JP2020504601A - 真核細胞の増殖制御方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、真核細胞の増殖を制御するためのシステム (100) に関する。システムは、制御論理 (116)と、制御論理を実行するように構成されたプロセッサ (104) とを含む。制御論理は、培養液 (M1) 中に真核細胞を含む第1タンク (130) に動作可能に連結される。制御論理は、以下を行うように構成されている:‐標的細胞密度 (114) および標的時間 (112) を受信すること;複数の時間間隔のそれぞれについて、・第1タンクの培養液中の真核細胞の測定細胞密度 (122) を受信すること;少なくとも測定細胞密度の関数として、標的時間における予測細胞密度を計算すること;・予測細胞密度と標的細胞密度を比較すること;・制御論理によって、予測細胞密度が標的細胞密度よりも低い場合には温度を0.1℃〜1℃上げることにより、または予測細胞密度が標的細胞密度よりも高い場合には温度を0.1℃〜1℃下げることにより、予測細胞密度が標的細胞密度から逸脱している場合に第1タンク内の培養液の温度を調整すること。

Description

発明の分野
本発明はバイオテクノロジーの分野に関し、より具体的には細胞、特に真核細胞の増殖を制御する分野に関する。
背景および関連技術
治療上または商業上重要なタンパク質は、関心対象の組換えタンパク質をコードする核酸を含む哺乳動物細胞を培養することによって生産される場合が多い。例えば、関心対象のタンパク質を生産し回収するために実際に用いられる大量生産用バイオリアクターに接種するのに十分な数の哺乳動物細胞を生成するために、シードトレイン工程が用いられる。従来のシードトレイン工程は、少量の細胞試料、例えば凍結保存された細胞バンクバイアルから開始し、続いて徐々により大きな培養槽またはタンク内で複数の細胞培養拡大段階を行う。
バッチ式および流加式生産工程は、細胞集団が蓄積する非生産的な増殖期、およびタンパク質または他の生物学的産物の大部分が細胞の内部または外部で生成される、より生産的な静止期を含む。増殖期および静止期は原核細胞においても観察され得るが、この2つの異なる期は、真核細胞によって生成される生物学的産物が産生細胞の代謝状態(例えば、タンパク質産物の糖鎖付加パターンに影響を及ぼし得る)に対して特に敏感であるため、真核細胞の培養に特に関連性がある。
細胞培養における細胞の増殖は、多くの異なる因子に対して非常に敏感な工程である:培養液もしくは栄養液の組成のわずかな違い、バイオリアクターの接種に用いられる細胞試料の細胞密度のわずかな違い、またはpH、温度、酸素もしくは二酸化炭素濃度のような工程パラメーターを測定する様々な装置の不正確な較正は、細胞の増殖速度に関して、各細胞によって産生されるタンパク質の量に関して、およびさらには産物の化学組成もしくは修飾に関して、重大な違いをもたらし得る。真核細胞によって生成されるタンパク質は、例えば糖鎖付加やリン酸化などの多くの異なる生化学的修飾過程を受ける。工程パラメーターおよび増殖条件の何らかの変化は、細胞代謝に重大な影響を及ぼす可能性があり、およびひいては生成されたタンパク質の糖鎖付加パターンにも影響を及ぼす可能性がある。例えば、Gammell P, Barron N, Kumar N, Clynes M (2007)「Initial identification of low temperature and culture stage induction of miRNA expression in suspension CHO-K1 cells」. J Biotechnol 130:213-218(非特許文献1)は、増殖阻害性miRNAであるmiR-21が、低温度への温度シフトによって誘導されるまたは通常のバッチ培養中に誘導される静止期増殖中に上方制御されることを特定した。したがって、実行中の真核細胞培養プロジェクトにおいて温度を変更することは、細胞状態に影響を及ぼし得る。
US 2009/0104594 A1(特許文献1)は、モデルフリーな適応制御装置または最適化装置に連結されたセンサーを含むバイオリアクターを記載している。センサーは、最終産物の力価または他の所望される産物品質特性と相関する品質のリアルタイム測定を提供し得る。加えて、生細胞を培養する方法が記載されている。その方法は、槽内で細胞をインキュベートする段階、槽の内部の複数の状態を測定する段階、モデルフリーな適応制御装置を用いて複数の測定値を複数の設定点と個々に比較する段階、および少なくとも1つの比較に基づいて槽の内部の状態を調整する段階を含む。
したがって製薬会社は、真核細胞の培養に関して、工程パラメーターをできるだけ一定に保って、規定の時間間隔内での所望の生物学的産物の再現性がありかつ安全な生産を確実にしようと試みている。
多くの場合、真核細胞は、増殖期および静止期のための2つの異なる温度条件下で増殖させる:増殖期は典型的には37℃で実施され、一方、生産期は典型的には、標準化された再現性のある生産工程、生産工程の終了時の標準化された産物濃度および品質を確実にするために、温度を約34℃まで下げ、生産工程を通じて温度を34℃で一定に維持することによって実施される。同様に、工程の再現性を確実にするために、増殖期中も温度は一定に維持される。
したがって、真核細胞を培養するための最先端のアプローチは、培養パラメーター、特に温度を(少なくとも増殖期および静止期のそれぞれを通じて)一定に維持することに基づく。
しかしながら、最初の細胞密度、培地組成、および測定装置の較正特性のわずかな変動を完全に回避することはできないため、細胞培養プロジェクトの継続時間、および所与の期間後に回収され得る生物学的産物の総量に関する変動性がなお存在し、それによってバイオ技術会社および製薬会社が生産工程を計画するのが非常に困難になっている。
US 2009/0104594 A1
Gammell P, Barron N, Kumar N, Clynes M (2007)「Initial identification of low temperature and culture stage induction of miRNA expression in suspension CHO-K1 cells」J Biotechnol 130:213-218
概要
本発明の目的は、独立請求項において特定されるような、細胞の増殖を制御するための改良された方法およびシステムを提供することである。本発明の態様は、独立請求項において与えられる。本発明の態様は、それらが相互に排他的でない場合には、互いに自由に組み合わせることができる。
1つの局面において、本発明は、真核細胞の増殖を制御するための方法に関する。制御論理は、標的細胞密度および標的時間を受信する。標的細胞密度は、標的時間における真核細胞の所望の細胞密度を表す。標的時間は将来の時点を表す。真核細胞を第1タンクの培養液中で培養する。本方法は、複数の時間間隔のそれぞれについて(例えば、各時間間隔の開始時または終了時に)、
‐培養液中の真核細胞の細胞密度を測定する段階;
‐制御論理によって、少なくとも測定細胞密度の関数として、標的時間における予測細胞密度を計算する段階;
‐制御論理によって、予測細胞密度と標的細胞密度を比較する段階;
‐制御論理によって、予測細胞密度が標的細胞密度から逸脱している場合に第1タンク内の培養液の温度を調整する段階
を含む。調整は、予測細胞密度が標的細胞密度よりも低い場合には温度を0.1℃〜1℃上げることによって;または予測細胞密度が標的細胞密度よりも高い場合には温度を0.1℃〜1℃下げることによってのいずれかで実施される。
前記特徴は、真核細胞の増殖を能動的に制御して、規定の時点において規定の細胞数をもたらすことが可能であるため、有利であり得る。驚いたことに、細胞培養物の増殖中に温度は一定に維持されなかったものの、出発条件(出発温度、出発細胞濃度)がわずかに異なった場合でさえ、多くの異なる細胞培養プロジェクトに関して、標的時間において標的細胞密度に到達したことが観察された。真核細胞およびその代謝は環境温度の変化に非常に敏感であるが、少なくとも温度調整が予測時間間隔当たり1℃の温度差を超えず、かつ生理学的に許容される温度範囲を超えることも下回ることもない場合に限り、生成された生物学的産物が、一定温度条件下で生成された生物学的産物と異ならないことが観察された。
さらに、細胞が、上記の指定された温度範囲内の温度変化を許容し、そこから迅速に回復できることが観察された。したがって、上記の指定された温度範囲内で培地の温度を調整することによって、細胞培養プロジェクトの全体の時間は延長されない。これは他の生産パラメーターの調整については異なり、例えばpHの場合には、細胞が細胞集団を蓄積し所望の生物学的産物を生産し続け得る前に、pH変化から回復するためにいくらかの付加的な時間を必要とすることが観察されたため、pHは細胞生産の効率を低下させることが観察された。
現在増殖させている細胞培養物がおそらく所望の細胞密度に到達するであろう時間を繰り返し予測し、予測時間を指定の標的時間と比較し、それに従って細胞培養液の温度を適合させることによって、本発明の態様は、細胞培養の出発条件のわずかな変動を補償することを可能にし、細胞培養物が特定の規定の将来時間(「標的時間」)において所望の細胞密度に到達し、所望の量の生物学的産物をもたらすことを確実にすることを可能にし得る。細胞株、培養液、タンク内の条件、および生産される生物学的産物の種類に応じて、細胞培養物の接種から開始して、細胞培養物が標的細胞密度に到達する時間までの細胞培養プロジェクトの典型的な継続時間は異なる。多くのプロジェクトは、3〜5日の範囲内の、例えば4.5日という典型的な継続時間を有する。本発明の態様が、参照細胞培養プロジェクトの「典型的」または「参照」工程パラメーターからの、開始時の1つまたは複数の工程パラメーターの20%までの逸脱を補償し得ることが観察された。例えば、参照プロジェクトが37℃の一定温度で実行され、所望の細胞密度に到達するまでに正確に4日(96時間)を要する場合、動的な予測ベースの温度適合化アプローチを用いる本発明の態様は、20%短い時間間隔内で、すなわち3.2日(77時間)以内に、同じ細胞密度を達成することを可能にし得る。同様に、バイオリアクターの接種に用いられる細胞の量が、参照バイオリアクターの接種に用いられる細胞の量よりも20%少ない場合、本発明の態様による動的な温度適合化は、出発細胞の数の減少を補償することを可能にし、所望の標的時間において所望の細胞密度を提供し得る。
同様に、本発明の態様は、従来の一定温度細胞培養技法に基づくと産物または細胞密度の最大20%の減少をもたらしたであろう、エラー(酸素または栄養素供給の故障、pH制御システムの故障、等)のいくつかの原因を首尾よく補償することが観察された。
したがって、本発明の態様は、システム故障、および参照培養プロジェクトに対する工程パラメーターの逸脱を補償することを可能にし、ならびにひいては細胞培養プロジェクトのより良い制御および予測性を可能にし得る。
少なくとも測定細胞密度の関数としての、標的時間における予測細胞密度の計算は、現在測定された細胞密度にのみ基づいて実施され得る。優先的に、標的時間における細胞密度は、前の時間間隔において測定された複数の測定細胞密度の関数として予測される。
好ましい態様に従って、温度調整は、培養液の温度を32℃の温度よりも低くは下げず、かつ培養液の温度をおよそ38℃の温度には上げない。
前記温度範囲内でのみ温度調整を実施することは有益であり得る、というのも、該範囲内での温度調整は、制御様式で増殖速度に影響を及ぼし得るが、他の代謝経路の方向に、例えば熱ショックタンパク質の産生の方向に、細胞代謝を有意に転換しないことが観察されたからである。細胞は以前に使用された温度から回復するために余分な時間を必要としないため、該範囲内での温度調整は完全にかつ迅速に可逆的であることが観察された。
態様に従って、細胞増殖を制御するための方法、および必要に応じて温度調整は、増殖期全体を通して、もしくは静止期全体を通して、または増殖および静止時間を通して実施される。
細胞培養の温度の動的調整に用いられる期間が長いほど、システム構成要素の故障および準最適な出発条件を補償する能力は優れているため、上記のことは有益であり得る。
態様に従って、第1タンクは、培養液中の細胞密度のオンライン測定を実施するための計器を含む。したがって、複数の時間間隔のそれぞれにおいて測定される真核細胞の細胞密度は、オンライン測定値である。
例えば、所与の容積の培地中の細胞数を決定するために培養液の誘電特性を測定する測定装置、または例えばオンライン顕微鏡の形態の光学的技法を、培地中の生細胞を自動計数するために使用することができる。
例えば、試料を採取せずにタンク内の細胞密度を決定するために、FOGALEバイオマスシステムを使用することができる。誘電センサーの使用は、光学的技法とは異なり、システムが懸濁液中の気泡、細胞残屑、および他の粒子に敏感ではないという利点を有する。FOGALEバイオマスセンサーまたは類似のセンサー装置を使用することにより、生存バイオマス濃度(生物体積)を、細胞サイズの変動とは無関係にオンライン測定値として決定することができる。
オンライン細胞密度計の別の例は、インサイチュー顕微鏡である。インサイチュー顕微鏡は、細胞培養プロジェクト中に哺乳動物細胞の画像をバイオリアクターの内部で直接(インサイチューで)獲得するために開発されたシステムである。それは最小限の操作者介入のみを必要とする。インサイチュー顕微鏡の例およびその使用は、Joeris K1, Frerichs JG, Konstantinov K, Scheper T:「In-situ microscopy: Online process monitoring of mammalian cell cultures」 Cytotechnology. 2002 Jan; 38(1-3):129-34. doi: 10.1023/A:1021170502775に記載されている。
オンライン細胞密度計のさらなる例は、ラマン分光計である。バイオリアクター内の細胞密度を決定するためのラマン分光計の使用は、例えば、Justin Moretto et al. in 「Process Raman Spectroscopy for In-Line CHO Cell Culture Monitoring」(April 2011 issue of American Pharmaceutical Review - Volume 14) によって記載されている。
細胞密度のオンライン測定の実施は、オフライン測定に付随する問題を回避する利点を有し得る:測定の時点と各制御操作を実施する時点との間にはかなりの待ち時間があるために、オフライン測定データは低品質になる傾向がある。さらに、試料から測定値を得るためのサンプリング工程は、望ましくない細菌による細胞培養物の感染のリスクを高める可能性があり、かつサンプリングの影響(例えば、温度の変化)によって測定の精度を低下させる可能性がある。
さらなる有益な局面において、オフライン密度ではなくオンライン細胞密度を使用することにより、完全に自動化された細胞培養増殖制御が可能になる。さらに、オンライン細胞密度を使用することで、細胞培養プロジェクト中に数多くの細胞密度測定を提供することができ、したがって標的時間における細胞密度を予測するためのより良いデータ基盤を提供することができ、これがやはり予測精度を高め得る。
態様に従って、制御論理は、終了基準が満たされた時に少なくとも温度の調整を終了させるように構成される。終了基準は、例えば、標的時間に到達した、または測定細胞密度が標的細胞密度と等しいかもしくはそれよりも高いという判定であってよい。
任意に、制御論理は、温度の調整を停止させ得るのみならず、細胞培養物の増殖もまた停止させ得る。例えば、制御論理は、1つまたは複数の制御コマンドを自動化制御要素に送信することができ、それは制御要素に、細胞培養タンク内の細胞にフィーディングおよび通気するのを停止させ、自動化細胞回収工程を開始させる。あるいは、制御論理は、的確な技術スタッフの1つまたは複数のモバイル通信装置にメッセージを送信して、タンク内の細胞を回収するかまたはさらに処理しなければならないことをスタッフに通知する。加えて、またはその代わりに、メッセージは、制御論理に動作可能に連結された画面上に表示される。さらなる処理は、細胞、または細胞を含む全培養液を、第1タンクから、異なる、優先的により大きなタンク、例えば別の生産前バイオリアクターまたは生産バイオリアクターに移動させることを含み得る。態様に応じて、回収工程および/または移動工程は、手動で、自動的に、または半自動的に実施され得る。
優先的に、標的時間における将来細胞密度の繰り返し行われる予測、標的時間との比較、および必要に応じて温度の調整は、完全に自動的に実施される。好ましい態様に従って、1つの生産前タンクから別の生産前タンクまたは生産タンクへの繰り返し行われる細胞移動、および細胞または生成された生物学的産物の最終的回収もまた、完全に自動的に、すなわち人のいかなる介入もなく実施される。出発条件のわずかな変動に対して頑強であり、細胞培養期中のシステム構成要素の故障に対して頑強であり、かつ人のいかなる介入もなく、指定の将来時間において規定の細胞密度および規定の産物品質を確実にもたらすことができる、完全に自動化されたシステムおよび方法が提供され得るため、これは有利であり得る。
態様に従って、制御論理は、温度を調整するための細胞濃度逸脱閾値を受信する。制御論理は、標的時間における予測細胞濃度が標的細胞濃度から該閾値を上回って逸脱している場合にのみ、第1タンク内の培養液の温度を適合させる。閾値は制御ループ内にいくらかの慣性を導入し、標的細胞濃度からの逸脱が有意なレベルに到達することが予測される場合にのみ、温度が適合化されることを確実にするため、このことは有益であり得る。例えば、制御論理は、下方の細胞濃度逸脱閾値、例えば標的細胞密度の95%を受信し、予測細胞濃度が標的細胞濃度の95%よりも低い場合にのみ、第1タンク内の培地の温度を上昇させ得る。加えて、またはその代わりに、制御論理は、上方の細胞濃度逸脱閾値、例えば標的細胞密度の105%を受信し、予測細胞濃度が標的細胞濃度の105%よりも高い場合にのみ、第1タンク内の培地の温度を低下させ得る。その他の下方および上方閾値も同様に使用することができ、例えば、99%および101%、もしくは98%および102%、または下方細胞密度閾値が99%であり上方細胞密度閾値が105%であるような非対称閾値などである。
態様に従って、制御論理はグラフィカルユーザーインターフェース (GUI) を提供する。GUIは、制御論理が予測細胞密度を計算し始める前に、ユーザーが標的時間および標的細胞密度を入力できるようにする。GUIは、制御論理が複数の時間間隔において予測細胞密度を計算している間、ユーザーが標的時間および/または標的細胞密度を修正できるようにする。
いくつかの態様に従って、本方法は、標的細胞密度に到達した後に、第1タンクの培養液およびその中に含まれる真核細胞を第1タンクから第2タンクに移動させる段階をさらに含む。第2タンクは第1タンクよりも大きい。制御論理は、さらなる標的細胞密度およびさらなる標的時間を受信する。さらなる標的細胞密度は、さらなる標的時間における真核細胞の所望の細胞密度を表す。第2タンク内でのさらなる増殖制御工程は、第1タンク内の細胞が標的細胞密度に到達した後に実施されるため、さらなる標的時間は、細胞を第2タンクに移動させた時間よりも後の時間を表す。
例えば、制御論理は、ローカルに(制御論理と同じ機械上に)インストールされたGUIを介してユーザーから直接、またはネットワークを介してリモートインストールされたGUIから、標的細胞密度、さらなる標的細胞密度、標的時間、および/またはさらなる標的時間を受信し得る。あるいは、制御論理は、制御論理がインスタンス化される前にユーザーによって作成または修正された構成ファイルから、該(さらなる)標的時間および標的細胞密度を読み込み得る。
次いで、移動させた真核細胞を第2タンク内で培養する。複数のさらなる時間間隔のそれぞれについて(例えば、各時間間隔の開始時または終了時に)、以下のサブ方法が実施される:
‐第2タンクの培養液中の真核細胞の細胞密度を測定する段階;
‐制御論理によって、少なくとも該測定細胞密度の関数として、さらなる標的時間におけるさらなる予測細胞密度を計算する段階;
‐制御論理によって、さらなる予測細胞密度とさらなる標的細胞密度を比較する段階;
‐制御論理によって、さらなる予測細胞密度がさらなる標的細胞密度から逸脱している場合に、第2タンク内の培養液の温度を調整する段階。調整は、さらなる予測細胞密度がさらなる標的細胞密度よりも低い場合には、温度を0.1℃〜1℃上げることによって実施される。さらなる予測細胞密度がさらなる標的細胞密度よりも高い場合には、制御論理は温度を0.1℃〜1℃下げる。
態様に応じて、第1標的細胞密度と第2標的細胞密度は同じであってもよいし、または互いに異なってもよい。
いくつかの態様に従って、第1タンクおよび第2タンクはそれぞれ、バッチ培養として細胞培養物を増殖させるように構成されたバイオリアクターである。本方法は、生産バイオリアクターに接種するための規定された最小数の細胞を生成するためのシードトレイン培養工程において用いられる。
細胞培養物を、第1標的時間における第1標的細胞密度まで半自動的にまたは完全に自動的に増殖させることができるため、上記のことは有利であり得る。次いで、細胞培養物を、別のより大きなタンク、例えばさらなる生産前バイオリアクターまたは槽に移動させることができる。次いで、細胞をさらなる第2標的時間における第2標的細胞密度まで増殖させる。大型生産バイオリアクターに接種するのに十分な数の細胞が得られるまで、前記段階を、3つ、4つ、またはさらにより多くの生産前槽またはバイオリアクターについて反復することができる。したがって、本方法は、シードトレイン培養プロジェクトにおいて細胞培養物を増殖させるために使用され得る。
態様に従って、第1タンクは、生産前バッチ培養として細胞培養物を増殖させるように構成されたバイオリアクターである。第2タンクは、第1タンクよりも大きく、生産培養として細胞培養物を増殖させるように構成されたバイオリアクターである。
生産培養は、例えば流加培養であってよい。いくつかの態様においては、生産培養もバッチ培養であってよい。
態様に従って、真核細胞は、哺乳動物細胞、特にチャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞である。あるいは、真核細胞は、ベビーハムスター腎臓 (BHK) 細胞またはヒト細胞株である。ヒト細胞株の一例は、アデノウイルスのE1遺伝子でヒト胚網膜細胞を不死化することによって導出された細胞であるPer.C6である。これは、選択薬剤としてG418を用いてモノクローナル抗体 (MAb) を生産するために使用される場合が多い。さらに、真核細胞は、NS0細胞、Sp2/0細胞、COS細胞、K562細胞、またはHEK細胞であってよい。
本明細書に記載される態様はすべて、原核細胞、特に細菌細胞、例えば大腸菌 (Escherichia coli) 細胞の増殖を制御するために同様に使用され得る。
態様に従って、第1タンク内の培養液は、500リットルまたはそれ未満の容積を有する。
態様に従って、本方法は、複数の時間間隔のそれぞれについて(例えば、各時間間隔の開始時または終了時に)、
‐所定の長さを有し、かつ現在の時間間隔の終了時に終了する現在の観察間隔を、現在の時間間隔について規定する段階;および現在の観察間隔中に測定されたすべての細胞密度を受信する段階
をさらに含む。
予測細胞密度は、少なくとも測定細胞密度の関数として計算される。計算は、標的時間まで、現在の観察間隔中に測定された細胞密度を外挿することを含む。
例えば、制御論理は、時計によって提供される現在時間を判定し、観察間隔の長さを決定するために構成ファイルまたはユーザー入力を解析することにより、現在の観察間隔を規定し得る。制御論理は次いで、現在時間において終了し、かつ現在時間よりも決定された長さだけ前に開始する時間間隔として、現在の観察時間間隔を特定する。異なる現在時間において決定される観察間隔の例は、図2に記載される。
態様に従って、外挿は、現在の観察時間中に測定された細胞密度に対して、カーブフィッティング操作または回帰分析を実施することを含む。
態様に従って、複数の時間間隔のすべての時間間隔は等しい長さである。
態様に従って、複数の時間間隔のすべての時間間隔は異なる長さである。
態様に従って、本方法は、現在時間が標的時間に近いかどうかを判定する段階を含む。例えば、a) 培養液の接種からの所定の継続時間が経過した場合、またはb) 標的時間における細胞密度の予測の所定の回数が既に実施された場合、またはc) 標的細胞密度の所定の割合に到達した場合、またはd) 標的時間の前の所定時間、例えば標的時間の13時間前に到達した場合に(典型的に、標的時間の前の該所定時間は、12時間〜14時間の範囲内である)、制御論理は、現在時間が標的時間に近いと判定し得る。現在時間が標的時間に近いかどうかを自動的に判定するその他の方法が存在する。あるいは、ユーザーは、GUIを介して現在時間が標的時間に近いという指示を入力することが可能である。
現在時間が標的時間に近いという判定に応答して、制御論理は、複数の時間間隔のうちの将来のすべての時間間隔の長さを短縮する。
細胞密度予測の精度および増殖制御の精度が向上し得るため、上記のことは有益であり得る:培養時間の終了時には、細胞密度は既に高く、予測におけるわずかな誤差と、各予測の間の長い時間間隔が組み合わさることで、標的時間において所望の細胞密度を正確にもたらすことができない可能性がある。予測および増殖制御の精度を高めるために、本発明の態様は、培養プロジェクトの終了時にはより短い予測時間間隔を使用する。例えば、予測時間間隔の短縮は、上記のように制御論理によって完全に自動的に実施され得るか、またはユーザーによって手動で実施され得る。
態様に従って、複数の時間間隔のそれぞれは、30分未満、優先的に10分未満の継続時間を有する。例えば、時間間隔のそれぞれは、1分〜10分の範囲内の継続時間を有する。
態様に従って、観察間隔の所定の長さは、60分〜480分、特に80〜100分の範囲内、例えば90分である。
予測時間間隔および観察間隔の上記の継続時間は、高い予測精度と資源消費との間の良好な妥協を提供することが観察された(測定値の取得、予測、および予測細胞密度の比較は、処理能力を消費し、ネットワークトラフィックを生じ得、測定細胞密度および予測細胞密度を示す曲線を含む画面のアップデートは、ネットワーク、メモリ、およびCPU容量をさらに消費し得る)。
態様に従って、第1タンク(ならびに任意でまた第2タンクおよび他のタンク)内の培養液は、CD-CHO AGT培地である。しかしながら、適切な培地は、細胞型、細胞増殖の期(例えば、増殖期または静止期)、生産されるべき産物の種類、使用される槽またはバイオリアクターの種類、および他の因子に強く依存する。したがって、他の培地、例えば、DMEM、RPMI、Hams F12、およびその他もまた使用され得る。
さらなる態様に従って、温度の調整は、温度を0.1℃〜0.5℃、優先的に0.1℃〜0.2℃上げること、または温度を0.1℃〜0.5℃、優先的に0.1℃〜0.2℃下げることを含む。
態様に従って、GUIまたは制御システムの別の構成要素は、ユーザーが、細胞培養プロジェクトの実行前および/または実行中に付加的な制御パラメーターを入力できるようにする。例えば、ユーザーは、予測時間間隔の長さ、観察間隔の長さ、調整間隔の長さ、予測細胞密度を標的細胞密度よりも(十分に)低いもしくは高いと見なすための上方および/もしくは下方閾値、ならびに/または調整行為当たりの温度調整の量を指示することが可能であり得る。優先的に、ユーザーは、正の温度調整段階および負の温度調整段階に関して異なる値を入力することが可能である。これは、バイオリアクターの加熱および冷却特性に対する、温度制御のより良好な適合化であり得る。
さらなる局面において、本発明は、規定の将来時間において所望の細胞密度の真核細胞を提供するための方法に関する。本方法は、人のユーザーによって、制御論理のインターフェースを介して、所望の細胞密度および将来時間を入力する段階を含む。所望の細胞密度は、入力された将来時間における真核細胞の所望の細胞密度を表す。本明細書に記載される態様のいずれか1つの方法に従って、真核細胞の増殖を制御するために、制御論理が用いられる。増殖制御は、入力された所望の細胞密度が標的細胞密度として使用され、入力された将来時間が標的時間として使用され、かつ真核細胞が標的時間において標的細胞密度で提供されるように、実施される。
さらなる局面において、本発明は、真核細胞の増殖を制御するためのシステムに関する。システムは、規定の将来時間において規定の細胞数を生じるように制御されるべきである。システムは、制御論理と、制御論理を実行するように構成されたプロセッサとを含む。制御論理は、培養液中に真核細胞を含む第1タンクに動作可能に連結される。制御論理は、標的細胞密度および標的時間を受信するように構成される。例えば、標的細胞密度および標的時間は、ネットワークインターフェースから受信され得るか、制御論理の構成ファイルから読み込まれ得るか、またはグラフィカルユーザーインターフェースを介してユーザー入力として受信され得る。標的細胞密度は、標的時間における真核細胞の所望の細胞密度を表す。標的時間は将来の時点を表す。
システムは、複数の時間間隔のそれぞれについて(例えば、各時間間隔の開始時または終了時に)、
‐第1タンクの培養液中の真核細胞の測定細胞密度を受信する段階;
‐少なくとも測定細胞密度の関数として、標的時間における予測細胞密度を計算する段階;
‐予測細胞密度と標的細胞密度を比較する段階;
‐制御論理によって、予測細胞密度が標的細胞密度から逸脱している場合に第1タンク内の培養液の温度を調整する段階であって、予測細胞密度が標的細胞密度よりも低い場合には、制御論理は温度を0.1℃〜1℃上げ、予測細胞密度が標的細胞密度よりも高い場合には、制御論理は温度を0.1℃〜1℃下げる、段階
を含むサブ方法を実施するように構成される。
態様に従って、システムは、第1タンク、および任意でまた1つまたは複数のさらなるタンクをさらに含む(細胞が、以前使用されたタンク内で所望の細胞密度に達した時に、さらなるタンクは第1タンクまたは別のタンクから細胞培養物を受け取ることができる)。
態様に従って、第1タンクは、培養液中の細胞密度のオンライン測定を実施するための計器を含む。複数の時間間隔のそれぞれにおいて測定される真核細胞の細胞密度は、オンライン測定値である。
態様に従って、制御論理は、終了基準が満たされた時に少なくとも温度の調整を終了させるように構成される。終了基準は、例えば、標的時間に到達した、または測定細胞密度が標的細胞密度と等しいかもしくはそれよりも高いということであってよい。
態様に従って、システムまたはその構成要素の1つ、例えば制御論理は、グラフィカルユーザーインターフェース (GUI) を提供するように構成される。GUIは、制御論理が予測細胞密度を計算し始める前に、ユーザーが標的時間および標的細胞密度を入力できるようにする。GUIはまた、制御論理が複数の時間間隔において予測細胞密度を計算している間、ユーザーが標的時間および/または標的細胞密度を修正できるようにし得る。
態様に従って、システムは少なくとも第1タンクおよび第2タンクを含む。第1タンクは、ユーザーが、第1タンク内の培養液およびその中に含まれる真核細胞を第1タンクから第2タンクに移動できるように適合化される。例えば、第1タンクは、細胞を含む培地を第1タンクから第2タンクに手動でまたは自動的に移動させるための開口部またはパイプを含み得る。
第2タンクは第1タンクよりも大きく、細胞を含む培地および付加的な無細胞培地を受け取るように、ならびに移動させた真核細胞を増殖させるように適合化される。
制御論理は、例えば記憶媒体からさらなる標的時間を読み込むことにより、またはユーザーからGUIもしくはネットワークインターフェースを介して標的時間を受信することにより、さらなる標的細胞密度およびさらなる標的時間を受信するように構成される。さらなる標的細胞密度は、さらなる標的時間における真核細胞の所望の細胞密度を表す。さらなる標的時間は、(細胞を第1タンクから第2タンクに移動させた時間よりも後の)将来の時点を表す。
第2タンクの細胞密度計は、本明細書において「さらなる時間間隔」または「さらなる予測時間間隔」と称される複数の時間間隔のそれぞれについて、第2タンクの培養液中の真核細胞の細胞密度を測定するように構成される。制御論理は、さらなる時間間隔のそれぞれについて、
‐少なくとも該測定細胞密度の関数として、さらなる標的時間におけるさらなる予測細胞密度を計算すること;
‐さらなる予測細胞密度とさらなる標的細胞密度を比較すること;
‐さらなる予測細胞密度がさらなる標的細胞密度から逸脱している場合に、第2タンク内の培養液の温度を調整すること
を行うように構成される。調整は、さらなる予測細胞密度がさらなる標的細胞密度よりも低い場合には、温度を0.1℃〜1℃上げること;またはさらなる予測細胞密度がさらなる標的細胞密度よりも高い場合には、温度を0.1℃〜1℃下げることを含む。
態様に従って、第1タンクは、バッチ培養として細胞培養物を増殖させるように構成されたバイオリアクターである。第2タンクは、第1タンクよりも大きく、バッチ培養として細胞培養物を増殖させるように構成されたバイオリアクターである。第1タンクおよび第2タンクは、生産バイオリアクターに接種するための規定された最小数の細胞を生成するためのシードトレイン培養工程において用いられるように適合化される。
態様に従って、第2タンクは、第2タンク内の細胞密度を測定するための計器を含み、かつ制御論理の温度制御コマンドに従って第2タンク内の培地の温度を調整するための温度制御装置を含む。
態様に従って、第1タンクは、生産前バッチ培養として細胞培養物を増殖させるように構成されたバイオリアクターである。第2タンクは、第1タンクよりも大きく、生産培養として細胞培養物を増殖させるように構成されたバイオリアクターである。
態様に従って、真核細胞は、哺乳動物細胞、特にチャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞である。
態様に従って、第1タンク内の培養液は、500 Lまたはそれ未満の容積を有する。
態様に従って、制御論理は、複数の時間間隔のそれぞれについて、
‐所定の長さを有し、かつ現在の時間間隔の終了時に終了する現在の観察間隔を、現在の時間間隔について規定すること;および
‐現在の観察間隔中に測定されたすべての細胞密度を受信すること
を実施するように構成される。
少なくとも測定細胞密度の関数として予測細胞密度を計算することは、標的時間まで、現在の観察間隔中に測定された細胞密度を外挿することを含む。
態様に従って、外挿は、現在の観察時間中に測定された細胞密度に対して、カーブフィッティング操作または回帰分析を実施することを含む。
態様に従って、時間間隔は等しい長さである。
態様に従って、時間間隔は異なる長さである。特に、細胞培養プロジェクトの最後の3分の1における少なくともいくつかの時間間隔は、細胞培養プロジェクトの最初の3分の1における時間間隔よりも短い。
いくつかの態様に従って、制御論理は、現在時間が標的時間に近いかどうかを判定するように構成される。現在時間が標的時間に近いという判定に応答して、制御論理は、複数の時間間隔のうちの将来のすべての時間間隔の長さを短縮する。
態様に従って、複数の時間間隔のそれぞれは、30分未満、優先的に10分未満の範囲内の継続時間、例えば1〜10分の範囲内の継続時間を有する。
態様に従って、観察間隔の所定の長さは、60分〜480分の範囲内である。
態様に従って、温度の調整は、温度を0.1℃〜0.5℃、優先的に0.1℃〜0.2℃上げること、または温度を0.1℃〜0.5℃、優先的に0.1℃〜0.2℃下げることを含む。
態様に従って、制御論理は、制御論理による第1タンクの以前の温度調整から少なくともある調整時間間隔が経過した場合にのみ、該第1タンクの温度調整を実施するように構成される。調整時間間隔の継続時間は、60〜120分の範囲内である。
態様に従って、制御論理は、(例えば、GUIを提供することにより)人のユーザーが、制御論理のインターフェースを介して、所望の細胞密度、および該所望の細胞密度に到達する将来時間を入力できるように構成される。所望の細胞密度は、入力された将来時間における真核細胞の所望の細胞密度を表す。制御論理はさらに、本明細書に記載される態様のいずれか1つに従って、真核細胞の増殖を制御するように構成される。増殖制御は、入力された所望の細胞密度が標的細胞密度として使用され、入力された将来時間が標的時間として使用され、かつ真核細胞が標的時間において標的細胞密度で提供されるように、実施される。
本明細書で用いられる「タンク」とは、液体を保持、輸送、または貯蔵するための容器である。タンクは、例えば、バイオリアクター、特に生産前もしくは生産バイオリアクター、バイアル、または回収もしくは輸送タンクであってよい。例えば、タンクは、細胞の維持または増殖を可能にする一連の制御された物理的条件下で、液体培養液中の複数の細胞(例えば、組換え哺乳動物細胞)を培養するのに適した内容積を有する容器であってよい。タンクの非限定的な例は、バイオリアクター(例えば、本明細書に記載されているか、または当技術分野で公知の例示的なバイオリアクターのいずれか)である。
本明細書で用いられる「バイオリアクター」とは、生物またはそのような生物に由来する生化学的活性物質を伴う化学的工程が行われる槽である。この工程は、例えば好気性または嫌気性であってよい。形状(例えば、円筒形またはその他)、サイズ(例えば、ミリリットル、リットル〜立方メートル)、および材料(ステンレス鋼、ガラス、プラスチック、等)が異なる、複数の異なるバイオリアクタータイプが存在する。態様に従って、バイオリアクターは、細胞培養において細胞または組織を増殖させるように適合化される。態様および/または動作様式に応じて、バイオリアクターは、バッチバイオリアクター、流加バイオリアクター、または連続バイオリアクター(例えば、連続撹拌タンクリアクターモデル)であってよい。連続バイオリアクターの一例はケモスタットである。
本明細書で用いられる「制御論理」は、一つのプログラム論理、例えば、アプリケーションプログラムまたはモジュール、コンピューターチップ、あるいは細胞培養物を含むタンクから1つまたは複数の測定値を受信および処理するように、該測定値を処理するように、ならびに細胞培養物の増殖を制御するために、タンクまたはタンクに動作可能に連結されたハードウェアモジュールに1つまたは複数の制御コマンドを送信するように構成された別の一つのソフトウェア、ハードウェア、もしくはファームウェア、またはそれらの組み合わせである。例えば、制御論理は、バイオリアクターモニタリングソフトウェアおよび制御ソフトウェアの一部であるか、またはこれと相互運用するプログラムモジュールであってよい。制御論理はまた、実験室情報管理システム (LIMS) の一部であってもよい。
タンクに「動作可能に連結された」「測定装置」または「計器」は、例えば、恒久的または一時的にタンクの内部に配置されるかまたはタンクの壁に連結され、タンクまたはその中に含まれる細胞培養物もしくは培養液の1つまたは複数の物理学的または化学的パラメーターを測定するように構成された測定装置であってよい。測定は、コマンドに応答して、または定期的に自動的に実施され得る。
本明細書で用いられる「オンライン測定」とは、タンクまたはその中に含まれる細胞培養物もしくは培養液の状態特徴を説明する測定値を得る工程であって、測定を実施するのに必要な期間が、該特徴が有意に変化する時間よりも短い工程である。有意な変化は、所定の閾値を超える変化であってよい。例えば、5%を超える変化が有意な変化と見なされ得る。閾値は、異なる特徴によって変動し得る。オンライン測定により、バイオリアクターをリアルタイムで制御することが可能になり得る。特に、用いられる「オンライン測定」は、直接的に、すなわち培地から試料を採取して該試料を測定することなく、タンクまたはその中に含まれる細胞培養物もしくは培養液に対して直接実施される測定であってよい。
「オフライン測定」とは、タンクまたはその中に含まれる細胞培養物もしくは培養液の状態特徴を説明する測定値を得る工程であって、測定を実施するのに必要な期間が、該特徴が有意に変化し得る時間よりも長い工程である。有意な変化は、所定の閾値を超える変化であってよい。オフライン測定の典型例は、例えば現在の細胞密度を測定するための、培地の自動、半自動、または手動サンプリングである。オフライン測定は、不連続なサンプリング工程に基づいている。試料を採取してから、その間にバイオリアクター特徴が変化している可能性があるので、測定の時点と各制御操作を実施する時点との間にはかなりの待ち時間があるために、オフライン測定データに基づくバイオリアクターの制御は低品質になる傾向がある。有意な変化は、各状態特徴に応じて、所定の閾値、例えば2%または任意の他の割合値を超える変化であってよい。
「温度をX℃上げるまたは下げる」ということは、例として、例えば細胞密度の予測が実施されるのと同時に、物体の温度を、測定された現在の温度に対して上げるまたは下げることを意味する。態様に従って、タンクはオンライン温度計を含む。
本明細書で用いられる「カーブフィッティング」の工程とは、おそらくは制約を受けた、一連のデータ点(この場合:測定細胞密度)に最もよく当てはまる曲線または数学関数を構築する工程である。カーブフィッティングは、データへの正確な当てはめ、またはデータにおおよそ当てはまる「平滑」関数が構築される平滑化のいずれかを伴い得る。
本明細書で用いられる「回帰分析」は、ランダムな誤差と共に観察されるデータに当てはめられる曲線に不確実性がどれだけ存在するかなど、統計的推測の問題にさらに焦点を当てる工程である。当てはめられた曲線は、任意にGUI上に表示される。当てはめられた曲線は、データが利用できない関数の値を推測するために、および2つまたはそれ以上の変数間の関係を要約するために用いられる。
本明細書で用いられる「回帰分析」という用語は、変数間の関係を推定し、その関係を関数、例えば線形または非線形曲線関数で表すための統計的工程を指す。最も一般的には、回帰分析は、独立変数を考慮した従属変数の条件付き期待値、すなわち独立変数が固定された場合の従属変数の平均値を推定する。例えば、将来時間と予測細胞密度の関係を推定するために、現在の測定細胞密度および増殖モデル、例えば線形または対数増殖モデルを用いることができる。回帰分析を行うための多く技法が開発されてきた。例えば、線形回帰または通常の最小二乗回帰を用いることができる。回帰分析の実施は、分類で用いられる離散応答変数とは対照的に、連続応答変数の推定を含み得る(メトリック (metric) 回帰)。
本明細書で用いられる「外挿」という用語は、観察データの範囲を超えて伸びる予測データ値を計算するために、観察データを使用すること、または(例えば、観察データを当てはめるかもしくは内挿することにより)観察データから導出された曲線を使用することを指す。例えば、外挿は、過去の時間間隔において得られた観察データ値を通して曲線を当てはめることによって、将来データ値を予測し得る。曲線は線形または非線形曲線であってよい。観察データの範囲は、例えば、細胞密度が特定のタンク内で測定された過去の時間間隔であってよい。該時間間隔は、本明細書において「観察間隔」とも称される。観察時間間隔は、各予測について新規に決定されるため、「現在の観察間隔」とも称される。将来の曲線部の計算は、観察データを反映するのと同じ程度に、曲線を構築するために用いられた方法を反映する可能性があるため、ある程度の不確実性を被る。
真核細胞は、特に、任意のヒトおよび非ヒト哺乳動物(例えば、ヒト、ハムスター、マウス、ミドリサル、ラット、ブタ、ウシ、またはウサギ)に由来する細胞であってよい。例えば、哺乳動物細胞は不死化細胞であってよい。いくつかの態様において、哺乳動物細胞は分化細胞である。いくつかの態様において、哺乳動物細胞は未分化細胞である。哺乳動物細胞のさらなる例は、当技術分野で公知である。
本明細書で用いられる「シードトレイン工程」という用語は、第1細胞培養物における出発細胞(例えば、組換え哺乳動物細胞)数が、0.25 x 106個/mLを超える初期細胞密度で典型的な生産バイオリアクターに接種するのに十分な数の細胞を含むN - 1細胞培養物に拡大される多段階法である。したがって、シードトレインタンクは、シードトレイン工程において用いられるように適合化された槽またはバイオリアクターである。シードトレインの目的は、生産バイオリアクターに接種するのに十分な数の細胞を生成することである。細胞株の維持に用いられる融解容積から、継代ごとにより大きくなる多くの培養システム(例えば、Tフラスコ、ローラーボトルまたは振盪フラスコ、小規模バイオリアクターシステム、およびその後のより大きなバイオリアクター)に細胞を通すことによって、細胞数を増加させなければならない。単回使用システムを適用することができ、システムに部分的に充満した状態で接種し、その後培地の添加により培養容積を増加させる)。典型的に、生産バイオリアクターには、最も大きなシードドレイン規模のものから接種する。シードトレインは、例えばある規模からより大きな規模へ細胞を継代するための最適な時点の選択といった最適化のためのスペースを提供する。いくつかの態様に従って、シードトレイン工程において用いられる各タンク内の細胞は、規定の時間内に、生産バイオリアクターの標的細胞密度と同じ細胞密度まで増殖させる。シードトレインタンクおよび生産タンクのそれぞれにおいて、本明細書に記載される態様による増殖制御法を、同じ共通の標的細胞密度に基づいて適用することができる(しかし典型的には、各シードトレイン段階の工程特殊性に応じて、標的時間は異なる。他の態様において、シードトレイン工程における異なる段階は、異なる標的細胞密度を使用する。
本明細書で用いられる「バッチ培養」とは、バッチ様式で操作されるタンク内で増殖が行われる細胞培養である。タンク、例えばバイオリアクターがバッチ様式で操作される場合、培地は全培養期間を通して同じままである。したがって、培養液には(流加工程のように)追加も補充もされず、また(ケモスタットバイオリアクターのように)培養液が部分的に交換されることもない。バッチ培養において、バッチ培養における細胞数の増加と定義される細胞の増殖は典型的に、初期恒常性(遅滞期)の後に非常に強く増加し(対数期)、次いで徐々に減少し(移行期/「静止期」)、必要に応じて負となる(衰退期)。バッチ培養における増殖の停滞の理由は、栄養培地の枯渇および毒性物質の蓄積である。
本明細書で用いられる「流加培養」とは、流加様式で操作されるタンク内で増殖が行われる細胞培養である。タンクは、特に、液体培養液中に複数の細胞を含む生産タンクであってよい。流加様式では、培養中にタンクから液体培養液が実質的にまたは著しく除去されることなく、新鮮な液体培養液が定期的にまたは連続してタンクに添加される。新鮮な培養液は、培養の開始時にタンク内に存在した培養液と同じであってよい。流加培養のいくつかの例において、新鮮な液体培養液は、培養の開始時にタンク内に存在した液体培養液の濃縮型である。
本明細書で用いられる「グラフィカルユーザーインターフェース (GUI)」とは、ユーザーがグラフィカルアイコンおよび視覚的インジケーターを通して電子装置、例えばコンピューターまたはスマートホンと相互作用できるようにする、一種のユーザーインタフェースである。GUIは、ユーザーがGUIのグラフィカル要素(例えば、アイコン、ボタン、バー、テキスト領域、等)の直接操作を通して、ソフトウェアおよび/またはハードウェアベースの機能、例えば制御論理またはタンクのハードウェアモジュール(例えば、サーモスタット)を制御できるようにする。
「培養」または「細胞培養」という用語は、一連の制御された物理的条件下での哺乳動物細胞(例えば、組換え哺乳動物細胞)の維持または増殖を意味する。「哺乳動物細胞の培養物」または「細胞培養物」という用語は、一連の制御された物理的条件下で維持されるかまたは増殖される、複数の哺乳動物細胞を含有する液体培養液を意味する。
「液体培養液」または「培養液」という用語は、細胞(例えば、哺乳動物細胞または細菌)がインビトロで成長または増殖することを可能にするのに十分な栄養素を含有する液体を意味する。例えば、液体培養液は:アミノ酸、プリン、ピリミジン、コリン、イノシトール、チアミン、葉酸、ビオチン、カルシウム、ナイアシンアミド、ピリドキシン、リボフラビン、チミジン、シアノコバラミン、ピルビン酸、リポ酸、マグネシウム、グルコース、微量金属または金属塩、および緩衝剤を含有し得る。いくつかの態様において、液体培養液は哺乳動物由来の血清を含有し得る。いくつかの態様において、液体培養液は哺乳動物成長ホルモンおよび/または哺乳動物増殖因子を含有し得る。あるいは、培養液は最少培地(例えば、無機塩、炭素源、および水のみを含有する培地)であってよい。培地は、哺乳動物由来の血清を含み得る。培地は、化学成分のすべてが公知である既知組成培養液であってよい。
態様に従って、細胞は、組換えタンパク質もしくはペプチド、例えば免疫グロブリン、または他の形態の生物学的産物を産生するように適合化される。「組換え」または「操作された」という用語は、生物(例えば、哺乳動物)の中に存在する内因性核酸によって天然ではコードされないペプチドまたはポリペプチドを意味する。操作されたタンパク質の例には、酵素、融合タンパク質、抗体、抗原結合タンパク質、および製薬工業または生物医学研究において用いられる他の種類のペプチドまたはタンパク質が含まれる。
態様に従って、制御論理は、第1タンクの培地中の所定の最小細胞密度が測定された後、比較結果に基づいて第1タンク内の温度を調整し始める。最小細胞密度は、例えば100000個/mLであってよい。予測精度は、高い密度値よりも低い密度値でより低いため、これは有益であり得る。さらに、特に細胞培養プロジェクトの開始時において、温度はしたがって、速い増殖速度に最適な温度のままであってよく、増殖速度の「微調整」は、不必要な遅延を回避するために細胞培養プロジェクトの後の期まで遅延され得る。
いくつかの態様に従って、制御論理は、制御論理による特定タンクの以前の温度調整から少なくともある調整時間間隔が経過した場合にのみ、該タンクの温度調整を実施する。
いくつかの態様に従って、システムは、細胞培養プロジェクトが開始する前にユーザーが調整間隔を指定できるようにし、および任意にプロジェクトの実行中にユーザーが調整間隔を動的に修正できるようにする。例えば、GUIは、ユーザーが、標的時間、標的細胞密度、およびさらなる最適な制御パラメーターに加えて、「調整間隔」も指定できるようにし得る。
本明細書で用いられる「調整間隔」とは、制御論理が同じタンクの温度を再調整することが可能になるまでに、制御論理によって以前に行われた温度調整から経過していなければならない最小時間である。優先的に、調整間隔は、およそ60〜120分の範囲内の継続時間を有する。
調整間隔は、制御論理があまりにも頻繁に温度を変更するのを禁止するため、上記の指定範囲内の調整間隔を使用することは有益であり得る。細胞の代謝が異なる温度に高頻度で適応しなければならないため、これは細胞の全体の増殖速度に負の影響を及ぼした可能性がある。
本明細書で用いられる「生産タンク」という用語は、静止期の細胞を培養するように適合化された大規模タンク、特に大規模バイオリアクターを指す。生産タンクは典型的に、所望の生物学的産物、例えばタンパク質またはペプチドを生産し、および任意に回収するために用いられる。大規模タンクは、例えば、500 L、1,000 L、5,000 L、10,000 L、20,000 L、50,000 L、または100,000 Lを超える内部容積を有する。例えば、生産タンクは灌流バイオリアクターであってよい。
本明細書で用いられる「灌流バイオリアクター」という用語は、液体培養液中の複数の細胞(例えば、組換え哺乳動物細胞)を培養するための内部容積を有し、バイオリアクター中の液体培養液を定期的にまたは連続して取り出すための手段(例えば、出口、入口、ポンプ、または他のそのような装置)を有し、かつバイオリアクターに実質的に同じ容積の交換液体培養液を添加するための手段(例えば、出口、入口、ポンプ、または他のそのような装置)を有するバイオリアクターを指す。交換液体培養液の添加は、バイオリアクターからの液体培養液の取り出しと実質的に同時に、またはその直後に実施することができる。バイオリアクターから液体培養液を取り出すための手段、および交換液体培養液を添加するための手段は、単一装置またはシステムであってよい。
以下に、図面を参照しながら、本発明の態様を単なる例としてより詳細に説明する。
第1タンクおよび第2タンクにおける細胞増殖を制御するためのシステムのブロック図である。 図2は、予測時間間隔およびいくつかの異なる現在の観察間隔を示す。 図2は、予測時間間隔およびいくつかの異なる現在の観察間隔を示す。 図2は、予測時間間隔およびいくつかの異なる現在の観察間隔を示す。 図2は、予測時間間隔およびいくつかの異なる現在の観察間隔を示す。 温度を調整することによって細胞増殖を制御するための方法のフローチャートである。 複数の生産前タンクおよび生産タンクを含むシステムを示す。 6つの細胞培養プロジェクトの細胞密度プロファイルを図示する。 図5の6つの細胞培養プロジェクトのうちの1つについて得られた、細胞密度シグナルに及ぼす温度の影響をより詳細に示す。 図5の6つの細胞培養プロジェクトのうちの1つについて得られた、細胞密度シグナルに及ぼす温度の影響をより詳細に示す。 3つの細胞培養プロジェクトに関する、オンラインおよびオフライン細胞密度の温度調整への依存を表すプロットを示す。 さらなる細胞培養プロジェクトに関する、細胞密度の温度調整への依存を表すさらなるプロットを示す。 制御論理が酸素供給の故障を補償する能力を図示する2つのプロットを示す。 制御論理が酸素供給の故障を補償する能力を図示する2つのプロットを示す。 制御論理がpH制御の故障を補償する能力を図示する2つのプロットを示す。 制御論理がpH制御の故障を補償する能力を図示する2つのプロットを示す。 図14は、制御論理が酸素供給およびpH制御の両方の故障を補償する能力を図示する3つのプロットを示す。 図14は、制御論理が酸素供給およびpH制御の両方の故障を補償する能力を図示する3つのプロットを示す。 制御論理が酸素供給および温度制御の両方の故障を補償する能力を図示する2つのプロットを示す。
詳細な説明
図1は、第1タンク130および第2タンク132における細胞増殖を制御するためのシステム102のブロック図である。タンクのそれぞれについての増殖制御は、図3のフローチャートによって図示される方法に従って実施され得る。したがって、図3もまた参照することによって、図1のシステムを以下に説明する。
データ処理システム102は、1つまたは複数のプロセッサ104、メインメモリ106、および時計108を含む。時計108は、絶対項または相対項で時間を測定するように構成される。それは、例えば図2a〜2dに示されるように、予測時間間隔および観察間隔を測定するために使用される。加えて、システム102は、制御論理116を実装するコンピューター可読命令を含む不揮発性記憶媒体114を含む。制御論理は、独立型のアプリケーションプログラム、または1つもしくは複数のバイオリアクターおよび/もしくは実験装置を制御するために用いられるアプリケーションプログラムもしくはソフトウェアフレームワークのサブモジュールもしくはユニットであってよい。
加えて、記憶媒体114は、グラフィカルユーザーインターフェースGUI 110を実装するコンピューター可読命令を含む。GUIは、ユーザー118が標的時間112および標的細胞密度114を指定し入力できるようにする。任意に、GUIは加えて、ユーザーが観察間隔138の継続時間を指定できるようにし、この観察間隔の間に、細胞密度が測定され、制御された細胞培養物が標的細胞密度114に到達する将来時間を予測するために外挿される。例えば、GUI 110は、HTMLインターフェース、またはJavaもしくはC#ベースのプログラム論理であってよい。いくつかの態様に従って、GUI 110は、細胞培養プロジェクトの開始前に、ユーザーが標的細胞密度、標的時間、および観察間隔を指定できるようにするのみならず、細胞培養プロジェクトの進行中に、既に入力され保存された標的細胞密度、標的時間、および/または観察間隔をユーザーが修正できるようにする。
システム102は、1つもしくは複数のタンクから測定データを受信するため、および/または1つもしくは複数のタンクに制御コマンドを送信するためのインターフェース120をさらに含む。インターフェースは、受信した測定データを制御論理116に転送し、制御論理からの制御コマンドを1つまたは複数のタンクに転送する。
データ処理システム102は、標準のコンピューターシステムとして、サーバーコンピューターシステムとして、またはモバイル通信装置、例えばスマートホンもしくはタブレット型コンピューターとして実装され得る。
図1に示される例において、システム102は、生産前バイオリアクター130に動作可能に連結され、これを制御する。バイオリアクター130は、培地の温度を上げるかまたは下げるための要素138を含む。この要素は、例えば、その標的温度が制御論理116によって制御されるサーモスタットであってよい。加えて、生産前バイオリアクター130は、試料を採取することなく、第1バイオリアクター130の培地M1中の現在の細胞密度を測定するように適合化されたオンライン細胞密度計134を含む。バイオリアクター130は、生産前細胞培養プロジェクトが開始した時点でいかなる細胞も含まない培養液M1を含む。
生産前バイオリアクター130内で細胞の増殖を始める前に、ユーザー118はGUI 110およびコンピューターシステム102をインスタンス化し、特定の細胞型についての標的細胞密度、およびバイオリアクター130内の細胞が標的細胞密度に到達する時間を規定する標的時間を入力する。典型的に、標的時間は、特定の該細胞培養プロジェクトが特定の増殖段階に入ることが公知である時間、例えば、生産前もしくは生産バイオリアクターについての増殖段階の終了時、または生産リアクターについての静止期の終了時の+/- 20%の範囲内である。
例えば、ユーザーは、月曜日の午前10.00時にGUIをインスタンス化することができる。ユーザーは、文献または以前の実験に従って、37℃の「一定温度」条件下で所望の細胞密度に到達するのに典型的に48時間を必要とする生産前CHO細胞培養物を増殖させることを望み、その1時間後、融解したCHO細胞試料をバイオリアクター130に接種することにより、午前11.00時にバイオリアクター130において生産前細胞培養工程を開始することができる。午前10.00時に、ユーザーは標的時間112、標的細胞密度、および観察時間間隔を入力する。例えば、ユーザーは、標的細胞密度について400万個/ml、および将来標的時間として「月曜日の午前11.00時 + 48時間」を入力することができる。加えて、ユーザーは、予測時間間隔を例えば約1分に、および観察間隔を例えば90分に設定することができる。ユーザーは、細胞培養工程を実施するのに必要な時間を1時間短縮するために、標的時間を「月曜日の午前11.00時 + 47時間」に設定することさえもできる。
GUI 110を介して制御論理を構成した後、午前11.00時に、ユーザーは、融解したCHO細胞試料をバイオリアクター130内の無細胞培地M1に接種することにより、生産前細胞培養を開始する。タンクの出発温度は37℃であってよい。
本明細書に記載される制御方法の第1段階302において、例えばおよそ月曜日の午前11.00時に、制御論理は、記憶媒体114から、ユーザー118によって前もって入力された標的細胞密度114、標的時間112、および任意に観察間隔138の継続時間を読み込む。読み込まれた標的細胞密度は、入力された標的時間(月曜日の午前11.00時 + 48時間)における真核細胞の所望の細胞密度を表す。当然のことながら、この時間は、態様に応じて様々な異なる形式で、例えば、絶対時間として、または現在時間から開始するもしくは特定の将来時間から開始する相対時間として指定され得る。
段階304において、真核細胞を第1タンク130の培養液M1中で培養する。例えば、段階304は、タンク130内の培地M1にCHO細胞を接種する段階を含み得る。他の態様に従って、段階304を段階302の直前に実施すること、および302、304の両段階を基本的に並行して実施することもまた可能である。
制御論理は次いで、例えば1分という所定の長さの、「時間間隔」とも称される一連の「予測時間間隔」I1、...、I4367を自動的に特定し得る。第1時間間隔は、例えば接種の時間の直前または直後に開始し得る。
複数の時間間隔のそれぞれ306について(例えば、時間間隔のそれぞれの開始時または終了時に)、以下のサブ方法が実施される。
段階308において、オンライン細胞密度計134は、第1タンク130内の培養液M1中の真核細胞の細胞密度122を測定する。測定値122は、インターフェース122を介して制御論理116に送信される。
測定された細胞密度値122の受信に応答して、制御論理は段階310において、少なくとも現在測定された細胞密度の関数として、標的時間「月曜日の午前11.00時 + 48時間」における予測細胞密度を計算する。特に、標的時間における細胞密度は、図2に示されるようにスライドする観察間隔中に測定された複数の細胞密度の関数として予測され得る。
加えて、制御論理は段階312において、予測細胞密度と標的細胞密度を比較する。
段階314において、制御論理は、予測細胞密度が標的細胞密度に対してより高いか、またはより低いか、または同一であるかを判定する。予測細胞密度がユーザーによって入力された標的細胞密度と同一であるか、または少なくとも標的細胞密度の周りの許容閾値帯内にあると、制御論理が判定した場合には、バイオリアクター130内の培地の現在の温度は、段階318において能動的または受動的に維持される。予測細胞密度がユーザーによって入力された標的細胞密度よりも低いか、または標的細胞密度を下回る下限許容閾値よりも低いと、制御論理が判定した場合には、制御論理は、段階316においてサーモスタットにバイオリアクター130内の培地の現在の温度を例えば0.4℃上げさせる温度調整制御コマンド126をサーモスタット138に送信する。あるいは、予測細胞密度がユーザーによって入力された標的細胞密度よりも高いか、または標的細胞密度を上回る上限許容閾値よりも高いと、制御論理が判定した場合には、制御論理は、段階316においてサーモスタットにバイオリアクター130内の培地の現在の温度を例えば0.4℃下げさせる温度調整制御コマンド126をサーモスタット138に送信する。態様に従って、GUIは、ユーザー118が、温度調整が必要であると見なされた各予測時間間隔について培地に課される温度変化の量を指定できるようにする1つの104。
上記の段階308〜318を含むサブ方法は、比較的短期の、典型的には1〜数分間の複数の時間間隔のそれぞれについて完全に自動的に実施され得る。
いくつかの態様に従って、サブ方法、例えば段階314は、終了基準が満たされたかどうかを判定するためのさらなるチェックを含み得る。例えば、予測時間間隔の所定の最大回数が経過するか、標的細胞密度に到達するか、または細胞培養プロジェクトの所定の最大継続時間を超えた場合などに、制御論理は終了基準が満たされたと判定する。
繰り返し実施されるサブ方法306〜318を含む上記の方法は、生産前細胞培養バイオリアクター130内で細胞を、第2タンク132、例えば生産バイオリアクター内で引き続き行う細胞培養プロジェクトを開始するのに適した所望の細胞密度まで増殖させるために用いることができる。生産バイオリアクターもまた、各制御コマンド128を介して制御論理によって制御されるサーモスタット140、および測定細胞密度値を制御論理116に提示するオンライン細胞密度計136を含む。測定細胞密度および温度制御コマンド128は、インターフェース120を介して制御論理へおよび制御論理から伝えられる。第2タンク内の細胞培地M1は、基本的には第1タンク内の培地と同一の組成のものであってよく、または異なる組成のものであってもよい。第2タンク内の第2細胞培養プロジェクトは、標的細胞密度に到達した後の第1タンク内に含まれる細胞および任意でまた培地を第2タンクに移動させることによって開始する。さらなる無細胞培地を第2タンクに添加し、それが第2タンク内の移動させた細胞の希釈を引き起こす。
細胞を第2タンク132内で増殖させる前に、ユーザー118は、第2タンクにおける生産細胞培養工程の特性に従って、標的時間112を再構成する。例えば、第1細胞培養プロジェクトは標的時間、すなわち月曜日の午前11.00時 + 48時間」、すなわち「水曜日の午前11.00時」に正確に終了した可能性がある。第1タンクから第2タンクへの細胞の移動、制御論理の再構成、およびさらなる培地の補充は、30分を要し得る。第1タンクによって提供される細胞数から開始して、細胞を標的タンク内で37℃で増殖させる細胞培養プロジェクトは、74時間を要することが文献から公知である。したがって、水曜日の11時15分に、ユーザーは、新たな標的時間「水曜日の11時30分 + 74時間」または「土曜日の午後1時30分」を入力することによって、制御論理を再構成することができる。第1タンクから第2タンクに細胞を移動させた後、第2細胞培養プロジェクトが水曜日の午前11時30分に開始し、第1細胞培養プロジェクトについて上記されたように、第2タンク132内の培地の温度を調整することによって細胞増殖が制御される。
図2aは、細胞培養液に真核細胞が接種された時点で開始する、「時間間隔」とも称される複数の「予測時間間隔」I1、...、I4367を示す。各時間間隔について、例えば各時間間隔の終了時に、制御バイオリアクター内の培地中の現在の細胞密度が測定される。例えば、第1時間間隔I1の終了時に、細胞密度CDM1が測定される。第2時間間隔I2の終了時に、細胞密度CDM2が測定される。第3時間間隔I3の終了時に、細胞密度CDM3が測定される。以下、同様である。加えて、各時間間隔について、または少なくとも観察間隔の経過後に開始する時間間隔について、現在の観察間隔中に得られた細胞密度測定値を外挿することによって、予測細胞密度CDPが計算される。
例えば、時間間隔I6の終了時に、観察時間間隔中に測定された細胞密度CDM1、CDM2、...、CDM5、CDM6を外挿することによって、標的時間112における予測細胞密度CDP6が予測される。加えて、制御論理は予測細胞密度CDP6と標的細胞密度114を比較し、時間間隔I6の終了時に、予測細胞密度CDP6が標的細胞密度114と有意に異なる場合に制御バイオリアクターの温度を調整する。
図2bは、時間間隔I7の終了時に制御論理によって実施されるデータ処理段階を図示する。観察時間間隔中に測定された細胞密度CDM2、CDM3、...、CDM6、CDM7を外挿することによって、標的時間112における細胞密度CDP7が予測される。加えて、制御論理は予測細胞密度CDP7と標的細胞密度114を比較し、時間間隔I7の終了時に、予測細胞密度CDP7が標的細胞密度114と有意に異なる場合に、制御バイオリアクターの温度を調整する。
図2cは、時間間隔I11の終了時に制御論理によって実施されるデータ処理段階を図示する。観察時間間隔中に測定された細胞密度CDM6、CDM7、...、CDM10、CDM11を外挿することによって、標的時間112における細胞密度CDP11が予測される。加えて、制御論理は予測細胞密度CDP11と標的細胞密度114を比較し、時間間隔I11の終了時に、予測細胞密度CDP11が標的細胞密度114と有意に異なる場合に、制御バイオリアクターの温度を調整する。
図2dは、時間間隔I4365の終了時に制御論理によって実施されるデータ処理段階を図示する。観察時間間隔中に測定された細胞密度CDM4358、...、CDM4365を外挿することによって、標的時間112における細胞密度CDP4365が予測される。加えて、制御論理は予測細胞密度CDP4365と標的細胞密度114を比較し、時間間隔I4365の終了時に、予測細胞密度CDP4365が標的細胞密度114と有意に異なる場合に、制御バイオリアクターの温度を調整する。図2a〜2cに示される時間間隔と比較して、図2dに示される時間間隔は有意により短い。例えば、図2a〜2cに示される時間間隔は数分、例えば15分の継続時間を有してよく、図2dの右の部分に示される時間間隔は1分の継続時間を有してよい。例えば、制御論理は、現在時間が標的時間に近いと判定した時に、例えば標的時間の2〜3時間前に、より短い時間間隔を自動的に使用し得る。プロジェクトのこの段階において細胞密度は既に高く、軽微な測定誤差は予測標的時間に重大な影響を及ぼす可能性があるため、このことは有益であり得る。より短い時間間隔を使用することによって、異常測定値に対する方法の頑健性が向上し得るため、予測の回数および予測精度が増加し得る。
図4は、複数の生産前タンク400、412、130、および生産タンク132を含むシステムを示す。生産前タンク400、412、130は、生産バイオリアクター132内で生産細胞培養プロジェクトを開始するのに十分な数の細胞を提供するためのシードトレイン工程において用いられる。融解した細胞株試料400を第1生産前バイオリアクターに接種し、第1タンク410において第1生産前細胞培養を開始する。第1タンク内で第1標的細胞濃度に到達した時に、第1タンク内の培地および細胞を第2生産前タンク412に移動させ、第2タンク412内で第2生産前細胞培養を開始する。第2タンク内で第2標的細胞濃度に到達した時に、第2タンク内の培地および細胞を第3生産前タンク130に移動させ、第3タンク130内で第3生産前細胞培養を開始する。第3タンク内で第3標的細胞濃度に到達した時に、第3タンク内の培地および細胞を生産タンク132に移動させ、生産タンク132内で生産細胞培養を開始する。少なくとも生産バイオリアクターは、ガス流入ラインまたはパイプを含み得る。例えば、特別な供給元からバイオリアクターへ環境空気(または既に膨張させた)圧縮空気を送達するために、単一のガス流入ラインまたはパイプを使用することができる。該環境空気または圧縮空気は、地球大気に典型的であるかまたは異なる組成を有するガス、特にN2、O2、およびCO2の混合物からなり得る。加えて、またはその代わりに、N2、O2、およびCO2などの個々のガスをバイオリアクターに送達するために、単一のガス流入ラインもしくはパイプ、またはその他のガス流入ラインもしくはパイプの任意のものを使用することができる。例えば、バイオリアクターは、タンク内の細胞の通気を改善するために、微細に分散された気泡を流入ガスから生成するためのマイクロスパージャーを含み得る。
タンク410、412、130、132はそれぞれ、サーモスタット138、406、408、140、およびオンライン細胞密度計134、402、404、136を含み、制御論理116に動作可能に連結され、それによって温度制御を受ける。GUI 110は、ユーザー118が、4つの細胞培養プロエクトのそれぞれについて個々に標的時間および標的細胞密度を指定できるようにする。例えば、GUIは、第1タンク410について、標的時間および標的細胞密度、ならびに間隔長、観察間隔長、時間間隔当たりの温度調整の量などのような任意のさらなる工程パラメーターを設定するための第1ウィンドウW410を含み得る。GUIは、第2タンク412について上記パラメーター値を設定するための第2ウィンドウW412、第3タンク130について上記パラメーター値を設定するための第3ウィンドウW414、および生産タンク132について上記パラメーター値を設定するための第4ウィンドウW132を含み得る。
図5は、真核細胞の増殖速度に及ぼす温度調整の影響を試験するために実施された6つの異なるバッチ細胞培養プロジェクトを示す。図5 ffに記載される細胞培養プロジェクトのそれぞれにおいて、CHO細胞株を2リットルバイオリアクターB-DCU (Sartorius) 内で増殖させた。オンライン細胞密度測定を実施するために、EVO200システム(Fogale、現在はHamilton)を使用した。全バッチの細胞の培養は、参照細胞培養プロトコールに従って振盪フラスコ内で行った。各プロジェクトに使用したバイオリアクターには、pO2電極(Clark型)およびpHゲル電極が装備された。作業容積は常に1.3リットルであり、バイオリアクターには通気した(ヘッドスペース通気およびスパーグリング)。ヘッドスペースを通じて、二酸化炭素が強化された窒素を50 ccmでバイオリアクターに一定に通した。pO2調節器に従って、純酸素をスパーグリングを介して導入した。ガス流はマスフローコントローラー (MFC) を介して調整した。オンライン測定値はすべて、MFCSを介して記録した。Fogale EVO200システムをオンライン細胞数測定に使用した。培養物の誘電率(誘電伝導率)を測定し、定数係数によって細胞密度値に変換した。これらの値は「オンライン」細胞密度と称される。EVO200システムの測定値は、特別にプログラム化されたソフトウェアを介して読み取られ、バイオリアクターの温度を適合化するように構成された制御論理に入力された。
誘電率に基づく細胞密度が実際の細胞密度を正確に反映するかどうかをチェックするために、それらを、バイオリアクターの培養液試料を解析することによって測定されたオフライン細胞濃度と時々比較した。培養物のオフライン対照については、試料を最初は少なくとも1日に1度採取し、細胞密度をCedex細胞分析装置で測定した。プロジェクトの後期には、毎日のオフライン細胞密度測定を部分的に省略した。誘電率は発酵工程の全体にわたって一定ではなく、いくつかのパラメーターに依存するが、それにもかかわらず、関連する細胞濃度範囲内で1つの変換値のみを用いて機能することが可能であった。
6つのバッチのうちの2つは、細胞培養プロジェクトを通して一定温度で増殖させた参照バッチであった。残りの4つのバッチにおいて、異なる計画に従って日間隔 (day interval) 中の温度を下げることにより、細胞増殖に及ぼす温度の影響を調査した。2つの参照バッチ培養物および4つの試験バッチ培養物はそれぞれ、常に36.5℃の標準温度で開始して約1日おき、細胞を高い増殖速度へと調整した。その後、図に示されるように4つの試験バッチ3〜6において温度変更を行った:バッチ3は36.5℃で9.3日間増殖させ、以後35℃で増殖させた;バッチ4は36.5℃で12日間増殖させ、次いで34.5℃で1日増殖させ、その翌日およびそれ以降の日はすべて33℃で増殖させた;バッチ5は36.5℃で15日間増殖させ、次いで33℃で増殖させた;バッチ6は36.5℃で18日間増殖させ、次いで35℃で1日増殖させ、次いで34℃で1日増殖させ、その翌日およびそれ以降の日はすべて32℃で増殖させた。
バッチのそれぞれについて、連続した滑らかな線500は、実験的に決定された単一の補正係数によって誘電率尺度を「測定細胞密度」に変換することによって測定された細胞密度を示す。段階的な曲線502は、試験した全温度範囲にわたって誘電率が実際の細胞密度を正確に反映することを保証するために時々実施されたオフライン測定値を示す。細胞密度のオフライン対照測定を実施するには、試料を採取し、Cedex細胞分析装置を用いて細胞密度を測定した。
図5は、細胞増殖速度が既存のバイオリアクターシステムにおいて温度調整によって制御され得ること、および関連する温度範囲にわたって誘電率尺度が細胞密度を正確に反映することを示す。細胞培養工程中に細胞培養液の温度を修正したが、これまでに調べられた、生成されたタンパク質およびペプチドは、参照細胞培養の生物学的産物からの逸脱を示さなかった。
図6および7は、6つの細胞培養プロジェクトのうちの2つに関して得られた、細胞密度シグナルに及ぼす温度の影響をより詳細に示す。両図面において、温度504の段階的低下は増殖速度の低下をもたらし、測定された誘電率に単一の定数変換係数を乗じたものは、時々のオフラインの、試料に基づく細胞密度測定値500によって確認されるように、細胞密度502(すなわち、所与の培地容積中の細胞数)の信頼性のある尺度であった。
増殖速度に及ぼすpH変化の影響を評価するために、さらなる細胞培養プロジェクト(「バッチ」)を実施した(表示せず)。さらなるバッチによって、pH 6.75からpH 7.1までの広範なpH範囲において、修正されたpHの短期影響は認められ得ないことが明らかになった。pH変化の影響は、たとえあるとしても、長い待ち時間を伴ってのみ現れた。pH 6.75から開始してpH 6.8に転換すると、影響は約1.5日後に観察され、pH 6.7ではおよそ1日後、およびpH 6.6では半日後に観察された(バッチ4を参照されたい)。pHを6.75を下回って下げた場合、培養物は、新たなpHが標準値(6.9〜7.1)まで上昇した後にかなりの時間をかけて再生する必要があった。したがって、温度に基づく増殖制御に反して、pHに基づく増殖制御は、生理的pH範囲において、pH変化は細胞増殖に有意でかつ迅速な影響を及ぼさないようであり、生理的範囲外のpHが用いられた場合には、細胞は極端なpH値から回復するため付加的な時間を必要とし、それによって細胞培養プロジェクトの速度が落ち、その柔軟性が低下するという問題に直面することが観察された。細胞培養増殖速度は、約6.8〜7.2の生理的pH範囲におけるpH変化よりも、約32〜38℃の生理的温度範囲における温度変化に、より強く依存することが認められた。さらに、細胞の回復は、異常に低い温度からよりも非生理的pH値からの方が有意により悪い。したがって、pH調整は、細胞培養増殖速度を柔軟に制御するのに適していないことが認められた。
それ故に、態様に従って、小さな温度変化でさえも、増殖挙動に対して有意な迅速可逆的な影響を及ぼすという理由で、細胞培養プロジェクトの自動制御を提供するために温度を使用した。
態様に従って、制御論理は、オンライン(誘電伝導率に基づく)測定装置(例えば、EVO200)によって測定された誘電率値から、または誘電係数に変換係数を乗じることによって誘電率値から算出されたバイオマス値(細胞密度値)を通して、現在の増殖速度を計算するように構成される。
変換係数は、誘電率測定と並行していくつかのオフライン細胞密度測定を実施し、誘電率値を乗じた場合にオフライン細胞密度を返す変換係数を同定することによって、1つまたは複数の参照細胞培養プロジェクトにおいて決定される。
態様に従って、誘電率オフライン測定を実施するためおよび標的時間における細胞密度を予測するための時間間隔は、60秒である。間隔について得られた誘電率値は、制御論理によって対数化され(底e)、記憶媒体に一時的または恒久的に保存される。任意に、オフライン細胞密度が時々測定され、各オンライン細胞密度に関連して保存される。対数化された細胞密度値は、所定の観察間隔(例えば、90分)にわたって線形回帰にかけられる。それぞれの新たな誘電率(およびひいては、オンライン細胞密度)測定値の後に(例えば、各60秒後に)、新たな算出が行われる。次いで、回帰直線の傾きを用いて、現在の観察間隔にわたる細胞の増殖速度μが決定される。この値μは、いくつかの測定値に関して自然に上下するが、指定の観察間隔内で固定される。観察間隔が長いほど、算出される増殖速度はより安定しており、標的時間における予測細胞密度はより正確である。
算出された増殖速度を用いて、標的時間における予定細胞密度の予測が算出され、予測細胞密度が、ユーザーによって設定された標的細胞密度と比較される。標的時間および標的細胞密度は、制御論理の開始の時点でもあり得るバッチ工程の最初に規定される。予測が標的細胞密度を上回る細胞密度をもたらす場合には、温度がわずかな値(例えば、0.4度)だけ下げられる;予測細胞密度が標的細胞密度を下回る場合には、温度がわずかに上げられる(例えば、0.2度)。温度の変更後、新たな観察間隔が自動的に開始され、サイクルが再度始まる。標的時間に到達するか、または別の終了基準が満たされるまで、これが続けられる。
例えば、バイオリアクターの温度を調整するために、外部から制御可能なウォーターバス(カウンタークーリングを装備)を使用することができる。しかしながら、外部値(設定点、制御パラメーター)を、タンク内の培地の温度を上げるおよび下げることができる要素に伝達することを可能にする任意の制御システムを使用することができる。
図8は、図5、6、および7に示される試験バッチについて記載されたように実施されたさらなるテキスト培養プロジェクト(バッチ6、7、および8)のオンライン(例えば、誘電率に基づくか、またはオンライン顕微鏡に基づく)細胞密度802、812、822、時々測定されたオフライン細胞密度値(記号)800、810、820、および温度シグナル(破線)804、814、824を示す。オンラインおよびオフライン細胞密度値は対数目盛りで、温度は均等目盛りでプロットしてある。垂直矢印は、標的細胞密度、例えば4,000,000個/ml(水平線)に到達すべき標的時間を示す。図8は、所望の標的時間において非常に正確に各標的時間密度に到達したことを示す。
バッチ6、7、および8は基本的には、同じ出発条件、同じ標的細胞密度を有するが、異なる標的時間を有する。各標的にほぼ正確に到達した。バッチ、特にバッチ8の温度プロファイルは、制御論理が、細胞の現在の増殖速度、およびひいては、適切ならば、異なる増殖期(増殖期、静止期、または接種後の遷移期)もまた考慮に入れ得ることを示す。
図9は、図5、6、および7に示される試験バッチについて記載されたように実施されたさらなるテキスト培養プロジェクト(バッチ9および10)のオンライン細胞密度902、912、922、時々測定されたオフライン細胞密度値(記号)900、910、920、および温度シグナル(破線)904、914、924を示す。プロットは図8について記載されたように作成され、参照として、バッチ8の値(820、822、824とは異なる参照番号900、902、904で)もまた含む。バッチ9は、バッチ8の標的時間および標的細胞密度(3日の長さ)を再現するように設計された細胞培養プロジェクトであったが、プロットの温度から、接種の時点で、バッチ8とバッチ9の培地が異なる温度を有したことが明らかである。それにもかかわらず、プログラム論理は、バッチ8およびバッチ9の両方について、標的時間おいて標的細胞密度を非常に正確に提供することができる。
バッチ10は、バッチ9と同様の標的細胞密度および出発温度で開始したが、標的時間は異なった(4日)。バッチ10の結果から、バッチ9と同じ細胞密度で、丸一日補って、同じ標的細胞密度が達成され得たことが示され得る。したがって、本発明の態様は、例えば、適切な時点でその後の発酵槽の接種を実施するために、および全調製を計画するために、少なくとも1日という時間帯の中で発酵の終点を明確に規定することを可能にする。
上記の試験は、細胞株T074OPT B048WCBを用いて実施された。さらなる試験は、CHO細胞株T072の細胞培養物に基づいて実施された。さらなる試験細胞培養プロジェクトでは、調整間隔の継続時間(60〜120分)、出発細胞密度、標的時間(約3〜4日、または67〜95時間)、および温度変化の高さ(0.2〜0.5℃)をわずかに変更した。すべての細胞株において、標的時間内に標的細胞密度に到達することができた。すべての温度曲線は、互いに異なることが認められた。したがって、増殖制御システムは、各細胞培養物を個々にかつ首尾よく制御した。例えば0.5〜1.0℃という大幅な温度調整の事象では、細胞がより多くの時間をかけて新たな温度に適合するように、調整間隔の長さを延ばした(優先的に、少なくとも90分まで)。
図10〜15は、たとえ細胞培養プロジェクトがプロジェクト中に1つまたは複数の技術的問題および故障に直面し得るとしても、本発明の態様に従って実施される温度調整による増殖制御は、標的時間において所望の細胞密度を提供することを可能にすることを示す。
技術的障害は、細胞培養プロジェクトの成功を深刻に危うくし得る。典型的には、補正措置ができるだけ速やかに手動で実施される。典型的には、運転不良は4時間以内に改善され得る。しかしながら、技術的故障によって引き起こされる細胞増殖の遅延は、全細胞培養プロジェクトの継続時間の延長をもたらす場合が多い。
一連の試験において、バイオリアクターの1つまたは複数の調節的制御の故障をシミュレートすることにより、制御論理が、典型的な技術的故障によって引き起こされる細胞増殖の遅延を補償する能力を評価した。試験された故障シナリオは、酸素供給の故障、酸素電極の故障、温度制御の故障、pH制御(CO2供給)の故障、およびその他を含んだ。試験のそれぞれにおいて、1つまたは複数の制御機能性(例えば、O2分圧調節、CO2分圧調節、等)を4時間停止させるか、または作動パラメーター(例えば、pH)をおよそ4時間の間、望ましくない値に設定した。次いで、制御機能性を再開させるか、または作動パラメーターを望ましいもしくは典型的な値に再設定した。制御論理、特に標的時間および標的細胞密度の設定は、該試験中に変更しなかった。
試験のうちのいくつかの結果を、図10〜15においてプロットの形式で表す。図10〜15に示される該試験に用いられた細胞培養物は、図5の図面の説明において言及された細胞培養物について記載されたように増殖させた。該試験に用いられた細胞培養物(「バッチ」)の番号付けは、ここで最初から始まる。したがって、図10〜15における細胞培養物4〜9は、そのデータが図5〜9の基礎を形成する細胞培養物と同一ではない。
図10および11はそれぞれ、制御論理が酸素供給の故障を補償する能力を図示する2つのプロットを示す。酸素供給の故障を補償する制御論理の能力の試験は、時間間隔48h〜52h中に(図10)または時間間隔55h〜59h中に(図11)酸素調節器の動作を停止させることによって行った。図10および11は、酸素なしでは(酸素シグナル)細胞がそれ以上増殖しないこと(上部プロット、細胞密度曲線の傾きの減少)を明らかに示す。制御論理は増殖速度の低下を判断し、増殖速度が低いことを考慮して、標的時間における細胞密度が標的細胞密度を下回ると予測し、1〜2時間遅れて温度を上げる(図10および11の下部プロット)。酸素供給の一時的故障にもかかわらず、設定された標的時間において所望の細胞密度を達成することが可能であった。
図12および13はそれぞれ、制御論理がpH制御の故障および結果として生じた望ましくないpH値を補償する能力を図示する2つのプロットを示す。pH制御の故障を補償する制御論理の能力の試験は、時間間隔48h〜52h中に(図12)または時間間隔72h〜76h中に(図13)、pH制御の設定点を望ましくない値に急激に変更することによって行った。図12および13は、pH変化が細胞の増殖に大きな影響を及ぼさず、結果として、制御論理は、何の問題もなく、pHに誘導された増殖の影響を補償し、標的時間において標的細胞密度を提供することを示す。
図14は、制御論理が酸素供給およびpH制御の両方の故障を補償する能力を図示する3つのプロットを示す。この場合も同様に、制御論理は標的時間において標的細胞密度を提供することができた。
図15は、制御論理が酸素供給および温度制御の両方の故障を補償する能力を図示する2つのプロットを示す。接種の26時間後、酸素供給の故障を約4時間にわたりシミュレートした。システムは、予測通り非常に強力に反応して、細胞増殖の減少を補償した。制御論理は、故障の時間中に温度を上げることによって、酸素供給の低下に対して反応した。およそ12時間後、温度調節器をオフにすることで、温度制御の故障をシミュレートした。約4時間のうちに、リアクター温度は30〜31℃の値まで下がった。この時間中に、制御論理は将来細胞密度を予測し続け、計算された密度を標的細胞密度と比較するが、それぞれの新たな温度設定点を首尾よく伝え、施行することができない。温度制御装置のスイッチが再度入った後、温度制御装置は制御論理から新たな温度設定点を受信した。これにより実際温度のわずかなオーバーフローが起こり、これは次いで速やかに補償される。残りのバッチ実行時間中、細胞培養物は制御様式で増殖した。この場合も同様に、制御論理は標的時間において標的細胞密度を提供することができた。
したがって、本発明の態様による温度に基づく増殖調節が、様々な技術的問題および故障に対して頑強であり、それらを補償し得ることがうまく実証された。酸素またはpH制御の断続的故障は、問題なく許容され、増殖に及ぼすその影響は補償される。温度制御の故障でさえ、なお緩和され得る。

Claims (16)

  1. 真核細胞の増殖を制御するための方法であって、
    ‐制御論理 (116) によって、標的細胞密度 (114) および標的時間 (112) を受信する段階であって、該標的細胞密度は該標的時間における真核細胞の所望の細胞密度を表し、該標的時間は将来の時点を表す、段階;
    ‐該真核細胞を第1タンク (130) の培養液 (M1) 中で培養する段階;
    複数の時間間隔のそれぞれについて、
    ・該培養液中の該真核細胞の細胞密度 (122) を測定する段階;
    ・該制御論理によって、少なくとも該測定細胞密度の関数として、該標的時間における予測細胞密度を計算する段階;
    ・該制御論理によって、該予測細胞密度と該標的細胞密度を比較する段階;
    ・該制御論理によって、
    ‐該予測細胞密度が該標的細胞密度よりも低い場合には温度を0.1℃〜1℃上げることにより、または
    ‐該予測細胞密度が該標的細胞密度よりも高い場合には温度を0.1℃〜1℃下げることにより、
    該予測細胞密度が該標的細胞密度から逸脱している場合に該第1タンク内の該培養液の温度を調整する段階
    を含む方法。
  2. 第1タンクが、培養液中の細胞密度のオンライン測定を実施するための計器 (134) を含み、複数の時間間隔のそれぞれにおいて測定される真核細胞の細胞密度がオンライン測定値である、請求項1記載の方法。
  3. ‐制御論理によって、
    ・標的時間に到達したこと;
    ・測定細胞密度が標的細胞密度と等しいかまたはそれよりも高いこと
    のうちの1つである終了基準が満たされた時に少なくとも温度の調整を自動的に終了させる段階
    をさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  4. ‐制御論理によって、グラフィカルユーザーインターフェース (GUI) (110) を提供する段階であって、該GUIは、該制御論理が予測細胞密度を計算し始める前に、ユーザー (118) が標的時間および標的細胞密度を入力できるようにし、該GUIは、該制御論理が複数の時間間隔において該予測細胞密度を計算している間、該ユーザーが該標的時間および/または該標的細胞密度を修正できるようにする、段階
    をさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  5. ‐標的細胞密度に到達した後に、第1タンクの培養液およびその中に含まれる真核細胞を該第1タンクから、該第1タンクよりも大きい第2タンク (132) に移動させる段階;
    ‐制御論理によって、さらなる標的細胞密度およびさらなる標的時間を受信する段階であって、該さらなる標的細胞密度は該さらなる標的時間における該真核細胞の所望の細胞密度を表し、該さらなる標的時間は将来の時点を表す、段階;
    ‐移動させた該真核細胞を該第2タンク内で培養する段階;
    複数のさらなる時間間隔のそれぞれについて、
    ・該第2タンクの培養液中の該真核細胞の細胞密度 (124) を測定する段階;
    ・該制御論理によって、少なくとも該測定細胞密度の関数として、該さらなる標的時間におけるさらなる予測細胞密度を計算する段階;
    ・該制御論理によって、該さらなる予測細胞密度と該さらなる標的細胞密度を比較する段階;
    ・該制御論理によって、
    ‐該さらなる予測細胞密度が該さらなる標的細胞密度よりも低い場合には温度を0.1℃〜1℃上げることにより、または
    ‐該さらなる予測細胞密度が該さらなる標的細胞密度よりも高い場合には温度を0.1℃〜1℃下げることにより、
    該さらなる予測細胞密度が該さらなる標的細胞密度から逸脱している場合に該第2タンク内の該培養液の温度を調整する段階
    をさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  6. 第1タンクが、バッチ培養として細胞培養物を増殖させるように構成されたバイオリアクターであり、第2タンクが、該第1タンクよりも大きく、かつバッチ培養として細胞培養物を増殖させるように構成されたバイオリアクターであり、前記方法が、生産バイオリアクターに接種するための規定された最小数の細胞を生成するためのシードトレイン培養工程において用いられる、請求項5記載の方法。
  7. 真核細胞が、哺乳動物細胞、特にチャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  8. 複数の時間間隔のそれぞれについて、
    ‐所定の長さを有し、かつ現在の時間間隔の終了時に終了する現在の観察間隔 (138) を、該現在の時間間隔について規定する段階;
    ‐該現在の観察間隔中に測定されたすべての細胞密度を受信する段階
    をさらに含み、
    少なくとも測定細胞密度の関数として予測細胞密度を計算する段階が、標的時間まで、該現在の観察間隔中に測定された細胞密度を外挿することを含む、
    前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  9. 外挿が、現在の観察時間中に測定された細胞密度に対して、カーブフィッティング操作または回帰分析を実施することを含む、請求項8記載の方法。
  10. 複数の時間間隔が等しい長さである、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  11. ‐現在時間が標的時間に近いかどうかを判定する段階;
    ‐該現在時間が該標的時間に近いという判定に応答して、複数の時間間隔のうちの将来のすべての時間間隔の長さを短縮する段階
    をさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項記載の方法。
  12. 観察間隔の所定の長さが60分〜480分の範囲内である、請求項8〜12のいずれか一項記載の方法。
  13. 温度を調整する段階が、温度を0.1℃〜0.5℃、優先的に0.1℃〜0.2℃上げること、または温度を0.1℃〜0.5℃、優先的に0.1℃〜0.2℃下げることを含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  14. 制御論理が、該制御論理による第1タンクの以前の温度調整から少なくともある調整時間間隔が経過した場合にのみ、該第1タンクの温度調整を実施し、該調整時間間隔の継続時間が60〜120分の範囲内である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  15. 規定の将来時間において所望の細胞密度の真核細胞を提供するための方法であって、
    ‐人のユーザー (118) によって、制御論理 (116) のインターフェース (110) を介して、所望の細胞密度 (114) および将来時間 (112) を入力する段階であって、該所望の細胞密度は、入力された該将来時間における真核細胞の所望の細胞密度を表す、段階;
    ‐請求項1〜14のいずれか一項記載の、真核細胞の増殖を制御するための方法を実施する段階であって、増殖制御は、入力された該所望の細胞密度が標的細胞密度として使用され、入力された該将来時間が標的時間として使用され、かつ該真核細胞が該標的時間において該標的細胞密度で提供されるように、実施される、段階
    を含む方法。
  16. 真核細胞の増殖を制御するためのシステム (100) であって、制御論理 (116)と、該制御論理を実行するように構成されたプロセッサ (104) とを含み、該制御論理は、培養液 (M1) 中に真核細胞を含む第1タンク (130) に動作可能に連結され、該制御論理は、
    ‐標的細胞密度 (114) および標的時間 (112) を受信することであって、該標的細胞密度は該標的時間における該真核細胞の所望の細胞密度を表し、該標的時間は将来の時点を表す、こと;
    複数の時間間隔のそれぞれについて、
    ・該第1タンクの該培養液中の該真核細胞の測定細胞密度 (122) を受信すること;
    ・少なくとも該測定細胞密度の関数として、標的時間における予測細胞密度を計算すること;
    ・該予測細胞密度と該標的細胞密度を比較すること;
    ・該制御論理によって、
    ‐該予測細胞密度が該標的細胞密度よりも低い場合には温度を0.1℃〜1℃上げることにより、または
    ‐該予測細胞密度が該標的細胞密度よりも高い場合には温度を0.1℃〜1℃下げることにより、
    該予測細胞密度が該標的細胞密度から逸脱している場合に該第1タンク内の該培養液の温度を調整すること
    を行うように構成されている、システム (100)。
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