本発明の一実施形態に係る再生制御装置を有するディーゼルエンジンの全体構成を例示する概略図である。
一実施形態に係る再生制御装置が実行する回復処理の一例を示すフローチャートである。
一実施形態に係る再生制御装置が回復処理と強制再生処理とを実行した場合の温度変化の一例を示すタイムチャートである。
一実施形態に係るアーリーポスト噴射とレイトポスト噴射により実行されるDPFの強制再生処理を説明するための図である。
一実施形態に係る再生制御装置による昇温速度の決定方法を説明するためのグラフである。
一実施形態に係る再生制御装置がカウントする重み付き累積運転時間を説明するためのグラフである。
一実施形態に係る再生制御装置が第2昇温速度に基づいてDOC昇温制御を実行した場合のDPF出口温度の変化の一例を示すグラフである。
比較例に係る再生制御装置が回復処理又は強制再生処理を実行した場合のDPF出口温度の変化の一例を示すグラフである。
一実施形態に係る再生制御装置が排気スロットルバルブの開度を制御した場合のDPF出口温度の変化の一例を示すグラフである。
一実施形態に係る再生制御装置が実行するDOC昇温制御の一例を示すフローチャートである。
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
図1は、本発明の一実施形態に係る再生制御装置2を有するディーゼルエンジン1の全体構成を例示する概略図である。再生制御装置2は、ディーゼルエンジン1の排気通路16に配置される排ガス処理装置3の再生(すなわちDOC31の回復処理及びDPF32の強制再生処理)を、排ガス処理装置3の昇温手段4(4A、4B、4C、4D、4E)を制御することにより実行するものである。
図1に示すように、ディーゼルエンジン1は、再生制御装置2(ECU9)及び排ガス処理装置3に加えて、エンジン本体11と、吸気通路13と、排気通路16と、排気ターボ過給機7と、EGR装置8と、を備えている。なお、図1に示される一実施形態では、再生制御装置2は、ECU(Engine Control Unit)9であり、ECU9の備える機能(プログラムや回路)の一つとして実装されている。しかし、他の幾つかの実施形態では、ディーゼルエンジン1をコントロールするECU9とは別に、プロセッサを備える他の電子制御ユニットとして再生制御装置2が構成されてもよい。
ECU9は、ディーゼルエンジン1をコントロールする電子制御ユニットである。例えば、ECU9は、プロセッサを含む中央処理装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、及びI/Oインターフェイスなどからなるマイクロコンピュータとして構成されてもよい。
エンジン本体11には、吸気通路13と排気通路16とが接続されている。吸気通路13は、ディーゼルエンジン1の外部の空気(吸気)をエンジン本体11に形成される燃焼室12に供給するための通路である。排気通路16は、燃焼室12からの燃焼ガス(排ガス)をディーゼルエンジン1の外部に排出するための通路である。
排気通路16には、DOC31の直上流位置に排気スロットルバルブ4(4C)が設けられている。排気スロットルバルブ4(4C)は、再生制御装置2(ECU9)によって、その開度が制御される。
ディーゼルエンジン1には、燃焼室12に高圧燃料を噴射するための燃料噴射装置4(4A)が配置されている。燃料噴射装置4Aは、高圧燃料が蓄圧されたコモンレール(不図示)に接続されるとともに、ECU9によって、その噴射タイミングおよび燃料噴射量が制御されるようになっている。そして、燃焼室12に噴射された高圧燃料は、吸気通路13を通って供給される吸気と混合された後、燃焼室12内で燃焼され、排気通路16を通ってディーゼルエンジン1の外部に排出される。
吸気通路13及び排気通路16には排気ターボ過給機7が設けられている。この排気ターボ過給機7は、排気通路16に配置されている排気タービン71と、吸気通路13に配置されているコンプレッサ72とを有しており、排気タービン71とコンプレッサ72とはシャフト73によって同軸で結合されている。そして、排気通路16を通過する排ガスにより排気タービン71が回転駆動されると、シャフト73によって同軸で結合されたコンプレッサ72も同じように回転駆動されるようになっている。
吸気通路13にはインタークーラ(不図示)及び吸気スロットルバルブ4(4B)が設けられている。そして、コンプレッサ72から吐出された圧縮吸気は、インタークーラ(不図示)で冷却された後、吸気スロットルバルブ4(4B)で吸気流量が制御され、その後、ディーゼルエンジン1の本体(不図示のシリンダヘッド)に設けられる吸気ポート14を介してディーゼルエンジン1の各シリンダ内の燃焼室12に流入する。なお、吸気スロットルバルブ4(4B)も、再生制御装置2(ECU9)によって、その開度が制御される。
ディーゼルエンジン1はEGR装置8を備えている。すなわち、吸気通路13と排気通路16とがEGR管81を介して連結されており、排気通路16を流れる排ガスの一部を吸気通路13に再循環することが可能に構成されている。
排気ポート17の直下流位置にEGR管81の一端が接続され、排気通路16からEGR管81が分岐している。また、EGR管81のもう一方の端部は、吸気スロットルバルブ4(4B)の下流側に位置している吸気マニホールド15(吸気通路13)に接続している。また、EGR管81にはEGRバルブ4(4E)が配置されている。このEGRバルブ4(4E)を制御することにより、ディーゼルエンジン1から排出された排ガスの一部が、EGR管81を通ってディーゼルエンジン1を再循環するようになっている。なお、EGRバルブ4(4E)も、再生制御装置2(ECU9)によって、その開度が制御される。
上述したように、ディーゼルエンジン1では、エンジン本体11(燃焼室12)から排出された排ガスは、上述した排気タービン71を駆動した後、排気通路16に設けられた上記の排ガス処理装置3に流入するよう構成されている。
排ガス処理装置3は、ディーゼルエンジン1の排気通路16に配置されるDOC31(ディーゼル酸化触媒)と、DOC31の下流の排気通路16に配置されるDPF32(ディーゼルパティキュレートフィルタ)とを有する。DOC31は、排ガス中の未燃燃料(HC)や一酸化炭素(CO)を酸化除去するとともに、排ガス中の一酸化窒素(NO)を酸化して二酸化窒素(NO2)を生成する機能を有する装置である。また、DOC31では、DOC31内に噴射された燃料の酸化熱によって通過する排ガスを昇温し、DPF32の入口温度を昇温する。
DPF32は、排ガス中に含まれるススなどのPM(粒子状物質)をフィルタで捕集し、排ガスから除去する装置である。つまり、排ガス処理装置3に流入した排ガスは、排ガス処理装置3の内部において、DOC31を通過し、次に、DPF32を通過する。この通過の際に、DOC31において、排ガス中に含まれる未燃燃料(HC)や一酸化炭素(CO)が酸化除去される。また、DPF32によって排ガス中のPM(粒子状物質)が捕集され、排ガス中に含まれるPMが除去される。その後、排ガスはディーゼルエンジン1の外部に排出される。
このように排ガス処理装置3を通過する排ガスが、ディーゼルエンジン1の運転負荷が低く、排ガス温度が低い状態が続く場合には、DOC31の上流側端面に未燃燃料等のSOF分やスートなどが付着していき、DOC31の閉塞が除々に進行する。そして、DOC31の閉塞は、排圧が上昇による燃費の悪化といった上述の問題を引き起こす。また、DPF32の強制再生の実行時において、DPF32の入口温度を所定温度に昇温するために余分な燃料が噴射されることで燃費が悪化することや、DOC31の閉塞によって生じる未燃燃料のスリップによるDPF32の焼損のリスク、後述するレイトポスト噴射により昇温する場合のオイルダイリューションの危険性の増大といった問題も引き起こす。
このような問題は、DOC31を閉塞させるDOC31の付着物によって生じるが、この付着物は、DOC31を昇温することによって除去可能である。そこで、再生制御装置2は、DOC31を昇温要状態から回復(再生)させるために、後述する回復処理を実行し、昇温手段4(後述)を制御することによって、昇温要状態にあるDOC31の昇温を行う。
再生制御装置2は、排ガスや排ガス処理装置3の状態を、排気通路16に設置される各種センサ類からの検出値に基づいて監視する。例えば、図1に示すように、DOC31の入口にはDOC入口温度センサ5(5A)が設けられており、DOC31に流入する排ガス温度が検出されている。DPF32の入口(DOC31とDPF32との間)にはDPF入口温度センサ5(5B)が設けられ、DPF32の出口にはDPF出口温度センサ5(5C)が設けられている。また、DPF32の入口にはDPF入口圧力センサ6(6A)が設けられ、DPF32の出口にはDPF出口圧力センサ6(6B)が設けられている。さらに、DPF32には、DPF32の入口と出口の間の差圧を検出するためのDPF差圧センサ6(6C)が設けられている。これらの温度センサ5及び圧力センサ6の検出値は再生制御装置2に入力され、後述する回復処理、DOC昇温制御及び強制再生処理の実行において使用される。
再生制御装置2は、回復処理又はDOC昇温制御の要否を判定するためのDOC昇温要否判定部21と、回復処理又はDOC昇温制御において昇温手段4を制御するためのDOC昇温実行部22とを備える。なお、以下、回復処理と強制再生処理について説明し、その後に白煙発生を抑制するためのDOC31の昇温制御について説明する。
DOC昇温要否判定部21は、後述する図2に示す回復処理の実行において、DOC31の閉塞状態又は閉塞危険状態の少なくとも一方を含む昇温要状態を検知する。DOC31の閉塞状態とは、回復処理が必要なほどDOC31が閉塞している状態である。DOC31の閉塞危険状態とは、ディーゼルエンジン1の運転状態に基づいて、DOC31が閉塞する危険性が推定される状態である。
ここで、昇温要状態の検知は、後述する図9に示すSOF除去のためのDOC昇温制御の実行における昇温が必要か否かの判定とは異なる。しかし、DOC昇温要否判定部21は、後述するように、昇温要状態の検知だけでなく、DOC昇温制御の実行における昇温が必要か否かの判定も行う。
DOC31の閉塞状態は、DOC31の閉塞に関する閉塞パラメータと予め定められる閉塞閾値との比較に基づいて検知される。このDOC31の閉塞状態の検知方法には、様々な手法が存在する。例えば、閉塞パラメータPは、DPF出口温度センサ5(5C)によって検出されるDPF32の出口温度であってもよい。このように、閉塞パラメータをDPF32の出口温度とすれば、DOC31の昇温要状態を、既存のセンサを用いて容易且つ精度良く検出することができる。なお、閉塞パラメータは、DOC31の出口温度(DPF入口温度センサ5(5B)の検出値)や、DOC31の入口と出口の差圧であってもよい。
一方、DOC31の閉塞危険状態は、ディーゼルエンジン1がDOC31の閉塞が起こり易い運転状態下にあった場合に検知される。DOC31の閉塞危険状態D2の検知方法においても様々な手法が存在する。例えば、DOC昇温要否判定部21は、DPF32の強制再生処理が実行されていないような通常運転時において、排ガス温度が排温閾値を下回る低排温運転状態の直近の所定時間内における累積継続時間が、予め定められる閾値を上回った場合に、DOC31が閉塞危険状態であると検知する。
なお、DOC昇温要否判定部21は、通常運転時において、排ガスの温度が予め定められた温度以下の状態に規定時間以上連続してあった場合、ディーゼルエンジン1のエンジン回転数の変動率が予め定められる回転数閾値を超える単位時間あたりの回数が閾値を規定時間以上連続して上回る場合、及びPM排出量推定値の平均値が予め定められた閾値以上の状態が規定時間以上連続してあった場合等においてDOC31が閉塞危険状態にあると検知するように構成されてもよい。
排ガス温度が排温閾値を下回る低排温運転状態が続くと、DOC31の閉塞が徐々に進行する。一方、排ガス温度が排温閾値を上回る高排温運転状態になると、DOC31の閉塞は解消に向かう。よって、上記の構成によれば、直近の所定時間内における低排温運転状態の累積継続時間でDOC31の閉塞危険状態を検知するため、DOC31の閉塞危険状態を精度良く検知することができる。また、DOC31の閉塞状態を未然に防止することができる。
DOC昇温実行部22は、DOC31の昇温要状態が検知された場合に、昇温手段4を制御して、DOC31を回復させるための昇温を実行する。この処理は、第1昇温処理Rc1と第2昇温処理Rc2とを含む。第1昇温処理Rc1は、温度T1までDOC31を昇温するように昇温手段4(後述)を制御する処理である。温度T1は、DOC31が活性化する程度の温度であり、例えば250℃に設定される。また、第2昇温処理Rc2は、第1昇温処理Rc1の完了後に、温度T1よりも高い温度T2までDOC31を昇温するように昇温手段4(後述)を制御する処理である。温度T2は、例えば、DOC31の上流側端面の付着物が燃える程度の温度であり、例えば400℃に設定される。
このように、DOC昇温実行部22は、回復処理の開始から温度T2までDOC31を一気に昇温させるのではなく、第1昇温処理Rc1によってDOC31を活性化させた後に、第2昇温処理Rc2によって温度T2までDOC31を昇温する。そして、温度T1から温度T2にDOC31を昇温することで、DOC31の付着物を燃焼させ、DOC31から除去している。このように、DOC31の昇温を2段階で行うことで、DOC31が活性化する前に、温度T2まで昇温しようとして、噴射される燃料によって、HCの排出を抑制しつつ、DOC閉塞状態が進行することを防止している。
次に、図2及び図3を参照しながら、再生制御装置2によるDOC31の回復処理とDPF32の強制再生処理とを説明する。図2は、一実施形態に係る再生制御装置2が実行する回復処理の一例を示すフローチャートである。図3は、一実施形態に係る再生制御装置2が回復処理と強制再生処理とを実行した場合の温度変化の一例を示すタイムチャートである。なお、図3に示す一例では、DOC31の温度はDOC入口温度センサ5(5A)の検出値に基づいて取得され、DPF32の温度は、DPF入口温度センサ5(5B)の検出値に基づいて取得されている。
図2に示すように、回復処理では、再生制御装置2は、DOC31の昇温要状態を監視し、DOC31の昇温要状態が検出されたか否かを判別する(ステップS11)。この昇温要状態の監視は周期的に実行されてもよいし、DPF32の強制再生処理が実行中などの所定のタイミングに実行されてもよい。
ここで、昇温要状態が検出されないと判別した場合(ステップS11;No)、再生制御装置2は、DOC31の昇温要状態の監視を継続する。一方、昇温要状態が検出されたと判別した場合(ステップS11;Yes)、再生制御装置2は、DOC31の第1昇温処理Rc1を実行する(ステップS12)。例えば、図3に示す一例では、時刻t1から第1昇温処理Rc1が開始されている。そのため、DOC31の温度の上昇速度は、時刻t1において増加する方向に変化している。
再生制御装置2は、第1昇温処理Rc1において、DOC31の温度が温度T1に到達するまで昇温手段4による昇温を継続する。その後、再生制御装置2は、第2昇温処理Rc2を実行する(ステップS13)。図3に示す一例では、時刻t2においてDOC31の温度が温度T1に到達しているため、第1昇温処理Rc1は時刻t2で完了し、時刻t2から第2昇温処理Rc2が開始されている。このため、DOC31の温度の上昇速度は、時刻t2において増加する方向に変化している。また、DOC31の温度は、時刻t2において温度T1からさらに上昇しており、時刻t3においてDOC31の温度は温度T2に到達している。
再生制御装置2は、第2昇温処理Rc2において、その完了条件が満たされるまで、昇温手段4による昇温を継続する。図3に示す一例では、時刻t4において、第2昇温処理Rc2の完了条件が満たされている。
第2昇温処理Rc2の完了条件は、DOC31の堆積物が燃焼する温度(温度T2)に、DOC31を所定時間おくことを目的として設定される。幾つかの実施形態では、回復処理は、第2昇温処理Rc2の開始から予め定めた時間の経過後、又は、第2昇温処理Rc2の開始後であって温度T2に到達してから予め定めた時間の経過後に完了してもよい。予め定めた時間は、例えば、温度T2に到達してから20分以上であってもよい。また、予め定めた時間は、マップ(対応表)を使用して、回復処理によって除去しようとするDOC31の堆積物の量に応じて設定される時間であってもよい。
なお、図3に示す一例では、DOC31の温度が温度T2に到達した後(時刻t3の後)に、DOC31の温度が一定に推移している。しかし、温度T2に到達後にDOC31の温度が変動するように推移していてもよい。また、図3に示す一例では、第2昇温処理Rc2の完了後は、後述するDPFの強制再生処理が実行されているが、これには限定されず、回復処理が完了した後に、DOC31の温度が徐々に温度が低下してもよい。
このように、再生制御装置2は、回復処理により、昇温要状態からDOC31を再生することができる。また、第1昇温処理Rc1によってDOC31を活性化した後に第2昇温処理Rc2を実行することで、HCの排出を抑制しつつ、昇温のための燃料によってDOC31の閉塞が進行することを防止することができる。また、第1昇温処理Rc1によって活性化されたDOC31をさらに温度T2まで昇温することで、DOC31の閉塞(閉塞状態、閉塞危険状態)を進行させることを防止しながら、DOC31の上流側端面の付着物を除去することができ、昇温要状態からDOC31を再生することができる。
また、回復処理において制御される昇温手段4は、例えば、ディーゼルエンジン1の燃焼室12に燃料を噴射する燃料噴射装置4A(図1参照)である。そして、第1昇温処理Rc1および第2昇温処理Rc2は、燃料噴射装置4(4A)によるアーリーポスト噴射により実行される。図4は、一実施形態に係るアーリーポスト噴射とレイトポスト噴射により実行されるDPFの強制再生処理を説明するための図である。アーリーポスト噴射は、図4に示すように、ディーゼルエンジン1に燃料を噴射する工程において、メイン燃料を噴射した直後の燃焼室12内の圧力がまだ高い状態でメイン噴射より少量の燃料を噴射する1回目のポスト噴射である。かかるアーリーポスト噴射によれば、ディーゼルエンジン1の出力には影響を与えずに排ガス温度を高めることが出来る。
また、第1昇温処理Rc1と第2昇温処理Rc2とは、アーリーポスト噴射における燃料噴射条件が異なっており、第1昇温処理Rc1の噴射条件が第2昇温処理Rc2の噴射条件に切り替えられることで、温度T1まで昇温されたDOC31が、さらに温度T2まで昇温される。具体的には、第2昇温処理Rc2は第1昇温処理Rc1よりも燃料噴射量が多いか、第1昇温処理Rc1と第2昇温処理Rc2との噴射タイミングが夫々異なるか、又は、第2昇温処理Rc2は第1昇温処理Rc1よりも燃料噴射量が多く、且つ、第1昇温処理Rc1と第2昇温処理Rc2との噴射タイミングが夫々異なる。つまり、第1昇温処理Rc1と第2昇温処理Rc2とは、燃料噴射量または噴射タイミングの少なくとも一方において噴射条件が異なっている。
上記の構成によれば、燃料噴射装置4(4A)によるアーリーポスト噴射において、燃料噴射量や噴射タイミングを変えることによって、第1昇温処理Rc1と第2昇温処理Rc2を容易に実行することができる。また、ディーゼルエンジン1が通常備える燃料噴射装置4(4A)によって第1昇温処理Rc1および第2昇温処理Rc2の両方を実行することができるので、他の昇温手段4を追加する必要はなく、更に調整パラメータが少なくなり適正化のためのキャリブレーション期間も短縮でき、コストの低減を図ることができる。
なお、他の幾つかの実施形態では、DOC31の回復処理を実行する際に使用される昇温手段4は、吸気スロットルバルブ4(4B)、または、燃料を噴射するコモンレール圧を制御するコモンレール圧制御手段(不図示)であってもよい。その他の幾つかの実施形態では、昇温手段4は、燃料噴射装置4A、吸気スロットルバルブ4B、及びコモンレール圧制御手段(不図示)、排気管噴射装置4D、排気スロットルバルブ4C、及びEGRバルブ4Eのうちの少なくとも1つであってもよい。例えば、これらの昇温手段4において、噴射条件、バルブの開度、コモンレール圧のうちの少なくとも1つを切り替えることによって、第1昇温処理Rc1と第2昇温処理Rc2とを実行してもよい。これによって、燃料消費量、コスト、制御の容易さの観点から最適化された条件で、DOC31の回復処理を実行することができる。
図1に示すように、排ガス処理装置3は、DOC31の下流の排気通路16に配置されるDPF32を、さらに有している。また、再生制御装置2は、温度T3までDPF32を昇温するように昇温手段4を制御する強制再生処理を実行するDPF強制再生実行部24、をさらに備えている。温度T3は、温度T2よりも高い温度であり(すなわち、温度T1<温度T2<温度T3)、例えば600℃以上の温度に設定される。
DPF32の強制再生について説明すると、上述の通り、排ガス処理装置3の内部を排ガスが通過する際には、排ガス中に含まれるPM(粒子状物質)はDPF32によって捕集される。このDPF32で捕集されたPMは、運転中のエンジン本体11(燃焼室12)から排出される排ガスが高温の場合には、高温の排ガスによって燃焼し、自然に除去される(自然再生)。しかし、自然再生によって除去されないPMはDPF32のフィルタに堆積していくことになる。そして、PMの堆積が過度に進行すると、PM捕集能力の低下、エンジン出力の低下などを招来する。このため、DPF32を備える排ガス処理装置3においては、適切なタイミングで強制再生処理を実行することで、DPF32のフィルタに堆積しているPMを強制的に燃焼させている。そして、この強制再生処理は、その実行開始のトリガの観点から、少なくとも2種類に分類される。すなわち、自動的に実行される自動再生と、操作者等の手動操作によって実行される手動再生、の少なくとも2種類となる。
DPF32の自動再生は車両の走行・停止に関わらず、自動再生に関する所定の強制再生実行条件(自動再生実行条件)を満たすことで自動的に実行される。この自動再生実行条件は、例えば、DPF32におけるPM堆積量の推定値が規定値(閾値)を超えること、ディーゼルエンジン1の運転時間が規定時間(閾値)を超えること、ディーゼルエンジン1の燃料噴射量の累計値が規定量(閾値)を超えること等の条件である。
なお、DPF32におけるPM堆積量の推定は、例えばDPF32の上流と下流とにおける差圧をDPF差圧センサ6(6C)によって検出することによって行われる。なお、エンジン回転数、燃料噴射量、空気流量、DPF温度(例えば、DPF出口温度センサ5(5C)の検出値など)を検出し、再生制御装置2に予め記憶されているマップに基づいて、ディーゼルエンジン1からのPM排出量とDPF32の内部での自然再生によるPM再生量とを推定し、PM排出量からPM再生量を差し引くことでPM堆積量を推定することも可能である。
一方、DPF32の手動再生は、操作者等のボタン操作等がされることを強制再生実行条件(手動再生実行条件)として実行されるものであり、基本的に車両が停止した状態で実行される。DPF32の手動再生は、自動再生条件を超えてPMが堆積している場合に実行される。例えば、手動再生実行条件は、PM堆積量の推定値が、自動再生よりも大きい規定値を超えることが条件とされる。
また、DPF32の手動再生には、DPF32にPMが過度に堆積した時に、メンテナンスを行うサービスマンによって行われる燃焼除去が含まれてもよい。この場合、DPF32の過昇温を避けるため、通常の手動再生よりも長時間をかけて強制再生が行われる。そして、強制再生の実行温度においても両者に違いがあり、手動再生の方が自動再生よりも再生温度が高くなるように制御される。一例としては、自動再生ではDPF32の入口温度が600〜610℃となるように制御されるのに対し、手動再生ではDPF32の入口温度が620〜630℃となるように制御される。
上記のDPF強制再生実行部24による強制再生処理について詳述する。幾つかの実施形態では、強制再生処理において使用される昇温手段4は、ディーゼルエンジン1の燃焼室12に燃料を噴射する燃料噴射装置4Aと排気管噴射装置4Dである。この場合、強制再生処理は、燃料噴射装置4Aによるアーリーポスト噴射と、燃料噴射装置4Aによるレイトポスト噴射又はDOC31の上流の排気通路16に配置される排気管噴射装置4Dによる排気管噴射と、により実行される。
レイトポスト噴射は、アーリーポスト噴射の後の燃焼室12内の燃焼に寄与しないタイミング(下死点近傍)で燃料を噴射する2回目のポスト噴射である。図4に示す一例では、エンジン本体11に設けられるピストンが上死点(TDC)から下死点(BDC)に移動する間において、上死点を過ぎたところでメイン燃料噴射がなされ、その後にアーリーポスト噴射がなされている。そして、アーリーポスト噴射後であって、ピストンが上死点(TDC)側から下死点(BDC)に到達する前に、レイトポスト噴射がなされている。このレイトポスト噴射によって、燃焼室12から排気通路16へ未燃燃料を流出させ、排出された未燃燃料がDOC31において酸化することでDPF32を温度T3まで昇温している。また、温度T3までDPF32を昇温することで、DPF32に堆積したPMを燃焼させることができる。
なお、図1では、EGR管81の分岐位置下流と排気ターボ過給機7の排気タービン71との間に、排気管噴射装置4Dが配置されている。他の幾つかの実施形態では、排気管噴射装置4Dは、排気タービン71とDOC31の間にあってもよい。また、排気管噴射装置4Dから排気通路16へ噴射する燃料噴射量は、再生制御装置2によって制御される。
DPF32の強制再生処理は、幾つかの実施形態では、図3に示すように、DOC31の回復処理の完了後に実行される。図3では、時刻t4において回復処理が完了しており、DOC31およびDPF32が温度T2付近に昇温されているところから、DPF32の強制再生処理が実行されている。そして、時刻t5において温度T3までDPF32が昇温されている。また、他の幾つかの実施形態では、DOC31の回復処理から独立してDPF32の強制再生処理が実行されてもよい。
この場合、DPF32の強制再生処理において、まずは、DPF32を温度T1以上に昇温し、DPF32を活性化する。この昇温は、燃料噴射装置4Aを昇温手段4とし、所定の噴射条件によるアーリーポスト噴射によって実行されてもよい。また、吸気スロットルバルブ4Bを昇温手段4とし、その開度を制御することでこの昇温を実行してもよい。また、燃料を噴射するコモンレール圧を制御するコモンレール圧制御手段(不図示)を昇温手段4とし、コモンレール圧を制御することでこの昇温を実行してもよい。燃料噴射装置4A、吸気スロットルバルブ4B、コモンレール圧制御手段(不図示)のうちの2つ以上を昇温手段4としてこの昇温を実行してもよい。その後、レイトポスト噴射や排気管噴射を用いたDPF32の強制再生処理を実行することで、DPF32が温度T3まで昇温される。
上記の構成によれば、燃料噴射装置4Aや排気管噴射装置4Dによって、DPF32の強制再生処理を実行することができる。また、DOC31の回復処理における昇温手段4が燃料噴射装置4Aである場合には、燃料噴射装置4Aによって、回復処理と強制再生処理を容易に実行することができる。また、燃料噴射装置4Aはディーゼルエンジン1が通常備えており、他の昇温手段4を追加する必要はなく、コストの低減を図ることができる。
他の幾つかの実施形態では、図3に示されるように、DOC31の回復処理の完了後に、DPF32の強制再生処理(自動再生または手動再生)が継続して実行されてもよい。図3では、時刻t4において回復処理が完了し、それからDPF32の強制再生処理が開始されている。そして、DPFの強制再生処理によって、DPF32の温度の上昇速度は増加方向に変化しており、時刻t5において強制再生温度である温度T3に到達している。その後、温度T3を維持するように昇温手段4が制御されている。一方、DOC31は、再生処理が完了した時刻t4から、そのまま温度T2を維持するように制御されている。そして、時刻t6において強制再生処理が完了されており、時刻t6以降では、DOC31の温度及びDPF32の温度は、いずれも時間経過に伴って徐々に低下している。なお、図3では、DOC31の温度は、温度T2を維持するように制御されているが、他の幾つかの実施形態では、温度T1以上に維持するように制御されてもよい。
図1に示すように、再生制御装置2は、DPF31の強制再生実行条件を満たすか否かを判定するDPF強制再生条件判定部23と、強制再生処理を実行するDPF強制再生実行部24とを備える。DPF強制再生実行部24は、DPF強制再生条件判定部23が強制再生実行条件を満たすと判定した場合に強制再生処理(自動再生)を実行したり、強制再生処理の実行を促す旨の報知を行い、オペレータの指示に基づいて強制再生処理(手動再生)を実行したりする。この報知は、後述する報知部26によって実行されてもよい。
また、幾つかの実施形態では、図1に示すように、再生制御装置2は、DOC31の昇温要状態、後述する昇温制御における昇温が必要か否かなどのDOC要否判定部21の判定結果を検知情報Fとして記憶する記憶部25をさらに備える。記憶部25は、再生制御装置2が備えるROM、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリや、RAMなどの揮発性メモリであっても良いし、再生制御装置2に接続された外部記憶装置であっても良い。
記憶部25に記憶される内容は、幾つかの実施形態では、単に、昇温要状態や昇温が必要なことを示す情報(例えば、フラグ)であっても良いし、それらを詳細に区別可能な情報であってもよい。また、他の幾つかの実施形態では、検知情報Fの履歴がわかるように記憶部25に時系列で検知情報Fを記憶してもよい。例えば、昇温要状態や昇温が必要なことが検知される度に検知情報Fを記憶部25に追記することや、検知情報Fと共に、検知情報Fに関連する他の情報(例えば、時系列が把握可能な情報としての検出日時、検出番号などや、各種センサの値など)も一緒に記憶されてもよい。これにより、エラー履歴として利用することができる。その他の実施形態では、検知情報Fは、上述した例示の組み合わせ(フラグなどやエラー履歴)であっても良い。
上記の構成によれば、例えば、この検知情報Fをメンテナンスやアフターサービスに活用することができる。また、後述するように、イグニッションのオフ後、再度、イグニッションがオンされた時に昇温を実行するような場合であっても、再起動された再生制御装置2は、検知情報Fを参照して、再起動される前の情報を取得できる。
また、幾つかの実施形態では、図1に示すように、再生制御装置2は、オペレータへの報知を行う報知部26と、報知に対してオペレータが指示したことに応答してDOC31の昇温を実行するDOC手動昇温実行部27とを備える。報知部26は、DOC要否判定部21の判定結果によって手動再生や手動の昇温実行が必要なことを、オペレータに対して報知する。報知部26は、報知装置を介して再生要求をオペレータに対して報知しても良い。この報知装置は、ディスプレイ、スピーカー、LEDやランプなどの発光装置、振動装置などであってもよく、報知部26は、報知装置に接続されている。そして、ディスプレイへの表示、発光装置による点灯、点滅などによる視覚的な報知や、音、音声による聴覚的な報知、振動することで報知しても良く、これらの組み合わせであってもよい。
DOC手動昇温実行部27は、オペレータによって操作される実行ボタン(スイッチ)に接続され、オペレータの指示を受信するように構成されている。この実行ボタンは、物理的なボタンやスイッチであってもよいし、ボタンの押下、スイッチの切り替えによってオン操作がなされるよう構成されてもよい。また、実行ボタンは、ディスプレイに表示されており、ディスプレイ上のボタンをタッチ操作することで、オン操作がなされるよう構成されてもよい。なお、DOC手動昇温実行部27は、マイクに接続されてもよく、オペレータの音声指示を受信するように構成されていてもよい。
幾つかの実施形態では、報知部26は、DOC要否判定部21やDPF強制再生条件判定部23の判定結果に応じて、イグニッションキーのオフ操作を促す旨を報知するように構成されていてもよい。これによって、DOC31を昇温させる処理を実行するために必要な操作(イグニッションキーのオフ操作)を促すことができる。なお、これには限定されず、イグニッションのオフ操作を促す旨の報知は任意である。他の幾つかの実施形態では、イグニッションのオフ操作を促す旨の報知はされなくても良い。例えば、イグニッションのオン操作と関係なくDOC31の昇温を実行する場合には、このような報知は不要である。また、昇温要状態、SOF除去のための昇温、強制再生等が必要なことを検出後、ディーゼルエンジン1を即座に停止できないような、建設機器や車両などのアプリケーションの場合にも、この報知は実行されなくてもよい。
上記の構成は、DOC31の昇温が、ディーゼルエンジン1が停止された状態から実行されるように構成されていてもよい。すなわち、ディーゼルエンジン1が停止された状態は、再生制御装置2が搭載される建設機器や車両などのアプリケーションが安全な状態に置かれたと推定できる状態である。そして、報知部26によって、アプリケーションを安全な状態に導いた後に、オペレータにDOC31の昇温等を実行させることができる。
ここで、白煙発生を抑制するためのDOC31の昇温制御について説明する。まず、図1に示すように、再生制御装置2は、DOC31のSOF堆積量に関連するパラメータを取得するパラメータ取得部28と、パラメータ取得部28が取得したパラメータに基づいて、昇温手段4による昇温が必要か否かを判定する昇温要否判定部21と、パラメータ取得部28が取得したパラメータに基づいて、昇温手段4による昇温速度を決定する昇温速度決定部29と、昇温要否判定部21が昇温手段4による昇温を必要と判定した場合に、昇温速度決定部29が決定した昇温速度に基づいて、DOC31の入口温度が第1温度になるまで昇温するように昇温手段4を制御するように構成されたDOC昇温実行部22と、を備える。
昇温手段4の制御は、例えば、燃料噴射装置4Aによるアーリーポスト噴射又はレイトポスト噴射であってもよいし、排気スロットルバルブ4C、吸気スロットルバルブ4B、EGRバルブ4Eの開度制御であってもよい。第1温度は、上述した温度T1以上の温度、例えば250℃に設定される。なお、第1温度は、上述した回復処理における温度T1又は温度T2であってもよい。
図5は、一実施形態に係る再生制御装置2による昇温速度の決定方法を説明するためのグラフである。本願発明者の知見によれば、DOC31に堆積するSOF分の量が多いときに、DOC31の昇温速度が速い場合に白煙の排出が視認される。例えば、DPF32の強制再生実行時にこのような現象が生じる。例えば、図5では、DOC31におけるSOF堆積量を横軸として縦軸をDOC31の昇温速度とした場合のグラフにおいて、関数を示す曲線L1が描かれている。本願発明者によれば、曲線L1が示す関数よりも昇温速度が大きい白煙発生領域では、昇温時に白煙が発生しやすいことが判明している。そのため、曲線L1よりも小さい昇温速度でDOC31を昇温する必要がある。
この点、上記構成によれば、再生制御装置2は、昇温要否判定部21が昇温手段4による昇温を必要と判定した場合にSOF堆積量に関連するパラメータに基づいて決定された昇温速度でDOC31を昇温するように制御する。そのため、DOC31に堆積するSOF分が多い場合には、ゆっくりとDOC31を昇温させてSOF堆積量を減少させ、白煙の排出を抑制することが可能となる。
幾つかの実施形態では、パラメータは、SOF堆積量が大きい程に大きな値となり、パラメータが第1閾値未満の場合における昇温速度を第1昇温速度、パラメータが第1閾値以上の場合における昇温速度を第2昇温速度とした場合に、昇温速度決定部29は、第1昇温速度よりも第2昇温速度の方が小さくなるように、昇温手段4による昇温速度を決定するように構成される。
例えば、図5において、曲線L1は、SOF堆積量が小さい場合には、SOF堆積量が大きい場合に比べて昇温速度が高くても白煙が発生しにくいことを示している。そのため、SOF堆積量S1に対応するパラメータの値を第1閾値として予め設定しておくことにより、昇温速度決定部29は、パラメータ取得部28が取得したパラメータが第1閾値以上か第1閾値未満かによって昇温速度を決定することが可能である。例えば、パラメータ取得部28が取得したパラメータが第1閾値未満である場合には、プロットP1のように大きな昇温速度に決定され、パラメータ取得部28が取得したパラメータが第1閾値以上である場合には、プロットP2のように小さな昇温速度に決定される。
かかる構成によれば、SOF堆積量が大きい程に大きな値となるパラメータが第1閾値以上である場合に第1閾値未満である場合よりも大きな昇温速度でDOC31の昇温が実行される。そのため、白煙の排出をより確実に抑制することが可能となる。なお、上記構成では、昇温速度は、第1閾値との比較によって2つの昇温速度のいずれかに決定される。しかし、複数の閾値が設定され、昇温速度決定部29は、それらとパラメータ取得部28が取得したパラメータとを比較して多段階で昇温速度が変化するように昇温速度を決定してもよい。
幾つかの実施形態では、昇温要否判定部21は、パラメータが第2閾値以上の場合に、昇温手段4による昇温が必要であると判定する。第2閾値は、第1閾値と同じ値であってもよいし、第1閾値とは異なる値であってもよい。ただし、第2閾値は、白煙の排出が生じやすい状態になる前のSOF堆積量に応じた値に設定されることが好ましい。
かかる構成によれば、パラメータが第2閾値に達するとDOC31の昇温が実行される。すなわちSOF堆積量が過大となる前に昇温が実行される。そのため、白煙の排出が生じやすい状態になる前にDOC31のSOF堆積量を減少させることが可能となる。
幾つかの実施形態では、回復処理及び強制再生処理を行わない運転モードを通常運転モードとした場合に、パラメータは、通常運転モードにおいて直近の回復処理と直近の強制再生処理とのうち後に実行された方からの累積運転時間を含む。
DOC31の回復処理やDPF32の強制再生処理が実行されると、DOC31の温度が上昇するため、DOC31のSOF堆積量は減少し、その後の運転によって徐々にSOF堆積量が増加していく。この点、上記構成によれば、直近のDOCの31回復処理と直近のDPF32の強制再生処理とのうち後に実行された方からカウントした累積運転時間をパラメータとしているため、パラメータと実際のDOC31のSOF堆積量との相関性が向上するため、昇温が必要か否かを精度よく判定し、適切なタイミングでSOF堆積量を減少させることが可能となる。
幾つかの実施形態では、図1に示すように、再生制御装置2は、排気通路16に設けられる温度センサ5の計測温度を取得する温度取得部30をさらに備え、パラメータは、予め定められた温度閾値(例えば250℃)と計測温度のうち温度閾値を下回った第1計測温度(例えば、DOC31の入口温度)との偏差が大きいほど累積運転時間が大きくなるようにカウントされた重み付き累積運転時間であってもよい。
図6は、一実施形態に係る再生制御装置2がカウントする重み付き累積運転時間を説明するためのグラフである。このグラフは、DOC31の入口平均温度に対して、昇温すべき昇温間隔時間を実験値に基づいて得たものである。昇温間隔時間は、SOFを除去してから、SOF堆積量が白煙発生しにくい量で且つSOF除去が必要な基準量に達するまでの時間である。
複数のプロットP3は、実験で得られた値である。本願発明者は、これらのプロットP3に基づいて近似式を作成し、その近似式の関数は、曲線L2のようにDOC入口平均温度に対して指数関数的に上昇することを発見した。この曲線L2に基づいて重み付き累積運転時間の重み係数を取得して設定することができる。例えば、重み係数は、DOC31の入口温度が250℃以上では1とするのに対し、DOC31の入口温度が250℃よりも低い温度になるほどより大きな値となるように設定する。例えば、DOC31の入口温度が150℃の場合に重み係数を5として、DOC31の入口温度が100℃の場合に重み係数を30としてもよい。
運転状態において排気温度が低いほど、DOC31にSOFが堆積しやすい。この点、上記構成では、例えば、SOFが堆積しやすい温度か否かを判別するための閾値を温度閾値として予め定めておいた場合に、パラメータは、その温度閾値と排気通路16に設けられる温度センサ5の計測温度とを比較した偏差が大きいほど累積運転時間が大きくなるようにカウントされた重み付き累積運転時間である。この場合、パラメータと実際のDOC31のSOF堆積量との相関性が向上するため、昇温が必要か否かを精度よく判定し、適切なタイミングでSOF堆積量を減少させることが可能となる。
幾つかの実施形態では、昇温手段4は、図1に示すように、ディーゼルエンジン1の排気通路16においてDOC31の直上流位置に配置された排気スロットルバルブ4Cを含み、DOC昇温実行部22は、第2昇温速度に基づいてDOC31を昇温するように排気スロットルバルブ4Cの開度を制御する第1開度制御を実行するように構成される。
かかる構成によれば、DOC31の昇温速度を容易に調整することができる。また、燃料噴射による昇温に比べて、DOC31の閉塞とそれによる未燃のHC(ハイドロカーボン)のスリップとを抑えることができる。また、排気スロットルバルブ4Cは、DOC31の直上流位置に位置するため、DOC31の昇温速度を効果的に制御可能である。
図7Aは、一実施形態に係る再生制御装置2が第2昇温速度に基づいてDOC昇温制御を実行した場合のDPF出口温度の変化の一例を示すグラフである。図7Bは、比較例に係る再生制御装置(不図示)が回復処理又は強制再生処理を実行した場合のDPF出口温度の変化の一例を示すグラフである。なお、これらのグラフでは、縦軸がDPF出口温度であり、横軸が経過時間である。これらのグラフが示す曲線L3、L4は、DOC31又はDPF32の昇温が実行された場合のDPF出口温度の変化を示している。なお、DOC31の温度が上昇すれば、DPF32の温度も上昇し、両者は基本的に相関性がある。そのため、DPF出口温度の観測ではなく、DOC31の入口温度又は出口温度を観測してもよいし、DPF32の入口温度を観測してもよい。すなわち、判別基準となる温度を変更すれば、温度を計測する位置は変更可能である。
幾つかの実施形態では、DOC昇温実行部22は、第1開度制御を実行する前に、排気スロットルバルブ4Cの開度を減少させる速度が第1開度制御よりも大きい第2開度制御を実行するように構成される。排気スロットルバルブ4Cの開度を減少させると、DOC31が昇温し、排気スロットルバルブ4Cの開度の減少速度が大きいほど昇温速度が大きくなる。
本願発明者の知見によれば、DOC31がある程度の温度T4に達するまでは、それまでの昇温速度によらず白煙は発生しない。例えば、一実施形態に係る再生制御装置2が第2昇温速度に基づいてDOC昇温制御を実行した場合に、図7Aに示すように、温度T4(例えば220℃)に達する前の100秒間における昇温速度を低くなるようにしている。この場合、白煙の発生がしにくい。一方、比較例に再生制御装置が回復処理又は強制再生処理を実行した場合に、図7Bに示すように、温度T4(例えば220℃)に達する前の100秒間における昇温速度が高いため、白煙が発生しやすい。また、温度T4に達する前の所定時間(例えば100秒間、30秒間、200秒間等において昇温速度を低くしておけば、それより前の時間すなわち温度が低い領域では、昇温速度を高くしても白煙が発生しにくい。
この点、上記構成では、白煙の発生に昇温速度が影響する温度範囲において開度の減少速度が小さい第1開度制御を実行し、その第1開度制御の前において、開度の減少速度が大きい第2開度制御を実行している。図8は、一実施形態に係る再生制御装置2が排気スロットルバルブ4Cの開度を制御した場合のDPF出口温度の変化の一例を示すグラフである。
図8において、曲線L3は、DPF出口温度の変化を示し、曲線L5は、排気スロットルバルブ4Cの開度の変化を示している。図8に示すように、DOC31の昇温制御において、排気スロットルバルブ4Cは、第2開度制御として、最初に急激にその開度が減少するように制御され、その後、第1開度制御として、開度の減少率は小さく抑えられている。これにより、曲線L3が示すように、最初は第1開度制御によってDPF出口温度が急上昇するものの、その後は第2開度制御によって昇温速度が低くなっている。このような制御によれば、DOC31の昇温に伴う白煙の発生を抑制しつつ、DOC31の昇温にかかる時間を短縮することが可能となる。
幾つかの実施形態では、図1に示すように、再生制御装置2は、オペレータからの指示に基づいて、第2昇温速度に基づいてDOC31の入口温度が第1温度になるまで昇温するように昇温手段を制御するように構成されたDOC手動昇温実行部27をさらに備える。昇温要否判定部21が昇温手段4による昇温が必要であると判定した後の所定時間以内にDOC31の入口温度が第1温度まで上昇しない場合に、DOC昇温実行部22は、報知部26を介してDOC手動昇温実行部27により昇温手段4を制御する処理の実行を促す旨を報知するように構成される。
DOC31の昇温が必要であると判定された後の所定時間以内に何らかの原因によりDOC31の入口温度が第1温度まで上昇していない場合、DOC31のSOF堆積量が多い可能性が高く、白煙が発生する可能性が高い。この点、上記構成では、そのような場合にDOC昇温実行部22は、報知部26を介して、DOC手動昇温実行部27により昇温手段4を制御する処理の実行を促す旨をオペレータに報知する。オペレータがそれに応答して実行を指示した場合には、DOC昇温実行部22は、第2昇温速度に基づいてSOFを除去可能な第1温度までDOC31の入口温度を昇温させる。そのため、白煙の発生を抑制しつつ、SOF堆積量を減少させることができる。
ここで、上述したSOFを除去するためのDOC昇温制御の処理の流れを説明する。図9は、一実施形態に係る再生制御装置2が実行するDOC昇温制御の一例を示すフローチャートである。
図9に示すように、DOC昇温制御では、再生制御装置2は、パラメータの監視を行う。具体的には、再生制御装置2のパラメータ取得部28は、累積運転時間又は重み付き累積運転時間等のパラメータを取得する(ステップS21)。
再生制御装置2の昇温要否判定部21は、取得されたパラメータと第2閾値とを比較し、パラメータが第2閾値以上であるか否かを判別する(ステップS22)。すなわち、再生制御装置2は、SOFを除去するための昇温が必要であるか否かを判別する。
ここで、パラメータが第2閾値未満であると判別された場合(ステップS22;No)、再生制御装置2は、ステップS21に戻って、パラメータの監視を継続する。一方、パラメータが第2閾値以上であると判別された場合(ステップS22;Yes)、再生制御装置2の昇温要否判定部21は、取得されたパラメータと第1閾値とを比較し、パラメータが第1閾値以上であるか否かを判別する(ステップS23)。
ここで、パラメータが第1閾値未満であると判別された場合(ステップS23;No)、再生制御装置2の昇温速度決定部29は、昇温速度を第1昇温速度に決定する(ステップS25)。一方、パラメータが第1閾値以上であると判別された場合(ステップS23;Yes)、再生制御装置2の昇温速度決定部29は、昇温速度を第2昇温速度に決定する(ステップS24)。
次に、再生制御装置2のDOC昇温実行部22は、決定された昇温速度に基づいて、DOC31の昇温を実行する(ステップS26)。例えば、昇温速度が第1昇温速度に決定されている場合、DOC昇温実行部22は、昇温手段4として燃料噴射装置4Aを制御し、アーリーポスト噴射を行ってもよい。昇温速度が第2昇温速度に決定されている場合、DOC昇温実行部22は、昇温手段4として排気スロットルバルブ4Cを制御し、その開度を減少させてもよい。これにより、DOC31を第1温度まで昇温させることができる。
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述したパラメータは、例えば、DPF32の出口温度、DPF32の入口温度とDPF32の出口温度との温度差、DOC31の出口温度および入口温度の温度差、DOC31を通過する排ガスの流量、およびレイトポスト噴射(または排気管噴射)の燃料噴射量等に基づいて算出されてもよい。また、パラメータは、DPF32の入口温度の上昇速度と、DOC31にSOFが堆積していない状態におけるDPF32の入口温度の上昇速度との対比に基づいて算出されてもよい。また、パラメータは、SOF堆積量の推定値であってもよい。
計測される温度や閾値温度等は、上記実施形態において例示したものに限られない。例えば、DPF32又はDOC31の出口、入口、中心位置等の任意の位置における計測温度又は温度閾値に変更することが可能である。図3に示すように、DOC31とDPF32の温度は若干の差分はあるものの相関性が高いことがわかる。そのため、位置による差分を考慮して判別基準を設定すれば、どこの温度が昇温要否等の判定に使用されてもよい。
また、幾つかの実施形態に係る再生制御装置2は、上記動作の全て或いは一部をソフトウェアによって実現する構成としてもよい。この場合、再生制御装置2は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサ、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置、及び上記処理の全て或いは一部を実現させるためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。
そして、プロセッサが上記記録媒体に記録されているプログラムを読み出して、情報の加工及び演算処理を実行することにより、上述した再生制御装置2と同様の処理を実現させる。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等である。また、このようなプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。