以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
実施形態における走行制御装置は、自車両の車線変更の際に、変更先の車線を走行する他車両に対する前記自車両の接触および異常接近のうちの少なくともいずれかを回避するように、操舵を制御する回避操舵機能を持つ装置である。前記異常接近とは、接触し得るほど接近することであり、前記異常接近とされる自車両と他車両との間の距離範囲は、例えば仕様等に応じて予め設定される。そして、本実施形態では、前記走行制御装置は、前記他車両の有無を検出し、前記他車両が有る場合に前記他車両の動きをさらに検出する他車両検出部と、前記他車両検出部の検出結果に基づいて求められた所定時間の経過後における前記他車両の位置が、前記自車両が走行する車線である自車線の延長方向に延び、前記自車両より車幅方向外側であって前記自車線内の領域である判定領域内である場合、および、前記他車両の位置が前記判定領域を通過している場合、のいずれか一方である場合には、前記回避操舵機能を停止する機能停止部とを備える。このような走行制御装置について、以下、より具体的に説明する。
図1は、実施形態における走行制御装置の構成を示すブロック図である。図2は、車両に取り付けられた前記走行制御装置におけるレーダ装置および撮像装置を説明するための図である。図3は、前記走行制御装置における回避操舵機能を説明するための図である。図3Aは、一例として、車線変更前の走行状況を示し、図3Bは、一例として、自車両が対向車線へ車線変更する際における回避操舵機能による自車両の走行軌跡を示し、図3Cは、一例として、自車両が同方向の隣接車線へ車線変更する際における回避操舵機能による自車両の走行軌跡を示す。図4は、前記走行制御装置における回避操舵機能の停止条件を説明するための図である。
実施形態における走行制御装置Dは、例えば、図1に示すように、レーダ装置1(1−1〜1−4)と、撮像装置2と、方向切換検出部4と、制御処理部5と、記憶部11とを備え、さらに、本実施形態では、走行を制御するために、車速測定部3を備え、走行させるために、動力部6a、動力伝達部6b、制動部7および操舵部8を備え、所定の入力および出力を行うために、入力部9および出力部10を備える。
レーダ装置1は、制御処理部5に接続され、制御処理部5の制御に従って、車両周囲において、所定の送信波を送信し、対象物で反射した送信波の反射波を受信することにより、前記対象物を検出し、前記対象物の方向と前記対象物までの距離を測定することにより、前記対象物の位置(自車両に対する前記対象物の相対位置(相対方向、相対距離))を測定する装置である。そして、本実施形態では、レーダ装置1は、送信波に対する反射波のドップラーシフトに基づき、自車両に対する前記対象物の相対速度も求めている。なお、車両VCは、説明の都合上、区別する必要がある場合には、適宜、「自車両VCs」、「他車両VCp」、「前方他車両VCo」、「後方他車両VCb」および「側方他車両VCh」等と呼称する。レーダ装置1は、例えば、本実施形態では、図2に示すように、車両VCの4つの各コーナーに配設される4個の第1ないし第4レーダ装置1−1〜1−4を備える。より具体的には、第1レーダ装置1−1は、車両VCにおける一方側の前方端(例えば右前方コーナ)に設けられ、前記一方側の車幅方向より斜め前方の第1方向FRを中心に所定の第1−1対象範囲R1−1で対象物を測定する。第2レーダ装置1−2は、前記車両VCにおける他方側の前方端(例えば左前方コーナ)に設けられ、前記他方側の車幅方向より斜め前方の第2方向FLを中心に所定の第1−2対象範囲R1−2で対象物を測定する。第3レーダ装置1−3は、前記車両VCにおける前記一方側の後方端(例えば右後方コーナ)に設けられ、前記一方側の車幅方向より斜め後方の第3方向BRを中心に所定の第1−3対象範囲R1−3で対象物を測定する。第4レーダ装置1−4は、前記車両VCにおける前記他方側の後方端(例えば左後方コーナ)に設けられ、前記他方側の車幅方向より斜め後方の第4方向BLを中心に所定の第1−4対象範囲R1−4で対象物を測定する。これら第1ないし第4レーダ装置1−1〜1−4は、それぞれ、例えば、ミリ波帯の送信波を第1−1ないし第1−4対象範囲R1−1〜R1−4で走査しながら送信する送信部と、前記送信波が対象物で反射した反射波を受信する受信部と、前記送信波と前記反射波とに基づいて前記対象物の方向と前記対象物までの距離とを求めることで、前記対象物の位置を求める信号処理部とを備える。前記信号処理部は、第1対象範囲R1(R1−1〜R1−4)の走査における前記送信波の送信方向から前記対象物の方向を求め、前記送信波の送信タイミングと前記反射波の受信タイミングとの時間差に基づいて、前記対象物までの距離を求める(TOF(Time−Of−Flight)方式)。なお、レーダ装置1(1−1〜1−4)は、このような構成に限らず、適宜な種類のレーダであって良い。例えば、レーダ装置1は、ミリ波帯ではなく、レーザ光を利用したレーザレーダであって良く、また、レーダ装置1は、複数の受信アンテナを備え、前記複数の受信アンテナが受信した反射波の位相差から前記対象物の方向を求める装置であっても良い。第1ないし第4レーダ装置1−1〜1−4は、それぞれ、このように測定した対象物における相対位置(相対方向、相対距離)および相対速度を制御処理部5へ出力する。
撮像装置2は、制御処理部5に接続され、制御処理部5の制御に従って画像(画像データ)を生成する装置である。撮像装置2は、車両VCの前方(走行方向)を撮像するように、車両VCに搭載される。例えば、本実施形態では、図2に示すように、撮像装置2は、車両VC内において、フロントガラス近傍の天井面(ルーフ内側面)に、車両VCの前方(走行方向)を所定の第2対象範囲(画角)R2で撮像するように、配設される。一例では、撮像装置2は、被写体(対象物)の光学像を所定の結像面上に結像する結像光学系、前記結像面に受光面を一致させて配置され、前記被写体の光学像を電気的な信号に変換するエリアイメージセンサ、および、エリアイメージセンサの出力を画像処理することで前記被写体の画像を表すデータである画像データを生成する画像処理部等を備えるデジタルカメラである。撮像装置2は、この生成した画像を制御処理部5へ出力する。
車速測定部3は、制御処理部5に接続され、制御処理部5の制御に従って、車両の速度を測定する装置である。車速測定部3は、例えば、ロータリエンコーダおよびその周辺回路を備え、単位時間当たりの、車輪(車軸)における回転の変位量から車輪速(車輪の回転速度)を測定する車輪速センサ等である。車速測定部3は、その測定した車輪速を制御処理部5へ出力する。本実施形態では、制御処理部5が車輪の大きさに基づき車輪速を車速へ変換するが、この車輪速から車速の変換は、車輪速センサを備える車速測定部3で実施されて良く、あるいは、制御処理部5は、車輪速を車速として扱っても良い。
方向切換検出部4は、制御処理部5に接続され、制御処理部5の制御に従って車線の切り換えを検出する装置である。方向切換検出部4は、例えば、方向指示スイッチおよびその周辺回路を備え、方向指示スイッチの入り切り(オンオフ)で、車線変更の方向、車線変更の開始および車線変更の終了を検出する。あるいは、例えば、方向切換検出部4は、操舵部8に取り付けられた蛇角センサおよびその周辺回路を備え、前記蛇角センサによって検出された蛇角で車線変更の方向を検出し、前記蛇角センサによって検出された前記蛇角が予め設定された閾値(操舵蛇角判定閾値)以上の蛇角であって予め設定された閾値(第1操舵時間判定閾値)以上継続した場合に、車線変更の開始を検出し、前記蛇角センサによって検出された蛇角が予め設定された閾値(第2操舵時間判定閾値)以上継続して戻されている場合に、車線変更の終了を検出する。あるいは、例えば、方向切換検出部4は、これら方向指示スイッチ、蛇角センサおよびこれらの周辺回路を備え、上述の組合せによって、車線変更の方向、車線変更の開始および車線変更の終了を検出しても良い。
動力部6aは、制御処理部5に接続され、制御処理部5の制御に従って車両を駆動(移動)する動力を生成する装置である。動力部6aは、例えば、エンジン、モータおよびこれらのハイブリッド装置等の原動機およびその付属機器を備えて構成される。動力伝達部6bは、動力部6aが生成した動力を駆動輪に伝達する機構であり、制御処理部5に接続され、制御処理部5の制御に従って、車両の進行方向の切り換えや、変速比および減速比の切り換えを行うトランスミッションを含む。このように動力部6aが生成した動力は、動力伝達部6bを介して駆動輪に伝達され、駆動輪を回転させる。
制動部7は、制御処理部5に接続され、制御処理部5の制御に従って車両に制動力を与え、車両を減速する装置である。制動部7は、車両を減速した結果、停止させることもでき、車両の停止中に制動力を与え続けた結果、車両の停止を維持することもできる。制動部7は、例えば、ディスクブレーキおよび回生ブレーキ等のブレーキ装置およびその付属機器を備えて構成される。なお、制動部7は、いわゆるパーキングブレーキ装置の機能を含む。
操舵部8は、制御処理部5に接続され、制御処理部5の制御に従って車両の操舵を行う装置である。操舵部8は、車両の操舵輪の方向を変えるステアリング装置およびその付属機器を備えて構成される。
動力部6aおよび制動部7それぞれを制御することで、車両の加速度が調整され、車輪速および車両の速度(車速)が調整される。動力伝達部6bの前記トランスミッションを制御することで、ギア比や車両の進行方向(前進、後退)が調整される。操舵部8を制御することで、車両の走行方向が調整される。
入力部9は、制御処理部5に接続され、例えば、運転支援の開始やその解除を指示するコマンドや、自動運転の開始やその解除を指示するコマンド等の各種コマンド、および、例えば前記運転支援や自動運転の実行に必要なデータ等の各種データを走行制御装置Dに入力する機器であり、例えば、予め機能を割り付けた複数のスイッチ等である。出力部10は、制御処理部5に接続され、制御処理部5の制御に従って、入力部9から入力されたコマンドやデータ等を出力する機器であり、例えば液晶ディスプレイ(LCD)および有機ELディスプレイ等の表示装置や音声を出力するスピーカ等である。
記憶部11は、制御処理部5に接続され、制御処理部5の制御に従って各種の所定のプログラムおよび各種の所定のデータを記憶する回路である。前記各種の所定のプログラムには、例えば、走行制御装置Dの各部1〜4、6(6a、6b)〜11を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御する制御プログラムや、レーダ装置1(1−1〜1−4)の出力信号に基づいて、自車両VCsの周囲における他車両VCpの有無を検出し、前記他車両VCpが有る場合に前記他車両VCpの動き(本実施形態では自車両VCsに対する相対位置(相対方向、相対距離)、相対速度および相対進行方向)をさらに検出する検出処理プログラムや、自車両の車線変更の際に、前記検出処理プログラムの検出結果に基づいて、変更先の車線を走行する他車両に対する前記自車両の接触および異常接近のうちの少なくともいずれかを回避するように、操舵を制御する回避操舵プログラムや、前記検出処理プログラムの検出結果に基づいて求められた所定時間の経過後における前記他車両VCpの位置が後述の所定の判定領域内である場合、および、前記他車両の位置が前記判定領域を通過している場合、のいずれか一方である場合には、前記回避操舵プログラムの実行を停止する機能停止プログラム等の制御処理プログラムが含まれる。前記各種の所定のデータには、後述の所定の各閾値等の各プログラムを実行する上で必要なデータ等が含まれる。記憶部11は、例えば不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を備える。そして、記憶部11は、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる制御処理部5のワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等を含む。
制御処理部5は、走行制御装置Dの各部1〜4、6(6a、6b)〜11を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、自車両の車線変更の際に、変更先の車線を走行する他車両に対する前記自車両の接触および異常接近のうちの少なくともいずれかを回避するように操舵を制御するための回路である。制御処理部5は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびその周辺回路を備えて構成される。制御処理部5は、前記制御処理プログラムが実行されることによって、制御部51、検出処理部52、回避操舵部53および機能停止部54を機能的に備える。
制御部51は、走行制御装置Dの各部1〜4、6(6a、6b)〜11を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、走行制御装置Dの全体制御を司るものである。
検出処理部52は、レーダ装置1(1−1〜1−4)の出力信号に基づいて、自車両の周囲における他車両の有無を検出し、前記他車両が有る場合に前記他車両の動きをさらに検出するものである。検出処理部52は、その検出結果を回避操舵部53および機能停止部54それぞれへ通知する。
より具体的には、検出処理部52は、第1レーダ装置1−1の出力信号に基づいて、自車両VCsにおける一方側前方(上述の例では右前方)で前方他車両VCoの有無を検出し、一方側前方に前方他車両VCoが有る場合に前方他車両VCoの動きをさらに検出する。より詳しくは、第1レーダ装置1−1の出力信号により第1レーダ装置1−1が対象物を検出している場合には、検出処理部52は、前方他車両VCoの検出と判定し、前記第1レーダ装置1−1の出力信号から、一方側前方において、自車両VCsに対する前方他車両VCoの相対位置(相対方向、相対距離)および相対速度を取得して前記前方他車両VCoの動きとして記憶部11に記憶し、さらに相対進行方向を求めて前記前方他車両VCoの動きとして記憶部11に記憶する。前方他車両VCoの相対進行方向は、互いに異なるタイミングで2回、前方他車両VCoの相対位置を第1レーダ装置1−1で測定することにより、求めることができる。
なお、より適切に前方他車両VCoの有無を検出するために、第1レーダ装置1−1と同方向の画像を取得する撮像装置がさらに車両VCに設けられ、この撮像装置によって生成された画像が利用されても良い。この場合では、検出処理部52は、前記撮像装置で生成された画像において、第1レーダ装置1−1で検出した対象物の位置に対応する所定のサイズの画像領域に車両が写り込んでいるか否かを判定する。例えば、検出処理部52は、車両に関わる所定の特徴量が前記画像領域から抽出されるか否かを判定することによって、前記画像領域に車両が写り込んでいるか否かを判定する。より詳しくは、例えば、前記画像領域からエッジフィルタによってエッジが抽出され、前記抽出されたエッジから直線のハフ変換によって直線が抽出され、前記抽出された直線によって形成される矩形が車両の輪郭形状を表す前記特徴量として抽出されるか否かが、判定される。また例えば、車両を表すテンプレートが予め用意され、検出処理部52は、前記画像領域に対しテンプレートマッチングを実行して車両が抽出されるか否かによって、前記画像領域に車両が写り込んでいるか否かを判定する。また例えば、車両を抽出するように機械学習(例えば深層学習等)された機械学習モデル(例えば畳み込みニューラルネットワークモデル(CNNモデル)等)が予め用意され、検出処理部52は、前記画像領域から前記機械学習モデルによって車両が抽出されるか否かによって、前記画像領域に車両が写り込んでいるか否かを判定する。そして、検出処理部52は、前記判定の結果、前記画像領域に車両が写り込んでいる場合に、前記検出した対象物を前方他車両VCoとする。
同様に、検出処理部52は、第2レーダ装置1−2の出力信号に基づいて、自車両VCsにおける他方側前方(上述の例では左前方)で前方他車両VCoの有無を検出し、他方側前方に前方他車両VCoが有る場合に前方他車両VCoの動きをさらに検出する。検出処理部52は、第3レーダ装置1−3の出力信号に基づいて、自車両VCsにおける一方側後方(上述の例では右後方)で後方他車両VCbの有無を検出し、一方側後方に後方他車両VCbが有る場合に後方他車両VCbの動きをさらに検出する。検出処理部52は、第4レーダ装置1−4の出力信号に基づいて、自車両VCsにおける他方側後方(上述の例では左後方)で後方他車両VCbの有無を検出し、他方側後方に後方他車両VCbが有る場合に後方他車両VCbの動きをさらに検出する。
回避操舵部53は、自車両の車線変更の際に、検出処理部52の検出結果に基づいて、変更先の車線を走行する他車両に対する前記自車両の接触および異常接近のうちの少なくともいずれかを回避するように、操舵を制御する回避操舵機能を実行するものである。
前記回避操舵機能は、本実施形態では、例えば、前方他車両回避操舵機能(OCP、ON Coming Prevention)と後方他車両回避操舵機能(BSP、Blind Spot Prevention)とを含む。例えば、図3Aに示すように、第1ないし第4区画線(レーンマーカ)LM1〜LM4によって区画された第1ないし第3車線DW1〜DW3を持つ片側2車線(紙面右端の1車線は不図示)の道路(走行路)において、第2車線DW2を走行している自車両CVsが、例えば先行車両の追い越しや前方障害物の回避等のために、第3車線DW3へ車線変更する際に、破線によって将来の走行軌跡MLoで示すように、対向車線である変更先の第3車線DW3を走行する前方他車両VCoに対し、自車両VCsが接触または異常接近してしまう場合がある。このような場合に、OCPが実行され、図3Bに示すように、回避操舵部53によって操舵部8が、変更先の第3車線DW3へ向かう操舵を、自車両VCsが走行していた第2車線DW2に戻すように制御され、前記自車両VCsは、走行軌跡ML1で示すように、走行する。このようなOCPの実行では、より具体的には、まず、回避操舵部53は、検出処理部52の検出結果に基づいて変更先の車線(この例では第3車線DW3)に前方他車両CVoが有るか否かを判定し、前方他車両VCoが有ると判定された場合に、自車両VCsが接触または異常接近してしまうか否かを判定するための指標(リスク判定指標)を求める。続いて、回避操舵部53は、前記求めたリスク判定指標が予め設定された所定の第1リスク判定条件(前方リスク判定条件)を満たすか否かを判定し、前記前方リスク判定条件を満たす場合には、回避操舵部53は、基本的に急ハンドルにならないように、現在の車速(車輪速)に基づいて変更先の車線(図3Bに示す例では第3車線DW3)から変更元の車線(この例では第2車線DW2)へ戻る走行軌跡(この例では走行軌跡ML1)を設定する。そして、回避操舵部53は、この走行軌跡に沿うように操舵部8を制御する。前記リスク判定指標は、例えば、自車両VCsに対する前方他車両VCoの相対距離をその相対速度で除算した値(衝突猶予時間)である(TTC=相対距離/相対速度)。前記前方リスク判定条件は、例えば、前記リスク判定指標が第1リスク判定閾値Thttc1を超え、第2リスク判定閾値Thtcc2を下回ることである(Thttc1<TCC<Thttc2)。これら第1および第2リスク判定閾値Thttc1、Thttc2は、複数のサンプルから予め適宜な値に設定される。
一方、図3Aに示すように、第2車線DW2を走行している自車両CVsが、例えば先行車両の追い越しや前方障害物の回避等のために、第1車線DW1へ車線変更する際に、破線によって将来の走行軌跡MLbで示すように、同方向の車線である変更先の第1車線DW1を走行する後方他車両VCbに対し、自車両VCsが接触または異常接近してしまう場合がある。このような場合に、BSPが実行され、図3Cに示すように、回避操舵部53によって操舵部8が、変更先の第1車線DW1へ向かう操舵を、自車両VCsが走行していた第2車線DW2に戻すように制御され、前記自車両VCsは、走行軌跡ML2で示すように、走行する。このようなBSPの実行では、より具体的には、まず、回避操舵部53は、検出処理部52の検出結果に基づいて変更先の車線(この例では第1車線DW1)に後方他車両CVbが有るか否かを判定し、後方他車両VCbが有ると判定された場合に、前記リスク判定指標を求める。続いて、回避操舵部53は、前記求めたリスク判定指標が予め設定された所定の第2リスク判定条件(後方リスク判定条件)を満たすか否かを判定し、前記後方リスク判定条件を満たす場合には、回避操舵部53は、基本的に急ハンドルにならないように、現在の車速(車輪速)に基づいて変更先の車線(図3Cに示す例では第1車線DW1)から変更元の車線(この例では第2車線DW2)へ戻る走行軌跡(この例では走行軌跡ML2)を設定する。そして、回避操舵部53は、この走行軌跡に沿うように操舵部8を制御する。前記後方リスク判定条件は、例えば、前記リスク判定指標が第3リスク判定閾値Thttc3を超え、第4リスク判定閾値Thttc4を下回ることである(Thttc3<TCC<Thttc4)。これら第3および第4リスク判定閾値Thttc3、Thttc4は、複数のサンプルから予め適宜な値に設定される。
なお、上述のOCPやBSPでは、走行軌跡ML1、ML2が設定され、この走行軌跡ML1、ML2に沿うように、操舵部8が制御されたが、基本的に急ハンドルにならないように、現在の車速(車輪速)に基づいて変更先の車線から変更元の車線に向かうヨーレートが設定され、この設定されたヨーレートに従って操舵部8が現在の車速(車輪速)に基づく時間だけ制御されても良い。このような場合に、前記現在の車速(車輪速)に基づく時間の経過後に、自車両VCsが前記変更元の車線を走行するように運転者によるマニュアルで操舵されても良い。
また、本実施形態では、走行制御装置Dは、4個の第1ないし第4レーダ装置1−1〜1−4を備えたが、図3を用いた上述の説明から分かるように、車両VCが車両左側通行に特化された専用車である場合、左側の前方端に設けられた第2レーダ装置1−2は、必ずしも必要ではなく、省略されても良い。同様に、車両VCが車両右側通行に特化された専用車である場合、右側の前方端に設けられた第1レーダ装置1−1は、省略されても良い。本実施形態では、車両VCが車両左側通行および車両右側通行に両用可能なように第1および第2レーダ装置1−1、1−2を備えている。
機能停止部54は、検出処理部52の検出結果に基づいて求められた所定時間の経過後における他車両VCpの位置が所定の判定領域内である場合、および、前記他車両VCpの位置が前記判定領域を通過している場合、のいずれか一方である場合には、回避操舵部53による回避操舵機能を停止するものである。前記所定時間は、複数のサンプルから予め適宜な値(例えば2秒や3秒等)に設定される。なお、前記所定時間は、OCP用とBSP用とで個別に設定されて良い。前記他車両VCpの位置は、予め適宜に定義され、例えば、レーダ装置1で検知される他車両VCpの先端位置であって良く、あるいは、例えば、レーダ装置1で検知される他車両VCpの先端位置から推定される他車両のVCpの中央位置であって良い(この場合、前記先端位置から中央位置を推定するために必要な補正値(オフセット値)が前記各種の所定のデータの1つとして予め記憶部11に記憶される)。前記所定の判定領域は、本実施形態では、例えば、図4に示すように、自車両VCsが走行する車線である自車線(図4に示す例では第2区画線LM2と第3区画線LM3との間の第2車線DW2)の延長方向に延び、前記自車両VCsより車幅方向外側であって前記自車線内の領域DRA、DLAである。前記判定領域は、通常、自車両VCsの一方側(右側)に設定される領域DRA、および、自車両VCsの他方側(左側)に設定される領域DLAを含む。
より具体的には、上述したように、回避操舵機能は、OCPとBSPとの2つであるので、まず、OCPでは、機能停止部54は、検出処理部52の検出結果に基づいて、自車線(図4に示す例では第2車線DW2)に対し対向車線と想定される右側に隣接する車線(この例では第3車線DW3)に前方他車両CVoが有るか否かを判定し、前方他車両VCoが有ると判定された場合に、検出処理部52の検出結果に基づいて、所定時間の経過後における前方他車両VCoの位置を求める。検出処理部52の検出結果は、上述のように、自車両VCsに対する他車両VCpにおける相対位置、相対速度および相対進行方向である。このため、機能停止部54は、自車両VCsの位置Psを座標原点とする座標系で、図4に示すように、前記判定領域DRA、DLAを設定し、前方他車両VCoの相対位置Poから、相対進行方向RVoに、前記前記相対速度に前記所定時間を乗算することによって求めた推定移動距離だけ離れた位置Potを、前記所定時間の経過後における前方他車両VCoの位置Potとして求める。続いて、機能停止部54は、この求めた前方他車両VCoの位置Potが右側の判定領域DRA内であるか否かを判定し、前記求めた前方他車両VCoの位置Potが右側の判定領域DRAを通過しているか否か(すなわち、前記相対位置Poと前記前方他車両VCoの位置Potとを結ぶ線分が右側の判定領域DRAと交差しているか否か)を判定する。この判定の結果、例えば、前記求めた前方他車両VCoの位置Potが図4に示す右側の判定領域DRA内に位置する位置Po1である場合には、前記求めた前方他車両VCoの位置Potが右側の判定領域DRA内であると判定され、機能停止部54は、回避操舵部53にOCPを停止させる。前記判定の結果、例えば、前記求めた前方他車両VCoの位置Potが図4に示す右側の判定領域DRAを越えた位置Po2である場合には、前記求めた前方他車両VCoの位置Potが右側の判定領域DRAを通過していると判定され、機能停止部54は、回避操舵部53にOCPを停止させる。一方、前記求めた前方他車両VCoの位置Potが右側の判定領域DRA内では無く、右側の判定領域DRAを通過していない場合、すなわち、前記求めた前方他車両VCoの位置Potが右側の判定領域DRAに未達である場合には、機能停止部54は、処理を終了する。したがって、回避操舵部53は、必要に応じてOCPを実行する。
一方、BSPでは、機能停止部54は、検出処理部52の検出結果に基づいて、自車線(図4に示す例では第2車線DW2)に対し同方向の車線と想定される左側に隣接する車線(この例では第1車線DW1)に後方他車両CVbが有るか否かを判定し、後方他車両VCbが有ると判定された場合に、検出処理部52の検出結果に基づいて、所定時間の経過後における後方他車両VCbの位置を求める。OCPと同様に、機能停止部54は、自車両VCsの位置Psを座標原点とする座標系で、図4に示すように、前記判定領域DRA、DLAを設定し、後方他車両VCbの相対位置Pbから、相対進行方向RVbに、前記前記相対速度に前記所定時間を乗算することによって求めた推定移動距離だけ離れた位置Pbtを、前記所定時間の経過後における後方他車両VCbの位置Pbtとして求める。続いて、機能停止部54は、この求めた後方他車両VCbの位置Pbtが左側の判定領域DLA内であるか否かを判定し、前記求めた後方他車両VCbの位置Pbtが左側の判定領域DLAを通過しているか否か(すなわち、前記相対位置Pbと前記後方他車両VCbの位置Pbtとを結ぶ線分が左側の判定領域DLAと交差しているか否か)を判定する。この判定の結果、例えば、前記求めた後方他車両VCbの位置Pbtが図4に示す左側の判定領域DLA内に位置する位置Pb1である場合には、前記求めた後方他車両VCbの位置Pbtが左側の判定領域DLA内であると判定され、機能停止部54は、回避操舵部53にBSPを停止させる。前記判定の結果、例えば、前記求めた後方他車両VCbの位置Pbtが図4に示す左側の判定領域DLAを越えた位置Pb2である場合には、前記求めた後方他車両VCbの位置Pbtが左側の判定領域DLAを通過していると判定され、機能停止部54は、回避操舵部53にBSPを停止させる。一方、前記求めた後方他車両VCbの位置Pbtが左側の判定領域DLA内では無く、左側の判定領域DLAを通過していない場合、すなわち、前記求めた後方他車両VCbの位置Pbtが左側の判定領域DLAに未達である場合には、機能停止部54は、処理を終了する。したがって、回避操舵部53は、必要に応じてBSPを実行する。
上述では、自車両VCsに対する他方側(図4に示す例では左側)の後方他車両VCbに対するBSPの停止について説明したが、例えば自車両VCsが第1車線DW1を走行し、後方他車両VCbが第2車線DW2を走行する場合や片側3車線以上の場合等のように、自車両VCsに対する一方側(図4に示す例では右側)の後方他車両VCbに対するBSPの停止も同様に実行される。
なお、上述では、回避操舵部53および機能停止部54が車両左側通行の場合について説明されたが、車両右側通行の場合についても、第1および第3レーダ装置1−1、1−3に対する検出処理部52の各検出結果に代え、第2および第4レーダ装置1−2、1−4に対する検出処理部52の各検出結果を用いることで、同様に回避操舵部53および機能停止部54が説明できる。
また、本実施形態では、レーダ装置1および検出処理部52が、前記他車両の有無を検出し、前記他車両が有る場合に前記他車両の動きをさらに検出する他車両検出部の一例に相当する。
次に、本実施形態の動作について説明する。図5は、前記走行制御装置の動作を示すフローチャートである。
このような走行制御装置Dは、車両VCが稼働を始めると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始める。その制御処理プログラムの実行によって、制御処理部5には、制御部51、検出処理部52、回避操舵部53および機能停止部54が機能的に構成される。
図5において、制御処理部5は、方向切換検出部4によって車線変更の開始を検出すると(S1)、各種の各出力信号を取得し、この取得した各出力信号を記憶部11に記憶する(S2)。本実施形態では、第1ないし第4レーダ装置1−1〜1−4から各出力信号が取得され、撮像装置2から画像が取得され、車速測定部3から車速(車輪速)が取得され、これらが記憶部11に記憶される。なお、ここでは、車両左側通行の場合について説明するが、車両左側通行の場合も同様に説明できる。
次に、制御処理部5は、変更先の車線に他車両VCpが有るか否かを判定する(S3)。より具体的には、制御処理部5は、検出処理部52によって、第1ないし第4レーダ装置1−1〜1−4の各出力信号のうち、変更先の車線に対応する側に配置されているレーダ装置1の各出力信号から、前方他車両VCoが有るか否か、および、後方他車両VCbが有るか否かを判定する。例えば、右側への車線変更の場合には、検出処理部52は、右側の前方端に設けられた第1レーダ装置1−1の出力信号に基づいて前方他車両VCoが有るか否かを判定し、検出処理部52は、右側の後方端に設けられた第3レーダ装置1−3の出力信号に基づいて後方他車両VCbが有るか否かを判定する。あるいは、例えば、左側への車線変更の場合には、検出処理部52は、左側の後方端に設けられた第4レーダ装置1−4の出力信号に基づいて後方他車両VCbが有るか否かを判定する。なお、地図情報が記憶部11にさらに記憶され、自車両VCsの位置を測定する位置測定部(例えばGPS等)がさらに備えられ、前記地図情報と前記自車両VCsの位置から、変更先の車線が対向車線であることが分かる場合には、後方他車両VCbの有無判定が省略でき、一方、変更先の車線が同方向の車線であることが分かる場合には、前方他車両VCoの有無判定が省略できる。
この判定の結果、他車両VCp(前方他車両VCoまたは後方他車両VCb)が有る場合(Yes)には、制御処理部5は、次に、処理S4を実行する。一方、前記判定の結果、他車両VCp(前方他車両VCoおよび後方他車両VCb)が無い場合(No)には、制御処理部5は、次に、処理S8を実行する。
この処理S4では、制御処理部5は、回避操舵部53によって回避操舵が必要か否かを判定する。より具体的には、例えば、右側への車線変更の場合において、まず、検出処理部52によって前方他車両VCoが有ると判定されている場合には、回避操舵部53は、第1レーダ装置1−1の出力信号から取得され記憶された相対位置(相対方向、相対距離)および相対速度に基づいて、リスク判定指標TCC(=相対距離/相対速度)を求める。そして、回避操舵部53は、この求めたリスク判定指標TCCが前方リスク判定条件、Thttc1<TCC<Thttc2を満たすか否かを判定することによって、回避操舵が必要か否かを判定する。また、検出処理部52によって後方他車両VCbが有ると判定されている場合には、回避操舵部53は、第3レーダ装置1−3の出力信号から取得され記憶された相対位置(相対方向、相対距離)および相対速度に基づいて、リスク判定指標TCC(=相対距離/相対速度)を求める。そして、回避操舵部53は、この求めたリスク判定指標TCCが後方リスク判定条件、Thttc3<TCC<Thttc4を満たすか否かを判定することによって、回避操舵が必要か否かを判定する。この判定の結果、前方リスク条件または後方リスク条件を満たし、回避操舵が必要と判定された場合(Yes)には、制御処理部5は、次に、処理S5を実行する。一方、前記判定の結果、前方リスク条件および後方リスク条件それぞれを満たさず、回避操舵が不要と判定された場合(No)には、制御処理部5は、次に、処理S8を実行する。
この処理S5では、制御処理部5は、機能停止部54によって、操舵制御の停止条件を満たすか否かを判定する。より具体的には、機能停止部54は、処理S2で撮像装置2から取得した画像から区画線を検出し、自車両VCsが走行する自車線を求め、前記求めた自車線に対する車幅方向における自車両VCsの中央位置を求め、前記求めた中央位置を基準に一方側および他方側それぞれに半車幅の位置を求めることで車幅方向の自車両VCsの境界線BLR、BLLを設定し、これら区画線および境界線との間に判定領域を設定する。例えば、図4に示す例では、機能停止部54は、処理S2で撮像装置2から取得した画像から第2および第3区画線LM2、LM3を検出し、自車両VCsが走行する自車線として第2および第3区画線LM2、LM3で区画された第2車線DW2を求め、前記求めた第2車線DW2に対する車幅方向における自車両VCsの中央位置Pcを求め、前記中央位置Pcを基準に一方側(右側)および他方側(左側)それぞれに半車幅Wc/2の位置を求めることで車幅方向の自車両VCsの両境界線BLR、BLLを設定し、これら第2区画線LM2および境界線BLLとの間に判定領域DLAを設定し、これら第3区画線LM3および境界線BLRとの間に判定領域DRAを設定する。なお、車両VCにおける撮像装置2の配設位置(または画像上での中央位置Pcに相当する画素位置)および車幅Wc(または画像上での車幅Wcに相当する画素数)が前記所定の各種のデータの1つとして記憶部11に記憶される。
画像から区画線を抽出する処理は、公知の処理手法が用いられる。例えば、前記特許文献1に開示されているように、区画線である白線を示すテンプレート画像を予め用意し、前記テンプレート画像とカメラで得られた画像とのマッチングを行って白線位置を検出するテンプレートマッチング法を用いて白線が求められる。あるいは、例えば、特開平7−85249号公報に開示されているように、白線探索エリア内で横方向に明度変化が探索され、明度変化の極めて少ない部分が道路部分であると判断され、明度変化の極めて少ない道路部分に隣接して該明度変化が大きい部分が、区画線である白線であると判断される。あるいは、例えば、特開2007−220013号公報に開示されているように、走行路上の画像からエッジ検出により、区画線である白線の候補となる構造物が検出され、前記白線の候補となる構造物の位置に対して所定の複数の相対位置にそれぞれ所定の構造物が存在するか否かが判定され、この判定結果に基づいて前記白線の候補となる構造物が白線であるか否かが判定される。ここで、前記所定の複数の相対位置および前記所定の構造物は、路上の複数の構造物が有する特有の相対位置関係を基に定められている。
そして、機能停止部54は、検出処理部52で有りと判定された他車両VCpに対し、所定時間の経過後における前記他車両VCpの位置を求め、この求めた他車両VCpの位置が、前記判定領域内であるか否か、および、前記判定領域を通過しているか否かを判定する。より詳しくは、前方他車両VCoが有ると判定された場合には、機能停止部54は、所定時間の経過後における前方他車両VCoの位置Potを求め、この求めた前方他車両VCoの位置Potが前記判定領域内であるか否か、および、前記判定領域を通過しているか否かを判定する。一方、後方他車両VCbが有ると判定された場合には、機能停止部54は、所定時間の経過後における後方他車両VCbの位置Pbtを求め、この求めた後方他車両VCbの位置Pbtが前記判定領域内であるか否か、および、前記判定領域を通過しているか否かを判定する。なお、相対進行方向の演算には、例えば、前回の処理S2で取得し記憶された他車両VCpの相対位置および今回の処理S2で取得し記憶された他車両VCpの相対位置が用いられて良く、あるいは、例えば、今回の処理S2で取得し記憶された他車両VCpの相対位置に加えて、この処理S5でさらに他車両VCpの相対位置がレーダ装置1から取得されて用いられて良い。この判定の結果、前記求めた他車両VCpの位置が、前記判定領域内である、または、前記判定領域を通過している、と判定されることによって、操舵制御の停止条件を満たすと判定された場合(Yes)には、制御処理部5は、次に、回避操舵部53に回避操舵機能(OCPまたはBSP)を停止させる処理S6を機能停止部54によって実行し、本処理を終了する。一方、前記判定の結果、前記求めた他車両VCpの位置が、前記判定領域内ではなく、および、前記判定領域を通過していない、と判定されることによって、操舵制御の停止条件を満たさないと判定された場合(No)には、制御処理部5は、次に、処理S7を実行する。
この処理S7では、制御処理部5は、回避操舵部53によって、回避操舵機能を実行し、本処理を終了する。より具体的には、回避操舵部53は、変更先の車線へ向かう操舵を、自車両VCsが走行していた元の車線に戻すように操舵部8を制御する。これによって、OCPの実行では、自車両VCsは、例えば図3Bに示す走行軌跡ML1を走行し、BSPの実行では、自車両VCsは、例えば図3Cに示す走行軌跡ML2を走行する。
前記処理S8では、制御処理部5は、方向切換検出部4の出力信号によって車線変更の終了か否かを判定する。この判定の結果、車線変更が終了していない場合(No)には、制御処理部5は、処理を処理S2に戻し、一方、前記判定の結果、車線変更が終了している場合(Yes)には、制御処理部5は、本処理を終了する。
なお、上述では、車線変更中、上述の各処理が繰り返し実行されたが、車線変更の開始を検出した際に、1度だけ上述の各処理が実行されても良い。この場合では、上述の処理S8が省略され、処理S3で変更先の車線に他車両が無いと判定された場合(No)、および、処理S4で回避操舵が必要ではないと判定された場合(No)には、制御処理部5は、本処理を終了することになる。
以上説明したように、実施形態における走行制御装置Dおよびこれに実装された走行制御方法は、所定時間の経過後における他車両VCpの位置が、判定領域DRA、DLA内であるか、前記判定領域DRA、DLAを通過している場合に、回避操舵機能を停止するので、車線変更の場合に自車両VCsと他車両VCpとの接触や異常接近を回避するために、自車両VCsの走行車線から変更先の車線へ向かう操舵を、前記自車両VCsの走行車線に戻すような制御が停止される。このため、上記走行制御装置Dおよび走行制御方法は、他車両VCpの搭乗者における平常心の乱れを低減できる。
走行中の車線変更は、先行車両を追い越すために、対向車線へ車線変更する場合があり、回避操舵部53が例えば図3Bを用いて上述したように前記対向車線を走行する前方他車両VCoを対象として自車両VCsを制御する場合、機能停止部54で用いられる判定領域DRLは、例えば図4を用いて上述したように、自車両VCsの前方に設定されている必要がある。一方、片側に複数の車線を持つ道路では、走行中の車線変更は、車線を切り換えるために、隣接車線へ車線変更する場合があり、回避操舵部53が例えば図3Cを用いて上述したように前記隣接車線を走行する後方他車両VCbを対象として自車両VCsを制御する場合、機能停止部54で用いられる判定領域DLAは、例えば図4を用いて上述したように、自車両VCsの後方に設定されている必要がある。上記走行制御装置Dおよび走行制御方法は、前記判定領域DRA、DLAが前記自車両VCsより前方および前記自車両より後方のうちの少なくともいずれかに、本実施形態では両方に、設定されているので、機能停止部54を、前記対向車線を走行する前方他車両VCoを対象として自車両VCsを制御する回避操舵部53、および、前記隣接車線を走行する後方他車両VCbを対象として自車両VCsを制御する回避操舵部53のうちの少なくともいずれか一方と、本実施形態では両方と、組み合わせることができる。
なお、上述の実施形態において、機能停止部54は、さらに、前記他車両検出部の検出結果に基づいて、前記自車両の車線変更の方向とは逆方向における前記自車両の側方に前記他車両が有る場合に、前記回避操舵機能を停止しても良い(第1変形形態)。
図6は、前記走行制御装置の変形形態を説明するための図である。例えば、図6に示すように、第1ないし第4区画線(レーンマーカ)LM11〜LM14によって区画された第1ないし第3車線DW11〜DW13を持つ片側3車線の道路(走行路)において、第2車線DW12を走行している自車両CVsが、例えば先行車両の追い越しや前方障害物の回避等のために、左側の第1車線DW11へ車線変更する際に、機能停止部54は、第1および第3レーダ装置1−1、1−3および検出処理部52の検出結果に基づいて、前記自車両VCsの車線変更の右方向とは逆方向の左方向における前記自車両VCsの側方に前記他車両VCpが有る場合に、前記回避操舵機能を停止する。より詳しくは、制御処理部5は、検出処理部52によって、第1および第3レーダ装置1−1、1−3の各出力信号から、自車線DW12内における自車両VCsの右側方に、例えば二輪車等の側方他車両VCh2が有るか否か、あるいは、例えば、右側に隣接する第3車線DW13における自車両VCsの右側方に、側方他車両VCh1が有るか否か、を判定する。この判定の結果、自車両VCsの側方に側方他車両VCh(この例ではCVh1やVCh2)が有る場合には、機能停止部54によって回避操舵部53に回避操舵機能(BSP)を停止させる。一方、前記判定の結果、自車両VCsの側方に側方他車両VChが無い場合には、機能停止部54によって回避操舵部53に回避操舵機能(BSP)を停止させる処理を実行しないことによって、機能停止部54によって回避操舵部53に回避操舵機能(BSP)を停止させない。なお、図6に示す例では、側方他車両VChは、自車線内を走行する側方他車両VCh2や隣接車線を走行する側方他車両VCh1であったが、いわゆる路肩を走行する他車両VCpであっても良い。
回避操舵機能の実行によって、自車両VCsの走行車線から変更先の車線へ向かう操舵を、前記自車両VCsの走行車線に戻すと、前記自車両VCsが、前記自車両VCsの車線変更の方向とは逆方向における前記自車両VCsの側方を走行する側方他車両VChに、接近する可能性が高い。特に、側方他車両VChの相対速度は、0km/hに近い可能性があり、前記回避操舵機能の実行によって、前記自車両VCsが、側方他車両VChに、接近する可能性がより高い。このような第1変形形態における走行制御装置Dおよび走行制御方法は、前記自車両VCsの側方に前記側方他車両VChが有る場合に、回避操舵部53に前記操舵の制御を停止するので、前記側方他車両VChの搭乗者における平常心の乱れを低減できる。
このため、好ましくは、走行制御装置Dは、回避操舵機能の停止を判定する際に、判定領域DRA、DLAに対する判定結果よりも、側方他車両VChの有無に対する判定結果を優先させる。すなわち、好ましくは、判定領域DRA、DLAに対する判定結果に関わらず、走行制御装置Dは、側方他車両VChが有る場合には、回避操舵機能を停止する。言い換えれば、好ましくは、判定領域DRA、DLAに対する判定処理の前に、側方他車両VChの有無の判定処理が実行される。
また、上述の実施形態において、前記他車両の動きは、上述のように、相対位置、相対速度および相対進行方向を成分として持つ相対速度ベクトルで表され、機能停止部54は、さらに、前記他車両検出部の検出結果に基づいて、上述ではレーダ装置1および検出処理部52の検出結果に基づいて、前記自車両と前記他車両との距離が第2所定時間継続して所定閾値(継続時間判定閾値)以上である場合には、前記回避操舵機能を停止しなくても良い(第2変形形態)。この場合では、例えば、制御処理部5は、まず、常時、所定のサンプリング間隔で、レーダ装置1および検出処理部52の検出結果に基づいて自車両VCsと他車両VCpとの距離(車間距離)を求め、この求めた距離が前記継続時間判定閾値以上である継続時間を求める。そして、車線変更の開始の検出後に、制御処理部5は、機能停止部54によって、前記処理S5において、操舵制御の停止条件の充足を判定する際に、これと合わせて、前記求められている継続時間を用いることによって、自車両VCsと他車両VCpとの距離が前記第2所定時間継続して前記継続時間判定閾値以上であるか否かを判定する。この判定の結果、操舵制御の停止条件を満たすと判定された場合には、制御処理部5は、次に、上述の処理S6を実行し、一方、前記判定の結果、操舵制御の停止条件を満たさないと判定された場合や前記距離が前記第2所定時間継続して前記継続時間判定閾値以上であると判定された場合に、制御処理部5は、次に、上述の処理S7を実行する。前記第2所定時間および前記継続時間判定閾値は、複数のサンプルから予め適宜な値に設定される。
自車両VCsと他車両VCpとの距離が所定時間継続して継続時間判定閾値以上である場合では、自車両VCsが前記回避操舵機能を実行しても、自車両VCsと他車両VCpとの距離が有るので接触や異常接近の虞が無く、平常心を乱す虞が無い。このような第2変形形態における走行制御装置Dおよび走行制御方法は、自車両VCsと他車両VCpとの距離が前記所定時間継続して前記継続時間判定閾値以上である場合には、前記回避操舵機能を停止しせずに実行するので、本来の回避操舵機能を発揮できる。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。