JP2020204074A - 大入熱溶接用高強度鋼板 - Google Patents

大入熱溶接用高強度鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】新たな成分設計の指針に基づいて、大入熱溶接用高強度鋼板を提供する。【解決手段】質量%で、C:0.030%以上0.080%以下、Mn:0.30%以上1.30%以下、Ni:1.30%以上7.00%以下、Cu:0.60%以上2.00%以下、Ti:0.005%以上0.020%以下、O:0.0010%以上0.0040%以下、を含有し、Si:0.10%以下、P:0.010%以下、S:0.005%以下、Al:0.003%以下、N:0.0060%以下に制限し、Mn/Ni:0.80以下、炭素当量CeqWES:0.45%以上0.70%以下、炭素当量CeqIIW:0.65%以上0.90%以下である大入熱溶接用高強度鋼板。【選択図】なし

Description

本発明は、大入熱溶接が適用される高強度鋼板に関するものである。
近年、高層建築に代表される溶接構造物の鉄骨に対する要求は、建築物の大型化、建造の高能率化、地震時の破壊に対する安全性(耐震性)の向上の観点から、高度化している。そして、溶接構造物の鉄骨に使用される厚鋼板は、高強度化、厚手化に加えて、大入熱溶接HAZの靭性の確保が求められている。なお、「大入熱溶接HAZ」とは、大入熱溶接によって形成された溶接熱影響部(Heat Affected Zone、HAZ)のことを意味する。以下、大入熱溶接HAZを単に、大入熱HAZという場合がある。大入熱溶接とは、大入熱の溶接であり、高能率なエレクトロスラグ溶接やサブマージアーク溶接などが例として挙げられる。
従来、高強度厚鋼板に上述の大入熱溶接を適用する場合、HAZにおいて良好な靱性を確保することは困難であるとされていた。例えば、引張強度780MPa級厚鋼板におけるエレクトロスラグ溶接部のHAZ靱性が非特許文献1及び非特許文献2に示されている。非特許文献1の図6によれば、溶融線(Fusion Line、FL)、FLから1mm(HAZ1)、FLから3mm(HAZ3)、及びFLから5mm(HAZ5)のノッチ位置におけるシャルピー吸収エネルギーの平均値は40J以下である。また、非特許文献2の図3及び図5によれば、FLのノッチ位置におけるシャルピー吸収エネルギーの平均値は50J以下である。
このような問題に対して、特許文献1では、微細なCの濃化領域を分散させることによってHAZでのマルテンサイト・オーステナイト混合相(Martensite - Austenite constituent、MA)の生成を抑制し、HAZ靱性を向上させる技術が開示されている。特許文献1では、鋼に含まれるSi及びPの含有量を低減し、熱間圧延後の加速冷却及び熱処理の条件を制御して、セメンタイト及びパーライトの生成を抑制している。
また、特許文献2では、Ti、Al、OおよびNの含有量のバランスを制御することで結晶粒を微細化し、HAZの靱性を向上させる技術が開示されている。この技術は、粗大なオーステナイト粒の成長を、鋼中に分散させた微細なTiN粒子によって抑制する効果と、Ti含有介在物を変態核として粒内フェライトの析出を促進する効果とを重畳している。
特開2017−155333号公報 国際公開第2017/183720号
徳納一成、他7名「建築用大入熱溶接型予熱低減780N/mm2級高張力鋼板」、新日鉄技報、1997年、No.365、p.37〜43 廣田実、他5名、「オンライン製造プロセスによる建築構造用低降伏比780N/mm2級鋼材 その3 大入熱溶接部継手特性」、日本建築学会大会学術講演梗概集、2012年、No.1017
鋼板の高強度化を図るためには、鋼の焼入れ性の指標である炭素当量CeqWESを高めることが有効である。しかし、MnやNiなどの合金元素の含有量を増加させると、大入熱HAZは粗大なベイナイトが主体の硬化組織となり、脆化相であるマルテンサイト・オーステナイト混合相(Martensite - Austenite constituent、MA)の生成が促進される。MAの生成は、鋼板に含まれるMnやNiなどの合金元素が局所的に濃化して形成されたミクロ偏析部に起因する。ミクロ偏析部は、溶接熱影響によって加熱され、冷却された後、相変態によってMAとなる。MAは硬い相であり、破壊の起点となってHAZ靱性を低下させる。
また、大入熱HAZは高温に加熱されるため、オーステナイトの粒成長が促進され、鋼の結晶粒が粗大化する。更に、合金元素の含有量を増加させるとHAZが硬化する。これらもHAZの靭性を低下させる原因となる。このように、鋼板を強度化するために炭素当量CeqWESを高めると、大入熱HAZにはMAが生成した粗大なベイナイト主体の組織が形成されて靭性が低下しやすくなる。
以上のように、強度を高める合金元素であるMn及びNiを含有する厚鋼板の場合、大入熱溶接HAZ靱性は、ミクロ偏析に起因するMAの形成、旧オーステナイトの粗大化、ベイナイトの硬化によって著しく低下する。そのため、従来の厚鋼板の成分設計の指針に基づいて鋼板(母材)高強度化と、大入熱HAZの靭性の確保とを両立させることは困難であった。
本発明は、このような実情に鑑みなされたものであり、新たな成分設計の指針を提案し、これに基づいて、大入熱溶接用厚鋼板を提供することを課題とするものである。
本発明者らは、高強度鋼板の大入熱HAZを著しく脆化させるMAの生成を抑制し、HAZ組織の微細化を図るという視点から、鋼板(母材)の高強度化と大入熱HAZの靭性の確保とを両立させるために検討を行った。その結果、鋼成分のMn/Niを0.80以下に制御することが、ミクロ偏析部におけるMAの低減に有効であるという知見を得た。更に、粒内変態の生成核として作用するTi系酸化物は、HAZの結晶粒を顕著に微細化させ、結果としてMAのサイズも小さくなることがわかった。
また、大入熱HAZの結晶粒は、鋼板の焼入れ性を一定以上に高めること、具体的には、炭素当量CeqIIWを0.65%以上とし、好ましくは焼入れ性倍数DIを10.0inch以上とすることにより、顕著に微細化することがわかった。特に、Cuは、焼入れ性を高め、HAZ靭性に及ぼす悪影響が小さいことから、Cuの含有量の増加によってHAZ靭性が顕著に向上するという知見も得られた。そして、HAZの硬化の抑制にはCの含有量の制限が有効である。また、Bの含有量を制限すると、鋼板(母材)の表面と板厚方向の内部との硬度差が小さくなり、表面性状や加工性などが優位となることがわかった。
本発明はこのような知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1] 質量%で、
C :0.030%以上、0.080%以下、
Mn:0.3%以上、1.3%以下、
Ni:1.3%以上、7.0%以下、
Cu:0.60%以上、2.00%以下、
Ti:0.005%以上、0.020%以下、
O :0.0010%以上、0.0040%以下、
Cr:0%以上、1.0%以下、
Mo:0%以上、1.0%以下、
W :0%以上、1.0%以下、
Co:0%以上、1.0%以下、
Nb:0%以上、0.10%以下、
V :0%以上、0.10%以下、
B :0%以上、0.0050%以下、
Ca:0%以上、0.005%以下、
Mg:0%以上、0.005%以下、
REM:0%以上、0.005%以下、
Zr:0%以上、0.005%以下
を含有し、
Si:0.10%以下、
P :0.010%以下、
S :0.005%以下、
Al:0.003%以下、
N :0.0060%以下、
に制限され、
残部がFe及び不純物からなり、
Mnの含有量とNiの含有量との比であるMn/Niが0.80以下であり、
下記(1)式で計算される炭素当量CeqWESが0.45%以上、0.70%以下、
下記(2)式で計算される炭素当量CeqIIWが0.65%以上、0.90%以下
である、大入熱溶接用高強度鋼板。
CeqWES(%)=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
・・・(1)
CeqIIW(%)=C+Mn/6+Cu/15+Ni/15+Cr/5+Mo/5+V/5
・・・(2)
ここで、上記(1)式、(2)式中のC、Mn、Si、Ni、Cr、Mo、V、Cuは、質量%で表した各元素の鋼板中の含有量であり、含有しない元素の項には0を代入する。
[2] 下記(3)式で計算される焼入れ性倍数DIが10.0inch以上、21.0inch以下
である、上記[1]に記載の大入熱溶接用高強度鋼板。
DI(inch)=0.5×fB×C0.5×(1+0.64×Si)×(1+4.1×Mn)×(1+0.27×Cu)×(1+0.52×Ni)×(1+2.33×Cr)×(1+3.14×Mo)
・・・(3)
ここで、上記(3)式中のC、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Moは、質量%で表した各元素の鋼板中の含有量であり、含有しない元素の項には0を代入する。fBは、Bが0.0004%以下の場合は1.0であり、0.0004%超の場合は1.3である。
[3] 更に、質量%で、
Cr:0.1%以上、1.0%以下、
Mo:0.1%以上、1.0%以下、
W :0.1%以上、1.0%以下、
Co:0.1%以上、1.0%以下、
Nb:0.005%以上、0.10%以下、
V :0.005%以上、0.10%以下、
の1種以上を含有する、上記[1]または[2]に記載の大入熱溶接用高強度鋼板。
[4] 更に、質量%で、
B:0%以上、0.0004%以下
を含有する、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の大入熱溶接用高強度鋼板。
[5] 更に、質量%で、
Ca:0.0001%以上、0.005%以下、
Mg:0.0001%以上、0.005%以下、
REM:0.0001%以上、0.005%以下、
Zr:0.0001%以上、0.005%以下、
の1種以上を含有する、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の大入熱溶接用高強度鋼板。
本発明によれば、新たな成分設計の指針に基づく大入熱溶接用高強度鋼板を提供することができる。
エレクトロスラグ溶接T字継手におけるシャルピー試験片の採取要領を示す図である。
以下、本発明の一実施形態に係る大入熱溶接用高強度鋼板について説明する。まず、本発明を完成するに至った本発明者らの検討結果や、得られた新たな知見について詳述する。
本実施形態に係る大入熱溶接用高強度鋼板(以下、単に「鋼板」とも称する。)は、焼入れ性を高める合金元素であるC、Mn、Ni、Cuを含有する。そして、本実施形態に係る鋼板は、鋼を溶製、鋳造して得られた鋼片に熱間圧延を施すことで製造される。このようにして製造される鋼板は、上述したように、鋳造時の凝固によって凝固組織の界面に形成されるミクロ偏析部を有する。このミクロ偏析部のMn、Niなどの合金元素の濃化は、溶接の熱影響のような短時間の加熱では解消され難い。そのため、C、Mn、Niを含有する鋼板に大入熱溶接を適用した場合、ミクロ偏析部は大入熱HAZに残存しやすい。このようにして局所的に形成されるHAZのミクロ偏析部は、加熱によってCが濃化した残留オーステナイトとなり、冷却後に硬質のMAとなる。このようなMAは破壊の起点となってHAZ靭性を低下させるので、安定なオーステナイトの残留、換言すると残留オーステナイトの生成を抑制することが望ましい。そして、本発明者らは、鋭意検討の結果、MnはNiに比較して大入熱HAZの冷却時における残留オーステナイトの分解を遅延させるという新たな知見を得た。
上述したように、大入熱HAZの冷却時において、ミクロ偏析部の残留オーステナイトが分解されずに大入熱HAZが室温まで冷却されると、この残留オーステナイトがMAとなってHAZの靱性を劣化させる。Mnは、Niと比較すると、残留オーステナイトの分解を遅延させることから、MAの増加を招きやすいと考えられる。換言するに、NiはMnよりも大入熱HAZの靭性に及ぼす悪影響が小さいと考えられる。そこで、本発明者らは、鋼中のMnの含有量とNiの含有量とのバランスに着眼し、両者の比率の適正化を図ることによって鋼の焼入れ性を高めつつMAの生成量を抑制できると考えた。具体的には、本発明者らは、鋼中のMnの含有量をNiの含有量で除した比であるMn/Niが0.80以下になると、大入熱HAZにおけるMAの生成量が低減する現象を見出した。この現象は、加熱時にミクロ偏析部にCが濃化して生成する残留オーステナイトが分解される際、すなわち残留オーステナイトがフェライトとセメンタイトとに変態する際の異相界面におけるC原子の分配挙動に及ぼすMn原子とNi原子との影響の違いに起因すると推察される。
また、本発明者らは、ミクロ偏析部の残留オーステナイトの分解開始時のCの濃度は、鋼板全体のCの含有量よりも鋼板に含まれるMnやNiなどの合金元素の種類や量に影響されることを見出した。つまり、本発明者らは、鋼成分のCの含有量を低減するほどベイナイト変態が促進され、MAとなる残留オーステナイトの量が減り、そのサイズも微細化する傾向があることを見出した。この現象は、ベイナイトの不完全変態の機構と関連していると推察される。また、本発明者らは、さらに検討を進めた結果、鋼成分においてMn/Niを0.80以下に制限し、かつCの含有量を0.080%以下に制限することによって、ミクロ偏析部におけるMAの生成を抑制できることを見出した。
また、大入熱溶接用高強度鋼板では、HAZの硬化及び結晶粒の粗大化が大入熱HAZの靱性を劣化させる原因となる。HAZの硬化の抑制には、Cの含有量の制限が有効である。一方、HAZの結晶粒の粗大化を抑制する有効な方法の一つは、Ti系酸化物を生成核とする粒内変態の利用である。本発明者らは、大入熱溶接を模擬した再現熱サイクルを付与した鋼に対して、金属組織と靱性との関係を調査した。その結果、鋼中に分散させたTi系酸化物によって粒内変態を促進させることで結晶粒を微細化すると共に、Mn/Niを0.80以下に制限してMAの生成を抑制することによって、大入熱HAZの靱性を顕著に向上し得ることを見出した。
このように、本発明者らは、鋼板のTiの含有量を0.005%以上とすることによってTi系酸化物を分散させ、大入熱HAZの結晶粒の微細化を図った。そして、Ti系酸化物による結晶粒の微細化を図るために、Alの含有量を制限する。これは、鋼板中のAlの含有量が増えると、鋼板中のO(酸素)がAl系酸化物の生成のために消費されやすくなり、Ti系酸化物の生成が抑制されるためである。したがって、本実施形態に係る大入熱溶接用高強度鋼板に含まれるAlの量は0.003%以下に制限される。一方、ミクロンサイズの粗大なTiNの生成は、Tiの含有量を0.02%以下に制限することで、回避できる。また、HAZ靭性に影響を及ぼすような粗大な介在物が生成しないように、Oの含有量は0.0040%以下に制限される。
更に、本発明では、Cu及びNiの含有量を高め、焼入れ性を十分に確保することによっても結晶粒の微細化が図られる。具体的には、炭素当量CeqWES及びCeqIIWの下限が適切に設定され、好ましくは焼入れ性倍数DIの下限が適正に設定される。一方、延性が極端に低下したり、吸収エネルギーが低下したりすることを抑制するため、CeqWES及びCeqIIWの上限が適切に設定され、好ましくはDIの上限が適切に設定される。炭素当量CeqWES及びCeqIIW、並びにDIは、C、Mn、Si、Cu、Ni、Cr、Mo、Vの含有量によって制御される。本発明者らは、鋭意検討の結果、下記(1)式によって求められる炭素当量CeqWESを0.45%以上、0.70%以下、下記(2)式によって求められるCeqIIWを0.65%以上、0.90%以下に制御すれば、大入熱HAZの靭性が確保されるという知見を得た。好ましくは、結晶粒の微細化のために、下記(3)式によって求められる焼入れ性倍数DIは10.0inch以上、21.0inch以下の範囲内に制御される。
CeqWES(%)=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
・・・(1)
CeqIIW(%)=C+Mn/6+Cu/15+Ni/15+Cr/5+Mo/5+V/5
・・・(2)
DI(inch)=0.5×fB×C0.5× (1+0.64×Si)×(1+4.1×Mn)×(1+0.27×Cu)×(1+0.52×Ni)×(1+2.33×Cr)×(1+3.14×Mo)
・・・(3)
ここで、上記(1)式、(2)式、(3)式中のC、Mn、Si、Ni、Cr、Mo、V、Cuは質量%で表した各元素の鋼板中の含有量であり、含有しない元素の項には0を代入する。fBはBが0.0004%以下の場合は1.0であり、0.0004%超の場合は1.3である。
次に、本実施形態に係る大入熱溶接用高強度鋼板の化学成分(鋼組成)について説明する。なお、以下の化学成分の説明では、質量%を単に%と表記する。
(C:0.030%以上、0.080%以下)
Cは、鋼の焼入れ性を高めて高強度化に寄与する元素である。本実施形態では、Cの含有量は0.030%以上である。Cの含有量は、好ましくは0.035%以上であり、より好ましくは0.040%以上である。一方、HAZの硬化を抑制して靱性を確保するという観点から、Cの含有量は0.080%以下である。Cの含有量は、好ましくは0.075%以下であり、より好ましくは0.070%以下である。
(Mn:0.30%以上、1.30%以下)
Mnは、鋼の焼入れ性を高めて高強度化に寄与する元素であり、本実施形態ではMnの含有量は0.30%以上である。Mnの含有量は、好ましくは0.40%以上であり、より好ましくは0.50%以上である。一方、大入熱HAZにおけるMAの過度な生成を抑制するという観点から、本実施形態では、Mnの含有量は1.30%以下である。Mnの含有量は、好ましくは1.20%以下であり、より好ましくは1.10%以下である。
(Ni:1.30%以上、7.00%以下)
Niは、鋼の焼入れ性を高めて高強度化に寄与する元素であり、同時に、大入熱HAZの靱性を高める元素である。強度および靭性を確保するという観点から、本実施形態において、Niの含有量は1.30%以上である。Niの含有量は、好ましくは1.80%以上であり、より好ましくは2.00%以上であり、さらに好ましくは2.50%以上である。一方、Niは高価な元素であり、製造コストの上昇を抑制するという観点から、本実施形態では、Niの含有量は7.00%以下である。Niの含有量は、好ましくは6.50%以下であり、より好ましくは6.00%以下であり、さらに好ましくは5.50%以下である。
(Mn/Ni:0.80以下)
Mn及びNiはともに鋼の高強度化に寄与する元素であるが、大入熱HAZにおいて、MnはNiに比べてMAの生成を促進しやすいことから、Mnの含有量はNiの含有量よりも少ないことが好ましい。大入熱HAZの高強度化を図りつつ靱性を確保するという観点から、本実施形態の鋼板において、鋼中のMnの含有量をNiの含有量で除した比であるMn/Niは0.80以下である。Mn/Niは、好ましくは0.70以下であり、より好ましくは0.60以下である。なお、Mn/Niは、Mnの含有量の下限をNiの含有量の上限で除した比を下限としてもよく、すなわち、0.04以上であってもよい。Mn/Niは0.10以上であってもよく、0.20以上であってもよい。
(Cu:0.60%以上、2.00%以下)
Cuは、溶接性やHAZの靱性に対する悪影響が小さく、鋼の焼入れ性を高めて母材の強度や靱性を向上させる元素である。強度および靭性を確保するという観点から、本実施形態の鋼板において、Cuの含有量は0.60%以上である。Cuの含有量は、好ましくは0.70%以上であり、より好ましくは0.80%以上である。一方、鋼板の熱間圧延時おけるCuクラックの発生抑制の観点から、本実施形態では、Cuの含有量は2.00%以下である。Cuの含有量は、好ましくは1.90%以下であり、より好ましくは1.80%以下である。
(Ti:0.005%以上、0.020%以下)
Tiは、Ti酸化物及びTiNを形成する元素である。TiNはピン止め効果によってγ粒の粗大化を抑制し、Ti酸化物は粒内変態核となってHAZの結晶粒の細粒化に寄与する。また、Tiは、TiNを形成してBNの生成を抑制するため、焼入れ性を向上させる固溶Bの確保にも有効である。大入熱HAZの靭性を確保するため、本実施形態において、Tiの含有量は0.005%以上である。Tiの含有量は、好ましくは0.007%以上である。一方、母材及びHAZの靭性の劣化や鋳片の表面品質の劣化を抑制するという観点から、本実施形態では、Tiの含有量は0.020%以下である。Tiの含有量は、好ましくは0.018%以下であり、より好ましくは0.016%以下である。
(O:0.0010%以上、0.0040%以下)
Oは、Tiなどの脱酸元素と結合して、酸化物を形成する。Ti酸化物は、粒内変態核として作用し、結晶粒の微細化に寄与する。この効果を得るため、本実施形態の鋼板において、Oの含有量は0.0010%以上である。ただし、鋼の清浄度が低下して母材及びHAZの靭性が劣化することを抑制する観点から、Oの含有量は0.0040%以下である。Oの含有量は、好ましくは0.0030%以下である。
(Si:0.10%以下)
Siは、脱酸や高強度化のために鋼に含有される元素である。一方、Siは、MAの生成を促進させる元素でもあり、本発明者らは、大入熱HAZのミクロ偏析部におけるMAの生成にSiが極めて大きな影響を及ぼすという知見を得ている。したがって、大入熱HAZの靭性を確保するため、Siの含有量の制限が必要であり、本実施形態では、Siの含有量は0.10%以下である。Siの含有量は、好ましくは0.08%以下であり、より好ましくは0.05%以下である。Siの含有量の下限は特に限定されないが、製造コストの観点から、Siの含有量は0.01%以上であってもよい。
(P:0.010%以下)
Pは、靭性に有害な不純物である。Pの含有量は、大入熱HAZの靱性を安定的に確保するために制限する必要があり、本実施形態では、0.010%以下である。Pの含有量は、好ましくは0.008%以下である。Pの含有量の下限は限定されないが、製造コストの観点から、Pの含有量は0.001%以上であってもよい。
(S:0.005%以下)
Sは、不純物であり、鋼中に多量に含有されると粗大な介在物を形成して靭性を低下させる場合がある。したがって、Sの含有量は、大入熱HAZの靱性を安定的に確保するために制限する必要があり、本実施形態では、Sは0.005%以下である。Sの含有量は、好ましくは0.004%以下である。S量の下限は限定されないが、製造コストの観点から、Sの含有量は0.0001%以上であってもよい。Sの含有量は0.001%以上であってもよい。
(Al:0.003%以下)
Alは、酸化物を形成する元素であり、脱酸に用いられる。しかし、Alの含有量の増加に伴ってTi系酸化物の生成が抑制される。したがって、Alの含有量は、Ti系酸化物の生成を促進するという観点から、本実施形態において、0.003%以下である。Alの含有量は、好ましくは0.002%以下であり、より好ましくは0.001%以下である。上述のように、Alは脱酸元素であるが、Si、Mn、Tiによる脱酸が可能であり、Alの含有量は0%であってもよい。
(N:0.0060%以下)
Nは、TiNを構成する元素である。微細なTiNは、ピン止めによってγ粒の粗大化を抑制するが、粗大なTiNは、HAZにおいて破壊起点となり、靱性を低下させる場合がある。粗大なTiNの形成を抑制し、HAZ靭性を確保するという観点から、本実施形態では、Nの含有量は0.0060%以下である。Nの含有量は、好ましくは0.0040%以下である。本実施形態では、Nの含有量の下限は限定されないが、製造コストの観点から、Nの含有量は0.0001%以上であってもよい。HAZにおいてγ粒の成長を抑制する効果を発現させるという観点から、Nの含有量は、好ましくは0.0010%以上である。
(炭素当量CeqWES:0.45%以上、0.70%以下)
炭素当量CeqWESは、鋼板(母材)の強度及びHAZの結晶粒径に大きな影響を及ぼす焼入れ性の指標である。鋼の焼入れ性を高め、母材の強度を確保し、HAZの結晶粒を細粒化させるという観点から、炭素当量CeqWESは、本実施形態では0.45%以上である。炭素当量CeqWESは、好ましくは0.50%以上であり、より好ましくは0.55%以上である。一方、大入熱HAZの硬化を抑制して、靱性を確保するという観点から、炭素当量CeqWESは、本実施形態では0.70%以下である。炭素当量CeqWESは、好ましくは0.65%以下である。なお、炭素当量CeqWESは、合金元素の含有量によって下記(1)式で計算される。
CeqWES(%)=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
・・・・(1)
ここで、上記(1)式中のC、Mn、Si、Ni、Cr、Mo、Vは質量%で表した各元素の鋼板中の含有量であり、含有しない元素の項には0を代入する。
(炭素当量CeqIIW:0.65%以上、0.90%以下)
炭素当量CeqIIWは、鋼板(母材)の強度及びHAZの結晶粒径に大きな影響を及ぼす焼入れ性の指標である。本実施形態に係る鋼板は、Cuが含まれることから、炭素当量CeqIIWは重要な指標である。鋼の焼入れ性を高め、母材の強度を確保し、HAZの結晶粒を細粒化させるという観点から、炭素当量CeqIIWは、本実施形態では0.65%以上である。炭素当量CeqIIWは、好ましくは0.70%以上であり、より好ましくは0.75%以上である。一方、大入熱HAZの硬化を抑制して、靱性を確保するという観点から、炭素当量CeqIIWは、本実施形態では0.90%以下である。炭素当量CeqIIWは、好ましくは0.89%以下であり、より好ましくは0.85%以下である。なお、炭素当量CeqWESは、合金元素の含有量によって下記(2)式で計算される。
CeqIIW(%)=C+Mn/6+Cu/15+Ni/15+Cr/5+Mo/5+V/5
・・・・(2)
ここで、上記(2)式中のC、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Vは質量%で表した各元素の鋼板中の含有量であり、含有しない元素の項には0を代入する。
(焼入れ性倍数DI:10.0inch以上、21.0inch以下)
焼入れ性倍数DIは、鋼板(母材)の強度及びHAZの結晶粒径に影響を及ぼす焼入れ性の指標である。鋼の焼入れ性を高め、母材の強度を確保し、HAZの結晶粒を細粒化させるという観点から、焼入れ性倍数DIは、好ましくは10.0inch以上である。焼入れ性倍数DIは、より好ましくは12.0inch以上であり、さらに好ましくは14.0inch以上である。一方、大入熱HAZの硬化を抑制して、靱性を確保するという観点から、焼入れ性倍数DIは、好ましくは21.0inch以下である。焼入れ性倍数DIは、より好ましくは20.0inch以下であり、さらに好ましくは19.0inch以下である。なお、焼入れ性倍数DIは、合金元素の含有量によって下記(3)式で計算される。fBは、焼入れ性に及ぼすBの影響を示す係数であり、Bの含有量によって変化する。Bの含有量が0.0004%以下の場合、焼入れ性に及ぼすBの影響は考慮されず、fBは1.0である。Bの含有量が0.0004%超の場合、焼入れ性に及ぼすBの影響が考慮され、fBは1.3である。
DI(inch)=0.5×fB×C0.5×(1+0.64×Si)×(1+4.1×Mn)×(1+0.27×Cu)×(1+0.52×Ni)×(1+2.33×Cr)×(1+3.14×Mo)
・・・・(3)
ここで、上記(3)式中のC、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Moは質量%で表した各元素の鋼板中の含有量であり、後述する選択元素Cr、Moを含有しない場合は各項に0を代入する。fBはBが0.0004%以下の場合は1.0であり、0.0004%超の場合は1.3である。
本実施形態に係る鋼板の化学組成の残部は、鉄(Fe)及び不純物である。不純物とは、鋼板を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料やその他の要因により混入する成分であって、本実施形態に係る鋼板に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。ただし、不純物のうち、P及びSについては上述のように含有量の上限値が制限される。
本実施形態の鋼板には、鋼板(母材)の強度や靭性を向上させるため、必要に応じて、下記に示す選択元素Cr、Mo、W、Co、Nb、V、Bの1種又は2種以上を含有させてもよい。
(Cr:0%以上、1.0%以下)
Crは、スクラップ等から不純物として鋼板に混入する場合がある元素である。しかし、Crの含有量の下限値は限定されず、0%であってもよい。また、Crは、母材の強度を向上させる元素でもある。そのため、本実施形態では、Crの含有量は0.1%以上であってもよい。Crの含有量は、好ましくは0.2%以上であり、より好ましくは0.3%以上である。ただし、大入熱HAZの靱性や溶接性の劣化抑制の観点から、本実施形態では、Crの含有量は、1.0%以下である。Crの含有量は、好ましくは0.8%以下であり、より好ましくは0.5%以下である。
(Mo:0%以上、1.0%以下)
Moは、スクラップ等から不純物として鋼板に混入する場合がある元素である。しかし、Moの含有量の下限値は限定されず、0%であってもよい。また、Moは、母材の強度及び靱性を向上させる元素でもある。そのため、本実施形態では、Moの含有量は0.1%以上であってもよい。Moの含有量は、好ましくは0.2%以上であり、より好ましくは0.3%以上である。ただし、大入熱HAZの靱性や溶接性の劣化抑制、合金コストの上昇抑制の観点から、本実施形態では、Moの含有量は1.0%以下である。Moの含有量は、好ましくは0.5%以下である。
(W:0%以上、1.0%以下)
Wは、スクラップ等から不純物として鋼板に混入する場合がある元素である。しかし、Wの含有量の下限値は限定されず、0%であってもよい。また、Wは、母材の強度及び靱性をさせる元素でもある。そのため、本実施形態では、Wの含有量は0.1%以上であってもよい。Wの含有量は、好ましくは0.2%以上であり、より好ましくは0.3%以上である。ただし、大入熱HAZの靱性や溶接性の劣化抑制、合金コストの上昇抑制の観点から、本実施形態では、Wの含有量は1.0%以下である。Wの含有量は、好ましくは0.5%以下である。
(Co:0%以上、1.0%以下)
Coは、スクラップ等から不純物として鋼板に混入する場合がある元素である。しかし、Coの含有量の下限値は限定されず、0%であってもよい。また、Coは、溶接性やHAZの靱性に対する悪影響が小さく、母材の強度や靱性を向上させる元素でもある。そのため、本実施形態では、Coの含有量は0.1%以上であってもよい。ただし、合金コストの上昇抑制の観点から、Coの含有量は1.0%以下である。Coの含有量は、好ましくは0.5%以下である。
(Nb:0%以上、0.10%以下)
Nbは、スクラップ等から不純物として鋼板に混入する場合がある元素である。しかし、Nbの含有量の下限値は限定されず、0%であってもよい。また、Nbは、母材の強度及び靱性を向上させる元素でもある。そのため、本実施形態では、Nbの含有量は0.005%以上であってもよい。ただし、大入熱HAZの靱性や溶接性の劣化抑制の観点から、Nbの含有量は0.10%以下である。Nbの含有量は、好ましくは0.05%以下であり、より好ましくは0.03%以下である。
(V:0%以上、0.10%以下)
Vは、スクラップ等から不純物として鋼板に混入する場合がある元素である。しかし、Vの含有量の下限値は限定されず、0%であってもよい。また、Vは、母材の強度を向上させる元素でもある。そのため、本実施形態では、Vの含有量は0.005%以上であってもよい。ただし、大入熱HAZの靱性や溶接性の劣化抑制、合金コストの上昇抑制の観点から、Vの含有量は、0.10%以下である。Vの含有量は、好ましくは0.08%以下であり、より好ましくは0.06%以下である。
(B:0%以上、0.0050%以下)
Bは、スクラップ等から不純物として鋼板に混入する場合がある元素である。しかし、Bの含有量の下限値は限定されず、0%であってもよい。Bは、鋼の焼入れ性を大幅に向上させる元素であり、微量でも鋼の焼入れ性を顕著に向上させることから、Bの含有量は好ましくは0.0003%以上である。一方、大入熱HAZの靱性や溶接性の劣化を抑制するという観点から、本実施形態では、Bの含有量は0.0050%以下である。Bの含有量は、好ましくは0.0030%以下、より好ましくは0.0020%以下である。ただし、鋼板の表層の硬度上昇を抑制し、表面性状や加工性などの劣化を防止するという観点から、Bの含有量は0.0004%以下であってもよい。
さらに、本実施形態に係る鋼板は、介在物の形態を制御するため、必要に応じて、下記に示す選択元素Ca、Mg、REM、Zrの1種又は2種以上を含有することができる。
(Ca:0%以上、0.005%以下)
Caは、酸化物や硫化物、酸硫化物を形成して粗大介在物の生成を抑制し、母材及びHAZの靱性を高める元素である。そのため、本実施形態では、Caの含有量は0.0001%以上であってもよい。ただし、脆性破壊の発生起点として作用するCa系介在物の増加を抑制するという観点から、本実施形態では、Caの含有量は0.005%以下である。Caの含有量は、好ましくは0.004%以下である。なお、Caの含有量は0%であってもよい。
(Mg:0%以上、0.005%以下)
Mgは、Caと同様に、酸化物や硫化物、酸硫化物を形成して粗大介在物の生成を抑制し、母材及びHAZの靱性を高める元素である。そのため、本実施形態では、Mgの含有量は0.0001%以上であってもよい。ただし、脆性破壊の発生起点として作用するMg系介在物の増加を抑制するという観点から、本実施形態では、Mgの含有量は0.005%以下である。Mgの含有量は、好ましくは0.003%以下である。なお、Mgの含有量は0%であってもよい。
(REM:0%以上、0.005%以下)
REM(希土類元素)とは、Sc、Yの2元素と、La、CeやNdなどのランタノイド15元素の総称を意味する。本実施形態でいうREMとは、これら希土類元素から選択される1種以上で構成されるものであり、以下に説明するREMの含有量とは、希土類元素の含有量の合計である。
REMは、CaやMgと同様に、酸化物や硫化物、酸硫化物を形成して粗大介在物の生成を抑制し、母材及びHAZの靱性を高める元素である。そのため、REMの含有量は0.0001%以上であってもよい。ただし、脆性破壊の発生起点として作用するREM系介在物の増加を抑制するという観点から、本実施形態では、REMの含有量は0.005%以下である。REMの含有量は、好ましくは0.003%以下である。なお、REMの含有量は0%であってもよい。
(Zr:0%以上、0.005%以下)
Zrは、CaやMgやREMと同様に、酸化物や硫化物や酸硫化物を形成して粗大介在物の生成を抑制し、母材及びHAZの靱性を高める元素である。そのため、Zrの含有量は0.0001%以上であってもよい。ただし、脆性破壊の発生起点として作用するZr系介在物の増加を抑制するという観点から、本実施形態では、Zrの含有量は0.005%以下である。Zrの含有量は、好ましくは0.003%以下である。なお、Zrの含有量は0%であってもよい。
本実施形態に係る大入熱溶接用高強度鋼板は、高強度で厚手の厚鋼板が必要とされる用途に好適である。本実施形態に係る大入熱溶接用高強度鋼板は、特に、溶接施工能率の高い大入熱溶接が施され、HAZの靭性に対する要求レベルが高い用途に好適である。具体的には、本実施形態に係る大入熱溶接用高強度鋼板は、建築鉄骨用の四面ボックス柱など、ダイヤフラム溶接(エレクトロスラグ溶接)が施され、HAZの靱性が要求される高強度厚鋼板に好適である。
建築物の大型化、建造の高能率化、要求される安全性の向上に伴い、溶接構造物用の厚鋼板に対する要求が高度化している。そのため、本実施形態に係る大入熱溶接用高強度鋼板において、強度の観点から、板厚は50mm以上、100mm以下、降伏強度は630MPa以上であることが好ましい。降伏強度の上限は限定されず、例えば、降伏強度は750MPa以下であってもよい。また、耐震性の観点から、本実施形態に係る大入熱溶接用高強度鋼板の降伏比は85%以下であることが好ましい。降伏比の下限は限定されず、例えば、降伏比は70%以上であってもよい。さらに、建造の高能率化や耐震性の観点から、大入熱溶接部のHAZにおけるシャルピー吸収エネルギー(試験温度0℃)の平均値は70J以上であることが好ましい。なお、大入熱溶接とは、例えば、エレクトロスラグ溶接やサブマージアーク溶接が挙げられる。
次に、本実施形態に係る大入熱溶接用高強度鋼板の製造方法を説明する。
本実施形態に係る大入熱溶接用高強度鋼板は、鋼を溶製し、鋳造して鋼片を製造し、得られた鋼片に熱間圧延を施して製造される。鋼片の製法は限定されず、公知の方法で製造すればよい。例えば、鋼片は、転炉、電気炉等の通常の精錬プロセスで溶製した後、連続鋳造法、造塊-分塊法等の方法で製造される。鋼片は、熱間圧延を施された後、そのまま水冷等の制御冷却を施されるか、又は空冷された後、熱処理を施されてもよい。また、鋼片は、鋼の溶製及び鋳造によって製造された後、そのまま熱間圧延を施されてもよい。ただし、後述するように、鋼片は、好ましくは、鋳造後に冷却され、Ac3以上の温度に再加熱されて、熱間圧延を施される。
以下、本実施形態に係る大入熱溶接用高強度鋼板の好ましい製造条件について説明する。
上述した化学成分から構成され、連続鋳造法によって製造された厚み200mm以上の鋼片は、一旦、400℃以下に冷却される。その後、鋼片は、900℃以上、1250℃以下の温度域に加熱され、熱間圧延を施されて、板厚が50mm以上、100mm以下の鋼板が製造される。鋼板は、必要に応じて各種の熱処理が施される。
連続鋳造後の鋼片は、400℃以下に冷却されずにホットチャージで加熱炉に装入されると、鋳造時に生成した粗大なγ組織が加熱後の鋼片にも残存し、鋼板の組織が十分に微細化せず低温靱性が劣化する場合がある。そのため、連続鋳造後の鋼片は、一旦、400℃以下まで冷却されることが好ましい。
鋼片の加熱温度は、鋳造後の鋼片に析出した炭化物や窒化物を溶体化し、熱間圧延におけるTiNの形成を促進するために、好ましくは900℃以上である。特に、Bを含む場合、加熱された鋼片中のNは、熱間圧延時にTiNを形成し、BNの生成が抑制される。その結果、鋼板において、鋼の焼入れ性を向上させる固溶B及び粒成長を抑制するTiNが十分に確保される。一方、鋼片の加熱温度は、γ粒の粗大化を抑制して、熱間圧延後の金属組織を微細化させて、低温靱性の劣化を抑制するという観点から、1250℃以下であることが好ましい。加熱温度は、より好ましくは1200℃以下である。
なお、熱間圧延後に直接焼入れする場合は、熱間圧延の終了温度(仕上げ温度)は、オーステナイト(γ)単相域、すなわちフェライト変態が開始するAr変態点以上であることが好ましい。このとき、熱間圧延終了時に鋼板の表層部の温度がオーステナイト(γ)/フェライト(α)の二相域であっても、板厚方向中心部の温度がγ単相域であれば問題はない。熱間圧延の終了温度は、750℃以上であってもよい。熱間圧延の終了温度は、金属組織の微細化とういう観点から、好ましくは900℃以下である。Ar変態点(℃)は下記(4)式によって求めることができる。
Ar変態点=868−396×C+24.6×Si−68.1×Mn−36.1×Ni−20.7×Cu−24.8×Cr+29.1×Mo ・・・(4)
ここで、上記(4)式中のC、Si、Mn、Ni、Cu、Cr、Moは質量%で表した各元素の鋼板中の含有量であり、含有しない元素の項には0を代入する。
さらに、熱間圧延後に直接焼入れする場合は、熱間圧延をγ単相域で終え、鋼板の材質を調整するために、引き続き、水冷が施される。一方、熱間圧延後に空冷される場合、鋼板は、γ単相域への再加熱とこれに続く焼入れ(γ再加熱焼入れ)が施される。また、熱間圧延後、直接焼入れまたはγ再加熱焼入れが施された鋼板は、材質を調整するために、各種の熱処理が施される場合がある。
これらの焼入れ処理(直接焼入れまたはγ再加熱焼入れ)が施された鋼板は、降伏比を低下させるために、オーステナイト(γ)とフェライト(α)とが共存する二相域への再加熱とこれに続く焼入れ(γ/α再加熱焼入れ)が施される場合がある。ここで二相域とはAc変態点以上Ac変態点未満であり、Ac変態点及びAc変態点は、それぞれ、下記(5)式及び(6)式によって求めることができる。
Ac変態点=750.8−26.6C+17.6Si−11.6Mn−22.9Cu−23.0Ni+24.1Cr+22.5Mo−39.7V−5.7Ti+232.4Nb−169.4Al−894.7B ・・・(5)
Ac変態点=910−203√C+44.7Si−30Mn−400Al−15.2Ni+104V+31.5Mo+13.1W+11Cr+20Cu−700P−400Ti ・・・(6)
ここで、上記(5)式及び(6)式中のC、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Ti、Nb、Al、B、W、Pは質量%で表した各元素の鋼板中の含有量であり、含有しない元素の項には0を代入する。
さらに、鋼板の強度、降伏比、靱性を最終的に調整するために、鋼板は、焼戻しが施される場合がある。焼戻しを実施する場合、焼戻し温度は、好ましくは350℃以上、600℃以下である。
ここで、上述した熱間圧延の仕上げ温度、γ再加熱焼入れ温度、γ/α再加熱焼入れ温度、および焼戻し温度はすべて、板厚方向中心部での温度を指す。板厚方向中心部の温度は、放射温度計で測定した鋼板表面の温度から、伝熱計算によって求めることができる。
以上の製法によって本実施形態に係る大入熱溶接用高強度鋼板を製造することができる。
本実施形態に係る大入熱溶接用高強度鋼板は、エレクトロスラグ溶接やサブマージアーク溶接など、溶接入熱量が50kJ/mmを超えるような大入熱溶接が施されても、良好なHAZ靭性が確保される。
また、本実施形態に係る大入熱溶接用高強度鋼板は、好ましくは、降伏強度が630MPa以上、大入熱溶接部(例えば、エレクトロスラグ溶接部)のHAZにおけるシャルピー吸収エネルギー(試験温度0℃)の平均値が70J以上である。そのため、本実施形態に係る大入熱溶接用高強度鋼板は建築鉄骨に好適であり、本実施形態に係る大入熱溶接用高強度鋼板によって、建築物の高層化や大スパン化の進行を促進させることができ、さらに建設効率及び耐震安全性の向上を図ることができる。
以下に本発明の実施例を示す。ただし、以下に示す実施例は本発明の一例であり、本発明は以下に説明する実施例に制限されるものではない。
転炉による鋼の溶製、連続鋳造によって製造された鋼片の厚さは300mmである。なお、鋼片は、連続鋳造後、室温まで冷却されており、1000℃以上、1200℃以下の温度範囲内に再加熱され、熱間圧延が施された。なお、熱間圧延の仕上げ温度は、750℃以上、900℃以下である。熱間圧延後の鋼板に直接焼入れが施される場合は、熱間圧延の仕上げ温度は、γ単相域(Ar変態点以上)である。
次に、熱間圧延後の鋼板は、表3、表4に示す条件にて熱処理が施された。表3及び表4において、「γ再加熱焼入れ温度」とは、熱間圧延後に空冷された鋼板に、γ再加熱焼入れが施された場合の加熱温度である。一方、「γ/α再加熱焼入れ温度」とは、熱間圧延後に直接焼入れまたはγ再加熱焼入れが施され、更に、γ/α再加熱焼入れが施された場合の加熱温度である。
このようにして製造された厚鋼板から試料が採取され、化学分析が行われた。各厚鋼板の化学成分は表1及び表2に示されており、板厚は表5及び6に示されている。なお、表1及び表2に示されている炭素当量CeqWES、CeqIIW、DIは、それぞれ下記(1)式、(2)式、(3)式により求められた。
CeqWES(%)=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
・・・(1)
CeqIIW(%)=C+Mn/6+Cu/15+Ni/15+Cr/5+Mo/5+V/5
・・・(2)
DI(inch)=0.5×fB×C0.5× (1+0.64×Si)×(1+4.1×Mn)×(1+0.27×Cu)×(1+0.52×Ni)×(1+2.33×Cr)×(1+3.14×Mo)
・・・(3)
ここで、上記式(1)、式(2)、式(3)中のC、Mn、Si、Ni、Cr、Mo、V、Cuは質量%で表した各元素の鋼板中の含有量であり、含有しない元素の項には0を代入した。式(3)中のfBはBが0.0004%以下の場合は1.0であり、0.0004%超の場合は1.3である。
Figure 2020204074
Figure 2020204074
Figure 2020204074
Figure 2020204074
<母材の機械的性質>
母材の機械特性の評価、すなわち、引張試験及びシャルピー衝撃試験に用いた試験片は、厚鋼板の板厚の1/4の位置から採取された。
引張試験は、JIS Z 2241:2011に準拠し、2本の試験片を用いて室温で行われた。YS(0.2%降伏強度)及びTS(引張強度)は、それぞれ2本の試験片の平均値である。YR(降伏比)は、TSに対するYSの割合であり、百分率、すなわち、100×(YS/TS)で表される。YR(降伏比)の単位は%である。
シャルピー衝撃試験は、JIS Z 2242:2018に準拠し、3本のVノッチ試験片を用いて行われ、吸収エネルギーが測定された。試験温度は0℃である。母材の吸収エネルギー(KV(0℃))は、このようにして測定された3本の試験片の吸収エネルギーの平均値(相加平均)である。
鋼板の圧延方向に平行な板厚断面(L断面)に機械研磨が施された試料を準備し、JIS Z 2244:2009に準拠してビッカース硬さが測定された。ビッカース硬さの測定が行われた部位は、鋼板表面から板厚方向に3mm以内の位置、及び、鋼板表面から板厚方向に1/4厚の位置である。ビッカース硬さの測定荷重は10kgfであり、それぞれの位置で3点の測定が行われた。鋼板表面から板厚方向に3mm以内の位置における測定結果の平均値を表層硬度Hvsとした。また、鋼板表面から板厚方向に1/4厚の位置における測定結果の平均値をHvqとした。硬度差ΔHvは、下記(7)式にて計算される。
ΔHv = Hvs − Hvq ・・・(7)
<溶接継手のHAZ靭性>
溶接継手のHAZ靭性の評価は、エレクトロスラグ溶接法(ESW)によって作製された各厚鋼板の溶接継手を用いて行われた。
エレクトロスラグ溶接法(ESW)によって、図1に例示されるT字継手が作製された。溶接は1パスで行われ、溶接入熱量が70kJ/mm以上、150kJ/mm以下である大入熱溶接が適用された。入熱量は、図1に示すT字継手の溶接全長における入熱量の平均値である。
図1のT字継手は、ESWによって次のようにして作製される。まず、厚鋼板からなるスキンプレート1に対して間隙をあけてT字状に、厚鋼板からなるダイヤフラム2が配置される。次に、ダイヤフラム2に沿わせて、スキンプレート1の長手方向から前記間隙を挟むように、裏当金3、4が配置される。この裏当金3、4により、溶接時の溶融スラグ及び溶融金属が溶接部から流れ出ないように、前記間隙が囲まれる。そして、この間隙の内部において、溶融したスラグ浴の中に溶接ワイヤが供給される。溶接ワイヤは、主として溶融スラグの抵抗熱によって溶融され、溶接金属部5が形成されることで、T字継手が作製される。
このT字継手の溶接部において、ダイヤフラム2の板厚中心線に沿ってシャルピー衝撃試験用の試験片7が採取された。具体的には、図1に示すように、溶接金属部5から溶解融線(FL)を超えてスキンプレート1側の溶接熱影響部(HAZ)6を通過してスキンプレート1の内部側に至る部位から試験片7が採取された。図1には、ノッチの位置がFLから1mmであるシャルピー試験片の採取位置が示されている。また、図示されていないが、ノッチの位置がFLであるシャルピー試験片も採取された。スキンプレート1及びダイヤフラム2は同鋼種であり、両者の板厚も同一である。
このようにして作製された試験片7は、溶解融線(FL)から1mm離れたHAZ部分にノッチを入れたVノッチ試験片、及び、FL上にノッチを入れたVノッチ試験片であり、これらを用いた試験結果は、表5及び表6において、それぞれ、「FL+1mm」及び「FL」と示される。各Vノッチ試験片を用いて、0℃と−20℃で、JIS Z 2242:2018に準拠してシャルピー衝撃試験が行われた。一つのノッチ位置と一つの試験温度について、それぞれ3本のVノッチ試験片用いてシャルピー衝撃試験が行われ、各条件における吸収エネルギーの平均値(相加平均)が評価結果として採用された。表5及び表6には、厚鋼板の板厚、母材の機械的性質、エレクトロスラグ溶接における入熱量、エレクトロスラグ溶接継手のHAZ靭性が示される。KV(0℃)およびKV(−20℃)は、それぞれ、0℃での吸収エネルギーおよび−20℃での吸収エネルギーである。
Figure 2020204074
Figure 2020204074
表5に示されるように、本発明の鋼板は、板厚が50mm以上100mm以下である場合において、630MPa以上の降伏強度(YS)と、85%以下の降伏比(YR)とを有する。さらに、本発明の鋼板を用いて作製されたESW継手は、0℃で70J以上の優れたHAZ靱性を有する。また、本発明の鋼板を用いて作製されたESW継手は、試験温度−20℃とした場合でも、27J以上の非常に優れたHAZ靱性を有する。
一方、表6に示されるように、従来の鋼板(比較鋼)は化学成分が本発明の範囲から外れているため、母材の機械的性質、ESW継手のHAZ靭性が劣る。
符号B1はC量が低すぎために降伏強度が劣り、符号B2はC量が高すぎるために、HAZ靱性が劣る。符号B3はMn量が低すぎるために降伏強度が劣り、符号B4はMn量が高すぎるためにHAZ靱性が劣る。符号B5はNi量が低すぎるためにHAZ靱性が劣る。符号B6はCu量が低すぎるために、符号B7はCu量が高すぎるためにHAZ靱性が劣る。符号B8はTi量が低すぎるために、符号B9はTi量が多すぎるために、符号B10はN量が高すぎるために、符号B11はO量が低すぎるために、符号B12はO量が高すぎるためにHAZ靱性が劣る。符号B13は、Si量が高すぎるために、符号B14はP量が高すぎるために、符号B15はS量が高すぎるために、符号B16はAl量が高すぎるために、HAZ靱性が劣る。
符号B17はCeqIIWが高すぎるために、符号B18はCeqWESが高すぎるために、HAZ靱性が劣る。符号B19はCeqWESが低すぎるために、符号B20はCeqIIWが低すぎるために、降伏強度及びHAZ靭性が劣る。符号B21はMn/Niが高すぎるために、HAZ靱性が劣る。
1・・・スキンプレート
2・・・ダイヤフラム
3、4・・・裏当金
5・・・溶接金属部
6・・・溶接熱影響部(HAZ)
7・・・試験片
本発明は、鉄鋼業において製造される厚鋼板に適用され、厚鋼板以外の鉄鋼製品、たとえば形鋼などへ適用することも可能である。本発明を適用した高強度で厚手の厚鋼板は、主に高層建築の鉄骨として使用され、特に、4枚のスキンプレートと内部に配置されたダイヤフラムで概略構成され四面ボックス柱の鉄骨として好適である。四面ボックス柱の各部材の接合では、溶接入熱の大きい、いわゆる大入熱溶接が行われる。例えば、ダイヤフラムをスキンプレートに取り付けるダイヤフラム溶接や、スキンプレートを組み立てる角溶接には、それぞれエレクトロスラグ溶接やサブマージアーク溶接などの高能率な大入熱溶接が適用される。また、本発明に係る大入熱溶接用高強度鋼板は、橋梁、造船、タンク、海洋構造物、ラインパイプなどの溶接構造物に使用することも可能である。
本発明に係る鋼板は、高強度で厚手の厚鋼板に対して、溶接施工能率の高い大入熱溶接を施し、HAZ靭性の要求レベルが高い場合に好適である。具体的には、本発明に係る鋼板は、降伏強度が630MPa以上、板厚が50mm以上、100mm以下、エレクトロスラグ溶接部のHAZにおけるシャルピー吸収エネルギー(試験温度0℃)の平均値が100J以上である、大入熱溶接用厚鋼板である。したがって、本発明に係る鋼板は、エレクトロスラグ溶接などの大入熱が適用される建築鉄骨四面ボックス柱ダイヤフラムのように、大入熱溶接HAZの靱性が要求される高強度厚鋼板に好適である。

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C :0.030%以上、0.080%以下、
    Mn:0.30%以上、1.30%以下、
    Ni:1.30%以上、7.00%以下、
    Cu:0.60%以上、2.00%以下、
    Ti:0.005%以上、0.020%以下、
    O :0.0010%以上、0.0040%以下、
    Cr:0%以上、1.0%以下、
    Mo:0%以上、1.0%以下、
    W :0%以上、1.0%以下、
    Co:0%以上、1.0%以下、
    Nb:0%以上、0.10%以下、
    V :0%以上、0.10%以下、
    B :0%以上、0.0050%以下、
    Ca:0%以上、0.005%以下、
    Mg:0%以上、0.005%以下、
    REM:0%以上、0.005%以下、
    Zr:0%以上、0.005%以下
    を含有し、
    Si:0.10%以下、
    P :0.010%以下、
    S :0.005%以下、
    Al:0.003%以下、
    N :0.0060%以下、
    に制限され、
    残部がFe及び不純物からなり、
    前記Mnの含有量と前記Niの含有量との比であるMn/Niが0.80以下であり、
    下記(1)式で計算される炭素当量CeqWESが0.45%以上、0.70%以下、
    下記(2)式で計算される炭素当量CeqIIWが0.65%以上、0.90%以下
    である、大入熱溶接用高強度鋼板。
    CeqWES(%)=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
    ・・・(1)
    CeqIIW(%)=C+Mn/6+Cu/15+Ni/15+Cr/5+Mo/5+V/5
    ・・・(2)
    ここで、上記(1)式及び(2)式中のC、Mn、Si、Ni、Cr、Mo、V、Cuは、質量%で表した各元素の鋼板中の含有量であり、含有しない元素の項には0を代入する。
  2. 下記(3)式で計算される焼入れ性倍数DIが10.0inch以上、21.0inch以下である、請求項1に記載の大入熱溶接用高強度鋼板。
    DI(inch)=0.5×fB×C0.5×(1+0.64×Si)×(1+4.1×Mn)×(1+0.27×Cu)×(1+0.52×Ni)×(1+2.33×Cr)×(1+3.14×Mo)
    ・・・(3)
    ここで、上記式(3)中のC、Si、Mn、Si、Cu、Ni、Cr、Moは、質量%で表した各元素の鋼板中の含有量であり、含有しない元素の項には0を代入する。fBはBが0.0004%以下の場合は1.0であり、0.0004%超の場合は1.3である。
  3. 更に、質量%で、
    Cr:0.1%以上、1.0%以下、
    Mo:0.1%以上、1.0%以下、
    W :0.1%以上、1.0%以下、
    Co:0.1%以上、1.0%以下、
    Nb:0.005%以上、0.10%以下、
    V :0.005%以上、0.10%以下、
    の1種以上を含有する、請求項1または請求項2に記載の大入熱溶接用高強度鋼板。
  4. 更に、質量%で、
    B:0%以上、0.0004%以下
    を含有する、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の大入熱溶接用高強度鋼板。
  5. 更に、質量%で、
    Ca:0.0001%以上、0.005%以下、
    Mg:0.0001%以上、0.005%以下、
    REM:0.0001%以上、0.005%以下、
    Zr:0.0001%以上、0.005%以下、
    の1種以上を含有する、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の大入熱溶接用高強度鋼板。
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