JP2020184472A - 非水電解質蓄電素子用正極、及びこれを備えた非水電解質蓄電素子 - Google Patents

非水電解質蓄電素子用正極、及びこれを備えた非水電解質蓄電素子 Download PDF

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Abstract

【課題】高い放電容量を損なうことなく、電極密度が高い非水電解質蓄電素子用正極を提供する。【解決手段】本発明の一態様は、リチウム過剰型正極活物質と、非晶質炭素と、黒鉛とを含む、非水電解質蓄電素子用正極である。【選択図】図6

Description

本発明は、非水電解質蓄電素子用正極、及びこれを備えた非水電解質蓄電素子に関する。
リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質蓄電素子は、エネルギー密度の高さから、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、自動車等に多用されている。また、リチウムイオン二次電池以外の非水電解質蓄電素子として、リチウムイオンキャパシタや電気二重層キャパシタ等のキャパシタも広く普及している。
非水電解質蓄電素子用正極活物質として、LiCoO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNi0.5Co0,2Mn0.3等の活物質が知られている。これらのいわゆる「LiMeO型」活物質は、α−NaFeO型結晶構造を有し、遷移金属(Me)に対するLiのモル比(Li/Me)が1.1未満であり、典型的には1付近である。
一方、高い放電容量が得られる非水電解質蓄電素子用正極活物質として、遷移金属(Me)に対するリチウム(Li)の組成比率Li/Meが1より大きく、例えばLi/Meが1.1〜1.6である、リチウム過剰型活物質が知られている。リチウム過剰型活物質は、組成式Li1+αMe1−α(α>0)と表記することができる。ここで、遷移金属(Me)の比率に対するリチウム(Li)の組成比率Li/Meをβとすると、β=(1+α)/(1−α)であるから、例えば、Li/Meが1.5のとき、α=0.2である。
非水電解質蓄電素子は、積載スペース、及び持ち運びの観点からさらなる小型化が求められている。その課題を解決する一つの手段として、電極の合剤密度(以下、「電極密度」という)の向上が挙げられる。
特許文献1には、「薄片状黒鉛の平均厚さを0.5μm以下とすることにより、薄片状黒鉛の変形性が良好となり、正極活物質の形状に応じて薄片状黒鉛が変形できるため正極活物質層の密度を向上させることができる。」(段落0019)と記載されている。そして、いわゆる「LiMeO型」活物質であるリチウムニッケル複合酸化物LiNi0.8Co0.1Mn0.1を正極活物質に用い、「同一線圧における正極活物質層の密度」が3.60g/cmである正極が記載されている(実施例1、表1)。しかし、特許文献1には、リチウム過剰型正極活物質を用いたときの電極密度の向上については記載がない。
特許文献2の表2、表3には、Ni/Co/Mn比が30/15/55で、Li/Me比が1.2であるリチウム過剰型正極活物質を用い、「合剤密度」が2.56g/cm乃至3.05g/cmである正極が記載されている。また、表4には、種々の組成のリチウム過剰型正極活物質を用い、「合剤密度」が、2.64g/cm乃至3.07g/cmである正極が記載されている。
WO2017/149927 特開2018−073752号公報
本発明は、リチウム過剰型正極活物質を含み、高い放電容量を損なうことなく、電極密度が高い正極を提供することを課題とする。
本発明の一態様は、リチウム過剰型正極活物質と、非晶質炭素と、黒鉛とを含む、非水電解質蓄電素子用正極である。
本発明によれば、リチウム過剰型正極活物質を含み、高い放電容量を損なうことなく、電極密度が高い正極、及びこれを用いた非水電解質蓄電素子を提供することができる。
非水電解質蓄電素子の一実施形態を示す外観斜視図である。 非水電解質蓄電素子を複数個集合して構成した蓄電装置の一実施形態を示す概略図である。 推定する実施例の作用機構を説明するための図である。 実施例で用いた黒鉛粉末のSEM像である。 実施例1−1、及び比較例1−1に係るプレス後の正極のエックス線回折図である。 正極活物質のピーク微分細孔容積と、正極の電極密度の相関を示す図である。 正極の黒鉛含有量と電極密度、及び正極の黒鉛含有量と非水電解質蓄電素子の2C放電容量の相関を示す図である。
本発明の一様態は、リチウム過剰型正極活物質と、非晶質炭素と、黒鉛とを含む、非水電解質蓄電素子用正極である。
ここで、上記リチウム過剰型正極活物質は、ピーク微分細孔容積が0.5mm/(g・nm)以上であってよい。
本発明の他の一様態は、上記非水電解質蓄電素子用正極を用いた非水電解質蓄電素子である。
本発明の構成及び作用効果について、技術思想を交えて説明する。但し、作用機構については推定を含んでおり、その正否は、本発明を制限するものではない。なお、本発明は、その本質又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、後述の実施形態又は実施例は、あらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
非水電解質蓄電素子の正極は、正極活物質を含む正極ペーストを正極基材に塗布、乾燥して正極合剤層を形成した後、プレス工程を経て完成される。上記プレス工程のプレス圧力を高くすれば、電極密度を高くすることができる。
後述する参考例に示すように、α−NaFeO型結晶構造を有し、遷移金属(Me)に対するLiのモル比(Li/Me)が1.1未満である、いわゆる「LiMeO型」活物質を正極に用いる場合、3.3g/cm程度の高い電極密度を備えた正極合剤層を得ることが容易である。しかし、正極合剤層の厚さ、及び正極合剤層の組成にもよるが、例えば、正極合剤中の正極活物質の含有量が90質量%以上であり、電極密度が3.3g/cmを超える正極では、正極合剤層の空隙率が低下し、電解液の浸透性が低下するため、充放電サイクル性能等の電気化学特性が低下する。そのため、いわゆる「LiMeO型」活物質を用いた正極においては、これ以上電極密度を高くする必要がない。
一方、上記特許文献1、特許文献2からもわかるように、いわゆる「LiMeO型」活物質を用いた正極に比べて、リチウム過剰型正極活物質を用いた正極は、電極密度が低い。
本発明者は上記の問題に対して鋭意検討を行った結果、リチウム過剰型正極活物質を用いた正極において、正極合剤を構成する材料として、非晶質炭素と黒鉛を用いることで、電極密度を向上させることができることを見出した。
本発明の効果を奏する作用機構は、次のように推察される。後述する表1に示すように、リチウム過剰型正極活物質は、いわゆる「LiMeO型」活物質に比べて、ピーク微分細孔容積が大きい。また、全細孔容積(cm/g)が大きく、微分細孔容積が最大値を示す細孔径(nm)も大きい。このことから、リチウム過剰型正極活物質は、いわゆる「LiMeO型」活物質に比べて、孔径の大きい細孔が非常に多い粒子から構成されていると考えられる。そのため、正極基材に正極活物質を含む正極ペーストを塗布、乾燥して正極合剤層を形成した後のプレス工程において、正極合剤層を構成する正極活物質粒子と他の構成材料との間に、大きな摩擦抵抗が生じると考えられ、これが高い電極密度を備えた正極を得ることができない原因であると考えられる。
本発明の構成により、電極密度が向上する作用機構を、図3を用いて説明する。黒鉛は、グラフェンが規則的に積層した構造である。そのため、図3(A)のように、図の上下方向から圧力がかかると、図3(B)のように、グラフェンの層間でずれが生じることによって黒鉛と他の構成材料との間の摩擦抵抗が低減され、その結果、正極に黒鉛を含まない系と比較して、電極密度を向上させることができると考えられる。
なお、電極密度を向上させるために、カーボンナノチューブを正極に添加する手法も知られているが、カーボンナノチューブは分散性が悪いため、扱いが非常に難しい。また、高価である。
本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子用正極について、以下、詳細に説明する。
(リチウム過剰型正極活物質)
本実施形態に係るリチウム過剰型正極活物質は、典型的には、組成式Li1+αMe1−α(Me:Ni及びMn、又はNi、Co及びMnを含む遷移金属)で表される。放電容量が大きい非水電解質蓄電素子を得るために、遷移金属(Me)に対するLiのモル比Li/Me、すなわち(1+α)/(1−α)は1.1より大きいことが好ましく、1.2以上であることがより好ましく、1.3以上であることが特に好ましい。また、1.5以下であることが好ましく、1.45以下であることがより好ましく、1.4以下であることが特に好ましい。
Niは、活物質の放電容量を向上させる作用があるから、遷移金属(Me)に対するNiのモル比Ni/Meは、0.15以上が好ましく、0.25以上がより好ましく、0.3以上が特に好ましい。また、モル比Ni/Meは、0.5未満が好ましく、0.45以下がより好ましく、0.4以下が特に好ましい。
Mnは、材料コストの観点から、また、充放電サイクル性能を向上させる作用があるから、遷移金属(Me)に対するMnのモル比Mn/Meは、0.5より大きいことが好ましく、0.6以上がより好ましく、0.65以上が特に好ましい。また、0.8以下が好ましく、0.75以下がより好ましく、0.7以下が特に好ましい。
Coは、活物質粒子の電子伝導性を高め、高率放電性能を向上させる作用があるが、充放電サイクル性能及び経済性の点で、少ない方が好ましい任意元素である。遷移金属(Me)に対するCoのモル比Co/Meは、0.20以下が好ましく、0.15以下がより好ましく、0.05以下がよりさらに好ましく、0でもよい。なお、Niを含む原料を用いると、Coは不純物として含まれる場合がある。
上記リチウム過剰型正極活物質のピーク微分細孔容積は、放電容量を向上させるため、0.5mm/(g・nm)以上が好ましく、0.6mm/(g・nm)以上がさらに好ましく、0.7mm/(g・nm)以上がよりさらに好ましい。また、充放電サイクル性能の観点から、2.6mm/(g・nm)以下が好ましく、2.0mm/(g・nm)以下がより好ましく、1.5mm/(g・nm)以下がよりさらに好ましい。
すなわち、上記リチウム過剰型正極活物質のピーク微分細孔容積は、放電容量、及び充放電サイクル性能の観点から、0.5〜2.6mm/(g・nm)が好ましく、0.6〜2.0mm/(g・nm)がさらに好ましく、0.7〜1.5mm/(g・nm)がよりさらに好ましい。
上記リチウム過剰型正極活物質の微分細孔容積が最大値を示す細孔径は、放電容量、高率放電性能の観点から、20〜150nmの範囲であることが好ましく、20〜100nmの範囲であることがより好ましい。
上記リチウム過剰型正極活物質の全細孔容積の下限は、放電容量、高率放電性能の観点から、0.02cm/gであることが好ましく、0.04cm/gであることがより好ましく、0.06cm/gであることがさらに好ましい。また、全細孔容積の上限は、0.5cm/gであってよく、0.3cm/gであってもよく、0.15cm/gであってもよい。
上記リチウム過剰型正極活物質は、遷移金属元素を含有する化合物とリチウム化合物とを混合、焼成して合成することができる。合成後(充放電前)の粉末の、CuKα線を用いたエックス線回折パターンは、空間群R3−mに帰属される結晶系に由来する2θ=18.6±1°、36.8±1°、及び44.0±1°の回折ピークに加えて、2θ=20.8±1°に、空間群C2/m、C2/c又はP312に帰属される結晶系に由来する超格子ピークが確認される。なお、空間群C2/m、C2/c又はP312は、空間群R3−mにおける3a、3b、6cサイトの原子位置を細分化した結晶構造モデルである。なお、「R3−m」は本来「R3m」の「3」の上にバー「−」を施して表記する。
本実施形態に係るリチウム過剰型正極活物質は、その特性を著しく損なわない範囲で、Na、K等のアルカリ金属、Mg、Ca等のアルカリ土類金属、Fe等の3d遷移金属に代表される遷移金属など少量の他の金属を含んでいてもよい。
リチウム過剰型正極活物質の一次粒子及び/又は二次粒子の表面にアルミニウム化合物を被覆及び/又は固溶させてもよい。粒子表面にアルミニウム化合物が存在することにより、非水電解質との直接的な接触が防止され、充放電に伴う構造変化等の劣化を抑制することができ、充放電サイクル性能を向上させることができる。
正極活物質としては、リチウム過剰型正極活物質を単独で用いてもよく、異なる物性の2種類以上のリチウム過剰型正極活物質を混合してもよい。また、本発明の効果を損なわない限り、低温特性の向上、出力特性の向上等を目的として、リチウム過剰型正極活物質以外の正極活物質を混合して用いてもよい。この場合、正極活物質中のリチウム過剰型正極活物質以外の正極活物質の混合割合は、20質量%以下であってよい。
リチウム過剰型正極活物質の平均粒径は、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、5μm以上がより好ましい。また、20μm以下とすることが好ましい。正極活物質の平均粒径を上記下限以上とすることで、正極活物質の製造又は取り扱いが容易になる。正極活物質の平均粒径を上記上限以下とすることで、正極合剤層の電子伝導性が向上する。ここで、「平均粒径」とは、JIS−Z−8825(2013年)に準拠し、粒子を溶媒で希釈した希釈液に対しレーザー回折・散乱法により測定した粒径分布に基づき、JIS−Z−8819−2(2001年)に準拠し計算される体積基準積算分布が50%となる値を意味する。
本実施形態に係る、正極に用いる非晶質炭素は、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。
正極合剤層における非晶質炭素の含有量の下限としては、正極合剤層の質量に対して、1質量%が好ましく、2質量%がより好ましい。非晶質炭素の含有量の上限としては、正極合剤層の質量に対して、7質量%が好ましく、5質量%がより好ましい。非晶質炭素の含有量を上記範囲とすることで、充放電サイクル性能を向上させることができる。
本実施形態に係る、正極に用いる黒鉛は、CuKα線を用いたエックス線回折測定において、2θ=26.4±1°に半値幅が0.6°以下のピークを有する、炭素質の材料である。
CuKα線を用いたエックス線回折測定において、2θ=26.4±1°のピークの半値幅が0.6°以下であることは、グラフェンがc軸方向に規則的に積層し、結晶性が高いことを意味する。そのため、リチウム過剰型正極活物質と非晶質炭素に、さらに黒鉛を含む電極を、ロールプレス機あるいは平板プレス機で、圧縮する力をかけたとき、グラフェンの層間がずれることによって、電極密度を向上させることができると考えられる(図3参照)。2θ=26.4±1°のピークの半値幅の上限は0.5°がより好ましく、0.4°がよりさらに好ましい。
正極に用いる黒鉛の平均粒径の下限は、3μmが好ましく、9μmがより好ましい。また、平均粒径の上限は、16μmが好ましく、13μmがより好ましい。黒鉛の平均粒径を上記範囲とすることで、充放電サイクル性能に優れた正極を提供することができる。ここで、平均粒径とは、JIS−Z−8825(2013年)に準拠し、粒子を溶媒で希釈した希釈液に対しレーザー回折・散乱法により測定した粒径分布に基づき、JIS−Z−8819−2(2001年)に準拠し計算される体積基準積算分布が50%となる値を意味する。
正極に用いる黒鉛のBET比表面積の下限は、3m/gが好ましく、4m/gがより好ましい。また、BET比表面積の上限は、12m/gが好ましく、10m/gがより好ましい。黒鉛のBET比表面積を上記範囲とすることで、充放電サイクル性能に優れた正極を提供することができる。
正極に用いる黒鉛の形状や種類については、後述の実施例に示すように、特に限定されない。例えば、球状黒鉛であってもよく、塊状黒鉛であってもよく、鱗片状黒鉛であってもよく、薄片状黒鉛であってもよい。なお、球状黒鉛及び塊状黒鉛の形態と、鱗片状黒鉛及び薄片状黒鉛の形態とは、アスペクト比の点で大きく異なる。一般に、球状黒鉛及び塊状黒鉛のアスペクト比は1以上10未満であり、鱗片状黒鉛及び薄片状黒鉛のアスペクト比は10以上25以下である。本実施形態においては、アスペクト比は10以上25以下である黒鉛が好ましい。
アスペクト比が10以上25以下である黒鉛において、厚さの上限は、2μmであってよく、1μmであってもよく、0.5μmであってもよい。黒鉛の厚さは、例えば黒鉛を含む正極の断面SEM像から求めることができる。なお、黒鉛の厚さとは、黒鉛粒子の面積が最も大きくなる方向から見た時の黒鉛粒子の表面に対して直交する方向の黒鉛粒子の最大寸法をいう。
正極合剤層における黒鉛の含有量の下限としては、正極合剤層の質量に対して、0.2質量%が好ましい。上記下限以上とすることで、電極密度を向上させることができる。黒鉛の含有量の上限としては、正極合剤層の質量に対して、2質量%が好ましく、1質量%がより好ましく、0.5質量%がよりさらに好ましい。上記上限以下とすることで、電気化学特性が低下する虞を低減できる。従って、正極合剤層における黒鉛の含有量は、正極合剤層の質量に対して、0.2〜2質量%が好ましく、0.2〜1質量%がより好ましく、0.2〜0.5質量%がよりさらに好ましい。黒鉛の含有量を上記範囲とすることで、電極密度を向上させつつ、電気化学特性が低下する虞を低減できる。
正極合剤層が含む非晶質炭素と、黒鉛との質量比を表す、「黒鉛質量比(=黒鉛の質量/(黒鉛の質量+非晶質炭素の質量))×100(%)」の下限としては、4%が好ましく、6%がさらに好ましい。上記下限以上とすることで、正極の電極密度を向上させることができる。また、黒鉛質量比の上限としては、40%が好ましく、25%がさらに好ましく、10%がよりさらに好ましい。上記上限以下とすることで、電気化学特性が低下する虞を低減できる。
<エックス線回折測定>
本明細書において、エックス線回折測定は、Rigaku社製エックス線回折装置(品番:RINT−TTR3)を用いて、次の条件にて行う。線源はCuKα、エックス線出力は50kV、300mAとする。スキャンモードはCONTINUOUS、ステップ幅は0.02deg、スキャンスピードは4.0deg/min、入射スリットは1/3deg、長手制限スリットは10mm、受光スリット1は1/3deg、受光スリット2は0.3mmとする。
<ピーク微分細孔容積測定>
本明細書において、ピーク微分細孔容積測定は、以下の方法により測定する。
被測定試料の粉体1.00gを測定用のサンプル管に入れ、120℃にて6h、180℃にて6h真空乾燥することで、測定試料中の水分を十分に除去する。次に、液体窒素を用いた窒素ガス吸着法により、相対圧力P/P0(P0=約770mmHg)が0から1の範囲内で吸着側、及び脱離側の等温線を測定する。そして、脱離側の等温線を用いてBJH法により累積細孔容積カーブを求める。このカーブから、全細孔容積(cm/g)の値が得られる。次に、上記累積細孔容積カーブを線形(Linear)微分することにより、横軸を細孔径(nm)とし、縦軸を微分細孔容積(mm/(g・nm))とする微分細孔容積カーブを得る。本明細書において、「ピーク微分細孔容積」とは、上記微分細孔容積カーブが最大値を示す点に対応する縦軸の値をいう。「ピーク微分細孔容積」が大きいとは、ある一定の細孔径の細孔数が多いことを意味する。また、本明細書において、「微分細孔容積が最大値を示す細孔径」とは、上記微分細孔容積カーブが最大値を示す点に対応する横軸の値をいう。
<平均粒径の測定>
測定装置には日機装社製Microtrac(型番:MT3000)を用いる。上記測定装置は、光学台、試料供給部及び制御ソフトを搭載したコンピュータからなり、光学台にはレーザー光透過窓を備えた湿式セルが設置される。測定原理は、測定対象試料が分散溶媒中に分散している分散液が循環している湿式セルにレーザー光を照射し、測定試料からの散乱光分布を粒度分布に変換する方式である。上記分散液は試料供給部に蓄えられ、ポンプによって湿式セルに循環供給される。分散溶媒としてエタノールを用いる。測定制御ソフトにはMicrotrac DHS for Win98 (MT3000)を用いる。上記測定装置に設定入力する「物質情報」については、「透明度」として「反射(REFLECTING)」を選択する。また、溶媒の「屈折率」として1.36を設定する。試料の測定に先立ち、「Set Zero」操作を行う。「Set Zero」操作は、粒子からの散乱光以外の外乱要素(ガラス、ガラス壁面の汚れ、ガラス凸凹など)が後の測定に与える影響を差し引くための操作であり、試料供給部に分散溶媒であるエタノールのみを入れ、湿式セルに分散溶媒であるエタノールのみが循環している状態でバックグラウンド測定を行い、バックグラウンドデータをコンピュータに記憶させる。続いて「Sample LD(Sample Loading)」操作を行う。Sample LD操作は、測定時に湿式セルに循環供給される分散液中の試料濃度を最適化するための操作であり、測定制御ソフトの指示に従って試料供給部に測定対象試料を手動で最適量に達するまで投入する操作である。続いて、「測定」ボタンを押すことで測定操作が行われる。上記測定操作を2回繰り返し、その平均値として測定結果が制御コンピュータから出力される。測定結果は、粒度分布、並びに、D10、D50及びD90の各値(D10、D50及びD90は、2次粒子の粒度分布における累積体積がそれぞれ10%、50%及び90%となる粒度)として取得される。粒度分布の分割幅は、縦軸の頻度を0.01%、横軸の常用対数をとった粒径を0.0376として設定する。得られたD50の値を平均粒径とする。
<BET比表面積の測定>
ユアサアイオニクス社製比表面積測定装置(商品名:MONOSORB)を用いて、一点法により、試料に対する窒素吸着量(m)を求める。得られた吸着量を、試料の質量(g)で除した値をBET比表面積(m/g)とする。測定に当たって、液体窒素を用いた冷却によるガス吸着を行う。また、冷却前に120℃、15分の予備加熱を行う。測定試料の投入量は、黒鉛では0.2g±0.01gとする。
<測定試料の調整>
本実施形態に係る正極活物質や、本実施形態に係る非水電解質蓄電素子が備える正極に含まれる活物質に対する各測定に供する試料は、以下のとおりの手順、及び条件により、調製する。
測定に供する試料は、正極作製前の粉末試料であれば、そのまま測定に供する。
電池を解体して取り出した正極から試料を採取する場合には、電池を解体する前に、当該電池の公称容量(Ah)と同じ電気量を1時間で通電する電流の10分の1となる電流値(A)で、指定される電圧の下限となる電池電圧に至るまで定電流放電を行い、放電状態とする。解体した結果、金属リチウム電極を負極に用いた電池であれば、以下に述べる追加作業は行わず、正極から採取した正極合剤を測定対象とする。金属リチウム電極を負極に用いた電池でない場合は、正極電位を正確に制御するため、電池を解体して取り出した正極を作用極とし、金属リチウム電極を対極とした電池を組立て、正極合剤1g当たり10mAの電流値で、電圧が2.0Vとなるまで定電流放電を行い、放電状態に調整した後、再解体する。取り出した正極は、ジメチルカーボネートを用いて付着した非水電解質を十分に洗浄し、室温にて一昼夜の乾燥後、正極から正極合剤を採取する。なお、電池の解体から再解体までの作業、及び正極板の洗浄、乾燥作業は、露点−60℃以下のアルゴン雰囲気中で行う。
エックス線回折測定に供する試料は、上記合剤を、瑪瑙製乳鉢で壊砕後、測定に供する。
ピーク微分細孔容積測定に供する試料は、上記合剤を、小型電気炉を用いて600℃で2時間焼成することで導電剤、及び結着剤を除去し、得られた粉末を測定に供する。
<非水電解質蓄電素子の構成>
本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子(以下、単に「蓄電素子」ともいう。)は、正極と、負極と、非水電解質とを備える。非水電解質蓄電素子の一例として、非水電解質二次電池(以下、単に「二次電池」ともいう。)について説明する。
(正極)
正極は、正極基材と、当該正極基材に直接又は中間層を介して配される正極合剤層とを有する。
正極基材は、導電性を有する。正極基材の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼等の金属又はこれらの合金が用いられる。これらの中でも、耐電位性、導電性の高さ、及びコストの観点からアルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。正極基材としては、箔、蒸着膜等が挙げられ、コストの観点から箔が好ましい。したがって、正極基材としてはアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔が好ましい。アルミニウム又はアルミニウム合金としては、JIS−H−4000(2014年)に規定されるA1085、A3003等が例示できる。
正極基材の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。正極基材の平均厚さの上限としては、30μmが好ましく、20μmがより好ましい。正極基材の平均厚さが上記下限以上とすることで、正極基材の強度を高めることができる。正極基材の平均厚さが上記上限以下とすることで、二次電池の体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。「平均厚さ」とは、任意の十点において測定した厚さの平均値をいう。他の部材等に対して「平均厚さ」を用いる場合にも同様に定義される。
中間層は、正極基材と正極合剤層との間に配される層である。中間層は、炭素粒子等の導電性を有する粒子を含むことで正極基材と正極合剤層との接触抵抗を低減する。中間層の構成は特に限定されず、例えば、樹脂バインダ、及び導電性を有する粒子を含む。
正極合剤層は、正極活物質を含む。正極合剤層は、必要に応じて、導電剤、バインダ(結着剤)、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。
粉体を所定の形状で得るためには粉砕機や分級機等が用いられる。粉砕方法として、例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェトミル、旋回気流型ジェットミル又は篩等を用いる方法が挙げられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、篩や風力分級機等が、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
正極合剤層における正極活物質の含有量の下限としては、正極合剤層の質量に対して、90質量%が好ましく、93質量%がより好ましく、95質量%がさらに好ましい。正極活物質の含有量を上記下限以上とすることで、放電容量を高めることができる。正極活物質の含有量の上限としては、正極合剤層の質量に対して、99質量%が好ましく、97質量%がより好ましい。正極活物質粒子の含有量を上記上限以下とすることで、正極の製造が容易になる。
バインダ(結着剤)としては、例えば、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド等の熱可塑性樹脂;エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のエラストマー;多糖類高分子等が挙げられる。
正極合剤層における結着剤の含有量の下限としては、正極合剤層の質量に対して、1質量%が好ましく、3質量%がより好ましい。結着剤の含有量の上限としては、正極合剤層の質量に対して、7質量%が好ましく、5質量%がより好ましい。結着剤の含有量を上記範囲とすることで、活物質を安定して保持することができる。
増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース等の多糖類高分子が挙げられる。増粘剤がリチウム等と反応する官能基を有する場合、予めメチル化等によりこの官能基を失活させてもよい。
フィラーは、特に限定されない。フィラーとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、シリカ、アルミナ、ゼオライト、ガラス、アルミノシリケイト等が挙げられる。
正極合剤層は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Nb、W等の遷移金属元素を正極活物質、導電剤、結着剤、増粘剤、フィラー以外の成分として含有してもよい。
(負極)
負極は、負極基材と、当該負極基材に直接又は中間層を介して配される負極合剤層とを有する。中間層の構成は特に限定されず、例えば上記正極で例示した構成から選択することができる。
負極基材は、導電性を有する。負極基材の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼の金属又はこれらの合金が用いられる。これらの中でも銅又は銅合金が好ましい。負極基材としては、箔、蒸着膜等が挙げられ、コストの観点から箔が好ましい。したがって、負極基材としては銅箔又は銅合金箔が好ましい。銅箔の例としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられる。
負極基材の平均厚さの下限としては、3μmが好ましく、5μmがより好ましい。負極基材の平均厚さの上限としては、30μmが好ましく、20μmがより好ましい。負極基材の平均厚さが上記下限以上とすることで、負極基材の強度を高めることができる。負極基材の平均厚さが上記上限以下とすることで、二次電池の体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。
負極合剤層は、負極活物質を含む。負極合剤層は、必要に応じて導電剤、バインダ(結着剤)、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。導電剤、結着剤、増粘剤、フィラー等の任意成分は、上記正極で例示した材料から選択できる。
負極合剤層は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Ta、Hf、Nb、W等の遷移金属元素を負極活物質、導電剤、結着剤、増粘剤、フィラー以外の成分として含有してもよい。
負極活物質としては、公知の負極活物質の中から適宜選択できる。リチウムイオン二次電池用の負極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵、及び放出することができる材料が用いられる。負極活物質としては、例えば、金属Li;Si、Sn等の金属又は半金属;Si酸化物、Ti酸化物、Sn酸化物等の金属酸化物又は半金属酸化物;LiTi12、LiTiO2、TiNb等のチタン含有酸化物;ポリリン酸化合物;炭化ケイ素;黒鉛(グラファイト)、非黒鉛質炭素(易黒鉛化性炭素又は難黒鉛化性炭素)等の炭素材料等が挙げられる。これらの材料の中でも、黒鉛、及び非黒鉛質炭素が好ましい。負極合剤層においては、これら材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
負極に用いる黒鉛は、充放電前又は放電状態において、エックス線回折法により決定される(002)面の平均格子面間隔(d002)が0.33nm以上0.34nm未満の炭素材料をいう。黒鉛としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。安定した物性の材料を入手できるという観点で、人造黒鉛が好ましい。
「非黒鉛質炭素」とは、充放電前又は放電状態においてエックス線回折法により決定される(002)面の平均格子面間隔(d002)が0.34nm以上0.42nm以下の炭素材料をいう。非黒鉛質炭素としては、難黒鉛化性炭素や、易黒鉛化性炭素が挙げられる。非黒鉛質炭素としては、例えば、樹脂由来の材料、石油ピッチまたは石油ピッチ由来の材料、石油コークスまたは石油コークス由来の材料、植物由来の材料、アルコール由来の材料等が挙げられる。
「難黒鉛化性炭素」とは、上記d002が0.36nm以上0.42nm以下の炭素材料をいう。
「易黒鉛化性炭素」とは、上記d002が0.34nm以上0.36nm未満の炭素材料をいう。
負極活物質の平均粒径は、例えば、1μm以上100μm以下とすることができる。負極活物質の平均粒径を上記下限以上とすることで、負極活物質の製造又は取り扱いが容易になる。負極活物質の平均粒径を上記上限以下とすることで、合剤層の電子伝導性が向上する。粉体を所定の形状で得るためには粉砕機や分級機等が用いられる。粉砕方法、及び粉級方法は、例えば、上記正極で例示した方法から選択できる。
負極合剤層における負極活物質の含有量の下限としては、60質量%が好ましく、80質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましい。負極活物質の含有量を上記下限以上とすることで、二次電池の電気容量を高めることができる。負極活物質の含有量の上限としては、99質量%が好ましく、98質量%がより好ましい。負極活物質粒子の含有量を上記上限以下とすることで、負極の製造が容易になる。
(セパレータ)
セパレータは、公知のセパレータの中から適宜選択できる。セパレータとして、例えば、基材層のみからなるセパレータ、基材層の一方の面又は双方の面に耐熱粒子とバインダとを含む耐熱層が形成されたセパレータ等を使用することができる。セパレータの基材層の材質としては、例えば、織布、不織布、多孔質樹脂フィルム等が挙げられる。これらの材質の中でも、強度の観点から多孔質樹脂フィルムが好ましく、非水電解質の保液性の観点から不織布が好ましい。セパレータの基材層の材料としては、シャットダウン機能の観点から例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましく、耐酸化分解性の観点から例えばポリイミドやアラミド等が好ましい。セパレータの基材層として、これらの樹脂を複合した材料を用いてもよい。
耐熱層に含まれる耐熱粒子は、大気下で500℃にて重量減少が5%以下であるものが好ましく、大気下で800℃にて重量減少が5%以下であるものがさらに好ましい。重量減少が所定以下である材料として無機化合物が挙げられる。無機化合物として、例えば、酸化鉄、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、チタン酸バリウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム―酸化ケイ素複合酸化物等の酸化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウム等の難溶性のイオン結晶;シリコン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶;タルク、モンモリロナイト、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、マイカ等の鉱物資源由来物質又はこれらの人造物等が挙げられる。無機化合物として、これらの物質の単体又は複合体を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの無機化合物の中でも、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又は酸化アルミニウム―酸化ケイ素複合酸化物が好ましい。
セパレータの空孔率は、強度の観点から80体積%以下が好ましく、放電性能の観点から20体積%以上が好ましい。ここで、「空孔率」とは、体積基準の値であり、水銀ポロシメータでの測定値を意味する。
セパレータとして、ポリマーと非水電解質とで構成されるポリマーゲルを用いてもよい。ポリマーとして、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。ポリマーゲルを用いると、漏液を抑制する効果がある。セパレータとして、上述したような多孔質樹脂フィルム又は不織布等とポリマーゲルを併用してもよい。
(非水電解質)
非水電解質としては、公知の非水電解質の中から適宜選択できる。非水電解質には、非水電解液を用いてもよい。非水電解液は、非水溶媒と、この非水溶媒に溶解されている電解質塩とを含む。
非水溶媒としては、公知の非水溶媒の中から適宜選択できる。非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、カルボン酸エステル、リン酸エステル、スルホン酸エステル、エーテル、アミド、ニトリル等が挙げられる。非水溶媒として、これらの化合物に含まれる水素原子の一部がハロゲンに置換されたものを用いてもよい。
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、クロロエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、スチレンカーボネート、1−フェニルビニレンカーボネート、1,2−ジフェニルビニレンカーボネート等が挙げられる。これらの中でもECが好ましい。
鎖状カーボネートとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジフェニルカーボネート、トリフルオロエチルメチルカーボネート、ビス(トリフルオロエチル)カーボネート等が挙げられる。これらの中でもEMCが好ましい。
非水溶媒として、環状カーボネート又は鎖状カーボネートを用いることが好ましく、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを併用することがより好ましい。環状カーボネートを用いることで、電解質塩の解離を促進して非水電解液のイオン伝導度を向上させることができる。鎖状カーボネートを用いることで、非水電解液の粘度を低く抑えることができる。環状カーボネートと鎖状カーボネートとを併用する場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの体積比率(環状カーボネート:鎖状カーボネート)としては、例えば、5:95から50:50の範囲とすることが好ましい。
電解質塩としては、公知の電解質塩から適宜選択できる。電解質塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、オニウム塩等が挙げられる。これらの中でもリチウム塩が好ましい。
リチウム塩としては、LiPF、LiPO、LiBF、LiClO、LiN(SOF)等の無機リチウム塩、LiSOCF、LiN(SOCF、LiN(SO、LiN(SOCF)(SO)、LiC(SOCF、LiC(SO等のハロゲン化炭化水素基を有するリチウム塩等が挙げられる。これらの中でも、無機リチウム塩が好ましく、LiPFがより好ましい。
非水電解液における電解質塩の含有量の下限としては、0.1mol/Lが好ましく、0.3mol/Lがより好ましく、0.5mol/Lがさらに好ましく、0.7mol/Lが特に好ましい。電解質塩の含有量の上限としては、例えば、2.5mol/Lが好ましく、2mol/Lがより好ましく、1.5mol/Lがさらに好ましい。
非水電解液は、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)等のハロゲン化炭酸エステル;リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、リチウムジフルオロオキサレートボレート(LiFOB)、リチウムビス(オキサレート)ジフルオロホスフェート(LiFOP)等のシュウ酸基を有する塩;リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)等のイミド塩;ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の上記芳香族化合物の部分ハロゲン化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソール、3,5−ジフルオロアニソール等のハロゲン化アニソール化合物;ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物;亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、プロパンスルトン、プロペンスルトン、ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、トルエンスルホン酸メチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、スルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジフェニルスルフィド、4,4’−ビス(2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、4−メチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド、ジピリジニウムジスルフィド、パーフルオロオクタン、ホウ酸トリストリメチルシリル、リン酸トリストリメチルシリル、チタン酸テトラキストリメチルシリル、モノフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム等が挙げられる。これら添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
非水電解液全体に対するこれらの添加剤の含有割合の下限としては、0.01質量%が好ましく、0.1質量%がより好ましく、0.2質量%がさらに好ましい。添加剤の含有割合の上限としては、10質量%が好ましく、7質量%がより好ましく、5質量%がより好ましく、3質量%がさらに好ましい。添加剤の含有割合を上記範囲とすることで、高温保存後の容量維持性能又は充放電サイクル性能を向上させたり、安全性をより向上させたりすることができる。
非水電解質には、固体電解質を用いてもよく、非水電解液と固体電解質とを併用してもよい。
固体電解質としては、リチウム、ナトリウム、カルシウム等のイオン伝導性を有し、常温(例えば15℃〜25℃)において固体である任意の材料から選択できる。固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、及び酸窒化物固体電解質、ポリマー固体電解質等が挙げられる。
硫化物固体電解質としては、リチウムイオン二次電池の場合、例えば、LiS−P系等が挙げられる。硫化物固体電解質としては、例えば、LiS−P、LiI−LiS−P、Li10Ge−P12、等が挙げられる。
本実施形態の蓄電素子の形状については特に限定されるものではなく、例えば、円筒型電池、ラミネートフィルム型電池、角型電池、扁平型電池、コイン型電池、ボタン型電池等が挙げられる。
図1に、本発明の蓄電素子の一実施形態として角型の非水電解質二次電池の一例を示す。セパレータを挟んで巻回された正極、及び負極を有する電極体2が角型のケース3に収納される。正極は正極リード4’を介して正極端子4と電気的に接続されている。負極は負極リード5’を介して負極端子5と電気的に接続されている。
<非水電解質蓄電装置の構成>
本実施形態の蓄電素子は、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器用電源、又は電力貯蔵用電源等に、複数の蓄電素子1を集合して構成した蓄電ユニット(バッテリーモジュール)として搭載することができる。この場合、蓄電装置に含まれる少なくとも一つの蓄電素子に対して、本発明の技術が適用されていればよい。
図2に、電気的に接続された二以上の蓄電素子1が集合した蓄電ユニット20をさらに集合した蓄電装置30の一例を示す。蓄電装置30は、二以上の蓄電素子1を電気的に接続するバスバ(図示せず)、二以上の蓄電ユニット20を電気的に接続するバスバ(図示せず)を備えていてもよい。蓄電ユニット20又は蓄電装置30は、一以上の蓄電素子の状態を監視する状態監視装置(図示せず)を備えていてもよい。
<非水電解質蓄電素子の製造方法>
本実施形態の蓄電素子の製造方法は、公知の方法から適宜選択できる。当該製造方法は、例えば、電極体を準備する工程と、非水電解質を準備する工程と、電極体、及び非水電解質を容器に収容する工程と、を備える。電極体を準備する工程は、正極、及び負極を準備する工程と、正極、及び負極を、セパレータを介して積層又は巻回することにより電極体を形成する工程を備える。
非水電解質を容器に収容する工程は、公知の方法から適宜選択できる。例えば、非水電解質に非水電解液を用いる場合、容器に形成された注入口から非水電解液を注入した後、注入口を封止すればよい。
<その他の実施形態>
尚、本発明の蓄電素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成又は周知技術に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。また、ある実施形態の構成に対して周知技術を付加することができる。
上記実施形態では、蓄電素子が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子の種類、形状、寸法、容量等は任意である。本発明は、種々の二次電池、一次電池、電気二重層キャパシタ又はリチウムイオンキャパシタ等のキャパシタにも適用できる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。本発明は以下の実施例に限定されない。
[リチウム過剰型正極活物質(LR1)の作製]
<リチウム過剰型正極活物質の合成>
硫酸ニッケル6水和物17.7g及び硫酸マンガン5水和物32.5gを秤量し、これらの全量をイオン交換水200mLに溶解させ、Ni:Mnのモル比が33.3:66.7となる1.0mol/Lの硫酸塩水溶液を作製した。一方、2Lの反応槽に750mLのイオン交換水を注ぎ、COガスを30minバブリングさせることにより、イオン交換水中にCOを溶解させた。反応槽の温度を50℃(±2℃)に設定し、攪拌モーターを備えたパドル翼を用いて反応槽内を700rpmの回転速度で攪拌しながら、上記硫酸塩水溶液を2mL/minの速度で滴下した。ここで、滴下の開始から終了までの間、1.0mol/Lの炭酸ナトリウムを含有する水溶液を適宜滴下することにより、反応槽中のpHが常に7.9(±0.05)を保つように制御した。滴下終了後、反応槽内の攪拌をさらに5h継続した。攪拌の停止後、12h以上静置した。
次に、吸引ろ過装置を用いて、反応槽内に生成した共沈炭酸塩の粒子を分離し、さらにイオン交換水を用いて粒子に付着しているナトリウムイオンを洗浄除去し、電気炉を用いて、空気雰囲気中、常圧下、80℃にて20h乾燥させた。その後、粒径を揃えるために、瑪瑙製乳鉢で数分間粉砕した。このようにして、共沈炭酸塩前駆体を作製した。
上記共沈炭酸塩前駆体2.8gに、炭酸リチウム1.2gを加え、瑪瑙製乳鉢を用いてよく混合し、Li:Me(Ni及びMnの合計)のモル比が1.33となる混合粉体を調製した。ペレット成型機を用いて、40MPaの圧力で成型し、直径25mmのペレットとした。ペレット成型に供した混合粉体の量は、想定する最終生成物の質量が2.5gとなるように換算して決定した。上記ペレット1個を全長約50mmのアルミナ製るつぼのフタに載置し、箱型電気炉(型番:AMF20)に設置し、空気雰囲気中、常圧下、常温から890℃の温度まで10時間かけて昇温し、昇温後温度で9h焼成した。上記箱型電気炉の内部寸法は、縦10cm、幅20cm、奥行き30cmであり、幅方向20cm間隔に電熱線が入っている。焼成後、ヒーターのスイッチを切り、アルミナ製るつぼのフタを炉内に置いたまま自然放冷した。この結果、炉の温度は5時間後には約200℃程度にまで低下するが、その後の降温速度はやや緩やかである。一昼夜経過後、炉の温度が100℃以下となっていることを確認してから、ペレットを取り出し、粒径を揃えるために、瑪瑙製乳鉢で数分間粉砕した。このようにして、リチウム過剰型正極活物質Li1.14Ni0.29Mn0.57(Li/Me=1.33)を作製した。
<リチウム過剰型正極活物質へのアルミニウム処理>
300mLの三角フラスコに硫酸アルミニウム水和物と、イオン交換水とを混合し、硫酸アルミニウムが0.5mol/Lとなる硫酸アルミニウム水溶液を調整した。上記の硫酸アルミニウム水溶液をスターラーを用いて、25℃、400rpmで撹拌しているところに、上記のリチウム過剰型正極活物質5.0g投入した。リチウム過剰型正極活物質を投入してから、30sec後に吸引ろ過することによって、ろ紙上にリチウム過剰型正極活物質を回収した。
このリチウム過剰型正極活物質を乾燥機を用いて、空気中、常圧、80℃で20h乾燥させることによって、アルミニウム処理したリチウム過剰型正極活物質を得た。
<アルミニウム処理したリチウム過剰型正極活物質への熱処理>
上記のアルミニウム処理したリチウム過剰型正極活物質をアルミナ製るつぼのフタに載置し、箱型電気炉(型番:AMF20)に設置し、空気中、昇温速度が5℃/min、熱処理温度が400℃、保持時間が4hの条件で熱処理することによって、アルミニウムが被覆された、実施例1−1に係るリチウム過剰型正極活物質(以下、「LR1」という)を得た。LR1のLi/Me=1.33であり、上記の条件で測定したピーク微分細孔容積は0.98mm/(g・nm)であった。
[正極活物質(LR2)の作製]
共沈炭酸塩前駆体と炭酸リチウムとを混合したペレットの焼成温度を930℃に変更したことを除いては、実施例1−1と同様にして、実施例1−5に係るリチウム過剰型正極活物質Li1.14Ni0.29Mn0.57(以下、「LR2」という)を作製した。LR2のLi/Me=1.33であり、上記の条件で測定したピーク微分細孔容積は0.72mm/(g・nm)であった。
[正極活物質(LR3)の作製]
共沈炭酸塩前駆体のNi:Co:Mnのモル比を19.5:12.3:68.2に変更し、その前駆体を用い、Li:Me(Ni,Co及びMnの合計)のモル比が1.38である混合粉体を調製し、その粉体から形成したペレットの焼成温度を900℃に変更したことを除いては、実施例1−1と同様にして、実施例1−6に係るリチウム過剰型正極活物質Li1.17Ni0.16Co0.1Mn0.57(以下「LR3」という)を作製した。なお、Co源として、硫酸コバルト7水和物を用いた。LR3のLi/Me=1.38であり、上記の条件で測定したピーク微分細孔容積は2.53mm/(g・nm)であった。
[実施例1−1に係る正極の作製]
正極活物質としてLR1を用い、非晶質炭素としてアセチレンブラック(AB)を用い、黒鉛として薄片状黒鉛を用い、バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いた。正極活物質:非晶質炭素:黒鉛:バインダ=95.5:2.5:0.5:1.5の割合(固形物換算)で含有し、N−メチルピロリドン(NMP)を分散媒とする正極ペーストを作製した。この正極ペーストを正極基材であるアルミニウム箔の片面に塗布した。その後100℃で1時間乾燥し、極板中のNMPを除去した。
[実施例1−2〜1−4に係る正極の作製]
黒鉛として、薄片状黒鉛に代えて、鱗片状黒鉛、球状黒鉛、及び塊状黒鉛にそれぞれ変更したことを除いては、実施例1−1と同様にして、実施例1−2〜1−4に係る正極をそれぞれ作製した。
[比較例1−1に係る正極の作製]
黒鉛を用いず、正極活物質:非晶質炭素:バインダ=95.5:3.0:1.5の割合(固形物換算)としたことを除いては、実施例1−1と同様にして比較例1−1に係る正極を作製した。
[実施例1−5、及び比較例1−2に係る正極の作製]
正極活物質を、上記LR2としたことを除いては、実施例1−1、及び比較例1−1と同様にして、実施例1−5、及び比較例1−2に係る正極をそれぞれ作製した。
[実施例1−6、及び比較例1−3に係る正極の作製]
正極活物質を、LR3としたことを除いては、実施例1−1、及び比較例1−1と同様にして、実施例1−6、及び比較例1−3に係る正極をそれぞれ作製した。
[参考例1−1〜参考例1−4に係る正極の作製]
正極活物質を表1に記載の市販の正極活物質LiNi0.5Co0.2Mn0.3(以下「NCM523」という)、又はLiNi0.33Co0.33Mn0.33(以下「NCM111」という)としたことを除いては、実施例1−1と同様にして参考例1−1、及び参考例1−3に係る正極をそれぞれ作製した。また、比較例1−1と同様にして参考例1−2、及び参考例1−4に係る正極をそれぞれ作製した。また、これらの正極活物質についても、上記の条件でピーク微分細孔容積を測定した。
薄片状黒鉛、鱗片状黒鉛、球状黒鉛、及び塊状黒鉛のSEM像を図4に示す。また、これらの黒鉛については上記の条件で、平均粒径、及びBET比表面積を求めた。
<プレス試験>
上記実施例1−1〜1−6、比較例1−1〜1−3、及び参考例1−1〜1−4に係る正極に関して、プレス試験を行った。
プレス前の極板を2×2cmに打ち抜いた後、室温にてロールプレスを実施した。具体的には、厚さに変化がなくなるまで、極板を複数回プレス機に通した。また、そのときの合剤の「電極密度(g/cm)」を求めた。ここで、電極密度とは、「(試験に供した正極の試験片の質量)−(正極基材の質量)」(単位g)を「合剤の体積(2×2×(正極基材を除く正極の厚さ))」(単位cm)で除したものである。
<エックス線回折測定>
実施例1−1、及び比較例1−1に係る正極をプレスし、上記の条件でCu管球を用いたエックス線回折測定を行った。その結果を図5に示す。実施例1−1では、26.4°付近に黒鉛に由来するピークが見られた。このピークの半値幅は0.4°以下であった。また、実施例1−1〜実施例1−4に係る電極に用いる前の、薄片状黒鉛、鱗片状黒鉛、球状黒鉛、及び塊状黒鉛粉末のエックス線回折測定の結果、いずれも、26.4°付近のピークの半値幅は0.4°以下であった。
実施例1−1〜1−6、比較例1−1〜1−3、および参考例1−1〜1−4に係る正極に用いた正極活物質の物性、黒鉛の物性と、正極合剤の組成比、得られた正極の電極密度を表1〜3にまとめた。
比較例1−1と、実施例1−1〜1−4とを比べると、非晶質炭素であるABを0.5質量%減らす代わりに黒鉛を0.5質量%用いることで、黒鉛の形状や、物性によらず、電極密度が向上することが分かった。中でも、実施例1−3で用いた球状黒鉛は、平均粒径が12μm程度と、大きいにもかかわらず、電極密度の向上効果が得られている。これは、黒鉛を用いることによる電極密度の向上の要因が、黒鉛の形状以外にもあることを示唆している。
すなわち、実施例1−1〜1−4の正極に用いた黒鉛粉末は、いずれもエックス線回折ピークにおいて、26.4°付近のピークの半値幅が0.4°以下であり、黒鉛の結晶性が高い。そのため、電極をプレスした際に、黒鉛のグラフェン層間にすべりが生じたため、電極密度の向上効果が得られたと考えられる。そして、黒鉛の中でも、薄片状黒鉛を用いた場合、最も電極密度が向上した。これは、薄片状黒鉛が正極活物質粒子の隙間に入り込んだ状態で、プレス圧が加わる際に変形したためと考えられる。
実施例1−5と比較例1−2、あるいは実施例1−6と比較例1−3を比べると、正極活物質として、ピーク微分細孔容積、及び活物質組成の異なるLR2、LR3を用いた場合でも、LR1を用いた場合と同様に電極密度の向上が見られた。
参考例1−1〜参考例1−4から、正極活物質としてNCM523、NCM111を用いた場合は、電極密度が3.3g/cm以上と、リチウム過剰型正極を用いた場合と比べて非常に高いことが分かる。また、黒鉛を用いることによる、電極密度の向上効果は見られなかった。
[電気化学特性の評価]
上記で良好な結果が得られた正極について、電気化学特性を評価した。
正極活物質としてLR1を、黒鉛種として薄片状黒鉛を用い、ABと黒鉛の含有量を表4に示すとおりとしたことを除いては、実施例1−1と同様にして正極を作製した。上記正極をプレスし、プレス後の正極を得た。
[実施例2−1〜2−4、及び比較例2−1に係る試験セルの作製(負極:金属リチウム)]
プレス後の正極を用いて、次の手順で試験セルを作製した。
非水電解質(電解液)として、フルオロエチレンカーボネート及び2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネートを3:7の体積比で混合した混合溶媒に、濃度が1mol/LとなるようにLiPFを溶解させた溶液を用いた。セパレータとして、ポリアクリレートで表面改質したポリプロピレン製の微孔膜を用いた。負極には、金属リチウムを用いた。外装体には、ポリエチレンテレフタレート(15μm)/アルミニウム箔(50μm)/金属接着性ポリプロピレンフィルム(50μm)からなる金属樹脂複合フィルムを用い、正極端子、及び負極端子の開放端部が外部露出するように電極を収納し、上記金属樹脂複合フィルムの内面同士が向かい合った融着代を注液孔となる部分を除いて気密封止し、上記電解液を注液後、注液孔を封止した。
[容量確認試験(負極:金属リチウム)]
上記試験セルについて、25℃の恒温槽内にて、次の手順で容量確認試験を行った。
(1)充電工程
充電電流0.1C、充電電圧4.7Vの定電流定電圧充電を行った。充電終止条件は電流が0.05Cに減衰したときとした。充電終了後、10分間の休止を行った。
(2)放電工程
放電終止電圧を2.0Vとする定電流放電を行った。放電終了後、10分間の休止を行った。
上記の(1)充電工程、及び、(2)放電工程を1回の充放電工程とし、この充放電工程を3回繰り返した。1回目、2回目の放電については放電電流を0.1Cとし、3回目については放電電流を2Cとした。
2回目の放電容量(mAh)を、正極が含む正極活物質の質量で除算し、「0.1C放電容量(mAh/g,対極リチウム)」として記録した。同様に3回目の放電容量(mAh)を、正極が含む正極活物質の質量で除算し、「2C放電容量(mAh/g,対極リチウム)」として記録した。
[実施例2−1〜2−3、比較例2−1に係る試験セルの作製(負極:黒鉛)]
負極活物質として黒鉛を用い、結着剤としてカルボキシメチルセルロースを用い、増粘剤としてスチレンブタジエンゴムを用いた。負極活物質:結着剤:増粘剤=96.7:2.1:1.2質量比(固形分換算)で含有し、水を分散媒とする負極ペーストを作製した。この負極ペーストを負極基材である銅箔上に塗布、乾燥、プレスし、黒鉛負極を作製した。
負極に、金属リチウムに代えて上記黒鉛負極を用いたことを除いては上記と同様の手順で、実施例2−1〜2−3、比較例2−1に係る、黒鉛負極を用いた試験セルを作製した。
[容量確認試験(負極:黒鉛)]
上記試験セルについて、25℃の恒温槽中で、次の手順で下記の容量確認試験を行った。
(1’)充電工程
充電電流0.1C、充電電圧4.6Vとする定電流定電圧充電を行った。充電終止条件は電流が0.05Cに減衰したときとした。充電終了後、10分間の休止を行った。
(2’)放電工程
放電電流0.1C、放電終止電圧を2.0Vとする定電流放電を行った。放電終了後、10分間の休止を行った。
(1’)充電工程、及び、(2’)放電工程を1回の充放電工程とし、この充放電工程を2回繰り返した。2回目の放電容量を「初期放電容量」として記録した。
[充放電サイクル試験(負極:黒鉛)]
上記容量確認試験に供した試験セルについて、25℃の恒温槽内にて、次の手順で充放電サイクル試験を行った。
(1’’)充電工程
充電電流0.5C、充電電圧4.6Vの定電流定電圧充電を行った。充電終止条件は、電流が0.1Cに減衰したときとした。充電終了後、10分間の休止を行った。
(2’’)放電工程
放電電流1C、放電終止電圧2.0Vの定電流放電を行った。放電終了後、10分間の休止を行った。
(1’’)充電工程、及び、(2’’)放電工程を1回の充放電工程とし、この充放電工程を50回繰り返した。
[充放電サイクル試験後の容量確認試験]
上記充放電サイクル試験後のセルについて、放電電流0.1C、放電終止電圧2.0Vの定電流放電をおこなった後、上記「容量確認試験(対極黒鉛)」と同様の手順で1回の充放電を行った。このときの容量を「50サイクル後の放電容量」として記録した。上記「初期放電容量」に対する上記「50サイクル後の放電容量」の百分率を「50サイクル後維持率(%,対極黒鉛)」として算出した。
各実施例及び比較例について、「電極密度(g/cm)」、「0.1C放電容量(mAh/g,対極リチウム)」「2C放電容量(mAh/g,対極リチウム)」、及び「50サイクル後維持率(%,対極黒鉛)」を表4に示す。また、正極の黒鉛含有量と、電極密度、及び非水電解質蓄電素子の2C放電容量の関係を図7に示す。ここで、電極密度は「●(第一軸)」で、2C放電容量は「△(第二軸)」で示した。
表4及び図7から明らかなように、黒鉛を0.2〜2質量%含有する正極を用いた実施例2−1〜2−4では、いずれも比較例2−1に比べて電極密度の向上効果が確認された。そして、表4に示すとおり、実施例2−1〜2−3において、比較例2−1と同等の優れた放電性能及び充放電サイクル性能を示すことが確認された。
すなわち、リチウム過剰型正極活物質を含有する正極に、非晶質炭素と、黒鉛とを用いることで、高い放電性能や充放電サイクル性能を損なうことなく、電極密度を向上させることができる。
本発明により、高い放電容量を損なうことなく、電極密度が高い正極を提供することができるので、この正極を用いた非水電解質蓄電素子は、携帯電話、パソコン等の携帯機器に加え、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車載用充電池として有用である。
1 非水電解質二次電池
2 電極群
3 電池容器
4 正極端子
4’ 正極リード
5 負極端子
5’ 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置

Claims (3)

  1. リチウム過剰型正極活物質と、非晶質炭素と、黒鉛とを含む、非水電解質蓄電素子用正極。
  2. 上記リチウム過剰型正極活物質のピーク微分細孔容積が0.5mm/(g・nm)以上である、請求項1に記載の非水電解質蓄電素子用正極。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の非水電解質蓄電素子用正極を備えた非水電解質蓄電素子。
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