以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
図1は、一実施形態の方法を示す流れ図である。図1に示す一実施形態の方法MTは、被処理体(以下、「ウエハ」ということがある)を処理する方法である。方法MTは、図1の(a)部に示すように、シーケンスSQ1(第1のシーケンス)を備える。シーケンスSQ1は、工程ST1および工程ST2を備える。方法MTは、さらに、工程ST3を備える。工程ST1は、図1の(b)部に示す工程ST1a(第1の処理)を含む場合がある。工程ST1は、図1の(c)部に示す工程ST1b(第2の処理)を含む場合がある。また、一実施形態の方法MTは、単一のプラズマ処理装置(後述のプラズマ処理装置10)を用いて実行することが可能であるが、方法MTの各工程に応じて、複数のプラズマ処理装置10が用いられ得る。
図2は、プラズマ処理装置の一例を示す図である。図2には、被処理体を処理する方法の種々の実施形態で利用可能なプラズマ処理装置10の断面構造が概略的に示されている。図2に示すように、プラズマ処理装置10は、容量結合型プラズマエッチング装置である。
プラズマ処理装置10は、処理容器12、排気口12e、搬入出口12g、支持部14、載置台PD、直流電源22、スイッチ23、冷媒流路24、配管26a、配管26b、上部電極30、絶縁性遮蔽部材32、電極板34、ガス吐出孔34a、電極支持体36、ガス拡散室36a、ガス通流孔36b、ガス導入口36c、ガス供給管38、ガスソース群40、バルブ群42、流量制御器群45、デポシールド46、排気プレート48、排気装置50、排気管52、ゲートバルブ54、第1の高周波電源62、第2の高周波電源64、整合器66、整合器68、電源70、制御部Cnt、フォーカスリングFR、ヒータ電源HP、ヒータHTを備える。載置台PDは、静電チャックESC、下部電極LEを備える。下部電極LEは、第1プレート18a、第2プレート18bを備える。処理容器12は、処理空間Spを画成する。
処理容器12は、略円筒形状を有する。処理容器12は、例えば、アルミニウムから構成される。処理容器12の内壁面は、陽極酸化処理が施されている。処理容器12は、保安接地される。
支持部14は、処理容器12の内側において、処理容器12の底部上に設けられる。支持部14は、略円筒状の形状を備える。支持部14は、例えば、絶縁材料から構成される。支持部14を構成する絶縁材料は、石英のように酸素を含み得る。支持部14は、処理容器12内において、処理容器12の底部から鉛直方向に延在する。
載置台PDは、処理容器12内に設けられる。載置台PDは、支持部14によって支持される。載置台PDは、載置台PDの上面において、ウエハWを保持する。ウエハWは、被処理体である。載置台PDは、下部電極LEおよび静電チャックESCを有する。
下部電極LEは、第1プレート18aおよび第2プレート18bを含む。第1プレート18aおよび第2プレート18bは、例えばアルミニウムといった金属から構成される。第1プレート18aおよび第2プレート18bは、略円盤状の形状を備える。第2プレート18bは、第1プレート18a上に設けられる。第2プレート18bは、第1プレート18aに電気的に接続される。
静電チャックESCは、第2プレート18b上に設けられる。静電チャックESCは、一対の絶縁層の間、または、一対の絶縁シートの間において導電膜の電極を配置した構造を有する。直流電源22は、スイッチ23を介して、静電チャックESCの電極に電気的に接続される。静電チャックESCは、直流電源22からの直流電圧によって生じたクーロン力等の静電力によって、ウエハWを吸着する。これによって、静電チャックESCは、ウエハWを保持することができる。
フォーカスリングFRは、ウエハWのエッジおよび静電チャックESCを囲むように、第2プレート18bの周縁部上に配置される。フォーカスリングFRは、エッチングの均一性を向上させるために設けられる。フォーカスリングFRは、エッチング対象の膜の材料によって適宜選択される材料から構成されており、例えば、石英から構成され得る。
冷媒流路24は、第2プレート18bの内部に設けられる。冷媒流路24は、温調機構を構成する。冷媒流路24には、処理容器12の外部に設けられるチラーユニットから配管26aを介して冷媒が供給される。冷媒流路24に供給される冷媒は、配管26bを介してチラーユニットに戻される。このように、冷媒流路24には、冷媒が循環するよう、供給される。この冷媒の温度を制御することによって、静電チャックESCによって支持されるウエハWの温度が制御される。ガス供給ライン28は、伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスを、静電チャックESCの上面とウエハWの裏面との間に供給する。
ヒータHTは、加熱素子である。ヒータHTは、例えば、第2プレート18b内に埋め込まれる。ヒータ電源HPは、ヒータHTに接続される。ヒータ電源HPからヒータHTに電力が供給されることによって、載置台PDの温度が調整され、そして、載置台PD上に載置されるウエハWの温度が調整される。なお、ヒータHTは、静電チャックESCに内蔵され得る。
上部電極30は、載置台PDの上方において、載置台PDと対向配置される。下部電極LEと上部電極30とは、互いに略平行に設けられる。上部電極30と下部電極LEとの間には、処理空間Spが提供される。処理空間Spは、プラズマ処理をウエハWに行うための空間領域である。
上部電極30は、絶縁性遮蔽部材32を介して、処理容器12の上部に支持される。絶縁性遮蔽部材32は、絶縁材料から構成されており、例えば、石英のように酸素を含み得る。上部電極30は、電極板34および電極支持体36を含み得る。電極板34は、処理空間Spに面している。電極板34は、複数のガス吐出孔34aを備える。電極板34は、一実施形態では、シリコンから構成され得る。別の実施形態では、電極板34は、酸化シリコンから構成され得る。
電極支持体36は、電極板34を着脱自在に支持するものであり、例えばアルミニウムといった導電性材料から構成され得る。電極支持体36は、水冷構造を有し得る。ガス拡散室36aは、電極支持体36の内部に設けられる。複数のガス通流孔36bのそれぞれは、ガス吐出孔34aに連通する。複数のガス通流孔36bのそれぞれは、ガス拡散室36aから下方に(載置台PDの側に向けて)延びる。
ガス導入口36cは、ガス拡散室36aに対して処理ガスを導く。ガス導入口36cは、電極支持体36に設けられる。ガス供給管38は、ガス導入口36cに接続される。
ガスソース群40は、バルブ群42および流量制御器群45を介して、ガス供給管38に接続される。ガスソース群40は、複数のガスソースを有する。複数のガスソースは、アミノシラン系ガスのソース、フルオロカーボンガス(ハイドロフルオロカーボンガス)のソース、酸素(O2)ガスのソース、不活性ガスのソース、希ガスのソース、および、二酸化炭素ガスのソースを含み得る。アミノシラン系ガス(後述の第1のガスG1に含まれるガス)としては、アミノ基の数が比較的に少ない分子構造のものが用いられることができ、例えば、モノアミノシラン(H3−Si−R(Rは有機を含んでおり置換されていても良いアミノ基))が用いられ得る。上記のアミノシラン系ガス(後述の第1のガスG1に含まれるガス)は、1〜3個のケイ素原子を有し得るアミノシランを含むことができ、1〜3個のアミノ基を有するアミノシランを含むことができる。1〜3個のケイ素原子を有するアミノシランは、1〜3個のアミノ基を有するモノシラン(モノアミノシラン)、1〜3個のアミノ基を有するジシラン、または、1〜3個のアミノ基を有するトリシランであり得る。さらに、上記のアミノシランは、置換されていてもよいアミノ基を有し得る。さらに、上記のアミノ基は、メチル基、エチル基、プロピル基、および、ブチル基の何れかによって置換され得る。さらに、上記のメチル基、エチル基、プロピル基、または、ブチル基は、ハロゲンによって置換され得る。フルオロカーボンガスとしては、例えば、CF4ガス、C4F6ガス、C4F8ガスといった任意のフルオロカーボンガスが用いられ得る。不活性ガスとしては、例えば、窒素(N2)ガス等が用いられ得る。希ガスとしては、例えば、アルゴン(Ar)ガス等が用いられ得る。
バルブ群42は、複数のバルブを含む。流量制御器群45は、マスフローコントローラといった複数の流量制御器を含む。ガスソース群40の複数のガスソースのそれぞれは、バルブ群42の対応のバルブ、および、流量制御器群45の対応の流量制御器を介して、ガス供給管38に接続される。したがって、プラズマ処理装置10は、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択された一以上のガスソースからのガスを、個別に調整された流量で、処理容器12内に供給することが可能である。また、プラズマ処理装置10では、処理容器12の内壁に沿ってデポシールド46が着脱自在に設けられている。デポシールド46は、支持部14の外周にも設けられている。デポシールド46は、処理容器12にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止するものであり、アルミニウム材にY2O3等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。デポシールドは、Y2O3の他、例えば、石英のように酸素を含む材料から構成され得る。
排気プレート48は、処理容器12の底部側であって、且つ、支持部14と処理容器12の側壁との間に設けられている。排気プレート48は、例えば、アルミニウム材にY2O3等のセラミックスを被覆することによって構成され得る。排気口12eは、排気プレート48の下方において、処理容器12に設けられている。排気装置50は、排気管52を介して排気口12eに接続される。排気装置50は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、処理容器12内の空間を所望の真空度まで減圧することができる。搬入出口12gは、ウエハWの搬入出口である。搬入出口12gは、処理容器12の側壁に設けられる。搬入出口12gは、ゲートバルブ54によって開閉可能である。
第1の高周波電源62は、プラズマ生成用の第1の高周波電力を発生する電源であり、27〜100[MHz]の周波数、一例においては40[MHz]の高周波電力を発生する。第1の高周波電源62は、整合器66を介して上部電極30に接続される。整合器66は、第1の高周波電源62の出力インピーダンスと負荷側(下部電極LE側)の入力インピーダンスとを整合させるための回路である。なお、第1の高周波電源62は、整合器66を介して下部電極LEに接続されることもできる。
第2の高周波電源64は、ウエハWにイオンを引き込むための第2の高周波電力、即ち高周波バイアス電力を発生する電源であり、400[kHz]〜40.68[MHz]の範囲内の周波数、一例においては3.2[MHz]の高周波バイアス電力を発生する。第2の高周波電源64は、整合器68を介して下部電極LEに接続される。整合器68は、第2の高周波電源64の出力インピーダンスと負荷側(下部電極LE側)の入力インピーダンスとを整合させるための回路である。また、電源70は、上部電極30に接続される。電源70は、処理空間Sp内に存在する正イオンを電極板34に引き込むための電圧を、上部電極30に印加する。一例においては、電源70は、負の直流電圧を発生する直流電源である。このような電圧が電源70から上部電極30に印加されると、処理空間Spに存在する正イオンが、電極板34に衝突する。これにより、電極板34から二次電子および/またはシリコンが放出される。
制御部Cntは、プロセッサ、記憶部、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり、プラズマ処理装置10の各部を制御する。具体的に、制御部Cntは、バルブ群42、流量制御器群45、排気装置50、第1の高周波電源62、整合器66、第2の高周波電源64、整合器68、電源70、ヒータ電源HP、およびチラーユニットに接続されている。
制御部Cntは、入力されたレシピに基づくプログラムに従って動作し、制御信号を送出する。制御部Cntからの制御信号によって、ガスソース群から供給されるガスの選択および流量と、排気装置50の排気と、第1の高周波電源62および第2の高周波電源64からの電力供給と、電源70からの電圧印加と、ヒータ電源HPの電力供給と、チラーユニットからの冷媒流量および冷媒温度と、を制御することが可能である。なお、本明細書において開示される被処理体を処理する方法(図1に示す方法MT)の各工程は、制御部Cntによる制御によってプラズマ処理装置10の各部を動作させることによって、実行され得る。
再び図1を参照し、方法MTについて詳細に説明する。以下では、方法MTの実施にプラズマ処理装置10が用いられている例について説明を行う。また、以下の説明において、図1および図2と共に、図3〜図7を参照する。図3は、図1に示す各工程の実行前の被処理体の状態を示す断面図である。図4は、(a)部および(b)部を含み、図1に示す各工程の実行後の被処理体の状態を、(a)部、(b)の順に示す断面図である。図5は、(a)部および(b)部を含み、図1に示す各工程の実行後の被処理体の状態を、(a)部、(b)の順に示す断面図である。図6は、(a)部、(b)部、および、(c)部を含み、図1に示す保護膜を形成するシーケンスにおける保護膜の形成の様子を、(a)部、(b)部、(c)部の順に、模式的に示す図である。
図1に示す方法MTの実行前に、図3に示すウエハWを処理容器12内に搬入する。図3に示すウエハWは、図1に示す方法MTが適用される被処理体の一例である。図3に示すウエハWは、デュアルダマシン(Dual Damascene)のエッチング工程において形成された基板生産物である。図3に示すウエハWは、凸部CV1(第1の凸部)と凸部CV2(第2の凸部)と被エッチング層PMと溝部TRとを備える。被エッチング層PMは、凸部CV1に含まれている領域PM1と凸部CV2に含まれている領域PM2とを含んでいる。溝部TRは、ウエハWの主面SCに設けられている。溝部TRは、被エッチング層PMに設けられている。溝部TRは、凸部CV1と凸部CV2とによって画成されている。
図3に示すウエハWは、さらに、マスクMKとデポ膜DPとを備える。マスクMKは、領域PM1上に設けられている。マスクMKは、領域PM1の端面SF1(領域PM1とマスクMKとの界面)に設けられている。デポ膜DPは、マスクMK上に設けられている。
溝部TRの内側の表面SF2は、表面SF2a、表面SF2b、および、表面SF2cを含む。被エッチング層PMは、凸部CV1において、端面SF1およびSF2aを含む。表面SF2aは、表面SF2のうち、凸部CV1の側にある表面である。表面SF2bは、溝部TRの底部BTにある。表面SF2bは、溝部TRの底面である。表面SF2cは、表面SF2のうち、凸部CV2の側にある表面であり、表面SF2aに対向している。被エッチング層PMは、凸部CV2において、表面SF2cおよび端面SF3を含む。端面SF1、表面SF2、端面SF3は、ウエハWの主面SCに含まれる。
溝部TRの幅LP1は、表面SF2aと表面SF2cとの間の距離であり、例えば3〜5[nm]程度である。高低差LP2は、端面SF1と端面SF3との間の距離である。端面SF1を含む平面は、端面SF3の上方にあり、この場合、高低差LP2の値は正の値となる。方法MTの実行によって、凸部CV2における被エッチング層PMの領域PM2が端面SF3の側からエッチングされるので、高低差LP2は、増加する。
被エッチング層PMは、複数の孔が形成されている多孔質膜である。被エッチング層PMは、低誘電率(low-k)を有する。被エッチング層PMの材料は、例えば、SiOCH等であり得る。マスクMKの材料は、例えばTiN等であり得る。デポ膜DPの材料は、例えばCF等であり得る。
図1に戻って説明する。方法MTでは、シーケンスSQ1を一回以上実行する。シーケンスSQ1の開始から後述の工程ST3:YESに至るまでの一連の工程は、被エッチング層PMの溝部TRの形状を所望とする形状にエッチングする工程である。図3に示すウエハWの搬入後に、シーケンスSQ1を実行する。方法MTは、シーケンスSQ1をN(Nは2以上の整数)回繰り返し実行する。シーケンスSQ1は、工程ST1と工程ST2とを含む。工程ST1は、ウエハWが収容されたプラズマ処理装置10の処理容器12内において、ウエハWの主面SCに保護膜SXをコンフォーマルに形成する。工程ST1の一例が、図1の(b)部に示す工程ST1aである。工程ST1の他の一例が、図1の(c)部に示す工程ST1bである。
工程ST1aは、シーケンスSQ1a(第2のシーケンス)を備える。シーケンスSQ1aは、工程T11a、工程ST12a、工程ST13a、および、工程ST14aを備える。
工程ST1aおよび工程ST1bのうち、まず、図1の(b)部を参照して、工程ST1aについて説明する。工程ST1aは、シーケンスSQ1aを備える。シーケンスSQ1aは、工程ST11a、工程ST12a、工程ST13a、および、工程ST14aを含む。工程ST1aは、さらに、工程ST15aを備える。
工程ST1aでは、シーケンスSQ1aを一回以上実行する。シーケンスSQ1aの開始から後述の工程ST15a:YESに至るまでの一連の工程は、ウエハWの主面SC(特に、表面SF2a、表面SF2b、表面SF2c、および、端面SF3であり、以下同様。)に保護膜SXをコンフォーマルに形成する工程である。
まず、工程ST11aでは、処理容器12内に、シリコンを含有する第1のガスG1を導入する。第1のガスG1は、アミノシラン系ガスを含む。ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択したガスソースから、第1のガスG1を処理容器12内に供給する。第1のガスG1は、アミノシラン系ガスとして、例えばモノアミノシラン(H3−Si−R(Rはアミノ基))が用いられ得る。工程ST11aでは、第1のガスG1のプラズマを生成しない。
図6の(a)部に示すように、第1のガスG1の分子が反応前駆体としてウエハWの主面SCに付着する。第1のガスG1の分子(モノアミノシラン)は、化学結合に基づく化学吸着によってウエハWの主面SCに付着するのであり、工程ST11aにおいて、プラズマは用いられない。なお、化学結合によって表面に付着可能であって且つシリコンを含有するものであれば、モノアミノシラン以外のガスの利用も可能である。
第1のガスG1にモノアミノシラン系ガスが選択される理由は、モノアミノシランが比較的に高い電気陰性度を有し且つ極性を有する分子構造を有することによって化学吸着が比較的に容易に行われ得る、ということに起因する。第1のガスG1の分子がウエハWの主面SCに付着することによって形成される層Ly1は、当該付着が化学吸着であるために単分子層(単層)に近い状態となる。モノアミノシランのアミノ基(R)が小さいほど、ウエハWの主面SCに吸着される分子の分子構造も小さくなるので、分子の大きさに起因する立体障害が低減され、よって、第1のガスG1の分子がウエハWの主面SCに均一に吸着でき、層Ly1はウエハWの主面SCに対し均一な膜厚で形成され得る。例えば、第1のガスG1に含まれるモノアミノシラン(H3−Si−R)がウエハWの主面SCのOH基と反応することによって、反応前駆体のH3−Si−Oが形成され、よって、H3−Si−Oの単分子層である層Ly1が形成される場合が考えられ得る。したがって、ウエハWの主面SCに対し、反応前駆体の層Ly1が、ウエハWのパターン密度に依存せずに、均一な膜厚でコンフォーマルに形成され得る。
工程ST11aに引き続く工程ST12aでは、処理容器12内の空間をパージする。具体的には、工程ST11aにおいて供給された第1のガスG1が排気される。工程ST12aでは、パージガスとして窒素ガスといった不活性ガスを処理容器12に供給してもよい。即ち、工程ST12aのパージは、不活性ガスを処理容器12内に流すガスパージ、または真空引きによるパージの何れであってもよい。工程ST12aでは、ウエハW上に過剰に付着した分子も除去され得る。以上によって、反応前駆体の層Ly1は極めて薄い単分子層となる。
工程ST12aに引き続く工程ST13aでは、処理容器12内において第2のガスのプラズマP1を生成する。具体的には、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択したガスソースから、二酸化炭素ガスを含む第2のガスを処理容器12内に供給する。第2のガスは、二酸化炭素ガスの他に、酸素原子を含有する他のガスであり得え、例えば、酸素ガスでもあり得る。そして、第1の高周波電源62から高周波電力を供給する。この場合、第2の高周波電源64のバイアス電力を印加することもできる。また、第1の高周波電源62を用いずに第2の高周波電源64のみを用いてプラズマを生成することもできる。排気装置50を動作させることによって、処理容器12内の空間の圧力を所定の圧力に設定する。
上述したように工程ST11aの実行によってウエハWの表面に付着した分子(層Ly1の単分子層を構成する分子)は、シリコンと水素との結合を含む。シリコンと水素との結合エネルギーは、シリコンと酸素との結合エネルギーよりも低い。したがって、図6の(b)部に示すように、二酸化炭素ガスを含む第2のガスのプラズマP1が生成されると、酸素の活性種、例えば、酸素ラジカルが生成され、層Ly1の単分子層を構成する分子の水素が酸素に置換され、図6の(c)部に示すように、シリコン酸化膜(例えばSiO2膜)である層Ly2が単分子層として形成される。
工程ST13aに引き続く工程ST14aでは、処理容器12内の空間をパージする。具体的には、工程ST13aにおいて供給された第2のガスが排気される。工程ST14aでは、パージガスとして窒素ガスといった不活性ガスを処理容器12に供給してもよい。即ち、工程ST14aのパージは、不活性ガスを処理容器12内に流すガスパージ、または、真空引きによるパージの何れであってもよい。
以上説明したシーケンスSQ1aにおいては、工程ST12aにおいてパージが行われ、工程ST12aに引き続く工程ST13aにおいて層Ly1を構成する分子の水素が酸素に置換される。したがって、ALD法と同様に、一回のシーケンスSQ1aの実行によって、シリコン酸化膜の層Ly2を、ウエハWの主面SC上に、薄く均一な膜厚でコンフォーマルに、形成することができる。
シーケンスSQ1aに引き続く工程ST15aでは、シーケンスSQ1aの実行を終了するか否かを判定する。具体的には、工程ST15aでは、シーケンスSQ1aの実行回数が所定回数に達したか否かを判定する。シーケンスSQ1aの実行回数の決定は、図4の(a)部に示すシリコン酸化膜の保護膜SXの膜厚THを決定することである。即ち、一回のシーケンスSQ1aの実行によって形成されるシリコン酸化膜の膜厚とシーケンスSQ1aの実行回数との積によって、最終的にウエハW上に形成される保護膜SXの厚みが実質的に決定される。したがって、ウエハW上に形成される保護膜SXの所望の厚みに応じて、シーケンスSQ1aの実行回数が設定される。
工程ST15aにおいてシーケンスSQ1aの実行回数が所定回数に達していないと判定される場合には(工程ST15a:NO)、シーケンスSQ1aの実行が再び繰り返される。一方、工程ST15aにおいてシーケンスSQ1aの実行回数が所定回数に達していると判定される場合には(工程ST15a:YES)、シーケンスSQ1aの実行が終了される。これによって、図4の(a)部に示すように、ウエハWの主面SC上にシリコン酸化膜の保護膜SXが形成される。すなわち、シーケンスSQ1aの実行回数が所定回数だけ繰り返されることによって、所定の膜厚を有する保護膜SXが、均一の膜みでコンフォーマルに、ウエハWの主面SCに形成される。保護膜SXの厚みは、シーケンスSQ1aの実行回数が少ないほど、減少する。
図1に戻って説明する。工程ST1に引き続く工程ST2は、処理容器12内で発生させたプラズマによって溝部TRの底部BT(表面SF2b)をエッチングする。まず、工程ST2において、第3のガスと第4のガスとの混合ガスを処理容器12内に供給する。第3のガスは、フルオロカーボン系ガスを含む処理ガスであり、第4のガスは酸素ガスを含む処理ガスであり得る。第3のガスは、例えば、C4F8ガスであり得る。第4のガスは、例えば、Ar/N2/O2ガスであり得る。そして、処理容器12内に供給される混合ガスのプラズマを処理容器12内で発生させる。具体的には、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから、第3のガスと第4のガスとの混合ガスを含む処理ガスを処理容器12内に供給する。第1の高周波電源62から高周波電力を供給する。第2の高周波電源64から高周波バイアス電力を供給する。さらに、排気装置50を動作させることにより、処理容器12内の空間の圧力を所定の圧力に設定する。これにより、第3のガスと第4のガスの混合ガスのプラズマが生成される。工程ST2において生成されるプラズマ中のF(フッ素)等の活性種は、多孔質膜である被エッチング層PMに設けられた溝部TRの底部BTをエッチングする。引き続き、処理容器12内の空間をパージする。具体的には、工程ST2において供給される処理ガスを処理容器12内から排気する。パージガスとして窒素ガスといった不活性ガスが処理容器12に供給されてもよい。即ち、工程ST2において行われるパージは、不活性ガスを処理容器12内に流すガスパージ、または、真空引きによるパージの何れであってもよい。
一回のシーケンスSQ1の実行によって、図4の(b)部に示すように、溝部TRの深さが増加する。さらに、一回のシーケンスSQ1の実行によって、凸部CV2における被エッチング層PMの領域PM2が端面SF3側からエッチングされるので、このエッチングによって凸部CV2の角部CPも削除される(面取りされる)。すなわち、一回のシーケンスSQ1の実行後においては、領域PM2の端面SF3の先端と、凸部CV2側の溝部TRの表面SF2cに設けられている保護膜SXの端面との間に、高さLP3(角部CPの削除部分の高さ)が生じ得る。方法MTにおいて生じ得る高さLP3は、保護膜SXの膜厚、および、エッチング時間などのプロセス条件を調節することによって、低減可能である。以下、削除部分とは、エッチングによって除去された部分を意味する。
図7は、一実施形態に係る方法MTにおいて、図4の(a)部に示す保護膜SXの膜厚THと、図4の(b)部に示すエッチング後の角部CPの高さLP3との対応を示す測定結果の一例を示す図である。図7の縦軸は、工程ST2におけるエッチングにおいて、1[nm]のエッチングで生じる角部CPの削除部分の増加量K(高さLP3の増加量)[nm]を表し、図7の横軸は、工程ST2のエッチング前に凸部CV2側の溝部TRの表面SF2cに設けられている保護膜SXの膜厚THの値[nm]を表している。結果GP1は、第2の高周波電源64から供給される高周波バイアス電力が0[W]の場合に得られた測定結果であり、結果GP2は、第2の高周波電源64から供給される高周波バイアス電力が25[W]の場合に得られた測定結果であり、結果GP3は、第2の高周波電源64から供給される高周波バイアス電力が100[W]の場合に得られた測定結果である。
図7を参照すれば、工程ST2のエッチングにおいて、1[nm]のエッチングで生じる角部CPの削除部分の増加量K(高さLP3の増加量)は、凸部CV2側の溝部TRの表面SF2cに設けられている保護膜SXの膜厚THが薄い程、且つ、第2の高周波電源64から供給される高周波バイアス電力が大きい程、大きくなることがわかる。なお、工程ST2において直流電圧が電源70から供給される場合には、当該直流電圧が大きい程、1[nm]のエッチングで生じる角部CPの削除部分の増加量K(高さLP3の増加量)は大きい。
さらに、結果GP1〜GP3の何れにおいても、膜厚THの変化に対する角部CPの削除部分の増加量K(高さLP3の増加量)の変化(すなわち、結果GP1〜GP3それぞれのグラフの傾き)は、保護膜SXの膜厚THが2[nm]以下の場合のほうが、保護膜SXの膜厚THが2[nm]以上の場合に比較して、大きいことがわかる。したがって、図7を参照すれば、工程ST2の実行前の保護膜SXの膜厚THは、2[nm]以上8[nm]以下であれば、工程ST2のエッチングにおいて生じ得る角部CPの削除部分を縮小でき、角部CPの削除部分の高さLP3を低減できる。従って、方法MTのエッチングによる被エッチング層PMの変形の程度を低減できる。
次に、工程ST2におけるエッチングの異方性の程度について説明する。縦方向(溝部TRの深さ方向)のエッチングレートをY1[nm/分]とし、横方向(縦方向に垂直な方向であり、ウエハWの主面SCが拡がっている方向)のエッチングレートをY1[nm/分]とすると、α=Y2/Y1は、0<α<1を満たしている。αが小さい程、縦方向優位の異方性の高いエッチングであることを示している。αは、第2の高周波電源64から供給される高周波バイアス電力の増加に伴って減少し、且つ、処理容器12内の圧力の増加に伴って減少する。このように、工程ST2におけるエッチングの異方性の程度は、第2の高周波電源64から供給される高周波バイアス電力と処理容器12内の圧力とを調節することによって、好適に制御し得る。
次に、図1の(c)を参照して、図1の(a)部に示す工程ST1として工程ST1bが用いられる場合について説明する。工程ST1bは、図1の(a)部に示す工程ST1の一例である。工程ST1bは、工程ST11bおよび工程ST12bを備える。工程ST11bの処理内容は、工程ST11aの処理内容と同様である。工程ST12bの処理内容は、工程ST12aの処理内容と同様である。すなわち、図4の(a)部に示すように、工程ST1bによってウエハWの主面SCに形成される保護膜SXは、層Ly2である。したがって、工程ST1として工程ST1bが用いられる場合、シーケンスSQ1の一回の実行によって形成される保護膜SXの膜厚は、シーケンスSQ1aの一回の実行によって形成される保護膜(層Ly2)の膜厚と、同様となる。
工程ST1として工程ST1bが用いられる場合、工程ST1aの工程ST13aにおいて用いられる酸素原子を含む第2のガスのプラズマP1による層Ly2(図6の(c)部を参照)の形成は、図4の(b)部に示すように、工程ST2におけるエッチングの実行によって実現され得る。すなわち、工程ST1bに引き続く工程ST2で用いられる第4のガスに含まれる酸素原子が、工程ST1aの工程ST13aで用いられる酸素原子と同様に作用することによって、層Ly1から層Ly2が得られる。すなわち、工程ST1bによって層Ly1が形成され、この工程ST1bに引き続く工程ST2のエッチングによって層Ly1から層Ly2が形成される。
図1の(a)部に戻って説明する。方法MTでは、シーケンスSQ1を一回以上実行する。シーケンスSQ1に引き続く工程ST3では、シーケンスSQ1の実行を終了するか否かを判定する。具体的には、工程ST3では、シーケンスSQ1の実行回数が所定回数に達したか否かを判定する。工程ST3においてシーケンスSQ1の実行回数が所定回数に達していないと判定される場合には(工程ST3:NO)、シーケンスSQ1の実行が再び繰り返される。一方、工程ST3においてシーケンスSQ1の実行回数が所定回数に達していると判定される場合には(工程ST3:YES)、シーケンスSQ1の実行が終了される。これによって、例えば、図5の(b)部に示すように、ウエハWの主面SCに設けられる溝部TRが所望とする形状(溝部TRの幅および深さ等)で形成され得る。図4の(a)部および図4の(b)部には、第一回目のシーケンスSQ1の実行によるウエハWの状態が示されているが、図5の(a)部および図5の(b)部には、第二回目のシーケンスSQ1の実行によるウエハWの状態が示されている。
シーケンスSQ1の実行回数の決定によって、溝部TRの形状が決定さ得る。即ち、一回のシーケンスSQ1の実行によって形成されるシリコン酸化膜の膜厚とシーケンスSQ1の実行回数との積によって、最終的にウエハWの主面SCに形成される溝部TRの幅(幅方向における溝部TRの形状)が実質的に決定される。さらに、一回のシーケンスSQ1の実行によってエッチングされる溝部TRの深さとシーケンスSQ1の実行回数との積によって、最終的にウエハWの主面SCに形成される溝部TRの深さ(深さ方向における溝部TRの形状)が実質的に決定される。したがって、ウエハWの主面SCに形成される溝部TRの所望の形状に応じて、シーケンスSQ1の実行回数が設定される。
なお、繰り返し実行される複数のシーケンスSQ1において、工程ST1が図1の(b)部の工程ST1aとなっているシーケンスSQ1が含まれる場合には、溝部TRの詳細な形状の決定は、シーケンスSQ1の実行回数だけではなく、シーケンスSQ1aの実行回数にも依存する。例えば、シーケンスSQ1がN回実行される場合において、N回のシーケンスSQ1のうち、図1の(b)部に示す工程ST1aを含むシーケンスSQ1がM(Mは1以上且つN−1以下の整数)回実行され、且つ、図1の(c)部に示す工程ST1bを含むシーケンスSQ1がN−M回実行される場合が考えられ得る。特に、N回のシーケンスSQ1の実行において、図1の(b)部に示す工程ST1aを含むシーケンスSQ1の実行が第一回目になされ、第二回目以降においては、図1の(c)部に示す工程ST1bを含むシーケンスSQ1がN−1回実行される場合があり得る。この場合、第一回目のシーケンスSQ1の実行によって、比較的に厚い膜厚THの保護膜SXを最初に形成しておくことができる。工程ST1aを含むシーケンスSQ1の実行回数が比較的に多い場合には、工程S13aのエッチングで用いられる酸素ガスのプラズマによって、溝部TRの表面SF2側の被エッチング層PMが変質する場合がある。さらに、この酸素ガスのプラズマによって、デポ膜DPがエッチングによって除去される場合があり、この場合、マスクMKが露出することによって、凸部CV1の被エッチング層PMの形状がエッチングによって変化し得る。
また、図5の(b)部を参照すれば、工程ST2のエッチングの異方性が比較的に低く、工程ST2のエッチングの実行によって溝部TRの幅が拡がる(溝部TRの表面SF2aが方向DR1に拡がり、且つ、溝部TRの表面SF2cが方向DR2に拡がることによって、溝部TRの幅LP1が拡がる)場合には、シーケンスSQ1の実行回数Nは、溝部TRの所望とする深さLP4の値dpと、溝部TRの所望とする幅LP1の値lpとに基づいて決定され得る。ここで、溝部TRの所望とする深さLP4の値dpは、縦方向のエッチングレートの値Y1[nm/分]と、シーケンスSQ1の実行回毎の実行時間と、シーケンスSQ1の実行回毎の保護膜SXの膜厚THの値thvとに基づいて決定され得る。溝部TRの所望とする幅LP1の値lpは、横方向のエッチングレートの値Y2[nm/分]と、シーケンスSQ1の実行回毎の実行時間と、シーケンスSQ1の実行回毎の保護膜SXの膜厚THの値thvとに基づいて決定され得る。
また、図5の(b)部を参照すれば、工程ST2のエッチングの異方性が比較的に高く、工程ST2のエッチングの実行において溝部TRの幅が維持される(幅LP1が維持される)場合には、シーケンスSQ1の実行回数Nは、シーケンスSQ1の一回の実行当たりに形成され得る所望とする膜厚THの値tha(平均値)と、溝部TRの所望とする深さLP4の値dpと、溝部TRの所望とする形状(具体的には、図5の(b)部に示す角度θ)とを用いて、N=(dp×tan(θ))/thaの式に従って、決定され得る。ここで、シーケンスSQ1の一回の実行当たりに形成され得る所望とする膜厚THの値tha(平均値)は、シーケンスSQ1のN回の実行によって形成される所望とする保護膜SXの膜厚THの値tht(最大値)と、シーケンスSQ1の実行回数Nとによって決定され得る(tha=tht/N)。溝部TRの所望とする深さLP4の値dpは、縦方向のエッチングレートの値Y1[nm/分]と、シーケンスSQ1の実行回毎の実行時間と、シーケンスSQ1の実行回毎の保護膜SXの膜厚THの値thvとに基づいて決定され得る。図5の(b)部に示す角度θは、溝部TRの所望とする深さLP4の値dpと、所望とする保護膜SXの膜厚THの値thtとによって決定され得る(tan(θ)=tht/dp)。
以下、工程ST2、工程ST11a、工程ST13a、シーケンスSQ1、および、シーケンスSQ1aのそれぞれの主なプロセス条件の実施例を示す。
<工程ST2>
・処理容器12内の圧力[mTorr]:80[mTorr]
・第1の高周波電源62の高周波電力の値[W]、周波数の値[MHz]:300[W]、40[MHz]
・第2の高周波電源64の高周波電力の値[W]、周波数の値[MHz]:25[W]、13[MHz]
・電源70の直流電圧の値[V]:0[V]
・処理ガス:C4F8/Ar/N2/O2ガス
・処理ガスの流量[sccm]:(C4F8ガス)30[sccm]、(Arガス)1000[sccm]、(N2ガス)20[sccm]、(O2ガス)10[sccm]
・処理時間[s]:30[s]
<工程ST11a>
・処理容器12内の圧力[mTorr]:100[mTorr]
・第1の高周波電源62の高周波電力の値[W]:0[W]
・第2の高周波電源64の高周波電力の値[W]:0[W]
・電源70の直流電圧の値[V]:0[V]
・処理ガス(第1のガス):モノアミノシラン(H3−Si−R(Rはアミノ基))
・処理ガスの流量[sccm]:50[sccm]
・処理時間[s]:15[s]
<工程ST13a>
・処理容器12内の圧力[mTorr]:200[mTorr]
・第1の高周波電源62の高周波電力の値[W]:300[W]、10[kHz]、Duty50
・第2の高周波電源64の高周波電力の値[W]:0[W]
・電源70の直流電圧の値[V]:0[V]
・処理ガス(第2のガス):CO2ガス
・処理ガスの流量[sccm]:300[sccm]
・処理時間[s]:5[s]
<シーケンスSQ1>
・繰り返し回数:5回
<シーケンスSQ1a>
・繰り返し回数:5回
以上説明した方法MTでは、ウエハWの主面SC(溝部TRの内側の表面SF2を含む)に保護膜SXをコンフォーマルに形成する工程ST1と、主面SCに設けられた溝部TRの底部BTを工程ST1の実行後にエッチングする工程ST2とが、交互に繰り返し実行され得る(工程ST3)。したがって、複数回実行される工程ST1毎に保護膜SXの膜厚TH等を好適に調節し、且つ、複数回実行される工程ST2毎にエッチング量等を好適に調節することによって、所望とする溝部TRの多様な形状に応じて比較的に精密に溝部TRの加工が可能となる。
また、工程ST1aは、ALD法と同様の方法によって、ウエハWの主面SC(溝部TRの内側の表面SF2を含む)に保護膜SXがコンフォーマルに形成されるので、ウエハWの主面SCに対する保護の強度が向上されると共に、ウエハWの主面SCを保護する保護膜SXが均一な膜厚で形成され得る。
また、工程ST1bは、第1のガスによってウエハWの主面SC(溝部TRの内側の表面SF2を含む)に反応前駆体(層Ly1)が形成され得る工程ST11bおよび工程ST11bの実行後に処理容器12内の空間をパージする工程ST12bのみによって成るので、この工程ST1bによって形成される保護膜SXは、工程ST11bで形成される反応前駆体(層Ly1)となり、よって、比較的に薄い膜となり得る。さらに、この工程ST1bに引き続く工程ST2では酸素を含有する第3のガスのプラズマが用いられるので、工程ST11bで形成された反応前駆体(層Ly1)に対し酸素の添加が可能となり、ALD法と同様の方法によって形成される保護膜と同様の組成を有する保護膜SXが比較的に薄い膜厚で形成可能となり、さらに、酸素ガスの添加が工程2のエッチング時に行えるので、処理工程の効率化が実現され得る。
また、工程ST1aでは、ALD法と同様の方法によって、ウエハWの主面SC(溝部TRの内側の表面SF2を含む)に保護膜SXがコンフォーマルに形成されるので、ウエハWの主面SCに対する保護の強度が向上されると共に、ウエハWの主面SCを保護する保護膜SXが均一な膜厚で形成され得る。工程ST1bでは、第1のガスによってウエハWの主面SC(溝部TRの内側の表面SF2を含む)に反応前駆体が形成され得る工程ST11bおよび工程ST11bの実行後に処理容器12内の空間をパージする工程ST12bのみによって成るので、工程ST1bによって形成される保護膜SXは、工程ST11bで形成される反応前駆体(層Ly1)となり、よって、比較的に薄い膜となり得る。さらに、工程ST1bに引き続く工程ST2では酸素を含有するガスのプラズマが用いられるので、工程ST11bで形成された反応前駆体(層Ly1)に対し酸素の添加が可能となり、ALD法と同様の方法によって形成される保護膜と同様の組成を有する保護膜SXが比較的に薄い膜厚で形成可能となり、さらに、酸素ガスの添加が工程ST2のエッチング時に行えるので、処理工程の効率化が実現され得る。そして、シーケンスSQ1のN回の実行では、上記した工程ST1aを含むシーケンスSQ1をM回実行し、且つ、上記したST1bを含むシーケンスSQ1をN−M回実行するので、溝部TRの多様な形状の形成に十分に対応し得る。
また、第2のガスが酸素原子を含むので、工程ST13aにおいて、工程ST11aにおいて形成されたシリコンの反応前駆体(層Ly1)と当該酸素原子が結合することによって、酸化シリコンの保護膜SXがコンフォーマルに形成され得る。また、第2のガスが二酸化炭素ガスの場合、第2のガスが炭素原子を含むので、酸素原子による浸食が当該炭素原子によって抑制され得る。
また、第1のガスがアミノシラン系ガスを含むので、工程ST11aおよび工程ST11bによって、シリコンの反応前駆体(層Ly1)がウエハWの主面SCの原子層に沿って形成され得る。
また、モノアミノシランを含む第1のガスを用いて、工程ST11aおよび工程ST11bにおいてシリコンの反応前駆体(層Ly1)の形成が行える。
また、第1のガスに含まれるアミノシラン系ガスには、1〜3個のケイ素原子を有するアミノシランを用いることができる。また、第1のガスに含まれるアミノシラン系ガスには、1〜3個のアミノ基を有するアミノシランを用いることができる。
また、工程ST2の実行前において、工程ST1で形成された保護膜SXの膜厚THが2[nm]以上8[nm]以下の場合には、特に保護膜SXの膜厚THが2[nm]を下回る場合と比較して、この保護膜SXによって覆われるウエハWの角部CPに対すエッチングの効果を低減し得る。よって、工程ST2のエッチングによるウエハWの変形の程度を低減できる。
以上、好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。