JP2020192542A - 加工方法および加工装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】効率が良い加工を可能にする加工方法および加工装置を提供する。【解決手段】光源が発したレーザ光を加工対象物に照射して前記加工対象物を加工する加工方法であって、目標加工ラインを中心とする複数の加工パスに沿って、前記レーザ光を掃引する掃引工程を複数回行い、前記複数の加工パスは、前記目標加工ラインを基準として一方側の最も外側に位置する第1の加工パスと、前記目標加工ラインを基準として他方側の最も外側に位置する第2の加工パスとを含み、Nを1以上の自然数とするとき、N+1回目の掃引工程における前記第1の加工パスは、N回目の掃引工程における前記第1の加工パスよりも前記目標加工ラインに近く、N+1回目の掃引工程における前記第2の加工パスは、N回目の掃引工程における前記第2の加工パスよりも前記目標加工ラインに近い。【選択図】図1

Description

本発明は、加工方法および加工装置に関する。
従来から、下記特許文献1に示されるような、同じ加工パスに沿ってレーザ光を複数回照射することで加工対象物を加工する加工方法が知られている。
特開2003−37085号公報
特許文献1に示されるような、レーザ光を用いた加工方法では、効率をより良好にすることが求められていた。
本発明はこのような事情を考慮してなされ、効率が良い加工を可能にする加工方法および加工装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る加工方法は、光源が発したレーザ光を加工対象物に照射して前記加工対象物を加工する加工方法であって、目標加工ラインを中心とする複数の加工パスに沿って、前記レーザ光を掃引する掃引工程を複数回行い、前記複数の加工パスは、前記目標加工ラインを基準として一方側の最も外側に位置する第1の加工パスと、前記目標加工ラインを基準として他方側の最も外側に位置する第2の加工パスとを含み、Nを1以上の自然数とするとき、N+1回目の掃引工程における前記第1の加工パスは、N回目の掃引工程における前記第1の加工パスよりも前記目標加工ラインに近く、N+1回目の掃引工程における前記第2の加工パスは、N回目の掃引工程における前記第2の加工パスよりも前記目標加工ラインに近い、加工方法。
上記態様によれば、N回目の掃引工程で、第1の加工パスおよび第2の加工パスに沿ってレーザ光を掃引することにより2つの溝が形成される。N+1回目の掃引工程における第1の加工パスおよび第2の加工パスは、N回目の第1の加工パスおよび第2の加工パスよりも目標加工ラインに近い。このため、N+1回目の掃引工程では、上記2つの溝の内側の空気が断熱層として作用し、上記2つの溝に挟まれた部分に熱が蓄積されやすくなる。このように、第1の加工パスおよび第2の加工パスを、外側から内側に向かって移動させていくことで、同じ加工パスに沿ってレーザ光を複数回照射する場合と比較して、目標加工ラインの近傍に熱を効率よく蓄積させることができるため、効率の良い加工が可能となる。
ここで、各々の前記掃引工程における前記複数の加工パスには、前記第1の加工パスよりも前記目標加工ラインに近い第3の加工パスと、前記第2の加工パスよりも前記目標加工ラインに近い第4の加工パスと、が含まれ、前記N+1回目の掃引工程における前記第1の加工パスの、前記N回目の掃引工程における前記第1の加工パスに対する移動量をD1とし、前記N+1回目の掃引工程における前記第2の加工パスの、前記N回目の掃引工程における前記第2の加工パスに対する移動量をD2とし、前記N+1回目の掃引工程における前記第3の加工パスの、前記N回目の掃引工程における前記第3の加工パスに対する移動量をD3とし、前記N+1回目の掃引工程における前記第4の加工パスの、前記N回目の掃引工程における前記第4の加工パスに対する移動量をD4とするとき、D3<D1、及びD4<D2であってもよい。
この場合、N回目の掃引工程における第1の加工パスおよび第2の加工パスに沿ってレーザ光を掃引することで形成された溝と、N+1回目の掃引工程における第1の加工パスおよび第2の加工パスと、の間の距離が大きくなる。これにより、上記溝の外側に向けて熱がより逃げにくくなり、目標加工ラインの近傍に熱をより蓄積しやすいため、効率の良い加工が可能となる。
また、各々の前記掃引工程における前記複数の加工パスには、前記第1の加工パスよりも前記目標加工ラインに近い第3の加工パスと、前記第2の加工パスよりも前記目標加工ラインに近い第4の加工パスと、が含まれ、前記N+1回目の掃引工程における前記第1の加工パスの、前記N回目の掃引工程における前記第1の加工パスに対する移動量をD1とし、前記N+1回目の掃引工程における前記第2の加工パスの、前記N回目の掃引工程における前記第2の加工パスに対する移動量をD2とし、前記N+1回目の掃引工程における前記第3の加工パスの、前記N回目の掃引工程における前記第3の加工パスに対する移動量をD3とし、前記N+1回目の掃引工程における前記第4の加工パスの、前記N回目の掃引工程における前記第4の加工パスに対する移動量をD4とするとき、D1<D3、及びD2<D4であってもよい。
この場合、N回目の掃引工程とN+1回目の掃引工程との間における第3の加工パスおよび第4の加工パスの移動量(D3、D4)が大きくなる。これにより、レーザ光のエネルギーを、より目標加工ラインに近い位置に集中させることができる。
また、前記加工対象物が繊維強化複合材により形成されていてもよい。
繊維強化複合材は、高耐熱性・高伝熱性の繊維(代表的には炭素繊維)と、低耐熱性・低伝熱性の基材(代表的には樹脂)と、が組み合わされることが一般的である。上記態様の加工方法は、このような繊維強化複合材を加工する際に、同じ加工パスに沿ってレーザ光を複数回照射する場合と比較して、基材部分が溶融することを抑制でき、熱影響領域の形成を抑制することができるため、加工品質を向上させることが可能となる。
また、前記加工パスは前記加工対象物を横断していてもよい。
また、1つの前記掃引工程における前記レーザ光の掃引ルートは一筆書き状に連なっていてもよい。
また、隣り合う加工パスに沿って掃引される前記レーザ光の照射範囲同士がオーバーラップしていてもよい。
この場合、加工の途中において加工対象物に複数の溝が形成されることを抑止することができる。
また、本発明の第2の態様に係る加工装置は、光源が発したレーザ光を加工対象物に照射して加工対象物を加工する加工装置であって、前記レーザ光の前記加工対象物への照射位置を制御する制御部を備え、前記制御部は、目標加工ラインを中心とする複数の加工パスに沿って、前記レーザ光を掃引する掃引工程を複数回実行し、前記複数の加工パスは、前記目標加工ラインを基準として一方側の最も外側に位置する第1の加工パスと、前記目標加工ラインを基準として他方側の最も外側に位置する第2の加工パスとを含み、Nを1以上の自然数とするとき、N+1回目の掃引工程における前記第1の加工パスは、N回目の掃引工程における前記第1の加工パスよりも前記目標加工ラインに近く、N+1回目の掃引工程における前記第2の加工パスは、N回目の掃引工程における前記第2の加工パスよりも前記目標加工ラインに近い。
上記第2の態様の加工装置によれば、上記第1の態様に係る加工方法を実現することができる。
本発明の上記態様によれば、効率が良い加工を可能にする加工方法および加工装置を提供することができる。
第1実施形態に係る加工装置の概略図である。 第1実施形態に係る加工方法を説明する概略図である。 第1実施形態における加工パスの一例を示す平面図である。 図3のIV−IV断面矢視図であって、掃引工程ごとの加工パスの位置を示す図である。 加工パスを変化させず、複数回レーザ光を掃引させた場合を示す図である。 外側から内側に向かって加工パスを変化させ、レーザ光を掃引させた場合を示す図である。 第2実施形態に係る掃引工程ごとの加工パスの位置を示す図である。
(第1実施形態)
以下、本実施形態の加工方法および加工装置について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の加工装置10は、光源1と、制御部2と、ミラー3と、レンズ4と、ガスノズル5と、ステージ6と、を備えている。なお、本実施形態の加工装置10はいわゆるガルバノスキャナを採用しているが、加工装置10の方式は適宜変更可能である。また、加工装置10は、図1に示す構成要素を全て備えていなくてもよい。
光源1は、レーザ光Lを出射する。光源1としては、ファイバレーザやガスレーザなどを用いることができる。光源1が出射するレーザ光Lは、例えば波長が1.1μm、パワーが1kWのシングルモードのCW(Continuous Wave)光である。なお、レーザ光Lの特性は適宜変更可能である。
制御部2は、レーザ光Lの加工対象物Tへの照射位置を制御する。図1の例では、制御部2はミラー3の傾きなどを制御しており、これによってミラー3により反射されたレーザ光Lの照射位置を制御している。ミラー3の傾きが連続的に変化することで、図2に示すように、加工対象物T上におけるレーザ光Lの照射位置も連続的に変化する。
なお、制御部2は、例えば光源1の位置を制御してもよいし、ステージ6の位置を制御してもよい。
レンズ4は、レーザ光Lを加工対象物Tの表面に集光させる。レンズ4としては、f−θレンズを用いることができる。加工対象物Tに照射されるレーザ光Lの強度分布は、例えばガウス型あるいはトップハット型である。
ガスノズル5は、不図示のガス供給装置に接続されており、不活性ガスを加工対象物Tに噴射して、加工対象物Tの表面を冷却する。不活性ガスとしては、例えば窒素ガスを用いることができる。
加工対象物Tは、ステージ6上に載置されている。加工対象物Tの厚さは、特に限定されないが、例えば1mm程度である。加工対象物Tの材質は、特に限定されないが、繊維強化複合材、金属(例えば銅)、ガラスなどである。繊維強化複合材としては、例えば炭素繊維強化プラスチック(CFRP: Carbon Fiber Reinforced Plastics)が挙げられる。繊維強化複合材は、例えば炭素繊維などの高耐熱性・高伝熱性の繊維と、樹脂などの低耐熱性・低伝熱性の基材とを複合させた材料である。CFRPに代表される繊維強化複合材は、軽量かつ高強度であることから需要が高まっており、効率よく加工することが求められている。
特に、加工対象物TがCFRPのような繊維強化複合材である場合、同じ加工パスに沿ってレーザ光を複数回照射すると、レーザ光のエネルギーの一部が熱に変換され、その熱により、炭素繊維よりも低い融点をもつ樹脂が溶融、焼損し、レーザ光の照射箇所の近傍に熱影響領域(Heat Affected Zone:HAZ)が形成される。熱影響領域では、損傷や層間剥離が生じやすくなる。したがって、高品質の加工のためには、熱影響領域はできるだけ小さいことが望ましい。
本実施形態の加工方法では、効率の良い加工を行うために、以下のような制御方法を採用している。
(制御方法)
図3は、加工対象物Tを上方から見た平面図である。図3において、目標加工ラインを破線Aで示す。目標加工ラインとは、切断が予定されているラインのことである。なお、図3では目標加工ラインAが直線状であるが、目標加工ラインAは曲線状であってもよいし、直線が折れ曲がった形状であってもよいし、これらを組み合わせた形状であってもよい。
以下の説明において、目標加工ラインAの延びる方向を掃引方向Yといい、加工面T1に向かうレーザ光Lの光軸方向を単に光軸方向Zという。また、掃引方向Yおよび光軸方向Zの双方に直交する方向を直交方向Xという。
なお、目標加工ラインAが単一の直線である場合には、掃引方向Yおよび直交方向Xが変化しないが、目標加工ラインAが単一の直線でない場合、レーザ光Lの照射位置に応じて掃引方向Yおよび直交方向Xが経時的に変化する。
図3では、加工対象物Tに照射されるレーザ光Lの、予め定められた掃引ルートPの一例を示している。掃引ルートPは、先述の通り、制御部2によって制御される。図3の例では、掃引ルートPは、開始点S1から始まり、終了点S2で終わるように、一筆書き状に連なっている。なお、開始点S1および終了点S2の位置は入れ替わってもよい。つまり、図3の点S2を開始点とし、点S1を終了点としてもよい。目標加工ラインAが加工対象物Tを横断しているため、掃引ルートPには、加工対象物Tを横断する複数(図3では5つ)の平行な加工パスP1〜P5が含まれている。なお、本明細書において「横断する」とは、加工対象物Tの1つの端部T4から他の端部T5にかけて、線などが延びることをいう。なお、加工パスP1、加工パスP2、加工パスP3、加工パスP4、加工パスP5を、それぞれ、第1の加工パス、第2の加工パス、第3の加工パス、第4の加工パス、第5の加工パスという場合がある。
各加工パスP1〜P5は、目標加工ラインAを中心として直交方向Xに並ぶとともに、目標加工ラインAに平行に延びている。すなわち、各加工パスP1〜P5は掃引方向Yと平行である。加工パスP5は、目標加工ラインA上に位置している。加工パスP3、P4は、加工パスP5よりも目標加工ラインAに対する直交方向Xにおけるずれ量が大きい。加工パスP1、P2は、目標加工ラインAに対する直交方向Xにおけるずれ量が、パスP3、P4よりもさらに大きい。
なお、複数の加工パスP1〜P5のうち、最も目標加工ラインAに近い加工パスP5は、必ずしも目標加工ラインA上に位置していなくてもよい。
また、図3の掃引ルートPは、レーザ光Lの照射範囲の中心位置の掃引ルートを示している。実際にはレーザ光Lの照射範囲は、スポット径を直径とする略円形状となる。スポット径は、特に限定されないが、例えば数十μmである。加工パスP1〜P5のうち、隣り合う加工パス(例えば加工パスP1と加工パスP3)に沿って掃引されるレーザ光Lの照射範囲同士は、オーバーラップしていてもよいし、オーバーラップしていなくてもよい。ただし、隣り合う加工パスに沿って掃引されるレーザ光Lの照射範囲同士がオーバーラップしていると、1つの掃引工程(後述)を行った後に加工対象物Tに複数の溝が形成された状態となることを抑止できる。
本明細書では、掃引ルートPに沿ってレーザ光Lを加工対象物Tに対して連続的に掃引する工程を「掃引工程」という。尚、加工対象物Tからレーザ光Lがはずれている際に、光源1はレーザ光Lを出射していても良く、出射していなくても良い。本実施形態における加工方法では、掃引工程を複数回行う。例えば図4では、N=1が1回目の掃引工程を示しており、N=2が2回目の掃引工程を示している。本明細書において、Nは1以上の自然数である。
1つの(N回目の)掃引工程を行った後、次の(N+1回目の)掃引工程を行うまでの間に、加工対象物Tを冷却するための時間間隔を設けてもよい。これにより、加工対象物Tに熱が蓄積されて、意図しない溶融や変形が生じてしまうことを抑制できる。特に、加工対象物Tに樹脂が含まれている場合、レーザ光Lを照射することで発生する熱で目標加工ラインA以外の部分にも溶融や変形が生じやすいため、時間間隔を設けることは有効である。
図4に示すように、N+1回目の掃引工程における掃引ルートPは、N回目の掃引工程における掃引ルートPと異なっている。より詳しくは、N+1回目の掃引工程における加工パスP1〜P4は、N回目の掃引工程における加工パスP1〜P4よりも、直交方向Xにおいて目標加工ラインAに近づいた位置となっている。図4のような掃引ルートPを採用することの効果について、図5、図6を用いて説明する。
図5(a)は、1つの加工パスに沿ってレーザ光Lを掃引し、溝Gを形成した後の状態を示している。図5(b)に示すように、溝Gから加工パスの位置を変えずに再度レーザ光Lを掃引すると、図5(b)の矢印に示すように、熱が溝Gの両側に向けて分散する。
図6(a)では、2つの加工パスに沿ってレーザ光Lを掃引し、2つの溝G1を形成している。図6(b)に示すように、2つの溝G1の内側に加工パスの位置を変えてレーザ光Lを掃引すると、図6(b)の矢印のように、熱が2つの溝G2の外側に向けて分散しようとする。このとき、予め形成されていた溝G1の内側の空気が断熱層として作用するため、2つの溝G1の内側に熱が蓄積されやすくなる。また、2つの溝G2の内側にも熱が蓄積される。
図5との対比から理解できるように、図6のように加工パスの位置を外側から内側に向けて移動させることで、熱の分散が抑制されるため、効率の良い加工が可能となる。
ここで本明細書では、図4に示す複数の加工パスP1〜P5のうち、目標加工ラインAを基準として最も外側に位置する加工パスP1、P2を「外側パス」という場合がある。また、外側パスP1、P2よりも目標加工ラインAに近い加工パスP3〜P5を「内側パス」という場合がある。第1の加工パスP1は、目標加工ラインAを基準として、直交方向Xにおける一方側の最も外側に位置している。第2の加工パスP2は、目標加工ラインAを基準として、直交方向Xにおける他方側の最も外側に位置している。
外側パスP1、P2に沿って掃引されるレーザ光Lの照射範囲は、目標加工ラインAにオーバーラップしていることが好ましい。なお、レーザ光Lの照射範囲は、レーザ光Lの種類にもよるが、例えばガウス型の強度分布を有している場合はピーク強度値に対して1/e以上(13.5%以上)となる範囲と定義することができる。
N回目の掃引工程とN+1回目の掃引工程との間における、外側パスP2の移動量をD2とする。また、N回目の掃引工程とN+1回目の掃引工程との間における内側パスP4の移動量をD4とする。このとき、D4<D2となっている。加工パスP1、P3についても同様である。すなわち、N+1回目の掃引工程とN回目の掃引工程との間における外側パスP1の移動量をD1とし、N+1回目の掃引工程とN回目の掃引工程との間における内側パスP3の移動量をD3とするとき、D3<D1となっている。
なお、加工パスP5を内側パスとし、加工パスP1、P2を外側パスとしたとき、加工パスP5については掃引工程ごとに位置が変化していないため、移動量が実質的に0(すなわちD5=0)であるということができる。したがって、パスP1、P2、P5の間でも、D1>D5及びD2>D5の関係が成り立つ。
なお、図4ではN=2以降の全ての掃引工程において、その前の掃引工程から加工パスP1〜P4の位置が移動している。しかしながら、例えば3回目またはそれ以降の掃引工程から、加工パスP1〜P4の位置を移動させてもよい。つまり、すべての掃引工程で、その前の掃引工程と比較して加工パスP1〜P4の位置を移動させることは必須ではない。
以上説明したように、本実施形態の加工方法では、目標加工ラインAを中心とする複数の加工パスP1〜P5に沿ってレーザ光Lを掃引する掃引工程を複数回行う。複数の加工パスP1〜P5は、目標加工ラインAを基準として一方側の最も外側に位置する第1の加工パスP1と、目標加工ラインAを基準として他方側の最も外側に位置する第2の加工パスP2とを含んでいる。そして、N+1回目の掃引工程における第1の加工パスP1は、N回目の掃引工程における第1の加工パスP1よりも目標加工ラインAに近く、N+1回目の掃引工程における第2の加工パスP2は、N回目の掃引工程における第2の加工パスP2よりも目標加工ラインAに近い。この構成により、N+1回目の掃引工程では、N回目の掃引工程において加工パスP1、P2によって形成された2つの溝の内側の空気が断熱層として作用し、上記2つの溝に挟まれた部分に熱が蓄積されやすくなる。このように、第1の加工パスP1および第2の加工パスP2を、外側から内側に向かって移動させていくことで、同じ加工パスに沿ってレーザ光を複数回照射する場合と比較して、目標加工ラインAの近傍に熱を効率よく蓄積させて効率の良い加工を可能にする。
また、複数の加工パスP1〜P5には、第1の加工パスP1よりも目標加工ラインAに近い第3の加工パスP3と、第2の加工パスP2よりも目標加工ラインAに近い第4の加工パスP4と、が含まれ、D3<D1、及びD4<D2の関係となっている。この構成によれば、N回目の掃引工程における第1の加工パスP1および第2の加工パスP2に沿ってレーザ光Lを掃引することで形成された溝と、N+1回目の掃引工程における第1の加工パスP1および第2の加工パスP2と、の間の距離が大きくなる。これにより、上記溝の外側に向けて熱がより逃げにくくなり、目標加工ラインAの近傍に熱をより蓄積しやすくなり、効率の良い加工を可能にする。
また、繊維強化複合材のように、高耐熱性・高伝熱性の繊維(代表的には炭素繊維)と、低耐熱性・低伝熱性の基材(代表的には樹脂)とを組み合わせた材質では、同じ加工パスに沿ってレーザ光を複数回照射する場合、熱が蓄積されることによる基材の溶融が、加工品質の低下につながりやすい。一方、本実施形態の加工方法は、同じ場所にレーザ光Lが吸収されることを抑制でき、熱影響領域の形成を抑制することができる。したがって、本実施形態の加工方法は、繊維強化複合材により形成された加工対象物Tの加工に好適に用いることができる。
また、隣り合う加工パス(例えば加工パスP1と加工パスP3)に沿って掃引されるレーザ光Lの照射範囲同士がオーバーラップしていてもよい。この場合、加工の途中において、加工対象物Tに複数の溝が形成されることを抑止することができる。
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、目標加工ラインAおよび加工パスP1〜P5が加工対象物Tを横断していた。しかしながら、例えば加工対象物Tに穴をあける場合等において、目標加工ラインAおよび加工パスP1〜P5が加工対象物Tを横断していなくてもよい。
また、前記実施形態では掃引ルートP(加工パス)が一筆書き状であったが、掃引ルートPは一筆書き状でなくてもよい。
また、前記実施形態では、掃引ルートPに、5つの加工パスP1〜P5が含まれていた。しかしながら、掃引ルートPに含まれる加工パスの数は複数であれば適宜変更可能である。例えば、加工パスの数は、3つ以上の偶数あるいは4つ以上の奇数であってもよい。
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図7は、本実施形態における掃引工程ごとの加工パスP1〜P5の位置を示す図である。図7は、第1実施形態における図4に対応する断面図である。
図7に示すように、本実施形態では、D1<D3、及びD2<D4となっている。すなわち、N回目の掃引工程とN+1回目の掃引工程との間における内側パスP3〜P4の移動量(D3、D4)が、N回目の掃引工程とN+1回目の掃引工程との間における外側パスP1〜P2の移動量(D1、D2)よりも大きくなっている。この構成によれば、レーザ光Lのエネルギーを、より目標加工ラインAに近い位置に集中させることができる。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
1…光源 2…制御部 10…加工装置 A…目標加工ライン L…レーザ光 P…掃引ルート P1、P2…外側パス P3〜P5…内側パス T…加工対象物

Claims (8)

  1. 光源が発したレーザ光を加工対象物に照射して前記加工対象物を加工する加工方法であって、
    目標加工ラインを中心とする複数の加工パスに沿って、前記レーザ光を掃引する掃引工程を複数回行い、
    前記複数の加工パスは、前記目標加工ラインを基準として一方側の最も外側に位置する第1の加工パスと、前記目標加工ラインを基準として他方側の最も外側に位置する第2の加工パスとを含み、
    Nを1以上の自然数とするとき、
    N+1回目の掃引工程における前記第1の加工パスは、N回目の掃引工程における前記第1の加工パスよりも前記目標加工ラインに近く、N+1回目の掃引工程における前記第2の加工パスは、N回目の掃引工程における前記第2の加工パスよりも前記目標加工ラインに近い、加工方法。
  2. 各々の前記掃引工程における前記複数の加工パスには、前記第1の加工パスよりも前記目標加工ラインに近い第3の加工パスと、前記第2の加工パスよりも前記目標加工ラインに近い第4の加工パスと、が含まれ、
    前記N+1回目の掃引工程における前記第1の加工パスの、前記N回目の掃引工程における前記第1の加工パスに対する移動量をD1とし、
    前記N+1回目の掃引工程における前記第2の加工パスの、前記N回目の掃引工程における前記第2の加工パスに対する移動量をD2とし、
    前記N+1回目の掃引工程における前記第3の加工パスの、前記N回目の掃引工程における前記第3の加工パスに対する移動量をD3とし、
    前記N+1回目の掃引工程における前記第4の加工パスの、前記N回目の掃引工程における前記第4の加工パスに対する移動量をD4とするとき、
    D3<D1、及びD4<D2である、請求項1に記載の加工方法。
  3. 各々の前記掃引工程における前記複数の加工パスには、前記第1の加工パスよりも前記目標加工ラインに近い第3の加工パスと、前記第2の加工パスよりも前記目標加工ラインに近い第4の加工パスと、が含まれ、
    前記N+1回目の掃引工程における前記第1の加工パスの、前記N回目の掃引工程における前記第1の加工パスに対する移動量をD1とし、
    前記N+1回目の掃引工程における前記第2の加工パスの、前記N回目の掃引工程における前記第2の加工パスに対する移動量をD2とし、
    前記N+1回目の掃引工程における前記第3の加工パスの、前記N回目の掃引工程における前記第3の加工パスに対する移動量をD3とし、
    前記N+1回目の掃引工程における前記第4の加工パスの、前記N回目の掃引工程における前記第4の加工パスに対する移動量をD4とするとき、
    D1<D3、及びD2<D4である、請求項1に記載の加工方法。
  4. 前記加工対象物が繊維強化複合材により形成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の加工方法。
  5. 前記加工パスは前記加工対象物を横断している、請求項1から4のいずれか1項に記載の加工方法。
  6. 1つの前記掃引工程における前記レーザ光の掃引ルートは一筆書き状に連なっている、請求項1から5のいずれか1項に記載の加工方法。
  7. 隣り合う加工パスに沿って掃引される前記レーザ光の照射範囲同士がオーバーラップしている、請求項1から6のいずれか1項に記載の加工方法。
  8. 光源が発したレーザ光を加工対象物に照射して加工対象物を加工する加工装置であって、
    前記レーザ光の前記加工対象物への照射位置を制御する制御部を備え、
    前記制御部は、
    目標加工ラインを中心とする複数の加工パスに沿って、前記レーザ光を掃引する掃引工程を複数回実行し、
    前記複数の加工パスは、前記目標加工ラインを基準として一方側の最も外側に位置する第1の加工パスと、前記目標加工ラインを基準として他方側の最も外側に位置する第2の加工パスとを含み、
    Nを1以上の自然数とするとき、
    N+1回目の掃引工程における前記第1の加工パスは、N回目の掃引工程における前記第1の加工パスよりも前記目標加工ラインに近く、N+1回目の掃引工程における前記第2の加工パスは、N回目の掃引工程における前記第2の加工パスよりも前記目標加工ラインに近い、加工装置。
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