JP2015073469A - 微細藻の生育機能を増強する方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】細胞密度を増大させることができるように、微細藻の増殖能を高める方法を提供すること。
【解決手段】微細藻の生育機能を増強する方法であって、微細藻のNADPH−O2オキシドレダクターゼを増強する工程を含む方法が開示される。上記生育機能は、光合成能、細胞増殖能、および糖類生産能を包含する。
【選択図】なし
【解決手段】微細藻の生育機能を増強する方法であって、微細藻のNADPH−O2オキシドレダクターゼを増強する工程を含む方法が開示される。上記生育機能は、光合成能、細胞増殖能、および糖類生産能を包含する。
【選択図】なし
Description
本発明は、微細藻の生育機能を増強する方法に関する。
近年、再生可能エネルギーの1つとして、デンプンおよびセルロースなどの糖質系バイオマスからの燃料および化学品の生産が期待されている。
微細藻類は、光を利用してCO2から糖質エネルギーを生産することが可能であり、水生であることから、食糧や土地利用との競合を回避することができ、バイオエネルギー生産に有望な生体システムとして注目されている。
しかし、バイオ燃料の製造に共通する課題は、大量生産を可能にし、そして価格を安くすることにある。このため、生産性効率向上が求められているが、微細藻類を利用する場合の大きな課題の1つが、細胞密度が低い点である。
そこで、発明者らは、微細藻類の光合成評価システムを開発し(非特許文献1および2)、微細藻類の増殖性を決定する因子を特定および強化することにより、細胞密度を増大させる方法を模索している。
微細藻類の増殖性に係る因子としては、シアノバクテリアの1種であるシネコシスティスPCC6803種(Synechocystis sp. PCC6803)において、フラボジアイロンタンパク質(Flavodiiron protein)であるFlv1およびFlv3のそれぞれを欠損させた場合、変動光下での細胞増殖および光合成が阻止されたことが報告されている(特許文献1)。
Hasunuma Tら, 2010, J Exp Bot 61: 1041-1051
Hasunuma Tら, 2013, J Exp Bot 64: 2943-2954
Allahverdiyeva Yら, 2013, PNAS 110: 4111-4116
本発明は、細胞密度を増大させることができるように、微細藻の増殖能を高める方法を提供することを目的とする。
本発明は、微細藻の生育機能を増強する方法を提供し、この方法は、微細藻のNADPH−O2オキシドレダクターゼを増強する工程を含む。
1つの実施形態では、上記生育機能は、光合成能、細胞増殖能、および糖類生産能から選択される少なくとも1つである。
1つの実施形態では、上記増強する工程は、NADPH−O2オキシドレダクターゼを発現または発現増強するように微細藻を形質転換する工程を含む。
1つの実施形態では、上記NADPH−O2オキシドレダクターゼは、フラボジアイロンタンパク質である。
1つの実施形態では、上記フラボジアイロンタンパク質は、Flv3である。
本発明はさらに、生育機能が増強された微細藻を作製する方法を提供し、この方法は、NADPH−O2オキシドレダクターゼを発現または発現増強するように微細藻を形質転換する工程を含む。
1つの実施形態では、上記生育機能は、光合成能、細胞増殖能、および糖類生産能から選択される少なくとも1つである。
1つの実施形態では、上記NADPH−O2オキシドレダクターゼは、フラボジアイロンタンパク質である。
1つの実施形態では、上記フラボジアイロンタンパク質は、Flv3である。
本発明はまた、Flv3を発現増強するように形質転換された微細藻を含む、グリコーゲン含量が高められた加工バイオマス材を提供する。
本発明によれば、微細藻の生育機能、例えば、光合成能、細胞増殖能および糖類生産能を向上させることができる。このような生育機能が向上した微細藻を用いることにより、バイオエネルギーの生産を向上させ得る。
「微細藻」は、葉緑素(クロロフィル)を持ち、光合成を行う微生物である。微細藻は、光合成によって、大気中の二酸化炭素(CO2)を固定化して糖類(例えば、グリコーゲン)を合成し、他方、水(H2O)から酸素(O2)を発生させ得る(「酸素発生型光合成」ともいう)。微細藻は、単細胞形態を有するものであってもよく、またはコロニー形態(例えば、フィラメント、シートまたはボール)を有するものであってもよい。微細藻は、海洋または淡水のいずれで繁殖するものであってもよい。
微細藻は、原核生物のシアノバクテリア(ラン藻類)および真核生物(例えば、緑藻類、珪藻類、渦鞭毛藻、紅藻、プラシノ藻、ユーグレナ藻、真正眼点藻など)の両方を包含する。シアノバクテリア(ラン藻類)としては、シネコシスティス属(Synechocystis)、アルスロスピラ属(Arthrospila)、スピルリナ属(Spirulina)、アナベナ属(Anabaena)、シネココッカス属(Synechococcus)、サーモシネココッカス属(Thermosynechococcus)、ノストック属(Nostoc)、プロクロロコッカス属(Prochlorococcu)、ミクロシスティス属(Microcystis)、グロエオバクター属(Gloeobacter)などが挙げられる。真核生物としては、クラミドモナス属(Chlamydomonas)、クロレラ属(Chlorella)、ドナリエラ属(Dunaliella)、ヘマトコッカス属(Hematococcus)、ボルボックス属(Volvox)、ボトリオコッカス属(Botryococcus)などの緑藻類;リゾソレニア属(Rhizosolenia)、ケトセロス属(Chaetoceros)、シクロテラ属(Cyclotella)、シリンドロテカ(Cylindrotheca)、ナビクラ属(Navicula)、フェオダクチラム属(Phaeodactylum)、タラシオシラ属(Thalassiosira)、フィッツリフェラ属(Fistulifera)などの珪藻類;アンフィジニウム属(Amphidinium)、シンビオジニウム属(Symbiodinium)などの渦鞭毛藻;シアニディオシゾン属(Cyanidioschyzon)、ポルフィリジウム属(Phorphyridium)などの紅藻;オストレオコッカス属(Ostreococcus)などのプラシノ藻;ユーグレナ属(Euglena)などのユーグレナ藻;ナンノクロロプシス属(Nannochloropsis)などの真正眼点藻などが挙げられる。例えば、微細藻類の微生物種としては、シネコシスティスPCC6803種(Synechocystis sp. PCC6803)、アルスロルピラ・プラテンシス(Arthrospila platensis)(「スピルリナ(Spirulina)」とも称される)、スピルリナ・マキシマ(Spirulina maxima)、スピルリナ・サブサルサ(Spirulina subsalsa)、アナベナPCC7120種(Anabaena sp. PCC7120)、クラミドモナス(Chlamydomonas reinhardii)、クラミドモナス種(Chlamydomonas sp.)、クロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)、クロレラ・ピレノイドーサ(Chlorella pyrenoidosa)、ドナリエラ・サリナ(Dunaliella salina)、ドナリエラ種(Dunaliella sp.)、ヘマトコッカス・プルビアリス(Hematococcus pluvialis)、ボルボックス・カルテリ(Volvox carteri)、ボトリオコッカス・ブラウニイ(Botryococcus braunii)、シクロテラ・クリプティカ(Cyclotella cryptica)、シリンドロテカ・フジフォルミス(Cylindrotheca fusiformis)、ナビクラ・サプロフィラ(Navicula saprophila)、フェオダクチラム・トリコルヌツム(Phaeodactylum tricornutum)、タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira psudonana)、フィッツリフェラ種(Fistulifera sp.)、アンフィジニウム種(Amphidinium sp.)、シンビオジニウム・ミクロアドリアチクム(Symbiodinium microadriaticum)、シアニディオシゾン・メロレ(Cyanidioschyzon merolae)、ポルフィリジウム種(Phorphyridium sp.)、オストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri)、ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)、ナンノクロロプシス・オキュラタ(Nannochloropsis oculata)などが挙げられる。
「NADPH−O2オキシドレダクターゼ」とは、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)を酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)に変換し、かつ酸素(O2)から水(H2O)を生成することを触媒する酵素である。当該酵素は、微細藻類が保有する光合成光化学系Iにおいて、還元型フェレドキシンからの電子伝達によりNADP+からの変換により生じたNADPHを再度NADP+に変換し、かつ酸素から水を生成し得る。
「微細藻の生育機能を増強」とは、増強されていない(従来の)微細藻と比較して生育機能が高められることをいう。より詳細には、「生育機能」とは、微細藻の一連の生育(例えば、成長から死滅に至るまで)において、当該微細藻内で起こる生物学的機能全般をいい、例えば、光合成能、細胞増殖能(本明細書中において、単に「増殖能」とも称する)、および糖類生産能を包含する。「生育機能を増強」とは、このような生物学的機能の1つまたはそれ以上が高められることをいい、それ以外の生物学的機能に変化が生じていなくてもよい。1つの実施形態では、「生育機能が増強された微細藻」は、増強されていない微細藻と比較して、光合成能、増殖能、および糖類生産能の1つ以上が高められている。なお、本明細書における用語「光合成能」は、光合成産物の生産効率をいい、例えば、光合成速度および光合成産物(例えば、糖類およびO2)量の測定によって評価され得る。光合成能評価のための測定手段として、例えば、非特許文献1および2に記載の方法および装置が用いられ得る。
「微細藻の生育機能を増強」は、微細藻のNADPH−O2オキシドレダクターゼを増強することによってなされ得る。微細藻のNADPH−O2オキシドレダクターゼを増強するために、1つの実施形態では、NADPH−O2オキシドレダクターゼを発現または発現増強するように微細藻を形質転換することがなされ得る。
NADPH−O2オキシドレダクターゼとしては、例えば、フラボジアイロンタンパク質(「FLV」または「Flv」とも称され得る)が挙げられる。
1つの実施形態では、フラボジアイロンタンパク質としては、例えば、Flv3、Flv1などが挙げられる。フラボジアイロンタンパク質は、上記微細藻に由来するものが挙げられる。Flv3およびFlv1は、光合成光化学系IにおけるO2の光還元に関与している。例えば、Flv3としては、上記微細藻に由来するものが挙げられる。例えば、微細藻の形質転換のために、シネコシスティスPCC6803種(Synechocystis sp. PCC6803)由来のflv3遺伝子(sll0550:コード領域の塩基配列およびアミノ酸配列を配列番号1および2に示す)が用いられ得る。
本発明で用いられる遺伝子は、NADPH−O2オキシドレダクターゼの活性(例えば、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)を酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)に変換し、かつ酸素(O2)から水(H2O)を生成することを触媒)を有する限りにおいて、データベースなどにおいて開示される配列情報または本願明細書中に具体的に記載された各種遺伝子の配列と一定の関係を有するタンパク質をコードする遺伝子であってもよい。このような実施形態としては、開示されたアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、本発明において発現または発現増強しようとする酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。開示されるアミノ酸配列に対するアミノ酸の変異は、すなわち、欠失、置換もしくは付加は、いずれか1種類であってもよいし、2種類以上が組み合わされていてもよい。また、これらの変異の総数は、特に限定されないが、例えば、1個以上10個以下程度、または1個以上5個以下である。アミノ酸置換の例としては、各酵素活性を有する限りにおいていずれの置換であってもよいが、例えば、保存的置換が挙げられ、具体的には以下のグループ内(すなわち、括弧内に示すアミノ酸間)での置換が挙げられる:(グリシン、アラニン)(バリン、イソロイシン、ロイシン)(アスパラギン酸、グルタミン酸)(アスパラギン、グルタミン)(セリン、トレオニン)(リジン、アルギニン)(フェニルアラニン、チロシン)。
他の実施形態としては、本発明で用いられる遺伝子は、開示されるアミノ酸配列に対して、例えば、70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ本発明において発現または発現増強しようとする酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。配列同一性はまた、74%以上、78%以上、80%以上、85%以上、90%以上、92%以上、95%以上、98%以上、または99%以上であり得る。
本明細書において配列の同一性または類似性とは、当該技術分野で知られているとおり、配列を比較することにより決定される、2以上のタンパク質あるいは2以上のポリヌクレオチドの間の関係である。配列の「同一性」とは、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間のアラインメントによって、あるいは場合によっては、一続きの部分的な配列間のアラインメントによって決定されるような、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の配列不変性の程度を意味する。また、「類似性」とは、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間のアラインメントによって、あるいは場合によっては、一続きの部分的な配列間のアラインメントによって決定されるような、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の相関性の程度を意味する。より具体的には、配列の同一性と保存性(配列中の特定アミノ酸または配列における物理化学特性を維持する置換)によって決定される。なお、類似性は、後述するBLASTの配列相同性検索結果においてSimilarityと称される。同一性および類似性を決定する方法は、対比する配列間で最も長くアラインメントするように設計される方法であることが好ましい。同一性および類似性を決定するための方法は、公衆に利用可能なプログラムとして提供されている。例えば、AltschulらによるBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)プログラム(例えば、Altschulら, J. Mol. Biol.,1990,215:403-410;Altschylら,Nucleic Acids Res., 1997,25:3389-3402)を利用し決定することができる。BLASTのようなソフトウェアを用いる場合の条件は、特に限定するものではないが、デフォルト値を用いるのが好ましい。
さらに他の実施形態として、開示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズする遺伝子が挙げられる。ストリンジェントな条件とは、例えば、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、塩基配列の同一性が高い核酸、すなわち開示される塩基配列と例えば、65%以上、70%以上、75%以上、78%以上、80%以上、85%以上、90%以上、92%以上、95%以上、98%以上、または99%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNAの相補鎖がハイブリダイズし、それより相同性が低い核酸の相補鎖がハイブリダイズしない条件が挙げられる。より具体的には、ナトリウム塩濃度が例えば、15〜750mM、50〜750mM、または300〜750mM、温度が例えば、25〜70℃、50〜70℃、または55〜65℃、ホルムアミド濃度が例えば、0〜50%、20〜50%、または35〜45%での条件をいう。さらに、ストリンジェントな条件では、ハイブリダイゼーション後のフィルターの洗浄条件が、ナトリウム塩濃度が例えば、15〜600mM、50〜600mM、または300〜600mM、温度が例えば50〜70℃、55〜70℃、または60〜65℃である。さらなる他の実施形態として、開示される塩基配列と例えば、65%以上、70%以上、75%以上、78%以上、80%以上、85%以上、90%以上、92%以上、95%以上、98%以上、または99%以上の同一性を有する塩基配列を有し、本発明で発現または発現増強しようとする酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAを含む遺伝子が挙げられる。
このような遺伝子は、例えば、開示されるまたは公知の塩基配列に基づいて設計したプライマーを用いて、各種生物から抽出したDNA、各種cDNAライブラリーまたはゲノムDNAライブラリー等由来の核酸を鋳型としたPCR増幅を行うことにより、核酸断片として得ることができる。また、上記ライブラリーなどに由来する核酸を鋳型とし、本発明で発現または発現しようとする酵素をコードする遺伝子の一部であるDNA断片をプローブとしてハイブリダイゼーションを行うことにより、核酸断片として得ることができる。あるいは遺伝子は、化学合成法等の当技術分野で公知の各種の核酸配列合成法によって、核酸断片として合成してもよい。
また、遺伝子は、例えば、開示されるまたは公知のアミノ酸の配列をコードするDNAを、慣用の突然変異誘発法、部位特異的変異法、エラープローンPCRを用いた分子進化的手法等によって改変することによって取得することができる。このような手法としては、Kunkel法または Gapped duplex法等の公知手法またはこれに準ずる方法が挙げられ、例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant-K(タカラバイオ株式会社製)やMutant-G(タカラバイオ株式会社製))などを用いて、あるいは、タカラバイオ株式会社のLA PCR in vitro Mutagenesisシリーズキットを用いて変異が導入される。
遺伝子は、宿主微生物での発現を最適にするように、コドンが最適化されてもよい。コドンの最適化は、当業者が通常用いる任意の手段、装置を用いて実施され得る。
宿主微生物において、NADPH−O2オキシドレダクターゼをコードする遺伝子の発現が増強されている形態は特に限定されない。これら遺伝子の発現を増強する改変が行われる前に比べて、これらのタンパク質の生産量または活性の増大が確認されればよい。遺伝子の発現が増強されている実施形態としては、例えば、内因性のいずれかの遺伝子がより強力なプロモーター(構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターのいずれであってもよい)の制御下に連結された実施形態が挙げられる。また、追加的に内因性および/または外因性のいずれかの遺伝子が導入されている実施形態が挙げられる。追加的に導入されたいずれかの遺伝子は、好ましくは構成的プロモーターなど強力なプロモーターで作動可能に保持されている。発現の増強について、本明細書中においては「過剰発現」ともいう。
NADPH−O2オキシドレダクターゼをコードする遺伝子は、組換え用構築物として提供され得る。このような構築物は、例えば、当該遺伝子に作動可能に連結されたプロモーターを含む。
プロモーターとしては、微細藻にて機能する任意のプロモーターが用いられ得る。例えば、微細藻がシアノバクテリア(ラン藻類)の場合、ラン藻に由来し得るsbDII、psbA3、psbA2、nirA、petE、nrsRS、nrsABCD、ndhF3、rbcX、glnA、atp1、atp2、petF1などのプロモーターが挙げられる。真核生物の場合、例えば、緑藻などを含む高等植物に由来し得るrbcS2、psbA、atpB、チューブリン遺伝子、グルタミン酸脱水素酵素遺伝子などのプロモーターが挙げられる。プロモーターは、微細藻および細菌(大腸菌など)の両方において効率的に機能し得るものであってもよい。プロモーターは、NADPH−O2オキシドレダクターゼをコードする遺伝子に作動可能に連結され得る。緑藻などの真核生物の形質転換としては、核形質転換法および葉緑体形質転換法が用いられ得、葉緑体形質転換法においては、シアノバクテリア用のプロモーターもまた用いることができる。
構築物は、限定するものではないが、発現を目的とする遺伝子の非翻訳領域からのさらなるポリヌクレオチド分子を含むことができる。これらのさらなるポリヌクレオチド分子は、構築物に存在する他の配列に対して天然または異種の供給源由来であり得る。
構築物は、発現ベクターまたは染色体組込み型ベクター(例えば、相同組換え型ベクター)とすることもできる。このようなベクターの調製に用いられるプラスミドとしては、微細藻(あるいは微細藻および細菌の両方)で発現可能なプラスミドであれば特に制限はない。染色体組込み型ベクター(例えば、相同組換え型ベクター)では、微細藻にて複製可能なプラスミドが用いられ得る。発現ベクターまたは染色体組込み型ベクターは、上記のような遺伝子およびプロモーターに加え、形質転換株を選択する観点から、抗生物質耐性などの選択マーカーを有することが好ましい。染色体組込み型ベクターは、宿主のゲノムと配列同一性のある2つの領域を有し、該2つの領域間に、発現目的の遺伝子およびプロモーターを作動可能に連結したもの、および必要に応じて選択マーカーを配置し得る。このようなベクターには、調節因子をさらに付加することもできる。調節因子としては、例えば、リーダーペプチド、プロペプチド、エンハンサー、ターミネーターなどが挙げられる。これらの調節因子は、微細藻で機能するものであれば、その由来は特に制限はない。
上記遺伝子を微細藻に導入するためのプラスミドベクターの一例は、pTCP2031Vベクターである。pTCP2031Vベクターは、psbA2(slr1311)プロモーター、およびslr2030およびslr2031のコード領域の一部(相同組換え用プラットフォームとして)、およびクロラムフェニコール耐性カセットを含む組換えプラスミドである(Satoh Sら, 2001, J. Biol. Chem. 276, 4293-4297;Horiuchi Mら, 2010, Biochem. J. 431, 135-140)。
組換え用構築物、例えば、上記のように調製された発現ベクターまたは染色体組込み型ベクターを、宿主微細藻に導入し、形質転換微細藻を調製することができる。
形質転換微細藻(特にシアノバクテリア)の形質転換には、多くの場合、遺伝子相同組換え法が用いられ得る。遺伝子相同組換え法のために、例えば、pTCP2031Vベクターが好適に用いられ得る。
形質転換のための発現ベクターまたは複製可能なプラスミドの導入は、任意の公知の方法を用いて行われ得る。導入方法としては、例えば、エレクトロポレーション法、プロトプラスト−PEG法、マイクロインジェクション法、パーティクル・ガン法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、カルシウムイオン法などが挙げられる。
形質転換株は、遺伝子導入に用いられた発現ベクターまたは染色体組込み型ベクターが有する選択マーカーなどを利用して選択される。宿主微生物それぞれに適した培地に、選択マーカーに応じた抗生物質または薬剤を添加し、選択圧とする。このような選択用培地として、微細藻の生育に適した任意の培地が用いられ得、例えば、BG-11寒天培地(例えば、Rippka Rら, 1979, J Gen Microbiol 111: 1-61に記載される:シアノバクテリアに用いられ得る);HSM寒天培地およびTAP寒天培地(これらは、例えば、福澤ら、2009,低温科学,67:17-21に記載される:緑藻などの真核生物に用いられ得る)などが挙げられる。まずこの選択マーカーに基づき形質転換体の選抜を行い、次いで、目的とする遺伝子(すなわち、NADPH−O2オキシドレダクターゼ遺伝子)またはその産物の発現を解析することにより、形質転換体の選抜を行うことができる。NADPH−O2オキシドレダクターゼ発現産物は、例えば、ウェスタンブロット法によって確認することができる。
形質転換微細藻は、非形質転換微細藻と比較して、光合成能、増殖能、および糖類生産能の1つ以上が高められたものであり得る。
形質転換微細藻は、液体培養することにより、該生物内で、導入されたNADPH−O2オキシドレダクターゼ遺伝子の産物である酵素を発現または過剰発現させることができる。形質転換微細藻の培養には、通常の微細藻を培養可能な公知の方法が適用され得る。培養容器を継代ごとに大きくすることにより、大量培養を行うことができる。培養時には、藻体が沈殿しない程度に攪拌しながら、光照射下で通気培養することが好ましい。
培養液としては、微細藻を増殖させることができる液体培地であれば特に制限されない。培養液としては、微細藻に応じて、人工または天然の海水、あるいは淡水(例えば、蒸留水)を用いてもよい。これらは、予め滅菌(除菌)処理(例えば、オートクレーブ、濾過滅菌、薬品を用いる滅菌)を施して、藻体の成長を妨げる有害菌を無害化し得る。
培養液中の成分として、微細藻の培養において重要な成分元素である窒素(N)およびリン(P)、または珪藻の場合はさらにケイ素(Si)を適宜追加してもよい。これらの元素を含む化合物としては、微細藻の培養に一般的に用いられる化合物が用いられる。窒素を含む化合物としては、アンモニウム塩(例えば、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウムなど)、硝酸塩(例えば、硝酸ナトリウム、硝酸カリウムなど)が用いられる。リンを含む化合物としては、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウムなどが挙げられる。窒素およびリン酸を含む化合物、例えば、リン酸アンモニウムなども用いられる。ケイ素を含む化合物としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムなどが挙げられる。これらの化合物は例示であり、これらに制限されない。
さらに、培養液中には、必要に応じて、微細藻の培養に通常用いられる微量金属類(例えば、Fe、Cu、Zn、Co、Mn、Mo、Ca、Mgなど)、ビタミン(ビタミンB12、ビオチンなど)などが添加され得る。
例えば、BG-11培地(例えば、Rippka Rら, 1979, J Gen Microbiol 111: 1-61に記載される:シアノバクテリアに用いられ得る);HSM培地およびTAP培地(これらは、例えば、福澤ら、2009,低温科学,67:17-21に記載される:緑藻などの真核生物に用いられ得る)などが使用できる。さらに、以下の表1に示す組成の培地が用いられ得る。
培養液のpHは、微細藻の増殖に適した任意のpHが用いられ得る。培養液のpHは、例えば、5〜10、好ましくは、6〜9、より好ましくは、6〜8である。
光照射条件としては、培養液中の藻体濃度および培養槽の深さによって、適宜調節することができる。例えば、30〜2000μmol m-2 s-1、好ましくは、30〜1000μmol m-2 s-1、より好ましくは、50〜600μmol m-2 s-1の自然光または人工光が用いられ得る。上記範囲であると、微細藻が光合成を行って順調に増殖し得る。光条件は、連続的であっても周期的であってもよい。屋外の大規模培養については、コストを最小限にし、かつ人工照明の追加費用を回避するために、明/暗周期を設けてもよい。
培養温度としては、微細藻の増殖に適した任意の温度が用いられ得る。培養温度は、例えば、15℃〜40℃、好ましくは、20℃〜35℃、より好ましくは、25℃〜35℃である。
培養期間は、特に制限されない。微細藻の増殖が阻害されない培養条件を維持できる限り、培養を継続することができる。培養液に接種後、例えば、3日〜60日程度の培養期間で回収され得る。培養期間としては、好ましくは、3日〜14日、より好ましくは、3日〜10日である。
培養中の二酸化炭素濃度としては、例えば、0.04(v/v)%〜20(v/v)%、好ましくは、0.04(v/v)%〜10(v/v)%、より好ましくは、0.1(v/v)%〜2(v/v)%である。培養は、例えば、上記濃度の二酸化炭素を含む空気を培養液に通気することにより行われ得る。
培養工程の実施により、形質転換微細藻は、糖類(例えば、グリコーゲン)を蓄積し得る。培養終了後、藻体が培養液から回収され得る。さらに、藻体から糖類を分離または濃縮し、そして必要に応じて酵素処理し得る。回収された藻体または糖類は、例えば、エタノールなどのバイオ燃料の製造のための材料として用いられ得る。
1つの実施形態では、形質転換微細藻(例えば、Flvを発現増強するように形質転換された微細藻)は、グリコーゲン含量が高められている。このようなグリコーゲン含量が高められた微細藻は、例えば、バイオマス原料として有用である。グリコーゲン含量が高められるように加工されたバイオマスとして、形質転換微細藻を利用し得る。よって、本発明は、形質転換微細藻を含む、グリコーゲン含量が高められた加工バイオマス材もまた提供する。
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1:Flv3過剰発現株の調製)
シネコシスティスPCC6803種(Synechocystis sp. PCC6803)グルコース耐性(GT)株(Williams JGK, 1988, Methods Enzymol 167: 766-778)から抽出したゲノムDNAから、フォワードプライマー(5’-GGAATTATAACCATAATGTTCACTACCCCCCTCCC-3’:配列番号3)およびリバースプライマー(5’-GGCATGGAGGACATATTAGTAATAATTGCCGACTT-3’:配列番号4)を用いて、flv3(sll0550)コード領域をPCRにより増幅した。
シネコシスティスPCC6803種(Synechocystis sp. PCC6803)グルコース耐性(GT)株(Williams JGK, 1988, Methods Enzymol 167: 766-778)から抽出したゲノムDNAから、フォワードプライマー(5’-GGAATTATAACCATAATGTTCACTACCCCCCTCCC-3’:配列番号3)およびリバースプライマー(5’-GGCATGGAGGACATATTAGTAATAATTGCCGACTT-3’:配列番号4)を用いて、flv3(sll0550)コード領域をPCRにより増幅した。
得られた1.7kb増幅断片を、In-Fusion Cloning Kit(Clonetech社製、タカラバイオ株式会社より入手)を用いてNdeI消化pTCP2031Vベクターに挿入した。pTCP2031Vベクターは、psbA2(slr1311)プロモーター、およびslr2030およびslr2031のコード領域の一部(相同組換え用プラットフォームとして)、およびクロラムフェニコール耐性カセットを含む組換えプラスミドである(Satoh Sら, 2001, J. Biol. Chem. 276, 4293-4297;Horiuchi Mら, 2010, Biochem. J. 431, 135-140)。
得られたプラスミドpTCP2031Vベクター(flv3コード領域を含む)によりGT株を形質転換した。コントロールとして、空ベクター(flv3コード領域を含まないプラスミドpTCP2031Vベクター)での形質転換を行った。形質転換細胞を、34μg mL-1 クロラムフェニコールを含むBG-11寒天平板(Rippka Rら, 1979, J Gen Microbiol 111: 1-61)上にストリークして植菌した。
(ゲル電気泳動およびイムノブロット分析)
細胞タンパク質を5%ラウリル硫酸リチウムおよび75mMジチオトレイトール中に可溶化した。可溶化された試料をTris/Mesシステム(Kashino Yら, 2001, Electrophoresis 22: 1004-1007)中の18%ポリアクリルアミド/6M尿素ゲルに載せた。電気泳動後、タンパク質をフッ化ポリビニリデン(PVDF)膜上にブロットし、ウサギ抗Flv3抗体と反応させ、そしてアルカリホスファターゼ結合ヤギ抗ウサギIgG抗体(Promega社製)とのインキュベーション後に5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-リン酸/ニトロブルーテトラゾリウムによって可視化した。
細胞タンパク質を5%ラウリル硫酸リチウムおよび75mMジチオトレイトール中に可溶化した。可溶化された試料をTris/Mesシステム(Kashino Yら, 2001, Electrophoresis 22: 1004-1007)中の18%ポリアクリルアミド/6M尿素ゲルに載せた。電気泳動後、タンパク質をフッ化ポリビニリデン(PVDF)膜上にブロットし、ウサギ抗Flv3抗体と反応させ、そしてアルカリホスファターゼ結合ヤギ抗ウサギIgG抗体(Promega社製)とのインキュベーション後に5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-リン酸/ニトロブルーテトラゾリウムによって可視化した。
図1は、シネコシスティスPCC6803種グルコース耐性株(GT)、Flv3過剰発現株(Flv3ox)および空ベクター形質転換株(ベクターコントロール)のイムノブロット分析の結果を示す電気泳動写真を示す。イムノブロット分析の結果、Flv3過剰発現株(Flv3ox)に強いFlv3のバンドが観察され、本株におけるFlv3発現増強を確認することができた。
(実施例2:Flv3過剰発現株の増殖速度)
シネコシスティスPCC6803株(野生型株:WT)およびFlv3過剰発現株(Flv3ox)を、BG-11液体培地(Rippka Rら, 1979, J Gen Microbiol 111: 1-61)中で増殖させた。NC350-HCプラントチャンバー(株式会社日本医化器械製作所製)内にて、BG-11培地を含有する500mLフラスコ中で、30℃にて100rpm撹拌下、白色光(光強度(光量子束密度):50μmol m-2 s-1、終日照射)連続照射下で細胞を前培養した。密閉二重壁フラスコ内で培養を行った。このフラスコは、所望のCO2濃度を得るために適切なpHにて50mLの2M NaHCO3/Na2CO3緩衝液を含有する第一ステージ(Flores Eら, 1983, Biochim Biophys Acta 725: 529-532;Deng Yら, 2003, Plant Cell Physiol 44: 534-540)および70mLのBG-11培養培地を含有する第二ステージを有した。
シネコシスティスPCC6803株(野生型株:WT)およびFlv3過剰発現株(Flv3ox)を、BG-11液体培地(Rippka Rら, 1979, J Gen Microbiol 111: 1-61)中で増殖させた。NC350-HCプラントチャンバー(株式会社日本医化器械製作所製)内にて、BG-11培地を含有する500mLフラスコ中で、30℃にて100rpm撹拌下、白色光(光強度(光量子束密度):50μmol m-2 s-1、終日照射)連続照射下で細胞を前培養した。密閉二重壁フラスコ内で培養を行った。このフラスコは、所望のCO2濃度を得るために適切なpHにて50mLの2M NaHCO3/Na2CO3緩衝液を含有する第一ステージ(Flores Eら, 1983, Biochim Biophys Acta 725: 529-532;Deng Yら, 2003, Plant Cell Physiol 44: 534-540)および70mLのBG-11培養培地を含有する第二ステージを有した。
前培養細胞を1.26mg乾燥細胞重(DCW)L-1のバイオマス濃度(750nmでの光学密度(OD750)が0.04であった)にて新鮮な培地に接種し、白色光(光強度:120μmol m-2 s-1 :終日照射)での連続照射、かつ30±2℃にて100rpm撹拌下0.5%(v/v)または1%(v/v)CO2下で培養した。
LI-190SA光量子センサー(LI-COR社製)を備えたLI-250A照度計(LI-COR社製)を用いて培地の中央部にて光強度を測定した。乾燥細胞重とShimadzu UV mini spectrophotometer(紫外可視分光光度計:株式会社島津製作所製)を用いてOD750にて測定した光学密度との間で線形相関が得られたため、細胞密度を培地内の乾燥細胞重として決定した。平板培養のために、BG-11を1.5%(w/v)寒天(BD Biosciences社製)を用いて固形化し、そして連続白色光(光強度:50〜70μmol m-2 s-1)下、30℃の外気中でインキュベートした。
図2は、CO2濃度が0.5%(v/v)および1%(v/v)の場合の白色光連続照射下でのシネコシスティスPCC6803種グルコース耐性株(野生型:WT)およびFlv3過剰発現株(Flv3ox)の増殖の経日変化を示すグラフである。図中、白丸はFlv3過剰発現株を表し、そして黒丸は野生型株を表す。どちらのCO2濃度下でも、Flv3過剰発現株(Flv3ox)が野生型株(WT)よりも高い増殖を示した。また、Flv3過剰発現株の増殖は、1%(v/v)CO2濃度において、0.5%(v/v)CO2濃度よりも促進されていた。
以下の実施例においては、1%(v/v)CO2濃度の培養条件を用いた。
(実施例3:Flv3過剰発現株の光合成および糖類生産)
シネコシスティスPCC6803種グルコース耐性株(野生型株:WT)およびFlv3過剰発現株(Flv3ox)をそれぞれ以下の手順に供した。
シネコシスティスPCC6803種グルコース耐性株(野生型株:WT)およびFlv3過剰発現株(Flv3ox)をそれぞれ以下の手順に供した。
(代謝プロフィール分析)
シアノバクテリア細胞(5mg乾燥重に等価)培養フラスコから取り出し、1μm孔径Omnipore PTFEフィルターディスク(Millipore社製)を用いて濾過した。4℃に予冷した20mM炭酸アンモニウムで洗浄後すぐに、フィルター上に保持された細胞を、質量分析用標準物質として190nM (+)-10-カンファースルホン酸、31μM L-メチオニンスルホン、および31μM ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)を含有する2mLの予冷(−30℃)メタノール中に入れた。非特許文献2に記載の通り、細胞内代謝物を抽出し、そしてキャピラリー電気泳動/質量分析(CE/MS)システム(CE:Agilent G7100;MS,Agilent G6224AA LC/MSD TOF; Agilent Technologies社製)およびMassHunter Workstation Data Acquisitionソフトウェア(Agilent Technologies社製)により制御される液体クロマトグラフィー−トリプル四重極質量分析(LC/QqQ−MS)システム(LC:Agilent 1200 series;MS,Agilent 6460 with Jet Stream Technology;Agilent Technologies社製)を用いて分析した。
シアノバクテリア細胞(5mg乾燥重に等価)培養フラスコから取り出し、1μm孔径Omnipore PTFEフィルターディスク(Millipore社製)を用いて濾過した。4℃に予冷した20mM炭酸アンモニウムで洗浄後すぐに、フィルター上に保持された細胞を、質量分析用標準物質として190nM (+)-10-カンファースルホン酸、31μM L-メチオニンスルホン、および31μM ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)を含有する2mLの予冷(−30℃)メタノール中に入れた。非特許文献2に記載の通り、細胞内代謝物を抽出し、そしてキャピラリー電気泳動/質量分析(CE/MS)システム(CE:Agilent G7100;MS,Agilent G6224AA LC/MSD TOF; Agilent Technologies社製)およびMassHunter Workstation Data Acquisitionソフトウェア(Agilent Technologies社製)により制御される液体クロマトグラフィー−トリプル四重極質量分析(LC/QqQ−MS)システム(LC:Agilent 1200 series;MS,Agilent 6460 with Jet Stream Technology;Agilent Technologies社製)を用いて分析した。
(13C標識実験)
シアノバクテリアにおける代謝回転を分析するために、非特許文献2に記載の通り、13C−重炭酸塩(NaH13CO3)を炭素源として用いてインビボ13C標識を実施した。シネコシスティス細胞を120μmol m-2 s-1の光強度、かつ30±2℃にて1%(v/v)CO2条件下、BG-11培地中で培養した。OD750が約4.5となったとき、5mgのシネコシスティス細胞を濾過し、25mM NaH13CO3を含有するBG-11培地中に初期OD750 1.0に再懸濁した。1〜30分間標識後、シネコシスティス細胞を濾過により採集し、そして前述の通り処理した。次いで、抽出された細胞内代謝物をCE/MSおよびLC/QqQ−MSを用いて分析した。生物由来の質量スペクトルピークを、12C−質量スペクトルと13C−質量スペクトルとの間の質量差について調べることにより、手動で同定した。非特許文献1に記載の通り、代謝物の13C割合および代謝回転率を決定した。
シアノバクテリアにおける代謝回転を分析するために、非特許文献2に記載の通り、13C−重炭酸塩(NaH13CO3)を炭素源として用いてインビボ13C標識を実施した。シネコシスティス細胞を120μmol m-2 s-1の光強度、かつ30±2℃にて1%(v/v)CO2条件下、BG-11培地中で培養した。OD750が約4.5となったとき、5mgのシネコシスティス細胞を濾過し、25mM NaH13CO3を含有するBG-11培地中に初期OD750 1.0に再懸濁した。1〜30分間標識後、シネコシスティス細胞を濾過により採集し、そして前述の通り処理した。次いで、抽出された細胞内代謝物をCE/MSおよびLC/QqQ−MSを用いて分析した。生物由来の質量スペクトルピークを、12C−質量スペクトルと13C−質量スペクトルとの間の質量差について調べることにより、手動で同定した。非特許文献1に記載の通り、代謝物の13C割合および代謝回転率を決定した。
(グリコーゲン定量)
1μm孔径ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)メンブレンフィルター(Omnipore;Millipore社製)を用いて5mg乾燥重の細胞を採取した。濾過直後、細胞を20mMの予冷した炭酸アンモニウムで洗浄した。すぐに、メンブレンフィルター上の細胞を液体窒素中で凍結し、凍結乾燥機(Labconco社製)内で凍結乾燥した。既報(Izumi Yら, 2013, J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci 930: 90-97)の通り、細胞からグリコーゲンを抽出した後、サイズ排除HPLCカラム(OHpak SB-806M HQ;昭和電工株式会社製)および屈折率検出器(RID-10A;株式会社島津製作所製)を備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(株式会社島津製作所製)を用いて、グリコーゲン含量を測定した。
1μm孔径ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)メンブレンフィルター(Omnipore;Millipore社製)を用いて5mg乾燥重の細胞を採取した。濾過直後、細胞を20mMの予冷した炭酸アンモニウムで洗浄した。すぐに、メンブレンフィルター上の細胞を液体窒素中で凍結し、凍結乾燥機(Labconco社製)内で凍結乾燥した。既報(Izumi Yら, 2013, J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci 930: 90-97)の通り、細胞からグリコーゲンを抽出した後、サイズ排除HPLCカラム(OHpak SB-806M HQ;昭和電工株式会社製)および屈折率検出器(RID-10A;株式会社島津製作所製)を備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(株式会社島津製作所製)を用いて、グリコーゲン含量を測定した。
(光合成分析)
酸素電極(Hansatech社製)を用いて酸素交換をモニタリングした。空気平衡条件下にて10分間暗所でインキュベートした後、50mM HEPES-KOH(pH 7.6)および任意量の細胞(10μgクロラムフェニコール mL-1)を含有する反応混合物(2mL)に、25℃にて、示した光強度のAL(赤色光[RL]、>640nm)を照射した。測定の間、反応混合物は、マグネットスターラーを用いて撹拌混合した。
酸素電極(Hansatech社製)を用いて酸素交換をモニタリングした。空気平衡条件下にて10分間暗所でインキュベートした後、50mM HEPES-KOH(pH 7.6)および任意量の細胞(10μgクロラムフェニコール mL-1)を含有する反応混合物(2mL)に、25℃にて、示した光強度のAL(赤色光[RL]、>640nm)を照射した。測定の間、反応混合物は、マグネットスターラーを用いて撹拌混合した。
結果を図3〜7に示す。
図3〜5は、シネコシスティスPCC6803種グルコース耐性株(野生型:WT)およびFlv3過剰発現株(Flv3ox)について、13C標識実験における各代謝物の13C割合の経時変化を示すグラフである(図3:グルコース−6−リン酸(G6P)、フルクトース−6−リン酸(F6P)、グルコース−1−リン酸(G1P)およびセドヘプツロース−7−リン酸(S7P);図4:アデノシン二リン酸−グルコース(ADP−Glc)、3−ホスホグリセリン酸(3PGA)、アセチルCoA(AcCoA)、2−ホスホグリセリン酸(2PGA)ならびに;図5:ホスホエノールピルビン酸(PEP)、クエン酸、シスアコニット酸、イソクエン酸、およびリンゴ酸。それぞれの図において、白丸はFlv3過剰発現株を表し、そして黒丸は野生型株を表す)。いずれの代謝物においても、Flv3過剰発現株が、野生型株よりも迅速な13C取り込みが観察され、代謝が促進されていることが確認された。
図6は、シネコシスティスPCC6803種グルコース耐性株(野生型:WT)およびFlv3過剰発現株(Flv3ox)について、細胞中のグリコーゲン含量を示すグラフである(WT:野生型株およびFLV:Flv3過剰発現株)。Flv3過剰発現株(Flv3ox)は、野生型株よりもグリコーゲン含有量が高く、グリコーゲン生産量が高められたことが分かる。
図7は、シネコシスティスPCC6803種グルコース耐性株(野生型:WT)およびFlv3過剰発現株(Flv3ox)について、種々の光強度の照射下における酸素発生速度を示すグラフである。図中、白丸はFlv3過剰発現株を表し、そして黒丸は野生型株を表す。Flv3過剰発現株(Flv3ox)は、野生型株よりも高い酸素発生速度を示した。これによっても、光合成が促進されていることが確認された。
本発明によれば、微細藻の光合成能、増殖能および糖類生産能を向上させることができる。このような光合成能、増殖能および糖類生産能が向上した微細藻を用いることにより、バイオエネルギーの生産を向上させ得る。よって、バイオ燃料(バイオエタノールなど)の生産の増大およびそれに費やされるコストの低減が期待される。
Claims (10)
- 微細藻の生育機能を増強する方法であって、
微細藻のNADPH−O2オキシドレダクターゼを増強する工程を含む、方法。 - 前記生育機能が、光合成能、細胞増殖能、および糖類生産能から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
- 前記増強する工程が、NADPH−O2オキシドレダクターゼを発現または発現増強するように微細藻を形質転換する工程を含む、請求項1または2に記載の方法。
- 前記NADPH−O2オキシドレダクターゼが、フラボジアイロンタンパク質である、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
- 前記フラボジアイロンタンパク質がFlv3である、請求項4に記載の方法。
- 生育機能が増強された微細藻を作製する方法であって、
NADPH−O2オキシドレダクターゼを発現または発現増強するように微細藻を形質転換する工程を含む、方法。 - 前記生育機能が、光合成能、細胞増殖能、および糖類生産能から選択される少なくとも1つである、請求項6に記載の方法。
- 前記NADPH−O2オキシドレダクターゼが、フラボジアイロンタンパク質である、請求項6または7に記載の方法。
- 前記フラボジアイロンタンパク質がFlv3である、請求項8に記載の方法。
- Flv3を発現増強するように形質転換された微細藻を含む、グリコーゲン含量が高められた加工バイオマス材。
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WO2016163382A1 (ja) * | 2015-04-08 | 2016-10-13 | 国立大学法人神戸大学 | 有機酸の製造方法 |
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CN114854648A (zh) * | 2022-06-17 | 2022-08-05 | 天津大学 | 能够耐受高光强的集胞藻驯化菌株的驯化方法 |
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2013
- 2013-10-08 JP JP2013211446A patent/JP2015073469A/ja active Pending
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