[0014]本開示の様々な実施形態をこれより詳細に参照する。これらの実施形態の一又は複数の例が、図中に示されている。図面についての以下の説明の中で、同じ参照番号は同じ構成要素を表す。概して、個々の実施形態に関する相違のみが説明される。各実施例は、本開示の説明のために提供されるが、本開示を限定することを意図しているわけではない。更に、1つの実施形態の一部として図示又は説明されている特徴は、別の実施形態を創出するために、他の実施形態で使用されることも、他の実施形態と併用されることも可能である。説明には、このような修正例及び変形例が含まれるように意図されている。
[0015]堆積システムの堆積チャンバ内で基板及び/又はマスクを保持し搬送するために、真空堆積システムなどの堆積システムにおいてキャリアを使用することが可能である。例えば、基板がキャリア上に支持されている間に、一又は複数の材料層を基板上に堆積させることができる。有機発光デバイスなどの用途では、基板上に堆積される有機層の高い純度及び均一性は利点になりうる。更に、堆積システム内のキャリアの滑らかな搬送は、例えば基板の破損を削減するために有益である。
[0016]本開示の実施形態によれば、キャリアは、一または複数のセンサによって検出可能な様々な性質を有する被検出可能装置を有する。一実施形態では、キャリアには、キャリアの端部において変化する、すなわち一定でない幾何学的外形が備わっている。別の実施形態では、キャリアには、異なる材料又は材料特性のセクションが備わっている。堆積システムの搬送構成部はこの変化を検出して、搬送構成部に対するキャリアの位置、具体的にはキャリアの一または複数の端部の位置を決定することができる。キャリアを非接触搬送するように構成された搬送構成部は、検出された変化と、そこから導出されたキャリア又は端部の位置に基づいて制御されうる。例えば、キャリアの一または複数のエッジの位置を決定することができ、搬送構成部の一または複数の能動磁気ユニットを選択的に制御することが可能である。詳細には、キャリアのエッジに位置する、及び/又はエッジ部分が接近する能動磁石ユニットを制御することが可能である。搬送方向におけるキャリアの滑らかな搬送が達成されうる。キャリアの不安定な搬送及び/又は粒子の生成に起因する基板の破損が削減されうる、又は回避さえもされうる。
[0017]図1に、キャリア100と、水平方向であってよい搬送方向1にキャリア100を非接触搬送するように構成された搬送構成部の一部の概略図を示す。
[0018]搬送構成部は、能動ガイド構造であってよいガイド構造110を含む。ガイド構造110は、搬送方向に沿って配置された複数のガイドユニット111を含む。各ガイドユニット111は、例えば能動磁石ユニット112等の(例えば電磁)アクチュエータと、アクチュエータを制御するように構成されたコントローラ114と、キャリア100までの間隙を測定するように構成された距離センサ116とを含む。ガイド構造110は、磁力を利用してキャリア100を非接触浮上させるように構成されうる。
[0019]キャリア100がガイドユニット111に接近する又はガイドユニット111から離れるときに、浮上精度及び/又は浮上安定性に影響が出る場合がある。詳細には、キャリア100がガイドユニット111に接近する又はガイドユニット111から離れるときに、キャリア100の突然の加速又は減速につながりうる相当な力及び/又はパルス状の力が生成されうる。この力は、ガイド構造110、特に複数のガイドユニット111(例えば一または複数の電磁気アクチュエータ及びセンサ)の構成要素の幾何学的な配置及び構成によって変化しうる。この力によりキャリア100の望ましくない突然の移動が起こる場合があり、キャリア100とガイド構造110との間の偶発的な機械的接触さえも起こる可能性がある。キャリア100、基板及び/又はガイド構造110が破損する場合がある。更に、堆積処理の品質を低下させる粒子が生成されうる。
[0020]浮上力の方向、特にアクチュエータによって付与される磁力の方向(例えば、垂直方向3)におけるパルス状の力又は力の変化は、キャリア100が例えば距離センサ116の下から突然消えたときに生じうる。この結果、距離センサ116において、キャリアが距離センサ116から例えば垂直方向3等の距離(又は測定)方向に高速移動で離れた場合と同じ信号値が得られうる。つまり、距離センサ116は間隙の拡大を示す。信号の変化により、コントローラに、「移動している」キャリア100がガイド構造110とキャリア100との間の設定距離に戻るように、アクチュエータの力を強力に増加させることができる。
[0021]更に、キャリア100がガイドユニット111に接近する又はガイドユニット111から離れるときに、搬送方向1に沿った力成分が生成されうる。力成分は、キャリア100の別の搬送を妨げるのに十分強いものであってもよい。搬送方向1に沿った力成分は、キャリアの前面及び/又は後面(例えば前縁又は後縁)に作用するアクチュエータの磁気抵抗から生じうる。これを、キャリア100の後面における磁場線によって、図1に例示的に示す。
[0022]図2Aは、本書に記載の実施形態に係る、真空システムにおいて非接触搬送するためのキャリア200の概略図を示す。キャリア200は、図1を参照しながら上述した望ましくない動きを避けることができる。
[0023]キャリア200は、キャリア200の搬送方向1に沿って配設された一または複数の第1の磁石ユニット210を有する磁気構造を含む。キャリア200はさらに、キャリア200の端部に配置され、搬送方向1に沿って変化する幾何学的外形220を有する検出デバイスを含む。幾何学的外形220は、ガイド構造の複数のガイドユニット111の少なくとも1つのガイドユニットに対する、キャリア200の位置、又はキャリア200の端部の位置を決定するために、真空システムの搬送構成部の一または複数の第1のセンサ118によって検出可能でありうる。これに関して、幾何学的外形220は「センサトレイル(sensor trail)」とも称されうる。
[0024]キャリア200は、例えば堆積システムの真空チャンバ等の一または複数のチャンバを通って、及び詳細には例えば線形搬送路等の搬送路に沿って少なくとも1つの堆積エリアを通って非接触搬送されるように構成される。キャリア200は、水平方向であってよい搬送方向1に非接触搬送されるように構成されうる。
[0025]本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態によれば、堆積システムは、堆積システムにおいてキャリア200を非接触浮上させる、及び/又は非接触搬送するように構成された搬送構成部を含みうる。搬送管理は、キャリア200を浮上させるための磁気浮上力を付与するためのガイド構造と、キャリア200を搬送方向1に移動させるための駆動構造とを含みうる。キャリア200の磁気構造の一または複数の第1の磁石ユニット210は、ガイド構造と磁気的に相互作用するように構成されうる。ある実行形態では、一または複数の第1の磁石ユニット210は、例えば永久磁石ユニット及び/又は強磁性体部品等の受動磁石ユニットであってよい。
[0026]本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態によれば、キャリア200の磁気構造は、キャリア200を搬送方向1に移動させるための駆動構造と磁気的に相互作用するように構成された一または複数の第2の磁石ユニット(図示せず)を含む。幾つかの実行形態では、一または複数の第2の磁石ユニットは受動磁石ユニット、例えば強磁性体であってよい。ガイド構造と駆動構造は、キャリア200の対向する端又は端部に配置されうる。同様に、一または複数の第1の磁石ユニット210と一または複数の第2の磁石ユニットは、キャリア200の対向する端あるいは端部に配置されうる。
[0027]キャリア200は、例えば第1の端部と、第1の端部の反対側の第2の端部等の一または複数の端部を有する。基板は、第1の端部と第2の端部との間に位置しうる。第1の端部は、上部(又は上方)端部であってよく、第2の端部は底部(又は下方)端部であってよい。第1の端部と第2の端部は、原則的に平行に、例えば原則的に水平方向に延びていてよい。幾何学的外形220は、第1の端部及び/又は第2の端部に配設されうる。図2Aの実施例に、幾何学的外形220と、キャリア200の上部又は上方端部である第1の端部における一または複数の第1の磁石ユニット210とを例示的に示す。幾何学的外形220と一または複数の第1の磁石ユニット210は、搬送構成部のガイド構造に面していてよい。一または複数の第2の磁石ユニットは、キャリア200の底部又は下方端部であってよい第2の端部に位置していてよい。一または複数の第2の磁石ユニットは、搬送構成部の駆動構造に面していてよい。
[0028]本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態によれば、幾何学的外形220は例えば、搬送方向1においてキャリア200の全長に渡って延びる要素である。キャリア200の長さは、搬送方向1に沿って、例えば搬送方向1に沿ってキャリア200の第1の端部201と第2の端部202との間で画定されうる。
[0029]堆積システム、及び具体的には搬送構成部は、複数のガイドユニット111を有するガイド構造を含みうる。各ガイドユニット111は、例えば能動磁石ユニット等のアクチュエータ112と、アクチュエータ112を制御するように構成されたコントローラ114と、一または複数の第1の磁石ユニット210とアクチュエータ112との間の間隙を感知する又は測定するように構成された第2のセンサ116とを含みうる。間隙は、例えば垂直方向3等の搬送方向1に対して直角の方向に測定されうる。詳細には、第2のセンサ116は、一または複数の第1の磁石ユニット210とアクチュエータ112との間の間隙を感知する又は測定するために、例えばキャリア200が第2のセンサ116にある時に一または複数の第1の磁石ユニット210に面するように配置されうる。第2のセンサ116は、距離センサであってよい。
[0030]コントローラ114は、第2のセンサ116によって測定される間隙に基づいてアクチュエータ112によって付与される磁力を調節するために、アクチュエータ112を制御するように構成されうる。詳細には、コントローラ114は、キャリア200が堆積システムを通って搬送されている間、一または複数の第1の磁石ユニット210とアクチュエータ112との間の距離が基本的に一定となるように、アクチュエータ112を制御するように構成されうる。図2Aには、各ガイドユニット111がコントローラを有することを例示的に示したが、本開示はこれに限定されず、コントローラは2つ以上のガイドユニットに割り当てられうることを理解すべきである。例えば、全てのガイドユニット用に単一のコントローラを配設することができる。
[0031]ガイド構造は更に、例えば幾何学的外形220等の被検出可能装置を検出するように構成された一または複数の第1のセンサ118を含みうる。一または複数の第2のセンサ116に加えて、一または複数の第1のセンサ118が配設されうる。一または複数の第1のセンサ118は、それぞれの第1のセンサと幾何学的外形との間、特にそれぞれの第1のセンサと第1のセンサに面する幾何学的外形の面との間の距離を検出するように構成された距離センサであってよい。距離は、例えば垂直方向3等の搬送方向1に対して直角の方向に測定されうる。ある実行形態では、各ガイドユニット111は、幾何学的外形220を検出するそれぞれの第1のセンサを含む。しかしながら、本開示はこれに限定されず、同じセンサによって第1のセンサと第2のセンサの機能を提供することが可能である。具体的には、各ガイドユニット111は、第1のセンサと第2のセンサの機能を組み合わせた1つのセンサのみを含みうる。
[0032]被検出可能装置は、一または複数の第1のセンサ118によって検出可能であってよい。ある実行形態では、被検出可能装置は、例えば被検出可能装置が例えばそれぞれの第1のセンサ(複数可)の例えば下に位置しているときに、一または複数の第1のセンサ118に面するように配置される。本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態によれば、被検出可能装置と一または複数の第1の磁石ユニット210は、例えば原則的に水平な平面などの、搬送方向1に平行な平面において互いに隣接するように配置されうる。例えば、被検出可能装置は、一または複数の第1の磁石ユニット210を有するキャリア200の磁気構造に取り付けられうる。
[0033]ある実行形態では、それぞれのガイドユニット111の第1のセンサと第2のセンサは、図2Aの右側に示すように、第1のセンサが被検出可能装置に面し、第2のセンサが一または複数の第1の磁石ユニット210、又は一または複数の第1の磁石ユニット210に隣接する別々のセンサトレイルに面するように、互いに隣接して配置されうる。オプションとして、ガイドユニット111のアクチュエータは、アクチュエータが一または複数の第1の磁石ユニット210に面するように、第1のセンサと第2のセンサに隣接して配置されうる。例えば、アクチュエータ、第1のセンサ及び第2のセンサは、例えば原則的に水平な平面等の同じ平面に配置されうる。ある実施形態によれば、第1のセンサは被検出可能装置によってもたらされる第1のセンサトレイルに面し、アクチュエータは一または複数の第1の磁石ユニット210によってもたらされるアクチュエータトレイルに面する。第2のセンサは、一または複数の第1の磁石ユニット210によって、又は一または複数の第1の磁石ユニット210に隣接する別々のセンサトレイルとしてもたらされうる第2のセンサトレイルに面していてよい。
[0034]幾何学的外形220は、キャリア200の第1の端部201と第2の端部202との間で搬送方向1に沿って変化しうる。幾何学的外形220は、第1の端部201と第2の端部202との間に延びている第1のセンサトレイルをもたらしうる。本開示全体で使用する「幾何学的外形」という語は、外形、又は搬送方向1に延び、搬送方向1及び搬送方向1に対して直角の少なくとも1つの方向(垂直方向3等)によって画定される平面に一定でない(又は変化する)断面形状を有する外形を有する要素を指す。幾何学的外形220は、搬送方向1に見たときに、キャリア200の第1の端部201(例えば搬送方向1にキャリア200の最外境界を画定しうる前面又は前縁)と第2の端部202(例えば搬送方向1とは反対の方向にキャリア200の最外境界を画定しうる後面又は後縁)との間に画定されうる。つまり、様々な幾何学的外形はキャリア200の第1の端部201又は第2の端部202のエッジを指すのではなく、一または複数の第1のセンサ118によって検出されうる第1の端部201と第2の端部202との間の別の構造的変化を指す。
[0035]本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態によれば、幾何学的外形220は一又は複数の形状要素を含む。ある実行形態では、一または複数の形状要素は凹部、非連続部、段、傾斜部及びこれらの任意の組合せを含む群から選択されうる。例えば、幾何学的外形220は、キャリア200の長さに沿って延び、例えば一または複数の凹部222等の一または複数の形状要素を有する要素であってよい。
[0036]ある実施形態では、キャリア200の第1の端部201及び/又は第2の端部202に一または複数の形状要素が配置される。例えば、少なくとも1つの第1の形状要素が第1の端部201に配置されうる、及び/又は少なくとも1つの第2の形状要素が第2の端部202に配置されうる。少なくとも1つの第1の形状要素及び少なくとも1つの第2の形状要素は基本的に同じであってよい、あるいは異なっていてよい。図2の実施例では、少なくとも1つの第1の形状要素と少なくとも1つの第2の形状要素は両方とも、幾何学的外形220を提供する要素内の凹部である。
[0037]一または複数の形状要素は、ガイド構造に対してキャリア200の端部がどこに位置するかを決定しうるように、キャリア200の端部に配置されうる。ガイドユニット111の一または複数の能動磁石ユニットは、搬送方向におけるキャリアの滑らかな搬送を提供するように制御されうる。詳細には、キャリアの一または複数のエッジに位置する、及び/又は一または複数のエッジが接近するアクチュエータを制御することが可能である。例えば、一または複数のアクチュエータによって付与される磁力を継続的に増加させて、又は減少させて、隣接するアクチュエータ/磁石ユニットの間でキャリア200の端部の滑らかな遷移を得ることができる。例えば、キャリア200がアクチュエータを「離れた」ときに、アクチュエータからキャリア200に基本的に何の力も加わらないように、アクチュエータの作動を低下させることができる。
[0038]本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるある実施形態によれば、ガイドユニット111のコントローラ114は、アクチュエータ112及び/又は第2のセンサ116がキャリア200上のそれぞれのトレイルから「離れる」ときに、アクチュエータ112を停止させることができる。オプションとして、又は代替的に、ガイドユニット111のコントローラ114は、アクチュエータ112及び/又は第2のセンサ116がキャリア200上のそれぞれのトレイルに面した後にのみ、アクチュエータ112を駆動させうる。言い換えれば、アクチュエータは、キャリア200がアクチュエータを「離れる」前に停止されるということである。同様に、停止したアクチュエータは、キャリアのアクチュエータと磁石構造が重なった後にのみ駆動される。アクチュエータの駆動及び/又は停止は、段階的、連続的、又は突然でありうる。
[0039]ある実施形態によれば、一または複数の形状要素の個別の形状要素は、搬送方向1における幾何学的外形220及び/又はキャリア200の長さに沿った長さの延長部を有しうる。個々の形状要素の長さの延長部は、幾何学的外形220及び/又はキャリア200の長さの少なくとも1%、具体的には長さの少なくとも4%、具体的には長さの少なくとも8%に対応しうる。
[0040]キャリア200は、基板処理中、例えば真空処理中に使用される基板及び/又はマスク(図示せず)を保持するように構成されうる。幾つかの実行形態では、キャリア200は基板とマスクの両方を支持するように構成可能である。別の実行形態では、キャリア200は基板又はマスクのどちらかを支持するように構成されうる。このような場合、キャリア200はそれぞれ「基板キャリア」及び「マスクキャリア」と称されうる。
[0041]キャリア200は支持面を提供する支持構造又は本体205を含むことが可能で、支持面は、例えば基板の背面に接触するように構成された原則的に平坦な面になりうる。詳細には、基板は、裏面の反対側の前面(「処理面」とも称される)であって、真空堆積処理などの処理中にその面に層が堆積される前面を有しうる。幾何学的外形220は、本体205に設けられ得る。
[0042]本開示のいたるところで使用されている「真空(vacuum)」という語は、例えば10mbar未満の真空圧を有する工業的真空の意味に理解されうる。真空チャンバ内の圧力は、10−5mbarと約10−8mbarとの間、具体的には、10−5mbarと10−7mbarとの間、より具体的には、約10−6mbarと約10−7mbarとの間であってよい。真空チャンバ内部に真空を発生させるために真空チャンバに接続された、ターボポンプ及び/又はクライオポンプなどの一又は複数の真空ポンプが配設されうる。
[0043]本開示に係るキャリア200は、キャリア200で基板及び/又はマスクを保持するための静電力を付与する静電チャック(Eチャック)であってよい。例えば、キャリア200は、基板及びマスクのうちの少なくとも1つに作用する引力を付与するように構成された電極構成部を含む。電極構成部は、本体205に埋め込まれてもよく、又は、本体205上に配設(例えば、配置)されてもよい。本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態によれば、本体205は誘電プレートなどの誘電体である。誘電体は、誘電材料、好ましくは、熱分解窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、アルミナ、又は等価材料などの高熱伝導性誘電体材料から製造されうるが、ポリイミドなどの材料からも作られうる。一部の実施形態では、電極構成部は、誘電体プレートに載置され、薄型誘電体層で覆われうる微細金属帯の格子などの複数の電極を含む。
[0044]電極構成部、及び特に複数の電極は、チャック力などの引力をもたらすように構成されうる。引力は、複数の電極(又は支持面)と基板及び/又はマスクとの間のある相対距離で、基板及び/又はマスクに作用する力でありうる。引力は、複数の電極構成部に印加される電圧によってもたらされる静電力でありうる。
[0045]基板はキャリア200(Eチャックになりうる)によって、支持面に向かって(例えば、搬送方向に直交する方向に)もたらされる引力によって引き付けられうる。引力は、基板を例えば摩擦力によって垂直位置に保持できるほど十分強力なものになりうる。具体的には、引力は、基板が支持面上で原則的に不動に固定されるように構成されうる。例えば、摩擦力を利用して0.5mmのガラス基板を垂直位置に保持するには、摩擦係数に応じて約50〜100N/m2(Pa)の引き付け圧力が使用されうる。
[0046]本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態によれば、キャリア200は、基板及び/又はマスクを実質的に垂直な配向に保持又は支持するように構成されている。具体的には、キャリアは垂直配向に搬送されるように構成されうる。本開示全体において使用する「ほぼ垂直」という表現は、特に基板の配向を指す場合、垂直方向又は配向から±20°以下(例えば、±10°以下)の偏差を許容することであると理解される。例えば、垂直配向から幾らかの偏差を有する基板支持体がより安定した基板位置をもたらす場合があるので、このような偏差が設けられうる。さらに、基板が前方に傾いた場合、基板表面に達する粒子がより少なくなる。ただし、例えば堆積処理中の基板配向は実質的に垂直であるとみなされ、これは、水平の基板配向とは異なるとみなされる。水平の基板配向は、水平±20°以下であるとみなされ得る。
[0047]「垂直方向」又は「垂直配向」という表現は、「水平方向」又は「水平配向」と区別されると理解される。つまり、「垂直方向」又は「垂直配向」は、例えば、キャリア及び基板の、実質的に垂直な配向に関連するが、厳密な垂直方向又は垂直配向からの数度(例えば、最大10°、又はさらに最大15°)の偏差は、依然として「実質的に垂直な方向」又は「実質的に垂直な配向」と見なされる。垂直方向は、重力に対してほぼ平行でありうる。
[0048]本書に記載の実施形態は、例えば、OLEDディスプレイ製造のための大面積基板上の蒸着に利用されうる。特に、本書に記載の実施形態に係る構造及び方法が提供の対象である基板は大面積基板である。例えば、大面積基板又はキャリアは、約0.67m2の表面積(0.73×0.92m)に対応するGEN4.5、約1.4m2の表面積(1.1m×1.3m)に対応するGEN5、約4.29m2の表面積(1.95m×2.2m)に対応するGEN7.5、約5.7m2の表面積(2.2m×2.5m)に対応するGEN8.5、又は更に、約8.7m2の表面積(2.85m×3.05m)に対応するGEN10でありうる。GEN11及びGEN12などの更に次の世代及びそれに相当する表面積を同様に実装してもよい。OLEDディスプレイの製造においては、ハーフサイズのGEN世代も提供されうる。
[0049]本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態によれば、基板の厚さは0.1〜1.8mmであってよい。基板の厚さは、約0.9mm以下、例えば0.5mmであってよい。本書で使用する「基板」という語は、例えば、ウエハ、サファイア等の透明な結晶片、又はガラスプレート等の実質的に非フレキシブルな基板を特に包含しうる。しかしながら、本開示はこれらに限定されず、「基板」という用語は、例えばウェブ又はホイル等のフレキシブル基板も含みうる。「実質的に非フレキシブル(substantially inflexible)」という語は、「フレキシブル(flexible)」とは区別して理解される。具体的には、0.9mm以下(例えば0.5mm以下)の厚さを有するガラスプレートなどの実質的に非フレキシブルな基板もある程度の柔軟性を有しうるが、実質的に非フレキシブルな基板の柔軟性はフレキシブル基板と比較して低い。
[0050]本書に記載の実施形態によれば、基板は、材料を堆積させるのに適した任意の材料から作られてもよい。例えば、基板は、ガラス(例えばソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラスなど)、金属、ポリマー、セラミック、複合材料、炭素繊維材料、又は、堆積処理によってコーティングされうる他の任意の材料、若しくはかかる材料の組合せからなる群から選択された材料で作られうる。
[0051]図2Bに、本書に記載の別の実施形態に係る、例えば真空システム等のシステムにおいて非接触搬送するためのキャリア200´の概略図を示す。図2Bのキャリア200´は図2Aのキャリアに類似しており、類似のまたは同一の態様に関する記載は繰り返さない。
[0052]キャリア200´はキャリア200´の端部に被検出可能装置220´を含み、被検出可能装置220´は搬送方向1に沿って配置された2つ以上のセクション222´を有する。2つ以上のセクション222´は、例えば異なる磁気特性、異なる光学特性、及び/又は異なる電気特性等の異なる特性を有する。ある実行形態では、2つ以上のセクション222´は、異なる特性を得るために異なる材料でできていてよい。別の実行形態では、2つ以上のセクション222´は、異なる特性を提供するように構成された基本的に同じ材料でできていてよい。例えば、2つ以上のセクション222´を提供するために、磁気材料の磁化程度を異なるものにすることができる。被検出可能装置220´は、ガイド構造の複数のガイドユニット111の少なくとも1つのガイドユニットに対するキャリア200´の位置又はキャリア200´の端部の位置を決定するために、(真空)システムの搬送構成部の一または複数の第1のセンサ118によって検出可能でありうる。これに関して、被検出可能装置220´は「センサトレイル」とも称されうる。
[0053]本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態によれば、被検出可能装置は例えば、キャリア200´の全長に渡って搬送方向1に延びている。キャリア200´の長さは、搬送方向1に沿って、例えばキャリア200´の第1の端部201と第2の端部202との間で搬送方向1に沿って画定されうる。
[0054]幾つかの実行形態では、2つ以上のセクション222´は様々な材料のものであってよく、磁気材料を有する少なくとも1つの第1のセクションと、非磁気材料を有する少なくとも1つの第2のセクションとを含みうる。一または複数の第1のセンサ118は、磁気材料を検出するように構成されたホールセンサであってよい。例えば、キャリア200´のエッジに位置しうる一または複数の第1のセンサ118が磁気材料を検出したときに、キャリアのエッジがガイドユニットに接近する又は離れるようにすることができる。しかし、本開示は磁気構成に限定されるわけではない。一または複数の第1のセンサ118が2つ以上のセクション間の差を検出することができる限り、光学及び/又は電気構成を使用することが可能である。
[0055]ガイド構造は更に、被検出可能装置、例えば磁石材料を検出するように構成された一または複数の第1のセンサ118を含みうる。一または複数の第2のセンサ116に加えて、一または複数の第1のセンサが配設されうる。一または複数の第1のセンサ118は、磁気材料から生じる磁場を検出するように構成されたホールセンサであってよい。ある実行形態では、被検出可能装置220´は、例えば被検出可能装置が例えばそれぞれの第1のセンサ(複数可)の下に位置しているときに、一または複数の第1のセンサ118に面するように配置される。本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態によれば、被検出可能装置と一または複数の第1の磁石ユニット210は、例えば原則的に水平な平面などの、搬送方向1に平行な平面において互いに隣接するように配置されうる。例えば、被検出可能装置220´は、一または複数の第1の磁石ユニット210を有するキャリア200の磁石構造に取り付けられうる。
[0056]被検出可能装置220´は、搬送方向1に沿ってキャリア200´の第1の端部201と第2の端部202との間に様々な光学的性質(例:輝度、色、又はバーコード)、磁気特性等の様々な材料の性質、又は様々な電気的性質(例:異なる誘導特性及び/又は抵抗特性)をもたらす。被検出可能装置220´は、第1の端部201と第2の端部202との間に延びている第1のセンサトレイルを提供しうる。
[0057]被検出可能装置220´は、搬送方向1に沿って配置された2つ以上のセクション222´を含む。2つ以上のセクション222´は、第1の材料特性を有する少なくとも1つの第1のセクションと、第1の材料特性とは異なる第2の材料特性を有する少なくとも1つの第2のセクションとを含みうる。材料特性は、光学特性、電気特性、又は磁気特性であってよい。少なくとも1つの第1のセクションは、第1の端部及び/又は第2の端部に配置されうる。例えば、各端部はそれぞれ第1のセクションを有しうる。少なくとも1つの第2のセクションは、2つの第1のセクション間に配置されうる。少なくとも1つの第2のセクションは例えば、キャリアの中間部分に渡って延びていてよい。
[0058]ある実施形態によれば、磁気材料を有する各第1のセクションは、搬送方向1における被検出可能装置220´及び/又はキャリア200´の長さに沿った長さの延長部を有しうる。第1のセクションの長さの延長部は、被検出可能装置220´及び/又はキャリア200の長さの少なくとも1%、具体的には長さの少なくとも4%、具体的には長さの少なくとも8%に対応しうる。
[0059]図3に、本書に記載の別の実施形態に係る、真空システムにおいて非接触搬送するためのキャリア300の概略図を示す。図3のキャリア300は、図2A及び2Bに示すキャリアと類似しており、類似の又は同一の要素の説明は繰り返さない。
[0060]本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態によれば、幾何学的外形は一又は複数の形状要素を含む。図3の実施例では、一または複数の形状要素は傾斜部322である。
[0061]ある実行形態では、傾斜部322は、搬送方向1に対して傾斜した、キャリア300の面であってよい。例えば、傾斜部322は水平面に対して傾斜していてよい。ある実施形態では、傾斜部322は、キャリア200の第1の端部201及び/又は第2の端部202に配置される。例えば、キャリアの第1の端部201に少なくとも1つの第1の傾斜部が配置されうる、及び/又は第2の端部202に少なくとも1つの第2の傾斜部が配置されうる。少なくとも1つの第1の傾斜部と少なくとも1つの第2の傾斜部は、反対方向に傾斜していてよい。具体的には、少なくとも1つの第1の傾斜部と少なくとも1つの第2の傾斜部は、鏡面対称であってよい。
[0062]第1のセンサは、キャリア300が搬送方向1に移動したときに、傾斜部322を検出しうる。第1のセンサによって検出された、第1のセンサと傾斜部322との間の距離は、搬送方向1及び/又は傾斜方向に応じて増加する、又は減少する。ガイドユニット111の一または複数の能動磁石ユニットは、搬送方向にキャリア300の滑らかな搬送を提供するように制御されうる。具体的には、一または複数の傾斜部に位置するアクチュエータが制御されうる。例えば、一または複数のアクチュエータによって付与される磁力は、隣接するアクチュエータ/磁石ユニット間のキャリアの端部の滑らかな遷移を提供するために、傾斜部によってもたらされる様々な距離に基づいて継続的に増加しうる、又は減少しうる。具体的には、図3において、キャリア300の左側の傾斜部により、キャリアが上向きに移動したのと同じ検出信号が第1のセンサにおいて得られうる。コントローラは、キャリアがアクチュエータを「離れる」ときに左側のアクチュエータがキャリアに浮上力を付与しないように、例えばアクチュエータの電流を減少させることによって、アクチュエータの力を弱めうる。
[0063]図2の実施例において、一または複数の第1のセンサとガイド構造は幾何学的外形の同じ側に配置される。他の実施例では、例えば図3に示すように、一または複数の第1のセンサとガイド構造は幾何学的外形の反対側に配置されうる。具体的には、一または複数の第1のセンサとガイド構造は、一または複数の第1のセンサとガイド構造との間でキャリアの磁石構造のためのガイド空間を画定するように配置されうる。例えば、ガイド構造、また特にアクチュエータはキャリア300の一または複数の第1の磁石ユニット210の上に位置していてよく、一または複数の第1のセンサ118はキャリア300の一または複数の第1の磁石ユニット210の下に位置していてよい。
[0064]図4A及び図4Bに、[0057]本書に記載の実施形態に係るキャリア410を非接触搬送するための装置400の概略図を示す。キャリア410は、本書に記載の実施形態にしたがって構成されうる。
[0065]装置400は、複数の能動磁石ユニット475と、幾何学的外形を検出する一または複数の第1のセンサ(図示せず)と、本開示に係るキャリア410とを含むガイド構造470を有する搬送構成部を含む。一または複数の第1のセンサは、一または複数の第1のセンサとキャリア410の幾何学的外形との間の距離を検出するように構成されうる。装置400はさらに、一または複数の第1のセンサによって提供される検出データに基づいて、複数の能動磁石ユニット475のうちの少なくとも1つの能動磁石ユニットを選択的に制御するように構成されたコントローラを含みうる。本書に記載の幾つかの実施形態によれば、搬送構成部は真空システムの真空チャンバ内に配置されうる。真空チャンバは真空堆積チャンバであってもよい。しかしながら、本開示は真空システムに限定されず、本書に記載のキャリア及び搬送構成部を大気環境において実行することが可能である。
[0066]キャリア410は、キャリア410を浮上させる磁気浮上力を付与するために真空システムのガイド構造470と磁気的に相互作用するように構成された一または複数の第1の磁石ユニットを含みうる。一または複数の第1の磁石ユニットは、第1の受動磁石ユニット450であってよい。ガイド構造470は、水平方向であってよいキャリア410の搬送方向1に延びていてよい。ガイド構造470は、複数の能動磁石ユニット475を含みうる。キャリア410は、ガイド構造470に沿って移動可能でありうる。第1の受動磁石ユニット450、例えば、強磁性材料のバー、及びガイド構造470の複数の能動磁石ユニット475は、キャリア410を浮上させる第1の磁気浮上力を付与するように構成されうる。本書に記載の浮上のためのデバイスは、例えばキャリア410を浮上させる非接触力をもたらすデバイスである。
[0067]ある実施形態によれば、搬送構成部は更に駆動構造480を含みうる。駆動構造480は、別の能動磁石ユニットのような、複数の別の磁石ユニットを含みうる。キャリア410は、駆動構造480と磁気的に相互作用するように構成された一または複数の第2の磁石ユニットを含みうる。具体的には、一または複数の第2の磁石ユニットは、駆動構造480の別の能動磁石ユニット485と相互作用する、例えば、強磁性材料のバー等の第2の受動磁石ユニット460であってよい。
[0068]図4Bに、搬送構成部の別の側面図を示す。図4Bは、複数の能動磁石ユニット475の能動磁石ユニットを示す図である。能動磁石ユニットは、キャリア410の第1の受動磁石ユニット450と相互作用する磁力を付与する。例えば、第1の受動磁石ユニット450は、強磁性材料のロッドでありうる。ロッドは、支持構造412に接続されたキャリア410の一部でありうる。支持構造412は、キャリア410の本体によって設けられうる。ロッド又は第1の受動磁石ユニットは、それぞれ、基板10を支持する支持構造412と一体的に形成されてもよい。幾何学的外形は第1の受動磁石ユニット450に取り付けられうる、あるいは第1の受動磁石ユニット450によって提供されうる。キャリア410は、例えば、別のロッドなどの第2の受動磁石ユニット460を更に含みうる。別のロッドは、キャリア410に接続されうる。ロッド又は第2の受動磁石ユニットは、それぞれ、支持構造412と一体的に形成されてもよい。
[0069]「受動(passive)」磁石ユニットという用語は、本書では、「能動(active)」磁石ユニットという概念と区別するために使用される。受動磁石ユニットとは、少なくとも搬送構成部の作動中には、能動制御又は調節の対象とはならない磁気的特性を有する要素のことを指す場合がある。例えば、受動磁石ユニット(例えば、キャリアのロッド又は別のロッド)の磁気的特性は、概して真空チャンバ又は真空システムを通過するキャリアの運動中は能動制御の対象ではない。本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態によれば、搬送構成部のコントローラは受動磁石ユニットを制御するように構成されていない。受動磁石ユニットは、磁場(例えば、静磁場)を生成するように適合されうる。受動磁石ユニットは、調節可能な磁場を生成するように構成されない場合がある。受動磁石ユニットは、強磁性材料などの磁性材料、永久磁石であってもよく、又は永久磁石特性を有してもよい。
[0070]本書に記載の実施形態によれば、複数の能動磁石ユニット475は、第1の受動磁石ユニット450に、及びその結果としてキャリア410に磁力を付与する。複数の能動磁石ユニット475は、キャリア410を浮上させる。別の能動磁石ユニット485は、例えば、搬送方向1に沿って、真空チャンバの内部でキャリア410を駆動させることができる。複数のさらなる能動磁石ユニット485は、キャリア410の上に位置する複数の能動磁石ユニット475によってキャリア410が浮上している間、搬送方向1にキャリア610を移動させるための駆動構造を形成する。別の能動磁石ユニット485は、第2の受動磁石ユニット460と相互作用して、搬送方向1に沿って力を付与することができる。例えば、第2の受動磁石ユニット460は、交互に変わる極性で配置された複数の永久磁石を含みうる。第2の受動磁石ユニット460から得られる磁場は、複数の別の能動磁石ユニット485と相互作用し、浮上中のキャリア410を移動させることができる。
[0071]複数の能動磁石ユニット475でキャリア410を浮上させるため、及び/又は、複数の別の能動磁石ユニット485でキャリア410を移動させるため、能動磁石ユニットを制御して調節可能な磁場を生じさせることができる。調整可能な磁場は、静磁場又は動磁場でありうる。本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、能動磁石ユニットは、垂直方向3に沿って延在する磁気浮上力を付与するための磁場を生成するように構成される。本書に記載の別の実施形態と組み合わせることができる他の実施形態によれば、能動磁石ユニットは、横方向に沿って延在する磁力を付与するように構成されうる。本書に記載の能動磁気ユニットは、電磁デバイス、ソレノイド、コイル、超伝導磁石、又はこれらの任意の組み合わせからなる群から選択された要素でありうるか、又は、かかる要素を含みうる。
[0072]本書に記載の実施形態は、キャリア、基板、及び/又はマスクの非接触浮上、搬送、及び/又はアライメントに関する。本開示はキャリアを参照し、キャリアは以下:基板を支持するキャリア、基板のないキャリア、基板、又は支持体によって支持される基板からなる群のうちの一または複数の要素を含みうる。本開示全体で使用する「非接触」という語は、例えばキャリア及び基板の重量は機械的接触又は機械的力によって保持されないが、磁力によって保持されるという意味であると理解すべきである。特に、機械的な力の代わりに磁力を用いて、キャリアが浮上した状態又は浮動した状態で保持される。例えば、本書に記載の搬送構成部は、キャリアの重量を支持する機械的レールなどの機械的デバイスを有しない場合がある。幾つかの実行形態では、浮上中に、また、例えば真空システム内のキャリアの移動中に、キャリアと装置のそれ以外の部分との間の機械的接触は全くなくてよい。
[0073]本開示の実施形態によれば、浮上している、あるいは浮上は物体の状態を指すものであり、物体は機械的接触又は支持体なしで浮動する。更に、物体の移動は、駆動力、例えば浮上力とは異なる方向の力を付与することを指すものであり、物体は1つの位置から別の異なる位置へ移動する。例えば、キャリア等の物体は、すなわち重力に反作用する力によって浮上することができ、浮上している間は重力に平行な方向とは異なる方向に移動しうる。
[0074]本書に記載の実施形態に係るキャリアの非接触浮上及び搬送は、キャリアの搬送又はアライメントの間、キャリアと、機械的レールなどの搬送構成部のセクションとの間の機械的接触により粒子が生成されることはないという点において有益である。したがって、詳細には非接触型の浮上、搬送、及び/又はアライメントを使用すると粒子発生が最小限に抑えられることから、本書に記載の実施形態は、基板に堆積される層の純度及び均一性の向上をもたらす。
[0075]図5に、本書に記載の実施形態に係る基板処理のためのシステム500を示す。真空システムであってよいシステム500は、基板10の上に例えば有機材料層等の一または複数の層を堆積させるように構成されうる。
[0076]システム500は、真空チャンバ502等の堆積チャンバ、本書に記載の実施形態に係るキャリア520、及び堆積チャンバ内でキャリア520を搬送するように構成された搬送構成部510を含む。幾つかの実行形態では、システム500は堆積チャンバ内に一又は複数の材料堆積源580を含む。キャリア520は、真空堆積処理等の堆積処理中に基板10、及びオプションとしてマスク20を保持するように構成されうる。システム500は、例えばOLEDデバイス製造用の有機材料の蒸着のために構成され得る。別の実施例では、システム500は、スパッタ堆積などのCVD又はPVD用に構成されうる。
[0077]幾つかの実行形態では、一又は複数の材料堆積源580は蒸着源であってよく、特に、OLEDデバイスの層を形成するために一又は複数の有機材料を基板上に堆積させるための蒸着源であり得る。例えば層堆積処理中に基板10を支持するためのキャリア520は、堆積チャンバの中へ、また、堆積チャンバを経由して、具体的には線形搬送路などの搬送路に沿って堆積エリアを経由して搬送されうる。
[0078]材料は、一又は複数の材料堆積源580から、コーティングされる基板10が位置する堆積エリアに向かう放出方向に放出される。例えば、一又は複数の材料堆積源580は、一又は複数の材料堆積源580の長さに沿って少なくとも1つの線に配置された複数の開口部及び/又はノズルを有する線源を提供しうる。材料は、複数の開口部及び/又はノズルを介して吐出されうる。
[0079]図5に示すように、別のチャンバを真空チャンバ502の隣に設けてもよい。真空チャンバ502は、バルブハウジング504及びバルブユニット506を有するバルブによって隣接するチャンバから分離され得る。矢印で示すように、基板10が載ったキャリア520が真空チャンバ502の中に挿入された後、バルブユニット506が閉じられうる。真空チャンバ502内の雰囲気は、例えば真空チャンバ502に接続された真空ポンプによって工業的真空を生成することによって、個別に制御されうる。
[0080]幾つかの実施形態によれば、キャリア520及び基板10は、堆積材料の堆積中には静的又は動的である。本書に記載の幾つかの実施形態によると、例えばOLEDデバイスの製造のために動的堆積処理が提供されうる。
[0081]幾つかの実行形態では、システム500は、真空チャンバ502を通って延びる一又は複数の搬送路を含み得る。キャリア520は、例えば、一又は複数の材料堆積源580を通過して一又は複数の搬送路に沿って搬送されるように構成されうる。図5には、矢印によって1つの搬送路が例示的に示されているが、本開示はこれに限定されるものではなく、2つ以上の搬送路が提供されうることを理解されたい。例えば、それぞれのキャリアの搬送のために、少なくとも2つの搬送路を互いに対して実質的に平行に配置することができる。一又は複数の材料堆積源580は、2つの搬送路の間に配置されうる。
[0082]図6に、本書に記載の別の実施形態に係る、基板10の処理、例えば真空処理のためのシステム600の概略図を示す。
[0083]システム600は、2つ以上の処理領域と、基板10とオプションによりマスクを支持するキャリア601を2つ以上の処理領域まで順次搬送するように構成された本開示に係る搬送構成部660とを含む。例えば、搬送構成部660は、基板処理のための2つ以上の処理領域を通って、搬送方向1に沿ってキャリア601を搬送するように構成されうる。言い換えるならば、複数の処理領域を通る基板10の搬送に同一のキャリアが使用されるということである。具体的には、基板10は、処理領域内での基板処理と後続の処理領域での基板処理との間は、キャリア601から取り外されない。すなわち、2つ以上の基板処理手順において、基板は同一キャリア上に留まる。幾つかの実施形態によれば、キャリア601は本書に記載の実施形態によって構成されうる。オプションにより、又は代替的に、搬送構成部660は、例えば、図4A及び図4Bに関連して説明したように構成されうる。
[0084]図6に例示的に示すように、2つ以上の処理領域は、第1の堆積領域608と第2の堆積領域612を含むことができる。オプションにより、第1の堆積領域608と第2の堆積領域612との間に移送(transfer)領域610を設けることができる。2つ以上の処理領域と移送領域などの複数の領域を、1つの真空チャンバ内に設けることができる。代替的に、複数の領域は、互いに接続された異なる真空チャンバ内に設けることができる。例えば、各真空チャンバは1つの領域を提供することができる。具体的に、第1の真空チャンバは第1の堆積領域608を提供することができ、第2の真空チャンバは移送領域610を提供することができ、第3の真空チャンバは第2の堆積領域612を提供することができる。幾つかの実行形態では、第1の真空チャンバと第3の真空チャンバは「堆積チャンバ」と称されうる。第2の真空チャンバは「処理チャンバ」と称されうる。更に、真空チャンバ又は領域は、図6の実施例に示す領域に隣接して提供されうる。
[0085]真空チャンバ又は領域は、バルブハウジング604及びバルブユニット605を有するバルブによって、隣接する領域から分離されうる。基板10が載ったキャリア601が領域(第2の堆積領域612など)の中に挿入された後、バルブユニット605を閉じることができる。領域内の雰囲気は、例えば、当該領域に接続された真空ポンプで工業的真空を生成することによって、及び/又は、例えば、第1の堆積領域608及び/又は第2の堆積領域612に一又は複数の処理ガスを注入することによって、個別に制御可能である。線形搬送路などの搬送路は、基板10が載ったキャリア601を領域の中へ、領域を通過して外へ搬送するように配設されうる。搬送路は、2つ以上の処理領域(第1の堆積領域608、第2の堆積領域612など)を少なくとも部分的に通って延在し、オプションにより移送領域610を通って延在しうる。
[0086]システム600は移送領域610を含みうる。幾つかの実施形態では、移送領域610は省略されうる。移送領域610は、回転モジュール、中継(transit)モジュール、又はこれらの組み合わせによって提供されうる。図6は、回転モジュールと中継モジュールの組み合わせを示す。回転モジュールでは、トラック構成部とその上に配置されたキャリア(複数可)は、垂直回転軸などの回転軸の周りで回転可能である。例えば、キャリア(複数可)は、システム600の左側からシステム600の右側へと、又はその逆に移送されうる。中継モジュールは、キャリア(複数可)が中継モジュールを経由して異なる方向へ、例えば互いに直交する方向へ移送されうるように、交差トラックを含みうる。
[0087]第1の堆積領域608及び第2の堆積領域612などの堆積領域内では、一又は複数の堆積源が配設されうる。例えば、第1の堆積源630は第1の堆積領域608内に配設されうる。第2の堆積源650は第2の堆積領域612内に配設されうる。一又は複数の堆積源は、OLEDデバイス用の有機層スタックを形成するため、基板10の上に一又は複数の有機層を堆積させるように構成された蒸着源であってよい。
[0088]図7に、本書に記載の実施形態に係る、例えば真空システム等の堆積システムにおいてキャリアを非接触搬送するための方法700のフロー図を示す。方法700は、本開示に係るキャリア、装置及びシステムを利用し得る。
[0089]方法700は、ブロック710において、堆積システムのセンサと搬送方向に搬送されるキャリアの端部の幾何学的外形との間の距離を検出することと、ブロック720において、検出された距離が幾何学的外形の変化を示すときに、真空システムの少なくとも1つの能動磁石ユニットを制御することとを含む。ある実行形態では、当該方法は、例えば検出された距離が幾何学的外形の変化を示すときに、真空システムにおけるキャリアの端部の位置を決定することができる。
[0090]キャリア300が搬送方向1に移動すると、幾何学的外形の変化に起因して距離が変化する。例えば、距離センサと幾何学的外形の傾斜部との間の距離は、搬送方向1及び/又は傾斜方向に応じて増加する、又は減少する。一実施形態では、距離センサと幾何学的外形との間の距離が減少すると、少なくとも1つの第1の磁石ユニットを通って流れる電流が減少しうる。更に、距離センサと幾何学的外形との間の距離が増加すると、少なくとも1つの能動磁石ユニットを通って流れる電流が増加しうる。しかしながら、本開示はこれに限定されず、削減される又は回避されるべき意図しない力に基づいて電流を増加させる又は減少させることができる。
[0091]別の実施形態では、図3の実施例に示すように例えばセンサが幾何学的外形の下に配置されている場合、距離センサと幾何学的外形との間の距離が増加したときに少なくとも1つの能動磁石ユニットを通って流れる電流が減少しうる。更に、距離センサと幾何学的外形との間の距離が減少すると、少なくとも1つの能動磁石ユニットを通って流れる電流が増加しうる。
[0092]別の態様によれば、堆積システムにおいてキャリアを非接触搬送するための方法は、搬送方向に搬送されるキャリアの端部の少なくとも1つの材料の性質又は特性を検出することと、検出された少なくとも1つの材料の性質又は特性が例えば材料の変化及び/又は磁気的変化、電気的変化、又は光学的変化等の変化を示すときに、堆積システムの少なくとも1つの能動磁石ユニットを制御することとを含む。少なくとも1つの材料の性質又は特性は、磁気的、光学的、又は電気的性質の特性でありうる。ある実行形態において、当該方法では、キャリアの一または複数の端部がガイドユニットに接近する又はガイドユニットから離れるときに、端部に配置された磁性材料を検出することができる。ガイドユニットを選択的に制御して、隣接するガイドユニット間でのキャリアの滑らかな移送を提供することができる。
[0093]本書に記載の実施形態によれば、堆積システムにおいてキャリアを非接触搬送するための方法は、コンピュータプログラム、ソフトウェア、コンピュータソフトウェア製品、及び相互関連コントローラを使用して実施することができる。相互関連コントローラは、キャリア、装置及び/又はシステムの対応構成要素と通信可能なCPU、メモリ、ユーザインターフェース、及び入出力デバイスを有し得る。
[0094]本開示の実施形態によれば、キャリアは、一または複数のセンサによって検出されうる様々な性質を有する被検出可能装置を有する。一実施形態では、キャリアには、キャリアの端部において変化する、すなわち一定でない幾何学的外形が備わっている。別の実施形態では、キャリアには、異なる材料のセクション等の異なる特性を有するセクションが備わっている。堆積システムの搬送構成部はこの変化を検出して、搬送構成部に対するキャリアの位置、具体的にはキャリアの一または複数の端部の位置を決定することができる。キャリアを非接触搬送するように構成された搬送構成部は、検出された変化と、そこから導出されたキャリア又は端部の位置に基づいて制御されうる。例えば、キャリアの一または複数のエッジの位置を決定することができ、搬送構成部の一または複数の能動磁石ユニットを選択的に制御することが可能である。詳細には、キャリアのエッジに位置する、及び/又はエッジ部分が接近する能動磁石ユニットを制御することが可能である。搬送方向におけるキャリアの滑らかな搬送が達成されうる。キャリアの不安定な搬送及び/又は粒子の生成に起因する基板の破損が削減されうる、又は回避さえもされうる。
[0095]以上の記述は本開示の実施形態を対象としているが、本開示の基本的な範囲から逸脱せずに本開示の他の実施形態及び更に別の実施形態が考案されてよく、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。