反応装置に再循環させて、揮発性成分流中の硫黄化合物を選択的に酸化することを含み、揮発成分流の再循環部分は、軽質コーカー軽油及び重質コーカー軽油の少なくとも1つを含む。
少なくとも一実施形態により、該方法は、抽出された炭化水素流をストリッパに供給して第2の回収された極性溶媒流及び除去された炭化水素流を生成すること、並びに第1の回収された極性溶媒流及び第2の極性溶媒流を、酸化された炭化水素流中の炭化水素及び酸化された硫黄含有化合物を分離するための抽出容器に再循環させることをさらに含む。
少なくとも一実施形態により、酸化剤は、空気、酸素、窒素酸化物、過酸化物、ヒドロペルオキシド、有機過酸及びそれらの組合せからなる群から選択される。
少なくとも一実施形態により、酸化反応装置の触媒は式MxOyを有する金属酸化物であり、Mは周期表のIVB族、VB族及びVIB族から選択される元素である。
少なくとも一実施形態により、酸化反応装置は、約20〜150℃の温度及び約1〜10バールの圧力に維持される。
少なくとも一実施形態により、炭化水素原料中に存在する酸化剤と硫黄化合物との比は、約4:1〜10:1である。
少なくとも一実施形態により、極性溶媒は約19より大きいヒルデブラント値を有する。
少なくとも一実施形態により、極性溶媒は、アセトン、二硫化炭素、ピリジン、ジメチルスルホキシド、n−プロパノール、エタノール、n−ブタノール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、メタノール及びそれらの組合せからなる群から選択される。
少なくとも一実施形態により、極性溶媒はアセトニトリルである。
少なくとも一実施形態により、極性溶媒はメタノールである。
少なくとも一実施形態により、溶媒抽出は、約20℃〜60℃の温度及び約1〜10バールの圧力で行われる。
少なくとも一実施形態により、炭化水素原料は、触媒の存在下で炭化水素原料を酸化剤と接触させるステップにより、窒素含有化合物の少なくとも一部が酸化されるように、窒素含有化合物をさらに含み、コーカーに供給された残留物流は酸化された窒素含有化合物を含む。
少なくとも一実施形態により、該方法は、抽出された炭化水素流を吸着塔に供給することをさらに含み、吸着塔には抽出された炭化水素流中に存在する酸化された化合物の除去に好適な吸着剤が充填され、吸着塔によって高純度炭化水素生成物流及び第2の残留物流が生成され、第2の残留物流は酸化された化合物の一部を含有する。
少なくとも一実施形態により、該方法は、第2の残留物流をコーカーに供給することをさらに含む。
少なくとも一実施形態により、吸着剤は活性炭、シリカゲル、アルミナ、天然粘土及びそれらの組合せからなる群から選択される。
少なくとも一実施形態により、吸着剤はポリマー被覆担体であり、担体は高い表面積を有し、シリカゲル、アルミナ及び活性炭からなる群から選択され、ポリマーは、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリエステルテレフタレート、ポリウレタン及びそれらの組合せからなる群から選択される。
別の実施形態により、硫黄含有化合物を含む炭化水素原料をアップグレードする方法が提供される。炭化水素原料をアップグレードする方法は、最高約500℃の沸点を有する炭化水素原料を、触媒の存在下で炭化水素原料を酸化剤と接触させて、炭化水素原料中の硫黄含有化合物の少なくとも一部を酸化する反応区域に供給することを含み、炭化水素及び酸化された硫黄含有化合物を含む中間生成物流を生成する。該方法は、炭化水素及び酸化された硫黄含有化合物を含む中間生成物流を抽出容器に供給することをさらに含み、抽出容器では、中間生成物流を極性溶媒と接触させ、極性溶媒は中間生成物流から酸化された硫黄含有化合物を選択的に抽出して、炭化水素を含み、炭化水素原料よりも低濃度の硫黄含有化合物を有する第1の炭化水素生成物流並びに極性溶媒及び抽出された酸化された硫黄含有化合物を含む混合流を生成する。さらに、該方法は、蒸留によって混合流を分離して、極性溶媒の大部分を含む回収された極性溶媒流及び酸化された硫黄含有化合物を含む残留物流を生成すること、残留物流をコーカーに供給して、凝縮されたコーカー蒸気及び軽油並びに固形コークスを含む、回収された炭化水素生成物流を生成することを含み、コーカーはコーカー炉及びコーカードラムを含み、コーカー炉は少なくとも約400℃の温度にて運転され、コーカードラムは少なくとも約425℃の温度及び約1〜50バールの範囲の圧力にて運転される。該方法は、回収された炭化水素生成物流の少なくとも一部を酸化反応装置に再循環させて、炭化水素生成物流中の硫黄化合物を選択的に酸化することをさらに含み、炭化水素生成物流の再循環された部分は軽質コーカー軽油及び重質コーカー軽油の少なくとも1つを含む。
少なくとも一実施形態により、該方法は、回収された極性溶媒流の少なくとも一部を抽出容器に再循環させることをさらに含み、抽出容器にて、回収された極性溶媒流の少なくとも一部は極性溶媒と合される。
少なくとも一実施形態により、炭化水素原料中の硫黄含有化合物の少なくとも一部を酸化するステップは、酸化反応において炭化水素原料を酸化剤及び触媒と接触させることを含み、酸化反応装置は、約5〜60分間の接触時間にわたって、約20℃〜約150℃の温度及び約1〜20バールの圧力にて維持される。
少なくとも一実施形態により、触媒の油に対する割合は、約0.1重量%〜10重量%である。
少なくとも一実施形態により、極性溶媒は、約19より大きいヒルデブラント溶解度値を有する。
少なくとも一実施形態により、抽出容器は約20℃〜60℃の温度に維持される。
少なくとも一実施形態により、炭化水素原料は、触媒の存在下で酸化剤と接触される炭化水素原料を供給するステップによって、窒素含有化合物の少なくとも一部が酸化されるように、窒素含有化合物をさらに含み、コーカーに供給された残留物流は酸化された窒素含有化合物を含む。
開示された方法及びシステムの特徴及び利点、並びに明らかになるその他がより詳細に理解され得るように、先に簡単に要約した方法及びシステムのより詳細な説明が、本明細書の一部を構成する添付の図面に示されているその実施形態を参照することによってなされ得る。しかし、図面は各種の実施形態を例示するに過ぎず、したがって、他の有効な実施形態も同様に含み得るので、範囲を限定するとして見なすべきではないことに留意されたい。全体を通して、同様の番号は同様の要素を示し、プライム付き表記が使用される場合、代替実施形態又は位置における同様の要素を示す。
以下の詳細な説明は例示の目的で多くの具体的な詳細事項を含むが、以下の詳細に対する多くの例、変形及び改変は範囲及び要旨の範囲内であることを当業者が認識することが理解される。したがって、添付の図面に記載及び提供された各種の実施形態は、特許請求の範囲に関して、一般性を失うことなく、及び制限を課すことなく記載されている。
実施形態は、炭化水素原料をアップグレードする従来の方法、特に炭化水素原料の脱硫及び脱窒素、並びに後続の硫黄含有化合物及び窒素含有化合物の回収、除去及び処分の方法に関連する問題に対処する。ある実施形態において、実施形態は、炭化水素原料から除去される各種の硫黄含有化合物及び窒素含有化合物の用途を見出す。したがって、少なくとも一実施形態により、炭化水素原料から硫黄を除去し、続いて酸化された硫黄種をディレードコーカーに供給して軽油及びコークスを製造する方法が提供される。
使用する場合、石油又は炭化水素に関して「アップグレードする」又は「アップグレードされた」という用語は、元の石油又は炭化水素原料よりも、軽質であり(即ち、メタン、エタン及びプロパンなどのより少ない炭素原子を有し)、より高いAPI比重、より高い中間流出物収率、より低い硫黄含有量、より低い窒素含有量又はより低い金属含有量のうちの少なくとも1つを有する、石油又は炭化水素生成物を示す。
図1は、炭化水素のアップグレードの一実施形態を提供する。炭化水素アップグレードシステム100は、酸化反応装置104、抽出容器112、溶媒再生塔116、ストリッパ120及びコーカー130を含む。
少なくとも一実施形態により、炭化水素原料、特に硫黄含有化合物若しくは窒素含有化合物又はその両方を含む炭化水素原料をアップグレードする方法が提供される。この方法は炭化水素原料102を酸化反応装置104に供給することを含み、酸化反応装置104にて炭化水素原料を酸化剤及び触媒に接触させる。硫黄含有化合物及び窒素含有化合物は、酸化剤及び触媒との接触時に酸化されることが好ましい。酸化剤は酸化剤供給ライン106を介して酸化反応装置104に供給することができ、新たな触媒は触媒供給ライン108を介して反応装置に供給することができる。
少なくとも一実施形態により、炭化水素原料102は任意の石油系炭化水素であることができ、元素硫黄、硫黄若しくは窒素を含む化合物又はその両方などの各種の不純物を含むことがある。ある実施形態において、炭化水素原料102は、約150℃〜約400℃の沸点を有するディーゼル油であることができる。又は、炭化水素原料102は、最高約450℃、又は最高約500℃の沸点を有することができる。ある実施形態において、炭化水素原料102は、約150℃〜370℃の沸点を有するディーゼル油であることができる。ある実施形態において、炭化水素原料102は、約370℃〜520℃の沸点を有する減圧軽油であることができる。又は、炭化水素原料102は、最高約450℃、又は最高約500℃の沸点を有することができる。又は、炭化水素原料102は、約100℃〜500℃の沸点を有することができる。任意に、炭化水素原料102は、最高約600℃、若しくは最高約700℃、又はある実施形態において、約700℃を超える沸点を有することができる。ある実施形態において、炭化水素原料102は重質炭化水素を含むことができる。本明細書で使用する場合、重質炭化水素は、約360℃を超える沸点を有する炭化水素を示し、非限定的な例として、芳香族炭化水素並びにアルカン、アルケン及びナフテンを挙げることができる。
一般に、ある実施形態において、炭化水素原料102は、全範囲原油、抜頭原油、製油所からの生成物流、製油所水蒸気分解工程の生成物流、液化石炭、石油又はタールサンドから回収される液体生成物、ビチューメン、オイルシェール、アスファルテンなど及びその混合物から選択することができる。
炭化水素原料102中に存在する硫黄化合物としては、スルフィド、ジスルフィド及びメルカプタン並びにチオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン及びアルキルジベンゾチオフェン、例えば4,6−ジメチルジベンゾチオフェンなどの芳香族分子が挙げられる。芳香族化合物は、通例、低沸点留分に見出されるよりも高沸点留分に多く存在する。
炭化水素原料102中に存在する窒素含有化合物としては、インドール、カルバゾール、アニリン、キノリン、アクリジンなど及びその混合物を含む、塩基性及び中性窒素化合物が挙げられる。
少なくとも一実施形態により、酸化反応装置104は、ディーゼル型原料向けの従来の水素化脱硫工程で通例使用される条件と比較して、温和な条件で運転することができる。より具体的には、ある実施形態において、酸化反応装置104は、約20℃〜約150℃、又は約30℃〜約150℃、又は約30℃〜約90℃又は約90℃〜約150℃の温度に維持することができる。ある実施形態において、温度は、好ましくは約30℃〜約75℃、より好ましくは約45℃〜60℃である。酸化反応装置104の運転圧力は、約1〜80バール、又は約1〜30バール、又は約1〜15バール、好ましくは約2〜3バールであることができる。酸化反応装置102内の炭化水素原料の滞留時間は、約1〜180分、又は約15〜180分、又は約15〜90分、又は約5〜60分、又は約60〜120分、又は約120〜180分であることができ、炭化水素原料中に存在する硫黄化合物又は窒素化合物のいずれの酸化にも十分な長さの時間であることが好ましい。一実施形態において、酸化反応装置104内の炭化水素原料の滞留時間は約15〜45分である。比較のために、ディーゼル型原料の従来の水素化脱硫は、通例、より厳しい条件下、例えば、約330〜380℃の温度、約50〜80バールの圧力及び約0.5〜2h−1の液空間速度(LHSV)で行われる。
少なくとも一実施形態により、酸化反応装置104は、硫黄含有化合物及び窒素含有化合物の酸化のために、触媒の存在下で炭化水素原料102と酸化剤が十分に接触するように好適に構成された、任意の反応装置であることができる。酸化反応装置104に好適な反応装置としては、例えばバッチ式反応装置、固定床反応装置、沸騰床反応装置、上昇型反応装置、流動床反応装置、スラリー床反応装置などが挙げられる。炭化水素原料102中に存在する硫黄化合物及び窒素化合物は、酸化反応装置104内で酸化されてスルホン、スルホキシド、及び酸化された窒素化合物となり、これらは続いて抽出又は吸着によって除去することができる。酸化された窒素化合物としては、例えば、ピリジン及びピロール系化合物又はピリジン−ジフラン化合物を挙げることができる。多くの場合、酸化中に、窒素原子自体は酸化されず、むしろ化合物が酸化されて、残りの化合物から容易に分離される化合物となる。
少なくとも一実施形態により、酸化剤は酸化剤供給流106を介して酸化反応装置104に供給される。好適な酸化剤としては、空気、酸素、過酸化水素、有機過酸化物、ヒドロペルオキシド、有機過酸、ペルオキソ酸、窒素酸化物、オゾンなど及びそれらの組合せを挙げることができる。過酸化物は、過酸化水素などから選択することができる。ヒドロペルオキシドは、t−ブチルヒドロペルオキシドなどから選択することができる。有機過酸は、過酢酸などから選択することができる。
窒素よりも硫黄の濃度が高い炭化水素原料などの、ある実施形態において、酸化剤の炭化水素原料中に存在する硫黄に対するモル比は、約1:1〜50:1、好ましくは約2:1〜20:1、より好ましくは約4:1〜10:1であることができる。
硫黄よりも窒素の濃度が高い炭化水素原料、例えばある南米の原油、あるアフリカの原油、あるロシアの原油、ある中国の原油、及びコーカーなどのある中間製油所流、熱クラッキング、ビスブレーキング、FCCサイクルオイルなどの他のある実施形態において、酸化剤の炭化水素原料中に存在する窒素に対するモル比は、約1:1〜50:1、好ましくは約2:1〜20:1、より好ましくは約4:1〜10:1であることができる。
少なくとも一実施形態により、触媒は、触媒供給流108を介して酸化反応装置104に供給することができる。触媒は均一系触媒であることができる。触媒は、化学式MxOyを有する少なくとも1つの金属酸化物を含むことができ、式中、Mは周期表のIVB族、VB族又はVIB族から選択される金属である。金属はチタン、バナジウム、クロム、モリブデン及びタングステンを含むことができる。モリブデン及びタングステンは、各種の実施形態において使用することができる、2つの特に有効な触媒である。ある実施形態において、使用済み触媒は、酸化容器の後に(例えば、水性酸化剤を使用する場合)水相と共にシステムから排除することができる。
少なくとも一実施形態により、触媒の油に対する割合は、約0.1重量%〜約10重量%、好ましくは約0.5重量%〜約5重量%である。ある実施形態において、割合は約0.5重量%〜約2.5重量%である。又は、この割合は約2.5重量%〜約5重量%である。触媒の油に対する他の好適な重量割合は、当業者に明らかとなり、各種実施形態の範囲内であると見なされるべきである。
酸化反応装置104内に存在する触媒は、炭化水素原料102中の各種硫黄含有化合物及び窒素含有化合物の酸化速度を上昇させることができ、それによってより短い時間量で反応の完了並びに硫黄含有化合物及び窒素含有化合物の酸化が達成され、硫黄含有化合物及び窒素含有化合物の酸化を達成するのに必要な酸化剤の量が減少する。ある実施形態において、触媒は、硫黄含有種若しくは窒素含有種又はその両方の酸化に対して選択性の向上を有し得る。他の実施形態において、触媒は芳香族炭化水素の酸化の最小化に対して選択的である。
少なくとも一実施形態により、酸化反応装置104は、酸化された硫黄含有炭化水素種及び酸化された窒素含有炭化水素種を含むことができる酸化された硫黄及び酸化窒素含有炭化水素流110を生成する。酸化副生成物は、元の酸化剤によって異なる。例えば、酸化剤が過酸化水素である実施形態において、水は酸化反応の副生成物として形成される。酸化剤が有機過酸化物である実施形態において、アルコールは酸化反応の副生成物として形成される。副生成物は通例、抽出及び溶媒回収ステップ中に除去される。
酸化された硫黄含有炭化水素及び酸化された窒素含有炭化水素流110は抽出容器112に供給され、抽出容器112にて、酸化された硫黄含有炭化種及び酸化された窒素含有炭化水素種は抽出溶媒流137と接触する。抽出溶媒137は極性溶媒であることができ、ある実施形態において、約19より大きいヒルデブラント溶解度値を有することができる。ある実施形態において、酸化された硫黄含有種及び酸化された窒素含有種の抽出に使用する特定の極性溶媒を選択する場合、選択は、一部は、非限定的な例として、溶媒密度、沸点、凝固点、粘度及び表面張力に基づくことができる。抽出ステップでの使用に好適な極性溶媒としては、アセトン(ヒルデブランド値19.7)、二硫化炭素(20.5)、ピリジン(21.7)、ジメチルスルホキシド(DMSO)(26.4)、n−プロパノール(24.9)、エタノール(26.2)、n−ブチルアルコール(28.7)、プロピレングリコール(30.7)、エチレングリコール(34.9)、ジメチルホルムアミド(DMF)(24.7)、アセトニトリル(30)、メタノール(29.7)並びに同様の組成物または類似の物理的及び化学的特性を有する組成物を挙げることができる。ある実施形態において、その低コスト、揮発性及び極性のために、アセトニトリル及びメタノールが好ましい。メタノールは、実施形態での使用に特に好適な溶媒である。ある実施形態において、硫黄、窒素又はリンを含む溶媒は、炭化水素原料からの溶媒の適切な除去を確実に行うために、比較的高い揮発性を有することが好ましい。
少なくとも一実施形態により、抽出溶媒は非酸性であり、抽出ステップは酸を含まない環境で行われる。酸の使用は通例、酸の一般的な腐食性、すべての装置が腐食性環境向けに特別に設計されるという必要条件のために回避される。さらに、酢酸などの酸は、エマルジョンの形成により分離が困難になるおそれがある。
少なくとも一実施形態により、抽出容器112は、約20℃〜約60℃、好ましくは約25℃〜約45℃、さらにより好ましくは約25℃〜約35℃の温度で運転することができる。抽出容器112は、約1〜10バール、好ましくは約1〜5バール、より好ましくは約1〜2バールの圧力で作動することができる。ある実施形態において、抽出容器112は、約2〜6バールの圧力で作動する。
少なくとも一実施形態により、抽出溶媒の炭化水素原料に対する比は、約1:3〜3:1、好ましくは約1:2〜2:1、より好ましくは約1:1であり得る。抽出溶媒と酸化された硫黄含有炭化水素及び酸化された窒素含有炭化水素流110との接触時間は、約1秒〜60分、好ましくは約1秒〜約10分であることができる。ある実施形態において、抽出溶媒と酸化された硫黄含有炭化水素及び酸化された窒素含有炭化水素流110との接触時間は、約15分未満である。ある実施形態において、抽出容器112は、抽出溶媒と酸化された硫黄含有炭化水素及び酸化された窒素含有炭化水素流110との接触時間を延長するための、又は2種類の溶媒の混合度を上昇させるための各種手段を含むことができる。混合手段は、機械式スターラ又は攪拌機、トレイ又は同様の手段を含むことができる。
少なくとも一実施形態により、抽出容器112によって、抽出溶媒、酸化種(例えば、炭化水素原料102中に元々存在していた酸化された硫黄及び窒素含有炭化水素種)及び炭化水素原料を含むことができる混合流114並びに炭化水素原料102と比較して低濃度の硫黄含有炭化水素及び窒素含有炭化水素を有する炭化水素原料を含むことができる、抽出された炭化水素流118が生成される。通例、炭化水素原料は混合流114中に微量でのみ存在する。
混合流114は溶媒再生塔116に供給することができ、溶媒再生塔116では抽出溶媒を第1の回収された溶媒流117として回収し、酸化された硫黄含有炭化水素及び窒素含有炭化水素化合物を含む、第1の残留物流123から分離することができる。任意に、混合流114を溶媒再生塔116内で、回収された炭化水素流124に分離することができ、回収された炭化水素流124は、炭化水素原料102からの混合流114中に存在する炭化水素を含むことがある。溶媒再生塔116は、混合流114を第1の回収された溶媒流117、第1の残留物流123及び回収された炭化水素流124に分離するように構成された蒸留塔であることができる。
抽出された炭化水素流118をストリッパ120に供給することができ、ストリッパ120は、残留抽出溶媒から炭化水素生成物流を分離するように設計された蒸留塔又は同様の容器であることができる。ある実施形態において、混合流114の一部を、ライン122を介してストリッパ120に任意に供給することができ、ストリッパ120で抽出された炭化水素流118と合せることができる。ある実施形態において、溶媒再生塔116は回収された炭化水素流124を生成することができ、これをストリッパ120に供給することができ、ストリッパ120では、回収された炭化水素流を、ライン122を介してストリッパ120に供給することができる抽出された炭化水素流118又は混合流114の一部と、任意に接触させることができる。
ストリッパ120は、そこに供給された各種流れを、炭化水素原料102中に存在する炭化水素を含み、炭化水素原料102と比べて硫黄及び窒素含有量が低下した除去油流126と、第2の回収された溶媒流128に分離する。
ある実施形態において、第1の回収された溶媒流117を第2の回収された溶媒流128と合せて抽出容器112に再循環させることができる。任意に、新しい溶媒を含むことができるメイクアップ溶媒流132を、第1の回収された溶媒流117、第2の回収された溶媒流128又はその両方と合せて、抽出容器112に供給することができる。
酸化された硫黄含有化合物及び窒素含有化合物を含み、低濃度の炭化水素系材料も含むことができる第1の残留物流123をコーカー130に供給することができ、コーカー130では、第1の残留物流123を変換して炭化水素を回収することができる。コーカー130は、ディレードコーカー、流動コーカー、フレキシコーカー又は同様の装置であり得る。ある実施形態において、コーカー130はディレードコーカーであることができる。ディレードコーカー130は、少なくともコーカー分留装置、コーカー炉及び少なくとも1個のコークスドラムを含むことができる。一実施形態において、コーカー130には、第1の残留物流123に加えて、代替工程からの追加の原料が供給される。
ある実施形態において利用され得る基本的なディレードコーキング工程において、コーカー130への供給物は、酸化された硫黄、酸化された窒素化合物又はその両方を含むことができ、並びに場合により微量の抽出溶媒、炭化水素原料102又はその両方も含み、コーカー分留装置(図示せず)の下部に導入することができる。酸化された硫黄含有化合物若しくは窒素含有化合物、又はその両方を含む、コーカー分留装置に供給された材料は、重質再循環材料を含み得る分留装置塔底油も含むことがある。任意に、真空蒸留塔又は常圧蒸留塔からの残留油を含むことがある第2の炭化水素原料133を、コーカー130に供給することができる。
コーカー130に供給された材料を、コーカー炉(図示せず)内でコーキング温度まで加熱して、加熱コーカー供給原料を製造する。ある実施形態において、コーカー炉は、約400℃を超える、又は約450℃を超える、又は約475℃を超える温度で運転することができる。ある実施形態において、コーカー炉は、約475℃〜525℃の温度で運転することができる。
少なくとも一実施形態により、加熱コーカー供給原料は、次いでコークスドラムに供給することができ、コークスドラムは、加熱コーカー供給原料を分解又はクラッキングして、低分子量炭化水素ガスを含み得る揮発性成分流134を形成するコークス化条件に十分な温度及び圧力に維持されている。ある実施形態において、揮発性成分流134を収集し、除去油流126と合せることができる。ある実施形態において、揮発性成分流134を個別に収集して、代替工程で利用することができる。
図1にさらに示すように、ある実施形態において、揮発性成分流134の少なくとも一部はライン135を介して酸化反応装置104に再循環され、酸化反応装置104では、揮発性成分流134は軽質コーカー軽油及び重質コーカー軽油の少なくとも1つを含有する。揮発性成分流134は硫黄に富み、酸化反応装置104内で行われる酸化的脱硫工程にて脱硫することができる。
少なくとも一実施形態により、コークスドラムは、約425℃より高い、又は約425℃〜650℃、又は約450℃〜510℃、又は約470℃〜500℃の温度で運転することができる。ある実施形態において、コーカードラムは少なくとも500℃の温度、又は少なくとも525℃の温度で運転される。
コーカードラム内の運転圧力は、約1〜50バールの範囲、又は約5〜40バールの範囲、又は約10〜30バールの範囲であることができる。ある実施形態において、コーカー130は約10〜25バールの範囲の圧力で運転される。別の実施形態において、コーカー130は約25〜40バールの範囲の圧力で運転される。別の実施形態において、コーカー130は約1〜10バール、好ましくは約1〜3バールの範囲の圧力で運転される。
コーカードラムから揮発性成分流134として塔頂で収集された揮発性成分(コーカー蒸気)をドラムから回収して、コーカー分留装置に戻すことができる。コーカー分留装置からの軽質及び重質軽油留分は、コーカー分留装置のフラッシュ区域に供給することができ、フラッシュ区域では、重質軽油を使用して、コーカー蒸気から最も重質の成分を凝縮することができる。コークスドラム蒸気の最も重質の留分は、熱交換などの他の技術によっても凝縮することができるが、ある実施形態において、流入コークスドラム蒸気は、コーカー分留装置内で軽質又は重質軽油によって凝縮することが好ましい。ある実施形態において、コーカー分留装置への従来の重質留分の再循環は、コークスドラム蒸気から凝縮した炭化水素及び未フラッシュ重質軽油を含むことができる。コークスドラムがコークスで満たされた場合に、供給が別のドラムに切り替られ、満たされたドラムが従来方法によって冷却され空にされて、コークス流136が生成され、それによって工程が連続的に動作できるように、連続的供給工程の間に、コークスがコーカードラムに蓄積する。
ある実施形態において、コーカー130は、上述のように、交互に運転することができる2個以上のコーカードラムを含む。例えば、原料を第1のコーカードラムに供給することができ、供給原料を第1のコーカードラム内で加熱してコーカー蒸気及び固体コークスを生成することができる。第1のコーカードラム内に所定量の固体コークスが蓄積した後、第1のコーカードラムへの原料を停止し、第2のコーカードラムに供給することができ、第2のコーカードラムは、第2のコーカードラム内に一定量のコークスが蓄積されるまで、第1のドラムと同様に運転される。第2のコーカードラムの運転中、第1のコーカードラムへの原料及び加熱の供給を停止し、第1のコーカードラム内のコークスを除去することができる。上記のように、第1及び第2のコーカードラムを交互に使用することによって、全体のコーキング工程を停止させずにドラムを運転から外すことができる。コーカードラムを運転から外すと、コークスを従来の手段で除去して、コークス生成物流136を生成することができる。
図2を参照すると、除去油流126を吸着塔240に供給することができ、吸着塔240では除去油流126を、酸化及び溶媒抽出ステップ後に炭化水素生成物流中に残存する硫黄含有化合物、酸化された硫黄化合物、窒素含有化合物、酸化された窒素化合物及び金属などの各種不純物の1つ以上を除去するように設計された1つ以上の吸着剤と接触させて、炭化水素生成物流242及び吸着ユニット残留物流244を生成することができる、第2の実施形態が提供される。
少なくとも一実施形態により、吸着剤としては、活性炭、シリカゲル、アルミナ、天然粘土及び他の無機吸着剤を挙げることができる。ある実施形態において、吸着剤は、シリカゲル、アルミナ及び活性炭などの各種高表面積担体材料に塗布されている又はそれらをコーティングする極性ポリマーを含むことができる。各種担体材料のコーティングに使用する極性ポリマーの例としては、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリエステルテレフタレート、ポリウレタン、酸化された硫黄種に対して親和性を示す他の同様のポリマー種及びそれらの組合せが挙げられる。
少なくとも一実施形態により、吸着塔240は、約20℃〜約60℃、好ましくは約25℃〜約40℃、さらにより好ましくは約25℃〜約35℃の温度で運転することができる。ある実施形態において、吸着塔は、約10℃〜約40℃、又は約35℃〜約75℃の温度で運転することができる。ある実施形態において、吸着塔240は、約20℃を超える温度で、又は約60℃未満の温度で運転することができる。吸着塔240は、最大約15バール、好ましくは最大約10バール、さらにより好ましくは約1〜約2バールの圧力で運転することができる。ある実施形態において、吸着塔240は、約2〜約5バールの圧力で運転することができる。例示的な実施形態において、吸着塔240は、約25℃〜約35℃の温度及び約1〜約2バールの圧力で運転することができる。
少なくとも一実施形態により、吸着塔240は、原料を、非常に低い硫黄含有量(例えば、15ppmw未満の硫黄)及び非常に低い窒素含有量(例えば、10ppmw未満の窒素)を有する抽出された炭化水素生成物流242及び第2の残留物流244に分離する。吸着第2残留物流244は、酸化された硫黄及び酸化された窒素化合物を含むことができ、第1の残留物流123と任意に合せてコーカー130に供給し、上記のように処理することができる。
図2にさらに示すように、ある実施形態において、揮発性成分流134の少なくとも一部はライン234を介して酸化反応装置104に再循環され、酸化反応装置104では、揮発性成分流134は軽質コーカー軽油及び重質コーカー軽油の少なくとも1つを含有する。揮発性成分流134は硫黄に富み、酸化反応装置104内で行われる酸化的脱硫工程にて脱硫することができる。
図3を参照すると、酸化された硫黄含有化合物、酸化された窒素含有化合物又はその両方を含む第1の残留物流123が熱クラッキング装置330に供給される、第3の実施形態が提供される。熱クラッキング装置330は一連の管を含み、これらの管は原料を炭化水素334の低沸点留分に一部変換するために加熱される。残留物はライン336を介して熱クラッキング装置330から収集することができる。ある実施形態において、熱クラッキング装置330には、代替供給源からライン133を介して炭化水素を供給することができる。ある実施形態において、炭化水素の低沸点留分からなる、熱クラッキング装置330からの流出物は、ストリッパ120のフラッシュ区域(図示せず)に送ることができる。
実施例
一実施例では、有機硫黄密度0.85kg/lの元素硫黄0.28重量%の500ppmwを含有する水素化処理された直留ディーゼル流102を、酸化脱硫した。酸化及び抽出された硫黄化合物を、その特性を表1に示す残留物流供給流136と混合して、合せた流れをコーカー130に供給した。
反応条件は以下の通りであった:過酸化水素の硫黄に対するモル比は4:1であった。触媒はモリブデン(VI)系触媒であった。反応時間は30分であった。温度を約80℃に維持し、圧力を約1バールに維持した。コーカーを約482℃の温度及び約1バールの圧力にて運転した。酸化ステップの物質収支を表2に示す。
一実施形態のコーカーステップの物質収支を表4に示す。
揮発性成分流が軽質コーカー軽油及び重質コーカー軽油の少なくとも1つを含有する、酸化反応装置へ戻る揮発性成分流の少なくとも一部の再循環の物質収支を表6に示す。
本明細書に記載の方法及びシステムにより、酸化脱硫及び脱窒素工程をコーキングユニット又は熱クラッキングユニットと連結することによって、芳香族硫黄、窒素化合物及び芳香族流からの液体炭化水素の量が増加すると考えられる。さらに、酸化反応副生成物(即ち、酸化された硫黄及び窒素化合物)を処分するための効率的な方法はないと考えられる。実施形態により、化合物を処分する必要なしに、酸化された硫黄及び窒素化合物を処分する方法が提供される。
各種実施形態を詳細に説明したが、原理及び範囲から逸脱することなく、各種変更、置き換え及び改変が、ここでなされ得ることが理解されるべきである。したがって、範囲は、以下の特許請求の範囲及びそれらの適切な法的均等物によって決定されるべきである。
単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈により明らかに別途指示されない限り、複数の指示対象を含む。
任意の、又は、任意に、とは、後述の事象又は状況が発生し得ても発生し得なくてもよいことを意味する。説明には、事象又は状況が発生する場合と発生しない場合が含まれる。
範囲は、約1つの特定の値から約別の特定の値までとして表され得る。そのような範囲が表される場合、別の実施形態が、前記範囲内のすべての組合せと共に、1つの特定の値から、又は他の特定の値までであることを理解されたい。