以下、車両用開閉体停止装置(以下、「停止装置」とも言う。)を備える車両の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、車両10は、後部に開口部11が形成される車体12と、開口部11を開閉する開閉体の一例としてのバックドア20と、車体12とバックドア20との間に配置されるガススプリング30と、バックドア20を任意の位置で停止させる停止装置40と、を備える。
開口部11は、略矩形状をなし、車両後方に開口する。開口部11は、ユーザが車両10の荷室から荷物を取り出したり、ユーザが車両10の荷室に荷物を積み込んだりするための開口部である。
バックドア20は、開口部11に対応する形状をなす。バックドア20は、回動軸21を介して、開口部11の上部に回動可能に支持される。バックドア20は、車両幅方向に延びる回動軸線回りに回動することで、開口部11を開放する「全開位置」及び開口部11を閉塞する「全閉位置」の間で変位する。また、バックドア20は、ユーザがバックドア20を開こうとする際にユーザに操作されるドアハンドル22を有する。
ガススプリング30は、筒状のシリンダ31と、棒状のピストンロッド32と、を有する。ガススプリング30は、シリンダ31とピストンロッド32との間に封入された高圧ガスの反力でバックドア20を付勢する。ガススプリング30は、バックドア20が全閉位置に位置するときも、バックドア20が全開位置に位置するときも、バックドア20を開方向に付勢する。ガススプリング30の第1端は、車体12に対して、車両幅方向に延びる軸線回りに回動可能に連結され、ガススプリング30の第2端は、バックドア20に対して、車両幅方向に延びる軸線回りに回動可能に連結される。
バックドア20には、バックドア20の重量と、ガススプリング30の反力と、ユーザによるドアハンドル22の操作力と、が作用する。つまり、バックドア20には、バックドア20の重量に応じた第1のモーメントと、ガススプリング30の反力に応じた第2のモーメントと、ユーザの操作力に応じた第3のモーメントと、が作用する。ここで、第1のモーメントは、バックドア20の重量と、バックドア20の回動軸21からバックドア20の重心までの距離と、の積で表現されるモーメントである。第2のモーメントは、ガススプリング30の反力と、バックドア20の回動軸21からバックドア20とガススプリング30との連結位置までの距離と、の積で表現されるモーメントである。第3のモーメントは、ユーザの操作力と、バックドア20の回動軸21からドアハンドル22までの距離と、の積で表現されるモーメントである。なお、ドアハンドル22の操作力は、バックドア20の開方向に作用する場合に正の値になり、バックドア20の閉方向に作用する場合に負の値になるとする。また、以降の説明では、第1のモーメントを「M1」で表現し、第2のモーメントを「M2」で表現し、第3のモーメントを「M3」で表現する。
バックドア20において、「M1>M2+M3」が成立する場合、言い換えれば、バックドア20の閉方向に作用するモーメントがバックドア20の開方向に作用するモーメントよりも大きい場合、バックドア20は閉動作する。また、「M1<M2+M3」が成立する場合、言い換えれば、バックドア20の開方向に作用するモーメントがバックドア20の閉方向に作用するモーメントよりも大きい場合、バックドア20は開動作する。さらに、「M1=M2+M3」が成立する場合、言い換えれば、バックドア20の閉方向に作用するモーメントとバックドア20の開方向に作用するモーメントとが釣り合う場合、バックドア20は停止する。
以降の説明では、ユーザがバックドア20を操作しない場合に、「M1=M2」が成立するときのバックドア20の位置を「中立位置」という。つまり、バックドア20が中立位置よりも全閉位置寄りに位置する場合、言い換えれば、バックドア20が中立位置及び全閉位置の間に位置する場合、バックドア20が閉動作しようとする。一方、バックドア20が中立位置よりも全開位置寄りに位置する場合、言い換えれば、バックドア20が中立位置及び全開位置の間に位置する場合、バックドア20が開動作しようとする。
次に、停止装置40について詳しく説明する。
停止装置40は、ユーザのバックドア20の開閉操作に基づいて、全開位置及び全閉位置の間の任意の位置でバックドア20を停止させる装置である。
図2〜図5に示すように、停止装置40は、停止装置40の構成部品を収容するケース50と、ケース50とともに停止装置40の外装を構成するカバー70と、バックドア20の開閉動作に連動して回転するドラム80と、ドラム80に巻き掛けられるケーブル90と、ドラム80を付勢する渦巻ばね100と、を備える。また、停止装置40は、ドラム80から伝達される動力で駆動する中継ギヤ110と、中継ギヤ110から伝達される動力で駆動するウォームホイール120と、ウォームホイール120から伝達される動力で駆動するウォーム130と、を備える。また、停止装置40は、ドラム80の回転をロックするロック部材140と、ロック部材140の作動状況を切り替えるノック機構200と、を備える。
図6に示すように、ケース50は、平板状をなす主壁51と、主壁51から延びる周壁52と、ドラム80を支持する第1支軸53と、中継ギヤ110を支持する第2支軸54を含むブラケット55と、ウォームホイール120を支持する第3支軸56と、を備える。また、ケース50は、ウォーム130を支持する第1規制壁57及び第2規制壁58と、ノック機構200を収容する収容壁59と、第1支軸53の周囲を囲うように主壁51から突出する台座61と、を有する。
図1に示すように、ケース50は、車体12の開口部11の車両幅方向における端部に固定される。図4及び図6に示すように、周壁52は、主壁51の大部分を縁取るように主壁51から延びる。周壁52には、ケース50の内部から外部にケーブル90を引き出すための通用孔62が形成される。通用孔62は、ケース50において、ドラム80を収容する領域と対応する位置に形成される。
第1支軸53、第2支軸54及び第3支軸56は、略円柱状をなす。第1支軸53、第2支軸54及び第3支軸56は、主壁51から同じ方向に延びる。第1支軸53の先端には、渦巻ばね100を固定するための固定溝63が径方向に形成される。第2支軸54を含むブラケット55は、第2支軸54が第2規制壁58と収容壁59とに干渉することを避けるために、主壁51とは別体に形成される。ブラケット55は、第2規制壁58と収容壁59とを跨ぐように、主壁51に固定される。
第1規制壁57及び第2規制壁58は、周壁52と同じ方向に主壁51から延びる。第1規制壁57及び第2規制壁58は、互いに対向する位置に形成される。第1規制壁57及び第2規制壁58には、ウォーム130の端部を支持する軸受64が形成される。
収容壁59は、台座61から第1支軸53の突出方向と同じ方向に延びる。収容壁59は、第1規制壁57とともに、ノック機構200の構成部品を収容するための第1凹部65を区画する。台座61は、第1支軸53の軸方向からの正面視において略円柱状をなす。台座61には、第1支軸53の軸方向に第2凹部66及び第3凹部67が凹み形成される。第2凹部66は、ノック機構200の構成部品を配置するための空間であり、第3凹部67は、ロック部材140を配置するための空間である。
図2に示すように、カバー70は、ケース50の周壁52の先端を縁取るような形状をなす。カバー70は、ねじなどの締結部材でケース50に固定する構成でもよいし、スナップフィット構造でケース50に固定する構成でもよい。
図2に示すように、ドラム80は、略円柱状をなす。図7及び図8に示すように、ドラム80には、渦巻ばね100を収容する第1収容凹部81と、ロック部材140を収容する「収容凹部」の一例としての第2収容凹部82と、ロック部材140の先端が係合する係合凹部83と、が形成される。また、ドラム80には、ケーブル90の巻き取りを案内する周溝84と、ケーブル90の第1端が挿入される挿入孔85と、周溝84の基端と挿入孔85とを接続する接続溝86と、が形成される。
第1収容凹部81及び第2収容凹部82は、略円柱状をなす空間である。第1収容凹部81は、ドラム80の軸方向における第1面に凹み形成され、第2収容凹部82は、ドラム80の軸方向における第2面に凹み形成される。係合凹部83は、第2収容凹部82からドラム80の径方向における外方に凹み形成される。本実施形態において、係合凹部83は、ドラム80の周方向に連続するように、複数形成される。周溝84は、ドラム80の外周面に螺旋状に形成される。挿入孔85は、第1収容凹部81からドラム80の軸方向に形成される。接続溝86は、周溝84の基端と挿入孔85とを接続するように、ドラム80の第1収容凹部81に形成される。
また、ドラム80は、ドラム80の外周面に周方向に亘って形成される第1ギヤ部87と、渦巻ばね100の先端が係止する係止部88と、を有する。第1ギヤ部87は、周溝84とドラム80の軸方向に隣り合うように形成される。図7に示すように、係止部88は、第1収容凹部81から、ドラム80の軸方向に突出する。
図2に示すように、ケーブル90の第1端は、ドラム80の挿入孔85に挿入された状態で固定される。挿入孔85から延びるケーブル90は、ドラム80の周溝84に巻き取られる。図3及び図4に示すように、ドラム80は、第2収容凹部82をケース50の台座61に向けた状態で、ケース50の第1支軸53に回転可能に支持される。渦巻ばね100の基端はケース50の第1支軸53の固定溝63に固定され、渦巻ばね100の先端はドラム80の係止部88に固定される。このとき、渦巻ばね100は、ケーブル90を巻き取る回転方向にドラム80に初期荷重を付与する。また、図1に示すように、ドラム80から延びるケーブル90の第2端は、バックドア20に固定される。
こうして、バックドア20が開動作する場合、開動作するバックドア20がケーブル90を牽引するため、ドラム80からケーブル90が繰り出される。このとき、渦巻ばね100は、ドラム80の回転量に応じて弾性変形する。一方、バックドア20が閉動作する場合、渦巻ばね100に付勢されるドラム80が回転するため、ドラム80がケーブル90を巻き取る。つまり、バックドア20が閉動作する場合であっても、ケーブル90に緩みが発生しない。
以降の説明では、バックドア20が開動作する場合にドラム80が回転する方向を「第1回転方向R11」とし、バックドア20が閉動作する場合にドラム80が回転する方向を「第2回転方向R12」とする。第1回転方向R11は、第2回転方向R12の逆方向である。
図7及び図8に示すように、中継ギヤ110は、第2ギヤ部111を有する。第2ギヤ部111の歯数は、ドラム80の第1ギヤ部87の歯数よりも少ない。図8に示すように、中継ギヤ110の片面には、中継ギヤ110の軸方向と交差する方向に延びるカム溝112が形成される。カム溝112は、中継ギヤ110の軸方向からの正面視において、渦巻き状をなす。カム溝112において、中継ギヤ110の中心から近い端部を第1端とし、中継ギヤ110の中心から遠い端部を第2端としたとき、中継ギヤ110の中心からカム溝112までの距離は、カム溝112の第1端から第2端に進むに連れて次第に長くなる。
図3に示すように、中継ギヤ110は、第2ギヤ部111がドラム80の第1ギヤ部87と噛み合うように、ケース50の第2支軸54に回転可能に支持される。また、中継ギヤ110は、第2支軸54に支持される状態では、カム溝112がケース50の主壁51を向く。
図7及び図8に示すように、ウォームホイール120は、第3ギヤ部121及び第4ギヤ部122を有する。第3ギヤ部121の歯数は、中継ギヤ110の第2ギヤ部111の歯数よりも少なく、第4ギヤ部122の歯数は、第3ギヤ部121の歯数よりも多い。図3に示すように、ウォームホイール120は、第3ギヤ部121が中継ギヤ110の第2ギヤ部111と噛み合うように、ケース50の第3支軸56に回転可能に支持される。
図7及び図8に示すように、ウォーム130は、第5ギヤ部131と、第5ギヤ部131の軸方向における第1端から延びる第1軸部132と、第5ギヤ部131の軸方向における第2端から延びる第2軸部133と、を有する。第5ギヤ部131の軸方向における長さは、ケース50の第1規制壁57及び第2規制壁58の間の長さよりも短い。
本実施形態では、一般的なウォームギヤ機構と異なり、ウォームホイール120が駆動ギヤに相当し、ウォーム130が従動ギヤに相当する。このため、ウォームギヤ機構におけるセルフロック機能が働かないように、第5ギヤ部131の進み角は比較的大きな値に設定される。
図4に示すように、ウォーム130は、第5ギヤ部131がウォームホイール120の第4ギヤ部122と噛み合うように、ケース50の第1規制壁57及び第2規制壁58に支持される。詳しくは、ウォーム130の第1軸部132が第1規制壁57の軸受64に支持され、ウォーム130の第2軸部133が第2規制壁58の軸受64に支持される。
ここで、ウォーム130の第5ギヤ部131はねじ状の歯部を有するため、ウォームホイール120が回転する場合、ウォーム130には、ウォーム130の軸方向、周方向及び径方向に力が作用する。
この点、本実施形態において、ウォーム130の第5ギヤ部131の軸方向における長さは、ケース50の第1規制壁57及び第2規制壁58の間の長さよりも短いため、ウォーム130は軸方向に移動可能となる。また、第1規制壁57及び第2規制壁58は、ウォーム130の周方向の回転を妨げないため、ウォーム130はウォーム130の周方向に回転可能となる。ただし、ウォーム130は、第1規制壁57及び第2規制壁58に支持されることで、ウォーム130の径方向に移動不能となる。なお、ウォームホイール120の第4ギヤ部122及びウォーム130の第5ギヤ部131は、ウォームホイール120が回転する場合に、ウォーム130の周方向の回転よりも、ウォーム130の軸方向への移動が優先されるように構成される。
このため、図4に示すように、ケース50の正面視において、ウォームホイール120が時計方向に回転する場合、ウォーム130の第5ギヤ部131の第1端がケース50の第1規制壁57に接触するまで、ウォーム130が移動する。ウォーム130の第5ギヤ部131の第1端がケース50の第1規制壁57に接触した後は、ウォーム130がウォームホイール120の回転方向に対応する回転方向に回転する。一方、ケース50の正面視において、ウォームホイール120が反時計方向に回転する場合、ウォーム130の第5ギヤ部131の第2端がケース50の第2規制壁58に接触するまで、ウォーム130が移動する。ウォーム130の第5ギヤ部131の第2端がケース50の第2規制壁58に接触した後は、ウォーム130がウォームホイール120の回転方向に対応する回転方向に回転する。こうして、ウォーム130は、第1規制壁57及び第2規制壁58により軸方向の移動量が規定される。
以上説明したように、本実施形態のウォームホイール120とウォーム130とは、「回転部材」としてのウォームホイール120の回転運動を「直動部材」としてのウォーム130の直線運動に変換する機構である。さらに、本機構は、直動部材が所定量だけ直線運動した後は、回転部材が回転しても直動部材が直線運動することを制限する機構でもある。
図2に示すように、ロック部材140は、板状をなす。ロック部材140は、基端から先端に向かうに連れて先細りする。ロック部材140の基端には、ロック部材140の厚さ方向に連結孔141が貫通形成される。
図4に示すように、ロック部材140は、ケース50の第3凹部67に収容される。また、第3凹部67が形成される台座61は、ドラム80の第2収容凹部82に収容されるため、図5に示すように、ロック部材140は、先端をドラム80の係合凹部83に向けた状態で、ドラム80の第2収容凹部82に収容される。
そして、ロック部材140は、ノック機構200の動作により、ドラム80の係合凹部83に係合する「ロック位置」と、ドラム80との係合凹部83に係合しない「アンロック位置」と、を含む移動範囲内を移動する。ロック部材140は、ロック位置に位置する場合、ドラム80の回転を制限し、アンロック位置に位置する場合、ドラム80の回転を許容する。
次に、ノック機構200について説明する。
以降の説明では、図9及び図10に示すように、ノック機構200の構成部品が連結される方向を「軸方向DA」とし、ノック機構200の軸方向DAにおける一方向を「第1方向DA1」とし、第1方向DA1の逆方向を「第2方向DA2」とする。また、ノック機構200の周方向DCにおける一方向を「第1周方向DC1」とし、第1周方向DC1の逆方向を「第2周方向DC2」とする。
図9及び図10に示すように、ノック機構200は、筒状をなす筒体210と、筒体210に対して軸方向DAに移動するノック体220と、筒体210に対して軸方向DAに移動するプッシュ体230と、筒体210に対して周方向DCに回転する回転体240と、を有する。また、ノック機構200は、回転体240を第2方向DA2に付勢する付勢部材250と、回転体240とロック部材140とを連結する連結軸260と、を有する。
筒体210には、ノック体220の軸方向DAの移動をガイドする第1ガイド溝211と、プッシュ体230の軸方向DAの移動をガイドする第2ガイド溝212と、が形成される。第1ガイド溝211及び第2ガイド溝212は、筒体210の第2方向DA2の端部から第1方向DA1に向かって延びる。
筒体210は、第1周方向DC1に進むに連れて第2方向DA2に向かうように傾斜する第1カム面213及び第2カム面214と、軸方向DAに延びる第1規制面215及び第2規制面216と、を内部に有する。第1カム面213及び第2カム面214の各々は、周方向DCに交互に並ぶように複数形成される。第2カム面214の第1周方向DC1における端部と第1カム面213の第2周方向DC2における端部との間には、第2方向DA2に延びる退避溝217が形成される。第1規制面215は、第1カム面213の第1周方向DC1における端部と第2カム面214の第2周方向DC2における端部とを軸方向DAに接続する。第2規制面216は、第1カム面213の第2周方向DC2における端部から第2方向DA2に延びる面であって且つ退避溝217の内面である。
ノック体220は、略棒状をなす。ノック体220には、第2方向DA2における端部から第1方向DA1に向かう第1軸孔221と、第1方向DA1における端部から第2方向DA2に向かう第2軸孔222と、が形成される。ノック体220は、第2方向DA2における端部から径方向における外方に延びる第1ガイド軸223と、第1軸孔221及び第2軸孔222の間の中間壁224と、ノック体220の第1方向DA1における端部に形成される第3カム面225及び第4カム面226と、を有する。第3カム面225は、第1周方向DC1に進むに連れて第2方向DA2に向かうように傾斜し、第4カム面226は、第1周方向DC1に進むに連れて第1方向DA1に向かうように傾斜する。第3カム面225及び第4カム面226の各々は、周方向DCに交互に並ぶように複数形成される。
プッシュ体230は、略筒状をなす。プッシュ体230には、プッシュ体230の第2方向DA2における端部から第1方向DA1に延びる第3ガイド溝231が形成される。プッシュ体230は、軸方向DAにおける中間部から径方向における外方に延びる第2ガイド軸232と、第2ガイド軸232の先端から延びるカム軸233と、プッシュ体230の第2方向DA2における端部に形成される第5カム面234及び第6カム面235と、を有する。
第2ガイド軸232は略角柱状をなし、カム軸233は略円柱状をなす。第5カム面234は、第1周方向DC1に進むに連れて第1方向DA1に向かうように傾斜し、第6カム面235は、第1周方向DC1に進むに連れて第2方向DA2に向かうように傾斜する。周方向DCにおいて、第5カム面234は第6カム面235よりも長い。第5カム面234及び第6カム面235の各々は、周方向DCに交互に並ぶように複数形成される。プッシュ体230における第5カム面234の形成数は、ノック体220における第3カム面225の形成数の半数であり、プッシュ体230における第6カム面235の形成数は、ノック体220における第4カム面226の形成数の半数である。
回転体240は、軸方向DAに延びる軸体241と、軸体241から軸体241の径方向に放射状に延びる複数のリブ242と、を有する。軸体241には、第1方向DA1における端部から第2方向DA2に向かって係合孔243が形成される。リブ242の第2方向DA2における先端には、第1周方向DC1に進むに連れて第2方向DA2に向かう第7カム面244が設けられる。
付勢部材250は、いわゆるコイルスプリングである。連結軸260は、円板状をなすフランジ261と、フランジ261から第1方向DA1に延びる屈曲軸262と、フランジ261から第2方向DA2に延びる係合軸263と、を有する。フランジ261は、付勢部材250の端部を支持する部位となる。屈曲軸262は、略L字状に屈曲する。
そして、ノック体220とプッシュ体230とが筒体210に対して第1方向DA1に挿入され、回転体240と付勢部材250と連結軸260とが筒体210に対して第2方向DA2に挿入されることで、ノック機構200が構成される。
ノック体220とプッシュ体230とが筒体210に挿入される状態では、ノック体220の第1ガイド軸223が筒体210の第1ガイド溝211及びプッシュ体230の第3ガイド溝231に収まり、プッシュ体230の第2ガイド軸232が筒体210の第2ガイド溝212に収まる。こうして、ノック体220は、筒体210とプッシュ体230とに対し、周方向DCに回転不能且つ軸方向DAに移動可能となる。同様に、プッシュ体230は、筒体210に対し、周方向DCに回転不能且つ軸方向DAに移動可能となる。
回転体240が筒体210に挿入される状態では、回転体240の第7カム面244が筒体210の第1カム面213又は筒体210の退避溝217の底面218に接触する。つまり、回転体240が筒体210に係合する。回転体240が筒体210に係合する状態では、回転体240の周方向DCの回転が制限される。一方、回転体240が筒体210と係合しない状態、言い換えれば、回転体240が筒体210に対して第1方向DA1に変位した状態では、回転体240の第1周方向DC1の回転が可能となる。
連結軸260が筒体210に挿入される状態では、連結軸260の係合軸263が回転体240の係合孔243に挿入される。連結軸260は、付勢部材250により第2方向DA2に付勢されることになるため、連結軸260は回転体240を常時に第2方向DA2に押す状態となる。このため、回転体240が第1方向DA1及び第2方向DA2に移動する場合には、連結軸260は回転体240に接したまま回転体240とともに移動する。
図4及び図6に示すように、ノック機構200は、ケース50の第1凹部65及び第2凹部66に跨って収容される。このとき、付勢部材250は、連結軸260のフランジ261とケース50の第1凹部65及び第2凹部66を区画する壁部との間で圧縮される。こうして、付勢部材250は、回転体240と連結軸260とを第2方向DA2に付勢する。また、連結軸260の屈曲軸262は、ロック部材140の連結孔141に挿入される。
図5及び図9に示すように、ノック体220の第2軸孔222には、ウォーム130の第1軸部132が挿入される。このため、ウォーム130が第1方向DA1に移動する場合には、ウォーム130の第1軸部132の先端がノック体220の中間壁224を第1方向DA1に押し、ウォーム130が第2方向DA2に移動する場合には、ウォーム130の第1軸部132の先端がノック体220の中間壁224から離れる。
図5に示すように、ノック機構200のプッシュ体230のカム軸233は、中継ギヤ110のカム溝112に係合する。プッシュ体230のカム軸233は、中継ギヤ110が回転する場合には、カム軸233に沿って移動する。詳しくは、中継ギヤ110に噛み合うドラム80が第1回転方向R11に回転する場合、言い換えれば、バックドア20が開動作する場合、プッシュ体230が第2方向DA2に移動する。一方、中継ギヤ110に噛み合うドラム80が第2回転方向R12に回転する場合、言い換えれば、バックドア20が閉動作する場合、プッシュ体230が第1方向DA1に移動する。
次に、図11〜図15を参照して、ノック機構200の作用について説明する。
図11〜図15は、筒体210の第1カム面213及び第2カム面214に関する構成と、ノック体220の第3カム面225及び第4カム面226に関する構成と、回転体240の第7カム面244に関する構成と、を模式的に図示している。
図11は、ノック体220が第1方向DA1に付勢されていないときの筒体210とノック体220と回転体240との位置関係を示している。図11に示すように、回転体240は、付勢部材250によって第2方向DA2に付勢されるため、回転体240の第7カム面244は、筒体210の第1カム面213を第2方向DA2に押す。筒体210の第1カム面213及び回転体240の第7カム面244は、ともに第1周方向DC1に進むに連れて第2方向DA2に向かうように傾斜するため、第2方向DA2に付勢される回転体240は、筒体210の第1カム面213に沿って移動しようとする。その結果、回転体240は、筒体210の第1カム面213及び第1規制面215に接触する。
以降の説明では、図11に示す回転体240の位置を「前進位置」という。前進位置は、回転体240が筒体210の「第1係合面」の一例としての第1カム面213及び第1規制面215と係合することで、回転体240の姿勢が安定する位置である。回転体240が前進位置に位置する場合、ロック部材140はアンロック位置に位置する。なお、回転体240が前進位置に位置する状態は、ノック式ボールペンにおいて、軸筒からペン先が突出した状態に相当する。
図12に実線で示すように、図11に示す状態からノック体220が第1方向DA1に移動すると、ノック体220の第3カム面225が回転体240の第7カム面244を第1方向DA1に押す。ノック体220の第3カム面225が筒体210の第1カム面213よりも第1方向DA1に移動すると、回転体240が筒体210の第1カム面213及び第1規制面215に係合しなくなる。ノック体220の第3カム面225及び回転体240の第7カム面244は、ともに第1周方向DC1に進むに連れて第2方向DA2に向かうように傾斜するため、回転体240は、ノック体220の第3カム面225に沿って移動しようとする。詳しくは、図12に二点鎖線で示すように、回転体240がノック体220に対して第1周方向DC1に回転するように、回転体240の第7カム面244がノック体220の第3カム面225と摺動する。
一方、ノック体220の第3カム面225と第1周方向DC1に隣り合う第4カム面226は、第1周方向DC1に進むに連れて第1方向DA1に向かうように傾斜するため、回転体240の第7カム面244はノック体220の第4カム面226と摺動しない。その結果、回転体240は、先端が、ノック体220の第3カム面225及び当該第3カム面225と第1周方向DC1に隣り合う第4カム面226の境界に留まる。
以降の説明では、図12に二点鎖線で示す回転体240の周方向DCにおける位置を「第1の位置」という。回転体240が第1の位置に位置する場合、軸方向DAにおいて、回転体240の第7カム面244の少なくとも一部が筒体210の第2カム面214と対向する。
図13に実線で示すように、図12に示す状態からノック体220が第2方向DA2に移動すると、回転体240の第7カム面244がノック体220の第3カム面225に接触しなくなる。つまり、ノック体220の第3カム面225が回転体240の第7カム面244を第1方向DA1に押す状態が解消され、回転体240の第7カム面244が筒体210の第2カム面214を押す状態となる。筒体210の第2カム面214及び回転体240の第7カム面244は、ともに第1周方向DC1に進むに連れて第2方向DA2に向かうように傾斜するため、回転体240は、筒体210の第2カム面214に沿って移動しようとする。詳しくは、回転体240がノック体220に対して第1周方向DC1に回転するように、回転体240の第7カム面244が筒体210の第2カム面214と摺動する。
筒体210の第2カム面214と当該第2カム面214の第1周方向DC1に隣り合う第1カム面213との間には、第2方向DA2に退避溝217が延びる。このため、回転体240の第7カム面244が筒体210の第2カム面214と摺動し続けると、図13に二点鎖線で示すように、回転体240のリブ242が筒体210の退避溝217に収まる。つまり、回転体240が筒体210の第2規制面216及び筒体210の退避溝217の底面218に接触する。
以降の説明では、図13に示す回転体240の位置、すなわち、回転体240が前進位置よりも第2方向DA2に移動した位置を「後退位置」という。後退位置は、回転体240が筒体210と「第2係合面」としての第2規制面216及び退避溝217の底面218に係合することで、回転体240の姿勢が安定する位置である。回転体240が後退位置に位置する場合、ロック部材140はロック位置に位置する。なお、回転体240が前進位置に位置する状態は、ノック式ボールペンにおいて、軸筒にペン先が収容される状態に相当する。
図14に実線で示すように、図13に示す状態からノック体220が第1方向DA1に移動すると、ノック体220の第3カム面225が回転体240の第7カム面244を第1方向DA1に押す。ノック体220の第3カム面225が筒体210の第1カム面213よりも第1方向DA1に移動すると、回転体240が筒体210の第2規制面216及び退避溝217の底面218に係合しなくなる。このため、図14に二点鎖線で示すように、回転体240がノック体220に対して第1周方向DC1に回転するように、回転体240の第7カム面244がノック体220の第3カム面225と摺動する。こうして、回転体240は、先端がノック体220の第3カム面225及び当該第3カム面225と周方向DCに隣り合う第4カム面226の境界に留まる。
以降の説明では、図14に二点鎖線で示す回転体240の周方向DCにおける位置を「第2の位置」という。回転体240が第2の位置に位置する場合、軸方向DAにおいて、回転体240の第7カム面244の少なくとも一部が筒体210の第1カム面213と対向する。
図15に実線で示すように、図14に示す状態からノック体220が第2方向DA2に移動すると、回転体240の第7カム面244がノック体220の第3カム面225に係合しなくなる。つまり、ノック体220の第3カム面225が回転体240の第7カム面244を第1方向DA1に押す状態が解消され、回転体240の第7カム面244が筒体210の第1カム面213を押す状態となる。このため、図15に二点鎖線で示すように、回転体240がノック体220に対して周方向DCに回転するように、回転体240の第7カム面244が筒体210の第1カム面213と摺動する。その結果、図13と同様に、回転体240が筒体210の第1カム面213及び第1規制面215に接触する。つまり、回転体240が「前進位置」に位置する。
以降の説明では、図11〜図13又は図13〜図15に示すように、ノック機構200において、ノック体220が第1方向DA1に移動した後に第2方向DA2に移動する動作を「ノック動作」という。そして、ノック機構200は、ノック動作の度に、回転体240を後退位置から前進位置に移動させたり、回転体240を前進位置から後退位置に移動させたりする。つまり、ノック機構200は、ノック動作の度に、ロック部材140をロック位置からアンロック位置に移動させたり、ロック部材140をアンロック位置からロック位置に移動させたりする。
なお、ノック機構200は、ウォーム130がノック体220を第1方向DA1に押した後に、ウォーム130が第2方向DA2に移動することでノック動作する。言い換えれば、ノック機構200は、ドラム80が第2回転方向R12に回転した後に、ドラム80が第1回転方向R11に回転することでノック動作する。さらに言い換えれば、ノック機構200は、バックドア20が閉動作した後にバックドア20が開動作することでノック動作する。ノック機構200にノック動作させるために必要なバックドア20の変位量は適宜に設定すればよい。
次に、図16〜図29を参照して、停止装置40の作用について説明する。
図16〜図29では、停止装置40の作用の説明の容易のために、一部構成の図示を省略したり簡略したりしている。
まず、任意の位置まで開動作させたバックドア20に対し、ユーザが停止操作及び停止解除操作を行うときの停止装置40の作用について説明する。ここで、停止操作とは、開動作可能なバックドア20を開作動不能とするための操作であり、停止解除操作とは、開動作不能なバックドア20を開動作可能とするための操作である。停止操作及び停止解除操作は、上述した通り、ともに、バックドア20を僅かに閉動作させた後にバックドア20を僅かに開動作させる操作である。
図16及び図17は、バックドア20が全閉位置に位置するときの停止装置40の状態を示している。バックドア20が全閉位置に位置する場合、ドラム80は最も第2回転方向R12に回転した状態であり、中継ギヤ110は最も第1回転方向R21に回転した状態である。つまり、ドラム80はケーブル90を最も巻き取った状態であり、中継ギヤ110はプッシュ体230を最も第2方向DA2に移動させる状態である。
そして、ユーザがバックドア20を中立位置及び全開位置の間の中間位置まで開動作させると、停止装置40が図18及び図19に示す状態となる。
図18及び図19に示すように、バックドア20が全閉位置から開動作すると、開動作するバックドア20がケーブル90を牽引するため、ドラム80からケーブル90が繰り出される。つまり、ドラム80が第1回転方向R11に回転するため、中継ギヤ110が第2回転方向R22に回転し、ウォームホイール120が第1回転方向R31に回転する。
中継ギヤ110が第2回転方向R22に回転すると、中継ギヤ110のカム溝112の内面とノック機構200のプッシュ体230のカム軸233とが摺動する。このため、ノック機構200のプッシュ体230が第2方向DA2に移動する。プッシュ体230の第2方向DA2への移動量は、中継ギヤ110の第2回転方向R22への回転量に比例する。
ウォームホイール120が第1回転方向R31に回転すると、ウォーム130は、ケース50の第2規制壁58に接触するまで第2方向DA2に移動し、第2規制壁58に接触する後は周方向DCに回転する。図19に示すように、ウォーム130の第1軸部132は、ノック機構200のノック体220の中間壁224から離れる。このため、図11及び図19に示すように、回転体240は前進位置に位置し、図18に示すように、ロック部材140はアンロック位置に位置する。
その後、ユーザが停止操作を行う場合、ユーザはバックドア20を中間位置から僅かに閉動作させる。
図20及び図21に示すように、バックドア20が僅かに閉動作すると、ケーブル90に弛みが発生するため、ドラム80がケーブル90を巻き取る。つまり、ドラム80が第2回転方向R12に回転するため、中継ギヤ110が第1回転方向R21に回転し、ウォームホイール120が第2回転方向R32に回転する。
ウォームホイール120が第2回転方向R32に回転すると、ウォーム130は、ケース50の第1規制壁57に接触するまで第1方向DA1に移動する。すると、図12及び図21に示すように、ウォーム130がノック体220を第1方向DA1に押すため、回転体240が前進位置よりも第1方向DA1に移動する。その結果、図20に示すように、ロック部材140がアンロック位置よりも第1方向DA1に移動する。
続いて、ユーザは、停止操作を完了させるべく、バックドア20を僅かに開動作させる。このとき、ユーザは、バックドア20を開方向に操作してもよいし、バックドア20から手を離すだけでもよい。バックドア20から手を離すだけでバックドア20が開動作するのは、バックドア20が中立位置よりも全開位置寄りに位置するためである。
図22及び図23に示すように、バックドア20が僅かに開動作すると、バックドア20がケーブル90を牽引するため、ドラム80からケーブル90が繰り出される。つまり、ドラム80が第1回転方向R11に回転するため、中継ギヤ110が第2回転方向R22に回転し、ウォームホイール120が第1回転方向R31に回転する。ウォームホイール120が第1回転方向R31に回転すると、ウォーム130は、第2方向DA2に移動する。すると、図13及び図23に示すように、ウォーム130がノック体220を第1方向DA1に押さなくなるため、回転体240が後退位置まで移動する。その結果、図22に示すように、ロック部材140がロック位置に移動する。
図22に示すように、ロック部材140がロック位置に位置すると、ドラム80が第1回転方向R11に回転不能となる。すると、バックドア20がドラム80からケーブル90を引き出すことができなくなり、バックドア20が開動作不能となる。こうして、停止装置40は、バックドア20を停止状態とする。
その後、ユーザが停止解除操作を行う場合、ユーザはバックドア20を中間位置から僅かに閉動作させる。
図24に示すように、バックドア20が僅かに閉動作すると、ケーブル90に緩みが発生するため、ドラム80がケーブル90を巻き取る。つまり、ドラム80が第2回転方向R12に回転するため、中継ギヤ110が第1回転方向R21に回転し、ウォームホイール120が第2回転方向R32に回転する。
ウォームホイール120が第2回転方向R32に回転すると、ウォーム130は、ケース50の第1規制壁57に接触するまで第1方向DA1に移動する。すると、図14に示すように、ウォーム130がノック体220を第1方向DA1に押すため、回転体240が前進位置よりも第1方向DA1に移動する。その結果、図24に示すように、ロック部材140がアンロック位置よりも第1方向DA1に移動する。
続いて、ユーザは、停止解除操作を完了させるべく、バックドア20を開動作させる。このとき、ユーザは、バックドア20を開方向に操作してもよいし、バックドア20から手を離すだけでもよい。
図25に示すように、バックドア20が開動作すると、バックドア20がケーブル90を牽引するため、ドラム80からケーブル90が繰り出される。つまり、ドラム80が第1回転方向R11に回転するため、中継ギヤ110が第2回転方向R22に回転し、ウォームホイール120が第1回転方向R31に回転する。
ウォームホイール120が第1回転方向R31に回転すると、ウォーム130は、第2方向DA2に移動する。すると、図15に示すように、ウォーム130がノック体220を第1方向DA1に押さなくなるため、回転体240が前進位置まで移動する。その結果、図25に示すように、ロック部材140がアンロック位置に移動する。
図25に示すように、ロック部材140がアンロック位置に位置すると、ドラム80が第1回転方向R11に回転可能となる。すると、バックドア20がドラム80からケーブル90を引き出すことが可能となり、バックドア20が開動作可能となる。こうして、停止装置40は、バックドア20の停止状態を解除する。
次に、バックドア20が閉動作するときの停止装置40の作用について説明する。
図20及び図24に示すように、バックドア20の閉動作中には、ドラム80が第2回転方向R12に回転するため、中継ギヤ110が第1回転方向R21に回転し、ウォームホイール120が第2回転方向R32に回転する。中継ギヤ110が第1回転方向R21に回転すると、中継ギヤ110のカム溝112の内面とノック機構200のプッシュ体230のカム軸233とが摺動する。このため、ノック機構200のプッシュ体230が第1方向DA1に移動する。プッシュ体230の第1方向DA1への移動量は、中継ギヤ110の第1回転方向R21への回転量に比例する。また、ウォームホイール120が第2回転方向R32に回転すると、ウォーム130は、ケース50の第1規制壁57に接触した状態で周方向DCに回転する。
図26に示すように、バックドア20が中立位置よりも全閉位置寄りの位置まで閉動作すると、プッシュ体230が回転体240に接触する。このため、バックドア20が上記位置よりもさらに閉動作すると、プッシュ体230が回転体240を第1方向DA1に押す。
ここで、停止装置40は、ロック部材140の位置に応じて、バックドア20の開動作を制限したり許容したりする。一方、停止装置40は、ロック部材140の位置に関わらず、バックドア20の閉動作を許容する。このため、ユーザがバックドア20の閉動作を開始するときには、バックドア20の開動作がロックされている場合と、バックドア20の開動作がロックされていない場合と、がある。言い換えれば、停止装置40が図18及び図19に示すように回転体240が前進位置に位置するときにユーザがバックドア20の閉動作を開始する場合もあれば、停止装置40が図22及び図23に示すように回転体が後退位置に位置するときにユーザがバックドア20の閉動作を開始する場合もある。
図27は、停止装置40がバックドア20の開動作をロックしていない状況下で、バックドア20の閉動作が開始される場合のプッシュ体230の動作を示している。つまり、図27に実線で示す回転体240の位置は、図12に二点鎖線で示す回転体240の位置と対応している。
図27に二点鎖線で示すように、バックドア20が全閉位置の付近まで閉動作されることで、プッシュ体230の第5カム面234がノック体220の第3カム面225よりも第1方向DA1に移動すると、プッシュ体230の第5カム面234が回転体240の第7カム面244を第1方向DA1に押す。すると、図27に二点鎖線で示すように、回転体240がプッシュ体230に対して第1周方向DC1に回転するように、回転体240の第7カム面244がプッシュ体230の第5カム面234と摺動する。
その結果、回転体240は、周方向DCにおいて、図27に実線で示す第1の位置から図27に二点鎖線で示す第2の位置に移動する。詳しくは、回転体240は、軸方向DAにおいて、回転体240の第7カム面244の少なくとも一部が、筒体210の第2カム面214と対向する第1の位置から、軸方向DAにおいて、回転体240の第7カム面244の少なくとも一部が、筒体210の第1カム面213と対向する第2の位置に移動する。
一方、図28は、停止装置40がバックドア20の開動作をロックする状況下で、バックドア20の閉動作が開始される場合のプッシュ体230の動作を示している。つまり、図28に実線で示す回転体240の位置は、図14に二点鎖線で示す回転体240の位置と対応している。
図28に二点鎖線で示すように、バックドア20が全閉位置の付近まで閉動作されることで、プッシュ体230の第5カム面234がノック体220の第3カム面225よりも第1方向DA1に移動すると、プッシュ体230の第5カム面234が回転体240の第7カム面244を第1方向DA1に押す。すると、図28に二点鎖線で示すように、回転体240がプッシュ体230に対して第1周方向DC1に回転するように、回転体240の第7カム面244がプッシュ体230の第5カム面234と摺動する。
その結果、回転体240は、周方向DCにおいて、図27に実線で示す第2の位置から図27に二点鎖線で示す第2の位置に僅かに移動する。詳しくは、回転体240は、軸方向DAにおいて、回転体240の第7カム面244の少なくとも一部が筒体210の第1カム面213と対向する第2の位置から、軸方向DAにおいて、回転体240の第7カム面244の少なくとも一部が筒体210の第1カム面213と対向する第2の位置に僅かに移動する。つまり、プッシュ体230の移動前後における回転体240の位置は、ともに第2の位置である。
こうして、図27及び図28に示すように、バックドア20の閉動作の開始時点における回転体240が前進位置に位置しているか後退位置に位置しているかに関わらず、バックドア20が全閉位置の付近まで閉動作する場合、回転体240が常に第2の位置に位置する。
このため、図27及び図28に二点鎖線で示すように回転体240が第2の位置に位置する状態で、バックドア20が開動作する場合には、図29に示すように、回転体240が筒体210に対して第1周方向DC1に回転するように、回転体240の第7カム面244が筒体210の第1カム面213と摺動する。このため、回転体240は、図29に二点鎖線で示す前進位置に移動する。言い換えれば、回転体240が後退位置に移動しない点で、停止装置40がバックドア20の開動作を停止しない。
こうして、プッシュ体230は、バックドア20が全閉位置の付近まで閉動作される場合に、回転体240を第2の位置に移動させることで、回転体240の位置を初期化する。以降の説明では、プッシュ体230が回転体240の位置を初期化する機能を「初期化機能」ともいう。
また、図27及び図28に実線で示すように、プッシュ体230が回転体240を後退位置よりも第1方向DA1に移動させる場合、すなわち、プッシュ体230の第5カム面234が筒体210の退避溝217の底面218よりも第1方向DA1に位置する場合には、回転体240が後退位置に移動できなくなる。つまり、この場合には、停止装置40がバックドア20の開動作を停止できなくなる。
こうして、プッシュ体230には、バックドア20が全閉位置の付近に位置する場合に、回転体240を退避位置に移動できなくすることで、ロック部材140によるドラム80の回転のロックを無効化する。以降の説明では、プッシュ体230がドラム80の回転のロックを無効化する機能を「無効化機能」ともいう。
ここで、バックドア20が閉動作する状況下において、プッシュ体230がドラム80の回転のロックを無効化し始めるときのバックドア20の位置を「無効化位置」とし、プッシュ体230がノック機構200の回転体240の位置を初期化するときのバックドア20の位置を「初期化位置」とする。この場合、無効化位置は、中立位置及び全閉位置の間の位置とすることが好ましく、初期化位置は、無効化位置及び全閉位置の間の位置とすることが好ましい。
本実施形態の効果について説明する。
(1)ノック機構200は、バックドア20が閉動作した後に開動作することでノック動作する。つまり、ノック機構200は、ユーザがバックドア20を開閉操作することでノック動作する。したがって、停止装置40は、ユーザのバックドア20の開閉操作により、バックドア20が開動作不能な状態及びバックドア20が開動作可能な状態を切り替えることができる。こうして、ユーザは、所望の位置でバックドア20を停止させるための操作を行いやすくなる。
(2)停止装置40は、ドラム80の回転運動をウォーム130の直線運動に変化させることで、ノック機構200にノック動作させる。また、停止装置40は、ウォーム130が第1規制壁57及び第2規制壁58に接触することで、ウォーム130が軸方向DAに移動できなくなる場合には、ウォーム130がウォームホイール120から伝達される動力に基づいて周方向DCに回転する。したがって、停止装置40は、バックドア20の開動作又は閉動作が継続される場合において、ウォーム130が第1方向DA1又は第2方向DA2に移動し続けることを抑制できる。例えば、ウォーム130が際限なく第1方向DA1又は第2方向DA2に移動することを許容する構成とする場合に比較して、停止装置40の大型化を抑制できる。
(3)バックドア20が無効化位置及び全閉位置の間に位置する場合には、バックドア20の開度が小さく、ユーザがバックドア20を停止させる必要性が低い。この点、停止装置40は、バックドア20が無効化位置及び全閉位置の間に位置する場合には、プッシュ体230が回転体240を後退位置よりも第1方向DA1に移動させる。つまり、この場合には、バックドア20が開閉動作されても、回転体240が後退位置に向かって移動できなくなる点で、バックドア20が停止しなくなる。こうして、停止装置40は、バックドア20が全閉位置の近くに位置する場合に不用意にバックドア20を停止しない点で、ユーザの利便性を高めることができる。
(4)プッシュ体230は、中継ギヤ110のカム溝112に係合するカム軸233を有する。カム溝112は、中継ギヤ110が第1回転方向R21に回転するに連れて、プッシュ体230が第1方向DA1に移動するように形成される。このため、バックドア20が閉動作する場合には、プッシュ体230が第1方向DA1に移動し、バックドア20が開動作する場合には、プッシュ体230が第2方向DA2に移動する。つまり、停止装置40は、バックドア20が全閉位置に近付く程、プッシュ体230を第1方向DA1に移動させることができる。
(5)全閉位置又は全閉位置の付近からバックドア20を開動作させる際に、回転体240が第1の位置に位置していると、バックドア20の開動作中に、回転体240が筒体210の第2規制面216及び退避溝217の底面218と係合するおそれがある。つまり、全閉位置又は全閉位置の付近からバックドア20を開動作する際に、回転体240が第1の位置に位置していると、バックドア20の開動作中に、回転体240が後退位置に移動するおそれがある。この場合、ロック部材140がドラム80の第1回転方向R11の回転をロックするため、バックドア20の開動作が停止される。
この点、停止装置40において、プッシュ体230は、バックドア20が初期化位置及び全閉位置の間に位置する場合に、回転体240を第1方向DA1に押すことで回転体240を第2の位置まで回転させる。つまり、全閉位置又は全閉位置の付近からバックドア20を開動作させる場合には、回転体240が必ず第2の位置に位置する。このため、停止装置40は、全閉位置からバックドア20を開動作する際に、バックドア20を停止することを防止できる。
(6)停止装置40は、ロック部材140をドラム80の第2収容凹部82に収容する。この点で、停止装置40は、ロック部材140をドラム80の第2収容凹部82の外方に配置する場合に比較して、装置の大型化を抑制できる。
(7)停止装置40は、バックドア20が開動作する場合にドラム80から繰り出される一方、バックドア20が閉動作する場合にドラム80に巻き取られるケーブル90と、ドラム80の回転に伴い弾性変形する渦巻ばね100と、を備える。このため、停止装置40は、簡易な構成で、バックドア20が開動作するときにドラム80を第1回転方向R11に回転させ、バックドア20が閉動作するときにドラム80を第2回転方向R12に回転させることができる。
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・停止装置40は、開口部11の車両幅方向における片端に1つだけ設けてもよいし、開口部11の車両幅方向における両端に1つずつ設けてもよい。
・停止装置40のケース50はバックドア20に取り付けてもよい。この場合、停止装置40から延びるケーブル90の端部は車体12に取り付けることが好ましい。
・停止装置40は、バックドア20の開閉動作に応じてドラム80が回転可能であれば、ケーブル90と渦巻ばね100とを有しなくてもよい。例えば、停止装置40は、バックドア20の回動軸21の回動によりドラム80が回転する構成を採用してもよいし、ガススプリング30のシリンダ31に対するピストンロッド32の進退移動によりドラム80が回転する構成を採用してもよい。
・停止装置40において、ドラム80の第1ギヤ部87、中継ギヤ110の第2ギヤ部111、ウォームホイール120の第3ギヤ部121及び第4ギヤ部122並びにウォームの第5ギヤ部131におけるギヤ比は、適宜に変更すればよい。また、ドラム80の外径と、中継ギヤ110のカム溝112の形状とについても、適宜に変更すればよい。つまり、バックドア20の開閉動作量に対するウォーム130の軸方向DAの移動量及びプッシュ体230の軸方向DAの移動量は、車両10の仕様に応じて適宜に設定されることが好ましい。
・ロック部材140の先端が係合するドラム80の係合凹部83は、ドラム80の第2収容凹部82に形成する必要はない。例えば、ドラム80には、ドラム80の外周面又は側面に係合凹部83に相当する構成を形成してもよい。
・ロック部材140は、ドラム80との摺動抵抗により、ドラム80の回転を制限する構成であってもよい。例えば、ロック部材140は、ブレーキパッド及びブレーキシューなどとしてもよい。
・停止装置40は、中継ギヤ110とウォームホイール120とウォーム130との代わりに、ドラム80の回転運動をノック体220の進退運動に変換する機構を有してもよい。例えば、停止装置40は、ウォームホイール120とウォーム130との代わりにラックアンドピニオン機構を有してもよい。この場合、停止装置40は、ラックが第1方向DA1又は第2方向DA2に対してノック動作に必要な量だけ移動した後に、ピニオンからラックに対する動力の伝達を遮断する構成を採用することが好ましい。
・プッシュ体230の駆動源は、中継ギヤ110でなくてもよい。例えば、停止装置40は、ドラム80の回転運動をプッシュ体230の軸方向DAにおける進退運動に直接変換する機構を採用してもよい。この場合、ドラム80の動力をウォームホイール120に伝達可能であれば、停止装置40は中継ギヤ110を有しなくてもよい。
・ケース50の第2規制壁58は、ウォーム130の第2軸部133の先端に接することで、ウォーム130の第2方向DA2の移動量を規定する構成としてもよい。つまり、第2規制壁58は、ウォーム130の一部に接触することで、ウォーム130の第2方向DA2における移動量を規定すればよい。
・停止装置40において、プッシュ体230の無効化機能及び初期化機能は、必須の構成ではない。例えば、停止装置40は、プッシュ体230の無効化機能だけを有してもよいし、プッシュ体230の初期化機能だけを有してもよい。
・停止装置40は、バックドア20が閉動作する際にプッシュ体230の無効化機能が機能し始める無効化位置は、中立位置よりも全開位置寄りの位置に設定してもよい。同様に、バックドア20が閉動作する際にプッシュ体230の初期化機能が機能し始める初期化位置は、中立位置よりも全開位置寄りの位置に設定してもよい。
・停止装置40は、車両10の開閉体の一例としての車両10のボンネット及び車両10のサイドドアに適用してもよい。車両10のサイドドアは、スイングドアでもよいし、ガルウイングでもよい。なお、停止装置40は、開方向又は閉方向に動作しようとする動作範囲が設定される開閉体に適用することが好ましい。上記実施形態では、中立位置から全開位置までの範囲が、開閉体が開動作しようとする動作範囲に相当する。
・例えば、車両10のボンネットなど、開閉体が閉動作するように付勢される場合、停止装置40は、開閉体が開動作した後に閉動作する場合に、ノック機構200がノック動作するように構成されることが好ましい。この場合、ボンネットが閉動作するときのドラム80の回転方向が第1回転方向R11となり、ボンネットが開動作するときのドラム80の回転方向が第2回転方向R12となることが好ましい。これによれば、停止装置40は、自重により閉動作しようとするボンネットを任意の位置で停止できる。つまり、車両は、ボンネットを任意の位置で支えるための支持部材を備えなくてもよくなる。