以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
図1は、実施の形態に係るパルス管冷凍機10を示す概略図である。パルス管冷凍機10は、コールドヘッド11と、圧縮機12とを備える。
パルス管冷凍機10は、一例として、GM(Gifford-McMahon)方式の4バルブ型のパルス管冷凍機である。よって、パルス管冷凍機10は、主圧力切換弁14と、第1段蓄冷器16と、第1段パルス管18と、副圧力切換弁20および任意的に第1流量調整要素21を有する第1段位相制御機構と、を備える。圧縮機12と主圧力切換弁14によりパルス管冷凍機10の振動流発生源が構成される。圧縮機12は、振動流発生源と第1段位相制御機構とで共有されている。
また、パルス管冷凍機10は、二段冷凍機であり、第2段蓄冷器22と、第2段パルス管24と、第2流量調整要素27を任意的に有する第2段位相制御機構と、をさらに備える。圧縮機12および副圧力切換弁20は、第2段位相制御機構にも共有されている。
流量調整要素(21、27)は、例えば、オリフィス、または絞り弁などの流路抵抗を含む。流路抵抗は、固定されていてもよいし、調整可能であってもよい。
本書では、パルス管冷凍機10の構成要素どうしの位置関係を説明するために、便宜上、縦方向Aおよび横方向Bとの用語を用いる。通例、縦方向Aと横方向Bはそれぞれ、パルス管(18、24)および蓄冷器(16、22)の軸方向と径方向にあたる。ただし、縦方向Aと横方向Bは互いにおおよそ直交する方向であればよく、厳密な直交は要しない。また、縦方向Aおよび横方向Bとの表記は、パルス管冷凍機10がその使用場所に設置される姿勢を限定するものではない。パルス管冷凍機10は所望される姿勢で設置可能であり、例えば、縦方向Aおよび横方向Bをそれぞれ鉛直方向および水平方向に向けるようにして設置されてもよいし、反対に、縦方向Aおよび横方向Bをそれぞれ水平方向および鉛直方向に向けるようにして設置されてもよい。あるいは、縦方向Aおよび横方向Bをそれぞれ互いに異なる斜め方向に向けるようにして設置することも可能である。
2つの蓄冷器(16、22)は直列に接続され、縦方向Aに延在する。2つのパルス管(18、24)はそれぞれ、縦方向Aに延在する。第1段蓄冷器16は、横方向Bに第1段パルス管18と並列に配置され、第2段蓄冷器22は、横方向Bに第2段パルス管24と並列に配置されている。第1段パルス管18は縦方向Aに第1段蓄冷器16とほぼ同じ長さを有し、第2段パルス管24は、縦方向Aに第1段蓄冷器16と第2段蓄冷器22の合計長さとほぼ同じ長さを有する。蓄冷器(16、22)とパルス管(18、24)は互いに概ね平行に配置されている。
なお、図1においては、蓄冷器(16、22)に対して第1段パルス管18と第2段パルス管24が両側に配置されているが、これは単に図示を容易にするためにすぎない。通例、蓄冷器(16、22)、第1段パルス管18、第2段パルス管24は、縦方向Aに見たとき三角形をなすように配置されうる。
圧縮機12は、圧縮機吐出口12aと圧縮機吸入口12bとを有し、回収した低圧PLの作動ガスを圧縮して高圧PHの作動ガスを生成するよう構成されている。圧縮機吐出口12aから第1段蓄冷器16を通じて第1段パルス管18に作動ガスが供給され、第1段パルス管18から第1段蓄冷器16を通じて圧縮機吸入口12bへと作動ガスが回収される。また、圧縮機吐出口12aから第1段蓄冷器16、第2段蓄冷器22を通じて第2段パルス管24に作動ガスが供給され、第2段パルス管24から第2段蓄冷器22、第1段蓄冷器16を通じて圧縮機吸入口12bへと作動ガスが回収される。
圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bはそれぞれ、パルス管冷凍機10の高圧源および低圧源として機能する。作動ガスは、冷媒ガスとも称され、例えばヘリウムガスである。なお一般に高圧PH及び低圧PLはともに大気圧より顕著に高い。
主圧力切換弁14は、主吸気開閉弁V1と主排気開閉弁V2とを有する。副圧力切換弁20は、副吸気開閉弁V3と副排気開閉弁V4とを有する。
パルス管冷凍機10には、高圧ライン13aおよび低圧ライン13bが設けられている。高圧ライン13aを通じて、高圧PHの作動ガスが圧縮機12からコールドヘッド11に流れる。低圧ライン13bを通じて、低圧PLの作動ガスがコールドヘッド11から圧縮機12に流れる。高圧ライン13aは、圧縮機吐出口12aを吸気開閉弁(V1、V3)に接続する。低圧ライン13bは、圧縮機吸入口12bを排気開閉弁(V2、V4)に接続する。
第1段蓄冷器16は、第1段蓄冷器高温端16aと、第1段蓄冷器低温端16bとを有し、第1段蓄冷器高温端16aから第1段蓄冷器低温端16bへと縦方向Aに延在する。第1段蓄冷器高温端16aおよび第1段蓄冷器低温端16bはそれぞれ、第1段蓄冷器16の第1端および第2端とも称しうる。同様に、第2段蓄冷器22は、第2段蓄冷器高温端22aと、第2段蓄冷器低温端22bとを有し、第2段蓄冷器高温端22aから第2段蓄冷器低温端22bへと縦方向Aに延在する。第2段蓄冷器高温端22aおよび第2段蓄冷器低温端22bはそれぞれ、第2段蓄冷器22の第1端および第2端とも称しうる。第1段蓄冷器低温端16bが、第2段蓄冷器高温端22aに連通している。
第1段パルス管18は、第1段パルス管高温端18aと、第1段パルス管低温端18bとを有し、第1段パルス管高温端18aから第1段パルス管低温端18bへと縦方向Aに延在する。第1段パルス管高温端18aおよび第1段パルス管低温端18bはそれぞれ、第1段パルス管18の第1端および第2端とも称しうる。
同様に、第2段パルス管24は、第2段パルス管高温端24aと、第2段パルス管低温端24bとを有し、第2段パルス管高温端24aから第2段パルス管低温端24bへと縦方向Aに延在する。第2段パルス管高温端24aおよび第2段パルス管低温端24bはそれぞれ、第2段パルス管24の第1端および第2端とも称しうる。
例示的な構成においては、蓄冷器(16、22)は内部に蓄冷材を充填した円筒状の管であり、パルス管(18、24)は内部を空洞とする円筒状の管である。
パルス管(18、24)の両端それぞれには、パルス管の軸方向に垂直な面内での作動ガス流速分布を均一化し、または所望の分布に調整するための整流器が設けられていてもよい。この整流器は、熱交換器としても機能する。
コールドヘッド11は、第1段冷却ステージ28と第2段冷却ステージ30とを備える。
第1段蓄冷器16および第1段パルス管18は第1段冷却ステージ28から同方向に延びており、第1段蓄冷器高温端16aおよび第1段パルス管高温端18aは、第1段冷却ステージ28に対して同じ側に配置されている。このようにして、第1段蓄冷器16、第1段パルス管18、および第1段冷却ステージ28は、U字状に配置されている。同様に、第2段蓄冷器22および第2段パルス管24は第2段冷却ステージ30から同方向に延びており、第2段蓄冷器高温端22aおよび第2段パルス管高温端24aは、第2段冷却ステージ30に対して同じ側に配置されている。このようにして、第2段蓄冷器22、第2段パルス管24、および第2段冷却ステージ30は、U字状に配置されている。
第1段パルス管低温端18bと第1段蓄冷器低温端16bは、第1段冷却ステージ28によって、構造的に接続され熱的に結合されている。第1段冷却ステージ28には、第1段蓄冷器低温端16bと第1段パルス管低温端18bとの間で作動ガスが流れることができるように、両者を連通する第1段連通路29が形成されている。
同様に、第2段パルス管低温端24bと第2段蓄冷器低温端22bは、第2段冷却ステージ30によって、構造的に接続され熱的に結合されている。第2段冷却ステージ30には、第2段蓄冷器低温端22bと第2段パルス管低温端24bとの間で作動ガスが流れることができるように、両者を連通する第2段連通路31が形成されている。
冷却ステージ(28、30)は、例えば銅などの高熱伝導率の金属材料で形成されている。蓄冷器(16、22)の筒部およびパルス管(18、24)は、冷却ステージ(28、30)に比べて熱伝導率の低い材料、例えばステンレス鋼などの金属材料で形成されている。
第2段冷却ステージ30には、冷却されるべき物体(図示せず)が熱的に結合される。物体は、第2段冷却ステージ30上に直接設置され、または第2段冷却ステージ30に剛性または可撓性の伝熱部材を介して熱的に結合されてもよい。パルス管冷凍機10は、第2段冷却ステージ30からの伝導冷却によって物体を冷却することができる。なおパルス管冷凍機10によって冷却される物体は、限定しない例として、超伝導電磁石またはその他の超伝導装置、あるいは赤外線撮像素子またはその他のセンサであってもよい。パルス管冷凍機10は第2段冷却ステージ30に接触する気体または液体を冷却することもできる。
また、言うまでもなく、第2段冷却ステージ30によって冷却される物体とは異なる物体が、第1段冷却ステージ28によって冷却されてもよい。たとえば、第1段冷却ステージ28には、第2段冷却ステージ30への熱侵入を低減または防止するための輻射シールドが熱的に結合されていてもよい。
一方、第1段蓄冷器高温端16a、第1段パルス管高温端18a、および第2段パルス管高温端24aは、フランジ部36によって接続されている。フランジ部36は、パルス管冷凍機10が設置される支持台または支持壁などの支持部38に取り付けられる。支持部38は、冷却ステージ(28、30)および被冷却物を収容する断熱容器または真空容器の壁材またはその他の部位であってもよい。
フランジ部36の一方の主表面からパルス管(18、24)および蓄冷器(16、22)が冷却ステージ(28、30)へと延び、フランジ部36の他方の主表面にはバルブ部40が設けられている。バルブ部40には、主圧力切換弁14および副圧力切換弁20が収容されている。したがって、支持部38が断熱容器または真空容器の一部を構成する場合には、フランジ部36が支持部38に取り付けられるとき、パルス管(18、24)、蓄冷器(16、22)、および冷却ステージ(28、30)は、当該容器内に収容され、バルブ部40は、容器外に配置される。
なお、バルブ部40は、フランジ部36に直接取り付けられている必要はない。バルブ部40は、パルス管冷凍機10のコールドヘッド11から分離して配置され、剛性または可撓性の配管によりコールドヘッド11に接続されてもよい。こうして、パルス管冷凍機10の位相制御機構がコールドヘッド11から分離して配置されてもよい。
主圧力切換弁14は、パルス管(18、24)内に圧力振動を生成すべく第1段蓄冷器高温端16aを圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bに交互に接続するように構成されている。主圧力切換弁14は、主吸気開閉弁V1と主排気開閉弁V2のうち一方が開いているとき他方は閉じているように構成されている。主圧力切換弁14は、蓄冷器連通路32を介して第1段蓄冷器高温端16aに接続されている。主吸気開閉弁V1が圧縮機吐出口12aを第1段蓄冷器高温端16aに接続し、主排気開閉弁V2が圧縮機吸入口12bを第1段蓄冷器高温端16aに接続する。
主吸気開閉弁V1が開いているとき、圧縮機吐出口12aから高圧ライン13a、主吸気開閉弁V1、および蓄冷器連通路32を通じて蓄冷器(16、22)に作動ガスが供給される。作動ガスはさらに、第1段蓄冷器16から第1段連通路29を通じて第1段パルス管18に供給されるとともに、第2段蓄冷器22から第2段連通路31を通じて第2段パルス管24に供給される。一方、主排気開閉弁V2が開いているとき、パルス管(18、24)から蓄冷器(16、22)、主排気開閉弁V2、および低圧ライン13bを通じて圧縮機吸入口12bに作動ガスが回収される。
副圧力切換弁20は、パルス管連通路34を介して第1段パルス管高温端18aと第2段パルス管高温端24aの両方を圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bに交互に接続する。副圧力切換弁20は、副吸気開閉弁V3と副排気開閉弁V4のうち一方が開いているとき他方は閉じているように構成されている。副吸気開閉弁V3が圧縮機吐出口12aを第1段パルス管高温端18aと第2段パルス管高温端24aの両方に接続し、副排気開閉弁V4が圧縮機吸入口12bを第1段パルス管高温端18aと第2段パルス管高温端24aの両方に接続する。
パルス管連通路34は、第1段パルス管高温端18aおよび第2段パルス管高温端24aと副圧力切換弁20との間に分岐部42を有する。パルス管連通路34は、分岐部42で第1パルス管流路44と第2パルス管流路46に分岐する。第1パルス管流路44が副圧力切換弁20を第1段パルス管高温端18aに接続し、第2パルス管流路46が副圧力切換弁20を第2段パルス管高温端24aに接続する。第1パルス管流路44は第1流量調整要素21を有し、第2パルス管流路46は第2流量調整要素27を有する。
副吸気開閉弁V3が開いているとき、圧縮機吐出口12aから高圧ライン13a、副吸気開閉弁V3、第1パルス管流路44、および第1段パルス管高温端18aを通じて第1段パルス管18に作動ガスが供給される。一方、副排気開閉弁V4が開いているとき、第1段パルス管18から第1段パルス管高温端18a、副排気開閉弁V4、および低圧ライン13bを通じて圧縮機吸入口12bに作動ガスが回収される。
また、副吸気開閉弁V3が開いているとき、圧縮機吐出口12aから高圧ライン13a、副吸気開閉弁V3、第2パルス管流路46、および第2段パルス管高温端24aを通じて第2段パルス管24に作動ガスが供給される。一方、副排気開閉弁V4が開いているとき、第2段パルス管24から第2段パルス管高温端24a、副排気開閉弁V4、および低圧ライン13bを通じて圧縮機吸入口12bに作動ガスが回収される。
図2は、図1に示されるパルス管冷凍機10のバルブ部40に適用されうる例示的なバルブタイミングを示す図である。パルス管冷凍機10の一周期の冷凍サイクルは、第1待機期間W1、吸気期間A1、第2待機期間W2、排気期間A2に分けられる。
図2においては便宜上、一周期の冷凍サイクルが、第1待機期間W1の開始タイミングt0から始まり排気期間A2の終了タイミングt8で終わるものとして図示している。排気期間A2の終了タイミングt8は次の周期の冷凍サイクルの開始タイミングt0となる。
主圧力切換弁14は、第1待機期間W1、吸気期間A1、第2待機期間W2、排気期間A2を順番に繰り返すように構成されている。副圧力切換弁20は、主圧力切換弁14に先行して開放され、先行して閉鎖される。図2において、斜線を付した区間は、弁が開いていることを示す。
第1待機期間W1においては、主吸気開閉弁V1と主排気開閉弁V2の両方が閉鎖され、第1段蓄冷器高温端16aが圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bのどちらにも接続されない。吸気期間A1においては、主吸気開閉弁V1が開放され主排気開閉弁V2が閉鎖され、第1段蓄冷器高温端16aが圧縮機吐出口12aに接続される。第2待機期間W2においては、再び主吸気開閉弁V1と主排気開閉弁V2の両方が閉鎖され、第1段蓄冷器高温端16aが圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bのどちらにも接続されない。排気期間A2においては、主吸気開閉弁V1が閉鎖され主排気開閉弁V2が開放され、第1段蓄冷器高温端16aが圧縮機吸入口12bに接続される。
副圧力切換弁20は、第1待機期間W1の1/2(または1/3、または1/4)が経過するまでに第1段パルス管高温端18aと第2段パルス管高温端24aの両方を圧縮機吐出口12aに接続する。副圧力切換弁20は、吸気期間A1が経過するまでにこの接続を絶つ。また、副圧力切換弁20は、第2待機期間W2の1/2(または1/3、または1/4)が経過するまでに第1段パルス管高温端18aと第2段パルス管高温端24aの両方を圧縮機吸入口12bに接続する。副圧力切換弁20は、排気期間A2が経過するまでにこの接続を絶つ。
図2に示されるように、副吸気開閉弁V3を開くタイミングt1は、第1待機期間W1の開始タイミングt0と(t2−t0)/2との間に設定される。ここで、(t2−t0)/2は、第1待機期間W1の開始タイミングt0と吸気期間A1の開始タイミングt2の差の半分である。あるいは、副吸気開閉弁V3を開くタイミングt1は、t0により近くてもよく、例えば、t0から(t2−t0)/3の間、またはt0から(t2−t0)/4の間に設定されてもよい。副吸気開閉弁V3を閉じるタイミングt3は、吸気期間A1の間(すなわち、t2からt4の間)に設定される。
副排気開閉弁V4を開くタイミングt5は、第2待機期間W2の開始タイミングt4と(t6−t4)/2との間に設定される。ここで、(t6−t4)/2は、第2待機期間W2の開始タイミングt4と排気期間A2の開始タイミングt6の差の半分である。あるいは、副排気開閉弁V4を開くタイミングt5は、t4により近くてもよく、例えば、t4から(t6−t4)/3の間、またはt4から(t6−t4)/4の間に設定されてもよい。副排気開閉弁V4を閉じるタイミングt7は、排気期間A2の間(すなわち、t6からt8の間)に設定される。
典型的な二段パルス管冷凍機は並列配置された2つの副圧力切換弁を有し、一方が第1段パルス管に接続され他方が第2段パルス管に接続されている。こうした典型的な設計では、第1段の副圧力切換弁のバルブタイミングを主圧力切換弁に対してごくわずかに先行させることによって、第1段の冷凍能力が最大化されうる。破線矢印Dで図示されるように、第1段の副圧力切換弁を開くタイミングは、例えば、(t2−t0)/2からt2の間に設定される。第1段の副圧力切換弁は、実施の形態に係る副圧力切換弁20とは異なり、第1待機期間W1の1/2が経過した後に開かれる。
ところが、本発明者の検討によれば、副吸気開閉弁V3が第1待機期間W1の1/2(または1/3、または1/4)が経過するまでに開放され、副排気開閉弁V4が第2待機期間W2の1/2(または1/3、または1/4)が経過するまでに開放されることによって、上述の典型的なパルス管冷凍機と同等の冷凍性能を実現することができる。
したがって、実施の形態に係るパルス管冷凍機10は、副圧力切換弁20が第1段パルス管18と第2段パルス管24に共用され、それによりバルブ部40の構造が簡素化されるとともに、良好な冷凍性能を提供することができ、有利である。
なお、これらのバルブ(V1〜V4)のバルブタイミングとしては、図2に例示されるものだけでなく、既存の4バルブ型パルス管冷凍機に適用しうる種々のバルブタイミングを採用することができる。
バルブ(V1〜V4)の具体的構成は種々ありうる。例えば、一群のバルブ(V1〜V4)は、例えば電磁開閉弁などの複数の個別に制御可能なバルブの形式をとってもよい。バルブ(V1〜V4)は、ロータリーバルブとして構成されてもよい。
図3は、図1に示されるパルス管冷凍機10のバルブ部40に適用されうる例示的なロータリーバルブを示す概略図である。図4(a)および図4(b)はそれぞれ、図3に示されるロータリーバルブのバルブステータ48およびバルブロータ50を示す概略図である。図4(a)および図4(b)には、ロータリーバルブのバルブ摺動面52における流路配置が示されている。図から理解されるように、このロータリーバルブは180度の回転で一周期の冷凍サイクルが行われるように構成されている。
ロータリーバルブのバルブステータ48およびバルブロータ50は、バルブハウジング54に収容され、両者はバルブ摺動面52で互いに面接触するように隣接して配置されている。バルブステータ48は、バルブハウジング54に固定されている。バルブ駆動モータ56がバルブハウジング54の外側に設置され、バルブ駆動モータ56の出力軸がバルブハウジング54を貫通してバルブロータ50へと延びている。
バルブハウジング54の内部には、圧力室58が形成され、バルブロータ50およびバルブステータ48は、圧力室58に配置されている。一例として、圧力室58には、低圧ライン13bが接続され、低圧PLが導入されている。バルブステータ48には、高圧ライン13a、蓄冷器連通路32、およびパルス管連通路34が接続されている。
バルブステータ48の中心部には、バルブロータ50の回転軸に沿って高圧導入路48aが貫通している。また、バルブステータ48の外周部には、2つの蓄冷器連通穴48bおよび2つのパルス管連通穴48cがバルブロータ50の回転軸の方向に貫通している。2つの蓄冷器連通穴48bは、バルブロータ50の回転軸を中心とする円周上で周方向に180度間隔で配置されている。2つのパルス管連通穴48cは、蓄冷器連通穴48bと同じ円周上で周方向に180度間隔で配置されている。ただし、蓄冷器連通穴48bとパルス管連通穴48cは周方向に所望の角度ずらして配置されている。
また、バルブロータ50には、高圧凹部50aと2つの低圧凹部50bが形成されている。高圧凹部50aは、バルブ摺動面52上でバルブ摺動面52の直径に沿って形成されている。高圧凹部50aは、バルブステータ48とバルブロータ50との面接触により圧力室58からシールされ、圧力室58に連通していない。高圧ライン13aは、バルブステータ48の高圧導入路48aを通じてバルブロータ50の高圧凹部50aに常時接続されている。2つの低圧凹部50bは、バルブロータ50の外周部に形成され、圧力室58の一部となっている。よって、低圧ライン13bは、低圧凹部50bに常時接続されている。
バルブステータ48とバルブハウジング54の間にはいくつかのシール部材(例えばOリング)が装着され、バルブ部40の内部における高圧ライン13a、蓄冷器連通路32、およびパルス管連通路34の間での直接の作動ガスの流通は防止される。
バルブ駆動モータ56の駆動により出力軸が回転し、それにより、バルブロータ50がバルブステータ48に対して回転摺動する。バルブロータ50の回転(矢印Rで示す)に伴ってバルブ摺動面52で流路接続が周期的に切り替わる。
バルブロータ50の高圧凹部50aと低圧凹部50bがバルブステータ48の蓄冷器連通穴48bを交互に通過するので、バルブ部40は、高圧ライン13aと低圧ライン13bを蓄冷器連通路32に交互に接続する。よって、バルブ部40は、第1段蓄冷器高温端16aを圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bに交互に接続するように動作可能である。
また、バルブロータ50の高圧凹部50aと低圧凹部50bがバルブステータ48のパルス管連通穴48cを交互に通過するので、バルブ部40は、高圧ライン13aと低圧ライン13bをパルス管連通路34に交互に接続する。上述のように、パルス管連通路34は分岐部42、第1パルス管流路44、および第2パルス管流路46を有する。よって、バルブ部40は、第1段パルス管高温端18aと第2段パルス管高温端24aの両方を圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bに交互に接続するように動作可能である。
ロータリーバルブとしてのバルブ部40の具体的な流路構成は、上述の具体例には限られず、種々ありうる。例えば、上述の説明では、圧力室58に低圧ライン13bが接続され、バルブステータ48に高圧ライン13aが接続されているが、これとは逆に、バルブステータ48に低圧ライン13bが接続され、圧力室58に高圧ライン13aが接続される構成も可能である。
このように、実施の形態に係るパルス管冷凍機10においては、副圧力切換弁20が第1段パルス管18と第2段パルス管24に共用されている。パルス管連通路34は、第1段パルス管高温端18aおよび第2段パルス管高温端24aと副圧力切換弁20との間に分岐部42を有する。パルス管連通路34は、分岐部42で第1パルス管流路44と第2パルス管流路46に分岐する。第1パルス管流路44が副圧力切換弁20を第1段パルス管高温端18aに接続し、第2パルス管流路46が副圧力切換弁20を第2段パルス管高温端24aに接続する。したがって、パルス管冷凍機10は、多段式のパルス管冷凍機であるにもかかわらず、単段式のパルス管冷凍機に用いられるものと同じ構造のバルブ部40を採用することができる。よって、簡素なバルブ構成をもつパルス管冷凍機が提供される。
また、第1パルス管流路44には第1流量調整要素21が設けられ、第2パルス管流路46には第2流量調整要素27が設けられている。第1流量調整要素21および第2流量調整要素27の流路抵抗を個別に予め適切に設定することにより、パルス管冷凍機10の第1段と第2段それぞれにおける位相制御の微調整をすることができる。これは、パルス管冷凍機10の第1段と第2段それぞれの冷凍能力を最大化することに役立つ。
図5は、実施の形態に係るパルス管冷凍機10の他の一例を示す概略図である。バルブ部40(すなわち主圧力切換弁14および副圧力切換弁20)は、コールドヘッド11から取り外し可能に接続されている。
蓄冷器連通路32は、主圧力切換弁14を第1段蓄冷器16に連結する蓄冷器連結配管60を備え、蓄冷器連結配管60は、主圧力切換弁14および第1段蓄冷器高温端16aのそれぞれに着脱可能である。蓄冷器連結配管60の両端は、セルフシーリング・カップリングのような着脱可能な継手61を介して、主圧力切換弁14および第1段蓄冷器高温端16aに着脱可能に取り付けられている。蓄冷器連結配管60は、フレキシブル管またはリジッド管であってもよい。
パルス管連通路34は、副圧力切換弁20を分岐部42に連結するパルス管連結配管62を備え、パルス管連結配管62は、副圧力切換弁20および分岐部42のそれぞれに着脱可能である。パルス管連結配管62の両端は、セルフシーリング・カップリングのような着脱可能な継手63を介して、副圧力切換弁20および分岐部42に着脱可能に取り付けられている。パルス管連結配管62は、フレキシブル管またはリジッド管であってもよい。
上述のように、典型的な二段パルス管冷凍機は2つの副圧力切換弁を有し、一方が第1段パルス管に接続され他方が第2段パルス管に接続されている。こうした典型的な設計では、第1段パルス管用の連結配管と第2段パルス管用の連結配管が必要である。配管の容積は冷凍能力に寄与しない死容積であるから、なるべく小さいことが望ましい。
実施の形態に係るパルス管冷凍機10においては、副圧力切換弁20が第1段パルス管18と第2段パルス管24に共用されている。そのため、副圧力切換弁20を1本のパルス管連結配管62で2つのパルス管(18、24)に接続することができる。典型的なパルス管冷凍機と比べると、連結配管による死容積を半分にすることができ、冷凍能力が向上されうる。また、配管による圧損も低減されうる。
また、バルブ部40はコールドヘッド11から取り外し可能であるので、作業者は、バルブ部40をコールドヘッド11から取り外してメンテナンスを施すことできる。あるいは、作業者は、バルブ部40をコールドヘッド11から取り外して、新品のまたはメンテナンス済みの他のバルブ部40と交換することができる。
ところで、4バルブ型パルス管冷凍機では、圧縮機、パルス管および蓄冷器を含む形で作動ガスの循環経路が形成されうる。こうした循環経路には、「DCフロー」とも称される、直流成分をもつガス流れが生成されうる。DCフローは、パルス管冷凍機の冷凍性能に影響しうる。とりわけ、DCフローが、パルス管高温端からパルス管低温端へと貫通する作動ガス流れを含む場合には、そうした作動ガス流れによりパルス管高温端からパルス管低温端へと顕著な入熱が与えられ、パルス管冷凍機の冷凍効率は低下しうる。
そこで、パルス管冷凍機10は、DCフロー制御流路66を備えてもよい。DCフロー制御流路66は、副圧力切換弁20と並列に配置され、第1段パルス管高温端18aと第2段パルス管高温端24aの両方を圧縮機吸入口12bに接続する。DCフロー制御流路66は、副圧力切換弁20と分岐部42との間でパルス管連通路34から分岐する。このようにして、DCフロー制御流路66も、第1段パルス管18と第2段パルス管24に共用されてもよい。
DCフロー制御流路66は、副圧力切換弁20の副排気開閉弁V4と並列に設けられたDCフロー開閉弁68およびDCフロー調整要素70を有する。例示的なバルブタイミングにおいては、DCフロー開閉弁68は、図2に示される副排気開閉弁V4のバルブタイミングと同一でよい(すなわち、DCフロー開閉弁68は、t5〜t7の間で開放され、他の期間は閉鎖されてもよい)。あるいは、DCフロー開閉弁68は、副排気開閉弁V4の開放中に一時的に開放されてもよい。DCフロー調整要素70は、第1流量調整要素21と同様に、例えば、オリフィス、または絞り弁などの流路抵抗を含み、流路抵抗は、固定されていてもよいし、調整可能であってもよい。
図5に示されるように、コールドヘッド11とバルブ部40の連結のためにパルス管連結配管62が使用されている場合には、DCフロー制御流路66は、副圧力切換弁20とパルス管連結配管62(副圧力切換弁20側の継手63)との間でパルス管連通路34から分岐してもよい。このようにすれば、DCフロー制御流路66のための追加の連結配管をパルス管連結配管62と並列に設ける必要がない。
DCフロー制御流路66は、ロータリーバルブに組み込まれてもよい。その場合、図4(a)に破線で示すように、バルブステータ48のパルス管連通穴48cと径方向に隣接して(例えば径方向に内側に)設けられてもよい。
図6は、実施の形態に係るパルス管冷凍機10に適用されうるバッファライン72の接続構成を一例を示す概略図である。
第1段パルス管高温端18aには、バッファライン72が接続されてもよい。バッファライン72は、バッファタンクなどのバッファ容積72aと、オリフィスなどのバッファライン流量調整要素72bとを有する。バッファ容積72aは、高圧PHと低圧PLとの中間圧(例えば高圧PHと低圧PLの平均圧)を有する作動ガスの中間圧源として働く。よって、第1段パルス管高温端18aとバッファ容積72aとの圧力差に応じて、第1段パルス管18とバッファ容積72aとの間でバッファライン72を通じて作動ガスが流れる。
第1段パルス管高温端18aには、第1接続口74および第2接続口76が設けられている。第1接続口74と第2接続口76は、互いに異なる位置にある。第1接続口74には、パルス管連通路34の第1パルス管流路44が接続され、第2接続口76には、バッファライン72によりバッファ容積72aが接続されている。このように、バッファライン72が副圧力切換弁20と第1段パルス管高温端18aとの間でパルス管連通路34に合流するのではなく、パルス管連通路34とバッファライン72は別々に第1段パルス管高温端18aに接続されている。
第1接続口74と第2接続口76は、第1段パルス管高温端18a上で径方向に互いに異なる位置にある。第1接続口74が、第1段パルス管高温端18aの中心78から径方向外側に第1距離C1の位置に設けられ、第2接続口76が、第1段パルス管高温端18aの中心78から径方向外側に第2距離C2の位置に設けられている。ここで、第1距離C1および第2距離C2は、第1段パルス管高温端18aの中心78から第1接続口74および第2接続口76の中心までの長さを示す。第1距離C1および第2距離C2はともに、第1接続口74と第2接続口76が第1段パルス管高温端18aの上面に配置されるべく、第1段パルス管18の半径より短い。
第1距離C1は第2距離C2より長い。よって、第2接続口76は、第1段パルス管高温端18aの中心78の近くに位置し、第1接続口74は、第2接続口76に比べて第1段パルス管高温端18aの外周の近くに位置する。例えば、第1距離C1は、第1段パルス管18の半径の半分より長くてもよい。第2距離C2は、第1段パルス管18の半径の半分より短くてもよい。第2接続口76は、第1段パルス管高温端18aの中心78に設けられてもよい。その場合、第2距離C2はゼロとなる。
第1接続口74および第2接続口76はともに、第1接続口74および第2接続口76それぞれを通じて第1段パルス管18の軸方向に作動ガスが流れるように第1段パルス管高温端18aに設けられている。
ある例示的な設計では、バッファライン72を第1段パルス管高温端18aに直接に接続することに代えて、バッファライン72がパルス管連通路34(例えば第1パルス管流路44)に合流されてもよい。しかしながら、この場合、バッファ容積72aから第1段パルス管高温端18aへとバッファライン72を流れる作動ガスがパルス管連通路34からも作動ガスを引き込む作用が生じ、パルス管の高温端から低温端に向かうDCフローが促進されうる。こうした作用は、バッファライン72を流れる作動ガス流量が大きいほど顕著となりうる。
これに対して、上述のように第1接続口74および第2接続口76を設け、パルス管連通路34とバッファライン72を第1段パルス管高温端18aに個別に接続することにより、DCフローが低減され、パルス管冷凍機10の冷凍効率が向上されうる。
同様にして、第2段のバッファラインが第2段パルス管24に接続されてもよく、第1接続口74および第2接続口76が第2段パルス管高温端24aに設けられてもよい。
図7は、実施の形態に係るパルス管冷凍機10の更なる一例を示す概略図である。このパルス管冷凍機10は、三段式のパルス管冷凍機である。よって、コールドヘッド11は、図1および図5を参照して説明した各構成要素に加えて、第3段蓄冷器80および第3段パルス管82を備える。第3段蓄冷器80は、第2段蓄冷器22に直列に接続されている。第3段蓄冷器80の低温端は、第3段連通路84を通じて第3段パルス管82の低温端と連通している。
副圧力切換弁20は、パルス管連通路34を介して第3段パルス管82の高温端も圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bに交互に接続する。パルス管連通路34は、分岐部42でさらに第3パルス管流路86に分岐し、第3パルス管流路86が副圧力切換弁20を第3段パルス管82の高温端に接続する。第3パルス管流路86には、第3流量調整要素88が設けられている。
このようにして、副圧力切換弁20は、第1段パルス管18および第2段パルス管24だけでなく、第3段パルス管82にも共用されている。したがって、簡素なバルブ構造をもつパルス管冷凍機10を提供することができる。
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。
例えば、図5を参照して説明した着脱可能なバルブ構成は、図7に示される三段式のパルス管冷凍機10にも同様に適用されうる。
図5には主圧力切換弁14および副圧力切換弁20の両方がコールドヘッド11から取り外し可能とされている。しかし、主圧力切換弁14と副圧力切換弁20が別個の弁である場合には、主圧力切換弁14と副圧力切換弁20のうち少なくとも一方がコールドヘッド11から取り外し可能に接続されていてもよい。
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。