JP2013056934A6 - オリゴ糖によるタンパク質の修飾及び標識方法 - Google Patents

オリゴ糖によるタンパク質の修飾及び標識方法 Download PDF

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Abstract

【課題】オリゴ糖結合によるタンパク質及び抗体のリモデリング及び標識方法、及び修飾されたオリゴ糖に結合する抗体又はタンパク質の提供。
【解決手段】修飾された糖を含む化学ハンドルを、第1のタンパク質上のGlcNAc残基に結合させる工程と、前記第1のタンパク質を、前記化学ハンドルと反応し得る、リポーター分子、担体分子、又は固体支持体と混合する工程を含む。前記リポーター分子、担体分子、又は固体支持体が、前記化学ハンドルの位置でタンパク質に結合し、それにより糖修飾タンパク質が形成される。前記第1のタンパク質が抗体である。
【選択図】なし

Description

本特許出願は、2006年2月10日に出願の米国仮特許出願第60/772,221号及び2006年6月13日に出願の米国仮特許出願第60/804,640号の優先権を主張し、それらの全開示内容を、本明細書に記載されているのと同様に援用する。
発明の分野
本発明は、概して、新規なオリゴ糖結合におけるタンパク質の標識方法、糖鎖を修飾することによる抗体のヒト化方法、並びに修飾されたオリゴ糖と連結されている新規な抗体に関する。
背景
単離若しくは合成されたタンパク質及び抗体(例えばIgG)は、治療用途、診断用途、及び研究用途で用いられている。検出可能な標識(例えばフルオロフォア)で抗体を標識することによって、抗体を、特に標的生体分子又は細胞の検出に用いることができる。抗体に結合性の物質(例えばビオチン)をタグとして結合させてもよく、その結果、それらは特に標的生体分子又は細胞に結合し、更にタグを付与された抗体と結合する物質を用いて(例えばストレプトアビジン)生体分子又は細胞の精製を実施することができる。抗体は通常、システイン若しくはリジン残基(Fabに存在しうる)、又は抗体の結合部位で標識されてもよい。この部位へのタグ又は標識付加により、抗体の結合特性が損なわれるか、又は少なくとも変化しうる。更に、各抗体に結合している標識分子の数を定量することは非常に困難である。
治療用のモノクローナル抗体(Mab)は、現在、癌、リウマチ性関節炎、黄斑部変性及び他の疾患又は症状と戦うために不可欠な薬剤として用いられている。しかしながら、非ヒト細胞株において産生させた抗体は、抗原性特徴を有し、ヒトの免疫系によって異物と認識され、それにより抗体の半減期及び有効性が制限されうる。ヒトのIgG配列をトランスジェニックマウスに導入することにより、免疫原性の問題を軽減することにつながるが、但し完全に解消するには至らない。タンパク質の配列の他に、IgGに結合するオリゴ糖の性質もまた、免疫系による認識に顕著な影響を及ぼす。糖鎖形成は細胞の種類に特異的であるため、異なる宿主細胞中で産生されたIgGは異なるオリゴ糖パターンを有し、それにより生物学的機能に影響が及びうる。細胞(例えばヒトの胚幹細胞)を動物由来の血清を交換させながら、マウスフィーダー層上で増殖させる場合でさえも、当該細胞は非ヒト由来の、免疫原であるシアル酸を取り込み、更に当該シアル酸は細胞表面に出現する(非特許文献1)。治療用抗体の製造業者は、脱フコシル化されたオリゴ糖を用いて、抗原性の低いIgGを産生させることによって、これらの課題を回避しようとしたが、脱フコシル化抗体はヒト化抗体と同等の性能を有さず、また依然として免疫原性の問題、並びに天然ヒト抗体とは異なる半減期を有するという問題が解消されていなかった。
代謝的オリゴ糖工学が存在し、それは、細胞のグリカン中の単糖残基に対してわずかな修飾を行うことを指す。研究者らは代謝的工学を使用することにより、グリカン生合成を破壊し、化学的に細胞表面を修飾し、細胞内部の代謝の流れを徹底調査し、プロテオームから特異的な糖タンパク質サブタイプを同定した(非特許文献2を参照)。
Martin,M.J.,ら、Nature Medicine,2005,11:228−232 Dube,D.H.,and Bertozzi,C.R.,Current Opinion in Chemical Biology,2003,7:616−625
以上より、結合部位以外の部位でタグ又は標識を有する抗体、及び単純かつ効率的な化学的反応により容易に標識できる抗体に対するニーズが存在する。また、よりヒト抗体と同様の翻訳後修飾を有する抗体に対するニーズも存在する。
発明の概要
本発明は、概して、新規なオリゴ糖結合におけるタンパク質及び抗体のリモデリング及び標識方法、糖鎖形成を修飾することによる抗体のヒト化方法、並びに修飾されたオリゴ糖に結合する抗体又はタンパク質に関する。なお、抗体又はタンパク質(例えばIgG)は、インビトロ又はインビボでの方法を使用して標識される。
若干のインビトロでの実施形態では、第1の抗体に存在するオリゴ糖が切断され、かつ別の第2のオリゴ糖が当該第1の抗体上の切断部位に結合する。この第2のオリゴ糖は、例えば第2の抗体から切断されてもよい。この方法を使用することにより、例えばヒト抗体から得られるオリゴ糖を、非ヒト細胞株において産生された抗体に結合させてもよい。またこの方法を使用することにより、オリゴ糖の位置で、2次標識を抗体に結合させてもよい。
若干のインビボでの実施形態では、化学ハンドルを有する非天然の糖を抗体産生細胞に摂取させ、抗体上にそのオリゴ糖を取り込ませる。抗体を単離した後、2次標識を当該化学ハンドルの位置で結合させてもよい。
抗体のFc部分のグリカン残基の部位で抗体を標識することにより、従来の、抗体の結合領域のシステイン又はリジン残基の標識の代わりに、起こりうるエピトープ結合の破壊が回避される。更に、IgGに存在するグリカン残基の数は一般に公知である。対照的に、各エピトープ特異的IgGはペプチド配列中に有するリシン又はシステイン残基の数が異なり、またそれぞれはIgGの構造に基づき、標識のされ方が異なりうる。したがって、各IgGにどの程度標識が存在するかを決定することは通常困難である。本発明の方法を用いることにより、グリカン残基のほとんど全てが標識されることが期待され、それにより、例えば蛍光活性化細胞選別(FACS)などによる、抗体を使用した定量的な標識化及び検出が可能となる。
本発明の他の方法では、非ヒトIgGに対するヒトオリゴ糖の連結により、実際にヒトのそれらと同一のグリコフォームとなり、唯一の違いとしては、糖結合部位の付近の余分なガラクトースの存在、及び環付加に由来する環構造の存在のみとなる。
本発明の方法には、治療用抗体のヒト化の他に、多くの応用が考えられる。例えば、糖鎖形成パターンは、特定の疾患又は症状(例えばリウマチ様関節炎及び妊娠)において変化しうる。オリゴ糖を混合し、かつ適合させる能力により、研究者は、動物モデルにおいて、改変された糖鎖形成に関連するヒトの疾患の調査が可能となる。
本発明の一態様は、以下の工程:
化学ハンドルを含む修飾された糖を、第1のタンパク質上のGlcNAc残基に結合させる工程と、
前記第1のタンパク質を、前記化学ハンドルと反応し得る、リポーター分子、担体分子、又は固体支持体を混合する工程、
を含み、前記リポーター分子、担体分子、又は固体支持体が、前記化学ハンドルの位置でタンパク質と結合し、それにより糖修飾タンパク質が形成される、糖修飾タンパク質の調製方法の提供に関する。
他の実施形態では、前記第1のタンパク質は抗体である。更なる実施形態では、抗体はIgGである。
他の実施形態では、前記結合工程は、プロテアーゼを実質的に含有しない溶液中で実施される。
別の実施形態では、当該方法は、結合工程の前に、GlcNAc−GlcNAc結合の位置で第1のタンパク質上に存在するオリゴ糖を切断して、GlcNAc残基を含むタンパク質を得る工程を含む。更なる実施形態では、前記オリゴ糖は、GlcNAc−GlcNAc結合の位置で、エンドグリコシダーゼH切断により切断される。他の実施形態では、前記オリゴ糖は、GlcNAc−GlcNAc結合の位置で、エンドグリコシダーゼM切断により切断される。
他の実施形態では、前記リポーター分子、担体分子、又は固体支持体を、ガラクトシルトランスフェラーゼ変異体を使用して前記GlcNAcに結合させる。他の実施形態では、前記変異体はY289L変異体である。
他の実施形態では、前記修飾された糖はアジド修飾された糖であり、かつ前記リポーター分子、担体分子、又は固体支持体は、アルキン又は活性化アルキンで標識されている。より具体的には、前記アジド修飾された糖は、UDP−GalNAzである。
別の実施形態では、当該方法は、結合工程の前に以下の工程を含む:
第2のタンパク質上に存在するオリゴ糖を、GlcNAc−GlcNAc結合の位置で切断し、GlcNAc残基を有するオリゴ糖を得る工程と、
前記オリゴ糖を、前記化学ハンドルと反応し得る、リポーター分子、固体支持体、又は担体分子と結合させる工程。
他の実施形態では、GlcNAc残基を有するオリゴ糖を重炭酸アンモニウムで前処理し、かつ前記オリゴ糖を、スクシンイミジルエステルを用いてアルキンと結合させる。他の実施形態では、前記第2のタンパク質を、前記第1のタンパク質とは異なる細胞株又は異なる種類の細胞中で合成する。他の実施形態では、前記第2のタンパク質はヒト細胞中で合成される。
他の実施形態では、当該リポーター分子は、蛍光色素、酵素、放射標識、金属キレーター、又は検出可能な基質からなる群から選択される。他の実施形態では、当該担体分子は、治療薬、DNA、タンパク質、ペプチド、及び糖からなる群から選択される。
他の実施形態では、前記糖修飾タンパク質は、それが修飾される前の第1のタンパク質と比較して、抗原性がより強くなるかまたは弱くなる。他の実施形態では、第1のタンパク質は非ヒト供給源由来である。他の実施形態では、糖修飾タンパク質は、ヒト化されたタンパク質である。
他の実施形態では、前記第1のタンパク質の前記切断をOH−アルキンの存在下で実施し、前記エンドグリコシダーゼMにより、前記OH−アルキンを、切断させたGlcNAc残基に結合させ、前記修飾されたオリゴ糖をアジド残基で標識する。
本発明の別の態様は、前記タンパク質に結合するオリゴ糖を標識することによってタンパク質を標識する方法の提供に関する。当該方法は、非天然の糖の存在下でタンパク質産生細胞をインキュベートする工程を含み、前記非天然の糖は化学ハンドルを有する。
本発明の別の態様は、標識されたオリゴ糖を含む抗体の提供に関する。
それらの部位にかかわりなく、上記の実施形態は、本発明の実施形態の任意の一つの具体的記載として提供される。
本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになると考えられる。本発明の好ましい実施形態を以下に示すが、当業者であれば、それらの詳細な説明から、本発明の範囲内で様々な改変及び変更態様を容易に想起できるため、係る詳細な説明及び具体例は飽くまで例示目的で記載されているに過ぎないものと理解すべきである。
未処理(下パネル)及びエンドH処理(上パネル)したヤギ抗ウサギポリクローナル抗体の、HPLCによる比較を示す。未処理抗体では軽鎖が20.2分に溶出し、グリコシル化した重鎖では26.8分に溶出した。エンドH処理された抗体では、完全に脱グリコシル化した重鎖が31.2分に溶出した。 未処理(下パネル)及びエンドH処理(上パネル)したG2Aモノクローナル抗体の、HPLC分析による比較を示す。未処理抗体では軽鎖が21.5分に溶出し、グリコシル化した重鎖では29.1分に溶出した。エンドH処理された抗体では、軽鎖は21.1分に溶出し、グリコシル化若しくは部分的に脱グリコシル化した重鎖では27.8及び28.7分に溶出し、完全に脱グリコシル化した重鎖では30.1分に溶出した。 図3Aは、TAMRA Click−iT(商標)による標識を示す。エンドH処理したIgG中のニワトリ抗ヤギ重鎖の標識(Degly)、及び未処理のIgG(Undegly)を示す。C:コントロールのニワトリ抗ヤギIgG開始材料、Degly:エンドH処理、O−GlcNAcの酵素的標識及びClick iT検出後のニワトリ抗ヤギIgG、Undegly:O−GlcNAcの酵素的標識化及びClick iT検出の後のニワトリ抗ヤギIgG。図3Bは、図3Aに記載されているのと同じ、SYPRO Rubyゲル染色で後染色したゲルを示す(全タンパク質パターンを示す)。 図4Aは、それぞれ、DMSO担体(コントロール)、又は、20μM AcGalNAz、40μM AcGalNAz、20μM AcManNAz、40μM AcManNAz又は30μM AcGlcNAzをM96細胞に導入し、その後アジド糖をClick iTで検出した結果を示す。 図4Bは、図4Aに記載したのと同じゲルをSYPRO Rubyゲル染色によって後染色したときの、全タンパク質のパターンを示す。 ゲルにおける分離後の、糖タンパク質サブクラスA)及びB)の代謝的標識及びその「click」検出、及びその手順を示す図(C)。 ゲルにおける分離後の、糖タンパク質サブクラスA)及びB)の代謝的標識及びその「click」検出、及びその手順を示す図(C)。 AcGlcNAz又はDMSO担体(未処理コントロール)を導入されジャーカット細胞の可溶性タンパク質を、取り込まれたアジド糖のClick iT検出し、更に二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動法による分離に供した結果を示す。同じゲルをSYPRO Rubyゲル染色によって後染色したときの、全タンパク質のパターンを示す。 ゲル中のアジド標識されたモデルタンパク質(40及び50kD)の検出(最初に蛍光のアルキンタグで標識し、更にゲル中で分離させた)結果を示す。 アジド標識された40及び50kdのタンパク質の標識化効率が、タンパク質合成により得られた抽出物中で不変であることを示す。 GalTl酵素標識及びα−クリスタリンO−GlcNAcA)の検出(図式的)、及びB)ゲル分離の後の検出結果を示す。 GalTl酵素標識及びα−クリスタリンO−GlcNAcA)の検出(図式的)、及びB)ゲル分離の後の検出結果を示す。 GalTl酵素標識及びClick−iTによる検出と、O−GlcNAcモノクローナル抗体CTD 110.6によるα−クリスタリンO−GlcNAcの検出との比較の結果を示す。 同じ二次元泳動ゲルにおける、O−GlcNAc修飾タンパク質、リンタンパク質及び全タンパク質の検出を示す。 同じメンブレンにおける、O−GlcNAc修飾タンパク質及びコフィリンの、ウエスタンブロッティングによる検出を示す。 O−G1cNAc修飾タンパク質(コントロール)及びO−GlcNAcアーゼ阻害遺伝子(PUGNAc)処理した細胞抽出液のディファレンシャル検出を示す。 異なるキレーターによるクリック反応を用いて標識したタンパク質を分離したときの結果を示すゲル。80μgの非標識ジャーカットライゼートに取り込ませたアジドオボアルブミン及びアジドミオグロビン各2.5μgを、TAMRAアルキンで2時間標識した。反応液の組成は、50mM トリス(pH8)、25%のプロピレングリコール、1mM CuSO、5mMのアスコルビン酸ナトリウム、20μM TAMRAアルキン。キレーターの有無(10mM TPEN[左上ゲル]、EDTA[右上ゲル]、バトクプロインジスルホン酸(BCS)[中央左のゲル]又はネオクプロイン[中央右のゲル])を用いて反応を実施した。コントロール反応を、CuSOなし[左下ゲル]、又はキレーターなし[右下ゲル]で実施した。標識後、サンプルを沈殿させ、7mM 尿素/2mM チオ尿素/65mM DTT/2% CHAPS/で再度溶解させ、約30μgを二次元ゲル電気泳動(pH4〜7のIEFストリップ、4〜12%のビス−トリスゲル、MOPSバッファー)で分析した。TAMRAシグナルを、532nmで励起、Fuji FLA3000(14A)で580のロングパス放出させてイメージングし、更にゲルをSypro(登録商標)Rubyを用いて全タンパク質をゲル染色によって後染色した(14B)。 異なるキレーターによるクリック反応を用いて標識したタンパク質を分離したときの結果を示すゲル。80μgの非標識ジャーカットライゼートに取り込ませたアジドオボアルブミン及びアジドミオグロビン各2.5μgを、TAMRAアルキンで2時間標識した。反応液の組成は、50mM トリス(pH8)、25%のプロピレングリコール、1mM CuSO、5mMのアスコルビン酸ナトリウム、20μM TAMRAアルキン。キレーターの有無(10mM TPEN[左上ゲル]、EDTA[右上ゲル]、バトクプロインジスルホン酸(BCS)[中央左のゲル]又はネオクプロイン[中央右のゲル])を用いて反応を実施した。コントロール反応を、CuSOなし[左下ゲル]、又はキレーターなし[右下ゲル]で実施した。標識後、サンプルを沈殿させ、7mM 尿素/2mM チオ尿素/65mM DTT/2% CHAPS/で再度溶解させ、約30μgを二次元ゲル電気泳動(pH4〜7のIEFストリップ、4〜12%のビス−トリスゲル、MOPSバッファー)で分析した。TAMRAシグナルを、532nmで励起、Fuji FLA3000(14A)で580のロングパス放出させてイメージングし、更にゲルをSypro(登録商標)Rubyを用いて全タンパク質をゲル染色によって後染色した(14B)。 異なるキレーターによるクリック反応を用いて標識したタンパク質をゲル中で分離させた結果を示す。サンプル及びクリック標識の条件は図14と同様である(但し、キレーター処理が、反応の最初での5mMのTPEN、BCS又はネオクプロインの添加を含むことを除く)。標識後、LDSバッファー+5mM TCEPのサンプルを沈殿させ、再度溶解させ、更に連続2倍希釈系列を調製した。希釈物を、MOPSランニングバッファーを含有する4〜12%のビス−トリスゲル上にロードした(各々250ngのオボアルブミン及びレーン1のミオグロビン)。図15Aは、キレーターの添加により、感度を損なうことなくTAMRAシグナルによる画像のバックグラウンドが減少することを示す。図15Bは、Sypro(登録商標)Ruby全タンパク質ゲル染色による後染色の結果であり、キレーターを含有するサンプルではバンド解像度が非常に良好であることを示す。 異なるキレーターによるクリック反応を用いて標識したタンパク質をゲル中で分離させた結果を示す。サンプル及びクリック標識の条件は図14と同様である(但し、キレーター処理が、反応の最初での5mMのTPEN、BCS又はネオクプロインの添加を含むことを除く)。標識後、LDSバッファー+5mM TCEPのサンプルを沈殿させ、再度溶解させ、更に連続2倍希釈系列を調製した。希釈物を、MOPSランニングバッファーを含有する4〜12%のビス−トリスゲル上にロードした(各々250ngのオボアルブミン及びレーン1のミオグロビン)。図15Aは、キレーターの添加により、感度を損なうことなくTAMRAシグナルによる画像のバックグラウンドが減少することを示す。図15Bは、Sypro(登録商標)Ruby全タンパク質ゲル染色による後染色の結果であり、キレーターを含有するサンプルではバンド解像度が非常に良好であることを示す。 サンプル及びクリック標識条件は図14と同様である(但しキレーター処理が7mM、5mM又は2mMのBCS、又はネオクプロインの添加を含むことを除く)。(A)の星印のレーンは、アスコルビン酸ナトリウムを添加する前にCuSO及びBCSを反応液に添加し、ボルテックスした時の反応の結果を示す。他の全ての反応においては、BCSを添加する前にCuSO及びアスコルビン酸ナトリウムを添加し、ボルテックスした。ゲルを解析した結果、キレーターを添加する前にアスコルビン酸ナトリウム及びCuSOを反応チューブに添加し、混合することが必要であることが示された。アスコルビン酸ナトリウムを添加する前にキレーター及びCuSOを添加し、ボルテックスする場合、アジド−アルキン標識は行われず、すなわちキレーターの添加によりCu IIのCu Iへの還元が阻害されることが示唆される。 クリック化学物質を使用した抗体の酵素的標識を示す:A)レーン1:ヤギ抗体(GAb)のみ。レーン2:GalTl酵素を有するGAb(UDP−GalNAzコントロールを含まない)。レーン3:酵素及びUDP−GalNAzを有するGAb。レーン4:アジド標識オボアルブミン及びミオグロビンコントロールタンパク質。レーン5:非標識の分子量マーカー。B)アジド標識ヤギ抗体(上から)の希釈系列を調製した後、電気泳動し、更にSYPRO Rubyゲル染色で後染色したときの、全タンパク質パターンを示す。 4つの現存するアルキンフルオロフォア(AからD)及び2つの強力なアルキンフルオロフォア(E、F)の構造を示す。本発明の方法に従い、それらを用いることにより、生体分子を標識することができる。A)TAMRA−アルキン、B)Alexa 488−アルキン、C)Alexa 633−アルキン、D)Alexa 532−アルキン、E)強力な蛍光発生アルキン、F)強力な蛍光発生アルキン。 図12Aに示すTAMRA−アルキン化合物を使用したゲルの染色の結果を示す。ゲルの左側上のレーン2、3及び4は、アジド修飾された糖で標識された細胞抽出液の結果を表す。レーン1は、コントロールの、非標識の細胞を表す。右側に、コントロールのアジド標識タンパク質(オボアルブミン及びミオグロビン)(+)、又は非標識のコントロール(−)(濃度変化あり)を示す。その結果、アジド修飾タンパク質の、非常に効率的かつ選択的なゲル中標識が可能であることが示された。
発明の詳細な説明
序論:
様々なグリコシダーゼ酵素(エンド−Hなど)は、N結合型オリゴ糖を切断することができ、他の酵素(Gal−Tなど)は、選択されたオリゴ糖を、−OH基を含むアクセプター分子へ転移させることができる。最も効率的なアクセプター分子は、N−アセチルグルコサミン及びグルコースである。あるいは、アクセプター(例えばタンパク質)に対して、選択された糖を代謝的標識により導入することもできる。オリゴ糖を有するタンパク質(例えば治療用抗体)の修飾、又はオリゴ糖を有する固形基質へのタンパク質の接合を含む幾つかの用途へのこの酵素又は代謝系の使用に関して、本明細書に記載する。若干の用途においては、適当なアクセプター分子でコーティングした固体支持体面のための相補的化学ハンドルを有するタンパク質への、オリゴ糖の転移を行ってもよい。更に、検出分子(例えば質量分析による検出、精製及び評価を効率化する、蛍光若しくは蛍光発生化合物、又はタンパク質)へ、糖を転移してもよい。適当なアクセプターOH基に加えて、親和性ペプチドタグ、化学反応性基(active chemical moiety)(例えばアジド、アルキン)又はビオチンを有する大型の分子への転移も可能である。
この方法の1つの好適な用途は、非ヒトのN結合型オリゴ糖類を、ヒト抗体に由来するヒトのN結合型オリゴ糖と交換することによる、非ヒト抗体のヒト化である。この場合、当該非ヒト抗体は、一連のヘテロなヒトのオリゴ糖で修飾される。あるいは、同種の精製又は合成されたヒト型のオリゴ糖(タンパク質又はペプチド基質に結合)を、抗体アクセプターに特異性を与えるドナーとして用いることもできる。係る特性としては、血清半減期の制御、特異的な細胞又は組織(例えばFcアクセプター)に対するターゲッティング又は抗体安定性の改変処理などが挙げられる。当該ドナーは、機能性部分(例えば金属キレーター、蛍光分子、抗原、オリゴヌクレオチド、ビオチン化合物、又は細胞リガンド)を有してもよい。
定義:
本発明を詳細に記載する前に、本発明が具体的な組成又は工程に限定されず、適宜変化させることができることを理解すべきである。単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、「当該(the)」という用語を本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いる場合、特に明記しない限りは、複数形をも包含するものとする。すなわち、例えば「リガンド」という用語には複数のリガンドが包含され、「抗体」という用語には複数の抗体が包含される。
特に明記しない限り、本明細書において用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって、通常理解されているのと同じ意味を有する。本明細書において記載されている用語を、以下の通り定義する。
(表1)略語のリスト
Figure 2013056934
本明細書で使用される「アクセプター」という用語は、ドナーを含有するオリゴ糖又は単糖と、エンドグリコシダーゼの触媒により結合を形成できる置換基を意味する。好ましくは、アクセプター単位は、抗体に付加されるGlcNAc残基である。好ましくは、アクセプター単位は、エンド−M又はエンド−Aによって標的にされ、エンド−M又はエンド−Aとの接触の前に更なる糖部分と結合する、GlcNAcである。
本明細書で使用される「ドナー」という用語は、オリゴ糖又は単糖アクセプターと、エンドグリコシダーゼの触媒により結合を形成できる置換基を意味する。好ましくは、ドナー単位は、アスパラギンに付加されるGlcNAc残基である。好ましくは、ドナー単位は、エンド−M又はエンド−Aの標的とされ、エンド−M又はエンド−Aとの接触の前に更なるGlcNAc部分と結合する、GlcNAcである。好適なドナーは、Asn−GlcNAc−Xの構造を有し、式中、Xは、アクセプターを含む標的タンパク質へ転移されるオリゴ糖又は単糖である。
本明細書で用いられる「活性化アルキン」という用語は、他の分子上のアルキン修飾基と選択的に反応し、アルキン修飾基とアルキン反応基との間での共有結合を形成する化学基を指す。アルキン反応基の例としてはアジドが挙げられる。「反応性アルキン」はまた、アルキン基と選択的に反応する化学基を有する分子であってもよい。
本明細書で用いられる「親和性」という用語は、2つの分子、例えば抗体と抗原との、又は正荷電基と負荷電基との結合相互作用の程度のことを指す。抗体などの二価の分子の場合、親和性は典型的には、抗原と1つの結合性領域との結合力(例えば抗原と1つのFabフラグメントとの)として定義される。両方の結合ドメインと抗原との間の結合力を「アビディティ」と称する。本発明における「高親和性」とは、リガンドが、10−1(通常10〜1011−1)より大きい親和性定数(K)で抗体と結合することを指し、係る親和性の数値は、阻害ELISA、あるいはそれに相当する技術(例えばスキャッチャードプロット又はK/解離定数(Kに反比例))で測定される。
本明細書で用いられる「反応性アルキン」という用語は、他の分子上のアルキン修飾基と選択的に反応して、アルキン修飾基とアルキン反応基との間に共有結合を形成する化学基のことを指す。反応性アルキン基の例としてはアジドが挙げられる。「反応性アルキン」はまた、アルキン基と選択的に反応する化学基を有する分子であってもよい。
本明細書で用いられる用語「抗体」とは、免疫グロブリン分子又はその免疫学的な活性を有する部分(すなわち抗原結合性部分)のことを指す。免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分の例としては、免疫グロブリン分子又はその断片が挙げられ、それはF(ab)部位、及びオリゴ糖結合部位(例えばアスパラギン−GlcNAc結合部位)を保持するための充分なFc部位を含む。抗体は、必要に応じてポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え体(例えば、キメラであるか、又はヒト化である)完全にヒト、非ヒト(例えばマウス)、又は単鎖抗体であってもよい。抗体はエフェクター機能を有することもあり、補体を固定でき、必要に応じて毒素又はイメージング剤とカップリングさせてもよい。当該抗体は、例えばIgGである。
本明細書で使用される「抗体フラグメント」という用語は、完全抗体中の、主要な選択的結合性を有する抗体断片のことを意味する。具体的な断片は当該技術分野においては公知(例えばFab、Fab’及びF(ab’)(様々なプロテアーゼ、ペプシン又はパパインとのインキュベートにより得られる))であり、完全抗体のFcフラグメントを欠くか、又は「半分子」フラグメントと称されるものであり、完全抗体の重鎖部分を結合させているジスルフィド結合を還元的に分解することにより得られる。また、係る断片としては、軽鎖可変部からなる単離された断片、重鎖及び軽鎖の可変部からなる「Fv」断片、及び軽鎖及び重鎖可変部がペプチドリンカーで結合している組換え1本鎖ポリペプチド分子が挙げられる。他の結合断片の例としては、(i)VH及びCH1領域からなるFdフラグメント、(ii)dAbフラグメント(Ward,ら、Nature 341,544(1989))(VH領域からなる)、(iii)単離されたCDR領域、及び(iv)単鎖Fv分子(scFv)(上記)が挙げられる。更に、組換え技術を使用して、抗原認識特性が保持されている任意の断片を作製することもできる。
本明細書で用いられる用語「抗原」とは、抗体の形成を誘導するか若しくは誘導することができる分子、又は抗体が選択的に結合する分子のことを指し、限定されないが、生体物質が例として挙げられる。抗原はまた「免疫原」とも称される。標的結合性抗体は、選択的に抗原(本明細書では用語「標的」と同義的に用いられる)と結合する。
本明細書で使用される「抗領域抗体」という用語は、選択された部位(外部抗体の断片)を用いて動物を免疫化することにより得られた抗体を意味し、当該断片のみが免疫原として用いられていることを特徴とする。抗体の領域としては、Fc部位、ヒンジ領域、Fab部位などが挙げられる。抗領域抗体には、モノクローナル及びポリクローナル抗体が包含される。本明細書で使用される「抗領域断片」という用語は、本発明の抗領域抗体から、酵素的処理によって得られた一価の断片のことを意味する。
本明細書で使用される「水溶液」という用語は、水の溶液特性を保持する、主成分を水とする溶液のことを意味する。水溶液が水以外の溶媒を含有する場合であっても、典型的には水が主な溶媒である。
本明細書で使用される「アジド反応性」という用語は、他の分子上のアジド修飾基と選択的に反応して、アジド修飾基とアジド反応基との間に共有結合を形成する化学基のことを意味する。アジド反応性基の例としては、アルキン及びホスフィン(例えばトリアリールホスフィン)が挙げられる。「アジド反応性」はまた、選択的にアジド基と反応する化学基を含有する分子であってもよい。
本明細書で使用される「バッファー」という用語は、化学物質の付加又は欠失に対して、溶液の酸性度又は塩基性度の変化を最小化するための系のことを意味する。
本明細書で使用される「担体分子」という用語は、本発明の化合物と共有結合する、生物学的又は非生物学的成分のことを意味する。係る成分としては、限定されないがアミノ酸、ペプチド、タンパク質、多糖、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸、ハプテン、ソラレン、薬剤、ホルモン、脂質、脂質アセンブリ、合成ポリマー、ポリマー性の微粒子、生物細胞、ウイルス及びそれらの組み合わせが挙げられる。
本明細書で用いられる「化学ハンドル」という用語は、特異的な官能基(例えばアジド、アルキン、活性化アルキン、亜リン酸エステル、ホスフィンなど)のことを指す。当該化学ハンドルとは、反応基(以下で定義される)とは別であり、当該化学ハンドルは天然に生じる生体分子には存在せず、生体分子(例えば未変性の細胞成分)に対しては化学的に不活性である化学基のことを指す。しかしながら、アジド又はアルキン反応基と反応したとき、当該反応は生物学的な反応条件(例えば過剰な熱又は強力な反応物質の非存在下で細胞培養するときの条件)下で、効率的に行われる。
本明細書で用いられる用語「クリック化学反応」とは、アジド及び末端アルキンとの間のHuisgen環付加又は1,3−双極子環付加により1,2,4−トリアゾールが形成される反応のことを指す。係る化学的反応においては、限定されないが、単純なヘテロ原子有機反応物質を用いることにより、信頼性が高く、選択的で、立体特異的で、発熱性の反応を実施することが可能となる。
本明細書で使用される「環付加」という用語は、2つ以上のπ電子系(例えば不飽和分子又は同じ分子の不飽和部分)が結合して、結合の多様性の正味の減少を示す環式生成物を形成する化学反応のことを意味する。環付加においては、π電子により新規なπ結合が形成される。環付加による生成物のことを、「付加物」又は「環付加物」と称する。異なる種類の環付加が当該技術分野において公知であり、例えば[3+2]環付加及びディールス−アルダー反応などが挙げられるがこれらに限定されない。[3+2]環付加(1,3−双極子環付加とも呼ばれている)は1,3−双極子及び双極子親和性物質との間で生じ、5員の複素環の形成の際に典型的に用いられる。「[3+2]環付加」の用語はまた、Bertozziら、J.Am.Chem.Soc.,2004,126:15046−15047に記載されているアジド及びシクロオクチン誘導体及びジフルオロシクロオクチンとの間の「銅を含まない」[3+2]環付加を包含する。
本明細書で用いられる用語「検出可能な反応」とは、観察又は機器の使用によって直接又は間接的に検出可能な、シグナルの発生又は変化を指す。典型的には、検出可能な反応はシグナルの発生であり、フルオロフォアが固有の蛍光を発し、金属イオン又は生物学的化合物との結合によっても即座にシグナルの変化を生じさせないことを特徴とする。あるいは、当該検出可能な反応は、吸光度若しくは蛍光の波長分布パターン若しくは強度の変化、又は軽い散乱、蛍光の持続時間、蛍光偏光の変化、又は上記パラメータの組合せをもたらす光学的反応であってもよい。他の検出可能な反応としては、例えば化学発光、リン光、放射性同位元素からの放射、磁力及び電子密度などが挙げられる。
本明細書で使用される「検出可能な程に顕著な」という用語とは、観察又は器具の使用によって、物理的性質を識別又は分離することができるシグナルのことを指す。例えばフルオロフォアは、スペクトル特性、蛍光強度、生存期間、偏光、又はサンプル中の他のフルオロフォア及び任意に存在する更なる物質による光減少速度によって、容易に識別することができる。
本明細書で用いられる「直接検出可能な」という用語は、材料の存在、又は当該材料から発生するシグナルが、化学修飾又は更なる物質の存在を必要とせずに、観察、機器の使用又はフィルムによって容易に検出できる状態のことを指す。
本明細書で用いられる用語「フルオロフォア」とは、固有に蛍光を発する組成物、又は生物学的化合物若しくは金属イオンと結合すると即座に蛍光の変化を示す蛍光発生組成物のことを指す。フルオロフォア中に、フルオロフォアの溶解性、分光特性、又は物理的性質を変化させる置換基を含有させてもよい。多くのフルオロフォアが当業者に公知であり、クマリン、シアニン、ベンゾフラン、キノリン、キナゾリノン、インドール、ベンズアゾール、ボラポリアザインダセン、フルオレセイン、ローダミン及びロードールなどのキサンテン、並びにRICHARD P.HAUGLAND,MOLECULAR PROBES HANDBOOK OF FLUORESCENT PROBES AND RESEARCH CHEMICALS(9th edition,CD−ROM,September 2002)に記載の他のフルオロフォアなどが挙げられるが、これらに限定されない。
「糖修飾された」という用語とは、結合している糖分子の数又は構成が変化した、タンパク質又は抗体などの粒子のことを意味する。好適な糖修飾抗体は、その糖鎖の修飾処理によりヒト化した非ヒト由来の治療用抗体である。
本明細書で使用される「糖タンパク質」という用語は、天然に糖付加されたタンパク質、及びインビボ又はインビトロで酵素的に修飾されて糖残基を有するに至ったタンパク質のことを意味する。
本明細書で用いられる「ヒト化」という用語は、ヒト化されていないものと比較して、免疫原性が低くなるか、又はヒトにおける免疫応答の惹起が少なくなる、タンパク質(例えば抗体)の修飾のことを指す。好ましくは、非ヒトタンパク質及び抗体は、ヒトにおいて発現されるものと類似するか若しくは同一の糖残基となるように修飾することにより「ヒト化」される。
本明細書で使用される「キット」という用語は、関連する成分、典型的には1つ以上の化合物又は組成物がパッケージされているセットのことを意味する。
本明細書で用いられる「標識」という用語は、標的又は化合物と結合し、本発明の方法において用いられる、直接又は間接的に検出可能(例えばその分光特性、コンホメーション又は活性に関して)である化学部分又はタンパク質を指し、例としてはリポーター分子、固体支持体、及び担体分子などが挙げられる。本発明では、標識とは、リポーター分子、固体支持体、又は担体分子を総称する用語として用いる。標識は、直接検出可能であってもよいか(フルオロフォア)、又は間接的に検出可能であってもよい(ハプテン又は酵素)。係る標識としては、限定されないが、放射線計数装置で測定できる標識用の放射性同位元素、分光光度計で視覚的に観察若しくは測定できる色素、染料又は他の色素源、スピン標識アナライザで測定できるスピン標識、並びに蛍光標識(フルオロフォア)、(出力シグナルは適切な分子付加物の励起によって生じ、またそれは色素により吸収される光を用いた励起によって視覚化できるか、又は例えば標準的な蛍光光度計又はイメージングシステムにより測定できる)などが挙げられる。当該標識は化学発光基質であってもよく、その場合、出力シグナルはシグナル化合物の化学修飾、金属含有物質又は酵素によって生じ、その場合、酵素依存性の二次シグナル(例えば無色の基質からの有色物質の形成)が生成する。標識という用語はまた、共役分子と選択的に結合できる「タグ」又はハプテンであってもよく、当該共役分子は、基質と共にその後添加されると、検出可能なシグナルを生成することを特徴とする。例えば、タグとしてビオチンを使用し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)のアビジン又はストレプトアビジンコンジュゲートを使用してタグと結合させ、更に比色定量用の基質(例えばテトラメチルベンジジン(TMB))、又は蛍光基質(例えばAmplex Red試薬(Molecular Probe社製))を使用してHRPの存在を検出することができる。多くの標識が当業者に公知であり、例えばRICHARD P.HAUGLAND,MOLECULAR PROBES HANDBOOK OF FLUORESCENT PROBES AND RESEARCH PRODUCTS(10th edition,CD−ROM,September 2005)に記載の粒子、フルオロフォア、ハプテン、酵素及びそれと反応する比色定量用、蛍光及び化学発光基質、並びにその他の標識などが使用可能であるが、これらに限定されない。
本発明の用語「リンカー」又は「L」とは、C、N、O、S及びPからなる群から選択される、1〜30の非水素原子からなる単一の共有結合又は一連の安定な共有結合のことを意味する。典型的なリンカー部材としては、−C(O)NH−、−C(O)O−、−NH−、−S−、−O−などの部分が挙げられる。「切断可能なリンカー」とは、反応又は反応条件の結果、切断されうる1つ以上の切断可能な基を有するリンカーのことを指す。「切断可能な基」という用語は、コンジュゲートの残基と放出部分との間の結合を切断することによって、コンジュゲートの残基からコンジュゲートの一部(例えばリポーター分子、担体分子又は固体支持体)を放出させることができる基のことを指す。係る切断は化学的な切断であってもよいか、又は酵素的な切断であってもよい。酵素的に切断可能な、典型的な基としては、天然アミノ酸をその末端に有する天然アミノ酸又はペプチド配列が挙げられる。
酵素的に切断可能な基に加えて、酵素以外の物質による反応により切断される1つ以上の基も、本発明の範囲内に包含される。典型的な非酵素的な切断物質としては、限定されないが酸、塩基、光(例えばニトロベンジル誘導体、フェナシル基、ベンゾインエステル)及び熱が挙げられる。多くの切断可能な基が従来技術において公知である。例えば、Jungら、Biochem.Biophys.Acta,761:152−162(1983)、Joshiら、J.Biol.Chem.,265:14518−14525(1990)、Zarlingら、J.Immunol.,124:913−920(1980)、Bouizarら、Eur.J.Biochem.,155:141−147(1986)、Parkら、J.Biol.Chem.,261:205−210(1986)、Browningら、J.Immunol.,143:1859−1867(1989)を参照。更に、汎用性の切断可能な二官能性(ホモ−及びヘテロ二官能性)スペーサーアームが市販されている。
典型的な切断可能な基(エステル)は、化学物質(例えば水酸化ナトリウム)により切断されて、カルボン酸含有断片及びヒドロキシル含有生成物を生じさせることができる化合物のことを指す。
「タンパク質」及び「ポリペプチド」の用語は、一般的な意味において本明細書において用いられ、あらゆる長さのアミノ酸残基のポリマーが包含される。「ペプチド」という用語は、100未満のアミノ酸残基(典型的には10アミノ酸残基未満)を有するポリペプチドを指す用語として本明細書で用いられる。当該用語には、天然のアミノ酸ポリマーのみならず、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工的なアナログであるアミノ酸ポリマーも包含される。
本明細書で使用される「精製された」という用語は、糖タンパク質の調製物が、例えば血清タンパク質又は細胞ライゼートのような、タンパク質又は複合体が内因的に存在する細胞混合物又は環境において、通常糖タンパク質に関連して存在するコンタミタンパク質を実質的に含まないことを指す。
本明細書で使用される「反応基」という用語は、他の化学基と反応して共有結合を形成できる(すなわち適切な反応条件下で共有結合反応を生じさせる)基のことを指し、一般には、他の物質との結合部位を表す基のことを意味する。本発明では、反応基とは一般に生物学的な系に存在する部分であって、通常の生物学的条件下で反応する化学基のことを指し、本明細書においてこれらは、本発明のアジド及び活性化アルキン部分とは区別される。当該反応基は例えばカルボン酸又はスクシンイミジルエステル部分であり、異なる化合物に存在する官能基と反応して共有結合を形成することができる。反応基には一般に、求核試薬、求電子試薬及び光励起基が包含される。
「リポーター分子」という用語は、本発明の修飾された翻訳後修飾タンパク質に結合でき、直接又は間接的に検出できる任意の部分のことを指す。リポーター分子としては、クロモフォア、フルオロフォア、蛍光タンパク質、リン光色素、タンデム色素、粒子、ハプテン、酵素、及び放射性同位元素などが挙げられるが、これらに限定されない。好適なリポーター分子としては、フルオロフォア、蛍光タンパク質、ハプテン及び酵素が挙げられる。
本明細書で使用される「サンプル」という用語は、目的の検体又は本発明の修飾された翻訳後修飾タンパク質を含有する、あらゆる材料のことを意味する。検体は、例えば本発明の化合物を検体とコンジュゲートさせることができる基などの反応基を含んでもよい。またサンプルには、希釈剤、バッファー、界面活性剤、並びに不純物、破片などの、通常標的と混合している物質が含まれていてもよい。例としては、尿、血清、血漿、全血液、唾液、涙液、脳脊髄液、乳首からの分泌液などが挙げられる。そのほか、液状材料(例えばバッファー、抽出液、溶媒など)中に溶解させた粘液、体組織、細胞などの固体状、ゲル状又はゾル状物質であってもよい。典型的には、サンプルは、生存細胞、内因性の宿主細胞タンパク質含む生体液、核酸ポリマー、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド及び緩衝溶液である。当該サンプルは、水溶液に存在してもよく、生存可能な細胞培養液であってもよいか、又はポリアクリルアミドゲル、ブロット膜若しくはマイクロアレイなどの固体若しくは半固体表面に固定化してもよい。
本明細書で用いられる「固体支持体」という用語は、選択された溶媒系において実質的に不溶であるか、又は、それを溶解させる所定の溶媒系から通常隔離されうる(例えば沈殿されている)材料のことを指す。固体支持体という用語には、半固体支持体が包含される。本発明の実施に有用な固体支持体は、所定の分子種を固体支持体に結合させるために活性化されているか若しくは活性化することができる基を有してもよい。固体支持体は様々な形態(チップ、ウエハ又はウェルなど)で存在してもよく、本発明の個々の又は複数の化合物が、例えばポリマービーズ又は粒子に結合されてもよい。
本明細書で用いられる用語「シュタウディンガー結合反応」とは、Saxon及びBertozziにより開発された化学的反応(E.Saxon及びC.Bertozzi,Science,2000,287:2007−2010)であって、古典的なシュタウディンガー反応の変形反応のことを指す。古典的なシュタウディンガー反応は、ホスフィン又は亜リン酸エステルとアジドの組合せによりアザ−イリド中間体を生じさせる化学的反応であり、それは加水分解時にホスフィンオキシド及びアミンを生じさせる。シュタウディンガー反応はアジドをアミンに還元する穏やかな方法であり、トリフェニルホスフィンが還元剤として通常用いられる。シュタウディンガー連結反応においては、求電子性のトラップ(通常メチルエステル)をトリアリールホスフィンに適切に配置し(通常リン原子に対してオルト)、アジドと反応させ、アザ−イリド中間体を調製し、更にそれを水性溶媒中で調製して、アミド基及びホスフィンオキシド官能基を有する化合物を得る。シュタウディンガー連結反応は、2つの開始分子が結合(接触/共有結合)するために係る名称を有するが、古典的なシュタウディンガー反応では、2つの生成物は加水分解の後に共有結合しない。
本明細書において使用される、「[生体分子]の構造の統一性が損なわれていない」又は「[生体分子]の構造の統一性が維持されている」という用語は、1)ゲル電気泳動及び検出(例えば染色)により分析したとき、標識された生体分子に由来するバンド又はスポットの強度が20%以上、好ましくは10%以上減少していないこと(分析対象の標識された生体分子に由来する、同じ量の電気泳動された非標識の生体分子由来の対応するバンド又はスポットと比較した場合)、又は、2)ゲル電気泳動で分析したとき、標識された生体分子に由来するバンド又はスポットが、同一量の電気泳動された非標識の生体分子由来の対応するバンド又はスポットより顕著に不明瞭であることを指す。ここで「顕著に不明瞭である」(「顕著に拡散されている」と同義)とは、検出可能なバンド又はスポットが、対応する非標識の生体分子より、少なくとも5%超、好ましくは10%超、更に好ましくは20%超の面積でゲル中に現れていることを意味する。標識された生体分子の構造統一性に関する他の再現性ある試験方法としては、放出されるアミノ酸又はペプチドの検出又は質量分析が挙げられるが、これらに限定されない。
細胞中で「合成される」抗体とは、前記細胞中で天然に産生されかつ単離されるか、又は、前記細胞中で組換え手法により合成させ、更に単離した抗体のことを意味する。
本明細書で用いられる「約」という用語は、それに続くパラメータ値の10%以内(すなわち±10%)、5%以内(すなわち±5%)、2.5%以内(すなわち±2.5%)、又は1%以内(すなわち±1%)の数値を包含させる際に用いる用語であり、場合によっては変動幅を有さないパラメータであることもある。すなわち、「約20のヌクレオチド長」の長さとは、19又は21ヌクレオチド長(すなわち5%の変動幅)である場合もあり、又は幾つかの実施形態では20ヌクレオチド長(すなわち変動幅なし)である場合もある。本発明では、「1つの」という用語を用いる場合には、それに続く要素が1つ以上含まれていてもよい(例えばタンパク質マイクロアレイでは、1つのタンパク質は、1つのタンパク質配列又は複数のタンパク質を含みうる)。「又は」という用語は、それが指す1つのもの又は用語に限定されない。例えば、構造「A又はB」というときは、A単独、B単独、又はA及びBの両方を意味しうる。
通常、本発明の理解を容易にするため、アジド部分、アルキン部分又はホスフィン及びアジド反応性の部分による生体分子の代謝的及び酵素的標識、並びに、反応性アルキン部分又はホスフィン反応性部分による、係る部分の化学標識を最初に詳述する。その後に、係る標識生体分子が検出、分離及び/又は分析できることを示す若干の実施例を記載する。以下に例示的な方法を示す。
本発明の方法:
抗体及び抗体産生細胞の調製:
本発明のオリゴ糖の切断及び置換に用いられる抗体は、当業者に公知のあらゆる手段を使用して調製することが可能である。抗体産生及び標識のための手順に関する一般的な情報は、例えば、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Chap.14(1988)に記載されている。インビボでの代謝的標識用の抗体を発現する細胞株は、当業者に公知のあらゆる手段を使用して調製できる。治療用途で、患者に頻繁に投与する場合には、キメラ抗体、ヒト化抗体、及び完全なヒト抗体が好適である。キメラ及びヒト化モノクローナル抗体(ヒト由来及び非ヒト由来の部分を含む)は、標準的な組換えDNA技術を使用して作製することが可能である。係るキメラ及びヒト化モノクローナル抗体は公知技術の組換えDNA技術によって調製することが可能であり、例えば以下の文献に記載されている方法を使用して行ってもよい:Robinsonら、PCT/US86/02269号、Akira,ら、欧州特許出願公開第184,187号、Taniguchi,M.,欧州特許出願公開第171,496号、Morrisonら、欧州特許出願公開第173,494号、Ncubcrgcrら、国際公開第86/01533号、Cabillyら、米国特許第4,816,567号、Cabillyら、欧州特許出願公開第125,023号、Betterら、Science 240:1041−1043(1988)、Liuら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439−3443(1987)、Liuら、J.Immunol 139:3521−3526(1987)、Sunら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214−218(1987)、Nishimuraら、Canc.Res.47:999−1005(1987)、Woodら、Nature 314:446−449(1985)、及びShawら、J.Natl.Cancer Inst.80:1553−1559(1988)、Morrison,S.L.,Science 229:1202−1207(1985)、Oiら、BioTechniques 4:214(1986)、Winter米国特許第5,225,539号、Jonesら、Nature 321 :552−525(1986)、Verhoeyanら、Science 239:1534、及びBeidlerら、J.Immunol.141:4053−4060(1988)。
内因性の免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子を発現できないが、ヒトの重鎖及び軽鎖遺伝子を発現できるトランスジェニックマウスを、本発明に係るヒト抗体の調製に利用できる。(Lonberg及びHuszar,Int.Rev.Immunol.13:65−93(1995)、並びに米国特許第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,569,825号、同第5,661,016号、及び同第5,545,806号を参照)。更に、Invitrogen(カールズバッド、カリフォルニア)、Abgenix、Inc.(フリーモント、カリフォルニア)及びMedarex社(プリンストン、N.J.)などの企業が、上記と同様の技術を使用して特定の抗原と反応するヒト抗体を受託生産している。選択されたエピトープを認識するヒト抗体はまた、「ガイドセレクション」と呼ばれる技術を使用して調製できる。この方法においては、選択された非ヒトモノクローナル抗体(例えばマウス抗体)を用いて、同じエピトープを認識する完全ヒト抗体をガイドセレクションする。この技術は、例えばJespersら、Bio/Technology 12:899−903(1994).に記載されている。
糖タンパク質:
本発明の糖タンパク質成分は、いかなる糖タンパク質であってもよく、例えばホルモン、酵素、抗体、ウイルス受容体、ウイルス表層糖タンパク質、寄生体糖タンパク質、寄生体受容体、T細胞受容体、MHC分子、免疫調節因子、腫瘍抗原、ムチン、阻害剤、成長因子、栄養因子、リンホカイン、サイトカイン、トキソイド、神経成長ホルモン、血液凝固因子、接着分子、多剤耐性タンパク質、アデニル酸シクラーゼ、骨形成タンパク質及びレクチンなどが挙げられる。
また、糖タンパク質にはホルモン及びサイトカインが包含される。ホルモンの例としては、濾胞刺激ホルモン、ヒト柔毛膜性ゴナドトロピン、黄体形成ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、並びにこれらのホルモンのヒツジ、ウシ、ブタ、マウス及びラットの同等物が挙げられる。サイトカイン糖タンパク質の例としては、α−インターフェロン、リンホトキシン及びインターロイキン−2が挙げられる。更に、糖タンパク質の腫瘍関連抗原(例えば胎児性癌抗原(CEA)、ヒトのムチン、her−2/neu及び前立腺特異抗原(PSA)[R.A.Henderson and O.J.Finn,Advances in Immunology,62,pp.217−56(1996)])も包含される。
あるいは、糖タンパク質成分は、パーソナルケア糖タンパク質から選択されてもよく、美顔用糖タンパク質、獣医学用糖タンパク質、食品用糖タンパク質、飼料用糖タンパク質、診断用糖タンパク質、化学反応に使用する糖タンパク質、産業用糖タンパク質、洗浄剤用糖タンパク質(界面活性剤糖タンパク質及びコンタミ除去用糖タンパク質を含む)などが挙げられる。係る糖タンパク質の中には、酵素(例えばヒドロラーゼ、トランスフェラーゼ、イソメラーゼ、リアーゼ、リガーゼ、トランスフェラーゼ及びオキシドレダクターゼ)が包含される。ヒドロラーゼの例としては、リパーゼ、コリンエステラーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、β−アミラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、グルコアミラーゼA及びB、α−ガラクトシダーゼI及びII、β−フルクトフラノシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、N−アセチル−β−グルコサミニダーゼ、ヒアルロニダーゼ、オキシトシナーゼ、カリクレイン、ブロメライン、エンテロキナーゼ、プロテイナーゼa、b及びc、ペプシノーゲン及びペプシンなどが挙げられる。オキシドレダクターゼの例としては、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ及びクロロペルオキシダーゼが挙げられる。トランスフェラーゼの例としては、γ−グルタミルトランスペプチダーゼ及びリボヌクレアーゼが挙げられる。
本発明用に包含される更なる糖タンパク質としては、架橋糖タンパク質(例えば米国特許第6,359,118号に記載、その内容を援用する)が挙げられる。
IgGオリゴ糖のインビトロ修飾
オリゴ糖は、N−アセチルグルコサミン二糖結合(GlcNac−GlcNac)によって、免疫グロブリンガンマ(IgG)抗体上のアスパラギン残基に結合する。一般に、各IgGは、IgGのネック部の付近に、オリゴ糖がGlcNac−GlcNac結合するための2つの部位を有する。エンドグリコシダーゼ処理(例えばエンドグリコシダーゼH(エンドH))により、2つのGlcNac糖の間が切断される。各糖の切断末端は「還元端」と呼ばれる。オリゴ糖を第1のIgGから切断し、切断されたオリゴ糖を回収することにより、還元端GlcNAcを有するオリゴ糖が得られる。次に、第2のIgGをエンドグリコシダーゼ(例えばエンドH)で処理する。次に、この第2のIgG(還元端を有するGlcNAcを有する)を回収する。次に第1のオリゴ糖に結合しているGlcNAc残基の還元端、及び第2のIgGに結合しているGlcNAc残基オリゴ糖の還元端を処理し、第1のオリゴ糖を第2のIgGに結合させる。
第1のオリゴ糖を結合させる1つの方法としては、例えば、アルキンに第1のオリゴ糖を化学的にコンジュゲートする方法が挙げられる。例えば、還元端を重炭酸アンモニウムで処理してアミンに変化させ、アルキンを、スクシンイミジルエステルを介して結合させることができる。次にアジド修飾糖を、UDP−GalNAzなどの第2のIgG上のGlcNAc残基の還元端に結合させる。この転移反応は、例えば変異ガラクトシルトランスフェラーゼを使用して実施できる。次にアジド標識IgGをアルキン標識オリゴ糖と混合する。アルキン及びアジド部分を環付加反応に供し、それにより、第1のIgG由来のオリゴ糖と、第2のIgG上のオリゴ糖が連結する。
IgGからのオリゴ糖除去
オリゴ糖は、抗体のFc部分上のアスパラギン残基を介してIgGに結合する(図1B)。アミノ酸の位置において、2つのGlcNAc糖は各々β(1−4)結合している。酵素エンド−Hはこの結合を切断し、その結果、1つのGlcNAc残基がIgG上のアスパラギンに結合したままとなり、一方で、もう1つのGlcNacは残りのオリゴ糖に結合したままとなる。オリゴ糖に結合するGlcNAcは反応性の還元端を有し、それは他の糖残基を変質させることなく、選択的に修飾されうる。
IgG GlcNAcへのアジドの結合
酵素ガラクトシルトランスフェラーゼは通常、UDP−ガラクトースから末端GlcNAc残基へガラクトースを転移させる。Khidekelら(J.Am.Chem.Soc.2003,125:16162−16163、Hsieh−Wilson,L.,ら、米国特許出願公開第20050130235,2005年6月16日公開、米国特許出願第10/990,767号)では、変異酵素(Y289L変異体)を用いてアセトン含有ガラクトース基質をGlcNAc残基へ転移させている。アジド含有ガラクトース基質(UDP−GalNAz)は、変異体ガラクトシルトランスフェラーゼによるGlcNAc部位への転移により合成できる。
切断されたオリゴ糖還元端へのアルキンの結合
糖の還元端は、選択的に修飾されうる反応部位である。幾つかの糖(例えばスクロース)は還元端を有さず、遊離還元端を有する糖よりも安定性が高い。酵素エンド−HによるGlcNAc−GlcNAc結合の切断により、オリゴ糖GlcNAcの還元端が露出する。
Tamuraらの方法(Analytical Biochem.1994,216:335−344)を用い、N結合型オリゴ糖の還元端を重炭酸アンモニウムと反応させてアミンに変化させ、それによりオリゴ糖−グリコシルアミンを得る。この反応は当業者に公知の方法を使用して実施でき、例えば、10mlのスクリュー付きガラスバイアルを使用して、約1gの重炭酸アンモニウム/約0.5mlの水の存在下で、約10μmolのオリゴ糖を混合し、約50℃で約24時間混合物をインキュベートすることにより実施できる。得られるオリゴ糖−グリコシルアミンを、例えばアシル化剤と反応させてフルオロフォアと結合させてもよいか、又は、N−グリシルリンカーと結合させてもよく、それにより、他の生物学的若しくは生物物理学的なプローブを受容させることが可能となる。
例えば、Boc保護されたチロシンスクシニミジルエステルを用いて、チロシンをアミンに結合させることができる。Boc保護は、チロシンスクシンイミジルエステルの重合を回避させるために行われる。それによりアルキン−スクシンイミジルエステルが得られ、コンジュゲート反応に使用できる。チロシン残基に結合させる場合、A280nmでオリゴ糖を定量してもよい。
[3+2]環付加反応を使用した糖タンパク質の標識:
アジド及び末端のアルキンは、銅触媒の存在下で、環付加反応を受ける。この環付加反応は、例えばSharplessらの方法を使用して実施でき(米国特許出願公開第20050222427号(2005年10月6日公開、PCT/US03/17311号、Lewis W Gら、Angewandte Chemie−Int’l Ed.41(6):1053、method reviewed in Kolb,H.C.,ら、Angew.Chem.Inst.Ed.2001,40:2004−2021)、その反応により、高収率で、かつヘテロ原子結合(炭素−炭素結合ではない)の副反応を生じさせることなく反応するように試薬を変化させ、化学物質のライブラリを調製することが可能となる。金属触媒及び還元剤の存在下で反応を実施する。例えば、Cu(II)を反応系に含有させ、還元剤(例えばアスコルビン酸、金属銅、キノン、ヒドロキノン、ビタミンK、グルタチオン、システイン、Fe2+、Co2+)の存在下で、電位を印加してもよい。更に好適な還元剤としては、Al、Be、Co、Cr、Fe、Mg、Mn、Ni及びZnからなる群から選択される金属が挙げられる。係る環付加反応を触媒できる他の金属としては、例えばAu、Ag、Hg、Cd、Zr、Ru、Fe、Co、Pt、Pd、Ni、Rh及びWが挙げられる。当業者は、目的のリガンドの使用に応じて適切な金属を決定することができる。
エンドM又はエンドAを使用したIgGのインビトロ修飾
エンドM(又はエンドA)は、グリコシルトランスフェラーゼ活性を有するエンドグリコシダーゼである。エンドHと同様に、当該酵素は2つの残基間の二糖類GlcNAc−GlcNAcを切断する。エンドMは更なる酵素活性を有し、すなわち、当該酵素は、GlcNAc残基を有するオリゴ糖を切断した後で、GlcNAc残基の還元端をOH基に結合させる。すなわち、本発明の他の方法は、切断されたオリゴ糖へのアルキンのインビトロ標識方法の提供に関する。1つの実施形態では、GlcNAc−GlcNAc結合を有するオリゴ糖を有するIgGを、OH−アルキンと共に、エンドMの存在下でインキュベートする。
本発明の一態様は、少なくとも1つの単糖又はオリゴ糖を含む糖修飾抗体の調製方法の提供に関する。当該方法は、抗体と、エンド−M又はエンド−Aと、単糖又はオリゴ糖を有するドナーを接触させ、接触溶液を調製する工程であって、当該抗体がアクセプターを有する工程と、当該接触溶液を充分な時間インキュベートし、アクセプターと単糖又はオリゴ糖との間に共有結合を形成させる工程と、糖修飾抗体を得る工程を含む。
更なる実施形態では、当該抗体は非ヒト由来である。より具体的には、当該抗体はマウス細胞、植物細胞、ヤギ細胞、ウサギ細胞、酵母又はCHO細胞由来である。他の実施形態では、当該糖修飾抗体はヒト化されている。
他の実施形態では、当該アクセプターはN−アセチルグルコサミン(以下GlcNAc)である。他の実施形態では、当該抗体はエンド−Mと接触する。他の実施形態では、当該抗体はエンド−Aと接触する。他の実施形態では、当該ドナーは:Asn−GlcNAc−X(Xはオリゴ糖又は単糖)の配列を有する。より具体的には、Xは、−GlcNAc−(オリゴ糖又は単糖)である。
他の実施形態では、単糖又はオリゴ糖にアルキニル又はアジド官能基が存在する。他の実施形態では、単糖又はオリゴ糖に化学ハンドルが存在する。
他の実施形態では、単糖又はオリゴ糖に、リポーター分子が存在する。より具体的には、当該リポーター分子は、蛍光色素、酵素、放射標識、金属キレーター又は検出可能な基質である。
他の実施形態では、当該単糖又はオリゴ糖は、担体分子、固体支持体、受容体、リガンド、ペプチド、タンパク質、核酸ポリマー、多糖、抗原、又はハプテンを含有する。
他の実施形態では、当該調製工程中に糖修飾抗体を精製する工程が含まれる。より具体的には、精製の後、糖修飾抗体を、賦形剤、希釈剤又は薬理学的に許容できる塩と混合する。より具体的には、糖修飾抗体は、賦形剤、希釈剤又は薬理学的に許容できる塩と混合した後に患者に投与される。
他の実施形態では、糖修飾抗体は治療用抗体である。より詳細には、当該治療用抗体は、トラスツズマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、アレムツズマブ、ゲムツズマブ、イブリツモマブ、リツキシマブ、及びパニツムマブからなる群から選択される。
他の実施形態では、当該単糖又はオリゴ糖の存在により、糖修飾抗体の血清半減期に影響が及ぶか、特定の細胞若しくは組織が糖修飾抗体の目標となるか、又は糖修飾抗体の安定性に影響が及ぶ。
他の実施形態では、接触工程は水溶液において実施される。他の実施形態では、接触工程は有機溶液において実施される。他の実施形態では、接触工程はプロトン性溶液において実施される。他の実施形態では、接触工程は極性溶液において実施される。他の実施形態では、接触工程はケトン又はフランではない溶媒において実施される。
他の実施形態では、糖修飾抗体は少なくとも1つのオリゴ糖を含む。
他の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。他の実施形態では、抗体はポリクローナル抗体である。
本発明の別の態様は、単糖又はオリゴ糖を抗体に共有結合させる方法の提供に関する。当該方法は、
抗体と、エンド−M又はエンド−Aと、単糖又はオリゴ糖を有するドナーを接触させ、接触溶液を調製する工程であって、当該抗体がアクセプターを有する工程と、
当該接触溶液を充分な時間インキュベートし、アクセプターと単糖又はオリゴ糖との間に共有結合を形成させる工程を含む。
本発明の別の態様は治療用抗体をヒト化する方法の提供に関する。当該方法は、
当該治療用抗体と、エンド−M又はエンド−Aと、単糖又はオリゴ糖を有するドナーを接触させ、接触溶液を調製する工程であって、当該抗体がアクセプターを有する工程と、
当該接触溶液を充分な時間インキュベートし、アクセプターと単糖又はオリゴ糖との間に共有結合を形成させる工程と、ヒト化治療用抗体を得る工程を含む。
他の実施形態では、当該治療用抗体はモノクローナル抗体である。
他の実施形態では、当該治療用抗体は、トラスツズマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、アレムツズマブ、ゲムツズマブ、イブリツモマブ、リツキシマブ及びパニツムマブからなる群から選択される。
本発明の別の態様は、検出可能な糖修飾抗体の調製用キットの提供に関する。当該キットは、
(a)エンド−M又はエンド−Aと、
(b)オリゴ糖又は単糖を含むドナーと、
(c)検出可能な糖修飾抗体を調製するための取扱説明書を含む。
他の実施形態では、オリゴ糖又は単糖は、レポーター基、アジド基又はアルキニル基を含む。
他の実施形態では、当該リポーター分子は、蛍光色素、酵素、放射標識、金属キレーター、又は検出可能な基質である。
本発明の別の態様は、以下を含む組成物の提供に関する。
(a)アクセプターを含有する抗体と、
(b)エンド−M又はエンド−Aと、
(c)オリゴ糖又は単糖を含むドナーと、
(d)溶媒。
抗体産生細胞中における抗体の代謝的標識
インビボでの代謝的標識方法を用いて、抗体産生細胞(例えばハイブリドーマ細胞、及び抗体又は組換え抗体を産生する他の細胞)中で抗体を標識することができる。抗体産生細胞は、非天然の糖基質(例えば反応性化合物/親和性ハンドルを有する非天然の糖基質)を取り込むことができる。化学ハンドルとしては、限定されないが、例えばアジド、トリアリールホスフィン、又はアルキン残基であって、例えば「click」タイプの化学反応に関与できる基が挙げられる。具体的な実施形態では、当該非天然の糖は、細胞への取り込み効率上十分小さい修飾を有するのが好ましい。細胞内の代謝機構により、抗体に結合しているN結合型グリカン又はO結合型グリカンに当該基質が組み込まれる。インビボで標識された抗体が細胞から放出され分離された後、当該標識抗体を、化学ハンドルとの反応性を有する検出/親和性/固定化化合物を使用して直接標識してもよい。これらの化合物としては例えば、限定されないが、フルオロフォア、固体支持体樹脂、マイクロアレイスライド、又は親和性タグなどが挙げられる。
抗体の代謝的標識
抗体産生細胞を非天然の糖の存在下でインキュベートすることにより、細胞表面糖タンパク質を修飾することができる(例えば米国特許第6,936,701号(Bertozziら)の方法を用いて非天然の糖の存在下で細胞をインキュベートしてもよい)。例えば、細胞を約72時間、非天然の糖(約20mM)とインキュベートする。
非天然の糖基質の合成
反応性化学ハンドルを組み込むことができる非天然の糖基質を合成し、クリック化学反応に用いることができる。アジド/アルキン環付加反応を用いて、親和性プローブ(ビオチン)、色素、ポリマー(例えばポリ(エチレングリコール)若しくはポリデキストラン)、又は他の単糖(例えばグルコース、ガラクトース、フコース、O−GlcNAc、適切な化学ハンドルを有するマンノース由来の糖)を取り込ませることができる。具体的実施形態では、これらのハンドルとしては、例えばアジド、トリアリールホスフィン又はアルキン残基が挙げられる。化学ハンドルはまた、シュタウディンガー反応し得るアジド基であってもよい(Saxon,E.,ら、J.Am.Chem.Soc.,2002,124(50):14893−14902参照)。シュタウディンガー反応は三価のリン化合物と有機アジドとの間の反応を含み(Staudingerら、Hclv.Chim.Acta 1919,2:635)、多くの用途に用いられている(Gololobovら、Tetrahedron 1980,37,437)、(Gololobovら、Tetrahedron 1992,48,1353)。ホスフィンは、隣接アシル基(例えばエステル、チオエステル、又はN−アシルイミダゾール)を有してもよく(すなわちホスフィノエーテル、ホスフィノチオエーテル、ホスフィノイミダゾール)、それによりアザ−イリド中間体をトラップし、加水分解時に安定なアミド結合を形成する。ホスフィンは、典型的にはホスフィンを安定化させる意味でジアリールホスフィン又はトリアリールホスフィンであってもよい。
例えば、本発明でインビボで取り込ませることができる非天然の糖基質としては、限定されないがGalNAz、ManNaz及びGlcNAzが挙げられる。非天然の糖基質としては、例えば小型の糖基を含む糖基質が挙げられ、それにより、細胞機構により取り込まれ、また異物として認識されにくくなる。
切断オリゴ糖の標識及びインビボでのIgG標識
様々な標識又はタグ(リポーター分子、固体支持体及び担体分子)を、本発明のインビトロ切断オリゴ糖に連結若しくはコンジュゲートさせ、更にそれを本発明に係る切断されたIgGに結合させてもよい。これらの標識又はタグを、代謝的標識の後、細胞から単離したインビボ糖修飾IgGに結合させて標識若しくはタグ付与してもよく、当該標識又はタグは、代謝的標識の間に組み込まれた非天然の糖上の化学/親和性ハンドルと結合させてもよい。
標識又はタグは例えば、治療的部分(例えばサイトトキシン、治療薬又は放射性金属イオン)であってもよい。サイトトキシン又はサイトトキシン剤は、細胞に有害であるいかなる薬剤であってもよい。例えばタキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポサイド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、並びにそれらのアナログ又はホモログなどが挙げられる。治療薬としては、代謝拮抗物質(例えばメトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(メクロレタミン、チオテパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BCNU)及びロムスチン(CCNU)、環状リン酸アミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストルクプトゾトシン(strcptozotocin)、マイトマイシンC及びシス−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン類(例えばダウノルビシン(以前のダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン及びアントラマイシン(AMC))、並びに有糸分裂阻害剤(例えばビンクリスチン及びビンブラスチン)が挙げられるが、これらに限定されない。
抗体コンジュゲートを用いて、所与の生物学的反応を調節してもよい。例えば薬剤部分として、所望の生物的活性を有するDNA又はタンパク質又はポリペプチドを付与してもよい。係るタンパク質としては、例えば毒素(例えばアブリン、ヒマ毒A、シュードモナス外毒素又はジフテリア毒素)、ポリペプチド(例えば腫瘍壊死因子、γ−インターフェロン、α−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノーゲンアクチベータ)、又は、生物学的反応の調節物質(例えばリンホカイン、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−6(「IL−6」)顆粒球マクロファージコロニー形成刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)又は他の成長因子)などが挙げられる。また、例えばSegalによる米国特許第4,676,980号に記載のように、抗体を第2の抗体とコンジュゲートし、抗体ヘテロコンジュゲートを調製してもよい。
標識又はタグはまた、例えば、診断又は研究用の検出可能な標識であってもよいか、又は他の生体分子若しくは試薬と抗体を結合(例えばビオチン/アビジン結合又はマイクロアレイチップ、ビーズ、若しくはプレートと抗体の結合)させるタグであってもよい。係る標識又はタグの例としては、蛍光色素(例えばフルオレセイン(FITC)、オレゴングリーン488色素、マリーナブルー色素、パシフィックブルー色素)、及びテキサスレッド−X色素、Alexa Fluor色素(Invitrogen社、カールズバッド、CA))、放射性同位元素含有化合物、光散乱化合物(例えば金又は銀を含有)、色素、光発生化合物(例えばルシフェラーゼ)、ハプテン(例えばビオチン、デスチオビオチン、DSB−Xビオチン及びジニトロフェノール(DNP))、酵素(例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリ性ホスファターゼ及び[β]−ラクタマーゼ)、フィコビリンタンパク質(例えばR−フィコエリトリン(R−PE)、アロフィコシアニン(AP))、並びに粒子(例えばQdots、金、磁性流体、デキストラン及びミクロ球体)などが挙げられるが、これらに限定されない。
リポーター分子:
本発明のリポーター分子は、本発明の修飾された糖タンパク質に結合できる、当業者に公知のいかなる直接又は間接的に検出可能なリポーター分子であってもよい。当該リポーター分子としては、クロモフォア、フルオロフォア、蛍光タンパク質、リン光色素、タンデム色素、粒子、ハプテン、酵素、及び放射性同位元素が挙げられるが、これらに限定されない。好適なリポーター分子としては、フルオロフォア、蛍光タンパク質、ハプテン、及び酵素が挙げられる。
本発明のフルオロフォアは280nm超の吸収極大を示し、標識試薬に共有結合したときにもその分光特性が維持されるいかなる化学基であってもよい。本発明のフルオロフォアとしては、限定されないが、以下のものが挙げられる:ピレン(米国特許5,132,432号において開示される対応する全ての派生化合物も含まれる)、アントラセン、ナフタレン、アクリジン、スチルベン、インドール又はベンズインドール、オキサゾール又はベンゾキサゾール、チアゾール又はベンゾチアゾール、4−アミノ−7−ニトロベンズ−2−オキサ−1、3−ジアゾール(NBD)、シアニン(米国特許出願第09/968,401号及び同第09/969,853号に記載の、全ての対応する化合物も含まれる)、カルボシアニン(米国特許出願第09/557,275号、同第09/969,853号及び同第09/968,401号、米国特許第4,981,977号、同第5,268,486号、同第5,569,587号、同第5,569,766号、同第5,486,616号、同第5,627,027号、同第5,808,044号、同第5,877,310号、同第6,002,003号、同第6,004,536号、同第6,008,373号、同第6,043,025号、同第6,127,134号、同第6,130,094号、同第6,133,445号、並びにWO02/26891、WO97/40104、WO99/51702、WO01/21624、EP1065250A1)、カルボスチリル、ポルフィリン、サリチル酸、アントラニラート、アズレン、ペリレン、ピリジン、キノリン、ボラポリアザインダセン(米国特許第4,774,339号、同第5,187,288号、同第5,248,782号、同第5,274,113号、及び同第5,433,896号において開示されるいかなる対応する化合物も含む)、キサンテン(米国特許第6,162,931号、同第6,130,101号、同第6,229,055号、同第6,339,392号、同第5,451,343号、及び米国特許出願第09/922,333号において開示される全ての対応する化合物も含む)、オキサジン(米国特許第4,714,763号において開示される全ての対応する化合物も含む)又はベンゾキサジン、カルバジン(米国特許第4,810,636号において開示される全ての対応する化合物も含む)、フェナレノン、クマリン(米国特許第5,696,157号、同第5,459,276号、同第5,501,980号、及び同第5,830,912号において開示される対応する化合物も含む)、ベンゾフラン(米国特許第4,603,209号及び同第4,849,362号において開示される対応する化合物も含む)、ベンズフェナレノン(米国特許第4,812,409号において開示されるいかなる対応する化合物も含む)、並びにその誘導体。本発明では、オキサジンにはレゾルフィン(米国特許第5,242,805において開示される全ての対応する化合物も含む)、アミノオキサジノン、ジアミノオキサジン及びそれらのベンゾ置換アナログが包含される。
フルオロフォアがキサンテンである場合、当該フルオロフォアは任意に、フルオレセイン、ロードール(rhodol)(米国特許第5,227,487号及び同第5,442,045号において開示される全ての対応する化合物も含む)又はローダミン(米国特許第5,798,276号、同第5,846,737号、米国特許出願公開第09/129,015号において開示される全ての対応する化合物も含む)であってもよい。本発明では、フルオレセインは、ベンゾフルオレセイン又はジベンゾフルオレセイン、セミナフトフルオレセイン又はナフトフルオレセインであってもよい。同様に、本発明では、ロードールはセミナフトローダフルオール(米国特許第4,945,171号において開示される全ての対応する化合物も含む)であってもよい。あるいは、フルオロフォアは、キサンテンの9位に存在する単一の共有結合を介して結合を有しているキサンテンであってもよい。好適なキサンテンとしては、9位で結合を有する3H−キサンテン−6−オール−3−オンの誘導体、9位で結合を有する6−アミノ−3H−キサンテン−3−オンの誘導体、又は9位で結合を有する6−アミノ−3H−キサンテン−3−イミンの誘導体などが挙げられる。
本発明の好適なフルオロフォアとしては、キサンテン(ロードール、ローダミン、フルオレセイン及びその誘導体)、クマリン、シアニン、ピレン、オキサジン、及びボラポリアザインダセンが挙げられる。スルホン化キサンテン、フッ化キサンテン、スルホン化クマリン、フッ化クマリン、及びスルホン化シアニンが最適である。標識試薬に結合させるフルオロフォアの選択により、標識試薬及び免疫標識複合体の吸収スペクトル及び蛍光放出特性が決定される。フルオロフォア標識の物理的性質としては、スペクトル特性(吸収、放出及びストークシフト)、蛍光強度、持続時間、極性、及び光退色速度が挙げられ、それらの全てを用いて、フルオロフォアを相互に区別することができる。
典型的には、当該フルオロフォアは1つ以上の芳香族又は芳香族複素環を有し、種々の置換基(限定されないが、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アルキル、パーフルオロアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールアルキル、アシル、アリール又はヘテロアリール環構造、ベンゾ又は公知のフルオロフォアに典型的に存在する他の置換基など)の1つ以上で任意に置換されてもよい。
本発明の一態様では、フルオロフォアは480nm超の吸収極大を有する。特に有用な実施形態では、当該フルオロフォアは、488nm〜514nm又はその付近(特にアルゴン−イオンレーザ励起源による励起に適する)、又は546nm付近(特に水銀アークランプによる励起に適する)の吸収スペクトルを有する。
多くのフルオロフォアはまた、クロモフォアとして機能することもでき、それにより、上記のフルオロフォアは本発明の好適なクロモフォアでもある。
フルオロフォアに加えて、酵素も、検出試薬のための標識として用いられる。酵素標識は、検出可能なシグナルを増幅して試験感度を向上させることができるため、望ましい標識である。酵素自体は、適当な基質と接触したとき、検出可能な反応を生じさせないが、基質を破壊する機能を有し、それにより変換された基質が蛍光若しくは比色定量若しくは発光シグナルを生じさせる。標識試薬上の1つの酵素が検出可能なシグナルに変化する複数の基質と結合できるため、酵素は検出可能なシグナルを増幅することができる。これはサンプルに存在する標的の量が少ない場合や、酵素と同様若しくはより強いシグナルを与えるフルオロフォアが存在しない場合に有利である。しかしながら、フルオロフォアは、追加的なアッセイ手順を必要とせず、それによりアッセイの実施に必要となる全体時間が少なくなるため、最も好ましい。好適な測定可能な生成物(例えば比色、蛍光又は化学発光)を生じさせる酵素基質を選択するのが好ましい。係る基質は広範囲に使用されており、それの多くは上記のMOLECULAR PROBES HANDBOOKに記載されている。
好適な比色若しくは蛍光を発生させる基質と酵素の組合せでは、オキシドレダクターゼ(例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ)と、基質(例えば3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)及び3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC)(特徴的な色(それぞれ褐色及び赤)を生じさせる)を用いる。検出可能な生成物を生じさせる他の比色用のオキシドレダクターゼ基質としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:2,2−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS)、o−フェニレンジアミン(OPD)、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)、o−ジアニシジン、5−アミノサリチル酸、4−クロロ−1−ナフトール。蛍光基質としては、限定されないが、ホモバニリン酸又は4−ハイドロキシ−3−メトキシフェニル酢酸、還元フェノキサジン及び還元ベンゾチアジン(Amplex(登録商標)Red試薬及びその誘導体(米国特許第4,384,042号)、Amplex UltraRcd及びその誘導体(WO05042504))、並びに還元ジヒドロキサンテン(ジヒドロフルオレセイン(米国特許第6,162,931号)を含む)、及びジヒドロローダミン(ジヒドロローダミン123を含む)などが挙げられる。チラミド(米国特許第5,196,306号、同第5,583,001号、及び同第5,731,158号)(ペルオキシダーゼ基質)はペルオキシダーゼ基質としてユニークである。すなわち、酵素活性の前には内因的に検出可能でありえるが、チラミドシグナル増幅(TSA)と言われるプロセスにおける過酸化酵素の作用によって「適所に固定」されるため、ユニークといえる。これらの基質を用いて細胞、組織、又はアレイなどのサンプルを標的にして標識し、次に顕微鏡、フローサイトメトリー、光学的スキャニング及び蛍光光度分析によりそれらを検出することが広範囲に行われる。
他の好適な比色(場合によっては蛍光)基質及び酵素の組合せにおいては、酸性ホスファターゼ、アルカリ性ホスファターゼ又は係るホスファターゼの組換え体などのホスファターゼ酵素と、比色基質(例えば5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリルホスフェート(BCIP)、6−クロロ−3−インドリルホスフェート、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリルホスフェート、p−ニトロフェニルホスフェート、若しくはo−ニトロフェニルホスフェート)との組合せ、又は、4−メチルウンベリフェリルホスフェート、6,8−ジフルオロ−7−ハイドロキシ−4−メチルクマリニルホスフェート(DiFMUP、米国特許第5,830,912号)、フルオレセイン二リン酸エステル、リン酸3−O−メチルフルオレセイン、リン酸レゾルフィン、9H−(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)ホスフェート(リン酸DDAO)若しくはELF97、ELF39、又は関連するホスフェート(米国特許第5,316,906号及び同第5,443,986号)などの蛍光基質との組合せを採用する。
グリコシダーゼ(特にβ−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ及びβ−グルコシダーゼ)は更なる適切な酵素である。適当な比色基質としては、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルβ−D−ガラクトピラノシド(X−gal)及び類似のインドリルガラクトシド、グルコシド及びグルクロニド、o−ニトロフェニルβ−D−ガラクトピラノシド(ONPG)及びp−ニトロフェニルβ−D−ガラクトピラノシドなどが挙げられるが、これらに限定されない。好適な蛍光基質としては、レゾルフィンβ−D−ガラクトピラノシド、フルオレセインジガラクトシド(FDG)、フルオレセインジグルクロニド及びそれらの構造異性体(米国特許第5,208,148号、同第5,242,805号、同第5,362,628号、同第5,576,424号、及び同第5,773,236号)、4−メチルウンベリフェリルβ−D−ガラクトピラノシド、カルボキシウンベリフェリルβ−D−ガラクトピラノシド及びフッ化クマリンβ−D−ガラクトピラノシド(米国特許第5,830,912号)などが挙げられる。
更なる酵素としては、限定されないが、適切な基質が公知であるコリンエステラーゼ及びペプチダーゼのようなヒドロラーゼ、グルコースオキシダーゼ及びシトクロムオキシダーゼのようなオキシダーゼ及びレダクターゼなどが挙げられる。
化学発光を生じさせる酵素及びそれらの適当な基質は、幾つかのアッセイにおいて好適である。例えば限定はされないが、天然型及び組換え型のルシフェラーゼ及びエクオリンが挙げられる。更に、安定なジオキセタン、ルミノール、イソルミノール及びアクリジニウムエステルを含有する、ホスファターゼ、グリコシダーゼ及びオキシダーゼ用の化学発光基質も有用である。
酵素に加え、ビオチンのようなハプテンも好適な標識である。ビオチンは、酵素系において、更に検出可能なシグナルを増幅する機能を有するために有用であり、またそれはタグとして機能できるため、親和性クロマトグラフィに使用することもできる。検出目的の場合、アビジン−HRPなどのビオチン親和的な酵素コンジュゲートを使用する。その後、ペルオキシダーゼ基質を添加して検出可能なシグナルを生じさせる。
また、ハプテンには、ホルモン、天然及び合成薬剤、汚染物質、アレルゲン、影響因子、成長因子、ケモカイン、サイトカイン、リンホカイン、アミノ酸、ペプチド、中間体、ヌクレオチドなどが包含される。
蛍光タンパク質はまた、本発明の標識試薬用の標識物質として使用できる。蛍光タンパク質の例としては、緑色蛍光タンパク質質(GFP)及びフィコビリンタンパク質及びその誘導体が挙げられる。蛍光タンパク質(特にフィコビリンタンパク質)は、特にタンデムな色素標識を有する標識試薬の調製において有用である。これらのタンデムな色素は蛍光タンパク質及びフルオロフォアを含み、それにより、放出スペクトラムが蛍光タンパク質の吸収スペクトラムの波長から大きく離れ、より大きいストークシフトを得ることができる。これは特に、サンプル中に低レベルで存在する標的物質を検出する場合に有利である(放射された蛍光が最大限に最適化されている、言い換えると放射された光がほとんど蛍光タンパク質によって再吸収されない)。これを機能させる場合、蛍光タンパク質及びフルオロフォアはエネルギー移動ペアとして機能(蛍光タンパク質が光を放射し、フルオロフォアがその光の波長を吸収する)し、更にフルオロフォアは蛍光タンパク質によってのみ得られる波長で、蛍光タンパク質から放射させる。特に有用な組合せとしては、米国特許第4,520,110号、同第4,859,582号、同第5,055,556号で開示されるフィコビリンタンパク質、及び米国特許第5,798,276号で開示されるスルホローダミンフルオロフォア、又は米国特許出願第09/968/401号及び同第09/969/853号で開示されるスルホン化シアニンフルオロフォア、又は米国特許第6,130,101号で開示されるスルホン化キサンテン誘導体、並びに米国特許第4,542,104で開示されるそれらの組合せなどが挙げられる。あるいは、フルオロフォアがエネルギードナーとして機能し、蛍光タンパク質はエネルギーアクセプターとして機能してもよい。
例示的な実施形態では、担体分子に共有結合によりコンジュゲートした糖タンパク質が提供される。これは、本明細書において開示されるいかなるアジド修飾糖タンパク質、及びいかなる担体分子も包含されるが、これらに限定されない。
一実施形態では、本発明の糖タンパク質、第1のリポーター分子及び担体分子を含む第1の組成物が提供される。他の実施形態では、第2のコンジュゲートとの組合せで第1の組成物を含有する第2の糖タンパク質が提供される。当該第2のコンジュゲートは、第2のリポーター分子と共有結合している担体分子又は固体支持体(下記)を含む。第1及び第2のリポーター分子は異なる構造を有し、好ましくは異なる発光スペクトルを有する。更に好ましくは、それらの蛍光放出が基本的に重複しないように第1及び第2のリポーター分子を選択する。別の実施形態では、リポーター分子は異なる励起スペクトラムを有するか、あるいは当該リポーター分子は同じレーザーにより励起する。
担体分子:
第2の組成物中のコンジュゲートの担体分子(又は固体支持体)は、同じ又は異なる分子であってもよい。様々な担体分子の特性に関連する本明細書における考察は、通常、他の実施形態と同様に本発明の本実施形態にも適用できる。
本発明において、種々の担体分子を利用することができる。典型的な担体分子としては、抗原、ステロイド、ビタミン、薬剤、ハプテン、代謝産物、毒、環境汚染物質、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、核酸、核酸ポリマー、炭水化物、脂質、及びポリマーが挙げられる。
ある具体的実施形態では、担体分子は、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、多糖、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸、ハプテン、ソラレン、薬剤、ホルモン、脂質、脂質アセンブリ、合成ポリマー、ポリマー性の微粒子、生物細胞、ウイルス及びそれらの組み合わせを含む。他の例示的実施形態では、担体分子は、ハプテン、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸ポリマー、タンパク質、ペプチド又は多糖から選択される。好ましい実施形態では、担体分子は、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、多糖、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸、ハプテン、ソラレン、薬剤、ホルモン、脂質、脂質結合体、チラミン、合成ポリマー、ポリマー性微粒子、生物細胞、細胞成分、イオンキレート化部分、酵素基質、又はウイルスである。他の好ましい担体分子の例としては、抗体又はその断片、抗原、アビジン又はストレプトアビジン、ビオチン、デキストラン、IgG結合タンパク質、蛍光タンパク質、アガロース及び非生物微粒子などが挙げられる。
具体的実施形態では、酵素基質は、アミノ酸、ペプチド、糖、アルコール、アルカノン酸、4−グアニジノ安息香酸、核酸、脂質、スルフェート、ホスフェート、−CHOCOアルキル基及びそれらの組み合わせから選択される。すなわち、酵素基質は、ペプチダーゼ、ホスファターゼ、グリコシダーゼ、デアルキラーゼ、エステラーゼ、グアニジノベンゾターゼ、スルファターゼ、リパーゼ、ペルオキシダーゼ、ヒストンデアセチラーゼ、エンドグリコセラミダーゼ、エキソヌクレアーゼ、レダクターゼ及びエンドヌクレアーゼからなる群から選択される酵素によって切断される。
他の例示的実施形態では、当該担体分子は、アミノ酸(ホスフェート、炭水化物又はC〜C22カルボン酸により保護若しくは置換されているものを含む)又はアミノ酸のポリマー(例えばペプチド又はタンパク質)である。関連する実施形態では、当該担体分子は少なくとも5つのアミノ酸(好ましくは、5〜36のアミノ酸)を含む。典型的なペプチドとしては、限定されないが神経ペプチド、サイトカイン、毒素、プロテアーゼ基質及びプロテインキナーゼ基質が挙げられる。他の典型的なペプチドは、オルガネラ局在ペプチド(すなわち共役化合物を、細胞の輸送機構によって特定の細胞構造中に局在化させる機能を有するペプチド)として機能できる。好適なタンパク質担体分子としては、酵素、抗体、レクチン、糖タンパク質、ヒストン、アルブミン、リポタンパク質、アビジン、ストレプトアビジン、プロテインA、タンパク質G、フィコビリンタンパク質及び他の蛍光タンパク質(ホルモン、毒素及び成長因子)が挙げられる。典型的には、タンパク質担体分子は、抗体、抗体フラグメント、アビジン、ストレプトアビジン、毒素、レクチン又は成長因子である。典型的なハプテンとしては、ビオチン、ジゴキシゲニン、及びフルオロフォアが挙げられる。
他の例示的実施形態では、担体分子は、核酸塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチド又は核酸ポリマーを含み、任意にフルオロフォア又は他のリガンドとの結合のための更なるリンカー又はスペーサー(例えばアルキニル結合(米国特許第5,047,519号)、アミノアリル結合(米国特許第4,711,955号)又は他の結合)を含む。他の例示的実施形態では、ヌクレオチド担体分子は、ヌクレオシド又はデオキシヌクレオシド又はジデオキシヌクレオシドである。
典型的な核酸ポリマー担体分子としては、一本鎖若しくは複数鎖の、天然若しくは合成DNA又はRNA、又はDNA/RNAハイブリッドであってもよく(モルホリン誘導されたホスフェート(AntiVirals社、Corvallis OR)などの非天然リンカーを組み込んでもよい)、又はペプチド核酸(例えばN−(2−アミノエチル)グリシン単位)(核酸が50ヌクレオチド未満、好適には25ヌクレオチド未満を含む)などが挙げられる。
他の例示的実施形態では、当該担体分子は、炭水化物(通常多糖類(例えばデキストラン、フィコール、ヘパリン、グリコーゲン、アミロペクチン、マンナン、イヌリン、デンプン、アガロース及びセルロース))又はポリオール(通常ポリマー(例えばポリ(エチレングリコール)))を含む。関連する実施形態では、多糖担体分子としてはデキストラン、アガロース又はフィコールが用いられる。
他の例示的実施形態では、担体分子は脂質(典型的には6〜25の炭素数)を含有し、例えば糖脂質、リン脂質及びスフィンゴ脂質などが挙げられる。あるいは、担体分子は、脂質嚢(例えばリポソーム)又はリポタンパク質(下記参照)を含有する。幾つかの親油性置換基が、細胞又は細胞オルガネラへの色素コンジュゲートの輸送の促進のために有用である。
あるいは、担体分子は細胞、細胞系、細胞性断片又は細胞関連粒子(ウイルス粒子、細菌粒子)、ウイルス構成要素、生物細胞(例えば動物性の細胞、植物細胞、細菌、若しくは酵母)又は細胞オルガネラである。担体分子として有用である細胞オルガネラの例としては、リソソーム、エンドソーム、細胞質、核、ヒストン、糸粒体、ゴルジ装置、小胞体及び液胞が挙げられる。
他の例示的実施形態では、担体分子は、非共有結合的に有機若しくは無機材料と結合する。親油性置換基を有する担体分子の例示的実施形態を用いることにより、膜の中の色素化合物の非共有結合による取り込みによる、生体膜又はリポソームなどの脂質アセンブリのターゲッティングが可能となり、それにより、例えば膜構造解析用、又はリポソーム、リポタンパク質、フィルム、プラスチック、親油性ミクロスフェア又は同様の材料への取り込み用のプローブとすることができる。
具体的実施形態では、当該担体分子は特異的な結合ペア用部材を含み、詳細には、本発明の化合物が特異的な結合ペア用部材とコンジュゲートし、結合ペアが形成されることを特徴とする。あるいは、標識された特異的結合ペア用部材の存在により、その特異的結合ペアの相補的部材の存在が示され、各特異的結合ペア用部材は、その表面上又はキャビティ内に、他の特定の立体構造及び極性を有する物質と、特異的に結合するか、又は相補的に結合するための領域を有する。この場合、本発明の色素化合物は、特異的結合ペアのためのリポーター分子として機能する。典型的な結合ペアを表2に示す。
(表2)代表的な特異的結合ペア
Figure 2013056934
IgGは免疫グロブリンである。
cDNA及びcRNAは、ハイブリッド形成に使用する相補鎖である。
具体的態様では、当該担体分子は抗体フラグメント(例えば抗Fc、抗Fcアイソタイプ、抗J鎖、抗κ軽鎖、抗λ軽鎖又は単鎖断片可変タンパク質)、又は非抗体ペプチド又はタンパク質(例えば、限定されないが可溶性Fc受容体、プロテインG、プロテインA、プロテインL、レクチン、若しくはそれらの断片)などが挙げられる。1つの態様では、当該担体分子は、標的結合性抗体のFc部分、又は標的結合性抗体のFc部分のアイソタイプに特異的なFabフラグメント(米国特許出願第10/118,204号)である。一価のFabフラグメントは典型的には、マウスモノクローナル抗体として産生させるか、種々の動物(例えば限定されないがウサギ又はヤギ)を用いてポリクローナル抗体として調製してもよい。これらの断片は、いかなるアイソタイプ(例えばマウスIgM、IgG、IgG2a、IgG2b又はIgG)に由来してもよい。
あるいは、非抗体タンパク質又はペプチド(例えばプロテインG又は他の適切なタンパク質)は、単独で用いてもよいか、又はアルブミンとの組合せで用いてもよい。好適なアルブミンとしては、ヒト及びウシ血清アルブミン又はオボアルブミンなどが挙げられる。プロテインA、G及びLは当業者に公知の当該タンパク質又はその誘導体として定義され、それは少なくとも1つのIgGとの結合領域を含む(すなわちIgGとの親和性を有するタンパク質である)。これらのタンパク質は修飾されてもよいが、本発明の他の担体分子と同様に、反応性の標識とコンジュゲートさせる必要はない。
別の態様では、当該担体分子は無処理の完全抗体である。抗体は、抗原に応答して動物において分泌又は産生される可溶性の物質又は分子であって、その産生を誘導した抗原と特異的に結合する特性を有する物質又は分子を意味する用語である。また、抗体はそれ自体糖タンパク質であり、ゆえに抗種抗体の調製用の抗原又は免疫原として利用することもできる。抗体(別名免疫グロブリン)は、5つの異なるクラス(IgG、IgA、IgM、IgD及びIgE)に分類される。基本的なIgG免疫グロブリン構造は、2つの同一の軽鎖ポリペプチド及び2つの同一の重鎖ポリペプチド(ジスルフィド結合で結合)から構成される。
IgGを酵素パパインで処理することにより一価の抗原結合フラグメントを単離することができ、それを本明細書ではFabフラグメントとして記載する。また、IgGをペプシン(他のタンパク質分解酵素)で処理した場合、より大きなフラグメントが生じる(F(ab’))。更にこのフラグメントを、穏やかな還元バッファーで処理することにより半分に切断でき、一価のFab’フラグメントが得られる。Fab’フラグメントは、Fabよりわずかに大きく、ヒンジ領域に由来する1つ以上の遊離スルフヒドリル基を含有する(それは小さいFabフラグメントには存在しない)。用語「抗体フラグメント」とは、本明細書では抗体のFab’、F(ab’)及びFab部分と定義される。抗体分子をペプシン及びパパインで処理して抗体フラグメントを得ることは公知技術である(Gorevicら、Methods of Enzyol.,116:3(1985))。
本発明の一価のFabフラグメントは、任意のマウスモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体から調製してもよく、その場合、外部抗体又はそのフラグメントで種々の動物を免疫する(米国特許第4,196,265号ではモノクローナル抗体の調製方法を開示している)。典型的には、二次抗体は、ウサギ又はヤギにおいて産生させたポリクローナル抗体に由来するが、当然ながら、ポリクローナル抗体の調製に用いられる、当業者に公知のあらゆる動物を用いて抗種抗体を調製してもよい。用語「一次抗体」は、一次抗体の一部分と結合する「二次抗体」とは異なり、直接抗原と結合する抗体のことを指す。モノクローナル抗体は、ポリクローナル抗体と同等、場合によってはそれよりも好適であるが、その場合、リガンド結合抗体は、当業者に公知の方法を使用して調製されたマウスハイブリドーマ細胞株から典型的に産生されるモノクローナル抗体と互換性を有するのが好ましい。
一態様では、当該抗体は、外部抗体のFc部位のみを免疫源として調製された抗体である。基本的に、外部抗体(例えばマウス由来)のFc領域フラグメントのみを用いて動物を免疫する。次に、採血を行い、ポリクローナル抗体を調製し、酵素、ペプシン又はパパインとインキュベートし、一価のフラグメントを調製する。当該フラグメントを更に、免疫した動物の全免疫グロブリンタンパク質、又はFcフラグメントのみを含有するカラムを用いてアフィニティ精製する。
例示的実施形態では、アジド糖タンパク質が固体支持体に共有結合している。これには、上記のあらゆるアジド糖タンパク質、及び本明細書で開示されるあらゆる固体支持体が包含されるが、これらに限定されない。
一実施形態では、本発明の化合物、第1のリポーター分子及び固体支持体を含む第1の組成物が提供される。他の実施形態では、第2のコンジュゲートとの組合せで第1の組成物を含有する第2の組成物が提供される。当該第2のコンジュゲートは、第2のリポーター分子に共有結合する上記の固体支持体又は担体分子を含む。第1及び第2のリポーター分子は異なる構造を有し、好ましくは異なる発光スペクトルを有する。更に好ましくは、それらの蛍光放出が基本的に重複しないように、第1及び第2のリポーター分子を選択する。別の実施形態では、リポーター分子は異なる励起スペクトラムを有してもよく、あるいはリポーター分子は同じレーザーで励起されてもよい。
第2の組成物中のコンジュゲートの固体支持体(又は担体分子)は、同じであってもよいか、又は異なる分子であってもよい。様々な担体分子の特性に関連する本明細書における考察は、通常、他の実施形態と同様に本発明の本実施形態にも適用できる。
固体支持体
本発明では、種々の固体支持体が利用できる。本発明の使用に適する固体支持体は、典型的には液相において実質的に不溶であり、化学ハンドルと反応し得る置換基を有する。好ましい実施形態では、当該固体支持体は、アルキン又は活性化アルキンを含み、修飾された糖と反応してもよいか、又はその逆であってもよい。本発明の固体支持体は、特定の種類の支持体に限定されず、半固体状の支持体であってもよい。むしろ、当業者に公知の従来技術の多くの支持体が利用できる。すなわち、有用な固体支持体としては、固体及び半固体状のマトリックス(例えばエーロゲル及びヒドロゲル、樹脂、ビーズ、バイオチップ(薄膜コート付きバイオチップなど)、ミクロ流体チップ、シリコンチップ、マルチウェルプレート(またマイクロタイタープレート又はマイクロプレートとも呼ばれる)、膜、導電性及び非伝導性金属、ガラス(顕微鏡スライドガラスなど)、並びに磁性支持体などが挙げられる。有用な固体支持体のより具体的な例としては、シリカゲル、高分子膜、粒子、誘導体化されたプラスチック薄膜、ガラスビーズ、コットン、可塑性ビーズ、アルミナゲル、多糖(例えばセファロース)、ポリ(アクリレート)、ポリスチレン、ポリ(アクリルアミド)、ポリオール、アガロース、アガー、セルロース、デキストラン、デンプン、フィコール、ヘパリン、グリコーゲン、アミロペクチン、マンナン、イヌリン、ニトロセルロース、ジアゾセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン(ポリ(エチレングリコール)など)、ナイロン、ラテックスビーズ、磁気ビーズ、パラ磁性ビーズ、超常磁性ビーズ、デンプンなどが挙げられる。
幾つかの実施形態では、当該固体支持体は、ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ、チオール、アルデヒド、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミド、尿素、カルボネート、カルバメート、イソシアネート、スルホン、スルホネート、スルホンアミド、スルホキシド基など(これらに限定されない)の、本発明に係る化合物を結合させるための反応性官能基を有してもよい。上記の反応基はいずれも、本明細書に係る固体支持体上の反応性官能基として有効利用することができる。
適切な固体支持体は、所望の最終用途、及び様々な合成手順における適合性などに基づいて適宜選択できる。例えば、本発明の化合物を固体支持体に結合させるのにアミド結合が望ましい場合には、ペプチド合成において通常有用な樹脂を使用し、当該樹脂としては例えばポリスチレン(PAM樹脂、Bachcm社、Peninsula Laboratories社などから市販)、POLYHIPE(商標)樹脂(Aminotech(カナダ)社製)、ポリアミド樹脂(Peninsula Laboratories社)、ポリエチレングリコールとグラフトしたポリスチレン樹脂(TentaGel(商標)、Rapp Polymere社、Tubingen、ドイツ)、ポリジメチル−アクリルアミド樹脂(Milligen/Biosearch社(カリフォルニア))又はPEGAビーズ(Polymer Laboratories社)などが挙げられる。
キット:
タンパク質及び抗体のインビボでの代謝的標識に用いるコンポーネントを含むキットもまた提供される。係るキットは、例えば、化学/親和性ハンドル(例えばアジド、トリアリールホスフィン又はアルキン)標識された非天然の糖を含んでもよい。係るキットは更に、例えば、細胞から単離された、代謝的標識された抗体を標識若しくは精製するための試薬を含んでもよい。例えば、キットは、非天然のオリゴ糖(例えばGalNAz、ManNAz又はGlcNAz)を含んでもよい。当該キットは、フルオロフォア標識又は親和性タグ(非天然オリゴ糖上の化学的/親和性ハンドルと反応性を有する)を更に含んでもよい。当業者であれば、例えば、修飾された抗体を標識又はタグ付与するために使用できる様々な標識又はタグ(例えば、限定されないが本明細書において列挙されているもの)を想起すると考えられる。例えば、当該標識又はタグはアルキンと結合でき、それにより、代謝的に標識された抗体上のアジドと接触することでclickタイプの化学反応を行うことができる。
本発明のキットは1つ以上の構成要素を任意の数の容器、パケット、チューブ、バイアル、マイクロタイタープレートなどに別々に梱包してもよいか、又は、当該構成要素を係る容器中で様々な組合せで混合してもよい。本発明のキットでは、例えば非天然のオリゴ糖(化学的/親和性ハンドルを含む)を、フルオロフォア標識又は親和性タグとは別の容器に準備してもよい。
本発明のキットは、本明細書に記載されている1つ以上の方法を実施するための取扱説明書、及び/又は、本明細書に記載されている1つ以上の組成物又は試薬の説明書を含んでもよい。取扱説明書及び/又は説明書は印刷物であってもよく、キットインサートとして含まれてもよい。あるいは、キットの取扱説明書及び/又は説明書をインターネット経由で提供してもよい。
本発明の具体的態様:
例えば、本発明の方法では、本明細書において記載されているGal−T酵素を用いることにより、糖タンパク質又は抗体上の末端糖残基を直接標識することが可能となる。あるいは、例えばエンド−Hによって糖基を切断し、次に、例えばエンド−M又はエンド−A(両方とも糖の切断及び転移を触媒できる)を用いて、化学ハンドルを含む糖をタンパク質又は抗体に付加させる。他の実施形態では、化学ハンドルを含む糖を、代謝的標識により糖タンパク質又は抗体に付与する。なお、「糖」とは単糖又はオリゴ糖を示す。
本発明の一態様は、糖修飾タンパク質の調製方法の提供に関する。当該方法は詳細には、
第1のタンパク質上に存在するオリゴ糖を、GlcNAc−GlcNAc結合において切断し、還元端を有するGlcNAc残基を含むタンパク質を得る工程と、
化学ハンドルを有する修飾された糖を、前記GlcNAc残基の還元端に結合させる工程と、
前記第1のタンパク質を、前記化学ハンドルと反応し得る標識を有する修飾されたオリゴ糖と混合する工程を含み、
前記修飾されたオリゴ糖は前記化学ハンドルの部位でタンパク質に結合し、それにより糖修飾タンパク質が形成される。
他の実施形態では、前記タンパク質は抗体である。より詳細には、当該抗体はIgGである。他の実施形態では、前記オリゴ糖は、GlcNAc−GlcNAc結合の位置において、エンドグリコシダーゼHの触媒により切断される。他の実施形態では、前記修飾された糖は、変異ガラクトシルトランスフェラーゼの触媒により前記還元端に結合する。他の実施形態では、前記変異体はY289L変異体である。他の実施形態では、前記修飾された糖はアジド修飾された糖であり、前記修飾されたオリゴ糖はアルキン標識されている。他の実施形態では、前記アジド修飾された糖はUDP−GalNAzである。
他の実施形態では、前記修飾されたオリゴ糖は、
第2のタンパク質上に存在するオリゴ糖をGlcNAc−GlcNAc結合の位置において切断し、還元端を有するGlcNAc残基を有するオリゴ糖を得て、
前記オリゴ糖を、前記化学ハンドルと反応し得る標識を用いて標識することにより得られる。
他の実施形態では、前記切断されたオリゴ糖の還元端を重炭酸アンモニウムで処理し、前記処理されたオリゴ糖を、スクシンイミジルエステルを用いてアルキンと結合させる。他の実施形態では、前記第2のタンパク質は、前記第1のタンパク質と異なる細胞株又は異なる種類の細胞中で合成される。他の実施形態では、前記第2のタンパク質はヒト細胞中で合成される。
他の実施形態では、前記修飾されたオリゴ糖は更に第2の標識を含む。他の実施形態では、前記第2の標識は、治療活性を有する部分、治療薬、放射性金属イオン、DNA、タンパク質、ペプチド、糖、検出可能な標識、ビオチン及びアビジンからなる群から選択される。
本発明の他の態様は、上記の実施形態のいずれか1つの方法を使用して得られる、オリゴ糖修飾されたタンパク質の提供に関する。
本発明の別の態様は、タンパク質をエンドグリコシダーゼHで処理することを含む方法を用いて得られる、オリゴ糖を切断されたタンパク質の提供に関する。他の実施形態では、前記タンパク質は抗体である。より詳細には、前記抗体はIgGである。
本発明の他の態様は、標識されたオリゴ糖を含有する抗体の提供に関する。他の実施形態では、前記標識は、治療活性を有する部分、治療薬、放射性金属イオン、DNA、タンパク質、ペプチド、糖、検出可能な標識、ビオチン及びアビジンからなる群から選択される。
他の実施形態では、当該オリゴ糖は、GlcNAc−GlcNAc結合の位置でエンドグリコシダーゼMの触媒により切断される。
他の実施形態では、前記第1の抗体の前記切断は、OH−アルキンの存在下で実施され、
前記エンドグリコシダーゼMは、前記OH−アルキンを、前記切断されたGlcNAc残基の還元端に結合させ、
前記修飾されたオリゴ糖は、アジド残基で標識されている。
他の実施形態では、前記オリゴ糖は、エンドグリコシダーゼMの触媒により、GlcNAc−GlcNAc結合の位置で、前記第2の抗体から切断される。
他の実施形態では、
前記第2の抗体の前記切断は、OH−アルキンの存在下で実施され、前記エンドグリコシダーゼMは、前記OH−アルキンを、前記切断されたGlcNAc残基の還元端に結合させ、それによりアルキン修飾されたオリゴ糖が得られ、
前記第1の抗体上の前記修飾された糖上の前記化学ハンドルがアジドである。
本発明の他の態様は、抗体をエンドグリコシダーゼMで処理することを含む方法を用いて得られる、オリゴ糖を切断された抗体の提供に関する。他の実施形態では、当該抗体はIgGである。
本発明の他の態様は、抗体を標識する方法の提供に関する。当該方法は、前記抗体に結合するオリゴ糖を標識することにより行われ、非天然の糖の存在下で抗体産生細胞をインキュベートすることを含み、前記非天然の糖は化学ハンドルを含む。
他の実施形態では、抗体産生細胞は組換え細胞である。他の実施形態では、前記抗体産生細胞はハイブリドーマである。他の実施形態では、前記抗体はIgGである。他の実施形態では、前記化学ハンドルはアジド、トリアリールホスフィン又はアルキンからなる群から選択される。他の実施形態では、前記非天然の糖はGalNAz、ManNaz及びGlcNAzからなる群から選択される。
他の実施形態は、前記抗体産生細胞から前記標識された抗体を単離する工程を含む。
他の実施形態は、第2の標識を前記単離された抗体と結合させる工程を更に含み、当該工程は、前記単離された抗体を、前記化学ハンドルとの反応性を有する第2の標識と接触させることを含む。
他の実施形態では、前記化学ハンドルはアジドであり、前記第2の標識はアルキン有するか、又はアルキンを有するために修飾される。他の実施形態では、前記第2の標識は、治療活性を有する部分、治療薬、放射性金属イオン、DNA、タンパク質、ペプチド、糖、検出可能な標識、ビオチン及びアビジンからなる群から選択される。
本発明の他の態様は、本明細書に記載されている実施形態のいずれかの方法を使用して得られる、標識された抗体の提供に関する。
本発明の他の態様は、化学ハンドルで標識された非天然の糖と、前記化学ハンドルの位置で前記非天然の糖に結合する第2の標識を含むキットの提供に関する。
他の実施形態では、当該キットは、抗体産生細胞中で抗体をインビボ標識するための取扱説明書を更に含む。他の実施形態では、前記化学ハンドルはアジド、トリアリールホスフィン及びアルキンからなる群から選択される。他の実施形態では、前記非天然の糖はGalNAz、ManNAz及びGlcNAzからなる群から選択される。他の実施形態では、前記化学ハンドルはアジドであり、前記2次標識はアルキンを含む。
以下の実施例において本発明を例示して、当業者に本発明の方法を詳細に説明し、本発明の具体的態様を記載する。以下の実施例は、単に本発明を理解し、実施する際に有用な具体的な方法論を提供するためのものに過ぎず、本発明が実施例の態様に限定されるものと解釈すべきでない。実施例で使用される試薬は、市販されているか、又は従来技術において公知の市販の器具、方法又は試薬を使用して調製できる。上記の実施形態では、本発明の様々な態様及び本発明の方法の実施形態を例示する。実施例における全ての引例は、その開示内容が本明細書に援用される。係る実施例は、本発明の多くの異なる実施形態を排除するものではなく、上記した範囲を越える、適切な試薬の選択を排除するものでもない。すなわち、上記した本発明を、理解の便宜上、図及び実施例を挙げて幾つかの具体的な態様として説明するが、当業者であれば、多くの変更及び修飾を、本発明の技術思想又は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく実施することができることを容易に理解すると考えられる。
<実施例1>:
モノクローナル及びポリクローナル抗体の、エンドHグリコシダーゼによるオリゴ糖の切断の有無によるHPLC解析
糖鎖除去反応:
90μLの還元及びアルキル化された抗体(1mg/ml)を、40μL 0.5Mクエン酸ナトリウム(pH5.5)及び10μL エンドH(1,000,000U/mL、New England BioLabs社製)に添加した。密封し、37℃で、48時間インキュベートした。サンプルを遠心分離して沈殿物を除去し、次にHPLC上へ直接注入した。Waters600E LCシステム、Agilent Zorbax 300SB−CNカラム(4.6×150mm、3.5μm)、0.8mL/分の流速で75℃で逆相HPLCを実施した。移動相の組成を、溶媒A:0.1%のTFAを含有する水、及び溶媒B:80%のn−プロパノール、10%のアセトニトリル、10%の0.1%のTFAを含有、とした(条件はRehderら、J.Chrom.A,1102(2006)164−175に記載のものを採用した)。分離は、30分にわたる、20〜40%のBの直線勾配を使用して実施した。結果を図1及び図2に示す。
<実施例2>:
エンドHグリコシダーゼによるオリゴ糖の切断を伴う及び伴わない、ニワトリ抗ヤギ抗体の酵素標識
ニワトリ抗ヤギIgGを、VivaSpin 5000 MWCOフィルタカラム上で、50mMのMES(pH6.5)バッファーで洗浄した。糖鎖除去のため、1mg/mLの洗浄済IgGのアリコートを、47.5U/μLのエンドH(New England BioLabs社)を含有する50mMのMES(pH6.5)で、37℃で24時間インキュベートした。洗浄済(脱グリコシル化されていない)又は、エンドH処理されたIgGを更にClick−iT O−GlcNAc酵素標識キットを使用して非変性条件(50mMのMES(pH6.5)中の0.5mg/mlのIgG、120mMのNaCl、11mMのMnCl、0.1mMのZnCl、50μMのUDP−GalNAz、5U/mLのAntarcticホスファターゼ、並びに0.65mg/mLのGalT酵素、4℃で一晩インキュベート)でアジド標識した。0.5mLのスピンカラムにパックしたP10サイズ樹脂にサンプルを通し、50mMのトリス(pH8)中に精製した。抗体を含む収集フラクションを、TAMRA Click−iT(商標)検出キット(C33370)で標識し、0.5mLのスピンカラムにパックしたP10サイズ樹脂にサンプルを通し、50mMのトリス(pH8)中に再度精製した。その約250ngを、MOPSバッファーを使用した4〜12%のビス−トリスゲルで分析した。BioRadFXイメージャーで、532nmのレーザー、及び555nmロングパス発光フィルタ使用してゲルをイメージングした(図3A)。SYPRO(登録商標)Rubyプロテインゲル染色を用いてゲルを後染色し、488nmのレーザー及び555nmのロングパス発光フィルタを使用してイメージングした(図3B)。
<実施例3>:
アジド糖による抗体の代謝的標識
マウスM96ハイブリドーマ細胞を、5日間にわたり、アジド糖アナログ、AcGalNAz、AcManNAz、又はAcGlcNAzで処理した。細胞上清(アジド標識されたモノクローナル抗体を含む)を回収し、タンパク質をクロロホルム/メタノールで沈殿させた。沈殿ペレットを50μLの1%のSDS、100mMのトリス(pH8)で再可溶化し、TAMRA Click−iT(商標)検出キット(C33370)で標識し、1μgを、MOPSバッファーを使用して4〜12%のビス−トリスゲルで分析した。532nmのレーザー及び555nmのロングパス発光フィルタを使用して、BioRadFXイメージャーでゲルをイメージングした(図4A)。SYPRO(登録商標)Rubyプロテインゲル染色でゲルを後染色し、488nmのレーザー及び555nmのロングパス発光フィルタ(図4B)を使用してイメージングした。
<実施例4>:
代謝的標識及び糖タンパク質サブクラスの「クリック」検出
ジャーカット細胞を、40μM AcManNAz又はAcGalNAzで3日(A)、又は250μM AcGlcNAzで一晩(B)処理した。回収された細胞を50mMのトリスバッファー(プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤を有する、pH8.0)中で超音波破壊し、ライゼートを高速遠心沈降(100K×g)に供した。ManN Az−及びGalNAz−処理した細胞からの膜ペレットタンパク質、およびGlcNAc−処理細胞からの上清の細胞溶解物をクロロホルム/メタノールにより沈殿させ、界面活性剤で溶解させ、1mMのCuSO4及び5mMのアスコルビン酸(1)の存在下で、蛍光アルキンプローブで標識した。標識され、沈殿させたタンパク質10μgを、1−D NuPAGE(登録商標)Novcx(登録商標)4〜12%ゲル(Invitrogcn社製)で電気泳動に供した。532nmの励起を使用し、Fuji FLA−3000スキャナ(Fuji)によりイメージングした(図5A)。次にゲルをSYPRO(登録商標)Ruby染色(Invitrogen)により後染色し、473nmで励起してイメージングした(図5B)。コントロールのレーンは、未処理細胞(但し蛍光プローブによる処理)の抽出液を表す(図5)。
<実施例5>:
二次元ゲルによるAcGlcNAz処理されたジャーカット細胞の可溶性タンパク質の分離
ジャーカット細胞を、250μM AcGlcNAz又はDMSO担体(未処理コントロール)と共に一晩培養した。可溶性のライゼートタンパク質を、音波処理及び超遠心分離を用い、実施例4と同様に調製し、蛍光アルキンプローブで1時間標識した。標識されたタンパク質40μgを沈殿させ、7Mの尿素、2Mのチオ尿素、65mMのDTT、2%のCHAPS、1%のZwittergent 3−10、1%のpH3〜10の担体のアンホライトで再度溶解させ、pH3〜10のIEF条片で第1のディメンション、及びMOPSバッファーを有する4−12%のビス−トリスゲルで第2のディメンションで分離した。532nmで励起させたゲルを、SYPRO(登録商標)Ruby染色(Invitrogen)で後染色してイメージングし、更に473nmで励起させ、Fuji FLA−3000スキャナ(Fuji)を使用して再びイメージングした。図6を参照。
<実施例6>:
40及び50kDのアジド標識されたモデルタンパク質のゲル中検出
1つのN末アジドを有する40及び50kDモデルタンパク質それぞれ25pmolを、ジャーカット細胞ライゼート100μgに取り込ませた(上方パネル)場合と、そうでない場合(下方パネル)を示す。タンパク質を蛍光アルキンプローブで標識し、示すように連続希釈し、NuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)4〜12%ゲルで電気泳動した。532nmの励起を行い、FLA−3000スキャナでイメージを得た(左パネル)。ゲルは、それから、SYPRO(登録商標)Ruby染色で染色し、473nmで励起し、イメージングした(右パネル)。標識されたタンパク質の検出感度は10フェムトモル未満であった。図7参照。
<実施例7>:
40及び50kdのアジド標識モデルタンパク質の標識効率は、複合タンパク質抽出液において不変であった
アジド標識された100ng(25pmol)若しくは10ng(2.5pmol)の各々40Kd及び50Kdタンパク質を、100、50、25、又は0μgコントロールジャーカットライゼート(左パネル)のバックグラウンドにおいて、蛍光アルキンプローブで標識した(標識の後、100μgのコントロールのライゼートを「0ライゼート」に添加し、沈殿による標識タンパク質の回収を促進した)。SYPRO(登録商標)Ruby全タンパク質染色によりゲルを後染色した。図8を参照のこと。
<実施例8>:
α−クリスタリンO−GlcNAcの酵素的標識及び検出
α−クリスタリンO−GlcNAcを、修飾されたb−GalT1酵素を使用して酵素的にアジド(UDP−GalNAz)標識した。その後、上記のようにタンパク質を蛍光アルキンプローブと反応させた。タンパク質を、示される希釈度で、1−D NuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)4−12%ゲルで電気泳動した(2−10%のα−クリスタリンのみを、O−GlcNAc修飾し、それゆえ、O−GlcNAc部分の検出感度は、中程度−低度のフェムトモル範囲(10〜45fmol)であった)。図9を参照。
<実施例9>:
a−O−GlcNAcモノクローナル抗体CTD110.6と、GalT1酵素標識との比較
Aにおいては、α−クリスタリンO−GlcNAcを、修飾GalT1酵素で酵素的に標識し、ビオチン−アルキンプローブとその後反応させた。タンパク質を、示される希釈度で、1−D NuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)4〜12% ビストリスゲルで電気泳動し、PVDF膜上へブロットした。次にPVDF膜をストレプトアビジン−HRPとインキュベートし、タンパク質をECL Plus(商標)(GE Biosystems社製)を使用して検出した。レーン2(NE)は、8pmoLの酵素無添加のコントロールを示す(Aにおいて、ウエスタンブロットによるO−GlcNAcの検出感度は、低度のフェムトモル範囲(3〜10fmol)である)。Bにおいては、無処理のα−クリスタリンを1−Dゲルで電気泳動し、上記の通りブロットした。PVDF膜を、製造者の指示に従い、O−GlcNAcウエスタンブロット検出キット(Pierce社製)を使用して処理した。キットでは、CTD110.6α−O−GlcNAcモノクローナル抗体を利用した。レーン2は、キットに添付のポジティブコントロール(O−GlcNAc−修飾BSA)5ngを含むレーンである。抗体検出系を使用しても、α−クリスタリンは検出されなかった。図10を参照。
<実施例10>:
同じ二次元ゲルにおける、O−GlcNAcタンパク質、リンタンパク質及び全タンパク質の多重検出:
AcGlcNAzでフィードしたジャーカット細胞から可溶性画分を抽出し、2時間にわたり、UV励起性のアルキン色素で標識した。上記のように、クロロホルム/メタノール沈殿させたタンパク質を二次元ゲルで電気泳動した。ゲルを水でリンスし、Lumi−Imager(商標)(Roche社)を用いて、UV照射及び600/bp放出によりイメージングした。次にゲルを、Pro−Q(登録商標)ダイアモンドリンタンパク質染色により染色し、FLA−3000レーザーイメージャーを用いて、532nmの励起/580 LP放出によりイメージングし、SYPRO(登録商標)Ruby全タンパク質染色により染色し、製造者の指示に従い、473nmの励起及び580nmのロングパス放出によって再度イメージングした。図11を参照。
<実施例11>:
O−GlcNAc修飾タンパク質及びコフィリンの、多重ウエスタンブロット検出
ジャーカット細胞の可溶性タンパク質25μgを上記のとおり二次元ゲル電気泳動に供し、更にPVDF膜にブロットした。PVDF膜は、α−コフィリンポリクローナル抗体とインキュベートし、更にGAR−HRP二次抗体を用い、ECL Plus(商標)検出(GE Biosystems社製)によって検出した。イメージング後、ブロット膜を、ストレプトアビジンAPとインキュベートし、O−GlcNAcタンパク質を、WesternBreeze(登録商標)化学発光検出キット(Invitrogen社製)を使用して検出した。図12を参照。
<実施例12>:
コントロール及び阻害剤処理された培養細胞抽出液における、O−GlcNAc修飾タンパク質のディファレンシャル検出
ジャーカット細胞をAcGlcNAzで一晩培養し、PUGNAc処理の有無に関して解析した。PUGNAcは、一般的に用いられるO−GlcNAcアーゼの阻害剤である。可溶性のジャーカットライゼートを、蛍光アルキンで標識した。レーン1)回収前の3時間、50μM PUGNAc及び4mMのグルコサミンで処理した細胞、レーン2)無処理、レーン3から5)250μM AcGlcNAzで一晩培養した細胞、レーン6から8)250μM AcGlcNAzで一晩培養し、更に回収前の3時間、50μM PUGNAc及び更に250μM AcGlcNAzで処理した細胞、PUGNAcで処理したタンパク質(レーン6−8)は、未処理のコントロール(レーン3−5)よりも、O−GlcNAc染色の顕著な増加を示した。図13を参照。
<実施例13>:
糖タンパク質のゲル中での連結
ゲル中での連結に用いる蛍光アルキン化合物を、図18(AからD)に示す。更に、2つの強力な蛍光発生アルキンをE及びFに示す。TAMRA−アルキン化合物(上の左側フレームに示す)をゲル中染色試験に用い、反応性のアジド−スクシンイミジルエステルを使用してインビトロで、又はフィード細胞にアジド修飾した糖をフィードしてインビボで、アジド基をタンパク質に組み込ませた。
アジド修飾糖を取り込ませたジャーカット細胞から細胞ライゼートを得た。
ゲル中検出、又はウエスタンブロット検出における、アジド−アルキン反応条件:
Figure 2013056934
全ての成分を混合し、最後にアスコルビン酸を添加し、最終溶液200μLとなるように溶液を調製し、穏やかにボルテックスした。10μLの100mM BCSを添加し(CuIの存在下、溶液がオレンジ色に変色)、穏やかにボルテックスし、次にアルゴンを添加した。溶液を室温で1時間ローター上で混合した。
反応後、タンパク質を以下の手順を使用して沈殿させた。600μLのMeOHを反応混合物に添加し、20秒間ボルテックスし(タンパク質量が低い場合30分間を凍結させ)、次に200μLのクロロホルムを添加し、20秒間ボルテックスし、次に450μLのHOを添加し、20秒間ボルテックスした。溶液を5分間、18K×gで遠心分離した。上層を除去し、450μLのMeOHを添加し、20秒間ボルテックスし、5分間18K×gで遠心分離した。上清を除去した。最後に、600μLのMeOHを添加し、ボルテックスし、一時的に超音波処理してペレットを分散させ、5分間、18K×gで遠心分離した。
アスコルビン酸ナトリウムを100mMに希釈するため、乾燥したアスコルビン酸ナトリウム(5mg)を、250μLのHOと混合した。図19は、添付プロトコルに従い、TAMRA−アルキン化合物で標識したタンパク質の電気泳動の結果を示す。ゲルの左側上のレーン2、3及び4はアジド修飾された糖を組み込んだ細胞抽出液を示し、レーン1はアジド糖フィードを行わなかった細胞(コントロール)を示す。右側では、コントロールのアジド標識タンパク質(オボアルブミン及びミオグロビン)(+)、又は非標識のコントロール(−)を、濃度を変化させてアプライした際の結果を示す。その結果、非常に効率的かつ選択的な、ゲル中でのアジド修飾タンパク質の検出が可能であることが示された。
<実施例14>:
アジドオボアルブミン及びアジド−ミオグロビンをそれぞれ2.5μgずつ用い、80μgの非標識ジャーカットライゼートにスパイクした。次にライゼートを2時間にわたり、TAMRAアルキンで標識した。反応液の組成は、50mMトリス(pH8)、25%のプロピレングリコール、1mM CuSO、5mMのアスコルビン酸ナトリウム、20μM TAMRAアルキンとした。キレーター(10mMのTPEN、EDTA、バトクプロイン二スルホン酸(BCS)又はネオクプロインのいずれか)を伴うおよび伴わない反応を実施した。コントロール反応を、CuSOなしで実施した。標識後、サンプルを沈殿させ、各サンプル約30μgを、7mMの尿素/2mMのチオ尿素/65mMのDTT/2%のCHAPS/中に再度溶解させ、二次元ゲル(pH4〜7、IEF条片、MOPSバッファーを含む4〜12%のビストリスゲル)で分析した。TAMRAシグナルを、Fuji FLA3000を使用して、532nmの励起、580のロングパス放出によりイメージングし、更にゲルをSYPRO(登録商標)Ruby全タンパク質ゲル染色で後染色した(図14A)。その結果、キレーターの添加により、タンパク質分離の解像度が改善され、特にバトクプロイン二スルホン酸(BCS)、Cu(I)キレーターでは最高の結果が得られた。全タンパク質染色(図14B)を参照。
第2の実験を、同様のサンプル及びclick標識条件で実施した。但し、キレーター処理において、反応の最初に5mMのTPEN、BCS又はネオクプロインの添加工程を追加したことを除く。標識後、サンプルを沈殿させ、LDSバッファー+5mM TCEP中に再度溶解させ、連続2倍希釈系列を調製した。希釈液を、MOPSランニングバッファーを用いて4〜12%のビストリスゲル上にロードした(レーン1は各々250ngのオボアルブミン及びミオグロビン)。図15Aは、キレーターの添加により、感度を損なわせることなく、TAMRAシグナルのイメージのバックグラウンドが減少することを示す。図15Bは、Sypro(登録商標)Ruby全タンパク質ゲル染色による後染色において、キレーターを有するサンプルにおいてバンド解像度が非常に良好であることを示す。
キレーター処理において、7mM、5mM又は2mMのBCS、又は7mM、5mM又は2mMのネオクプロインを添加したことを除き、同じclick標識条件を用いてキレーターの効果を試験した。図16の星印でマークしたレーンは、アスコルビン酸ナトリウムを添加する前にCuSO4及びBCSを反応液に添加し、ボルテックスした場合の反応の結果を示す。他の全ての反応において、BCSを添加する前にCuSO4及びアスコルビン酸ナトリウムを添加し、ボルテックスした。ゲルを解析した結果、キレーターを添加する前にアスコルビン酸ナトリウム及びCuSO4を反応チューブに添加し、混合することが不可欠であることが示された。アスコルビン酸ナトリウムを添加する前にキレーター及びCuSO4を添加し、ボルテックスした場合、アジド−アルキン標識は進行せず、キレーターがCu(II)からCu(I)への還元を阻害することを示唆する。
<実施例15>:
Click化学反応を用いた抗体の酵素的標識
ヤギIgG抗体を還元し、アルキル化し、更に2つの別々のアリコートに分け、エンドH酵素を使用して脱グリコシル化した。脱グリコシル化された抗体(2つの別々の調製物)を更に150μL反応液中で、33ng/μLのGalT1(Y289L)酵素及び500μMのUDP−GalNAz(0.5μg/μLヤギ抗体)を使用して、GalNAz標識した。反応液を4℃で一晩インキュベートした。4〜500ngのヤギ抗体(図示するゲルを参照、GalNAzを含まないコントロールか、又はアジド標識)を、4〜12%のビストリスゲルの各レーンにロードした。MESバッファーを使用して、200vで〜50分間、電気泳動を実施した。ゲルをTAMRA−アルキン染色し、532nm(励起)及び580nmの放出により、Fuji imagerを用いてイメージングした。一晩用のプロトコルを使用して、SYPRO Rubyによってゲルを後染色した。図17を参照。
代理人案件番号IVGN745及びIVGN745.1に係る、2007年2月12日に出願した米国特許出願(米国仮特許出願第60/772,221号及び第60/804,640号の優先権を主張する)を、本明細書に参照により援用する。
本明細書に援用される各特許、特許出願、刊行物及び文書の全内容は、全ての表、図面及び図を含め、参照により本明細書に援用される。全ての刊行物及び特許は、本明細書において各刊行物又は特許を具体的かつ個別に援用する場合と同程度に、本明細書に参照により援用される。上記の特許、特許出願、刊行物及び文書の引用は、前述のいずれも関連する先行技術であることを承認するものでもなく、またその内容又はこれらの刊行物又は書類の日付に関するいかなる承認を行うものでもない。
特に記載のない限り、本明細書で用いる全ての専門用語及び科学用語は、通常本発明の技術分野に属する当業者に理解されるものと同じ語義を有する。本明細書において記載されている方法、装置及び材料以外の、いかなる同様の方法及び装置、又はその均等物も本発明の実施又は試験において使用できる。
本発明の範囲、技術思想及び基本的態様から逸脱することなく、上記の態様を適宜変更することが可能である。本発明を、1つ以上の特定の実施形態に関して相当詳細に記載したが、当業者であれば、本明細書で具体的に開示されている実施形態を適宜変化させることができることを認識すると考えられ、これらの変形及び改良もまた、本発明の範囲及び技術思想の範囲内である。当業者であれば、本発明を、その課題を解決し、その結果及び記載される効果(固有の効果を含む)を得るために適宜修正することができることを想起すると考えられる。本明細書において提供される実施例は、特定の実施形態を代表する、飽くまで例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。
本明細書において最適に例示された本発明は、本明細書において特に開示されない1つまたは複数のいかなる部品が存在しない場合でも、実施可能である。すなわち、使用される用語及び表現は説明のための用語であり限定的なものではなく、開示され記載された特徴と均等な事項、又はその一部は排他的なものではなく、更に様々な変更が本発明の技術的範囲内で可能であることが理解される。本発明の実施形態を、特許請求の範囲に記載する。

Claims (22)

  1. 修飾された糖を含む化学ハンドルを、第1のタンパク質上のGlcNAc残基に結合させる工程と、
    前記第1のタンパク質を、前記化学ハンドルと反応し得る、リポーター分子、担体分子、又は固体支持体と混合する工程を含む、糖修飾タンパク質の調製方法であって、
    前記リポーター分子、担体分子、又は固体支持体が、前記化学ハンドルの位置でタンパク質に結合し、それにより糖修飾タンパク質が形成される、方法。
  2. 前記第1のタンパク質が抗体である、請求項1記載の方法。
  3. 前記結合工程の前に、第1のタンパク質上に存在するオリゴ糖をGlcNAc−GlcNAc結合の位置で切断し、GlcNAc残基を含むタンパク質を得る工程を含む、請求項1記載の方法。
  4. 前記オリゴ糖が、GlcNAc−GlcNAc結合の位置で、エンドグリコシダーゼH切断により切断される、請求項3記載の方法。
  5. 前記修飾された糖が、ガラクトシルトランスフェラーゼ変異体を用いて前記GlcNAcに結合される、請求項1記載の方法。
  6. 前記変異体がY289L変異体である、請求項5記載の方法。
  7. 前記修飾された糖がアジド修飾された糖であり、かつ前記リポーター分子、担体分子、又は固体支持体がアルキン又は活性化アルキンで標識されている、請求項1記載の方法。
  8. 前記アジド修飾された糖がUDP−GalNAzである、請求項7記載の方法。
  9. 以下の工程を更に含む、請求項1記載の方法:
    第2のタンパク質上に存在するオリゴ糖を、GlcNAc−GlcNAc結合の位置で切断し、GlcNAc残基を有するオリゴ糖を得る工程と、
    前記オリゴ糖を、前記化学ハンドルと反応し得る、リポーター分子、固体支持体、又は担体分子と結合させる工程。
  10. GlcNAc残基を有する前記オリゴ糖が重炭酸アンモニウムで処理され、かつ前記オリゴ糖がスクシンイミジルエステルによってアルキンに結合される、請求項9記載の方法。
  11. 前記第2のタンパク質が、前記第1のタンパク質と異なる細胞株又は異なる種類の細胞中で合成される、請求項9記載の方法。
  12. 前記第2のタンパク質が、ヒト細胞中で合成される、請求項9記載の方法。
  13. 前記修飾されたオリゴ糖が、蛍光色素、酵素、放射標識、金属キレーター、又は検出可能な基質からなる群から選択されるリポーター分子を含む、請求項1記載の方法。
  14. 前記修飾されたオリゴ糖が、治療薬、DNA、タンパク質、ペプチド、及び糖からなる群から選択される担体分子を含む、請求項1記載の方法。
  15. 前記糖修飾タンパク質が、修飾される前の第1のタンパク質と比較して、抗原性がより強くなるか又は弱くなる、請求項1記載の方法。
  16. 前記第1のタンパク質が、非ヒト供給源由来である、請求項1記載の方法。
  17. 前記糖修飾タンパク質がヒト化されている、請求項16記載の方法。
  18. 前記オリゴ糖が、GlcNAc−GlcNAc結合の位置で、エンドグリコシダーゼM切断により切断される、請求項3記載の方法。
  19. 前記オリゴ糖が、GlcNAc−GlcNAc結合の位置で、エンドグリコシダーゼM切断により切断され、その後前記オリゴ糖が第1のタンパク質へ転移する、請求項18記載の方法。
  20. 前記結合工程が、プロテアーゼを実質的に含まない溶液中で実施される、請求項1記載の方法。
  21. タンパク質産生細胞を非天然の糖の存在下でインキュベートする段階を含む、タンパク質に結合しているオリゴ糖を標識することによるタンパク質の標識方法であって、前記非天然の糖が化学ハンドルを含む、方法。
  22. 標識されたオリゴ糖を含む抗体。
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