JP2020181070A - 光変調器 - Google Patents
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Abstract
【課題】低屈折率且つ高誘電率なバッファ層を有する光変調器を提供する。【解決手段】本発明による光変調器100は、光導波路10a,10bと、光導波路10a,10bと対向して設けられた電極7,8と、光導波路10a,10bと電極7,8との間に設けられたバッファ層4とを備えている。バッファ層4は、ペロブスカイト構造を有する誘電体のナノ粒子が分散した樹脂からなる。【選択図】図2
Description
本発明は、光通信及び光計測分野において用いられる光変調器に関し、特に、光導波路を覆うバッファ層の組成に関する。
インターネットの普及に伴い通信量は飛躍的に増大しており、光ファイバ通信の重要性が非常に高まっている。光ファイバ通信は、電気信号を光信号に変換し、光信号を光ファイバにより伝送するものであり、広帯域、低損失、ノイズに強いという特徴を有する。
電気信号を光信号に変換する方式としては、半導体レーザによる直接変調方式と光変調器を用いた外部変調方式が知られている。直接変調は光変調器が不要で低コストであるが、高速変調には限界があり、高速で長距離の用途では外部変調方式が使われている。
光変調器は代表的な電気光学デバイスの一つであり、ニオブ酸リチウム単結晶基板の表面付近にTi(チタン)拡散により光導波路を形成したマッハツェンダー型光変調器が実用化されている。マッハツェンダー型光変調器は、1つの光源から出た光を2つに分け、異なる経路を通過させた後、再び重ね合わせて干渉を起こさせるマッハツェンダー干渉計の構造を有する光導波路(マッハツェンダー光導波路)を用いるものであり、40Gb/s以上の高速の光変調器が商用化されているが、全長が10cm前後と長いことが大きな欠点になっている。
これに対して、特許文献1、2には、ニオブ酸リチウム膜を用いたマッハツェンダー型光変調器が開示されている。ニオブ酸リチウム膜を用いた光変調器は、ニオブ酸リチウム単結晶基板を用いた光変調器と比較して、大幅な小型化及び低駆動電圧化が可能である。
特許文献3には、光学的に透明な電気光学領域を備えたナノ複合材料電気光学変調器が記載されている。この電気光学変調器は、2次光学非線形特性を示す電気光学領域と、電気光学領域に接した1または複数の誘電体層と、電気光学領域に近接した1または複数の電極を備えている。上述した複数の要素の少なくとも1つは、体積比約0.25%から約70%のナノ粒子が充填された有機ホストからなるナノ複合材料からなる。例えば、複数の電極は、少なくとも1つの誘電体層と接触しており、誘電体層は、絶縁耐圧を増加させるナノ粒子が充填されたバッファ層である。
光変調器において、光導波路とRF信号電極との間に存在するバッファ層は、屈折率が低いほど光損失が低減し、誘電率が高いほど半波長電圧Vπを低くすることができ、Vπ特性が向上することが知られている。
しかし、低屈折率と高誘電率はトレードオフの関係にあり、屈折率が低い材料は誘電率も低く、逆に誘電率が高い材料は屈折率も高いため、酸化物材料から低屈折率且つ高誘電率な材料を選択する余地はほとんどない。樹脂材料は低屈折率であり、スピンコートによる塗布が可能であるため量産性が高い。しかし、樹脂材料の誘電率は低いため、バッファ層の材料としては不向きである。
したがって、本発明の目的は、低屈折率且つ高誘電率なバッファ層を有する光変調器を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明による光変調器は、光導波路と、前記光導波路と対向して設けられた電極と、前記光導波路と前記電極との間に設けられたバッファ層を備え、前記バッファ層は、ペロブスカイト構造を有する誘電体のナノ粒子が分散した樹脂からなることを特徴とする。
本発明によれば、屈折率が低く誘電率が高いバッファ層を形成することができ、酸化物材料では達成できない低屈折率と高誘電率の両立を実現することができる。また樹脂材料を用いることでバッファ層をスピンコートにより形成することができ、光変調器の特性のみならず生産性の向上も可能となる。
本発明において、前記ナノ粒子はBaTiO3系粒子であることが好ましい。これによれば、屈折率が低く誘電率が高いバッファ層を形成することができる。
本発明において、前記ナノ粒子の粒径は15nm以上50nm以下であることが好ましい。これによれば、屈折率が低く誘電率が高いバッファ層を形成することができる。
本発明において、前記樹脂はポリイミド樹脂であることが好ましい。これによれば、耐熱性が比較的高いバッファ層を得ることができる。
本発明において、前記樹脂はポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂であることもまた好ましい。これによれば、低屈折率なバッファ層を得ることができる。
本発明において、前記光導波路はニオブ酸リチウム膜からなることが好ましい。特に、リッジ形状に加工されたニオブ酸リチウム膜からなる光導波路を用いることにより、10GHz以上の高周波においても良好な電気光学特性を持つ光導波路を得ることができる。
本発明において、前記光導波路はマッハツェンダー光導波路を含むことが好ましい。これによれば、変調特性の良好なマッハツェンダー光変調器を実現することができる。
本発明によれば、低屈折率且つ高誘電率なバッファ層を有する光変調器を提供することができる。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態による光変調器の構成を示す平面図であり、図1(a)は光導波路のみ図示し、図1(b)は進行波電極を含めた光変調器の全体を図示している。
図1(a)及び(b)に示すように、この光変調器100は、基板1上に形成され、互いに平行に設けられた第1及び第2の光導波路10a,10bを有するマッハツェンダー光導波路10と、第1の光導波路10aに沿って設けられた信号電極7と、第2の光導波路10bに沿って設けられた第1の接地電極8と、信号電極7から見て第1の接地電極8と反対側に設けられた第2の接地電極9とを備えている。
マッハツェンダー光導波路10は、マッハツェンダー干渉計の構造を有する光導波路である。一本の入力導波路10iから分波部10cによって分岐した第1及び第2の光導波路10a,10bは、合波部10dを介して再び一本の出力導波路10oにまとめられる。入力光Siは、分波部10cで分波されて第1及び第2の光導波路10a,10bをそれぞれ進行した後、合波部10dで合波され、変調光Soとして出力導波路10oから出力される。
信号電極7は平面視で第1及び第2の接地電極8,9間に位置している。信号電極7の一端7eは信号入力端であり、信号電極7の他端7gは終端抵抗12を介して第1及び第2の接地電極8,9にそれぞれ接続されている。これにより、信号電極7と第1及び第2の接地電極8,9はコプレーナ型進行波電極として機能する。詳細は後述するが、信号電極7及び第1の接地電極8は二層構造であり、破線で示す信号電極7の下層部7bは第1の光導波路10aと平面視で重なっており、同じく破線で示す第1の接地電極8の下層部8bは第2の光導波路10bと平面視で重なっている。
信号電極7の一端7eには電気信号(変調信号)が入力される。第1及び第2の光導波路10a,10bはニオブ酸リチウムに代表される電気光学材料からなるので、第1及び第2の光導波路10a,10bに電界を与えることによって第1及び第2の光導波路10a,10bの屈折率がそれぞれ+Δn、−Δnのように変化し、一対の光導波路間の位相差が変化する。この位相差の変化により変調された信号光が出力導波路10oから出力される。
DCバイアスを印加するため、第1及び第2の光導波路10a,10bと平面視で重なる位置には、一対のバイアス電極が設けられてもよい。一対のバイアス電極の一端はDCバイアスの入力ポートである。一対のバイアス電極の形成領域は、信号電極7の形成領域よりも光導波路の入力ポート側に設けられてもよく、あるいは出力ポート側に設けられてもよい。また、バイアス電極を省略し、DCバイアスを予め重畳させた変調信号を信号電極7に入力することも可能である。
このように、本実施形態による光変調器100は、1つの信号電極7で構成されたシングル駆動型であるため、第1の接地電極8の面積を十分に確保することができ、高周波で動作可能である。また信号電極7を挟んで第1の接地電極8と反対側に第2の接地電極9を配置することで放射損失を低減でき、さらに良好な高周波特性を得ることができる。
図2は、図1(a)及び(b)のA−A'線に沿った光変調器の略断面図である。
図2に示すように、本実施形態による光変調器100は、基板1、導波層2、保護層3、バッファ層4、絶縁層5及び電極層6がこの順で積層された多層構造を有している。
基板1は例えばサファイア基板であり、基板1の表面にはニオブ酸リチウム膜からなる導波層2が形成されている。導波層2はリッジ部2rからなる第1及び第2の光導波路10a、10bを有している。第1及び第2の光導波路10a、10bの幅W0は例えば1μmとすることができる。導波層2としては電気光学材料であれば特に限定されないが、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)からなることが好ましい。ニオブ酸リチウムは大きな電気光学定数を有し、光変調器等の光学デバイスの構成材料として好適だからである。
保護層3は第1及び第2の光導波路10a,10bと平面視で重ならない領域に形成されている。保護層3は、導波層2の上面のうちリッジ部2rが形成されていない領域の全面を覆っており、リッジ部2rの側面も保護層3に覆われているので、リッジ部2rの側面の荒れによって生じる散乱損失を防ぐことができる。保護層3の厚さは導波層2のリッジ部2rの高さとほぼ同じである。保護層3の材料は特に限定されないが、例えば酸化シリコン(SiO2)を用いることができる。
バッファ層4は、第1及び第2の光導波路10a,10b中を伝搬する光が信号電極7や第1の接地電極8に吸収されることを防ぐため、第1及び第2の光導波路10a,10bを構成するリッジ部2rの上面を覆うように形成されている。バッファ層4は、導波層2より屈折率が低く、透明性が高い材料からなることが好ましい。リッジ部2rの直上のバッファ層4の厚さは0.2〜1μm程度であればよい。バッファ層4の膜厚は、電極の光吸収を低減するためには厚いほど良く、第1及び第2の光導波路10a,10bに高い電界を印加するためには薄いほど良い。電極の光吸収と電極の印加電圧はトレードオフの関係にあるため、両者のバランスを考慮して、誘電率が高く且つ屈折率が低い材料を選定することが重要である。
本実施形態において、バッファ層4は、第1及び第2の光導波路10a,10bの上面のみならず保護層3の上面を含む下地面の全面を覆っているが、第1及び第2の光導波路10a,10bの上面付近だけを選択的に覆うようにパターニングされたものであってもよい。また保護層3を省略し、導波層2の上面全体にバッファ層4を直接形成してもよい。
絶縁層5は、進行波電極の下面に段差を形成するために設けられたものである。絶縁層5の第1及び第2の光導波路10a,10bと重なる領域には開口(スリット)が形成されており、バッファ層4の上面を露出させている。この開口内に電極層6の一部が埋め込まれることにより、信号電極7及び第1の接地電極8の下面に段差が形成される。絶縁層5の厚さTは1μm以上であることが好ましい。絶縁層5の厚さが1μm以上であれば、信号電極7及び第1の接地電極8の下面に段差を設けたことによる効果を得ることができる。
電極層6には、信号電極7、第1の接地電極8及び第2の接地電極9が設けられている。信号電極7は、第1の光導波路10a内を進行する光を変調するために第1の光導波路10aに対応するリッジ部2rに重ねて設けられ、バッファ層4を介して第1の光導波路10aと対向している。第1の接地電極8は、第2の光導波路10b内を進行する光を変調するために第2の光導波路10bに対応するリッジ部2rに重ねて設けられ、バッファ層4を介して第2の光導波路10bと対向している。第2の接地電極9は、信号電極7を挟んで第1の接地電極8と反対側に設けられている。
信号電極7は二層構造であり、電極層6に形成された上層部7aと、絶縁層5を貫通する開口(第1の開口)内に埋め込まれた下層部7bとを有している。信号電極7の下層部7bは、信号電極7の上層部7aの第1の接地電極8寄りの端部に設けられている。そのため、信号電極7の下層部7bの下面は、上層部7aの下面よりも第1の接地電極8寄りに設けられている。このような構成により、信号電極7の下層部7bの下面は、第1の光導波路10aの上方においてバッファ層4の上面に接しており、バッファ層4を介して第1の光導波路10aを覆っている。信号電極7の上層部7aの下面は、下層部7bの下面よりも上方に位置しており、バッファ層4には接していない。
第1の接地電極8も二層構造であり、電極層6に形成された上層部8aと、絶縁層5を貫通する開口(第2の開口)内に埋め込まれた下層部8bとを有している。第1の接地電極8の下層部8bは、第1の接地電極8の上層部8aの信号電極7寄りの端部に設けられている。そのため、第1の接地電極8の上層部8aの下面は、下層部8bの下面よりも信号電極7寄りに設けられている。このような構成により、第1の接地電極8の下層部8bの下面は、第2の光導波路10bの上方においてバッファ層4の上面に接しており、バッファ層4を介して第2の光導波路10bを覆っている。第1の接地電極8の上層部8aの下面は、下層部8bの下面よりも上方に位置しており、バッファ層4には接していない。
第2の接地電極9は、信号電極7を挟んで第1の接地電極8と反対側に設けられている。第2の接地電極9は電極層6に設けられた導体のみからなる単層構造であるが、信号電極7や第1の接地電極8と同様に二層構造であってもよい。
次に、導波層2をニオブ酸リチウム膜とした場合の光変調器の構成について詳しく説明する。
基板1としてはニオブ酸リチウム膜より屈折率が低いものであれば特に限定されないが、ニオブ酸リチウム膜をエピタキシャル膜として形成させることができる基板が好ましく、サファイア単結晶基板もしくはシリコン単結晶基板が好ましい。単結晶基板の結晶方位は特に限定されない。ニオブ酸リチウム膜はさまざまな結晶方位の単結晶基板に対して、c軸配向のエピタキシャル膜として形成されやすいという性質を持っている。c軸配向のニオブ酸リチウム膜は3回対称の対称性を有しているので、下地の単結晶基板も同じ対称性を有していることが望ましく、サファイア単結晶基板の場合はc面、シリコン単結晶基板の場合は(111)面の基板が好ましい。
ここで、エピタキシャル膜とは、下地の基板もしくは下地膜の結晶方位に対して、そろって配向している膜のことである。膜面内をX−Y面とし、膜厚方向をZ軸としたとき、結晶がX軸、Y軸及びZ軸方向にともにそろって配向しているものである。例えば、第1に2θ−θX線回折による配向位置でのピーク強度の確認と、第2に極点の確認を行うことで、エピタキシャル膜を証明できる。
具体的には、第1に2θ−θX線回折による測定を行ったとき、目的とする面以外の全てのピーク強度が目的とする面の最大ピーク強度の10%以下、好ましくは5%以下である必要がある。例えば、ニオブ酸リチウムのc軸配向エピタキシャル膜では、(00L)面以外のピーク強度が、(00L)面の最大ピーク強度の10%以下、好ましくは5%以下である。(00L)は、(001)や(002)などの等価な面を総称する表示である。
第2に、極点測定において、極点が見えることが必要である。前述の第1の配向位置でのピーク強度の確認の条件においては、一方向における配向性を示しているのみであり、前述の第1の条件を得たとしても、面内において結晶配向がそろっていない場合には、特定角度位置でX線の強度が高まることはなく、極点は見られない。LiNbO3は三方晶系の結晶構造であるため、単結晶におけるLiNbO3(014)の極点は3つとなる。ニオブ酸リチウム膜の場合、c軸を中心に180°回転させた結晶が対称的に結合した、いわゆる双晶の状態にてエピタキシャル成長することが知られている。この場合、3つの極点が対称的に2つ結合した状態になるため、極点は6つとなる。また、(100)面のシリコン単結晶基板上にニオブ酸リチウム膜を形成した場合は、基板が4回対称となっているため、4×3=12個の極点が観測される。なお、本発明では、双晶の状態にてエピタキシャル成長したニオブ酸リチウム膜もエピタキシャル膜に含める。
ニオブ酸リチウム膜の組成はLixNbAyOzである。Aは、Li、Nb、O以外の元素を表している。xは0.5〜1.2であり、好ましくは、0.9〜1.05である。yは、0〜0.5である。zは1.5〜4であり、好ましくは2.5〜3.5である。Aの元素としては、K、Na、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、V、Cr、Mo、W、Fe、Co、Ni、Zn、Sc、Ceなどがあり、2種類以上の組み合わせでも良い。
ニオブ酸リチウム膜の膜厚は2μm以下であることが望ましい。膜厚が2μmよりも厚くなると、高品質な膜を形成することが困難になるからである。一方、ニオブ酸リチウム膜の膜厚が薄すぎる場合は、ニオブ酸リチウム膜における光の閉じ込めが弱くなり、基板1やバッファ層4に光が漏れることになる。また電界を印加したときの光導波路の実効屈折率の変化が小さくなるおそれがある。そのため、ニオブ酸リチウム膜は、使用する光の波長の1/10程度以上の膜厚が望ましい。
電界印加領域におけるニオブ酸リチウム膜の膜厚は1μm以上であることが好ましく、1.4μm以上であることが特に好ましい。光の波長λが光通信システムで使用される1550nmである場合において、ニオブ酸リチウム膜の膜厚を1μm未満にすると半波長電圧Vπが急激に高くなり、半波長電圧Vπを実用的な電圧値である3V以下にすることが難しいからである。これは、膜厚が薄いと、ニオブ酸リチウム膜への光の閉じ込めが弱くなり、電気光学効果が実効的に小さくなるためである。一方、膜厚が1.5μm以上であれば、光の閉じ込めが十分に強くなるので、それ以上膜厚を厚くしてもVπはほとんど変化しない。以上のように、ニオブ酸リチウム膜の膜厚を1μm以上とした場合には、駆動電圧や伝搬損失を低減することができる。
ニオブ酸リチウム膜の形成方法としては、スパッタ法、CVD法、ゾルゲル法などの膜形成方法を利用するのが望ましい。ニオブ酸リチウムのc軸が基板1の主面に垂直に配向されており、c軸に平行に電界を印加することで、電界に比例して光学屈折率が変化する。単結晶基板としてサファイアを用いる場合は、サファイア単結晶基板上に直接、ニオブ酸リチウム膜をエピタキシャル成長させることができる。単結晶基板としてシリコンを用いる場合は、クラッド層(図示せず)を介して、ニオブ酸リチウム膜をエピタキシャル成長により形成する。クラッド層としては、ニオブ酸リチウム膜より屈折率が低く、エピタキシャル成長に適したものを用いる。例えば、クラッド層(図示せず)としてY2O3を用いると、高品質のニオブ酸リチウム膜を形成できる。
なお、ニオブ酸リチウム膜の形成方法として、ニオブ酸リチウム単結晶基板を薄く研磨したり、スライスする方法も知られている。この方法は、単結晶と同じ特性が得られるという利点があり、本発明に適用することが可能である。
次に、バッファ層4について詳細に説明する。
バッファ層4は、屈折率が低いほど光の閉じ込めを強くすることができるので好ましく、誘電率が高いほどVπL(電界効率を表す指標)を低減することができるので好ましい。これまで、バッファ層4にはAl2O3、LaAlO3、LaYO3などの酸化物材料が好ましく用いられてきた。例えば、Al2O3は、比誘電率が約9、屈折率が約1.6であり、バッファ層4に好ましい材料である。LaAlO3は、比誘電率が約13、屈折率が約1.7であり、Al2O3よりも好ましい材料である。LaYO3は、比誘電率が約17、屈折率が約1.7であり、LaAlO3よりもさらに好ましい材料である。しかし、一般的に、屈折率が低い材料は誘電率も低く、逆に誘電率が高い材料は屈折率も高く、低屈折率と高誘電率とはトレードオフの関係にあるので、酸化物材料を用いる限りはこのトレードオフから抜け出すことができない。
そこで本実施形態では、チタン酸バリウムに代表されるペロブスカイト型誘電体のナノ粒子を樹脂中に分散させた薄膜をバッファ層4として用いる。
図3は、バッファ層の構造を示す模式図である。
図3に示すように、バッファ層4は、樹脂4aと、樹脂4aのマトリックス中に分散したペロブスカイト構造を有する誘電体のナノ粒子4bとを有している。このような樹脂4aと誘電体のナノ粒子4bとの複合材料によれば、低屈折率且つ高誘電率なバッファ層4を実現することができる。バッファ層4の屈折率を低くすることで光導波路中の光の電場の広がりを抑制することができ、高性能なバッファ層4を実現することができる。またバッファ層4の誘電率を高くすることでバッファ層4が薄くても光導波路に強い電界を印加することができ、位相制御に必要な電圧を低くすることができる。
バッファ層4を構成する樹脂4aはポリイミド樹脂であることが好ましい。ポリイミド樹脂であれば、耐熱性が高いバッファ層4を得ることができる。またバッファ層4を構成する樹脂は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂であってもよい。PMMA樹脂であれば、屈折率がより低いバッファ層4を得ることができる。さらにバッファ層4を構成する樹脂はポリイミド樹脂やPMMA樹脂に限定されず、低屈折率且つ使用する光の波長に対して透明な他の樹脂、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、フッ素樹脂、ABS樹脂等を用いることも可能である。
バッファ層4がSiO2等の酸化物材料からなる場合、バッファ層4をスパッタ法により形成する必要があり、生産性が悪かった。しかし、バッファ層4がナノ粒子含有樹脂からなる場合には、バッファ層4をスピンコートにより形成することができ、バッファ層4を容易に低コストで形成することが可能である。
ペロブスカイト構造を有する誘電体は、BaTiO3系材料であることが好ましい。BaTiO3系材料とは、BaTiO3を主成分とする誘電体材料のことを言い、BaTiO3のみからなる誘電体材料のみならず、BaTiO3を構成する元素の一部が置換されたものを含んでいてもよい。置換元素としてはCa、Sr、Zr、Hfの中から1種類以上を選択することができる。すなわち、BaTiO3系材料の組成は、一例を示すと(Ba,Ca)TiO3、Ba(Ti,Zr,Hf)O3、(Ba,Ca,Sr)(Ti,Zr,Hf)O3などが選択可能である。
ペロブスカイト構造を有する誘電体は、BaTiO3系材料に限定されず、(Na,K)(Nb,Ta)O3の組成を有する誘電体であってもよい。すなわち、NaNbO3、NaTaO3、KTaO3、NaTaO3などの誘電体であってもよく、あるいはBaTiO3系材料に(Na,K)(Nb,Ta)O3が所定の割合で含まれていてもよい。(Na,K)(Nb,Ta)O3はBaやTiを含有する誘電体ではないが、高誘電率が期待される材料である。
ナノ粒子とは、広義には粒径が1〜数百nmの粒子のことを言い、狭義には粒径が1nm以上100nm以下の粒子のことを言う。本実施形態によるナノ粒子の粒径は15〜50nmであることが好ましく、20〜50nmであることが特に好ましい。粒径が50nmよりも大きい場合には、粒径が大きすぎて光の透過性が悪くなり、さらに強誘電性の影響により高周波特性が劣化する懸念がある。また、粒径が15nmよりも小さい場合には、粒径が小さすぎて分散が難しくなり、バッファ層4の誘電率を向上させることができない。
しかし、ナノ粒子の粒径が15〜50nmであれば、光変調器で使用する光の波長(1470〜1610nm)に対して透明な薄膜を得ることができ、さらに常誘電性となることから、高周波でも誘電損失を抑制することが可能である。特に、粒径が15〜50nmのBaTiO3系粒子を用いた場合には、従来の酸化物材料では実現できなかったn<2.0の低屈折率とε>15の高誘電率の両立が可能となる。
例えば、BaTiO3のナノ粉(平均粒径が30nm、誘電率ε=400、屈折率n=2.35の)をポリイミド樹脂(誘電率ε=3.5、屈折率n=1.68、5wt%、減量温度500℃)に分散させて、ポリイミド樹脂中のBaTiO3の含有率を50vol%とした場合、屈折率n=1.85、誘電率ε=36.5のバッファ層4を得ることができる。
バッファ層4に含まれるナノ粒子4bの含有率は30〜70vol%であることが好ましく、40〜60vol%であることがさらに好ましい。バッファ層4に含まれるナノ粒子4bの含有率が30vol%よりも低い場合には、樹脂4a中のナノ粒子4bが少なすぎて所望の誘電率(ε>15)を達成することが難しくなるからであり、バッファ層4に含まれるナノ粒子4bの含有率が70vol%よりも高い場合には、樹脂4a中のナノ粒子4bが多すぎて所望の屈折率(n<2.0)を達成することが難しくなるからである。
図4は、バッファ層4のRF性能指数を示すグラフであり、横軸はポリイミド樹脂中に分散させたBaTiO3(以下、「BT」という)の含有率(vol%)、縦軸はRF性能指数K=(2.14−n)×εをそれぞれ示している。RF性能指数Kは、バッファ層の性能を示す指標であり、RF性能指数Kが高ければ高いほど低屈折率且つ高誘電率であり、バッファ層として優れていることを示している。なおnはバッファ層の屈折率、εはバッファ層の誘電率である。図中の5本のグラフは、BT粒径が10nm,15nm,30nm,50nm,70nmであるときのバッファ層のRF性能指数Kをそれぞれ示している。
図4に示すように、RF性能指数Kは、BT含有率(vol%)が高くなるほど大きくなり、その増加率はBT粒径が大きいほど顕著となる。例えばBT粒径が10nmのときと比べて、BT粒径が70nmのときの粒径の増加率は著しいことが分かる。現状の酸化物材料のRF性能指数Kの最大値が約5.5であることから、ナノ粒子含有樹脂材料のRF性能指数Kは5.5以上となるためには、BT粒径は15nm以上であることが好ましい。BT粒径が10nmではバッファ層の誘電率εが向上せず、RF性能指数Kを5.5以上にすることができないからである。
BT粒径が15nmである場合、BT含有率を50vol%以上にすればRF性能指数Kを5.5以上にすることができる。BT粒径が30nmである場合、BT含有率を30vol%以上にすればRF性能指数Kを5.5以上にすることができる。BT粒径が50nmである場合、BT含有率を25vol%以上にすればRF性能指数Kを5.5以上にすることができる。BT粒径が70nmである場合、BT含有率を22vol%以上にすればRF性能指数Kを5.5以上にすることができる。
上記のように、BT粒径が70nmである場合には、RF性能指数を大幅に向上させることが可能である。しかしながら、BT粒径が50nmを超えるとBTのナノ粒子による光の散乱の影響により光損失が増加する。したがって、BT粒径は50nm以下であることが好ましい。
以上説明したように、本実施形態による光変調器100は、第1及び第2の光導波路10a,10bと、バッファ層4の上方に第1及び第2の光導波路10a,10bと対向して設けられた信号電極7及び第1の接地電極8と、第1の光導波路10aと信号電極7との間及び第2の光導波路10bと第1の接地電極8との間に設けられたバッファ層4と、を備え、バッファ層4は、ペロブスカイト構造を有するナノ粒子が分散した樹脂からなるので、低屈折率且つ高誘電率なバッファ層4を有する光変調器を実現することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
例えば、上記実施形態においては、単一の信号電極7を用いて第1の光導波路10a内を伝搬する光を駆動するシングル駆動型の光変調器を例に挙げたが、本発明において光変調器の具体的な構成は特に限定されない。したがって、例えば、第1及び第2の光導波路10a,10bに対応する一対の信号電極に差動信号(変調信号)を入力して第1の光導波路10a内を伝搬する光と第2の光導波路10b内を伝搬する光の両方を駆動するデュアル駆動型の光変調器に本発明を適用することも可能である。
1 基板
2 導波層
2r リッジ部
3 特許文献
3 保護層
4 バッファ層
4a 樹脂
4b ナノ粒子
5 絶縁層
6 電極層
7 信号電極
7a 信号電極の上層部
7b 信号電極の下層部
7e 信号電極の一端
7g 信号電極の他端
8 第1の接地電極
8a 第1の接地電極の上層部
8b 第1の接地電極の下層部
9 第2の接地電極
10 マッハツェンダー光導波路
10a 第1の光導波路
10b 第2の光導波路
10c 分波部
10d 合波部
10i 入力導波路
10o 出力導波路
12 終端抵抗
100 光変調器
Si 入力光
So 変調光
2 導波層
2r リッジ部
3 特許文献
3 保護層
4 バッファ層
4a 樹脂
4b ナノ粒子
5 絶縁層
6 電極層
7 信号電極
7a 信号電極の上層部
7b 信号電極の下層部
7e 信号電極の一端
7g 信号電極の他端
8 第1の接地電極
8a 第1の接地電極の上層部
8b 第1の接地電極の下層部
9 第2の接地電極
10 マッハツェンダー光導波路
10a 第1の光導波路
10b 第2の光導波路
10c 分波部
10d 合波部
10i 入力導波路
10o 出力導波路
12 終端抵抗
100 光変調器
Si 入力光
So 変調光
Claims (7)
- 光導波路と、
前記光導波路と対向して設けられた電極と、
前記光導波路と前記電極との間に設けられたバッファ層を備え、
前記バッファ層は、ペロブスカイト構造を有する誘電体のナノ粒子が分散した樹脂からなることを特徴とする光変調器。 - 前記ナノ粒子がBaTiO3系誘電体からなる、請求項1に記載の光変調器。
- 前記ナノ粒子の粒径が15nm以上50nm以下である、請求項1又は2に記載の光変調器。
- 前記樹脂がポリイミド樹脂である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光変調器。
- 前記樹脂がポリメタクリル酸メチル樹脂である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光変調器。
- 前記光導波路がニオブ酸リチウム膜からなる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光変調器。
- 前記光導波路がマッハツェンダー光導波路を含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光変調器。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019083686A JP2020181070A (ja) | 2019-04-25 | 2019-04-25 | 光変調器 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2019083686A JP2020181070A (ja) | 2019-04-25 | 2019-04-25 | 光変調器 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2020181070A true JP2020181070A (ja) | 2020-11-05 |
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ID=73023409
Family Applications (1)
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JP2019083686A Pending JP2020181070A (ja) | 2019-04-25 | 2019-04-25 | 光変調器 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2020181070A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR20220072943A (ko) * | 2020-11-25 | 2022-06-03 | 한국전자통신연구원 | 전기 광 변조기 |
-
2019
- 2019-04-25 JP JP2019083686A patent/JP2020181070A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR20220072943A (ko) * | 2020-11-25 | 2022-06-03 | 한국전자통신연구원 | 전기 광 변조기 |
KR102617408B1 (ko) * | 2020-11-25 | 2023-12-28 | 한국전자통신연구원 | 전기 광 변조기 |
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