<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、図1ないし図7を用いて説明する。まず、本実施形態の現像装置を有する画像形成装置の概略構成について、図1を用いて説明する。
[画像形成装置]
画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色に対応して設けられ4つの画像形成部Y、M、C、Kを有する電子写真方式のフルカラープリンタである。画像形成装置100は、画像形成装置本体に接続された原稿読み取り装置(図示せず)又は画像形成装置本体に対し通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等のホスト機器からの画像信号に応じてトナー像(画像)を記録材Pに形成する。記録材としては、用紙、プラスチックフィルム、布などのシート材が挙げられる。このような画像形成プロセスの概略を説明すると、まず、各画像形成部Y、M、C、Kでは、それぞれ、像担持体としての感光ドラム(電子写真感光体)10Y、10M、10C、10K上に各色のトナー像を形成する。このように形成された各色のトナー像は、記録材P上に転写される。トナー像が転写された記録材は、定着装置25に搬送されて、トナー像が記録材に定着される。以下、詳しく説明する。
なお、画像形成装置100が備える4つの画像形成部Y、M、C、Kは、現像色が異なることを除いて実質的に同一の構成を有する。したがって、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの画像形成部に属する要素であることを表すために符号に付した添え字Y、M、C、Kは省略し、総括的に説明する。
画像形成部には、像担持体として円筒型の感光体、即ち、感光ドラム10が配設されている。感光ドラム10は、図中矢印方向に回転駆動される。感光ドラム10の周囲には帯電手段としての帯電器21と、現像手段としての現像装置1、転写手段としての一次転写帯電器23、クリーニング手段としてのクリーニング装置26が配置されている。感光ドラム10の図中上方には露光手段としてのレーザースキャナ(露光装置)22が配置されている。
また、各画像形成部の感光ドラム10と対向して記録材搬送ベルト24が配置されている。記録材搬送ベルト24は、複数のローラにより張架され、図中矢印方向に周回移動する。記録材搬送ベルト24の記録材搬送方向下流には定着装置25が配置される。
上述のように構成される画像形成装置100により、例えば4色フルカラーの画像を形成するプロセスについて説明する。まず、画像形成動作が開始すると、回転する感光ドラム10の表面が帯電器21によって一様に帯電される。次いで、感光ドラム10は、露光装置22から発せられる画像信号に対応したレーザ光により露光される。これにより、感光ドラム10上に画像信号に応じた静電潜像が形成される。感光ドラム10上の静電潜像は、現像装置1内に収容されたトナーによって顕像化され、可視像となる。画像形成で消費された現像剤中のトナーはトナー補給槽としてのホッパー20から補給される。
感光ドラム10上に形成されたトナー像は、記録材搬送ベルト24を挟んで配置される一次転写帯電器23との間で構成される転写部にて、記録材搬送ベルト24により搬送される記録材Pに転写される。転写後に感光ドラム10表面に残ったトナー(転写残トナー)は、クリーニング装置26によって除去される。
このような動作をイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各画像形成部で順次行い、記録材搬送ベルト24により搬送される記録材P上で4色のトナー像を重ね合わせる。次いで、記録材Pは定着手段としての定着装置25に搬送される。そして、この定着装置25によって、加熱、加圧されることで、記録材P上のトナーは溶融、混合されて、フルカラーの画像として記録材Pに定着される。その後、記録材Pは機外に排出される。これにより、一連の画像形成プロセスが終了する。なお、所望の画像形成部のみを用いて、所望の色の単色又は複数色の画像を形成することも可能である。
[現像装置]
次に、現像装置1の詳しい構成について、図2ないし図5を用いて説明する。現像装置1は、トナーとキャリアを含む現像剤を収容する現像容器2と、現像容器内の現像剤を担持して回転搬送する現像剤担持体としての現像スリーブ8とを有する。現像容器2内には、現像容器内の現像剤を攪拌・搬送しつつ現像容器内を循環させる現像剤搬送部材としての搬送スクリュー5、6が配置されている。また、現像スリーブ8内には、周方向に複数の磁極を有するマグネット8aが、回転不能に配置されている。
現像剤は、非磁性トナーと磁性キャリアを含む二成分現像剤である。トナーは、着色剤を有した結着樹脂からなる母体と、母体に添加される添加剤とを有している。トナーの樹脂として、本実施形態では負帯電性ポリエステル系樹脂を用いた。体積平均粒径は4μm以上、10μm以下が好ましく、本実施形態では体積平均粒径が7μmのトナーを用いた。トナーの粒径は小さすぎるとキャリアと摩擦し難くなるため帯電量を制御しづらくなり、大きすぎると精細なトナー像を形成できなくなる。
キャリアは、表面酸化或は未酸化の鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類などの金属、及びそれらの合金、或は酸化物フェライトなどが使用可能であり、本実施形態では、平均体積粒径が50μmのフェライトキャリアを用いた。キャリアの粒径は小さすぎると現像時にキャリアが潜像担持体に付着する問題が起き、大きすぎると現像時にキャリアがトナー像を乱す問題が起こる。また、本実施形態において現像容器内には300gの現像剤を収容し、設置時の現像剤はトナーとキャリアの重量比を1:9とした。
このような現像剤は、現像スリーブ8に内包するマグネット8aの磁力により現像スリーブ8の表面に担持され、現像スリーブ8が回転することで現像剤を現像剤搬送方向bに搬送する。そして、感光ドラム10上に形成された静電潜像に対し現像剤が供給される。また、搬送スクリュー5、6は、回転軸上に螺旋状のスクリュー翼を有し、回転することで軸方向に現像剤を搬送する。
図2及び図3を参照してより詳しく説明する。まず、現像容器2の内部は、その略中央部が紙面に垂直方向に延在する隔壁7によって現像室3と攪拌室4に垂直方向の上下に区画されており、現像剤は現像室3及び攪拌室4に収容されている。
現像室3及び攪拌室4には、搬送スクリュー5、6がそれぞれ配置されている。搬送スクリュー5は、現像室3の底部に現像スリーブ8の軸方向に沿って配置されており、不図示のモータによって回転軸を回すことで現像室3内の現像剤を軸線方向cに沿って搬送しつつ、現像スリーブ8に現像剤を供給する。また、搬送スクリュー6は、攪拌室4内の底部に現像スリーブ8の軸方向に沿って配置され、攪拌室4内の現像剤を搬送スクリュー5とは反対の軸方向dに搬送する。本実施形態においては、回転軸は900rpmで回転することにより現像剤の循環を行っている。
現像室3と攪拌室4は、連通部71、72で連通している。連通部71では、攪拌室4で現像スリーブ8から回収した現像剤と現像室3から搬送された現像剤を現像室3に組み上げる。連通部72では、現像室3から現像スリーブ8に供給されずに現像室3を通過した現像剤を攪拌室4に搬送する。このように、搬送スクリュー5、6の回転による搬送によって、現像剤が隔壁7の両端部の連通部71、72を通じて現像室3と攪拌室4との間で循環される。ここで、現像剤の攪拌・搬送される経路としては、次の2つの経路がある。第1の経路は、現像室3→現像スリーブ8→攪拌室4→連通部71→現像室3の順で現像剤を搬送する経路(現像に寄与する循環経路)である。第2の経路は、現像室3→連通部72→攪拌室4→連通部71→現像室3の順で現像剤を搬送する経路(現像に寄与しない現像容器内の循環経路)である。
次に、現像スリーブ8により現像剤を搬送する構成について、図2により詳しく説明する。現像容器2には感光ドラム10に対向した現像領域Aに相当する位置に開口部があり、この開口部において現像スリーブ8が感光ドラム10方向に一部露出するように回転自在に配設されている。一方、現像スリーブ8に内包されたマグネット8aは非回転に固定されている。
現像スリーブ8まわりの現像剤の流れを説明する。まず、搬送スクリュー5の現像剤搬送に伴って、現像剤が跳ね上がり、現像スリーブ8に供給される。現像剤は磁性キャリアが混合しているため現像スリーブ8内のマグネット8aが発生している磁力に拘束され、現像スリーブ8の回転に伴って、現像スリーブ8上の現像剤は、現像剤規制部材としての規制ブレード9を通過し、所定量に規制される。所定量に規制された現像剤は、感光ドラム10に対向する現像領域Aへ搬送され、トナーが静電潜像に供給される。現像領域Aを通過した現像剤は現像容器内の第2の搬送スクリュー6に回収される。
[現像スリーブ]
このような現像スリーブ8は、不図示のモータにより回転させられて、現像剤を感光ドラム10に搬送する。本実施形態では、現像スリーブ8はアルミニウムで円筒状に形成され、ドラム対向部での断面において直径が20mmとした。現像スリーブ8の表面性と現像剤の搬送性について説明する。まず、現像スリーブ8の表面が鏡面のような平滑な場合は、現像剤と現像スリーブ表面との摩擦が極端に少ない為に、現像スリーブ8が回転しても現像剤は殆ど搬送されない。現像スリーブ表面に適度な凹凸を設け、現像スリーブ表面と現像剤との間に摩擦力を作ることで、現像剤が現像スリーブの回転に追従するようになる。本実施形態では、現像スリーブ8表面にブラスト処理を行い表面粗さ15μ程度の凹凸を設けた。
ブラスト処理とは、所定の粒度分布を有する砥粉やガラスビーズ等の粒子を高圧で吹き付ける加工法である。以下、ブラスト加工した部分をブラスト領域と呼び、ブラスト加工していない端部を非ブラスト領域と呼ぶ。現像スリーブはブラスト領域で現像剤を搬送するので、ブラスト領域は画像形成可能領域よりもやや広い範囲に設ける必要がある。
[マグネット]
現像スリーブ8内には、ローラ状の磁界発生手段であるマグネット8aが現像容器2に固定配置されている。このマグネット8aは、図2に示すように、周方向に複数の磁極N1、N2、N3、S1、S2極の合計5極を有している。なお、図2では、各極の現像スリーブ8の外周面に対する法線方向の磁束密度の最大値位置を示している。現像領域Aに対向する位置には、現像磁極N2を配置し、現像領域Aで形成するN2極の磁界により現像剤が磁気ブラシを形成する。そして、この磁気ブラシが、現像領域Aで矢印a方向に回転する感光ドラム10に接触しつつ、帯電したトナーを静電気的な力によって静電潜像をトナー像として現像する。
マグネット8aの各磁極の役割と現像剤の流れを説明する。まず、搬送スクリュー5の現像剤搬送に伴って、現像剤が跳ね上がり、現像スリーブ8に供給されると、現像剤は磁性キャリアが混合しているためN1極(現像剤規制極)が形成する磁気力に拘束される。次に、現像スリーブ8の回転に伴って、規制ブレード9に対向する位置を通過し、現像剤が所定量に規制される。規制された現像剤はS1極を通過し、感光ドラム10に対向するN2極へ供給される。現像領域Aを通過し、静電潜像に対してトナーを消費した現像剤はS2極によって現像容器内に取り込まれて、N3極とN1極の極間において、磁極による磁気拘束力から解放され、搬送スクリュー6に回収される。
[規制ブレード]
ここで、規制ブレード9は、現像スリーブ8の外周面に所定の隙間を介して対向配置され、現像スリーブ8に担持された現像剤の層厚を規制する。このために規制ブレード9は、現像スリーブ8の回転方向の現像領域Aの上流に配置される。本実施形態では規制ブレード9は、現像スリーブ8の回転軸線方向(長手方向)に沿って延在した板状の部材である。また、規制ブレード9の材質としては、アルミニウムを用いた。また、規制ブレード9は、感光ドラム10よりも現像スリーブ8の回転方向上流においてブレード先端がスリーブ中心を向くように現像容器側に配設している。現像スリーブ8が回転することで、現像スリーブ8上の現像剤は、規制ブレード9の先端部と現像スリーブ8の間を通過して現像領域Aへと送られる。従って、規制ブレード9と現像スリーブ8の表面との間隙を調整することによって、現像スリーブ8上に担持され現像領域へ搬送される現像剤量が調整できる。
なお、規制ブレード9と現像スリーブ8の間隙が狭すぎると現像剤内の異物やトナーの凝集塊が詰まりやすいので好ましくない。また、現像スリーブ8上を搬送される現像剤の単位面積当たりの質量が多過ぎると、感光ドラム10との対向位置近傍で現像剤が詰まったり、感光ドラム10にキャリアが付着したりする等の問題が生じる。一方、現像スリーブ8上を搬送される現像剤の単位面積当たりの質量が少なすぎると、所望のトナー像を現像できず、画像濃度が低下する問題が生じる。本実施形態においては、規制ブレード9により規制される現像剤搬送量が30mg/cm2となるように、規制ブレード9と現像スリーブ8の間隔を400μmに設定した。
また、本実施形態では、現像スリーブ8の直径は20mm、感光ドラム10の直径は80mm、現像スリーブ8と感光ドラム10との最近接領域の距離を400μmに設定した。この構成によって、現像領域Aに搬送した現像剤を感光ドラム10と接触させた状態で、現像が行なえるように設定した。
上記構成にて、現像スリーブ8は、現像時に図2に示したように矢印b方向に回転し、規制ブレード9によって適量に規制された現像剤を感光ドラム10と対向した現像領域Aに搬送する。現像領域において現像剤はマグネット8aの磁界によって磁気ブラシを形成し、感光ドラム10上に形成された静電潜像にトナーを供給し、トナー像を得る。この時、現像スリーブ8には不図示の電源から直流電圧と交流電圧を重畳した現像バイアス電圧が印加される。本実施形態では、−500Vの直流電圧と、矩形波でピーク・ツウ・ピーク電圧Vppが1800V、周波数fが12kHzの交流電圧とした。しかし、直流電圧値、交流電圧波形はこれに限られるものではない。また、現像領域において、感光ドラム10上の非画像領域は−600Vに帯電し、静電潜像が形成されている画像領域では、出力画像の濃度に応じて電位が上がるようにレーザによって静電潜像が形成されている。
また、現像領域Aにおいては、現像スリーブ8は、感光ドラム10の移動方向と順方向で移動し、感光ドラム10の周速は300mm/s、現像スリーブ8の周速は450mm/sとしている。現像スリーブ8と感光ドラム10の周速比に関しては、通常1〜2倍の間で設定される。周速比は、大きくなればなるほどトナー供給量多くなるが、大きすぎると、トナー飛散等の問題点が発生する。また、最大濃度でのトナー消費量は0.5mg/cm2であり、A4サイズに最大限にトナーを消費した場合には0.31g使用する。
[現像剤の補給]
次に、図3を用いて現像容器2への現像剤の補給について説明する。本実施形態において、ホッパー20(図1参照)から補給剤として、消費した量とほぼ同量のトナーを補給する。図3は現像容器内の現像剤循環経路を見るための長手方向を水平に見た断面図である。但し、ホッパー20は補給剤Sの経路が分かるよう現像容器2に接続されている。現像装置1の上部には、補給剤Sを収容するホッパー20が配置されている。補給手段を構成するホッパー20は現像装置の補給口30と接続している。
画像形成によって消費された分とほぼ同量のトナーが、ホッパー20から補給口30を通過して、現像容器2内に補給される。補給剤は補給口30から補給スクリュー30aによって矢印g方向へ搬送され、現像剤の循環経路に入る。なお、補給口30は現像室3より下流に設けられる。これは、循環経路に入った補給剤が攪拌される前に現像スリーブ8に供給されるのを防ぐためである。現像装置1の連通部71近傍には、センサ面近傍の一定体積で現像剤の透磁率を検知して、トナーとキャリアの比率を算出する、不図示のトナー濃度センサが設けられていて、トナー濃度を重量比で10%近傍になるように補給量を調整している。
ここで、画像形成に伴い現像容器内のトナーは負荷を受け、形状や表面性が変化してトナー特性が変化する。このようなトナー特性の変化は、現像装置内でトナーが負荷を受ける時間によるため、トナー消費が少ない画像の通紙を続けると顕著になる。現像装置が複数あるカラー画像形成装置の場合はトナーを消費しない現像装置もありうる。通常、ある範囲内のトナー特性を維持するように、所定の枚数や現像スリーブの回転数毎に最低のトナー消費量を決めて、それを下回った場合、画像形成領域外や画像形成間にトナーを現像し、新しいトナーに入れ替える制御を行う。本実施形態については最低のトナー消費量はA4サイズ基準で全面最大濃度画像を出力した場合を100%とした場合に全面消費の1%とした。即ち、所定枚数毎の平均トナー消費量が全面消費の1%を下回った場合には平均トナー消費量が1%となるようにトナーを消費する制御を行う。従って、トナー特性の変化はトナー消費1%画像を連続通紙した場合が最大となる。ただし、現像装置内のトナーが負荷を受ける平均時間が定常値(以下トナー消費1%画像形成時)になるまでには約1万枚通紙する必要がある。これは、トナー消費量と現像剤内のトナー量から計算できる。
次に、現像スリーブ8による現像剤の搬送性について説明する。現像スリーブ8は、内包するマグネット8aが形成する磁束分布によって磁化されるキャリアを含む現像剤を磁気拘束し、表面に凹凸がある現像スリーブ8が回転することで回転方向にかかる摩擦力によって現像剤を搬送する。感光ドラム10近傍に搬送される現像剤は、現像スリーブ8と規制ブレード9の間隔を通過できる現像剤量で決まるため、現像スリーブ8と規制ブレード9の間隔の他に規制ブレード9対向部を通過する現像剤が形成する磁気穂の通過角度が重要になる。現像剤の通過角度はマグネットが形成するブレード対向部の磁束分布によって決まる。このため、マグネット8aの工程能力(マグネット製造時のマグネット単品での公差)や取り付け精度によっても、形成される磁束分布がブレード近傍で極力変わらないことが望ましい。
[マグネットが形成する磁束分布とキャリアに係る磁気力]
次に、マグネット8aが作り出す磁束密度及び磁力について説明する。尚、本実施形態の説明に際して、Br、Bθ、Fr、Fθを以下のように定義する。
Br:ある点における現像スリーブ8の外周面(表面)に対する法線方向(垂直方向)の磁束密度
Bθ:ある点における現像スリーブ8の外周面に対する接線方向の磁束密度
Fr:ある点における現像スリーブ8の外周面に対する法線方向に働く磁気力(但し、吸引方向(現像スリーブ8に向かう方向)を負とする)
Fθ:ある点における現像スリーブ8の外周面に対する接線方向に働く磁気力(但し、現像スリーブ8の回転方向を正とする)
なお、特に断らないかぎり、Br、Bθ、Fr、Fθといえば、現像スリーブ8上のある点における磁束密度又は磁気力のことを指す。
[磁気力又は磁束密度の測定方法]
ここで、本実施形態における磁気力の測定方法について説明する。本実施形態で述べた磁気力は以下説明する計算方法によって算出できる。キャリアに作用する磁気力は、下記の(1)式で求められる。ここで、μ0が真空の透磁率、μがキャリアの透磁率、bがキャリアの半径、Bが磁束密度である。
この(2)式から、Br及びBθが分かれば、Fr及びFθを求めることができる。ここで、磁束密度Brは、測定器としてF.W.BELL社製磁場測定器「MS−9902」(商品名)を用いて、測定器の部材であるプローブと現像スリーブの表面との距離を約100μmに設定して測定したものである。
さらに、Bθは以下のように求めることが出来る。磁束密度Brの測定位置でのベクトルポテンシャルAZ(R,θ)は測定された磁束密度Brを用いて、
で求められる。境界条件をA
Z(R,θ)とし、方程式
▽
2A
Z(R,θ)=0
を解くことでA
Z(r,θ)を求める。そして、
以上より測定及び計算されたBr及びBθを(1)式に当てはめることで、Fr及びFθを導き出すことができる。また上記式に従えば、本実施形態で必要なFr分布を形成する磁束密度の分布が得られる。
[現像剤搬送量の安定性について]
次に、現像スリーブ8により規制ブレード9に搬送される現像剤の搬送量の安定性について説明する。規制ブレード9近傍において、現像剤は現像スリーブ8による搬送方向と逆方向に力を受ける。このため、現像スリーブ8の規制ブレード9と対向するブレード対向部において形成される磁気穂が、現像スリーブ8の外周面に対する法線方向から上流方向に傾いている場合は、ブレード対向部近傍で受ける力によって磁気穂が途切れ易くなる。そして、規制ブレード9を通過する現像剤量が不安定になり、搬送量のばらつきが大きくなる。
したがって、規制ブレード9を通過する現像剤量を安定させるためには、ブレード対向部近傍に形成される磁気穂の向きを下流に向けることが好ましい。このためには、ブレード対向部近傍において磁力線が現像スリーブ8の外周面に対する法線方向に伸びている位置をブレード対向部上流とする。即ち、現像スリーブ8の外周面に対する接線方向の磁束密度(Bθ)が0となる現像スリーブ8の外周面上の位置が、規制ブレード9が対向する現像スリーブ8の外周面上の位置よりも現像スリーブ8の回転方向上流にずれるようにする。
ここで、ブレード対向領域で磁力によりキャリアを担持させるため、現像剤規制極としてのN1極が規制ブレード9に対向配置されるため、ブレード近傍のBrの値は反転しない。このため、ブレード近傍のBθ=0の位置で磁力線の向きが判断できる。図4に示すように、ブレード近傍のBθ=0の位置が、規制ブレード9に対向する位置よりも上流にあれば、磁力線(破線)は下流方向に向かっている。規制ブレード9と対向する磁極の位置を変更して検討した結果、ブレード近傍のBθ=0の位置が上流にある場合、搬送量の測定毎のばらつきが1mg/cm2であったのに対して、下流にある場合は2mg/cm2であった。
前述のように、規制ブレードと対向する現像剤規制極の磁束密度の分布を略対称とした場合、マグネットの公差によりブレード対向部の磁束密度の分布の変化を抑えるためには、現像剤規制極の磁束密度分布の半値幅を大きくすることが考えられる。マグネットの公差としては、前述したように、マグネットの工程能力とマグネットの取り付け精度がある。マグネットの工程能力とは、前述のようにマグネットの製造時の公差であり、例えば、マグネットメーカは、この公差でマグネットを製造する。即ち、公差(工程能力)を2度とした場合、マグネットメーカから納品されるマグネットは、公差2度となる。一方、取り付け精度は、このマグネットを現像装置に対して取り付ける際の公差であり、機種によって異なるが、例えば1度の公差がある。したがって、この例によると、マグネットを現像装置に取り付けた状態での公差は3度となり、例えば、現像剤規制極の磁束密度が最大となるピーク位置は、3度の範囲でずれることになる。
したがって、このような公差を半値幅で対応する場合、磁束密度が最大となるピーク位置が、設計上の位置に対して交差分ずれたとしても、ブレード対向位置で磁束密度の分布が極力変化しないように半値幅を広げる必要がある。但し、このようにブレードに対向する磁極の半値幅を大きくすると、前述のように他の磁極の設計に制約が出てくる。特に、本実施形態のように、現像室と攪拌室とを上下に配置した縦攪拌型の現像装置の構成では、攪拌室下流の現像剤面が高くなる。このため、磁極の設計に制約により現像室と攪拌室とを区画する隔壁近傍に磁気力が発生してしまうと、以下のような問題が生じる。即ち、現像スリーブ8に担持搬送されて現像によりトナーを消費したトナー濃度が低い現像剤が、攪拌室に回収されずに隔壁を越えて、現像スリーブ8に現像剤が供給される剤だまり部に到達し易くなる。そして、再度、現像スリーブ8により感光ドラム10に搬送されてしまう。
したがって、本実施形態では、隔壁と対向する部分には磁気力が発生しないようにすることが好ましいが、上述のように半値幅を大きくすると、隔壁対向部近傍に生じる磁気力も大きくなり易い。また、マグネットは周方向に他の磁極があるため一つの磁極の幅を大きくすると他の磁極の幅を削る必要が生じることもある。以上より、磁極の幅は、なるべく小さくすることが望ましい。
[現像剤規制極]
そこで、本実施形態では、マグネット8aの複数の磁極のうちの規制ブレード9に対向配置される現像剤規制極(N1極)を以下のように形成している。まず、現像スリーブ8の外周面に対する法線方向の磁束密度が最大となる現像スリーブ8の外周面上の位置を最大値位置(ピーク位置)とする。また、現像剤規制極の磁束密度の分布の半値となる範囲の中央位置に対応する現像スリーブ8の外周面上の位置を半値中央位置とする。この場合に、現像剤規制極を、最大値位置が半値中央位置に対して、現像スリーブ8の周方向に3度以上ずれるように形成する。且つ、規制ブレード9が対向する現像スリーブ8の外周面上の位置(ブレード対向位置)が、最大値位置よりも半値中央位置が存在する側となるように、現像剤規制極を形成する。
即ち、現像スリーブ8の外周面に対する法線方向の磁束密度分布において、規制ブレード9に対向する現像剤規制極の最大値位置を半値中央位置に対してずらして、現像剤規制極の磁束密度の分布を非対称とする。本実施形態では、マグネット8aの公差として磁極の位置が3度変動する場合、即ち、公差3度の構成である。このため、現像剤規制極の最大値位置を半値中央位置に対して3度以上ずらすようにしている。これにより、磁極の位置3度変動した場合でも、規制ブレード9に対向する位置での磁束密度分布の変化を抑えられる。
また、本実施形態では、このように現像剤規制極の磁束密度の分布を非対称とすることに加えて、磁束密度の分布が緩やかとなる側に、規制ブレード9を対向させるようにしている。即ち、現像剤規制極の最大値位置を半値中央位置に対してずらすことで、磁束密度の分布は、図5に示すように、傾斜が緩やかな部分と急な部分とが存在することになる。図5からも明らかなように、最大値位置よりも半値中央位置が存在する側で磁束密度の分布の傾斜が緩やかになり、逆側で傾斜が急となる。本実施形態では、傾斜が緩やかな方に規制ブレード9を対向させるようにすることで、公差により磁極の位置がずれたとしても、規制ブレード9が磁束密度の分布の傾斜が緩やかな領域に対向する。このため、磁極の位置がずれたとしても磁束密度の変化も緩やかであり、現像剤の搬送量の変化を抑制できる。
但し、現像剤規制極の磁束密度の分布の半値となる範囲の幅である半値幅を70度以下、好ましくは60度以下、より好ましくは50度以下とする。これは、半値幅が70度よりも大きいと現像剤規制極の幅が大きくなり過ぎて、他の磁極の設計の自由度に影響を与えるためである。
なお、より確実に規制ブレード9を磁束密度の分布の傾斜が緩やかな領域に対向させるためには、現像剤規制極の最大値位置を半値中央位置に対して4度以上ずらすことが好ましく、より好ましくは5度以上ずらすことが好ましい。また、公差が4度や5度などより大きい場合には、最大値位置の半値中央位置に対するずれ量をより大きくする、例えば、8度以上などとすることが好ましい。但し、最大値位置の半値中央位置に対するずれは、20度以下とすることが好ましい。
また、現像剤規制極は、最大値位置が、規制ブレード9が対向する現像スリーブ8の外周面上のブレード対向位置及び半値中央位置よりも現像スリーブ8の回転方向下流にずれるように形成されていることが好ましい。これは、ブレード対向位置よりも上流に磁束密度の分布が緩やかな領域がある方が、現像剤の劣化を抑制できるためである。即ち、ブレード対向位置よりも上流では、現像剤が規制ブレード9により規制される前であるため、現像スリーブ8上に多くの現像剤が担持されている。このとき、ブレード対向位置よりも上流で、磁束密度の変化が急な領域が存在すると、現像スリーブ8に担持されている現像剤にかかる磁力が大きくなる。この結果、現像剤に対する負荷が高くなり、現像剤が劣化し易くなる。但し、規制ブレード9を通過する現像剤の搬送性を安定させるためには、規制ブレード9に対向する位置で磁束密度の変化が緩やかであれば良いため、最大値位置がブレード対向位置よりも上流にあっても良い。
また、本実施形態のように磁束密度の分布が非対称の磁極は、非対称性が隣接する磁極に影響される。即ち、隣接する磁極が離れていて磁極が小さい場合には磁束密度の変化が緩慢になり、隣接する極が近く磁力が大きい場合はこの変化が急峻になる。したがって、本実施形態では、現像剤規制極のマグネット上流には、磁力が小さい磁極を離して配置し、下流には上流の磁極よりも磁力が大きい磁極を、上流の磁極よりも近づけて配置することが好ましい。なお、磁極の位置関係は、磁束密度の最大値位置で設定する。
本実施形態の場合、上述のように、最大値位置が半値中央位置に対して3度以上ずれ、且つ、規制ブレード9が対向する現像スリーブの外周面上の位置が最大値位置よりも半値中央位置が存在する側としている。このため、他の磁極の設計の自由度に与える影響を抑えつつ、規制ブレード9近傍での磁束密度の分布の変化を低コストで抑えられる。
即ち、最大値位置が半値中央位置に対して3度以上ずれるように形成されることで、現像剤規制極の磁束密度の分布が非対称となる。このため、現像剤規制極の磁束密度の分布は、最大値位置よりも半値中央位置が存在する側で変化が緩やかになる。そして、この変化が緩やかな側に規制ブレード9が対向するため、公差などにより現像剤規制極の最大値位置と規制ブレード9との位置関係がずれたとしても、規制ブレード9材近傍での磁束密度の分布の変化を抑えられる。この結果、公差により磁束密度の分布が規制ブレード9に対してずれても、現像スリーブ8により搬送する現像剤量の変化を抑制できる。そして、搬送される現像剤量の変化で生じる画像弊害を抑制できる。
また、公差などのずれに対応するため、磁束密度の分布を非対称とすることで、現像剤規制極の幅が抑えられ、他の磁極の設計の自由度に与える影響を抑えられる。また、最大値位置が半値中央位置に対して3度以上としているため、公差を必要以上に小さくしなくて済み、低コスト化を図れる。
<実施例1>
上述のように、本実施形態では、マグネット8aを現像剤規制極の磁束密度の最大値位置の上流において緩やかに、下流で急峻に変化する非対称としている。そして、規制ブレード9を最大値位置(Brピーク位置)の上流に配置している。これにより、規制ブレード9の上流で緩やかに磁束密度の分布を変化させて、ブレード対向位置での磁束密度の分布の変化を小さくして、マグネットの工程能力や取り付け精度による搬送性の変化を抑制しつつ、極幅の増加を抑えている。このような効果を確認するために、以下のような条件で実験を行った。
実施例1で使用したマグネットにおける現像剤規制極(ブレード対向極)の工程能力と取り付け精度の公差は合計3度とした。このため、設計上の基準位置に対してブレード対向極の最大値は最大で上下流3度ずれることになる。したがって、実施例1では、現像スリーブ8の外周面近傍においてブレード対向極の磁束密度の最大値位置を半値中央位置に対して8度下流に設定した。また、規制ブレード9が現像スリーブ8に対向するブレード対向位置を磁束密度の最大値位置の4度上流に配置した。
図6に、このような構成を有する実施例1のマグネット8a(マグ1)の現像スリーブ8の外周面(スリーブ表面)におけるBrの分布を示す。角度の基準は、ドラム側の水平位置を0度とし、スリーブ回転方向と逆方向を回転方向とする。図6の縦の破線は規制ブレード9が現像スリーブ8の外周面に対向する位置(ブレード対向位置)を示しており、86°である。この破線の両隣の点線は、ブレード対向位置が上下流3度の範囲を示している。また、ブレード対向極(N1極)の磁束密度の最大値は40mT、磁束密度の分布の半値幅は60度とした。また、最大値位置と半値中央位置のずれは、上述のように8度とした。実施例1でマグネットの公差による現像剤の搬送量の変化は、3mg/cm2であった。
一方、比較例1として、磁束密度の分布の最大値位置と半値中央位置とを揃えた対称なマグネット(マグ2)を用意した。図7に、図6と同様に、比較例1のマグネットの現像スリーブ8の外周面(スリーブ表面)におけるBrの分布を示す。比較例1でも、実施例1同様に、規制ブレード9が現像スリーブ8に対向するブレード対向位置を磁束密度の最大値位置の4度上流に配置した。そして、この比較例1では、磁束密度の分布の半値幅を76度として、マグネットの公差による現像剤の搬送量の変化を、実施例1と同様に3mg/cm2とした。その他の条件は、実施例1と同じである。このような実施例1と比較例1とを比較した結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1では、マグネットの公差による現像剤の搬送量の変化を比較例1と同等の3mg/cm2に抑えつつ、比較例1に対して半値幅を16度狭めることができた。
即ち、実施例1では、ブレード対向極の磁束密度の最大値位置を半値中央位置に対して8度下流に設定し、ブレード対向位置を磁束密度の最大値位置の4度上流に配置した。このため、ブレード対向極の最大値位置が4度上下流に振れた場合であっても、規制ブレード9近傍における磁束分布の変化は緩やかであった。この結果、磁束密度の分布が公差により変化した場合においても、現像剤の搬送量の変化を抑制できた。具体的には、マグネットの公差により、磁極が上下流に3度すれることがあるが、ブレード対向位置の上下流3度(縦の点線部)の範囲で、磁束分布の変化が緩慢になっているため、現像剤の搬送量の変化を抑制できた。このとき、実施例1のブレード対向極の半値幅は60度であった。
一方、比較例1では、現像剤の搬送量の変化を実施例1と同様にするためには、半値幅を76度とする必要があった。以上より、本実施形態の具体例である実施例1では、ブレード対向極の磁束密度の分布が対称となる比較例1に対して、半値幅を16度小さくできた。これにより、規制ブレード9近傍での現像剤の搬送性を安定させつつ、ブレード対向極の幅を狭くでき、他の磁極の設計の自由度を高められた。
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について、図8ないし図12を用いて説明する。本実施形態は、上述の第1の実施形態の現像装置1と異なり、現像容器内の現像剤を現像スリーブ8に向けて案内するガイド部材11を備えた現像装置1Aに本発明を適用した例である。その他の構成は、上述の第1の実施形態と同様であるため、第1の実施形態と重複する説明及び図示を省略又は簡略にし、第1の実施形態と同様の構成には同じ符号を付し、以下、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
まず、トナーとキャリアを含む二成分現像剤を使用した現像装置では、以下のような問題が発生する可能性がある。即ち、規制ブレードの現像スリーブの回転方向上流では、規制ブレードにより現像剤の流れが堰き止められる部分(不動層)と、現像スリーブの回転に追従して現像剤が搬送される部分との境界部でせん断面が生じる。そして、このせん断面で現像剤が摺擦されることでトナーがキャリアから遊離し、遊離したトナー同士が固着してトナー層を形成する場合がある。このようなトナー層が発生すると、現像スリーブにより感光ドラムとの対向部に搬送される現像剤が、トナー層の影響により部分的に減少し、現像するのに十分なトナー量を供給できず出力画像濃度が低下してしまう。
このような問題に対して、前述の特許文献2では、現像スリーブに沿った現像剤搬送力の総和を減少させつつ、規制ブレード付近の現像剤に加わる磁気吸引力の総和を増加させるようにしている。これにより、規制ブレード近傍の現像剤が現像スリーブ中心方向へと移動し、トナー層の発生を抑制できる。
本実施形態では、このような特許文献2に記載の構成と同様に、トナー層による現像剤の搬送不良を抑制しつつ、第1の実施形態と同様に、マグネット公差による搬送量変化を抑制する。以下、具体的に説明する。
図8に示すように、現像室3と攪拌室4とを区画する隔壁7Aは、規制ブレード9近傍まで延長した形状を有し、現像室3に収容されている現像剤を重力方向上方から現像スリーブ8に案内するガイド部材11を有する。ガイド部材11は、規制ブレード9よりも現像スリーブ8の回転方向上流側に対向して設けられている。ガイド部材11の規制ブレード9に対向する面(ガイド面)は、搬送スクリュー5の駆動によって規制ブレード9とガイド部材11の間隙から現像剤を適正に供給するためのガイド機能を兼ねている。
更に、ガイド部材11は、現像スリーブ8の周方向に対向配置することで、現像室3から現像スリーブ8に対する現像剤の供給開始位置P1を規制する規制部として機能している。ガイド部材11のガイド面の角度は、現像スリーブ8の表面の法線方向に設定している。またガイド部材11の現像スリーブ8の最近接距離は1mmとしている。またガイド部材11の供給開始位置P1は、現像スリーブ8と感光ドラム10側の水平位置から、現像スリーブ8の回転方向とは逆方向に115度となる位置に設定している。また隔壁7Aの現像スリーブ8最近接位置で、且つ現像スリーブ8回転方向上流側の位置P3は、本実施形態においては、水平位置から、現像スリーブ8の回転方向とは逆方向に180度となる位置に設定している。
次に本実施形態の現像剤の流れについて、図8を用いて説明する。まずガイド部材11の現像スリーブ8への最近接位置P3は、同極(N1極、N3極、図2参照)によって形成される斥力領域の下流であって、現像剤は斥力により現像スリーブ8から離れる方向に力を受けるために斥力領域ではぎとられる。したがって、現像剤は、現像スリーブ8と隔壁7Aのギャップを通過しない。言い換えれば、規制ブレード9への現像剤の供給は、搬送スクリュー5からガイド部材11を乗り越えた経路を通ることになり、乗り越えた現像剤は、規制ブレード9とガイド部材11との間に貯蔵される。
本実施形態においては、ガイド部材11の頂点位置P4と規制ブレード9の下点位置(現像スリーブ8との最近接位置)P2とは、互いの位置を結ぶ線が水平方向に対して仰角30°になるように設定している。即ち、ガイド部材11の頂点位置P4は、規制ブレード9と現像スリーブ8の最近接位置に対して、水平方向上側に位置する。この理由は、規制ブレード9とガイド部材11との間の空間に、現像スリーブ8に現像剤を安定してコートできうる量に貯蔵するためである。なお、ガイド部材11の長さは11mmである。また本実施形態においては、ガイド部材11は隔壁7Aと一体に構成されており、現像容器2と同じ材質を用いている。
また、規制ブレード9からガイド部材11の現像剤供給開始位置P1までの間隔(現像スリーブ8の周方向距離)の望ましい範囲は、2mm以上8mm以下であって、本実施例では約5mmに設定している。これは、規制ブレード9からガイド部材11までの間隔が2mm以下だと、現像剤が搬送される搬送路が狭くなり、詰まる虞があるためである。一方、間隔が広すぎる場合、現像スリーブ8と現像剤の接触距離が長くなるために、磁気力で摺擦される時間が長くなり、現像剤劣化が懸念されるため好ましくないためである。
なお、本実施形態のように、搬送スクリュー5が規制ブレード9の位置に対して略横方向にある場合、ガイド部材11は現像剤をガイドする機能及び現像剤を貯蔵する機能を有する。これと共に、搬送スクリュー5の駆動時の現像剤押圧を遮蔽する効果も有している。搬送スクリュー5の駆動に伴い、現像剤はスクリュー軸方向に押圧されて搬送されるが、スクリューの動径方向にも押圧が加わる。規制ブレード9と搬送スクリュー5の位置関係が略横方向の場合、動径方向の押圧によって規制ブレード9の面に対して略垂直方向の現像剤搬送力が加わることになり、搬送性ムラの観点で望ましくない。従って搬送スクリュー5の押圧の影響を遮蔽するためにもガイド部材11の特に頂点位置P4(図8記載)は高く配置することが好ましい。少なくとも規制ブレード下点位置P2と搬送スクリュー5の軸中心を結ぶ線に対して上方に、ガイド部材11の頂点位置P4を位置ささせることが好ましい。
本実施形態においては、ガイド部材11の位置から規制ブレード9間のFrは常に引力方向であって、且つ規制ブレード9に近づくにつれてFrが急峻且つ単調増加するように構成している。即ち、本実施形態のマグネット8bの複数の磁極は、現像スリーブ8の法線方向の磁気力Frの絶対値が、現像スリーブ8の回転方向に関して、ガイド部材11の後端から規制ブレード9の位置に向かって単調的に増加するように形成されている。ここで、単調増加するとは、現像スリーブ8の周方向にFrを測定したときに、スリーブ周方向に関して角度2度以上10度以下の範囲でサンプリングした場合において、Frが単調増加していることを指す。
またガイド部材11の上流側(位置P3よりも上流側)にはFrが略0又は正の領域(斥力領域)になるよう構成している。なお、斥力領域は、現像スリーブ8の回転による遠心力により現像剤が現像スリーブ8の表面から離れる程度に絶対値が小さければ、Frが負の値であっても良い。本実施形態では約180°〜200°位置が斥力領域になっており、斥力領域から現像スリーブ8の回転方向下流側に向うにつれてFrが増加させる構成にしている。
Frはスリーブ方向への磁気吸引力のため、Frが大きいとガイド部材11を乗り越えた現像剤が現像スリーブ8へ強く引き込まれる。従って、ガイド部材11と規制ブレード9間のFr分布を規制ブレード9に近づくにつれて単調的に増加傾向にする。こうすることで、図8で示す規制ブレード9近傍の現像剤は、規制ブレード9とガイド部材11間の他の箇所に比べて強いFrで現像スリーブ8近傍へ引き込まれていることになる。規制ブレード9近傍の現像剤を縦方向(規制ブレードに対して平行、現像スリーブ8の外周面の法線方向と略平行)の流れにしたいために、規制ブレード近傍のFrは大きい方が好ましい。本実施形態では、ガイド部材11と規制ブレード9との間においてFrの最大値は規制ブレード9対向部としている。即ち、マグネット8bの複数の磁極は、現像スリーブの回転方向に関してガイド部材11の後端から規制ブレード9の位置までの領域において、磁気力Frの絶対値が最大となる位置が規制ブレード9と対向する位置となるように形成されている。
一方、規制ブレード9との衝突による現像剤の滞留を弱めるべく、現像スリーブ8の回転に伴う現像スリーブ8に沿った現像剤搬送力は弱めるためには、規制ブレード9とガイド部材11間のFrの総和は小さいほうが好ましい。現像スリーブ8の回転に伴う現像剤搬送は現像剤と現像スリーブ8間の摩擦力によって為されるため、垂直抗力=磁気吸引力Frと現像剤搬送力とは比例関係にある。従って規制ブレード9に衝突して不動層の起源になる現像スリーブ8に平行な現像剤搬送力を弱めるためには、規制ブレード9とガイド部材11との間のFrの総和は小さい方が望ましいことになる。
なお規制ブレード9近傍の現像剤の流れは、規制ブレード近傍の現像剤の縦方向の力と横方向(規制ブレードに直交する方向、現像スリーブ8の外周面の接線方向と略平行)の力の大小関係によって決定される。従って、規制ブレード近傍の現像剤の流れを縦方向にするには、規制ブレード近傍のFrを強めることで縦方向の力を強めて、且つ、規制ブレードから搬送ガイド間のFrの総和を小さくすることで横方向の力を弱めることが必要十分条件になる。上記二事象を両立するためには、規制ブレード9とガイド部材11間のFr分布は規制ブレード近傍のみFrが大きくなる分布が好ましい。換言すると規制ブレード9とガイド部材11間のFr分布は、規制ブレード9に近づくにつれて急峻に且つ単調に増加する傾向を取ることが定性的に望ましいといえる。
ここで、規制ブレード9から規制ブレード9よりも現像スリーブ8の回転方向に関して2mm上流の位置までFrを積分した値をFrNearと定義する。また、現像スリーブ8の回転方向に関して、ガイド部材11の後端から規制ブレード9までのFrを積分したFrの総和をFrAllと定義する。このとき、特許文献2に記載されているように、定量的には、積分値FrAllに対するFrNearの割合が、60%以上でコート不良の発生がなくなる。したがって、本実施形態では、FrAllに対するFrNearが、少なくとも60%以上となるように、マグネット8bの複数の磁極を形成している。
なお、規制ブレードから上流2mm間は、現像剤が圧縮され不動層が形成されやすい領域であり、この付近の現像剤の流れがスリーブ垂直方向に向かうことが重要である。
ここで、FrAllに対するFrNearの割合を高めようとすると、規制ブレード9近傍のFrが、ガイド部材11との間の他の領域と比べて大きい必要がある。そのためには、前述の式(1)から分かるように、規制ブレード9近傍の磁気分布の変化を大きくする必要がある。仮に、規制ブレード9と対向する現像剤規制極(ブレード対向極)の磁束密度の分布が略対称なマグネットを用いて、FrAllに対するFrNearの割合を高めようとすると半値幅を狭めることになる。半値幅を狭めると、規制ブレード近傍の磁束密度の分布の変化が大きくなって、マグネットの公差による現像剤搬送量の変化が大きくなる。
そこで本実施形態では、マグネット8bの現像剤規制極を第1の実施形態と同様に、磁束密度の分布を非対称としている。即ち、本実施形態では、現像剤規制極の磁束密度の分布が、最大値位置の現像スリーブ8の回転方向上流において緩やかに、下流において急峻に変化するようにしている。そして、規制ブレード9を最大値位置の現像スリーブの回転方向上流に配置する。上述したように、最大値位置は、現像スリーブ8の外周面に対する法線方向の磁束密度(Br)が最大となる現像スリーブ8の外周面上の位置である。また、ブレード対向位置は、規制ブレード9が対向する現像スリーブ8の外周面上の位置であり、半値中央位置は、磁束密度の分布の半値となる範囲の中央位置に対応する現像スリーブ8の外周面上の位置である。
このように、規制ブレード9の下流においてBrのピークを急峻に立ち下げることで規制ブレード近傍のFrを急峻に立ち上げることができる。そして、FrAllに対するFrNearの割合を高めつつ、規制ブレード9の上流の磁束密度の分布の変化を小さくしてマグネットの工程能力や取り付け精度による搬送性の変化を抑制する。
<実施例2>
このような本実施形態の効果を確認するために、以下のような実験を行った。実施例2で使用したマグネットにおける現像剤規制極(ブレード対向極)の工程能力と取り付け精度の公差は合計3度とした。このため、設計上の基準位置に対してブレード対向極の最大値は最大で上下流3度ずれることになる。したがって、実施例2では、現像スリーブ8の外周面近傍においてブレード対向極の磁束密度の最大値位置を半値中央位置に対して20度下流に設定した。また、規制ブレード9が現像スリーブ8に対向するブレード対向位置を磁束密度の最大値位置の3度上流に配置した。
図9に、このような構成を有する実施例2のマグネット8b(マグ3)の現像スリーブ8の外周面(スリーブ表面)におけるBrの分布を示す。角度の基準は、ドラム側の水平位置を0度とし、スリーブ回転方向と逆方向を回転方向とする。図9の縦の破線は規制ブレード9が現像スリーブ8の外周面に対向する位置(ブレード対向位置)を示しており、86°である。この破線の両隣の点線は、ブレード対向位置が上下流3度の範囲を示している。また、長破線はガイド部材11が現像スリーブ8の外周面に対向する位置を示している。また、ブレード対向極(現像剤規制極)の磁束密度の最大値は40mT、磁束密度の分布の半値幅は45度とした。また、最大値位置と半値中央位置のずれは、上述のように20度とした。実施例2でマグネットの公差による現像剤の搬送量の変化は、3mg/cm2であった。
また、上述の実施例2のマグネット8b(マグ3)を用いることで、FrAllに対するFrNearの割合を高めて、規制ブレード下流の磁束密度の分布の変化をより急峻に変化させた。図10に、マグ3を用いた場合のスリーブ表面におけるキャリアにかかるスリーブ中心方向の磁気力(Fr)の分布を示す。実施例2では、規制ブレード近傍のFrが相対的に大きく、FrAllに対するFrNearの割合が65%であった。
一方、比較例2として、実施例1で使用した現像剤規制極の磁束密度の分布が非対称であるマグ1を、比較例3として、比較例1で使用した現像剤規制極の磁束密度の分布が対称なマグ2を用意した。そして、これらマグ2、3を図8に示したような現像装置に組み込んだ。このとき、マグネットの公差による現像剤の搬送量の変化は、実施例2と同様に3mg/cm2であった。
また、図11にマグ1を用いた場合の、図12にマグ2を用いた場合の、スリーブ表面におけるキャリアにかかるスリーブ中心方向の磁気力(Fr)の分布をそれぞれ示す。比較例2では、FrAllに対するFrNearの割合が55%、比較例3では、FrAllに対するFrNearの割合が50%であった。その他の条件は、実施例2と同じである。このような実施例2と比較例2、3とを比較した結果を表2に示す。
表2から明らかなように、実施例2では、マグネットの公差による現像剤の搬送量の変化を比較例2、3と同等の3mg/cm2に抑えつつ、比較例2、3に対して半値幅を狭めることができた。即ち、実施例2では、ブレード対向極の磁束密度の最大値位置を半値中央位置に対して20度下流に設定し、ブレード対向位置を磁束密度の最大値位置の3度上流に配置した。このため、ブレード対向極の最大値が3度上流に振れた場合であっても、規制ブレード近傍における磁束分布の変化は緩やかであった。この結果、磁束密度の分布が公差により変化した場合においても、現像剤の搬送量の変化を抑制できた。また、実施例2では、FrAllに対するFrNearの割合が65%であったため、規制ブレード上流における前述のトナー層の形成が抑制され、現像剤の搬送不良を発生しなかった。即ち、規制ブレードの下流で磁束密度の分布が急峻に変化するため、規制ブレード近傍の磁力が、ガイド部材11との間の他の領域と比べて大きくなり、結果としてFrNear/FrAllが大きくできた。このため、現像剤の搬送不良を防止できた。
一方、比較例2、3では、FrNear/FrAllが60%未満で小さかったため、トナー層の形成を十分に抑制できず、耐久時や低印字率の画像を連続して形成する場合に現像剤の搬送不良が発生する場合があった。以上より、本実施形態の具体例である実施例2では、半値幅を小さくでき、規制ブレード9近傍での現像剤の搬送性を安定させつつ、ブレード対向極の幅を狭くでき、他の磁極の設計の自由度を高められた。また、FrNear/FrAllを65%としたため、現像剤の搬送不良を防止できた。但し、比較例2の構成は、現像剤規制極の磁束密度の分布が非対称としているため、本発明の効果を得ることができる。そして、本実施例では、実施例1の効果に加えて、FrNear/FrAllが60%以上とすることで、不動層の発生を簡易な構成で抑制する効果を付与することができる。尚、上記不動層に関しては、所定のタイミングの非画像形成時において、現像器内の現像剤を感光ドラムに吐き出す動作等を行うことで、対応することができる。
<他の実施形態>
上述の各実施形態では、図1に示すように、画像形成装置として、感光ドラム10Y、10M、10C、10Kから記録材搬送ベルト24により搬送された記録材Pに直接転写する構成を適用した。但し、本発明は、これ以外の構成にも適用可能である。例えば、記録材搬送ベルト24の代わりに中間転写ベルトなどの中間転写体を設けた構成にも適用可能である。即ち、感光ドラム10Y、10M、10C、10Kから中間転写体に各色のトナー像を一次転写した後、記録材Pに各色の複合トナー像を一括して二次転写する構成の画像形成装置においても本発明は適用できる。また、帯電方式、転写方式、クリーニング方式、定着方式に関しても、上記方式に限られるものではない。
また、上述の各実施形態では、現像容器の上側に現像室を下側に攪拌室を配置した縦攪拌型の現像装置に本発明を適用した例について説明した。但し、本発明は、現像スリーブ内にマグネットを配置して現像剤を担持搬送し、規制ブレードで担持された現像剤の層厚を規制する構成であれば、他の構成にも適用可能である。例えば、上述の現像室と攪拌室とを水平方向に配置した構成にも適用可能である。また、上述の実施形態のように、現像スリーブに現像剤を供給する現像室と、現像スリーブから現像剤を回収する攪拌室とを別々に備えた構成以外にも本発明を適用可能である。例えば、現像室により現像スリーブに対する現像の供給及び回収を行い、攪拌室では現像室との間で現像剤を循環させる構成にも適用可能である。