以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。なお、以下に説明する各実施の形態の筒型リニアモータM1,M2,M3において共通する構成については同じ符号を付し、説明の重複を避けるために、第一の実施の形態の筒型リニアモータM1の説明において説明した構成については他の実施の形態の筒型リニアモータM2,M3における説明では詳細な説明を省略する。
<第一の実施の形態>
第一の実施の形態の筒型リニアモータM1は、筒状の電機子2と、電機子2の外周に配置されるとともに電機子2に対して軸方向へ移動可能であって軸方向にN極とS極とが交互に配置される界磁10とを備えて構成されている。
以下、筒型リニアモータM1の各部について詳細に説明する。電機子2は、コア3と巻線5とを備えて構成されている。コア3は、円筒状のコア本体3aと、環状であってコア本体3aの外周に軸方向に間隔を空けて設けられる複数のティース3bとを備えて構成されている。
コア3は、前述の通り筒状であって、図1に示すように、コア本体3aの外周に軸方向に等間隔に並べて設けられた10個のティース3bを備えており、ティース3b,3b間には、巻線5が装着される空隙でなるスロット4が形成されている。また、本実施の形態では、図1中で隣り合うティース3b,3b同士の間には、空隙でなるスロット4が合計で9個設けられている。そして、このスロット4には、巻線5が巻き回されて装着されている。巻線5は、U相巻線、V相巻線およびW相巻線の三相の巻線で構成されている。9個のスロット4には、図1中左側から順に、W相、W相、W相およびV相、V相、V相、V相およびU相、U相、U相、U相およびW相が装着されている。
そして、電機子2は、出力軸である非磁性体で形成されたロッド11の先端の外周に装着されている。ロッド11は、筒状の第一ロッド20と、筒状であって外周にコア3が装着されるとともに第一ロッド20の内周に螺合される第二ロッド21とを備えている。
第一ロッド20は、筒状であって図1中左端外周と図1中右端内周にそれぞれ螺子部22a,22bを有するロッド本体22と、筒型リニアモータM1を機器へ取り付けるブラケット23aを有してロッド本体22の図1中左端の螺子部22aに螺着されてロッド本体22の左端を閉塞するエンドキャップ23とを備えている。
また、ロッド本体22の図1中右端外周には、環状のスライダ25が嵌合されている。スライダ25は、後述する筒部9bの内周に摺接する摺接部25aと、摺接部25aの図1中左方側であるロッド11の基端側に設けられた外径が摺接部25aよりも小径な小径部25bと、小径部25bの外周に周方向に沿って設けられた環状溝25cと、図1中右端内周に設けられたフランジ25dとを備えている。そして、スライダ25の環状溝25cには、弾性体としてのゴム製のシールリング26が装着されている。また、フランジ25dの内径は、ロッド本体22の内径以上であってロッド本体22の外径以下となっており、スライダ25をロッド本体22に嵌合するとフランジ25dがロッド本体22の図1中右端面に当接する。
第二ロッド21は、外周にコア3が装着される筒状のコア保持筒21aと、コア保持筒21aの図1中右端となる先端の外周に設けられる環状のスライダ21bとを備えている。また、コア保持筒21aの図1中左端となる基端の外周には、螺子部21cが設けられており、コア保持筒21aの基端側内周には内径が他の部位よりも大きな内径大径部21dが設けられている。そして、コア保持筒21aの基端を第一ロッド20におけるロッド本体22の図1中右端の内周に挿入しつつ螺子部21cを螺子部22bに捩じ込むと、第一ロッド20と第二ロッド21とが連結される。このようにロッド11は、本実施の形態では、第一ロッド20と第二ロッド21とで構成されて筒状とされている。
また、第二ロッド21におけるコア保持筒21aの外周には、コア3が嵌合されて装着されている。コア保持筒21aの外径は、第一ロッド20におけるロッド本体22の外径よりも小径となっているので、スライダ25を装着した第一ロッド20に電機子2を装着した第二ロッド21を前記した要領で連結すると、電機子2およびスライダ25が第一ロッド20の図1中右端と第二ロッド21のスライダ21bとで挟み込まれて固定される。このようにロッド11に電機子2を装着すると、コア3がスライダ21bおよびスライダ25に挟まれる格好でロッド11に固定される。なお、本実施の形態では、電機子2は、単一のコア3のみを有して構成されているが、コギング推力の軽減等のために複数のコア3を持つ構成とされてもよい。
つづいて、ロッド11には、ロッド11の外周を覆って空隙Gを形成するカバー17が設けられている。具体的には、カバー17は、筒状であって一端がロッド11の外周に設けた環状のカバーエンド18の外周に嵌合されるとともに他端がスライダ25の小径部25bの外周に嵌合されてロッド11に装着されている。
カバー17とロッド11との間の空隙G内には、コア3に装着された各相の巻線5を外部の図示しない駆動回路へ接続するリード線Lが収容されており、カバー17を取外した状態で巻線5とリード線Lとの配線作業を行えるようになっており、筒型リニアモータM1の組立作業を容易ならしめている。
つづいて、本実施の形態では、界磁10は、軸方向に交互に積層され複数の環状の永久磁石でなる主磁極10aと複数の環状の永久磁石でなる副磁極10bとを備えて構成されている。また、界磁10は、外周に装着される円筒状の磁性体で形成されるバックヨーク8とともに、円筒状の非磁性体で形成されるアウターチューブ7と、アウターチューブ7内に挿入される円筒状の非磁性体の界磁保持部材9との間の環状隙間内に収容されている。
界磁保持部材9は、非磁性体で形成されており、筒状であって、外周に螺子部を有してアウターチューブ7の図1中左端開口端に螺子締結されるヘッド部9aと、ヘッド部9aよりも肉厚が薄くヘッド部9aの内周から図1中右方へ突出する筒部9bとを備えて構成されている。また、界磁保持部材9における筒部9bの外周には、界磁10が軸方向移動不能に取り付けられている。なお、界磁保持部材9の筒部9bの外周には、界磁10とともに界磁10の軸方向両側を挟むように環状のスペーサ40と環状のストッパ41とが順に装着されている。
アウターチューブ7は、図1中右端側が縮径されていて底部7aが設けられており、底部7aの右端に筒型リニアモータM1の機器への取り付けを可能とするブラケット7bを備えている。
そして、界磁保持部材9のヘッド部9aをアウターチューブ7に螺子締結すると、スペーサ40、界磁10およびストッパ41が界磁保持部材9におけるヘッド部9aとアウターチューブ7の底部7aとで挟持され、界磁10に軸力が作用しても筒部9bに対して軸方向へずれることが無い。なお、界磁10の外周に装着されるバックヨーク8は、界磁10の磁力によって界磁10に拘束されるのでアウターチューブ7内で移動しない。
界磁10は、前述したとおり、筒状のバックヨーク8の内周に軸方向に交互に積層されて挿入される複数の環状の主磁極10aと複数の環状の副磁極10bとを備えて構成されている。なお、図1中で主磁極10aと副磁極10bに記載されている三角の印は、着磁方向を示しており、主磁極10aの着磁方向は径方向となっており、副磁極10bの着磁方向は軸方向となっている。主磁極10aと副磁極10bは、ハルバッハ配列で配置されており、界磁10の内周側では、軸方向にS極とN極が交互に現れるように配置されている。
本実施の形態の筒型リニアモータM1では、主磁極10aの軸方向長さは、副磁極10bの軸方向長さよりも長くなっている。このように、主磁極10aの軸方向長さを長くすればコア3との間の主磁極10aとの間の磁気抵抗を小さくできコア3へ作用させる磁界を大きくできるので筒型リニアモータM1の質量推力密度を向上できる。ここで、質量推力密度とは、筒型リニアモータM1の最大推力を質量で割った数値であり、質量推力密度が良化すれば、筒型リニアモータM1の質量当たりの推力が大きくなる。
なお、副磁極10bが主磁極10aよりも高い保磁力を有していれば、大きな磁界が印加される副磁極10bの減磁を抑制しつつも主磁極10aに高い残留磁束密度の永久磁石を利用できる。
また、主磁極10aの軸方向長さL1を副磁極10bの軸方向長さL2よりも長くすれば、界磁10はコア3に大きな磁界を作用させ得るが、主磁極10aの軸方向長さL1と副磁極10bの軸方向長さL2に最適な関係がある。図2に主磁極10aの軸方向長さL1で副磁極10bの軸方向長さL2を割った値と筒型リニアモータM1の推力との関係を示す。発明者らは、鋭意研究した結果、図2に示すように、主磁極10aの軸方向長さL1と副磁極10bの軸方向長さL2が0.15≦L2/L1≦0.6を満たすように設定されれば、L2/L1の値を理想的な値に設定した際の推力に対して95%以上の推力を確保できることを知見した。
よって、筒型リニアモータM1における主磁極10aの軸方向長さL1と副磁極10bの軸方向長さL2を0.15≦L2/L1≦0.6を満たすように設定すれば、推力を一層向上できる。さらに、図2から理解できるように、主磁極10aの軸方向長さL1と副磁極10bの軸方向長さL2が0.2≦L2/L1≦0.5を満たすように設定されれば、L2/L1の値を理想的な値に設定した際の推力に対して98%以上の推力を確保できるので筒型リニアモータM1の推力をより効果的に向上できる。
また、主磁極10aは、図3に示すように、円環を周方向に等間隔で分割した円弧状の8個の主磁石ピースMP1で構成されている。図3中で▲印は、主磁石ピースMP1の着磁方向を示している。また、図3に示したところでは、主磁石ピースMP1の着磁方向が径方向内側に向かっており、内周にN極が現れる主磁極10aが示されているが、内周にS極が現れる主磁極10aでは着磁方向が径方向外側に向かうように着磁される。このように、主磁石ピースMP1が内周と外周とで異なる磁極が現れて着磁方向が内側または外側の磁極パターンを有してパラレル配向で着磁されているので、複数の主磁石ピースMP1が環状に組み合わせられると磁気配向方向が主磁極10aの中心を向き、製造工程が複雑なラジアル配向の永久磁石を用いずとも安価に疑似的なラジアル配向の主磁極10aを実現できる。
他方、副磁極10bは、図4に示すように、主磁極10aと同様に、円環を周方向に等間隔で分割した円弧状の8個の副磁石ピースMP2で構成されている。副磁極10bにおける各副磁石ピースMP2は、図4中で紙面を貫く方向である軸方向に配向するように着磁されている。副磁極10bを複数の円弧状の副磁石ピースMP2を環状に配置して形成すると、円盤状の永久磁石に着磁してから孔開け加工するような工程とはならず材料の歩留まりが良くなるので、副磁極10bを安価に製造できる。
そして、主磁極10aにおける主磁石ピースMP1と副磁極10bにおける副磁石ピースMP2は、図5に示すように、千鳥に積層されて1つの主磁石ピースMP1に対して隣の列の2つの副磁石ピースMP2が接し、1つの副磁石ピースMP2に対して隣の列の2つの主磁石ピースMP1が接するように配置されている。なお、図5では、磁界保持部材9のヘッド部9aの外周における螺子部の記載を省略している。
より詳細には、主磁極10aにおける主磁石ピースMP1と副磁極10bにおける副磁石ピースMP2は、以下のようにして、接合されて界磁保持部材9の筒部9bの外周に装着される。本実施の形態の筒型リニアモータM1では、界磁10の終端には副磁極10bが配置されているので、まず、界磁保持部材9の筒部9bの外周に副磁極10bを構成する各副磁石ピースMP2を接着して定着させる。このように筒部9bの外周に1つの副磁極10bを構成するすべての副磁石ピースMP2が接着されると副磁石ピースMP2が周方向に列をなして筒部9bの外周で円環状に接合されて1つの副磁極10bが形成される。このように形成された副磁極10bの副磁石ピースMP2の隣に、主磁極10aを構成する各主磁石ピースMP1を副磁石ピースMP2に対して千鳥に積層しつつ筒部9bの外周に接着していく。主磁極10aを構成する主磁石ピースMP1の筒部9bの外周への接着が終了すると、副磁極10bの隣に主磁石ピースMP1が周方向に列をなして接合されて主磁極10aが形成される。引き続き、主磁極10aの主磁石ピースMP1の隣に、副磁極10bを構成する各副磁石ピースMP2を主磁石ピースMP1に対して千鳥に積層しつつ筒部9bの外周に接着していく。副磁極10bを構成する副磁石ピースMP2の筒部9bの外周への接着が終了すると、主磁極10aの隣に副磁極10bが形成される。こうして周方向に列をなして接着された副磁石ピースMP2で副磁極10bが形成されると、その隣に主磁極10aを構成する主磁石ピースMP1を副磁石ピースMP2に対して千鳥に積層して筒部9bに接着する。このように筒部9bの外周に副磁極10bと主磁極10aとが交互に形成されるように、前述の手順で副磁石ピースMP2と主磁石ピースMP1を筒部9bの外周に接着して界磁10を製造する。なお、主磁石ピースMP1と副磁石ピースMP2の筒部9bへの装着にあたり、主磁石ピースMP1と副磁石ピースMP2は、磁極がハルバッハ配列となるような向きで装着される。また、本実施の形態では、界磁10は、両端に副磁極10bを備えているが、両端に主磁極10aを備えていてもよいし、両端の一方に主磁極10aを他方に副磁極10bを備えていてもよい。
前述の手順で、主磁石ピースMP1と副磁石ピースMP2とを筒部9bの外周に接着すると、主磁極10aをなす各主磁石ピースMP1は、先に筒部9bの外周に接着される隣の副磁極10bの列における二つの副磁石ピースMP2に接するとともに、後に筒部9bの外周に接着される隣の副磁極10bの列における二つの副磁石ピースMP2に接する。副磁極10b側から見れば、副磁極10bをなす各副磁石ピースMP2は、先に筒部9bの外周に接着される隣の主磁極10aの列における二つの主磁石ピースMP1に接するとともに、後に筒部9bの外周に接着される隣の主磁極10aの列における二つの副磁石ピースMP2に接する。つまり、界磁10は、1つの主磁石ピースMP1に対して隣の列の2つの副磁石ピースMP2が接し、1つの副磁石ピースMP2に対して隣の列の2つの主磁石ピースMP1が接するように積層されて形成されている。
副磁石ピースMP2を予め環状に接合する場合には副磁石ピースMP2の接着面積が極小さい周方向の端面同士を接着しなければならないが、界磁保持部材9の筒部9bの外周に副磁石ピースMP2を接着して環状に接合する場合には、接着面積が大きな副磁石ピースMP2の湾曲面を筒部9bに接着することができる。副磁石ピースMP2を円環状に組み合わせた場合、互いの磁力で反発しあうので円環状に接合するには接着面積を大きく確保しなくてはならないから副磁極10bの軸方向長さを長くしなくてはならない。これに対して、筒部9bの外周に接着して円環状に接合する場合には円弧面を接着面にして接着面積を大きく確保できるので副磁極10bの軸方向長さをごく短くすることができる。よって、界磁保持部材9の筒部9bの外周に副磁石ピースMP2を接着して副磁極10bを形成する場合、副磁極10bの軸方向長さを短くでき、筒型リニアモータM1の質量推力密度を向上できる。
なお、主磁極10aにおける主磁石ピースMP1と副磁極10bにおける副磁石ピースMP2は、円環を周方向に等分割した円弧状とされているが、1つの主磁石ピースMP1に対して隣の列の2つの副磁石ピースMP2が接し、1つの副磁石ピースMP2に対して隣の列の2つの主磁石ピースMP1が接することができればよいので、円環を不等に分割した形状とされてもよい。また、主磁石ピースMP1に対して隣接する2つの副磁石ピースMP2の境が主磁石ピースMP1の周方向の中央からずれた位置に配置されてもよく、副磁石ピースMP2に対して隣接する2つの主磁石ピースMP1の境が副磁石ピースMP2の周方向の中央からずれた位置に配置されてもよい。また、主磁極10aを構成する主磁石ピースMP1の数と副磁極10bを構成する副磁石ピースMP2の数は、複数であって同数であれば任意であるが径の大きさ等に応じて最適な数とされればよい。
また、本実施の形態の筒型リニアモータM1では、界磁10の外周に円筒状のバックヨーク8を設けている。バックヨーク8を設けると磁気抵抗の低い磁路を確保できるので副磁極10bの軸方向長さの短縮に起因する磁気抵抗の増大が抑制される。よって、主磁極10aの軸方向長さを副磁極10bの軸方向長さよりも長くするとともに界磁10の外周に筒状のバックヨーク8を設けると筒型リニアモータM1の推力を大きく向上させ得る。バックヨーク8の肉厚は、主磁極10aの外部磁気抵抗の増大を抑制に適する肉厚に設定されればよい。
バックヨーク8の両端における界磁10が装着される面である内周には、面取り加工によって形成されるリードインチャンファ8aが設けられている。また、バックヨーク8の両端であって外周には、面取り加工によって形成されるリードインチャンファ8bが設けられている。
このようにバックヨーク8の両端内周にリードインチャンファ8aが設けられると、バックヨーク8内に主磁石ピースMP1と副磁石ピースMP2を順次積層して形成される界磁10を挿入する工程において、界磁10がリードインチャンファ8aに倣ってバックヨーク8内に挿入しやすくなり、界磁10をバックヨーク8内に挿入する作業が容易となる。さらに、バックヨーク8の両端外周にリードインチャンファ8bが設けられているので、バックヨーク8をアウターチューブ7内に挿入する工程において、アウターチューブ7がリードインチャンファ8bに倣ってバックヨーク8をアウターチューブ7内に挿入しやすくなり、バックヨーク8をアウターチューブ7内に挿入する作業が容易となる。なお、バックヨーク8の長さは、界磁10よりも長くなっており、界磁10の長さが主磁石ピースMP1と副磁石ピースMP2の軸方向長さの寸法誤差、主磁石ピースMP1と副磁石ピースMP2の筒部9bへの接着加工における位置ずれがあっても界磁10全体をバックヨーク8内に収めることができる。よって、界磁10に比してバックヨーク8の全長が不足して界磁10の磁界強度の低下を招かないように配慮されている。
そして、界磁保持部材9内には、電機子2が装着されたロッド11が軸方向移動自在に挿入され、筒部9bの内周にスライダ21b,25が摺接して、電機子2の軸方向の移動が案内される。このように、界磁10の内周側には、電機子2が軸方向移動自在に挿入されており、界磁10は、コア3に磁界を作用させている。なお、界磁10は、コア3の可動範囲に対して磁界を作用させればよいので、コア3の可動範囲に応じて界磁10の設置範囲を決定すればよい。したがって、アウターチューブ7と筒部9bとの環状隙間のうち、コア3に対向し得ない範囲には、界磁10を設置しなくともよい。なお、ヘッド部9aの内周には、第一ロッド20の外周を覆うカバー17の外周に摺接する環状のシール部材28が設けられており、筒型リニアモータM1内へ塵や水などの侵入が防止されている。
なお、界磁保持部材9の筒部9bは、コア3の外周と界磁10の内周との間のギャップを形成するとともに、スライダ21b,25と協働してコア3の軸方向移動を案内する役割を果たしている。なお、本実施の形態では、電機子2は、単一のコア3のみを有して構成されているが、複数のコア3を持つ場合、電機子2の軸方向両端だけでなくコア3,3間にも筒部9bの内周に摺接するスライダを設けてもよい。
さらに、アウターチューブ7の底部7aの内周には、ガイドロッド16が取り付けられている。ガイドロッド16は、底部7aの内周に固定される基端部16aと、基端部16aからロッド11側へ延びてロッド11内に摺動自在に挿入されるガイド部16bとを備えており、筒型リニアモータM1が伸縮しても常にロッド11の内周に摺接している。より詳細には、ガイドロッド16のガイド部16bは、第二ロッド21の内径大径部21dよりも先端側に摺動自在に挿入されている。
このように本実施の形態における筒型リニアモータM1では、ガイドロッド16がロッド11の内周に摺接し、スライダ21b,25が筒部9bに摺接しているので、電機子2はロッド11とともに界磁10に対して偏心せずに軸方向へスムーズに移動できる。
また、このように構成された筒型リニアモータM1では、電機子2の軸方向移動をガイドして界磁10に対する電機子2の偏心を防止する筒部9bがヘッド部9aと一体構造になっているので、筒部9bとヘッド部9aに歪が生じにくくスライダ21b,25が筒部9bの内周を滑らかに摺動でき、スムーズに伸縮できる。
また、本実施の形態の筒型リニアモータM1は、ロッド11内にストロークセンサSを収容している。ストロークセンサSは、本実施の形態では、線形可変差動変圧器とされており、詳しくは図示しないが、プライマリコイルと二つのセカンダリコイルとを収容した筒状のセンサ本体30と、センサ本体30内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともに先端に被検出子であるセンサ用コア31を有するプローブ32とを備えて構成されている。なお、線形可変差動変圧器は、プライマリコイルへ交流電圧を印加した際に誘導さえる二つのセカンダリコイルの誘導電圧の差からセンサ用コア31の位置を検知する。
センサ本体30を予め第一ロッド20内に挿入しておき、スライダ25を第一ロッド20の端部に嵌合して、第二ロッド21を第一ロッド20に螺着すると、センサ本体30は、第二ロッド21における内径大径部21dの右端に形成される段部と第一ロッド20のエンドキャップ23とで挟持されて第一ロッド20内に固定される。このように、センサ本体30は、外周に電機子2が装着されない第一ロッド20内に収容されており、ロッド11の径方向で電機子2と対向しない範囲に収容されている。このように構成された筒型リニアモータM1では、電機子2を外周に備えるロッド11内にストロークセンサSが収容されており、通電によって発熱する電機子2および磁界を発生する界磁6に対してストロークセンサSが直接曝露されていない。したがって、ストロークセンサSは、電機子2の熱から保護されるとともに、界磁6の磁界にも曝されないので、検知した電機子2の位置を精度よく検知できる。
また、ストロークセンサSにおけるプローブ32は、ロッド状であってガイドロッド16におけるガイド部16bの先端に取り付けられている。よって、被検出子としてのセンサ用コア31は、プローブ32、ガイドロッド16およびアウターチューブ7を介して界磁10に対して固定的に連結されている。プローブ32は、前述したとおり、先端にセンサ用コア31を備えていて、先端側をセンサ本体30内に挿入している。よって、電機子2が界磁10に対して軸方向へ移動するのに伴ってプローブ32がセンサ本体30に対して軸方向へ相対移動して、センサ用コア31がセンサ本体30内で移動する。
センサ本体30を収容するロッド11内にはプローブ32を保持するガイドロッド16が摺動自在に挿入されているので、センサ本体30に対するセンサ用コア31の径方向への偏心が防止され、ストロークセンサSは精度よく電機子2の位置を検知できる。なお、センサ本体30のプライマリコイルへの通電用の配線およびセカンダリコイルに接続される配線は、図示はしないがエンドキャップ23に設けた孔から外部へ引き出されて図外のコントローラに接続される。
そして、図外のコントローラは、ロッド11の界磁10に対する位置をストロークセンサSで検知し、コア3の界磁10に対する電気角を把握して通電位相切換を行うとともにPWM制御により、各巻線5の電流量を制御して、筒型リニアモータM1における推力と電機子2の移動方向とを制御する。なお、前述のコントローラにおける制御方法は、一例でありこれに限られない。また、電機子2と界磁10とを軸方向に相対変位させる外力が作用する場合、巻線5への通電、あるいは、巻線5に発生する誘導起電力によって、前記相対変位を抑制する推力を発生させて筒型リニアモータM1に前記外力による機器の振動や運動をダンピングさせ得るし、外力から電力を生むエネルギ回生も可能である。
以上のように、本発明の筒型リニアモータM1は、筒状の電機子2と、電機子2の外周に配置されるとともに電機子2に対して軸方向へ移動可能であって軸方向にN極とS極とが交互に配置される界磁10とを備えている。そして、界磁10は、ハルバッハ配列にて軸方向に交互に並べられる径方向に着磁された環状の主磁極10aおよび軸方向に着磁された環状の副磁極10bとを有し、主磁極10aが周方向で分割された複数の主磁石ピースMP1を有し、副磁極10bが周方向で分割された複数の副磁石ピースMP2を有しており、界磁10が1つの主磁石ピースMP1に対して隣の列の2つの副磁石ピースMP2が接し、1つの副磁石ピースMP2に対して隣の列の2つの主磁石ピースMP1が接するように積層されて形成されている。このように構成された筒型リニアモータM1では、主磁石ピースMP1と副磁石ピースMP2が千鳥に配置されて積層されて、界磁10の軸方向の両端の副磁石ピースMP2を除いて、主磁石ピースMP1が界磁10の軸方向の前後で4つの副磁石ピースMP2に対向し、副磁石ピースMP2が界磁10の軸方向の前後で4つの主磁石ピースMP1に対向するので、主磁石ピースMP1と副磁石ピースMP2とに界磁10の軸方向における長さに寸法誤差があっても、主磁石ピースMP1と副磁石ピースMP2とが界磁10の軸方向に整列されて積層される場合に比較して寸法誤差が界磁10の軸方向で蓄積されにくくなる。よって、本実施の形態の筒型リニアモータM1によれば、ハルバッハ配列で積層される主磁極10aと副磁極10bとを周方向で分割した複数の磁石ピースMP1,MP2で構成しても周方向における磁極のずれを低減できる。また、本実施の形態の筒型リニアモータM1によれば、周方向における磁極のずれを低減できるから、電機子2に効率よく磁界を作用させ得るので質量推力密度を向上できる。
なお、本実施の形態の筒型リニアモータM1では、電機子2が界磁10の内周側に配置される構造となっているが、電機子が界磁の外周に配置される構造の場合であっても界磁を構成する主磁極の主磁石ピースと副磁極の副磁石ピースを界磁の軸方向に千鳥に積層して界磁を形成すれば、周方向における磁極のずれを低減でき、筒型リニアモータM1の質量推力密度を向上できる。
また、本実施の形態の筒型リニアモータM1では、主磁極10aの軸方向長さが副磁極10bの軸方向長さより長くなっているので、コア3との間の主磁極10aとの間の磁気抵抗を小さくできコア3へ作用させる磁界を大きくでき、質量推力密度をより一層向上できる。なお、主磁極10aの軸方向長さL1と副磁極10bの軸方向長さL2が0.15≦L2/L1≦0.6を満たすように設定されれば、L2/L1の値を理想的な値に設定した際の推力に対して95%以上の推力を確保でき、0.2≦L2/L1≦0.5を満たすように設定されれば、L2/L1の値を理想的な値に設定した際の推力に対して98%以上の推力を確保できる。
筒型リニアモータM1の質量推力密度向上には副磁極10bの軸方向長さを主磁極10aよりも短くするとよいのであるが、副磁極10bの軸方向長さを短くすると副磁極10bを構成する副磁石ピースMP2の軸方向長さが短くなって接合が難しくなる。本実施の形態の筒型リニアモータM1のように、界磁保持部材9の筒部9bに副磁石ピースMP2を接着するようにすれば、副磁石ピースMP2の軸方向長さが短くなっても十分な接着面積を確保できるので、軸方向長さが短い副磁極10bを形成でき、筒型リニアモータM1の質量推力密度を向上できる。
また、本実施の形態の筒型リニアモータM1では、界磁10の外周に嵌合する筒状のバックヨーク8を備え、バックヨーク8の両端であって界磁10が嵌合する周面端部にリードインチャンファ8aが設けられているので、バックヨーク8内に界磁10を無理なく挿入できるようになって製造作業が容易となる。なお、電機子が界磁の外周に配置されて、界磁の内周にバックヨークが嵌合される構造の筒型リニアモータの場合には、バックヨークの両端の外周にリードインチャンファを設ければよい。
さらに、本実施の形態の筒型リニアモータM1は、界磁10の外周に嵌合する筒状のバックヨーク8と、バックヨーク8の外周に嵌合するアウターチューブ7を備え、バックヨーク8の両端の内周および外周にリードインチャンファ8a,8bを設けている。このように構成された筒型リニアモータM1によれば、バックヨーク8内に界磁10を無理なく挿入でき、アウターチューブ7内にバックヨーク8を無理なく挿入できるようになって製造作業が容易となる。
<第二の実施の形態>
第二の実施の形態の筒型リニアモータM2は、第一の実施の形態の筒型リニアモータM1に対して、界磁10における主磁石ピースMP1と副磁石ピースMP2の積層の態様が異なる他は、同様の構成となっている。以下、筒型リニアモータM2が筒型リニアモータM1と異なる界磁10について詳細に説明し、その他の同様の構成については詳細な説明を省略する。
第二の実施の形態の筒型リニアモータM2における界磁10は、筒型リニアモータM1と同様に、主磁極10aと副磁極10bとで構成されており、主磁極10aが周方向で等分割された8個の主磁石ピースMP1で構成され、副磁極10bが、周方向で主磁石ピースMP1と同数の8個に等分割された複数の副磁石ピースMP2で構成されている。なお、主磁極10aを構成する主磁石ピースMP1と副磁極10bを構成する副磁石ピースMP2の数は、複数であれば任意である。
そして、界磁10は、1つの主磁石ピースMP1と1つの副磁石ピースMP2とを重ねて接合した磁石ユニットMU1を界磁10の軸方向で隣りの列の2つの磁石ユニットMU1に接するように積層して形成されている。具体的には、磁石ユニットMU1は、1つの主磁石ピースMP1と1つの副磁石ピースMP2とを界磁10の軸方向に整列させた場合に向き合う端面同士を接着剤で接合して一体化されている。なお、磁石ユニットMU1は、内周にS極を持つ主磁石ピースMP1と主磁石ピースMP1側にS極を持つ副磁石ピースMP2とを接合して一体化されるものと、内周にN極を持つ主磁石ピースMP1と主磁石ピースMP1側にN極を持つ副磁石ピースMP2とを接合して一体化されるものとが製造される。
そして、アセンブリ化された磁石ユニットMU1は、図6に示すように、千鳥に積層されて界磁10の軸方向で隣りの列の2つの磁石ユニットMU1に接するように配置されている。なお、図6では、磁界保持部材9のヘッド部9aの外周における螺子部の記載を省略している。
より詳細には、磁石ユニットMU1は、以下のようにして、界磁保持部材9の筒部9bの外周に装着される。本実施の形態の筒型リニアモータM2では、界磁10の終端には副磁極10bが配置されているので、まず、界磁保持部材9の筒部9bの外周に副磁極10bを構成する各副磁石ピースMP2を接着して定着させる。
このように筒部9bの外周に1つの副磁極10bを構成する全ての副磁石ピースMP2が接着されると副磁石ピースMP2が周方向に列をなして筒部9bの外周で円環状に接合されて1つの副磁極10bが形成される。このように形成された副磁極10bの副磁石ピースMP2の隣に、磁石ユニットMU1を副磁石ピースMP2に対して千鳥に積層しつつ筒部9bの外周に接着していく。磁石ユニットMU1の筒部9bの外周への接着が終了すると、副磁極10bの隣に主磁石ピースMP1と副磁石ピースMP2とが周方向に列をなして接合されて主磁極10aと副磁極10bとが形成される。引き続き、磁石ユニットMU1の隣に、磁石ユニットMU1を既に筒部9bに装着された磁石ユニットMU1に対して千鳥に積層しつつ筒部9bの外周に接着していく。磁石ユニットMU1の筒部9bの外周への接着が終了すると、既に装着された磁石ユニットMU1によって形成される副磁極10bの隣に主磁極10aと副磁極10bとが形成される。このように筒部9bの外周に磁石ユニットMU1を千鳥に積層して装着すると、副磁極10bと主磁極10aとが交互に形成されて界磁10を製造できる。なお、磁石ユニットMU1の筒部9bへの装着にあたり、内側にN極を持つ主磁石ピースMP1で構成された磁石ユニットMU1と、内側にS極を持つ主磁石ピースMP1とが交互に積層されて、磁極がハルバッハ配列となる界磁10が形成される。
前述の手順で、磁石ユニットMU1を筒部9bの外周に接着すると、周方向に並べられて列をなす磁石ユニットMU1は、先に筒部9bの外周に接着される隣の列における磁石ユニットMU1に接するとともに、後に筒部9bの外周に接着される隣の列の磁石ユニットMU1に接する。なお、筒部9bの外周に磁石ユニットMU1を接着する際に、副磁石ピースMP2をヘッド部9aへ向けて接着する場合には、界磁10の最後の列の副磁極10bを副磁石ピースMP2のみで形成すればよい。
このように第二の実施の形態の筒型リニアモータM2は、筒状の電機子2と、電機子2の外周に配置されるとともに電機子2に対して軸方向へ移動可能であって軸方向にN極とS極とが交互に配置される界磁10とを備え、界磁10がハルバッハ配列にて軸方向に交互に並べられる径方向に着磁された環状の主磁極10aおよび軸方向に着磁された環状の副磁極10bとを有し、主磁極10aが周方向で等分割された複数の主磁石ピースMP1を有し、副磁極10bが周方向で主磁石ピースMP1と同数で等分割された複数の副磁石ピースMP2を有し、界磁10が1つの主磁石ピースMP1と1つの副磁石ピースMP2とを重ねて接合した磁石ユニットMU1を界磁10の軸方向で隣りの列の2つの磁石ユニットMU1に接するように積層して形成されている。
このように構成された筒型リニアモータM2では、主磁石ピースMP1と副磁石ピースMP2を接合した磁石ユニットMU1が千鳥に配置されて積層されて、界磁10の軸方向の両端における磁石ユニットUM1を除いて、磁石ユニットMU1が界磁10の軸方向の前後で4つの磁石ユニットMU1に対向するので、主磁石ピースMP1と副磁石ピースMP2とに界磁10の軸方向における長さに寸法誤差があっても、主磁石ピースMP1と副磁石ピースMP2とが界磁10の軸方向に整列されて積層される場合に比較して寸法誤差が界磁10の軸方向で蓄積されにくくなる。よって、本実施の形態の筒型リニアモータM2によれば、ハルバッハ配列で積層される主磁極10aと副磁極10bとを周方向で分割した複数の磁石ピースMP1,MP2で構成しても周方向における磁極のずれを低減できる。また、本実施の形態の筒型リニアモータM2によれば、周方向における磁極のずれを低減できるから、電機子2に効率よく磁界を作用させ得るので質量推力密度を向上できる。
なお、本実施の形態の筒型リニアモータM2では、電機子2が界磁10の内周側に配置される構造となっているが、電機子が界磁の外周に配置される構造の場合であっても界磁を構成する主磁極の主磁石ピースと副磁極の副磁石ピースを界磁の軸方向に千鳥に積層して界磁を形成すれば、周方向における磁極のずれを低減でき、筒型リニアモータM2の質量推力密度を向上できる。
また、本実施の形態における筒型リニアモータM2では、主磁石ピースMP1と副磁石ピースMP2とを接合して得られる磁石ユニットMU1を千鳥に積層していけば界磁10が形成されるので、主磁石ピースMP1と副磁石ピースMP2を交互に積層して接合する場合に比較して単一の磁石ユニットMU1を積層していけばよいので、誤って界磁10の軸方向にて主磁極10a同士や副磁極10b同士を隣に接合してしまうような誤組立も抑制できる。さらに、主磁石ピースMP1と副磁石ピースMP2とを予め接合するので、界磁10の組み立て作業が簡素化される。なお、磁石ユニットMU1を一体化する接合工程においては、主磁石ピースMP1と副磁石ピースMP2の互いに向き合う端面を接着面とするので接着面積を確保でき、副磁石ピースMP2の界磁10の軸方向の長さを短くしても磁石ユニットUM1を製造できる。
<第三の実施の形態>
第三の実施の形態の筒型リニアモータM3は、第一の実施の形態の筒型リニアモータM1に対して、界磁10における主磁石ピースMP1と副磁石ピースMP2の積層の態様が異なる他は、同様の構成と備えている。以下、筒型リニアモータM3が筒型リニアモータM1と異なる界磁10について詳細に説明し、その他の同様の構成については詳細な説明を省略する。
第三の実施の形態の筒型リニアモータM3における界磁10は、筒型リニアモータM1と同様に、主磁極10aと副磁極10bとで構成されており、主磁極10aが周方向で等分割された8個の主磁石ピースMP1で構成され、副磁極10bが、周方向で主磁石ピースMP1と同数の8個に等分割された複数の副磁石ピースMP2で構成されている。なお、主磁極10aを構成する主磁石ピースMP1と副磁極10bを構成する副磁石ピースMP2の数は、複数であれば任意である。
そして、界磁10は、内側にN極を持つ主磁石ピースMP1の軸方向の両側にそれぞれ副磁石ピースMP2とを重ねて接合した磁石ユニットMU2と、内側にS極を持つ主磁石ピースMP1とを界磁10の軸方向で積層して形成されている。
具体的には、磁石ユニットMU2は、1つの主磁石ピースMP1を2つの副磁石ピースMP2で挟むようにして界磁10の軸方向に整列させて、各磁石ピースMP1,MP2の互いに向き合う端面同士を接着剤で接合して一体化されている。なお、磁石ユニットMU2を構成する主磁石ピースMP1は、内側にS極を持つものとして、磁石ユニットMU2を構成しない主磁石ピースMP1は、内側にN極を持つものとしてもよい。
そして、アセンブリ化された磁石ユニットMU2と磁石ユニットMU2を構成しない主磁石ピースMP1とは、図7に示すように、千鳥に積層されて1つの磁石ユニットMU2が界磁10の軸方向で隣りの列の2つの主磁石ピースMP1に接し、1つの主磁石ピースMP1が界磁10の軸方向で隣りの列の2つの磁石ユニットMU2に接している。なお、図7では、磁界保持部材9のヘッド部9aの外周における螺子部の記載を省略している。
より詳細には、磁石ユニットMU2は、以下のようにして、界磁保持部材9の筒部9bの外周に装着される。本実施の形態の筒型リニアモータM3では、界磁10の終端には副磁極10bが配置されているので、まず、界磁保持部材9の筒部9bの外周に磁石ユニットMU2を接着して定着させる。
このように筒部9bの外周に全ての磁石ユニットMU2が接着されると、2つの副磁石ピースMP2が軸方向で内側にN極を持つ主磁石ピースMP1を挟んで周方向に列をなして筒部9bの外周で円環状に接合されて1つの主磁極10aと2つの副磁極10bが形成される。
このように形成された副磁極10bの副磁石ピースMP2の隣に、磁石ユニットMU2を構成しない内側にS極を持つ主磁石ピースMP1を磁石ユニットMU2に対して千鳥に積層しつつ筒部9bの外周に接着していく。内側にS極を持つ主磁石ピースMP1の筒部9bの外周への接着が終了すると、磁石ユニットMU2によって形成された副磁極10bの隣に主磁石ピースMP1が周方向に列をなして接合されて主磁極10aが形成される。引き続き、主磁石ピースMP1の隣に、磁石ユニットMU2を既に筒部9bに装着された主磁石ピースMP1に対して千鳥に積層しつつ筒部9bの外周に接着していく。磁石ユニットMU2の筒部9bの外周への接着が終了すると、既に装着された主磁石ピースMP1によって形成される主磁極10aの隣に、界磁10の軸方向で副磁極10b、主磁極10aおよび副磁極10bの順で形成される。このように筒部9bの外周に磁石ユニットMU2と主磁石ピースMP1を千鳥に積層して装着すると、副磁極10bと主磁極10aとが交互に形成されて界磁10を製造できる。なお、磁石ユニットMU2と主磁石ピースMP1とを交互に積層して筒部9bへ装着すると、磁石ユニットMU2と主磁石ピースMP1とが自動的にハルバッハ配列となるような向きで筒部9bに装着される。
前述の手順で、磁石ユニットMU2と主磁石ピースMP1とを筒部9bの外周に接着すると、周方向に並べられて列をなす磁石ユニットMU2は、先に筒部9bの外周に接着される隣の列における主磁石ピースMP1に接するとともに、後に筒部9bの外周に接着される隣の列の主磁石ピースMP1に接する。また、磁石ユニットMU2と主磁石ピースMP1とを筒部9bの外周に接着すると、周方向に並べられて列をなす主磁石ピースMP1は、先に筒部9bの外周に接着される隣の列における磁石ユニットMU2に接するとともに、後に筒部9bの外周に接着される隣の列の磁石ユニットMU2に接する。
このように第三の実施の形態の筒型リニアモータM2は、筒状の電機子2と、電機子2の外周に配置されるとともに電機子2に対して軸方向へ移動可能であって軸方向にN極とS極とが交互に配置される界磁10とを備え、界磁10がハルバッハ配列にて軸方向に交互に並べられる径方向に着磁された環状の主磁極10aおよび軸方向に着磁された環状の副磁極10bとを有し、主磁極10aが周方向で等分割された複数の主磁石ピースMP1を有し、副磁極10bが周方向で主磁石ピースMP1と同数で等分割された複数の副磁石ピースMP2を有し、界磁10が内側にN極或いはS極の一方を持つ主磁石ピースMP1の軸方向の両側にそれぞれ副磁石ピースMP2とを重ねて接合した磁石ユニットMU2と、内側にN極或いはS極の他方を持つ主磁石ピースMP1とを界磁10の軸方向で積層して形成されており、1つの磁石ユニットMU2が界磁10の軸方向で隣りの列の2つの主磁石ピースMP1に接し、1つの主磁石ピースMP1が界磁10の軸方向で隣りの列の2つの磁石ユニットMU2に接している。
このように構成された筒型リニアモータM3では、1つの主磁石ピースMP1と2つの副磁石ピースMP2を接合した磁石ユニットMU2と主磁石ピースMP1とが千鳥に配置されて積層されて、界磁10の軸方向の両端の磁石ユニットMU2を除いて、磁石ユニットMU2が界磁10の軸方向の前後で4つの主磁石ピースMP1に対向し、主磁石ピースMP1が界磁10の軸方向の前後で4つの磁石ユニットMU2に対向するので、主磁石ピースMP1と副磁石ピースMP2とに界磁10の軸方向における長さに寸法誤差があっても、主磁石ピースMP1と副磁石ピースMP2とが界磁10の軸方向に整列されて積層される場合に比較して寸法誤差が界磁10の軸方向で蓄積されにくくなる。よって、本実施の形態の筒型リニアモータM3によれば、ハルバッハ配列で積層される主磁極10aと副磁極10bとを周方向で分割した複数の磁石ピースMP1,MP2で構成しても周方向における磁極のずれを低減できる。また、本実施の形態の筒型リニアモータM3によれば、周方向における磁極のずれを低減できるから、電機子2に効率よく磁界を作用させ得るので質量推力密度を向上できる。
なお、本実施の形態の筒型リニアモータM3では、電機子2が界磁10の内周側に配置される構造となっているが、電機子が界磁の外周に配置される構造の場合であっても界磁を構成する主磁極の主磁石ピースと副磁極の副磁石ピースを界磁の軸方向に千鳥に積層して界磁を形成すれば、周方向における磁極のずれを低減でき、筒型リニアモータM3の質量推力密度を向上できる。
また、本実施の形態における筒型リニアモータM3では、1つの主磁石ピースMP1と2つの副磁石ピースMP2とを接合して得られる磁石ユニットMU2を千鳥に積層していけば界磁10が形成されるので、主磁石ピースMP1と副磁石ピースMP2を交互に積層して接合する場合に比較して接着面積の大きな磁石ユニットMU2と主磁石ピースMP1とを筒部9bに接着していけばよいので、誤って界磁10の軸方向にて主磁極10a同士や副磁極10b同士を隣に接合してしまうような誤組立も抑制できるとともに接着作業も容易となる。さらに、主磁石ピースMP1と副磁石ピースMP2とを予め接合するので、界磁10の組み立て作業が簡素化される。なお、磁石ユニットMU1を一体化する接合工程においては、主磁石ピースMP1と副磁石ピースMP2の互いに向き合う端面を接着面とするので接着面積を確保でき、副磁石ピースMP2の界磁10の軸方向の長さを短くしても磁石ユニットUM1を製造できる。また、磁石ユニットMU2と主磁石ピースMP1とを交互に積層して筒部9bへ装着すると、磁石ユニットMU2と主磁石ピースMP1とが自動的にハルバッハ配列となるような向きで筒部9bに装着されるので界磁10の組み立てが非常に簡単になる。
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。