JP2020182937A - ガスの製造方法、および、二酸化炭素の分離システム - Google Patents

ガスの製造方法、および、二酸化炭素の分離システム Download PDF

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Abstract

【課題】従来の膜分離方法よりも、二酸化炭素の分離効率を向上させたガスの製造方法および分離システムを提供する。【解決手段】少なくとも二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離するガスの製造方法であって、前記混合ガスをゼオライト膜を含む分離膜へ供給する混合ガス供給工程、該分離膜により前記混合ガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離工程を有し、前記分離膜へ供給される前記混合ガスの温度を20℃以下とする、ガスの製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、ガスの製造方法、および、二酸化炭素の分離システムに関する。
油田またはガス田から産出される天然ガスや、家畜の糞尿や、食品残渣などの有機性廃棄物を嫌気性微生物により発酵させて発生させて得るバイオガスは、主成分がメタン(CH)であり、二酸化炭素(CO) 等の不純物を含む混合ガスである。
混合ガスから不純物を除去する方法としては、膜分離法、吸着分離法、吸収分離法、深冷分離法等が知られている。この中で、吸着分離法、および、吸収分離法は、吸着・吸収した気体を脱離する工程が必要であり、深冷分離法は、分離に相変化を伴い大量のエネルギーが必要となるという問題がある。
これらの方法に対して、膜分離法は、分離の途中で相変化を殆ど伴わず、圧力差を駆動エネルギーとした省エネルギーな分離が実現できる方法である。
膜分離法としては、1970年代から高分子膜を用いた方法が提案されている。しかし、高分子膜は加工性に優れる一方で、熱、化学物質、圧力により劣化し性能が低下する問題を有している。この問題を解決すべく、耐薬品性、耐酸化性、耐熱性、耐圧性が良好な無機膜を用いた方法が提案されている(特許文献1、2)。
特許第6199918号明細書 WO2017/056134号公報
特許文献1には、ガス分離膜に閉塞が生じたり、劣化が生じたりすることを防ぐことを課題として、ゼオライト膜等の無機膜を使用する、天然ガスから二酸化炭素を分離するシステムおよび方法が記載されている。
特許文献2には、天然ガスに含まれる重質炭化水素の液化や固化に伴う無機膜の閉塞を防止することを課題として、非炭化水素ガス分離装置、および、非炭化水素ガス分離方法が記載されている。
なお、膜分離法においては、分離効率を向上させることが常に求められており、特に、分離膜の分離係数を向上させることが求められており、上記従来技術の方法では、分離効率では十分ではなく、改善の余地があった。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、以下の事項を見出した。
・上記従来技術では、分離膜の分離性能を向上させため、または、分離膜の閉塞を防止するために、分離膜に供給される混合ガスを加熱している。混合ガスの膜分離においては、加熱した混合ガスを供給することは当業者にとって一般的であった。
・本発明者は、上記一般的方法に反して、供給する混合ガスの加熱をやめ、分離膜に供給される混合ガスの温度を20℃以下とすることによって、意外にも分離膜の分離効率が向上されることを見出した。
・また、本発明者は、低温にて分離膜を用いて混合ガスの分離を行う場合において、分離膜が閉塞してしまう問題に対しては、必要に応じて、混合ガスに対して、固形物除去工程、気液分離工程を施すことにより、対処可能であることを、併せて見出した。
本発明者は、上記事項に基づいて、以下の発明を完成させた。
第1の本発明は、少なくとも二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離するガスの製造方法であって、前記混合ガスをゼオライト膜を含む分離膜へ供給する混合ガス供給工程、該分離膜により前記混合ガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離工程を有し、前記分離膜へ供給される前記混合ガスの温度を20℃以下とする、ガスの製造方法である。
第1の本発明において、前記混合ガスから二酸化炭素を分離する際のガス供給側の圧力を0.2MPaG以上とすることが好ましい。
第1の本発明において、前記混合ガス供給工程の前に、前記混合ガスを20℃以下まで冷却する冷却工程を含むことが好ましい。
また、前記冷却工程において、前記混合ガスを断熱膨張させることにより冷却してもよい。
第1の本発明において、前記混合ガス供給工程の前に、前記混合ガスから固形物を除去する固形物除去工程をさらに含むことが好ましい。
第1の本発明において、前記混合ガス供給工程の前に、前記混合ガスから水及び/または膜分離操作の際に凝縮する成分を除去する気液分離工程をさらに含むことが好ましい。
第1の本発明において、前記ゼオライト膜のSARが5以上2000以下であることが好ましい。
第1の本発明において、前記混合ガスがメタンを含むことが好ましい。
第1の本発明において、前記混合ガスが炭素数が2以上の炭化水素を含むことが好ましい。
第1の本発明において、前記分離膜の、ガス排出側を減圧する減圧工程をさらに含むことが好ましい。
第2の本発明は、少なくとも二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離する分離システムであって、分離膜、及び、前記分離膜に供給する前記混合ガスを冷却する冷却装置を備える、二酸化炭素の分離システムである。
第2の本発明において、前記分離膜に供給する前の混合ガスから固形分を除去する固形物除去装置をさらに含むことが好ましい。
第2の本発明において、前記分離膜に供給する前の混合ガスから水及び/または膜分離操作の際に凝縮する成分を除去する気液分離装置をさらに含むことが好ましい。
第2の本発明において、前記分離膜の、ガス排出側を減圧する減圧装置をさらに含むことが好ましい。
本発明のガスの製造方法によると、分離膜の分離係数を向上させることができ、混合ガスから、より効率的に二酸化炭素を分離してガスを製造することができる。このため、該ガスの製造方法を用いた製造装置(分離システム)の小型化、省エネルギー化を図ることができる。
精製ガスの出荷までに実施される各種処理工程を示す工程図である。 本発明に係る混合ガスから二酸化炭素を分離する分離システムの一実施形態を示す模式図である。 ゼオライト膜を含む分離膜、を含む分離膜モジュールの一実施形態の模式図である。 本発明に係る混合ガスから二酸化炭素を分離するシステムの別の実施の形態を示す模式図である。 膜性能(透過性能/分離性能)の経時変化の評価試験における、膜の透過性能(初期の流量に対する比率)の経時的な変化を示すグラフである。 膜性能(透過性能/分離性能)の経時変化の評価試験における、膜の分離性能(分離係数α)の経時的な変化において、温度の影響を示すグラフである。 膜性能(透過性能/分離性能)の経時変化の評価試験における、膜の分離性能(分離係数α)の経時的な変化において、減圧の効果を示すグラフである。 膜の透過性能に対する、C5成分の影響の経時変化を示すグラフである。 膜の分離性能(分離係数α)に対する、C5成分の影響の経時変化を示すグラフである。
<ガスの製造方法>
本発明のガスの製造方法は、少なくとも二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離するガスの製造方法であって、混合ガス供給工程、二酸化炭素分離工程を有し、分離膜へ供給される前記混合ガスの温度を20℃以下とする。
(混合ガス)
本発明のガスの製造方法が対象とする混合ガスとは、二酸化炭素を含む混合ガスであれば特に限定されない。例えば、二酸化炭素及びメタンを含む混合ガスが挙げられる。また、該混合ガスは、他に、例えば、エタン、プロパン等の炭素数2〜4の炭化水素、炭素数5以上の重質炭化水素、水蒸気、硫化水素、窒素等の非炭化水素ガスを含んでいてもよい。混合ガスの一例として、天然ガスが挙げられる。
該成分中、水蒸気、硫化水素、窒素等を目標値以下まで精製したものを精製ガス成分と呼ぶ。精製ガス成分は、例えば、メタン、及び、エタン、プロパン等の炭素数2〜4の炭化水素等である。
混合ガス中、含有され得る二酸化炭素の量は特に限定されず、通常3mol%以上、好ましくは5mol%以上であり、また通常90mol%以下、好ましくは80mol%以下である。
本発明のガスの製造方法は、メタン及び二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離するのに好ましく適用され、混合ガス中に存在するメタン及び二酸化炭素の総量は、80mol%以上であることが好ましく、85mоl%以上であることがより好ましく、90mol%以上であることが更に好ましい。
本発明の分離対象である混合ガスは、典型的には、油田またはガス田から採取される混合ガスであり、採取後に前処理によって一部の成分を除去されたものを混合ガスとして使用してもよく、また必要に応じて圧力調整されたものでもよい。
(精製ガス)
本発明では、本発明のガスの製造方法によって、混合ガスから以下に述べる各種成分が分離されることで得られたガスを精製ガスと呼ぶ。
精製ガスにおいては、二酸化炭素があらかじめ設定された目標濃度以下、好ましくは、濃度測定限界以下にまで低減されている。好ましくは、さらに、水分が、あらかじめ設定された目標濃度以下、好ましくは、濃度測定限界以下にまで低減されている。
(ガス供給工程)
ガス供給工程においては、上記の混合ガスが、COを分離可能なゼオライト膜を含む分離膜へ供給される。前記ゼオライト膜は、CO選択性があることが好ましい。混合ガスが供給される空間と、分離膜により分離され、二酸化炭素の濃度が高められたガスが通流する空間とは、分離膜により区分けされている。混合ガスは、分離膜により区分けされた分離膜の一方面側(ガス供給側)に供給される。
混合ガスが供給されるガス供給側である、分離膜の一方面側のCO分圧を、分離膜の他方の面側(ガス排出側)のCO分圧よりも高くすることにより、混合ガス中の二酸化炭素(CO)が分離膜を選択的に透過する。これにより、混合ガスから二酸化炭素を分離することができる。
分離膜のガス供給側におけるガス源の種類やガス源の圧力にも依存するが、混合ガスの圧力は、0.2MPaG以上が好ましく、0.3MPaG以上がより好ましく、0.5MPaG以上とすることが更に好ましく、1.0MPaG以上とすることが特に好ましく、2.0MPaG以上とすることが最も好ましい。
本発明の方法では、分離膜へ供給される混合ガスの温度を20℃以下とする。これにより、分離膜の分離係数αを向上させることができる。ここで、分離係数αとは、以下の式で表される。分離膜へ供給される混合ガスの温度は、10℃以下とすることが好ましい。
式(1)において、YCO2は、分離膜の他方の面側(ガス排出側)の二酸化炭素の分圧であり、YCH4は、分離膜の他方の面側(ガス排出側)のメタンガスの分圧であり、XCO2は、分離膜の一方の面側(ガス供給側)の二酸化炭素の分圧であり、XCH4は、分離膜の一方の面側(ガス供給側)のメタンガスの分圧である。
本発明において使用する分離膜は、ゼオライト膜を含む分離膜であるが、上記のように20℃以下の混合ガスをゼオライト膜に供給することにより、ゼオライト膜と二酸化炭素との親和性が向上し、これにより二酸化炭素の分離係数αを向上させることができると、本発明者は推測している。
分離膜に供給される混合ガスの温度を20℃以下とする方法は特に限定されない。例えば、分離膜を透過した二酸化炭素は、分離膜のガス排出側において、断熱的に膨張し温度が低下する。これにより、分離膜が冷却され、分離膜を介した伝熱により、分離膜のガス供給側にある混合ガスも冷却されるが、このような冷却による方法であってもよい。
また、ガス供給工程の前に、別途冷却工程を設けてもよい。冷却工程における冷却方法は混合ガスの温度を20℃以下とすることができれば特に限定されず、例えば、冷媒を用いた方法や、混合ガスを断熱膨張させる方法が採用できるが、冷却効率の点から、混合ガスを断熱膨張させる方法が好ましい。
(二酸化炭素分離工程)
分離工程においては、分離膜を介して混合ガスから二酸化炭素が分離される。分離膜としては、ゼオライト膜を含む分離膜が使用される。二酸化炭素を含む混合ガスが通流するガス供給側の空間と、混合ガスから分離された二酸化炭素の濃度が高められたガスが通流するガス排出側の空間とを、分離膜により分離して、ガス排出側空間よりもガス供給側空間の圧力(CO分圧)を相対的に高くすることにより、混合ガスからの二酸化炭素の分離が行われる。
本発明のガスの製造方法では、特に分離性能が高い分離膜を使用する場合に高い効果を発揮することができる。具体的に分離性能が高い分離膜とは、分離対象である、膜分離するガスに含有するガスに対して高い分離係数αまたはパーミエンス比を有する分離膜を言う。例えば、分離対象が二酸化炭素であるときは、二酸化炭素の分離係数αが高い、または二酸化炭素に対するパーミエンス比(パーミエンス比を算出する対象ガスのパーミエンス、に対するCOのパーミエンス、の比)が大きい分離膜を言う。膜のパーミエンスとは、膜の単位面積あたり、分離対象物質の単位分圧差あたり、単位時間あたりの物質の透過量であり、単位を[mol/m/Pa/s]とする。膜のパーミエンスを、以後透過性能ともいう。
例えば、二酸化炭素を含む混合ガスが、二酸化炭素及びメタンを含む混合ガスである場合、供給側ガス圧を0.1MPaG、透過側ガス圧を大気圧とし、40℃において測定する二酸化炭素とメタンをそれぞれ単成分としたとき、分離膜の、分離係数αは、好ましくは80以上、より好ましくは100以上、さらに好ましくは140以上、特に好ましくは180以上である。上限は特に限定されないが、通常4500以下である。
このような高い分離性能を有する分離膜として、本発明のガスの製造方法では、ゼオライト膜を含む分離膜として、無機多孔質支持体上に形成されたゼオライト膜を用いることができる。
・多孔質支持体
多孔質支持体としては、その表面などにゼオライトを膜状に結晶化できるような化学的安定性があり、無機の多孔質よりなる支持体(無機多孔質支持体)であれば如何なるものであってもよい。例えば、シリカ、α−アルミナ、γ−アルミナ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化珪素、炭化珪素などのセラミックス焼結体(セラッミクス支持体)、鉄、ブロンズ、ステンレス等の焼結金属や、ガラス、カーボン成型体などが挙げられる。
これら多孔質支持体の中で、基本的成分あるいはその大部分が無機の非金属物質から構成されている固体材料であるセラミックスを焼結したものを含む無機多孔質支持体(セラミックス支持体)が好ましい。この支持体を用いれば、その一部がゼオライト膜合成中にゼオライト化することで界面の密着性を高める効果がある。
具体的には、例えば、シリカ、α−アルミナ、γ−アルミナ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化珪素、炭化珪素などを含むセラミックス焼結体(セラミックス支持体)が挙げられる。それらの中で、アルミナ、シリカ、ムライトのうち少なくとも1種を含む無機多孔質支持体が好ましい。これらの支持体を用いれば、部分的なゼオライト化が容易であるため、支持体とゼオライトの結合が強固になり緻密で分離性能の高い膜が形成されやすくなる。
多孔質支持体の形状は、混合ガスを有効に分離できるものであれば特に制限されず、具体的には、例えば、平板状、円筒管などの管状のもの、または円筒状、円柱状や角柱状の孔が多数存在するハニカム状のものやモノリスなどが挙げられる。このような多孔質支持体上、すなわち支持体の表面などにゼオライトを膜状に形成させることで、ゼオライト膜を含む分離膜となる。支持体の表面は、支持体の形状に応じて、どの表面であってもよく、複数の面であってもよい。例えば、円筒管の支持体の場合には外側の表面でも内側の表面でもよく、場合によっては外側と内側の両方の表面であってよい。なお、本発明では、ゼオライト膜に対する二酸化炭素の親和性が、20℃以下の低温環境において向上し、これにより本発明における分離膜の分離係数αが向上すると考えている。よって、ゼオライト膜は、少なくとも、混合ガス供給側に形成されていることが好ましい。
多孔質支持体表面の平均細孔径は特に制限されないが、細孔径が制御されているものが好ましい。支持体表面の平均細孔径は、通常0.02μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上であり、通常20μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。平均細孔径が小さすぎると透過量が小さくなる傾向があり、大きすぎると支持体自体の強度が不十分になり、支持体表面の細孔の割合が増えて緻密なゼオライト膜が形成されにくくなる傾向がある。
多孔質支持体の平均厚さ(肉厚)は、通常0.1mm以上、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは0.8mm以上であり、通常7mm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。支持体はゼオライト膜に機械的強度を与える目的で使用しているが、支持体の平均厚さが薄すぎるとゼオライト膜を含む分離膜が十分な強度を持たずゼオライト膜を含む分離膜が衝撃や振動等に弱くなる傾向がある。支持体の平均厚さが厚すぎると透過した物質の拡散が悪くなり透過度が低くなる傾向がある。
多孔質支持体の気孔率は、通常20%以上、好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上であり、通常70%以下、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下である。支持体の気孔率は、気体を分離する際の透過流量を左右し、下限未満では透過物の拡散を阻害する傾向があり、上限を超えると支持体の強度が低下する傾向がある。
多孔質支持体は、必要に応じて表面をやすり等で研磨してもよい。なお、多孔質支持体の表面とはゼオライトを結晶化させる無機多孔質支持体の表面部分を意味し、表面であればそれぞれの形状のどこの表面であってもよく、複数の面であってもよい。例えば円筒管の支持体の場合には外側の表面でも内側の表面でもよく、場合によっては外側と内側の両方の表面であってもよい。
・ゼオライト膜
ゼオライト膜を構成する成分としては、ゼオライト以外にシリカ、アルミナなどの無機バインダー、ポリマーなどの有機化合物、あるいは下記詳述するようなゼオライト表面を修飾するSi化合物またはその反応物などを必要に応じ含んでいてもよい。また、一部アモルファス成分などを含んでいてもよいが、実質的にゼオライトのみで構成されるゼオライト膜が好ましい。
ゼオライト膜の厚さは特に制限されないが、通常0.1μm以上、好ましくは0.6μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは2μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは60μm以下、より好ましくは20μm以下の範囲である。膜厚が大きすぎると透過量が低下する傾向があり、小さすぎると選択性が低下したり、膜強度が低下したりする傾向がある。
ゼオライトの粒子径は特に限定されないが、小さすぎると粒界が大きくなるなどして透過選択性などを低下させる傾向がある。それゆえ、通常30nm以上、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上であり、上限は膜の厚さ以下である。さらに、ゼオライトの粒子径が膜の厚さと同じである場合が特に好ましい。ゼオライトの粒子径が膜の厚さと同じであるとき、ゼオライトの粒界が最も小さくなる。後に述べる水熱合成で得られたゼオライト膜は、ゼオライトの粒子径と膜の厚さが同じになる場合があるので特に好ましい。
ゼオライト膜を含む分離膜の形状は特に限定されず、管状、中空糸状、モノリス型、ハニカム型などあらゆる形状を採用できる。また大きさも特に限定されず、例えば、管状の場合は、通常長さ2cm以上、好ましくは20cm以上、通常200cm以下、内径0.05cm以上2cm以下、厚さ0.5mm以上4mm以下が実用的で好ましい。
ゼオライト膜の分離機能の一つは、分子ふるいとしての分離であり、用いるゼオライトの有効細孔径以上の大きさを有する気体分子とそれ以下の気体とを好適に分離することができる。なお分離に供される分子に上限はないが、分子の大きさは、通常100Å程度以下である。
ゼオライト膜を構成するゼオライトはアルミノシリケートであることが好ましい。ゼオライト膜のSiO/Alモル比(SAR)は、好ましくは5以上、より好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上、特に好ましくは12以上、最も好ましくは20以上である。好ましくは2000以下、より好ましくは1000以下、さらに好ましくは500以下、さらに好ましくは100以下、特に好ましくは50以下である。膜のSARが下限以上であることにより耐久性が向上する傾向があり、上限以下であることにより、吸着性の点で透過度が小さくならないというメリットがある。
ゼオライト膜のSARは、走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光法(SEM−EDX)により得られた数値である。SEM−EDXにおいて、X線の加速電圧を10kV程度として測定することにより、数ミクロンの膜のみの情報を得ることができる。ゼオライト膜は均一に形成されているので、この測定により、膜のSARを求めることができる。
ゼオライト膜を構成する主たるゼオライトは、酸素8員環以下の細孔構造を有するゼオライトを含むものが好ましく、酸素6〜8員環の細孔構造を有するゼオライトを含むものがより好ましい。
ここでいう酸素n員環を有するゼオライトのnの値は、ゼオライト骨格を形成する酸素とT元素(骨格を構成する酸素以外の元素)で構成される細孔の中で最も酸素の数が大きいものを示す。例えば、MOR型ゼオライトのように酸素12員環と8員環の細孔が存在する場合は、酸素12員環のゼオライトとみなす。
酸素8員環以下の細孔構造を有するゼオライトとしては、例えば、AEI、AFG、ANA、BRE、CAS、CDO、CHA、DDR、DOH、EAB、EPI、ERI、ESV、FAR、FRA、GIS、GIU、GOO、ITE、KFI、LEV、LIO、LOS、LTN、MAR、MEP、MER、MEL、MON、MSO、MTF、MTN、MWF、NON、PAU、PHI、RHO、RTE、RTH、RUT、SGT、SOD、TOL、TSC、UFI、VNI、YUGなどが挙げられる。
酸素6〜8員環構造を有するゼオライトとしては、例えば、AEI、AFG、ANA、CHA、EAB、ERI、ESV、FAR、FRA、GIS、ITE、KFI、LEV、LIO、LOS、LTN、MAR、MWF、PAU、RHO、RTH、SOD、TOL、UFIなどが挙げられる。
なお、本明細書において、ゼオライトの構造は、上記のとおり、International Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライトの構造を規定するコードで示す。
酸素n員環構造はゼオライトの細孔のサイズを決定するものであり、酸素6員環よりも小さいゼオライトでは二酸化炭素分子のKinetic直径よりも細孔径が小さくなるため透過度が小さくなり実用的でない場合がある。また、酸素8員環構造よりも大きい場合は細孔径が大きくなり、サイズの小さな気体成分では分離性能が低下することがあり、用途が限定的になる場合がある。
ゼオライトのフレームワーク密度(T/1000Å)は特に制限されないが、通常18以下、好ましくは17以下、より好ましくは16以下、特に好ましくは15.5以下、最も好ましくは15.1以下であり、通常10以上、好ましくは11以上、より好ましくは12以上である。
フレームワーク密度とは、ゼオライトの1000Åあたりの、骨格を構成する酸素以外の元素(T元素)の数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まる。なおフレームワーク密度とゼオライトとの構造の関係はInternational Zeolite Association(IZA)のホームページに示されている。
好ましいゼオライトの構造は、AEI、AFG、CHA、DDR,EAB、ERI、ESV、FAR、FRA、GIS、ITE、KFI、LEV、LIO、LOS、LTN、MAR、MWF、PAU、RHO、RTH、SOD、TOL、UFIであり、より好ましい構造は、AEI、CHA、ERI、KFI、MWF、LEV、PAU、RHO、RTH、UFIであり、さらに好ましい構造は、CHA、LEVであり、最も好ましい構造はCHAである。
CHA型のゼオライトとは、International Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライトの構造を規定するコードでCHA構造のものを示す。これは、天然に産出するチャバサイトと同等の結晶構造を有するゼオライトである。CHA型ゼオライトは3.8×3.8Åの径を有する酸素8員環からなる3次元細孔を有することを特徴とする構造をとり、その構造はX線回折データにより特徴付けられる。
CHA型ゼオライトのフレームワーク密度(T/1000Å)は15.1である。また、SiO/Alモル比は上記と同様である。
・ゼオライト膜を含む分離膜の製造方法
ゼオライト膜を含む分離膜の製造方法は特に限定されないが、例えば、水熱合成により、多孔質支持体上にゼオライトを形成させる方法が好ましい。
具体的には、例えば、ゼオライト膜を含む分離膜は、組成を調整して均一化した水熱合成用の反応混合物(以下これを「水性反応混合物」ということがある。)を、多孔質支持体を内部に緩やかに固定した、オートクレーブなどの耐熱耐圧容器に入れて密閉して、一定時間加熱することにより調製できる。
水性反応混合物としては、Si元素源、Al元素源、アルカリ源、および水を含み、さらに必要に応じて有機テンプレートを含むものが好ましい。
水性反応混合物に用いるSi元素源としては、例えば、無定形シリカ、コロイダルシリカ、シリカゲル、ケイ酸ナトリウム、無定形アルミのシリケートゲル、テトラエトキシシラン(TEOS)、トリメチルエトキシシラン等を用いることができる。
Al元素源としては、例えば、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、酸化アルミニウム、無定形アルミノシリケートゲル等を用いることができる。なお、Al元素源以外に他の元素源、例えばGa、Fe、B、Ti、Zr、Sn、Znなどの元素源を含んでいてもよい。
ゼオライトの結晶化において、必要に応じて有機テンプレート(構造規定剤)を用いることができる。有機テンプレートを用いて合成することにより、結晶化したゼオライトのアルミニウム原子に対するケイ素原子の割合が高くなり、耐酸性、耐水蒸気性が向上する。
有機テンプレートとしては、所望のゼオライト膜を形成し得るものであれば種類は問わず、如何なるものであってもよい。また、テンプレートは1種類でも、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
ゼオライトがCHA型の場合、有機テンプレートとしては、通常、アミン類、4級アンモニウム塩が用いられる。例えば、米国特許第4544538号明細書、米国特許公開第2008/0075656号明細書に記載の有機テンプレートが好ましいものとして挙げられる。
水性反応混合物に用いるアルカリ源としては、有機テンプレートのカウンターアニオンの水酸化物イオン、NaOH、KOHなどのアルカリ金属水酸化物、Ca(OH)などのアルカリ土類金属水酸化物などを用いることができる。アルカリの種類は特に限定されず、通常、Na、K、Li、Rb、Cs、Ca、Mg、Sr、Baなどが用いられる。これらの中で、Li、Na、Kが好ましく、Kがより好ましい。また、アルカリは2種類以上を併用してもよく、具体的には、NaとK、LiとKを併用するのが好ましい。特にアルカリ源としてNa及び/またはKのみを使用することが好ましい。
水性反応混合物中のSi元素源とAl元素源の比は、通常、それぞれの元素の酸化物のモル比、すなわちSiO/Alモル比として表わす。SiO/Alモル比は特に限定されないが、通常5以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは15以上である。また、通常10000以下、好ましくは1000以下、より好ましくは300以下、更に好ましくは100以下である。
SiO/Alモル比がこの範囲内にあるときゼオライト膜が緻密に生成し、分離性能が高い膜となる。更に生成したゼオライトに適度にAl原子が存在するため、Alに対して吸着性を示す気体成分では分離能が向上する。またAlがこの範囲にある場合には耐酸性、耐水蒸気性が高いゼオライト膜が得られる。
水性反応混合物中のシリカ源と有機テンプレートの比は、SiOに対する有機テンプレートのモル比(有機テンプレート/SiOモル比)で、通常0.005以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上であり、通常1以下、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.2以下である。
有機テンプレート/SiOモル比が上記範囲にあるとき、緻密なゼオライト膜が生成し得ることに加えて、生成したゼオライトが耐酸性、耐水蒸気性に強くなる。
Si元素源とアルカリ源の比は、M(2/n)O/SiO(ここで、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示し、nはその価数1または2を示す。)モル比で、通常0.02以上、好ましくは0.04以上、より好ましくは0.05以上であり、通常0.5以下、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下である。
CHA型ゼオライト膜を形成する場合、アルカリ金属の中でKを含む場合がより緻密で結晶性の高い膜を生成させるという点で好ましい。その場合のKと、Kを含むすべてのアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属とのモル比は、通常0.01以上1以下、好ましくは0.1以上1以下、さらに好ましくは0.3以上1以下である。
Si元素源と水の比は、SiOに対する水のモル比(HO/SiOモル比)で、通常10以上、好ましくは30以上、より好ましくは40以上、特に好ましくは50以上であり、通常1000以下、好ましくは500以下、より好ましくは200以下、特に好ましくは150以下である。
水性反応混合物中の物質のモル比がこれらの範囲にあるとき、緻密なゼオライト膜が生成し得る。水の量は緻密なゼオライト膜の生成においてとくに重要であり、粉末合成法の一般的な条件よりも水がシリカに対して多い条件のほうが緻密な膜ができやすい傾向にある。
一般的に、粉末のCHA型ゼオライトを合成する際の水の量は、HO/SiOモル比で、15〜50程度である。HO/SiOモル比が高い(50以上1000以下)、すなわち水が多い条件にすることにより、支持体上にCHA型ゼオライトが緻密な膜状に結晶化した分離性能の高いゼオライト膜を含む分離膜を得ることができる。
さらに、水熱合成に際して、必ずしも反応系内に種結晶を存在させる必要は無いが、種結晶を加えることで、支持体上にゼオライトの結晶化を促進できる。種結晶を加える方法としては特に限定されず、粉末のゼオライトの合成時のように、水性反応混合物中に種結晶を加える方法や、支持体上に種結晶を付着させておく方法などを用いることができる。
ゼオライト膜を含む分離膜を製造する場合は、支持体上に種結晶を付着させておくことが好ましい。支持体上に予め種結晶を付着させておくことで緻密で分離性能良好なゼオライト膜が生成しやすくなる。
使用する種結晶としては、結晶化を促進するゼオライトであれば種類は問わないが、効率よく結晶化させるためには形成するゼオライト膜と同じ結晶型であることが好ましい。
CHA型ゼオライト膜を形成する場合は、CHA型ゼオライトの種結晶を用いることが好ましい。
種結晶の粒子径は、通常0.5nm以上、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上であり、通常20μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。
支持体上に種結晶を付着させる方法は特に限定されず、例えば、種結晶を水などの溶媒に分散させてその分散液に支持体を浸けて種結晶を付着させるディップ法や、種結晶を水などの溶媒と混合してスラリー状にしたものを支持体上に塗りこむ方法などを用いることができる。種結晶の付着量を制御し、再現性よく膜複合体を製造するにはディップ法が望ましい。
種結晶を分散させる溶媒は特に限定されないが、特に水が好ましい。
水熱合成により支持体上にゼオライト膜を形成する場合、支持体の固定化方法に特に制限はなく、縦置き、横置きなどあらゆる形態をとることができる。この場合、静置法でゼオライト膜を形成させてもよいし、水性反応混合物を攪拌させてゼオライト膜を形成させてもよい。
ゼオライト膜を形成させる際の温度は特に限定されないが、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、更に好ましくは150℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは190℃以下、さらに好ましくは180℃以下である。反応温度が低すぎると、ゼオライトが結晶化し難くなることがある。また、反応温度が高すぎると、本発明におけるゼオライトとは異なるタイプのゼオライトが生成し易くなることがある。
加熱時間は特に限定されないが、通常1時間以上、好ましくは5時間以上、更に好ましくは10時間以上であり、通常10日間以下、好ましくは5日以下、より好ましくは3日以下、さらに好ましくは2日以下である。加熱時間が短すぎるとゼオライトが結晶化し難くなることがある。加熱時間が長すぎると、求めるゼオライトとは異なるタイプのゼオライトが生成し易くなることがある。
ゼオライト膜形成時の圧力は特に限定されず、密閉容器中に入れた水性反応混合物を、この温度範囲に加熱したときに生じる自生圧力で十分である。さらに必要に応じて、窒素などの不活性気体を加えても差し支えない。
水熱合成により得られたゼオライト膜を含む分離膜は、水洗した後に、加熱処理して、乾燥させる。ここで、加熱処理とは、熱をかけてゼオライト膜を含む分離膜を乾燥又はテンプレートを使用した場合にテンプレートを焼成することを意味する。
加熱処理の温度は、乾燥を目的とする場合、通常50℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは150℃以下である。また、テンプレートの焼成を目的とする場合、通常350℃以上、好ましくは400℃以上、より好ましくは430℃以上、さらに好ましくは480℃以上であり、通常900℃以下、好ましくは850℃以下、より好ましくは800℃以下、さらに好ましくは750℃以下である。
テンプレートの焼成を目的とする場合には、加熱処理の温度が低すぎると有機テンプレートが残っている割合が多くなる傾向があり、ゼオライトの細孔が少なく、そのために分離・濃縮の際の透過流束が減少する可能性がある。加熱処理温度が高すぎると支持体とゼオライトの熱膨張率の差が大きくなるためゼオライト膜に亀裂が生じやすくなる可能性があり、ゼオライト膜の緻密性が失われ分離性能が低くなることがある。
加熱時間は、ゼオライト膜が十分に乾燥、またはテンプレートが焼成する時間であれば特に限定されず、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上である。上限は特に限定されず、通常200時間以内、好ましくは150時間以内、より好ましくは100時間以内である。テンプレートの焼成を目的とする場合の加熱処理は空気雰囲気で行えばよいが、Nなどの不活性気体や酸素を付加した雰囲気で行ってもよい。
水熱合成を有機テンプレートの存在下で行った場合、得られたゼオライト膜を含む分離膜を、水洗した後に、例えば、加熱処理や抽出などにより、好ましくは加熱処理、すなわち焼成により有機テンプレートを取り除くことが適当である。
テンプレートの焼成を目的とする加熱処理の際の昇温速度は、支持体とゼオライトの熱膨張率の差がゼオライト膜に亀裂を生じさせることを少なくするために、なるべく遅くすることが望ましい。昇温速度は、通常5℃/分以下、好ましくは2℃/分以下、さらに好ましくは1℃/分以下、特に好ましくは0.5℃/分以下である。通常、作業性を考慮し0.1℃/分以上である。
また、焼成後の降温速度もゼオライト膜に亀裂が生じることを避けるためにコントロールする必要がある。昇温速度と同様、遅ければ遅いほど望ましい。降温速度は、通常5℃/分以下、好ましくは2℃/分以下、より好ましくは1℃/分以下、特に好ましくは0.5℃/分以下である。通常、作業性を考慮し0.1℃/分以上である。
ゼオライト膜は、必要に応じてイオン交換してもよい。イオン交換は、テンプレートを用いて合成した場合は、通常、テンプレートを除去した後に行う。イオン交換するイオンとしては、プロトン、Na、K、Liなどのアルカリ金属イオン、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+などの第2族元素イオン、Fe、Cu、Znなどの遷移金属のイオンなどが挙げられる。これらの中で、プロトン、Na、K、Liなどのアルカリ金属イオンが好ましい。
イオン交換は、焼成後(テンプレートを使用した場合など)のゼオライト膜を、NHNO、NaNOなどアンモニウム塩あるいは交換するイオンを含む水溶液、場合によっては塩酸などの酸で、通常、室温から100℃の温度で処理後、水洗する方法などにより行えばよい。さらに、必要に応じて200℃〜500℃で焼成してもよい。
かくして得られるゼオライト膜を含む分離膜(加熱処理後のゼオライト膜を含む分離膜)の空気透過量[L/(m・h)]は、通常1400L/(m・h)以下、好ましくは1000L/(m・h)以下、より好ましくは700L/(m・h)以下、より好ましくは600L/(m・h)以下、さらに好ましくは500L/(m・h)以下、特に好ましくは300L/(m・h)以下、もっとも好ましくは200L/(m・h)以下である。透過量の下限は特に限定されないが、通常0.01L/(m・h)以上、好ましくは0.1L/(m・h)以上、より好ましくは1L/(m・h)以上である。
ここで、空気透過量とは、後述するとおり、ゼオライト膜を含む分離膜を絶対圧5kPaの真空ラインに接続した時の空気の透過量[L/(m・h)]である。
(本発明のガスの製造方法の一実施形態)
本発明のガスの製造方法は、以下に説明するように、さらに、固形分除去工程、および/または、気液分離工程を有していてもよい。図1に、本発明のガスの製造方法の1実施形態の工程図を示す。なお、図1では、固形分除去工程11、気液分離工程12の順に記載しているが、これら工程の順序は逆でも構わない。
図1に示すように、本発明のガスの製造方法は、二酸化炭素分離工程13の前に、固形分除去工程11により混合ガス中の水分を除去することが好ましく、さらに、気液分離工程12により、混合ガス中の水分および/または膜分離操作の際に凝縮する成分を除去することが好ましい。膜分離操作の際に凝縮する成分としては、例えば、炭素数5以上の炭化水素が挙げられる。これにより、二酸化炭素分離工程において、混合ガス中の水分や膜分離操作の際に凝縮する成分により分離膜が閉塞するのを防ぐことができる。
混合ガスが天然ガスである場合、二酸化炭素分離工程13の後の精製ガスは、液化工程14を設けて液化させてLNGとしてもよい。なお、精製ガスを液化する前の液化前処理においては、図1に例示した各工程(固形分除去工程11、気液分離工程12、二酸化炭素分離工程13)の他、混合ガス中の水銀を吸着剤に吸着させて除去する水銀除去工程や、硫化水素などの酸性のガスをアミンなどの吸収液に吸収させて除去する酸性ガス除去工程などを必要に応じて設けてもよい。
液化工程14では、予冷用冷媒(プロパンを主成分とする)により精製ガスを、例えば−40℃付近まで予備冷却し、さらに主冷媒(メタン、エタン、プロパン及び窒素の混合冷媒)を用いて例えば−155℃から−158℃に冷却することにより、精製ガスを液化させてLNGとする。
液化されたLNGは、LNGタンク内における貯蔵工程15を経てLNGタンカーやパイプラインへと出荷される。
(固形物除去工程11)
本発明の方法は、ガス供給工程の前に、混合ガスから固形物を除去する固形物除去工程11をさらに含むことが好ましい。混合ガスには、水分が混合ガスの温度における飽和濃度以下で含まれている。混合ガス中に該水分が残っていると、後の二酸化炭素分離工程13において、分離膜の閉塞が発生する可能性があるので、固形分除去工程において、該水分を除去することが好ましい。
水分の除去は吸着分離により実施してもよい。また、固形物除去工程11では、混合ガスが加圧下において冷却され、混合ガス中の水分がメタンハイドレートとして固体化して、該固形物であるメタンハイドレートが除去される。
固形物除去工程11における、混合ガスの加圧は、1MPaG以上15MPaG以下が好ましく、3MPaG以上10MPaG以下がより好ましい。
冷却温度は、−10℃以上20℃以下が好ましく、0℃以上15℃以下がより好ましい。
冷却方法については、特に限定されず、例えば、冷媒を使用した熱交換によるものが挙げられる。
生成した固形物の除去は、例えば、濾過、サイクロン等の固気分離機を用いて行うことが好ましい。
(気液分離工程12)
本発明の方法は、ガス供給工程の前に、混合ガスから液体を除去する気液分離工程12をさらに含むことが好ましい。混合ガスには、炭素数5以上の炭化水素などの膜分離操作の際に濃縮・温度低下によって凝縮する成分が、混合ガスの温度における飽和濃度以下で含まれている。混合ガス中に該炭素数5以上の炭化水素などの膜分離操作の際に濃縮・温度低下によって凝縮する成分が残っていると、後の二酸化炭素分離工程において、分離膜の閉塞が発生する可能性があるので、気液分離工程12において、該炭素数5以上の炭化水素などの膜分離操作の際に濃縮・温度低下によって凝縮する成分を分離することが好ましい。
気液分離工程12において除去する液体とは、例えば、炭素数5以上の炭化水素、および、水分である。炭素数5以上の炭化水素としては、例えば、ペンタン、ヘキサンなどが挙げられる。
なお、気液分離工程12の前に固形物除去工程11を設ける場合は、固形物除去工程11にてとりきれなった水分が、気液分離工程12における除去対象となる。
気液分離工程12での冷却温度は、−10℃以上40℃以下が好ましく、0℃以上30℃以下がより好ましい。
冷却方法については、特に限定されず、冷媒を使用した熱交換によるものであってもよいし、混合ガスを断熱膨張させることにより冷却する方法であってもよい。
生成した液体の除去は、ミストセパレーター等により行うことが好ましい。
(減圧工程)
本発明のガスの製造方法では、分離膜のガス排出側は、ガス供給側よりも相対的に低い圧力となっていればよく、常圧(大気圧)であってもよいし、あるいは、ガス供給側よりも低い圧力で加圧されていてもよいが、分離膜のガス排出側を減圧する減圧工程をさらに備えることが好ましい。減圧工程では、ガス排出側の圧力を、好ましくは0.095MPaA以下、より好ましくは0.08MPaA以下、さらに好ましくは0.05MPaA以下とされる。ガス排出側の圧力を所定の範囲で減圧することにより、二酸化炭素の分離係数を向上させることができ、分離膜の分離性能を引き出すことができる。
<二酸化炭素の分離システム>
本発明の二酸化炭素の分離システムは、少なくとも二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離する分離システムであって、分離膜、及び、前記分離膜に供給する前記混合ガスを冷却する冷却装置を備える。
図2に該分離システムの具体的な構成の一例を示す。
(分離膜30)
図2に示すように、本発明の二酸化炭素の分離システム100は、混合ガスから二酸化炭素を分離する分離膜30を収納した分離モジュール32を備える。分離膜30としては、上記の二酸化炭素分離工程において説明した、ゼオライト膜を含む分離膜である、無機多孔質支持体上に形成されたゼオライト膜を使用することができる。
分離モジュール32は分離膜30を含み、二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離するためのモジュールである。
分離モジュール32が有する分離膜30の大きさ、個数は特段限定されず、分離する混合ガスの量、成分、分離膜30の種類等に応じて適宜設定できる。
この分離モジュール32には、必要に応じて行われる前処理を経て、冷却装置20を介して混合ガスが供給される供給ライン31と、混合ガスから分離された二酸化炭素が排出される排出ライン34と、二酸化炭素と分離された精製ガスが流出する流出ライン36とが接続されている。
供給ライン31には、前処理である、固形分除去工程11、気液分離工程12にて、各々、水分、炭素数5以上の炭化水素が分離・除去された混合ガスが供給される。
二酸化炭素と分離され、二酸化炭素濃度が例えば予め設定された目標濃度以下、好ましくは濃度測定限界以下まで低減された精製ガスは、流出ライン36を介して下流側の液化工程14へと送られる。
一方、分離膜30によって混合ガスから分離された二酸化炭素は、排出ライン34を介して外部へ排出される。この二酸化炭素は、例えば二酸化炭素貯留(Carbon dioxide Capture and Storage;CCS)により地中に貯留したり、石油増進回収(Enhanced Oil Recovery;EOR)、天然ガス増進回収(Enhanced Gas Recovery;EGR)の用の圧入ガスに用いたりしてもよい。また、二酸化炭素を尿素製造プラントの原料として利用することも考えられる。この他、混合ガスが天然ガスである場合、LNGの出荷基地から離れた場所で二酸化炭素処理を行うため、二酸化炭素をパイプライン輸送してもよい。
(分離モジュールの一例)
混合ガスの分離に用いる分離モジュール32の形態としては、平膜型、スパイラル型、ホロウファイバー型、円筒型、ハニカム型等が考えられ、適用対象に合わせて最適な形態が選ばれる。
その一つである円筒型分離モジュール32について、図3を用いて説明する。
図3は、本発明のガスの製造方法及び分離システムに用いることができる分離モジュール32の一実施形態である。分離モジュール32は、ゼオライト膜を含む分離膜30を有し、ゼオライト膜を含む分離膜30は、ステンレス製の耐圧容器35に格納された状態で、恒温槽(図示せず)に設置されている。恒温槽には、試料気体の温度調整が可能なように、温度制御装置が付設されている。
円筒型の分離膜30の一端は、円形のエンドピース37で密封されている。他端は、接続部38で接続され、接続部38の他端は耐圧容器35と接続されている。円筒型の分離膜30の内側と透過気体である二酸化炭素を排出する配管34とが、接続部38を介して接続されており、配管34は、耐圧容器35の外側に伸びている。さらに、耐圧容器35に通ずるいずれかの箇所には、試料気体(混合気体)の供給側の圧力を測る圧力計33、供給側の圧力を調整する背圧弁39が接続されている。各接続部は気密性よく接続されている。
二酸化炭素を含む混合ガスを、一定の流量で耐圧容器35と分離膜30との間に供給し、背圧弁39により供給側の圧力を一定とする。気体は分離膜30が備えるゼオライト膜の内外の分圧差に応じてゼオライト膜を透過し、配管34を通じて排出される。
混合ガスからの二酸化炭素の分離は、20℃以下で行われる。混合ガスを該温度以下に調整すべく下記の冷却装置20が使用される。
(冷却装置20)
本発明の分離システム100は、分離膜30に供給する混合ガスを冷却する冷却装置20を備えている。
該冷却装置20は、前処理工程(固形分除去工程11、気液分離工程12)により得られた混合気体を、冷媒を使用した熱交換により冷却するものであってもよいし、また、混合気体を断熱膨張することにより冷却するものであってもよい。
また、冷却装置20は、上記のように、分離モジュール32の前段階として配置されたものであってもよいし、それ以外に、分離膜30を透過した二酸化炭素の断熱膨張による冷却に伴って分離膜30を介して混合ガスが冷却される機構を冷却装置20としてもよいし、あるいは、分離モジュール32を配置する恒温槽を冷却装置20としてもよい。
(固形分除去装置)
本発明の分離システム100は、混合ガスの前処理をする装置として、さらに、固形分除去装置を備えていてもよい。固形分除去装置では、混合ガスが加圧下において冷却され、混合ガス中の水分がメタンハイドレートとして固体化され、該固形物であるメタンハイドレートが除去される。
加圧の程度、冷却温度は、上記固形分除去工程に記載したものと同様である。
固形分除去装置は、混合ガスを加圧する手段として、例えば、コンプレッサー等を使用することができる。混合ガスを冷却する手段としては、冷媒を使用した熱交換器を使用することができる。生成した固形分の除去する手段としては、無機膜、有機膜などのフィルター、サイクロン等が使用できる。
(気液分離装置)
本発明の分離システム100は、混合ガスの前処理をする装置として、さらに、気液分離装置を備えていてもよい。気液分離装置では、混合ガスが冷却され、液体となった水分および/または炭素数5以上の炭化水素などの膜分離操作の際に濃縮・温度低下によって凝縮する成分が分離される。
気液分離装置は、混合ガスを冷却する手段として、例えば、冷媒を使用した熱交換器や、混合ガスを断熱膨張させる減圧装置を使用することができる。
冷却温度は、上記気液分離工程に記載したものと同様である
液体を分離する手段としては、例えば、ミストセパレーターを使用することができる。
(減圧装置)
本発明の分離システム100は、分離膜30のガス排出側を減圧する減圧装置をさらに備えていてもよい。分離膜30のガス排出側を減圧することで、分離膜30の二酸化炭素の分離係数αを向上させることができる。
減圧の程度は、上記減圧工程において記載した通りである。
(分離システム100の作用)
以下、上記の二酸化炭素の分離システム100の作用について説明する。
上流側の工程11、12にて水分や炭素数5以上の炭化水素などの膜分離操作の際に濃縮・温度低下によって凝縮する成分の分離・除去が行われた混合ガスが冷却装置20において、所定の温度以下に冷却される。該冷却された混合ガスは分離膜30のガス供給側に供給され、混合ガスが分離膜30に接触すると、混合ガス中の二酸化炭素が分離膜30を透過して分離される。
この時、混合ガスの温度が20℃以下に調整されているので、混合ガス中の二酸化炭素と、分離膜30であるゼオライト膜との親和性が高まっている。これにより、分離膜30の二酸化炭素の分離係数αが向上し、より効率的に二酸化炭素を分離することができる。
また、冷却装置20の上流側に、固形分除去装置、気液分離装置を設けた場合には、混合ガスが水分や炭素数5以上の炭化水素などの膜分離操作の際に凝縮する成分を含んでいたとしても、これらを除去することができるので、上記の分離膜30において、20℃以下の混合ガスを分離する際において、分離膜30がこれら成分で閉塞することが防止される。
そして、分離膜30により混合ガスから分離された二酸化炭素は、排出ライン34を介して外部へ排出され、二酸化炭素が分離された精製ガスは流出ライン36を介して下流側の液化工程14へ送られる。
(複数の分離モジュール32を備える形態)
次に図4を参照しながら、混合ガスからの二酸化炭素の分離を複数の分離モジュール32a、32bを使用して行った実施の形態について説明する。
図4に示す二酸化炭素の分離システム200は、例えば、2基の分離モジュール32a、32bを備える。各分離モジュール32a、32bには、分離膜30が収納され、接続ライン31bを介して分離モジュール32a、32bが直列に接続されている。接続ライン31bは、前段側の分離モジュール32aから見ると混合ガスが流出する流出ラインに相当し、後段側の分離モジュール32bから見ると、混合ガスが供給される供給ラインに相当している。
後段側の分離モジュール32bにおいて、混合ガスから分離された二酸化炭素が通流する排出側の空間は、中間ライン34bを経由して二酸化炭素の排出ライン34に接続されている。さらに後段側の分離モジュール32bのガス供給側の空間は、二酸化炭素と分離された精製ガスが流出する流出ライン36と接続されている。
本形態の二酸化炭素の分離システム200においても、各分離モジュール32a、32bの入口側には、混合ガスを冷却する冷却装置20a、20bが設けられている。なお、冷却装置20a、20bは、からなずしも各分離モジュール32a、32bの前に設ける必要はなく、例えば、分離モジュール32aの前に設けることで、分離モジュール32bに供給される分離ガスの温度も所定温度以下とすることができるのであれば、冷却装置20bは省略しても構わない。
また、直列に接続する分離モジュール32a、32bは2段に限定されるものではなく、3段以上の分離モジュールを直列に接続してもよい。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明におけるサンプルの作成方法、評価方法は、以下に示すとおりである。
<混合ガス分離試験>
混合ガス分離試験は、図3に模式的に示す装置を用いて、以下のとおり行った。用いた試料ガスは、CO/CH/C/C/C5成分を予め調整した標準ガス(大陽日酸社製)を用いた。C5成分とは、n−C12であり、不純物としてi−C12が含まれている。
使用した図3の装置において、円筒形のゼオライト膜複合体30は、ステンレス製の耐圧容器35に格納される。分離試験時、耐圧容器35は氷浴、湯浴、またはオイル浴(図示せず)に設置される。湯浴またはオイル浴には、試料ガスの温度調整が可能なように、温度制御装置が付設されている。
円筒形のゼオライト膜複合体30の一端は、円柱状のエンドピース37で密封されている。他端は接続部38で接続され、接続部38の他端は、耐圧容器35と接続されている。円筒形のゼオライト膜複合体30の内側と、透過ガス40を排出する配管34とが、接続部38を介して接続されており、配管34は、耐圧容器35の外側に伸びている。耐圧容器35に通ずるいずれかの箇所には、試料ガスの供給側の圧力を測る圧力計33が接続されている。各接続部は気密性よく接続されている。
使用した図3の装置において、混合ガス分離試験を行う場合は、混合ガス(供給ガスx)を耐圧容器35とゼオライト膜複合体30との間に供給し、背圧弁39を用いて混合ガスの圧力を調整し、ゼオライト膜複合体30を透過した透過ガス40を、配管34に接続されている流量計(図示せず)にて流量を測定する。さらに透過ガス40の一部をサンプリングした後、ガスクロマトグラフィー(FID)にて分析し、組成を求めた。
ガスは標準ガスを用い、排気若しくは使用する供給ガスxによるパージ処理をした後、装置の温度及びゼオライト膜複合体30の供給ガスx側の圧力と流量を一定として、透過ガス40の流量が安定したのちに、ゼオライト膜複合体30を透過した透過ガス40の各分圧(ガス排出側)と、供給ガスxと非透過ガスyの各分圧の対数平均値(ガス供給側)を用いて、下記式(1)で表される分離係数αを求めた。
(実施例1)
無機多孔質支持体上にCHA型アルミノ珪酸塩のゼオライト(SAR:65)を直接水熱合成することにより無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を作製した。
上記で作製したCHA型ゼオライト膜複合体を用いて、混合ガス分離試験を行った。前処理として、図3に示すように、ゼオライト膜複合体30をステンレス製の耐圧容器35に格納して分離モジュール32とした。ゼオライト膜複合体30の長さは80mmで、有効長さ60mmであった。分離モジュール32には、供給ガスxの入口、非透過ガスyの出口、透過ガス40の出口の配管を接続した。
この分離モジュール32を100℃に設定したオイル浴の中に入れ、供給ガスxを供給する前に、COガスを約100mL/minの流量で、耐圧容器35とゼオライト膜複合体30との間に導入した。COガス圧力を約0.1MPaGに設定し、ゼオライト膜複合体30の円筒の内側を0MPaG(大気圧)として、約1時間乾燥した。その間、膜を透過するCO量によってCOガス圧力は変化する。
その後、測定時の温度を一定に保つため、及び供給ガスxの温度を制御するため、モジュール32は氷水(0℃)に浸漬され、供給ガスxを氷水に浸漬した10mの銅管を通してモジュール32に供給した。供給ガスxを前述のCOガスから切り替えて導入した。供給ガスxの組成は、CO/CH/C/C=20/68/8/4のモル比率とした。供給ガスxの圧力は背圧弁39で3.0MPaGに設定した。供給ガス量はニードル弁(不図示)で調節した。供給ガスxの流量はガス線速が0.5m/sとなるように調節した。
上記条件にて透過ガス40の量を測定し、さらに透過ガス40の一部をサンプリングしてガスクロマトグラフィーにて分析し、ガス組成を求めた。同時に、マスフローメーターで流量を測定した。測定は、圧力/流量がほぼ安定した時点で実施した。COパーミエンスは5.71E−07[mol/m/Pa/s]、供給ガスxと非透過ガスyの各分圧の平均値(ガス供給側)で算出した分離係数αは212であり、供給ガスxと非透過ガスyの各分圧の対数平均値(ガス供給側)で算出した分離係数αは153であった。測定条件および結果を表1に示す。
(比較例1)
オイルバスでモジュール32及び配管を加熱することで供給ガスxの温度を40℃に制御したほかは、実施例1と同様の条件で混合ガス分離試験を実施した。COパーミエンスは6.15E−07[mol/m/Pa/s]、供給ガスxと非透過ガスyの各分圧の平均値(ガス供給側)で算出した分離係数αは65であり、供給ガスxと非透過ガスyの各分圧の対数平均値(ガス供給側)で算出した分離係数αは53であった。測定条件および結果を表1に示す。
(比較例2)
オイルバスでモジュール及び配管を加熱することで供給ガスxの温度を40℃に制御し、供給ガスxの組成をCO/CH=25/75のモル比率に変更したほかは、実施例1と同様の条件で混合ガス分離試験を実施した。COパーミエンスは1.13E−06[mol/m/Pa/s]、供給ガスxと非透過ガスyの各分圧の対数平均値(ガス供給側)で算出した分離係数αは69であった。測定条件および結果を表1に示す。
(比較例3)
ゼオライト膜複合体30の内部を−95.3kPaG(6kPaA)に減圧し、オイルバスでモジュール及び配管を加熱することで供給ガスxの温度を40℃に制御し、供給ガスxの組成をCO/CH=25/75のモル比率に変更したほかは、実施例1と同様の条件で混合ガス分離試験を実施した。COパーミエンスは1.11E−06[mol/m/Pa/s]、供給ガスxと非透過ガスyの各分圧の平均値(ガス供給側)で算出した分離係数αは175であり、供給ガスxと非透過ガスyの各分圧の対数平均値(ガス供給側)で算出した分離係数αは127であった。測定条件および結果を表1に示す。
低温でガス分離を行うことで、分離係数αが飛躍的に向上することが分かった。
また、ゼオライト膜複合体の内部を減圧することで、分離係数αが向上することが分かった。
<膜性能(透過性能/分離性能)の経時変化の評価試験>
膜性能の経時変化の評価試験は、図3に模式的に示す装置を用いて、以下のとおり行った。用いた装置は、上記混合ガス分離試験におけるものと同様であるが、0℃未満に冷却する場合は、チラーを備えた塩化カルシウム水溶液の冷却槽を使用した。
(実施例2)
実施例1と同様の分離モジュール32を、40℃に設定したオイル浴の中に入れ、供給ガスxを供給する前に、COガスを約100mL/minの流量で、耐圧容器35とゼオライト膜複合体30との間に導入した。COガス圧力を約0.1MPaGに設定し、ゼオライト膜複合体30の円筒の内側を0MPaG(大気圧)として、約30分間乾燥した。その間、膜を透過するCO量によってCOガス圧力は変化する。
その後、測定時の温度を一定に保つため、及び供給ガスxの温度を制御するために分離モジュール32はチラー付きの塩化カルシウム水溶液の冷却槽(−5℃)に浸漬され、供給ガスxを該冷却槽に浸漬した10mの銅管を通して分離モジュール32に供給した。供給ガスxを前述のCOガスから切り替えて導入した。
供給ガスxの圧力は背圧弁39で3.0MPaGに設定した。供給ガス量はニードル弁(不図示)で調節した。供給ガスxの流量はガス線速が0.5m/sとなるように調節した。
上記条件にて、透過ガス40の流量をマスフローメーターによって測定し、膜の透過性能の変化を初期の流量(100%)に対する比率として評価した。透過ガスとしては、COのみに限らず、全ての透過ガスについて測定したものである。また、COパーミエンスおよび分離係数αを求めた。測定開始時のCOパーミエンスは5.53E−07[mol/m/Pa/s]、分離係数αは82であり、測定開始から120分後のCOパーミエンスは5.28E−07[mol/m/Pa/s]、分離係数αは77であった。結果を図5および図6に示す。また、測定条件を表2に、結果を表3に示す。
(実施例3)
分離モジュール32をオイル浴(20℃)に浸漬し、測定時間を2時間とした以外は、実施例2と同様にして、測定を行った。測定開始時のCOパーミエンスは5.01E−07[mol/m/Pa/s]、分離係数αは61であり、測定開始から120分後のCOパーミエンスは4.55E−07[mol/m/Pa/s]、分離係数αは55であった。結果を図5および図6に、測定条件を表2に、結果を表3に示す。
(実施例4)
分離モジュール32をオイル浴(7.5℃)に浸漬し、供給ガスxの線速を0.35m/sとし、測定時間を2時間とした以外は、実施例2と同様にして、測定を行った。測定開始時のCOパーミエンスは4.34E−07[mol/m/Pa/s]、分離係数αは62であり、測定開始から120分後のCOパーミエンスは4.31E−07[mol/m/Pa/s]、分離係数αは58であった。結果を図5〜7に、測定条件を表2に、結果を表3に示す。
(実施例5)
分離モジュール32をオイル浴(7.5℃)に浸漬し、供給ガスxの線速を0.35m/sとし、測定時間を3時間とし、ゼオライト膜複合体30の内部を−95.3kPaG(6kPaA)に減圧した以外は、実施例2と同様にして、測定を行った。測定開始時のCOパーミエンスは4.27E−07[mol/m/Pa/s]、分離係数αは86であり、測定開始から120分後のCOパーミエンスは4.87E−07[mol/m/Pa/s]、分離係数αは74であった。結果を図5および図7に、測定条件を表2に、結果を表3に示す。
(比較例1)
比較対象として、上記の比較例1(測定時間は3時間)の結果を図5および図6に、測定条件を表2に、測定結果を表3に示す。
図5の結果より、混合ガスの供給温度が20℃以下の場合において、膜の透過性能の低下が抑制されることが分かった。また、混合ガスの供給温度が7.5℃以下の場合はその効果がより優れていた。さらに、図5及び図7の結果より、膜内を減圧した場合は、その効果がさらに優れており、初期の段階で膜の透過性能及び分離性能が向上することを示された。
図6の結果より、混合ガスの供給温度が20℃以下の場合において、膜の分離性能(分離係数α)が、優れていることが示された。
<膜性能(透過性能/分離性能)に対するC5成分の影響について>
(実施例6)
供給ガスxの組成を、CO/CH/C/C=20/80/0/0にC5成分を50ppm添加したものとし、測定時間を2時間とした以外は実施例2と同様にして、膜の透過性能および分離性能(分離係数α)について測定を行った。供給ガスxは、大陽日酸社製の標準ガスである。測定開始時のCOパーミエンスは6.60E−07[mol/m/Pa/s]、分離係数αは115であり、測定開始から120分後のCOパーミエンスは7.02E−07[mol/m/Pa/s]、分離係数αは123であった。経時変化を示す結果を図、8、9に、測定条件および評価結果を表4に示す。なお、COパーミエンスに関しては、初期値を100%とした値を示した。
図8、9より、例えば直列に膜モジュールを連結することで分離ガスの温度が低下したとしても、適切な前処理で凝縮成分の濃度を低下させることにより、供給ガス中のC5成分などの膜分離操作の際に濃縮・温度低下によって凝縮する成分が凝縮して、膜の透過性能が急激に低下することはないことが分かった。
<ゼオライトの種類の影響について>
(実施例7)
無機多孔質支持体上にDDR型珪酸塩のゼオライトを直接水熱合成することにより無機多孔質支持体−DDR型ゼオライト膜複合体を作製した。
上記で作製したDDR型ゼオライト膜複合体を用いたほかは実施例1と同様の条件で混合ガス分離試験を実施した。COパーミエンスは3.7E−08[mol/m/Pa/s]、供給ガスxと非透過ガスyの各分圧の対数平均値(ガス供給側)で算出した分離係数αは756であった。測定条件および結果を表5に示す。
(実施例8)
膜内を減圧したほかは実施例1と同様の条件で混合ガス分離試験を実施した。COパーミエンスは4.7E−08[mol/m/Pa/s]、供給ガスxと非透過ガスyの各分圧の対数平均値(ガス供給側)で算出した分離係数αは4137あった。測定条件および結果を表5に示す。
(比較例4)
供給ガスxの温度を40℃にしたほかは、実施例7と同様の条件で混合ガス分離試験を実施した。COパーミエンスは5.00E−08[mol/m/Pa/s]、供給ガスxと非透過ガスyの各分圧の対数平均値(ガス供給側)で算出した分離係数αは486であった。測定条件および結果を表5に示す。
表5より、ゼオライトの種類を変更しても、低温でガス分離を行うことで、分離係数αが向上することが分かった。
また、ゼオライト膜複合体の内部を減圧することで、分離係数αが向上することが分かった。
以上の結果より、本発明者は、本願発明の効果の発現のメカニズムは、推定ではあるが、供給ガス温度を低温とすることにより、膜表面へのCOの吸着が促進され、また、膜内を減圧することにより、低温にしたことによって分子運動が低下したため膜の細孔を移動する推進力低下を補完していると、考えている。
本発明のガスの製造方法および分離システムは、混合ガスから、二酸化炭素を効率よく分離することできる。よって、天然ガスやバイオガスなどから二酸化炭素などの不純物を分離した精製ガスを効率よく製造することできるため、効率的なエネルギー製造の観点から産業上の利用性が高い。
11:固形分除去工程
12:気液分離工程
13:二酸化炭素分離工程
14:液化工程
15:貯蔵工程
20、20a、20b:冷却装置
30:分離膜
31、31a、31b:供給ライン
32、32a、32b:分離モジュール
33:圧力計
34:排出ライン
35:耐圧容器
36:流出ライン
37:エンドピン
38:接続部
39:背圧弁
40:透過ガス
x:供給ガス
y:非透過ガス

Claims (14)

  1. 少なくとも二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離するガスの製造方法であって、前記混合ガスをゼオライト膜を含む分離膜へ供給する混合ガス供給工程、該分離膜により前記混合ガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離工程を有し、
    前記分離膜へ供給される前記混合ガスの温度を20℃以下とする、ガスの製造方法。
  2. 前記混合ガスから二酸化炭素を分離する際のガス供給側の圧力を0.2MPaG以上とする、請求項1に記載のガスの製造方法。
  3. 前記混合ガス供給工程の前に、前記混合ガスを20℃以下まで冷却する冷却工程を含む、請求項1または2に記載のガスの製造方法。
  4. 前記冷却工程において、前記混合ガスを断熱膨張させることにより冷却する、請求項3に記載のガスの製造方法。
  5. 前記混合ガス供給工程の前に、前記混合ガスから固形物を除去する固形物除去工程をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のガスの製造方法。
  6. 前記混合ガス供給工程の前に、前記混合ガスから水及び/または膜分離操作の際に凝縮する成分を除去する気液分離工程をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のガスの製造方法。
  7. 前記ゼオライト膜のSARが5以上2000以下である、請求項1から6のいずれか一項に記載のガスの製造方法。
  8. 前記混合ガスがメタンを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のガスの製造方法。
  9. 前記混合ガスが炭素数が2以上の炭化水素を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のガスの製造方法。
  10. 前記分離膜の、ガス排出側を減圧する減圧工程をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のガスの製造方法。
  11. 少なくとも二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離する分離システムであって、分離膜、及び、前記分離膜に供給する前記混合ガスを冷却する冷却装置を備える、二酸化炭素の分離システム。
  12. 前記分離膜に供給する前の混合ガスから固形分を除去する固形物除去装置をさらに含む、請求項11に記載の二酸化炭素の分離システム。
  13. 前記分離膜に供給する前の混合ガスから水及び/または膜分離操作の際に凝縮する成分を除去する気液分離装置をさらに含む、請求項11または12に記載の二酸化炭素の分離システム。
  14. 前記分離膜の、ガス排出側を減圧する減圧装置をさらに含む、請求項11から13のいずれか一項に記載の二酸化炭素の分離システム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2023238557A1 (ja) * 2022-06-08 2023-12-14 日本碍子株式会社 分離装置の運転方法および分離装置

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