JP2020180395A - セルロース繊維の成形体及びその製造方法 - Google Patents

セルロース繊維の成形体及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】水に濡れても強度が極端に低下することのないセルロース繊維の成形体及びその製造方法とする。【解決手段】セルロース繊維からなる成形体を、撥水性樹脂を含み、セルロース繊維の一部又は全部がセルロースナノファイバーで、かつ撥水性樹脂の含有率が1〜20質量%であるものとする。また、成形体を製造するにあたっては、セルロース繊維のスラリーをプレス及び乾燥して成形体原紙を得、この成形体原紙に撥水性樹脂を含ませ、セルロース繊維の一部又は全部としてセルロースナノファイバーを使用し、プレスに先立ってスラリーを脱水し、撥水性樹脂の含有率が1〜20質量%となるように調整する。【選択図】なし

Description

本発明は、セルロース繊維の成形体及びその製造方法に関するものである。
近年、樹脂系の高強度材料に代替し得る成形体として、セルロースナノファイバーを主成分とする高強度材料(成形体)が注目されている(例えば、特許文献1参照)。この高強度材料はセルロースナノファイバーのスラリーをプレス、乾燥等することで製造することができ、軽量で、しかも燃焼残渣の問題が生じない等の特徴を有する。しかしながら、この従来の成形体は、水に濡れると極端に引張弾性率や引張強度等の強度が低下してしまうため、水に触れる用途での使用には適さない。
そこで、特許文献2が開示するように、セルロースナノファイバーを含有する成形体を湿潤紙力剤によって耐水化処理することが考えられる。同文献は、紙糸用原紙に関するものであるが、紙に対する湿潤紙力剤の役割から想定すると、同公報の思想は、紙糸用原紙以外の成形体一般にも適用可能であると考えられる。しかしながら、本発明者等が試験したところによると、湿潤紙力剤を使用して成形体を耐水化処理しても成形体が水に濡れると極端に当該成形体の強度が低下してしまうことが知見された。
特開2013−11026号公報 特許第5454450号公報
本発明が解決しようとする主たる課題は、水に濡れても強度が極端に低下することのないセルロース繊維の成形体及びその製造方法を提供することにある。
パルプを抄紙して製造する紙の分野における湿潤紙力剤の役割から想定すると、前述した特許文献2の思想によれば、紙糸用原紙以外の成形体についても水に濡れた場合における強度低下を防止することができそうである。しかしながら、本発明者等が試験したところでは、そのような結果にならなかった。そこで、本発明者等は、セルロース繊維としてセルロースナノファイバーを含む場合は、パルプのみからなる紙一般の場合とは同様に考えることができないとの前提で、種々の試験を行った。結果、撥水性樹脂を使用し、成形体の内部に水が浸透すること(成形体の膨潤)自体を極力抑えなければ強度の低下を防ぐことができないことを知見した。この知見を前提に想到するに至ったのが、次に示す手段である。
(請求項1に記載の手段)
セルロース繊維からなる成形体であり、
撥水性樹脂を含み、
前記セルロース繊維の一部又は全部がセルロースナノファイバーで、かつ前記撥水性樹脂の含有率が1〜20質量%である、
ことを特徴とするセルロース繊維の成形体。
(請求項2に記載の手段)
前記撥水性樹脂の含有量が、下記の量である、
請求項1に記載のセルロース繊維の成形体。
(含有量)
前記成形体を水に1時間浸漬した後の含水率が10%以下になる量。ここで、前記含水率は、((成形体の1時間浸漬後の質量−成形体の絶乾質量)/成形体の絶乾質量)×100である。
(請求項3に記載の手段)
前記撥水性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ロジン及びシェラックから選択されるいずれか1種以上の樹脂である、
請求項1又は請求項2に記載のセルロース繊維の成形体。
(請求項4に記載の手段)
前記セルロース繊維として、前記セルロースナノファイバーと共にパルプを含み、
前記セルロースナノファイバー及び前記パルプの配合比が40〜9900:100である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロース繊維の成形体。
(請求項5に記載の手段)
前記成形体の接触角変化率が0.1以下である、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロース繊維の成形体。
ここでいう、接触角変化率とは水を滴下した場合における当該水の接触角の変化であり、接触角変化率=((1分後の接触角)−(1秒後の接触角))÷(1秒後の接触角)である。
(請求項6に記載の手段)
セルロース繊維のスラリーをプレス及び乾燥して成形体原紙を得、この成形体原紙に撥水性樹脂を含ませてセルロース繊維の成形体を製造する方法であり、
前記セルロース繊維の一部又は全部としてセルロースナノファイバーを使用し、前記プレスに先立って前記スラリーを脱水し、
前記撥水性樹脂の含有率が1〜20質量%となるように調整する、
ことを特徴とするセルロース繊維の成形体の製造方法。
(請求項7に記載の手段)
前記成形体原紙の密度が0.95〜1.5g/m3となるように前記プレス及び前記乾燥を行う、
請求項6に記載のセルロース繊維の成形体の製造方法。
(請求項8に記載の手段)
前記成形体原紙に前記撥水性樹脂を含ませるにあたって、前記成形体原紙を撥水性樹脂に浸漬し、
前記撥水性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ロジン及びシェラックから選択されるいずれか1種以上の樹脂を使用し、
前記浸漬後に100〜200℃で乾燥する、
請求項6又は請求項7に記載のセルロース繊維の成形体の製造方法。
本発明によると、水に濡れても強度が極端に低下することのないセルロース繊維の成形体及びその製造方法になる。
次に、発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は本発明の一例である。本発明の範囲は、本実施の形態の範囲に限定されない。
本形態の成形体は、セルロース繊維及び撥水性樹脂を含む。セルロース繊維は、好ましくは主成分であり、より好ましくは80質量%以上を占める。セルロース繊維は、セルロースナノファイバー又はセルロースナノファイバー及び他のセルロース繊維で構成される。他のセルロース繊維としては、例えば、パルプ、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)等を好適に使用することができる。ミクロフィブリル化セルロースは、セルロースナノファイバーと同じように、パルプ繊維を解繊して得ることができ、いずれも解繊繊維である。本形態の成形体は、例えば、セルロースナノファイバー等からなるセルロース繊維のスラリーを調成し、このセルロース繊維のスラリーから湿紙を形成し、この湿紙を加圧乾燥することで得ることができる。以下、詳細に説明する。
(セルロースナノファイバー)
セルロースナノファイバーは、セルロース繊維の水素結合点を増やし、もって成形体の強度を向上する役割を有する。加えて、セルロースナノファイバーは、成形体の表面を平滑化し、もって撥水性樹脂の含有と相まって水が成形体内に浸透するのを抑制する役割を有する。
セルロースナノファイバーは、原料パルプを解繊(微細化)することで得ることができる。
セルロースナノファイバーの原料パルプとしては、例えば、広葉樹、針葉樹等を原料とする木材パルプ、ワラ・バガス・綿・麻・じん皮繊維等を原料とする非木材パルプ、回収古紙、損紙等を原料とする古紙パルプ(DIP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。なお、以上の各種原料は、例えば、セルロース系パウダーなどと言われる粉砕物の状態等であってもよい。
ただし、不純物の混入を可及的に避けるために、セルロースナノファイバーの原料パルプとしては、木材パルプを使用するのが好ましい。木材パルプとしては、例えば、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)等の化学パルプ、機械パルプ(TMP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
広葉樹クラフトパルプは、広葉樹晒クラフトパルプであっても、広葉樹未晒クラフトパルプであっても、広葉樹半晒クラフトパルプであってもよい。同様に、針葉樹クラフトパルプは、針葉樹晒クラフトパルプであっても、針葉樹未晒クラフトパルプであっても、針葉樹半晒クラフトパルプであってもよい。
機械パルプとしては、例えば、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、漂白サーモメカニカルパルプ(BTMP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
原料パルプは、解繊するに先立って化学的手法によって前処理することもできる。化学的手法による前処理としては、例えば、酸による多糖の加水分解(酸処理)、酵素による多糖の加水分解(酵素処理)、アルカリによる多糖の膨潤(アルカリ処理)、酸化剤による多糖の酸化(酸化処理)、還元剤による多糖の還元(還元処理)等を例示することができる。
解繊に先立ってアルカリ処理すると、パルプが持つヘミセルロースやセルロースの水酸基が一部解離し、分子がアニオン化することで分子内及び分子間水素結合が弱まり、解繊におけるセルロース繊維の分散が促進される。
アルカリ処理に使用するアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム等の有機アルカリ等を使用することができる。ただし、製造コストの観点からは、水酸化ナトリウムを使用するのが好ましい。
解繊に先立って酵素処理や酸処理、酸化処理を施すと、セルロースナノファイバーの保水度を低く、結晶化度を高くすることができ、かつ均質性を高くすることができる。この点、セルロースナノファイバーの保水度が低いと脱水し易くなり、セルロース繊維スラリーの脱水性が向上する。
原料パルプを酵素処理や酸処理、酸化処理すると、パルプが持つヘミセルロースやセルロースの非晶領域が分解される。結果、微細化処理のエネルギーを低減することができ、セルロース繊維の均一性や分散性を向上することができる。セルロース繊維の分散性は、例えば、セルロース繊維のスラリーから成形体を製造する場合において、当該成形体の均質性に資する。ただし、前処理は、セルロースナノファイバーのアスペクト比を低下させるため、過度の前処理は避けるのが好ましい。
原料パルプの解繊は、例えば、ビーター、高圧ホモジナイザー、高圧均質化装置等のホモジナイザー、グラインダー、摩砕機等の石臼式摩擦機、単軸混練機、多軸混練機、ニーダーリファイナー、ジェットミル等を使用して原料パルプを叩解することによって行うことができる。ただし、リファイナーやジェットミルを使用して行うのが好ましい。
原料パルプの解繊は、得られるセルロースナノファイバーの平均繊維径、平均繊維長、保水度、結晶化度、擬似粒度分布のピーク値、パルプ粘度、分散液のB型粘度が、以下に示すような所望の値又は評価となるように行うのが好ましい。
セルロースナノファイバーの平均繊維径(平均繊維幅。単繊維の直径平均。)は、好ましくは10〜100nm、より好ましくは15〜90nm、特に好ましくは20〜80nmである。セルロースナノファイバーの平均繊維径が10nmを下回ると、脱水性が悪化するおそれがある。また、成形体が緻密になり過ぎ、乾燥性が悪化するおそれがある。さらに、撥水性樹脂を含ませる本形態においては、成形体が緻密になり過ぎると、撥水性樹脂がセルロース繊維間に十分に浸透しなくなり、撥水性樹脂が成形体表面から剥がれやすくなるおそれがあるという問題もある。他方、セルロースナノファイバーの平均繊維径が100nmを上回ると、水素結合点の増加効果が得られないおそれがある。
セルロースナノファイバーの平均繊維径は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
セルロースナノファイバーの平均繊維径の測定方法は、次のとおりである。
まず、固形分濃度0.01〜0.1質量%のセルロースナノファイバーの水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t−ブタノール20mlで3回溶媒置換する。次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて3,000倍〜30,000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。そして、計測値の中位径を平均繊維径とする。
セルロースナノファイバーの平均繊維長(単繊維の長さ)は、好ましくは0.3〜2000μm、より好ましくは0.4〜200μm、特に好ましくは0.5〜20μmである。セルロースナノファイバーの平均繊維長が0.3μmを下回ると、成形体を製造する場合において、脱水の過程で流出する繊維の割合が多くなり、また、成形体の強度を担保することができなくなるおそれがある。他方、セルロースナノファイバーの平均繊維長が2000μmを上回ると、繊維同士が絡み易くなる。結果、成形体を製造する時点で繊維同士の絡みによる強固な凝集が局所的に発生し、局所的に撥水性樹脂が浸透しない、又は局所的に撥水性樹脂が剥がれやすくなるという問題が発生するおそれがある。また、成形体の表面性が悪化するおそれがある。表面性の悪化は、水の浸透を抑えるという点で好ましくない。
セルロースナノファイバーの平均繊維長は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
セルロースナノファイバーの平均繊維長の測定方法は、平均繊維径の場合と同様にして、各繊維の長さを目視で計測する。計測値の中位長を平均繊維長とする。
セルロースナノファイバーの保水度は、例えば90〜600%、好ましくは200〜500%、より好ましくは240〜460%である。セルロースナノファイバーの保水度が90%を下回ると、セルロースナノファイバーの分散性が悪化し、他の繊維、例えばパルプと均一に混合することができなくなるおそれがある。他方、セルロースナノファイバーの保水度が600%を上回ると、セルロースナノファイバー自体の保水力が高くなり、セルロース繊維スラリーの脱水性が悪化するおそれがある。
セルロースナノファイバーの保水度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
セルロースナノファイバーの保水度は、JAPAN TAPPI No.26(2000)に準拠して測定した値である。
セルロースナノファイバー結晶化度は、好ましくは45〜90%、より好ましくは55〜88%、特に好ましくは60〜86%である。セルロースナノファイバーの結晶化度が以上の範囲内であれば、成形体の強度を確実に担保することができる。
結晶化度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等で任意に調整することができる。
セルロースナノファイバーの結晶化度は、JIS K 0131に準拠して測定した値である。
セルロースナノファイバーの擬似粒度分布曲線におけるピーク値は、1つのピークであるのが好ましい。1つのピークである場合、セルロースナノファイバーは、繊維長及び繊維径の均一性が高く、セルロース繊維スラリーの脱水性に優れる。
セルロースナノファイバーのピーク値は、例えば1〜100μm、好ましくは3〜80μm、より好ましくは5〜60μmである。
セルロースナノファイバーのピーク値は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
セルロースナノファイバーのピーク値は、ISO−13320(2009)に準拠して測定した値である。より詳細には、まず、粒度分布測定装置を使用してセルロースナノファイバーの水分散液の体積基準粒度分布を調べる。次に、この分布からセルロースナノファイバーの中位径を測定する。この中位径をピーク値とする。
セルロースナノファイバーのパルプ粘度は、好ましくは1〜10cps、より好ましくは1〜9cps、特に好ましくは1〜8cpsである。パルプ粘度は、セルロースを銅エチレンジアミン液に溶解させた後の溶解液の粘度であり、パルプ粘度が大きいほどセルロースの重合度が大きいことを示している。パルプ粘度が以上の範囲内であれば、スラリーに脱水性を付与しつつ、成形体としたときの機械的物性を保持できる。
セルロースナノファイバーのパルプ粘度は、TAPPI T 230に準拠して測定した値である。
解繊して得られたセルロースナノファイバーは、必要により、他のセルロース繊維と混合するに先立って水系媒体中に分散して分散液としておくことができる。水系媒体は、全量が水であるのが特に好ましい(水溶液)。ただし、水系媒体は、一部が水と相溶性を有する他の液体であってもよい。他の液体としては、例えば、炭素数3以下の低級アルコール類等を使用することができる。
セルロースナノファイバーの分散液(濃度1%)のB型粘度は、好ましくは10〜4000cps、より好ましくは80〜3000cps、特に好ましくは100〜2000cpsである。分散液のB型粘度を以上の範囲内にすると、他のセルロース繊維との混合が容易になり、また、セルロース繊維スラリーの脱水性が向上する。
セルロースナノファイバーの分散液のB型粘度(固形分濃度1%)は、JIS−Z8803(2011)の「液体の粘度測定方法」に準拠して測定した値である。B型粘度は分散液を攪拌したときの抵抗トルクであり、高いほど攪拌に必要なエネルギーが多くなることを意味する。
セルロース繊維中におけるセルロースナノファイバーの含有率は、好ましくは30〜99質量%、より好ましくは40〜95質量%、特に好ましくは50〜90質量%である。セルロースナノファイバーの含有率が30質量%を下回ると、十分な強度が得られないおそれがある。他方、セルロースナノファイバーの含有率が99質量%を超えると、成形体を製造する時点で、原料となる水分散体から水を除去するためのコストが多大にかかり、結果として膨大なコストがかかるおそれがある。
(パルプ)
パルプは、セルロース繊維スラリーの脱水性を大幅に向上する役割を有する。また、パルプは、成形体の強度を向上する役割も有する。
ただし、パルプは、含有率を所定の範囲内(後述)とするのが好ましく、保水度比(セルロース繊維スラリーの保水度をセルロースナノファイバーの保水度で除した値)及びセルロース繊維スラリーの自重脱水性が所定の範囲内(後述)になるように含ませるのがより好ましい。このような限定を加えることで、セルロース繊維スラリーから成形体を製造した場合において、当該成形体の強度が担保される。なお、保水度比及び自重脱水性の詳細については、後述する。
セルロース繊維中におけるパルプの含有率は、好ましくは1〜70質量%、より好ましくは5〜60質量%、特に好ましくは10〜50質量%である。パルプの含有率が1質量%を下回ると、セルロース繊維スラリーの脱水性が十分に向上しないおそれがある。他方、パルプの含有率が50質量%を上回ると、結果的にセルロースナノファイバーの含有率が減るため、成形体の強度が担保されないおそれがある。
パルプとしては、セルロースナノファイバーの原料パルプと同様のものを使用することができ、セルロースナノファイバーの原料パルプと同じものを使用するのが好ましい。パルプとしてセルロースナノファイバーの原料パルプと同じものを使用すると、セルロース繊維の親和性が向上し、結果、セルロース繊維スラリーや成形体の均質性が向上する。
また、パルプとしては、リグニンを含有するパルプを使用するのが好ましく、機械パルプを使用するのがより好ましく、BTMPを使用するのが特に好ましい。これらのパルプを使用すると、セルロース繊維スラリーの脱水性がより向上する。
パルプの平均繊維径(平均繊維幅。単繊維の直径平均。)は、好ましくは10〜100μm、より好ましくは10〜80μm、特に好ましくは10〜60μmである。パルプの平均繊維径が以上の範囲内であれば、パルプの含有率を前述した範囲内とすることで、セルロース繊維スラリーの脱水性がより向上する。
パルプの平均繊維径は、例えば、原料パルプの選定、軽い解繊等によって調整することができる。
パルプの平均繊維径の測定方法は、次のとおりである。
まず、固形分濃度0.01〜0.1質量%のパルプの水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t−ブタノール20mlで3回溶媒置換する。次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて100倍〜1000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。そして、計測値の中位径を平均繊維径とする。
パルプのフリーネスは、好ましくは10〜800ml、より好ましくは350〜780ml、特に好ましくは400〜750mlである。パルプのフリーネスが750mlを上回ると、セルロース繊維スラリーの脱水性は向上できるものの、成形体とした際に表面に凹凸ができ易くなり、また、繊維が剛直になってセルロースナノファイバーと一体化せず、密度が向上しないおそれがある。他方、パルプのフリーネスが400mlを下回ると、セルロース繊維スラリーの脱水性が十分に向上しないおそれがあり、また、パルプ繊維自体の剛直性が低下し、成形体を支持する繊維として機能しなくなるおそれがある。
パルプのフリーネスは、JIS P8121−2(2012)に準拠して測定した値である。
(ミクロフィブリル化セルロース)
ミクロフィブリル化セルロースは、脱水性を担保しつつ、水素結合点を増加し、成形体の引張弾性率を向上させる役割を有する。
ミクロフィブリル化セルロースは、セルロースナノファイバーよりも平均繊維径の太い繊維を意味する。具体的には、例えば0.1〜10μm、好ましくは0.3〜5μm、より好ましくは0.5〜2μmである。
ミクロフィブリル化セルロースの平均繊維径が0.1μmを下回ると、セルロースナノファイバーであるのと変わらなくなり、強度(特に曲げ弾性率)増加効果が十分に得られなくなる。また、解繊時間が長くなり、大きなエネルギーが必要になる。さらに、セルロース繊維スラリーの脱水性が悪化する。脱水性が悪化すると、セルロース繊維スラリーから成形体を製造する場合において、成形体の乾燥に大きなエネルギーが必要になり、乾燥に大きなエネルギーをかけるとミクロフィブリル化セルロースが熱劣化して、強度が低下するおそれがある。他方、ミクロフィブリル化セルロースの平均繊維径が10μmを上回ると、分散性に劣る傾向があり、パルプやセルロースナノファイバーとの混合が困難になるおそれがある。
ミクロフィブリル化セルロースは、原料パルプを解繊(微細化)することで得ることができる。原料パルプとしては、セルロースナノファイバーと同じものを使用することができ、セルロースナノファイバーと同じものを使用するのが好ましい。
また、ミクロフィブリル化セルロースの原料パルプは、セルロースナノファイバーの場合と同様の方法で前処理や解繊をすることができる。ただし、解繊の程度は異なり、例えば、平均繊維径が0.1μm以上に留まる範囲で行う必要がある。以下、セルロースナノファイバーの場合と異なる点を中心に説明する。
ミクロフィブリル化セルロースの平均繊維長(単繊維の長さの平均)は、例えば0.01〜1mm、好ましくは0.03〜0.7mm、より好ましくは0.05〜0.5mmである。平均繊維長が0.01mm未満であると、繊維同士の三次元ネットワークを形成できず、補強効果が低下するおそれがある。
平均繊維長は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等で任意に調整可能である。
ミクロフィブリル化セルロースの繊維長は、0.2mm以下の割合が60%以上であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましく、75%以上であるのが特に好ましい。当該割合が60%未満であると、十分な補強効果を得られない可能性がある。他方、ミクロフィブリル化セルロースの繊維長は、0.2mm以下の割合の上限がなく、全て0.2mm以下であっても良い。
ミクロフィブリル化セルロースのアスペクト比は、セルロース繊維スラリーから成形体を製造する場合において、当該成形体の延性をある程度保持しつつ強度を向上させる必要がある場合においては、1〜10000であるのが好ましく、5〜5000であるのがより好ましい。
なお、アスペクト比とは、平均繊維長を平均繊維幅で除した値である。アスペクト比が大きいほどパルプ中において引っかかりが生じる箇所が多くなるため補強効果が上がるが、他方で引っかかりが多い分成形体の延性が低下するものと考えられる。
ミクロフィブリル化セルロースのフィブリル化率は、0.5%以上であるのが好ましく、1.0%以上であるのがより好ましく、1.5%以上であるのが特に好ましい。また、フィブリル化率は、10%以下であるのが好ましく、9%以下であるのがより好ましく、8%以下であるのが特に好ましい。フィブリル化率が10%を超えると、水との接触面積が広くなり過ぎるため、たとえ平均繊維幅が0.1μm以上に留まる範囲で解繊できたとしても、脱水が困難になる可能性がある。他方、フィブリル化率が0.5%未満では、フィブリル同士の水素結合が少なく、強硬な三次元ネットワークを形成することができなくなるおそれがある。
ミクロフィブリル化セルロースの結晶化度は、45%以上であるのが好ましく、55%以上であるのがより好ましく、60%以上であるのが特に好ましい。結晶化度が45%未満であると、パルプやセルロースナノファイバーとの混合性は向上するものの、繊維自体の強度が低下するため、強度を担保することができなくなるおそれがある。他方、ミクロフィブリル化セルロースの結晶化度は、90%以下であるのが好ましく、88%以下であるのがより好ましく、88%以下であるのが特に好ましい。結晶化度が90%を超えると、分子内の強固な水素結合割合が多くなり繊維自体が剛直となるため、パルプとの水素結合点が十分に増加せず、セルロース繊維スラリーから成形体を製造する場合において、当該成形体の強度が十分に向上しないおそれがある。
ミクロフィブリル化セルロースの結晶化度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、微細化処理で任意に調整可能である。
ミクロフィブリル化セルロースのパルプ粘度は、1cps以上であるのが好ましく、2cps以上であるのがより好ましい。パルプ粘度が1cps未満であると、ミクロフィブリル化セルロースの凝集を十分に抑制することができないおそれがある。
ミクロフィブリル化セルロースのフリーネスは、200cc以下が好ましく、150cc以下がより好ましく、100cc以下が特に好ましい。ミクロフィブリル化セルロースのフリーネスが200ccを超えるとミクロフィブリル化セルロースの平均繊維径が10μmを超え、強度に関する効果が十分に得られないおそれがある。
ミクロフィブリル化セルロースの保水度は、500%以下であるのが好ましく、4500%以下であるのがより好ましく、400%以下であるのが特に好ましい。ミクロフィブリル化セルロースの保水度が500%を超えると、脱水性が劣る傾向にあり、また、凝集する可能性がある。
ミクロフィブリル化セルロースの保水度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等で任意に調整可能である。
セルロース繊維中におけるミクロフィブリル化セルロースの含有率は、好ましくは1〜90質量%、より好ましくは5〜80質量%、特に好ましくは10〜50質量%である。ミクロフィブリル化セルロースの含有率が1質量%を下回ると、十分な補強効果が得られないおそれがある。他方、ミクロフィブリル化セルロースの含有率が90質量%を超えると、相対的にパルプやセルロースナノファイバーの含有率が減ることになり、パルプやセルロースナノファイバーを含有することによる効果が得られないおそれがある。
ミクロフィブリル化セルロースの各種物性の測定方法は、特にこれに反する記載のない限り、セルロースナノファイバーやパルプの場合と同様である。
(撥水性樹脂)
撥水性樹脂とは、成形体の内部に水分が浸透するのを抑止する樹脂をいう。セルロース繊維としてセルロースナノファイバーを含む場合は、湿潤紙力剤を使用して成形体(原紙)を耐水化処理しても成形体が水に濡れると当該成形体の強度が極端に低下する。しかしながら、撥水性樹脂を使用して成形体の内部に水分が浸透するのを抑止すると、当該成形体の強度が極端に低下するおそれがなくなる。
撥水性樹脂としては、成形体原紙との親和性や成形体原紙の表面に撥水性皮膜を形成できるという観点から、撥水性を有する樹脂を、例えば、水系エマルジョンとして使用するのが好ましい。より好適には、撥水性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ロジン及びシェラックから選択されるいずれか1種以上の樹脂を使用するのが好ましく、スチレン−アクリル系樹脂及びシェラックの少なくともいずれか一方を使用するのがより好ましい。
また、撥水性樹脂としては、より上位概念的には、長鎖の炭化水素(例えば、ポリオレフィン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、フッ素樹脂が該当する。)、又はシロキサン構造(例えば、シリコーン樹脂が該当する。)、又は炭化水素による多環構造(例えば、ロジン及びシェラックが該当する。)を主要な骨格として有する化合物が好適である。
撥水性樹脂の含有率は、1〜20質量%であるのが好ましく、2〜18質量%であるのがより好ましく、5〜15質量%であるのが特に好ましい。撥水性樹脂の含有率が1質量%を下回ると、成形体の強度低下抑止効果が得られないおそれがある。他方、撥水性樹脂の含有率が20質量%を上回っても、撥水性樹脂の存在自体によってセルロース繊維の一体性が阻害され、かえって成形体の強度が低下するおそれがある。
本形態において撥水性樹脂の含有率は、成形体の全量(絶乾質量基準)に対する撥水性樹脂の割合(質量基準)を意味する。
撥水性樹脂の含有量は、成形体を水に1時間浸漬した後の含水率が10%以下になる量とするのが好ましく、9%以下になる量とするのがより好ましく、8%以下になる量とするのが特に好ましい。ここで、上記含水率は、((成形体を水に1時間浸漬後した後の質量−成形体の絶乾質量)/成形体の絶乾質量)×100である。
(成形体の製造方法)
成形体を製造するにあたっては、まず、微細(解繊)繊維(セルロースナノファイバー、又はミクロフィブリル化セルロース及びセルロースナノファイバー)やパルプ等を所定の割合で混合し、好ましくはセルロースナノファイバー及びパルプの配合比(質量基準)が40〜9900:100となるように混合し、もってセルロース繊維のスラリーを調成する(スラリー調成工程)。微細繊維及びパルプは、それぞれを分散液の状態で混合することもできる。
微細繊維及びパルプの混合に際しては、水等の媒体を加える等して、セルロース繊維のスラリー中におけるセルロース繊維の固形分濃度を調節すると好適である。セルロース繊維の固形分濃度は、好ましくは1〜15質量%、より好ましくは1〜7質量%、特に好ましくは1〜5質量%である。セルロース繊維の固形分濃度が1質量%を下回ると、流動性が高く、脱水工程においてセルロース繊維が流出してしまうおそれが高くなる。他方、セルロース繊維の固形分濃度が15質量%を上回ると、流動性が著しく低下し、加工性が悪化するため、厚みのむらが発生し易くなり、均質な成形体を得ることが困難になるおそれがある。
水等の媒体(水系媒体)は、全量が水であるのが好ましい。ただし、水系媒体は、一部が水と相溶性を有する他の液体であってもよい。他の液体としては、例えば、炭素数3以下の低級アルコール類や、炭素数5以下のケトン類等を使用することができる。
セルロース繊維のスラリーは、パルプの含有率を適宜調節することで、保水度比が0.50〜0.99となるようにするのが好ましく、0.55〜0.98となるようにするのがより好ましく、0.60〜0.97となるようにするのが特に好ましい。
以上に加えて、セルロース繊維のスラリーは、パルプの種類や含有率を適宜調節することで、自重脱水性が1.1〜3.0となるようにするのが好ましく、1.2〜2.0となるようにするのがより好ましく、1.3〜1.8となるようにするのが特に好ましい。
セルロース繊維スラリーの保水度比を0.50以上に、また、自重脱水性を3.0以下にすることで、最終的に得られる成形体(最終製品)の強度を担保することができる。
セルロース繊維スラリーの保水度は、以下の方法によって測定した値である。
まず、セルロース繊維のスラリー(濃度2質量%)を遠心分離機(条件:3000G、15分)によって脱水し、得られた脱水物の質量を測定する。次に、当該脱水物を完全に乾燥し、得られた乾燥物の質量を測定する。そして、保水度(%)=(脱水物の質量−乾燥物の質量)/セルロース繊維スラリーの質量×100とする。
保水度は一定の遠心力をかけた後にスラリーに残存する水量のことであり、保水度が低いほど脱水性が良好であることを示す。また、保水度比が低いほど、元々のセルロースナノファイバースラリーから保水度が減少したことを示し、脱水性が増加したことを示す。
一方、セルロース繊維スラリーの自重脱水性は、以下の方法によって測定した値である。
セルロース繊維のスラリーを吸水基材の上の金網(300メッシュ、幅10cm×長さ10cm×厚さ2mm)に塗工し、2分間放置する。そして、自重脱水性=2分間放置後の固形分濃度/塗工前の固形分濃度とする。
セルロース繊維のスラリーには、必要により、例えば、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、分散剤、消泡剤、スライムコントロール剤、防腐剤等の添加剤を添加することができる。
以上のようにして得たスラリーは、適宜、湿紙形成、脱水及び加圧(プレス)乾燥等することで成形体原紙を得る。プレスに先立ってスラリーを脱水することで、特にセルロースナノファイバーの流出を可及的に減らすことができる。
プレスにおいて湿紙を十分にプレスすることで、成形体原紙を高密度化することができ、また、成形体原紙の表面性を向上させることができる。湿紙の乾燥には、例えば、ヤンキードライヤ、シリンダードライヤ、スルードライヤ、オーブン等の乾燥装置を使用することができる。
乾燥の後、例えば、マシンカレンダーやスーパーカレンダー等を使用して更に高強度化することもできる。
成形体原紙の密度は、好ましくは0.95〜1.50g/cm3、より好ましくは1.00〜1.45g/cm3、特に好ましくは1.00〜1.40g/cm3である。成形体の密度が0.95g/cm3を下回ると、強度が十分なものにならないおそれがある。他方、成形体の密度が1.50g/cm3を上回ると、撥水性樹脂の含有率を十分なものとすることができなくなるおそれがある。また、軽量という特性が失われるため好ましくない。
スラリーから成形体原紙を製造する方法としては、例えば、特開2018−62727号公報(セルロースナノファイバー成形体)に記載の方法によることができる。なお、湿紙の形成方法等について、上記したのは好適な例であり、本形態の製造方法をこれに限定する趣旨ではない。
本形態の成形体は、以上の成形体に撥水性樹脂を含ませたものであってもよい。撥水性樹脂を含ませる方法としては、特に限定されず、例えば、含浸法、サイズプレス法、ゲートロール法、バーコーター法、カレンダー法、スプレー法等の各種公知の方法を適用できる。また、成形体に撥水性樹脂を塗工する方法(塗工形態)においては、例えば、サイズプレス、ゲートロールコータ、プレメタリングサイズプレス、カーテンコータ、スプレーコータ等のコータ(塗工機)を使用して塗布することができる。また、成形体を撥水性樹脂(溶液)に浸漬する方法(浸漬形態)としては、成形体を撥水性樹脂(溶液)で満たされたゾーンにドブ漬けにしてから乾燥させる方法等を採用することができる。ただし、必要により、セルロース繊維のスラリーに撥水性樹脂を添加して混合する方法(混合形態)等も考えることができる。
塗工形態又は浸漬形態を採用した場合は、必要により余分な撥水性樹脂を成形体原紙からふき取ったうえで、再度乾燥すると好適である。この乾燥は、成形体原紙を製造する際に使用する乾燥装置と同様の装置によって行うことができる。この乾燥は、例えば、100〜200℃で0.1〜5時間行うと好適である。
(成形体)
以上のようにして得られた成形体は、密度が、好ましくは0.95〜1.50g/m3、より好ましくは1.00〜1.45g/m3、特に好ましくは1.00〜1.40g/m3である。成形体の密度が0.95g/m3を下回ると、水素結合点の減少を原因として強度が不十分であるとされるおそれがある。また、成形体の密度が1.50g/m3を上回ると、撥水性樹脂を含ませる本形態においては、成形体が緻密になり過ぎることにより、撥水性樹脂がセルロース繊維間に十分に浸透しなくなり、撥水性樹脂が成形体表面から剥がれやすくなるおそれがある。なお、成形体の密度は、JIS−P−8118:1998に準拠して測定した値である。
成形体の厚さは、好ましくは1μm以上、より好ましくは40μm以上、特に好ましくは80μm以上である。成形体の厚さが1μmを下回ると、撥水性樹脂を含ませる段階において、一時的な成形体の強度低下によりシートが破断するおそれがある。
成形体の引張破壊ひずみは、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、4%以下が特に好ましく、3%以下が最も好ましい。引張破壊ひずみが上記上限を超えると、ひずみが大きく用途が限られることがある。他方、成形体の引張破壊ひずみは、0%が最もよいが、例えば、1〜3%であっても許容される。なお、成形体の引張破壊ひずみは、JIS K7127:1999に準拠し、温度23℃の環境下、試験片をJIS−K6251で定める引張2号型ダンベル状とし、試験速度を10mm/分として測定した値である。
成形体の接触角変化率は、好ましくは0.15以下、より好ましくは0.13以下、特に好ましくは0.10以下である。この点、水を吸収し易い成形体においては接触角変化率が大きくなる。したがって、接触角変化率が0.15を上回ると、水との接触により容易に水が成形体内部に浸透することから、成形体の強度が極端に低下し、要求される物性を維持できなくなるおそれがある。なお、接触角変化率とは水を滴下した場合における当該水の接触角の変化であり、接触角変化率=((1分後の接触角)−(1秒後の接触角))÷(1秒後の接触角)である。また、接触角とは、静止液体(水)の自由表面が固体壁(成形体)に接する場所で、液面と固体面とのなす角(液の内部にある角をとる)を意味する。
接触角は、JIS R3257:1999に準拠し、温度23℃、湿度50%、滴下量2μLの条件で、静滴法により行った。水を滴下して1秒後と、1分後の接触角を測定した。
次に、本発明の実施例について説明する。
まず、原料パルプ(LBKP:水分98質量%)をリファイナーで予備叩解し、これを高圧ホモジナイザーで解繊(微細化)し、CNFのスラリー(水分散液:濃度2.0質量%)を得た。なお、リファイナーでの処理及び高圧ホモジナイザーでの処理は、いずれも複数回の循環処理とした。得られたCNFの物性は、平均繊維径30nm、保水度348%、結晶化度75%であった。得られたCNFのスラリーは、パルプ(LBKP:水分98質量%、平均繊維径20μm、フリーネス557ml)と固形分換算で配合質量比が400:100になるよう混合し、固形分濃度2.0質量%のスラリーを調製した。
次に、得られたスラリーから湿紙を作製し、この湿紙を加圧脱水、加圧(プレス)乾燥して厚さ300μmの成形体原紙を得た。この成形体原紙を得るにあたっては、特願2018−054244の方法に準拠した。加圧脱水は、25℃、2MPaで5分間行った。また、加圧乾燥は、120℃、2MPaで5分間行った。得られた成形体原紙の密度は、1.3g/m3であった。
得られた成形体原紙は、撥水性樹脂の溶液に常温で1時間浸漬し、更に105℃で1時間乾燥してセルロース繊維の成形体を得た。撥水性樹脂としては、表1に記載のものを使用した。なお、天然系樹脂(シェラック)としては、株式会社舞昆のこうはら製のアルコートTEC20を使用した。また、スチレン−アクリル系樹脂としては、サカタインクス株式会社製のブライトーンFC−3063を使用した。さらに、湿潤紙力剤としては、星光PMC株式会社製のWS4024を使用した。
また、CNF成形体をライナー紙(280g/m2、厚さ320μm、密度0.88g/cm3)に置換えて、上記と同様の撥水性樹脂による処理を行った。
Figure 2020180395
得られた成形体について、耐水性を評価するために、浸水後の含水率と、浸水前後の引張弾性率及び引張強度の比とを調べた。結果は表1に示した。なお、引張弾性率及び引張強度の測定方法は、次のとおりである。
引張弾性率は、JIS K7127:1999に準拠して測定した。試験片(成形体)は、JIS−K6251で定める引張2号型ダンベル状とした。試験速度は、10mm/分とした。また、温度23℃、湿度50%の環境下で測定した。
引張強度は、JIS K7127:1999に準拠して測定した。試験片(成形体)は、JIS−K6251で定める引張2号型ダンベル状とした。試験速度は、10mm/分とした。また、温度23℃、湿度50%の環境下で測定した。
接触角は、JIS R3257:1999に準拠し、温度23℃、湿度50%、滴下量2μLの条件で、静滴法により行った。水を滴下して1秒後と、1分後の接触角を測定した。
(考察)
撥水性樹脂で処理していない成形体(成形体原紙)では(試験例1〜3、試験例10〜12)、浸水0.5時間以上で含水率が78%に増加し、引張弾性率及び引張強度が1/10程度にまで減少した。一方、撥水性樹脂で処理した成形体では(試験例4〜9)、浸水1時間でも含水率5%以下を保ち、引張弾性率及び引張強度は浸水前とほぼ同等であった。以上のことから、撥水性樹脂を含むと、水に濡れても強度が極端に低下することのないセルロース繊維の成形体になることが分かる。
また、ライナー紙を使用した場合でも(試験例13〜24)、撥水性樹脂での処理によって一定の引張弾性率、引張強度を維持できるものの、CNF成形体を使用した場合と比較して、浸水前後の引張弾性率及び引張強度の比が低いことがわかる。
本発明は、セルロース繊維の成形体及びその製造方法として利用可能である。

Claims (8)

  1. セルロース繊維からなる成形体であり、
    撥水性樹脂を含み、
    前記セルロース繊維の一部又は全部がセルロースナノファイバーで、かつ前記撥水性樹脂の含有率が1〜20質量%である、
    ことを特徴とするセルロース繊維の成形体。
  2. 前記撥水性樹脂の含有量が、下記の量である、
    請求項1に記載のセルロース繊維の成形体。
    (含有量)
    前記成形体を水に1時間浸漬した後の含水率が10%以下になる量。ここで、前記含水率は、((成形体の1時間浸漬後の質量−成形体の絶乾質量)/成形体の絶乾質量)×100である。
  3. 前記撥水性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ロジン及びシェラックから選択されるいずれか1種以上の樹脂である、
    請求項1又は請求項2に記載のセルロース繊維の成形体。
  4. 前記セルロース繊維として、前記セルロースナノファイバーと共にパルプを含み、
    前記セルロースナノファイバー及び前記パルプの配合比が40〜9900:100である、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロース繊維の成形体。
  5. 前記成形体の接触角変化率が0.1以下である、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロース繊維の成形体。
    ここでいう、接触角変化率とは水を滴下した場合における当該水の接触角の変化であり、接触角変化率=((1分後の接触角)−(1秒後の接触角))÷(1秒後の接触角)である。
  6. セルロース繊維のスラリーをプレス及び乾燥して成形体原紙を得、この成形体原紙に撥水性樹脂を含ませてセルロース繊維の成形体を製造する方法であり、
    前記セルロース繊維の一部又は全部としてセルロースナノファイバーを使用し、前記プレスに先立って前記スラリーを脱水し、
    前記撥水性樹脂の含有率が1〜20質量%となるように調整する、
    ことを特徴とするセルロース繊維の成形体の製造方法。
  7. 前記成形体原紙の密度が0.95〜1.5g/m3となるように前記プレス及び前記乾燥を行う、
    請求項6に記載のセルロース繊維の成形体の製造方法。
  8. 前記成形体原紙に前記撥水性樹脂を含ませるにあたって、前記成形体原紙を撥水性樹脂に浸漬し、
    前記撥水性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ロジン及びシェラックから選択されるいずれか1種以上の樹脂を使用し、
    前記浸漬後に100〜200℃で乾燥する、
    請求項6又は請求項7に記載のセルロース繊維の成形体の製造方法。
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