JP2020200227A - バナジウム化合物の製造方法、及びレドックス・フロー電池用電解液の製造方法、並びにバナジウム化合物の製造装置、及びレドックス・フロー電池用電解液の製造装置 - Google Patents
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Abstract
Description
また、アルカリ抽出工程ではpH13と高いpH領域で浸出を行っているため、ニッケル等の夾雑物が浸出しにくく、最終的に得られるバナジウム化合物の純度を高くすることができる。
さらに、晶析・固液分離工程でバナジウム化合物を含む固形分を分離した晶析ろ液には、析出しなかったバナジウム化合物のほかアルカリが含まれているため、必要に応じて再度アルカリ抽出工程にリサイクル利用することができる。また、本発明では浸出ろ液の蒸発濃縮を行っているため、得られる濃縮液のアルカリ濃度が高く、アルカリ抽出工程へのリサイクルの際にアルカリ濃度回復のためのアルカリの追加が不要であるか少量で済むため、低コストでリサイクルすることができる。
さらに、前記蒸発濃縮工程は、前記浸出ろ液を70〜130℃で蒸発濃縮し、前記晶析・固液分離工程は、前記濃縮液を0〜20℃に冷却することが好ましい。
さらに、前記蒸発濃縮手段は、前記浸出ろ液を70〜130℃で蒸発濃縮し、前記晶析・固液分離手段は、前記濃縮液を0〜20℃に冷却することが好ましい。
以下、図1を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るバナジウム化合物の製造方法を示しており、(a)はバナジウム化合物の製造方法の工程を示すフロー図、(b)は(a)のフロー図のそれぞれの工程において原料中に含まれる成分の推移を示す模式図である。
図1(a)に示すように、本発明のバナジウム化合物の製造方法は、まず燃焼灰(原料灰)を準備する(ステップ10)。この工程では、上述した原料灰をそのまま使用するか、あるいは水などの溶媒に溶解して原料灰スラリーとしたものを原料灰として使用する。この場合の原料灰に含まれる成分は図1(b)(ステップ10)のようになっている。
次に、原料灰(原料灰そのもの又は原料灰スラリー)にアルカリを添加してpH13以上とし、バナジウムを含むアルカリ浸出液を得る(ステップ12)。本工程で使用するアルカリとしては、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ルビジウム(RbOH)、水酸化セシウム(CsOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化ストロンチウム(Sr(OH)2)、水酸化バリウム(Ba(OH)2)などを挙げることができる。これらのうち、入手が容易などの理由から、水酸化ナトリウムが好ましい。
次に、アルカリ浸出液から不溶物を固形分として除去するとともにバナジウムを含む浸出ろ液を得る(ステップ13)。分離方法としては、特に制限はないが、沈殿分離、遠心分離、吸引ろ過などを挙げることができる。本工程後の原料灰に含まれる成分は図1(b)(ステップ13)のように、炭素分が除去されたものとなっており、浸出ろ液中には硫安分、硫酸イオン、バナジウムが含まれている。
固液分離工程後に、固形分(ケーキ)を洗浄する工程(固形分洗浄工程)を行うことが好ましい。この固形分洗浄工程では、水を固形分(ケーキ)に含まれる水(固形分含水)の1〜3倍量加え、洗浄を行う。この工程により、固形分含水からバナジウムを抽出し、回収することができる。これは、アルカリ浸出後の固形分が高pHであることから、ケーキ洗浄水もpH12〜13程度の高pHとなるため、バナジウムが溶液状態となり、洗浄によって回収しやすくなるためである。さらに、固形分洗浄工程で得られた洗浄液(洗浄ろ液)を回収して浸出ろ液とともに次の蒸発濃縮工程に移行させる。図5に示すように、洗浄液の回収を行わなかった場合(洗浄ろ液量0mL)、88%の回収率であったのに対して、洗浄液を回収した場合は、100%以上と高い回収率となる。なお、ケーキ洗浄水のpH、電気伝導度を監視することで、洗浄水量を制御してもよい。
一方、特許文献2では、pH9以下でアルカリ浸出を行っており、ケーキ洗浄については記載されていない。なお、特許文献2においては、仮にケーキ洗浄を行ったとしても、中性付近のpHで洗浄を行うことになり、バナジウムの新たな抽出は見込めず、むしろ図4に示すようにニッケル等の金属夾雑物が多く浸出する可能性がある。
次に、浸出ろ液を蒸発濃縮し、アルカリの濃度が10〜25質量%の濃縮液を得る(ステップ14)。蒸発濃縮方法としては、特に制限はないが、蒸発濃縮缶などを用いて行うことができる。蒸発濃縮温度は、浸出ろ液の塩濃度にもよるが、70〜130℃であることが好ましい。蒸発濃縮温度が高いと濃縮に必要な投入エネルギー量が多くなり、処理コストが増大するため、減圧下で蒸発させることにより、温度100℃以下、特に80〜90℃で処理することが好ましい。
次に、濃縮液を冷却して晶析し、バナジウムを含む析出物を固形分として回収する(ステップ15)。冷却温度は0〜20℃であることが好ましい。晶析方法としては、冷却機能を備えた水槽、冷却晶析槽や、メタノールなど有機系貧溶媒を加える貧溶媒晶析槽などを用いた方法を挙げることができる。晶析後は、固液分離を行う。固液分離方法としては、シックナー、デカンター、バスケット遠心真空ベルトフィルタなどを用いた方法を挙げることができる。図1(b)に示すように、本工程後では、硫安分、硫酸アルカリ(本実施形態では、硫酸ナトリウム(Na2SO4:芒硝))、バナジウム化合物(Na3VO4など)のそれぞれの一部が固形分として析出し、これらの残りとアルカリ(NaOH)が晶析ろ液に含まれる。
さらに、上述において、Na3VO4飽和濃度がゼロに漸近し下限に近い領域で晶析処理すれば、高収率でのバナジウム化合物の回収が可能であり、Na2SO4飽和濃度がゼロに漸近せず、高い溶解度を示す領域で晶析すれば、安定した高純度バナジウム化合物の回収が可能である。
このような条件としては、アルカリ抽出液中のSO4を0.6質量%以下として、2〜7倍濃縮することにより、濃縮液のアルカリ濃度10〜25質量%、Na2SO4飽和濃度4〜7質量%、Na3VO4飽和濃度0〜2質量%とすることが好ましい。
アルカリ抽出工程の前段階において、原料灰を酸化する酸化工程を更に備えていてもよい。酸化工程としては、原料灰に酸化性ガス及び/又は酸化剤を添加する方法を挙げることができる。酸化性ガスとしては、空気、酸素、オゾン、亜酸化窒素、一酸化窒素、二酸化窒素、塩素などを挙げることができる。酸化剤としては、過酸化水素、次亜塩素酸などを挙げることができる。原料灰中において、バナジウムは3価、4価、5価の様々な価数の化合物の形態をとっているが、アルカリ抽出工程において、概ね5価のバナジウムが選択的にアルカリ浸出液に溶解し、3価や4価のバナジウムや金属夾雑物はほとんど溶解しない。それゆえ酸化工程を追加することにより3価や4価のバナジウムを5価のバナジウムに変換し、バナジウムの回収率を向上させることが可能となる。
本発明のレドックス・フロー電池用電解液の製造方法は、バナジウム化合物の製造方法で製造したバナジウム化合物をレドックス・フロー電池用の電解液の原液とするための方法である。レドックス・フロー電池用電解液の製造方法としては、上述したバナジウム化合物の製造方法で製造したバナジウム原料をもとにレドックス・フロー電池用電解液を製造する工程である電解液製造工程を備える。
本発明のバナジウム化合物の製造装置は、上記の第1の実施形態のバナジウム化合物の製造方法を実施するための装置として構成することができる。本実施形態のバナジウム化合物の製造装置は、アルカリ抽出手段、固液分離手段、蒸発濃縮手段、晶析・固液分離手段を備える。
本発明のレドックス・フロー電池用電解液の製造装置は、バナジウム化合物の製造装置で製造したバナジウム化合物をレドックス・フロー電池用の電解液の原液とするための装置である。レドックス・フロー電池用電解液の製造装置としては、上述したバナジウム化合物の製造装置で製造したバナジウム原料をもとにレドックス・フロー電池用電解液を製造する工程である電解液製造手段を備える。レドックス・フロー電池用電解液の製造装置の詳細については、上述したレドックス・フロー電池用電解液の製造方法を参考にすることができる。
以下、図3を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。図3は、本発明の第2の実施形態に係るバナジウム化合物の製造方法を示しており、(a)はバナジウム化合物の製造方法のフロー図、(b)は原料中に含まれる成分の推移を示す模式図である。
本実施形態では、原料灰準備工程(ステップ20)の後に、原料灰を洗浄する原料灰洗浄工程(ステップ21)を行う。本工程では、原料灰から溶解性の金属夾雑物(鉄、ニッケル、マグネシウムなど)を除去するとともに、アルカリ再使用の妨げとなる溶解性塩類(硫安分、硫酸など)を除去する。原料灰の洗浄に使用する溶媒は、水又はアルカリ溶液を挙げることができる。原料灰洗浄工程は、原料灰に対して重量比で2〜20倍の溶媒で洗浄を行うことが好ましい。
晶析・固液分離工程の後段階において、晶析・固液分離工程で得られる晶析ろ液は、アルカリ抽出工程へリサイクルされることが好ましい。リサイクル工程は、返送ポンプやオーバーフロー槽などで行ってもよい。この場合、晶析ろ液の全量をアルカリ溶液としてアルカリ抽出工程で再使用しても良いが、硫酸根の系内蓄積を抑えるため、1〜30質量%の範囲で系外へ排出し、残りを使用してもよい。
また、リサイクル工程では、アルカリ抽出工程において、晶析ろ液により持ち込まれる硫酸根と、原料灰から持ち込まれる硫酸根との合計が、晶析・固液分離工程における冷却後の飽和濃度相当量以下になるように、リサイクルする晶析ろ液の量を調整することが好ましい。
本発明のバナジウム化合物の製造装置は、上記の第2の実施形態のバナジウム化合物の製造方法を実施するための装置として構成することができる。本実施形態のバナジウム化合物の製造装置は、原料灰洗浄手段、アルカリ抽出手段、固液分離手段、蒸発濃縮手段、晶析・固液分離手段、リサイクル手段、晶析ろ液量調整手段を備える。これらのうち、アルカリ抽出手段、固液分離手段、蒸発濃縮手段、晶析・固液分離手段については、上記の第1の実施形態において説明しているため、説明を省略する。
ボイラー燃焼灰 5kg wet(含水率14.9%、バナジウム(V)含有率2.3%)を原料とし、水:10kgを加え、60分間撹拌したのち、遠心脱水機にて固液分離を行った。得られた残渣は、4.5kg(含水率33wt%)であった。この水洗工程において、原料灰中に含まれるバナジウム(V)の16.6wt%がろ液中に溶出した。
水洗工程で得られた残渣1kgに、スラリー化水:2.1kg、30wt%苛性ソーダ(NaOH):1.0kgを投入し、pH13.8として60分間撹拌したのち、加圧ろ過を行い、ろ液:2.8kgを得た。残渣を2.1kgの水でケーキ洗浄し、その際の洗浄液も回収することで合計4.8kgのアルカリ浸出液を得た。
アルカリ浸出工程で得られたろ液(濃縮前液)4.8kgを、80〜85℃、−70kPaで減圧濃縮を行い、濃縮液:1.0kgを得た。
蒸発濃縮工程で得られた濃縮液1.0kgをとり、徐々に冷却を行い、5℃にて5時間攪拌し、結晶を析出させた。1.0μmのメンブレンを使用して吸引ろ過によって固液分離を行った。これにより固形物であるケーキI:157g(うち、Na3VO4:64gとしてのバナジウム(V):18g)を得た。このケーキIの乾物中構成比は、Na3VO4が85wt%、Na2SO4が0.1wt%、NaOHが15wt%であった。なお、NaOHの混入はその大部分が付着水によるものであるため、固液分離性を高めることで混入率は大幅に削減できる。また、蒸発濃縮工程に必要な投入エネルギーは、純バナジウム1.0kg回収あたり、13950kcalであった。
Claims (14)
- 硫酸アンモニウム及び/又は硫酸水素アンモニウムからなる硫安分と、硫酸と、バナジウムと、ニッケル、鉄及びマグネシウムから選択される少なくとも1種類のその他金属と、を少なくとも含有する原料灰からバナジウムを分離するバナジウム化合物の製造方法であって、
pH13以上となるように前記原料灰にアルカリ及び水、又はアルカリ溶液を添加し、バナジウムを液相に浸出させてアルカリ浸出液を得るアルカリ抽出工程と、
前記アルカリ浸出液を固液分離し、不溶物を固形分として除去するとともにバナジウムを含む前記アルカリ浸出液を浸出ろ液として得る固液分離工程と、
前記浸出ろ液を蒸発濃縮して濃縮液を得る蒸発濃縮工程と、
前記濃縮液を所定の冷却温度に冷却して晶析し、バナジウムを含む析出物を固形分として回収する晶析・固液分離工程と、を含み、
前記濃縮液は、前記冷却温度においてバナジウム化合物が飽和濃度以上、硫酸アルカリが飽和濃度以下となることを特徴とするバナジウム化合物の製造方法。 - 前記アルカリ抽出工程の前段階において、前記原料灰を洗浄する原料灰洗浄工程を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のバナジウム化合物の製造方法。
- 前記晶析・固液分離工程の後段階において、前記晶析・固液分離工程で前記固形分から分離された晶析ろ液を前記アルカリ抽出工程で再利用するリサイクル工程を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のバナジウム化合物の製造方法。
- 前記アルカリ抽出工程において、前記晶析ろ液により持ち込まれる硫酸根と、前記原料灰から持ち込まれる硫酸根との合計が、前記晶析・固液分離工程における冷却後の飽和濃度相当量以下になるように、リサイクルする前記晶析ろ液の量を調整する晶析ろ液量調整工程を更に含むことを特徴とする請求項3に記載のバナジウム化合物の製造方法。
- 前記アルカリ抽出工程の前段階において、前記原料灰を酸化する酸化工程を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のバナジウム化合物の製造方法。
- 前記アルカリ抽出工程の後段階において、前記固形分を洗浄してバナジウムを含む洗浄液を回収し、前記洗浄液を前記浸出ろ液とともに前記蒸発濃縮工程に移行させる固形分洗浄工程を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のバナジウム化合物の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のバナジウム化合物の製造方法で分離した前記バナジウムを原料としてレドックス・フロー電池用電解液を製造する電解液製造工程を有することを特徴とするレドックス・フロー電池用電解液の製造方法。
- 硫酸アンモニウム及び/又は硫酸水素アンモニウムからなる硫安分と、硫酸と、バナジウムと、ニッケル、鉄及びマグネシウムから選択される少なくとも1種類のその他金属と、を少なくとも含有する原料灰からバナジウムを分離するバナジウム化合物の製造装置であって、
pH13以上となるように前記原料灰にアルカリ及び水、又はアルカリ溶液を添加し、バナジウムを液相に浸出させてアルカリ浸出液を得るアルカリ抽出手段と、
前記アルカリ浸出液を固液分離し、不溶物を固形分として除去するとともにバナジウムを含むアルカリ浸出液を浸出ろ液を得る固液分離手段と、
前記浸出ろ液を蒸発濃縮して濃縮液を得る蒸発濃縮手段と、
前記濃縮液を所定の冷却温度に冷却して晶析し、バナジウムを含む析出物を固形分として回収する晶析・固液分離手段と、を含み、
前記濃縮液は、前記冷却温度においてバナジウム化合物が飽和濃度以上、硫酸アルカリが飽和濃度以下となることを特徴とするバナジウム化合物の製造装置。 - 前記アルカリ抽出手段の前段階において、前記原料灰を洗浄する原料灰洗浄手段を更に備えることを特徴とする請求項8に記載のバナジウム化合物の製造装置。
- 前記晶析・固液分離手段の後段階において、前記晶析・固液分離手段で前記固形分から分離された晶析ろ液を前記アルカリ抽出手段で再利用するリサイクル手段を更に含むことを特徴とする請求項8に記載のバナジウム化合物の製造装置。
- 前記アルカリ抽出手段において、前記晶析ろ液により持ち込まれる硫酸根と、前記原料灰から持ち込まれる硫酸根との合計が、前記晶析・固液分離工程における冷却後の飽和濃度相当量以下になるように、リサイクルする前記晶析ろ液の量を調整する晶析ろ液量調整手段を更に含むことを特徴とする請求項8に記載のバナジウム化合物の製造装置。
- 前記アルカリ抽出手段の前段階において、前記原料灰を酸化する酸化手段を更に備えることを特徴とする請求項8に記載のバナジウム化合物の製造装置。
- 前記アルカリ抽出工程の後段階において、前記固形分を洗浄してバナジウムを含む洗浄液を回収し、前記洗浄液を前記浸出ろ液とともに前記蒸発濃縮手段に移行させる固形分洗浄手段を更に備えることを特徴とする請求項8に記載のバナジウム化合物の製造装置。
- 請求項8〜13のいずれか1項に記載のバナジウム化合物の製造装置で分離した前記バナジウムを原料としてレドックス・フロー電池用電解液を製造する電解液製造手段を有することを特徴とするレドックス・フロー電池用電解液の製造装置。
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