JP2020191851A - 芳香族系化合物を生産する方法 - Google Patents

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誠久 蓮沼
Yoshihisa Hasunuma
誠久 蓮沼
弘樹 蘆田
Hiroki Ashida
弘樹 蘆田
龍胆 大林
Ryudo Obayashi
龍胆 大林
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Abstract

【課題】グアノシン4リン酸(ppGpp)合成酵素をコードする遺伝子の発現を促進させた微細藻を用いた芳香族アミノ酸の製造方法等を提供すること。【解決手段】グアノシン4リン酸(ppGpp)合成酵素をコードする遺伝子の発現を促進させた微細藻を培養することを含む、芳香族アミノ酸の製造方法。芳香族アミノ酸が、L-フェニルアラニン及び/又はL-チロシンであって、製造された芳香族アミノ酸を、p-クマル酸に変換することを含む、p-クマル酸の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、グアノシン4リン酸(ppGpp)合成酵素をコードする遺伝子の発現を促進させた微細藻を用いた芳香族アミノ酸の製造方法、当該方法により製造された芳香族アミノ酸を用いたp-クマル酸の製造方法、グアノシン4リン酸(ppGpp)合成酵素及び/又は芳香族アミノ酸からp-クマル酸の生成に関与する酵素をコードする遺伝子の発現が促進された微細藻の形質転換体等に関する。
現代社会では、プラスチックをはじめ繊維、ゴム、溶剤、塗料、洗剤、液体燃料など多くの材料が石油化学に依存している。しかしながら、これ以上の石油の利用拡大は、資源の枯渇や環境負荷の増大を深刻化させる。中でも、プラスチックは全世界で2億6千万トン(2007年)製造されており、これは温室効果ガスの排出の大きな原因の一つである。このような観点からプラスチックのバイオベース化が進められ、植物バイオマス等の再生可能資源から、微生物発酵を活用した環境持続型のバイオプロセスが検討されている。例えば、コーンスターチ由来の乳酸や、ケーンジュース由来のコハク酸等が微生物(乳酸菌、酵母等)発酵で生産され、バイオマスポリマーの原料として導入が進んでいる。
しかしながら、実用化しているバイオベースポリマーはポリ乳酸、ポリブチレンコハク酸(PBS)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)など一部に限られており、ポリマービルディングブロックとしては乳酸、コハク酸、ヒドロキシアルカン酸、1,3-プロパンジオールのように一部の短鎖脂肪族化合物に限られている。また、現状では発酵の炭素源にはデンプンやスクロースが用いられており、非可食資源(主としてリグノセルロース)への転換が期待されているが、高温高圧条件下での前処理を有することや発酵阻害物の存在等の問題があり、従属栄養微生物での高収率、大量生産には至っていない。
30年先を考えると、植物の耕作に利用できる土地面積が限界に達している可能性がある。さらに、食料用作物の生産を優先にして、資源用作物をあえて栽培する土地は無くなっている可能性が高い。加えて、淡水の供給も課題となる。そこで将来的には、水圏に生育するバイオマスである藻類の利用が考えられる。藻類は光をエネルギー源として、CO2と水から、光合成で固定した炭素を有機化合物に変換することができ、培養に陸地を必要としない。中でも、藍藻(シアノバクテリア)は生育が速く、遺伝子組み換えが可能であることから藻類の中でも特に有望である。実際、これまで代謝改変による、エタノール、イソブタノール、遊離脂肪酸など様々な有用物質の生産が報告されている(特許文献1及び非特許文献1)。一方、藻類により産生される汎用化学品は社会実装するレベルには達していない。その理由は、目的生産物質のTiter(濃度)、Yield(収率)、Productivity(生産速度)が上がらないことに起因する。
特開2018-143192号公報
NJ Oliver et al., Curr Opin Chem Biol 2016, 35:43-50
本発明の課題は、グアノシン4リン酸(ppGpp)合成酵素をコードする遺伝子の発現を促進させた微細藻を用いた芳香族アミノ酸の製造方法、当該方法により製造された芳香族アミノ酸を用いたp-クマル酸の製造方法、グアノシン4リン酸(ppGpp)合成酵素及び/又は芳香族アミノ酸からp-クマル酸の生成に関与する酵素をコードする遺伝子の発現が促進された微細藻の形質転換体等を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、まず、藍藻(シアノバクテリア)の物質生産においては、定常期では物質生産しない(即ち、対数増殖期でのみ物質生産を行う)ことと、細胞密度が一定の濃さになり光を吸収し難くなると増殖が止まることが、最大の問題であることを見出した。そして更に研究を進めた結果、緊縮応答のシグナル分子として知られるグアノシン4リン酸(ppGpp)の生合成を、細胞増殖期において、発現誘導剤で誘導すると、細胞分裂が抑制される一方で、物質代謝は止まらずに、芳香族系ポリマー原料の生合成のためのハブ化合物であるp-クマル酸に容易に変換し得る芳香族アミノ酸(例:L-チロシン、L-フェニルアラニン)を細胞外に分泌することを見出した。また、細胞分裂が抑制されることで光の自己遮蔽効果も同時に解決することができ、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]グアノシン4リン酸(ppGpp)合成酵素をコードする遺伝子の発現を促進させた微細藻を培養することを含む、芳香族アミノ酸の製造方法。
[2]前記ppGpp合成酵素が、ppGpp又はpppGpp(グアノシン5リン酸)合成活性のみを有する、[1]に記載の芳香族アミノ酸の製造方法。
[3]前記遺伝子が、yjbM遺伝子、ywaC遺伝子、及びrelA遺伝子からなる群から選択される少なくとも1種である、[2]に記載の芳香族アミノ酸の製造方法。
[4]前記yjbM遺伝子及び/又はywaC遺伝子が選択される、[3]に記載の芳香族アミノ酸の製造方法。
[5]前記ppGpp合成酵素をコードする遺伝子が枯草菌(Bacillus subtilis)由来である、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の芳香族アミノ酸の製造方法。
[6]前記ppGpp合成酵素が、以下:
(A)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(B)配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質、及び
(C)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質、
(D)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(E)配列番号4で表されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質、及び
(F)配列番号4で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質、並びに
(G)配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(H)配列番号6で表されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質、及び
(I)配列番号6で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質
からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]に記載の芳香族アミノ酸の製造方法。
[7]前記芳香族アミノ酸が、L-フェニルアラニン及び/又はL-チロシンである、[1]〜[6]のいずれか1つに記載の芳香族アミノ酸の製造方法。
[8][1]〜[7]に記載の製造方法により製造された芳香族アミノ酸を、p-クマル酸に変換することを含む、p-クマル酸の製造方法。
[9]前記変換が、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ及びtrans-ケイ皮酸-4-モノオキシゲナーゼ並びに/又はチロシンアンモニアリアーゼによってなされる、[8]に記載のp-クマル酸の製造方法。
[10]前記微細藻が、さらにフェニルアラニンアンモニアリアーゼ及びtrans-ケイ皮酸-4-モノオキシゲナーゼ並びに/又はチロシンアンモニアリアーゼをコードする遺伝子の発現を促進させた微細藻である、[8]又は[9]に記載のp-クマル酸の製造方法。
[11]前記フェニルアラニンアンモニアリアーゼ及びチロシンアンモニアリアーゼが、以下:
(J)配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(K)配列番号8で表されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、L-フェニルアラニンからtrans-ケイ皮酸の生成能及び/又はL-チロシンからp-クマル酸の変換能を有するタンパク質、及び
(L)配列番号8で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、L-フェニルアラニンからtrans-ケイ皮酸の生成能及び/又はL-チロシンからp-クマル酸の変換能を有するタンパク質
からなる群から選択される少なくとも1種のタンパク質である、[9]又は[10]に記載のp-クマル酸の製造方法。
[12]以下:
(A)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(B)配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質、及び
(C)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質、
(D)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(E)配列番号4で表されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質、及び
(F)配列番号4で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質、並びに
(G)配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(H)配列番号6で表されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質、及び
(I)配列番号6で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質
からなる群から選択される少なくとも1種のタンパク質をコードする遺伝子の発現が促進されている、微細藻の形質転換体。
[13]以下:
(J)配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(K)配列番号8で表されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、L-フェニルアラニンからtrans-ケイ皮酸の生成能及び/又はL-チロシンからp-クマル酸の変換能を有するタンパク質、及び
(L)配列番号8で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、L-フェニルアラニンからtrans-ケイ皮酸の生成能及び/又はL-チロシンからp-クマル酸の変換能を有するタンパク質、並びに
(M)配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(N)配列番号10で表されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、trans-ケイ皮酸からp-クマル酸の生成能を有するタンパク質、及び
(O)配列番号10で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、trans-ケイ皮酸からp-クマル酸の生成能を有するタンパク質
からなる群から選択される少なくとも1種のタンパク質をコードする遺伝子の発現
がさらに促進されている、[12]に記載の微細藻の形質転換体。
本発明によれば、グアノシン4リン酸(ppGpp)合成酵素をコードする遺伝子の発現を促進させた微細藻を用いた芳香族アミノ酸の製造方法、当該方法により製造された芳香族アミノ酸を用いたp-クマル酸の製造方法、グアノシン4リン酸(ppGpp)合成酵素及び/又は芳香族アミノ酸からp-クマル酸の生成に関与する酵素をコードする遺伝子の発現が促進された微細藻の形質転換体等を提供することができる。
図1は、yjbM誘導発現株の培養液中の代謝産物(イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)添加及び未添加)の分析結果を示す図である。 図2は、yjbM誘導発現株の培養液から回収した細胞内の代謝産物(IPTG添加及び未添加)の分析結果を示す図である。 図3は、yjbM誘導発現株の培養液から回収した細胞内の代謝産物(IPTG添加及び未添加)の分析結果を示す図である。 図4は、yjbM誘導発現株の培養液から回収した細胞内の代謝産物(IPTG添加及び未添加)の分析結果を示す図である。 図5は、IPTG添加及び未添加にて培養したyjbM誘導発現株を蛍光顕微鏡で観察した図である。 図6は、IPTG添加及び未添加にて培養したyjbM誘導発現株を蛍光顕微鏡で観察した図である。 図7は、yjbM、TAL遺伝子同時誘導発現株において、IPTG添加の時期と目的物質の生産(p-クマル酸)との関連を示す図である。 図8は、yjbM誘導発現株において、ppGppの蓄積によるフェノール性化合物(p-クマル酸)耐性の向上を示す図である。
1.本発明の製造方法
本発明者らは、緊縮応答のシグナル分子として知られるグアノシン4リン酸(ppGpp)の生合成を、ppGpp合成酵素の発現を発現誘導剤(例:IPTG)で誘導すると、細胞分裂が抑制される一方で、物質代謝は止まらずにアミノ酸(特に芳香族アミノ酸、より具体的には、L-チロシン及びL-フェニルアラニン)を細胞外に放出するという現象を見出した。また、L-チロシン及びL-フェニルアラニンは、芳香族系ポリマー原料のハブ化合物であるp-クマル酸に容易に変換することができる。
従って、本発明は、グアノシン4リン酸(ppGpp)合成酵素をコードする遺伝子の発現を促進させた微細藻を培養することを含む、芳香族アミノ酸の製造方法を提供する。また、本発明は、本発明の芳香族アミノ酸の製造方法により製造された芳香族アミノ酸を、p-クマル酸に変換することを含む、p-クマル酸の製造方法も提供する。
本明細書において「緊縮応答」とは、飢餓時などに細胞内物質の無駄な消耗を避け、適応する応答機構を意味し、例えば、大腸菌や枯草菌では、グアノシン4リン酸(ppGpp)の蓄積がDNA複製(primase等)、転写(転写関連因子)や翻訳(elongation factor等)を負に制御するような栄養飢餓時の応答をいう。
本明細書において「芳香族アミノ酸」とは、芳香環及び芳香族複素環を有する疎水性アミノ酸を意味する。芳香族アミノ酸としては、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン等が挙げられるが、中でも、L-フェニルアラニン及びL-チロシンが好ましい。
本明細書において「微細藻」とは、葉緑素(クロロフィル)を持ち、光合成を行う微生物をいう。微細藻は、光合成によって大気中のCO2を固定化して糖類(例えば、グリコーゲン)を合成し、他方、水(H2O)から酸素(O2)を発生させ得る。微細藻は、単細胞形態を有するものであってもよく、又はコロニー形態(例えば、フィラメント、シート又はボール)を有するものであってもよい。微細藻は、海洋又は淡水のいずれで繁殖するものであってもよい。
本明細書において「微細藻」は、原核生物のシアノバクテリア(ラン藻類)及び真核生物(例:緑藻類、珪藻類、渦鞭毛藻、紅藻、プラシノ藻、ユーグレナ藻、真正眼点藻等)の何れであってもよい。シアノバクテリア(ラン藻類)としては、例えば、シネコシスティス属(Synechocystis)、アルスロスピラ属(Arthrospira)、スピルリナ属(Spirulina)、アナベナ属(Anabaena)、シネココッカス属(Synechococcus)、サーモシネココッカス属(Thermosynechococcus)、ノストック属(Nostoc)、プロクロロコッカス属(Prochlorococcu)、ミクロシスティス属(Microcystis)、グロエオバクター属(Gloeobacter)などが挙げられる。真核生物としては、例えば、クラミドモナス属(Chlamydomonas)、クロレラ属(Chlorella)、ドナリエラ属(Dunaliella)、ヘマトコッカス属(Hematococcus)、ボルボックス属(Volvox)、ボトリオコッカス属(Botryococcus)などの緑藻類;リゾソレニア属(Rhizosolenia)、ケトセロス属(Chaetoceros)、シクロテラ属(Cyclotella)、シリンドロテカ(Cylindrotheca)、ナビクラ属(Navicula)、フェオダクチラム属(Phaeodactylum)、タラシオシラ属(Thalassiosira)、フィッツリフェラ属(Fistulifera)などの珪藻類;アンフィジニウム属(Amphidinium)、シンビオジニウム属(Symbiodinium)などの渦鞭毛藻;シアニディオシゾン属(Cyanidioschyzon)、ポルフィリジウム属(Phorphyridium)などの紅藻;オストレオコッカス属(Ostreococcus)などのプラシノ藻;ユーグレナ属(Euglena)などのユーグレナ藻;ナンノクロロプシス属(Nannochloropsis)などの真正眼点藻などが挙げられる。例えば、微細藻類の微生物種としては、シネコシスティスPCC6803種(Synechocystis sp. PCC6803)、シネココッカスPCC7002種(Synechococcus sp. PCC7002)、シネココッカスPCC7942種(Synechococcus sp. PCC7942)、アルスロルピラ・プラテンシス(Arthrospira platensis)(「スピルリナ(Spirulina)」とも称される)、スピルリナ・マキシマ(Spirulina maxima)、スピルリナ・サブサルサ(Spirulina subsalsa)、アナベナPCC7120種(Anabaena sp. PCC7120)、クラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)、クラミドモナス種(Chlamydomonas sp.)、クロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)、クロレラ・ピレノイドーサ(Chlorella pyrenoidosa)、ドナリエラ・サリナ(Dunaliella salina)、ドナリエラ種(Dunaliella sp.)、ヘマトコッカス・プルビアリス(Hematococcus pluvialis)、ボルボックス・カルテリ(Volvox carteri)、ボトリオコッカス・ブラウニイ(Botryococcus braunii)、シクロテラ・クリプティカ(Cyclotella cryptica)、シリンドロテカ・フジフォルミス(Cylindrotheca fusiformis)、ナビクラ・サプロフィラ(Navicula saprophila)、フェオダクチラム・トリコルヌツム(Phaeodactylum tricornutum)、タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)、フィッツリフェラ種(Fistulifera sp.)、アンフィジニウム種(Amphidinium sp.)、シンビオジニウム・ミクロアドリアチクム(Symbiodinium microadriaticum)、シアニディオシゾン・メロレ(Cyanidioschyzon merolae)、ポルフィリジウム種(Porphyridium sp.)、オストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri)、ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)、ナンノクロロプシス・オキュラータ(Nannochloropsis oculata)などが挙げられる。
上記微細藻は、後述する本発明のグアノシン4リン酸(ppGpp)合成酵素、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ、trans-ケイ皮酸-4-モノオキシゲナーゼ及びチロシンアンモニアリアーゼをコードする遺伝子を導入する宿主微細藻として用いることができる。
本発明の「グアノシン4リン酸(ppGpp)合成酵素」とは、GDP(又はGTP)を基質とし、ppGpp(又はpppGpp)を合成する酵素であれば特に限定されないが、ppGpp(又はpppGpp)の合成活性のみを有するものが好ましい。具体的には、各種細菌(例:大腸菌、枯草菌、シアノバクテリア)由来のRelA、SpoT、Rel/SopT、YjbM(RelQ)、YwaC(RelP)等のppGpp合成酵素が挙げられる。より具体的には、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質(枯草菌由来のRelA)、配列番号4で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質(枯草菌由来のYjbM)、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質(枯草菌由来のYwaC)等が挙げられる。
本発明のppGpp合成酵素は、その酵素活性が保持される限り、該酵素のアミノ酸配列(例:配列番号2、4及び6で表されるアミノ酸配列)との同一性が80%以上のアミノ酸配列を含むあるいはからなるタンパク質であってもよく、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、99%以上がさらに一層好ましい。
また、本発明のppGpp合成酵素は、その酵素活性が保持される限り、該酵素のアミノ酸配列(例:配列番号2、4及び6で表さるアミノ酸配列)中の1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜数(5、4、3若しくは2)個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、該酵素のアミノ酸配列(例:配列番号2、4及び6で表されるアミノ酸配列)に、1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜数(5、4、3若しくは2)個のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、該酵素のアミノ酸配列(例:配列番号2、4及び6で表されるアミノ酸配列)に1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜数(5、4、3若しくは2)個のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、該酵素のアミノ酸配列(例:配列番号2、4及び6で表されるアミノ酸配列)中の1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜数(5、4、3若しくは2)個のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、又はそれらを組み合わせたアミノ酸配列を含むあるいはからなるタンパク質であってもよい。性質の似たアミノ酸(例:グリシンとアラニン、バリンとロイシンとイソロイシン、セリンとトレオニン、アスパラギン酸とグルタミン酸、アスパラギンとグルタミン、リシンとアルギニン、システインとメチオニン、フェニルアラニンとチロシン等)同士の置換等であれば、さらに多くの個数の置換等があり得る。
本発明の「フェニルアラニンアンモニアリアーゼ」(以下、「PAL」と略記する場合がある)とは、L-フェニルアラニンを基質とし、trans-ケイ皮酸とアンモニアを生成する反応を触媒する酵素であれば特に限定されないが、具体的には、例えば、EC 4.3.1.24、EC 4.3.1.25の酵素等が挙げられる。
本発明のフェニルアラニンアンモニアリアーゼは、その酵素活性が保持される限り、該酵素のアミノ酸配列(例:配列番号8で表されるアミノ酸配列)との同一性が80%以上のアミノ酸配列を含むあるいはからなるタンパク質であってもよく、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、99%以上がさらに一層好ましい。
また、本発明のフェニルアラニンアンモニアリアーゼは、その酵素活性が保持される限り、該酵素のアミノ酸配列(例:配列番号8で表されるアミノ酸配列)中の1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜数(5、4、3若しくは2)個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、該酵素のアミノ酸配列(例:配列番号8で表されるアミノ酸配列)に、1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜数(5、4、3若しくは2)個のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、該酵素のアミノ酸配列(例:配列番号8で表されるアミノ酸配列)に1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜数(5、4、3若しくは2)個のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、該酵素のアミノ酸配列(例:配列番号8で表されるアミノ酸配列)中の1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜数(5、4、3若しくは2)個のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、又はそれらを組み合わせたアミノ酸配列を含むあるいはからなるタンパク質であってもよい。性質の似たアミノ酸(例:グリシンとアラニン、バリンとロイシンとイソロイシン、セリンとトレオニン、アスパラギン酸とグルタミン酸、アスパラギンとグルタミン、リシンとアルギニン、システインとメチオニン、フェニルアラニンとチロシン等)同士の置換等であれば、さらに多くの個数の置換等があり得る。
本発明の「trans-ケイ皮酸-4-モノオキシゲナーゼ」(以下、「C4H」と略記する場合がある)とは、trans-ケイ皮酸を基質として、4-ヒドロキシケイ皮酸(p-クマル酸)を生成する反応を触媒する酵素であれば特に限定されないが、具体的には、例えば、EC 1.14.13.11の酵素等が挙げられる。
本発明のtrans-ケイ皮酸-4-モノオキシゲナーゼは、その酵素活性が保持される限り、該酵素のアミノ酸配列(例:配列番号10で表されるアミノ酸配列)との同一性が80%以上のアミノ酸配列を含むあるいはからなるタンパク質であってもよく、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、99%以上がさらに一層好ましい。
また、本発明のtrans-ケイ皮酸-4-モノオキシゲナーゼは、その酵素活性が保持される限り、該酵素のアミノ酸配列(例:配列番号10で表されるアミノ酸配列)中の1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜数(5、4、3若しくは2)個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、該酵素のアミノ酸配列(例:配列番号10で表されるアミノ酸配列)に、1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜数(5、4、3若しくは2)個のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、該酵素のアミノ酸配列(例:配列番号10で表されるアミノ酸配列)に1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜数(5、4、3若しくは2)個のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、該酵素のアミノ酸配列(例:配列番号10で表されるアミノ酸配列)中の1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜数(5、4、3若しくは2)個のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、又はそれらを組み合わせたアミノ酸配列を含むあるいはからなるタンパク質であってもよい。性質の似たアミノ酸(例:グリシンとアラニン、バリンとロイシンとイソロイシン、セリンとトレオニン、アスパラギン酸とグルタミン酸、アスパラギンとグルタミン、リシンとアルギニン、システインとメチオニン、フェニルアラニンとチロシン等)同士の置換等であれば、さらに多くの個数の置換等があり得る。
本発明の「チロシンアンモニアリアーゼ」(以下、「TAL」と略記する場合がある)とは、L-チロシンをp-クマル酸に変換する反応を触媒する酵素であれば特に限定されないが、具体的には、例えば、EC 4.3.1.23、EC 4.3.1.25が挙げられる。本明細書中においては、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ及びチロシンアンモニアリアーゼの両方の活性を有する酵素(例:EC 4.3.1.25)(以下、「PAL/TAL」と略記する場合がある)は、フェニルアラニンアンモニアリアーゼと称されてもよく、チロシンアンモニアリアーゼと称されてもよい。
本発明のチロシンアンモニアリアーゼは、その酵素活性が保持される限り、該酵素のアミノ酸配列(例:配列番号8で表されるアミノ酸配列)との同一性が80%以上のアミノ酸配列を含むあるいはからなるタンパク質であってもよく、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、99%以上がさらに一層好ましい。
また、本発明のチロシンアンモニアリアーゼは、その酵素活性が保持される限り、該酵素のアミノ酸配列(例:配列番号8で表されるアミノ酸配列)中の1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜数(5、4、3若しくは2)個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、該酵素のアミノ酸配列(例:配列番号8で表されるアミノ酸配列)に、1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜数(5、4、3若しくは2)個のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、該酵素のアミノ酸配列(例:配列番号8で表されるアミノ酸配列)に1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜数(5、4、3若しくは2)個のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、該酵素のアミノ酸配列(例:配列番号8で表されるアミノ酸配列)中の1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜数(5、4、3若しくは2)個のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、又はそれらを組み合わせたアミノ酸配列を含むあるいはからなるタンパク質であってもよい。性質の似たアミノ酸(例:グリシンとアラニン、バリンとロイシンとイソロイシン、セリンとトレオニン、アスパラギン酸とグルタミン酸、アスパラギンとグルタミン、リシンとアルギニン、システインとメチオニン、フェニルアラニンとチロシン等)同士の置換等であれば、さらに多くの個数の置換等があり得る。
アミノ酸配列に変異を導入する方法としては、例えば、アミノ酸配列をコードする塩基配列に変異を導入する方法が挙げられる。変異を導入する方法としては、部位特異的な変異導入法が挙げられる。具体的な部位特異的変異の導入方法としては、SOE-PCR反応を利用した方法、ODA法、Kunkel法等が挙げられる。また、Site-Directed Mutagenesis System Mutan-SuperExpress Kmキット(タカラバイオ社)、Transformer TM Site-Directed Mutagenesisキット(Clonetech社)、KOD-Plus-Mutagenesis Kit(東洋紡社)等の市販のキットを利用してもよい。また、ランダムな遺伝子変異を与えた後、適当な方法により酵素活性の評価及び遺伝子解析を行うことにより目的遺伝子を取得することもできる。
一般に、酵素タンパク質をコードしているアミノ酸配列は、必ずしも全領域の配列が保存されていなければ酵素活性を示さないというものではなく、アミノ酸配列が変化しても酵素活性に影響を与えない領域も存在することが知られている。このような酵素活性に必須でない領域においては、アミノ酸の欠失、置換、挿入又は付加といった変異が導入されても酵素本来の活性を維持することができる。本発明においても、このようにppGpp合成能、L-フェニルアラニンからtrans-ケイ皮酸の生成能、trans-ケイ皮酸からp-クマル酸の生成能、L-チロシンからp-クマル酸の変換能が保持され、且つアミノ酸配列が一部変異したタンパク質を用いることができる。
上記本発明のタンパク質として、例えば、以下:
(A)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(B)配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質、及び
(C)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加(挿入)されたアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質、
(D)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(E)配列番号4で表されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質、及び
(F)配列番号4で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加(挿入)されたアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質、並びに
(G)配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(H)配列番号6で表されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質、及び
(I)配列番号6で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加(挿入)されたアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質
が挙げられる。
上記本発明のタンパク質として、また、例えば、以下:
(J)配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(K)配列番号8で表されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、L-フェニルアラニンからtrans-ケイ皮酸の生成能及び/又はL-チロシンからp-クマル酸の変換能をを有するタンパク質、及び
(L)配列番号8で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加(挿入)されたアミノ酸配列からなり、L-フェニルアラニンからtrans-ケイ皮酸の生成能及び/又はL-チロシンからp-クマル酸の変換能を有するタンパク質、並びに
(M)配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(N)配列番号10で表されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、trans-ケイ皮酸からp-クマル酸の生成能を有するタンパク質、及び
(O)配列番号10で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加(挿入)されたアミノ酸配列からなり、trans-ケイ皮酸からp-クマル酸の生成能を有するタンパク質
が挙げられる。
上記本発明のタンパク質(A)〜(O)は、通常の化学的手法、遺伝子工学的手法等により得ることができる。例えば、枯草菌、大腸菌等から単離、精製等することで天然物由来のタンパク質を取得することができる。また、配列番号2、4、6、8及び10に示すアミノ酸配列情報をもとに人工的に化学合成することで、前記タンパク質(A)〜(O)を得ることができる。あるいは、遺伝子組み換え技術により、組換えタンパク質として前記タンパク質(A)〜(O)を作製してもよい。組換えタンパク質を作製する場合には、後述する、ppGpp合成酵素、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ、trans-ケイ皮酸-4-モノオキシゲナーゼあるいはチロシンアンモニアリアーゼをコードする遺伝子を用いることができる。
ppGpp合成酵素(RelA)(例:タンパク質(A)、(B)又は(C))をコードする遺伝子(以下、「relA遺伝子」ともいう)として、下記核酸(a)及び(b):
(a)配列番号1で表される塩基配列からなる核酸
(b)前記核酸(a)の塩基配列と同一性が80%以上の塩基配列からなり、且つppGpp合成能を有するタンパク質をコードする核酸
のいずれか1つからなる核酸が挙げられる。
配列番号1で表される塩基配列は、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列である。
上記核酸(b)において、ppGpp合成能を有するという点から、上記核酸(a)の塩基配列との同一性は80%以上であり、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、99%以上がさらに一層好ましい。
また上記核酸(b)として、上記核酸(a)の塩基配列において1又は複数個(例えば、1個以上60個以下、好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上15個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、且つppGpp合成能を有するタンパク質をコードする核酸であってもよい。
さらに上記核酸(b)として、上記核酸(a)と相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つppGpp合成能を有するタンパク質をコードする核酸であってもよい。
ppGpp合成酵素(YjbM)(例:タンパク質(D)、(E)又は(F))をコードする遺伝子(以下、「yjbM遺伝子」ともいう)として、下記核酸(c)及び(d):
(c)配列番号3で表される塩基配列からなる核酸
(d)前記核酸(c)の塩基配列と同一性が80%以上の塩基配列からなり、且つppGpp合成能を有するタンパク質をコードする核酸
のいずれか1つからなる核酸が挙げられる。
配列番号3で表される塩基配列は、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列である。
上記核酸(d)において、ppGpp合成能を有するという点から、上記核酸(c)の塩基配列との同一性は80%以上であり、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、99%以上がさらに一層好ましい。
また上記核酸(d)として、上記核酸(c)の塩基配列において1又は複数個(例えば、1個以上60個以下、好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上15個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、且つppGpp合成能を有するタンパク質をコードする核酸であってもよい。
さらに上記核酸(d)として、上記核酸(c)と相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つppGpp合成能を有するタンパク質をコードする核酸であってもよい。
ppGpp合成酵素(YwaC)(例:タンパク質(G)、(H)又は(I))をコードする遺伝子(以下、「ywaC遺伝子」ともいう)として、下記核酸(e)及び(f):
(e)配列番号5で表される塩基配列からなる核酸
(f)前記核酸(e)の塩基配列と同一性が80%以上の塩基配列からなり、且つppGpp合成能を有するタンパク質をコードする核酸
のいずれか1つからなる核酸が挙げられる。
配列番号5で表される塩基配列は、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列である。
上記核酸(f)において、ppGpp合成能を有するという点から、上記核酸(e)の塩基配列との同一性は80%以上であり、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、99%以上がさらに一層好ましい。
また上記核酸(f)として、上記核酸(e)の塩基配列において1又は複数個(例えば、1個以上60個以下、好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上15個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、且つppGpp合成能を有するタンパク質をコードする核酸であってもよい。
さらに上記核酸(f)として、上記核酸(e)と相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つppGpp合成能を有するタンパク質をコードする核酸であってもよい。
フェニルアラニンアンモニアリアーゼ、チロシンアンモニアリアーゼ、並びにフェニルアラニンアンモニアリアーゼ及びチロシンアンモニアリアーゼの両方の活性を有する酵素(PAL/TAL)(例:タンパク質(J)、(K)又は(L))をコードする遺伝子(以下、「PAL遺伝子」、「TAL遺伝子」、及び「PAL/TAL遺伝子」ともいう)として、下記核酸(g)及び(h):
(g)配列番号7で表される塩基配列からなる核酸
(h)前記核酸(g)の塩基配列と同一性が80%以上の塩基配列からなり、且つPAL及び/又はTAL活性を有するタンパク質をコードする核酸
のいずれか1つからなる核酸が挙げられる。
配列番号7で表される塩基配列は、配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列である。
上記核酸(h)において、PAL及び/又はTAL活性を有するという点から、上記核酸(g)の塩基配列との同一性は80%以上であり、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、99%以上がさらに一層好ましい。
また上記核酸(h)として、上記核酸(g)の塩基配列において1又は複数個(例えば、1個以上60個以下、好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上15個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、且つPAL及び/又はTAL活性を有するタンパク質をコードする核酸であってもよい。
さらに上記核酸(h)として、上記核酸(g)と相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つPAL及び/又はTAL活性を有するタンパク質をコードする核酸であってもよい。
trans-ケイ皮酸-4-モノオキシゲナーゼ(C4H)(例:タンパク質(M)、(N)又は(O))をコードする遺伝子(以下、「C4H遺伝子」ともいう)として、下記核酸(I)及び(J):
(I)配列番号9で表される塩基配列からなる核酸
(J)前記核酸(I)の塩基配列と同一性が80%以上の塩基配列からなり、且つC4H活性を有するタンパク質をコードする核酸
のいずれか1つからなる核酸が挙げられる。
配列番号9で表される塩基配列は、配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列である。
上記核酸(J)において、C4H活性を有するという点から、上記核酸(I)の塩基配列との同一性は80%以上であり、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、99%以上がさらに一層好ましい。
また上記核酸(J)として、上記核酸(I)の塩基配列において1又は複数個(例えば、1個以上60個以下、好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上15個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、且つC4H活性を有するタンパク質をコードする核酸であってもよい。
さらに上記核酸(J)として、上記核酸(I)と相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つC4H活性を有するタンパク質をコードする核酸であってもよい。
塩基配列及びアミノ酸配列の同一性(%)は、自体公知の方法により決定でき、例えば、Lipman-Pearson法(Science,1985,vol.227,p.1435-1441)によって計算され得る。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Winのホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。また、例えば、当該分野で慣用のプログラム(例えば、BLAST、FASTA等)を初期設定で用いて決定してもよい。例えば、NCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップコスト=Linear;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=-2)にて計算することができる。別の局面では、同一性は、当該分野で公知の任意のアルゴリズム、例えば、Needlemanら(1970) (J. Mol. Biol. 48: 444-453)、Myers及びMiller (CABIOS, 1988, 4: 11-17)のアルゴリズム等を使用して決定することができる。Needlemanらのアルゴリズムは、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに組み込まれており、同一性は、例えば、BLOSUM 62 matrix又はPAM250 matrix、並びにgap weight: 16、14、12、10、8、6若しくは4、及びlength weight: 1、2、3、4、5若しくは6のいずれかを使用することによって決定することができる。また、Myers及びMillerのアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラムに組み込まれている。塩基配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、例えば、PAM120 weight residue table、gap length penalty 12、gap penalty 4を用いることができる。配列同一性の算出については、上記の方法のなかで最も低い値を示す方法を採用してもよい。
本明細書において「ストリンジェントな条件」とは、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, 6.3.1-6.3.3, 1999に記載される条件、例えば、6×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)/45℃でのハイブリダイゼーション、次いで0.2×SSC/0.1% SDS/50〜65℃での1回以上の洗浄等が挙げられるが、当業者であれば、これと同等のストリンジェンシーを与えるハイブリダイゼーションの条件を適宜選択することができる。
前記ppGpp合成酵素をコードする遺伝子(例:yjbM遺伝子、ywaC遺伝子、及びrelA遺伝子)やフェニルアラニンアンモニアリアーゼ、trans-ケイ皮酸-4-モノオキシゲナーゼ、チロシンアンモニアリアーゼをコードする遺伝子の発現を促進させる方法としては、自体公知の方法より適宜選択することができる。例えば、上記遺伝子を宿主微細藻に導入する方法、上記遺伝子をゲノム上に有する宿主微細藻において、当該遺伝子の発現調節領域(プロモーター、ターミネーター等)を改変する方法などが挙げられる。また、該方法により複数の上記遺伝子を宿主微細藻に導入してもよく、複数の上記遺伝子の発現調節領域を改変してもよく、それらの組み合わせであってもよい。なかでも、上記遺伝子を宿主微細藻に導入し、当該遺伝子の発現を促進させる方法が好ましい。
本明細書において、本発明の目的のタンパク質をコードする遺伝子の発現を促進させた微細藻を「形質転換体」ともいい、目的のタンパク質をコードする遺伝子の発現を促進させていないものを「宿主」又は「野生株」ともいう。本発明の目的のタンパク質をコードする遺伝子の発現を促進させた微細藻あるいは形質転換体は、本発明の芳香族アミノ酸の製造方法やをp-クマル酸の製造方法に好適に用いることができる。また、本発明の目的のタンパク質をコードする遺伝子の発現を促進させた微細藻あるいは形質転換体は、1又は複数種のppGpp合成酵素(例:yjbM遺伝子、ywaC遺伝子、及びrelA遺伝子)をコードする遺伝子の発現を促進させた微細藻であってもよく、更にフェニルアラニンアンモニアリアーゼ、trans-ケイ皮酸-4-モノオキシゲナーゼ、チロシンアンモニアリアーゼをコードする遺伝子の少なくとも1種をコードする遺伝子の発現も促進させたものであってもよい。
ppGpp合成酵素をコードする遺伝子(例:yjbM遺伝子、ywaC遺伝子、及びrelA遺伝子、)やフェニルアラニンアンモニアリアーゼ、trans-ケイ皮酸-4-モノオキシゲナーゼ、チロシンアンモニアリアーゼをコードする遺伝子を宿主微細藻に導入して上記目的の遺伝子の発現を促進させる方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
上記目的の遺伝子は、通常の遺伝子工学的手法により得ることができる。例えば、配列番号2に示すアミノ酸配列又は配列番号1に示す塩基配列に基づいて、relA遺伝子を人工的に合成できる。当該遺伝子の合成は、例えば、インビトロジェン社等のサービスを利用してもよい。また、枯草菌などからクローニングによって取得することもでき、例えば、Molecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION[Joseph Sambrook,David W.Russell,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)]記載の方法等により行うことができる。また、使用する宿主の種類に応じて、上記目的の遺伝子の塩基配列の一部を最適化してもよい。例えば、Thermo Fisher Scientific社のGeneArt人工遺伝子合成サービスを利用してもよい。
本発明の目的のタンパク質をコードする遺伝子の発現を促進させた微細藻あるいは形質転換体は、上記目的の遺伝子を自体公知の方法により宿主に導入することで得られる。具体的には、上記目的の遺伝子を宿主細胞中で発現させることのできる組換えベクターや遺伝子発現カセットを調製し、これを宿主細胞に導入して宿主細胞を形質転換させることにより作製し得る。本発明の目的のタンパク質をコードする遺伝子の発現を促進させた微細藻あるいは形質転換体の宿主としては、上述したような微細藻類の中から適宜選択することができる。
遺伝子発現用プラスミドベクター又は遺伝子発現カセットの母体となるベクター(プラスミド)としては、目的のタンパク質をコードする遺伝子を宿主に導入することができ、宿主細胞内で当該遺伝子を発現させることができるベクターであればよい。例えば、導入する宿主の種類に応じたプロモーターやターミネーター等の発現調節領域を有するベクターであって、複製開始点や選択マーカー等を有するベクターを用いることができる。また、プラスミド等の染色体外で自立増殖・複製するベクターであってもよいし、染色体内に組み込まれるベクターであってもよい。
本発明で用いることができる発現ベクターとしては、具体的には、例えば、pBluescript(pBS) II SK(-)(Stratagene社製)、pSTV系ベクター(タカラバイオ社製)、pUC系ベクター(タカラバイオ社製)、pET系ベクター(タカラバイオ社製)、pGEX系ベクター(GEヘルスケア社製)、pCold系ベクター(タカラバイオ社製)、pHY300PLK(タカラバイオ社製)、pUB110(Mckenzie,T.et al.,1986,Plasmid 15(2),p.93-103)、pBR322(タカラバイオ社製)、pRS403(ストラタジーン社製)、pMW218/219(ニッポンジーン社製)pRI系ベクター(タカラバイオ社製)、pBI系ベクター(クロンテック社製)、及びIN3系ベクター(インプランタイノベーションズ社製)が挙げられる。
また、上記発現ベクターに組み込んだ目的のタンパク質をコードする遺伝子の発現を調整するプロモーターの種類も、使用する宿主の種類に応じて適宜選択することができる。本発明で好ましく用いることができるプロモーターとしては、lacプロモーター、trpプロモーター、tacプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーター、SpoVGプロモーター、イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)の添加によって誘導可能な誘導体に関するプロモーター、Rubiscoオペロン(rbc)、PSI反応中心タンパク質(psaAB)、PSIIのD1タンパク質(psbA)、c-phycocyanin βサブユニット(cpcB)、リボゾームRNAをコードするrrnAオペロン遺伝子のプロモーター、カリフラワーモザイルウイルス35SRNAプロモーター、ハウスキーピング遺伝子プロモーター(例えば、チューブリンプロモーター、アクチンプロモーター、ユビキチンプロモーター等)、西洋アブラナ又はアブラナ由来Napin遺伝子プロモーター、植物由来Rubiscoプロモーター、ナンノクロロプシス属由来のビオラキサンチン/クロロフィルa結合タンパク質遺伝子のプロモーター(VCP1プロモーター、VCP2プロモーター)(Oliver Kilian,et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,2011,vol.108(52))、及びナンノクロロプシス属由来のオレオシン様タンパクLDSP(lipid droplet surface protein)遺伝子のプロモーター(Astrid Vieler, et al., PLOS Genetics, 2012;8(11):e1003064. doi: 10.1371)が挙げられる。
また、目的のタンパク質をコードする遺伝子が組み込まれたことを確認するための選択マーカーの種類も、使用する宿主の種類に応じて適宜選択することができる。本発明で用いることができる選択マーカーとしては、例えば、アンピシリン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、エリスロマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、ブラストサイジンS耐性遺伝子、ビアラフォス耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、パロモマイシン耐性遺伝子、ゲンタマイシン耐性遺伝子、及びハイグロマイシン耐性遺伝子等の薬剤耐性遺伝子が挙げられる。さらに、栄養要求性に関連する遺伝子の欠損等を選択マーカー遺伝子として使用することもできる。
目的のタンパク質をコードする遺伝子の上記ベクターへの導入は、制限酵素処理やライゲーション等の常法により行うことができる。また、導入する遺伝子は宿主微細藻におけるコドン使用頻度にあわせてコドンを至適化されることが好ましい。各種生物が使用するコドンの情報は、Codon Usage Database(www.kazusa.or.jp/codon/)から入手可能である。
形質転換方法は、使用する宿主の種類に応じて、自体公知の方法より適宜選択することができる。例えば、自然形質転換法、カルシウムイオンを用いる形質転換方法、一般的なコンピテントセル形質転換方法、プロトプラスト形質転換法、エレクトロポレーション法、LP形質転換方法、アグロバクテリウムを用いた方法、パーティクルガン法、及び接合法が挙げられる。
宿主微細藻に導入した上記目的の遺伝子は、相同組換え等により微細藻のゲノム上に組み込まれていることが好ましい。当該目的の遺伝子がゲノム上に組み込まれる位置は適宜設定することができる。
上記目的の遺伝子断片が導入された形質転換体の選択は、選択マーカー等を利用することで行うことができる。例えば、薬剤耐性遺伝子が、形質転換時に目的DNA断片とともに宿主細胞中に導入された結果、形質転換体が獲得する薬剤耐性を指標に行うことができる。また、ゲノムを鋳型としたPCR法等によって、目的DNA断片の導入を確認することもできる。
上記目的の遺伝子をゲノム上に有する宿主において、当該遺伝子の発現調節領域を改変して、前記遺伝子の発現を促進させる方法については、例えば、以下のような方法が挙げられる。
「発現調節領域」とは、プロモーターやターミネーターを示し、これらの配列は一般に隣接する遺伝子の発現量(転写量、翻訳量)の調節に関与している。ゲノム上に上記目的の遺伝子を有する宿主においては、当該遺伝子の発現調節領域を改変して当該遺伝子の発現を促進させることで、ppGpp等の目的の産物の生産性を向上させることができる。
発現調節領域の改変方法としては、例えば、プロモーターの入れ替えが挙げられる。ゲノム上に上記の各種目的の遺伝子を有する宿主において、当該遺伝子のプロモーターを、より転写活性の高いプロモーターに入れ替えることで、当該各種目的の遺伝子の発現を促進させることができる。
上述のプロモーターの改変は、相同組換えなどの自体公知の方法に従って、行うことができる。具体的には、標的とするプロモーターの上流、下流領域を含み、標的プロモーターに代えて別のプロモーターを含む直鎖状のDNA断片を構築し、これを宿主細胞に取り込ませ、宿主ゲノムの標的プロモーターの上流側と下流側とで2回交差の相同組換えを起こす。その結果、ゲノム上の標的プロモーターが別のプロモーター断片と置換され、プロモーターを改変することができる。このような相同組換えによる標的プロモーターの改変方法は、例えば、Besher et al.,Methods in molecular biology,1995,vol.47,p.291-302等の文献を参考に行うことができる。
本発明の製造方法により製造された芳香族アミノ酸を、p-クマル酸に変換する方法としては、上述の方法により、微細藻に導入した外因性のフェニルアラニンアンモニアリアーゼ、trans-ケイ皮酸-4-モノオキシゲナーゼ、チロシンアンモニアリアーゼ等をコードする遺伝子の発現を促進させることで行ってもよい。また、別途、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ、trans-ケイ皮酸-4-モノオキシゲナーゼ、チロシンアンモニアリアーゼ自体を添加することで行ってもよい。
本発明の製造方法における本発明の微細藻あるいは形質転換体の培養について以下に述べる。本明細書において「水性媒体」とは、種培養及び/又は本培養に用いられる水溶液をいう。後述するように窒素源、無機塩などを含む水溶液であることが好ましい。具体的には、微細藻に応じて、人工又は天然の海水、あるいは淡水(例えば、蒸留水)を用いてもよい。例えば、BG-11培地(J Gen Microbiol 111: 1-61 (1979));HSM培地及びTAP培地(低温科学,67:17-21 (2009))、Cramer-Myers培地(CM培地)等を使用することができる。具体的には、以下の表1に示す組成の培地を用いてもよい。
培養での芳香族アミノ酸の生産反応を効率的に行うために、水性媒体には、前記培地に炭素源として有機原料を添加しても良い。本培養に用いる有機原料は、前記微細藻が資化して増殖し得るものであれば特に限定されないが、通常、ガラクトース、ラクトース、グルコース、フルクトース、スクロース、サッカロース、デンプン、セルロース等の炭水化物;グリセロール、マンニトール、キシリトール、リビトール等のポリアルコール類等の発酵性糖質が用いられ、目的とする有機酸に応じて選択可能であり、一般的な有機原料から選択できる。例えば、グルコース、スクロース、又はフルクトースが好ましく、特にグルコース又はスクロースが好ましい。また、前記発酵性糖質を含有する澱粉糖化液、糖蜜なども使用され、前記発酵性糖質がサトウキビ、甜菜、サトウカエデ等の植物から搾取した糖液であってもよい。これらの有機原料は、単独でも組み合わせても使用できる。水性媒体には炭酸イオン、重炭酸イオン又CO2を含有させることができる。
本発明の微細藻あるいは形質転換体の培養温度は、通常15〜40℃、好ましくは20〜37℃であり、より好ましくは25℃〜35℃である。水性媒体のpHは、当該微細藻あるいは形質転換体の増殖に適した任意のpH、例えば、pH 5〜10、好ましくは、pH 6〜9、より好ましくは、pH 6〜8に調整することができる。pHは、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等を添加することによって適宜調整することができる。
本発明の芳香族アミノ酸の製造方法に関し、本発明の微細藻あるいは形質転換体は予め前培養等することができる。例えば、(1)前々培養、(2)前培養、(3)本培養(光独立栄養)(対数増殖期(ppGpp誘導前))、(4)(光独立栄養)本培養(対数増殖期において対数増殖抑制(ppGpp誘導開始))等のステップを経て培養することができる。(1)〜(4)の培養では、通気培養を行うことができる。培養期間としては、(1)前々培養では、4日〜10日、好ましくは4日〜7日、より好ましくは5日〜6日(OD750が1〜1.5)、(2)前培養では、3日〜10日、好ましくは3日〜6日、より好ましくは4日〜5日(OD750が1〜1.5)、(3)本培養(ppGpp誘導前)では、1日〜10日、好ましくは2日〜7日、より好ましくは2日〜3日(OD750が3〜4)、(4)本培養(ppGpp誘導開始)では、2日〜14日、好ましくは4日〜10日、より好ましくは5日〜8日(OD750が5〜9)である。ppGppの誘導を開始するタイミングは、上記(3)の本培養開始(OD750=0.1で培養を開始した時点を0時間とする)後、48時間(2日)〜120時間(5日)の間、より好ましくは72時間(3日)〜96時間(4日)の間である。通気培養のために、空気やCO2を混合した空気を水性媒体に通気することができる。上記(4)本培養(対数増殖期において対数増殖抑制(ppGpp誘導開始))を経て、水性媒体中に芳香族アミノ酸が分泌される。ppGppが誘導されて、上記微細藻あるいは形質転換体に蓄積されることにより、細胞分裂が抑制される一方で、物質代謝は停止せずに芳香族アミノ酸、特に、L-チロシン及びL-フェニルアラニンの分泌が継続されるという効果を得ることができる。
本明細書の(3)及び(4)本培養(光独立栄養)において、「光独立栄養」とは一般的な意味で使用され、微細藻が光合成によってCO2と水から糖を作り、これをエネルギー源として成長する仕組みをいう。光独立栄養時の光照射条件は自然光又は人工光のいずれであってもよく、その強さは、水性媒体中の藻体密度及び培養槽の深さ等によって、適宜調節することができる。例えば、30〜2000μmol photons m-2 s-1、好ましくは、30〜1000μmol photons m-2s-1、より好ましくは、50〜600μmol photons m-2 s-1の自然光又は人工光が用いられ得る。上記範囲であると、微細藻が光合成を行って順調に増殖し得る。光照射は、連続的であっても周期的であってもよい。屋外の大規模培養については、コストを最小限にし、かつ人工照明の追加費用を回避するために、明/暗周期を設けてもよい。
本発明のp-クマル酸の製造方法に関し、該方法は、上述の本発明の芳香族アミノ酸の製造方法により水性媒体中に分泌された芳香族アミノ酸を、当該水性媒体中で、p-クマル酸に直接変換してもよい。当該変換は、上述したような本発明の製造方法に好適なフェニルアラニンアンモニアリアーゼ、trans-ケイ皮酸-4-モノオキシゲナーゼ、チロシンアンモニアリアーゼ等をコードする遺伝子の発現が促進された微細藻や形質転換体により為されてもよく、当該水性媒体中に芳香族アミノ酸からp-クマル酸の変換に関与する酵素(例:フェニルアラニンアンモニアリアーゼ、trans-ケイ皮酸-4-モノオキシゲナーゼ、チロシンアンモニアリアーゼ等)を添加することで行ってもよい。
一般にp-クマル酸のようなフェノール性化合物は、微細藻の生育を阻害する物質として知られており、上記のように水性媒体中で芳香族アミノ酸をp-クマル酸に直接変換した場合、当該変換が進むにつれ、通常であれば、変換効率等が低下するが、本発明の製造方法のようにppGppを微細藻中に蓄積させる方法を採用した場合、微細藻のp-クマル酸への耐性が向上させることができ、ひいては変換効率の低下の回避に繋がるという効果を得ることができる。
また、本発明の芳香族アミノ酸の製造方法により製造された芳香族アミノ酸を回収、精製等し、例えば、上記芳香族アミノ酸からp-クマル酸の変換に関与する酵素を用いて、別途、変換してもよい。
p-クマル酸への変換において、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ、trans-ケイ皮酸-4-モノオキシゲナーゼ、チロシンアンモニアリアーゼ等をコードする遺伝子の発現が促進された微細藻や形質転換体を用いる場合、上記(4)(光独立栄養)本培養(対数増殖期において対数増殖抑制(ppGpp誘導開始))の間に、水性媒体中に分泌された芳香族アミノ酸をp-クマル酸に直接変換することができる。
以上の様な方法で産生された芳香族アミノ酸又はp-クマル酸は、必要に応じて、水性媒体から、自体公知の方法又は今後開発されるあらゆる分離、精製方法により分離、精製することができる。具体的には、限外ろ過膜分離、遠心分離、濃縮等により微細藻あるいは形質転換体、及びその産生物と分離した後、カラム法、晶析法等の公知の方法で精製し、乾燥させる事により、結晶として採取する方法等が挙げられる。本発明で、製造の対象となる芳香族アミノ酸としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、L-チロシン及びL-フェニルアラニンである。
本発明の製造方法により製造されるp-クマル酸は、芳香族系ポリマーの原料として利用することができる。
2.本発明の微細藻及び形質転換体
本発明の形質転換体としては、例えば、上記(A)〜(I)の本発明のタンパク質の少なくとも1種のタンパク質をコードする遺伝子の発現が促進されている、微細藻の形質転換体が挙げられる。また、該微細藻の形質転換体は、上記(J)〜(O)の本発明のタンパク質の少なくとも1種のタンパク質をコードする遺伝子の発現が更に促進されていてもよい。
上記「1.本発明の製造方法」において記載した内容は、全て「2.本発明の微細藻及び形質転換体」においても援用される。
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
実施例1 yjbM誘導発現株作製方法
枯草菌Bacillus subtilis 168由来のppGpp合成酵素であるyjbM遺伝子(Nanamiya H. et al., 2007, Mol. Microbiol.)をSynechococcus elongatus PCC 7942の染色体上のNeutral site I領域に導入した。S. elongatus染色体上への相同組換え領域としてNeutral site I、イソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(IPTG)による誘導発現用のlacI遺伝子、その下流にtrcプロモーターとlacO配列を含むプラスミドpNSHA(Watanabe S., et al., 2012, Mol. Microbiol)にyjbM遺伝子をIn-Fusion Cloning Kit (TAKARA)を用いてクローニングした。yjbM遺伝子の下流にはrrnBターミネーター配列、マーカ遺伝子としてスペクチマイシン耐性遺伝子が含まれる。得られたプラスミドよりNeutral site Iを両端に含む全長をPCR法によって増幅し、これをS. elongatusに形質転換し、yjbM誘導発現株を構築した。
Primers
[yjbM遺伝子増幅用]
yjbM-F: TTCGAGCTCCACCGCATGGATGACAAACAATGGGA(配列番号11)
yjbM-R: TGCCTGCAGGTCGACCTATTGTTGCTCGCTTCCT(配列番号12)
[プラスミドpNSHA増幅用]
Vec-F: GTCGACCTGCAGGCATGC(配列番号13)
Vec-R: GGATCCTGCATAGTCCGGGAC(配列番号14)
[Neutral site I増幅用]
7942NSI-F: CGCTCCGCATGGATCTGACC(配列番号15)
7942NSI-R: GCGCTGCTTTCTTGG(配列番号16)
実施例2 TAL誘導発現株作製方法
実施例1で得たyjbM誘導発現株のNeutral site II(N. F. Tsinoremas et al., 1996, EMBO J)にチロシンアンモニアリアーゼ(TAL遺伝子)を導入した。S. elongatus染色体上への相同組換え領域としてNeutral site IIを含むpUC19由来のプラスミドにTAL遺伝子と誘導発現用配列(lacI遺伝子-trcプロモーター-lacO配列)をIn-Fusion Cloning Kit (TAKARA)を用いてクローニングした。TAL遺伝子の下流にはSynechococcus sp. PCC 7002由来のrbcLターミネーター、マーカー遺伝子としてクロラムフェニコール耐性遺伝子が含まれる。得られたプラスミドよりNeutral site IIを両端に含む全長をPCRにより増幅し、これを上記のNSI::yjbM(S. elongatus)に形質転換しyjbM、TAL遺伝子同時誘導発現株を構築した。
人工遺伝子合成(チロシンアンモニアリアーゼ)
Primers
[LacI-Ptrc増幅用]
LacI-F: TGGGTCATTCCATGGCCATGGGTCGAGTTACGT(配列番号17)
Ptrc-R: CGTCTCAATAAACATGGTCTGTTTCCTGTGTGAA(配列番号18)
[TAL遺伝子増幅用]
TAL-F: ATGTTTATTGAGACGAATGTTG(配列番号19)
TAL-R: GGATTTATTTATTCTTCAGAACATTTTGCCCACAG(配列番号20)
[プラスミド増幅用]
Vec2-F: AGAATAAATAAATCCTGGTGTCCCTGTTGA(配列番号21)
Vec2-R: CCATGGAATGACCCACAAACTGC(配列番号22)
[Neutral site II増幅用]
7942NSII-F: CCGCCCTTGCTTTGGGC(配列番号23)
7942NSII-R: CAGTTCCAAGCAGCTGCGC(配列番号24)
実施例3 前々培養
実施例1において作製した株をBG-11寒天培地上で生育させ、生じたコロニーを白金耳で取り、BG-11液体培地(70 ml)に加え、pH7.8にて通気条件下、50 μmol photons m-2s-1で30℃にて9〜10日間培養した。
実施例4 前培養
実施例3で前々培養した株をOD750が0.1になるようBG-11液体培地(150 ml)に加え、pH7.8にて通気条件下、50 μmol photons m-2 s-1で30℃にて4〜5日間培養した。培養後のOD750は1〜1.5であった。
実施例5 本培養
実施例4で前培養した株をOD750が0.1になるようBG-11液体培地(70 ml)に加え、pH7.8にて1%(v/v)CO2条件下、120 μmol photons m-2 s-1で30℃にて3日間培養した。培養後のOD750は3〜4であった。本培養開始3日目の株に、Isopropyl-β-D-thiogalactopyranoside(終濃度1 mM)を添加した。添加後、24時間ごとに細胞と培養液を回収した。
実施例6 培養液の代謝物分析
実施例5で回収した1 mlの培養液を14,000 g、25℃にて10分間遠心分離し、上清を回収した。該回収した上清に等量のクロロホルムを添加し、よく攪拌後、フィルター(Millipore 3 kDa cut-off)を用いて上層を濾過した。濾過液をキャピラリー電気泳動/質量分析(CE/MS)(G7100/G6220; Aglilent Technologies)システムで分析した。分析の結果、1 mMのIPTGを添加した培養液において、L-バリン、L-スレオニン、L−システイン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-フェニルアラニン、及びL-チロシンが、IPTG未添加の培養液(対照)と比して、少なくとも2倍以上増加したことが確認された(図1)。特に、対照と比して、L-チロシンについては、3倍程度、L-フェニルアラニンについては、2.5倍程度、1 mMのIPTGを添加した培養液において増加した(図1)。
実施例7 細胞内の代謝物分析
実施例5において回収した培養液中に含まれる細胞(乾燥重量5 mg)をフィルター(polytetraluoroethilene膜、1μm孔径)で濾過し、4℃に冷却したメタノールに浸けた。フィルターを取り除き、4℃に冷却したクロロホルムと水を加え、よく攪拌し、フィルター(Millipore 3 kDa cut-off)を用いて上層を濾過した。濾過液をキャピラリー電気泳動/質量分析(CE/MS)システム(G7100/G6220; Aglilent Technologies)で分析した。分析の結果、IPTG未添加の培養液より得られた細胞(対照)と比して、1 mMのIPTGを添加した培養液より得られた細胞では、対照と比較して、ppGppの増加にともなってGDP及びGMPの増加がみられ、ATPが顕著に増加していた。また、対照と比して、RuBPについては30%程度低下し、FBPについては10倍程度増加した(図2)。該結果より、ヌクレオチド代謝が変化していることが示唆された。さらに、1 mMのIPTGを添加した培養液より得られた細胞では、L-バリン、L-スレオニン、L−システイン、L-イソロイシン、3PGA、L-ロイシン、L-フェニルアラニン、及びL-チロシンが、対照と比して、少なくとも2倍以上増加したことが確認された(図3及び4)。特に、対照と比して、L-チロシンについては、2倍程度、L-フェニルアラニンについては、1.5倍程度、1 mMのIPTGを添加した培養液より得られた細胞では増加した(図4)。
実施例8 顕微鏡観察
実施例5において24時間ごとに回収した細胞を4〜8倍に希釈し、蛍光顕微鏡で観察した(100倍拡大)(図5及び6)。その結果、IPTG添加後、細胞の肥大化が観察された(図5及び6)。該結果から、細胞内に誘導されたppGppが蓄積することで、該細胞の分裂が抑制される一方で、該細胞内の物質代謝は維持されることが示唆された。
実施例9 IPTG添加のタイミングの検討
実施例8の結果より、IPTGの添加により細胞内の物質代謝が維持されることが分かったので、本培養後のいずれのタイミングでIPTGを添加することが目的物質(例:p-クマル酸)の生産効率の観点から適しているのかを検討した。具体的には、実施例5と同様に、前培養した実施例2で作製した株をOD750が0.1になるようBG-11液体培地(70 ml)に加え、pH7.8にて1%(v/v)CO2条件下、120 μmol photons m-2s-1で30℃にて本培養を開始した。なお、OD750 = 0.1にて本培養を開始した時点を0時間とした。本培養開始から2、3、4、5及び6日目にIPTGを終濃度が1 mMとなるように添加した。添加後、13日目に至るまで24時間ごとに培養液を回収した。該回収した各培養液中のp-クマル酸の濃度とODを測定した。
測定の結果、3日目にIPTGを添加したものがp-クマル酸の生産効率が最も高く、次いで4日目に添加したものの効率が高かった(図7)。これらは、例えば、6日目に添加したものと比して、少なくとも4倍程度効率が良かった(図7)。また、細胞増殖に関しても、3又は4日目にIPTGを添加したものが、最も優れた結果となった(図7)。
実施例10 ppGpp蓄積によるp-クマル酸耐性の向上の検討
一般にフェノール性化合物(例:p-クマル酸)は、微藻類等の生育を阻害する物質として知られている。ppGppが細胞内に蓄積することで、該生育阻害に対して耐性を有するか否かについて、検討を行った。具体的には、実施例1で得られたyjbM誘導発現株を、実施例3〜5に記載のように培養した。本培養開始後72時間後に、IPTGを終濃度1 mMとなるように添加し、該添加から48時間経過後にp-クマル酸を、終濃度100 mg/lとなるように添加した。結果から分かるように、IPTGの添加によりppGppを誘導させた株ではp-クマル酸添加後も生育することができたが(図8)、一方、ppGppを誘導させなかった株ではp-クマル酸添加により生育が阻害された(図8)。該結果より、ppGppが細胞内に蓄積することで、フェノール性化合物であるp-クマル酸に対する耐性を獲得し得ることが示唆された。
本発明のグアノシン4リン酸(ppGpp)合成酵素をコードする遺伝子の発現を促進させた微細藻を用いた芳香族アミノ酸の製造方法、当該方法により製造された芳香族アミノ酸を用いたp-クマル酸の製造方法、グアノシン4リン酸(ppGpp)合成酵素及び/又は芳香族アミノ酸からp-クマル酸の生成に関与する酵素をコードする遺伝子の発現が促進された微細藻の形質転換体等は、バイオベースポリマーを提供することができるため有用である。

Claims (13)

  1. グアノシン4リン酸(ppGpp)合成酵素をコードする遺伝子の発現を促進させた微細藻を培養することを含む、芳香族アミノ酸の製造方法。
  2. 前記ppGpp合成酵素が、ppGpp又はpppGpp合成活性のみを有する、請求項1に記載の芳香族アミノ酸の製造方法。
  3. 前記遺伝子が、yjbM遺伝子、ywaC遺伝子、及びrelA遺伝子からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の芳香族アミノ酸の製造方法。
  4. 前記yjbM遺伝子及び/又はywaC遺伝子が選択される、請求項3に記載の芳香族アミノ酸の製造方法。
  5. 前記ppGpp合成酵素をコードする遺伝子が枯草菌(Bacillus subtilis)由来である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の芳香族アミノ酸の製造方法。
  6. 前記ppGpp合成酵素が、以下:
    (A)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
    (B)配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質、及び
    (C)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質、
    (D)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
    (E)配列番号4で表されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質、及び
    (F)配列番号4で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質、並びに
    (G)配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
    (H)配列番号6で表されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質、及び
    (I)配列番号6で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質
    からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の芳香族アミノ酸の製造方法。
  7. 前記芳香族アミノ酸が、L-フェニルアラニン及び/又はL-チロシンである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の芳香族アミノ酸の製造方法。
  8. 請求項1〜7に記載の製造方法により製造された芳香族アミノ酸を、p-クマル酸に変換することを含む、p-クマル酸の製造方法。
  9. 前記変換が、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ及びtrans-ケイ皮酸-4-モノオキシゲナーゼ並びに/又はチロシンアンモニアリアーゼによってなされる、請求項8に記載のp-クマル酸の製造方法。
  10. 前記微細藻が、さらにフェニルアラニンアンモニアリアーゼ及びtrans-ケイ皮酸-4-モノオキシゲナーゼ並びに/又はチロシンアンモニアリアーゼをコードする遺伝子の発現を促進させた微細藻である、請求項8又は9に記載のp-クマル酸の製造方法。
  11. 前記フェニルアラニンアンモニアリアーゼ及びチロシンアンモニアリアーゼが、以下:
    (J)配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
    (K)配列番号8で表されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、L-フェニルアラニンからtrans-ケイ皮酸の生成能及び/又はL-チロシンからp-クマル酸の変換能を有するタンパク質、及び
    (L)配列番号8で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、L-フェニルアラニンからtrans-ケイ皮酸の生成能及び/又はL-チロシンからp-クマル酸の変換能を有するタンパク質
    からなる群から選択される少なくとも1種のタンパク質である、請求項9又は10に記載のp-クマル酸の製造方法。
  12. 以下:
    (A)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
    (B)配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質、及び
    (C)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質、
    (D)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
    (E)配列番号4で表されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質、及び
    (F)配列番号4で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質、並びに
    (G)配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
    (H)配列番号6で表されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質、及び
    (I)配列番号6で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、ppGppの合成能を有するタンパク質
    からなる群から選択される少なくとも1種のタンパク質をコードする遺伝子の発現が促進されている、微細藻の形質転換体。
  13. 以下:
    (J)配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
    (K)配列番号8で表されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、L-フェニルアラニンからtrans-ケイ皮酸の生成能及び/又はL-チロシンからp-クマル酸の変換能を有するタンパク質、及び
    (L)配列番号8で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、L-フェニルアラニンからtrans-ケイ皮酸の生成能及び/又はL-チロシンからp-クマル酸の変換能を有するタンパク質、並びに
    (M)配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
    (N)配列番号10で表されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、trans-ケイ皮酸からp-クマル酸の生成能を有するタンパク質、及び
    (O)配列番号10で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、trans-ケイ皮酸からp-クマル酸の生成能を有するタンパク質
    からなる群から選択される少なくとも1種のタンパク質をコードする遺伝子の発現
    がさらに促進されている、請求項12に記載の微細藻の形質転換体。
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