JP2020183938A - 金属キャスクの密封喪失の検知方法及び検知装置並びに金属キャスク - Google Patents

金属キャスクの密封喪失の検知方法及び検知装置並びに金属キャスク Download PDF

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Abstract

【課題】金属キャスクの密封構造が損なわれていることを的確に検知することができるようにする。【解決手段】 使用済燃料と共に負圧状態で不活性ガスが内部に密封され、縦置き姿勢で保管される金属キャスク1の密封構造の喪失を検知する方法において、金属キャスク1の蓋4の外部を内部の不活性ガスよりも熱伝導率の小さな気体28の雰囲気とし、金属キャスク1の底温度TB、蓋温度TT及び側壁温度TSのうちの少なくとも一つの温度を計測し、底温度TB、蓋温度TT、及び側壁温度TSの少なくともいずれかの温度に所定の閾値を超えた変化が生じたときに金属キャスク1の密封構造が損なわれたと判断するようにしている。【選択図】図1

Description

本発明は、金属キャスクの密封喪失の検知方法及び検知装置並びに金属キャスクに関する。さらに詳述すると、本発明は、使用済燃料の長期貯蔵管理に用いられる金属製キャスクの密封性の喪失を検知する技術に関する。
使用済燃料の貯蔵に用いられる従来の金属キャスクとして、図8に示すように、内筒101と、当該内筒101の内部に収納される使用済燃料集合体108を入れる格子状の燃料収納区画102(「バスケット」とも呼ばれる)と、内筒101の上部にボルト締め付けによって固定されて取り付けられる一次蓋103及び当該一次蓋103を覆う二次蓋104と、内筒101の外側に設けられる中性子遮へい材105と、当該中性子遮へい材105を囲む外筒106とを有するものがある(特許文献1)。なお、図中において、符号109は、内筒101と一次蓋103や二次蓋104との間に介在するように設けられる環状の金属ガスケットである。
金属キャスクの内筒101の内部には、使用済燃料と共に、熱伝導が良く且つ不活性なガスとしてヘリウム(He)ガスが例えば0.8 atm 程度の負圧で充填されている。また、一次蓋103と二次蓋104との間の空間107に例えば4 atm 程度の高圧のヘリウムガスが充填されている。これらの構成により、従来の金属キャスクでは、一次蓋103の密封性が損なわれた場合には一次蓋103と二次蓋104との間の空間107に充填されている高圧のヘリウムガスが負圧の内筒101内へと吸い込まれる(別言すると、インリークが起こる)ことになる。そこで、従来の金属キャスクでは、一次蓋103の健全性(具体的には、密封性の保持)の確認として、一次蓋103と二次蓋104との間の空間107のガス圧を圧力計110によって常時監視するようにしている。
特開2018−54309号公報
しかしながら、従来の金属キャスクでは、一次蓋103と二次蓋104との間の空間107の圧力が低下した場合に、一次蓋103の密封性が損なわれたのか、或いは二次蓋104の密封性が損なわれたのかを即座に特定することはできない。このため、二次蓋104の密封性の健全性を確認する作業を別途行うことが必要とされ、余分な手間が掛かり、この点において従来の金属キャスクは、一次蓋103の密封性の健全性を簡便にそして確実に確認することを可能とする構造であるとは言い難い。
また、従来の金属キャスクでは、少なくとも二つの蓋103,104が必要とされると共にこれら二つの蓋103,104の間の空間107に高圧でガスを充填する手間が必要とされ、加えて、圧力計110(尚、通常は二台設置される)が必要とされ、その分コストが嵩むという問題がある。
そこで、本発明は、金属キャスクの密封構造が損なわれていることを的確に検知することができる金属キャスクの密封喪失の検知方法及び検知装置並びに金属キャスクを提供することを目的とする。
かかる目的を達成するため、本発明は、使用済燃料と共に負圧状態で不活性ガスが内部に密封され、縦置き姿勢で保管される金属キャスクの密封構造の喪失を検知する方法において、金属キャスクの蓋の外部を内部の不活性ガスよりも熱伝導率の小さな気体の雰囲気とし、金属キャスクの底温度、蓋温度及び側壁温度のうちの少なくとも一つの温度を計測し、温度に所定の閾値を超えた変化が生じたときに金属キャスクの密封構造が損なわれたと判断するようにしている。
また、本発明の金属キャスクの密封喪失の検知方法は、金属キャスクの底温度、蓋温度及び側壁温度を計測し、底温度及び蓋温度が所定の閾値を超えて上昇し且つ側壁温度が所定の閾値を超えて低下するときに、金属キャスクの密封構造が損なわれたと判断するようにしている。
また、本発明の金属キャスクの密封喪失の検知方法は、金属キャスクの底温度、蓋温度及び側壁温度を計測し、底温度、蓋温度及び側壁温度のうちのいずれか二つの温度の間の温度差に所定の閾値を超えて変化が生じたときに、金属キャスクの密封構造が損なわれたと判断するようにしている。
また、本発明は、使用済燃料と共に負圧状態で不活性ガスが内部に密封され、縦置き姿勢で保管される金属キャスクの密封構造の喪失を検知する装置において、金属キャスクの蓋の外部を不活性ガスよりも熱伝導率の小さな気体の雰囲気として、金属キャスクの密封構造が損なわれたときに金属キャスクの内部へと吸い込まれる構造とされ、金属キャスクの底温度、蓋温度及び側壁温度のうちの少なくとも一つの温度を計測する温度センサと、温度センサからの計測値データが入力され、入力された計測温度値に所定の閾値を超えて変化が生じたときに金属キャスクの密封構造が損なわれたと判断する密封喪失判断部とを有している。
また、本発明の金属キャスクの密封喪失の検知装置は、密封喪失判断部には、温度センサから金属キャスクの底温度、蓋温度及び側壁温度の全ての計測値データが入力され、金属キャスクの底温度及び蓋温度が所定の閾値を超えて上昇し且つ側壁温度が所定の閾値を超えて低下したときに、金属キャスクの密封構造が損なわれたと判断するようにしている。
また、本発明の金属キャスクの密封喪失の検知装置は、密封喪失判断部には、温度センサから金属キャスクの底温度、蓋温度及び側壁温度のうちの少なくとも二つの温度の計測値データが入力され、二つの温度の間の温度差に所定の閾値を超えて変化が生じたときに金属キャスクの密封構造が損なわれたと判断するようにしている。
また、本発明は、使用済燃料と共に負圧状態で不活性ガスが内部に密封され、横置き姿勢で保管される金属キャスクの密封構造の喪失を検知する方法において、金属キャスクの蓋の外部を不活性ガスよりも熱伝導率の小さな気体の雰囲気とし、金属キャスクの底温度、蓋温度、横置きの姿勢における側壁下部温度及び横置きの姿勢における側壁上部温度のうちの少なくとも一つの温度を計測し、温度に所定の閾値を超えた変化が生じたときに金属キャスクの密封構造が損なわれたと判断するようにしている。
また、本発明の金属キャスクの密封喪失の検知方法は、金属キャスクの底温度、蓋温度、横置きの姿勢における側壁下部温度及び横置きの姿勢における側壁上部温度のうちのいずれか二つの温度の間の温度差に所定の閾値を超えて変化が生じたときに、金属キャスクの密封構造が損なわれたと判断するようにしている。
また、本発明は、使用済燃料と共に負圧状態で不活性ガスが内部に密封され、横置き姿勢で保管される金属キャスクの密封構造の喪失を検知する装置において、金属キャスクの蓋の外部を不活性ガスよりも熱伝導率の小さな気体の雰囲気として、金属キャスクの密封構造が損なわれたときに属キャスクの内部へと吸い込まれる構造とされ、金属キャスクの底温度、蓋温度、横置きの姿勢における側壁下部温度及び横置きの姿勢における側壁上部温度のうちの少なくとも一つの温度を計測する温度センサと、温度センサからの計測値データが入力され、入力された計測温度値に所定の閾値を超えて変化が生じたときに金属キャスクの密封構造が損なわれたと判断する密封喪失判断部とを有している。
また、本発明の金属キャスクの密封喪失の検知装置は、密封喪失判断部には、温度センサから金属キャスクの底温度、蓋温度、横置きの姿勢における側壁下部温度及び横置きの姿勢における側壁上部温度のうちの少なくとも二つの温度の計測値データが入力され、二つの温度の間の温度差に所定の閾値を超えて変化が生じたときに金属キャスクの密封構造が損なわれたと判断するようにしている。
さらに、本発明にかかる金属キャスクは、請求項4から6および請求項9から10のいずれか1つに記載の金属キャスクの密封喪失の検知装置を備えるようにしている。
本発明の金属キャスクの密封喪失の検知方法や検知装置によれば、金属キャスクの密封構造が損なわれたときに内部の不活性ガスよりも熱伝導率の小さな気体を金属キャスク内に流入させて金属キャスク内雰囲気の熱伝導率を低下させることによって除熱効果を低減させ、使用済燃料の温度が上昇して金属キャスク自体の温度を変化させることを利用しているので、金属キャスクの密封構造が損なわれていることを的確に検知することができる。依って、縦置き姿勢/横置き姿勢の金属キャスクにおける密封性の喪失の検知手法や検知手段としての有用性や信頼性の向上を図ることが可能になる。
本発明に係る金属キャスクの密封喪失の検知方法及び金属キャスクの密封喪失の検知装置の第一の実施形態が適用され得る金属キャスクの一例を示す概略構造図である(金属キャスクは縦断面図であり、バスケットは側面図である)。 図1に示す金属キャスクに関する各部温度の位置を示す図である。図2Aは縦置きの姿勢の金属キャスクの正面図である。図2Bは縦置きの姿勢の金属キャスクの平面図である。図2Cは縦置きの姿勢の金属キャスクの底面図である。 本発明に係る金属キャスクの密封喪失の検知装置の第一の実施形態の一例を示す機能ブロック図である。 本発明に係る金属キャスクの密封喪失の検知方法及び金属キャスクの密封喪失の検知装置の第二の実施形態が適用され得る金属キャスクの一例を示す概略構造図である(金属キャスクは縦断面図であり、バスケットは側面図である)。 図4に示す金属キャスクに関する各部温度の位置を示す図である。図5Aは横置きの姿勢の金属キャスクの側面図である。図5Bは横置きの姿勢の金属キャスクの正面図である。図5Cは横置きの姿勢の金属キャスクの背面図である。 本発明に係る金属キャスクの密封喪失の検知装置の第二の実施形態の一例を示す機能ブロック図である。 本発明に係る金属キャスクの密封喪失の検知方法及び金属キャスクの密封喪失の検知装置の第一の実施形態が適用され得る従来型の金属キャスクの一例を示す概略構造図である(金属キャスクは縦断面図であり、バスケットは側面図である)。 従来の金属キャスクを示す概略構造図である(金属キャスクは縦断面図であり、バスケットは一部切欠き図である)。
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の例に基づいて詳細に説明する。
《第一の実施形態:竪型キャスク》
図1から図3に、本発明に係る金属キャスクの密封喪失の検知方法及び金属キャスクの密封喪失の検知装置の第一の実施形態の一例を示す。なお、各図は、本発明に係る構成を含む金属キャスクの概略構造を示すための概念図であり、各部の寸法関係や詳細構造が実物/実機に則して正確に表されている図ではない。
第一の実施形態では、放射性物質である棒状の使用済燃料(「使用済燃料集合体」とも呼ばれる)を長手方向が鉛直方向に沿う姿勢で収納した上で貯蔵建屋内や屋外などで縦置きの姿勢で保管される態様のキャスク(「竪型キャスク1」と呼ぶ)に対して本発明が適用される場合について説明する。すなわち、竪型キャスク1は、竪型キャスク1自身の長手方向が鉛直方向に沿う姿勢で設置される。
竪型キャスク1は、円筒状の胴部2、当該胴部2の下端開口を塞ぐ円盤状の底板3、胴部2の上端開口を塞ぐ円盤状の蓋4、胴部2の外周を取り巻いて覆う中性子遮蔽体5、当該中性子遮蔽体5の外周面を覆う外筒6、及び蓋4を被って外筒6の上端に取り付けられるカバー7を有する。
なお、胴部2内の使用済燃料の崩壊熱を外筒6に伝達するための伝熱フィン(図示省略)が胴部2の外周面と外筒6との間に所定の間隔で配設され、これら伝熱フィンの間に例えば合成樹脂が流し込まれて中性子遮蔽体5が形成される。
胴部2、底板3、蓋4、及び外筒6は、例えば炭素鋼やステンレス鋼などの金属を主要な材料として形成される。
胴部2に対し、底板3は溶接によって接合され、蓋4は胴部2との間に環状の金属ガスケット9を介在させた上でボルト締め付けによって固定されて取り付けられる。
胴部2、底板3、及び蓋4からなる密封性能を備える容器のことを「容器体10」と呼ぶ。すなわち、容器体10は、使用済燃料を胴部2内に収納して密封する構造を備えるものとして構成される。
例えばステンレス鋼製のハニカム構造の仕切り11(「バスケット」とも呼ばれる)が容器体10の胴部2に装入され、仕切り11の各区画に放射性物質である使用済燃料12が挿入される。
容器体10は、封入された放射性物質が外部に漏洩しないようにするために溶接による密閉/密封構造が採られると共に、熱伝導率の大きい不活性ガスが封入され、容器体10内の使用済燃料12の崩壊熱がバスケット11や不活性ガスを介して容器体10を構成する胴部2、底板3、及び蓋4へと伝達され、更には伝熱フィンを介して外筒6へと伝達される構造とされている。
容器体10内に封入される不活性ガスとしては、外気(通常は、空気)よりも熱伝導率の大きい不活性ガスが一般には用いられ、具体的には例えばヘリウム(He)が用いられることが好ましいものの、他の不活性ガスが用いられるようにしても良い。
容器体10は、初期内圧が負圧にされた状態で密封される。容器体10内の圧力は、負圧(即ち、1 atm 未満)であれば特定の値には限定されないものの、0.1〜0.8 atm 程度の範囲のうちのいずれかの値に設定されることが考えられ、0.1〜0.5 atm 程度の範囲のうちのいずれかの値に設定されることが好ましく、0.1 atm 程度に設定されることが一層好ましい。
カバー7は、天面は塞がれていると共に下面は開口し且つ中空部7aを有する王冠状(別言すると、瓶の口金形)に形成され、容器体10の蓋4を被うようにして外筒6の上縁部に取り付けられる。ここで、本実施形態の金属キャスクは、蓋4とカバー7との間の空間の圧力を監視するものではないので、圧力計が不要になると共に、堅固なカバー(二次蓋)7は必須ではなくなり、内部のガスの純度が保たれる程度の気密性を備える簡易なカバーが設けられれば良い。
カバー7の中空部7aに、容器体10内に封入される不活性ガスよりも熱伝導率の小さい気体8が充填される。気体8は、カバー7の内圧が容器体10の内圧(負圧状態)よりも大きくなるように中空部7aへと充填される。すなわち、カバー7の内圧は、相対的に容器体10の内圧よりも大きければ良く、負圧でも良く、或いは大気圧と同等でも良く、更に言えば大気圧よりも大きくても良く、例えば従来の金属キャスクと同様の4気圧程度としても良い。
カバー7は、カバー7内の圧力が保持され得る程度(言い換えると、カバー7内の気体の純度が保たれ得る程度)に外筒6に対して接合されれば良い。したがって、従来の金属キャスクにおける二次蓋のような堅固な構造である必要はなく、従来の二次蓋と比べて格段に簡易な構造であって構わない。この点に関連して、カバー7(尚、外筒6との接合構造を含む)を一層簡易な構造にするため、カバー7の内圧は大気圧と同程度であることが好ましい。
胴部2と蓋4との間の密封性が損なわれた場合には、容器体10の初期内圧が負圧であり且つカバー7の内圧が容器体10の内圧よりも大きいため、カバー7の中空部7aに充填された気体8が容器体10内へと吸い込まれる(別言すると、インリークが起こる)ことになる。
蓋4の外側を取り囲む気体8としては、少なくとも容器体10の内部に封入される不活性ガスよりも熱伝導率の小さい気体であれば良く、活性ガスあるいは不活性ガスであることを問われない。しかしながら、金属キャスクの密封が喪失する状態においても、使用済燃料12の酸化を避けることが必要条件とされる場合には気体8として不活性ガスのみが用いられ、使用済燃料12の酸化を避けることが必要条件とされない場合には気体8として活性ガスを含む気体や活性ガスのみが用いられることが許容される。
例えば、容器体10の内部に封入される不活性ガスとしてヘリウムが用いられる場合には、気体8として用いる不活性ガス(即ち、ヘリウムよりも熱伝導率の小さい不活性ガス)としては具体的には例えばアルゴンや窒素が挙げられ、活性ガス(即ち、ヘリウムよりも熱伝導率の小さい活性ガス)としては具体的には例えば空気が挙げられる。
初期内圧が負圧である容器体10の密封性が損なわれた場合にはカバー7内の気体8が容器体10内へと吸い込まれることになるため、吸い込まれる量(別言すると、インリーク量)が確保され得ることが考慮されてカバー7の中空部7aの容積が設計されることが好ましい。具体的には例えば、容器体10内の不活性ガスが充填される空間の容積と容器体10の初期内圧とが設定された上で、容器体10の密封性が損なわれた場合に容器体10内の圧力が概ね大気圧レベルになるために必要とされる気体の量が考慮されてカバー7の中空部7aの容積が設計されることが好ましい。
尚、気体8として空気が用いられることが許容される場合には、加圧の必要がない限り、カバー7の存在は必要ない。
そして、本実施形態の金属キャスクの密封喪失の検知方法は、金属キャスクの密封構造が損なわれたとき、金属キャスク内部の不活性ガスよりも熱伝導率の小さい気体を金属キャクス内部へと流入させて金属キャスク内雰囲気の熱伝導率を低下させることによって除熱効果を低減させ、使用済燃料の温度が上昇して金属キャスク自体の温度も変化することに起因する温度変化を利用するようにしている。即ち、金属キャスクの温度を観測して当該温度が所定の閾値を超えて変化したり箇所別の温度の差が所定の閾値を超えて変化したりしたときに金属キャスクの密封構造が損なわれていると判断するものである。
つまり、竪型キャスク1の底温度TB、蓋温度TT及び側壁温度TSうちの少なくとも一つの温度を計測し、その温度に所定の閾値を超えた変化が生じたときに竪型キャスク1(特に、容器体10)の密封構造が損なわれたと判断するようにしている。尚、本明細書において、所定の閾値とは、特定の値に限定されるものではなく、例えば想定実機に関する数値解析や実験または外気温度の変動実績などに基づいて適切な値に適宜設定されるものである。
竪型キャスク1の底温度TBは竪型キャスク1のうちの容器体10を構成する底板3の温度であり、竪型キャスク1の蓋温度TTは容器体10を構成する蓋4の温度であり、竪型キャスク1の側壁温度TSは容器体10を構成する胴部2を囲う外筒6の温度である。
ここで、監視対象となる温度としては、底温度TB、蓋温度TT、及び側壁温度TSのいずれでも良いが、単独で用いるだけでなく他の温度との組み合わせで用いても良く、好ましくは最も大きな温度変化を示す底温度TBあるいは底温度TBと他の温度との組み合わせであるが、これらに特に限られるものではなく、全ての部位の温度を用いても良いし、場合によってはそれらの組み合わせであっても良い。例えば、竪型キャスク1の底温度TB、蓋温度TT、及び側壁温度TSのうちのいずれか二つの温度の間の温度差ΔTBS(=TB−TS)、ΔTTS(=TT−TS)、ΔTBT(=TB−TT)に所定の閾値を超えて変化が生じたときに竪型キャスク1(特に、容器体10)の密封構造が損なわれて気体8の竪型キャスク1の内部へのインリークが発生したと判断するようにしても良い。例えば、大きな温度変化を生む底温度TBと側壁温度TSとの間の温度差ΔTBSに変化が生じたときに竪型キャスク1の密封構造が損なわれたと判断しても良いし、さらに好ましくは竪型キャスク1の底温度TB及び蓋温度TTが所定の閾値を超えて上昇し且つ側壁温度TSが所定の閾値を超えて低下するときに、竪型キャスク1の密封構造が損なわれたと判断しても良い。
上記金属キャスクの密封喪失の検知方法は、本発明に係る金属キャスクの密封喪失の検知装置によっても実施され得る。本実施形態の金属キャスクの密封喪失の検知装置は、使用済燃料と共に負圧状態で不活性ガスが内部に密封され、貯蔵建屋内あるいは屋外に縦置きで保管される竪型キャスク1の密封構造の喪失を検知するものであって、竪型キャスク1の蓋の外部を不活性ガスよりも熱伝導率の小さな気体の雰囲気として、竪型キャスク1の密封構造が損なわれたときに竪型キャスク1の内部へと吸い込まれる構造とされ、竪型キャスク1の底温度、蓋温度及び側壁温度のうちの少なくとも一つの温度を計測する温度センサ即ち竪型キャスク1の底温度TBを計測する第一の温度センサ13A、竪型キャスク1の蓋温度TTを計測する第二の温度センサ13B、及び竪型キャスク1の側壁温度TSを計測する第三の温度センサ13Cのうちの少なくとも一つの温度センサと、いずれかの温度センサ13A、13B、13Cによって計測される少なくとも一つの温度の計測値データが入力され、当該入力された計測値に所定の閾値を超えて変化が生じたときに気体8の竪型キャスク1(特に、容器体10)の密封構造が損なわれたと判断する密封喪失判断部16aとを有している。
密封喪失判断部16aは、底温度TB、蓋温度TT、及び側壁温度TSのいずれの温度を単独で用いて、若しくは複数の温度間の温度差あるいは他の温度との組み合わせで用いて、それらの温度が所定の閾値を超えて変化が生じたときに気体8の竪型キャスク1の内部へのインリークが発生したと(つまり、竪型キャスク1の密封構造が損なわれたと)判断するようにしている。ここで、最も大きな温度変化を示す底温度TBあるいは底温度TBと他の温度との組み合わせが好ましいが、これらに特に限られるものではなく、全ての部位の温度を用いても良いし、場合によってはそれらの組み合わせであっても良い。例えば、密封喪失判断部16aは、竪型キャスク1の底温度TB、蓋温度TT、及び側壁温度TSのうちのいずれか二つの温度の間の温度差ΔTBS、ΔTTS、ΔTBTに所定の閾値を超えて変化が生じたときに竪型キャスク1の密封構造が損なわれて気体8の金属キャスクの内部へのインリークが発生したと判断するようにしても良い。また、密封喪失判断部16aは、大きな温度変化を生む底温度TBと側壁温度TSとの間の温度差に変化が生じたときに竪型キャスク1の密封構造が損なわれたと判断しても良いし、さらに好ましくは竪型キャスク1の底温度TB及び蓋温度TTが所定の閾値を超えて上昇し且つ側壁温度TSが所定の閾値を超えて低下するときに、竪型キャスク1の密封構造が損なわれたと判断しても良い。
第一から第三の温度センサ13A、13B、13Cとしては、例えば熱電対やサーミスターのような温度計測手段が用いられ得る。第一から第三の温度センサ13A、13B、13Cは、竪型キャスク1の密封性喪失の検知感度を一層高める上では竪型キャスク1(具体的には、容器体10や外筒6)の表面に直に接触して表面温度を計測することが望ましいものの、場合によっては非接触式温度計が用いられて竪型キャスク1の表面の温度を測定したり表面の極近傍の温度を計測したりするようにしても良い。
発明者の分析によると、竪型キャスク1(具体的には、容器体10)の初期内圧が負圧で熱伝導率の大きい不活性ガス具体的には例えばヘリウムガスが充填された状態から前記不活性ガスよりも熱伝導率の小さい気体8が容器体10内へと吸い込まれる場合、容器体10の内部の圧力増加(言い換えると、負圧から大気圧(1 atm)へと向かう圧力変化)に伴い、竪型キャスク1の底温度TBと蓋温度TTとが上昇する一方で側壁温度TSは低下する。
竪型キャスク1に生ずる温度変化のメカニズムは、熱伝導率の大きい不活性ガス雰囲気の中にインリークで熱伝導率の小さい気体8が混入することで、熱伝導率の低下に伴って除熱効果が低減し、竪型キャスク1内の使用済燃料の温度が上昇することに起因する。したがって、使用済燃料に接触している竪型キャスク1の底の温度TBが上昇する。
また、混入した気体は竪型キャスク1(具体的には、容器体10)内に初期充填されている不活性ガスよりも密度が大きい(具体的には例えば、空気はヘリウムよりも密度が大きい)ため、混入した気体は容器体10内の下部空間に溜まる一方で、初期充填されている不活性ガスは容器体10内の上部空間に溜まることになる。これにより、温度が上昇した使用済燃料の熱が熱伝導の良い不活性ガスを介して容器体10の蓋へと伝えられ、蓋温度TTも上昇すると考えられる。
また、インリークで竪型キャスク1の底温度TBと蓋温度TTとが上昇する一方で、使用済燃料の発熱量自体はインリーク前後で基本的には変化しないことから、側壁温度TSは相対的に低下すると考えられる。
なお、インリークにおいて竪型キャスク1の底温度TBが上昇し且つ蓋温度TTも上昇するという現象は、竪型キャスク1内が熱伝導率の大きい不活性ガス雰囲気の負圧の状態からインリークが発生して熱伝導率の小さい気体が混入する場合に特有の現象であり、従来は知られていない知見である。
また、インリーク後の竪型キャスク1の内部の大気圧に向かう圧力増加に伴い、竪型キャスク1の底温度TBと側壁温度TSとの温度差ΔTBSや竪型キャスク1の底温度TBと蓋温度TTとの温度差ΔTBTは大きくなる。
竪型キャスク1の底温度TBとしては、竪型キャスク1の容器体10を構成する底板3の何れの箇所における温度が計測されて用いられても構わないものの、気体8のインリークが発生した場合の竪型キャスク1の容器体10の底板3の下面(即ち、底面)における温度変化は底面の中心位置に於いて最も大きくなるので、竪型キャスク1の容器体10の底板3の下面(即ち、底面3B)の水平面方向における中心位置3Bcの温度が計測されて用いられることが好ましい(図2A、図2C)。
竪型キャスク1の蓋温度TTとしては、竪型キャスク1の容器体10を構成する蓋4の何れの箇所における温度が計測されて用いられても構わないものの、気体8のインリークが発生した場合の竪型キャスク1の容器体10の蓋4の上面(即ち、天面)における温度変化は天面の中心位置に於いて最も大きくなるので、竪型キャスク1の容器体10の蓋4の上面(即ち、天面4T)の水平面方向における中心位置4Tcの温度が計測されて用いられることが好ましい(図2A、図2B)。
竪型キャスク1の側壁温度TSとしては、竪型キャスク1の容器体10を構成する胴部2を囲う外筒6の何れの箇所における温度が計測されて用いられても構わないものの、気体8のインリークが発生した場合の竪型キャスク1の容器体10の外筒6の外面(以下、側周面6Sと呼ぶ)における温度変化は側周面6Sの上下方向における中央位置若しくは中央位置の周囲に於いて最も大きくなることが多いので、側周面6Sの上下方向における中央位置6Sc若しくはその周囲の温度が計測されて用いられることが好ましい(図2A)。なお、竪型キャスク1の底温度TBと蓋温度TTとのそれぞれの上昇の程度/バランスや竪型キャスク1内の構造物の構成などにより、竪型キャスク1の側周面6Sにおける温度変化が最も大きくなる位置が側周面6Sの上下方向における中央位置6Scからずれる場合がある。
上記の発明者の分析を踏まえ、縦置き姿勢の竪型キャスク1に関する下記のIからIIIまでの温度のうちの少なくとも一つを観測して温度が経時的に変化するか否かを監視することにより、竪型キャスク1の密封構造が維持されているか或いは損なわれているかの判定を行うこと、つまり竪型キャスク1におけるガスインリークの検知を行うことが可能になる。
I)竪型キャスク1の底温度TB(尚、インリークによって上昇する)
II)竪型キャスク1の蓋温度TT(尚、インリークによって上昇する)
III)竪型キャスク1の側壁温度TS(尚、インリークによって低下する)
上記の発明者の分析を踏まえ、また、縦置き姿勢の竪型キャスク1に関する下記のiからiiiまでの温度差のうちの少なくとも一つを観測して温度差が経時的に変化するか否かを監視することにより、竪型キャスク1の密封構造が維持されているか或いは損なわれているかの判定を行うこと、つまり竪型キャスク1におけるガスインリークの検知を行うことが可能になる。なお、下記のi、ii、iiiの順番がガスインリークに対する感度の良好さの順位に対応すると考えられ、延いてはガスインリークの検知における有利さの順位に対応すると考えられる。
i)竪型キャスク1の底温度TBと側壁温度TSとの温度差ΔTBS
ii)竪型キャスク1の蓋温度TTと側壁温度TSとの温度差ΔTTS
iii)竪型キャスク1の底温度TBと蓋温度TTとの温度差ΔTBT
竪型キャスク1に関する二つの温度の間の温度差が用いられる場合には、貯蔵建屋内や屋外などで保管されている状況における外気温度の変化の影響を受けてそれぞれ変動する二つの温度から、外気温度の変化が相殺されるので、外気温度の変化の影響を受け難くなって正確な判定が行われ得る。
また、竪型キャスク1(具体的には、容器体10)の初期内圧の負圧度が大きい(即ち、初期内圧が低い)ほど、インリークに伴う熱伝導率の小さい気体8の流入量が多いので、インリーク後の(別言すると、インリークの進行に伴う)竪型キャスク1内の使用済燃料の温度上昇の度合いが大きくなり、このため、竪型キャスク1に関する各部温度TB、TT、TSの変化幅や温度差ΔTBS、ΔTTS、ΔTBTは大きくなる。
なお、竪型キャスク1(具体的には、容器体10)の初期内圧の負圧度が大きいほどガスインリーク後の竪型キャスク1内の使用済燃料の温度上昇の度合いが大きく、そして、竪型キャスク1に関する各部温度TB、TT、TSの変化幅や温度差ΔTBS、ΔTTS、ΔTBTの変化幅が大きいほどガスインリークの検知には有利である(言い換えると、検知感度が向上する)ものの、これら各部温度TB、TT、TSや温度差ΔTBS、ΔTTS、ΔTBTの変化の大きさは使用済燃料の温度変化の大きさが反映された結果であるので、必要に応じ、竪型キャスク1内の使用済燃料の許容温度上昇の程度が考慮された上で初期内圧の負圧度が設定される。
金属キャスクの密封喪失の検知装置は、所定のプログラムがコンピュータ上で実行されることによって実現されるようにしても良い。
金属キャスクの密封喪失の検知装置15は、例えば図3に示すように、制御部16(具体的には、CPU;即ち、中央演算処理装置)、記憶部17、インターフェース18、及び表示部19を備えるコンピュータにおいて、記憶部17に記憶されているプログラムが実行されることによって実現され得る。
金属キャスクの密封喪失の検知装置15としてのコンピュータの制御部16に、プログラムが実行されることにより、各温度センサ13A、13B、13Cから入力された縦置き姿勢の竪型キャスク1の底温度TB、蓋温度TT、及び側壁温度TSのうちの少なくとも一つの温度の変化に基づいて竪型キャスク1の密封構造が損なわれたとの判断を行う密封喪失判断部16aが構成される。第一の温度センサ13A、第二の温度センサ13B、及び第三の温度センサ13Cの計測値データは、インターフェース18を介してコンピュータに少なくとも一つが入力され、入力された計測値に経時的に有意な変化(別言すると、特異な)が生じているか否かが密封喪失判断部16aによって判定される。
密封喪失判断部16aは、具体的には例えば、入力された計測値が所定の閾値を超えて変化したときに、計測値に経時的に有意な変化が生じていると判定し、延いては竪型キャスク1の密封構造が損なわれていると判断するようにすることが考えられる。
例えば、本実施形態の密封喪失判断部16aでは、上述したように底温度TB、蓋温度TT、及び側壁温度TSのいずれかの温度を単独で用いて、それらの温度が所定の閾値を超えて変化が生じたときに竪型キャスク1の密封構造が損なわれて気体8のインリークが発生したと判断するようにしているが、これに特に限られず、全ての部位の温度を用いても良いし、あるいはそれらの組み合わせ即ち複数の温度間の温度差若しくは他の温度との組み合わせを用いても良く、より好ましくは最も大きな温度変化を示す底温度TBあるいは底温度TBと他の温度との組み合わせから得られる温度変化から判断することである。例えば、コンピュータの制御部16に、プログラムが実行されることにより、キャニスタ4の底温度TB、蓋温度TT、及び側壁温度TSのうちのいずれか二つの温度の間の温度差ΔTBS、ΔTTS、ΔTBTに所定の閾値を超えて変化が生じたときに竪型キャスク1の密封構造が損なわれて気体8の竪型キャスク1の内部へのインリークが発生したと判断するようにしても良い。
また、密封喪失判断部16aは、大きな温度変化を生む底温度TBと側壁温度TSとの間の温度差に変化が生じたときに竪型キャスク1の密封構造が損なわれたと判断しても良いし、さらに好ましくは竪型キャスク1の底温度TB及び蓋温度TTが所定の閾値を超えて上昇し且つ側壁温度TSが所定の閾値を超えて低下するときに、竪型キャスク1の密封構造が損なわれたと判断しても良い。
そして、計測値に所定の閾値を超えて経時的な変化が生じている場合には、検知装置15は、例えば、竪型キャスク1の密封構造が損なわれたことを表示部19に表示させたり、あるいは警報などを発生させたりする。
《第二の実施形態:横型キャスク》
図4から図6に、本発明に係る金属キャスクの密封喪失の検知方法及び検知装置の第二の実施形態の一例を示す。尚、本実施形態において、第一の実施形態の縦置き金属キャスクと同様の構成については説明を省略する。
第二の実施形態では、放射性物質である棒状の使用済燃料(「使用済燃料集合体」とも呼ばれる)を長手方向が水平方向に沿う姿勢で収納した上で貯蔵建屋内や屋外などで横置きの姿勢で保管される態様のキャスク(「横型キャスク21」と呼ぶ)に対して本発明が適用される場合について説明する。すなわち、横型キャスク21は、横型キャスク21自身の長手方向が水平方向に沿う姿勢で設置される。
横型キャスク21の構成(具体的には、容器体、外筒、カバー及び気体、仕切り/バスケットの装入、溶接やボルト締め付けによる密封構造、不活性ガスの封入、初期内圧が負圧など)は上述の第一の実施形態と同様である。横型キャスク21を構成する各要素の符号は、胴部22、底板23、蓋24、中性子遮蔽体25、外筒26、カバー27、中空部27a、気体28、金属ガスケット29、容器体30、仕切り/バスケット31、使用済燃料32とする。
そして、第二の実施形態の金属キャスクの密封喪失の検知方法は、内部が不活性ガス雰囲気の負圧状態にされると共に密封構造が損なわれたときには不活性ガスよりも熱伝導率の小さい気体28が内部へと流入するように構成されて横置きの姿勢で保管される横型キャスク21の底温度THB、蓋温度THT、横置きの姿勢における側壁下部温度THSL、及び横置きの姿勢における側壁上部温度THSUのうちの少なくとも一つの温度に所定の閾値を超えて変化が生じたときに横型キャスク21の密封構造が損なわれたと判断するようにしている。つまり、横型キャスク21の底温度THB、蓋温度THT、横置きの姿勢における側壁下部温度THSL、及び横置きの姿勢における側壁上部温度THSUのうちの少なくとも一つの温度を計測し、その温度に所定の閾値を超えた変化が生じたときに横型キャスク21(特に、容器体30)の密封構造が損なわれたと判断するようにしている。
ここで、横型キャスク21の底温度THBは横型キャスク21のうちの容器体30を構成する底板23の温度であり、横型キャスク21の蓋温度THTは容器体30を構成する蓋24の温度であり、横型キャスク21の横置きの姿勢における側壁下部温度THSLや側壁上部温度THSUは容器体30を構成する胴部22を囲う外筒26の温度である。
尚、監視対象となる温度としては、横型キャスク21の底温度THB、蓋温度THT、横置きの姿勢における側壁下部温度THSL、及び横置きの姿勢における側壁上部温度THSUのうちの少なくとも一つの温度のいずれでも良いが、単独で用いるだけでなく他の温度との組み合わせで用いても良く、好ましくは最も大きな温度変化を示す底温度TBあるいは底温度TBと他の温度との組み合わせであるが、これらに特に限られるものではなく、全ての部位の温度を用いても良いし、場合によってはそれらの組み合わせであっても良い。例えば、横型キャスク21の底温度THB、蓋温度THT、横置きの姿勢における側壁下部温度THSL、及び横置きの姿勢における側壁上部温度THSUのうちのいずれか二つの温度の間の温度差ΔTHBT(=THB−THT)、ΔTHBSU(=THB−THSU)、ΔTHSLT(=THSL−THT)、ΔTHSLU(=THSL−THSU)に所定の閾値を超えて変化が生じたときに横型キャスク21の密封構造が損なわれて蓋外部の気体28のインリークが発生したと判断するようにしても良い。また、大きな温度変化を生む底温度THBと蓋温度THTとの間若しくは側壁上部温度THSUとの間の温度差に変化が生じたときに横型キャスク21の密封構造が損なわれたと判断しても良いし、さらに好ましくは横型キャスク21の底温度THB及び側壁下部温度THSLが所定の閾値を超えて上昇し且つ蓋温度THT及び側壁上部温度THSUが所定の閾値を超えて低下するときに、キャニスタの密封構造が損なわれたと判断しても良い。
上記金属キャスクの密封喪失の検知方法は、第二の実施形態に係る金属キャスクの密封喪失の検知装置によっても実施され得る。第二の実施形態の金属キャスクの密封喪失の検知装置は、使用済燃料と共に負圧状態で不活性ガスが内部に密封され、貯蔵建屋内あるいは屋外に横置きで保管される横型キャスク21の密封構造の喪失を検知するものであって、横型キャスク21の蓋24の外部を不活性ガスよりも熱伝導率の小さな気体28の雰囲気として、横型キャスク21の密封構造が損なわれたときに横型キャスク21の内部へと吸い込まれる構造とされ、横型キャスク21の底温度、蓋温度及び側壁温度のうちの少なくとも一つの温度を計測する温度センサ即ち底温度THBを計測する第一の温度センサ33A、蓋温度THTを計測する第二の温度センサ33B、横置きの姿勢における側壁下部温度THSLを計測する第三の温度センサ33C、及び横置きの姿勢における側壁上部温度THSUを計測する第四の温度センサ33Dと、少なくとも一つの温度センサによって計測される少なくとも一つの温度の計測値データが入力され、当該入力された計測値の所定の閾値を超えた変化に基づいて横型キャスク21の密封構造が損なわれたと判断する密封喪失判断部36aとを有する。
ここで、密封喪失判断部36aは、底温度THB、蓋温度THT、側壁下部温度THSL、及び側壁上部温度THSUのいずれかの温度を単独で用いて、若しくは複数の温度間の温度差あるいは他の温度との組み合わせで用いて、それらの温度が所定の閾値を超えて変化が生じたときに横型キャスク21の密封構造が損なわれて気体28の内部へのインリークが発生したと判断するようにしている。したがって、最も大きな温度変化を示す底温度THBあるいは底温度THBと他の温度との組み合わせが好ましいが、これらに特に限られるものではなく、全ての部位の温度を用いても良いし、場合によってはそれらの組み合わせであっても良い。例えば、密封喪失判断部36aは、横型キャスク21の底温度THB、蓋温度THT、側壁下部温度THSL及び側壁上部温度THSUのうちのいずれか二つの温度の間の温度差ΔTHBT、ΔTHBSU、ΔTHSLT、ΔTHSLUに所定の閾値を超えて変化が生じたときに横型キャスク21の密封構造が損なわれて気体28の横型キャスク21の内部へのインリークが発生したと判断するようにしても良い。また、密封喪失判断部36aは、大きな温度変化を生む底温度THBと蓋温度THTとの間若しくは側壁上部温度THSUとの間の温度差に変化が生じたときに横型キャスク21の密封構造が損なわれたと判断しても良いし、さらに好ましくは横型キャスク21の底温度THB及び側壁下部温度THSLが所定の閾値を超えて上昇し且つ蓋温度THT及び側壁上部温度THSUが所定の閾値を超えて低下するときに、横型キャスク21の密封構造が損なわれたと判断しても良い。
尚、第一から第四の温度センサ33A、33B、33C、33Dは、第一の実施形態の温度センサと同様であり、説明は省略する。
発明者の分析によると、横型キャスク21(具体的には、容器体30)の初期内圧が負圧で熱伝導率の大きい不活性ガス(具体的には例えば、ヘリウムガス)が充填された状態から不活性ガスよりも熱伝導率の小さい気体28が容器体30内へと吸い込まれる場合、横型キャスク21の内部での大気圧に向かう圧力増加に伴い、横型キャスク21に関する、横置き姿勢において水平方向における一方の端部になる底温度THBが上昇すると共に、横置き姿勢における側壁下部温度THSLも上昇し、一方で、横置き姿勢において水平方向における他方の端部になる蓋温度THTは低下すると共に、横置き姿勢における側壁上部温度THSUも低下することを知見するに至った。
なお、横型キャスク21に関する、底部は水平方向における一方の端部、蓋部は水平方向における他方の端部になる。即ち、底温度THBは、竪型キャスク1の使用済燃料並びにバスケットが接触している底になる部分の温度に相当し、蓋温度THTは竪型キャスク1の蓋になる部分(使用済燃料が接触しない側)の温度に相当する。
さらに、横型キャスク21に関する、横置き姿勢における側壁下部温度THSLは、横置きの姿勢にされた状態の横型キャスク21の容器体30を構成する胴部22を囲う外筒26のうちの、横置きの姿勢の横型キャスク21(特に、外筒26)の中心を通る水平面Hpよりも下部になる部分の温度である。
また、横型キャスク21に関する、横置き姿勢における側壁上部温度THSUは、横置きの姿勢にされた状態の横型キャスク21の容器体30を構成する胴部22を囲う外筒26のうちの、横置きの姿勢の横型キャスク21(特に、外筒26)の中心を通る水平面Hpよりも上部になる部分の温度である。
横型キャスク21に関する温度変化は、第1の実施形態と同様に、熱伝導率の大きい不活性ガス雰囲気の中にインリークで熱伝導率の小さい気体が混入するため、熱伝導率の低下に伴って除熱効果が低減し、横型キャスク21内の使用済燃料の温度が上昇することによって生じる。
そして、使用済燃料の熱は、接触(特に、金属同士の接触)によって最も伝えられるために横型キャスク21の底温度THB及び横置きの姿勢における側壁下部温度THSLが上昇し、蓋温度THT及び横置きの姿勢における側壁上部温度THSUが低下する。
横型キャスク21の底温度THBとしては、横型キャスク21の容器体30を構成する底板23のうちの何れの箇所における温度が計測されて用いられても構わないものの、横型キャスク21において気体28のインリークが発生した場合の横型キャスク21の容器体30の底板23の外面(即ち、底面)における温度変化は底面の中心位置に於いて最も大きくなるので、横置き姿勢の横型キャスク21の容器体30の底板23の、横型キャスク21(特に、胴部22、外筒26)の軸心方向(即ち、水平方向H)における一方の端面(即ち、底面23HB)の鉛直面方向Vpにおける中心位置23HBcの温度が計測されて用いられることが好ましい(図5A、図5C)。
横型キャスク21の蓋温度THTとしては、横型キャスク21の容器体30を構成する蓋24のうちの何れの箇所における温度が計測されて用いられても構わないものの、横型キャスク21において気体28のインリークが発生した場合の横型キャスク21の容器体30の蓋24の外面(即ち、天面)における温度変化は天面の中心位置に於いて最も大きくなるので、横置き姿勢の横型キャスク21の容器体30の蓋24の、横型キャスク21(特に、胴部22、外筒26)の軸心方向(即ち、水平方向H)における他方の端面(即ち、天面24HT)の鉛直面方向Vpにおける中心位置24HTcの温度が計測されて用いられることが好ましい(図5A、図5B)。
横型キャスク21の側壁下部温度THSLとしては、横置き姿勢の横型キャスク21の容器体30を構成する胴部22を囲う外筒26のうちの、横型キャスク21(特に、外筒26)の中心を通る水平面Hpよりも下部になる部分の何れの箇所における温度が計測されて用いられても構わないものの、横型キャスク21の容器体30の外筒26の外面(即ち、側周面26HS)のうちの最下部26HSL(別言すると、最下底部)の、水平方向Hにおける中央位置26HSLc若しくはその周囲の温度が計測されて用いられることが好ましい(図5A)。なお、横型キャスク21の底温度THBと蓋温度THTとのそれぞれの上昇と低下との程度/バランスや横型キャスク21内の構造物の構成などにより、横型キャスク21の容器体30を構成する胴部22を囲う外筒26の外面(即ち、側周面26HS)における温度変化が最も大きくなる位置が側周面26HSのうちの最下部26HSLの水平方向Hにおける中央位置26HSLcからずれる場合がある。
横型キャスク21の側壁上部温度THSUとしては、横置きの姿勢にされた状態の横型キャスク21の容器体30を構成する胴部22を囲う外筒26のうちの、横置きの姿勢の横型キャスク21(特に、外筒26)の中心を通る水平面Hpよりも上部になる部分のうちの何れの箇所における温度が計測されて用いられても構わないものの、横置き姿勢の横型キャスク21の容器体30の外筒26の外面(即ち、側周面26HS)のうちの最上部26HSU(別言すると、天辺部)の、水平方向Hにおける中央位置26HSUcの温度が計測されて用いられることが好ましい(図5A)。
上記の発明者の分析を踏まえ、横置き姿勢の横型キャスク21に関する下記のIからIVまでの温度のうちの少なくとも一つを観測して温度が経時的に変化するか否かを監視することにより、横型キャスク21の密封構造が維持されているか或いは損なわれているかの判定を行うこと、つまり横型キャスク21におけるインリークの検知を行うことが可能になる。
I)横型キャスク21の底温度THB(尚、インリークによって上昇する)
II)横型キャスク21の蓋温度THT(尚、インリークによって低下する)
III)横置き姿勢の横型キャスク21の側壁下部温度THSL
(尚、インリークによって上昇する)
IV)横置き姿勢の横型キャスク21の側壁上部温度THSU
(尚、インリークによって低下する)
上記の発明者らの分析を踏まえ、また、横置き姿勢の横型キャスク21に関する下記のiからivまでの温度差のうちの少なくとも一つを観測して温度差が経時的に変化するか否かを監視することにより、横型キャスク21の密封構造が維持されているか或いは損なわれているかの判定を行うこと、つまり横型キャスク21におけるインリークの検知を行うことが可能になる。
i)横型キャスク21の底温度THBと蓋温度THTとの温度差ΔTHBT
ii)横型キャスク21の底温度THBと側壁上部温度THSUとの温度差ΔTHBSU
iii)横型キャスク21の側壁下部温度THSLと蓋温度THTとの温度差ΔTHSLT
iv)横型キャスク21の側壁下部温度THSLと側壁上部温度THSUとの温度差ΔTHSLU
なお、底温度THBと側壁下部温度THSLとの上昇の度合いが異なるので、横型キャスク21の底温度THBと側壁下部温度THSLとの温度差ΔTHBSL(=THB−THSL)が観測されて経時変化の有無が監視されるようにしても良く、また、蓋温度THTと側壁上部温度THSUの低下の度合いが異なるので、横型キャスク21の蓋温度THTと側壁上部温度THSUとの温度差ΔTHTSU(=THT−THSU)が観測されて経時変化の有無が監視されるようにしても良い。
横型キャスク21に関する二つの温度の間の温度差が用いられる場合には、貯蔵建屋内や屋外などで保管されている状況における外気温度の変化の影響を受けてそれぞれ変動する二つの温度から、外気温度の変化が相殺されるので、外気温度の変化の影響を受け難くなって正確な判定が行われ得る。
また、横型キャスク21(具体的には、容器体30)の初期内圧の負圧度が大きい(即ち、初期内圧が低い)ほど、インリークに伴う熱伝導率の小さい気体28の流入量が多いので、インリーク後の(別言すると、インリークの進行に伴う)横型キャスク21内の使用済燃料の温度上昇の度合いが大きくなり、このため、横型キャスク21に関する各部温度THB、THT、THSL、THSUの変化幅や温度差ΔTHBT、ΔTHBSU、ΔTHSLT、ΔTHSLUは大きくなる。
なお、横型キャスク21(具体的には、容器体30)の初期内圧の負圧度が大きいほど熱伝導率の小さい気体28の流入後の横型キャスク21内の使用済燃料の温度上昇の度合いが大きく、そして、横型キャスク21に関する各部温度THB、THT、THSL、THSUの変化幅や温度差ΔTHBT、ΔTHBSU、ΔTHSLT、ΔTHSLUの変化幅が大きいほどガスインリークの検知には有利である(言い換えると、検知感度が向上する)ものの、これら各部温度THB、THT、THSL、THSUや温度差ΔTHBT、ΔTHBSU、ΔTHSLT、ΔTHSLUの変化の大きさは使用済燃料の温度変化の大きさが反映された結果であるので、必要に応じ、横型キャスク21内の使用済燃料の許容温度上昇の程度が考慮された上で初期内圧の負圧度が設定される。
金属キャスクの密封喪失の検知装置は、所定のプログラムがコンピュータ上で実行されることによって実現されるようにしても良い。
金属キャスクの密封喪失の検知装置35は、例えば図6に示すように、制御部36(具体的には、CPU;即ち、中央演算処理装置)、記憶部37、インターフェース38、及び表示部39を備えるコンピュータにおいて、記憶部37に記憶されているプログラムが実行されることによって実現され得る。
金属キャスクの密封喪失の検知装置35としてのコンピュータの制御部36には、プログラムが実行されることにより、各温度センサ33A、33B、33C、33Dから入力された横置き姿勢の横型キャスク21の底温度THB、蓋温度THT、横置きの姿勢における側壁下部温度THSL、及び横置きの姿勢における側壁上部温度THSUのうちの少なくとも一つの温度の変化に基づいて横型キャスク21の密封構造が損なわれたとの判断を行う密封喪失判断部36aが構成される。第一の温度センサ33A、第二の温度センサ33B、第三の温度センサ33C、及び第四の温度センサ33Dの計測値データは、インターフェース38を介して検知装置・コンピュータ35に入力され、入力された計測値に所定の閾値を超えて経時的に有意な変化(別言すると、特異な)が生じているか否かが密封喪失判断部36aによって判定される。
密封喪失判断部36aは、具体的には例えば、入力された計測値が所定の閾値を超えて変化したときに、計測値に経時的に有意な変化が生じていると判定し、延いては横型キャスク21の密封構造が損なわれていると判断するようにすることが考えられる。
例えば、本実施形態の密封喪失判断部36aでは、上述したように底温度THB、蓋温度THT、横置きの姿勢における側壁下部温度THSL、及び横置きの姿勢における側壁上部温度THSUのいずれかの温度を単独で用いて、それらの温度が所定の閾値を超えて変化が生じたときに横型キャスク21の密封構造が損なわれて気体28のインリークが発生したと判断するようにしているが、これに特に限られず、全ての部位の温度を用いても良いし、あるいはそれらの組み合わせ即ち複数の温度間の温度差若しくは他の温度との組み合わせを用いても良く、より好ましくは最も大きな温度変化を示す底温度THBあるいは底温度THBと他の温度との組み合わせから得られる温度変化から判断することである。例えば、コンピュータの制御部36に、プログラムが実行されることにより、横型キャスク21の底温度THB、蓋温度THT、横置きの姿勢における側壁下部温度THSL、及び横置きの姿勢における側壁上部温度THSUのうちのいずれか二つの温度の間の温度差ΔTHBT、ΔTHBSU、ΔTHSLT、ΔTHSLUに所定の閾値を超えて変化が生じたときに横型キャスク21の密封構造が損なわれて気体28の横型キャスク21の内部へのインリークが発生したと判断するようにしても良い。
また、密封喪失判断部36aは、大きな温度変化を生む底温度THBと側壁下部温度THSL、及び側壁上部温度THSUとの間の温度差に変化が生じたときに横型キャスク21の密封構造が損なわれたと判断しても良いし、さらに好ましくは横型キャスク21の底温度THB及び側壁下部温度THSLが所定の閾値を超えて上昇し且つ蓋温度THT及び側壁上部温度THSUが所定の閾値を超えて低下するときに、横型キャスク21の密封構造が損なわれたと判断しても良い。
そして、計測値に所定の閾値を超えて経時的な変化が生じている場合には、検知装置15は、例えば、横型キャスク21の密封構造が損なわれたことを表示部19に表示させたり、あるいは警報などを発する。
以上のように構成された金属キャスクの密封喪失の検知方法や金属キャスクの密封喪失の検知装置15、35によれば、金属キャスク(具体的には、竪型キャスク1、横型キャスク21)に関する温度の変化や箇所別の温度の差の変化に着目するようにしているので、金属キャスクの密封構造が損なわれていることを的確に検知することができる。このため、縦置き姿勢の竪型キャスク1や横置き姿勢の横型キャスク21における密封性の喪失の検知手法としての有用性の向上や信頼性の向上を図ることが可能になる。
つまり、金属キャスク(竪型キャスク1、横型キャスク21)の密封喪失が起こると、熱伝導率の大きい不活性ガス雰囲気の中に熱伝導率の小さい気体8あるいは28が混入することで熱伝導率が低下して除熱効果が低減して使用済燃料の温度が上昇することに起因する様々な特有の現象を伴うので、金属キャスクの密封構造の損失を的確に検知しつつ放射性物質の放出を適切に制御することが可能になる。
しかも、これらの金属キャスクの密封喪失の検知方法や金属キャスクの密封喪失の検知装置では、一次蓋と二次蓋との間の空間の圧力を監視する圧力計が不要になると共に、堅固な二次蓋は必須ではなくなり、内部のガスの純度が保たれる程度の気密性を備える簡易なカバーが設けられれば良く、更に言えばカバーが設けられないようにしても良いので、金属キャスク自体の構造を簡素化することが可能になり、延いては金属キャスクの製造コストを大幅に低減させることが可能になる。
なお、上述の実施形態は本発明を実施する際の好適な形態の一例ではあるものの本発明の実施の形態が上述のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において本発明は種々変形実施可能である。
例えば、上述の実施形態では図1に示す竪型キャスク1や図4に示す横型キャスク21に対して本発明が適用される場合を例に挙げたが、本発明が適用され得る竪型キャスク1や横型キャスク21の具体的な構成/構造は図1や図4に示す例に限定されるものではなく、縦置きの姿勢で保管される種々の竪型キャスクや横置きの姿勢で保管される種々の横型キャスクに対して本発明は適用可能である。
例えば、一次蓋と二次蓋とを有する従来型の金属キャスクに対して本発明が適用されるようにしても良い。具体的には例えば、図7に示すように、上述の第一の実施形態における蓋4を一次蓋として有すると共に当該一次蓋としての蓋4を覆う二次蓋42を有する従来型の金属キャスク41に対して本発明が適用されるようにしても良い。二次蓋42は、一次蓋4と同様に、胴部2との間に環状の金属ガスケット9を介在させた上でボルト締め付けによって固定されて取り付けられる。この場合には、一次蓋4と二次蓋42との間の空間43に、容器体10内に封入される不活性ガスよりも熱伝導率の小さい気体8が充填される。気体8は、一次蓋4と二次蓋42との間の空間43の圧力が容器体10の内圧よりも大きくなるように前記空間43へと充填される。空間43の圧力は、容器体10の内圧よりも大きければ、負圧でも良く、或いは大気圧と同等でも良く、更に言えば大気圧よりも大きくても良い。なお、図7に示す構成は縦置きの姿勢で保管される従来型の金属キャスクに対応する例であるが、縦置きの金属キャスクに限らず、横置きの姿勢で保管される従来型の金属キャスクに対しても同様に本発明が適用されるようにしても良い。具体的には例えば、上述の第二の実施形態における蓋24を一次蓋として有すると共に当該一次蓋を覆う二次蓋を有する従来型の横型キャスクにおいて一次蓋と二次蓋との間の空間に容器体30内に封入される不活性ガスよりも熱伝導率の小さい気体28が充填されるようにして本発明が適用されるようにしても良い。
図7に示す本発明の構成と図8に示す従来の金属キャスクの構成とを比較すると分かるように、本発明は、一次蓋4(一次蓋103)と二次蓋42(二次蓋104)との間の空間43(空間107)に、従来の金属キャスクのようにヘリウムガスが高圧で充填される代わりに容器体10内に封入される不活性ガスよりも熱伝導率の小さい気体8が充填されることによって実現され得る。本発明は、また、図1や図4に示す本発明の構成と図8に示す従来の金属キャスクの構成とを比較すると分かるように、現状の金属キャスクにおける二次蓋104の代わりに簡易なカバー7、27を有するようにしたり、或いは、現状の金属キャスクにおける二次蓋104もカバー7、27も有しないようにしたりすることによって実現され得る。この場合においても、蓋4の外部の外気(空気)は内部の不活性ガスよりも熱伝導率の小さな気体であると共に内圧よりも高い正圧状態にあるため、金属キャスクの蓋の外部を内部の不活性ガスよりも熱伝導率の小さな気体の雰囲気で取り囲む状態を作り出すこととなる。したがって、本発明は、従来の金属キャスク本体を有効活用することによっても、言い換えると、従来の金属キャスク本体の構造を維持しながら、圧力計を有しない態様で、実現することが可能である。
また、上述の実施形態では金属キャスク(具体的には、竪型キャスク1、横型キャスク21)の任意の部位の表面温度の変化あるいは複数の部位の間の温度差の変化に着目するようにしているが、金属キャスク自体の各部位の表面温度以外の温度との差が用いられるようにしても良い。具体的には、金属キャスクに関する各部温度TB、…、THSUと、貯蔵建屋内や屋外などで保管されている状況における金属キャスク周囲の外気の温度(「周囲外気温度」と呼ぶ)との差が用いられるようにしても良い。金属キャスクの各部温度TB、…、THSUは、一日のうちの外気温度の変化の影響を受けて、金属キャスクの密封性の喪失(具体的には、インリークの発生)とは関係なく、変動する。このため、金属キャスクの各部温度と周囲外気温度との差が用いられることにより、金属キャスクに関する各部温度の変動から外気温度の変化の影響分を相殺して取り除くことができる。
1 竪型キャスク(金属キャスク)
2 胴部
3 底板
4 蓋
5 中性子遮蔽体
6 外筒
7 カバー
7a 中空部
8 気体
9 金属ガスケット
10 容器体
11 仕切り、バスケット
12 使用済燃料
13A 第一の温度センサ
13B 第二の温度センサ
13C 第三の温度センサ
15 金属キャスクの密封喪失の検知装置(竪型キャスクの場合)
16 制御部
16a 密封喪失判断部
17 記憶部
18 インターフェース
19 表示部
21 横型キャスク(金属キャスク)
22 胴部
23 底板
24 蓋
25 中性子遮蔽体
26 外筒
27 カバー
27a 中空部
28 気体
29 金属ガスケット
30 容器体
31 仕切り、バスケット
32 使用済燃料
33A 第一の温度センサ
33B 第二の温度センサ
33C 第三の温度センサ
33D 第四の温度センサ
35 金属キャスクの密封喪失の検知装置(横型キャスクの場合)
36 制御部
36a 密封喪失判断部
37 記憶部
38 インターフェース
39 表示部
41 従来型の金属キャスク
42 二次蓋
43 一次蓋と二次蓋との間の空間
101 内筒
102 燃料収納区画
103 一次蓋
104 二次蓋
105 中性子遮蔽体
106 外筒
107 空間
108 使用済燃料集合体
109 金属ガスケット
110 圧力計

Claims (11)

  1. 使用済燃料と共に負圧状態で不活性ガスが内部に密封され、縦置き姿勢で保管される金属キャスクの密封構造の喪失を検知する方法において、
    前記金属キャスクの蓋の外部を内部の前記不活性ガスよりも熱伝導率の小さな気体の雰囲気とし、
    前記金属キャスクの底温度、蓋温度及び側壁温度のうちの少なくとも一つの温度を計測し、
    前記温度に所定の閾値を超えた変化が生じたときに前記金属キャスクの密封構造が損なわれたと判断する
    ことを特徴とする金属キャスクの密封喪失の検知方法。
  2. 前記金属キャスクの前記底温度、前記蓋温度及び前記側壁温度を計測し、前記底温度及び前記蓋温度が所定の閾値を超えて上昇し且つ前記側壁温度が所定の閾値を超えて低下するときに、前記金属キャスクの密封構造が損なわれたと判断することを特徴とする請求項1記載の金属キャスクの密封喪失の検知方法。
  3. 前記金属キャスクの前記底温度、前記蓋温度及び前記側壁温度を計測し、前記底温度、前記蓋温度及び前記側壁温度のうちのいずれか二つの温度の間の温度差に所定の閾値を超えて変化が生じたときに、前記金属キャスクの密封構造が損なわれたと判断することを特徴とする請求項1記載の金属キャスクの密封喪失の検知方法。
  4. 使用済燃料と共に負圧状態で不活性ガスが内部に密封され、縦置き姿勢で保管される金属キャスクの密封構造の喪失を検知する装置において、
    前記金属キャスクの蓋の外部を内部の前記不活性ガスよりも熱伝導率の小さな気体の雰囲気として、前記金属キャスクの密封構造が損なわれたときに前記金属キャスクの内部へと吸い込まれる構造とされ、
    前記金属キャスクの底温度、蓋温度及び側壁温度のうちの少なくとも一つの温度を計測する温度センサと、
    前記温度センサからの計測値データが入力され、入力された計測温度値に所定の閾値を超えて変化が生じたときに前記金属キャスクの密封構造が損なわれたと判断する密封喪失判断部とを有する
    ことを特徴とする金属キャスクの密封喪失の検知装置。
  5. 前記密封喪失判断部には、前記温度センサから前記金属キャスクの前記底温度、前記蓋温度及び前記側壁温度の全ての計測値データが入力され、前記金属キャスクの前記底温度及び前記蓋温度が所定の閾値を超えて上昇し且つ前記側壁温度が所定の閾値を超えて低下したときに、前記金属キャスクの密封構造が損なわれたと判断することを特徴とする請求項4記載の金属キャスクの密封喪失の検知装置。
  6. 前記密封喪失判断部には、前記温度センサから前記金属キャスクの前記底温度、前記蓋温度及び前記側壁温度のうちの少なくとも二つの温度の計測値データが入力され、前記二つの温度の間の温度差に所定の閾値を超えて変化が生じたときに前記金属キャスクの密封構造が損なわれたと判断することを特徴とする請求項4記載の金属キャスクの密封喪失の検知装置。
  7. 使用済燃料と共に負圧状態で不活性ガスが内部に密封され、横置き姿勢で保管される金属キャスクの密封構造の喪失を検知する方法において、
    前記金属キャスクの蓋の外部を内部の前記不活性ガスよりも熱伝導率の小さな気体の雰囲気とし、
    前記金属キャスクの底温度、蓋温度、横置きの姿勢における側壁下部温度及び横置きの姿勢における側壁上部温度のうちの少なくとも一つの温度を計測し、
    前記温度に所定の閾値を超えた変化が生じたときに前記金属キャスクの密封構造が損なわれたと判断する
    ことを特徴とする金属キャスクの密封喪失の検知方法。
  8. 前記金属キャスクの前記底温度、前記蓋温度、前記横置きの姿勢における側壁下部温度及び前記横置きの姿勢における側壁上部温度のうちのいずれか二つの温度の間の温度差に所定の閾値を超えて変化が生じたときに、前記金属キャスクの密封構造が損なわれたと判断することを特徴とする請求項7記載の金属キャスクの密封喪失の検知方法。
  9. 使用済燃料と共に負圧状態で不活性ガスが内部に密封され、横置き姿勢で保管される金属キャスクの密封構造の喪失を検知する装置において、
    前記金属キャスクの蓋の外部を内部の前記不活性ガスよりも熱伝導率の小さな気体の雰囲気として、前記金属キャスクの密封構造が損なわれたときに前記属キャスクの内部へと吸い込まれる構造とされ、
    前記金属キャスクの底温度、蓋温度、横置きの姿勢における側壁下部温度及び横置きの姿勢における側壁上部温度のうちの少なくとも一つの温度を計測する温度センサと、
    前記温度センサからの計測値データが入力され、入力された計測温度値に所定の閾値を超えて変化が生じたときに前記金属キャスクの密封構造が損なわれたと判断する密封喪失判断部とを有する
    ことを特徴とする金属キャスクの密封喪失の検知装置。
  10. 前記密封喪失判断部には、前記温度センサから前記金属キャスクの前記底温度、前記蓋温度、前記横置きの姿勢における側壁下部温度及び前記横置きの姿勢における側壁上部温度のうちの少なくとも二つの温度の計測値データが入力され、前記二つの温度の間の温度差に所定の閾値を超えて変化が生じたときに前記金属キャスクの密封構造が損なわれたと判断することを特徴とする請求項9記載の金属キャスクの密封喪失の検知装置。
  11. 請求項4から6および請求項9から10のいずれか1つに記載の金属キャスクの密封喪失の検知装置を備えることを特徴とする金属キャスク。
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