JP2020504997A - 迅速で効率的な糖タンパク質の脱グリコシル化 - Google Patents

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Abstract

本発明は、糖タンパク質の脱グリコシル化の迅速で費用効率性が高い方法であって、糖タンパク質を、安定な変性糖タンパク質得るために、アニオン性表面活性剤および還元剤および非イオン性表面活性剤と合わせる、前記方法を開示する。さらに、エンドグリコシダーゼを、脱グリコシル化タンパク質を得るために、変性糖タンパク質に添加して、N−結合性グリカンを開裂させる。部分的な脱グリコシル化によるタンパク質のコンフォメーションを評価するための迅速なツールもまた提示し、ここで、部分的な脱グリコシル化タンパク質は、キャピラリー電気泳動(CE−SDS)を使用して分析される。

Description

発明の分野
本発明は、分子の類似性を確立するために産業に必要とされる、迅速で確実な分析方法に関する。それは糖タンパク質の迅速で効率的な脱グリコシル化のための方法を示す。それはまた手段として部分的な脱グリコシル化を利用して糖タンパク質の三次構造を比較することにより分子の類似性を評価する方法に関する。
発明の背景
グリコシル化はタンパク質のフォールディング、輸送、および安定性ならびに受容体結合、細胞シグナリング、免疫認識、炎症および病原性などの細胞的事象における重要な役割を果たす。真核生物起源のタンパク質は翻訳後修飾の結果として度々グリコシル化される。特定のグリカンレベルにおける変化は、糖尿病、癌、および伝染病を含む複数の疾患におけるバイオマーカーとして度々使用される。グリコシル化は複雑で不均質なので、グライコムをマッピングすることは極めて困難な課題であり、遊離したグリカンをプロファイルする液体クロマトグラフィーLCにより一般になされる。2つ、つまりN−結合型およびO−結合型の中で;N−結合型グリカンはPNGaseFを用いた酵素的開裂により糖タンパク質から分離される。酵素O−グリコシダーゼはコア1のO−グリカンを開裂するために共通して使用され、しかしながらノイラミニダーゼ酵素との前処理がO−グリカンから末端シアル酸を除去するために必要である。タンパク質が最初に変性しない限り、タンパク質の二次および三次構造は酵素の炭水化物への接近を阻害する。変性のための公知のプロトコールは、37℃で一晩のインキュベーションを伴う、界面活性剤または還元剤の使用を含む。
脱グリコシル化タンパク質は、グリカンによる内在する不均質性および不十分なイオン化により苦労する、大きく複雑なモノクローナル抗体の場合における完全な/還元した(reduced)質量分析のために有用になり得る。遊離したグリカンを高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、キャピラリー電気泳動(CE)、または質量分析(MS)などの方法によりN−グリカンプロファイリングのための蛍光染料を有する、それらのフリー還元末端(free-reducing terminus)でラベル化され得る。
PNGaseFによるタンパク質の脱グリコシル化は、グリカンの表面接近可能性および嵩高く高度に分岐したグリカンによる立体障害などの要因に依存する。これらの要因は各々間接的にタンパク質のグローバルな構造およびグリカン部位占有率に依存する。全てのこれらの要因は脱グリコシル化された種の分子量の違いを利用してCE−SDS(キャピラリー電気泳動ドデシル硫酸ナトリウム)により観察され得る、タンパク質上の特定の部位の脱グリコシル化の割合を決定するだろう。このように、糖タンパク質上の異なる部位の脱グリコシル化の割合の情報を含む部分的な脱グリコシル化プロファイルはその三次/四次構造の指紋(fingerprint)としての役割を果たし得る。
タンパク質の脱グリコシル化後に遊離するグリカンは品質制御のため、および度々、タンパク質が所望の治療効果または他の効果を有するかどうか決定するための両方に有用である。クロマトグラフィーマッピングプロトコールに対して、タンパク質およびペプチドの両方の完全な脱グリコシル化が度々望まれている。脱グリコシル化はSDS−PAGEによるタンパク質分離中の汚染を減らすことができるか、または質量分光分析中のより簡単なイオン化およびスペクトル解釈を許容し得る。これは特に、多数の翻訳後修飾からの不均質のためにひずみ得るタンパク質の完全な分子量を見るとき、特に有用であり得る。治療抗体の場合において、脱グリコシル化は度々、C末端リジンの存在などの修飾を特徴づけるか、またはラベル化もしくは薬物コンジュゲート化したモノクローナル抗体が免疫グロビンと結合させる低分子の数を観察するために必要である。
生物医薬産業において、承認の基準は品質、有効性および安全性を含む。したがって、候補のバイオシミラーの分子類似性を評価して革新者製品とすることは、バイオシミラー製品開発中の重要な課題である。この目的のために、迅速で確実な分析方法が、規制機関により必要とされる分子類似性を確立するために産業で必要とされる。
発明の目的:
本発明の目的は、手段として部分的な脱グリコシル化を利用する糖タンパク質の三次構造を比較することおよびグリカンの分析のためのより早く、効率的な糖タンパク質の完全な脱グリコシル化のための方法を有することである。
発明の概要
本発明の1つの目的は、迅速な手段として部分的な脱グリコシル化方法を提供してマルチプルグリカン部位(multiple glycan site)を有する糖タンパク質の三次/四次構造を評価し比較することである。本方法は、部分的に脱グリコシル化されたタンパク質の亜母集団を得るために、限定された期間に天然の糖タンパク質にエンドグリコシダーゼを添加してN−結合型グリカンを部分的に開裂させることを含む。部分的に脱グリコシル化した糖タンパク質はキャピラリー電気泳動を使用して分析される。
本発明のもう1つの目的は、糖タンパク質の完全な脱グリコシル化のための方法であって、安定な変性糖タンパク質を得るために、糖タンパク質をアニオン性表面活性剤、還元剤および非イオン性表面活性剤と合わせる、該方法を提供することである。さらに変性糖タンパク質は非イオン性表面活性剤と合わせてアニオン性表面活性剤の阻害効果を無効にする。脱グリコシル化タンパク質を得るために、エンドグリコシダーゼを変性糖タンパク質に添加してN−結合型グリカンを開裂する。遊離したグリカンを液体クロマトグラフィーにより分離する。
図面の簡単な説明:
図1は、部分的に脱グリコシル化される糖タンパク質Aの還元したCE−SDSプロファイルである。融合構成物(fusion construct)である糖タンパク質を37℃、10U PNGaseFにより300rpmで混合して脱グリコシル化し、一定量(aliquots)を多くの時間間隔で抜いて(drawn out)、還元したCE−SDS分析によりさらに分析した。脱グリコシル化糖タンパク質の亜母集団はピーク1、ピーク2、ピーク3およびピーク4としてラベル化される。完全に脱グリコシル化した糖タンパク質Aを16時間のPNGaseF消化により得た。
図2は、自然な条件下37℃で2時間、10U PNGaseFにより部分的に脱グリコシル化される糖タンパク質の還元したCE−SDSプロファイルである。抗体である糖タンパク質は、軽鎖(LC)および重鎖(HC)に還元される。Ng−HCは部分的なPNGaseF消化後に生じる非グリコシル化重鎖に対応する。完全に脱グリコシル化された糖タンパク質を、0.4%SDS、100mM β−Meおよび0.75% TritonX−100の存在下37℃での15分の10U PNGaseF消化で得る。
図3は、混合するかまたは混合なしで、自然な条件下、37℃で10U PNGaseFにより部分的に脱グリコシル化される糖タンパク質Aの還元したCE−SDSプロファイルである。A)PNGaseFインキュベーション中、300rpmで混合すること;B)PNGaseFインキュベーション中、混合しないこと。一定量を多くの時間間隔で抜いて、還元したCE−SDS分析によりさらに分析した。脱グリコシル化糖タンパク質の亜母集団はピーク1、ピーク2、ピーク3およびピーク4としてラベル化される。
図4は、自然な条件下で1時間、37℃で10U PNGaseFにより異なるバッファーバックグラウンド下で部分的に脱グリコシル化される糖タンパク質Aの還元したCE−SDSプロファイルである。バッファー1はヒスチジン配合物、バッファー2はPBSトレハロース配合物、およびバッファー3はPBS配合物である(PBS:リン酸緩衝食塩水)。 図5は、自然な条件下で1時間37℃で10U PNGaseFにより、異なるバッファーバックグラウンド下で部分的に脱グリコシル化される糖タンパク質Aの還元したCE−SDSプロファイルであり、本方法の再現性、日間でのばらつき、分析間でのばらつきを実証する。
図6は、部分的な変性後の部分的に脱グリコシル化された糖タンパク質Aの還元したCE−SDSプロファイルである。サンプルは図に記載された要因により部分的に変性された。糖タンパク質は37℃、10U PNGaseFにより300rpmで45分間混合して脱グリコシル化された。完全に脱グリコシル化された糖タンパク質Aを16時間のPNGaseF消化により得た。 図7は、糖タンパク質Aの5つの部分的に脱グリコシル化されたバッチの還元したCE−SDSプロファイルである。糖タンパク質は37℃、10U PNGaseFにより300rpmで45分間混合して脱グリコシル化された。ロット1、2、および3はEUから、4および5はUSから認可される。下のパネルには亜母集団の%分布が示されている。
図8は、変性条件下で抗体である糖タンパク質の完全な脱グリコシル化のための最適化SDS濃度である。SDS濃度を固定するために、最初の脱グリコシル化実験を37℃で2時間、10U PNGaseF、130mM β−Me、1%Triton X−100を用いて行った。 図9は、本発明の方法を使用してFcグリコシル化抗体である糖タンパク質EおよびFの完全な脱グリコシル化を実証する還元したCE−SDSプロファイルである。 図10は、本発明の新しい方法をRoche脱グリコシル化キットと比較した脱グリコシル化の継時変化である。用いられる糖タンパク質はFc領域でグリコシル化される抗体(糖タンパク質B)である。
図11は、本発明の方法とRoche脱グリコシル化キットとのLC−グリカンプロファイル比較である。a)抗体(糖タンパク質B)のFcグリカンプロファイルは16時間のRoche脱グリコシル化方法からおよび1U PNGase Fを用い1分のインキュベーション時間の本発明の方法から得た。b)グリカンプロファイルと比較する糖タンパク質からのもう1つのFc−グリカンプロファイルを、本発明の方法を使用する15分でのPNGaseF(10ユニット〜0.66ユニット)の減少するユニットを使用する脱グリコシル化後に得た。商業的に入手可能なRoche脱グリコシル化方法を16時間使用する脱グリコシル化をコントロールとして使用した。糖タンパク質BおよびCから遊離したグリカンの相対存在量は、従来の16時間消化および本発明の方法を比較して示される。異性体種を集めるそれらの溶出の順に、ピークを数える。
図12は、Fc、Fabおよび融合部分でグリコシル化される糖タンパク質DのLC−グリカンプロファイルである。本発明の方法およびRoche脱グリコシル化方法を使用して得られた遊離したグリカンを比較する。 図13は、本発明による完全な脱グリコシル化と比較して、Waters’ Rapigest(RG)界面活性剤(0.1%〜0.6%)を使用する糖タンパク質Aの不完全な脱グリコシル化を実証する還元したCE−SDSプロファイルである。 図14は、PNGaseF消化後のシアリダーゼによる糖タンパク質Aの脱シアル化の還元したCE−SDSプロファイルである。糖タンパク質はNおよびO−グリカンの両方を含有する。N−グリカンをシアリダーゼ処理の前にPNGaseFにより除去する。本発明の方法は脱グリコシル化のために使用され単独で使用されるシアリダーゼと比較される。
詳細な説明
定義
用語「脱グリコシル化」は特に糖タンパク質からの糖の存在(グリカン)の除去のプロセスをいう。
用語「部分的な脱グリコシル化」は特にグリコシル化、脱グリコシル化した糖タンパク質および中間体の混合物をもたらす計画的な不完全な脱グリコシル化をいう。
用語「完全な脱グリコシル化」は特に全体積が脱グリコシル化した糖タンパク質である、糖タンパク質からのグリカンの完全な除去をいう。
用語「糖タンパク質」は、マルチプルグリカン部位を有する抗体、そのフラグメントまたは融合タンパク質をいう。
「商業的に入手可能なキット」は、SigmaP7367キット、Prozyme GKE−5006キット、Roche 11365177001キット、NEB PNGaseFキットおよびWaters Rapigestキットをいう。
本発明は、マルチプルグリカン部位を有する糖タンパク質の三次/四次構造を評価しおよび比較する迅速な手段を有する方法を記載する。この方法は、PNGaseFによる脱グリコシル化の微分率をもたらすグリカン部位の暴露における違いを利用する。特定の時点でのマルチプルグリカン部位の部分的な脱グリコシル化後に作られる種の亜母集団はタンパク質に特有であり、ならびにグリカンの表面接近可能性および嵩高く高度に分岐したグリカンによる立体障害などの要因に導かれる。この指紋は、糖タンパク質の全構造と比較するために用いられる。母集団を分離する部分的な脱グリコシル化のために、還元したCE−SDSを作られる質量の違いを利用するために使用した。
三次構造の方法を比較するための糖タンパク質の部分的な脱グリコシル化の方法は、
(a)糖タンパク質を提供すること;
(b)糖タンパク質を、エンドグリコシダーゼと糖タンパク質1mgあたり1ユニット〜10ユニットの量で合わせて、N−結合型グリカンを部分的に開裂すること;
(c)約37℃からの温度で約45分〜8時間、ステップ(b)の構成成分をインキュベートして、部分的に脱グリコシル化されたタンパク質を提供すること、
のステップを含む。
さらに本発明は、LCプロファイリングのためにさらに処理されるべき、複雑なグリカン構造の遊離のために洗剤および還元剤を使用する迅速で効率的なタンパク質の脱グリコシル化方法を記載する。本方法は大きく且つ複雑な糖タンパク質に適用され、ここで付着したオリゴ糖は度々埋められおよび遊離しにくい。本方法の新規性は、使用される酵素の最少量でおよび非常に短い時間で酵素活性を促進する比例関係における構成成分の特有の組み合わせにある。
糖タンパク質の脱グリコシル化の方法は、
(a)糖タンパク質を提供すること;
(b)糖タンパク質を、アニオン性表面活性剤および還元剤と合わせること、ここで還元剤は、糖タンパク質を変性させるのに十分な量である;
(c)90℃〜100℃の温度で2分〜5分間、ステップ(b)の構成成分をインキュベートして、変性した糖タンパク質を提供すること;
(d)変性した糖タンパク質を冷却すること;
(e)変性した糖タンパク質を非イオン性表面活性剤とアニオン表面活性剤の阻害効果を無効にする量において合わせること
(f)エンドグリコシダーゼを変性した糖タンパク質1mgあたり0.66ユニット〜10ユニットの量で導入して、N−結合型グリカンを開裂すること;
(g)37℃で1〜15分間ステップ(f)の構成成分をインキュベートして脱グリコシル化タンパク質を提供すること;および
(h)脱グリコシル化タンパク質を遊離したグリカンから分離すること:
のステップを含む。
方法および材料
IgG1 mAbsを含む糖タンパク質および融合タンパク質はCHO細胞において製造され、Biocon Ltd.での標準的な抗体精製手順を使用して精製される。
ある態様において、糖タンパク質はモノクローナル抗体のバイオシミラーであり、および融合タンパク質のバイオシミラーである。
もう1つの態様において、糖タンパク質は、イトリズマブ、トラスツズマブ、ベバシズマブ、アダリムバブなどのモノクローナル抗体(mAbs)である。
もう1つの態様において、糖タンパク質はエタネルセプトなどの融合タンパク質である。
糖タンパク質の詳細は以下に示すとおり。
糖タンパク質A:エタネルセプト
糖タンパク質B:イトリズマブ
糖タンパク質C:トラスツズマブ
糖タンパク質D:融合mAb(セツキシマブ+TGFRBII)
糖タンパク質E:ベバシズマブ
糖タンパク質F:アダリムバブ
本発明のある部分は多数のグリカン部位を有する糖タンパク質の三次/四次構造を評価および比較する迅速な手段として部分的な脱グリコシル化方法を提供することである。本方法は、部分的に脱グリコシル化されたタンパク質の亜母集団を得るためにN−結合型グリカンを部分的に開裂するために45分〜8時間などの限定された期間、1mgの糖タンパク質あたり1ユニット〜10ユニットでネイティブな糖タンパク質へのエンドグリコシダーゼの添加を含む。部分的に脱グリコシル化された糖タンパク質はキャピラリー電気泳動を使用して分析される。
本発明の第2の部分は糖タンパク質の完全な脱グリコシル化の方法を提供することであり、ここで、糖タンパク質はアニオン性表面活性剤および還元剤と合わせ、90〜100℃で2分〜5分間インキュベートする。安定な変性糖タンパク質を得るためにさらなる非イオン性表面活性剤を添加する。変性糖タンパク質をさらに非イオン性表面活性剤と合わせてアニオン性表面活性剤の阻害効果を無効にする。脱グリコシル化タンパク質を得るために、エンドグリコシダーゼを1mgの変性糖タンパク質あたり1〜10ユニット添加して37℃で1〜15分の時間インキュベートしてN結合型グリカンを開裂させる。1mgあたり0.1ユニットのエキソグリコシダーゼをエンドグリコシダーゼ後の非イオン性表面活性剤または脱グリコシル化タンパク質後の変性糖タンパク質に添加し、37℃で30分間インキュベートし、変性糖タンパク質の脱シアル酸化タンパク質を得るために、N−およびO−グリカンの末端シアル酸を開裂する。遊離したグリカンを液体クロマトグラフィーにより分離する。
エキソグリコシダーゼをエンドグリコシダーゼ後の非イオン性表面活性剤または脱グリコシル化タンパク質後の変性糖タンパク質に任意に添加してN−およびO−グリカンの末端シアル酸を開裂して変性糖タンパク質の脱シアル化タンパク質を得る。
ある態様において、アニオン性表面活性剤は、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、カルボキシラート、スルホナート、石油スルホナート、アルキスベンゼンスルホナート、ナフタレンスルホナート、オレフィンスルホナート、アルキルサルファート、サルファート、サルファート化天然油および脂質、サルファート化エステル、サルファート化アルカノールアミドおよびアルキルフェノールからなる群から選択されるものである。
好ましい態様において、糖タンパク質の変性のために使用されるアニオン性表面活性剤はSDSである。
還元剤はジスルフィド結合を破壊する量であり、β−メルカプトエタノール、ジチオトレイトール、またはトリス(カルボキシエチル)ホスフィンからなる群から選択される
好ましい態様において、還元剤は100mM〜150mMの量におけるβ−メルカプトエタノールである。
非イオン性表面活性剤は、Triton−X、エトキシ化脂肪族アルコール、ポリオキシエチレン表面活性剤、カルボン酸エステル、ポリエチレングリコールエステル、無水ソルビトールエステルおよびそのエトキシ化誘導体、脂肪酸のグリコールエステル、カルボキシアミド、モノアルカノールアミン凝縮物およびポリエチレン脂肪酸アミドからなる群から選択されるものである。
ある態様において、Triton−X 100などの非イオン性表面活性剤はSDSの阻害効果を無効にするために添加する。
好ましい態様において、Triton−Xは0.60%〜1.2%の濃度で添加される。
もう1つの態様において、タンパク質の変性のためのWaters Rapigestキットなどの商業的に入手可能なSF表面活性剤に続くRoche PNGase Fを使用する脱グリコシル化はまた本発明の性能を比較するために使用された。
ある部分において、PNGaseFなどのエンドグリコシダーゼは変性糖タンパク質に添加して糖タンパク質からN−結合型グリカンを開裂し、ここで最内部のGlcNAc残基はα1−6フコース残基と結合してもよくまたはしなくてもよく、完全に脱グリコシル化された糖タンパク質を得る。必要とされる時間は1〜15分の間である。
もう1つの部分において、エンドグリコシダーゼはPNGaseFであり、それは45分〜8時間、ネイティブな糖タンパク質に添加されて糖タンパク質からN−結合型グリカンを部分的に開裂し、ここで最内部グリカン残基がGlcNAcであり、部分的な脱グリコシル化糖タンパク質を得る。
シアリダーゼなどのエキソグリコシダーゼは、変性したおよびN−グリカン脱グリコシル化糖タンパク質に添加して糖タンパク質からのO−結合型グリカンから末端シアル酸を開裂する。
好ましい態様において、シアリダーゼ酵素反応を37℃で30分行い、脱シアル化タンパク質を得る。
自然な条件下の脱グリコシル化を以下の通り行った。
50mM Tris Cl pH8.0、1mgの各糖タンパク質、10ユニットのPNGaseFを有する1mMCaCl2を37℃で16時間インキュベートして完全な脱グリコシル化をすることによりN−グリカンを除去するために、PNGaseF(Roche、at.11365193001)を使用した。部分的な脱グリコシル化のために、各図に示した通り、インキュベーションはより短い時間であった。
シアリダーゼ消化(QABio、E−S001)のために、0.1ユニットのシアリダーゼを50mMの酢酸ナトリウムpH4.5中の各糖タンパク質1mgに添加し、37℃で30分間インキュベートした。分析が行われるまでサンプルを−20℃で凍結した。
変性条件下の脱グリコシル化を以下の通り行った。
50mM Tris Cl pH8.0中の1mgの各糖タンパク質、1mMCaCl2を100−130mM β−メルカプトエタノールおよび10%貯蔵溶液からのSDS0.1〜0.8%と混合した。混合物を95℃で2分間インキュベートし、室温まで冷却した(2分)。0.75−1%Triton X−100を添加してボルテックスし、続いて1〜10ユニットのPNGaseF酵素(Roche、cat.11365193001)および37℃で1〜15分インキュベートした。
シアリダーゼ消化のために、0.1ユニットのシアリダーゼを50mMの酢酸ナトリウムpH4.5における各糖タンパク質1mgに添加し、37℃で30分間インキュベートした。シアリダーゼ消化のための糖タンパク質を上記の通りの0.4%SDS、100mM β−メルカプトエタノールおよび0.75%Triton X−100の存在下、10ユニットのPNGase Fで前処理した。分析が行われるまでサンプルを−20℃で凍結した。
グリカンのNP HPLC−FLDのためのサンプル調製を以下の通り行った。
遊離したグリカンを冷却したエタノールを添加することによりタンパク質から分離し、続いて8000rpmで15分間遠心分離した。グリカンを含有する上澄みを集め真空乾燥した。ラベルする試薬をアントラニル酸5mgおよびシアノ水素化ホウ素ナトリウム6mgをDMSO:氷酢酸の70:30混合物100μLに溶解させることにより調製した。この試薬の5μLを乾燥したグリカンサンプルに添加して、80℃で45分間インキュベートした。その後ラベル化したグリカンを水中で再構成し(reconstituted)、酢酸エチルで5回洗浄した。過剰量の酢酸エチルを有機および水層の相分離を使用して各回除去し、サンプルを再度真空乾燥する。乾燥したサンプルを100μlの50%アセトニトリルおよび50%水(v/v)において再構成し、さらに混合した。上澄みを除去し、マキシマムリカバリーバイアルに移し、蛍光検出器を有するHPLCシステム中に注入した。グリカンを移動相Aが100%アセトニトリルであり移動相Bが50mMギ酸アンモニウムpH4.4であるLudgerSep N2アミドカラム上で分離した。蛍光検出器を励起352nmおよび放射435nmに設定した。グリカンサンプルは分析まで2〜8℃で貯蔵され得る。
以下の通りのCE−SDSサンプル調製および装置操作手順
CE−SDS分析を32カラットV 9.1ソフトウェアを備えるPA 800 Plus Pharmaceutical Analysis System (Beckman Coulter)で行った。30cm長のキャピラリーを50μ IDと200μの開口部(aperture)とともに用いる。サンプルを10kDa MWCO NanoSepにおいてSDSバッファーpH9.5を使用して糖タンパク質125μgを脱塩することにより調製した。pH9.5のSDSバッファー76μlを0.5μlの内部標準(10kDamol.wt.マーカー、SDSMW分析キット)および5μlのβ−メルカプトエタノールとともに脱塩したサンプル19μlと混合した。混合物をボルテックスし、簡単に遠心分離した。内容物を80℃で2分インキュベートし、溶液を室温まで冷却した。内容物をユニバーサルバイアル中に設置されたPCRチューブに移した。
脱グリコシル化方法は本発明の方法の通りに行われ(図1〜9)、その後RocheおよびWaters Rapigest(図10〜13)による事前に存在する商業的に入手可能な脱グリコシル化方法と比較した。方法の使用はまたO−結合型グリカンを有する糖タンパク質のシアリダーゼ酵素消化まで拡張される(図14)。
例1:
自然な条件下でのPNGaseFによる多数のグリカン部位糖タンパク質の脱グリコシル化の継時変化が図1に説明されており、それは抗体の融合構成物である、部分的に脱グリコシル化された糖タンパク質Aの還元されたCE−SDSプロファイルである。還元されたCE−SDSプロファイルは、異なる時間間隔で糖タンパク質の異なる亜母集団が得られ、ここで各連続したピークは、タンパク質中の違うグリカン部位の脱グリコシル化に対して直接的に関連付けられる。
図1において、糖タンパク質Aは3つの違うグリカン部位(二量化形態中に6つ)を示し、その部分的な脱グリコシル化は4つの違うピークへ導く。ピーク1は完全にグリコシル化され、各々脱グリコシル化される1および2個の部位を有するピーク2および3が続く。さらにピーク4は脱グリコシル化された全て3つのグリカン部位を有し、完全に脱グリコシル化された糖タンパク質Aである。進行する脱グリコシル化のインキュベーション時間として、グリカン部位亜母集団は完全な脱グリコシル化に向かってシフト(左側)した。各時間間隔での各亜母集団の強度は、タンパク質の局所の構造および嵩高くおよび高度に分岐したグリカン(部位占有率)による立体障害によりマスクされ得るグリカン部位の接近可能性に影響を与える。したがって、このプロファイルはグリコシル化タンパク質の三次構造の指紋であり、およびより高次の構造品質を評価するための手段として用いられ得る。プロファイルは図2にみられるとおり単一のグリカン部位糖タンパク質(2量化形態において2つ)においてより単純であり、それは自然な条件下で37℃で10U PNGase Fにより部分的に脱グリコシル化される糖タンパク質の還元されたCE−SDSプロファイルである。抗体である糖タンパク質を軽鎖(LC)と重鎖(HC)に還元する。Ng−HCは部分的なPNGaseF消化後に生じた非グリコシル化重鎖に対応する。特定の部位でのグリカン構造における不均質性による大きさの変化(variant)は、各亜母集団のピーク幅を占めるべきと仮定される(低い分子量差のため)。特別な時点での亜母集団は、温度、インキュベーションの長さ、酵素ユニットおよびインキュベーションの時間での混合などの多くの要因に影響を受けやすい。還元する時間および還元する酵素ユニットの両方は脱グリコシル化の亜母集団の減少をもたらす酵素反応の速度を遅くするだろう。インキュベーションの長さおよび混合の影響は各々図1および図3に実証される。
PNGase F消化でのバッファーマトリックスからの干渉がまた見積もられ、アッセイはタンパク質バッファーに反応しにくい(図4)。このようにパラメータは糖タンパク質の良好に溶解したグリカン亜母集団を含有する最高のプロファイルを得るために最適化されるべきである。本発明者らの実験のために、本発明者らは37℃で10UのPNGaseF酵素、300rpmで混合して45分のインキュベーション時間で糖タンパク質のプロファイルを選ぶ。
分析的な方法の変動性を自然な条件下で糖タンパク質Aの45分の脱グリコシル化で確立し、日内(intra-day)での再現性(reproducibility)/繰り返し性(repeatability)、日間(inter-day)および分析間(inter-analyst)での実行(runs)に基づいて見積もる。表1において、図1に示される各亜母集団の相対的な存在量が示され、%RSDが計算される。最大の変動性がより低い量における種に対して観測され、よく分割された(resolved)亜母集団ではない。糖タンパク質Aの実証方法変動性の還元したCE−SDSプロファイルを図5に重ね合わせる。

表1.日内、日間および分析間のために評価された分析方法変動性。各亜母集団をピーク1、2、3および4の相対的領域百分率として見積もる。
本発明者らは本方法の構造安定性を見積もるために部分的に脱グリコシル化した抗体の亜母集団上の多くの要因による抗体の部分的な変性/アンフォールディングの効果を見積もった。変性したサンプルをPNGaseF消化の前に熱、界面活性剤および還元剤に曝露することにより得た。熱と界面活性剤の両方は水素結合および疎水性相互作用に影響を与える。還元剤はタンパク質におけるジスルフィド結合を標的にする。部分的な変性の後300rpmで45分間混合して37℃で10UのPNGase Fにより部分的に脱グリコシル化した糖タンパク質の還元したCE−SDSプロファイル。完全に脱グリコシル化した糖タンパク質Aを16時間のPNGase F消化により得た。図6にみられるとおり、上記要因の各々は脱グリコシル化配座異性体の亜母集団に異なる程度で影響を与えた。
例えば、ピーク3および4への最大シフト(完全な脱グリコシル化に対する)は、0.01% SDSまたは2−メルカプトエタノールと処理したタンパク質において見られる。37℃での抗体の一晩のインキュベーションおよび95℃で2分のインキュベーションの両方が、コントロールとして使用される定期的な45分の部分的に脱グリコシル化された糖タンパク質と比較して、亜母集団における重要なシフトをもたらした。37℃で一晩のインキュベーションで得られた結果は、脱グリコシル化された糖タンパク質とグリコシル化された抗体と比較した安定性上の意味合いを有した。ほとんどの場合において、観測される違いは、後者単独よりも、延長されたインキュベーションに対する酵素的な処理による温和なタンパク質変性とグリカン除去後の構造的な歪みとの組み合わせた効果だろう。タンパク質のグリカン亜母集団におけるシフトは、部分的な変性により強いられたタンパク質の三次構造における変化が、糖タンパク質において関連する部位での脱グリコシル化の量に直接的に影響すること、およびしたがって亜母集団のレベルがタンパク質の四次/三次構造と比較して使用され得る、ということを示す。
より高次構造と比較する方法を使用するために、それはEUおよびUSの規制機関から承認される多数のロットの糖タンパク質で試験された。5つの部分的に脱グリコシル化した多くの糖タンパク質Aの図7における還元したCE−SDSプロファイルを得た。糖タンパク質を300rpmで45分間混合しながら37℃で10UPNGaseFにより脱グリコシル化された。ロット1、2、および3はEUから、4および5はUSから認可される。図7はEUの3つおよびUSの2つのロットの糖タンパク質Aの還元したCE−SDSの出力(traces)を示す。明らかに、本方法の変動性以上である分析されるバッチ間での著しい変動性が観測された。糖タンパク質AはFcと融合ドメインの両方でグリコシル化され、ロットにおけるグリカン部位占有が類似しない場合、観測される違いが得られる。糖タンパク質Aの多くのロットにおける嵩高く分岐したグリカンの区別を示す分布は、変化したCE−SDSプロファイルの原因となるPNGaseF消化に異なるレベルの立体障害を引き起こすだろう。しかしながら、EUおよびUSの両方のロットのN−グリカンプロファイルが類似している。表2において、1つの代表的なEUおよびUSのロットがそれらのLCグリカンプロファイルと比較され、類似していることが見出される。これらのロットは非常に異なる部分的な脱グリコシル化還元CEプロファイルを示した(図7))。これは、抗体Aで観測されるロット間の変動性はグリカンの付着部位でのタンパク質構造からきている、ということを示唆した。それにもかかわらず、グリカン付着の部位での部位占有率およびタンパク質の構造の両方が部分的に脱グリコシル化されたサンプルにおいて亜母集団に影響を与え得る。
グリカンがモノクローナル抗体の生物学的活性に影響を与えることが知られているので、抗体生産において、製品の有効性を維持するために、異なるロットのグリカンプロファイルにおける変動性は最小化され、したがって上で観測されるロット間の違いは現実である。このように、本方法は繊細であり、革新者製品の三次構造におけるロット間変動性をマッピングすることとバイオシミラーと比較することに適している。

表2.還元したCE−SDSプロファイルにおける相対的な極大差を示す多くの糖タンパク質AのLCグリカンプロファイルの比較。数値はロットにおけるグリカン種の相対存在量に対応する。
タンパク質の脱グリコシル化後に遊離するグリカンは品質の制御のためおよびタンパク質が所望の治療の有効性または他の効果を有するかどうかを決定するための両方に有用である。クロマトグラフのマッピングプロトコールのために、および他の分析的なシナリオのために、タンパク質とペプチドの両方の完全な脱グリコシル化が度々望まれる。例えば、脱グリコシル化はSDS−PAGEによるタンパク質分離中の汚染を減らすことができるか、または質量分光分析中のより簡単なイオン化およびスペクトル解釈を許容し得る。これは特に、多数のPTMからの不均質のためにひずみ得るタンパク質の完全な分子量を見るとき、特に有用であり得る。治療抗体の場合において、脱グリコシル化は度々、C末端リジンの存在などの修飾を特徴づけるか、またはラベル化または薬物コンジュゲート化したモノクローナル抗体が免疫グロビンと結合する低分子の数を観察するために必要である。この理由のため、それは度々脱グリコシル化糖タンパク質に有利である。
本発明において、本発明者らは、界面活性剤および還元剤を使用する迅速で効率的なタンパク質−脱グリコシル化方法を示す。タンパク質脱グリコシル化に続くステップのフローチャートが以下のフローチャートに描かれる。各ステップの説明が表3に詳しく述べられる。


表3:本方法の説明。ステップの数はフローチャートに対応する。
例2
簡潔に、アニオン性界面活性剤SDS(0.4%)および還元剤β−メルカプトエタノール(100mM)を95℃でタンパク質をアンフォールディングするために用いる。その後、PNGaseFによる脱グリコシル化の前に非イオン性界面活性剤Triton X−100(0.75%)で処理してSDSの阻害効果を無効にする。1mMの塩化カルシウムを反応バッファー(10mM Tris−Cl pH8.0)において使用して安定化し、PNGaseF活性を促進した。反応最適化条件を図8に詳しく述べ、ここで変性条件下での抗体Cの完全な脱グリコシル化のための最適化SDS濃度を説明する。SDS濃度を固定するために、最初の脱グリコシル化実験を37℃で10U PNGaseF、130mMβ−Me、1%Triton X−100で行った。10Uの酵素を用いた15分の完全な脱グリコシル化はまた本発明の方法で他のFcグリコシル化抗体(糖タンパク質EおよびF)に観測された(図9)。
本方法の新規性は、1〜15分という非常に短時間のプロセスを完結させるために使用される酵素の最低量を用いた酵素活性を促進する比例関係における構成成分の特有の組み合わせにある。表4に示す通り、商業的に入手可能なキットにおいて、10〜25ユニットの酵素が1mgの変性タンパク質からのN−グリカンを遊離するために示される(特異的活性参照)。本方法において、表3のとおり社内で開発したプロトコールを用いて、1ユニットの酵素(試験されるRoche酵素)は〜95%の1mg変性タンパク質を1分で消化することができ、それは酵素活性においておよそ10倍増加し、商業的に入手可能なキットにおける1時間〜一晩のインキュベーションと比較して時間内での顕著な還元である(表4)。

表4.脱グリコシル化キットは市場で入手できる。脱グリコシル化ミックスにおいて用いられる全ての成分は容易に入手でき、タンパク質変性のために一般に使用される。
例3
図10は、Rocheキット(10Uの変性剤なしのRoche酵素)およびBioconの方法(1Uの変性剤有りのRoche酵素)でのFcグリコシル化抗体糖タンパク質Bの脱グリコシル化のパーセントの経時変化を比較する。観測されるとおり、ほぼ完結した脱グリコシル化(〜99%)が、10UのRoche酵素変性剤なしで16時間で観測され、一方同様のグリカン収率(〜94%)を、本発明の方法において用いられる1UのRoche酵素を用いて1分で達成された。
例4
図11は、より少ない酵素ユニットを用いて本発明の方法を使用する減少したインキュベーション時間およびRocheキットで得られた、2つのFcグリコシル化モノクローナル抗体(糖タンパク質BおよびC)からのグリカン種のLCプロファイルの比較を与える。10Uの酵素で16時間と1ユニットの酵素で1分で消化した糖タンパク質Bについて同一のプロファイルが得られる。15分間0.66Uの酵素でと16時間10Uの酵素と比較して類似のグリカン収率が消化される糖タンパク質Cに対して得られた。少ないグリカン種(<0.5%)は10UのRoche酵素単独で16時間で観測された。類似のグリカン種が1分間の1ユニットの酵素インキュベーションでの本発明の方法で観測された(図11)。
本発明において試験される糖タンパク質は、モノクローナル抗体/構造的に複雑でそのFc、Fabおよび融合部で多数グリコシル化されている融合抗体(>100kDa)である。図12のパネルは6個の違う部位(2量体中で12個)でグリコシル化されるFc、Fabおよび融合部を有する多数グリコシル化された融合糖タンパク質DのLC−グリカンプロファイルを示す。さらなるグリカン種はさもなければ消化のためのPNGaseFに近づけない本方法を用いて遊離する。これらのグリカン種は高度に分岐し、嵩高い、タンパク質のFabおよび融合部に存在するガラクトシル化し、およびシアル化した種に対応する。パネルbにおいて、脱グリコシル化した融合タンパク質(糖タンパク質D)のCEプロファイルが描かれ、ここで87%の脱グリコシル化は本発明の方法を用いて1分間インキュベートした1ユニットの酵素を用いて観測され、消化は酵素10ユニットを用いて1分で完結した。脱グリコシル化の相対的割合は図12のパネルbにおいて言及される。
さらに、図13に示す通り、本発明の方法はまた同様の時間に酵素量において完全に脱グリコシル化する多数のグリカン部位融合タンパク質(糖タンパク質 A)においてもまた効率的であった。
例5
本発明者らは、PNGaseF以外の酵素による脱グリコシルカのための界面活性剤および還元剤の類似のレシピを拡大した。図14において、シアリダーゼ消化の界面活性剤ありとなしとでの比較を示す。本発明者らのレシピのシアリダーゼは、シアリダーゼ単独と類似する、すなわち30分での脱シアルO−グリカン(末端シアル酸の除去)を可能にする。使用されるタンパク質はシアリダーゼ処理の前にPNGase Fを使用するN−グリカン脱グリコシル化物である。本発明はさらに酵素ユニットだけでなくインキュベーション時間を減らすように最適化され得る。
本方法は他のエンドグリコシダーゼ酵素、例えばベータ−ガラクシトダーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ、エンド−H、エンド−F2、エンド−S、マンノシダーゼおよびフコシダーゼなど、をさらに添加して各末端糖残基を除去することにより分析される。
例6
本発明者らは、また変性およびその後に続くRoche PNGase Fによる脱グリコシル化のための商業的に入手可能なWaters Rapigestキットの性能を比較した。図13は本発明の方法および商業的に入手可能なWaters Rapigest(RG)キットを使用する糖タンパク質Aの脱グリコシル化を実証する還元したCE−SDSプロファイルを説明する。それは時間の減少、費用の減少および酵素ユニットの減少の利益を有するので、結果は、脱グリコシル化の本発明の方法が商業的に入手可能な/伝統的な方法よりもよいということを示す。本発明は糖タンパク質のより速い脱グリコシル化を許容するだけでなく、収率と遊離されるグリカン種の数の両方を改善する。
迅速な脱グリコシル化方法は以下の長所および適用を有する。
1)重度にグリコシル化される、構造的に複雑な糖タンパク質の脱グリコシル化
2)NおよびO−グリカンを含む完全な糖タンパク質のエキソグリコシダーゼを含む、完全なN−グリカンLC−MSプロファイリング
3)本来の不均質性および暴露されたグリカンの低いイオン化のために苦労する糖タンパク質の完全および還元された質量分析。界面活性剤を脱塩スピンカラムを使用してMS分析の前に除去することができる。多くの消化後清浄化プロトコールはまた文献において利用可能であり、それは反応混合物から界面活性剤を取り除く。
4)グリコシル化部位および付着部位でのグリカンの不均質のため、さもなければ困難であるMSを使用する部位占有率の同定。

Claims (21)

  1. 糖タンパク質の脱グリコシル化の方法であって、
    (a)糖タンパク質を提供すること;
    (b)糖タンパク質を、アニオン性表面活性剤および還元剤と合わせること、ここで還元剤は、糖タンパク質を変性させるのに十分な量である;
    (c)90℃〜100℃の温度で2分〜5分間、ステップ(b)の構成成分をインキュベートして、変性した糖タンパク質を提供すること;
    (d)変性した糖タンパク質を冷却すること;
    (e)変性した糖タンパク質を非イオン性表面活性剤とアニオン表面活性剤の阻害効果を無効にする量で合わせること
    (f)エンドグリコシダーゼを変性した糖タンパク質1mgあたり0.66ユニット〜10ユニットの量で導入して、N−結合型グリカンを開裂すること;
    (g)37℃で1〜15分間、ステップ(f)の構成成分をインキュベートして、脱グリコシル化タンパク質を提供すること;および
    (h)脱グリコシル化タンパク質を遊離したグリカンから分離すること:
    のステップを含む、前記方法。
  2. エンドグリコシダーゼが、ステップ(e)の後またはステップ(g)の後、任意に変性糖タンパク質1mgあたり0.1ユニットの量において添加され、37℃で30分間、構成成分をインキュベートして、脱シアル酸化されたタンパク質を提供する、請求項1に記載の方法。
  3. アニオン性表面活性剤が、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、カルボキシラート、スルホナート、石油スルホナート、アルキルベンゼンスルホナート、ナフタレンスルホナート、オレフィンスルホナート、アルキルサルファート、サルファート、サルファート化天然油および脂質、サルファート化エステル、サルファート化アルカノールアミドおよびアルキルフェノールからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  4. アニオン性表面活性剤が、好ましくはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)である、請求項3に記載の方法。
  5. ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が、好ましくは0.1%〜0.8%の濃度である、請求項4に記載の方法。
  6. 非イオン性表面活性剤が、Triton−X、エトキシ化脂肪族アルコール、ポリエチレン表面活性剤、カルボキシエステル、ポリエチレングリコールエステル、無水ソルビトールエステルおよびそのエトキシ化誘導体、脂肪酸のグリコールエステル、カルボキシアミド、モノアルカノールアミン凝縮物およびポリエチレン脂肪酸アミドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  7. 非イオン性表面活性剤が好ましくはTriton−X100である、請求項6に記載の方法。
  8. Triton−Xが、好ましくは0.60%〜1.2%の濃度である、請求項7に記載の方法。
  9. 還元剤が、ジスルフィド結合を切断する量であり、およびβ-メルカプトエタノール、ジチオトレイトール、またはトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  10. 還元剤が好ましくはβ−メルカプトエタノールである、請求項9に記載の方法。
  11. β−メルカプトエタノールが好ましくは100mM〜150mMの量である、請求項10に記載の方法。
  12. 最内部の残基がGlcNAcである場合、エンドグリコシダーゼが、糖タンパク質からN−結合型グリカンを開裂させる能力を有するPNGaseFである、請求項1に記載の方法。
  13. 酵素活性が1〜15分で完結する、請求項12に記載の方法。
  14. エキソグリコシダーゼが、糖タンパク質のN−およびO−結合型グリカンの両方から末端シアル酸を開裂させる能力を有するシアリダーゼである、請求項2に記載の方法。
  15. 酵素活性が30分で完結する、請求項14に記載の方法。
  16. 遊離したグリカンを液体クロマトグラフィーにより分離する、請求項1に記載の方法。
  17. 糖タンパク質が、抗体、そのフラグメントまたはマルチプルグリカン部位を有する融合たんぱく質である、請求項1に記載の方法。
  18. 三次構造を比較するための糖タンパク質の脱グリコシル化の方法であって、
    (a)糖タンパク質を提供すること;
    (b)糖タンパク質を、エンドグリコシダーゼと糖タンパク質1mgあたり1ユニット〜10ユニットの量で合わせて、N−結合型グリカンを部分的に開裂すること;
    (c)約37℃からの温度で約45分〜8時間、ステップ(b)の構成成分をインキュベートして、部分的に脱グリコシル化したタンパク質を提供すること、
    のステップを含む、前記方法。
  19. 最内部の残基がGlcNAcである場合、エンドグリコシダーゼが、糖タンパク質からN−結合型グリカンを開裂させる能力を有するPNGaseFである、請求項18に記載の方法。
  20. 部分的に脱グリコシル化された糖タンパク質がキャピラリー電気泳動を使用して分析される、請求項18に記載の方法。
  21. 糖タンパク質が、マルチプルグリカン部位を有する抗体、そのフラグメントまたは融合タンパク質である、請求項18に記載の方法。
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